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小野分科員 大臣から極めて前向きの御答弁をいただきまして、大変ありがとうございます。
私は、実はこの
情報というものは、今まで人間を制約していたもろもろの条件から人間を解き放つ意味を持っているものだろうと考えております。例えば、私は今ここに立っていれば、もうここにいるというだけでほかの場所にいないわけでありますけれども、
情報通信のメディアを使えば、あっという間に世界じゅうのどこの人とでも、まさに目の前にいるかの
ごとく
情報交換をし合うこともできれば、また時間的制約の中で、私は今この時間にここにいるわけでございますが、この生きざまを記録として残しておけば、未来の
人たちにいつでも私
たちのことを呼び出してもらって、まさに目の前で、何を考えた人かということもわかっていただけるというようなことをいろいろと考えてまいりますと、これは極めて人間の生き方、考え方にまで多様な影響を及ぼすものがこの
情報社会の要素の中に入っているな、こんな気持ちがいたしております。それだけに、繰り返しになりますけれども、
郵政省の役割は極めて大であるということでございますので、改めて
大臣初め皆さんのこれからの御活躍を御期待申し上げたいと思います。
そこで、理念的問題をもう一問御質問させていただきたいと思うのでございます。
私のことばかり申し上げて大変恐縮でございますが、もう十数年前でございますが、
情報社会の姿を描き出してみようということで「
情報化社会風林火山論」という小論文をまとめさせていただいたことがございました。
情報化社会の中で求められる基本的な機能が、風林火山の四つの要素にまとめられるのじゃなかろうかというふうに感じたわけでございまして、風とは、速きこと風の
ごとしてございますから、秒速三十万キロメートルでどこへでも飛んでいくこの
情報通信の風であります。
それから林とは、一日一日、目には見えないけれどもすくすくと育っていって、月日を経たときには大木になり、人々に便益を与え、憩いを与える、これはまさに
情報蓄積の機能であろうと考えるわけであります。
そしてさらに火、侵略すること火の
ごとしと申しますけれども、これは例えば炭素と酸素が化合したらCO2が生まれて、それに熱が発生する。これは
情報処理の機能がまさに同じ働きをしているわけでございまして、Aという
情報群とBという
情報群がコンピューターの中でお互いに反応し合った結果、Cという新しい
情報群が生まれ、そして
社会に対してある一定のインパクトを及ぼしていくということでございますが、火は
情報処理であります。
この風林火山のうちの風、林、そして火という要素については、最近の著しい
技術進歩において、どんどんと新しいエリアが
拡大されてきていると思うのでございます。
残されましたのが
一つ、山ということでございますが、これは武田信玄の最も重視した考え方であるというふうなことが黒沢明さんの映画でも描かれていましたけれども、この山は、動かざること山の
ごとし、つまり
情報社会の中にあってはいろいろな
情報が自由自在に、先ほど申しましたとおり、空間を飛び越え、時間軸を飛び越え、そしていついかなるところへでもその影響が及んでいく。しかも、何か物であるならば、物をつくるために大変なエネルギーを投入しなければそれは生まれないけれども、
情報の世界におけるものは、
一つの
情報をあるポイントから発した途端に、それが意味のある
情報であれば、ほとんどエネルギーも消費することなく全世界にあっという間に広がってしまうというような特性を持つわけでありますから、これは大変
社会的に、すぐに
社会を揺り動かしてしまうという要素を持つわけでありまして、それだけに
社会的に不安定を引き起こしてくるという意味合いも同時にはらんでいるということは、御指摘をしておかなくてはならないだろうと思います。
そして、それと同時に、先ほど申しました風であり、林であり、火である、こういうものにつきましては、
技術の進歩とともに世界じゅうが統一規格になってまいりました。そして、どこの国で使っている機械も、その差がなくなってくる。世界じゅうの人がひとしくその便益を受けながら、仕事に、
生活に活用できてくるということになってまいりますと、実はこれから国家間で、また
地域社会間で競われてくる部分がどこになるかというと、この風林火の部分ではなくて、山の部分の勝負になってくる。
だから、
情報社会の勝負というのは、
一つの舞台は
技術の勝負です。それからもう
一つは、その
社会が
情報社会の中にあって動かざる何を持っているかということにおいて、その
社会の個性が生まれ、そしてその
社会の持つエネルギーが生まれてくるのだ、こういうふうに私は今感じている次第であります。山とは、具体的に恐らく倫理観であったり
社会の中で長い間培われてきた伝統であり歴史であり、また慣習であるといった、そういうものでもありましょうし、また新しくみんなが議論し合いながら、私
たちの国はこういう国にしようということで決め合っていくような要素でもあろうと思いますが、私は、今後
情報社会が
進展していくにつれて、先ほど御指摘申し上げましたとおり、さまざまな課題も、影の部分の問題もはらんでくる
社会であろうと思いますが、この山の部分をいかに確立しておくかということが、
日本の
情報社会の
あり方を基本的に決める大事な課題だ、こう感じている次第でございます。
郵政省として、
技術的側面はこれまでもいろいろな機関を使ってやってこられているわけでございますが、むしろこの山の部分にしっかりと光を当てながら、検討を進めていきながら、二十一世紀の
情報社会を展望するという部分が求められ始めてきていると考えている次第でございますが、
大臣はいかなる御所見をお持ちでございましょうか。