○庭山
参考人 ただいま御指名いただきました庭山でございます。私の所見と申しますか、申し上げます。
日本住宅金融は、二十五年前、三和
銀行に頼まれて私が
社長を引き受け、私が知恵を絞ってつくり上げた手づくりの
会社でございます。しかし、当初の約束を破り、都市
銀行が当社方式をまね、みずから
住宅ローンに進出し、また住宅
金融公庫の
事業拡大もございまして、当社の
経営は難しくなりました。
当社が不動産ローンを手がけましたのは、それが
住宅ローンに直結する周辺
業務であり、都市環境開発と中小
事業者の
支援に役立つ
日本経済に残された重要な課題と考えたからでございます。
当社は、私の在任中二十一年間に、二十万人に
住宅ローンを提供し、多くの中小企業の年金運用に
住宅ローン債権信託を、さらに五万人に抵当証券を御利用いただき、大いに社会的貢献をしたつもりでございます。最小限度の人員で合理的
経営を行い、毎期配当を続け、株主に報いました。
しかし、私が退任する直前、いわゆる
総量規制と不動産に対する差別課税により不動産市場が破壊され、
地価が暴落いたしました。そのため、
地価の八〇%を限度として
融資をしていた当社の優良債権が大幅な担保不足の状態になり、延滞債権が急増いたしました。当社は長期貸し付けをしている
会社であり、その期間中にはいろいろのことが起こります。最も難しい状態の現状だけを見て事を
判断することは適当でないと思います。
このような事情を知らないで、特に税金投入の
政府案が世上に伝えられて以来、我々が税金をもらうように誤解され、ずさん貸し付けとか乱脈
融資とか放漫
経営などのあらゆる侮べつ的な言葉を使って、純粋の私企業である我々を誹議している人があるのは遺憾にたえません。
このような
事態は、過剰流動性政策による
地価の急騰と、
総量規制、不動産に対する差別課税による
地価の急落の二つが原因となって起こったことであり、いずれも、当時の政権政党、内閣、
大蔵省、
日本銀行の誤った政策によるものであります。
日銀の引き締め政策への転換がおくれたことも重大な過失ですが、特に
総量規制は、
大蔵省の法律に認められた権限を越える違法なものであります。
行政権は法律なくして私的取引に介入することは許されないというのが
我が国憲法の基本的な
考え方で、過去にも、旧憲法下でさえそのような場合には、国家総動員法、ポツダム勅令などによっておりました。今回は、しかし、単なる一片の
銀行局長の
通達によったのです。
通達というものは、上位官庁の下位官庁への訓令にすぎず、外部に向けて出すものではありません。何の
自己判断もなくそれに盲従した
銀行も同罪と思います。
それに、タイミングも間違っておりました。
地価が東京都心部ではピークから既に下がり始めていたころ、この
通達を出したのです。回復過程にあった病人に創業を飲ませた結果、副作用のために健康な体質に戻れないでいるのが
日本経済の現状であります。また、
地価をいつまでに何割下げるという目標もなくして
通達を出すというのも、私は無
責任だと思います。
世上、
総量規制で
住専を外したことの可否などの論議がありますが、それは
大蔵省や
日本銀行の現在の誤った
行政指導的
金融行政を応援することになる論議で、そのこと自体が今世間で批判の的になっているのです。
地価は利回りによって決まりますので、上がり過ぎたものは必ず下がります。それが自由市場経済のよいところです。
地価はできるだけ安いのがよいのですが、それは市場が決める、マーケットが決めることです。強権が恣意で介入して急騰させたり急落させたのでは、
自己責任の
事業活動はできません。
私が
政府を非難しているのは、それが私の
経営者としての
責任と考えているからであります。株主から預かった財産、それが
政府によって被害を受けて黙っているようでは、
経営責任は果たせません。それを私の
責任転嫁と言っている人があるのは、とんでもない間違いであります。
はっきり申し上げておきますが、私が
社長在任中に当社で起こったことは、すべて私の
責任です。私はそれを回避するものではありません。私は常に慎重に事を全精力をささげて
処理してまいりました。そして、間違ったことは
自己責任でいやしてまいりました。しかし、
政府のなさったことによって生じた結果には、
政府が
責任を負っていただくのが当然と考えておりますので、御了承いただきたいと思います。
なお最後に、私が四年前に
社長を退任いたしましたときは、当社はまだ十分な
自己資本を保持しており、
再建が可能な状態でしたが、その後、残念ながら、
事態はさらに悪化の一路をたどりました。しかし、私の退任後のことにつきましては、私はコメントする
立場にございませんので、御了承いただきたいと思います。
ありがとうございました。