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1996-02-23 第136回国会 衆議院 労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年二月二十三日(金曜日)     午前九時一分開議 出席委員   委員長 岡島 正之君    理事 大野 功統君 理事 森  英介君    理事 若林 正俊君 理事 上田  勇君    理事 河上 覃雄君 理事 北橋 健治君    理事 池田 隆一君 理事 金田 誠一君       粕谷  茂君    木部 佳昭君       中谷  元君    長勢 甚遠君       藤尾 正行君    宮里 松正君       東  祥三君    江田 五月君       須藤  浩君    中村 時広君       桝屋 敬悟君    松岡滿壽男君       柳田  稔君    井上 一成君       岩田 順介君    岡崎トミ子君       寺前  巖君  出席国務大臣         労 働 大 臣 永井 孝信君  出席政府委員         労働政務次官  坂井 隆憲君         労働大臣官房長 渡邊  信君         労働省労政局長 七瀬 時雄君         労働省労働基準         局長      松原 亘子君         労働省婦人局長 太田 芳枝君         労働省職業安定         局長      征矢 紀臣君         労働省職業安定         局高齢障害者         対策部長    坂本 哲也君         労働省職業能力         開発局長    伊藤 庄平君  委員外出席者         公正取引委員会         事務局経済部企         業課長     舟橋 和幸君         労働委員会調査         室長      松原 重順君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十二日  辞任         補欠選任   柳田  稔君     安倍 基雄君 同日  辞任         補欠選任   安倍 基雄君     柳田  稔君 同月二十三日  辞任         補欠選任   二田 孝治君     中谷  元君   須藤  浩君     中村 時広君 同日  辞任         補欠選任   中谷  元君     二田 孝治君   中村 時広君     須藤  浩君     ――――――――――――― 二月二十二日  失業対策事業に関する陳情書  (第九七  号)  新規学卒者就職機会の確保等総合的な雇用対  策に関する陳情書  (第九八号)  男女雇用機会均等法の見直しに関する陳情書  (第九九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 岡島正之

    岡島委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森英介君。
  3. 森英介

    ○森(英)委員 おはようございます。自由民主党所属森英介でございます。今国会における質問の一番手として、大臣所信表明に対する質問機会を与えていただきましたことを感謝申し上げます。  冒頭から私ごとで恐縮でございますけれども、一昨年の七月に村山連立内閣が発足したのに伴いまして、野党側河上筆頭理事の後を受けまして私が労働政務次官を拝命いたしました。それで、一年一カ月にわたりまして、労働行政の一翼というほどではありませんけれども、その一端を担わせていただきまして、民間育ちの私としては、初めて役所の中から、しかもそれまでやや疎遠であった労働行政を見せていただき、また勉強させていただきまして、大変貴重なひとときを過ごさせていただきました。  私のその折の所感を申し上げさせていただきますと、労働省というところは対象人間しかないということでありますから、すぐれて人間的だな、人間臭いなというのが私の印象でございます。加えまして、まずそのことからおのずからそうなるのかもしれませんけれども、コモンセンスというか常識が非常にその根底にあって、それがすベての物事の考え方において一つの物差しになっているというのは、私は大変すばらしいことであるというふうに思いました。  しかしながら一方で、そうでありながら、これは労働行政の特質かもしれませんけれども、若干おせっかいに過ぎるのじゃないかなというふうなところも感じました。その後、党に帰りまして、また国会仕事を通じまして私からもいろいろと意見を申し上げまして、労働行政進展のために違った立場からこれからも微力を尽くさせていただきたいというふうに思っております。  今回の組閣におきまして、河上筆頭理事の前の政務次官をなさった永井孝信先生が、また大変労働問題、労働行政に対して深い思い入れを持った永井先生大臣になられまして、加えまして、私の大変尊敬する友人である、若いにもかかわらず練達の坂井隆憲さんが政務次官に就任されまして、このベストフォーメーションでさぞや労働省も意気上がっているところではないかというふうに拝察申し上げます。  つきましては、ただいま労働大臣閣議でしばらくの間お見えになりません。ちょうどいい機会であると思いますので、ここで坂井政務次官から、大蔵省でお役所については造詣の深い坂井政務次官であられますけれども労働省に来られて一カ月余りたちまして、労働省についての所感と、そして政務次官としてのこれからの労働行政に対する抱負をまずお聞かせをいただきたいと思います。
  4. 坂井隆憲

    坂井政府委員 ただいま森先生から、私の政務次官としての前々任者ということで貴重な御質問をいただきまして、心から御礼申し上げます。  ちょうど村山連立政権ができたときに、私は実は幹事長に、これから連立政権でございますから、自由民主党としては重要な人を政務次官に送り込んでくれと陳情したことがあるのです。そのときに森先生政務次官になられて、非常にうれしく思ったことがありました。  実は私がなぜそういうことを申し上げましたかというと、戦後政治ということを考えた場合に、ちょうど憲法昭和二十一年の十一月三日に交布されました。ところが、日本昭和二十年八月十五日に負けて最初に取り組んだことが実は労働行政で、昭和二十年の十二月、憲法が公布される一年前に労働組合法ができた。それから昭和二十一年の九月には労働関係調整法ができたというように、憲法ができる前にこういう基本的な法律ができていったということでございます。  ですから、当時戦争で日本が負けて、これからの日本民主化を図っていくという場合に何はさておいて優先したのが、こういう勤労者福祉を守っていく、あるいは団結権団体交渉権を守っていくということだったと思うのです。  そういう意味で、その後にできたのが、昭和二十二年八月に労働省が設置されたということでございますから、戦後政治一つの第一歩というものがまさにこの労働行政だったのじゃなかろうかなというふうに私は常日ごろから思っていたわけでございます。  私自身は大蔵省で予算をやっていたわけでございますが、やはり組織というものは、財務という面と、もう一つは人という面があります。政治家は特に人間対象にし、国民福祉対象にしているものでございますから、財務だけではだめで、どうしても人間という側面に当てて政治を進めていく、行政を進めていくということが極めて重要であり、それがやはり国の政策としても根幹でなかろうかと思ったわけでございます。  特に、諸外国を見ますと、国政の基本というのは物価の安定と雇用という問題でございまして、日本高度成長の中で失業問題というのが余り話題になってなかったわけでございますから、それほど大きな議論にはなってなかったのですけれども、これから日本の行く末を考えますと、この労働行政というものがますます重要になってくるに違いない、そう思って、労働省皆様のいろいろな、労働省人たちもやはりいろいろな経験を積まれて幅広い知識と経験をお持ちでございますから、そういう人たちをブレーンとしながら、政治国民の隅々にきめ細かい政策展開ができるようにやっていきたいと思っているところでございます。  政務次官としての先輩である森先生を初め、各委員皆様方の御指導を得ながら精いっぱいやっていきたいと思っておりますので、どうかよろしくお願いいたします。
  5. 森英介

    ○森(英)委員 大変力強い、また見識豊かなお話を伺いまして、大変敬意を表します。今後とも労働行政進展のために存分に頑張っていただくことを心から御期待を申し上げておきます。  さて、私が一昨年の七月に労働政務次官に着任しました折には、失業率が三・〇%でございました。それまでたしか二・五、六%で長いこと推移してきて、随分高くなったなということで大変緊張感を持っておられた時期だと思いますけれども、昨年の八月に退任しました折が三・二%でありました。この間、コンマ一%ずつ上がるたびに、労働省内、衝撃が走るぐらいの受けとめ方であったように思いますけれども、それがいつの間にやら、昨年の暮れには三・四%になったわけであります。  何ゆえにこの期間にこれだけ失業率が急に上がったか、その原因について伺いたいというふうに思います。
  6. 征矢紀臣

    征矢政府委員 ただいま御指摘のように、最近の完全失業率、二カ月連続しまして三・四%と非常に厳しい状況が続いているわけでございます。  これにつきまして、どういう理由でこういう事態になっているかという御指摘でございます。いろいろな理由はあろうかと思いますが、一つには雇用情勢、昨年四月以来悪くなってきているわけでございますが、その原因といたしましては、御承知のように、急激な円高による影響が各方面に出て、その結果失業者が滞留し、上がってきている、こういう面も一つあろうかと思います。  それからもう一つは、新規学卒者就職できない方、こういう方がふえてきている、こういうような点もあろうかと思います。  それからもう一点は、最近景気が緩やかでございますけれども上昇傾向にあるわけでございまして、そういう面から見ますと、雇用指標でも、有効求人倍率で見ますと、昨年の九月の〇・六〇倍を底にいたしまして、十二月には〇・六五倍ということで上昇してきております。そういう景気回復過程におきます雇用指標並行指標で見ますとよくなっている。  そういう面とあわせまして、例えば、パートタイム労働者方々のように、景気が悪くなりますと仕事をやめざるを得ない、やめた場合に家庭の中にお入りになる、こういうことで労働市場から引っ込んでいた方が、求人がふえるということと合わせまして再び労働市場に出てくる、そういうようなことで、それが完全失業率にはね返って失業率が上がる、こういうような面もあるわけでございます。  そういうようなことから現在の状況になっているのではないかというふうに考えているところでございます。
  7. 森英介

    ○森(英)委員 昨年の末ぐらいから、経済見通しの面からするとやや明るさが見られるとか、そういう状況になってまいりましたし、昨今もいろいろな条件が整備されてきたというふうな見方がされているようでございますけれども失業率の面からすると必ずしもそうでもないのかな。あるいはこれまでも景気の循環の中で、失業率との関連で見ますと、若干失業率景気指標とのタイムラグがあるというふうに思いますけれども経済見通しとの関連で現在の失業率をどのように見ておられるのか、伺いたいと思います。
  8. 征矢紀臣

    征矢政府委員 政府の来年度経済見通しにおきましては、先生承知のように完全失業率は三・一%、これは年度間の平均ということになるわけでございますが、そういう見通してございます。  足元の、現下の状況が三・四%と非常に厳しいわけでございますが、現時点におきます景気の、緩やかではございますけれども回復する動き、それから為替相場が百五円前後で安定している状況、そういうものとの関係雇用情勢がどうなるか、これはなかなか先行きの見通しは難しいわけでございます。  私どもといたしましては、ただいまの政府経済見通し、そういうことを頭に置きつつ、景気回復がより着実になっていく中で雇用情勢が改善し、当面具体的には有効求人倍率の動向について大変私ども心配いたしておるわけでございますが、現在の有効求人倍率改善傾向が継続し、それが失業の減少につながる、そういうことで完全失業率が低下する、そういうことを期待しながら、求人開拓等あるいは職業紹介全力を挙げて取り組んでまいらなければならないというふうに考えているところでございます。
  9. 森英介

    ○森(英)委員 ぜひ注意の上にも注意を払っていただきまして、この上とも失業率が一方的に増加していくということがないような一助となる施策を講じていただきたいと思います。  それと関連いたしまして、産業構造の転換が進むというふうに見込まれている中で、今後雇用増加が見込まれる業種と、むしろ衰退していくだろうと見られる業種とがおのずから出てくるというふうに思われます。今後の雇用対策考えるに当たっては、やはりこういう点もきめ細かく考慮した上で対応していくべきであるというふうに考えますけれども、その辺についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  10. 征矢紀臣

    征矢政府委員 御指摘のとおりでございまして、産業別に今後雇用がどうなるかという点につきましては、私ども、昨年十二月に閣議決定いたしました第八次雇用対策基本計画の中での数字的な資料といたしまして、今後二〇〇〇年にかけて、大まかに言って、第一次産業のほか製造業あるいは卸・小売業飲食店等では就業者が減少していくのではなかろうか、それに対しましてサービス業等増加していくのではなかろうか、こういう大まかな見通しはしているわけでございますが、具体的に個別な、さらに細分化されたところでの状況というのは、なかなか的確な把握は難しいわけでございます。  いずれにいたしましても、そういう大きな構造変化の中で今後考えられますのは、産業間、企業間におきます労働移動、これがいろいろな形でふえていく、そういうことが見込まれるわけでございます。そういう過程失業問題の発生、増加という心配がございまして、そういうものをできるだけ抑える、そういう観点からの対策政策展開、そういうことが重要になっていくものというふうに考えております。  そういう観点から、昨年七月から実施されました改正業種雇用安定法に基づき、構造問題を抱えた業種から今後雇用機会増加が見込まれる業種等への円滑な労働移動、具体的には出向とかあるいは再就職あっせんとかいう形で、失業しない形で労働者の受け入れあるいは送り出し、そういうものを進める事業主に対する教育訓練等に対する助成あるいは受け入れた場合の賃金の一定期間助成、そういうような支援策を行っていく必要があるということで、そういう対策を進めているところでございます。
  11. 森英介

    ○森(英)委員 今のことに関連しまして、特に女性の問題に焦点を絞って伺いたいと思いますけれども、今女子学生就職受難時代というふうに言われておりますし、現に大変厳しい状況であるというふうに認識しております。  ことしの卒業生の三月の卒業が目前に迫っているわけでありますけれども、いまだ就職の決まっていない学生に対する就職支援対策、どのように取り組んでおられるかということをお尋ねいたします。これについては別に女性に限らないで結構でございます。
  12. 征矢紀臣

    征矢政府委員 ただいま御指摘の当面する本年三月卒の新規学卒者就職問題でございますが、これは結論から申し上げまして、極めて厳しい環境にあるわけでございます。  最新の時点で私どもが把握しておりますのは昨年十二月末現在におきます就職内定状況でございますが、これで見ますと、高等学校で八三・四%、大学で八一・七%、短大が五六・五%、専修学校で七八・四%ということで、専修学校を除きましていずれも昨年同期を下回っているということでございます。そういう意味で、就職状況は極めて厳しい環境にあるというふうに考えております。  この対策といたしましては、当面、三月の卒業までに何とか一人でも多くの方の就職が決まるよう求人開拓全力を挙げますとともに、公共職業安定所あるいは大学等を通じました求人一覧表提供、あるいは全国各地におきます就職面接会開催、そういう対策を強化するなどの形で就職支援全力を挙げているところでございます。また、学生職業センターあるいは全県下に設置されました学生職業相談室におきましても、きめ細かな職業紹介相談等を強力に推進しているところでございます。  今後とも、三月初旬に大学等新卒者対象といたしました本年度三回目の求人一覧表の作成、提供を行うことにいたしておりますが、そういうことによりまして新卒者就職につきまして最大限の努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  13. 森英介

    ○森(英)委員 これは大臣所信表明の中にもございましたけれども就職の問題を解決するに当たって、一つには求人と求職のミスマッチということが指摘できると思います。特に、私なども平素いろいろな方々に接しておりまして、男子学生に比べて女子学生は、押しなべてブランド志向というか一流志向といった面がやや強いのじゃないか、むしろ男子学生の方が自分の身の丈に合ったところを選択するというような気がするのです。  労働省印象一つとして、女性官僚がまことに生き生き、ばりばりと仕事をなさっている。これは御本人たち能力努力もさることながら、先達の努力やら苦労やらでそういう環境がつくられ、またシステムがつくられたというようなことも多いんじゃないかと思います。  そういった女性官僚代表選手として、きょうは太田芳枝婦人局長においでいただいておりますけれども、そういう女性立場ということも勘案して、今の職制上、女子学生のそういう職業選択についてどういうふうにとらえておられるか、また、先輩として彼らの認識に対してもし注文でもあれば、そこら辺の忌憚のないお話を伺わせていただきたいと思います。
  14. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えいたします。  今、女子学生ミスマッチの問題について先生の御指摘でございますが、御承知のとおり、女性の方が男子学生よりも就職率が悪くなっております。  その理由一つとしては、やはり先生おっしゃいましたように、ブランド志向一流志向、さらには従来女子が多く就職しておりました事務職求人数が減っているというようなことも原因一つにあるのではないかと思っております。ということで、私どもは、女性就職問題の解決のためには、事務職以外の職種にも女性たちが広く応募することが必要でありまして、そのためには、大学学部選択などの進路決定に当たっても、将来の職業生活を念頭に置いて学部を選ぶということも非常に重要ではないかというふうに考えております。  このため、労働省におきましては、平成年度から、女子高校生大学等への進路決定に当たりまして、自分の適性とか能力とかに応じて適切な学部選択をするように、全国婦人少年室女子高校生等対象にしたセミナー等開催をさせていただいているところでございます。
  15. 森英介

    ○森(英)委員 ありがとうございました。  いずれにしましても、そういう求人雇用側にいろいろ要請をすると同時に、私としてはやはり学生の側の認識を高めるということも非常に大事なことだと思いますので、それについてもあわせてこれから御尽力いただければよろしいのじゃないかなというふうに思っております。  いろいろ考えていたのですけれども、ちょっと時間がなくなりましたので、最後にもう一度政務次官に御質問をいたします。  人材育成は、新経済計画におきましても、我が国が二十一世紀に向けまして新たな発展を遂げていくための新しい経済社会を支える基盤として大きな位置を占めていると思います。その中で、職業能力開発推進が大きな政策課題として取り上げられているわけですが、職業能力開発行政も、公共職業訓練実施事業のみならず、人材高度化事業ホワイトカラー対策のような変化に対応した施策を充実していくべきではないかというふうに考えております。  特に今後は、労働者一人一人がみずからの能力開発に主体的に取り組むことを支援していくことが重要だと考えますが、このような重要な政策課題について労働省としてどのような方向に向かって施策を進めていくお考えか、お尋ねをしたいと思います。
  16. 坂井隆憲

    坂井政府委員 我が国経済社会は、現在、技術革新国際化進展などに伴う産業構造変化等に直面しておりますが、構造改革を進めて、新しい経済社会を支えるための基盤として、人材育成は極めて重要な課題になっていると認識しております。  森先生工学博士で、私なども一緒に科学技術仕事どもしていたわけでありますが、科学技術関係も、最近はいろいろそういうことで議論になっていることはもう御承知のとおりでございます。  そのように、全体が技術革新という、国際化というような流れの中で、日本の国全体で人材育成をどうしていくかということが極めて重要な課題になっておりまして、そういうことで、昨年十二月に閣議決定された新経済計画、ここにおいても、職業能力開発を含む人材育成ということを重要な位置づけにしているわけでございます。  このような状況を踏まえて、労働省としては、高付加価値化・新分野展開を担う人材育成個人主導職業能力開発推進産業発展基盤となる職業能力評価推進技能継承促進等を内容とする第六次職業能力開発基本計画を策定いたしまして、去る十六日に閣議に報告したところでございます。  労働省としては、この計画に基づいて、二十一世紀に向けた新たな発展を担う人材育成を強力に推進していく考えではありますけれども、特に先生が御指摘された労働者みずからが主体的に能力開発に取り組むことに対する支援については、労働者個人への直接の支援策の検討も含めて、その施策の強化を図っていきたいと思っているところでございます。  どうかよろしく御協力をお願いいたします。
  17. 森英介

    ○森(英)委員 ありがとうございました。ぜひ頑張っていただきたいと思います。  終わります。
  18. 岡島正之

  19. 江田五月

    江田委員 おはようございます。  永井労働大臣、このたびはどうも御就任おめでとうございます。永井大臣は、もうこれは労働問題の大専門家であられるわけで、まことに適材適所かと思います。この内閣、今エイズ問題で私の昔の同志の菅直人君も非常に頑張っておって、これも適材適所かと思いますが、永井大臣にも大いにひとつ、活躍を期待をされている大臣だと思いますので、ぜひ頑張っていただきたいと思います。  実は、私と大臣とはいろいろ偶然がありまして、くしくも議員会館の部屋はお隣同士で、かれこれ十年以上ですか、やってまいりました。岡山県と兵庫県ということもございます。  実は私ども、新進党という新しい政党をおととしの暮れにつくったわけで、去年一年間私は党役員の方をさしていただいておりましたが、ことしから、明日の内閣というのがあるんですが、その労働雇用政策大臣というのを受け持てということになりまして、ちょうど時期を同じくして永井さんが労働大臣になられた。  私たちは、やはり議会制民主主義というのは政権交代がなきゃいかぬ、政権交代可能性ぐらいせめてなきゃいかぬ。そのためには、本日ただいまの内閣があって、そこにいろいろ大臣がおられれば、もう一つ政権交代可能性を持った政党にもやはり同じようにカウンターパートがいて、これがなかなか対等とはいきませんが、ひとつ大いに我々も頑張って対等の議論をしていく、政治家同士議論をしていく、そういうことをぜひやりたいということで明日の内閣をつくっているわけでございます。  いろいろ縁のある永井大臣とこうして、大変な専門家であられる本日の労働大臣と、私は実は労働行政というのは本当に経験がないんですが、素人素人なりに、それでも意欲だけは持って頑張ろうとする私どもの方の明日の労働雇用政策大臣と対決をさしていただくということで、ぜひひとつ実のある議論をさしていただきたいと思います。  大臣所信表明をつい先日聞かしていただきましたし、また、その後も改めて読ましていただきました。いろいろなことが注意深く適切な言葉で入ってはおるんですが、大臣自身恐らくお読みになりながらお感じになっておられるんだと思いますが、やはりお役人のつくった文章なんですね。大臣の言葉もいろいろ随所に入ってはおるんだとは思いますけれども、それでも役人の文章で、きょうはひとつそうではなくて、もう政治家同士の生の言葉で議論をしたいと思っております。  通告をしていない話でちょっと恐縮なんですが、大臣はたばこは吸われますか。
  20. 永井孝信

    永井国務大臣 酒は飲みませんけれども、たばこはたくさん吸います。
  21. 江田五月

    江田委員 昨日、労働省はなかなかすばらしいことをされたんですね。たばこの煙から非喫煙者の健康を守るために、分煙を柱とした職場での喫煙対策のガイドラインを労働省は初めて策定をした。これは通告はしてありませんが、どうです大臣労働行政任者としてどういう意欲をお持ちですか。
  22. 永井孝信

    永井国務大臣 私、たばこを吸うものですから、吸う者の立場に立っていつも発言をしているんですが、この社会の中で嫌煙運動をされる方もありますし、たばこをお吸いになる方は、これは一つの嗜好品でありますから、その吸う権利もという議論もあります。  そういう中で、社会の中でたばこを吸う喫煙者がたばこを吸わない人々にどれだけ迷惑を少なくするようにするかということからすると、職場の中でも一定の節度ある対応が必要なのではないか。これは、喫煙者である私の立場からいいましても、その節度というものはやはり守らないかぬだろう。  現に、飛行機に乗りましてもあるいは電車に乗りましても、新幹線もそうでありますが、禁煙車というのがきちっとつくられておりまして、私どもたばこを吸う者は禁煙車に乗らない、禁煙車にしか乗れないときはそこではたばこを吸わないということを自分でもずっと守ってきたわけでありまして、その程度のことは社会の共生という中ではやはり必要なのではないかということで、今回のこの通達についても、ぜひひとつ関係者の皆さんに十分な御理解をいただいて、お互いが気持ちよく社会の中で生きていけるようにするということで、私はこのことは高く評価をしているわけであります。
  23. 江田五月

    江田委員 いいですね、そういうことだと思いますよ。たかがたばこでけんかになったり、あるいは気分悪くなったりというのはたまらぬので、吸う人も吸わない人もそれぞれが皆仲よくやっていけるといいと思う。  大臣、今最後に高く評価をしておるとおっしゃいましたが、これは大臣自身がやられたことですから、評価というよりも自分の意欲をひとつ示していただきたいんですよね。評価は我々がするわけでございますから、ひとつぜひ間違わないように、大臣、当事者ですから、よろしくお願いをいたします。  さて、労働行政全般のいろいろな議論をさしていただく前に、まず一つお伺いをしておきたい。それは今議論になっております独占禁止法改正問題、特に持ち株会社の解禁と労働問題についてでございます。  今やはり時代の大きな転換期ですし、企業がいろいろな形の企業展開をしていくということももちろん必要で、日本の場合には戦前あるいは戦争中いろいろな経験を持っておって、財閥というものが弊害を引き起こしておった。そんなことを乗り越えて、戦後、公正な競争市場というものを確保していかなきゃならぬということで独禁法をつくって、持ち株会社というものを禁止をしたわけですね。  しかし、どうもこれも一定の限度で必要性があるのではないかというので、いろいろな類型なども検討しながら持ち株会社解禁の議論が起きておるわけでありますが、一方しかし、ことしの一月三十一日、連合の鷲尾事務局長は談話をお出しになった。どうも今の持ち株会社解禁の動き、持ち株会社原則自由化、これは労働問題の観点からの検討が抜けておるではないかと、「労使関係や、雇用労働条件に関わる合意形成に関して、重大な懸念がある。」「国民議論が不十分なまま持株会社の解禁を強行することには断固反対する。」こういう談話を出されて、強い意思表示をされました。  連立与党の中でも永井大臣の所属政党である社会民主党ですか、何となく懐かしい響きのある名前ではありますが、この社会民主党の方は原則自由化に強い異論を唱えて、与党の間での調整がつかずに、この部分先送りで、公取の組織強化、本当に強化になるかどうかちょっとわかりませんが、そういう改正となった。しかし、一国会の中で、一つの法案について、この改正とさらにもう一回改正を出すというような動きもあるとか、三月中にも結論を出すのだとか、いろいろな議論が聞こえてくるわけです。これは一体どういうことなのですか、まず永井大臣にこの持ち株会社解禁ということについての基本的なお考えを伺っておきたいと思います。
  24. 永井孝信

    永井国務大臣 現在、江田議員からも御指摘がありましたように、連立与党を組んでおります与党の中でプロジェクトチームをつくって、検討しているわけであります。  戦後の独禁法の制定されました経緯については、今先生言われたように、公正な社会をつくるというその原点に立っているわけでありますが、今現実のこの高度に発展してきました社会の中で持ち株会社というものを解禁するというこのことについて、果たしてそのことが社会的に見て、経営者の側と働く側との関係においていろいろな問題が想定されますけれども、その想定される問題について的確に対応できるか、あるいは経営団体とか労働団体の要望を最低限満たすようなものになり得るかどうかが検討の焦点になっているわけであります。  その点につきましては、今直ちにそれがどうのこうのということのコメントは差し控えたいと思うのでありますが、プロジェクトチームで与党は与党なりに検討している経過というものを慎重に見守った上で労働省としても対応していかざるを得ない、このように実は考えているわけであります。
  25. 江田五月

    江田委員 公正取引委員会の方、お見えですね。  今、永井大臣は、持ち株会社の原則自由化、解禁、これによって労働関係に重要な影響が出てくる可能性があるので、労働関係への影響の検討というものは重要な課題になっておるのだということで、労働省としては関心を持っておるのだ、そういうお話なのです。  四章研と言われましたか、独占禁止法第四章改正問題研究会の中間報告書、これを拝見しますと、一番最後の方に「他の関連法制」というので、「一定の範囲で持株会社を認める場合には、独占禁止法だけでなく他の法制に内在していた問題が明確になり、その見直しを必要とするものがでてくることが予想される。」「これらの問題については、今後どのような措置が必要とされるかについて、関係各方面において早急に検討が深められていくべき事項であると考えられる。」こういう記述があるのですが、この記述は労働関係のことも頭に置いて書かれたものなのですか、どうなのですか。
  26. 舟橋和幸

    ○舟橋説明員 御説明申し上げます。  今この持ち株会社禁止制度、これは全面禁止になっておるわけでございますが、これに対しましては、その規制を緩和すべきであるという意見、要望が寄せられてきておりまして、最近では規制緩和、そういう観点からこの持ち株会社禁止制度のあり方を見直すべき、こういう御主張がございます。  昨年の三月三十一日になりますが、規制緩和推進計画、これは閣議決定されたものでございますが、ここで公正取引委員会は、その持ち株会社規制について検討を開始して、結論を得るということでございます。  先生指摘の他法令との関係でございますが、これにつきましては、現在全面的、一律に禁止されている持ち株会社、これを一定の範囲で認めるという場合には、いろいろな法制との関係、これが当然出てくるわけでございます。  労働法規ということでございますが、労働界から、例えば使用者の考え方に影響があるのではないか、そういう御指摘があることも承知いたしてはおりますが、この問題につきましては、現行の法制下において認められております会社の親子関係、ここにおいても議論されておる問題でございまして、持ち株会社禁止制度を見直すということに伴って新たに生ずる問題というふうには考えていないわけでございます。  今後何らかの措置が必要かどうか、これは関係方面において十分議論が深められていく問題、かように理解をいたしております。
  27. 江田五月

    江田委員 非常に言葉がたくさんございまして、その中から私が質問したことについての答えの部分を探し出すのに今一生懸命注意しながら聞いていたのですが、もう一度言いますと、「持株会社を認める場合には、独占禁止法だけでなく他の法制に内在していた問題」、他の法制にいろいろ内在していた問題がこの持ち株会社を認めることによってもう一度見直しをしなければならぬ、そういう必要性が出てくる、そういうような問題がいろいろあると予想される、だからさらに細かく検討を、こういうふうに書いてあるので、この「見直しを必要とするものがでてくることが予想される。」という予想されたものの中に労働関係というのは入っておるのですか、いないのですか。今入っているというふうにどうも聞こえたのですが、それはそれでいいですか。
  28. 舟橋和幸

    ○舟橋説明員 先生指摘の四章研の報告書の、ここで指摘しております「他の法制に内在していた問題」、その中に労働法規がストレートに入っているかどうか、これは四章研の検討の場でも明示的には議論はされていなかったというふうに私は理解いたしております。  ただ、この四章研の報告書は別といたしまして、労働関係について、先ほど申し上げましたが、労働界から使用者の考え方とかそういう影響があるのではないかという指摘がある、これは私ども承知しておる、そういうことでございます。
  29. 江田五月

    江田委員 よくわからないですね。  例えば使用者性という問題がございますね。これは従来からも、親会社、子会社という関係で、もちろん親会社の従業員は問題はないのですが、子会社に雇われている者の場合には一体だれを使用者として交渉していったらいいのか。  現実に、労働契約で使用者となっている者といろいろ交渉してもらちが明かない、これはやはり親会社と話をしなければいけないのではないかということがしょっちゅう起きて、そして法は「使用者」としか書いていないわけですから、使用者というのは言ってみれば包括的、あるいは価値評価をある程度含んだ概念でしょうから、実態をずっと解明しながら、これが使用者だというようにして使用者性を認めていくというやり方をやってきたわけですね。ですから、従来からも使用者性というのは内在されていた問題で、それを法人格否認の法理とかなんとかでクリアをしてきた。  しかし、今持ち株会社というものを認めるという方向を検討し始めると、もう一度この使用者性という問題が浮かび上がってくる。だからこれについて検討しなければいけないというので連合の方から言われた。確かにその問題は、ここへ書いてある「他の関連法制」の中にそういえば入っていると認識をしなければならぬな、こういう経過で今認識をされておる、そういう理解でいいですか。ちょっとよくわからない、舟橋さん。
  30. 舟橋和幸

    ○舟橋説明員 答弁がつたなくて恐縮でございます。  四章問題研究会の二十五ページだったかと思いますが、ここに書いてある範囲で労働関係が明示的に入っていたかどうか、ここは研究会の報告でございますのではっきりはいたしておりませんし、研究会の議論過程でも特段それが明示的に議論になったこともない。  ただ、それは別といたしまして、現在私ども持ち株会社関係の規定の見直しについて検討いたしておるわけでございますけれども、それとのかかわりにおければ労働関係関連する問題だというふうに認識しておる次第でございます。
  31. 江田五月

    江田委員 課長がそこを注意深く答弁されるのは、大臣、こういうことなのだと思うのですよね。  確かに労働関係も、当たり前なんですよ、持ち株会社を解禁すればいろいろな形態の会社が出てきて、親会社、子会社よりももっと、どう言いますか、すっきりと言えばすっきりだけれども、はっきりした支配、被支配の会社が出てくるわけです。しかし、会社というのはもちろんそこで人が働いているわけですから、そういう働いている関係からいろいろな労働関係というのが出てくるのは当然で、これについての検討なしに持ち株会社問題を考えるというのは、これはおかしな話。  ところが現実には、大臣、大変なことなんですね。この第四章改正問題研究会のメンバーには、ずっと見ても、労働関係労働問題について見識、まあ見識は皆さんそれぞれお持ちでしょうが、専門的な知識経験を持っていらっしゃる方が一人も入っていないんですね。入らずにやったものだから、その点の議論がきっちりできずにこうなってきて、後で言われてあわてた、これは確かに関係あるなと。そこで、その関係議論をしていかなければならぬというので、労働省ともいろいろ協議を始めたという、そんな感じのようですが、大臣、どうです。  さっき大臣は、これは重要な関係があるとおっしゃったので、過去の経緯は別として、これからいよいよ法案取りまとめというようなときに、与党内の協議でもあるいは閣議の中でも、まあ閣議というのは大体花押か何かを一生懸命書いて、それだけで済んでしまうような形式的なものですが、広い意味での閣議で、閣僚の中で、労働問題についてしっかりした検討なしに議論を進めることはだめですよと。  しかし、もちろん持ち株会社解禁という一定の社会的要請は今あるわけですから、何が何でも反対とかというわけではもちろんないので、きっちり節度ある、自由な競争力のある市場を維持していくために前向きに取り組まなければならぬけれども、一方で、労働問題についてはやはりちゃんと労働省なり労働大臣なり、十分言いたいことは言わせてもらうという覚悟を持っていただきたいのですが、いかがですか。
  32. 七瀬時雄

    ○七瀬政府委員 ちょっと技術的な点でございますが、現在でも使用者性の範囲についてはいろいろと議論がある。問題は、この使用者性を広げるかどうかという点につきましては、労使を含めた幅広い議論で判断することになると思うのですが、持ち株会社の解禁に伴ってどんな問題が生じ、どんな形態ができ、それが労使関係にどう影響を及ぼすかという議論は必要なことだというふうに考えております。
  33. 永井孝信

    永井国務大臣 最前も御答弁申し上げましたように、今さまざまな問題点が想定されますので、実はプロジェクトチームで検討してもらっているわけでありますが、労働団体側からいえば、果たして従来の親会社、子会社という関係の労使問題ということで処理することで済むのかどうなのかという問題が一つ提起をされているわけであります。  経営者側からすれば、いや、それは今までから親子関係にある労使関係と同じような形態でやれるのではないかという議論もあります。あるいは、現在の労組法や労調法で対応できるのではないかという議論もあります。  その根拠となるべき背景は、それぞれの持っていらっしゃることは随分あると思うのでありますが、それを一つ一つ引き出して、実際に心配されるような異常な労使関係というものが、産業界の発展に混乱をもたらすことがあってはならないという立場で検討してもらうということで今検討してもらっているわけでありますから、これについては私自身は、江田先生も言われましたように重大な関心を持っているわけであります。  労働省としても、労働者の保護ということも十分に頭に置きながら、その推移を見て対応していきたい、こう考えております。
  34. 江田五月

    江田委員 大臣のその御決意は多といたします。頑張っていただきたいと思うのですが、もう少し事実関係、今局長お答えになったので、詰めてみたいのです。  この持ち株会社解禁問題について、まず舟橋課長、労働省とはいつどんな形で協議を開始されましたか。
  35. 舟橋和幸

    ○舟橋説明員 御説明申し上げます。  持ち株会社関係の独占禁止法の改正法案につきましては、通常、法案を提出する前に政府部内の調整が行われるわけでございますけれども、一月の下旬から調整を行ってきております。当然労働省もその対象ということでございます。
  36. 江田五月

    江田委員 これはもっともっと細かく詰めていってもいいのですが、まあいいでしょう。  局長、それでいいのですか。いつ公正取引委員会の方からこの協議を持ちかけられました。
  37. 七瀬時雄

    ○七瀬政府委員 一月下旬に提出予定法案の協議という形で御相談を受けております。
  38. 江田五月

    江田委員 それは各省庁全部を集めての法案協議でしたか、すべてにやるということですか。それとも個別に公取と労働省と協議をされたのですか。
  39. 七瀬時雄

    ○七瀬政府委員 法案協議の場合には、各省とそれぞれ個別に協議をする一環として私どもが御相談を受けたというふうに承知いたしております。
  40. 江田五月

    江田委員 その協議はこれからどうされるのですか。
  41. 七瀬時雄

    ○七瀬政府委員 私どもの理解では、労使関係にどういう影響を及ぼすかについての関心がございますので、この法律の趣旨その他についてわからない点があるということでいろいろと問題点を指摘し、それに対する公取の考え方をお聞きしておったわけでございますが、トータルとしてどういう判断をするかは、与党三党のプロジェクトチームで判断をするという手続が進んでおりましたので、そういう段階でいろいろと問題点について御質問をしたという形でとどまっておるところでございます。
  42. 江田五月

    江田委員 いまひとつよくわからないのですがね。  大体この持ち株会社の解禁、私は、くどいようですが、反対と言っているわけじゃないのです。しかし、労働関係にいろいろな影響があるから、むしろ持ち株会社の問題なんかが出てくるときには、何か一月下旬になって法案協議の場で言われて、それから労働省が動き出すんじゃ本当はおかしいので、その問題はうちにも関係あるから、ひとつぜひ協議をさせてくれと積極的にもっと前から出ていかなければいけない場面じゃないのですか。どうなんですか。
  43. 七瀬時雄

    ○七瀬政府委員 先生の御指摘はよくわかりますが、事実といたしましては、私どもはこういう動きをその時点で承知した。それについての承知の仕方が遅かったということに御批判があれば、その御批判は甘んじて受けるほかはない、率直に申し上げてそういうことでございます。
  44. 江田五月

    江田委員 いや率直なあれで、甘んじて受けられてもこっちも困るのですけれども。まあやむを得ませんが、これから本当に重要ないろいろな影響がありますから。  私、先ほどちょっと言いましたが、例えば使用者性ということについては、今の親子関係、親会社、子会社関係でも、法律上なかなか難しい問題なんですよね。その問題を法制度的にちゃんとした解決をせずに、言ってみればほったらかしてきたわけですよ、言葉は悪いけれども。  まあ判断機関、それが例えば労働委員会であったりあるいは裁判所であったり、そういうところの判断にゆだねて、ゆだねられたら困るのはだれかというと、労働者の方なんですよね。使用者の方は別に困らないのですよ。労働者の方が、だれを相手にいろいろなことをやっていいかわからないものだから、大変手間暇かかる裁判所の手続なんかをやらなければいけない。それで今日まで来て、裁判所も困るわけですよ、なかなか判断の枠組みというのがないので。  それで、しようがないから、法人格否認の法理とか、これなんかも、法人格否認の法理なんというのは威張って言える法理じゃないので、言ってみれば逃げの法理なんですよね。あるいは救済の法理なんですよ。そういうもので何とか解決をしたり、何か超法規的に、いや、こういう実態ならこうだとかいうような解決をしてみたり、いろいろやってきたわけです。言ってみれば今日までの法制度の中に内在していた問題点なんですね。ですから、今回こういう持ち株会社といったことが表に出てきたときには、そういうものもひとつ法制度的に解決をしていくんだという労働行政の積極展開があってもいいのではないか。  この使用者性については、例えば立法で解決という方法もあるでしょう。あるいは、たばこ問題を最初に申し上げたのは、実はそこにちょっと伏線があるので、ガイドラインでちゃんと解決していく。こういうようなときには持ち株会社にも使用者性を認められたい、こういう形態の持ち株会社のときにはと、いろいろあるでしょう。そういうようなガイドラインを出していって、無用にいつもいつも長い手間暇かかる裁判手続などをやらなくても、労働者側がちゃんと相手方を見定めることができるような労働行政があってしかるべきじゃないかと思いますが、いかがですか。
  45. 七瀬時雄

    ○七瀬政府委員 使用者性の判断基準については、現行法では労働契約の当事者である法人、しかし実質主義ということでございますが、この点については、今の段階では判例の集積にまつほかないという形でやってきております。  ただ、そういう判例の集積を経て交通整理をするということは、いろいろ検討に値するのではないかと思いますが、おっしゃいますがイドラインについては、使用者性の範囲を広げる必要があるのかどうかという本質的な議論についても十分詰めておかなければいかぬし、あるいは使用者性の範囲を法律的には広げないけれども、あるべき姿として、あるいは啓蒙指導的な観点でこういうふうにした方がいいというようなやり方をとることも考えられると思いますが、いずれにしても非常に重要な問題なので、少し論点を整理する必要があると思っております。
  46. 江田五月

    江田委員 これはちょっと技術的なことになるので大臣はよろしいですが、そういうような問題があるということ、したがって、これは労働省としても無関心ではいられないということ、これはぜひひとつ念頭に置いていただきたいと思います。  労働組合側から、使用者性の問題だけでなくて、団体交渉応諾義務のこと、労働協約の拡張適用のこと、あるいは労使協議制度の義務づけなどいろいろ問題を提起されておって、それぞれに法律上も技術上も実体上もいろいろ難しい問題もあるが、同時に、やはり持ち株会社解禁ということになると問題として浮かび上がってくるテーマであることは間違いないので、ひとつ積極的に検討をしていただきたい。大臣、簡単にひとつ覚悟だけ聞かせてください。
  47. 永井孝信

    永井国務大臣 今、江田先生から御指摘がありましたように、この問題について内在する問題点は、できるだけ早期に全部洗い出しをしてプロジェクトチームの方に反映をさせていきたい、このように一つ考えることと、いずれにいたしましても、この結論というものが、今せっかく安定してきた労使関係というものを損なうことのない、そういうものだけは基盤としてしっかり踏まえたようなものにしていただくことを念頭に置いて労働省としても対応していきたい、こう考えております。
  48. 江田五月

    江田委員 労働省側とそういう十分な協議をすることについて、公取の方にもぜひ決意を聞かせていただきたいと思います。
  49. 舟橋和幸

    ○舟橋説明員 持ち株会社の部分的な解禁に伴いまして、例えば労使関係で生じるとされるいろいろな問題につきましては、今後関係方面において議論が深められていくことを期待しておりますし、私どもといたしましても労働省を初めとする関係省庁と密接な連絡を図ってまいりたい、かように考えておるところでございます。
  50. 江田五月

    江田委員 さて、持ち株会社の問題はその程度にしまして、労働行政全般について広く大臣とひとつ議論をしてみたいのですが、大臣労働というのは一体何ですか。  私もよくわからなくて、きのう広辞苑をちょっと引いてみましたら、一として「ほねおりはたらくこと。体力を使用してはたらくこと。」二は経済学の言葉としてですか、「人間がその生活に役立つように手・脚・頭などをはたらかせて自然質料を変換させる過程。」とか、何かややこしいことが書いてあります。  それでもどうもよくわからぬので、きのう夜、息子の何か法学入門とかいう本を見ていましたら、労働の特質というので、一つは、人間から切り離せないとかあるいは売り惜しみなんかができないそういうような特質から、労働というのは経営とか資本に対してどうしても弱者になる。これを支えていかなければ、近代市民法の形式的ルールだけでは実質的な公正というものは図られないから云々というようなことがいろいろ書いてありました。  それはそれで確かに当たっているのだろうと思いますが、どうも最近はもうちょっと違ってきているのじゃないか。何か労働というのは、苦楽でいえば苦、苦役、労役、そういうふうに考えて、そのような搾取の形態としての労働、どうしてもそこでは力関係人間人間として扱われなくなるから、労働行政では、労働者人間として扱われるように、使用者に対するいろいろな規制をするとか労働者を奨励するとか救済をしていく、それが労働行政だ、そんな感じがずっとあったのだろうかと思います。  しかし、最近は、もちろんその面も大切だけれども、それだけでなくて、労働というのは何かもっと明るいもの、苦と楽でいうと楽しいもの、そんなものになって、労働というのは苦役じゃなくて、苦役の面もあるけれども、やはり社会をつくっていく、社会を成り立たせていく、それは人間としての自己実現ですね。社会を成り立たせていく自己実現として人間がやること、これが言ってみれば労働ということですね。  そんな意味で、労働行政というのは、一人一人の人間が社会人として仕事をしていくときに、その仕事が全部自分も実現していく、社会もそれで成り立っていく、そんなバラ色というと変ですが、夢のある、未来のある、本当に人間と密着した行政になっていくときが来ているのじゃないか、そんな気がするのです。  そんな意味を込めて、大臣、一体労働というのをどういうふうに考えておられるか。長い労働運動の経験ですから、そこからほとばしる言葉があるのじゃないかと思うのですが、聞かせてください。
  51. 永井孝信

    永井国務大臣 なかなか専門的に難しい御指摘でございますから、的確にお答えできるかどうかわかりませんけれども、実は、私が長年の間労働運動に携わってきて、そこからつくり出した私の座右銘というものがございまして、その座右銘は、政治家になって十六年、この間ずっとそれを使い続けてきたわけでありますが、「人の喜びは我が喜び」という言葉でございます。それは端的に言えば、今先生の御指摘になった労働ということのすべてがそこに集約されていると言ってもいいのではないかという自分自身の気持ちでございます。  いずれにいたしましても、自分が働いて自分の生活を成り立たせるという単純な昔からの発想ではなくて、自分が社会の一員として、歯車の一つとして働くことが世の中をよくすることだ、世の中をよくするということは自分自身の置かれていることもよくなっていくのだ、そういう立場でのものではないかなという気がするわけです。  したがって、そこには友情もあり、あるいは弱者という言葉は私は適切ではないと思うのでありますが、いろいろなハンディを持っていらっしゃる方々に対する思いやりも、そういう自分労働を通してそれを果たしていくという、そこには福祉をつくり上げていくという精神もその中に込められているのではないかな。したがって、端的に申し上げる言葉はないのでありますが、私の座右銘である「人の喜びは我が喜び」というところにすべて集約させていきたい、こう考えているわけであります。
  52. 江田五月

    江田委員 私はなぜそんなことを言うかといいますと、今時代の大きな転換期で、日本はなかなか不況から脱し切れない。多少明るい兆しは見えてきたとはいうものの、まだまだなどと言われるわけですが、時代を大きく区切ってみますと、かれこれ二百年ぐらい続いた経済成長の時代、産業発展の時代、そういうものがどうやら終わりになってくる、次の時代へ移行していく。学者の言葉で言えば、国民経済という時代がそろそろ終わりつつあるのじゃないか。まだまだ途上国の皆さんなんかもあるわけですから、世界じゅうが一色でというわけじゃないのですが、日本なんというのはその中で特にそういう何か新しい時代に入っていく。  過去の産業時代、経済成長時代、これは例えば利潤追求が企業の目的であって、したがって、例えば赤字決算となる場合には企業としては失敗。しかし、今はそうでもないので、赤字のときもあれば黒字のときもある。しかし、企業が企業としてちゃんと存立をし、そういう企業活動が全体として国の経済をつくって、その中で例えば物価を安定し、あるいは完全雇用が実現できておれば、それはそれでいいのだ。  企業というのは単に利潤追求だけじゃないですよ。利潤追求という点でうまくいかないときでも、例えばメセナもあります。あるいはいろいろなことがあって、しかもそこで働いている労働者にとってはすばらしい労働環境がちゃんと保障されておって、給与もきっちり支払われてとなれば、不況というのはある時代の特徴であって、そういうのを乗り越えていけばまた次の展開が来るという、そんなことも考えていいのじゃないか。  そうすると、労働というのも、ただひたすら利潤追求をする資本経営、これに従属して働かされて搾取される形態、これが労働、そうとらえるだけでなくて、もっと別のとらえ方があって初めて、労働行政というのがいろいろな多彩多様な展開ができてくるのじゃないか。  人間というのは何だというので、ホモ・エコノミックスとかホモ・サピエンスとか、ホモ・ファベルなんというのもあるのですかね、工作、道具人ですかね。ホモ・ルーデンスとかホモ・ロクエンスとかいろいろあるのだけれども、マルクスという人が、たしかホモ・レーバーと言ったのですかね。労働するというのは人間の本質的な特徴だという。  マルクスという人は、資本主義の中ではそれは搾取になってしまうから、社会主義にして解放して、本当に労働人間にとって自己実現できる営みにしようと考えたわけです。それはそれである一定の歴史的な時代の考え方でしたが、何かそんな時代に我々、実はマルクスを卒業しながら入りつつあるのじゃないかというような感じもするのです。  今、いろいろな労働のタイプが出てきていますね。終身雇用日本の場合には一つ日本労働の場のあり方としての典型例なんでしょうが、終身雇用も崩れつつある。もちろんまだございますけれども、必ずしも終身雇用ばかりじゃない。昔からある季節労働とか出稼ぎとか、こんなものもあるけれども、パートタイムとか、あるいは何年と年期を区切った契約労働とか、派遣労働とか請負とかボランティアとか、あるいは最近はフリーターとか、いろいろな形の職業生活労働生活というものがあって、一人の人が自分の一生の中でこれをいろいろな格好で組み合わせながら自分の一生を送っていく。  そのどういう労働の形態をとってみても、それが安心できて安定、それぞれの形で安定の度合いは違いますが、それがあって、そしていろいろ保障されておって、それぞれ人が心豊かな労働生涯をそういう形で送っていけるようにしていくっそこで労働行政は、例えばパートタイムだったらこういうふうなこと、あるいは派遣労働ならこういうふうなこと、いろいろな労働の場面について、今の安心とか安定とか保障とか、そういうものがちゃんと裏打ちされている、そんな労働行政が必要な時代が来ているのではないか。  つまり、労働行政というのは、そういうパートタイムというのが最近出てきました、困りました、これは大変ですから何かとか、派遣労働という形が出てきました、これはいろいろ問題がありますからとかじゃなくて、後追いではなくて、もっと積極的に打って出て、前向きに出ていって、いろいろな形の労働の条件をきっちり整えていく、こんな姿勢が必要なのではないか。そして、それをやれば、労働行政というのはこの新しい転換の時代に物すごく大切な、物すごく可能性を持った行政になるのではないか、こういう思いがあるのですが、いかがですか。
  53. 永井孝信

    永井国務大臣 今先生指摘のありましたように、社会が進展することに伴って、まさに多様な労働形態が生まれてまいりました。とりわけ今のように景気が低迷してきている中では、さらにその傾向が強まってきていると私は思うのです。ですから、先生の御指摘になっておりますように、そういうものを想定して、それぞれに事前に的確に対応するようなことを労働行政として打って出よという御指摘でありますが、意識的にはそのことを常に頭に置いて労働省としては実は対応してきているつもりであります。  とりわけ、パートの皆さんは随分と数がふえてまいりました。ちなみに、ちょっと数字的に申し上げますと、就業形態の多様化に関する総合実態調査ということを平成六年に実施をしているわけであります。その結果からいいましても、正社員でない人の割合は、これはいわゆるパートであったり臨時であったりということになっていくと思うのでありますが、全体の二二・八%ということになっているわけです。五人に一人という状況が生まれてきているわけであります。  そういう実態がありますだけに、本来の正社員ではないパートの皆さん、あるいは労働組合も組織されていない皆さん、そういう人たちに対して労働行政としてどこまで働く人の立場に立った、保護と言えばちょっと語弊がありますけれども、その人たち労働条件を守るためにどこまで行政が深くかかわることができるか、この視点こそ今大事だということで、労働省としてはいろいろなガイドラインもつくってみたり、パート労働法もつくりましたが、不十分な点についてはさらにこれからの対応についても検討しているというのが今の実情であります。  言われましたように、多様な労働形態に対応するような労働行政、これは大変なことでありますけれども、それをやらねばならないという立場で取り組んでいるのが現実であります。
  54. 江田五月

    江田委員 これは、そういう問題意識も確かにお持ちなんだろうと思うのですよ。大臣の所信の中でも「労働者一人一人が職業生活のあらゆるステージを通じてゆとりを持ちつつ、その能力を開発・向上し、健康で安心して働ける環境整備を進めるとともに、就業形態の多様化等に対応して、労働者の多様な個性や能力が十分に発揮できるような環境整備を一層進めることが重要です。」こうお書きで、こういうところはそういう問題意識なんだろうけれども、もっとその問題意識を膨らませて積極的に展開をする、ほかの省庁も全部労働省が引っ張っていくという、そのくらいの覚悟を持ってやってほしいのですね。ぜひお願いをしたいのです。  これは例えば派遣労働法でももっともっといろいろな展開の仕方があるだろうし、そのほかでもそうです。シルバー人材センターだってそうです。いろいろな展開の仕方があるのです。一方で、今は働く場がある、その働く場の形態が今いろいろと多様になってきていますよ、働く皆さんの自由な選択というのがもっともっとできるようになった方がいいですよという話ですが、働く場がないという、これがまたもう一つ問題なのですね。  雇用自体をいかに確保していくかというのが今大変な状況であって、失業なき労働移動というのは非常に重要なこれからの労働行政のポイントで、着眼点はいいのですが、失業なきというのは、ちゃんと雇用の場があるという前提ですね。雇用の場がない、雇用の場をいかにつくっていくか、これがやはりこれからの労働行政一つの重要なポイントだと当然お考えでしょうね。雇用の場をつくっていく労働行政、いかがですか。
  55. 永井孝信

    永井国務大臣 新しい事業を創出するといいますか、つくり出すということについても、中小企業の皆さんを初めとして多くの事業者の方々労働省としてもお願いといいますか、これだけの支援をいたしますから積極的に取り組んでくださいということも、今までいろいろな法律の改正も通しまして行ってきているところであります。  そういう場合に、例えば新しく事業を起こす人について、それに合ったような能力を持った労働者が必要である。では、その人たち能力開発をどうするか。もしその能力開発のために教育をするのであれば、それに対して財政面も含めて支援をしていこう、あるいはそういう労働者を雇い入れた企業については、それだけの雇い入れた人たちに対する一定の人件費についても事業者に補助をしていこうとか、労働省として考えられることについては、財政的な援助も含めていろいろなことを行ってきているところでありますが、それをさらに厚みを持たせて、実際に実行できるようなことをこれからも積極的に取り組んでいきたい、こういうことで今懸命の努力をしているところであります。
  56. 江田五月

    江田委員 雇用対策については、今の労働行政の中心的な考え方というのは第八次雇用対策基本計画だ、こう考えてよろしいのですね。
  57. 征矢紀臣

    征矢政府委員 当面の対策でいろいろやっていることもございますが、基本的に今後二十一世紀に向けての中長期的な対策考え方としては、御指摘のとおり、新しい第八次雇用対策基本計画考え方に沿って対処してまいりたいということでございます。
  58. 江田五月

    江田委員 これもなかなかおもしろいこともお書きなんですが、やはりもっと積極的にと言いたいのですよね。重点方針で、経済社会の変革期において雇用の安定を図る、労働者が主体的に可能性を追求できるための環境を整備するとか、超高齢社会の到来に対応し、職業生涯を通じて安心、あるいは国際化などとお書きですが、新しい雇用をつくり出していくというのは、これは労働省だけの課題じゃない。他省庁とどういうような連携で新しい雇用をつくり出す仕事に取り組んでおられるのか、ちょっと説明してくれますか。
  59. 征矢紀臣

    征矢政府委員 御指摘のとおりでございまして、雇用創出ということが当面非常に重要な課題でございます。  私ども雇用対策を進めていくわけでございますが、雇用対策というのは、狭い意味での労働省の所管する雇用対策と、より広い意味での雇用創出という観点でいきますと、御指摘のように、これは産業経済が今後どう発展していくか、そういう中で新しい雇用をどこにどうつくり出していくか、こういうことになるわけでございまして、そういう観点からいきますと、産業官庁と十分連携をとりながら、そういう視点から新分野の展開、そういうものを図っていただくことが必要である、こういうことでございます。  そういう観点からいきますと、私ども、例えば通商産業省等とは定期的に連絡協議会、そういうようなものを持ちながら、産業政策との整合性をとりながら雇用対策を進めていく、こういうこともやっておりますし、あるいはこの前、二十一日に、内閣総理大臣を本部長といたします、全閣僚を構成員とする産業構造転換・雇用対策本部、これを開催いたしましたけれども、こういうところでも、当面の最重要課題雇用問題であるという観点から、労使の意見を聞く、あるいは関係閣僚の間でいろいろな意見の交換を行っていただき、雇用問題についての認識を改めてしていただき、雇用創出ということを頭に置きながらそれぞれが政策を進めていただく、そんなような取り組みをいたしているところでございます。
  60. 江田五月

    江田委員 私ども新進党、昨年の参議院選挙のときに実はいろいろな公約をしたのですが、そのときに新産業創造・三〇〇万人雇用創出三か年計画というのを提唱しまして、いろいろな分野でいろいろと新たな雇用というものをつくっていく、新たな雇用をつくっていくというよりも、もっと本質的には日本産業社会の構造自体を変えていくという、そんな提案をしているのです。  きょうはこの細かなことを一々言うつもりはないのですけれども、やはり産業空洞化とかいろいろ言われるわけで、そういうものを乗り越えていくのに、空洞化だから企業は外国へ出ていってはいかぬなどと言ったって、これはしようがないことでして、そうすると新しい産業をそこへつくっていかなければならぬ。  これからの経済発展をリードしていく産業ということになると、例えばそれは科学技術であるとか情報通信であるとか、こういったことになって、情報通信についてスーパーハイウエート光ファイバー網をもっとどんとつけろ、これはもちろん労働省だけでやるわけには当然いきませんが、やはり労働省雇用創出、新産業をつくって、そこへ労働の場を広くつくっていくというような観点から、関係する省庁と大いに協議をし、大いにハッパをかけて頑張っていかなきゃならぬ課題だろう。  そして、そういう新しいリーディング産業、そうしたものに働く能力を持った労働者を大量に用意をしていくために、能力開発、自己啓発その他をむしろ早手回しにつくっていくといった、そんなことが必要だろうと思うのですね。今もちろんやられていないわけじゃないだろうと思いますが、どういう程度のことをやっておられるのですか、そうした問題意識で言えば。
  61. 征矢紀臣

    征矢政府委員 御指摘のとおりであるというふうに考えます。  私どもといたしましては、そういう意味で、新しい分野がどういう方面でどうあるか、これが非常に今後の重要課題でございます。そういう新分野展開とあわせて、それに必要な人材をどう確保するか、あるいは既存の企業・産業労働者にどう円滑にそちらの方に移っていただくか、こういう観点が極めて重要であるということでございます。あるいは、新しい分野における必要な人材についての能力開発を積極的に進めていく、こういうことが極めて重要であるというふうに考えております。  当面、そういう観点からの具体的な対策としましては、主として大企業が中心になるわけでございますが、業種雇用安定法という法律、これは昨年の国会で改正していただいたわけでございますが、そういう中で、新しい分野に企業が展開していく場合に、それについての配置転換あるいはそれに伴う教育訓練が必要な場合にそれに対する支援をするとか、あるいは、サービス関係その他新しい分野で別のところに労働者を移す場合、移った先で労働者が職場になれるまでの間の一定期間について賃金の支援をして、失業しない形で労働者に移っていただく、そういうことによって新分野が新しく広がっていく、こういうような面での対策一つございます。  それからもう一つは、いわゆるベンチャー企業あるいは中小企業が新しい分野を展開する場合に、それに必要な人材の採用がなかなか困難だ。こういう新分野展開をする場合、あるいは新しくベンチャー企業が出発する場合に必要な人材を確保する場合に、それについても一定の賃金面での支援をすることによってその人材が確保できやすくする、そういうような対策、そんな形での雇用創出という面からの労働省としての対策を始めているところでございます。
  62. 江田五月

    江田委員 きょうは総論ですから、各論に入るといろいろ出てくるので。  今いろいろおっしゃいましたが、その一つ一つに、じゃどの程度の人員とかどの程度のお金とかどの程度の規模とか、そういうことを考えていきますと、決してなかなか満足できる状況じゃないんだろうと思うんですが、大臣、ひとつそうした観点から、時代の大きな転換期に、日本産業構造の転換、新しい科学技術、情報通信、そうした産業を大きく育てていく、そういう場面での大臣の決意を聞かしてください。
  63. 永井孝信

    永井国務大臣 今いろいろと先生指摘がありましたけれども、目まぐるしく産業構造が転換してきているということでありますから、それに対して、とりわけ少子・高齢化社会という背景がありますから、その中で勤労者の意識の変化に対応するような労働行政でなければならぬと一つは決意をしているわけであります。  あわせて雇用の創出、大変難しいことでありますが、この雇用の創出のためには、今言われましたように、労働省の枠を超えて、関係省庁と十分連携をとって新しい分野を開拓してもらう。そのためには、もう既につくってまいりました中小企業の労働力の確保法であるとかあるいは新分野展開に対する援助の措置を決めたいろいろな施策を総合的、機動的に運用していくといいますか、そういう立場で対応してまいりたいと思います。  今も職安局長から申し上げましたように、二十一日に、これは初めての試みでありますが、全閣僚出席のもとに、経済界の代表と労働界の代表も入っていただきまして御意見を聴取いたしました。  その中で、経済界の代表の方も労働界の代表の方も、今のこの産業構造転換にあわせて、新しい分野の開拓であるとか新しい雇用の創出であるとか、こういうことが今日本にとって極めて重要な問題であるという御指摘がございまして、そこは共通の土俵が私はできていると思うのですね。その共通の土俵にどうやって行政がこたえることができるかということでありますから、これこそ関係省庁と十分連携をとって実は対応してまいりたい、こう思っておるわけであります。  何にしろ新たな展開を図っていくという場合にはいろいろな障害が起きてくると思いますが、その障害を乗り越えるためには、各党派を超えてひとつ御協力をいただいて、必要な法改正などについても積極的に対応していきたい、こう考えております。
  64. 江田五月

    江田委員 もちろん我々も協力すべきは協力するにやぶさかでないので、大いに頑張っていただきたいと思います。  ただもう一つ、経済の構造が大きく変わっていく、そして次の時代の日本産業展開、経済社会発展のためには、こういう産業分野、新しい分野が牽引車になっていかなきゃならぬよということで、今の科学技術とか情報通信とかいうものを大いに伸ばしていかなきゃいけないというものがありますが、私は、やはりそれだけでは足りないんだろう。  つまり、新しい時代になっていって、本当に安定成長軌道に乗せながら、完全雇用とかあるいは物価の安定とか生活の充実とかそういうものを図っていこうと思いますと、そういうリーディング産業をぐうっと伸ばしていくと同時に、すき間産業と言うとちょっと変なんですけれども、そうでない、例えばこれまでの経済の延長線上で、どうしても効率のいいところ、いいところへと行きますから、非効率の部分というのはぽかっとあきますよね。  そこの部分は、非効率であるがゆえに産業がきっちりできていく、非効率であることを活用した雇用の場ができてくる、こんなものもあるんですよね。これは例えば教育であるとか福祉であるとか、あるいは医療であるとか、あるいは緑であるとか環境であるとかコミュニティーであるとか、観光なんというのもあるいはひょっとしたら入るかもしれませんね。これからの観光というのは、もうひなびた田舎の宿で温泉につかりながらなんというのがすばらしい観光だなんということも出てくるわけですからね。  そうすると、そういう新しい雇用をつくっていくというときに、そうした何か今まで我々が見落としていた、つまり、経営のトップと労働のトップが集まって話をしただけじゃどうしても見逃されてしまうような、そういう地域に密着した新しい雇用の場というのがあるんじゃないか。だから、何かこうばあっと旗を振ってというだけではつくっていけない。地道に地域に足をつけ、地域住民の目線に立って見ると、あ、こんなところに新しい雇用がある、こういうところにもあるじゃないかというのがいっぱいある。これはやはり私は労働省として支援をするという問題意識が要るのではないかと思うんですが、これはいかがです。大臣、どうです。
  65. 永井孝信

    永井国務大臣 実は先日、産業労働懇話会を開きました。その席上でも御意見があったわけでありますが、今先生が言われたように、雇用創出を行っていくあるいは雇用対策を進めていくためには、地域の実情に合ったそういう政策も必要だということも御指摘をいただいたところであります。  したがって、現在労働省としては、そういう実情も踏まえながら、多角的な視点に立った雇用対策が必要だろうということで、そういう立場推進をしているわけであります。とりわけ、産業構造変化等に対応した業種雇用安定法による対策などを実施しているわけでありますが、地域の実情に根差した雇用対策という立場から、円高、これは円高関係は非常に大きな影響を及ぼしてきたわけでありますから、円高雇用対策協議会というものを設けているのでありますが、これをより具体的に実効あらしめるための活用をしていきたいという決意を、先日その産業労働懇話会でも実は申し上げたわけであります。  したがって、今後とも都道府県や市町村等と密接な連携を図って、今御指摘のあったようないろいろな多角的な面からも踏まえた地域振興施策との連携をとった雇用対策というものも積極的に進めていきたい、こう考えているところでございます。
  66. 江田五月

    江田委員 これは本当に具体的なことなんですね。個別の具体的な、しかし普遍性を持った課題だと思いますよ。  例えば、今ちょっと本があるんですが、福祉の分野で寝たきり老人が現在六十万人だ、痴呆性老人も六十万人だ。これらの人を一人介護しようとすると三人が必要だと。そうすると百二十万寝たきりと痴呆性老人でいるわけですから、三人必要だとすると三百六十万人ヘルパーが必要だ。しかし現在、公的なところでは三万人、私的なところを合わせても四万人しかいない。さあこれからこのヘルパーということ、寝たきりとか痴呆性老人の介護ということだけを考えてみても、今でさえさらに百倍の担い手が求められている。そこをきっちり雇用の場にしていけば随分新しい雇用というのはできてくる。  そういうことは、まあ今大臣おっしゃいまして、まずそういうことなんでしょうけれども、もっともっと具体的にやらなきゃいけませんよね。ひとつぜひ新しい雇用創出という産業の新しい展開、その新しい産業の展開であるがゆえに、しかし、影の部分と言うと本当は変なのですが、地域にいろいろなものが残っている。それを十分埋めていくことによって日本の社会というのが本当に心豊かに暮らせる共生の社会になっていく、こんなことが必要なのですね。  今、大臣ちょっとおっしゃいましたが、中央レベルだけではこれはもちろん無理で、全国一律の新産業育成などということはできるはずがないのです。それぞれの地方から地方振興の政策と一体になった雇用創出、これもそうですし、同時に地域に密着した、それぞれの地方、地域にいろいろなことを今努力をしてやっておる人たちがいるのですね。それぞれの地域にいろいろな方々がおられるわけですから、そういう皆さんの努力をひとつエンカレッジしながら、福祉にしても医療にしても、あるいは教育にしても緑にしてもコミュニティーにしても、新しい観点から取り組んでほしい。  そんな中で、労働行政としても、例えば今よく言われますNPO、非営利法人というのですか、こんな問題についてのビビッドな問題意識ぐらいは持っていなければ、地域に展開をしていく草の根雇用開発なんというのは、雇用創出なんというのはできないのじゃないかと思います。  NPO、これは大臣、ちょっと通告してないのですが、もちろん御存じですよね。どういうお感じでおられるか、労働行政担当者としてどういう問題意識をお持ちか、ちょっと聞かせてください。
  67. 永井孝信

    永井国務大臣 余り専門的な知識はまだまだ持っていないわけでありますが、例えば震災のときにボランティアの皆さんが大変な活動をされました。あれに触発されまして、このNPOの問題も必要性ということから提起をされているものだと私は理解をしております。  そういう社会全体の動きの中で、具体的な問題点として提起されていくことについては、労働行政の中でも、積極的に取り入れることのできるものは取り入れていかなければいかぬなという気持ちを実は今持っているわけであります。  まだこのNPOの関係について、私自身具体的に専門的に検討をしている段階ではありませんので、細かいことは言えませんけれども、重要な問題だという認識は持っております。
  68. 江田五月

    江田委員 労働行政がやはり転換期の行政として非常に重要なときなので、こんな言い方をすると申しわけないですが、労働省という一つの狭い枠組みの中で、タコつぼ型に閉じこもっているようなときではないですよ。もうどんどん外へ出ていって、取り込むと言うと向こうが怒るかもしれませんから、出ていっていろいろやっていただければ、今のNPOとかNGOとか、いろいろな場面があると思うのですね。  そうした形で新しいきめの細かな雇用創国政策というのが要るんだということになりますと、私は今、労働省の皆さん、なかなかいいことを実は気づかれた、なかなかいい芽をお出しになろうとしておるというのが今度の予算の中にあると思うのですね。  女性起業家への支援という、余り聞きなれない言葉ですが、これはどういう問題意識でこの女性起業家支援ということをお考えになりました。
  69. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 女性起業家支援につきましては、ことし初めて予算要求をさせていただいたものでございます。  近年、女性の働き方がいろいろな形になってきておりまして、特に再就職型の女性を中心に、女性たち自分の力を生かす就労の機会というのを、企業に勤めることもよいことでございますけれども、みずから企業を起こしてやっていきたいという方が増加しておりますので、こういう方々に対していろいろな支援労働省としてもできるのではないかということで、勉強をさせていただこうではないかということで始めさせていただいたものでございます。
  70. 江田五月

    江田委員 これは今度の予算の中にあるのですが、金額は幾らですか。
  71. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 金額は、まだ芽出しということで、八百万程度お願いをしております。
  72. 江田五月

    江田委員 いやいや、いいですよ、八百万でも、それはもう大したものです。初めてですからね。だけれども、ずっと八百万じゃいけませんよ。ことしはそうだけれども、来年はその十倍とか百倍とかね。  大臣女性起業家という言葉を御存じでした。
  73. 永井孝信

    永井国務大臣 最近テレビや新聞の報道で随分出てきましたから、十分認識はしているつもりであります。
  74. 江田五月

    江田委員 私は、やはりこういう問題意識、別に女性でなきゃならぬことはないので、男性でもいいんですけれども、要するにそういう問題意識がなければ、さっき申し上げたような、きめの細かな心豊かに暮らせる共生社会をつくっていくための雇用創出というのはできないんだろうと思うんですね。  どういうことかといいますと、例えば私の友人でも、私の大学の後輩で県庁へ勤めておりまして、奥さんがある日、まあ長い間温めておられたのでしょうか、ガラス細工か何かを始めまして、いろいろなおもしろいガラスのつぼなんかをつくって、これを単に趣味でやるだけではなくて、売ったりするんですね。どうも御主人の方が後ろで糸を引いていたのか、あるいは奥さんがやっているのを見て、生き生きしていて、自分の県庁での人生はどうもなかなか灰色だなと思ったりしたのか、県庁をやめて、今度奥さんの方の仕事を手伝うようになって、そこにある雇用がちょっとできてとか、そういうのが今いろいろあるんです。  どうも既存の職場では男社会で、男論理で、その中で太田局長も大変苦労をしてこられたのだろうと思いますけれども女性がなかなか安心して働けない。男女雇用機会均等法というのをつくった。これもまだまだいろいろ不十分な点のある法律でした。  しかし、私も法案の審査のときに当時の赤松局長に申し上げたのですが、女性の地位向上というのは一朝一夕でできるものではないので、長い歴史の中でやっとここまで来た。男女雇用機会均等法、いろいろ問題点はあるが、しかし、その問題点があるからこれはだめだというのではなくて、ここまで来て、女性の地位向上はさらにこれからもずっと取り組んでいく課題なので、この法律ができましたら、はいそれで終わりです、あとは腰をおろして休んでしまうというんじゃだめだ。これをこれまでの成果とし、そこに立って、さらにこれを土台としながら次の女性の地位向上に取り組んでいこうじゃないか、そんなことを話したことを思い出すのですが、なかなか難しいです、既存の労働環境の中で女性の地位向上をやっていこうというのは。  しかし一方で、さっきもちょっと申し上げたように、例えば非効率であるがゆえの新しい雇用の場の展開とか、あるいは利潤追求でなかなかうまくいかないがゆえに一つの特徴を持った雇用の場の展開とか、そういうことがあって、まあどっちかというと、生活価値事業なんという言葉もあるようですが、生活の中に価値がある。  なかなか利潤は上がっていかない、なかなか効率は悪い、だけれども生活の中に価値がある、そういうものを女性が、私は別に何も偉くなりたいからやるんじゃない、隣近所の皆さんのために何かこういうことをやったら意味があると思って始めたら、それが一つ雇用になっていくという、そんな女性ならではの発想からの業を起こしていく起業家というものが今だんだんできつつあるわけです。  こういうものをずっと育てていけば、既存の職場の中ではなかなか女性の地位が向上しない、しかし、大きな社会の別のうねりで、女性が社会の中で非常に重要な役割を果たしていく。これがむしろ企業社会の中にも大きく影響を与えていって、本当の男女雇用、男女の共生社会ができていく。八百万ですけれども、そういう芽を持った取り組みではないか。これはちょっと高く評価し過ぎですかね。どうでしょう。大臣、私が今言ったのは大げさ過ぎますか。
  75. 永井孝信

    永井国務大臣 一つ一つそういう現場をこの目で見て、体験をして申し上げるという経験をまだ持っていないわけでありますが、最近女性起業家を中心にした動きがテレビなんかでも特集番組として出されてまいりまして、非常に興味を持って私も見させていただいたわけであります。そこには、先生が今言われたように、我々が今まで頭の中で想像でき得なかった分野に、現実に新しい起業家という方たちが動きを見せている。これはやはり大事に育てていかなきゃいかぬ、こう思うのですね。  だから、今婦人局長が申し上げましたように、先生に大変お褒めいただきましたけれども、わずか八百万円であっても、これを一つの突破口にしてこの起業を希望する女性の実態把握などもやっていきたい。そして、そういう実態を把握した中から、労働行政としてどういう支援をすることができるかという支援策について検討を進めたいということから、ことし突破口を開こうとしているわけでありまして、大変興味を持ち、重視をしているというふうに御理解をいただきたいと思います。
  76. 江田五月

    江田委員 本当にそのとおりなんで、どこまで行くかわかりませんが、私は、やはりこれは相当大きな可能性を秘めた問題意識だろうと思っているのです。  一九七五年に国際婦人年がございまして、そこからいろいろなことが国際的に展開をされてくるわけですが、一九八〇年にウイミンズ・ワールド・バンキング・システムですか、WWBニューヨーク、これは国際的にそういう女性起業家に対するいろいろな金融支援というのをやっていこうじゃないかというプログラムができて、第一号がニューヨークにできて、一九九〇年にWWBジャパンが三十九番目にできた。大臣御存じないでしょうね。知らないですね。太田局長、御存じですか。
  77. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 存在は存じております。その詳細については不勉強で存じませんが、あるということだけは存じ上げております。
  78. 江田五月

    江田委員 みんなそういういろいろなおもしろいことをやっているんですよ。どうぞそんなこともひとつ今の八百万円でぜひ勉強して、取り組む先をいっぱい見つけていってほしいと思います。  労働行政、こうやって考えてみますと、今私はほんの一部分だけちょっとつまみ食い風に議論しただけですが、やはりこれから先の時代を開いていく本当に重要な行政で、そうした労働行政の中にこれまで労働運動の長い長い貴重な経験をお持ちの永井大臣がかなめの役として就任をされたのですから、これは期待も大きいけれども、逆に大臣、怖いですよ。期待を裏切ったときには我々は、ちょっと大臣、そこどいてください、私がかわりに座ります、こういきますよ。それが政権交代ですからね。  私どもも一生懸命、そういう意味で、新しい時代の労働行政はいかにあるべきかという勉強をします。労働省の皆さんもひとつそういう覚悟でやってほしい。これはやはり切磋琢磨というのがなきゃいけないので、きょう私が申し上げたのは、これまでの万年野党型批判の態度じゃなくて、いつでもとってかわりますという意味で言っているわけですから、批判の言葉が鋭くなかったからといって安心していちゃいけないと思っていただきたいと思います。  さて、もう時間があとわずかでございますが、幾つか小さな、小さなじゃない、本当は大きな問題です。新卒の人がいよいよ間もなく期限切れということになるのですが、新卒の就職問題はどんな状況ですか、ちょっと報告しておいてください。
  79. 征矢紀臣

    征矢政府委員 新規学卒者就職内定状況でございますが、これは十二月末現在の状況でございます。  大学卒が八一・七%、短大卒が五六・五%、専修学校が七八・四%でございますが、昨年三月末の最終的な状況で見ますと、大卒が九六・三%、短大が八八・三%、専修学校が九三・七%という状況でございます。
  80. 江田五月

    江田委員 これはとにかく一生懸命努力するということしかない。いろいろ新しい試みもされているのだろうと思うのですが、これまでになかった新しい試みというのはどんなものがありますか。
  81. 征矢紀臣

    征矢政府委員 御指摘のとおりでございまして、なかなか新しいいい知恵があるということではございませんけれども、三月に向けまして最大限の努力をしてまいりたいということでございます。  昨年に比べまして拡充強化した点について申し上げますと、公共職業安定所の中で具体的に相談するセクションとしまして、大都市に、全国六都道府県におきまして学生職業センターという専門的に相談するセクションがあったわけでございますが、それでは間に合わないということで、全県下で学生職業相談室という形で職業相談、職業紹介をする、そんなセクションを設けております。  それから、あと求人開拓全力を挙げて就職につなげるということでございますが、その具体的な方策として全国的な規模で求人一覧表というのをつくりまして、これは大学、安定所を通じて提供するということでございます。これも昨年は一回三月にやりまして、ある程度一定の効果がありましたので、ことしは、また三月で三回目になりますが、三回にわたって実施するというようなこと。  それから就職面接会、これは各地でやっているわけでございますが、これも昨年に比べまして大幅に回数をふやして、一人でも多くの方が就職できるように一生懸命やっているところでございます。
  82. 江田五月

    江田委員 労働省予算の中に、これもなかなかおもしろいと思うのですが、パソコン通信を使った職業紹介というのが出てきましたね。これは来年度からだから、ことしは間に合わないのですか。
  83. 征矢紀臣

    征矢政府委員 今後の産業構造変化に伴う就業構造の変化あるいは雇用の流動化の進展、あるいは求人・求職のミスマッチがいろいろ大きい。そういう中で迅速かつ効果的に行政を行うためには、御指摘のとおり、情報機器を活用した職業情報の提供をすることが重要になってきているのではないか、こういうことでございます。  これにつきましては平成年度の予算で手当てをいたしまして、公共職業安定所人材銀行におきまして、求職者・求人者が安定所内あるいは所外においてみずから求人・求職情報を検索できる装置の試行的な導入、あるいは求職者・求人者が自宅や事業所にいながらパソコン等により求人・求職情報を検索できる装置の試行的な導入、あるいは全国学生職業センター学生職業相談室、主要公共職業安定所におきます新卒者対象としたパソコンによる求人情報の提供求人開拓や合同就職面接会等、公共職業安定所の外でも即時に求人・求職情報を提供できる携帯端末装置の導入、そういうものを平成年度から実施したいというふうに考えているところでございます。
  84. 江田五月

    江田委員 ミスマッチを最大限なくしていく、そのためにありとあらゆるきめの細かな方策を用意するということは大変大切なことで、私はパソコン通信というのはなかなかいいところへ目をつけたなと思ったのですが、来年度からで今年度には間に合わない。ちょっと残念です。  そのような状況ですが、大臣、新卒の人たちに対する就職問題、これは最後までひとつ頑張っていただきたいと思いますが、大臣のこの問題についての決意、これを最後に聞かせてください。
  85. 永井孝信

    永井国務大臣 私が前に労働政務次官をしておりましたときに、新規学卒者就職が非常に厳しいということで、各業界をずっと歩きまして、採用枠の拡大を求めて集団面接会を開催したことがございました。ことしも百カ所を超える箇所で集団面接会もやっておりますが、そのために求人をふやしていかなければいかぬということで、今月の二十一日の早朝に産業労働懇話会を開きましたときにも、改めて強い決意を持って経営側の代表の皆さんに採用枠の拡大をお願いしたところであります。これからも引き続き、三月末に向けて、さらに新卒者就職が可能な限り最大限、一〇〇%に近づくような努力をしていきたいと思っているわけであります。  なお、今パソコンの関係もございましたけれども、現在持っている能力でいきましても、本当に高度なコンピューターの能力を駆使いたしまして職業開拓などをやっておりまして、一つの例で言いますと、求人側の企業の全体像がパソコン通信で見られるということまで現在の能力でも持っているわけであります。それをさらに強化しようというのがこの八年度計画でございまして、雇用の確保のためには、ある意味で言うとなりふり構わぬ立場でこれに当たっていきたいというのが私どもの決意であります。
  86. 江田五月

    江田委員 期待をしておると同時に厳しい目で見ておりますので、ひとつ頑張ってください。  終わります。
  87. 岡島正之

  88. 松岡滿壽男

    ○松岡(滿)委員 おはようございます。新進党の松岡滿壽男でございます。  まず、永井労働大臣大臣御就任おめでとうございます。心からお喜びを申し上げます。私も実は永井労働政務次官のときに労働委員長を仰せつかっておったりいたしましたし、大臣のお人柄は十分に存じ上げておるわけであります。  今回、労働行政もやはり大きな転機に来ておる。本来なら、今国会労働雇用問題がかなり大きな論議の焦点にならなければいかぬのですけれども、残念ながら今国会は住専国会、それに引き続いてエイズの問題、これが大きな国民的論議の展開をされるだろうと私は思っております。  そういう状況の中で今いろいろと問われておりますのは、数年来、我が国政治改革、この背景は、やはり政官業のそういう癒着、腐敗の構造、国民の側に立っていない、そういう政治行政が行われてきておったということが実は背景にあったのですね。ところが、いつの間にか政治改革の中にそれが埋もれておったのが、今回またいわゆる政治の決断と官僚の責任、こういう問題がこの住専問題の中で浮き彫りにされてきておるというふうに私は思います。  そういう中におきまして、国民の方から見ると、例えば今度のHIVの問題なんかについては、情報の開示と責任のとり方、政策判断はどこでなされるのかということがやはり厳しく問われておるというふうに思うのです。そういう中におきまして、例えば厚生大臣、これは菅さんだからできたんだ、前の方は一体どうしていたんだというような声も出てきているのですね。そうすると、一つのトップに座られる方の判断によって、当然政治家としての立場、いろいろな政策判断、こういうものが問われておるというふうに私は思うのです。  片方で民間の方は、御存じのように、時代の変化に応じてトップリーダーの意識も変わってくる、組織も変えていく、商品その他も、国民がどういう商品を期待しているかということに対してリサーチをしながらきちっと対応していく、そういうことによって生き残ってきているわけですよ。  ところが、百二十年間、この中央集権の中で政官業の位置づけ、国、県、地方という位置づけの中でがっちり抑え込まれて、外的な変化があるのだけれども、それに対応できないでおくれてきている。その間違いというものが今まさに住専の中で問われておる。特に大蔵官僚のあり方というものですね。  労働省の場合は、そういう点ではほかの省庁に比べて、それぞれ出先機関、職安行政あるいは労働基準行政の中で、民間の方々国民方々との接触というのが非常にある。だから、民間の人たちは何を考えているんだ、地方はどうなっているんだという空気をかなり肌身で感じながら仕事をしておられる。労働組合との接触もある。私は、そういう点ではほかの省庁と違う際立った特色があるだろうというふうに思うのです。  やはり外的な状況、例えば労働組合の果たすべき役割も、大臣はずっと労働運動をなさっておられたわけですけれども、大きく変わってきているわけですよ。日本人の考え方も変質してきている。それぞれの置かれている立場がそういう変化に対応していかなければいかぬところに今来ておる。  そういう中におきまして、労働行政を預かる政治家永井大臣として、これからの労働行政に取り組まれる、今もろもろ私は申し上げましたけれども、そういう変化に対応してどういう決意で臨まれようとしているか、まずお伺いいたしたいというふうに思います。
  89. 永井孝信

    永井国務大臣 私も労働運動、そして国会へ出ましてから主としてこの労働省の所管する事項について国会の中で活動をしてまいりましたものですから、先生労働行政については十分な御認識を持っていらっしゃる先生でございますが、思いは私は同じだと思うのです。  そこで、例えば今春闘の山場が目前に迫っておりますけれども、ではその春闘に対して労働省がどう対応するのか。よく私はマスコミの皆さんからも聞かれるわけでありますが、もちろん労働省労働行政が、例えば景気が低迷してきて今ようやく回復軌道に乗ってきつつあるという状況の中で、その中に割って入るというふうなものではないと思っているわけであります。  しかし、労働省の持っている役割というのは、働く人々の暮らしや権利をどのように労働行政の中で守っていくことができるのかということは極めて重要な分野を占めておると思っておりますので、そういう面では労働団体とも十分な連携を日常からとっておりますけれども、十分に労働団体の持っている要望などもくみ取りながら、では、それに対して経営側がどう対応できるかということも率直に経営側からも意見を聞いて、景気回復を目指している今の日本の現状の中で、言いかえれば過去のような対立の構造ではなくて、労使がそれぞれ力を出し合って、どうやって協力し合ってこれからの新しい二十一世紀を迎えることができるか、そういう立場に立った労働行政でなければならぬ、私はこう思っているわけであります。  そのためには、労働省の幹部の皆さんを初めとして職員の皆さんは、私からいえば非常にすばらしい人材がそろっておりますので、そのすばらしい人材能力を十分に伸び伸びと遺憾なく発揮できるような、そういう政治環境というものを労働行政を預かる者として私は提供できるような役割を果たしていきたいな、実はこう思っているわけであります。
  90. 松岡滿壽男

    ○松岡(滿)委員 ぜひそういう基本的な姿勢で労働行政を進めていただきたいというふうにお願いを申し上げます。  今、三・四%という厳しい失業率、三・二が五カ月続いた後ですが、それで失業者も二百十万を超す状況である。そういう厳しい情勢の中で経済企画庁が事実上の景気回復宣言ととれる月例報告を行ったわけですけれども、片方では、デパートの売り上げの低迷に見られるように、本当の明るさというものは私はまだ見えてきてないというふうに思います。  しかし、何とかしてほしいという国民の切実な声にいろいろな形でこたえようとしておる。しかし、片方で金融不安というものも現実に出てきておる。二、三日前、予算委員会で私の質問に対して梶山官房長官が、国民の不満よりは金融不安の方が怖いんだというような御答弁をなさっておるわけでありますけれども、確かに一つだけきちっと片づければいいということじゃなくて、全部連鎖しておりますし、日本は今いろいろな国際的な広がりもある。  そういう状況の中で、三・四という厳しい失業率、さらに企業内失業と言われておる。若い人たちは超氷河期だとか、先ほど江田さんが最後に御質問なさっておられましたけれども新卒者の問題、去年も十六万人就職できずに、ことしはもうどうなるのか、二十万になるんじゃないかという声も出ておるわけでありますが、それよりもむしろ先の見えない日本経済の前途に一番ストレスがたまってきておるのは、四十代、五十代のそれぞれ製造業を中心として働いておられる方々、いわゆる企業内失業というのを横目で見ながら頑張っておられる方ですね。  だから、政治の責任というのは、やはり全体的なデザインをきちっと国民の前に情報を開示しながら明示して、それぞれの部署におる人たちの責任を明らかにしながら、五年先どうなる、十年先どうなるということをきちっと示してやるということが私は政治の責任だと思うのですよ。  今回の住専の問題でも問われているのは、やはり政治家政策国民は委託しているんですよ。官僚に委託していたわけじゃ本当はないのですよ。ところが、我々も反省をしなければいかぬのだけれども、やれ道路だ橋だということばかり我々がやっているものだから、中立的な判断という形で、情報もたくさん持っている皆さん方がごちゃごちゃと密室でやってしまったツケを今国民に押しつけようとしておるということに対して、やはり国民が怒っているわけですね。だから、政治家と官僚の分業というものをお互いが明確にしなければいかぬことも今私は問われておるというふうに思うのです。  その中で、企業内失業はあるし、さらに今後は規制緩和とか内外価格差の是正とか、そういうこともやっていかなければいけない。企業の中での大幅な合理化、特に民間の人たちは、さっき申し上げたように、いろいろ変化に対応していく柔軟なエネルギー、発想というものが持てる人たちですから、片方でどんどんそれは進んでいくわけですよ。リストラが進んでいく。  上場企業の従業員数を見ても、九二年から九四年までの三年間に十三万人以上がもう実は削減をされているわけですね。リストラへの取り組みが急速に進行している。例えば、我々中国地区の製造業に働く人たちが一千万人、そのうちもう百万人が三カ年で職を失って別の方に流れていっている。思っているよりも物すごく速いスピードで民間は進むのですよ。お役所との感覚的な差が非常にあるのですね。お役所は二年、三年ぐらいと思って仕事をしている。ところが、民間の方はどどっとすごいスピードで進んでいくのですよ。だから、それにどう対応するかということが非常に私は大切なことだと思うのですね。  中長期的なリストラ計画を進めておる。相当な人員削減が進んできておる。片方で中小企業は労働力不足に悩んでいる部分もある。これはさっき江田さんが言っておられましたが、要するにブランド志向というものがやはり若い人たちにあるわけですよ。だから中小企業から見ると、えらい失業率が高くて大変なようだけれども、おれのところは求人出しても来ないのだと言う。それは来ないですよ。  特に日本の場合に特徴的なのは、やはり大企業と中小企業との格差ですよ。賃金格差、いろいろな勤務条件の差もある。だから、どうしてもお嬢さん方の方はブランド志向で大企業へ行っちゃう。小さいところは嫌だ。それで今労働省がやっておる職業紹介ですね、ああいう集団見合い、あれは私は非常に有効だったというふうに思うのですけれども、そういうことがあるわけであります。  こういう産業構造変化労働力の流動化が加速されていく中で、我が国労働政策のあり方も大変な転機に立っておる。そういう最近の雇用失業情勢につきまして労働大臣はどのような認識を持っておられるのか、また、これに対する政策の方向をひとつ具体的にお示しを願いたいというふうに思います。
  91. 永井孝信

    永井国務大臣 今先生指摘のように、比較対照できる昭和二十八年以降を調べてみましたら、三・四%という失業率は史上最高なんですね。求人倍率は少し上向きに上がってきているのですが、失業率そのものは横ばいになっている。  この間もある新聞が報道しておりましたけれども、三月の末になりますと、例えば新規学卒者として予定されておる人たちは今就職活動をやっておりますが、その人は失業率の中にカウントされてないわけですね。これが四月一日になりますと、就職を希望したけれども就職できなかった、これが新たにカウントされているということなどを考えると、季節調整値を含めてさらに三・四%を上回るのではないかという危惧があるということも新聞でも報道したところがございました。確かにそういう危惧も私どもは十分に認識しておりまして、だからこそこの三・四%という数字は極めて厳しい状況だ。私の発言でしてきたことを言えば、ゆゆしき事態だというふうに自覚を実はしているわけであります。  したがって、そういう就職が難しい、失業率が高まるというおそれがあるからこそ、改正業種雇用安定法に基づいて、特定雇用調整業種労働者を受け入れた事業主に対しては特別に賃金助成をするとか、あるいは改正中小企業労働力確保法に基づいて雇用機会を創出した中小企業にも特別の援助を行うとか、幾つかのそういう施策を講じてきたわけですね。これが後追いであったか、同時進行であったか、先行的投資であったか、これは見方はいろいろあろうかと思いますが、どんどん悪化の傾向をたどってきた今の雇用状況という中で、労働省としては的確にその時点時点で対応するための法整備をしてきたと私は自負をしているわけであります。  ただ、これをどこまでうまく活用してもらえるか、活用してもらえるようにするかというのもこれまた大事な労働行政でございまして、そのためにあえて言うならば、労働省の出先機関で可能な限りこういうものを知ってもらうためのPR活動にも力を入れようということで、特別のパンフレットをつくって中小企業団体にお配りをしたり、あるいはセミナーを開いてそういうことの徹底を図ったり実はしてきているわけであります。  したがって、学卒者を含めてでありますが、一人でもたくさんの雇用開発を行っていくために、先日も産業労働懇話会で日経連の代表の皆さん、あるいはその他の経団連の皆さんなどに対して特別にこの雇用枠の拡大もお願いをしてきたところであります。  あと、三月までに、今言われました、評価していただいておりますが、集団面接会もさらに実施をしていくこととしております。  片方で、ブランド志向というお話がございましたけれども、確かに特に短大卒の学生なんかには、ブランド志向の傾向と実際の求人との間にミスマッチができてきている。これをどうやって埋めるかということで、これまた片方で啓蒙活動も行っているところであります。  そういうものを総合的に進めながら、史上最悪と言われているこの失業率を低下させていくための努力を、それこそ全省庁挙げて、全省挙げて取り組んでいきたい。先日の雇用対策本部の会議でもそういうことを中心にしてお話を申し上げ、労働界、経済界からの御意見も聴取したところでありまして、そこはひとつ労使のそれぞれの団体も含めて、御協力をいただくための提言も私どもは積極的に行っているというのが今の実態であります。
  92. 松岡滿壽男

    ○松岡(滿)委員 去年、男女雇用機会均等法が施行されてから十年目を迎えたわけであります。女性労働者が、勤労者がふえてきているのだけれども雇用に男女の差別がある、それを解決するという目的でそういう均等法が施行されまして、同時に、国連婦人の十年の中間年世界会議我が国女子差別撤廃条約に署名して、批准期間の八五年までに国内法の整備が必要である、そういう事情があったことも事実であります。  これが施行されたときには、新しい女性の時代だということで高い評価を受けた記憶があるのですけれども、今日では、不備な点が指摘をされて、婦人少年問題審議会において改正作業が始まっていると伝えられております。どのような点が問題とされているのか、労働大臣の御見解を伺いたいというふうに思います。
  93. 永井孝信

    永井国務大臣 この男女雇用機会均等法が施行されましてから約十年が経過をしておりますが、この均等法に対する認識は、それぞれの経営者、事業者の皆さんにも深まってきているのは事実であります。しかし、認識は深まっておりますけれども、均等法に盛り込まれたその具体的な趣旨というものが実体的に生かし切っていない、まだまだ女性に対して不利な条件がたくさん見られるというのが今の現状であります。  だからこそ今、先生が御指摘のように、婦人少年問題審議会で昨年の秋以降御審議をいただいているところでありますが、募集、採用から定年、退職、解雇に至るまでの女子雇用管理の変化状況というものをしっかり踏まえて、女性がその意欲と能力に応じて持てる力を十分に発揮できる社会を実現するために、今検討を求めているわけでありまして、その結論を待って、労働省としては必要な法整備も含めて対応していきたいと実は考えているわけであります。
  94. 松岡滿壽男

    ○松岡(滿)委員 均等法では、募集、採用、配置、昇進についてそれぞれ女性差別をなくすということにしているわけですけれども、禁止規定を設けずに、事業主努力を求めることとしておるわけですね。しかし、景気が低迷してから企業が採用抑制を強めていく中で、女子には会社案内を送らないとか、企業説明会や選考時期に差をつけるといったケースがたくさん出てきておるわけですね。  一方ではコース別人事制度という制度も考えられて、例えば、一般職と総合職に振り分ける人事制度が採用されるようになってきておるわけですよ。総合職は、社内の中心的、基幹的業務に従事して転勤もある。一般職は、定型的、補助的業務に従事して転勤がない場合が多い。こうした制度のもとで、男は総合職、女は一般職という機会がつくられて昇進や給与に男女差が拡大をする、こういう問題が指摘をされておるわけです。  今回の改正に当たっては、これらの点で男女雇用機会均等が達せられるようぜひ対処していただきたいというふうに私は思うのですけれども、御答弁を願いたいと思います。
  95. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 お答えさせていただきます。  コース別雇用管理制度は、本来は、労働者を意欲、能力、適性によって評価し、処遇するシステムの一つの形態として導入されてきたものであるというふうに理解をしております。また、企業が個々の労働者の意欲と能力に応じて適正にこのコース別制度を運用し、また、女性自身もみずからの意思で各コースを選択している場合には、特段の問題点はないのではないかというふうに考えてはおりますけれども、現在、先ほど大臣も申されましたように、婦人少年問題審議会におきまして、男女の均等な機会と待遇の確保のための真に実効のある方策について御検討いただいているところでございます。  労働省といたしましては、その結果を踏まえて対応していきたいというふうに考えております。
  96. 松岡滿壽男

    ○松岡(滿)委員 今後、我が国産業は、アメリカがかつて経験したように、製造業のリストラ、それから技術革新、経営手法の改革、そういうものによって、いわゆるホワイトカラーの大量の失職、失業、こういうものを生み出しかねない状況がやはり出現してくるのではないかということを危惧いたしております。アメリカの場合は、サービス業が製造業からの失業者の受け皿になって、情報関連サービスのようなニュービジネスの登場が雇用拡大を可能にしたわけであります。  我が国の法人企業統計を見ると、製造業の人員は急速に減少しているが、サービス業は雇用規模を六八%と、全産業の中で最も大きく規模を拡大してきておるのですね。やはりそういう傾向が出てきておる。  私どもも昨年、三〇〇万人雇用促進という形で、一つ政策を新進党としても出したわけですけれども、これから規制緩和を積極的にやることによって、情報通信を初めとして新しい雇用の受け皿をつくっていくということを思い切ってやっていかないと、日本は大変な失業時代になっていくだろうというように私は思うのですね。ですから、その大きな変革期に差しかかっているだけに、私はやはり政治の果たす役割というのは大変大きいものがあると思うのですね。  私は、二、三日前も予算委員会で後藤田先生の「政と官」という本を引用させていただいたのですけれども、その中にはっきり言っておられるのは、政治家はゼネラリスト、官僚はスペシャリストだ、しかもお役所の発想は現状維持だ。それはそうなんだ。僕は、それは一つの限界だし、それだから国民が安心して官僚に仕事をお願いしておったと思うのですよね。だけれども、今、物すごく改革、変革のときに来ている。新しいものを生み出していく、そういう指導をまさに政治がやらなきゃならぬと私は思うのですね。  そういう中におきまして、製造業は当面まずサービス業に移っていく。それと並行しながら、やはり新しい産業の受け皿をつくる努力を政官力を合わせて、民もそうですけれども、頑張っていかなきゃいけない。問題は、アメリカの例から見ても、こういう製造業でリストラをやるとどんどん空洞化が進んで、アジアの方に企業は転移をしているわけですからね。そうすると、とりあえずはサービス業にそういう雇用の受け皿というものを持ってもらう。サービス業しか当面吸収力がないんだろうと私は思うのですね。  ところが、問題は、そのサービス業での雇用構造、労働環境が必ずしも十分整備されていないわけですよね。だから、どうしても行こうにも二の足を踏んでいるという状況一つはある。他産業に比べてサービス業は若年層の比率が多くて、パートタイムなどの雇用形態に依存しているのが現状だろうと実は思うのですね。現状のままでは、中高年層の受け皿としてこれが十分なものかというと、どうもクエスチョンマークがつく。十分とは思えないわけですね。  こういう構造変化による雇用面での痛みを少しでも和らげていくためにも、日本の場合はサービス業に的を絞った規制緩和とかあるいは雇用環境の整備が求められておると私は考えるのですけれども、この問題についての労働大臣のお考えを伺いたいと思います。
  97. 永井孝信

    永井国務大臣 今御質疑がございましたけれども産業構造が大きく変化していく中で、サービス産業はまさに雇用の拡大が見込まれる産業だと考えているわけでありまして、このような産業雇用の場として魅力あるものにしていかなくてはいけない。そういうことが非常に労働省にとっても重要な政策課題であるという認識を実は持っているわけであります。  このため、労働省といたしましては、このサービス産業を含めて、各産業・企業の雇用管理の改善を進めていきたい。改正中小企業労働力確保法に基づいて、魅力ある職場づくりのための支援を積極的に行っていきたい。また、産業雇用の高度化のために業界が行う雇用管理、この雇用管理の改善の取り組みに対して、セミナーもあるだろうしいろいろなことがあると思うのでありますが、それに対する支援も行っていきたい。さらに、公共職業安定所あるいはパートバンクにおける事業主に対する雇用管理に関する相談援助なども行っていきたい。  これらについては、十分ではありませんけれども、予算措置も裏づけとして対応しているわけでありまして、これらを活用しながら、今後とも、サービス産業で働く労働者がそれぞれの能力を十分に発揮できるように、そして、生き生きと働いていけるようなそういう職場づくりを目指していきたいと思っているわけであります。  なお、ちなみに、サービス産業に従事する人の割合の一つの資料がございますが、大体の割合というのは、全体の産業とサービス業の産業とも割合はそう変わっていかないんですね。  例えば、全産業で見てみますと、三十歳から五十四歳といういわゆる中年層ですね、中年層の構成割合は五四・五%になっています。サービス産業でいいますと五四%でありますから、ほぼ横並びであります。若年層でいいますと、十五歳から二十九歳で全産業が二三・五%、サービス業は二六・一%であります。高年齢層にいきますと、全産業が二一・九%、サービス業は一九・九%でありますから、現在のところではそう余り構成比率としては変わっていないのであります。  今先生が御指摘のように、これからサービス産業に対して非常に雇用の場が拡大していくだろう、そういう見方をしておりますだけに、今私が申し上げましたような幾つかの施策を援助の対象として、積極的に取り組んでいるというのが今の実情であります。
  98. 松岡滿壽男

    ○松岡(滿)委員 サービス業は主としてパートタイム労働者に依存している傾向が強いということを先ほど申し上げたわけですけれども我が国産業にとってパート労働者は、就労的に見ても基幹的な役割を果たしておるというふうに思います。総務庁の労働調査では、一九九三年で平均週就業時間が三十五時間未満の雇用者が九百三十七万人で、このうち女子が六百二十七万であります。雇用者に占めるパートタイム労働者の比率は一八%に達しているわけであります。一九六〇年には雇用者に占めるパートタイム労働者の比率は六%であったわけですから、毎年急速に増加していることは明らかだと思います。  パートタイム労働者増加する原因としては、主婦や高齢者、学生などがフルタイム労働よりも短時間労働を希望するという就業者側の条件と、臨時の安い人手を必要とする雇い主側の条件があると考えられるわけであります。これからも、女子労働者の進出、高齢化の進展製造業などからの余剰人員の削減、吸収、サービス経済化など、経済の長期的な構造変化によってパート労働者の供給増加傾向は拡大していくだろうというふうに考えておるわけであります。企業側にも常雇用を削減してパートタイム労働者を定着化させる動きもあるわけであります。  しかし、一部には労働者保護法令の遵守に不徹底である例が指摘をされております。一九九三年にパート労働法が制定され、労働環境の改善も進んでいると思われますが、より一層の指導が求められているというふうに考えます。労働大臣の所見を伺いたいと思います。
  99. 永井孝信

    永井国務大臣 パートの皆さんの数が非常にふえてまいりました。今御指摘のように、自分の置かれている生活環境からいってパートを求める人もいます。しかし、正社員とかそういう雇用を確保したいと思ってみても、それが満たされないから、やむなくパートということで働く人もいらっしゃいます。さまざまな条件があると思うのでありますが、経営側の方も、パートで安易に労働力を充足していこうという経営者もおれば、パートの置かれている労働条件というものをしっかり踏まえた上で、事業の実態に合ってパートを雇っているというさまざまな形態があるわけですね。だからこそ一九九三年にパート労働法を制定したわけでありまして、あのときには私も随分と苦労を重ねた思い出が実はございます。  とはいうものの、このパートタイム労働者我が国経済社会において重要な役割を果たしてきているということも、これまた事実でありますから、それだけに、労働条件や雇用管理の改善などの面で今問題になっていろいろ指摘されている問題については、パート労働法の一つのしっかりした適用という視点から、これについて労働省としては全力を挙げて指導を強化していきたい、このように実は考えるわけであります。もちろんその中には、労働者保護関係法令の遵守は大切でありますから、そういうものの周知徹底も含めて対応してまいりたい、こう思っているわけであります。  なお、経営団体に対しましても、パート労働法を初めとしてパートで働く人々の労働条件を守り、向上させるための対応というものも、労働省として積極的にお願いをしてきているところであります。
  100. 松岡滿壽男

    ○松岡(滿)委員 結局、過去のいろいろな状況を見ておると、パートの場合は、好況になるとふえてきて、不況になると家庭に帰るという循環がかつてはあったわけですね。だけれども、これから日本産業構造も変わり、何とか雇用の受け皿が新しい形で出ていけば、私は、恐らく高齢者の雇用の問題と女性方々雇用の問題、これはやはり日本の貴重な雇用を支える大きな部分になっていくだろうというふうに思うのですね。  だから、そういうことじゃなくて、抜本的なそういうパート対策というものがこれからきちっと求められていく時期が来ると思いますし、日本経済が抱えておる大企業と中小企業との構造ですよね。だから、結局こういう状況の中でも、中小企業にはなかなか働きに来てくださいと言っても集まらないわけですよ。現実にこういう事実があるし、短大あるいは大学出の女性方々がどうしても有名なところしか行かないという、そういう谷間の中にある。ここはやはり非常に私は大事なところだというふうに思うのですね。  今恐らく大臣の頭の中には、当面の失業率三・四というのも大変なものですし、潜在的な失業考えればもう欧米並みの水準じゃないか、そういうことが中心にあるだろうと思うのですけれども、私は、ぜひこういうサービス産業を中心とするパートですね、ことしだって、大学を出たけれども就職できなかった十六万人の子供たちは、恐らく半分以上はこういうところに入り込んでおるんだと思うのですね。来年もまたそれが繰り返されていくと思うのですね。だから、そこを一歩踏み込んできれいにしておかなければいけない。これは非常に大事なことだというように思います。  それで、新卒につきましては先ほど江田さんからの御質疑もあったわけですけれども、当面どうなのでしょうか。おととしがたしか十五万人就職がなくて、去年が十六万人で、ことしがどうなるのか。たしか昭和三年ごろ「大学は出たけれど」という時代があって、それが何年かたったら社会的なストレスとなって、結局二・二六とかああいう社会的な事件につながっていっているのですね。  ところが、今どうも子供たち状況を見ると、国民に一千百兆円の預貯金、金融資産があるので、比較的のんびりしているのですね、我々の時代と違って。我々のころは、何とか就職して親に迷惑をかけないようにという思いで走り回っていたわけですけれども、どうもその辺、むしろ社会的なストレスは中高年の方にある。恐らく四十歳過ぎの会社で働いている方々が、先々我々どうなるのだというストレスがむしろ大きいのですね。だけれども、私は、若い人たちの社会的ストレスもだんだん積み重なっていくと、いつか爆発してくるだろうと思うのですね。  労働省はまさに人を相手のお仕事ですから、ほかの省庁と違って非常に行き届いたいろいろな努力を積み重ねておられることは、私もよく知っております。しかしながら、大学を出あるいは高校を出た子供たち就職できない、社会に受け入れられない、それを受け入れる基盤がないということは、やはり正常な状況とは私は思えないわけですね。ですから、ことし大学出、それから高校出の人たち状況が当面どうなるのか、その辺をちょっと御説明いただきたいと思います。
  101. 征矢紀臣

    征矢政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、十二月末現在におきます内定状況は、各種学校、専修学校を除きまして、昨年三月卒の方より厳しくなっております。いずれにいたしましても、私どもといたしましては、三月卒業時までに最大限の努力をいたしまして、一人でも多くの方に就職していただくように努力を積み重ねてまいりたいということでございます。  具体的な対応策につきましては、積極的な求人開拓、あるいは求人一覧表をつくって配布する、あるいは学生職業センター、相談室で積極的に相談、紹介をする、あるいは集団的な面接会、これにつきましては、先生指摘のように特に求人に中小企業が多いわけでございますが、中小企業事業主の方からは、昨年来、この面接会でいい人材が採用できたという声もございます。こういうものを積極的にやることによりまして、何とか就職率を高めたいというふうに考えております。  その結果といたしまして、どのくらい就職できずに卒業する方がおるかということでございますが、これはなかなか現時点で申し上げにくい問題でございます。今までの厳しい状況考えれば、昨年の状況と同等あるいはそれより悪くなる、そういうことも予想されるわけでございまして、そういう心配をしながら努力をしているところでございます。  それで、仮に就職できずに卒業された方につきましても、これは引き続き就職あっせんに努めてまいりたい。就職面接会等については継続的に実施することによって、就職につなげる努力を引き続きやっていきたいというふうに考えているところでございます。
  102. 松岡滿壽男

    ○松岡(滿)委員 結局、今度のさまざまな問題、いろいろな情報は官僚の皆さん方が持っているのですよ。きちんと持っているはずなんですよ。分析もするのですよ。だけれども、住専の問題だって、分析して経営破綻しているとわかっておっても、そこから先がない。現状維持、それでずるずる来ているわけですよ。それに対して政治が的確な対応ができなかったということを我々も反省しなければいかぬのだけれども、それが今度の問題ですよ。  我々は頭が悪いから、ちゃんと何ぼやという数字を言ってもらわないと。おととしが十五万で去年が十六万で、ことしは何ぼになるか、おおよそのめどを言ってください。それでないと、それに対してどうするかということも、それは社会的な不安も出てくるかもわからぬけれども、現実にもう就職はほとんど決まっておるでしょう。あと何ぼか動くだけですよ。だから、どのくらいになって、それに対してどうするかということをやっていかないと、これはみんな生きて生活している連中ですから。  それともう一つ、去年の十六万人の追跡調査は一体どうなっているのか、十六万人の就職できなかった子供たちはこの一年間どういう形で過ごしているのか、何万人がどうしてという、それをちょっと教えてください。
  103. 征矢紀臣

    征矢政府委員 本年三月末の方についての状況がどうなるかという点で、昨年の実績が十六万人に対してどうかという点でございますが、実は数字の問題につきましては、学校の関係につきましては文部省が最終的に集計して調査した上で対処する、こういうことでございます。現時点におきましてその辺の作業がまだ行われておらないというようなこともございまして、なかなか申し上げにくいということでございます。  ただ、状況からいきますと、私どもの方で調査いたしております就職内定状況で見ますと、昨年より数字がより厳しいわけでございまして、そういうことを踏まえれば、結果としては、就職できずに残る方が十六万人よりなお多くなる可能性が大きいということは申し上げられると思います。そういう具体的な内容につきましては、今申し上げましたようなことでございますので、それで御了解いただきたいと思います。
  104. 松岡滿壽男

    ○松岡(滿)委員 去年の十六万人のうち半分ぐらいは、それぞれいわゆるアルバイトとかパートとかそういうもので雇った、あと残りが大学院に行くとかあるいは留年という形で勉強しておるというふうに私は聞いておるのですが、その勘定は正しいのかどうなのか。そうすると、十六万人より多いということになると、二十万人という話もいろいろ聞いておるのですけれども、大体そういう受けとめ方でいいのですか。
  105. 征矢紀臣

    征矢政府委員 十六万人がどの程度ふえるかという点につきましては、先生おっしゃるように、そういうお話もございますが、私どもといたしましては、どのくらいになるかというのは現段階でなかなか申し上げにくいところでございます。  十六万人の方がどんなその後の状況になるかという点につきましては、先生指摘のように、緊迫感という面からいくと、とにかく就職をするために、ぜひ就職したいということでたくさんの方が私ども公共職業安定機関に来ているかということになりますと、必ずしもそうでもない。よりまた専門的な学校に行くとか、いろいろなケースの方も相当おられる、こういうことでございます。  他面、私ども学生職業センターあるいは安定所に、就職ができなくて引き続き求職活動をする方が相当ふえていることも事実でございます。ただ、その割合は、ふえているわけでございますが十六万人のうちその半分には及んでいない、そういう現状でございます。
  106. 松岡滿壽男

    ○松岡(滿)委員 まだ日本に繁栄の宴の余韻が少しあるわけですよ。千百兆円というものが国民の預貯金、資産としてある。だけれども、どんどんこれは悪くなっていくと思うのですね、いろいろな例を見ていると。国の財政だって御存じのような形で、ことしは二十一兆円、二百二十兆円にまたプラスですよ。全体でも三百兆ぐらい。地方自治体の方も百三十兆近い借入金残高がある。そういうことで、今度は消費税も来年の四月から五%と、村山内閣のとき大体そういう方向性も決めておるわけですよ。  だけれども、今度六千八百五十億円を投入する問題で国民の論議をいろいろ聞いてみると、だんだんに生活が切実になってきている。先行きも不安だという気持ちが物すごくあるわけですよ。実際に今働いている中高年の皆さん方も非常に不安を持っている。そういうところに、新しくせっかく学校を出て、さあ社会のために働こうと思って出てきた子供たちの受け入れ先もない、これはもう大変なことだと私は思うのですよ。やはり労働省は、この事態を全体の流れの中からもう少し真剣に受けとめて対処しなければいけないということを私は重ねて申し上げたい。  だから、その人数について言えない、そういうことで今までずるずる——今度の住専の問題だって、ああいうものはもっと明確に例えば直属の大蔵大臣とか政治家に情報を提示しておれば、こういうことになっていないわけですよ。情報を握り込んで、それを持っているのはやはり官僚の皆さん方なのですね。  そういう形で、社会的な影響が大きいと言ったって、もう何カ月かしたら二十万という数字は出るわけでしょう。言ったら大変だと言ったって、情報を出してもらわないことには我々も対応のしようもないですよね。ある程度もう見通しを持っておられると思いますので、もう一回言っていただきたいと思いますね。
  107. 征矢紀臣

    征矢政府委員 繰り返しの御答弁になりますが、私どもとして現時点で見通しを持っているという段階ではございません。  それから、申し上げましたように、この数字自体は所管は文部省でございまして、いずれにいたしましても、私ども文部省にも現時点でどのくらいの見通しなのかの点につきましては御相談をしながら、どこまで申し上げられるかどうかを検討いたしたいと思います。
  108. 松岡滿壽男

    ○松岡(滿)委員 これ以上征矢さんに申し上げても、それは所管もあるでしょう。ただ、これは大事な数字ですから、やはり本来労働省がきちっと持つべき数字なのですね。  住専問題で金融機関に対する国民の信頼が大きく崩れようとしておるわけでありますが、国会審議を通じまして、住専の母体行と言われる大手銀行、あるいは住専への貸し手である農林系金融機関に対していろいろな意見も出てきておるわけです。まことに不幸なことでありますけれども、一般国民の金融機関に対する不信というものも出てきている。これは大変なことだというふうに思うのです。  そうした折でもございますので、労働大臣、大蔵大臣が共管しております労働金庫、それから労働省が指導に当たっている社内預金制度の状況等についてお伺いをいたしたいというふうに思います。  労働金庫の経営の状況、それから、金融自由化が進み、他の金融機関と競争するという事態が考えられるわけですけれども労働金庫の運営に問題はないのか、あるいは労働金庫の貸し出し状況について伺いたいと思うのです。特に、住専会社への融資とかあるいはノンバンクへの融資があるのかどうなのか。金融制度調査会が一九九八年三月までに不良債権に関する情報開示を求めておりますけれども労働金庫の情報開示への取り組みはどうなっているのか。  それから、昨日ですか、予算委員会に禿河理事長が出てこられて、労働金庫の全国統合問題について、ブロック単位でとりあえずやっていこうかというような御説明もありましたけれども、どういう状況になっているのか。また、全国統合によるメリットというのは何かあるのかという諸点にわたりまして、ひとつまとめてお答えをいただきたいというふうに思います。
  109. 七瀬時雄

    ○七瀬政府委員 多岐にわたっておりますので、簡潔に答えさせていただきます。  まず、全国四十七金庫の経営状況でございますけれども、預金が九兆三千六百億、貸付金が五兆強、預貸率五八・九%という状況でございまして、全体の経営状況はおおむね順調に推移しております。個別金庫ごとに見ると当然のことながらばらつきはございますけれども、総体的には堅実な運営がなされているというふうに考えております。  それから、金融自由化と労働金庫の運営ということでございますが、自由化になりますと、従来相対的に金庫のウエートの高かったお客さんといいますか、そういう部門に対して一般の金融機関が競争で入ってくる、こういう状況もございますので、会員サービスを充実させるとか、あるいは未組織労働者の利用促進などについて積極的に取り組んでいるところでございますし、それと同時に、貸し付けの範囲を拡大することに伴いまして、監査体制とかリスク管理の充実をあわせて図っていくというようなことを考えております。  それから住専等への融資でございますけれども労働金庫法の制度として、住専、ノンバンクには貸し出しができない、こういう制度になっておりますので、そういうところには貸付金はないということでございます。  それから金融制度調査会のディスクロージャーの件でございますが、調査会の答申におきましては平成十年三月期までという目標を掲げておりますけれども労働金庫協会におきましては、この答申の趣旨を踏まえまして、本年三月期からすべての不良債権額の開示を行う方針を取りまとめておられますので、私どもといたしましても、経営の透明性を高めるために、そして健全な経営を確保するために適切な指導をしてまいりたい、こういうふうに考えております。  それから金庫の統合の問題でございますけれども、概略申し上げますと、これは自主的な会員制の金融機関でございますので、金庫あるいは金庫協会の方で検討を進めており、二十一世紀に向けて最終的には全国統合、ただ当面ブロックごとにまとめていくということが現実的ではないか、こういうお考えのようでございます。したがって、私どもも、自主的に検討されたことでございますので、そういうことを頭に入れながら対応していきたいと思っております。  そして統合のメリットということを申し上げるとすれば、一つは、スケールメリットの問題とか効率化の問題があるだろうと思います。それから、都道府県単位でございますと、最近、住んでいるところと働いているところが隣の県、あるいはもう少し遠いのかもしれませんが、そんな問題があったりいたしますと、住んでいるところで利用するということと昼間職場の周辺で利用する、それが別の金庫であるというような問題があったりいたしますので、そういう技術的な観点からの統合のメリットというのもあるのだろうと思っております。  幾つかの項目でございますので、はしょりまして大変申しわけございません。もし補足が必要であれば追加いたしたいと思います。
  110. 松岡滿壽男

    ○松岡(滿)委員 労働金庫も、きのうの禿河理事長のお話を聞くと、九兆円ぐらいですか、かなり大きな規模に全体的にはなっていますし、労働者のための金庫としてきちっと充実をしてもらいたいという立場から質問をさせていただいたわけであります。  社内預金の問題ですけれども、この返還不能事件のここ十年ばかりの推移はどうなっておるのか。また最近、住専に関連して、金融不安について問題が出てきているわけですけれども、社内預金制度は民間私企業内のものでありまして、市中の金融機関によるものではないとはいえ、その安全性の確保は重要な問題だと考えます。社内預金返還不能事件というのは減少しているというふうには聞いておるのですけれども、この辺の実態について御説明をいただきたい。  また保全措置は、企業が倒産した場合に社内預金が返還不能になることを避けるために設けられているものであるというふうに思いますけれども、これの具体的な内容はどうなのか、あるいは企業が倒産に至った場合はこれらの保全措置によって確実に返還がなされるのか、こういう点につきましてちょっと御回答をいただきたいと思います。
  111. 松原亘子

    松原政府委員 お答え申し上げます。  社内預金の返還不能事件の推移でございますけれども、過去十年間の発生状況を御説明いたしますと、昭和六十年度から平成年度まではおおむね三十件前後で推移してまいりましたが、平成年度から四年度につきましては十七、八件程度、平成年度が十三件、六年度八件というように、だんだん減少をしてきているというのが実態でございます。  また、社内預金制度につきましての保全措置でございますけれども、保全措置の具体的な方法といたしましては法令で四つが決まっております。それを申し上げますと、一つは金融機関と保証契約を締結すること、二つ目は信託会社と信託契約を締結すること、三つ目は質権または抵当権を設定すること、そして四つ目が預金保全委員会を設置し、あわせて貯蓄金管理勘定その他適当な措置を設けることということになっているわけでございます。  このうち、最初の三つの保全措置の方法による保全につきましては特段の問題はないわけでございますけれども、最後に申し上げました預金保全委員会による方法につきましては、あわせ講ずべき措置として貯蓄金管理勘定を設けるというだけでは、なかなか保全機能は十分でないというふうに考えられるわけでございます。そういうことから、これをさらに一層十分なものとするために、適正な委員会運営を行わせるということは当然のことでございますけれども、貯蓄金管理勘定とあわせまして支払い準備金制度というものが併用されるよう、私どもはあらゆる機会をとらえまして、事業場に対して指導をいたしているところでございます。
  112. 松岡滿壽男

    ○松岡(滿)委員 労働金庫と社内預金の問題につきましては、ちょっと時間がなかったものですからまとめてお伺いしましたが、七瀬さん、松原さんからそれぞれ御回答いただきましてありがとうございました。  時間が参りましたので終わりたいと思いますけれども労働行政、非常に難しいところに来ておりますので、大臣初め局長あるいは労働省の皆さん方、国民立場に立って、ひとつ信頼される労働行政推進していただきたい。ほかの省庁とは違う部分があるわけですから、心から期待を申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  113. 岡島正之

    岡島委員長 上田勇君。
  114. 上田勇

    ○上田(勇)委員 新進党の上田勇でございます。  新進党三人目になりまして、これまで我々新進党の明日の内閣労働雇用政策大臣でございます江田先生、そして松岡先生の方から、大きなテーマについて御質疑が行われました。私の方からは、限られた時間でもございまして、幾つか個別の問題について御質問をさせていただきたいというふうに思います。  まず、先月、労働省から、所管行政にかかわる規制緩和要望及びその検討状況についての御報告が行われております。私が拝見した中で、全体で八十九件、その中で特に有料職業紹介事業あるいは労働者派遣事業についてのものが、それぞれ九件、五件という形で多数寄せられております。  この有料職業紹介事業あるいは労働者派遣事業というのは、業としての性格の上からも、弱い立場にある労働者あるいは求職者を、悪い言い方をすれば搾取するインセンティブが働きやすい業態でもあるわけでありまして、しかも報道等の中には、いわゆる暴力団のフロント企業などの事例も見受けられるということなどから、やはり労働者、求職者の保護という観点から一定の措置が必要であるということは、そのとおりであるというふうに考えております。  ただし、そうした措置が過剰な規制とならないように十分に監視して、過剰なものは極力撤廃、緩和して、できる限り自由な経済活動を保証していく、このことが必要であるというふうに考えております。  とりわけ、いろいろ提出されている要望を拝見させていただくと、中には許可期限の延長のことだとかあるいは許可更新手続の簡素化など、ある意味で、そういう手続的なことで規制を緩和していってもいいものがたくさんあるのではないかというふうにも思います。  もちろんこうしたものの中には、御報告いただいている中にもう既に対処済みのものもあるわけでありますが、今後この派遣事業あるいは有料職業紹介事業にかかわる規制緩和についてどのような方針で取り組まれていくのか、その辺の御所見をお伺いしたいと思います。
  115. 征矢紀臣

    征矢政府委員 有料職業紹介事業あるいは労働者派遣事業についての御質問でございますが、この問題につきましては、御指摘のように、一方で適用対象業務の拡大等規制緩和の要望が行われており、また他面では規制緩和に慎重な対応や、あるいは労働者の保護等の観点から規制をむしろ強めるべきであるというような御意見もあるところでございます。また政府といたしましては、行政改革委員会の御意見を尊重しながら対処するという立場もございます。  いずれにいたしましても、この労働力需給調整にかかわる制度につきましては、その当事者である労使のコンセンサスを得ながら対処していかなければなかなか適切に機能し得ないのではないか、こういう考え方が基本にございます。  そこで、まず労働者派遣事業につきましては、これは昭和六十一年に非常に大きな御議論があったわけでございますが、法律が制定されましてちょうど十年の節目になるというようなことから、平成六年の十一月から約一年余にわたりまして、公労使三者構成の中央職業安定審議会においてこの制度の見直し検討の議論をしていただきました。これは、実態調査をし、関係団体の意見の聴取をし、かつそれぞれの御意見を集約して見直しの結果が取りまとめられたわけでございますが、これが昨年十二月でございます。  中央職業安定審議会から労働大臣に対して、派遣労働者の就業条件等の整備確保、労働者派遣事業の適正な運営の確保、あるいは適用対象業務の拡大、介護休業あるいは育児休業等の代替要員についての特例、それから手続の簡素化、こんなことを内容といたします建議が行われたところでございます。  私どもといたしましては、この建議の内容を踏まえまして、法改正が必要なものにつきましては今通常国会労働者派遣法等の改正案を提出いたしたいと考えまして、現在準備を進めているところでございます。  それからまた有料職業紹介事業制度につきましては、このあり方につきまして、昨年十月から中央職業安定審議会におきまして、取り扱い職業の範囲あるいは手数料のあり方等につきまして、さまざまな御意見を踏まえ、多角的な観点から検討をしていただいているところでございます。
  116. 上田勇

    ○上田(勇)委員 ただいまの御答弁の中にもありましたけれども、去年の十二月、行政改革委員会の第一次意見の中で、この有料紹介事業労働者派遣事業対象業種を拡大するというような方向が出ております。ただ、行政改革委員会の方の考え方としては、現行のいわゆるポジティブリストからネガティブリストに変更するというような、原則は自由だというような提案がなされております。  一方、先日の中央職業安定審議会では、派遣事業だけについてであると思うのですが、これは明確に現行のとおりポジティブリストのままでいくという方向が示されているというふうに理解をしております。  この行政改革委員会、それから中央職業安定審議会の考え方の基本は、多分共通するものではないかというふうに思います。対象業種で、その支障のないものについては拡大していくということについては共通しているものだというふうに思いますけれども、ただ、基本になる考え方、これはポジティブリストでいくのかネガティブリストでいくのか、これは原則は自由であるのかあるいは原則は禁止であるのかという観点からすれば、やはり考え方がかなり大きく異なる面もあるのじゃないかというふうに思います。  そこで、これは両方とも、行政改革委員会もまた中央職業安定審議会も、これを尊重して今後対応されていくということであると思うのですが、具体的にちょっと考え方が違う中でどちらの方向で進められるのか。また、有料職業紹介事業については、中央職業安定審議会の方での答申が出るという段階にはまだ至っておりませんけれども、それについてもどういう方向で考えられるのか、その理由も含めてお尋ねしたいと思います。
  117. 征矢紀臣

    征矢政府委員 まず、労働者派遣事業制度についてでございます。行政改革委員会から御意見をいただいておりますが、先生指摘のネガティブリストにすべきであるという御意見とあわせまして、この最後のところに、なお書きがございますが、  昨年来、中央職業安定審議会において、適用対象業務の拡大等が審議され、適用対象業務の拡大や、原則として業務を問わない育児・介護休業取得者の代替要員に係る特例の措置等についての検討結果が取りまとめられる予定であるが、これについては早期に施行されることが望まれる。 これもまた行政改革委員会の御意見でございます。今回の法律におきましては、今申し上げた点を踏まえて対処するという考え方の法律でございます。  それから、中央職業安定審議会の建議におきましても、これについて、対象業務の拡大という観点と就労条件の適正化あるいは適正な運営という観点、それから手続の簡素化、こういうことを全体としてまとめまして建議がされているわけでございますが、その中でやはり議論といたしましては、建議の中におきましても、   なお、審議の過程においては、適用対象業務について、労働者派遣により派遣労働者に従事させることが適当でない業務を限定列挙し、それ以外の業務については原則自由化することが適当であるとの意見があった。 ということとあわせて、   また、もし、このように制度の根本的な変更を検討するのであれば、諸外国に見られるように派遣事由・派遣期間の厳格な制限及びそれに違反した場合の派遣先の直接の雇用責任の発生等についても併せて検討する必要があるとの指摘があった。 これは労使それぞれの御意見でございますが、そういう指摘もございまして、それも建議にまとめられておりまして、建議におきましては「おわりに」ということで、したがって、   以上のような措置を講ずることにより速やかに制度の改正を図ることが適当であるが、この報告に沿った制度の改正が行われた後においても、経済社会情勢の変化等状況を踏まえ、労働者派遣法の立法の精神及び制度の運用の実情、民間労働力需給調整機能の強化の必要性等をも勘案し、制度の在り方等について、多角的に必要な検討を行っていくことが適当である。 こういうまとめになっておりまして、したがいまして、私どもとしましては、今回、行政改革委員会の御意見とそれから中央職業安定審議会におきます全会一致のこの建議を踏まえて、法案を提出するということで準備を進めているところでございます。  なお、有料職業紹介事業に関します行政改革委員会の御意見もあるわけでございますが、中央職業安定審議会におきます民営職業紹介事業のあり方の検討につきましては、これは職業安定法に基づきまして、あり方については関係審議会、すなわち、中央職業安定審議会で議論をしなければならないという形になっておりますので、そういう観点から、このあり方について昨年十月以来御検討をいただいている、こういうことでございます。
  118. 上田勇

    ○上田(勇)委員 ちょっと確認をさせていただきたいのですが、今行政改革委員会考え方も尊重するということであれば、もちろんこの最終的な判断は中央職業安定審議会ということなんでしょうけれども、今回人材派遣業についてこういうポジティブリストのままでいくという考え方というのは、当面いろいろな環境が整うまでの措置ということなのか、それとも派遣業、有料職業紹企業も含めて、そういう環境が整えば、先ほど行政改革委員会の報告に沿ってということでもございましたので、さらに中央職業安定審議会等での議論を経てそういう方向に誘導されていくのか、その辺ちょっともう一度確認をしたいのです。
  119. 征矢紀臣

    征矢政府委員 環境が整えばという点でございますが、現状の建議におきましては、先ほど申し上げましたように、労使の意見はそれぞれ違っているわけでございます。したがって、今回は現在の法律の体系の中で、ただいま申し上げましたようなことで改正法案を国会に提出して、御議論をいただくということでございますけれども、なお今言ったような問題も含めて今後のあり方については引き続き検討する、こういうことになっているわけでございます。  その検討する先がどうなるかという点につきましては、行政改革委員会の御意見を尊重するという立場もございますが、関係審議会での御議論もいただく、こういうこともございまして、現時点では、当面は私どもは現在提出予定いたしております法案について御審議をお願いし、対処していきたいというふうに考えているところでございます。  なお、あわせまして、当面、ILOの九十六号条約を我が国は批准しているわけでございますが、この見直しも来年度予定されております。これは有料職業紹介事業について等に関する条約でございますが、労働者派遣事業についてもこの条約の中に含まれているという考え方でございます。その点の議論がどうなっていくか、そういう点もなお見ていく必要があろうというふうに考えております。
  120. 上田勇

    ○上田(勇)委員 冒頭申し上げたように、有料職業紹介事業あるいは人材派遣事業というのは、やはりこれは一定の規制が必要であるということは私も全く同感するものであります。したがいまして、今この規制の緩和に当たっては、いろいろな方面から検討されているということでございます。  特に、その中で人材派遣業については、ある意味でさまざまなトラブルが発生しているというような報道もございます。有料職業紹介の方はある意味で業態自体がある程度安定している面もあるのかもしれませんが、特に人材派遣事業について、報道だけを見てみましても、中には契約の途中で一方的に解雇されたというようなものだとか、契約と実態がかなり異なっていたというような内容の報道などもありますし、とかくまだそういう意味でトラブルが依然として多い面もあるのじゃないかと思います。  もちろん、この規制緩和をこれから進めるに当たりまして、特に人材派遣事業について、こうしたトラブルの発生を未然に防げるような対策もあわせて講じていかなければならないのじゃないかというふうに考えます。このことについて今後の方針をお尋ねしたいと思います。
  121. 征矢紀臣

    征矢政府委員 御指摘のとおりでございまして、ただいま申し上げました全体の中での派遣労働者の就業条件等の確保整備のための措置というようなことも考えなければならないということで、この点につきましては、ただいま先生の御指摘もございましたように、特に労働者派遣契約の中途解除があった場合において、派遣元事業主及び派遣先により適切な措置が講じられるようにすべきであるというようなことについて、あるいは労働大臣が指針を作成しまして、それを遵守していただくような努力をしていただく、こういうようなこと、あるいは派遣労働者からの苦情処理の問題につきましても、一定の契約事項として対処するというようなこととあわせまして、適用対象業務の拡大、あるいは育児休業、介護休業についての特例制度というものを検討する、こういうのが今回の考え方でございます。
  122. 上田勇

    ○上田(勇)委員 次に、先ほど来、現在の雇用情勢についてかなり厳しい情勢であるという認識といったものは、質疑の中でも共通したものがあるというふうに思います。  現在、完全失業率が過去最高などという指標も出ているわけでありますし、政府では景気回復宣言というような形で、景気の動向については明るい見通しを示されているようでございますけれども雇用については、先般の大臣の所信でもございましたように、依然として厳しい状況が続いているのが現実でございます。中には、景気というのは遅行指標というのですか、おくれて来る指標であるので、いずれ景気回復とともに改善するのじゃないかというような御意見の方もあるのですが、これはちょっと余りにも楽観的過ぎる見方じゃないかというふうに私は思います。  先ほどの質問の中にもございましたし、また答弁の中でも、経済社会の変革期における雇用というようなことで、いろいろな観点からの質疑がありました。そういう意味で、これから変革期の中で雇用を確保していくというのが大変難しい、また大変重要な課題であるというふうに思います。  こうした認識あるいは基本方針については、先ほど来の質疑の中でも取り扱われておりますので、ここで私の方から、将来の我が国雇用のあり方について、若干新しい視点でちょっと御質問をさせていただきたいというふうに思います。  雇用政策基本は、これまでも経済活動の活性化を通じて雇用を確保していくというものでありましたし、また、今後もこれが基本になるのだというふうに思います。  ただ一方、近年、国民、市民が自発的に参加して行う市民公益活動といったものも活発化しております。こうした分野というのは、阪神大震災などでも注目を集めました災害救助などの分野ももちろんのこと、社会福祉環境保全、犯罪被害者救援あるいは国際協力などといった多様な分野に及んでおります。こうした市民公益活動を支え、発展させていくための施策が今求められているのじゃないかというふうにも思います。  こうした観点から、新進党では、さきの国会でNPO法案などといったものを提案させていただいているわけでありますが、こうした市民公益活動を含む民間公益セクターというものが、特に今後、高齢化が進展する社会あるいは価値観が多様化する社会におきましては、雇用という面からも有力な場を提供するのじゃないかというふうにも私は思います。  とりわけ高齢者の社会参加、あるいはさらなる女性の社会進出、こうしたものを支援していくという意味からも、民間公益セクターの雇用の場というのを考えていかなくてはいけないのではないかというふうに思います。現にあるデータでは、米国などでは民間公益セクターの雇用が全雇用の一割を既に超えているというような報告もあるわけでありますし、とりわけアメリカなどでは、女性であるとかマイノリティーの職場として非常に重要な役割を果たしているというふうにも言われております。  もちろん我が国でも財団、社団、こういった民法法人がこのセクターにも属するのだと思うのですが、やはりこうした民間公益部門を活性化して、そこで雇用を創出していくというためには、市民の自発性に即したこういう市民公益活動などの育成支援が重要なのではないかというふうに考えます。そうした目標のために、今後、税制上の措置だとか、そういったものも含む支援体制の確立が重要なのではないかというふうに私は考えています。  そこで、将来におきます新しい分野での雇用の確保という観点も含めまして、この民間公益セクターの発展について御所見をお伺いしたいというふうに思います。
  123. 永井孝信

    永井国務大臣 先生が御指摘になりましたように、とりわけ阪神大震災でボランティア活動などが非常に注目を集めましたし、そのあり方が社会的な大きな関心を実は呼んでいるわけであります。  したがって、そういうものがこれからより活発に活動ができて、社会の中に定着していくようなことを政府としても当然積極的に考えていかなければいかぬ、このように実は考えておりまして、政府といたしましても、これについて与党の中で十分に協議をしてもらって、新進党が出されておりますNPO法案も含めてその対応をしていきたい、こう考えているわけであります。  とりわけ来年度予算におきましては、新たなパソコン情報ネットワーク、こういうものも構築をしていこうとしているわけであります。具体的には、一つには勤労者ボランティア相談コーナー、こういうものを阪神地区に設置をしていきたい。とりあえずは当面大阪に設置を予定いたしておりまして、今後ともそういう面で積極的に勤労者のボランティアへの支援の拡充、こういうものを図ってまいりたいと思っております。  また、労働団体の方でもこれについて積極的な姿勢を示していただいておりまして、非常に労働省としても心強く思っているところでありまして、経営団体にも当然のこととしてこれへの協力をお願いしていきたい、こう思っているところであります。
  124. 上田勇

    ○上田(勇)委員 このボランティア、市民公益活動というのは、これからの課題ではないかというふうに私も思っております。  ちょっと今大臣の御答弁がありましたけれども労働省の方でも本年からかなり関心を持って取り組んでいるというようなことも伺っておりますし、先般は勤労者ボランティアシンポジウムを主催したというふうにも聞いております。ちょっとこれまでとは異なった視点かもしれませんが、今後やはり勤労者がボランティア活動であるとか、そういう公益活動に従事するという方面での対策の充実もさらに望みたいというふうに考えておりますし、また、先ほど申し上げましたいわゆる民間公益セクターにおけるこれからの雇用のあり方というようなことも含めて、ぜひ御検討をいただければというふうに思います。  もう余り時間がございませんので、最後に時短の問題についてお伺いしたいというふうに思います。  来年の四月から週四十時間労働制の全面的な実施、これは既に決定されていることでございますし、いろいろな経緯の中でこういうふうに決定されたわけであります。中小企業に対する猶予措置であるとか特例措置などを含めて、関係者の同意を得た上でこういう結果になった。当委員会も含めまして、いろいろな場面での大変な御議論の末の結論であったというふうに理解しております。  ところが、どうも昨年後半あたりから、経済団体など一部から、経済情勢が大変厳しいということを反映しているのかもしれませんけれども、この猶予措置の延長や特例措置の拡大、これを求める声が大きくなっているのじゃないかというふうに私も感じております。  もちろん、中小企業の置かれている厳しい状況考えるときに、こうしたお考えというのは理解できるのですけれども、やはり我が国労働時間が他の先進諸国に比べて依然として長いという現実を見るときに、大臣所信表明の中にもありましたゆとりのある豊かな社会、これを実現するためには、この短縮といったことは必須のものだというふうに考えております。  大臣所信表明の中で、この件について大変力強いお言葉があったわけでありますけれども、ぜひこの明年四月の全面的な実施実現のために、大臣、またさらに全力を挙げていただきたく、確実に実施していただきたいというふうに考えておるところでございます。  そこで、最後になりますが、大臣のこの件についての見解、御決意をお伺いしたいと思います。
  125. 永井孝信

    永井国務大臣 今先生から御指摘がありましたように、労働時間の短縮というのは、勤労者のゆとりある生活を実現するための重要な課題だと心得ております。とりわけ週四十時間労働制の実現というのは、我が国を取り巻く国際的環境を踏まえまして、約十年をかけて取り組んできた最重要課題であることから、平成九年四月からの週四十時間労働制の全面的な実施を確実なものにしていきたいと考えているわけであります。  今御指摘がありましたように、中小企業団体を初めとして、猶予をさらに延ばしてほしいという御要望があることは十分承知しておりますが、もうあと一年しかないというのではなくて、まだあと一年余裕がある、こういう立場労働省としても対応していきたいし、中小企業団体にも強く四十時間労働制が実施できますように求めていきたいと考えているわけであります。  そのために、来年度拡充を予定しております時短奨励金等の助成措置を積極的に活用したい、活用してほしい、そして、現在猶予措置が講じられている中小企業等が円滑にこの週四十時間労働制に移行できますように、業種別、地域別などきめ細かな指導や援助をしていきたい、こう考えているところであります。強い決意で、来年の四月には円滑に四十時間労働制が実現できますように、省を挙げて努力をしてまいることを申し上げておきたいと思います。
  126. 上田勇

    ○上田(勇)委員 時間ですので、これで終わります。
  127. 岡島正之

    岡島委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十四分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  128. 岡島正之

    岡島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。池田隆一君。
  129. 池田隆一

    ○池田(隆)委員 社会民主党の池田でございます。午前の質問方々と重複するところがあると思いますけれども、視点が違いますのでお許し願えればと思います。  労働行政の当面の課題について、何点かお聞きをしていきたいと思います。  まず最初の質問ですけれども、去る二月十日、私の地元であります古平町の豊浜トンネル事故で被害に遭われ、亡くなられた方々の御冥福を心からお祈り申し上げますとともに、御遺族の皆様に深く哀悼の意を表したいと思っています。私もたびたび現地に赴き、対策本部や古平町、積丹町の関係者に事情を聞いたり、または激励をしたり、お見舞いを申し上げてまいりました。  この事故に関しまして、労働省として、被災者に対する通勤時の労災の適用を速やかに行うという大臣の談話の発表、さらには、雇用保険等の手続のために、近くの事務所へ通っていた方々のために、トンネル事故に遭って陸の孤島化した古平、積丹町の該当者に対して移動事務所を開設する、または、当時徹夜で救出に当たっておられました方々の二次災害防止の視点から、労働省の皆さんも積極的に対策本部との協議も進めて、出先の皆さんにかかわっていただきました。深く感謝申し上げたいと思います。  そこで、この事故の労災の認定に当たっては、該当者から申請が上がってきてから事務手続が行われるというのが通常でございますけれども、一日も早く家族の方々の生活再建を行うということも重要だと思います。そういうことで、待ちの姿勢ではなくて、積極的にこの問題について労働省として関与していただきたいと思いますが、この事故に対する取り組みの経過並びに今後の対処の仕方についてお尋ねいたしたいと思います。
  130. 永井孝信

    永井国務大臣 今回の豊浜トンネルの崩落事故、まことに痛ましい事故でありまして、不幸にして二十名の方が亡くなられました。心から御冥福を祈りますとともに、御遺族の方々にこれまた心からお悔やみを申し上げたいと思うわけであります。  労働省といたしましては、業務中あるいは通勤途上において被災された方々の御遺族に対して迅速な労災保険給付を行うように、そういうことから今必要な情報提供に努めているところであります。まだ救出作業を展開しているときから既にその方針を決めておりまして、一日も早く認定ができるように万全の取り組みをしていきたい、こう考えているところであります。  また、今後のトンネル復旧工事の労働災害の防止については、施工業者に対して的確な指導を行うことなどによって、土砂、岩石の崩壊、または建設機械による災害などの防止が図られるように万全を期してまいりたい、こう思っているわけであります。また、あのときの災害の救出作業のさなかにも、今御指摘がありましたように、救出作業に当たる方々の二次災害の防止のための特別の御要請もしてまいったところであります。  なお、現在全国で行っていますトンネル工事は大小合わせて二千七百カ所ぐらいございまして、そういうこともございますから、トンネル建設工事における崩落災害等の防止を図るために、既に全国の都道府県労働基準局長を通じまして、二月の十三日でありますが、管内の工事施工業者に自主点検を実施するように要請をしたところであります。  今後とも、このような痛ましい災害が起きないように最善の努力をしてまいりたいと考えております。
  131. 池田隆一

    ○池田(隆)委員 よろしくお願い申し上げたいと思います。  次に、JR採用問題についてお尋ねをしたいと思います。  この問題は、一九八七年の四月に旧国鉄から分割・民営化されたJR、これも来年四月で十年目を迎えます。ですから、この問題はもう十年間を経るという非常に長い問題でございます。  大臣は元国鉄にお勤めになっていたということで、この問題の経過、中身については十分御承知のことと思います。しかし、一日も早い解決をしていただきたいという願いで今も頑張っておられる方々が多くあるわけですので、この問題の解決に向けての大臣の御決意をちょっとお聞きしたいと思います。よろしくお願いいたします。
  132. 永井孝信

    永井国務大臣 JR各社の採用問題にかかわります問題については、既に中労委命令が幾つか出されておりまして、平成五年の十二月以降、これまでに九回、合計十三件、救済命令が出されてい るわけであります。  この問題を現実的に解決するためには、どういうことをいいましても、まず当事者である労使双方がこれまでの主張にこだわらないようにして、立場を超えて率直に話し合うことが必要だと考えています。そういう状況をどうやってつくることができるかということが、私どもに課せられた重要な課題だと考えているわけであります。過去も数回、労使双方を別々に、あるいは合同で集まっていただきまして、何とか早期解決をということで努力をしてきた経緯がありますが、不幸にして現在までそれは実らなかったわけであります。  労働省としては、そういういろいろな経過もありますが、難しい問題ではありますけれども、今後とも所管官庁であります運輸省とも十分連携をしながら、労使の関係者の努力や対応を見守っていきたい。適宜、労使の関係者からこれからも話を聞きながら早期解決の方法を模索していきたい、こう考えているわけであります。  何といってもこれをいつまでも放置することは非常に不幸なことでありますから、そういう不幸な状況から一日も早く脱却することができますように、また、そのことを通して労使の安定した関係がより強固なものになってまいりますように、労働省としても努力をしてまいる決意であります。
  133. 池田隆一

    ○池田(隆)委員 この問題は、当時政府の責任で分割・民営化したという問題でございます。その問題が十年も続いているという部分については、政府の責任も重いと思いますので、今大臣の方から決意がありましたとおり、積極的な取り組みをお願い申し上げたいというふうに思います。  次に、雇用対策について午前中もるる質問がございました。我が国雇用情勢は、午前中にもありましたけれども、本当に大変厳しい状況にあると思っています。  こういう労働者を取り巻く雇用情勢が厳しい状況のときには、特に労働者の中でも弱者と言われる高齢者、さらには女性障害者、そして新たに職につきたいという新卒者方々に対しては、より以上の厳しさがあるのではないかと感じています。とりわけ障害者に対しては、障害者雇用促進等に関する法律において、民間、国、地方公共団体等に分けまして、それぞれその採用、雇用率、枠が定められているところでございますけれども、こういう非常に厳しい状況になっていけばいくほど、この障害者雇用率がなかなか上がらないという問題も抱えているだろうというふうに思います。  さらに、新卒者の問題でも、将来の人材を確保するということは企業にとっても非常に重要なことだと思うのですけれども、その辺のところが、学卒者の就職が困難だということは、将来の国益にとっても、そういう意味では非常に不幸なことだというふうに思っています。これまで大臣の方からも御答弁がありましたけれども労働省としても積極的に取り組んできておられる。経済界の皆さんにも直接お会いになってお話をしている。  地方六団体というのがあります。地方公共団体、四十七都道府県、三千三百の市町村の自治体があるわけですけれども、仮に地方自治体で一名採用されると三千三百、十人だと三万人を超えるという形になっていくわけですね。そうすると、経済界ばかりでなくて、地方公共団体に対して積極的な働きかけをしていくことは、地域住民に対しても理解が得られるのではないかというふうに思います。一方で地方行革というような言葉もございますけれども、こういう状況ですから積極的な働きかけをしていくべきだというふうに考えますけれども、それらの対策について御見解をお聞きしたいと思います。
  134. 征矢紀臣

    征矢政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のように、新卒者あるいは障害者等の雇用問題は極めて厳しいわけでございますが、この新卒者就職問題あるいは障害者雇用促進といった課題に対しましては、私ども関係団体あるいは地方自治体の果たす役割が極めて重要であるというふうに考えておるところでございます。  新卒者雇用を促進するために、経済団体等への要請については、本年度も二回にわたりまして、この採用枠の拡大等について労働大臣初め関係者が要請を行ってきているところでございます。また、一昨日開催いたしました産業労働懇話会におきましても、永井労働大臣から重ねてこの点についてお願いをしているところでございます。  また、障害者雇用促進の問題につきましても、常日ごろから経済団体への要請を行うとともに、都道府県知事に対しまして、各都道府県及び各市町村の機関におきます法定雇用率の達成についての要請をしているところでございます。雇用率未達成である民間企業あるいは地方自治体等に対しましては、個別に雇用率達成指導をあわせて実施をいたしているところでございます。  なお、実雇用率につきましては、最新時点で一・四五%ということでございまして、民間におきます一・六%になお達していないわけでございます。ただ、従来、極めて経済情勢の厳しい時期には障害者がどんどん切られるというようなことで、雇用率が下がるというようなこともございましたが、最近におきましては障害者雇用の問題についての認識はかなり進んでいる面もございまして、こういう厳しい時期におきましても、雇用率につきましては上昇傾向が続いているというところでございます。  引き続き努力をいたしたいと思います。
  135. 池田隆一

    ○池田(隆)委員 大変厳しい状況にあるわけですので、各自治体への直接の働きかけについては、先ほどありましたように、地方の行革というようなこともございますけれども、積極的な取り組みの中で、当面、対策としては効果があるというふうに思いますので、それらも含めて積極的な取り組みをお願いを申し上げたいと思います。  次に、労働時間の短縮問題についてお尋ねいたします。  先ほど上田議員の方からも御質問がございました。この問題は、九七年の四月から、猶予期間が切れて、一部の適用除外職種を除いて全面的に原則週四十時間という形になるわけです。日本労働界にとっては待ち望んでいた時期ではないかというふうに思います。  この猶予期間が決定されて今まで推移をしてきた背景には、当時、大変バブルの好景気の中で人手不足がある、したがって、人手がない中で今すぐこれを実施すれば、ますます人手不足になっていく等との意見もあったというふうにお聞きをしています。しかし、現在、先ほどもありましたけれども景気が悪い。こういう経営状態がよくない中で週四十時間というのを適用するとするならば、ますます経営が苦しくなっていくので、さらに延長していただきたいというような要望が中小企業を含めましての経済団体からあるとも聞いております。  しかし、本来、この労働時間という問題は、景気のよしあしの中で判断をしていくものではないだろうというふうに考えています。なぜなら、景気が物すごく落ち込んで、仮に深刻になっていったとするならば、労働者にとって休日も要らないのかということになりかねない問題でございます。働く者の権利としてどうとらえ、どう認識していくのかということが極めて重要な視点だろうというふうに考えます。  そこで、国際的にも、国際比較の中で日本労働時間は極めて多いという指摘があるわけで、国際協調という意味からも非常に重要な問題だというふうにも認識をしています。ですから、猶予延長という形になれば、国際的な摩擦も生じる問題だろうというふうに考えております。  そういう意味で、労働者が本当にゆとりある生活をしていくということを実行するためにも、週四十時間制度への円滑な施行、実施が必要だろうというふうに思います。先ほども決意が述べられましたけれども、改めて大臣の決意をお聞きしたいと思います。
  136. 永井孝信

    永井国務大臣 今先生指摘のように、この労働時間短縮問題については、千八百時間労働制を実現するというのは国際的な日本の公約であります。その公約を実現させるために、過去十年間この労働時間短縮問題に取り組んできたわけでありまして、そのための法改正も行ってきたところであります。それだけに、来年四月一日から全面的に適用しようとしているこの週四十時間労働制というものは、何としてでも確実にその実現を図っていきたい、これが今の私ども立場であります。  また、これは国会における政府の公約でありまして、先日も本会議で御質問があったときに、橋本総理からも、来年の四月一日からは週四十時間制を確実に実行するようにしていきたいという御答弁を申し上げているところであります。このために、来年度、この四月以降でありますが、拡充を予定しております時短奨励金等の助成措置、これはかなり思い切って拡充をしているわけでありまして、それを積極的に活用しつつ、現在猶予措置が講じられている中小企業等が円滑に週四十時間労働制に移行できますように、業種別、地域別などきめ細かな指導援助に努めてまいりたいと考えております。  なお、日本商工会議所あるいは全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会、全国商店街振興組合連合会、この四団体から政府に対しましても、猶予措置の延長であるとか、そのための法改正であるとかということが要望として出されておりますが、私どもとしては、今申し上げましたような基本的な態度でもって来年の四月に完全実施をしていきたい。  そのために、今中小企業の皆さんの持っていらっしゃるいろいろな悩みといいますか、そういう問題があることは承知しておりますので、私どもは、時短奨励金制度の活用を初めとして、現行法制の中ででき得る限り最大限これを活用いたしまして、実施に向けて円滑に準備が進みますように、まだあと一年残されているわけでありますから、そういう立場努力をしていきたいと思っております。
  137. 池田隆一

    ○池田(隆)委員 よろしくお願いしたいと思います。  それでは、規制緩和に関連してお尋ねをしたいというふうに思います。  規制緩和推進計画が昨年三月に策定されまして、それに基づいて、それの改定作業を現在労働省は精力的に進められているというのが午前中のやりとりでも明らかになりました。一般に規制については、国の関与を極力排除するという視点から緩和が叫ばれているというふうに思っております。しかし、その検討に当たっては、常に社会的な観点、弱者保護の観点を忘れてはいけないんではないかなというふうに考えています。  そこで、労働省が現在進められています規制緩和の検討に当たっては、労働条件の確保、労働者の安全や健康の確保など労働者保護という視点を大事にしていただきたいと思っています。そこで、この規制緩和の検討に当たっての基本的な認識をお尋ねしたいと思います。  さらには、午前中長時間にわたって持ち株会社のことが論議をされました。規制緩和の大きな流れの中で、この問題は、新年早々、経済の審判役とも言うべき公正取引委員会の組織機能を強化する、そのために独禁法を改正する、こういう改正問題にあわせて、にわかにこの持ち株会社の問題が出てきたというふうにとらえています。この持ち株会社の原則解禁問題は、企業の系列化、グループ化を一層推進してしまうという問題を抱えているのではないかというふうに思いますし、また一方、労働界にとっては、長い歴史の中で認められてきている労働基本権、特に団体交渉権を形骸化させていく、使用者の概念が変わるという意味においてそのことが危惧をされています。  そこで、この持ち株会社についても労働省としての認識を、先ほどもありましたけれども、再度お尋ねをしておきたいと思います。この二点をよろしくお願いいたします。
  138. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 御質問の前段の部分についてお答えをさせていただきます。  規制緩和につきましては、新たな事業機会の創出や消費需要の喚起という積極的な側面があり、全体としては我が国経済の活性化につながるものと考えておりますが、その一方で、中小企業の事業活動への影響やあるいは構造転換に伴う雇用調整の問題、その他労働者の保護の問題など、いろいろと懸念される場合もあるものと承知しております。このような問題につきましては、各般の政策努力が払われることが必要であろうというふうに考えております。
  139. 永井孝信

    永井国務大臣 持ち株会社の関係につきましては、午前中にもお答えを申し上げたわけでありますが、現在、独占禁止法改正案については与党のプロジェクトチームで調整が図られているところでありますから、私からこの場で明確にお答えすることは避けておきたいと思いますが、いずれにせよ、持ち株会社がその形態を利用して労働関係にかかわる問題を生じさせることのないように、今後の調整を重大な関心を持って見守っていきたいと思っているわけであります。そして、その推移を見守りつつ検討してまいります。  また、持ち株会社解禁に係る法案の内容自体が確定しておりませんので、今の段階では明確に申し上げることはできませんけれども、現在、事業を行っている親子会社の関係でも類似の問題が生じ得ると考えているわけであります。しかし、だからこそ持ち株会社がその形態を利用して労働関係にかかわる問題を生じさせることのないように、私どもは十分に見守っていきたい、こう考えているところであります。
  140. 池田隆一

    ○池田(隆)委員 規制緩和というのは、時代の流れという形では積極的に推進していかなければならぬ部面と、先ほど申し上げましたけれども、弱者保護という視点で、逆に言えば規制を強化していくという側面も一つには持ちつつ進めていかなければならぬと思っています。  特に持ち株会社の問題については、新たな雇用関係をどうするのかという意味において、特に労働基本権のあり方が問われる重要な問題だというふうに認識しておりますので、今現在与党の中でも論議をしておりますけれども労働省としても重大な関心を持って積極的に協議に加わっていただきたいというふうに思っています。要望しておきたいと思います。  さて、やっと春という言葉がすぐ近くに来るような時期になってきましたけれども、春といえば労働界にとっては春闘ということが言われています。今、連合では生活改善闘争という形で進めていますけれども、ことし、または昨今の春闘の問題というのは、雇用かまたは賃金かというような言葉で代表されるように、特に厳しい状況の中でこの問題がそれぞれ労使の中で議論されているわけでございます。  大臣は、先月三十日の閣議後の記者会見で、この春闘の問題に絡めて、基本的には労使間の問題である、そして、個人的な意見ではあるというふうに断った上ですけれども景気のよいところは労働者の意欲を高めることが必要である、初めからベアゼロはよくないということで、積極的な発言をされたというふうに認識をしております。  それが関係者間で論議を呼んでいますが、私も、景気を押し上げ、特に消費が落ち込むことによって景気が上がらない、好転しないという形の中で悪循環があるわけですから、経営努力によってベースアップをできるどころは積極的に行っていくべきだというふうな基本的な認識に立っています。しかし、最終的には労使の交渉によるというふうに思っていますけれども、さきの記者会見の真意について大臣の方の御見解をお聞きしたいと思います。
  141. 永井孝信

    永井国務大臣 私のあの発言は、今御指摘がありましたように、賃金の引き上げというのはあくまで労使間で決めるものである、そういう原則を踏まえた上で申し上げたことであります。  今、景気が緩やかながら回復の兆しを見せているというときに、私の当時の記者会見で申し上げたことは、消費購買力を高めることも極めて重要な意義を持つという、そういう立場で実は申し上げたわけであります。したがって、消費購買力を高めるためには、業績のよいところは賃金の引き上げも積極的にやって、働く人の意欲を引き出すことも大事なのではないか、また、消費購買力が高まって内需拡大が図られれば、そのことは企業にもいい意味で還元してくるのではないかという立場で、私の個人的な私見として申し上げたのが実情であります。  いずれにいたしましても、現在の時点においては、労働組合側が使用者側にそれぞれ要求額を示しまして交渉に入っている段階でありますから、今後、労使間で真摯な話し合いが行われて合理的な決着を見るように求めていきたい、期待をしていきたい、こう考えております。
  142. 池田隆一

    ○池田(隆)委員 ありがとうございます。  それでは、時間もなくなりましたので、最後に一点、大臣の出身地域の阪神・淡路大震災の関係についての雇用の問題についてお尋ねをしたいと思います。  大変な被災から一年が過ぎました。この間、政府としてはいろいろな政策を進めてきましたけれども、特にこの被災地域の雇用対策についても積極的な政策推進してきていると考えています。例えば公共事業で、ある一定の割合は現地の人たちを採用するようにというようなことで、特別立法もつくってきたところでございます。しかし、現在のところ、被災した地域の雇用問題は深刻な状況にあるというふうに考えています。特にケミカルシューズ等、中小零細の失業問題というのは深刻だろうというふうに思っています。  そこで、被災地の雇用状況、さらにはこれら中小零細の失業問題の対策等について見解をお聞きしたいと思います。
  143. 征矢紀臣

    征矢政府委員 兵庫県の被災地におきます雇用失業情勢の現状につきましては、十二月現在で見ますと、新規求職者数は対前年同月比で九一・七%でございます。これに対しまして新規求人者数につきましては、同じく対前年同月比で一三一・七%と、数字の面ではかなり改善されておるところでございます。  ただし、求人と求職者との間で産業あるいは職種、年齢等のミスマッチも大きくございまして、そういう意味で、被災地におきます雇用失業情勢は依然として厳しい状況が続いているというふうに考えております。また、徐々に復興は進んでいるわけでございますが、中小企業を初めとする被災地の企業の雇用環境、これも大変厳しいというふうに考えております。  このため、被災地におきます雇用対策といたしましては、地元からの要望を踏まえまして、その要望の強かった雇用調整助成金の特例措置及び高率助成の継続、あるいは特定求職者雇用開発助成金の積極的な活用等によりまして、雇用の維持、失業の防止に努めているところでございます。特に、これらの助成金につきましては、中小企業に配慮した高率助成を行っているところでございます。  また、積極的な求人開拓あるいは就職面接会開催を含めましたきめ細かな職業相談、職業紹介の実施などによりまして、引き続き被災による離職者の雇用の促進について最大限の努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  144. 池田隆一

    ○池田(隆)委員 労働省は、特にこういう景気が悪いときには、さまざまな積極的な政策推進が求められているというふうに思います。雇用の問題については特に必要だと思います。しかし、残念ながら直接労働省労働者雇用するという立場にはありませんので、支援策、どういうふうに企業の方にそれらの活力を持たせるかということが重要な政策だろうと思いますので、今後とも雇用対策を含めまして積極的な労働行政を進められるようお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  145. 岡島正之

    岡島委員長 金田誠一君。
  146. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 大臣、御就任おめでとうございます。  未曾有の雇用情勢といいますか、大変深刻な労働状況の中にあるわけでございます。そして一方では規制緩和、かつての護送船団方式そのものが根底から批判をされて、自由競争といいますか、そういうことを着実に進めざるを得ないという状況の中でございます。  そうした中で大臣、御就任をされたわけでございますが、かねて労働問題のエキスパートでございますし、特にパート労働法の成案に当たっては大変御苦労された、こう伺っておりまして、こうした状況の中で期待するところ大でございますので、ぜひひとつよろしくお願い申し上げたいと思うわけでございます。  規制緩和によって経済を活性化させる、それは一面非常に結構なことであると思いますが、それによって自由競争のしわ寄せが弱者にばかり行ったのでは、これは一体何のための経済の活性化なのか、何のための規制緩和なのかということになりかねないと思いますので、弱者に対する手当ては規制緩和をすればするほど重要になってくる、そういうものであろうと私は思っております。  そういう中で、先般所信表明を聞かせていただきまして、読み返させていただきまして、特に男女雇用機会均等法の問題あるいはパート労働対策の問題、これらについて絞ってお聞かせをいただきたい、こう思うわけでございます。  まずパートの関係でございますが、パートタイム労働条約、ILO百七十五号条約並びに勧告が一九九四年六月二十四日に採択をされているわけでございます。その全文をちょうだいいたしまして目を通してみました。これは労、使、政府の入った機関でございますし、そういう意味では利害が相対立する構成員のもとでまとめられた、そういう大変厳しい状況の中で、ある意味では妥協の産物という側面もあるのでしょう。  それにしても日本のパート労働法に比べれば極めて先進的といいますか、パート労働者は単に労働時間が短いというだけにすぎない、それによって不当な差別を受けてはならないのであって、比例的な同等待遇ということがうたわれておるわけでございまして、大変すばらしい条約だなと私は拝読をいたしました。  そこで、大臣にお聞かせをいただきたいと思うのですが、当時日本政府はこれについて棄権をいたしております。もちろん社民党の大臣ではなかったわけでございますけれども大臣、いかがでしょうか。この条約をごらんになって、これについて今この条約をどうお考えになるか、そして、当時日本政府がとった態度をどうお考えになっておられるか、まずはここからお聞かせをいただきたいと思います。
  147. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 初めに、平成六年に我が国が棄権をした、その点についてお答えを申し上げたいと思います。  日本政府としましては、このパートタイム労働条約については、趣旨はおおむね理解できるものの、パートタイム労働者の定義でありますとかパートタイム労働者の賃金の保障等の問題がいろいろとあり、今後、我が国の国内法制との整合性、この点につきましてなお検討を要する必要がある、こういった、事情をいろいろと考えまして、やむなく棄権をしたものであるというふうに理解をしております。
  148. 永井孝信

    永井国務大臣 ただいま政府委員が説明いたしましたけれども、本条約につきましては、今後、我が国における国内法制との整合性につきなお検討を要する点もあることなどの事情から、当時、総合的に勘案して、やむなく棄権に至ったものと承知をいたしております。  しかし、ILO条約そのものを非常に重視をして労働省は今まで取り組んできておりますので、そのことも念のためにつけ加えておきたいと思います。
  149. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 当時の事情はわかりましたが、大変残念でございます。  そこで大臣、前任者がどうだったこうだったということはさておきまして、パート労働者には「比較可能なフルタイム労働者に対し与える保護と同一の保護を受けることを確保する措置をとる。」とか、「同一の方法により計算される比較可能な」労働者と同等な賃金、「比例して計算される基本賃金」を確保するとか、こういうパート労働者の権利を高らかに宣言したという条約の趣旨そのものについては、これはもう御賛同いただけると思うのですけれども、いかがなものでしょう。
  150. 永井孝信

    永井国務大臣 今御指摘がありましたけれども、このILO第百七十五号条約は、労働条件等の面で、パートタイム労働者がフルタイム労働者に与えられる保護と同一または同等の保護を受けることを確保するための措置等について規定したものと心得ています。  我が国では、パートタイム労働法等によりましてパートタイム労働者の保護についての各種の措置を講じてきているところでありますが、このILO条約の批准については、国内法制との整合性の観点からさらに慎重に検討する必要があろうかと考えております。  いずれにいたしましても、パートタイム労働者の適正な労働条件の確保が大事でありますから、そういう面から雇用管理の改善等が図られるように、総合的なパートタイム労働対策を積極的にこれからも推進してまいる決意であります。
  151. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 きのう労働省の方においでいただきまして、質問の予定項目などをお話し申し上げたのですが、その中でいろいろ伺った中では、当時日本政府が棄権をした。その棄権に当たって、この種国際条約の採択に当たって我が国がどういう態度をとるかということは、かなり高いレベルでそれなりの資料なり裏づけに基づいて態度が決まっておるもの、私は実はこう思ってお伺いしたのですけれども、当時なぜ棄権をしたかということをきちんと整理をして残した文書というのはないのだというおっしゃり方でございました。  閣議決定、閣議了解などによって棄権という態度を決めたのかと伺いましたら、そうでもないというようなのです。いろいろやりとりいたしましたが、だれの責任で日本政府の態度が決まったのかということは、どうもはっきりのみ込めなかったわけでございます。  この際、改めて教えていただきたいのです。ILO条約ばかりではないのかもしれません、ほかの条約もそうなのかもしれませんが、事このILOの百七十五号条約に当たってということで限定して聞かせていただいてもいいと思うのですけれども、これを棄権をするというふうに決定をしたのは政府のどの機関なのでしょうか。どなたの責任においてこれを棄権をするということが決定されたものなのでしょうか。
  152. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 私もその会議に出ていたわけではありませんので、つぶさにはわかりませんが、代表団がございまして、一応態度を決定するときには、国の各省の親元、それから外務省を主として訓令を仰いで決めるというスタンスになっておりますから、この条約もそうだったというふうに思っております。
  153. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 日本政府のしかるべき立場の方が、これについてはこうしろという最終判断を下すということだと思いますね。  それではこれは、例えば労働大臣決裁とか外務大臣決裁とか、何かそういうような最終的な手続になっているものなのでしょうか。主務官庁は労働省なのか外務省なのか。そして、その最終決定権者は、例えば外務大臣労働大臣ということになっているものなのか。  そして決定するに当たって、例えば先ほど冒頭の御答弁でも、国内法との関連等々があって、やむを得ず棄権に回ったのだというお話でございましたが、そうならそのような記録というのが残っているだろう、これこれこういうわけで棄権と。理由も付さないもので、ただ口頭のやりとりだけで決まるとかということではないのではないか、役所の場合は。  厚生省のエイズ研究班でも、いろいろなメモがあったというふうにこの間出てきたようでございます。これはメモとかではなくて、恐らくはきちっと何か合議書というのでしょうか決裁書というのでしょうか、何かの形で残っているのかな、あるいはこの会議でこういう決定をしたという議案とか議事録とかが残っているのかなという気がするのですが、その辺どうでしょう。
  154. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 ILOにおきまして条約が採択をされるに至る過程におきましては、各国あるいは各労使、こういったものを含めましていろいろな議論が行われて、その結果この条約は採択する、しないというようなことが決定されていくわけで、大変機動的な対応が要請される場面でございます。  したがいまして、この条約につきましても、少し前のことでありますけれども、外務省や労働省、その他関係機関で協議をしてジュネーブに電報を打って政府の対応を指示をした、こういうふうになっておると思います。
  155. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 その電報を打ったのは、だれの責任で打ったかということを先ほど来聞いているわけです。
  156. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 各省協議をいたしまして、窓口は外務省であったと思います。
  157. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 外務大臣が決めたということなんですか。
  158. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 あくまで各省で協議をしたということでございます。
  159. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 同じことばかりやりとりしていてもしようがないので、これはまたいずれかの機会に聞かせていただきたいと思います。  そこで、そういう経過の中で棄権というふうに決まったわけですけれども大臣、そのころの大臣がそういう判断をされて、大臣の判断までこれは至っていないのかもしれませんね、恐らく事務方か何かで判断されて棄権をされたということなのでしょうけれども、私は実は非常に残念に思っておるわけです。  このパート労働に関する条約、にわかに批准をするにはやはりいろいろな手続が相当必要だと思います。パート労働法との落差が余りにもあり過ぎるといいますか、国内法に比べますとかなり進んだ内容になっているということでございます。  しかし、進んでいるから無理だからあきらめようとか、これはとてもできないわいということではなくて、条約の趣旨そのものは、政府を挙げて批准をできるような状態を一日も早くつくろうという性質の条約だと僕は思っているのですよ。そういう意味では、条約の採択に当たりましても、本来であれば賛成という立場をとられて、その上で国内法のさまざまな改正だとか条件整備に努めていただけるというのが本来の姿だと思っておりまして、そういう意味では残念だなという気がいたしております。  そのときの判断は判断といたしまして、今時点では、これは再度大臣、お聞かせいただきたいと思いますが、すぐ批准をというのは難しいかもしれません。しかし、パート労働法は、ことしの十二月でしょうか、ちょうど制定から三年たつ。国会審議の経過の中でも、ILOの条約並びに勧告を踏まえて、三年後に見直しをするというやりとりがあったと伺ってございます。ことしの十二月ですから、これから準備に入るのかなと思うわけでございますけれども、この条約は、私は人類の進歩の方向だと思っております。進むべき道だと思っております。日本の現状よりはまだ大分先にはありますけれども、これに向けて努力する目標だと思っております。  そういう立場からお伺いをいたしますが、このパート労働法の見直しに当たって、この条約を踏まえて見直し作業を進めていただけるのかどうかということについてお聞かせいただきたいと思います。
  160. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 先生指摘のように、パートタイム労働法は、附則の二条におきまして、法施行後三年を経過した場合において、この法律の規定の施行状況を勘案し、必要があると認めるときは、この規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずることとされているところでございます。  労働省といたしましては、昨年でございますが、本年秋までに取りまとめる予定のパートタイム労働者総合実態調査というのをやっておりまして、その結果を踏まえて、パートタイム労働法の附則第二条に基づく検討を進めてまいりたいと考えておるわけでございます。この検討に当たりましては、先生指摘のILO百七十五号条約も参考にしていきたいというふうに考えております。
  161. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 所信の中でも、パート労働対策を総合的に進めるということでございます。そのためにも、このパート労働法の見直し、そしてこのILO条約を踏まえて、ILO条約の精神を一日も早く日本の法体系の中に取り入れていただくということでひとつ御努力をいただきたい、こう御要請申し上げておきたいと思います。  次に、男女雇用機会均等法女子差別撤廃条約に絡めましてお伺いをいたしたいと思います。  女子差別撤廃条約に基づきまして女子差別撤廃委員会というものが設置をされて、日本からは三次にわたるレポートが出されて、それに対して日本政府への最終コメントというものが出されているようでございます。  この女子差別撤廃委員会には歴代労働省婦人局長が団長ということで参加をされているようでございますが、日本政府に対する最終コメントの中では、女性が直面している間接差別に対処するためにとった措置について報告をするようにということが求められております。このレポートには間接差別ということが非常に大きなテーマとしてあらわれているわけでございますけれども、報告を求められている点についてどのように対処なされようとするのか、これについてお聞かせをいただきたいと思います。
  162. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 女子差別撤廃委員会におきましては、一昨年の一月に日本報告に対する審査が行われまして、それに対するコメントが昨年二月採択されました。先生の御指摘のコメントはその二月のものでございます。  この最終コメントにおきまして、先生おっしゃいましたように、「民間部門において女性が直面している昇進や賃金についての間接的な差別を取り扱うためにとった措置について報告すべきである。」というふうに指摘を受けております。ここでの間接差別といいますのは、委員会での議論の経過から見まして、コース別雇用管理制度のことが女子差別撤廃委員会委員先生方の念頭にあったのではないかというふうに理解をしております。  コース別雇用管理制度につきましては、本来は労働者を意欲、能力、適性等によって評価し、処遇するシステムの一形態ということで導入されてきたものでありまして、労働省におきましては、これまでも、制度本来の趣旨に沿って運用されますよう、企業に対して「コース別雇用管理の望ましいあり方」というのを事実上示しまして、指導を行ってきております。  また、平成年度から、全国婦人少年室におきまして、コース別雇用管理制度を導入しています企業、例えば金融業ですとかを中心といたしましてそういう企業を訪問し、実態を調査して、もし性によって差別をされているような場合があれば必要な指導を行ってきております。
  163. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 これは昨年でしたでしょうか一昨年でしたでしょうか、ちょっとあれですが、ある航空会社のアルバイトスチュワーデスということが問題になったことがございました。当時の運輸大臣自由民主党の亀井静香先生だったと思いますが、これは十八世紀の経営者の発想であるというようなコメントなどもされまして、ただ単純に安く使えばいいとか、アルバイトで使えばいいというものではないというお立場をとられたようでして、その後いろいろなことがあって、一定の前進をする中で解決を見たということを記憶いたしてございます。当時私は、自民党の先生がよくこういう立場で発言をしていただいたな、まさに五五年体制はもう終わったのかなという感を深くしたわけでございます。  同じスチュワーデスという業務の中にありながら、アルバイトか正規職員かという身分差別といいますか、そういう中で賃金から労働条件から相当格差が出る。業務内容自体は、同じスチュワーデスですから、安全上も何ら問題ないという発言もあったことからすれば、同じ業務内容なんだろうと思うわけでございます。恐らくスチュワーデスという職種が女性の職種だから、こういうアルバイトと正規職員という格差が出るのではないだろうか、ある意味では、これも女性職場だからあり得る間接差別の一形態ではないだろうかな、こう思ったりもしておりました。  それともう一つは、フルタイムのパートといいますか、疑似パートという言葉もあるようですけれども、そのたぐいではないだろうか。アルバイトとかパートとかという名前をつけて、実際は身分差別をしていくというものなのではないだろうか。パート労働条約の面から見ても女子差別撤廃条約の面から見ても、どちらから見てもおかしいのではないだろうか。  当時の議論では、安全面ということが非常に重視されて議論されたようですが、同等待遇、同一価値労働同一賃金という面から、あるいは女子差別撤廃という面から、あるいはパートの権利という面から、さまざまな面から見ても、労働省としてもこの種のものについては深く関心を持つ必要があるのではないだろうかな。規制緩和の中でこういうことというのはますます広がりかねないなという気がいたしておりますが、その辺のところ、前のときは労働省の発言というのは余り記憶にないものですから、御見解がございましたら簡潔にお聞かせいただきたいと思うのです。
  164. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 先生おっしゃるとおり、あのときの問題でいろいろと議論があったことは十分承知しておりますし、私どもも情報についてはいろいろ収集をさせていただきました。  そして、婦人局の中でもいろいろ議論をいたしまして、先生おっしゃるように、スチュワーデスを契約社員として採用することは、女性の職業の場を狭めたり女性差別にもつながる可能性もあるのではないかとか、それから、その当時は一年契約というようなこともございましたので、若年定年制に当たらないだろうかとか、いろいろ議論もいたしたり、事情も聴取いたしました。  その後、いろいろ社会問題化したこともあり、航空会社の方が三年後には正社員にするとかいろいろ待遇改善案を出したというようなこともありまして、一応現時点では落ちついているというような状況でございますけれども、この点につきましては労働省婦人局としても注意深く見守っていきたいというふうに思っております。
  165. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 先ほど来御答弁いただいている婦人局長ですが、こういうところでこういうことを申し上げていいのかどうかあれですが、一般的に、今は婦人という言葉遣いが女性というふうに改まっているのではないだろうかなと思っております。労働省だけが婦人局長ということのようでございますけれども、官房長官なんかも女性問題担当大臣なんということになっておるようでございます。名称変更しないというのは特別何か意味があるのでしょうか。
  166. 太田芳枝

    太田(芳)政府委員 婦人という言葉を女性という言葉に変えるという点につきましては、政府全体として原則的な同意がなされておるところでございまして、婦人局も女性局にしたらいいではないかという議論もございますし、また、そういうふうに考えたいというふうに思っておるところでございますが、もしでき得れば、できるだけ早い機会をとらえて名称変更もさせていただきたいというふうに思っております。
  167. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 わかりました。ひとつよろしくお願いをいたしたいと思います。  ILOの問題、男女雇用機会均等法、男女平等の問題をお伺いさせていただきましたが、時間もございませんで、私の方もまだちょっと欲求不満的な状況ではございますけれども、きょうのところはこの辺でとどめさせていただきたいと思います。  最後に一つだけお伺いしたいのですが、これは地元の北海道新聞なんでございます。「行革、過疎地を直撃 出先機関が相次ぎ撤退表明」という大きな見出しで、法務局、林業指導事務所、NTT、測候所、そして職安ということで、実は労働省管轄の施設が縮小なり廃となり、過密過疎が進んでいますから、過疎地を直撃しているわけなんでございます。数少ない公共の施設が町からなくなっていく、そのことによって過疎にまた拍車がかかる、雇用状況にまた深刻な影響を及ぼす、町の商店だとかいろいろなところに影響を来していく。町長さん、村長さんも深刻な状況になっておるわけなんでございます。  行革は行革で、否定をするものでも何でもございませんけれども、そういう立場からいたしますと、そこ以外にもまだ先にやるところはあるのではないのかなという気持ちも率直にいたします。  同じ労働省所管の中でも、北海道は面積も非常に広いので、一つ廃止されますと、車で何時間もかかって次の職安まで行かなければならないという状況なんでございます。もっと狭いところで、その分をどこかに押しつけろということではございませんけれども、全体の見直しの中でいろいろな工夫があるのではないかな、あるいはこの不況のどん底で、もう少し離陸してからとかいろいろな思いがあるのです。  御当地ソングになって大変恐縮でございますが、私どものところ、実は職安の縮小廃止がございまして、この辺のところ、もう少し意を配っていただくわけにいかないものかどうか、最後にお聞かせいただきたいと思うのです。
  168. 征矢紀臣

    征矢政府委員 ただいま御指摘公共職業安定所の設置につきましては、地域の人口あるいは産業活動の動向等を踏まえて、行政改革という立場で見直しを毎年行ってきているところでございますが、今回は、昨年十二月二十五日に閣議決定されました行革大綱におきまして、「行政組織については、その簡素・効率化を推進するとともに、新たな行政需要への対応を進めることとし、これに当たっては、スクラップ・アンド・ビルドによる組織の再編・合理化によることを原則とする。」とされておるところでございます。  労働省といたしましては、こういう方針を踏まえまして、公共職業安定所出先機関の整理を来年度全国で十カ所行うということとあわせまして、北海道地域につきましては、特に行政需要の多い札幌について、札幌北公共職業安定所の新設を予定しているところでございます。  これにつきましては、先生の御指摘、地元の関係者の立場からまいりますと、公共職業安定所を廃止する、整理するということにつきましては、いずれもなかなか御理解の得られにくい課題でございまして、いいよというところは一つもないわけでございますが、全体の流れの中で情勢の変化の中で対処をする、こういうことでございます。  したがいまして、これについてやめるわけにはまいりませんけれども、ただ一方、再編によって、御指摘のように地元の住民の方に対して著しく行政サービスが低下する、そういうことがないように配慮をしながら、地元の市町村とも十分お話をしながら、御理解を得ながら対処しなければならない課題であるというふうに考えております。  したがいまして、これにつきましては平成年度の実施ということでございますが、八年度というのは九年の三月末まであるわけでございまして、したがって、実際には九年三月末時点で対処をする。その間よくお話し合いをし、かつ行政サービスの低下が著しくないように、これは地元の事情もいろいろ違う面もございまして、近くに公共職業安定所がある場合ない場合、それから先生の地元は、たまたまということは恐縮ですが、二つもございまして、そういう意味で余計大変であるという特別事情もあるということも承知をいたしております。  そういうことを踏まえながら具体的な対応策を考えて、御相談をしながら対処してまいりたいというふうに思っております。
  169. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 時間でございますので、これで終わらせていただきたいと思いますが、極めて地域事情は深刻であるということだけぜひお含みをいただいて、地元とも十分善後策等を協議して対応していただければと思います。  それと、これは御答弁はいただかなくても結構なんですが、実は、何とかいい方法はないものかと思いまして、資料をいただきまして、各都道府県別の職安職員一人当たりの人口数というのを私ちょっとはじいてみました。北海道の場合、職安職員一人で八千六百人を担当している。しかし、ある小さな県では六千七百人しか担当しておらない。北海道のような広いところで八千六百人、小さなところで六千七百人、こういう格差も実はありまして、全体的に見直してもらえれば、ただ単に都道府県ごとの業務指数だけを盾に機械的にやらなくても、いい方法が見つかるのではないのかなと思ったりもしております。いずれにしても御検討いただければありがたいと思います。  時間でございますので、終わらせていただきます。ありがとうございました。
  170. 岡島正之

    岡島委員長 寺前巖君。
  171. 寺前巖

    ○寺前委員 きょうは、阪神の震災から一年少したちましたので、労働大臣はまた御出身の県でもありますので、この問題を中心にして所信に対する質問をしたいと思います。  私、この間所信表明を聞いていて、実は、公共事業就労促進法というのは唯一の新規立法として昨年労働委員会で大問題になったのに、この問題について一言もお触れにならなかったというのは、何か検討する要素があると見てそうなのか、一体どういうことだったのだろうかな、気になったのでちょっと大臣にお答えいただきたいと思います。
  172. 永井孝信

    永井国務大臣 所信表明の中では具体的に公共事業就労促進法という文言は使いませんでしたけれども、被災地における雇用の確保のためには全力を尽くしていきたいということは、あの中で申し述べたわけであります。所信表明という短い中でございますから、表現が言葉足らずでありましたけれども、御了解をいただきたいと思います。
  173. 寺前巖

    ○寺前委員 なぜあえてそういうことを言うかといいますと、実は沖縄やその他のところで四〇%の公共事業の吸収とか六〇%とか、過去にあったものについて実績はどうやということをあの法律ができるときに私が聞きましたら、四・数%だ、こう言ったものだから、それじゃ余り値打ちない法律じゃないかと気になっておったのです。  ところが、当時の浜本労働大臣はこうおっしゃっているのです。今回提案している法案については、公共事業に関して被災者が雇用される割合を決める方式は、迅速かつ簡単な方法でありますし、かつ相当の労働需要も見込まれるということがすぐれた点ではないだろうか。  実績から見ると何にもすぐれたな、そんなふうに私は感じないものだから、それじゃ実態はどうだったんだろうか、改めて私は担当の局長さんに聞きたいと思うのです。この法律によって実人員としてどれだけの雇用ができたのか、御説明いただきたい。
  174. 征矢紀臣

    征矢政府委員 公共事業就労促進法の運用実績でございますが、これで見ますと、被災失業者の求職数、これが八十七名でございます。紹介数が三十一名、延べ人員でいきますと二千九百四十三人日、これは平成八年一月末現在の累計でございますが、そういう結果になっております。
  175. 寺前巖

    ○寺前委員 三十一名という実人員で、前々の大臣ですか、法律をつくるときにおっしゃった相当の労働需要も見込まれるという点、これが相当だったんだろうか。ちょっと私は唖然とするのですよ、正直言って。  そこで、この間、先週です、私、神戸へ実態はどうなっているんだろうかと見に行きました。その前にも行ったのです、県庁にも。そうすると、朝早く行きますと、こういう現象が起こっているのです。わざわざ新しく法律までつくったのに今言ったような数字であるけれども、現地では暴力団の息のかかった手配師による違法な労働者のあっせんが横行しているのではないだろうか。そこには、数百人の労働者が手配師によって公共事業の現場に送り込まれているという姿を早朝見ることができるからです。  歩いてみたところ、JRの神戸駅の北側を高架に沿って西へ行ったところ、あるいは相生町四丁目の二十四時間食堂周辺及びそれからさらに西へ行った新開地のJRガード下周辺から南側にかけて、それが行われている。早朝五時半ごろから七時過ぎにかけて延べ数百人の労働者が集まってくるのです。周辺には手配師などのワゴン車がびっしりと詰まっている。片手に携帯電話を持って手配師が労働者に声をかけているところもありました。まとまった者から次々にワゴン車に乗せて、満杯になると現場に向かう光景。  さらに進んで、事務所もあって、その事務所の中にはカウンターを設けて、クリップボードに受け付けた労働者の名前を控え、求人を受けた事業所や現場に次々と送り出していく。さながら私設職安の様相です。夕方になれば、現場から戻った労働者とカウンターで賃金の精算をするという風景が見られます。そしてそこには、看板というのか、ぶら下がっています。一般作業員九千円から一万四千円、大工は一万五千円から二万一千円、以上の額で募集と書いてある。これらの手持ち労働者が多いために被災者の雇用吸収が進まない。  要するに、公共職安の方を通じては三十一人であったかしらぬけれども、こうやって公共事業の分野に手配師がおって、そこからワゴン車に乗せて大量に連れていくという現場を目で見ることができるのですよ。そうすると、この今やっているやり方の中に問題があるのではないか。  しかも、調べてみたら、建設省所管だけでも事業費ベースで八兆円、公共事業には国の分だけで三兆三千八百億円からの金が注ぎ込まれている。運輸省分野その他もありますよ。莫大な金を使っていながら、暴力団をはびこらせていくという役割にしかならないのではないだろうか。これはメスを入れなければならない問題だ。  労務費単価を聞いてみたら、積算の基礎、大工で二万六千八百九十一円、特殊作業員で一万九千六百二十五円、普通作業員で一万六千五百六十二円、軽作業員で一万二千七百八十五円。そこには当然のことながら、建退共の金も公共事業だから含まれているわけです。全部手配師のもとで取り上げられてしまっているだけではないですか。これが圧倒的に諸君がおる中でやられているのだから。私は、これで職安行政ありとは言えぬと思うのです。  これほど深刻な地域で、このようなままを放置していいのだろうか。いや、それは合法だとおっしゃるのかどうか。合法でないとするならば、それはメスを入れなければいかぬのやないのだろうか。労働省としておやりになっているのかどうか、これはまず担当局長に聞きましょう。どうなっているのですか。私の言っているのがうそやというのやったら、うそやと言ってください。
  176. 征矢紀臣

    征矢政府委員 労働者派遣法あるいは職業安定法に違反するいわゆる悪質なブローカーがいる場合につきましては、関係法令に照らし臨検指導を行うとともに、関係機関とも連携する等によりその排除に努めなければならないというふうに考えております。
  177. 寺前巖

    ○寺前委員 これは違法でしょう。違法ではないのはっきりしてくださいよ。違法だったら違法らしく取り締まりをやってもらわないかぬ。合法だとおっしゃるのだったら、このやり方は私は反対ですわ、暴力団養成のことになるから。そして、何も労働者雇用につけていくという方向にはなっていない。違法か違法でないのか、はっきりしてくださいよ。大臣、どう思いますか。
  178. 永井孝信

    永井国務大臣 昨年成立いたしました公共事業就労促進法、今までは震災の後片づけが中心だったのですが、それはもう大方終わりましたので、これから本格的な公共事業に入っていくというふうに考えているわけでございます。復興委員会計画でもそのようになっておりますので、公共事業就労促進法がより効果が出てまいりますように労働省としても全力で取り組んでまいります。  加えて、今先生から御指摘がございましたやみの手配師問題、実情は先生の言われたとおりだろうとは思います。まだ私自身が確認しておりませんけれども、もしそれが事実だとすれば、これは違法なやみ手配であることは間違いございません。したがって、私の方から関係省庁、とりわけ国家公安委員会に対しましても今の先生からの御指摘を率直にお伝えいたしまして、厳正に対処することにしてもらいたいと思います。  加えて労働省としては、先生も御案内かと思いますが、現地の職安の職員の皆さんは、私自身も何回か職安に行きましたけれども、本当に涙の出るような努力をしてくれているわけであります。  数少ない人員でありますけれども、一人でもたくさんの被災者の雇用ということを考えて、関係企業を駆けずり回り、あるいは職業紹介あるいは相談に乗る、本当に不眠不休と言ってもいいほど職員は頑張ってくれているということを私はこの目で確認をいたしておりますので、職安の皆さんが努力をしている片方でこういうやみ手配師が存在するとすれば、そのことによって正当な活動を一生懸命やっておる職員が報いられることのない状態になっていかないように厳正に対処するように、私の方としても対処していきたいと思います。
  179. 寺前巖

    ○寺前委員 ひとつぜひきちんとしてほしいと思います。  ところで、震災で職を失って雇用保険の失業給付を受け取った人はどれだけなのでしょうか。担当の局長からお願いします。
  180. 征矢紀臣

    征矢政府委員 被災による雇用保険の関係でございます。  被災による事業所の休業等に伴い賃金が支払われない方や、事業所の閉鎖等に伴い再雇用を約して一時的に離職した方については、失業給付の特例給付が支給されたところでございますが、この特例給付の対象者は一万四百六人となっております。  それから、特例給付のほか、震災により離職を余儀なくされたと見られる方に係る失業給付の支給を合わせた受給者数全体につきましては、約二万五千五百人となっております。
  181. 寺前巖

    ○寺前委員 二万五千五百人。  失業給付を延長させて、それで最長で三百六十日間支給されたという人が出てきます。そうすると、今日では全員がもう打ち切りという時期になっていると思うのです。それでは、打ち切りの後にどうなるのだろうか。果たして職業の保障が現実に余裕を持って進んでいるのだろうか。そこを考えなかったら今日の施策にはならないと思うのです。  そこで、この間の、被災者のうちから職安を通じて就職の決まった人というのはどれだけおりますか。
  182. 征矢紀臣

    征矢政府委員 震災から昨年三月までの被災者の新規求職者数は、兵庫県内で約二万七千六百名でございます。  震災からこれまでの被災者の就職件数でございますが、これは公共職業安定所経由の数字でございますが、昨年十二月までの就職件数は、兵庫県内で七千八百九十六人、全国の数字ですと九千三百十三人でございます。
  183. 寺前巖

    ○寺前委員 そうすると、二万五千からの人がここで失業の保険は切れてしまう。時期はちょっと違うにしたってそういうことになっている。職安を通じて就職した人は一万弱や。それなら、あとどこへ行きますのか。そこを考えなかったら雇用政策にはならぬではないか。そこを私は考えてもらいたいと思う。  そこで、この間兵庫県へ行ったときに、関係する労働者やらからずっといろいろお話を聞いていたら、こういう話が出てきたのです。雇用保険の再延長をやってくれというのが一つある。これはなかなか労働省としてはうんと言わへんでと私は言うとるのやけれども、これは必ず出てくる話です。  それからもう一つは、特別な施策をやってくれよと。それで、どういう施策があるのだ、こう聞いたら、そこで出てくるのはこれです、雇用対策法、雇対法や。  十三条では「国及び都道府県は、他の法令の規定に基づき支給するものを除くほか、労働者がその有する能力に適合する職業につくことを容易にし、及び促進するため、求職者その他の労働者又は事業主に対して、給付金を支給することができる。」という法の定めがあるじゃないか。これはかつてオイルショックのとき、二百海里規制などのときに大量雇用としてこの施策をやったことがある。これは一般会計から金を出してもらわなければならぬことになるのだ。それをやってくれてこそ、国会やってよかったなということになるじゃないか。これについてあなたどう思うのだと私、詰められた。  労働大臣、いかがですか。これ、やってみようじゃありませんか。
  184. 征矢紀臣

    征矢政府委員 特別延長給付の適用の切れた求職者の方に対する職業転換給付金制度の適用等の問題でございますが、阪神・淡路大震災の被災地域につきましては、雇用保険の受給を終了した方々に対しまして、雇用対策法に基づく一定の職業転換給付金、具体的には、公共職業安定所長の指示によりまして必要な職業訓練を受講する者に対して支給する訓練手当等の制度を活用するようにいたしているところでございます。  また、阪神・淡路大震災被災地域におきましては、被災離職者に係る特定求職者雇用開発助成金等の特例措置を平成九年一月二十二日まで一年間延長したところでございまして、こうした措置を最大限活用するとともに求職者へのきめ細かな職業相談を実施し、今後とも被災離職者の再就職促進に最大限努力してまいりたいと考えております。
  185. 寺前巖

    ○寺前委員 大臣、今言っている話わかりますか。別に難しいことない。法律の十三条の中にちゃんと何項目かありますけれども、そのトップやと思いますが、そこにかつてオイルショックや二百海里のときにやったやり方があるじゃないか。大量の雇用失業者問題が生じたときに、この手を打つんだということで一般会計から特別に手を打ったらどうだろうか。  雇対法のこの分野のお金というのは、今日もう既に出されている。平成年度のときのものを少し調べてみたら、七億四千六百六十五万三千円出ている。これは何かと聞いてみたら、障害者とかあるいはまた刑務所を出てきた人とか、そういう人のためにこの対策は組んでいる。だから、大量にこういうことが起こったかつてのオイルショックのときなどにやろうと思ったら、金を積まなければならぬことになる。何ぼ積んだか。その当時は百億の金を積んだ。今七億からだけれども、百億からの金を積んであのときに対策を組んだ。  よく住専で六千八百五十億という話が出てきますけれども、さて、あれだけの災害が起こっている地域にこの問題を研究してしかるべきじゃないだろうか。大臣、いかがですか、研究してみられたら。
  186. 永井孝信

    永井国務大臣 オイルショックのときの経緯がありまして、この雇対法の十三条の問題が今提起をされているわけでありますが、そういうオイルショックの問題と特定地域における災害という状況の違いはありますけれども、この雇対法の関係については研究はしてみたいと思います。  ただ、私もよく現地に行きますと言われるのですが、それよりも先に雇用保険法の延長給付はなぜできないのかと、まず第一番にそれが出てくるわけです。  私としても、本当はずっと永久に出せば、それは一番被災者の方にとったはいいことなんでありましょうけれども、まず就職をしてもらうということが大前提でありまして、この雇用保険も、適用者は九十日から三百日までという差がありますね、勤続年数や年齢によって違いますが。それを一律に六十日上積み給付をしてきた。  もう既にずっと以前にそれが切れてしまった人もいる、ことしの一月になって切れた人もいる、こういう状況もありますから、それを一概に現在の時点で切れようとしている人、あるいはきのう、おととい切れた人を再延長ということは、やはり公平性に欠ける問題もあるので、一律的に扱うことは極めて難しい問題であるということも私は現地でも申し上げてまいりました。  また、給付の関係と負担の関係ということがございますから、その均衡にかんがみて、今直ちにこの延長をすることは適当でないということも申し上げてまいったわけであります。  しかし、現実は失業されている方にとっては極めて深刻な問題であることは事実でありますから、とりもなおさず就職をしてもらうための努力労働省として全力を尽くす、そのことによって結果的に雇用保険の給付を受ける必要がなくなっていく、これが一番ノーマルな状態でありまして、そのことに当面は全力を挙げていきたい。  雇対法の関係については、財政上の問題もありますので、研究はさせていただきます。
  187. 寺前巖

    ○寺前委員 私、この前ここの委員会で飯田橋職安へ行ったときに、最初に学卒者の就職の相談所みたいなところへ案内してくれた。そこでこういう説明を聞いた。未就職卒業者職場体験プログラム、要するに一定の期間体験をしてもらう。何ぼ金を使っておるのやと聞いたら、平成七年で二億七千四百万円。何人の人がそれについたのだろうか。聞いてみたら、実績は東京で一件、大阪で十二件、全国的にその他を入れて合計合わせて十七件、これだけに二億七千四百万円かけている。計算どおりとはうんと差がある。ほとんどの人がそういう形で、経営者の側も参加しなければ学生の側もつかない。その予算をことしは調べてみたら三億二千九百万円、さらにふえている。  そんなところに私はけちをつけるわけじゃないけれども、細かいところまでそういう配慮の気分を持たれるのだったら、これだけの大問題のところに何で真剣に考えないのか。私は、雇対法の十三条は単なる雇用保険の延長の話じゃないので、訓練をしていく方向で新しい分野に入れていこうという方向なんだから、これは大臣のおっしゃるように積極的に検討をしてほしい。あえて御意見を申し上げたいと思う。  次に移ります。  この被災地における労災の発生というのか、労働災害の状況というのはどういうことになっているでしょうか。
  188. 松原亘子

    松原政府委員 阪神・淡路大震災の復旧工事に係る労働災害発生状況でございますけれども、残念でございますが、平成八年二月十六日現在私どもが把握しておりますところで、死亡者数が四十五名、休業四日以上の負傷者数が八百九十一名という状況になっているところでございます。
  189. 寺前巖

    ○寺前委員 私、この間、県へ行きましたときに、兵庫県全体の死亡災害の状況業種別にずっと一回聞かせてくれやといって聞かせてもらいました。そうすると全産業百三十二名だ。それは平成六年の五〇%増しだ。特に建設業は六十七人で一三九・三%増しや。建設業におけるところの死亡事故というのは物すごい広がっている。休業四日以上の負傷者数は全産業で二〇・四%増し、そして建設業では六〇・七%増しになっている。  私はあの地域におけるところの雇用の話を先ほどしたけれども、今度は災害の分野から見るならば、これまた異常な事態が生まれている、こういうことになっている。それで、そういうことについて一体労働省としてはどういうふうに調査をしておられるのか、その調査をした結果、違反の現状はどういうことになっているのか、お聞かせをいただきたいと思う。
  190. 松原亘子

    松原政府委員 先生がおっしゃいましたのは、復旧・復興工事以外も含めたすべての労働災害の発生状況の数字だというふうに思いますけれども、なぜそのように非常に大きくふえたかといいますのは、被災地域における災害復旧・復興工事に伴う労働災害が多発したということにあるわけでございます。そういうことから、私ども昨年二月以降、数次にわたりまして復旧・復興工事に対する一斉監督やパトロールを実施してきております。  特に、昨年九月末でございますけれども、二日にわたりまして兵庫労働基準局及び近隣ブロックの各労働基準局による応援体制を組みまして、延べ二百三十六人の労働基準監督官を動員し、三百八十八現場に対する一斉監督を実施いたしました。そのうちの四九%、百九十一現場におきまして労働安全衛生法の違反が認められたところでございます。  具体的な違反の内容でございますけれども、主なものを申し上げますと、墜落のおそれのある場所に手すりを設けるなどの墜落防止対策措置をとっていなかったといったものが約四一%、作業場に通じる場所や作業場内に安全な通路を設けていなかったというものが九・四%、建設機械についての安全措置等が十分に講じられていなかったものが約八%といったようなところでございました。その後、こういった違反があったところにつきましては是正を求め、すべてその後是正されたということは確認をいたしているところでございます。
  191. 寺前巖

    ○寺前委員 さっき大臣は、第一線で活動しておられる人たちの苦労というのは大変だということをおっしゃいました。私もそう思います。  そこで、今の局長さんのお話じゃございませんが、調査にお入りになったら、そうしたら五割近くが法違反が現実には存在しているという報告ですよ。そうすると、僕は、これだけの異常な状態が続いている以上は引き続き調査もしなければいかぬし、引き続き指導もしなければならないという事態が生まれる。職安は職安で、この兵庫県については特別にそういう監督官なり、あるいは職安のそういう分野の人を配置するということを強化しなければいかぬ。これはやはり異常事態なんだから、それにふさわしいことをしなかったら、やれと言ったってやれるものではないということを私は強く感ずるものです。  そこで、担当者にお聞きしたいと思うのですが、まず基準局の方です。  基準局としては、この十分な体制に入ることに人員はなっているのかなっていないのか。というのは、一方で定員削減という方向が全国的にのしかかっているから、それだけについて、まず基準局の中においては兵庫県において実質的に人がふえるのかふえないのか、そこはどうなっていますか。
  192. 松原亘子

    松原政府委員 平成年度の増員といたしまして、全国労働基準監督官四十三名認められましたけれども、そのうち六名は復旧・復興工事に対応するための増員でございまして、そういう意味では、特別に今先生指摘の被災地におけるこういう労働基準監督官が活動する必要性の高さということが認められ、今のような増員が認められたところでございます。
  193. 寺前巖

    ○寺前委員 改めてもう一回聞いておきますけれども、計算上増員があるけれども計算上減員があると、差し引きマイナスになったりゼロになったり、それでは大臣のおっしゃるような役に立たないですよ。いいですね。必ず実人員としてふえるという体制にはしますのや、そういうふうに理解してよろしいですね。
  194. 永井孝信

    永井国務大臣 昨年度もそうでありましたけれども、法律の改正などによりまして監督署もあるいは職業安定所も非常に業務が増大するということから、厳しい行政改革の中での定員削減の方針がありますけれども労働省は実人員で増加をさせてもらったわけであります。そのことから、ことしも監督官の必要性ということから特別にお願いをいたしまして、監督官の四十三名の増員が認められたわけであります。  そのうち、今局長が申し上げましたように、この災害復興工事に伴う関係として、現地兵庫県の方には六名の増員をいたしました。それだけでは足りませんので、今現実どういうことをやっておりますかというと、そういう復旧・復興工事にかかわる災害防止のために、近隣の府県からも監督官の応援を求めているわけであります。何とかその数少ない中でやりくりをして、できる限り災害防止に万全を期していきたいということで対応していることだけはひとつ御理解を願っておきたいと思います。
  195. 寺前巖

    ○寺前委員 もう時間が来たからやめますけれども、あえて実人員としてふえるんですよという理解をして帰りますけれども、よろしいですね。後からごまかしをせぬようにしておいてください。言うんだったら言ってください、あれは間違いでしたというんだったら。  あわせて、職安の方はどうなりますか。実人員としてふえますか。さっき言ったようなことを、取り締まりのことをやろうと思ったら、今のままではできませんよ。あえてそのことだけを確認して、終わらせてもらいたいと思うのです。
  196. 征矢紀臣

    征矢政府委員 職業安定行政関係職員につきましては、実人員で平成年度二十四名、全国規模でございますが、増員というふうに記憶いたしております。  それから、阪神・淡路地域の関係につきましては、昨年度臨時増員といたしまして二十四名、これは昨年とことしと二年間ということになっておりますが、増員の枠で対処いたしております。なおかつ県外からの応援体制、これにつきましては、昨年震災発生時以降非常に大変な時期がございましたが、三十名規模での応援体制ということで乗り切ってまいりまして、現在も基本的にはそういう応援体制をしいて、現地における窓口の状況やあるいは応援送り出しの事情、そういうものを勘案しながら、今後また必要に応じ見直してまいりたいというふうに考えております。
  197. 岡島正之

    岡島委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時三十七分散会