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1996-04-08 第136回国会 衆議院 予算委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年四月八日(月曜日)    午前十時開議 出席委員   委員長 上原 康助君    理事 桜井  新君 理事 近岡理一郎君    理事 深谷 隆司君 理事 保利 耕輔君    理事 今津  寛君 理事 草川 昭三君    理事 野田  毅君 理事 三野 優美君  理事 五十嵐ふみひこ君       相沢 英之君    伊藤 公介君       江藤 隆美君    小澤  潔君       越智 伊平君    越智 通雄君       大野 功統君    菊池福治郎君       小杉  隆君    後藤田正晴君       志賀  節君    高鳥  修君       谷川 和穗君    蓮実  進君       原田  憲君    村山 達雄君       谷津 義男君    安倍 基雄君       愛野興一郎君    伊藤 達也君       石井 啓一君    石田 勝之君       川島  賢君    笹川  堯君       中野 寛成君    平田 米男君       広野ただし君    松岡滿壽男君       山口那津男君    山田  宏君       今村  修君    佐々木秀典君       坂上 富男君    田中 昭一君       細川 律夫君    横光 克彦君       錦織  淳君    佐々木陸海君       松本 善明君    海江田万里君       土肥 隆一君  出席国務大臣         法 務 大 臣 長尾 立子君         外 務 大 臣 池田 行彦君         大 蔵 大 臣 久保  亘君         文 部 大 臣 奥田 幹生君         厚 生 大 臣 菅  直人君         農林水産大臣  大原 一三君         運 輸 大 臣 亀井 善之君         労 働 大 臣 永井 孝信君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 臼井日出男君  出席政府委員         内閣法制局長官 大森 政輔君         警察庁刑事局長 野田  健君         防衛庁参事官  小池 寛治君         防衛庁防衛局長 秋山 昌廣君         防衛施設庁長官 諸冨 増夫君         防衛施設庁総務         部長      大野 琢也君         防衛施設庁施設         部長      小澤  毅君         法務省民事局長 濱崎 恭生君         法務省刑事局長 原田 明夫君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部長    朝海 和夫君         外務省アジア局         長       加藤 良三君         外務省北米局長 折田 正樹君         外務省条約局長 林   暘君         大蔵省主計局長 小村  武君         大蔵省銀行局長 西村 吉正君         国税庁次長   若林 勝三君         文部大臣官房長 佐藤 禎一君         文部省初等中等         教育局長    遠山 耕平君         厚生省保健医療         局長      松村 明仁君         厚生省薬務局長 荒賀 泰太君         農林水産大臣官         房長      高木 勇樹君         農林水産省経済         局長      堤  英隆君         運輸省鉄道局長 梅崎  壽君         労働大臣官房長 渡邊  信君         労働省職業安定         局長      征矢 紀臣君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      堀口 一郎君     ――――――――――――― 委員の異動 四月八日  辞任         補欠選任   武藤 嘉文君     小杉  隆君   若林 正俊君     蓮実  進君   谷口 隆義君     広野ただし君   前田 武志君     中野 寛成君   佐々木秀典君     横光 克彦君   海江田万里君     土肥 隆一君 同日  辞任         補欠選任   小杉  隆君     大野 功統君   蓮実  進君     若林 正俊君   中野 寛成君     前田 武志君   広野ただし君     谷口 隆義君   横光 克彦君     佐々木秀典君   土肥 隆一君     海江田万里君 同日  辞任         補欠選任   大野 功統君     武藤 嘉文君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  平成八年度一般会計予算  平成八年度特別会計予算  平成年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 上原康助

    上原委員長 これより会議を開きます。  平成八年度一般会計予算平成八年度特別会計予算平成年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、理事会協議に基づく一般質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。笹川堯君
  3. 笹川堯

    笹川委員 まず最初に、大蔵省ニューヨーク大和銀行事件についてお尋ねいたします。  新聞では、もう既に大和銀行そのもの司法バーゲンに応じて罰金を払ったそうでありますが、元支店長の津田さんという方が裁判をして無罪を主張しておりましたが、これも司法取引に応じたというふうに報道がなされております。実際にもう司法取引に応じてしまったのかどうか、大蔵省に多分通知があったと思うのですが、ちょっと説明していただけますか。
  4. 西村吉正

    西村政府委員 今回、司法取引議論をされておるということは私どもも仄聞しておるところでございますけれども、これはあくまでも津田元ニューヨーク支店長と米国の検察当局との問題でございまして、当局といたしましてこの問題についてコメントをすることは差し控えさせていただきたいと存じます。
  5. 笹川堯

    笹川委員 二月の私の質問のときに、大和銀行事件につきましては大蔵省が関与している、大蔵省アメリカ政府に対する通報がおくれた、これはもう既に大蔵省も認めておられるわけでありますが、今回、支店長司法取引をせざるを得なかった。これは、いかに支店長裁判無罪を申し立てても、雇用主であります大和銀行司法バーゲンに応じてしまうと、これはもう一人で闘うといったって闘えるわけじゃありませんし、その辺について今大蔵省はコメントする立場にないと言うのだけれども、実は大蔵省アメリカでその共犯じゃないか、同罪だということを私は申し上げたのでありますが、私は今でもその考え方は崩しておりません。  大蔵省というところは、どんな小さなことでも全部実は情報が入るシステムになっています。にもかかわらず、やはり四十日以上延ばしてしまった。私は、大蔵省として、もう少しアメリカに誠心誠意やっていかないと、これから日米が対等にあるいはまた共同に繁栄をしていくのだという建前の上に立つと、もとはこういう小さな問題であっても、アメリカ金融界全般に及ぼす影響があろうと思いますので、今後は絶対に、こういう届け出がありあるいはまた話があったときには、速やかに相手の政府に通告するということはもう国際的な儀礼だと思うのですけれども大蔵大臣いかがですか。
  6. 久保亘

    久保国務大臣 お話のように、金融国際化グローバル化が進んでまいります中で、国際的なルールを守る、信頼を確保するということは極めて重要なことであると考えております。  ただいま御意見がございましたような立場で、大蔵省としては今後臨むべきであると考えております。
  7. 笹川堯

    笹川委員 大蔵大臣がそのように答弁されるわけでありますが、ぜひお願いしたいのは、どうも日本の役所というのは、大臣がそのとき決意を述べられても、政府がかわるとまたすぐ変わってしまう。ですから、やはり私は、大臣がかわっても大蔵省事務当局の中でしっかりしたものをきちっと持っておらないと、大臣答弁したことと事務当局答弁したことが実際形であらわれてこないということが今まで長い歴史の中であったと思うのです。  今回は、今まで大蔵省に何の関係もなかった久保大蔵大臣がなったわけでありますから、今までの既存のものを断ち切って、今大蔵省解体論だとかあるいは再建論だとか見直し論だとかいろいろありますが、私は解体論にくみすることは考えておりませんし、そうかといって、やはり大蔵省が金を入る方と出る方と両方一つでコントロールしているということは非常にそこには危険性もあるというふうに思いますので、ぜひひとつ今後とも今の大蔵大臣答弁がきちっと隅々まで行き渡るようにお願いをしたいと思います。  さて、農林大臣にちょっとお尋ねいたします。これは経済局長でも結構ですが、JAの組織でありますが、役員無限責任について、有限責任と二つあるわけですが、農協の場合には無限責任社員になっている。これを将来やはり普通の金融機関と同じように有限責任社員に変えるようなおつもりはあるかどうか、いかがでしょうか。
  8. 堤英隆

    堤政府委員 農協につきましては、組合員役員関係というのは委任関係にございまして、当然ながら、そういった意味で善良な管理者注意義務をもってこの職務を執行しなければならない、それから、過失があります場合には第三者に対してもそういう責任を負うという形になっておりまして、法制上は現在他の商法あるいは信用組合等と全く同じ形になっております。したがいまして、法制度上何か農協だけが無限責任ということになっているわけではございません。法制度上はそういうことでございます。  ただ、現実の具体的な問題が起こった場合の処理を見てみますというと、どうしても、農村社会ということの影響は受けているかと思いますけれども、私的な財産のところまで責任を追及される。そういう意味で、無限責任という言葉が正しいかどうかわかりませんけれども、法令上認められております有限責任の範囲を超えまして、無限責任というか、私的な財産のところまで責任を追及されるという場合が事例としてはあるということでございます。
  9. 笹川堯

    笹川委員 聞くところによりますと、鹿児島かどこかの農協事件を起こしたときに、無限責任社員ということで、組合長財産まで何か提供して解決したことがあるというようなことは聞いております。  もちろん、今度の住専問題について、何兆円の話でありますからそんな話、とてもじゃないけれどもできないわけでありますが、さりとてお金を預ける農協組合員立場にしてみると、預けたものは必ず返ってくるということが前提でありますので、ぜひひとつ一般金融機関と同じようにやはり高度の自覚ですね、お金を貸している、それからもう一つは預かっているというこの自覚が普通の金融機関に比べてはやや薄いような気がいたしますが、大蔵大臣どうでしょうか、ほかの金融機関と全く同じように農協は運営されてきたという自信がおありになるかどうか、ちょっとお答えいただきたい。
  10. 大原一三

    大原国務大臣 大蔵大臣お答えになる前に私からお答えしたいのでありますが、笹川委員の御指摘、私も非常に心当たりないしは御批判の原点というのはわかるような気がいたします。  ドライな商業主義的な経営というようなものが、これからの金融自由化の波の中で選択肢が非常に膨れていく中で、農協金融のプロフェッショナルなスタッフというのが非常に少ない、ここらがやはりこれから基本的にこたえられていかなければならぬところではないかな。  先ほどの無限責任問題でございますけれども農協理事責任というのは、信用組合、信用金庫の理事と全く同様な規定があるにかかわらず、農村社会の慣習から、やはりどうしても理事さんというのは選挙で選ばれる。そういうことで、おまえ責任持てと言われると逃げられないという慣習的な実態があることも事実でありまして、ここらもやはりもう少しドライに割り切らなければならぬ時期が来たのではないか、こんな感じを受けております。
  11. 笹川堯

    笹川委員 今農林大臣から、時期が来たのじゃないかという答弁でありますが、まさしく私はそのとおりだと思います。一農協単位預金量というものは少ないかもわからぬけれども、合計しますと一流銀行より多いわけでありますから、そういう意味では、農協の職員の質の向上、同時にまた、これから金融マンとして生きていくのだということになれば、やはり教育をきちっと徹底をしていただきたい、こういうことをぜひひとつ農林大臣お願いをいたしておきます。  さて、前の質問のときに覚書の問題で大分時間を食いました。また、大蔵農林答弁が食い違ったわけでありますが、最終的には大蔵大臣も五・五兆円は支払うべきものだというふうなお答えをいただいて、そのとき私は大変満足をしたわけでありますが、いろいろな人からの話がありまして、きょう、蒸し返すわけではありませんが、もう一度実はお尋ねをしたいと思っております。  実は、この覚書にございますのは、あくまでも大蔵省農林省は住専再建する、再建計画なんですな。今度預金保険機構から独立をして住専機関をつくると、これに書いてあることと違って、再建じゃなくして清算をするんだ、住専はもうつぶしちゃうんですよということをこれにはっきり書いてあるわけですね、政府広報に。「住専は消滅します。救済はしません。」こう書いてあるのです。そうすると、本来は再建というのは、住専を生かしながら住専をてこ入れして住専の借金を返す、これが私は再建計画だと思うのですが、政府広報に書いてある「住専は消滅します。」ということと整合性がちょっとないような気もするのだけれども、これは事務当局で結構です、お答えいただきたい。
  12. 西村吉正

    西村政府委員 平成五年二月三日のいわゆる覚書は、そこにも明記されておりますように、「再建支援について、下記により、それぞれ誠意をもって、当事者間の協議が円滑に行われるよう対処して行くものとする。」ということでございまして、今回清算をせざるを得ないという事態に立ち至ったことはまことに残念なことでございますけれども、当時とは状況が変わっているということは、私どももそういう前提で考えざるを得ないと考えております。
  13. 笹川堯

    笹川委員 今銀行局長が残念に思っているということは、もう既に、この覚書よりもこちらの「住専は消滅します。」という方に軸足が移ってしまっている、当然。そうすると、法律的に言うとこの覚書というのはもともと、大蔵省の人は私の質問に答えて、これは法律的に有効なものじゃないんだ、ただのペーパーなんだ、何ら法律的に拘束されるものじゃないんだという答弁をされたわけですが、最終的には倫理的に拘束されるというようなことになったのです。  法制局長官お尋ねしますが、この再建計画書、今言っているように、もう認識が変わって、「住専は消滅します。」と言っているんだということになりますと、この覚書そのものの内容はもう全く本当の紙っぺらだ、全く効力ないんだというふうにとるべきなのでしょうか。お尋ねをいたします。
  14. 大森政輔

    大森(政)政府委員 そもそもこの覚書法的性格は何かということに関係しようかと思いますが、この点に関しましては、既に本委員会でも大蔵省等から答弁があったと思いますとおり、住専再建問題の進め方について議論整理をしたものである、したがいまして、この覚書自体によって当事者間の権利義務を制約したりあるいは左右したりするものではそもそもないということでございますから、この再建前提が崩れたから、覚書によって生じた権利関係がどうこうなるというものではそもそもないということではなかろうかと思います。
  15. 笹川堯

    笹川委員 これはどっちに移っても、もともとこれは法的に拘束力のないものだ、こう今おっしゃっているわけなんですが、そうしますと、法的に何ら拘束力のないということになってしまうと、これは大蔵大臣農林大臣答弁したことと全然変わってくるんじゃないのかな。農林大臣は、もうこれに基づいて金利もまけたし、私の方は払ってくれるということと認識している、こう前におっしゃった。大蔵大臣の方は、最初大分もたもたしたけれども、最後は明快に、やはり広義に解釈して払わざるを得ない。  それはそうでしょう。払うと言わなければ、金利をまける話なんかいきっこないんですから。これ以上の負担はかけないという負担は何かというと、私は、五・五兆円のものはきちっと払いますよと、それを払わないなんということを言わないというふうにとれると思うのですね。そうじやなかったら再建なんかできないんだから。  だから、再建について支援をするというんだから、役人の書いた文書法律に全くのっとらない、法律的に何ら効力のないものだなんて言われてしまうと、これはこの委員会議論するのは非常に難しいと思うのですね、ここは法律をつくるところですから。  また、その書いた字句を大蔵大臣は読んでいただいて、文書以上のものでもなければ文言以下のものでもない、こういう御答弁をいただいたのですが、私は、これを見なければ、再建計画再建をしていくんだ、それをしながら、やはり最終的にどうしてもうまくいかないからここで税の投入というような話が出るのならば、時間的経過があって国民も理解をしてくれると思うのだけれども、しょっぱなから、もうこれは返ってこないものですから、お金は出してしまうのですと。返ってこないお金なのに貸すのはおかしいという議論大蔵大臣もなさっておりましたね、六千八百五十億は返ってこないのだから貸付金と言うのはおかしいと。あくまでもこれは国が負担をするものだということを言われたのです。  実は、事情があって私は委員会に出られなかったのですが、土田参考人とそれから寺村参考人が出たこの議事録を読ませていただきました。自民党桜井先生大分厳しくやっていただいたのでそこを読んだのですが、どうもお二人出た参考人は、余り我々が考えているほど厳しく現状認識がなかったような気がするのですね。  それからもう一つは、私も一員だということを反省しているということを前の委員会で申し上げました。やはり自民党のときにも申し上げましたが、この住専問題ばかり大きくなっております。実は住専問題というものはノンバンクの中の一翼なんですね。ノンバンク不良債権は七十兆か八十兆かわかりませんが、あります。その中の住専一つの角度なんだ、これはもうみんなそう認識しているし、土田参考人もそう答弁されている。  その点について大蔵大臣は、この住専問題というのはノンバンクのあの大きい枠の中の一環として考えられるのか、あるいは住専だけはもう全くノンバンクと独立して別なものだというふうに考えて、このことだけを今回法案で解決すればもうあとはノンバンク公的資金導入しないとおっしゃっているわけだから、そういうふうに理解をされておられるのか、ちょっとお尋ねをいたします。
  16. 久保亘

    久保国務大臣 最初の問題から申し上げたいと思いますが、平成五年二月三日の覚書段階は、これは第二次再建計画を進めようとする時代でございます。再建計画に基づいての両省の担当局長覚書であったと思っております。  この覚書の見方がそれぞれございましたが、今日の段階におきましては、この再建計画を断念し、整理清算に入る、その上で不良債権処理するということになってまいったわけでありまして、その段階で第二次再建計画を進めようとしたときの覚書に基づく系統側からの主張があり、これらの問題を協議をした結果、住専整理するに当たっての損失、欠損の処理をどうするかという当事者間の合意が得られたものと考えております。  私、住専問題は不良債権の象徴的で喫緊の課題であるということを抽象的に申しておりますけれども、今住専に集中的にあらわれております不良債権の問題は、不良債権処理一つの入り口であると思っております。しかし、この問題の処理に続くいわゆるノンバンク処理に関しては、公的資金導入なしに、預金保険機構等の役割を果たす中で一定の期間に不良債権処理を終えるよう努力をすべきであるという立場をとっているものと考えております。
  17. 笹川堯

    笹川委員 今大蔵大臣が、ノンバンクの方は預金保険機構でやっていくのだというふうに……(発言する者あり)もう一遍、ちょっと。
  18. 久保亘

    久保国務大臣 少し言葉が足りませんでしたけれども、いわゆる預金者影響が及びます場合は、預金保険機構保険料率等を引き上げることによって保全の体制を整えながら、預金者保護に万全を期すような体制とともに、ノンバンク不良債権に対する扱いは、十二月十九日の閣議決定もございます。これらに基づいて処理されるということになるわけでございます。
  19. 笹川堯

    笹川委員 今大蔵大臣は、預金保険機構料率を引き上げることによって預金者保護をするのだ、もうこれは当然でありますが、ノンバンクも実は預金は受けていないのですよね。住専と全く同じだと思うのだけれども、ちょっと答弁が――銀行局長、変えるのですか。
  20. 西村吉正

    西村政府委員 事務的に論点を整理して申し上げたいと存じます。  一般的に申し上げまして、金融制度調査会でも明確に議論されたところでございますが、金融機関破綻処理におきましては預金保険発動されることとなりますが、預金保険発動により保護されるべきは預金者信用秩序であり、破綻金融機関ではない、経営者でもない、株主出資者でもないという原則が明らかにされているわけでございます。その場合に、破綻金融機関は存続させない、そして経営者の退任及び民事刑事上の厳格な責任追及が行われる、また株主出資者損失負担が行われる、このような原則が明記されているところでございます。これが預金受け入れ金融機関破綻原則でございます。  さて、住専を含みますノンバンクにつきましては、これは預金受け入れ金融機関ではございませんので、本来であるならばこのような預金保険発動であるとかあるいはそれが不可能な場合の公的関与とかいう問題にはならないわけでございますけれども住専という緊急かつ象徴的な課題につきましては、これは国際的な問題もございますし、また、日本不良債権問題を解きほぐす糸口をつけるということもございまして、ノンバンクではございますけれども、その処理について今回公的な資金導入をもお願いして早急な解決を図りたいという御提案も申し上げているところでございます。  しかしながら、そのほかのノンバンク住専を含めまして八十九兆円ばかりノンバンクの貸し出しというものはあるわけでございますが、住専以外のノンバンクにつきましては、あくまでも原則に戻りまして、ノンバンク破綻をしたという段階では公的な資金の問題についてお願いはすることはいたしません。それは原則に戻って、ノンバンク破綻預金受け入れ金融機関破綻につながる、そういう段階になって初めて議論をするという原点に戻らせていただきますというのがただいま大臣が申し上げた趣旨でございます。
  21. 笹川堯

    笹川委員 これは大蔵省の元の銀行局長が明確に、住専ノンバンクの一部分なのだということをはっきりおっしゃっている。我々も自民党にいたときはそういうふうな理解で、ノンバンクをどうしようか、大変だという議論は何遍もいたしました。ただ、当時の幹部の人の認識が甘いといえば甘かったのでしょうからそのまま先送りされてしまった。ということでありまして、今、住専は緊急の課題だけれども、聞いていると、ノンバンクは全く緊急の課題ではないようにも銀行局長の説明で聞こえるのですね。  ノンバンクの問題は、預金者がいないのだから本来は政府が関知すべきものではないのだけれども住専については特別だ、こうおっしゃる。そうすると、住専について特別だとおっしゃるなら、ではノンバンクは特別ではないのだ、何かそこに物すごく差別があるように思うのです。大きい方はそのままほっておくのだよ、自力でやりなさい、小さい方は国の予算を投入してということになると、私は、両方やります、だけれども、こっちの方が先なのだからこっちは先にやりますけれども、後の方の大きい方も責任を持ってそういう事態があればやりますよと言うのなら整合性があるのだ。もう一遍。
  22. 西村吉正

    西村政府委員 広い意味でのノンバンク住専を入れて考えますと、ノンバンク全体では先ほど八十九兆円に上る融資残高があるわけでございます。そのうち住専は十二兆円ばかりでございますので、確かにノンバンクの一部であるということは笹川先生御指摘のとおりでございます。  ただ、ノンバンクの中で住専というものが特殊な位置づけを持っておりますのは、一つには、住専に対します金融機関の貸し付けでございますが、非常に多数の金融機関、母体行で申しますと百六十余り、金融機関全体では三百に上るという大変多数の当事者がいる。通常、ノンバンクの場合にはそれほど多くの関係者はおりません。したがって、非常に権利関係がふくそうしているというのが第一点でございます。  もう一つは、七つの住専につきまして、共通した最大の融資先として系統金融機関というものの存在がございます。したがいまして、七つの住専一つだけをその当事者が解決を図ろうと努力をいたしましても、七つの住専に共通した課題を解決できないとなかなかこの問題を解きほぐすことができない、こういう特殊性がございます。  要するに、関係金融機関が非常に多数に上ること、そして共通した最大の融資先として系統金融機関というものが存在すること、こういう特殊な問題でございますので、政府も解決に協力をしつつ、関係者とこの問題の解決に一緒になって努力をするということが必要だということでございます。  その他のノンバンクにつきましては、恐らくこの住専問題という特殊な問題が片づきますならば、それぞれの当事者の努力と意欲によりまして解決が可能になるのではないかと考えております。
  23. 笹川堯

    笹川委員 今、銀行局長答弁の中で、特殊なものだ、こう言われた。私はわかっていないから聞いているわけじゃありませんで、わかっておりますが、なかなか口に出していただけないので、何とか発言をしてもらいたいと思ってしつこく聞いているわけです。  私は、ノンバンク住専も置かれている状況は一緒だ、ただノンバンクの方は、金融機関がじかに五〇%以上株を持っているから、法律的に言うと子会社だ、だから責任を持つんだ、これは法律的にも明確にわかるわけであります。住専の方は、法律的には子会社の扱いにはなっておりません。だから、そういうことも言えるかもわからぬけれども住専には人的つながりがあるのだから、株を五〇持っている持っていないというのは私は議論にならないと思うのですね、今回は。  恐らく銀行局長は、特殊と言うのだから、住専がつぶれれば農協系統に多大な迷惑をかける、これは金融不安につながるんだよ、だからこの覚書の中で、引き揚げたいというときに引き揚げては困るということでこれはもともと結んだものなんだから、はっきり銀行局長は、住専の問題については母体行が責任を負うべき法律的な責任はないけれども、やはり返すと言った以上は返すんだよという、銀行というのは、金融業界というのは信用と信頼なんですね、大蔵大臣。  信用と信頼というのは、約束したことは文書になくても守るというのが私は金融秩序だと思っているのです。それを、書いたものも守れない、書かないことでもやりますよと言ってしまうと、金融秩序の維持というのは口で言っているだけの話で確立しないから、銀行局長、思い切って、それは特殊と言ったのは、農協系統のお金を返せなくなると大変だから、これはやはり倫理的にも責任がありますと。大蔵省農林省へ行って頼んだのでしょう、再建に母体行は協力するという、みんな紙っぺら持っていって、判を押してあるけれども、それは取締役会にかけた書類じゃないと私は思うけれども。  だから、やはり農協系統に迷惑かけないようにするための今度の住専ですということをはっきり言いなさいよ、ここで。その方が格好がいいよ、もうすっきりするから。そうじゃないと、筋が通らぬと議論できない。
  24. 西村吉正

    西村政府委員 住専の設立、そしてその後の経営の経緯につきましては、今までも御説明してきたとおりでございますが、母体行がやはりその経営について大きな責任を持っているということは、皆様から御指摘もございましたし、私ども認識をしているところでございます。しかしながら、その点につきましては、今回の御提案の中で、母体行、一般行それぞれ最大限の努力をしているということは、またこれも御説明してきたとおりでございます。  ただ、御指摘のように、しからば、このような解決がなされない場合にどのようなことになるのかという点に関しましては、私ども日本全国の預金者保護という点について遺憾な点が発生することも考えておかなければいけない。その場合に、やはり最大の貸し手である系統金融機関というものに対する影響というものが一番大きいであろうということは、また私どももそのように思っているところでございます。  したがいまして、そういう日本金融全体のことを考えまして、関係者全員がそれぞれの責任立場に応じまして最大限の努力をするということを前提とした処理案が、今回の政府の提案だと理解しているところでございます。
  25. 笹川堯

    笹川委員 銀行局長の話を聞いていると、最初の一行はわかったように言うのだが、だがしかしと、こう来るものだから非常にわかりづらくていかぬわけでありますが、五・五兆円という巨額の債権を系統が持っているのですから、このことが引き金になって預金者に迷惑をかけるという議論一つあります。そうならば、完全に預金者に迷惑をかけるということになるのなら、預金保険機構整理しても私はおかしくないと思うのですが、銀行局長どうですか、それの方が私は正当だと思うが。
  26. 西村吉正

    西村政府委員 笹川先生御指摘のとおりの面もございます。預金保険発動によって金融機関破綻処理をするということがあくまでも原則でございます。  ただ、問題は、先ほども金融制度調査会の答申を引用いたしましたように、預金保険発動するという場合には、あくまでも預金受け入れ金融機関を存続させない、破綻をさせるということがまた原則になっているわけでございます。  さて、今回の住専処理について考えますと、そのようないわば事後方式と申しますか、預金受け入れ金融機関破綻をさせた後に処理をするという方式をこの十三兆円という膨大な債権債務関係処理に適用できるかということは、私どもとして大変に心配でございます。やはりこれだけ大きな債権債務関係処理ということになりますと、預金保険を活用したいわば事後方式でなくて、特例的ではございますが、事前的な何らかの処理があわせて考えられなければならないのではないか、こういう考え方に基づいて今回の政府の御提案を申し上げている、こういうことでございます。
  27. 笹川堯

    笹川委員 法律的な意味の解釈をしてみたり、あるいはまた十三兆という巨額だからということを今言われた。そうすると、私の言っているノンバンクというのはもっと巨額ですよ、こういう議論を言うと、ノンバンクの方は母体行があって法律的に五〇%だから、そっちはそっちで自己責任でやってください。それでは、そっちは自己責任で、こっちは自己責任ないのか。  どうも国民一般がやはりその辺のことで、私は六千八百五十億の税金を投入することに八〇%以上の人が反対している原因はここにあると思うのですね。これはみんな聞いているわけですよ、活字になるし。だから、それは農林省と大蔵省で約束した以上は、やはり私は守ってもらわなければ困る。しかも、こういう文書を書いたからには、はっきり申し上げた方がいいと思うのですね。  だから、農協の人が引き揚げたいといって引き揚げてしまった、それで破綻をしたのなら、私はこの場で農協農協として自己責任でやるべきだと申し上げたいけれども、そうじゃないのだからしようがない。これで払うと言っているのだから、だから協力してください、金利もまけてください。  だから、これに沿った答弁をしてもらわないとやはり我々は納得できないし、国民の税金を使うのですから、後の議論に進めなくてこれで時間を食ってしまうので、ぜひひとつ、本来は金融機関がつぶれたら預金保険機構が出動する、これは当たり前です。だけれども住専金融機関ではありません。けれども、ここでけれどもを使うのならいいんだよ。けれども大蔵省の通達で準金融機関の扱いを受けているわけでしょう。だから、系統も安心して、担保もとらないで貸したわけだから、ここには信頼関係があったんだね。この信頼関係を崩すようなことを言われると、今度国民自体が大蔵省の言っていることは信用できないということになってしまう。これはまた大蔵省に対する信用が失墜すると大きな社会問題なんですよ。  だから、こっちの方が大きいんだよ、大蔵省はこれから信頼されるのかされないのか。このことをぜひひとつここで、大蔵省は前任者であろうが前々任者であろうが約束したことは守ります、だから今回は、預金保険機構の出動じゃない、だけれども、どうしても社会的に大きいので、これはぜひさせてほしいんだ、そういうふうに言いなさいよ。思っていることを言った方がいいんだよ。
  28. 西村吉正

    西村政府委員 御指摘のように、金融行政は信頼が基盤であるということは私ども肝に銘じておかなければならないことだと存じます。今後、国民の皆様の御信頼を得る金融行政を展開できるように、誠心誠意努力をしてまいりたいと考えております。
  29. 笹川堯

    笹川委員 なかなかぬかにくぎというか、ぬかがあればいい、何か空気にくぎを打っているような気がするんですが、さて、これだけやっていると時間がなくなってしまうので、大蔵省がこの問パンフレットをお出しになりました。  どなたかの質問で幾らつくったかというのを、私帰ったら新聞に載っていましてね、大蔵大臣。何か三十万部で九百万でつくったというふうに言われておりますが、もう当日載っているんだ、朝日新聞に。大蔵省は知らなんだと言うんだけれども、もう朝日新聞に載っているんだ。だから我々、自民党時代も、何か大蔵省のコメントというのは自民党に来て説明するより前に新聞見た方が早いと言われちゃうんだ。よくこういうことがありました。どうですか、三十万部で九百万。
  30. 西村吉正

    西村政府委員 政府広報といたしまして支出いたしました金額が九百五十万円、作成部数は三十万部でございます。
  31. 笹川堯

    笹川委員 五十万ばかり新聞記事の方が間違っていたということになりますが、部数はそのとおりであります。  大蔵省お尋ねしますが、「六千八百五十億円の財政支出を含む政府住専処理策は皆さんの預金を守るためにどうしても必要です。」こう書いてある。そのほかのことは何も書いてないですね。今言われた系統だとか特殊なものということ、全然書いてない。どういうわけですか。
  32. 西村吉正

    西村政府委員 わかりやすく簡明にということで、すべてのことをこのパンフレットで尽くしているわけではございませんので、必ずしも詳細に御説明をしているわけではございませんが、法的整理処理するとどのようになるかというような問題も述べてございますので、あるいは御指摘のような問題はそういう点で触れているということになろうかと存じます。
  33. 笹川堯

    笹川委員 全部書くと書き切れないから大まかなことだけ書いたというのだけれども、実は大まかなことというのは、私がさきに国会で質問して、五・五兆円は必ず責任を持って大蔵省、銀行、母体が返すということを約束されたんだから、ここで。五・五兆を返しますというそんな大事な問題がここに全然抜けていて、六千八百五十億の方が重いんですか、五・五兆円返すことよりも。
  34. 西村吉正

    西村政府委員 五・五兆円を返済するということも、六千八百五十億円の政府支出をお願いするということも、この政府処理案のそれぞれ重要な要素であろうかと考えております。
  35. 笹川堯

    笹川委員 今銀行局長がそう言われたことをここに書いておけば問題ないけれども、一番大事なことが全然書いてないで、ただ六千八百五十億は預金者を守るために必要、これ、国民に誤解を与えると思うのですが、大蔵大臣、どうでしょうか。そんな大事なものが抜けておって、政府広報だなんて言われると困るのですよ。
  36. 久保亘

    久保国務大臣 国会での御議論もマスコミを通じて国民の皆さんに聞いていただいているところでございますし、またこの政府広報というものは、できるだけ簡潔に政府として国会の論議等も通じて考えられる論点を列挙する、こういう立場でつくられたものと思っております。  御指摘の問題等につきましては、すべていろいろな論点について触れられれば万全なのかもしれませんけれども政府の側が考えました今日における住専問題処理の論点、そういうことでっくられたものと思っております。
  37. 笹川堯

    笹川委員 政府がつくった広報ですから政府に都合のいいように書くというのはわかるんですが、これからはやはり一般国民の理解がないとなかなか税の問題は解決ができないという現状ですから、やはり政府広報というのは一番の大事なポイントだけは書いてもらわないと、全部細かく何から何まで書けなんということを言っているわけじゃないので、六千八百五十億よりも農協系統に五・五兆円を、これさえ、六千八百五十億出してもらえれば五・五兆円は返せて農協系統にも迷惑かけないのです、これが即金融秩序の維持につながるんですというふうなことが一番大事な眼目なんですから、その項目が全く触れてないということは、国民に私は物すごく大きな解釈の違いを生じると思うのですけれども大蔵大臣、どうですか。
  38. 久保亘

    久保国務大臣 今おっしゃったことがこの委員会の当初からの論点であり、それをどのような視点から見るかということで見解が分かれてきたところではなかったのかと私は思っております。
  39. 笹川堯

    笹川委員 各党によってそれぞれの理解とそしてまた方式は異なることはわかりますが、質問している以上は質問者としての権利と義務を行使しているわけですから、聞いている委員に対する答弁という形でお答えをいただかないと、何かこう私に答えるのじゃなくしてほかに答えているような気がしてならないのです。私は大蔵大臣に再度お尋ねしますが、六千八百五十億を出さないと系統の五・五兆円に対する支払いができなくなるのでしょう。できるんですか、六千八百五十億出さなくても。どうですか。
  40. 久保亘

    久保国務大臣 これは住専問題処理の全体スキームの中で六千八百五十億の財政支出が決まっておりますから、ただいまの御質問にストレートにお答えすれば、六千八百五十億を含むスキームの中での五兆五千億の扱いが決まっているのですから、なければ五兆五千億に影響を及ぼすということは当然だと思います。
  41. 笹川堯

    笹川委員 そうしますと、六千八百五十億円があのスキームの中に入っているということになれば、これが出ないと返せない。ということは、入ってくれば返せるということでしょう。だから、返すものをなぜ返すと書かないかと聞いている。
  42. 西村吉正

    西村政府委員 御指摘のとおり、五兆五千億を返すということを実現するためにも六千八百五十億円の政府支出をお願いをしているところでございます。したがいまして、全体の枠組みが実現するためには、ぜひこの六千八百五十億円の政府支出をお認めいただき、その結果として五兆五千億の支払いも実現できるようにお願いを申し上げる次第でございます。
  43. 笹川堯

    笹川委員 そう言えばよくわかるのだけれども、言っていることを、これは大蔵省がいずれにしたってお願いしてつくった原文でしょうから、やはりそれは入れておくべきが本来親切だと思うんだね、政府広報というのは国民が読むんだから。後で注釈つけて説明しなければわからないような広報というのは、私は、おかしい。今、広報というのは漫画になりました、ぱっと見て難しくなくてもわかるような。ですから、私は、この政府広報というのはどうもおかしい。  この中に「住専処理のために一人五千五百円ずつの税金を新たに納めていただくことはありません。」と書いてある。これは、私たちは今回の住専処理は母体行責任で十分できると。十三兆あった株式の含み益がもう今十六兆になっているのですね、景気が上がってきたから。ここで三兆円浮いている。同時にまた、土地の不動産の含み益が二十一行で六兆五千億あるということは前回指摘をしました。ですから私は、母体行は十分にこのことを、政府が税金で六千八百五十億出さなくても大蔵省がこうやりなさいと行政指導すれば必ずできるということを前回申し上げました。  今回、一人五千五百円の税金を新たに納めていただくのではないと言うのだけれども、これは当たり前の話でして、住専処理のために税金を増税するなんということは、これは政府の案でもないと思うんですよ。どうして「新たに」という言葉を使ったのか、ちょっと答えてください。
  44. 西村吉正

    西村政府委員 今回、私どもの御説明が必ずしも十分でなかったため、今回の住専処理策によって、新たに例えば住専税というようなものを課せられるのではないかというような誤解をお持ちの方々がおられるというお話も伺いまして、決してそういうことはございませんということを御説明申し上げたわけでございます。
  45. 笹川堯

    笹川委員 一人五千五百円を新たに取られるのではないかと、そのぐらいのことを気をつけていただいているのなら、今の答弁みたいに、それなら私が言った五・五兆円などというものになぜ触れられないのか。自己の調子のいいときには、親切に書いたんですと、そういう説明をするけれども、片っ方は全く、書かなければならないものを落としてしまっている。そういうことなので国民の反発が強いのだと私は思うのですね。  これだけ議論したんだから、もう六千八百五十億しょうがないよと言う国民がどんどんどんどんふえてくれて、やむを得ないと言ってくれれば、やっぱり私たちも考えを変えなければならぬときもあると思うのですけれども、依然として国民は税金を使うことに反対だとおっしゃっている。というのは、今みたいな、やっぱり説明が全くどうもおかしい、わかりにくい。  それから、銀行局長お尋ねしますが、今度のスキームの中で三・五兆円は母体行の債権を放棄させるわけであります。これ、よく農林大臣は、系統の五千三百億について、あれはもうぎりぎり、ぎりぎり、ぎりぎりの負担だということを言われた。ぎりぎりだと言った。大蔵省も、母体行に三兆五千億の債権放棄させるのはぎりぎりの方法だったとおっしゃっているのだけれども、私はそうは思わないのです。  というのは、今回、政府が乗り出しても乗り出さなくても、住専破綻をして倒産することはもうわかっているのですから、そうすると、倒産をすれば自動的に、銀行が貸した三兆五千億の返ってこないというお金はもう債権放棄しなければならないのだから、これがぎりぎりの支出などということに当たらないと私は思うのですが、いかがですか。
  46. 西村吉正

    西村政府委員 現状からいたしまして、住専という会社が破綻に瀕しているということはだれしも認めざるを得ないことかと存じます。しからば、その破綻処理をした場合に、それぞれの融資をしているものがどれぐらいの負担をせねばならないかという点につきましては、関係者の間で意見の違いが相当ございます。  例えば母体行につきましても、貸出額に比例して配分されるならば一兆七千五百億ぐらいの負担で済むのではないかというような計算もございます。しかし、母体行は、今までの経営への関与だとか設立の経緯等にかんがみまして、そういうことではなくて、貸したお金全額三兆五千億を放棄するということがその立場から適切ではないかというのが今回の御提案であり、母体行もそのように認識をしているところでございます。
  47. 笹川堯

    笹川委員 今の銀行局長答弁を聞いていますと、国民サイドに立って考えているんじゃなくして、銀行サイドの答弁だと思うのですね、ぎりぎりだと。つぶれれば三兆五千億は間違いなく返ってこないというふうに政府みずから認めて、あのスキームの中に書いてあるじゃないですか。それなのに、政府がやらないときには、そのうちまた戻るものがあるというふうに理解するんですか。私はおかしいと思うんだな。銀行局長、いいです、もう次の質問に行けないので。  議員の皆さんもこれを聞いていただいていると思うので、どうか与党、野党で話し合って、ぜひひとつ、一日も早くこの問題を解決できるようにしていただきたいというのが実は私の願いであります。  なお、銀行局長お尋ねしますが、協同住宅ローン、これは定款に株式投資は書いてないというふうに楢崎先生の質問で答えておられますが、株式投資の場合には自己責任ということになっています。これは橋本総理も大蔵大臣のときにずっとそう言っていた。そうすると、株式投資で損をしたものは今度の住専機構の中から本来なら除外されなければいけないんだけれども、もうつぶれちゃっているからこれはもう除外できないわけですな。どうですか。
  48. 西村吉正

    西村政府委員 今回の処理策では、株式投資あるいは土地の購入というようなものも含めまして、破綻をいたしました場合に処理せざるを得ない損失全体を対象にして処理をするという提案になってございます。
  49. 笹川堯

    笹川委員 結局、橋本総理の言った、株式投資というものはあくまでも自己責任だということが全然履行されなかったということなんですね。自己責任と言ってみたものの、結局は、損すると、自己責任ではなくしてやはり税金でそれを賄うという形、言ってみると、国家が損失補てんをしたという形になってしまう。もちろん、お金に色目があるわけじゃないですから、どれがどれということは言えないけれども、全部まとめて面倒を見るということになると、株式の損失したものも税金で一部補てんをしたという形になると思うのですが、大蔵大臣、どうでしょうか。
  50. 久保亘

    久保国務大臣 公的な関与に基づいて住専処理機構がこの住専問題の処理をいたします場合には、これを取りつぶすことになりますので、結果的に有価証券等によります欠損もその中に含まれてこざるを得ない、こう思っております。
  51. 笹川堯

    笹川委員 結局、国の最高決定者がみずから言ったことが全然履行できない、不言実行ではなかった、私は、そのことが今回大きく将来に禍根を残すことになる。なぜなら、また証券会社の損失補てんが起きたときに、住専だって株式投資して損をしたのを補てんしているじゃないかということを国民から言われるのではないかと私は思うのです。その点を私は大変心配しております。  銀行局長お尋ねしますが、今、優良債権と書いてある部分がありますね、一番上。これは確かに個人ローンでして、借りた人は金利が高くてもみんな返しております。そうしますと、確かに、貸した方の住専サイドとしては優良債権になっているけれども、借り手の方の一般国民、勤労者は、これは払い続けます。いつの日か必ずローンが終わるわけですが、そのときに優良債権が不良資産になるということがあるのですね。  例えば、あのバブルのときにお金を借りて五千万で買った、それをずっと長い間払った、その終わったときに、払い終わったときに五千万の値打ちがあればいいけれども、これが今、もう土地が下がってしまっているから三千万ぐらいしか仮に値打ちがなかったとする、そうすると、一番まじめな人が仮に二千万なら二千万損するわけです。これはだれも面倒見てもらえない。借りた人が一番損して涙するわけですね。  大蔵大臣大蔵大臣はもともと勤労者、労働者を守れと闘った人だ。この払い終わったときにまじめな優良債権が不良資産になるということについての御感想はいかがですか。
  52. 西村吉正

    西村政府委員 笹川先生御指摘のとおりでございまして、お金を借りました場合には、たとえその借りました段階で見込みました価値がなくなったとしても、借りたお金は返さざるを得ない、こういうことでございまして、善良な方々で借金をした方々がそれを返済する場合に大変に苦い思いをしておられるということは、私もよくわかっているつもりでございます。  ただ、今回の処理策におきまして、それでは、今お金を返すことが直ちにはできないような人に対して、その債務を免除するということになっているのかと申しますと、決してそういうわけではございませんで、不良債権の債務者に対しましても、あらゆる手段を講じましてその債権を回収するための努力をするというのが今回のスキームの趣旨でございまして、決して免除するということではございません。そこのところは、善良な借り手と同じことであるという点についてはぜひ御理解を賜りたいと存じます。
  53. 笹川堯

    笹川委員 それは最初から取らないでいいなんてだれも言っているんじゃないですよ。それでなくたって、ここに強力な回収方法と言うんだ。どんなのが強力かわかりません。そうすると今までは強力じゃなかったのか。ここに「厳しい取り立て」と書いてある。これは、新聞で「厳しい取り立て」と見ますと、町の高利貸しか暴力団金融ですよ、はっきり申し上げて。それ以外には厳しい取り立てなんという文字は使いません。銀行局長、どうですか。私の言ったことに間違いありますか。町の高利貸しか暴力団金融以外には厳しい取り立てなんて書きません。
  54. 西村吉正

    西村政府委員 今回のスキームに関しまして、不良債権の債務者について債務を免除するのではないかというような誤解がございましたので、そういう方々に対しても今までできなかったような手段を講じてまでも厳しい回収を行う、こういう趣旨を御説明したつもりでございます。
  55. 笹川堯

    笹川委員 これはもうのれんに腕押しでありますが、時間が最後になりますので、私は改めて大蔵大臣農林大臣お願いをいたします。  私は、二月に質問をした時点の考え方は今でも変わっておりませんので、覚書に基づいてとにかくいかなることがあっても、大蔵省農林省は協力して系統預金をひとつ全額返せるようにしてほしい。  それからもう一つは、母体行が三・五兆円の損失を今度するわけですが、これは放棄をしても全くぎりぎりの放棄ではないということを改めてこの場で申し上げたい。ですから、母体行は、私が申し上げたように、株式の含み益、土地の含み益もあるわけだから、信頼と信用の秩序に基づいて住専問題を解決するようにぜひひとつ大蔵大臣農林大臣に私はお願いをいたしておきます。  さて、ほかの大臣にも来ていただいたので、大変申しわけありませんのでお尋ねをいたします。  運輸大臣の亀井先生にお尋ねしますが、この前私お尋ねしたときには、国鉄の清算事業団、当初の計画では残債が十四兆円ぐらい残るんじゃないか、全部土地を売って返しても。最終的にその十四兆円は国民の皆さんの負担ということですから、税を投入して最後は返すわけですけれども、現在お聞きするところによると、借入金額はもう二十七兆を超しているというようなお話でありますが、正確な金額と、それから、今残っている土地、もう大部分売りましたから残っている土地の現在の評価額を教えていただいて、結局当時の政府が言った十四兆円は守れませんと、最終的に二十兆か二十一兆になるか、この辺のことを御答弁をいただきたいと思います。
  56. 亀井善之

    ○亀井国務大臣 先生御質問の国鉄清算事業団の所有する土地の件でございますけれども、昭和六十二年から平成七年度の間に約五千八百ヘクタール売却をいたしまして、約四兆六千億の収入を得たところであります。あわせて、JR株式につきましても平成五年度にJR東日本の売却、上場をいたしまして、二百五十万株、約一兆一千億の収入、こういうことでございます。そのほかいろいろな資産の売却を含めまして、この間の収入が総額で約十一兆三千億になっております。  一方、支出につきましては、金利支払いの費用約十二兆八千億、そして、平成二年度以降新たに鉄道共済年金に対する特別負担、これが約六千億、このようなことが生じております関係から、総額十三兆三千億の負担。  したがって、昭和六十二年四月の事業団発足時に約二十五兆五千億、このようでございましたが、現在の平成八年度首における債務は二十七兆五千八百億、このように至っております。  なお、土地の評価につきましては事務当局から御説明いたします。
  57. 梅崎壽

    ○梅崎政府委員 お答え申し上げます。  国鉄清算事業団が持っております土地の資産価値でございますが、平成七年の評価でもちまして平成七年度におきましては四・四兆円の資産価値がございました。これに対しまして、平成七年度中に約四千億を処分いたしまして、約四千二百五十億円でございますが、これを処分いたしました。  なお、土地の価格につきましては、本年になりまして新しい土地の評価額が出ておりますので、現在それにつきまして、個々の土地につきましてもう一回計算をし直しているところでございます。例年でございますと、七月ぐらいになりましてから新しい評価額に基づく土地の資産価値を決めまして、公表をいたしております。
  58. 笹川堯

    笹川委員 そうしますと、運輸大臣、大体当初の試算というものはもう大幅に狂って、借金が相当かさんで残るというふうに理解してよろしゅうございますか。
  59. 亀井善之

    ○亀井国務大臣 いろいろ努力をいたしておりますが、現状そのような方向にあるということはお答えできると思います。
  60. 笹川堯

    笹川委員 やはり、政府清算事業団という物すごく大きなものをつくって協力しても、なかなかやはり当初の計画というのは計画どおり進まない。もちろん計画ですから、計画どおり進まないというのが私はそのとおりだと思うのです。  ですから、今度の住専機構にいたしましても、政府の計画どおり絶対いかないということをもう最初から私は申し上げている。必ず優良債権も不良債権に移行していくから、損失がふえても少なくなることはありませんと。ただ、厳しく取り立てる云々なんて、じゃ債権が減るのかなというふうに一般国民が考えるかもわかりませんが、それは大きな間違いでありますと。必ず不良資産というものは解散あるいは清算していくとどんどんどんどんふえていくというのが、大体今までの会社を清算したときの実情であります。  同時にまた今回の住専というのは、銀行がどんどんどんどん、じゃぶじゃぶ金を使ってくれというふうにみんな貸した。借り手の方も威張って借りた。ですから、普通の一般企業で長い間企業を継続しながら倒産をした事例とは、大蔵大臣、全く違うんですね。だから、このことをよく頭に置いていただいて、私は政府の方もつらいと思いますが、六千八百五十億で国民の信頼をなくさないように六千八百五十億は必ず母体行で出させる。  それからもう一つは、第二次損失については実はこれに何にも書いてないんですね、大蔵省のあれには。何にも書いてない。六千八百五十億は書いてあるけれども、第二次損失が幾らぐらいになりそうだということを全く書いてない。それから、二分の一を払うんですよということも書いてない。これははっきり言って欠陥パンフレットですな。これは九百五十万むだ遣いだから、大蔵省の職員は北海道庁に見習って損失補てんでやはり給料の中から返さなければいかぬよ、本当。  さて、菅直人大臣もお見えですね。これは、菅直人大臣に御答弁していただく時間が少なくて大変申しわけありませんが、二月の質問のときにもエイズ問題を一番最初に私は国会で取り上げました。残念ながら厚生省の理解と協力が得られなくて、当時は薬害防止公団から、一人部屋の差額ベッド代、あるいは亡くなった人の弔慰金をいただけるということで私は矛をおさめたわけでありますが、さきの厚生大臣と現在の菅直人厚生大臣の努力によって、言ってみると事務当局が抑えられた形になったと思いますが、裁判所の和解を全面的に受け入れていただいて解決ができたことに心から敬意と感謝を申し上げたいと思います。  ただ、これからも薬害というものは必ず起きます。薬というものは無効無害ではありませんので、必ず有効有害でありますから、必ずやはり何かあったときには速やかに国民に公表して、あるいはまた、公表をするとパニックになるならば、公表はできずともやはり国民の命ということを考えて、何でも裁判して負けたら幾らでも払いますよというような態度は私は本当に困る。  だから、お金の問題じゃなくして、現実に、四千五百万の和解金をもらってももう死んでしまっているのですね、前の人はみんな亡くなっている。亡くなった人はお金をもらっても本人は使うことができませんで、逆に言うと、後に残った人がその分割でもめるような事態もあるのじゃないか、私はこういうふうに思いますので、ぜひひとつ今の厚生省の行政の中で、特に薬というのは命がかかっているので慎重に、時には政府として涙のある勇断を持っていただきたいということを私は申し上げたいと思いますので、一言どうぞ。
  61. 菅直人

    ○菅国務大臣 笹川委員には、私も読ませていただきましたが、大変以前から血液の問題、そしてこの薬害エイズの問題には関心を持たれていろいろ御指摘をいただいて、今おっしゃったように、そのことがもう少し早く行政の中で生かされていればと思っております。  和解については、もう細かい経緯は省きますけれども、確かにおっしゃるように、裁判で負ければ出せるけれどもそうでないときは出しにくいんだというような論理というのは、やはりどこかに何かが欠落しているような気がいたします。  確かに、一方的に判断をして補償金を出すということが難しいことはあるかもしれませんが、裁判になれば、今回も七年間かかっておりますし、水俣なんかは四十年もかかったわけですから、そういう点では、まさにおっしゃるとおり、裁判でなければできないという形ではなくて、今回の和解を含めてもう少し早い形で対応できるような体制を今後考えていかなければならないのではないか。  スモンのときにも、そういうためにたしか基金をつくった、機構をつくったわけですけれども、今回はその機構を直接には使えないというか使わない形で来ておりますが、今後の薬事行政を考える点では、今言われたような問題も含めてどうあるべきかをぜひ検討させていただきたいと思っております。
  62. 笹川堯

    笹川委員 あと一つは厚生大臣お願いしておきますが、国内の血液状況につきましてはもう先刻御存じのとおりと思いますが、でき得れば国内の問題は国内で解決をしたい。外国からの輸入液に頼りますと、不純物が入っていてもわかるまでにうんと時間がかかった。  アメリカでは、特に献血ではなくて売血が非常に盛んであります。朝五時か六時に売血のところへ行きますと、とてもじゃないけれどももうこんなところでつくった薬は使う気にはなれないということがよく理解できますので、チャンスがありましたらぜひひとつ売血の現場をアメリカに行ったときに見られると非常に感銘的な印象を与えると私は思いますので、お願いをいたします。  さて、最後になりましたが、大蔵大臣農林大臣に、議論の中でお互いに議員として、なるほどな、この辺で何とかしないとということがもうおわかりになっていると思います。ただ、この席でなかなかそういう返事はできないということも私も理解ができますが、自民党の議員の中には金融業界にも詳しい人も多くいるし、あるいはノンバンクの問題でもさんざん議論したわけでありますので、私は連立与党の苦しいことはわかりますが、ぜひ国民のサイドになって考えていただいて、これ以外に解決の策はないのかどうかをもう一遍ひとつ冷静に考えていただいて、措置をしていただけるようにお願いをして、質問を終わります。
  63. 上原康助

    上原委員長 これにて笹川君の質疑は終了いたしました。  次に、広野ただし君。
  64. 広野ただし

    ○広野委員 新進党の衆議院議員広野ただしてございます。  昨年の七月下旬に大和銀行ニューヨーク支店の問題が発覚をいたしまして、その後、ことしの二月の上旬にニューヨーク支店の閉鎖ということになったわけであります。そういうところで、この四月の四日にニューヨーク大和銀行ニューヨーク支店長津田さんの公判が行われていて、これの司法取引が成立をする、こういうことが報道をされております。  その中で明らかになってきておりますのは、昨年の八月の八日に、大和銀行の白金寮というのですか白金会議所というのですか、そこで藤田頭取、そして西村銀行局長、また銀行局の課長、また大和銀行の幹部の方々とのやりとりがあって、この場合一カ月ルールというのはあるわけですけれども、当時の金融情勢等を勘案して、大蔵省では公表を十月以降におくらすというようなことが話し合われた、そういうようなことを公判でお話をされているわけであります。  これは私は、相談に来たのに、その相談に大蔵省がいわば悪いアドバイスをして、結局は公表をおくらせて、そして大和銀行ニューヨーク支店の閉鎖というような事態になっていったのではないかというように思えてならないわけであります。  なぜ、受けたときにもう少しきちんと公表をするということができなかったのか、また、その点、銀行局長としてどういうふうに現在考えておられるのか、お答えをいただきたいと思います。
  65. 西村吉正

    西村政府委員 まず、津田被告と大蔵省とは事件の当時から一度も接触はございません。したがいまして、新聞報道等で津田被告の陳述の内容が報道されておりますが、あくまでも大和銀行と津田被告との関係に基づいて津田被告が理解をした結果であるということを前提にお話を申し上げたいと存じます。  八月八日の会合につきましては、これまでも国会等で何度か御説明を申し上げてきたところでございますが、今回の報道もございますので若干の補足をしつつ整理をしてみたいと存じます。  我が国の金融行政におきましては、従来から従業員の不祥事のような銀行の内部管理上の問題につきましては、もっともこの点について、今回の問題が単なる従業員の不祥事かどうかという点については今裁判で争われているところもあるわけでございますけれども、そういう内部管理上の問題につきましては、まず経営者責任において実態を解明し、その上で行政上の措置をとり、必要な場合には公表する、このような手順が踏まれてまいりました。  本件につきましても、大和銀行自身が八月八日にまず実態のより的確な把握に努めたいとのお話でございました。それで、調査に要する期間に関しましては、約三万枚の伝票を処理するには二カ月あるいはそれ以上かかるという御説明でございましたし、決算のタイムリーディスクロージャーの観点から、十月の上、中旬に公表したいとのお話でございました。  当時の金融機関をめぐる状況は、確かに極めて緊迫したものでございました。コスモ信用組合破綻発表直後でもございましたことから、世の中には金融に対する不安感というものが相当漂っていたように思います。このような状況のもとでは特に不確実な情報が流れることは問題であり、大蔵省としては、早急に事態の把握に努めて調査をするということでございましたが、その調査をできるだけ早く進めて、状況がわかり次第報告してほしいと述べたところでございます。  以上のように、大蔵省が本件の公表の時期をおくらせるというふうなことを指示するような発言をした事実はございません。
  66. 広野ただし

    ○広野委員 私はいろいろと弁解を聞いているのではなくて、結果として一千百億円の欠損が出、そしてまたニューヨーク支店が、また、全体的にアメリカから大和銀行が撤退を迫られる、こういうことになった。それを大蔵省に相談したのに裏目に出た、こういうふうにしか見えないわけです。  やはり、もう情報公開の時代なんですから、きちっと相談があったときに公にする。何か密室談合のようなことを繰り返して、これでは結局はまた日米の信頼を損ね、そしてまた国民のための行政というものがどんどん失われていくというふうに私は思えるわけで、特に八月八日に相談を受けて、武村前大蔵大臣に上げた日にちが九月の十四日というふうに前は報告をされているわけですね。一カ月おくれて大蔵大臣に上げておられる。  そして、大和銀行大蔵省あるいはFRBに報告したのが九月十八日、こういうようなことになっているわけで、しかも公判においてその津田支店長が、十月以前の公表は日本経済へのマイナスが大きく、九月の発表は時期的に最悪だというふうに安井副頭取から言われた、こういうことで、本人はある意味では全部罪をかぶっていくわけですね。  こういうことについて、まず一つは、武村前大蔵大臣に上げられたのがなぜそういうふうに遅くなったのか、あるいはもっと早く上げておられたのか、その点、お聞かせいただきたいと思います。
  67. 西村吉正

    西村政府委員 私ども事務当局といたしましては、大和銀行の実態解明を待って正確な御報告を申し上げるということで、今御指摘のような大臣への御報告がおくれたことについては申しわけないと思っております。  先ほど申しましたように、公表の時期をおくらせるというようなことを指示するような発言をした事実はございませんが、ただ、後になって振り返ってみますと、この点は前武村大蔵大臣からも御指示を受けたところでございますが、本件はアメリカで起きた問題でございまして、アメリカのルールによって処理されるべき問題でございます。そういう観点からは、アメリカ当局への通報などの問題に関しまして今後の教訓にすべき点があったと私どもも反省をいたしておりますし、また、実態の解明につきましては、当事者のペースにゆだねることなく、もっと督促すべきではなかったかという御批判があることは重く受けとめているところでございます。  いずれにいたしましても、本件の公表につきましては、十月に公表をするということは、もともと大和銀行が調査の上でそのようにすることはお考えであったことでございます。
  68. 広野ただし

    ○広野委員 久保大蔵大臣に、この大和銀行事件にかかわる行政責任あるいは前大蔵大臣責任、監督責任といいますか、そういうことについてどうお考えか、お答えいただきたいと思います。
  69. 久保亘

    久保国務大臣 ただいま経過につきましては銀行局長から答弁を申し上げました。大蔵省として公表をおくらせるよう指示、指導した事実はないと報告を受けております。  ただ、私といたしましては、この大和銀行事件につきましては、今後、内部管理、リスク管理の体制の強化等について、また、外国におきます金融活動に当たっての、その存在いたします国におけるルールを守らせること等についての大蔵省としての指導について万全を期すべきであると考えております。  昨年末、大蔵省としても、今回の事件にかんがみて、今後の金融行政のあり方について、特にこの大和銀行事件を中心にして幹部がいろいろと検討いたしまして、今後の方針について取りまとめたという報告を受けております。
  70. 広野ただし

    ○広野委員 私は、民間も責任をとりました、そしてまた、大蔵省も事前に聞いておったわけですから、そういう密室談合的な相談をして結果的におくれたというようなことが今回の事件の大きな原因になっているわけですので、その点についても大蔵省の行政責任というのは非常に大きいというふうに思っております。  また、今回の住専問題においても、その負担額をどういう形で決められたのか、これがよく見えないわけですね。そういう点がやはり金融行政、また金融システムの安定にとってかえってマイナスになっているという点を申し述べたいと思います。  ところで、先ほども笹川委員からありましたが、ノンバンクの問題であります。  住専以外のノンバンクの不良資産、ノンバンクは九十兆円の融資残がある、こういうことでございますが、住専以外のノンバンク不良債権というのはどれくらいになるのか、お答えいただきたいと思います。
  71. 西村吉正

    西村政府委員 ノンバンクそのものの不良債権ということになりますと、ノンバンクと申しますのは約三万社に上るものでございまして、いろいろな形のものがございますので、私ども、そういう点では把握をいたしておりませんが、ノンバンクに対する銀行の貸し出しという点に関しまして申し上げますならば、日銀の統計月報によれば、七年九月末の部長銀、信託二十一行の住専を除くノンバンク向け貸出額は約三十一兆円でございます。このうち、当局のヒアリングによれば、住専を除くノンバンク向けの破綻先・延滞債権及び金利減免債権額は約七兆円となってございます。
  72. 広野ただし

    ○広野委員 それで、この住専以外のノンバンクへの農協系統の貸付残が七兆七千億ですか、というふうに報告をされておりまして、そこへの不良債権というのが五、六百億円だ、比較的少ないんだというふうに報告をされているわけであります。  ところで、さくら銀行系がメーンバンクとなっている、ちょっと名前を秘しますが、Aというノンバンクがあります。これは負債総額五千億円以上で、現在も再建計画に取り組んではいるんですが、なかなかうまくいかない、こういうことであります。  このノンバンクAは、株式会社共和が約二千億円で倒産をした、そのところに百四十億円融資をしていて、いわば共和の倒産が引き金になって経営が苦しくなってきている。そのほか末野興産には二百十億融資しておって、これもかなりの分が不良債権化をする。こういうようなことで非常に心配されるわけでありますが、ここに農協系統で無担保・無保証で五百三十億円融資をされている、こういうことであります。  もし万が一このノンバンクAがおかしくなると、このノンバンク一つだけで五百億円以上の不良資産になってくるわけですね。ですから、農協系統は現段階においては五、六百億円の不良資産、こういうふうに言われておるわけですが、また一つおかしくなることになる。  そしてまた、この二月の末にエクイオンというノンバンクがやはり三千億円以上の負債を抱えて倒産をしております。その中でやはり農協系統がどうなっているのか、これは詳細を調べないといけないわけですが、こういう点、大蔵大臣は、公的資金導入はしない、住専以外のノンバンクにはしない、こういうことをおっしゃっているわけです。  私たちは、一番大事なのは農家の預金であり国民の皆さんの預金だ、こういうことはきちっと守る。途中にある会社だとか放漫な経営をやった農協だとか、それは守れないけれども、国民の皆さんの預金は守るんだ、これが一番大切なところであって、その点、こういう事態が幾つか見えてまいりますとどういうことになるのか。農林大臣、どういうふうにお考えか、お答えいただきたいと思います。
  73. 堤英隆

    堤政府委員 特定のノンバンクについてでございますので、特定のノンバンクに対し農協系統がどういう形で融資しているかということにつきましては、民間同士の取引でございますので行政としてはコメントする立場にございませんが、ただ、全体的に、農協系統につきましても御指摘のようにノンバンクに対しまして貸し付けを行っているところでございます。その場合におきましても相手方の信用力等に応じて必要な担保保全措置がとられているというふうに考えております。  また、現段階では、不良債権の額は、先ほどおっしゃいましたように、まだ不良債権の定義ということに該当するものは比較的それほど大きなものではないというふうに承知しているわけでございますが、今後ともそういった意味での担保の保全措置、債権の保全措置ということがきちんととられるべきだというふうに考えておりまして、そういう指導をしていきたいというふうに考えているわけでございます。  いずれにしましても、ノンバンク等の住専以外の不良債権処理につきましても、それぞれの経営内部におきまして自己責任あるいは自己努力という形の中で対応されるべきものというふうに考えております。
  74. 広野ただし

    ○広野委員 ところが、私もこの間指摘しましたように、農協系統の担保というのは、大体母体行の方が第一抵当権を設定をし、第二抵当権以下になっているわけですね。ですから、そういう面ではいろいろな点でやはり十分な想定をしておきませんと、本当にいざとなったときに大変なことになる。  ですから、やはり貯金保険機構を拡充をする、そしてまた預金保険機構でもバックアップする、ここのところが、国民の皆さんの預金を守るということが一番大切なんで、ここのところを農林大臣のお考えをお願いします。
  75. 大原一三

    大原国務大臣 御指摘のとおりであります。  正直に申しまして住専後の金融破綻というものが、私はこれで終わりだということではないと思うのです。今後何が起きるかわからぬような事態が予想される中で、おっしゃるように預金者保護をどうしていくかということがやはり我々がこれからやっていかなければならない金融改革の目玉だと思います。そういう意味で、貯金保険機構の充実等もあわせて考えていかなければならぬと思っております。
  76. 広野ただし

    ○広野委員 ところで、このノンバンクAというのはまさに共和の倒産がきっかけになって連鎖的におかしくなってきているということであります。  この共和からの問題について、この共和は住専から七十三億円の融資を受け、そしてまたその共和の森口副社長から一千万円の献金を受けておった加藤紘一さんのことにつきまして、加藤紘一後援会の紘和会会長の水町さんの代理人として岡田弁護士が記者会見をしておられるわけであります。  そういう中で、所得税法違反というようなこと、このことについて国税庁にも調査を以前に依頼をしておるわけですが、国税庁ではどういう調査をされたのか、お答えいただきたいと思います。
  77. 若林勝三

    若林政府委員 個別にわたる事柄につきましては従来から答弁を差し控えさせていただいておりますので、その点は御理解を賜りたいと思いますけれども、国税当局といたしましては、従来から、資料、情報の収集とか必要に応じて調査というようなことで、課税上問題がある場合には適正かつ厳正に対応してきておるところでございます。
  78. 広野ただし

    ○広野委員 ところで、同僚委員七名から成る所得税法違反の告発がなされておるわけですが、このことについて法務省、現段階においてどのような捜査が行われておるのか、あるいは事情聴取等が行われているのか、特に水町後援会会長等にお話を聞かれたのかどうかについてお答えいただきたいと思います。
  79. 原田明夫

    原田政府委員 お答え申し上げます。  お尋ねの件につきましては、去る三月七日、東京地検におきまして所得税法違反による告発を受理いたしております。現在捜査中であると承知しております。  ただ、具体的な捜査状況、また捜査の内容につきましては、法務当局として答弁は差し控えさせていただきたいと存じますが、検察当局におきましては、所要の捜査を遂げ、法と証拠に基づきまして適正に処理するものと存じます。
  80. 広野ただし

    ○広野委員 ところで、三月四日に水町さんの代理人岡田弁護士が記者会見をされておるわけでありますが、その資料によりますと、   加藤代議士は、破産会社(株)共和の森口元副社長とは当時会ったこともなげれば、同氏から自ら政治献金を受領した事実はない旨弁明されております。しかしこれは全くの偽りであります。   平成二年一月三一日夜、ホテルセンチュリーハイアット七階の当時(株)共和が使用していた専用ルームにおいて、森口副社長・加藤代議士が面談し、森口氏より当時宏池会の選対責任者であった加藤代議士に一〇〇〇万円の現金の授受がなされており、その場に私は立ち会っております。   ちなみに当日は夜六時半頃より森口氏と私とで加藤代議士が地方選挙区より帰京されるのを前記部屋においてお待ちし、同代議士は遅れて来着されております。こういうこともおっしゃっているわけです。   又加藤代議士は右献金の事実を否定もしくは知らないとしながら、一方で「献金が事実なら折りをみて森口氏ないし破産管財人に返却したらどうか」と告げた上で秘書を介し私に一〇〇〇万円を渡した旨弁明されております。   しかしながら、献金の事実を否定しながら返却を話題にするということ自体不自然極まりなく、又受領した当事者でない私が返却するというのも誠に奇妙な話であります。   事実は以下のとおりであります。即ち(株)共和の政治献金問題が国会で取り上げられるようになった平成四年二月、全日空ホテル七〇一号室において、私は当時内閣官房長官であった加藤代議士より、「あの時の一〇〇〇万円を預かって欲しい」「自分が総理大臣や外務大臣になったら返して欲しい」旨直接依頼され、翌日同代議士の秘書が私のクリニックの院長室に紙袋に入った一〇〇〇万円を持参したものであります。こういうような話をされているわけです。   本件一〇〇〇万円は加藤代議士自身に対する政治献金であって「紘和会」に対する寄付金でないことは明白であります。これを「紘和会」の政治資金規正法違反の問題とするのは事実の歪曲であり、又後援会の収支報告の実質上の責任者であった私への責任転嫁であります。   私はこれまで本件を政治家の政治責任の問題と考えてはおりましたが法的問題とは考えては参りませんでした。しかし加藤代議士の言うように法的問題であるとするならば、同氏の所得税法違反の問題ではなかろうかと思料致します。   更に、私は、本年に入りいわゆる住専の大口不良貸出先の一つとして(株)共和の名前があげられるにつけ一刻も早く返還することを決意しました。そして加藤代議士サイドにも電話でその旨を伝えました。しかしながら同代議士サイドからはこれに対する何らの回答も頂けなかった為、やむなく代理人弁護士を通じ本年二月二七日迄に返還方法を指定されるよう催告をなすに至り、翌二八日東京法務局に供託したのが真実だ、こういうことを記者会見でもおっしゃっているわけで、ぜひ法務当局におかれましても、よくこの事実をお聞きの上、捜査をお願いをしたい、このように思うわけでございます。刑事局長、いかがでございますか。
  81. 原田明夫

    原田政府委員 捜査の中身と申しますか、今後の進め方につきまして私の立場からお答え申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思いますが、さまざまな角度から御論議がされているということは検察当局も承知していると存じます。
  82. 広野ただし

    ○広野委員 ところで、北朝鮮の軍隊がこの四月五日、六日、七日、三日間にわたって、連日板門店の軍事境界線上にある共同警備区域に武装兵力を投入して挑発をしております。韓国側は緊急国家安全保障会議を開催して対応を練っておるということでありますし、国連軍も北朝鮮側の休戦協定違反行為に警戒を強めている、こういうことであります。  私は、この行為は極東に軍事的緊張をもたらす極めて警戒すべき行為であり、また、北朝鮮の真意がどういうところにあるのかはかりかねておるわけでございますが、外務省、この点はどういうふうに考えておられるのか、お聞かせください。
  83. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 御指摘のとおり、三月の二十九日の金光鎮人民武力部第一副部長の非常に激しい言葉遣いをした談話発表というのを受けまして、四日に北朝鮮人民軍の板門店代表部のスポークスマンが、非武装地帯の地位を維持できなくなった状況に伴う自衛的措置だといたしまして、委員御指摘のような対応に出ているということを私たちも承知しておる次第でございます。  北朝鮮側の意図というものについては、これはなかなか有権的に申し上げることができないのでございますけれども一般的には米国との暫定協定、この締結についてアメリカに圧力をかけるのがねらいであるというふうに見られておるようでございます。  ただ、その意図がどうあれ、いずれにいたしましても、一連の北朝鮮側の動きというものが朝鮮半島の平和と安定にとって大変好ましからざるものであるというふうに私たちは考えておりまして、北朝鮮側の自制を強く求めたいと思っているわけでございます。  ただ、政府としては、北朝鮮の動向そのものについては、関係の諸国とも緊密に連絡をとりながら、引き続き細心の注意を払ってまいりたいと存じます。
  84. 広野ただし

    ○広野委員 北朝鮮のこういう軍事的行動、そしてまた先ごろ、カンボジア、ベトナム国境で、にせドル、スーパーKの偽造容疑でもって赤軍派の田中義三容疑者が拘束をされる、こういうことになったわけであります。  ところで、このにせドル、スーパーK、これが北朝鮮と本当にかかわるのか、あるいは北朝鮮の国がどこまで関与しているのかという点はこれからの捜査によることだと思いますけれども、北朝鮮貿易に携わっているそういうところから、やはりにせドルが見つかっているわけであります。一昨々年、九三年から見つかってきているということですが、九四年、九五年とそれがどんどんふえてきている、こういうことでありますが、捜査当局としてこの点はどのように把握しておられるのか、御説明をいただければと思います。
  85. 野田健

    野田(健)政府委員 新聞その他でスーパーKと報道されているにせドル札、それがどのようなものであるか、具体的な確定的な内容は把握しておりませんけれども、過去に日本国内で発見されたにせドル札の中には、数十枚まとめて発見された偽造紙幣について、印刷された番号がすべて異なるものであるとか、あるいはマイクロ文字が鮮明に印刷されているなどの特徴を有する極めて精巧な偽造米ドル紙幣が発見されているところでございます。  発見状況を最近三年間で見ますと、平成五年には米ドル紙幣の発見状況というのは約四百五十枚ぐらいでありますが、平成六年には三百八十枚ぐらい、平成七年は五百枚ぐらいでありまして、これは百ドルだけでなく、いろいろな金額の紙幣があるわけでありますけれども、うち極めて精巧な米ドル紙幣ということで押収しておりますものは、平成五年が約九十枚、平成六年は、あるいは七年は約百五十枚ぐらいというような状況にございます。
  86. 広野ただし

    ○広野委員 このにせドル紙幣、百ドルのスーパーK、アメリカの財務当局等の情報によりますと、二千万ドル以上は出回っている、これは日本を初め東南アジア等。ですから二十億円以上のもの、場合によっては数百億円が出回っているんじゃないか、このように言われているわけであります。こういうことが起こりますと、大変な国家経済の混乱をもたらすことになりますし、各国間の不信感がまた高まる、通商貿易関係破綻をする、こういうことになるわけであります。  日本国内においても、北朝鮮と中古自動車の輸出等によって五万ドルを入金したところ、五十数枚がにせドルだった、こういうことが報道されております。四月四日の東京新聞でありますが、この東京新聞に出ている会社は東海商事と言われる会社であります。この東海商事等にお話を聞かれた経緯はございますか。いかがですか。
  87. 野田健

    野田(健)政府委員 個別具体的な事件の捜査についてはお答えを控えさせていただきたいと存じますけれども、昨年六月に警視庁築地警察署に届け出がありました偽造百ドル紙幣、これは渋谷区内の会社員が北朝鮮の商社と中古車の売買契約を結び、その内金としてもらってきたうちに偽造のものがあったということで届け出を受けたものでございます。
  88. 広野ただし

    ○広野委員 まず捜査当局に、このスーパーKあるいはにせドル札の偽造について北朝鮮側がどのように関与しているのか、この点はどういう捜査段階にありますか。
  89. 野田健

    野田(健)政府委員 日本国内で発見されました極めて精巧な偽造紙幣の中には、中国国内の銀行で両替してきて日本に持ち込んだというものもございまして、我が捜査当局で、それぞれの偽造紙幣がどこで印刷されたかということについては、現在まで判明していない状況にございます。
  90. 広野ただし

    ○広野委員 この東海商事の副社長、李健一さんという方がおられるわけですが、この方がスーパーKを受け取ったということであります。この方がまた、新日本産業というのは聞かれたことがあるのではないかと思いますが、新日本産業の社長吉田猛さんと極めて親交が深いということであります。  吉田猛さんはまた、どんなことか知りませんけれども、加藤紘一事務所の名刺を持ち回っているわけであります。ですから、それは全く無関係なことだというふうに私は思いたいわけでありますが、何かそういうところで変に名刺を持ち回らせることがおかしなことになるので、何でこんなことになるのかな、余りにもわきが甘いというふうに思えてならないわけであります。  ところで、李健一さんと吉田猛さん、新日本産業社長との関係について、捜査当局、いかがでございますか。
  91. 野田健

    野田(健)政府委員 個別具体的な事柄でございますので、答弁は差し控えさせていただきたいと存じます。
  92. 広野ただし

    ○広野委員 アメリカのCIAも、またアメリカの財務当局も、また国際刑事警察機構なりも非常に関心を持ってこの点の捜査に乗り出しているわけでありまして、ぜひ日本の捜査当局におかれましても重大な関心を持って御捜査をいただきたい、このように思うわけであります。そうしませんと各国間の通商貿易関係上の信頼関係が本当に乱れ、そしてまた国家経済がおかしくなってくる、こういうふうに思いますので、再度捜査当局答弁お願いします。
  93. 野田健

    野田(健)政府委員 通貨偽造事件と申しますものは、その行為によりまして、国内あるいは国際的な通貨に対する信頼性を失わせるという意味で非常に重要なものと考えておりまして、警察としては情報収集に全力を挙げ、犯人検挙に向けて鋭意捜査を進めてまいりたいと考えております。
  94. 広野ただし

    ○広野委員 ところで、前の私の質問の中で、農林省のOBの森本さん、そして加藤紘一さん、さらに銀行局の幹部、また信連の幹部等が入った勉強会が九二年ごろから行われておった。住専の第二次再建計画をつくるところ、そして九三年の二月の元本保証の覚書等にいろいろな影響力を行使していたというふうに私は思えてならないわけであります。農林省に前に調査の依頼をいたしたわけですが、そういう勉強会があったのかどうか、この点はいかがでございますか。
  95. 堤英隆

    堤政府委員 御質問がございましたので本人に確認をいたしましたところ、そういった勉強会の存在については自分は知らないということと、そういうものに参加したことは全くないということでございました。
  96. 広野ただし

    ○広野委員 今の御本人というのはどなたでございますか。中金OBの森本さんでございますか。
  97. 堤英隆

    堤政府委員 森本さんの名前も出ましたし、それから特定の信連のお名前も出ておりましたので、両方確認いたしました。
  98. 広野ただし

    ○広野委員 私どもは、そういう勉強会があって、そこで住専の第二次再建計画をどうしたらいいか、そして農協系統の負担が、もともと融資を引き揚げようとしておったわけですから、それをどうしたらいいのだろうということ等をいろいろと検討されていたというふうに調査をしておるので、再度調査をお願いしたい、このように思います。局長答弁を求めます。
  99. 堤英隆

    堤政府委員 御質問がございましたので、先ほどもお答えしましたとおり、特定の県信連の専務さん、それからお名前が出ました森本さん、すぐ確認をいたしまして、そういうことは全くないということでございましたので、そのように受けとめております。
  100. 広野ただし

    ○広野委員 以前から、加藤紘一現自民党幹事長が早くから、宮澤内閣の官房長官時代から住専のスキームづくり、そしてまた今度の住専のスキームづくりに大きく関与をしておられた、また、その裏にいろいろな火曜会、木曜会等の動きがあったということを再度指摘をいたしまして、質問を終わらせていただきます。
  101. 上原康助

    上原委員長 これにて広野君の質疑は終了いたしました。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     正午休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  102. 上原康助

    上原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中野寛成君。
  103. 中野寛成

    中野委員 まず、我が国を取り巻く国際環境からお尋ねに入っていきたいと思います。  今回の北朝鮮の軍事行動の実態と目的であります。  報道によりますと、対米協定の見直しを求めているのだとか、いろいろ言われておりますけれども、しかし、恐らく、北朝鮮内部の国民、とりわけ軍の規律を引き締めるという目的もあるでしょうし、また、それとちょうど裏表の関係で、目下国会議員の選挙をやっております韓国の内政が混迷していると受けとめて、または誤解して、この際揺さぶりをかけようという気持ちも一方であるのではないか、こういうふうにも見られるわけであります。  そこで思い出しますのは、先般の台湾の総統選挙の際における中国の軍事行動でございます。どうも共産主義の国家というのは、民主国家、民主主義のもとにおける民意の反応というものを読み誤っているのではないか。結果として、台湾でもそうでありましたが、時の体制にその民意は有利に流れたわけでございまして、韓国の選挙情勢もまた同じ結果を生むのではないか、こういうふうにも見られているわけであります。  その北朝鮮の現在ねらっているものを何だと日本政府は分析しているのか、まずお聞かせいただきたいと思います。
  104. 池田行彦

    ○池田国務大臣 北朝鮮の、いわゆるDMZについては保証の限りにあらずという声明、それに引き続いての三日にわたる、規模は必ずしも大きくないとはいえ、あのような行動というものは、朝鮮半島の情勢に無用の緊張をもたらすものでありますし、場合によって不測の事態につながる可能性が皆無とは言い切れないといったことでもありますので、私どもとしましても重大な関心を持ってこれを注視しているところでございます。もとより、このような行動は甚だ遺憾なことだと考えております。  ただ、その意図するところが何であるか、これは大変読みにくいところでございまして、今委員も御指摘になりましたように、ああいった難しい状況にございます北朝鮮でございますから、国内を引き締めるという意図もそれはあるかもしれません。一番大きいのは、やはり米国に対して、平和協定、その前の暫定協定というものをやろうじゃないかというので交渉に引き出すという動きをしているわけでございます、これは韓国抜きで米国との間でということでございますが。それに対する影響、あるいは北朝鮮の立場からいえば促進効果でしょうか、それが一番大きい目的ではないかというふうに現段階では見ているところでございます。  それから、今御指摘のございました、韓国における選挙、十一日に投票されます選挙に対する影響というものを意図しているのじゃないかという点につきましては、これは、私どもといたしましては何とも申し上げようのないところなのでございます。でございますが、あえて申しますと、仮にそういうふうな意図を持って今回のような行動をとったとするならば、それは決して北朝鮮が意図するような効果につながるということは言いにくいのじゃないのかな、こんな感じがいたします。
  105. 中野寛成

    中野委員 ちなみに、次にお聞きしたいと思いますが、四日の朝鮮中央放送が伝えたとされます朝鮮人民軍板門店代表部スポークスマン談話というのがありますね。この中で、いわゆる向こうの言葉で言う「南朝鮮」、韓国のことですね、「の軍事当局は、非武装地帯内に戦車と各種口径の砲、重火器を大量に搬入し、多くの武装要員を引き入れて展開させた。」「現在、非武装地帯の南側地域は、緩衝地帯としての自己の固有の義務を完全に喪失し、休戦協定に基づいて設定された軍事境界線非武装地帯は、北侵のための武装地帯、一つの新たな攻撃出発陣地と化した。」こう表現されているわけですね。我々から見ると荒唐無稽な話に見えるわけです。  そして、しかも最高人民会議議長、これは楊さん、ヤンさんと読むのでしょうか、は「(戦争が)いつぼっ発するかが問題なだけで、戦争が起こるということは疑問の余地がなくなった」、ここまで言っているのですね。  結局、こういう北朝鮮側談話の示しているような実態というのが本当にありゃなしや、そして、このような北朝鮮側議長の発言というものを、私から見るとまことに荒唐無稽に思えますが、日本政府としてはどう考えますか。
  106. 池田行彦

    ○池田国務大臣 私は、韓国側は休戦協定に定めるところを遵守して行動している、このように理解しております。そして、もとより北朝鮮のいろいろな動きに対しまして警戒の態勢を強めているというのは事実でございますけれども、休戦協定に定められたところはきちんと遵守して行動しているもの、こういうふうに理解しているところでございます。  それからいま一点、そのような声明あるいは発言というものをどう考えるかという点でございますけれども、私どもは、そういったふうな声明が国際社会において言葉どおりに受け取られるということはないと思いますし、そういった意味では、その効果というものも限定されたものではないかと思います。  しかしながら、仮に、委員のお言葉をかりれば荒唐無稽なものであっても、やはり、そういった発言をする、あるいはそれにつながるような一連の行動もあるということは、これは憂慮すべき事態でございます。それが直ちに武力衝突につながるなんということは想定されませんけれども、やはりいろいろな行動があれば不測の事態につながるという可能性を否定し切るわけにはいかぬわけでございますから、我々としては、北朝鮮側に対して、そういったいたずらに緊張を高めるような行動は差し控えるということを強く求めたい、こういう気持ちでございます。
  107. 中野寛成

    中野委員 今外務大臣、不測の事態が全く起こらないということはあり得ないということを言われました。私も、全くそのことは同感なんです。そして、大変憂慮しているわけであります。  特に、今日までの北朝鮮の動きを見ておりますと、例えば南北会談が行われる、場所をソウルにしたりピョンヤンにしたり、お互いのマスコミも含めて政府の代表団が往来したときがありましたね。あの時期に、たしか南進トンネルが裏では掘られておったというふうに言われているのですね。それから、また次の南北会談が行われるような時期になりますと、例のラングーン事件がありましたね、爆弾事件がございました。というふうに、何か表で話し合いをしているときというのは、北朝鮮は必ず裏で軍事行動をしているということがある。  例えば現段階ですと、日米韓が中心となってKEDOの問題がございますね。また、人道的な食糧援助等の話もやってきました。そしてまた、これからどうあるべきかということについて、むしろ本当は平和的な協力、協議が行われるべき時期になぜこういう行動をとるのかというのは、実に我々から見ると不可解でならないわけですね。しかし、彼らはこういう軍事行動が一つの国際的な影響力を及ぼす、効果があると見ているのではないかというふうにも思うわけでございます。  そういう意味から考えますと、それと必ずしも関係ないかどうか知りませんけれども、先般、北京において日朝の非公式折衝が行われたという報道もなされ、また、橋本総理も何か記者さんに、通称ぶら下がりで認めたとかなんとかという記事も出ておりましたけれども、これは実態はどうなんですか。
  108. 池田行彦

    ○池田国務大臣 まず、北朝鮮だけではないと思います。あらゆる国の外交において、一つの大きな方針あるいは戦略があったとしても、それを実現するために、いろいろな戦術といいましょうか、あるいはいろいろな方途を模索しやっていくということは、これは決して珍しいことではないと思います。しかし、特に北朝鮮の場合、今委員御指摘のようなことがあるということは、それはそうかもしれません。  そういった意味から申しますと、私は、今いろいろな報道がございますけれども、基本的には、北朝鮮の置かれた今の状況というものを考えますと、これはやはり、何とか国際社会とのつながりを見出さなくては国の将来も開けてこないということはわかっているのだと思います。ただ、そのときに今、アメリカと韓国あるいは日本、これをどういうふうにということを、委員も指摘されましたけれども、そういうふうなことは当然考えておるのだと思います。  そういった中で、我が国といたしましては、基本的には、北朝鮮との関係を正常化する、これは必要だと考えております。しかし、それは同時に、朝鮮半島全体の安定に資するようなものでなければいかぬ、こう考えておりまして、そういったことで我が国としていろいろ行動をとっていく場合には韓国との連携を常にとって進めていく、こういったスタンスで進めてきておるわけでございます。  そういった中で、今委員から具体的な御質問がございました、北朝鮮と我が国とが最近北京で云々という点でございます。  これにつきましては、私ども外交当局としては、先ほど申しましたような基本的な方針あるいは姿勢を踏まえまして、常にいろいろな、何といいましょうか、耳目は、目は開き、耳はそばだて、そしてしかるべきときに接触をするということは、これはあってしかるべきだ、こう考えております。  ただ、今北朝鮮との関係で一体どういうふうなことをしているかということにつきましては申しわけないのでございますが、これまでもコメントは差し控えさせていただいてまいりました。総理が発言されたというのも、具体的に最近どうこうしたということではなくて、一般論としての話をされたというふうに理解しておるわけでございます。  もとより、例えば、中断しておる正常化交渉を正式に再開するということになれば、当然これは国会にもお話し申し上げるわけでございますが、今はまだそういった状況にはなっておりませんので、先ほど申しましたような、外交当局として当然とらなければいけない態勢あるいはそれに基づいての行動をしているというふうに御理解賜ればと存ずる次第でございます。
  109. 中野寛成

    中野委員 これは報道ですからあれですが、極秘裏に中国で外務省の課長が北朝鮮側と会談しているという報道なんですね。私は、今このタイミングでやるべきでないと思うのです、むしろ。外務大臣が、一般論として、常に耳目を開いておくということは必要だと言われた、そのことは私も認めないわけではありませんが、今日この段階で、極秘、非公式、いろいろ言葉、形容詞はつくかもしれませんが、私は、この時期にはむしろ意図的に接触を避けるぐらいの気の使い方というのが必要だと思うのであります。  そういう意味で、これがもしあったとすれば、日韓関係が今最悪の事態にある。本当は、これから仲よくして、海洋法の問題その他、言うならば親身な話をしなければいけないタイミングですね。そういうときにこういうことが行われた、またはそういうことがばれたというようなことは、これはやはり避けるべきときではないのか。それこそ日韓関係を今よりももっと悪くしてしまいますね。そして、今これをやることによって日本に何のメリットがあるのだろうか。むしろ、こういう誤解を招かれる、それが誤解だとするなら。真実なら真実でこれはまた別の追及をしなければいけませんが、もし誤解なら誤解で、そういうことは今ありませんというふうに明確にお答えになることの方が日本の外務当局としては必要なのじゃないのですか。
  110. 池田行彦

    ○池田国務大臣 先ほど申しましたように、北朝鮮との関係の正常化を図るに当たっては、それは朝鮮半島全体の安定に資するものでなければならない、こういうことを申し上げました。そして同時に、韓国との連携をとりながらということも申し上げたところでございます。さらに申しますと、私はやはり、朝鮮半島の安定をもたらすためにはいろいろな方途、またいろいろな努力があり得ると思いますけれども、その中で一番重要なのは何かと申しますならば、それは言うまでもなく南北の対話を通ずるものであると思います。  そういったことを踏まえながら、私どもも、いろいろな事を運ぶに当たっては、韓国との間の密接なると申しましょうか、あるいは緊密な連携をとりながら事を運ぶときには運んでいく、こういう姿勢でおりますので、そのことによって日韓の関係が悪化するということはあってはならないということは十分肝に銘じながら進めていくということを御答弁させていただきたいと思います。
  111. 中野寛成

    中野委員 説明が長ければ長いほど、あっ、やはりあったのだなと、これは思わなければしょうがないですね、随分と長い御答弁ですが。ここでは、なければなかったと言った方が国益に合うのですよ。それをなかったとも言わないで、延々と韓国の頭越しにはやらないとかなんとかといろいろな答弁を長々とおやりになると、あっ、やはりおやりになったんだ、そう見るしかないですね。新聞記事風に言うと、その答弁の中で池田外務大臣はこの折衝があったことを暗に示唆したということになりますよ。そういうことではないですか。  そこで結局、今こういうことが行われたのは何だろう。これはばれたら日韓関係がますます悪くなるのに、そして日本側に何のメリットもないのにどうしてだい。これはそうすると、向こうから要請をされた。それで、考えられることとすれば、こちら側から何らかの探りを入れたのか、または向こうの方から、食糧問題が大変深刻でありますから、しかも、アメリカからの米はもう終わっていますね。韓国から出すということはありませんね。国連のものも、これは国連の調査団に対する回答その他の問題があってストップしていますね。  あと北朝鮮が期待するのは米だけですね。いつ発送しようかといってどこかへ蓄えているという話もありますし、それ以上のことは言いませんけれども、そしてしかも、日本のブローカーが暗躍している、政治家が何とかかんとかという話まで出てくると、これは本当にゆゆしい問題なのですよ。この問題というのは決して一般論で言い逃れて終わられていいという問題ではなくて、こういうのはそういうところまで憶測を呼んでいく、しかも、ほっておくこと、または明らかにしないことの方が国益に反するのです。そのことを外務大臣としては認識してお答えいただきたい。どうですか。
  112. 池田行彦

    ○池田国務大臣 ただいまお話のございました米の問題につきましては、これは、昨年実施しました米の援助というのは、もう長々と申しませんけれども、あくまで特例的な例外的なものでございます。そして今、いかなる形でも米の支援の要請を受けているわけじゃございませんし、そういったことを追加支援することは考えておりませんということははっきり申し上げさせていただきます。  それから、先ほどの件につきましては、答弁の繰り返しになりますけれども、先ほど申しましたような基本的な方針、そうしてその考え方に基づいて、我々は日韓関係、その他の関係も十二分に考えながら事を運ぶ場合には運ぶというふうにお答えさせていただきたい、こう存ずる次第でございます。  一方におきまして、現在のような状態とおっしゃいますけれども、現在の北朝鮮がとっておりますいろいろな行動につきましては、先ほども答弁申し上げましたように、我が国としては、それを容認するものではない、それはまことに遺憾であるということを明確に申し上げておる次第でございます。
  113. 中野寛成

    中野委員 米の問題は否定をされました。ということは、ほかのことはあったということになりますね。私は、これはもう本当に厳しい姿勢で臨まなければ、これからの日本というのはなめられてしょうがないですよ、実際言って。そのことを私はしっかりと踏まえていただきたいというふうに思うのであります。  それからもう一つ、この北朝鮮の動き、非武装地帯がなくなったということの軍事的影響。実質上、これは非武装地帯が無視されているんですね。この軍事的影響というものをやはり深刻に考えなければいけないと思うんですね。政府は、朝鮮半島有事は即日本有事だという認識を持たなければいけないと思うのでありますが、しかも、先ほど外務大臣は、私は御答弁の後念を押しましたけれども、不測の事態が起こらぬとも限らぬということをおっしゃられているわけです、そこまでストレートじゃなかったかもしれませんがね。慎重に言われたけれども、しかしそのことをにおわされたわけです。  しかも、日本の座間には朝鮮半島への常駐する国連軍の後方司令部があるんですね。ということになりますと、朝鮮半島の有事というのは日本にとって無縁ではないんですよ。そう考えますときに、当然安全保障会議を開いて、そして有事の際を仮定して一これは起こらぬ方がいいんですよ、起こらぬ方がいいし起こらないために努力しなければいけませんが、万が一にも起こった場合にどうするかというための安全保障会議、または国連軍がどういう動きをするか、そのことが日本とどういう関係を持つかということについての検討も当然なされておかなければいけないと思いますが、このことについて、これは防衛庁長官関係することですから、まず防衛庁長官からお聞きしたいと思います。
  114. 池田行彦

    ○池田国務大臣 防衛庁長官からも御答弁いただけると思いますけれども、私の方から先に御答弁したいと思います。  先ほど私が申し上げましたのは、不測の事態の可能性を全く否定することはできない、そういったことで申し上げたと存じますし、それからまた、不測の事態というのは決して大きなものを想定しておるものではないということは、その際の御答弁の中であわせて、現在の事態が武力衝突につながるということはないと思うがと申し上げたということで御理解いただきたいと思います。  そういった意味で、今の事態がすぐに、すぐにと申しましょうかすぐにでなくても、いわゆる委員おっしゃるような朝鮮半島有事と言われるようなそういった事態につながっていくという蓋然性というものは、今私どもとしては、余りそういう蓋然性というものがあるとは考えていないところでございます。  ただ、可能性というものを、それほどの規模でないけれども、何らかの不測の事態が起こる可能性を否定し切れるかと言ったら、そうは言えないという判断だということを前提にして御答弁申し上げるわけでございますが、そういった状態でございますので、我々としては、あそこの事態を非常に関心を持って、重大な関心を持って注視はしております。  情報の収集にも努めますし、関係国とも、当然のことながら、どうだろうかという情報の交換なんかは進めなくてはいけませんけれども、ただ、現在の段階で、今委員御指摘の安全保障会議招集云々というところになるかどうかといいますと、これは招集権者は私じゃございませんけれども、今のところは、重大な関心を持って事態を注視しておくというふうな段階ではないかと考える次第でございます。
  115. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 今外務大臣からお答えを一部いただいたわけでございますが、朝鮮半島有事というような具体的な問題についてお答えをいたすわけにはいかないわけでございますが、あえて一般論的に申し上げますと、新防衛大綱にも記述がございますとおり、我が国周辺地域において我が国の安全と平和に対して重大な影響を与えるような事態が起こったときには、憲法及び関係法令に従って、必要に応じ国際連合の活動を適切に支持しつつ、日米安全保障体制の円滑かつ効果的な運用を図ること等により適切に対応する、こういうふうに記述をいたしているわけでございます。  先ほどお話しございましたとおり、安全保障会議の開催等も含めまして、政府としてもこれに対処するため万全の体制をとりたい、こう考えております。
  116. 中野寛成

    中野委員 きょうは一般質問の形をとっていますから、外務大臣防衛庁長官しか御指名しておりませんが、これは本当は総理に聞きたいところですね。  それと、例えば防衛協力のガイドライン、これは後で質問に入ってくるんですが、これなんかも今のところ制服対制服でやっているんでしょう、日米間で。しかし、例えば朝鮮半島の有事の問題、また、有事にいかない、武力衝突以前の段階であっても、その中に韓国や北朝鮮の国民の皆さんの不安な状況というものが増幅されますと、どういう事態が起こってくるかわからないんですよ。これは、それこそ通産大臣も場合によっては必要でしょうし、運輸大臣は当然のことながら、いろいろな関係省庁がいろいろな状態を想定しながら考えなければいけないんですよ。  ですから、当事者かもしれませんけれども、少なくとも韓国は大統領を中心に有事の対策の会議を開いているわけですよ。言うならば、海を隔てているといえども隣接をしている日本、これはおっとりと構えているわけではないと思うけれども、しかし、やはりそれに対応した対策、そして準備、検討、分析、情報収集というのはなされなければいけないんですよ。  そして、こういう国会の場において国民に対しても説明しなければいけないんですよ。国民みんなが不安に感じているんですよ。また朝鮮戦争が起こったら大変だと思っているわけですよ。起こるのか起こらないのか、起こったとしてもこの程度ですよ、この程度ですよというのは予測はなかなかつかぬけれども、しかし、起こらなくてもこういうことをひとつ心がけたいとか、そういうことがあって初めて国民というのは安心できるし、やっと日本政府も危機管理能力が少しは上がってきたかと評価されるんですよ。このことについてはどうお考えですか。
  117. 池田行彦

    ○池田国務大臣 先ほどから御答弁申し上げておりますように、今回の北朝鮮の発言あるいは行動につきましては、私どももそれは甚だ遺憾だと考えておりますし、事態を非常に重大な関心を持って注視しております。そうしてまた、いろいろな情報の収集なりあるいはいろいろな分析にもそれは当然努めておるところでございます。  そういったものも踏まえまして、先ほど来申しますように、今の事態は非常に注視をしなくてはいけないけれども、これが非常に大きな事態につながっていくという蓋然性は今考えなくてもいいだろう。ただ、そういう大きなものではないけれども、場合によっては不測の事態につながるという可能性を全く否定し去るわけにはいかぬということを、そういう判断を申し上げておるところでございますので、どうか、我々も決してのほほんと構えているわけではないという点については御理解を賜りたいと思います。  また一方におきまして、今申しましたような事態の認識でございますから、余りこの事態で、騒ぎ立てると言ったら語弊があるかもしれませんけれども、過度の反応をすることも、これまたいろいろ波紋あるいは影響を与える可能性もあるわけでございますから、その辺は慎重に対応してまいりたいと思います。
  118. 中野寛成

    中野委員 過度の反応はかえって国民に負担を与えるからできるだけ質問も控えてくれと言わんばかりの御答弁でございましたが、しかしこれは、時の政治、政府に対する信頼感が確立されておってこそ初めて国民は、騒がなくても大丈夫なんだろうという安心感を持つんです。今は、危機管理についての政府に対する信頼は完全に崩れているということを前提にお考えをいただきたいと、私は改めて御指摘をしておきたいと思います。  それから、蓋然性に基づいてとおっしゃるけれども、あらゆる場面を、少しでも可能性があれば、危険性があれば、それを想定して万全の体制を組むのが本当じゃないですか。蓋然性があることについてしかやらないというのだったら、どういう蓋然性に基づいて防衛庁、自衛隊を存在させているのですか。  そうでしょう。何のために自衛隊はあるのですか。蓋然性だけではないでしょう。仮定の問題としてでも、たとえであろうとも、そこに少しでも危険性が論理的な可能性としてあるならば、そういう備えを日ごろから備えておくがために自衛隊はあるのでしょう。私は、そういう真剣な対応、真剣な検討をしてこそ、騒ぎ立てなくても日本政府がちゃんとやってくれるから大丈夫だと国民は思えるんだと思うのですよ。  まあ、余りこればかりしつこくやってもいけませんが、私は、多分、外務大臣防衛庁長官も、おわかりだけれども答えにくいと思っておられるのだろうと思いますよ。まあ、うなずいておられるからそうなんでしょう。しっかりと腹をくくってやっていただきたい。  それからもう一つ、この北朝鮮の絡みで、先ほども同僚議員から指摘をいたしましたが、元日本赤軍派の田中義三容疑者、このにせドル事件。これも決して元日本赤軍派が云々というだけではなくて、もう既に数多くの報道もされ、そして各国間に疑念も持たれている、北朝鮮との関係というのが、北朝鮮から出て行っているんだから。この事件の実態というのはやはりしっかりと調べなければいけませんし、その背景となる問題を、防衛上も外交上もちゃんと把握して対策を講じないといけない。  先ほど来、一連の北朝鮮の、何といいますか、お国柄といいますか、やり方というのをちょっと説明しましたけれども、私は決して北朝鮮を敵視したいと思いませんよ。思いませんけれども、そして、いずれの日か仲よくしたいと思いますよ。そして、朝鮮半島が平和裏に、当事者間の協議によって平和統一されることを心から念願しております。しかし、それだけに、このような危険性があるとするならば、しっかりとそれを、現実を、事実を踏まえておかなければいけないと思うのでありますが、どう把握しておられますか。これは警察の方かもしれませんけれども
  119. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 ただいま委員御指摘の件については、捜査が継続中でございますので、その点、立ち入ってコメントをすることは差し控えさせていただかざるを得ない状況でございますけれども、ただ、北朝鮮政策につきましては、北朝鮮の国が持つ透明性の欠如というものがいろいろなところで問題になるのは事実でございます。したがいまして、時に相反して見えるような行動、その他のものを総合的に把握いたしまして、北朝鮮に対する政策というものを立案し、実施していくように努めたいと考えております。
  120. 中野寛成

    中野委員 十分に情報分析もし、そしてやはり明らかにすべきところは明らかにしていただかなければ、国民が判断を間違うんですよ。政府が判断を間違えるだけではなくて、国民にも間違った情報を提供してしまうことになるんですよ。そのことを再度申し上げて、次へ移りたいと思います。  次に、いよいよクリントン大統領が来日をされます。どういう環境でクリントン大統領を日本国はお迎えするのかなと想定をいたしますと、実に肌寒い思いがするのであります。  きょうも新聞の報道は、警察の皆さんが総がかりで安全性確保のために随分努力している、まあ今回ばかりではもちろんありませんけれどもね。しかし、私は今回も、より一層大きな混乱がないかと心配をしております。  この楚辺通信基地の問題、明らかに不法占拠であります。国家権力による不法占拠であります。それはいろいろ口実はつけられております。日米安保条約の問題であるとか、いろいろ解説はしておられますが、しかし、国民はそう簡単に納得するものではありません。  例えば、先般橋本総理がわざわざアメリカ西海岸まで行ってクリントン大統領とお会いになりました。あのとき、何のために行ったんだったでしょうか。政府は明らかにしていませんよ、実際言って。顔つなぎみたいなことしか御答弁ではおっしゃっていない。しかし本当は、そのときの目的の一つに、このクリントン大統領来日の下ごしらえもあったはずであります。また、なければおかしい。何のために行ったのかわからない。  ところが、一体何だったんでしょうか。確かにこの沖縄の基地問題については、前村山政権の置き土産ですよ。あのときに宝珠山長官の言われたように、もっと早くちゃんとやっておけばいいのに、まあ総理の頭が悪いからとかと言った、その言葉じりをとらまえて首にしたのかどうか知りませんけれども、しかし、彼の言った言葉はそのまま当たっているじゃないですか。  正しいことを政府に対して直言をし、にもかかわらず、言葉の間違いがあったかどうか、言葉じりをとらえて首にする。しかも、こういうふうに聞くと、首にしたのではなくて自分でやめていただいたんだと言うかもしれない。言葉の遊びはやめたい。あのときに本当に事態の認識をして対応しておればこういうことにならなかったはずです。  先般来答弁を聞いておりますと、いや、できるだけ話し合いで解決したかったんだ、沖縄の皆さんと最後のぎりぎりまで話をしたがったんだ。しかし、あの秋の臨時国会で、私自身も含めて、もうタイムリミットが過ぎたよ、こうなるよとシミュレーションまで描いて示したじゃないですか。そのとおりになってきているんですよ。  そして結局、そのあげくは何なんですか。民主主義に基づいて、話し合いによって解決したい、円満に解決したいと言っておった、それが崩れただけではなくて、結果として不法占拠なんですよ。そのことによって、結局沖縄県民の皆さんの怒りもなお高まり、そして日本の法治国家としての権威、メンツも崩しているんですよ。このことについて、私はぜひとも正しい認識政府が持ち、かつそのことについて謝るべきは謝り、正すべきは正し、そして今後の対応に間違いのないようにするということが極めて重要だと思います。  加えて申し上げれば、宝珠山長官、悪かったと、政府を代表して一言彼に謝って、名誉回復ぐらいしてやったらどうですか。いかがでしょうか。
  121. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 委員お話しをいただきましたとおり、今回の手続に大変長い時間を要したために、楚辺通信所約四百四十名の土地所有者のうちお一人のこうした拒否によりまして、こうした事態が生じていることは極めて残念でございます。  確かに長いことかかっておるわけでございますが、例えば一部の、御本人が署名押印に応じていただけなかったため、市町村長に押印をしていただいたのが六月十二日からでございますが、それから知事さんが拒否の御意思を表明されるまでに実に三カ月以上たっているわけでございます。そうした中で、あの極めて不幸な事件が起こりました。政府としても、こうした状況の中で、知事さんに、御苦悩はあるけれどもぜひとも署名をしていただきたいと誠意を持って最大限の努力をするということは、私は決して責められるべきものではない、しかしながら、結果としてこうした状況を招いたということは極めて残念でございます。  今後とも、こういうことのないようにさらに努力をいたしてまいりたい、このように考えております。
  122. 中野寛成

    中野委員 それでは、これはまた本当にないことを祈りますが、不穏な状況がクリントン大統領を迎えて起きますことは、これは日米関係、良好な関係を大きく損ねることになると思うのですね。友好を深めるために来日していただくのですね。しかし、沖縄において不幸な事件がありましたね。そしてその後、APECが大阪で開かれた。だから、結局そのことを米国として、被害者の皆さんを初めとして、その陳謝の意をどうあらわすか、改めて日米関係をどう再構築するか、それらのことについて話し合いがなされるわけですよね。  ところが、このままでは日本国民は、とりわけ沖縄の皆さんは快く大統領を迎えようかという気持ちに果たしてなるのでしょうか。そして、そのことによって、国民は率直な表現をする、アメリカの報道機関はその部分をクローズアップさせて米国内に報道をする、米国民はそしてまたそれについてどう思うのでしょうか。大統領選挙を目前に控えまして、果たしてこのことは日米間にとって本当にいいことなのかどうか。  クリントン大統領の訪日のきっかけは、日本側の、いたいけな少女の被害によって生まれたかもしれません。しかしながら、今後のことを考えるときに、この基地問題はある意味では一にかかって日本国内の問題でもあります。それをきちっと整理し切れないで日米間のことをこれから再構築をしていこうということになりますと、これは米国を責めるだけの話では済まないことになっていくはずでございます。  そのことをしっかりと踏まえて対策を講じなければいけませんけれども、しかし、これは沖縄県の収用委員会の見通し、緊急使用申し立て六カ月、また裁決の申請六カ月、これはかかるのじゃないですかね。その後、政府の望む裁決になるとはこれは限りませんね。そうこうしているうちに次のものが来るのですね。事態はいよいよ深刻ですよ。そして、それは日米安保条約のかなめでもあるわけでしょう。だからということで、四月四日に首相が表明されたそうですが、強制使用の特別立法の検討をやろう、こういうことなのですが、何かすべてが後手後手で、そして泥縄式、何か新聞にも泥縄と書いてあったけれども、そういうふうに思えてしょうがないのですが、どのようにそのことを見通し、想定し、対策を講じられているのか、お聞きをしたいと思います。
  123. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 お答えします。  ただいま御質問ございましたように、現在私ども、条約上の義務を果たすために沖縄県収用委員会に緊急使用の申し立てをしておるところでございます。先月の二十九日に申し立てをした状況でございます。現在、第一回の収用委員会の審理が四月十二日に開かれるということが決定しておるところでございます。したがいまして、四月十二日が第一回の審理でございます。  私どもとしては、かねがね沖縄県の方にはこの緊急使用の申し立てと同時に、この重要性といいますか、一刻も早く緊急使用の許可がおりるようにいろいろ御説明はしておりますが、県の収用委員会というのはやはり独立した機関ということでございますので、ここへの働きかけはいたしておりませんが、そういう私ども政府内の事情につきましては県の方には十分御説明をしておる、こういう状況でございまして、現段階では第一回の十二日の審理が決まっておる、こういう状況でございます。
  124. 中野寛成

    中野委員 この収用委員会も沖縄県の皆さんのお立場で考えられると思いますよ、当然でしょう。そういうふうに考えますときに、先行き、これは政府の都合のいいようにというわけにはいかないですよ。まして、市町村長の皆さんの意見を聞くこともこれから生まれてくるわけですね。皆さん、それぞれ何かマスコミの取材では全部ノーとお答えになっているという報道もあります。  ということは、この日米安保条約の体制というものを、社民党の皆さんも評価をし、堅持し、村山総理のときにはそれを堅持のもう一つ上の言葉までお使いになられたことがあると思いますけれども、結局、日本の安全、アジアの平和、そのことのために日米安保条約がどういう役割を果たしているかということを改めて評価をし、そしてその重要な一翼をなしている在日米軍の存在というものを評価をする、しかし、沖縄には余りにも多くの基地が存在し過ぎること等を踏まえた政府の明快な方針と対策というものが立てられなければ、私は沖縄の皆さんは納得しないのだろうと思う。まして、それが確立をされなければ、日米安保体制というものの確立にそごを生じるということになるのだろうと思います。  今、役所の方からの、政府委員さんからの御答弁でございましたが、ひとつ首にならないように気をつけていただきたいと思いますが、御努力をいただきたいと思います。私は、そういう政治的な意義というのをしっかりと踏まえた役割を検討し、行動に移していただきたいと思いますが、もう一度、外務大臣お尋ねいたします。
  125. 池田行彦

    ○池田国務大臣 委員御指摘のとおり、現在の我が国を取り巻く安全保障環境というものを考えた場合に、我が国の安全のためにも、またアジア太平洋地域の安定、平和のためにも、日米安保体制の持つ意義というものは非常に大きなものがあると思います。そうしてまた、その有効性を担保していくためにも、沖縄にございますものも含めまして米軍に対する区域・施設の提供等についてもきちんとしたことで対応していかなくてはいけない、そしてそのことについて、沖縄県民の皆様方を初めとして日本の国民の間に十分なる御理解とまた御支持というものをちょうだいできるようにしていくというのが政治の務めであろう、こう思っております。  今、沖縄の基地をめぐりまして、具体的には楚辺の通信所の問題で、残念ながら十分なる権原を有さないまま条約上の義務として提供するという状態になっておりますが、一日も早くそういった状態を解消してまいりたいということで、防衛施設庁を中心として、政府としては今全力を傾注しているところでございますが、また同時に、これは全体としてやはり基地の存在に伴う沖縄の県民の皆様方の御負担をいかに軽減していくか、そういった努力をすることが肝要だと思います。そのときに、長年にわたる御負担に耐えてこられた県民の皆様方の御心情というものを十分に考えながら、配慮しながら作業を進めていかなければいけません。  そういったことで、御承知のとおり、今SACOを中心に精力的にその作業を進めておりまして、既に運用に伴う騒音の問題、あるいは行軍の問題なんかもつい最近合意に達しましたけれども、そういうものも進めておるところでございます。  それから、基地の整理統合・縮小につきましては、大統領の御訪日、これは大きな節目でございますので、それまでにできる限りの成果を上げたいということで鋭意やっておりまして、最終的な結論を出すのはもちろん秋でございますが、今月の段階におきましても、具体的にここについてはこういう方向性でやりたいのだということを県民の皆様方にも、そうして国民の皆様方にもお示しをできるようにしたいということで、今本当に日米共同作業でやっているところでございますので、どうか、全体としては委員のおっしゃるとおりの精神で、心構えで作業に全力を傾注しているということを御理解ちょうだいしたいと思います。
  126. 中野寛成

    中野委員 それでは、三つちょっと具体的にお聞きします。  日米行動委員会の中間報告を国会でなさるおつもりはありませんか。私は、ぜひしていただきたい。どこで何がどのくらい行われているのかさっぱりわからぬ。沖縄県民のみならず、これは国会も国民も知るべきであるというふうに思います。  それから、強制使用の特別立法の検討を始めるという話を先ほどもちょっと申し上げましたが、これはどういう方向で検討をされているのですか。  それからもう一つ、先ほどちらっと申し上げましたが、防衛協力のガイドライン、共同宣言に織り込むためにということで協議をなされていると聞きますが、これも日米の言うならば軍人、制服組同士が話をしている、こう聞いております。私は、防衛協力のガイドラインというのは、これは随分と、四つ、五つの省庁にまたがるような内容ではないのかと思いますが、制服組だけでいいのでしょうか。今後どうするつもりか、お伺いをしたいと存じます。
  127. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 中間報告の話がございました。先ほど外務大臣からもお答えをいただきましたとおり、SACOにおきまして、騒音問題等、逐次両国間でもって決まった問題がございますが、御報告をさせていただいているわけでございます。  御承知のとおり、この問題はいよいよクリントン・橋本会談で大きな取りまとめの時期が来ております。そのことは承知をいたしておりますが、決定をいたしておらない項目について、これが外部に出ることによって過大な御期待をお持ちいただく、そういうふうなことになってはマイナス部分が非常に多い、こう考えておりまして、慎重に取り扱わせていただいている次第でございます。  また、ガイドラインのことにつきましては、現行のこの指針は、かつて五十三年に北米局長、防衛局長等を日本側のメンバーとする防衛協力小委員会でその研究協議の結果、作成されたものでございます。昭和五十三年に外務大臣及び防衛庁長官日本側メンバーとする日米安全保障協議委員会において了承されました。御指摘のように、制服組だけで行っているというものではございません。  この指針は、前大綱に基づいてつくってございますので、当然のことながら、新防衛計画大綱が策定された現在、いずれにいたしましても調整の必要があろうかと考えておりますが、それらの策定の経緯等も踏まえまして、広く関係省庁と御相談をいたしながら所要の検討をいたしてまいりたい、このように考えている次第でございます。  それから、特別立法のことにつきましては、先ほど来お話しを申し上げておりますとおり、こうした使用権原のない状態になったということは極めて残念でございます。当庁といたしましても、でき得る限り早く駐留軍用地特措法に基づきまして使用権原がとれるように努力をいたしているわけでございますが、現在のところ、御質問のような特別立法を検討しているということはございません。  また、法的な措置を図るべきではないかという御指摘につきましては、一般論として申し上げれば、今回のこうした状況も踏まえて、駐留軍用地特措法に基づく手続のあり方等も含めまして、幅広く検討をしていくべき課題であると考えております。
  128. 中野寛成

    中野委員 私は、行動委員会の中間報告、やることによって過大な期待を生むというふうにおっしゃられたが、哲学論だけ言われて中身がさっぱり触れられない。そして、例えば騒音対策とか行軍の問題とかと、ちらりちらりと漏れてくるというか報道されてくる。むしろ、その中身が触れられないがために過大な期待をし、そして時々ちらちらと漏れてくるものが、余りにもと言ったら失礼だけれども、ささいなものが出てくるので、その落差が大き過ぎて国民の怒りにまたつながっていくということではないのでしょうか。軍事機密ということの視点で考えるとこれは別の問題かもしれませんが、この基地の整理統合・縮小の問題はそういう次元のものでもないはずであります。私は、ぜひこのことは前向きに考えていただきたいというふうに要請をしておきたいと思います。  その他の問題につきましても、それでは強制使用の特別立法の検討はしていないのですね。今していないとおっしゃったね。それでは、総理がこの前言ったのは別ですか。あれはつぶやきで、そういうことも考えるかなといった程度のことなんですか。それで、これは将来とも考えませんか。
  129. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 ただいま私がお話を申し上げましたとおり、現在のところ検討はいたしておりません。しかしながら、先ほど申し上げましたとおり、今後、現在非常に残念な状態になっているということも含めて、駐留軍用地特措法等の今後のあり方について幅広く研究、検討をしていくべきものだと考えている次第でございます。
  130. 中野寛成

    中野委員 まさに戦後五十年、曲がり角に来ているのですよ。言うならば日本の戦後は終わっていないのですな。そういう中で、結局判断が甘い、そしてその対策、手続がおくれるということによって、一見当初は民主的に話し合いと見せているようですけれども、結果として強制的な方法をとらざるを得ないという不幸な事態を、より傷を大きくする不幸な事態を招くということを、私はぜひこれは大きな教訓として受けとめ、今後の対策をしっかりとやっていただきたいというふうに思うのでございます。  次に、少しだけ国連との関係についてお尋ねしたいと思いますが、四月二日から六日までガリ事務総長が来日をされました。毎年いらっしゃるのですね。ガリさんの前までの事務総長は、日本に来たことがないか、またはめったに来なかったと思うが、なかなか国連に頼りにされているようですね。何が頼りにされているのか。問題は、金を出してほしい、人を出してほしいということかもしれませんけれども、それはそれでいいと思いますよ。いいと思いますが、私は、例えば国連の現在の実態をどう見ておられるのかお尋ねしたいのですね。  アメリカ合衆国というのは国連をうまく利用しますね。自分たちがおもしろくないときには国連はちょっと何かそでにしているという感じですよね。それで、自分たちが何かやはり、まあ合衆国の立場からすれば国連とともに平和行動を起こさなければいけないというときに国連を使っている、こうなるのでしょうけれどもね。しかし実に国連の使い方がうまいと私は思います。そして、お金を出さないことによって近ごろはまた国連に対する影響力が逆に強くなっているというおかしな、矛盾した現象が起こっていますね。  それで、日本の場合はどうなんですかね。先ほども防衛庁長官の御答弁の中で一回出てきたけれども、北朝鮮との関係、有事の問題について、国連の動きを見ながらとかという言葉を使われた。そういうふうに、国連決定を口実として使う。アメリカ合衆国と日本の違いは、アメリカ合衆国は国連を道具として使う、手段として使うということを心得ている。日本は国連決定を口実として使う。この差は大きいですね。  私は、米国に対してもロシアに対してもウクライナに対しても、ちゃんと払うべきものは払ってくださいよと日本だから言う権利があると思うのですよ。そういうことを、この前ガリ事務総長が来られたときにも随分と苦労話をされたのだろうと思いますがね。しかし私は、クリントン大統領がいらっしゃるということになれば、これらのこともテーマとして話されるのではないか、まして、日本の常任理事国入りの問題等も含めて協議されるのではないかと思いますが、どうでしょうか。
  131. 池田行彦

    ○池田国務大臣 国連に対する見方あるいは対応の仕方が米国と我が国とで随分違うじゃないかというお話がございました。私も決してアメリカが国連を道具、手段としてのみ考えていると思いませんし、我が国といえども、国連に協力するそのこと自体が目的であるとか、いわば国連至上主義的な考えでやっておるわけではございません。  もとより、我が国外交の大切な柱の一つは国連外交でございますけれども、やはり国連というのは米国、日本、我が国も含めまして世界全体として、この世界の安定と、そうして繁栄をもたらすためのいわば手段として考えるわけでございますから、それがうまく機能するために、それぞれの国がその国柄、得手不得手を考えながら、どういうふうに国連をうまく機能させていくかという観点から働きかけていく、こういうふうに私は考えておるところでございます。  そうして、先般ガリ事務総長がお越しになりましたとき、私もいろいろお話し申し上げました。今委員御指摘の国連の財政が窮迫しているという問題も当然のことながら話題になりました。その際に、私どもといたしましては、日本といたしましては、財政の改革も大切だが、それは財政の改革だけではなくて、安保理のあり方の改革あるいは経済社会の問題に対する取り組みのあり方をどう見直すか、そういったいろいろな国連の改革のバランスのとれた検討、進め方の中で考えていくべきじゃないか、こういうことを申し上げたわけでございます。  そうして、財政問題についても、そのような中長期的な観点からの改革と当面のいわば流動性危機といいましょうか、資金繰りがどうにもならぬ、米国を初めとして大きな未払い国があるからという問題は、これは分けて考えるべきじゃないか。そうして、そちらについては支払いが滞っている国の責任をまず追及すべきである。我が国としてもそういった未払い国の肩がわりをするというつもりは毛頭ないということは明確に申し上げておきました。そういった上で、我が国としては国連の仕事の中でやるべきことについてはきちんと対応していく、そういう基本方針で対応してまいりたいと思います。  さて、米国に対して国連の分担金の未払い分をどうするかという点について、首脳会談ででもというお話がございましたけれども、それは首脳会談の場が適当かどうかということはこれまたいろいろ考えてみなければいけないと思います。しかしながら、我が国も国連の財政を考えた場合に、米国に対して、支払うべきものは支払うべきだということは当然言ってまいらなければいけませんし、これまでも機会をとらえてそういうことを米側に言ったこともあるということを申し上げさせていただきたいと思います。
  132. 中野寛成

    中野委員 日本はやっと国連中心主義の時代を迎えたような気がいたします。本当は、まだ世界の平和のための国連中心主義というのはちょっと時間がたつのかもしれません。しかし、日本にとっては国連の充実こそは平和貢献のためのよすがであり、そしてまた国連をサポートする運命にあるものだ、こう考えますから、ぜひ国連についての日本のせっかくの努力をまたお願いをしておきたいと思います。  外務大臣防衛庁長官、以上で結構でございます。  さて、世界の中の日本というのを考えますときに、今もずっと外交・防衛問題でお尋ねしたのですが、今日まで、終戦直後の日本国民の頭脳指数は十二歳以下という言われ方をしたことから始まって、トランジスタラジオのセールスマン、ウサギ小屋の住人、エコノミックアニマル、バブル時代に海外投資をしてひんしゅくを買ったことなど、いま一つ外国からのイメージや表現、論評というのはよくない。大変残念であります。  そして、バブル時代のツケなのでしょうか、何か世界じゅうでお金がなくなると、困ると日本へ求められる。何か世界の金庫番をやっているみたいですね。しかし、その実態は、日本に言えば引き出し放題、何か出してもらえるような印象を与えているのかと思いますが、しかし例えば悪いかも知らぬが、これは新潟県の方に失礼だが、我々の間では佐渡の金山と言うのですね、もう掘っても出てこないと。結局、これから我々は国際社会からも信頼をされ、かつ国民からも信頼されていかなければいけません。  そういう中で、双方から一番大きな不安材料として注目されているのが金融不安の問題であります。大和銀行事件一つのきっかけとなりまして、日本金融システムの改革のために国際公約を急がされました。そして、そのためにまずとりあえずは住専から、こういうことになったと私は思います。  そして、その住専処理スキームについて、国際的に発表した際に、一たんは評価されました。いよいよ政府が乗り出したというので評価をされました。しかしながら、徐々に日がたつにつれて、中身に乏しいことがばれてきて、より一層信用失墜をしているというのが現状ではないのでしょうか。  海外の論評は大変厳しゅうございます。  三月六日のフィナンシャル・タイムズ、   最も大事なことは、いかなる救済計画といえども金融制度の抜本的改革が伴わなければならないと政治家は声高らかに要求することである。今まで、危機に対応して、官僚たちは小手先の微調整しかしていない。これほどの裁量権を大蔵省という一つの省庁に任せたことは明らかに間違いであった。今やこのことは痛いほどはっきりしたのである。救済措置をとる必要があるとすれば、同時に欠かせないことは、金融財政制度を改革して、より開放された、より透明度の高い、より競争の原理を取り入れたものにしなければならない。というものがございます。政治家の一人として我々も肝に銘じたいと思います。  三月十一日、米国国際経済研究所のバーグステン所長の発言は随分とここでも取り上げられたと思います。東京都内で講演をして、「米政府日本の住宅金融専門会社(住専処理策を支持していないことをモンデール米駐日大使が確認したと述べた。」これは通信社の報道ですけれどもね。  次に、三月十五日、これは「ロンドンに本拠を置く欧州の有力信用格付け機関IBCA」、これも「日本政府処理策を痛烈に批判する論評を発表した。」こうなっております。  そしてもう一度、三月十九日、フィナンシャル・タイムズでありますが、「住専問題は氷山の一角。 もたれ合いの経済・金融構造を抜本的に改革すべきだ。これを認めない日本政府・与党は、過ちを繰り返すことになるだろう。」こう報道されております。  並べ立てていると、実は切りがないのです。これだけ資料を集めたのですけれども、もうこれ以上言いません、こっちも情けなくなるから。  そこで、私は、問題を先送りするのではなくて、この際、この金融問題をトータルとしてしっかりと踏まえて対策を講じていくべきであると考えるのであります。そして、それは一貫性のあるものでなければ法治国家として私は間違いである、こう思います。  ちなみに、まず金融機関不良債権について、例えば大蔵は四十兆円と言い、民間調査機関は百兆円と言い、米国の計算、これは三カ月滞納、六カ月滞納の差がありますから、ところがアメリカ流に言うと、百四十兆円だと言うのですね。  いずれにいたしましても、この前置きは別にいたしまして、三カ月ならこれだけ、六カ月ならこれだけというように不良債権の実態というものをやはり国民の目の前に情報を開示すべきだと思うのであります。その上で、住専の第一次処理策、住専の第二次処理、三番目にノンバンク、四番目に信用組合など、これは金融三法に絡むことでありますが、これらのことをトータルとしてどうするかという方針と計画を立て、国民に協力を求めるというのがまず最初の取っかかりではないでしょうか。  先ほど申し上げましたように、大和銀行事件が起こって、アメリカ等に対して、早く金融問題のスキームを発表しなければいけない、何か国際公約をしなければいけないというので、大慌てに慌てておっ取り刀でつくったというのが、今問題になっている六千八百五十億円の税金の使い道なのではないのでしょうか。  まず、大蔵大臣お答えを聞きたいと思います。
  133. 久保亘

    久保国務大臣 私は、この住専問題処理の必要性、不良債権処理を早期にトータル的にやっていかなければならないという御主張に関しては、中野さんのおっしゃることはよく理解できます。ただ、この住専問題の処理に関して私どもが提案いたしておりますことが、大和銀行事件が起きたことによっておっ取り刀でこれに取り組んだということは、私は私ども立場から申しますと違うのではないかと思っております。  既に、村山内閣の時代でございますが、昨年四月に、金融システム安定のための検討の必要性を経済対策の中で盛り込んでおります。参議院選挙に先立つ六月には「金融システムの機能回復について」、そして九月には「金融機関不良債権の早期処理について」、いずれも不良債権処理のための対応の方針を公表をいたしております。  なお、この間、与党三党はかなりの回数を重ねて、この問題と金融・証券プロジェクトを中心に取り組んでまいりました。十二月の一日にガイドラインを発表いたしたのであります。これらを受ける中で、政府・与党の間で協議を重ねまして、十二月十九日に閣議決定として住専問題処理の方針を決定をいたしたものでございます。  そのような意味では、今申されましたようなものではなかったと私は思っております。  なお、国際的な評価でございますが、私も大蔵大臣に就任いたしましてから、パリにおけるG7、そして先般京都におきますAPEC蔵相会議に出席をする機会がございました。そして、この際、アメリカのルービン財務長官、それからフランスのアルチュイ蔵相、カムドシュ・IMF専務理事等との間にお話をする機会を持ちました。  私は、国際公約というようなことではなくて、日本不良債権処理問題について、当時の武村大蔵大臣が昨年十月のG7において日本の取り組む考え方について報告をされたことを引き継いでおります。そして、この一月の二国間の会議でも、またG7の会議でも、日本政府が今日取り組もうとしていることについて説明を申し上げました。別に公約をいたしたわけではございませんけれども、国際会議において蔵相がその国の考え方を述べるということは広い意味では国際公約であろう、こう思っております。  そして、その際いずれも、ルービン長官からも、我々は、その方法は日本が決められることであるけれども、ぜひ住専問題の不良債権処理が成功をおさめることを期待しているということを伝えられております。また、IMFのカムドシュ専務理事は、再度にわたって、日本が今やろうとしている不良債権処理のための住専問題処理の方針は、IMFとしても支持し期待できることであるということを彼は私に伝えております。  また、今中野さんの方からトータルでというお話がございました。  この住専問題の処理に関しましては、私どもは、現在の損失や欠損をどのように当事者間の協議において処理をするかということとあわせて、住専処理機構が引き継ぎます債権の処理に伴うこの処理の仕方につきましても、また、不良債権の全体についてどのように進めていくかというようなことにつきましても、十二月十九日の閣議決定におきましても、その後橋本新内閣がこの問題と取り組んでまいります中でも、総合的に全体的な取り組み方を進めるよう努力をしてまいったつもりでございます。  今中野さんからお話がございましたことをさらに念頭に置いて努力してまいりたいと考えております。
  134. 中野寛成

    中野委員 海外からの評価について、私も多くの論評を見ましたけれども、その中で随分と出てまいりますのは、その中身のいかんを評価する云々ではなくて、政府が何かやり始めたということについての期待感というのがあった。そして、そのプロセスは別にして、内容も云々するものではないけれども、結果的に日本不良債権処理が成功し、かつ金融システムが改めて安定的に確立されることを願う、これはどこの国でもそうでしょうし、我々も同じことを考えているわけですね。  ですから、先般来たびたび与党の方々が、国際社会で評価をされたから為替相場も安定をしたとか、やれ株価が上がったとかいろいろなことを言っておられたけれども、私は全く無関係な話だと実際に思うのでございまして、この全体的なシステムというものが処理されるめどがきちっと確立をされなければ、かえって信用を失墜する、失望を買うということを私はむしろ心配をするわけであります。  そこで、若干内容に入っていきたいと思いますが、まず最初にお聞きしたいと思いますが、この住専から行きます。  総資産十三兆円、こう言われます。正常債権三兆五千億から始まって、第二分類、言うなら回収困難なもの、第三分類、ほぼ不能なもの、第四分類、全く不能だ、それが六兆四千億、これが実際上は第一次処理の対象となるのでしょう。  しかし、先般来土地の再評価が発表されましたが、これは随分地価が下がっているのですね。そうすると、この第四分類がふえるのですか、第三分類に先送りするのですか。この辺はどうお考えになるのでしょうか。  そして、またそれによって、言うならば国民の税負担、そして母体行、一般行、農林系のそれぞれの負担や贈与というようなものがどうなるのかということは、これは大変重要な関心の的であります。第二次処理を先送りしておいて、土地が値上がりしたら第二次処理分が減ってくるわい、あわよくばインフレでも引っ張り出すか、土地の値上がりでも待つかということではないはずでございますから。  それらのことについては、トータルとしてどうお考えになりますか。
  135. 西村吉正

    西村政府委員 今回の住専処理策におきましては、六兆四千百億に上ります損失額の処理をしようとしているものでございます。そのような損失額の評価に際しましては平成七年八月の立入調査を基礎としておりますけれども、その際、不動産担保の評価は平成七年の路線価を基本としているわけでございます。  今、中野委員御指摘の公示価格が低下している、こういう問題でございますけれども、路線価の基準は、課税の基礎として用いられる性格上、地価の変動の可能性等をも勘案いたしまして安全性を見込んでおります。公示価格の八割程度に設定されているわけでございます。  今回の公示地価の下落率は、全国全用途で見ますとマイナスの四%でございますが、確かに地域圏別に見ますと、東京圏の商業地では一七・二%と相当大幅な下落をしておるところもございまして、当初見込まれました安全性が全体として低くなっていることは否定できないところでございます。  こうした状況のもと、処理方策の見直しに直結するわけではないものの、住専処理にとって厳しさが増したことは事実でございますので、これを真摯に受けとめ、今後回収努力に万全を期さなければならないとの認識を新たにいたしておるところでございます。  なお、いわゆる二次ロスという御指摘がございました問題につきましては、今申し上げましたような回収努力の中で、そういうものが生じないように一生懸命努力をしてまいる、こういうふうな考え方でいるわけでございます。
  136. 中野寛成

    中野委員 おざなりな答弁をしてほしくないのですね。回収努力といったって、これは地価が下がったこととは関係ない話です。いずれにしたって回収努力をしなければいかぬのでしょう。回収努力で何かこの問題が解決するようなことをおっしゃられたのではどうしようもないんですよ。  それで、もう一つは、結局、住専問題があって、そして地上げが行われたりしたその対象となるべき土地が下がっているんでしょう。バブルのときに土地が上がっていない、地上げもされていないところは関係ないわけですよ。回収するにしても、土地の値段にしても、この住専の対象となる土地が上がって、下がっているんですよ。だから、一般論的な、のんびりした答弁をされたのでは困るのです。現実に、むしろこれは深刻な問題じゃないんですか。  例えば、第一次処理で、先般来、母体行、一般行、農林系云々とやりましたよ。しかしながら、それだってすったもんだもめている。今もこれはひっかかっているわけですよ。第二次処理、十五年先の話とのんびり構えるんですか。そんなことじゃ済まないでしょう。第三分類、第二分類、これは広がるんじゃないですか。  そして、何か一時期、二分の一を財政措置で講ずると。それじゃあと残りの二分の一、これはどこが持つんですか。母体行ですか、一般行ですか、農林系ですか。幾ら配分するんですか。それは先のことだから今は知りません、それまでには土地が値上がりするでしょうと言うのですか、どうなんですか。
  137. 西村吉正

    西村政府委員 ただいま申し上げました損失額を超えて損失が生じた場合の問題でございますけれども、それにつきましては、預金保険機構内に新たに設置される約一兆円を目途とした金融安定化拠出基金の運用益の活用あるいは低利融資による利益等により対応することといたしておりまして、その安定化拠出基金の配分等につきましては、現在、関係者の間で検討が続けられているところでございます。
  138. 中野寛成

    中野委員 まだ何も決まっていないということですよ。これはだんだんでかくなるんですよ。  それで、結局、そういうことがひっかかるから、第一次処理でもあれだけすったもんだするんではないですか。それがあるから国民はなおさら先のことはわからない。だから今不安になって、今から税金で取られたらたまったものじゃない。政府広報によると、税金を追加で払ってもらうのではありませんなんて余計なことを書いている、さっき笹川委員質問にありましたが。そんなことでは済まされる問題ではないでしょう。  そこで、結局、母体行の負担は、これはもうまさにさっぱりわからないぐらい大きくなりますよ。第二次処理農林系はどうするんですか、農林系統。ここに農水大臣いらっしゃるけれども、これは持たせないの、関係ないのですか。  それからもう一つ、七つの住専がいろいろと言われておりますが、八番目の住専と言われる協同住宅ローン、これは農林系で安定的にやっていますから任せておいてください、大丈夫ですよ、こうおっしゃっておられるようですけれども、本当に間違いないんですか。傷が浅くて、貸出金七千億円のうち三千億円が不良債権となっており、うち二千億円が回収不能と見られているとか、しかし、こういう数字を見ると、そんなにいいかげんなものではないと思いますよ。  もっと具体的に詰めればいいけれども、別に何も揚げ足を取るのが目的ではないから一々言いませんけれども農林系は住専七社に総額で五兆五千億円近く貸し込んでいるというのは、これは今までの問題ですね、今まで論じられてきた問題です。しかしながら、それ以外に、この協同住宅ローンだって、そんなにのんびりとしたことが言える状況ではないのではありませんか。  第一次処理の贈与分、第二次処理に幾ら負担させられるかわからない、そしてその八番目の住専の対策。そして、ノンバンクにも農林系として貸しているわけでしょう。これは、母体行がしっかりしていて、ノンバンクをつくったその母体行が数少ないところは、その母体行に対してノンバンクは、言うならば借り手からの利息をとれなくてもへ母体行にだけ金利を払っていれば、いわゆる母体行を持つノンバンクというのは、どのくらい借りがあるのか母体行からはわからないのですね。そして、そのノンバンクにも農林系統はどんと貸し出しているわけでしょう。本当に大丈夫ですか。こういう全体の姿が見えなくてもいいのですか。ひとつ農水大臣お願いします。
  139. 大原一三

    大原国務大臣 我々は我々なりに全体像を把握して、これからの農協系統の金融システムの再構築をしていかなければならぬ、こういう段階にあると思います。  ただ、先ほどから委員がるる御指摘のように、日本全体の金融システムのあり方、これは農水大臣から申し上げることじゃないかもしれませんけれども、先ほどいみじくもおっしゃいましたもたれ合い組織、こういったシステムが今後日本金融制度のあり方として続いていくのかどうか。  さらにまた、御承知のように、信用組合から長期信用銀行、都市銀行に至る金融機関相互間の垣根、こういった問題は日本独自の金融構造で、いわゆる護送船団と言われるシステムであります。こういったところを、一千百兆円の中の七十兆円、農協系統でございますが、どう位置づけていくべきかということを我々は真剣に取り組んでいかなければならぬ、こう思っております。  その中で、系統の、今るるおっしゃいました細かいいろいろの問題も我々は十分把握しておりますが、協同住宅ローンは、我々、まだ十分熟した結論ではございませんが、農協系統には住宅ローンがないのです、これを何とかこの協同住宅ローンを生かして、一般金融機関がおやりになっているような住宅ローンシステムの窓口として再構築していったらどうかな、こういう考え方も持っているところであります。  それで、二千億円の不良債権農林中金の年度利益でもって償却していこう、こういう計画をただいま立てております。
  140. 中野寛成

    中野委員 今の協同住宅ローンの償却の方法についてはわかりました、最後の部分については。しかしながら、それとても、ほかの分野について負担をする、また貸し倒れになるということがあるわけです。  例えば、ノンバンクですと、農林系として七兆七千億円出している。どれだけ戻ってくるのでしょうかということなども考え合わせてみますときに、この全体像がわかりませんと、本当に深刻な状況というものが目に見えないのです。  ですから、先ほども質疑応答の中でもあったと思いますが、ノンバンク、これは、出資者というのは都銀、長銀、信託、地銀、農林系統、生保、証券、一般企業から個人まで。母体行くは通常どおり金利を払っているから実態がわからない。しかし、その母体行は耐えられても、ほかは大丈夫かということが指摘されているわけです。これの処理は、会社更生法プラス母体行責任でやろうというのでしょう、今政府としては。  もう一つ、四番目の信組。金融三法とかその対象になりますけれども、これとても、言うなら、破綻信組の処理で回収不能が一兆円出るだとか、財政資金五百億ぐらい要るかなという話が答弁等でなされたりしているようでございますが、これも金融三法プラス会社更生法、最後に預金者保護公的資金。  これは、ノンバンクや信組の対策といったら、結局会社更生法でやるんでしょう。これが原則なんです、本来の。そうすると、我々は法治国家で経営をし経済活動をやっているわけですから、その本来なすべき、現存する法律に基づいて処理が行われるというのは当たり前のことなのではありませんか。  よって、私は、時間が来ましたから最後に申し上げたいと思いますが、財産保全もできるだけ早くやらなければいけません、債権の回収をやらなければいけません。今の政府のスキームだと、談合で決まりますから、責任追及がさっぱりわかりません。これは、第三者で公社を設けて管財人を置いてやれば、責任追及します。経営者責任までいきます。  言うならば、そのことを考えますと、結局、経営者であった大蔵省出身の皆さんの責任追及が嫌だから、それを逃れるために、免責のために、別の政府としての考え方、スキームを押しつけたとしか国民の目には見えませんよ。特に我々の目には、なおさらそうしか見えません。  会社更生法を適用して、裁判所プラス管財人、すなわち第三者のスクリーンを通すことによって公正、透明な対策というのが講じられるのではありませんか。だとするならば、私は、すべての処理に通じる一貫した、筋の通ったルールを適用しましょう、足らざるは補ってつくりましょう、そして、今の政府の提案を一たん白紙に戻していただいて、そして、透明な金融システムをどう構築するか一緒に議論しましょう、与野党の議論の場を、そういう形で共同のテーブルをつくりませんか。そして、第三者機構でなければできないこの新しいシステム処理策というものをこれから一緒に協議をしていく、そのときを迎えているのではありませんか。  少なくとも国民の八割、七割の皆さんが納得しないものを強行する、または強行しないという言葉の裏に、しかし、今週中にでも採決をしようというような分析や報道がなされているという事態を私は憂えます。本当に真の民主主義を確立するために、政府・与党の皆さんも改めて御再考をお願いしたい。お願いして、終わります。
  141. 上原康助

    上原委員長 これにて中野君の質疑は終了いたしました。  次に、五十嵐ふみひこ君。
  142. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 私は、最近、地元に帰って選挙区の皆様と話をする機会がかなりありますけれども、帰りますと、ただ税金を入れるのがいいか悪いかという議論はもう終わってしまった。むしろ、バブルを発生させ、そしてその処理に失敗をした、住専など金融をめぐるモラルハザードがかなり生じてでたらめな経営が行われている、こういうことを二度と起こさないようにどういうふうにやってくれるのか、そういう担保がない、そういう議論がないということに対する政界全体への怒りというものにどうも変わってきている。私どもは、もっと真剣にその点を考えるべきだろうと思います。  そういう観点から、もう大臣はたびたび、自己責任原則の確立と市場規律を基軸にした透明度の高い金融行政をつくるんだということをおっしゃられている。これはまさに正論、正解でありまして、だれも異論がないわけでありますが、その前に、大蔵省の今までやってきた行政は、じゃ、そういう基準に照らしてどうなんだろう、どこに間違いがあったんだろうという総括や反省がなければならないと思うのですね。いわゆる護送船団方式という言葉も、たった今農水大臣答弁の中にもあったばかりでございますけれども、一体護送船団方式とは何で、どこが悪かったんだろうかということから入ってまいりたいと思います。  護送船団方式というのは、これは体力の弱いところを標準にして、この体力の弱い金融機関がつぶれないように金融界全体がそれを守り合うといいますか、そういうものであろうというふうに定義をされていると思います。そして、それに沿って行政も手とり足とり、非常に細かい窓口等々行政指導が行われてきた。それを護送船団方式と言うのだろうと思いますけれども大臣は、護送船団方式の問題点というのはどこにあるとお考えでしょうか。
  143. 西村吉正

    西村政府委員 従来、金利が規制されております等、規制の枠組みの中におきましては、今御指摘のような大きな金融機関から小さな金融機関までそれぞれが共存し合うということは可能であったわけでございますが、自由化、国際化が進んでまいりまして、そういう枠組みを崩さざるを得ない、そのことが日本金融の発展のために必要であるという時代におきましては、今までのように全員が枠組みの中で足並みをそろえてやっていくということは、システム全体の効率性の問題としていかがなものかということを私どもも真剣に考えておるところでございます。
  144. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 自由化におくれるということをおっしゃったと思います。  資金逼迫の時代にはこれは確かに有効な手段だった、しかし、現在はそういう状況ではなくて、資金はむしろ余剰である、そして国際化を迎え、今おっしゃった自由化を迎え、そしてデリバティブというような金融技術の高度化を迎えたという時代にあっては、それが時代おくれになってしまったということを意味するんだろうと思う。  私、これをもう少し細かく言うと、今局長は自由化だけをおっしゃいましたけれども、確かに自由化が後手に回って金融技術の革新等に立ちおくれて国際競争力が低下してしまった、そういう面が一面あると思います。  二つ目に、金融機関の安全第一を考える余り、土地担保主義を随分偏重してきた、そういう行政指導を行ってきた、そしてそれによってベンチャービジネスなど新企業への資金供給が阻害されたではないか。  三つ目は、ディスクロージャーが進まない、そして市場や預金者より大蔵省に顔を向けた経営に偏っていった、そのためにモラルハザードを生じた。  また、四つ目は、行政の判断ミスにより行政が間違うとみんなが間違ってしまう、金融機関全体の大損失に直結して、日本経済全体としてリスク分散ができない。  そういった四つの大きな問題点が護送船団方式にあっただろう、そのように考えているわけであります。  そしてその中で、特に大蔵省に顔を向けた金融が行われたということですから、大蔵省はやはり非常にその護送船団方式のかなめになるわけですね。大蔵省がプレーヤー兼コーチ兼アンパイアになっている、そういう立場に立っていった、そのことについてどのようにお考えでしょうか。
  145. 西村吉正

    西村政府委員 金融行政につきましては、金融の自由化、国際化が急速に進展したにもかかわらず、金融機関経営基盤の安定を重視いたします、いわゆる今委員のお言葉でございますとコーチ的な行政から、市場機能を重視し自己責任の徹底を求める行政への転換が必ずしも十分に行われてこなかったのではないかとの御批判をいただいているわけでございます。また、金融業界との相互信頼に基づきましてきめ細やかな行政を進めていく姿勢が、ともすれば不透明な行政として批判されてきたということも事実でございます。  そのような御指摘を踏まえまして、今後の金融行政につきましては、金融機関と行政の間に一定の緊張感を保ち、また、自己責任原則の徹底と市場規律の十分な発揮を基軸とする透明性の高い行政を行っていくことが重要と考えております。
  146. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 要するに、大蔵省が過保護ママになっていたということなんですが、その裏腹に、大蔵省自体の支配の大きさ、支配する力の大きさというものが問題になってくるわけであります。  その中で私は二つのことを申し上げたいと思うのですが、大蔵省が非常に強く金融に対する支配、介入権を持つということに関連して、金融の専門性にどうも対応できなくなっているのではないかというのが一点。もう一つが、財政の論理が優先されて金融の中立性がゆがめられてはいないかという問題点が一つあると思います。  この二つの点のうち、まず金融の専門性についてお尋ねをしたいと思うのです。  大蔵省は、今のシステムによって金融の専門性に果たして対処し得る、そうお考えかどうか。これはいろいろな例があるわけでありますけれども、その点についてまずお伺いをしたいと思います。
  147. 西村吉正

    西村政府委員 金融というものが、昔の、お金を預かって貸すというだけではございませんで、世界的に非常に高度化、複雑化しているわけでございます。各金融機関もそういうものに対応すべく一生懸命やっておるわけでございますが、行政としてそのような金融の自由化、国際化、あるいは高度化、複雑化に対応できるかという点につきましては、私どもも常に研さんに努めてまいる必要があろうかと考えております。  大蔵省といたしましては、金融の自由化、国際化の進展に対応したこれからの新しい金融行政のあり方を検討するため、新しい金融行政のあり方について検討するプロジェクトチームを発足させたところでございますが、どのような金融行政がこれから必要であるのかということを真剣に考えてまいりたいと思います。
  148. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 ちょっと、わかったようなわからないような答弁なんですけれども一つは、大蔵省は、銀行局があるのですが、銀行局も実は主計局の支配下にあって主計局の人が行く、しかもしょっちゅうこれがかわっていく、その問題点というのが指摘をされてきているのですね。  兵庫銀行が危なくなって、そしてバブルの崩壊の影響が深刻化してきた九二年以降、四人の中小金融課長、特に担当するところになるわけですけれども、いらっしゃるわけですけれども、これは毎年かわっていくのですね。毎年、中小金融課長がかわる。四人かわって、そのうち三人が前のポストが主計局なのです。経験があって、銀行局からそのまま金融課長になったという人は一人にすぎない。こういうことが、やはり後手後手に回っていく原因になったのじゃないか。  要するに、大蔵省は、よその省庁に株としていろいろなポストを持っていますけれども大蔵省の中でも主計局優先というかそういうものが確立し過ぎちゃって、そこから人をやって、また戻していく、そういう武者修行的にポストを使っている。それがこの住専等、バブル崩壊後の対策が後手後手に回った一つじゃないかというようなことも言われているわけですけれども、こういう大蔵省の支配構造、そしてその中でも、主計局中心というのがかなり問題があるということが言われております。これについてどういうお考えをお持ちでしょうか。
  149. 久保亘

    久保国務大臣 五十嵐さんは、大蔵省のあり方について前々から御見識をいろいろな形で御発表になっておりまして、私も読ませていただいたりいたしております。  ただ、この非常に変化の激しい時代、しかも厳しい改革を迫られるこのときに、今大蔵省が主計の支配下にあるかないかとかいったような問題ではなくて、私は、大蔵行政、財政金融行政のあり方について、大蔵省の中に、今回は金融行政のあり方について検討するプロジェクトチームを設置をいたしましたけれども、大胆に改革を目指すプロジェクトチームの役割を果たすべきだと思っております。  もし現在までの組織や機能を防衛するためのプロジェクトチームであるならば、これは、今御指摘もございましたけれども日本の行政が求められている新しい時代の期待にこたえられない、このように考えておりまして、プロジェクトチームの発足に当たりましても、私の方から特に強く要請をいたしているところでございます。
  150. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 一般論はそれで結構なんですけれども、要するに、この問題を詰めていくと、そういうところに、省のため、局のためという考え方が行政本来のあり方をゆがめている面がかなり見つかりますよということを指摘をさせていただいているわけですね。  例えば、プラザ合意の後、そのプラザ合意を受けて、国際協調のもとに超低金利政策が続いていくわけですけれども、その間に日銀としてはこれを是正しようとした動きがあった。しかし、これを大蔵省政府によって押しとどめられたということがあちこちで指摘をされているわけですね。そして、八九年五月まで二年三カ月も史上最低の超低金利が続いた、これがバブルの発生、過剰流動性の発生につながった、こう言われているわけですね。  専門家である日銀に任せないで、むしろ財政側の理由あるいはその他の理由からこれがゆがめられた、いわゆる日銀の独立性を侵して、そして財政の論理が優先をされたためにこのような政策の失敗が起きたという指摘もかなり各方面からなされているわけですけれども大蔵省は、日銀の独立性強化をかつて反対をされておりました。今でもその考えに変わりはないのでしょうか。
  151. 西村吉正

    西村政府委員 一般論といたしまして、通貨価値の安定と信用制度の保持育成を図る観点から、中央銀行が独立性を保持することが重要であることは言うまでもないと考えております。これまでも、そのような考え方につきましては、大蔵省としても申し上げてきているところでございます。  現行法のもとで、公定歩合操作等の主要な金融政策は、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の所管事項として決定権が明確にされておりまして、私どもといたしまして、その独立性に十分配慮がなされていると考えております。
  152. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 だけれども、実は先ほど例を挙げましたように、かなり日銀の判断と違うものを押しつけられているという例がこのバブルの発生時もあるし、バブルが崩壊した後も金利の引き上げがおくれていった、後手後手に回ったというところにも、これはいろいろな財政面からの制約があった、あるいは圧力があったという説がかなり強いわけですね。  公定歩合の上げ下げは日銀の専管事項と言われていますけれども、日銀法によりますと、一般的な監督権がかなり幅広く政府に付与されておりまして、その影響を受けるというのは当然であります。予算と人事を政府に握られているというところから、かなり日銀の日本における独立性においては怪しいものがある。  あるいは各国においては、国債の操作、市場操作というものはかなり厳しく限定をされております。日本においても直接引き受けはできないことになっております、国債は。しかし、ある一定の時期を置けば、日本においては国債は間接的に日銀が引き受けてもいいような、いわば抜け道がつくられている。こういう甘い規定があるのは恐らく先進国で日本だけではないかと思うんですが、国債のいわば間接引き受けみたいなものは、これができるようになっているのも、実は財政の側の事情じゃないか。これもやはり日銀の独立性、日銀が日銀自体として判断をすれば、恐らくそういうことはできませんということになるんではないかなと思うんですが、日本における日銀の独立性にはかなり疑問がある。  こういった観点から、やはり私は、今のままで日銀の独立性が十分ある、配慮されているという局長答弁には承服をしかねるものでありますけれども、再度御答弁をいただきたいと思います。
  153. 西村吉正

    西村政府委員 国債の引き受けの問題の御指摘がございましたが、私ども理解といたしましては、戦前のいろいろな経験をも踏まえまして、戦後の制度におきましては、そのような点について遺憾のないような仕組みになっていると理解をしているところでございます。  なお、政府と中央銀行との関係につきましては、昭和三十二年から三年余りをかけまして金融制度調査会においても徹底した議論が行われたわけでございますが、当時はついに結論を得るに至らなかった経緯がございます。  中央銀行のあり方という問題は、どこの国におきましても経済、金融システムの根幹にかかわる問題であり、極めて慎重な検討が必要な課題であろうかと存じます。
  154. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 私どもも十分検討しているつもりであります。資料を集めましたけれども、山のようにこの問題に関する資料があるんですね。その多くの論文や著書、ジャーナリストの分析あるいは研究者の分析を見ると、やはり日本金融行政、金融システムのあり方について問題ありとしている。特に大蔵省のあり方については、古くから、私は解体論というものを生意気にも書きましたけれども、もう大昔からそのようなことは言われているんですね。それがちっとも改善をされてこなかった。そこに問題があると思います。私は、大蔵省の、このバブルの発生自体、そしてその処理の過ちに対してもっと率直な反省が必要かと思います。  我が党の代表である武村正義前大蔵大臣が、住専処理処理策を発表した直後、このように言っています。「バブル崩壊という過去十年間の経済・金融政策の中で、大蔵省が果たした役割を振り返りながら、たとえ結果であろうと、そこは素直に総括したいと思う。」バブルがどうやって生じてきたのか、その後始末がどのように行われたか、結果論であるかもしれないけれども、誤りがあるべきところは素直に総括をしていきたい、そういう趣旨で、私は、これがあるから、いわば国税を投入することもやむを得ないというふうな意見が出てくるんだろうと思うんですね。  ところが、けさからの論議を聞いていますと、大蔵省はまた無謬論に戻っちゃったのかなと。大蔵省は間違いがないんだ、間違いをしたことがないんだ、これからも、未来永劫間違わないんだとあたかも言っているような気がしてくるんですね。  私は先ほどのやりとりの中で、五十億は別にして、六千八百億は何のために入れるんだ、どうして入れなければいけないんだという話が出たとき、これは大蔵省が間違えたからというふうに答えるべきだろうと思うんですね。そこがこの問題を複雑にしているんですよ。  農林系が、おれのところは罪が薄い、あるいはないのになぜ負担を求められるのかと言ったときに、大蔵省が絡んで、母体行といわばぐるになって結果として金融機関をだましたような形になっている。だから問題は複雑化している。母体行側も早く住専処理したいと言ったときに、大蔵省が力でもって、いやもうちょっと待て、こう言われた。だから傷が拡大したんだ。そこで大蔵省責任というものが出てくるから、この問題が複雑化して話し合いがなかなかつかなくなっちゃったんじゃないですか。そこに、その責任のすき間に大蔵省の分として六千八百億は実は入り込んできた。結果としてそうなると思うんですね。  大蔵省責任を認めなければここは解決がつかないと私は思っているんですが、大蔵省には責任がないんだというような感じの御答弁があった。なぜ民間と民間との間に政府が介入しなければならなかったのかという、その一つにそれがあるんです。国民は知っているわけですよ。国民は、一番だれに責任があるんです史大蔵省、二番目は政治家、正しい判断ですよ、正しい判断だ。三番目が母体行だ、こう言っているわけです。国民の皆さんはかなりはっきりそのところを意識されている。  そこを踏まえて、反省の上に立って、私はこれからの金融システムの新しいつくり方というものが出てこなければならないと思うんですが、その点についてどう思われますでしょうか。
  155. 西村吉正

    西村政府委員 責任という言葉にはいろいろな意味があろうかと存じますけれども、六千八百億の税金をつぎ込まなければ解決が難しくなったということは、すなわち金融行政というものが大きな責任を感じなければいけないということは御指摘のとおりでございまして、私も、金融行政を担う大蔵省として、広い意味での責任を免れるものではないと思っておりますけれども、その場合の、母体行責任というような意味での責任という言葉とは少しまた違った意味合いを持っておろうかと存じます。  いずれにいたしましても、大蔵省として、例えばバブルの発生、崩壊の十年間の過程を通じまして、金融政策のみならず広く経済政策全体として、どのような反省に立たなければいけないかという問題につきましては、かねてから研究をしているところでもございまして、そういう研究の上に立って今後誤りなきを期してまいりたいと考えております。
  156. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 どうも不十分なように思いますね。  それから、先ほどから出ている、私もきょう聞こうと思っていたわけですけれども大和銀行ニューヨーク支店の事件です。これについて、津田元ニューヨーク支店長大和銀行支店長は、司法取引に応じて有罪を認めた上での四月四日の連邦地裁予備審理での証言として、これは、私は上司の指示と大蔵省の方針に従う以外にほとんど選択肢はなかったんです、こういうことを言っているわけですね。この発言は重いですよ。私は一概に、大蔵省が公表時期をおくらせるように指示した事実はありませんと言われて、はいそうですかということにはならないと思いますよ。これがアメリカに伝わったら、アメリカから、あなた出てきてください、事情聴取をさせてくださいと言われるんじゃないかなと私は思いますね。  私はやはり、あなたは具体的にどう言ったか、そのとおりに言ったかどうかは別にして、これは間接ですからね、だけれども、津田さんの上司であるその副頭取が、何にもないところでつくり話をして、大蔵省からこう言われたんだから隠しておけよと言うはずがないんですよ。相手は怖いんですから、大蔵省が。大蔵省が怖い民間の金融機関がそのように言うには、大蔵省に罪をかぶせようなどと思わない。むしろ、確かに何らかの形でそういう示唆を受けたから、だからそういう発言が出てくるんだと私は思います。それに類した発言もしていないのか。  それから、そのこと自体よりも今求められているのは、あなたがそのことを知ったら、大蔵省自体の責任としてアメリカに通報する、少なくともアメリカとの間の道義的な責任が強くあったということですよ。そのことについても、先ほどあなたは触れられませんでしたけれども、私はきちんと反省をしていただく必要があると思います。いかがでしょうか。
  157. 西村吉正

    西村政府委員 まず、津田被告と大蔵省とは事件当時から一度も接触はないということ、そして、津田被告の理解は、あくまでも大和銀行と津田被告との関係をもとにしたものであるということと承知をしております。  八月八日の会合につきましては、これまでも申し上げてきましたことに若干の補足をしつつ整理をいたしますと、まず、我が国の金融行政におきましては、従来から、従業員の不祥事のような銀行の内部管理上の問題につきましては、まず経営者責任において実態を解明いたしまして、その上で行政上の措置をとり、必要な場合には公表するという手順が踏まれてきているわけでございます。本件につきましても、大和銀行自身がまず事態のより的確な把握に努めたいとのことでございました。  調査に要する期間に関しましては、約三万枚の伝票を処理するためには約二カ月あるいはそれ以上かかるとのことでございました。また、決算のタイムリーディスクロージャーの観点から、十月の上、中旬に公表したいとのことでございました。私どもといたしましては、そのような考え方を踏まえまして、早急に事態の把握に努め、状況がわかり次第報告をしてほしいと述べたところでございます。  なお、米国に通報するという問題でございますが、そういう観点から通報がおくれたという問題に関しまして、いろいろな御指摘があることは今後の教訓にすべきと考えておりますが、私どもは、従来から、営業店の所在する国の政府に対しましてまず報告をするという立場当事者にあり、それと並行いたしまして政府としていかなる措置をとるべきか、このような姿勢で臨んできたところでございます。
  158. 五十嵐ふみひこ

    ○五十嵐(ふ)委員 そういう答弁は全く誠意がない。同じ答弁を二度続けて読み上げて、そういうふざけた態度で、反省していますなんていう、とても見られるわけがないのですよ。  これは八月八日の、そのあった当日に副頭取がニューヨークに飛んできてそう言ったという証言なのですから、これは証言に重みがあります。それはおかしいと思います。  これからまた、私は引き続き別の機会にやらせていただきますけれども、特に、大蔵省支配というものが護送船団方式をやめて新しい金融行政をつくり上げる上で大きな障害になっている、この問題について追及をさせていただくということを言明をさせていただきまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  159. 上原康助

    上原委員長 これにて五十嵐君の質疑は終了いたしました。  次に、佐々木陸海君。
  160. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 四月一日から再開されたこの予算委員会で、我が党は、住専問題で母体行の追加負担の問題を中心的に議論をしてまいりました。母体行は、住専に対してこれまでやってきたさまざまな事柄の社会的な責任からいって、三・五兆円の債権放棄にとどまらない追加の負担をすべきであるという点がほぼ共通の認識になってきたということが言えると思います。  私の質問に対して、橋本首相も母体行にみずからの努力を求めると言いましたし、大蔵大臣は繰り返し追加負担の必要を言い、そのために努力をしている、そして引き続き努力するということを答弁をされているわけであります。  今必要なこと、そして今重要なことは、これを言葉だけに終わらせるのか、それとも本当にきちんと具体化して国民の期待にこたえるか、これが今住専問題の中心的な焦点になっていると私は考えております。  母体行の追加負担が必要であり、可能であり、そして実現すべきだとなった以上、そしてそれを口にしてきた以上、当然それを具体化する責任が出てまいります。そのために国会や国会の各党派が知恵を出し合うのは当然ですけれども、具体化していく責任が何よりも政府の側にあると私は考えますが、それが当然だと考えますが、大蔵大臣、まずその点はいかがでしょうか。
  161. 久保亘

    久保国務大臣 連日繰り返し同じ御質問をいただいておりまして、私が別に特に繰り返して申し上げたというよりも、御質問がありますので繰り返しお答えをいたしているのでございます。私は、申し上げておりますことに誠実に取り組む政府責任を強く感じております。  ただ、この問題につきましては、佐々木さんも御承知のことだと思いますけれども、現在のところは法的に強制する手段が、まだ我々はこれを見出すことができないのであります。あくまでも協議によって、合意によって結論を生み出さなければなりません。そして、そのためにも、今私どもお願いをいたしております住専問題処理方策が、預金保険機構住専問題処理機構が一体になって行動が開始できるようにしていただくことは、大変重要になってきているのではないかと考えております。
  162. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 法的な根拠という問題についても、いつも同じことを言われているので同じことを言わざるを得ないのですが、もちろん私たちは、今の住専、母体行に対して追加負担を迫っていくその問題、何か狭い意味での法的な根拠というような問題ではなくて、その問題に関して言えば、母体行主義、母体行責任のルールというものはだれも否定できない問題としてこれまでも議論されてきたし、そしてそれが当たり前の根拠なんだという形で母体行に迫っていく。  もちろん、母体行に強制できるわけではありませんから、協議と合意によって実現するんだということはこちらも十分承知しているわけですけれども、その協議と合意によって母体行の責任を具体化する責任は、第一義的に大蔵大臣政府にあるんだということをまずお認めになるかどうかという点を確認をしておきたいということなんです。当たり前のことだと思いますけれども
  163. 久保亘

    久保国務大臣 先ほど、政府はこの問題を進めるために誠意を持って努力しなければならないということを御答弁を申し上げました。
  164. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 政府が具体化していく責任を持っている、またその責任に基づいて、大蔵大臣が何度も言っておられますように、銀行側とも今協議をされているというふうに理解をしておきたいと思いますが、それでよろしいですね。うなずいておられますからそう確認します。  ではお聞きしますけれども政府大蔵省は今、母体行側をどのような方針で指導し、あるいは交渉しているのか、交渉しようとしているのか。その方針、どんな方針なのかという点について明らかにしていただけませんか。
  165. 久保亘

    久保国務大臣 私どもといたしましては、将来六千八百五十億の財政支出がどのような形で返済されるかということについて、一つは、経済の、景気回復による税収の増加が考えられる。もう一つは、回収の努力がどこまで進むかということであろう。さらにもう一つの問題は、この住専問題に対する責任をそれぞれの当事者が十分に自覚することによって、みずからの体力に応じてその負担の責めを負う努力をすることであろう、このように考えております。  そういうことについて、私どもはいろいろな機会に話をし、また接触も試みておるのでありますが、今はこうして連日この委員会に拘束されておりますので、私も余り時間をたくさん持つことができません。
  166. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 今言われた中で、税収の増加とか回収の努力とかというのは、私は、母体行の責任に基づく追加負担というのと多少概念が違うんじゃないかと思うのですよ。  最後に言われました、責任自覚して体力に応じて応分の負担をしてもらう、これがまさに追加負担の重要な内容になると思うのですけれども、その問題については、四月一日の時点で大蔵大臣は、具体的に何千億出してくださいという要請をする段階にはないという答弁をされましたが、時間がないから、今もまだそういう段階ではなくて、向こうに検討してくれと言っている段階だということでよろしいのですか。
  167. 久保亘

    久保国務大臣 私の方からは、銀行協会の会長に対して、国会の審議の模様、非常に母体行、銀行に対して住専問題に対する厳しい責任を問う声がある、そのことに対して、今日まであなた方もいろいろと努力をされたことを私は認めないわけではないけれども、これらの声にこたえられるよう、さらにその責任負担について考えてほしいということを申し上げてございます。
  168. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 その場合に、母体行側が負担する額の問題についてはまだ何も出しておられないということなんだと思いますが、大蔵大臣の側の方針としては、母体行の体力に応じた負担というふうにさっき言われましたけれども、どの程度の負担をしてもらうという腹づもりで臨んでいるのか、そこもはっきりさせていただきたいと思うのです。
  169. 久保亘

    久保国務大臣 そのようなことは、今あなたに申し上げられる問題ではないと思います。
  170. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 なぜですか。
  171. 久保亘

    久保国務大臣 こういった問題は、協議のといいますか、相手方とのいろいろな話の途中の問題でありますから、今これだけ要求しているとか、そういう話を申し上げるような段階ではないということを申しているわけです。
  172. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 確かに、交渉事であるというのは私も事実だと思うのですが、しかし、六千八百五十億の問題でこれだけの国民的批判があり、これだけの国会での論議がある。政府がそういうもとで、その国民の声や国会の声を担って母体行側と交渉するという場合に、政府の方針を国会で明らかにし、審議して、政府も国会も一体になって母体行に追加負担を求めていく、これが公明正大で筋が通るし、そうしてこそ私は追加負担もきっちりしたものが実現できるというふうに考えたいと思うのです。  政府と銀行だけのいわば密室の協議で、どうしてこの追加負担をきっちりと実現できる保証があるのか。やはりこの問題は公明正大にやるべきだと思いますし、それからまた、この住専の問題というのは、負担を求められているのは、国民も今求められているわけでありまして、国民もその当事者の一人でありますから、政府が母体行とこの追加負担の問題について交渉をしているという際に、政府側がどういう立場で臨んでいるのか、きちんと、例えば一次ロス分まで負担しろとかあるいは二次ロス分まで負担しろとかいう立場で臨んでいるのかどうかということは当然知る権利がある。また、そういう点を本当に明らかにして、繰り返すようですけれども、国会も意思を統一して母体行に迫っていった方が実現の可能性も大きくなる。それが国民の期待にこたえる道だという点からいけば、交渉事だからということで一般論で、どういう腹で臨んでいくのかということは言えないというのは、私は筋が通らないと思うのです。  もう一度、大蔵大臣お答え願いたい。
  173. 久保亘

    久保国務大臣 あなたが先ほど、銀行とこういう話をやるのは政府責任だとおっしゃったのじゃなかったでしょうか。私は、そういうあなたの御意見もお聞きした上でお答えをしてきたつもりでありますが、それを密室の談合だと言われたのではどうしようもないわけでございます。  それで、国会の意見もまとめてということでございましたけれども、国会の御意見は、ぜひ国会や各党でお話し合いいただきたいと思います。私がそのことに口を差し挟む問題ではないのではなかろうかと思っております。
  174. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 私は先ほど、政府だけが責任を負っているなんて言いませんでした。国会でも、国会を構成する各会派でも、母体行の追加負担の問題は大いに知恵を出し合う必要がある。しかし、第一義的に銀行とかけ合ったりなんかする責任は、それは政府にあるし、政府がやっておられるじゃないか。だから、政府はその臨む方針を国会にも示して、お互いに論議もし合って、意思を統一してちゃんと銀行に当たったらいいじゃないか、だから政府の方針を示してもらいたいということを申し上げているわけであります。  大蔵大臣は五日の私の質問に対して、追加負担の限界をどこに置くかということは、必ずしも六千八百五十億にとどめる必要はない、可能な負担をしてもらえば、その負担によって国民の負担としては軽減される場合も出てくるということをおっしゃいましたが、これは、可能ならば六千八百五十億円にとどまらない追加負担を求めたいという腹づもりということに受けとめてよろしいでしょうか。
  175. 久保亘

    久保国務大臣 余り畳み込んでそう言われますと、私の方も構えなければならぬようになりますので、そうではなくて、自由に論議をさせていただきますならば、私としては、母体行がその責任をどう感ずるか、そしてどれだけの、そのことにこたえる体力を持っているか。これは、今銀行が一般的に持っている業務純益も非常に大きい、こういうことも数字の上で出てまいっております。そういうことも考えながら協議に応じて、合意せられる数字がどの辺になるのか、それを今私が、例えば一兆円であるとか幾らであるとかいうようなことを申し上げることは、逆にこれらの話し合いを難しくするものだと思っておりますので、ぜひその点は御理解を賜りたいと思います。
  176. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 六千八百五十億円にとどめる必要はない、そういう発言があったということを重ねて確認をしておきたいと思います。  いずれにしても、政府の、今そういう具体的な数字などは出せないにしても、しかし、大蔵大臣にお聞きしますけれども、母体行と今いろいろやっている、その交渉のまとまった結果というものは国会にきちんと報告される、それは間違いありませんね。
  177. 久保亘

    久保国務大臣 住専問題処理機構の問題と、母体行の追加すべき新たな措置がどのような協議としてまとまるかという問題とは一応切り離して御検討いただきたいと思っておりますが、将来はそれはつながる問題だと思っております。そういう意味では、もし母体行といいますか、銀行の側が協議に応じ、合意せられるような問題があれば、これは当然に報告せられるべきもの、公表せられなければならないものと考えております。
  178. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 ともかく、何らかのまとまったものを国会に報告するということは、これは当然の話でありまして、今交渉の過程だからいろいろなことは言えないということですけれども、それは当然報告をしていただくのが政府責任だと思うのです。  その問題にかかわって最後にお聞きしたいのですが、与党も政府も、今の予算を一刻も早く採決をしたい、通してほしいということを言っているわけですが、私は、この予算の論議を通じて、この中で母体行の追加負担の問題というのがこれだけ大きな声となってきて、それを母体行にも伝えているというのが大蔵大臣の繰り返しの答弁でありますから、この予算の審議中に、少なくともその結果なり、あるいはこういう方向で最終的に決着をつけるために努力するんだという内容は当然示さなければ、予算の最終的なきちんとした審議を保証するということにならないのじゃないかと思いますけれども、それを出してくるタイミングというものについては、大蔵大臣、どういうふうに考えていらっしゃるのでしょうか。
  179. 久保亘

    久保国務大臣 そこは少し私と見解の違うところでございます。  私は、一応この問題処理に関する方針、方策が決定をした段階で最終的に銀行側との話が進められるものと考えておりまして、今そのことがなければ決められないということになりますと、非常に難しいのではないかなという私なりの感じを持っております。
  180. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 それは全く筋が通らないということを私は申し上げたいと思うのです。見解の相違ということでは私は通らないと思うのです。やはり母体行の追加負担がいかほどになるかという問題で、六千八百五十億円の国民が反対している負担が結局最終的にどうなるかという問題が絡んでくるわけであります。  今の母体行に追加負担を求めるというその立場からいけば、この六千八百五十億円は最終的にはどうなるかということが不確定という状況に当然客観的に言えばなっているわけでありまして、母体行の追加負担を求めて、その結果がどうなってくるかということがわからないままに六千八百五十億円はともかく通してもらうんだ、通してしまうんだというのでは筋が通らない。やはり、母体行に追加負担を求めているその交渉、まだ継続中であるというならば、六千八百五十億円は一たんは削除して、そしてその結果に基づいてどうするかということが当然議論されなければならぬ、私はそういう状況であるということをはっきりと申し上げておきたいと思うのです。  いずれにしても、母体行の追加負担の問題で、政府責任を持ってそれに当たっている、交渉に当たっている、そしてその合意の結果というようなものは国会にも報告されるということはお認めになったわけですから、それを一刻も早くきっちりとしたものとして出していただいて、それを審議をした上で予算の可否を決めるということにしなければ筋が通らないし、私たちはそういうことを求めていきますし、またこの委員会としても、予算の審議中に追加負担についての何らかの具体策を政府から国会に提出するようにきっちりと求めていただきたいということを委員長にもお願いをいたしまして、私の質問を終わります。
  181. 上原康助

    上原委員長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。  次に、土肥隆一君。
  182. 土肥隆一

    土肥委員 市民リーグ・民改連の土肥隆一でございます。  きょうは、文部省に来ていただきまして、大臣にもおいでいただきまして、御質問させていただきます。  今、教育現場で学習障害児という問題が出ております。学習障害児というのは英語でラーニング・ディスアビリティーズと言うのですが、それを日本語に訳したのですけれども、ここにもまた障害児という言葉が出てまいりまして、非常に残念に思うのです。  ここに伊藤隆二さんという、神戸大学の教授から横浜市立大学の教授になられて、今引退しておられますが、私立の神奈川大学の方に行っていらっしゃいますが、「この子らに詫びる」という本を書かれまして、障害児と呼ぶのはやめようとおっしゃっています。この先生は、四十年間にわたって、かぎ括弧つきでありますけれども、「精神薄弱児」などの研究の権威者、教育の権威者でございます。多くの養護教諭を特に神戸大学を中心にしてお育てになった方でありますが、四十年間の研究の成果から、障害児と呼ぶのはやめよう、私はこの子らにわびるという本を書いていらっしゃるのです。  したがって、今回も学習障害児というのに非常に私は抵抗を感じるのでありますが、そういうお子さんたちがいるということもまた事実であります。  そして今、文部省はようやくこの「学習障害児」、かぎ括弧つきでありますけれども、LD児と呼ばせてください、LD児という子供さんたちに対する研究や調査が始まりまして、中間報告も出る段階になりまして、一定の成果を上げられているとは思いますが、平成四年の六月からスタートしたと私は考えておりますが、この調査研究協力者会議が開かれ、そして今LD児と呼ばれる子供の数は何人ぐらいいるのか、そして学校現場でどういう取り組みが行われているのか、ごく簡潔にお答えください。それから予算額、これまで費やされた予算額もあわせてお話しください。
  183. 遠山耕平

    ○遠山政府委員 お答え申し上げます。  学習障害に関する調査研究協力者会議でございますが、平成四年の六月からこれまでに二十回会議を開催しておりまして、その主な内容としましては、学習障害の定義でございますとか、該当児童生徒の実態把握の方法、それから指導計画の開発、それから学習上の困難の類型に応じた指導内容、方法、それから適切な教育の形態、こういうことを調査研究してきたわけでございますが、昨年の三月に中間報告が出たところでございます。  その中では、主として、学習障害の定義でございますとか、それから実態把握の方法、こういうものを中心に議論がされて中間まとめが出されたわけでございますので、実際の子供についての指導方法について、具体的にどうすればいいかということについてはまだ議論に入った段階でございまして、結論が最終的にまとまっている段階ではございません。  したがって、LD児がどれくらいいるかという数字につきましても、これは、調査研究協力校を小学校八校に依頼をして、そこの実態をもとに調査研究をやっておりますので、それを全国に及ぼすには余りにもまだ母数が少ないものですから、全国でどれぐらいLD児がいるのかというのはまだ推測できる段階に至っておりません。  予算総額は、これは平成四年から協力者会議が始まったわけでございますが、そのときは六百十九万五千円でございます。三年間、四、五、六と六百十九万五千円でございましたが、平成七年度に千百九十一万一千円に増額されておりまして、平成八年度にはそれが二千四百六十三万二千円というぐあいにさらに大幅に増額をされているところでございます。
  184. 土肥隆一

    土肥委員 一つ申し上げておきますけれども、厚生省が、一九九三年から精神薄弱という言葉を、どう呼ぶかということで、特に薄弱というようなことはいけないというので知的発達障害というふうに改めました。ここにもまた障害が出てくるのですね。  文部省のを見ますと、平成七年度の予算のときには学習困難児となっていますね。ことしになりましてまた学習障害児と出ておりますので、そして、ことしになって、この、いわば非常に見やすいというか初めてというか、「学習障害児等の理解に向けて」というパンフレットが出ました。  こういうことからも、障害とかいう言葉についてもよく御検討なさるようにお願いしたいと思うのです。やはり私は学習困難児の方がいいのじゃないかというふうに思っておりますが、省内での検討をお願いいたします。  さて、時間がありませんから、この平成七年度中間報告が出まして、そしてこれを全国の教育関係者に配るというリーフレットでございます。これの最大の特徴は、初めて学習障害の定義というものができました。この定義がされたのでありますから、これにのっとってLD児の子供たちへの方策が決まるかと思うのでありますが、どうも中身がはっきりしない。読んでみてもよくわからない。  LD児が発生するのは中枢神経系の何らかの機能障害があったということが一つと、それから学習障害はいろいろな複合的な障害だろうというふうに考えておられるようでありまして、直接関係はない。例えば視覚障害、ここも障害が出てきますけれども、視覚障害、聴覚障害、精神薄弱、情緒障害などと、それからその子供が置かれている環境や学校や地域社会まで取り上げまして、それが直接原因ではないけれども、そうした状況が要因とともに生じる可能性がある、こう読みましてもよくわからないのです。もうちょっとわかりやすく具体的に話してください。
  185. 遠山耕平

    ○遠山政府委員 お答え申し上げます。  このLD児についての原因とかそういうものは、まだ医学的にもあるいは心理学的にも教育学的にも解明されていない状況でございます。したがいまして、このLD児に関する調査研究協力者会議におきましてもいろいろ議論がございまして、とりあえずはこういう学習障害というのは、視覚障害あるいは聴覚障害などの状況とか、あるいは家庭、学校、地域社会などの環境的な要因が直接的な原因となるものではない、しかしそういうものと併存する可能性はあるということでございます。視覚障害とか聴覚障害あるいは精神薄弱、そういうものと、それからLD児の状態とがどちらが原因でどちらが結果である、そういうような因果関係はないんだ、ただ両方が併存することはあり得る、そういうことを言っているにすぎないわけでございます。
  186. 土肥隆一

    土肥委員 もう時間がないので、もっと突っ込んだ話をしたいのですけれども、例えば環境的な要因とか、家庭、学校、地域社会などと挙げられますと、一体地域社会の何がその子供にこういうLD児的な障害を与えたのかなんという議論を始めますと、これはやはり相当な議論になりますので、もうここはやめます。  時間が参りましたので、大臣にお聞きいたします。  平成四年から始まりまして、ことし平成八年、四年間たったわけでありますが、子供たちは刻一刻育っていくわけですね。そして、私がいろいろな方と話をしてみますと、大体三十万人ぐらいLD児の方がいるのではないかと言われている人もいます。これは、文部省ははっきり数字が出せないとおっしゃるので私の発言とさせていただきますが、これは子供を持っていらっしゃる家庭は、両親ともに非常な問題を刻一刻抱えているわけです。  ですから、ここまで中間報告まで出たのですから、その完成されたもの、原因がわからなくてもやはりこの子供たちに対して積極的にどういうアプローチをするかということをぜひとも考えていただかなければならない。文部大臣として、ぜひともここで行政に対して、文部省当局に対して急いで全国的なLD児対策を進めるように、その決意をお聞きして終わります。
  187. 奥田幹生

    ○奥田国務大臣 今先生はLD児、推定でおよそ三十万人という数字をお挙げになりましたが、私も、確かな数字ではございませんけれども、大体今小学生、中学生合わせますと一千三百万人ぐらいになるのですが、ちょっと欠ける、一千三百万を切れるようですけれども、それの一%ぐらいはLD児がいるのではなかろうかな、非常にこの問題と真剣に取り組んでいただいている先生方の中には、そういうことをおっしゃる方もいらっしゃいます。これはやはり大事な子供の成長期に差しさわりのある問題でございますから、ほっておくことはできません。  したがって、おっしゃるとおり今八つの学校で研究協力校をお願いしておりまして、これを継続しておりますので、今はまだ原因もはっきりつかみ切っておりませんから、さらにさらに実態の把握とあわせて原因の究明に、さらにまた今先生いみじくもおっしゃいました、この「教師のために」というパンフレットももうひとつわかりにくいよというお話でございましたが、これでいいのか、改善するところがあればどういうところをこのパンフも改めるべきか、総合的に勉強させて取り組んでまいりたいと思っております。
  188. 土肥隆一

    土肥委員 終わります。
  189. 上原康助

    上原委員長 これにて土肥君の質疑は終了いたしました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十五分散会