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1996-06-12 第136回国会 参議院 外務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年六月十二日(水曜日)    午後一時十分開会     —————————————    委員異動  六月七日     辞任         補欠選任      伊藤 基隆君     照屋 寛徳君  六月十日     辞任         補欠選任      田村 秀昭君     木暮 山人君      戸田 邦司君     畑   恵君  六月十一日     辞任         補欠選任      木暮 山人君     田村 秀昭君      寺澤 芳男君     山崎  力君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         木庭健太郎君     理 事                 笠原 潤一君                 野沢 太三君                 高野 博師君                 川橋 幸子君     委 員                 岩崎 純三君                 大木  浩君                 武見 敬三君                 成瀬 守重君                 宮澤  弘君                 田村 秀昭君                 畑   恵君                 山崎  力君                 照屋 寛徳君                 立木  洋君                 武田邦太郎君                 椎名 素夫君                 矢田部 理君     国務大臣         外 務 大 臣 池田 行彦君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 臼井日出男君     政府委員         内閣法制局第一         部長      秋山  收君         防衛庁防衛局長 秋山 昌廣君         防衛庁教育訓練         局長      粟  威之君         防衛庁装備局長 荒井 寿光君         防衛施設庁長官 諸冨 増夫君         防衛施設庁総務         部長      大野 琢也君         防衛施設庁施設         部長      小澤  毅君         外務大臣官房審         議官      谷内正太郎君         外務省総合外交         政策局長    川島  裕君         外務省総合外交         政策局軍備管         理・科学審議官 河村 武和君         外務省アジア局         長       加藤 良三君         外務省北米局長 折田 正樹君         外務省経済局長 野上 義二君         外務省経済協力         局長      畠中  篤君         外務省条約局長 林   暘君     事務局側         常任委員会専門         員       大島 弘輔君     説明員         科学技術庁研究         開発局宇宙利用         課長      倉持 隆雄君         通商産業省貿易         局輸出課長   桑山 信也君         運輸省海上技術         安全局安全基準 矢部  哲君         課長     —————————————   本日の会議に付した案件日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間に  おける後方支援物品又は役務相互提供に  関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間  の協定締結について承認を求めるの件(内閣  提出、衆議院送付)     —————————————
  2. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る七日、伊藤基隆君が委員辞任され、その補欠として照屋寛徳君が選任されました。  また、去る十日、戸田邦司君が委員辞任され、その補欠として畑恵君が選任されました。  また、昨十一日、寺澤芳男君が委員辞任され、その補欠として山崎力君が選任されました。     —————————————
  3. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 野沢太三

    野沢太三君 自民党の野沢でございます。本委員会最後案件となりましたので、二日ほどかけてしっかり御質問をし、審議をさせていただきたいと思います。  四月に来日されましたクリントン大統領橋本総理との間で取り決めました日米安保共同宣言が、冷戦後の日本並びアジア地域の平和と安全にとって大きな安定要因としていわゆる日米安保条約の再確認という形でしっかりと再確認をされたということは、私どもも大きく評価をしているものでございます。また、これとあわせて締結をされました本日の議題になっております物品役務相互提供協定につきましても、こういった大きな流れの中で具体的に仕事を進めるために極めて大切な協定評価をいたすものでございます。  こうして見ると、これまでなぜできなかったかということがひとつ反省があるわけでございますが、これまでのこういった物品提供というものについては、いわゆる物品管理法等運用の中で米軍に、細々と言ってはなんですが、燃料等提供してきておりますが、今回の協定によりまして十五項目にわたって幅広く資材、機材の提供が可能になってきたということでございます。  今なぜこれを締結することが必要であるのか、もちろん必要だからやったというふうに我々は考えますが、そしてまたこの意義についていかようにお考えか、これは大臣からひとつお伺いしたいと思います。
  5. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 野沢委員指摘のとおり、日本自衛隊米軍との間の事実としてのいろいろなこういった物品面あるいはサービス面での協力というのは、従来も全くなかったわけではございません。物品管理法等の法的な枠組みのもとで必要なものは行われてきておったわけでございますけれども、やはり共同訓練等をより円滑により有効に行うためには、もう少し幅広いそういった協力関係を打ち立てることが適切ではないだろうか、そしてそのために必要な枠組みをきちっと決めることが大切ではないか、こういう意識がもうかなり前からございまして、その研究を続けてきたわけでございます。  その研究が相当積み上がってきたということが一方であり、それから一方では、議員御指摘のとおり、この四月に日米首脳会談において現在の世界情勢の中で日米安保体制の有する意義というものを再確認されたわけでございますが、そういったことも踏まえまして、日米安保上でのいろいろな協力関係を進めていこう、さらに研究していこうということがなされたわけでございます。  そういった中で、従来から作業を進められておりましたこういった物品役務についての相互提供についてきちんと協定を結ぼうということになったわけでございまして、こういった協定が結ばれることによりまして、対象となっている共同訓練、そしてPKO活動、人道的な観点からの国際的な救援活動につきまして、物品役務相互提供というものがきちんとした枠組みのもとで円滑に行われるということになりますので、こういった行動作業が非常に機動的にまた有効に行うことができるという意味で、非常に高い意義を有するものと考える次第でございます。
  6. 野沢太三

    野沢太三君 そこで、この適用範囲というところを拝見しますと、共同訓練PKO活動または人道的な国際救援活動に限定しておるわけでありますが、これまで既にNATO等の諸国と米軍が交わしております協定を伺いますと、もっと幅広い範囲での協力が可能になっているようでございますが、この点、事柄を限定した意味はどんなところにございましょうか。
  7. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 委員指摘のように、アメリカNATOの国々と締結しておりますいわゆるACSA協定でございますけれども、我々が調べたところによりますと、そのような限定を付している例は見当たらないのは事実でございます。  私どもといたしましては、日米安保条約の円滑かつ効果的な運用、それから国連中心とした国際平和のために努力するという目的に合致し、かつ自衛隊それから米軍双方でどういうニーズがあるのかということを綿密に検討した結果、ニーズが高いと見られる共同訓練国際平和維持活動、そして人道的国際救援活動、この三つに対処をすることで日米間で合意をしたということでございます。
  8. 野沢太三

    野沢太三君 そこで、本協定の有効な範囲といいますか、適用範囲にこれも入るのかもしれませんが、いわゆる平時共同訓練あるいは有事にどうするかと、こういった点が明確に協定の中には出ていないわけでありますが、有事の場合でも当然有効と考えてよろしいかどうか。この点についてお願いします。
  9. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 今、委員平時有事という表現をお使いになりましたけれども一般国際法上それからまた国内法令上も、平時有事ということが法律的な観念として確立したものではないということで、私ども、この協定では、平時有事という切り口から取り決めをしているわけではございません。  この協定は、先ほど来申し上げているように、共同訓練国際平和維持活動及び人道的な国際救援活動というものに限定されているわけでございまして、米軍戦闘作戦行動のための後方支援枠組みではないということは明らかであろうというふうに思うところでございます。
  10. 野沢太三

    野沢太三君 そういうことであろうかと思いますが、しかし今後予想されます極東有事、これは後ほどまた別に議論をいたしますが、こういった事態が発生した場合についてもこのACSA運用というのは私は有効でなければ意味がないのではないかと思うわけでございます。  特に、米軍前線の方で戦っているとしても、それとはるかに離れた後方あるいは別な地域、そういったところでの後方支援で本協定の中にうたわれていますような水、食料あるいは燃料、そういったものの供給であるとか、あるいは通信業務であるとか、そういったものを手伝うということは、これは何ら差し支えがないのではないかと思いますが、これに関する政府としての検討はどのようになっておりましょうか。
  11. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 先ほど政府委員の方から御答弁申し上げましたとおり、これは有事平時という切り口から決めているわけじゃございません。しかし、いわゆる戦闘状態にあるというような事態の中で、それに参加している米軍部隊戦闘行動を行っている米軍に対するいわゆる物品役務提供ということはできない、これは当然のことでございます。しかし、仮にそういった状態状況極東のどこかであったとしましても、共同訓練とかPKOとかいう活動についてこの協定に基づく物品役務提供ができないかといいますと、私はそういうものはこの協定では排除されているものではない、こう思います。  ただ、この協定でそういった物品役務などを提供するか否かという判断の前に、そもそも共同訓練なりなんなりがそういう事態のもとで行われるかどうかという判断がまずあるんだと思います。ただ、委員がおっしゃるように、そういうことは当然あってもいいんじゃないかという御指摘でございましたけれども、確かに当然それが行われるのが適当だと思われるようなケースもあり得ると思います。  その典型的な例をとってみますと、まず我が国周辺で事が起こっているときに新たに共同訓練なりPKO活動をするのはどうかという設定ではなくて、事態を逆にいたしまして、何もない平時に、例えばアフリカとか中東なんかで我が国PKO活動をやっておるときに、それを継続中に、たまたま我が国周辺地域で何か戦闘状態、いわゆる有事事態になり米軍も出たというときに、そんなことがあったからといってこちらの遠隔地であるPKO活動をまずやめるべきかどうか。それをすぐやめろというのは余り現実的ではないと思いますし、これが行われているときに従来から行われておった物品役務提供をやめろというのも決して常識的ではないと思います。そのことは共同訓練についても同様のことはあり得るんだと思います。  例えば、自衛隊米国へ参りまして日米共同訓練が行われておって、そこでこの協定に基づく物品役務提供が行われておるときに、その過程において我が国周辺のどこかでいわゆる有事事態になり、共同訓練に参加している米軍とは全く別の米軍部隊戦闘状態に対処しているというときに、この共同訓練そのものをやめなくちゃいけないのか、あるいはそこで行われているこの協定に基づく物品役務提供がとまらなくちゃいけないのかと申しますと、それは個別具体的なケースを見なくちゃいけませんけれども、これをとめるというのは決して常識的な判断ではないと、こう考える次第でございます。協定上はそういったものはできると、こう思っております。
  12. 野沢太三

    野沢太三君 具体的に踏み込んでいけば、この十五項目の中には衛生業務というのもございますから、これは例えば負傷した米国軍人さんの介護、療養等をお引き受けする、それから実際に前線損害を受けてきた航空機艦船等修理も、これも修理業務というのがここにございますね。こういったことで可能ではないかと私は思うんですが、そのとおりでよろしいでしょうか。
  13. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 共同訓練国連平和維持活動、それから人道的な国際救援活動のための必要な物品または役務提供ということでございますので、これに関して、委員の今言われたように、看護だとか航空機及び船舶修理といったことがあればこの協定に基づき対応は可能でございますけれども、他方、それとは全く別の戦闘作戦行動のために出た米軍人看護だとか損害を受けた飛行機だとか船舶修理というのはこの協定対象ではございません。
  14. 野沢太三

    野沢太三君 そこが非常に問題だと思います。これは安全保障全体にかかわる問題だと思いますので後ほどまた議論をいたしたいと思いますが、非常に狭くこの協定をスタートさせているということについては、必要になった時点あるいはそういった事態が出た場合には見直しなり検討なりが必要ではないかと私どもは思っております。これはこれ以上議論はいたしません。  もう一つ、付表の中で「部品構成品」という事柄がございまして、「軍用航空機軍用車両及び軍用船舶部品又は構成品並びにこれらに類するもの」について相互協定ができることになっておりますが、この中には武器輸出原則に抵触する可能性のあるものが含まれるということが当然想定されるわけであります。これについては官房長官の談話も出ておるわけでございますが、この委員会においても一遍確認をしておきたいと思いますが、これは心配ないのかどうか、お願いします。
  15. 桑山信也

    説明員桑山信也君) 今、先生お尋ねの点でございますけれども政府といたしましては、日米安全保障条約の円滑かつ効果的な運用及び国際連合中心とする国際平和のための努力に積極的に寄与するという本協定意義等にかんがみまして、先生指摘のような本協定のもとで行われ得る武器部品等提供につきましては、武器輸出原則等によらないものといたした次第でございます。  この場合におきましても、協定提供された物品等の使用が国連憲章と両立するものでなければならないこと、及び我が国政府の書面による事前同意なく米軍以外の第三者への移転が禁止されているというようなことから、国際紛争等を助長することを回避するという武器輸出原則等のよって立つ平和国家としての基本理念は確保されていると考えております。
  16. 野沢太三

    野沢太三君 大臣、今の点につきましては非常に重要な点だと思いますが、本文の中にも「国際連合中心とした国際平和のための努力」というような前文であるとか、あるいは「国際連合憲章と両立するものでなければならない。」という事柄もございまして、その範囲であれば特に日米安保を組んでいるアメリカに関しては例外であると。これははっきりそのような認識でよろしいかどうか、大臣の御見解を伺いたいと思います。
  17. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員指摘のとおりの認識でございます。そういうことでございますし、先ほど通産省の方から御答弁申しましたけれども、今回はいわゆる武器輸出原則等における武器に当たるものが含まれる可能性がございますので、そこのところははっきりと、今回の本協定に基づいて行われる武器等提供はこの三原則等によらないということを明確にしたわけでございます。  その上で、しかし今おっしゃいました国連憲章と両立するとか、あるいは第三国への移転については事前同意にかかわらしめるというようなこともやりまして、武器輸出原則等にはよらないけれども、その三原則等基本理念は確保するということをきちんと手当てし、また明らかにしたところでございます。
  18. 野沢太三

    野沢太三君 このACSA議論を詰めてまいりますと、どうしても日米安全保障条約、そして日本安全保障全体の問題を議論しないと、この条約についての判断が十分行われないと考えられるわけでございます。  そこで、最初に申しましたような安保条約の再確認が行われた中で、冷戦構造の中で想定していた有事と現段階考えられる極東有事というものについては、地域あるいは相手、内容が相当変わってきているように思われますが、現時点で想定されます極東有事というのはどんな場合が考えられるか。これは難しい課題と思いますが、答えられる範囲でひとつよろしくお願いします。
  19. 川島裕

    政府委員川島裕君) お答え申し上げます。  確かに冷戦当時と冷戦以後とで東アジアあるいは太平洋における国際情勢というものが変わったということは御指摘のとおりでございます。ただ、その変わった状況有事というものも変わったのではないかというお尋ねかと思いますけれども、いろいろな脈絡で使われている極東有事という言葉でございますけれども、これは特定事態というものを政府としては特に想定はしておりませんで、要は例えば日米安保共同宣言、先般つくりました文書でございますけれども、「日本周辺地域において発生しうる事態日本の平和と安全に重要な影響を与える場合」ということに尽きると考えている次第でございます。  そこで、要はそういう事態において何をするかということが重要なわけでございまして、先般も総理から指示がありまして、こういう安全保障上のさまざまな事態に対して我が国としてとるべきいろいろな対応について具体的に検討してみよう、研究をしようということになったわけでございます。邦人保護あるいは大量避難民等々の研究をここ一、二カ月にわたって開始したところでございます。そういうケースをいろいろ検討し、その中で我が国は何をなすべきかということを検討している段階でございまして、いずれにしてもどこで何が起こってというような特定事態を想定して考えるという状況ではないわけでございます。
  20. 野沢太三

    野沢太三君 しかし、安全保障というのは、漠然と備えているということでは備えにならないと私は思うわけであります。私ども自由民主党の中の安全保障あるいは外交の各部会においても、その点については相当詰めた議論をいろいろやっておるわけでございますけれども、例えば北朝鮮がどのような形で今後行動を起こしてくるか、あるいは中台関係、一段落していますが、しかし依然として私どもが願っているような形ですんなりと平和的な話し合いが進んでいるというわけでもなさそうです。あるいは南沙諸島の問題についてもまだそのままになっておりますし、特にシーレーンの関係からしたら日本としては大きな関心を持たざるを得ないと思うわけであります。  それで、具体的にそれを進めるためにも日米防衛協力指針見直しをこれからやらなければいけないということで御検討いただいていると思いますが、伝えられるところによりますと、直接日本が攻撃を受けた場合、それから周辺紛争が起こった場合、さらにずっと遠隔の地で問題が起こった場合と、一応三つの場合を想定して対応するということを報道等でも言われておりますが、防衛庁いかがでしょうか。
  21. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 御質問にございました日米防衛協力のための指針見直し内容に関しまして、御指摘のような報道がありましたことについて私も承知しておりますけれども見直しの具体的な内容につきまして、まさに今、日米間でも話し合いが始まったところでございます。また、日本政府の中も、外務省防衛庁あるいはその他の関係省庁、また防衛庁の中も実はこれはいろいろな組織がございまして、まさに議論が始まったばかりでございまして、報道されているようなそういう分類をしてこの見直しを進めていくといったような方針を決めたわけではございません。これからアメリカも含め、関係機関と十分協議して議論してまいりたいという段階でございます。
  22. 野沢太三

    野沢太三君 けさもニュースを伺っておりますと、有事の場合の、まずは未然防止、あるいはおそれがある場合、実際に問題が発生した場合、それからそれが終息した場合等、五段階に分けての検討米軍側から申し入れがあったと言われておりますが、日本政府の側としては、それじゃこれから御相談しましょうと、大変何か受け身で立ち上がりが遅いように思うんですが、この点はどうでしょうか。
  23. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 五月の末にハワイで日米実務当局者間の通称ミニSSCという会議を開きました。その会議でこの指針見直しについて議論をいたしたところでございますけれども、その議論対象として、どういう組織議論をしていくか。現在の防衛協力指針、つまりガイドライン日米間の防衛協力小委員会というものをつくってやったわけでございます。今回もそれに似たような組織をつくることを考えておりますが、その組織をどういうメンバーで構成するか、あるいは今後どういうタイムスケジュールといいますか段取りで決めていくかといったような議論をいたしました。率直に申し上げまして、それではガイドラインをどういう形で見直していくのかというディスカッションもいたしました。  御案内のように、現在の防衛大綱は第一項、第二項、第三項という三つ分類になっておりますけれども、そういう分類でいいのか、あるいは新しい分類でいくのか、あるいは範囲を広げるのか、まさに非公式な議論が始まったばかりでございまして、我々にももちろんいろいろ意見がございます。これからその辺を詰めてまいりたいと思っております。
  24. 野沢太三

    野沢太三君 有事の場合に、私どもは現行の憲法範囲内で我が国として何ができるのか、何が対応として可能であるかということを事前に具体的に絶えず検討しておくことが大変大事であると、これはもう言うまでもないことでございます。しかし、これまでの議論をずっと振り返ってみると、集団的自衛権の行使に関しまして政府見解が非常に控え目になって今日に来ておるわけでございます。この点につきましては、やはりしっかりした議論をし直した上で見直しをしていく必要が今後あるんではないかと、こういうふうに私は思うわけでございます。これに関する政府の今の考えはいかがなものでしょうか。
  25. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもがこれから安全保障につきましていろいろな研究も行い、また体制も整え、必要な措置をとっていく上におきまして、当然のことながらこれは我が国憲法の枠内、これは当たり前のことでございます。そして、政府といたしましては、集団的自衛権等にかかわるこれまでの政府解釈というものは変えない、これを踏襲してそれから考えてまいりたい、このように考えている次第でございます。  集団的自衛権についてのこれまでの政府見解と申しますのは、国際法上当然のこととして我が国は個別的自衛権そして集団的自衛権、いずれも持っているわけでございますが、我が国憲法の規定あるいは趣旨からいたしまして集団的自衛権の行使は許されない、これが政府見解でございます。そして、その先にいろいろな議論が出ることはございますけれども、いろいろな議論がありますけれども、私どもは、基本的にはそういったものは実力の行使にかかわる概念として考えていきたいと、こう思っております。
  26. 野沢太三

    野沢太三君 なかなかこれは難しい課題であると思いますが、今後日本国連の常任理事国に入ろうというようなことで意思表示をしている中でこの問題の検討を避けて通るわけにはいかないのではないか。少なくとも国連憲章で認められている範囲までは日本としても、もちろん現憲法の枠内ということではあってしかるべきだと思いますが、もう少し詰めた議論をする必要があろうかと思うわけでございます。  そこで、一般的な解釈論をやっていますと神学論争になってしまいますので、具体的な活動行動を個別に検討しておくことが非常に有意義ではないかと思うわけでございますが、例えば邦人の救出であるとか難民が発生した場合の対策については今どのようなお考えでおられましょうか。
  27. 川島裕

    政府委員川島裕君) お答え申し上げます。  先ほど御答弁いたしましたように、まさに研究を始めたところでございます。その一つの柱が邦人保護であり、あるいは避難民なわけでございます。その際に、具体的にどういう事態を想定するか、そしてそれに対して日本の今の法制のもとで何ができるか、さらには憲法との関連あるいは集団的自衛権との関連で何ができるかということを、まさにこれからの作業中心というか重要点として考えている次第でございます。したがいまして、今の時点で邦人保護あるいは避難民との関係憲法上どこまでできるかというお尋ねでありますとしますれば、まだちょっとそこまで詰めた作業に至っていないということでございます。  いずれにいたしましても、これはまさに御指摘のとおり、神学論争ではなくて本当に具体的な話に即して考えるべきであるという点は、私どももそのとおりだと考え作業をしている次第でございます。
  28. 野沢太三

    野沢太三君 私ども、昨日の朝、ジョセフ・ナイ前米国国防次官補と御懇談の機会がありまして、安全保障の問題朝鮮半島の問題その他極東有事についていろいろと話し合ったわけですが、その中でもナイ氏は、有事のときに、日本国のもちろん憲法の枠内ではございますけれども、可能なことをできるだけ明確にしておくことが大事であると、こんな御指摘をいただいております。まことに同感であるわけでございます。  また、朝鮮半島の問題について私は質問をして、いろいろと意見を交換いたしました。なぜ十万人のプレゼンスが極東に今必要か、ナイ・レポートで十万人を明記されたのはどういうわけかということも伺ったわけでございます。最高十三万というときもあったし、あるいは少ないときには九万ということもあった、しかし今後の当分の間は十万人くらいが適切だというのが現段階での判断ということでございます。  その中で一番大きな要素になったのが、北朝鮮の不安定要素ということをきのうも明言されておるわけでございます。これまでも亡命の飛行士が飛んできたとか、それから伝えられるところによれば百万の軍隊をほぼ国境線、停戦ラインの百キロくらいの範囲にほとんど集中して配置をしているとか、そういったさまざまな情報がございまして、北朝鮮といいますか南北を含めまして軍事情勢が懸念をされるわけでございます。  政府といたしましてこの北朝鮮の動きをどのように把握しているか、またどのようにこれを判断しておられるか、お話を聞きたいと思います。
  29. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 北朝鮮は一九六二年以来、全人民の武装化、全国土の要塞化、全軍の幹部化、全軍の近代化という四大軍事路線に基づいて趨勢としては軍事力を増強してきておりまして、現在も、深刻な経済不振にもかかわらず、依然としてGNPの約二〇%から二五%を投入していると見られております。  その軍事力は陸軍中心の構成で、総兵力は約百十三万と見られるといったような数字もございます。装備の多くは旧式でございますが、近年近代化に努めつつあるというふうに承知いたしております。そしてまた、御指摘のとおり、北朝鮮は依然として地上戦力の約三分の二を非武装地帯付近に前方展開して即応態勢の維持に努めているということがございますので、その動向については今後とも引き続き注意していく必要があると考えております。
  30. 野沢太三

    野沢太三君 昨日ナイさんがいみじくもおっしゃったのは、今の北朝鮮の軍部の関係を例えで申しますと、ビルの火災で、十二階にいるとして、飛びおりれば二十分の一か三十分の一の確率で助かるかもしれない、しかしそのまま残ったら一〇〇%これは死んでしまう、そういうところに今置かれていると私は考えるんだと、こういう話をされました。  その意味で、私どもも、北朝鮮の軍の動向というものが暴発等にならないように、あるいは弱いがゆえに逆に強がるということもおっしゃっておるわけでありまして、食糧の不足とか、あるいはさまざまな困難をむしろ軍事行動で置きかえて活路を見出すということが最も我々としては困るわけでありまして、この辺に関する情報の収集やら対応について遺漏なきょう、これは政府としても万全の取り組みをお願いしたいと思います。  その中で、先般アメリカの方からの情報ということで、北朝鮮が現在核ミサイルを四発保有しているというような報道がございましたが、政府はこの情報を確認しておられますか。
  31. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 委員指摘報道は、四月二十六日にワシントンで行われた金正宇北朝鮮対外経済委員会委員長とハバード米国国務次官補代理との会談の席上で、その金副委員長から、核ミサイルを四発保有しているということを明らかにしたという、そういう内容のものであると承知いたしております。  この報道につきましては、米国政府は、この会談において金副委員長が核ミサイルのことについて触れたことはない、全く触れていない、報道は事実ではないということを明確にいたしております。
  32. 野沢太三

    野沢太三君 そういう中で、先般の中台紛争のときにも日本の近海にミサイルが飛んできているということを考えますと、今後の日本の防衛では何といってもやっぱりミサイル防衛という問題が大事ではないかと。戦域ミサイル防衛ということで既にこれまでも随分問題になり、かつ議論もしてきたわけでございますが、この研究は長期的に見ると大変大事なものと私は考えるのですが、現在の取り組みはどうなっておりますでしょうか。
  33. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 御質問の戦域ミサイル防衛についてでございますけれども我が国防衛政策上の位置づけですとか、あるいは我が国対応についての政策判断をまず行う必要があると考えておりますが、そのためには弾道ミサイルの脅威ですとかあるいは弾道ミサイル防衛システムの具体的な内容、さらには技術的にそういう防衛が可能なのかどうか、そして非常に大きな問題だと思いますけれども費用対効果、そういったようなことを十分検討する必要があると考えておりまして、現在アメリカ協力も得ながら研究を進めているところでございます。  平成八年度におきましては、前年度に引き続きまして、我が国の防空システムの在り方に関する総合的調査研究に係る経費などを予算に計上させていただきまして、これを用いて弾道ミサイル攻撃などの空からの脅威に対処をするための防空システムの機能あるいは性能、そういったことにつきまして研究を予定しております。  防衛庁といたしましては、これによりまして弾道ミサイル攻撃などの空からの脅威に対処するための防空システムについて分析あるいは評価を行いまして、本件の政策判断に必要な技術的資料の収集に当たりたいと考えております。そして、このような検討をも踏まえまして、弾道ミサイル防衛に関する政策判断政府として行っていくべきと考えているところでございます。
  34. 野沢太三

    野沢太三君 しっかり取り組んでいただきたいと思います。  そこで、紛争を未然に防止する、さらに国内的な混乱が外国に迷惑をかけないような形で収束をされていく、そしてできれば開かれた国として、友好関係を保つ外交が展開できる開かれた国に変わってもらうという意味で、北朝鮮に対する外交努力というものは大変大事であると思うわけでございます。  これから日本がとるべき北朝鮮に対する外交政策、あるいはこれは韓国も含めてと思われますが、これはどうあるべきか、何が今大事かと。これについて大臣、よろしゅうございますか。
  35. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員指摘のとおり、朝鮮半島の安定ということは我が国の安全にとりましても大変重要な課題であると、こう認識しております。そしてまた、それを実現していくために安全保障面でのいろいろな配慮なり備えも大切ではございましょうけれども外交努力の重要性というものが何といっても大きいものだと、こう考えております。  そして、これからどういうふうにそれを具体的に進めていくかということでございますが、委員も先ほどから御指摘しておられますように、北朝鮮は経済的あるいは社会的にも非常に困難な状況にはございます。しかしながら、そういった中でやはり現在の体制というものが政治面では基本的に権力を掌握している、そして内部からそれに対抗し得るような反対勢力が早急に出てくるという兆候は必ずしも見られない、そしてまたそういった状況の中で依然として強大な軍事力が存在するという、こういう非常に難しい状況にあるわけでございます。  そういった国をいかに極力スムーズに国際社会へ導いてくるといいましょうか、国際社会とのつながりが持てるような、そしてその地域の不安定要因が除かれるような状況に持っていくか、我が国だけじゃなくて国際社会全体として大変工夫の要るところでございますけれども、当面ということになりますと、先般韓国並びに米国両大統領のイニシアチブによって発せられましたいわゆる四者協議でございますね、これをまず動かしていく。そして、その中から朝鮮半島の平和に関する合意を形成されていくことが当面一番大切なことではないかと考える次第でございます。  我が国としてもこのイニシアチブが発せられまして直ちに橋本総理からこれを支持するということを明らかにしたところでございます。そして現在、引き続き米国あるいは韓国からの北朝鮮への協議の参加の呼びかけが行われております。我が国もそれを支持するという体制でいるわけでございます。  そしてまた、このプロセスが動いてまいりますならば、またその過程において我が国としても何らかの形で朝鮮半島の平和なり安定に向かって何らかの役割を果たしていけるという局面が出てくるかもわかりません。そういうところもよく注意しながら適切に対応してまいりたいと考えている次第でございます。と同時に、御承知のとおり、北朝鮮と我が国の間の関係は不正常なままでございますから、これも正常化するという努力はしなくてはならないわけでございます。  いずれにいたしましても、韓国あるいは米国等と緊密な連携をとりながら、おっしゃるような外交努力を展開してまいる所存でございます。
  36. 野沢太三

    野沢太三君 KEDOに対する協力金であるとか、あるいはこれから申し上げますが、国連からの呼びかけにかかわる緊急人道的な援助、そういった面からしますと、北にかかわる問題に関して、日本にツケだけ回ってきて、それを具体的に先方の国民の皆様に私どもが直接働きかけたり直接お役に立つという道がない。これはまことに不正常な話だと思いますので、援助をただお金として届けておくというだけではなく、外交のルートが正常化できるよう、さまざまなこういった事件や問題が起こる都度やはり加速をさせまして、日本として直接北と交渉ができ対話ができる、こういうことが今一番大事なことではないかと思われます。  その意味で、いろんなルートで接触はしておられると思いますが、やはり何といっても政府外交ルートをすべて駆使して道を開いていただきたい、こういう御要望を申し上げておくわけでございます。  そこで一つ、国連からの呼びかけで今緊急人道支援ということでアメリカも既に決定し、我が国としても六百万ドルをこれから閣議決定にかけてと、こういう話になってきたようでございますが、これはあくまで国際機関を通しての援助であるのかどうか。そして、これが伝えられるところでは、さまざまな支援が軍の備蓄の方に回されるというようなおそれがないのかどうか、本当に困っている人のところへどう届くのか、それを執行する体制というのは一体どうなっているのか、この辺についてはいかがなものでございましょうか。
  37. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 今回の緊急人道支援アピールにつきましては、これは関係する国連の諸機関、例えばWFPとかユニセフなどでございますが、こうした国連諸機関からの支援物資を国連諸機関が委託した北朝鮮当局などが配付して、これを国際機関がモニターするという仕組みになっていると承知いたしております。  世界食糧計画、WFPはピョンヤンに常駐事務所を持っております。そして国連人道問題局、DHAのアピールによりますと、このWFPは昨年十一月から本年五月までの間に計三十四回、延べ八十一日間のモニタリングのための訪問を行っております。また、ユニセフはこの同じ期間内に計十七回、延べ二十七日間のモニタリングのための訪問を行っておるとのことでございます。こういう訪問において、WFP、ユニセフの係官は、支援物資の荷揚げ港ないしは鉄道駅から最終的な配付地域に至るまでのいろいろの段階でモニタリングを行いまして、支援物資が適正に配付されているという報告を出しているようでございます。  今回のアピールの対象となっております緊急人道支援につきましても、北朝鮮側と国連諸機関との間でモニタリングの方法につき合意があるというふうに承知いたしております。今回のアピールの実施のために、国連諸機関の方はモニタリング機能をより一層強化する予定であるというふうに承知しておるわけでございます。  このように、供与された支援物資の使途について、北朝鮮側から報告を受けるというだけではなくて、北朝鮮各地において直接モニタリングを実施しているということによって、国連諸機関のモニタリングは相当高い透明性を確保していると評価されるのではないかと一般に見られておると思います。  もちろん、北朝鮮には基本的な透明性の欠如の問題というのがあるわけでございますが、米国の方もWFPを通じる支援が現実の問題として最も支援を必要とする人々に物資を届けるためには多分最良のチャネルであるだろうという見解を持つているようでございますので、この点も付言して申し上げたいと思います。
  38. 野沢太三

    野沢太三君 韓国も今回は三百万ドルほどを拠出するということが報道されていますが、韓国としては、今回の援助はあくまで象徴的な、いわばまさに人道上の問題ということで、緊急避難的な性格だという解釈に立って、本来もう少ししっかりした本格的な援助をするためには、まず何よりも北朝鮮当局自身が意思表示をしてこないことにはどうもそれ以上のことは難しい。それから、そのための話し合いを正式の場所で正式の機関できちんとするということ。それから、相変わらず韓国についての非難放送をやっている、これはもうやめてもらわにゃいかぬ。こういうことを一つの条件としてきちんとした援助にこれを切りかえていこうという意思があると言われております。  日本の場合についても、少なくとも今回はまさに人道上ということでやむを得ないと思いますが、国交のない状態でどこまで支援できるのか。やはり北の立ち上がりを助けるためにも外交ルートが開かれるということが大前提でなければならないと思うわけでありますので、重ねてひとつこの点についての御努力をお願いしたいと思います。これは御要望にとどめます。  続きまして、先般海洋法条約のときに実は質問をしたがったことでもあるんですが、やむを得ず私ども質問を返上いたしましたが、きょうどうしてもやはりこれは伺っておきたい課題もございますので、二、三点お伺いしたいと思います。  それは、海洋の管理あるいは航行の安全あるいは今後の日本の海洋防衛、こういった点を考えますと、宇宙衛星を活用して資源調査をしたり、航行船舶を掌握したり、あるいは万一の場合の救援対策にこれを利用することが大変期待されるわけでございます。  既に六十個に及ぶたくさんの衛星が今空を飛んでおるようでございますが、こういった目的のために利用できる衛星にどのようなものがあるのか、そしてまたそれがどのくらいの能力があるのか、またそれが足りないとすれば技術開発の可能性というものはいかようなものであるか、これについてお伺いをしたいと思います。
  39. 倉持隆雄

    説明員(倉持隆雄君) 御説明申し上げます。  人工衛星の利用は、広範な区域の海洋現象の長期間にわたる観測を可能といたしますので、海洋環境の状況把握でありますとか漁場探査等の分野では非常に有効なものと認識しております。  このような観点から、これまでに我が国の海洋観測衛星により観測を実施してきているところでございまして、今後も本年夏に打ち上げ予定といたしております地球観測プラットホーム衛星等を用いて海洋現象の観測や漁場探査への利用、こういったものを推進していくことといたしております。  一方、人工衛星で得られます画像、これを船舶の把握等に利用することにつきましては、求められます観測要件等について十分に検討する必要がございますが、一般的に申し上げますと、現有の人工衛星で対応することは難しく、人工衛星の分解能の向上等の技術開発や特定区域を常時監視するシステムの構築等が必要になるものと考えられます。  いずれにいたしましても、今後ともこのような人工衛星の利用に関しましては、関係省庁ニーズを踏まえ、連携をとりつつ対処してまいりたいと考えております。
  40. 野沢太三

    野沢太三君 私も、いろいろ伺ってみると、現在の衛星の解像能力等からいたしますと、海上の船舶をしっかり認識する、さらにそれを識別して対応する、そのデータによっていわゆる海上の交通管制やら国籍不明船等の発見を第一次情報として行う、こういうことが期待できればと思ってお話を伺ってみたわけでございますが、まだそこまでの能力は十分でない、今後の技術開発にかかると、こう言われましたが、その辺を一つ大いに期待したいし、そのために必要ならば予算なりあるいは新しい開発の体制を組んで取り組んでいただきたいと、こう思うわけであります。  もう概算要求の時期も近づいておりますし、年末に向かってひとつすばらしいアイデアが出てくることを期待しておりますので、遠慮せずに、これは新海洋体制に対する科学技術庁を初めとする政府の取り組みということで大いに私どもも楽しみにしておりますので、ぜひひとつよろしくお願いします。  そこで、先般もこれもやはり外交調査会で議論をしたんですが、日本として偵察衛星を保有して、海峡を渡ってくる船をチェックするとか、あるいは必要な軍事基地の情報を手に入れるとか、こういったことが大事ではないかということでございます。アメリカでは相当精度の高いものが既に実用化していると伺っておりますけれども、これについての防衛庁のお取り組みと、これが宇宙開発に対して平和目的に限るということで国会の委員会で決めております事柄との関係についてはどのようにお考えか、ひとつお話を聞かせてください。
  41. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 専守防衛を旨といたします我が国の防衛にとりまして、各種の情報機能の充実は大変重要なことであると認識しております。それで、この有力な情報収集手段の一つでございます偵察衛星につきましても、防衛庁といたしましては従来から関心を有しているところでございます。  御質問の国会決議との関係でございますけれども、国会決議についての有権解釈はこれは国会でなされるものであると承知しておりますけれども、この利用が一般化している衛星及びそれと同様の機能を有する衛星につきましては、自衛隊による利用も認められるものと我々としては考えております。
  42. 野沢太三

    野沢太三君 とにかく、衛星というのは単機能のものもございますが、一つ上げれば、幾つかの機能を付加しまして、それを多目的に利用するということが普通行われるわけでございます。偵察というと何やらきな臭くなりますけれども、先ほど申しましたような資源調査やら航行船舶のいわゆる管制であるとか救援救護対策とか、こういった多目的機能をあわせ持つことによって明確に平和利用と認定できるんじゃないかと思いますので、ひとつその辺も遠慮せず、しっかりと開発を進めていただきたいと思うわけでございます。  それから、先般この委員会でも議論をしていただきましたいわゆる海難救助のために導入いたしましたGMDSSが現在鋭意普及をさせている最中と伺っておりますが、これはどの程度普及をしたのか、またこれによって海難救助がどの程度実績として上がっておるのか、これについてお伺いをいたしたいと思います。
  43. 矢部哲

    説明員(矢部哲君) お答えいたします。  GMDSS、これは海上における遭難及び安全の世界的な制度というのが日本の方の名前でございますが、これは衛星通信等を利用することによりまして、従来の遭難通信制度を根本的に変更するものでございます。それで、これは平成四年二月一日から平成十一年二月一日までの七年間で段階的に移行するということになっております。  このGMDSS設備の中核をなしますものとしまして、遭難時に自動的にその船舶の位置を通報する衛星を利用したEPIRBというものがございます。これは非常用位置指示無線標識装置という長い名前のものですが、この装置とそれからもう一つは安全通信等に用いる無線電話でございます。  この中核をなします設備のうち、衛星系のEPIRBにつきましては、その設置の対象となる船舶が約九千六百隻ございまして、現在までにそのうち約三千隻がEPIRBを設置しております。したがいまして、残りの六千六百隻につきましては、移行期間が終了いたします平成十一年二月一日までにすべて設置することになると思われます。  それから、もう一つの中核的な設備でございます無線電話につきましては、平成七年二月一日以後に建造されます船舶につきましては建造時から設置することになっております。また、それ以前に建造された船につきましては平成十一年二月一日までに設置すればよいということになっておりまして、この電話の設置対象船舶、約三千三百隻ございますが、現在までに約六百隻が設置済みということになっております。  なお、我が国船舶が移行期間が終了します平成十一年二月までに円滑にGMDSS体制に移行できるよう、関係省庁並びに関係団体で構成されますGMDSS導入促進連絡協議会というものを設置いたしまして、導入にかかわる連絡調整、周知普及活動を実施しているところでございます。
  44. 野沢太三

    野沢太三君 急いで進めていただきたいんですが、誤作動とか誤発信が意外に多くて、いわゆるモールス信号等による初歩的とは言うけれども基本的なものに置きかわった割には信頼性にいささか難点がある、まだこういう評価であろうかと思いますので、数量的な普及とあわせて質的な向上をあわせ行っていただくことがこのシステムの今後の発展のために大変大事であると思います。その点もひとつ含めて御努力をお願いいたしたいと思います。  衛星関係の利用、以上でございますが、最後にOECDの新しい開発援助の方針について、外務省大臣にまたお伺いをいたしたいと思います。  冷戦が崩壊していよいよ平和の時代が来るという期待があったにもかかわらず、南北問題が出てくる、あるいは民族、宗教問題等もあり、地域紛争もある。そういった中で、いわゆる貧富の格差というようなものについては、必ずしもこれが埋まるどころか、むしろそれがどうも拡大する方向にあるというのが現状ではないかと見られるわけでございます。その一方で、先進諸国に経済的な困難等もありましていわゆる援助疲れというようなものが出てきて、ODAの前途は必ずしも平穏でないということでございます。  我が国は、過去五年間、世界一のODAの大国ということになってきたわけでありますが、このODAのあり方についてここら辺でもう一工夫しなければまずいのじゃないかとかねてから私も考えてきたところでございます、大綱をつくりまして日本の意思表示がしっかりとここにあらわれるというところまではよかったんですが。  ここで一つOECDの中での新しい開発援助戦略を打ち出されたことは大変大事なことではないかと私は評価をするわけでございます。先般大臣が出席されましたOECDの閣僚理事会におきまして採択されました長期的な開発戦略、これはどういう意義を持ち、またどのような役割を日本はここで果たされたか、お伺いをいたしたいと思います。
  45. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員指摘のとおり、冷戦が終結いたしまして、この開発問題についても従来とは見方が変わってきたと思います。  一つは、従来はともすれば政治問題と絡める形での開発あるいは援助という視点があったわけでございますが、これからは真にその開発途上国の経済的、社会的な開発、発展をどうするか、そういった観点から純粋に考えられるという、こういう時代に入ったんだと思います。  それから他方におきまして、そのことはまた先進各国の経済的なパフォーマンス、それから力の盛衰ということもありまして、さらに政治的な面からの必要性なりなんなりというものが要するに減退してきた、こんなことも重なりまして、いわゆる援助疲れという現象が出ているのは事実だと思います。しかしながら、これから開発途上国の発展というものは、これは開発途上国自体にとってはもとよりでございますが、世界全体としてもこれは真剣に取り組むべき課題であろうと考えております。  当然のことながら開発の主たる責任は開発途上国自身が背負うべきものでございますけれども、それじゃ先進国は人ごととして考えていいのかと申しますと、開発のおくれというものが環境の破壊であるとか難民流出、あるいは人口増加、それからさらにはそういったことに起因するいろいろな安全保障上の不安定要因にもなり得るということを考えますと、やはり先進国にとっても自分自身の問題でもある、こういう観点が必要であろうと思います。  我々としましては、そういったことを土台にいたしまして、そのような途上国と先進国との新しい観点からの協力をしっかりいたしまして開発を目指していく、新たなグローバルパートナーシップという言い方をしておりますけれども、こういうことを主張してきたわけでございます。  先般のOECD閣僚理事会において採択されました開発戦略も基本的に今申し上げましたようなことになっておりまして、これは文字どおり我が国がここ数年間いろいろな、OECDはもとよりでございますが、国連その他いろんな国際会議の場で主張してきたところでございまして、そういった方向に世界全体の方向も向かいつつあると、こう考える次第でございます。  なお、もう一点この開発戦略について申し上げますならば、具体的な目標を設定していこうと。例えば、初等教育がどうであるか、乳児死亡率がどうであるかとかですね。これはアウトプットオリエンテッドという言い方をしておりますけれども、そういったものも設定していく。つまり、これまでのようにGNPの何%というような、要するに投入量だけではなくて、そういった開発のために開発途上国と先進国が共同していく中で、具体的にどういうふうな成果がいろいろな分野で得られるかということにも着眼していこうという点が一つ新しいところだと、こういうふうに考えている次第でございます。
  46. 野沢太三

    野沢太三君 このような長期戦略を打ち出されますと、これは援助を単に要請主義で箱物だとかプロジェクトを置いてくればいいということではなくて、途上国自身が計画を立て希望を表明して努力をしてもらわないとうまくいかないと思うわけであります。  そこで、日本はアジアを中心に主としてやってきた援助では、比較的多くの国でこれが成功をしたと思われるケースがあるわけでございますし、まさに今度は自力で発展を始めまして、ところによっては援助国に回るというようなところも出てきているわけです。  一方、アフリカ諸国に対する援助はどうも必ずしも効果が上がっていない。私の仲間がザイールで例えばマタディ橋、七百二十二メートルという鉄道、道路の併用橋をつくったのはいいんですが、道路計画も鉄道計画も伴わなくて、依然としてはだしの人が牛車を引いて渡っているというような状況が続いておるようでございます。  いずれにいたしましても、貧困の絶滅とか乳幼児の死亡率の減少とかということになりますと、大変な人材の育成と一つの国づくりというようなことを手伝ってあげないとぐあいが悪い。ハードの援助からソフトの援助へというふうに期待をされるのですが、アフリカにどういうふうにこれからアプローチをするか。この辺についてはいかがなものでしょうか。
  47. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 御指摘のとおりでございまして、これまで我が国が最も大きな力を注いでまいりましたアジア地域は、先ほど申しましたように、まず途上国自身の自助努力を柱にしてそれを応援していくという、そういった手法が成功したと申しましょうか、一つ一つのいわゆるテークオフを実現いたしまして、中には被援助国から援助を供与する側に回ってくると、こういった非常に好ましい状況が生まれているわけでございます。  それに引きかえまして、アフリカの場合は、なかなかそういうふうなうまいサイクルが出てまいりませんで、依然としてテークオフの展望が開けないという状況である。これを何とかしなくちゃいけないというのは国際社会全体の課題でもございますし、我が国としてもその辺をこれから重視していかなくちゃいけないと、こう考えている次第でございます。具体的には、九三年に東京におきましてアフリカ開発会議というのを開きまして、我が国がこれからイニシアチブをとっていこうということをしたわけでございます。  これからもそういうことを続けてまいりますが、今考えておりますのは、先ほど申しましたような新しいグローバルパートナーシップという枠組みの中でやっていきますけれども、特にアフリカにつきましては、先ほど申しましたようなアジアの成功物語といいましょうか、開発途上国がその成果を上げていったと、こういった歴史といいましょうか模範をよく見てもらって、あるいは我々もそういった手法をここに適用していこうと考えている次第でございます。  私自身、実は先般、南アフリカで開かれましたUNCTADの総会に出てまいりまして、その節にも、マンデラ南アフリカ大統領を初め南アフリカ諸国の指導層といろいろな話をしてまいりましたけれども、南アフリカを初めアフリカ諸国でもそういったこれからの日本が打ち出している開発の方向につきまして非常に高い関心が寄せられました。そして特に、先ほど言いましたようにアジアの国が一つ一つテークオフしていくと、そういう姿を見て、我々もあのアジアの諸国の姿を見るならば同じようなことができるかもしれない、すぐに一足飛びに欧米諸国やあるいは日本のようなまねをしろと言われても無理だけれども、このアジアの歴史は我々も模範にできるかもしれない、そういう気持ちが非常に充満しておりました。そういったことも踏まえまして、私もその会合におきまして第二回のアフリカ開発会議を今度は一九九八年にまた東京で開きましょうということを提唱いたしまして、大きな賛同、共感を得てきたところでございます。  まずその九八年をにらみながら、それまでも着実に我が国としても、またいろいろな国際機関におきましても南アフリカの開発の方途について検討を進めてまいりたいと、こう考えている次第でございます。
  48. 野沢太三

    野沢太三君 プロジェクト中心から人間中心の開発へということで、しかも長期的な戦略のもとに国連関係機関とあわせて日本がそれでイニシアチブをとって進めるということに大変な意義があろうかと思うわけでございます。新しいODAの質的な転換という意味も含めまして、外務省のさらなる御健闘をお祈りして、私の質問を終わります。
  49. 山崎力

    山崎力君 平成会の山崎でございます。ACSAの問題を中心にお伺いしていきたいと思います。  まず、その前にといいますか最初の段階として、今この問題でも言われております集団的自衛権についてお伺いしたいと思います。  野沢先生の御質問の中にもありましたけれども集団的自衛権の権利そのものは認めるところであるというふうなことでございますけれども、従来からの政府解釈といいますか憲法解釈によれば、集団的自衛権の行使は我が国憲法の認めるところではない、このように伝えられてといいますか、決まっている、解釈しているということでございます。  そこで、一番私が疑問に思うことは、神学論争にはしたくないんですけれども、果たして行使が認められていないものを権利として認められていると言えるのかどうかということについて、まずもってお伺いしたいと思います。
  50. 秋山收

    政府委員秋山收君) 集団的自衛権についてのお尋ねでございますが、従来から政府日米安保条約等におきまして日本が集団的自衛の固有の権利を有していることを確認しているところでございます。  一方、このような国際法上の立場を踏まえつつ、我が国憲法の解釈としましては集団的自衛権の行使は認められないものと、先生今御指摘のとおり解釈しているわけでございますが、国際法上保有しているとしつつ、我が国憲法におきましてみずから集団的自衛権の行使を抑制するということが、憲法条約との関係におきまして特段論理上矛盾があるというようなことではないというふうに理解しております。
  51. 山崎力

    山崎力君 これは憲法条約の問題ではなくて日本語の問題なんです。法概念の問題です。要するに、行使をしないという、行使を認めていないという問題の性質の権利を持っていると言えるかどうかということです。例えば、端的に言えば、人間は本来正当防衛権がありますよというふうに正当防衛権を認めておりながら、物理的抵抗をしてはならないというような規約があった場合、果たしてそれが権利そのものが担保されているのかどうか、そういう意味質問でございます。
  52. 秋山收

    政府委員秋山收君) 憲法集団的自衛権は行使できないというふうに解しているところでございますけれども、それを行使できない以上は、これを保有しているかどうかということはいわば観念的な議論でございますし、また憲法集団的自衛権の保有それ自体について言及しているものでもございません。  そこで、私どもは従来から、集団的自衛権につきましては憲法上行使できない、その意味におきまして保有していないということと結論的には同じであるというふうに説明してきているところでございます。
  53. 山崎力

    山崎力君 ということは、結論的には集団的自衛権は持っていないのと同じであるというふうに考えてよろしいわけですね。確認です。
  54. 秋山收

    政府委員秋山收君) 理論的には集団的自衛権を国内法上持っているがこれを行使できないというふうに考えることも可能であろうと考えますが、集団的自衛権憲法上行使できないものでございますので、したがってこれを国内法上持っているといっても全く観念的な議論という帰結になるわけでございます。したがいまして、憲法集団的自衛権は行使できず、その意味において保有していないといっても結論的には同じであるというふうに考える方が適切であると考えておりまして、また従来からそういうふうに説明してきているところでございます。
  55. 山崎力

    山崎力君 ということで、私どもがよく日常会話で使っている言葉と若干乖離があると思うんですが、例えばある一国がほかの国と同盟関係を結ぶというようなことは、これは集団的自衛権の行使というふうな概念とどのような関係があるのか、ちょっと御説明願いたいと思います。
  56. 林暘

    政府委員(林暘君) 今の御質問が、同盟条約にもいろいろな種類の同盟条約がございますので、同盟条約集団的自衛権とどういう関係に立つかということを一概に御説明するのは難しいわけでございます。  集団的自衛権というのは、御案内のとおり、自国に対して侵略があったわけではない場合であっても自国と密接な関係にある国に侵略があった場合にいわゆる自衛権の発動として武力を行使ができるという権利でございます。同盟条約によってはそういう権利をもとに結んでいる条約がございますし、日米安保条約のように、アメリカ日本に武力侵略があった場合に日本を助けるわけでございますけれども、逆は規定はされておりません。そこの部分については集団的自衛権に基づいた部分ではないと考えておりますので、同盟条約内容いかんであろうかというふうに考えております。
  57. 山崎力

    山崎力君 ということは、日米関係におけるアメリカ合衆国においては集団的自衛権でもって我が国を守る、日本はそうではないということになるわけですけれども、ということは我が国アメリカに対して我が国憲法で認めていない集団的自衛権を要求しているということになりますが、それでよろしいんでしょうか。
  58. 林暘

    政府委員(林暘君) アメリカに何かを要求しているという関係ではないんだろうというふうに思います。アメリカは、国連憲章第五十一条に基づきます集団的自衛権というのはもちろん持っておりますし、それを行使し得る立場にあるわけでございます。アメリカとしてはそれに基づいて日米安保条約というものを締結し、その規定に従って日本に武力侵略があった場合に集団的自衛権を行使するという形になっておりますので、日本日本憲法でどうこうということはアメリカに要求しているという関係ではないだろう、アメリカがみずから持っている権利及び権利の行使をしているということだろうと思います。
  59. 山崎力

    山崎力君 そのことは自明のことでございまして、私がお尋ねしたいのは、日本日本国の決めた憲法によって集団的自衛権の行使はしてはならないと日本を規定しているわけでございます。それを外国はそれはいいですよと。それで、我が国の約束で同盟関係でもってアメリカに対してそのことの権利を行使してくださいという感覚がどうも私にはよくわからない。自分たちがやってはいけないものだとしている価値観を外国に対して要望している、それによって日米安全保障条約締結されているのではないかと、そのように考えるんですが、その点についてはいかがでございましょうか。
  60. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) そこのところは、我が国集団的自衛権は持っているけれども憲法でみずからいわば手を縛ってそれは行使しないんだと、こういう姿になっているわけでございますね。そして、米国我が国がそういった姿になっている、そういった方針であるということを十分承知の上で、しかしアメリカ自身の国家利益から考えて、そのような日本ではあるけれども、やはり日本と密接な関係を持つことが米国自身の国益にも合致する。  そして、そのような自制した姿をとっている日本との間で日米安保条約という条約を結び、日本集団的自衛権の行使にかかわることはできないことを承知しながら、アメリカとしてはアメリカの持つ集団的自衛権の行使にかかわる部分も条約上の義務として必ず受け入れるということで条約が結ばれているわけでございます。それを余り日本の方からアメリカはそれでいいんだったらと言うのはいかがかという御批判はあるいはあるかと思いますけれども、決して我が方は一方的に何かアメリカに対して過大なものを求めているというのではなくて、そういうことでいろんな条件を十分承知の上で米国米国としての判断があっての条約関係であると、こう考えます。
  61. 山崎力

    山崎力君 私の申しているのはその方面からの話じゃないんです。外務大臣のおっしゃることはよくわかります。そのとおりだろうと思います。しかし、私の言いたいのは、我が日本国として、自分たちの価値観として、憲法として手を縛っておる、自分たちが対外的な集団的自衛権は事実上ないんだという今の法制局の説明にもありました。  そういった価値観を持つ我が国が、そうでない価値観の、世界的にはその方が普通なのかもしれませんけれども、そうでない人たちの国々に対して集団的自衛権を前提とするようなことを結ぶ、プロポーズすること自体が、憲法が本来もし集団的自衛権を持っていないとするならば、ちょっと矛盾がそこにあるのではないか。日本側からアメリカにそういう申し出をすること自体が感覚からすると矛盾があるのではないかということをお尋ねしているわけなんです、法的に考えまして。
  62. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 価値観と言われますと、これはむしろ自由であるとかあるいは民主主義であるとか、そういったものにかかわるものじゃないかなと。そういった点では、我が国米国は価値観を共有していると思います。しかし、そういった価値観を実現していく手段といいましょうか、そういったものとしていろんなものがある。価値観もそうでございますし、安全を守っていく手段としていろんなものがある。そういった手段としては、確かに我が国はある程度みずから抑制した姿になっている。これは事実でございます。  しかし、抑制しているけれども、しからば米国のように抑制してみずからを縛ることはない、国際法上認められている機能を十分に発揮できる体制のもとにある国といわゆる同盟関係を結ぼうというのは決して矛盾とは言えないんじゃないでしょうか。それは価値観にかかわる問題じゃなくて、その手段、手法の問題かと思います。
  63. 山崎力

    山崎力君 この場合の手法というのが憲法解釈に対する考え方と非常にずれがあると、どうしても私はぬぐい切れないものですから、この辺はこれ以上話してもいわゆる神学論争に陥ってしまいますので、そういうことだけをお考え願って、今後の対応の参考にしていただきたいと思い、次の問題に移らせていただきます。  次は、このACSAの条文そのものに対しての質問でございます。  条文の最初は省かせていただいて、いわゆる協定の見出しの部分のところですが、非常に奇異に感じますのは、「後方支援物品又は役務相互提供に関する」という表現がございます。やはりこれでは素直にわかりにくいだろうということでその第一条において「「後方支援物品又は役務」とは、後方支援において提供される物品又は役務をいう。」と、こういうふうにわざわざこの協定の表書きの部分を第一条で説明するというような形式になっております。日本語において、おけるおけると重なるのを別にすれば、後方支援における物品又は役務相互提供に関する協定とすればこの第一条は要らないのではないかというのが素直な読み方なんですが、その辺はどうなっておるのでしょうか。
  64. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 先生のおっしゃることは私もよくわかります。私も交渉の途中でそうしたらどうかということを言った経緯があるわけでございます。  実は「後方支援物品又は役務」という表現でございますけれども、この表現は、アメリカ側から見ますと、このアメリカ側の権限を持っているのはアメリカの国防省でございますけれども、この協定締結する権限をもらっている根拠となるのはNATO相互支援法というアメリカの国内法でございます。そして、この「後方支援物品又は役務」という表現はそのアメリカの国内法の中で使われている表現で、アメリカがほかの国と結ぶ協定でもこういう使い方をしていたと、そういうことなわけです。  日本とこの協定を結ぶに当たってアメリカ側は、アメリカNATO相互支援法に基づいて、そこで権限をもらって日本協定を結んだということを明確にする必要があるので同じ表現にしてくれということで、アメリカ側はこの表現を使ってくれということを主張したわけでございます。そうしますと、おっしゃるとおり若干意味が不明でございますので、協定第一条1という形でその意味するところを定めたと、そういう経緯でございます。
  65. 山崎力

    山崎力君 経過はよくわかりましたが、非常に日本語としては残念な状況でございまして、つい憲法の条文を思い出してしまうんです。  それはさておきまして、その言葉の問題です。私の苦手とする英語が向こう側から出てくるわけですが、この「後方支援」という言葉の対応することがロジスティックサポートという言葉を使われております。この場合のロジスティックという言葉は、後方支援ともちろん訳されますが、いわゆる軍事用語においては兵たんと訳される部分が非常に多い、あるいは似たような言葉では補給という言葉も使われて非常に広い概念でございます。ある意味においてロジスティックの場合においては、防衛庁関係者がおられるので釈迦に説法だとは思いますけれども、大砲の弾であるならば、現実に前線で撃っているその部隊まで運ぶのがロジスティックの概念でございまして、そういう意味においては後方支援というもの、後方という言葉がひとり歩きしがちな部分があるのではないかというふうに懸念いたします。  ところが、日本における後方という言葉は、アメリカのロジスティック、英語におけるロジスティックにはないんだろうというふうに理解しておるんですが、その辺はいかがでございましょうか。
  66. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 委員指摘のとおり英語ではロジスティックサポートという言葉を使っております。これは後方支援、それから兵なんという意味に訳されることもあるわけでございますが、では具体的に何を提供するのかということで、この協定の二条にずらっと並べて書いてありますけれども、そこの内容を含めて私どもはこれは後方支援という訳でよろしいのではないかというふうに考えたわけでございます。  この協定に基づいて実際に提供する物が何かということで見てみますと、二条でずっと列記してある十五に区分される事項でありますし、それの意味が不明であると困るというので、さらに付表を設けましてその中身を定めたということでございますので、言葉がひとり歩きして違う意味になってしまうということは私はないんじゃないかというふうに考えておるのでございます。
  67. 山崎力

    山崎力君 全体的に今度のACSAの条文から見て、ロジスティックという言葉は後方支援と訳してよろしいのではないかという御答弁だと受けましたが、こういった種類の問題においてよく言われますのは距離感ということ、どこまで支援活動ができるかということにおいて、前線とそれから我が国の間の距離というものが言われるわけでございます。  後方支援という言葉で、距離があればとか距離が短ければというようなことがよく言われて、いわゆる中東有事、それから極東有事ということで距離感といいますか距離概念というものが出てくる。そのときに、後方支援と言ったときにこの訳語がロジスティックであれば、これはあくまでも距離とは関係のない概念だと私は理解するわけでございます。  その辺について、「後方支援」という訳語が誤解を与えるのではないかという疑念をどうしてもぬぐい切れないんですが、いかがでしょうか。
  68. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 確かに距離の問題というのはあろうかと思いますが、この協定は、適用対象共同訓練のとき、国連平和維持活動のとき、それから人道的な国際救援活動のときというところに限っておることが一つと、それから適用対象で、一方の国が要請があれば必ず全部やるということではなくてこちら側の判断でやるということでございますので、先生御懸念の非常に遠く離れたところについて適用があるのではないかというのは、そこで解決ができる問題ではなかろうかというふうに思います。
  69. 山崎力

    山崎力君 それはちょっとどうかなと思うんです。これは共同訓練する場所をこのACSAによって決めているわけでもございませんし、さらに国連平和維持活動、人道的な国際救援活動の場所を特定しているものではないわけでございます。  例えば、我が国がアフリカにおいて国際救援活動をする、あるいは平和維持活動をするといったときに、まさにその現場において協力するアメリカ合衆国軍隊物品提供をするということは可能ではないかとこの文章から思うんですが、それが後方支援というような形になるのかどうか、その辺はどういうふうになっておりますか。
  70. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 例えば、共同訓練の場合でございますけれども日本アメリカ共同訓練をしている場合に、共同訓練の円滑な実施のために行うわけでございますので、その場合に米軍自衛隊が一緒に共同訓練をしているわけですから、おのずとその距離から言うとそう遠く離れたところということにはならないんじゃないかというふうに考えるわけでございます。
  71. 山崎力

    山崎力君 国連平和維持活動及び国際救援活動においての場合はどうなんでしょう。むしろ問題はそちらの方だと思いますが。
  72. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 後方支援という観念でございますけれども、これは正面作戦と区別する観念でございまして、正面作戦を支援するために必要な補給、輸送、整備、衛生、通信、調達、管理等の業務を行うことが後方支援でございまして、この協定に基づいて行われる物品または役務提供というのは、後方支援業務において提供されることが通常想定される種類のものを言っておるわけでございます。  具体的に何かということですと、二条の第二項に列挙されている「食料」以下十五の区分に係るものがこの協定対象となっているわけでございます。
  73. 山崎力

    山崎力君 時間があれなんですけれども、今の御答弁でも、それでは国際連合の平和維持活動国際救援活動前線後方があるのかということを質問したくなるわけでございます。  ですから、私が最初に言いましたように、英語においてのロジスティックというのはそういったものの概念と別の、まさに兵たん、補給という概念でございます。それを「後方支援」というような形で訳すから、その「後方」に引っ張られて、訓練の場合はアフリカ沖で訓練することはないでしょうけれども、平和維持活動並びに国際救援活動というのは全世界的に行われるべきものとして考えるわけですから、そのときにおいてアメリカ軍とのこういったACSAのことが、予想はしていないかもしれないけれども、この法律の範囲内としてあり得るわけでございます。そのときに、後方支援活動という言葉自体が日本語としてなじまないケースがあるのではないかということを私は先ほどから申し上げているわけでございます。御答弁は結構でございます。  次に移らせていただきます。  二条におきまして、なぜ弾薬だけを抜き出して、これはだめであるよというふうにわざわざお書きになったのか、教えていただきたいと思います。
  74. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) この協定締結するに当たりまして、どの分野に適用するか、それからどういう物品または役務提供するのが適当であるかということで日米間で協議をしたわけでございますけれども、弾薬の場合につきましては、米側がその提供につき特段のニーズがないということから、日米合意の上で弾薬を外したわけでございます。
  75. 山崎力

    山崎力君 今の御答弁は、この条文を入れたのはアメリカ側の要望であったというふうに解釈してよろしいでしょうか。
  76. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 日米双方で協議した結果でございます。
  77. 山崎力

    山崎力君 そういったニーズが余りないからどうとかこうとかというのは、こういった協定にはなじまないのではないかと思うんです。ある場面において列挙した部分、そういったもののニーズが、それではほかのところで列挙した部分で果たしてどの程度のニーズがあるんだということを点検の上そういったことでやるならばともかくとして、そういったものの中で弾薬だけ特段に抜き出して「解してはならない。」と言うようなことというのは果たしていかがなものかという感じがするんですけれども、いかがでございましょうか。
  78. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) これは日米間でどういうものをこの協定対象にすべきかということで議論をした結果、ニーズがないのでこれは外そうではないかということで外したわけでございます。
  79. 山崎力

    山崎力君 それでは、ニーズがあるかないかということについて、逆に言えば、食料、水、宿泊、空輸を含むそのあれは、すべてニーズがあるというふうなことで列挙したというふうに解釈してよろしゅうございますか。
  80. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) これは自衛隊米軍関係者がいろいろ検討した結果、どれが必要でという検討の上で、一応このニーズがあるということで挙げたわけでございます。
  81. 山崎力

    山崎力君 この辺が有事集団的自衛権といった絡みを気になされての政治的な表現でないことを私は希望しておきたいと思います。  それで、最後になりますが、先ほどの野沢先生からの御質問の中にもあったんですが、このACSA協定自体は平時をもとに考えておられて、有事のことについては全然らち外であるというか考えていない協定であるというふうに御答弁いただけたものと思っております。  ただ、それを前提といたしますと、問題は、要するに今まで共同訓練においては相互融通していたことを明文化して単にやりやすくするというような協定意味合いだけならば、これほど大げさにする必要はないような気もするんです。  ということは、アメリカ側とすれば、日米間の米軍及び自衛隊協力関係相互融通関係、そういった意味においては、かつて言われたインターオペラビリティーですか、兵器の共用性、兵器だけではない、通信その他の共通のものを持って同盟の一つのあれとするということでFSXその他の問題がかなり言われた経緯もございます。  そういった日米関係の中においてこういったものをつくっておいて、これからも一生懸命そういった訓練をしておいて、あるいは相互融通をしておいて、一朝有事の際に、訓練はやりますけれどもそうじゃないときは私は知りませんよと、こういったことをこの協定自体が表現するとしたら、これは逆の意味において有事の際の日米関係の妨げになるのではないかという危惧を私自身は持つわけでございます。  質問意味がおわかりかどうか確かめさせていただきたいんですが、訓練は一生懸命やります、協力関係は持ちます、自衛隊米軍においてのあれはやりますよと。ところが、そういった訓練間で融通し合っていたものは一番重要な有事の際はやりませんよと。では何のための訓練なんだ、何のためのいわゆる融通協定なんだということが、関係者はわかるかもしれませんが、一般の国民としては、特にアメリカ側の国民世論としては何だということを考えてしまうのではないかという危惧を持つんですが、外務大臣並びに防衛庁長官の所見を伺って、私の質問を終わらせていただきます。
  82. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) まず最初に、この協定平時のものであって有事のものではないというふうに理解するというお話がございましたが、先ほどから御答弁申し上げておりますのは、これは有事平時という、そういった角度から、そういった切り口から規定されていない、こういうことでございます。共同訓練PKO、人道的救援活動、そういう切り口からとらえております。  そして、いわゆる有事というのは、国際法的な定義がございませんけれども、これが戦闘行動が行われているというそういった状況事態だというふうに考えますならば、そのような事態の中で戦闘行動を行っている米軍部隊に対する協力というものはこの協定ではできません。しかし、そういった戦闘状況にあるものとは切り離されたところで別途共同訓練なりPKOが行われている場合、それに対してこの協定協力ができるかできないかといいますと、これは論理上、協定の規定上は排除されておりません。しかしながら、それをするかしないかというのはまた別の判断があると、こういうふうに御答弁を申し上げております。  それから、いわゆる有事に際してどうするんだと、訓練についてだけこういった相互協力をやって有事はほったらかしかという点でございますが、その点につきましては、文字どおり、先般の首脳会談で発出されました安保共同宣言の中で、例えば「日本周辺地域において発生しうる事態日本の平和と安全に重要な影響を与える場合における日米間の協力に関する研究をはじめ、日米間の政策調整を促進する」という、今申しました研究ということがあるわけですね。そういったことについていろいろ研究をしていくということでございますし、また別途ガイドラインについても見直しを開始すると、こういうことはうたわれているわけでございます。  そういった中で、一体何を具体的に研究していくのか。これはまだ作業が始まったばかりで、これからではございますけれども、いろいろこういった事態に対してどういうふうな協力があるかという研究を進めるということで御理解いただきたいと思います。
  83. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) ただいま外務大臣の方からお話がございましたとおり、この協定国連平和維持活動共同訓練等に用いると、こういうことでございます。いわば切り口が違うということで、有事平時といった概念を使用しておりません。  したがいまして、極東有事我が国有事における米軍戦闘行動、作戦行動への協力への物品または役務提供というものは、そういうものはされないということは明確になっておりまして、そのことは日米ともに考え方は一致をいたしているところでございます。  他方、先般の日米安全保障共同宣言で、我が国周辺地域我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が発生した場合の日米協力についての研究を進めるということで合意がなされました。また先般、総理から御指示がございまして、対米協力のあり方を含む緊急事態対応策の研究というものを政府部内で進めるということになりまして、検討が開始されておるところでございます。  私ども防衛庁といたしましては、御指摘のような事態における対米協力のあり方、どうあるべきかということについては真剣に研究すべき問題である、このように考えております。
  84. 高野博師

    ○高野博師君 私は、一般国際情勢について御質問させていただきます。  まず、中国の核実験につきまして、去る八日、中国は国際世論の反対にもかかわらず核実験を強行した。極めて遺憾でありまして、深い憤りを禁じ得ないところであります。平和は国際社会の願望でありまして、核兵器は平和と人類にとっての敵であります。中国は大国の論理で国際世論や核のない世界を求める我々の切なる声を無視してこれを実行したわけですが、許しがたいという感じを持っております。重大な問題でありますので、この際、政府見解をただしておきたいと思います。  既にかなり以前から中国が核実験を行うことが予想されていたにもかかわらず、これを阻止できなかった。昨年の八月以降、今回の実験まで日本政府は中国に対していかなる対応をしてきたのか。また、中国側の反応はどうだったのか。また、先般、昨年からの無償の凍結に対して外務省の幹部が一定の効果を上げたというような発言もされておりますが、これはどういう意味でしょうか。
  85. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員指摘のとおり、核実験はいずれの国のものであってもこれを容認することはできない。当然のことでございます。今回の中国の核実験は極めて遺憾でございまして、政府といたしましても、実験が行われまして、直ちに官房長官の声明を出しましたし、それからまた、私がその当日、在京の中国の臨時代理大使を外務省に招致いたしまして、この核実験が極めて遺憾であるということ、それからまた今後一切実験を行われないこと、そしてさらにいわゆる包括的核実験禁止条約、CTBTでございますが、これの締結に向かってさらなる努力をするようなこと等々の申し入れをしたところでございます。  さて、今の委員の御質疑の中では、それ以前に一体どういうふうな努力をしたのかという点でございましたが、その点につきましては、日本といたしましても、もうかねてからいろいろな機会をとらえまして核実験の停止を求める立場を明らかにし、また中国側にも申し入れてまいりました。  最近で申しますと、バンコクで三月一日に行われました日中首脳会談、翌三月二日に行われました日中の外相会談、また三月三十一日にこれは東京で行いました日中外相会談等におきましてもそのような申し入れをしてきたところでございます。しかし、それにもかかわらず今回中国が核実験に踏み切ったということは大変に遺憾なことだと考えておりまして、そういったことを踏まえて、先ほど申しましたような申し入れを八日に行ったところでございます。  それから、外務省が昨年来、核実験の関連で無償援助を原則停止していると、それがある程度の効果があったというふうなことを言っているがどうかという御質問がございました。  これはいろんな考え方があると思いますけれども、確かに今回の核実験を中国が国際世論の流れに逆行して行ったということは大変遺憾でございます。しかし、中国側の考えあるいはその意図ということをそんたくいたしますと、こういうことが言えるんじゃないかと思います。  確かに中国は依然として核実験を行いましたし、また九月にもやるとは書っておりますけれども、従来はいつやめるとは言っておりませんでした。強いて言えば、CTBTがきちんとできるならば、それが締結か発効かというところは若干あいまいでございましたが、ともかくCTBTがちゃんとできたらやめるよということは言っておった。それを今回は、九月にもう一回やる、それでもうやめるんだと、こう言いました。そういうふうに時間を特定したということは、それを我々として評価することは決してできませんけれども、中国側の意図としては、そこは少し明らかにしたんだぞということはあるかもしれません。  それからまた、委員も御承知のとおり、CTBTにつきましても、従来、小規模の平和的爆発と称するものは対象外にする等の主張をしておりましたけれども、これを取り下げてまいりましたですね。そういったことで、核に関する中国の態度に最近ある程度の変化があるということは事実でございます。  その変化の背景を考えてみますと、やはり我が国中心とする国際世論のいろいろな主張、申し入れあるいはその無償の原則停止といった措置も含めて、そういったものを中国側が勘案してこのような政策変更をしたということはあり得るんじゃないかなと。そういったことを考えながらあのような発言になったんだと思います。しかし、その因果関係をきちんと説明しろと言われますと、これはなんでございますけれども
  86. 高野博師

    ○高野博師君 今、大臣がおっしゃられたようなことは、日本の無償援助の凍結の効果ということは私は言えないというふうに、まあいろいろ見方があるかもしれませんが、私はそう見ております。  中国がCTBTの締結前の駆け込みということで実験をやったということ、また昨年の五月にNPTの無期限延長が合意されたときに核保有国は核実験を最大限自制するという約束をしたわけですが、中国はこの約束を破っている、これに反していると、こう言えると思います。  九日付のある新聞の社説に、実験に対する日本の抗議に対して中国は、日本人民の核に対する気持ちは理解すると、そう言っておきながら、それでも実験を続ける中国の姿勢は日本人の心を深く傷つけ、友好の気持ちに冷水を浴びせ続けているということも出ておりました。  一方、昨年の八月から、我が方の抗議に対して中国側は、日本米国の強大な傘の保護のもとにある、中国を非難する資格はない、あるいは経済援助に政治的条件をつけることには反対だと、こういうことを言っておりまして、こういうことに対して日本政府が反論しているのかどうか、伺います。
  87. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 確かに中国は従来から、我が国が核に対して政府としてもあるいは国民としても全体としても特別な気持ちを持つ、そしていろいろ申し入れをされるというその事情は理解できるということは繰り返して言っております。  しかしながら同時に、中国としては核の問題について中国の立場をいろいろ主張しております。これは今、委員も御指摘されましたようなことでございますけれども、中国の核はあくまでも自衛のためのものであって先制攻撃はしないんだとか、あるいは核実験も核保有国の中では一番回数が少ないんじゃないかとか、いろんなことを言っております。しかし、そういった主張に対しまして日本としては、そのような中国側の主張は受け入れることはできないと、その都度申し上げているところでございます。  先般、私が八日に申し入れをいたしましたときも、中国側からはそのような従来からの中国の主張を言いました。それで私は、それはこれまでの中国の主張の繰り返しだから、それを日本として理解することも了解することもできないと明確に言っておいたところでございます。  なお、経済協力との絡みにおきましても、今回私の方から、昨年来無償資金協力を一部例外を除き供与しないことにしているけれども、中国が核実験を継続する以上、この措置をさらに継続せざるを得ないということを申しましたし、またさらに、経済協力を初めいろんな協力関係というのは日本としても国民の理解を得ながら進めなくちゃいけないんだと、だからそういった国民の理解と支持が得られるような環境が保持されるような状況をつくるために中国としても考えなくちゃいかぬじゃないかということを申し入れておきました。  それに対して中国の方は、私に対しては、要するに核と経済協力をリンクして行動するような局面があらわれないよう期待するという表現で、これで経済協力を云々ということはしないでほしいという中国としての希望が表明されたということがございます。  私の方からは、先ほど申しましたように、当方の主張をきちんと繰り返し申しておいたところでございます。
  88. 高野博師

    ○高野博師君 余り時間がありませんので、簡潔にお願いいたします。  先ほど大臣が言われましたように中国は自衛のためにしか使わない、あるいは先制攻撃をやらないと、こういうことを言っているんですが、核兵器の破壊力からして核兵器の使用そのものが悪だという、そういうことを認識させることが重要ではないかなと思います。経協との絡みについてはまた後ほど質問させていただきます。  ところで、今回の実験の規模はどのぐらいだったのか、費用は金額にしたらどのぐらいになるのか、そして目的は何だったのか、できるだけ簡潔にお願いいたします。
  89. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 中国は、今回の核実験の目的を実は明らかにしておりません。これをこちらから推測として云々することはちょっとできがたい状況でございます。  それから、中国の核実験の費用を推定できるような情報は私どもとして有しておらないわけでございます。全くの参考までに申し上げれば、米国の場合に簡易な実験の基本費用が千五百万ドル程度であったというような話はございますが、これは実験に使われる装備いかんによって変化する、まして核実験の費用は規模や実験の態様で相当変わり得るものだと思いますし、国ごとに装備の調達方法など全く異なるでしょうから、この例をそのまま当てはめるわけにはもちろんいかないと思います。そういうわけでございまして、費用ということを推定できるような情報を私どもは有しておりません。
  90. 高野博師

    ○高野博師君 実験の目的についてはいろんなことが言われております。推測はできないということですが、中国はワシントンを含むアメリカの東海岸を射程に入れるための核弾頭の小型化がねらいだと、こういうことも報道では言われております。アメリカの核の脅威を前提に置かなければ、核保有国としての一般的な意味での最小限の核報復力を維持、確保しておく、あるいは大国としての地位、発言力を維持する、あるいは防衛力の強化と、こういうことが言われますが、いずれにしても核兵器の開発を目的にしていることは明らかではないかと思います。これらのことを含めて、いずれにしてもアジアの安全保障に影を落とすのではないかということも言われております。中国自身が冷戦後の今日を平和と発展の時代だと位置づけている、それにもかかわらずこういう矛盾した行動をとっているということであります。  中国の防衛政策、軍事力の現状その他については質問を省かせてもらいます。  今回の実験によって中国脅威論に拍車がかかるおそれはないだろうかと、世界の国々は中国離れをして台湾につくんではないか、そういうことも言われております。  そこで、今回の実験が中台関係も含めたアジア各国に与える影響はどういうものが考えられるか。簡単で結構でございます。
  91. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今回の核実験自身は決して容認できるものではございませんし、今後、直ちに核実験を停止するということを我が国としては求めておりますし、またCTBTにも積極的に対応することを求めているわけでございます。  さて、これが中国をめぐるいろんな国際関係にどういうふうな影響を与えるかという点でございますが、いろんな要素はございましょうけれども、基本的に私どもは中国がこのアジア太平洋地域の建設的なパートナーになるということが、この地域はもとより世界全体にとって極めて大切なことだと思います。そしてまた、長期的なまた幅広い観点からかんがみました中国の国益もそこにあるんだと、こう信じておりますので、我が国もその方向へ中国をいざなうようにいろいろな働きかけをしてまいりたい、こう考える次第でございます。
  92. 高野博師

    ○高野博師君 それでは、対中国の経済協力との関係で何点かお伺いいたします。  日中二国間の援助は現在どのぐらいで、それは我が国のODA全体の何%を占めるのか、二国間の援助実績、これはもう簡単な数字で結構でございます。
  93. 畠中篤

    政府委員(畠中篤君) 平成七年度の中国に対します有償資金協力は、交換公文締結ベースで一千四百十四億円でございます。これは、平成七年度の我が国の全体の有償資金協力の中で占めます割合の一三%でございます。それから、無償資金協力の方でございますが、平成六年度には七十七億九千九百万円を供与しておりまして、これは全体の三・一%でございましたけれども、平成七年度には、八月に実施されました中国の核実験を受けまして、一部無償資金協力の例外を除きまして原則として供与しないということを決めました結果、実績は四億八千百万円ということで、全体の〇・二%になっております。
  94. 高野博師

    ○高野博師君 二国間の援助の実績では全体の一三%を中国に供与しているわけですが、これだけの援助をしていて中国側は感謝しているんでしょうか。感謝の表明というのはあるんでしょうか。
  95. 畠中篤

    政府委員(畠中篤君) どういうふうに申し上げたらよろしいかあれですけれども、中国の方での報道ということで申し上げますと、有償資金協力の交換公文の締結の際、あるいはプロジェクトの完成の際、そういった際に大変大きく放送あるいは新聞などで報道されておりますし、さらに二国間のいろいろな協議の場、総理会談あるいは外相会談も含めまして、そういった会談の中で中国側から円借についての評価、感謝の意というのは伝えられております。
  96. 高野博師

    ○高野博師君 ところで、八日のこの核実験の後、橋本総理がこれについてコメントをされて、「残念だ。これで終わりにしてもらいたい」「中国をこの問題で国際社会に引き戻すようにしなければならない。円借款停止はそういう方向とは逆行する」と、こういう発言をされております。  これは、私は問題が二つあるだろうと思うんです。一つは、「残念だ。これで終わりにしてもらいたい」ということなんですが、簡単にこの実験を受け入れたような発言をしている。そして、抗議をしていない、抗議の言葉がない。もう一つは、円借款を停止しないと簡単に本音を述べてしまっている。政治的、外交的に極めて稚拙なやり方ではないかなという感じを持っております。この総理の発言を聞いて、中国側はほっとしているんではないかなと思います。余談ですが、中国の専門家によれば、本音とかすぐ腹を割っちゃう人間は余り尊敬されないということでございます。  それで、橋本総理は、対中国強硬論ではなくて、平和で核のない世界を強く望むゆえの強い態度、姿勢、抗議をすべきではないか。大臣が別途抗議をされたことは承知しております。中国のこの核実験に対して強い姿勢をとらない、そして一方で日米安保体制を軍事同盟として強化しているということ、これは世界のあるいはアジアの国々にとってみれば、日本は平和への強い意志を持った国とは映らないんではないだろうかという懸念を私は持っております。  中国の改革・開放政策を支える円借款は、日本の唯一最大の外交カードだと、こう言われておりまして、その最大のカードの手のうちを簡単に直ちに見せてしまうというやり方はいかがなものか。カードというのは見せない、切らないからこそ威力を発揮するんではないかということを感じております。この最大のカードを逆に利用されているような印象を私は時々持ちます。八日付のある新聞の社説は、  すでに外務省幹部は日中の信頼関係維持を理由に、円借款見直しには手をつけない方針を明らかにしていた。何のことはない。中国ペースで実験再開のレールが敷かれているのである。 それから、  中国に対して手厚い援助を継続することは、中国指導部内の強硬派に誤ったシグナルを与えることにもなる。台湾総統選挙に対する武力威嚇にも半ば沈黙していた日本は、まるで威厳なく「歴史カード」に弱い便利な現金自動支払機と映ずるだろうからである。中国に対する甘い対応は、北朝鮮やイランなどの核疑惑国を元気づける恐れもある。日本は核の水平拡散防止に不熱心だといわれても仕方がない。 こういうことを論じておりますが、大臣の御所見を伺います。
  97. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 総理の御発言は公式の場における公式の御発言じゃございませんで、たまたま総理の周りを取り巻いておりました新聞記者が質問をし、それにお答えになったというものでございますので。それからまた、報道がすべて総理の真意をあらわしているかどうかという点はいろいろあろうかと思います。  いずれにいたしましても、日本国政府としての考え方は、官房長官談話でも出しましたし、私自身が中国に対してきちんと申し上げたわけでございますので、私も橋本内閣の外務大臣として総理の御意思を体しながら行動しているということでございます。  さて、円借の問題をどう考えるかという点でございますけれども、もとより核実験そのものは決して容認することはできないし、強い姿勢で臨まなくてはいけないし、臨んでいるところでございます。  他方、対中の円借款につきましては、これはやはり改革・開放路線に対する支援を通じて、両国の間に安定的な関係を築いていくという意味で非常に大切なものでございますし、先ほども申しましたように、やはり中国というものがアジア太平洋地域の建設的なパートナーの位置をきちっと占める、そのことが我が国を含め国際社会全体の目指すべきところであると考えますし、それがまた中国自身の国益にも大きな意味で合致するところであると、こう考えております。  そういうことを考えますと、やはり円借というのは、我が国の対中政策の基本的部分をなしているものでございますから、そこのところは大切に考えていかなくちゃいけないということを総理もお考えになってあのような御発言をなさったんだろうと思います。  しかし、いずれにいたしましても、この問題は総合的に考えてまいりたい。先ほども申しましたけれども、私の中国に対する申し入れの中では、経済協力関係日本の国民の理解と支持のもとに行われなくちゃいけないんだと、だからそういった日本国民の理解や支持を損なうような行為は中国としても避けてもらわなくちゃいかぬということもきちんと申し入れているところでございます。  それから、我が国日米安全保障体制がどういうふうに見られるかという点につきまして、これは安保宣言そのものの中にも中国との関係を大切にするということもきちんと明記されているわけでございまして、そこのところは間違いなくこの性格づけが行われており、また国際社会でも基本的にそのように理解されるものと考える次第でございます。
  98. 高野博師

    ○高野博師君 日中間の安定的関係あるいは建設的パートナーということが重要で、これが中国の国益にもなるということなんですが、まさに建設的なパートナーということであれば、平和に対する中国の姿勢をもっと強く日本は求めてもいいんではないかということを感じます。それから、総合的に日中間の関係考えるということであれば、その総合的な判断、視点の中に日本国民の感情、世論というものも当然考慮に入れるべきではないかということを感じます。  先ほど核実験の費用について聞きましたが、明確にはよくわからないということなんですが、いずれにしても膨大な費用がかかっているということは間違いないので、素直に考えれば、そもそもその費用、予算は自国の経済発展に優先的に使うのが筋であろう、それを日本が肩がわりするというのはおかしいのではないかというふうに私は思っております。  経済協力というものは、経済的あるいは社会的な発展が究極的には平和につながるということでなくてはならない。したがって、平和を脅かすような行動をとった場合には経済援助を供与することもあるときは差し控えてもしかるべきではないか。そこに政治的、外交判断が入っても全くおかしくないと私は思っております。いずれにしても、今回円借をやらないということを早々と言う必要はないだろう、見直しあるいは再検討をするというようなことを言ってしかるべきではないかなと私は思っております。  ところで、この中国に対する円借の供与を続けることは、ODA大綱の四原則、その中の第三原則、すなわち相手国の大量破壊兵器の開発の動向に注意するということに抵触するのではないでしょうか。
  99. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 経済協力を進めていくに当たりましては、当然ODA大綱を大切にしてまいりますけれども、このODA大綱四原則運用に当たりましては、そこに列記されている事柄は当然大切に考えますけれども、それだけではなくて、相手国の経済社会の状況はどうかとか、あるいは二国間関係全体をどういうふうにとらえ、またどういうふうにそれを進めていくべきか、そのことに経済協力の進め方がどういうふうに影響するか等々、いろいろな観点から配慮し、総合的に判断するべきものだと考えております。そういったことはODA大綱自体にも明記されているところでございますので、そういったことで今後ともやってまいりたいと考える次第でございます。
  100. 高野博師

    ○高野博師君 簡単に言うと、このODA原則には反しないということでしょうか。
  101. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 先ほど申しましたようないろいろな関係も総合的に判断するということまで含めてがODA大綱でございますので、そういったものを踏まえてそのように進めていくと、こう考える次第でございます。
  102. 高野博師

    ○高野博師君 はっきりしないんですが。  ODAというのは国民の税金で賄われているということで、今回の実験に対しては、被爆者団体とかあるいは市民グループとかの抗議集会を見ても、あるいはマスコミの論調を見ても、国民の大多数が核実験に反対している。その国民の反対があるにもかかわらず、このODAの円借款について見直しなり再検討なりを全くしないということは、住専処理と同様に国民の意思に反するのではないかという印象を私は持っております。  いずれにしても、政府はもっと毅然とした態度で臨んでもらいたい。今すぐ円借款を停止しないにしても、九月にまたもう一度やると言っているわけです。これに対してはもう絶対反対と。もしこれを無視してまたやるようなことがあれば停止してもしかるべきではないかということを私は考えておりますが、大臣見解を伺います。
  103. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 先ほど申しましたように、今回の実験に対してこれは極めて遺憾であるという申し入れをしただけではなくて、先方が九月に一回やっただけでもうやめるんだからと、こう言ったことに対しても、それも受け入れられない、九月の実験も取りやめるべきであるということも申し入れているわけでございます。そういった姿勢で臨んでまいります。
  104. 高野博師

    ○高野博師君 それでは次に、北朝鮮の食糧援助についてお伺いいたします。  先ほど野沢議員からも御質問がありましたけれども、関連の質問をさせてもらいますが、国連が四千三百六十万ドルの要請を各国に行った、これに対してアメリカが六百万ドル、韓国が三百万ドル、我が国は六百万ドルの援助を予定しているということです。  この援助に対しては、北朝鮮で餓死者が出たりあるいは難民が出たりすると大変な局面になる、北東アジアの平和と安定を支えるためにも食糧援助が必要だということが言われております。日本は、昨年の五十万トンの米支援同様、これは人道的、緊急の援助ということの理解でよろしいでしょうか。
  105. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) おっしゃるとおりでございまして、我が国と北朝鮮の間には国交関係はございません。そういったことでございましたので、通常の経済協力を進めるということは考えていないところでございます。  そして、今いろいろ最終的な詰めを行っているところでございますけれども、今回国連から発出されましたアピールに対応しまして、我が国としても米国、韓国その他の諸国とともに援助を行う方向で詰めを行っておりますけれども、それはあくまでも現在の北朝鮮の状況にかんかみ、人道的な見地からの緊急な必要性に応じて、それにこたえて行おうとしているものでございます。
  106. 高野博師

    ○高野博師君 ところで、北朝鮮がことしの一月に西欧の保険会社から凶作保険ということで一億三千万ドルを受け取っていたという情報があります。これは今回の国連の要請額の約三倍の金額ですけれども、この保険金によって食糧を購入していないという情報がありますが、この辺の事実関係を把握しているでしょうか。
  107. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 御指摘報道は私どもも承知いたしております。それから、きょうの朝の報道の中にも、北朝鮮へ小麦十万トンをシリアが売却したというような記事がある、そういうことは承知いたしておりますが、しかしこの凶作保険の件については事実関係確認しておりませんので、コメントは差し控えさせていただきたいと存じます。
  108. 高野博師

    ○高野博師君 いろんな情報によればかなりの食糧不足で国民が相当窮乏生活を強いられていると思われるんですが、この凶作保険金の問題、あるいは軍の戦時備蓄米がまだ在庫にあるという情報、これは韓国筋あたりから出ていますけれども、実態は不明というのが現状ではないか、かなりの部分はわかってきているけれども、かなりの不明部分があるのではないかと私どもは見ております。  この食糧事情についてはアメリカと韓国の認識に相当ずれがあるということで、アメリカはかなり危機的な状況ととらえている、あるいは国連もそう見ているんですが、韓国はまだまだ余裕があるというふうに見ていると言われています。日本政府はどういうふうに見ているのか。  それから、報道によれば、日本政府の独自の調査によって米の作付状況についての何か報告というか調査結果が出ているとありますが、これについてもお伺いいたします。
  109. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 最後の点についてでございますけれども、もし御質問が気象庁が独自に調査した云々ということでございますと、昨年の夏の北朝鮮の洪水被害の実態を把握するための参考とするために、かつて外務省から気象庁にこの時期の降水量などの気象データにつき照会を行ったことはございます。  しかし、御質問は最近の報道を踏まえてのものかとも御推察申し上げるわけですが、気象庁が北朝鮮の凶作などの食糧事情について独自の調査を行ったということは全く承知いたしておりません。そしてまた、そういうことについて外務省として気象庁から報告をいただいているという事実もございません。
  110. 高野博師

    ○高野博師君 韓国の見方としては、この北朝鮮発表の被災者五百二十万人、損失総額百五十億ドルという、これは最大限の食糧物資を獲得しようという戦術的な誇張だと判断していると言われておりまして、今の金正日体制は動揺していない、したがって援助によって余裕を与える必要はないということを言っております。  それはそれとしまして、北朝鮮政府は、各国から援助をもらったならば、これが国民の手に渡ったということを国際社会に明確に示す義務と責任があるのはもう当然であろうと思いますが、日本はこの援助に際して、国連を通じてでも結構ですけれども、昨年の我が国の米支援の正確な報告を求めてはどうだろうかと思います。この点はいかがでしょうか。
  111. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 今回の国連の人道支援につきましては、まずWFP、世界食糧計画、これは平壌に常駐事務所を有しているわけでございます。そしてDHA、国連人道問題局の今回のアピールによりますと、昨年の十一月からことしの五月までの間に三十四回、延べ八十一日間、モニタリングのための訪問を行ったと。また、ユニセフ、国連児童基金の方でございますが、同じ期間内に十七回、延べ二十七日間のモニタリングのための訪問を行ったと、こういう実績があるようでございます。  そして、こういう訪問において、WFPとかユニセフの係官が、支援物資の荷揚げ港ないしは鉄道駅から最終的な配付地域に至るまでのいろいろな段階でモニタリングを行って、支援物資が適正に配付されているんだと、こういう報告をしているようでございます。  今回のアピールの対象となっている緊急人道支援の場合も、北朝鮮側と関係する国連諸機関との間でモニタリングの方法について合意をしているというふうに承知いたしておりまして、WFPやユニセフなどの関係国連諸機関の方では今回のアピールの実施のためにモニタリング機能を今までよりも一層強化する予定であるというふうに承知いたしておるわけでございます。  こういうわけで、国連諸機関の場合には、供与をされた支援物資の使途について、北朝鮮側から報告を受けるということに加えて、北朝鮮各地で直接モニタリングを実施しているということでございますので、したがって特に我が国に対して北朝鮮からその使途について報告がなされるということを条件としなくても、相当高い透明性を確保し得るのではないのかなというふうに思うわけでございます。  ちなみに、現実の問題としては、米国の方でも、今申し上げたこのWFPを通ずる支援が、最も支援を必要とする人々に物資を届けるための最良のチャネルであるという認識を持っているようでございます。
  112. 高野博師

    ○高野博師君 私が伺っているのは、これから日本がやる援助あるいは国連の援助ではなくて、去年日本がやった援助についてどうしてモニタリングをやらないんだ、もっと透明度を求めてもいいんではないかと、そういうことであります。この点はどうでしょうか。
  113. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 昨年実施いたしましたトータルで五十万トンの米の支援についてのお話でございますが、これはもうこれまで何回かの委員会でも委員御自身からも御指摘、御質問がございましてお答えしたところでございますが、それぞれ取り決めなり契約なりで民生用に充当されること等が明記されておるわけでございます。そして、これまできちんと、終わったものにつきましてはどのように配付されたという報告も来ております。  さて、その報告が十分かどうか、あるいは信頼するに足るかどうかという御議論もございました。そしてまた、ただいまの御質問は、さらに昨年行ったものについてこれからでもモニタリングをすべきではないかというお話でございますけれども、これは国連諸機関の場合と違いまして我が国と北朝鮮の場合には国交関係がないということもございまして、やはりそこのところはいろいろ限界があるというのは否定できないところでございます。  透明性確保という観点からいえば、それは確かに残念なことと言えるかもしれませんけれども、全体的な事情を総合すれば、できる限りその面でも努力したというふうに御理解いただけないかと存ずる次第でございます。
  114. 高野博師

    ○高野博師君 以前にも何回かこの件については質問しましたのでこれ以上やりませんけれども、今回のこの国連を通じた援助については、アメリカの場合は六百万ドルと。しかし、この援助の背景には、ミサイル協議とか、あるいは朝鮮戦争の行方不明米兵の捜索等での政治的な判断も含めていろんな思惑が入っているのではないか。韓国についても、四者協議とか、あるいは日本アメリカとの関係を考慮するとそれなりの思惑がある。しかし、日本の場合は全く人道的、緊急の観点と、それだけは非常に純粋で結構なんですが、もっと外交的に最大限利用することも大事ではないかと私は思います。  したがって、先ほど言いましたように、少なくとも昨年の米支援ということについては、昨年といっても実際に米が届いたのはことしの四月、つい最近でありますから、この支援の報告を求めることを提案しておきたいと思います。  ちなみに、アメリカのコロンビア大学のコリア研究センターのスティーブ・リントンという博士が、この米支援については常駐監視が必要だと、これは国連のことを言っているんですが、日本の場合でも、例えばWFPの平壌駐在所長として食糧配付に献身したトレバー・ページ氏に協力を依頼したらどうか、彼ならば北朝鮮も受け入れるだろうというようなことも言っております。これも検討してはいかがかと思います。  時間が来ましたので、以上で終わります。
  115. 照屋寛徳

    照屋寛徳君 それでは、質問をさせていただきたいと思います。  久しぶりに外務大臣防衛庁長官防衛施設庁長官、おそろいでございますので、今議題になっておりますACSAの問題と沖縄の基地問題とを含めて御質問をさせていただきたいと思います。  ちょっと色が黒くなっておりますが、ゴルフ焼けじゃなくして選挙焼けでございまして、誤解のないように。  その沖縄の県議選挙でございますが、定数四十八名に対して、今回大田知事を支持する与党が二十五名、過半数を制したわけでありますが、私は、どの政党が勝った負けたと、こういうことよりも、知事がこれまで進めてきた基地政策、とりわけ沖縄の米軍基地の整理、縮小、撤去を図ってもらいたい、それから日米地位協定を抜本的に見直してもらいたい等々の、昨年秋以来の大田知事を先頭にした大田県政の基地政策が県民から信任が得られた、こういうふうに評価をしているわけでございます。そのことを含めて幾つか質問させていただくわけであります。  四月十七日に橋本・クリントン会談が行われまして、日米安全保障共同宣言が発表されました。この日米安保共同宣言日米防衛協力のための指針、いわゆるガイドライン見直しということがうたわれております。このガイドライン見直しACSAとの関係について外務大臣並びに防衛庁長官はどのようにお考えになっているのか、まずただしておきたいと思います。
  116. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 日米共同宣言では、日米協力とりわけ安全保障面での日米間の信頼性を強化する、そういうことを目的にいたしました一連の措置がうたい込まれているわけでございますけれども、御質問のございましたいわゆるガイドライン指針見直し、そしてまた、ただいま御審議を願っております後方支援物品役務相互提供協定につきましても、その共同宣言の中におきましていずれも安全保障面での日米協力の強化のための重要な措置と、こういうふうに位置づけているところでございます。
  117. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) いわゆる日米防衛協力のための指針は、昭和五十三年に前大綱に基づいて策定をされたものでございまして、日米防衛協力のあり方につきまして共同研究を行うための指針を示したものでございます。さきの日米安全保障共同宣言におきましても、日米間で緊密な協力関係を増進するためにその見直しを開始するということが合意された次第でございます。  他方、日米物品役務相互提供協定は、自衛隊米軍との間で平素から相互支援の体制を確立しておくことが日米安保条約の円滑かつ効果的な運用を図る上で重要であるとの観点から、昭和六十三年以来その導入について検討いたしてまいった結果、先般米側と合意が得られまして署名に至ったものでございます。  このように、指針見直しと本協定締結は、ともに日米安保条約の信頼性を向上させまして、これを有効に機能させる上で必要な施策ではございますけれども、基本的には別の案件であり、お互いに連動しているというような関係にはないと、このように理解をいたしております。
  118. 照屋寛徳

    照屋寛徳君 沖縄が本土に復帰をいたしました一九七二年の五月十五日以降今日までに在沖米軍自衛隊共同訓練が実施された日時、回数、それから共同訓練の規模、形態、内容等についてお教えいただきたいと思います。
  119. 粟威之

    政府委員(粟威之君) 沖縄の本土復帰以降の在日米軍自衛隊との間の訓練でございますけれども、大変回数が多うございますので、概要だけをちょっと申し上げたいと思います。  まず陸上自衛隊は、沖縄に所在する第三海兵師団との間で昭和五十六年度から毎年、沖縄以外の九州とか本州の演習場で訓練を実施しております。  それから海上自衛隊は、沖縄の米嘉手納基地に所在するP3C対潜哨戒部隊を含む第七艦隊との間で昭和四十八年から毎年対潜特別訓練、それから海上自衛隊演習等を実施しているところでございます。  それから航空自衛隊は、沖縄の米軍の嘉手納基地に所在する第十八航空団を含む在日米軍航空部隊との間で昭和五十四年から戦闘機戦闘訓練でございますとか防空戦闘訓練等を毎年実施しているところでございます。
  120. 照屋寛徳

    照屋寛徳君 陸上自衛隊、海上自衛隊、それから航空自衛隊の訓練の規模、これはどうなっていますか。
  121. 粟威之

    政府委員(粟威之君) 年度によって違いますが、陸上自衛隊で申し上げますと、沖縄の米軍との訓練は年大体二回ほどやっておりまして、一回は秋、一回は冬でございます。年によって違いますが、秋に行うのは片方が大体六百から八百ぐらい、トータル千二、三百から五百ぐらいの規模で訓練をやっております。それから、冬にやりますのは積雪地訓練でございまして、これは比較的人数が少のうございまして、トータルで四、五百ぐらいの規模の訓練でございます。
  122. 照屋寛徳

    照屋寛徳君 後で詳細な資料をいただけますでしょうか。
  123. 粟威之

    政府委員(粟威之君) わかりました。
  124. 照屋寛徳

    照屋寛徳君 それでは次に、沖縄の米軍用地強制使用手続を簡素化するための特別立法の動きがいろいろと報ぜられております。  御承知のように、楚辺通信所、通称象のおりの不法占拠状態は今でも継続をしておりまして、政府が県の収用委員会に求めておりました緊急使用も却下をされておるという事態でございます。このような中で、米軍用地強制使用手続を迅速化、簡素化する、こういう内容で、例えば収用委員会の裁決手続をもっと迅速化を図るんだとか、あるいは代理署名や公告・縦覧手続を簡略化しちゃおう、こういう内容を持った特別立法の複数の試案を防衛施設庁が作成をして連立与党に提示をしたと、こういうことが幾つかの報道機関で報ぜられておりますが、防衛庁長官、いかがでしょうか。そういう事実はあるんでしょうか、ないんでしょうか。
  125. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 先生ただいま御指摘のような報道が先週ございましたことは私どもも承知しておりますが、結論から申し上げまして、このように連立与党に対して私どもが複数の試案を提示したというような事実は全くございません。私の方でも、先週金曜日の記者会見においてこういう点は明確に否定しております。私ども、こういう報道について否定するのと同時に、先週、別の委員会においても国会の中でそういう点は明確に否定しております。  私ども、現在の駐留軍用地の特別措置法に基づいて収用委員会の方に楚辺を含めて審理をお願いしている最中でございまして、現段階でそういうことをまとめて、連立与党の方々にお願いするというような考えは持っておりませんし、政府内でそういう御指示を受けたということもございません。
  126. 照屋寛徳

    照屋寛徳君 施設庁長官、今、来年五月十五日に使用期限の切れる嘉手納飛行場など十三の施設、約三千件の強制使用の裁決手続を収用委員会に申請してございますね。そうすると、政府としては、来年使用期限が切れる嘉手納飛行場など十三施設、三千件の強制使用手続については来年五月十五日までに使用裁決が得られると、こういうふうな見通しを持っていらっしゃるんですか。
  127. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 先生指摘のように、私ども、ことしの三月二十九日に県の収用委員会に対しまして裁決申請書を提出しております。これが六月六日に正式に受理をしていただきまして、六月七日に関係十市町村に対して公告・縦覧の必要性について県の収用委員会の方からお願いが行きましたところでございます。  そういうことで、私ども、現行法令といいますか現行制度に基づきましていろいろ関係の方々にお願いをしておるのと同時に、何とか使用期限内に権原が得られるように今お願いをしておるところでございまして、県の収用委員会の方にも早急な審理をお願いしたいと、このように考えておるところでございます。
  128. 照屋寛徳

    照屋寛徳君 収用委員会における過去の公開審理等の期間に照らすと、私は来年五月十五日の使用期限切れがまた生ずるのは極めて蓋然性が高いんじゃないかというふうに思われるんです。今、施設庁長官がおっしゃっておったような期待をされるのは大いに結構なんですけれども、過去の審理期間等から照らしても、これは私は非常に見通しは難しいと思うんですね。  しかも、今回、当該市町村長で公告・縦覧の拒否をしているのがふえましたね。それから、今のところですと知事も恐らく公告・縦覧の代行に応じないんじゃないか、こういうふうに見通せるわけですが、この事態についてはどう思っていらっしゃるんですか、公告・縦覧の代行については。
  129. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 楚辺の件につきましては、私どもはちょうど二週間前に県知事サイドの方に公告・縦覧の代行のお願いを起業者としてしたところでございますが、ちょうど昨日が二週間でございますが、残念ながら二週間経過した段階で応じていただけないということで、本日、地方自治法の百五十条に基づきます指揮監督という制度がございます。これは主管大臣としての総理大臣からの指揮監督ということで、まあ督促とお考えいただいた方がわかりやすいかと思いますが、そういう手続をきょう、今時分だと思いますか、県の方に私どもの職員からお願いをして、一日も早い公告・縦覧の手続に入っていただきたいということをお願いしたばかりでございます。  そういうことを踏まえまして、今後とも何とか県当局なり関係の方々の御理解を得ながら一日も早い使用権原の取得に全力を挙げて努力したい、このように考えておるところでございます。
  130. 照屋寛徳

    照屋寛徳君 本日、地方自治法に基づいて指揮監督、いわゆる督促状を出されたというのは私もけさ初めて報道で知りました。  ところで、きょう出されたというこの督促状のことなんですか、前回、象のおりの関係で知事が代理署名を拒否したときには督促状は出していないですね。
  131. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 前回の場合は、私どもは県知事サイドから明確に応じないという御回答をいただきました。したがいまして、直ちに次の百五十一条の手続に移行したということで、今回の場合とちょっと前提条件が違っておるということでございます。
  132. 照屋寛徳

    照屋寛徳君 そうすると、今回は知事が必ずしも事前に公告・縦覧の代行を拒否するという姿勢を示していないので、勧告・命令そして提訴という段階以前に督促をして応じてもらおうと、こういうもくろみだというわけですか。
  133. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) さようでございます。
  134. 照屋寛徳

    照屋寛徳君 私は、そのもくろみは外れるんじゃないかというふうに思っております。  ところで、施設庁長官、特別立法の件ですが、正直に述べていただきたいと思うんですが、仮に連立与党に対してまとまった複数の試案を提案していないにしても、施設庁としてはいわゆる特別立法の検討作業、これを進めておるのではありませんか。
  135. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 一般論として、私どもは現行制度に乗っかって制度を運用しておる責任者でございますので、現在の制度について改善すべき点があれば当然ふだんからいろいろ検討しております。  一方、今回の楚辺の事件に関連いたしまして国会の各先生方からいろいろ説明を求められることがございます。そういう際に説明に応じて、私どもは、現行制度はこういう制度になっております、したがいまして今回いろいろ時間がかかっているところは、こういう点に時間がかかりましたとか、問題点といいますか、そういうことについては各連立与党あるいは野党の先生方も含めて御説明はさせていただいているところでございます。
  136. 照屋寛徳

    照屋寛徳君 マスコミで特別立法のかなり詳細な内容が報ぜられるものですから、全くそれがないというのも私どもはおかしいんじゃないかというふうに率直に思うんですがね。  これ以上の議論はちょっと困難のようですので先に進みます。  施設庁長官、普天間飛行場の返還合意の前提になっている新たなヘリポートの建設問題、これが今関係市町村で大変大きな問題になっております。先日の政府と県との協議会でも知事の方から強い申し入れがあったと思いますが、新たに三百ヘクタール、千五百メートル級の滑走路もつくるというふうなことがこれまで言われているわけですね。これについて強い反対があるということをどのように受けとめていらっしゃいますか。
  137. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 今、先生指摘のように、SACOの中間報告で、実際にどこに移転するかという移設先については現段階でまだ固まっておりません。しかしながら、沖縄の県内にございます既存の米軍施設内に移設するという前提で、内容はまだ固まっておらないわけでございますが、種々報道等でいろんな憶測が流れておりまして、それに基づいて沖縄の関係される市町村とかそういうところから私どもの方にいろんな御意見をいただいております。それは私どもとしても御意見の中身はお聞きして、重々承知しているところでございます。  一方、私どもとしては、現段階では、移設先についてこれから米国といろんな意見を交換しながら、あるいは先般設けられました沖縄県も含みますタスクフォースの中でいろんな意見の交換をしながら移設先が固まっていって、それから地元の御協力、御理解を得ながら何とか実現に向けて努力をしたい、このように考えている段階でございまして、地元のいろんな御意見も当然踏まえながら、最終的には結論が出せるといいますか結論を出すべきだというふうに考えているところでございます。
  138. 照屋寛徳

    照屋寛徳君 それでは、ACSAのことについて具体的に二、三お伺いいたします。  第二条第二項で言う後方支援物品役務の中で「空港・港湾業務」というふうにうたわれておりますが、これは具体的にどのような形態を指しておられるのか。付表にも記載がございますが、例えば那覇空港などの民間空港を後方支援に使うことも可能になるのか、使う場合にどういう形態の使い方になるのか、そのことについてお答えいただきたいと思います。
  139. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 今、委員指摘のように、第二条二項に「港湾業務」ということが書いてございますし、付表にもさらにやや細かく書いてございますけれども、この協定で言います空港及び港湾業務と申しますのは、空港及び港湾におきまして航空機船舶に対する人員や貨物の搭乗、積みおろしを行うというようなこと、それから航空機の離発着や船舶の出入港に際して必要な支援を行うことを言うわけでございます。具体的に提供いたします業務の内容といたしましては、航空機船舶に対する人員の乗降や貨物の積みおろし及び航空機の離発着や艦船の出入港の際の支援でございます。  今、委員は空港、港湾の使用のことをおっしゃいましたけれども、この協定自体によって空港とか港湾の一時的な施設・区域としての使用だとかこれらへの出入りを許可するということではございませんで、空港及び港湾の一時的な施設及び区域としての利用、使用、それからこれらへの出入りは地位協定に定められたとおりの手続で行うということでございます。
  140. 照屋寛徳

    照屋寛徳君 その場合に空港あるいは港湾の管理者の許可はどういうふうになりましょうか。
  141. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 今回御審議をお願いしているこの協定によって行われるわけではございませんで、例えば使用の場合ですと、あくまでも地位協定の第二条四(b)に基づいて行うということでございます。  港湾管理者との関係はどうかということでございますが、地位協定の手続をとるに当たってそれなりの手続を国内的にとるようなことになるというふうに考えております。
  142. 照屋寛徳

    照屋寛徳君 ACSAで言う後方支援のことが先ほどから議論されておるんですが、この後方支援というのは日本の領土内に限るのか、それとも公海上まで含めて考えるのか、その点はいかがでしょうか。
  143. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) この協定に基づいて提供されます物品または役務は、先ほど来申し上げておりますように、日米共同訓練国連平和維持活動、または人道的な国際救援活動に必要なものと限られているわけでございますけれども、いずれの場合におきましてもこの協定におきまして特段の地理的な範囲に関する規定を設けてはおりません。公海上におきましても、該当する事柄があればこの協定に基づきます物品または役務提供を行うことは可能でございます。
  144. 照屋寛徳

    照屋寛徳君 ACSAで言う共同訓練の支援と、それから今、日米安保共同宣言を受けて日米間で協議が開始をされております極東など日本周辺有事の際の対米支援、これはどのように違うんでしょうか。
  145. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) この協定によります日米共同訓練に関します物品役務提供といいますものは、我が国自衛隊我が国の防衛という目的達成に必要な戦術技量を向上させることを目的として行われるものでございまして、このような訓練の円滑のために必要と考えられます食料、水、燃料等々、この協定に書かれている物品役務提供に限定するとともに、決済の手続も定めておりまして、提供された物品または役務は返還されるとか、通貨による償還等により決済されることが定められておるわけでございます。  他方、今、委員指摘我が国周辺我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が生じた場合にどういう対米協力のあり方があるかということにつきましては、先ごろの総理の御指示に従いまして、各種の安全保障上の緊急事態において我が国としてとるべき対応策の研究を開始したところでございます。  それでは、いかなる具体的な支援のやり方、対米支援が必要となるかということは、現時点ではまだ明らかにお答えすることは困難でありますけれども内容、態様等においていろんな角度から検討していく必要があろうというふうに考えております。
  146. 照屋寛徳

    照屋寛徳君 終わります。
  147. 川橋幸子

    川橋幸子君 社会民主党の川橋でございます。  提案されておりますACSAについては賛成でございますが、ACSA及び日米協力ガイドライン見直しのほか数点、時間内でお尋ねさせていただきたいと思います。  まず、ACSAでございますが、武器輸出原則によらないという、私にとっては妙な日本語だなと思いますが、よらないが三原則の精神は守るということでございまして、政府のこれまでの基本姿勢は貫かれていると思います。何回も御答弁いただいていて恐縮でございますけれども憲法範囲内で、憲法の解釈は変えないで、当面これまでの政府の基本方針、基本姿勢を守っていくという、その姿勢をまず最初に確認的に御答弁いただければありがたいと思います。
  148. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今回御審議いただいておりますこの協定、それからその他一連の安全保障政策の運営、推進に当たりましても、これはもう当たり前のことでございますが、私ども当然その憲法の枠内でございます。それから、橋本内閣といたしましては、集団自衛権の問題を初めといたしますこれまでの政府の歴代の見解、これを踏襲してまいります。その上に立っての今回の協定であり、またその他の政策でございます。  それから武器原則関係のお話がございましたけれども武器原則等によらないこととする、こういうふうに申しておりますが、これは御承知のとおり三原則の決める武器というのは非常に広い概念でございまして、例えば防毒マスクなんかも武器になっているので、湾岸戦争の際に、一般の方々が危ないのでそれを出したらどうかという話があって、これも三原則に触れるなんという問題があったことは御承知のとおりでございます。  今回も、ACSAでこうやりますと、例えば修理をしますときに、車両の修繕をするときの部品、ボルトとナットなんかもこれはそういうことになる可能性があるということで、今回のこの協定武器原則にはよらないということにしたわけでございますが、他方において、これは国連憲章その他の国際平和のための努力に寄与するものでございますし、また第三国移転については事前同意がない限り行えないというような規定もしておりますし、全体として見まして、今回武器原則等によらないといたしましても、国際紛争を助長することを回避する、これが武器輸出原則等基本理念でございますが、その基本理念はきちんと維持される、このように考えているところでございます。
  149. 川橋幸子

    川橋幸子君 ありがとうございました。  先ほど同僚の照屋委員質問防衛庁長官は、ACSAガイドライン見直しは一体のものではないというような感じの御答弁がございましたが、日米共同宣言、その前にこの委員会でも承認いたしました地位協定、今回のACSA、それからガイドライン見直しと、ポスト冷戦後に日本というものが安全保障に対してどのような役割を持つか。再定義という言葉ともちょっと違う、再確認というものともちょっと違う、日本というものはこれからどういう国にアジア太平洋地域の中でなっていくのか、グローバルの世界の中でなつていくのか、そういう大変大きな節目の時期であるのではないかと、私自身はそのように理解しております。  ところで、秋山局長にお伺いいたしますが、先ほどから何回も既にこの場でも質問が出ておりますが、有事の問題でございます。  有事平時という切り口ではないという外務大臣のお答えもございましたけれども、マスコミ紙上に専ら出てまいりますのは有事の三事態ということで、これはきのうの日経新聞でございますけれども日本本土直接、周辺遠隔という地域的な適用範囲の三事態防衛庁の方では御検討というような記事が出ました。それからけさのNHKでしたか、これは紛争未然防止とか紛争中とか紛争後とかというような感じで、紛争のステージ別に五類型が出たわけでございます。それから、総理から指示されているところの検討事項、四事項と言われますが、邦人救出ですとか難民救済ですとか沿岸警備等四項目、これは紛争が生じた場合に起こるご之が想定される事態の形態別の分類でございます。それから、今回の自衛隊法の改正といいますか、ACSA適用範囲共同訓練PKO救援活動というふうに規定されて、これは結構だと思いますが、これはどういう切り口かといえば、集団的自衛権の行使ができない自衛隊活動の類型のように思います。  ですから、切り口というのは多分幾つか、たくさんあるんだと思います。それを、有事であるとか有事でないとか、この距離はこうである、ここから離れていればこうであるというようなテクニカルな議論をするんじゃなくて、もっと率直にどのような日米協力をやっていくのか、こういう検討が必要なんじゃないかと思います。まだ交渉は始まったばかりとおっしゃいますけれどもアメリカ側の主張がどうで、それから日本側の主張はどうでいらっしゃったのか、どういう方向で検討していくのか、ぜひ明らかにしていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  150. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) ただいま御質問がありましたように、日米防衛協力指針議論するに当たりまして、あるいは総理の指示に基づいて緊急事態対処についての検討をするに当たりまして、委員指摘のようにいろいろな切り口があるというのは、まさに御指摘のとおりだと思いますし、我々もそれを意識しております。  一言申し上げますと、新聞報道防衛庁が方針を固めたといったような一面トップの記事が出たことについては、実は全くそんなことはございませんで、先ほども説明いたしましたとおり、まさに議論が始まったばかりで、今、委員指摘のようにいろんな切り口がある。どういう切り口でやったらこの日米防衛協力指針にとって最もふさわしい検討ができるかということの議論をまさに始めたばかりでございます。  御質問有事という言葉についての議論というものがあったかと思いますが、実は有事という言葉は法令上の用語ではございません。そして、その意味することも必ずしも一義的であるわけでございませんけれども、ただ防衛庁の業務でございます国の防衛に関連いたしまして使用する場合には、我々の意識としては、自衛隊法第七十六条に規定いたしますところの防衛出動が下令されるような事態というものが一つ大きく浮かんでくるわけでございます。  現在の日米防衛協力のための指針、いわゆるガイドラインは一項、二項、三項と分かれておりますが、一項も含めまして、まあ二項が中心でございますけれども我が国が侵略される、攻撃される、あるいはそのおそれがある、そういったような事態中心であるわけでございます。  三項は、現在は極東有事ということで書いてございますけれども、いわゆる極東有事も含めた日本周辺有事といったようなことを考えてみますと、その意味内容を明確にお答えするのは現在のところまだなかなか頭の整理ができておりません。日米安保共同宣言では「日本周辺地域において発生しうる事態日本の平和と安全に重要な影響を与える場合における日米間の協力に関する研究」ということで、こういった形で、どういう切り口でやったらいいのかということをまさにこれから議論していきたいと思います。  実は、昨年十一月に決定いたしました新防衛大綱におきましてもほぼ同じような表現で、日本周辺地域における我が国安全保障に重要な影響を与える事態、これに適切に対応しなければならないといったような記述がございますので、その考え方に沿って、今御指摘のようないろいろな切り口で、どういう切り口が最もこの日米間の防衛協力にとって頭の整理になるのかということをまさにこれから協議してまいりたい、そういう段階でございます。
  151. 川橋幸子

    川橋幸子君 先ほどお話しになりましたナイ教授でございますが、読売新聞と日経新聞が私の手元にありまして、見ております。ナイ教授は、やはり日本に対する理解が非常にある方でいらっしゃるわけですね。私の目に印象的に映るのは、憲法範囲内でできることを明確にしておくべきだと、そういうことをこの二つの新聞、マスコミの中でも一問一答の答えの形で出てきているわけでございます。  日本の価値観というのは主張すれば相手もわかる、憲法については向こうも既にわかっておられるということだとしますと、先ほど外務大臣の御答弁にもありましたように、ぜひ憲法の枠内ということをしっかりと踏まえて交渉していただきたいのと、検討切り口をやはりその都度その都度節目で発表できる時期において明らかにして、国民的な議論を巻き起こすようにしていただきたいと思いますが、この点いかがでしょうか。
  152. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 新聞報道あるいはマスコミの報道にもありますように、今、日米間で議論が始まったばかりでございまして、非公式意見ということで報道されたりしておりますが、我々といたしましても、日米間で議論をし、また政府部内でも、これは関係するところが非常に多うございます、防衛庁の中も多いわけでございまして、今、委員がおっしゃられた点につきまして十分意識してこれからやってまいりたいと考えております。
  153. 川橋幸子

    川橋幸子君 ありがとうございました。  マスコミに非常に早目早目に出るのは、記者の方々も本当に机の上の資料も取材精神旺盛に見ておられるのかもわかりませんが、こうたびだびさまざまなことが出てまいりますと、何となく政府とマスメディアの癒着というんでしょうか、なし崩し的に何か世論操作をなさるのではないかという警戒心が逆に国民の方には出てくるわけでございます。  はっきり切り口を示して国民の選択を問う、そういうことをしていただくのが近代国家なわけでございまして、ぜひそのようにお願いしたい。もしそうした国民の選択がまだ求められないという状況だとすると、日本もミャンマーの状況とそう変わらないのではないか。軍事政権SLORCは、自国の民主化の程度はまだこの程度なのでというような感じと同じような姿で日本の姿が見えてしまう、そういう危険があるかと思います。
  154. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 一言お答えさせていただきたいと思いますのは、日米防衛協力にいたしましても、我が国周辺における我が国安全保障にかかわる緊急事態の問題にいたしましても、あるいは危機管理の問題にいたしましても、少なくとも私は、こういったことがマスメディアを通じていろいろ議論をされるということは大変好ましい、そういう時期に来ているのではないかというふうに思っておりますが、今お話がありましたように、マスメディアの報道によりまして、ほとんど方針も決めていないことが何か決まったかのごとく一面トップで報道されることについて、私も非常に遺憾に思っております。  マスメディアとの関係について、もちろん我々は重々注意してまいりたいと思いますけれども、そういったことが議論されることはいいと思っておりますが、決まっていないことが決まったかのごとく報道されることについては、いささか私は遺憾に思っております。
  155. 川橋幸子

    川橋幸子君 時間が短うございますので、通告したものは大体この場で出尽くしておりますので、ここで少し飛ばさせていただきます。  中国の核実験の問題と円借款の問題について、外務大臣外務省対応を私は評価いたしますけれども、一方的にちょっと言わせていただきます。  封じ込めないようにする、国際社会の中に出てくるようにするという、これは大変グッドでございますけれども、だから円借を凍結ないしは見直すことはしないというのは、極めて日本的な和の精神であって、こうしたメッセージは相手にそう伝わるものではないというような感じを私は持っておりますことをお伝えさせていただきます。  北朝鮮の支援の問題につきましても、先ほど、弱いがゆえに強がるという、こういうお話が野沢先生の方から紹介されまして、私も戦時中の日本人の精神構造から考えてもよくわかる気がいたします。  韓国、アメリカと協議をしながら、どういう援助をどの程度するかということをそういう交渉の中でおやりになることは当然かと思いますけれども、何となくお祭りの寄附のように、あの国が幾ら、この国が幾らだとつかんでからやるというような感じに見てとれるのは、これはまた私の偏見でございましょうか。やはり国際アピールがあった場合の対応というものは少し早目に言っていただいた方がよろしいような気がいたします。  最後に。間もなくリヨン・サミットが始まりまして、総理、外務大臣はリヨンにおいでになられると思います。このところ日本はアジア諸国の代弁をするというんでしょうか、これも新聞報道によりますと、固まった経済宣言の案の中では、フランス等は、経済のグローバル化というのは先進国から雇用の機会を奪って、川上というのか川下ですかね、ちょっと上下忘れましたけれども、そういう就業の機会を奪ってしまうと。逆に、それは経済原則として当然かもわかりませんが、途上国において公正な労働基準が守られていないという、非常にアンフェアなことも引き起こすというような感じの先進国の主張があるというような紹介記事がございました。  私は、その際、日本はアジア諸国を代弁するというよりも、日本自身の哲学をぜひ主張していただきたいと思うわけでございます。どこかの国のためというのは、ある種の思い上がりというんでしょうか、日本自身も今労働時間の短縮について非常に不況下にあるからというような産業界の声もございます。先日来、人権の問題ですとかそういう人の問題のことをこの場で御要望させていただきましたけれども日本自身がそういうフェアなスタンダードを守るという、そういう立場を御主張いただけないものかと思いますが、いかがなものでございましょうか。
  156. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) リヨン・サミットでどういうふうな審議がなされ、それからどういうふうなまとめになるか、これは文字どおり首脳間の話し合いで決まることでございますから、今の段階でこれということは申し上げられないわけでございます。しかし、そういう中で確実に議論されるであろうという点は、ただいま委員も御指摘になりました経済のグローバル化がどんどん進んでおります。それが一体どういうふうな影響をもたらすであろうか、またそれに対してどういうふうに対応すべきであろうか、こういったところは大きな議論になろうかと考える次第でございます。  これまでも国際的ないろんな場におきましてその問題が議論になっております。先般行われましたOECDの閣僚理事会でもこの問題が議論になりまして、そこでも今御指摘のございましたように、グローバル化がいわゆる先進工業国において雇用の機会を奪うとか、日本なんかでも産業の空洞化なんという言い方をしますが、そういうふうなマイナス面に着目した議論もあったのは事実でございます。  それに対して私もOECDの場でも発言しておいたのでございますけれども、しかし経済のグローバル化というのは不可逆反応であり、確実にもう進んでいくんだ、そうしてこれはマイナス面だけじゃなくて肯定面、プラス面もよく着目していかなくちゃいけない。全体として見れば貿易や投資がずっと拡大していくし、新規の雇用も創出されていくじゃないか。そういったところにもよく着目して、世界全体の成長の原動力になるものとしてこのグローバリゼーションをとらえるべきじゃないかということを主張してきたわけでございます。そういったことをそうした視点からこれからもいろいろお話をしてまいりたいと思います。  それから、アジアの諸国の言い分を代弁するだけではございません。私ども関係の深い国々のそういう事情というものもよく踏まえながら、世界経済全体の中にそういった事情、またそういった国々の御意見というものも反映させるべきじゃないかという観点からやってまいりますし、あくまで御指摘のとおり日本自身として世界経済あるいは世界はこれからいかにあるべきかということを考えながらそれに取り組んでまいる所存でございます。
  157. 川橋幸子

    川橋幸子君 ありがとうございました。
  158. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時二十四分散会      —————・—————