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1996-03-01 第136回国会 参議院 科学技術特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年三月一日(金曜日)    午前十時開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         長谷川 清君     理 事                 鹿熊 安正君                 吉川 芳男君                 石田 美栄君                 川橋 幸子君     委 員                 海老原義彦君                 沓掛 哲男君                 河本 三郎君                 志村 哲良君                 楢崎 泰昌君                 松村 龍二君                 友部 達夫君                 林  寛子君                 山崎  力君                 峰崎 直樹君                 山本 正和君                 阿部 幸代君                 立木  洋君                 佐藤 道夫君    国務大臣        国 務 大 臣        (科学技術庁長        )官       中川 秀直君    政府委員        科学技術庁長官        官房長      工藤 尚武君        科学技術庁科学        技術政策局長   落合 俊雄君        科学技術庁科学        技術振興局長   沖村 憲樹君        科学技術庁研究        開発局長     加藤 康宏君        科学技術庁原子        力局長      岡崎 俊雄君        科学技術庁原子        力安全局長    宮林 正恭君    事務局側        第三特別調査室        長        塩入 武三君    説明員        文部省初等中等        教育局中学校課        長        加茂川幸夫君        気象庁総務部企        画課長      由良  武君    参考人        動力炉核燃料        開発事業団理事        長        大石  博君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○科学技術振興対策樹立に関する調査  (科学技術振興のための基本施策に関する件)     —————————————
  2. 長谷川清

    委員長長谷川清君) ただいまから科学技術特別委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  科学技術振興対策樹立に関する調査のうち、科学技術振興のための基本施策に関する件について、本日、動力炉・核燃料開発事業団理事長大石博君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 長谷川清

    委員長長谷川清君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 長谷川清

    委員長長谷川清君) 科学技術振興対策樹立に関する調査のうち、科学技術振興のための基本施策に関する件を議題といたします。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 海老原義彦

    海老原義彦君 おはようございます。自民党の海老原義彦でございます。中川大臣大臣御就任本当におめでとうございます。  前回、二月二十三日の当委員会所信表明を伺いました。まことに力強い立派な所信表明でございました。私も共鳴するところ数々ございます。例えば、「科学技術は、経済構造を改革し、新しい経済社会のフロンティアを生み出す源泉であります」という冒頭のお言葉、それから途中にも、「人類共通の夢を実現する未来への先行投資であり」とか、いいお話たくさん伺いました。  私、軍恩連盟の会長をしておりまして恩給改善ということをずっと手がけておりますけれども、最近数年間、不況の実態をひしひしと身に感じてならないのです。私が若いころ、昭和三十年代、四十年代、あの時代皆様御存じのとおり、大変な経済成長の時期でございました。私、そのころ公務員給与改善仕事をしておりまして、ちょうど今と似たようなことをやっておった。ところが、景気が非常によろしい、もう経済成長は年率十数%という二けたの成長を毎年続けておる、だから民間給与もどんどん上がるわけで、公務員給与がそれを追っかけていくというのは容易なことじゃなかったという記憶がございます。あの時代、あんな活力あふれる成長がどうして行われたか、これは経済学的、講学的には非常に諸説あるところでございますけれども、一番わかりやすいのは技術革新、イノベーションが原動力になったと。技術革新というものは幾つかの技術の種がまとまって一つの時期に発現されるんだそうでございますけれども、ちょうどあの時代にそういう技術革新の花が咲いたんだ、それがあの大成長率の根源になったんだ、こういうふうに私も理解しております。  今、毎年一%とか一%に満たないというような経済成長に伴った民間給与改善、それに伴った公務員給与改善、これを受けた恩給改善というものをやっておりますと、今みたいな不況を早く脱出しなきゃならない。これは、経済一つサイクルもございますし、また、しかるべき経済政策いろいろとらにやならぬものがあるわけで、それらの効果がだんだん出てくるということで当面切り抜けられると思うんですけれども、そういう短期的なサイクルでなくて長期的なサイクルで見た場合に、技術革新のもう一度花咲く時代が将来あると思うんです。そのときに日本が立ちおくれないように、今から技術革新の芽を育てていくということは非常に大事なことだと思うんですが、大臣の御所見を承りたいと思います。
  6. 中川秀直

    国務大臣中川秀直君) おはようございます。よろしくお願いいたします。  ただいまの海老原委員冒頭の御見解につきましては、全く私も同感でございます。日本は資源のない国ですから技術立国しかない、これは国民の皆さんもそう感じておられることだろうと思います。  しかし、フロントランナー、第一走者で走ってきたつもりでございましたが、昨今の科学者自身のいろんな各分野における我が国技術水準あるいは研究開発水準というものの意識調査等々を拝見いたしますと、例えば、アメリカに比しましてもいろんな分野で立ちおくれておる、またヨーロッパでも、我が国がレベルは上だと思っていた分野でも立ちおくれてきている分野もある。いつの間にか第一走者が第二走者、第三走者になっているような、そういう御意識科学者自身もお持ちのようでございます。  加えて、二十一世紀は人口、食糧、エネルギーあるいは地球環境と、本当に人類にとりましても三重苦、四重苦といったような厳しい時代になるのではないかと思われます。また、国際的にも知的所有権等々の問題がございまして、従前のような応用技術我が国生命線にしていくということは相当制約を受けてくるのではないかと思います。そういう意味で、本当に我が国自身がもう一度フロントランナーとして、第一走者として独創的な、また基礎的な科学技術振興に取り組むあるいは技術開発に取り組むということが、まさに現内閣の「変革」と「創造」の「創造」の中核をなすことである。  今、当委員会でも大変な御努力をいただいた科学技術基本法に基づきまして、六月までに科学技術基本計画策定したいということで努力をいたしておりますけれども、以上申し上げましたような、また委員がおっしゃったような観点で新しい取り組み方をきちんとやっていこう。そこから初めて我が国経済構造改革やあるいは新しい産業の創出というものが可能になる。その意味での科学技術創造立国、二十一世紀我が国の路線、いわば戦略というものはこれしかない、こういう思いでやっていかなければならぬ、こう考えております。  当委員会でもいろんなアイデアやまたお知恵もおかしを賜りたいと思っておりますが、予算規模早期にできるだけ倍増したい、新経済計画でもあるいは政策大綱でもそう申し上げておるわけでありますが、事はやっぱり内容が大事だ、政策が大事だと。抽象的に、例えば西暦二〇〇〇年に我が国科学技術投資というものを倍増する、こう言いましても、厳しい財政事情の中でそんな簡単なことではありません。問題はやっぱり、冒頭申し上げましたような意味の問題の解決に資する政策であり内容である。それをいろんな面で、研究開発基盤でも人材育成の面でも、研究者個人をもっともっと大切にしていく施策においても、また青少年科学技術に対するさまざまな関心、参加を求めていく施策においても、本当に内容が大事だと、こう思って今いろんな議論をさせていただいておるところでございます。
  7. 海老原義彦

    海老原義彦君 本当に内容が大事なことだろうと思います。いろいろと科学技術庁において、また他の各方面において今議論が進められておる科学技術をいかに促進すべきかという問題、これは長期的な視野でかからにやならぬ問題だろうと思います。長期的視野という意味は、我々の世代で育てた科学技術を次代に引き継ぐというだけでなく、さらに次の世代人たちが参加してもっとその芽を伸ばしていく、そういう意味で若い人たち教育というのは非常に大事だろうと思うんです。  今、小中学生、高校生あたり風潮を見ますと、どうも昔よりも科学技術離れを起こしておるということがあるようでございます。この傾向は我が国だけではなくて、先進諸国にも共通の問題だと言われておるようでございます。  科学技術庁としても、所信で触れられました科学館充実でありますとかいろいろな施策を推進しておられると思うんですけれども、中学生、高校生科学技術離れということ、これは基本的には教育の問題かとも思いますので、この問題についてどう把握し、またどのような解決考えておるのか、文部省の御見解を承りたいと思います。
  8. 加茂川幸夫

    説明員加茂川幸夫君) 理科離れ科学技術離れ、そういった問題について御説明を申し上げます。  理科離れの問題につきましては、児童生徒関心が過去と比較して必ずしも低くないというデータも一方にあるようでございまして、問題のとらえ方が調査によりましてもいろいろであるというふうに理解をいたしておるところでございます。  ただ、理科教育充実を図ることは学校教育の中でも大変重要な課題の一つととらえておりまして、特に子供たち科学技術への関心を高め、例えば、科学的に調べる能力でございますとか態度、あるいは科学的な見方考え方など、いわゆる科学する心を育てることを大変重視してきておるところでございます。  例えば、具体的に申しますと、小学校中学校高等学校理科中心科学技術に関する学習が行われておるわけでございますが、観察実験といったいわゆる直接体験子供たちが物事を自分で触れてみたり実験してみたり観察してみたりという直接体験を一層重視すること、そういうことを通じまして、創造的に考える力でございますとか問題を解決していく能力育成を図っておるところでございます。  こういった教育内容充実する上では、いわゆるカリキュラムの問題だけではございませんで、教員指導力の問題もございますし、施設設備充実等も図っていかねばならないわけでございます。特に、学校外のさまざまな科学技術理科に関します情報または興味関心を呼び起こす事柄への接触が大事だと考えておりまして、平成八年度の新規事業といたしましては、先端的な科学技術子供たちが触れることができまして、理科への興味関心を高める方策について実践的な研究を行うための科学技術理科教育推進モデル事業も掲上させていただいておるところでございます。
  9. 海老原義彦

    海老原義彦君 おっしゃるとおり、昔よりも理科教育というものは、むしろ教科内容としては大変充実したんじゃないかと思うんですけれども、問題は、どうも受験ブームと申しますか非常に生徒が忙し過ぎる、ゆとりがない。昔はクラブ活動理科系クラブというのは非常にたくさんありまして、みんな熱心にやっていた。今、そういう風潮がなくなってしまったんじゃないかなという気がするんです。余りにも受験を、選抜を目指しての勉強だけになってしまう。やはり科学する心というのはそれでは養えないんです。受験勉強のための暗記物として理科をやったんじゃだめなんです。  これは学校教育かなり基本にかかわる問題だと思いますので、そういった生徒教科外活動を含めた全人的な教育について、ひとつ御答弁いただきたいと思います。
  10. 加茂川幸夫

    説明員加茂川幸夫君) 先ほどは理科教育中心に申し上げましたけれども先生おっしゃいました子供たち創造性を養うそのための論理的な思考力でありますとか問題解決能力自分で問題を見出し解決策に向けて自分で判断し思考していくという能力をより一層重視するといった考え方は、教科指導一般について大変重視をしてきておるところでございます。  先ほど理科実験、実習と申しましたのは、単なる座学で知識を一方的に暗記するというだけではなくて、具体に、子供理科実験室実験をしてみたり、学校外に出ていって自然観察をしてみたり、そういうことを重視するということでございます。受験準備だけではない創造性のもとになるような授業形態についてもいろいろ工夫を進めてきておるところでございまして、そういった指導もこれから一層充実してまいりたいと思っておるところでございます。
  11. 海老原義彦

    海老原義彦君 文部省もいろいろ工夫しておられることと思いますけれども社会一般のこういった風潮の中でなかなか限界のある問題かとも思うんです。  これからの社会を担っていく青少年が、昔だったらばいろんなクラブがあったんです、理科系クラブ天文クラブであるとか昆虫であるとか鉄道であるとか気象であるとか、いろんなことをやって、そういったものが理科好きの少年を育てていく。それが将来、理科系等へ行ってしっかりした学者、研究者の卵に育っていくということがあったのですが、どうもそういう流れが断ち切られているような気がして、私は、これはむしろ忙し過ぎる社会風潮学校教育にも及んでいるんじゃないかという気がいたします。余りにも成績主義メリットシステムに徹しているということではないかと思うんですが、そこら辺、大臣の御意見を伺いたいと思います。
  12. 中川秀直

    国務大臣中川秀直君) 先般、教育白書を閣議で文部大臣が御説明になられた折に、私から文部大臣総理お願いをしたことがございます。  長官になりましてから、全くこちらからお願いしたことではないんですが、いろんな方からお手紙をいただいたり、あるいはまた御注意をいただいたことの中に、やはり青少年理科離れという項目が一番多かったわけでございます。  中には大変お詳しい先生もいらっしゃいまして、五年前に比しまして、学校における隔週五日制の実施とかあるいはまた週五日制の実施とかいう中で、理科系授業時間が初等教育で二百時間ぐらい減っているのではないか。そういうことでまた教員皆さん新規採用が少なくなり、もともと教育学部先生方が多いわけですから、もっともっと理科系教員をたくさん採用していかなきゃいけないという御注意もいただいた。また高等教育においても、欧米のマサチューセッツ工科大学あるいはドイツの大学等々のバチェラー、工学士の資格を取るための授業時間というのは二千時間平均、我が国大学の場合は九百時間から千時間であると。こういうところも真剣に考えないと大変だと、こんな御注意もいただいたというようなことを実はお願いで申し上げた次第でございます。  子供たちが三分の一に減ってくる少子社会の中で、先ほど委員も御指摘になられた、私も御答弁申し上げさせていただいた科学技術創造立国日本というものを築いていくために、本当に現状の認識というものをより真剣に議論して、文部省科学技術庁が力を合わせて、今度の基本計画の中でも相当この部分、政府全体の計画でございますので、二十一世紀に向かって、これならば何とか道が開けるかなというような答えをやっぱり求めていかないといけない一番重要な問題ではないか、こう感じております。
  13. 海老原義彦

    海老原義彦君 ただいま大臣ちょっとお触れになりましたけれども、昨年十一月の議員立法科学技術基本法というものが成立いたしました。この法律は、今後我が国フロントランナーとして科学技術立国を目指していく、これをうたったものでございます。それを受けて政府は、科学技術振興施策を総合的、計画的に推進するための科学技術基本計画、これを早期策定する努力をなされておると思います。現在、その進捗状況はどうなっておるのか。これは事務的な答弁で結構でございますが、お願いします。
  14. 落合俊雄

    政府委員落合俊雄君) ただいま御指摘ございましたように、科学技術基本法は昨年の十一月十五日公布、施行になっております。私どもといたしましては、まさに海老原委員指摘のとおり、今後の日本科学技術政策の大もとになる法律をつくっていただいたということで非常に感謝を申し上げているところでございます。  現在の科学技術基本計画策定進捗状況でございますが、十一月二十九日に開催されました科学技術会議に対しまして、内閣総理大臣から、科学技術基本計画についての諮問をお出しいたしております。  科学技術会議におきます検討とあわせまして、私ども事務方といたしまして現在鋭意策定作業を進めているところでございまして、今までの計画策定作業の中でいろいろと議論がございますが、まず科学技術基本計画の性格といたしましては、当委員会で昨年十一月一日に附帯決議がございましたが、今後十年程度を見通した五カ年の計画として、講ずべき施策規模等についてできるだけ具体的なものとするということで考えております。  その際に、科学技術系人材研究開発システムに関する制度改善研究開発基盤民間支援方策研究開発資金確保等の重要なポイントを絞り込んだ計画にしたいというふうに考え作業を今鋭意進めているところでございます。できるだけ早い時期に科学技術基本計画策定を終えたいと思っております。
  15. 海老原義彦

    海老原義彦君 できるだけ早い時期にということで、まだ具体的なめどとしては固まっていないんだということ、これは今の時期としてはやむを得ないと思いますけれども、早急にそれは進めていただかにやならぬと思っております。  今附帯決議にもお触れいただきました。あのときの附帯決議で、「当該基本計画の中に、例えば講ずべき施策規模等を含めてきるだけ具体的な記述を行うよう努めること」とございますけれども規模ということになると、これは一つ数値目標というものを計画の中に明示していく、まあ財政事情の厳しい折からこういうことをやるというのは大蔵省も大変な抵抗があると思うんです。しかし私は、やはりそういった数値目標の明示ということが必要かと考えます。  殊に最近、この不況のもとで、何度も不況の話を繰り返しますけれども日本研究費総額民間が出しております研究費総額は、民間投資の低迷を反映いたしまして、九三年度、九四年度、二年連続して減少しておる。恐らく九五年度もその続きになっていくだろうと思うんです。そういう流れの中で、民間活力が低下しているときこそ政府投資の出番だということだろうと思うんです。  数値目標計画の中に明示するということについて、長官はどういうふうにお考えになりますでしょうか。
  16. 中川秀直

    国務大臣中川秀直君) 委員指摘のとおり、民間研究費も、九一年から九二年、私が聞いているところではマイナス十数%という状況のようでございます。また、政府負担研究費GDP比等々を見ましても、欧米に比べて日本の方が約半分、特にフランスなんかに比べると半分というような水準であるようでございます。  その分今度の計画で、でき得べくば政策をきちんと積み上げて、積み上げられるだけ積み上げて、財政当局にも御理解がいただけるような具体的なものにしてまいりたい。局長関係者にもそのように精いっぱいやっていただきたいというお願いも指示も今いたしておるところでございます。
  17. 海老原義彦

    海老原義彦君 前向きな御答弁ありがとうございます。  この基本法についてもう二、三伺いたいと思いますが、戦略的基礎研究推進事業ということ、これは昨年秋の補正からいろいろと、八年度予算にはさらに科学技術庁だけでも百五十億認められる。何かこれは科学技術庁一本ではなくて六省庁にまたがっておるということでございます。大口が科学技術庁の百五十億、それから文部省の百十億、あと通産が二十五、六億であるとか厚生省が十億、農水が二十億、郵政が五億というようなことで、各省にまたがっているようでございますけれども、こうやっていかにも科学技術庁らしい戦略的な科学研究のための推進事業というものを、これは他の省庁でも一生懸命手がけている。まあそれは日本国全体としてはあるいは結構なことかもしれませんけれども、本来これは科学技術庁で一本化すべきじゃないかという疑問を私は持っておるんです。  疑問は疑問としてさておきまして、それはしかるべき行政改革のときなどにいろいろ考えにゃならぬ問題かなと思っておりますけれども、そういう含みはさておきまして、こうやって各省庁に分かれておるということは、できるだけ重複を避けるために調整する体制が当面は必要であると思います。その調整体制というのはどうなっておるか。  また、テーマ選定、評価に有識者の方を煩わせて選定委員会などをつくると、各省庁とも似たような手法でやっているんだろうと思います。そういった人事面は、同じ人が各省庁へ行ってやっていろんならそれはますます科学技術庁に統一すればいい話でございますし、さればといって、全然別の人が別の見方でやっていてそれでいいのだろうかという問題もございます。そこら辺はどのようにお考えになっているのか。  それから、省際的なテーマというのは当然科学技術庁で取り上げるということになると思います。そこら辺の実情などいろいろ伺いたいことがありますが、とりあえずその三点について、事務的な御答弁で結構でございます。
  18. 沖村憲樹

    政府委員沖村憲樹君) ただいま先生指摘のとおり、この出資金を利用した研究推進制度、これを六省庁でやらせていただいているところでございます。御指摘のように、全体で三百二十億円という大変なお金をいただきまして、ぜひこれは整合性を持って効率的に有効に利用していかなければいけないというふうに考えております。  このような観点から、調整の場といたしまして、まず科学技術会議政策委員会のもとに科学技術会議議員あるいは大学先生方にお入りいただいて懇談会を設けまして、全体の枠組み等についてはこの場においていろいろ御議論いただいております。と同時に、事務的な面につきましては、この関係の六省庁連絡会議を設けまして、そこで具体的なことにつきましてはいろいろ調整をさせていただきたいというふうに思っているわけでございます。  ただいま先生から御指摘のあった、まずテーマの点でございますけれどもテーマにつきましては、そのテーマそのものあるいは研究の中身、それから研究の方法、いろんな点を調整しながら重複のないように図っていきたいというふうに思っているわけでございます。  また、選定をいただく先生方につきましても、一回これに携わっていただきますとなかなか大変な仕事量でございますので、実質的には重複ということはないと思うのでございますけれども、この各省連絡会議の場を通じまして各省情報を交換し合いまして、支障のないように運営をしていきたいというふうに思っているわけでございます。  なお、当庁の場合でございますと、本年度に補正予算をいただきまして既にスタートをさせていただいておりますが、当庁の場合につきましては、テーマにつきましてはほかに応募したことがあるかないかとか、いろんな点につきましてチェックをしながら各省と実質的な重複のないように運営をさせていただいているところでございます。
  19. 海老原義彦

    海老原義彦君 いろいろ伺いたいことはあるんですが、時間も詰まってきましたので、原子力の問題に話を転じたいと思います。  まず、「もんじゅ」でございます。「もんじゅ」の事故、あれは私も科学技術特別委員会調査団のメンバーの一人としてこの一月に現地を視察させていただきました。あの事件は、やはり原子力開発に対して非常に国民の信頼を損なって、地域住民の危惧を増したというまことに遺憾な事件でございます。  現地視察して、なぜそういうのが起こったかというのは、あの時点ではいろいろと説明されている。今でも基本的にはその説明余り変わっていないと思うんですけれども、温度計のさやが折れました、その原因は恐らく流体の渦によるものでしょうとあのころは言っていました。今、もう少し詳しい話を読んでみると、渦から起こる振動がさやに対して金属疲労を与える、この金属疲労の結果折れたんだ、非常に高周期な振動であるから金属疲労が大きかった、そういうような説明。それで、これがまた九二年の試運転のとき最高限度の運転をした、そのときから始まっているんだというふうにも聞いております。  こういった事実関係について、まず担当局長のお話を伺いたいと思います。
  20. 宮林正恭

    政府委員(宮林正恭君) お答えさせていただきます。  「もんじゅ」の温度計のさや管の件でございますが、基本的には先生が現在御理解をいただいているようなラインではなかろうかと、こういうふうに私ども考えているところでございますけれども、しかしながら、現在タスクフォースにおいてより詳細な検討を進めさせていただいております。  それで、現在、当該温度計部は切り出されまして、日本原子力研究所、それから金属材料技術研究所におきまして電子顕微鏡による破面調査などをやっております。それで、金属材料技術研究所のこれまでの調査の結果によりますと、上流側から進展をしてきました主な亀裂が少なくとも十五個の疲労亀裂というものとなっておりまして、それが合流して上流側から下流側に進み、一方で下流側から少しずつ副次的な亀裂が出てきてまいっておりまして、それが両方合わさって破断したのではないかと、こういうことでございます。  こういうふうな現象でございますと、やはりこれは低周波ではなくて高周波といいますか、そういう振動現象がございまして、それで起こったんではないかというふうに推察をされるというところまでは至っております。  しかしながら、今後引き続きこういう解析などを進めてまいりまして、総合的に評価をしていくということにさせていただきたいというふうなところでございます。
  21. 海老原義彦

    海老原義彦君 そのことについて二つほど補足して伺いたいと思います。  一つは、そういった渦流による高周波の、高サイクルの振動というものは、この種の温度計は他の施設において、ナトリウム流体ではなくて水溶液などにおいてしばしば使われてきたもう非常に一般的な温度計だと聞いておりますけれども、これまでそういった渦流が生ずることが予想できなかったんでしょうか。これは水では起こらないナトリウムだけの特性なんでしょうか。それが一つ。  それからいま一つは、そのような高度な振動によって金属疲労が起こるというのであれば、恐らくこの二次冷却系、温度計が全部で三十二個あるそうでございますけれども、三十二個全部共通に起こっているんじゃないだろうか。そこら辺はどういうふうに検討されているのか。その二点について伺いたいと思います。
  22. 宮林正恭

    政府委員(宮林正恭君) まず、最初のお尋ねの件でございますけれども、これにつきましては、基本的にはこういう現象があるということは、既にこの温度計が設計され製作されたときは理解はされておりました。それにつきましては、どういう考え方をして整理をされていったかということは今詳細を調べているところでございますが、現段階のところによりますと、これにつきましては少なくともそういう認識はあったものの、その認識の度合いといいますか、そういうものが十分でなかったのではないかと思われる様子でございます。  それから、第二点のところでございますが、先生三十二カ所というふうにおっしゃっていただいたんですが、実は全体で申し上げますと四十六カ所、二次冷却系で同じ温度計を使っている部分がございます。それで、これにつきましては、現在この「もんじゅ」の系列は全部で三つのループがありましてA、B、Cと言っておりましたんですが、二次冷却系のうちCループというのはこれはとめてございます。それで、残りのA、Bループは現在これは動いているといいますか約七%ぐらいの能力で動かしている。これは炉心から崩壊熱を除去する、こういうふうな必要があるわけでございます。  したがいまして、これにつきましては当然先生のようなことを私どもも検討させていただきまして、現在、私どもといたしましては、いろいろと解析をしました結果といたしましては、振動が起こらない領域である、非常に出力が小さいレベルで動かしておりますのでというふうに考えておりますけれども、念のため温度計の密閉性能を強化している。一種の栓をしまして、たとえ温度計が折れたとしてもそのナトリウムが外へ出てこないようにと、こういうふうな措置をとりつつある。こういう段階にございます。  失礼いたしました。先ほど私四十六本と申し上げましたが四十八本でございます。数字を言い間違えてしまいました。  今後ともこれらの原因究明は進めていきたい。こういうふうな状況でございますので、よろしくお願いをしたいと思います。
  23. 海老原義彦

    海老原義彦君 前段、後段、それぞれ再質問したくなりまして、まず後段ですが、当面は栓をしてとめると。本当に原子力発電というのは栓をするのが好きなんですね。熱交換器の破損なんかも、その破損した棒だけ栓をしてやる。ひどいときには三十数本のうち三分の一ぐらい栓をしてしまう。それでもやっていけるんだという考え方。私は本当にそれでいいのかなと。従来から栓をするのになれているので、また栓というお話が出たので、これはいつもの手をやるんだなと思って思わず笑ってしまったんですけれども、それで本当に済むんですかね。理論的にも技術的にもそれで済むんだというんだからこそやっているんだと思うんですけれども、あれだけ高度な技術が、全く現場のたたき上げのおじさんが考えるようなことしかできないのかなと思ってちょっと情けない感じがするんですよ。まあこれは感想でございますけれども、それが一点。  それからいま一点は、前段の方でございますけれども、ああなることの予想はあったけれどもさほど重大なものとは考えてなかった、そういうことでございますね、言うなれば。ちょっともう一回正確におっしゃってください。
  24. 宮林正恭

    政府委員(宮林正恭君) 前者のお答えにつきましては、それもお答えさせていただいてよろしゅうございましょうか。それとも今の……
  25. 海老原義彦

    海老原義彦君 今の部分だけ、あなたのお言葉だから、正確に繰り返して。
  26. 宮林正恭

    政府委員(宮林正恭君) これは、その当時、十分に配慮が行き届いていなかったというふうに私どもは今考えておりますと、こういうふうなことでございます。これにつきましては、現在、どういうふうな考え方でどういう整理をして、それでこういう設計をしたかというふうなことについて、鋭意調べているところでございます。  今私どもが承知をしておりますところでは、設計した当時は、どちらかというとこういう機械的な振動というよりは熱応力というものに非常に関心が高く、かつまた温度を正確にはかりたい、こういうふうなことから、ややこの疲労破壊といいますかそういうふうなことについての配慮が行き届いてなかったのではないか、こういうふうに思われるところがございますということでございます。
  27. 海老原義彦

    海老原義彦君 大体おっしゃる趣旨は、当時疲労破壊ということについて、まあ原理的にもそれから一般的な現場での現象もわかってはおるんだけれども、熱応力に専ら関心があったので、またさほど重大なものとは受けとめていなかったからと、そういう趣旨でよろしゅうございますね。
  28. 宮林正恭

    政府委員(宮林正恭君) 重大なものではなかったという理解をしていたというところまで、今私ども認識をできるところまで行っておりません。  その当時、実際にそういう可能性はあるということを認識して、簡単な計算をしているという実態はございます。しかしながら、それ以上に詳しくそういう解析をするというところまでしていないと、こういうことであろうかというふうに思っております。
  29. 海老原義彦

    海老原義彦君 まあ、可能性でも結構でございます。ともかく可能性はあるということでそれなりの解析もしたけれども、それ以上のところまではやらなかったということでございまして、先ほどの栓をしてとめるのは、これは技術的には確立している方法だろうと思いますのであえて御説明は要りませんけれども、何だかどうもしっくりこない。あれだけの高度な科学技術の粋の中で栓をしてとめるというのもすっきりこないと思いますし、また、温度計の差し込みについて、金属疲労で折れるということ、可能性はあるにしても大したことにもならぬだろうという理解もちらちらうかがわれるわけであります。  私は、お話聞きながら、千九百八十何年当時の厚生省のエイズの審査の話、近ごろ新聞種になっている、あれを思い出したんです。エイズというのは大した問題じゃないだろうと、それで、一方いろいろと事情があって、それは国内産業振興のためにもあれだけの非加熱製剤をむだにするわけにもいかぬだろうと、いろいろな配慮があってああした。何かそういったつながりを思い出してしまってしょうがないんです。まあそこまでの重大な問題ではないと私は思います、ちょっと比較するのは妥当じゃないかもしれませんけれども。  ただ、こういった高度な科学技術を適用する中で、時々そういう間に合わせ的なものがちらちらするということは、これは十分反省していかにやならないなと思います。そこら辺の大臣の御見解を伺いたいと思います。
  30. 中川秀直

    国務大臣中川秀直君) 御案内のとおり、「もんじゅ」の二次系配管はA、B、Cと三ループございます。事故が起きましたのはCループのちょうど二次系配管の始まるところの温度計であった、このように承知しておりますが、そのA、B、Cで先ほど答弁ありましたように四十八本の温度計がある。現在、Cループはナトリウムを全部抜きまして、そしてAとBは、七%ぐらいの出力ではございますけれども、現実に原子炉から崩壊熱が出ますので、その熱を取るためにA、Bはまだナトリウムが循環しておるわけでございます。  このAとBで万一Cループと同じように温度計が破損した場合ナトリウムが漏れてはいかぬということで、とりあえず応急措置として、A、Bが動いておるところの温度計の外側にすべて漏れないような密閉構造、栓をしておる。現実にAとBはまだ動いておるということでございます。  今いろいろ安全局長中心関係者が原因究明の作業とあわせて今後のことも議論していると承知をいたしますが、当然この二次系の四十八本の温度計は、動燃御自身もこの前の報告では総点検と言っておりますが、総点検どころかやはりもうすべて新しいものに取りかえる、あるいは二度と折れないような実験も加えて、模擬実験もして、そういうものに取りかえていくということが当然ではないかというのが今議論の中では出ているように私は承知をいたしております。  したがって、栓をしてそのままでやっていくんだということでは決してなくて、それは現実に動いている部分があるものですから、今のままでも折れないようにするために応急手当てをした、このように理解をしております。今後、原因が究明をされまして、二度とこんなことが起きないための抜本的な対策はまた別途きちんと講じていかなければもちろん御理解は得られない、こんな認識でおります。
  31. 海老原義彦

    海老原義彦君 大臣技術的にまでわたる詳細な御説明、本当にありがとうございました。  この「もんじゅ」の事故というものは、冒頭申し上げましたように、これは非常に国民の信頼を損ねた、住民の不安をあおったということだろうと思うんです。  これは、一つには公開の問題であると思います。前に四国の伊方原発、あそこも弁の損傷トラブル、地元への連絡のおくれというのが指摘されておるようでございますけれども、こういう状況考えあわせますと、どちらも二次系の問題でございまして、放射能が漏れるということは絶対あり得ないという自信は、もう現場の技術屋の皆さんもまた科学技術庁のトップに至るまでお持ちだろうと思うんです。それはそのとおり、もうそんな心配はないと。ところが、やはり住民なりそれから広く一般国民は不安を抱く。安全の問題と安心の問題とあるんです。  二次系の事故なら大したことはないじゃないかということで、つい公開の迅速性も失われたというようなことがあるのかと思うんですけれども長官の御認識を伺いたいと思います。
  32. 中川秀直

    国務大臣中川秀直君) まさに海老原委員指摘のとおりでございまして、きのうも現地敦賀の市長さんがお越しになられて、るる地元の状況等も伺う機会を得ました。  おっしゃるとおり、市民の皆さんも、放射能漏れを一般周辺、公衆、あるいは環境、従事者にまで与える、そういうことはないということは、今までの経緯に照らしてそこは信じてもらっていると思うんだけれども、現実に「もんじゅ」の場合は、放射能、プルトニウムの問題のみならず、循環系にナトリウムを使うというもう一つの側面があって、絶対に高い信頼性を有すると言っていたその「もんじゅ」からナトリウム漏れを起こし、火災を起こし、その漏れも拡大を防止するのに時間がかかってしまった。また、情報公開が大変立ちおくれたのみならず、多少意図的であったように受け取られるまで、ビデオの問題等々まことに不手際、不適切な対応があった。そうすると、我々の知らないところで何か陰に隠れてやっておるのではないだろうか、こういう市民の不信感、不安感というものを惹起してしまった。そこがもう最大の問題であるというのが地元の行政の責任者である市長さんの分析でもございました。  全くおっしゃるとおりだろうと思うのでございます。原子力の開発利用は民主、自主、公開と、本当に早くから基本法でそううたっておるわけで、基本的に核防護だとか保障措置だとかというものを除く問題については、もう原則すべて公開というのが今日までの哲学でもあったはずでございます。そういうことで、こういう事故を起こしたときに今回のような対応になったということは、本当に反省をしなければならぬことだと思います。  私は、もう一歩進んで、公開というのは何なのかというと、開発利用を進めている事業者側あるいはまたそれを指導監督している当方に、市民、国民の皆さん説明する責任がある。外国ではこれをアカウンタビリティーと言っていますが、そういう責任を負っているんだと、これをやっぱり徹底しなきゃいけないと思っております。  まず、何があってもすぐ知らせる、あるいはナトリウムの漏えいなんかが起きた場合は、あるいは二次系の冷却水の漏れなんかが起きた場合もほぼ同様であろうと思いますけれども、すぐとめる、すぐ知らせるということがやはり保障されていないと、社会的安全と市民の安心というものは得られない。まず、すぐ知らせるというところで体制の強化もし、意識も抜本的に変えていくということが今回の事故の大きな教訓である。そのために、動燃も厳しく指導監督をし、私どもの取り組み方も今後はそういう発想で改めてまいりたい、こう考えております。
  33. 海老原義彦

    海老原義彦君 この公開という問題は、事故のときだけでなくて、平素から原発の安全性についていろいろと地元の方に説明しておると思うんです。見学の人なども入れていると思うんです。そういうときに、できるだけ機微にわたることも話してやる。  例えば、二次系に事故が起こったら、もうナトリウムが噴出して火災になるというような大変な騒ぎになるんだよ、放射能については二次系だから絶対大丈夫だけれども、しかし、事故としては一見大事故のように見える物すごいものになるんだよというような話も平素から十分してあれば、今回のような不安をあおる問題もある程度防げたんじゃないかと思うんです。だから、そういうあたりで、公開というか平素からのPRというのか、そういうのが足りないということ。  それからいま一つ、私、今回の事故でまことに残念だったのは、一人の犠牲者を出したことでございます。亡くなった方の御冥福をお祈りいたしますとともに、この犠牲者というのは一体どうして亡くなったんだろうか。これは、これまでいろいろな方に聞いたけれども、私自身として納得できる説明は伺えない。また、これはこの場で聞いたって同じだろうと思うんです。皆さん、本人でない、推測で言う話ですから。ただ、こういったことを頂門の一針として、これからの原子力開発に携わる方々がもう少し、体質の改善というのとまたちょっと違うニュアンスだろうと思いますけれども、ともかくいろいろ考えて、この死をむだにしないようにやっていっていただきたいと思うわけでございます。
  34. 中川秀直

    国務大臣中川秀直君) 就任早々、こういうまことにつらい、痛ましいことに遭遇をいたしまして、すぐ私も当日、御遺族のもとへ弔問に上がらせていただきました。一言で言えば、本当に大変残念で痛ましいの一語に尽きるわけでございます。  私どもとしては、本当に二度とこんなことを起こさないために、委員指摘の原因究明の点、また万全な安全対策の点、それから、情報公開をめぐって悲しいこのような犠牲者を出したと思いますので、この情報公開に関しても、もちろん事故時はもとより、常に安全の規制にかかわる情報について、核物質の防護とか国際的な取り決めとかという中で公開できない部分もあると思いますが、そういうものを除いて許される限り公開していく。その情報公開のあり方についても、近々安全委員会にも特別の御議論をいただく場、検討する作業お願いし、できるだけ早急に取りまとめて、一つの手順というかマニュアルといいましょうか、一つのルールといいましょうかシステムといいましょうか、そういうものをきちんとしておくということが二度とこのような悲しい事件を起こさないための我々がとるべき方策である、このように考えております。
  35. 海老原義彦

    海老原義彦君 今回の「もんじゅ」の事故で、将来、これはずっと先の話は何とも言えないと思うんですけれども、長期にわたって日本の原子力開発にどう影響を及ぼすかということ。「もんじゅ」が現在、高速増殖炉の原型炉として経験を積んでいって、何か二〇〇〇年初頭には実証炉の建設に着手するという年次計画があったようでございます。実用炉は二〇三〇年だと。二〇三〇年はずっと先なんでこれはまた別としまして、とりあえず二〇〇〇年初頭の実証炉着手という計画、これは狂いが生ずるんじゃないかなと危惧しているんですけれども、ここら辺はいかがでございますか。事務的な答弁で結構です。
  36. 岡崎俊雄

    政府委員(岡崎俊雄君) 先生指摘のとおり、原子力を長期にわたって安定したエネルギー源としていくためには、高速増殖炉の開発というのは大変重要な課題だと認識しております。ただし、具体的な今後の実証炉の開発を含めまして、今後いかに高速増殖炉の開発に当たっていくかということにつきましては、今回のナトリウムの対策を含めました事故の教訓を十分に生かしながら、あるいはまた幅広い皆さん方の御意見を伺いながら、これをどのように政策に反映していくかということについても十分検討をしていかなければならないと考えておるところでございます。
  37. 海老原義彦

    海老原義彦君 具体的に二〇〇〇年開始というのをやはり延ばさざるを得ないということはお答えいただけませんでしたけれども、今の段階ではそれも言えないということでございますね。  もう一つ、将来計画として考えなければならないのはプルトニウムの問題でございます。プルトニウム、これは、我が国の原子力委員会策定した需給見通しては、今世紀末までの累積供給分四トン、これは「もんじゅ」などに使われていく。それで、二〇〇〇年から二〇一〇年にかけて回収されるプルトニウムが三十五トンから四十五トン、この四割を新型転換炉あるいは高速増殖炉の研究開発用に、六割が軽水炉におけるウランとプルトニウムのMOX燃料、いわゆるプルサーマル計画でございますか、こういうふうに使用される。  ところが、新型転換炉の開発中止というのが昨年決まりました。「もんじゅ」の事故もございましたし、プルサーマル計画自体がどうも難しい段階になっておる。そうすると、プルトニウムの需給計画についても下方修正しなきゃならぬなと思うんですけれども、その辺はいかがでございますか。
  38. 岡崎俊雄

    政府委員(岡崎俊雄君) 先生指摘のこのプルトニウムの需給計画というんでしょうか、あるいは需給見通しにつきましては、もちろん先般つくりました長期計画の中にも明確に書かれておるわけでございますけれども、関連しますいろんな計画進捗状況に合わせて変わり得るものでございます。したがって、そういう変化に十分柔軟に対応していくべきものと認識をしてございます。  今後のプルトニウム需給の量的な観点につきましては先生指摘のとおりでございまして、量的な観点から申し上げますと、プルサーマルが今後主流になっていく。もちろん、あわせて高速増殖炉等の研究開発にも使用していくということでございます。今回のこのような「もんじゅ」の事故でありますとか周辺の状況を十分見きわめながら、このプルトニウム需給計画についても適切に検討をしていくべきものと認識をいたしております。
  39. 海老原義彦

    海老原義彦君 次に、もう一つ原子力政策関係。使用済みの核燃料再処理後に高レベルの放射性廃棄物が出てまいります。この処理処分について、ガラス固化体として地中深い、最初冷却して、それから地中深い地層中に埋めるとかいろいろ考えておられると思いますけれども、処分地の地元の了解というのがなかなかとれないとか、そういうことでこの処分が非常に難しい段階になっていると思うんですけれども、そこら辺についての事務的な御説明お願いします。
  40. 岡崎俊雄

    政府委員(岡崎俊雄君) 御指摘の高レベルの廃棄物の処分問題は、今後原子力発電体系を確立していく上で残された大変重要な課題でございます。  したがいまして、関係者挙げてこの問題に真剣に今取り組みつつあるところでございますが、その処分の基本的な方策については、今先生指摘のとおり、三十年間から五十年間安定したガラス固化体にして貯蔵し、その後地下深い地層に処分をするという計画を持っておるわけでございます。  今後、この処分に向けましては、当面研究開発を進めると同時に、二〇〇〇年ごろには処分の実施主体を決めていく。その実施主体が今後その候補地等を慎重に選定しながら、できますれば二〇三〇年代から遅くとも二〇四〇年にはこの操業を開始するという計画に沿って今進めているところでございますが、いずれにしても、これは単に地元だけではなくて国民全体の御理解をいただかなければこの計画は進めることはできないと思います。したがいまして、このような研究開発の状況でありますとか、あるいは処分に向けてのいろんな準備作業についても幅広く情報を提供し、あるいは広い御議論をいただきながら御理解を得ていくということが大事なことだと認識をいたしております。
  41. 海老原義彦

    海老原義彦君 青森の六ケ所であるとか、何しろ方々でこれはいわば嫌われている施設でございます。それで、一つには、地中のどの辺の岩層へ埋めるんだとか、そういう処分方法が確立して、場所を決めてからボーリングしないと確定しないという問題もあるんでしょうけれども、そういうこともあるんじゃないかと思います。  それからもう一つ、私は、根本的にはそうやって土の中へ埋めていくというのは、当面他に技術がないんだから、安全ならば土の中へ埋めても結構です、非常に安全だということさえ証明されれば。だけれども、これは長い目で見ればいつまでもやっていく方法じゃない。長い目というのは、科学技術で長い目といえば、それは五十年、百年の長期の話ですけれども、これは今から研究しておいた方がいいんじゃないか。  例えば、高レベル放射性廃棄物というのは、まだ白金族だとか寿命の長い核が残っているわけでしょう。そういうものは分離してまた使って、それで残りの低レベルのものをどうするか。あるいは分離したものが使えない状態であるならば、それを破壊するというような、消滅処理というんですか、そういうようなことも必要だろう。そういった方面の研究を、もちろん今でも少しずつやっておられるんだろうと思いますけれども、これをさらに推し進めていくということが一番重要なんじゃないかと思うんですけれども、いかがですか。
  42. 岡崎俊雄

    政府委員(岡崎俊雄君) 先生指摘の、例えば寿命の長い、すなわち放射能の減衰が非常に長い期間がかかるもの等について、例えばそれを消滅する、あるいは他の核種に変換していく、こういった研究というのは大変重要な課題だと認識をしてございます。  現在、日本原子力研究所でありますとか、あるいは動燃事業団等が基礎的な研究開発を実施しておる段階でございます。今後、こういった基礎的な研究を促進させながら、この状況を適宜見守りながら、将来の実用化に向かってどのような研究を進めていくべきかということを適時見直しながら進めていくべき問題だと思っておりますし、これは単に日本だけではなくて、フランスでありますとかほかの国でもこの問題に取り組んでおりますので、ぜひ国際協力も生かしながらこの問題に取り組んでいきたいと思います。  ただ一点、地層処分につきましては、単に我が国だけの問題ではなくて、ヨーロッパ各国でありますとかアメリカでありますとか、こういった国の専門家が集まった会議におきましても、安定したかなり深い地層にこの高レベルの廃棄物を処分することは、長期的にもあるいは経済的、社会的、いろんな要素から考えても、十分それは成り立ち得るものであるといういわゆる合意というのは得られつつあるんだろうと思っておりますし、もちろん各国ともそういう方向に向かって、研究開発であるとかあるいは国民の合意を取りつけるいろんな努力をそれぞれ世界じゅうが今進めておるということだけ、恐縮でございますが、申し上げさせていただきたいと存じます。
  43. 海老原義彦

    海老原義彦君 世界じゅうのエネルギー源というのは、例えば石油がそうでございますけれども、だんだん枯渇してきております。もうあと何十年もつかという段階になっております、石炭はまだまだあるようでございますけれども。そうはいっても、また日本自体でとれるものは、いかにも資源小国でございまして、ほとんどございません。全部輸入に頼らなきゃならぬということになると、エネルギーセキュリティーという問題もございます。  そういったことから、やはり原子力というのは日本では欠かせない、原子力政策日本がこれから生きていくために非常に大事なことだと思います。今回の事故でまた一歩おくれたような気もいたしますけれども、しかし、ほんの一歩というものは、長期的な原子力開発の将来にとってほんのわずかな蹉跌でしかないわけでございまして、どうぞこの事故で力を落とさずに、また慌てずに、安全で安心できる原子力というものの開発を目指して進んでいっていただきたいと考え大臣の御所見を伺いたいと思います。  なお、本日は、ほかにいろいろ地震予知でありますとか、お尋ねすることはあったのでございますけれども、時間の関係で、これで最後の質問にさせていただきます。
  44. 中川秀直

    国務大臣中川秀直君) 委員おっしゃるとおり、今回の事故を教訓といたしまして、国民各界各層の方々に御理解がいただけるそういう原子力の開発利用に鋭意懸命になって取り組んでまいりたい、こう決意をいたしております。  いま一点、委員指摘のとおり、ウラン燃料そのものも確認埋蔵量は四十三年と、こう言われております。そのような中で、世界のエネルギーはどうあるべきなのか。日本のエネルギーはどうあるべきなのか。その中における原子力はどうあるべきなのか。先ほど御指摘のあった処理処分の問題、使用済み燃料の廃棄物対策の問題も含めまして、本当に国民一人一人が幅広くお互いに議論する、考えるということも極めて重要であろうと思っております。  福井、福島、新潟等々、我が国の原子力発電の約六割を担っている自治体だけの問題などという感覚ではいけない。やっぱり日本みんなの問題である、そういう議論を通じていろいろなまたコンセンサスをつくっていく、それをまた的確に、適切に政策に反映していく、こういう努力がますます重要になってきておる、このように認識をし、またそういう場をつくるべく、今、鋭意取り組ませていただいている次第でございます。
  45. 海老原義彦

    海老原義彦君 ありがとうございました。
  46. 山崎力

    ○山崎力君 平成会の山崎力でございます。所信表明中心にこれからお尋ねしていきたいと思います。  まず、科学技術庁の八年度、明年度予算でございますが、一般会計でおよそ五千三百億、特別会計を含めた総額でおよそ六千九百億円と、こういうふうになっておりますが、その金額でふっと気がつくのは、今、国会で、衆議院で問題になっております住専の問題で、国民の税金をお願いするという政府側からの額が六千八百五十億、大体似ているわけでございます。  いわゆる科学技術庁の所管する全体の予算と、今、国民にその額を別にいわゆる税金という形でお願いしたいという、そういう政府の立場、政府の閣僚としての長官の御感想をまず伺いたいと思います。
  47. 中川秀直

    国務大臣中川秀直君) 科学技術の二十一世紀に向かいます重要性は、先ほど来申し上げたとおりでございます。また同時に、自由主義経済の動脈でもある金融システムを、預金者保護の観点からも、また我が国経済の安定的な発展のためにも、その金融システムを安定的に維持していくという重要性も劣らず重要なことであろうと、このように考えております。  いま一点、今度の問題に関してこれ以上の先送りは、国際的にも、また我が国の今の経済の現状あるいは金融システムの現状から考えましても許されないもうぎりぎりのところに来ている、このように認識をいたしております。
  48. 山崎力

    ○山崎力君 この問題は、別のところで突っ込んだ意見のやりとりが本院でも将来あると思いますが、続いて本題の科学技術行政に関してお伺いしていきたいと思います。  昨年の科学技術基本法の成立ということで、科技庁が日本科学技術立国というものの将来を担うべきいろいろな研究その他について取りまとめていく、調整していくということの方針が定まりました。  本来、この法律の目指したところというのは、各省庁あるいは民間がてんでんばらばらにやっていたのでは重複その他が起こるし、あるいはエアポケットで抜けた重要な部分も出てくるだろう、そういうところを科技庁が見て、それを調整して、ないところは足していくというような観点が重要だろうと思っております。  そういう意味でいけば、科学技術庁が本来、庁として独自にといいますか、専門としてやるべき原子力あるいは宇宙開発、海洋開発、そういった研究のほかに、ほかの省庁その他でやっている研究をどう調整していくか、あるいは穴を埋めるところをどうやっていくかということが別の課題といいますか、行政の姿勢として必要になってくると思いますが、その基本的な認識についてまずお伺いしたいと思います。
  49. 中川秀直

    国務大臣中川秀直君) 山崎委員おっしゃる御指摘は私も同感でございます。  今度おつくりいただいた基本法は、まさに我が国の全体の科学技術政策、この目指すべき方向をお示しいただいたものだと認識しておりますし、政府においても、とりあえずこの基本計画は、策定に当たっては当庁が中心になってやっておりますけれども関係各省いろいろな形で御関与、御参画いただきながら、連携を十二分にとりながら、政府全体の基本計画を今取りまとめていこうということで作業を進めていると承知いたしております。  そういう中で、この基本計画策定いたしました暁には、すべての面で重複やあるいはまた御批判をいただくようなむだもない、そして効率的な施策の全面展開をしていく、その都度その都度、事前評価も中間評価も事後評価もしながら進めていくということが重要な点であろう、こう考えております。
  50. 山崎力

    ○山崎力君 その御認識のもとに、若干具体的なこと、所信表明に出されておりました具体的なことについてお伺いしたいと思います。  地震調査研究推進本部というものをつくって、そのもとでいわゆる地震予知等震災対策、広い意味でのそういった地震対策というものをやっていくということを述べられておりますが、御承知のとおり、この問題というのはいろいろな省庁に絡んだ問題でありますし、あるいは地震の影響というのは極めて国民生活に重大な被害をもたらすということも事実でございます。この辺のところをどういうふうにまとめてこれからやっていくのかということをお示し願えればと思います。
  51. 加藤康宏

    政府委員(加藤康宏君) 地震に関する調査研究でございますけれども、実際に担当しているところ、例えば気象庁におきましては、地震に関する速報とか津波予報、そういうものを出す観点からの地震観測をしておりますし、国土地理院においては、全国的な測地測量の観点から地殻の変動の観測をしておりますし、地質調査所におきましては、地質とか地下構造を調査するそういう一端として活断層の調査をしておりますし、もちろん大学におきましては幅広く地震に関する学術的な研究などをされております。科学技術庁も防災研というところで基礎的な研究をしておりますし、各県にお金を出しまして活断層の調査等をしておるわけでございますが、それぞれ得意な分野での調査研究にタッチしておるわけでございます。  先生指摘のように、昨年の七月に地震調査研究推進本部が発足いたしまして、地震に関する調査研究について、企画調整、それから調査結果の総合的な評価、それから広報、そういうものを政府として一元的に推進するような体制をとっていただいたわけでございますが、具体的には、その推進本部の政策委員会がございまして、そこで全国的な地震調査観測計画をつくったり、あるいは各省庁予算の要求を事前に調整したり、そういうところで企画の調整をしているわけでございます。  また、地震の調査研究結果の評価分析につきましても、いろんな各機関の観測データを気象庁に全部集中して皆さんが使えるようにするとか、そのデータを地震調査委員会が分析しまして全国的な地震活動の評価をする、そしてそれを地元を含めいろんなところにお伝えする、そんな活動をしているわけでございます。  そういうことによりまして、現在の本部のもとに関係機関が密接に連携をとりまして調査研究が一元的に推進されているものと考えておりますし、これからも一層努力してまいりたいと考えております。
  52. 山崎力

    ○山崎力君 国民の期待というのは非常にその点については大きいものでございます。いろんな事件、事故が起きた場合に、行政の縦割りとかあるいは横の連絡が悪いとか、そういったことが報道されております。事実、そういった傾向も強いということがあろうかと思いますが、事ここに関して、これからハンドリングの問題だろうと思いますが、それをうまくやってできるだけ成果が国民に反映されるようにお願いしたいと思います。  それからもう一点、細かいことですが、その絡みでいきますと、がん関連の研究ということも所信表明の中に述べられておりました。  これもいわゆる学術の問題からいけば、もちろん、がんというのは今、我々が直面している病気の中で一番関心の強いものの一つでございます。そういった中で科技庁がここを取り上げるというところ、一般の国民からすれば、わかっている人はお医者さんというか病気の関係だから厚生省ではないだろうか、あるいは大学研究という意味からいけば文部省なのかなというところに、科学庁というものがここにがんという表現で出てくる、その辺の事情を教えていただきたいと思います。
  53. 加藤康宏

    政府委員(加藤康宏君) 御指摘のように、死亡原因の約四分の一をがんが占めているわけでございますので、がん研究は国を挙げて取り組むべき重要な課題と認識しております。  がんの研究というのは、発がんのメカニズム解明という非常に基礎的なところから、実際に予防・治療法の開発といった現場で行うような臨床研究まで非常に幅広い分野でございますので、関係省庁でそれぞれの役割、得意なところを分担し合って進めているというところでございます。  ちなみに、平成六年度からがん克服新十カ年戦略というのができております。これは政府全体の戦略でございますけれども、その中で、文部省大学におきましてがんの本態解明を中心とした基礎的な研究をやっていらっしゃいますし、厚生省は予防、診断、治療の確立を目指しました目的志向的な研究をされております。科技庁は放射線医学総合研究所で放射線を使った治療等をやっておりますので、そういう放射線、粒子線を利用した基盤的研究中心に担当いたしまして全体として総合的に取り組んでいるところでございます。  具体的に、科技庁といたしましては、先ほど申しました放射線医学総合研究所で、難治性がんと申しますか、非常に普通の方法では治療が難しいがんへの適用が期待されております重粒子線による治療の臨床試行、そういうものをやっておりますし、また基礎的な研究としましては、理化学研究所でがん遺伝子とかがん抑制遺伝子の探索、そんな研究もしているわけでございます。  いずれにせよ、本件につきましても、関係省庁と連携協力しながら、先ほどの十カ年戦略のもとで一層努力していく所存でございます。
  54. 山崎力

    ○山崎力君 いずれにしろ、これは釈迦に説法かもしれませんが、それぞれの研究がいかに連携をとっていくか、それでその成果が国民に反映されていくかということが最終目標でございます。その意味で、とかく今までその面での評判といいますか、信頼性に欠けた部分があろうかと思いますので、効率化の意味からも皆様方の御努力お願いしたいと思います。  続いて、今問題となっている「もんじゅ」に絡みまして、これは中間報告をもとに、その中間報告の内容に対する質疑というものはまた別の機会にあろうと思いますけれども、若干踏み込む部分もあるかもしれませんが、所信表明にあらわれた原子力行政という観点中心にお伺いしたいと思います。  まず、最近の話でございます。たしか二十八日だったと思いますが、NHKの報道において聞いた記憶がございますが、今回の「もんじゅ」の事故に関して、関連する三県の知事から長官あてに提言がなされた。それからその番組中で、こういったいろいろな事情をもとに大臣みずから原子力行政、政策を見直す可能性これありという発言があったやに聞いておりますが、その辺についての御事情を御説明願いたいと思います。
  55. 中川秀直

    国務大臣中川秀直君) 委員指摘の件でございますが、今週初め、NHKにおきまして「クローズアップ現代」という番組で「もんじゅ」を再び取り上げる、原因究明の科学的な実験等もなさった、そういう番組であるが、最後に大臣としての一連の経緯を踏まえた今後の方針を聞きたい、こういうお申し越してございました。お尋ねは大変たくさんございました。報道をされましたのは、御指摘のとおり、三県知事の提言を受けた政府として今後の原子力政策の進め方についてどういうふうに考えておるかというところが取り上げられて報道されたわけでございます。  その際発言した要旨を持っておるのでございますが、その中で私は、いろいろ政府の基本的な今の立場というものを答えろ、こういうことになれば、御案内のとおり、我が国のエネルギーの現状、原子力発電に三割依存をする現状、そして西暦二〇一〇年には四割依存しなければならなくなるかもしれない、なるであろうという長期計画のもとで、他方、資源の枯渇、先ほど来御議論のとおり、ウラン燃料も四十三年、石油が四十年、天然ガスが六十年、石炭が百二十年から百四十年、こう言われておる中で責任を持ってエネルギー政策を進めていくということになりますと、正直、具体的に現実にそれにかわるエネルギーの議論を、代案を持たない限り、やはり原子力というものに依存せざるを得ない現実がある。  加えて、原子力発電をすればプルトニウムも出てくる、使用済み燃料も出てくる、その処理処分の問題もある。また、地球環境に与える影響も極力低減していかなければならぬという中で、今の基本政策をすぐ変えてしまうという結論は現段階ではかわる案を求めない限りできません、その基本は、現段階で政府見解をと言えば、今までの基本政策を堅持していくことしかない、こうお答えするしかありませんと。  しかし、他方、いろいろな国民的なコンセンサスを得ていかなければこの基本政策を遂行していくことにもさまざまな問題を生じ、また基本政策の遂行自身もいろいろな面で制約を受けてくることになる。その意味で、今起きている国内のさまざまな御議論を、消費地だとか発電立地県だとかというそんな区分けではなくて、地元民の皆さん方だけに御理解をいただくなんというそんなレベルではなくて、本当に国民一人一人が真剣にさまざまなそういう問題を我が問題として考える、そういう作業をもっともっとやっていかないといけない。  三県知事の御提言はまさにその点で、コンセンサスをつくるためにもつと国自身が積極的な対応をしてくれ、そうでなければ立地県は地元の県民感情も含めて今までのようなことでは済みませんよという、まことに行政を預かるお立場での危惧の念あるいは大変な御苦労というものを申された提言であったと、このように受けとめまして、具体的には今検討中で詳細には申し上げられる段階にございませんけれども、原子力委員会あるいは安全委員会等々を中心に、原子力政策に批判的な立場の方々も含め、また原子力発電所が一基もない、しかし一番電気を、エネルギーを使っている大都市の方々も含め、幅広い多くの方々に御参加をいただく、そういう議論の場を、仕組みを、意見をただ伺うというだけではなくてそういう場をぜひつくってまいりたい。そういう中で政策に反映すべきものがあったら、これは柔軟に検討して反映させてまいりたい、こういうことを申し上げた次第でございます。  最後のお尋ねの中で、ということは原子力政策の進め方を転換するのか、こういうお尋ねですから、繰り返して、国民の合意、必要性に対する理解、納得、安心、これを基本にして進めなければ政策の進め方もいかぬだろう、その意味で進め方は転換しなければいけない、そういう意味ならば変えていかなければいけないと思う、こう申し上げた次第でございます。
  56. 山崎力

    ○山崎力君 そういった点での真意ということを伺ったのを踏まえまして、所信表明に、「安全の確保が大前提であり、厳格な安全規制を実施する」、こういうことが述べられているわけでございます。これは先ほど言ったこととちょっと矛盾するかもしれませんが、中間報告を詳しくということからいけば、そこまで今の時点で踏み込むかどうか別といたしまして、先ほど海老原委員の方からの質問にもそれに近い部分がございましたので、今回の事故についての私自身の認識というものを御披露申し上げまして、それに対する科技庁側の考え方といいますか、対応をお聞かせ願いたいと思います。  私は、この事故というものは非常に大きな問題を含んでいると思います。これは大体わかってきた、温度計のさやが折れた、こういうことですが、詳しい調査というものは、これは中間報告全体の精査の中の委員会で述べることだと思いますけれども、現状あらわれてきた段階において何が問題かというと、そのさやがなぜ折れたか、その折れた原因がいわゆる流体力学で起きる渦によっての金属疲労であろう、こういう報告になっているわけでございます。  そうすると、まず第一に考えるのは、どういう基準で設計をしたのか。頭の中にそのナトリウムの流体に対する応力のカルマン渦というんですか、そういった渦の力関係というものが頭に入っていなかったのか。その次に言えば、入っていたとして、どういう計算で強度計算をしたんだ。あるいは本来の感覚でいけば、実物での試験をやったのか、あるいはそこまでいかなくてもコンピューター解析をやったのか。そういったことが一つ一つこの問題の一連の考え方として出てきてしまうわけでございます。  これについてまだ詳しい報告はございません。しかし、どうも今の時点では、先ほどの御答弁にもありましたように、その辺の認識が甘かったようだという御答弁。ということになりますと、これは一本の温度計の問題ではなくて、それを敷衍すればシステム全体への信頼性の問題へつながるということでございます。ここのところを計算ミスしたから、あるいは製造で設計図どおりできなかったからで、これは全体には行きませんということになったとしても、それではそのチェック体制はどうだったんだという問題が必ず出てきます。そして、行政的に最終的な責任を持つ科技庁としては、その辺のところの信頼関係、あるいはどこまで科技庁が入ってそれをチェックする必要があるのかという問題も入ってまいります。  そういった点からいきますと、私はこの問題、ナトリウム炉だけの問題だろうとは思うんですが、そうすると、今まで営々と築いてきた軽水炉の発電技術そのものに対してもチェック体制の不備というものが同時並行にあらわれてくれば、まさに我が国の原子力行政、原子力計画の根幹を揺るがす大問題になりかねない。あるいはそこのところを信用できない人たちが残れば、最初に出てきた「安全の確保が大前提であり、厳格な安全規制を実施する」というところに対する国民の信頼感をどう再構築するかという問題まで行きかねないというふうに認識しております。その点についての科技庁側の御見解を伺いたいと思います。
  57. 宮林正恭

    政府委員(宮林正恭君) 原子力の安全確保といいますのは、原子力開発におきましてはまさに大前提でございまして、国民の皆様、特に地元の方々との信頼関係もこれまた不可欠である、こういうふうに認識しております。しかしながら、今回「もんじゅ」の事故では、地元の方々や国民の皆さんに大変な不安感なり不信感を与える結果となりまして、極めて重要な事件だと、こういうふうに私どもは認識しておるところでございます。  特に、先生指摘のありましたポイントにつきましては、私どもが二月九日に取りまとめをいたしました調査状況に関する資料の中でも、高い信頼性を確保することとしていたにもかかわらず、現実にナトリウム漏えい事故を発生するに至った、こういう事実については非常に私ども重要なことだというふうに認識しているところでございます。  現実のこのさや管といいますか温度計につきましては、残念ながら、科学技術庁なりで安全審査をする、あるいは設計、工事方法で見るということにこれまではなっておりませんでした。したがいまして、私ども非常にゆゆしきことが起こったという認識をしておりまして、これにつきましては私どもも引き続き検討を進めているところでございますが、やはりこういうことが二度と起こらないような方向で対応する必要がある、こういうふうに考えて、そういう方向で進めていきたい、こういうふうに思っておるところでございます。
  58. 山崎力

    ○山崎力君 そちらの方向でやっていただくということは当然のことといたしまして、私どもとしては、厳密な意味での調査報告書といいますか、そういったものをできるだけ一般の国民にわかりやすい形で出していただきたい。それは、専門的な強度計算の方式であるとかそういったものは専門家に任せるとして、少なくとも今回の事故が科技庁にとっても、専門家に任せていて大丈夫なものがだめだったという事例だと私は思っているわけです。  この専門家というのが設計者なのかメーカーなのか、あるいは動燃まで入るのか、あるいは原子力安全委員会その他の調査機関まで入るのか、その辺は皆様方の御専門で、その組織的な中でどういうふうに安全をチェックするかということはお仕事としてお任せするといたしまして、少なくとも今まで科技庁が思い描いていた安全管理の方法では国民の負託にこたえるような安全性は確保できなかったという現実があるわけでございますから、その辺のところは、その結果対応というものをわかりやすい形でしていただきたいということをまずお願いしたいと思います。  次いで、先ほども申し上げましたように、一温度計の問題にこれはとどまりません。温度計がそうであるならば、ほかのものはどうなんだ。例えば、もっと近い時点で言えば、一次系の温度計はどうなっているんだという話がすぐ思い浮かぶわけでございます。あるいは配管自体の強度はどうなんだ、どういう計算をしていたんだ。そこのところは今までここの時点で専門家に任せたからいいんだというふうなことでは、私は今回のことからいけば、もちろん今回のことは例外的だと思いますけれども一つのことがあれば二つ三つのことがあり得るという前提に立てば、このことは揺るがせにできない問題だと思います。そのことをぜひ強くお願いしたいと思います。  その意味におきまして、調査報告書というものがございますが、これは科技庁の問題ではないかもしれませんが、先ほどの海老原委員の質問の中にもありましたように、犠牲者を出した、そのところの人間系の問題、それを含めたその辺のところもぜひ調査の重要な項目として、反省材料として、実のところ、非常に言いにくい話ですが、身内の恥をさらすというようなところもあろうかと思いますけれども、やはりここまで至ってくれば国民の理解を得るためにはその辺のところも含めた調査報告書の作成をお願いしたいということを要望しておきたいと思います。  続きまして、先ほどもありましたけれども、いわゆる最終処分、バックエンドの対策について積極的に取り組む、こうなっているんですが、これは申しわけない言い方ですが、いわゆる役所の決まり文句ではないかというような気がいたします。  というのは、この問題は関係者にとってはもう十年以上も前から極めて深刻な問題としていろいろやってこられて、御努力されてきたというのはわかっているんですが、目に見えた形での成果があらわれていないというのが現状だろうと思っております。見通しがなかなか立ちにくい。その中で積極的に取り組むと言われても、これは何の意味だというふうに意地悪く言えばとってしまうことになるんですが、その辺のところを御説明願えればと思います。
  59. 岡崎俊雄

    政府委員(岡崎俊雄君) 先ほども答弁申し上げましたとおり、高レベル廃棄物の処分というのは原子力発電体系を確立していく上で避けて通れないし、大変重要な課題だということを申し上げました。具体的に今、研究開発並びにその処分体系の確立ということに向けて取り組んでおるわけでございます。  昨年九月に原子力委員会において、これに向けての取り組みについての基本的な方向についても明らかにいたしました。その一つに、これからの研究開発を中心とします技術的な事項につきます専門部会は既に昨年九月に設置をいたしました。現在、鋭意検討を進めておる段階でございまして、この成果をもとに、できますれば二〇〇〇年ぐらいには第二次の全体的な研究開発成果を取りまとめて、技術的な今後の処分に向けての見通しというものを明らかにできるように、研究開発の項目でありますとか、あるいは評価のあり方でありますとか、そういった点について現在鋭意検討を進めておりまして、できますればその専門部会の報告をまとめていきたいと思っておるわけでございます。  もう一点の技術的な問題以外の今後の処分の実施主体の設立てありますとか、あるいはこれを取り巻きます例えば法整備でありますとか、あるいは社会的な合意を得る手段でありますとか、こういった社会的、経済的側面を幅広く御議論いただきます懇談会を設置するということを決めたわけでありますけれども、残念ながらこれはまだ設置に至っておりません。現在、幅広くこれに参加をいただく先生方の人選でありますとかあるいは進め方について検討を進めておる段階でございまして、できる限り早く国民各界あるいは各層から英知を集めていただくよう、この懇談会の設置を早急に図っていきたいと思っております。  したがいまして、こういう作業を進めまして処分にかかわります研究を加速するとともに、二〇〇〇年ごろには処分の実施主体を設立する、こういう目標に向けて具体的な取り組みを図っていきたいと思っているところでございます。
  60. 山崎力

    ○山崎力君 それでは続いて、若干絡む問題ですが、世界的な核の不拡散体制充実強化というものに積極的に貢献すると所信で述べられております。これは具体的に何をイメージなさっているのか、いろいろなことがありますので、その辺をちょっと一歩踏み込んだ表現で御説明願えればと思います。
  61. 岡崎俊雄

    政府委員(岡崎俊雄君) 大臣所信の中にも先生指摘の不拡散体制充実強化に取り組むということを述べておられるわけでありますけれども、もちろん原子力の開発利用を進めるに当たりましては、厳に平和目的に限るとともに核不拡散との両立を図るということは、大変重要なまさに基本であろうかと思っております。  そういう観点から、我が国は、いわゆる平和利用を進めておる原子力の先進国として、これまでも核不拡散に関する条約NPTに基づく義務、こういうものを厳格に果たしてきたわけでございますし、それに加えまして国際的な核不拡散体制充実強化に貢献してきたわけでございます。  今後、さらに具体的に、例えばNPTに基づく国際原子力機関IAEAによります保障措置の強化あるいは効率化ということを図っていかなくてはなりません。こういった検討に我が国が率先して今も参加をいたしております、専門家の会合等についても積極的に参加をいたしておりますけれども、こういったIAEAの保障措置強化にぜひ貢献をしていきたいというのが第一点。  それから、旧ソ連におきますいろんな問題がございます。こういった問題につきましては、非核化支援でありますとか、あるいは旧ソ連におきます核兵器関連技術者の流出防止という観点からも今取り組んでおるところでございます。  さらに、今後、原子力の開発利用が開発途上国にも広がっていくということが十分予想されるわけでございます。こういった国におきます保障措置関連あるいは核不拡散関連の人材養成、こういった問題についてもIAEAと十分連携をとりながらぜひ積極的に我が国が貢献をしてまいりたい、こう考えております。
  62. 山崎力

    ○山崎力君 最後の全体の取りまとめのことでぜひ長官から御所見を賜りたいと思うのですが、この所信表明の一番最初にもありましたように、科学技術振興というのは未来への先行投資であるというふうにうたっておられます。まさにそのとおりの面はございます。ただし、投資というからには、これは金額とそのタイミングというものが極めて重要な問題ではなかろうかと思っております。  まさにその点において、今の原子力行政というものが先行投資であることは皆、心の中では認めつつも、今のタイミングで今のこれだけの予算をつけることが果たしていいのかどうかという議論というものはなかなか出てきていない。残念ながら、科学技術に関することだけに、一般の人たち、私たちも含めて多くの人たちが将来的にはこうなってくれればなというふうに思ったとしても、今この時点でこの技術にこれだけのお金を投資することがいいのかどうかという踏み込んだ議論になると、なかなかそこまで行けないというのが実情ではないかと思うわけです。  長官自身、申しわけない言い方でございますけれども、そういった中でのことからいけば私たちとそれほど違わない知識ではないかというふうに申させていただきたいと思うのですけれども、そういった同じような立場から、専門家がこれだけのことをやりたい、これが将来の日本あるいは世界の科学技術の進展のために必要だというふうな要望をいかに現実のもの、政治の場のものとして予算化し、あるいは方向づけるかということの責任というものが今、長官のお立場にかかっているというふうに認識するわけでございます。  そうすると、私たちは、これから未来へ向かって余裕のある分を要するに先行投資していればいいんだという時代ではなくて、先ほども申し上げましたように、ある程度の経済効率というものも重要視しなければならなくなった時点で、どういうふうな観点で国民は国の科学技術行政というものを見ればいいのか、あるいはその責任者としてのお立場から、そういった視点で国民に、私どもはこういうふうな形で今こういうものをこれだけの予算をつけてやっているのだということを長官のお立場で御説明願えればと思っておりますが、.よろしくお願いいたします。
  63. 中川秀直

    国務大臣中川秀直君) 極めて核心に触れる重要な御指摘であろうと存じます。  科学技術施策実施というものに対しても国民の理解、共鳴、共感、支持がなければ、これはもう先ほどの若者の科学技術離れもそうでございますけれども、御協力は得られないと思いますし、本当の力が出てこない、このように思います。その理解を得るために、原子力にしても、宇宙開発にいたしましても、海洋開発にいたしましても、その他さまざまな研究分野におきましても、一層の努力をやはり払っていかなければいけない。  先般の当院の御決議にもございましたATR転換炉の実証炉建設の断念について、決算の面で厳しい御指摘もいただいております。私はやっぱり、一般論ではございますけれども、そういう事前の評価あるいは中間的な評価、事後の評価、こういうものを、行政は行政、また立法は立法、さまざまな場面できちんと本当に透明性、あるいはまた幅広い国民の御参加もいただいたガラス張りの中で御議論をいただいていくということが極めて重要だろうと思います。  もちろん、科学者研究者の立場からする技術的な側面というものもあると思います。原子力等の場合は、五年や十年で急に方針を変えるなどということではとても間に合いません。高速増殖炉にいたしましても、十七年の長きにわたる常陽での実験があり、そして今度の「もんじゅ」になってきておること。それから、これからの核融合にいたしましても、本当にいっかを明確に見通すことさえも現段階でできるかというと、正直申し上げにくいのでございます。  そういった技術的な側面や、今、予見し得る範囲内での議論という制約もいろいろあるだろうと思います。しかし、そういう議論も大いに本当に国民レベルでやる、その努力が本当にすべての面で求められている、このように考えておりますし、またそういう認識を持っていろいろなことを考えるときに常に臨んでまいりたい、こういうふうに考えております。
  64. 山崎力

    ○山崎力君 まず、そういった意味での御答弁の趣旨を具体的な行政の中で私たちに示していただきたいという御要望を申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。  いろいろありがとうございました。
  65. 川橋幸子

    川橋幸子君 社会民主党の川橋と申します。  本日は三十分の質問をさせていただきたいと思いますが、前半の方は中川大臣所信に対する質問、後半の方は「もんじゅ」についての質問と、大きく分けてさせていただきたいと思います。  既に海老原委員、山崎委員も質問されたこととかなりダブります。同じような発想を委員の皆様方も持っていらっしゃるかなと思います。ダブりますけれども、やはり私もお聞かせいただきたいと思います。  所信の中に、昨年十一月、科学技術基本法が成立、施行されたということを大きく位置づけられまして、もちろんこの法律議員立法でやったわけでございまして、私どももその一端にかかわらせていただいたわけでございます。本法につきまして、「今後の我が国の進むべき方向を示したものであります」というふうに評価していただいておりますが、この「我が国の進むべき方向」というのは、具体的に大臣はどのようにお考えになられますでしょうか。  関連してでございますが、所信の三ページ目でございます。「戦略的基礎研究推進事業」というのがございます。ことしの予算は大変な財政危機の中でさまざま明暗分けるような予算も組まれておるわけでございますけれども戦略的基礎研究等々、科学技術に対する予算の配分は、私は国民にとって明るいイメージを植えつけられる積極的に評価できる部分だとひそかに思ってはおりますけれども、この戦略的という言葉の意味といいますか中身でございます。大臣の忌憚のない御所見を伺いたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  66. 中川秀直

    国務大臣中川秀直君) 前段の点につきましては、私は、「我が国の進むべき方向」というのは、我が国のみならず二十一世紀人類共通の課題、先ほど四重苦ということも申し上げましたが、まさに人類の生き残りをかけた取り組みというものがこの科学技術に今求められている。環境、食糧、人口、資源、そういった本当に共通の課題を人類みんなが今抱えている。その抱えている課題に挑戦していくまさに第一走者として、我が国科学技術創造立国を目指し、そして貢献をしていく。その中でまた、我が国のさらなる進歩発展、国民生活のより一層の発展を期していくというのが我が国が進むべき方向である、このように認識をいたしております。  戦略的という定義は、まさにそういうものを踏まえながら、従前以上に、我が国独自の独創的なあるいはまた基礎的な技術研究を多くの皆様の応募もいただきながら、また、それの内容もいろいろ全部チェックして重複をなくしながら、本当に効率的に一層の基盤の強化、水準の向上を図っていこう、そういう意味戦略的にやっていこうということだろう、若干大まかですがそんなふうに考えております。
  67. 川橋幸子

    川橋幸子君 科学技術庁の役割とはということを、この委員会に所属させていただくようになってから繰り返し繰り返し私は思うわけでございます。  庁の方々、大変誠実に熱心に御所管の部分をやっていただいておりまして、それぞれまた悩みも抱えながら、ほかに例えば大省庁があるわけでございます。その中で総合的な科学技術政策についての調整という役割を担われるのは大変困難もおありなのかなと内心御同情もしながらなのでございますけれども、やはり所信表明の中でございますが、「早期に」という言葉遣いではございますが、政府研究開発投資の倍増を達成するということになりますと、何か量的な拡大の方に重きがおありなのかなと思ってしまうのでございます。  先ほど中身だというような大臣のお話もあったわけでございますけれども、いま一度お答えいただけますでしょうか。
  68. 中川秀直

    国務大臣中川秀直君) 戦略的の定義について私非常に大まかなことを申し上げましたが、せっかくのお尋ねでございまして、政府委員からもより詳細な定義といいましょうか、ねらいもお聞き取りを賜りたいと存じますが、今、川橋委員の御指摘投資の倍増の具体的な中身をお尋ねであろうと存じます。  具体的に重点を置いて取り組むべきものとして、これもまた御案内のことだと思いますけれども、基礎的なもの、先導的なもの、そういった研究開発や、がん、地震等、国民生活に密着した科学技術、これを推進していくというのが第一。  第二に、人類の抱えるさまざまな問題を乗り越えていくためにも人類のフロンティアを開拓する。宇宙であるとか海洋であるとか、あるいはまた原子力の問題もそうであろうと思いますし、ライフサイエンスというような問題はもっと重要かもしれません。そういったものを推進していく。  第三番目は、そういうものを推進していくための研究開発基盤というものを施設整備も含めまして充実をしていく、整備をしていく。第四番目は、科学技術系の人材の確保養成、また研究者の創意が生かされる体制を確立していく。五番目は、国際協力、国際貢献。  大体そんなイメージで具体的な政策の積み上げをして、なるほどこれは倍増せねばならぬなと委員先生方にも、当然財政当局にも、またもっと広く国民の皆様にも十分な御支持がいただけるような、そういう基本計画をつくってまいらなければいかぬ、こう考えております。
  69. 川橋幸子

    川橋幸子君 政府委員の方から渡されたメモによりますよりも、先ほど大臣が御自分のお言葉で話してくださった、これからの二十一世紀人類の生き残りとか、それから我が国独自の誇り得る貢献とか環境とか、そういう国民生活のニーズというような感じのことをおっしゃったところが私にはむしろ非常によくわかるのでございます。  さまざま抱負はおありかと思いますが、私が考えますには、大蔵省が財政危機宣言というものを出すまでもなく、これからの日本経済考えますと全部が右上がりでふえるわけにいかない、その中に優先順位をつけるという、そういうポリシーが必要になってくるんだと思います。全部につけてあげたいけれども、それはできないことでございます。その優先順位をつけるという点で、大臣のおっしゃったような国民のニーズをキャッチして、ぜひそちらの方向に国全体の科学技術政策をリードしていただけるようにお願いしたいと思います。  ちなみに、御紹介させていただきますと、去年の科学技術白書でございますが、百十七ページに、これからの科学技術の貢献というんでしょうか進むべき道としまして、第一部の方で戦後五十年を総括した後で、「人間的豊かさのための科学技術へ」ということで、国民からの新たな要請にこたえて社会的な課題や生活に密着した課題をとらえていきたいんだと、こういう記述もございます。庁内でも分析されていることだと思います。  ぜひ、科学技術会議基本計画の諮問をなさいますときには、白紙諮問ではなくて、行政の価値判断を含めた諮問をしていただきましてリードしていただきたいというのが私の希望でございます。  次の質問は、これももう既に話題になっておりますが、評価システムといいましょうか、監視といいましょうか、まあ片仮名文字で言えばフォローアップとかモニタリングということだろうと思います。そういう問題についてお尋ねさせていただきたいと思います。  かなり前のものでございますけれども、これは一九八四年九月、日経ビジネスに岡部三郎先生が書かれた「科学技術政策評価はいかにあるべきか」というテーマが紹介されております。いっか暇がありましたら大臣にもお目通しいただきたいと思います。  十年前にこれが話題になりましたのは「むつ」の関係で、巨大プロジェクトになるわけでございます。科学技術につきましては、長期間にわたりまして国家目的を定めての巨大プロジェクト、民間ができないことを国家でやるという意味でそういうものになるわけでございますが、この「むつ」の存廃問題を機に岡部先生がこの評価制度はいかにあるべきかというテーマの論文を書かれているわけです。  最近、改めてこの「もんじゅ」の問題も含めまして評価というものはいかにあるべきなのか、審査というものはいかにあった方がいいのだろうか、どうやってチェックしたら財政的な効率といいましょうか費用対効果が上がりまして、それから優先順位も国民の目にわかりやすく出てくる。それから一番の大きな問題は、住専ですとか薬害エイズ問題に象徴されますように、国の意思決定システムというのはどうあってどう評価していけばいいのかという問題と絡まる話ではないかと思います。  抽象的な言い方でしかできませんけれども、大変重要な問題でございまして、科学技術につきましては既に十年前からこういう問題意識考えられてきたということでございます。大臣は、どのようにこの問題についてお考えになり、これから取り組んでいかれるという所信がおありでしたらお話しいただきたいと思います。
  70. 中川秀直

    国務大臣中川秀直君) 私もその点について正直、岡部先生の論文等もこれから読ませていただくということで、率直に申し上げて勉強が十分ではございません。  現状でも、もちろん、科学技術会議あるいは原子力で言えば原子力委員会、宇宙開発委員会、その都度政策大綱をつくるときに見直すとかあるいはまた何か新しい情勢の変化で見直すとか、いろいろなそういう作業を中間段階でもいたしていると承知をいたしておりますけれども、評価の仕方あるいはまた設定されたいろいろな目標と資金コスト、時間の関係、そういうことの評価方法というのは何が一番適切なのか、こういう議論もさらに深めなければいけないんじゃないかという気がいたします。  今、いろいろ先輩議員欧米等の例も教えていただいたりしておりますけれども、テクノロジーアセスメントという考え方でいろいろな蓄積をしようとしている、そんな点に比べて我が国体制が今十分であるかというと、そうではないという御指摘もお伺いしたことがございます。そんなことも十分頭に入れながら、私自身も真剣にこれから考えていかなきゃいかぬ、こういうふうに感じておるところでございます。  何はともあれ一番重要な問題である、こういうふうに認識をしておることを申し上げておきます。
  71. 川橋幸子

    川橋幸子君 大変御理解のある御答弁をいただきまして、ありがとうございました。  と申しますのは、実は現在、科学技術の評価システムについて超党派の議員で、キャップ、座長さんは中山太郎先生でございますけれども、やっておりまして、議会の中でも話し合いを進めているところでございますが、ぜひ庁の中でも行政の中のそういう審査、評価のあり方としてお考えいただければありがたいと思います。  それでは、「もんじゅ」について伺わせていただきたいと思いますが、動燃の大石理事長さん、雨の中また御多忙の中、きょうは理事長さんに質問いたしますのは私一人でございます。たった一人のために大変費用対効果が悪いのかもわかりませんが、よろしくお願いしたいと思います。  二月二十七日、つい先ごろ、動燃自身が今回の「もんじゅ」の事故につきまして報告書を科技庁の方に出しておられます。私もざっと拝見いたしましてわかりやすい感じはいたしますが、ぜひ理事長さん御自身の言葉で、この場で、国会の中で強調なさりたい点等がございましたら御報告いただきたいと思います。
  72. 大石博

    参考人大石博君) それでは、御説明申し上げます。  先月二月九日に科学技術庁原子力安全局長より、ナトリウム漏えいの発生原因、事故の拡大防止、三点目が事故時の対外対応にかかわる指摘事項、それから事業団施設の点検の実施につきまして文書にて御指示をいただきました。  事業団といたしましては、これを真摯に受けとめ、深い反省の上に立って慎重に検討いたしました。その結果について二月二十七日に原子力安全局長あてに御回答申し上げたところでございます。  まず、ナトリウム漏えいの発生原因についてでございます。漏えいを厳重に防止すべき配管系からナトリウム漏れが発生したことを深く反省いたしまして、原子力安全局に設置されておりますもんじゅナトリウム漏えい事故調査・検討タスクフォースの御指導のもと、実施してまいりました温度計の破損原因を初めといたしました動燃事業団の調査の現状と今後の計画について取りまとめをいたしました。  二点目の事故の拡大防止につきましては、結果的にナトリウム漏えい火災の影響が拡大いたしましたことを深く反省し、ナトリウム漏えいが確認されれば直ちに原子炉を停止する等、運転手順書や設備等の改善策を取りまとめました。  三点目の事故時の対外対応につきましては、事故時の通報連絡におくれを生じましたことから、現場責任者の判断で直ちに通報連絡することに改めますとともに、設備面を拡充する等通報連絡の迅速化を図ることといたしました。また、ビデオ問題に象徴されます情報提供につきましては、これまでに事業団として行ってまいりました詳細な調査結果を御報告し、役職員の意識改革と体制整備等再発防止のための具体策を御報告させていただきました。  さらに、当事業団の主要な四十六施設の点検実施につきましては、事故時、緊急時の対外対応体制等にかかわる諸規定や手順書類を点検いたしました。その結果、通報連絡の迅速化等一部の改善措置を行いました上、特段問題のないことを確認いたしました。今後とも、「もんじゅ」におきます事故の原因究明の進捗も踏まえまして、さらなる点検を実施してまいります。  以上、今回の御指示いただきました事項につきましてはきちんと対応してまいります。  加えまして、動燃の置かれております現在の厳しい状況考えますと、今、動燃事業団に強く求められておりますのは、技術的信頼と社会的信用の回復と確立てあると認識しております。このため、ナトリウム技術の強化はもとより、「もんじゅ」の安全総点検を実施し、安全確保に万全を期してまいります。また、意識の改革、危機管理体制の強化、情報公開の徹底、地域社会とのコミュニケーションや地元自治体対応の充実強化などを早急に図っていくために、私、理事長を本部長とする全社的な推進体制として既に自己改革推進本部を設置いたしましたところでありまして、今後その成果を示しながら地域の皆様方の信頼が得られるよう全力を尽くしてまいります。  動燃事業団といたしましては、今後とも、国、地方自治体並びに関係機関の御指導、御協力を得て原因の徹底究明と改善策を実施していきますとともに、地元を原点とした事業の展開や施設の安全を第一とする意識の改革を進めまして、再出発する決意で全力を尽くしてまいりますので、今後ともよろしく御指導を賜りますようお願い申し上げます。
  73. 川橋幸子

    川橋幸子君 その御決意でぜひこれからも御活躍といいましょうか、この件についての社会的な信用というふうに理事長さんおっしゃいましたが、動燃だけの問題ではなくて、これはきっと原子力政策に対する社会的信用につながるものかと思います。ぜひ動燃という持ち場の中でその御努力をしてくださいますようにお願い申し上げたいと思います。ありがとうございました。  さて、これよりもかなり前でございますが、当院の院の運営の関係もございまして、なかなか科技庁の方からはいわゆる中間報告についてお話を伺ってないわけでございます。二月九日、中川大臣がおいでになられましてから何回かに分けて大変科技庁の方も努力されまして、調査状況状況を折り目でお知らせいただいているわけでございますけれども、やっぱり動燃、事業自身調査と監督官庁である科技庁の調査と違うわけでございます。お役目も違うと思います。  それから原子力安全委員会、これは第三者機関でありますというふうに科技庁の方はおっしゃっておられますけれども、それぞれ調査の視点とか役割とか、今後ほどんな節目でどういう点について明らかにしていってくださるのか。その辺を一まとめでお答えいただきたいと思います。
  74. 宮林正恭

    政府委員(宮林正恭君) お答えさせていただきます。  まず、二月九日に私どもがそれまでの調査状況を取りまとめました中身でございますが、これは「もんじゅ」のナトリウム事故が起こりまして設置をいたしました外部の専門家もお入りいただいたタスクフォース、むしろ中心は外部の専門家だというふうにお考えいただいたらありがたいかと思いますが、その中で調査状況ということでまとめていただいたものでございます。  それで、この中では三点をまず重く受けとめるべきであるというふうな指摘をしておりまして、一つは高い信頼性を確保することとしていたにもかかわらず、現実にナトリウムの漏えいが発生するに至った。それから二つ目といたしまして、漏えいを初期の段階で掌握し、火災拡大に至らないように適切に対処できなかった。それから三番目といたしまして、動燃の事故時の対外対応について、その時点までに明らかだった事実関係を整理させていただいて、またそれに対するタスクフォースメンバーとしての見解なり、今後も引き続き調査検討の必要な事項、こういうふうなものをまとめさせていただいたわけでございます。  具体的には、原子炉の停止操作あるいは緊急ドレン操作といったようなときの手順書の記載事項の不適切さなどを指摘しておりますし、原因究明のための試験、解析、教育訓練の内容、緊急時の連絡通報体制等について継続して調査検討していくというふうにいたしているところでございます。現在このラインに従いまして調査検討を続行しているところでございます。  それから、原子力安全委員会の方では、現在ワーキンググループという会合をお持ちいただきまして、みずからいろいろと現地調査をされる、あるいは私どもからいろいろと自分たちの御疑問の点を聴取されております。かつまた、私どもは先ほど申し上げました取りまとめの中身を御報告する。こういうふうなことをさせていただきまして、それぞれの会合のたびにその座長はプレス会見をしてその状況を御説明されている。こういうふうな状況でございますが、まだ現段階において具体的に何か結論といいますか、報告といったようなものをおまとめになったというところには至っておりません。  しかしながら、私どもは、当然規制監督部局としましてタスクフォースを運用いたしましてこの調査検討を進めていくわけでございますが、これにつきまして原子力安全委員会の方としては、第三者チェック機関といいますか、そういう役割を果たして、私どもの行動を逐次御報告しておりますので、必要なときには当然いろいろと聴取をされるということをされております。  したがいまして、最終的な成果につきましては、当然それにつきましてもチェックをしていただくという機能もあり、かつまた、それ以外にも必要な御指摘をいただくということになるんではなかろうかと思っているところでございます。
  75. 川橋幸子

    川橋幸子君 余り意地悪な質問をするつもりもないのですけれども、やっぱり何というんでしょうか、国民の目をお伝えする、外の目をお伝えするのも議員の役割かと思いまして、言わせていただきたいと思います。  これは、二月二十日の日経新聞でございます。産業界の専門新聞でございますので、そう偏りはないと思いますが、この日経新聞の中で、動燃ばかり悪者にして科技庁は責任逃れをしようというのかとか、第三者機関の設立を日弁連が提案しておりますと。それから、私ども社会民主党の関係では、自治労からもそのような提言をさせていただいております。それから、当院の予算委員会の場でも私どもの同僚議員がそのように質問させていただいているわけでございますけれども、やはり科技庁さんの報告書を拝見いたしますと、どうもそういう要望がよくおわかりいただけないのではないか、そんな感じがするところがございます。  原子力安全、これは規制当局というのでしょうか、法律上の用語ですので規制当局なのかもわかりませんが、一般的には規制当局という言葉自身が安全をしっかり国民のために確保する、そういう責任を持つ局というのがはっきりしないせいもあるのかもわかりません。  例えば、概要の一ページにこういう文句がございます。事故後の対応なんですが、規制当局に正しく事業体から情報が提供されずというようなくだりがあるのでございます。これはオーバーに言いますと、例えば犯人から通報がないので警察が動けないというような、何かもっと監督官庁というのは自分の役目、自分の使命から積極的に行動するというのが役割なのではないかと思います。  例えばの話で申し上げましたけれども、同じ一ページ、「重く受けとめる必要がある」と。事故発生原因ですとか拡大防止策ですとか対外対応について重く受けとめるということなんですが、「必要がある」というのは、非常に客観的で他人事のような感じが国民の目にはするわけでございます。  それから、もう過ぎたことではございますけれども、この事故が発生した当初は、この委員会の中でも事故、事故と申しておりましたけれども、去年の年内は「ナトリウム漏えいについて」というタイトルでございまして、最近は事故についてということですけれども、何かこう監督官庁の使命というのをもうちょっと国民にちゃんと理解されるような、そういうコミュニケーションをやっていただきたいと思います。  時間も来ているようでございますけれども、あと一つしつこいようですが要望させていただきますと、運転管理専門官ですか、運専官と省略されるようでございますけれども、その方が現場に立ち入る権限がなかったので動燃の調査にもあるいは自治体の調査にも同行して部屋の中に入れなかった。やっぱりこれは権限が要るんだというようなことですね。それから、携帯電話を持たせるべきだったという非常に技術的なことを踏まえて、運専官の権限強化がこれからの改善策というような報告もちょうだ…しているわけでございます。やっぱり監督官庁で、しかも現場にいる方ですから、しかも動燃の中の理事さんには科技庁OBの方も行っていらっしゃるわけですから、何でそんなに遠慮なさるのか非常に不可思議な感じがいたします。  ですので、権限強化とか電話が云々より以前に、やはり科技庁の中でも、動燃さんと同じように自己改革推進本部とは申しませんが、もう少し行政の責任というものについて改めて自覚いただけるような、そういう対策をとっていただきたいと思います。要望です。  もし、大臣、何かありましたら一言お願いいたします。
  76. 中川秀直

    国務大臣中川秀直君) 御指摘の点は、私自身も感ずるところがいろいろございます。その意味で、この事故を教訓に、監督官庁、規制官庁として  の科学技術庁のやってまいります今後の進め方、やり方についても、反省すべき点、改善すべき点はきちんと改めてまいりたい、そのように決意を  いたしております。
  77. 立木洋

    ○立木洋君 長官所信表明について幾つかお尋ねをしたいと思います。  独創的基礎研究科学技術振興基盤の強化ということを一番最初に強調しておられます。予算書の方を見せていただきますと、百八十四億余りふえているわけですね。これについては一五四%の増でありますが、長官はこれで十分だというふうにお考えになっているのか、あるいはまだ足らないというふうにお考えになっているのかということについては後に回すことにしまして、この中で述べられている一つの問題としては、優秀な若手研究者の積極的な支援と活用を図ると。この問題での二番目の科学技術系人材の確保養成の問題についても、昨年に比べてやはり倍とまではいきませんけれども、四十三億円ふえておるという状況になっているんですね。  しかし、実際の状態でいろいろいただいた資料を見てみますと、科技庁関係研究所での研究者というのは、一九八〇年から十五年間の間に毎年のように減っているわけです。そして技術職員、これについても毎年のように減っております。耳にしたところによりますと、技術職員というのを余り重視しないという風潮があるというふうに言えば語弊があるかもしれませんが、そのような話も聞くところであります。  しかし、実際には、この技術職員の方々が実験等々に携わって行う仕事というのは非常に大切な問題でありまして、これが軽視されるようなことがあると大変であるわけなんです。これが十五年間に四十三人、つまり一八%削減されているということは、私としてはやはり重視しなければならないというふうに思っております。  大学、国立研究機関等における研究者一人当たりの研究支援者、つまり技術職員というのでしょうか、イギリス、フランス、ドイツなど外国に比べてみますと四分の一の低さなんです。こんな状態で、本当に技術職員が研究生活をあらしめるための人数として実際に充足しているのかどうかという問題も考えざるを得ません。  また、科技庁の試験研究機関の研究者一人当たりの技術員の数は、一九八〇年は〇・二二、それが九五年になると〇・一八、このような減り方であります。  これはもちろん科技庁の所管ではございませんけれども技術職員が不在のために起こった事故がありました。御承知のように、大阪大学では爆発事故が起こりましたし、名古屋の大学では感電死という事態が起こったのも技術職員が不在のために起こった事故であるわけです。  ですから私は、科技庁として本当に若手研究者育成していく、こういう問題を考える場合に、研究者の数、それから技術職員の充足、これはやっぱり非常に重視する必要がある。このことを長官所信の中で強調されておられるんですけれども、現実にはそれと違う方向にこの十五年間の歩みがなっているということは、非常に私としては不満足といいますか、もっと強く言えば遺憾なんですが、この点についてのまず大臣の御所見をお伺いいたします。
  78. 中川秀直

    国務大臣中川秀直君) 委員指摘の具体的な国際的な比較の数字を初め趨勢についてはまた政府委員よりお答えをさせていただきますが、いずれにしても、御指摘のとおり、研究支援体制の整備を図るために平成七年度から新たに研究支援協力員制度というものをスタートさせまして、確かに予算額そのものもまだまだ小さいような認識を持っておりますが、これからそういう点も十分踏まえて政府として努力をしていこうと、緒についたところである、こう理解をしております。
  79. 落合俊雄

    政府委員落合俊雄君) ただいま研究補助員についての御質問ございました。日本全体につきまして、今委員指摘のとおり、諸外国と比較いたしますと確かに研究者一人当たりの研究開発支援者数、非常に低い水準でございます。  数字を申し上げますと、我が国研究補助員、これは研究開発の支援者でございますが、自然科学系のみをとった場合に、一九九五年に二十七万人という数字になっております。さらにこれを研究者一人当たりの支援者数で比較をしてみますと、我が国の場合には〇・四四人、自然科学系のみでは〇・四七人ということで、ドイツ、フランス、イギリスというような各国の数字を大きく下回っているのが現状でございます。  これは総務庁の統計による数字でございまして、この場合の研究支援者といいますのは、研究補助者、技能者、事務補助者等を合計したものでございます。
  80. 立木洋

    ○立木洋君 先般開かれた科学技術会議、ここでヒアリングが行われて、長官、参加されておられたかどうか知りませんけれども、そこで日本私立大学連合会の会長さんが指摘されている点なんですが、これは当委員会で行いました基本法附帯決議の問題に言及して、独創的、基礎的研究の抜本的な強化についての大学へのあり方の問題についての意見が発表されました。  簡単に申し上げますと、日本の公的財政支出がGDP比〇・六%で、アメリカ、イギリス、西ドイツの二分の一、しかも日本高等教育の八割を占める私大への公費支出が一二%で、国立系経常経費の八八%に比して七対一という状況になっているというふうな意見が述べられております。  これは、各省庁から出されている白書を全部きれいに読んだわけではありませんけれども、いろいろとつまんで読んでみますと、公的研究部門の拡充という問題がほとんどの白書で強調されているんです。これは事実です。  ところが、それについていろいろ実態を聞いてみますと、例えば文部省の管轄関係でいいますと、東大なんかでは柏キャンパスへの移転の計画等があります。教員の定数はふえないで本郷や駒場などとの兼職で賄うと。大学院生だけがふえて、本郷などへの往復の負担をあわせるとさらに研究条件が悪化するんではないかというふうに研究者の方々が大変心配されておるという状況があります。  また、厚生省の定員の削減を含む七つの研究機関の再編が職員との間で十分に話し合いがなされないまま進められようという状況が今起こっております。この問題について現場でのいろいろなお話を聞いてみますと、現場では、研究の継続は一体どうなるんだ、こんなふうな形にされてはと。さらには、我々の働く場所はどうなるんだという非常な不安と、何といいますか不信を持っておられるという状態があるのも事実であります。  こういうような問題については、科学技術政策の方向性を決めるという立場にある科技庁として、こういうような研究機関のそれぞれの各省庁における実態を十分に把握して、そういう問題点をやはり改善していくように積極的に努力をしていただく必要があるのではないかというふうに思っているわけです。  現場の研究者がこういうような声を上げざるを得ないのは問題だと私は思いましたが、科技庁の長官としてというお立場もおありでしょうが、科学技術政策の樹立に関する科学技術会議議員でもございますので、そういう見地からもあわせて長官のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  81. 落合俊雄

    政府委員落合俊雄君) ただいま立木委員指摘ございました私立大学連合会の会長さんからの意見陳述、これは先ほど御答弁申し上げましたが、科学技術会議におきまして科学技術基本計画策定作業をやっているわけでございますが、その作業の一環といたしまして、国立大学協会それから私立大学連合会等々の機関からの意見聴取を行っております。  その中で出た意見として、確かに私立大学に対する国からの助成というものをもっとふやしてほしいという御指摘がございました。現在の我が国政府研究開発投資平成六年度におきまして二兆九千億円でございました。これは、ただいま御指摘ございましたようにGDPに対する比率は〇・六%ということで、私どもといたしましては、諸外国に比較してこの数字は低い、したがって、これを引き上げていく必要があるということで、大臣所信表明でも述べております政府研究開発投資の倍増というものの一つの中身になっておるわけでございます。  それに関連いたしまして、研究補助員の配置状況につきましては、先ほど私から研究補助員数の現状につきましては御報告を申し上げましたけれども、現在、策定作業を進めております科学技術基本計画におきましても、我が国研究開発を円滑に進めるための研究補助員の重要性ということに着目いたしまして、それに対する対策というものを計画上できるだけ具体的なものができないかという検討を現在行っているところでございます。
  82. 立木洋

    ○立木洋君 何か長官、御所見がありましたら。
  83. 中川秀直

    国務大臣中川秀直君) ヒアリングのこと等もまたその都度ブリーフをしていただいて、私なりにもそういうお声が上がっているということは聞き及んでおります。  今、局長答弁したような気持ちで、各省庁の連携ももちろんでございますけれども科学技術庁が強いリーダーシップを発揮してめり張りのある基本計画をつくってまいりたい、こう考えております。
  84. 立木洋

    ○立木洋君 積極的に努力していただくように重ねてお願いをいたしておきたいと思います。  次に、防災の問題についてちょっとお尋ねしょうかと思いますが、過酷事故が起こった場合の防災対策です。過酷事故が起こらないようにする対策等については研究が進められているかのように聞き及んでいますけれども、しかし防災対策、つまり人間が危難から避けるという、言葉を言いかえれば防災訓練といいますか、そういうようなことの計画というのは実際につくられているんでしょうか、どういうことになっているんでしょうか。
  85. 宮林正恭

    政府委員(宮林正恭君) お答えさせていただきます。  万が一、原子力発電所において事故が発生いたしまして、放射線の影響が周辺地域に及ぶおそれが生じた場合、そういう場合に備えましては、災害対策基本法などに基づきまして国及び地方公共団体が防災基本計画策定しているわけでございます。この防災基本計画に従いましてそれぞれ具体的な対策が行われる、こういうことになります。  それで、まず原子力安全委員会の方では、「原子力発電所等周辺の防災対策について」という一種の指針といいますか、そういうものを作成しておりまして、これをもとに地方公共団体におきましては地域防災計画をおつくりになっているということでございます。これに基づきまして避難誘導とか医療対策が行われております。  それから、国の方は発電所周辺のモニタリングを実施しているところでございます。また、その結果といたしまして、周辺住民に過度の被曝が予想される、こういうふうなことになりますと、地方公共団体は国の助言を得まして屋内退避あるいは避難を勧告する、こういうふうなことになります。また、住民の被曝が起こってその程度が十分医療を必要とするというふうなことになる場合につきましては、地域の救急医療施設あるいは私どもにございます放射線医学総合研究所が協力をしまして緊急的医療を実施することにしておりまして、地方公共団体ではそのための機器としましてホール・ボディー・カウンターとかあるいは沃素剤といったものを購入しているわけでございます。国も、これにつきましては財政的支援を行っております。また、当庁自身といたしましては、モニタリングあるいは放射線医学の専門家をいつでも派遣できるようなそういうふうな体制を組んでいるところでございます。  なお現在、原子力安全委員会につきましては、阪神大震災の経験にかんがみまして、より充実した災害対策をする必要があるということで検討しております。
  86. 立木洋

    ○立木洋君 一九八八年に国際的な原子力機関で行われた過酷事故が起こった場合の対策、この勧告については原子力局長に二回ぐらいお尋ねしたことがあったんですけれども、この中で見てみますと、そういうふうな事故が進行した場合、そういう事故が起こらないようにその影響を軽減するような処理方法を用意しなければならないというのが一つあります。それからもう一つは、そういう問題について、事故の進行とその影響を管理するための訓練、人命を救うためのそういう訓練もやらなければならない。二つのことが勧告されているわけです。  この問題についてアメリカの原子力規制委員会で出されました内容を見てみますと、これはここでは、過酷事故が起こったときの住民への放射線影響の可能性とその程度、事故発生の通報、屋内退避、避難、移住、放射能除染、それから飲食物管理など、緊急時計画などの問題が研究の対象とされて進められているというのが、アメリカで行われている原子力規制委員会で検討されている具体的な内容として提起されている文書であります。  ところが、実際に一九九四年三月、通産省資源エネルギー庁の要請を受けて、電力会社十社が運転中、建設中の軽水炉五十一基については二〇〇〇年までにその対策を検討するということになって、アクシデントマネージメントの検討報告書を提出しました。ところが、それを見てみますと、このアクシデントマネージメント検討報告書では、住民の緊急時の対策については全く触れられていないんです。これはもうごらんになっていただければわかります。通産省が出されている内容では一言も触れていない。  だから、事故が起こらないようにどう対策するかという問題については、当初は安全だから問題ありませんという御答弁をいただきましたけれども、しかし、より安全を確保するために検討することにしましたという答弁に変わりました。しかし、そうはなったものの、事故が起こらないようにする対策は検討されたとしても、もし事故が起こった場合の人間に対する避難の訓練だとかそれらの問題について全く触れられていないというのは、私は甚だ遺憾に思うんです。こういう問題についてもよく御検討を私はいただきたい。  今、訓練の問題についてお話がありました。私、いろいろ現場に行って聞いたんです。私たちが調査した内容で、水戸からのお話では、沃素剤を車で運ぶことになっているが全然間に合いませんと言っているんです。これは茨城県の東海村です。それから、避難すべき体育館がございませんと。これは玄海原発です。それから、避難を誘導することになっている警察官にどうしたらいいのかといって説明を受けたら、そういうことは役場に行って聞いてくれといって警察官から断られたということが起こっているのが福井県です。一応避難訓練をやっているように見せかけているけれども、住民が参加しない。参加しても、いや、こんなことは絶対にございませんからというふうな言い方で訓練をしているというんです。  これ、本当に訓練なんだろうか。形の上だけでの問題であって、実際にはそういうふうに人体に影響を与えるような問題については何一つ公式の文書では触れないで、訓練をやらなければならないからといって安全局長が今おっしゃったようなことについてはやっているけれども、現実にそういう声が出ているということをよく確かめていただいて、それが本当の訓練になるのかどうなのか。その問題については私は真剣に考えていただきたいということを申し上げたいんですが、安全局長、いかがでしょうか。
  87. 宮林正恭

    政府委員(宮林正恭君) まず、先ほどちょっと申し上げることを忘れたのでございますが、現在、中央防災会議の防災基本計画専門委員会におきまして部会を設置され、阪神・淡路大震災の経験を踏まえまして、原子力災害等の事故災害についてもこの二月から検討を開始されております。この検討した結果は、防災基本計画という形で追加をされるという形になっております。  それから、それぞれの地域につきましてはそれぞれ地域防災計画が設置をされておりまして、その訓練につきましては、ここにある地元の資料を見ますと、確かに幾つかの県におきましては、まさに関係者といいますかリーダーシップを持ってやるようなそういう方々、つまり直接的な地元住民以外のリーダー的な役割を果たす方々を中心とした訓練をしている、こういうふうな状況になつていることもございます。それで、これらにつきましては、それぞれ地域防災計画に基づく訓練でございますものですから、それぞれの県が立案をされましてそれで進められているわけでございます。  私どもとしては、できる限りこれには御協力申し上げるということで、いろいろ職員を派遣したり、そういうサポートをしておりますが、先生の御指摘のようなことにつきましては今後引き続き県の方々ともお話を伺いながら留意していきたい、こういうふうに思います。
  88. 立木洋

    ○立木洋君 長官、御答弁いただかなくて結構なんですが、私、極端な幾つかの例を挙げました。これ、全部が全部そうなっているというふうに言うつもりは私はありません。だけれども、事実上、机上にいろいろなプランがあるにしても、現実にそれが動く状態になっていないということであるならば、いざというときにはまさに大変な事態になる。この点については十分御留意いただいて、実際の状態を十分に御調査いただいて、安全の問題は所信の中でも極めて強調されているわけですから、ぜひともこの問題についても努力していただくように強く御要望申し上げておきたいと思います。  それから、気象庁の方はおいでになっているでしょうか。  来年度の予算で気象庁は五つの測候所を廃止するという計画が発表されましたが、廃止する測候所五カ所はどこでしょうか。
  89. 由良武

    説明員(由良武君) 昨年末に内示をいただきまして、現在、具体的な計画を立てているところでございまして、測候所名についてはまだ決まっておりません。
  90. 立木洋

    ○立木洋君 決まっていなくても大体御存じなんだろうと思うんですね。東京管区でいえば富山県にある伏木だとか伊良湖、諏訪、あるいは枕崎等々なんかがあります。もう既に名前が指定されなくても九州なんかでは多くのところで反対の運動が起こっています。  なぜこういうことになるのかという問題について私は強調したいんですが、これは、防災機関の最前線にあるのが気象庁の観測所だと。この問題については、昨年の阪神・淡路大震災のときに、測候所に夜間人がいなかったために通報する時間がおくれたことによって大変な被害がふえたということが国会でも大きな問題になりました。この問題でいえば、その大地震が発生してから一時間四十三分おくれたというふうにされております。これが初動態勢のおくれの原因の問題となって大きなことになったわけですが、測候所の定員は八〇年から百七十一名削減されております。測候所は三十四カ所が夜間無人化されておる。全国に九十七カ所あるうち三十四カ所か夜無人化されている状態になっていると聞いております。  今までは測候所における人員の削減だったんです。だから、人員が削減されたから三人しかいないような測候所が生まれてきた。三人の測候所になったために夜間人を配置することができないから夜間無人化という状態が起こった。それが阪神・淡路大震災のときの淡路にあった測候所の問題として一時間四十三分の通報の立ちおくれになったんです。  ところが、今度出しているのは人員の削減だけではないんです。一部の測候所そのものを廃止するというんです。初めてのことです、これは。測候所を廃止するというのは初めてのことですよ。これは、阪神・淡路大震災であれだけの大問題になっておりながら、機敏に、緊急にそういう手当てをして被害が拡大しないようにしなければならないということが大問題になっているときに、五つの測候所そのものが廃止されるということは、まさにあの阪神・淡路大震災から一体何の教訓を学ぼうというのか。  聞いてみますと、これまでの計画で、いわゆる行革のために人員をどういうふうにして削減していくか、そういう計画があるためにやらなければならない、さような状況もございますなんという説明をちょっと漏れ聞いたことがあります。阪神・淡路大震災が起こった教訓から考えるならば、そういう誤った、正確でない行革のあり方というのは、人の命を重視するならば改めるべきだと、私はそう考えるんです。  だからこの問題については、今あなたの方では、どこどこが問題にされているかという大体の地名はおわかりになっておられるだろうと思うけれども、ここで公表するのは待ちたまえというふうに言われてきたから言わなかったんだろうと私は思います。だけれども、この測候所の廃止の問題は全国的な大変な問題になります。このことを一体どのようにお考えになっているのか、まず気象庁の見解をお聞きしたい。
  91. 由良武

    説明員(由良武君) 今、測候所廃止ということでお言葉がございましたが、私どもの方では無人化というふうに考えてございます。  気象庁におきましては、最新の科学技術の進歩の成果を活用いたしまして、常に業務の近代化に努力してまいっておるところでございます。例えて申しますと、気象衛星の「ひまわり」あるいは気象レーダーの観測網アメダス、これは無人で気象観測をする機械でございますが、全国に千三百ほど設置してございます。さらに、津波地震早期検知網といったような観測施設の整備を図ってまいっておりました。また、これらのデータの処理のために、スーパーコンピューターにつきましても逐次更新を図っているところでございます。そういうことで、気象あるいは地震の監視能力というものの向上が十分に進歩しておろうというふうに考えてございます。  これらの背景から、一部の測候所につきましてはその観測施設について無人で運用が可能である、このように判断したわけでございます。したがいまして、その測候所におります要員を地方気象台等に振りかえまして、その地方気象台等の強化を図りまして府県全域に対します気象サービスの充実を図りたい、かように考えているわけでございます。  特に、震度情報充実に関して申し上げますと、先般の大震災の経験を踏まえまして、本年度補正予算によりまして通信回線を二重化しまして、データ収集機能を強化しております。  また、観測施設につきましてもその耐震化等を行っております。数自体につきましても、従来の二百九十カ所から五百七十四カ所にまで倍増したというようなことで観測施設を充実し、また震度につきましても、従前六までの観測でございましたが、七までも自動で計測できるように改良いたしまして、観測施設の信頼性向上に努めているところでございます。これらによりまして、人手を介した震度観測よりも一層の迅速化、客観化というものを図りました。また、信頼性の維持向上にも努めているということでございます。  気象庁といたしましては、災害に直結するような自然現象の観測データ、これにつきまして速やかに収集する。また、それを適宜処理いたしまして国民の皆様にお知らせする、あるいは防災機関にお知らせする。そのためには、自動化された観測網を整備いたしまして、そのデータを迅速に処理し、解析し、的確な情報早期に提供する、これが最も重要なことだろう、かように考えているところでございます。
  92. 立木洋

    ○立木洋君 私、今の話を聞きながら、結局「もんじゅ」の問題を質問したときも、問題は起こりませんから安全ですと。原発が問題になったときも、これはもう日本としては完全な対策がとられておりますから安全ですと。しかし、あの阪神・淡路大震災で問題になったときには、どのように機械が精巧なものになろうとも機械は機械なんです。やっぱり人間が最終的にどうするかということをやらなければだめじゃないかということが大きな問題になったんです。その安全神話にとらわれるような官僚の答弁というのは、私はもう何回も聞き飽きました。そういうことがあってはならないためにこそ、我々が力を尽くさなければならないのが今日の状況だと私は思うんです。  そういう点で、先ほど同僚議員も質問いたしましたけれども、プルトニウム利用の進め方という問題でなくて、プルトニウム路線そのものについて私は抜本的な見直しを御検討いただきたい、ここまで大きな問題になってきているわけですから。いわゆる安全の問題についてはどれだけ手を尽くしても絶対ということはあり得ないわけですから、安全の問題について最善の努力をあくまでも尽くすということと同時に、プルトニウム路線についての根本的な見直しについて、最後に長官の御所見をお聞きして、私の質問を終わりにしたいと思います。
  93. 中川秀直

    国務大臣中川秀直君) 再々申し上げておりますが、さまざまな科学技術の進展の中で安全確保というのが大前提である。他方、現実のエネルギー消費はまだまだ二十一世紀に拡大をしていく、これは国際的にもそうであろう。その中で、具体的、現実的に何をもってそれを賄っていくかという国民的な御議論を幅広い観点からいただいて、施策にも反映すべきものは反映していきたい、そういう基本方針で臨んでいきたいと思っておるのでございます。  今、プルトニウム利用政策そのものをと、こういう御議論でございましたが、現実に原子力発電の中でもプルトニウムはつくられております。アメリカのようにこれをワンススルーで処理処分するという方針に、資源の少ない我が国において、さまざまな角度からまだまだ処理処分方法の具体的現実化については検討を加えていかなきゃならぬ。そういう中で、全くこれを利用しない方針にすぐ転換するということは、委員の御指摘ではございますけれども、現実問題として我々はまだそこまでは踏み切れません。しかし、冒頭申しましたような、これからの全体的な御議論の中で、いろいろなコンセンサスを得るその努力をする中で、また反映すべき御意見あるいは方向というものが形成されてきましたときには、それは柔軟にまた検討してまいりたい、こう考えております。
  94. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 最後になりましたが、私から二、三質問させていただきます。  なお、簡単に終わりますから、御辛抱の上おつき合いくださいませ。  最初に、山崎委員も取り上げておられましたけれども、私も科技庁の予算を見まして、瞬時にしてこの六千九百二十八億円というのは、政府が今回の住専問題で投入しょうとしている税金の額と同じというふうなことをわかり、理解いたしました。  科学技術庁というのは、大臣以下中央に数百名の職員がおる。それから、いろいろな研究施設がありまして、そこに何千人という職員が働いて、あすの日本をにらんでいろいろな研究を進めておる。恐らく膨大な予算が使われておるでありましょう。その額とこれが同じということは一体これはどういうことだろうかと。いかにも住専に使われる税金の額というのはまことに巨額なものだ、膨大なものだという思いがいたしますが、見方を変えてみますると、住専というのはあれは貸金業者、たかだか町の高利貸してございます。町の高利貸しがああして貸した不始末に使われる金と、あすの日本を背負って頑張っておる人方が使っておる金とが、これは全く同じと。一体こういうことでこの国は文化国家と言えるんだろうかという気もいたすわけであります。両方の金を合わせますと一兆二千億近く、これをあすの日本を担うための科学技術のために使えばどれだけ有効な研究ができるんだろうかなと、こういうことも私なりに考えておるわけであります。  以上、私の感想ですから、お答えは結構でございます。  私は、最初に核実験の停止の問題についてお尋ねいたしたいと思います。  これは、大臣所信表明で取り上げておられまして、その識見を私高く評価をいたしたいと思います。  フランスは、国際非難の中で核実験をやめましたが、残りはそうなりますと中国ということになります。あの国はやめるともやらないとも言ってませんので、恐らくこれから何回かやるつもりであるんだろうと思われます。  核実験の停止というのは、実はこれ言葉だけの、スローガンだけの問題じゃないんだろうと私は思います。いずれ核の廃絶を目指して第一歩を踏み出していく。核の廃絶ということは、これ軍備の廃絶にもつながっていく問題だろうというふうに考えております。  二十一世紀の国々というのは、もう軍事力じゃなくて、民生の安定とか生活の向上とかそういうことでお互いに競争していく、そういう時代だろうと思います。そういう時代を控えながら、なお核実験をやろうという中国の真意は一体どこにあるのかわかりませんけれども大臣所信表明で言っておられるように、粘り強く反対の態度を進めていく、その通りだと思います。  しかし、ただ、実験が行われるたびに形式的に駐日の大使を呼んで抗議をするとか、抗議声明を発するということになりますと、心ある人にとつては、何だ同じことをやっているのか、あるいは本当にやめる気はなさそうだからああいうごまかしをやっているだけだと言う評論家もいるようであります。  私考えるに、公式か非公式かは別といたしまして、核実験をやればこういうペナルティーをあなたの国に科しまするぞと、外交儀礼に反しない限度で。そういうことをはっきりと通告しておきまして、それを無視して実験を強行したら、言ったとおり約束どおりにきちっとペナルティーを科する、それぐらいの強い態度で望むべきではないかというふうにも考えておりますので、この問題につきまして大臣の御所見をちょっと伺わせていただければと思います。
  95. 中川秀直

    国務大臣中川秀直君) 委員もうお詳しいわけで、そういう意味ではだらだらとは申し上げませんが、CTBTの全面核実験禁止条約の本年中の交渉完了、それから、それまでの核実験の最大限の自制ということを、我が国はこの問題に関して基本方針にしていることは御案内のとおりでございます。  また昨年十二月には、我が国と各国が共同提案した核実験停止決議案というものが国連総会で採択される。そういういろいろな努力政府としてもいたしておると理解をいたしておりますし、その結果として、フランス政府の多少方針変更というふうにも受け取れるような、そういう核実験全体に対する禁止に向けた世界的な機運というものも盛り上がってきている、このように考えております。ありとあらゆる機会をとらえて、この交渉そのものにも科技庁として専門家を派遣する等努力をいたしておりますし、また所信で述べましたとおり、粘り強く働きかけていくということに尽きるだろうと思っています。  ペナルティーの問題については、与党の中にもいろんな議論がございますし、またそういう観点から無償援助の問題等々も議論された経緯もあった、これは私の個人的な受けとめ方でございますけれども。今、閣僚の立場でこれを明言してそうすべきだということはいささかまだ申し上げにくいところもございます。しかし、そういう議論視野に入れながら、本当にCTBT交渉が完全に実効の上がるような結末、結果を得られるように努力をしてまいりたいと思います。
  96. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 次は、角度を変えまして、科学技術に関する情報の公開と伝達のあり方についてお尋ねしたいと思います。  「もんじゅ」の際にああいうことがありまして、あれは事故かくしたろう、こう世間は言いまして、なかなかそれは弁解しにくいような、多分そうなんだろうと思われるわけであります。それから、今問題になっておりますHIVのエイズの問題。これも貴重な資料を隠していた、こう言われても仕方のないような現実だろうと思います。それから、先般、豊浜のトンネル事故がありまして、あのときは別に情報その他を隠したというわけじゃございませんけれども、家族の方々にあるいは国民に対してその情報を伝達する仕方が問題になったわけであります。  いずれにしろ、世間の人は科学技術ということはもう全然わからないわけですから、何回説明を聞きましても、何か大変危ないものだというふうに考えておるところにああいうふうな事故隠し的なことがありますと、ますます疑いの目を持って見ていく。何かあるんだ、危ないんだ、こういう印象が先に立ってくるわけです。  私考えまするに、国民の生命、身体、財産にかかわる科学技術の問題についてはおよそ秘密などあるわけがないんだろうと思います。これは、外交上の秘密とか犯罪捜査の上での秘密を守るとか、こういう問題とは質を異にする、次元を異にする問題だろうと思います。もう堂々と問題がありましたらそれを発表して、国会の場であるいは国民サイドで議論をしていただいて、その中から対応策を考えていくということが、またこれは二十一世紀の新しい時代科学技術のあり方だろうというふうにも考えておりますので、「もんじゅ」の反省も踏まえて、これまた大臣の御所見を例えればと思います。
  97. 中川秀直

    国務大臣中川秀直君) これもまた何回か御答弁いたしておりますが、公開の原則、その内容は、説明する責任を事業者はもとより行政の側が負っておる。我が国の戦後五十年のもろもろの進め方を、やはり新世紀、新時代に向けてアカウンタビリティーという格好で、形で、哲学で変えていかなければ、本当にこれからは理解が得られない、こう考えております。  科学技術の点に関して申しますと、例えばNASA等の努力というものは、これは我々お話を若田さんあたりから聞きましても、大変な努力をいたしております。あの宇宙での作業をNASAチャンネルで国民にリアルタイムで伝える努力、我々もその映像を見るという努力、これも大変なことでございますし、また、宇宙飛行士自身が、どうやったら、何のために、何の目的でこういう宇宙開発をやっているかということを理解してもらうために、そういうまたアカウンタビリティー、説明の方法まで研修を相当の時間積んでやっておる、対外対応についてそういうこともやっておる。これも大変参考にしなければならぬ。  科学技術のすべての問題について、そういう研究が文化的で豊かな国民生活にどうつながっていくか。最近、宇宙開発事業団で「スピンオフ」、研究の結果どういうものが地上の国民生活につながってくるかという、そんなパンフレットも発刊したようでございますけれども、そういう努力をもっともっとやっていく。ましてや安全にかかわる情報はもう何をおいてもすぐお知らせをするということが一番理解を得る王道であろう、こう思っております。
  98. 長谷川清

    委員長長谷川清君) 本件に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時九分散会