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寺前委員 ずっと十年たって今
考えてみたときに、今度の
法律でさらに全面的に
派遣労働者を法的に保障していくという
やり方の道が、
労働者の権利を守ってやるという立場から見ることができないように感ずるのです。問題提起をされた点については、私は真摯に検討すべきだというふうに思うということを申し上げておきたいと思います。
それでは第二の問題です。
映画演劇関連産業労組共闘
会議と舞台美術労働組合協議会が
大臣に出した要請書です。これは昨年の暮れです。これを見まするとこういうことが書いてあります。
テレビキイ局の美術の八割以上が舞美労協関連の美術
会社で製作され、これら各社の
従業員によって局および関連のスタジオで建て込み(配置)作業やバラシ(撤収)作業が行われています。
現在、
中央職業安定審議会で進められている
労働者派遣事業制度の見直しのなかで、「放送番組等に係わる大道具及び小道具の
業務」を加えようとされていますが、これはテレビと美術の現場の実情を全く無視した判断であり、テレビ放送
業務に大きな混乱をもたらすものなので撤回されるよう要請します。
そこには誤った
認識があるということが書いてあります。そして、その後に、
テレビの大道具、小道具は、テレビ局から請負契約で美術
会社に「道具帳」という形式で発注され美術
会社の責任で製作されます。テレビ局が
労働者を直接雇用して大道具や小道具を製作することはありません。従ってテレビ美術の製作部門の
労働者がテレビ局を
派遣先として雇用されることもあり得ないのです。また、テレビ美術を担当している各社は演劇美術を本業としている
企業であることから、その製作
技術のノウハウは伝統的に
企業内に蓄積され、人材の育成も
企業の責任で行われてきたため、フリーの製作スタッフは皆無に等しく、従って、これらの美術
会社を
派遣先としての
派遣労働も現状では成立しません。このように「中間整理」が
派遣対象業務に大道具、小道具の「製作」
業務をふくめたことはナンセンスとしかいいようがありません。
ということを
一つは提起しております。
それからもう
一つは、
テレビ局から発注された大道具や小道具は「道具帳」に基づいて美術
会社の工場で製作され局に搬入されます。搬入された道具は「道具帳」に基づいて美術
会社の責任者の指示の下で建て込みされます。ディレクター等テレビ局側の指示は、建て込みや飾り込みに従事する
労働者に対して直接出されるのでなく、美術
会社の責任者をとおして出されるのです。テレビ番組が収録された後のバラシ作業にいたっては局側の立ち会いさえもない作業です。このようにテレビ局の大道具、小道具の
業務は、基本的には番組収録の前と後の作業であり「放送機器等の操作」や「放送番組等の演出」の
業務のように収録作業そのものに参加するわけではありません。美術の「操作」とよばれるテレビ局で働く大道具、小道具の
労働者は、美術
会社の
常用労働者としてテレビ局に常駐し、どの番組であれ、建て込み作業や撤収作業に従事するのです。従って「中間整理」が「
需給調整システムとしての必要性」として述べている「第一号の四の
業務とその必要性及び
就業期間が類似している…」という
認識は全くの間違いです。美術
会社が番組ごとの担当者としてつける一人乃至三人の「番組付」といわれる
業務は、一見、直接局側の指示の下での
業務のように見えますが、この
業務は美術
会社の営業係を兼ねるため美術
会社の社員が担当しています。
以上の労働関係から見て、テレビ局の大道具、小道具の
業務をテレビ局を
派遣先とする
労働者派遣を実施することは事実上不可能です。
こういうふうに事実の
認識についての誤りを具体的に
指摘しています。
そこで私は聞きたいのです。
こういう検討がされてきているわけですけれ
ども、現に中間の段階の整理までされてきたわけですが、少なくとも民放連なりテレビ局、美術
会社あるいは関係する労働組合に対して、ヒアリング等で
実態を把握するということが必要ではないのだろうか、これが
一つです。
それからもう
一つは、現実に
派遣労働を問題にするというのは、現にそういう事態があるのか、
派遣労働者という問題が現に存在しておって、したがってこういう
方向を
考えようというふうにしているのか。事実の
認識が違うという
指摘がある以上は、私はそこをはっきりしていただきたいということを提起したいと思うのです。