運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1996-02-27 第136回国会 衆議院 予算委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年二月二十七日(火曜日)     午前九時三十分開議 出席委員   委員長 上原 康助君    理事 桜井  新君 理事 近岡理一郎君    理事 深谷 隆司君 理事 保利 耕輔君    理事 今津  寛君 理事 草川 昭三君    理事 野田  毅君 理事 三野 優美君  理事 五十嵐ふみひこ君       相沢 英之君    伊藤 公介君       江藤 隆美君    小澤  潔君       越智 伊平君    越智 通雄君       大野 功統君    菊池福治郎君       後藤田正晴君    志賀  節君       七条  明君    鈴木 俊一君       高鳥  修君    谷川 和穗君       萩山 教嚴君    原田  憲君       村岡 兼造君    村山 達雄君       谷津 義男君    若林 正俊君       安倍 基雄君    愛野興一郎君       伊藤 達也君    石井 啓一君       石井  一君    石田 勝之君       川島  實君    左藤  恵君       須藤  浩君    谷口 隆義君       中野 寛成君    仲村 正治君       平田 米男君    前田 武志君       松岡滿壽男君    山口那津男君       山本 孝史君    今村  修君       緒方 克陽君    佐々木秀典君       坂上 富男君    田中 昭一君       細川 律夫君    枝野 幸男君       錦織  淳君    古堅 実吉君       松本 善明君    矢島 恒夫君       海江田万里君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  橋本龍太郎君         法 務 大 臣 長尾 立子君         外 務 大 臣 池田 行彦君         大 蔵 大 臣 久保  亘君         文 部 大 臣 奥田 幹生君         厚 生 大 臣 菅  直人君         農林水産大臣  大原 一三君         通商産業大臣  塚原 俊平君         自 治 大 臣 倉田 寛之君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)梶山 静六君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 中西 績介君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 臼井日出男君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      田中 秀征君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 鈴木 和美君  出席政府委員         内閣法制局長官 大森 政輔君         内閣法制局第一         部長      秋山  收君         人事院総裁   弥富啓之助君         人事院事務総局         職員局長    佐藤  信君         阪神・淡路復興         対策本部事務局         次長      生田 長人君         総務庁人事局長 池ノ内祐司君         総務庁行政管理         局長      陶山  晧君         防衛庁参事官  藤島 正之君         防衛庁防衛局長 秋山 昌廣君         防衛庁人事局長 大越 康弘君         防衛庁経理局長 佐藤  謙君         防衛施設庁長官 諸冨 増夫君         防衛施設庁総務         部長      大野 琢也君         防衛施設庁施設         部長      小澤  毅君         法務省刑事局長 原田 明夫君         外務省総合外交         政策局長    川島  裕君         外務省総合外交         政策局軍備管         理・科学審議官 河村 武和君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部長    朝海 和夫君         外務省アジア局         長       加藤 良三君         外務省北米局長 折田 正樹君         外務省条約局長 林   暘君         大蔵省主計局長 小村  武君         大蔵省銀行局保         険部長     福田  誠君         文部大臣官房長 佐藤 禎一君         文部省高等教育         局長      雨宮  忠君         厚生大臣官房総         務審議官    亀田 克彦君         厚生省保健医療         局長      松村 明仁君         厚生省薬務局長 荒賀 泰太君         農林水産大臣官         房長      高木 勇樹君         水産庁長官   東  久雄君         通商産業省機械         情報産業局長  渡辺  修君         海上保安庁次長 加藤  甫君         自治省財政局長 遠藤 安彦君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      堀口 一郎君     ————————————— 委員異動 二月二十七日  辞任         補欠選任   後藤田正晴君     七条  明君   志賀  節君     萩山 教嚴君   武藤 嘉文君     大野 功統君   村岡 兼造君     鈴木 俊一君   愛野興一郎君     須藤  浩君   笹川  堯君     石井  一君   平田 米男君     仲村 正治君   山田  宏君     中野 寛成君   佐々木秀典君     緒方 克陽君   錦織  淳君     枝野 幸男君   矢島 恒夫君     古堅 実吉君   海江田万里君     楢崎弥之助君 同日  辞任         補欠選任   大野 功統君     武藤 嘉文君   七条  明君     後藤田正晴君   鈴木 俊一君     村岡 兼造君   萩山 教嚴君     志賀  節君   石井  一君     笹川  堯君   須藤  浩君     愛野興一郎君   中野 寛成君     山本 孝史君   仲村 正治君     平田 米男君   緒方 克陽君     佐々木秀典君   枝野 幸男君     錦織  淳君   古堅 実吉君     矢島 恒夫君   楢崎弥之助君     海江田万里君 同日  辞任         補欠選任   山本 孝史君     山田  宏君     ————————————— 二月二十七日  平成八年度予算における住専処理経費削除に  関する請願志位和夫紹介)(第一四六号)  同(寺前巖紹介)(第一四七号)  同(東中光雄紹介)(第一六五号)  平成八年度予算における住専処理費削除に関す  る請願青山二三紹介)(第一六三号)  同(大野由利子紹介)(第一六四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  分科会設置に関する件  平成八年度一般会計予算  平成八年度特別会計予算  平成八年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 上原康助

    上原委員長 これより会議を開きます。  この際、分科会設置の件についてお諮りいたします。  平成八年度総予算審査のため、八個の分科会を設置することとし、分科会の区分は  第一分科会は、皇室費、国会、裁判所会計検   査院、内閣総理府一ただし経済企画庁、環   境庁国土庁を除く)並びに他の分科会の所   管以外の事項  第二分科会は、法務省外務省大蔵省所管  第三分科会は、文部省自治省所管  第四分科会は、厚生省労働省所管  第五分科会は、総理府一環境庁)、農林水産省所   管  第六分科会は、総理府経済企画庁)、通商産業   省所管  第七分科会は、運輸省、郵政省所管  第八分科会は、総理府国土庁)、建設省所管以上のとおりといたしたいと存じますが、これに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  3. 上原康助

    上原委員長 起立多数。よって、そのように決しました。  次に、分科会分科員の配置及び主査選任、また、委員異動に伴う分科員補欠選任並びに主査辞任及び補欠選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  4. 上原康助

    上原委員長 起立多数。よって、そのように決しました。  次いで、お諮りいたします。  分科会審査の際、最高裁判所当局から出席説明の要求がありました場合は、これを承認することとし、その取り扱いは、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  5. 上原康助

    上原委員長 起立多数。よって、そのように決しました。      ————◇—————
  6. 上原康助

    上原委員長 平成八年度一般会計予算平成八年度特別会計予算平成八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  本日は、外交安全保障問題等について集中審議を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大野功統君。
  7. 大野功統

    大野(功)委員 おはようございます。自由民主党の大野功統でございます。  私は、外交・安保問題について、総理大臣並びに関係大臣質問をさせていただくものであります。  まず、日米首脳会談でございますけれども、総理、本当に御苦労さまでございました。滞米時間わずか十九時間ということで日米間を駆け回ってこられた。これはもう大変な気力、体力が要ることでございまして、総理が一生懸命頑張っておられる姿を拝見しておりますと、私は、昨年のことでありますけれども、総理がまだ通産大臣のときにアメリカのUSTRのカンター代表とやり合っておられて、ちょうどカンターが竹刀を総理首元に突きつけて、それを莞爾としてほほ笑んでおられた。あの姿を拝見しておりますと、体を張って国を守るのだ、こういうイメージがわいてまいりまして、本当に尊敬しておるものでございます。  総理は出発前に、今回の訪米は個人的な信頼関係クリントン大統領と築いてくるのだ、こういうことをおっしゃっていましたけれども、ビル・リュウと呼び合う仲になったという報道がありましたけれども、どうですか、個人的信頼関係、築けたとお思いでしょうか。また、クリントン大統領は人間としてどのような方であると思われますか。  それから内容についても、安全保障問題それから沖縄問題等いろいろ成果が発揮されておりますけれども、私が特にすばらしいと思いましたのは経済問題、いわゆる半導体、フィルム、保険、航空問題、こういう細かな個別問題——細かとは申しませんけれども、個別問題について、橋本剣法とでも申しましょうか、魔剣をお使いになったのか秘剣をお使いになったのか、出てこないようにしてしまった。これはもう本当に私はすばらしいことだと思います。  私は、首脳会談で、例えばこういう個別問題を余り議論するのはどちらかというと好ましくないなと思っている者の一人でありますけれども、総理大臣は、首脳会談で個別問題を取り上げることについてどういうふうに思っておられるのか。  そしてもう一つ、これはもう、私は、今回の橋本総理訪米には百点満点を差し上げたい、こう思っているのでありますけれども、総理自身はどういうふうに評価されているか。まず、橋本クリントン会談について、以上のことをお尋ね申し上げます。
  8. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今回サンタモニカで行いました日米首脳会談、時間としてちょうど一時間ぐらいでありましたけれども、私は、クリントン大統領は非常に誠実に話されたと思っておりますし、同時に、率直に自分の気持ちを述べていただいたと思います。  そして、その中で、私の方から冒頭、三つメッセージという形であなたにきちんと伝えたい。それは日米関係の大切さであり、それはお万いが思うだけではなく、昨年の自動車協議のさたかに、EUあるいはアジア太平洋地域の友人の人たちから、その協議の結果、日米関係にひびを入れないようにということを非常に強く言われた。改めて、他の国々からも日米関係というものが非常に大切に位置づけられているということを痛感した。その土台に日米安全保障条約があり日米安保体制というものがあるということを十分私は認識しているつもりであり、それを国民に再確認をしていただく上でも、沖縄の問題というものに誠実に対応していただきたい、できるだけ弾力的に対応していただきたいということを申し上げ、それに対して、同様の感覚でお返事が返ってまいりました。  私は、全体を通じまして、そのほかにもさまざまな問題に触れていったわけでありますけれども、非常に誠実な対応、人柄という印象を受けて帰ってまいりました。同じような印象を与えていることを、私は心から願っております。そして、その意味で私は、率直に話し合える相手という印象を持ちましたし、その意味での信頼関係は築けたと思っております。  同時に、二つ目メッセージとして私が伝えたかったのは、個別の経済問題が存在していること自体は私は承知をしておりますけれども、そうした問題が、その問題の解決の困難さのために両国関係に傷をつけることは絶対に私は避けたい。そして、これに対する大統領の返答として、その意味では、個別問題に触れながら、よい解決が見出されることを望むという形だけで、議論に入らずに終わっております。  私は、これから先も経済問題というのは、往々にして、我々が求める求めないにかかわらず、テーマとしては大きく出てくることはあろうと思います。しかし、それを解決するに当たって、いたずらに紛糾させることではなく、できるだけ穏やかな形で議論が終始するようなことを望みますし、殊に、我が国自身が今規制緩和を進めていけば進めていくほど政府の関与の範囲は減るわけでありますから、むしろ民間の話し合いというものをできる限り政府として慫慂していく、そうした姿勢が双方ともに必要ではなかろうかと思っております。
  9. 大野功統

    大野(功)委員 個別問題に対する総理のお考えは十分わかりました。また、どうぞクリントン大統領との間に築かれました個人的な信頼関係、これはさらによき二国間関係をつくっていく上で大変大事なものでございます。よりよき日米関係のために御努力くださいますよう、お願い申し上げます。  総理は、施政方針演説の中で、自立的外交ということをおっしゃっています。自立した外交。  自立した外交というのは、ちょっと印象的に申し上げますと、何だか独立独歩でやっていくのかな、あるいはアメリカ離れをするのかな、ノーと言える日本をつくるのかな、こんな印象をちょっと受けるわけでございます。その辺が若干心配でございますけれども、改めて総理大臣の、これは恐らく総理自身の発想じゃないかと思うんですが、自立的外交について簡単に教えていただければありがたいと思います。
  10. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 これは、むしろ例を引いて申し上げた方が、私のイメージするものは御理解がいただけるかと思います。  私が申し上げたい外交における自立というのは、我々自身国際社会に受け入れられる理念を打ち出しながら、その理念に基づいてみずからのイニシアチブで行動していく、そしてそれが新しい国際秩序の構築に向けて積極的なあるいは創造的な役割を果たしていくということに尽きると思います。そしてまた、これは国家同士相互依存関係が非常に深まってきております今日の世界の中で、我が国の安全そして繁栄を確保するためにも最良の道だと考えております。  そうした場合の基本に、私は、日米関係が大切であるということは冒頭申し上げたとおりでありまして、これはあくまでも我が国基本だと思います。  しかし、例えば、昨年の日本が議長を務めましたAPECにおいて、その協調的自主的行動という方針を我々が打ち出しましたとき、当初、アメリカはこの提案を理解をいたしませんでした。アメリカだけではなく、この考え方に疑念を呈した国が幾つもあったことは事実であります。しかし、最終的に、アジアという地域を考え、アジア太平洋地域というものを考えたときに、それぞれがみずからのアイデアを打ち出す、他の国がそれをサポートしていく、そういうやり方の方が望ましいということは最終的に合意になりました。私は、これは一つの例であると思います。  そして、将来を考えますとき、二十一世紀になりますと、アジア太平洋地域におけるエネルギーの消費は、人口の急増そして工業の発展とともに急増いたします。当然のことながら、食糧にも我々は今から懸念を払わなければなりません。こうした問題に警鐘を鳴らし、各国が共同してこうした問題に思いをめぐらしていく、そんな素地を昨年私どもはつくり出したわけであります。こうしたことも一つの例として申し上げられるかと存じます。
  11. 大野功統

    大野(功)委員 みずからのイニシアチブで積極的にやっていこう、総理のお考え、十分わかりました。  しかし、そのメッセージというのは、外国へは英語で伝わっていくわけであります。外国語で伝わっていくわけであります。自立した外交自立的外交というのは、どのように英語に訳されているのか、外務省、ちょっと説明してください。
  12. 川島裕

    川島政府委員 お答え申し上げます。  プロアクティブアプローチという英訳をしております。これは現代語でございまして、反対の言葉が例えばリアクティブで、これだと状況対応型でございます。プロアクティブというのは、むしろ積極的に行動する、こういう意味言葉でございます。  在外及び東京におきまして、外国マスコミ等にも全部これで説明いたしまして、理解を得ているという印象でございます。
  13. 大野功統

    大野(功)委員 今伺いまして、安心をいたしました。  ところで、積極的にイニシアチブをとってやっていくということになりますと、どうしても次に御質問をさせていただきたいのは、日本国連安保理事会常任理事国入りの問題でございます。  ことしは十一月に非常任理事国選挙がありまして、日本アジア・グループの改選議席一つにつきインドと争っている、こういう状況だと思いますけれども、これまで非常任理事国入りは一生懸命頑張ってやれと、ただ常任理事国入りの問題が出てまいりますとにわかに何か懐疑論が出てきた、こういう状況であります。  これは、会社に入って一生懸命頑張って平取ぐらいまではやっていけ、ただ常務とか専務にはなるのは責任が重過ぎるから余り頑張るな、こういうようなことで、極めておかしな議論だと思いますし、また、みんなにやれと頼まれればやりますよ、こういう議論もありますけれども、これも町内会の会長の選挙じゃありませんから何となくおかしい。  そういう意味で、総理にお伺いしたいのは、今の自立的外交という考え方に照らして、この常任理事国入りを積極的に進めていくのか、それとも推されればやるという感じなのか。そこのところを、これは聞くまでもないことかもしれませんけれども、お教えいただきたいと思います。
  14. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 最近の世論調査を見ましても、国民のこの問題についての御理解というものは相当進んでいると承知をいたしております。我が国常任理事国入りの立場というものは、この連立政権が発足して以来、国連総会における演説などにおいて、憲法が禁ずる武力の行使は行わないという基本的な考え方のもとに、多くの国々賛同を得て常任理事国として責任を果たす用意があるという言葉に尽きております。  そして、今議員お触れになりましたけれども、一方に非常任理事国改選の問題があり、また国連改革全体の中で私は多少危惧しておりますのは、どちらかというと財政の問題が先行し過ぎまして他の問題、これは社会経済、安保理ともでありますけれども、必ずしも作業が順調に進んでいるように見えない部分がございます。そうした中で、やはり政府としてはこの連立政権の三党合意というものを踏まえながら、より多くの国々にこの期間に賛同を得ること、そして国民の皆様の一層の御理解を得て進んでいきたい、そのように考えております。
  15. 大野功統

    大野(功)委員 次に、アジア欧州サミット、三月一日、二日にあると伺っておりますけれども、クリントン大統領と会談されて、トンボ返りで帰ってこられて、すぐまたバンコクへ行かれる、大変御苦労さまなことでございます。今までアメリカアジアというのは接点があったわけでございますが、ヨーロッパアジアというのは余り接点がなかったような気もいたします。  私は、ヨーロッパの物すごくすばらしいところというのは、やはり戦後、一国平和主義を捨てて、みんなで一緒になってドイツの脅威を抑えていこう、そしてそれに成功したことだと思います。アジアは、どちらかというと各国ばらばらなところがあって、共通性がないところがあります。みんなアメリカに向かっておりますけれども、ただ、それはまさに丸の内に勤めているサラリーマンのようなもので、ベッドタウンではお互いに余りつき合っていない、こういう状態もあるかと思います。  今、今度のアジア欧州サミットで一番大事なことは、そういうヨーロッパのみんなでやっていこう、プラスサムにしていこう、アジアのゼロサムじゃなくて、プラスサムにしていこうということじゃないか、私はこのように思っておりますが、まず外務大臣に、今回のアジア欧州サミット意義、これはどこにあるのか、そしてアジアは何を日本に期待しているのか、この点についてお伺いし、その後総理大臣に、総理はこのアジア欧州サミットで何を訴えてきたいか、この点をお伺いしたいと思います。
  16. 池田行彦

    池田国務大臣 いわゆるASEM会合でございますが、来月の一日、二日を中心にいたしまして、首脳会合はその前の二十九日から始まるわけでございます。  まず、この意義いかん、そしてまた日本はそこで何を主張するかという御質問でございますけれども、今回は、初めて開かれる、アジアの十カ国、日中韓とそれからASEAN七カ国、それとヨーロッパ側からはEUに加盟しております十五カ国とそうしてまたEU委員会そのもの、その首脳が一堂に会するという初めての会合でございます。そういった意味では、両地域間の包括的な、また新しい建設的なパートナーシップというものを構築する、そのことにまず意義があるんだ、こう考えております。  そして、御承知のとおり、これからの国際社会を展望してまいります場合に、アジアヨーロッパとそして北米、こういったところがその大きな役割を期待されるわけでございますが、この三つの中の関係がどうかと申しますと、今回のASEMの構想を打ち出しましたASEANの言い方をかりますと、この三つの中でアジアヨーロッパという関係が欠落しているリンクではないか、こういうことを言っております。そういった意味で、アジア欧州間の関係を一層幅の広いものにしていくというのがその最大の意義であるというふうに考えております。  今回は初回の会合でございますので、先ほど申しましたような首脳間の共通認識、今申しましたようなアジアヨーロッパの間の幅広い関係をつくっていく、それについて共通認識をつくっていくということがまず大切だと思います。  そうして、先ほど委員おっしゃいました、ヨーロッパの方は一緒に手を携えて事に当たっていこう、そうしてプラスサム社会をつくっていこう、こういう姿になっているのに対して、どうもアジアはばらばらではないか、そういうことをおっしゃいました。  これはもう御承知のとおり、経済社会のいろんな発展段階の違いだとか、またいろいろな体制問題等々ございます。そういった要因もあるわけでございますけれども、今日アジアが全体として大きく発展している、二十一世紀に向かっての世界の成長の中心である、こんなことを考えますと、アジアにおいてもプラスサム社会、そういうものを目指していかなくちゃいけない、このような御指摘は私も共鳴するところでございますが、それは、今回の会合で直ちにどういつだ枠組みをつくるというんじゃなくて、まず共通認識をつくり、そうして将来に向かって進めていこうということでございます。  恐らく、今回限りではなく、第二回、またその先というお話も今回の首脳間で話し合われると思います。そういったときに、二回目に一体どういうことをやっていくのか、それに向かってどういう準備を進めていくかという点につきまして、我が国といたしましても、経済の面あるいは文化の面、政治の面、いろんな面でいろんなアイデアも出していき、今回の第一回の会合をフォローアップできるような、そうしてまた、それが将来につながっていくような基本的な構想やアイデアについても提案をしてまいりたい、こう思う次第でございます。  それがまた日本役割でございますし、さらにもう一つ申しますと、先ほど言いました欠落しているリンクと申しましょうか、比較的希薄な関係アジアヨーロッパ関係でございますが、その中で、我が国は従来からヨーロッパとも非常に幅の広い、また深い関係を持っているわけでございます。そういったことを、我が国だけではなくて、アジアの諸国のためにも、アジア全域のためにも生かしていく、そうしてこのアジアヨーロッパのつながりを幅広いものにしていくという面でそれを役立てていくというのも我が国役割でないかな、こんなふうに考える次第でございます。
  17. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今外務大臣が述べられたことで私は要点は尽きておると思います。  ただ私は、今回のアジアEU会合というものを通産大臣としての立場から見ておりましたときにも、この首脳が一堂に会し、アジアEU諸国の首脳が対等の話し合いの場を持つ初めての場所、それ自体が非常に大きな意義だ、そのように考えておりました。そして、例えば米欧、米・アジア、あるいはASEANを含めまして北東アジア地域と申してもいいかもしれません、その間には常に対話のリンクがありましたけれども、二国間は別として、北東アジアを中心としたアジアEUという関係は非常に希薄でありましたろうし、これは投資等の面でも必ずしもスムーズなものだったとは言えません。そうなりますと、この場所で首脳同士の対話が始まり、それが経済にも、政治のレベルにも、あるいは安全保障等につきましても自由な議論首脳同士が交わすということは、それ自体が非常に大きな意義だと思っております。  そして、その中における日本役割としては、従来からその双方と対話を持ってきた立場として、幾つかの注意すべき問題点でせっかくの会合がとげとげしいものにならないように、そして二度、三度と対話が続いていく状況をつくり出すために努力することが私の役割ではなかろうか、そのようにみずからに言い聞かせております。
  18. 大野功統

    大野(功)委員 アジア欧州サミットにおきまして、各国首脳との間に確固たる信頼関係を築いてくださいますようお願い申し上げます。  それで次に、日米安保問題についてお尋ねを申し上げたいのでありますけれども、今回の日米サミットにおきましても、日米関係の土台は安保体制だ、こういうことをはっきり確認されていらっしゃるわけであります。  ただ、前の国防次官補、ナイ教授でございますが、ナイ教授のリポートには、日米安保というのはアジア太平洋地域の安全と平和、繁栄にとって極めて重要である、こういう発言ないし報告があります。  このことは、安保条約というのは物すごく広がりを見せてきた。アジア太平洋地域、これまでは極東といいますと、第六条、極東条項、こういうことがありましたけれども、広がりを見せてきた。そして、その広がりを見せたところで考えてみますと、そのために日本が米軍に基地を提供している。こうなりますと、どうもアジア太平洋地域においては、日本アメリカというのはアジア太平洋地域の平和と安全を守るための共同責任者じゃないんだろうか。駐留米軍の経費の七割以上を日本が支払っているわけでありますから、そういう意味でも、対等のパートナーじゃないか、こういう認識が生まれて当然なわけでありますけれども、そういう議論を、さきに、二月上旬でございますが、与党の沖縄問題・安全保障問題調査団の一員として私アメリカへ参りまして、いろいろな方にぶつけてみますと、いやいや対等と言うのは言い過ぎである、より対等のパートナーと言うべきじゃないかとか、あるいはアルティメットパートナーと言うべきじゃないか、究極のパートナーと言うべきじゃないかとか、あるいは最近の米国の東アジア太平洋安全保障戦略という報告書を見ますと、当然のパートナー、ナチュラルパートナー、こういうふうに書いてあるわけであります。  私は、日米関係が一方的に、片務的にアメリカ日本が守ってもらっている、こういう点はありますけれども、やはりそれを超えて、共通、共同でアジア太平洋地域の安定に貢献しているんだ、こういう広がりを見せてきたことが冷戦後の新しい意味づけかなとも思うのでありますけれども、総理にお尋ね申し上げたいのは、安保というのは重要である、それはもう本当にそのとおりであります。重要性については確認、再確認、当然であります。しかし、意義づけとなりますとやはり新しい定義が出てくるのかなという気がいたしますので、総理に、冷戦後の安保の意義づけをどうお考えになっていらっしゃるか、それから、自立的外交という観点から今の日米関係、今私若干申し上げましたけれども、日米関係をどう名づければ一番いいのかな、こういう点についてお考えを例えれば幸せでございます。
  19. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 もう私が申し上げるまでもなく、日米両国がよりよい関係を今後も保ち続けること、これは冷戦終結の後におきましても、私は、アジア太平洋という限定された地域だけではなく、本当に世界全体の平和と繁栄にとって不可欠なものだと思います。それは先ほど、自動車協議の際の各国の反応で申し上げたとおりでありまして、その土台として日米安全保障条約が存在するということについては議員も全く御異論のないものだと思います。  そしてこれは、確かに冷戦終結の後におきましても、東アジアにおきまして、また国際的にもさまざまな不安定要因を抱えております中で、我が国の安全の確保に非常に大切なものであると同時に、この米軍の存在というものはアジア太平洋地域における一つの安定を形づくるその基盤の役割はなしておると思います。そして私は、それは必ずしも今に始まったことだとは思いません。しかし、むしろ冷戦というものが終結した結果、その米軍の存在というものがアジア太平洋地域に与える安定というものがより大きくクローズアップされてきた。そして、改めてその必要性というものが認識されてきたという意味では、世間が見る目の方が変わってきた、中身が変化をしたのではないと私は基本的に思うのです。  ですから、これから先を考えましても、私は、日米関係というものは日本外交の基軸に据えていくべきものであり、より深くしていく必要のあるものでありますし、時代の移り変わりの中でさまざまな変化はあり得ましても、日米安保体制というものを堅持していくというその基本、そしてこれを円滑かつ効果的な運用に努めていくということ、そしてその中で、日本もみずから適切なイニシアチブを発揮しながら、政治の分野でも、安全保障の分野でも、経済の分野でも、さらに全地球的な協力関係など非常に幅の広い分野で両国の関係というものをより深いものとしていく努力、これが我々に求められているものであると思います。そして、そんな思いを持って首脳会談にも臨み、帰国をいたしました。
  20. 大野功統

    大野(功)委員 日米安保の中身は変わらないけれども世間が見る目が変わってきている、こういう大変わかりやすいお話でありますけれども、それにしても、やはり日米安保体制というのが広がりを見せてきた、アジア太平洋地域の安全、平和、繁栄のために必要である、こういう議論はあるわけでありますので、そういう見方からしますと、これは例えば日米安保条約の六条で、アジア太平洋地域の安全と平和のために基地、施設を提供する、こういう議論はないわけでありますから、やはり私はそれだけアメリカと対等の立場で議論をしていっていいんじゃないか、こういうふうに思うわけであります。  そういう観点からいたしますと、三つの疑問がわいてくるのでありますけれども、その第一は、在日米駐留軍の兵力数とかあるいは兵力構成について、これまでは恐らくそういう問題は両国政府間で話し合っておられなかったと思いますけれども、これからもう少し率直に話し合っていいんじゃないか、こんな気もするわけであります。この問題は沖縄の基地問題とも関係してくるわけでありますけれども、まずそういう疑問がわいてくる。  それからもう一つは、地位協定についてももっともっと話し合っていいんじゃないか、こういう感じもしてまいります。そして、そのかわり、日本もやはり責任を明確にしていく。こういう場合には日本としてきちっとこういうことをやるんだと、責任を明確にしていく、これが私は橋本総理の言われる自立的外交にそぐうことだと思っております。その三点、外務大臣にお尋ね申し上げたいと思います。
  21. 池田行彦

    池田国務大臣 新しい国際情勢のもとでの日米関係、とりわけ日米安保体制の重要性というものにつきましては、先ほど総理から御答弁あったとおりでございますが、そうなりますと、今三点御質問になりましたけれども、そういった点について従来以上に日米間で話をすべきではないか、日本としてもいろいろ申し上げることは申し上げるべきではないか、そういったことでございますが、まずこの地域、とりわけ日本における駐留米軍の水準いかんという点でございます。  これにつきましては、私どもも従来からも全く話し合っていないというわけではございません。この駐留米軍というのは、米国が日米安保条約上果たさなくてはいけない役割、負っている義務と言っていいと思いますが、それを果たすためにどういうふうなことを米国としてしなくちゃいけないか、その一環として一定水準の米軍を我が国に駐留させる、こういうことになっているわけでございますから、当然我が国としても、米国としての条約の義務を果たしていく体制というものが適切であるかどうかということについては関心を持っているわけでございます。  ただ、そういったことでございますので、このレベルについてもその時々の、その時代時代の我が国を取り巻く安全保障環境、これによって変化し得るものである、また、いろいろ軍事面その他の技術の上での変化によってもそれは変わり得るものだということは、従来から日米両当局ともに折に触れて申し上げてきたところでございます。  そういったことを前提にいたしまして、私どもは、現在の段階、現在の国際情勢、安全保障環境等から見まして、今、日本に大体四万七千というレベルのプレゼンスを米国が維持しようと言っておられるのは、アメリカの責務、役割を果たしていく上で適切な水準であるというふうには我が国としても考えておる、こういうことでございます。また、将来において大きく環境が変わってくれば、またその段階でいろいろお話をしていくことはあろうか、こういうふうに考える次第でございます。  それから、二番目に地位協定の問題でございますが、この問題につきましては、特に昨年、沖縄でああいうまことに遺憾な、痛ましい事件がございまして、いろいろクローズアップされた点がございます。しかし、そのときに取り上げられました問題だけではなくて、やはり米軍の駐留に伴ういろいろな関係について、協定の実行上、運用上、県民、住民の皆様方の暮らしとの関連で調整しなくちゃいかぬ問題がいろいろあることは事実でございます。そういった問題については一つ一つ現実的に解決していこうということで、現在もいろいろな機関で、とりわけ特別行動委員会、SACOと申しておりますが、そこで今優先的な課題として精力的にやっておりまして、解決できるものから早期に一つ一つやっていこうということでございます。そういった意味で現実的に解決を図ってまいりたい、こういうふうに考えております。  そして第三点として、そういったことを考えていくならば我が国自身責任も明確化していかなくちゃならないのではないか、その御指摘は私どももそのとおりに考えている次第でございます。
  22. 大野功統

    大野(功)委員 今の三点目でございますけれども、これは私は今一番日本として取り組んでいかなきゃいけない問題じゃないか。兵力数の問題をオープンに話し合う。しかし、これはまた話し合った結果別のメッセージが発生する可能性がありますから、本当に慎重にやっていかなきゃいけないということは当然でありますけれども、今早速やらなきゃいけないのは、いざというときの我が国責任と行動、これを明確にしていかなきゃいけない。もう言うまでもないことであります。  例えば朝鮮半島で紛争が起こった場合、六条協議どうするんだ、あるいは難民の問題どうするんだ、海上からの作戦行動をどうするんだ、海上封鎖の問題どうかかわっていくんだ、いろいろな問題があるけれども、これに対してはきちっとしたマニュアルもなければ何もない。こういう状態では私はいけないと思います。  それから中台間、これは今本当にアメリカが心配していることであります。総理もクリントンとこの中台問題を話し合ったと思いますけれども、この問題でも、台湾海峡というのは西太平洋における重要なシーレーンでありますし、また、中台間で紛争が起こりますと東アジアの軍事バランスが崩れてくる、当然のことであります。だから大変な問題でありますが、一体台湾で紛争が起こった場合に日本はどうするんだ。仮に朝鮮半島で紛争が起こって、若いアメリカの兵士が血を流している、日本が手をこまねいて何もしないで黙っている。  今でも、例えばアメリカ大統領候補のブキャナンは、自分が大統領になったら安保条約を廃棄するというような発言をしているぐらいでありますから、これはもう直ちに安保条約反対、廃棄、こういう状態になることは火を見るより明らかだ、こういうふうに感じるのでありますが、こういう情勢をどういうふうに、簡単で結構ですが、朝鮮半島の情勢あるいは中台間の情勢、これに対してどういう心構えを持っているのか、この辺を簡単に御説明いただければと思います。
  23. 池田行彦

    池田国務大臣 中台間あるいは朝鮮半島の情勢をどういうふうに認識しているかという御質問でございますけれども、御承知のとおり、今、台湾海峡の関係で中台間にいろいろ緊張が高まるんじゃないか、そういったことが各方面で心配をされておるところでございます。  現在の情勢をどう見るかでございますが、御承知のとおり、台湾で大きな選挙を控えている、そういうこともあるいは念頭に置いてではないかと見る向きが多うございますけれども、中国の側で大規模な軍事演習が予定されておるというふうなことでございますが、いろんな心配される向きがございますけれども、私どもといたしましては、現在の情勢が直ちに武力衝突に結びつく、そういった差し迫った状態にはこれはないんだ、こういうふうに考えております。  しかしながら、基本的にこの地域の緊張が高まるということは、我が国も含めまして、その周辺地域にとっても極めて重大な関心事でもございますので、極力そのような緊張の高まりを和らげてまいりたい、そのような希望を我々が持っているのは事実でございます。  基本的には、これは両当事者の自制した、非常に抑制した姿勢によってそういうふうな状況を、緊張の和らぎをもたらされるのがそれは適切だと思うわけでございますが、我が国といたしましても、先ほど申しましたような立場で、非常に深い関心を持っておりますので、そのような我が国の姿勢というものは、立場というものは、いろいろな機会に当事者に伝わるようにしておるわけでございまして、私も先般、プーケットで銭其シン中国外務大臣とお目にかかりました際にも、我が国としてのそのような考え方、立場というものをお伝えした次第でございます。これはほかの、例えば米国を初めとするこの地域の動向に重大な関心を持つ国もそれぞれにそのようなことをしておるというふうに理解しております。  それから朝鮮半島の方でございますが、御承知のとおり、いっとき南北対話等ということもございましたけれども、ここ数年、そういうふうな動きがとまっております。そして、やはり三十八度線を挟みまして軍事的な対峙ということも続いているわけでございます。  また、北朝鮮の情勢については、状況につきましては、なかなか的確なところがつかみにくい国ではございますけれども、政治的な面では、狭い政治の面でとらえますと、現在の指導体制に対抗するような力が、勢力が出てきているわけではない。そういうことでは一応相対的な、その狭い世界での安定性はあるのかなと言われますけれども、その基礎になります経済社会状況を見ますと、食糧の問題にいたしましても、あるいはエネルギーの問題にしましても、いろんな面で非常な困窮した状態にあるということが言われておるわけでございます。  にもかかわらず、非常にかたい、ああいった政治体制、またそれを軍事面でも従来の体制をずっと維持しているということでございますので、さあ、これをどういうふうに解決していくか、非常に頭の痛いところでございますが、我々としては、やはり南北対話というものがその中心となってこの情勢を打開していくべきであろう。我が国としてはそういうことをよく念頭に置きながら、韓国とも連携をとり、そういったことに資するような動きをしていくのかな、こんなふうに考えている次第でございます。
  24. 大野功統

    大野(功)委員 そこで具体的に、アメリカとの具体的な協力でございますけれども、これは昭和五十三年、今から約二十年前に日米防衛協力のためのガイドライン、指針ができております。新しい防衛大綱のもとで、若干手直しをしなければいけない部分ももちろんありますけれども、おおむねこれはよくできていると私は思っております。ただ、難を言えば、例えば前提条件として、事前協議に関する諸問題は研究もしなければ協議もしない。これは、今まさに外務大臣、この事前協議に関する協議や研究をするべきではないでしょうか。  それからもう一つ、例えば「侵略を未然に防止するための態勢」でありますけれども、これは、例えば研究するのみならず実行に移せるようにマニュアル化していかなければいけないのではないか。この辺、防衛庁長官にお伺いしたいと思います。  それから、「日本に対する武力攻撃に際しての対処行動」というところがありますけれども、これもやはり段階ごとにアラーム態勢をつくっていって、これを研究だけではなくて具体的なマニュアルにしていかなければどうしようもないのではないか、こんな感じがするわけであります。  また、もう一つ指摘申し上げたいのは、例えば最後のところでありますけれども、「米軍による自衛隊の基地の共同使用その他の便宜供与のあり方に関する研究」と書いてあります。これは、「日本以外の極東における事態で日本の安全に重要な影響を与える場合の日米間の協力」の項目でありますけれども、この点は外務大臣、今どのような研究がなされているのか。  以上四問になりますけれども、外務大臣それから防衛庁長官にお答えいただきたいと思います。
  25. 折田正樹

    ○折田政府委員 四項目御質問をいただきましたけれども、私はそのうちの一番最初の点と最後の点をお答えさせていただきます。  第一の点、事前協議に関する問題、これは研究の対象にすべきではないかという御主張だと思います。委員御指摘のとおり、昭和五十三年の日米防衛協力の指針におきましては、研究の前提条件として、事前協議に関する諸問題を研究協議の対象とはしないということにしていることはそのとおりでございます。  事前協議につきましては、御承知のように、合衆国軍隊の配置の重要な変更の場合、それから同軍隊の装備の重要な変更の場合、それから米軍の戦闘作戦行動のための基地としての施設・区域の使用の問題、これが事前協議の対象になるわけでございますが、仮にアメリカ側が事前協議をしてきた場合はどうするかということでございますけれども、これに対する日本政府基本的な対応は、自主的に判断をして諾否を決定するということでございまして、日本の自主的判断によるということなものですから、日米間でその問題を研究するようなたぐいのものではないのだろうということで研究対象から外れているという趣旨でございます。  それから、日米防衛協力指針の第三項、日本以外の極東における事態で日本の安全に重要な影響を与える場合の日米協力でございますが、これまで外務省、防衛庁が中心となって研究を行ってきているわけでございますが、まだ残念ながら結論を得るには至っておりませんが、委員御指摘のように、今度新防衛大綱ができまして、その中でも、我が国周辺地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が発生した場合に、憲法及び関係法令に従い、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を図ることなどにより適切に対応していくということも盛り込まれておりますので、これも踏まえまして、いかなることが可能か真剣に検討してまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
  26. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 ただいま御質問にありました昭和五十三年の日米防衛協力のための指針でございますが、今委員御指摘の三点があるわけでございます。この三点につきまして、これまで共同作戦計画を中心にいたしまして、いろいろな研究をある程度終えてきております。  ただ、御指摘のございました、第一項及び第二項の委員御指摘の具体的な点について、まだ研究が終わっておりません。我々といたしまして、さらにこの研究を進めていきたいと考えておるところでございます。  なお、共同研究とそれから実際の有事における対応の話、これはつながっているわけではございますけれども、現在の共同研究はあくまで研究ということでやっております。これをマニュアル化する、あるいは有事対応するというのは、また別個の問題としてこれも取り組まなければならないというふうに認識しております。
  27. 大野功統

    大野(功)委員 次に、集団的自衛権の問題についてお尋ねを申し上げたいと思います。  日本の憲法のおかしなところは、前文では、一国平和主義はだめだ、みんなでやりましょう、こういうふうに書いてあるわけでありますけれども、九条になるとこれができない。今日本として一番大きな問題というのは、やはり日本が国際的に果たすべき義務を果たしていない、果たせない、こういうことではないかと思うのであります。  国連憲章に規定している集団的自衛権は、ほかの国と同じように日本の自衛隊も権利として、また義務として持っていなければ、これからの国際社会は乗り切っていけないのじゃないか、この点を明らかにしておかないと日米協力も国際協力も何にもできなくなってしまうのじゃないか、こういう感じがするわけであります。  今、歴史の大きな曲がり角であります。歴史の大きな曲がり角に際しましては、過去の残滓を整理して未来への道を切り開いていかなくてはいけない。未来への道の兆候の一つが、この集団的自衛権にまつわる諸問題をはっきりと、徹底的に議論して、そして疑わしい部分というのは、灰色の部分というのは白くしていく。これはやはり政治家の役割ではないか。旧来の秩序を守るということではなくて、新しい秩序をつくっていかなければいけない。  こういう意味で、今この集団的自衛権にまつわるいろいろな問題、その中で疑わしいということもあります。例えば、米軍の艦船に油を供給して、その米軍の艦船が平時で練習中であろうとももし威嚇行為をしたら、これは集団的自衛権に抵触するんだ、こういう議論もあるわけであります。  そこで、灰色の部分をしっかりと議論して白くしていく、これは政治家の責任ではないか。政治の責任において国際的に期待される日本をつくっていく、こういうことが今一番必要ではないかと思うのでありますが、この点について、政治家としての外務大臣並びに防衛庁長官の御所見を伺いたいと思います。
  28. 池田行彦

    池田国務大臣 集団的自衛権につきましては、我が国も国家でございます以上、国際法上個別的自衛権と並んでそれを有しているというのは、これは当然のことでございます。  ただ、我が国の憲法、特に第九条との関係で、自衛権の行使は我が国を防衛するために必要な最小限の範囲にとどまる、こういうことが憲法の趣旨であるということは歴代の内閣がずっと踏襲してまいった解釈でございまして、そういった観点から申しますと、集団的自衛権は持っているが、その集団的自衛権を行使することは憲法上許されるものではない、このように今の内閣も、政治家としての私も考えております。  しかしながら、今歴史の曲がり角である、そういったことを考えるならば、グレーゾーンについてはいろいろ考えるべきではないかという点でございます。  その点につきましては、この憲法のもとで、また今のような日本基本方針からしても、一体何ができるのか、どこまでできるかということは、これは御指摘のとおりよく考えなくてはいけないと思います。しかし、それは集団的自衛権をどうこうするということではないということを申し上げさせていただきたいと思います。
  29. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 我が国が国際法上、国連憲章五十一条に定める個別的自衛権、集団的自衛権双方有しているということは、疑いはございません。  しかし、我が国で憲法上許される自衛権の発動というのは、まさに我が国に対する急迫不正の侵略に対する、これを排除するための必要最小限度の範囲のものである、こういうふうに言われております。これはまさに個別的自衛権ということでございまして、したがいまして、我が国においては憲法上集団的自衛権の行使は認めておらない、こういうふうに理解をいたしております。  こうした解釈のもとで、自衛隊がどのような具体的な行動が可能なのか、こうした問題につきましては、必要に応じて個別具体的に検討し明らかにしていくべきもの、このように理解をいたしております。
  30. 大野功統

    大野(功)委員 次に、沖縄の米軍基地問題について、まず総理にお尋ね申し上げたいと思います。  今回のクリントン大統領との会談で、総理は、普天間基地の問題も例に出されて、そして、将来に向けて作業を進める上で大統領からよいシグナルを受けた、こういうふうにおっしゃっていらっしゃいます。よいシグナルとは、普天間基地も含めてのシグナルと考えてよいのでしょうか。あるいは、四月のクリントン大統領訪日までに米軍の沖縄基地の整理縮小について大きな進展がある、こういう確信をお持ちでございましょうか。どうぞ沖縄人たちに、あるいは我々に、総理からよいシグナルを送っていただきたいと思います。
  31. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先ほど申し上げましたような位置づけの中で、私は、沖縄県における基地の整理統合・縮小について、アメリカ側にもできるだけ協力を求めるという言い方をいたしました。  そして、その際クリントン大統領から、昨年の不幸な事件に対する、自分だけではない、米国国民みんながそう思っているのだ、まことに遺憾であったという、そうした意思が改めて表明されますと同時に、クリントン大統領の発言の中に、沖縄の人々の気持ちをきちんと考慮し、また、安全保障のニーズも考えながら最善を尽くすこととしたい、柔軟性を持って考えていきたいという発言をされました。  私は、大統領の発言の中に、沖縄の人々の気持ちをきちんと考慮しという言葉が入ってくるという予測は、実は持っておりませんでした。そして、柔軟性という言葉が使われましたことも、私は非常に積極的な発言と受けとめたわけであります。その意味で、大統領自身がこの問題に対しての姿勢を明らかにされたこと、これは私は、将来に向けて作業を進めていく上でよいシグナルと受けとめたことは事実でございます。
  32. 大野功統

    大野(功)委員 沖縄問題、沖縄基地問題につきましては、もう少し掘り下げた質問を申し上げたかったのでありますけれども、時間の関係がありますので、どうぞこの日米安保と調和のとれた形で沖縄基地問題が解決されていくために一生懸命頑張っていただきたい、このことをお願い申し上げまして、次に、自衛隊の自衛力の問題についてお尋ねを申し上げます。  まず、我が国考え方からすれば、空中給油機、これは決して足が延びるということじゃなくて、我が国のような地理的条件を持っている場合には、どうしても空中警戒態勢が重要であります。そのために、空中給油機を導入して、そして空中警戒態勢の時間を長くする、こういう意味で大変重要な問題であります。この点は早く導入していくべきだと考えておりますが、防衛庁長官、いかがでございましょうか。  また、BMDでございます。  これは大変金のかかる問題でありますし、費用対効果の問題もありますが、どのぐらいの時間をかけて決定するのか、この点もお尋ね申し上げたいと思います。  それから最後に、もう一つ防衛庁長官にお尋ね申し上げたいのでありますけれども、防衛は確かに装備の力があります。しかし、装備を扱うのは人間であります。隊員の処遇の改善ということは日本の自衛力強化の上で非常に大切なことじゃないか、こういうふうに思うわけであります。  これからも日米が協力し合う場面が相当ふえてくると思いますけれども、例えば、アメリカの兵士が住んでいる宿舎と日本の自衛隊の隊員が住んでいる宿舎、これはもう面積にして倍以上違うわけであります。いろんな意味で自衛隊の隊員の処遇の改善を図ること、これは基本的に自衛隊の自衛力を高めるゆえんではないかと思います。  それからもう一つ、今回、二月上旬にアメリカへ安保調査団の一員として参りまして、幾つかのアメリカの基地を訪問してまいりました。そのときあちこちの基地で、我々を受け入れてくれる、そしてそこで歓談できる、場合によっては食事のできるようないわゆる接受の部屋があるわけであります。翻って、日本の自衛隊関係を見ますと、なかなかそういうことができるような設備が、施設があるのかどうか。  これからますます防衛交流その他重要なことが起こってまいります。信頼醸成というのは、もう言うまでもなくいろんな防衛交流から生まれるものであります。そういう意味で、大変重要な場面、信頼の醸成について軍事交流、制服組の交流というのが起こってくる。あるいは、外国の議員が日本の自衛隊を訪ねることも出てくるかもしれない。そういうときにやはり、ぜいたくではないけれども恥ずかしくないだけの設備は持っていなきゃいけないんじゃないか。  この点を、三問でございますが、お願い申し上げます。
  33. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 まず、お尋ねの空中給油機能についてでございますが、前中期防、今中期防、二期十年にわたりまして、この問題につきましては、その性能、運用構想等につきまして研究、検討を続けてまいっておるわけでございます。  新しい中期防におきましても、この空中給油機能の取り扱いにつきましては、これらの今までやってまいりました内容の研究、検討、こういうものを基礎にいたしまして、今後とも政府部内あるいは与党内においていろいろ御検討をいただいて決めていかなければならない、このように考えているわけでございますが、導入をしていくか否か、その問題につきましては、なお今後、その性能あるいは運用構想等について、具体的なあり方あるいは費用対効果、こうした問題についてさらに研究をいたしていかなければならない、このように思っております。したがいまして、今中期防の中にも、「空中給油機の性能、運用構想等空中給油機能に関する検討を行い、結論を得、対処する。」といたしているわけでございます。  いずれにいたしましても、今後とも鋭意検討いたしまして、適切に対処いたしてまいりたい、このように考えております。  次に、弾道ミサイル構想でございますけれども、現在、大量破壊兵器が非常に拡散をいたしておりますし、また、その運搬手段となり得る弾道ミサイルの拡散も引き続いて起こっているわけでございます。現実に、我が国周辺におきましても弾道ミサイルを所持している国も存在しておるわけでございまして、この弾道ミサイル防衛の問題は、我が国にとりましても極めて防衛政策上重要な問題と考えております。  このために、我が国といたしましても、この弾道ミサイル防衛につきましては、我が国の防衛政策上の位置づけや我が国の対処の方法、政治政策判断をどのようにしていくかという問題、そうしたものを突き詰めて考えていく必要がございます。  そのために、弾道ミサイルの脅威のあり方あるいは弾道ミサイルの防衛システムの具体的な内容の問題、技術的可能性、費用対効果、これらの多様な問題についてこれから鋭意検討していく必要があるわけでございまして、現在、日米共同で作業もいたしておりますし、また自衛隊、防衛庁内部におきましても所要の検討をいたしているところでございます。  先般策定をされました中期防衛力整備計画におきましても、弾道ミサイル防衛につきまして、その有用性、費用対効果等について、十分に検討の上結論を得る、こういうふうにいたしているところでございます。引き続き、政策判断を的確に行ってまいりたい、このように考えております。  それから、日本の自衛隊と米軍の施設の宿舎等につきまして、格差についてのお話がございました。これは、日米の間で面積等の相違があるということは私どもも十分承知をいたしておりますが、この相違は、主として日米間の生活様式あるいは文化あるいは体格、こういったもろもろのものに起因をしていると私どもは理解をいたしております。  いずれにいたしましても、自衛隊員の宿舎等の生活関連施設の充実を図るということは、隊員の士気も高めます。また、質の高い防衛力を整備をしていく、このためにも大変私は重要なことだと考えておりまして、今後とも、これらの宿舎整備等につきましても、隊員が安心をして職務を全うできるように努力をいたしてまいりたい、このように考えております。  なお、最後の質問といたしまして、防衛交流を行うための諸施設、こういうことでございました。  現在、私ども自衛隊におきましても、駐屯地、基地等におきまして、建設省の基準のもとに事務所の一部を応接室等に改めまして設置をする、こういうことをいたしているところでございます。今後とも、御指摘のとおり、防衛交流をさらに一層円滑化するためにはこうした施設が大変重要なもの、こういうふうに考えておりますので、応接室等も含めて庁舎の整備等に努めてまいりたい、こういうふうに考えております。  なお、平成十一年までに市谷に新庁舎を建設することになっておりまして、この際には、委員お話しのとおり、防衛交流をさらに盛んにするために国際会議室等も設ける予定を計画をいたしているところでございます。
  34. 大野功統

    大野(功)委員 ありがとうございました。  残り時間につきましては、鈴木俊一議員にバトンタッチさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございます。
  35. 上原康助

    上原委員長 この際、鈴木俊一君から関連質疑の申し出があります。大野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。鈴木俊一君。
  36. 鈴木俊一

    鈴木(俊)委員 自由民主党の鈴木俊一であります。  質問に入ります前に、総理訪米大変御苦労さまでございました。  私からは、国連海洋法条約につきまして質問をいたしたいと思います。国連海洋法条約は海の憲法とも言われるものでありまして、海洋国家の我が国にとりましては、これを早期に批准することが国益にかなったものであると思っております。  この条約は大変幅広い分野にかかわりを持つものでありまして、水産業はもとより、大陸棚と地下資源でありますとか、あるいは国際海峡をめぐる国防上の問題、さらには環境保全の問題等さまざま多岐にわたりますけれども、とりわけ水産業につきましては、国民にたんぱく食料を供給する食糧産業であるということ、また、漁業をなりわいとする漁業者に大変大きな影響を与えるということがございますので、特に条約批准に当たりましては漁業の分野には十分な対応、適切な対応が必要である、そういうふうに思います。  そこで、私は、漁業の観点からこの国連海洋法条約について質問をしたいと思います。  国連海洋法条約が発効いたしましたのは、御承知のとおり一昨年の十一月であるわけでありますが、世界の趨勢はもう既にこの二百海里体制というものを先取りをしているわけでありまして、我が国も、昭和五十二年に漁業水域に関する暫定措置法というものを施行いたしまして、漁業水域というものを設定しているわけであります。  しかし、これが甚だ変則的なものになっておりまして、東経百三十五度以西については漁業水域を設定していない。さらに、韓国や中国に対してはそもそも適用を除外をしている、こういうことでございますので、韓国や中国の漁船が九州や山陰の沿岸にやってまいりますし、さらには、漁業水域を設定しております北海道沿岸にも主に韓国の大型のトロール船がやってまいりまして、もうここ十数年来、資源管理というものを顧みない、いわば無謀操業というものをしているわけであります。  日韓漁業取り決めには、それぞれの国内の漁民に課しております操業禁止水域等についてはこれを相互に尊重をするという、そういう自主規制措置というものがとられているわけでありますが、なかなかこれが守られないわけでありますし、また、目の前で違反操業が行われておりましても取り締まりは日本側にはない、いわゆる旗国主義ということで有効な手だてが打てないというのが現実の姿でございます。  こうした韓国漁船の無謀操業、原因がすべて韓国漁船にあるというのではありませんし、すべての韓国漁船が無謀操業をしているということではもちろんないのでありますけれども、これらがもたらしました我が国の沿岸の資源に対する悪影響というものは本当に甚大なものがあると思うのであります。加えて、漁具被害等もございまして、関係漁民の憤りというものはまさに極に達していると思っております。  また加えて、ここ数年、旗国主義の現行の漁業協定を見直そうということもなかなか前進を見ないわけでありまして、行政に対する不満あるいは我々政治家に対する不信というものも私は実感をしております。  国連海洋法条約が批准され、EEZが設定されますと、今度は沿岸国が資源管理をすることが義務になるわけでありますが、こうした資源管理上からも甚だ問題点の多い現行の日韓、日中の漁業協定を見直すチャンスは今回の国連海洋法条約の批准のときにしかない、私はこういうふうに思うわけであります。  具体的には、排他的経済水域を東経百三十五度以西にも引くということと、それから韓国、中国にもこれを全面的に適用しなければならない、こういうことであります。全面適用という言葉使いますと誤解をされるのでありますけれども、これは何も日韓、日中の現行協定を即時に一方的に破棄しろ、こういうものではもちろんございませんし、外国漁船をすべて締め出せ、こういうことでもないわけであります。現に適用しておりますロシアにつきましては、沿岸国の主権のもとで相互入域を認め合っているわけでありますから、決してラジカルな要求ではないと思っております。  あす、二十八日でありますが、全国の漁業者が六千人武道館に集まりまして、この全面設定、全面適用の要求をするための総決起大会を開くということになっておりますが、私は、まことにこれは理にかなった要求であろうかと思いますし、政府も全面設定、全面適用の方向で全力を挙げるべきである、このように思いますが、総理の御見解を伺いたいと思います。
  37. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 二月二十日の閣議了解におきましてもこの問題についての姿勢を明らかにいたしましたとおり、政府といたしましては、排他的経済水域を設けることが適当であると考えておりますし、現在、その所要の準備を進めております。  そして、政府といたしまして、この排他的経済水域の設定に当たりまして、一部水域の除外を行うことは考えておりません。  また、その上で、韓国及び中国との漁業関係につきましては、これが両国との協議によりまして、国連海洋法条約の趣旨を十分に踏まえた新たな漁業協定が早期に締結されることを目指して、両国国民に対する漁業規制の適用のあり方につきましても、合理的な期間内に結論が得られますように鋭意努力をしてまいりたいと考えているところであります。
  38. 鈴木俊一

    鈴木(俊)委員 排他的経済水域を設定をしなければならないわけでありますが、その際懸念されることは、竹島あるいは尖閣列島といった領土問題であると思っております。  改めて言うまでもなく、竹島、尖閣列島は我が国の領土でありますし、政府の立場もこの点は一貫をしているわけでありますけれども、この領有権の問題が前面に出てまいりますと、なかなか話が先に進まないのではないかと危惧をされるところであります。  そこで、領土問題と漁業問題を切り離して漁業交渉を進めなければならないと思いますが、この点につきましては一つの参考事例があるわけでありまして、それは北方領土についてでありますけれども、我が国が昭和五十二年に漁業水域を設定いたしましたときに、当然北方領土は我が国の領土でありますからその周りに我が国の二百海里も引く。ソ連は、遺憾ながらソ連側に含めて漁業水域を引いたわけであります。いわば北方領土については両国の水域がダブっているわけでありますけれども、この線を引いた法律をそれぞれ認め合った上で日ソ地先沖合漁業協定というものが結ばれているわけであります。その日ソ地先沖合漁業協定の第七条で、「この協定のいかなる規定も、相互の関係における諸問題についても、いずれの締約国政府の立場又は見解を害するものとみなしてはならない。」という規定を置きまして、領有権の問題と漁業の問題を明確に切り離しているわけであります。  領土問題は絶対に譲ることのできない問題でありますが、領有権問題の早期解決が困難であるという現実の中で、北方四島の例を念頭に置きながら、領土問題と漁業問題を切り離して漁業交渉を進めるべきであると思いますが、外務大臣の見解を尋ねたいと思います。
  39. 池田行彦

    池田国務大臣 委員御指摘のとおり、我が国の竹島あるいは尖閣に関する立場は一貫したものでございます。  ただいまの御主張は、そういった問題とは切り離して漁業問題の解決を図るべきではないか、こういうことでございますが、政府としてもそのように考えておりまして、日韓あるいは日中の関係全体を損なうことなく、また、領土問題の解決というものとは別個のものとして切り離して漁業の問題について話し合いによって円満な解決を図りたいと思っております。  その際、ロシアとの関係での先例をという話がございました。その先例があるということもよく承知しておりますが、日韓あるいは日中の間でどういうふうな新しい協定をつくるか、これは両国とそれぞれよく話をしてまいりまして円満にその結論を得てまいりたい、こう思っている次第でございます。
  40. 鈴木俊一

    鈴木(俊)委員 二月二十日に政府は国連海洋法条約締結及び海洋法制整備についての閣議了解をいたしまして、その中で、韓国、中国と新たな漁業協定を早期に締結するように努力する、こういうことが記されております。そしてまた、同日、韓国の外務部長官の声明におきましても、漁業問題に関しては、韓日間の漁業秩序改編問題を協議していくものである、こういうふうに記されているわけであります。  私は、韓国の外務部長官の声明あるいはその後の記者会見の内容を見てみますと、領土問題については相当抑制ぎみでありますし、漁業問題については大変前向きである、そういうような印象を個人的に受けたわけであります。日本、韓国、中国がそれぞれ国連海洋法条約を批准し、あるいは今まさに批准をしようという段階に入りまして、改定交渉を行う環境が整ったと思うわけであります。日韓・日中漁業協定の改定交渉を早期に始めなければならない。現在どのような状況にありますのか、お伺いをいたしたいと思います。
  41. 池田行彦

    池田国務大臣 去る二十日の我が国としての基本方針の閣議での了解を踏まえまして、二十二日に韓国並びに中国に対しまして新たな漁業協定締結のための交渉を早期に始めようではないか、こういった申し入れをいたしまして、今その返事を待っておるところでございます。  まだ、そういうことで正式な返事は来ておりませんけれども、これまでも事前にいろいろな形で接触しておりましたけれども、そういったことを通じまして、委員御指摘のように韓国あるいは中国におきましても、円満な話し合いを通じて漁業問題の解決を図ろうではないか、そういった姿勢、考え方を持っているというようにうかがえるところでございまして、そういった意味では話し合いを進めていくといった環境は整いつつあるというふうに考えている次第でございます。
  42. 鈴木俊一

    鈴木(俊)委員 二十日の閣議了解を行うに先立ちまして、我々与党でいろいろと意見を述べさせていただいたわけであります。その中で、日中、日韓の新たな漁業協定が早期に締結されるよう、速やかに交渉を開始し、合理的期間内に結論を得るよう云々という部分を最終段階で挿入してもらったわけでありますけれども、その意味するところは何かというならば、先方との話し合いがまとまらないからといって、韓国、中国への適用除外というものがずるずるとエンドレスで続いてはならない、こういうことであります。  この閣議了解で合理的期間内とされておりますのは、与党の責任者の間では一年以内でなければならないという認識になっているわけでありますが、政府もこの考え方に相違はないと考えてよろしいでしょうか。
  43. 池田行彦

    池田国務大臣 この交渉をどの程度の期間でまとめ上げるべきかということにつきまして、与党内におきまして、あるいは関係方面におきまして、いろいろな御議論があったということは政府としてもよく承知しておるところでございます。  ただ、政府といたしましては、先ほど申し上げましたように、今、韓国並びに中国に対して交渉を申し入れたところでございまして、また、現に交渉に入っていない段階でございますので、現段階で具体的な期限、いつまでということを申し上げるのは適切ではないと思いますけれども、その与党等のお考えというのはよく念頭に入っているところでございます。
  44. 鈴木俊一

    鈴木(俊)委員 韓国、中国、両国との新たな漁業協定を、これから交渉に入り結んでいくということでありますが、これはやはり両国との話し合いの中で円満に新しい協定に移行するということが、韓国あるいは中国の水域で操業している日本漁船の利益を守る上からも、これは最も望ましい形であって、そうでなければならないと思います。政府はそのための努力を今なされているわけでありますが、今後とも最善を尽くしていただきたいと思うわけであります。  しかし、相手があることでありますから、この合理的期間内に新協定についての合意が得られない場合どうするのか。現行の協定には終了通告というものがございます。日韓については通告後一年、それから日中については通告後三カ月でこの現行協定が終了する、こういうことになるわけでありますけれども、現行協定に基づく権利の行使としての終了通告もあり得る、こういう覚悟をしておくべきではないか、私はこう思うのであります。  これから交渉に入るわけでありますから、何かだんびらを振りかざしてやるということは余りよくない、こんなことは言う必要のないことでありますが、やはり腹づもりを明確にして、強い決意を持って事に当たらなければ、今までもう十数年間いろいろ交渉をしようとしてきて進まなかったことを考えますと、そのような終了通告もするんだというような決意を持って臨まなければいけないと思いますが、この辺の覚悟について、大臣にお伺いをいたしたいと思います。
  45. 池田行彦

    池田国務大臣 御承知のとおり、今から交渉に入ろうとしているわけでございますので、私どもといたしましては、合理的期間内に何とか話し合いを通じて円満な解決を、そうして今おっしゃいます漁業関係者の方々のお気持ちも十分踏まえた解決をと、こういった努力を傾注しよう、そういった覚悟でおるところでございますので、その先のことは申し上げるのは差し控えさせていただきたいとは存じますけれども、協定のその規定、現行協定がどういうことになっているかということは我々も十分承知している次第でございますし、また、大変温厚な鈴木委員が今そのようなことをあえて御質疑されるということは、それだけ水産関係の方々の今置かれている状況あるいはお気持ちというものが切実なものがあるということはよく理解できるところでございまして、そういったことも十分踏まえながら交渉に当たってまいりたいと思います。
  46. 鈴木俊一

    鈴木(俊)委員 時間も迫ってまいりましたので、最後の質問に入りたいと思いますが、この国連海洋法条約の批准によりまして、水産業というものは大変大きな転換点を迎えると思っております。  例えば、漁業調整の問題につきましても、従来は、漁船の隻数の制限でありますとか馬力数あるいは網目の制限でありますとか、そういった入り口における漁業規制というものを行ってきたわけでありますけれども、これからは、魚の種類ごとに漁獲可能量を定めるいわゆるTAC制度を導入するという中で、出口での制限が行われることになるわけであります。  こうした大きな変化というものは、まさに農業におけるガット・ウルグアイ・ラウンドの受け入れにも匹敵するような、水産業にとっては大き左転換点であると思うわけであります。ウルグアイ・ラウンド受け入れに当たりまして、農業においては新農政というものが打ち出されました。そして、その中で大きな財政措置というものもとられたわけでありますが、漁業もこの大きな転換点に当たって、権威ある審議会、これは沿岸漁業等振興審議会もありますし中央漁業審議会もございますが、権威ある審議会において審議をしていただき、新漁業政策というものをぜひ打ち出していただきたい。そして、その中で必要なものについてはしっかりした財政措置というものもとっていただきたいと思うわけであります。  特に、これから日中、日韓の新漁業協定ができますと国際減船の問題も出てまいると思いますし、TAC制度というものがさらに広がってまいりますと、今度は、我が国二百海里内での漁獲可能量と漁獲努力量の整合性を保つための生産構造再編、二百海里内においても減船というものが必要になってくるかもしれません。  それから、今回の条約の趣旨を体するためには、やはりつくり育てる漁業、栽培増殖漁業というものをさらに推進していかなくてはいけない。こういうものには財政措置がどうしても伴うわけでございますので、農林水産大臣に、この漁業の大きな転換期を迎える国連海洋法条約の批准に当たって、前向きにこれに取り組んでいくんだ、受け身でやるんではなしにこれを機に逆に打って出るんだ、そういう漁業政策を展開していただきたいと思う次第でありますが、農林水産大臣の御所見を伺いたいと思います。
  47. 大原一三

    ○大原国務大臣 鈴木委員、与党の中にあって大変御苦労なすっておまとめいただいていることに心から敬意を表したいと思います。  今御指摘ありましたように、我々水産行政を預かる者としては、大きな漁業の転換点、未来が開ける漁業の構図がこの条約を契機に展開できるように努力をしていきたいな、こう思っております。  先ほど、大会もあるそうでございますが、先日漁業関係代表者がお見えになりまして、全面設定、全面適用ということを強く御要請がございましたことを我々も厳しく受けとめております。  同時に、先ほど、漁業資源管理のTAC制度の導入、これに伴って、従来もやってまいりましたが、あの二百海里内における漁業管理、資源管理というものを、相手国もやるわけでございますが、こちらもこれを従来の政策にさらにまた上乗せしていろいろの施策をやっていかなければならない。御指摘がありましたように、つくり育てる漁業の展開もさらに一層強固にやっていかなければならぬと思います。  その間に、特に二百海里の外で現在操業していらっしゃる方々、それから、二百海里内でも、御指摘がありましたようにあるいは減船という問題も起きるかもしれない。その際に、やはり従来もいろいろ我々も問題を処理してきましたけれども、十分その辺にも対応を考えていくつもりでございます。
  48. 鈴木俊一

    鈴木(俊)委員 いずれにいたしましても、国連海洋法条約を批准をいたしますと、沿岸国は二百海里の排他的経済水域を引く権利を有する、その権利を行使いたしますと、今度は二百海里内の資源を管理する義務というものを生じるわけでありますから、今後の施策がぜひそういうものに合致したものになりますように、万般の推進をしていただきたいと思います。  そして、こうしたものの前提になりますのも、日本の国でいいますと日中、日韓との外交交渉にあるわけでございますから、外務省におきましては、どうも漁業者の皆様方、漁業団体の方々のお話を伺いますと、外務省は漁業の問題になると腰が引けているのではないか、韓国の問題になると腰が引けているのではないか、こういうような長年にわたります経緯の中でそういう思いというものもあるのも現実の姿でありますから、外務省におかれましては池田外務大臣を先頭に、ひとつまなじりを決してこの日韓、日中の交渉に当たっていただきますようにお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
  49. 上原康助

    上原委員長 これにて大野君、鈴木君の質疑は終了いたしました。  次に、細川律夫君。
  50. 細川律夫

    ○細川(律)委員 社会民主党の細川でございます。  私は、まず初めに、総理がこの間訪米されましてクリントン大統領と会談をされました、その点についてお聞きをいたしたいと思います。  まずは沖縄の米軍基地の問題でございます。  総理は、会談の中で日米安保体制の重要性を確認をされまして、この安保条約が日米関係の土台であり、アジア太平洋地域の安定と平和、そのために大変な大きな貢献をしているというようなことでも認識が一致をされたというふうに報道もされております。そしてまた、日米安保の堅持のための沖縄の米軍基地の縮小そして返還など、これなどについてもこれから取り組んでまいるというような合意もされております。  私が大変うれしかったのは、この橋本総理クリントン大統領との会談の中で、特に沖縄の普天間飛行場、この問題が取り上げられまして、この飛行場の返還に総理が期待を示した、このことは大変私自身うれしく思いましたし、国民の皆さんも、とりわけ沖縄県民の皆さんが高く評価されたものだろうというふうに思います。  そこでお聞きをいたしたいのは、総理が具体的に普天間飛行場の問題を提起をされて、そして大統領はどういうふうにこの問題について答えられたのか、その経過について御説明をいただけたらというふうに思います。  そしてまた、四月には大統領が訪日をされます。そこでの日米首脳会談におきましては、沖縄の県民の皆さんのいわば悲願でもあります、今申し上げました普天間飛行場の返還を含みます沖縄の米軍基地の整理統合・縮小のいろいろな課題につきまして、実りある結論を得るために総理はどのような決意をされておるのか、その点についてお伺いをいたしたいと思います。
  51. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先刻来御答弁を申し上げてきたところに多少重複をいたしますけれども、私は、この日米関係というものが極めて大切なものであり、これからも深化させていかなければならないものであること、そしてその基盤に日米安保条約というものがあり、日米安保体制というものを我々はこれからも堅持していくということ、そしてそれを国民に再確認を求めて努力をしていく上でも、沖縄県における基地の整理統合・縮小の問題についてアメリカ側のできるだけの協力を求めるという話の仕方をいたしました。そして、これに対して、正確を期しますのでちょっと読ませていただきますけれども、昨年の不幸な沖縄における出来事に対して遺憾の意の表明をされますとともに、沖縄の人々の気持ちをきちんと考慮し、また安全保障のニーズを考えながら最善を尽くすこととしたい、柔軟性を持って考えていきたいという大統領の御返事がありました。  そして、その具体的な話に、全体は限られた時間でありましたので、私はその際、大田沖縄県知事とお目にかかりましたときに大田知事からございました話をも踏まえ、例えば普天間基地のように非常に要請の強いものもあるという具体的な例示としてこれを申し上げましたが、この普天間基地の問題を含め、個別の問題の論議はいたしておりません。  むしろその場で確認をいたしましたのは、この大統領の発言、そして私自身の発言を踏まえまして、四月の大統領の訪日までの間に、事務的にも、またいわゆる2プラス2と言われます閣僚レベルの部分におきましても、できる限りの努力をしてもらおうという意思の確認をしたということでございます。  本日、閣議終了直後に、外務大臣並びに防衛庁長官にお残りをいただきまして、改めてこの経緯をお伝えすると同時に、最善の努力を尽くしてもらうように改めて指示をしたというところでございます。
  52. 細川律夫

    ○細川(律)委員 四月のクリントン大統領訪日の際の日米首脳会談におきまして、沖縄の皆さんの悲願でありますこの問題について実りのある結論、目に見える成果というものをぜひ期待をいたしておりますので、どうぞ外務省の事務当局に対しても督励もいただきまして、ひとつよろしくお願いをいたしたいというふうに思うところでございます。  それから、会談の中では朝鮮半島の問題についても触れられておりますけれども、その中で、私の方では、朝鮮半島エネルギー開発機構に関連いたします千九百万ドルの資金を提供するというお約束をされたという点についてお聞きをいたしたいと思います。  この千九百万ドルの提供に対しては、クリントン大統領もこれに対して大きな評価をされたということも報道をされておりますけれども、この朝鮮半島エネルギー開発機構、いわゆるKEDOの方から朝鮮民主主義人民共和国、北朝鮮の方に供与されます代替燃料、重油の代金千九百万ドルを出すということを表明されたわけなんですけれども、そもそもこの重油代金というものは、これは米朝合意によりまして、アメリカが負担をするという取り決めになっていたのではないかと思います。  そうしますと、この千九百万ドルというのは、どうも日本アメリカの重油代金を肩がわりをしたのではないかというふうにも受けとめられますし、今後このKEDOの問題につきましては、軽水炉の建設を初めといたしまして、いろいろなお金がたくさんかかるわけでございます。それの日本の負担をする分担金といいますか、それがますます日本に偏ってくるんではないかというような、そういう心配もされているところでございます。  一体これは、肩がわりではないんだというようなことも、重油代金ではないんだというようなことも総理もおっしゃっているようでありますけれども、今後の問題として、この千九百万ドルというものはどういうふうに取り扱われるのか、今後の分担金の負担割合のところでこれが差し引かれるのかどうなのか、その点についてお聞きをいたしたいと思います。
  53. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 必要な部分、外務大臣から補足をしていただきますけれども、誤解のないようにお願いをいたしたいと思いますのは、重油代金として拠出はあくまでもいたしておりません。  と申しますのは、この米朝合意に至りますまでの経緯の中で、私はアメリカの努力というものを大変高く評価をいたしておりますけれども、韓国、そして日本アメリカが緊密に連携をとりながらKEDOの設立に向けて努力をしてまいりました。そして、そのプロセスにおきまして、重油の代金というものはアメリカ側が負担するということで、ずっと我々はそう理解しておりましたし、今日もそうでございます。  しかし、御承知のように、アメリカの中で、政府と議会の対立の中で予算が非常におくれております。そして、先般暫定的に成立をいたしました予算の部分に、たしか二千二百万ドルであったと記憶をいたしますが、KEDOに対するアメリカの拠出が計上されております。しかし、それが執行されるまでにはアメリカの国内法で非常に時間がかかる。そして、結果的にKEDOの流動性危機というものが生じております。  今回日本が負担をいたします千九百万ドルというものは、そのKEDOの流動性危機というものに対応するためにKEDOの中に基金を設けるという形で拠出をすることといたしておりまして、継続的な重油代の負担といったような問題を生じないために、あくまでもKEDOの流動性危機に対する基金という形で対応しておりますということをまず申し上げます。
  54. 池田行彦

    池田国務大臣 ただいま総理から御答弁ございましたように、今回の我が国の拠出は、決して重油代金に充てるものではない、流動性の危機に対応するための基金に対する拠出である、こういうことでございますけれども、さらに若干補足させていただきますと、そもそもKEDOの仕組みというのはこうなっておりました。  軽水炉を建設していく、それが完成するまでのつなぎとして毎年大体五十万トン相当、大体現在の油価で五千万ドルに相当するわけでございますが、それをKEDOとして北朝鮮に供給していく、こういうことになっておりまして、その金の負担につきましては、軽水炉の方につきましては韓国が最も主要なる負担をしていこう、そしてまた我が国にもかなりの負担が期待されておった、こういうことがございました。  そして、油の方につきましては米国の責任という言い方でございますけれども、これは主として米国が負担をしていく、米国が中心になって負担していく。米国だけではございません。現にEU諸国であるとかあるいは湾岸諸国あるいはアジア国々にも拠出を、KEDOとしても、また米国あるいは我が国もいろいろ要請しておるところでございます。  そういうふうな仕組みになっておるわけでございますけれども、現在のところ、そういった米国以外の諸国からの拠出についてもある程度の拠出のプレッジといいましょうか、出しますよといった意図の表明はございますけれども、現実にそれが使えるようになるにはまだ若干時間がかかる。仮にことし使えるとしても、かなり後半の方になるのじゃないかということがございます。  それから、そもそも中心的な役割を果たす米国の拠出が、総理の御答弁にもございましたように、議会との関係予算全体の成立が随分おくれました。まだ成立、全体はしておりません。先般、この関係は切り離して成立したのでございますが、北朝鮮との関係で使うためには、予算の成立だけではなくて、まだ大統領府と議会との間での手順が必要でございまして、どうしても四月のかなりの時期にならなくてはそれが現実に拠出できない、こういう事情があります。  そして、今回議決されましたのは二千二百万ドルでございますが、そのうち事務局経費が三百万ドルで、現実に重油代金に使えるのは千九百万ドル、こういうふうになっておるわけでございます。  そういった仕組みの中で、我が国は、ともかく重油の方に充てるべきアメリカの拠出あるいはその他の拠出が当面間に合わないのじゃないか、そうするとどうするんだ、支払いができない、流動性と言っておりますけれども、要するに資金繰りの話でございますね、それを何とかつないでやろうというので基金に出したというものでございます。肩がわりではない。  したがいまして、今後もKEDOのいろいろな事業を推進するに当たって、将来ともに流動性危機というものは、短期的にそういうことは、資金繰りが苦しくなることはあり得ると思いますので、そういうときにはまたお使いいただくということがあるということでございますので、今つないでおいて、米国その他から十分な金が入ってきたら取り戻すという性格じゃない、これが一つございます。  それから、いま一点委員が御指摘になりましたのは、こういうことでどんどんやっていったら日本に負担が偏ってしまうのじゃないか、どうするんだということでございますが、日本基本的な立場は、軽水炉を含めましてKEDOの全体像が明らかになったところで、たしかミーニングフルと言っていたと思いますけれども、意味のある負担をしていこう、こういうことでございます。  軽水炉プロジェクトについても、いろいろな観測は行われていますけれども、日本が幾ら持つということは確定していないところでありますので、そういったときに、我が国のKEDOに対する拠出の最終的な位置づけなりその負担額というものは、その段階で決めることにさせていただく、こういうことでございます。
  55. 細川律夫

    ○細川(律)委員 私自身も、このKEDOの円滑な運営にどうしても必要だというようなことでの千九百万ドルの支出ということについては、これは了とするわけでございます。ただ、一方では、アメリカの言い分ばかり聞いているのではないかとか、あるいは結局日本の経済的な負担が大きくなるのではないかというような批判もあるわけなんでございます。  私は、日本がこういうお金を出すということは、それはそれでよしとして、そしてそれをするとともに、日本があるいは日本政府が、もっと自主的に朝鮮半島の緊張緩和の問題あるいはまた日朝国交の正常化の問題に取り組んでいかなければならないのじゃないかというふうに思います。  総理にお聞きいたしますけれども、総理自立する外交ということを専らのモットーにされておられます。そこで、現在再開のめどが立っておらない日朝国交正常化に向けての総理のこれからの考え方、これについてお伺いをいたしたいと思います。
  56. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 日朝国交正常化交渉の再開につきましては、具体的な時期などについて現在全く目途の立っておる状況ではございません。  しかし、日本といたしましては、これから先も、第二次世界大戦後の日朝間の不正常な関係というものを正してまいりますとともに、朝鮮半島の平和と安定に資するものとするというこの二つの観点を踏まえながら、韓国と緊密に連携しながらこれを取り進められるようにしていくべきだ、そう考えておりますし、我々としては韓国との緊密な連携というものを重視しつつ事に当たりたい、そのように考えております。
  57. 細川律夫

    ○細川(律)委員 次に、先ほど鈴木委員の方からも質問がありました海洋法条約について、私の方からも何点かお聞きをしたいというふうに思います。  この海洋法条約は海の憲法とも言われておりまして、海に関する法的な秩序に関するほぼ全部の分野にわたっての規定がなされておる条約でございます。したがって、日本にとりましては、四万を海に囲まれ、そして海に大変多くの依存をいたしております我が国にとっては大変重要な条約でもございます。  この条約というものは、関係する多くの国々が平和的に共生するということを前提にしながら、それぞれの国の国益そして海洋秩序と調和をさせながら、人類全体が海を役立てていくというようなことでつくられたわけでございます。  また、ことしの十月には、ドイツで国際海洋裁判所というものが設置をされることになっております。この裁判所というものは、領海あるいは水域をめぐりますいろいろなトラブルあるいは紛争に、この海洋法に基づいて司法判断をする機関でございます。  どころが、この裁判所の裁判官の選挙というものが八月一日に行われる予定になっております。その裁判官を選任をする選挙権、被選挙権が、ことしの六月末までに批准をしていなければいけないということにもなっておりまして、そういう意味でも、この条約についてはいろいろな意味で大変重要な条約でありまして、これを今国会で批准をしていかなければいけない。  こういう時期的なものもありまして、この条約を批准をしていきます上に、総理がどのようなお気持ちでこの条約を考え、そしてこの成立にどう取り組んでいかれるのか、このことについてまずお聞きをいたしておきます。
  58. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 国連海洋法条約が、当然のことながら、国際社会における安定した海洋の法的秩序の確立に資する、また、これによって海洋における問題のルールをつくる、非常に大きな意味があると思っておりますし、これは周囲をすべて海に囲まれている海洋国家である日本にとりまして、極めて私は大切な条約だと考えております。そして、これを批准し、国内法を整備してまいりますことは、まさに海洋国家としての日本の長い将来にわたって総合的な国益に沿うものであるとも考えております。それだけに政府としてこの条約の早期締結を目指したい、そんな思いでこの国会に御提案をさせていただいております。
  59. 細川律夫

    ○細川(律)委員 総理が言われるように、大変重要な条約でございます。しかし、日本がこの条約を批准をするということを、そういう方向を決めた途端に、お隣の韓国では、竹島の領土権をめぐりまして大変な反日感情が高まっているところでございます。日本の大使館に韓国の方々が押しかけて、いわゆる抗議行動を起こすというような事態にもなっているわけでございます。  この海洋法の批准というものは、本来、領土問題とは全く別個の問題であろうというふうに思っております。それは、隣国との関係におきまして、この海洋法批准をめぐる  どういうことがここで求められているかといいますと、これは我が国の周辺海域におきます漁業規制を確立をすることによりまして、特に我が国の漁業関係者の利益を確保していくというようなことにあるわけでございます。これは、領土権をめぐります感情的な議論、これによっては私は解決をしないと思いますし、むしろ、感情論の応酬になって冷静な合理的な交渉というものが阻害をされまして、結局は日韓の漁業者の利益を損なうことにもなろうかと思うものでございます。  そこで、これから、先ほどもありましたように、海洋法の批准に伴います排他的な経済水域の設定、漁業規制というふうなことに当たりましては、領土権の問題あるいは領有権の問題と切り離して、そしてこの問題を、漁業交渉というのも進めていかなければいけないだろうというふうに思いますけれども、この点についてもう一度、改めてでありますけれども、総理に、どういうふうに対処をしていかれるか、お聞きをしたいと思います。
  60. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先刻申し上げましたことと重複をいたしますけれども、二月二十日の閣議了解におきまして明らかにいたしましたように、政府といたしましては、排他的経済水域を設けることが適当と考えておりまして、現在、その所要の準備を進めております。そして、この排他的経済水域を設定するに当たりまして、一部水域の除外を行うことは考えておりません。  また、韓国及び中国との漁業関係につきましては、両国との協議によりまして、国連海洋法条約の趣旨を十分に踏まえた新たな漁業協定が早期に締結されることを目指すことといたしまして、両国国民に対する漁業規制の適用のあり方につきましても、合理的な期間内に結論を得るように鋭意努めてまいりたい、そういう努力を払ってまいりたいと考えております。
  61. 細川律夫

    ○細川(律)委員 それでは、最後になりますけれども、竹島問題についてお伺いをいたしておきます。  今、竹島には韓国の警察部隊が駐留をいたしまして、施設をつくって実効支配を試みております。また、最近では、韓国軍が竹島の周辺海域で軍事訓練も行っているところでございます。韓国のこうした実効支配の積み重ね、これが竹島の韓国領有の既成事実化につながらないかという問題がございます。  この問題について、大変難しい問題ではありますけれども、政府はどのように考えているのか、その見解をお聞かせいただきたいと思います。
  62. 池田行彦

    池田国務大臣 御承知のとおり、本件につきましての我が方の立場は一貫したものでございますけれども、そういった立場から、これまで韓国側に対しましては、累次の機会をとらえまして我が方の立場を申し入れる等の外交的な努力をしてきたところでございます。ただいま御指摘のございました先般の軍事演習につきましても、その実施を確認した時点で、直ちに我が方の立場を韓国側に申し入れております。  そういうことでございまして、国際法上、既成事実によって領有権が成立する、こういうことはないもの、こう考えておる次第でございます。そうしてまた、今後ともただいま申し上げましたような外交努力は続けていく所存でございます。
  63. 細川律夫

    ○細川(律)委員 私の質問はこれで終わりますけれども、この後、田中委員の方から、沖縄問題を中心に御質問をさせていただきます。  どうもありがとうございました。
  64. 上原康助

    上原委員長 この際、田中昭一君から関連質疑の申し出があります。細川君の持ち時間の範囲内でこれを許します。田中昭一君。
  65. 田中昭一

    田中(昭)委員 社会民主党・護憲連合の田中でございます。  私は、九州の出身でございますから、沖縄問題に絞りまして御見解をお伺いをしたい、こう思っております。  私は、先般の一般質問の際にも申し上げましたけれども、長い間水俣病の問題に取り組んでまいりました。四十年かかってようやく解決に至ったわけですが、私は、その取り組みの中で、何回も何回も座り込みをしたり、一緒に交流会をしたりしてまいりました。  そこで私が考えたのは、何の責任もあの被害者にはない、もちろん罪も落ち度も全くない、そしてみずからは防ぎようもなかった、しかし、何十年も不自由な体で満足に働くこともできずに、一生苦しみの中で生きている、こういうことについて、政治家の端くれとしまして、本当にじくじたる気持ちで悩んだことがございます。これはもう総理はよくおわかりだと思います。  今回のHIVの被害者の場合も、私は全く同じじゃないかと思います。亡くなった方も、今病身で悩んでおられる方も、何の罪もない、防ぎようもなかった。しかし、私は、そこに手を伸べるべき政治、行政というものはこれでよかったのかということをやはり考えなければならないんじゃないかな、こうつくづく今感じております。  政治や行政によっては、罪なき国民が差別をされる、虐げられる、苦しむ、生活権を奪われる、 そんなことがたくさんあるわけであります。私どもは、政治や行政というものはそういうところに積極的に焦点を当てて取り組むことが極めて重要ではないか、こういうことを最近つくづくとみずから言い聞かせておるわけです。  私は、沖縄問題の取り組みに当たっても、そんな心が極めて重要ではないかな、こう実は思っております。  あの戦時中、唯一の地上戦のあの悲劇、戦争の犠牲だということで看過することは私はできないと思います。そして引き続いて、戦後の占領下のあの苦しみ。私どもも、本土並み復帰ということで一生懸命努力をいたしましたけれども、本土並み復帰といっても、復帰後も決して本土並みではなかったと思います。そのことを私たちは歴史の事実としてやはり考えなければいけないだろう、こう思っています。  今、過日の少女暴行事件を契機といたしまして、沖縄問題は我が国最大の政治的課題としてクローズアップされておる、こう認識をしなければいけないと思います。真の意味での解決が必要だ、単なるビジネス的な解決ではいけない、こういうことを私どもは肝に銘じなければいけないんじゃないかな、こう思っているんですが、総理大臣、いかがでございましょうか。
  66. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 御自身の政治家としての体験を踏まえられながらの御意見を真剣に拝聴させていただきました。  私自身、国会に出していただきましてから、対馬丸の学童の遺族の方々へのお世話あるいは六歳未満児への戦傷病者特別援護法の適用など、沖縄の皆さんの御要望を受けて働いたことがございます。  しかし、先般、初めて大田県知事にお目にかかりまして改めてお話を伺ったときに、最初に私の口をついて出た言葉は、申しわけありませんでしたという言葉でございました。私は、第二次世界大戦中、そして戦後の占領下、そして日本が独立を回復いたしました後、施政権は日本にありながらなお施政権下に置かれ、本土復帰がようやく実現をいたしましてからも抱えておられた沖縄の方々の生の悲しみとか苦しみとかという点について、大田知事の話を伺うまで、余りにも自分が知らな過ぎたという思いは率直にいたします。  他方、我が国にとりまして日米関係は極めて大事でありますし、日米安全保障条約の存在がその基盤であることもまた事実であります。  県民の痛み、悲しみというものを受けとめながら、でき得る限りの努力をこの問題について払ってまいりたい、そのような思いでおります。
  67. 田中昭一

    田中(昭)委員 総理のお考え方についてよく理解をいたしました。  総理も大変お忙しい中に訪米をされまして、日米関係の問題につきまして信頼関係をさらに深められまして、特にまた四月に向けての、首脳会談に向けまして一定の道筋を明らかにすることができたのではないか、こう私は高く評価をいたしておりまして、そのことを前提にいたしまして、私は率直に、二つの問題について、沖縄の関連につきまして御意見をお伺いをしたいと思っております。  その第一は、安保体制、今総理も言われましたけれども、安保体制沖縄問題についての基本的な認識の問題なんです。  その第一は、安保と沖縄の問題につきまして、先般の三党新合意でも沖縄問題は、「日米安保条約の目的達成との調和を図りつつ、」ということを明記をいたしております。このことは、私は極めて重要なことだと思っております。  このことと、少女暴行事件後の、例えば沖縄県民総決起大会における決議がございます。これも総理は御理解をしていただいておると思いますが、「主権国家、独立国家として断固とした外交的処置がとれず軟弱外交ぶりを露呈したわが国政府に対して満腔の怒りを表明する。」というのがこの大会の決議文でございます。  私は、沖縄の方々のあの怒りはよく理解をすることができるんです。しかし、前段申し上げました、沖縄問題というのは「日米安保条約の目的達成との調和を図りつつ、」、これもまた極めて重要だ、こう思います。  ある報道によりますと、この事件発生後、アメリカは、大統領を初めオールキャストの顔ぶれでこの問題について謝罪をして、私はこの謝罪というのは単なるヒューマニズムだけでやったのではないと思います、国を挙げて日米関係の修復に走り回ったという報道がございます。日本の反米ナショナリズムに火がついて、その結果、日本側が日米安保条約破棄の動きに出ることを極度にアメリカは恐れた、アメリカにとって日米同盟の解消というのは世界のリーダーの座から落ちる事態になる、こういう報道が実はございました。  逆に、日本の立場は一体どうであったのかということですが、日本の立場は今日まで、何か強力な主張をすればアメリカに安保条約を破棄されるのではないかという逆の心配があった、したがって、ひたすら恐れおののいてきた面があるんではないか、日本アメリカに対して極度に弱腰で、戦わずして外交戦に敗れるような姿勢に終始をし国益を大きく損ねてきたという、そういう問題があるのではないかという報道がございます。  私が申し上げたいのは、今後沖縄問題を解決するに当たっては、この認識というものは極めて重要ではないかということを申し上げたいわけです。もっと申し上げますと、主権国家、独立国家として主張すべきところはきちんと主張するという、そういう態度がなければ、この沖縄の問題については精神論や抽象論では沖縄の県民の皆さん方が納得できるような解決は難しいのではないかな、こういう実は気がいたします。この点について総理、どういうお考えでしょうか。
  68. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 さまざまな角度からの日米関係について、報道等を御引用になりながらお話がございましたが、私は、今日までの日米関係、そのときそのとき、やはり日本側として主張すべき点は主張しながら、その上で決裂に至らないための努力を双方が払ってきた、それが実態ではなかっただろうか、御意見を承りながら、そのような感じがいたしました。  現に私自身、昨年の自動車交渉をいたしておりましたときにも、三〇一条の適用という状況になりまして、EUあるいはアジア太平洋の各国に日本の主張に対する支持を求めましたときに、アメリカも同じようなことをやったわけですが、結果として三〇一条というものに対しては日本側にすべての国が支持をしてくれた。しかし、それと同時に私が忘れられないのは、日米関係がこれによって壊れるような事態だけは何とか絶対に避けてくれということを皆から言われたことでありました。  あるいは、今、沖縄の県民集会のお話を引用されましたが、ちょうどあのとき私は、四極通商代表会議でイギリスにおりました。そして、その日のBBCの二番目のニュースとして、あの光景がほとんど解説のないままにテレビに映し出されましたとき、EU、そしてカナダ、アメリカそれぞれから、日米関係を非常に危惧する言葉が相次ぎました。私がそのとき申しましたのは、よく読んでくれ、こんな不幸な事件があったから本当にみんな怒っている、だけれども、その中に例えば安保条約破棄というスローガンはないぞ、米軍全部出ていけなんというスローガンはないんだぞ、そこを見てもらいたい、その上でこの重みは受けとめてほしいというのが、そのとき私が他のメンバーに説明したことであります。  私は本当に、今委員から御指摘がありましたように、言葉だけで済む問題だとは思いません。同時に、やはり日米安全保障条約を堅持していくという基本方針のもとに、まさにこの条約の目的達成と調和を図りながらという作業は、大変困難なものが現実にはあろうと思います。しかし、それでも私どもは、沖縄県の施設・区域の整理統合・縮小というものに全力を挙げて取り組まなければなりませんし、一歩でも二歩でも前進をさせることが、たとえその瞬間に県民の方々に喜んでいただけないかもしれません、完全な目標達成ではないと言われるかもしれませんけれども、少しずつでも前進させる努力を私は政府として払いたいと思います。  国会にもぜひお手助けを賜りたい、心からお願いを申し上げます。
  69. 田中昭一

    田中(昭)委員 総理の強い御決意をお聞きをいたしまして、本当に安心をいたしました。  私は、やはり交渉事、話し合いというのは信頼関係が基盤でなければ絶対にうまくまとまらない、こう思っております。そういう意味では、今回のクリントン大統領との信頼関係のきずなを強めたということを基盤にいたしまして、我が国は主権国家、独立国家として主張すべきは主張する、こういうことを基本にいたしましてこの沖縄問題を具体的に解決をされるように、特に私はお願いを申し上げておきたいと思います。  そこで、基本的問題の第二の問題について少し御見解をいただきたいと思うのですが、沖縄の問題に取り組むに当たっての今後の展望の問題、将来展望の問題ですね。四月にクリントン大統領が訪日をされます。首脳会談が開かれるわけですが、日米同盟の基盤は日米安保条約であるということは確認がされると思います。  それから二つ目には、東アジアには依然として不安定の要素が存在をする、このことについても認識がなされるであろうと私は思います。  三つ目として、アメリカは東アジアに兵力十万人を維持したい、こういう提起があると思います。在日米軍四万七千名、これらの問題についてもいろいろと議論が展開されるであろう、こう思います。  そして四つ目は、私は、やはり両国は沖縄の米軍基地の整理統合・縮小に努力をする、こういうことについて詰めた議論がなされるであろうと思います。  時間がございませんから前段は省略をいたしますけれども、沖縄の米軍基地の整理統合・縮小について沖縄県から、もうこれは総理外務大臣も御理解をいただいておると思いますが、基地返還についてのアクションプログラムが実は提起をされております。これはもう御案内だと思いますが、二〇一五年を目途に三段階で四十一カ所の米軍基地の計画的かつ段階的な返還を目指す、こういう内容になっております。  私は、当面の措置だけじゃなくて、やはり将来の展望というものをある程度明らかにするということが非常に重要ではないか、こう思っております。  沖縄県としても、国際都市形成整備構想など沖縄県の将来への希望を鮮明にするという努力を今いたしております。平和で豊かな沖縄県をどうつくっていくのか、そのためにも、今回のこの首脳会談の中で将来展望、中期的な展望というものを明らかにする、そして沖縄県が提起をしているこのアクションプログラムなどについても政府としてこたえていくことが必要ではないかな、こういうふうに思うのですが、大変難しい問題であるということは私は理解をしつつ、外務大臣なり総理の御見解をお聞きをしたいと思います。
  70. 池田行彦

    池田国務大臣 お答え申し上げます。  四月の首脳会談におきましてどういうふうな文書を発出するか、これについてはまだこれから調整を進めていくところでございます。日米関係の重要性、その中での安保の重要性ということを、もちろんそれが基本になるわけでございますが、具体的にそのほかの問題についてどのような記述をするかはこれからでございます。  ただ、沖縄の問題につきましても、これまでも進めておりましたが、これから、先般の総理クリントン大統領との個人的信頼関係の構築に至ったサンタモニカ会談を踏まえまして、一層その作業を促進してまいらなくちゃいけないと思います。そうして、そういった作業の四月段階での進展を見まして、それを反映するような何らかの記述をするようになろうかと思いますけれども、今の段階で具体的なことはまだ申し上げられる段階じゃございません。  それから、沖縄県から御要望が出ておりますアクションプログラム、これでは二〇一五年を目指しながら三段階に分けての基地の返還についての要望を出しておられる。また、それとの絡みにおいて沖縄県の将来の構想を提示しておられる。よく承知しておるところでございます。そういったことも、我々政府といたしましても真剣に受けとめなくてはならないとは思っておりますけれども、ただ、それが四月の首脳会談との関連で、どういうふうな関連になっているかと申しますと、そこのところはちょっと、まあすんなりと入ってくる形にはならないんじゃないかな、こんな感じがするわけでございます。  それからまた一点、沖縄県のアクションプログラムは、県側においてもまだこれから地主さんとかあるいはこれまでのいろいろな三事案、十三事案、いろいろございますけれども、そういったものとの間の調整をしなくちゃいかぬ、そういう性格のものであるということも委員は御理解いただいていると思いますけれども、しかし、そういった沖縄の方の御要望あるいは将来展望であるということは、政府としても十分念頭に入れながら将来考えてまいらなくちゃいかぬ、こう思っております。
  71. 田中昭一

    田中(昭)委員 大変難しい問題であることはよく理解をいたしておりますが、今外務大臣がお答えをいただいたように、積極的な御努力を今後引き続いて行っていただくように要請をしておきたいと思います。  時間もございませんが、少し具体的な問題について御見解をお聞きをしたいと思いますが、実は、予算委員長上原先生は沖縄の御出身でございまして、本当に沖縄問題についてはこの場でいろいろ御見解を述べたい、こういうこともお聞きをいたしておりましたけれども、委員長という立場でできませんので、大変役不足ではございますが、私がかわって政府にお願いをしておく、この点についてぜひ総理外務大臣、お受けとめをいただきたい、こういうふうに思います。  そこで、具体的問題について、時間がございませんので簡単に三、四点、現状についてお聞きをしたいと思います。  その第一は、米軍の基地の縮小・整理統合の具体的問題でございますが、先ほどからも御意見がございましたように、当面の具体的問題として、十四事案の一つである普天間飛行場の問題について、先般総理クリントン大統領の話の中でも既に具体的に名前が出されておるわけでございますけれども、この普天間飛行場の具体的な問題について今日どのような状況にまで話が詰められておるのか、どういう展望があるのか。ここのところは、私は、やはり具体的問題のスタートとして、沖縄の問題の解決は単なる抽象論や精神論でない具体的な問題であるという認識に立つならば、これが一つの具体的なスタートになる、こういうふうに理解をするわけでありまして、この点について、今日の現状と今後の展望について第一点としてお聞かせをいただきたいと思います。  それから第二点は、日米の地位協定の問題についてでございます。  政府としては、あの少女暴行事件があった際に、地位協定の十七条の五項(c)の問題などについてはいろいろと議論があったのは御承知のことだと思いますが、しかし、この地位協定全体にして、私はやはりこの際抜本的に議論をして、改定すべきは改定する点がたくさんあるんではないかな、こういう気持ちを持っております。  例えば二十五条で、合同委員会の開催、運営の問題などがございます。この会議の内容などの公開の問題とか、この合同委員会をもう少し充実をするという問題などもございます。第三条では、合衆国の権利の問題などがいろいろ問題になっております。第五条では、公の船舶、飛行機の出入国の問題などもございます。十二条では調達の問題、十三条では課税の問題、十八条では請求権などの問題、こういうのが当面の問題としてやはりメスを入れるべき条項ではないかな、こう思っていますが、この点の議論の今日的な現状と今後の展望について、少し簡単にお聞かせをいただきたいと思います。  それから三点目でございますが、騒音防止協定の締結の問題がございます。特に嘉手納飛行場と普天間飛行場の周辺の住民の皆さん方の生活とか環境の問題は、もうかなりいろいろと問題提起がなされておる問題でございます。厚木などにおいては、この問題については一定の決着が見られておるというふうに聞いております、横田もそうですけれども。したがって、この嘉手納とか普天間飛行場の騒音防止の問題についてどういうふうに今日的に議論が進められておるのか、展望はどうであるのか、時間がございませんから、この三つについて御見解をお聞きをしたいと思います。
  72. 池田行彦

    池田国務大臣 ただいま田中委員、この沖縄の問題に、地元として本当に長い間真剣に取り組んでこられました上原委員長のお気持ちもあわせ質問するというお話でございました。私どももそういったことで、真剣にまた真摯にこの問題について対応してまいらなくちゃいけない、こう考える次第でございます。  さて、今具体的にお話してございました三つの点でございますが、まず、順序が変わりますけれども、最後に御指摘になりました嘉手納並びに普天間における騒音の問題いかんというお話でございますが、この問題につきましては、御承知のとおり、昨年の秋できました特別行動委員会、SACOでございますね、そこに特別に航空機騒音の分科委員会というのを設けまして、現在精力的にその作業を進めております。  御指摘もございましたが、本土の基地におきましては、協定と申しますか、合同委員会でいろいろな合意ができて、それによって騒音問題なんかについても対応しておるわけでございます。そういったことも十分念頭あるいは参考にしながら、この騒音問題について、精力的に作業を進めて、なるべく早く結論を出したい、こう思っておりますので、必ず米側との間で意見の一致を見ることができる、合意に至ることができる、こう考えているような次第でございます。  それから、普天間の問題のお話がございました。この問題につきましては、先ほど他の委員の御質問に対しまして総理の方からもお話、御答弁ございましたけれども、今回のクリントン大統領総理とのお話の中で、沖縄の県民の方々の御要望がいかに強いものであるか、そういったことの例示として普天間という名前が出た、こういうことでございました。  そして、今の作業の現段階で一体どうなるのか、また将来の展望はということでございますが、現段階におきましては、普天間だけではなくて、全体の問題につきまして、基地の整理統合・縮小の具体的な進展ぶりをお話し申し上げ得るような段階には至っていないところでございます。  しかしながら、ことしの秋には整理統合・縮小について具体的な成果を上げなくちゃいけませんし、四月の首脳会談に向かっては精力的に作業を進めて、その段階でそれを踏まえて何らかの方向性を明確にしなくちゃいけない、こう考えておる次第でございますので、今後とも努力をしてまいりたい、こう思っております。  それから三点目でございますが、地位協定の問題でございます。  御指摘のように、十七条五項(c)につきましてはいろいろございました。協定そのものの改定ではございませんけれども、合意をした文書ということで、あのような決着を昨年見たところでございます。  そうしてまた、全体としてもいろいろ抜本的にこの際検討すべきではないかということで、二十五条、三条、十八条その他いろいろ御提起があったわけでございますが、私どもといたしましては、やはり米軍駐留に伴ういろいろな問題について、県民の、住民の皆様方の御負担あるいは御苦労というものを実質的にまた現実的にいかに軽減していくか、こういうことで対処してまいりたいということで、今もそのSACO等の場におきまして、できるものから逐次やっております。先ほどお話し申し上げました航空機騒音の問題もそうでございますし、検疫の問題等々も真剣にやっております。  そういったことで、できるものから着実に早期に解決をしてまいりたい、そういうことで実質的な御負担の軽減を図ってまいりたい、こう考えております。
  73. 田中昭一

    田中(昭)委員 時間が参りましたのでこれで終わりたいと思いますが、沖縄問題に取り組む総理を初め政府としての基本的なお考えについては十分受けとめました。  何回も言うようでございますが、この問題は精神論、抽象論で終わらせてはいけない、現実的に実りあるものをやはり首脳会談の中でも明確にするし、その道筋に沿って具体的に、今後将来に向けてきちんとした対応ができるように、我々、政府は努力しなければいけないだろう、こう思っております。  私たちも、政府一緒になりまして、この問題については積極的に努力をしてまいりたい、こう思いますから、総理を初め政府の皆さん方の今後の御健闘を心から期待をいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  74. 上原康助

    上原委員長 この際、私の方からも、橋本内閣総理大臣、久保副総理・大蔵大臣、池田外務大臣並びに臼井防衛庁長官に一言御要望申し上げます。  これまでの御苦労を多としながら、沖縄県民の意を体して、目に見える形での米軍基地の整理縮小を早期に実現していただきますようお願い申し上げますとともに、並びにその他の基地関係懸案事項の解決のため、なお一層のお力添えを賜りますよう、強く御要望させていただきます。  これにて、細川君、田中君の質疑は終了いたしました。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  75. 上原康助

    上原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。枝野幸男君。
  76. 枝野幸男

    枝野委員 新党さきがけの枝野幸男でございます。  本日は、外交安全保障問題等集中審議ということでございますが、外交的な安全ということだけではなくて、残念ながら国内で日本国民の健康、安全が害されているという問題が、従来から大問題でありましたが、ここのところ大きな問題となっております薬害エイズの問題でございます。「等」の中の問題ということで、この問題について私からお尋ねをさせていただきたいと思っております。  まず、本来これは立法府があるいは政治が口を出す話ではないかもしれませんが、この薬害エイズ問題に関連をいたしまして、当時のエイズ研究班の班長であります前帝京大学副学長の安部英が殺人容疑で、そして、当時の厚生省生物製剤課長であります郡司篤晃が偽証罪で刑事告訴を受けております。  また、私が従来、厚生委員会あるいは質問主意書等で御指摘を申し上げておりますとおり、この問題については、私も弁護士、法律家の端くれとしてさまざまな資料を見させていただくと、当時の関係者の中に、時効の問題が若干ございますが、業務上過失致死罪等の犯罪の成立する余地もかなりあるのではないかというふうに思っております。  そこで、こうした告訴されている事件、そしていろいろと疑念があると思われている薬害エイズにかかわる刑事事件について、どのように対応されるおつもりであるのか。特に、先週金曜日の衆議院法務委員会で、長尾法務大臣が所信表明の中で住専問題についてかなり踏み込んだ表現をし て、捜査に全力を挙げるということを言っていただいております。住専問題も大切な問題でありますが、住専問題以上に、こちらは人の命がかかった問題であります。住専問題以上に最大限法務大臣として踏み込んだ表現で、この薬害エイズにかかわる刑事事件について、検察当局、法務当局が努力をしていただくというお約束をいただければと思います。
  77. 長尾立子

    ○長尾国務大臣 御指摘の薬害エイズにかかわる問題につきましては、東京地方検察庁において、数件の告訴、告発を受理して、現在捜査中と承知しております。  検察当局におきましても、薬害エイズ問題が人の生命にかかわる重大かつ社会的関心の高い問題であることを十分に踏まえ、広い観点から証拠を収集し吟味した上、法と証拠に基づいて適正に対処するものと思います。
  78. 枝野幸男

    枝野委員 ぜひ、国民の期待にこたえて、そして被害者の皆さんの期待にこたえて、全力で捜査をしていただきますようお願いを申し上げます。法務大臣、ありがとうございました。  さて、この問題では、今三月末までに和解をしようということで努力が続けられておりますが、和解の一つの争点ともなっております恒久対策という問題がございます。患者の皆さんは、今なお発病の恐怖におびえながら、あるいは病気と闘いながら日々を過ごしておられます。  そうした中で、従来から拠点病院というシステムの指定を厚生省からしていただきまして、その拠点病院を中心に医療がなされているということになっております。ところが、残念ながらこの拠点病院の指定には地域的な偏りがあると聞いております。例えば、北海道には全道で一つも存在をしていなかったというような問題もあります。こうした方は飛行機に乗ったりして、特に発病予防の治療に当たっておられます。  また、せっかく拠点病院を指定をしておきながら、その指定された病院の名前が一般に、あるいは患者さんにすら公開されていないという現実もございます。これは残念ながら、医療機関側の一部であろうと思いますが、エイズという病気に対する偏見と差別、そしてそれに基づいて、指定自体を嫌がる、あるいは公開を嫌がるという傾向が存在をするのではないかと思っております。特に、原告被害者の皆さんから生の話を伺いますと、最近は少しは改善されてきたとはいえ、お医者さんあるいは医療関係者の中からすら、エイズの患者さんは診たくないというような、とても考えられないような診療拒否をされてきたという歴史がございます。  言うまでもございませんが、エイズという病気は、きちんとした対応さえすれば、お医者様はもちろんのこと、関係者あるいは院内感染などという危険は全くございません。全く偏見に基づいた差別的な取り扱いでございます。  そこでぜひ、これは医療従事者の皆さんにとっての倫理の問題であると思いますし、患者さんの本当の意味での救済というためには、まず出発点として最低限やらなければならない問題だと思っております。少なくとも厚生省が、あるいは国がきちんと指導監督のできる公の病院においては、こうした指定を嫌がるとか公開を嫌がるとか、あるいはそもそもエイズの患者さんに対する診療を嫌がるなどというようなことが今後二度と起こってはいけないというような指導といいますか、そういったことを十分にしていかなければならない。  そして、それはエイズの直接の治療だけの問題ではございません。薬害エイズの患者さんといえども、例えば歯が痛くなって歯医者さんにかからなければならない、目が悪くなることもあるかもしれない。そうした包括的な医療体制をしっかりと国の指導のもとでやっていただかなければならないと思っておりますが、まず、国立病院あるいは医療全般の関係として厚生大臣に、そして大学病院を所管をしておる文部大臣に、それぞれ決意をお伺いしたいと思います。
  79. 菅直人

    ○菅国務大臣 枝野委員がおっしゃいましたように、拠点病院は今順次整備を急いでおりまして、現在百六十二医療機関にお願いをいたしております。北海道、青森がまだですので、今重点的にそれをつくれるように進めております。  その中にありまして、国立病院・療養所においての拠点病院は二十五カ所になっておりまして、積極的な診療体制を整えるとともに、その他の国立病院・療養所においても適切な医療を提供するよう、各種会議等を通じて現在行政を行っているところであります。  今後も国立病院・療養所においては、各都道府県が選定するこのエイズ拠点病院を中心として、今枝野さんの言われましたいろいろな診療科、あるときには歯科ですとか眼科ですとか、そういういろいろな診療科の連携を図って、適切な医療が提供できるように進めていきたいと考えております。  なお、公立病院もかなり多くエイズ拠点病院にしていただいておりますが、これらの公立病院についても十分な機能が果たせるよう、設置者である都道府県に対して働きかけを行ってまいりたい、こう考えております。
  80. 奥田幹生

    ○奥田国務大臣 エイズ患者に対する医療体制の充実が必要なことは、先生のおっしゃるとおりでございます。  文部省所管をいたしますのは国立大学の附属病院における患者さんの治療でありますが、これにつきまして、現在その関係で五億円ほどで予算措置をしてもらってやっておるわけでありますが、今御審議いただいております新予算では一億円ふやしまして、そうしてさらに充実した医療体制ということで取り組んでまいりたいと思っております。
  81. 枝野幸男

    枝野委員 文部大臣、お忙しいところをありがとうございました。  もう一つ、この拠点病院を中心とする医療体制と同時に、和解の中で大きな争点になるのが定期金の給付でございます。  裁判所が示しております一次和解案の中では、一時金として四千五百万、そしてそのほかに、その補完的措置としての恒久対策ということが言われております。そして、間もなく出ると言われております二次和解案の中にその具体的な内容が示されていくことと思っております。  日本は実は、薬害に限らずエイズの感染者の方の発病までの時間というものが欧米諸国に比べて非常に長いと言われております。それは、一生懸命十分な治療を、あるいは発症予防措置をとっていればエイズの発病自体はかなり長期にわたって抑えられるという証明であります。しかも今、幸いなことにも、エイズが不治の病であるというのもそう長くはないのではないか、あと三年、五年研究が進めばエイズに感染をされた皆さんの治療そのものができるようになるのではないかという期待がかなり高まっております。  そうした中で、ぜひともこの薬害エイズの被害者の皆さんに十分な発症予防措置あるいは発症後の治療措置というものをしていただくためには、例えば拠点病院が充実をしていったとしても、自宅から歩いていけるところに病院があるわけではありません。通院をするのにも例えばタクシー代がかかるとか、場合によっては電車賃、飛行機代がかかるという現実がございます。介護の問題も、発病後の介護はプライバシーなどの問題もあって、家族が仕事を休んで、あるいはやめて介護をしなければならないという現実がございます。そうした部分を、病状に応じて定期金をお支払いをさせていただくことによって、その定期金で十分な発症予防あるいは発病後の治療をしていただく、これは最低限必要なことではないかと思っております。  具体的な金額等については裁判所の和解の場で今議論をされているところでございますので、その点についての御見解は結構でございますが、こうした健康を管理するための手当あるいは発病後の介護のための手当について、裁判所の第二次和解案が出ましたら、ぜひ前向きに取り組んでいただきたい。担当の厚生大臣、そして財政を担っていらっしゃる、お金を出していただく大蔵大臣、そして大変大事な話でございます、総理の御決意をお聞かせいただければと思います。
  82. 菅直人

    ○菅国務大臣 ただいま枝野委員の方からお話のありました恒久対策につきまして、現在和解の協議中で、その中で議論が進んでおります。  これに関連しまして、平成八年度予算の中では、医療体制の充実及びエイズ医薬品の研究開発の推進を図ることに重点を置いていただいて、医療体制の充実には対前年度三倍増の二十一億円、エイズ医薬品等の研究開発の推進には同じく倍増の約十五億円を確保させていただいたところであります。  また、患者の皆さんが強く求められているエイズ治療研究の向上について、さらに検討を進めておりますとともに、アメリカ等で使用されているエイズ薬で、まだ日本で承認されていないものについても、治験薬として患者の方々が使用できるよう、現在、企業の協力も得て、その実現に向けて努力をいたしております。  御指摘の定期金給付などの問題について、患者の皆さん、原告の皆さんから具体的な提案がなされていることも承知をいたしております。それぞれ、これは御承知のように、国の責任、同時にメーカーの責任といったこともありまして、そういう中で、和解の協議の場で、何とかこの問題も含めて早い時期に合意を得て解決をしていきたい、その努力を進めている、そういう状況であることを申し上げさせていただきます。
  83. 久保亘

    ○久保国務大臣 ただいま厚生大臣から御答弁を申し上げましたように、現在、和解の協議が継続中でございます。早期に和解による解決ができますように全力を挙げたいと思っております。和解が成立をいたしました場合には、誠実に措置してまいりたいと考えております。
  84. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先日も厚生大臣と御相談をいたし、政府責任とともに和解への方向を打ち出していただいたところでありまして、今後一日も早く和解が成立をいたしますように、そしてその和解が成立いたしました段階で、政府として、大蔵大臣から御答弁がありましたように、そのお約束を誠実に実行してまいりたいと存じます。  国会におきましても、厚生委員会を中心に非常な御協力をいただいておりますこと、この場をかりてお礼を申し上げます。
  85. 枝野幸男

    枝野委員 ありがとうございました。  厚生大臣からありました製薬会社との問題も含めて十分な対応をお願いを申し上げます。  さて、薬害エイズ問題ではもう一点、まだまだ真相のすべてが明らかになっていないという問題がございます。具体的な細かい真相究明の問題については、来月一日に厚生委員会の場でも集中審議が行われるという予定でございますので、この場ではあえていたしませんが、むしろその根本となっている問題についてお尋ねをさせていただきます。  これは、いわゆる郡司ファイルと称されている厚生省の内部の資料が発見され、公になった問題であります。  まず、こうした資料が発見をされて公表されたという事実に対して、マスコミあるいは患者の皆さんから高い御評価をいただいている一方で、一部の報道によりますと、事務当局の皆さんは、こんなものを公開したのはよくなかったんじゃないかというような発言が、非公式ですが、報道でなされているというふうに伺っております。まさかそんなことはないと思うのですが、今回、資料が発見されたこと、それを公表したことについて、事務当局としてどのように評価をされているのか、業務局長に御答弁をお願いします。
  86. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 関係資料の公表につきましては、国民の関心の高いこの問題につきまして、当時の状況や事実関係を公開するという点で意義のあるものと考えております。
  87. 枝野幸男

    枝野委員 そのような方向で今後も進めていただきたいし、またやっていただけるものと信じておりますが、ただ、今回の資料の公表については、出てきたこと自体はよかったのですが、大変大きな問題を残しております。  これも報道等によるものでございますが、例えば、前厚生大臣の森井忠良先生は、厚生省事務当局に対してかなり強く、本当に資料はないのかということを、捜せという指示を出して、そのときには、捜したにもかかわらず見つからなかったということ。何度も何度も森井前大臣はそれについて確認をしたのに、そのときには見つけ切れなかった。  あるいは、昨年の十月二十四日の衆議院厚生委員会で、私がやはり荒賀業務局長に対して、資料は本当にないのかという御質問を申し上げましたら、二度重ねてお尋ねをいたしましたが、「当時の事情は調べてみましたが、残念ながら、資料が保存されていないという状況でございます。」という御答弁をされております。  さらに、昨年の十一月十四日付で、私が土井衆議院議長を通じて政府にお尋ねをしました質問主意書、その回答の中でも、やはりこのエイズ研究班関連の資料について、どういうふうになっているのか、ちゃんと調べたのかということをお尋ね申し上げましたら、「厚生省内の書庫等の精査をしたが、確認できないものである。」というような御答弁を、政府として土井議長あてにされておられます。  このことの責任云々ということは、余り強く言いますと、隠し切れるまで隠してしまおうということになってしまっても困るのでありますが、少なくとも、これだけ明確な幾つかの話が出てきているときに、当時の事務当局の担当者として、例えば前厚生大臣に対する責任をどうお考えになっているのか。  あるいは、衆議院議長から内閣に対しての質問に対する、土井議長に対する答えであります。衆議院に対する責任をどのようにお考えになっているのか。  さらに言えば、それは国民の知る権利に基づいてお尋ねを申し上げているのでありますから、国民に対してどのように、この精査したが確認できなかったという回答をお考えになっているのか。荒賀業務局長の御見解をお伺いしたいと思います。
  88. 荒賀泰太

    荒賀政府委員 従来確認できないとしてきました資料が発見されましたことにつきましては、過去の調査が十分でなかったことにつきまして、歴代厚生大臣に対しまして、事務当局として深く反省をいたしております。  また、従来の国会答弁に関しましても、このような結果になりましたことについてはまことに申しわけなく思っており、今後十分気をつけてまいりたいと存じます。
  89. 枝野幸男

    枝野委員 人事院においでいただいていると思うのですが、国家公務員法の九十八条一項にはこう書いてあります。「職員は、」「上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。」  前厚生大臣に対する事務当局の対応というのは、これに違反をしていないでしょうか。  さらに、九十九条ではこう書いてあります。「職員は、その官職の信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。」  私は、厚生省の中にもたくさんお知り合いがございます。たくさんの方が一生懸命この国の福祉のために働いていらっしゃいます。そうした中で、多分これは荒賀局長自身でもないのだと思います、どなたかが見つけ切れなかったというところ、その方は、この厚生省の、あるいは政府の官職の信用を傷つけた、あるいは厚生省全体の不名誉となったと、この公務員法に違反はしないでしょうか。
  90. 弥富啓之助

    ○弥富政府委員 お答えを申し上げます。  一般論として申し上げさせていただきますが、職員が、上司から職務に基づきまして指示を受けた場合、これに対して、虚偽の報告をし、あるいは職務を怠った場合には、国家公務員法九十八条第一項あるいは同法第九十九条に抵触する場合があると存じております。  具体的なケースがこれに該当するか否かにつきましては、任命権者が諸般の事情を総合的に勘案をいたしまして判断されることであると存じております。
  91. 枝野幸男

    枝野委員 この問題については、二つの問題点があると思っております。  まず一つ目なんですが、そもそも情報を公開をしていないからこういうことになるんだ。初めから、例えばエイズ研究班の議論などがそもそもオープンになっていれば、こんな問題は生じない。役所の持っている情報というものを国民に対して明らかにしないという姿勢が、そもそも隠すとか隠れていたとか、見つかったとか見つかっていなかったとかという話になるのだというふうに思っております。にもかかわらず、例えば、昨日の報道によりますと、民事訴訟法の改正に当たっても、国の国家機密というだけで裁判所にさえ資料を出さなくてもいいというような条文が残るというようなことも聞いております。  そもそもこういった問題を再発させないために情報公開を徹底しなければならない、これが、薬害エイズ事件の、現時点までわかっている一つの大きな学んだことではないかというふうに思っております。  現在、情報公開法の議論が進んでおりますが、今回のこの薬害エイズのいわゆる郡司ファイルの問題などというものを、ぜひその議論の中で十分に考慮して、この情報公開法の制定の議論を早急に進めていただきたいと思いますが、総務庁長官、いかがでしょうか。
  92. 中西績介

    ○中西国務大臣 今指摘をされましたエイズの資料問題についていろいろお答えをそれぞれいたしましたけれども、情報公開につきましては、行政改革委員会で行政情報公開部会をさらに設けまして、精力的に専門的に今論議をいたしておるところであります。現在まで三十一回、週一回の割合でずっと論議を詰めておりますが、現在、小委員会を設置をいたしまして、さらに憲法あるいは法律等を含みまして関係の問題を検討いたしております。  十二月までにこれを同委員会から意見具申をいたしまして、これに基づいて具体的に措置をしていくということを今考えております。  特に公開につきましては、公正あるいは民主的な行政運営をしていかなくてはならぬわけでありますから、国民の信頼を確保しそして取り戻すためには、行政改革委員会から提出される意見を尊重いたしまして、皆さんの期待にこたえるよう積極的に取り組んでまいりたいと思っております。
  93. 枝野幸男

    枝野委員 例えば、今回の薬害エイズにかかわるこのファイルの問題などについての経緯その他というものを資料としてまとめて、審議をいただいている審議会の皆さんにお伝えするなど、今回のことを、教訓というものをしっかりと生かすような工夫をぜひお願いをしたいと思います。  もう一つ、現時点まででこの薬害エイズ問題について、これは実は住専問題などにも共通をする今の日本の抱えている一つの大きな問題であると考えておりますが、私は、行政機構の匿名性、名前が出てこない、組織として何か決めてしまうと個々の人間の責任が全く表に出てこないという仕組みそのものをそろそろ見直すべきときではないか。  先ほどのファイルが出てくる、出てこないという問題についても、まさか局長が自分で書庫の中を捜して、あるいは見つからなかったと言ったわけではないでしょう。どなたがどこをどう捜して見つからなかったのか、それが今度はだれがどう見つけたら出てきたのか。具体的な個人の人間性というものか、あるいは一生懸命やっているかどうか、個人の問題というものに最終的には行き着かなければいけないと思っています。  あるいは、そもそも薬害エイズの問題自体が、いっどこでだれが今回問題になっているような決定をしたのかということが、少なくとも役所の外からは全く見えないで、それで五年、十年たってしまうと何が悪かったのかはっきり表に見えてこないという状況になっているわけであります。  そしてまた、この公務員という問題をいえば、既に報道されておりますとおり、天下りの問題、例えば退職後五年間まで天下りできない期間を延ばそうという議論があるようでございますが、少なくとも一定の幹部以上の方については一生関連企業には天下りできないという法律をつくったとしても、私も大学で憲法を勉強した法律家の端くれでございますが、憲法違反になるとは到底思えない。  ぜひ天下りの問題、公務員の責任の問題について広範かつ抜本的な御議論を始めていただきたいと思いますが、総理、いかがでしょうか。
  94. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 公務員が公共の利益のために全力を尽くす、そして任務の遂行に当たることは、これは当然のことでありますし、そうした観点から、今の委員の御指摘は私も拝聴をいたしておりました。そして、そうした視点を持ちながら、政府としても引き続き公務員の意識の徹底に努めていきたいと考えております。  また、たまたま委員は天下りを例に引かれましたけれども、それに限らず、行政をめぐる環境の変化という中で、人事管理政策といいましょうか管理施策といいましょうか、こうしたものについても引き続き検討を加えていく必要があると思います。
  95. 枝野幸男

    枝野委員 さらにもう一、二点お尋ねしたいことがございましたが、時間でございます。  この薬害エイズの問題は、被害者の救済という問題とそして再発防止のためのさまざまな諸政策という二つの観点で、そしてその基礎になる真相究明という観点で、これはもう厚生省だけの問題にとどまらなくなっております、ぜひ政府一体となって御努力をさらに進めていただくようお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  96. 上原康助

    上原委員長 これにて枝野君の質疑は終了いたしました。  次に、中野寛成君。
  97. 中野寛成

    中野委員 新進党を代表して、若干の質問をいたしたいと思います。  今、日本を取り巻く国際環境は大変厳しい、そしてまたある意味では綱渡り的な要素を持っているというふうに感じるわけであります。特に、きょうの質問のテーマは、私流に位置づけると、選挙外交ということかなという感じがするのであります。  というのは、日本国内の選挙のことを言っているのではありませんで、言うならば、既に台湾で総統選挙が始まりました。アメリカ大統領選挙の、ある意味では真っ最中と言っても過言ではないと思います。ロシアの大統領選挙、そして韓国の国会議選挙が間もなく始まります。また続いて、韓国の場合は来年ですが、大統領選挙に向けて、既にその前哨戦的な動きが始まっていると言っても過言ではないと思います。  また一方、中国は三月五日から、いわゆる国会に当たる全人代、全国人民代表者会議が開かれる。そういう中で、言うならば、急成長を遂げている経済界と、そして一方軍部と、そして江沢民体制がその中で守り切れるかどうかという問題と、言うならば、それぞれの国においては、選挙あるいは国会という民主主義の審判を受けるために、それぞれの国のリーダーがいろいろな形で苦労をしている、または四苦八苦しているということではないかと思います。  よって、選挙中であるということのフィルムをかけて見なければいけませんし、そしてまたフィルターを通して見なければならないというところでございますので、ここで私がお尋ねをいたしましても、相手の立場をおもんばかりますとなかなか御答弁も本当のことを言いにくいという部分があるかもしれません。しかし、国民の立場から、そこはでき得る限りわかりやすく、国民理解を求めるための努力をするのは我々国会の務めでありますから、私も率直にお尋ねをしたいと思いますし、そしてまた、でき得る限り率直にお答えをいただきたいというふうに思う次第でございます。  さてそこで、まず最初に外交基本方針について総理に伺います。  先般の施政方針演説橋本総理は、「外交面での私の基本方針は「自立」であります。」というふうにおっしゃったわけであります。総理の言われる自立外交とはいかなる外交なのか、そしてその自立の反対語は何なのか、今日までの外交自立てはなかったのか、そのことについてまずお伺いをしたいと思います。
  98. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、確かにその自立外交という言葉を用いたわけであります。そして、それは、みずからやはり国際社会に対して我が国として受け入れられる理念を打ち出し、そしてそれに基づいてみずからのイニシアチブにより積極的に国際社会のために活動をしていく、私なりに申し上げるならば、新しい国際秩序の構築に向けて積極的な役割を果たしていく、そう言いかえてもよいかもしれません。  そして、午前中の御論議の中で、私は、そうした方向の一つの例示として、昨年のAPECに臨んだ日本政府考え方、これを例示として出しました。このときには、協調的、自主的体制という考え方を打ち出したわけでありますが、昨年の前半から夏ごろにかけまして、これはアメリカもそうでありましたし、その他の国々の幾つかもそうでありましたが、果たしてその協調的、自主的な体制というものがAPECになじむのか、それぞれの国が自分の行動計画をつくってそれを他の国がサポートするという仕組みがうまくいくのか、そうした懸念を示されました。しかし、最終的に各国が日本イニシアチブによりこのAPECの大阪会合ということを締めくくることができました。私は、これは一つ自立の例だと思っております。  そして、私は、こうした行動というのは、国家間の相互依存関係の深まっております今日、我が国にとりましてその安全、繁栄を確保していくためにも最も望ましい道だと考えております。  一つ例示としてそのように申し上げた次第でありまして、過去とどう違うか、過去をどう評価するかと言われますなら、私は、それぞれの時代において、例えば私の恩師であります佐藤総理沖縄の返還というものに視点を見据えて日本外交を組み立ててこられましたし、その時代その時代にふさわしい外交というものが行われてきた、そのように思います。
  99. 中野寛成

    中野委員 私は独立国としてその外交基本自立という姿勢があることはむしろ当然だと思いますし、今総理の御答弁をお聞きしておりますと、決して私が違う考えを持っているとは思わない。総理のその御答弁を私もまたそのとおりだと考えたいと思います。  ただ、問題はその後なんであります。自立というのは逆に言えば当然のことなのではないのか。むしろ日本が、これからの世界のありよう、その中で日本がどういう役割を果たそうとするのか、そのことについて日本独自のビジョンを打ち出し、そして見える外交をすることによって世界の国々から、日本が何を考えているのか、日本がどういう国であるのか、日本が何をしようとしているのかということがわかり、それを批判したり評価したりすることができるというその姿を世界に明らかにするということが極めて重要だと思うのであります。  そういうことをしなければ、これから極めて重要になりますのは多国間外交です。今言われたAPECもその一つでありましょう。その一番極端といいますか、一番大きなものが国連外交でありましょう。そのような多国間外交が必要なときに、みずからの主体性を持ち得なければ多国間外交の中で埋没してしまうことも事実であります。  よって、私どもは、橋本総理自立とおっしゃられる限りは、そこに明確な日本外交のビジョンを示すことが肝要だというふうに思うのでございますが、いかがでしょうか。
  100. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私も、これは中野さんのおっしゃることを否定するものではありません。  そして、その意味で、例えば国連の中において日本が求めております国連改革、これはややもすると最近財政改革が先行して出てまいりますけれども、国連の財政が非常に問題があることは事実といたしまして、財政だけではなく、経済社会、安保理それぞれの改革を我々は求めております。そして、その中で、他の国々の支援を得ながら、そして国民理解を得ながら、安保理の常任理事国になれば日本はその責任を果たしていく用意があるという姿が一つここにはっきりと出されております。  これは、現在の例えば安全保障理事国というものが核保有国だけで成立をしております中に、他にどこの国が入ってくるか私はわかりません、しかし、もし日本がその位置を占めた場合、核兵器による攻撃というものを受け、被害を受け、多数の人命を失い、被爆という体験を持った唯一の国が安保理に入るということになります。そうした立場で、国際社会の中で核兵器の廃絶に向けての声を出していく、これも私は日本一つの大きな役割だと思います。  あるいは、昨年のAPECの中で、二十一世紀のアジア太平洋地域というものを考えましたときに、この地域の非常に大きな経済発展というものが見込まれる一方で、その経済発展の制約要因として、人口の急増とそれに伴う食糧、そしてエネルギー、そのエネルギーの消費に伴う環境といったものが懸念材料として、各国の合意を得て、これから注意しなければならない成長制約要因と位置づけられました。その前年から日本はその問題を提起し、このアジア太平洋地域におけるエネルギーの分析に手を染めております。  私は、いろいろな分野があると思いますけれども、例えばかつて昭和四十年代の半ばに、我々は公害列島日本と言われるぐらい環境破壊の、環境の限界を見きわめることができず、各地に公害を発生させました。その後の大変な努力の中で、いわゆる従来型の公害というものは既に存在を社会が許さないところまで参りましたけれども、人口の集中による大気の汚染とかあるいは水質の問題とか、我々は今も苦労しておる問題を抱えております。  しかし、今後企業活動の盛んになる中で起きるであろう環境破壊に対しては、我々は十分なノウハウを持って、これから経済発展を遂げようとする諸国に日本と同じ失敗を犯さずに経済発展を遂げてもらえるだけの知識を持っておると思います。こうしたものを提供していくこともありましょう。さらに、技術移転等の進む中で、むしろ貧困というものと闘っていける力をそれぞれの地域につけてもらう。さまざまな役割が私は日本にあろうと思います。  現在、地球上には歴史的な、あるいは宗教的な、民族的なさまざまな要因による対立が東西二大陣営の対立という時代から変化した中でも続いておるわけでありますが、我々は我々のいわば切り口から尽くしていき得るものは多々ある、そのような思いを持っております。
  101. 中野寛成

    中野委員 国連に関連をして、まず総理の今のお答えを聞きますと、我が国のやるべき一つのテーマとして、具体的な、そしてかつ地道な貢献策がどういうものがあるかということについて、今例示をされたと思います。  それらのことについては、私どもは当然なさなければならない役割だと思いますし、とりわけこれからのエネルギー問題を考えますと、化石燃料を中心にした公害の問題は、これからの開発途上国にはむしろこれからの問題として大きくなっていくであろうと思います。しかし、同時にまた、ロシアや中国のエネルギー事情を考えると、これは恐らく核エネルギー大国になるだろう、言うならば原発大国になっていくだろう、こう思うわけであります。  そういたしますと、その安全性等について果たす役割というのは、日本の場合にはますます大きくなる。そしてまた、それは二国間もありましょ うが、国連を通じてやらなければいけないこともありましょう。その国連で今なすべき我々の役割として、特に安保理の問題が欠かせない要素であると思います。あらゆる問題の根幹はそこから派生するからであります。  今国連の姿を見ておりますと、国連の力が大きくなったのか小さくなったのか、むしろわからない状況に差しかかっているというふうに思います。しかし、東西冷戦構造がなくなった今、国連の役割は間違いなく大きくなっているし、大きくならなければならないと思うのであります。そのときに、より一層これから国連を中心にして世界の平和を構築していこうと思いますと、平和のための国連のシステムというものを改めて見直し、確立していかなければなりません。  ちなみに、東西の対決はなくなりましたが、国連をじっと見ておりますと、私はいつも申し上げることですが、少数の大国と多数の小国との間の葛藤というのは常に続いてきました。今も続いていると思います。そして、それは時に、ややもすると国連民主主義のあり方を問われることにもつながります。また、大国の国連負担金の支払い状況にもそのことが影響を与えております。  ということになりますと、我々は、やはり五十年たった今日、しかもことしは国連加盟四十周年を迎える我が国であります。また、国連負担金は最も多く日本は払っているわけであります。そして国連に対して、これから日本常任理事国として積極的に名乗りを上げる。すなわち、国際社会で意思表示をしないことは、ないも同然であります。むしろこれは、日本からこういう役割を果たしたいという意思表示をみずからすることが大切なのだ、そう思うのであります。  しかし、先般の総理の所信表明演説では、その積極的な言葉は聞かれませんでした。お気持ちは私はきっと別にある、こう信じたいと思いますが、しかし私は、その常任理事国でないからこそ今日本は大胆に提言ができるという現在のポジションの有利性というものを逆説的に考えて提言するべきではないか、こう思うのであります。  国連改革についての姿勢、情熱をお聞かせいただきたいと思います。
  102. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先刻多少触れましたけれども、今大変残念でありますが、先日一時帰国をされた小和田大使の報告を伺いましても、ややもすると財政問題に国連内部の議論が行ってしまいそうである、そして、日本としては、ほかの問題をさておいて財政問題にだけ議論が行くことを何とか食いとめたい、これは率直なお話としてございました。  そして、私から小和田大使にお願いをしましたことも、また明石さんがお見えになりましたときにお伝えをしたことも、まずその分担金を払っていない人からちゃんと払わせろ、それがまず先だと。そして、それと同時に、やはり国連の中でむだを省き、あるべき財政の姿というものを出してくれ。  日本は今まで分担金の支払いについて、多少ともに、むしろ早めるぐらいにして負担をしてきている国である。だけれども、ほかの国が払わないものを何でもレシートを回されて払えるようなものではないんだということと同時に、安保理の今後のあり方についての議論、あるいは経済社会に対する議論、こうしたものもできるだけ速度を上げてもらうように実は大使にもお願いを申し上げ、明石さんには、ガリ総長が見えたときにそうした問題を踏まえてお話をしたいということを伝言したばかりであります。  私は、国連の現在動いている姿とかけ離れた理想論をぶつけようとは思いません。しかし、やはり事務総長が見えましたとき、我々として求める姿についてはお話を申し上げたい、そのように思います。
  103. 中野寛成

    中野委員 私は、国連財政の問題は総理がおっしゃるとおりだと思います。しかし、財政の問題にかかずりあって、ほかの基本的な国連のあるべき姿について議論ができないのでは困るわけであります。  よって私は、財政問題はもう当然、払っていないやつに払わせろ、これに尽きると思うのでございまして、むしろ国連改革について、私は、主要国が国連改革のビジョン、そういうものを話し合うサミットをやってもいいと思うのです。日本が国連加盟四十周年記念行事として日本に招致したらいかがでしょうか。そして国連のあるべき姿を、五十年たって制度疲労も起こしている、いろいろ行革もやらなければいけない。しかし同時に、新しい世界平和戦略として国連が果たす役割というものが生まれてきた。PKOだって、ある意味では経験法則的に積み重ねてきただけであって、国連憲章からすれば、これはまだあいまいであります。  それらのことについて、私はもっと積極的に提言をするという姿勢があっていいのではないか、そしてその一環として、日本常任理事国入りを積極的に希望するということをむしろみずから手を挙げるという姿勢こそが本当の自立外交と言えるのではないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  104. 池田行彦

    池田国務大臣 先ほど総理からも御答弁がございましたが、ただいまの委員のさらなる御質問を踏まえまして、私から若干補足させていただきたいと思います。  国連の改革のあり方について、我が国として積極的に提言をするべきではないか、私どももそのように考えておりまして、財政改革と同時に、ただいま委員御指摘のように、これからの世界の中で、安全保障理事会の担わなくてはいけない役割、随分それはふえてくると思います。そういったものに的確に対応していくためにはどのような安全保障理事会のあり方が正しいのか、今国連の五十周年ということを踏まえまして、総会において非常に精力的にその作業が進められておるところでございます。そういった中で、我が国としても具体的な提言をし、なおかつ我が国として常任理事国としての責任を果たす用意があるということを明確に示しておるところでございます。  なお、おっしゃいました経済社会理事会等の関係でも改革の必要性が痛感されておりますので、そういった三つの主要な改革テーマというもののバランスのとれた形での改革をぜひやってまいりたい、こう思っております。  それでなお、主要国の間でこの問題についてサミットをという御提言がございましたが、これは国連の性格から申しまして、それからまた現に、先ほど申しましたように、国連において作業が進められておるということを考えまして、今はそういった国連の既に動いている場において、我が国としての立場というものを鮮明にしながら国連改革に資してまいりたい、こう思っておる次第でございます。
  105. 中野寛成

    中野委員 国連改革についての話が進んでいるとおっしゃるが、目に見えない。日本が何を主張しているかもわからない。むしろ今我々の認識で最近何か提案があったというものを記憶をたどるとすれば、それは昨年秋の国連総会アメリカの国連大使が、これは財政の問題を中心にして、言うなら国連行革ですね、そういうことの提案をしたのだけが唯一最近の私の記憶であります。私はもっと前向きの議論というものを、あれはアメリカ財政事情を私は反映しているだけだと思っておりますけれども、日本の場合にはもっと積極果敢に具体的な提言をなすべきだというふうに思います。  このことばかり言っておられませんから次へ行きますが、次に、日本の平和を守っているもう一つの要素は日米安保条約であります。  さてそこで、よく言われますが、冷戦時代と冷戦後では安保条約というものの位置づけというものは変わったのではないのか、こういうふうに指摘する人もいるわけであります。私は、よく日米安保条約の堅持だとか維持だとかいろいろ言われますけれども、今日まで日本とそしてアジアの平和を守るために最大の役割を果たした日米安保条約というものは、それを評価し、そのベースの上に立ってより一層の平和と繁栄を築き上げていくという解釈でなければならないだろう。  だとするならば、日米安保条約の発展ということでなければいけない、その精神の発展でなければいけない、こういうふうに思うのでございます。よって、日米安保条約、それは確かに条約の文言は堅持かもしれません、維持かもしれません。しかしながら、これからは日米安保条約精神の発展を我々は考えるべきときにあるというふうに思うのであります。  これは単に日米の問題だけではありません。そのアジアの中で果たしている日米安保条約の役割というのは極めて大きいわけであります。そのことに気がついている国々もあります。気がついていない日本国民もいます。この日米安保条約の果たす役割というもの、これについて政府はもっと積極的に内外に説明をしていく、訴えていく、そのことが極めて重要ではないか。そのことが日韓関係や日中関係等いろいろなものにいい影響を与えると思うだけに、私はもっと政府の積極性が欲しいと思いますが、いかがお考えでしょうか。
  106. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 もっと政府が努力しろというお言葉につきましては、そのとおり受けとめて、我々一生懸命にこれからも努力をいたしたいと思います。  ただ、日米安全保障条約というものの果たしている役割というものについて、今伺っている限りにおいて私は議員と認識の開きがあるとは思いません。午前中の御議論の中で、変化というとらえ方で御質問がありましたものを、私は、日米安全保障条約というのは日本にとって大事であり、アメリカにとっても大きな役割をしたけれども、アジア太平洋地域の中において今までも役割を果たしてきた。  今それに、東西二大陣営対立の時代が終わった今日になって気づき始めた方々が各地におられる、各国にもおられる。そして、その意味ではむしろ見る目が変わった。その果たしている役割というものは、この米軍の存在というものがアジア太平洋地域における安定を来している。それは今までと同じようにこの価値として評価すべきもの、そのような考え方を持って述べてまいりました。  そしてその上で、その体制というものを堅持することによってより大きな安定に資していきたいという意味では、私は議員と考え方が違うとは思いません。ただ、それをより積極的に国民にも理解をしていただくべく努力を払え、これは私もそういうふうにしたいと思います。
  107. 中野寛成

    中野委員 先般、総理訪米をされました。そして、訪米のその目的の大きな要素の一つが、私はこの安保体制のことであったろうというふうに思うわけであります。  私は、まあ下世話な勘ぐりかもしれませんけれども、だれが言い出したのかな。たしか去年のAPECの後では、村山総理、まあクリントンさんが来られなくなったので、日本総理大臣があっちへ行ったらみたいな話があったときに、日本側はそれを拒否されたというふうな話を聞いたことがあります。また一方で、日本の世論の中でも、今度は向こうが来る番だろうという話も当然あるわけであります。  今回このプロポーズしたのは総理の方なんですか、アメリカの方なんですか。どうも見ておりますと、終わりました後の共同記者会見というのはなくて、総理が一人で会見しておられましたね。しかも一時間、通訳を除けば実質三十分。顔合わせだけが目的だったのかというと、それだけでは当然ないであろう。そうすると、やはり四月のクリントンの訪日への布石か、こういうふうにも思うのでございますが、どういういきさつで、どういう内容だったのですか。
  108. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 もともと村山総理が退陣を宣言される前、私は、一月の国会の召集されます前にワシントンに参る予定を持っておりました。そして、これは東西貿易大臣会合がたまたま当時予定されておりましたものを利して、その機会にワシントンとニューヨークに寄り、多くの方々にお目にかかる予定を立てておりました。  ところが、急な村山総理の辞職、そしてその後の首班指名で私が総理に指名をいただくという事態の中で、この計画自体は中止せざるを得ませんでした。ただ、私はできるだけ早く大統領にお目にかかる機会は持っておきたいという気持ちは持っておりましたし、モンデール大使を通じてそういう気持ちは私はアメリカ側に伝えておりました。  その中で、さまざまな方が御努力をいただいたと思います。大統領選のアメリカ側とすれば大変忙しい時期でありましょう。大統領の日程を、ここならという日取りが梶山官房長官のところに御連絡があり、ちょうど週末ということで国会のお許しをいただいて、私はアメリカに飛んだということであります。そして、私も英語は全くだめでありますから、確かに通訳を介してで三十分間、実質の日本語の会話とすればそうなるでありましょう。  ただ、私は、少なくとも日米関係というものを極めて大切に思っており、それは我々が思っているだけではなく、自動車協議の交渉の途次、日本に対する支援を各国に求めたときの各国の反応、それは、自動車協議について三〇一条に我々は反対するという意味日本を支援するけれども、日米関係を壊さないようにというEU国々、あるいはアジア太平洋地域の皆さんからの声というものを考えるとき、我々がただ大事だ大事だと言っているだけではない、ほかの国も日米関係は大事だと思っている。そして、そのベースに日米安全保障条約というものがあり、それを国民理解していただくために私は全力を尽くす、そういうメッセージを、経済問題があることは知っているが個別の経済問題で両国の関係を悪くするようなことがあってはならないということとともに伝えることができただけでも、私はこの会談は役立ったと思っております。
  109. 中野寛成

    中野委員 私は、たまたま沖縄の普天間基地のことを例示で総理が会見の中でおっしゃいました、やはりこれがメーンだろうと思いました、実を言うと。  すなわち、クリントン大統領は今まさに選挙キャンペーンの真っ最中です。ある意味では、今回の会談場所もそのキャンペーン日程の、行程の中で一番近いところをお選びになったというふうに思います。  その中で、私は、日米関係を今後良好に維持していくためには、この沖縄の基地問題を抜きにして考えられないというふうに考えますと、お互いに私は、国内向けに協議をして、そして助け合うといいますか、言うならば国内対策で大変苦労する部分がお互いにある、その部分をいかにして、日本側からいえば、総理からいえば、クリントン大統領にリーダーシップを発揮してもらうかということについての要請をするということが基盤にあったのではないか、こう思うわけであります。そのことが悪いと言っているんじゃないですよ、私は必要だと思っているのです。  そのときに、アメリカの国内にも、米軍基地について、これを整理統合・縮小、これに積極的に取り組まなければ、在日米軍のありよう、またひいては日米安保条約の体制を維持することが大変困難な環境にある。しかし一方では、米軍、沖縄の基地というのは、ロシアと日本との関係というものの冷戦構造、これが解けたという前提で考えますと、むしろ北海道の基地よりも、朝鮮半島のことや台湾海峡のことやシーレーンのことを考えますと、沖縄の米軍基地の存在というのは極めて重要な意味を逆に持ってきたわけですね。  ただ、基地の存在を許すかどうかの沖縄県民の感情や環境というものが逆に厳しくなっているわけです。それをどう克服するか。そのためには、目に見える成果が上がらないといけない。その象徴的なものが普天間基地なのではないのか。  しかし一方、アメリカの方も、アメリカ沖縄における海兵隊の役割を損なわないようにしたい、また、アジアに対する海兵隊の役割を損なわないようにしようと思えば、あの基地は重要だと位置づけ、そこに固執する人たちも当然アメリカの中にはいるわけであります。それらのことをどう解きほぐしていくかというのが重要なテーマでありますが、この問題を解きほぐせなければ、クリントン大統領が四月に日本に来た、アメリカ帰れ、基地撤去というデモがアメリカ大使館を取り巻く。また、クリントン大統領の公邸の中でそういうものが繰り返される。これがテレビに映ってアメリカに放映されたとすれば、これは明らかにクリントン大統領選挙キャンペーンにとってはマイナスであります。まだ来ない方がいいということになってしまうかもしれません。  これらの極めて重要な問題について、私は、総理から当然クリントン大統領にも実態を伝えなければいけませんし、要請もしなければいけませんし、クリントン大統領の国内工作というものも極めて重要な意味を持つ。この極めて重要な意味を持つこのことがあればこそ今回の橋本総理訪米があった。とするならば、私は私なりに納得できます。これはいかがでしょうか。
  110. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、先ほど来何遍も繰り返して申し上げておりますように、日米関係の大切さ、その基盤にある日米安全保障条約を堅持していくことの大切さ、それを国民理解させていくためにも、沖縄県における基地施設の整理統合・縮小に対するアメリカ側の協力というものをまず最初に伝えたということを申し上げております。  たまたま私は例示として、大田知事から非常に切々としたお話を伺いましたときに、大田県知事も例示で挙げられた普天間を、現地の声として例えば普天間という形で私はその話題にのせました。それが悪いと言われれば、これはもう何をか言わんやでありますし、しかし、それが現地の御要望であることはきちんと伝えるべきだと私は思いました。  ただ、それと同時に、本当にこれを解決していくのは大変な苦労の要る話であるということも私は認識しておるつもりであります。そして、越えていかなければならない壁の一つでもありますが、クリントン大統領自身も言っておられたように、沖縄の方々に対して心を配りながら、安保条約の目的をきちんと担保できる、維持できるような、そうした結論を見出すために両国がこれから努力をしていくということであります。
  111. 中野寛成

    中野委員 私は、そのことを例示として挙げたことが軽いと申し上げたことは一度もない。むしろそれはキーポイントだ、そう申し上げているわけです、極めて重要だと。そこで、私は、そのことをむしろもっと積極的に打ち出すべきだと逆に思っているんです。  しかし、そのときに、これは単なる、基地が邪魔だからやめなさいという話ではないと思います。沖縄の米軍基地の重要性は、いよいよますます高まっている。しかし、沖縄県民の皆さんの苦痛、そしてこの前の秋のあの痛ましい事件、それらのことは当然考えなければいけない。そして、そのことが日米安保体制の今後の維持のベースでなければならない。また、それがなければ守り切れないということを認識するならば、そのすべてについてもっとアメリカ、そして日本国民理解をしてもらわなければいけない。  普天間、あれは単にやめるだけじゃないでしょう。それをどこかへ移転することを考えなければいけないのでしょう。移転をするとなると、沖縄県内の移転ということは、これはとてもではないけれども納得できる話ではありませんね。日本の本土に持ってくるんですか。大変ですよ。まあもちろん、一部豪州へ持っていってもいいんだという米軍関係者の人の発言が報道されたことはありますけれども、しかし、これは極めて日本にとっては重要な問題です。  それから、普天間の基地の位置づけ、例えばその飛行場部分といいますか、固定翼の飛行機やヘリやそういうものを、例えば今、時に言われている岩国へ持ってくるとしても、後方部隊は沖縄に残すんですか、全部持ってこられるんですか。持ってくるといっても、なかなかそれは簡単なことではありませんね。また、岩国の皆さんだって、もう既に今や心配して反対運動をやっているわけでしょう。  そうすると、いかにこの基地が重要であるかということは、日本国民みんなが理解しなければ、これらについて賛成は得られないのではありませんか。そしてまた、アメリカだって、財政が大変厳しい状況の中で、おう、なくせなくせという意見もないことはない。しかし一方で、重要性を主張するという意見もある。アメリカの世論だって決して一様ではない。そのためには、両国政府がよほどの努力をしなければ、この問題はそう簡単に解決できる問題ではないということを私は申し上げたいわけであります。  ちなみに、普天間基地の位置づけ、その意義から御説明ください。
  112. 池田行彦

    池田国務大臣 日米関係の重要性、その中での日米安保体制をどうしても大切にしなくてはいけない、先ほど来総理の御答弁、また委員の御指摘にもあるとおりでございます。  そのためにも、沖縄の県民の皆様方がこれまで耐え忍んでこられた大きな御負担というものをできる限り軽減しなくてはいけない。それは、安保の目的との調和を図るというだけでなくて、安保の目的を達成するためにもそのことをしなくてはいけないと私どもは考えております。  そういった中で、沖縄県の大田知事が挙げられましたように、現地では非常に強い御要望がある、このことも承知している次第でございます。しかるがゆえに、今回の首脳間の話し合いにおきましても、沖縄県の要望の例示としてではございますが、普天間に言及された、こう考えております。私ども、その辺は十分よく承知をしております。  しかしながら、現在の段階で、どの基地をどういうふうにしていくかということは、今委員も御指摘になりましたように、いろいろな要素を勘案していかなくてはなりません。安保の目的達成のためにどういうふうな米軍の運用が必要か、そのために基地がどういう役割を果たさなくてはいけないかということ、あるいは、もしその機能をどこかに代替するならば、そちらの方の理解がどうやって得られるのか等々、いろいろな要因がございまするので、そういったものをすべて踏まえながら、今、ともかくこの秋には具体的に目に見える成果を見出そうと日米協力して努力を傾注しているところでございます。  そして、四月のクリントン大統領がお越しになるときが大きな節目でございますから、そこで今申しました作業をそれに向かってさらに促進いたしまして、その段階での作業の進展ぶりを反映したことを何か出さなくてはいけないと思っていますけれども、現段階で、普天間のみならず、具体的なケースについてどういうふうになっているか、あるいはどうするつもりかというのは、まだ申し上げられるような状態には残念ながらなっていないということについては御理解をちょうだいしたいと思います。  また、これから鋭意努力を積み上げてまいりますし、それから委員が最後の部分で強調されました、我が国でも、また米国でもこの日米安保についての見方、いろいろな声があるよと、そのとおりでございます。それだけに、両国民のあるいはアジアの諸国の理解をさらに深めていくために我々として一層の取り組みをしていかなくてはならぬ、それはそのとおりに考えている次第でございます。
  113. 中野寛成

    中野委員 クリントン大統領訪日まであとわずかですね、一カ月半くらいですか。まあ、もちろん具体的な内容の詰めば秋までですが、四月までに大綱をまとめておかないと、それから以後は、いよいよ大統領選挙も詰めですよ。ますます環境が厳しくなるのですよ。  ですから、私は四月まで、これは今外務大臣もお答えでありますが、四月までが勝負ですよ、ある意味では。そういう状況の中で、国民の前に、何をやっているか、どうしているか、日本政府の姿勢はどういうことか示されないというのでは、これは判断のしようがないではありませんか。 もっと私は細微にわたってまでお答えを要請しようとは思いません。しかしながら、その基本的姿勢については、もう少し具体的にお答えいただくということでなければ、本当の国民の判断というのはできないのではないでしょうか。また、事の重要性だとか、そういうものの認識というのは深まっていかないのではないでしょうか。  そしてまた、普天間の問題は、今申し上げたように、こちらからもう時間の都合もありますから申し上げますけれども、これは日本防衛の話だけじゃないですね。朝鮮半島や台湾海峡のことを考え合わせても、極めて重要な位置づけにあるんでしょう。そしてそういうところが今不穏な空気が流れているんでしょう。こういう時期に当たって、私は軍事的機密まで漏らせとは言いませんよ。これは、政策判断の問題を今申し上げているわけです。どうするんですか、より一層明確に示されることが今沖縄県民の願いにもこたえることになるんではないでしょうか。
  114. 池田行彦

    池田国務大臣 まず、おっしゃるとおり日米安保条約の目的は、我が国の安全を守ると同時に極東地域の平和も維持していく、そういう目的を持っているわけでございます。そういった役割日米両国の間で果たしていく、そのために米国が日本に基地を持っている、そしてまた軍隊を駐留されている、そういうことはおっしゃるとおりでございます。我が国の防衛だけではなくて、そういったことも念頭に置きながら我々は考えてまいります。  そうして、第二点として、もう四月目前じゃないか、それまでに話を詰めなくては後は難しいぞと。私どもも、先ほども申しましたように、四月の首脳会談というのは大きな節目でございますから、そこへ向かって精力的に作業を進めてまいりたい。  これは我が方だけじゃなくて、米国の方も、先ほど総理からクリントン大統領自身のこの問題に対する御理解ぶりあるいは積極的な姿勢というものもお話がございましたけれども、私どももクリストファー国務長官あるいはペリー国防長官等々とお話いたしましても、米国も本当に真剣にこの作業を進めようとしている、しかもできる限りの進展を四月に向かって実現していこう、こういった意欲は我々日本側と全く同一であるというふうに考えております。  そうして、さて、それじゃもう少し、どういうふうに取り組んでいくかということでございますが、私どもといたしましては、アクションプログラムも含めまして沖縄県側からいろいろな形で寄せられております御要望というものを、そういうことももとより重いものとして受けとめ、御要望もよく念頭に入れながら作業に取り組まなくてはならぬと思います。  それと同時に、先ほど来申します安保の目的を達成していく上で一体どういうことが、どういうものがどういう形で必要かということも、これも大きな考慮をしなければならない要素だと思いますし、それからまた、いろいろ整理統合・縮小の作業を進めていく上においてどういうふうな措置を講じなくてはいけないか、その問題を進めていく難しさと申しましょうか難易度と申しましょうか、そういったことも考慮しなくてはいけない重要な要因でございます。  そのようなもろもろの要因を個別の基地につきましてもいろいろ勘案いたしまして、日米間で精力的に話を詰めてまいる、そうして最終的には、当面この秋における具体的な成果、そして四月までに極力大きな進展を図ってまいり、それを明らかにしてまいりたい、こう思っております。
  115. 中野寛成

    中野委員 ちなみに、もう一つ沖縄の話題で、北部訓練場を返還するという米側の意思が示されているような報道もありました。しかしながら、これは今急に返されましても、土地の形態や位置づけからいって地主さんもそう簡単ではないですね。そうすると、これは何か、返してもらっては困るという言葉もおかしいんですけれども、しかし、そのことの経済性から考えますと、これはしばらく時間を置かなければいけないものというのもあるんですね。これは私は、経済と感情の問題からいってなかなか難しい問題だと思います。  しかし、逆に、そのことが一種の牽制、まあこれはアメリカに対して失礼かもしらぬが、米軍側に対して失礼かもしれませんが、一種の牽制、嫌がらせとは言いませんけれどもね、みたいになって、その基地の問題が結局、目に見える成果が上がるということとは違って、別の方向にそれらがごちゃまぜになっていくとすると、これまた大変なこと、問題をなおこじらせるということになるわけですね。こういうことについては十分配慮が加えられなければなりませんけれども、これは十分御注意の上やっておられるのですか。
  116. 池田行彦

    池田国務大臣 北部訓練場というお話がございましたが、先ほども申しましたように、個別のケースについてどうこうということは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、すべてのケースにつきまして、先ほども三つばかり考慮すべき要素ということで申し上げましたけれども、今御指摘のような点も当然考慮しながら日米間で話し合ってまいりたいと思います。  ただ、今御指摘の要素につきましては、やはり今返されても困るというお気持ちが、先ほどのケースではない、これまでほかのケースについてもいろいろあったというのは御承知のとおりでございます。  しかし、そういった地主のお気持ちというものをどういうふうにすれば、いや返してもらおう、そうして自分たちの生活の上で、あるいは地域発展のために生かしていこうというお立場に変わっていただけるか、こういう点についての工夫も、国としても、また県あるいは地元の市町村においても御協力をいただきながらやっていくことが必要なのではないか、このように考えている次第でございます。
  117. 中野寛成

    中野委員 それでは、クリントン大統領が訪日されたといたしまして、そこで日米共同宣言、これが出されるということでありますが、この日米共同宣言というのはどういうものになるのでしょうか。すなわち、沖縄の基地の整理縮小も当然含まれるものと、むしろそれがメーンと言ってもいいかもしれませんが、ということになりますか。そしてそのほか、何をどう詰め、どのような結論を出したいと日本政府はお考えなのですか。  もう一つ、例のナイ・リポートでは、東アジアに十万人、日本に四万七千人体制の堅持が示されておりますが、これらのことにつきましても、共同宣言に具体的な数字を盛り込む必要があると私は考えるのです。そういうものが見えませんと、何のための日米共同宣言かわからないのですね。これらのことについては鋭意努力をされているのでしょうか。  ちなみに、河野前外務大臣は去年十一月の衆議院の外務委員会で、我が方も十分議論、検討を加えたというふうに言っておられるのですね、このナイ・リポートについては。ここは、今政府の姿勢はどういう考えなのですか。
  118. 池田行彦

    池田国務大臣 四月の首脳会談の際に発出される文書でございますが、これは基本的には日米関係の重要性、特にアジア太平洋の安全を守っていく上においても日米安保体制が重要なのだということを両国民あるいは世界に向かっても宣言していく、こういうことが基本になろうかと思います。  そうして、そのほかどういうふうな文言になっていくかというのは、現在、四月に向かって作業を進めている最中でございますから、まだ申し上げられる段階に至っておりませんけれども、沖縄関係について申しますと、先ほども申しましたように、基地の問題につきまして作業を一層促進しようということにしておるわけでございますので、その四月までの進展を見まして、それを踏まえてと申しましょうか、あるいはそれを反映してと申しましょうか、何らかの言及はすることになろうかと思いますが、今具体的にどういうことになるかは、もう少しその作業の進展をにらみながら考えてまいりたいと思っております。  それからいま一つ我が国における四万七千人、アジア太平洋における十万人という米軍のプレゼンスの問題でございますが、これを文書で触れるかどうかという点につきましては、先ほど申しましたようなことでございますので、まだ今の段階で何とも申し上げるに至っていないということでございます。  それから、そもそもそのことについて、河野前外務大臣は自分たちもよく考えたことなのだというお話がございましたけれども、これは昨年の二月でございましたか、国防総省からいわゆる通称ナイ・リポートが出される前の段階で、いろいろな日米の当局間の協議の場で、これからの我が国の安全あるいはこの地域の安全を守っていくためにどういうふうな体制が必要だろうかという話し合いはずっとしておるわけでございまして、その過程におきまして、十万人あるいは四万七千人のプレゼンスの話も、あの報告が出される以前に日本側としても受け取っておるところでございます。
  119. 中野寛成

    中野委員 最終的にどうまとまるかは、相手もあることですから、当然これは外交交渉ですからそう簡単に予断は許しません。しかしながら、少なくとも日米共同宣言に日本は、何をどういう方向で、どういう内容で織り込もうとしているのか。今折衝中とはいえ、別に軍事機密でも何でもないはずです。これはむしろ国民のコンセンサスが極めて重要な問題なんです。国民が注目しているわけです。  ならば、もっと日本政府としての現在の主張というものを、今交渉中ですと抽象的なことのみをお答えで言われるのではなくて、基地の問題、そしてアジアにおける米軍のプレゼンスの問題やそれらのことについて、もっとこうあるべきだと日本は主張しているんだ、ひとつみんな、おい、国会も応援してくれよという、もっと開かれた姿勢というのはなぜ持てないのでしょうか。
  120. 池田行彦

    池田国務大臣 先ほども申し上げましたように、現段階で具体的な文言、記述の仕方はまだ固まっておりません。しかし、その基本は、日米両国関係の重要性、そしてまた、我が国の防衛だけではなくてこの地域の安定、平和のためにも両国の関係、とりわけ安保体制の重要性ということは記述していくわけでございます。  そしてまた、そういった日米安保条約上、米側が負っております責務、義務と言ってもよろしゅうございましょう、そういったことを果たしていくために、きちんとした、何といいましょうか、コミットメントをしていくということが重要であるというふうに私どもも認識しておるわけでございます。ただ、それがどういう具体的な文言になるかは、まだ今の段階ではということでございます。  なお、基地の関係につきましては、先ほど申しましたように、これからの作業の進展を反映した形の記述になろうかと思います。
  121. 中野寛成

    中野委員 もう一カ月半しかないのですよ。実際上は一カ月しかないのですよ。そういう中で、こうします、こういう主張をしていますという内容に触れた御提言がもっとあってもいいと思いますね。  基地の問題でもそうなんですよ。これは、国民みんなが合意をしていく、理解をしていくということがなければ、これからできませんよ。ごまかして、ぎりぎりまで、いやいや、岩国に持っていくかどうかわからないよと言いながら、ある日ふたをあけたら岩国だったというようなことでは、これは納得できないですよ。普天間の問題だって、それこそ、具体的に一生懸命努力しているという姿を見せることの方が大事なのではないでしょうか。  ちなみに、今度も金融システムで、日米首脳会談総理から、金融システムに関し、住専問題の解決を図るとともに、早期是正措置の導入等新しい金融システムの構築を行っていきたいと述べた。これに対して、大統領から、自分も同様の苦しい状況に直面したことがある、選ばれた人は時には厳しい選択をしなければならない旨を言われた。  ああアメリカ理解してくれた、との住専のスキームは欧米諸国も外国理解してくれているんだ。これは外務省のペーパーですけれども、そういうので、もうやたらと宣伝これお努めになられる。そのくらい拡大解釈されるのだったら、いや、お互いに苦労しますなという言葉でしょう。それをそういう形で宣伝されるぐらいなら、もうちょっと国民が知りたい内容についてお話しになられたらいかがでしょうか。それがこれからの、本当の自立するための外交基本ではないのでしょうか。政府自立するということだけであれば、国民から孤立するのではないでしょうかと私は思います。  さて次に……(発言する者あり)私は、総理が先ほどのクリントン大統領言葉をそういうふうに解釈して、総理がおっしゃったと言っているのではないのですよ。自民党の皆さんがいろいろな機会に……(発言する者あり)そう、そのことは総理が記者会見で言ったとは言っておりませんよ。  さて、中国、台湾問題についてお尋ねをしたいと思います。  台湾の総統選挙が二月二十四日に告示され、三月二十三日に投票を迎えるようであります。私は、中国、台湾の関係が波風が立たないで、平和裏に今後ともいろいろな問題について協議が進められる、そして中国、台湾の協議の過程の中で問題が平和裏に解決されるということを望んでおります。  それだけに、中国の軍事的な動きというのが大変気にかかります。中国は軍事力増強を図って、最近台湾近辺での大規模な軍事訓練も実行したり、計画をしたりしているわけであります。これは恐らく総統選挙に対する牽制であろうというふうにも言われます。同時に一方、先ほど選挙や国会対策というものが極めて外交問題に影を投げかけていると最初に申し上げましたけれども、中国も、間もなく全人代がある、経済界そしてまた軍部、そういうところとの確執もあるという中で、単に台湾を牽制するだけではない意味もあるかもしれません。しかし、このような軍事的行動というのは、場合によって一触即発ということがある、弾みがある、間違いがあるということも一方事実であります。これらについては、これまた沖縄の基地の重要性の一つにもなりますけれども、台湾海峡における米軍の果たしている役割というものも一方大きいわけでございます。  これらのことについて、私はやはり中国に対して、これはマハティール・マレーシア首相との間でも話題になったようでございますけれども、やはり積極的に中国の自制を求めるということが私は極めて重要ではないか。これは別に台湾の味方をするとかなんとかということではなくて、台湾海峡、ひいてはアジアの平和のために、また日本は挟み打ちにされたら大変なことになるんですから、だからそのことも考え合わせて、私は、平和を求めるという視点から、中国に対しての自制を積極的に日本は求めるということが大切だと思いますが、いかがですか。
  122. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今マハティール首相との話を引用されましたので、誤解のないように申し上げておきたいと存じます。  クリントン大統領との中でも、この問題は双方が触れたテーマでありましたが、双方とも、主権のある相手に対しての相談しての干渉というような受け取られ方は避けたいということは、お互いに感じたと思います。その上で、皆その意味では意見が一致しておりますのは、台湾海峡を挟んだ両当事者に自制を求める、そのための努力はそれぞれに払うということでありました。  我が国としても、当然のことながら、ここに問題の起きることを絶対に望みません。日本自身にとって非常に重要な問題を惹起しかねない。その限りにおきまして、我々は双方の当事者に対し、自重を、自制を求めたい、そうした外交的な努力をする場面がありましたなら、そういうことも当然積み重ねていくべきものと思います。
  123. 中野寛成

    中野委員 私も、ちょっと先ほどは言葉を選びまして、マハティール首相との会談でも話題になったようですがと申し上げたんです。申し合わせたとは申し上げていない。  そこで、お尋ねをいたしますが、万一ですよ、これはないことを望みますし、ないとは思いますが、しかし、あらゆる場合を想定して我々の行動というものは考えておかなければいけないんですね。国益を守るためにも必要です。  そこで、お尋ねをいたしますが、中台間でもし武力紛争が起きた場合、これは武力紛争が起きた場合と、こう言いますが、現在の動きから見ますと、中国側からの武力行使になりましょうね、台湾側にそのあれはないわけですから。そうすると、米軍は中国を牽制をするという行動に出ざるを得ませんね。我が国も重大な決断を迫られると思いますのは、米軍が実質上いわゆる台湾支援に回る。言うなら台湾を守る、武力を引き離さなければいけないのですから。そういう場合に、米国側から日米安保条約に基づいて事前協議を受ける。私は、第四条事前協議、これは該当すると思うのですね。第六条の極東条項、これは台湾海峡も含まれるのでしょう。そのことについてどうお考えですか。検討されていますか。
  124. 池田行彦

    池田国務大臣 まず、我が国基本的な立場は、この台湾海峡をめぐる問題につきましては、両当事者の平和的な話し合いのもとで解決をされることが望ましいということでございます。それが基本的な考え方であり、当面ここで緊張が高まっているということが心配されておりますけれども、この問題は、当面の情勢につきましても両当事者の自制を通じて緊張が高まらないことを、和らぐことを期待しておる、こんなことでございます。そういった立場は我が国だけではなくて、米国その他この地域に深い関心を持ち利害を有している国が共有するところではないか、こう考えております。  それから二番目に、確かに今中国の演習というようなことを言われておりますけれども、そういった今の台湾海峡をめぐる情勢というものがこのままエスカレートしていきまして武力衝突につながるというふうな差し迫った危険性は、これはないというのが、我が国だけではなくて一般的な見方である、こういうふうに考えている次第でございます。  それからまた、中国におきましても、もとよりいろいろな面での努力は傾注しております。それは軍事面でも近代化の努力は払われているということはございますけれども、基本的にはやはり改革・開放路線を通じまして経済の発展を果たしていく、こういうことであろうと思いますし、そういったいろいろな情勢を考えましても、今委員御指摘のような仮定を置いて、いろいろそのときにどうするかということを申し上げるのは差し控えた方が適切なのではないかと考える次第でございます。
  125. 中野寛成

    中野委員 ただ、条約の解釈の問題ですから、もう一度確認いたしますが、台湾海峡は極東条項のその極東に含まれますか。単純に聞きます。
  126. 林暘

    ○林(暘)政府委員 お答え申し上げます。  御承知のように、昭和三十五年に安保条約に言います極東という地域についての政府の統一見解をお出しをいたしております。  基本的にこの統一見解は現在も政府が維持しておるものでございますが、ただ、その当時に出しました統一見解で「中華民国の支配下」と書かれておる地域については「台湾地域」と読みかえて、当時の統一見解をそのまま維持しております。  台湾海峡ということでございましたけれども、この統一見解におきましては、極東という地域は非常に厳密な地理学上の言葉ではございませんけれども、大体にして申し上げれば、フィリピン以北並びに日本及びその周辺地域であって、韓国及び台湾地域もこれに含まれるという定義でございますので、一般的に申し上げれば台湾、台湾近辺というのは含まれるということでございます。
  127. 中野寛成

    中野委員 そうすると、これは事前協議の対象になるわけです。あってほしくないことですよ、もちろん。軍事的な行動が台湾海峡で展開されるということはあってほしくないことですよ。しかし、少なくとも中国が台湾に対していろいろな形で影響を及ぼそうとして、軍事的な訓練をしたり行動をしたりしていることは事実なんです。そして、それがどういうことを引き起こすかというのは、これは偶発的なことも含めて、我々は常に考えなければいけないことです。事が起こってからどうしようというのでは遅いんです。日本の場合は、この前から、災害対策だってもう危機管理の問題で嫌というほど議論が尽くされているんであります。  これはひとり台湾海峡という、日本国から見れば国外の問題ということだけではないのです。日本の基地から米軍が行動を起こす、展開をするということにつながる、だから事前協議の対象になるんです。万一起こらないとするならば、そんな条約さえ要らないじゃないですか。条約があるということは、いろいろな場合を想定して条約というものは結ばれるんだろう。そうすれば、その条約に対する解釈やその対応というのは、常に、単なる仮定の話としてではなくて、我々はきちっと考えておかなければいけないことだ、そう思うんです。いかがですか。
  128. 池田行彦

    池田国務大臣 条約の解釈は、先ほど条約局長から御答弁申し上げたとおりでございます。  ただ、先ほども御答弁申し上げましたけれども、私は、今の状況から考えまして、そういうふうな仮定を置いていろいろ問題を考え、それを議論しなくてはいけない、そこまでの情勢にはなっていないし、そういうふうな情勢になっていくプロバビリティーといいましょうか、蓋然性も非常に低いんじゃないか、こう思っております。  それは、先ほども若干申しましたけれども、そもそも中国自身のこれからの行き方というのが、先ほど私が改革・開放路線を通ずる経済と申しましたけれども、それは経済だけじゃなく、経済、社会、さらには政治的な安定をも志向している、これが中国の一番中心の政策だと思いますし、それを実現していくに当たっては、国際社会また国際的ないろいろな秩序の中に中国も入っていって、そことの協調のもとで物事を進めていこう。これはいろいろな、国連を初めIMF、世銀みたいな仕組みに入っている、また現に最近できましたWTOについても中国は熱心にその加盟を求めている、こういうふうなことにも見られるわけでございます。  そういうふうな基本的な中国のあり方というものも考え、そうしてまた周辺の国々もいろいろな態度、立場を表明しているということも当然勘案されるわけでございましょうから、今そういった蓋然性の極めて低い前提を置いて議論をすることは、これは差し控えさせていただきたいと思います。  ただ、先ほど総理からも御答弁がありましたけれども、しかるべき機会に我が国として、両当事者の自制した態度でもって物事が静かな方向へ行くことを強く希望しているんだということはいろいろな機会に表明してまいりたいと思いますし、私自身も先般、銭其シン・中国外務大臣とお会いいたしましたときには、我が国のそのような考え方というもの、また希望ということをお伝えしたところでございます。     〔委員長退席、三野委員長代理着席〕
  129. 中野寛成

    中野委員 大変お立場上慎重にお答えであることはわかりますが、しかし私は、この事前協議を受けた場合の答え、それは、日本の答えはノーという答えはあり得ないと思います。そしてそれは、中国との関係においては最悪の事態を迎えることになります。そのことを我々は認識しなければいけないのです。我々はそれを知らなければいけないのです。それを知るからこそ、中国に対してなお一層我々は自制を求める、または、経済的な協力や外交関係をより緊密にし、そして中国の行動についてできるだけ自制をしてもらえる環境づくりもまたあわせてしなければいけないので す。  私が求めている答えは、アメリカから事前協議を受けた場合にノーという答えはあり得ないのです、条約からいっても、そして両国関係からいっても。そのときに中国との関係がどうなるかを考えて、対中国とのおつき合いを考えなければいけないのです。  ですから、極めて希有な場合を想定して事前の検討をするべきではないとか、答弁するべきではないとかということだけれども、私は、むしろそれは検討し、シミュレーションをやって、その中でこういう事態になる、ならば何としてもやはり避けなければならないなという危機感を、一方で大前提を持つということが、我々が外交を考えるときの基本姿勢でなければならない、そういうふうに思うのであります。そのことをぜひ御検討いただきたいと思います。だから私は、六条の極東条項に台湾海峡は含まれますかということも含めてお聞きをしたということでございます。  次に、北朝鮮の問題、朝鮮半島の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  政府は、これまで五十万トンの米支援と、国連を通じて五十万ドル緊急援助を行いましたけれども、これは韓国とも協議の上、日米協議の上ということで、そういうお答えになるでしょう。しかしながら、韓国の頭越し援助という韓国国内の不満も一方で招いていることは、これは事実であります。もちろん、それぞれの国に、また人間に本音と建前はありますから、そのことを一概に暴き立てようと思うのではありません。しかし、それらの感情が外交の上においては極めて大きく状況を左右するということを忘れてはならないと思います。  一方、国連からの支援は、北朝鮮が国連から要求のあった食糧供給のデータの提出を拒んでいるために支援がとまった状態になっています。国連も、その食糧供給のデータ提出を北朝鮮が拒んでいるために、さすがの国連もその支援活動をとめているわけであります。  日本は今日まで、北朝鮮の食糧がどれだけ自給できるのか、どれだけ生産できるのか、どれだけ必要なのか、そのことも十分見きわめないままに、日本としては米やその他のものを提供しているということでありますが、この実態についてどうなんですか。もっと詳しく調べますか、調べないのですか。国民は納得しませんよ。  例の十五万トン無償供与、あれだって韓国が十五万、韓国よりも多く出すわけにいかないから日本はその十五万トン以内。それ以外にまた延べ払いか何かで三十万だとか、いろいろ積み重ねているわけでしょう。これらのことが、ある意味では時にこれは人道的な問題として扱われます。しかし、私は、人道問題も長期的に見れば、このことによって北朝鮮の国内というものがまた別の展開を示すことになると、逆に災いになるということだってあると思うのですよ。  韓国が南北会談をいろいろセットする、そして何か韓国が切り札を切りたいと思うときに、日本が余計なことをしてくれたばかりにその切り札を切れないということだってあるのですよ。そういう意味では、単に建前の論議、建前の了解ということだけではなくて、その本音をしっかりと分析し、そして南北関係をしっかりと踏まえて私たちは行動しなければならないと思うのですが、どうお考えですか。
  130. 池田行彦

    池田国務大臣 昨年、二度にわたり計五十万トンの米を北朝鮮に援助いたしました。また、御指摘のように国際機関を通ずる援助として別途五十万ドル拠出したところでございます。  それで、これは韓国の頭越してはないか、いや、そういうふうに韓国ではとられ、不満が募っているのじゃないか、そういう御指摘がございましたが、この問題につきましては、我々としては、人道的な見地に立つ特別な、特例的なものではありますけれども、まず韓国がそういった面でもおやりになるのが適切であろう、そう考えまして、韓国と昨年の五月でございましたか、そのぐらいの段階でお話をし、まず韓国が先立って対北朝鮮の米支援を決定したわけでございます。その後で私どもの方はそれを決定し、実行した、こういう事実関係でございます。  そしてただ、事後的に、韓国がせっかくそういった善意に基づき人道的な見地に立って行った北朝鮮に対する援助というものが、北ではそのように評価されなかった。またいろいろなトラブルもございました。そういったことで、韓国において北朝鮮に対する不満が募ったということは事実でございますけれども、我が国の支援が頭越しであるというとらえ方での不満は、これはないんだろうと考えております。  いずれにいたしましても、私どもは、北朝鮮とのいろいろな関係を考えてまいります場合には、韓国とも、韓国との間の連携を大切にしながらやってまいりたい。どうしてもこの半島情勢の解決というのは南北対話を通ずるというのが、これが中心でございますから、そういうふうに考えております。  なお、国際的な支援についてでございますが、これは、北朝鮮の方から国際機関に対して今これ以上の支援を求めることはしないという話があってとまっておるというふうに理解しております。  そういったことでもございますし、また我が国として別の追加支援の要請に接しているわけでもない。さらに、去年ございましたような緊急輸入米の在庫という、過剰米の在庫というような事情も現在はない等、いろいろな事情がございまして、今追加的なものは検討しておりません。
  131. 中野寛成

    中野委員 私は、KEDOの問題も、一昨々年ですか、韓国の金泳三大統領にもお会いしたときに、このKEDOの結成に至るまでジュネーブで随分長期間米朝協議が行われました、その際も、会談を中断してまで米国の代表が韓国側に報告をし、協議をし、大変懇切丁寧にやってもらったという話をされておりました。この南北問題というのは大変微妙ですし、かつ重要でもございます。日本にとっても重要です。そして、同じ民族間のことでもありますから、常に感情論がつきまとってくるわけでありまして、そのことを我々はしっかりと踏まえてやっていかなければいけないというふうに思うのです。  このKEDO支援で、日本が重油代千九百万ドル供与する、まあつなぎということですけれども、これらも韓国は出せない、アメリカも国会対策上というか国内事情で出せない、どうする。まあ日本にその肩がわりといいますか、求めてきた。日本としても、それでは、韓国も米国も出せない、日本が出しますよ、ほいほいというわけにはいかないわけですから、これは当然つなぎとして立てかえておくということであろうと思いますが、これらの問題も、その目的が北朝鮮の核武装化といいますか、を防ぐという大前提があるわけですね。これらのことをやはり国民がみんな理解をしなければ、何で日本はそんな肩がわりばかりやらされるのということになるわけですね。ましてや、税金の使い方についてはもう住専問題で怒り狂っているわけですから。  こういう問題については、やはり私は、その目的というものを政府は常に明らかにしていく。つなぎで貸すのだからということ、これは返ってこないかもしらぬですよ。不透明な中でのつなぎなんですよ、日本が勝手につなぎと思っているわけで、建前上。そんなことでは私は許されないと思いますよ。それらのことは国際関係の中できちっと整理をしていく必要があります。国民への説明というものも必要でありましょう。  そこで、私はそういう日米間の関係というものをベースに、大事にしながら、同時にお互いに、日米間でも、日韓間でも言いたいことを言い合うというその関係がなければいけないと思うのですね。  ところが、日本と韓国の間、ここ一年か二年ほど最悪の状態にあると言っても過言ではないと思いますよ。これはいろいろな方々の、政府・与党要人の発言もありました。歴史観の違いはいかんともしがたいけれども、しかし、その発言にはお互いに注意しなければならないところです。そしてまた、この対北朝鮮対策についても、これは、その方途を間違えますと善意が悪意に解釈されるということも我々は十分注意をしておかなければなりません。  そういう一番最悪の環境の中で、しかも韓国は選挙を目前にしているという環境の中で、この海洋法の問題や竹島の問題が出てきたわけであります。この竹島の問題などは、日韓関係が大変順調に、好調にいっているときには出てきませんよ。しかし、これも避けて通ることのできない問題であります。  私は見ておりますと、例えば北方領土でも竹島でも尖閣列島でも、実効支配しているところはお互いに領土問題はありませんと言うんだな。そして、実効支配をしていない方は、領土問題が残っていますよ、あれは紛争です、両国間の紛争の火種ですよと。これはまあお互い、世界じゅうどこへ行ったって、それが一つのセオリーになっていますよ。  そのときに日本は、北方領土についてはみんな、我々も含めて大騒ぎする。竹島について、果たして日本政府というのはちゃんと国民に説明しているのでしょうか。そして、韓国に実効支配され続けている状況の中で、日本は果たしてどういう努力を今日までしているのでしょうか。一たん国際司法裁判所へ訴えようとした。しかし、これは両国が、両当事者がオーケーしなければだめだというので、これも何か断念したのかどうしたのか。結局、これらのことについて、日韓関係の良好な関係を保ちながらも、これら懸案事項についてはお互いにそういう中で忌憚のない協議というものが常になされなければいけないというふうに私は思うのであります。  そこで、この竹島問題についての日本国の政府としての明確な姿勢をまず御説明いただきたい。
  132. 池田行彦

    池田国務大臣 ただいま委員の方から詳細にお話がございましたようなことでございまして、竹島の問題につきましては、我が国の立場は一貫しておるところでございます。  申し上げますと、私どもは、歴史的な経緯から見ましても、また国際法上から見ましても、これは日本の領土であるという立場をずっと一貫してとってまいりました。ところが一方、韓国においては、やはり歴史的な経緯、そして国際法上のいろいろな観点から見て韓国の固有の領土である、こういう主張をしているところでございます。  そしてさらに、今実効支配とおっしゃいましたけれども、韓国が竹島、向こうでは独島と言っておりますが、そこに人員を置く、あるいはいろいろな施設を設置する、そういうふうなことをしているということもございまして、韓国では、ここでは領土問題はないんだ、日韓間に領土問題は存在しないという主張をしている。それはなぜかということは、先ほど委員のおっしゃったとおりでございます。  そういうことでございますが、我が国としては、基本的にそういうふうな両国の立場の違いはありますけれども、この違いというものが、相違というものが大切な日韓両国の友好関係を損なうことがあってはならない、ここのところは大切にしていこうということでずっと従来から対応してきたわけでございます。したがいまして、領有権をめぐる問題については、あくまで平和裏に話し合いを通じて解決の方途を見出してまいりたい、こう考えております。  しかしながら、御承知のように、韓国側は先ほど申しましたように領土問題は存在しないという立場なものですから、なかなかその話し合いはできない、こういう状況でございます。そして、そういった状況のもとで、我が国といたしましてはいろいろな機会に我が国の立場を明らかにするというような外交上の措置をとってきたというのは、御承知のとおりでございます。  それから、国際司法裁判所による解決ということも若干触れられましたけれども、これにつきましては、御承知のとおり、国際司法裁判所の争訟手続と申しますのは、両当事者がその場で国際司法裁判所を通じて問題を解決しようという合意があって初めてこれは動き出すという、こういう仕組みでございます。かって日本政府がそういったことを、国際司法裁判所へ提訴して問題の解決を図りたいという意向を韓国側に伝えたことはございますが、そのときも韓国側は、先ほどから申します基本的な立場からしてそれに応じなかった、こんなことがある次第でございます。  そういったことでございますので、我が方としては、基本的に他の面に、両国の友好関係に好ましからざる影響を与えないように十二分に配慮をしながら、この問題については粘り強くいろいろな可能性を探って平和的な解決の道を見出してまいりたいな、こう考えている次第でございます。     〔三野委員長代理退席、委員長着席〕
  133. 中野寛成

    中野委員 最後にしたいと思いますが、この竹島問題が出てまいりましたときに韓国大統領が、これは新聞報道ですからそれ以上のことはわかりませんが、韓国の大統領が現地の警備隊員に対して激励の電話をしたというような報道がなされておりました。また、竹島周辺で韓国が軍事訓練を行った。これに対しては、さすがに外務省の林次官が電話で韓国大使に抗議したということでございますけれども。  結局、日本がこれらの問題について武力に訴えるということはあり得ないわけで、ましてや憲法九条、国際紛争を解決する手段としては武力を行使しないとなっているわけでありますし、また、日韓基本条約のときの交換公文の中にもそれらのことはうたわれているわけですね。にもかかわらず、それは、日本国民の立場からすれば歯がゆい話ですよ。  しかしながら、少なくとも日本が過去の歴史、そして過去の反省の上に立って、これらの問題について武力行使をしない、あくまでも平和裏に協議をするという姿勢というものは貫いているわけですね。これらの日本の立場、そして憲法を初めとする体制、そういうものがある中で軍事訓練が行われるというのは、これは本当に大変なことです。それは、そのことをまた、日本国民はもとよりのこと韓国国民が知ることによってどれだけ感情を刺激されるかということを考え合わせますと、これらは決して日本国としていいかげんにしておいていいというものではないと思うのであります。単に電話で大使に抗議したという程度の事案ではないだろう、こう思うわけであります。  もちろん、この後海洋法の問題、それから経済水域の問題等、極めて重要な問題が続いていくわけですから、その兼ね合わせといいますか、これは大変難しいことですけれども、しかしながら、日本としてなすべき態度、そして日本が今平和国家であることを韓国国民の皆さんにも知ってもらう努力、それらのことが同時に行われなければ、あらゆる外交問題に対処するということが難しい、また国民も納得しないということになっていくのではないか、こう思うのでありまして、基本的に自立外交を唱えられる総理に、最後にこれらの問題にどういう姿勢で対応されるかをお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  134. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 さまざまな点から、我が国の将来に対して、外交上懸念すべき事案、さらに、あるべき姿について、広く御議論をいただきました。同感できる部分、必ずしも意見を一にしない部分がありましたが、特に最後の部分について、我が国の領土というものを踏まえた御議論、私も真剣に聞かせていただきます。これから先、さまざまな局面があり得るでしょうが、事外交というものについて、水際までで国内の論議をとめていただき、一体となって国益を追求していける状態をつくるように努力をしたいと思います。
  135. 中野寛成

    中野委員 終わります。
  136. 上原康助

    上原委員長 この際、石井一君から関連質疑の申し出があります。中野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。石井一君。
  137. 石井一

    石井(一)委員 どうぞよろしくお願いします。  最近、我が国の安全保障、外交あるいは防衛政策の中で、大変重要な決定がされました。その一つは、新しい防衛計画の大綱ができたということと、それから中期防衛力整備計画が策定されたということでございます。  前者の新大綱は十九年ぶりの作成でありまして、当時はベトナム戦争の真っ盛りでありました。まさに東西冷戦構造ではなく、それがさらに深化した中での極東の紛争が続いておりましたときに決定された新大綱を今回改められ、冷戦構造は崩壊しておるわけでありますから、そこには政府として相当責任のある議論がなされなければならないと思いますし、また、中期防におきましても今後五年間の膨大な予算を拘束する、そういう問題でございますから、国民のサイドから見ましても看過することのできない問題でございます。  しかし、はたから見ておりますと、与党三党の議論というのは、政権維持というものを最優先して、本格的な議論をどれだけ詰められたのか。数字にしても、ちょうど中間点で、足して二で割る。文言の操作ということに終始をする。今後十年、十五年、あるいは二十年の展望のもとに我が国の安全保障政策がいかにあるべきかというふうな、そういうビジョンが論議されずにこれが決定をされたということは、私は、国民の立場から見てやはり厳しく批判をされなければいけないというふうに思います。  そこで、その原因はどうなっておるのかと思いまして、実は、自民党の政調会の資料、それから社会党の安保調査会の防衛力のあり方について党議を比較してみましたら、これは余りにも政策が違います。さきがけまで十分調べておりませんが、大体想像したらわかるわけですけれども、さきがけはもっと左かもわかりません。  例えば軍縮に関しては、自民党は、短絡的に軍縮をするべきであるという考え方はとるべきでないと結論づけておりますが、社民党は、積極的に自国の軍縮を進める、こういう決定であります。日米安保条約につきましても、ACSAの締結、東アジア米軍の十万人体制には、自民党は賛成、社民党は反対。国際平和協力のPKOに関しても、武器使用等々については、片一方は前向き、片一方はこれに応じない。その他、集団的自衛権、武器輸出の三原則、核廃絶等々、すべての政策がこれだけ違っておるのになお与党三党が一体になっておるということは国民の不幸である、こう申し上げても過言ではございません。  一体、三党の合意というのはどこへ行ったのか。こういう形で十五年、二十年の展望に立ったこういう重要な決定をされていいのか。当時通産大臣であったかもわかりませんが、政権を担われた橋本総理の御所見をまずお伺いしたいと存じます。
  138. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、与党三党の中でどういう御議論があったかを、当時内閣におりましたから存じません。ただ、少なくとも村山総理のもとにおいて、安保会議等々の場では相当の回数、何回だかちょっと忘れましたけれども、相当の回数論議が交わされて、それぞれ主管のポストによりましての意見、党としての意見、お互いに持ち寄りながら議論をいたしてまいりました。そして私は、与党としても与党防衛調整会議で随分議論をされたと承知をいたしております。少なくとも閣内においては、国際情勢の変化、特に東西冷戦終結後の我が国周辺の状況、さらに世界全体の状況等をも含めた国際的な論議を含めまして、非常に真剣な議論が行われたということは事実でございます。それだけに、そういう中でまとめてまいりました新防衛大綱、そしてそれをベースにいたしまして新中期防をつくってまいりましたプロセスの中で、やはり一層の効率化、合理化というものに努めていく、そして我が国財政状況も当然のことながら勘案し、極力経費は節減をしながら、必要最小限度の経費を平成八年度予算にも計上をいたしてきた。そのプロセスの議論は非常に真剣なものだったという記憶を私はいたしております。
  139. 石井一

    石井(一)委員 予算面で申し上げますと、中期防の場合、自民党が伸び率二・五%を主張し、社民党が二%以下ということを主張した中に、最終的に二・一%で決着いたしましたが、それでは少し社民党寄りなので、調整枠に一千百億というものを計上して結局二・二五という真ん中をとった、こういうようなことがその軌跡を見ますと明らかであります。  八年度予算、今住専で六千八百五十億という問題がよく言われておりますが、我が国の防衛予算は四兆八千億であります。自民党は二・九%をシーリング水準で主張し、そして中期防並みの二・一%の主張を社民党がした中に、二・五八%で決着をしております。平成六年度〇・九%伸び、平成七年度〇・八六%伸び、しかし本年は二・五八%伸びております。  久保大蔵大臣は、社会党書記長の時代から軍縮論者で、たびたび御所見を拝見してまいりました。平成八年は軍縮元年とすると叫んでおられましたが、今のお気持ちはいかがですか。
  140. 久保亘

    ○久保国務大臣 今もそう思っております。  私が社会党の書記長に就任いたしましたのは、細川連立内閣がスタートいたしました直後のことでございましたが、細川連立政権ができますとき、皆さんと一緒に、外交、防衛についてはこれまでの政策を継承することからスタートをするが、世界の平和と軍縮に責任役割を果たす国家を目指すということで、皆さんと合意をして細川連立政権は進められてきたのであります。その考え方は、村山政権が誕生いたしますときにも、新しい連立三党の合意として決められた考え方に引き継がれていると私は思っております。  それで、この新大綱や新中期防も、私どもはそういう考え方に立って、与党の政策調整会議において調整を終えた上、安全保障会議、閣議において決定をされたものと考えております。  私どもは、それぞれ政党の主張する理念や政策に違いがございますが、今、国民の求める連立政権を共有するということにおいて、可能な政策の合意ができているものと考えております。
  141. 石井一

    石井(一)委員 細川内閣の防衛予算〇・九%、村山内閣において〇・八六%でありますが、村山内閣から継承された橋本内閣でのこの予算の審議、執行では二・五八%であり、その大蔵大臣が久保亘であるということは間違いございません。  そういう御認識のもとにそれを執行されようとしておるわけでございまして、今、軍縮に対する考えは変わっていないと言われますと、それは閣内不統一とも言える発言でございますが、古い久保さんとの御縁もあります、北朝鮮で苦楽をともにしたこともありますし、まあまあこの程度で次の問題に移らせていただきたいと思いますが、問題を厳しく提起しておきたいと思いますし、この問題は、同じ言葉をさきがけの代表にもひとつ享受していただきたいと存じます。  そこで、きょうは官房長官においでいただいておりますが、私は、最近の官房長官の言動、政治家らしいなと拝見いたしました。  我が国の周辺に何かが起きた場合には、日本はじっとしていれば安全なのか、アメリカ日本を守ってくれるのが当たり前で、日本は何もしないということが世間に通るのか、国民議論を高めておく必要があると述べておられますが、これに対する真意をお聞かせください。
  142. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 私の率直な国の安全に関するいわば疑問、そういうものを表現した個人的な見解でもあります。  しかし、現実には、我が国民挙げての願望である平和国家、そしてその願いと外交努力は、日本の地理的環境と相まって大変平和的な環境を形成をいたしております。理論上のいろいろな問題点はございましょうけれども、現実、今の政権でそういうものを危惧すべき状況にはないというふうに考えております。  ただ、我が国の長い将来を考えてそういうことを頭の中で整理をしておく、勉強をすることは、私自身は大切だと考えております。
  143. 石井一

    石井(一)委員 そのときに、極東有事の際にどういうことがなされなければならないのか、なされなければいけないのか、あるいは憲法とのかかわりはどうか、そういうことをこれから検討しておかなければいけないと、私は常日ごろ考えていた。  私もこういうことは考えております。日本責任ある政治家であったら、だれでも考えておると思うのです。それをタブーとして言わぬということの方がおかしい。官房長官が記者会見で発言をされて、個人的発言というわけはないでしょう。  ひとつこれを我々も十分前向きに取り組んでいきたいと思っておりますから、これは、憲法との関係についてやはり有事の即応態勢と集団自衛権に関する検討が個人的に必要だと思うし、今官房長官をやっておるので勉強するのだ、こういう意味でございますか。お答えいただきたいと存じます。
  144. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 一義的には私の答える分野ではないかもしれませんが、某紙が、官房長官がそれぞれの内閣においてそういう検討が始まったという、全く実は私のあずかり知らない記事が出ていたのに対してのお答えを私は申し上げたので、それは、今の政権下において今即刻公的な検討を開始するということではない、そして、私の政治家としての信念としてそういうものの危惧を持ちながらも勉強しなければならない、そういうことを申し上げたので、内閣としての取り組み方ではないことを御理解をいただきたいと思います。
  145. 石井一

    石井(一)委員 極東の有事ということは、安全保障条約六条に日米協力が規定され、その細則については今後適宜協議をすると。安保条約ができましてから何年たっておるでしょうか。その間、いろいろの危惧もあります。  先ほど池田外務大臣が、平和的に日台問題を解決する、それはもう我々も大いに希望しておりますけれども、二年前にも、北朝鮮の核疑惑に関連をいたしまして国連の制裁がなされるのではないか、この場合に我が国がどう対応するのかという議論がございました。  こういう現実的な問題、しかも、冷戦構造は崩壊したけれども、アジアという地域を考えた場合には、そのような多極的な、人種的その他非常な紛争の種があるということは我が国の公式文書はどこにも明記しておる、こういう状態の中に、なおかつこの問題を橋本内閣は避けて通られるのか。  まあ、大物官房長官と言われておる梶山さんが個人的には賛成で、そのことに口を出したのだけれども、内閣としてはこれは正式には取り上げていない、これはいささか納得できませんね。それよりも、それは真剣に取り組むと、国民責任を果たすと。  例えば、四月にクリントン大統領が来日されてくるというふうな場合に、台湾、中国、北朝鮮の問題についてもお話しになるでしょう。ACSAを結ぶとか、その他いろいろのことをやっておるこのときに、この問題をまだ避けて現内閣は通られようというおつもりなのですか。  まず、もう一度官房長官からお答えをいただき、総理からもこの点、お伺いをしたいと存じます。
  146. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 私は橋本内閣の官房長官でありまして、私の答えるべき分野ではございません。
  147. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、あえてこの問題にお答えをするといたしますならば、歴代の内閣が、あるいは心の中に問題意識を当然のことながら持ち続けていたであろうにかかわらず公式な論議を避けてくる問題というのは、それだけの難しさがあるものだと思います。また、それだけの取り扱いの微妙さを要するものだと思います。  先ほど来の御意見を御忠告として私は受けとめさせていただきたいと思います。
  148. 石井一

    石井(一)委員 総理の答弁の方がやや前向きのようにも国民には聞こえるでしょう。それだけ重要な問題である。しかし、それだけ微妙な問題であるから、やはり我々も避けて通るんだと橋本総理がおっしゃるんなら、これは本当に自立する、そういう姿勢を出す内閣なのか。しかも安保は変質してきておる。これまではアメリカにすがりついておっただけでよかったんだけれども、ここのところはもうそうじゃない、しかも緊急的な話題が周辺にはもうたくさんある、こういう認識をしていただくべきであります。  しかも、副総理として横に座っておられる久保さんの社民党も、まあ表向き政策を転換しまして、自衛隊の合憲、安保の是認というところまで来ておるんですから、場合によっては、この時期にこれを出すのが非常にいいチャンスじゃないんですか。  我々新進党も、真剣に議論をする用意があります。こういう問題はオープンに、国民議論を呼ぶというのですから、官房長官は政府で検討するというのでなしに国民議論を呼ぶというのはそういうことを言われたんだろう、私はそう思ったのでありますが、久保大蔵大臣のこの問題に対する見解を伺っておきたいと思います。
  149. 久保亘

    ○久保国務大臣 私の現在の立場で個人的な考え方を申し上げることはよくないと思いますが、私としては、日本国憲法の理念に基づいてこれらの問題は考えていかなければならないと思っております。
  150. 石井一

    石井(一)委員 同じ趣旨の質問をさきがけの代表の田中経企庁長官にもお伺いしたいと存じます。
  151. 田中秀征

    田中国務大臣 集団的な自衛権をどう思うかという御質問と受けとめてよろしいですか。
  152. 石井一

    石井(一)委員 いや、今ずっと一連申し上げておる、それに関連をして、あなたがどういう、あなたの政党はどういう態度をおとりになっているかということですね。
  153. 田中秀征

    田中国務大臣 安保条約が冷戦が終わってから変わっている、そういう認識はしております。  また、私の言葉で言わせていただきますと、防衛機能から警察機能に変わりつつあるのかな、そういうふうにも私は受けとめております。これは個人的な見解でございます。  その中で、当然安保の変質というのは起きてきている、そんなふうに思っております。ただ、集団的自衛権については、政府の見解を尊重しております。
  154. 石井一

    石井(一)委員 この際、御出席をいただきました大森内閣法制局長官に、個別的自衛権、集団的自衛権に関する憲法解釈の変更はあり得るのか、このことについて御意見を伺いたいと存じます。
  155. 大森政輔

    ○大森(政)政府委員 憲法解釈の変更はあり得るのかというお尋ねでございますが、憲法を初め法令の解釈と申しますのは、当該法令の規定の文言、趣旨に即しつつ、立案者の意図等も考慮いたしまして、また、議論の積み重ねのあるものについては、全体の整合性を保つことに留意いたしまして論理的に確定すべきものであるというふうに解しているところでございます。私どもも、今までいろいろな問題につきましては、このような態度で対処してきたつもりでございます。  そこで、政府の憲法解釈等についての見解でございますが、以上申し述べましたような考え方に基づきまして、それぞれ論理的な追求の結果として示されてきたものと考えております。したがいまして、一般論として申しますと、政府がこのような考え方を離れて自由にこれを変更するということができるような性質のものではないというふうに考えております。  したがいまして、政府がその政策のために従来の憲法解釈を基本的に変更するということは、政府の憲法解釈の権威を著しく失墜させますし、ひいては内閣自体に対する国民の信頼を著しく損なうおそれもある、憲法を頂点とする法秩序の維持という観点から見ましても問題があるというふうに考えているところでございます。
  156. 石井一

    石井(一)委員 きょうはこの問題を提起いたしておきまして、総理が御答弁になりましたごとく、国際情勢の変化、安保の変質、再定義、そして日米安保体制の再検討、そういう場合に、私は、この問題はクリントン訪日の場合に避けて通れない問題になってきておるのではないか、これまでとは違う日米関係というものが要請されておるのではないか、そういう認識をいたしておりまして、強く政府に問題の提起、喚起をしておきたいと存じます。  きょうは、いろいろ問題があるのでございますが、時間が限られておりますので、最後の多角的安保協力という問題について所見を申し述べたいと存じます。防衛大綱を決定される下敷きになったと言われております防衛問題懇談会の答申の中には、日米安保より前に多国間の安保協力という、そういうものが位置づけられておったわけでございます。  私は、今後、アジアがこれだけの問題を抱えておる場合に、バイラテラルな安保とか、それも重要です。それから、グローバルな国連よりもマルチラテラルな、リージョナルなその安全保障体制ヨーロッパでも成功しておりますけれども、これに積極的に日本イニシアチブをとっていくべきではないか。  残念に思いますのは、新大綱にはこの下敷き、答申があるにもかかわらず、多国間の安保というものが抹殺、消滅いたしまして、日米安保の中にごく一文書き込まれておるだけだというふうなことになっております。日本は、APECの会議におきましても、ARF等につけても、日本が主導したんだということを主張しておるのに、なぜ新大綱にこのリージョナルな安全保障に対する積極姿勢を示されないのか。この点について、外務大臣なり防衛庁長官から、まずお答えをいただきたいと存じます。
  157. 池田行彦

    池田国務大臣 お答え申し上げます。  私どもが、今日の、あるいはこれから将来に向かっての世界情勢、とりわけアジア太平洋のこの情勢の中で、どのようにして国の安全を守り、また地域の安定を確保していくか、こういった観点で、そういった際にいろいろなことが考えられるんだと思います。  基本的には、これまで我が国の防衛の二本柱となっておりました自衛隊、そうして日米安保体制、これを堅持していくということでございます。これは、情勢が変わりましたので、なぜこれが有効であるか、また必要であるかという点についての説明の仕方は違いましょうけれども、結論的に言って、やはり日米安保体制が不可欠であるということは御説明するまでもないと思います。  それと同時に、今委員御指摘のように、マルチラテラルなと申しましょうか、あるいはリージョナルないろいろな安全保障の仕組みというものについても、これはやはりそういったものの可能性を追求していくということは必要だと思います。  ただ、それがどういう仕組みになるかでございますけれども、例えば、ヨーロッパに存在しますNATOのような、何と申しましょうか、実力も備えた地域的な安全保障の仕組みということになりますと、御承知のとおり、アジアにおいては、経済社会発展段階であるとか、あるいはその制度であるとか、それから安全保障に対する認識であるとか、いろいろ違いますので、近い将来にそういうものが構築できるということはちょっと期待できないと思うのでございます。  しかしながら、間断なき対話を、安全保障をめぐる対話を通じまして地域の安定に資していくということは必要でございますし、現に例えばASEAN地域フォーラム等、そのような試みもずっと今進められておるところでございます。  そして、例の防衛問題懇談会の報告書ではそういったものの必要性が触れられているのに、新大綱ではそれはないのかという御指摘でございます。  これは私が答弁申し上げるべきかどうかちょっとあれなんでございますけれども、ただ、新大綱を見ましても、これは(3)にこういう項があると思います。「安全保障対話・防衛交流を引き続き推進し、我が国の周辺諸国を含む関係諸国との間の信頼関係の増進を図る。」これは確かに安全保障対話とか防衛交流でございますので、すっと読みますと、これは依然としてバイラテラルの、二国間の対話とか交流というふうに読み取られがちでございますが、これは決して二国間に限られるわけではなくて、多国間のそういった対話や交流も視野に入れての話じゃないかと思います。
  158. 石井一

    石井(一)委員 そういう記述があるということよりも、日米安保よりも上位に位置さすほどこの懇談会は多国間の安保というものを重視しておるということでありまして、何もそれが存在していないなんという話とは全く違うわけでございます。  最近、沖縄の不幸な事件等もございまして、日本の国内世論もふくそうしておりますが、アメリカ日米安保に対する退潮的風潮というものも、クリントンさんは別ですし、我々も重要性を認めておりますけれども、変わってまいります。  また、今後二十年後に中国の経済力がアメリカをしのぐというふうな経済的展望もあるときに、結局、もう二国間あるいは国連を中心にした安全保障というよりも、これらの台頭するアジアの時代への先駆け的なステップ、これを日本イニシアチブをとっていくべきだと思いますし、そういうふうな意味におきまして私は、この点でも今回の新大綱に満足をいたしておりません。  この点もひとつ提言として申し上げておきたいと思いますが、総理として、何か御所見がございましたらお伺いをさせていただきたいと存じます。
  159. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、これからも日本は積極的に国際社会の中、殊にアジア太平洋地域においてさまざまな役割を先導して担っていく立場にあると思います。しかし、事軍事あるいは安全保障という問題で日本がこの地域において飛び出すことが私は望ましい姿だとは思っておりません。  私は、日本の置かれている地位またその役割というものを考えますときに、我が国にとりましてはやはり日米安全保障条約というものがその基礎をなすものである。そして、アジア太平洋地域の歴史もあるいは現在の経済状態も政治体制もさまざまな国が肩を寄せ合っております中で、軍事的なあるいは安全保障面における仕組みづくりに日本が先に飛び出すことが、私はこの地域をまとめる上でプラスだとは必ずしも思いません。  むしろ、そのほかの分野におきまして、先ほど中野寛成委員から提起をされました社会経済問題等におきましては私は随分役割を果たすものがあると思います。その辺のところは、多少私は委員と意見を異にいたします。
  160. 石井一

    石井(一)委員 まことに恐縮ですが、ここで全面的に話題を変えまして、大震災の復興の問題につきましてひとつ御質問を申し上げ、御要望をさせていただきたいと存じます。  実は、二月二十一日当委員会におきまして質問をいたしまして、建設、運輸、通産、厚生、国土、自治、大蔵等の担当の大臣に出ていただきましたが、総理には、御不在で、御出席を要請いたしませんでした。しかし、この問題は大変大きな問題だと思います。そういう意味で、きょうは要約した問題点を二、三御指摘させていただきたいのであります。  あの未曾有の大震災の後一年たちまして、先日、総理は被災地を訪ねられ、仮設住宅も回られ、その後、関係閣僚をも招集されてそれなりの適切な指示をしていただいております。それは大変感謝申し上げたいと存じますし、また被災地の人々も、村山内閣のときに対応がおくれたということですが、橋本さんが政権をとられたらという何か祈るような、そういう期待を現在持っておることも確かであります。  先日、住宅、マンションの建てかえ、差額家賃、道路、港湾、仮設住宅、中小企業、経済の復興等々、それぞれの大臣からかなりの前向きな答弁もいただきましたし、また御検討をいただいておるところもございます。ところが、この間、行かれてお感じになりましたように、まだ緒についたといいますか、表通りは多少整理はできておりますけれども、一たん裏側に入りますと全く何もない。都会の中の砂漠の状態が続いておる。これの最大の問題は、公の部分に対する制度があり財政措置はとられても、民間のいわゆる個人補償というものはできない。したがって、多少でも蓄えのあった者は、これは何とか生き延びていけ、家の再建もできるのですが、あとはもうどうにもならないという、一瞬のもとに谷底へ突き落とされるという、こういう状態が起こっておるわけでございます。  被害の総額が九兆九千億といいますが、補正でつぎ込んでいただきましたのが三兆四千億であります。そこで、この差をどうするか。地元は市と県が義援金を集めて、全国から集まってきた金が二千億。しかし、これまでの奥尻とか雲仙と比べますと、これは非常に少ないものであります、余りにも被災民が多いというために。奥尻、雲仙では一千万円とか一千三百万円ぐらいの義援金を分配することができたんですが、阪神・淡路の場合は二十万円か三十万円。それにとどまっておる場合には、これはどうしたって立ち上がりのステップになる資金にもならないという、こういう状態の中から、地元では復興基金というふうなものをつくりました。  地元のこの復興基金というのは、銀行から金を借りてきまして、そうしてその利息を自治省の方にお願いをして地方債で払ってもらって、そこから出てくる利息を何とか涙金として使っておる。これが、住宅であるとか教育であるとか産業であるとか福祉というふうにばらまかれておるのですけれども、余りにもパイが小さい。それで、地元の要求というのは、何とかこの六千億の復興基金をせめて一兆円にできないか。いわゆる弱者救済という思想の中から、何か国の財政措置がこの復興基金に対してできないかという強い要望があることは御存じだと思います。まず、このことについてひとつ何らかの決断ができないかということをお伺いしたいと存じます。
  161. 鈴木俊一

    鈴木国務大臣 先般の委員会でもお答え申し上げたとおりでございますが、国の財政から直接支出をするということは、私は、結論的に言って難しいんじゃないですかということを先生にお答えしたと思うんです。  つまり、この復興基金というのは、復旧、復興についての各般の行政施策を補完をするという立場でこの措置をとっているものですから、補完という立場を尊重するならば、国の財政から直接入れることはちょっと難しい、こういうふうにお答えしたと思うんです。  さて、そういうところで、今、基金は五十六の事業を始めているわけでございますね。それで、まだ緒についたばかりなものですから、どういうぐあいで、どういう実施状況であるのかということが必ずしも明確になっているわけではないように思うのです。  そこで、先般、総理からも御指示があったとおり、今回、明日ですが、事務次官、それから内政審議室からもお出かけいただいて、これからの対策を協議するということになっているものですから、地方自治体から直接お話があれば、また自治省ともお伺いし、また関係省庁とも相談をしながら対応するという現状でございます。
  162. 倉田寛之

    ○倉田国務大臣 石井委員御指摘の、基金の拡充に関しましては、被災地におきまする事業の実施状況などを踏まえまして、地元県市の御意向をお伺いしてまいりたいというふうに考えております。  なお、阪神・淡路大震災復興協賛宝くじにつきましても、平成八年度におきましては、平成七年度に引き続いて発売することとなったところでありまして、七月に初の五百円くじとして、通常のくじに百億円を上乗せをして発売をして、収益金は四十五億円程度が見込まれております。  平成七年度の震災宝くじの収益金は、御案内のように、兵庫県、神戸市分九十五億五千八百万円、基金へ繰り入れ済みでございます。
  163. 石井一

    石井(一)委員 先日の委員会で御答弁いただきましたことについては、ここで御答弁は必要ございません。私としましては、何とか新たなそういう財源が与えられないかということでお願いをしておるわけでありますが、実は一週間も前から大蔵省の前へ座り込んだというグループがありまして、これはきょう、あすが山場になっておるんですけれども、この人たちが言っておりますのは、要するに、生命保険の掛金の払込猶予期限が今月で打ち切られる、だからきょう、あすのうちに十三カ月分持っていったら生命保険は延長になるんだけれども、それでなければこれで完全にパアになってしまう、したがってこれは命を絶つんだ、命を絶つ以外にこの生命保険はむだになってしまうし、家族に残してやれるものはないんだ、こういう切実なグループまであるんです。  これは一々これに御答弁を求めようとは思っておりませんけれども、今の国土庁長官なり自治大臣は、制度上できませんとかなんとかという話じゃなくて、もう瀕死の状態になっておるということも御理解をいただきたいと思うんでありますが、私は、一つは、この復興基金をせっかく地元がつくっておるんだから、しかしその資金の運用というものはもう利子だけでやっておるんで非常に小さいので、そのパイを大きくするための何らかの特例措置が考えられないかということをまず御提案申し上げておるわけでございます。  それからもう一つございますのが、震災復興特別事業債の創設。なかなか創設というのがこの国の制度ではできないということはよくわかるんでありますが、これからどんどんどんどん家を建てたりなんかするというのに物すごい事業費がふえてまいります。それは裏負担が必ずつきまとう。裏負担というのは地方の税金で賄っていくわけですけれども、その地方税というのが大幅な減収に見舞われてきておる。この被災地十市十町の十年間のいわゆる不足財源は二兆円というふうに見込まれております。したがって、もうあと一年もすれば起債制限比率二〇%を超える。要するに赤信号がともる。あと三、四年すればそれが三〇%を超えるという、こういう状態に置かれております。  そこで、政府は三次にわたる補正の措置をしてくださいましたけれども、これは裏負担がございませんので地元にとっては非常に助かるんですけれども、今後やっていきます事業というのは全部今のような財政状況の中で裏負担というものがつきまとってくる。したがって、赤字が雪だるまのようにふえてくれば、住宅も区画整理も都市再開発も何もかにも、もうほとんど今の状態から金がなくて動かぬという状態に、赤字に転落していきますから、これはなっていくのは明らかなんであります。  そういうところから、この今申しております復興債ということを検討してもらえないかということなんでありますが、この復興債に関しましては政府の手続が済んでおります。すなわち、阪神・淡路復興委員会、下河辺委員会の提言の中に、その五にあるんですけれども、「復興計画の前期五カ年において、被災地域のおかれた状況の下で、復興にとって緊急かつ必要不可欠な施策を復興特別事業として位置づける」。そして「国はこの復興特別事業への取組み方針を明らかにするとともに、」その円滑な事業の「実施のために特段の措置を講ずる」。これは国庫補助金か交付金か何らかでそういうことを見てくれということを言っておると私は思うんです。  それに対しまして、平成七年七月二十八日の阪神・淡路復興対策本部、本部長総理でございますが、これの回答の三項に、前略でやりますが、「復興にとって緊急かつ必要不可欠な施策を復興特別事業として位置づけ、その円滑な実施に必要な特段の措置を講じ、それら事業の着実な実施に全力を注ぐこととする。」こういうふうに復興本部は方針を出しておられるんですけれども、この財源につきまして地元からいろいろの要望をしておりますけれども、これに対する手当てが今日までありません。  これは、やはり何らかの形でその基金を創設していただくということをお考えいただきたい。国庫の各事業に対する補助率のアップが難しいということであれば、地方財政全体の中で財源の手当てができないか、あるいは大蔵省として交付税総額の上積みを検討できないか、自治省としてもこの上積みを大蔵省に要求できないか。十六兆八千億もある交付税でもあるので、何らかの形で新たな財源を入れてもらいませんと、現政府の中でほか以上の例外はできませんということになりますと、この復興というものは不可能であります。  どうかこの窮状というものをお考えいただいて、最初に申しました復興基金に対する拡充か、あるいは政府が指定しておる事業がこれだけできてきておるわけでありますから、この事業に対する特別の起債の枠を認めるか、何らかの処置を、ひとつ総理、お考えをいただきたいと思いますが、いかがですか。
  164. 遠藤安彦

    ○遠藤(安)政府委員 今、震災復興特別事業債の創設のお話がありました。これは昨年のたしか八月だったと思いますが、こちらにおられます当時の深谷自治大臣が現地に行かれましたときに御要望を受けて、私どもも真剣に検討をしたわけであります。復興事業の中で各市町村あるいは県で一番問題が大きいのは土地区画整理事業と市街地再開発事業であるという結論に達しまして、この事業について特別な財政的な措置をすればかなりの程度財政的には救われてくるということで、御案内のとおり、これらの事業の裏負担について九〇%の地方債を充当して、その八〇%を交付税で見るということをしたわけであります。  その他の公園とか街路とかいろいろありますけれども、これは通常の補助率の中で処理されるわけでありますから、通常の交付税と地方債で処理をしていく、あるいは単独事業についても、復興対策の中で主要な事業がありますけれども、これらについても交付税率の地方債を有効に使うことによって何とか処理できるだろうということでやっておったわけであります。  ただ、これからの地方税の動向、その他の新しい要因等もありますので、そういった面については国にお願いをしなければならない部分もありますが、いずれにしても、最終的には、当該地方団体の財政状況をよく私どもの方で聞いて、そして特別交付税その他での運用というものはありますので、そういった点で十分地方団体の財政に支障がないように努めてまいりたい、こういうように思っております。
  165. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今自治省から御答弁がございましたけれども、先般私も神戸の仮設住宅を見せていただき、災害直後の非常に破壊の目に見える姿から、むしろ内にこもったという言い方はおかしいのですけれども、外目にある程度回復をしながら、例えば仮設住宅の問題一つをとりましても、問題が裏側に入ってしまったという感じは確かに私も持って帰ってきました。  そして、それぞれの関係者に対して検討すべきことは指示いたしましたが、その一つとして、知事にお約束をいたしました復興対策本部そのものの幹事会を神戸で開かせていただく、そして事務局長あるいは内政室長等、各省の幹部、幹事、これが神戸で、各関係者おそろいの上で御意見を伺うような第一回の協議を開かせていただくことにしております。ここでより細かく現実の区画整理事業の進行状況その他をお聞かせをいただけると存じます。  これを受けまして、阪神・淡路復興対策本部には、先日、知事さん、また神戸市長さんに対して、私の方でお越しを願いたいと言ったら来ていただけるだろうかというお願いをして、快く出席するという御返事をいただきました。今後、実際に対策本部に知事さんにも神戸市長さんにもお越しをいただいて、一緒に対策を立てていきたい、そう考えております。  また、今倉田自治大臣の方からも御報告がありましたが、去る二月二十日、私の方から関係閣僚にお願いをし、検討を要請しておりましたところ、自治省からは先ほど御報告のありました阪神・淡路大震災復興協賛宝くじを発売をする、そしてその収益を、あるいは通産大臣からは競輪、オートレース、運輸大臣からはモーターボート競走、そして農水大臣からは競馬関係、それぞれの財源を拠出していただけるという御報告をきょういただきました。恐らくそれぞれの閣僚から御報告をし、地元にも御連絡をとっておるのではないかと思います。
  166. 石井一

    石井(一)委員 あらゆる機会に国の財政支援の措置をお願いしておりますが、ほとんど地元の要求は満たされておりませんし、そこに余りにも大きな金額的乖離がございます。いろいろ宝くじ等をやっていただいておりますが、これでもとてもおぼつかないという情勢であるということをひとつ改めて御認識をいただき、ただいま申し上げました二つの提案につき何らかのひとつ前向きな御検討をお願い申し上げたいと思います。  最後に、地震共済制度の問題でございますが、御承知のとおり、今回四十万戸の家が崩壊をし、しかし個人補償がないということから建てかえが進まない。公営住宅はぼつぼつ建ち始めるけれども、民間の家というのはどうにもならないという状態にございます。  最近、NHKが、地震に対する保険制度に国民全員が参加するのはどうかというようなアンケートをとりましても、六八%、七〇%の人々がこれに賛意を表しておりますし、時事通信の調査ではもっと多い。今の制度は新潟地震のときにできたといいますが、加入率が一〇%未満でございますから、結局これでは家が建てかえられるというふうなことはほとんど不可能であったという、こういうのが実態でございます。  私は、これは今がチャンスだと思うのです。これ以上放置をしておればまた忘れられてしまう。しかし、いっかやってくる。ほとんどの勤勉な国民は懸命に家を建てる。しかし、それが一瞬のもとに飛んでしまう。こんな不幸なことはありません。そして、今から始めようと思っても二重ローン、それはできない。年をとっておれば、今度はそういうローンの制度にはまらない。何らかのこういう再建のための制度がなかったら、この国はどうにもならない。  いつどこへ来るかわからないというこの状況を考えた場合に、自民党では何か日本を地震から守る会というのがございまして、後藤田先生おられませんが、会長のもとに大いに研究をされておりますし、私の方も懸命に合成案をつくろうと思ってやっております。  総理は、地元へ来られたときかどこか、中長期的な課題だ、こういうようにお話しになったようでございますが、中長期的といえばもうしばらくは保留だということになるのであって、この時期に政府がもう少し積極的になっていただく、これは全国民のためだ、こう思うのでありますが、これに対する御所見を伺いたいと存じます。
  167. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は先般現地を拝見いたしまして、やはり住宅対策が重要だという感じは当然のことながら持って帰りました。  ただ、それは、仮設の住宅から安心してずっと住むことのできる恒久的な住宅への移行が早くできるようにしなければならないこと、同時にそのときに、さまざまな施策によりまして、今引き下げを図っております公営住宅ですら重い負担になるような被災者の方々を視野に置いた何らかの工夫が必要だ。今三万円という水準を置き、さらに、さまざまな工夫をして最低六千円の負担まで下げておりますけれども、それでも負担がつらい方が現におられるわけでありますから、そうした方々を視野に置いた工夫が何らか必要だということで、関係閣僚に検討をお願いをしているところでありまして、この問題には真正面から取り組みたいと思います。  ただ私は、地震保険でいきなりこれがカバーできると思いません。そういう制度をつくっているよりも先に、私は、仮設住宅から恒久住宅に移っていただけることを急がなければならぬ、これは本当にそう思っています。そして、ちょうど新潟地震の後、地震保険の議論が随分長くかかっていたことを私は記憶しております。いたずらにそれに時間をかけるよりも、仮設住宅から恒久住宅にいかにして移っていただけるか、その際、その家賃負担にも耐えられない方が現にあるということを認識した上でどういう対策を立てるかが私は喫緊の課題だと思いながら帰ってまいりました。そして、関係閣僚にはそういう指示をいたしました。
  168. 上原康助

    上原委員長 この際、仲村正治君から関連質疑の申し出があります。中野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。仲村正治君。
  169. 仲村正治

    仲村委員 私は、まず橋本総理大臣質問をいたしたいと思います。  橋本総理は、去る二十四日、クリントン大統領との一時間の会談のために駆け足訪米をされました。一時間の会談ですので、どれだけのことが話し合われたのかなと思いますが、しかし私は、その会談内容に非常に注目をしておりましたし、また、現地での記者会見で総理が発言されることを食い入るように耳を傾けておったのであります。  総理がお話しされた中で、沖縄の基地問題の解決によいシグナルがあった、そしてクリントン大統領沖縄の人々の気持ちを考慮しながら最善を尽くしたい、柔軟性を持って考えたいと言われたと橋本総理は言われました。クリントン大統領の発言と総理が言われたよいシグナルがあったという点の御説明をお聞きいたしたいと思います。
  170. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今朝来何回か同じ答弁を申し上げ、また重複する部分がありますけれども、その点はどうぞお許しをいただきたいと思います。  私はクリントン大統領に対し、日米関係というものが本当に日本にとってもまたアメリカにとっても大切な関係であること、そして、これから先もこれはより深いものにしていく必要のあるものであること、そして、アジア太平洋地域あるいはEU国々も、これは昨年、私自身自動車協議を行っておりましたときに各国から言われて心に残っておることでありますけれども、経済問題の議論日米関係を傷つけないようにという声が非常に強くありましたことを考えても、この関係というものがほかの国からも大切な関係認識をされていること、そして、その信頼関係の基盤に日米安全保障条約というものが存在し、その日米安保体制というものが今日の信頼関係の基となっていること、そして、それを私は認識し、国民に対してその再確認を求めていく努力をすること、そのためにも沖縄県の方々の長年の苦しみ、悲しみというものに心を尽くしていただき、沖縄における基地施設の整理統合・縮小にアメリカもできる限りの弾力性を持って臨んでほしいこと、私はそういうことをアメリカ側に伝えました。  クリントン大統領からの返事は、昨年の不幸な事件に対する遺憾の意を改めて表明されると同時に、沖縄の人々の気持ちをきちんと考慮し、また、安全保障のニーズも考えながら最善を尽くすことにしたい、柔軟性を持って考えていきたいという発言がありました。私は、この発言は、今後の議論をしていく上で非常に大切な発言だと考えております。
  171. 仲村正治

    仲村委員 くしくも総理訪米された二月二十三日の新聞に、アメリカは普天間飛行場の機能を岩国へ移転する用意があることを日本政府に対して非公式協議の中で提示をした、さらに米側は沖縄の北部訓練場の全面返還に応じる方針であることも日本政府に伝えた、こういうふうに報じているわけでありますが、橋本総理が記者会見で、クリントン大統領との会談の後、よいシグナルがあった、こういうことの説明の中で、例えば普天間飛行場の移転の問題などという言葉を使われましたが、この総理が特定の基地名を挙げてお話をされた点は、大統領言葉として受け取ってよいかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  172. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先般、大田沖縄県知事にお目にかかりました際、大田知事から切々たるお話がございまして、その中で幾つかの事案について説明をされた中、最も力を入れて述べられたものがこの普天間の問題でありました。そして、私は大統領に対し、沖縄県が、例えばどういう問題があるかということを理解してもらうためにも、どこか例示が必要だと私は思いましたし、県の強い御要望があるものとして普天間基地の名前を例示として挙げました。ただ、それは個別の議論をしたのではございません。誤解のないようにお願いをいたしたいのは、普天間基地の問題というのを例示に挙げましたのは私の方であります。
  173. 仲村正治

    仲村委員 次の問題に移ります。現在、福岡高裁那覇支部で、内閣総理大臣が原告で大田沖縄県知事が被告として行われている裁判についてであります。  この裁判は、米軍基地に土地を貸すのを拒否している地主の土地を駐留軍用地特措法及び土地収用法をもって米軍への基地提供の目的で、大田知事を被告として行っている職務執行命令裁判のことであります。  この裁判は、皮肉にも皮肉、つい一年半前まで四十年間も日米安保に反対し、自衛隊は憲法違反だと安保条約と米軍基地に徹底的に反対してきた社会党の委員長でもあった村山前総理が、なぜ米軍に土地を貸さないのかということで、昨年十二月二十一日に大田沖縄県知事を被告として提訴した裁判であることを考えれば、まことにこっけいな話で、まさにあいた口がふさがらないというところであります。  まあそのような話はしばらくそこにおいておくといたしまして、村山前総理は、十一月四日と十一月二十四日の二度にわたって大田知事を総理官邸に呼び、長時間の話し合いをされた。恐らく村山前総理のねらいは、何とか大田知事を説得して、強制収用手続に必要な代理署名をやってもらおうとしたと思います。しかし、大田知事がこれに応じなかったために、今まで日米安保や基地に反対してきた村山さんは、米軍に基地を提供するために大田知事を相手に裁判に訴えたということであります。もちろん、本件の裁判は橋本総理に引き継がれて、現在その裁判は続行中であります。  橋本総理も、一月二十三日に大田知事を官邸に呼んで、沖縄の基地の問題について大田知事から説明を受けられたと思います。そのような中での裁判の原告が橋本総理であり、被告が大田知事であるということについて、橋本総理はどのようなお考えをお持ちか、御所見を承りたいと思います。
  174. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 これは、去る二月二十三日に第三回の口頭弁論が開かれ、現在進行中の訴訟についての話であります。この第三回口頭弁論におきましては、那覇防衛施設局施設部長の証人尋問が行われました。第四回口頭弁論は、三月十一日に開かれることになっており、沖縄県知事さん御本人に対する尋問を行うことが予定をされておるわけであります。これは、今後の見通しをも含めまして、裁判所の訴訟指揮に係る事項でありまして、言及をすべきことではないと存じます。  いずれにいたしましても、私としては、我が国として条約上の義務を履行できないような事態が生じないように最大限の努力をしてまいりたいと考えておりますし、村山前総理もそのような思いで御努力をされたと私は思います。
  175. 仲村正治

    仲村委員 この件について、村山前総理が二回、橋本総理が一回、大田知事を官邸に呼び、話し合いをされた。しかし、そのような中で知事を被告として提訴したことは、まるで左手で頭をなでなでして右手で顔を殴ったようなものではないかというふうに私は思うのであります。  それでは、なぜ大田知事が公告・縦覧の代理署名を拒否したかということであります。  その最大の原因は、昨年九月四日の米軍人の少女乱暴事件の被疑者を日本側へ身柄を引き渡せということについて、米軍当局は地位協定を盾にそれを拒否した。そこで沖縄県は政府に対して、地位協定の十七条五項(c)の改正をすべきである、こういうことを要請したときに、野坂官房長官も河野外務大臣もけんもほろろ、これを拒否するという冷たいあしらいでこれを一蹴した。この冷たいあしらいに、県民の積年の積もり積もった米軍基地から起こる事件、事故、被害に対する不満と怒りは、まるで燎原の火のごとく一挙に燃え広がったのであります。そして、戦後五十年間蓄積されたマグマが爆発してしまったのであるわけであります。  そのような怒り狂った県民の米軍基地縮小運動の中で、大田知事は幾ら政府から要請されてもこれに従うわけにはいかなかったのであります。そして、大田知事の署名拒否の姿勢は、全国的にこれが支持されるということをわかっていただきたいと思うのであります。  このように、大田知事を拒否の方向に追い込んだ責任は私は政府にあるのではないかと思うのでありますが、このことについて橋本総理の御所見をお聞かせいただきたいと思います。
  176. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 あえて仲村さんと言わせていただきますが、私はあなたと一緒に随分沖縄を訪ねさせていただきました。あなたは沖縄県人であり、私は他県の人間であります。しかし、あなたのおかげで、私は沖縄の方々の心は少なくともある程度わかってきたつもりであります。そして、今あなたが言われんとしていることを私は理解しないのではありません。ただここで、大田知事にお目にかかりましたとき、私はこの署名を云々という話にはあえて触れませんでした。その気持ちもわかっていただきたいと思います。  そして、この国には日米安全保障条約という日米関係の基盤をなす条約は必要なのであります。沖縄県の皆さんもその必要は認めてくださっておられる。そして、その条約の維持、堅持が必要であるとすれば、現在ある基地を整理統合・縮小しながらも、どこかに我々はその拠点を条約上の義務として持っていかなければなりません。  そうした中において、私は、もし当時の政府関係者の中に言葉が足りない者がおりましたのなら改めておわびをしても結構でありますけれども、その責めをすべて特定のところにだけ負わせないでいただきたい。そして、解決をするために、ぜひ県民の代表としての立場、国政の中における議員のお立場で御協力をいただきたいと存じます。
  177. 仲村正治

    仲村委員 この駐留軍用地特措法に基づく米軍提供用地の強制収用手続は、沖縄の復帰後、これまで四回目だと私は思います。私は、日米安保条約で我が国が駐留米軍に基地提供義務を負っているということは当然だと思っておりますので、政府が法律に基づいて粛々と手続をとることにいささかも反対するものではありません。  政府は、平成八年三月三十一日と平成九年五月十四日に収用期限が切れるのを百も承知であったはずであります。また、その強制収用手続に予想される、いろんな事態が起こることを想定して、その手続に必要な期間は、期限が切れる平成八年三月三十一日から逆算して手続を進めるべきであったと思います。そのようになされただろうかという疑問を強く持つものであります。  総理は、原告としてその手続の期間設定についてどのように考えておられますか。お答えをいただきたいと思います。
  178. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 これは、閣内にありましても守備範囲を異にしておりました立場として、私が拝察する以外のものではありません。しかし、当時私は、だれも昨年の夏に発生したような不幸な事件が、国民、あえて沖縄県民だけではありません、国民全体を怒りに追い込むような事件が発生するとはだれも予測をしなかったと思います。そして、むしろ私は、代理署名拒否といった事態が起こることはその当時想定せず、むしろ手続がいかに円滑に終了するかを関係者は考えていたと思います。  ところが、あの不幸な事件が、これは沖縄県民が怒られるのは当然でありますし、本土の人間も皆これは怒りました。私自身が似たような年齢の娘を持っております。耐えがたい思いがしました。そして、その結果として沖縄県の皆さんが大変厳しい態度をとられ、知事さんも厳しい態度をとられた、その中で法的手続をとらざるを得なくなったというのが私は実態ではなかったであろうか、そう思っております。
  179. 仲村正治

    仲村委員 これは大田知事も、九月の中旬ごろまで、ぜひ国の要請にはこたえていかなければならない、そういうお気持ちを持っていたと私は思っております。ただしかし、私が先ほど申し上げましたように、あの不幸な事態が起こって、もう我慢できないといって県民が立ち上がった、何としても事件、事故の起こる元凶はそれは米軍基地だ、それを整理縮小しない限りこれはもう次から次へ起こる、こういうことでみんなが立ち上がった、その中で大田知事は署名をするわけにいかなくなった、こういうふうに私は申し上げたわけであります。  しかし、それにいたしましても、やはりこの手続をとるためには期限の切れる平成八年三月三十一日から逆算をしてどれだけの期間設定をしなければならないということは、これは事務当局においてはきちっとわかっておったことだと私は思うから、その質問をいたしたのであります。  かつて防衛施設庁は、来る三月三十一日で契約期限が切れる土地を駐留軍用地特措法で強制収用するために必要な期間は、平成八年三月三十一日から逆算して、大田知事が代理署名の業務を行うのは九月末日がタイムリミットである、その後、沖縄県の土地収用委員会での収用裁決を出すまでに少なくとも六カ月は要する、こういう説明をしておったのであります。しかし、大田知事の代理署名拒否の姿勢は変わらず、とうとう村山前総理は、期限から逆算して必要なタイムリミットの期日から三カ月近くもおくれて大田知事に対して代理署名をやれという職務執行命令の裁判を提訴したのであります。  現在進行中のこの職務執行命令の裁判は、たとえ沖縄県知事に代理署名をやるべしだという判決が出されたとしても、大田知事がその判決に従うか否かは非常に疑問であります。  そういうさまざまな手続を経なければ、期限の切れる三月三十一日に間に合わせて手続を完了することは極めて困難であります。その場合、地主が賃貸を拒否すれば、結局、政府により土地の不法占拠という事態になることに原告の総理大臣は大変な焦りがあるということは否定できないと私は見ております。  総理、この件は九九・九%そのような事態になること間違いなしと私は思うが、これにどういうふうに対処されるおつもりか、お聞かせをいただきたいと思います。
  180. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今議員は、焦りという言葉を使われました。その焦りという言葉も合りているかもしれません。しかし、そういう事態が起こることを私は大変悲しく思います。この国のためにも残念であります。沖縄県のためにも、私は決して望ましい事態だとは考えておりません。
  181. 仲村正治

    仲村委員 したがって、私が先ほどから申し上げておりますように、こういった提供義務を果たすためには、それなりの期間設定をした手続が必要であったんじゃないかということの指摘を今申し上げているところであります。  この裁判を見ておりますと、第二回口頭弁論で、裁判長は、この裁判は普通の民事裁判とは違って国際的なかかわりがあると言ったり、また、この職務執行命令訴訟は知事の職務怠慢を総理が訴えたものだなどと言って、政府が期限切れで焦っている立場を意識して、その結審を急ごうとする姿勢がありありであるということをマスコミは報じているのであります。これは、我が国の司法、立法、行政の三権分立の国家組織形態から、司法の公平、公正の中立性が貫かれるだろうかという憂慮の念を深くするものであります。  期限切れで政府の土地接収の法的根拠を失うことの大きな焦りから、強引な訴訟指揮があるのではないかと疑わざるを得ないのであります。この点について、総理から御所見をお聞かせいただきたいと思います。
  182. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 大変恐縮でありますが、訴訟の進行中、その訴訟指揮について行政府の長として意見を申し上げることは、まさに越権だと思います。
  183. 仲村正治

    仲村委員 裁判長は、この職務執行命令訴訟は大田知事の職務怠慢を総理が訴えたものだと言っております。まさに本末転倒じゃないかと私は思うのであります。私に言わせれば、これは、期限切れになる日時から逆算して手続に必要な期間を設定して手続をしなかった原告の方に責任がある。その責任が厳しく問われなければならない問題になるのではないかと思うのであります。  この駐留軍用地の強制収用に空白期間が生じた場合の責任はどこにあると思いますか。
  184. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 お答えいたします。  先ほど総理から御説明もございましたように、前内閣のときに、県知事と総理との会談が行われまして、いろいろ御調整申し上げた結果、やむを得ず、私どもとして最後にとるべき手段としては、もうこの特措法に基づく手続しかとり得ないということで、最終的な訴訟という形をとらざるを得なかったということが一点でございます。  それから、もう一つ、先ほどの総理答弁にちょっと補足させていただきますと、私どもとしては、三月三十一日までに何とか判決をいただいて、その上で、判決をいただいた結果、裁決申請と同時に、緊急使用の手続というのをとらさせていただきたいと考えております。  したがいまして、三月三十一日までに何とか、私どもとしては、使用権原が得られるような事態といいますか、そういうことを期待いたしまして、現在、最大の努力をしておるところでございますが、もちろん裁判に対しまして私どもは公正、迅速な裁判を期待しておりますが、裁判官の訴訟指揮等の問題もございますので、私ども政府側としては、その訴訟の内容について、先生御指摘のようなことは全く考えておらないというようなことでございます。
  185. 仲村正治

    仲村委員 私は、あらかじめお断り申し上げましたように、我が国日米安保条約に基づいて駐留米軍に基地を提供する義務がある。もしそれを拒否することであれば、これは駐留軍用地の法律に基づいてその収用をすべきである。そのためには、やはりその期限の切れる期日から逆算してきちんと手続のとれるようなことをやるべきである。それをやらなくて、今もうせっぱ詰まった、もう期限が到来しているということで強引な裁判を進めていることに県民は非常に司法に対する不信感を持っている、これはどこかで強引な訴訟指揮をしているのではないかということさえ言っているから、私はこのようなことを指摘をしたわけであります。  前の防衛施設庁長官であった宝珠山さんの説明からいたしますと、この土地を収用するためには平成七年九月三十日までに大田知事の代理署名が必要である、もしそうでない場合にはやはり法律に基づいて粛々とその手続をとるべきである、こういうことを発言して、結局、首にされましたね、ある面、宝珠山さんの言ったことは当たっていたのかなという気がしてならないのであります。  私は、この三月三十一日までに土地収用に必要な手続が完了することはもうあり得ない。その場合、政府がこの土地を米軍に提供できる法的根拠は消滅してしまうわけであります。まさに不法占拠状態になるわけであります。その場合、どういう措置をおとりになるおつもりか、お答えをいただきたいと思います。
  186. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 お答えします。  ちょっと手続的なところを若干御説明いたしますと、現在行われております裁判は、県知事に対する署名押印の代理署名の手続を行っておるところでございます。したがいまして、これに判決が出ますと、県知事が判決に従っていただければその時点で手続は終了するわけでございますが、判決に従っていただけない場合には、別途裁決申請という手続がこの後あるわけでございます。  それで、私先ほど答弁いたしましたように、裁決申請と同時に、私どもは緊急使用の許可の申請を別途収用委員会の方にお願いすることになります。したがいまして、収用委員会の方で緊急使用の許可をいただけますと、三月三十一日までに私どもとしては法的な使用権原が取得できる、こういうことでございます。  それからもう一方、前施設庁長官発言云々というのがございましたが、この全体を通して見ますと、確かにおっしゃるように、現在までかかっております期間プラス裁決申請の手続がこの後控えておりますので、そういう意味では、通常六カ月程度がかかるということを申し上げたのではないか、このように思います。
  187. 仲村正治

    仲村委員 現在ここなんですよ、ここ。ここからここまで来ているわけです。あとこれだけ残っているわけですね。これが果たして三月いっぱいでできると思いますか。これはもうとんでもない話ですよ。だから私は、どこにその責任があったのかということでお話を申し上げているところであります。  ぜひ、法的根拠を失って空白状態が生じないように、これは皆さんもそれなりの御努力をいただきたい、こういうふうに思っているわけであります。  それから、大田知事が代理署名を拒否した理由について私申し上げました。もう一点あったんですよ。  それは何かというと、五年前に公告・縦覧代行を政府から大田知事にお願いをした。大田知事はもう一年間苦悶を続けて、苦渋の、熟慮の末、その代行を平成三年五月二十八日に実施したのであります。  しかし、これは決して無条件ではなかった。当時の池田防衛庁長官と児玉防衛施設庁長官の間で交わされた覚書、これは、十一省庁協議会をつくって、ちゃんと沖縄の基地問題を沖縄県民の要望に従って処理をしていきますという覚書があったわけです。これがほごにされたということが、政府に対する最大の不信感、それも加わって今回の拒否、こういうことになったと思います。  当時の防衛庁長官であられた池田外務大臣に、そのことについてお答えをいただきたいと思います。
  188. 池田行彦

    池田国務大臣 私が防衛庁長官を務めておりました時代にも、沖縄における基地につきまして、沖縄の県民の皆様方の御理解を十分ちょうだいしながら、何とかその安保条約の目的を達成するためにその役割を果たさせていただきたい、そういったところでいろいろ沖縄県ともお話をし、いろいろなことをした次第でございます。  そういった中で、御指摘のように、当時まで国としてもいろいろな施策を講じてはまいりましたけれども、沖縄県とそういった国の各機関との間の協議、あるいはその御相談する仕組み、あるいは機能というものが十分果たされていない、そういう声がございまして、今御指摘のような協議の機関をつくろう、そういうお話を沖縄県としたのは、おっしゃるとおりでございます。  その後、もしその機能が所期の目的を十分に果たせなかったということがあるならば、それは当時そういったことに携わりました者として残念なことでございますが、そういったことの教訓も踏まえながら、今回の沖縄における基地の運営というものを県民の皆様方に十分御理解ちょうだいするために整理統合・縮小、さらにはもろもろの運用面についても真剣に取り組んでまいりたい、こう考える次第でございます。
  189. 仲村正治

    仲村委員 私はこのことについて、平成四年三月十日の沖縄及び北方問題特別委員会で厳しく指摘をいたしました。そういうことにならぬように、ぜひ約束どおりきちっとやってほしい、こういう警告をしたわけでありますが、私の警告が的中したようなものだと私は思っているわけであります。  最後に、私は去る二月二十日の当予算委員会で、四月のクリントン大統領訪日時の日米首脳会談での日米安保体制の再定義に関する共同宣言で次の三点をはっきりさせるべきであるということの見解を求めました。  それは、一つには、沖縄の米軍基地を大幅に整理統合・縮小するということをはっきり明示すること。二つ目には、米軍がよく言っている四万七千人体制の継続というものを、これは明記しないこと。これを明記すれば沖縄の基地の固定化につながる、こういうことになるからであります。三つ目には、日米安保の現行の範囲を拡大しない、こういうことをはっきり明示すべきであるということを質問したわけでありますが、あいにく橋本総理が御出席でなかったために明確なお答えをいただけなかったのであります。  二十四日には、橋本総理はその事前の会談をなされたわけでありますが、ぜひこの本番のときに、この三点についてはっきりとお示しをいただけるかどうか、ひとつ御所見をいただきたいと思います。
  190. 池田行彦

    池田国務大臣 四月の首脳会談の際に発出します文書につきましては、今どういうふうな表現、記述にするか相談しているところでございますので、現在の段階で具体的なところまでは御答弁できないところでございます。ただ、基本的には日米安保体制が大切である、またそのために日米協力して努力していこうということを内外に宣明するということでございます。  そして、具体的に今先生、三点御指摘になりました。その中の一点、沖縄の基地の問題につきましては、本日の委員会におきましても、総理を初めといたしまして繰り返し御答弁申し上げておりますように、日米とも真剣にこの問題に取り組みまして、四月の段階までに精力的な作業の、その段階での進展というものを十分に反映させるような記述をしてまいりたい、このように考えております。  第二点でございます。第二点は、そのプレゼンスの規模の問題でございますが、この点につきましても、きょうの委員会で申し上げておりますように、私どもといたしましては、現在の我が国をめぐる安全保障環境等を考えますならば、米側がその安保条約上の義務を果たすために考えているプレゼンスの規模というものは妥当なものと考えておりますが、ただ、それを文書に記述するかどうかというのは、先ほど申したとおりまだ決まっていない、こういうことでございます。  それから、第三点でございますが、今回安保条約の目的といいましょうか、その範囲が変わるんじゃないかと、今安保条約の目的としております日本を含めた極東地域の安全、平和を守るというところからさらに広い地域を対象にするのじゃないかと、もしそういう御趣旨の質問であるとするならば、私どもは、安保条約は現行のまま、こう考えております。  ただ、先ほど申しましたように、そのような安保条約がきちんと我が国並びに我が国を含む極東地域の安全を守るという面で十分役割を果たしておるということが広くアジア太平洋地域全体の安定のために好ましい影響を及ぼしていくということがあるということ、さらには、安保条約の目的でございます日米関係の、それは政治的基盤になっているという面もあるわけでございますが、そういった良好な日米関係というものもアジア太平洋地域全体の安定に資する、こういうふうに考えている次第でございます。  また、先ほどの御質問でちょっと補足させていただきますが、私、防衛庁長官当時から今日までの経過をよく存じませんでしたけれども、防衛施設庁からも聞きましたところ、十一省庁間の機構というものがちゃんと役割を果たしておるということでございます。しかしながら、それがなお十分ではない、さらにいろいろな努力をしていこうということで、今、国も真剣に取り組んでいるというふうに理解する次第でございます。
  191. 仲村正治

    仲村委員 時間であります。終わります。  ありがとうございました。
  192. 上原康助

    上原委員長 この際、山本孝史君から関連質疑の申し出があります。中野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山本孝史君。
  193. 山本孝史

    山本(孝)委員 新進党の山本孝史でございます。エイズ薬害に関連して御質問をさせていただきます。  まず、厚生大臣にお伺いをいたします。  昨日、外資系の製薬会社と協議をされたそうですけれども、よい感触を得られましたのでしょうか。あわせて、和解の実現については三月の早い時期にということでほぼ関係者で合意をされたというふうにもお伺いをしておりますけれども、成立の見通しについてお伺いいたします。
  194. 菅直人

    ○菅国務大臣 昨日、関係をしておりますメーカーの一つでありますバクスターのラウクス会長が表敬訪問に来られた折に、約一時間この問題についていろいろと意見交換をいたしました。  その中で、和解の場で解決をしたい、その方向に向けてそれぞれの立場でリーダーシップを発揮していこうではないか、いくべきだ、そういう点においては全く意見が一致をいたしました。  その時期等については、特にその中で具体的に申し上げたというよりは、今の和解の手続は御存じのように三月中に決着を目指して裁判所を中心に話が進んでおりますので、そういう中で解決を目指していこうという、そういう意味で三月ということがあるいは報道に出たかもしれませんが、今の枠組みの和解で解決をしていこうということで意見の一致を見たというところです。
  195. 山本孝史

    山本(孝)委員 橋本総理は、厚生大臣であられました五十四年の九月にスモン和解の確認書をお取り交わしになりました。田辺製薬がテーブルに着かないという中で大変に難しい交渉であったというふうにお伺いをしておりますけれども、今回のこのエイズ薬害の解決総理であればやっていただけるのじゃないかという期待を実は私も高く持っております。  サリドマイドは提訴から和解まで十一年、スモンは提訴から全面和解まで八年、今回のエイズ薬害も大阪地裁への提訴から間もなく七年になります。和解成立には国のイニシアチブ、特に総理の強い指導力が必要であろうというふうに思うのです。厚生大臣は期日はなかなか難しいとおっしゃいましたけれども、総理のお力でぜひこの三月中に和解が成立するようにお力をおかしをいただけないものでしょうか。
  196. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先日も菅厚生大臣から経過の御報告を伺い、御相談を申し上げ、また本日は、外資系との話の進みぐあいについて御報告をいただき、厚生大臣を中心に政府側、そしてまた、本院並びに参議院の厚生委員会を中心に党派を超えてこの問題に御協力をいただいておりますことを、非常に感謝をいたします。  たまたま今、スモンの和解のときの例をお出しをいただきましたが、あのときの和解に至るプロセスを考えてみましても、幾つかやはり自分で反省をする点がございました。厚生大臣には、そうした体験も率直にお話を申し上げ、少しでも和解が促進されるように私も応援をするよということを申し上げてきましたが、これからも、できる限りの努力を厚生大臣とともに払ってまいりたいと思います。
  197. 山本孝史

    山本(孝)委員 総理、ぜひよろしくお願いをいたします。  中で、恒久対策の部分で厚生大臣にお伺いをしたいのですけれども、今友愛福祉財団から出ております医療手当あるいは特別手当という部分、今回和解が成立しますともう支払われなくなるだろうというふうなことが言われております。差別を受ける中で闘病する、大変難しい病気と闘っておられる皆さんに、ぜひこの医療手当あるいは特別手当の支給をしていただきたいというふうに思うわけであります。  あわせて、和解の成立後も、ぜひ患者の皆さんとお話し合いを引き続き行っていただきたいというふうに思うのですが、この二点についてお伺いします。
  198. 菅直人

    ○菅国務大臣 山本委員承知のように、和解の中にも、一時金に加えて、恒久対策については補完的にそれを進めるよう協議をするようになっております。また、患者、原告団の皆さんからも具体的な、いろいろな提案といいましょうか、出てきていることもよく承知をいたしております。  現在の仕組みは、今委員が言われるように、発症までの健康管理手当、あるいは発症後の、一つのメーカーからの基金による手当が出ているわけですが、和解が成立する段階では、それが新しい仕組みに変わるものと考えております。そういう中で、何らかの形で恒久的な対策の中にそういった枠組みを、どういうレベルになるか、これはまだ和解の交渉の中ですからわかりませんが、つくらなければならない。もちろん、それに加えて最も必要な、いわゆる治療の問題、薬の問題等々もあわせて実行をしていかなければならない、そのように考えております。
  199. 山本孝史

    山本(孝)委員 総理にお伺いをいたします。  先ほども申しましたように、スモンの薬害を受けて五十四年に薬事法が改正になりました。さらには、医薬品副作用被害救済基金法の成立に大変に御尽力をされたというのも議事録でお読みをいたしました。今回のエイズ薬害とスモンの薬害、大変似通った点があるように私思っております。前回の薬事法の改正で、今回の裁判所の所見も述べていますように、「医薬品の安全性確保は、厚生大臣が行う業務行政において最大の考慮を払うべき事柄の一つとなった」。今回のエイズ薬害においては、そのせっかくの薬事法の五十四年改正というものが生かされていないのではないかというのは、大変に私は強く思うわけであります。  当時厚生大臣として御尽力なさった橋本総理も、今残念な思いでおられるんじゃないかと思うんですけれども、薬事法が改正されてなおかつこうしたエイズ薬害が起こってしまったということについて、今どんな思いを抱いておられますか、御所見をお伺いいたします。
  200. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 ちょうどその昭和五十四年当時を振り返ってみますと、スモンが、実はちょうど昭和四十五年から六年にかけまして、私が厚生省の政務次官のころに、キノホルム原因説が出てまいりまして、当時、薬事法上そうしたルールがない中で回収を要請し、製品を全部店頭から引き揚げるという事態がございました。そして、先ほど委員がはしなくも述べられましたように、その当時の政務次官が厚生大臣になったときに、依然としてこの問題が残っておりました。そして、それ以外に、クロロキンその他幾つかの薬害が当時問題になっており、それぞれが非常に深刻な問題を呼んでおりました。  そして、ある意味では、それ以前に存在をいたしました薬事法というもの、これは、薬は無害なものだということを前提にできていたと申し上げても、これはちょっと極端な言い方ですけれども、よかったのかもしれません。  しかし、その五十三年から五十四年にかけましての時期におきまして、さまざまな論議を交わします中に、医薬品というのは、いずれにしても人体に異物が入るという意味では何らかの副作用はあり得る、しかしそれが効果が大きいかどうかが大事なこと、その副作用というものは常に注意しておくべき事項、それだけの注意を払うべきもの、副作用情報といったものにも当時から力を入れるようになったと思います。それと同時に、その時点においての予知し得ない薬害の発生というものも、当時から懸念をされておりました。そして、救済基金等の発足をも見たわけであります。  そして、そういう全体のスキームができていきます中で、当時の、今の厚生委員会に当たりますものは社会労働委員会でありましたが、衆参の党派を超えた社会労働委員会の方々の御協力を得ながら、これが和解に結びついてまいりました。  今日振り返って、当時、ある意味では副作用というものを非常に懸念していたその懸念が、血液製剤の中で新たな悲劇を生んだ。非常に残念な思いがいたします。
  201. 山本孝史

    山本(孝)委員 非常に残念な思いがするというふうに今御答弁をされましたけれども、この血液製剤がHIVに汚染をされているという部分は、私は副作用ではないと思います。副作用という部分と、製品が明らかに瑕疵があるという部分とは、これは話は両方分けて考えないといけないというふうに思います。  総理、こういう質問をしては大変恐縮なのですけれども、一部週刊誌で製薬業界とのつながりが、余りいい部分じゃないつながりがあるというふうな書かれ方をされておられます。今も御答弁にありましたように、厚生関係で随分御活躍でいらっしゃいましたから、今もそうでございますけれども、そういう意味では、いろいろな御関係が製薬業界の中とできても不思議ではないというふうに思いますけれども、今一番問題になっておりますミドリ十字という製薬会社、ここのところと総理は特に何かかかわりはお持ちでございますか。
  202. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 確かに、大変私にとって楽しくない聞かれ方でありますけれども、私は、医薬業界に多数の友人もおりますし、また、支援をしてくだすった方々もあります。そしてミドリ十字という会社も、ちょうど厚生省の児童家庭局長で退官をされた方であったと思いますが、その方が行かれた当時から、私の後援会にも入っていただいておりました。  そして今、それとは別に、今注意をいただきました点をありがとうございます。正確に申し上げますなら、もう一つこれについて問題がありますのは、我が国の供血体制についての反省であります。  かつて我が国は、売血がございました。そして、さまざまな問題を生じた結果、献血によってすべての血液を賄う体制をとってまいりました。しかし、その献血の量は必ずしも必要な血液を全部満足させる量ではございません。そしてそこに、輸入製剤というものが入ってくる部分がございました。その意味におきまして、先ほどこれは副作用ではないと言われた委員の御指摘は大変正確でありまして、私の方が言葉使い方を不正確に使いました点はおわびをいたしますが、根本的に私が今後を考えますときに、やはり献血というものがもっと国内で定着をしてくれることを、そしてもっと気軽に皆さんが献血をしていただけることを、この場をかりて私は願いたいと存じます。
  203. 山本孝史

    山本(孝)委員 総理も今お触れになりましたように、やはりエイズ薬害の本当の根源の一つは血液事業のあり方にあったというふうに思います。ライシャワーさんが刺されて、黄色い血だというふうに騒がれたあのときからいろいろとやはり問題が残っていて、いまだにそこが解決されていない。これは、今度厚生委員会集中審議が予定されておりますので、その中でも私、じっくりと取り上げさせていただきたいと思います。  嫌な質問が続いて恐縮でございますが、そうしますと、ミドリ十字の内藤良一さん、あるいは松下廉蔵さんという社長の皆さんと、総理はかなり御関係があったというふうに思いますか。
  204. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 松下さんは、私が政務次官のころに、厚生省のたしか審議官クラスでおられたと思います。そして、お子さんをある事故で亡くされまして、その当時から私は、その方のお嬢さんの亡くなったことに対しても非常にお気の毒でありましたし、在任中、当然のことながら交際を持っておりました。それは、ミドリ十字という会社に入る以前から厚生省の一人として交際があり、厚生省を出られてからはOBとしておつき合いがありましたということであります。
  205. 山本孝史

    山本(孝)委員 時間もありませんので少しはしょらせていただきますけれども、今、いわゆる郡司ファイルというものが出てまいりまして、ここで疑惑の一週間ということがまことしやかに言われております。今、私も地元へ帰りますと、お話をしますと、郡司だ、安部だというような形で固有名詞を出しておしゃべりになる方が物すごく多くて、安部英というのも、非常に読みにくい字であるにもかかわらずしっかりと覚えておられるというのは、極めて国民の関、心の高い問題に今なっていると思うのです。  そういう意味でも、国民が今抱いている疑惑を解くためにもしっかりとした情報公開をしていただく。これは、ファイルの公開をなさるということを聞いておりますけれども、あわせて、キーパーソンであるところの安部英さんが厚生省関係でいろいろ審議会あるいは研究班の班長であったわけですけれども、いろいろなお立場についておられた、その役職をぜひ厚生大臣には調べていただいて、お出しをいただきたいというふうに思うのです。
  206. 菅直人

    ○菅国務大臣 今、山本さんの言われた意味が、私は正確にとらえているかどうかわかりませんが、例えば、現在の審議会あるいは過去の厚生省に関連する審議会のメンバーであった、あるいはその時期などを調べる、そういう趣旨であれば、それは事務方に申しつけて調べさせて、必要に応じてお知らせをするようにさせていただきます。
  207. 山本孝史

    山本(孝)委員 よろしくお願いします。  先ほど総理もおっしゃいました松下さんが社長であったところのミドリ十字の問題に戻りますけれども、先週、ミドリ十字に立入検査がございました。新聞で御承知、あるいは厚生大臣から御報告をいただいておられるかと思いますけれども、実はミドリ十字の方から、あるいは製薬会社各社から、日本血液製剤協会を通じて昭和六十二年の三月に、加熱の製剤が開発をされ承認をされ市場に出回った、その後について、非加熱の製剤は最終いつ出したのか、あるいは市場に出回っている非加熱製剤はいつ回収をしたのかということの報告をいただいたペーパーがあります。この日付が、今回のミドリ十字への立入検査によって違うんだということがはっきりとしてまいりました。これは、一月の質問主意書で……(発言する者あり)これは一月の質問主意書で私がお伺いをして、それを受けてミドリ十字に立ち入りになったんだというふうに思いますけれども……(発言する者あり)
  208. 上原康助

    上原委員長 お静かに願います。
  209. 山本孝史

    山本(孝)委員 ここは回収が、この報告を受けている回収から実際の回収は一年以上も後だったということが今回の立入検査ではっきりわかったというふうに、きょうお昼のニュースでもやっておりました。このミドリ十字の姿勢というのは、私は大変に問題であろうというふうに思うわけであります。  当時のミドリ十字の社長は、先ほどから出ております松下廉蔵さん、元の厚生省の業務局長であります。そして、業界を代表してこの回収状況厚生省に報告をした日本血液製剤協会、ここの理事長が宮嶋剛さん、これまた厚生省の元業務局長でいらっしゃいます。受けたのが、もちろん厚生省の業務局がこの報告を受けた。  さっきから申し上げているように、昭和五十四年の薬事法の改正で、国は販売の一時停止、あるいは廃棄、または回収その他の公衆衛生上の危険の発生を防止するに足りる処置をとるべきことを命ずることができるようになりました。御承知のとおりでございます。今回は、当然その改正薬事法に基づいて、こうした危険な製品を回収すべき、回収命令を出すべきであったろうというふうに思います。多分、総理もそういうふうに思われるだろうと思います。  実際は回収命令は出ませんでした。しかも、ミドリ十字は、間違った報告を、誤った報告を、この日本血液製剤協会を通じて厚生省に上げております。そのために大変に被害が広がってしまった。何百人という方が、この回収がおくれたがために、かからなくてもよかったエイズに感染をしたというふうに言われております。  これは、大変に国に大きな落ち度があるんではないかというふうに思うわけですけれども、厚生大臣の所見をお伺いをします。
  210. 菅直人

    ○菅国務大臣 今回の立入検査については、昨年来の山本委員からの質問もありましたし、またこの問題について、御承知のように調査のプロジェクトをつくっておりまして、それの中でも、それに関連する項目が調査項目に入っておりました。そういう中で、いろいろ報告をさらに確認をしたり聴取したりしていたわけですが、どうも不明な点が多いということで、それでは一度立ち入って調べたいという、そういうことが役所の中からも出てまいりましたので、私の方でじゃそうしてほしいということで、行ったわけであります。  その結果は、私も、具体的なところはきょうですか、報告を受けたわけですけれども、今おっしゃったように、従来の報告とはかなり違った内容になっていて、特に回収時期などが従来の報告より一年以上おくれているということが判明をいたしました。  この問題につきましては、まだある意味では関連の調査が進んでいる途中過程でありますので、そういったことが一応全体の形がわかった段階で、この問題についてどのように対応するかを検討したいというように思っております。  まあ確かにこの問題は、単に報告の問題ということだけではなくて、いわゆる非加熱製剤の危険性というものの認識とか、あるいはそれにかわる加熱製剤の供給の問題とか、そういうことについての当時の認識が、必ずしも非常にシビアに考えていなかったのではないかということも感じられますので、そういった点についても今申し上げたようによく調べた上で、そのことについての対応の仕方について検討していきたいと思っております。
  211. 山本孝史

    山本(孝)委員 加熱製剤の提供がおくれたというのは、当時の知見からして難しかったかとは思います。しかし、非加熱製剤の回収がおくれているということは、これはやはり私は犯罪だと思います。そこのところ、しっかりと調べていただきたい。  松下廉蔵さんの、元厚生省薬務局長のお仕事がどうだったのか、あるいは安部英さんは総理大臣経験者と極めてじっこんな間柄にあられる方でありますけれども、この方がやはり政界、官界、業界の癒着構造の真ん中に今おられる。この方の役割は一体何だったのか。郡司さんというのは私はいい人だと思うのですけれども、なぜ今回のエイズ薬害が防げなかったのか。私は、いろいろな問題があって、さっきも申し上げたように、国民の関心が極めて高い中で行政というものに対しての国民の信頼感を極めて損なっている、住専と同じですけれども、問題の一つだと思うのです。それを、情報公開をする中で辛うじて国民はこの気持ちをつなぎとめているのだろうと思うのです。  そういう意味でも、ぜひしっかりとした審議をしていただいて、それでこの真相解明、そして何よりも被害者の救済に、三月中にもぜひ成立しますようにお力をいただくようお願いをして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  212. 上原康助

    上原委員長 これにて中野君、石井君、仲村君、山本君の質疑は終了いたしました。  次に、古堅実吉君。
  213. 古堅実吉

    古堅委員 日本共産党、沖縄選出の古堅でございます。  本日は、総理に、沖縄米軍基地問題を中心とする沖縄問題について質問させていただきます。  こちらに「沖縄からのメッセージ」というパンフレットを持ってまいりました。委員長総理にお渡ししたいのですけれども、よろしいですか。
  214. 上原康助

    上原委員長 はい、どうぞ。
  215. 古堅実吉

    古堅委員 今、沖縄問題が国政の重要な中心課題となっています。戦後五十年を経て、二十一世紀に向けて同じようなことを続けるわけにはいかぬ、沖縄みずからの尊厳を取り戻すのだ、こういう願いを込めて、今沖縄は立ち上がっています。  政府に対して沖縄がどのような政治を求めるか、そのことについて全国の皆さんにも知っていただこう、こういう願いを込めて沖縄県がつくったのがこの「沖縄からのメッセージ」、このパンフレットであります。お忙しい総理にあっても、その程度のパンフレットでありましたら目を通していただけるのではないか、こう考えています。大変よくできています。私の本日の質問も、そのパンフレットに込められた願い実現の立場から行おうというものであります。  それでは、質問に入らせていただきます。  最初に、先日の総理訪米による日米首脳会談についてであります。首脳会談で、今問題となっている沖縄の基地縮小問題について総理がどう取り組んでこられたのかということについてです。  総理は、報道によりますというと、クリントン大統領に対して、「国民理解を得るためにも、沖縄の米軍基地の整理、統合、縮小で米国のできる限りの努力を求める。」こう述べられた。それに対して大統領は、「現在の戦力維持が必要で、米軍の全面撤退は間違っている。」このように応じています。  今回の日米首脳会談の結果について、現地沖縄の地元新聞の社説が、「首相が全力で取り組む決意を表明して臨んだはずの日米首脳会談は、全く期待外れの内容となった。」このように述べています。この指摘について、総理、どうお考えですか。
  216. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 本日何回も同じお話を申し上げて恐縮でありますけれども、私から大統領に対して伝えましたのは、日米関係が大切であり、その日米関係の大切さというものは、EUあるいはアジア国々からも、昨年六月、自動車協議を続けております最中に、その自動車協議の行き詰まりによって日米関係に傷が入らないかという形で非常に懸念を表明されたぐらい各国が大切な関係であると見ている。そして、その基盤に日米安全保障条約というものがあり、我々はこれを堅持していく、そして、我々はそれを国民理解を求めていくが、そのためにも、沖縄県の基地施設の整理統合・縮小についてでき得る限りの協力が欲しい、これは確かに私が申したことでございます。大変、マスコミの引用をいただきまして、厳しい御批判のようでありますが、私なりに努力をしてきたつもりであります。
  217. 古堅実吉

    古堅委員 総理みずからは評価していただきたいというお気持ちがありましょうが、現地の新聞社説がこのような評価をされた。期待外れと言ったのは、今の説明を通しても、理由があることだというふうに考えます。  日米首脳会談で、クリントン大統領が縮小も言わなかった、逆に戦力維持が必要だと言っているのに対して、総理大臣は、会談後の記者会見で、米国は誠実に話し合いに応じていただけると思う、むしろ、ここから先、日本国内の問題として我々が取り組む部分が当然あるというふうに述べたと報道されています。クリントン大統領沖縄県民が願っているような大幅な基地縮小を約束していないのに、この後は日本国内の問題だというのは、結局、沖縄の基地の一部を県内や県外に移転することで問題を処理しようということではありませんか。
  218. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は私なりに誠実に話し、大統領も、私は誠実に御自分の立場で議論をされたと思っております。その上で、県と国との間でもまだ話し合いは続いておるわけでありますし、当然のことながら、日米政府間における交渉はこれからも続きます。
  219. 古堅実吉

    古堅委員 クリントン大統領が在日米軍基地、沖縄米軍基地についての縮小を約束されたのですか。
  220. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、正確に、協力を求めたということを申し上げました。約束をしろというような非礼な言い方は、私はいたしませんでした。
  221. 古堅実吉

    古堅委員 これでもわかりますように、クリントン大統領は、沖縄の切実な願いである基地の整理縮小、その問題について明言をされたんじゃないのですね。
  222. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 けさから何回も繰り返しまして大変失礼と思いまして省略をいたしましたが、クリントン大統領からの発言は、昨年の不幸な事件に対し、その遺憾の意を改めて表明をされますとともに、沖縄県の方々の気持ちをきちんと考慮し、また安全保障のニーズも考えながら、最善を尽くすこととしたく柔軟性を持って考えていきたいということでありました。
  223. 古堅実吉

    古堅委員 沖縄県民がこれだけ切実な願いを持っている、こういう内容も含めて日米間における重要な問題だというふうに受けとめて訪米もされているのに、なぜ基地の縮小問題について総理は提起されなかったのですか。
  224. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は先ほど、沖縄県における基地施設の整理統合・縮小についてできる限りの協力を求めると伝えたと申しております。
  225. 古堅実吉

    古堅委員 明確にお答えいただけないように、基地の返還にかかわる、沖縄県民の願っているようなそういうことをずばりクリントン大統領に提起して話をしたんじゃない、その返事があったんじゃないという経過は明らかだろうかというふうに思います。  沖縄県民は、基地を県内あるいは県外に移転して基地のたらい回しで問題の解決を図ってほしいなどと考えているのではありません。アメリカにそれを移転すればいいんです。持ち帰ってくれというのが沖縄県民の願いであり、要求なんです。なぜ、アメリカと交渉して基地の縮小・撤去を実現しよう、こういう態度で臨まれないんですか。
  226. 池田行彦

    池田国務大臣 政府といたしましては、日米安保体制は、これは堅持していかなくてはならない、このように考えておる次第でございます。そうして、安保条約上、米国が担ってまいります役割を果たすために必要な我が国における基地というものは、これは引き続き提供していかなくてはならない、こう考えております。  しかし、そういった安保の目的、そして一方におきまして、沖縄の県民の方々がこれまで長い間非常に大きな負担を強いられてこられました。そうしてそのことに起因して、大変深い悲しみあるいは憤りのお気持ちもお持ちになっていることは我々も十分承知しておるところでございます。  そういったことを踏まえながら、安保の目的との調和を図りながら、沖縄における基地の整理統合・縮小あるいは関連する問題について誠心誠意取り組んでいこう、こういう姿勢でおるわけでございまして、米側も全く同じ気持ちである。とりわけ今回の橋本総理クリントン大統領との会談の中で、先ほど総理からも明確にお話しになりましたように、総理の方から、沖縄における基地の整理統合・縮小を求める、それに対する米国の協力を求めるとおっしゃり、そしてクリントン大統領の方からも、沖縄の人々の気持ちも十分考えながら柔軟に対応してまいりましょうという、こういうお返事があったところでございます。  我々はこれから、まず四月のクリントン大統領がおいでになります。そういった大きな節目に向かって、従来にも増してこの努力を促進してまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  227. 古堅実吉

    古堅委員 それでは、具体的に一つお尋ねします。総理、お答えください。  クリントン大統領に対して、普天間基地について沖縄県民の強い要望がある、このように伝えられたそうであります。沖縄県民の強い要望というのは、言うまでもなく普天間基地の撤去そのものであるし、基地の返還そのものが県民の強い要求であります。  総理は、その問題について、この基地そのものの返還の問題として提起したのか、それとも、基地はそのまま残すということを前提にして、何かを考えて言われたんですか。
  228. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、例えばということで、県の方々からの強い御要請のあるのは普天間基地という例示に申しました。これも何回かけさから申し上げ続けております。そして、これはあくまで例示であり、ほかの案件も当然のことながらたくさんあるわけでありまして、個別の議論はいたしておりません。
  229. 古堅実吉

    古堅委員 それじゃ、大統領への提起、その話し合い、それを離れてお聞きします。  今申しました沖縄県民の強い要望であるという普天間の基地の問題について、総理として、それは返還すべきだ、返還ということで対米交渉すべきだ、このようにお考えですか。総理の最高責任者としての立場からの御意見をちょうだいしたい。
  230. 池田行彦

    池田国務大臣 総理の大変強い御決意を踏まえまして、具体的に米国との間でこの問題の解決に取り組んでいる、その衝に当たる人間の立場からお答えさせていただきたいと存じます。  私どもは、先ほど来お話を申し上げておりますように、日米安保条約の目的との調和を図りながら、しかし沖縄の県民の皆様方の御負担を極力軽減してまいりたい、こういうことで今真剣に考えておるところでございます。  しかしながら、ただいま、今個別に、個々の具体的なケースについてどうするということをお答えするまでに至っていない。四月の大統領訪日に向かって精力的にその作業を進めてまいりまして、先ほども申しましたような、県民の皆様方の御負担を軽減するような作業の進展を図ってまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  231. 古堅実吉

    古堅委員 四万七千人体制の問題が引き続き重要な問題となってかかわりを持ちますので、それについて二、三質問をしたいと思います。  クリントン大統領は、現在の戦力維持が必要だというふうに述べて、事実上、今まで言われております四万七千人体制の維持を改めて強調したというふうに受けとめられる、こういう態度を示しました。総理もそのことを支持されたのですか。
  232. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私たちは、確かにこのアジア極東地域の中で現在の状況というものについて話し合い、日米安全保障条約というものの果たす役割が、ただ単に日本だけのものではなくアジア太平洋地域に安定をもたらしているというその役割をも確認をいたしました。米軍がその安定の役割にどれだけの兵力を必要とするかは、一義的には私は米軍の問題であると思います。
  233. 古堅実吉

    古堅委員 私がお尋ねしておりますのは、四万七千人という問題は、昨年の日米共同宣言が打ち上げられようとしておったあの時期のときにも出てまいりましたし、日米共同宣言案にもその文言が入ってきたということで報道もありました。  そういう経過もございますし、そういう経過を踏まえれば、クリントン大統領が言っておるところの現在の戦力維持というこういう内容というのは、そういう四万七千人体制も含めて念頭に置いて言われたものでありましょう。それに何の反論もしなかったのですか。——総理クリントン大統領に会われておるので、外務大臣が会ったのじゃないのですよ。
  234. 池田行彦

    池田国務大臣 先ほど総理が御答弁になりましたように、総理クリントン大統領との間では、我が国の安全、そしてまたアジア太平洋の地域の安定のためにも、どういうふうに日米が協力していくか、そういったお話をされたわけでございます。  そして、今委員質問の四万七千人の問題につきましては、これは米国が日米安保体制上、我が国を含む極東地域の平和と安定を守っていく、そういう役割、また義務を、これは条約上の義務を担っております。それを遂行していく上において、一体どういった体制を組まなくちゃいけないか、そのことを米国において検討され、そして現在のこの地域の安全保障環境等にかんがみまして、このレベルが適当である、そういう結論に立っておられるわけでございまして、先ほど総理も御答弁になりましたけれども、私どもは、そういった一義的に責任を持っている米側の判断というものを妥当なもの、こう考えておる次第でございます。  なお、先ほど委員、昨年の秋の段階でクリントン大統領の訪日が予定されておったそのときの文書に云々というお話がございましたけれども、いろいろな新聞報道はございましたけれども、その秋の御来訪というのは延期になったわけでございますし、そのときの文書云々というものは、報道はございましたけれども現実にはないというふうに御理解いただきたいと思います。
  235. 古堅実吉

    古堅委員 アメリカ側が言っている四万七千人体制、それを認める。現在は四万五千人ほどだと言われています。それを上回る四万七千人体制、これが現状維持の問題だと言われているものなんですが、それを認めながら、その拠点となる米軍基地の縮小をどうして実現できるというのか、県民の納得できるような説明を総理から求めたい。総理からお願いしたい。
  236. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、日米安全保障条約というものが必要だという立場をとっておりますし、その点で委員と食い違うのかもしれません。しかし、私は、数字の議論をされますけれども、それが現在、委員自身、四万五千人ぐらいだろうということを言われました。兵力というものは確かに動くものであります。しかし、仮にその四万七千という数字を固定するという前提に立ちましたとしても、私は整理統合・縮小はできると考えておりますし、また、それに努力していく責任があると考えております。
  237. 古堅実吉

    古堅委員 私が求めているのは、単にできるということではなしに、四万七千人体制を維持するのであれば、どのようにして縮小するのか、県民が納得いくような説明をしてほしいということを申し上げているわけです。(発言する者あり)
  238. 上原康助

  239. 古堅実吉

    古堅委員 委員長、いいです。もうよろしいです。よろしいです。
  240. 池田行彦

    池田国務大臣 委員長から御指名がございましたので、答弁させていただきます。
  241. 上原康助

    上原委員長 できるだけ短目にお願いします。
  242. 池田行彦

    池田国務大臣 はい。  先ほど、総理から御答弁がございましたけれども、四万七千人というその水準というのは、いわば定員的な考えでございまして、そのときそのとき、軍の運用上、数の異動があるということは、一つございます。  それから、仮にその水準を維持するといたしましても、いろいろな創意工夫を凝らしまして、基地の整理統合・縮小というものは可能であるし、しなくちゃいけない。我々は文字どおり、それを今しょうとせっかく努力しておるところでございます。
  243. 古堅実吉

    古堅委員 はっきりしておるのは、今までもありましたように、何十事案などとかいうふうな形で言われているその問題が解決しても、せいぜい二、三%基地の面積が縮小される、その程度のものだというふうな論議もされてきている、そういうことの繰り返しを今説明しているものにすぎない。  総理は、沖縄県民の怒りについて、本当はまだ御存じない、このように思います。  今から五十一年前、あの悲惨きわまる沖縄戦がありました。生き残った沖縄県民は、米軍によって各地の収容所に入れられて、しばらくは出されなかった。その間に米軍は、自分たちが欲しいだけの基地をあちこちに、一番大事な平たん部なども含めて確保した。その上に、一九五二年の平和条約が締結された後も、米軍は、沖縄を占領状態同然のもとで、布告布令を出して、抵抗する県民を弾圧して、銃剣とブルドーザーで県民の土地や住家を取り上げて、今日のこの米軍基地をつくっていった。  一九七二年の祖国復帰に当たって、こういう不法きわまりない取り上げられた土地、それは本来地主に返還されるべきものでありました。しかし、返還されませんでした。返還しないところか、ソ連の脅威があるぞなどと言って、県民は我慢させられた。しかし、ソ連は崩壊いたしました。  それなのに、今度はまた、米軍がアジア太平洋に存在をすることが重要だ、そういう言いぐさのもとで、四万七千人の駐留が必要だと言って沖縄県民に新たに基地を押しつける、こういう方向を描こうとしておるのであります。それに県民は耐えられない思いで、二十一世紀の沖縄、こうであっていいのかと怒っているものであります。  結局、総理の言い分というのは、大方の基地の存続はやむを得ない、これからも我慢してくれということにほかならないのではありませんか。沖縄県民にそれを引き続き押しつけようと、こうおっしゃるのですか。
  244. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は大変今情けない思いでお話を伺っておりました。  確かに、私は、昭和二十年八月十五日の時点はまだ小学校の二年生でありました。そして、兵庫県の日本海側の、小さな平和な町で終戦を迎えました。しかし、その前には、東京で空襲も受けましたし、私のいとこも、特攻隊で死んでいった者もございます。  ただ、それでも、本土で暮らしておりました私どもは、たった一つ日本の国内で戦場となりました沖縄の苦しみを肌身で知らないと言われることは、私はそのとおりだと思います。  そして、その結果、戦いに敗れた後、日本自身が独立をいたしました後も、施政権が返還されるまでの間、占領の時代が続き、御苦労をかけたことも存じておるつもりであります。しかし、それは確かに、本土の人間の受けとめ方の範囲の同情でしかないのかもしれません。そして、県民お一人お一人の胸の中にあるものがすべてわかるなどと、私はうぬぼれたことを申し上げるつもりはございません。  ただ、その上で、私は御理解をいただきたいと思っておりますことは、日米関係というものの基盤をなす日米安全保障条約というものは、私は、この国の将来に対しても、また、アジア太平洋地域の中でその安定に資しております点からいきましても、私は堅持していくべき必要のあるものだと信じております。そして、その中で、全力を尽くして、一つ一つできる限りの努力を私どもは県民に対して尽くそうといたしております。  それが足りないと仰せられるのであれば、甘受いたします。しかし、できる努力をしていきたいと願っておりますことだけは御理解をいただきたい、この点だけは心からお願いを申し上げます。
  245. 古堅実吉

    古堅委員 結局、結論において、沖縄県民は我慢しろ、お願いしますということではありませんか。日米安保条約を持ち出せば我慢しなくちゃいかぬなどという、もうこういう時代は過ぎています。  沖縄県民が二十一世紀に向けてどういう沖縄を描こうとしているか、それにかかわる「基地返還アクションプログラム」について、一問お尋ねしたいと思います。  県民は、基地の重圧を何としても取り除きたい、こういう共通の願いに立って、それなしにはまた沖縄の振興も経済発展もないんだという理解の上に立って、沖縄県が政府に基地返還のアクションプログラムを示し、総理もその説明を受けておられるはずであります。  県は既に、こうしたいと国に提示しました。今度は、国がそれにこたえる番です。我が国の基地返還について、みずから計画を持って、沖縄県の強い要望にもこたえるようにしなくちゃいかぬというふうに思います。沖縄が提示したところの返還アクションプログラム、それについても検討していただけますか。
  246. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 アクションプログラムを御説明をいただきましたとき、県の側でも夢として語られ、県内でなお調整を要するものとして承りました。  私どもは、できることから一つずつ、誠実に努力をしていきたいと考えております。
  247. 古堅実吉

    古堅委員 部分的な調整を要するものがあるにしても、県は、こうしたいという基本的な大きな計画は責任を持って国に提示した。それは、何も遊び事というふうな程度のものではありません。それを検討してほしいというふうに要望申し上げておるんです。  政府は、みずからの計画を持たずして、こんな沖縄が強く望んでおるところの基地の返還問題などについて、対米交渉ができないんじゃないんですか。国と国の交渉事に、みずからの要求、計画、それを持たずして、どうしてテーブルに着くことができますか。何らかの、沖縄の要望にこたえるような内容も含めて、その計画を持って臨まれますか。
  248. 池田行彦

    池田国務大臣 沖縄県から要請を受けましたアクションプログラムにつきましては、先ほど総理からも御答弁がございましたように、沖縄県においてもなお調整を要するものだと言っておられます。しかしながら、このアクションプログラムの中に沖縄県としてのいろいろなお考え、そしてその願いというものが込められておるということは、私ども、そのように受け取っておる次第でございます。  また、そのほかのいろいろな場、新たに設置いたしました協議会等の場を通じましても、沖縄県としてのいろいろなお考えをお伺いしながら、私どもは、先ほど来申しておりますように、沖縄における区域・施設の整理統合・縮小に真剣に取り組んでまいりたい、こう考えております。その際、国としてもきちんとした考え方に立って進めていくのはもとよりでございます。  また、その後沖縄の全体の将来像をどうするかということにつきましても、アクションプログラムは触れておられるところでございます。その分野につきましては、外務大臣としての私の立場から御答弁するのはいかがかとは存じますけれども、従来から国におきましては、沖縄の県民生活の安定あるいはその振興発展につきまして、諸般の政策を総合的に考え、そうして展開してきたところでございまして、今後も国としてもそういった努力を続けていくことは当然でございます。
  249. 上原康助

    上原委員長 これにて古堅君の質疑は終了いたしました。  次に、楢崎弥之助君。
  250. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 市民リーグ・民改連の楢崎弥之助であります。  私はうかつにも、きょうの集中審議外交・安保等というのを、「等」がようわからぬかったものですから、ほかの問題でもちょっと触れていいんだぞということをきょう聞いたものですから、そのほかの問題を先にやらせていただきます。  突然で恐縮ですが、大蔵大臣にお伺いをいたします。まあ、今まで住専問題、いろいろやられた。そして大体帰するところ、なぜ農協系金融機関が優遇されるのかという疑問が依然として私はあると思うのです。  それで、今回、いろいろな経過はもう省きますけれども、ここまでいわゆる農林中金の問題、つまり元本を保証する、あるいは五兆五千億の問題、五兆五千億が五千三百億になった。それで、これをいろいろ組み立てた人は一体だれなのか。  これはほとんどわかっているのですよ。もうほとんどの、十くらいの雑誌に出ています。つまり、かつて農林省におられて経済局長あるいは農政局長をされて、事務次官までされた、そしていわゆる農林中金に行かれた森本修、今特別顧問でありますね。実力者であります。ドンと言われる方であります。そして、この前参考人でお見えになりまして、私ども質問をいたしましたが、現理事長の角道さん、あるいは農水省経済局長の堤さん、こういう方々もいわゆる森本学校の門下生と言われているのは周知の事実であります。  それで、このいろいろ問題の総量規制、それから九三年二月三日のいわゆる覚書、二月二十六日の密約と言われるもの、こういう経過を経て、今のスキームになった。  この森本さんと非常に親しいというか、つながりのある方が大蔵省におられるのを大臣は御存じですか。
  251. 久保亘

    ○久保国務大臣 存じません。
  252. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 無理もないと思いますね。  私はこういうことはあるということで言っているんじゃないですよ、今から言うことは。  そのとき、大臣官房企画官森本学という方です、この方が、いわゆる問題の覚書、その後の密約等々に寺村局長と協力をしてやられたんですね。これは私はもう調べてわかっております。  それで、私は、先ほど申し上げたとおり、それは、私は立派な方だと思いますよ。だから、たとえ親子であっても、それはきちんとやられたと思います。しかし、そういうことが、げすの勘ぐりかもしれないが、あるいはいろいろ情報交換、あれしながら、うまくやられたんじゃないかという、いわゆる勘ぐりをされやすい。  だから、そのときに、私は、そういう役目からお子さんの方を外されるべきではなかったか。今あなたに言ってもしょうがない話ですよ、と私は思うんですよ。  それで、お子さんの森本学さんの方は、外務省へ行かれたんじゃないですか、あれが終わって、九三年の五月に。出向されたんじゃないですか、その覚書をつくって。
  253. 小村武

    ○小村政府委員 私、前官房長でございますが、現在、森本学氏は、イギリス大使館の参事官をしております。
  254. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どうせそうされるんだったら、この問題のときに、私は、そのポストから外されておった方が誤解を生まないで済んだんじゃないかと、まあこれは私の意見です。テークノートをしておいていただきたい。  きょういろいろ質問を聞きました。だから、私は、まあ落ち穂拾いと申しますか、ちょっと抜けたんじゃないかと思われる点、確かめたいと思うんです。  要するに、この沖縄の基地縮小の問題、これを国民に、公に公約されたのは、総理大臣、いっと思われますか。
  255. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私自身は、総理に就任をいたしまして以降お尋ねのあるときに、この問題については、整理統合・縮小に努力するということを申し上げてきたつもりであります。
  256. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 予算委員長をされておる上原さんはよく御存じだと思うんです。  昭和四十六年、沖縄返還協定特別委員会、十一月の十六日、私が夕方質問に立ちました。総理大臣佐藤さんだった。そのときに、私は、沖縄の核抜きどころか、本土のあなたの県の岩国に核がある、そういう疑惑があるということをやりました。  そして、その一部を出しました、証拠を。証拠があるなら出せと言われたから出した。そこで、いわゆる中断になって、そして明くる日に再び質問をしようというときに、いわゆる強行採決されたんですよ。見渡したとき、上原さんがその辺におられて涙ぐんでおられるのを見た。  そして、結局正常化するために何日かかかって、船田議長が仲介をされて、そして沖特で決議をやった、二つ。それは何かというと、非核三原則の問題、それからこの沖縄基地縮小の問題であります。文章は、この沖縄の件は、「政府は、沖縄米軍基地についてすみやかな将来の縮小整理の措置をとるべきである。」これが沖特で決議されて、同時に本会議で決議された。これは国是と言われた。  昭和四十六年、今二十五年目ですかね。そのときから二十五年間たった今日まで、この決議に沿ってどれだけの努力をされたか、具体的にどれだけ基地が縮小されたか、面積だけ言いなさい。
  257. 上原康助

    上原委員長 できるだけ簡潔にまとめてください。
  258. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 数字についてのお尋ねでございますので答弁いたしますが、返還協定締結時、施設数が百四十四ございまして、三万五千三百ヘクタールございましたが、それが、きょう現在、平成八年一月一日では、三十八施設、二万三千五百ヘクタールでございます。大体この差が三〇%ぐらいでございます。
  259. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は面積を聞いておるのですよ。(発言する者あり)だから、長くなるから注意しているのです。私が調べたところでは、四千ヘクタールしか縮小されていないですよ。四千ヘクタールとは、テレビで見ている人はわからぬかもしれぬが、どのぐらいの広さか。東京に直したら、千代田区と比べてどのぐらいの面積ですか。この二十五年間に、この決議に沿ってどれだけ縮小されたか。四千ヘクタール、言ってください。
  260. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 ちょっと、四千ヘクタールといいますと、現在キャンプ・ハンセンが五千ヘクタールぐらいございまして、あそこの演習場の大きさでございますが、大体その程度の大きさでございます。
  261. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 まあもう少しわかりやすく言って、ここは東京ですから、千代田区の三倍とちょっとなんですよ。そのくらいしか二十五年間、この国会決議に沿った、努力はされたかもしれないが、具体的にはそういうことにしかなっていないのですよ。  だから、今度は、本当にもうこれは最後の機会かもしれない。四月に橋本総理、頑張ってください。それで、少なくとも普天間という名前がどういう関係で出されたか別にして、これは一つの問題になります。この問題について具体的な答えを出されることが非常に重要になってきます。私どもの受ける印象です。これは申し上げておきます。  そこで、私がきょう聞いておって、四月に日米安保条約の再定義あるいは見直しということが言われておる。これは一体具体的にどういうことなのか。もう時間がないから、答えを私は先に言いますけれども、これは集約するところ、集団自衛権の解釈の問題になる。そして、それが公然と——法制局長官が、変えられない、それは当然ですよ、今までの解釈を。そうすると、どういうことになるか。今度は逆に、個別的な自衛権の範囲を拡大する、そういう解釈改憲というものが私は行われる可能性があるのではないか。それを私は、四月の日米首脳の共同声明の中でそれとなくそういう意味のことが盛られるのではないかという危惧を持っておるのであります。  非常に問題は、通産大臣呼んでおりますから引き続き、せっかくですから聞いておきますが、ACSAですね、御存じでしょう、防衛庁が今、米軍にいろいろ物品あるいは役務を融通するという協定です。武器の予備部品が含まれておるとするならば、たとえそれが予備部品であっても、武器輸出の制限を定めたいわゆる武器禁輸三原則に抵触するのではないか。それが一つであります。  もう一つは、この米軍に融通した部品がもし実戦に転用された場合は、集団的自衛権との関係は一体どうなるのか。これは法制局長官にお願いします。
  262. 広瀬勝貞

    ○広瀬政府委員 お尋ねのACSAにつきましては、ただいまその導入について検討いたしているところでございまして、在日米軍等とも適宜意見交換を行っているというところだと聞いております。  したがいまして、武器輸出三原則等における武器の輸出がACSAによる融通の対象となるか否かについては現段階では具体的に固まっておりませんけれども、仮に含まれるということになった場合には、その時点で武器輸出三原則等との関係について整理、検討していかなければならないと思っております。その場合におきましても、国際紛争等を助長することを回避するという武器輸出三原則等のよって立つ基本理念につきましては、引き続き尊重してまいる所存でございます。
  263. 大森政輔

    ○大森(政)政府委員 突然のお尋ねで、質問の趣旨を十分に理解しかねているところがあろうかと思いますが、お尋ねは、補給と武力行使との関係についてのお尋ねに帰すのではなかろうかというふうに理解するわけでございます。  そういたしますと、一般論として申し上げますと、補給、すなわちみずからは武力行使を行わない行動について、これが憲法九条との関係で許されない行為に当たるかどうかということにつきましては、その補給というものが各国が行います武力の行使と一体化するかどうかということで決まろうかと思います。したがいまして、一体化するかどうかということになりますと、これは一概に、抽象的に断定的なお答えをいたすことは困難である、具体的な事情、諸般の事情に即して一体化しているかどうかということを慎重に検討した上でなければお答えすることはできないということになろうかと思います。
  264. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 よくわかりました。ありがとうございました。
  265. 上原康助

    上原委員長 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十八日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十九分散会