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江田委員 大蔵大臣、大変御苦労さんでございます。お疲れかと思いますが、よろしくお願いします。
平成八年度の
一般会計予算についての
質疑ですが、私は今回で四回目になりまして、今まで全部で三回三時間、四時間日に突入をしているわけですが、今回も住専の問題に限って質問をさせていただきます。
予算
委員会、しばらくとまっておりまして、久しぶりということになってしまいまして、これ自体大変遺憾なことだとは思いますが、しばらく時間があいておったので、議論の原点にちょっと戻って整理をしてみたいと思います。
景気の今の状況とか
国際社会の
日本を見る目とか、そういうものにかんがみ、不良債権をきっちり
処理をしなければいけない。それも、そんなに時間のゆとりがあるわけでもない。金融秩序をしっかりと維持していく、あるいは回復をしていく、あるいはこれまでの金融秩序の足らざるものはちゃんと再構築をしていく、そのようなことが必要である。これはもう当然私たちも
認識をしているわけで、そういう点について、別に
政府や与党の皆さんと
認識の違いがあるということではないと思うのです。
しかし、その不良債権の
処理の仕方について、やはりやっていいこと、いけないことというのがあるだろうというのが私たちの基本的な
考え方です。住専というものも、これももちろん住専のいろいろな個別の事情というものはありますが、しかし、どう言ってみても、住専が預貯金者がいない民間会社であるということ、これはやはり変わりないので、民間会社が経営破綻をした、そのときにどうするかということで、民間会社が経営破綻したときの
処理のルールというものがやはりあるのではないか。
ですから、以前に伺ったときに、たしか銀行
局長の答弁だったと思いますが、この
政府のスキームは私的整理である、そういうふうにお答えになっておる。私的整理というのは、これは破綻をした民間会社に債権債務の
関係を有している皆さんが集まって、そして互譲で合意をつくるんだと。ちゃんと合意でみんながまとまれば、それは私的自治ですから、その中のいろいろな事情をめぐって、ここがおかしいとかあそこがどうだとか、そこまで言わずに、それはそれで、私的整理はだれも文句を言いませんよ。
しかし、合意がまとまらないときには、これは最後は法律というものがありますよ、裁判所がありますよ。裁判所が入ってきて監督をし、管財人がその破綻をした民間会社に乗り込んでいって、理非曲直を明らかにしながら、透明な手法で、だれにでも説明できる、そういう内容で整理をしていく。そして、嫌でもあきらめるべきものはあきらめさせる、こういう法的
処理、これがあるじゃないか。その二つのものがあって、今度のこの
政府の案というのは私的整理なんだと。
私的整理だと、あくまで当事者の互譲による合意だ。しかし、そこに六千八百億円の穴があく。穴があくということは、つまり当事者だけでは合意が完結しない。それをどうするんですか。それを税金で穴埋めするというのが
政府案で、私たちは、それはルールに反するじゃないかと。
法治主義の国、法のもとの平等、あるいは憲法八十九条といったものもある。そういうような
日本のルールに反して、私的債務に税金を投入して穴埋めするということが許されるんだったら、
国民は皆、一体何をルールだと信頼して
経済活動をやっていっていいかわからなくなるじゃないですか。
そんなことが許されるんだったら、どんどん借りて借りて借りまくって、そして飲めや歌えの大騒ぎをやって、取り立てが来た、ああ、税金で払ってください、なに、一人二人じゃだめなのならみんなで渡れば怖くないと言うのかというようなことになったら、これは大変で、そんなことを許して、やれ景気だ、経済だ、金融秩序だと言っても始まらぬじゃないかというのが私たちの気持ちなんですね。
ですから私たちは、
我が国はそういう法治国家としての、あるいは自己責任の国としての、市場原理の国としてのルールを、この場合でもやはり大切にしなければならぬ。
そこで、破綻した民間会社の
処理、これは合意がまとまらないのなら法的
処理ですよというので、二月の下旬に「基本方針」というものをお出しをした。しかし、それだけでは具体的じゃありませんので、さらにもっと具体的やり方はどうなんだ、こういうことになりました。
二月の下旬に出したときには、法的手続でやるんだけれ
ども、倒産五法というのがあって、いろいろなメニューがありますよね。破産法もありますし、会社更生法もありますし、その他にもあります。いずれにしてもこういうものは管財人というものが任命をされて、裁判所の監督のもとに、管財人が会社に乗り込んでいっていろいろなことを明らかにしながら
処理をする。しかし、その管財人が、現行の法律サービスの供給
体制でいえばちょっとまだ手薄だろうというので、二月下旬のものでは、これを国家行政組織法三条の行政
委員会にして、例えば刑事訴追権まで付与する、つまり特別検察官のような権限まで付与するようなものをアイデアとして想定をしたのです。
さらに具体的にということになりますと、そこまで手を広げていろいろやっていると大変な作業になって、その間に住専の問題が通り過ぎてしまったら、これはアイデアとしてはよくても、実際の役に立つということにならないことになってしまってはいけない、事は急ぐといったこともあって、そういう行政
委員会方式よりも、もっと検討の項目の少ない、ある
意味で時間をかけずにさっと構想を立てることができる公社制度、特殊法人、これを管財人にして管財機能を補強しようじゃないかと。
刑事訴追権とまで言いますと、全体の刑事訴訟体系に大変な検討を加えなければいけないので、そこまで言わずに、告発義務という程度でとにかくおさめて、しかし基本は既存の倒産
関係の法律を活用するんだと。その既存の倒産
関係の法律としては、いろいろ検討の結果、会社更生法というのがいいという案をお出しをしたわけです。
ですから私たちは、基本は、民間会社が経営破綻した、そのときにどうするのか、合意ができなかったら法的
処理しかありません、そういう市民
社会の普通の法律、
我が国の基本的な法律を使う、そしてその中では会社更生法がいいと思っておる。しかし管財機能は補強する必要があるからというので、管財機能のところだけを強化をしているわけで、その他の点については別に既存の法律にそんな何も手を加えているわけではないのですね。
そういうことで、今、法治国家あるいは市場原理、あるいは自己責任、そういうものがしっかり守られる、何だか説明のつかない形で私的整理に税金を投入するということをやらない、そういう案を
考えて世に問うているわけでございます。
もちろん、まだ法案にしていませんし、今予算
委員会ですからここに出すという性質のものでもありませんから、これは今作業を進めている最中ですが、何か、きのう及びおとといですか、本
委員会で、与党の
委員の方々と大蔵大臣とのやりとりの中で、我々の
処理策について質問者と答弁者と両方で私たちの批判をされたようです。
私たちもまだ「具体的方針」という一枚紙を出している
段階ですから全部御理解いただくという
段階でもないかもしれませんが、しかし、会社更生法というものについて理解をしていただけないやりとりがあったような感じもいたします。
そこで本日は、そういうきのう、おとといのや
りとりで
お話しになっていることについての反論も含めて質問をしたいと思いますが、その前に私は、
政府案では住専の役員の皆さんに対する責任追及というのが十分できないんじゃないかということ。これは、どう質問してどう説明を聞いても、どうも、なるほど責任追及は完璧だというような理解にまで至らないので、そこのところをひとつもうちょっと詰めておきたいと思います。
誤解のないように言っておきますが、刑事責任の追及は、これは刑事責任を追及するそういうポジションにいる人たちがやれば、すなわち検察とかあるいは警察とかこういう皆さんがやれば、これは時効にかかっていない限りはちゃんとできるんですよね。ただ、時効の問題というのはありまして、今一九九六年の四月のきょうは三日ですから、五年の時効ということで
考えれば、一九九一年の四月の三日以前のものはもうきようで時効にかかる。日々時効で免れる人が出てきているわけですからこれは大変だと思いますが、まあそれはそれで、刑事責任の追及はできる。
問題は、民事責任の追及だと思うんですね。
国民の皆さんも、住専役員、これが大蔵省とか銀行とかいろいろ天下りや出向で来て、そして紹介融資などいいかげんな融資案件をろくろく、ろくろくといいますか担保余力の
調査も十分しないで貸し込んでいって、そして住専に穴をあけ、あげくの果て左前になって、さあ大変だというので退職金をもらって退職し、まあ逃げてしまっていると言うと言葉は悪いですけれ
ども、そういう皆さんに対してやはり、退職金も全部返してもらおうじゃないか、役員報酬、もらったものは全部返してもらおうじゃないか、そんなような声もよく聞くわけで、そういう民事責任の追及。
これは大蔵大臣も、地の果てまで追いかけるとおっしゃったときには、単に刑事責任の追及だけでなくて民事責任の追及のことも当然お
考えで言われておると思いますが、もちろんその民事責任の追及のことも含めて徹底してこれは追及をするという、以前のお言葉で言えば地の果てまで追いかける、そのお気持ちはこれは当然変わっておられないですよね。ちょっと確認させてください。