運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1996-06-07 第136回国会 衆議院 労働委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年六月七日(金曜日)     午前九時開議 出席委員   委員長 岡島 正之君    理事 大野 功統君 理事 森  英介君    理事 若林 正俊君 理事 上田  勇君    理事 河上 覃雄君 理事 北橋 健治君    理事 池田 隆一君 理事 金田 誠一君       粕谷  茂君    木部 佳昭君       田澤 吉郎君    長勢 甚遠君       藤尾 正行君    二田 孝治君       宮里 松正君    江田 五月君       須藤  浩君    桝屋 敬悟君       柳田  稔君    吉田  治君       井上 一成君    岩田 順介君       岡崎トミ子君    三原 朝彦君       寺前  巖君  出席国務大臣         労 働 大 臣 永井 孝信君  出席政府委員         労働大臣官房長 渡邊  信君         労働省労政局長 七瀬 時雄君         労働省労働基準         局長      松原 亘子君         労働省婦人局長 太田 芳枝君         労働省職業安定         局長      征矢 紀臣君  委員外出席者         警察庁刑事局暴         力団対策部暴力         団対策第二課長 宮本 和夫君         科学技術庁原子         力安全局放射線         安全課長    森田 健二君         資源エネルギー         庁公益事業部原         子力発電安全管         理課長     三代 真彰君         労働省労働基準         局安全衛生部長 露木  保君         労働委員会調査         室長      松原 重順君     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労  働者の就業条件整備等に関する法律等の一部  を改正する法律案内閣提出第六六号)(参議  院送付)  労働安全衛生法の一部を改正する法律案内閣  提出第七二号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 岡島正之

    岡島委員長 これより会議を開きます。  内閣提出参議院送付労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金田誠一君。
  3. 金田誠一

    金田(誠)委員 おはようございます。十五分をいただきましたので、質問させていただきたいと思います。  労働者派遣法、もう十年になるようでございますけれども、その運用実態として心配をしている点がございます。  本来の趣旨としては、常用雇用労働者代替にならないように、あるいは専門性を生かすようにということが趣旨になっていると思うわけでございますけれども、実態としては、代替として使われているのではなかろうか、あるいは専門性ということが必ずしも生かされていないのではないだろうか。特に、女性労働者をできるだけ雇用関係という煩わしさにとらわれずに、低額の賃金で使えるようにというような趣旨で実際は運用されているのではなかろうかという心配がございます。  そういう立場から、細かいことで恐縮ですが、数字的なことについてお聞かせをいただきたいと思うのです。  いただきました資料によりますと、一般労働者派遣事業のうち、常用雇用六万九千九百九十六人ということになっておりますが、この六万九千九百九十六人のうちの男女別数字がわかりますでしょうか。
  4. 征矢紀臣

    征矢政府委員 まず、永井労働大臣が閣議のため出席できないことにつきまして、おわび申し上げたいと存じます。  ただいまの派遣労働者につきましての男女比率の問題でございますが、平成五年十二月に労働省が実施いたしました調査によりますと、派遣労働者女性が占める割合は九二・一%という数字になっております。
  5. 金田誠一

    金田(誠)委員 この六万九千九百九十六人の男女別も、女性が九二・一ということでございましょうか。
  6. 征矢紀臣

    征矢政府委員 恐縮でございますが、ただいま申し上げました数字派遣労働者総数割合でございまして、ただいま先生指摘人数の内訳としての男女比率というのは把握いたしておりません。
  7. 金田誠一

    金田(誠)委員 売り上げ状況という数字もいただいておりますけれども、一般特定合わせまして九千三百十九億円と、一兆円産業に近い状態になっていると思うわけでございます。この売上高状況のうち、一般特定、別々でも結構ですし、一括しても結構ですが、賃金として直接労働者に支払われている金額は幾らになりますでしょうか。
  8. 征矢紀臣

    征矢政府委員 御指摘売上高一兆円弱ということでございますが、このうち派遣労働者賃金がどのくらいかという点につきましては、賃金割合がその業務あるいは企業事業所によって違いますので、的確に計算することは困難でございますが、平均的に申し上げますと、賃金割合が大体七割程度でございますので、したがいまして、それを単純に掛け算をしますと、一兆円のうちの約七千億程度ではないかというふうに推定いたしております。
  9. 金田誠一

    金田(誠)委員 法によりますと、毎年、事業報告書決算報告書を添付して登録事業者報告することになっておるようでございますが、そういう報告がなされているとすれば、平均七割などという大ざっぱな数字よりも、例えば一般では幾ら特定では幾らとか、もっと細かな数字で出るのではなかろうか。あるいは、前段お尋ねしました男女比率についても、それぞれの事業者から報告が出ているとすれば、その辺も出るのではなかろうかと思うのですが、そうはなっていないのでしょうか。
  10. 征矢紀臣

    征矢政府委員 個別の事業所ごとのそういう具体的な事業報告についての集計をいたしておりませんので、先ほどお答え申し上げましたような推計をいたした数字を申し上げたところでございます。
  11. 金田誠一

    金田(誠)委員 この問題で女性が九二・一%ということで心配をしておりますのは、常用雇用労働者代替、それも専門性という言葉を隠れみのにしながら、普通のOLの代替のようになってはならないという気がいたしておるわけです。今回も法改正をするわけでございますし、あるいは政省令見直しもあるのかもしれませんけれども、そういう行政運営に当たっては、賃金実態等をきちんとつかまえた上でやっていただきたい、こう思っているもので、あえてお尋ねをしているのです。報告も毎年度出すことになっているようでございますから、ぜひひとつ中身の実態把握できるように努めていただきたいと御要望申し上げておきたいと思うわけでございます。  そこで、売り上げ平均約七割が賃金として支給されているということでございますけれども、これが派遣先同種の他の労働者比較をして、派遣労働者賃金状況というものは優位にあるのか下位にあるのか、あるいは均等の状態になっているのかということでございます。その辺のところ、派遣先同種の他の常用雇用労働者比較をして、どの程度賃金状況と押さえられておられますでしょうか。
  12. 征矢紀臣

    征矢政府委員 平成七年におきます労働者派遣事業実態調査によりますと、派遣労働者平均賃金日額につきましては、最も高いのが通訳、翻訳、速記の業務でございまして、一万八千八百二十四円でございます。それから、低いのが建築物清掃業務の五千五百六十二円でございまして、業務の種類によりましてかなりのばらつきがあるところでございます。  御指摘の、これと同職種労働者との賃金関係につきましては、派遣労働者就業がただいま申し上げました十六業務ということで業務別になっているのに対しまして、賃金構造基本統計調査等主要な賃金関係調査対象で見ますと、これが産業別職業別になっているということから、なかなか直接比較することは困難でございます。  ただ、そういうことを前提にいたしまして比較可能なものについて見ますと、平成六年の賃金構造基本統計調査におきまして、システムエンジニアの平均賃金日額は一万五千百円、プログラマーの平均賃金日額は一万二千二百十八円となっておりますのに対しまして、平成七年の労働者派遣事業実態調査におきまして、ソフトウエア開発業務派遣労働者につきましては、一万二千七百二十七円というような数字になっているところでございます。
  13. 金田誠一

    金田(誠)委員 賃金比較なども、いただいた数字なり今の御答弁を伺いましても、派遣労働者という方々派遣先の他の労働者に比べて一体どういう状態なのかということは、ほとんどわからないという感じを受けるわけでございます。  いただいた数字から、実は私なりにそろばんをはじいてみました。一般常用雇用常用雇用以外のものを合わせますと十六万九千四百十七人という数字をいただきまして、一般派遣労働者売り上げ五千四百四十九億円ですから、これで割り返してみますと、一般につきましては年商売り上げ三百二十一万六千円、これの七割だとすると二百万台ですね、二百二、三十万というところでしょうか。あるいは、特定の六万八千八百八十三人の方を特定売り上げの方で計算してみますと、売り上げ五百六十一万八千、七掛けしますと四百万弱というところでしょうか。いずれにしても、年収二百万台あるいは四百万程度ということはいかにも低い気がいたします。  派遣先同種常用雇用労働者と比べて、こういう数字比較してみますと、かなり低い状態に置かれているのではないのかなという気がいたします。専門性などを売り物にしている派遣労働者実態がかいま見られるわけでございますが、その辺の認識はいかがなものですか。専門性といううたい文句とは裏腹に、派遣先一般同種常用雇用労働者比較しても決して高くはない、かなり低めというのが派遣労働者実態だと認識しても差し支えないと思うのですが、いかがなものでしょう。
  14. 征矢紀臣

    征矢政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、派遣労働者実態につきましては、まず九割以上が女性であるという点、それから特に若年の女性の方が多いという点、こういう点がございます。  そこで、そういうこととあわせまして、平成七年の労働者派遣事業実態調査によりますと、派遣労働者平均賃金日額は大体一万円程度でございまして、これを年間ベースに計算いたしますと、一カ月の勤務日数を仮に二十二日といたしまして換算いたしますと、年間で大体二百六十四万円という数字になります。  これが高いか低いかという点でございますが、一方で、賃金構造基本統計調査女子労働者の年齢、二十ないし二十四歳層で見ますと、日額が八千二百五十五円となっておりまして、これを年間ベースで計算しますと二百十七万円程度になります。これにつきましては、御承知のように、派遣労働者につきましては残業等はございません。そういうことを含めてみますと、必ずしも直ちに低いと言えるかどうか。ただ、生涯ベースで見ますと、福利厚生あるいは退職金、そういうものにつきましては当然ございませんので、そういう点では差があるわけでございますが、実態としてはそんな状況ではなかろうかというふうに考えております。
  15. 金田誠一

    金田(誠)委員 圧倒的に女性労働者が多い。そして、賃金については必ずしも十分比較対照ができるような状態ではないようでございます。  そういうことで、職業安定審議会ですか、ネガティブリストだポジティブリストだ、今いろいろな議論がされているようでございますけれども、そういう議論に踏み込むについては余りにもデータ不足のような気がいたすわけでございます。毎年度毎年度その報告提出させている。それにしては、実態一般的な勤労者統計などとの比較というものに根拠を求めざるを得ないような状況というのはいかがなものか。  比較先常用同種労働者なりときちんと比較対照できて、派遣という極めて不安定な身分方々が、身分も不安定、賃金も安いというようなことにならないように、本来の専門性を生かせる、そういう健全な派遣労働が担保されるような調査をまずはしていただく。毎年度毎年度報告に当たって、その辺のところがもっと詳細な、男女別勤続年数別職種専門性が生かされている、あるいは同種常用労働者との比較ができる、そういう報告を聴取することになりませんでしょうか。最後の質問です。
  16. 征矢紀臣

    征矢政府委員 派遣労働者就業実態把握するための調査の問題でございますが、労働者派遣事業実態につきましては、労働者派遣法第二十三条の規定に基づきまして、派遣事業主から定期的に派遣労働者の数、派遣料金額等を記載した事業報告書及び収支決算書提出することを義務づけているところでございます。また、必要に応じまして派遣労働者実態等に関する調査を、これは随時でございますが実施しておりまして、今回の労働者派遣事業制度見直しに当たりましても、全国的な実態調査を行ったところでございます。  今後とも、労働者派遣事業制度の適正な運用を図るために、派遣労働者就業実態把握により努めてまいりたいと考えております。
  17. 金田誠一

    金田(誠)委員 終わります。
  18. 岡島正之

  19. 吉田治

    吉田(治)委員 吉田治でございます。  労働者派遣事業法をめぐる件に関して御質問させていただきたいと思います。  まず初めに質問させていただきたいのは、労働省としてこの労働者派遣事業というものをどういうふうに把握なさっていらっしゃるのか、一つの事例でお答えをいただきたいと思います。  日本企業も随分海外進出するようになり、テレビ等を見ておりますと、海外での日本労働者派遣業者の活躍、活動というのも非常によく出ておりますし、また、海外からも日本派遣業というもので進出をしている企業が多々あるやに聞いております。この辺の現況ですとか状況把握、また問題点等いかに把握していらっしゃるのか、まず労働省お答えをちょうだいしたいと思います。
  20. 征矢紀臣

    征矢政府委員 国内派遣会社海外への進出状況でございますが、この点につきまして正確に把握しているわけでございませんが、数社程度ではないかというふうに考えております。  このことに伴います問題点につきましても、現時点特段は聞いておらない状況でございます。  なお、国内派遣会社海外への進出とは異なりますが、国内派遣会社から海外派遣先労働者派遣が行われるケースもございます。このような場合には、通常の場合に比べまして派遣労働者保護について一層の配慮が必要とされるため、法第二十六条の規定に基づきまして、労働者派遣契約に、通常の場合に記載すべきものに加えまして、派遣先責任者の選任、派遣先管理台帳の作成、記載など派遣先において講ずべき措置規定させまして、派遣先に書面により交付しなければならないというふうにいたしているところでございます。  実績といたしましては、平成年度におきましては、二十の派遣事業主から三十名の派遣労働者海外派遣されております。
  21. 吉田治

    吉田(治)委員 実数二十社で三十というのは、私の実感としては少ないのではないかな。  私どもの地元に関西国際空港というのがあるのですけれども、これは認可されて行かれているということではないのかもしれません、個人的に行かれているのかもしれません。金曜日の最終アジアへ向かう飛行機の中に日本ビジネスマンの方も結構乗られて、日曜日の最終で帰ってくる。土日、アジア方面へ出稼ぎに行かれている日本人のビジネスマンというのですか技術者というのですか、そういう方もたくさんおられる。その辺の労働条件確保というのですか、今局長さん、二十六条で守られ、二十派遣元三十名と言われましたけれども、私はもっとここに特段の御配慮というのですか、国際化になってきましたら力を入れていただきたいと思います。  労働者派遣業年商、それから許可されている業者数、そこに働く人数というのは今大体どれぐらいなんでしょうか。
  22. 征矢紀臣

    征矢政府委員 現在、労働者派遣事業を行っております事業所数が約一万三千所、対象の登録されております派遣労働者数が約五十八万人、その年間売上高が約一兆円でございます。
  23. 吉田治

    吉田(治)委員 非常に産業としても大きな産業になってきている。一万三千社もある、五十八万人もそこへ勤めていらっしゃる、そして一兆円になるという売り上げがあるというふうな中で、労働省としてこの派遣業というものの把握、例えば私は一点お聞かせいただきたいのは、この一万三千社の中で大手と言われているところ、また中小零細と言われているところ、これは何%ずつ割合はあるのですか。
  24. 征矢紀臣

    征矢政府委員 ただいま一万三千と申し上げましたのは、これは会社でなくて事業所でございまして、事業所につきましての規模別統計は、状況把握いたしておりません。
  25. 吉田治

    吉田(治)委員 派遣業という業態を考えた場合に、労働省所轄とはいいながら、これはほかの省庁にもまたがってくるのでしょうけれども、実態把握という部分、私は随分厳しいのかな。もっとその辺をはっきりしていただいた上で、例えば派遣事業法改正というふうなものは非常に労働条件等々、大臣もおいでになられましたけれども、局長も御承知のとおり、いいときにはよく悪いときには悪い、厳しくなってというここ十年ばかりの大きな流れがあっての結果だと思うのですけれども、もっとその辺を把握していただかなければ。そこに現実五十八万人も勤めているという状況、この辺について、労働省として今後の現状把握というものにどういうふうに努めるのか、一言お言葉をちょうだいしたいと思います。
  26. 征矢紀臣

    征矢政府委員 派遣労働者就業実態の問題でございますが、これにつきましては、現状におきまして、法律第二十三条の規定に基づきまして、派遣事業主から定期的に派遣労働者の数、派遣料金額等を記載いたしました事業報告書及び収支決算書提出することを義務づけているところでございます。また、必要に応じまして派遣労働者実態等に関する調査を随時実施いたしておりまして、今回の労働者派遣事業制度見直しに当たりましても、全国的な実態調査を行ったところでございます。  今後とも、労働者派遣事業制度の適正な運用を図るため、派遣労働者就業実態把握に努めてまいりたいと考えております。  なお、今後の課題として、この労働者派遣事業あり方についての制度検討を行う際には、やはり必要に応じて全国的な実態調査が御指摘のように必要であろうというふうに考えておるところでございます。
  27. 吉田治

    吉田(治)委員 基本部分をもっとしっかり押さえていただかなければ。これは後ほど質問もさせていただきますけれども、例えば暴力団のある意味での資金源になってしまったり、また、中における労働条件というふうなものも随分今度の法律で変わる。変えていただきたいという部分はあっても、やはり実態把握されていなければなかなか厳しい部分で、今のこの財政厳しい中で、そうなってきますと職員をふやせ、予算をふやせという話になりますが、その辺は日本で一番賢い人たちが集まっている霞が関でありますので、お知恵を集めて頑張っていただきたいと思うところです。  今度、派遣業が変わりますことによりまして、例えば中小企業、本当に経済が不況の中で大変厳しい部分と、それからこれを逆手にとってというのですか、うまく活用して中小企業として伸びている部分、その両方の企業があると思うのですけれども、特に中小企業という形になりますと、今度の法案でも、育児・介護休業特例という形で、休業取得による人手不足に対して配慮されておるのです。  また、昨年の法律では、中小企業労働力確保法略称中小労確法というものができておりますが、今回の法改正によって私が望むのは、中小企業では手に入れられない、中小企業としては常雇いという形では来ていただけないような人材がそこへ来て、伸び行く中小企業というふうなものを大きく発展させる一つの大きな手助けになるのではないかなと、この法律を読ませていただきながら考えたわけです、労働省としては労働全体を見るので。  しかしながら、日本労働者の非常に高いパーセンテージが中小企業で働いているという現状からも、今度の派遣法中小企業というふうなことに関して労働省としてどういうふうに今後取り組んでいくのか、何らか特別の措置をする予定があるのかどうか、その辺を含めてお聞かせをいただきたいと思います。
  28. 征矢紀臣

    征矢政府委員 先生指摘のように、昨年十月に中小企業労働力確保法改正されまして、十一月から実施いたしているところでございますが、これによりまして、従来、中小企業団体対象としていました支援の枠組みが個別中小企業者にまで範囲が拡大されますとともに、支援措置も大幅に充実いたしたため、中小企業における人材確保対策については、より効果的なものになったというふうに考えているところでございます。  また、労働者派遣事業に関しましては、今回の改正法の施行とあわせまして政令改正を行い、昨年末の中央職業安定審議会の建議において示されております十二の業務を新たに適用対象業務として追加することを予定いたしておりまして、中小企業の専門的な知識、技術経験等を要する業務に関します派遣ニーズにも、より的確に対応できるというふうに考えているところでございます。  ただ、労働者派遣事業に関しまして中小企業に係る特例を設けるかどうか、この点につきましては、基本的な問題としまして、派遣先中小企業におきます常用雇用労働者との代替を促進するおそれがあるというような問題、あるいは、御承知のように我が国の企業相当部分、ほとんどが中小企業であるというようなことでございまして、それに対する特例を設けることに伴う影響は従来の特例に比べまして格段に影響の大きい問題でございまして、十分慎重に対応する必要があるというふうに考えているところでございます。  なお、政府におきまして三月に決定いたしました規制緩和推進計画におきまして、今後この法案の実施後、本年度中にこの労働者派遣あり方について引き続き検討を開始する予定にいたしているところでございまして、その際にはまた労使関係者を含めました中央職業安定審議会においてさまざまな議論があろうかと考えております。
  29. 吉田治

    吉田(治)委員 今るる局長の方から述べていただきましたけれども、中央職業安定審議会ですか、私は、ここで一点だけこれから先の労働省の施策なり審議会の中で議論していただきたいテーマというのですか、議題として、町の職人さんですね。  日本技術というのは町の職人さんがつくってきた。戦前でしたら砲兵工廠造兵廠等々に勤めていた職人さん方が、戦後は町の職人さんとして働き、また独立をしていった。その技術力をもって、例えば産業用ロボットであるとか、コンマ何ミリ以下を切断するような機械とか、さまざまなものが生まれてきた。しかし、それを伝承していく、継承していく人たちがだんだんいなくなった。これは、私、一番最初に質問しました派遣業海外進出という部分も含めて、やはり海外でもそういう職人さんというふうなものが欲しい。  それで、これは後ほど質問いたします高齢者雇用安定法というふうなものにもかかわってくるのかもしれませんけれども、この技能というふうなものをどう伝承させていくか、その基盤または条件整備をすることが、これからの労働行政のみならず、日本の今後の産業の一番小さな基本的な部分、手に職を持つとよく言われましたけれども、その部分に大きく影響してくるのじゃないか。これは、単に職安の問題だとか、高齢者の問題だとか、また派遣業の問題、それだけではないとは思うのですけれども、特にこの機会を生かして、その辺のことを配慮していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  30. 征矢紀臣

    征矢政府委員 先生指摘のとおりでございまして、すぐれた技能の伝承、これは現時点におきます非常に重要な課題になってきているというふうに考えます。これをいかに伝承していくか、これにつきましてはなかなか難しい面もあるわけでございますが、私どもといたしましては、職業能力開発行政の中におきますいろいろな実態調査研究、そういうものを踏まえて、今後どういうふうに伝承していったらいいか、そういう点について十分検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  31. 吉田治

    吉田(治)委員 続いて、高齢者雇用安定法のことに関して質問をしたいと思います。  この派遣業法の改正の過程で審議会で随分議論があったと、私いろいろ調べておりましたら書いてあります。今度、十六業態からもうプラス十二業態ですか、ふえていく。しかしながら、この十二業態に関して、俗に言うネガティブリストというのですかポジティブリストというのですか、これだけの業態を認めましょうというのか、いや、これとこれとこれ以外はすべて認めましょうというのか。  これは後ほどの質問にも、大臣お答えいただきたいところなんですけれども、規制緩和という、先ほどの答弁にもございました、また、労働市場の自由化という中においても出てまいる言葉でございます。  その中におきまして、高齢者雇用安定法が一昨年十一月、改正法案が成立し施行されていっております。これはもう御承知のとおり、高齢者の方に関しては業態を、いわばネガティブリストというのですか、これとこれはだめよ、それ以外はすべて認めていいよと。本法案の目玉であります育児・介護休業特例でもそういうふうに、これだけはだめ、それ以外は全部オーケーよと。  私は、まず最初に、高齢者雇用安定法が施行されて以降の実際の運用状況というのですか、これを具体的に先ほど言いました一万三千事業所にも上る派遣業者がどう活用しているのか、その辺お聞かせをいただきたい。
  32. 征矢紀臣

    征矢政府委員 高齢者に係る労働者派遣事業特例についてでございますが、高齢者がみずからの選択や裁量のきく働き方をすることができる雇用機会を提供することと、高齢者の方の雇用の場の拡大を図るために、平成六年十一月から実施されているものでございます。  制度の内容につきましては、派遣労働者が六十歳以上の方だけである事業所については、港湾運送、建設、警備及び物の製造業務以外の業務について労働者派遣を行うことができるが、期間といたしましては、期間を定めて臨時的に行われる業務について派遣する場合等を除きまして、一年を超えて派遣を継続してはならないものとする、こういう二点を踏まえましてこの特例が発足いたしておるところでございます。  この実績でございますが、本年六月一日現在で、この高齢特例労働者派遣事業事業所は三十五事業所でございます。御承知のように、この実施時期が経済情勢あるいは雇用情勢の非常に厳しい時期であったというようなこともございまして、この数自体のふえるテンポにつきましてはそう多くございませんけれども、今後の見通しとしましては、これは逐次ふえていくのではないかというふうに考えているところでございます。
  33. 吉田治

    吉田(治)委員 多分この法案の成立過程でも随分議論があったのではないかと思うのですけれども、これは今後の国の福祉施策の中で、年金の支給が遅くなるとか、そういうことも勘案されての法律であったわけですか。
  34. 征矢紀臣

    征矢政府委員 前回の高齢者雇用安定法改正された際の考え方といたしましては、御承知のように、二十一世紀を見た場合に、急激に高齢化が進んでいく。そういう中で、一方、高齢者の方も相当元気で働ける方あるいは働く希望の方が多い。ただし、六十歳を過ぎますと状況も人によってさまざまでございまして、働き方も、できるだけ多様な形で働ける機会を設ける方がいい、こういうことと、それからもう一点は、御承知のように、雇用と年金の連携という観点から考えました場合に、年金につきましては、二〇〇一年から二〇一三年までの間にかけまして逐次六十歳から六十五歳まで受給開始年齢が上がっていく、そういうことを踏まえましてこの法律改正が行われたというふうに承知いたしております。
  35. 吉田治

    吉田(治)委員 働いてリタイアしたら、何も年金生活者で幸福に暮らした方がいいと私は思わないのですね。私の父、七十六歳になるのですが、やはり今でも元気に働いておるのです。  やはり選択の幅というのですか、定年をしても働きたい人は働く、働きたくない人は働かなくても生活ができる、また、働きたくなくてというか、しばらくのんびりして、その後でも働けるというふうな部分で、この法律の持つ部分というのは非常に大きいと思いますので、労働省として、高齢者、それからまた後ほど若年労働者のお話もできればと思うのですけれども、年齢構成でいったら、下の部分と上の部分にもう少し配慮していただきたいなと思う次第でございます。  今度のこの法案について具体的な質問をしてまいりたいと思うのですけれども、今アメリカのベストセラーで「大失業時代」という本があるのですけれども、大臣、読まれたことはございますか。
  36. 永井孝信

    永井国務大臣 まだ読んでおりません。
  37. 吉田治

    吉田(治)委員 そこの一節にこういう文章があるのですね。経営者にとってパートタイマーは一夜の情事の相手のような存在だ。うるさいことは言わない。フルタイマーのようにさまざまなコストはかからない。かくてフルタイマーは大量に解雇され、その失業者の中から賃金が低くてお手軽なパートタイマーが発生する。  今、頭の中で、大臣以下、また委員の皆様方、いろいろなことを思いめぐらせているかと思うのですけれども、派遣業というふうなものを、先ほどから申し上げております高齢者雇用安定法に見られたように、ネガティブリストのみで、あとは自由よ、それが世の中で言う規制緩和の波なんだと。  俗に労働問題というのは、労使双方という使用者側、つまり会社の経営者側からすると、人件費が世界一高いという中で、できるだけ安い労働力を、しかもお手軽に使いたいというふうな思いが強い。特に今度のリストラにおいては、この不況、リセッションにおいては非常にそういう傾向が強い。  たしか大臣は兵庫県の御選出だと思います。兵庫県にサンテレビというテレビがございます。このテレビのCMに私は衝撃を受けたことがございます。どういうCMかというと、ある人材派遣会社のCMです。リストラは日系人から、こういうのをばんと大きく公共の電波を使ってテレビでCMを流す。すばらしい時代というよりも、これはとんでもない時代になったな、派遣業という形でいうと、そういうふうな発想なのかという感じを私は非常に深く受けたわけであります。  ですから、この派遣業法の改正審議会の過程等々でも、非常に業態を広げる、ポジティブリスト、ネガティブリストという話で集約できないようなさまざまなことがあったと思います。それがよく言えば労働市場の自由化なんだよ、規制緩和なんだ、そうしなければ日本企業は生き残れないんだと。なるほど常雇いにしますと、今問題になっております厚生年金基金の問題でありますとか、また、これから問題になってきます公的介護保険の企業負担の問題、そういうふうな中になってまいりますと、企業側、使用者側としてはこの派遣業法をできればもっと拡大をしてもらって、自分たちの使いやすいように使いたいというふうな気持ちになるのは至極当然だと思うのです。  大臣として、この派遣業法が審議会を通じて法案として出てきて、この法案に関して私が最後の質問者になりますけれども、いろいろ質問をずっと聞かれて、常用労働者派遣業というふうな問題、日本労働市場というのですか、この辺を含めて、大臣の所信というか、お考えをまずこの件に関してお聞かせいただきたいと思います。
  38. 永井孝信

    永井国務大臣 御指摘の兵庫県のサンテレビのコマーシャルは見ておりませんけれども、先生の御指摘になっていることは十分に想定ができるわけであります。理解もできるわけであります。  この労働者派遣事業は、雇用する者と指揮命令する者とが違うわけでありますから、適正な労働条件確保が非常に困難になってくるという問題があります。また、派遣先におきまして常用雇用労働者との代替の促進のおそれがあるといった点におきましても、審議会でもいろいろ御意見があったところであります。したがって、そういう面からいきますと、労働者を保護するという観点からかなり多くの問題があることは承知をいたしております。  このため、行政改革委員会の意見におきましても、労働者派遣事業に係る規制緩和の措置にあわせまして、派遣労働者の保護のための措置を講ずる必要があるということを指摘しているわけであります。  また、それを受けまして、昨年十二月の中央職業安定審議会の建議におきましても、いろいろな議論があったようでありますが、その中で特徴的に申し上げますと、労働者派遣によりまして派遣労働者に従事させることが適当でない業務を列挙いたしまして、それ以外の業務については原則自由化することが適当であるとの意見がありました。また、その一方で、このように制度の根本的な変更を検討するのであれば、諸外国に見られるように、派遣の事由、また派遣期間の厳格な制限及びそれに違反した場合の派遣先の直接の雇用責任の発生などにつきまして、あわせて検討する必要があるという意見も出されているところであります。  いずれにいたしましても、労働者の保護ということが一番大切でありますから、安易に人件費の節約あるいは労働条件を全く顧みないで済むという、そういう視点に立つような事業主派遣を求めてくるということは大変問題がありますので、まずそういう面では、事業主の対応について、あるいは事業主基本認識について、きっちりと理解がされるような啓蒙活動あるいは指導が必要かと思います。  いずれにいたしましても、そういう労働者の保護という観点を最大限に重視をいたしまして、労働者派遣事業あり方につきましては、今先生が御指摘になっておりますように、雇用問題の当事者であります労使を中心とする関係者による検討を踏まえまして、問題のないように適切に対処してまいることに心がけていきたい、こう思っているところであります。
  39. 吉田治

    吉田(治)委員 十年ぶりの法改正ということで、いろいろな方にいろいろ聞いておりますと、十年たったから法改正をするという言い方も強いのですけれども、やはり言えるのは、この十年間日本の経済の変遷というのですか、これができた後にすぐ俗に言うバブル経済になった。非常に景気のいいときだ、だから会社側はどんな人でも欲しい、常雇いでも足らないから派遣業から雇う、勤めるよりも派遣業の方から紹介という形で派遣で行った方が自分の実入りもよかった、うるさい上司のつき合いもしなくて済むというのでぐっと広がった。  しかし、それが一転不景気になって、一つは、常雇いをどういうふうに合理化というか減らしていくか。また派遣も、派遣してもらう人を、一つは、同じお金を払うならばよく言えば能力というふうな部分ではかりたい、二つ目は、いや、やはりいい人を安く、三つ目は、非常に大きな問題は、これは後ほどの質問でもお答えいただきたいなと思うのですけれども、安くて能力があって、できれば、女性の場合だったらかわいい、きれい、男性の場合だったらよく言うことを聞く。  ですから、一部弁護士さんなんかも問題にされておりますように、事前の面接、これは契約のときの面接で、例えばその面接に行ったときの日当はどうするのか、交通費はどうするのか。不景気になってまいりますと、派遣業をやられている事業主の方は、いや、それはもうあなた自身のために行くのだからと、非常にその辺もあやふやになっているというふうな問題が起こっているということがあるのです。  今大臣のお考えをいただいたのですけれども、それを実際運用していく担当局長として、この法案ができていった過程をずっと見てこられていかに今お考えなのか、まずその辺をお聞かせいただきたいなと思います。
  40. 征矢紀臣

    征矢政府委員 今回の法案について御提案いたしました考え方でございますけれども、御承知のように、昭和六十一年に、大変さまざまな御議論がある中で労働者派遣事業法が国会において制定されまして、今日まで運用されてきているわけでございますが、その間に、やはりさまざまな問題点があるということが一つでございます。  具体的には、今回の改正法案の中で御審議いただいておりますような就業条件の面で、例えば、契約の中途解除の問題であるとか、あるいは苦情処理の問題であるとか、そういう労働者保護という観点からのさまざまな問題点、これについて法的な措置が十分でない、こういう問題点がございます。  それからもう一点は、育児休業法あるいは介護休業法、そういうものが制定されまして、その休業を労働者がとる場合、中小企業等を中心にしましてその代替要員の確保が非常に困難である、こういう御指摘がございました。  この点につきましては、法律に基づく労働者の権利として認められている休業でございまして、事由もはっきりいたしておりますし、期間も一年というようなことで明確になっているわけでございまして、そういうものにつきましては、これは特例として原則自由に派遣対象にしていいのではないか、こういう考え方が一つございます。  それからもう一点は、対象業務につきまして、やはり経済社会情勢の変化に応じて必要な拡大をしてほしい、こういう御要望がございました。  例えば、研究開発というようなものにつきましては、これは、会社において新しい研究を進めるに当たって、自分のところの研究員だけでなくて、やはり専門的な知識を持った方を一定期間プロジェクトチームに入れて研究開発を進める、そういうために必要である、こういうような観点がございまして、そういう意味で対象業務について必要なものを拡大する、こういう考え方で整理したところでございます。
  41. 吉田治

    吉田(治)委員 るる述べていただきましたけれども、私、この件に関して、派遣労働者を使っているというのですか、派遣労働者がおられる職場の方にお話を聞かせていただきました。その人は、何もその派遣労働者派遣元の社長だとかそういうことではございません。派遣労働者の方と一緒に働いていらっしゃるある会社の方が、五点指摘されております。  派遣労働者は大抵契約を何度も更新しているが、現在の契約期間満了前に突然雇用を打ち切られることがある。その際に何の補助もなく、生活が不安だ。二つ目は、同一企業の同一の職種に複数の派遣会社が社員を派遣していることがあるが、派遣会社間の時給に格差がある。これなんか一緒に働いていたら、おまえ、幾らもらっているんだという話になるのでしょう。これは派遣されている方と会社との契約と言ってしまえばそれまでかもしれません。三番目は、派遣会社には交通費の支給をしていないところが多い。最低限度の交通費の支給を保障してやってほしい。四点目が、社会保険の負担が大きい。入っていない人も多い、本当は雇用主が加入しなくてはいけないのに。五つ目、健康診断などを受けに行くと欠勤扱いになる。特別有給休暇などが欲しい。こういうふうにその派遣労働者と一緒に働いている方は言われるわけです。自分たちと比べてというよりも、同じ職場で一緒に働いているのになぜと。  そういう内容からしますと、こういう今の五点も含めて、一点一点お聞かせいただきたいのです。  まず、苦情の中では、労働者派遣契約と異なる内容の業務に従事させられたり、適用対象業務外の業務派遣されたという苦情が一番多いと聞いておりますが、例えばこの法律を通すことによってその辺が何らか変わっていくのか、これからはどういうふうな措置をとっていくのかということです。
  42. 征矢紀臣

    征矢政府委員 ただいまの、派遣先におきまして、いわゆる違法派遣という形で、本来の派遣でない仕事につかされる、あるいは派遣業務でない仕事に派遣労働者として使っている、こういうような実態があるという点については、御指摘のとおりでございます。  この点につきましては、そういう問題点を解決するために、今回の法律におきましては、勧告・公表制度という仕組みをもちまして、そういうところについてはその是正について指導勧告をし、なおかつその勧告を聞かない場合についてはこの企業名を公表する、こういうことによってそういうものの防止を図っていく、こういう考え方で対処いたしたいと考えておるところでございます。
  43. 吉田治

    吉田(治)委員 では、二点目に賃金の不払い。例えば、給料の支払いの遅延であるとか、先ほど申しました突然の解雇にもかかわらず解雇予告手当を支払ってもらえない、こういうふうなケースについてはどういうふうにされるわけですか。
  44. 征矢紀臣

    征矢政府委員 御指摘の点につきましては、今回の法案におきまして、派遣労働者就業条件確保のための措置を充実することといたしておりまして、労働者派遣契約の中途解除につきましては、改正法の中で「労働者派遣契約の解除に当たって講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置」を派遣契約に定めなければならないというふうにいたしたところでございまして、この契約内容を周知徹底し、必要な指導をすることによって対処してまいりたいというふうに考えております。
  45. 吉田治

    吉田(治)委員 だから、それは契約途中の解除、解雇に対してでしょう。賃金の未払いについては、それを適切に運用するということなのですか。どういうことなのですか。
  46. 征矢紀臣

    征矢政府委員 賃金の不払いの問題につきましては、これは当然その契約には反するわけでございますけれども、御承知のように、一般的に、労働基準法におきまして、賃金不払いの場合どうするかというのは労働基準監督署において対処をすることといたしておりまして、派遣労働者につきましても同様な考え方で対処していくということになろうかと思います。
  47. 吉田治

    吉田(治)委員 だから、さっきから局長の話を聞いていましたら、私の質問に答えているのではなくて、何か後ろの方で、私の質問を事前に聞いた人たちから、次はこの答え、この答えと。ですから、今までも質問の答えが違うのです。もうちょっとしっかり聞いていただきたい。  私が今聞いたのは、賃金不払いを聞いたのに、局長お答えは契約途中の解除、解雇について答えをしていたのです。だから、私は今もう一度聞き直したのです。せめて一時間ぐらいの質問なのですから。局長にとったら、前半を埋めて一時間十五分、一昨日の分を含めたら随分長い時間になる。しかも一年生議員だ、聞いていられるかという思いでもひょっとしてあるのではないですか。そういうことに関しては許せない、そういうふうに私は感じるわけです。  それでは次に、労働保険、社会保険に関する苦情相談も結構ふえていると思います。先ほどの現場の意見でも、労働保険、社会保険の負担が大きいのではないか、給料もこのごろそんなに上がっていないのにというふうな話もありますけれども、この辺についてはどういうふうに進めていくおつもりなのでしょうか。
  48. 征矢紀臣

    征矢政府委員 質問につきまして若干取り違えました点についてはおわび申し上げますが、決してそのようなつもりでお答え申し上げているわけではございませんので、御理解いただきたいと思います。  社会保険の適用促進につきましては、保険料の負担、これは御承知のように労働保険、社会保険、それぞれ使用者が全額負担するもの、あるいは労使折半で負担するものがあるわけでございまして、そういうことでこの支払いの負担をしていただくということでございます。  派遣労働者に対する労働保険、社会保険の適用促進につきましては、これも昨年十二月に中央職業安定審議会におきまして出されました建議を踏まえて、労働大臣が公表いたします派遣事業主及び派遣先が講ずべき措置に関する指針、あるいは派遣労働者に対するパンフレットに制度趣旨、内容等必要な事項を記載すること等によりまして、より積極的、効果的な周知指導を行ってまいりたいというふうに考えております。
  49. 吉田治

    吉田(治)委員 最後に労働時間。これは先ほどの契約内容等々と違うということになるのでしょうけれども、例えば、労働時間に関しては年次休暇が取得できないとか、休暇に関する解釈が違う。やはりこれは契約内容ですので、解釈の違いというのは随分いろいろと出てくると思うのです。労働時間なんかは特にその大きな一例だと思うのです。  こういうふうなさまざまな苦情が寄せられている中で、今後この苦情処理というもの、また機構をつくってだとかシステムをつくると、人もお金もかかるということになるのではないか、そこまでする必要もあるのかどうかというのはちょっと考えなければならない点なのですけれども、現在、苦情処理をどこが受け付けて、どういうふうに処理をしているのかということをお聞かせいただきたいと思います。
  50. 征矢紀臣

    征矢政府委員 派遣労働者の方の苦情処理につきましては、私ども、公共職業安定所の窓口において対応しているわけでございます。この場合には、ほとんどのケースは、派遣元あるいは派遣先責任者を中心といたしまして、派遣先派遣事業主の連携のもとに適切に処理されているものというふうに承知いたしております。  ただし、安定所の窓口で対応していないケースも多数あろうかと思います。その点につきまして適切に処理されているかどうかという点については、問題があるのではないかというふうに考えているところでございます。
  51. 吉田治

    吉田(治)委員 安定所が窓口になって派遣先派遣元に措置をしていくということですけれども、これはもう一方では、そういうふうに相談を持ちかけて、告発という言い方がいいのかどうかわかりません、言うと、その場は派遣元も派遣先も、うん、わかりました。しかしながら、嵐が過ぎ去るように、それが終われば、もうあんたみたいな人は要らないという言い方ではなくて、契約期間が満了したとか、契約の解除条件にこういうふうにあったからもういいですよと。  派遣業法のパンフレットとかいただいておりますけれども、これは労働省の出されているパンフレットですね。派遣事業主派遣先派遣労働者というのは三角形になっていて、派遣労働者は下に書いてあるのです。つまり、これは書き方によるのでしょうけれども、パンフレット自身も派遣労働者の方が下だ。非常にこんなのばかにした話ではないかな。まあ、ばかにした話かどうかわかりませんけれども。  ですから、今言ったように、いや、安定所に言っていただいたらいいんです、そうすると派遣元、派遣先に言うと。それでどちらからも責められる。派遣先ほどう言うか。なんでうちにああいうのが来るんだ、あなたたちがしっかりしていないからじゃないか。派遣元、派遣事業者としては、今不景気ですから一人でもお客さんを減らしたくない。それだったら悪いけれどもそういう労働者の方にはお引き取りを願いたいと。この三角形からそれが読み取れるわけなのですよね。  ですから、今度は労働者としては我慢に我慢を重ねて、今不景気だから仕方がないんだ、景気がよくなったらそのかわり見ておれよと思うのかどうか。果たして景気がよくなるのかどうかもわからない。随分この派遣労働者というのは、今ある意味で虐げられているというのですか、女工哀史とまでは言いませんけれども、便利な先ほど言った一夜の情事の相手なわけですね。  ですから、それについて実効性というのですか、どう権利を守り、保護をするか。先ほどからの大臣の答弁もありますけれども、私はこの苦情処理については、しっかりした何かシステムなり、もしくは苦情処理をした結果のフォローというふうなものまで含めてしていただきたいと思うのですけれども、それはいかがお考えなのでしょうか。
  52. 征矢紀臣

    征矢政府委員 御指摘のような問題点があるわけでございます。したがいまして、そういう点を踏まえまして今回の法案におきましては、一つは、先ほどもお答え申し上げましたが、中途解除の問題について派遣契約の中できちんとあらかじめその中に事項として入れておく、こういうような対処をするということでいいシステムをつくっていく。  それからもう一点、苦情処理の問題につきましても、今回の法案において、労働者派遣契約に苦情処理に関する事項を定めさせることといたしておりまして、これによって派遣元あるいは派遣先における苦情処理体制が派遣契約締結時に確立されるようになる。それとあわせまして、派遣労働者が当該派遣就業における苦情処理体制を十分理解できるようになる、そういうことが期待されるわけでございます。  また、あわせまして、派遣元あるいは派遣先の管理台帳に苦情処理に関する事項を記載させることといたしておりまして、これによって派遣元あるいは派遣先においてより適切に苦情処理が行われることになろうかと考えます。また、行政によります指導監督の際にも、より効果的な指導を行うことができるようになるというふうに考えておるところであります。  さらに、中央職業安定審議会の建議を踏まえまして、専門的な相談援助を行うことのできる知識あるいは経験を有する団体が行う苦情処理に関する取り組みの促進を図るとともに、行政機関によります苦情相談機能もなお一層強化することとしたいと考えております。
  53. 吉田治

    吉田(治)委員 今いろいろ言っていただきましたけれども、私はこの法案、また審議会の過程を読ませていただいて感じるのは、今度の法案の中にも出てきておりますけれども、派遣元とそれから派遣労働者、と同時に今度は派遣先というのですか、派遣された方、派遣を受け入れる方が不許可ですとか許可されていないところからたびたびそういう労働者を雇ったりした場合には、名前を外部に公表するというふうなことになっておりますけれども、私は、ある意味では派遣先にももっと踏み込んだ形の施策というものを、これは法律基本にできた場合には、政令でありますとか省令でありますとか、できるものであればしていただきたい。  そうでないと、最後の最後どこが一番この三者の中で強いかというと、今この不景気の状況においては派遣先が一番強い。わがままという言い方はよくないかもしれませんが、言うだけ言って責任はとらない。保険のことはあんたのところだ、交通費のことはあんたのところだ、気に入らないやつはあんたのところが悪いんだ。女性の場合でしたら美人じゃないから帰らせろとか、極端な話、そこまでレベルは低下しているという部分もあると思います。高潔な、立派な方ばかりが派遣先の事業を担当されているということは一概には言えないという中において、派遣先の名前を公表するだけでいいのか。  また、私が聞かせていただきたいのは、派遣先について、この審議の過程、法案作成の過程で、名前を公表するだけでいいというのでみんな納得をしたのか、それとも、いや一歩進めてこういうこともしろというふうな話が出たのかどうか、そこはいかがでしょうか。
  54. 征矢紀臣

    征矢政府委員 議論の過程におきましては、先生指摘のように、より労働者保護を徹底するという観点から、派遣先についてより強い責任を認めるべきである、こういう御意見も出ました。ただ、それにつきましては反対であるという御意見もありました。  あわせまして、対象業務について、不適切なもの以外は対象とするような原則自由にすべきである、こういう御議論も出ました。この点につきましては、審議会の中でなかなか見解が一致しないというようなことがございまして、現在の考え方のような内容で整理されたところでございます。したがいまして、その点については今後の検討課題として残されているところでございます。
  55. 吉田治

    吉田(治)委員 本当に、今局長言われたように、経団連が労働市場の自由化という。自由化というのは、何も労働者のことを考えて、働くことを考えて自由にしなさいというのではなくて、自分たちがいかにもうかるかということを考えたら自由にした方がいいよと。つまり、今の時代の流れというのは、労働行政ですとか労働者労働条件というものに対してある意味ではアゲンストの風が吹いている。  私もたびたび労働省の方にいろいろな委員会等で質問をしているのですけれども、持ち株会社の解禁ということになっても、これは話は別かもしれません、この法案関係ないかもしれませんけれども、リストラするには持ち株会社にした方がしやすいんだという発想ももちろんあるという中において、やはり派遣先というもの、最後の最後お金を払うところが最後のある意味で責任もとっていくということは、私は特段必要ではないかな。  そうでないと、先ほどの一夜の情事の話ではないですけれども、来ても気に入らぬから帰れ、金に糸目をつけずと、何か悪い意味での日本人のステレオタイプ的なものをあらわすような形になってしまうのではないかということで、この派遣先に関しての公表ですとか業務というものを、では、これを後どういうふうに担保されていくわけですか。どういうふうにシステムづくりをされていくわけですか。
  56. 征矢紀臣

    征矢政府委員 勧告・公表につきましては、違反している状態把握いたしました場合に、それにつきましてまず私どもからその是正について指導勧告をいたします。それで、指導勧告してもなおかつ聞き入れない場合についてこれを公表する、こういう手順で行うわけでございます。  いずれにいたしましても、先生指摘のように、私どもは働く方々の立場というものを踏まえて行政を行っていくのが基本でございまして、そういうことを基本としつつ、経済社会情勢の変化する中でどこまで、どういう対策をあわせてとっていくかということ、かつ、そういう政策判断をする場合には、やはり関係労使を含めた関係者の間で十分議論をし、煮詰めていただきながら、それを踏まえて行政を進めていくことが非常に重要であるというふうに考えているところでございます。
  57. 吉田治

    吉田(治)委員 よくわかりました。派遣先については特段頑張っていただきたいと思います。  そして、今大きな社会問題になってくるのが、この派遣業というものが非常に暴力団のフロント企業化してきているのではないか。派遣業というのは、言葉はいいかどうかわかりませんが、ピンはねという、紹介料というのは、事業者としていただいたお金から派遣労働者に払う間の部分で商売をするわけですから、私たち子供時分に聞いた言葉で言ったら、どれだけピンはねするかということ、ピンというのは一ですから、初めからどれだけはねるかということになってくると思います。  そこで、暴力団がそこへ入ってきて、そういう派遣業ということによって資金源になっているということが話題になり、また問題になっておりますけれども、まず労働省として、またきょうは警察庁の方にもおいでいただいておりますけれども、この辺の実態把握、掌握は何かなされているのでしょうか。
  58. 征矢紀臣

    征矢政府委員 ただいま御指摘のいわゆる暴力団フロント企業の問題でございます。この点につきましては、私ども直接ということではございませんが、平成六年の警察白書、これで見ますと、暴力団フロント企業にかかわる犯罪検挙件数が二百五十七件でございますが、そのうち労働者派遣法違反のものは十八件となっております。  いわゆる暴力団フロント企業に限らず、形式的には請負と称しつつ、実態は就労先が労働時間管理や人の配置を決定したり、業務に関する指示をしているなど、実質的に違法派遣となっているケースがさまざまな形で指摘されているところでございます。  労働省といたしましては、適正な請負について、パンフレットの配布等により周知に努めるとともに、適正に請負が実施されていない疑いのある事業所に対しましては臨検指導を行い、是正指導を行っているところでございます。  暴力団フロント企業に係る違法派遣につきましては、警察庁等関係行政機関とも十分連携しながら、今後とも適切に対処してまいりたいというふうに考えております。
  59. 吉田治

    吉田(治)委員 警察庁の方。
  60. 宮本和夫

    ○宮本説明員 暴力団の労働者派遣事業に対する関与の実態につきまして、一般的に申し上げることは困難でありますが、検挙状況について申し上げますと、警察は、平成五年から七年までの三年間労働者派遣事業法違反事件を三百九十五件検挙しておりまして、うち暴力団勢力に係るものとして百五十八件を把握いたしております。  警察といたしましては、労働者派遣事業法を含め、あらゆる法令を駆使して、暴力団員等に係る違法行為について積極的に取り締まってまいる所存でございます。
  61. 吉田治

    吉田(治)委員 本当に、いい業者、悪い業者という分け方がいいのかどうかわかりませんけれども、これは大きな問題だと私は思います。  労働省の方が許可するとき、欠格事由と事業者能力ということで判断するというふうなことを言われていますけれども、警察と緊密に連携をとりながらその辺の部分をしていただきたい。行政というのは縦割りですから、横というのはなかなか難しいかもしれません。そこが緊密に連絡をとり合うことによって、お互いに情報交換することによって未然に防いでいくということをお願いしたいと思います。  業法の改正の中で、新しい業態として病院等の介護労働力を認めるというふうにされております。ちょっと私、疑問があるのですね。介護労働という形になってきますと、病院のチームワークの問題もありますし、また、保険の点数からすると、果たしてそんなのが出せるのかねというふうな問題もありますし、また、専門性という部分でもあると思うのです。この点について一点、端的に短くて結構です、労働省としてのお考えをお聞かせいただきたい。  と同時に、今度、育児・介護休業特例という形で、先ほどから私も質問してまいりました代替要員を受け入れる。この代替要員、先ほどから何度も契約の中身ですとか労働時間の問題とか申し上げました。これから守るようにされていくのでしょうけれども、今度は、そこに勤めていた方、休業をとっていた人が戻ってきた場合、原職に復帰する場合、私は二つ聞きたいのは、代替要員の契約内容の確保、それから、原職もしくは原職に準ずるものに休業が終わって帰ってきた、帰ってきた途端に自分の机はなかったとか、自分のポジションはなかったということのないようにしていただきたいのです。短い時間ですけれども、介護労働を含めて三点、お答えをちょうだいしたいと思います。
  62. 征矢紀臣

    征矢政府委員 昨年十二月の中央職業安定審議会の建議におきまして、適用対象業務に追加することが適当な業務として挙げられております病院における介護の業務につきましては、医師、看護婦等とのチームワークの中で、介護を必要とする患者の療養を支える重要な仕事であり、保健衛生に関する専門知識や介護技能等のほか、患者の欲求や心理についての理解なども求められる専門性の高い業務であるというふうに私ども考えております。  それから、育児・介護休業取得者の代替要員の問題でございますが、この特例につきましては、常用雇用代替防止という観点から、派遣期間を育児休業等取得者の休業期間内で、かつ最大一年とするとともに、労働者派遣契約及び派遣元・派遣先管理台帳に育児休業等を取得した者の氏名、その行っていた業務等を記載させ、派遣事業主及び派遣先はもとより、指導監督を行う行政機関の職員におきましても、この特例が適正な事由により行われているか否かを確認できるようにいたしているところでございます。  また、育児・介護休業制度運用に当たりましては、休業後に円滑に職場に復帰できるようにすることが重要でございまして、このため、育児・介護休業法に基づいて定められた事業主が講ずべき措置に関する指針におきまして、労働者の配置その他の雇用管理に関して必要な措置を講ずるに当たっては、育児休業、介護休業後においては、原則として原職または原職相当職に復帰させることが多く行われているものであることに配慮する旨を盛り込んでいるところでございます。  育児休業等取得者の業務について行われる労働者派遣事業特例運用に当たりましても、この指針の周知啓発に努め、事業主に対する指導を行ってまいりたいと考えております。
  63. 吉田治

    吉田(治)委員 介護労働は特に人を相手にいたします。特に、相手が強いのではない、弱い人を相手になさいますので、私はこれから特段配慮をしていただきたい。と同時に、育児・介護休業の場合には代替要員ということで、先ほどの例えがいいかどうかわかりませんけれども、一夜の情事の相手がいつの間にか、嫁さんが帰ってきたら奥さんになっていたというふうなことが決してないようにお願いを申し上げたいと思います。  まだ法案趣旨説明をされておりませんけれども、最後に、これは意見として、労働者派遣業法ではなくて、今般、労働安全衛生法改正がなされてまいります。そこについて数点だけお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせたいと思います。  まず一点は、安全衛生委員会の設置、産業医の選任義務対象事業場を、現行の五十人以上というものを、これは中央労働基準審議会において五十名未満は努力義務ということになりましたけれども、私は、三十人以上ということにぜひとも拡大をしていただきたい。  そして、労働災害防止指導員については四点。  まず一点目、調査等の指導員の権限を強化していただきたい。二点目、指導員に対する指導結果等、労働基準局からの確実な報告義務の徹底を図っていただきたい。三点目、指導員の教育研修等を十二分に充実をしていただきたい。そして、地域産業保健センター運営へ指導員をぜひとも参加させていただきたいということを最後にお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
  64. 岡島正之

    岡島委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  65. 岡島正之

    岡島委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。寺前巖君。
  66. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、日本共産党を代表して、略称労働者派遣法改正案に反対の討論を行います。  労働者派遣事業が法施行後十年、この間さまざまな労働者の雇用上の権利侵害が発生しています。しかも、合法、非合法を分けるかなめである対象業務については、それが政令事項にされ、その範囲も極めてあいまいで、罪刑法定主義の原則に抵触しかねない欠陥が明らかになっています。今回、それを改善するのではなく、対象業種をさらに拡大する意図を持っていることが本改正案に反対する第一です。  第二は、派遣労働者が違法派遣を告発すれば、解雇という形で我が身に降りかかってくる。こうした労働者を守るために、派遣先に直接の雇用を義務づける原則の確立こそが急務です。今回の改正は、これらの問題の解決を見送っています。派遣労働者が、派遣先事業所で団結権の行使が困難である上に、派遣先との団体交渉権が否定されているというままであることは許されません。  反対理由の第三は、育児・介護代替の名目で、派遣事業法のかなめである業種限定を外していることであります。しかも、本来、正規従業員で代替できるところにも無限定に派遣労働者による代替を許すこととしており、職場の労働条件を悪化させる要素を持っているからであります。  第四は、改正案には幾つかの改善点があるとはいえ、十分ではありません。派遣契約の解除にかかわる措置、苦情処理に関する措置については一定の改善を行ってはいますが、解雇予告期間三十日についても、法律上の義務にせず労働省令で定めるなど、極めて不十分です。  また、派遣法は、派遣労働者の国籍、性別、信条、社会的身分労働組合活動などを理由として派遣契約の解除をしてはならないと決めていますが、この規定に違反した場合の制裁を派遣先は受けません。ここを改めない限り、労働者の保護などはおぼつきません。  さらに、改正案は、違法派遣について派遣先責任を明記しました。しかし、その内容たるや全く不十分で、指導、助言、是正されなければ勧告、それでもだめなら公表というだけで、これでは違法に派遣労働者を使用した派遣先の使い得を許容するものとなってしまいます。  以上、本法案に反対する幾つかの理由を明らかにして、私の反対討論を終わります。
  67. 岡島正之

    岡島委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  68. 岡島正之

    岡島委員長 これより採決に入ります。  労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  69. 岡島正之

    岡島委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  70. 岡島正之

    岡島委員長 この際、本案に対し、森英介君外三名から、自由民主党、新進党、社会民主党・護憲連合及び新党さきがけの四派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。北橋健治君。
  71. 北橋健治

    ○北橋委員 私は、自由民主党、新進党、社会民主党・護憲連合及び新党さきがけを代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。     労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   経済社会情勢の変化の中で、労働者派遣事業が適正に運営され、派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進が十分に図られるよう、政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。  一 適用対象業務見直しに当たっては、わが国の雇用慣行との調和に十分留意し、常用雇用労働者代替を促すこととならないよう、また、専門性確保等に十分に配慮し、中央職業安定審議会の意見を尊重して、個々の対象業務の内容及びその範囲を具体的に定めること。  二 病院における介護労働への派遣制度の適用に当たっては、医療福祉事業の専門性やチームワークの要請を踏まえ、適切な配置が行われるよう指導すること。  三 育児、介護休業に関する特例対象が、育児、介護休業取得者の代替要員の派遣に限られることを確保するため、特例派遣対象となる休業取得者の氏名、業務及び休業を取得する期間を正確に特定し、派遣労働者の従事する業務内容がそれに対応することとなるよう指導すること。  四 育児休業等に関する特例運用に当たっては、育児休業取得者が原職又は原職相当職に復帰することについて配慮されるよう指導すること。  五 派遣先における実際の就業条件が、派遣事業主が示した就業条件と相違することのないよう、派遣先に対する指導を効果的に行う等適切な措置を講ずること。  六 派遣事業主及び派遣先に対し、労働者派遣契約に、労働者派遣契約の中途解除に当たって講ずる損害賠償に関する措置派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置が適切に記載されるよう指導すること。  七 派遣労働者の苦情処理について専門的な相談援助を行う団体の取組を促進するとともに、行政機関による苦情相談機能の充実を図るため、関係行政機関の適切な連携を図ること。  八 派遣先が無許可・無届出の労働者派遣事業主から労働者派遣を受け入れ、又は派遣労働者適用対象業務以外の業務に就かせることのないよう適切な措置を講ずること。  九 請負等を偽装した違法な労働者派遣事業の解消のため、派遣と請負の区分について具体的な基準を作成し、より一層効果的な指導・監督に努めること。  十 労働者派遣事業の適正な運営確保するため、派遣事業主及び派遣先の自主的な努力の促進、労働者派遣事業適正運営協力員制度の活用を図るとともに、行政体制の整備・充実を図ること。  十一 社会保険・労働保険の適用促進等派遣労働者の福祉の一層の増進を図るため、派遣事業主等に対する関係制度の周知徹底等適切な措置を講ずること。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  72. 岡島正之

    岡島委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  森英介君外三名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  73. 岡島正之

    岡島委員長 起立総員。よって、本動議のとおり本案に附帯決議を付することに決しました。  この際、労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。永井労働大臣
  74. 永井孝信

    永井国務大臣 ただいま決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、努力してまいる所存であります。     —————————————
  75. 岡島正之

    岡島委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 岡島正之

    岡島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  77. 岡島正之

    岡島委員長 次に、内閣提出参議院送付労働安全衛生法の一部を改正する法律案議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。永井労働大臣。     —————————————  労働安全衛生法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  78. 永井孝信

    永井国務大臣 ただいま議題となりました労働安全衛生法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  労働者の健康確保につきましては、高齢化の進展等に伴い、最近幾つかの課題が生じています。  すなわち、脳・心臓疾患につながる所見を有する労働者が増加しており、定期健康診断の結果では、労働者の三人に一人が何らかの所見があるという状況にあります。  また、産業構造の変化や技術革新の進展等により、労働の態様に変化が生じており、これに伴い、仕事や職場生活で悩みやストレス等を感じる労働者が増加しているほか、「過労死」が社会的に大きな問題となっており、その予防のための総合的な対策を講ずる必要が生じています。  このような状況にかんがみ、すべての労働者が職業生活の全期間を通じて健康で安心して働くことができるよう、労働者の健康の確保のための施策の推進を図るため、中央労働基準審議会の建議を踏まえて、労働安全衛生法の一部を改正する法律案を取りまとめ、提案した次第であります。  次に、その内容を御説明申し上げます。  第一に、産業医について、労働者の健康管理等を行うのに必要な知識を有する者の中から選任することとするとともに、産業医はその専門的な知識に基づき、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができることとしております。  第二に、小規模の事業場における労働者の健康管理等の促進について、事業者の責務を定めるとともに、国は、これらの事業場の労働者の健康の確保に資するため必要な援助を行うこととしております。  第三に、事業者は健康診断の結果について医師等からの意見の聴取を行うこととするとともに、労働大臣が事後措置の効果的な実施を図るための指針を公表すること等により、健康診断実施後の措置が適切に実施されるようにすることとしております。  第四に、事業者が、一般健康診断の結果を労働者に通知するとともに、医師、保健婦または保健士による保健指導を実施することにより、労働者の自主的な健康管理の促進を図ることとしております。  以上のほか、所要の規定の整備を行うこととしております。  なお、この法律の施行期日は、平成八年十月一日といたしておりますが、産業医の選任に関する要件についてはさらに二年後から実施することとしております。  以上がこの法律案の提案理由及びその内容の概要であります。  何とぞ御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  79. 岡島正之

    岡島委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  80. 岡島正之

    岡島委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柳田稔君。
  81. 柳田稔

    ○柳田委員 おはようございます。厚生委員会とちょっとダブっておりまして、戻らなければなりませんので、できるだけ短く私自身はいたしまして、あとは北橋さんにいろいろなことを質問させてもらいたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。  大臣、普通のお医者さんと産業医とどう違うのでしょうか。産業医と普通のお医者さんとどう違うのでしょうか。
  82. 永井孝信

    永井国務大臣 私は医師の専門知識は持っておりませんけれども、一般医師の場合は、あらゆる診察を求めてくる人たちに対して、その診断の結果、所見を患者に伝えて、適切な治療を行うというのが医師の務めだと思います。  産業医の場合は、その事業場の特性に合わせて、いわゆる労働者の安全衛生の立場に重点を置いて健康診断を行い、職場の環境を含めて指導をしていくという、一般の開業医や病院の先生方と違う任務を持っていると私は認識をいたしております。
  83. 柳田稔

    ○柳田委員 今大臣お話しになりましたように、産業医というのは大変重要な役割を帯びておる、私はそう思います。ところが、働く人たちの健康というのは想像以上に悪いのかな、そういう危惧がございますけれども、今の働く人たちの健康をめぐる状況はいかがなものでございましょうか。
  84. 松原亘子

    松原政府委員 幾つかの数字で御説明したいと思います。  まず業務上疾病、仕事が原因で病気となった、こういう業務上疾病の発生状況でございますけれども、長期的には素いなことに減少してきております。平成六年、これが最新の数字でございますけれども、業務上疾病にかかった方の数は九千九百十五人でございます。十年前の昭和五十九年に比べますと、その水準は六五%というところにまで減少してきているわけでございます。  ただ、先生承知のとおり、職場でも中高年労働者が非常にふえてきておりますことから、一般健康診断をやりました結果などを見ますと、血圧とか血中脂質、尿糖、心電図の検査などで、高血圧性疾患ですとか虚血性心疾患等につながる所見を有する労働者がふえてきているという状況にございます。こういった所見のある方も含め、一般健康診断の結果何らかの所見があるというふうにされた方の割合は、全労働者の大体三四%程度になってきております。こういった何らかの所見がある方については、職場の労働の態様ですとか作業管理、その他健康管理の状況いかんによっては、非常に重要な状況が発生してしまうということもあるわけでございます。  また、最近、仕事や職場生活でストレスを感じる方の割合も非常に高まってきております。私どもが実施しました調査によりますと、職場や仕事で不安、悩み、ストレスを感じる労働者割合はこの十年間で約七ポイントふえてきておりまして、最新時点、平成四年の数字でございますけれども、五七・三%という状況になっております。そういうことから、労働者のメンタルヘルスといいますか、そういった問題も非常に重要になってきているのではないかというふうに考えているところでございます。  さらに、先ほどちょっと申し上げましたけれども、動脈硬化ですとか高血圧などの基礎疾患を持つ労働者が非常に長時間労働をする、そういう過重負荷を受けることによって基礎疾患が著しく悪化をして、脳・心臓疾患を発症するいわゆる過労死と言われている状況も発生してきているわけでございまして、大きな社会問題になっているわけでございます。  こういうような状況を踏まえますと、労働者の健康確保対策の充実ということは、極めて急がれる重要な課題だというふうに認識をしているところでございます。
  85. 柳田稔

    ○柳田委員 我々もストレスが大変たまっておるので、我々の職場にも産業医が要るのかなと、そう感ずる昨今でありますけれども、産業医の選任状況はどういう感じになっておりますでしょうか。
  86. 松原亘子

    松原政府委員 平成年度調査した結果が最新時点の状況なんでございますけれども、この産業医は、先生も御承知のとおり、労働者数が五十人以上の事業場で選任しなければいけないということに今なっているわけでございますが、その選任率は全産業で八一%という状況でございます。  業種別に見ますと、最も選任率が高いのは鉱業でございまして、ここでは九一・三%、続いて製造業が八八%、運輸交通業が八二・八%、貨物取扱業が八一・七%、建設業が七八・三%というふうになっておりまして、最も低いのがサービス業等のその他の産業でございまして、七五・一%ということでございます。  規模別に見ますと、規模が非常に大きな企業、例えば三百人以上の事業場ではもうほぼ一〇〇%の事業場が産業医を選任しているわけでございますけれども、事業場の規模が小さくなると選任率は低くなってきておりまして、残念なことではあるのですが、労働者数五十人から百人という事業場では、産業医を選任している事業場の割合は七七・三%という数字調査結果で私ども把握しているところでございます。
  87. 柳田稔

    ○柳田委員 規模が小さければ小さいほど選任率が低いというお話でございました。五十人から百人、これが七七%ぐらいだと。私も企業の人にいろいろお話をしましたらば、うちも産業医は選任をいたしております、しかし、その産業医は軸足を、もっと言うと両足を自分の本業である開業医としての立場に置いておって、余りいい指導が行われておりませんという話も聞きます。今局長、七七・三%とおっしゃいましたけれども、実態はもっとひどいのではないかという認識がございます。  まあ質と量ということがありますが、まずは量を上げることも大事だと思いますので、この量を上げる方策、労働省としてはどのようにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。
  88. 松原亘子

    松原政府委員 規模五十人以上の事業場には産業医を選任しなければならないということが義務づけられているわけでございます。にもかかわらずその選任率が八割弱だということにつきまして、私どもは本当に残念であり、さらに行政努力もしていかなければいけないというふうに思っております。  その原因はいろいろあろうかと思いますが、一つには、事業者企業を営んでおられる方のこういった労働者の健康問題についての意識が十分でないということもあるのではないかと思います。したがって、そういうことから、企業の中で労働者の健康を確保するための体制を整えなければいけないという認識が薄いということもあるのではないかというふうに思っております。  まずもって、事業を営む方々に、労働者の健康を確保するということが極めて重要なことであり、それは単に労働者にとってもちろん重要なことは言うまでもないのですけれども、企業を経営する立場の方にとっても、労働者が健康で働けるという状況確保することが重要であり、それはある意味では企業の利益にもつながることなんだということについての認識をまず高めていただく必要があろうかと思います。  そういうことで、今回、改正法案の審議をお願いいたしておりますけれども、この成立を契機として、改めて産業医の重要性、いわば労働者の健康確保のキーパーソンであるということについて、中小企業を含めまして十分周知啓発をしたいというふうに思っております。また、必要によりまして監督指導を実施するというようなことで、産業医を置かなければいけないと義務づけられている五十人を超える事業場については、そういうことでさらに努力をしたいというふうに考えているところでございます。
  89. 柳田稔

    ○柳田委員 今度は質について伺いますが、先ほど申し上げましたように、産業医を選任する場合でも、ある企業が、中小企業が一社だけでお願いするということは大変難しいというお話も聞いております。産業医に支払う賃金も余り大きくないということもあって産業医としての活動が余り活発ではなくて、本業の開業医の方がメーンになっているという話も聞きました。  今度は質ですけれども、量はだんだんふえるでしょうけれども、その産業医としての質を高めるためには何かお考えがありますでしょうか。
  90. 松原亘子

    松原政府委員 今回の改正法案の非常に重要な柱が、産業医の方々のいわば質的向上を図るという点でございます。  これまで産業医は、医師のうちから選任するということだけが要件になっていたわけでございますけれども、今働く場の状況というのは非常に変わっている、また、労働者の健康を確保するという観点が中高年労働者がふえればますます重要になってくるということから、その産業医の方も、一定の資格を持った方から選任していただくというようにしたいと考えておりまして、労働の場についての専門的な知識を持った方から選任するように、まずスタートのときからそういうふうにしたいと考えているのが一つございます。  また産業医の方も、選任をされたときに、もう後は何も研修がないということでは、労働の現場というのは非常に大きく変化しているわけでございますので、そういったことにやはりついていっていただかなければいけない。そういう意味におきまして、産業医に対する研修につきましても充実させる方向を今後検討したいと考えている面もあるわけでございます。  ところで、先生おっしゃいました専属で産業医をやっている方の場合には、企業に雇われ、専らその仕事をやっておられるわけでございますので、今御指摘があったようなことはないのかもしれませんけれども、問題は、嘱託産業医と言われている方々に御指摘があったようなことが一部見られるというのを私どもも聞いております。  この産業医は、常時千人以上の労働者を使用する事業場においては専属の産業医、もちろんそれに加え、一定の有害な業務に常時五百人以上の労働者を従事させる事業場についても専属の産業医を置かなければいけないということになっておりますが、それ以外の事業場については必ずしも専属でなくてもいい。したがって、開業医の方ですとか病院の勤務医の中から産業医として企業が委嘱をしているということがあるわけでございます。こういう場合には、産業医の方自体も、十分その産業医としての任務を自覚されているかというとちょっと怒られるかもしれませんが、必ずしもそうでない方もある場合もある。また、事業場の受け入れ体制も十分整ってない面もあるのではないかというふうに思うわけでございます。  産業医の方々に、どうして産業医活動が十分できないかということについて調査したものがございます。日本医師会がやった調査でございますが、産業医活動上何らかの問題点があるかという問いに対して、四九%の産業医の方が問題があるというふうに言っておられます。そのうち具体的な内容で最も多く挙げられましたのは、「事業主の理解の不足」というのが四四・六%、次いで多いのが「従業員の理解の不足」というのが四三%挙がっております。  そういう意味で、産業医の方の活動を活発化させるというのは、一方で事業主の責任という部分もあるわけでございますけれども、やはり労働者自身が自分の健康ということにもう少し関心を持ち、産業医の重要な役割について認識していただくということも必要なのではないか。そういうことも含めまして啓発もしていかなければいけないというふうにも考えているところでございます。
  91. 柳田稔

    ○柳田委員 おっしゃることは本当にごもっともと、ここに座っておると感じるのですが、企業に行ってお話を聞くと、ああ、労働省の理想的な考えと現場は大分違うな、これが実感であります。局長も大変認識をされておりまして大変すばらしいことをお話しになりましたので、現場もそうなるように御努力をしていただきたいと思います。  もうそろそろ私も行かなければならない時間になりましたので、最後に大臣に私の方からお尋ねしたいのは、今申し上げましたように、量の問題も質の問題も特に中小の方で困っております。今後、働く人たちの健康確保対策をさらに充実していかなければならないと私も考えるわけでありますが、大臣のお考えをお聞かせ願えればと思います。
  92. 永井孝信

    永井国務大臣 今言われましたように、問題は中小零細企業だと思うのです。大企業の場合は専任の産業医を配置することができますし、事業場内に診療所を設けるとかいろいろなことができるわけでありますが、中小零細企業はなかなかそれができないという現状にあります。  したがって、今局長からも答弁しましたけれども、中小零細企業におきましても事業主がこの労働安全衛生ということについてさらに一層認識を強めて持ってもらうこと、労働者自身もみずからの健康管理について積極的な姿勢を持ってもらうこと、もちろん認識もそうであります。そういうことと相まって、産業医を委嘱する場合に、専任でなくても、あるいは数社の事業場が共同で委託する場合もあります。その場合に、産業医の皆さんに、それぞれ委託された事業場においてどういう作業が行われているかということも認識をしてもらうことが非常に大切だと思うのです。  例えば粉じんの多い作業であるとか騒音の多い作業であるとか、あるいは非常に密閉された室内での作業であるとか、あるいはラインによる作業のように特に目を中心に使う作業であるとか、事業場によってその作業の内容がいろいろ違うと思うのです。そういう作業から発生する健康を阻害するようなことについて、どのように適切に対応するかということも委嘱をされた産業医の皆さんに十分に認識をしてもらわなければいかぬ。そういうことも含めまして、問題のないようなことを図っていくことが非常に重要ではないか、こう実は思っているわけであります。  いずれにいたしましても、この法改正によりましてより積極的な対応をすることにしているわけでありますから、法改正ができました暁には、その法改正趣旨を十分に生かして、単に一事業主だけではなくて、全体の問題として労働省挙げて取り組んでまいる決意であります。
  93. 柳田稔

    ○柳田委員 労働者の認識と言われると、大変私自身も思い出があります。実は、船のプロペラを磨くときにグラインダーをかけるんです。すると粉じんがぱっと出る。船のプロペラは銅でできていますから、それを吸い込むとたんが緑になる。そのとき私もマスクはかけませんでした。まあ帰ったらそういうことも皆さんにお願いしながら、健康管理に労働省としても十分取り組んでいただくようお願いして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  94. 岡島正之

    岡島委員長 北橋健治君。
  95. 北橋健治

    ○北橋委員 新進党の北橋でございます。柳田委員に続きまして質問をさせていただきます。  この法改正議論に入ります前に、就職戦線、昨年同様超氷河期の時代が続いておりまして、労働委員会で大臣の御所見を承る機会がないものでございますから、冒頭にそのことをまずお伺いさせていただきたいと思っております。  就職浪人はどれぐらいの数になるか。昨年でも十数万人にはなっていると言われております。女子大生さんはもとよりでございますが、本当に地獄のような不安感、超氷河期の就職戦線で苦労しております。  そこで、まず統計がありましたら教えていただきたいのですけれども、ことし三月に新たに大学を卒業した方で、まだ残念ながら就職されていない方はどれぐらいの数に上っているのでしょうか。
  96. 征矢紀臣

    征矢政府委員 まず、平成八年三月卒業の新規学卒者の方の内定状況でございますが、三月末現在において四年制大学は九五・九%、短期大学は八四・九%、専修学校は九五・四%、私どもの把握している数字ではそんな状況になっております。  そこで、御指摘の今春三月卒の未就職卒業者の数でございますが、総務庁の労働調査によりますと、平成八年四月の時点におきます大学、高校のほか各種学校等を含めました学卒未就職者全体の数は二十二万人でございます。これは、昨年の三月時点で二十三万人という数字がございますが、それに次ぐ高い数字でございます。  なお、労働調査におきましては、大卒未就職者の方だけの集計は行っておりませんので、そういう意味では、数字としてはただいま申し上げたような状況であるということでお許しいただきたいと思います。
  97. 北橋健治

    ○北橋委員 前途洋々たる若者が、学校を終えてこれから社会人になろうとするときに就職するところが見つからないというのは、これは大変気の毒なことでございまして、その御両親や御家族の方や友達も含めますと、これは大変な社会不安になっていると思っております。そういった意味では、行政がこの問題についてどこまで踏み込んで対応できるかについては議論の分かれるところではありますが、何としてでもできることは何でもやるという気持ちで、ぜひとも民間企業等に対しまして就職についても要請をしていただきたい、こう思っておるわけでございます。  新規学卒者の雇用の場を確保するために大臣として今後どのような決意で臨まれるか、今まさに就職活動で大変苦労されているときでございますので、ぜひとも御所見を聞かせていただきたいと思っております。
  98. 永井孝信

    永井国務大臣 先生指摘のように、新たな学卒者の皆さんの就職状況は極めて厳しい状況にあるというふうに実は認識をしているわけであります。  今春大学等を卒業しましてまだ就職ができていない皆さんに対して、何とか就職の機会を多くつくっていこうということで、ことしの三月二十一日には、未就職卒業者の早期就職に向けた対策を早急に実施すべき旨を職業安定局長名で各都道府県知事あてに指示をいたしました。各都道府県におきましても、この私どもの求めに応じまして、職業安定課などを通しまして積極的な求人開拓を行っているところであります。  また、この六月四日でありますが、全国職業安定課長会議を緊急に開催いたしまして、未就職卒業者を初めとする若年者の早期就職の実現に向けまして強力な取り組みを行うように、事務次官から指示をさせたところであります。  また、この対策の具体的な内容でありますけれども、まず一つは、積極的な求人の確保が必要だと考えております。毎年行っていることでありますが、私も含めまして全労働省の幹部たちが手分けをして、各業界に対して一人でも多くの採用を行ってもらえるような要請行動を行っておりますが、ことしもさらにそれを積極的に進めていきたい、こう思っているわけであります。  また、学生職業センター及び学生職業相談室におきまして、職業相談・職業紹介を積極的に進めてまいります。今まで四十七都道府県全部に職業センターとか相談室はなかったわけでありますが、ことしはもう全都道府県にそれをつくりました。これを最大限に活用してまいりたいと思っております。  あるいは就職面接会でありますが、この面接会は、毎年九月以降ぐらいに翌年の卒業者を対象にして集団面接会、もちろんその前段には各事業団体に対しまして求人をお願いして回って、それを全部集めた上でのことでありますが、そういう集団面接会を行ってきております。ことしの場合は、まだ就職できていない今春卒業された学生、この方たちを対象にいたしまして、求人票をさらに集めまして、六月末までに十六の都府県、二十一会場で特別に集団面接会を行っているところであります。五月十七日の栃木県開催から現在まで、既に十会場において開催を行っております。かなりの成果を上げてまいっていると自負しているところであります。  あるいは、未就職卒業者の職場体験プログラムというのがございますが、これを積極的に活用して就職につなげていきたい、こう思っております。  未就職卒業者の早期就職の実現に全力を挙げてまいるわけでありますが、ここで一つ私は大きな問題意識を持っております。  ことしの学卒者が非常に就職率が悪かった。悪かったといっても大体昨年並みまで到達してきましたけれども、非常に厳しい状況にある。その片方で、大学へ問い合わせてみますと、事業団体からあるいは企業から出された求人票が随分残っているのです。求人票が残っているけれども学生は就職できていない、このミスマッチを私は重視しているわけであります。これを言うと、大臣はまたブランド志向だと指摘するのかという批判を受けることがございます。必ずしもブランド志向と私は言いませんけれども、求人票がかなり残っているのになぜ就職できないのか、そのミスマッチを解消するための進路指導というものも大学側に積極的に求めていきたい、こう考えているわけであります。  また、平成九年三月卒業予定の学生への対策でありますが、最近の新聞報道あるいは労働省のそれぞれの調査によりますと、一部の企業ではかなり採用拡大をするという明るい兆しも見えてきております。しかし、それに甘えることはできませんし、それにすべてを依存することはできないと思いますが、少なくとも採用抑制を続ける企業にできるだけ採用の場を広げてもらうような努力を積極的に進めていきたい、こう思っております。  これからもあらゆる努力を傾注して、いわゆる大学は出たけれども就職できなかったという就職浪人が出ないように、全力を尽くす決意を申し上げておきたいと思います。
  99. 北橋健治

    ○北橋委員 今、大臣の方から各般の施策についてお話がございました。いずれにしても、昨年に続きまして大変厳しい超氷河期の就職戦線でございますので、万全を期して頑張っていただきたい、こう思っております。  私は、この点につきまして、微力ですけれども自分なりにいろいろな情報を集めて考えているのですが、とりわけ衝撃を感じましたのはフランスの大統領選挙の結果であります。  これは特に質問ではありませんが、結果は保守のシラクが勝ったわけであります。その要因には、いろいろな分析がありましたけれども、フランスは若者の失業率が非常に高い。社会党の候補者も保守党のシラクも、両方がこの若い人たちの就職の場の確保ということを非常に大きな争点として取り上げて、意識して政策を訴えたのですけれども、シラクの方が勝ったと言われております。それは、就職浪人して困っている青年を雇った企業には補助金を出すという非常に明快な政策が受けたということを聞いておりまして、大変衝撃を受けました。  本来ならば、私も旧民社党で、フランス社会党の政策に非常に共鳴をする一人であったものですから、雇用政策では絶対社会党の方が勝つと思っていたのですけれども、そうではなかった。果たしてその方法が日本の予算体系あるいは雇用政策全般の中で採用されるかどうかについては、党内でもいろいろな議論がございますが、いずれにしてもこれは重大な社会不安になりかねない問題である。そのことを与野党ともに自覚して、政府に対してこれからの特段の御尽力を強く要請し、見守っていきたいと思っておりますので、ぜひ頑張っていただきたい、こう思っております。  さて、今回提案されております労働安全衛生法の一部を改正する法律案につきまして質問させていただくわけでございますが、私は、去年の今ごろ介護休業の議論をさせていただきました。そして、先般は勤労者財産形成制度の問題について質問いたしました。  いずれにしましても、なかなか理想に向けて思うように飛躍できないというのは、やはり大企業中小企業の経営基盤の格差というものが厳然としてある。これは戦後五十年間いろいろな学者が指摘し、また関係方面がその改善を模索してきたにもかかわらず、やはりいろいろな面で大変な格差というものが厳然としてある。ですから、労働時間の短縮しかり、いろいろな問題で思うように理想的な政策に到達できないでいるという状況だろうと思います。今回の労働者の健康管理のための法改正を考えておりまして、ここが一番大きなネックになっているといいますか、重要な問題であることは大臣が先ほど御答弁のとおりでございます。  そこでまず、お示しいただければと思っておりますが、実際労働者の健康管理という面で、例えば健康診断、一般の定期健康診断なんかを見ますと、有所見率というのがやはり中小事業場においては非常に高い。八%は高いというような数字が出ております。例えば、労働災害で認定をされた過去の事例というものが整理されていると思うわけでございますが、過労死として認定した事案について、事業場規模別に見ていくとその発生状況はどうなっているでしょうか。
  100. 松原亘子

    松原政府委員 いわゆる過労死として認定した事案について、すべて事業場規模別にどうなっているかというのを把握した数字は実はないのでございますが、昨年の二月に過労死の認定基準を改正をいたしました。  それ以降昨年までに認定された事案について、事業場規模が明らかな事業場というのは六十二ございましたので、それにつきまして申し上げさせていただきますと、そのうち労働者数五十人以上の事業場が二十二、五十人未満の事業場が四十、こういう状況でございました。したがいまして、五十人未満の事業場が全体の六四・五%を占めているという状況でございました。一部の例についての集計でございますが、以上のような状況にございます。     〔委員長退席、河上委員長代理着席〕
  101. 北橋健治

    ○北橋委員 働く人の健康管理という面におきましても、大企業中小企業との間には非常に大きな隔たりといいますか、格差というものが改めてその数字からもうかがえるところであります。  今回の法改正によりまして、五十人未満の事業場につきましては産業医の選任は義務づけられていなかったわけでありますけれども、労働者の健康管理等についての義務というものが新たに規定された。これは努力義務でございますから、どれだけの影響があるかは、これからの行政指導その他、あるいは関係各位の理解によるわけでございますが、これはこれで一歩前進であると思っているわけであります。今回この努力義務規定を設けた。今後政府は、中小の事業場の労働者の健康管理、健康確保という面で、法改正、努力義務を入れたということを具体的にどのようにして生かしていかれるのでしょうか。
  102. 松原亘子

    松原政府委員 私どもは、いかなる規模の事業場に働いていても、そこで働く労働者の健康が十分に確保される、必要な産業保健サービスがそういった労働者にも提供される、そういう状況をつくることは極めて重要なことだというふうに考えているわけでございます。  今、五十人以上の事業場につきましては産業医を選任しなければいけないことになっておりますが、これをさらに引き下げるかどうかについてはかなり議論がございました。一部には、今先生も御指摘されましたように、五十人未満の小さいと ころでは産業医を頼むだけの十分な資力がないという意見もありましたし、また、五十人から百人未満の事業場、ここは既に産業医を置かなければいけないことになっているところでございますけれども、そこにおける産業医の活動状況を見ると、労使双方にいろいろ原因はあるのだろうと思いますけれども、十分活発に産業医活動が行われていない。したがって、産業医を置いたら具体的に労働者の健康状況にこういうメリットがあったということがはっきり見えない面もあるのじゃないかなど、さまざまな議論がありまして、今回の改正におきましても、産業医の選任義務を課す事業場の規模というのは、五十人というところをそのままにしたわけでございます。  ただ、最初に申し上げましたように、五十人未満の事業場で働く労働者にとっても、健康を確保する、そのために産業保健サービスが適切に提供されるということは極めて重要なことでございます。そういうことから、そういった小さな規模の事業場におきましても、一定の医師に労働者の健康管理等を行わせるなどの措置を講ずるよう、事業主に努力義務を課すことにしたわけでございます。あわせまして、国としても、そのような事業者の努力に対して、相談に応ずることを初めといたしまして、さまざまな指導、援助をやっていきたいということで、そういう規定も置くことといたしたわけでございます。  具体的に一体どういうことをやっていくのかというお尋ねでございますけれども、まず、産業医の選任義務のない小さな事業場の労働者に対する健康相談ですとか、事業主の方からの相談ということもあろうかと思いますけれども、事業場に対する相談、また、場合によりましては事業主からの要請に応じて個別に企業を訪問し、そこで産業保健指導を行う地域産業保健センターを平成年度以降順次整備してきておりますが、今年度で全国に二百四十四カ所整備するということにいたしております。今後、最終的には労働基準監督署単位に地域産業保健センターが設置できるようにしたいと考えておりまして、来年度予算、これから要求案をまとめる作業をするわけでございますけれども、来年度さらにこれを整備するよう予算要求もしていきたいと思っているわけでございます。  また、量的に順次その箇所をふやすだけではなくて、そこで行う業務につきましても、例えば今年度はメンタルヘルスについての相談援助も行うことにいたしましたように、質的な機能、業務の充実ということについても今後努力をいたしたいと思っております。  それからまた、小規模の事業場が単独で産業医を選任するのはなかなか難しいということがあろうかと思いますけれども、例えば工場団地にまとまって企業があると、そういうところが共同して産業医を選任するということも極めて有効な制度、やり方だと考えておりまして、そういったことが促進されるよう何らかの助成措置を考えられないかということで、これも来年度の予算要求に向けまして今部内で検討をいたしているところでございます。     〔河上委員長代理退席、委員長着席〕
  103. 北橋健治

    ○北橋委員 結局、地域産業保健センターが既にもう百四十一カ所設置されておりまして、これを二年かけて三百四十七、労働基準監督署のあるところは全部つくるんだ、そこをセンターにして、小規模事業場に対する健康管理のサービス等について万全を期すという御趣旨だったと思うわけでございますが、この五十人未満の小規模事業場というのは一体どれだけの数になるのかということであります。  御案内のとおり、五千万人の労働者のうちの六割、三千万人がそこで働いている。そして、事業場の比率にして実に九十数%でございます。つまり、ほとんどの人は小規模事業場において働いているわけでありまして、そこの経営者並びに働いている人が、労働省がこれからこういうサービスを拡充するんだと言ったときに、情報がはんらんするマスメディア社会の中でどのようにしてこの貴重な情報をキャッチするであろうか、そこが問題だと思っております。  この点につきましては、中央労働基準審議会の方から建議が出て、それを踏まえて今回の法改正がなされたと聞いておりますが、その中でも、既に行われている地域の産業保健サービスについては指摘がございます。「地域産業保健センターについては、周知が図られていないこと等により、十分な活用が図られていない面がある。」ということがあるわけでございます。  当然そのことを政府も念頭に置かれていると思うわけでありますが、何しろ膨大な数の事業場、そして莫大な数の働く人が小規模事業場にいらっしゃるわけでありまして、その点について、地元、地域の医師会との連携あるいはこの事業を促進するに当たっての予算が万全であろうかという気がするわけでございますが、いかがでしょうか。
  104. 松原亘子

    松原政府委員 現在設置しております地域産業保健センター、活動自体が十分でないということもございますが、まず何よりもその存在を知ってもらうことが非常に重要であるというのは、先生の御指摘のとおりでございます。  地域産業保健センターは、小規模事業場の労使を対象とした健康相談の窓口を開設しているとか、個別に訪問して産業保健指導をするとか、さまざまな情報提供を行うということでやっているわけでございますし、また、今年度からはメンタルヘルスの相談に応じられるように窓口を設けるなど、機能の充実は年々図ってきているわけでございます。また、今後とも図りたいと思っておりますけれども、まず何よりも、多くの労使の方、特に小規模事業場に働く労働者の方にこの存在を知っていただくことが重要なことでございます。  そういうことから、私ども、これまでもこの周知を図るべく努力はしてまいりましたけれども、今後、この法改正がなされましたら、こういう趣旨でこういう法律改正されたということについての集団説明会等さまざまな周知活動をやってまいりますので、その中におきまして、地域産業保健センターについても、どういう事業をやっているか、どういう相談に応じられるかといったようなことについての周知を図ってまいりたいと考えているところでございます。
  105. 北橋健治

    ○北橋委員 先ほどの御説明の中で、小規模事業場対策の一つとして、産業医を共同で選任することを促進していきたいという御答弁がありました。  これはぜひとも実行していただきたいと思っておりますが、外国の制度、これは労働省の外郭団体がお調べになった資料でございますが、諸外国における産業制度の概要として、産業医の選任基準、資格要件、勧告権、産業医の身分保障の四つのポイントについて、日本とフランスとドイツの比較が出されております。これを見まして改めて、労働者の健康にかかわる問題について、フランスやドイツという国は、やはり制度としてしっかりとした仕組みをつくり上げているなという率直な印象を感じました。  例えば今、中小企業についてはなかなか自分のところで産業医が選任できない。努力義務は今度の法改正で入れたけれども、なかなか難しい面もあるだろうということで、共同選任を促進するということなんですが、フランスの場合は「中小企業は複数の企業が共同で企業産業医局を設置し、これに加入することが義務付けられている。」と書いてあります。  私どもは、まだこのフランスの制度を詳しく調査したわけではございませんので、この外郭団体の資料しかございませんが、いずれにしましても、中小企業は共同でつくったものに義務づけて入らせるというところまでやっているわけでございまして、これはいろいろな議論があると思います。とてもそこまではできないんだという議論もあるかもしれませんが、働いている人の健康管理という面から考えますと、フランスというのはなかなかしっかりと仕組みをつくっているなということを率直に感じるのです。  こういった産業医の共同選任を促進するということは、どうでしょうか、今回の法改正は一歩前進であると評価をいたすものでありますが、将来的には、それがさらに充実したものになるように何かお考えをさらに進めるという必要性はないのでしょうか。
  106. 松原亘子

    松原政府委員 産業医の選任義務を課す事業場の規模をどうするかということは、中央労働基準審議会でこの問題を議論していただくときの非常に大きなテーマでございました。今五十人以上になっておりますけれども、中小規模の事業場における労働者の健康状況等を考えると、もう少しそれを引き下げるべきではないかという議論がございました。  ただ、一方では、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、選任義務が課されている事業場であっても、比較的小さな規模の事業場、五十人から百人といった規模の事業場の状況を見ると、必ずしも産業医の方々が活発に活動できていないという実態もあるという指摘もございました。これは、事業主の方で受け入れ体制がちゃんとなっていないということもありますし、労働者自身も産業医活動の重要性について十分認識していないといったことも、産業医の先生方が活動の問題点として挙げられているといったようなこともあるわけでございます。  そのように、特に中小規模の事業場の産業医を置かなければいけないとなっているところについて、産業医活動がどう活性化され、それがどう労働者の健康確保に役立っているかといったようなことについて、十分なデータといいますか、そういったものがまだないわけなんでございますが、そういうことがないと、規模を下げるというだけの議論になってしまうのもおかしいのではないかといったこともございまして、この問題については結論を得られなかったわけでございます。  ただ、その過程におきまして、五十人から百人といった規模の、今現在産業医活動が十分活発でないというふうにいろいろなところから指摘されている事業場において、この産業医活動をどう活発化させるかという方策についても十分検討しなければいけないのではないか。  それからもう一つ、地域産業保健センターをこういった小規模事業場の産業保健活動といいますか、サービスを提供する拠点として整備したいと私どもは考えているわけですが、それが今後どのように整備され、どのように機能を果たしていくかということも見ていかなければいけないのではないかといったようなことがございます。  いずれにしても、その両方の面、産業医活動の活性化をどう図るか、そしてその結果、実際にどう図られていくか、そして一方では、地域産業保健センターがどう整備され、それが労働者の健康確保にどのように役に立ってきているかといったようなことを両方踏まえながら、今後、この産業医の選任基準についてもさらに検討するということになっているわけでございます。  先生、今特にフランスの中小企業についての共同選任ですか、それを義務づけているということについて御指摘がございました。  私どもは、まだそこまではいかないといいますか、先ほど申し上げたような状況を見ながら、今後の検討課題ということにはなるというふうに認識しておりますけれども、現段階では、まだそこまでやるには労使を含め関係者の認識が十分熟していないということもございまして、とりあえず小規模事業場については、労働者の健康確保について事業主が十分配慮するように、適切な措置をとるようにという努力義務を置き、そしてその努力の一端として、共同して選任するということも一つの形でございますので、国も奨励金等の措置をやりながら、事業主の自主的努力で、できるだけそういうことが実施されるようにということを促進したいというふうに考えているわけでございます。  ただ、御指摘の、そういったものを将来義務づけていくかどうかについては、今後の検討課題だというふうに認識しているところでございます。
  107. 北橋健治

    ○北橋委員 国が違いますと、いろいろな社会の風習なり法令のつくり方なりが違ってまいりますから、必ずしもこだわるものではありませんが、いずれにしても結果が重要だと思っております。そういった意味では、今回の政府の提案は、共同で選任をして、産業医のそういう保健サービスがあまねく一社でも多く、一人でも多くの中小企業労働者に行き渡るようにという趣旨だと思いますので、今後の活動を見守らせていただきたいと思っております。  今までのお話の中でもございましたが、現在は五十人以上につきまして産業医が義務づけられているわけでございますが、七七・三%のところが選任しているということは、まだ四分の一は選任していないところがあるということであります。いろいろな事情があるのだろうと思いますが、今回の法改正は、その五十人未満の義務づけられていないところにでも努力義務ということを法律で明文化しているわけでございますので、そういった意味では、五十人以上でまだ産業医を設置されていないところについては、今後、具体的にその選任に向けての促進方を労働省としてもかなり本格的にやっていただけるのだろうと期待するのですが、具体的にどうされますか。
  108. 松原亘子

    松原政府委員 御指摘のように、五十人から百人の規模の事業場につきましての産業医の選任率というのは、八割弱ということでございます。ここは既に法律で義務づけられているわけでございますから、本来ですと一〇〇%にならなければいけない、こういうものであるわけですけれども、残念ながらこのような状況でございます。  この原因には、事業主自身の衛生意識といいますか、労働者の健康確保が極めて重要なことだということについての認識が十分でないということもあるわけでございますので、私どもは今回、安全衛生法の改正案を御審議いただいておりますけれども、成立させていたださましたら、当然この内容を周知していかなければいけない。それにあわせまして、改めてこの五十人から百人という規模の事業場に対しましては、中小企業の団体とも連携をとりまして、産業医の選任についてさらに一層周知を図るべく努力をしたいと思いますし、必要に応じまして監督指導をしていきたいというふうに考えているところでございます。
  109. 北橋健治

    ○北橋委員 一年後の来年の今ごろは九〇%以上になっていますか。期待していいでしょうか。政治も行政も結果が勝負の世界でございますから、頑張っていただきたいと思っております。  この審議会議論の中で、先ほどからも議論がありましたが、産業医の選任義務のある事業場の範囲を、今の五十人から三十人まで広げてはどうかという意見が労働側を中心に強くあったというふうに聞いております。  ところが、それに対しては、現状のままでよいとする意見もあって結論が出なかったということなんでございます。先ほどフランス、ドイツの資料、労働問題リサーチセンターあるいは労働福祉事業団の報告書を見ますと、これは議論すると賛否両論がありますから、なかなか前に進まない事情はうかがい知れるわけでございますが、そこでとまっておったのでは前に進みません。  そういった意味で、ドイツの制度というのは、見てみますと、基本的には、従業員規模が五十人以上の事業場に全部選任しているそうでございますが、一部の危険有害業務については従業員規模三十人以上の事業場で産業医を選任する。つまり、すべての事業場について三十人で切るのではなくて、労働者の健康に非常に心配だと思われる物質を扱っているところについては三十人として、法律あるいは政府の監督が及ぶようなことにしているわけですね。そういった方向で合意を得るというのはできなかったのでしょうか。
  110. 松原亘子

    松原政府委員 御指摘のように、一般の事業場と有害業務に従事する労働者が多い事業場とについて考え方を分けたらどうかということは、一つのポイントであろうかと思います。  現状でも専属産業医を選任すべき事業場の範囲というのが決められておりますけれども、一般の事業場では常時千人以上使用する事業場に専属産業医を選任する義務があります。一方、一定の有害業務に従事する労働者を使用する事業場については、この千人という規模が、常時五百人以上そういう有害業務に従事する労働者を使用する事業場についても専属産業医を選任する義務が課されているわけでございます。そういうことから、どういった業務に従事する労働者がいるか、特に有害業務に従事する労働者が多いということによって、産業医の選任について取り扱いを異にしているわけでございます。  御指摘のように、中央労働基準審議会で、この五十人という選任義務があるレベルをもう少し下げてはどうかという議論がございましたけれども、先ほど来申し上げましたようなさまざまな意見がございまして、今後はむしろ、選任を義務づけるという前に、もう少し共同で選任するなどそういったことを奨励する、また、地域産業保健センターの充実をするといったようなことで、同じような産業保健サービスが得られるといったような状況もあるかもしれない、そういったさまざまの状況を見ながら検討すべきだということで、結論は得られませんでした。  そういうことがございますけれども、今先生指摘されましたように、今後の検討課題として残されているものでございますので、今後検討していただく際には、有害業務に従事する労働者がどの程度いるかということも、この選任義務の範囲を決めるときに視野に入れていただきたいということでお願いをしたいというふうに思っております。
  111. 北橋健治

    ○北橋委員 外国の産業医の制度を見たときに私ははっと思ったのですが、勧告権などを見ましても、産業医による事業場の環境の改善の勧告を出す場合ですが、使用者は無視することができない、もし意見が対立した場合には裁定は労働監督官にゆだねられる。あるいは身分保障にしましても、ドイツなどでは、解任するときには従業員代表と経営側との共同決定事項になる。これからもし法が施行されるに当たりまして、ぜひ外国の制度もしっかり調べていただきたいと思うのですけれども、こういう制度をつくっているというのは、産業医と実際の事業場の間では労働者の健康管理という面で相当緊張した関係があるのではないだろうか。しっかりとした仕組みをつくっていますよ。  いろいろ議論があるので、もう少し時間をかしてほしいという局長のお話なんですが、やはりどこかでリードをしていかないと、いつまでたっても、できる、いやまだ無理だ、その議論の堂々めぐりでございまして、私は、ドイツの仕組みのように、すべてを三十人に下げることは今すぐは難しいと思います。しかしながら、危険な有害物質を扱っているところについては速やかに三十人からいこうではないかというのは、私は、関係者の合意が得られる妥当なまず第一歩だと思うのです。ぜひともその方向で前進させていただきたい、こう思っております。要望しておきます。  それからもう一つ、この法律に関連しまして、事業場の中で労使による衛生委員会というものがある、こう聞いております。「産業保健サービスが的確に提供されるためには、労使が調査審議を行う衛生委員会の活動を促進する必要がある。」これは先ほどの審議会の建議に出ていることでございます。  この改革について審議会の結論は、衛生委員会の設置義務のある事業場の範囲については、産業医の選任と同じく五十人ということで、三十人以上まで拡大すべきだという意見と、いや現状のままでいいんだという意見で平行になって、引き続き検討するということになっているのですが、これは、特に義務づけることによって、例えば介護休業だとか労働時間短縮、こういうのは経営側にとってコストアップとか大変に難しい問題を派生じますけれども、労使の間で事業場の健康管理について話し合いをするということは当然必要なことだし、またそれがなければ、いかに労働省が頑張っていろいろなセンターをつくってみても、それは生きてこないと思うのですね。  そういった意味では、企業には千差万別いろいろあるでしょうけれども、相当労使の間で工夫して労働安全衛生について話し合いをやっているものでありまして、こういったものについてなぜ三十人以上に拡大するのが難しいという議論が出てくるのか、不思議でならぬのですよ。経営側に特にコストアップの問題があって、経営上非常に困るとかという問題があれば別なんですけれども、こういう問題については、労使が一体となって労働者の健康管理に対応するというのは極めて重要な課題でございますから、せめてこの衛生委員会だけでも三十人まで引き下げてはどうでしょうか。
  112. 松原亘子

    松原政府委員 この衛生委員会の設置の規模につきましても産業医と同じような議論がございまして、現在設置を義務づけられている事業場においても、なかなか衛生委員会の活動が十分に行われていないといったような意見もございました。  それと、これも法律上問題なのでございますけれども、規模五十人から百人というところで安全衛生委員会がどの程度設置されているか。これは製造業の数字でございますけれども、実は七割になっているわけでございまして、まだこの五十人から百人という設置が義務づけられているところでも、置かれていないという実態もあるわけでございます。そういったことを総合的に考えまして、今直ちに三十人まで引き下げるということは難しいのではないかという議論もあったわけでございます。  いずれにしても、この衛生委員会の活動をどういうふうに活性化してもらうかということも重要なポイントでございます。事業主が十分安全衛生問題について認識をされていないという面もあるのですけれども、先ほどちょっと申し上げましたように、産業医の方々の活動が十分できない問題点として指摘されている中に、従業員の理解が十分でないという意見などもあるわけでございますので、今回の改正法案の成立を契機として、使用者のみならず労働者の方にも、いかに自分の健康を守ることが重要かということについて改めて啓発をしたいと思っておりますし、衛生委員会の活動の活性化の方策につきましては私どもとしても検討し、衛生委員会というものがあることが労働者の健康確保にとって非常に重要であり、欠くことのできないものだというように認識が高まるように今後努力をしたいというふうに思っております。
  113. 北橋健治

    ○北橋委員 なかなか議論のあれが縮まらなくて、今後の労働省の内外のそういった関係各位による議論の経緯を見守りたいと思っております。  労働側の意見としては、地域産業保健センター、これは医師会に設置するわけでありますが、あるいは都道府県のセンターにつきましても、いろいろな機会に労働側の率直な意見が反映できるように、そういったところに代表を参加させてほしいとか、いろいろな議論があるわけでございます。これは審議会の内部でも引き続き検討課題になるということでございますが、労働者の健康管理にかかわる問題でございますので、参加という視点から、働いている人の生の声がそういったセンターの運営に当たりまして生き生きと反映されますような工夫をぜひとも今後御検討いただきたいと思っております。  時間がもう間もなく参るわけでございますが、この産業制度につきましても、今回の法改正について私は有力な前進であると率直に評価をさせていただきたいと思いますし、これまでも、なかなか関係者の意見がまとまらない中で、この重要な課題について鋭意努力されてきたことに率直に敬意を表する一人であります。  そしてまた、私の地元、北九州におきましても、産業医として優秀な夢と理想に燃えた若い青年医師をたくさん育てていただいておりまして、そういった意味では、政府のこれまでの御尽力に対しては心から感謝を申し上げる一人であります。  ただ、この産業制度を本当にさらに大きく前進させていくためには、なお一層の関係者の合意の形成と労働省の努力が必要と思います。そういった意味では、農林族とか建設族という言葉はありますが、なかなか労働族という言葉は聞きません。こういう問題については党派はないわけでございまして、必要な予算については私ども最善を尽くして御協力申し上げることを表明させていただきたいと思いますし、また、フランスやドイツに負けないような本格的な、立派な、世界に冠たる日本産業医システムをつくり上げるその第一歩であるという認識に立って、最後に大臣、今後この制度を中小事業場にも十分配慮しつつ、さらに大きく前進させるという決意の一端を聞かせていただきまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  114. 永井孝信

    永井国務大臣 先生が今御論議いただきましたように、この労働安全衛生という問題に限定はできないと思いますが、どの問題にいたしましても中小企業が一番問題であります。  最前、柳田先生の御質問にもお答えしたわけでありますが、労働組合も組織されていないそういう零細企業が、健康管理の面でも果たして労使対等ということが担保されるのかという問題もあります。したがって、そういう面については、労働省としても全力を尽くして啓蒙活動あるいは指導を行ってまいりますが、いずれにいたしましても、産業医の配置が義務づけられていない五十人以下のところにつきましても、できる限り、共同で産業医の委託をするとか、あるいは産業医の指定を受けました医師の皆さんに現場の秩序を十分理解してもらった上で適切に指導してもらう、こういうことも積極的に進めてまいりたいと考えるわけであります。  そして、何よりも重要なことは、事業主自身がみずからの雇用する労働者の健康管理に重大な関心を持ってもらうこと、そして働く労働者も、みずからの健康の問題でありますから、健康管理について積極的な姿勢を示してもらうこと、このことが相まって初めて中小零細企業に働く労働者の安全衛生という問題についても、私どもが求めているような成果を上げることができると思いますので、私どもも、そういう労使関係が十分に機能しますように、これまたあらゆる角度から力を尽くしてまいりたい、このように考えるわけであります。
  115. 北橋健治

    ○北橋委員 終わります。ありがとうございました。
  116. 岡島正之

  117. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 岡崎トミ子です。よろしくお願いいたします。  戦後五十年、さまざまな問題があります中で、解決されたものもたくさんございます。村山内閣で被爆者援護法ですとか、あるいは水俣病問題、現政権におきましても薬害エイズの問題、基本的に解決されたとは言えません、まだ真相解明や責任という問題が残っているだろうと思いますけれども、ある程度の解決はできたというふうに思います。  もう一つ労働者の問題でいいますと、まだとげがのどのところに刺さっている、これがJRの採用事件ではないかなというふうに思いますけれども、永井労働大臣は大変このことに長いこと御努力をされていらっしゃいまして、一言この問題に関しての御努力と御認識について、まずこの法律の問題に入ります前にお伺いしたいと思います。
  118. 永井孝信

    永井国務大臣 先生が今提起されました国鉄改革に伴います不当労働行為と言われている問題について、中労委が幾つかの命令を出しております用地労委でも随分とその問題が審議をされまして、地労委命令も出されているということは十分承知をしているところであります。  国鉄が今のJRに改革をされる際に、当時、いわゆる労働組合によって差別をしてはならないということも確認をされました。そして、当時の中曽根総理が、この改革に伴って一人たりとも路頭に迷わせないということを本会議で、あれは私の質問に対してでありましたが、中曽根総理がそういう答弁をされた経緯もございます。  それを受けまして、現在たくさんの不当労働行為事件として労働委員会にかかっていることは極めて残念なことでありますが、片方で、いわゆる清算事業団を解雇された労働者が千四十七名いらっしゃることも承知をしているわけであります。この人たちに対しまして、歴代の労働大臣、歴代の運輸大臣が何とか解決をしたいという大変な御努力をされてきたという経緯もありますし、労働委員会の席上におきましても、委員会の席上におきましても、歴代の労働大臣がこのことについて努力をする旨の決意を申し述べられているわけであります。  私も労働政務次官をしておりましたときに、労使の代表を呼びまして、何とかこの問題の解決の糸口を探りたいということで努力をしましたけれども、結果としてこれは実ることができませんでした。これは結果についての評価でありますから、幾ら努力をしてみてもその結果がうまくいかなかったら、それは成果と言えないのであります。  しかし、私どもは、今まで続いてきました経過を十分に踏まえまして、きょうこの席上で先生からそういう御質問を受ければ、私といたしましても、何とか安定した労使関係をつくり上げること、安全輸送に徹すること、そして国鉄改革に伴う当時の経緯からいって、今不幸にして路頭に迷っていらっしゃる皆さんの問題について何らかの解決ができないものか、これについては、結果がどうなるかわかりませんけれども、労働大臣の立場で懸命の努力をしてみたい、このように考えているわけであります。
  119. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 中労委として、東京地裁に緊急命令ということの申し立てをして、一刻も早く解決をしてもらいたいという多くの労働者がいらっしゃるということでございますので、永井労働大臣にはさらなる御努力をお願いをしたいと思います。  さて、労働安全衛生法の今回の改正ですが、職場の健康管理の充実を図った点で、職場の労働者の健康と安全を確保して、快適な職場環境を向上させるために大変評価すべきだというふうに考えております。  ところで、男女雇用機会均等法が施行されて十年たちましたが、女子労働者の健康管理はおくれているという現状がございます。特に生理休暇については、進むどころかますますとりにくくなっているということです。昨年、労働省調査されたと聞いておりますが、その概要と、なぜとりにくくなったかについて、そして今後の取り組みについてもお伺いしたいと思います。
  120. 太田芳枝

    ○太田(芳)政府委員 平成年度の女子雇用管理基本調査で生理休暇の調査をしておりますけれども、それによりますと、実際に休暇をとった女性割合は六・七%となっておりまして、この数字は前回の調査に比べてほぼ横ばいの状況にございます。また、請求者の年間平均請求回数は四・九回、平均休暇日数は一・二日ということで、これも前回調査に比べまして横ばいの状況でございます。  この措置は、先生御存じのように、労働基準法におきまして「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女子が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない。」というふうに規定されているものでございまして、それに基づくものでございますが、このような調査結果を見ますと、生理日の就業が著しく困難な者が必要に応じて取得している状況にあるというふうに考えているところでございます。  ただ、いずれにいたしましても、この法の措置趣旨にかんがみまして、生理日の就業が著しく困難な者が必要に応じて取得できますよう、法の適正な運用には努めてまいりたいというふうに思っております。
  121. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 今回の法改正では、メンタルヘルスケアにも対応するというふうに言われておりますが、ジェンダーとそれから母性保護の認識に基づく女子労働者に対する特別の配慮が不足しているというふうに私は思います。  昨年調査されました女子雇用管理基本調査の中で、職場での女性の相談体制が上司と人事担当者という事業場が圧倒的に多いわけです。こういう状態では職場でのカウンセリングは望めそうにもないと思います。生理休暇を含めて女性の体と心の健康や相談、時には上司への助言や勧告もできるといった立場は、やはり同性の医者がより適切だと考えます。  そこでお伺いしたいのですが、現在女性産業医の割合はどのぐらいで、また十分な配置になっているでしょうか。
  122. 松原亘子

    松原政府委員 女性産業医の実態については、必ずしも最新時点の調査は私どもはないのでございますけれども、平成三年に産業医学振興財団が実施をいたしました調査によりますと、女性は全産業医の約四%を占めております。  十分な配置かどうかということは、何をもって十分かというのはなかなか難しいことだと思いますし、産業医の仕事そのものが女性でなければできない、女性である方がいいというふうに言えるかどうかなどさまざまな問題がありますので、十分かどうかという評価は別といたしまして、単純に一つ比較の参考として、全体の医師の中で女性の医師がどれぐらいいるかという数字を申し上げますと、これが一一・四%でございます。これが現状数字でございます。
  123. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 そうしますと、まだまだ少ないというふうに言えるのではないかと思います。  重ねて伺いますが、女子労働者が多い事業場には女性産業医を、また、産業保健センターには必ず一人は女性を配置して、女性産業医がいない事業場の労働者も相談ができるという保障やシステムをつくるべきだと思いますが、いかがでしょうか。簡単にお答え願います。
  124. 松原亘子

    松原政府委員 現在、専属産業医の養成を目的として産業医科大学という大学が設置をされております。昭和五十三年度に設置されました。ここの卒業生の多くは専属産業医等の業務に従事しているわけでございますけれども、最近のこの大学の卒業生に占める女性割合を見ますと、約二七%になっております。設置された当時は三%程度でございましたので、女性割合も十倍ぐらいにふえてきているというような実態がございます。  そういうことから、今後、地域産業保健センターで労働者産業保健に関するさまざまの指導に当たる医師も含めまして、女性産業医への進出が相当程度進んでいくのではないかというふうに私どもも期待をいたしているわけでございます。  産業医自身の講習といったようなことも産業医に対してやっているわけでございますけれども、その中に一つ「婦人労働と健康」という講義も入っております。そういう講習の一つのテーマに入っておりまして、男性の産業医の方であっても、女性の健康の問題については十分知識を持ってやっていただいているものだというふうに期待をいたしているわけでございます。  なお、今回の法改正によりまして、新たに保健指導についての規定を入れさせていただきたいということで提案をさせていただいております。これは、健康診断の結果に基づきまして保健婦などが保健指導に当たれるように、そういった機会を提供するようにということを事業主に求める規定でございますが、必ずしも産業保健サービスというのは産業医の方だけではなくて、保健婦さんたち、また場合によっては看護婦さんたちがそういうサービスを提供するということも有効な場合があるわけでございますので、そういうものをトータルに活用いたしまして、女性労働者のための健康確保について努力をしたいというふうに考えておるところでございます。
  125. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 次の質問に移ります。  原子力発電所が稼働してからことしで二十年になりました。全国で五十基が稼働しております。何回となく繰り返されます事故と毎年行われる定期検査には、たくさんの労働者が駆り出されております。原子力安全白書によりますと、九三年三月で被曝者は三十万人を超えたそうです。  先日、電力会社の現場監督の立場で二十年働き続け、みずからも放射線の後遺症に苦しみながら原発労働者の相談を続けていらっしゃる平井憲夫さんにおいでいただきまして、生々しい現場のお話を伺いました。  現在のエネルギー社会を末端から支えておりまして、いわば彼らの犠牲の上に成り立っている原子力発電所について、その健康管理は置き去りにされているという現状を改善すべきという観点から質問をしたいと思います。  現在、労働者の被曝管理は、放射線中央管理センターの電算化で厳密に行われておりまして、許容線量を超えて作業はできないことになっているわけですが、かつては許容限度を超えるような作業が行われたこともありまして、労災の申請もされているとのことです。  そこで今後ですが、原発は老朽化しておりますから、検査が増加するでしょう。また、廃炉の作業等による後遺症や事故は避けられないと思いますが、認定の壁は厚いと言われております。労災の現状とこの点についての見解を伺いたいと思います。短くお願いします。
  126. 松原亘子

    松原政府委員 原発関係労働者の電離放射線障害に係る労災保険の請求件数は、平成年度末までに六件ございまして、そのうち三件を業務上の疾病として認定をしているところでございます。  また、現行の電離放射線障害に関する労災認定基準におきましては、急性放射線症、急性放射線皮膚障害、白血病、白内障などにつきましての、ほかにもあるのですけれども、認定の要件を定めているわけでございます。  その中で、例えば急性放射線症につきましては、数日以内の短い期間に二百五十ミリシーベルト以上の電離放射線に被曝し、被曝後数週間以内に発症したものであることということを認定の要件にいたしております。また、白血病につきましては、電離放射線被曝業務従事年数に五ミリシーベルトを乗じて得た値以上の電離放射線に被曝をし、被曝してから一年以上経過した後に発症したものであることを労災の認定要件といたしているところでございます。  電離放射線障害に係る労災請求がなされた場合には、被災労働者が過去に被曝した線量等についても的確な追跡調査を実施いたしまして、今申し上げたような認定基準に基づきまして業務上外の判断をいたしておるところであり、今後とも適正な運用をいたしていきたいというふうに考えているところでございます。
  127. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 原発労働者にとりましては、将来の健康調査を保障する健康管理手帳の適用が望まれておりまして、その要望が昨年、岩田順介護員から出されておりますけれども、この制度の厳密さから、十分な疫学調査が不足しているので難しいというふうに伺いました。これからの健康管理や治療、がんとの因果関係、こうした疫学調査は一日も早くまとまることが期待されております。  科学技術庁は、現在その調査を実施したというふうに伺っておりますが、死亡者を対象にしたのみで発病者の調査は行っていないと聞いております。事例としてはかなりの数に上るのではないかと予想されますが、今後丁寧な調査が求められると思います。方針をお聞かせください。短くお願いします。
  128. 森田健二

    ○森田説明員 御説明いたします。  先生指摘の放射線疫学調査でございますが、低線量域の放射線、少ない量の放射線の人体に与えます影響につきまして科学的な知見を得るということを目的といたしまして、平成年度から実施させていただいております。原子力発電施設等におきまして放射線業務に従事したことのある方を対象に、死因と放射線被曝との関係について統計的に解析、評価を行っているところでございます。  このような疫学調査におきまして確実なことを明らかにしてまいりますためには、長期間にわたる観察を続けることが極めて重要なことでございまして、現在も第二期ということで継続させていただいておりますが、とりあえず昨年、五年たった節目ということで中間報告を取りまとめましたところによりますと、生死が確認できました方は十一万四千九百人でございます。それらの方についての解析を行いましたところ、この低線量放射線が健康影響、特にがんに影響を及ぼしたという証拠は見られなかったというところでございます。  現在続けております平成年度からの第二期の調査におきましては、この死亡調査を着実に継続いたしますほか、最近では、例えばがんになりましても治癒するというふうなケースも増加しておりますことなどを考慮しまして、がんの罹患状況調査を行うというふうなことを目的といたしまして、ただ、これは個人のプライバシーの保護というふうなこともあったりいたしますので、こういうことにも十分配慮しながら、実現可能な調査、解析の方法があるのかどうかといったようなことから、現在検討させていただいておるところでございます。
  129. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 どんな低線量の被曝でもそれに応じたリスクが生じるわけでありまして、このリスクを社会的にどのように受け入れるかという指標が被曝線量限度ですけれども、科学技術庁は最近、ICRPの勧告を受ける方針を固めたとも聞いておりまして、これもできるだけ早くしていただきたいなというふうに思っているところです。  現場で働く労働者の安全と事故防止の観点から、何としても安全教育が非常に重要だと思いますが、現場の作業員のお話では、入所時教育では安全性ばかりが強調されているということですし、必ずしも放射線被害の正しい知識が伝わっていないというのが実情のようです。労働省はこのような実態についての認識とチェック体制、指導監督についてどのように行っているか、これも簡単にひとつお伺いしたいと思います。
  130. 露木保

    ○露木説明員 お答えいたします。  原子力発電所におきまして放射線業務に従事する労働者の被曝線量をできるだけ少なくするなどの被曝管理対策の実効を上げるためには、事業者が被曝低減化に向けて積極的に取り組むことがまず第一でございますが、労働者に放射線業務に係る必要な知識、技能等を付与するための労働衛生教育を積極的に推進することが極めて重要だと考えております。  このため、現在、労働安全衛生法におきましては、労働者を雇い入れた場合あるいは作業内容を変更したときは、その業務に関連して発生するおそれのある疾病の原因、予防等の事項につきまして安全衛生教育を行わなければならない、このようになっておりまして、放射線業務に従事する場合には放射線障害の予防等に関する教育を行わなければならない、このようになっております。  また、放射線業務に従事する労働者に対する教育の充実を図るということで、私どもでは、原子力発電所における放射線業務に係る労働衛生教育実施要領というものを策定しておりまして、この要領に基づきまして、放射線の人体に及ぼす影響でありますとか被曝管理などに関しまして、詳細な内容の教育の実施の徹底を行っているところでございますが、引き続き関係事業者に対しまして指導を行ってまいりたいと考えております。
  131. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 作業現場の健康と安全管理について、原発内部で働く労働者は、定期検査のときは大体千人から二千人というふうに言われておりまして、大体一日十人から二十人が切り傷を含めたけがをすると聞いておりますが、なかなか診療所の中できちんとした診療を利用することがないというふうに聞いています。それは、無事故の実績を大切にするということで、なかなかかかれないのだということなんですけれども、ぜひ労働環境を改善していただきたいという観点から、発電所の監督官庁であります通産省と労働者を守る立場の労働省に、それぞれ簡単にお話を伺いたいと思います。
  132. 三代真彰

    ○三代説明員 実用発電用原子炉を所管しております通産省でございます。  原子力開発利用を進めるに当たっては、安全の確保は大前提でございまして、その一環として、放射線による障害防止と作業員の安全を確保するということが非常に重要であると考えております。その観点から、通産省におきましては、放射線管理を行うとともに、被曝低減、そのような技術開発を進めております。また、電気事業者においても、法律に定められている線量当量限度を遵守することは当然のことでありまして、作業の自動化、遠隔化、水質管理、そういうことをやっておりまして、被曝量を低減する努力をしております。  近年、原子力発電所の基数はふえておりますけれども、被曝線量の総量あるいはその平均も低減傾向にございます。御指摘の診療所の使用状況については、通産省として必ずしも把握しているわけではございませんけれども、トラブルの件数に数えられるからといって入らない、そういう傾向があるということは承知してございません。  いずれにせよ、当省といたしましては、今後とも、引き続き電気事業者に対して作業員の安全確保を徹底するよう指導してまいりたいと思っております。よろしく御理解のほどをお願いいたします。
  133. 露木保

    ○露木説明員 労働省でございますが、一定限度を超えて放射性物質に汚染されるおそれのある作業に労働者を従事させる場合につきましては、現在、電離則、電離放射線障害防止規則に基づきまして、汚染を防止するために有効なもろもろの保護具あるいは手袋、履物、こういったものをその作業に従事する労働者に使用させるということになっておりまして、これらの汚染防止措置を講じなければならない、このようになっているところでございます。  また、労働者が切り傷等で放射性物質に汚染された場合につきましては、同電離則に基づきまして、速やかに医師の診察または処置を受けさせなければならない、このようなことになっておりまして、これらの措置が下請労働者を含めまして適切に実施されるよう引き続き監督指導に努めてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  134. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 安全教育とか作業環境、けがの治療体制は、労働基準監督署が抜き打ち検査を行って改善の指導、命令を出せるわけですから、ぜひこの辺のことをきちんとしていただきたいと思っております。なかなかやられていないということですので、ぜひお願いします。  最後に大臣に、こうした重層構造の中で原発労働者が私たちのエネルギーを支えているということでございますので、現場労働者の職場の改善、健康管理と保障の点からも可能な限りの積極的な取り組みをしていただきたい思いを込めて、大臣からの御決意をお伺いいたしまして、終わりにしたいと思います。
  135. 永井孝信

    永井国務大臣 初めに、抜き打ち検査のお話がございましたけれども、放射線管理という特殊な事業場でございますから、そういう面からいきますと、検査をする場合に保護衣であるとか保護具の着用など、入場に当たって必要なことがございますので、すべてを抜き打ち検査ということができないかもわかりませんけれども、できるだけその趣旨を生かして対応してまいりたい、一つはこう思っております。  さらに、原子力発電所におきます労働者の健康確保を図るためには被曝管理が極めて大事でありますから、その健康管理に必要な措置を的確に講ずることにしていきたい、このように考えます。そのために、労働省といたしましても、今申し上げましたように、臨検監督の徹底を図っていきたい、そして、関係事業者団体に対する指導や認定基準に基づいて的確な労災補償の実施等に努めてまいる所存であります。
  136. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 大変時間がオーバーしてしまいまして申しわけありません。ありがとうございました。
  137. 岡島正之

    岡島委員長 寺前巖君。
  138. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、今度の労働安全衛生法の一部改正で、産業医の活動をより強化しようという幾つかの視点について賛成です。ですけれども、今日の実態から考えるならば、もっと改善をしてほしいという要求を持っています。そこで、時間がありませんので、若干の点だけを聞いて質問にしたいと思うわけです。  この間、過労死弁護団の皆さんが四月九日の日に全国十都道府県で行われていました自殺過労死の相談を聞いてきました。記事に書いてあったのですが、こういうことを書いていました。  東京では午後三時からの受け付けとともに電話が鳴りだし、三台の臨時電話はすぐにふさがりました。   入社翌年で自殺したという証券マンの遺族、月百二十時間におよぶ残業で自殺した二十二歳の食品会社の青年労働者、本社の商品開発部で深夜までの残業が続き自殺した自動車メーカーの社員……、こんなケースが次つぎと飛び込んできたのです。息子の書いた遺書をもとに「疲れたと遺書にあった。午前一時、二時まで働き、休みがなかった」 そういう電話が次々と母親たちからも入ってきた。   この日の相談は、実際に死亡したケースが十八件、自殺未遂が四件、自殺が心配という予防相談が十五件、あわせて三十七件を数えました。「過労死一一〇番」に九五年六月までの五年間によせられた自殺過労死の相談は五十二件です。その半分近い二十二件の死亡相談が、一日の相談で持ち込まれたことになります。 大変な事態が今進行しているなということを感ずるわけです。  一方、日立製作所で労働者たちが懇談会を組織して、毎年、自殺、急死が多いといって社内の死亡実態調査しています。  九四、九五の二年間につかんだ自殺は十四件になります。二カ月に一件の自殺が発生したことになります。「研修員論文の発表直前に寮の屋上から投身」「工場の煙突から飛び降り」「設計職場でノイローゼぎみになり教育センターに配属後、まもなく排気ガスをすって自殺」 業務が絡んだ自殺が、こうやって次々とそこの整理されたものを見ていますと書いています。これだけの自殺の過労死という問題が起こっているときに、それでは労災として認定を受けた人はどれだけおるでしょうか。
  139. 松原亘子

    松原政府委員 これまで自殺をされた方で労災認定された件数は、二件でございます。
  140. 寺前巖

    ○寺前委員 そうすると、一つ会社実態でもああいうことになっている、あるいは自殺過労死の相談日を設けて電話を設置したらこういう姿になってきていることを考えたときに、それでは改善をしなければならない労災上の問題があるのではないだろうかということを感ぜざるを得ません。  そこで、本を読んでおりましたら、こういうことを弁護士さんが言っています。   労災保険法は「労働者が、故意に負傷、疾病、障害若しくは死亡又はその直接の原因となった事故を生じさせたときは、政府は保険給付を行わない」とあります。 これをせまく解釈するところの通達が出ている。  このなかで、長時間労働などによって本人が自殺の前に「精神異常」かつ「心神喪失の状態」になっていたかどうかを、認定判断の基準においたのです。   自殺は「故意」だから業務とは関係ない、というのが労働省基本的態度です。かりに「故意」でないようなケースでも、自殺の前に、精神障害による心神喪失の状態が認められなければ「故意」の自殺だという理由で、労災にされません。   精神障害にいたる前に、精神的重圧、過労が引き金になって発作的に自殺するケースは珍しくありません。こうしたケースは最初から除外されているのです。さらに自殺の前に、うつ病などの精神障害にかかっていたかどうかの認定基準が極端にきびしく、遺族の間で、強い批判がおきています。 云々と書いています。  そこでお聞きしますが、余りにも少ない労災認定と余りにもひどい社会状況からの相談が持ち込まれているというこの関係を見たときに、労災の認定基準の改善を図らなければならないという問題点に今直面をしているのじゃないでしょうか。その点についてどういうふうにお考えになっていますか。
  141. 永井孝信

    永井国務大臣 先生指摘のように、最近は自殺事件というのが随分とふえてまいっているというふうに承知をいたしております。非常に心の痛む思いであります。  今先生が御指摘になりましたように、労災保険法では、労働者がみずからの意思に基づいて自殺した場合には、保険給付は行わないということになっているわけであります。ただし、労働者業務に起因して精神異常または心神喪失の状態に陥り、その結果として正常な意思能力を欠如した状態のもとでみずから死を招いた場合には、業務上の災害として保険給付を行うことができるとなっておりまして、今局長が答弁いたしましたように、労災保険法を適用いたしまして、現在まで認定されたのは二件という非常に少ない数でございます。  なお、業務に起因して自殺前に精神異常または心神喪失の状態に陥っていたか否かにつきましては、死に至る前に精神障害等の診断がない場合でありましても、可能な限りの調査を尽くすことにいたしておりまして、専門医の意見を重視しながらこれからも判断をしてまいりたい、こう思っているわけであります。  そのことを通しまして、今後とも適正な労災保険の給付に努めてまいる所存でございますが、まずはその前提条件として、何よりも、過労死につながるような、あるいは精神的な負担が重くのしかかってくるようなそういう業務をできるだけ排除すること、むしろ、職場におきましても、家庭に帰りましても、そういう面では解放感に浸れるような、ゆとりを持つような仕組みをつくられること、これがまず大前提だと思っておりますので、その面も積極的に進めながら、今申し上げましたように、十分な対応ができ得るように私どもとしては考えてまいりたい。  今直ちに労災認定基準を改正するというところまで至っておりませんけれども、先生の御意見というものは十分に受けとめておきたいと思います。
  142. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、時間がありませんので、端的にだけ申し上げます。  平成六年三月に、人事院が疲労の蓄積と脳・心臓疾患に関する研究会報告というのを出しています。私は、これを読んで非常に感銘を深くしているわけです。特に、十ページのところにこういうことが書いてあるのです。問診が疾病発見に主眼が置かれてしまう。健康診断の第一歩として保健指導にまでつながる重要な要素を持っているのにもかかわらず、問診がそういう位置づけになっている。だから、そうではなくして、疲労に関する項目を問診票に設定をして、そして職員の疲労状況や疲労要因を点検することが重要だということが書いてある。  そこで、担当している課長さんにお聞きをしたら、政府部内において、独自の問診票をつくって積極的にそういう側面を引き出そうということをやっている省庁は三省庁だ。健康診断の問診票をどこかの会社、団体などでつくっておられるものを利用させていただいてやっておられるところも二省庁ある。全くそういうことはやっていないという省庁が三省庁ある。まだ一省庁は返事が来ません。  それほどまでに疲労の蓄積問題を重視しなかったならば、公務員の災害の場合だって、六件とか何件とか、これは民間の労災認定よりもまだ数多くしているけれども、一番肝心なところはここじゃないだろうかということの指摘を人事院でやっているわけです。  私は、この視点を労災の分野においても積極的に取り上げないといかぬのじゃないだろうか。要するに、疾病発見に主眼を置くような健康診断をやっているだけではだめなのじゃないか。積極的に、過労死、自殺する、そういう要因を持っている方向を引き出すために、問診票というのは別な角度から検討を要するのじゃないだろうかという問題をこの人事院の提起から感じました。これが聞きたい一つです。  それからもう一つは、同じく一九九五年二月に、日本産業衛生学会の「職場の循環器疾患とその対策」という長い文章のものが出ています。  これを見ますと、要するに、今大臣もおっしゃっていましたけれども、長時間労働についての指摘が書いてあります。幾つかの内容がありますが、月五十時間以上の残業、週六十時間にわたる長時間労働は原則として禁止したらどうなのか、あるいは、バスなどの長時間労働を原則として禁止するという問題を考えなかったら、過労死問題というのは解決がつかないよというような内容の指摘があります。  これを労働行政の中にどういうふうに生かしていこうとしておられるのか、これが第二点のお聞きをしたい点です。  第三点は、今度の産業医の強化の問題があるけれども、いろいろな勧告権を与えるような方向が出てきています。だけれども、産業医自身が職場を巡視するということを保障してやるとか、あるいは資料を経営者からとることができるという問題を積極的にやらなかったら、先ほどの質問にあったように、産業医という名前がついて、何かやっているという程度の水準にしかならないのじゃないだろうか。もっと積極的に職場を直接見ることができるように、必要な資料を積極的にとることができるように、そういう立場を保障する、労働省の行政としてそういう指導を取り上げることが必要じゃないか。これが三点です。  四点目に、先ほども質問がありましたが、五十人未満の方が有所見率が非常に高うございます。そういうことから考えても、個々の分野について、例えば、先ほど要望事項として出されておりました有害な物質を扱う、少なくともそういう分野に対しては積極的にすぐ取り組んだらどうだろうかということで、そういう内容を含めて、小企業対策としては、国が一定の助成をもっと積極的にやるべきではないのだろうか。そういうことを検討しなかったら、やはり力のない中小零細な業界の労働者保護というのは難しいのじゃないか、そういう点を私は感じました。  以上、四点についてお聞きをしたいと思います。
  143. 松原亘子

    松原政府委員 四点のうち、最初の三点は私の方からお答えをさせていただきたいと思います。  まず、健康診断についての問診の関係でございますけれども、現在、安全衛生法及び安全衛生規則に基づきまして、一般健康診断の検査項目の中に、既往歴ですとか業務歴の調査、自覚症状及び他覚症状の有無の検査といったことが含まれているわけでございます。したがいまして、こういう中で、労働者の疲労状況や疲労の要因等についても、医師の問診等を通じて把握されているものというふうに考えているわけでございます。  また、今回の法改正の中に、「健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に対し、医師、保健婦又は保健士による保健指導を行うように努めなければならない。」という規定を置かせていただいておりますけれども、こういったことによりまして、疲労蓄積、それに基づくさまざまな症状の危険が察せられるような労働者については、保健指導の中でも十分対応できるというふうに考えているわけでございます。  いずれにいたしましても、労働者の疲労状況を的確に把握しまして健康管理を行うということは、労働者の健康確保を図るという上で極めて重要なことだというふうに考えておりますので、こういったことについて関係者に十分周知を図りたいというふうに考えております。  二番目に御指摘がございました、日本産業衛生学会の中に設けられました循環器疾患の作業関連要因検討委員報告の中で指摘されましたことについてでございますけれども、私どもも、過長で恒常的な時間外労働というのは抑制していかなければいけないというふうに考えているわけでございます。こういうことから、労働省としましては、時間外労働の適正化指針というのをつくって、過長で恒常的な時間外労働がないようにということで、その抑制に努めているわけでございます。  また、御指摘ございましたバスやタクシー、トラックといったような運転者の方につきましては、さらに改善基準というものを告示で示しておりまして、自動車運転者の長時間労働の改善が図られるようにということで指導啓発等に努めているわけでございます。  一方、この報告は、一定時間以上の時間外労働を禁止するということが提言をされておりますけれども、時間外労働、休日労働が我が国の雇用慣行の中でどういう役割を果たしているかということを考えますと、ある意味では雇用調整機能を有しているという面もある。したがって、雇用の安定に一定の役割を果たしているという面もあることから、ある程度の弾力性を付与する必要があるということがあろうかと思います。そういうことから、時間外労働、休日労働の上限については労使協定の定めるところにゆだねているわけでございまして、一定時間以上の残業を法律をもって禁止するというやり方は適当ではないというふうに考えているわけでございます。  恒常的な長時間労働が行われることのないようにということは極めて重要な点でございますので、四月の初め、日経連に対しまして、労働時間が過重なものとならないよう所定外労働の削減を図るといったこととか、サービス残業等が行われることのないよう適正な労働時間管理についての要請を行ったわけでございますし、地方労働基準局に対しましても、この点について遺漏なきようちゃんとやるようにという指示をしたところでございます。今後とも、適正な労働時間管理の実施には努めていきたいというふうに考えているところでございます。  三点目の産業医活動の点でございますけれども、産業医の方々は、現行法制によりましても、毎月一回作業場を巡視しなければいけないということになっております。その作業場の巡視等につきましては、事業者産業医に対し、職場巡視等をなし得る権限を与えなければいけないということが規定をされているわけでございます。  そういうことから、この趣旨が十分生かされるよう必要な場合には指導をしていきたいというふうに考えておりまして、その趣旨にのっとった活動が産業医の方にやっていただけるようにしていきたいというふうに考えているわけでございます。  また、健康診断結果に基づく事後措置について医師の意見を聞くということにしておりまして、この医師というのは産業医であることが最も適当でございますが、その事後措置についての意見を言う場合にありましても、必要な資料が提供されるということは必要でございますので、今後、事後措置についての指針をつくっていきたいと思っておりますが、それにおきましても、必要な資料の提供についても具体的に記述をするなど、検討いたしたいというふうに考えております。
  144. 永井孝信

    永井国務大臣 四点目の御質問でございますが、本来、すべての事業場において、その状況に応じまして必要な産業保健サービスが提供されることが重要であります。そのことが達成されまして初めて労働福祉の達成ができたというふうに言えると思うのでありまして、その立場に立ってこれからも対応してまいります。  とりわけ、今回の産業医の選任義務のない小規模の事業場におきましても、労働者の健康管理等の実施についての事業者の努力や、これに対する国の援助を新たに盛り込んだところでありまして、これを実効あらしめるために最大限の努力をいたしてまいります。
  145. 寺前巖

    ○寺前委員 どうもありがとうございました。
  146. 岡島正之

    岡島委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  147. 岡島正之

    岡島委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  労働安全衛生法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  148. 岡島正之

    岡島委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  149. 岡島正之

    岡島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  150. 岡島正之

    岡島委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時十五分散会      ————◇—————