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1996-02-29 第136回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会平成八年二月二十七日(火曜日)委員 会において、設置することに決した。 二月二十八日  本分科員委員長指名で、次のとおり選任さ  れた。       相沢 英之君    越智 通雄君       保利 耕輔君    草川 昭三君       谷口 隆義君  五十嵐ふみひこ君       海江田万里君 二月二十八日  保利耕輔君委員長指名で、主査選任され  た。 ————————————————————— 平成八年二月二十九日(木曜日)     午前十時開議 出席分科員   主 査 保利 耕輔君       相沢 英之君    越智 通雄君       熊代 昭彦君    伊藤 英成君       草川 昭三君    谷口 隆義君       中村 時広君    広野ただし君     五十嵐ふみひこ君    石井 紘基君       海江田万里君    吉岡 賢治君    兼務 青山  丘君 兼務 鮫島 宗明君    兼務 冬柴 鐵三君 兼務 正森 成二君    兼務 山原健二郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 池田 行彦君         大 蔵 大 臣 久保  亘君  出席政府委員         外務省北米局長 折田 正樹君         外務省条約局長 林   暘君         大蔵大臣官房長 涌井 洋治君         大蔵大臣官房審         議官      尾原 榮夫君         大蔵大臣官房審         議官      永田 俊一君         大蔵大臣官房参         事官      河上 信彦君         大蔵省主計局次         長       伏屋 和彦君         大蔵省理財局た         ばこ塩事業審議         官       宝賀 寿男君         大蔵省銀行局保         険部長     福田  誠君         大蔵省国際金融         局長      榊原 英資君         国税庁課税部長 内野 正昭君  分科員外出席者         警察庁刑事局捜         査第二課長   栗本 英雄君         警察庁刑事局暴         力団対策部暴力         団対策第二課長 中林 英二君         防衛施設庁施設         部施設取得第二         課長      米岡 修一君         環境庁企画調整         局環境影響評価         課環境影響審査         室長      寺田 達志君         国土庁大都市圏         整備局特別整備         課長      沼生 哲男君         法務省刑事局刑         事課長     麻生 光洋君         大蔵省主計局主         計官      三國谷勝範君         大蔵省主計局主         計官      加藤 治彦君         大蔵省造幣局東         京支局長    山田 孝夫君         建設省住宅局民         間住宅課長   内田 俊一君         外務委員会調査         室長      野村 忠清君         大蔵委員会調査         室長      藤井 保憲君         予算委員会調査         室長      堀口 一郎君     ————————————— 分科員の異動 二月二十九日  辞任         補欠選任   相沢 英之君     熊代 昭彦君   谷口 隆義君     伊藤 英成君 五十嵐ふみひこ君     前原 誠司君   海江田万里君     吉岡 賢治君 同日  辞任         補欠選任   熊代 昭彦君     相沢 英之君   伊藤 英成君     広野ただし君   前原 誠司君     石井 紘基君   吉岡 賢治君     楢崎弥之助君 同日  辞任         補欠選任   広野ただし君     中村 時広君   石井 紘基君   五十嵐ふみひこ君   楢崎弥之助君     土肥 隆一君 同日  辞任         補欠選任   中村 時広君     谷口 隆義君   土肥 隆一君     海江田万里君 同日  第一分科員森成二君、山原健二郎君、第三分  科員青山丘君、第四分科員鮫島宗明君及び冬柴  鐵三君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  平成八年度一般会計予算  平成八年度特別会計予算  平成八年度政府関係機関予算  (外務省及び大蔵省所管)      ————◇—————
  2. 保利耕輔

    保利主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  私が本分科会主査を務めることになりました。何とぞよろしくお願い申し上げます。  本分科会は、法務省外務省及び大蔵省所管について審査を行うことになっております。  なお、各省所管事項説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。  平成八年度一般会計予算平成八年度特別会計予算及び平成八年度政府関係機関予算外務省所管について、政府から説明を聴取いたします。池田外務大臣
  3. 池田行彦

    池田国務大臣 平成八年度外務省所管一般会計予算案概要について御説明申し上げます。  外務省予算総額は、七千五百五十八億三百万円であり、これを平成七年度予算と比較しますと、三百十億二千百万円の増加であり、四・三%の伸びとなっております。  今日の国際社会においては、冷戦終結後の平和と繁栄を確保することを目指し、新たな枠組みを確立するためのたゆみない努力が続けられておりますが、政治経済両面での課題は山積しており、依然として不透明で不確実な状況が続いております。核兵器の拡散の危険は依然大きいものがあり、また、主要国経済は困難を抱えたままであります。さらに、開発途上国の貧困の問題は一層深刻化しております。加うるに、地球環境、麻薬、難民、人口、エイズといった地球的規模の問題に取り組まなければなりません。このような状況の中で、我が国としても一層積極的で創造性豊かな役割を果たす必要があります。  このような観点から、我が国外交に課せられた使命は極めて重大であり、平成八年度においては、その足腰ともいうべき外交実施体制拡充国際貢献策充実強化の二点を重点事項として、予算強化拡充を図っております。  まず、外交実施体制拡充に関する予算について申し上げます。  定員の増強につきましては、平成八年度において百六十名の増員を得て、外務省政令定員合計五千五名といたしております。また、機構面では、在済州総領事館新設することなどを予定しております。さらに、在外公館機能強化のために、在外公館施設等強化及び海外邦人安全対策危機管理体制強化のための経費三百六十五億円を計上しております。  加えて、外交政策策定の基盤となる情勢判断を的確に行うために不可欠な情報通信機能強化に要する経費として六十八億円を計上しております。  次に、国際貢献策充実強化に関する予算について申し上げます。  国際貢献策充実強化の三つの柱は、政府開発援助拡充、平和・軍縮のための協力、そして国際文化交流強化であります。  まず、平成八年度政府開発援助(ODA)につきましては、一般会計予算において、政府全体で対前年度比三・五%の増額を図っております。このうち、外務省予算においては、無償資金協力予算を対前年度比一・七%増の二千六百一億円計上しておりますが、その内訳は、経済開発等援助費が二千百六十六億円、食糧増産等援助費が四百三十五億円であります。さらに、人的協力拡充のために技術協力予算拡充に努め、なかんずく国際協力事業団事業費は対前年度比三・八%増の千七百五十七億円を計上しているほか、国際協力事業団定員につき十九名の純増を図るなど、援助実施体制強化に努めております。  次に、平和・軍縮のための協力でありますが、新しい世界平和の秩序の構築のための国際協力を進めることが必要との認識に立ち、国連の平和維持活動を初めとする平和及び難民人道分野での国際機関などによる活動の支援のため、また地球環境問題、あるいは麻薬問題といった国境を越えて国際社会影響を及ぼす地球的規模の問題に取り組むため、国際機関を通じて積極的貢献を行うべく、総額三百九十五億円を計上しております。  また、本年は日ソ共同宣言による国交回復後四十周年に当たり、北方領土問題解決のための環境整備として約三億九千万円を計上しております。  次に、国際文化交流強化でありますが、各国との知的・文化的交流を図り、異なる文化間の相互交流を促進するため百八十七億円を計上し、国際交流基金事業拡充強化及び文化協力推進等を図ることとしております。  以上が外務省関係予算概要であります。よろしく御審議のほどお願い申し上げます。  なお、時間の関係もございますので、詳細につきましては、お手元に「国会に対する予算説明」を配付させていただきましたので、主査におかれまして、これが会議録に掲載されますようお取り計らいをお願い申し上げます。
  4. 保利耕輔

    保利主査 この際、お諮りいたします。  ただいま池田外務大臣から申し出がありましたとおり、外務省所管関係予算概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 保利耕輔

    保利主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————    外務省所管平成八年度予算案説明  外務省所管平成八年度予算案について大要を御説明いたします。  予算総額は七千五百五十八億二百五十万三千円で、これを主要経費別に区分いたしますと、経済協力費五千四百六十六億二千百八十万三千円、エネルギー対策費四十六億八千九百八十七万八千円、その他の事項経費二千四十四億九千八十二万二千円であります。また「組織別」に大別いたしますと、外務本省六千四百六十七億六千七百七万五千円、在外公館一千九十億三千五百四十二万八千円であります。  只今その内容について御説明いたします。    (組織外務本省  第一 外務本省一般行政に必要な経費三百十四億八千九百二十四万五千円は、「外務省設置法」に基づく所掌事務のうち本省内部部局及び外務省研修所において所掌する一般事務を処理するために必要な職員一千九百五十四名の人件費及び事務費等、並びに審議会運営経費であります。  第二 外交運営充実に必要な経費九十六億二千五百二十六万三千円は、諸外国との外交交渉により幾多の懸案の解決をはかり、また、各種条約協定締結する必要がありますが、これらの交渉我が国に有利に展開させるため本省において必要な情報収集費等であります。  第三 情報啓発事業及び国際文化事業実施等に必要な経費百九十七億二千九百八十八万三千円は、国際情勢に関する国内啓発海外に対する本邦事情の紹介及び文化交流事業等を通じて国際間の相互理解を深めるため必要な経費並びに国際交流基金補助金百四十九億七千百七十一万九千円及び啓発宣伝事業等委託費八億二千七百七十九万二千円等であります。  第四 海外渡航関係事務処理に必要な経費百二十五億一千五百十二万六千円は、「旅券法」に基づく旅券発給等海外渡航事務を処理するため必要な経費であります。  第五 諸外国に関する外交政策樹立等に必要な経費五十八億九千八百九十七万二千円は、アジア、北米、中南米、欧州、大洋州、中近東、アフリカ諸国に関する外交政策企画立案及びその実施総合調整を行うため必要な経費財団法人交流協会補助金十九億三千四百十九万五千円、財団法人日本国際問題研究所補助金六億五千六百八万一千円、社団法人北方領土復帰期成同盟補助金五千四百十三万七千円、社団法人国際協力会等補助金一億五千六百九十一万円、インドシナ難民等救援業務委託費八億二千三百四十八万三千円であります。  第六 国際経済情勢調査及び通商交渉準備等に必要な経費二億八千百八十三万円は、国際経済に関する基礎的資料を広範かつ組織的に収集し、これに基づいて国際経済を的確に把握するための調査及び通商交渉を行う際の準備等に必要な経費であります。  第七 条約締結及び条約集編集等に必要な経費五千四百二十万七千円は、国際条約締結及び加入に関する事務処理並びに条約集編集及び先例法規等調査研究に必要な事務費であります。  第八 国際協力に必要な経費二十三億六百十一万九千円は、国際連合等国際機関との連絡、その活動調査研究等に必要な経費及び各種国際会議我が国代表を派遣し、また、本邦国際会議を開催するため必要な経費財団法人日本国際連合協会等補助金四千五百九十七万三千円であります。  第九 外務本省施設整備に必要な経費十四億六千九百五十万九千円は、外務本省庁舎等施設整備に必要な経費であります。  第十 経済技術協力に必要な経費六十四億二千三百九十九万九千円は、海外との経済技術協力に関する企画立案及びその実施総合調整並びに技術協力事業に要する経費地方公共団体等に対する補助金三十三億六千六百九十二万七千円等であります。  第十一 経済開発等援助に必要な経費二千六百三億一千二百三十二万一千円は、発展途上国経済開発等のために行う援助及び海外における災害等に対処して行う緊急援助に必要な経費であります。  第十二 経済協力に係る国際分担金等支払に必要な経費一千四十二億二百六十万三千円は、我が国が加盟している経済協力に係る各種国際機関に対する分担金及び拠出金支払うため必要な経費であります。  第十三 国際原子力機関分担金等支払に必要な経費四十六億八千九百八十七万八千円は、我が国が加盟している国際原子力機関に対する分担金及び拠出金支払うため必要な経費であります。  第十四 国際分担金等支払に必要な経費百二十億八千五百二十四万円は、我が国が加盟している各種国際機関に対する分担金及び拠出金支払うため必要な経費であります。  第十五 国際協力事業団交付金に必要な経費一千七百二十億一千六百八十八万円は、国際協力事業団の行う技術協力事業青年海外協力活動事業及び海外移住事業等に要する経費の同事業団に対する交付に必要な経費であります。  第十六 国際協力事業団出資に必要な経費三十六億六千六百万円は、国際協力事業団の行う施設取得等に要する資金に充てるための同事業団に対する出資に必要な経費であります。    (組織在外公館  第一 在外公館事務運営等に必要な経費七百六十九億四千百六十八万二千円は、既設公館百七十六館六代表部平成八年度中に新設予定の在済州総領事館設置のため新たに必要となった職員並びに既設公館職員増加合計三千五十四名の人件費及び事務費等であります。  第二 外交運営充実に必要な経費百五十五億七千六百二万八千円は、諸外国との外交交渉我が国に有利な展開を期するため在外公館において必要な情報収集等であります。  第三 対外宣伝及び国際文化事業実施等に必要な経費三十三億四千九百一万九千円は、我が国と諸外国との親善等に寄与するため、我が国政治経済及び文化等の実情を組織的に諸外国に紹介するとともに、国際文化交流推進及び海外子女教育を行うため必要な経費であります。  第四 自由貿易体制維持強化に必要な経費二億八千三百七十七万八千円は、自由貿易体制維持強化のための諸外国における啓発宣伝運動実施する等のため必要な経費であります。  第五 在外公館施設整備に必要な経費百二十八億八千四百九十二万一千円は、在ガーナ大使館事務所・公邸新営工事(第一期工事)、在上海総領事館事務所営工事(第一期工事)、在ドイツ大使館事務所新営用基本設計、その他関連経費であります。  以上が只今上程されております外務省所管平成八年度予算大要であります。  慎重御審議のほどをお願い申し上げます。     —————————————
  6. 保利耕輔

    保利主査 以上をもちまして外務省所管についての説明は終わりました。     —————————————
  7. 保利耕輔

    保利主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。正森成二君。
  8. 正森成二

    ○正森分科員 私は、分科会でもございますので、岩国基地の問題について質問をさせていただきます。  米軍岩国基地は、市の中心部にあり、中心平野部の二三%、約五・七四平方キロメートルを占めております。市民生活経済活動は、基地によって東と南地域に分断されるという状況であります。で、御多分に漏れず、凶悪犯罪が毎年発生しておりまして、九三年までの十年間で、米軍人などによる犯罪件数は、凶悪犯十一件十三人、粗暴犯二十一件十三人、盗犯百二十八件五十五人、知能犯二人、そのほか八件七人の犯罪がありました。交通事故も九百一件発生し、死者一人を含めて百二十人の死傷者が出ております。また、所属機事故は二十年間で八十六件起きております。  ところが、この岩国基地について、沖合を埋め立てまして、約二百十五ヘクタールだそうですが、そこへ滑走路シーバースヘリポートなどを建設するというように言われております。  まず、関係省庁に伺いますが、その計画や経緯、予算等について御説明を願います。
  9. 米岡修一

    米岡説明員 今委員から御指摘のありました事項について御説明申し上げたいと思います。  岩国飛行場につきましては、飛行場の北側の進入表面下石油コンビナート等工場群がございまして、運用上及び安全の確保上大きな制約を受けておりまして、また市街地が近接し、騒音問題が生じているということがございまして、昭和四十六年以降、地元の山口県、岩国市等から岩国基地沖合移設を強く要望されております。  この地元要望を踏まえまして、当庁としましても、平成四年に、同飛行場運用上、安全上及び騒音上の問題を解決し、米軍駐留を円滑にするとともに、同飛行場安定的使用を図るため、同飛行場の東側の海面を埋め立てまして、現有と同等の滑走路を千メートル程度沖合移設することとしまして、平成五年度から事業推進しているところでございます。  この事業に係る予算額につきましては、昭和四十八年度から平成四年度までの間におきましては各種調査を行いましたが、それに約二十五億円、移設決定後の平成五年度から平成七年度までの工事準備期間におきましては、ボーリング調査環境影響評価書等の作成に約十二億円、さらに、平成八年度の予算案におきましては、工事等に要する経費として約百四億円、これは契約ベースでございますが、これを計上しております。
  10. 正森成二

    ○正森分科員 平成八年度までは報告されましたが、ほぼ十年計画というように言われておるようですが、総額幾らになりますか。
  11. 米岡修一

    米岡説明員 工事期間につきましては、現段階で十年程度を見込んでおりまして、工事に要する経費につきましては、平成八年度案の予算単価で約千六百億円を見込んでおります。
  12. 正森成二

    ○正森分科員 千六百億円を見込んでいるようですが、これは防衛予算のどこから出るのですか。
  13. 米岡修一

    米岡説明員 この支出につきましては、提供施設整備費といいますか、そちらによって支出しております。
  14. 正森成二

    ○正森分科員 それは、一般に言われている思いやり予算と言われる項目ではないのですか。
  15. 米岡修一

    米岡説明員 この点につきましては、委員指摘のとおり、いわゆる思いやり予算というもので支出されております。
  16. 正森成二

    ○正森分科員 そこで、外務大臣に伺います。  安保条約に基づく地位協定の二十四条では、米軍は、ベースといいますか、基地土地そのものについては提供を受けるけれども施設については米側負担ということになっているはずであります。  その後、大平内閣の時分からリロケーションなどについて負担するという、我々からいえば拡張解釈が行われました。ところが、本件はリロケーションでもない。今まで使っていた滑走路は返還されるのかといえば、やはり返還されないで誘導路等についてそのまま使う。しかも今度の滑走路沖合へ移転して、今まで四十六メートル幅だったのが六十メートル幅に拡張するとか、あるいはそれに伴ってシーバースヘリポートなどを建設するとか、全く新しい基地の建設という意味を持っております。そういうものに国民の税金を今後千六百億円も注ぎ込んで建設するということは、安保条約地位協定にも違反する、問題のある支出じゃないですか、外務大臣
  17. 池田行彦

    池田国務大臣 先ほど防衛施設庁の方から御説明いたしましたように、岩国の空港につきましては、現在約十年間の計画でその移設を進めているところでございますが、私は、これはやはり安保条約に基づきまして米軍我が国の安全を守っていく、そういう義務を果たしていく上で必要なものとして提供しておるのだと思います。そして、今、正森委員指摘のところは、地位協定二十四条によれば、これは施設そのものについては米側負担である、そういうことでなかったか、その後リロケーションについては認めるということになっているが、それにも当たらないのではないか、そういう御趣旨の質問であると思います。  しかし、詳細は政府委員から答弁させますけれども、岩国におきます今の移設工事というのは、現在の安保条約地位協定、またいろいろな取り決めがございますが、そういった法体系の中できちんと米軍駐留を、そうしてその米軍我が国防衛のために果たす役割、そのために必要なものであり、法律的にも条約上も日本がその経費負担するということについて正当なる根拠を有するもの、このように考えている次第でございます。
  18. 正森成二

    ○正森分科員 政府側根拠を有するものという結論だけは強調されましたが、根拠を有するものではないと言わなければなりません。  私は、現地へ行って見てまいりましたが、リロケーションというからには、今までの滑走路あるいはその周辺部分が返還される、あるいは民用地に転換されるということであれば、これは、我々はリロケーションそのもの思いやり予算を投入することには異議を持っておりますが、それでもなお言えるかもしれませんが、今回の場合は、米側はあんなこと言っていないのですよ。だから、二百十五ヘクタールの明白な基地拡張である、新設であって、それに対して思いやり予算を投入するというのは何事かという声が起こっているわけであります。  そこで、委員長も言われましたように、時間が短いのですから次の論点に移って、時間があればまた申し上げたいと思います。  問題は、沖縄普天間基地、この機能の一部をここへ移して、沖縄駐留海兵隊施設のうち、いろいろあるようですが、主として輸送部門をここへ移転させるということが新聞紙上で出ております。  具体的に申し上げますと、沖縄には輸送部隊がいるようですが、航空機ですね、KC130でしたか、それを持ってくる。ヘリコプターも持ってこようと思ったけれども、これは海兵隊の訓練にとってどうしても沖縄に置いておかなければならないということなども報道されておりますが、そういう点との関連で言われているんですね。その点については、総理クリントン大統領との会談がこの間あり、四月十八日以降行われるようですが、どうなっておりますか。
  19. 池田行彦

    池田国務大臣 現在、沖縄における提供施設・区域の整理統合・縮小につきまして鋭意検討中でございまして、今委員指摘のような報道があったのも承知しております。そしてまた、先般サンタモニカで行われました橋本総理クリントン大統領の会談の中において普天間基地に言及がされたということも、今委員指摘のとおりでございます。  しかしながら、この会談における言及の仕方というのは、日米安保体制が非常に大切である、しかし、それを有効に機能させていくためにも、やはり沖縄を含める基地について住民の方々の十分な御理解も大切である。そういった中で、日米協力して沖縄基地の問題に真剣に取り組んでいこう、その際に、沖縄からいろいろな御要望が寄せられているが、その御要望の中の例示として例えば普天間ということがあったわけでございまして、そのことが、あの会談において普天間をこれからどうするということに結びついたということは全くございません。  それから、現実に現在の作業の様子から申しましても、今御承知の特別行動委員会、SACOといいますのをつくりまして、日米協力して鋭意作業に取り組んでおりますけれども、今普天間も含めまして、個別のケースについてどうするこうするといったことは申し上げるまでの段階には至っておりません。  いずれにいたしましても、この秋までに具体的な成果を得るということ、そしてその過程における大きな節目である四月のクリントン大統領訪日の時期に向かって精力的に作業を進めていく、こういうことでございます。
  20. 正森成二

    ○正森分科員 普天間には、輸送機C12が二機とKC130十二機が配備されていて、今、当面巷間マスコミ等で言われているのは、これを岩国に移転させるということが出ているわけですが、その移転については、まだ決定的な段階ではないという答弁がありました。  そこで伺いたいと思うのですが、もともと岩国には海兵隊基地があります。それから、今移転をマスコミ等で言われている沖縄の部隊も海兵隊の部隊であります。そこで、海兵隊役割について伺いたいと思うのですが、日米安保条約上、海兵隊は、安保条約の五条、六条にかんがみて、どういう役割を果たしているのですか。
  21. 池田行彦

    池田国務大臣 現在、我が国に、沖縄も含めまして大体四万七千という水準の米軍駐留しております。実員は異動しますけれども、定員的に考えますとそういうことになっております。  この四万七千の駐留米軍というのは、それは全体としまして、また、そのほかの米国側におきますいろいろな備えとあわせまして、安保条約上米国が果たさなくてはならない義務、すなわち我が国防衛と、それからまた極東地域の平和、安定を守っていく、そういった条約上の米国の役割、義務というものを果たしていくために必要なものとして駐留しておるわけでございます。  したがいまして、その中のどの部隊がどうであるこうであるということではなくて、米側におきまして今我が国をめぐるいろいろな安全保障環境というものを考え、また、軍の運用その他の点もいろいろ勘案いたしまして、このような組み合わせで置いておるわけでございまして、海兵隊について、ましてやその中の、岩国あるいは普天間に駐留するものがどういう役割ということは、これは個別に引き出して論議するのは必ずしも適当ではないと考える次第でございます。
  22. 正森成二

    ○正森分科員 今の答弁は、米軍米側あるいは海兵隊全体として見るべきで、個々の普天間あるいは岩国の一部の部隊、あるいは基地を取り出して見るべきではないという趣旨に承りました。  それでは、海兵隊がどういう役割を持っているかについて、ここに米側の最高責任者の文書があります。これは、米海軍作戦本部長J・M・ボーダ大将というのが、米海軍のためのプログラムガイド「フォース二〇〇一」に掲載した「二十一世紀に向けた海軍の発展」と題する論文であります。これは、「ディベロッピング ネイブルフォーシズ フォー ザ トゥエンティーファースト センチュリー」こういう題です。  それを見ますと、こう言っているのです。私は英語がそうできないから、日本語で読ませていただきますが、危機が発生するとき、前方展開海軍部隊は、最初のタイムリーな危機対処と拡大を抑制するための手段を与える。もし紛争が続くなら、米海軍部隊は、一連の海軍部隊や米国本土から展開され、支援され、維持される陸上基地部隊にとって必要である強制介入及び防護のための基本的手段を提供する。我が在日——我がというのはアメリカの海軍大将が言っているのですね。アワーという言葉を使っております。我が在日第七艦隊前方展開海軍部隊は、軍事行動の中でこの原則の明確な具体例を提供する。米海軍インディペンデンス戦闘群、これは横須賀に基地を置いております。米海軍ベローウッド水陸両用即応群、これはたしか佐世保であります。そして、第三海兵遠征軍は、我々の国家利益、我々の友好国、国際的シーレーンを守るために、米国海岸から遠く離れた日本に前方配置されている、こう言っております。  つまり第三海兵遠征軍は、アメリカの国家利益、アメリカの友好国、これは日本が入っていると言われるかもしれませんが、この文脈では、むしろ日本以外の友好国を支援するために、遠く離れた日本に前方展開されているという趣旨で書いているのです、国際的シーレーンと。  そしてその次に、西太平洋、インド洋あるいは地中海をパトロールしながら、海軍の目に見える存在は我々の国家的決意と地球的リーダーシップを誇示する、こう言っております。  だから、我が国防衛とか極東の平和と安全に寄与するなどというのからはるかに超えて、インド洋や地中海をパトロールしながら、アメリカの国家的決意と地球的リーダーシップを誇示するために存在する部隊が第三海兵遠征軍であります。だから、そういうものが我が国の平和と安全というようなものを中心的任務としているかと言えば、大いに疑問があるというように言わなければなりません。  それからさらに、それが実際上どう運用されているかは、池田外務大臣は、我が党の志位書記局長予算委員会質問されましたから、そのときにはごく一部を引用されましたので、私がもう少し詳しく引用します。  引用するのは、アメリカの海兵隊の事実上の機関誌「マリーンズ」という書物の一九九四年十月号であります。ここではこう言っているのですね。  これは沖縄海兵隊について言っているのですが、琉球列島の一部を占める沖縄島は、アメリカの海兵隊唯一の前進配備部隊である第三海兵遠征軍の根拠地である。沖縄では、海兵隊はジャングル戦争の訓練を積むことができ、そして、ここを本拠に日本以外の太平洋の国々に展開することができるのである。予算委員会でも言われましたが、ディプロイという言葉を使っておりますから、展開というのが普通使われている用語であろうと思います。  「ここ沖縄基地を持っている最大の利点は、将来不測事態が発生するであろう地域と同様の地域で訓練を行うことができる点にある」、こう言っております。つまり、自分が出かけていくところと同じ状況の中で訓練をすることができるのだ。  「前進配備されている第三海兵遠征軍は、海兵隊の十字路と考えられている。」十字路というのは、だれもが通る通路、こういう意味であります。「他の二つの海兵遠征軍とは違って、第三海兵遠征軍は、他の連隊から派出される大隊によって構成されている。それぞれの大隊は、部隊展開計画に基づいて、ここで六カ月を過ごす。」  いいですか。つまり、沖縄の第三海兵遠征軍は、独自の編成ではなしに、アメリカ国内にいる第一、第二海兵遠征軍から大隊隊員に引っこ抜いて、全部沖縄へ行って、そして訓練を受けるというようになっておる。だから六カ月間を過ごすんだ。  ここで訓練を受ける地上兵力は、しばらくすると中部訓練場や北部訓練場に習熟する。中部訓練場には、都市型戦闘訓練施設、射撃場及び演習場がある。島の北端にある北部訓練場には、約八十平方キロメートルの、時として人の通過をも許さないうっそうと茂るジャングルに覆われた荒れた地形がある。第三海兵遠征軍の演習場のうちでも、北部演習場は、宝冠に例えるならその宝石に当たる。「その地形は第三海兵遠征軍が責任をもつ地域——温度・湿度が高く、通りぬけることが困難なジャングルが多い東南アジアを含む地域にそっくりである。」こう言って褒めたたえているのですね。  つまり、第三海兵遠征軍というのは、特に今主力は沖縄におりますが、その沖縄におるというのは、何も沖縄を含む日本防衛するためじゃなしに、米本土にもいる海兵隊全体のかけがえのない訓練場で、海兵隊全員が通過する十字路として、訓練場として使われているんだ、こう言っているのです。だからこれは、我が国の平和と安全とか極東の平和と安全じゃなしに、アメリカ全体の国家利益、アメリカ全体が持っている遠征軍、言葉を砕いて言えば殴り込み部隊と言われておりますが、その訓練のために、宝冠に例えれば宝石に当たる、そういう地位を占めているんだという位置づけじゃないですか。それでは日米安保条約による存在目的から大きく離れてしまっている部隊である。その部隊の一部が今岩国に来ようとしているということで、非常に問題になっているのです。  こう言っておりますよ、また別のところで。ここでは、文句を言うことはないのだけれども、五十口径の重機関銃が撃てないのだけが残念だ。なぜだか知っていますか。五十口径の重機関銃というと遠くへ飛ぶから、沖縄の北部演習場だったら幅が狭いから、ひょいと外へ出たら困るというので、これだけは制限されている、これが残念だという意味のことを言った上で、射撃訓練の不足は本土の富士演習場で埋め合わされる。富士演習場では五十口径重機関銃から対戦車誘導ミサイルを含む海兵隊のすべての火器の射撃が実施できる。部隊開発計画に参加する大隊は富士演習場に最大二カ月いることができる、だから、米海兵隊全体で六カ月間は沖縄基地へ取り込んでジャングル戦その他の訓練をする。都市型の戦闘も訓練する。しかし実弾射撃については、地域の広さの関係から撃てない点があるから、それは全部富士演習場へ行く。我が国の平和と安全などと直接関係がないじゃないですか。全体のアメリカの国益のためにいるのじゃないですか。  しかも、こう言っていますよ。我々はここで戦った。この場所は教育の場でもある。我々は古い戦跡をめぐり、現代の戦争でどのように戦い、どのように勝利するかを目の前に見ることができる。海兵隊員がこのような機会に恵まれる場所はほかにはない、こう言って自慢たらしく書いているのです。ですから沖縄海兵隊というのは、そうだそうだ、ここで五十年前に我々は戦って勝って、ここを分捕って占領したんだ、そういう教育を受けながらやっているから、占領の時代と同じように、十一歳の少女に暴行を加えるというような心境になっていくのです。  そんな部隊を、思いやり予算を使って千六百億円もかけて岩国に持ってくるなんというのは、まさに国民の感情から大きくかけ離れたものだ。それでなくても財政危機で、今でも二百四十二兆円国債を発行する。十年たてばそれが四百八十四兆円になると大蔵省は言っております。それなのにこういう大金を注ぎ込むなんというのはもってのほかじゃないかということを申し上げたい。  最後に、そろそろ時間が来ましたので、環境庁、岩国にこういうものを持ってくると……
  23. 池田行彦

    池田国務大臣 ただいま正森委員からいろいろお話ございましたけれども、時間の関係もございますので、簡潔に申し上げさせていただきます。  私は、駐日米軍が、海兵隊も含めまして、やはり我が国の安全を確保するための抑止力として働いているということ、また、もし日本に危機的な状況が発生いたしましたときには、自衛隊とともに共同対処して我が国を守る米軍の一部としての役割を果たす、これは間違いない、こう思っております。  それから、アメリカの利益のためじゃないかというお話がございましたけれども、やはり私は基本的に我が国の利益を守るためにだと思います。しかし、御承知のとおり、日米安保条約をアメリカが締結しておりますのは、やはりアメリカとしても、日本を守り、そしてまたアジア太平洋地域の安定を維持していくということがアメリカ自身の国益の観点からも大切である、そういうことがあるというのは委員も御理解いただいておると思う次第でございます。  それから第三点といたしまして、十字路とかいろいろなお話がございましたけれども、私は、先ほど申しましたような安保条約の目的を守るといった見地から駐留している米軍でございますけれども、その軍隊がいろいろな形で移動するということは、これは従来から認められておることだということは申し上げたいと思います。  そして最後に御指摘になりました沖縄という古い戦場でいろいろやっている、だからこんな事件が起きるんだということでございますけれども、それは私は、やはり米国も、日本を守るということが大切なんだ、それは米国にとっても大切だということを海兵隊においても教育しているのだと思いますし、そういった気持ちを持ってぜひやってほしいものだと思います。  実は昨日も、太平洋軍司令長官でございますプルーアー提督ともお話いたしましたけれども、その中でも、昨年の沖縄における大変不幸な痛ましい事件についても申し上げまして、くれぐれも米軍の厳正なる規律の確保のためには意を用いていただきたいということを強く申し入れ、プルーアー司令長官、さらに御同席なさいましたモンデール米大使も、その点につきましてはさらに努力を重ねていくということを確約していただいたところでございます。
  24. 正森成二

    ○正森分科員 しかし、ボーダ大将の論文を見ますと、ツー・プロテクト・アワー・ナショナル・インタレストというのを真っ先に掲げていますよ。安保条約では、日本の平和と安全、極東の平和と安全に寄与するということで、アメリカのナショナル・インタレストを守るなんということは書いていないのです。しかし、今やそれがもうトップに出てきているのだということを申し上げておきたいと思います。  最後に、時間が数分になりましたので、環境庁に来ていただいておりますので、今度の岩国計画によりますと、ちょうど町の中心部にある愛宕山、百二十三メートルぐらいの標高があるそうですが、それを五十メートルぐらいに土をとってならして、その土で埋め立てるというようになっています。そうしますと、これは太平洋側から来る風をこの山が冷やして非常にいい温度関係にしていたり、保水能力があったのに、洪水の被害がないか、八カ所に調整池をつくるから水害の心配はないなどと市と県は言っておりますが、それだけにとどまるんだろうかということがある上に、きのう通告をしておきましたが、埋立地には、干潟が四十二ヘクタール消滅します。それから藻場が四十一ヘクタール消滅します。  これはそれぞれ広島湾全体の一割以上、あるいは六分の一を占めております。これは魚介類や鳥類の生態系を守るために重要な干潟、魚介類の産卵、生育の場となっている藻場、どちらも瀬戸内法で保全が義務づけられているはずであります。また、時間の関係で多くは申しませんけれども、ここに持ってまいりましたが、瀬戸内海環境保全特別措置法の第十三条第一項等に基づく基本方針などがありますが、そこの自然環境や水産資源保全上の意見というのから見ても慎重の上にも慎重にしなければならない水域を二百十五ヘクタールも埋め立てるということになるんじゃないですか。
  25. 寺田達志

    ○寺田説明員 御説明申し上げます。  御指摘のございました岩国基地沖合移設事業、これにつきましては、面積五十ヘクタールを超える埋め立てということでございますので、公有水面埋立法上の定めによりまして、公有水面埋立法上の主務大臣でございます建設大臣から、埋め立てに当たりまして環境庁長官が意見を求められるという手続が予定されておるところでございます。  現在まだ、私ども環境庁といたしましては、建設大臣から意見照会を受けておりません。意見照会を受けた際には、いわゆる環境影響評価の結果も添えまして意見照会がなされるわけでございますので、その段階で私どもとしては慎重に審査の上、必要な意見を述べるということで、まだこの事業について個別の環境影響等についてどう判断するかというお答えはできないという状況でございますので、御理解をちょうだいいたしたいと思います。
  26. 正森成二

    ○正森分科員 終わりますが、環境についてまだ調べていないということですが、地元では、愛宕山の問題についても、あるいは水面の埋め立てについても非常な心配が起こっております。安保条約上の問題だけでなしに、そういう生活環境の問題についても十分に住民を納得させるような措置をとっていただきたいということを申し上げて、質問を終わらせていただきます。
  27. 保利耕輔

    保利主査 これにて正森成二君の質疑は終了いたしました。  次に、山原健二郎君。
  28. 山原健二郎

    ○山原分科員 米軍機の低空飛行問題について質問いたしたいと思います。  一昨年の十月に低空飛行訓練中の米軍機が高知県の早明浦ダムの上流に墜落した事故につきまして、昨年も質問をしたのですが、この事故に関する米側調査報告書について、外務省は、事故後の十一月の外務委員会で、「米側調査中でございまして、それがはっきりいたしまして結論が出たという段階におきまして、私どもは可能な範囲でできるだけこれを公表するというつもりでおります。」というふうに北米局長が答弁しております。  しかし、私どもが再三この報告書提出を要求したにもかかわりませずいまだに提出をされていませんが、これはなぜ提出できないのか、最初に伺っておきます。
  29. 折田正樹

    ○折田政府委員 本件事故につきまして、まだ米側より正式に報告書をいただいていないわけでございます。私どもは、先ほど委員が言われた、私の前の北米局長でございますが、その趣旨を踏まえまして、可能なものはできる限り早急に公表することが好ましいとの考え方に立って、引き続き米側と調整してまいりたいというふうに思います。
  30. 山原健二郎

    ○山原分科員 この報告書がまとめられていることははっきりしているわけですね。それがどうして外務省で正式に入手できないのか、私はどうしてもわかりませんのでね。  我が党はワシントンで米国の情報公開手続に基づいて資料提出を求めまして、報告書の中心部分のレポートを入手しております。これがそうなんです。  また、地元の高知新聞の昨年十月十九日の報道によりますと、高知新聞社は事故報告書を米海軍省法務部に開示請求をして入手したと報じておりまして、報告書は全文約四百三十ページで、事故原因のほか、低空訓練の概要、当日の飛行計画などさまざまな情報が記載されていると報じておられます。  民間ルートの情報開示の請求で入手できているのに、外務省が入手できないということはあり得ないと思うのですが、今私が申し上げました高知新聞が入手した全文、これはどうなんですか。まだ入っていないのですか。
  31. 折田正樹

    ○折田政府委員 私ども、そういう報道があったということは承知しておりますが、先ほど申し上げましたように、米側から正式にいただいているわけではないわけでございます。他方、やはり先ほど申し上げましたように、可能なものはできる限り早く公表することが望ましいという考えに立って、引き続き米側と調整してまいりたいと思います。  本件につきましては、実は沖縄に関して特別行動委員会ができまして、そこで作業部会、作業グループというのがございますが、その場で、米軍事故についてアメリカ側が作成する調査報告書の日本政府への提供関係自治体や一般への公開の問題についても日米間で協議をするということで二十七日お互いに了解したということでございまして、この問題につきまして、一般論として、調査報告書の提供、公開の問題については積極的に取り組んでいきたいと考えておるところでございます。
  32. 山原健二郎

    ○山原分科員 今まで奈良県の十津川でワイヤーが切断されたという事故が二度起こっておりますが、それぞれ事故報告をまとめておりまして、これがその報告書でありますけれども、持っていますが、相当分厚い詳細なものですね。  ワイヤーの切断事故でさえこうした報告書がまとめられ外に出されているわけですが、今回の事故は、低空飛行中に訓練機が墜落する、乗員二名が死亡するという米軍にとっても重大事故なんです。しかも、墜落現場の住民からしますと、近くには保育所がありますし学校もありますし、役場もあるし民家もあるというところでございまして、あわや大惨事という重大な事故なんです。その報告がいまだにない。これは、これで済ませるのかという問題ですね。  私は、当然この報告書全文を速やかに提出すべきことを米側に対して断固として要求すべきだと思いますが、もう既に一年四カ月たって、いまだに米側から関係市町村に対するおわびもなければ報告もなければ、県に対してもおわびもなければ報告もない。こんなことで放置されていいのかということを感じるわけですが、外務大臣にこの点について御見解を伺っておきます。
  33. 池田行彦

    池田国務大臣 先ほど政府委員から御答弁申し上げましたように、我が国政府といたしましても、米側から調査の報告というものが提供されました場合にはそれを極力公開していこう、また国会において御報告申し上げよう、そういう姿勢でおるところでございまして、また、一般論ではございますが、特別行動委員会の作業グループにおいても真剣に取り組んでおる、こういうところでございます。  御指摘の早明浦の問題につきましては、確かに墜落そして乗員の死亡ということがあったということでございますから、恐らく米側においてもそれは慎重にまたしっかりした調査を進めておるんだ、このように考えております。  我が方といたしましては、こういった訓練の必要性というものは、これは否定できないわけでございますけれども、それにいたしましても、今回のような事故が起こらないように、またそのほか住民の方々に対するいろいろな生活面への好ましからざる影響というものは極力少なくしていくという面で努力をしてまいりたいし、また米側にもそのようなことを求めていくということには従来から努力しているところでございます。
  34. 山原健二郎

    ○山原分科員 報告書はできているのですね。私どもが入手した報告書によりましても中心的な内容はうかがうことができるわけですが、重大なことは、訓練機が百五十メートル以下の超低空を飛行訓練したことがこの中で明らかになってくるわけです。法務監会議の見解としまして、事故機の飛行状況が記述されていますが、そこでは、航空機は時速約四百二十ノットから四百五十ノット、約八百キロですね、しかも地上から五百フィート、これは百五十メートルですが、以下で、困難な左旋回を始めたと判定したと結論づけております。  別の箇所でも、事故機の飛行高度は四百フィートから五百フィート、すなわち約百二十メートルかち百五十メートルの高度であったことが指摘されています。時速八百キロもの猛スピードで、しかも高度百数十メートル、しかも超低空で、しかも曲がりくねった山岳地帯ですから、その谷間を旋回して飛行するということですから、報告書を読みましても、全く危険きわまりない訓練が常時行われておると言わざるを得ないわけでございます。  山間地とはいえ、今言いましたように、学校もあれば保育所もある、人家もあるというところでございますから、こんなことが許されて、日本国民がその下で安穏な生活ができないというのは、もうみんな言っているのですね。  それで、低空飛行訓練にかかわる事故が生じるたびに、外務省はこう答弁してきました。「米側は、」「引き続き我が国航空法を尊重し、最低安全高度百五十メートル、ただし人口密集地上空では三百メートルを実体的に守るとともに、飛行の安全及び地域住民に与える影響に一層の配慮を払うということを明らかにしております。」これは一九八八年二月二十三日の衆議院予算委員会での有馬北米局長の答弁であります。  つまり、米側は三百メートル、百五十メートルという我が国の航空法の最低安全高度を守ると言っているから納得してくれ、こういうことを私たちに対して今まで言ってきたわけですよ。了承してくれ、こう言ってきたのです。  ところが、今度の事故報告書は、米側がこの我が国の最低安全高度を守らない訓練をしていたことが明らかになっているわけでございます。しかも重大なのは、この報告書では、百五十メートル以下で飛行訓練していたことを問題とする立場に全く立っていないということですね。法務監会議の見解で、「衝突は乗務員の失敗、特に機体構造と乗務員の両方の行動能力を超えた無理な地形の中での旋回行動によって生じた」と報告しておりまして、乗務員の技量を超えた飛行に問題があったというだけで、百五十メートルを下回る超低空で飛行していたことは何ら問題にされておりません。  外務省は、米軍我が国の航空法の最低安全高度を守ると日本政府に言明をしておる、だから納得してほしい、こうおっしゃっているわけですけれども、低空飛行訓練の中止までは求めていないわけですね。そして、米側は、日本の航空法の最低安全高度を守るということを言っているのですが、実態としては、この報告書によれば、そういう気持ちはさらさらないということが明確になっているわけでございます。  私は、そういう意味で、外務省は本当に、今までの弁明は通用しないという事態をこの報告書は示しておると思うのですが、この点についてどうお考えになっておりますか。
  35. 折田正樹

    ○折田政府委員 米軍機につきましては、地位協定の規定に基づきまして、我が国駐留する在日米軍の属性にかんがみまして、航空特例法におきまして、一部の規定を除きまして我が国の航空法は適用されないことになっているわけでございますが、おっしゃるように、最低飛行高度について、航空法第八十一条において、今委員がおっしゃられたような規定がございます。私どもは、この規定が米軍機に適用されることはないものの、米軍もこの規定を尊重してしかるべきものであるという立場を有しているわけでございます。  私どもといたしましては、米軍機による低空飛行訓練に関連いたしましてさまざまな問題が生じているということを十分に認識しておるつもりでございます。安保条約の目的とそれとの調和を図りつつ、安全確保に万全を期する、それから地域住民への影響を最小化するために何ができるかということで米側と話し合っているところでございます。現在、事務当局間でいろいろ話を行っておりますが、この結果がまとまれば、しかるべき形でその結果を公表したいというふうに考えております。
  36. 山原健二郎

    ○山原分科員 それはいつごろできるのですか。もう一年四カ月もたっておりますからね。本当にこれは、四国全体の住民、今度はまた、先ほどお話に出ました、岩国からのあれがふえていますね。大変な事態なんですが、外務省が国会で弁明してきたことと、本当にこう、それをなぜこれだけのことができないのかと疑わざるを得ないような状態があるわけでございます。  例えば、ちょっと委員長の許可をいただきまして、これは超低空飛行の実態の写真なんです。これはもう瞬間的な写真ですから、なかなか撮りにくいのですよ。これは、ことしの一月十二日ですね、こういうふうに稜線の上をこう飛んでいます。これは、二機一緒になって飛んでいる姿ですが、この飛行機が頂上より下を飛んでいるのです。これが、ちょっと見にくいと思いますけれども、頂上より下を飛んでいるのですよね。視線からして下を飛んでいる。もう明らかにこれは危険区域の訓練が猛烈なスピードでやられているわけでして、危なくて仕方がないのですよ。だから、子供たちは逃げ惑いますしね。  それがどれくらいやられておるかといいますと、昨日も役場へ電話して聞きますと、二月に入ってからですけれども、二月五日、二月六日、二月七日、二月二十二日。一月には八日間来ております。愛媛県側の、愛媛県の方の役場がありますけれども、この役場に連絡をしますと、一月に十四、五日来ているのです。しかも、五機、六機で来まして、そして朝の八時から夜の八時まで訓練を行うわけですね。  これはもう大変な事態でございまして、今お話にありましたように、米側と話をして、実態も調べ、結果が出るだろうというお話ですけれども、これは一刻も放置できない。しかも、この事件が起こったときから、県知事も、皆政府に対して抗議しているのですよ。だから、四国住民全体の意向として、この訓練はもうやめてもらいたい、少なくとも日本の航空法に基づいてやってもらいたいのです。  しかも、超低空訓練などというのは、日本の航空法、今まで、外務省説明からいっても、米側説明からいっても、はるかにそれをオーバーするような訓練が実施されているわけでして、これはどうしても納得ができないのですよ。だから、この際、北米局長とそして外務大臣に毅然たる態度で臨んでもらいたい。いつまでに決着をつけるということをここで言ってもらいたいのですけれども、どうでしょう。
  37. 折田正樹

    ○折田政府委員 先ほど来申し上げておりますが、米軍我が国において飛行訓練を実施するに当たって、我が国関係国内法令にある安全基準を尊重し、また我が国の公共の安全に妥当な考慮を払うべきことは当然であるという考えでございまして、こういう立場で米側と話し合っているわけでございます。  それで、いつということはまだ申し上げられませんけれども、鋭意アメリカ側と話し合っていきたいというふうに思っております。
  38. 山原健二郎

    ○山原分科員 これは結局、最低安全高度を実体として守ると向こうも言っているというのですね。それから、そういう米側の姿勢なるものも報告を受けているのです。  昨年、同じこの分科会質問で取り上げましたけれども、低空飛行訓練に関する米海軍・空軍共用マニュアル「飛行訓練航空航法」ではどうなっているかといいますと、低空戦闘任務のための通常の高度は地上二百フィートから五百フィートの間である、こういうふうになっていますね、これは米軍側のマニュアル。すなわち、六十メートルから百五十メートル、通常の高度はこの間で低空戦闘任務のために訓練をするんだ、こういうふうになっておりまして、明確にこれを想定しているわけですね。  今回の事故報告書は、この米軍マニュアルのとおりに訓練が行われていることを裏づけているのです。したがって、米軍は最低安全高度を守る気がないのではないか。それならば、低空飛行訓練自体をとめてもらうということを日本政府として要求するのは当然ではありませんか。
  39. 池田行彦

    池田国務大臣 先ほど来御答弁申し上げておりますように、こういった米軍の訓練によって住民の皆様方に与える影響というのは極力小さくしてまいりたいと考え、努力しておるところでございます。また、この訓練に当たりまして、米軍は基本的には我が国の航空法には拘束されないといいますか、航空法の適用は受けないところでございますけれども、極力それを尊重するということで対応してきたわけでございます。そういったところを御理解ちょうだいしたいと思います。  それで、訓練自体をやめるように申し入れしたらどうか、こういう点でございますが、これはやはり、そもそも我が国の安全を保障をするという目的のために、日米安保条約に基づきまして米軍との協力による、こういうことが我が国の基本的な方針でございます。そしてそのためには、やはり米軍としては緊急事態の発生に備えて即応態勢を維持するといった観点から訓練をしていくというのは、これは欠かすことのできない要素である、こう考えますので、一切訓練を行わないように申し入れるということは、これは適切ではないと考えております。  しかし、先ほど来申し上げておりますように、訓練により住民の方々がこうむるマイナスの影響というものは、極力これは起こらないようにしてまいりたい、こう思います。
  40. 山原健二郎

    ○山原分科員 外務大臣の答弁は安保条約容認の立場の答弁であろうと思いますが、その点、私はもちろん見解は違います。  それにしても、米軍については、我が国の航空法が規定する安全飛行規定の適用を除外されている、いわゆる航空法特例法で適用除外されている、これをやめて、我が国の航空法の安全飛行規定を適用させることが今求められているのではないか。  米側も、言葉の上では実体として航空法の規定を守ると言ってきた立場があるわけですから、そういう点から見ましても、これは米側としても正当な日本政府側の要請を拒む理由は全くないわけです。彼らも日本の国内法、航空法を守ると言っているのですから、国内法を守ってこういう超低空の飛行はやめなさいと言うことは、これは当然の要求として私はできると思いますよ。  今言うように、訓練一切をとめろということが今できないとするならば、少なくとも超低空飛行、これはやめさせるべきだ、それに全力を挙げてもらいたいと思いますが、なお伺っておきます。
  41. 池田行彦

    池田国務大臣 先ほども申しましたように、安保条約の目的を守り、我が国の安全を守っていく、そのために、米軍としてはやはり緊急事態に即応できる態勢を維持する、そういった観点から訓練は行わなくてはならない、こう考えておるところでございます。  そしてまた、航空法との関係でございますけれども、これは先ほど来政府委員もよく答弁しておりますように、特例法によりまして、米軍については基本的に適用されない。これは低空飛行の点もです。そういうことではあるけれども、我が国の航空法の趣旨というものは尊重してやっていこうということでございますので、そういった現実の運用において、極力そういった努力を米側にも求め、結果としていろいろな被害が起こらないように努力をしてまいりたい、こう考える次第でございます。
  42. 山原健二郎

    ○山原分科員 もう時間も少なくもなってまいりましたが、これはぜひ早く解決をしていただきたいんです。こんなことをやって、もう一回でも事故が起こったら本当にこれは大変なことですし、それはもうよくおわかりだと思いますよ。  それから、最近では訓練が減っているんじゃなくてふえているんですよ。早明浦へ墜落したとき、いっとき、数日間訓練がやんでおりまして、静かになったと言われておりましたが、今またルートが変わってきまして、これは今お話ししましたようにダムと発電所をねらった訓練ですからね。あの四国山脈の上というのは、石鎚山と剣山の稜線を結ぶ間にダムもありますし、これは四国の水がめと言われる、四国四県の飲料水あるいは農業用水、工業用水をここで生産しておるダムがあるわけです。早明浦ダムというのはその中でも一番大きいんですね。それをねらっての超低空訓練です。  兵員は、これは軍の命令によって訓練をやっておるのでしょうが、余りにも超低空でやるものですから、スピードは速いし、八百キロでわあっと行くわけですから、結局失神状態、これはたしか失神状態で墜落したというふうに出ていますが、墜落して何が落ちたのかわからぬのです。早明浦ダムの底に何が落ちておるかもいまだにわからない。どんなものを積んでおったかもわかりませんしね。  だから、これは本当に米軍としても当然礼を尽くすべきで、日本政府に対してこの事故の全貌を報告すべきですよ。一年間もたってまだ報告できないなんて、そんなばかな話がどこにありますか。日本政府に対して報告をし、おわびをし、関連市町村、関連県に対しておわびをする、これは少なくともやるべきです。  そんなこともやられないで、あのときだって随分周辺の警察署員、あるいは消防署員、あるいは町の職員等が動員されておりますけれども、すぐそこへ網が張られて、現場へは近寄らせない。治外法権がばっとしかれて、何一つわからない。どんなものが湖の底にあるかもわからないというような状態なんですね。  私のふるさとの地でありますけれども、日本国民がこれほど主権を失って、戦後五十年たっていますよ、戦争に負けたときから五十年たって、なおかつ全く変わらないこの米軍の飛行機の爆音のもとにさらされるなんて想像ができない。それに対して政府がなぜ毅然たる態度をとらないのかというのは、もう切歯扼腕ですよ、みんな。そういうことが沖縄問題でも引用されるわけでございまして、もう毎日飛行機で悩まされている。  私の町は本山町という、早明浦ダムのあるところですけれども、本山町は毎日観測しておるんですよ、何時に来たんだと。横須賀でインディペンデンスが、航空母艦が着きますとそこから飛んでくるわけですが、イントルーダーという飛行機ですから物すごい飛行機です。それが、間もなく来るわけですよ。だから、ずっと、耳に入り目に見えるものはこういうふうに記録されているのです。でも、もうずっと何年間もやられておりますけれども、一昨年の十月の墜落以後は非常な注目をしてこういう事態を見詰めているのですね。  そういうことを考えますと、これは一刻も早くこの問題について、少なくとも真実を知らせる、あるいはおわびをする、日本政府に対して米側としては当然のことじゃないですか。この当然のことを直ちにやらせていただきたい、このことを要請しておきたいと思いますが、最後にこれについて大臣の見解を伺います。
  43. 池田行彦

    池田国務大臣 政府といたしましても、米軍の訓練等による被害を、被害と申しましょうか、住民の方々がお受けになる好ましからざる影響を極力小さくしていくために最善の努力をしていくことはもとよりでございます。そしてまた、不幸にして事故等が起こりましたときには、その善後措置に万全を尽くしていくということもまたこれは当然のことだと思います。  そしてまた、今具体的にお話のございました早明浦の事故に関します米側の報告につきましては、先ほど政府委員から御答弁申し上げたとおりでございますけれども、政府といたしましても、その報告を求め、そしてそれが入手されましたときには公表してまいりたい、こう考えておる次第でございます。  ただし、先ほども申しましたように、訓練そのものは、我が国の安全を守るといった日米安保条約の目的を達成するために不可欠のものであるという点については御理解をちょうだいしたいと思います。
  44. 山原健二郎

    ○山原分科員 最後に、河野外務大臣のときにこの問題が起こりまして、私も河野さんにも言って、やりますということできたのですが、いまだに解決しておりませんので、池田外務大臣としては、本当に不退転の決意でぜひ解決のめどをつけていただくように希望いたしまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  45. 保利耕輔

    保利主査 これにて山原健二郎君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして外務省所管についての質疑は終了いたしました。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時十一分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  46. 保利耕輔

    保利主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  大蔵省所管について、政府から説明を聴取いたします。久保大蔵大臣。
  47. 久保亘

    ○久保国務大臣 平成八年度一般会計歳入予算並びに大蔵省所管一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算について御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入予算額は、七十五兆一千四十九億二千四百万円となっております。  このうち主な事項について申し上げますと、租税及び印紙収入は五十一兆三千四百五十億円、雑収入は二兆三千四百八十二億百万円、公債金は二十一兆二百九十億円となっております。  次に、当省所管一般会計歳出予算額は、十九兆百一億七千九百万円となっております。  このうち主な事項について申し上げますと、産業投資特別会計へ繰り入れば一千七百十五億四千百万円、国債費は十六兆三千七百五十一億九千七百万円、政府出資は三千九百二十八億円、緊急金融安定化資金は六千八百五十億円、予備費は三千五百億円となっております。  次に、当省所管の各特別会計の歳入歳出予算について申し上げます。  造幣局特別会計におきましては、歳入、歳出とも三百三十一億三千三百万円となっております。  このほか、印刷局等の各特別会計の歳入歳出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。  最後に、当省関係の各政府関係機関の収入支出予算について申し上げます。  国民金融公庫におきましては、収入四千五百五十二億三千四百万円、支出四千八百九億三百万円、差し引き二百五十六億六千九百万円の支出超過となっております。  このほか、住宅金融公庫等の各政府関係機関の収入支出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。  以上、大蔵省関係予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第でございます。  なお、時間の関係もございまして、お手元に配付しております印刷物をもちまして詳細な説明にかえさせていただきたいと存じますので、記録にとどめてくださるようお願いいたします。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  48. 保利耕輔

    保利主査 この際、お諮りいたします。  ただいま久保大蔵大臣から申し出がありましたとおり、大蔵省所管関係予算概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  49. 保利耕輔

    保利主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————    平成八年度一般会計歳入予算並びに大蔵省所管一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算に関する説明  平成八年度一般会計歳入予算並びに大蔵省所管一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算について御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入予算額は、七十五兆一千四十九億二千四百万円でありまして、これを前年度予算額(補正予算(第二号)による補正後の改予算額。以下同じ。)に比較いたしますと、三兆九千三百三十四億九千九百万円の減少となっております。  以下、歳入予算額のうち主な事項につきまして、その概要を御説明申し上げます。  第一に、租税及印紙収入は、五十一兆三千四百五十億円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、二兆二千四百八十億円の減少となっております。  なお、平成七年度第三次補正後予算額五十兆六千八百十億円に比較いたしますと、六千六百四十億円の増加となっております。  この予算額は、現行法による租税及び印紙収入見込額五十二兆九千六百三十億円から、平成八年度の税制改正による減収見込額一兆六千百八十億円を差し引いたものであります。  次に、各税目別に主なものを御説明申し上げます。  まず、所得税につきましては、平成八年分所得税の特別減税等による減収額を見込んだ上で、十九兆三千三百八十億円を計上いたしました。  法人税につきましては、租税特別措置の整理合理化等による増収額を見込んだ上で、十三兆五千四百八十億円を計上いたしました。  消費税につきましては、課税の適正化による増収額を見込んだ上で、五兆九千四百八十億円を計上いたしました。  以上申し述べました税目のほか、相続税二兆五千五百四十億円、酒税二兆一千百十億円、たばこ税一兆四百億円、揮発油税一兆八千七百五十億円、印紙収入一兆九千二百五十億円及びその他の各税目を加え、租税及印紙収入の合計額は、五十一兆三千四百五十億円となっております。  第二に、雑収入は、二兆三千四百八十二億百万円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、二兆二百三十八億七千八百万円の減少となっております。  この収入のうち主なものは、日本銀行納付金四千七百四十億円、日本中央競馬会納付金四千四百四十九億一千九百万円、特別会計受入金九千六百五十二億三千六百万円等であります。  第三に、公債金は、二十一兆二百九十億円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、九千三十億円の増加となっております。  この公債金のうち、九兆三百十億円は、建設公債の発行によることとし、残余の十一兆九千九百八十億円は、特例公債の発行によることといたしております。  最後に、前年度剰余金受入は、百九十三億六千万円となっております。  なお、既に発行の授権をいただいている減税特例公債を除く特例公債の発行、外国為替資金特別会計からの一般会計への繰入れの特別措置等のため、別途「平成八年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案」を提出し、御審議をお願いいたしております。  次に、当省所管一般会計歳出予算額は、十九兆百一億七千九百万円でありまして、これを前年度予算額に比較致しますと、二兆四千二百六十二億二千三百万円の増加となっております。  これは、国債費が三兆四千二百七十二億五千七百万円、緊急金融安定化資金が六千八百五十億円、予備費が一千五百億円増加しましたが、他方、産業投資特別会計へ繰入が一兆一千二百五十四億四千五百万円減少したこと等によるものであります。  以下、歳出予算額のうち主な事項につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、第一に、産業投資特別会計へ繰入につきましては、一千七百十五億四千百万円を計上いたしておりますが、この経費は、無利子貸付け等の財源に充てるための「日本電信電話株式会社の株式の売払収入の活用による社会資本の整備の促進に関する特別措置法」に基づく産業投資特別会計への繰入れに必要なものであります。  第二に、国債費につきましては、十六兆三千七百五十一億九千七百万円を計上いたしておりますが、この経費は、一般会計の負担に属する国債及び借入金の償還及び利子等の支払並びにこれらの事務の取扱いに必要な経費の財源を、国債整理基金特別会計へ繰り入れるためのものであります。  第三に、政府出資につきましては、中小企業信用保険公庫等二機関に対し、一般会計から出資するため必要な経費として、三千九百二十八億円を計上いたしておりますが、その内訳は、中小企業信用保険公庫百九十五億円、海外経済協力基金三千七百三十三億円であります。  第四に、緊急金融安定化資金につきましては、六千八百五十億円を計上いたしておりますが、この経費は、我が国金融システムの安定性とそれに対する内外からの信頼を確保し、預金者保護に資するとともに、我が国経済を本格的な回復軌道に乗せるため、住専問題の早期処理を図るとの観点から、住専からの資産等を引き継ぐ「住専処理機構」に対し、預金保険機構が資金援助等を行うための資金として、預金保険機構に対する補助等に必要なものであります。  第五に、経済協力費につきましては、五百四十五億七百万円を計上いたしておりますが、この経費は、国際開発金融機関を通じて供与する発展途上国に対する経済協力等に必要なものであります。  最後に、予備費につきましては、予見し難い予算の不足に充てるため、三千五百億円を計上いたしております。  次に、当省所管の特別会計のうち主な会計につきまして、その歳入歳出予算概要を御説明申し上げます。  まず、造幣局特別会計におきましては、歳入、歳出とも三百三十一億三千三百万円となっております。  次に、印刷局特別会計におきましては、歳入一千三十四億二千二百万円、歳出九百七十四億二千百万円、差引き六十億円の歳入超過となっております  以上申し述べました各特別会計のほか、資金運用部、国債整理基金、外国為替資金、産業投資、地震再保険及び特定国有財産整備の各特別会計の歳入歳出予算につきましては、予算書等を御覧いただきたいと存じます。  最後に、当省関係の各政府関係機関の収入支出予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、国民金融公庫におきましては、収入四千五百五十二億三千四百万円、支出四千八百九億三百万円、差引き二百五十六億六千九百万円の支出超過となっております。  このほか、住宅金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、北海道東北開発公庫、公営企業金融公庫、中小企業信用保険公庫、環境衛生金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、日本開発銀行及び日本輸出入銀行の各政府関係機関の収入支出予算につきましては、予算書等を御覧いただきたいと存じます。  以上、大蔵省関係予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第でございます。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。     —————————————
  50. 保利耕輔

    保利主査 以上をもちまして大蔵省所管についての説明は終わりました。     —————————————
  51. 保利耕輔

    保利主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。熊代昭彦君。
  52. 熊代昭彦

    熊代分科員 質疑の機会を与えられましたので、本委員会とオーバーラップする面もあるとは思いますが、住専問題についてお伺いしたいと思います。  住専問題につきましては、マスコミでは、これを批判する声が大変に強いわけでありますが、しかしまた、これは世論を背景にしているということもございますけれども、世論もマスコミも誤ることはある、無謬ではないということでございます。  昔のことを思い出せば、戦争のとき、第二次世界大戦に突入する前に、新聞の売り上げを伸ばすために戦意高揚に走ったということもございます。それから、その戦争のときに、国のためを思い、同胞のためを思い命を捨てられた方々に本当に敬意を表する次第でございますけれども、あれだけ戦意高揚の動きがなければあれほどの大きな犠牲を払う必要がなかったのではないか、そういう思いもいたすわけであります。  一九六〇年、六〇年安保のときもございました。私どもも学生として当時渦中にいたわけでございますが、安保改定に反対するという物すごい世論であり、物すごい大衆運動であった。しかし、今日の時点で振り返ってみますと、あれは大変に必要な改定であったというふうに私どもは思うわけであります。  今度の六千八百五十億の予算も金融大恐慌を防ぐためということで、あるいは金融恐慌だけにとどまらないで、日本経済的大恐慌、日本発の世界大恐慌が来るのを防ぐためという性質が強いと思うのですね。  一九二九年のあのときも、株の過剰投機と、それから、フロリダの土地を買うとかアメリカの物すごい土地の過剰投機がありまして、それがとんざしたというのが原因でありましたから、バブル崩壊という言葉遣いは、私は問題であると思うのですが、非常に気楽に言っておりますけれども、下手をすれば世界大恐慌の引き金になりかねないことだと思うのですね。  昭和二年の金融大恐慌のときは、たしか、衆議院ではこういう支出を可決したけれども、貴族院ではそれを否決してしまった。今と同じようにマスコミの大変な批判がありまして、世論の批判があって、否決してしまった。それを引き金に大恐慌が起こった。今日と当時とは違うのだという意見もありますが、それを実験してみるには余りに大きなかけであると思います。しっかりと危険を防いでやっていただきたい。  大蔵大臣、大変に御苦労いただきながら、非常にしっかりと現在の予算の正当性を御説明いただいているので敬意を表する次第でございます。このままこれを進めていくということが基本であると思います。これをしっかりしなければいけないと思いますが、それとともに、六兆四千億程度の第一次損失で、これは担保価値がなくなって、消えてしまったということでありますけれども、これについてもやはり示しをつけなければいけないだろうというふうに思います。  通常、こういう借り受けをするときには、担保を出しているだけではなくて、借り受けした会社の役員というものは個人保証、連帯保証をしているのではないだろうかというふうに思います。それが一般の取引の現状ではないかと思います。それについてまず確認いたしたいと思いますが、大蔵省さん、どうでございましょうか。
  53. 永田俊一

    ○永田政府委員 お答えいたします。  ただいまの御質問でございますが、私ども、住専会社に対しまして調査等を行ったわけでございますが、その際に個人保証云々のところについてまで詳しく調べておりませんが、おっしゃいましたように、個人保証のあるもの、ないもの、それぞれに存在するというふうに存じております。
  54. 熊代昭彦

    熊代分科員 非常に詳しく、正確に言えばそういう話になるかもしれませんけれども、大部分はついているのじゃないだろうか。それでなければ、法律的に背任罪になるかどうかは別としまして、現行の取引慣習からすれば極めて軽率な取引であるというふうに思いますので、大部分個人保証をつけてあるのではないかと思います。それが実態でありまして、そういう前提のもとに申し上げるわけでございますが、担保価値がなくとも個人保証をつけていれば、連帯保証であれば、個人から取り立てる、個人が払わなければ破産させる、そして最後の一円まで取り立てるということは可能であると思うのですが、理論的にそれはどうですか。大蔵省事務当局からお願いします。
  55. 永田俊一

    ○永田政府委員 お答えを申し上げます。  御質問でございますけれども、具体的に、今後、住専処理機構が法律上認められるあらゆる回収手段を迅速的確に用いていくわけでございますが、その際に、当然、おっしゃいましたところのその債務保証の履行を厳格に求めていくということになろうと思っております。
  56. 熊代昭彦

    熊代分科員 住専処理機構ができる、それから預金保険機構が新しい形になる、この後でやることになるだろうと思うのですね。それで、具体的にどうなりますか。住専処理機構が個人保証の契約に基づいてそれを取り立てていくということになりますか。あるいは、預金保険機構は何らかの意味で絡むのですか。その辺をちょっと御説明いただきたいと思います。
  57. 永田俊一

    ○永田政府委員 お答えいたします。  基本的には住専処理機構が今のおっしゃられました業務を行っていくということになると思います。
  58. 熊代昭彦

    熊代分科員 基本的にはということは、預金保険機構も絡むことがある、それはどういう場合でしょう。
  59. 久保亘

    ○久保国務大臣 今審議官から申し上げたとおりでございますが、預金保険機構の出資によって住専処理機構が生まれるわけでありますから、この処理機構が回収の仕事を進める上で問題のありますものは、預金保険機構の中にございます検察、警察、国税等の現役の方々に入ってもらっております組織に対して悪質なものの回収について協力を求めることになっております。その場合には、法律に基づいて、債務者と債務者の関係者を含めて、財産調査権が罰則を伴って与えられることになります。
  60. 熊代昭彦

    熊代分科員 大臣の御答弁のとおりだと思うのですが、そうしますと、とにかく個人保証をして、しかも金を返さないで、ロールスロイスか何か知りませんが乗り回していて、豪邸に住んでいるという者については、これは最後の一円まで取り立てるんだ、そういう決意でこれからやっていただけるということであると思うのですが、大臣、そのあたりをよろしくお願いいたします。
  61. 久保亘

    ○久保国務大臣 公的な資金を投入して、公的関与を行ってこの住専問題を処理いたします場合の基本的な立場は、公的資金の導入が住専を助けたり債務者を免責したりするものでは絶対にないという立場でございます。したがいまして、住専は、解散させられても経営責任は追及されます。また、債務者は、十三兆のすべての債務について債権の回収が行われることになります。この取り立てる側から見ました債権は、一円たりともこれが免除される、軽減されるということはございません。
  62. 熊代昭彦

    熊代分科員 大臣の決意のほどを伺いました。ありがとうございました。ぜひ、そのように厳しく、お金を借りて返さない、そういう人に対しては厳しく対処していただきたいと思います。  次に、そういうことではありますけれども、そこに暴力が絡むというときにどうなるのかというのが国民の心配でありまして、個人の財産を取り立てようにも、それをやると取り立てる方の人間が殺されるのではないだろうか。銀行の重役で非業の死を遂げた方が何人かいらっしゃって、それを契機に取り立てがもう行かなくなったというような話もちまたにうわさをされているわけでございます。そういうことがあってはいけないので、経済がマフィア化してくる、経済のマフィア化というのは大変に日本経済についても恐れられているわけであります。これを断固として防いでいかなければならない。  権力というのは、力のある悪い者に対して力を発揮して、これを排除していかなければならない、力のない人には、その権利を守って、助けていかなければならない、これが権力であります。正しい権力であります。その逆に使われたら権力というのは悪い権力で、そういった権力はあってはならないわけであります。したがいまして、力ある悪い対象に対して、この場合、例えば取り立てをしょうにも脅迫しておどす、あるいは、口には出さないけれども行けばどうも危ない、行った途端にやられるのではないだろうか、そういう状況がある場合に、警察は民事不介入であるというふうに言っているのではないか、世の中一般にそのように思っているわけですね。  まず、そのあたりのことをちょっと御説明いただきたいのですが、急迫の危険があっても警察は民事には不介入なのかどうか、その辺をちょっと御説明いただきたいと思います。
  63. 中林英二

    ○中林説明員 お答え申し上げます。  まず、いわゆる不良債権問題と暴力団との関係について種々取りざたされておりますが、これは承知しておりますが、この問題につきましては、国民の関心も高い、またその重要性もありますので、警察としましては、総合力を発揮し得る体制をもちまして取り組んでおるところでございます。ただいま民事不介入原則という話がありましたが、警察といたしましては、民事上の債権債務関係につきましては民事関係法令に基づきまして適正に処理すべきものであり、捜査機関、私どもでありますが、債権回収業務それ自体を行うことは適当ではないと考えております。しかしながら、その債権回収等の過程におきまして刑罰法令に触れる行為があれば、これは厳正に対処する、こういう立場でございます。
  64. 熊代昭彦

    熊代分科員 大変いいお答えをいただいたと思うのですが、しかし、基本的に民主主義社会の警察というのは、殺された後から来る、そういうふうに皮肉に言う人もいるわけですね。殺された後から来る、それで、それを処理する。それも重要な抑止力ではありますけれども、やはり急迫の危険があるときにはそれなりの対処をしていただくということが本当の犯罪の抑止力になるのではないかと思います。  先ほどの話で、民事の契約そのものの執行に介入することはない、しかし、そのときに何らかの違法行為があればこれは断固として処理するということでございますが、それは、できれば後にならない方がいい、傷つけられて殺された後にならない方がいいということでありまして、これは警察力の執行でありますから、急迫の場合にどのようなことをするかというのは、いろいろ工夫の余地があると思うのですね。四角四面のことではなくて、工夫の余地がありまして、法律の範囲内をしっかり守るけれども、工夫して事前にその危険を防ぐという力の行使もぜひ行っていただきたいと思います。これに対する答弁はなかなか難しいと思いますが、ちょっと何かしゃべってください。
  65. 中林英二

    ○中林説明員 お答え申し上げます。  警察としましては、ただいま申し上げましたように、債権回収過程において刑罰法令に触れる行為があれば厳正に対処をするという立場でございますが、それ以外の場合、ただいまお示しがあったケースも含めていろいろなケースがあるわけでありますが、例えば、暴力団等によります違法、不当な行為に関する相談が事前にございます。こういったものにつきましては、事案の実態に応じまして適切に対処してまいります。  また、ただいま申し上げましたような刑罰法令に触れる行為以外にも、暴力団対策法というのがございますが、これに基づきまして、中止命令等も活用しまして厳正に対処してまいるということでございます。  もちろん、その過程におきまして、ただいま先生お話しになりましたように、民事執行の手続の過程におきまして、例えば暴力団等が執行の現場で暴力で抵抗するということも予想されます。そういった場合におきましては、民事執行法上も執行官等の職務の執行を確保するために、警察上の援助の要請ということができるようになっておりまして、これは同法で第六条でございますが、警察としましても、裁判所と緊密な連携をとりまして、この種の事案に適切に対処するように努めているところであります。  なお、警察としましては、今後ともこういった法律の規定による援助の要請に基づきまして、あるいはこれがたとえなくても、警察官職務執行法等に基づきまして、個別具体的な事案の実態に応じて適切に対処してまいる、そういうことでございます。
  66. 熊代昭彦

    熊代分科員 暴力団等が現場で占拠しているというような事態には的確に対処するということでございます。ぜひやっていただきたいと思います。個々の警察力で対処できない場合には、機動隊の導入も考えていただけたらいいのじゃないかというふうに思います。いずれにしましても、経済のマフィア化というのは絶対に防がなければならないと思います。  十分なる決意を伺ったと思いますが、もう一つだけ関連でお伺いしたいのですが、これも世上言われていることでございますが、競売すべき物件に暴力団が短期の賃借権をつけた、それでどうにもならないという話があります。こういう場合にはどのように対処されるのですか。
  67. 中林英二

    ○中林説明員 先ほども申し上げましたように、民事問題と刑事問題はあくまで別に考えたいと思っております。  短期賃借権をつけて、いろいろな形態があると思いますが、その形態の事案の実態に応じまして、刑罰法令に触れるような行為がもしあれば、それに対して厳正に対処するということでございます。
  68. 熊代昭彦

    熊代分科員 恐らくお答えは、一次的には民事であるから民事の当事者が対処しなければいかぬ、それで、対処する間に短期の賃借権解消についてえらい妨害、解消しないということで、暴力行為とか違法行為があれば対処するということだと思います。そういうことで、そういうものも対処できるということでございますので、ぜひしっかりとこの問題は解決していただきたいと思います。  この住専問題で、六千八百五十億が節約になるわけですね。回収できればこれを返す、たしか法律でそのようになっていたはずだと思いますが、そのあたり、大蔵省さん、いかがでございますか。
  69. 永田俊一

    ○永田政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、回収に全力を挙げていくということでございますし、ただいま警察庁の方からもお答えがありましたように、予防的な、執行における妨害行為の排除の御協力をいただきつつ回収に全力を挙げていくということだと思っております。
  70. 熊代昭彦

    熊代分科員 お伺いしましたのは、今出ている法律案では、六千八百五十億、まあ担保価値が消えてしまったけれども、とにかく個人保証でも金を取り返した、コリンズの財産から百億なら百億取り返した、それは国庫に納付するのですねということを確認しているのですよ。
  71. 永田俊一

    ○永田政府委員 失礼いたしました。おっしゃるとおりでございます。  一次ロスでございますが、引き取った価額以上で回収できた場合につきましては、当然国庫に納付されるという規定になっております。
  72. 熊代昭彦

    熊代分科員 ありがとうございました。  そういうことでありますから、貴重な国費を大切に使うという意味でも、ぜひこの回収に全力を挙げていただきたい。そしてまた、大きな観点から見れば、経済のマフィア化を防ぐということに対しても、警察庁さん、大蔵省、ともに力を合わせてやっていただきたいというふうに思います。  次に、母体行とか住専の幹部の責任でございますが、これも世上いろいろ言われておりますけれども、本来融資すべきでないときに融資したとか、特別背任とかそういったものに当たる行為がいろいろ考えられると思うのですが、個々具体的には全部に当たらなければわからないわけですけれども、ごく抽象的に申しまして、可能性としてどのような罪があるかということを法務省さんにお伺いしたい。
  73. 麻生光洋

    ○麻生説明員 具体的な事案を想定してどのような犯罪が成立するかということにつきましては、その具体的な状況を踏まえまして、捜査当局において証拠を収集いたしまして、それに基づいて具体的に判断すべき事柄でございますので、答弁は差し控えさせていただきたいと思いますけれども、金融関係犯罪ということであえて一般論として申し上げますと、例えば、背任とか特別背任とか業務上横領とか詐欺などが、一般的には考えられる犯罪であろうかと思います。
  74. 熊代昭彦

    熊代分科員 ちょっと細かいことをお聞きして申しわけないのですが、背任罪と特別背任罪というのはどこが違うのですか、御説明ください。
  75. 麻生光洋

    ○麻生説明員 背任罪というのは刑法に規定されている犯罪でございます。これの構成要件というのは「他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたとき」こういうことになっております。  それに対しまして、特別背任と申しますのは商法に定められておる罪でございまして、こちらの方は、主体が会社の発起人、取締役、監査役などに限られておるわけでございます。したがいまして、まず主体の方で違いがございます。  それから、罪に対する刑の方でございますけれども、背任罪の方は法定刑が五年以下の懲役または五十万円以下の罰金となっております。それに対しまして、特別背任の方は七年以下の懲役または三百万円以下の罰金になっております。  以上でございます。
  76. 熊代昭彦

    熊代分科員 特別背任は商法上、特に役職員、重い責任を持った人たちの犯罪ということでございます。そういうケースもあると思います、これだけの大きな問題が起こったということですから。背景には、時のバブルに全員浮かされて、大恐慌に突入する前のそのような雰囲気の中にみんな侵されたということがあるでしょうけれども、個別に見ればそれだけではなくて、特別背任というのはいっぱいあると思います。そういうものについて最低百人以上ぐらい逮捕者を出さなければ国民は納得しないのではないか、このように私は申し上げて、いろいろなところでお話をしているわけでございます。百人という人数に意味があるわけではありませんけれども、厳正に対処して、およそけしからぬ特別背任がある者はしっかりとこれを訴えて、逮捕していくということが必要であるというふうに思います。その辺につきまして、警察庁さん、これに臨む態度、どういう態度で臨まれるか、その辺をちょっと。
  77. 栗本英雄

    ○栗本説明員 お答えをいたします。  警察といたしましても、住専問題の処理につきましては現下の喫緊の課題であると認識しておるところでございまして、現在、広範かつ徹底した実態解明に取り組んでいるところでございます。  今後、この実態解明の結果、収集いたしました証拠に基づきまして刑罰法令に触れる行為が認められますならば、貸し手側、借り手側を問わず、厳正かつ速やかに対処してまいりたいと考えておるところでございます。
  78. 熊代昭彦

    熊代分科員 大変頼もしいお答えをいただいたわけでございますが、いずれにいたしましても、この問題というのは、住専処理機構を速やかに発足させて、また、預金保険機構の新しい体制を速やかにつくりまして解決していく、前に進まなければいけない問題だと思います、前に進めなければならない。  マスコミというのは、私は、基本的には自由主義社会の宝である、大変大切なものでありまして、この情報に従って我々は非常に便利にしておりまして、また動いておりますが、ただ、その意見にわたるものは大変に間違っておることもある、冒頭に申し上げたとおりであります。医療の世界でインフォームド・コンセントというのがありますが、患者が同意さえすればいいのではなくて、患者に十分知識を与えた上で合意しなければならない。  ですから、国民の世論世論と言いますけれども、本当に十分な情報を国民の皆様に持っていただいて、その上での判断なのか。例えば、一万円を自分が損するのではないかと思っていますけれども、そんなことはありませんで、これは既に払った税金の中から出されるわけであります。しかし、その一万円云々にこだわれば、金融大恐慌が起これば預金の一千万円を超えるものはみんなだめになるとか、恐慌になれば失職して、それは年間一千万になんなんとするような損害になるとか、そういう大きな大きな問題に対してそれを未然に防ごうということでありますから、ぜひそういうことを今後とも十分国民の皆様に知っていただきたい、そういうPRも兼ねて、PRを積極的にやっていただくとともに、この問題を原案でしっかり処理していただきたいということを大臣にお願い申し上げて、大臣に最後に一言お願いを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
  79. 久保亘

    ○久保国務大臣 大変激励をいただきまして、お礼を申し上げます。  私は、最初に熊代さんのお話を伺いながら考えておりましたことは、ロッテルダムの大干拓地に記念碑がございますが、そこに、日本語で書いてあるわけではありませんが、日本語に直しますと「きょう生きる者はあすのために建設する」という言葉がございます。私は、住専問題を考える場合には、日本のあすの立場から、しっかり責任あるとらえ方をしていかなければならないと思っております。未来に向かって我々の今なすべきことという立場で、今お話がございましたような立場で、この問題をしっかり処理してまいりたいと考えております。
  80. 熊代昭彦

    熊代分科員 大変力強いお言葉をいただきまして、ありがとうございました。  これで終わります。
  81. 保利耕輔

    保利主査 これにて熊代昭彦君の質疑は終了いたしました。  次に、伊藤英成君。
  82. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 まず最初に、住専の問題についてお伺いをいたします。  もう言うまでもありませんが、最近の世論調査でも、国民の九〇%近くは、この住専の問題に税金六千八百五十億円を投入するのには反対をする、こういう意見ですね。それで、私ども新進党としても、住専に税金を投入することには断固反対をするということで、あらゆる手段を使ってでも、この問題について税金を投入することについて阻止をするつもりであります。  昨日も、党首会談も開かれました。そして、本日の回答をあすに延期させてくれという話のようでありますが、この六千八百五十億円の削除について検討されておりますか。まず大臣にお伺いしたいと思います。大臣にお願いします。
  83. 永田俊一

    ○永田政府委員 私が答えることだと思います。  お答え申し上げます。  私どもといたしましては、政府でただいま提案させていただいております案につきましては、当事者のぎりぎりの負担を求め、やむを得ぬ措置としてお願いをしておりますので、削除ということは考えておりません。‘
  84. 久保亘

    ○久保国務大臣 今審議官も申し上げましたけれども、住専問題の処理は、既に数年にわたって、我が国経済、金融に与える影響の大きさから、政府もこのことに真剣に取り組んできたものでございます。そして今日、もはやこの問題が先送りできない深刻な状態に立ち至っていることを考え、やむを得ざる措置として、公的資金を投入することによって、この問題の解決に公的関与を行うことといたしました。  そのことにつきまして、皆様方に今、予算並びに法律案の御審議をお願いいたしているわけでございまして、今日まで国会におきましてもあらゆる角度から御意見を賜りましたが、私どもといたしましては、今、政府案として御審議を願っておりますものにかわる案は考えられない、こう思っておりまして、削除する予定はございません。
  85. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 次に、銀行等の母体行の経営責任の問題でありますが、実は私自身が、あのバブルのころも、国会の場でも、銀行の経営者の経営のビヘービアについて、いかにも問題だ、銀行法第一条に違反するという話までしてきた経緯がございます。昨年の予算委員会でも、銀行の責任の重大さについては、私自身もいろいろ言ってまいりました。  ただ、つい最近、大蔵大臣やら、あるいは事務次官も含めてでありますが、銀行の経営者にやめろという話をされておりますね。ちょっと見ますと、何となくたちの悪い総会屋みたいだなという印象を私は抱きます。そして、きのうの夜のニュースでもやっておりましたけれども、金融機関の責任の問題について、時期の問題についても、予算成立の時期をめどに責任を明確化せよということを銀行のトップの方に言っているようであります。  では、私は伺いますが、大蔵省はいつ、どのような責任をとろうとしているのでしょうか。
  86. 久保亘

    ○久保国務大臣 私は、マスコミの報道しておりますことを批判する気持ちはございませんが、伊藤さんほどの方がそのように受け取られるということを非常に残念に思っております。  昨日、事務次官が銀行協会の幹部と接触をいたしましたのは、私が国会で答弁していること、記者会見で申し上げていることを正確にお伝えした方がいいということで、銀行協会の会長に会って正確に大臣の言っておられることをお伝えしたいと思うがということでしたので、結構だと私は申しておきました。またその際は、国会における党派を超えての御議論の様子もよく伝えてくださいということを私は申し上げたのであります。  そして、その話の後、銀行協会の会長の方から、協会の、あれは幹部と言った方がいいのでしょうか、関係者を集めるのでそこで直接話をしてくれないかということを次官に言われたようでございます。それで次官が行ってお話をしたということでございまして、それで、間違いがないようにというので、私はけさこれは受け取ったのでありますけれども、私が国会での答弁や記者会見で申したことを、テープを起こして正確にお伝えしたようでございます。  その中には、私は、銀行の幹部に、そんな総会屋のような、辞任しろとか、そんなことを申しているものはございません。  私は、国会の論議も踏まえ、また、みずから調査できる範囲でいろいろと資料も見た上で、住専問題に関して、母体行の責任というのは非常に重いのではないか、単なる貸し手責任ということで済まない責任だと思う、そこをどう考えておられるのですか、そして、もしその責任ということをみずから考えられるならば、その責任について銀行の経営者としてどのようにお考えになるのでしょうか、みずから責任を明らかにされなければいけないのではないでしょうか、責任についての認識が一致すれば、それでは母体行として三・五兆の債権全額放棄で済むのか済まないのかということもお話ししなければならないと思っている、こういうことを申しているのであります。  マスコミでは、その部分が出てまいりますものですから、何か私が銀行法を盾にとって辞任勧告を行ったような印象になる表現もございますが、そこら辺は、私の真意をすべて伝えられていないなという気持ちも持っております。次官もそのようなことを正確に伝えることから始めたのでございまして、辞任を勧告したり要求したり、そのようなことは、出席者の銀行の代表の方もそのようなことはなかったということをコメントされておる方も何人かいらっしゃいまして、これはいろいろ受けとめ方も違うのかなと思っております。  また、私が、母体行も、母体行によって問われるべき責任は紹介融資の問題などをめぐってかなり銀行によって差があるということも思っておりますから、おっしゃったようなつもりで私がいろいろ大臣の立場でやっているということはございません。
  87. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 大蔵省についての責任をどう考えて、いつどういうふうにしようと思っておられますか。
  88. 久保亘

    ○久保国務大臣 大蔵省の責任と申しますと、その時々に大蔵省としては的確で十分な指導を行ったということでやってきたのでありますけれども、しかし、政治や行政にとって重要なことは結果責任でございます。それで、今この深刻な事態、先送りのできないこのような状況に立ち至ったその判断の問題、指導の問題、そういうことについての責任は今日決して軽んじてはならないと考えております。  そのためにも、この問題をしっかり処理して、そして、今後の金融行政というのはいかにあるべきかということをきちんとやること、そして、法的に問われる責任があればこれは司法にゆだねる以外にありませんが、道義的な責任、あるいは行政の判断の誤りとして国民に対して明らかにすべき責任、行政の責任などについては、今後私どもはこの住専問題の処理を進める中でできるだけ明確にしていくということで、このことは内閣においても申し合わせていることでございます。
  89. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 この責任については、私は一応この場では余りそれ以上あれするつもりはありませんが、私自身の認識ではこう思っています。  例えば銀行局長きょういらっしゃいませんが、銀行局長は、バブルのころに、私が当時、あれは土地特別委員会でありましたけれども、銀行の経営がいかに今大問題であるかということを申し上げて、そして、銀行にアクションをとらないと重大なことになりますよと言ったその御本人が、今銀行局長西村さんであります。これは昨年の予算委員会のときにも私は申し上げましたけれども、実はいろいろな重大な責任を持っていることは当然である、こう思っていますから、当然、大蔵省としてもそれなりの責任を感じて対処すべきものだ、こういうふうに思っております。それはまた御記憶しておいていただきたいと思っております。  それから、若干先ほどの話にも関連するのですが、来月すぐにはこの関連法案が出されるというふうに聞いておりますが、そのうちの一つに、金融機関の経営の健全性確保のための法律案が出されて、そこに役員賞与のカットを盛り込むというふうに言われておりますが、もしもそうなら、私のこれまた印象風に申し上げれば、民間と国ないし官との関係あるいはそういうこと等を考えたときに、一体これは本当にまともないわゆる自由主義国の法律なのだろうかと私は思ったりいたしますが、いかがですか。
  90. 永田俊一

    ○永田政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、現在、健全性確保法という形で提出の作業を進めているところでございますが、これにつきましては、昨年十二月の金融制度調査会答申を踏まえまして、今国会に金融機関の経営の健全性確保のために法律を提出すべく準備を進めているわけであります。御指摘のとおり、この中で、金融機関の経営の健全性を確保するための監督手法であります、客観的な指標であります自己資本比率に基づいた業務改善命令等の行政上の措置を適時に講じていきますいわゆる早期是正措置についても検討をしておるわけであります。  その際、発動の基準となる自己資本比率の水準とその是正措置のあり方についても検討を行っているところでありますが、今御指摘の役員賞与の件でございますが、一般的には、役員賞与のカットについては、役員賞与は剰余金の処分として行われております、内部留保を充実し、早期に自己資本の回復を図る観点から有効な措置となり得ると考えております。早期是正措置は、健全性確保のために自己資本比率の水準が低い金融機関に対して適用されるものでございますので、健全な金融機関については、市場経済のもと、自己責任原則に基づく経営が行われていくものと承知しております。  なお、類似の措置内容といたしましては、アメリカの早期是正措置におきましても役員報酬の支払いの禁止の措置が講じられているところでございます。  私どもとしては、客観的な行政の進め方の中のこの早期是正措置ということで御理解をいただきたいというふうに思っております。
  91. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 私は、これは今回の住専処理、全体のスキームも皆同じなのですが、あるいは預金保険機構のあの問題でも同じですが、本当に自己責任原則を貫いた形での日本のこれからの経済社会のあるべき姿を追求したやり方というふうには全然思っておりません。いわば、かつてよく言われてきたいわゆる護送船団方式等々、あるいは、行政が結構恣意的にいろんな業界を動かしたりというようなことの延長線上でいろんなものが考えられているということですね。だから、そういう意味で、今の問題についてもいわばその延長線上の発想から出てきているものだ、こういうふうに思っているものですから伺いました。ぜひまた参考にしていただいて、法案はまだこれからですけれども、考えていただきたいと思います。  それから、もう一つ伺いたいのですが、実はこの今回の問題は、先ほど母体行もいろいろあるという話が、審議官だったですか、言われたりいたしました。あるいは、住専自体も本当は物すごくいろいろ錯綜している。錯綜しているというのは、住専の実態も七社の中でいろいろ変わったりしております。そして、今回のことを考えれば、本当に日本が法治国家でしかも極めて理性的なことをやろうと思えば、私は、いわば会社更生法等法的措置をとるのが断然いいと思っております。私もそう思ってますし、我が党としてもそういうことを考えて先般も基本的な考え方を出しました。  ここで大臣にお伺いするのですが、この会社更生法の申し立てを金融機関、銀行等がやろうというふうになった場合には、大臣はどういうふうに思われますか。それは非常に望ましい話か、やってほしくないと思っているのか、それはぜひいい話だと、どういうふうに思われますか。
  92. 久保亘

    ○久保国務大臣 今日の政府側が御審議いただいておりますスキームは、これは当事者であります母体行、一般行、銀行と農協系金融機関、それに政府、大蔵省が加わりまして合意をした案でございます。この合意がなければこのスキームは成り立たないわけです。したがいまして、当事者のどこかが会社更生法でやる、こういうことになります場合には、このスキーム自体がもう成り立たないという前提に立つことになろうかと思っておりますから、今はこのスキームが合意で成り立っているわけですから、私どもとしては、これが今日の段階におけるよりよい最善の方策だという考え方をとっております。  それから、先生の党からの基本方針というのも、きのう委員会でもいろいろ御説明もございました。私どももそれを承っておりますけれども、例えば会社更生法というものを適用いたします場合には関係者の合意が必要となってまいります。そういったような問題はどうなるのか。それから、あの案の中でもやはり完全に民間の問題としてゆだねるということにはなっておりませんで、RTC、日本版のRTCを設置して……(伊藤(英)分科員「RTCの問題とは別ですよ」と呼ぶ)いや、そういうふうになって、そこで会社更生法という問題これは新進党の基本方針です。(伊藤(英)分科員「いや、私が言っておりますのはそれとは関係なくて」と呼ぶ)ちょっと待ってください。
  93. 保利耕輔

    保利主査 ちょっとお待ちください。
  94. 久保亘

    ○久保国務大臣 そういうようなことでありますから、会社更生法というものを純然たる民事の法的処理としてやるということは大変難しいものだと私は思っております。
  95. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 例えば株主とかそういうところが申し立てをすれば可能なわけですよね。そういうふうなことをやった場合にはどうでしょうか、銀行が申し立てをした場合には。
  96. 久保亘

    ○久保国務大臣 会社更生法は申し立てたけで可能でしょうか。私はそう思っておりません。(伊藤(英)分科員「できます、それは」と呼ぶ)
  97. 永田俊一

    ○永田政府委員 お答え申し上げます。  仮に、会社更生法でその申し立ての手続をするといたしましても、先ほど大臣が御説明されましたように、手続の開始の条件としては再建できるかどうかということがまず一つありますのと、それから、更生計画案を関係人集会で決議すること等が求められておるわけでございますので、決議自体が容易でないのではないか。また、決議されるとしても、それまでに相当の期間が費やされるのではないか。また、実際に今の案は、私どもの案は合意が既にできているというところ、基本的にできているところが前提でございます。したがいまして、これをもう一回やり直すという形になって、体力の弱い金融機関の長期間継続することによりましてその損失分担が確定しない不透明な状態が長期間継続することによりまして、さらなる問題を生じるものではないかというふうに考えております。
  98. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 時間もなくなってしまいますからこの問題についてはこれ以上申し上げませんが、私は、法的な措置でこういうものをはっきりとやっていく。そうすれば債権の保全もより図られることになる。そして、それぞれの責任も考えてやれることになる。いわばそういうことを大蔵省が嫌う、あるいは避けようとする方法はいかにも、いわゆる談合と言われますが、そういうような方向のアプローチをやっているにすぎないことだと私は思っております。またいっか機会があればお伺いをいたしますが、時間もなくなりますのでちょっとほかの、自賠責の問題についてお伺いいたします。住専の関係者の方は帰っていただいて結構であります。  自賠責保険の問題についてお伺いいたしますけれども、昨年の二月に、私は自賠責料率の保険料率を一〇%下げたらどうかという具体的な提案等もいたしました。その後どうなっているのか、ちょっと伺います。
  99. 福田誠

    ○福田政府委員 昨年の予算委員会委員よりそのような御指摘を賜りました。御案内のとおり、平成五年四月の料率改定時におきましては、平成五年度以降の予定損害率を一三九・七%と見込んでおりましたが、直近の検証によりますと、料率改定時に比べまして交通事故による死者数が減少したこと等から、平成七年度は一二六・七%、平成八年度は一二八・三%となっておりまして、それぞれ確かに九・三%、八・二%の改善となっております。  このように、損害率を見ますと当初の見込みに比べて改善しておりまして、御指摘のように保険料率を引き下げるという考え方もございますが、去る二月二日に開催されました自賠責審議会におきましては、次の理由から当面現行料率を維持するのが適当であるとされたところでございます。  第一点は、七年度、八年度の損害率の見込みは料率改定時に比べてそれほど大きく乖離しておらないということ、二番目は、もともと現行料率は大幅な赤字であること、三番目は、今後の収支につきましては、やや鎮静化しておりました交通事故発生件数が平成七年におきまして四%台の増加になるなど、予断を許さない状況であること等でございます。  なお、保険料率につきましては、今後とも審議会の御意見を賜りながら、低位の料率水準を安定的に維持できるよう努めてまいりたいと存じます。
  100. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 まず、今言われた二月二日に自賠責審議会が行われたということですが、その詳細な議事録を、後からで結構ですが私に届けてください。いいですか。では、まずイエスかノーだけ答えてください。
  101. 福田誠

    ○福田政府委員 お届けします。
  102. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 私の理解では、自賠責審議会でこの間の引き下げをしたときに、これから予定損害率といいましょうか、こういうものがどういうふうになる、それに対してどうなっているかということを恐らく丁寧に説明されていないのではないかと思います。今言われたように、実際には非常に改善をされているという話がございました。改善をされているならなおさら料率は引き下げてもいい。  今、前の分は幾ら残っていますか。そんなに残っているから、この間も御承知のとおりに平成六年度八千百億、この間三千百億、一兆二千億ぐらいも一般会計の方に貸しているのでしょう。そんなことをやっているからますます引き下げることにもならないし、しかも、どんどんよくなっていても、いつまでもそのお金を確保しておこう、大きな金額を持っていてユーザーには還元をさせずに持っておろうというような行動になるのでしょう。  私は、最近の住専に関する大蔵省の問題、あるいはエイズの関係の厚生省の問題あるいは、きのうの新聞にも出ておりましたけれども、環境庁も大気の公害の状況についての発表を隠しているとか、そんな話が出ておりますでしょう。今それぞれの中央官庁が、中央官庁と限っていいかどうかわかりませんが、少なくとも最近起こっている中央官庁は、それこそ憲法第十五条でしたか、十五条の、公務員は一体何をするのかということに違反しているとさえ言える状況です。  このユーザーに対する自動車の保険、任意保険の問題についてもそうですが、いっ還元するのですか。何兆円金を持っているのですか。こんなことを本当にいつまでも許していいのか。私はもう時間が余りありませんので、自分でもシミュレーションした数字については細かく申し上げません。一〇%でどうなるか、一二%引き下げたらどうなるか、一五%引き下げたらどうなるか、一七%引き下げたらどうなるかという数字についても、もしも必要ならば数字もお見せしますけれども、十分ぐらいできる。そんなことは皆さん方も、私の数値については恐らく大体承知していると思います。ことしの七月ぐらいには、あるいは夏ぐらいには引き下げたらどうですか。
  103. 福田誠

    ○福田政府委員 まず第一の点でございますが、当日の審議会には、私どもといたしましてかなり詳細な資料を提出して、御審議いただいております。  それから、ただいまの点でございますが、平成五年度の料率改定時におきましては、平成四年度までの累積黒字六千八百億円及び累積運用益一兆二千三百億円を活用して、平均一三%の引き下げを実施したわけでございます。損害率につきましては、先ほど申し上げましたように、当時の予定損害率より若干改善しておりますが、一二六・七%ということでございますので、この一〇〇%を超える部分、二六・七%につきましては、累積黒字等により補てんされ、契約者に還元されているわけでございます。  今後ともこのような改善傾向が続くとの確たる見通しが持てれば、計算上は、御指摘のように何%かの引き下げを行うことも理論的には可能と存じます。しかしながら、累積黒字額につきましては必ず料率の低位安定という形でユーザーに還元されておるわけでございまして、それをいつどの程度どのスピードで還元していくかということが問題でございます。余り急激に取りましてしまいますと、その後、急に料率が上がるというような事態も予想されるわけでございますから、その辺を審議会の御審議も経ながら判断させていただいておるわけでございます。  また、料率の安定化という観点から見ますと、先ほど申し上げましたように、最近の交通事故の発生状況等から今後の収支見通しは不透明でございますし、改善しているとはいえ現行料率が大幅な赤字料率でございます。そういうことでございますので、当面は現行料率を維持するのが適当であると考えております。
  104. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 大臣、この問題に大臣もお詳しいとは思いますが、この特会が膨大な金を持ったままなのですよ。それで、実は今の住専の問題、今のような状況の中でこの六千八百五十億円の税を使うということを、平気な顔をしてどんどんこれを国会でも与党が通過をさせて、そのままやっていくということがあったとしたならば、こんな不公平な、こんな社会正義にもとるようなことをやっていくとするならば、一般の国民からすると、私たちがなぜ税金を払うのだ、それこそ税金の拒否運動でもしたいよという動きが出るかもしれませんよね。そのくらいに私は深刻に考えるべき話だと思います。それが第一点。  今の自賠責の問題でも、こんないいかげんなことを政府がやっているなら、こんな自賠責はやめた方がいい。世界的に見たってこんな格好でやっているのは、そうたくさんの国がやっているわけではない。それなら全部任意保険でもいいじゃないか。国は勝手放題やって、しかもたくさん金が余っているのだけれども、それを余ったからといって一般財源の方に勝手に使ったり、勝手にやったり、しかも、それに猛烈に金がたくさん余っているにもかかわらず、それをユーザーに還元しようとすることについてやらない。こんな政府が何で信用できるのかというのが今の事態……
  105. 保利耕輔

    保利主査 質疑者に申し上げます。  質疑時間が既に経過しておりますので、結論をお急ぎいただきたいと思います。
  106. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 はい。  そういう二つのことを申し上げました。大臣、そういう意味で、これについての感想と、まあ感想はいいです。これからどういうふうに考えるか、結論をお伺いして、終わります。
  107. 久保亘

    ○久保国務大臣 伊藤さんの御意見として承りました。  特に住専問題の処理の方策につきましては、これは国の将来にかかっての責任ある方策をどのように考えるかという大きな政策上の見解の分かれるところ、そしてそのことのもたらす影響についての判断の異なるところかなという感じを深くいたしております。
  108. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 では、終わります。
  109. 保利耕輔

    保利主査 これにて伊藤英成君の質疑は終了いたしました。  次に、鮫島宗明君。
  110. 鮫島宗明

    鮫島分科員 新進党の鮫島でございます。  通告はしていないのですけれども、初めに住専の問題で一言だけ大臣の御所見を伺いたいのです。  先ほどあるいは予算委員会を通じて、大臣はいつも、今度の政府の処理案については、関係者の同意がなければこれはなかなかスムーズに発足するものではないのだということを繰り返しておっしゃっておられると思いますけれども、その関係者の中に国民は入っていると大臣はお考えでしょうか。
  111. 久保亘

    ○久保国務大臣 直接的には、この住専問題の関係者ということになりますと、債権者としては三つの分類がございます。それから債務者としては、住専からの借り手の方を指しておりますから、そういう意味で、直接的な関係者ということはそういうことに含まれる国民ということになるのだろうと思いますが、この処理方策については、これに公的資金を投入をするということに関しては国民の皆さんに直接関係のある問題でありますから、国会において御審議をいただいているということだと思います。
  112. 鮫島宗明

    鮫島分科員 住専問題については、また別の場で御見解を伺う機会もあろうかと思います。きょうは、大蔵省の造幣局東京支局の移転の問題についてお伺いしたいと思います。  久保大臣は、私の名字を聞くと、恐らく多少なじみがあるというふうにお感じじゃないかと思いますけれども、私の曾祖父、ひいおじいさんですけれども、三十五歳で城山で西郷さんとともに腹を切っていまして、その息子が東京に出てきて、縁あって私は今豊島区というところに住んでおるわけでございます。鹿児島と東京の豊島区とで同じ大蔵省を見たときに、御承知のように、東京都は地方交付税の不交付団体でございますから、やれ橋をかけてくれ、道路をつくってくれというようなことは言う立場にはございません。  しかし、私どもも、それなりに地域の発展を願い、地域の利益をしょっているわけでございまして、そういう立場から、地方交付税の不交付団体を選挙基盤にする議員の一人として、国の利益との関係でどういうことがあるかといいますと、きょう話題にするような大蔵省造幣局東京支局というのが池袋のど真ん中にいまだに存在し続けていて、御承知だと思いますけれども、サンシャインシティという六十階建ての池袋のシンボルと言える大きなビルがあるのですけれども、その横にこの造幣局が一万坪の土地を構えて、勲章をつくったりコインを磨いたりしているということでございます。  私は、豊島区に来る前に一九八〇年から一九九三年まで、つい最近まで、筑波の研究学園都市というところに住んでいたのですけれども、本題に入ります前に、筑波の研究学園都市というのがどういう都市なのかということを、国土庁の関係の方にお伺いしたいのです。  今、国の研究機関が幾つぐらいあって、国立の大学も含めて結構ですけれども、どのぐらいの数の公務員が暮らしているのかということをお教えいただきたいのです。
  113. 沼生哲男

    沼生説明員 筑波研究学園都市の現状でございますけれども、現在四十六の研究機関、大学等が立地してございます。そこにいます職員数でございますけれども、私どもの把握している数字といたしましては、約一万一千百五十人程度でございます。
  114. 鮫島宗明

    鮫島分科員 筑波大学の関係者も入ってということでよろしいのですか。
  115. 沼生哲男

    沼生説明員 そうでございます。
  116. 鮫島宗明

    鮫島分科員 筑波研究学園都市も、それこそ筑波おろしの吹くカラマツ林を切り開いて、ほぼ山手線の内側と同じぐらいの面積を研究学園都市として整備したわけですけれども、何もないところに夢の都市をつくるということで、関係者の御苦労は大変だったと思います。  やはり日本の頭脳があそこに集まって支障なく研究を続けるためには、教育とか医療だとか、その他さまざまの生活支援機能を整備しなければいけないはずですし、また、研究が円滑に行われるためには、研究に必要な資材の供給とか、あるいは情報提供も含めた研究支援機能というのも必要だと思いますけれども、そういう面での整備状況というのはどうなっておりますでしょうか。
  117. 沼生哲男

    沼生説明員 生活環境施設ですとか都市の基盤についてはかなり整備をされてきたというふうに考えております。  それから、ただいま御指摘の、研究とか試験に際しての支援機能といいますか、支援する産業につきましては、明確に私ども把握してございませんけれども、つくば研究支援センターが調査した調査によりますと、そういった支援するような産業につきましては、つくば市を含めた茨城県内では余り立地しておらず、東京の企業のサービスを受けているのが多いのではないかというふうに推測しております。
  118. 鮫島宗明

    鮫島分科員 確かに、国の研究機関の半分ぐらいが筑波に集積しているわけですし、行政との対応の必要もあり、また霞が関との連携も国の研究機関である以上必要であると思いますし、今お答えいただいたように、研究支援機能としても、特殊な資材とか機器についてはやはり東京から直接運ばないとなかなかうまくいかないというふうになると思います。  東京から筑波へのアクセスについて、科学博を契機として常磐高速ができたのは承知しておりますけれども、今後常磐新線の計画もあるやに聞いておりますけれども、近い将来、どのぐらい東京との往復とか行き来が便利になるのかどうか。  それから、研究機関の場合、やはり隔離されて余りのんびりした環境にあると、実は研究の側にいい刺激が入ってこないということがあって、そういう意味でも東京との連携というのは私は大事だと思うのですけれども、今後、そのアクセス面でどのように改善される計画がおありになるのかをお伺いしたいと思います。
  119. 沼生哲男

    沼生説明員 筑波研究学園都市は、先生御承知のとおり、東京の中心から北東約六十キロの距離にございます。現在の交通機関といたしましては、JRの常磐線、それから常磐自動車道が西側に位置しているというような状況がございます。  それから、ただいま御指摘ございましたように、平成十二年には常磐新線が筑波研究学園都市の中心部まで開通する予定と聞いております。さらに、本都市を通る首都圏中央連絡自動車道の整備も予定されているという状況にございます。  東京と本都市の都市間交通につきましては徐々に整備されてきているところでございますけれども、本都市の一層の育成整備の観点ということから、東京と直結した大量かつ定時性の高い公共交通機関の整備が必要と考えておりまして、常磐新線の開通等、公共交通機関の増強がぜひとも必要と考えているところでございます。
  120. 鮫島宗明

    鮫島分科員 あと一点だけ。  筑波に移転するときには、移転反対運動等もあってなかなか大変だったというふうに私も聞いておりますけれども、今、筑波の生活環境という意味でいえば、子供の教育とか医療とかいう意味で、普通に健康で文化的な生活を営む上で、特にある種のハンディキャップをしょった地域ということはないというふうに考えてよろしいでしょうか。
  121. 沼生哲男

    沼生説明員 本都市の建設当初につきましては、かなりいろいろな面で不便を感じたという点もあったかと思いますけれども、現時点におきましては、先ほど申し上げましたように、都市基盤の整備もされましたし、また、ショッピングセンターの整備、医療施設の整備、公園の整備、そういったような観点から快適な生活も十分可能な状況になっているというふうに考えております。
  122. 鮫島宗明

    鮫島分科員 造幣局の東京支局の移転の問題に話を移しますけれども、この問題は、昭和五十四年、昭和五十六年、昭和六十一年、平成二年の四回にわたり、この予算委員会分科会で取り上げられております。特に昭和六十一年、平成二年については、旧公明党の長田武士さんという議員が取り上げられております。  豊島区選出の議員は党派を問わず、この問題については継続的にしょった課題として対応することになっておりまして、私もこの問題をやらせていただきたいと思いますけれども、なぜあの地域選出の議員がこれほどこだわるのかといいますと、これは実に大変長い歴史がありまして、実は巣鴨プリズンの歴史とこの造幣局の歴史とが混然一体となっているというところがあります。  御承知のように、巣鴨プリズンというのは、さかのぼれば、ちょうど私の祖父が東京に出てきた明治二十八年ごろに石川島監獄の移転ということで、当時の北豊島郡巣鴨村というところに大きな、今で言う刑務所が移転してきたわけでございます。その後、さまざまな経緯がありましたけれども、昭和八年に初めて豊島区会が巣鴨刑務所撤廃に関する意見書というのを出しまして、それを受けて、国の方は府中に刑務所をつくって巣鴨刑務所を府中に移し、より小さな市ケ谷刑務所というのをこの巣鴨に移す。東京拘置所というふうに名前が変わったのが昭和十二年でございます。  このときに、約二十ヘクタールあった土地のうちの、東京拘置所というふうに小さく縮小して再編したことによって約三分の二ぐらいの土地があきまして、そこが、一部は民有地として開放され、また総合グラウンドとしても使われているようになっているのですけれども、ただ残念ながら、その空き地のうちの四分の一ぐらいに、昭和十四年にこの造幣局の東京支局というのができまして、それが今日まで続いているわけでございます。  その後、巣鴨刑務所というのは有名な巣鴨プリズンに名称変更になり、戦犯が処刑されたりしました。  あの大蔵省の敷地、巣鴨プリズン、それからこの造幣局のある敷地というのは池袋の中でも超一等地になっていまして、その後、今度は巣鴨プリズンの移転の請願がずっと戦後出まして、延々この区民の闘いの結果、昭和四十六年になってやっと東京拘置所は小菅の刑務所に移転して、その跡に今のサンシャインシティというのが昭和五十三年十月にオープンして、それから池袋の東側の発展というのが図られてきた。  したがって、あの池袋を、豊島区をよく知っている人間にとっては、古くは巣鴨刑務所の敷地の二十ヘクタール、これが徐々に民営化され、そこに民間の創意工夫が生かされる度合いの発展とともに池袋が発展してきたということを歴史的にもよく知っているものですから、いまだにあそこに造幣局が居を構えていて、もちろん、実際やっておられる業務は貴金属の国家検定という業務がありますから、確かにある程度便利な場所じゃないと、多くの業者の方々が国家検定を受けるために、余り不便なところだと行きにくいということがもちろんあることは承知ですけれども、池袋の超一等地に今でも一万坪の土地を構えて、そこで勲章をつくり、コインを磨き、貴金属の検定を続ける必要がなぜあるのかというのが、実は区民の側から見て得心がいかないというところでございます。  私は、これまでの議事録も読ませていただきましたけれども、大蔵省の造幣局東京支局があそこになければいけない理由というのを、積極的な理由がありましたら教えていただきたいというふうに思います。
  123. 山田孝夫

    ○山田説明員 お答え申し上げます。  造幣局東京支局は、御存じでございましょうが、造幣局本局は大阪にございます。それで、支局は本局機能の一部ということで、中央官庁の一部としての機能を代行しております。したがって、国会における質問並びに大蔵本省、日銀、総理府賞勲局、労働省、その他の関係官庁との連絡調整を常時行っております。したがって、筑波に移転するとすれば、現在地よりも時間がかかることになります。ということで、円滑な業務が遂行できなくなるというおそれがございます。  それから、議員よく御存じのように、東京支局におきましては貨幣と勲章の製造、それから貴金属の品位証明業務というのを行っておるわけでございますが、貴金属の品位証明事務につきましては、金、銀、白金などの貴金属の装飾品をつくっております貴金属関係業者が上野、浅草を中心に九百社程度ございまして、そのほとんどは中小零細企業でございます。これらの業者のうち百九十社程度が常時、毎朝証明を受けに来られます。個数として、その数は年間五百万個ということになっております。  それで、検定をいたしまして、検定と申しますのは、その貴金属の品位を試験いたしまして、それについてホールマークというか、一種の印をつけまして、これは例えば二十四金であるとかあるいは十八金であるというような証明をするということで、消費者利益のあれを、消費者のあれをするということでございます。  したがって、そういうことでございまして、仮に筑波に移転するとすれば、現在のところより遠方へ行かなければなりません。これらの業者の方々はほとんど車で来ております。ということで、私ちょっと考えますと、大体二倍ぐらいかかるということで、非常にこれらの業者の営業に大きな影響を与えるということでございます  それから、これは委員も御存じのことだと思いますが、当支局におきましては、営内、営内といいますか、支局の中に宿舎もございます。現在支局は約三百人の職員がございますが、そのうち約半数程度の人間が住んでおります。仮に移転するとすれば、その職員、従来とも移転はないということでして、生活あるいは人生設計に非常に影響があるということでございまして、我々としては現在のところで業務を続けさせていただきたいということでございます。  それから……
  124. 保利耕輔

    保利主査 答弁者に申し上げます。  質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。
  125. 鮫島宗明

    鮫島分科員 私はこれまでの議事録も読んでおりますと申し上げましたけれども、ほとんど言い分としては今までと変わらなくて、今の大蔵省の言い方は、かつて移転の対象となった国の研究機関の労働組合の言い分と全く同じでして、私は、いつから大蔵省が労働組合と同じ言い分をするようになったか疑問に感じますけれども、造幣局が何をやっているかというのは、実は、私ども何十年もあの地域に住んでいる人間は大変よく存じ上げております。  逆に、大蔵省は、じゃ豊島区のことをどのぐらい知っているのか、あるいはあの場所の持つ意味というのをどういうふうに考えておられるのか。東京都が「あなたのまちの地域危険度」という資料を出しておりますけれども、そういうのを見たことはございますでしょうか。
  126. 山田孝夫

    ○山田説明員 お答え申し上げます。  具体的なあれは見ておりませんけれども、豊島区は非常に、まあ何と申しますか、緑の少ない土地で、防災上問題があるという点は認識しております。
  127. 鮫島宗明

    鮫島分科員 そんな簡単な問題じゃなくて、市町村別に見た危険度というのが全部、震災が起こった場合にどうなるかというのを東京都が細かくまとめていまして、人的被害、火災の発生、それから建物の被害、避難の難しさ、この四項目で、平均を一とした場合にどのぐらい丸からはみ出すかということでスコアリングしているデータがあります。中野区と豊島区が山の生地区では突出しておりまして、特に人的被害とか建物の崩壊あるいは避難の難しさということについては、いわゆる東京全体の平均の二倍ぐらい危険度が高いというふうに言われているのが現状でございます。  それから、避難場所については、豊島区全体で、今大きい場所としては五カ所の避難場所が指定されていますけれども、豊島区内だけでは足りなくて、文京区に一カ所、それから北区、板橋区、練馬区にそれぞれ避難場所を指定して、そこをお借りして、そこに逃げ込むという設計になっております。しかも、その豊島区内にある避難場所としては雑司ケ谷墓地とか立教大学とか学習院大学とかありますけれども、このときの避難場所のスペースの設計は、一人一平米というような緑地しかとれない。一人一平米で詰め込んでもまだ七万人の行き場所がなくなっちゃう。  したがって、私は、実際大震災が起こったときにとても池袋から赤羽まで歩いて行けるとは思いませんけれども、その赤羽にも公園を一部借り、それから板橋の方にも借り、文京区にも借りというような形の非常にきつい設計になっておりまして、こういう地域の人たちの命と暮らしを守るという観点から見ると、震災が起こってからでは遅いわけです。  あそこの、造幣局がちょうど一万坪、平米数でいえば三万平米ぐらいありますから、単純な人数分でいえば三万人以上の方が一番中央部分の便利なところに逃げ込めるわけです。七万人の方々が区外に逃げるという現状から考えれば、あそこを、豊島区は御承知のように東京の中でも一人当たりの公園面積がまた一番小さい地域でもありますし、少しでも都市の中に健康と安全のための緑の空間をという大局的見地から考えれば、あそこにいつまでもスペースを占有しておくことのデメリットと、あそこの場所を区民に開放することのメリットとどちらが大きいのか。  先ほど冒頭に、筑波の話を国土庁の方から紹介していただきましたけれども、筑波は、先ほどの表現はむしろ控え目でして、今、日本で一人当たりの公園面積が最も多いところですし、あらゆるスポーツ施設充実し、また教育施設充実、そのレベルも大変高くて、かつては筑波に移転するのに反対していた労働組合の各分会も、今は逆に、筑波とそれ以外、筑波がよ過ぎるということが問題になっているような点もあるぐらいよく整備された地域であります。  また東京からの日常的な交流に支障を来さないということであの地域が選ばれたこと、それから近い将来に常磐新線の開通も見込まれるというもろもろの諸条件を勘案すれば、どちらが本当に国益にかなうのか、あるいは都民の命と暮らしを守るという本来の大義に素直なのかということを、この辺で、昭和五十四年以来一貫した御答弁しかいただけないということで私も大変残念に思っております。  環境は徐々に変化しつつありますし、筑波はどんどんよくなっている、東京の震災の危険度に関する関心は一方でますます高まっているということも考えれば、また施設も、ちゃんと調べればもう既に既存不適格というぐらい老朽化しているかもしれませんし、今の造幣局の中でお暮らしになっている三百人の職員の方々あるいはその家族の方々も、あの商業地域のど真ん中でそのまま生活を営むというのは必ずしも、私は生活環境としていい環境とも思えません。  それで、今池袋は割合目覚ましい発展を遂げておりまして、東京の中の商業地域としても、ついに渋谷を抜いて、今、銀座、新宿に次ぐ第三の商業地域になりつつありまして、豊島区民としては、あのかつての巣鴨プリズンの跡地の利用こそが池袋の発展だということを考えていることも御勘案いただければ、もう少し、私は、何も筑波移転をいきなり直接提案しようと思って言ったわけではありませんけれども、例えば、その候補地の一つとして筑波も視野に入れて前向きに考えることもそろそろ必要な時期に来たのではないかというふうに思ってお願いしているわけでございます。  ちなみに、私は筑波に十三年間住んでいたと申しましたけれども、現在の市長さんの木村操さんとも大変じっこんにしておりまして、御参考までに申し上げれば、つくば市側はいつでもウエルカムだというふうに言っていることだけ申し添えておきます。  最後に、このやりとりを聞いていての大蔵大臣の御所見を一言お伺いできればありがたいと思います。
  128. 久保亘

    ○久保国務大臣 今、鮫島さんのお話を聞きながら、実は、筑波にございます図書館情報大学の副学長が私の教え子でございまして、私も、筑波のことはよくいろいろ話も聞かされております。  また、現在の豊島区にございます造幣局には、これは私が伺っておりますところでは、防災避難場所としての役割機能といいますか、そういうものがここにございまして、そういう問題もあわせて考えながら、今お話がございましたようなことについて今後できるだけ関心を持っていろいろ考えさせていただきたいと思っております。
  129. 鮫島宗明

    鮫島分科員 もう時間が来ましたので、一言だけ。  確かに、造幣局も避難場所に指定されておりますけれども、建物がたくさん建っていて、敷地の割には避難場所として使える有効面積が狭くなっておりまして、実際、三万平米あるのですけれども、避難できる人口としては一万ぐらいということになっていて、宿舎も含めてあれだけ建物が密集している空間としてある限りは、やはり避難場所としての機能は十分に果たせないことも御承知いただきたいというふうに思います。  この課題は、あの地域選出の議員は、それこそ党派を問わず、社民党の方が当選してくれば、恐らくその人も、この移転が実現するまではこの問題を必ず主張し続けると思いますので、そういう課題だということを御認識いただければ幸いだと思います。  これで、私の質問を終わります。
  130. 保利耕輔

    保利主査 これにて鮫島宗明君の質疑は終了いたしました。  次に、広野ただし君。
  131. 広野ただし

    ○広野分科員 新進党の広野ただしてございます。  昨日、中堅ノンバンクのエクイオンが負債総額約二千九百億で東京地裁へ会社整理を申請と、事実上の倒産ということになったわけであります。住専以外のノンバンクの不良債権問題、これはもう非常に大きなものがあって、全体的には七兆円あるということでございますが、予算委員会でも大臣は、住専以外のノンバンクが破綻をしても公的資金は導入をしない、こういうことを明言されたと思っておるわけでございますが、この考え方には変わりはございませんか。
  132. 久保亘

    ○久保国務大臣 昨年の十二月十九日に前内閣において閣議決定をされましたときに、そのこともあわせて政府・与党の合意として決めてございます。橋本内閣もその考え方を引き継いでおります。そのような立場から、私が申し上げましたことは今おっしゃいましたことに変わりはございません。
  133. 広野ただし

    ○広野分科員 それでは、公的資金を投入することはないということで再確認をさせていただきたい、このように思います。  ところで、この住専の不良債権問題についての、債権回収の問題なのですけれども、一番国民の皆さんが言われるのは、阪神大震災で家が壊れて住宅ローンだけが残っている人、この方がもう必死になって住宅ローンを返しておられる。ところが、一方で、住専から数百億円、何千億という形で借りておられる人が返されないで、借り得というような状況で、高級車を乗り回す、あるいは豪邸に住むというようなことで、片一方は一生懸命返す、片一方はぬくぬくしている、こういうようなことがまかり通りますと、まさに社会正義というものはどうなるのだ、こういうことに一般の国民の皆さんは非常に腹を立てておられるということであります。  ですから、私はきちんとした債権回収というのをやっていかなければならない、こういうふうに思うわけなのですが、九三年の二月にできた共国債権買取機構、ここでは額面十兆円のものを大体四兆円で買い取って、ところが、今、回収されているものが三千四百億ですか、そういうような状況になっている。もしそういうようなことがこの住専処理機構で起こったならばどうなるのだ、全然回収されないではないか、何か国民の税金が結局どぶに捨てられていくことになるのではないかということを懸念されているわけで、そういう面では債権回収というのをきちっとやっていかなければならない、こういうことだろうと思うわけであります。  ところで、この住専七社の貸付債権、十三兆ちょっとですか、これは昨年の六月末時点におけるものである。ところが、その後も住専は業務を継続していたわけでありまして、その後、例えば正常債権三・五兆、それと第二分類のものが二兆円、こういうことになっておるわけですが、ずっと業務を継続しているわけですから、その中で飛ばしがあったり、肩がわりがあったり、あるいはどんどん貸し付けをすれば、それがまた不良債権にもなりかねない、こういうことがあるわけです。  ですから、果たして現在どうなっているのか。破綻をさせるということで、この一月、二月も、その後も業務はやっているわけでしょう。六月三十日から今までどういう状況になっているのか、もしおわかりでしたら、ちょっとお知らせいただきたいと思います。
  134. 久保亘

    ○久保国務大臣 詳細は審議官の方から申し上げた方がよいと思いますが、現在、住専の保有しております債権、これは現在まだ会社が生きておりますから、二千人前後の従業員とともに存在をしているわけです。その間に、今お話がございましたようなことが全くないわけではございませんで、いろいろなことが私どもの調査によっても出てまいっているわけであります。それだけに、できるだけ早く住専処理機構を発足をさせて住専の持ちます債権を全部処理機構へ引き取る、そしてその管理下にきちっと置いてしまうということが非常に急がれているのではないかと考えております。  もちろん、現在ございます債権の保全についても努力をしなければならないと思いますが、現在の段階におきましては、これは住専が独立して企業として存在しておりますから、やはりいろいろ困難なこともあると思っております。今のような問題も考えれば、資産の劣化や債権の保全ができないというようなことにならないように努力をしていかなければいけないと思っております。
  135. 広野ただし

    ○広野分科員 それで結構でございます。  それで、この間、結局損失額がさらに一千億円強ふえるかもしれないと、銀行局長でしたでしょうか、こういうような話があり、ここのところが非常に大事なところで、普通は民間会社が行き詰まりますと、利害関係者がよってたかって、言葉は悪いですけれどもいわばハゲタカのように、ある意味では優良資産からどんどんとっていくというようなことが起こるわけですね。そうしますと、本当の不良資産ばかりが残ってきて損失が大きくなってくる、こういうことが通例としてあるわけで、そういう面では、今大臣の言われた債権の保全命令といいますか、そういうものがきちっとなされませんと、昨年の六月末からどんどん損失額がふえる、こういう事態がやはりあらわれてくるわけですね。  ですから、果たしてこの現在提案をされているスキームがそういう債権保全命令がかけられるような、そういうスキームになっているのかどうか、そこの点をお答えいただきたいと思います。
  136. 永田俊一

    ○永田政府委員 お答え申し上げます。  先ほど大臣のお答えにもございましたように、今後住専処理機構へ債権の譲渡を行うまでの間につきましても債権保全措置の徹底を図るということが大事だと考えておりまして、この旨母体行等を含めまして強力に要請しておるところでございまして、これにより現在以上の損失が極力生じないよう全力を挙げたいというふうに考えております。当然、処理機構が買い取って、処理機構が処理をしていくという段階になれば、ここはきちっと処理機構でやってまいるということでございます。
  137. 広野ただし

    ○広野分科員 それで、アメリカのRTCは非常に債権回収がうまくいった。いわば四千億ドル近くのものが回収をされて、日本円でいえば四十兆が回収をされた。大体回収金額が簿価の全体の八十数%になるということになっているわけです。ところが、共国債権買取機構の場合は三%しか戻ってこなかった。  共国債権買取機構は、これは全くの民間会社ですから住専処理機構とは違うわけですけれども、本当に三%しか戻ってこないようなやり方、これはどういうことかというと、簡単に言えば、これもビジネス・ウイークにも出ていたと思うのですが、普通、日本の金融機関の不良債権の約一割ぐらいが暴力団絡みだというようなことが言われているわけです。  そうしますと、住専で例えば八兆円ぐらいの不良資産があったということになると、八千億が暴力団絡みのものになる。そこへ、責任を明確化しないままで税金を投入をするということになると、結局その税金は暴力団への徳政令のような役割を果たすということになるわけですね。ですから、きちっとした対応をしないと大変なことになってしまう。国民の皆さんもそこを非常に心配をしておられるわけです。  共国債権買取機構の場合は、ほとんどが任意売却というようなやり方でやっている。相対取引でやっているわけですね。これではやはりどうしても、そういうやみの世界の人たちが妨害に入るというようなことで、なかなか売却がうまくいかない、こういうことであります。ですから、やはり競売にかけていくということをどんどんやっていくことが一番大切なことではないか、こう思うわけですね。ところが、競売にするときには裁判官が足りない、あるいは執行官が足りない、こういうことであります。そこの手当てはどういうことになっておりますか。
  138. 永田俊一

    ○永田政府委員 お答え申し上げます。  お尋ねは、競売の執行官ということでございますので、私どもはこの処理機構の方から見まして、お尋ねのとおりいろいろ、競売の手法も使い、あらゆる手段を使って強力な回収を預金保険機構と住専処理機構が一体となってやっていくということでございます。競売の執行官等の強化といったものにつきましては、昨年の、これは私どもの方の所管ではありませんけれども、補正予算等でもある程度強化されておるということを聞いておりますし、私どもも所管の省庁にはそういうことをさらにお願いをしていきたいというふうに思っております。
  139. 広野ただし

    ○広野分科員 いずれにしても、やはり司法の力を使って強制執行をしていかないと、そういうことができるような競売をどんどん入れていかないと、これはもうなかなか暴力団の妨害を排除できないということがありますから、司法の人員をふやすとかそういうことをやりませんと、もう人員が足りなくて二年ぐらいかかってしまうとか、そういう問題がある。ですから、そこのところも非常に大切なことではないか、このように思っているわけです。  ところで、この住専処理機構に住専七社から三兆五千億の正常債権と第二分類の二兆円というものを譲渡することにするわけですね。そうしますときに、債権譲渡に伴ってはいろいろな法律的な問題が起こる。これがいわば賠償請求権の問題だと思うのですね。特に国民の皆さんが心配をしておりますのは、住専の経営者が非常に高給を取り、そして退職金もたくさんもらっていった。こういう中で、時効の問題がありますから、五年間の時効ということを考えますと限度があるのですが、やはりそういう人たちのツケが住専にたまっているわけです。いわば掃きだめみたいになっているわけですね。  ですから、そこをさかのぼってでも賠償請求をする、こういうことをやらないと、住専の高給を取った、あるいは退職金をたくさん取った経営者というのはどうなるんだ、こういうことだと思うのですが、大臣はどういうふうに考えておられますか。
  140. 久保亘

    ○久保国務大臣 債務超過になりながら経営者が多額の報酬を受け取るというようなことは問題だと思っております。特に、住専が破綻のおそれが出てまいりましてから多額の退職金などを山賊の山分けみたいにして持っていったというようなものに対しては、私は、それらの事態を明確にしながら、そのことに対して損害賠償の請求が行われなければならない、こう思っております。これは住専の経営者に課せられる社会的な責任であろうと思っております。
  141. 広野ただし

    ○広野分科員 住専七社から住専処理機構へ債権譲渡されますね。そのときに、賠償請求権は移りますか。どうなりますか。
  142. 久保亘

    ○久保国務大臣 債権を住専処理機構に移譲いたします際に、特定できる損害賠償請求権は明確にして移ることになると思います。しかし、私どもとしては、今後回収の仕事をやってまいります中で、これは会社に損害を与えているのではないか、これは賠償請求すべきだというようなものが明確になってまいりました場合には、これらのものに対しても損害賠償請求権を持つということを条件にして債権を引き継ぐ、こういうことにしたいと思っております。
  143. 広野ただし

    ○広野分科員 大臣から非常に力強いお答えをいただいたのですが、ですから、債権譲渡の際に、ぜひ特定項目の中に、経営者責任を問う、そこのところをきちっと入れていただきたいと思うのですね。何も特定しませんと、包括的な形のものでありますと、どういうことをやっていいのかわからない。しかも、法制局も言うとおり、包括的な賠償請求権が移るわけでは決してありませんから、その譲渡の際にきちっとやっていただきたいと思いますが、そこはお願いできますか。
  144. 久保亘

    ○久保国務大臣 そのように心がけてやりたいと思っております。
  145. 広野ただし

    ○広野分科員 それと、昨日、小川事務次官ですか、母体行の経営責任についてお話があったということであります。私は後でもちょっとお話ししますが、大和銀行事件で、このとき、あれは千百億ですかの損害をもたらし、しかもアメリカから撤退をしなければいけない、こういう中で経営者が責任をとった、こういうことであります。そういうことを考えますと、住専のこの八兆円にも及ぶ損失ということを考えると何をか言わんやということだと思います。ただ、もちろん、行政責任のある大蔵省がいろいろととやかく言うのは私はどうかなと思いますが、大臣はどんどん言っていただきたい、こういうふうに思うわけであります。  経営者は経営責任並びに道義的責任をとらないと非常に、国民の目から見て、何だ、母体行が紹介融資なんかをして、それが九〇%が焦げついて、優良案件は自分たちがとって不良案件を子会社に押しつけたのではないか、こういうことをみんなやはり思っているわけですから、その点、再度大臣の明快な答弁をお願いします。
  146. 久保亘

    ○久保国務大臣 私は、通常の債権者としての貸し手責任で母体行の責任は終わらないということを当初から一貫して申し上げてまいりました。そして、母体行は、設立、出資、人事、経営、融資、こういうことに深くかかわってきている、この責任を回避して母体行は責任を果たしたことにならない。したがって、そういう責任を感ずればこそ、三・五兆の債権全額放棄に応じたということはわかるけれども、これで済んだということにはならないということを私は申しているのであります。  それで、国会における、もう党派を超えての皆様方の母体行に対する責任追及の御意見もよく伺いました。それから私自身も、答弁でも記者会見でもそのことを申し上げてまいりました。  ただ、法的に追及できることがあればこれはきちんとやろう、しかし、協議によってその責任をとってもらうこと、負担をふやしてもらうということについては、相手が合意する、つまり協議の土俵に乗って話し合うという条件をつくらなければいけない。そのためには、母体行がやはり国民に対して申しわけない、責任が重いということを感じてもらうことが最初であるということを私は繰り返し申し上げてきたのであります。  小川次官も、そういう国会の審議状況や私の会見における発言を整理をされまして、銀行協会側に誤って伝わっているということがあればよくないということで、それを昨日伝えられたということでございます。まだ私どもの方からこうしろというようなことを強制する立場にございませんので、母体行の責任については非常に重いものがある、だからそのことにしっかりみずからの判断においてこたえてもらいたいということを私は今申しておりますが、母体行責任というのは住専問題の解決に当たって大変重要なことであると思っております。
  147. 広野ただし

    ○広野分科員 ぜひ大臣のその点の御努力をお願いしたいと思います。  ところで、農協の系統の経営責任という点については、大臣はどういうふうに思われますか。
  148. 久保亘

    ○久保国務大臣 農水省がお答えになるのが至当かと思いますが、私も予算委員会における答弁でも申し上げてまいりました。今度の問題で、母体行責任主義を主張するだけで、全く系統金融機関に責任がないなどということはない。系統金融機関はやはり、金融機関の経営判断という点において、貸し手責任は、今後の金融行政が自己責任原則の確立という立場を主張している以上、この責任は免れることはない。だから、やはり系統金融機関も経営上の貸し手責任ということについては重く受けとめ、その責任に対応できる自己改革が求められているのではないかということを私は強く主張したいと思っております。
  149. 広野ただし

    ○広野分科員 大臣の答弁を重く受けとめさせていただきたいと思います。  ところで、本日、アメリカの大和銀行ニューヨーク支店、昨年から不祥事がございましたが、そのことについて、司法取引に応じて、日本円でいくと三百四十億ですかの司法取引に応じたということであります。  私は、昨年来あるいはそれ以前からの大和銀行の不祥事について、非常に重大な事件だ、このように思っておりますが、その中で、昨年七月二十四日あるいは八月八日、そしてその後の、大蔵省がアメリカの連銀への連絡等について一カ月ルールを守れなかった。どうしたのか、それを守れなかったということなのか、知らなかったのかよくわかりませんが、大和銀行は非常に厳しいこの現実を受け入れざるを得ないということになりました。  ところで、相談にあずかった大蔵省、この大蔵省の大和銀行事件についての責任、この点についてはどう思われますか。大臣にお願いをしたいと思います。
  150. 永田俊一

    ○永田政府委員 大臣のお答えの前にちょっとお答えさせていただきます。  御指摘の大和銀行の事件でございますけれども、今回の米国の処分はあくまでも大和銀行自体の行為に対して決定されたものでありまして、日米金融監督当局間の通報の問題とは別であるというような認識を持っております。  この一連の事件を契機といたしまして、金融機関は、自己責任原則のもとでリスク管理能力を高めることが求められております。個々の金融機関がリスク管理、内部管理のあり方を改めて見直す必要があると考えております。  御指摘のように、当局といたしましても、今後、外国金融当局との一層の緊密な情報交換に努めますとともに、海外拠点に対する監督・検査の充実等を図るために、これらの課題について局長クラスから成る委員会において議論を重ねた結果、昨年十二月二十六日に、今後の金融検査・監督等のあり方と具体的な改善策ということを取りまとめたところでございます。当局といたしましては、当該報告書の諸措置につきまして法令改正等所要の手だてを講じていくとともに、今後とも、より一層金融機関の健全性確保と金融行政の信頼回復に努めていくこととしたいと思っております。
  151. 久保亘

    ○久保国務大臣 日本時間で本朝七時半でありますか、ニューヨークの地裁におきまして司法取引が成立したという報告を受けました。正確には記憶いたしておりませんが、二十四項目ぐらいの内容について、十八項目について罪状が確定するということになって、三億四千万ドルの罰金が確定することになったと報告を受けております。  司法の判断につきまして私が今直ちにコメントする立場にございませんが、このような有罪の判決が司法取引によって確定をいたしましたことは大変遺憾な、遺憾と申しますのは、このようなことがありましたことが大変遺憾なことだと考えております。  また、このような遺憾な事態を引き起こしました大和銀行に対する監督の立場にございます大蔵省といたしましては、大変残念に思い、またその責任を感ずるところでございますが、アメリカにおけるこれらの事項に対しての報告義務等に違反したばかりでなく、その後のいろいろな業務上の扱いについても問題がございましたことについて、大蔵省の指導監督上の責任もまた免れないものと考えております。これらのことに関しましては、今後、内部管理の体制等を強化するよう指導をしていかなければならないと思っております。  なお、この司法取引に当たっての合意の文書等につきまして、詳細まだ私も目を通しておりませんので、詳細に目を通しました上、今後考えるべき課題については適切に、速やかに検討をしてまいりたいと考えております。
  152. 広野ただし

    ○広野分科員 この大和銀行事件あるいは住専の問題、金融機関の不祥事が続いておるわけですが、やはり基本的な原則ということでは、護送船団方式ということではなくて自己責任原則というものを明確にしていかないと、もたれ合いの中では国民は絶対納得をしない、私はこのように思っておりまして、住専問題につきましても、予算から国民の税金分六千八百五十億は削除していただくということをやはり再度要求させていただきまして、質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  153. 保利耕輔

    保利主査 これにて広野ただし君の質疑は終了いたしました。  次に、吉岡賢治君。
  154. 吉岡賢治

    吉岡分科員 私は、公的財政支援のあり方と、そして地震災害ということでお尋ねをしたいと思っています。  今、神戸を中心とする阪神・淡路大震災の被災地では、多くの団体あるいは個人が公的支援措置の拡大を求めています。ここにありますだけでも、自治体の議会の皆さん、この間も、早朝六時半に大蔵省の前にバスで着かれて頑張っておられました。また、法曹界の皆さんとかあるいは医師会の皆さん、生活協同組合の皆さん、地元のNGO救援連絡会議の皆さん、そしてマスコミの皆さんとか、あるいはあすはまた連合兵庫の皆さんがお越しになるというような状況でございまして、まさに現地を歩いてみましてつくづく感ずるのは、やはり住宅問題でございます。     〔主査退席、越智(通一主査代理着席〕  私は昨年、発生の直後十八、十九日と現地を、芦屋、西宮そして神戸と自転車で回って、炎と煙の中を歩いておりました。今回も、一年を経て、皇太子がお越しになるということで県の方から御案内をいただいておりましたが、私はそこには行かずに、現地の長田町、兵庫で、豚汁をつくりに行ったときに話したおばちゃんや、そして現地を訪れたときの方々とお話をしてまいったところであります。  こんな事例が出ておるのですね。兵庫の中の仮設住宅にお住まいの独居老人で、おうちに行っても電話がないのですよ。災害のときに電話が大変活躍したということがある。お年寄りにとっては命だと思います。その電話の基本料も払えないから取っ払ってくれと言って取ってもらったのだというおばあちゃんのお言葉であります。  そしてまた、周辺の自治体、こういうところに行ってまいりますと、一年間ですよ、一年間たって出ろと言われたらどうなるのでしょうか。あいている仮設住宅に入ってくださいと言われるだけですね。私たちは心のケアといいますか、そういうものが必要なんですよ。新しいところに来てやっと傷をいやし、生活を始めた。また新しいところに行くのですか。せめて二年間なら二年間ぐらいにしていただけないですか、こういう深刻な話を聞いてくるわけでございます。  そう考えてみますと、いかに住宅という問題が非常に重くこれからのしかかってくるかということは論をまたないと思います。まさに被災者の表情は暗いと言わねばなりません。とりわけ家屋の崩壊、そういうことによって、ローンを持っておられて、さらにダブルローン、こういうことになりますと一層の重圧であろうと思います。  国の方では、支払いの延期だとか、あるいは金利の引き下げ、利子補給、復興基金でやるというように言っていただいておりますが、そういうこととか融資の拡充、こういうことを暫定措置としてとられている。しかし、それは先延ばしされるだけでありまして、深刻な社会問題にこれからなってくることは論をまちません。  支払い能力がなくても、借金は借金です。容赦のない取り立てに責められるようなことは必然であります。結局、夜逃げか自己破産をすればいい、こういうことに追い詰められていく人たちが出てくることは目に見えています。今は支払い延期というふうになっていますからいいのですけれども。  そういう意味で、国民の皆さん方の善意による義援金、こういうものも、例えば、普賢岳の関係では一千万円、北海道の南西沖地震では一千三百八十万円、阪神・淡路大震災の被災地の方々は四十万円、こういうことで、住宅の建設に対する意欲とか、頭金さえ払えない、こういう実態があるわけであります。まさに、家や資産というものを喪失し、今、日本の繁栄の谷間に落ちた人々、こういうふうに考えなければならないと思っているわけであります。  私は、そういう意味で、今、地震国日本の今後を考える場合に、安心していけるような保障体制というものが築けないものだろうか、そんなことを思いながら、公的支援のあり方について何とかそういう方向を求められないのかということを感じている次第でございますけれども、御見解をお聞かせいただきたい、こう思います。
  155. 久保亘

    ○久保国務大臣 地元の御出身の吉岡さんの本当に政治家としての思いを込めての御発言でございまして、私もよく理解ができることでございます。  私も、御承知のように、昨年震災が起こりました直後に与党三党の震災対策本部をつくりまして、その本部長を今度閣僚になります直前まで務めてまいりました。現地にも通算五回出向いて調査もし、また、地元の方々の御意見も伺ってまいりました。  今のお話でございますが、今度の震災につきましては、現行の法体制において可能な救援、復旧、復興の対策については政府としても最大限の努力を心がけてまいったと思っております。三兆四千億に及びます国費の投入もいたしてまいりましたし、また、総理大臣も先般神戸を訪れました折に、特に今お話がございました住宅の問題について切実な現地の声を聞いて、約束もして帰ってまいりました。  閣議において、所得の低い方々の公営住宅の家賃の支払いについて知恵を出せ、こういう御指示もございましたし、また、震災復興のための基金の捻出についてもさまざまな工夫を凝らすように関係省庁に指示をされたところでございます。また、政府としては、この対策のために十六本の特別立法も行ってまいりました。  しかし、なお、私は、それで被災者の皆さんに対する対策が十分であるなどとは考えておりません。ただ、今日までは個人補償を自然災害について行うという法制はないわけでございまして、その点が大変に厳しいところだと思っております。今後も、可能な努力がどのようにしてできるか、首相の指示もございますし、全省庁においてそのことを考えていかなければならないことであろう、このように思っております。  吉岡さんが申されましたその御趣旨は、私どもも十分に理解できるところでございます。
  156. 吉岡賢治

    吉岡分科員 ありがとうございます。  ぜひひとつ考えていただきたいのですが、私は、何としても阪神・淡路大震災の教訓をきちんと生かさなきゃならぬと思っています。そういう意味で、日本の憲法もあるわけでありますから国民の生活を守るということは当然のことというように思っておりますし、今申し上げたように、住宅は最重要課題だというように今回の地震を通してはっきりしたと私は思うのです。災害救助法の問題にいたしましても、その施策に限界もあるだろう、こういうように思います。今、いみじくも大臣がおっしゃいましたように、個人補償については現行の制度の中では無理だということでございましょうけれども、特に私有財産の問題となりますとそうなってくるかと思いますが、少しくそれが限界だというふうに言い切らずに、考えるというふうに言っていただきましたので……。  私は、実は昨年の二月七日の日に建設委員会で質問させていただきました。当時の建設大臣が野坂大臣でございました。その方に、私は、公的な買い取り機構をつくってはいかがですか、いろいろな施策を駆使してみても結果として集合住宅の問題ではいろいろな制約も出てくる、しかしその権利を買い取って次のローンに備えていけるような方向をとってあげたらいかがか。  あるいは、戸建ての部分につきましては、例えばお年寄りで、家を建てられないのですという方がいらっしゃるわけです。しかし、そこには土地がある。土地を買い上げて、そして建てていただく。さらには借地料としてはその機構がもらえばいいのだからというようなことを申し上げたのですが、そのときに、最後の方で大臣が、いろいろな問題があるとしても、住宅の公的な買い上げ機構というものも検討していかなきゃならぬ、それを進めていくのが政治であるというふうに私の質問に答えていただいておりますので、その辺の検討がどの辺まであったのかということについて、建設省の方にお願いしたいと思います。
  157. 内田俊一

    ○内田説明員 住宅の再建支援策等、その中での買い取り制度の問題についてでございます。  住宅の再建につきましては、先生の御指摘にもございましたように、融資、利子補給制度についてさまざまな施策を講ずる中で、少なくとも当初の五年程度は住宅建設に伴う費用の負担がほとんど生じない、そういう中で、その間生活全体の再建に取り組めるよう支援体制を整備したところでございます。  さらに、支援の一環として買い取り制度という議論がなされまして、先生御指摘ございました二月七日の建設委員会で、建設大臣あるいは住宅局長が答弁をいたしております。その後、私ども議論したわけでございますけれども、一般的な条件の中でさまざまなケースについて買い取りで対応することはやはり困難だと考えておりまして、特に被災マンションの再建を円滑に進めていくために、必要な場合に住宅供給公社が積極的に事業に参加をしていく、そしてその底地を買い取っていく、こういう方式で対応しようということで、今具体的に被災者と相談もさせていただいているところでございます。
  158. 吉岡賢治

    吉岡分科員 兵庫県が提唱しております新しい住宅地震災害共済制度の創設ということでございますけれども、これは、私は、ある意味でぜひ国の方も真剣に受けとめていただきたい、こう思っているわけでございます。  といいますのも、先ほどもお話がございましたように、基本的に私有財産についての公的資金の導入ということはやらない。ある意味でそれは私はよくわかるのです。だからといって放置するということもできない。とするなら、兵庫県が言っておりますのは、やはり第三セクターで、いわゆる国民皆保険的、いわば自動車の自賠責のような形で、家の方は家として家財にもということをお考えいただきながら新しい方向をとるという提案をされております。いろいろな制約条件があることは間違いございません。  私は、過日、大蔵省の保険二課の方にお伺いしましたら、吉岡さん、そういったって、今地震保険があります、それも再保険制度の中でやっておるのですから、それを活用してくださいというふうにおっしゃるのですね。  しかし、それでは余りにも私は政策的にも貧弱ではないかという気がしてならぬわけであります。社会の成熟化に伴いまして、国民の要求というものが質、量ともに高まってきておりますし、ある意味で、社会保険や社会福祉、こういった一般的な社会保障の枠を超えて、新たな大災害など非常時に備える総合的な社会政策というものを確立する必要があるだろう。そのことが、やはり今回の大震災の中で我々が教訓として受けとめてやっていかなきゃならぬことではなかろうかというように思っているところでございます。  大臣の方で、兵庫から出されておりますものについて見解をお聞かせいただければありがたいと思います。
  159. 福田誠

    ○福田政府委員 お答えを申し上げます。  兵庫県の提唱しておられます地震共済保険制度でございますが、その内容を拝見いたしますと、まず問題としては、すべての住宅所有者等を強制加入とするような負担増を多くの国民が受け入れるというコンセンサスが果たしてできるかどうか。一生に一度あるかどうかという地震でございますので、そのようなコンセンサスが成り立つかどうかという問題がございます。  それから、保険料率でございますが、現行の損保会社の行っております地震保険は、利潤を認めず、可能な限り低い料率を提示しておりますが、兵庫県の提案しておられるシステムは、民間の損害保険会社の行っております料率よりもさらにはるかに低い負担機能するとされておりますが、本当にこのような仕組みで保険制度として成り立つのかどうか。  例えば、過去の地震データに基づく被害想定額を過小に積算している可能性があるのではないかというふうに考えられます。それから、損害査定につきましては、地方自治体の職員が行うというふうにされておりますけれども、いざ大地震が発生した場合に、そのような混乱の中で自治体の職員等が迅速に対応できるか等々、いろいろな問題があると考えられます。  したがいまして、この点につきましては、さまざまな角度から極めて慎重な検討が必要ではないかというふうに考えております。  なお、現行の地震保険制度でございますが、阪神・淡路大震災等を契機といたしまして、各界からの御要望、御指摘を踏まえまして、今回、引受限度額の引き上げ、家財の損害認定方法の改善等を行うことといたしまして、本年一月一日から新しい制度として実施いたしておりまして、何をおいても、今後とも広報等も充実いたしまして、地震保険の一層の普及率向上、拡大に努めてまいりたいと考えております。
  160. 吉岡賢治

    吉岡分科員 そう言われるだろうと思いますけれども、神戸市で現実に入っておられた人は、地震保険には三%、最大と言われる東京で一八%です。保険に入れる人はいいんです、四万、五万を年間払える人は。冒頭に私が言いましたように、一台の電話の基本料さえ払えないよという人が現実にあらわれているという実態は、私はやはり見詰めていただきたいというように思っているわけです。  コンセンサスの問題ですと言われましたね、先ほど。今ほどコンセンサスが得られやすいときはないんじゃないですか。国民の皆様方に、国民皆保険、月千円、そして補償が、いわゆる十七万円掛ける平米数というふうになっていますから、大体平均でいきますと一千万。コンセンサスが得られないというなら、いつ得られるのですか、そういうことについて。それが一つ。  もう一つ言わせてください。そして、判定員の問題、今判定員がいないから困っているのでしょう。私もこのことはちゃんと質問していますよ、あのときに。判定員をつくっていこうと言っているんです、この中で。  それから三つ目の問題、再保険制度というのがありますが、今の仕組みでもやっておられるわけです。国もこれに関与して、第三セクターでいくという方向でございまして、それは一時、本当に大きな地震が起こった場合には、一兆を超すようなことが起こった場合には、やはり国の方から、いわば財政的な融資を受けるということがあっていいのじゃないでしょうか。私は、そんなことも含めて思っております。  何も兵庫のことをこのままやってくれと言っているのじゃないんですよ。このことは、一つの新しい、我々が安心できる生活の保障システムとしてこれから十分考えていかなきゃならないことではないのか。とするなら、これを検討素材にしてやっていただけないかということを申し上げておりますので、再度お答えいただきたい。
  161. 福田誠

    ○福田政府委員 まず最初に御指摘の、料率が月一千円程度というお話でございますが、まさにこの辺につきましても、どのような保険数理に基づいて計算されているのか、これによって兵庫県のおっしゃるような保険給付がなされるのかどうか、その点を先ほど御指摘申し上げたわけでございます。  また、強制加入についてのコンセンサスにつきまして、これは何ともわかりかねるわけでございますが、現行の地震保険につきましても、みずからの財産については自分で守るという選択をされている方も多うございますので、すべての住宅所有者に強制できるかどうかについてのコンセンサスについて申し上げたわけでございます。  また、現行の地震保険料でございますが、申し上げるまでもございませんが、通常の火災等の被害に比べますと、地震は一たん発生すれば広範囲に大規模な災害が発生いたしまして、被害規模は比較にならないほど大きいわけでございますので、地震保険の担保するリスクは火災保険等に比較して大きくなるわけでございます。それに対する料率は相対的に高いものとならざるを得ないわけでございます。現在の地震保険の料率は、中立機関である損害保険料率算定会によりまして、合理的、科学的な手法により予想される損害額を算出し、さらに取扱事業者の利潤を認めないという、可能な限り低廉な水準となるように設定されております。  そういう意味で、一般的に、民間保険の考え方でございますが、これは保険金額に応じた保険料を負担し合って相互扶助を行うものでございますので、格別、低所得の方の負担を軽くするような社会保障的な性格を持たせることは困難ではないかと考えておるわけでございます。
  162. 吉岡賢治

    吉岡分科員 今みずから御回答いただいたように、低所得者層を含めて大変困ったことになってきているんです。先ほど言いましたように、非常に深刻なんですよ。そういうところで、金持ちの皆さんは堅固な住宅を建てて、リスク負担はしないわというふうに言われるかもしれません。低所得者は粗末な家でリスクが高いし、あるいは保険料も高くなるのではないかというようなことも出てくるわけですね、現実に現在の保険制度で。  そうなりますと、一体どうなのか、できないよということだけでなくて、例えば先ほど大臣が検討の余地ありというふうにおっしゃっていただいているわけですが、日本の安全保障、社会保障、それと並んで生活の安心保障、こういうふうなことを真剣に我々が今政治という立場で考えないと、本当に今回の震災の教訓として後世に残せることにならないのではないかということを私は真剣に考えているわけであります。  世界で一番地震が多い危険な国日本。とすれば、今そういう方向での検討をやる最大のチャンスが来ているというように思うわけでございます。現行法の中でできない、これで言い切ってしまったら、これから我々の社会の発展はどこにあるのかということにも相なります。  ぜひひとつ、その点について大臣の御見解をお尋ねしたいと思います。
  163. 久保亘

    ○久保国務大臣 昨年の十二月六日だったと思いますが、当時の関係閣僚数名の方々と一緒に、与党の代表として神戸へ参りました。その際、地元の各界の代表の方がかなりたくさんお集まりになりまして、いろいろとお話を伺いました。その際、貝原知事からのお話であったと思いますが、地震共済の問題についてのお話も伺いました。  私どもも、その発想については、今度の不幸な経験の上に立っての御提言としてよく理解ができます。しかし、この問題については、制度として国民皆保険でこの共済の制度をつくっていきますためには、やはり多くの問題もあるという専門的な関係者からの意見がございます。  これらの問題を、どのような調整が可能なのかということについて、絶えず前向きに、前を向いて考えるということは、今吉岡さんがお話しになりました政治の責任といいますか、政治の発想でなければならない、その点については私は同感でございますが、今直ちに、それじゃこのことについて私の方の責任で実現が可能でありますとお答えするには、まだ少し問題が多過ぎるように思っております。
  164. 吉岡賢治

    吉岡分科員 今大臣がお答えになりましたように、現実にやるとなるといろいろな問題があります。この兵庫の方式はすべからく正確にやられているし、これでどんずばりやるんだなどということを私は言っているわけではないのです。  そうじゃなくて、そういう発想の中で、大蔵省としても十分お考えいただいて、そして、新しい日本に向かって一つの方向をつくり上げていくんだということで、内部を検討しながら、不十分なところは補い、そして政策として立案していただけないかということをお願い申し上げ、そして、それが被災地の皆さん方の深刻な問題にこたえる道であるということを私は思い、一政治家として真剣に取り上げなければならない問題だと思って発言させていただきましたことを申し上げて、今後の検討をお願いして、終わりたいと思います。
  165. 越智通雄

    越智(通)主査代理 これにて吉岡賢治君の質疑は終了いたしました。  次に、青山丘君。
  166. 青山丘

    青山(丘)分科員 各論に入っては恐らく審議官から御回答があると思いますので、総論で大臣に一問だけ、大臣がどう認識しておられるかお尋ねしたいと思います。  一つは、最近の日本経済状況、大企業を中心に幾らか明るい兆しが見えてきている、しかし、中小企業、不動産、金融関係はまだまだ大変苦しい状況だと言われておりますが、その苦しい状況であるという大きな原因の一つに、バブル崩壊後の資産デフレ、これがあると言われております。  今まで住専等でいろいろ議論されてきておりますが、一つは、土地神話が崩壊をした、土地の値下がりが起きている、これは、かなり長い間その動きがあったと私は理解しておりますけれども、その点が、土地の流通が阻害されている一つの大きな要因だと私は受けとめております。  問題は、そういう認識であるかどうか。それから、現下、景気は少しずつよくなっているとは言いながらも、土地の流動化を促進していく、こういう立場が今必要だと私は思っております。  各論はともかくとして、総論として大蔵大臣がどう受けとめておられますか、お聞かせいただきたいと思います。
  167. 久保亘

    ○久保国務大臣 今、日本経済の動向は、消費、住宅、設備といった面で、やや足踏みを脱するところから回復基調になってきたと言われておりましたが、最近の経済の動向を示します指数は、いずれもよい方向に向いてきております。  このような中で、日本経済が回復基調を確かなものとすることが今大変重要なときでありますが、青山さんがお話しになりましたように、中小企業に活力がなければ、本当の意味での日本経済の明るさというものは出てこないのではないかと思っております。  企業数で九九%を占めます中小企業がどのようにして元気を取り戻すかということに、私どもとしては最も意を用いなければならないと思っておりまして、昨年秋の経済対策におきまして、中小企業の債務の金利負担の軽減というようなことも念頭に置きまして、二千億を超える中小企業対策費を計上いたしました。  しかし、中小企業が実感としてこの景気の回復を受けとめるような状況にはまだまだなっていないのではないかと思っておりまして、今後も特に力を用いなければならないことだと考えております。  土地の問題についてもお話がございましたけれども、土地の有効、効率的な利用、そして、特に土地基本法の持ちます理念に沿った土地の流動化が今後どのように進められるかということも、今後の日本経済の方向にとって非常に重要なことの一つであろうと思っておりまして、今お話しになりましたことについては、私どもとしては非常に重視しなければならない課題にお触れになったと考えております。
  168. 青山丘

    青山(丘)分科員 この問題で余り時間をとりたくないのですが、土地神話というのは意外と根強いものがあって、現段階では土地神話は崩壊をしたと言われておりますけれども、これはいつもマークしておかないといけないことだなと私は今でも思っています。というのは、それこそ七年も八年も前から、実は私も、地価の高騰をどういう形で抑制していくのかということに心を砕いてきた一人の立場といたしまして。  今日までバブル抑制のための政策としてはいろいろな政策がとられて、あの段階では私個人も支持をしてきた政策が多くあります。ただ、今日の段階はなおまだ景気は本調子にはとてもなり切っていない。昨年も今ごろはそんなには悪くなかったと私は思っておりますが、しかし、結果としては三月をピークに相当な勢いで後退をしてきた過去の経過から見ますと、まだこれは過去というにはそんなに遠くありませんから、ついこの間の経過から見ても、ひとつここは景気対策として多くの抑制策が足かせになっていないかという段階を今私は考えていかなければならないと思っているのです。既に阪神大震災等の問題であるいはこの種問題は議論されてきておりますが、あえて私からきちっともう一回質問させていただきたいと思っております。  法人の新規取得土地に係る負債利子の損金算入を制限する特例措置。地価高騰を抑制していきたい、そのためにはいろいろな抑制策がとられてきておったのですが、あの当時地価高騰による企業の思惑買い、借金をしてでも土地を買って、土地は必ず上がっていくので利息を払っても十分採算がとれるし、その土地は将来大きな財産として活用できる、それがまた税負担の回避にもなっていく、企業になればできるだけ税金は払いたくない、こういう気持ちはあるかと思います。  そういう税負担の回避、これを抑制していくために、昭和六十三年十月一日以降に取得をした土地については四年間、借入金利子、負債利子の損金算入は制限をしていく、こういう特例措置が設けられてきました。あの段階では、私はこれは理解できるし、支持してきた者の一人でございます。  ただ、今日の経済情勢を考えてみますと、今日では思惑買いはもう鎮静化してきている、このあたりはどういうふうに理解されるのか、その辺は少し聞かせていただきたいのですが、私は、思惑買いは鎮静化してきておる、土地の価格も鎮静化してきておる。こういう状況の中で、企業というのは本来業務である設備投資をどんどん進めていってもらいたい。けれども逆に、これがまた足かせになってきておる。そういう意味で、支払い利息の損金算入というのはもうそろそろ制限を解除してもよろしいのではないかと私は思うのです。その点はいかがでしょうか。
  169. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 今先生からお話がございましたように、この制度は昭和六十三年にできた制度でございまして、二つねらいがあったと思います。一つは、借入金による土地取得を通じて税負担回避行為が起きてしまうという問題が第一点。あわせまして、土地の仮需要を抑制するということで設けられたものでございます。  すなわち、法人の借入金の利子といいますのは経費として損金に算入されます。したがいまして、借金をして土地を買えば、土地を譲渡するまではその値上がり益には課税されない、他方、利子は支払い時に経費として損金算入されるということで、その分法人税の軽減を図ることができてしまう。本制度はこういった税負担回避行為を主として是正するために設けられたものではなかったかというふうに理解しております。  平成八年度の税制改正におきましては、御案内のような経済情勢にかんがみまして、平成三年度の土地税制ができました状況と今何が変わっているのだろうか、政府の税制調査会でも徹底的に議論をしていただきました。  それで、これも御案内のように、その後の情勢を考えまして、変化を考えまして、土地の保有、譲渡、取得の各段階での税負担のあり方の見直しを御提案させていただいているわけでございますが、この制度につきましても、今回の土地税制の改正の趣旨を踏まえまして、何と申し上げたらよろしゅうございましょうか、長期に使用する建物がついている土地についてはある一定の要件のもとでこの制度の適用除外になっているわけでございます。今回は、その見直しをする際に、これは政令事項ではございますけれども、その適用除外になります範囲、適用要件といいましょうか、これを緩和いたしまして、実情に即した取り扱いにさせていただきたい、こう思っているところでございます。  ただ、先生の御指摘が制度そのものを廃止してはどうかということでございます。確かに、土地の仮需要というのは鎮静化しつつあるという認識は同じでございます。他方、この制度は、税負担回避行為の是正というのを主眼として設けられているところから考えますと、やはり業績のいい法人などは、中長期的に見て、この制度がなければ節税がまた行われるのではないかということもございまして、これはやはり制度そのものを軽々に廃止するというのはいかがかというふうに考えているわけでございます。
  170. 青山丘

    青山(丘)分科員 これは税調の趣旨に沿った一つの施策として、租税負担の回避、それを是正していく、抑制していくという考え方は私は理解しております。ただ、その前提になってきたのは、やはり借金をしても、そして利息を仮に払っても、前提には土地神話が当時ありました。したがって、土地に投機して大きな売買差益を上げているというよりは、むしろ借金だと言いつつも実際は相当な資産を蓄積していくという形になっているということは当時ありましたね。  ただしかし、大事なことは、もう土地投機は今だんだん鎮静化してきておりますよ。それから、思惑買いももうなくなってきておるというような状況から考えれば、基本的な土地税制、整合性ある土地税制という立場からしますと、少しこれはイレギュラーな、はみ出した土地税制だと私は思っています。  したがって、本来的には、整合性ある税制を考えていくときに、今の時点ではもうそろそろこれは必要ないものと考えていく段階に私は来ておると思うのですね。その辺がないと、これは景気対策の足かせにも実はなっていて、企業が設備投資をしていきたいというそういう本来的な業務の遂行を阻害しつつある、しているというふうに私はとりますので、これはひとつ基本的にこの税制そのものをそろそろ廃止する段階じゃないかと思うのです。いかがでしょうか。
  171. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 ただいま申し上げましたように、この制度の主たる目的が税負担回避行為の是正を主眼にするということを第一点申し上げました。  税制といいますのは、やはり公平という理念を大切にしなければならないものでございますから、やはりその税負担回避行為の余地があるときには、この制度も廃止ということではなしに、合理性があるのではないかというのが第一点でございます。  それから第二点申し上げさせていただきますと、実はこれも先生がよく制度を御承知でお話がございましたが、最長で四年間の利子の損金算入は否認いたしますが、その後四年間、それは損金算入されるわけでございます。いわば永久に損金算入が否定されるわけではなしに、損金算入の時期がおくれる、若干おくれることがあるかもしれない、またその土地が有効利用されればその時点で損金に算入できる制度になっておりますので、その面での何といいましょうか、過酷な制度になっているとは考えられないわけでございます。  ただ、いずれにいたしましても、この制度についていろいろな御意見があったことも承知しておりまして、今回の改正におきまして、先ほどの繰り返しになりますけれども、適用除外になる場合の長期使用建物についての要件の緩和を図らせていただいたということでございます。
  172. 青山丘

    青山(丘)分科員 六問ぐらい用意して、一問だけで終わりそうになってはいけませんね。  この制度を適用してきたときには、私は、よく理解しておりました。ただ、借入金の利子は損金算入されるべきものというのは、租税全体の大きな整合性の中に沿ったものです。四年間だからということでしょうけれども、これはやはり、企業の設備投資意欲を阻害するということははっきり言えると思います。  それから、この制度を導入してきた前提が、土地神話があり、思惑買いがあり、それがあるものですから、借金してでも土地を買って、そして、租税負担を回避していくことができる。ただ、企業を経営していくときに、租税負担をどうしたら回避できるかということは、これは一律に全部押さえ込めばいいというものでもないのですね。経済を活性化していくためにはある程度必要なことですから、私は現時点ではこれは必要だと思っておりますので、あえて重ねて申し添えたいと思います。ひとつこのことはしっかと受けとめておいていただきたいと思います。  実は、同じような趣旨でもう一点あります。不動産所得にかかわる損益通算、これも同じことですが、個人所得税についても、バブル時にいわゆるワンルームマンションを節税に利用することをしてきました。これは、ふらちなことだ、けしからぬやつだと、実は私も思っておりました。しかし、これはいつも表と裏がありまして、当時、マンションの取得にかかわるローン利息のうち、土地にかかわる利息部分、これについては、他の所得との損益通算を認めておらない。これについては既にワンルームマンションを投資目的に購入すること自体が鎮静化してきております。  そういう意味で、実はあのとき、バブルの真っただ中のときは、マンションを購入した人たちがたくさんいたわけです。これは、実際に使用目的もそんなに明らかでなく、とにかく今買っておこうというような時代がありました。  けれども、今静かに考えてみれば、現在の時価は担保額を下回っておりますし、なかなか売れない状況、全然金もうけにはならない、投資的な目的には全然沿わないものに実はなってきておりまして、さらに高い金利を支払い続けておる、こういう状況なのですよね。したがって、もうこの段階では、損益通算を制限するという必要はないのではないかと私は思います。いかがでしょうか。
  173. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 今先生からお話のございました不動産所得についての損益通算の制限措置、つまり、土地を借金で取得した場合、その分の利子については損益の対象としないということで、平成三年度の税制改正で設けられたものでございます。  この制度が設けられたきっかけと申しますのは、ワンルームマンションのブームで、大変社会的な問題になったわけでございます。つまり、ワンルームマンションのセールスポイントといいますのは何かといいますと、借金でワンルームマンションを取得いたしますと、その不動産取得による損失が給与所得からも引けますよ、したがいまして、税金が軽くなった上に、何年かたてばそのワンルームマンションがあなたの資産になりますということで社会的問題になったわけでございます。  我々の当時の税制の考え方からいたしますと、これも、先ほど申し上げましたように二つあったわけでございます。  それまでの税制がそのような投機的な土地需要を非常に増加させた、したがいまして、今は少しずつ鎮静化しているかと思いますけれども、この投機的な土地需要を抑制する必要がある。しかし、この機会に何よりも大切だと考えましたのは、マンションを借金で取得すると給与所得税の負担が軽くなるというのは、いかにも税制のあり方としておかしいのではなかろうか、税制の公平という観点から考えてどうなんだろうか。  それで、それまで認められていたわけでございますから節税ではございますけれども、そのような節税というのは、やはり税制から考えて余り適当ではないのではないかということで、御指摘のような制度にさせていただいたわけでございます。  したがいまして、先生がおっしゃいますように、前と比べますれば、そのようなことで土地の仮需がふえているという状況ではございません。この制度の状況についていろいろ聞きますと、まだちらほらとこういう話があるやに聞いておりますけれども、いずれにいたしましても、税制の公平ということから考えをいたしますと、この制限措置を廃止することはいかがかなと考えているところでございます。
  174. 青山丘

    青山(丘)分科員 この問題は、相当豊富な資料を材料にして、また直接話をしたいと思っております。  ただ、前提が変わってきておって、あの当時は政策的な判断として、税制全体で整合性が仮になくても、これは必要だとみんなが思いましたよ。だから、私も支持しました。けれども、現時点ではそういう前提は大きく変わってきているという意味で、私は、このことだけはきちっと提言させていただいておかないといけないと思いますから、聞いていただきました。  ちょっと時間がなくなりましたから、一問飛ばさせてもらいましょう。いや、でもこれはどうしても触れたいので、簡潔に答弁をいただきましょうか。  先ほどからも節税対策ということばかりずっとやってきていますが、同族会社の留保金については、これは実は企業を進めていく上には非常に重要なことで、仮に、では活力源になるのだと理解していただきたいと私は思います。  同族会社の留保金については、配当の方を抑制して留保金をふやしていくということは、節税に対する抑制策という観点からやはり特別課税がなされてきておりますが、会社が財務体質を強化していくとかというために、利益の配当を抑え込んで社内留保をふやしていく、そういうことが資本を充実させていくという意味で基本的に大切なことだ。  ところが、同族会社といっても大手の一流の企業がありますが、そうではなく、零細とまでは言い過ぎかもしれませんが、中小企業の立場で経営基盤がまだ弱い同族会社にとっては内部留保というのは非常に重要なことだという観点で、この特別税率というのは一刻も早く廃止していくべきではないかと私は思っています。  それから、時間がなくなりましたから、まことに申しわけないがついでにもう一点、尾原審議官の答弁になるかと思いますが、消費税の課税申告の変更は、消費税の課税申告については、本則課税のほかに簡易課税制度というものがありまして、どちらかを選択できることになっていますが、納税側の企業にとっては、これはどちらにするかというのは非常に重要なことでございます。  例えば、大きな設備投資をそろそろしたい、こんなような方針を実は持っておっても、簡易課税制度を今までとってきたために、この制度を引き続きやっていくということは相当過重な課税になっていく、だから、この際はぜひ本則課税、消費税の本則課税の法人として切りかえていきたい、こういう届け出をするときに、現行制度では、実は決算の前にそういう届け出をしてもらいたい、そうでないと困ると。  ところが、中小企業なものですから、決算をやってみて初めて、来期はこうやってやっていきたいというのがわかるのですよ。決算直後の申告書提出期限までのわずかな間ですけれども、その間まで、その届け出の期間を延長していただくわけにはいかないのか。これが、実は中小企業にとっては極めて機動的な経営でございまして、そういう中小企業の実情というものを少し理解していただきたい。  徴収の立場ではわかりますよ、今までやってきた制度は。制度をきちっと進めていくというのも皆さんの仕事ですから、これも大切なこと。しかし、納税者の事業者にとってはこれは非常に重要なことで、決算が済んでからすぐですから、そんなに期間がありませんから、申告書提出期限までの間を認めていただかないと、その間に変更の申し出をしてももう一年延びてしまうのですね。それでは状況の変化に対応できなくなってしまう。こういう実情をひとつ御理解いただいて、中小企業の立場に立って改善を図っていただきたいと思いますが、いかがですか。
  175. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 二点、お尋ねがございました。  まず、同族会社の留保金課税制度の問題でございます。  シャウプ以来の沿革があるわけですが、長々となりますので今の制度の考え方だけ申し上げますと、これも実は税負担の公平確保のためにつくられている制度でございます。つまり、同族会社におきましては少数の株主が意思決定権があるわけでございます。そうなりますと、会社から支払う配当が多くなりますと、配当といいますのは、所得税の中では累進所得税、地方税合わせますと六五%までくるわけでございますから、そういうことを回避するためにこの配当をどうするかということが調節できるのではないか、その結果、必要以上に会社に所得を留保するということが予想されるわけでございます。こういったことに対応するため、つまり税負担の公平確保の観点から設けられているのがこの留保金課税制度なわけでございます。  つまり、もう少し説明させていただきますと、フラットな法人税と累進税率のある所得税、これを通ずる全体としての税負担の公正をどう考えるのだろうか、こういうことだろうと思います。  ただ、留保すればそれが全部課税されという仕組みにはなっておりませんで、一定の割合まで、あるいは一定の金額まで等々基準が三つございますが、そのような制度により、また中小企業の実情にも配慮しているということを御理解いただければと思っております。  それから、二番目のお尋ねといたしまして、消費税に関連いたしまして、課税事業者の選択届け出あるいは簡易課税制度の選択届け出の提出期限を、今の制度は事業年度が開始する前となっておりますけれども、その後でも、延長してくれてもいいのではないか、こういうお話でございました。このお話も、例えば税理士の先生の方々からもよく聞いてきたところでございます。  ただ、なぜその期限の延長ができないかということを御説明申し上げますと、一つは、消費税は転嫁を予定している税でございます。したがいまして、課税事業者のことを考えますと、どのような商品の値づけをするのか、そういうことを決めていただく必要がございます。また、課税事業者の選択をするということになりますと、あるいは簡易課税制度を選択するということになってまいりますと、それぞれ売り上げ、仕入れに関する記帳をどうするかというところに影響を及ぼしてくるわけでございます。  このように、消費税のこの課税事業者選択制度などの特例制度の選択をするかしないかというのは、取引方法に影響があることから、課税期間を開始する前に確定しておくことが必要であろう、またそれが適正な課税の実現を図る上で必要なことであろう、こう思っているわけでございます。  それから、中小企業の特例制度については、かねて益税の批判もございました。実は、この中小事業者の特例措置、免税点制度やら簡易課税制度でございますが、これは、事務負担を軽くしようということから設けられているものでございまして、ある制度をとったから納付税額が有利になるか不利になるかということで届出書の是非を判断していただくという性格の制度ではないというふうにも理解しているわけでございます。  いずれにいたしましても、この届け出の期限の問題というのが今申し上げましたような制度の趣旨であるということについては、その内容を納税者の方によく御理解いただくよう努めることが非常に重要だと考えておりまして、これからも理解を求めるための努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  176. 青山丘

    青山(丘)分科員 改めてまたやりますが、終わります。
  177. 越智通雄

    越智(通)主査代理 これにて青山丘君の質疑は終了いたしました。  次に、石井紘基君。
  178. 石井紘基

    石井(紘)分科員 大蔵大臣、連日、長時間大変御苦労でございますが、しばらくおつき合いをお願いします。  ところで大蔵大臣、きょうの新聞によりますと、きのうですか、二十八日、主要銀行の頭取クラスを、これは小川事務次官が集めて、そして住専の経営責任をとるようにという異例の要請を行ったということのようでありますが、それに対して全銀連の橋本会長は、経営者の責任追及は経営者自身が考えて決めることだというぶっきらぼうな返答だったようでございますが、御感想はいかがでございますか。
  179. 久保亘

    ○久保国務大臣 全銀協の橋本会長がおっしゃっておりますことを私が申し上げているのであります。  というのは、母体行は住専問題に関して非常に重い責任がある、単なる住専に対する債権者、貸し手責任でとどまるものではない、母体行自身が設立、出資の段階から、人事はもちろん、経営、融資にまでかかわってきた、それが今紹介融資とかいうことで、九割不良債権になっているという批判を受けている、こういうことに対して母体行は、三兆五千億の債権全額放棄をしたから自分たちは責任を果たしたのだということで、これで責任は終わったのだという考え方ならば大変な間違いであるということを、私は、国会の予算委員会でも申し上げてまいりましたし、記者会見でもそのように申してまいりました。そして、母体行としては、とるべき責任をぜひみずから判断してもらいたいということを私は申し上げているのであります。  そのことに対して、橋本さんや皆さん方がおっしゃったのは、母体行の経営者の責任は経営者自体が判断することだとおっしゃっているのですから、どうぞ判断してくださいというのが私の気持ちなのであります。  きのう小川次官が参りましたのは、私が国会で申し上げていること、会見で申し上げていること、それから与野党問わず予算委員会で御意見のあること、これは何なのかということを正しく理解してもらうことが必要だろうということで小川次官は銀行協会の幹部の方々とお会いをしたのでありまして、私もけさそれを受け取ったのでありますが、銀行協会側に渡された、私の発言をテープを起こしてそのまま印刷しましたものを小川次官は銀行協会に渡しているのであります。  私きょうそれを読みまして、少しのぶれもない、初めから終わりまで、私がいろいろな場所で発言したことは、論旨明快、一貫しておると自分で確信を持ちました。そのことは、言われておりますように、私が、何か大蔵大臣の地位、権限に基づいてやめろと言ったとか、そんなことではないのであります。  母体行の責任は重いでしょう。その責任をしっかり自分で考えてくださるなら、それならば三・五兆にとどまらず、また新しいいろいろな協議にも応じてもらえるのじゃないか。法的に強制する道があればいいのですよ。それがない。そういう中で、今私が、母体行の側に誠意を尽くして、この母体行の皆さんの責任を明確にしてその責任に対応する措置をとっていただきたいということをお願いをしているのであります。
  180. 石井紘基

    石井(紘)分科員 主要な銀行の頭取クラスを集めて、しかも全銀連の会長も出席をしていたということですから、これは。一方大蔵省の方には、銀行協会というのは、これは大蔵省の認可団体ですから、当然監督権を持っているわけですね。そういう監督権のもとに、わざわざそういう会合を持って、事務次官がテープを起こしたものまで持っていったということはそれなりの大きな意味があるわけでありまして、当然それは、これだけの大問題で、連日連夜国会で問題になっているわけですから、その頭取クラスが大蔵大臣の発言を、一字一句とは言わないまでも、注目していないはずはないわけでありまして、当然わかっていることをさらに会合を開いて改めて示したということの意味は特別なものがあると思いますが、その点はいかがでございますか。
  181. 久保亘

    ○久保国務大臣 先ほども申し上げましたように、国会で御審議を願っております住専問題の処理に関しては、それこそ私も、もう百数十時間予算委員会に座っております。しかしその間、母体行の責任がこれで尽くされたという御発言は全くなかったと思っております。母体行の責任をもっと明らかにすべきだ、その責任を追及すべきだという御発言は毎日ございました。私は、そのようなことを、小川次官としては私の発言とあわせて正確に銀行の幹部の方々にも知っていただくことが重要である、こう考えて、私に、銀行協会の幹部と会いたいということでありましたので、それは結構なことだ、どうぞということで私は申し上げました。そういうことで会われて、そのことを銀行協会がどのようにお受けとめになったかは今後の問題であります。  私は、銀行協会の幹部の方々は十分におわかりになっていると思っております。みずから母体行として、また母体行の経営者として責任なしと主張される方はいらっしゃらない、こう思っております。
  182. 石井紘基

    石井(紘)分科員 母体行の方では、既に十分に責任を果たしているのだというようなニュアンスの発言をされているようですが、わざわざそうやってやったわけですから、しかも、監督権を持った大蔵省が乗り込んでいってやったわけですから、これは効果が出なければ、さらなる責任というものが実行されてこなければ、大蔵省としては問題ではないかという気もいたしますが、そういう点での昨日の会合の効力といいますか、さらに責任をとるということが出てこないということが考えられますか。それが出てこない場合はどうしますか。
  183. 久保亘

    ○久保国務大臣 実はきのう、おとといになるのかな、小川次官が最初にお会いしたのは協会の会長であります。会長に、会長はまた参考人として予算委員会にも出席された方でありますから、問題になっている私の発言等について事実を正確にお伝えして、そして銀行協会の幹部の会合が、幹部の方々にもぜひこの正確な内容をお伝えいただきたいということが最初に会われたことなのでありますが、そうしたら、橋本会長の方から、それじゃ、幹部を集めるから、私が言うよりは、橋本さんが自分が言うよりは、小川次官、あなたが来て話してくださる方がいいのじゃないか、こういうことで、小川さんはその協会の幹部の集まりに行って話をされた、私はそのように報告を受けております。  それで、このことにどういう受けとめ方をなさったのかというのは、まだ新聞紙上で見ることしか、私忙しくしておりまして見ていないものですから、しばらく時間を見ながら、私の方もまた何か申すことがあれば申し上げなければならないと思っております。
  184. 石井紘基

    石井(紘)分科員 さてそこで、先ほど来言っておりますように、大蔵省の方に監督権といいますか、あるわけですから、そうすると、銀行、母体行の方の責任は当然でありますが、大蔵省の方にもやはり、同等ないしそれ以上の責任があるのではないかというふうに思われますが、大蔵省の方の責任についてはどのようにお考えですか。
  185. 久保亘

    ○久保国務大臣 今大蔵省は、住専問題の処理を遂行する任務を帯びております。そしてまた、その住専問題の処理という深刻な事態を今日招いておりますことについて、直接の行政責任を負っておりました大蔵省としては、その判断が的確であったか、また、今日の事態に至る結果責任、こういうものについては明らかにしなければならないと考えておりまして、みずから、バブルの発生から破綻に至る状況についてもいろいろと内部で検討をしてもらっております。  さらに、今度の住専問題の処理をめぐっても、みずからの責任を含めて検討をし、そして、それに基づいて、行政改革が今時代の要請となっている、そのことともあわせて、大蔵省の今後の財政、金融行政の機能、機構といったようなものはいかにあるべきかというようなことをしっかり取りまとめていく必要があると思っております。もちろん、責任をとるべきものがあれば、そのことは、特に行政官庁であります大蔵省は、みずからの責任について目をつぶるというようなことは許されないことであろう、こう思っております。
  186. 石井紘基

    石井(紘)分科員 こういう処理策を出した前内閣あるいは現内閣、これはこれで、私が言うのは、大蔵省の責任と同時に、さらに言えば政治家の方の、政治の方の責任があるわけですが、そういう点でいえば、やはりこうしたことを見過ごしてきたというか、意識的にか無意識的にか避けて通ってきたというか、まあ個別に言えば、これまでの政界あるいはまた大蔵省のその任にあった人たち、そういうところの責任というものを、母体行にさらなる責任を要求すると同時に、やはりけじめをつけるということが必要ではないかというふうに思います。政治家あるいは従来のいわゆる内閣についての責任、まあ、これまでもたびたび出たことでしょうが、一言何か大蔵大臣、というか副総理でございますので、お願いします。
  187. 久保亘

    ○久保国務大臣 私は、政策決定の責任を持ちます政治家のそれぞれの役割、責任というものは大変大きなものがあると思っております。特に、政治はその結果責任を決して回避してはならない、こう思っておりますが、今私は、大蔵行政の責任の立場にございます。その私が政治責任について言及いたしますときではないのかな、このことは、国会における御論議の中でも、みずから明らかにしていただかなければならない問題もあると思っております。私が大蔵省の行政の責任者の立場で申さなければならないものについては、情報の開示ということで協力しなければならないと思っております。  これらの責任や、処理をやっていきます場合に、やはり法的な責任は司法の手で追及していただく、政治の責任は政治、政界みずからがやっていただかなければならない点がございます。行政は、それらの責任を明らかにしていく中で、必要な情報提供ということについて協力し、みずから責任を果たすという点があるのではなかろうかと思っておりますが、また、せっかく三権分立の上に成り立つ民主主義でございますから、この三権が相互にその役割を果たし合うことによって全体の責任が明らかになり、そして問われるべき責任が問われることによって、これらの問題は完結させることができるのではないかと思っております。
  188. 石井紘基

    石井(紘)分科員 ありがとうございました。  次に、私は、先日来予算委員会でも申し上げておりますように、我が国の行政の全体構造といいますか、これが大変肥大化しておりまして、民間の企業を一方では圧迫している。その辺が、大変けじめがルーズになっているということで、子細にいろいろと調査をしてみましたところが、国が特殊法人ないし特殊会社というような形で経営をしている企業があります。そういった企業が膨れ上がって、子会社、孫会社というものをどんどんつくって、さまざまな産業分野に、市場経済といいますか、民間企業を圧迫するという、これは相当深刻な形になってあらわれてきているという問題があるわけですね。  そこで、大蔵省の所管するところの日本たばこ産業株式会社、これは昭和六十年に民営化ということになったわけですが、まだ相変わらず相当の政府保有株があって、民営化とは名ばかりというような状況ではないかと思うわけですが、これはちょっと具体的なことですが、政府保有株というのは今何%ぐらいになっているのですか。それから、その民営化の今後のスケジュールといいますか、将来的にはどういうふうに進める予定なのか、ごく簡潔にひとつお願いします。
  189. 宝賀寿男

    宝賀政府委員 お答え申し上げます。  JTの株式の発行済み株式総数が二百万株でございます。そのうち、二分の一の百万株というのが売却可能ということでございます。ただし、当分の間、政府は全体の三分の二以上を保有しなければならないということで、当面の売却可能株式数は六十六万六千六百六十六株、売却済み株式数は三十九万四千二百七十六株でございます。  今後の問題でございますが、日本たばこ産業株式会社につきましては、国産の葉たばこ問題を抱えた状況におきまして、我が国たばこ産業が国際的な競争力を確保し、健全な発展を遂げるために、合理的企業経営が最大限可能な現行の経営形態としているところでございます。こうした観点を踏まえまして、政府は、日本たばこ産業株式会社法に基づき日本たばこ産業株式会社の株式を保有して、会社が適切な事業運営を行うことを担保しているところでございまして、政府の保有する株式をすべて売却し、完全民営化することは適当ではないというふうに考えております。
  190. 石井紘基

    石井(紘)分科員 完全民営化というのは適当ではない、しかも三分の二は保有しなければいかぬ、現在では圧倒的大部分は政府が保有しておるという状況では、これは民営化とは言えない状況ですね。そうすると、いわば国営のたばこ会社である。それが、国営というか公営というか、にもかかわらず、ビジネスをどんどん広げている。いろいろな産業分野に手を伸ばしていますね。  そういう中で、よくある形ですけれども、直接子会社、株式会社をつくるという形と、それからまた、財団法人というようなものをワンクッションつくって、そしてそのもとに株式会社をつくる、そういうような形態が、よく特殊法人の場合あるいは特殊会社の場合、見られるわけですが、このたばこ産業の場合は財団法人たばこ産業弘済会というのがありまして、基本財産は六億五千万ですか、そのうちの五億円を日本たばこ産業が出している。いわば日本たばこ産業からいうと孫会社に当たる、財団法人たばこ産業弘済会がつくっている株式会社が六つあります。こういうことをやっていますと民営化をする上でもおかしいし、それからまた、国の直接間接に経営する企業としてこういうことをどんどんやっていきますと、非常に市場経済じゃない、いわゆる社会主義経済みたいなことになっていくわけですね。  私は、少なくとも当面孫会社というのを整理すべきだというふうに考えます。たばこ産業弘済会の場合には六社ありますけれども、一般の株式会社というのは、商法に基づいて、厳しい競争の中で一生懸命リストラをやりながらやっているわけですから、国がまた株式会社をつくって、法的には商法に基づいた民間企業でありながら、一方では絶対に仕事もある、そしてつぶれることもないというような状況にあるというのはおかしいわけで、これをひとつ整理をするべきだと考えますけれども、いかがですか。
  191. 宝賀寿男

    宝賀政府委員 たばこ産業弘済会でございますが、たばこの消費者及び事業関係者の便益を図り、あわせて日本たばこ産業株式会社の職員一家族等の福利厚生を増進し、もってたばこ事業の健全な発展に寄与することを目的とするものでございます。  お話のありました六社については、子会社という形ではなくて、六社に出資しているというふうに聞いておりますが、内容的に弘済会と直接関係ない、本来の公益事業に直接関係ない部分については整理する方向というふうに聞いておりますし、私どもも適宜それを指導してまいりたいと思います。
  192. 石井紘基

    石井(紘)分科員 出資しているといったって、三三%とか二四%とか二〇%、大体全部資本金の額も同じですし、個々の会社名は言いませんけれども子会社ですよ、これは明らかに。そして、これらの会社は日本たばこ産業株式会社の仕事を主としてやっているわけです。ですから、これは早急に整理されませんか。
  193. 宝賀寿男

    宝賀政府委員 ただいまお話ありました会社につきましては、もともと日本たばこ産業株式会社の工場における補完業務等の仕事をやっているというふうに聞いておりまして、そういう意味で関連性があったものと考えていますが、いろいろ疑念の点があるということでございますので、漸次見直して整理する方向で指導してまいりたいと思います。
  194. 石井紘基

    石井(紘)分科員 いろいろと言いわけめいたことは言わないでもいいのです。このたばこ産業の仕事や外の仕事を受けてやっているわけですから、あなたがおっしゃるようなそんなに簡単な仕事ばかりじゃないですよ。  ですから、それはそういうことで、これ以上個々の会社の営業のこともあるでしょうから言いませんが、それでは、そういうことで整理をすると。その整理をする場合には、ここに資産がたくさんだまっておりますので、こういうものを連結決算をして上に清算をしていくように、そしてこの上の団体である財団法人たばこ産業弘済会というのは六億五千万の基本財産のうち五億をJTが出しているわけですから、いろいろな比率のやり方があるのでしょうが、そういうものでどんどん戻していくという形で完全に資本金も引き揚げて、そして民間の会社にする、純然たる民間会社にするということで早急にやってもらいたい。  それからもう一つ、大蔵省の所管の財団法人で大蔵財務協会というのがありますが、これもやはり孫会社が幾つかあるのですが、これの中に、株式会社毎日新聞社へ出資しているということになっているのですが、毎日新聞というのは日本でも有数の大きな報道機関でありますので、こういうものに国が直接にも間接にも出資をしているというのはいかがなものかと思うのですが、その点についてはどうですか。
  195. 河上信彦

    ○河上政府委員 お答えいたします。  先生御指摘の大蔵財務協会につきましては、国が出資しているということはございませんで、基本財産につきましてはかつての設立の際の方々の出捐金、その後の財団……(石井(紘)分科員「いや、直接にも間接にもと言ったでしょう。この財団法人大蔵財務協会というのは、何しろ大蔵省の認可のものでしょう」と呼ぶ)
  196. 越智通雄

    越智(通)主査代理 立って質問してください。
  197. 河上信彦

    ○河上政府委員 ということでございます。  それから、この法人の出資でございますが、確かに先生御指摘のとおりの出資がございます。これにつきましては詳細な経緯は十分承知しておりませんが、税の関係の広報紙を出すに当たって従来から関係があったようでございまして、それに関連して出資をすることになった、こういうふうに承知しております。
  198. 石井紘基

    石井(紘)分科員 私、経緯を聞いたのじゃなくて、この出資というものが適当ではないのではないかというふうに言ったのですけれども。
  199. 河上信彦

    ○河上政府委員 ただいま、大蔵財務協会の出資についてでございますが、これも先生御案内のとおりでございますが、公益法人の運営に関する指導監督基準というものがございまして、こうした中で基準が定められているわけでございますが、この大蔵財務協会の出資につきましては、こうした基準から見まして特に問題があるというふうには考えてございませんが、先生の御指摘もございますので、今後とも適切にこうした基準を運用していくようにしてまいりたいと存じます。
  200. 石井紘基

    石井(紘)分科員 よくわからない返事で、何を言ったか全然わかりませんが。  それでは、ちょっと一つ前に戻りまして、この日本たばこ産業株式会社というのは大蔵省の所管になっているのですが、民営化ということもあり、大蔵省の所管というのは従来の経緯と趣旨からいっておかしいことになっていると思います。先進各国でも、大体たばこなどというものは、日本でいえば厚生省なりなんなり、そういうところの所管になっているわけでして、大蔵省の所管を外すべきだと思いますが、ちょっと唐突な質問ですけれども、何か見解ありませんか。
  201. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 先ほどからの委員の御指摘で、行政改革というのは、確かに民間の活力ということを生かすために行政の肥大化を防止して、それで簡素にして効率的な行政を実現する、それを目指して常に見直しをしていかなければならぬわけでございます。  これまでも特殊法人の見直し等いろいろやってきたわけで、八年度予算におきましてもそれをやっておりますが、今言われました、いろいろな意味での民間の活力を活用するというようなことも含めまして、これからも特殊法人の整理合理化に努めていかなければならないと考えております。
  202. 石井紘基

    石井(紘)分科員 ありがとうございました。
  203. 越智通雄

    越智(通)主査代理 これにて石井紘基君の質疑は終了いたしました。  次に、中村時広君。     〔越智(通)主査代理退席、主査着席〕
  204. 中村時広

    中村(時)分科員 新進党の中村時広でございます。連日、御苦労さまでございます。昨日は遅くまで大変御苦労さまでございました。  きょうは、昨年、金融の自由化であるとか、規制緩和であるとか、あるいは日米包括経済協議の経過、そういったものを踏まえて改定をされました保険業法、この問題について、私も本会議質問委員質問等々やりましたので宿題事項が大分残っておりますので、その点を中心に質問をさしていただきたいと思います。若干時間があれば、昨晩の続きの住専にも触れさしていただければというふうに思っております。  保険業法、まず初めにお伺いしたいのは、今回の改定によりまして、傷害であるとか疾病であるとか介護であるとか、いわゆるこうした第三分野という位置づけが明確になるわけであります。この第三分野につきましては、外資系の保険会社の市場占有率が極めて高い、そういったことも加味いたしまして、あえてここに配慮規定というものを設けた経緯がございます。これは、九四年の日米の交渉の合意事項でもありまして、そのときには、新規のまたは拡張された商品の導入について中小保険会社や外国保険会社の経営環境の急激な変化を避ける、こういう規定に基づいているわけでありますね。それを受けまして、附則第百二十一条にこの配慮規定が設けられたということであります。  そこで、まず、ちょっと新聞を見ますと、日米間にこの解釈をめぐって何か隔たりがあるような記事を見るわけでありますが、私の理解では、この合意事項の文章からも明らかなように、第三分野での新しい保険商品などに限定した歯どめだというふうな認識に立つのは当然であろうと思うわけでありますが、そのあたりの考え方について、まず最初に御見解をお伺いしたいと思います。
  205. 榊原英資

    ○榊原政府委員 今、日米保険交渉、これはフォローアップということでございますけれども、保険交渉、一昨年の十月に一応決着を見ましたけれども、そのフォローアップをやっておるところでございます。  先生御指摘のように、その第三分野のまさに新規あるいは拡張された商品の導入という点が両方で議論の対象になっておりまして、これについて日米で若干、解釈の違いが存在するということでございます。その解釈の違いは、その拡張されたという、新規あるいは拡張されたという文章なんですが、拡張されたというのは一体何であるか、具体的に何であるか、これについての解釈の違いが存在している、そういうことでございます。
  206. 中村時広

    中村(時)分科員 ということは、日本側の解釈というのは、私が申し上げたとおりでよろしいわけですか。
  207. 榊原英資

    ○榊原政府委員 結構でございます。
  208. 中村時広

    中村(時)分科員 アメリカの方は、恐らく拡大解釈をされて、すべてについて配慮をせよというふうなことを言ってきているのかなということがうかがえるわけでありますけれども、やはりこれは、この配慮規定の条文を見る限り、今御主張されている理解が私は正しいと思います。  この背景にはアメリカの大統領選挙の問題等々もあるのかもしれない。一応表向きは、これは、一般の保険分野への自由参入が認められたら、これは解消するんだというような条件に使われているような記事も散見されましたけれども、そういったものに使われるべき問題ではなくて、やはり筋は筋、主張は主張として貫き通すべきだと思います。要らぬ妥協であるとか、そういったものをすべき問題ではないと思いますので、交渉に臨むに当たっての姿勢を確認をさしていただきたいと思います。
  209. 榊原英資

    ○榊原政府委員 交渉に当たって、日本側の主張を明確にして筋を通すべきであるという先生の御指摘、まことにそのとおりだと思います。  ただ、交渉担当者として、双方の解釈に違いがあるときは、何らかの形で筋を通しながら妥協ができないか、そういう道を探るのもまた交渉者の役割でございまして、今具体的にそういう交渉を進めているところでございます。
  210. 中村時広

    中村(時)分科員 その方向でぜひ踏ん張っていただきたいと思います。  それから、この規定の中に、これは昨年も質問さしていただいたんですけれども、期間の問題が、「当分の間」というふうな文言で片づけられてしまっているわけですね。状況を見ながらという御回答しかいただけなかったんですけれども、やはりある程度期間を区切らないと、ずるずるずるずるとそれに寄りかかって、いつまでたってもこれがなくならないというふうになってしまう。だから、ある程度のめどというぐらいはお示しいただけませんでしょうか。
  211. 福田誠

    ○福田政府委員 御指摘の保険業法のいわゆる第三分野につきまして、条文の制定趣旨は、生損保の相互参入によりまして、第三分野にその経営を依存している度合いの高い会社、中小保険会社並びに外国保険会社等でございますが、それらの会社の事業の健全性に欠けるおそれ等がないよう当分の間、配慮するというものでございます。  御質問の終了時期でございますが、四月一日を目指してまず保険業法を円滑に施行させていただきたい、また、その施行後、これらの会社の経営環境等を勘案して総合的に判断していくものでございまして、現時点において、その時期を明確にすることは困難であることを御理解賜りたいと存じます。ただ、昨年来の国会の審議につきましては、十分念頭に置いていきたいと存じます。
  212. 中村時広

    中村(時)分科員 示すことができないということでありますが、これは国会等々を通じてきちっきちっと毎年毎年チェックをしていくということしかないのかなというふうに承っております。  それから次に、もう一つ交渉で問題になっておりますのが、保険料率の自由化の問題であります。  昨年の議論におきましては、この自由化を無制限に認めていくというのは非常に危険だ、いかがなものかという主張をさしていただきました。やはりそれはアメリカでも、非常に弱いところに対する保険の引き受けの拒否であるとか、あるいは非常に、事実として、この料率競争に巻き込まれる中で、大変数多くの保険会社が倒産をしたという保険危機、こういったことがあったわけですから、無制限の自由化というのはいかがなものかというふうなことを申し上げておったわけであります。それらのことはもう十分加味された法案になっておりまして、今現在この法案で明らかになっているのは、いわゆる付加保険料率の部分、ここについて自由化をしようというふうなことで処理をされたわけであります。  ところが、今新聞等を見ておりますと、アメリカは、それ以降の具体的な自由化のスケジュールを示せ、こういうふうなことを言ってきているわけでありますが、私は、まず基本理念として、無制限の自由化というものは危険だということを確認しておきたいと思います。そこから、じゃ、ちょっと確認だけさしてください。
  213. 福田誠

    ○福田政府委員 ただいま委員の御指摘のとおりだと存じます。
  214. 中村時広

    中村(時)分科員 その中で、米国側は具体的にそれ以降のスケジュール、自由化のスケジュールを省令に盛り込むように要求している、こういう記事を見たんですが、それは事実でありますか。
  215. 榊原英資

    ○榊原政府委員 現在交渉中でございまして、外交ルールというのは、交渉中の相手の要求あるいはその進捗状況については公にしないということなものでございますので、今アメリカがどういう要求をしているか、それに我々がどう対応しているかということについては御説明を控えさせていただきたいと思います。まことに申しわけございませんけれども、これが交渉のルールということでございますので。
  216. 中村時広

    中村(時)分科員 仮にそれが事実とすると、これは極めて慎重に対応していかなければならない問題なのだろうというふうに思うわけであります。特に、何かこう妥協案みたいなものまで新聞に出てしまっているのですね。そういう妥協案なんかも出ているようでありますけれども、今の基本理念というものはここで確認させていただいたわけでありますから、この問題について要らぬ保険危機を招くような交渉には絶対にしないでいただきたい、このことをあえて要望しておきたいと思います。  それから次に、保険契約者保護基金制度、この問題についてお尋ねをしたいと思います。  これは、いわばいざというときのための積み立て、契約者を保護するための積み立てということでありますけれども、前回の質問のときに、一体この積み立てば事前にやるのかあるいは事後にやるのか、こういう質問をさせていただいたわけであります。双方ともにメリット、デメリットがありますので、当時の御回答というのは、いわばこれから業界等々とも勘案して実施までに方向性を出しますというふうなことだったろうと記憶しております。  その後、かなりの期間が経過しておりますので、この保険契約者保護基金制度というものについては、事後積み立て、事前積み立て、どういう考えの方向にまとめられようとしているのか、お示しをいただきたいと思います。
  217. 福田誠

    ○福田政府委員 お答えいたします。  保険契約者保護基金につきましては、現在保険業界において設立に向けて準備が進められているところであると承知しております。  お尋ねの負担金の拠出につきましては、御指摘のような観点で時間をかけて検討が進められたわけでございますが、その際、事前積み立てとすべきであるという考え方もございますが、いろいろ比較検討いたしますと、事後拠出の方が積立金の資産運用等の組織が不必要になるために基金をより簡素な組織とすることが可能になるという利点がございますし、また、アメリカ、カナダ、イギリスなどの諸外国における支払い保証基金におきましても事後拠出がとられているのが一般的であるようなことを勘案いたしまして、保険業界におきまして最終的には事後拠出制を採用することを決定したところでございます。
  218. 中村時広

    中村(時)分科員 そうすると、基金については事前積み立てばもう一切行わない、全額事後積み立てというふうな形で運用を図っていかれる、こういうことでよろしいのでしょうか。
  219. 福田誠

    ○福田政府委員 そのとおりでございます。
  220. 中村時広

    中村(時)分科員 わかりました。  それからもう一つ、これが一番私のお聞きしたい点なのですが、今度の改正に伴いまして、私どもの国には今までになかった業態、ブローカーという業態が正式に認知をされるという、言葉が適切かどうかわかりませんけれども、そういう業態が誕生することになります。新しい業態であればこそ、特に契約者と直接やりとりをする業態でありますから、契約者の保護という観点からの整備というものは何よりも重要視していかなければならないわけであります。  内容を拝見いたしますと、一つ心配な点がございました。そのときに、貴重なポイントであるというふうな御答弁をいただきましたけれども、今後検討課題にしたいというふうなことで終わっていたわけであります。もう一度繰り返していきますと、要は、ブローカーが誕生したときに何かあったときに契約者をどう保護するか、こういう観点に立って制度をつくられたわけですけれども、その制度は、簡単に言えば、損害賠償保険と保証金供託制度を抱き合わせにして契約者の保護を図っていこう、こういう内容であったと記憶しております。  問題は、仮に、新しい業態として誕生したブローカーがきちっと賠償責任保険契約も締結してやったのだけれども、そのブローカー側に重大な過失あるいは故意、そういう行為があって、それに起因した損害が発生した、そういう場合は免責に相当してしまいますから、賠償責任保険契約を締結していたとしても保険金はおりない、こういうことになるわけであります。そうすると、抱き合わせの片側が全く期待できない、こういうふうな現実が想定されるわけであります。  一方、供託金でそれが全部カバーできるのか否か。実はあのときは、その保証金をどの程度の基準に置くかということはまだ決めていない、外国からまた新規参入の高いハードルじゃないかと言われるおそれもあるだろうし、あるいは契約者保護の観点という点も加味しなくてはいけないだろうし、いろいろな角度から検討してこの金額を決めていきたい、こういうような段階であったと思うのですね。  ただ、これは答弁でもはっきりいただいた記憶があるのですが、もし今のような免責事由に相当してしまった場合、仮にこの積み立てられた保証金の範囲の中で保険者に対して損害賠償が満たされない、金額が足らない場合、この場合は自己責任ですというような御答弁だったと思うのですね。だから、この供託金が足らざるときというのは契約者が自己責任のもとにすべて負担をしなくてはいけない、かぶらなくてはいけない、こういうことになる、だからこそ、この負担金のレベルをどこに置くかというのは極めて重大な問題だというふうな指摘をさせていただいたつもりなのです。  そこで、あれから七カ月、八カ月たっているわけでありますから、そろそろもう施行も間近でありますし、四月からひょっとしたらブローカーが誕生するかもしれない、そういう段階を迎えておりますので、この供託金の水準というものをいかなる理念のもとにどのくらいのレベルに考えようとされているのか、また、今言ったようなケースに対しては、やはり前と同じような答えで、自己責任でやっていただく範囲もあるのだということになるのかどうか、そのあたりをお伺いしたいと思います。
  221. 福田誠

    ○福田政府委員 大変専門的な御質問をちょうだいいたしましたが、御説明いたします。  改正保険業法につきましては、今御指摘のように、保険契約の締結の媒介に関しブローカーが保険契約者に対して損害を与えたことによる賠償責任義務を負う場合に備えまして、保険ブローカー、仲立ち人の賠償資力を確保するため、一つは保証金の供託を義務づけております。この保証金の額及び同じ保証金の一部として代替できる賠償責任保険契約の要件につきましては政令で定めることとなったわけでございます。  結論的に申し上げますと、まず保証金の額につきましては、今御指摘ありましたが、契約者保護の観点から見ますと、ブローカーがその業務を行う際に生じる顧客に対する損害賠償義務の支払いを担保するに十分なものである必要がございますし、他方において、余りにも高額な保証金が参入障壁とならないように配慮する必要もございます。そういう両方の要請をかんがみまして、具体的には、保険ブローカーが取り扱った保険契約により支払われる保険金の額を担保し得る額、つまり担保し得る額としまして、具体的には過去三年の保険募集に関してブローカーが受領した手数料、報酬その他の対価収入の合計額というふうに政令でさせていただきました。  また、その場合も、保証金の最低額と最高額を定めておりまして、統計的に見ました保険事故一回につき支払われる保険金の額、あるいは海外の例などを参考にしまして、最低額を四千万円、最高額を八億円といたしております。  また、次のお尋ねの、保証金の一部として賠償責任保険契約で代替できる要件といたしまして、あくまで保証金の額のうち四千万円、先ほど申し上げた最低額の四千万円を差し引いた額のみ代替し得る。最低保証金額に相当する四千万円はこの賠責保険では代替できずに、キャッシュといいますか、金銭等による供託が必要というふうにさせていただいております。故意または過失のような場合には、現金が留保されている。  それから、そのような賠償契約につきましても、代替した後で勝手に変更されると困りますので、その場合は大蔵大臣の承認が必要である、承認を受けた場合を除いて契約を解除したり変更することはできないものにさせていただいております。  それから、もう一つのお尋ねの、賠責保険契約に免責金額をどうするかということでございます。これは、政令ではまだ一定額以下とするということだけでございまして、今の御指摘にございましたように、契約者保護の観点からできるだけ免責金額、余り高くすると意味がございませんので、幾らにするか現在検討中でございます。  全体として申し上げますと、御指摘のように、契約者とブローカーの間に生じた損害につきまして、あくまで私法上の問題でございますし、法律的には契約者同士が責任を負うことでございまして、国が直接責任を負うことはできないわけでございますが、しかし、制度的にはそういう契約者がこうむった被害をブローカーが賠償できないといった事態を極力回避するよう留意しながら、今申し上げたような金額、基準なり義務を課すことにいたしたわけでございます。
  222. 中村時広

    中村(時)分科員 この供託金の比率というものが、契約者保護の観点からすると非常に大きな意味合いを持ってくると思います。検討中ということでありますから、今御答弁いただけないわけでありますけれども、その点の重要性というものを十分認識をしていただいた上で、よき着地点を見出していただきますように、要望をしておきたいと思います。
  223. 福田誠

    ○福田政府委員 新保険業法におきましては、規制緩和という流れの中で、保険仲立ち人制度、ブローカー制度を導入いたしておりますので、この制度が円滑に定着するように今の措置等について十分配慮してまいりたいと思います。
  224. 中村時広

    中村(時)分科員 以上で保険関係を終わらせていただきます。  五分だけ。もう一問ぐらいしかできませんが、昨日の続きに若干なりますけれども、六千八百五十億円の問題について、いま一度お尋ねしたいというか、お伺いしたい点がございます。  今、金融の問題というのが非常に大きなテーマになっている。その原因とは一体何なのだろうかなということを考えていくと、バブルの崩壊であるとか、八〇年代半ばから始まった自由化の波であるとか、いろいろな要因があると思うのですけれども、ひょっとしたらもっと大きな要因がひたひたと足音を忍ばせて来ているのかな、そんな気がしてならないのです。それは、外国国際的な金融変革の波、この視点というものは決して見失ってはいけないのだろうというふうに思うのですね。  具体的にはアメリカでございます。アメリカの金融体制の基本というのが、二つほど明確なルールがあったわけでありますけれども、一つは、前もお話しさせていただいたことがあるのですが、グラス・スティーガル法という法律。これによって、銀行と証券の垣根を厳格に設けている、こういうルールが一つございました。いま一つは、マクファーデン法という法律。これは州の中での業務制限、州を越えた業務に一定の制限を設ける、これが大きな二つの柱になっていたと思うのですね。  ところが、最近非常に大きな変革の波がアメリカの方にも押し寄せていまして、この後者のマクファーデン法については既に廃案になっております。一九九七年からもう州を越えた業務、オールアメリカンということが、実施をすることが決定しているというふうな状況を迎えております。それから、グラス・スティーガル法についても、これを廃案にしよう、垣根を壊そうという法律はもう何本も何本も提出されておりまして、今の段階では、ぎりぎりという言葉は余り使いたくないのだけれども、何とか否決されているという状況が続いておりますが、どうも金融筋なんかに聞きますと、あと数年でこれも崩れるだろう。二年か三年後にアメリカの金融界というのは非常なる変化をするということがもうほぼ確定しているのではないかというふうに思うのですね。  そのほかにも、例えば、昔だったらアメリカなんかでも信用リスクというふうな概念に立ってお金の貸し出しをやっていたのだけれども、どうも貸し手が全部そういう責任を負ってしまうというのは危険だ。それで、メキシコだとかブラジルとかああいう中南米諸国で痛い目に遭ったことがありましたから、その反省から誕生してきたのがリスクの証券化というこういう流れが出てきている。  そういう新しいルールが一気に、アメリカの変革を伴って、今度は州を越え、国を越えて日本やほかの市場にも押し寄せてくるということはもう間違いないと思うのですね。その変革の波というのを予期した上で、日本の金融市場はどうあるべきか、金融機関はどうあるべきか、これはもう大至急検討しておかないと、そんなに悠長なことは言っていられないのじゃないかな。  そこを考えると、私心配なのは、今回こういう新しい外国からの波を迎え撃つに当たって、やはり今住専もそうなんですけれども、それ以外の不良債権問題というのを片づけておくというのは、これは私もわかるのです、同意したいと思うのです。だからこそ、私は、住専以外の問題というものが今非常に視点として欠落してしまっている、欠落とまでは申しませんけれども、大蔵大臣によりますと、住専以外についてはもう公的資金は一切使わない、こういうことを明言されてしまっている。本当にそれでいいのですかというのが率直な感想なんです。  この際、住専というものは、これは一回撤回して、もうすべての問題というものをひっくるめて、そういった世界の金融改革の波というものを迎え撃つ準備を整えるために今非常に大事なときだと思うのですね。それが、極めて限定的な、矮小化したテーマで今議論が進んでしまっているということに私は個人的に非常に危険性を感じているわけであります。今、このまま住専で不良債権問題は終わります、あとの問題は五年もすれば、銀行は体力あるから、金融機関は体力あるから何とかなりますというような考え方のもとに進んでしまって、その波が押し寄せてきたら、多分競争ではたばたとやられていくというのが予想されると思うのです。  そのあたり、外国の変革の波というものをどう考えられているのか、どう準備されようとしているのか、お伺いしたいと思います。
  225. 永田俊一

    ○永田政府委員 お答え申し上げます。  五分でやるには大変大きな問題でございますが、アメリカからひたひたと寄せておる金融制度改革の波というお話でございましたが、米国におきましても、お話ございました三三年銀行法、いわゆるグラス・スティーガル法によりまして、銀行と証券の分離が規定されておりましたけれども、一九八〇年代後半以降、持ち株会社形態を通じまして、銀行の証券業務への参入が段階的に進んできておるわけでございますし、先ほどおっしゃられたような州際業務の自由化とか、それから流動化の問題とか、そういうことも目をみはるように進んでいることも事実であります。  他方、我が国におきましても、金融の自由化、国際化というものは着実に今進んできておりまして、例えば平成五年四月の金融制度改革法の施行を受けまして、現在金融機関による証券子会社の設立、あるいは金融機関及び証券会社による信託銀行子会社の設立等が行われる等、金融制度改革は着実に実施に移されてきているというふうに思っております。  今後ともそうした利用者のための改革、あるいは国際性の確保といった金融制度改革の理念に沿いまして、金融制度改革の着実かつ円滑な実施に努めていく所存でございますし、まさに御指摘のありましたような、このとき、バブルの落とし子でございますところの住専の問題についてもきちっとした対応を今先送りせずすることが、大きな金融自由化の流れ、そして日本の金融システムの世界に対する対応力といいますか、拮抗力を維持していくためにもぜひとも必要なことだというふうに考えております。
  226. 中村時広

    中村(時)分科員 もう質問はいたしません。また大蔵委員会で続きはやらせていただきますけれども、やっていると言いますが、その程度のスピードではとてもじゃないけれども僕は間に合わないというふうな感じがしてならない。だからこそ、今言ったような観点からすれば、この住専処理というのは私はちょっと待った方がいいんじゃないの、待ったというか、先送りするんじゃないんですよ、もっと大きなくくりの中でやった方がいいんじゃないか。  それからもう一つは、これは大蔵委員会でも言いましたように、近代法治国家の絶対条件である透明性というものが確保されていない。こういうものを通すということはやはり良心として私はできない。そういう観点から、六千八百五十億円というのは削除すべきだという意見を申し上げて、御質問を終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  227. 保利耕輔

    保利主査 これにて中村時広君の質疑は終了いたしました。  次に、冬柴鐵三君。
  228. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 新進党の冬柴鐵三でございます。  私は、昭和六十一年七月に初当選させていただいたのですが、初当選をして初めて法務委員会、私は前職が弁護士なものですから、法務委員会で質疑の機会を与えていただいたのが十月二十二日のことでした。そのときにお尋ねしたのが、こういうことを言っています。「最近マスコミ等で問題とされている抵当証券取引にのみ焦点を絞って、一般投資家の保護の観点から質問をさせていただきたいと思います。」ということで、抵当証券の問題を取り上げさせていただきました。その中で、ちょっと長いのですけれども、  御承知のように、豊田商事破産事件で債権届けをした二万七千八百名の債権者のうち、実に六割以上の人が六十歳以上の御高齢の方でありました。それに主婦あるいは障害者のような社会的な弱者と目される方々、これは全体の八割以上にも達し、集中しているのでございます。また平均被害額は四百万円以上にも達しておりまして、被害者の多くは生活資金を根こそぎ奪われているというような悲惨な事件でございました。抵当証券ではそのようなことにならないことを祈りますけれども、一刻もその対策を遷延  する、あるいは逡巡することは許されないのではないか、このような観点から質問させていただく次第でございます。ということで、この質問を契機に抵当証券業の規制に関する法律というものが制定を見まして、私としては大変思い出にも残るし、誇りにも思っている法律でございます。  そしてこのときに、特に、昭和六年に抵当証券法というのができているけれども、そのときの思想と、その当時私が危険を感じた抵当証券業者による、債権を細分化してモーゲージとして一般消費者にたくさん売りつける、投資家に売りつけるという業態というのは昭和六年の抵当証券法では全く前提にしていなかったというところから、私は、業者登録が必要であるし、それから、抵当証券の細分化、これにはきちっとした保管をするものを、今いわゆる保管機構という形になっておりますけれども、そういうものをきちっとしないと不測の損害が高齢者に集中して起こるのではないかという危惧のもとに質問させていただきました。  幸い法務、大蔵両省の御理解をいただきまして、さっそくその年に抵当証券研究会というものが発足をし、そして、一年ほどの研究の後に、閣 法としてですけれども、抵当証券業の規制に関する法律というのができた、現在も六法全書に載っておるわけでございます。  そういうことを誇りにしていたのですが、昨年、平成七年八月三十一日に、私は兵庫県なんですが、神戸市に本店を置く株式会社兵庫銀行の経営破綻が明らかになりました。その後大蔵省の行政指導によりまして新設された株式会社みどり銀行へ業務が引き継がれ、そして同行くの預金者については預金全額が保証されるということになったわけでございます。これは周知の事実です。  ところで、この兵庫銀行には、兵庫抵当証券株式会社という子会社と目される会社があったわけでございます。  大蔵省にお尋ねしたいのですが、兵庫抵当は、私が申し上げました抵当証券業の規制等に関する法律三条に定める大蔵大臣の登録を受けているかどうか、受けたとすればそれはいつのことか。  それをちょっと御答弁いただきたいのと、それから、この兵庫抵当証券株式会社は株式会社兵庫銀行の子会社だというふうに言われておりまして、事実この銀行のロゴマークも二重丸で、全く同じものを使っております。が、この同じ法四条の事項に照らしまして、本店の所在地とか資本関係とか共通する役員等から見て親子関係と評価して誤りがないのかどうか、その点についてまず御答弁をちょうだいいたしたいと思います。
  229. 永田俊一

    ○永田政府委員 お答えいたします。  兵庫抵当証券株式会社でございますが、兵庫銀行が五%を出資いたします兵庫銀行の関連会社でございます。抵当証券業の規制等に関する法律第三条に基づきまして、昭和六十三年でございますが、十二月二十一日に登録を受けた法人でございます。なお、同法に基づきます登録の有効期限が三年でございますので、同社はこれまで平成三年十二月とそれから平成六年十二月にそれぞれ登録の更新を行っているところでございます。  それから、お尋ねの二つ目でございますが、兵庫銀行の子会社であると言われてきたがというお話でございますが、正確に申し上げますと、兵庫抵当証券株式会社は兵庫銀行が五%を出資いたします抵当証券会社でございまして、役員は兵庫銀行出身者が就任しております。その出身者も兵庫銀行グループが大宗を占めている、そういった会社でございます。
  230. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 この兵庫抵当証券株式会社も、今、親会社と呼ぶのはどうなのか、関連会社である兵庫銀行の経営破綻に呼応しまして、同じ日に経営破綻によって営業を停止した。その後こちらの方は商法に定める特別清算手続というものがとられて、現在債権債務の整理が行われているというふうに聞いているわけでございますが、大蔵省に報告されている兵庫抵当証券に関する特別清算の現時点までの進捗状況といいますか概要といいますか、もう大まかで結構ですが、若干御説明いただければと思います。
  231. 永田俊一

    ○永田政府委員 お答え申し上げます。  御指摘の点でございますが、抵当証券会社は昨年の八月三十日に支払い停止に至りまして、同日の取締役会におきまして、特別清算のための臨時株主総会の招集を決議し、その後、昨年の九月十六日の株主総会の解散決議等を経まして、昨年九月十八日に神戸地裁に特別清算の申し立てが行われたところでございます。御指摘のとおりでございます。  平成七年十二月二十二日には第一回債権者集会が開催されまして、現在裁判所から任命された清算人によります協定案づくりが進められていると私どもとしてはお聞きしておるところでございます。
  232. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 この兵庫抵当証券からいわゆる抵当証券を購入し、そして同会社の経営破綻以降、約定どおりの弁済といいますか、あるいは買い戻しと申しますか、受けられない債権者の数と、その総額といいますか、そういうものについてもわかればお知らせいただきたい。まず、それだけ先に教えていただきたいと思います。
  233. 永田俊一

    ○永田政府委員 お答えいたします。  支払い停止となりました昨年八月三十日時点のケースでちょっと恐縮でございますが、兵庫抵当証券の販売残高は約九百五十一億円、販売先数は約三千百四十三件、うち個人向け販売は三千六十五人、約百四十九億円となっております。  今具体的な、おっしゃられましたところの受けていない、受けられない、そこの金額については正確に承知しておりません。
  234. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 大蔵大臣、私、これは若干聞き取り調査をした。そしてまた、謄本とかそういうものをとって調査してみたものがこれだけあるわけですけれども、これは十数人の分です。ですけれども、大変難しい法律の仕組みになっていますね、私もそのときにいろいろ議論を民事局長としたわけですけれども。  そういうものを売ったのがほとんど兵庫銀行の行員。そして、相手は兵庫銀行の顧客、定期預金をしている人。そういう人が定期預金の満期日はいつ来るかというのは銀行は全部わかるわけですから、その満期日に行員が御自宅に赴いて、有利な投資物件があるからこういうものをしてくださいというような、後でるる説明しますけれども、この抵当証券の仕組みとかその危険性については全く説明していない。そして、この契約締結前に交付すべき書面も全く交付されていないということを共通して言うのですけれども、大蔵省にもし報告あるいは申告ということで、そういう態様について、これは大ざっぱなことでいいのですけれども、わかっていることがあれば、その範囲で結構ですからお知らせいただきたいと思います。
  235. 永田俊一

    ○永田政府委員 お答えいたします。  兵庫銀行は、兵庫抵当証券との業務提携契約に基づきまして、兵庫抵当証券と顧客との間におきます抵当証券の売買契約を媒介する形で窓口において抵当証券の販売を行っていたものであると承知しております。ただ、御指摘のような問題のある販売行為が実際にあったかどうかについては承知しないところでございます。  なお、兵庫銀行が行った抵当証券の売買契約の媒介の方法において問題があったとして抵当証券保有者の一部から訴訟が提起されているところでございまして、裁判所の判断を見守っていきたいと思っております。
  236. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 理屈は大体それぐらいにしまして、大蔵大臣に聞いてほしいのですけれども、御存じのように兵庫は昨年一月十七日に未曾有の大震災に見舞われまして、そこでの倒産でありますので被害者が競合しているのですよ。  ちょっと紹介させていただきます。  六十五歳の女性ですが、初めて購入を勧められて購入したのは平成七年七月十七日、震災からちょうど六カ月目の日ですね。一千万円のとらの子で兵庫銀行の行員の勧めによって買っているわけです。もう利息も何も払っていませんし、これは競売でしょうね。これは恐らく難しいと思います、専門家が見たら。  それから、六十五歳の男性。平成七年八月十五日、これは地震後七カ月であるとともに、経営破綻の十五日前。もう内部ではわかっていたのじゃないでしょうか。六百万円、被災者ですよ。  それから、七十歳と七十一歳の御夫婦。平成七年七月十七日、四百万円。これは例の兵庫銀行の長田支店。長田というのは火事で一番よく焼けたところですね。ここに住んでおられる方ですが、そこの宗田という行員の勧誘で、これは預金と同じなんだ、心配は要らないということで、抵当証券の仕組みとかリスクは何の説明もなし。そのときはもう自宅は半壊で、御主人は入院しているのですよ。それで、生活資金あるいは住宅の修理資金を兵庫銀行の行員に奪われている。  六十七歳の女性。これは淡路島の方ですが、兵庫銀行三原支店の神田典昭という行員が来られて勧誘をしています。定期預金よりも利息がいい、年二回の利払い、余り数が出ていない有利な商品なので、お得意様だから特にお勧めするのです、こういうふうに言われた。仕組みや危険性、全く説明はなし。手続は一切その行員がされて、この御婦人は判を押しただけ。この六十七歳の女性は、息子さんを亡くして、その子供、すなわちお孫さんである十六歳の高校生とお二人で暮らしている人です。  八十歳の女性。とてつもない金額ですけれども、これも兵庫銀行長田支店の行員による勧誘。定期より金利もいい、利息が半年ごとに振り込まれると。抵当証券はどんなものだと質問すると、兵庫銀行が運営しているので心配はないと断言をされた。兵銀のことについて尋ねたら、大蔵省銀行局長の吉田という人が頭取で来ていられるので、兵庫銀行は大蔵省が全面的にバックアップしている銀行なので全く心配ないと。八十歳のおばあさんですね。  余りやってもしょうがないけれども、これを聞いてほしいから私はきょうやっているわけですから、辛抱して聞いてほしいと思うのです。  あと、六十歳と五十六歳の夫婦から千五百万円。阪急六甲支店の窓口で勧められました。元本は保証する、確定利回り、いつでも解約は可能です、兵庫銀行がバックで保証しているから安全で有利です、こういうふうに説明された。それ以外は、抵当証券の仕組みも危険性も説明は全くない。老後の生活資金を根こそぎ奪われてしまった。自宅は地震で半壊で住めず、大阪へ避難中、こういう人ですね。六十歳と五十六歳の夫婦。  五十五歳の主婦、平成七年七月十七日、震災から六カ月後、倒産直前ですね、三百万円。兵庫銀行名谷支店の窓口で、定期預金の満期のときに、こちらの方が有利だからということで勧められた。定期預金と全く同じで、定期預金よりも利息がいいからお買いなさいというふうに勧められた。この人も自宅はもちろん損壊、息子さんの家も全壊。  まあ、あと六十六歳と六十一歳の夫婦からも一千万円とか、もう耐えられない。  六十八歳、ひとり暮らしの女性、合計で千百万円。自宅マンションも全壊、脊椎損傷の重傷を負った、現在仮設住宅住まい、こんな人です。  まだたくさんありますけれども、私が尋ねたいのは、武村大蔵大臣のときですけれども、ペイオフは、今ディスクロージャーが進んでいないし、五年間はできない、ですから預金者には迷惑をかけません、こういうことを言われて取りつけ騒ぎはおさまっていると思うのですね。それで、兵庫銀行に定期預金のままでこの人たちが置いてあったら、要するにみどり銀行に承継されて、元利金を払ってもらえるわけですね。  ところが、兵庫銀行の行員に、兵庫銀行と関係のある会社の兵庫抵当証券という会社から、預金よりもこちらが有利だ、兵庫銀行がバックでおるのだから大丈夫です、大蔵省から吉田という局長に来ていただいて、大蔵省がバックアップしているから絶対間違いありませんなんて言われて、全部これはお年寄りですね、こうやったという事案を見ると、これはどこまで、こういう人たち、そのままほっておいていいのかな。やはり、特段の事情があれば預金者救済の範疇に入れなければいけないのじゃないかな。  先ほどの報告で、九百五十一億円、事業会社が多いですから、個人は三千六十五人と非常に多いですけれども、総額が百四十九億ですか、この個人の人たちは、大なり小なりみんなだまされていますよ。  私は、もういろいろ言われるから聞いたのですよ、こういうことを書いてくださいと言って。そうしたら、みんな、これは兵庫銀行そのものだと思っているのですよ。もう欲でも得でもないですね。そういうものを、兵庫銀行の問題だけではなく、今住専でも、抵当証券の関連会社を持っているところがあるのじゃないですか。それからノンバンク、みんな持っていますよ。  幸い、これは自分のことを言うのじゃないけれども、この抵当証券業の規制等に関する法律で、二重売りはないのですよね。抵当証券を抵当証券保管機構というところが預かってくれていますから、二重売りはないから、根こそぎなくなるということは、だまされるということは、豊田商事みたいに金も何もないのに金の預かりを商いしているということとは事情が違って、これはよかったと思うのですけれども。  ところが、抵当権を私ずっと見てみると、先順位に何億もついていて、到底、そんな価値のない、競売して、とてもそんな値段、一番抵当も賄えるとは思えないような金額の二番抵当、三番抵当が抵当証券になっているのですよ。  この抵当証券を見れば、これは法務省が、法務局がちゃんと発行していまして、もちろんそこには、法律上そう書いてあるわけですけれども、「注意」として「この債権は、政府が弁済の責任を負うものではない。」と書いてあるけれども、やはり立派な抵当証券として法務省の大きな印鑑をぽんと押したものがついているものですから、これを見せられたら、それはみんなころっといくと思うのですね。そういう取引があるのです。  大蔵大臣、欲と道連れで損してもしようがないなというふうな自己責任でいくのか。銀行が絡んでいるだけに、それはみんな行員がやっているだけに、私はこれは何らかの形で、政府が全部見よとは、そこまでよう言いませんけれども、特別清算手続の中で、大蔵も業者登録を受け付けて、監督権を持っておったわけですから、銀行はもとよりこの抵当証券についても持っておられるわけですから、単なる株式会社でなしに。ですからリーダーシップをとってほしいですね。  これは、一銭も弁済を受けられない人と、平成二十二年だけれども弁済は受けられるのではないかなと思われる抵当権もあります。全く受けられないと思われるものもあります。ですから、そこら辺を、それを何らかの形でやはりリーダーシップをとってほしいと思いますね。  大蔵大臣のお言葉を一つちょうだいして、私は終わりたいと思います。
  237. 久保亘

    ○久保国務大臣 今、冬柴さんから事例を挙げて御説明がございました。私のところにも、ある御婦人の方から長い手紙をいただきました。  今、この問題は裁判にもなっていると聞いております。私も、これは兵庫銀行の責任に属するものかどうかというようなことについても、いろいろ専門的な意見も聞いてみました。先生は御専門でいらっしゃいますからよく御存じのことでございますが、なかなか難しい問題だなと思いながら見ておりました。  ただ、金融機関が、知識が専門的でない方、しかもディスクロージャーが十分でない中で、言ってみれば、だましたと言えば言い過ぎかもしれませんけれども、結局相手を信用させて、そういう知識が専門的でない、十分でない人たちに抵当証券を販売したという事実は、これはどういうことになるのか。  なお、今後の問題としてだけではなく、現にそのことによって被害を受けている人たちがたくさんおられるということとして、特にその方々が、震災の被災者の人たちが多くおられるというようなことについて、何か救済の道があるのかどうかというようなことについて私もいろいろと調べてみましたけれども、非常に難しい問題だなと思っております。裁判の成り行きもどうなるのか。  ただ、今いろいろお話しになりましたことについて、予算委員会でもお答え申し上げましたけれども、私は、そのような抵当証券の売買が行われて被害者というべき立場の人が大勢出ているということについて、これはどういうふうにしていったらいいのか、いろいろ関心を持って考えなければならない問題だという認識は持っております。
  238. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 何か技術的なことはないですか。
  239. 永田俊一

    ○永田政府委員 今大臣にお答えいただきましたのであれですが、この兵庫銀行に対して、売買契約の媒介方法に問題があるとして、先ほど申し上げました購入者の一部から訴訟が提起され、みどり銀行が訴訟を継承しております。大蔵省としても、この裁判の推移を見守っておるところでございます。  それから、お話にも出ましたように、阪神・淡路大震災被災者や、あるいは高齢者、傷病者等、抵当証券保有者の個々の状況については十分に承知しておりませんけれども、いずれにしましても、兵庫抵当証券については、財団法人の抵当証券保管機構が債務者から元利金を回収するということで努力しております。大蔵省としましても、その元利金の回収が円滑かつ最大限に行われるよう、業務体制の充実等を指導してまいりたいと思っております。
  240. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 どうもありがとうございました。
  241. 保利耕輔

    保利主査 これにて冬柴鐵三君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして大蔵省所管についての質疑は終了いたしました。  次回は、明三月一日金曜日午前十時より開会し、法務省所管について審査を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十二分散会