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1996-06-05 第136回国会 衆議院 労働委員会 第6号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    平成八年六月五日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 岡島 正之君    理事 大野 功統君 理事 森  英介君    理事 若林 正俊君 理事 上田  勇君    理事 河上 覃雄君 理事 北橋 健治君    理事 池田 隆一君 理事 金田 誠一君       粕谷  茂君    木部 佳昭君       田澤 吉郎君    長勢 甚遠君       藤尾 正行君    二田 孝治君       谷津 義男君    江田 五月君       須藤  浩君    西村 眞悟君       桝屋 敬悟君    柳田  稔君       岩田 順介君    岡崎トミ子君       三原 朝彦君    寺前  巖君  出席国務大臣         労 働 大 臣 永井 孝信君  出席政府委員         労働大臣官房長 渡邊  信君         労働省婦人局長 太田 芳枝君         労働省職業安定         局長      征矢 紀臣君  委員外出席者         厚生省健康政策         局総務課長   石本 宏昭君         厚生省健康政策         局看護課長   久常 節子君         厚生省社会・援         護局施設人材課         長       柴田 雅人君         厚生省老人保健         福祉局老人福祉         計画課長    吉冨 宣夫君         厚生省保険局医         療課長     下田 智久君         労働委員会調査         室長      松原 重順君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十四日  辞任         補欠選任   須藤  浩君     笹山 登生君   柳田  稔君     米沢  隆君   寺前  巖君     志位 和夫君 同日  辞任         補欠選任   笹山 登生君     須藤  浩君   米沢  隆君     柳田  稔君   志位 和夫君     寺前  巖君 同月十五日  辞任         補欠選任   寺前  巖君     志位 和夫君 同月十七日  辞任         補欠選任   柳田  稔君     愛知 和男君 同日  辞任         補欠選任   愛知 和男君     柳田  稔君 同月二十四日  辞任         補欠選任   江田 五月君     阿部 昭吾君   三原 朝彦君     渡海紀三朗君 同日  辞任         補欠選任   阿部 昭吾君     江田 五月君   渡海紀三朗君     三原 朝彦君 同月二十八日  辞任         補欠選任   松岡滿壽男君     吉田  治君   岡崎トミ子君     松本  龍君 同日  辞任         補欠選任   松本  龍君     岡崎トミ子君 同月三十一日  辞任         補欠選任   須藤  浩君     月原 茂皓君 同日  辞任         補欠選任   月原 茂皓君     須藤  浩君 六月五日  辞任         補欠選任   宮里 松正君     谷津 義男君   吉田  治君     西村 眞悟君   志位 和夫君     寺前  巖君 同日  辞任         補欠選任   谷津 義男君     宮里 松正君   西村 眞悟君     吉田  治君     ――――――――――――― 五月三十一日  労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労  働者就業条件整備等に関する法律等の一部  を改正する法律案内閣提出第六六号)(参議  院送付)  労働安全衛生法の一部を改正する法律案内閣  提出第七二号)(参議院送付) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 六月四日  解雇規制雇用保障に関する陳情書  (第三二七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労  働者就業条件整備等に関する法律等の一部  を改正する法律案内閣提出第六六号)(参議  院送付)      ――――◇―――――
  2. 岡島委員長(岡島正之)

    岡島委員長 これより会議を開きます。  内閣提出参議院送付労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案議題とし、趣旨説明を聴取いたします。永井労働大臣。     —————————————  労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 永井国務大臣(永井孝信)

    永井国務大臣 ただいま議題となりました労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  労働者派遣事業制度は、昭和六十一年の労働者派遣法施行以来十年目を迎え、新たな労働力需給調整システムとして着実に定着してまいりました。しかしながら、この間、経済社会情勢変化等に伴い、労働者派遣事業に対する新たなニーズが生じる一方、我が国経済長期不況経験する中で、派遣労働者保護等観点から、種々の問題点指摘されているところであります。  このような状況背景に、中央職業安定審議会において、一昨年来、労働者派遣事業制度あり方について御検討いただいてきたところ、昨年末、同審議会より、同制度の改善についての御建議をいただいたところであります。  政府といたしましては、同建議を踏まえ、派遣労働者の適正な就業条件確保等を図るための措置及び育児休業等取得者業務について行われる労働者派遣事業特例措置を講ずること等を内容とする法律案を作成し、関係審議会全会一致の答申をいただき、ここに提出した次第であります。  次に、この法律案内容につきまして、概要を御説明申し上げます。  第一に、派遣労働者就業条件確保を図るため、労働者派遣契約の解除及び適切な苦情処理に係る措置充実等を図るとともに、派遣事業主及び派遣先が講ずべき措置に関する指針を公表することといたしております。  第二に、派遣先における派遣就業適正化を図るため、派遣先は、適用対象業務以外の業務派遣就業させてはならないこと等を明確化するとともに、不適正な派遣就業を是正するための勧告公表等措置を設けることといたしております。  第三に、手続簡素化等を図るため、一般労働者派遣事業許可更新を受けた場合における許可有効期間を延長するとともに、事業対象業務の種類を減ずる場合の手続等を簡素化することといたしております。  第四に、育児休業または介護休業取得者代替要員の円滑な確保を図るため、育児休業等を取得する労働者業務について行われる労働者派遣事業は、港湾運送業務建設業務その他政令で定める業務以外の業務について行うことができるものとする特例措置を講ずることといたしております。  なお、この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することといたしております。  以上、この法律案提案理由及び内容概要につきまして御説明申し上げました。  何とぞ御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  4. 岡島委員長(岡島正之)

    岡島委員長 以上で趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 岡島委員長(岡島正之)

    岡島委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大野功統君。
  6. 大野(功)委員(大野功統)

    大野(功)委員 おはようございます。自民党の大野功統でございます。  ただいま永井労働大臣から趣旨説明のございました労働者派遣法等の一部を改正する法律案審議に当たりまして、私は、まず基本的な問題点についてお伺いしたい。  と申しますのは、最近、派遣労働者の数が大変勢いよく伸びているわけであります。派遣労働者パートタイムで働いていらっしゃる方はもちろん違いますけれどもパートタイム考えてみましても、パートタイムで働いていらっしゃる方も数がどんどんふえている。このことは、一方において価値観多様化しておりますから、好きなときに働きたい、好きなときに好きな仕事で働きたい、こういうことが実現できれば、働く者にとっては大変理想的なことであります。  ところが、コストを安くするためにパートタイムとして雇っていこう、あるいは不況対策といいますか、景気調整弁としてパートタイムで働いてもらおう、こういうことであると大変困るわけでありまして、その辺は何年か前にパートタイム労働法をつくりました。そのことは労働大臣十分御存じでございますけれどもパートタイムといえ、それから派遣労働者の問題といえ、私は、新しい働く者のニーズに沿った動きだとは思っています。  しかし、それだけにいろいろな問題を惹起するのではないか。例えば会社にとっても、雇用関係を結ぶという煩わしさから逃れることはできる、しかもコストも安くなっているのかもしれない。いろいろな問題がありますけれども、じゃ一体問題が起こったときに責任はだれが持つのか、こういうような問題も起こってくるわけであります。  いずれにしましても、必要なときに必要な労働者を雇用できるわけですから、会社にとっても便利な、大変いい制度だと思いますし、それから働く者にとっても、働きたいときに働くことができるという、価値観多様化時代に大変適した制度だと思います。そういうことを考えますと、余りこの制度が乱用されるのも好ましくないという面があるけれども、やはりすぐれた制度ですから、どんどん政府としても、行政としても伸ばしていかなければいけない制度だと思います。  そういう意味で基本的にお伺いしたいのですが、一体私のような理解でいいのか。大臣は、なぜこの派遣労働者というのはふえていっているのか、この点の背景認識について第一にお伺いしたいと思います。  それから、今も申しましたけれども、まさに両方のニーズを合致させたものである。しかし、そこにはいろいろな問題が起こってまいります。そういう点についてはどういう御認識をお持ちなんでしょうか。  いずれにしましても、景気調整とかコストの低減とか、余りその面が強調されるのは私はよくないと思いますので、その辺をチェックするためにどのようにお考えになっているのか、まずその三つの問題点についてお伺いしたいと思います。
  7. 永井国務大臣(永井孝信)

    永井国務大臣 今、大野先生から御指摘いただきましたように、産業構造のいろいろな変革に伴いまして、労働者派遣事業というものがかなり大きなウエートを占めてきていることは事実であります。  また、労働者、働く側からいいまして、自分知識であるとかあるいは技術経験を生かして、自分都合のよい日に、あるいは都合のよい時間帯に働くことを希望するという人たちがふえてきていることも、これまた事実であります。他方、雇い入れる企業側におきましては、技術革新の進展などによりまして、専門的な知識あるいは技術経験を必要とする業務を処理するための労働力を必要なときに迅速に確保したい、こういうニーズが強まっていることも、これまた事実であります。  その双方がマッチをいたしましてこの派遣事業というのが随分と広がってきたと思うのでありますが、この労働者派遣事業は、このような労働力需給両面におけるニーズ多様化、こういうものに対応する新たな労働力需給調整システムとして昭和六十一年に制度化されたものであります。これは先生指摘のとおりであります。  このように労働者派遣事業は、いろいろなニーズ、働く側もあるいは雇用する側も、それぞれ持っているニーズにこたえることができるというメリットは持っておりますが、その一方で、先生が御指摘になっておりますように、労働者保護という観点、こういう面から見ると、野放しにすることはできない多くの心配される問題点も持っているわけであります。とりわけ我が国におきます雇用慣行との調和の観点という面から見ますと、確かに弊害が生ずるおそれがあります。したがって、こうした点にも十分に留意をしながら、事業の適正な運営確保等を図っていく必要があるというふうに認識しております。  だからこそ、最前趣旨説明で申し上げましたように、そういう問題が起きないように、就業規則あり方とか、あるいは勧告、あるいは場合によっては問題の起きるところは公表するなどの措置も片方でとりながら、きちっとした対応をして問題のないようにしていきたい。もともとこの労働者派遣事業そのものも、派遣される労働者保護という観点を重視をして私どもは全力を尽くして対応してまいりたい、このように考えておるわけであります。
  8. 大野(功)委員(大野功統)

    大野(功)委員 今の労働大臣の御答弁で私は二つのことを思ったのでありますが、一つは、確かに専門的な知識を持った方、その専門的な知識を必要とする企業がそういう知識を有効に生かしていく、こういう御説明でありましたけれども、それはそういう専門分野だけに限っていいのだろうかどうだろうか、こういう業種限定の問題であります。  それからもう一つは、実際に好きなとき好きな時間に好きなだけ働きたいという人の専門的技術を生かすということであればいいのですが、そういう建前のもとに、本当は常用雇用として雇ってもらいたい人が、実はこういう美名というか建前のもとにいつまでも派遣労働者でいなければいけない、こういうことにはなっていないのだろうか。  こういう二つのことをふと思ったのでありますが、まず後者の、実は仕方がないから派遣労働をしているのだ、本当は常用労働者になりたいのだ、こういう人が私はいるのだと思いますけれども、その辺の御認識はいかがですか。  それから、あと専門的な業種に限るという問題は、また後ほど質問させていただきます。
  9. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 ただいま御指摘の、本来的には常用労働者を希望するにもかかわらず、やむを得ず派遣労働という形で自分の専門的な知識技能経験を生かしている方がおるのではないかという点についてでございますが、恐らくそういう方も、特にこういう雇用情勢の厳しい時期におきましてはおられるというふうに考えております。これは統計的な把握はなかなか難しいわけでございますが、いずれにいたしましても、そういう方については、私どもとしては、本来の希望する仕事につけるように職業紹介、あっせんに努力しなければならない、そういう課題であろうというふうに考えているところでございます。  それから、もう一つあり方としまして、そういう専門的な知識技術経験を要する業務、そういうものに限定して労働者派遣を行うことについて、もう少しその辺を外した方が希望需給にマッチするのではないか、こういう御意見でございますが、この点について、現在の我が国労働者派遣法につきましては、御承知のように、そういう専門的な知識経験を有する、そういう必要のある業務について、それを対象業務としまして派遣を認める、ただし、派遣期間については、そういう意味では専門性を持った業務ですから、期間はある程度期間契約更新もできる、こういう仕組みでございます。  ただ、御指摘のように、もう少しその辺の対象業務限定をせずに広く認めるという考え方もございますが、この点につきましては、一方で派遣期間は、臨時的な業務ということで短期間というような形の仕組みでございまして、この辺をどうするかにつきましては、これは十分関係者意見を聞きながら検討しなければならない課題であろうというふうに考えております。
  10. 大野(功)委員(大野功統)

    大野(功)委員 まさに今御指摘を申し上げ、そしてまた局長から御答弁のあったこの二点、私はこの二点がこの問題の根本的な問題点だと思っているのです。  まず、業種の問題から始めますと、外国の例で見ると、どうもそう業種を限っている国はないのですね。例えばフランスでありますが、単に代替要員あるいは企業業務量の一時的変化への対応、あるいは本来的に一時的な労務のニーズ、こういう三事由限定している、こういうことであります。  またアメリカの場合でも、景気変動への対応あるいは一時的需要への対応で、業種を全然絞っていないのですね。それからドイツの場合では、有給休暇病気休暇あるいは産前休暇等を取得した従業員の補充、こういうふうになっている。景気季節変動に対する調整という項目もあります。わずかに専門的知識の外部からの導入の手段、こういう位置づけもちょっと顔を出していますけれども、大体において一時的なニーズ対応するために派遣労働者というのがあるんだ、こういうふうな認識であるわけですね。  最近、日本の場合も、例えば高齢者につきましては、業種でなくて高齢者という側面に着目をして、高齢者であれば業種は問わない、こういう方向になりました。これは本当にいい方向だと私は思っております。また、今の改正法の中でも、育児休業等あるいはまた家族介護を行う労働者代替要員はもう業種は問わない、これはまさに正しい方向だと私は思っています。  にもかかわらず、昭和六十一年七月の労働者派遣法施行以来十年間、この理由専門的知識技能を要する業種というふうに限ってやっている、あるいは特別な管理が必要な業種というふうに言っている。しかも十六業種に限ってきた。私は、これは今の日本経済実態に照らして少しおかしいのじゃないか、もっともっと現実のニーズを把握して、業種という側面ではなくて、今申し上げました諸外国の例にもありますように、高齢者あるいは家族介護、こういう側面に着目していくべきではないかというふうに思うわけであります。  したがって、まず第一に、業種限定で、今回業種を広げますけれども、そういうやり方はおかしいのじゃないか、もっともっと国民のニーズに合致した派遣法ということでやっていくべきではなかろうか、このように思います。その点について、まず大ざっぱな話はいただきましたけれども、もう少しピンポイントにコメントをいただきたいと思います。  したがいまして、現在の法律はこれでよしとしても、近い将来必ずそういうような実態に応じたやり方派遣労働法というのを考えていくべきではなかろうか、このように思う次第でございますが、この二点につきまして御回答をちょうだいしたいと思います。
  11. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 現在の労働者派遣法昭和六十一年に制度として出発したわけでございます。この考え方につきましては、制度発足当時いろいろな御意見もあったわけでございますが、ただいまもお話がありましたように、専門性というものに着目して一定の対象業務限定して、そのかわり派遣期間は長期間にわたることを可能とする、こういう仕組みで運用されているわけでございます。  ただし、その後の情勢変化等を踏まえまして、高齢者に係る労働者派遣特例、あるいは今回の改正法案でお願いしております育児休業介護休業等についての特例制度、そういう形での特例もあわせてお願いしているわけでございますが、これにつきましては、考え方としては、例えば育児休業等につきましては、これは事由がはっきりしておりまして、かつ期間も一年間ということではっきりしている。そういうことで、この考え方というのは、ただいま先生も御指摘ありましたように、外国において一般的に行われております派遣考え方と通ずるものがあるかと思います。  そういうことで、いわば折衷的に、現在の制度については、日本的な考え方専門性というものを原則としながら必要に応じて特例制度として新しく対処している、こういうことでございます。  今回については、あわせまして、この対象専門業務につきましても、各界からの要望も踏まえまして、少なくとも経済社会情勢変化に伴う労働者派遣事業に対する主要なニーズに的確に対応するという観点から、十二の業務について追加することを考えているところでございます。  ただ、今後、このあり方について、ただいま先生指摘のような御議論もあるわけでございますが、その辺につきましては少なくとも現行の法律を抜本的に変える話になるわけでございます。したがって、この点をどうするかにつきましては、政府といたしまして、三月に改定いたしました規制緩和推進計画に基づきまして、労働者派遣事業あり方について、この法律の成立後、また引き続き本年度内に関係審議会で検討していただく、こういう予定にいたしておるところでございます。
  12. 大野(功)委員(大野功統)

    大野(功)委員 業種限定という考え方を当面維持するというお考えでございますけれども、私、先ほどからたびたび申し上げております、人生の価値観が変わった、どんな仕事であれ働きたいときに働く、その需要に応じて、そういうニーズに応じて行政あるいは政治対応していくのは当然ではないか、このように思っております。ぜひとも将来、業種限定するという考え方にとらわれることなく、やはり一時的な、例えば産休あるいは家族介護あるいは高齢者という点に着目する、そういう意味では労働省もうんと進歩しているわけでありますが、そういう意味での労働者派遣ということを考えていただきたいと思います。  それから、専門的な知識が必要である、だから業種を限るけれども、そのかわりに派遣期間は長期間考えているのだというようなお話がありました。そういう考え方自体に少し問題があるのではなかろうか、私はこのように思っているものであります。つまり、冒頭にも申し上げましたけれども、問題は、これは常用雇用を阻害するものであってはならない。本当に短期的な、一時的な企業側ニーズ対応する制度でなければ私はおかしいと思うのであります。  そういう意味で、期間はできる限り短い方がいいのではないかと思っているのです。日本の場合は、期間は一年、これは三回まで三年間更新してもいい。三年間派遣労働で同じ企業に雇われているということは、まさにこれは常用雇用の変形ですよ。隠れみのになっているわけですね。そういう隠れみのを排除していくことがまさに政治がやらなければいけないことではなかろうかと思うのであります。  ちなみに、外国ではどのぐらいの期間でやっているのか、日本では実際に派遣労働者が同じ企業平均どのぐらいの期間勤めているのか、調査があればちょっと教えてください。
  13. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 派遣期間の問題でございます。  例えばフランスアメリカにおきましては、私どもが承知しておりますのは、平均就業期間が約二週間程度、あるいはドイツでは、就業期間が三カ月未満の者が六割というような状況であるようでございます。  我が国におきましては、平成七年の労働者派遣事業実態調査によりますと、派遣労働者の現在の派遣先事業所におきます派遣期間につきましては、一年以上というものが三八%と最も多くなっております。一年未満が二四・八%、ちょうど一年というのが一七・九%。一年以上が合わせますと五六%程度ということになっております。
  14. 大野(功)委員(大野功統)

    大野(功)委員 今の例で見ましても、外国派遣労働という制度に対する考え方日本派遣労働に対する考え方がちょっと違うのですね。ちょっとどころか大いに違う。日本の場合は、業種を限って、しかも長くしている。外国の場合は、一時的な、それは不況対策不況調整という面もあります、いろいろな面があるけれども非常に短期間である。フランスとかアメリカでわずか二週間程度である。ドイツにしても三カ月というのが六〇%を占めている。ところが日本の場合は、一年以上というのは三八%とおっしゃったと思いますが、期間がそういうふうに長くなっているというのはやはり常用雇用を阻害しているのではないか、こういう感じが私はしてなりません。  期間の問題について、例えば今は一年ということが原則であるけれども、三回更新できる、こういう制度考え直してみる御方針はありませんか。
  15. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 御指摘のように、我が国労働者派遣事業制度につきましては、諸外国の例に見られるような形と異なっております。専門的、技術的な業務について期間をそういう意味では長く、こういうことでございます。この点につきましては、派遣労働者の方についての雇用の安定という面からいきますと、二週間とか三カ月とかいうのに比べますと、専門的、技術的な水準を持った方についての仕事としてはより雇用の安定性が高い、こういうことでございます。  そういう観点から我が国の現在の制度は運用されているわけでございますが、これが御指摘のように一般的に常用労働者の代替促進になってはまずい、こういうことから、その点についても別途そういうふうにならないようにというような制度の運用がされているところでございます。ただし、制度あり方として、再々御指摘ありますような考え方というものもあるわけでございますが、現状の我が国派遣法考え方からいきますと抜本的にこの考え方を変える話になりますので、現在お願いしております法案につきましては、従来の法律の改正案ということでございます。  ただし、経済社会情勢変化に応じた点については、高齢者特例あるいは今回の育児・介護休業の特例というような形で、特例制度としてこの中に盛り込んでお願いしている、こういうことでございます。
  16. 大野(功)委員(大野功統)

    大野(功)委員 理想から申しますと、私が申し上げたような方向で進むのが理想的だと思うのでありますが、今、征矢局長お話では、雇用の安定という面も考えなければいけないんだ、それはおっしゃるとおりであります。  そこで、そういう面から考えますと、派遣労働で働きたいという者に対して実際に派遣労働で働いている者、この割合は一体どのぐらいかわかりますか。
  17. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 現在の十六業務で働いておられる方は約五十八万人弱でございまして、これは全体の労働者数の一%程度でございます。
  18. 大野(功)委員(大野功統)

    大野(功)委員 派遣労働で働きたいと思っている者の中で、実際に働いている人の割合はわかりますか。
  19. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 派遣労働者の中で現在登録している方が四十三万七千人おりますが、その中で実際に派遣就業をしている方につきましては十三万九千人という数字になっております。
  20. 大野(功)委員(大野功統)

    大野(功)委員 そういう数字を見ますと、確かにまだまだ日本企業側にも派遣労働に対する理解が進んでいないのかなという気がするし、やはり先ほどの御説明にあった雇用の安定という面も相当考えていかなければいけないのではないかという気はいたします。ひとつこの際、企業側にもっとこの派遣労働という考え方について理解を進めていくような方策を労働省としても考えてもらいたいと思いますし、また、そういう前提に立って、先ほどから私がるる申し上げているような理想に向かって進んでくださいますようにお願いいたします。  最後に、そういう観点からいいますと、やはりこれまでの日本の雇用システムを変えるものだと私は思うのです。  これまでの日本の雇用システムというのは終身雇用であります。終身雇用の場合は、企業側から見まして、できの悪い人を雇ってしまった、これは教育したら何とかなるだろうと、親子の愛情みたいなものでお互いに使用していた、使用されていた、こういうようなことかと思いますけれども派遣労働の場合はそういう要素がなくなってきます。本当に質のいい労働を提供しなければいけないし、その質のいい労働を企業がいわば使用するわけでありますから、人情が入り込む余地が全くない。  それだけにいろいろな苦情が出てくる可能性があると思うのですね。そういうことを考えますと、やはり契約というのは書面できちっと細部にわたってやっておかなければいけないのは当然であります。今回の法案ではその点はどういう配慮をしているのか。  それから、これまでのこの派遣労働制度の実行に当たり、いろいろな苦情が出てきていると思いますが、その苦情はどのようなものが多いのか。それから、いろいろな苦情が出てきて、一体派遣元が責任を負うのか、あるいは企業派遣労働力を受け入れた方が責任を負うのか、いろいろあります。あるいは派遣労働者が責任をとるのか、こういう面の責任の明確化の問題があります。そういう点については今回の法案はどのように配慮しているのか、簡単で結構ですから教えてください。
  21. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 苦情関係の問題でございますけれども、例年七月に実施しております労働者派遣事業適正運営推進月間におきまして、全国の公共職業安定所等に寄せられました労働者派遣事業に関する苦情、相談を見ますと、適用対象業務以外の業務に関するもの、労働者派遣契約の中途解除を含む解雇に関するもの、賃金に関するもの、就業条件の明示に関するものが多く見られる状況に ございます。  これらの苦情につきましては、労働者派遣法の規定に基づきまして、派遣先派遣元責任者を中心に、派遣先派遣事業主の密接な連携のもとに、おおむね適切に処理されているものというふうに承知いたしております。  それから、この苦情処理についての責任を明確化すべきではないかという点でございますが、現行の労働者派遣法におきましても、  派遣先は、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者から当該派遣就業に関し、苦情の申出を受けたときは、当該苦情の内容を当該派遣事業主に通知するとともに、当該派遣事業主との密接な連携の下に、誠意をもつて、遅滞なく、当該苦情の適切かつ迅速な処理を図らなければならない。 これが法第四十条一項でございますが、それとあわせまして、派遣元責任者及び派遣先責任者の行う業務として、「当該派遣労働者から申出を受けた苦情の処理に当たること。」これが法第三十六条三号及び第四十一条三号でございますが、これが定められておりまして、派遣事業主及び派遣先苦情処理につき責任を負うことが明確にされているところでございます。  今回の法案におきましては、さらにその趣旨を徹底するために、労働者派遣契約苦情処理に関する事項を定めさせ、派遣労働者にその内容を明示させるとともに、派遣元あるいは派遣先管理台帳に苦情処理に関する事項を記載させることといたしておるところでございます。
  22. 大野(功)委員(大野功統)

    大野(功)委員 仏教の言葉に自利利他という言葉があります。自分の利益を追求する、それは他人を利することである。私はこの言葉が大変好きなのでありますが、どうぞ、この労働者派遣法等派遣労働者の利益にもなり、かつ受け入れ側の企業側の利益にもなりますような法制として、また、そういうような自利利他の精神で運用されるようなことを実現していただきますようにお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  23. 岡島委員長(岡島正之)

    岡島委員長 須藤浩君。
  24. 須藤委員(須藤浩)

    須藤委員 新進党の須藤でございます。  労働者派遣法の一部を改正する法律案についての質問をさせていただきます。ただいまの御質問の中で御答弁があったことと多少重複するところがあろうかと思いますけれども、簡潔に御答弁をお願いいたします。  まず最初に、今回のこの派遣法の一部改正についての背景等について、どのような社会状況の中で今日のような問題、法改正に至っているか、そういった経緯も含めて逐次質問をさせていただきたいと思います。  フロー型の人材についてまず質問をさせていただきたいと思いますが、我が国労働者は、学校を卒業して企業に就職し、定年まで同一企業に勤続するという形がこれまでおおむね一般的であったと思います。そして、そういった状況というものが、企業に対する一体感、あるいは言葉として忠誠心、こういったもので語られているということかと思います。そういう意味では、これまでのその従業上の地位というものはそれほど大きな変化はなかったということであろうと思います。  しかし、先ほどの答弁の中にもいろいろ出てまいりましたが、ここ近年の状況を見ますと、やはり転職をする、あるいは正規の従業員以外の形で働いている人がかなりふえてきている。そして、企業の方としても、高い技能技術というものを有する労働力、そういったものを適宜導入を図っていく傾向がかなり強くなっている。この流れは、ある意味で欧米の社会の労働構造、社会構造といったものに近似をしてきているのかなというように考えられるわけです。  こういったフロー型の人材、これには転職や派遣労働者あるいはフリーターと最近よく呼ばれるような人たちがおられますけれども、この雇用のフロー化の要因、傾向というものをどうとらえられているか、先ほど概括的に答弁がありましたが、より詳しく御答弁を願いたいと思います。  また、昭和六十一年に法律が施行されて以来、当時と比較して雇用のフロー化というものがどういう点において変化が生じてきているか、そして、こういったフロー型人材にはどのような特徴があらわれているのか、こういった観点から御質問をさせていただきたいと思います。
  25. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 ただいま先生、雇用のフロー化というお話をされましたが、転職の増加あるいは就業形態の多様化等の背景といたしましては、労働力供給面について見ますと、若年層を中心としたいわゆる一社勤続志向の弱まり、あるいは専門家志向の強まりなどの意識の変化、これがあります。労働力需要面について見ますと、産業構造変化等への対応のほか、専門的業務への対応等があるものと考えられるところでございます。  このような需給両面変化が今後一層進展するものと考えられることから、転職あるいは就業形態の多様化等がさらに進む可能性があるというふうに考えております。このため、転職ができる限り失業を経ることなく行われるようにする支援策、あるいは低い労働条件を強いられる労働者の増大につながらないような就業条件の整備を図っていくことが重要になるものと考えております。  それから、派遣法が制定された六十年当初と比べて、雇用のフロー化にどのような差異が見られるかという点でございますが、労働省の就業形態の多様化に関する総合実態調査によって見ますと、非正社員、これは出向社員とか派遣労働者、パートタイマー、臨時・日雇い、契約・登録社員等でございますが、その割合で見ますと、昭和六十二年では一六%であったものが、直近の平成六年におきましては二二・八%まで上昇いたしております。特に、パートタイマーは九・九%から一三・七%へ、契約・登録社員は〇・九%から一・七%へと上昇幅が大きくなっているところでございます。  この特徴といたしましては、労働省の雇用動向調査によって見ますと、転職者の状況は、性別で見ますと男子が女子を上回っております。また、一年間に転職した者の割合を年齢別に見ますと、若年層で高水準であり、年齢が高くなるにつれておおむね低下いたしておりますが、男子では五十歳を超えるとまた上昇しております。  この背景としましては、若年層では自発的理由による転職が多く、高年齢層では出向等非自発的理由による転職が多いことが考えられるところでございます。  次に、派遣労働者就業実態調査によって派遣労働者状況を見ますと、性別では女子が九割以上を占めておりまして、年齢別に見ますと、比較的若い二十五ないし三十四歳層が約六割近い数字になっております。  また、総務庁の労働力調査特別調査でアルバイトの状況を見ますと、性別では女子が五三・五%と男子を上回っております。年齢別では若年層が全体の六〇%。同様にパートの状況を見ますと、性別では女子が九五%と大部分でございます。年齢別に見ますと、三十五ないし五十四歳層の中年層が全体の六七・六%を占めております。  以上のような状況でございます。
  26. 須藤委員(須藤浩)

    須藤委員 今いろいろ答弁していただきましたけれども、済みませんけれども、もう少し大きな声でゆっくりとお願いいたします。  一時代と比べて、社会構造や産業構造のさまざまな変化があったということで、数字の上からもパートタイマーであり契約労働者、そういった方たちの数字がかなりふえている。しかも、女性の社会進出に伴ってその増加傾向がさらに高まっているということは、今の数字でもかなり出てきているというふうに私は思います。  そこで、そういった社会状況産業構造等の変化に対して、今回の労働者派遣法の一部を改正をするということになろうかと思います。  そこで、さらに次の質問をいたしますけれども労働力の需給の変化ですね、この対応について質問いたしたいと思います。  先ほど申しましたフロー型の人材の類型であります今回のこの派遣労働者問題点、この一つには労働条件があろうかと思います。  派遣労働者は、企業が人件費の中に占める固定的部分を最小にするために活用される面がかなり多いということ、どちらかというと企業企業経営の観点から派遣労働者を活用していくということであろうと思います。そして、現在も続いておりますが、景気があるいは経済状況というものが一たん悪化をしてくると、当然不安定雇用と劣悪な労働条件、こういったものに陥りやすい危険性というものが相対的に高い、私はこのように思います。  そこで、日本の今の経済状況を見ますと、バブル崩壊後、多少景気が上向いてきたということを言われておりますけれども、まだまだ上昇傾向の段階には至っていないかと思います。  そういった状況の中で、不況によって企業の操業度が落ちたりあるいは売り上げが減少していった場合、企業は当然のことながら企業を維持していくために雇用調整を行っていくかと思いますが、そういった際に派遣労働者がどうしてもその削減の対象となりやすい。これは現実にそういう状況も生まれているし、また企業経営の考え方、さらに、こういった派遣労働者を雇用する段階で、ある意味で当然そういう目的を持って採用していくといいますか、労働契約を結んでいくということもあろうかと思います。  そこで、こういった雇用形態の多様化の中で派遣労働者が年々増加しているわけですけれども平成四年度は数字の上では多少減少しております。そして、平成五年度には逆に微増にとどまっている。この中で、先ほどの数字にも出ておりましたけれども、女性の比率が高い。そして、雇用調整の影響を受けやすい状況の中で、先ほども申しましたけれども日本が欧米先進諸国のような状況産業構造が移りつつある、変わりつつある。そういう中で、不況のたびに行われるこの雇用調整というものは、一時的なものではなく、恐らく恒常的に出てくるのではないかというふうに思うわけです。  そうした場合、この労働力の需給の変化への対応というものは当然していかなければならないわけですけれども、今回のこの労働者派遣法の一部改正を提出するに当たって、この背景認識というものをどのようにお考えであるか、その基本的な考え方をお伺いいたします。
  27. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 不況により企業の操業度が落ちたり売り上げが減少した場合における雇用調整では、派遣労働者がその削減の対象になりやすいのではないかという点でございますが、派遣労働者の雇用の安定を図ることは労働者派遣法の目的の一つでございまして、極めて重要な問題であるというふうに考えております。  御指摘のように、不況期においては派遣労働者数は減少する傾向にございますが、特に、我が国経済が今般の長期不況経験した中で、労働者派遣契約の中途解除が相当発生いたしまして、派遣労働者の雇用の安定の観点から大きな課題とされたわけでございます。  今回の法案におきましては、派遣事業主と派遣先に、労働者派遣契約の締結に際し、「労働者派遣契約の解除に当たって講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置に関する事項」、これを定めなければならないことといたしているところでございまして、今後とも、派遣労働者の雇用の安定が図られるように努力してまいりたいというふうに考えております。
  28. 須藤委員(須藤浩)

    須藤委員 雇用の安定ということは当然のことで、行政といいますか、政府の方でそういった制度面を含めた形で先を考えていくということは当然のことであろうと思います。  さらにお聞きしたいのは、今の日本産業構造、そして雇用契約といいますか労働のあり方、そして社会構造の変化というようなものが、欧米先進諸国の追随とは言いませんけれども、少なくとも先進国からの文物の輸入を図ってきて、ある意味で大きな成長をしてはいますけれども、他方では、そういった構造に伴う問題点といいますか、そういったこともかなり出てきているかと思います。  今回、こういったさまざまな日本の社会状況産業構造変化というものが、欧米先進諸国のそういったものに、同じ轍を踏むといいますか、そういう形で進行しているのか、それとも、先ほど申しましたように、日本においてはこれまで、一つ企業に就職をして定年を迎えるまでそこで働いていく、企業に対する忠誠心も非常に高いという雇用形態というものがあったのですが、この辺の変化あるいは方向性といいますか、そういったものをどう考えられているか、お伺いします。
  29. 永井国務大臣(永井孝信)

    永井国務大臣 今先生指摘になりました、ヨーロッパと日本との産業構造の転換あるいは技術革新のテンポの違いといいますか、いろいろなものがございまして、先日も雇用サミットが開かれましたときに、そういう問題についてもかなり議論を深めてまいりました。  今先生が御指摘になりましたように、ヨーロッパの高失業という状況から見まして、その同じわだちを踏まないように日本としても十分な配慮をしていかなければいかぬ。また、ヨーロッパの側からは、日本の雇用システムというものの長所を十分学びたいというお話もございました。そういうことが、これからの国際社会において、先進国の中でも雇用問題に一つ方向性が見出せるのかなという気もいたしております。  いずれにいたしましても、国際化の進展などを背景にいたしまして、産業構造の転換が大きく進められていくということは見込まれるわけであります。それに伴います就業構造の調整というものは、もう御案内のように、新規学卒就職者の減少が見込まれております。少子化社会であり高齢化社会であります。そういうことから、これまで以上に産業間や企業間の労働力の移動による対応ということが大きく見込まれているわけであります。  こうした変化に適切に対応することができなければ、我が国もヨーロッパ並みのように高失業時代を迎えるのではないか、こういう危惧を実は持っているわけであります。  これを避けるためには、雇用の創出に必要な環境整備を図ることは当然でありますが、雇用機会が減少していくという分野からの円滑な労働力の移動というものを支援することが大事だと考えまして、今労働省としても全力を尽くしてその支援を進めることにしているわけであります。  その基本は、昨年十二月に策定いたしました第八次雇用対策基本計画でありますが、その中身は、一つは、改正中小企業労働力確保法に基づきまして中小企業の活力を生かした雇用機会を創出していくこと、あるいは二つ目には、改正業種雇用安定法がございますが、これに基づきまして、今申し上げましたように、失業しないで労働移動が円滑に行われていくように、そういう支援を新総合的雇用対策として今進めているところであります。  今後とも、我が国が高失業社会に陥ることのないように総力を挙げて取り組んでまいりますが、その中におけるこの派遣事業、あるいは最前も大野先生から御指摘があったところでありますが、常用雇用労働者との関係、こういうものの調整を十分にわきまえまして、問題の生じないような対応労働省といたしましては積極的に進めていきたい、こう考えておるところであります。
  30. 須藤委員(須藤浩)

    須藤委員 後ほどまた規制緩和のところで若干触れたいと思うのですが、世界も含めたいわゆる大競争の時代の中にあって、日本の構造調整といいますか、構造改革をどんどん進めていかなければならない。と同時に、そのためにも規制緩和を大きく推進していくということであろうと思います。  けれどもお話を伺っていて、今回の労働者法律の一部改正というものは、社会状況経済構造等の変化というものに対応しなければならないから、そういう意味で後追い的に制度というものをさわっているのか、それとも、当然だと思いますけれども、そういった世界情勢変化も踏まえた上で日本産業構造を転換していかなければならない、そのためには現在ある規制というものを大きく撤廃あるいは緩和をしていかなければならない、その延長線上でこういった法案の改正ということが出てくるのか、この辺についてはどう考えられていますか。
  31. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 今回の法案の内容につきましては、これも経緯からいきますと、そういう大きな構造変化が起こっている背景につきましては、先生指摘のように世界的な規模での変化、そういうものが日本にも影響を及ぼしておるわけでございまして、そういう中でどう対処するか、こういう視点から昨年来行政改革委員会でいろいろな御意見もございました。そういう中で、労働面でどう対処するかという点について私どもも率直に御意見を申し上げてまいった結果、行政改革委員会意見が昨年末に公表されたわけでございますが、この中におきまして、労働者派遣事業について二つの御意見がございました。  一つは、たまたま十年目という節目で、労働者派遣事業あり方についての議論が私ども中央職業安定審議会においてされてきたわけでございますが、その議論の中身について、これが適切なものであり、できるだけ早く実施すべきである、こういう御意見、それからもう一つは、労働者保護に配慮しつつ経済構造の変化に対処するために、対象業務の大幅拡大あるいは不適切な業務以外は対象業務にすべきである、こういう御意見二つございまして、今回の法案は、先ほど申し上げましたような第一点目の意見、そういうものも踏まえながら対処しているものでございます。  今後、そういう構造変化に対処しながら労働面でどうやっていくかという点については、政府といたしましても、そういう行政改革委員会の御意見も踏まえて規制緩和推進計画を三月末に決めたわけでございますが、そこにおきまして、労働者派遣事業あり方につきましても、さらに本年度中に関係審議会において検討を開始することといたしておるわけでございます。  ただし、労働政策上で見ますと、そういう経済構造の変化に伴う必要性という問題と、他面ではやはり労働者保護という視点からどういうふうに考えたらいいか、こういう二点をあわせて検討されるべき課題であろうというふうに考えておるところでございます。
  32. 須藤委員(須藤浩)

    須藤委員 では、次の質問に移りますが、派遣労働者の現状等についてさらに詳しくお聞きします。  先ほども御質問の中で若干答弁がありましたけれども派遣労働者の全就業者数に占める割合はどの程度か。先ほど五十八万人ですか、数字がありましたけれども、もう一度確認させていただきたいと思います。
  33. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 派遣事業主から定期的に提出されます労働者派遣事業報告によりますと、平成六年度におきます派遣労働者数は約五十八万人となっておりまして、全就業者数の約一%を占めているところでございます。  数の今後の増減見通しは、なかなか数量的に予測することは難しいわけでございますけれども、今回の法律改正とあわせて予定しております政令改正により適用対象業務の追加が予定されておりますこと、また、労使双方で多様な就業形態に対するニーズが高まっていく傾向にあること、そういうことから見まして、この五十八万人という数は一定の増加、この一定の増加というのがどこまでふえていくかというのはなかなか見込みが難しいわけでございますが、一定の増加は見込まれるものと考えております。  諸外国の例で申しますと、派遣労働者数及び就業者に占める割合で見ますと、アメリカで一・一%、あるいはフランスで〇・九%、ドイツで〇・四%というような数字もございます。
  34. 須藤委員(須藤浩)

    須藤委員 今後の見通しということで、恐らく一定の増加ということを推測されているということですね。  そうしますと、今回の改正によって規制緩和を行い、そして労働移動というものをある意味で適切に行う。そういう整備を図るということは、一定の増加があるだろうからそういう環境整備を行っていくのか、あるいは、当然法案の一部改正には趣旨があるわけでありまして、そういった環境整備をすることの結果として一定の増加が見られるのか、その辺は政策的にはどういう考え方を持っておられるのか、伺います。
  35. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 今回の法律改正とあわせまして、この法律は、御承知のように、基本的に専門的な業務、これを政令で指定いたしまして、その業務について派遣労働を認める、こういう仕組みでございますから、今回の議論の中で、社会経済情勢変化を踏まえてさらに追加して広げるべき業務にどんなものがあるかという議論があわせて関係審議会で行われまして、昨年十二月に建議されたわけでございますが、対象業務として十二の業務が一応そこで指摘されております。  この十二の業務といいますのは、例えば研究開発の業務というようなものにつきましては、こういう構造変化の中で特に新しい技術等の研究開発をするについては、従来の常用労働で研究機関で雇用している研究者だけでは対処できない。より専門的な知識を持った方に一定期間プロジェクトチームに入っていただいて、そういう中で研究開発することが非常に重要である、こういうような御指摘がございまして、そういう観点から、こういう研究開発の業務について、今回派遣対象業務にするというようなことを考えているわけでございます。  そういうことで対象業務の幅を広げますと、それによって新たな需要が起こるわけで、そこで働きたいという対象労働者もふえてくるわけでございまして、結果としてこの対象労働者がふえていくのではないかというふうに考えているところでございます。
  36. 須藤委員(須藤浩)

    須藤委員 質問の中で、今回の派遣法の全体像といいますか、その目的の中心部分に迫っていきたいなというふうに考えているのです。  今の御答弁ですと、政策的といいますか、結局、日本産業構造といったものが今後どのようになるか、あるいは構造改革も含めてある意味でどう構築していくか、そういった視点からの法案の整備なのか、それとも、言葉は悪いですけれども、対症療法的に、社会構造が変化して、結果的にそれに対応しなければならないから法制度を整えていくのかということが、少しあいまいかなという気が私はいたします。  少なくともこれだけ世界レベルで大きな競争の時代に入って、しかも日本国内において見れば、高齢社会から少子社会を迎えて労働人口の減少というものが想定される中で、労働も含めた日本産業構造仕組み、そういったものをどういった方向に持っていくかということが基本的になければおかしいのではないかなと私は思うのですけれども、この点に関してはいかがでしょうか。
  37. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 その点につきましては、中期的な見通しといたしましては、昨年十二月に策定いたしました雇用対策基本計画の中で、一定の大まかな見通しはいたしているわけでございます。  ただ、先生指摘のように、政策的に、例えば大きな構造変化の中で労働のあり方をどう持っていくべきか、その辺が必ずしもはっきりしていないという御指摘もございますが、なかなかそこは難しい点でございまして、構造変化が大きくある中で、一方では需要側での要望があります。それから一方では労働力を供給する側での要望もあります。そういう需給両面の要望を踏まえながら適切に対処していく、そういうことが重要でございます。  そういう観点からいきますと、非常に多様化してきている。労働のあり方多様化してきている、あるいは意識も多様化してきている、あるいは生活のあり方多様化してきている。そういう中でこの派遣労働という労働が認知され、制度として出発してきている、こういうことであろうと思います。  その点について、十年目の節目ということで見直しをしたわけでございますが、この考え方につきましては、やはり労使を含めた関係者で十分御議論をしていただくことがもう一点労働行政を進める上で重要でございまして、そういう意味で、関係審議会で自主的に議論をしていただいて、そこで建議という形でまとめられた中身について今回法案として提案し、御審議をいただいているということでございます。
  38. 須藤委員(須藤浩)

    須藤委員 では、ここはもう少し置いておきまして、さらに進めさせていただきます。  先ほど御質問の中で、派遣労働者が抱える問題点について、労働条件があるということを述べましたけれども派遣労働者からの苦情はどういう例があるかということで、業種のことであるとか条件あるいは賃金、その他もろもろ出ました。そういった苦情に対しておおむね適切に処理をされているという御答弁でしたが、具体的にはどのように処理をされているのか、また、おおむねということは苦情に対して適切に対応し切れないということも含まれてのことなのかどうか、伺います。
  39. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 例年七月に実施しております労働者派遣事業適正運営推進月間におきまして、全国の公共職業安定所等に寄せられました労働者派遣事業に係る苦情、相談を見ますと、その中身としましては、適用対象業務以外の業務に関するもの、労働者派遣契約の中途解除を含む解雇に関するもの、賃金に関するもの、就業条件の明示に関するものが多く見られる状況でございます。  私どもといたしましては、これらの苦情につきましては、労働者派遣法の規定に基づきまして、派遣先派遣元責任者を中心に、派遣先派遣事業主の密接な連携のもとで、おおむね適切に処理されているものと承知しているところでございますが、おおむねという点でいきますと、適切でないものも含まれているわけでございますし、これはただいま申し上げましたように、労働者派遣事業適正運営推進月間において、私ども、全国の公共職業安定所等で把握した案件についての結果を申し上げているものでございます。
  40. 須藤委員(須藤浩)

    須藤委員 統計上の数字でのお答えなのですが、実態としては、一〇〇%が望ましいのですけれども、何割かはなかなか処理し切れないということに関して、労働省の方ではその辺は把握をされているのでしょうか。
  41. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 苦情の処理状況につきましては、個々のケースについて全面的に私どもが中央で把握いたしておりませんので、具体的にどの程度適切でないものがあったかという点につきましては、なかなか数量的に申し上げるのは困難でございます。  いずれにいたしましても、これは各公共職業安定所等に苦情の申し出があったものについて労働者派遣法に照らして適切な処理をする、こういうことで臨んでいるところでございますが、おおむねの中身につきましては、申しわけありませんが、具体的にどの程度かというのは把握いたしておりません。
  42. 須藤委員(須藤浩)

    須藤委員 それでは続いて、派遣契約の中途解除の問題についてなのですが、これについてはここ数年どのような状況になっているか、またその理由、さらに、派遣契約が中途解除された場合賃金の支払いはどのようになっているのか、伺います。
  43. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 ただいま申し上げました平成七年の労働者派遣事業実態調査によりますと、一般派遣事業主の四七・八%、特定派遣事業主の三一・八%が労働者派遣契約を中途解除されたことがあるというふうな結果になっております。  その理由といたしましては、派遣先事業計画に急な変更、中止等があったためというものが一般派遣事業主の七五・一%、特定派遣事業主の八三・五%と、最も多いところでございます。  その際の派遣労働者の取り扱いといたしましては、一般派遣事業主の八三・九%が他の派遣先を見つけたとする一方、一七・七%が他の派遣先が見つからない等の理由で解雇したといたしております。  賃金の支払いにつきましては、私どもの今の調査によりますと、適正に行われているというふうに承知いたしております。
  44. 須藤委員(須藤浩)

    須藤委員 では、続いての質問に移りますけれども、今回の法律の改正の趣旨について若干お伺いします。  法律施行後十年余りを経過しているわけですけれども、この派遣法自体に大きな問題点というものが果たしてないかどうか。それは、派遣労働の場合には、派遣先の指揮命令のもとで就労していく、そして賃金等の労働条件は派遣先にゆだねられているということであろうと思います。  しかし、法律そのものは、派遣元と派遣労働者の間の関係を基本として定められている。そこで、派遣先の使用責任を追及しにくいという実情があろうかと思いますが、労働基準法の責任というものがどの程度そこで明確になっているか。深刻な問題を派遣労働者に場合によっては投げかけるような問題、危険性というものがあるのではないかと思います。雇用については、そういった不安定要因といいますか不安定さ、こういったものを法律的に見方によっては容認をする、そういう仕組みになっていないかということが考えられますけれども、この点についてはどのようなお考えをお持ちですか。
  45. 永井国務大臣(永井孝信)

    永井国務大臣 法制定以来十年が経過いたしまして、なぜ今回法改正が必要なのかという趣旨も御質問の中にあったように思います。  この派遣事業制度というのは昭和六十一年に制定されたわけでありますが、全体的には着実に定着しているものと認識をいたしております。  しかし、今先生が御指摘になりましたように、経済社会の情勢が刻々と変化いたしておりますし、労働者派遣事業に対する新たなニーズというものが生じてまいっております。それは働く側にも、あるいは派遣事業を行う者にも、あるいは派遣労働者派遣を求める事業主の方にも新たなニーズが生じてきているわけであります。そういう中で、我が国は長期の経済不況というものを経験してきましたが、そういう中で労働者保護という観点を私どもは極めて重視をしているわけであります。そういう立場から、この際、労働者保護確保していきたい、そういう趣旨も含めまして今回の派遣法の改正に踏み込んだわけであります。  もちろん、今回の法案を出すに当たりましては、中央職業安定審議会で十分に時間をかけていただきまして御検討いただきまして、全会一致建議をいただいたところであります。  なお、この派遣労働者に対する労働条件の確保という問題については、当然のことながら、労働基準法を初めとする幾つかの法律を遵守させるということが前提になることは当然のことでありまして、そういうものも踏まえまして問題の起きないように運用を図ってまいりたい、このように考えているところであります。
  46. 須藤委員(須藤浩)

    須藤委員 労働者保護、これは法制度を変える変えないにかかわらず必要なことであろうと思います。当然、法制度を変えるということであれば、そういった点に配慮をした上で不備な点も補っていくという考え方が必要だと思います。  さらに、次の問題に移りますけれども、今回の改正の中で、派遣契約の当事者が派遣契約の締結に際して「労働者派遣契約の解除に当たって講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置に関する事項」を定めなければならないということを規定されていますが、その具体的な内容と、もう一つは、先ほども触れましたけれども苦情処理体制についてどの程度改善が見込まれると想定をされているか、伺います。
  47. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 今回の法案におきます「労働者派遣契約の解除に当たって講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置に関する事項」、これの具体的な内容でございますが、相当の猶予期間をもってする事前の通知、派遣事業主と派遣先の連携による就業機会の確保、適切な損害賠償に関する措置等を想定しているところでございます。  それから、苦情処理に関する点でございます が、今回の法案におきましては、派遣事業主及び派遣先に対し、労働者派遣契約苦情処理に関する事項を定めさせ、派遣労働者にその内容を明示させるとともに、派遣元・先管理台帳に苦情処理に関する事項を記載させることといたしております。  労働者派遣契約苦情処理に関する事項を定めさせることによりまして、派遣事業主及び派遣先におきます苦情処理体制が派遣契約締結時に確立されるようになるとともに、派遣労働者が当該派遣就業における苦情処理体制を確実に理解できるようになるものと考えております。  また、派遣元管理台帳及び派遣先管理台帳に苦情処理に関する事項を記載させることによりまして、派遣事業主及び派遣先において確実に苦情処理が行われることが確保されることになるとともに、行政による指導監督の際に、派遣事業主及び派遣先において苦情処理が的確に行われているか否かを確認し、必要な指導を行うことができるようになる、そういうことが期待されるものでございます。  これら労働者派遣契約に係る措置派遣元あるいは派遣先台帳に係る措置とが相まちまして、適切な苦情処理が行われることが期待されるものでございまして、これらの措置が適切に行われるよう派遣元及び派遣先を指導してまいりたいと考えております。
  48. 須藤委員(須藤浩)

    須藤委員 苦情処理については、先ほども触れましたように、具体的な苦情に対する対処、そして当然一〇〇%が望ましいのでしょうが、労使関係の間でどのような具体的な事例が挙がっているかによってその処置方法というものは必ずしも一定ではありませんので、事前に、今回の契約時にそういったものが確立をされることによって、その苦情についても減少するかと思いますが、この点については、この法案の一部改正によってかなり整備が進むように期待をします。  さらに、次に移りますが、事前明示義務に関する法整備について若干お伺いいたしたいと思います。  労働条件や就業条件というものの明示が派遣前になされていないことがやはり大きな問題で、それがこれまでにもたくさん苦情が出たり、トラブルの原因になったりということであろうと思います。こういったことはこれまで数多く指摘されているかと思いますが、この事前明示義務というようなものを課していく法整備についてどのようなお考え方を持っておられるか、伺いたいと思います。
  49. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 派遣労働者に対します労働条件の明示につきましては、労働基準法十五条が適用されまして、そこに規定されております。また、就業条件の明示につきましては、労働者派遣法三十四条に規定されているところでございます。  労働省といたしましては、このように労働者派遣法あるいは労働基準法に基づく派遣労働者に対する労働条件及び就業条件の明示が的確に行われるようにするため、中央職業安定審議会におきましてもその御議論がございまして、その建議も踏まえまして、モデル雇入通知書及びモデル就業条件明示書を作成いたしまして、これに基づく指導を図ってまいりたいと考えているところでございます。
  50. 須藤委員(須藤浩)

    須藤委員 一応問題点となるところを幾つか質問させていただきたいと思いますが、先ほど触れました規制緩和推進計画の提言についてなんです。  この三月の計画の改定におきまして、今回の労働者派遣事業について新しく検討すべき事項として数項目加わったということですが、まずこの事項について御説明願います。  そしてさらに、その提言に対して今後どのようなスケジュールで見直し検討を行っていくか、その具体的な計画について伺います。
  51. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 去る三月二十九日に改定されました規制緩和推進計画におきましては、労働者派遣事業制度あり方につきまして、対象業務の大幅拡大、不適切な業務以外は対象業務とするとともに、派遣労働者保護のための措置を講ずる等の行政改革委員会意見を尊重し、有料職業紹介事業制度あり方に係る検討に引き続き、平成八年度中に検討を開始すること等といたしております。  他方、これに基づいて今回の法改正を行うこととなりました昨年末の中央職業安定審議会建議におきましても、「この報告に沿った制度の改正が行われた後においても、経済社会情勢変化等を踏まえ、制度の在り方等について、多角的に必要な検討を行っていくことが適当である。」とされているところでございます。  中央職業安定審議会におきましては、現在、有料職業紹介事業についての見直し検討を進めていただいているところでございまして、労働省といたしましては、規制緩和推進計画を踏まえ、その検討結果を八年中に取りまとめていただき、引き続き八年度中に中央職業安定審議会において派遣事業あり方について検討を開始していただく予定といたしております。
  52. 須藤委員(須藤浩)

    須藤委員 規制緩和によって対象業務が拡大されていくということで、それ自体は私も歓迎するところです。規制緩和そのものを推し進めていくということは、現在の日本においては恐らく至上命令といいますか、これを行っていかなければ二十一世紀の日本をつくっていくための土台を築くことはかなり難しいというように思います。  今回の法案の改正におきまして、現在の経済状況というものが完全に景気回復の段階にまで至っていない、しかし、規制緩和そのものは、構造改革も含めて断行していかなければならないという客観的な状況がある。その中で規制緩和を行うことは、雇用調整あるいは賃金抑制に場合によっては利用されるのではないかというようなことに関して、どのような御見解、考え方をお持ちであるか、伺います。
  53. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 労働者派遣事業適用対象業務の拡大との関係について申し上げますと、この適用対象業務の拡大につきましては、中央職業安定審議会におきましても、業務専門性があること、労働力の迅速的確な結合を図るために必要であること、常用労働者の代替を不当に促進しないこと、こういう三つの基準に基づき、必要性について具体的に検討するという考え方に立ちまして慎重に検討が行われ、必要性があるものに限って新たに適用対象業務とすべきである、こういう建議をいただいているところでございます。  また、あわせて、今回の法案におきまして、派遣労働者就業条件確保派遣先における派遣就業適正化のための措置の充実を図ることといたしたところでございます。  そういう点から考えまして、今回建議された業務の追加につきましては、それによって雇用調整あるいは賃金抑制に利用される、そういうことは少ないのではないかというふうに考えているところでございます。
  54. 須藤委員(須藤浩)

    須藤委員 そのように考えられているということで、当然そういうことがないように十分監督をしていただきたいというふうに思います。  続いて、今回の法改正におきまして、先ほどから出ておりますさまざまな苦情処理、あるいは派遣労働者の適正な就労のために、派遣事業主あるいは派遣先に対してどのような形で周知徹底を図っていくのか、この辺のプログラムを御説明ください。
  55. 永井国務大臣(永井孝信)

    永井国務大臣 派遣労働法の適正な運用と、そしてその目的とする効果を着実にするためには、今先生指摘のように、周知徹底を図ることは非常に重要なことであると思っております。  派遣労働者の適正な派遣就業確保のために、適切な苦情処理を初めとする派遣事業主及び派遣先が講ずべき措置につきまして十分な周知徹底と啓発を図っていく、このように労働省としては強い決意を持って取り組んでまいりたいと思っているところであります。  また、このために、今回の法案におきましても、適切迅速な苦情処理を初め、派遣事業主及び派遣先が講ずべき措置を適切に実施するための方法及び当該措置を適切に実施するために考慮すべき事項、こういうものを指針として公表することにいたしておりまして、労働省、そして都道府県、公共職業安定所の各段階で、派遣元あるいは派遣先事業主やその団体に対するいろいろな機会をとらえましての説明をしたり、あるいは種々の広報誌、パンフレット等の活用を図っていくことにいたしているところであります。  先生の御趣旨を十分に生かし切るような対応を進めてまいりたいと思います。
  56. 須藤委員(須藤浩)

    須藤委員 特にこの周知徹底に関しましては、トラブルが発生している業種といいますか、さらに、当然それに伴って苦情が寄せられているところへの周知徹底というものがかなり必要であろうと思いますが、この辺について、一般的に広報等を活用しての周知徹底ということのみでは、私は少し弱いのではないかなというように思います。先ほどからいろいろ問題点の上がっているような部分に関しての周知徹底というものがぜひ必要だと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
  57. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 御指摘のとおりでございまして、一般的な周知徹底に努めることとあわせまして、具体的にそういう問題のあるところにつきましては、必要な指導を行うということで対処してまいりたいというように考えております。
  58. 須藤委員(須藤浩)

    須藤委員 ではもう一点、派遣労働者の社会保障の実態と現状について伺いたいと思いますが、今回の改正で、派遣労働者の社会保障の関係で、雇用保険あるいは社会保険の加入の実態はどうなっているのか。さきの代表質問におきましても若干御答弁をいただきましたが、この実態と、さらに、この保険について加入促進をしていくためにどういった対策を講じているのか、お伺いしたいと思います。
  59. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 平成七年の労働者派遣事業実態調査の結果によりますと、雇用保険につきましては派遣労働者の七九・四%、健康保険につきましては派遣労働者の七五・六%、厚生年金につきましては派遣労働者の七二・九%が加入いたしているところでございます。  私どもといたしましては、これまでも派遣事業主団体を通じた制度の周知等を図ってきたところでございますが、この点につきましても、昨年末の中央職業安定審議会建議を踏まえまして、労働大臣が公表する派遣事業主及び派遣先が講ずべき措置に関する指針及び派遣労働者に対するパンフレットに制度趣旨内容等必要な事項を記載すること等によりまして、関係者に対する指導周知を一層徹底してまいりたいと考えているところでございます。
  60. 須藤委員(須藤浩)

    須藤委員 保険の加入についての指導ということなのですが、現実問題、契約として派遣労働者を使う場合に、パートも含めてなのですが、自分みずからの企業経営の観点において、なかなかそこまで費用負担をしていくのが大変であるということで、ルーズにされるといいますか、そういったこともなきにしもあらずということであろうと思います。具体的に指導を行っていく場合、どういった方法で今行われているのでしょうか。
  61. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 派遣労働者の雇用保険の適用促進を図るという観点から、私ども所管でございます雇用保険制度について申し上げますと、いわゆる登録型派遣労働者につきましては、就労形態が多種多様でございまして、断続的に就労する者が多いことなどによって、雇用保険の適用対象とならない者も相当いるものというふうに考えられる一方で、適用対象となる場合であっても、その適用手続が必ずしも十分に行われていない、そういう状況にあろうかと思います。  このため、所定労働日数あるいは所定労働時間が一定以上である等の要件を満たす場合には被保険者として取り扱うこと、これを周知徹底するとともに、要件を満たしているにもかかわらず加入手続がされていない場合につきましては、定期指導、派遣元責任者研修会等さまざまな機会をとらえて十分指導を行うなど、適用促進に努力してまいりたいと思います。  なお、事後的に派遣労働者につきまして問題があった場合、これが雇用保険の適用があるという判断がされる場合につきましては、これは強制適用でございますから、後からでありましても当然適用されるというふうにいたしているところでございます。
  62. 須藤委員(須藤浩)

    須藤委員 労働者保護という観点からすると、こういった社会保障の制度の保障、環境整備をしていくということは、かなり重要な観点であろうと思います。現実に現場における苦情も含めて、そういった点がどこまで保障されていくかということが今回の改正によってかなりはっきりと進められていかなければならない、こういうように思うわけです。  代替要員確保するための労働者派遣事業については、今回、この派遣事業の活用をすることというふうになっておりますが、その理由と、先ほど若干出ましたが、派遣期間を一年間と限定した理由を伺います。
  63. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 育児・介護休業取得者代替要員確保対策といたしまして労働者派遣事業を活用することといたしましたのは、育児・介護休業制度の現状を見ますと、代替要員確保が困難であるという理由によって育児・介護休業が取得できないというケースが相当存在しており、特に企業内で代替要員確保することが困難な中小企業を中心といたしまして、休業取得者の代替要員確保に係るニーズに迅速的確に対応できる需給調整システムの整備が強く求められている、こういうことでございます。  こうした現状のもとで、労働者派遣事業は、育児・介護休業という比較的急な事態に対応した迅速な労働力需給調整が可能であること、他の方法では確保することが難しい専門的な知識等を要する労働者確保が比較的容易に可能であること等の特性を有するものであることから、育児・介護休業取得者代替要員確保に係る幅広いニーズに迅速的確に対応するという観点から、港湾運送業務建設業務その他政令で定める業務以外の業務について、労働者派遣事業を行えることとする特例措置を講じたものでございます。  なお、派遣期間につきましては、例えば育児休業法に基づきます育児休業の取得期間、これは法律で一年間というふうに明確に限定されているところでございます。そういう期間というものと育児休業という理由、そういうものを前提としまして、今回、特例として認めるという考え方をしているわけでございます。  なお、この期間について、期間を限ることなく認めるとした場合には、これも御承知のように、派遣先常用労働者の代替問題が起こるなどの弊害が出てくるおそれが強いわけでございまして、そういう意味で、中央職業安定審議会におきましては、派遣期間については一年間に限定することが適当であるとされたことを踏まえまして、今回の制度改正をお願いしているところでございます。
  64. 須藤委員(須藤浩)

    須藤委員 個々の点ではもう少し質問したいことがあるのですが、時間が参りました。  今回の改正で重要なことは、冒頭に触れましたように、社会構造の変化あるいは世界の経済状況変化、そういったものにかんがみての日本の構造改革、さらにはそのための規制緩和の推進、それに伴う今回の日本の労働・雇用関係の整備をどう行っていくか、それともう一つは、世界の、欧米先進諸国の雇用形態というものを日本が後追いをする中で、どこまで先取りをして整備を図っていけるかということが私は重要なポイントだと思うのです。  その点に関して今回の法整備がどれだけ十分なものであるかということについては、細かな点で議論をすべきことがたくさんあろうかと私は思いますが、この辺の基本的な考え方というものがいま一つまだはっきり伝わってこないような感じがしております。この点については後ほどまた同僚議員からもさらに突っ込んだ質問があろうかと思いますので、一点だけ最後に、この辺の基本的な考え方答弁願いたいと思います。
  65. 永井国務大臣(永井孝信)

    永井国務大臣 産業構造がどんどん変革していく、転換をしていく、技術革新がどんどん進んでいく、中には労働力の需給の関係から海外に進出する企業も出てきている。そういう中で労働者の労働条件をいかに守っていくか。その労働者の労働条件を守ることとあわせまして、日本の産業を発展させるためにどういうことが必要なのか、そして働く側と雇い入れる側、そういうそれぞれの現在の産業の実態にあわせてどういうニーズがあるのか。こういうものを考えまして総合的に検討しました場合に、その中で派遣事業の持っている任務あるいは求められているもの、こういうものを最大限に生かし切るようなことを考えていかなくてはいけない、こういう観点から今回の法改正になってきたわけであります。  もちろん、今回の法改正だけですべてそれを十分に充足するとは思いませんが、これから引き続き実態を十分に認識した上で、今後の規制緩和のあり方も含めまして、改めて中央職業安定審議会で御検討いただくことにしているわけでございます。  いずれにいたしましても、労働問題でありますから、労使が合意できることが非常に重要なことでありまして、そういう面で、中央職業安定審議会で今回の法改正についても全会一致建議がなされたことを私たちは大変重視をしております。これからもそういう立場で、労使の十分なコンセンサスが得られまして、そして日本の産業発展に資することができますように、そういう視点に立って対応してまいりたい、このように考えるわけであります。
  66. 須藤委員(須藤浩)

    須藤委員 終わります。
  67. 岡島委員長(岡島正之)

    岡島委員長 上田勇君。
  68. 上田(勇)委員(上田勇)

    ○上田(勇)委員 新進党の上田勇でございます。  きょうは、時間の区切り上、休憩を挟んでの質問になりまして、途中での区切りがちょうどうまくいくかどうかわかりませんが、ひとつ御容赦いただきたいと思います。  きょうは質問の機会を与えていただきましたので、今回審議されております労働者派遣法並びに現下いろいろと問題になっております労働政策全般について、若干の質問をさせていただきたいというふうに思います。  まず初めに、関連事項でございますけれども、現在の我が国におきます外国労働者の問題について、若干労働省としての見解をお伺いしたいと思います。  現在、国内では、多数の外国から来られている労働者がさまざまな職種で働いております。このことは私たちの国の労働・雇用政策にも重大な影響を与えているわけでありますし、これはもう無視できない事実ではないかというふうに考えております。  そこで、まず初めに、労働省として外国労働者実態につきましてどのように把握されているのか、その辺を御説明いただければと思います。
  69. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 ただいま、外国労働者の問題について御指摘でございます。  実態につきましては、大まかに言いまして、約六十万人の就労する外国人がおるものというふうに推計いたしております。この中には合法的に就労している方といわゆる不法就労と言われる方がおるわけでございまして、不法就労と言われる方が、この六十万人のうち約半数近くおられるのではないかというふうに考えているところでございます。  就労目的で入国している外国人の方につきましては、在留資格をチェックいたしまして、その資格に基づいて働いていただいているわけでございますが、そういう方が約十万人、それからアルバイトという形で、留学して勉強しながら働いている方が約六万人、それから日系人で働いている方が約十五万人、そんな数字でございます。
  70. 上田(勇)委員(上田勇)

    ○上田(勇)委員 今の御答弁にもありましたとおり、六十万人の就労者がいるということであります。これは、我が国の労働・雇用を考えるときには到底無視できない数字ではないかと思いますが、今後、将来的にこの外国労働者をどのように労働・雇用政策の中で位置づけていくのか、見解をお伺いしたいと思います。
  71. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 外国労働者の受け入れにつきましては、昨年十二月に閣議決定されました第八次雇用対策基本計画においても踏襲されておりますように、「専門的、技術的分野の労働者については可能な限り受け入れるが、いわゆる単純労働者の受入れについては十分慎重に対応する。」ということを政府の基本方針といたしておりまして、労働省といたしましても、この方針に沿って、外国労働者の雇用状況の把握、事業主への啓発指導、雇用管理援助等の推進、外国人求職者に対する適切な対応、不法就労に対する実効ある対処等を柱といたします対策を講じているところでございます。
  72. 上田(勇)委員(上田勇)

    ○上田(勇)委員 今お話にあったように、雇用対策基本計画でも、専門的、技術的分野については可能な限り受け入れるということであります。私は、我が国経済が国際化に対応して外国から有為な人材を受け入れる、登用する、そのことが我が国の産業の発展やまた技術の向上にも寄与する面も多くあるというふうに思いますので、これから特に可能なところは大いに門戸を開放するということも考えていくべきであるというふうに考えております。  一方、今御答弁にあった中で、専門職、技術職、こうした分野への外国の方々の進出というのは、現状ではそれほど進んではいないのではないかというのもまた実感であります。  そしてもう一方、今、単純労働については受け入れない方針ということでありますが、現実には、先ほど言われた外国労働者の方々の多くは、この単純労働に従事しているというのが現実ではないかというふうに思います。私も地元の工業団地などを拝見すると、中小企業を中心に、一見すると、日本人の労働者よりもむしろ外国労働者の方が多いぐらいの感じを受けるところすらあるのが現実であるというふうに思います。  先ほどお話もあったように、これらの外国労働者の大多数は、先ほど半分という話でありましたが、不法就労という状況であります。これは逆に言うと、労働政策の中では、どちらかというと無視された存在になっているのではないかというふうに感じます。しかし、そうした中小企業などの経営者の方々のお話を伺いますと、現実にはもうこの人たちがいなければ中小企業の経営は成り立たないという話も伺いますし、やはりこうした現実を直視していくことが今必要なのではないかというふうに思うわけであります。  私は、何も単純労働の面で外国から労働者をどんどん受け入れろという話をしているわけではございません。それにはどうしても国内の労働者との雇用の競合の問題もありますし、また、労働市場の二重構造みたいなものができてしまうというような問題もあるでしょうし、あるいは、目に見えるもの見えないもの、社会的費用といった新たな負担、そういう懸念が多いわけでありますので、これは慎重に対処するということは当然のことであるのです。しかし、現状の労働・雇用政策を見ておりますと、実態を無視して今後のそういう政策を論ずるわけにはどうもいかないのではないかというのが率直な感じであります。  そこで、いろいろなそういう経営者の方々や、またその労働の実態などを見るにつけまして、近い将来こうした実情がさらに大きく変わるといったことは想像しにくいのでありまして、そういう中で、これは労働省だけの問題ではありませんが、都合の悪いことは、現実であっても、どちらかというと直視しないというような姿勢は、私は疑問を感じるのであります。  そこで、これから将来の我が国の労働政策、雇用政策を考えるときに、やはりこうした現実に立脚して今後の政策立案をしていかなければいけませんし、外国労働者の問題を政策の中にちゃんと位置づけた上で、今後どのように取り組んでいくのか、そのあり方をどのようにしていくのか、そういったことを現実に立脚した上で検討していく必要があると思うのですが、その点につきましてぜひ大臣の方から御見解をお伺いしたいと思います。
  73. 永井国務大臣(永井孝信)

    永井国務大臣 御指摘のとおり、現実に今、日本の社会には相当数の不法就労者が存在していることは十分に推測されているところであります。しかしながら、政府といたしましては、いわゆる単純労働者の受け入れ問題につきましては、さまざまな問題が懸念されるために、十分慎重に対応する必要があるというふうに考えているところであります。長年にわたりましてこの単純労働者の受け入れ問題が議論されてまいった経過もございますが、その経過の中でも、最終的に、慎重にすべきことだということが今の段階では結論となっているわけであります。  また、この外国人の不法就労者につきましては、そもそも違法であることに加えまして、国内の雇用問題、そして労働条件に悪影響を及ぼすことが十分に懸念されるわけでありまして、労働省といたしましては、今後とも関係行政機関との連携を十分にとりながら、お互いに協力をし合う中で、まず人権擁護に配慮をしながら悪質な仲介業者の取り締まりの強化を図ってまいりたい、そして事業主への啓発指導を進めていきたい、このように考えているところであります。  なお、つけ加えて申し上げますと、今、高失業社会で大変苦しんでおりますヨーロッパ諸国では、外国人の単純労働者の受け入れが自由になった時代もございまして、そのことが大きなツケといいますか、そういう状況に今立ち至っているわけであります。一たんこの単純労働者の受け入れをもし仮に自由化してしまいますと、今度は我が国都合によってそれを締め出すということは、国際的にも極めて難しい問題になってまいりますので、だからこそより慎重な対応が望まれるというふうに考えているわけであります。
  74. 上田(勇)委員(上田勇)

    ○上田(勇)委員 先ほども申し上げましたとおり、私も慎重な対応ということに対して異議を唱えるものではございません。しかしながら、今の国全体としての政策の中で、現実にこうした状況がある、それを直視した上で今後の対応考えていかなくてはいけない、これが必要なのではないかというふうに考えるわけであります。  今、いわゆる単純労働者については受け入れないということでありますが、しかしながら、現実にたくさんの人たちが就労しているわけであります。この人たちの労働福祉の問題もございまして、労災の発生などといういろいろな問題点が現実に発生しております。では、もう受け入れないのかというと、実際の対応というのはある程度許容されている、それが実際の現場での制度の運用ではないかと感ずるわけです。それでなければ、普通に我々がそうした工業団地などを歩いてそうやって大変多く見られるというのは、ある程度運用の中において、あいまいというのでしょうか、不明確な面が残っているということではないかと思います。  ですから、どこまで許容するのか、あるいは将来のことを考えてどこから先は慎重に対応するのか、そうしたことも今後やはり労働・雇用政策全体の中で現実を直視した上でよく御検討をいただく、今そういう必要性があるのじゃないかということを感じている次第でございます。  どうかこの問題、特に製造業や組み立て加工などの分野の産業の側からも、将来どういうふうになるのかといったことをはっきりさせてほしいということもありますし、行政対応が必ずしも一貫性がないというような指摘もあるものですから、その点をぜひ十分御考慮いただきまして、今後の雇用政策の中ではっきり位置づけていただければというふうに考えている次第であります。  そこで、今回の法案の関連に移らせていただきますが、先ほどの議論の中でも、派遣労働者の数というのは、現在までのところ労働者全体の約一%、一%未満で推移してきているということでありますが、先ほど答弁にもありましたように、今後やはり社会のニーズが高まって、増加するのではないだろうかというふうに一般には言われております。  先日の新聞でも、ある大手派遣会社調査では、これはその会社のデータだけだと思いますが、ことしは大変派遣労働者の数が伸びていて、去年に比べて五〇%近い伸びであったというようなことも報道されております。その記事の中には、新入社員が入社する四月というのは派遣先企業の引き合いが少し細るのが通例と言われている中で、四月においても増加したということは、企業側仕事の一部を完全に派遣社員に任せるようになった結果ではないかというような分析も載っておりました。  雇用対策基本計画の中でこの派遣労働についても記述されているわけですが、なかなか表現が難しい面もありまして、私が読み取るには、派遣労働ニーズというのは高まっているということが一つ、それから、今後ともそれなりに重要な役割があるのだ、そういう認識が示されているのではないかというふうに思うわけであります。  そこで、この派遣労働という労働の形態、これが労働・雇用政策全体の中でどのような位置づけで考えられているのか、現状をどのように認識されているのか。例えば、今ふえているのは、これは産業構造の転換の中での過渡的な現象としてとらえているのか、それとも恒常的な趨勢としてとらえているのか。あるいは、常用雇用の補完的な役割というふうに認識されているのか、それとも先ほどの新聞記事で言われているように常用雇用と競合するような関係にあるのか。さらに、ちょっとまとめてで申しわけありませんが、将来はどのように位置づけられていくのか。例えば、どういった職種でどの程度派遣労働者を想定されているのか、そうしたこの派遣労働という労働形態に関して基本的なお考えをお伺いしたいというふうに思います。
  75. 永井国務大臣(永井孝信)

    永井国務大臣 今後、経済社会がさらに変革してくるものと思われますが、労働市場も需給両面にわたりまして大きな変化に直面すると予想されているわけであります。この労働者派遣事業につきましても、労働力の需給という面から考えまして、その需給の迅速的確な調整を図る民間労働力需給調整システム、これが極めて重視されるところでありまして、その一つとして、その適正有効な運用を図っていくことが極めて重要であるというふうに実は認識をいたしているわけであります。  このような考え方から、第八次の雇用対策基本計画におきましては、労働者派遣事業制度について、中長期的な経済社会情勢変化対応した民間労働力需給調整機能の強化という観点から、労働者保護に十分留意しながら必要な見直しを行うというふうにしているところであります。  今後の派遣労働者数の推移については、数量的に予測することは極めて難しゅうございますが、この改正法施行時に予定されております政令改正によりまして適用対象業務の追加が予定されていること、また、労使双方からの多様な就業形態に対するニーズが高まる傾向にあることなどから見まして、追加される業務分野を初めとして、一定の増加が見込まれていくと思うのであります。  なお、常用労働者、そして派遣労働者の関係も御指摘になりました。  この派遣労働者というものが、いわゆる日本雇用慣行とも言える終身雇用システムあるいは常用労働者を重視する、そういう雇用形態を崩してしまうようなことがあってはならないと私も考えておりまして、あくまで企業における業務の波動対策、あるいは特別な専門職、あるいは今回提起しておりますように、育児であるとか介護であるとかという関係でできてきました欠員を埋めるための代替要員、こういうものに当面は限定をして、雇用労働者の立場を根本から覆してしまうことのないようなそういう配慮は当然なこととしてこの運用を図っていきたい、このように考えているところであります。
  76. 上田(勇)委員(上田勇)

    ○上田(勇)委員 今、大臣の方からの御答弁の中で、派遣労働の形態というのはかなり定着してきている労働形態の一つであるというふうに言われて、私も認識しているところであります。そうであれば、労働者派遣について、これまでもいろいろなトラブルといったものが指摘されてきているわけでありますけれども、そうしたトラブルを防止し、今後派遣労働者がそういう雇用形態として安心して働くことができる、そういう対策が必要であるというふうに考えるわけであります。今回の法改正も、そうした点についてかなりの点で改善が見られているというふうに考えるわけであります。  そこで、当然今回の改正にもこうした考えは盛り込まれていると思うのですけれども平成六年度に労働省では労働者派遣事業実態調査というのを実施されていると思いますが、その結果を拝見いたしまして、その中からちょっと幾つか気がついた点がございます。それについてのお考えをお伺いしたいと思います。  この実態調査の結果を拝見しますと、労働者側それから派遣先事業所からの苦情、あるいはさまざまなトラブルについてのいろいろな分析が示されているわけでありますけれども、そうしたトラブルの多くは、派遣労働者派遣先企業との間の意識のギャップに起因しているものが大多数ではないかというふうに感じるわけであります。  これは、派遣労働者の側から見ると、派遣という労働形態に非常に積極的な評価を行っていて、しかも専門性志向というのでしょうか、これが強いことがうかがえるわけであります。  例えば、調査結果の中で、派遣という働き方を選んだ理由として第一に挙げられているのが、自分の能力を生かせるから、これは約四割の方が挙げているわけでありますし、専門的な技術や資格を生かせるから、これも三七%の人が挙げている。また、女性の立場からすると、働きたい仕事内容を選べるから、これがやはり三七%というような数字が出ております。つまり、働く者の方から見るときには、派遣という形で働いているこの働き方というのか、形態を非常に積極的に評価しているということがうかがえると思います。  ところが一方、派遣先企業の方の意識を見てみますと、これは非常に消極的というのでしょうか、何か補完的な評価が多いのではないかということが見受けられまして、派遣労働者の受け入れ理由として第一位に挙がっているのが、必要な人員を迅速に確保できるというようなことであるとか、あるいは通常業務の一時的な補充のためとか、そういう理由がトップに挙がっているわけです。  これほど働く側と受け入れる側との間に認識のギャップがあれば、働く側の希望と雇う側の要求がかみ合わないのは当然のことではないかというふうに考えるわけでありますが、こうした点をどのように認識されておるのか、また、今後こうしたずれ、ギャップをどのように解消していかれる考えなのか、御所見があればお伺いしたいと思います。
  77. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 ただいま御指摘のように、派遣就業におきますミスマッチの解消を図ること、これは派遣労働者の雇用の安定を図るという観点からも極めて重要な課題であるというふうに考えております。このため、派遣先におきます就業条件が的確に派遣労働者に対して明示されるよう、派遣事業主及び派遣先に対する効果的な指導等を一層積極的に行ってまいらなければならないと考えております。  また、今回の法律改正とあわせまして、中央職業安定審議会における建議、この中でも指摘がされておりますが、その建議を踏まえまして、モデル雇入通知書及びモデル就業条件明示書というものを作成して、これらに基づく指導啓発を積極的に行ってまいりたいというふうに考えております。
  78. 上田(勇)委員(上田勇)

    ○上田(勇)委員 ぜひその点、働く者の側の意識、それからそれを雇う側、受け入れる側の意識のずれといったものが縮まるように努力をお願いしたいというふうに考える次第であります。  そうすると、もう一つ、この実態調査の中で、派遣先事業所からの苦情という項目では、労働者技能レベルについてということが非常に多いわけであります。これはちょっとさっきの話と裏返しなのかもしれないのですが、やはり派遣元の事業所におきまして派遣労働者技能レベルを的確に把握することが必要であると思いますし、また、ある程度客観性のある評価といったものが必要なのではないか。できればそういう基準とかいったものも考えるべきではないかというふうに思うわけでありますが、この方法、こうしたことについてどのように考えられているのか。  また、最近は非常に技術の進歩も急速でございますし、OA化などによって事務の形態もかなり変化している。そういう技能と言われるものの中身の変化もかなり大きいのではないかというふうに考えるわけであります。そうすれば、技能向上のための能力開発、そういったこともやはりこれからますます必要になってくると思いますが、対策がございましたら、お考えを伺いたいと思います。
  79. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 御指摘のように、派遣労働者の教育訓練の充実につきましては、派遣労働者の労働条件の向上等のためにも大変重要な課題であるというふうに考えております。昨年十二月の中央職業安定審議会建議にもございまして、これを踏まえまして、派遣労働者の公共職業能力開発機関、民間教育訓練機関等による教育訓練の活用を促進するとともに、派遣事業主団体等が行う教育訓練に係る取り組みを促進してまいりたいというふうに考えております。  また、派遣労働者の有する技能水準の明確化を図る観点から、中央職業能力開発協会が派遣事業主の団体である社団法人日本事務処理サービス協会等の協力を得て実施いたします事務専門士に関する技能審査の対象部門の拡大等を検討することも含めまして、その充実を図ってまいりたいと考えております。
  80. 上田(勇)委員(上田勇)

    ○上田(勇)委員 若干時間前ではありますけれども、ちょっと区切りのこともありますので、この先は引き続きまた休憩後に行わせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
  81. 岡島委員長(岡島正之)

    岡島委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時七分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  82. 岡島委員長(岡島正之)

    岡島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上田勇君。
  83. 上田(勇)委員(上田勇)

    ○上田(勇)委員 それでは、午前中に引き続きまして質問をさせていただきます。  午前中も、この労働者派遣にかかわりますいろいろな苦情やトラブルについて若干触れさせていただきましたけれども、この派遣事業にかかわります事件やトラブルなどについては、私もいろいろなところで耳にするわけであります。  それで、これまで掲載されている新聞などをちょっと拾い読みをしてみましても、結構な件数がございました。九四年以降の新聞をざっと見ただけでも、例えば九四年の九月には、長野県内の建材会社に違法派遣があった、二年間で三千万円を仲介業者がピンはねをしていたというような事実もありますし、また九五年の二月には、埼玉県内で工事現場などへの派遣が行われていて、これは裁判で有罪判決も出ているわけでありますが、その裁判長のお話の中にも、この業者の利益の一部が暴力団の資金源になっていたというような発言も出ております。  またさらに同年、九五年の四月には、埼玉県内、熊本県内で暴力団が違法な派遣業を行い、資金源としていたというような記事も載っておりますし、さらにことしに入ってからも、長野県内で違法派遣、これも暴力団が関与していたというような記事が掲載されております。このほかにも、ざっと見ただけでも、神奈川県内、京都府、山梨県などでいろいろと悪質なケースの報道が見られました。  また、いろいろな関係者の方々から話を伺いますと、新聞に載るほどの悪質なものではなくても、相当問題となり得るようなケースもほかにあるというような話も聞くわけであります。  やはりこうしたとりわけ悪質なケースについては、厳格な対応が必要であるというふうに思うわけであります。被害に遭いました労働者の権利が侵害されたということはもう言うまでもありませんけれども、この労働者派遣業界全体のイメージダウンにもなっておりますし、また、大多数の業者は大変健全な経営をしているにもかかわらず、それにも迷惑が及んでいるということが言えると思います。これは労働行政としても、こうしたケース、また、いろいろな実態についてしっかりとモニターをしていただきたいと思いますし、とりわけ新聞記事にも載っているような暴力団関連のケースなどには、やはり警察当局とも密接な連携が必要ではないかというふうに思うわけであります。  そこで、こうした問題の実態をどのように認識されているのか、また、こうした悪質な事件、ケースを防止するためにどのような具体的な対策を講じられていて、今後どう対応されていくのか、見解をお伺いしたいと思います。
  84. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 ただいま御指摘のように、派遣先において適用対象業務以外の業務について派遣就業を行わせたり、あるいは形式的には請負と称しつつ実態は就労先が労働時間管理や人の配置を決定したり、あるいは業務に関する指示をしているなど、実質的には違法派遣となっているケース、あるいはただいま御指摘のようにそれに暴力団が関与しているというケース、そういうさまざまなケースが指摘されていることも事実でございます。  このため、これまでも私ども、適正な請負についてパンフレットの配布等により周知に努めるとともに、公共職業安定所におきまして、請負が適正に実施されていない疑いのある事業所に対して臨検指導を行い、適正な請負となっていないものについては是正指導を行うというようなこともやってまいったところでございます。  今回の法律案におきましても、派遣先適用対象業務以外の業務について派遣就業を行わせてはならないこと等について明確化するとともに、これらに違反する派遣先に適正な派遣就業を行わせるために必要な場合、勧告公表等措置を講ずることを盛り込んでいるところでございます。  いずれにいたしましても、この違法派遣の問題につきましては、労働者派遣法に基づきまして適切に執行されなければならないわけでございますから、御指摘のように、悪質なものについては警察当局とも連携を図りながら、適切な運営を図ってまいりたいというふうに考えております。
  85. 上田(勇)委員(上田勇)

    ○上田(勇)委員 もちろん、行政側からの過剰な干渉というのは慎重にしなければいけないわけでありますけれども、ルールに基づいて行われることが重要であるわけでありまして、そのルール違反については、やはり厳しく対応していただきたいというふうに思います。  とりわけ、こうしたいろいろな事件が報道されておりまして、多くのケースが暴力団の資金源になっていたというような報道があるわけであります。この派遣労働というのは必要な労働形態の一つであるというふうに考えますので、業界全体の健全性を保つ上でも、こういう悪質なケースの取り締まりについては、ひとつ今後ともとりわけ神経を使って対応していただきたいというふうに考えるわけであります。  次に、この派遣事業は、法律上、適用対象業務限定されているわけであります。現在のところ十六分野というような業務限定されているのですが、そうした内容を見てみますと、労働省の報告によりますと、九五年度の派遣された業務の種類の中で最も多い分野というのは、一般派遣事業の方でいえば第一位が事務用機器操作という分野であります。  この事務用機器、この派遣法の中で想定しているものは、かなり高度な技能を有している作業だというふうに理解されるのですが、ただ派遣労働者からの苦情等を見てみますと、事務用機器などの操作というのは、いわゆる一般の事務職との境界線がかなりあいまいになってきているのではないかという感じがするわけであります。今一般の事務職においても事務のOA化が進んで、かなりそういう意味では事務機器の操作というのが行われているわけでありまして、その専門性、専門職と一般事務職との境界というのが非常にあいまいな面が出てきているのではないかという感じがするわけであります。  そのほか、この十六分野の中でもデモンストレーションなんというのがあるのですが、これもいわゆるキャンペーンガールだとかマネキンなどとの境界といったものも、若干わかりにくい面もあるのではないかというふうに思うのですね。  ある新聞記事によりますと、実際に現場で行政を担当されている県の方の発言が引用されているのですが、ちょっと読ませていただきますと、キャンペーンガールなどはその製品の専門知識を有するものと解釈すれば適法だが、実際のところ法律すれすれか、限りなく灰色に近い派遣業を行っている会社が目立っているという発言が引用されております。労働省の見方とは異なるのかもしれませんが、こうした発言が出るということは、こういう労働行政の現場で、今この法律で想定されておる派遣事業について、意識がかなり混乱しているのではないかというふうに考えるわけであります。  現行法におきまして、今回の改正法も含めてでありますが、派遣事業専門性あるいは技術のレベルの高い業務分野に限定されているわけでありますけれども、現実にはその境界線がかなり不明確になっていて、いわゆる派遣という雇用形態が常用雇用だったり、その他の雇用形態とかなり区別しにくく、混然となっているケースもあるのではないかと、これらのことを見るときに考えるわけであります。  それで、労働省として、この派遣事業の定義、これは現行法律ではその適用対象業務限定しているわけでありますので、派遣事業の認められる業務の定義の明確化、それと労働者派遣という雇用形態の趣旨の周知徹底、こうしたことにさらに努力すべきというふうに考えるわけでありますが、所見をお伺いしたいと思います。
  86. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 ただいま、適用対象業務の範囲について、その境界線がわかりにくい、そういう問題があると御指摘ございまして、例としまして事務用機器操作あるいはデモンストレーションという対象業務についてお話がございました。  これにつきましては具体的に政令で定められているところでございまして、事務用機器操作につきましては「電子計算機、タイプライター、テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作の業務」、あるいはデモンストレーションでいいますと「電子計算機、自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識技術又は経験を必要とする機械の性能、操作方法等に関する紹介及び説明業務」というような形で政令上定めているわけでございます。  ただ、御指摘のように、その具体的な解釈につきましては、派遣事業主やあるいは派遣先に対してはパンフレット等を活用して、あるいは公共職業安定所の職員等に対しましては各種会議、研修等の場を活用して、その業務の範囲についての解釈にそごが生じないように努力はしているところでございます。  しかしながら、個別のケースでいきますと、今言ったような政令上の文言で、その対象業務に含まれるかどうか、にわかに判断しがたいものが出てくるケースもあるわけでございまして、こうした場合にはこの解釈を明確かつ統一のものとするとともに、その速やかな周知徹底に努めることが必要である、そういう努力をいたしているところでございます。  今後とも、対象業務の範囲の解釈につきましては、各種会議の場あるいはパンフレット等の方法を積極的に活用しまして、関係者の間で理解の徹底が図られるように、さらに努力をしてまいりたいというように考えております。
  87. 上田(勇)委員(上田勇)

    ○上田(勇)委員 今お話ししましたように、また御答弁の中にもありましたけれども、実際の現場の行政においてはかなりわかりにくくなっている部分が現実にはあるということであります。法律趣旨からいえば、この法律の構成からして、適用対象業務というのがやはり限定されているわけでありまして、今後はいろいろな方向考えられるということであると思いますけれども、少なくとも現在の法律あるいは今回提案されている法案においては、そういう前提のもとにいろいろな条件が整っているというふうに理解しますので、ひとつその辺の混乱をなくすように、また御努力をお願いしたいというふうに思います。  その上で、今その適用対象業務をさらに広げようというお考えだというふうに伺っております。九五年十二月の審議会建議を受けまして、今作業しているというふうに聞いているわけであります。さらに十二の分野について適用対象業務を拡大するということでありますが、具体的に適用対象を拡大する分野、こうした分野を選んだ理由、それから、これは政令事項ということでありますので政令改正に向けてのスケジュール、今後の方針についてお伺いしたいというふうに思います。
  88. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 ただいま御指摘労働者派遣事業適用対象業務の拡大につきましては、昨年十二月の中央職業安定審議会建議におきまして、御指摘のように、十二の業務について新たに適用対象業務とすることが適当であるというふうにされているところであります。  これにつきましては、中央職業安定審議会におきまして、各方面から御要望のあった個別の業務について、専門的な知識技術または経験等が必要な業務であること、労働力需給の迅速的確な結合を図るために、労働者派遣事業として行わせる必要がある業務であること、常用雇用労働者の代替を不当に促進しない業務であること、この三つの基準に基づきまして、適用対象業務とする必要性を具体的に検討して、十二の業務について御建議をいただいたというふうに理解いたしております。  この適用対象業務の具体的な範囲につきましては、今後この法律が成立をお認めいただきました後に、この法律の施行令において明確にすることといたしておりまして、中央職業安定審議会においてさらに御審議をいただいた上で、この改正労働者派遣法の施行とあわせて、政令によって実施してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  89. 上田(勇)委員(上田勇)

    ○上田(勇)委員 今回、拡大を御検討されている十二の分野の中に、例えばその中の一つに病院における介護の業務といった分野がございます。これはもちろんそうした需要というのが、ニーズというのがあるということは今の社会情勢の中で十分理解できるわけでありますけれども、例えば現在の家政婦紹介事業、これは有料職業紹介事業として認められている分野の一つであります。それとの関係性というのでしょうか、どういう位置づけになるのか。  また、その他の分野についても、一般論といたしまして、今認められています民間の有料職業紹介事業との関係について、これはもちろん雇用の形態が異なるというのはわかりますが、実際に労働者が適材適所で仕事につくという上で、それはその補完的な役割を果たすのか、あるいは競合、競争することによってよりサービスの向上といったものが考えられるのか、そうしたこれらの有料職業紹介事業との関係性、位置づけについて労働省の見解をお伺いしたいというふうに思います。
  90. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 労働者派遣事業と民営職業紹介事業につきましては、労働力需給調整システムとしては制度的には違うものでございます。かつ機能の面でも異なっておりますので、有料職業紹介事業対象職業となっている業務分野を労働者派遣事業対象としたときに、直ちにそこでバッティングが生ずる、こういうものではないというふうに理解いたしているところでございます。  しかしながら、既に有料職業紹介事業によって円滑な需給調整が図られている分野について、労働者派遣事業として新たに行わせるということにいたしました場合に、労働市場に無用の混乱を招き、かえって労働者保護に欠けるおそれがある、そういう面もあるわけでございまして、そういう面での調和に配慮する必要があるということから、昨年十二月の中央職業安定審議会建議におきます適用対象業務の検討に当たりましても、関係団体等から五十数業務の要望もあったわけでございますが、その辺を十分検討し十二業務に絞ってきた、こういう経緯があるわけでございます。
  91. 上田(勇)委員(上田勇)

    ○上田(勇)委員 先ほど、現行の対象業務につきまして、若干わかりにくい面もいろいろと出てきているということをお話しました。さらにまたそれが十二追加されるわけであります。  そうすると、基本的な考え方というのは、いわゆる労働者派遣に適する業務というのは、専門性あるいは技術性の高い分野が原則であるというふうに思うわけでありますけれども、そういう面で、そういった専門性技術性といったことが若干わかりにくくなっているのが今日の現状ではないかというふうに思うわけであります。そうすると、いろいろな考え方があると思うのですが、なかなか適用対象業務限定的に表現するのが難しい面も現実には出てきているのではないかというふうに思うわけであります。  そうすると、今回の改正あるいは現行法においては、適用対象業務限定的にとらえるという前提に立っているわけでありますが、今後そういう境界が非常にわかりにくくなってくる。また、その適用対象業務の種類が追加されていくというときに、今後ともそういうふうに適用対象業務限定的な形でずっととらえ続けるのか、それとも、そういったことが現実的に無理になる面もあるので、いろいろなその他の諸条件を整備しながらもっと緩やかにされていくのか。これはもっと中長期的な観点になると思いますが、その辺の労働省としてのお考えをお伺いしたいというふうに思います。
  92. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 今回、新たに適用対象業務として中央職業安定審議会建議いただきました十二の業務につきましては、法律の施行とあわせて政令で具体的に指定する際にできるだけ業務の範囲を明確化する、そういう努力をいたしたいと考えているところでございます。  なお、今後の課題として、こういう専門性に着目して適用対象業務を拡大するという方式でなくて、もっとその辺は緩やかに考えるべきではないか、こういう御指摘でございます。  今後の労働者派遣事業あり方につきましては、政府におきます規制緩和推進計画に基づきまして、本年度中にさらに関係審議会で検討を開始する予定にいたしているところでございますが、そこでの課題として、今言ったような御意見、それからもう一つは、労働者保護という観点から、むしろ規制を新たにどう考えるかという観点、さまざまな観点があろうかと思いますが、そういうことを含めまして関係審議会で十分御議論をいただき、検討してまいりたいというふうに考えております。
  93. 上田(勇)委員(上田勇)

    ○上田(勇)委員 ぜひとも幅広い御検討というのでしょうか、将来、中長期的な観点から、いろいろな方面から、可能性を含めた御検討をお願いしたいというふうに思います。  最後に、これは派遣労働ということとは直接は関係ないことでございますが、今日の雇用情勢の中で、一般的に、いわゆるホワイトカラーの職種の雇用の安定といったことが大きな課題になっているというふうに思います。  産業構造が非常に急激に変化する中で、先ほど午前中に他の委員からも御質問がありましたが、終身雇用制と言われる従来の雇用形態、労働慣行といったものがもとにありましたが、いわゆるホワイトカラー労働者業種間あるいは企業間の移動というのが多くなっているのが最近の傾向であります。しかし、現実にはこの移動が必ずしもスムーズに行われていない。そのために労働力とそれから労働需要との間の雇用のミスマッチが起きていて、その結果雇用の不安が起きている、そういう現状ではないかというふうに私は認識しているわけであります。  その理由というのでしょうか原因を考えてみるときに、現行の公的職業紹介だけではこれらのミスマッチに必ずしも有効に対応し切れていないのではないか、そういう指摘も最近いろいろなところで聞かれるようになっております。  現在、労働省で行われています職業紹介は、比較的仕事が汎用的であるというのでしょうか、どこに行っても通じるような一般事務職が対象になっていて、伺うところでは、いわゆるホワイトカラー、サラリーマンとして働いていた人たちが、今までの職歴であるとか経験、特技、そういったものをアピールしようとしても、必ずしも十分に表現できないような形になっているという指摘も私も伺いました。  一方、この派遣事業あるいは民間有料職業紹介事業では、その対象としているものが専門性あるいは技術力といったことに着目しているために、管理職であるとか、かなりレベルの高い技術者、そういったものに限定されているわけであります。  そうすると、ちょうど一番今雇用のミスマッチというのが現象として起こっている中間層への対策というのが、どちらからもちょっと不適切というか、派遣や民間の職業紹介では対象にされていないし、国のやっている職業紹介ではそのニーズに十分対応できていないという面もある。そうすると、この中間層への対策というのがちょっと取り残されているような部分がありまして、このホワイトカラーの雇用のミスマッチといったことを解決していくためには、ここのマッチングをひとつ緊急に考えていく必要があるのではないかというふうに思います。  こうしたことについての所見と、それからまた具体的な対策があれば、お考えを伺いたいというふうに思います。
  94. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 ただいま御指摘ございましたように、急激な産業構造の転換等に伴いまして、特にホワイトカラーの方々の雇用不安、こういうものが問題になってきておるというのは御指摘のとおりでございます。そういうところに企業から見ると雇用の過剰感がある、こういうことが言われているわけでございます。  こうした状況のもとでは、雇用機会が減少する分野から雇用機会がより多い雇用創出の必要な分野、そういうところに労働移動がより多く起こってくる、そういうことによって雇用不安を生じさせないようにする、そういうことが今後の重要課題であるわけでございます。  これはなかなか難しい問題でございますが、できるだけ失業させない形で労働移動が起こるような枠組みが必要になってくるわけでございまして、この点につきましては、労働省といたしましても、昨年十二月に策定いたしました第八次雇用対策基本計画を踏まえまして、改正中小企業労働力確保法に基づく中小企業の活力を生かした雇用機会の創出、あるいは改正業種雇用安定法に基づく失業なき労働移動に取り組む事業主への支援、そういうような対策を進めているところでございます。  あわせまして、公共職業安定所において、今後、求職者、特にホワイトカラーの方に対するきめ細かな職業相談・職業紹介の実施、あるいは情報機器等を活用した求人・求職情報の提供機能の強化、さらにこの点に努めていかなければならないというふうに考えているところでございます。  あわせまして、ただいまも御指摘のように、労働者派遣事業に関しましても、今回の改正で新たに適用対象業務考えております中に、企業におきます事業の実施体制に関する企画、立案等の業務あるいは研究開発の業務というようなものも含まれておりますが、こういういわゆるホワイトカラー分野の業務について、労働者派遣事業でも改正法の施行とあわせて対処してまいりたいというふうに考えているわけでございます。  民営の職業紹介事業の問題につきましても、これは現在具体的に中央職業安定審議会において御検討いただいているところでございますが、その問題点一つといたしまして、御指摘のような、ホワイトカラーの方々の例えばより専門的な仕事について検討すべきではないかというような御意見もあるところでございまして、この点につきましては、いずれにいたしましても本年中に中央職業安定審議会で御検討いただき、その結果を踏まえて来年度対処してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  95. 上田(勇)委員(上田勇)

    ○上田(勇)委員 今いろいろと対策、考え方を御答弁いただきましたけれども、いわゆるホワイトカラーの雇用のミスマッチといったことが一番の雇用不安の原因であるというふうにいろいろなところで指摘されているわけであります。  国のやっている職業紹介についても、よりきめの細かい対策を講じるという御答弁も今いただきましたし、また、特に私自身が考えるには、幾らきめ細かいといっても、たくさんの件数を扱う公的な職業紹介だけでは、あるところではやはりどうしても限界があるのじゃないかというふうに思いますので、今、今後検討するということでありましたが、ぜひとも民間も含めていろいろな手段、いろいろな方法を考えまして、この問題に早急に取り組んでいただきたいというふうに考えるわけであります。  もう時間が来ましたので、ここで終わらせていただきます。大変ありがとうございました。
  96. 岡島委員長(岡島正之)

    岡島委員長 桝屋敬悟君。
  97. 桝屋委員(桝屋敬悟)

    ○桝屋委員 それでは引き続きまして、労働者派遣事業法改正案につきまして質疑をさせていただきます。  本日は、私は、今同僚の上田議員からも最後の方で議論がございましたが、特に今回の政令の改正でありますが、適用対象業務に病院における介護の業務が予定されております。今から具体的な政令改正の作業に入るのだろうと思いますが、政令改正はなかなか国会での議論ができないものでありますから、本日はかなり突っ込んだ議論も、あるいはまた少々乱暴な議論になるかもしれませんが、二十一世紀の介護労働力確保という観点から本日は議論をさせていただきたい、このように思うわけであります。そういう意味では、きょうは厚生省の説明員さんにもおいでいただきました。大変に御苦労さまでございます。  最初にお伺いしたいのは、今回の適用対象業務、病院における介護の業務ということになっております。当然ながら、介護の業務といいますと、病院だけに限らず施設あるいは在宅、いろいろな分野で介護というものはあるわけでありますが、今回、病院の介護という表現になった背景といいますか経緯をまず最初にお伺いしたいと思います。
  98. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 ただいまの点でございますが、今回の労働者派遣法の見直しにつきましては、中央職業安定審議会においてさまざまな議論をしていただき、その結果として昨年十二月に建議をいただいたわけでございますが、その議論の過程におきまして、まず一部の委員から、病院における介護を含めた介護業務全般について、高齢化社会に対応するためのマンパワー確保のために特に重要な業務として、適用対象業務に追加することについての提案がございました。  これを受けて介護業務についての議論が行われる中におきまして、なお別の委員の一部から、公的介護保険制度の検討が行われている現時点では、この業務の追加については慎重に対処する必要があるとの意見がございましたが、結局、病院付き添いの廃止等もございまして需給調整システムとしての必要性が特に高く、また、公的介護保険の影響が少ないと思われる病院における介護の業務について、適用対象業務に追加することが適当である、そういうことで建議がされたというふうに理解いたしております。
  99. 桝屋委員(桝屋敬悟)

    ○桝屋委員 ちょっと私、聞きそびれたのですが、公的介護保険の検討が今厚生省の方で進んでおるということで、いわゆる公的介護保険の影響というものが病院は一番少ない、これが二つ目だったですね。一つ目は何だったですか、済みません、もう一度。
  100. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 再度申し上げますが、中央職業安定審議会におきまして、委員の一部から、介護業務全般について、高齢化社会に対応するためのマンパワー確保のために特に重要な業務として、適用対象業務に追加するべきである、こういう提案がまずあったわけでございます。  これを受けて介護業務についての議論が行われる中におきまして、委員の一部から、公的介護保険制度の検討が行われている現時点では、この業務の追加については慎重に対処する必要があるとの意見がございましたが、結局、病院付き添いの廃止等もあって需給調整システムとしての必要性が特に高く、また、公的介護保険の影響が少ないと思われる病院における介護の業務について、適用対象業務に追加することが適当である、こういう建議になったというふうに理解いたしております。
  101. 桝屋委員(桝屋敬悟)

    ○桝屋委員 済みません、再度お答えをいただきましてよくわかりました。  付添看護が廃止になったということで、恐らくニーズがあるだろうということが一つと、それからもう一つは、公的介護保険の影響がない、ここは私は理論的にはちょっと理解できないのであります。当然ながら、公的介護保険は病院の問題も入っておるわけでありますから、病院だけ何で影響が少ないのか、ちょっと理解はできませんが、理由はわかりました。  そういたしますと、では、今回この派遣法の改正で適用対象業務になった新たな病院における介護の業務でありますが、民間の人材派遣会社が病院の介護業務労働者派遣するということができるわけでありますけれども、これはどうでしょうか、病院サイドあるいは医療サイドの受け入れの体制というのは、これから検討されるのかもしれませんが、整うのか整っているのか。  最初に、医療法上の取り扱い、これは当然ながら、医療提供の理念という医療法上の精神があるだろうと思うのですが、病院、医療機関の中でチームプレーをやる、いろいろな業種が一緒になってやっていくという、そこの体制ができるのかということが一つ。それから、こういう人材派遣が参画をするということになって医療保険制度上大丈夫なのかどうか。その二つについてまず厚生省の御説明をいただきたいと思います。簡略で結構でございます。
  102. 石本説明員(石本宏昭)

    ○石本説明員 御質問のございました、病院に対して介護労働者派遣した場合の病院サイドの受け入れ体制の問題につきましてお答えいたします。  私どもといたしましては、医療というものがそもそも人の生命あるいは健康に直接かかわるサービス業務であるということからしまして、医師や看護婦あるいは看護補助者などから成りますチームによりまして、患者さんに一体としてサービスが提供されるといったものが医療サービスではないかというふうに考えております。  このため、介護補助者といいますか、あるいは看護補助者という者でございましても、その業務を行うに当たりましては、医療関係従事者との間でしっかりとした信頼関係が必要でございまして、仮に短期的、継続的な就労を前提とする看護補助者の派遣形態というものを認めます場合には、良質な医療サービスの確保という面で支障が生ずるおそれもあるというふうに考えております。  したがいまして、病院の介護業務派遣業務とするかどうかにつきましては、医療関係団体等の意見も十分踏まえながら慎重な検討が必要と考えております。
  103. 桝屋委員(桝屋敬悟)

    ○桝屋委員 もう一点、医療保険制度の方はどうでしょう。
  104. 石本説明員(石本宏昭)

    ○石本説明員 なお、診療報酬上の取り扱いにつきましては、看護料については、実際に業務に従事している人数に応じた評価を行うということとしております。
  105. 桝屋委員(桝屋敬悟)

    ○桝屋委員 ありがとうございます。  これは、政令改正が今からでありますから今のようなお答えになったのかもしれませんが、どうも結論部分を聞いていますと、慎重に検討されるという話であります。今回、労働省さんが予定をされている適用対象業務に病院における介護の業務を加える、こういうことはかなり予定をされているわけでありますから、今のようなお話で果たして大丈夫かなという気がいたします。ここは両省いつもなかなかぎくしゃくしているわけでありますから、こういう政令改正になれば、やはり受け皿の体制もぜひ御努力をお願いしたい。  慎重にというのは結構であります。確かにおっしゃるように、医療におけるスタッフの一員として今の人材派遣を迎えるということはいろいろな問題があろうと思いますが、しかし、法の穴ができれば、実際に私は今の付添看護・介護が廃止された医療機関の実態を聞いておりますと、いろいろな看護補助者あるいは介護補助者を常に一定数確保しなければいかぬというその労務管理は大変なわけでありまして、お悩みの声を現場で聞いております。そういう意味では、私は、この人材派遣を適正に運用していくということもある方法ではあるだろうと思っているわけでありますから、どうか両省よく協議の上、準備を進めていただきたいというふうに思うわけであります。  よもや慎重に検討した結果、いやいや、労働省はこの人材派遣を認めたけれども、厚生省、病院は、医療機関は受け入れられないということになるのでは、ちょっと心配だなという気がするわけであります。大臣、けげんそうな顔をされていますが、今の議論の結果は実際そんな可能性もあるわけであります。恐らくそういうことはないと思いますが、私は、ぜひ両省連携の上、作業を進めていただきたい。お願いをしておきたいと思います。  局長、今手を挙げられましたが、お答え何かありますか。
  106. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 適用対象業務の拡大につきましては、この労働者派遣法の改正をお認めいただきました場合に、その施行にあわせて政令改正で対処するということでございます。したがいまして、この実施につきましては、政令改正、あるいはその前には関係審議会への諮問、こういうこともございますが、その辺の手順を踏んで、関係者とよく御相談した上で対処してまいりたいというように考えております。
  107. 永井国務大臣(永井孝信)

    永井国務大臣 先生の御心配でありますが、これは内閣提出法律案でございます。労働省が所管しておりますが、内閣の閣議を経て出した法律案でございますから、先生の御心配のような、厚生省と労働省との関係においてぎくしゃくがあったり、あるいは対応に違いがあったりして問題が生じないようにすることは当然なことでありますから、御心配のないようにいたしてまいります。
  108. 桝屋委員(桝屋敬悟)

    ○桝屋委員 わかりました。大臣のお気持ちは大変よくわかるわけでありますが、実は、政令改正ですから、今局長さんの御答弁では、政令改正は今からやるのですから、結果的にはどうなるかまだわからない余地が残っているということでしょう。私は、まだ決定をされたものではないのだろうというふうに理解をしているのです。  ただ、私はこの方向性は賛成でありますから、ぜひ進めていただきたい。そのときにはやはり厚生省さんと相当な協議が必要なんだろう、このことをお願い申し上げているわけであります。多分両省同じことを言っておるのだろうと思いますから、これ以上申し上げません。  そこでお伺いをするのでありますが、労働市場の実態から、現実にこうした取り組み、今の病院における介護の業務、これが人材派遣になった場合でありますが、こんな取り組みを行う企業とか事業所というのは実際に想定をされるのかどうか、その辺の労働市場の状況をどのように認識しておられるのか、お伺いしたいと思います。
  109. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 現在、病院におきましては、御承知のように付添看護の解消が進められておりまして、これを代替できる介護マンパワーが十分確保できないことに伴う種々の問題につきまして、マスコミ等でも報道されているところでございま す。  このような中で、病院における介護の業務労働者派遣事業が導入された場合、多様な就労希望を持つ潜在介護労働力を掘り起こしまして訓練し、各病院の実情に応じて即戦力として供給することが可能になる、こういう点から、付き添い廃止後の病院において、常勤の看護婦やあるいは看護補助者のみでは手薄となると考えられる夜間や繁忙時間帯の看護マンパワーの確保に貢献できるものというふうに考えておるところでございます。  また、派遣労働者につきましては、請負事業の場合と異なりまして、就労場所における指揮命令に服するものであることから、派遣先の看護チームに組み込むことも可能になるものと考えております。  このような労働力需給両面でのニーズあるいはメリットもあることから、制度が導入されました場合には、これに取り組もうとする民間事業者は少なからず出てくるものというふうに考えているところでございます。
  110. 桝屋委員(桝屋敬悟)

    ○桝屋委員 わかりました。そういう制度が改正になれば、お取り組みになる業者もあるだろう、事業所もあるだろう、こういうことでございます。  実は私は、介護労働力の問題につきましては、昨年の七月に発表されました介護労働研究会、これは局長の懇談会のように伺っておりますが、この報告書には大変関心を持っております。隅から隅まで読ませていただきまして、大変に示唆に富む内容が入っておる、このように思っておるところであります。  この報告書では、特に介護労働者の需給調整機能の整備というのはやはり今後急務だという認識に立ちまして、いわゆる請負という形態あるいは民営職業紹介という形態、それからさらには今回法案になっております労働者派遣という制度、この三つのパターンを比較検討しまして、今後のあるべき介護労働力の需給調整の姿のようなものを検討していただいた、私はこのように理解をしているわけであります。  その一定の方向も出されているようでありまして、この報告書の概要で結構でございます、エキスの部分で結構でございますが、方向性をお伺いしたいと思います。
  111. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 昨年七月に発表されました介護労働研究会報告書におきましては、高齢化社会の進展の中で介護労働者確保するための方策を提言したものでございまして、その中におきましては、短期、短時間等のニーズを含むあらゆる介護ニーズに対して、直ちに即戦力を供給できる労働力需給調整機能の整備の必要性を指摘されているところでございます。  また、そのような観点から、現在のような民営職業紹介と請負の形態のみでは、今後の介護労働力需要の大幅な量的拡大や質的な高度化、多様化対応することは困難であり、介護分野においては、これら既存の形態に加えて、労働者派遣の形態を導入する必要性があるとしているところでございます。
  112. 桝屋委員(桝屋敬悟)

    ○桝屋委員 ありがとうございます。  今、本当にエキスの部分の御説明がありました。私も読んでみまして、この介護労働研究会の結論部分としては、今現在、実際に介護労働力として、介護の形として運営されている請負と、それから民営職業紹介というものを比較検討して、それぞれやはりメリット、デメリットがある。その上で、今後はこの人材派遣労働者派遣事業も介護労働力の需給調整にとって非常に重要だ。あるいは、請負それから民営職業紹介それぞれのデメリットを、双方の欠点を補う形として、今後の介護労働力確保のために労働者派遣制度に介護を導入したいという考え方でありまして、ある意味では大変すばらしい考え方ではないかな、私はこう思っておるのであります。  確認をいたしますと、もう一回局長に御説明をいただきたいのですが、請負のメリットは結構でございます。請負の欠点、それから民営職業紹介の欠点を挙げていただいて、その上で労働者派遣制度考えられているわけですから、そこのところをもう一回御説明をいただきたいと思います。
  113. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 まず、請負のデメリットでございますが、就労先の指揮命令を受けることができないので、病院、施設等におきまして医師、看護婦等の指揮下に入ることができず、また、在宅においては要介護者の状態の変化に応じた臨機応変なサービスや、要介護者の生活状況やその希望に即したきめ細かなサービスの提供が行えない、こういうデメリットがございます。  また、民営職業紹介のデメリットといたしましては、雇用主が労働基準法が適用されない一般家庭の場合が多く、介護労働者の福祉の増進や職業能力の向上を図っていく上で困難な面があることや、介護労働者が雇用主に対して損害を与えた場合における問題解決に不安があることなどが挙げられると考えております。
  114. 桝屋委員(桝屋敬悟)

    ○桝屋委員 今局長がおっしゃったように、現在、介護のサービスという言葉を使いましょうか、介護サービスについては多くが請負という形でやられている。この請負については、やはり請負元が全部指揮監督権を持っているわけでありますから、介護の現場で、それが病院であれば、病院のチームの中でその指揮監督のもとに入ることはできない。在宅であれば、在宅の方の利用者の指揮監督、指揮命令関係はないわけでありますから、そこはどうしてもサービスが画一化してしまうというデメリットがありますよ。  それから民営職業紹介については、今度は逆に利用者の方は指揮命令関係があるのだけれども、それだけに派遣元の方が、紹介元の方が管理監督をしておりませんから、利用者から見るとそこは大変不安だ。  この二つの欠点を補う形で人材派遣といいますか労働者派遣事業に介護を取り入れれば、まさにこの二つの欠点を補う。そして、利用者にとってより利便性の高い、より利用しやすいサービスができるのではないかという、この介護労働研究会の結論はこういう結論なのですね。そういう研究であります。  私も長い間介護の現場でいろいろな仕事を見てまいりましたから、この結論については、まことになるほどと目のうろこが落ちたような気がしたわけでありまして、二十一世紀の超高齢化社会の中で多くの要介護者がふえてくる。その中でより利用者の本位、利用者の立場に立ったサービスを展開する上では、ある意味ではこの労働者派遣制度というのは、もちろん欠点もあるだろうと思いますが、本当にすぐれている、そういうことを深く認識した次第であります。  さて、そこで確認でありますが、これは今も局長がまさしく説明されたように、何も病院の介護に限った結論ではないわけですね。在宅をも含めて検討されておられるわけでありますが、その点、施設も含めて再度確認をしたいと思います。
  115. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 この報告書の検討におきましては、請負は民間サービスのみを検討対象といたしております。公的な介護サービスといたしましては、特別養護老人ホーム等の施設介護サービスと公的ホームヘルパーによります在宅介護サービスがあるわけでございますが、これらについては公的介護保険制度の検討の中でそのあり方の検討がされておりましたために、この報告書におきましては直接の検討対象とはしなかったということでございます。  ただ、問題点としまして、メリット、デメリットにつきましては、先生指摘のように、一般的な考え方として指摘されているところでございます。
  116. 桝屋委員(桝屋敬悟)

    ○桝屋委員 ちょっと答えが私の議論とかみ合っていないのです。  もう一回聞きます。この平成七年七月の介護労働研究会、局長の懇談会で議論されたときには、当然ながら、病院の介護だけを検討対象としたものではなくて、在宅も、あるいは施設も含めて、請負それから民営職業紹介労働者派遣という三つのパターンで比較検討されたというふうに私は理解しておるのでありますが、再度確認をさせていただきたいと思います。
  117. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 介護業務についての追加の適否が議論された中におきまして、一部の委員から、公的介護保険制度の検討が行われている現時点では、この業務の追加については慎重に対処する必要があるという意見がございました。結局、最終的には病院付き添いの廃止等もあって需給調整システムとしての必要性が高く、公的介護保険の影響が少ないと思われる病院における介護の業務について、適用対象業務に追加することが適当である、こういう考え方で整理されたというふうに理解いたしております。
  118. 桝屋委員(桝屋敬悟)

    ○桝屋委員 局長のお答えしたいことはよくわかるのでありますが、私がお尋ねしたいのは、局長、僕の顔を見ていただけますか。この介護研究会があったときには、まだ公的介護保険がどうのこうのではないわけであります。もちろん水面下の議論はあったと思います。  私が室尋ねしたいのは、実はこのときに介護という業務全般を視野に入れて検討されたのです。それで、病院の介護もあるし施設の介護もある、在宅の介護もある。そういういろいろな介護の業務の中で、形態としては請負という形もあるのではないか、それから民営職業紹介という形もある。しかし、それぞれ欠点があるので、やはりそういう欠点を補う形としては労働者派遣制度は非常に有意ではないか、こういう結論がこれで出ているのですよ。何も病院に限ったことではないでしょうということを私は確認をしたいわけであります。
  119. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 御指摘のとおりでございます。
  120. 桝屋委員(桝屋敬悟)

    ○桝屋委員 それで、今局長が私の先までお答えいただいたのですが、ただ問題は、このときに議論されたのは、恐らく厚生省さんが専門とされておられる公的な部分の介護サービス、例えば特養とかあるいはホームヘルパーとかそういうパブリックな形で運用されているサービスは、労働省がやることですから、よその省の仕事に余り立ち入れないので、むしろここは民営、民間のサービスを想定して議論したのだ、こういうふうにお答えがあるかもしれませんが、局長、そこはどうでしょうか。
  121. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 そういう考え方でございます。
  122. 桝屋委員(桝屋敬悟)

    ○桝屋委員 わかりました。恐らくそうだと思うのです。  しかし、この介護労働研究会に書いてあることは、実は厚生省所管でおやりになっているいろいろなパブリックなサービスも含めて、まさにある意味では今の公的なヘルパーだってそうであります。今、公的なヘルパーが議論されているのは、やはり請負でやられていますから、市町村が実施主体で、市町村長が決めたサービスということを派遣申請があったときに決めてしまうのですね。その派遣決定に基づいて、あなたのところの家庭ではこういうサービスをやりますというふうに派遣決定のときに決めてしまうのです。そのサービスを出て現場に行ってサービスはできないわけでありまして、これがまさに請負の欠点であります。  しかし、これからの介護サービスというのはいろいろなニーズが出てくるだろう。そういう意味では、まさにこの労働者派遣というシステムも、これからの介護サービスのありようとしては非常に示唆に富んだ結論だな。何も民営、民間に限ったことではない。厚生省がおやりになっているそういうサービスも含めて、私は大事な結論ではないか、こう思うわけであります。  そこで、きょうは厚生省さんにおいでいただいておりますが、この報告書の内容について見られているのかどうか。読まれてどのように認識をしておられるのか。社会・援護局は来られていますか。ちょっと認識をお尋ねしたいのです。
  123. 柴田説明員(柴田雅人)

    ○柴田説明員 介護労働研究会の報告書につきましては、私どもも読んでおります。  その中で、病院とか社会福祉施設、それからホームヘルパーなどの在宅福祉分野、ここに労働者派遣形態を導入するということは、先生さっきおっしゃったように入っているわけでございますが、まず病院につきましては、先ほど私どもの健康政策局の総務課長が申し上げましたように、医療サービスは医師、看護婦、看護補助者などから成るチームにより一体として提供されるということでございまして、いいサービスを提供するということからすると、やはり問題があるのではないか。  それから、特別養護老人ホームなどの社会福祉施設につきましても、対象者個々の特性に応じまして一定の処遇方針を立てて、そして非常に安定した形で、というのは、例えば寮母さんとの関係や何かも、安定した形で処遇していくということが本人にとっても非常に安定するわけでございます。そういう見地から見ても、私どもとしては、こういう短期断続的な派遣形態というのは問題があるのではないかというふうに思っております。  それから、今度は例えば職員の教育とか研修という面で考えてみますと、個々の病院とか施設の特性をそれぞれ配慮しまして、どうしてもほかの職員との連携、チームプレーということが出てきまずから、そうしたことを考慮した上で行う必要があると思いますけれども、短期断続的な派遣ではこういう研修もなかなか難しいのではないか。  それから三番目に、一番大きなところかもしれませんが、在宅介護業務について派遣形態を導入するということでございますけれども、そういう形態によるサービスが必要とされているのかどうかということについては、私どもとしては必ずしもそう強い声を聞いているわけではございませんし、それから、仮に導入すると、これは先ほどからのお話にもございましたように、介護が必要なお年寄り、あるいはその方の家族から指示を受けながら仕事をするということになろうかと思います。  ところで、介護サービスというものを考えてみますと、本人の、要するに介護が必要なお年寄りの残された能力というのを維持し、拡大するということを目的として計画的に行われるものでありますから、その御本人あるいはその御家族の指示を受ける形では、御本人に負担を生じるような介護を避けがちとなる。  もうちょっと具体的に申し上げますと、例えば寝たきりのお年寄りを考えてみますと、体の一部にどうしても麻痺があるとかいうことでございまして、起き上がる、着物を着がえる、あるいは入浴する、そういうことは本人にとっては大変苦痛というか、痛いわけでございます。それを痛いからということでそのままにしておきますと残存能力がどんどん落ちてきまずから、そこをできるだけ負担を少なくしながら、保健医療関係者との連携もとりつつ、専門的な知識でもって少しでも動かしていくということが残存能力の維持活用にプラスになるのではないか。  そういうことから見ますと、御家族とか本人から指示を受けて動くということについては、やはり問題があるのではないだろうかというふうな認識を持っています。  以上、幾つか申し上げましたけれども、そういうことでございまして、この研究会の報告の内容につきましては、私どもとしても慎重に検討しなければいけない問題なのじゃないかというふうに思っております。結構問題点があるのじゃないかというふうに思っております。
  124. 桝屋委員(桝屋敬悟)

    ○桝屋委員 ありがとうございます。厚生省の認識は理解をさせていただきました。  ただ、今のお話を聞いて、昨今、まさに厚生行政の部分で議論されております公的介護システム、この中で二十一世紀の高齢社会の中で寝たきりのお年寄り等が本当に安心をしてサービスが受けられるシステム、こういう意味合いからいくと、果たしてどうかなという疑問も感じないわけではありません。  ただ、公的サービスということであれば、確かにおっしゃるように、相手の言うことばかりを聞いていていい介護はできないということも理解できるし、さらにはチームでもって仕事をしなければいけないという介護の特殊性といいますか、業務の特殊性ということも私は理解ができないわけではありません。しかし、そこは人材派遣というシステムの中で、派遣元がしっかり専門的な訓練をするということであれば、幾らでも乗り越えられるのではないか。  あるいは、もっと乱暴なことを言いますと、厚生省さんが厚生省所管でやられている現場のパブリックなホームヘルプのサービスあたりが今言われたような方向でやられているのかというと、今ゴールドプランでどんどん現場はホームヘルパーさんをふやされています。その中で、私はいろいろな形態のヘルパーさんもいらっしゃるということも現場で見ておりまして、そういう実態からすると、今御説明があったようなことが果たしてどうなのかなという気がしないでもない。  さらに申し上げますと、今、新介護システムというのは、公的介護保険、新しい保険システムを導入しよう、こういう大胆な改革をなさっているわけでありますから、そういう意味では、今までの公的なサービスが今後どうなるか。もし公的介護保険が導入されれば、恐らく今の医療機関と同じように、公的介護保険で指定を受けたサービス提供機関が、これは民間もどんどん開いていくということでありますから、民間会社もあるでありましょう、そういうところがこれからサービスを提供するという時代になった場合に、私はその一形態として人材派遣というシステムがあってもいいのではないか、むしろそれが利用者の利便につながるのではないかというふうに思うわけであります。  もう一点申し上げますと、公的介護保険を相手にしないというのだったら、しないでもいいのですよ。これは公的でなくてもいい、全く民間のサービスとして存在する。私は自分が思うがままに使いたい、サービスしてもらいたい、こういうニーズだってあるわけであります。そこを厚生省がとめる必要はないわけでありまして、そういう意味では、私は今回、労働者派遣事業の中に在宅が入っても何ら問題ないのじゃないか。むしろこれからの時代、いろいろな選択できるサービスが、今検討されている公的介護保険を利用するパターンもあるだろうし、利用しないパターンもあるわけですから、いろいろなサービスがあっていいのではないか、こう思うわけであります。  そこはもちろん厚生省さんも議論があると思います。きょうは説明員で来ていただいていますのでこれ以上は申しませんが、再度、労働省局長にお伺いしたいのです。  今のような議論があるわけでありまして、私はこの介護労働研究会の内容、頑張っていただきたい。厚生省さんは今のように非常に冷たい反応がありますから、この部分はまた厚生委員会でしっかりやりたいと思いますが、しかし、せっかく局長さんの研究会で出された方向性でありますから、これがどこかの中央職業安定審議会ではひょろっと在宅が抜け落ちて、病院における介護という結論になったということは、私はいかにも理解ができない。  大臣もいらっしゃいますが、大臣、そういう実態があるわけでありまして、私はこれは短期的な問題とは思っておりません、中長期的な課題というふうに認識をしておりますので、どうか頑張っていただきたい。大臣、ちょっとお伺いしたいと思いますが、いかがでありましょう。
  125. 永井国務大臣(永井孝信)

    永井国務大臣 先生が何回も御指摘になっておりますように、この介護労働研究会報告の内容は私どもは十分に認識をいたして受けとめておりますが、その中で言われておりますように、民営職業紹介あるいは請負形態とともに、三つの形態が補い合って介護労働者の量的充足と質的向上を図っていくような総合的な需給調整システムを整備することが必要である、このことについて、私はそのとおりだと思うわけであります。  ただ、局長から何回も答弁しておりますように、そういう介護労働研究会報告書が出されたのを受けまして中職審でいろいろ検討する過程の中で、委員の一部の方々から、公的介護保険制度の検討が行われているという現時点で、直ちにこの業務の追加について指定することは慎重でなければならない、こういう御意見があったこともこれまた事実であります。  そういうことを踏まえて今回の改正になったわけでありますが、最終的に政令で拡大をする指定業務を定める場合には、当然のこととして関係省庁と十分な連携をとり合うわけでありますから、先生の言われているようなことも踏まえながら、将来のあり方についてはあり方として、現在の時点でやれるものについては現在の時点でということについて、実態的に即して最終的には対応してまいりたい、このように考えるわけであります。
  126. 桝屋委員(桝屋敬悟)

    ○桝屋委員 今の大臣のお答えの中で、請負と民営職業紹介と人材派遣とこの三つの形態を組み合わせてという、これは本当に私はそのとおりだろうと思います。  そこで、一番大事なのは、利用する立場で、一番利用しやすいサービスを考えていくということが私は基本になければいけない。では、どこまで公的な部分でカバーするのかというのは、また議論があってしかるべきだろうと思いますが、私は、システムとしていろいろなバリエーションをこれから考えないと、二十一世紀の高齢社会は耐えられないのじゃないか、こう思うわけであります。  私は、地元で毎日のように、寝たきりになった御家庭の方からいろいろな市民相談を受けているわけでありますが、本当に目を覆うような悲惨なケースもあるわけでありまして、もっともっと柔軟なサービスというのはないのかということがいつも心にあるわけであります。何も私は厚生省がいけないとか、労働省がいけないとか申し上げるつもりではなくて、本当に将来のために、両省協議の上、できるだけいいサービスにしていただきたい。まさに今公的介護保険が検討されているわけでありますから、末広の、視野を広げた検討をぜひお願いしたいというように思うわけであります。  ところで、有料職業紹介事業として運営をされております看護婦家政婦紹介所についてであります。  これは本会議でも申し上げましたが、医療保険制度の改正で、いわゆる病院から撤退を余儀なくされていると思われます。この四月一日から正式に施行されていると思いますが、現在、厚生省が把握しておられる医療機関における付添看護・介護の実態を簡単に御説明いただきたいと思います。
  127. 下田説明員(下田智久)

    ○下田説明員 付き添いの解消の実態でございますけれども、付添看護解消につきましては、御承知のように、平成六年十月から着手をいたしたところでございまして、原則として平成七年度末、つまり、ことしの三月末日までに解消するというのが原則でございます。  しかしながら、期限までに解消できない医療機関につきましては、例外といたしまして、付添看護の解消に関する計画を策定し、都道府県知事に届け出を行うなどの要件を満たしている場合には、当該計画期間内は引き続き付添看護が認められるという経過措置を設けておるところでございます。  本年四月一日現在で、厚生省で調査いたしましたが、この経過措置を使いまして引き続き付添看護を行っております保健医療機関は、病院では四百四十一カ所、診療所につきましては七百七十四カ所となっておるところでございます。病院に関してもう少し申し上げますと、平成六年七月の時点で付添看護を実施しておりましたのは二千五百二十六病院でございましたので、一年余の間におよそ八割強の病院が付き添いを解消したことになるというふうに考えております。
  128. 桝屋委員(桝屋敬悟)

    ○桝屋委員 ありがとうございます。  ほとんど、八割の医療機関において法の施行の具体的な実施が行われたということであります。逆に言いますと、あと二割は暫定的な解消計画を立てて現在進んでおられるのだろう。そういうところについては家政婦紹介所も一部使われている部分があるのかな、こう思ったりしておるのでありますが、余り大きい声でも言えない話であります。  しかしながら、私はこれで有料職業紹介所は完全に全部つぶれるだろうというふうに思っておったのでありますが、まだ実際に活動を続けておられるところもあるわけでありまして、どこに行っているのかなと思ったりしておりまして、そこは私なりにもしっかり実態をつかみたい、こう思っておるところであります。  二割が残っているということなのであります。これ以上厚生省にもお聞きをできないと思いますので労働省にお尋ねするわけでありますが、医療機関から今のような形で、院内化という形でありますから、今までの家政婦紹介所という営業形態というのは医療機関から撤退せざるを得ない、こういう実態があるわけであります。この救済措置が随分議論になりまして、法の施行のときも両省で連絡会議を持っていただいて、私は相当きめ細かな対応をしていただいたということは実は高く評価をしているわけであります。  ただ、いよいよこの四月から法が正式に施行になりまして、ほとんど病院から撤退をしなければいけないという状況でございますが、どうでしょうか、そもそもこの家政婦紹介所のマンパワーというのはどれぐらいあったのか。よく聞く話でありますが、労働省さん、どのぐらいの数が当初あったのか、お尋ねをしたいと思います。
  129. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 看護婦家政婦紹介所の数の問題でございますが、平成三年三月末時点で紹介所の数が千二百四十四、登録者が十六万百二十九人でございました。これが平成七年三月末時点で紹介所数が千二百十、登録者数が十一万一千九百九十三人というふうになっております。平成八年三月時点の数字は、まだ現在のところ把握いたしておりません。
  130. 桝屋委員(桝屋敬悟)

    ○桝屋委員 当初十六万人ぐらいいらっしゃったそういうケアワーカーさんと俗に言っておりますが、そういう方が現在十一万、平成八年の数字はまだわからないということでありますが、漸減傾向にあるということであります。  私は、この十六万の方、正直申し上げて相当平均年齢も高いわけでありまして、ある意味では整理をされていく部分も残念ながらあるのかな、こう思ってはおりました。ただ、十一万というかなりの方がまだいらっしゃるわけでありまして、実はこういう方々というのは、もう私が言うまでもありまぜんが、以前の医療保険制度のまさに谷間を埋める形で、本当に二十四時間勤務といいますか、大変な中を仕事をしてこられたわけであります。  逆に言いますと、患者負担もそれだけたくさんあった、保険外負担があったということで、ここに改革の手をつけようということで変わったわけであります。しかし、病院から撤退をするそういう介護マンパワー、中には本当に介護力といいますか、介護の研修を臨床でしっかりお積みになって、相当なマンパワーがあるわけでありまして、こういう方を何とか活用したいというふうに前々から思っているわけでありますが、実はなかなかいい手がないわけであります。  実際、どうでしょうか、ちょっと状況をお聞きしてみたいのですが、そういう多くの数が、もちろん今減っているのでありますが、今の家政婦紹介所の実態というのはどんなふうになっているのか、あるいは将来どんな方向に動こうとしているのか、労働省が把握しておられる情報をちょっと教えていただきたいと思います。
  131. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 ただいま先生指摘の、付添看護の廃止に伴いまして、家政婦紹介所で働いている方々、家政婦の方々の実態がどうなっているかという具体的な数字は残念ながら把握いたしておりませんので、どの程度どうなっているかというのは明確にはお答え申し上げられませんが、ただ、基本的な考え方につきましては先生指摘のとおりでございまして、高齢化社会が急速に進展していくそういう中で、介護マンパワーの需要はもうますます増加していくであろう。そういう中で、看護婦家政婦紹介所及びその登録者、これが今後とも重要な役割を担っていくことが期待される分野だということは事実であろうかと思います。  ただ、現実問題としましては、医療機関から撤退せざるを得ないということで、そういうことを前提として、どういう分野にどう活躍できるかというところがなかなか難しく、かつ、はっきりしないということでございますが、今後需要の増大が見込まれます一つ方向として、在宅介護の分野において、この介護労働力あるいは看護婦家政婦紹介所の需給調整機能が有効に活用されることが必要であろう。  こういう観点から、職業講習の充実による家政婦の資質の向上であるとか、あるいは介護クーポン制度に対する支援による看護婦家政婦紹介所の在宅分野への転換の促進であるとか、あるいは紹介所の近代化、効率化を図るためのコンピューターや介護労働補助器具の無償貸与事業、そういう施策を積極的に推進いたしているところでございますが、なお今後の方向につきましては、難しい問題を抱え、必ずしもはっきりしない、こういう状況でございます。  あわせまして、介護労働が対象業務とされた場合の労働者派遣事業の兼業等事業の多角化についても、今後考慮していく必要があるのではないかというふうに考えておるところでございます。
  132. 桝屋委員(桝屋敬悟)

    ○桝屋委員 今局長からお話があったように、医療機関から撤退をした分、今の家政婦紹介所はどういう動きをしているかというと、当然ながら、有料職業紹介という形で在宅介護をやっていこうという取り組みも、これはあるのだろうと思います。私は、いろいろな形態があっていいと思います。それはそれで努力をされておられる。あるいはクーポン券制度、さらにはいろいろな近代化に取り組まれているということでありまして、本当にそうだろうと思います。  家政婦紹介所も本当に努力をして、新しい時代に即応できるいわゆる体質改善というものをしっかりやっていかなければいけない。家政婦紹介所の現場には何とかまだ病院にしがみついておれないかという声もあるわけで、私はよくお話をするのでありますが、そういうことは考えない方がいい、本当に新しい医療制度を十分認識をした上で、これからの時代、自分たちで体質改善できる努力をしっかりやってもらいたい、このように申し上げているわけであります。そういう意味では、今の在宅介護の部分、さらにはクーポン券とか種々の近代化というものはぜひ取り組まなければいけない。  実のところ、今、在宅の介護というのはどういう状況かというと、厚生省さんはなかなかおっしゃらないと思いますが、まだほとんどの寝たきりのお年寄りであるとか痴呆性のお年寄りの方は病院に入っておられるのです。あるいは施設に入っておられるのです。現場では在宅のニーズというのは余りないのです。公的ホームヘルパーさんが一生懸命努力をしようとしても、公的ホームヘルパーさんの体質改善がまだ十分でないこともあって、したがって介護保険を導入するのであるわけでありますが、なかなかニーズが現場でない。  したがって、在宅という分野だけ意識をして有料職業紹介が頑張ろうとしても、恐らく採算はとれないと私は思います。しかし、どこかの時点で確かに膨大な介護需要が出てくる時代が来るのだろうというふうに私は思っているのです。それまで新しい時代を見据えてしっかり頑張ってくださいよ、こう私は申し上げているのであります。  そういう意味からも、今回の人材派遣労働者派遣という制度も、新たな形態を模索する家政婦紹介所、民営職業紹介という需給調整の形が、いろいろ体質改善をして、いろいろな看板をそろえて、何とか国民のニーズにこたえていこうという努力をする、そこはぜひ道をあけてあげてもらいたいな、こう私は思うわけであります。そういう意味で、先ほどから、何で病院の介護に限っているのか、在宅の介護もやってもいいじゃないか、このように私は言っているわけであります。  もちろん、いろいろな隘路があるのでありましょうが、この点では、本会議でも大臣から、家政婦紹介所の有効活用は介護マンパワー対策の重要な部分と認識をしている、十分に考慮したいと、野党の私の質問にもかかわらず大変な前向きな御答弁をいただきまして、この大臣答弁は全国津々浦々まで伝わっているわけであります。ぜひ大臣、これからも、家政婦紹介所の有効活用を十分考慮したい、こうおっしゃっているわけでありますので、具体的にもう少しお示しをいただけないかな、こう私は思うわけでありますが、いかがでありましょうか。
  133. 永井国務大臣(永井孝信)

    永井国務大臣 大変御評価いただきまして恐縮でございますが、高齢化社会の進展の中で家政婦紹介所が今後とも十分に活用されるためには、まず家政婦の方々の資質の向上が必要であろう、そして、紹介所の活動分野、事業形態の多角化、さらには経営体質の強化などが重要であると私は認識をするわけです。  そのような観点から、職業講習の推進などによる資質向上を図っていきたい、そして介護クーポン制度の推進による在宅転換の支援をしていきたい、そしてコンピューター等の無償貸与による経営の近代化などの施策を今後とも積極的に推進をするようにしていきたい、このように考えているわけであります。そして、介護分野への労働者派遣事業の導入につきましても、最前から申し上げておりますが、中職審の建議をいただいたその内容を踏まえまして適切に対処してまいりたい、このようにお答えせざるを得ないわけであります。  最前から私が申し上げておりますように、今の時点で対応することと、いわゆる長期的な展望に立って今後どうするかということと、両方を含めて私どもは適切な対応を間違いのないようにしていかなければいかぬ、こう思っているわけであります。したがって、引き続き中職審でもこれからも御協議いただくことになっていこうかと思いますが、現実を踏まえまして、対応できるようなところは十分に対応していきたい、このように思います。
  134. 桝屋委員(桝屋敬悟)

    ○桝屋委員 大臣の苦しい御答弁はよくわかるのですが、中職審はいいのでありまして、先ほど私がお願いしました介護労働研究会の原点もどうかお忘れなく、引き続き御検討をお願い申し上げたいと思います。  最後になりましたけれども、厚生省さんにせっかく来ていただいておりますので、いい機会でありますので、両省がいらっしゃるときにお伺いをしたいのであります。  実は、国会議員の中で私だけ異常に家政婦紹介所ばかり言っておるのでありますが、東京都方式という言葉があります。私が言っている言葉でありますが、東京都においては、都の公的ヘルパーの部分と有料職業紹介が完全にタイアップしている珍しいケースがあります。これは、私は全国で展開されていいとは思っておりませんが、しかし、今まさに新介護システムが検討される、そんな状況の中で、厚生省としては今後に向かってどのようにこの方式をとらえておられるのか。よもや公的介護保険制度、システムを仕込んだ段階でこれを抹殺しようということではないのだろう。やはり東京都が御判断でおやりになっていることでもありまして、将来に向かってどのようにとらえられているのか、最後にちょっと御説明をいただきたいと思います。
  135. 吉冨説明員(吉冨宣夫)

    ○吉冨説明員 ただいま先生の方から御指摘のございましたいわゆる東京都方式というものは、東京都と家政婦紹介所とが委託契約を結びまして、その家政婦紹介所が職業紹介の形で家政婦さんを派遣先派遣する、こういったような形でございまして、委託をする東京都と派遣される家政婦さんとの間に直接の関係がないわけであります。  そういったようなことから、御指摘の東京都方式につきましては、本人から派遣要請がありました場合に、市区町村は単に派遣の可否を決定するだけで、その具体的なサービスの内容を指示するものではございません。あるいは指示することができないわけであります。そしてまた、家政婦紹介所と家政婦との関係につきましても、雇用関係はございませんで、単に職業紹介という形で紹介されているだけだということでございます。  こうしたことから、それぞれのケースにつきまして、提供されるホームヘルプサービスにつきましての責任の所在があいまいになる、そしてまた安定的なサービスの提供ができない、こういったような問題点指摘をされているわけでございます。  現在検討中の介護保険制度におきましては、請負事業者としまして利用者に対して組織的に責任を持った体制でサービスを提供する、こういったようなことを目指しておるわけでございます。そういったようなことから、職業紹介の形を現状で評価するということはなかなか困難ではないか、このように考えております。
  136. 桝屋委員(桝屋敬悟)

    ○桝屋委員 将来的にどう展望するかというのは今の段階ではなかなか言えないと思うのですが、今の認識は理解をいたしました。ただ、県なり市町村、現場で行われていることでございます。どうか新しいシステムの中で本当に優秀な介護マンパワーが意欲を失うことがないように、十分都とも知恵を出していただいて、協議をしていただいて、できるだけいい方向へお考えいただきたいということをお願いをしておきたいと思います。  いずれにいたしましても、今後の介護労働力確保ということ、往々にして、今までの法案の経緯を見ましても、どうも労働省と厚生省、うまくいっているようでいっていないところもありまして、今までの経緯を整理すると、いつもそう思うのであります。どうか本当に、利用するのは国民でありますから、国民にとって最も利用しやすい、いろいろな選択の幅のある介護のサービスというものが形成されるように御努力をお願いしまして、質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  137. 岡島委員長(岡島正之)

    岡島委員長 池田隆一君。
  138. 池田(隆)委員(池田隆一)

    ○池田(隆)委員 社民党の池田でございます。  まず、派遣法審議に入る前に、一点お尋ねをしたいと思います。  それは、労働基準法に明示されている第四条の男女同一賃金に関してでございます。  あす、生産者麦価が決定をされます。そこで、政府がかかわる農産物の政府価格の決定におきます生産費というのがございまして、それをどう判断していくのかということでの基本的な論議もございますけれども、価格については、春の乳価、そして麦価、畑作三品、そして、今年度から十二月ごろになりますでしょうか、米価の関係という形で、それぞれ政府が生産者価格を決定していくという形になっていますけれども、農家の生産費、これが価格を決定する上に非常に重要な要素になっています。  その生産費ですけれども、一般的に言えば、飼料やさらには肥料代、農機具などの物財費、そして労働費が計上されています。この労働費に非常に大きな問題があるというふうに考えているわけです。それは、女性の労働費が男性の労働費の二分の一しか計上されていないという実態でございます。  例えば平成七年の麦価決定のとき、平成六年の調査に基づいて労働費を算出していくわけですけれども、毎月勤労統計調査、これは労働省が行っているわけですけれども、五人から二十九人の事業所単位の平均の賃金を出している。それを家族の労働の単価として、時給として計算しているわけですけれども、例えば平成六年では、男は千七百七十二円、女性では九百七十六円、これは全国平均です。また、私の地元の北海道なんかでは、男は千六百八十四円、女性は八百七十六円という形、ほぼ半分の単価計算になっているわけですね。  あくまでも机上での計算上でございますし、生産費を出していく上での数字なわけですけれども、しかし、それぞれ農家にお勤めになっている方が、仕事をしている上で、自分の時給、単価が男性の半分しかないということに対しては非常に憤りを持っています。統計上の問題だと言えばそれっきりですけれども、算出しているデータ、それはあくまでも平均値のものでございますから、それを参考にするということ自体が問題があるのではないか。それを容認するということは、先ほど一番最初に言いましたけれども、労働基準法の第四条に違反する行為を農水省そのものが行っているのでないかというふうにも考えられるわけです。  そこで、労働省としてはこのような実態をどのように押さえておられますか、見解をお聞きしたいと思います。
  139. 太田(芳)政府委員(太田芳枝)

    ○太田(芳)政府委員 農水省に確認いたしましたところ、今先生のおっしゃったとおりでございまして、農産物価格の算定の基礎となる農家の生産費に含まれる家族労働費を評価するに当たりましては、私ども労働省でやっております毎月勤労統計の平均賃金を使用しているようでございます。  そして、使用されている平均賃金は、先生おっしゃったとおり、建設業、製造業及び運輸・通信業の五人から二十九人規模の事業所における平均賃金でございますが、これらの産業におきましては、やはり男女間で職種とか雇用形態とか勤続年数に差があるものですから、平均賃金に男女間で大きな格差が生じているわけでございます。  私どもといたしましては、これをそのまま農作業におけるあらゆる作業の家族労働の対価として使用するということにつきましては、検討を要する課題ではないかというふうに考えておるところでございます。
  140. 池田(隆)委員(池田隆一)

    ○池田(隆)委員 あくまでも計算上の話ですけれども、それが農家の人たちにしてみれば、査定をする上に明確にそういう差があっての上での平均値で計算されているわけですね。そうすると、私の労働は男性の労働の半分なのか、価値はそれだけしかないのかということで、民間がやっている場合は指導機関があるわけですが、政府がやっているわけですね。これについては、本当に労働基準法が守られているのかということについては疑義が感じられるわけです。  そういう意味で、今、検討を要する課題だというふうに言いましたけれども、具体的に農水省とどう進められていくのか。指導をしていかなければならぬのではないか。改めて、そのデータではなくて別なデータによって男女の単価については同じにする。しかし、労働時間がそれぞれ違うとすれば、それに掛けることによって数値は別になってきましょうけれども、基本的な単価として同じくしていかなければならぬのではないかというふうに考えますけれども、そのあたりの指導と考え方について、いかがでしょうか。
  141. 永井国務大臣(永井孝信)

    永井国務大臣 御指摘のように、このような方法によりまして男女別に労働費を推計することにつきましては、男女同一賃金の原則の精神からも疑問があると考えます。したがって、労働省といたしましては、今後、農家の労働費の推計に当たりましては、労働に対する評価を男女で異にすることのないように、農林水産省に対して働きかけてまいります。
  142. 池田(隆)委員(池田隆一)

    ○池田(隆)委員 ありがとうございます。  あすの麦価決定ということで、きょう今回の生産費が出たのですけれども、今後の問題としては、畑作三品やこれからもいろいろ生産物の価格が決定されてきますから、そのときに変更になるようによろしくお願いを申し上げたいというふうに思います。  それでは、派遣法に関してお尋ねをしていきたいというふうに思います。  この派遣法の正式名称は、労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律となっています。これは逆説的に言えば、法が施行された十年前には、派遣事業が適正に運営されておらずに、また派遣労働者就業条件が未整備にあったのではないか。それらを適正化していくという意味で法がつくられたのではないかというふうにうかがえます。  そこでまず、職安法の第四十四条では、労働者供給事業原則的には禁止されている。しかし、派遣事業特例として認められているわけですけれども、なぜ十年前に例外として労働者派遣法を定め、派遣事業制度化したのか。そのときの我が国労働者派遣事業制度の基本的な考え方、押さえをお聞きしたいと思います。
  143. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 労働者供給事業は、労働者供給事業を行う者と労働者との間に前近代的な支配従属関係が存在し、中間搾取、強制労働等、労働者保護に著しく欠ける場合が相当あることから、供給元、供給先双方に対する罰則をもって禁止してきたものでございます。これが職安法四十四条ということでございます。  一方におきまして、労働者派遣事業は、労働力需給両面にわたるニーズ多様化対応し、労働力需給の迅速的確な結合を図るために、従来禁止しておりました労働者供給事業の中から、労働者保護に欠けるおそれの少ない形態として派遣事業主と派遣労働者との間のみに雇用関係がある形態を取り出しまして、派遣事業主に明確に責任を負わせることを前提に制度化したものでございます。  また、労働者派遣事業制度の基本的な考え方につきましては、派遣労働者保護常用雇用の代替防止等に十分留意しつつ、労働力需給の両面にわたる多様なニーズに迅速的確に対応することができる労働力需給システムとして適切有効に活用されていくことが重要であるというふうに考えております。
  144. 池田(隆)委員(池田隆一)

    ○池田(隆)委員 この法が施行されてから十年間たつわけですけれども、午前中などの論議も含めまして、非常に派遣事業所及び労働者も増加してきているということで、資料によりますと、平成六年で事業所数が八千七百五十八カ所、それから労働者数では五十七万五千八百七十九人、このように非常にふえているわけですね。その中でも女性が九割を占めている。四十歳未満が八割という実態にもなっています。  こういうように非常に増加してきた理由について、労働省としてはどのように分析されていますか。
  145. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 技術革新の進展等によりまして、専門的な知識技術経験を必要とする業務がふえ、自社の従業員に行わせるよりも外部にゆだねた方が効率的に処理できる業務分野が増加する一方、働く側も、自分知識技術経験を生かして自分都合のよい日時に働くことを希望する者がふえてきたところでありまして、労働者派遣事業については、このような労働力の需要、供給両面にわたるニーズ多様化対応し、労働力需給の迅速かつ的確な結合を図るための新たな労働力需給システムとして昭和六十一年に制度化されたものでございますが、その後の労働力需給両面にわたるニーズ多様化の一層の進展に対応し、需給の調整を図る機能を発揮することにより、派遣労働者数、派遣事業所数等も増加し、定着してきたものというふうに考えているところでございます。
  146. 池田(隆)委員(池田隆一)

    ○池田(隆)委員 このように発展してきたわけですけれども、十年前の法制定時には、国会では非常に慎重論があったというふうに聞いております。それらの多くは、派遣される労働者保護の視点からのものが多かったというふうにうかがわれます。  この十年間を経過してきてさまざまな問題点が多く挙げられていますけれども労働省平成六年十二月から平成七年一月にかけて調査した実態調査報告によりますと、中途で派遣契約が解除されたというのが圧倒的に多くなっています。例えば一般の事業所で四七・八%、特定でも三一・八%もございます。また、派遣労働者からの苦情も多くあります。中途で契約が解除されるということは極めて問題でありますし、昨今の不況という形での経済状況を反映しているのかなとも想像できるわけです。  派遣法の二十七条では、労働者派遣契約を結んで、それを一方的に解除してはならないというふうに記載をされています。しかし、今回の改正でも、残念ながら契約を解除した派遣先に対する何らの制裁措置も書かれていないわけですね。これは極めて不十分だというふうに考えるわけですけれども、なぜ派遣先への制裁が講じられないのかということ、さらに、今回の改正でどのような効果を労働省としては期待しているのか、その点をお尋ねしたいと思います。
  147. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 不当な労働者派遣契約の解除につきましては、御指摘のように、労働者派遣法第二十七条により禁止されておりまして、これに違反する派遣契約の解除、これは公序良俗に反するものとして民事上無効とされるものと考えられ、それなりに相当の抑止効果はあるものと考えております。  ただ一方、労働者派遣契約の中途解除に関しまして、契約を解除した派遣先に対して罰則等の制裁措置を科すべきではないか、この点につきましては、労働者派遣契約が民事上の取引契約としての性格を有するものであること等を踏まえれば、法制的になかなか難しい面があるということと、また関係者の合意を得ることが困難である、こういう二点があると考えております。  今回の法改正におきましては、派遣事業主及び派遣先に対し、労働者派遣契約の解除に当たって講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置に関する事項を労働者派遣契約に定めさせることといたしておりますが、これによりまして、労働者派遣契約の中途解除があった場合において、派遣労働者の雇用の安定が図られることが期待されるものでございます。
  148. 池田(隆)委員(池田隆一)

    ○池田(隆)委員 今労働省が言われたような効果が積極的に発揮されまして、中途で契約が解除されるということが少なくなっていけば大変いいことなのですけれども、ふえてきている実態からいって、どのような効果があるのかなというところが心配でございます。そういう意味では、指針づくりも進めていくわけですので、積極的なその辺の努力を進めていただきたいというふうに思います。  あわせて、苦情処理の問題ですけれども派遣法三十四条には、就業条件明示書を事前に交付することが明示されています。しかし、施行規則の二十五条では、緊急の必要があるためあらかじめ当該書面を交付できない場合という形で、例外規定が設けられています。そのために、就労後に就業条件がそれぞれの形で明示されることが圧倒的に多いとも聞いています。つまり、原則と例外が逆転しているという状況もあるのではないかというふうに思います。  そこで、今回の改正では、これらのことも含めまして苦情処理に関してどのような改善を図ろうとしているのか、また、どのような効果が期待できるのか、お答え願いたいと思います。
  149. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 今回の改正におきましては、労働者派遣契約苦情処理に関する事項を記載させることといたしておりまして、これによって派遣事業主及び派遣先における苦情処理体制が派遣契約の締結時に確立されるようになりますとともに、派遣労働者が当該派遣就業における苦情処理体制を確実に理解できるようになるものというふうに考えております。  また、派遣元管理台帳及び派遣先管理台帳に苦情処理に関する事項を記述させることといたしておりまして、これによって派遣事業主及び派遣先において確実に苦情処理が行われることが確保されますとともに、行政による指導監督の際に派遣事業主及び派遣先において苦情処理が的確に行われているか否かの確認をし、必要な指導を行うことができるようになるものと考えております。  御指摘のような派遣事業主から明示された業務派遣先で実際に就業する業務とが異なるような苦情につきましても、これら労働者派遣契約に係る措置派遣元・派遣先管理台帳に係る措置とが相まちまして、適切な苦情処理が行われることにより、適切な対応が期待されるものであり、これらの措置が適切に講じられるよう、派遣事業主及び派遣先を私どもとしては指導してまいりたいと考えております。
  150. 池田(隆)委員(池田隆一)

    ○池田(隆)委員 派遣先適正化のための措置の充実では、違反が出た場合、勧告公表等を進めていくということも今回の改正で積極面として書かれています。いずれにしても、派遣される労働者が、突然仕事がなくなる、または行ってみたら契約内容と全然話が違うというような形はトラブルとして多く、これは労働者保護の視点からいっても大きな問題だというふうに思います。  そこで、まず労働者保護の問題ですけれども、諸外国ではこのような派遣労働者の場合どのように保護を講じられているのか、わかる範囲で保護について、諸外国の例についてお答え願えればと思います。
  151. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 諸外国におきまして派遣労働者保護のために講じられている措置に関しましては、その国における背景事情によってさまざまでございますが、例えば、ドイツにおきましては、派遣期間が制限されるとともに、派遣期間の制限等に反する違法派遣については、刑事的制裁あるいは民事的制裁が科されております。  フランスにおきましても、利用事由派遣期間が制限されるとともに、利用事由派遣期間の制限等に反する違法派遣については、刑事的制裁、民事的制裁が科されております。  アメリカにおきましては、労働者派遣事業について連邦法上の規制はございませんが、判例によりまして、派遣元と派遣先の連帯雇用責任が認められているところでございます。
  152. 池田(隆)委員(池田隆一)

    ○池田(隆)委員 いずれにしましても、先進国といいますか、これを先に進めて定着している国では、やはり労働者保護という視点でその政策が充実されているなという感想を受けるわけですけれども、そのことは私たちとしても参考にしていかなければいけないのではないかというふうに思っています。  それで、今お話もありましたように、契約期間の問題、就労期間というものについての労働者保護の視点が諸外国でもありますけれども我が国では、派遣法においては契約期間原則一年というふうになっています。更新を反復することによって長期に就労する形態というのが、午前中の大野先生質疑にもありましたけれども、多く見られています。これは非常に大きな問題だというふうに思っています。  なぜかといいますと、あくまでも雇用形態というのは常用雇用原則とする。万やむを得ずのときに代替として派遣労働者を活用していく、その制度を活用していくということだろうというふうに思っています。それが諸外国、特にヨーロッパの考え方ではないかなというふうに思うわけです。  ところが、我が国では、派遣期間を超えて就労するに至った場合には、法的に何らの制約もありません。先ほどの諸外国の例ですと罰則があるという形でございます。フランスなんかでは、更新期間を含めて十八カ月以上になってしまったら、それは常用雇用されたものとみなすという形の中で、正規職員として雇っていくという形に法体系がなっているというふうにも聞いています。我が国では、職種に対しての適用範囲を限定していくけれども、就労期間については、極端に言えば三年間、それ以上もという形の中で無制限に行われる。これが労働者保護の視点からいってどうなのかということがございますね。  それから、労働形態としての雇用関係の中で、基本的に常用雇用をきちっと確立していく、その特例的な、例外的な扱いとして派遣事業を行っていくということの根底が崩れてくるのではないかというふうに思っています。  この労働者派遣事業に関して、ネガティブリストというような形の中で、行政改革委員会からも職種の拡大がいろいろ出ておりますし、基本的にはそういうことも考えられると思うのですけれども労働者保護の視点から考えていきますと、まず第一に考えなければならないのは、派遣期間、さらに派遣事由の制限、こういうことだろうというふうに思うわけです。フランスあたりでは、その事由については三つに限定しています。代替要員、それから企業業務量の一時的な変化への対応、本来的に一時的な労務、この三つに限定をされていますし、さらには、先ほど御説明があったような形の中で、期間についても原則きちっと厳しく決められている。  こういうことで、この派遣期間派遣事由等の制限について第一義的に検討することが必要でないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  153. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 現在の労働者派遣法考え方につきましては、御指摘のように、専門的な業務についてこれを対象業務とする、派遣期間については、一年あるいはこれを繰り返して三年というような形で比較的長期に認める、こういう枠組みでございます。  これは、派遣労働者の雇用の安定という面から考えますと、そういうあり方の方が、専門的な業務ということで比較的労働条件の確保もされやすいし、あるいは比較的長期にわたるということで雇用の安定にもつながる、こういう考え方でございます。ただし、これが常用雇用の代替になることについては避けねばならないということで、そういう面からの考え方も整理しているところでございます。  ところで、ただいま御指摘のように、諸外国に見られるような形で労働者派遣考え、検討するという視点をとった場合には、おっしゃるように、対象業務については原則として不適切なもの以外は認めるという考え方がございます。それとあわせて、労働者保護という視点からは、派遣事由は、今おっしゃいましたようなそういう短期的な事由限定する、あるいは派遣期間もきちんと制限する、こういう考え方、それとあわせて、それに違反した場合の派遣先の責任、そういうものが全体としてあわせてセットで考えられているところでございます。  我が国の現在の労働者派遣法につきましては、先ほど申し上げましたような考え方で整理をされておりまして、今回その改正法案の御審議をお願いしているわけでございますが、今後の検討課題といたしましては、政府として、規制緩和推進計画の中で、労働者派遣事業あり方について本年度内にさらに検討を開始するということになっておりまして、その際の検討課題としては、御指摘のような問題点、そういうものがあるのではないかというふうに考えているところでございます。
  154. 池田(隆)委員(池田隆一)

    ○池田(隆)委員 派遣された先の仕事内容が違う、または中途解除される、さらには長く雇用されていく、こうなりますと、先ほど言いましたように、常用雇用原則とする中で、万やむを得ずのときに派遣事業を活用していくということが悪用されていくという感じもするわけです。  先ほどの労働省実態調査によれば、派遣の場合、労働単価が安いから採用しているというような例もあります。そうしますと、そういう意味では悪用されるという心配もあるわけですので、日本の場合の論議というのは、適用業務限定していく、こういう考え方にどうしてもなっていくのです。全体像の中で労働者保護をどうしていくか、このことをよりつくっていかなければならぬのじゃないかなというふうに思っています。  一方では、派遣労働者の労働組合の組織率というのは極めて少ない、こういうような形もございます。そうすると、自分たちの要求も派遣元に対して出していけないというような状況になって、個人個人で協約を結んでいくというような実態にもなりかねない要素があるわけですから、その辺の整理も含めて、抜本的にやっていかなければならぬこともあるのではないかなと考えております。  そういう実態の中で、昨年十二月の職安審の建議によれば、新たに十二の業務適用対象業務とすることが望ましいというふうに報告されています。特に、先ほど桝屋議員の方から論議もございましたけれども、病院における介護業務、これについて、報告書によれば、公的保険制度について検討されている現時点で、導入するについては慎重に対処する必要があるというふうに記載されています。なぜこのような報告になったのか、改めてお聞きしたいと思います。
  155. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 病院におきます介護の業務につきましては、昨年十二月の中央職業安定審議会建議におきまして、新たに労働者派遣事業適用対象業務にすることが適当であるとされたところでございますが、御指摘のように、公的介護保険制度について検討が行われている現時点では、慎重に対処する必要があるとの意見がございました。その旨が付記されております。  中央職業安定審議会におきましては、当初、介護の業務全般について適用対象業務とすることについて検討が進められ、その中でただいまの意見が一部委員から出されたものでございますが、結論といたしましては、介護業務の中でも需給調整システムとしての必要性が特に高く、公的介護保険制度による影響が少ないと思われる病院における介護業務については、適用対象業務とすることが適当であるという建議が行われたものでございます。
  156. 池田(隆)委員(池田隆一)

    ○池田(隆)委員 私は、基本的に派遣労働というものは、まず常用雇用制度がきちんと確立をしていて、多くの常用雇用の形で職種がある。例えば、今回はアナウンサーも一つ追加になっていますね。つまり、アナウンサーといえば、民間放送、NHKを含めて、それぞれ放送業界の中で会社の職員としてまず採用されていくというのが圧倒的に多いわけです。こういう派遣だとかいうのは、フリーだとか契約だとかいう形になるわけですけれども、圧倒的にそういう職種があるわけですね。しかし、あくまでも代替的な、部分的な職種としてそれを追加していく。  しかし、病院介護の問題というのは、九四年の健康保険法の改正において付添療養費払い廃止に伴って、今度はそれぞれの医療機関が介護職員を雇用しなければならぬというふうになってきたのです。新しい課題なわけですね。常用雇用がきちっとされていて、その中であくまでも緊急やむを得ずということになれば、より積極的に入れなさいという話になるかもしれませんけれども、そういう実態にはなっていない。とすれば、正規職員の方を積極的に採用していくという政策の方がより以上、第一義的に進めなければならぬ課題だろうというふうに考えています。  そこで、厚生省にお尋ねいたしますけれども、先ほどの質疑の中で、九六年四月現在の状況、付添看護が廃止になった状況については御答弁がありました。およそまだ二割ぐらいの医療機関で未実施のところがあるわけですけれども、この二割程度の付き添い解消未実施の医療機関に対して厚生省としてはどのように指導していくのか、お考えをお聞かせいただきたいというふうに思います。
  157. 下田説明員(下田智久)

    ○下田説明員 付き添い解消の状況につきましては先ほど数的に申し上げましたので、それは省かせていただきますが、四月現在で、病院につきましては四百四十一カ所、診療所については七百七十四カ所が依然として付き添いをつけているというふうに申し上げました。  これらにつきまして今後どう指導していくかということになるわけでございますが、これらの医療機関、例えば病院数で四百四十一カ所というわけでございますが、各県でならしていきますと十件足らずといった形になるわけでございますので、今後は個別に事情を聴取いたしまして、解消に向けての問題点を明らかにしながら相談に応じてまいりたいと考えております。  例えば、具体的に申し上げますと、付き添い解消の予定日を明確にしていただきまして、それまでの間、看護要員の計画的な増員を立てるとか、あるいは付き添い解消のために各種の診療報酬上の措置がございますけれども、必ずしもこれらの活用がなされていない現状もございますので、こういったものの周知徹底を図りながら個別具体的に指導をしてまいりたいというふうに考えておりまして、この旨を各都道府県に通知しているところであり、付き添い解消に向けまして全力を挙げて取り組んでまいるつもりでございます。
  158. 池田(隆)委員(池田隆一)

    ○池田(隆)委員 付き添いを解消し、なおかつ常用雇用の介護職員を配置していくというのが必要なわけです。しかし、なかなか二割程度でもその辺が進んでいない。このことは新しい問題としての課題だろうというふうに思っています。  病院における看護・介護のサービスは、直接患者さんの健康、生命にかかわる問題だというふうに思っていますし、チーム医療の中でも極めて重要な位置づけにあるというふうに考えています。とりわけ介護職員が担う介護サービスについては、先ほども論議がありましたけれども、高齢化社会に対応する医療提供体制の確立という視点からも、従来の付き添いという領域からの患者の自立支援を促すという役割を担うものだというふうに考えています。  そこで、厚生省として、今後、医療機関における介護労働者の位置づけ、役割をどのように考えておられるのか、また、チーム医療の一員としての研修、訓練等をどのように考えておられるのか、あわせて介護職員の人材確保に向けた具体的な対策はどのようにお考えになっているのか、お聞きしたいと思います。
  159. 久常説明員(久常節子)

    ○久常説明員 介護職員の医療機関におきます位置づけにつきましては、平成四年の改正によりまして、医療法において療養型病床群が位置づけられました。この中で看護補助者の基準が設けられまして、具体的に申しますと、患者六人に看護補助者一人の割合になっております。今後、先生の御意見のように、高齢化に伴う要介護者の増大に対応いたしまして、チーム医療の一員といたしまして、看護補助者のうち介護を担う者の役割も重要になると考えております。  研修に関しましては、本年度におきまして、看護補助者の研修マニュアルを策定することになっておりまして、このマニュアルに基づきまして医療機関における研修が普及するよう努めてまいりたいと思っております。  さらに、人材の確保に関しましては、平成六年十月の診療報酬の改定におきまして、新看護体系を導入いたしました。その中で看護補助者の評価を明確にするとともに、看護補助者を増員すれば、それに応じて診療報酬も評価される仕組みになっております。
  160. 池田(隆)委員(池田隆一)

    ○池田(隆)委員 どうもありがとうございました。  それでは、労働省にお尋ねをしたいと思いますけれども労働省として考えている病院等の介護労働者の具体的な仕事についてどのように認識をされておりますでしょうか。
  161. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 病院等の介護労働者業務につきましては、医師、看護婦等とのチームワークの中で介護を要する患者の療養を支える重要な仕事であり、保健衛生等に関する知識や介護技能等の専門性と、患者の欲求や心理に対する理解などを必要とする業務であるというふうに考えておるところでございます。
  162. 池田(隆)委員(池田隆一)

    ○池田(隆)委員 この病院介護の問題は、先ほど桝屋先生質疑の中で、一般の社会福祉における介護労働、いわゆる施設の介護、さらには在宅介護、そして今回の新たな追加業種の中に、慎重に検討すると言われている一つにこの病院介護の問題があるわけですね。  そうすると、二十一世紀の高齢化社会の中で、介護労働の本務といいますか職務内容といいますか、そのことがいろいろ論議されているだろうというふうに思います。場面場面で違う。福祉施設の中での介護士等の介護職員の介護のあり方、それからホームヘルパー等での在宅での介護のあり方、それから病院という形の中で、病院となると決して高齢者ばかりじゃなくて、若い人でも二十四時間の看護・介護といいますか、例えば骨折をして歩けなくなった、それをどう手助けしていくのかという意味での介護もございますね。そういうような形でさまざまな介護の定義づけがあるのではないか。そうすると、一言に介護職員、介護労働と言っても、幅広いものがあるのではないかなというふうに考えています。  ですから、政策的に言えば、常用雇用の中でそういうさまざまな、例えば福祉施設でいえば福祉施設での介護士等の常用職員を積極的にふやしていく、さらには在宅であれば専門的なホームヘルパーをふやしていく、そして病院では付添看護からいわゆる介護という形の中での職員をふやしていく、こういうことが積極的に政策として進められる、これが先ほども言いましたけれども、第一義的であろうというふうに思います。そして、やむを得ず臨時的にといいますか、代替的に職員が必要であるからサービスとしての介護派遣労働者を採用していく、こういうような全体のシステム像になっていかなければならないのではないかと思います。  そうでなければ、安易に派遣労働者だけに頼ってしまいますと、さまざまな福祉の世界でもそうですし、福祉施設でもそうですし、在宅介護でもそうですし、特に病院介護の幅広い介護の部分においては、医療という医者と看護と介護とが本当にチームワークを持ってやっていく世界の中では、安易にただ派遣労働者に頼ってしまうという形が出てくるおそれがあるのではないかというふうに思っていますので、やはり長期的で安定した常用雇用の労働形態が望ましいというふうに考えています。  そういうような状況がありますし、さらには教育訓練については、特に病院の場合は、チームワークの中での教育訓練というものも介護労働の場合は重要であろうというふうに思います。それぞれの病院の特色があるわけですから、施設内で行うことが望ましいだろうというふうに思います。  そこで、施設内で行う教育訓練、研修のあり方、それから常用雇用の労働形態のあり方、これについてまず基本的にどのように労働省としてはお考えになっているのか、その考え方をお聞きしたいと思います。
  163. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 病院におきます介護の業務につきましては、先生指摘のように、基本的には、常用労働者によって担われることが望ましいということは当然であろうというふうに考えます。  ただ、夜間であるとか繁忙時間帯等、常勤の看護婦や介護者のみでは手薄となる部分の手当てが必要となる、そういう面も少なからずあるのではないかというふうに考えるところでございます。そのためには、多様な就労ニーズを持つ潜在労働者を登録いたしまして、それに教育訓練を行い、派遣先の具体的ニーズに応じて、その指揮命令下に供給できる労働者派遣事業を認めていくことも有益ではないかというふうに考えるところでございます。  長期的に安定した労働形態が望ましいという意味で、そういうことを前提とした教育訓練が行われることが望ましいという点については、御指摘のとおりと思います。
  164. 池田(隆)委員(池田隆一)

    ○池田(隆)委員 そこで、仮に介護労働者派遣された場合という形ですけれども、病院では院内感染や医療事故等、労働安全上の問題に特別な配慮が必要だろうというふうに思うわけです。  これが常用雇用の場合でしたら、日ごろの訓練といいますか、チームワークによってそのことに対しての対策も日常的にとられる。しかし、仮に派遣労働者が入ってきますと、その辺のところをどういうふうに対策をとっていくのか。その日から仕事につくということが大前提であるわけですので、仮に多くの介護労働者常用雇用されているのであれば、何々さんと一緒にその仕事やってくださいという形の中で注意ができるわけですけれども、そうでない実態が出てくるとすれば、その辺のところが極めて重要な問題であろうというふうに思っています。  ですから、労働安全衛生上、医療事故等の問題の中で特別な配慮を考えておられるのかどうなのか、その辺のところを労働省としてはどのように考えておられますか。
  165. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 労働者派遣法におきましては、派遣労働者に係る労働安全衛生法上の適用につきまして、必要に応じ派遣元あるいは派遣先が負う責任については、これは法律上区分しているところでございます。  具体的には、労働者の危険または健康障害を防止するための措置に関しましては、派遣先事業者が労働安全衛生法に規定する事業者としての義務を負うこととなっており、病院等の事業場におきましては、派遣中の労働者に対しても、通常の労働者と同様、派遣先の責任において、病原体による感染防止措置も含め、危険または健康障害を防止する措置が講じられることとなるわけでございます。
  166. 池田(隆)委員(池田隆一)

    ○池田(隆)委員 そういうような労働安全衛生上の問題、医療事故等の問題、院内感染の問題等、病院としてはやはり特殊な事情があるわけでして、何度も言っているようですけれども常用雇用の中で積極的に介護労働者を雇用していく。このことがないと、公立病院と言われるところはある程度大きな病院ですから、その辺の留意事項も積極的に進められるのかもしれませんけれども、民間に行きますと、よく言われているように営利中心になってしまう、利益中心になってしまうという形になっていくと、なかなか常用の介護労働者を雇わないで、安易に派遣労働者を雇っていくというような形も危惧されるわけです。  ですからこそ、このところは慎重にというのがこの職安審の建議の中での文言にある。一応、今介護保険導入が片方であるから慎重にというような読み方もできますけれども、基本的な考え方として、常用雇用での介護労働者が極めて少ない、整備されてないという状況の中で、こういうような心配点があるのではないかという考え方をしておりますものですから、政令改正に当たって、やはり慎重に対応していかなければならぬだろうというふうに思っています。  関係省庁や関係団体の意見も十分聞きながら、このことに対処していかなければならぬのではないかなというふうに思っていますけれども労働省としての基本的な押さえをお聞きしたいと思います。
  167. 永井国務大臣(永井孝信)

    永井国務大臣 先生指摘のように、大変重要な課題だと認識をいたしておりまして、病院における介護の業務労働者派遣事業適用対象業務として具体的に追加していくに当たりましては、関係省庁や関係団体の意見も十分に聞きながら、また、公労使の三者構成の中央職業安定審議会に御審議をいただいて、慎重かつ適切に対処してまいりたいと考えているわけであります。  なお、余分なことでありますが、厚生省からも御答弁いただいておりますが、付添看護を廃止していくということと介護労働力確保すること、これは重要な相関関係を持っておりますので、その面におきましても十分に厚生省と協議を進めてまいりたい、このように考えております。
  168. 池田(隆)委員(池田隆一)

    ○池田(隆)委員 この病院の介護に関する業務での派遣労働者については、政令改正時にまだ導入がされない、もう少し様子を見なければならぬということもあり得るのではないかというふうに思いますけれども、その辺のところはいかがでしょうか。必ず入れるという前提で進んでいくのでしょうか。
  169. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 ただいま法律案を御審議いただいているところでございますが、この法律を成立させていただきました後、この実施につきましては、六カ月以内に政令で定める日から施行することとなっているところでございます。  その施行に合わせまして、政令改正によって対象業務の拡大について対処いたしたいと存じておりますが、この点につきましては、現時点では、昨年十二月におきます中央職業安定審議会建議を私どもは尊重する立場にあるということでございまして、その建議を尊重しつつ、かつ、具体的には、この実施の段階で、ただいま労働大臣から御答弁ありましたような考え方で対処してまいりたいというふうに考えております。
  170. 池田(隆)委員(池田隆一)

    ○池田(隆)委員 そうすると、他団体を含めて意見を聞きながら、最終的な判断をしながら政令改正をしていきたいという理解でよろしいでしょうか。
  171. 永井国務大臣(永井孝信)

    永井国務大臣 当然のことだと思っております。
  172. 池田(隆)委員(池田隆一)

    ○池田(隆)委員 ありがとうございます。  残りもあと五分程度になりましたので、あと一点のみお聞きをしていきたいと思います。  それは、何度も言っていますけれども、この派遣労働という形態は、あくまでも常用雇用を補完する例外的な雇用だというふうに、原則押さえていかなければならぬだろうというふうに考えています。  ところが、先ほども言いましたけれども、規制緩和の中でその適用職種を広げていく。一方で、きちんと労働者保護がなされていればそのことも考えられると思うのですけれども、現実の実態を見ていきますと、罰則についても、今回の改正であってもある面では勧告・公表という程度だけにおさまっている。極めて残念です。前進ではありますけれども、まだ不十分だろうというふうに思っています。そういう意味では労働者保護、どういうふうに保護して、なおかつその職種も拡大をしていくのか。これはどちらかというと、労働者保護の方をより優先的にまず確立する中で適用職種の拡大というものをしていかなければならぬのではないかというふうに思っています。  我が国の労働雇用の慣行といえば終身雇用という言葉が一つございますけれども、そういう長年の労働慣行の状況もございます。そういう意味労働者保護、特にこの場合は、派遣労働者保護をいかに図るかということも十分に検討する中で、派遣事業制度の適用をこれからも図っていくことが極めて重要だと考えますけれども、最後に大臣、この労働者保護の視点も含めて、今後の課題も含めまして、適用に当たっての決意をお聞きしたいというふうに思います。
  173. 永井国務大臣(永井孝信)

    永井国務大臣 労働者派遣事業につきましては、雇用する者と指揮命令する者が分離するという特殊な雇用形態でありまして、この制度あり方いかんによりましては、労働者保護に欠けたり常用雇用労働者との代替を不当な形で促進をする、そして我が国雇用慣行に大きな影響を及ぼすというおそれもなしとしないと考えております。  このため、労働者派遣事業制度の運用に当たりましては、派遣労働者保護に十分留意をしながら、我が国雇用慣行との調和を図っていく必要があると認識をいたしております。今回の法案もそうした考え方に立ったものと考えているところであります。  本法案の成立後におきましては、改正後の法律の適正な運用を図ることを第一に心がけていきたい、そして、より徹底した周知指導を行いまして、労働者派遣事業制度の適切、健全な運用を図ってまいりたいと考えるところであります。
  174. 池田(隆)委員(池田隆一)

    ○池田(隆)委員 午前中の論議の中でもありましたけれども、諸外国の例で、例えば、アメリカでは派遣労働者平均就業期間は約二週間、ドイツでは一週間以上三カ月未満のものが約六割、それからフランスでは平均就業期間は約二週間。本当に一時的な、企業が困ったときに代替をしていくということで、こういうような実態的な就業期間としての平均があるのではないか。  これらを見ても、そういう意味で、派遣労働の基本的な押さえは、あくまでも代替、緊急やむを得ず一時的なものとして、これからも労働者保護を十分考えながら進めていっていただきたいということを強く要望して、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  175. 岡島委員長(岡島正之)

    岡島委員長 寺前巖君。
  176. 寺前委員(寺前巖)

    寺前委員 私は、きょうは三点についてお聞きをしたいと思います。  第一点は、法が施行されて十年になってきている、この期間にどういう問題を含んできているだろうか。衆議院では参考人の皆さんを呼ぶ機会がございませんでしたので、参議院でお呼びになった会議録を読ませていただいて、幾つかの気になった点について質問をしたいと思います。  それから第二番目に、昨年の暮れのことですが、大道具、小道具の関係について、映画演劇関連産業労組共闘会議、舞台美術労働組合協議会が労働大臣あてに要請書を出されていますので、派遣労働の拡大の問題として、この意見についてどういうふうに見られるのだろうか、これが二番目です。  それから三番目に、ニチイ学館という病院への労働者派遣している会社がありますが、この会社のやっていることをどういうふうに見ておられるか、この三つについて聞きたいと思います。  それではまず第一番目の、法の施行から十年たった今日の幾つかの問題について、参考人の提起しておられる問題を中心に聞きたいと思います。  第一番目の問題は、こういう問題が出されていました。  派遣労働の場合には、派遣先の指揮命令を受けて就労し、派遣労働者の賃金や労働条件の多くは派遣先によって左右されるのが実態であります。ところが、派遣法は、派遣元と派遣労働者の間の関係が基本で、これを雇用関係とし、派遣先派遣労働者の間には使用関係ということで、基本的には派遣元との関係を中心に考えるという意味で、派遣先の使用者責任を非常に追及しにくくしている。こういう点が、労働法の基本原理と大きく違っている のじゃないだろうかという問題提起がありました。  同時に、昨年の二月に、大阪の朝日放送で働く派遣労働者、当時はまだ派遣法がなかった前の事案ですが、今で言う派遣労働者が労働組合をつくって、親会社である朝日放送に労働条件の改善を求めての団体交渉をやりました。これについて最高裁判所は、労働条件に実際に影響を及ぼす親会社、朝日放送が派遣労働者の労働組合の求める団交に応ずるべきであるという判決を下した。そうすると、この十年の間に、雇用関係というのは派遣元でやりなさいということで、派遣先とは団体交渉ができない事態になっていたものを、この最高裁の判決では、違う形の問題提起に判決として出されているわけです。  私は、最高裁の判決の方向こそ現実的で、労働者にあるべき姿として提起をしなければならぬと思うのですが、この点について、改善しなければならないという意思があるのかないのか、お聞きしたいと思います。
  177. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 現行の労働者派遣事業法におきましては、ただいま御指摘がございましたように、雇用関係につきましては、派遣事業主と派遣労働者の間での雇用関係、そういうものを前提といたしまして、派遣先との関係につきましては、雇用関係を前提とせずに使用関係、こういう関係を認める、こういう法制的な枠組みで制度が成立いたしているものでございます。  朝日放送事件の最高裁判決については、労働組合法上第七条にいいます「使用者」につき、雇用主以外の事業主であっても、基本的な労働条件等について雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定できる地位にある場合には、その限りにおいて同条の「使用者」に当たるのが相当という判示、判断が示されたものと理解いたしております。  そこで、この具体的な「使用者」の判断につきましては、実態に即して行うべきものでございますが、労働者派遣法上の派遣先につきましては、ただいま申し上げましたように、原則として派遣労働者の基本的労働条件等を決定できる地位にはございませんで、具体的な就労に関し派遣労働者を指揮命令するのみでございますので、通常はその当事者とはならないというふうに考えておるところでございます。
  178. 寺前委員(寺前巖)

    寺前委員 私は、改善する気があるのかという問題を提起したので、これは後で労働大臣考えを聞かせてほしいと思います。現状はそうなっているから問題だという指摘が参考人から出されておるのです。  二番目。  派遣法ができたときに、縛られないで自由な就労形態を選択したい、こういうふうな労働者の意識にこたえるものというのが制定の理由に挙げられました。   しかし、その典型とされております登録型の派遣というのは、実態は、なかなか登録をしても仕事が来ない、来た仕事も短期で終わってしまう。ところが、雇用保険の適用資格については就労の継続を前提にしているということで、加入が非常に難しい こういう問題提起がなされているわけです。  私は、労働者が雇用保険の適用を受けるというのは、生涯にとって大きな課題であろうと思うのです。この点では私は改善をする必要があると思うし、参議院の段階でそういう問題提起を参考人がしています。これについてどういうふうにお考えになっているのですか。改善する気があるのですか。
  179. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 ただいま登録型の派遣労働者についての御指摘がございましたが、登録型の派遣労働者につきましては、御指摘のように、反復継続して就業する者であること、あるいは家計補助的な者でないことの要件を満たしている場合に雇用保険を適用することといたしております。  現状で申し上げますと、平成六年十二月から平成七年一月時点で調査いたしました現状ですと、派遣労働者全体で雇用保険の適用状況は七九・四%でございますが、内容を見ますと、登録スタッフは六四・九%、登録スタッフ以外は八九・二%という結果になっております。  登録型派遣労働者につきましては、この要件を満たさずに、雇用保険が適用されない者も相当存在しているものと考えますが、適用されるべき者が適用されていないという点があれば、これは是正する必要があるということでございまして、中央職業安定審議会建議を踏まえて、労働大臣が公表する派遣事業主及び派遣先事業主が講ずべき措置に関する指針及び派遣労働者に対するパンフレットに必要な事項を記載する等によりまして、関係者に対する指導周知を一層徹底してまいりたいと考えております。  ただ、今言いました要件、これを変える気があるかという点につきましては、現在御審議をお願いしておりますこの改正案の中におきましては、そういうことは考えておりません。
  180. 寺前委員(寺前巖)

    寺前委員 私は、現状と法案の範疇でしかお答えを聞かせていただけないので、非常に残念です。積極的に参議院で参考人が十年の経過の上に立って問題を提起しておられるのですから、それなりに私は検討すべきだと思います。  三つ目。  違法派遣に対する制裁も非常に日本の場合には乏しい。例えばドイツの場合は、許可のない派遣がされた場合には、制裁の効果としまして、派遣労働者が直接に派遣先の使用者のもとの従業員になれるというそういうふうな擬制、みなしをしているわけです。日本派遣法には、派遣先の責任を追及するような、このような仕組みはありません。 長期間派遣労働者派遣する場合には、派遣先とその労働者との雇用関係が成立したものとドイツではしていますけれども日本でもそういうふうに考えるべきだという問題提起がなされています。これについてどのようにお考えでしょうか。
  181. 永井国務大臣(永井孝信)

    永井国務大臣 御指摘のように、違法な派遣を受け入れた派遣先につきまして、一律に派遣労働者と直接雇用関係が成立したものとすることにつきましては、不適正な派遣就業を行わせるような問題のある派遣先における就業を継続させることになります。かえって派遣労働者保護に欠けることになるおそれもありますことから、必ずしも適当ではないと考えるわけであります。  また、ドイツの例と対比されているわけでありますが、我が国労働者派遣事業制度は、ドイツのように派遣期間を制限するのではなくて、対象業務限定する方式を採用していることにつきましても留意をしてほしいと思うのであります。  また、違法な労働者派遣事業を行う事業主から、派遣労働者を受け入れて就業させる派遣先適正化のための措置につきましては、これまで特段の規定がなかったところでありますが、今回、勧告公表等措置を盛り込んだところでありまして、まずその有効適切な運用を図っていくことが第一段階で大切ではないか、このように考えているわけであります。
  182. 寺前委員(寺前巖)

    寺前委員 私は、必ずしも今の意見に賛成はしません。  次に、四番目に、育児休業、介護休業の代替派遣についての問題が参考人から提起されていました。育児休業や介護休業で代替で行かれるのですから、同一労働の任務につかれることになります。その場合に同一労働、同一賃金で採用するということになるべきではないのだろうか。このことについてそういうふうにお考えになりませんか。そうでなかったら、代替の名で安上がりの労働者を使うことになるのではないか。この見解についてお聞きをしたいと思います。
  183. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 御指摘の点につきましては、おっしゃるように同列に論じるべきである、考えるべきであるという御意見もございますが、ただ、他面におきまして、代替要員である派遣労働者については、休業取得者の行っていた業務を行うものの、必ずしも休業取得者と同等の技術知識経験を持って業務を行うとは限らない、そういう問題があること、あるいは、派遣労働者派遣事業主に雇用される労働者であり、休業取得者は派遣先に雇用される労働者であることから、雇用主の異なるこれらの労働者について同列に論じ得ないという御意見、そういう意見もあるところでございます。  いずれにいたしましても、特例に係る派遣労働者派遣先において適正な就業条件のもとで就業できるようにすることは重要な課題であると考えておりまして、今後とも派遣労働者の適切な派遣就業確保に努めてまいりたいと考えております。
  184. 寺前委員(寺前巖)

    寺前委員 ずっと十年たって今考えてみたときに、今度の法律でさらに全面的に派遣労働者を法的に保障していくというやり方の道が、労働者の権利を守ってやるという立場から見ることができないように感ずるのです。問題提起をされた点については、私は真摯に検討すべきだというふうに思うということを申し上げておきたいと思います。  それでは第二の問題です。  映画演劇関連産業労組共闘会議と舞台美術労働組合協議会が大臣に出した要請書です。これは昨年の暮れです。これを見まするとこういうことが書いてあります。  テレビキイ局の美術の八割以上が舞美労協関連の美術会社で製作され、これら各社の従業員によって局および関連のスタジオで建て込み(配置)作業やバラシ(撤収)作業が行われています。   現在、中央職業安定審議会で進められている労働者派遣事業制度の見直しのなかで、「放送番組等に係わる大道具及び小道具の業務」を加えようとされていますが、これはテレビと美術の現場の実情を全く無視した判断であり、テレビ放送業務に大きな混乱をもたらすものなので撤回されるよう要請します。 そこには誤った認識があるということが書いてあります。そして、その後に、  テレビの大道具、小道具は、テレビ局から請負契約で美術会社に「道具帳」という形式で発注され美術会社の責任で製作されます。テレビ局が労働者を直接雇用して大道具や小道具を製作することはありません。従ってテレビ美術の製作部門の労働者がテレビ局を派遣先として雇用されることもあり得ないのです。また、テレビ美術を担当している各社は演劇美術を本業としている企業であることから、その製作技術のノウハウは伝統的に企業内に蓄積され、人材の育成も企業の責任で行われてきたため、フリーの製作スタッフは皆無に等しく、従って、これらの美術会社派遣先としての派遣労働も現状では成立しません。このように「中間整理」が派遣対象業務に大道具、小道具の「製作」業務をふくめたことはナンセンスとしかいいようがありません。 ということを一つは提起しております。  それからもう一つは、  テレビ局から発注された大道具や小道具は「道具帳」に基づいて美術会社の工場で製作され局に搬入されます。搬入された道具は「道具帳」に基づいて美術会社の責任者の指示の下で建て込みされます。ディレクター等テレビ局側の指示は、建て込みや飾り込みに従事する労働者に対して直接出されるのでなく、美術会社の責任者をとおして出されるのです。テレビ番組が収録された後のバラシ作業にいたっては局側の立ち会いさえもない作業です。このようにテレビ局の大道具、小道具の業務は、基本的には番組収録の前と後の作業であり「放送機器等の操作」や「放送番組等の演出」の業務のように収録作業そのものに参加するわけではありません。美術の「操作」とよばれるテレビ局で働く大道具、小道具の労働者は、美術会社常用労働者としてテレビ局に常駐し、どの番組であれ、建て込み作業や撤収作業に従事するのです。従って「中間整理」が「需給調整システムとしての必要性」として述べている「第一号の四の業務とその必要性及び就業期間が類似している…」という認識は全くの間違いです。美術会社が番組ごとの担当者としてつける一人乃至三人の「番組付」といわれる業務は、一見、直接局側の指示の下での業務のように見えますが、この業務は美術会社の営業係を兼ねるため美術会社の社員が担当しています。   以上の労働関係から見て、テレビ局の大道具、小道具の業務をテレビ局を派遣先とする労働者派遣を実施することは事実上不可能です。 こういうふうに事実の認識についての誤りを具体的に指摘しています。  そこで私は聞きたいのです。  こういう検討がされてきているわけですけれども、現に中間の段階の整理までされてきたわけですが、少なくとも民放連なりテレビ局、美術会社あるいは関係する労働組合に対して、ヒアリング等で実態を把握するということが必要ではないのだろうか、これが一つです。  それからもう一つは、現実に派遣労働を問題にするというのは、現にそういう事態があるのか、派遣労働者という問題が現に存在しておって、したがってこういう方向考えようというふうにしているのか。事実の認識が違うという指摘がある以上は、私はそこをはっきりしていただきたいということを提起したいと思うのです。
  185. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 ただいまの点でございますが、昨年十二月の中央職業安定審議会建議におきまして、放送番組等に係る大道具及び小道具の業務適用対象業務の追加業務として適当であるとされたところでございますが、その検討に当たりましては、関係の事業主及び労働者からの意見を踏まえて、中央職業安定審議会において使用者団体の代表及び労働組合の代表を含めた三者構成の場で慎重に御審議いただいたものであり、その結果については、私どもとしては尊重しなければならないというふうに考えているところでございます。  ただ、この適用対象業務につきましては、これは法律が成立させていただきました後、実施する段階で政令で指定するということになるわけでございまして、その適用対象業務の具体的な検討に当たりましては、各方面の御意見をなるべく広く伺っていく必要があると考えているところでございまして、御指摘の要請書につきましても、そのようなものとして受けとめてまいりたいと考えているところであります。
  186. 寺前委員(寺前巖)

    寺前委員 私は、実態の把握が違うという指摘がある以上は、ヒアリングをきちんと関係方面との間にするように改めて要求をしたいと思います。  最後の問題です。  ニチイ学館というのは、一九九四年十二月の八日に、一年単位の変形労働時間は無効で基準法違反だと、池袋労働基準監督署に会社と社長を告発した、そういう告発された会社です。  この会社を調べてみますと、管理部門などの社員が約一千名、それから病院に派遣され事務をつかさどる業務社員が約二万一千人と言われています。本社は東京の千代田区にあるようです。  この会社のやっていることが現行派遣労働法違反にならないのだろうかということについてお聞きをしたいと思います。  この会社が出しているところのリーフを見ますと、主な取引病院名が書いてある。それを見ますと、釧路労災病院とか和歌山労災病院、山陰労災病院など、労働省が直接監督指導する病院名がそこには出てきます。それ以外にも国立大学や公立大学の名前もいっぱい出てきますので、私はどれだけあるだろうかとパンフを見てみますと、一万施設の総契約医療機関があるんだ、こういうふうに会社が言っているんですから、非常に大手の、労働者派遣していることになる。それが派遣労働なのか委託なのか請負なのか、私はそこをはっきりさせる必要があると思う。  私のところでどんな仕事をしているんだということで調査をさせました。その調査によるとこういうことを言っているわけです。歯科の矯正科受付、放射線科の受付、総合第二診療受付ですか、口腔外科、会計受付、診断科受付などなどずっと書かれているわけです。  労働省の関係者にお聞きをしたら、ビルの受付のようにあちらに何々がありますという総合受付の場合は別として、これらの専門科の受付というのは医療にかかわるいろいろなことがありますので、これは派遣労働としては認められていませんというお話でした。そうすると、こういう仕事をやらせている以上は、それでは請け負わせていたのかということになるかと思います。  そこで、請負をやる場合にはどういうことが必要になるんだろうかということで、その条件を調べてみました。そうすると、請負という以上はこういうことになるというのですね。労働省の告示に基づいて、その第二条で、労働力をみずから直接利用していないと請負にならないということで、業務遂行方法に関する指示がある。  そこはどういうことになっているかというと、ニチイ学館の担当者は病院におらないし、来ない。業務は病院から指示があって病院の職員と混在している。服装も一緒だ。患者から見ると何の区別もない。医者と患者をつなぎ、患者からの問い合わせには医者の指示に従って応答することから、カルテの保存、運搬、診療報酬の計算や会計処理などなど多岐にわたってやらされている、こう言います。  それから、ニチイ学館の担当者は病院にいないので、業務遂行の評価というのはできないはずだ。結局、病院の評価になっているのではないだろうか。  労働時間の管理は、始業時刻その他は病院に従わされ、休日、休暇の届け出も病院にする。タイムレコーダーも同じ機械を使っている。残業も病院の指示でしている。  秩序維持はどうなっているのか。ニチイ学館担当者がおらないのだから、秩序維持の指示は何もありません。労務者が欠勤すると病院の指示で補充が行われている。更衣室も病院の職員と同じだ。  こうやって考えていったときに、請負という場合には、請負の条件の側からもこれはないではないか。こうなってくると、これは違法な派遣労働ということになっているじゃないか。労働省が直接所管しているような労災病院から国立病院、公立病院まで、こんな調子で最大の医療関係の派遣労働をもしも派遣労働と言うのだったら、違法派遣労働をこういうふうにやられていて黙って見過ごすことは許されないのではないだろうかと私は強く感じたものです。  そこでお聞きをしたいと思います。  労働省としてこれを知っていたのか。私は、直ちに調査をしていただいて、適切な措置をやっていただかなければならないと思うのですが、いかがですか。
  187. 征矢政府委員(征矢紀臣)

    征矢政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、病院窓口におきます業務のうちで労働者派遣事業適用対象業務として行うことができる業務といたしましては、病院内における総合受付、案内業務、事務用機器操作、医療保険事務の一部、これは財務処理関係でございますけれども、そんなものが考えられるところでございます。  第二点目としまして、請負として実施する場合どうかという点でございますが、これは御指摘のように、請負業者がみずから雇用する労働者労働力を直接利用する、請け負った業務を自己の業務として契約の相手方から独立して処理するといった基準を満たさない場合は、契約の名称が請負契約であったとしても、違法な労働者派遣を行っているものと判断されることになるところでございます。  御指摘の件につきましては、患者と医師の間に立って問い合わせに対応しているというようなことがあるとすれば、これは発注者である病院の指揮命令を受けている可能性がございまして、適正な請負とはなっていないという疑いもございますが、この点につきましては具体的な実態を踏まえて判断する必要があると考えておりまして、私どもとしては、事実関係を調査した上で判断する必要があると考えているところでございます。
  188. 寺前委員(寺前巖)

    寺前委員 私は、今局長が対処の方向をおっしゃいましたので、ここで一々また細かいところまでやれませんので、直ちに調査をしていただいて、適切な処置をとられることを要望したいと思います。  しかし同時に、十年たった今日、これによって労働者がいいことをつくってくれたなという方向にはなっていないように私は思うのです。労働者として全体の権利が崩されていっているというふうに見なければならぬと思うので、したがって、最初に申し上げましたが、労働大臣が幾つかの参考人が参議院で提起しておられる問題について改めてもう一度見直していただいて、次への発展を考えてほしい。  労働大臣の所見を聞いて、終わりたいと思います。
  189. 永井国務大臣(永井孝信)

    永井国務大臣 参議院におきます参考人の方々の御意見は、私も議事録で十分に読ませていただきました。その中に幾つかの貴重な御提言もございますので、その御提言は非常に高度な御見識として十分に受けとめて、今後、中長期的に派遣労働考える場合の一つの提言として、それはそれなりに受けとめた形でこれからも対応を検討してまいりたい、このように考えます。
  190. 寺前委員(寺前巖)

    寺前委員 予定時間になりました。終わります。
  191. 岡島委員長(岡島正之)

    岡島委員長 次回は、明後七日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十九分散会      ————◇—————