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1996-04-11 第136回国会 参議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年四月十一日(木曜日)    午前十時開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         木庭健太郎君     理 事                 笠原 潤一君                 野沢 太三君                 寺澤 芳男君                 川橋 幸子君     委 員                 岩崎 純三君                 大木  浩君                 武見 敬三君                 成瀬 守重君                 宮澤  弘君                 田村 秀昭君                 高野 博師君                 畑   恵君                 照屋 寛徳君                 立木  洋君                 武田邦太郎君                 椎名 素夫君                 佐藤 道夫君                 矢田部 理君     国務大臣         外 務 大 臣 池田 行彦君     政府委員         内閣法制局長官 大森 政輔君         防衛施設庁長官 諸冨 増夫君         防衛施設庁施設         部長      小澤  毅君         防衛施設庁建設         部長      田中 幹雄君         法務大臣官房審         議官      山崎  潮君         外務大臣官房長 原口 幸市君         外務省アジア局         長       加藤 良三君         外務省北米局長 折田 正樹君         外務省経済局長 野上 義二君         外務省条約局長 林   暘君         食糧庁次長   阿部  修君     事務局側         常任委員会専門         員       大島 弘輔君     説明員         警察庁刑事局捜         査第二課長   栗本 英雄君         警察庁警備局外         事課長     米村 敏朗君         防衛施設庁総務         部総務課長   野津 研二君         防衛施設庁施設         部施設取得第一         課長      小竹 秀雄君         文化庁文化財保         護部記念物課長 山中 伸一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協  定の譲許表第三十八表(日本国譲許表)の修  正及び訂正に関する確認書締結について承認  を求めるの件(内閣提出) ○インド洋まぐろ類委員会設置に関する協定の  締結について承認を求めるの件(内閣提出)     —————————————
  2. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定譲許表第三十八表(日本国譲許表)の修正及び訂正に関する確認書締結について承認を求めるの件、インド洋まぐろ類委員会設置に関する協定締結について承認を求めるの件、以上二件を便宜一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 笠原潤一

    笠原潤一君 自民党笠原潤一であります。お許しをいただきましたので質問をしたいと思います。  まず、インド洋マグロの問題につきましては、非常に時宜を得たものでありまして、既にもう十カ国が、韓国も加盟されたということでありますから自動的に協定発効に相なっておると思うんです。インド洋マグロ漁業については、魚族の保存ももちろん大事でしょうし、乱獲の傾向も今非常に多くなっておるので、我が国としても安定的にこの漁獲ができるようなことが一番望ましいと思っております。我が国としても一刻も早く協定締結できるようにと、こういうふうに私は思っておりますので、この問題は賛成をいたしたいと思います。  それから、実は北朝鮮状況でありますが、北朝鮮情勢について外務省の方は一体どういうふうに把握しておられるか。  御承知のように、板門店をめぐる北朝鮮動向については、今非常に憂慮されておる問題があるわけです。本来であれば、重装備の兵士がこの中立地帯において腕章とかその他をつけて、そして当然の行為を行わなければならぬというのにもかかわらず、そういうことが行われていない。さらに非常に蠢動している動きもあるということであります。この問題について外務大臣からお伺いをしたいと思います。
  4. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 北朝鮮情勢につきましては、笠原委員指摘のとおり北朝鮮側休戦協定義務を遵守しないと、こういう状態になっております。そして、言葉の上だけではなくて現実協定を遵守しない形で繰り返し軍をDMZの中に入れておる、こういった事態はまことに遺憾なことでございます。我々といたしましては、北朝鮮がこの休戦協定を遵守する、こういった状態に一日も一刻も早く立ち戻ることを強く求めたい、こう考えている次第でございます。  この行動意図するところについてはいろんな見方がございます。国内的な引き締めではないかという見方もございますし、また対外的にいろいろな影響を及ぼすあるいは効果をもたらすことを期待して、そういった中でもとりわけ米国北朝鮮との間での新たなる平和協定あるいはそれに先立つ暫定協定の交渉の場に引き出そう、そういったことが主な意図ではないかと、こういう見方があるわけでございます。  いずれにしましても、そのような意図が今回のような姿勢あるいは行動を通じて実現されるものではないということを北朝鮮にもよく理解せしめることが必要なのではないかと、こういうふうに考えている次第でございます。
  5. 笠原潤一

    笠原潤一君 今、外務大臣から御答弁をいただきましたが、実は私は一九七五年に、当時、自民党青年局浜田幸一団長中心にして前建設大臣森喜朗さんと一緒に韓国台湾へ行ったわけです。  そのときに板門店へ行きまして、当時は、特別の許可があれば板門店の中へみんな入れたわけです。私も入りました。この三十八度線の境界を挟んで、国連旗中心にして両方の代表が並ぶいすがありました。びろうな話ですが、たまたま私はちょっとトイレへ行きたくなって行きまして、向こう側へ行っちゃったんです。後ろまで行ったんだけれども、別にそんなにとがめも受けず、例のあの建物の近くまで行って、やあやあということで北朝鮮兵士とも話をした。片方では私がいないものですからみんなびっくりしたんですがね。その後すぐこの板門店に入ることは閉ざされてしまったんです。  そういうことがありましたが、今回の休戦協定に違反した北朝鮮動向について非常に心配しています。我が方としても御承知のように米の支援もしているわけですから、両方に対して不測事態が起こらないようなことを、外務省としても外務大臣としても、特に国交はありませんけれども北朝鮮側に対して何らかのサジェスチョンをしていただくことが一番大事ではなかろうかと思いますので、その点についていま一度お尋ねをしたいと思います。
  6. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもといたしましては、委員も御指摘のように、今、北朝鮮との間に外交関係がございませんので直接的に当方の意向を伝えるあるいは何らかの影響を与えるということは非常に難しい立場にございますけれども、こういった国会審議の場あるいはその他の場を通じまして我が国としての考え立場というものを明確に内外に表明していくということがまず必要ではないかと、こう考えております。  先ほども申しましたように、私どもは、一刻も早く休戦協定を遵守するという状態北朝鮮は復すると、当面そのことを期待しておりますし、それから長期的にはやはり南北対話中心とするいろいろな努力を通じて朝鮮半島の安定がもたらされることを期待したい、こう思っております。
  7. 笠原潤一

    笠原潤一君 それでは、最近非常に重大な問題として世界経済に大恐慌を与えるような問題で、よど号ハイジャック田中義三容疑者タイ国で逮捕された。それはにせ米ドルを持っておったということであります。伝えられるところによりますと七百億ドルくらい世界の中でばらまかれたということでありまして、これは大変な問題であります。  七百億ドルといいますと、外貨保有高世界第一位は日本です、第二位は台湾ですけれども台湾が七百億ドルぐらいですから、世界の中でそれだけのにせドルがあちこちで使用されたということになりますと、本当にこれはもう世界経済というのは一体どうなっていくかということと同時に、紙幣に対する信用、特に米ドルというのは世界のいわゆる基軸通貨ですから、ローカルカレンシーじゃありませんから、そういう点で大変心配をしておるわけです。  さらに、情報によりますと我が国の中にも持ち込まれているということでありますが、一体この点についてはどうなっておるのか。この点についてお尋ねしたいと思います。
  8. 栗本英雄

    説明員栗本英雄君) お答えをいたします。  国内発見されております偽造米ドル紙幣につきましては、すべてが具体的にどこで偽造されたかということにつきましては必ずしも十分な解明に至っておるわけではございません。そういう中で、過去三年間の国内におきます偽造米ドル紙幣発見状況について御説明をいたします。  百ドル紙幣以外も含めまして、国内では平成五年に四百五十五枚、平成六年に三百八十枚、平成七年に五百一枚の発見を見ております。これらのうちで特に極めて精巧な偽造百ドル紙幣につきまして、平成五年に約九十枚、平成六年及び平成七年におきましては約百五十枚が発見されておるわけでございます。  警察といたしましては、通貨偽造事件国内外に流通しております通貨信頼性に極めて影響を与えるというように認識をいたしまして、現在鋭意捜査中でございます。
  9. 笠原潤一

    笠原潤一君 この問題ですが、今警察庁からお話がありましたが、実はこのにせ米ドルは巧妙といいますか、すばらしい技術です。私も世界各国を歩いておりまして、紙幣の持つ精巧さというかすばらしさは何といっても日本が一番だと思うんです。紙幣も透かしが入っている。印刷技術は特に飛び抜けておりまして、聞くところによると日本の一万円札は表十色、裏が五色です。五千円札は表九色、裏が四色ということでして、十五色を重ねてやる印刷技術ですからすばらしいものなんです。聞きますと、大蔵省は、印刷局の中でインキも自分で、それは市販のインキを買ってこられると思うんですけれども、そのインキについても独特のインキを開発されておるということであります。  何といってもグリーンバックの名で呼ばれる米ドル、それからドイツ紙幣、あとの紙幣各国から怒られるかもわかりませんが、本当に精巧ですばらしいなという紙幣はそういう意味で言えば日本米国ドイツぐらいで、本当に数限られていると思うんです。  その米ドルと寸分違わない技術というのは、普通とても北朝鮮の中で印刷できるようなものじゃない。北朝鮮で印刷されたかどうかよくわからない、特定できませんが、これは相当巧緻な、精巧なことがしてある。一説にはこの印刷機械北朝鮮で刷っているという話もありますし、印刷機械がどこからか搬入されたという話もあります。また同時に、インキ調合技術といいますか、そういうものがとても他に類を見ないほどすばらしい。  この点について非常に憂慮されておりますが、いわゆる追跡調査というか、これは日本だけではできません、何といってもインターポールもあるでしょう、それから各国が協力しながら、もちろん米国連邦捜査局もそれはみんな動くと思いますが、我が国としても安閑としておられません。そういう国際協力で、それがどこでつくられ、どこではらまかれて、どうされたかということを早くつかむ必要があると思いますが、その点についていま一度お尋ねしたいと思うんです。
  10. 栗本英雄

    説明員栗本英雄君) 先ほど申し上げました国内発見されました百ドルの偽造紙幣につきましては、これまでのところ、どこで偽造されたかというような点についてはまだ十分な解明に至っておりません。外国通貨でございますので、もちろん先生御指摘のように必要に応じまして外国捜査機関との必要な捜査協力を現在も行っているところでございます。
  11. 笠原潤一

    笠原潤一君 一刻も早くその点は国際的な問題として解明をしていただきたいと、こういうふうに思っております。  続きまして中台関係ですが、御承知のように李登輝総統が三月二十三日に当選をされました。それに至る中台関係、特に中国ミサイルを発射したこの驚異的な事件について、ひとしく皆憂慮しておりましたし、橋本内閣総理大臣におかれても、事そのものについて大変に憂慮され、新聞紙上で御本人もおっしゃっていましたが眠れぬ日々が続いたと。それは当然のことでしょう。  そこで心配されるのは、あのミサイル与那国島海域から六十キロのところへ向けて発射されたんですが、もし仮に当時そこを航行している船舶あるいは漁船等不測事態が起きたときは一体どうなったか。特に我が国船舶の場合だったらどうしたか。あるいは、精度はそんなにいいという話ではありませんから、もし曲がって間違って仮に与那国島へでもこれを撃ち込まれたということになりましたら、これは大変なことになるんですよ。幸いそういうことはなかったのでよかったけれども、もしもあった場合はこれは憂慮すべき事件です。憂慮ぐらいじゃ済みません、日本の国では一体こういう問題についてどう対応できたのか。その非常時といいますか有事に対してどんな考えを当時は外務省として持っておられたのか、ひとつお尋ねをしたいと思うんです。
  12. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 先般の中国の大規模な軍事演習、とりわけ与那国島の近く六十キロのところでございますが、その海域ミサイル着弾海域が設定をされる、こういう状態で、私どもも非常に心配をいたしました。その節には、委員も今御指摘のような不測事態も起きてはいけないということで、中国側に対しましても我が方の関心のあるところ、また心配しているところを伝えまして、中国側の適切な対応を求めたところでございます。  いろいろございましたけれども演習は終わりまして、全体としましてはあの時期に極度に高まりました緊張が和らぐ方向に向かいつつあるかなと思いますけれども、さらにその当事者の間での平和的な話し合いの道が開け、あの地域がずっと安定することを期待したいと、こう思っているところでございます。  今、委員質問の、もし不測事態が起こっておったら我が国としてはどういうふうに対応するつもりであったのかという点でございますが、これは委員も御理解いただけると思うのでございますが、そういった仮定の問題につきましてこういった公式の場で日本外交を預かる私の立場からお答えを申し上げるのは必ずしも適切でないという点についてはどうか御理解をちょうだいできればと存ずる次第でございます。
  13. 笠原潤一

    笠原潤一君 それはもちろん当然了解いたしますが、そういうことを日本国民がひとしく憂いておったことは事実であります。それについて外務省として公式の場で述べるというのは大変至難というよりも求めるわけにもいきませんけれども国民はそう思ったと思うんです。そういう点で、今後有事の場合には大変な状況に相なるということは恐らく外務省も御認識されたと思うし、総理もそう思われたと思うんです。ですから、将来の問題として我々は有事に対する問題も真剣に考えなきゃならぬではないかと、こういうふうに思うわけです。  それから、楚辺通信所のいわゆる知花昌一さんの土地賃貸借について、御承知のように三月三十一日をもって切れたわけです。国内法上は賃貸借契約は切れたんですが、しかし非常にいろんな難しい問題があります。日米安保条約によって基地を提供する義務を負っているわけですが、政府としては一体この問題について今後どう対応されていくのか、今ひとしく皆さん方もこの点について大変いろいろ心配しておるわけです。ですから、クリントン大統領がお見えになる前にある意味での解決と言うとおかしいですけれども、やっぱり何か一つのそういうものを示しておかなければならぬ時期に来ていると思いますが、その点についてお尋ねをしたいと思うんです。
  14. 野津研二

    説明員野津研二君) 御説明させていただきます。  ただいま御指摘いただきました楚辺通信所の問題でございますけれども、その一部の土地につきまして賃貸借契約に基づく使用権原が三月三十一日に切れたわけでございます。同日までに引き続き使用する権原が得られていないという状況になって、まことに残念な状態になっておるわけでございます。しかしながら、政府といたしましては、日米安保条約及び地位協定に基づきまして米側に提供する義務を負っているということでございまして、その占有を継続しているという状況でございます。  この間の法的な問題については、官房長官談話あるいは国会審議のいろんな場で政府の見解も御説明しているところではございますが、いずれにいたしましてもできるだけ早期に使用権限を取得できるように、今、沖縄県の収用委員会の方に手続をとっておるところでございまして、この手続が早急に終了してきちっとした権原が得られるように最大限努力してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  15. 笠原潤一

    笠原潤一君 時間が参りましたので、一刻も早く解決されるよう心から望んでおります。  以上をもちまして私の質問を終わります。
  16. 武見敬三

    武見敬三君 インド洋まぐろに関する協定及びWTOの確認書については、いずれも内容的に問題はなく、これは支持を表明しておきたいと思います。  そこで、日米首脳会談における主要なテーマと思われる日米安保に関連した質問をさせていただきたいと思います。  間もなく行われる日米首脳会談目的でございますが、その目的一つというのは、冷戦が終わった後にその役割国民レベルであいまいになってしまって、しかも沖縄における少女暴行事件という極めて不幸な事件をきっかけとして拡大をした沖縄のいわゆる基地問題、こうしたことで脆弱になってしまった日米安保体制国内支持基盤というものを再強化するということが来るべき日米首脳会談目的一つであろうと考えるわけでありますが、外務大臣はこの点いかがお考えでありましょうか。
  17. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今回のクリントン大統領訪日の際に行われます首脳会談におきましては、これまで日米間において非常に広い分野、それはもう政治、安全保障経済あるいは文化等という問題について非常に幅の広い交流の実績がございます。そういったものを踏まえまして、最高レベルにおきましてきちんと将来に向かっての友好関係の増進というものを進めていくといった姿勢を打ち出す、こういうことでございます。その中で、武見委員指摘のように、やはり大きく変わりました世界情勢、とりわけ我が国を取り巻く地域情勢の中においても日米安保体制というものは不可欠であるんだと、こういうことをきちんと確認してそれを内外に宣明していくと、これが今回の首脳会談の非常に大きな意義であると、このように考えている次第でございます。
  18. 武見敬三

    武見敬三君 そこで、特に内外の内についてわかりやすく、特に国民に対し日米安保体制の今日的意義役割について説明をしなければいけないんだろうと、こういうふうに考えるわけであります。このわかりやすく説明するという観点から御質問を続けさせていただきたいわけであります。  このいわゆる日米安保体制という言葉の使い方ですが、新聞報道などによりますと、これを再確認するという言葉が使われたり、あるいは再定義するという言葉が使われたり、その辺が非常にあいまいになっているように思われます。日米安保条約の再確認ということであればこれはすぐに理解ができるわけでありますが、日米安保体制をわかりやすく説明するとすればどういう説明の仕方があり得るのでありましょうか。
  19. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 再定義とか再評価とか再確認とかいろいろ言われているようでございますけれども、私どもといたしましては、例えば再定義という言い方は政府としましては使っていないところでございます。  今、委員指摘のように、日米安全保障条約はこれまでもずっと我が国の安全を守る上で、そしてまた極東地域の安定と平和を確保するために役割を果たしてきたわけでございます。この条約はこれからもこれまでの姿のままでずっと維持していく、こういうことを中心にしているわけでございます。  冷戦が終わりまして国際情勢も随分変わりました。変わりましたけれども我が国自身の安全を守っていく、平和を守っていくということを考えた場合には、この日米安全保障条約で定められている米国との協力関係というのが我が国の自衛隊と並んで我が国の安全を守る上での二本柱である、こういうことは依然としてあるんだということを事実として申し上げると。  それと同時に、そのような日米の揺るぎない体制があるということ、そうしてそれがさらに極東地域の平和を守っていく上でもきちんとした役割を果たすことが利益であるということが広くアジア太平洋の国々にもいわば安心感と申しましょうか、日本中心とするこの地域がそういうふうに安全と平和を保障される仕組みになっているということがさらに広い地域に好ましい影響を与えていく、こういうことになっておるんだと、こういうふうに考えております。そういったことを今回の首脳会談でもいわば確認しようと、こういうふうに考えているところでございます。
  20. 武見敬三

    武見敬三君 そういたしますと、日米政府の間でこの日米安保体制という言葉についての明確な定義というのは行っておられるのでしょうか。
  21. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 日米安保体制という言葉について明確な定義を合意したとかなんとかという話ではございません。日米安保条約そのもの条約として存在し、それを政治的な基盤として日米協力が進んでいるということだと思います。
  22. 武見敬三

    武見敬三君 ただ、現実報道を通じて国民理解をしているこの日米安保体制という言葉、その意味がもう少し明確にわかりやすく知らされなければ、冷戦後の日米実質同盟関係というものの継続的な意義役割をきちんと説明することはやはりなかなか難しいのではないかという気が私はし、若干憂慮している点がこれでございます。  ちなみに、この日米安保体制という言葉英語では通常どういうふうに使っておられますか。
  23. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 今、日米の間で文書で詰めを行っておりますけれども、そこで特に日米安保体制ということで議論しているということではございませんので、どういう英語といっても今の段階ではなかなか申し上げられないわけであります。一般的に申しますと、例えばジャパンUS・セキュリティー・アレンジメンツとか、そういうような言葉はあり得ると思います。
  24. 武見敬三

    武見敬三君 ジャパンUS・セキュリティー・アレンジメントという言葉日米安保体制という、通常ども理解している言葉意味と同じであるかどうか。やはりこうした点についてのきちんとした説明がないと、日米安保体制という言葉報道を通じてどうもひとり歩きをしておりまして、国民にある明確な理解を与えるときに何か不自然な感じがいたしますので、ぜひこの点は今回の首脳会談等を通じまして明確に国民にきちんとしたメッセージが伝わるよう御努力をお願いしたいと思うわけであります。
  25. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) ちょっと誤解があると申しわけないんですが、もう一度申し上げさせていただきますと、日米安保体制と普通言われますのは日米安保条約基盤とする日米協力関係と言ったらよろしいのかと思います。それが日米協力関係の政治的な基盤をなしており、またアジア太平洋地域の平和と繁栄にとって極めて重要な役割を果たしているということだろうと思います。
  26. 武見敬三

    武見敬三君 日米安保条約基盤とした日米両国間の協力関係ということであるというお話でありますが、こういう日米安保体制という言葉が使われながら、そのいわば意味意義という点で、特にアジア太平洋地域の平和と安定に貢献するんだという言い回しがついてくるときに、私自身は、こうした論理というものは単なる以前の日米安全保障条約の再確認という枠組みとちょっと異なる新しい意義意味を持ってきているように思われるわけであります。この点、日米安保体制の再確認という言い方よりも再定義という言い方の方がやはり事実に即するような印象を受けるわけでありますが、この点はいかがでございましょうか。
  27. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 日米安保の再定義ということになりますと、あたかも日米安保条約そのものを改定ないし変更するかのようなニュアンスが出てくるんだろうと思うんです。我々が今いたしておりますのは、日米安保条約の仕組みそのものに手をつけるという話ではないものですから再定義という言葉は使っておらないということでございます。
  28. 武見敬三

    武見敬三君 例えば池田外務大臣の御発言の中で、特に日米安保条約についても、冷戦終結後、第五条のいわゆる日本防衛から第六条の極東条項にそのウエートが移行しつつあるんだという御発言があったやに報道を通じて聞いているわけでありますが、そうしたいわばウエートの移行といったようなことが、ひいては日米安保条約を通じて組み立てられている日米協力関係というものの持つ意義役割全体を新たに意義づける必要性をつくり出すというふうに解釈をした場合には、日米安保条約そのものは再確認であっても、それをより広く体制という言葉で議論をしたときには再定義という言葉で議論をした方が適切ではないかという印象を私は今のところ受けております。  次に御質問させていただきたいことは、さきの銭其シン外務大臣日本訪問によってこの日米安保体制といったものとこれからの日中関係というものを調整していくことが極めて微妙かつ重要な外交課題になったなということでございます。このいわば調整すべき点というのは二つの側面から成り立っているように思われます。その第一は台湾問題から派生する側面であり、第二の側面というのは中国をいわば敵視するような、中国脅威論に基づく中国封じ込めに対する中国政府の警戒心という側面ではないかというふうに思うわけであります。  そこで、先に台湾問題から派生する問題点という観点から御質問をさせていただきたいわけでありますが、銭其シン外務大臣池田外務大臣との会談の中で日米安保条約が日中の健全な関係進展に矛盾しないことを望むというふうに発言をしたと伺っております。この意味するところはどうやら日米安保条約の第六条、極東条項に基づく極東の範囲に台湾を含んでいるということから生ずるこのような発言であったというふうに理解をするわけでありますが、実際にこうした問題が生じた場合、我が国としてはこの極東条項の対象範囲から台湾を外す考えはおありでありましょうか。
  29. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 先般の銭其シン中国外務大臣と私との会談におきまして、中国の側から、日米安保条約のあり方というものが日中関係に何らかの影響を与えることがないように、矛盾することのないようにといった発言があったことは事実でございます。それは今、委員指摘のように、具体的に台湾の問題をめぐって、それとの絡みにおいてそういう御発言があったのかどうか、そこの点は必ずしも明確ではございませんけれども、私の受け取りました感じではそこまで明確にリンクをしているという感じはございませんでした。  むしろ、委員が後におっしゃいました方でございますね、これは日本があるいは米国がということじゃございませんけれども、世間でいろいろな言説がなされておる中にはいろいろな力関係の変化に応じてこういうことがあり得るのじゃないかというような見解なども幾つか見られるのは事実でございますから、そんなことを頭に描きながらこういう発言があったのかなと、こんな印象でございました。  それに対して私の方からは、いや、これは基本的に、日本はもとよりでございますけれども米国中国アジア太平洋地域において建設的なパートナーとしての役割を果たしていく、そういう状態を期待しておるわけでございますので、この日米安保条約のあり方というものが日中関係に何らかの好ましからざる影響を与えるのじゃないか、矛盾する可能性があるのじゃないかという御心配には及ばないということをいろいろ申し上げておいた次第でございます。  それと同時に、昨今の中国のいろいろな動きというものが日本を含めた国際社会全体としてやはり大きな関心を持たざるを得ないということも指摘し、台湾問題の関係で言えば、過去比較的長きにわたりまして両当事者の非常に自重した姿勢というものがあの地域の安定をもたらし、それが国際社会、とりわけアジア太平洋地域全体の安定に資してきた、プラスに作用してきたということを私の方から指摘しまして、裏返して言えばそういうことでございますからということも申し上げたと、こういうことでございますので、今直ちに極東地域の範囲を云々ということに結びつくような会談ではございませんでしたし、私どもも今そういうことは考えていないところでございます。
  30. 武見敬三

    武見敬三君 そういたしますと、極東条項の対象地域から台湾を外す考えはないというふうに理解させていただいていいというわけでございますね。
  31. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) そのことは昨年の暮れに、前内閣のときでございますけれども、新防衛計画の大綱、十九年ぶりにつくられましたが、その際に発出されました官房長官談話で、そういったことも含めましてこれまでの歴代の政府として積み上げてきました解釈については変えるものではないということが明らかにされておりますし、現在の橋本内閣におきましても、そういったものも含めまして基本的に前内閣の方針を引き継ぐということを最初の閣議において確認しておるところでございます。
  32. 武見敬三

    武見敬三君 実際に台湾を極東条項の対象地域から外さないという考え方を堅持する場合には、中台両当事者が武力を行使せずに、または米国中台両当事者間に発生した紛争に軍事的に介入しないということを前提としない限りにおいては、日米安保条約と日中関係というものはやはり常に潜在的に緊張をはらまざるを得ないということになりかねないわけであります。  しかも、実際に中国政府台湾独立を阻止するために軍事演習台湾海峡において行うなど軍事的な緊張が高まりますと、また米国政府が戦略的なあいまい性というものを残しつつもこうした空母二隻を中心とする二つの機動部隊を台湾近海に派遣するといったようなことなどが起きてまいりますと、日米安保条約と日中関係との矛盾がこうした台湾の問題を通じて顕在化してくるという状況がどうしても出てくるわけであります。こうした状況我が国が誠意を持って中国側に対して外交的に対処をし、いかにして顕在化を阻止するかということは、常に極めて重要な課題としてこれから私どもは抱え込むことになりましたので、その点どうかいろいろ御配慮をいただきたいと思うわけであります。  なお、時間がなくなりましたが、この二つ目の側面、すなわち中国脅威論に基づく中国封じ込めに対する中国政府の警戒心という点に関しましては、これは日本中国との両政府間の安全保障対話というものをより充実させていくということ、そしてさらにはこの二国間の安保対話に加えて、日米中三カ国の安全保障対話といったようなものが組み合わされることによってこうしたいわば中国政府の不要な警戒心というものを解消し、相互の理解を深めていくことができるだろうと考えるわけでありますが、こうした考え方について最後にコメントをしていただければ幸いであります。
  33. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) おっしゃるとおりでございまして、このアジア太平洋地域の安定を守っていくためには関係諸国、とりわけ今御指摘のように中国我が国、そしてまた米国との間で絶え間のない対話、あるいは安全保障面での交流も含めまして信頼関係を醸成していくことが非常に肝要だと思っております。政府としてもそのような努力を今後とも続けてまいりたいと、こう考えております。
  34. 武見敬三

    武見敬三君 以上です。
  35. 高野博師

    ○高野博師君 二つの案件に関してですが、まずインド洋まぐろ類委員会設置に関する協定、これはマグロ類資源の安定的な確保、供給という観点からも一つの国際的な枠組みをつくるという点では有意義であろうと思います。これは賛成いたします。  それからもう一つのWTO関連の譲許表の修正及び訂正に関する確認書、これもかなり技術的な面がありますけれども、税関手続の円滑化を図るという観点からこれも有意義であろうと思います。特に問題はありません。賛成でございます。  それでは、別な話題について御質問いたします。  去る四日に北朝鮮板門店の非武装地帯の維持任務を放棄すると宣言して数日間にわたって共同警備区域に侵入した。この北朝鮮側の動きを政府としてはどのようにとらえておられるのでしょうか。
  36. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 北朝鮮はかねてからDMZの地域に地上兵力の三分の二程度を展開する、そしてまた即応態勢をとっている、こういう状況であったわけでございます。そして、この朝鮮半島の安定を大切にするという観点からこれは重大な関心を持って注視しなくちゃいけないという情勢であったわけでございます。そういった基本的な状況の上に立って、最近になりましていろいろな動きが伝わってまいりました。  具体的には、三月二十九日に金光鎮人民武力部の第一副部長、国防次官に当たる方だと思いますが、これが非常に激越な談話を発表した。そしてその後、四日に至りまして休戦協定に伴う非武装地帯の地位を維持することはできなくなった、こういうことを板門店代表部のスポークスマンが明らかにいたしました。以来任務を放棄しているということがあり、その後、五日に至りまして中隊規模の武装兵力を休戦協定に沿わない形で投入するという行動がさらに六日、七日と続いてきたわけでございます。  こういった状況につきましてその意図するところはどうかということ、いろいろございました。国内的な引き締めをねらうものであるとか、あるいは韓国に対する影響ということもございましたが、やはり一番大きな意図米国韓国抜きの北朝鮮米国との間の暫定協定の交渉に引っ張り出そう、それを有利に展開しようとすることじゃないかと、こういうふうに見られたわけでございます。しかし、もしそれが大きな意図であるとするならば必ずしもそれは期待どおりの効果を発揮していない、こういうふうに思われるところでございます。  いずれにいたしましても、現在の北朝鮮のとっている姿勢あるいは行為というものは朝鮮半島の安定という観点から申しますと、まことに遺憾なことでございまして、一刻も早く休戦協定の定めにのっとった状態に復帰するように我が国としては強く期待もしているところでございます。
  37. 高野博師

    ○高野博師君 今おっしゃられましたように、休戦協定から平和協定に変えることが目的だということ、これはマスコミでも言われておりますけれども、実際には政府と軍の鋭い内部対立があるというような見方もあります。この点についてはどう見られますか。
  38. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 御承知のとおり、今、北朝鮮我が国外交関係はございませんし、また国内状況というものは非常にわかりにくいところでございます。しかし、あの国の中にもいろいろな考えがあるだろう。そういった中でのいろんなせめぎ合いと言ってはなんでございますけれども、いろいろな力関係の変化というものもその時々にあるのかと存じます。しかし、それが具体的に今どうなのかという点については我々も十分に把握していないところでございます。
  39. 高野博師

    ○高野博師君 今の状況については悲観論、楽観論さまざまありますけれども、悲観論の見方としては、今の北朝鮮の食糧問題が全然解決していない、本年の六月から七月には備蓄もほとんど底をつく、したがって食糧危機はもう最悪の状態になるだろうと、こう言われております。それから、先日もテレビで放映されましたけれども、金正日書記の五十三歳の誕生日の二十六日にちなんだフィルムが放映されましたけれども、これは軍民一致を強調しているということで何か起きる不安とか不気味な材料であるとも言われております。  一方では、先ほど言いましたように、金書記が軍部を完全に掌握していない、したがって軍部がミサイル交渉等の不満もあって独自の示威行動をとっている、そういう点では非常に危険があると言われております。しかしながら、北朝鮮には今戦争をする大義名分がない。例えば朝鮮戦争の場合は祖国防衛というような大義名分があったんですが、今はそれがないということで、ある意味では韓国の挑発を待っていると、そういうことも言われております。ちなみに、金書記は各地の軍を頻繁に訪問していると言われまして、一方で水害等の被災地にはほとんど訪問していないとも言われています。  そこで、万々一戦争になった場合、これはいろんな見方があって、局地的なものになるだろうとも言われているんですが、北側は長期戦では負けるということで短期戦でいくだろう、その場合は韓国人口の四分の一が集中しているソウルに攻撃をかけるだろう。板門店から戦闘機で約六分でソウルに到達するということが言われております。  そこで、ソウルには数多くの日本人、在留邦人がいると思うんですが、こういう万一の場合の在留邦人の危機管理といいますか緊急避難等の件についてはどういう措置をとられるのでしょうか。
  40. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今、朝鮮半島の情勢、とりわけ北朝鮮動向については重大な関心を持って注視しなくちゃいけない、こう思っておりますけれども、しかし今の情勢が直ちにより重大な事態に結びつくかといいますと、そこまでの情勢ではないんじゃないか、こういうふうに見ております。  しかしながら、一般論といたしまして、在外におります邦人の緊急事態における安全をどういうふうに確保していくかということにつきましては我々としても常に心がけていかなくちゃいけないと、こういうふうに考えておるところでございます。全体の情勢がそういうことでございますので、今具体的にソウルにおいでになる邦人の方々についてどういうふうなことをといったことは、それは差し控えさせていただきたいと思います。
  41. 高野博師

    ○高野博師君 少なくとも板門店近辺への渡航は自粛するとか、何かそういう措置をとってもいいのではないかと思います。  それからもう一つ、なぜ今この時期に休戦協定に違反するような行動に出たのかという点についてお伺いいたします。
  42. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) これも先ほど来申しますように、何分にも外交関係はないし、また情報も非常に集めにくい国でございますから、多分に推測かあるいはその間の推定か、その辺の域を出ない嫌いはございますけれども、私どもといたしましてはこう考えております。  北朝鮮は、いろんな見方はございますけれども、一応金正日書記が政治の面では掌握していると見ていいんだと思います。しかし、基本的には、先ほど委員も御指摘になりました食糧の問題を初めとしてエネルギーその他、また経済全般が非常に苦しい状態にある。そしてまた、そういった中で南北との対話も今進展する情勢にございませんし、米国あるいは我が国に対するいろいろな接触というものもはかばかしい進展をそう見ていない。あるいは、従来から関係を持っておりました中国あるいはロシアとの関係も一昔前に比べれば北朝鮮経済なり生活を支えていく上でそう大きな支えになるという状態でもない。いろんな意味でいわば打つ手がない状態になっているんですね。何か道が八万ふさがりというような状態になっているという感じを持っても不思議ではないという状況だと思います。  そういった中で、一つのブレークスルーを見出そうということで米国との間の暫定協定の交渉に影響を、それを促進するあるいは米国を引っ張り出してくる効果をねらったのではないかと、こういうふうに考える次第でございます。
  43. 高野博師

    ○高野博師君 国交がないから余り情報がないということは当たらないと思います。例えば、在日朝鮮人も年間一万人ぐらい訪問しているし、北朝鮮と国交のある国を通じてもいろんな形で情報はとれるのではないかと思います。  この問題について、なぜ今やったかという点については、これはいろいろな情報を集めた上での私の分析なんですが、ことしの七月八日に金日成前国家主席の三回忌の法要がある、したがってこれを後継者としては盛大に成功させたいということで、それまでは戦争をやる気はないと。その後の九月九日の建国記念日とかあるいは十月十日の労働党の創立記念日、このあたりに国家主席につく可能性がある。したがって、七月八日までに何らかの政治的、外交的な成果を上げたい、そして国内向けに自分の指導力を誇示したい、これが金正日書記のねらいではないかというふうに見ております。特に今月の十九日、二十日にはアメリカとミサイル交渉をやる。これを有利に運ぶということ、これを包括的な軍縮交渉にまで持っていきたい、そして平和協定を結びたい、そういう意図があってこういう行動に出たのではないか。  平和協定締結するというのは金日成前主席の遺言でもあると言われております。しかしながら、湾岸戦争とかボスニア・ヘルツェゴビナとか、こういう戦争あるいは地域紛争を見ても、戦争をした場合の被害が大き過ぎるということはもう十分知っている。北朝鮮にとっては経済が壊滅的になる、したがって本格的な戦争をやる気はないだろうというふうに見ております。やり方は中国台湾海峡でやったようなやり方に似たところもあるかなというふうに見ております。  この北朝鮮行動に対して、中国はこれを支持しない、休戦協定体制は有効であるという表明をしております。それから安保理も、韓国側の意向を受けて、きょうですか、十一日に非公式の協議をやるということを決めております。日本政府としてはどういう対応をするんでしょうか。
  44. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 先ほど来申し上げておりますように、私どもといたしましては、今回の北朝鮮行動というものはまことに遺憾であると考えておりますし、それから休戦協定の規定を遵守する状態に一刻も早く復帰すべきである、こういうふうに考えております。そういうことをこういった国会の場を通じまして、あるいはその他いろいろな機会を通じまして明確に表明しておるところでございます。  また、ただいま委員指摘のように、国際社会の状況を見ましても、これまで北朝鮮と友好的な関係を持っていた国も含めまして今回の北朝鮮行動というものを支持する声は見当たらない、こういうことでございますから、そういったことを北朝鮮の側においてもやはり考慮せざるを得ないんじゃないかと思います。
  45. 高野博師

    ○高野博師君 韓国はこういう北との緊張関係の中で、日本とアメリカに対して北朝鮮との外交交渉等には応じないように要請もしたと、そういう報道もされております。一方で、韓国の野党の自民連の金鍾泌総裁が、北の兵士は去年政府国会に相談もせずに送った米を食べて今板門店で我々を脅迫しているという現政権の北朝鮮政策を批判しております。米の問題については後ほどお伺いしますけれども日本の米援助についても同じようなことは言えませんか。
  46. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 昨年行われました我が国から北朝鮮に対する米の支援というものは、委員も御承知のとおり、人道的見地からするあくまで例外的なものであるということでございます。また、水害等もあり大変な食糧難の情勢にある状況の中で民生の用に供されるべきものである、こういうことは明確にしておりまして、赤十字ベースで運ばれたものについても、また食糧庁のルートを通じて供与されたものにつきましてもそれを具体的にそれぞれ合意書なりあるいは契約書の中で民生用に使うということを明記しておるわけでございまして、私は、今、委員指摘になったような用途に供されたものではないと、こう考えております。
  47. 高野博師

    ○高野博師君 いずれにしても朝鮮半島の平和と安定は我が国安全保障にとっても極めて重要なことでありますので、その動向には十分注意をして、そして必要があれば何らかの平和的な対応をとる、そういうことも見きわめる必要があるんだろうと思います。  それでは次の質問に移らせていただきます。  去る三月二十五日に元赤軍派のよど号事件田中義三容疑者がドル札偽造あるいは所持の疑いでタイでタイ警察に逮捕されたと。この田中容疑者については、北朝鮮外交官パスポートを持っていた、大使館にも自由に出入りしていたというようなことで北朝鮮のさまざまな対外工作に何らかかかわっていたのではないかということも言われております。この辺の情報を公安当局としてはつかんでいたんでしょうか。
  48. 米村敏朗

    説明員(米村敏朗君) お答えいたします。  よど号のハイジャック犯が北朝鮮の国外で何らかの活動をしているのではないか、そういう状況を私どもの方で把握しておったのかと、こういう御質問だろうと思うわけであります。  例えば、これはよど号のメンバーの二人、小西隆裕と若林盛亮でありますけれども、昭和五十八年八月二十二日から十日間、リビアのトリポリで開かれた第二回全アフリカ青年フェスティバル、これに参加をしておる、あるいはまた昭和六十三年五月に国内で逮捕されましたメンバーにつきまして全く別人に成り済まして欧州等へ出国をしておった等々の幾つかの事例は確認をしております。  以上でございます。
  49. 高野博師

    ○高野博師君 韓国のKGBの情報では、北朝鮮が八一年に高性能の印刷機を輸入して偽造を開始したというようなことも言われておりますしまた、ある筋の情報によれば、日本の有力政治家に非常に近しい人が、日朝の貿易関係に携わっている者がにせ札用の機械を日本から北朝鮮に持ち込んだという情報もありますけれども、この辺については当局は何か御存じでしょうか。
  50. 米村敏朗

    説明員(米村敏朗君) 最近の新聞報道あるいは北からの亡命者による北朝鮮関係の著作物等におきまして北朝鮮のドル札偽造に対する関与というのが述べられているということは承知をしておりますけれども、しかしながら具体的にこれを確認しているというわけではございません。
  51. 高野博師

    ○高野博師君 この膨大なにせドル札が、麻薬の流通とか地下武器市場とかあるいはテロリストの支援とか、こういうやみの世界に流れ込んでいるとも言われております。これは大変ゆゆしき事態ではないかと思います。中には核物質の入手にも使われている、こういうことも言われております。北朝鮮側は今回の田中容疑者との関係を否定しておりますけれども、いずれにしても関係当局の真相の究明を期待したいと思います。  それでは次の点ですが、先般、北東アジア課長北朝鮮側と極秘裏に三月の十八、十九日に北京で接触したという報道がされました。国交再交渉が目的とは思われますけれども、差し支えない範囲でこの事実関係をお聞かせ願いたいと思います。
  52. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 御承知のとおり、我が国北朝鮮との間の国交正常化の問題につきましては、八回にわたり交渉を持ってまいりましたけれども、九二年の秋に中断してそのままの状態になっております。  我が国の基本的な方針といたしましては、国交の正常化は図らなくちゃいけない、しかしまたそれと同時に我が国は朝鮮半島の安定に資していくものでなくちゃいけない。いずれにしてもそういった朝鮮との関係あるいは交渉を持っていきます場合には韓国との間の連携を保ちながら進めていきたい、こんな基本的な姿勢で臨んでおるところでございます。  そういうことでございますので、私どもといたしましては、今は正常化交渉は中断しておりますけれども、やはり外交当局の姿勢としては何かあればいろんなところで接触をするということはあってしかるべきだと、こう思っております。しかし、従来からそういった一般的な外交当局としての役割を果たしていく上での個々の事柄についてはコメントは控えさせていただいておりますので、恐縮でございますけれどもその辺は御了解いただきたいと思います。  しかしながら、いずれにしても、これまで中断しておりました正常化交渉がきちんと再開される、こういうふうな事態の大きな進展になってくればこれは当然御報告を申し上げるわけでございますけれども、現段階ではまだそのような大きな変化といいましょうか進展が見込める状態には至っていないというふうに御理解賜りたいと思います。
  53. 高野博師

    ○高野博師君 この件については、橋本総理が、プライベートなルートでお互いいろんな交渉の糸口を探して混線するよりも政府間で進めた方がいいと強調したというふうに報じられております。チャンネルの一本化を強調した、こういう認識を示したと言われております。  この総理のコメントの背景には、朝鮮訪問団とかそれとの関連での北朝鮮への米の支援をめぐってのさまざまな動き、民間人や政治家の動き等を念頭に置いて、むしろそれを批判的に述べたものと私は理解しておりますけれども、大臣はどう思われますか。
  54. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 総理のコメントも一般論であって、具体的な交渉なり接触なりに言及されたものではないと、こう思っております。  そして、北朝鮮だけではなくていろんなところにおきまして、外交当局以外の方々のいろんな活動が一定の役割を果たすというケースはいろいろあるわけでございますけれども北朝鮮との間の国交の正常化の問題につきましては、これはもうすぐれて外交的な問題外交そのものでございますから、これは私ども外交当局の責任において事を運ばなくちゃいけないと、こういうふうに考えている次第でございます。
  55. 高野博師

    ○高野博師君 いずれにしても、国交のない国との交渉ですから、やはり正攻法で政府間で進めるのが適当ではないかと私は思います。  次に、米の支援問題についてお伺いいたします。これ喜で何度も各委員会で取り上げられていますけれども、改めて私の視点から幾つか御質問したいと思います。  この米の支援については、緊急の食糧援助と先ほど大臣もおっしゃられましたように、そしてまた国交がないということで例外的なそして人道的な援助であると、こう言われております。しかし、昨年六月三十日とそれから十月三日に合意が成って、実際に米が一般の市民に届くまでに相当の時間がたっているわけです。最終の船が四月一日ですか、数日前に積み終わったというふうに理解していますが、その間の先方の食糧事情はどうだったのか。米が到着するまでに餓死者が出たとか、緊急事態が起きたとか、そういう情報は何か持っておられるんでしょうか。
  56. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 現時点において、北朝鮮においてなかなか深刻な食糧事情があるということは我々も承知いたしておりますけれども、その間、餓死者が出たり深刻な飢餓が大規模に生じたというような情報には接しておりません。
  57. 高野博師

    ○高野博師君 そうすると余り緊急性はなかったのかなという感じを受けますが、年間二百万トンぐらいの恒常的な食糧不足もあると言われております。  この米の支援については、どの時点でいかなる形でだれからだれに要請がなされたのか、種々論議があるところであります。この点についてはきょうは繰り返しませんが、この援助が相手国の国民、生活に困っている人々に本当に役に立ったという、そういう報告とか資料はあるんでしょうか。
  58. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 我が国から供与いたしました米のうち、それぞれ六月に支援が確認された無償供与の分の十五万トンと、それから延べ払い売買契約に基づいて供与された十五万トンの配分状況については、北朝鮮側から資料が送付されまして、これらの報告のあった三十万トンの米は九道二市に幅広く配付されているとのことでございます。この九道二市についてはもちろん私どもとしても御説明できるわけでございます。  我が国から供与された米が北朝鮮においてどのように受けとめられたかという御質問でございますが、昨年の九月四日の朝鮮中央通信がその報道で、日本が提供した食糧について、これは人道主義的立場からの善意の表明であると伝えた経緯がございます。それから、追加支援のために行われた昨年九月三十日の協議の場でも、北朝鮮側我が国の支援が人道主義的立場からなされたものであるということを明確に確認いたしまして、また北朝鮮の住民がこれに感謝している旨の説明がございました。
  59. 高野博師

    ○高野博師君 その九月四日の先方の回答は、実はその前に全容淳さんが韓国の「マル」という雑誌の中で、日本からの米の支援はこれは賠償の意味があるんだ、米は多ければ多いほどいい、家畜とかあるいは工業にも使えるというような発言、インタビューが載った後、政府ないしこれに関係した人たちがそういうことを言われては困るというようなやりとりがあっての話ではないかと私は理解しております。  それで、緊急援助ないしは経済援助をやった場合にその評価が非常に重要だろうと思うんです。緊急援助等をやった場合には普通は現地の大使館が先方政府と引き渡し式をやるとか、例えばマットとか毛布とか発電機とか医薬品とか現物を持つて引き渡しをやって、そしてその後にこれがこういうふうに役立っていますというような現地の報告があるのだと思います。国交はないけれどもそういうことは北朝鮮に求めればできないことはないだろうと思います。したがって、先方政府が現地の市民に米を配っているような現場の写真あるいは新聞報道、現場の生の声等、そういう報告を求めてもいいのではないかと思うんですが、どうでしょうか。
  60. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 確かに委員指摘のとおり、日本北朝鮮に対する米の支援が謝罪のためと全容淳書記が発言したと報ぜられたことに伴って、九月四日付の先ほど申し上げました朝鮮中央通信の論評ということがあったわけでございます。  しかし、この発言に関する報道について与党関係者と北朝鮮側との間にもやりとりがあったわけでございまして、そこで全容淳書記がみずから日本からの米の支援については日本側の善意のあらわれであって、人道主義的立場から提供していただいたと言及しているというふうに私ども承知しているわけでございます。  それから、先ほど委員から御指摘があったように、DHAの報告書なんかでも、北朝鮮当局が洪水発生前の時点において既に約二百万トンの穀物不足に陥っていたということを認めていたわけで、北朝鮮当局がこのように国際社会に対して洪水発生前において大幅な穀物不足が生じていたことをみずから明らかにしたということは、全容淳書記が行ったとされている発言、すなわち謝罪のため云々という発言とは内容的に相入れないものだというふうに考えて、総合的な判断のもとに北朝鮮側我が国の米支援を人道的観点からのものと認識しているということを改めて確認した、そういう視点に到達したというふうに考えたところでございます。  評価のミッションの派遣とかその種のことを行ってはどうかということでございますが、これは我が国による米の使途の直接の検証ということは、日朝間に国交がないこと、さらに先般の国際機関に対する食糧援助のアピールの件をめぐるやりとりの状況から見ましても現実になかなか困難が伴うということであろうと思いますが、私どもといたしましては、大臣からも既に御答弁申し上げましたとおり、北朝鮮側が適正使用を文書で保証して、配分状況についても説明しているということもございます。  政府としては、種々情報収集には最大限の努力を払って万全の注意を払っていきたい、こういうふうに考える次第でございます。
  61. 高野博師

    ○高野博師君 いずれにしても、米が市民に届いたという確かなデータはないのではないかと私は思います。そもそも膨大な国民の税金を使っての米支援でありますから、相手国の市民に役立っているかどうか確認ができない、国交がないからそれは難しいということであれば本来は二国間の援助をやるべきではないんではないか、私はそう思います。  この金額については有償無償合わせて政府側は八十億円と言っておりますけれども、倉庫の保管費用、当時の緊急輸入したときの米の相場なんかも含めると我々の計算では四百六十億円ぐらいになるという膨大な金額でありまして、これはまさに人道的に使用されなければならないというふうに思っております。  時間が余りありませんので急いで質問させてもらいますが、この間、加藤局長が衆議院の予算委員会で、今回の米支援については政府関係者以外の人が一定の役割を果たしたことは認める、しかし政府が責任を持って最終的に決定したと発言されましたけれども、これで間違いございませんですね。
  62. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 間違いございません。
  63. 高野博師

    ○高野博師君 責任を持って決定したということですが、この援助自体に問題があったとか、あるいは何らかの問題が生じた場合には政府が責任をとるということでしょうか。
  64. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) まず最初にその御質問に直接にお答え申し上げる前に一言だけ申し上げたいと思いますが、この米の供与というのは通常の援助ではございませんで、繰り返し申し上げておりますとおり特殊例外的な措置としてとられたものでございます。  その前提での話でございますが、もちろん政府政府としての責任において供与を最終的に決定したということがございます。そして、その決定を政府が行ったということについては、それは政府が責任を負うということであろうと思います。
  65. 高野博師

    ○高野博師君 理由が特殊であろうが例外的であろうが、やはりこれは国民の税金を使っているということが第一義的にあると思うんです。北朝鮮に対する米の支援についてはさまざまな疑問、疑惑が依然としてあって、まだ解明されていない。  きょうは時間の都合がありますので時間の範囲内でお伺いしたいと思うんですが、政府関係者以外の人々が一定の役割を果たしたと。この人たちの責任はどういうふうになるんでしょうか。一定の役割そのものに問題があった場合はその役割を担った人たちが責任をとるのか、それとも政府がかわって責任をとるのか、いかがでしょうか。
  66. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 既に過般の国会審議の場でお答え申し上げましたとおり、北朝鮮に対する米の支援問題というのは、北朝鮮側から日本側に支援の要請があったことを受けて、日本側として検討を進めていくその過程において我が国北朝鮮と国交がないという事情もあったために北朝鮮側からの要請が当初与党の関係者に対して行われたというところから、政府当局と北朝鮮側との間の協議が行われるまでの間、与党関係者が北朝鮮との連絡を行われる、そういう役割を果たした、これがその一定の役割と申し上げたことの意味でございます。  御質問関係者をめぐる問題が出てきたとき云々ということが具体的に何を意味するのか明らかではございませんけれども、また仮定の質問お答えすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、政府が行った決定について政府として責任を負うということだろうと思います。
  67. 高野博師

    ○高野博師君 わかりました。  それでは、一定の役割を果たした政府関係以外の人とは具体的にだれを指しているんでしょうか。
  68. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 与党の対応について政府が個々人の具体名を挙げて詳述するということは、特にこの国会の場において私どもとしては差し控えさせていただきたいと存じます。
  69. 高野博師

    ○高野博師君 加藤幹事長は入っておられますか。いるかいないかで結構でございます。
  70. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 先ほど来政府委員から御答弁申し上げておりますように、最終的には政府の責任において決定したことでございますけれども、それに至ります過程におきましていろいろ与党の関係の方が一定の役割を果たされた、こういうことはあったわけでございます。  そしてまた、今具体的な名前が出ましたけれども、現在の自民党の幹事長である加藤紘一氏はその当時与党の中で政策関係の責任者である政調会長を務めておられたということでございますので、その立場でいろいろ政策問題という側面からその関係をお持ちになったということはあると、こう思います。
  71. 高野博師

    ○高野博師君 入っているという理解でよろしいのだと思います。  それで、この一定の役割がなかったとすれば今回の支援は実現しなかったのかどうか、こういう一定の役割がなくても政府としてはいずれやるつもりだったのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  72. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) それは、現実の問題として一定の役割というものがあり、それを踏まえながら政府においてその後いろいろ交渉もし、あるいは判断をしていった、こういうことでございます。  それから、先ほど来責任というお話がございますけれども政府の責任において決定したといいますのは、ただいま申しましたように、いろいろなその事情を考え政府の判断でやったと、そういう意味の責任でございます。一方、委員の、それならば何かあったときには責任をとるかと。この責任というのは日本語としては言葉は同じでございますが、意味内容は随分違うんだと思います。まして、何か個別的な問題があったときに、それがどういうことを意味されるのか私も明確にはわかりませんが、法律的な、あるいは道徳的な、あるいは社会的な、そういった責任をというお話でございましょうけれども、これは責任という同じ言葉であっても意味内容が全く違うんだということは考えてもらわなくちゃいかぬと思います。
  73. 高野博師

    ○高野博師君 当然政治的あるいは法的な責任も含めた一般的な責任という意味で、それはもう事と次第によって何らかの責任になると思います。  それで、この米が民生消費に供されたと言っておるんですが、万が一にも民生消費に供されていなかったということが判明した場合には当然責任問題になると思いますが、大臣どう思われますか。
  74. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 先ほど来御答弁申し上げておりますように、文書において民生用に供するということをきちんと確認しておるわけでございますし、また一部につきましては報告にも接しているところでございます。
  75. 高野博師

    ○高野博師君 時間がないので、次に食糧庁にお伺いしたいと思います。  援助米の五十万トンのうちの三十五万トンが有償資金協力、すなわち延べ払い輸出となっておりますが、この契約は食糧庁と朝鮮国際貿易促進委員会ということで、この国際貿易促進委員会というのは民間の団体であります。それで、この契約書の中に支払いを北朝鮮政府が保証するというような一文が入っているのかどうか確認したいと思います。
  76. 阿部修

    政府委員(阿部修君) 御指摘のように、延べ払いの契約でございますけれども北朝鮮日本とは国交がないということで、朝鮮国際貿易促進委員会との間でこの契約を締結したものでございます。  食糧庁としましては、その債権の保全に万全を期すために北朝鮮政府機関でございます朝鮮民主主義人民共和国対外経済委員委員長名によりまして、食糧庁が延べ払い売買契約書を交わした朝鮮国際貿易促進委員会の輸入に関する債務を含めたすべての契約上の義務が誠実に履行されるよう必要な措置をとることを確認する旨の書簡を取りつけておるというようなことになっております。
  77. 高野博師

    ○高野博師君 この促進委員会が支払いができなくなったといった場合には政府がかわって払うことになるんでしょうか。その点だけで結構でございます。時間がないので簡単にお願いします。
  78. 阿部修

    政府委員(阿部修君) 私どもは、そういった政府機関でございます対外経済委員会との間で先ほど申しましたような書簡を取りつけておるわけでございまして、これに沿って行われることになるというふうに考えております。
  79. 高野博師

    ○高野博師君 契約の中に明確に政府が保証するということを入れていないと非常に危ないんではないか。この民間の団体が何らかの形でなくなった、解消しちゃった、政府は全然知りませんということになると払う人がだれもいなくなると思うんですね。そういう意味では非常にいいかげんな契約書ではないかなという印象を私は持っております。  時間がないので次に進みます。  今度北朝鮮に輸出した米のうちのタイ米については精米されているんですが、アメリカと中国の米については精米していない、したがって備蓄に非常に適している、おまけにタイとか中国、アメリカから緊急輸入したときのパッケージのままで北朝鮮に持っていったと、こう言われております。  もしそうだとすると、この米が現地に着いたときに日本から来たということは何にもわからない。日の丸がついているわけでも何でもない。こういう援助のやり方をしていては、先方の政府なり関係機関が日本からもらった米ですよということをよほど強調しない限りは全くわからないということになるんではないか。この辺の確認は食糧庁はやらなかったんでしょうか。簡単に答えてください。
  80. 阿部修

    政府委員(阿部修君) 御指摘北朝鮮向けの支援米のパッケージでございますが、これは日本が緊急輸入米として輸入したままの荷姿で出してございまして、日本からの支援であるといったようなマークが張ってあるというようなことではないわけでございますが、この支援米が北朝鮮住民の食糧用以外の用途に使用されるというようなことがないように専ら民生用消費のために適正に使用されること、さらには本件の支援を行ったことによりまして北朝鮮からの米の輸出が行われることがないようにするというようなことを契約書の中でうたっておる次第でございます。
  81. 高野博師

    ○高野博師君 結構です。  契約書はそうなっていますけれども、現場に行った米はだれもわからないと。一説によると日本のある団体がこれをみんな買って送ってくれたということが現地では言われていると、そういう情報もあります。したがって、日本の援助が本当に効果的であったのか、現地の国民から評価されているのかどうか全くわからない。先方から、赤十字かなんかからの一枚紙の報告を受けているだけでは全くわからないと、私はそう見ております。  それで、北朝鮮では石油と米はむしろ軍事というか戦略的な物資だと言われております。実際に北朝鮮では米は主食ではない、主食はトウモロコシだと言われております。軍の場合も軍人も栄養失調かなんかで病院に収容されたときにしか米は食べられないと言われております。そうすると、一般に食べられていない米が一般の口に入るのかなという疑問があります。  さっき言いましたように、この米が軍の方に行っているとすると軍事協力というようなことにもなりかねない話ではないか、私はそういうふうにとらえておりまして、もしそういうことであるならばこの援助そのものは大変な問題がある、当然責任問題になるだろうと思います。この点は外務省の方にお伺いいたします。どう思われますか。
  82. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 繰り返し御答弁申し上げておりますように、私どもは民生用として支援し、その用に供されているものと考えております。
  83. 高野博師

    ○高野博師君 時間がないので一言だけにして、また次の機会に質問させていただきます。  この米の問題については、金丸訪朝のときあたりから、国交正常化に向けたその前の段階として、援助をやった上で国交正常化交渉をするというようなことが言われておりますが、こういうやり方は国交正常化した後に援助をするというのが常道ではないかと思います。  それで、今回いろんな疑惑がある中で、この米の支援と絡んだ国交回復、特に国交回復のときに日本から相当な賠償金が支払われるという情報がありまして、その賠償金との絡みでいろんな関係者がこの利権をねらっているという情報もたくさんあります。もしそういうことであるのであれば、この外交問題を自分の利権絡みの政治に利用しようというようなことがあってはならないのではないか、そういう利権政治というのはもう終わりにしなくちゃいけないというふうに私は思っております。この点についてはまた次の機会に質問させていただきます。  以上で終わります。
  84. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 私は、三月二十八日の当委員会で楚辺通信所の一部の土地、正確に申し上げますと、知花昌一さんが所有する二百二十六平米の土地については三月三十一日をもって国が賃貸借契約に基づく正当な使用権原を失うことになる、その後、政府の名において正当な使用権原がないままに不法占拠が続くような事態になっては困るということを強く申し上げました。    〔委員長退席、理事寺澤芳男君着席〕 しかし、残念ながら四月一日以降知花昌一さんの土地については政府は正当な使用権原を有しないままに不法占拠を続けております。この事態をどのように私たちは考えたらいいだろうかということで質問させていただきます。  まず、三月二十九日に梶山官房長官が四つの理由を挙げて、知花昌一さんについての土地の明け渡しをしない、それから土地への立ち入りも認めない、こういう談話を発表いたしました。  その一点目が、過去二十年間にわたり土地所有者との間で賃貸借契約に基づき適法に使用してきたものであると言っております 確かに過去二十年はそうだったかもしれません。しかしながら、知花さんは三月三十一日をもってもう契約更新しません、明け渡してくれということを事前に弁護士を通して国に通知をしているわけです。本来なら、我が国の民法に基づいて、期限が到来をしたら貸借人である国は当然のことのように原状回復をする法律上の義務を負っている。そうじゃありませんか。まず、その点について見解を聞きます。
  85. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 四月一日以降、まさに先生御指摘のように占有状態について正権原といいますか、そういうものがない状態にあるということは御指摘のとおりでございますが、私ども、過去二十年間にわたり土地所有者との間の賃貸借契約に基づき適法に使用してきているという現実一つございます。  それで、この点につきまして私ども、ちょっと古い判例でございますが、例えば最高裁判所の判例をちょっと御紹介させていただきますと、  土地所有者との間にすでに適法に形成された前期のごとき土地の使用関係は、単に契約が満了した(占領の終了)という一事により、たやすく消滅させるべきではなく、その使用(駐留軍による使用)の必要性が大であるかぎり、むしろこれを存続させることを相当とする というような指摘がございまして、  土地所有者において、正当の事由がないかぎり、借地権者からの更新の請求を拒絶しえないものとする借地法四条一項の精神に照らすも、肯認するに堅くないところである。 というような昭和四十年の同様の事例につきましての最高裁判所の判例が出ておることは先生御承知かと思います。  私ども、こういうふうな背景に立ちますと、安保条約上の義務に基づきまして当該土地を米軍へ提供することも一方では私ども国際的約束に基づいて行っておるところでございますので、国民の皆様といいますか、先生方の御理解も何とか得られるのではないかというような前提を考えたところでございます。
  86. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 とてもこれは法律家としても理解し得ないし、国民理解してくれといっても理解できないと思いますよ。  二番目の理由が、当該土地を引き続き米軍へ使用提供することは、安保条約上の義務であるのみならず、我が国及び極東の平和と安全のため必要であると考えられること、こう言っております。安保条約上の義務を履行するためには、個人有地なんだから個々の地主との間で賃貸借契約を結んで正当な使用権限を取得しなければいかぬでしょう。それが必要ないというのであれば、なぜ今まで契約を結んできたんですか。契約更新をやろうとしたんですか。理由にならないと思います。  三番目の理由が、土地使用の権原を得るための所定の手続をとっていると。それはとっておりますよ。しかしながら、収用委員会も使用裁決も認めていないし、緊急使用も認めていないじゃないですか。そんなものは理由になりませんよ。  四番目の理由に、土地所有者に対しては賃料相当の全員の提供をして土地所有者に損害を生じさせない処置を講じている、こういうことを官房長官は言っておりますけれども土地所有者は賃料にかわる賃料相当の損害金をくれとは言っていませんよ。明け渡してくれと言っているんです。現に今、毎日のように施設庁の職員が一日分の損害金として五百六十七円、これを支払うために何千円、何万円の国民の血税を使ってやっているじゃないですか、むだなことを。  私は全くこれは根拠がない。官房長官は直ちに違法ではないと、こういうふうに談話の中で言っておりますが、しからば今の状態は合法的な占有である、適法な占有であると、こういうふうに国は思っていらっしゃるんですか。
  87. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 再三官房長官談話等でも発表しておりますように、四つの事由を掲げまして、法秩序全体の中で総合的に判断すると、現在の状態は確かに正権原はございませんが直ちに違法であると言うには当たらないということで御理解をいただきたい、このように言っておるところでございます。
  88. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 直ちに違法でない、これは談話で言っていますよ。私が質問しているのは、ではしからば国は今の状態を合法的な占有、適法な占有をしているんだと、こういうふうに思っていらっしゃるんですかと聞いているんです。
  89. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) ただいま緊急使用の申し立てを土地収用委員会の方にさせていただいておりますので、その緊急使用の許可がおりればその時点で適法になることはもう間違いございませんが、現在置かれている状態は直ちに違法とは言えないということで、繰り返しの答弁になりますが、そういうことを御説明申し上げている、こういうことでございます。    〔理事寺澤芳男君退席、委員長着席〕
  90. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 緊急使用の申し立てをしていますよ。しかし、収用委員会はあしたからしか審理を開始しないんですよ。だから、緊急使用が認められるか認められないか、まだわからないでしょう。今言っているのは、なぜ率直に合法的な占有、適法な占有ではないと、こういうふうにおっしゃらないんですかと。おかしいでしょう。  その点はおいておくとして、外務大臣、十七日に日米首脳会談があるわけですが、この楚辺通信所について政府が正当な使用権原を失っている状態首脳会談に何らかの影響を与えるとは思いませんか。
  91. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 楚辺通信所の問題につきましては、ただいま防衛施設庁長官の方から御答弁がございましたように緊急使用の申し立てを行っておりまして、一日も早くそれが認められることを期待しているところでございます。  さて、この問題が日米首脳会談そのものへ大きな影響を与えないかと、こういう御質問でございますけれども、私どもといたしましては、今回の日米首脳会談というものは安全保障問題も含めまして日米間の関係をより緊密なものにし、将来に向かって協力関係を強めていく、こういったことを確認し明らかにする非常に有意義な会談であると考えておりますので、何としてもこれを成功させなければならないと思っております。そのためには沖縄における基地の問題についてもでき得る限りの努力を払っていかなくちゃいけない、そういった意味での環境整備といいましょうかそれをしなくてはいけないと思っております。いずれにいたしましても、この楚辺の問題云々ということはないようにやっていきたい、首脳会談を成功させたいと思っております。
  92. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 私は、アメリカも成熟した民主主義国家ですから、外務大臣がおっしゃる日米関係が大事だというのはよくわかりますよ。しかしながら、政府が正当な権原もないままに軍用地として土地を使っている。こういう状態首脳会談にストレートに悪影響を及ぼすことは間違いないと私は思いますよ。しかも、今の状況ですと、今の政府の態度ですと、来年五月にはこれはもう三千人余りの土地が同じような正権原を失うような状況になることは必至だと思います。  ところで、首脳会談へ向けて沖縄の米軍基地の整理縮小がこれまで日米間でいろいろと交渉が続けられておるやに聞いております。近々その中間報告も発表されるようでございますが、きのうきょうのマスコミ報道によりますと、この楚辺通信所が伊江島の補助飛行場に移設をされる、しかもそれが日米間で合意をされて中間報告で発表されるんだと、こういう報道がありましたが、真偽のほどはいかがでしょうか、お聞きいたします。
  93. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) ただいま、大統領訪日という大きな節目を控えまして、それまでに沖縄における施設・区域の整理、統合、縮小にでき得る限りの成果を見出したい、こういうことで日米共同で鋭意努力しておるところでございまして、今その中間報告なるものの具体的内容というものはまだ煮詰まっておるわけではございません。報道ではいろいろな情報が乱れ飛んでおるのは承知しておりますけれども、私どもまだ個別具体のケースについて申し上げられる段階には至っていないところでございます。
  94. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 楚辺通信所の伊江島補助飛行場への移設について合意があったかなかったか、現段階では申し上げられないと、こういうことですか。
  95. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 御承知のとおり、いわゆる地位協定の運用をめぐる騒音問題等々につきましては合意に達しまして、そのことは明らかにさせていただいておりますけれども、その施設・区域の整理、統合、縮小の問題につきましてはまだその作業の過程でございまして、まだ合意に至ったという状態には至っていない、こういうことでございます。
  96. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 しからば、沖縄の米軍基地の整理、縮小についてどのような基本的なスタンスでアメリカと交渉しているのか。特に、返還面積について、復帰後これまで約四千三百ヘクタールぐらい返還されましたが、それを超えるぐらい、五千ヘクタールぐらいの基地の返還がなされるのではないか、こういうことも漏れ伝わってくるんですが、施設庁長官、いかがでございましょうか。
  97. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) この問題についての政府としての基本姿勢ということでございますけれども、これは安全保障条約目的との調和を図りながらでき得る限り沖縄県民の方々の御負担を軽減していこう、そういうことでありとあらゆる創意工夫をいたしまして、その整理、統合、縮小に今は努力を払う、こういうことでございます。  今、御質問の中で具体的な面積等々のお話がございました。また、報道の中でそういったことが一部に報ぜられているのも承知しておりますけれども、私どもの基本姿勢はただいま申し上げたとおりでございます。  そして、あえて申しますならば、沖縄の復帰以降二十三年余が経過しておりますけれども、その間、時々のその衝にありましたものがいろいろ努力をしたのでございましょうけれども、結果としてやはりいまだに沖縄県民の方々に大きな御負担を強いているという、こういう現実を踏まえまして、私ども、これまでより以上に工夫を凝らし、またその努力を傾注いたしまして、またそのことが成果につながるようにしたい、こういった姿勢で臨んでおるところでございます。
  98. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 外務大臣、安保条約の必要性を強調されるわけでありますが、この日米安保条約によって一番苦しんでいるのは基地が集中をしている沖縄の人たちなんです。これはもう本当に短時間で説明ができない、筆舌に尽くしがたいような基地の重圧を受けて百二十七万県民は生きているわけであります。  それで、私は、安保条約の必要性を政府は強調されるわけですから、この基地の島沖縄で行政の最高責任者である大田県知事とクリントン大統領が来日される折に直接会談の場を政府が積極的に設けて、新しい時代の我が国日本安全保障というのは一体どうあるべきなのか、今のような一方的に安保の犠牲を沖縄だけに強いていることが日本の将来にとってもアメリカの将来にとってもいいことなのかどうなのか、じかに話し合いをする、こういう場を政府が積極的に設けたらいかがかと、こういうふうに思っておりますが、どうでしょうか。
  99. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもといたしましては、安保条約目的を達成していくためにも両国の国民、とりわけ基地が存在することにより大きな御負担に耐えておられます沖縄県民の方々の御理解を可能な限り得ていくということが大切だと思います。そうであればこそ、これまでも大田沖縄県知事さんを初めとして、また総理みずからいろいろな形で現地の御要望あるいは御事情、気持ちというものもお伺いしながら、それを十分に念頭に入れて、そして日米間でも作業をしておるところでございます。今回、そういうものの上に立って、できる限りの成果を見出しながら日米首脳会談を成功に導いてまいりたい、こういうふうに考えております。  具体的にクリントン大統領と大田知事直接の会談をという御提議でございましたけれども、ここのところはやはり事柄は国と国との、特に首脳同士の広範な日米関係全般にわたる会談、こういうことでございますので、それからまた日程的にも極めて限定されたものでございますし、またその当事者、それは米国側にしましてもあるいは沖縄県側にしましてもいろいろそれぞれの御事情なりお考えもおありでございましょう、そういったことをいろいろ考えてまいりたいと思います。  委員の御提議は御提議として承っておきたいと存じます。
  100. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 直接会談が実現しないのはまことに残念でありますが、質問を進めます。  施設庁長官、この楚辺通信所の地主である知花昌一さんの土地への立ち入りを一体いつまで拒否するんですか。ずっと立ち入りを認めないおつもりなんですか。  私は、四月一日に楚辺通信所のゲート前に行きまして、知花さんを含めて土地立ち入りが実現するように要求いたしました。この土地は彼のおじの平次郎さんが所有していた土地で、平次郎さんはくしくも五十一年前の四月一日にこの土地の場所でアメリカ軍の銃撃を受けて戦死をしたんです。その供養をするために、片手に三線を持って、片手に線香を持って、家族が入って供養したいんだ、こう言っているのにいつまでも認めない。そういうことは私は余りにも理不尽だと思うんですが、どういうお考えなんですか。
  101. 諸冨増夫

    政府委員(諸冨増夫君) 私どもはかたくなに立ち入りを認めないということではございません。  米軍は地位協定三条第一項に基づきまして施設・区域内における管理権を持っておりますので、最終的な判断はもちろん米軍が行うわけでございますが、四月一日の時点で、先生御承知のように平穏な立ち入りが非常に難しい状況であったことと、運用上に支障を来すおそれがあるとか、あるいは不測事態が起きる可能性があると。私どもは、米軍に対して最終的な基地の安定使用といいますか、そういうことを保証する立場でおりますので、諸情勢を分析いたしますと不測事態の起きる可能性が極めて高いということで、米軍と私どもが相談をいたしまして、当初のお申し出に対する立ち入りは遠慮していただきたいということでございます。  現段階で、あくまでも平穏な立ち入りであって、米軍の運用に支障を来さない、なおかつ不測事態が起きる可能性がないというふうに判断できますれば、そういう所有地の確認といいますか、あるいは先生今おっしゃったように非常に平穏な立ち入りで祖先の供養みたいなことをお考えであれば、米軍の方で運用上支障を来さない範囲の立ち入り、人数の制限とか若干そういう制限があろうかと思いますが、そういう前提であれば立ち入りについてはまた米軍と御相談させていただきたい、私どもとしてはこのように考えているところでございます。
  102. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 時間がありませんので、最後に文部省と施設庁の方にお伺いいたします。  米軍のホワイト・ビーチで、約三千年前の竪穴住居址を含む遺跡を空軍の気象用レーダーを建設するために破壊した、こういうことが報じられております。琉球の古代史を知る上で非常に貴重な遺跡が米軍の工事によって破壊をされるということは何としても許しがたい。ここにもまた安保の影があるわけでございます。考古学者は、安保条約は歴史まで奪うのか、こういうことで非常に怒っております。  一体、沖縄の米軍基地内に文化財保護法などで指定を受けている文化財や遺跡がどれぐらいあるのか、そしてなぜ米軍の基地内工事に文化財保護法などの日本国内法が適用されないで、やりたい放題で貴重な遺跡まで破壊をされるのか、そのことについて文部省と施設庁にお伺いいたします。
  103. 山中伸一

    説明員(山中伸一君) 現在、沖縄県の教育委員会が把握しております米軍基地内に所在する文化財でございますが、これは国の指定文化財ということではございませんで県の方で把握している文化財でございますけれども、およそ百三十件程度あるというふうに聞いております。これは、埋蔵文化財包蔵地でございますとか建造物、あるいは村落の跡というふうなものでございます。  また、米軍基地内での文化財保護法の適用の問題でございますが、一般国際法上、一般的には外国軍隊には接受国の法令は適用されず、したがって在日米軍には我が国法令に基づく諸手続等も適用されないということでございます。  一方、地位協定十六条にも規定されておりますように、米軍は我が国に駐留するに当たりまして我が国国内法令を尊重する義務を負っているというふうに、これは外務省の方からも聞いておるところでございますけれども、文化財保護法についても同様の取り扱いというふうに考えております。したがいまして、米軍の施設・区域内における埋蔵文化財の取り扱いにつきましても、工事に伴いまして基地内で埋蔵文化財が発見された場合には、文化財保護法を尊重していただきまして適切な取り扱いがなされることが望まれるというふうに考えております。  今回、こういう事件があったわけでございますけれども沖縄県の教育委員会としても今後基地内の埋蔵文化財の取り扱いに関しまして米軍の方にも申し入れを行いたいというふうに聞いているところでございます。  文化庁といたしましても、必要に応じましてこういうふうな県教委に対する指導等を行いますとともに、米軍の施設・区域内におきましても、埋蔵文化財は我が国の歴史を支える貴重な文化財でございますので、適切に取り扱いがなされるよう関係の省庁とも連絡調整をしてまいりたいというふうに考えております。
  104. 小澤毅

    政府委員(小澤毅君) ただいま文化庁の方から全般的な御説明がございました。防衛施設庁からは、本件工事に係ります米軍と那覇施設局との関係について御説明させていただきたいと思います。  本件工事につきましては、ことしの一月二十五日に、那覇局では、地元から米軍が鉄柱を建設しているという通知がありまして、それによって承知したものでございました。それを受けまして、施設局といたしましては直ちに米軍に照会しましたところ、米軍からは、このレーダーの建設は四、五年前から計画されており、建設に当たっては平成四年には一応地元の勝連町等に説明を行っていたこともあり、既に地元との調整を了しているものと考え着工したということでございました。このため、翌二十六日、那覇局の方から現地米軍に対して、再度地元に説明してください、また地元との調整が調うまで工事は中断してくださいというふうなことを要請いたしました。  これに対しまして、一月三十日、米軍は、地元に対しまして、本件工事について着工前の説明が十分でなかったということについておわびしたいということと、建設に対して理解を求めてまいりました。これを受けまして、二月八日、勝連町の軍用地等地主会の総会におきまして改めて経緯等の説明が行われまして、最終的には建設に対しまして地主会等の同意が得られたところでございます。また、三月十二日には、勝連町の教育委員会が現地の米海軍に対しまして、文化財の保護について要請しております。この際、現地米軍の司令官からは、文化財の破壊について陳謝するとともに、文化財調査については全面的に協力する旨の回答をしたものというふうに私どもとしても承知しております。  いずれにしましても、当庁といたしましても、本件工事は一義的には米軍の工事でありますけれども、今後このような文化財の保護等に注意が欠けないように米軍に対しましても一層地元との意思疎通に努めるよう努力をしていきたいというふうに感じております。
  105. 立木洋

    ○立木洋君 インド洋まぐろ類委員会設置に関しては、これは適切なことでありますから賛成であります。  譲許表の修正と訂正確認書の問題については、後ほど意見を述べさせていただきます。  最初に、沖縄の問題について若干御質問いたします。大臣には最初から質問いたしませんが、ちょっとその経過を聞いておいていただきたいと思います。  安保条約並びにそれに基づく地位協定、これは国家間の条約として施設・区域の提供を米軍に行うことは義務化されているわけですけれども、特定の土地を米軍に提供するという場合には、それは国内法に基づいて日本政府使用権原を得ていなければならない、そういう前提があって初めて特定の土地米側に提供することができるということになるのがやっぱり法治国家としての当然のあり方だろうというふうに思うんです。  それで、今、同僚議員も述べましたけれども、三月二十九日の梶山官房長官が四つの条件を出して、返還しなくても直ちに違法とはならない、違法に当たらないんだということを述べられましたけれども、一昨日、内閣委員会において、こういう事態が長引けば違法にならないとは言えなくなる、違法になるということを梶山官房長官は明確に答弁をされております。このことだけはちょっと指摘しておきたいと思うんです。  そこで法制局長官にお尋ねしたいんですが、憲法二十九条に「財産権は、これを侵してはならない。」というふうに述べられています。今お話がありました楚辺通信所の問題については、賃貸契約が切れているわけですから、ですから当然これは地主に返還されなければならないし、その財産権は当然保障されなければならない。  この財産権の保障という問題に関して、この楚辺通信所の知花さんの財産権はどのように保障されるんでしょうか。長官いかがでしょう。
  106. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) ただいま楚辺通信所の敷地の一部の所有者と憲法二十九条との関係についてのお尋ねでございますけれども、この点につきましては、要するに、この敷地といいますのは、従来国が私法上の賃貸借契約に基づいて使用し、そしてその契約期間の満了によって確かに契約に基づく使用権原が消滅したということは御指摘のとおりでございます。したがいまして、私どももこの点を否定しているわけではさらさらございません。  ただ、賃貸借契約の終了によって直ちに返還していないのはおかしいじゃないかという御指摘をたびたび賜っているわけでございますけれども、その点に限って申し上げますと、当該土地所有者に返還されていない現在の状態というものは、国際法及び国内法関係が重複する法秩序全体の見地から見ますと、直ちに違法であるというには当たらないのではないかという見解を申し上げているわけでございます。  したがいまして、当面返還しないことについて直ちに違法であるというには当たらないということになりますと、憲法に翻って考えますと、それもやはり憲法二十九条による財産権の保障というものに抵触する事態には当面はないんではないかというお答えであろうかというふうに思います。
  107. 立木洋

    ○立木洋君 一昨日の内閣委員会におきまして梶山官房長官も長引けば違法になるというふうに述べざるを得なかったということをひとつ十分に考えていただきたい。  この問題については、短かったら違法でなくて、長引けば違法になるなんというのはおかしな論理であります。この点については、これ以上私は議論を進めても長官からいい答弁が返ってくるとは思いませんので。  この問題については、二十九条の一項で財産権は侵してはならないとされているんです。そして、三項目に「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」としてあるんです。違うんです、表現が。財産権は侵してはならないんです、いかなる場合でも。「できる」ということと、「侵してはならない」という問題については、区別しなければならないんです。  ですから、日本の法律では、土地収用法というのがつくられて、一定の場合にそれは提供されることができるようになりました。またさらには、公共用地の取得に関する特別措置法というのがつくられて、それも可能になりました。それとは別途に、米軍については土地等の使用に関する特別措置法というのがつくられているということも私は知っております。  この特別措置法の問題に関して言いますと、これも決して無条件ではないんです。第三条では明確に「駐留軍の用に供するため土地等を必要とする場合において、その土地等を駐留軍の用に供することが適正且つ合理的であるときは、」というふうに限定して、そして「これを使用し、又は収用することができる。」というふうになっているんです。それから、十四条には土地収用法の適用という問題が細部にわたって記載されております。  ですから、無条件、いわゆる無法的に米軍が土地の使用が可能だということを米軍についての場合の特別措置法も決めているわけではないということは、長官、異論はございませんね。いかがでしょうか。
  108. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) 現在の法制がただいまお尋ねのような内容であるということについては全くそのとおりでございます。
  109. 立木洋

    ○立木洋君 そうしますと、憲法で定めている「公共のために用ひることができる。」という「公共」とは一体何なのか。また、土地収用法では三十五項に分けて公用のために土地を収用することができると。これは、米軍の場合でも土地収用法の適用ということが問題になっているわけですから全然度外視して考えるわけにはいかない。だから、公共とはどういうことを公共と言うのか。長官、いかがでしょうか。
  110. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) 一般的、抽象的に公共とはいかなる内容かということを申し上げましても余り実益がない議論になろうかと思います。  お尋ねのように、確かに土地収用法におきましては「公共の利益となる事業」という言葉を使い、そしてまた憲法では公共の用に用いるという「公共」という言葉を使っているわけでございます。  したがって双方がどういう関係にあるのか、また駐留軍特措法の「駐留軍の用に供する」ということとどういう関係になるのかという、そういう議論に絞って申し上げますと、憲法二十九条第三項に言います公共の用というその公共の用は、土地収用法に規定する「公共の利益となる事業」として相当多数のものが限定列挙されております。それはあくまで憲法二十九条に言う公共の用に供する事業の一部限定列挙でございまして、土地収用法に規定する公共事業以外にも公共の用に供することが憲法上許容される場合は残っているわけでございます。  その一つが駐留軍特措法により「駐留軍の用に供する」場合でございまして、それには御指摘のとおり「適正且つ合理的である」という現実の当てはめの制約はもちろんかかっていくわけでございますけれども、概して言えば三つの憲法及び法律の関係はそういうことになろうかというふうに考えます。
  111. 立木洋

    ○立木洋君 日本での土地収用法と、日本での特別措置法ですね、米軍の場合はこれはおいて。  収用制度の基本法である土地収用法が昭和二十六年に改正されました。それまでは公共事業ということで第一項目に、冒頭に「国防其ノ他軍事ニ関スル事業」というのが旧土地収用法では掲げられていたわけですね。ところが、これは新しい憲法のもとにおいては、こういうものは非常に妥当性を欠いておる、だから「国防其ノ他軍事に関スル事業」というのを公共事業から廃止し、削除をするということが決められました。  そして、一九六四年の公共用地の取得に関する特別措置法の改正の際には、当時の河野建設大臣が、軍施設を公共の範囲に入れることは適当ではないと述べて、これはもう社会通念であろうと考えますということで、五一年の政府見解を再確認しております。  以上の論議から見ますと、憲法二十九条の一項で言われている財産権はこれを侵してはならないのであって、その場合に特定の国民の財産をその意に反して国家が取得し借り上げたりするような手続を定めた土地収用法の言ういわゆる公共のためという日本の法体制のもとでは、軍隊や軍事の事業を公共と認めてこなかったし、法の規定を厳守し、無視すべきではないというのが、米軍の場合はさておいて、日本で置かれている観点からいえば、この「公共」というものには国防や軍事に関する事業が含まれないということは明確だと思いますが、いかがでしょうか。
  112. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) ただいま御指摘のとおり、旧土地収用法の第二条第一号におきまして御指摘のような条項があり、その用語自体は土地収用法に引き継がれておらないということは御指摘のとおりでございます。  しかしながら、この現土地収用法におきまして自衛隊用地について土地収用法に基づく収用ができるかどうかにつきましては、もう既に何回かにわたりまして国会においても御質疑があり、また質問主意書に対する答弁書におきまして政府の見解を明らかにしておるとおりでございます。  その結果を要約して申し上げますと、現行土地収用法におきましても第三条第三十一号に規定する公共事業として、すなわち第三十一号は「国又は地方公共団体が設置する庁舎、工場、研究所、試験所その他直接その事務又は事業の用に供する施設」、これは公共事業として収用できるという規定になっておりますが、自衛隊の施設用地につきましても、合理性とかそういう要件はもちろんあるわけでございますが、それを満たすならば公共事業として収用の対象になるということは一貫してお答えしているとおりであります。  それからもう一つ申し上げますと、公用地取得特別措置法に基づいては、当時の河野国務大臣が軍施設を公共の範囲に入れるということは考えません、相当でないという見解の答弁をされていることもこれまた御指摘のとおりではございますけれども、これは公共用地取得特別措置法における「特定公共事業」の範囲に含めるのは相当でないと考えたにすぎませんで、一般に土地収用法による収用の対象になることを否定したわけではございません。
  113. 立木洋

    ○立木洋君 私が厳密な意味で言っているのは、いわゆる憲法上の解釈からして、軍事、軍隊というものは今でも日本政府は使わないんです。自衛隊は軍隊ではないと言っているんです。いいですか。ですから、軍事だとか軍隊というものについては憲法上は認められていないんです、日本の収用法についてはそういうふうになっているわけですから。  自衛隊が軍隊か軍隊でないかということを議論すると時間がありませんから私はこれ以上申しませんけれども、軍事や軍隊については、ずっと日本政府は否定をしてきました。自衛隊はそうではないからという形にしてきたんです。私は、その点では憲法上の疑義があって、今まで議論は重ねられてきましたけれども、この点についてはこれ以上申し上げません。  ただ、その点について、そうであるならば、なぜ軍隊であるあるいは軍事行動を米軍にのみ日本土地使用においては認めるのかと。だから、憲法の上にいわゆる日米安保条約を置いておるというふうに言わなければならないということになってくる。  この点について、もう長官は結構です、今度は外務大臣の方に最近の問題と合わせて二点ほど若干お尋ねしておきたいと思うんです。  これは、つまりアメリカの軍隊や軍事行動について日本土地の提供を認めるということは、憲法上からするならば憲法に反した、これはそうではないとおっしゃることはもうわかっていますけれども、そういう意味では、対米追随、大変屈辱的な協定であるということが第一点です。  それから第二点の問題については、そういう状況がありながら、長引けば違法になるというふうに認めざるを得ない状態、梶山官房長官が一昨日述べられたそういう違法状態を短期であっても認めるということは、やはり軍隊優先、安保条約優先ということで非常に重要な問題点があるというふうに指摘せざるを得ないんですが、その点についてはいかがでしょうか。簡潔にひとつお願いいたします。
  114. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私は、日米安保条約に基づきまして、我が国の安全を守る等の目的のために我が国に駐在します米軍の存在あるいはそれの諸活動あるいはそのために必要な我が国政府としてとる行為というものは、いずれも憲法に合致したものであると、このように考えておる次第でございます。  そしてまた、楚辺通信所をめぐる法律問題につきましては、先ほど来法制局長官から御答弁のあったとおりに考えています。
  115. 立木洋

    ○立木洋君 大臣御承知の国防次官補をなさっておられたアーミテージさんがつい先日、三月十五日に明確に述べておりますが、これまで日米同盟は基本的に政治的同盟だった、今後は本当の安保条約、安保同盟にしなければならないと述べられています。  これまで、つまり前進配備の軍事基地として日本を使うだけではなくて、世界各地でアメリカが介入する紛争に自衛隊も参加して、そして海外で日米共同作戦が展開できるように日米安保の質と中身を変えようとするというのが今度クリントンさんが来られて会談をやられる内容の重要な問題点の一つになっているとさまざまな新聞で報道されています。  また、結局、日本でつくられた今度の新防衛計画大綱についても、日本が武力攻撃をされていなくても、つまり日本防衛とは無関係に周辺地域で紛争が起きれば日米安保を発動し、自衛隊が米軍とともに軍事行動に参加するということが事実上述べられています。そして、この「我が国周辺」というのは、日米安保条約で言われている日本の周辺、いわゆる領域ではなくてこの周辺地域ということを防衛庁の秋山防衛局長は特に特定はしていないと述べております。そして、我が国安全保障に重要な影響のある事態が発生する地域が周辺地域であると、こういうふうに述べているんです。極めて重大な安保の解釈が変えられている。  先ほどは再定義とは言わないというふうに言われました。再定義とすると安保条約を変えるということになるからそういうふうな言葉を使われているわけでしょうけれども、実質的には安保条約が強化されて、沖縄における基地を縮小し整理していくというふうな概念とは全く逆行する内容にならざるを得ない。そういうふうな点についてはやっぱり安保の大変な強化になっていく。このアジア周辺における本来の意味日本が平和的に解決しなければならない、そういう立場には逆行することになるのではないかというふうな点を厳しく指摘したいわけです。  その点についての大臣の御答弁を最後にいただいて質問を終わりにしたいと思うんですが、余り変わったことを言われるともう一言また言わなければならなくなるかもしれません。
  116. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) アーミテージ氏の所説については、同氏が現在、米政府の責任ある立場においでにならないということでもございますので、格別の論評は避けさせていただきたいと存じます。  そして、今回の日米首脳会談で、日米関係全般について友好関係のさらなる増進に向かっていろいろお話をするわけでございますが、その中で、日米安保条約の持つ意義というものが現在の国際情勢の中でも非常に大切であるということを確認し、そしてそのために十分日米協力関係をきちんとしていくということを内外に宣明する、こういうことを考えておるわけでございます。日米安保条約の改定だとか、あるいはそれを実質的に変えていくなんということを考えておるわけではございません。  新しい国際情勢の中で、同じ安保条約であっても、それに基づくいろいろな体制があっても、持つ効果というものがいろいろ変わっていくということはあると思いますけれども条約あるいはそれに基づく体制を今回の首脳会談で云々ということは考えておりません。
  117. 立木洋

    ○立木洋君 あとは後日にします。
  118. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 例によって原則論的な問題でございますが、有事に対して対応するとか準備するとかということが盛んに言われるんですが、有事を起こさせないような努力がもっと大事だと思うんです。特に、外務省は防衛庁ではないわけでありますから、防衛庁とは多少意見が対立してもそういう御努力をお願いしたい、こう思います。  それで、このたびの北朝鮮の非武装地帯任務放棄のことについて、新聞情報ですが、北朝鮮韓国を除いてアメリカと直接的に話したいんだと、こういう見解があるようでありますけれども、私などは、日本がアメリカや韓国を説きつけて、向こうはそういう気持ちがあるのかないのか、あるとすれば、大いに結構だよといって北朝鮮と存分の話し合いをするという姿勢を明らかにするくらいがいいのではないかと思うんです。そうでなくても向こうは孤独でかたくななわけですから、このかたくなな心を解きほぐして、例えば人民が飢えているといえば、日本などは格別縁の深い間柄でありますから、一時間でも早くお米ならお米を届けてあげたいという気持ちといいますか、そういうものが響かなければお米を送るにしても意味がないわけですね。だから、そういう心で向こうの心を開かせる姿勢がこちらに必要ではないか。  先ほど来この委員会でも、国交がないから国交がないからということを繰り返されますけれども、これは国交を開こうじゃないかということを事あるごとに向こうに呼びかける、そういう姿勢日本が持たなければ、能力の高い民族ですからなかなか難しいことはよくわかりますけれども、大臣は頭のいいことでは定評があるわけですから、書類を見ても眼光紙背に徹するというふうにだれでも思っておるんですが、事平和問題については、人がよくて善意の塊だという一面を持ってこういう国には接していただけるとありがたい。  十回のうち一回や二回はだまされてもいいじゃないかぐらいの姿勢で、それは知らないでだまされるというのはよろしくありませんけれども、ちゃんと知っておって、それで許される範囲のことはまあまあだまされた格好をしようというぐらいのところがあってもいいじゃないかと思うんです。そういう姿勢がないと、有事有事といって有事の準備をすれば本当の有事になってしまうんですね。これは人類はたびたび経験しました。だから、有事を起こさせない努力をするのが外務大臣としての何よりのお仕事ではないかというふうに思うんです。  アメリカもかなり腕力を振るうのが好きでありますし、韓国はもうつばぜり合いの形でありますから、その中で日本が両国の肩をたたいて、それも理屈はあるけれども我々三国は北朝鮮を包容しようじゃないかということを言い出す立場日本が一番あるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  119. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 武田委員指摘のとおり、有事にどう備えるかということを考えるだけではなく、というよりもその前にまず有事を起こさせないためにあらゆる努力を傾注するべきではないか、とりわけ外交当局としてはそれが務めではないかという御指摘は私どもも傾聴してまいりたいと思います。  私どもも、あらゆる外交努力を通じまして世界の、とりわけ我が国周辺地域の安定、平和を守るための外交を展開してまいらなくちゃいけないと思います。そういった際に、これも御指摘ございましたが、いろいろな形での対話ということをよく心がけていかなくちゃいけないというのもそのとおりだと存ずる次第でございます。  ただ、例えば日米安保条約につきましても、これもただ有事に備えるというだけじゃなくて、そういった備えがあるということが抑止力になり、あるいは事を起こさせないという面でも力があるという点も否定できない、これもお認めいただけるんじゃないかと思います。  さて、具体的に北朝鮮との関係我が国としてとるべき姿勢について委員からお考えをお聞かせいただきました。私どもも基本的に関係の正常化をしなくてはならない、こう考えております。しかしながら同時に、それが単に関係を正常化するだけにとどまるんじゃなくて、やはり朝鮮半島全体の安定に資するものでなくちゃいけない、こう思います。  そういったことを考えてまいりますと、おっしゃるように、我が国としてそういった面でいろいろ効果を引き出すことも可能でございましょう。また、当然のこととして米国も朝鮮半島の安定に対していろいろな影響を及ぼす力を持っておりましょう。あるいは中国もそうかもしれません。しかし、基本的にはやはり韓国北朝鮮との間の南北対話を通じて事を進めていくというのが中心になるわけでございまして、やはりそれとの関係において我が国北朝鮮とのいろいろなかかわり合い、あるいは米国北朝鮮とのかかわり合いというものも、生きてくることもあれば生きてこないこともあり得るんだと思います。そういったことを十分に考えながら私どもは事を進めなくちゃいけませんので、先ほど来韓国とも連携をとりながらと、こういう御答弁を申し上げておるというふうに御理解賜りたいと思います。  そして、いろいろございました米の問題でも、飢えているのならば一刻も早くというお話でございましたけれども、そういったお気持ちもわからぬではございませんけれども、やはり経済協力というものは基本的には国交関係がある、そういった上に立って行われるものでございます。それを、昨年の場合にはああいった特別の異常気象に基づく大変な食糧難の状態であるということで、それこそ委員のおっしゃるようなお気持ちも日本国民の中にはあったんだろうと思います。それで、人道的な見地からの特殊例外的なものとして実行された、こういうことでございます。  善意の塊でたまにはだまされてもいいじゃないかというお話がございましたが、そういった崇高な姿勢も大切だと思いますけれども、一方におきまして、やはり世界のいろいろな現実というものを踏まえながら我が国外交に誤りなきを期してまいりたい、こう考える次第でございます。
  120. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 お考えはよくわかりましたが、重ねて、北朝鮮に対する場合に、韓国考え方の範囲内において接するとか、アメリカの考える範囲内において接するんじゃなくて、一歩でも半歩でも本当の平和に向かう考え方で日本独自の接触の仕方、できれば一日も早く国交を回復するという御努力を重ねてお願いして、次の問題に移ります。  今お話がありました日米安保の問題ですが、大臣のお話を伺いますと、これは特定の国を指したものではない、東アジアの安定を図るという全般的な考え方に立つものだというお話を伺いましたが、アメリカあたりに見られる論調でも、やはり中国北朝鮮を主たる注意すべき相手として考慮しているということは繰り返されておりますし、またそう思っても無理がないというふうにも思われます。  そこで、私は原則論を繰り返しているわけでありますけれども日本とアメリカの提携だけではどうしてもそういうように、武見委員にもお話がありましたが、この間、銭其_外相が来られても、中国の方はそれを身に感じているというようなこともありますので、私としては、アメリカとではなくて、アメリカはもちろん一番大事なのでありますけれども中国とも北朝鮮とも韓国とも、できればロシアとも安全保障の枠組みをつくったらどうかということを申し上げたことがあります。  たまたまアメリカのぺリー国防長官のお考えということでも、東アジアあるいは東北アジアの安全保障というものは、日米だけでは十分じゃない、やはり第一に中国北朝鮮韓国はもちろんだけれども、ロシア、日米を入れて六つになりますか、六つの国の協力体制における安全保障ができれば今よりもはるかに安定的な状態が構築できるだろうという意味のお考えがあるようであります。もちろんこれは御存じのことと思いますけれども、今の状態よりもさらに安定的な状況をつくるという方向に御努力を願いたいと思うんですが、いかがですか。
  121. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私ども日米間の関係は極めて大切だと思っております。我が国外交あるいは我が国の安全を大いにしてくれる意味において最も大切な関係ではないかと考えております。  しかしながら、それならばそれだけでいいのかと言われれば、決してそうは考えておりません。それは、関係各国との関係、あるいはお互いに影響をし合う間柄にある各国との間での関係をよりよいものにしていくことは当然でございます。したがいまして、それがたとえ条約だ何だというふうになりませんでも、いろいろな対話を進めていかなくちゃいけない。それはバイラテラルなものだけでなくてマルチラテラルなもの、あるいはリージョナルなものも安全保障の分野においては必要だと、こういうふうに考えておるところでございます。  そういった観点から申しますと、現にASEAN地域フォーラムなんという仕組みもございますし、それから政府間のものではございませんが、例えばアジア太平洋安全保障協力会議がございまして、これでは日米韓のほかに、例えば今お話がございましたロシアとかあるいは北朝鮮とかが入っておるという場もございますし、そのほかにも北東アジア協力対話、これも民間のものでございますが、そういったものもございます。そういったフォーラム等がいろいろできていくということは地域の安定を図っていく上で大切だと、こういう考えでおる次第でございます。
  122. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 お話はよくわかるんですけれども、仮にそういう体制がとれるとして、そういう六つの国が共同体制をとるということになったら沖縄を初め在日米軍基地をどの程度減らすことができるのか、これは相当減らせることは想像にかたくないと思います。  これは別としまして、今アメリカの大統領選挙で、クリントン大統領の相手役のドール氏の秘書のようでありますけれども中国北朝鮮、ロシアの核攻撃に対してアメリカの全国土を防衛する防衛網をつくるべきだということを、これは選挙向けの議論かもわかりませんけれども、それを盛んに言っておられる。クリントン大統領は、そんなことは金がかかってとても話にならないとか、あるいはそういうことはしないというロシアとの条約があるからできない、こう言って対抗しているようでありますけれども、仮に選挙向けの議論にせよ、明らかに中国北朝鮮、ロシアの名を挙げてそういう論議が出る、アメリカの有力者の中にはそういう考え方がある。  これがさらに進んでいけば、これはCTBTに中国が入るのか入らぬのか、今のところは入ると言っておりますけれども、心から賛成はしていないのじゃないか。核の対立ということが議論されるような状況のもとで、中国としてはそう簡単に核実験をやめますと言えるかどうか。常識的に言って、やはりアメリカと同じレベルには行かないまでも、アメリカ本土を直撃するまではやってやろうという気持ちを持っておかしくない、こういうふうに思うんです。  だから、そういうふうになりますと、勝ち負けではなくて、いわゆる核の冬によって全人類、生きているものが全部つぶれてしまうわけでありますから、そういうことも考えに入れて、中国とアメリカの核の対立のないプロセスをこれから探求するということが日本世界政策の重要な課題になってしかるべきではないか、こういうふうに思いますけれども、どうでしょうか。
  123. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私ども世界情勢全体を見てまいりますと、核も含めましてなるべく軍事力のレベルを下げていって、その中で均衡を持ちながら安定を保っていこう、そういう動きにあるんだというように認識しております。  そういった中で、核について申しますならば、一方で核の拡散を防ぎながら、一方、核保有国の間ではレベルを下げていくということがなされていることは事実でございますし、また核実験につきましてもいろいろ着実に努力が積み上げられておりまして、現在はCTBTをどうするかという段階に来ておるわけでございます。  我が国といたしましては、そういった動きをさらに促進していくために努力してまいりたいと思っております。核についても積極的に取り組んでおりますし、それ以外の通常兵器の分野につきましても、国連等の場におきましてその縮小の方向にいろいろ努力を払ってきているところでございます。そういうことで御理解を賜りたいと思います。
  124. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 終わります。
  125. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 最初に、先般来日しました中国の銭其シン外相との会談内容についてちょっとお尋ねしたいと思います。  報道によりますれば、中国の核実験停止問題が取り上げられたということですが、その会談内容を極めて簡単で結構でございますから御披露いただければと思います。
  126. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) ただいまの御質問、銭其シン中国外相と私との会談、三月三十一日でございましたが、会談全体についての内容を……
  127. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 いや、核実験だけで結構です。
  128. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 実は私が銭其_外相とお会いするのは私が就任いたしましてから三度目でございます。プーケットそしてバンコクでそれぞれ一時間程度会談を持っておりまして、今回も持ったわけです。  核の問題につきましては、過去二回の会談においても我が国考えは十分申し上げましたし、また先方も先方の基本的立場は繰り返しておったわけでございます。そういったことを踏まえまして今回の会談が持たれたわけでございます。  今回の会談におきましては、私の方から既に中国の核実験の停止を求めるということをまず申しました。とりわけ、フランスが御承知のとおりのようなことでこれ以上もう核実験を行わないということもはっきりしたわけでございますので、中国もぜひ核実験の停止をすべきであるということを主張いたしました。それともう一点は、CTBTの早期妥結に向かって中国努力するようにと。とりわけ、中国が平和的な小規模核爆発は例外にする、こういう立場を表明しているところでございますが、それは国際社会には中国の主張を認めるという声はないよと、ここのところはやはりきちんとすべきでないかということを申し上げました。  それに対しまして銭其_外相の方からは、これも中国のこれまでの基本的な立場でございますけれども、すべての核保有国の中で先制的使用をしないということをはっきり言っているのは自分のところだけなんだと、そういうことを主張されましたり、それから中国の場合は他の核保有国からの威嚇を受けておるんだ、こういうふうなことを言っておりました。それから、CTBTにつきましては積極的に参加しておるし、ことしじゅうの合意達成、そうして調印ということに向かって努力したいと、こういうふうな話がございました。そしてなお、日本が核の問題については非常に敏感であるということはよく承知しておると、こういったコメントもあったわけでございます。それと同時に、しかしながら実験をやめるとかあるいは小規模爆発の例外という主張を取り下げるという発言はなかったと。  以上がその概要でございます。
  129. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 次に、沖縄楚辺通信所基地問題についてお尋ねしたいと思います。  最初に基本的なことですけれども、今問題になっております知花昌一氏があそこに土地を所有したのはいつごろか、そのいきさつはどうなのか、それから彼の所有する面積はいかほどか、基地全体の何%を占めておるのか、なおかつ彼の所有地というのは極めて重要な箇所にあるのか、周辺部分を返還しても何ら基地の機能には影響しないようなそういう箇所にあるのか。その辺のところをちょっと説明してください。
  130. 小竹秀雄

    説明員(小竹秀雄君) 御説明いたします。  今の御質問沖縄県の読谷村に所在する楚辺通信所の総面積は五十三万平方メートルあります。このうち、国有地を除く民公有地は約五十万平方メートルであります。所有者数は約四百四十名となっております。  これらの民公有地につきましては、賃貸者契約に基づき使用権原を取得し、米軍に提供し……
  131. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 聞いたことだけでいいです。
  132. 小竹秀雄

    説明員(小竹秀雄君) はい、わかりました。  知花氏の土地でございますが、知花昌助の名義の五筆のうち一筆、面積につきましては二百三十六平方メートル、先ほど申し上げました全体の五十万平米に対して割合は〇・〇五%でございます。
  133. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 知花氏が所有したのはいつですか。それから、そのいきさつはどういうことで所有者になったのか。それも簡単に。
  134. 小竹秀雄

    説明員(小竹秀雄君) 所有しましたのは平成六年の六月一日、贈与を原因として長男知花昌一氏に所有権が移転したものでございます。
  135. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 知花氏からこの契約期間が満了したら更新には応じない、土地は返してもらいたいという意向が示されたのはいつごろですか。
  136. 小竹秀雄

    説明員(小竹秀雄君) 先ほど御説明いたしましたが、平成六年六月に所有権が移転して以来二十三回にわたり契約更新の折衝を重ねておりましたが、六年の十二月ごろ、更新に応じられない旨の回答を得たところでございます。
  137. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 ほぼ一年以上前にそういう申し出があったわけだと思いますが、行政側とすればどういう対応をとられたのか、それをまたお願いします。
  138. 小竹秀雄

    説明員(小竹秀雄君) 知花氏が契約に応じられないということでございましたので、私ども日米安保条約六条に基づき施設及び区域として米軍に提供する必要があるということで、やむを得ず駐留軍用地特措法に基づく使用権限取得の手続をとることとして、過去三回の手続期間の実績、これは昭和五十七年、昭和六十二年、平成四年でございますが、その実績を考慮して平成七年の三月二日に手続を開始したものでございます。
  139. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 大田知事が代理署名を拒否したのは九月末ごろだと思いますけれども、裁判手続現実に開始されたのは十一月ぐらいでありまして、若干の期間の猶予があったようですが、その間、政府あるいは行政はいかなる措置を講じておったのか、そこもちょっと説明してください。
  140. 小竹秀雄

    説明員(小竹秀雄君) 今、委員の御指摘のとおり、裁判は確かに十二月に入っておりますが、その間、沖縄県知事の理解が得られるように説明し、説得してきたところでございます。
  141. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 私は、政治というのは結果がすべてだと言ってもいいと思うんです。話し合うことも大切でしょうけれども、結果が得るところがなければ、何の話し合いか、見通しを誤ったと言われても仕方がないわけです。  三月三十一日に期限の満了が来るというところから逆算いたしまして、裁判にどれぐらいかかる、知事との話し合いにどれぐらいかかるというようなことを逆算していけば、おのずとどの時点から手続を開始するということはこれはすぐにわかるわけですけれども、率直に申し上げますと余り実りのない話し合いにむだな、むだなという言い方はちょっと語弊がありますけれども、むだな時間が費やされたのだろうかというふうに考えるんですけれども、その点いかがでしょうか。
  142. 小竹秀雄

    説明員(小竹秀雄君) 御説明が若干重複いたしますが、今回の手続は、先ほども説明いたしましたように、過去三回の手続の対象人数とか筆の数とか手続の期間の実績等を考慮した上、先ほども説明しましたように平成七年三月三日に手続を開始したものでございます。現在は、今御指摘のありましたように、三月三十一日で契約を終了した土地については、三月二十九日、沖縄県の収用委員会に裁決申請及び緊急使用の申し立てをしているところでございます。
  143. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 最初からこれに間に合うような見通しがあったのかどうなのか。そこの点はいかがでしょうか。
  144. 小竹秀雄

    説明員(小竹秀雄君) たびたび重複しますが、過去の実績とかそういうものを十分考慮いたした上で私ども使用権原が得られるというふうに考えておるところでございます。
  145. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 結局のところ、法の空白状態が生じているようなことなんですけれども、率直に申し上げますとこの点についての政府の責任というものは私は極めて大きいと思うんです。やっぱりこういう状態が生じないように着々とかなり早い時期から所要の手続を踏む、それに合わせてまた話し合いも進めるということが、これは当たり前の政治であり、当たり前の行政だろうと思うんです。今度は大臣の方にお尋ねしたいと思いますけれども、その点いかがでございましょうか。
  146. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 本件につきましては、それぞれの段階においてその衝にあった方々は最善の道と思って対応してこられたんだとは思いますけれども、残念ながら現在いわゆる権原がない状態になっているというのはまことに残念だと、こう考えている次第でございます。  目下所定の緊急使用の手続をしているわけでございますが、一日も早くその許可が出ることを期待したい、そして委員おっしゃいますところのきちんとした姿で提供できる状態、結果が早急に出ることを期待したいと、こう思っております。
  147. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 政府の公式見解は直ちに違法とは言えないということのようでございますけれども、私も法学徒の端くれといたしまして、こういう考え、法律見解があるんだろうかと。違法でなければ適法、適法でなければ違法。こういう解釈というものは、国民に対して価値判断の基準を示すわけですから、国民が聞きましてこれは違法なのか適法なのか。  先ほどの話によりますと、しかるべき時間が経過すると違法になるというような見解も官房長官の方から出ておるようですけれども、それならば、一体何カ月経過すれば違法になるのか、その一日前の状態はどうなんだ、何で一日経過するとそのときから違法になるのかと、こういう説明もやっぱり必要になるわけです。違法でなければ適法だというふうにしか考えられないわけなんですけれども、直ちに違法とは言えないという状態は、先ほども質問に出ておりましたけれども、適法と考えてよろしいのでございましょうか。所管省としてちょっと見解を示してもらえればと思います。
  148. 野津研二

    説明員野津研二君) 御説明申し上げます。  本件土地につきましては、御案内のとおり賃貸借契約の期間が終了しておりまして、それにかわって駐留軍用地特措法に基づく手続を今とっておるところでございます。しかしながら、残念ながら本日現在沖縄県の収用委員会におきます結論が得られていないという状況でございます。  したがいまして、占有につきまして権原のない状態にあるということは事実でございますので、そういう点を踏まえますと、ストレートに適法という表現を使わずに、いろんな場で御説明をさせていただいておりますが、四点ほど事情を申し上げまして、現在土地所有者に返還されていない状態について直ちに違法であるというには当たらないのではないかといったような表現をさせていただいておりますところでございますので、その点について御理解を賜りたいと思っております。
  149. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 余り細かな法律議論をする気はないんですけれども、それはやはり適法状態とはどうも違うようですね。ですから、適法と違法との間にもう一つ何か灰色の、グレーゾーンがあるようで、そういう法律見解があるというのは私は初めて聞いたんですけれどもね。これはまじめに議論をした結論なのかどうか。  それからもう一つ、官房長官の先ほどの話では時がたつと違法になるんだと。では、その時というのは何カ月かということもちょっとわかれば示してもらいたいと思うんです。
  150. 野津研二

    説明員野津研二君) この見解につきましては、まず政府部内で関係省庁等含めましていろいろ議論した結果得た結論でございます。  なかなかわかりにくいという点、御指摘のような点があろうかと思いますが、一方では賃貸借契約が既に終了しておる、それにかわる権原が得られていない、他方、安保条約に基づきますところの提供義務というものを国は負っておると。そういう中から今のような国として措置をとり、また御説明をしているところでございまして、ある一定の時間なりが過ぎたらどうというふうになかなか単純に割り切れない面があるところでございますので、その点御理解を賜りたいと思います。
  151. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 政府は、行政というのは法律を執行するわけですから、執行しておるものが一体これは適法なんですか違法なんですかと国民から聞かれて回答に窮するということでは大変困るわけでして、やっぱり適法なら適法、違法なら違法と、まずその点のスタンスをきちっと決めていただかないと国民はただ迷惑するばかりであろうという気がしております。  簡単に申せばそれはごまかしの法律論なんでしょうかね、あなたと余り議論してもしようがないんですけれども
  152. 野津研二

    説明員野津研二君) 私どもといたしましては、現在のような非常に不安定な状況というものを一刻も早く解消したいということで、沖縄収用委員会の結論をできるだけ早くいただきまして、占有につき特措法に基づくところの権原を得ることが重要であって、それに最大限努力したいと、こういうふうに考えている次第でございます。
  153. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 大学の法学部に籍を置いた人ならばすべて知っておることなんですけれども、当然の常識なんですが、宇奈月温泉事件というのが昭和十年に大審院の判例が出ておりますけれども、これまた簡単でいいですから事件の概要と大審院の結論、その理由を簡単に説明してもらえればと思います。
  154. 山崎潮

    政府委員(山崎潮君) ただいまの点について、詳しくは宇奈月温泉事件を調べてはこなかったわけでございますけれども、温泉を引く利用権が他人の土地を通っているという事件だろうと思いますけれども、その撤去を求めるということで、その撤去が認められなかったというふうに承知をしております。これも、その温泉のパイプを引く者についてはそこを利用する権利はなかったという状況でございますが、所有者の方から撤去を求めたということになりますが、それが認められなかったという事案だというふうに承知しております。
  155. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 この事件は、温泉を引くための賃貸借契約があってそれが期間が切れたという問題じゃなくて、もう最初から他人の土地に引いてしまって、何年かたってその土地の所有者から撤去を申し入れられて、そこが裁判で争いになりました。いろんな状況にかんがみると、引き湯権という言葉ですけれども、引き湯管、それの撤去を求めるのは権利の濫用であるといって初めて権利の濫用を認めた裁判例なわけであります。知花氏の場合よりももっとはっきりしておるような無権原状態なわけですが、いずれにしろ、権利者の要求に応じて引き湯管を撤去する義務はないというのが大審院の判断であって、その管を撤去しろというのは権利の濫用である、こういうことなんです。  率直に申し上げまして、知花氏の主張は私は権利の濫用と言われても仕方がないのではないかという気がしておるわけです。ですから、国とすれば、引き湯管というのか、逆に基地を占有使用しているのは違法状態ではあるけれども、所有者の要求に応じて撤去する義務まではないと。その違法状態を速やかに解消するために万全の努力を尽くすべしというようなことが落ちつく先の法律見解ではないかという気がしますけれども、いかがでしょうか。
  156. 山崎潮

    政府委員(山崎潮君) 法律論ですから私の方からでよろしゅうございますか。  先ほどから議論を拝聴しておりまして、確かに民法上権利はないということは明らかでございます、賃貸借契約は終了したわけでございますので。そうだからといって、ではこれが直ちに違法になるかどうかという問題は、結局明け渡しが権利の濫用だということは、最終的にその行使が許されないということになるわけでございます。ですから、その観点から社会的には明け渡しが相当ではないという判断になりまして、結局はその反射的効果としてそこを占有していることができる。民法上は権利はないかもしれませんが、社会的に許容される占有という考えになろうかと思いまして、直ちに違法になるかどうかは別問題というふうに考えております。
  157. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 民法上の問題として考える場合には、占有権あるいはまたその土地を使用する権利はないが直ちに明け渡す義務もないんだというふうな、要するに違法ではあるが明け渡す義務はないんだというような考え方が成り立つ余地があるのではないかと私は考えておるのですけれどもね。また、この問題に対する法律見解の解釈は唯一これしかないのだろうというふうに思っておりますが、その点いかがでしょうか。
  158. 山崎潮

    政府委員(山崎潮君) 考え方としてはそういう考え方も方法論としてはあろうかと思います。
  159. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 法律論ですから、余りおどおどしないで、後ろ向きにならないで、後ろめたい気持ちを持たないで堂々と議論されたらいかがでしょうか。  そういうふうに私は要望しておきまして、私の質問を終わります。
  160. 矢田部理

    ○矢田部理君 近々行われる日米首脳会談、安保再定義が議論になっておりますが、共同の文書がつくられるということでありますが、それに関連して何点か話を聞きたいと思います。  第一は、日米軍事同盟といいますか、同盟関係アジア太平洋地域の平和と安定のために役割を果たす、寄与するというような趣旨の文言が入ると言われているわけでありますが、このアジア太平洋地域というのは、地理的範囲はどんなことを考えているんでしょうか。大臣にお聞きします。
  161. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私ども、今回の首脳会談日米関係は大切なことである、そういうことを確認してまいりますが、その中で日米安保条約、それに基づく体制我が国の防衛のために必要不可欠であるということと同時に、日米協力関係の政治的な基盤をなしている。それからさらに、アジア太平洋地域の平和と繁栄にとっても極めて重要な役割を果たしておる、こういうふうな認識に立っていろいろ話が行われるものと、こう考えております。具体的な文章の文言は別でございますけれども。  そして、アジア太平洋地域がどうかということでございますけれども、これを具体的に定義づけるということはいたしません。アジア太平洋地域ということでお考えいただければいいのではないかと、そういうふうに考える次第でございます。  なお、念のために申し上げておきますけれども、それは日米安保条約に規定されている我が国周辺地域、いわゆる極東地域でございます。それの地域をどうこうするということと直接にかかわってくる問題じゃございません。
  162. 矢田部理

    ○矢田部理君 まだそこまで聞いていないんですよ。  アジア太平洋地域と言った場合にインド洋とか中近東、ペルシャ湾などは入るんでしょうか入らないんでしょうか。
  163. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) いろいろございますですね。アジアと言った場合にいわゆる南西アジアといいましょうか、インド、パキスタン等の地域、あるいは今おっしゃいました中東地域、そういったところを入れるという考え方もございます。しかし、一般的にアジア、太平洋という二つの言葉を一緒にしましてその地域状況をどうするかというのは、これは経済関係考えるのかあるいは安全保障関係から考えるのかによって必ずしも同一のものではないのではないかと思います。  一般的に申しまして、安全保障の問題を考えます場合には、やはり我が国を含みます東アジアであるとかあるいはそれに隣接する地域というものを念頭に置きながら考えるべきであると思います。しかし、どこからどこまでと区切られているわけではございません。もとより経済関係アジア太平洋と言った場合には、御承知のようにアメリカとかカナダとか、場合によってはオセアニアも含めて、そういったところも考えられることもあると思います。そういうことでございます。だから、そのときそのときによって、いわば相対的な概念と言ってはなんでございますけれども、そういうふうに考えております。
  164. 矢田部理

    ○矢田部理君 重要な日米間の安全保障に関する政治文書をつくるわけですから、その言葉が今言ったように漠たるものでは困るのであります。特に、経過的に見ればナイ・イニシアチブといいますか東アジア報告が土台になっていると思われるわけです。この文書を見れば、インド洋はもちろんでありますが、ペルシャ湾の海上交通路まで言及をしているわけでありまして、ここを含めた平和と安定と安全ということまで考えておられるのではありませんか。
  165. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) そこのところは、極論いたしますと、やはり日米の安保体制がきちんとしていることは世界全体の安定に資するものだと、こういうふうに考えております。そして、それが世界の中のどの地域にどの程度のいわば効果を持つかということは、ここは一〇〇であり、ここはゼロだと、いろいろそれは効果は全然違うんだと、こう思いますですね。
  166. 矢田部理

    ○矢田部理君 大変心もとないんですね。  そのために米軍が十万人体制を維持する、こうなっているわけですが、その十万人の米軍の守備範囲はどうなんですか。
  167. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) これはいわゆるアジアにおいて十万人の米軍のプレゼンスを維持する、こういうことになっていると思います。それはアメリカにおける定義でございますので、具体的には政府委員から答弁いたさせます。
  168. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) アメリカが十万人体制と申しておりますのは、例えば日本、それから韓国にいる兵力プラス第七艦隊のような船に乗っている兵力を合わせて十万人という数でございます。
  169. 矢田部理

    ○矢田部理君 それは私はわかっているんだけれども。ですから、その守備範囲はどこまで及ぶのか、地理的範囲はどういう範囲になっているのかという亡とです。
  170. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 第七艦隊の守備範囲ということでいきますと、インド洋のところまで入っていると思います。
  171. 矢田部理

    ○矢田部理君 中近東は入りますか。
  172. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 具体的な紛争等が生じたときにさまざま移動していっておりますので、第七艦隊が中近東の方に行くこともあり得ます。
  173. 矢田部理

    ○矢田部理君 安全保障上の範囲をどうするかとか、軍隊の役割をどう位置づけるかとか、十万人体制をどう見るかということは、日米関係にとっても、それからアジアの安全保障考える上においても非常に重要な課題なのですが、全部あいまいもことしているじゃありませんか。  沖縄に駐留する米海兵隊、これは中近東は守備範囲に入っていますか。
  174. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 能力としては中近東で展開する能力を持っていると思います。
  175. 矢田部理

    ○矢田部理君 能力を聞いているんじゃないんです。余り答えをそらさずに今のその問いに答えてく、ださい。
  176. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) その前に、先ほどのお答えで不正確だったところがあるのでお答え申しますと、中近東は第五艦隊の守備範囲になっているようでございます。
  177. 矢田部理

    ○矢田部理君 沖縄の第三海兵師団は太平洋海兵隊の傘下に入ると。太平洋海兵隊というのは在韓の米海兵隊、それから中央軍も含めて指揮下に入るわけですね。それはお認めになりますか。
  178. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 第三海兵機動展開部隊というのは太平洋海兵隊の下に属しております。
  179. 矢田部理

    ○矢田部理君 その第三海兵隊が太平洋海兵隊の傘下に入るために、一たん事が起こると日本からペルシャ湾まで出撃をするという過去の事実がありますね。  そのときに日本外務省は、領海や領空を出るまでは目的を持たずにスタートしたんだと、外洋に出てからアメリカの新しい編成のもとに参画をして行ったんだから日本からの直接の出撃ではないと今まで誰弁を弄してきた。そして、それを極東条項に違反しないと、極東の範囲を超えているんじゃないかということに対する弁解としてきた。ところが、今度の場合には、米軍の駐留が単に日本と極東の平和と安全だけではなくて、アジア太平洋地域の平和と安全に寄与するという趣旨の文言がうたわれることになるというふうに言われておりました。これは安保条約の逸脱ではないか、極東条項ののりを越えるものではないかという厳しい指摘がマスコミなどからはなされておるし、先ほど問題になった東アジア報告はそれをにらんだ報告書だというふうに私どもは受けとめているのでありますが、何か御異論がございますか。
  180. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 日米安全保障条約目的は、我が国の安定、そして極東の安定と平和に資する、こういうことになっているのは御承知のとおりでございます。そして、我が国に駐留いたします米軍は、そういった目的あるいはその条約に基づく米軍の責務を果たしていく、そういったことのためにアメリカのコミットメントをきちんとあらわすというもので駐留するものでございます。  それから、委員当然御承知のことでございますけれども、その目的を果たすためには、仮に緊急な事態が起きた場合には、その駐留米軍だけで対応するとは限らない、場合によってはそれに必要な勢力をさらに派遣してくるということも当然あり得るわけでございます。それから他方において、先ほどからお話ございましたけれども、米軍の運用の中において、我が国におります米軍がいろいろ移動するということはあるわけでございまして、そのことと安保条約との間に矛盾があるということではないと、このように御理解いただきたいと思います。  そして、アジア太平洋地域ということを申しましたけれども、それはこういった日米間の安保体制も含めた協力関係がきちっとしているということによってアジア太平洋地域全体の安定に効果がある、こういうことでございまして、このことによってこれまでの安保条約目的とするところ、あるいは極東の地域に変化があるというふうなことではないというふうに御理解をいただきたいと思います。
  181. 矢田部理

    ○矢田部理君 時間があれば個別にいろいろ詰めたいことが多いわけでありますが、私の認識は、冷戦が終わったということになると、軍事同盟で日米関係をつなぐ、それを基軸にするという考え方、立て方は私は賛成しかねる。  日米関係は重要であることは了解をしますけれども、やっぱり軍事同盟は解消に向けて進めるべきだという考え方に立っておりますのに、今度の日米首脳会談における再定義は、安保条約の極東条項などを逸脱して目的と範囲を拡大する、安保条約の拡大強化路線ということで強く反対をすると同時に、今までペルシャ湾に展開をする、ソマリアのPKOに出向いていく、こういうアメリカがとってきた既成事実を追認し公式に認めることにもなりかねないということで、大変危険な問題をはらんでいることを指摘しておきたいと思います。  かかわってもう一つ沖縄の基地の返還問題が議論になってきているわけでありますが、日米首脳会談がことしの二月、サンタモニカで行われました。そのときに橋本総理大臣は、普天間の基地についてでありますが、沖縄県民の要望を伝えるとすれば普天間の全面返還をお願いすることになるけれども日米安保の重要性を考えるとそれを要求することはできない、普天間の基地の返還要求はしないということを公式に言明されたそうですが、そのとおりでしょうか。
  182. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) サンタモニカで行われましたクリントン大統領との橋本総理のお話し合いの中で、一つの例示として普天間については沖縄県民の要望が強いということを総理から話された、このように承知しております。しかし、そこから先、あの場において個別のところの基地を、これを返還を要求するんだ、いや、それはだめなんだという、そういったやりとりがあったわけではございません。  一般的に、日米関係を大切にしなくちゃいかぬ、日米安保関係が不可欠であるということをしなくちゃいかぬ、そのためにはやはり沖縄の基地の問題にもいろいろと真剣に取り組まなくちゃいけないなという話の中で一つの例示としてあったと、こういうことでございます。
  183. 矢田部理

    ○矢田部理君 返還を求めたのではなくて、返還の要求はできないと言ったから私は問題にしているんです。沖縄が今当面の課題として一番求めているのは普天間基地の返還です。そのことだけ申し上げておきたいと思います。  時間がありませんので、ACSAについて伺います。  首脳会談が行われると同時に、物品役務融通協定締結をされるというふうに伝えられております。この協定では、武器の予備部品あるいは武器の構成品が含まれるというふうに考えてよろしいでしょうか。
  184. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 今現在この日米物品役務提供協定、これは自衛隊と米軍の共同訓練等の際に物品または役務を相互に提供する枠組みを設けるということが安保体制の円滑な運用を図るという観点から重要な意義を有するということで、可能な限り早くまとめるべく現在最終的な調整を行っておりまして、日米間それから政府部内で種々検討を行っている最中でございますが、まだ合意を達成するには至っておりませんし、まだ結論を申し上げる段階ではないということを申し上げたいと思います。
  185. 矢田部理

    ○矢田部理君 経過や内容じゃなくて、外務省からちゃんと資料をもらっているんですよ、外務省文書を。この中に武器の予備部品とか構成品が含まれるかと聞いている。イエスかノーかで答えてください。
  186. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) アメリカは例えばNATOの諸国と協定を結んでおりますけれども、その中に予備部品、構成品等が入っているということでございます。それを日米間でどう取り扱うかということについては、先ほど申し上げましたように今交渉をやっている最中であるということでございます。
  187. 矢田部理

    ○矢田部理君 端的に答えてほしいのは、時間がないんですよ。もう新聞も何もこういうことをはっきりさせているじゃありませんか。武器の予備部品が含まれるということになると、かねてから議論してきた武器輸出三原則に抵触をすると。技術の提供でかつて穴をあけて、また大穴をあけようとしていることは私どもは認められないというのが一つ。  もう一つは、この物品や役務の提供は平時に限られますか。有事の際はないということを断言できますか。
  188. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 平時、有事定義は難しゅうございますので、なかなか一刀両断にお答えするのは難しいわけですが、例えば米軍の戦闘行動に対する支援を目的とするようなことはございません。
  189. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこでまた問題になりますのは、領海、領空を出るまでは戦闘行動じゃないと。これは米軍がよく使う手です。先ほどのペルシャ湾に行くときもそうでした。そこで、この武器の予備部品などを提供して、領海から出たら今度は作戦行動に入るというようなことで、公然と脱法が行われる危険性があるというのが一つ。  もう一つは、このPKOの場合にはよろしいと。アメリカのPKOはPKFを含むわけでありますが、PKFで武力行使をしている米軍にPKOということだからということでこの部品の提供と武器の予備部品等の提供等が可能かどうか、この二つについて伺っておきたいと思います。
  190. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) PKOに関する部分につきましては、PKOに関する日本国内法がございます。その国内法の枠内で実施するということでございます。
  191. 矢田部理

    ○矢田部理君 したがってPKFは入らないと。
  192. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) PKOで協力できる範囲で協力をするということでございます。
  193. 矢田部理

    ○矢田部理君 だから、アメリカの武力行使を伴うPKFにはこの部品等の提供はできないというふうに考えてよろしいですか。
  194. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 私はPKO協力法の担当ではございませんけれども、PKO協力法の中にいわゆるPKO五原則というものが入っておりまして、あの五原則に合致した彩で当然ながら実施が行われるということであります。
  195. 矢田部理

    ○矢田部理君 もう一問の前者はどうですか。  では、私が一言だけ言って終わります。  ACSAということで、物品役務融通協定締結をされようとしているのでありますが、従来の日本安全保障に対するいろんな基本、これにかかわることでありますから、武器の供与、これは予備部品だとはいっても一部ねじを外せば予備だという評価もできないわけじゃありません。  大変危険な問題で、有事体制づくりの一つというふうな位置づけもあれば、集団自衛権に踏み込むのではないかというおそれも指摘をされているのでありまして、これについては私どもは賛成しかねるということだけを申し上げておきたいと思います。
  196. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 他に御発言もなければ、両件の質疑は終局したものと認め、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  197. 立木洋

    ○立木洋君 私は、日本共産党を代表し、WTO譲許表の修正及び訂正に関する確認書に反対の立場で討論を行います。  統一システム条約に伴う今回の事務上の修正改定には一定の合理性があると思います。しかし、今回改定される譲許表は、日本の農業、経済など国民生活に重大な影響を与えるマラケシュ協定での関税率、輸入数量などを記載した譲許表の問題をそのまま引き継いでおります。その中には、日本の農業に壊滅的な影響を与える農産物輸入自由化の約束が明記されています。  さらに、鉱工業製品の平均関税率を一・五%として、先進国中で最低となっております。この低い関税率のもとで低価格の外国製品の輸入が拡大し、ただでさえ戦後最大、長期にわたる不況で苦しめられ、倒産の相次いでいる地場産業、中小企業をさらに苦境に追いやることになります。この状況は、今回の確認書によって何ら改善されていないのであります。  こうした低関税率は、輸出競争力の強い多国籍企業と先進大国の利益増を保障し、その反面、特恵関税と一般関税の差を縮小し、発展途上国の競争力を低下させ、いつまでも発展途上国を不利な状態に置き続けるものであります。  以上の理由によって反対することを表明して、討論を終わります。
  198. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  まず、千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定譲許表第三十八表(日本国譲許表)の修正及び訂正に関する確認書締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  199. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、インド洋まぐろ類委員会設置に関する協定締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  200. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、両件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  201. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十五分散会