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1996-02-13 第136回国会 衆議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年二月十三日(火曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 上原 康助君    理事 桜井  新君 理事 近岡理一郎君    理事 深谷 隆司君 理事 保利 耕輔君    理事 今津  寛君 理事 草川 昭三君    理事 野田  毅君 理事 三野 優美君  理事 五十嵐ふみひこ君       相沢 英之君    伊藤 公介君       小澤  潔君    越智 伊平君       越智 通雄君    菊池福治郎君       後藤田正晴君    志賀  節君       七条  明君    高鳥  修君       谷川 和穗君    原田  憲君       松下 忠洋君    武藤 嘉文君       村山 達雄君    若林 正俊君       安倍 基雄君    愛野興一郎君       伊藤 達也君    石井 啓一君       石田 勝之君    川島  實君       北側 一雄君    小池百合子君       左藤  恵君    谷口 隆義君       平田 米男君    前田 武志君       松岡滿壽男君    山口那津男君       山田  宏君    今村  修君       佐々木秀典君    坂上 富男君       田中 昭一君    畠山健治郎君       細川 律夫君    錦織  淳君       藤田 スミ君    松本 善明君       矢島 恒夫君    海江田万里君  出席国務大臣         内閣総理大臣  橋本龍太郎君         法 務 大 臣 長尾 立子君         外 務 大 臣 池田 行彦君         大 蔵 大 臣 久保  亘君         文 部 大 臣 奥田 幹生君         厚 生 大 臣 菅  直人君         農林水産大臣  大原 一三君         通商産業大臣  塚原 俊平君         運 輸 大 臣 亀井 善之君         郵 政 大 臣 日野 市朗君         労 働 大 臣 永井 孝信君         建 設 大 臣 中尾 栄一君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     倉田 寛之君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 梶山 静六君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 中西 績介君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      岡部 三郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 臼井日出男君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      田中 秀征君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      中川 秀直君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 岩垂寿喜男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 鈴木 和美君  出席政府委員         内閣法制局長官 大森 政輔君         内閣法制局第一         部長      秋山  收君         阪神・淡路復興         対策本部事務局         次長      生田 長人君         警察庁刑事局長 野田  健君         総務庁人事局長 池ノ内祐司君         総務庁行政管理         局長      陶山  晧君         総務庁統計局長 伊藤 彰彦君         北海道開発庁総         務監理官    松川 隆志君         防衛庁参事官  小池 寛治君         防衛庁参事官  澤  宏紀君         防衛庁人事局長 大越 康弘君         防衛庁経理局長 佐藤  謙君         防衛施設庁労務         部長      早矢仕哲夫君         科学技術庁原子         力局長     岡崎 俊雄君         科学技術庁原子         力安全局長   宮林 正恭君         環境庁長官官房         長       田中 健次君         環境庁企画調整         局長      大西 孝夫君         環境庁企画調整         局環境保健部長 野村  瞭君         国土庁土地局長 深澤日出男君         国土庁防災局長 村瀬 興一君         法務省民事局長 濱崎 恭生君         法務省刑事局長 原田 明夫君         外務省アジア局         長       加藤 良三君         外務省条約局長 林   暘君         大蔵大臣官房総         務審議官    武藤 敏郎君         大蔵省主計局長 小村  武君         大蔵省主税局長 薄井 信明君         大蔵省理財局長 田波 耕治君         大蔵省銀行局長 西村 吉正君         国税庁次長   若林 勝三君         文部大臣官房長 佐藤 禎一君         文部大臣官房総         務審議官    辻村 哲夫君         厚生省薬務局長 荒賀 泰太君         厚生省社会・援         護局長     佐々木典夫君         農林水産大臣官         房長      高木 勇樹君         農林水産省経済         局長      堤  英隆君         農林水産省構造         改善局長    野中 和雄君         食糧庁長官   高橋 政行君         通商産業大臣官         房審議官    横川  浩君         通商産業省機械         情報産業局長  渡辺  修君         中小企業庁長官 新  欣樹君         郵政大臣官房審         議官      品川 萬里君         郵政省通信政策         局長      山口 憲美君         郵政省電気通信         局長     五十嵐三津雄君         労働大臣官房長 渡邊  信君         労働省労働基準         局長      松原 亘子君         労働省婦人局長 太田 芳枝君         労働省職業安定         局長      征矢 紀臣君         労働省職業安定         局高齢障害者         対策部長    坂本 哲也君         建設大臣官房長 伴   襄君         建設省建設経済         局長      小鷲  茂君         建設省都市局長 近藤 茂夫君         建設省道路局長 橋本鋼太郎君         自治大臣官房長 二橋 正弘君         自治大臣官房総         務審議官    湊  和夫君         自治省行政局長 松本 英昭君         自治省行政局公         務員部長    鈴木 正明君         自治省財政局長 遠藤 安彦君         自治省税務局長 佐野 徹治君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行総裁松下 康雄君         予算委員会調査         室長      堀口 一郎君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十三日  辞任         補欠選任   小澤  潔君     松下 忠洋君   谷津 義男君     七条  明君   笹川  堯君     北側 一雄君   佐々木秀典君     畠山健治郎君   矢島 恒夫君     藤田 スミ君 同日  辞任         補欠選任   七条  明君     谷津 義男君   松下 忠洋君     小澤  潔君   北側 一雄君     小池百合子君   畠山健治郎君     佐々木秀典君   藤田 スミ君     古堅 実吉君 同日  辞任         補欠選任   小池百合子君     笹川  堯君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  平成八年度一般会計予算  平成八年度特別会計予算  平成八年度政府関係機関予算  平成七年度一般会計補正予算(第3号)  平成七年度特別会計補正予算(特第3号)  一般国道二二九号豊浜トンネル崩落事故につい  ての報告聴取      ――――◇―――――
  2. 上原康助

    上原委員長 これより会議を開きます。  この際、一般国道二百二十九号豊浜トンネル崩落事故について、中尾建設大臣及び岡部北海道開発庁長官から発言を求められておりますので、順次これを許します。中尾建設大臣
  3. 中尾栄一

    中尾国務大臣 平成八年二月十日午前八時十分ごろ、一般国道二百二十九号北海道余市町から古平町に至る豊浜トンネル坑口部において、トンネル上方岩盤が大規模崩落しまして、トンネルが約三十メートルにわたり押しつぶされました。  これにより、路線バス一台と乗用車一台が落石土砂に埋まり、多くの方々、約二十名が事故に巻き込まれた模様でございまして、他に落石により一名の方が負傷した次第でございます。事故に巻き込まれました方々及び御家族の方並びに負傷された方に心よりお見舞い申し上げる次第であります。  事故状況の的確な把握及び迅速な事故処理を図るために、事故直後に北海道開発局及び建設省において対策本部を設置するとともに、現地専門家などを派遣し、調査を進めてまいりました。また、二月十一日に私から直接、北海道開発局長人命救助を第一に作業を急ぐように督励をしたところでございます。  現地では、被災者の救出を最優先にして、北海道開発局対策本部が、土質工学構造力学学識経験者民間コンサルタント地質専門家等協力を得て作業方針を定め、多数の施工業者協力体制のもと、岩盤除去作業を進めているところでございます。  本日、さらに現地対策本部において、早期岩盤除去を行うために、第三回目、さらには第四回目の発破作業の準備を進めることとしております。  なお、岩盤崩落が大規模で二次災害の懸念があることから、除去作業が難航しており、建設省としても新たに岩盤除去専門家の派遣を行うなど、できる限りの支援を尽くしてまいりたいと思います。  皆様方に御心痛をかけましたことを心からおわびを申し上げたいと思います。ありがとうございました。
  4. 上原康助

  5. 岡部三郎

    岡部国務大臣 総理大臣の御指示に従い、昨日現場を調査してまいりました。  今回の事故は、予想だにできなかった大規模岩盤崩落し、トンネルを直撃した事故であり、救助活動は大変困難をきわめておりますが、人命救助を最優先に、一刻も早い救助作業現地で指示してまいった次第でございます。  さらに、安否を気遣う御家族方々からお話を承り、心からお見舞いを申し上げるとともに、連日本眠不休救助活動を進めております関係者になお一層の御努力をお願いしてまいったところであります。  私といたしましては、一刻も早く全員が救助されるよう万全の措置を講じてまいりたいと存じております。      ――――◇―――――
  6. 上原康助

    上原委員長 平成八年度一般会計予算平成八年度特別会計予算平成八年度政府関係機関予算、以上の三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北側一雄君。
  7. 北側一雄

    北側委員 北側一雄でございます。  ただいま御報告ございました北海道豊浜トンネルでの落石土砂事故につきましては、救援に全力を挙げて全力を果たしていただきたい、このようにお願いを申し上げる次第でございます。  私の方からも、きょうは住専問題を中心質問をさせていただきたいというふうに思っております。  これまで予算委員会議論が重ねられてきたわけでございますが、最近、与党の幹部の方の国会外での御発言の中で、どうもこれまでの総理やまた大蔵大臣農水大臣等答弁との違いがあるのかなと思うような御発言がございます。  先週の終わりでございますが、二月の十日の朝日新聞で、武村大蔵大臣、この朝日新聞インタビューに答えられまして、さまざまな御発言をなされておるわけでございますが、必ずしもこれまでの内閣の閣僚の皆さんの御答弁と一致するとも思えません。この点、少し聞いてまいりたいと思っているのですが、一つは、農協系統贈与をいたします五千三百億円の算出根拠でございます。  これにつきまして、武村大蔵大臣、前大蔵大臣というのはこの予算案を作成した責任者でございますけれども、このようにおっしゃっております。  「農協系負担額五千三百億円の算出根拠は。」という質問に対しまして、「資料としては見ていない。農協系負担で、個々の信連がどう赤字に転落するかという具体的なデータが上がってきたわけではない。」こうおっしゃっているのですね。  「大蔵省事務当局はきちんとしたデータを把握していたのでしょうか。」という問いに対して、「どれだけ知っていたか、確認していない。把握していた自信があるとは言えません。」このようにも言っております。そして、「政治の世界には農協系負担しなくてもいいという意見も横行していた。その中でまとめるには、最終的には政治的判断になると考えていた。その意味で五千三百億円という数字政治的に判断された数字だ」このように前大蔵大臣はお答えになられております。  そして、「積み上げ根拠はないのですね。」という質問に対して、「大所高所からの総合的な判断というふうにとってほしい。」このようにおっしゃっているのですね。  これまでこの五千三百億円の算出根拠につきまして、例えば大原農水大臣は、二月の六日の日に、このようにおっしゃっております。ここは同僚委員質問で何度もやりとりがあるわけでございますが、大原大臣は「基本は、先ほどから何回も申しますように、積み上げですよ。」と、「積み上げていって、ぎりぎりの負担、こう申し上げているわけでありまして、」と、このように御答弁なされておるのですね。  前大蔵大臣は、これは「政治的に判断された数字だ」、このように言っていて、一方、これまでの予算委員会議論は、この五千三百億円は積み上げ数字だというのが基本だというふうに、何度も大臣初め御答弁があります。これは矛盾じゃないですか。
  8. 大原一三

    大原国務大臣 武村大蔵大臣がどういう御答弁をなすったかは、私はよくわかりません。  ただ、前農林大臣からの引き継ぎ、さらにまた事務当局説明によりますと、いろいろ積算をし、そうして内部資料ではいろいろの計算をしてみました、ところが、どう見ても三十以上の信連赤字になる数字はこちらとしてはのむわけにはまいりません、そういうことで、ぎりぎり二千億という数字積算してみますと三十信連経常利益赤字、こういう数字が出てきたわけでございます。そういう積算というか積み上げのもとに前農林大臣大蔵大臣と折衝されたものというふうに私は了解をしております。
  9. 北側一雄

    北側委員 今の大臣の御答弁は、やはりこれまでの御答弁と同様でございまして、この五千三百億円は積み上げであるという御答弁ですよね。  そうすると、この武村大蔵大臣、この予算案を作成をした直接の責任者である武村大蔵大臣の話と違うんですよ。この予算委員会の冒頭で、たしか前内閣と今の内閣総理も、前内閣を引き継いだ、責任を引き継いでいる、そのようにおっしゃったかと思いますけれども、これは矛盾ですよ、やはり総理、いかがですか。
  10. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 系統系金融機関資金協力につきましては、今農林水産大臣からも御答弁がありましたように、我が国の金融システム安定性信頼性を確保し再構築していくといった見地から、当事者間で最大限の努力を払うという認識のもとで、信用事業の存立の基盤を守り得るかどうか、ぎりぎりの協力資金贈与額を模索したものと私も承知をいたしております。  そして、改めて申し上げるのも大変失礼かもしれませんけれども、その算出根拠におきましては、九百万人の農協組合員などから六十八兆円という貯金を受けている全国二千五百の単協の経営に悪影響を及ぼし、農協をめぐる新たな信用不安が起こることを回避するということを基本としていたものと承知しています。  武村大臣が当時本件につきどのような説明を受けておられたのか、これは我々はわかりませんけれども、また、前大臣が言われましたように、最終的には「大所高所からの総合的な判断」という面もあったのかとも思われますが、いずれにいたしましても、今申し上げましたような基本的考え方に基づいて算定された金額である、私はそう理解をいたしております。
  11. 北側一雄

    北側委員 久保大蔵大臣、いかがですか。  前大蔵大臣は、政治的な判断だ、大所高所からの総合的な判断だ、算出根拠資料としては見ていないんだ、このようにおっしゃっているんですけれども、いかがですか。
  12. 久保亘

    久保国務大臣 私も、今北側さんが御質問になりました武村大蔵大臣インタビュー記事を読ませていただきました。  ただ、武村さんがおっしゃっている内容を見てみますと、武村さん御自身は「資料としては見ていない。」ということをおっしゃっておりますが、「農協系体力が弱く資金に余力がない。信連の半分くらいが赤字に転落する」ということを聞いたということを申しておられますから、当然その内容について報告を受けられたものと考えております。  また、この数字が「緻密でない、いいかげんな数字というのではなく、大所高所からの総合的な判断というふうにとってほしい。」ということも申されております。そして、一番最初のところで、景気対策としても住専を解決して、「日本経済の霧を晴らしていかなければならないという使命感を感じていた」ということを申しておられまして、こういう全体として見てまいりますと、前大蔵大臣としても、いろいろ知り得る必要な報告を受けられて御判断になったものと考えております。
  13. 北側一雄

    北側委員 いや、前大蔵大臣予算編成をされる直接の責任者の前大蔵大臣が、この住専処理に六千八百五十億円の財政支出をしようとするわけでございまして、その根拠となる資料また数字、そういうのを見ていないというのも、これは甚だ私は無責任な話と言わざるを得ないなと思わざるを得ないですね。  ちょっと質問をまた変えてみますけれども、もう一つ武村大蔵大臣はおっしゃっているんですよ。「政府はどうして、はっきり「農協系取り付け騒ぎを防ぐため」と説明しないのですか。」こういう質問に対して、「そういう言い方は、正直で、間違っていない」、はっきりおっしゃっているんですね。「当時、大臣室でも『農水省予算にしたらどうか。農協金融安定化資金と名付けたほうが、全体像としてはわかりやすいし、正直だ』」私もそう思いますけれども、このようにおっしゃっている。  さらには、自民党幹事長でいらっしゃいます加藤紘一幹事長も、これもつい最近の話です、二月九日の読売新聞で、やはり同じインタビューでございますが、「本当は農協も一兆一千億円程度は負担しなければならなかったが、(負担能力がなかったので財政資金を投じたと言い切った方が分かりやすい。」と、こうおっしゃっているわけでございまして、この辺の武村大蔵大臣加藤自民党幹事長お話とこれまでのこの予算委員会での御答弁とは少し違うのじゃないのかなと思うのですね。  例えば二月五日の橋本総理の御答弁では、「真剣な議論の中におきまして、財政資金投入を含む処理方策というものを決定をしたわけでありまして、これは農民保護あるいは農協系金融機関保護だというふうには私は考えておりません。」この種の趣旨のお話は、これまで何度もなされておるわけでございます。  武村大蔵大臣加藤自民党幹事長のこの辺の今の私が読み上げましたお話と私は明らかに矛盾する、財政資金導入目的という極めて大事な問題について認識が違っているんじゃないかと思いますが、いかがですか。
  14. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 これも何回か御答弁を申し上げていることに尽きるわけでありますけれども、この住専の問題というものが、日本金融機関の抱えております不良資産の問題の中でも象徴的かつ緊急の課題である、そして早期解決がぜひとも必要だということについては、議員も御理解をいただいておると存じます。  そして、今回の処理策がもし実行されず、住専に係る多額損失分担が確定をしない不透明な状態がこれからも長期間継続するような場合を想定いたしますと、体力の弱い金融機関に対する信用不安を招く可能性というものは非常に大きくなりますし、破綻に至るものも生じかねないという状況があります。その場合には、これは預金の払い戻しができないことにもなり、善意の預金者に御迷惑をおかけすることになるわけであります。  さらに、現在金融機関多額不良債権を抱えておりますために、一部金融機関に対する信用不安というものが、預金者の不安が不安を呼ぶ、そして健全な先を含めて他の多数の金融機関預金者影響を与えかねない危険性というものは存在をするわけであります。また、その信用不安の発生によりまして、企業中小企業中心に決済困難という状態にも追い込まれかねませんし、これはさらに多数の連鎖倒産にも発展をいたしかねません。  このように、一たび信用不安が発生いたしますと、それは本当に日本社会経済に与える影響、打撃というものははかり知れないものがあります。そして、こうした状況を回避するために、今回住専早期解決のために関係者のぎりぎりの議論の中から公的資金導入というものを決断した、この点はどうぞ御理解をいただきたいと思います。
  15. 北側一雄

    北側委員 総理にもう一度お聞きしますが、端的にお答え願いたいと思いますが、前大蔵大臣武村さんの、財政資金導入農協系の取りつけ騒ぎを防ぐためという言い方は「正直で、間違っていない」、この表現、この認識、それから加藤幹事長の、農協も「(負担能力がなかったので財政資金を投じた」、この認識、この認識と違いがありますか。
  16. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 そういう一面を全く私は否定して、ゼロだと申し上げるつもりはありません。そういう要因も決して私はゼロだとは思いません。  ただ、結論として申し上げられることは、これまでも繰り返してまいりましたように、それぞれの立場の関係者の真剣な議論の中から、どうやっても負担し切れない六千八百億というものが生じ、そして、そのほかの五十億の資金と合わせまして、公的資金投入というぎりぎりの決断を迫られたものであるということもまた事実であります。
  17. 北側一雄

    北側委員 総理、ゼロではないという認識というのと――農協系の取りつけ騒ぎを防ぐためというのは「正直で、間違っていない」、また加藤幹事長は「能力がなかったので財政資金を投じた」と、端的に、明快に、今回の財政資金導入目的についてわかりやすくおっしゃっているんですよね。ゼロではないとか、そういうあいまいな言い方じゃなくて、この認識と同じなのかどうか。違うのか、同じなのか。
  18. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、系統系金融機関負担能力の限界まで積み上げてきた努力というもの、これは農水大臣経済局長が繰り返し述べておられますように、そうした問題があったことを全く否定をいたしておりません。しかし、それだけがすべての原因だというのは、私は少し短絡的に過ぎると思っております。
  19. 北側一雄

    北側委員 これだけだなんて私も申していないわけでございまして、主にこの理由じゃなかったのかということなんですね。主に農協系統金融機関の破綻を防ぐ、これが主たる目的であったという認識をお持ちなんでしょうか。
  20. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先般来の審議の中でも、これらの点、繰り返しそれぞれの責任ある立場の方から御答弁を申し上げておりますように、母体行にもぎりぎりの負担を求め、三兆五千億という負担を求め、それは、現在までよく言われる言い方でありますけれども、株主代表訴訟といったことに対しても懸念を持つ、そのぎりぎりの判断だった。あるいは、一般行につきましても同様の議論がございました。さらには系統金融機関において、過半数の信連の経営上赤字を生ずるといった状況も、ぎりぎりの状況の御説明としてお話がございました。  ですから、そういう状況全体の中での最終的な判断公的資金投入だったということでございます。
  21. 北側一雄

    北側委員 全く、この加藤さんや武村さんのお話と私は矛盾するような御答弁であると思います。ぜひこれはもう、この点は明らかにしていただきたいというふうに思うわけでございます。  こればかりやっていますと時間がなくなってしまいますので、次の質問に入りますが、今回のこの住専問題、住専処理方策につきましては、まず平成七年の十二月十九日の閣議決定がございます。そこで、まず一次損失処理につきましてこの閣議決定で、母体行に対し、住専に対する債権を全額放棄することを政府が要請をしているわけですね。  ちょっと確認です。私は当然だと思います。母体行が全額放棄するのは当然だと思いますが、全額放棄することを閣議決定で政府が母体行に対して要請をした、この理由は何でしょうか、大臣
  22. 西村吉正

    ○西村政府委員 これは、住専問題を一日も早く決着を見るためには、関係者がぎりぎりの努力をそれぞれのお立場でしていただくことが必要である、そういうお立場で母体行としてはこのような債権の全額放棄をお願いをしたい、こういう趣旨で私どもがお願いをしたものでございます。
  23. 北側一雄

    北側委員 ですから、そのお願いした、母体行がなぜ全額放棄だったのか、ほかと違って。それはどうしてなのかという質問なんです。
  24. 西村吉正

    ○西村政府委員 与党のガイドラインにおきましても、この負担判断する場合の三つの指針をお示しいただきました。そのような総合的な判断のもとに、母体行としては債権の全額放棄をしていただくのが適正であろうと私どもも判断したところでございます。
  25. 北側一雄

    北側委員 要するに、母体行というのは、住専の設立の当初から出資等でかかわっておる、役員も派遣しておる、経営にも深くかかわっておる、だから、母体行については全額放棄する責任があるじゃないか、そうするべきだ、こういう御判断だと思うのですね。久保大臣、そうでしょう。
  26. 久保亘

    久保国務大臣 北側さんのおっしゃるとおりだと思います。
  27. 北側一雄

    北側委員 そこでお聞きしたいんですが、母体行に住専に対する債権を全額放棄させるということでございますが、これは法律上、いつの時点の住専に対する債権額を放棄させるということなんでしょうか。いつの時点の住専に対する債権額を放棄させるのか。
  28. 西村吉正

    ○西村政府委員 これは、各住専関係者が合意に達して、住専を清算をして住専処理機構に移すことの合意ができ上がったときというふうに理解しておりますが、ただ、そのときの関係者の合意によって、その状況をある時点に設定をして、その時点での債権債務関係というふうに整理することも可能であろうと思います。
  29. 北側一雄

    北側委員 今の銀行局長お話は、こういうことですか。これから各母体行は、自行の取締役会で自分のところの債権額を確定して、全額放棄の意思を取締役会で決定しますね。それで、全額放棄の意思を住専なら住専に意思表示する。書面でしょうね。その時点ということなんでしょうか。それとも、さかのぼって、ある時点の債権額というふうに考えていいというふうにおっしゃっているのでしょうか。
  30. 西村吉正

    ○西村政府委員 母体行と、あるいは一般行、系統にしてもそうでございますが、住専との間の債権債務関係というのは、今の時点である意味では確定しておるわけでございます。したがって、今の状態を前提に置きまして、住専とそういう母体行とか一般行とか系統との債権債務関係を確定するということだと考えております。
  31. 北側一雄

    北側委員 久保大臣、ちょっと聞いていただきたいのですが、もしこれ、各母体行の取締役会で全額債権放棄を決定した時期以降だとしますと、まだ大分先の話なんですね。そうすると、住専からそれまでに元本の返済を受ければその弁済は有効だということになるんですよ。全額債権放棄というのが取締役会で決定をした時期の債権について全額放棄をするのだとすれば、その以前の債権額、元本の一部を弁済を受けたとすると、その弁済は有効になるんですよ。こういう取り扱いはいいんでしょうかね。大臣、いかがですか。
  32. 久保亘

    久保国務大臣 これは、債権の全額放棄ということと三兆五千億ということの二つの条件があると思います。そうしないと六兆四千百億の損失並びに欠損を補てんできなくなりますから、だから三兆五千億が全額放棄というときの金額として、私は母体行の責任となるものだと考えております。
  33. 北側一雄

    北側委員 ちょっとこの問題また後で関連しますのでお聞きしますけれども、銀行局長住専七社がいわゆる債務超過、資産よりも負債の方が多いという債務超過、この債務超過となった時期は七社ごと、いつになりますか。七社ごとお答えください。
  34. 西村吉正

    ○西村政府委員 債務超過となりましたのは、地銀生保住宅ローンは四年の九月期からでございます。それから、住総、総合住金は五年の九月期からでございます。住宅ローンサービスは六年の九月期からでございます。日本住宅金融、第一住宅金融、日本ハウジングローンは七年の九月期からでございます。ただし、総合住金の六年三月期は債務超過になっておりません。  以上でございます。
  35. 北側一雄

    北側委員 地銀生保住宅ローンについてはもう四年の九月期から決算上債務超過、あと五年の九月期も二つほどあって、六年の九月期が一つ、七年の九月期が三つというふうに御説明あったわけでございますが、これは決算上の話でございまして、実際は、貸借対照表の資産の部に計上されています貸付金、要するに借入先への貸付金、これが相当前から大蔵省報告でもあるとおり不良化されているわけですから、実質は貸借対照表上の貸付金の金額なんかないわけなんですよ。今おっしゃった債務超過の時期よりももっと以前に実質は債務超過になっていたわけなんですね。  そこで、銀行局長、ちょっと御答弁をお願いしたいのですが、昨年一年間で母体行が各住専から元本の弁済を受けたというのはどの程度の金額になりますか。
  36. 西村吉正

    ○西村政府委員 平成六年九月から七年九月の一年間で母体行分は百三十億円の増加、一般行分は二千二百億円の減少、系統分は六百七十億円の減少、合計では二千七百四十億円の減少となっております。これが借入金の残高でございます。(北側委員「それは、いつといつとを比べているのですか」と呼ぶ)六年の九月と七年の九月の関係でございます。  それから、平成七年三月期の支払い利息の金額は、七社合計で約三千七百五十億円となっております。
  37. 北側一雄

    北側委員 今その融資残高、母体全体でおっしゃっているからそんな数字になっていますけれども、銀行局長、例えば、私がいただいている資料によりますと、平成七年三月末と平成七年九月末、この半年を比べまして、例えば日本住宅金融に関して、母体行は、平成七年三月末の段階では八千六百四十四億あったけれども、九月末の段階では八千四百二十億。減っているんですよ。さらに日本ハウジングローンについても、母体行は、五千八百二十億の残から五千四百四十五億の残に減っているんですよ。  というふうに、個々の母体で見ましたら、住専から元本の返済を受けているところがあるでしょう、それを出してくださいというふうに言っているんです。
  38. 西村吉正

    ○西村政府委員 御承知のように、今もなお、この住専七社は生きている会社でございます。したがいまして、日々お金の出入りというものはあるわけでございまして、その中で、契約に基づきまして弁済をするものもございますし、受け入れをするものもございます。これは、まだ生きている会社として、いたし方のないことでございます。  しかしながら、住専の借入金については、原則といたしまして、関係者の間で残高維持という考え方で整理をされてきておるわけでございます。そういう原則の中で、個々の契約に照らしまして、生きている会社としてお金の出入りがあるということはやむを得ないことでございますし、それは経済活動として認めるべきものだと考えております。
  39. 北側一雄

    北側委員 銀行局長、また後で求めますけれども、各母体行別に、昨年一年間、住専から元本の返済を受けた金額を出してくださいよ。これは私、極めて大事な問題だと思いますよ。  総理、なぜこんな話をするかといいますと、ちょっとわかりやすくお話ししますと、例えば、私が総理から一千万円お借りしています。久保大蔵大臣から一千万円お借りしています。梶山官房長官から一千万円お借りしています。三千万借りています。ところが私は一千万しかありません、一千万しか。将来お金が入ってくる見通しも全くない。私が例えば橋本総理に、橋本総理好きだから、一千万円、特に橋本総理だけに弁済したとします。そうしたら、久保大蔵大臣や梶山官房長官は、ふざけるんじゃない、何で一部の債権者だけに払うんだ、そんな不公平なことするなとなりませんか。なるんですね。なるんです。  これは民法の四百二十四条の、総理御存じだと思いますが、詐害行為取り消し権といいまして、一部の債権者への弁済というのは、私のように、今の例で債務超過になっているような典型的な場合ですけれども、一部の債権者への弁済というのは詐害行為で取り消されるのです。久保大蔵大臣や梶山官房長官から、この弁済行為自体を取り消されるのです。こういうことなんですね。  去年一年間といったら、住専は実質的にはもう債務超過です、これだけ不良資産を抱えているわけですから。その実質的に債務超過であることを熟知している母体行ですよ、その母体行が一部の元本の弁済を受ける、これはほかの債権者を害するでしょう。ほかの一般行や系統を害するんじゃないですか。特に一般行を害するんじゃないですか。おかしいんですよ。そんな元本の弁済は私は認められるべきじゃないと思うんですね。  大蔵大臣いかがです。――総理
  40. 西村吉正

    ○西村政府委員 先ほど私申し上げましたように、これは生きておる会社でございますので、お金の出入りというものは日々あるわけでございますが、そのお金の出入りにつきましては、契約あるいは再建計画等におきましてそれぞれ根拠のある形になっておりまして、恣意的に一部の債権者に負担をかけたり、利益を与えたりというような形でのお金の出入りというものはないと私は考えております。
  41. 北側一雄

    北側委員 銀行局長、私の久保大臣への弁済も私の梶山長官への弁済も、有効な債権債務関係があって弁済しているのですよ。一緒ですよ。  法務省にお聞きしますが、一般論で結構でございますが、債務超過後の一部の債権者への弁済は、ほかの債権者を害するものとして民法四百二十四条の詐害行為取り消し権の対象となり得るのではありませんか。
  42. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 一般論として申し上げさせていただきますと、一部の債権者に対して債務を弁済するという行為が詐害行為取り消し権の対象となるかどうかということに関しましては、その弁済が、債務者が当該債権者と通謀して他の債権者を害する意思をもってされたものであれば、詐害行為の要件を満たすというふうに考えられております。
  43. 北側一雄

    北側委員 今の御答弁は、住専の債権者から、例えば一般行から、住専から母体行くの元本弁済が詐害行為として取り消される可能性があるということをおっしゃっているのですよ、一般論ですけれども。母体行は、何度も申し上げますように、各住専の債務超過状態は知っているわけですよ。熟知しているわけですよ。いかがですか。少なくとも、例えば百歩譲って、去年八月に大蔵省調査に入った、それ以降の母体行くの元本の返済というのは、これは取り消されるべきですよ。  なぜこんなことを言うかといいましたら、六千八百億もの税金を今投入しようと言っているわけでしょう。にもかかわらず、一方で破綻が明らかで清算することがもう見えている、はっきりわかっている、そういう住専から母体行が元本の一部の返済を受けるというのは、とんでもない話ですよ。その差額が結局我々の税金の負担になっているわけでしょう。  大蔵大臣、いかがですか。私の話わかりますでしょう。総理、いかがです。
  44. 西村吉正

    ○西村政府委員 先ほどから申し上げておりますように、日々の生きている会社としての活動の中には、契約に基づきまして、あるいは経営判断に基づきまして、日々の活動の結果としてお金の出入りというものはございます。例えば、返済をする場合に高い金利のものから返していくというような考え方で処理をしていき、例えば系統金融機関にはお金ができたときには先に返していくというようなことで処理をされている部分もございます。  それから、母体行に関してのお尋ねでございますが、九三年に第二次再建計画を策定したとき以降に母体が追加で行った資金繰りの融資につきましては、十分な不動産や有価証券の担保をとられた上に優先弁済が定められているとか、そういうような計画上の位置づけ等がありまして、そのような結果として一部返済をされているものもございますが、それは他の債権者を害するとかあるいは根拠に基づかないとかそういうことではございませんで、法的な根拠があった上で、契約上の根拠があった上でなされている行為だと考えております。
  45. 北側一雄

    北側委員 銀行局長、六千八百五十億の税金を投入しようとしているわけでしょう。母体行の放棄額の金額をふやせばふやすほど税金投入額は減るわけでしょう。  こういう聞き方しましょうか。そうしたら、住専について整理する方向になったのはいつですか、整理する方向になったのは。
  46. 西村吉正

    ○西村政府委員 政府として最終的にそのような方向で関係者に要望いたしますことを決定したのは、昨年の十二月の十九日でございます。
  47. 北側一雄

    北側委員 いや、政府のことを聞いているのじゃないんですよ。銀行局長、これは大蔵省からいただいている書類ですよ。大蔵省からいただいている書類で、こういうことを書いていますよ。「住専七社については、昨年十月二日に母体金融機関から整理の方向が表明され」というふうに書いていますけれども、違うんですか。
  48. 西村吉正

    ○西村政府委員 この十月二日と申しますのは、与党の金融・証券プロジェクトチームにおいて、プロジェクトチームの勧告後の検討状況に関する母体の代表から座長への御報告についていろいろと議論のあった段階でございます。その段階におきまして、協同住宅ローンを除きます七社、すなわち今議論の対象になっておる七社でございますが、その七社につきましては、整理を含む抜本的見直し、整理ということをも念頭に置いて抜本的見直しを検討しよう、こういうことになった、こういうことでございます。
  49. 北側一雄

    北側委員 総理、もうこれ以上質問しませんけれども、ぜひ最後に総理に御答弁をお願いしたいんですが、住専が実質破綻状態になったのはもう大分前です。そして、整理の方向しかないという判断も、これも大分前の話です。少なくとも去年の下半期なんかに母体行が元本の弁済を受けているというのは、これはその分だけ国民の税金が投入される額がふえるという話になるわけですよね。これはおかしいと思うんです。  私は、一次ロスの処理で六千八百億円もの税金を投入して国民に負担をかけようとしているんだから、母体行が、住専が経営破綻して債務超過していることが明らかな、百歩譲って、少なくとも大蔵省が昨年調査に入った八月以降の弁済を受けている元本は、住専の資産に取り戻しをすべきだというふうに思うんですが、総理、いかがですか。その分だけ税金投入が減るんですから。
  50. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私も新聞記事で母体行の一部がみずからの債権保全に動いたという記事を見まして、大変苦々しい思いをいたしました。ただ、それが法的に防げるものなのかどうか、率直に申してそれだけの知識がありませんでしたので、その苦々しい思いのままでおります。  いずれにいたしましても、私は、母体行は大きな責任を負う立場であり、行動に対して慎重の上にも慎重であってもらいたい、率直な気持ちを申し上げます。法的な部分については、私は十分な知識がありません。
  51. 北側一雄

    北側委員 十分な知識がないところはぜひ、これは先ほど法務省が詐害行為取り消し権の対象になり得ると言っているんですよ。(橋本内閣総理大臣「言っていました」と呼ぶ)そうですよね。だから、債権者が取り消し得るんですね。国民は六千八百五十億、払おうというわけですよ。これは幾ら何でも私は認めがたい。(橋本内閣総理大臣「この後どういうふうにしていくのかというのは、私、法的にわからないから」と呼ぶ)だから、今後の問題で結構です。結構ですけれども、こうした、昨年の下半期に一部の母体行が元本返済を受けている、こういう行為についてどうするのか、検討するのかどうか、ちょっと答弁をお願いします。総理、お願いします。もう銀行局長、結構ですよ。銀行局長の御答弁はもう十分聞きました。
  52. 西村吉正

    ○西村政府委員 まず、事実について御説明申し上げます。  御指摘の問題は恐らく、私の理解によりますと、第二次再建計画策定当時の危機的な経営状況にかんがみまして、その計画の中におきまして、当時の債権残高の維持に加えまして、追加のニューマネーの融資を行う場合には優先弁済を認めることで関係者が合意したというようなものについての御指摘だと思いますが、このような融資のときの経緯に加えまして、この融資につきましては、そもそも担保をとっているために、仮に破産手続がとられました場合においても返済を受け得ることになっていることや、現在資金繰り上そういうものの弁済が可能であるというような状況にかんがみまして、いろいろと法律上の問題も検討いたしましたが、母体行としても、このように優先弁済の条件を再建計画上明示されているような債権について権利を放棄することについては、株主代表訴訟への危惧から全く困難であると強く主張したものでございます。  したがって、今回の各関係者のぎりぎりの努力というものの限界をどこに置くかという問題に帰着するものだと考えられます。
  53. 北側一雄

    北側委員 銀行局長答弁、物すごい矛盾している。全額放棄するのですよ。担保権を持っている債権についても全額放棄すると言っているのですよ、母体行は。そういう法律上の権利を放棄すると言っているんじゃないですか。全額放棄すると言っているのですよ。何でそれだけきちんとその担保権を実行しようとするのですか。おかしな話じゃないですか。六千八百五十億も税金を投入しようというのだから、そんな母体行の覚書で決めたことを実施して優先弁済を受けようというのは余りにも不公平であり、私は納得できません。おかしいですよ。総理、いかがですか。
  54. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今法制局長官にも確認をした上で御答弁を申し上げます。  さまざまな要件はあるようであります。しかし、議員が指摘をされましたような問題点は対応できる可能性のあることだということでありますので、今後、当然のことながら預金保険機構あるいは住専処理機構がその権限の中で対応していき得る部分、そのように思います。
  55. 北側一雄

    北側委員 対応できることだというのであれば、税金投入の額を減らさないといけないのですよ。
  56. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 ですから、その場合には国庫返還規定がございます。権限を行使し得る状況であり、その権限を行使した結果債権が回収されれば、それは国庫に返納される、そういう経緯をたどるものと思います。
  57. 北側一雄

    北側委員 じゃ、法制局長官に聞きましょうかね。この住専処理機構で、破産法や会社更生法に規定されている否認権の行使ができるような規定があるのですか。
  58. 大森政輔

    ○大森(政)政府委員 ただいま委員がお尋ねの件は、民法四百二十四条は、あくまで債権者取り消し権は住専の債権者の権利である、したがいまして、今問題になっています他の債権者である一般行とかあるいは他の母体行が、自分の債権を害せられたとして特定の母体行に対する弁済行為を取り消すことができるかどうかの問題でございまして、この提案いたしました法案に基づく預金保険機構なりあるいは住専処理会社自体がその権限を行使できるかどうかとは別の問題であることは、それは御指摘のとおりでございます。
  59. 北側一雄

    北側委員 というふうに長官はお答えなんですよ。行使できるとは限らないとおっしゃっているのですよ。  法制局長官、要するに、住専が清算されるわけですよ。本来住専処理機構は破綻した住専の清算を行っていくにもかかわらず、破産法や会社更生法で規定されている否認権の行使ができないというのはちょっとおかしいのじゃないかと思うのですね、清算手続として。だれがどのようにして過去の詐害行為を取り消し、財産を保全するのでしょうか。
  60. 大森政輔

    ○大森(政)政府委員 この問題は、今回の住専処理の機構、スキームをどう立てるかの問題でございますので、私からお答えを申し上げる性質の問題ではないかもしれませんが、現在提案しております法案に基づくスキームと申しますのは、あくまで住専会社から住専会社の債権を住専処理会社が債権譲渡を受けて、その債権の取り立てを行っていくというスキームでございますから、住専処理会社なり、その代行取り立てを一部することを予定しています預金保険機構が債権者取り消し権を行使するということは通常想定されないことではあろうと思いますが、そのほかの一般行なり他の母体行が、みずからの債権を害せられるとして、まあ否認権は破産になってからの問題でございますが、その取り消し権を行使することができるかどうかについての総理の御答弁であったというふうに理解しております。
  61. 北側一雄

    北側委員 ですから、今回の住専処理スキームは、過去の詐害行為を取り消す機能が与えられていないのですよね。与えていないのですよ。破産とか会社更生だったら、管財人が債権回収をできる手段もいろいろ与えられています。それだけじゃなくて、過去の詐害行為についても、そんなのはだめだ、債権戻せと言って、資産をふやしていく努力が、そういう機能が与えられているのです、破産法や会社更生法だと。  今回の住専処理機構ではそうした詐害行為、特に六千八百億の税金を投入しようというわけですから、国民も重大な利害関係を持っています。そういう一部の不公平な弁済について取り消して、資産を取り戻してくる、そういう利害関係を持っているわけでございますから、そういうのが、この住専処理機構のスキームだったらだれもできない。欠陥ですよ、これ、今回のスキームの。
  62. 西村吉正

    ○西村政府委員 住専処理機構が住専から譲り受ける貸付債権その他の財産という中には損害賠償請求権等も含まれておりますので、そういう権限を活用いたしまして、御指摘のような問題も解決をできるのではないかと考えております。
  63. 北側一雄

    北側委員 銀行局長、法律論のこと、全然わかっていらっしゃらないわ。損害賠償請求権という、だれのだれに対する損害賠償請求権ですか。この今の詐害行為の取り消し権というのは、住専が持っている債権じゃないのですよ。損害賠償請求権じゃないのですよ。それがどうやって移っていくのですか。移らないのです。
  64. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 私ども所管外でございますので、御答弁するのがいかがかと思うわけですが、今御指摘にあります詐害行為取り消し権あるいは破産法上の否認権、それらはいずれも、当該破綻状態に陥っている会社に対する債権者間の公平を確保するという観点の問題であろうと思います。  住専問題でいえば、具体的には、母体行、一般行、系統系金融機関相互間の公平という観点の問題であろうと思っております。まあ私ども所管外でございますので、このスキームがどういうふうに実施されるのかは正確には承知しておりませんけれども、そういった金融機関相互間でお互いの了解のもとに弁済がされるということが予定されているものとすれば、そういった債権者間の債権の回収についての争いというものはないということが前提にされているのではないかというふうに思っております。
  65. 北側一雄

    北側委員 よろしいですか、いずれにしても、今回のスキームは、破産法や会社更生法だったら否認権の行使ができる。管財人が過去の弁済行為を取り消して財産を資産に戻す、これはできるのですね、破産法や会社更生法だったら。また、詐害行為取り消し権で、先ほどから法務省おっしゃっているように取り消される可能性がある行為があるんですね。今回のスキームは、それはだれもできない。だれがそれをやる、だれもできない。一方で、国民が六千八百五十億を支払う。こんなばかな話ないですよ。  総理、いかがですか。
  66. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 大変技術的、専門的な部分なので、専門家の御答弁をお許しをいただきたいと思います。
  67. 西村吉正

    ○西村政府委員 北側委員の問題の御提起と私どもの考え方に、前提に若干の違いがあるように感ずるわけでございますが、私どもは、今民事局長からもお答えございましたように、今回のスキームは関係者の間で合意ができるという前提で、合意をするということを前提に組み立てられておるものでございます。今の御指摘は、そういう合意を形成するプロセスにおいて関係者の間でお互いに権利を主張し合う、そういう場合の、権利の主張のし合いをする場合の手段としてどのような方法があるかという御議論のように思います。  私どもは、今回の住専処理のスキームは、その段階においては関係者の間で意見が一致した、合意ができたという前提のもとで、後どのようにスムーズに物事を進めるか、こういう段階の問題だと考えております。
  68. 北側一雄

    北側委員 銀行局長、もう銀行局長が答えるたびに反論をしないといけないのですけれども、仮に銀行局長がおっしゃっているとおり関係金融機関が全部合意した、そうしたら、もう債権者みんな合意しているんだからいいんじゃないかというお話をしているんでしょう。そうじゃないですか。そうでしょう。だけれども、関係金融機関が取締役会で了解したとしても、関係金融機関の株主がいるのですよ。株主代表訴訟を起こされて取締役の責任を問われる。こんな不合理な話はないといって、何で一般行の我々がこんな負担しなければいけないんだといって、善管注意義務違反だといって、株主代表訴訟で取締役の責任が追及される可能性があるのですよ、債権者自身が、金融機関自身が同意したとしても。違いますか。  そうしたら、まず、ひとつこの質問をしましょう。政府がこういう閣議決定で、一般金融機関一兆七千億円放棄しなさいよ、放棄してくださいという要望をした、この要望したという一点だけで、株主代表訴訟で、取締役の注意義務が果たされているとしてその責任が免れると思いますか。
  69. 西村吉正

    ○西村政府委員 私どもは、このような金融システムの安定のために皆さんが御協力されるようなスキームに対して参加したことが仮に株主代表訴訟になった場合でも、取締役の責任になるというようなことにはならないと信じておりますけれども、仮に今北側委員の御指摘のように株主と取締役との間に紛争が起こりました場合におきましても、それは株主と取締役との関係の問題であろうかと存じます。そのことと、取締役会として適切に決定をいたしましたことの結果としてこのようなスキームが成立するということとは、直接の関係はないのではないかと考えております。
  70. 北側一雄

    北側委員 質問に対して答えてください。  法務省、もう一度ちょっとお聞きしますけれども、今度は株主代表訴訟でお聞きしますが、一般論で結構ですよ。  平成七年の十二月十九日の閣議決定で、一般行は一兆七千億円放棄してくださいというふうに政府が要請をしました。こういう政府から要請があったということで取締役の責任は免れ得るものですか。
  71. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 一般論として申し上げますけれども、今委員御指摘の、取締役としての忠実義務あるいは善管注意義務、そういう義務に反する行為があるかどうかということは、これは当該会社、本件で言えば銀行でございますが、その置かれた状況、そういった諸般の事情を総合して最終的には裁判所で判断されるわけでございますが、今般の政府提案の住専問題の処理案、これは先ほど来御議論されておりますとおり、現在置かれている状況のもとで金融システムの安定化を図るということを目的とするもので、そういうスキームの中での金融機関の対応であるというふうに承知しておりまして、そういった点は、その判断に当たっての重要な要素として考慮されるものと思っております。  それから、今御指摘の政府から要請があったということ自体も、そういった中での重要な考慮要素として判断されるものと考えております。
  72. 北側一雄

    北側委員 民事局長、私が聞いているのは、要請があったというだけで責任が免れるものですかと聞いているんです。端的にお答えください。
  73. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 ただいま申し上げましたように、訴訟が起こりました場合には、最終的な判断は裁判所が判断されるわけでございますので、今の段階で、私ども法務当局といたしまして、それがどういう判断がされるかということを答弁することができないということは御理解いただきたいと思います。  今申し上げましたように、その点は一つの重要な考慮要素であろうというふうに申し上げたわけであります。
  74. 北側一雄

    北側委員 一つの重要な考慮要素であるということは、政府からの要請があって、それに応じて債権放棄をしたからといって必ずしも金融機関の取締役の責任が免除されるものではないというふうに逆におっしゃっているんですよ。重要な要素だとおっしゃっているんですけれども、一方で、それだけではだめなんだとおっしゃっているということなんですよ。  ということは、株主代表訴訟が例えば一般行の株主から起こされたら、株主代表訴訟で取締役の責任が追及されて損害賠償責任を負わされる場合があり得る、可能性としてあり得るとおっしゃっているんです、法務省は。先ほど銀行局長は、取締役の責任はないというふうに信じていますと言っていますけれども、全然違うわけですよ、あり得るんですよ。閣議決定に基づく政府の要請があろうとも、具体的な損失負担の合理性がなければ取締役の善管注意義務を果たしたとは言えず、株主代表訴訟での取締役の責任を免除されるものではないということなんですよ。  大蔵大臣、これは株主代表訴訟で損害賠償責任を取締役が追及される可能性が法律上は残っているんですよ。そのことを認識されていますか。大臣、いかがですか、今の法務省の答弁に応じて。
  75. 久保亘

    久保国務大臣 法律上の手続を行使をする権利は存在していると思いますから、そのような可能性はあるんだと思います。しかし、そのことがどのように裁判所において決定されるかは別の問題でございます。
  76. 北側一雄

    北側委員 今非常に大事な御答弁をされましたよ。可能性としてはあり得るとおっしゃったんですよ、あり得ると。可能性としては、代表訴訟が起こされて責任を負わされる場合があり得るという趣旨の御答弁ですよ、今の御答弁は。それでいいんですね。
  77. 久保亘

    久保国務大臣 株主代表訴訟を起こす権利は存在しているということを申し上げているのであります。それだけなんです。
  78. 北側一雄

    北側委員 提起されて、政府の要請があったからといって、一〇〇%取締役は負けませんよ、勝てますよ、責任は免除されますよというふうに断言できるんですか。
  79. 久保亘

    久保国務大臣 その訴訟が受理されるかどうか、そしてどのような判断になるかは、これは裁判の問題でありますから、私が申し上げることはできません。
  80. 北側一雄

    北側委員 ということは、今の久保大臣のお答えは、わかりませんとおっしゃっているのですから、取締役の責任が免除されるものであると断言できないとおっしゃっているのと一緒なんですよ。株主代表訴訟を提起されて、取締役の責任を追及されて損害賠償責任を負わされる可能性があるとおっしゃっているのと一緒なんですよ、わからないとおっしゃっているのだから。そういうことでしょう。大臣いかがですか。大臣答弁に対して聞いているのですから、銀行局長、黙っていてください。
  81. 久保亘

    久保国務大臣 私は、非常に明確に申し上げているつもりでありますが、株主が訴訟を行う権利はあるでしょう。しかし、その訴訟を裁判所が受理するかどうかは、そんなことは私がお答えする限りではない、こう申し上げているのです。
  82. 北側一雄

    北側委員 だから私の質問は、こういう十二月十九日の閣議決定で、政府が一般行に合計で一兆七千億放棄しなさいよと要請したわけでしょう。それに応じて一般行が自分のところの分の幾ら幾ら放棄しますよと決めました。そこの一般行の株主が、それはおかしいと言って株主代表訴訟を起こしたときに、この閣議決定があったからといって取締役の責任が免れるんだというふうに断言できるのかと聞いているんです。
  83. 西村吉正

    ○西村政府委員 私が先ほどお答え申し上げたことも民事局長がお答えされたことも違いはないと思います。私も、閣議決定によって、我々が要請することによってそういうことが、先生のお言葉によりますと免除されるということを申し上げたわけではないわけでございます。  大臣の御答弁もございましたように、株主は株主の考え方に従って代表訴訟を提起するという権利はあるわけでございますが、私が先ほど申し上げたのは、今回のスキームのように、金融システム全体の安定のために関係者がぎりぎりの努力をする、そういうことで参加したというようなことについて、裁判の結果、その取締役が責任を問われるというような結論にはならないと私どもは信じておりますと申し上げたわけでございます。
  84. 北側一雄

    北側委員 信じていますというのは、そういうふうに断言できるんですか。断言できるんですか。一〇〇%断言できるんですか。
  85. 西村吉正

    ○西村政府委員 私どもが裁判の結果について一〇〇%断言するというような立場にはないわけでございますけれども、恐らく、取締役の方々が御判断をされるときにも、このような要請に基づいてこのようなスキームに参画することが自分たちの判断として適切かどうかということをお考えになった上で、その問題が代表訴訟との関係においても自信を持って対応できるかどうかということを御判断の上で最終的な御決定をされる、こういうことかと考えております。
  86. 北側一雄

    北側委員 ということですから、要するに、こういう要請があったということ自体はその取締役の責任を免れる方向にプラスには働くけれども、こういう要請があったということだけで取締役の責任が免れるものではないということを法務省も銀行局長もおっしゃっているんですよ。そういうことはあり得るとおっしゃっているんです。大蔵大臣、あり得るんです。(久保国務大臣「何ですか」と呼ぶ)ですから、同じ認識ですかと聞いているんです。
  87. 久保亘

    久保国務大臣 政府としては、そのようなことにはならないという確信のもとに物事を進めているわけです。しかし、裁判になります場合に、その結果を私が断定するようなことはできませんと申し上げているわけです。
  88. 北側一雄

    北側委員 ですから、今の大臣の御答弁は、この閣議決定の一枚要請が来た、一般行に要請したと。閣議決定とはいえ、この要請だけでは取締役の責任を免れるものではないとおっしゃっているわけですね。  要するに、株主代表訴訟が提起されて取締役の責任が追及される可能性も残っている。そして、先ほどから申し上げていますような詐害行為取り消し権が行使される可能性も残っている。そして、本来ならば、破綻した会社の清算手続であるならば、破産法や会社更生法で規定されているような、過去の行為を取り消して財産をふやす、そういう機能が本来与えられているのです、会社更生法や破産法では。この住専処理では全くそういうのがない。欠陥スキームなんですよ。できないんですよ。このスキームはやはりおかしいと言わざるを得ません。  銀行局長一つお聞きしますが、一般行で、ほかの住専の母体行にもなっていない純然たる一般行、これは何社ありますか。何社あって、損保が何社だとか、信用金庫何社だとか、ノンバンク何社だとか、その内訳もおっしゃってください。
  89. 西村吉正

    ○西村政府委員 母体行でない一般行という立場でおりますのは、例えば東京銀行とか、あるいは全信連等でございますが、たしか三社だと思いますが、ちょっと確認をいたしました上でお答えをさせていただきます。
  90. 北側一雄

    北側委員 いやいや、何社、幾つの会社がありますかと聞いているんですよ。私、事前に聞いたら、そういうお答えは聞いていませんけれどもね。三十二社じゃないですか。
  91. 西村吉正

    ○西村政府委員 ちょっと今確認をいたしておりますが、私の今記憶にございますのは東京銀行と商工中金と全信連でございますが、その他、ちょっと今確認をしてお答えいたします。
  92. 北側一雄

    北側委員 私が聞いたのは、大蔵省から聞いたのですよ。七社合計で、要するに純然たる一般行、ほかの住専にも母体になっていないというのは、損保会社で二十一あると聞いていますよ。信用金庫等で六行、商工中金、ノンバンク等で四、計三十二社だと。これに東京銀行を入れたら三十三ですね。
  93. 西村吉正

    ○西村政府委員 失礼をいたしました。  七社合計で、重複分を除き、損保会社二十一社、信用金庫等が六、商工中金、ノンバンク等四の、合計三十二社でございます。失礼をいたしました。
  94. 北側一雄

    北側委員 総理大蔵大臣、こういう損保とか信用金庫とかノンバンク、こういう本当に、住専とは本当に縁のない、縁のないというか、ある意味では、この住専七社に関しては系統と同じように距離のあるこういう一般行があるわけですよ。こうした一般行も、もう十把一からげにしまして一兆七千億放棄しろ、放棄しなさいと要請しているわけなんですね。  これは私は、例えば損保とか信用金庫や商工中金、ノンバンク、特にノンバンク、こういうところの株主から取締役の責任が追及されたら果たしてたえ得るのかなと、極めて私は疑問です。株主代表訴訟を起こされたら、取締役の責任が問われる可能性は十分あると言わざるを得ません。  時間がございませんので次の質問に行きますけれども、母体行が特定の融資案件を住専に直接紹介した紹介融資、紹介融資でも二つありまして、債務者そのものを紹介した場合と、その案件を紹介した場合と、二つあるのですよね。母体行が特定の融資案件を住専に直接紹介した紹介融資のうち、不良債権となっているのはどの程度の金額になるのか、住専ごとで金額を示してもらえますか。
  95. 西村吉正

    ○西村政府委員 この紹介という問題はなかなか難しい問題でございまして、今委員からも御指摘ございましたが、住専各社が紹介として認識しているものと、金融機関側が紹介をしたと確認をしておるものと、必ずしも一致いたしません。そしてまた、紹介をするということによって、住専側が紹介をしてほしいと言って紹介を受けたものと、金融機関側が積極的に紹介をしたものというものについては、また意味合いが違うかと存じます。  しかし、いずれにしても、全体で、昨年八月の立入調査によりますと、母体行による紹介融資は、債権単位の集計で申し上げますと、事業性貸付金で八千九百二十二億円ございますが、このうち不良債権となっている額は七千八百十九億円で、約八八%でございます。
  96. 北側一雄

    北側委員 今の銀行局長答弁は、住専が八千九百二十二億円の案件を直接母体行から紹介されて、そのうち不良債権になっているのが七千八百十九億円というのですね。七千八百十九億円も、直接紹介でこれが不良債権になっている。  この不良債権を、結果として不良債権になった案件を直接紹介した母体行の責任は本当に大きいと思うのですね。本来みずからが融資できるのを住専にやらせて、やってもらって、それが不良債権になったわけでしょう。この母体行の責任を私はきちんと追及をすべきではないかと思うのですが、総理、いかがですか。
  97. 西村吉正

    ○西村政府委員 そういう御指摘があるのは承知をしております。  ただし、先ほども申し上げましたように、この紹介という問題をどのように解すべきか、母体行との責任においてどのように解すべきかということにつきましては、その紹介の態様についてもさまざまの形態がございますし、また、その理解の仕方についても立場によっていろいろな違いがあるということでございます。
  98. 北側一雄

    北側委員 そんなこと聞いているんじゃないのです。本来母体行みずからが融資できるにもかかわらず住専に融資させた特定の紹介案件が不良債権となっている金額、これは今御紹介あったように七千億を超えているのですね。これについてやはり母体行も責任をとるべきじゃないか。その案件そのものを紹介していて、自分が本来融資できるところを紹介して住専にやらせているわけですから、その範囲の金額については母体行みずからの融資とみなして住専からその債権を引き継ぐ、そういうことを検討していいのじゃないかと思うのですが、いかがですか、大臣
  99. 西村吉正

    ○西村政府委員 紹介があったといたしましても、その紹介案件につきまして融資をするかどうかということを判断をいたしましたのは住専でございます。別の法人格を持った住専自体がその紹介を受けたものについての判断を下したわけでございますので、それを直ちに母体行の完全な責任というもとに処理をすることは必ずしも適切ではないと考えております。
  100. 北側一雄

    北側委員 今回、母体行は全額放棄ですね、一次損失は。これはもうすべての母体行がそうですね。というふうに全く区別を設けていないんです。私が申し上げたいのは、母体行によっては責任に差があるんですよ。  例えば、この紹介融資のことを言いますならば、大蔵省調査結果によれば、日本住宅金融とそれから総合住金、日本ハウジングローン、これについては母体行からの貸出額がゼロになっているんですよ。ほかの四社についてはいっぱいある、いっぱいあるものの大半が不良債権化している、こういう実態が報告されているんですね。母体行によっても責任が全く違うわけです。  それを十把一からげにして、母体行だから全額放棄し、そして二次損失自体はこうしというふうに、全く責任にその差を設けていない。今回のスキームというのは、そういう責任の程度や度合いについての差を設けられない、母体行だからということで全く同じ扱いをしている。ここも不合理だと思いませんか。
  101. 西村吉正

    ○西村政府委員 まさに委員御指摘のような問題があるがゆえに、この住専問題の解決が難しいということでございました。たびたび申し上げておりますように、住専の母体行百六十八ございます。債権者の数という意味では三百ございます。こういう関係者がそれぞれ色合いの違いがありながら、しかしながら複雑にその権利関係が絡み合っている、これが住専問題の特徴であるわけでございまして、そういう問題であるがゆえに、今日までなかなか解決が難しかったわけでございます。  今回政府としても、処理策を提案するに際しまして、このような過去の経緯や現状を踏まえました上で、このようなことで長年の懸案を解決するということでいかがか、このように申し上げておるわけでございます。
  102. 北側一雄

    北側委員 ですから、先ほどの、母体行の一部への弁済行為についてもどうしようもできない、そして今の、直接紹介融資をしている案件、それについて不良になった、それをしている母体行もあればしていない母体行もある、そういう責任の区別もできない、そういうスキームになっているんですよ。ところが、会社更生とか破産という手続でやれば、その辺の個々的な判断ができるわけなんです。個々的な責任の追及ができるわけなんです。やはりそれができないという問題点があるということをぜひ認識をしていただきたい。私から言わせれば、やはり欠陥だというふうに言わざるを得ないわけでございます。  そこで、ちょっと国税庁、来られていますか。――済みません。けさ聞いたところによりますと、まあ幾つかのところらしいんですが、幾つかのところに一斉に、借入先です、大口の融資先に税務調査が入ったというふうにお聞きをしております。そういう借入先に一斉に入るというのはかなり異例な話だなというふうに思うんですけれども、これはどういう、何か目的、動機があるわけでしょうか。
  103. 若林勝三

    若林政府委員 お答えいたします。  今委員御指摘のような報道がけさほどなされたことは十分承知いたしておりますが、個別にわたる事柄については、かねてからコメントすることは差し控えさせていただいておるところでございます。  ただ、国税当局といたしましては、従来から資料、情報の収集等に努め、納税者の適正な課税の実現ということのために努力をしております。問題があるということになれば調査をするという対応をしてきてまいったわけでございます。その場合、資料、情報の収集に当たりましては、当然のことながら、そのときどきにおける社会情勢とか経済情勢を踏まえてそれを行ってきておるわけでございます。  こういう意味におきまして、最近非常に大きい問題になっております住専問題でございます。この問題をめぐる関係者の課税処理が適切に行われておるかどうかということにつきましても、関心を持っておることは事実でございます。いずれにいたしましても、国税当局といたしましては、この問題につきましても今後とも適正かつ厳正に対応してまいりたいと思っております。
  104. 北側一雄

    北側委員 ちょっと話は変わりますが、大阪のある大手の借り手、もう名前は申し上げません。大手の借り手の不動産の登記簿謄本をできるだけ取り寄せをいたしまして、すごい数です。これ、一つ一つが大体登記簿謄本、ちょっとまとめてあるのです。それを見ますと、これはほぼ大阪市内のは網羅していると思うのです。ある借り手先が所有している不動産です、土地建物。  これを見て一つびっくりしましたのは、住専から確かに借りている。借りているのですが、それはもう本当にごく一部なのですよ。あれだけ大きな金額であるにもかかわらず、ごく一部なのです。抵当権をつけている債権者の名前を見ますと、住専以外のところがいっぱいあるのです。名前は申し上げませんが、信用組合、ノンバンク、信用金庫、いっぱい抵当権ついています。住専はごく一部です。私の感じだと、二割もないのじゃないかなというのですよ。  これは、この住専処理をやっていったら、担保物件の評価がぐんと下がっていますから、住専だけではなくて、信用金庫、そしてノンバンク、信用組合、こういうところにも相当焦げつきが、当然これは出るだろうな。特に、住専処理機構に移って、住専処理機構が競売手続等でどんどんどんどん債権行使をしていけば、この今隠れている不良債権が現実化してくるなというのを、この登記簿謄本全部見て、これ、すごい数の登記簿謄本でしたけれども、これは大変だなというふうに痛感いたしました。  今、住専問題で財政資金投入ということが問題になっているわけですが、この財政資金投入の問題というのは、住専問題だけで済むのですか。私は、この、数たくさんの、何百とある登記簿謄本を見て、住専というのはごく一部しかありませんから、これは住専だけの問題ではないな、この後次々とやってくるなというのを痛感いたしました。いかがでしょうか、この財政資金投入というのは、今後も住専問題以外にもあり得るのか。
  105. 西村吉正

    ○西村政府委員 御指摘のように、この不良債権の問題と申しますのは、昨年の六月の八日に私ども問題提起をいたしましたように、ひとり住専の問題にとどまらず、金融全般の課題になっておるわけでございます。ただ、私どもが住専を特に取り上げます理由は、先ほどからもるる申し上げておりますように、この住専問題、関係者の権利関係が非常にふくそうをいたしておりまして、当事者の努力と意欲だけではこの解決の糸口を見出せないという意味におきまして、特殊な要素を持っておるわけでございます。  そういう意味で、この不良債権問題の象徴となっておりますことに取り組んだわけでございますが、ほかの問題につきましては、原則といたしまして、金融システムの内部におきまして、例えば預金保険等の手段をもちまして解決していくべき課題だと考えております。  ただ、昨年十二月二十二日の金融制度調査会の答申によりますと、このような中でも、信用組合の問題につきましては、従来から地方公共団体が財政的な支援をしておるということとの関係等もございまして、国としてもこの問題にどのように取り組んでいくかということが課題として取り上げられております。
  106. 北側一雄

    北側委員 じゃ、最後に総理に、今と同じ問題でございますが、先ほどの、ある大阪の企業の登記簿謄本を見たら、これはもうトップランクの会社ですよ、住専からの借入額が。登記簿謄本見たら、住専というのはごく一部なんですね。担保をつけているのは、ノンバンク、信用組合、信用金庫、そこがいっぱい、名前は申しませんけれどもあるのですね。これは、住専問題を処理していくうちに不良債権化が現実化することはもう明らかだと思うのですね。今後のこの不良債権、全体の不良債権処理の問題をどうしていくのか、また財政資金投入についても今後もあり得るのか、その辺の基本方針をぜひ総理に御答弁をお願いしたいと思います。
  107. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 これまでも申し上げてきたところでありますが、不良資産の問題が当然のことながら解決を迫られている、その中の象徴的かつ喫緊の課題として私どもは住専の問題を今御審議を願っております。そして、その理由もるる申し上げてまいりました。  今後新たに発生するその他の金融機関における不良資産の問題について、先般も私は、信用組合の場合には公的資金可能性がこれはあり得ると。これは、金融制度調査会の答申の中にも限定されて、一つのケースとして書かれております。しかしまた、これは国と都道府県の監督権限の問題があることも議員御承知のとおりであります。ただ、そのほかの問題について公的資金を入れるつもりはありませんということをお答えを申し上げました。そして、預金保険機構の保険料を引き上げることによってこうした部分に対応していきたい、そういうお答えを申し上げてきております。
  108. 北側一雄

    北側委員 以上で終わります。
  109. 上原康助

    上原委員長 これにて北側君の質疑は終了いたしました。  この際、残余の質疑を含め、草川昭三君の質疑を許します。草川昭三君。
  110. 草川昭三

    ○草川委員 まず、総理にお伺いをしますが、先ほど北側委員の方からも、住専の借り手企業に一斉に税務調査が入った、こういうことの目的についての質問がございましたが、総理としての見解を改めて求めたいと思います。
  111. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今国税庁次長から申し上げましたように、個別にわたる事項について具体的に御答弁をすべきことでは政府としてないと思います。しかし、いかなる立場の納税者でありましても、課税上問題があるということでありますならば、国税庁があるいは国税当局が税務調査を実施することは当然であると考え、そうした考え方のもとに現在、国税庁は行動しておる、そう思っております。
  112. 草川昭三

    ○草川委員 私は、きょうは少し具体論に入るわけでございますが、過日指摘をいたしました、日本ハウジングローンの上位貸付先百の実名リストと昨年の調査結果の貸付金の内容に差額があるということを申し上げました。それで、局長の方からは、関係会社分が含まれているからという趣旨の答弁がございましたが、日本ハウジングローンの関係会社は二十九社であることは間違いがないか、これが一つ。これは局長から答弁願いたい。  あえてその二十九全部言っていただく必要がないので私が言いますが、日本ハウジングローンが貸し付けました金額の多い順に五つ言います。日本エステート、千三百三十九億。二番、ジェイ・エフ・シー、八百十三億。三、モリマチファクター、六百四十六億。四位、ツカサファクター、五百五十六億。五番、日本エイチ・エル・興産、四百七十七億となりますが、もしこれが事実ならば、実名百社リストに当然これが入らなきゃいけませんし、順位が変わることになります。今回の資料作成について信頼性に欠けるのではないかと思うのですが、その点はどうでしょう。
  113. 西村吉正

    ○西村政府委員 今、二十九社という御指摘でございましたが、二十九社でございます。間違いございません。  個々の残高につきまして今御指摘のようなことだろうと存じますが、ちょっと私、にわかのことでございますので、確認をさせていただくのは後ほどにさせていただきたいと存じます。
  114. 草川昭三

    ○草川委員 じゃ、また後日出してください。  それから、日本ハウジングローンの平成七年三月末の有価証券報告書を私調べたんですが、明らかな関係会社に対する貸付金は千八百二十七億しか計上されていません。大蔵省が今回行いました調査における関係会社の金額は、六千四百六十六億ということになっておりまして、貸付金との差が非常に大きいんですね。これは有価証券報告書と比べてみたわけです。非常に信頼性がないと思うんですが、細かいことを言って大変恐縮でございますが、大臣、こういうことについてどうお考えになりますか。
  115. 西村吉正

    ○西村政府委員 事実の問題でございますので私からお答えさせていただきますが、提出させていただきました百のリストの中に注の二といたしまして、「関係会社向け貸付金残高」についても注記しておるところでございます。こういう関係会社との関係につきましては、これはまた一般の融資先と違った意味を持つのではないかということで、このようなリストの作成方法をとらせていただいたところでございまして、私どもはその方法が事実を説明するものではないかと判断をしたところでございます。
  116. 草川昭三

    ○草川委員 いずれにしましても、基準が明確でない、そういうものが国会に提出されていて、私どもは非常に不満であります。しかし、時間がどんどん過ぎますので二番目に移ります。  住専に対する親銀行の紹介案件が大変不良債権化していることの責任追及は厳しくしなければいけないことは当然です。それで、今から取り上げる問題は、母体行が責任を持って処理しなければならない子会社の不良債権を複雑な方法で住専に移しかえる、まあ飛ばすというんですかね、今回の住専処理スキームに紛れ込ませている悪例があるのでそれを取り上げてみたい、こういうことでございます。  今から指摘をする例は、日本ハウジングローンの大口融資先であり、ハウジングローンの母体行である日本興業銀行の子会社である興英コーポレーションにまつわる問題であります。  日本ハウジングローンの貸付先リストの第九位にこの興英コーポレーションというのは名前が載っております。この企業について、私は再三大蔵省資料要求をしております。もうこれは一カ月近く前からやっておるのでございますが、今日に至るも、企業概要すら大蔵省は私どもに答えてくれません。私は大変これは不満でありますが、どういうことで答えないのか、明確にしていただきたいと思います。
  117. 西村吉正

    ○西村政府委員 御依頼がありまして以来、関係方面に照会して準備しておりましたところでございます。おくれまして申しわけございません。  興英コーポレーションに対する興銀の出資比率は四%でございまして、いわゆる関連会社通達におきます「関連会社」というものではございませんけれども、後日、調べました結果を御報告するようにいたします。
  118. 草川昭三

    ○草川委員 まあ、一カ月近くこの住専の中に名前が出ている企業についての資料要求について、今ようやくこの席上で答弁があるわけであります。  大蔵大臣、国民に情報を開示し住専処理をしたいとおっしゃってみえる立場から、今の答弁をどのように受けとめられるのか、お伺いしたいと思います。
  119. 久保亘

    久保国務大臣 御要求のあっておりました問題について、私詳細を存じておりませんでしたが、大変長い期間もし理由なく資料の提出が行われていないとすれば、大変申しわけないと思っております。調査をいたしたいと思います。
  120. 草川昭三

    ○草川委員 興英コーポレーションは、昔は港ファイナンス、旧名、港ファイナンスと言っていたのですが、日本興業銀行の新宿支店長が社長を務めておりますノンバンクです。興銀が二十八万株を持っていると言われておりますし、最盛期には、株の店頭公開を目指して興銀の支援を受けていました。  興銀系のノンバンクであることはただいま局長答弁でございましたので、それはさておきまして、いわゆる総量規制が行われた直後、九〇年の六月でございますが、興業銀行の新宿支店長がこの興英コーポレーションの社長に就任をしたわけです。そこで、興銀が直接扱えない案件を興英コーポレーションが引き受けることになりまして、興銀の支店長が社長に就任してから、貸付金というのは千七百億の増加をしております。こういったような事実を承知をしておみえになるのか、局長にお伺いしたいと思います。
  121. 西村吉正

    ○西村政府委員 申しわけございませんが、私ども、そのような個々の取引の内容について承知はいたしておりません。
  122. 草川昭三

    ○草川委員 ですから、私どもは三週間前からこの問題を取り上げるよということを言っておるのですが、私は態度がよくないと思うのですね。  それで、日本ハウジングローンの貸し出しは、さきの委員会でも指摘をしておりますが、提出された資料数字がばらばらで、一貫性がありません。資料作成の基準があいまいで、不良債権隠しの疑いすら私は持ちます。  そこで、日本ハウジングローンがこの取引先というのですか関係会社の興英コーポレーションを迂回した融資、迂回融資の事例を挙げてみたいと思うのです。ちなみに、日本ハウジングローンというのは興銀系であります。  物件は、杉並区内の不動産で、不動産登記簿謄本によりますと、平成元年、八九年ですが、十二月十三日、都内に本社を置くA社が土地を買収します。同じ日に、当時は港ファイナンスと言っていたのですが、現在の興英コーポレーションが担保権を設定します。七十億円の抵当権と代物弁済の予約をいたします。  ところが、それから二年半後の平成四年の四月の二十二日受け付けの登記簿を見ますと、興英が担保を設定をしたA社の物件に関連をして、大変興味深い記述があるわけであります。それは、先ほど述べましたA社が不動産を購入をいたしました平成元年の十二月十三日の約二週間前、平成元年十一月の二十九日ですが、日本ハウジングローンが興英コーポレーションに七十億円を融資をし、平成元年の十二月十五日に興英のA社に対する抵当権を譲り受けたと記載をされております。このことは、初めから日本ハウジングローンが興英経由でA社に対して出した融資であるということが読み取れるわけであります。  そこで、政府から提出をされました個別の貸付先の財務状況等に関する平成七年八月の調査結果の三十二ページを開いてください。この三十二ページには、興英コーポレーションに関する記述があります。そこには、二百三十一億円の債権が二分類から四分類に分けて分類をされていますが、A社は、平成五年の時点で興英の最大の貸付先になっておるのです。融資額は百十億円に上っております。  興英の最大の融資先はただいまのところ返済をしていないと言われているのですが、この二から四に分けた分類の中にこのA社の問題は対象になっているのかどうか、お伺いしたいと思います。
  123. 西村吉正

    ○西村政府委員 提出いたしました資料の中に興英コーポレーションに関する記述がございますのは御指摘のとおりでございますが、私ども、この調査報告の中では、立入調査というものについて制約のある中で、管理上問題があると見られる貸付金について問題点を指摘したものでございます。この内部資料報告されておりますような事実以上に深く事態を把握しておるわけではございません。
  124. 草川昭三

    ○草川委員 A社が実は一切返済をしていないという理由は、興英コーポレーションや親銀行の興銀との間に何らかの理由があると指摘をされている向きもありますが、その点についても調査をしていない、立ち入っていないということですが、これは非常に私はゆゆしきことではないだろうかと思うのです。  このような住専にまつわる不可解な不良債権について、法務省の刑事局あるいは警察庁はどのように取り組むのか、簡潔にお答え願いたいと思います。
  125. 原田明夫

    原田政府委員 お答え申し上げます。  検察当局におきましては、既に住専問題等につきまして、協議会ないしは専従班を設けるなど所要の体制を整えているところでございます。本委員会における広範な御質疑また問題の御提起等を含めまして、各種の情報にも十分な関心を払いつつ、資料の収集等に努めまして、その検討を行っているものと存じます。  今後、関係者らの刑事責任を追及すべきであると認められますような容疑事実が判明いたした場合には、検察当局におきましては、警察当局等の関係諸機関と緊密な連絡をとりまして、鋭意所要の捜査を遂げ、法と証拠に基づきまして厳正に対処してまいるものと存じます。
  126. 草川昭三

    ○草川委員 警察庁、お願いします。
  127. 野田健

    野田(健)政府委員 個別具体的な事案については答弁を差し控えさしていただきますが、警察といたしましては、いわゆる住専問題に関して、ただいま御指摘の事項も参考とさせていただいた上、広範かつ徹底した実態解明を進める所存であります。その結果、刑罰法令に触れる行為を認めた場合には、貸し手、借り手を問わず、厳正に対処してまいりたいと考えております。
  128. 草川昭三

    ○草川委員 じゃ次に、この興英コーポレーションの不良債権隠し、いわゆる飛ばしの実例を挙げてみます。  平成三年の二月、興英コーポレーションの単独で最大の貸付先である城栄物産グループというのがありますが、これが不渡りを出しました。翌三月、興英は、関係先でございますが、蔵建という会社あるいはジッポウセゾンなどの弱い取引先へ城栄の有しております担保物件を買い取らせます。関連として買い取らせるわけです。買い取り代金はすべて興英が融資をするわけです。ですから、城栄に対する債権は、この興英コーポレーションとはゼロになるわけであります。いわゆる興英が城栄物産に対して残高ゼロの受領書を渡していることでも、これは証明できます。  この関係会社である蔵建などに対する新規の融資については、すべての物件の評価を水増しをいたしまして、書類を作成して、総額六百億円の新規融資を興銀、三和銀行、安田信託、三菱、あるいは住専一つである第一住宅金融、あるいは興銀リース等から引き出しをしているわけであります。件数にして百四十一件。リファイナンス先になった銀行やノンバンク等は数十社に及んでおります。  これは、興英の資金調達先に対する完全な詐欺ではないだろうかと私は思うんですが、警察庁お聞きになって、あるいは刑事局長お聞きになって、どう思われますか。一般論でお答え願いたいと思います。  お答えがなければ、これは一般論で後ほどまた追加をしていただきたいと思いますが、さらに驚くべきことは、この興英コーポレーションは、平成三年の三月末の決算に当たりまして、監査法人をも欺きまして、監査法人に、城栄物産の債権を肩がわりさせた蔵建に、この会社の名前ですね、債権があることを確認する残高確認書を発行させまして、新たな融資先から資金を引き出しているんです。  これは大蔵省、こういうのは極めて悪質な行為だと思うんですが、局長、これも私が今言ったことだけで結構ですが、一般論でお答え願いたいと思います。
  129. 西村吉正

    ○西村政府委員 私ども、昨年の八月の調査におきましては、住専そのものの経営状況を全体として把握するという目的調査したものでございまして、取引先がどのような経理をしているかというところまで把握をいたしておりません。
  130. 草川昭三

    ○草川委員 じゃ、私は、ここでこういう話をしますから、また後ほど答弁してもらいたいと思うんですが、ここに「城栄物産グループ関連債権についてのお詫び」という表題の書類を持っています。ここには、東京都中央区築地二丁目一番八号株式会社興英コーポレーション代表取締役社長玉塚佳久と書いてあります。この玉塚氏こそ、元興銀の新宿支店長であるわけですが、これは平成四年三月決算において、興英コーポレーションが借入先に対して利払いや元本の支払いができなくなったため、城栄物産分の不良債権飛ばしと粉飾の事実を各リファイナンス先、新たなニューマネーを引き出した融資元、ノンバンク等、銀行等々におわびを入れた社長名のわび状があるんです。  リファイナンス先に、平成三年六月の時点で、住専の一社である第一住宅金融にもこのわび状が行っているはずなんです。事実、第一住宅金融には二億一千五十万円、三億四千五百五十万円、三億八千万円、二億八千五百万円、一億三百五十万円の五口、合計十三億二千四百五十万円の貸付残が残る。ということは、玉塚社長名のわび状が第一住宅金融にも保管をされているということになります。住専問題の解明に必要なこの資料の提出をぜひ私は大蔵省に求めたいと思うんですが、委員長の取り計らいを求めたいと思います。
  131. 上原康助

    上原委員長 お答えできますか。――銀行局長
  132. 西村吉正

    ○西村政府委員 先ほど申し上げましたように、住専の取引先につきまして、詳細な状況等まで私どもとしては把握をいたしておりません。今回の調査は、住専八社が現在どのような経理状況にあるか、経営状況にあるかということを横断的に調査をしたものでございます。
  133. 草川昭三

    ○草川委員 まあ銀行局ですから、その先の住専だといつも答弁がありますが、実はリファイナンス先には、親会社の興銀というのもあるんです。これは天下の産業銀行であります。この興銀も城栄物産グループの物件を担保に新規融資をしています。平成三年六月の時点で二十七億四千六百万円、三十六億四百万円、三十五億三百五十万円、計九十八億五千三百五十万円。このほか、関係会社として興銀ファイナンスや興銀リースによる融資が多数あるわけであります。ということは、興銀は、城栄物産にかかわるすべての事実経過を承知していたのではないか。  このことは、後日、当予算委員会に参考人として黒澤日本興業銀行頭取に御出席を願うことになっているので、あらかじめこの質問を通知をしておいていただきたい。それで当日お答えを求めたいと思うわけです。委員長、取り計らいをお願いしたいと思います。
  134. 上原康助

    上原委員長 今の御提言については、理事会で協議をさせていただきます。
  135. 草川昭三

    ○草川委員 このわび状にもう一回戻りますけれども、当面の善後策として、旧知の不動産会社などに債務引き受けを依頼したものでありますと書いてあるんですね。これは、興英コーポレーションがみずから不良債権飛ばしを認めた記述であります。さらに、当時の興英を取り巻く状況として、平成三年三月期決算をもって実は店頭登録の申請をいたしておったんでありますよということを書いてあるんです、弁解に。このような処置をとらざるを得ませんでしたと書いてあります。  興英コーポレーションは日本ハウジングローンの大口融資先であり、興英分の損失見込みは百七十一億円です。こんな悪質な借り手まで国民の税金で救済をしなくてはいけないのか。私は許せない話だと思うんですが、総理、ここまでの話を聞いておられて、大変お疲れのところで恐縮でございますが、どう思われますか。
  136. 西村吉正

    ○西村政府委員 住専の個々の取引先の事情まで十分承知しておらなくて申しわけございませんが、私ども、今回の処理案によりまして決してそのような貸付先を救済しようとかいう考え方は全くございませんで、住専の融資先に対しましては、今まで住専が個々に行っておりました以上に厳しくその返済を求めていくということは、今回のスキームの重要な要素であると考えております。
  137. 草川昭三

    ○草川委員 要するに、融資先の悪質なところまで手をつけていきませんと、国民は納得しないんです。  もう一つ例を出しますが、ここに興英コーポレーションが城栄物産の不良債権を肩がわりをさせましたジッポウセゾンという株式会社があるんですが、これに破産申し立てをいたしまして、東京地方裁判所の決定文があります。日時は平成六年八月八日午後一時三十分。この中で東京地方裁判所は、興英コーポレーション自身が粉飾決算をした事実を認めておるんですね。また、不良債権の押しつけの事実についても社会的非難に値すると、この東京地方裁判所は述べておるんです。  裁判所がここまで言及している悪質な借り手責任は私は徹底的に追及をしなければいけないと思うんですが、法務省刑事局長、先ほどの答弁とあわせてお答えを願いたいと思います。あるいはまた、警察庁の刑事局長からも同様の答弁を求めたいと思います。
  138. 原田明夫

    原田政府委員 大変申しわけございませんが、具体的な事案につきまして、犯罪の成否、証拠に関することにつきましては個別に判断すべき事柄でございますので、私がただいま答弁することは差し控えさせていただきたいと存じますが、一般的に申し上げまして、先ほど申し上げましたように、当委員会等におけるさまざまな御指摘、ただいま委員が御提起なされましたような問題点を踏まえまして、検察当局は厳正に捜査を進めてまいるもの、そういうふうに考えます。
  139. 野田健

    野田(健)政府委員 お尋ねのような行為が何らかの犯罪を構成する可能性があるかどうかについては、具体的な事実関係に即して判断されるべきものと考えており、答弁は差し控えさせていただきます。  一般論として申し上げますならば、警察としては、刑罰法令に触れる行為があれば厳正に対処してまいりたいと考えております。
  140. 草川昭三

    ○草川委員 総理、ちょっと今本当にごく簡単に二、三の問題を私取り上げたわけでございますが、非常に複雑な不良債権飛ばしたとか詐欺を構成をするのではないかという問題提起をしておるわけでございますが、これらが、いずれにいたしましても今回の救済スキームの根底にあるわけですね、根元に。どう考えても私は納得できないわけであります。  そこで、過日も申し上げましたが、過日は株の問題を私取り上げました。だれでも国民の多くの方々、株をやっておりますが、損失をしたからといって補てんができませんが、今回の場合は、仕手戦に参加をした企業のいわゆる不良債権としてこれが救済の対象になっておる。大変納得できないのですが、どのようにお考えか、お答えを願いたいと思います。
  141. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今議員が一つの例として取り上げられましたような複雑な経理操作を解明し、その中で責任を追及していくこと、非常に苦労はありましょうけれども、一層厳しくこれを行わなければならないというのが率直な感想であります。  その上で、先般、特定社の仕手戦参加の問題とあわせての御論議がございました。私はこれは本当に問題だと思います。そして、私は疑義が指摘をされたことを認めないのではありません。その上で、この住専というものを助けるのではないということ、これはっぷしてしまうのだということ、そして、この不良債権の処理のいわば全体の中の突破口としてこの問題を処理していくことが、今後日本金融システムというものに対し信頼を取り戻し、まさに自己責任で透明な運営のできる金融というものに改めていくためにどうしても越えていかなければならない大きな課題であるということ、この点だけはぜひ御理解をいただきたい、そうお答えを申し上げます。
  142. 草川昭三

    ○草川委員 じゃ、大蔵大臣一つ質問をいたしますが、私の申し上げたいのは、詐欺に近いことによって不良債権を移しかえている。本来ならば、日本興業銀行という立派な産業銀行、世界に名立たる銀行の子会社ともいうべき興英コーポレーション、そこには支店長も行っているわけですから、本来はこの親銀行が面倒を見るノンバンクなんです。本来は親銀行が面倒を見なければいけないノンバンクが、どうしたことか不良債権をたくさん抱え込んでしまって、この有名な産業銀行とも言われた、日本最大とは申し上げませんが、影響力のある銀行が深みに入っていってしまった。そこで、いろいろな複雑な操作をすることによって、債権を移しかえたりいろいろなことをすることによって彼らが今回のこの住専スキームの中に潜り込んだというのですか紛れ込ました、こういうのは私は許せぬと思うのですよ。  今総理答弁なされたように、住専の救済じゃないんだよ、住専はつぶすんだよとおっしゃった、それはそれでいいんですよ、考え方で。しかし、それを察知をした親銀行が、本来は自分が面倒を見なければいけない、始末をしなければいけない不良債権を抱えたものをそっと潜り込ませるということがわかったとするならば、これは極めて私は重大な犯罪だと思うのですよ。許せないと思うのですよ、それは。  そこの究明についての力強い総理の指揮、指導、それを私は強く求めたいと思うのですが、その点、いま一度総理大蔵大臣から答弁を願いたいと思います。
  143. 久保亘

    久保国務大臣 今草川さんから御指摘のありましたような問題は、今後債権の回収、責任の追及を進めてまいります中で徹底した調査をさせていただきたいと思っております。  また、このことについて法的に責任を問われるべきものについては、徹底してその責任を追及すべきものと考えております。
  144. 草川昭三

    ○草川委員 総理、A社ということを私はあえて申し上げたのですが、A社は返済していないのです。返済していない何らかの理由があると言われているのですよ、ちまたでは、都市銀行の雄たるものが、産業銀行であった経験を持ったものが。私は、これは司法当局においても徹底的に追及していただかなきゃいかぬことだと思うのですが、改めて総理の見解を求めたいと思います。
  145. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、議員が御指摘になりましたようなケースを想定したわけではありませんけれども、この問題を解決していく途上で、預金保険機構あるいは住専処理機構が、債務者に対してだけではなく、その本来の紹介といったような事実の中で起きる問題あるいは起きたであろう問題を、その紹介主である金融機関に対してもその報告を求め、調べる機能を持つべきだと考えておりました。そして、そうしたものを今回付与した法律案を御審議をいただこうと思っております。  今議員が御指摘になりましたようなケースにもそうした機能を最大限に生かし、まさにその問題を調べ上げていく責任があろうかと存じます。
  146. 草川昭三

    ○草川委員 じゃ、この問題はこれで終わりまして、次へ行きます。  住専処理についての財政の支出の六千八百五十億の根拠について、随分ここで議論がありました。そこで、母体行についての議論がございませんので、先ほど少し北側委員も触れましたが、母体行が負担をするところの、放棄をする三兆五千億円の各住専別、七つの住専別の負担額を明らかにされたいと思うのですが、どうでしょう。
  147. 西村吉正

    ○西村政府委員 ちょっと今資料が見当たりませんが、後ほどまたお答えをさせていただきます。
  148. 草川昭三

    ○草川委員 七住専ごとの母体行の負担内訳をしてくれということを、きのう実は私は銀行局に言ったら、今母体行がそれぞれ相談をしております、ですからその内訳、三兆五千億円の負担内訳はお答えすることにはならぬでしょうということを言っているのですが、どうなんですか、それ。今の局長のでは、ここですぐ出るんですか、七住専ごとの三兆五千億の内訳は。
  149. 西村吉正

    ○西村政府委員 母体行のみならず、一般行も含めまして、具体的に各行別の負担割合につきましては、ただいま委員御指摘のように、関係者の間で議論をさらに詳細に詰めておるところでございます。もとより原則的な考え方につきましては関係者の間で合意ができておるわけでございますが、個々の問題をさらに詰めるべき点があるというのは御指摘のとおりでございます。
  150. 草川昭三

    ○草川委員 ですから、これだけ今議論をしているんですが、肝心の母体行の七住専ごとの三兆五千億の内訳というのはまだないんですよ。話し中なんですよ。だからこれは、私は、本当はもうこういう答弁では審議できないと言うところでございましょうが、まずはもう少し問題提起をしてみたいと思うのです。  これは、今から言うのは全く私個人の試算なんです。ここでずっと座っておりまして、こういう考えはないのかなというつもりで出したことでございますから、当然批判もたくさん出るということを前提にした議論になりますが、政府からたくさんの資料をいただきました。それで、住専七行別の損失見込み額が六兆二千七百三十億というのは明らかですね。そこで、次に母体行割り当て分は三兆五千、もうこれは閣議決定しております。  ところが、今お話がありますように、七住専別の負担ということはまだ決めていない、こういうわけでございますから、これを私が推定で数字を一遍つくってみたのです。この根拠というのは、融資残だとか不良債権額とかいろいろなものを推計をしてみたわけでございますけれども、例えば日本住宅金融には母体行は八千六百五十六億かな。あるいは都銀の住宅ローンサービスは三千五百十四億かな。住総は九千三十億ぐらいかな。総合住金は二千百六十二億ぐらいかな。第一住金、これは長銀等ですが、二千二百六十九億、あるいは地銀等、地銀生保ローンは五千三百八十六億かな。日本ハウジングローンは五千九百六十八億かなというようなことを、一次損失分だとか不良債権等々で私どもでちょっと勉強してみたわけであります。  この政府の方から提出をされました七社の経営状況というのが、これは昨年の八月の調査によって出ておるのですが、ここには母体行の融資先の状況が記載をされておりまして、非常に重要な数字なのです。そこで、母体行が紹介をした案件すべてが不良債権化したとは言えませんけれども、今日の状況から判断して、母体行はこの紹介案件についてはもう少し責任を持った要素を加味したらどうだろう、これを私どもが今、試算というのですか、推計をしたわけであります。  そこで、この住専七社の全貸出金額に対する一次の損失の割合は、これは簡単な割り算をすれば四八・三%という数字になります。この数字を、推計をいたしました母体割り当て分、すなわち三兆五千億分の内訳に案分をします。これを案分するわけです。さらに、先ほどの母体行紹介分の額をそこへ、政府答弁書に出てきた母体行の紹介分の額を加えることによりまして、母体行の責任が非常に明確になります。  ここで出た七社分の合計はちょうど三兆五千億になるのです、その母体行の負担の。これによって出た数字と先ほど推計をした母体行割り当て分を比較をしますと、日住金は三千七百億余分に負担することがわかります。住宅ローンサービスは三千五百億円負担が少ないことがわかります。住総は約千四百億円負担が少ないことがわかります。総合住金は約二千八百億円少ないことがわかります。第一住金、地銀生保ローン、日本ハウジングローンは若干負担が多いのです。そこで、負担の多いところはもうこの際黙っておりなさい、負担の少ないところはよそ並みに上げたらどうだ、紹介分だけウエートを上げたらどうだということを計算をいたしますと、ちょうど七千七百億円になるのです。  これはまんざら私の素人の提案ではないのではないかと思うのです。要するに、紹介をした分だけウエートをかけるということです、早く言うならば。紹介をして不良債権になったのだから、その分だけ少し重くなっても仕方がないじゃないか、そのかわりに、紹介分よりはちょっとたくさん割り当てられているところはこの際黙っておりなさいという提言をいたしますならば、財政支出はカバーできるはずだ。この考えは、政府が提出をされた資料から初めて読み取れるわけです。  あんな厚いのを、我々も頭余りよくはございませんが、一生懸命勉強すると結構出てくるのです。おもしろい。おもしろいと言うとこれは国民から怒られますが、こういう数字が出てきたわけでございますが、どうか大蔵大臣総理、あくまでも私のこれは個人の試案だが、これは原則的には政府提出の資料から引き出したものをまとめたのですが、こういうことで検討することができないのかどうか。これが私は本来の議会であり、あるいは皆さんが本当にこの住専処理というのを、国民の強い怒りということを背中に引き受けながら議論をできるのではないかと思うのですが、その点どうお考えか、お答え願いたいと思います。
  151. 久保亘

    久保国務大臣 私どもが提出申し上げました資料に基づいて大変細かい分析をなさっておりまして、一つの見方かなと思いますが、ただ、今お話を伺っただけでは、私、そのことに責任のあるコメントを申し上げることは非常に困難だと思います。
  152. 草川昭三

    ○草川委員 私は、議会というのは、こういうように非常に重要な問題のときには、本来は我々のような委員ではなくて、もっと上級の、書記長・幹事長会談というのですか、あるいは党首会談だとかいうようなことがあって、本当に国民に迷惑をかけないようなことを模索をするという一つのアクションがあってしかるべきだと思うのですが、その点総理はどのようなお考えか、お伺いしたいと思います。
  153. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、そういった場面というものは、その問題に応じて、あって悪いものだと思ってはおりません。また、私どもが自由民主党として野党でおりましたときにも、そうした呼びかけに対して野党という立場で応じましたこと、そうしたこともございました。  そしてまた、今議員がみずからの試算として述べられました考え方の中に、私も大変興味深い思いを持ちながら拝聴しておりました。これは法律論的な議論をすればいろんな問題があるいはあるのかもしれません。当然のことながらその紹介の度合いによってとか、あるいはその悪質さがどうかとか、それはいろんなことがあるんだろうと思います。しかし、非常に真剣に資料を御検討いただいた結果の御提案、大蔵大臣ともども大変関心を持って拝聴をいたしました。
  154. 草川昭三

    ○草川委員 そこで次に移りますが、実は農林系、系統金融機関負担についての批判が集中をいたしております。  私はかねがね、実は、農業協同組合は肥大化した、そして本当に農民の声を取り上げていないということを連続してこの予算委員会で取り上げてきたわけでございますが、昨年初めて私は、この住専処理については、いわゆる母体行というものを信用して全国の信連がお金を預託をしたんだ、運用を任したんだ、だから私は、被害者の立場に立って今回は問題提起をしたいというのが昨年来からの基本姿勢なんです。  しかし、最近新聞等の論調もそうでございますが、農協金融機関負担政治力を行使して負担を軽くした、こういう批判が非常に強いようであります。また、大原農林大臣も、まあそうは言うけれども、経常損益で約三十、当期損益で二十の信用農業協同組合が出てくるんだ、もうこれが精いっぱいだと答弁をしているわけであります。  で、これがこのまま残りますと、私は、損失負担がこれ以上できないと系統金融機関が言うならば、金融機関としての免許を返上しろ、あるいは国債などの安全な資金運用だけを認めて金融市場から切り離すか、どちらかを迫られるような情勢が来るんじゃないかということを心配しているんです。これは全国の農民の立場からも農協の立場からも、今のままでいくならば、ここはひとつ真剣に議論をしなきゃいかぬことではないだろうかと思うんです。  そこで、どっちが強いとか弱いとかではなくて、確かに、再建の見込みのない住専に対して、系統金融機関に元本保証を認めるような密約をして処理を先延ばしをしてしまったMOFの、大蔵省銀行局のこれは責任は大きいんですよ、何といったって。大きいと思うんだけれども、その犠牲になってしまったということを放置をしていいのかどうか。  ですから、私は、ひとつこの際、農民から預かった大切な資金を、今後も系統金融機関責任を持って運用をしてもらいたいと思うんです。やはり地域に根を張っておるわけですから、系統の窓口というのは大切にしなきゃいかぬと思うのです、お百姓さんのためにも。  ですから、私はここで、大変これは反論があるかもわかりませんが、今度は母体行ではなくていわゆる系統農協方々に問題提起をしたいと思うわけであります。  実は、過日政府が新進党に回答いたしました住専資料の八ページに、「農協系統協力額(五千三百億円)の算出根拠」というのが書かれております。この内容から我々が推察をいたしますと、系統が負担をする五千三百億は、信連の推定した利益を充当したい、あるいは貸倒引当金を可能な限り取りますとあります。これで二千億出す。農林中金からは有価証券含み益の益出しで二千億、さらに共済の方々にお願いをして千三百億、こういう内容になっておりますね。  そこで、まず信連でございますけれども、ここに公表をされましたところの、これは海外にも発表されております農業協同組合あるいは農林中央金庫あるいは信用農業協同組合連合会のそれぞれの貸借対照表というのがあるのでございますが、これによりますと、九五年の三月では諸引当金として三千三十億、これを可能な限り取りまして二千億という答弁になっておると思うのです。  しかし、資本勘定の方の剰余金を見ますと、八千八百六十六億円が計上されております。これは今回の対象とはなっていないわけであります。これは使うことができないのか。聞いてみますと、赤字にならない限りこれは使いません、こういう答弁です。  ならば、特別積立金の方の五千四百八十五億円はどういう場合に使うのか。こちらに五千四百八十五億、特別積立金というのがあるわけです。  あるいは、全国の農業協同組合の信用事業の残高試算表というのを見ますと、同じく九五年の三月を見ると、剰余金は二兆三千八百四十億円とあります。これはまあ使えぬと思うのですが、こういうような試算内容になっておるわけです。  ですから、結論として、いずれこのような話というのは、先ほど言ったように、余り農林系が厳しい態度をとっておりますと金融市場からボイコットをされるようなことを防ぐためにも、私は、あえてこれは全く個人の立場から申し上げますが、農林中央金庫が政府保証を受けて六千億規模の割引債を発行したらどうか。三十年物でいいじゃないか、二百億ずつ返済をする、こうすれば処理スキームの財政支出は私はなくなって、農家、農協も胸を張れることになるのではないか。お百姓さんが胸を張らないとだめなんですよ、これ、今回の場合は。  これは、私は、一回真剣に議論をしていただく一つの材料になる。もうお互いに与党、野党と言わなくて、もうさんざん言い合ってきたわけですから、だれの責任か。また、これからも参考人でやるわけですけれども、知恵を出して、知恵を出さなければ、私は、国民から我々議員というものは大変失望を受けるのではないか。  ここを真剣に考えていただくならば、私は、政府保証をするならば、今日のように余裕資金を持っている機関投資家もたくさんあるわけでありますから、これは必ずしも消化が難しいわけではない、こんなように考えるのですが、どのようなお考えか、大蔵大臣総理大臣、できれば農林大臣、三者からお答えを願いたい、こう思います。
  155. 大原一三

    大原国務大臣 草川先生もう御存じのとおりでありますが、現在の五千三百億という負担、これについては、もう既にどういう負担か、御存じのとおりであります。  さらにまた、今委員会でいろいろ御議論がありましたように、我々は、母体行責任、先ほどから母体行のいろいろの事例を挙げての御指摘、それらについて直接経営責任がないわけでございますので、一貫して母体行責任を主張してきたわけでございます。したがって、今回の財政資金による負担というのは、農協系の擁護のために負担されたものというふうには、我々も認識をいたしておりません。前の総理大臣も、さらにまた武村大蔵大臣も、先ほど新聞でいろいろおっしゃったということでございますが、公式には、農協系救済のためではないということをはっきりおっしゃっていただいているわけであります。  それから、非常に大事な御指摘をいただきました。六十八兆円というお金を今後どう運用していくか。住専というものによる収入が信連だけで一千五百億あったわけでございます。その六・四%がなくなり、四・五がなくなり、そして、これから国債運用ということになりますと一・五%内外ということになりますので、三分の一ぐらいに信連初め農協系統の収入がなくなっていくわけでございます。  こういった状況の中で、一体日本金融システムの中に、我々、六十八兆円というお金の役割をどう位置づけていくかということは、おっしゃったとおり非常に大きな問題だと思っております。だから、今日までのようないわば護送船団的システムの中へ農協も安住しているわけにはいかぬという気持ちで、おっしゃるように、そのシステムの改革には思い切った改革をしなきゃならぬ、このように考えております。
  156. 久保亘

    久保国務大臣 今農水大臣からもお答えを申し上げましたけれども、私は、今度の問題に関して、系統金融機関金融機関として経営をしている以上、その経営責任や貸し手責任がないとは決して言えないと思っております。ただ、今度の問題の処理に当たりましては、同じ債権者でありましても、設立から今日に至りますまでの経緯やかかわり方等を通して、母体行との間にはおのずから差異があるものと考えておりますが、今草川さんから御提案のありました問題につきましては、農水大臣がお答えをいたしましたような立場で、一つの御提案として承っておきたいと思っております。
  157. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 きょう二つの御提案をいただきましたが、私は先の御提案の方により興味を引かれました。というのは、やはり割引金融債という形でこの問題に対応しようといたしました場合、いずれの時点かで必ずその償還という問題に遭遇をいたします。そうすると、その住専のロスというものを考えましたときに、償還を必要とする資金調達の方式で対応することはいかがか、これは私はちょっと問題点ではなかろうかという感じがいたしました。  いずれにいたしましても、真剣な御提案として検討させていただきますが、私個人は先の考え方の方をより興味のある御提案と感じております。
  158. 草川昭三

    ○草川委員 せっかく総理大臣の方から、いわゆる母体行の紹介案件に少しウエートを置いたスキームというものを練り直せというのが私の趣旨でございますが、関心を示していただいて大変恐縮でございます。  きょうは本会議もございまして時間があとわずかよりございませんので、かねて新進党の方から資料要求をしていることを数点まとめて質問をしたいと思います。  我々の方から、住専七社について担保物件に短期賃借権を設定しているもののうち暴力団関係者はどのくらいいるのか示せ、大変難しい注文をつけたわけでございます。それで、その内容によっては国会法に基づく処置をすべきではないか、こんなことを言ったのでございますが、ひとつ関係当局の答弁を求めたいと思います。
  159. 野田健

    野田(健)政府委員 いわゆる不良債権問題と暴力団との関係について、さまざまな報道がなされていることは承知しております。債権債務をめぐる暴力団の関与につきましては、その関与の程度、態様が一様ではなく、警察としては、個別具体的な事件の、検挙した場合はその実態を解明することができるものと考えておりますが、一般的に暴力団が債権回収に関与する状況やその割合について申し上げることは困難でありまして、この点について御理解をいただきたいと存じます。
  160. 草川昭三

    ○草川委員 あと五分よりありませんので、二間続けて質問をして終わります。  まず、大蔵省に、どの担保物件にだれがどのような短期賃借権を設定しているかについて、広く国民に知らせるべきと考えますが、公表するとどのような問題が生じるのか、大蔵省から答えてください。  それから最後に、法務省に、短期賃借権がついている担保物件の処分を容易にするためには民事執行法を改正をしないとできないと言われておりますけれども、その点についての法務大臣の見解。二つを求めてちょうど時間だと思いますので、お答えを受けて終わりたいと思います。
  161. 西村吉正

    ○西村政府委員 大蔵省では、御指摘のような観点からの短期賃借権に関する資料の整理、集計は行っておりませんので、その点御容赦いただきたいと思うのでございますが、仮にこれらについて整理、集計を行ったといたしましても、恐らく短期賃借権を設定するということの事情にはいろいろな個別の理由があると思われます。御指摘のような問題によってだけ短期賃借権が設定されているというわけではなかろうかと存じます。  また、そういう個別の事情を、どのように公表に際して考慮するかという非常に難しい問題もあろうかと考えております。
  162. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 短期賃借権の乱用と民事執行法の規定の関係についてのお尋ねでございますが、短期賃借権と申しますのは、御案内かと思いますけれども、抵当権者と所有者との利益関係の調整といたしまして、抵当権後に設定された賃借権でございましても、一定期間のもの、建物でございますと三年間ということでございますが、三年間についてはその賃借権を抵当権者に対抗することができるという規定でございます。これは、今申しましたように権利の調整規定として必要なものであると考えております。例えば、抵当物件でございましても、賃貸マンションとか賃貸事務所というものもあるわけでございまして、そういったたな子の利益は一定の限度で守らなければならないという問題があるわけでございます。  ただ、この短期賃借権というものが、真実は自分で使うという目的がないのに、この名目を借用して執行妨害とか一定の不当な利益を得ようとする手段として使われているということが問題でございまして、そういう場合の対応につきましては、現行法のもとで裁判所におかれてもいろいろ運用上の工夫をされておりますが、現在の民事執行法の規定しております抵当権実行あるいは強制執行の場合の売却のための保全処分でございますとかあるいは買い受け人のための保全処分、それらの規定をいま少し充実すればそういうものに適切に対応できるのではないかという指摘があるところでございます。  具体的には、現在の民事執行法上の保全処分の対象者は債務者、抵当権の場合は抵当物件の所有者でございますが、債務者あるいは所有者に限定されておりますが、これを一定の限度で不動産を占有する第三者にも広げるということが適当なのではないかという指摘がされており、この点については、与党におかれてもいろいろな立法関係の検討課題として議論がされているというふうに承知しておるところでございます。
  163. 草川昭三

    ○草川委員 以上で終わります。
  164. 上原康助

    上原委員長 これにて草川君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして総括質疑は終了いたしました。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十一分休憩      ――――◇―――――     午後一時十二分開議
  165. 上原康助

    上原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  平成七年度一般会計補正予算(第3号)、平成七年度特別会計補正予算(特第3号)の両案を一括して議題とし、質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中昭一君。
  166. 田中昭一

    田中(昭)委員 社会民主党・護憲連合の田中でございます。  私に与えられた時間は四十分でございますが、なるべく欲張って御意見をお伺いをしたいと思っておりまして、演説はなるべく避けたいと思いますが、大臣の方から端的なお答えを幾つかいただきたいと思っております。  まず第一は、住宅専門会社、いわゆる住専問題についてでございます。  私は与党の立場でございまして、予算編成作業に参加をした立場、政府との認識のずれがそんなにあってはおかしいという、こういう立場に立っています。したがいまして、まず社会民主党としてのこの住専問題についての三つの基本的な態度と四つの課題を明らかにいたしておりますから、このことを簡単に申し上げまして、認識のずれがないということをまず確認をし合いたい、こう思っております。  まず、三つの基本的態度でございますが、その第一は、住専問題につきましては、私どもは公正かつ厳正に追及をしなければいけない、こう思っております。同時に、国民多数の皆さん方の理解協力を得られる、そういう解決にしなければならない、こう思っておりまして、この点について最大の努力をしたい、こう思っております。  第二点でありますが、この住専問題の解決につきましては、いろいろ御議論がございますように、母体だけで百七十社以上、それから貸し手だけで三百社以上という不良資産の大きさ、それから関係者の多数、こういう考え方に立った場合に、今日まで適用してきたという一般的な破産法であるとか会社更生法などの法を通じての適用では、必ずしも十分に解決をすることはできないんではないかというのが私どもが党の中で議論をした結論でございまして、したがって今回のようなスキームができ上がった、こういうふうに理解をいたしております。  もちろん破産法なり会社更生法の立場に立った御意見がございます。あるいは日銀の融資という提起もございますけれども、やってみたがだめだったということは今回の場合には許されない、こういう立場に立つならば、寸分でもやはり疑義があるとすれば大胆な提起が必要である、こういうふうに私どもは考えております。  日本の景気にしても、あるいは雇用にしても、金融にいたしましても、すべて不安材料がございます。日本経済の力は必ずしも完璧ではないということを考えた場合に、今金融信用不安を起こしてはいけないという問題や、景気回復をこれ以上腰折れさせてはいけないという問題や、国際的な責務を担っている、国際的に責任を果たすということなどを大胆に考えた場合に、現実的な、緊急的な対応措置としては、今回のスキーム、そして解決の方針について国民の皆さん方に御理解を求める以外にないのじゃないかというのが、私どもとしての第二点の考え方でございます。  それから、三つ目の基本的な考え方でございますが、本問題の処理に当たっては、第一番目に申し上げましたように、やはり情報公開をきちんとする、責任を明確にするということ、それから、こういう状態に立ち至った問題でございますから、金融システムの改革というものを重視をして、これによって国民の皆さん方の理解協力を得る努力が必要である。  この三点が我が党としての基本的な態度でございまして、こういう立場で、この問題については私どもは与党の責任ある立場で対応をしてまいりたい、こう思っております。  この基本的な立場を踏まえまして、私どもは、四つの課題について今回のこの予算委員会議論を通じて解明をしていかなければいけないだろう、こう思っております。  その四つの課題の第一点は、このスキームというのは国民の皆さん方の税金を使って解決をするということでございますから、国民の皆さん方の税金を使う以上は、秘密は許されない。やはりあらゆる情報を国民の皆さん方の前に鮮明にする、開示をする、このことをやはり徹底的にやっていただかなければならない、こう思っております。  それから第二の問題でございますが、責任の明確化でございます。  悪いことをしたり、でたらめなことをしても、それがそのまま雲散霧消してしまうというそういうやり方であっては、決して国民の皆さん方の理解と納得を得ることはできないと思っております。したがって、貸し手、借り手、母体行、一般行、系統、行政、政治のすべての責任をこの議論を通じて国民の皆さん方の前に明らかにしなければいけない、この努力をしなければいけないということをお互いに確認をし合いたいと思っております。  それから三点目でございますが、強力なる機関をやはり設置をしなければいけないと思っております。  住専処理機構などにつきましては既に法律が提案をされておりますが、徹底した債権回収によって国民の皆さん方の負担を最小限に抑える、あらゆる法的手段を使ってこの住専処理機構の機能を活発化する、こういうことについて具体的に議論をして、努力をしていかなければいけないということが三つでございます。  それから第四点目でございますが、これも先ほど申し上げました日本金融システム、従来の金融行政というものを厳しく私はやはり総括をしなければならない、そして、大胆に改革をすることが必要である、このことを抽象的でなくて具体的に確認をする、このことが必要ではないかな、こう思っております。  以上が、私どもの党が基本的に議論をして、悩ましい議論をした結果、三つの基本的態度、四つの具体的な課題、このことを決めたわけでございまして、この点について総理との認識の不統一はないと思いますが、いかがでしょうか。
  167. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今社民党としてのお立場での要約を拝聴いたしました。  住専問題の処理に当たりまして、情報開示を通じた透明性の確保がまず重要であります。政府としては、これまでの経緯を含め、明らかにすべき事項につきましてはきちんと責任を持って明らかにすべく、これまでも誠意を持って資料の提出あるいは御答弁を申し上げてまいりました。今後とも一層の情報開示に努めてまいりたいと思います。  次に、種々の責任の明確化と追及につきましては、住専各社の経営責任の徹底的な追及を初め、それぞれの責任が明確化されますよう政府としても努めていく覚悟であります。  また、強力な債権回収につきましては、政府は、預金保険機構と住専処理機構が一体となりました体制を整備して、全力を挙げて強力な回収に当たり、最終的な住専問題の処理コストを最小限に抑制する覚悟であります。  さらに、今後の金融行政につきましては、金融自由化の進展やバブルの発生、崩壊といった環境変化を踏まえまして、早期是正措置といった新しい制度を導入するなど、自己責任原則と市場規律の十分な発揮を基軸とする透明性の高い金融システムを構築していくように全力を尽くすつもりであります。
  168. 田中昭一

    田中(昭)委員 総理の御見解で私どもと認識はきちんと合っていると思うんですけれども、私は、一昨日、昨日、三日間地元におりまして、いろんな集会なり会合なりに実は参加をしてまいっております。私は、今政府なり与党がやらなければならないのは、今総理が御発表になりましたような基本的な考え方、態度について、ひたすらに限りなく国民の皆さん方の理解協力を得る、納得を得る、こういう努力をしなければいけないんじゃないかな、こう思っております。私は、この情報化社会の中でやっぱり環境は必ずしもよくない、実はそう思っております。  例えば、これはまあ一例にすぎませんけれども、大蔵省の元の主計局次長がかなり私腹を肥やすようなでたらめなことをやられておる。こういう問題についてはやっぱり非常に国民の皆さん方は敏感ですね。それから、官官接待の場合にも、その中心はやっぱり大蔵省ではないかという、こういうマスコミの報道などもたくさんございます。  それから、もう御存じのように、今預金利子が極端に低くなっておりまして、特に退職者の皆さん方、御老人の皆さん方などについては、このことによってやっぱり生活に影響が出てきているという方などもたくさんおられます。しかし、マスコミの報道などによりますと、銀行の幹部なりあるいは銀行の職員の賃金とか報酬というのは極めていいということで、結局、預金者が損をした分は全部銀行などに移転をしている、こういう理解がございます。  それから、住専問題などについては、タレントの方々なども含めまして、暴力団との関係などもマスコミでは毎日毎日、テレビ、新聞で報道がされておるという、そういう関係などがございまして、今回のこのスキーム、政府がやろうとしている手法につきましては、まだまだ私は国民の皆さん方の中には理解と納得が得られるような、そういう状況にないんではないかということをつくづくと痛感をいたしております。  きのうも千五百名ぐらい規模のパーティーでございましたけれども、村山委員長も来られまして、大々的なパーティーをやりましたけれども、二時間私は物を一つも食べることができなかった。次から次に人が寄ってきてこの住専問題についての質問をされる、こういう状況だと思います。そういう意味で私は、まだまだ政府・与党は、これでなければいけないという確信を持った今回のスキームについて、国民の皆さん方の理解と納得を得るようなそういう努力をしなければいけないんじゃないかということをつくづくと感じております。  そこで、私は、いろいろ意見がございますけれども、最低四つのことをやっぱりこの際きちんとしなければいけないんじゃないかということを考えるわけであります。  その第一は、なぜこのような状態になったのかということをもう少しきちんと整理をする必要があると思います。そして、そのような状態になった責任はどこにあるのかということをはっきりしなければいけないだろう、こう思います。特に、第一次調査がございまして、いろいろ問題点が明らかになりました。これに対してなぜきちんとした対応をしなかったのかという疑問は、国民の皆さん方の中にたくさんあると思います。  したがって私は、第一点として、こういう状況になった情勢の説明と、なぜそうなってどこにどういう責任があるかということをきちんと整理をして国民の皆さん方の前に明らかにする、こういうことをひとつ政府としては努力をすべきではないかな、こう思います。  それから二点目の問題でございますが、なぜ公的資金いわゆる税金を導入しなければいけないかということについて、政府の方としても、金融システムの崩壊の問題であるとか、国民全体に信用不安が起きたら大変なことになるとか、あるいは国内のみならず国際的にも我が国金融制度についての信頼が喪失したら大変だとか、景気回復の問題とか、いろいろ説明をいたしております。  しかし、今回の住専の債権というのは十三兆ぐらいでございまして、第一次の損失は六兆四千億でございます。しかし、巷間言われておりますように、ノンバンクなどの不良債権は、一説では三十八兆とか四十兆とかいう数字が出てみたり、アメリカでは百兆とか百二十兆とかいう数字が出ているわけであります。今回のこの予算委員会議論を通じて、今後の不良債権の処理については税金は導入をしないということを明らかにしているというふうに私は理解をいたしております。  そうしますと、今回のこの一次損失六兆四千億、住専の債権を処理するために六千八百五十億の金を投入しなければ、先ほど言ったように景気の問題、金融不安の問題、信頼度の問題、問題が出てくるということを政府説明をしているわけですが、他方、それに倍する以上の不良債権がある、これに税金を投入しなくても問題が出てこないのか、そういう素朴な疑問がやはり私は国民の皆さん方の中にあると思うのです。なぜ今回六千八百五十億の公的資金導入かということなどをもう少しきちんとすることが必要ではないかな、こういうふうに思っております。  特に、この六千八百五十億の算出根拠などの問題については、先ほどもちょっと議論がございましたように、前の武村大蔵大臣認識について若干の食い違いが出てくるなどということが新聞に出てきますと、そういうところにやはり国民の皆さん方の不信が出てくる、こういうふうに思います。  したがって、二点目として、なぜ公的資金導入なのかという問題について、もう少し国民の皆さん方がおわかりになるような説明が必要ではないかな、こう思っております。  それから第三点でございますが、いろいろ御意見の提起がございます。破産法の適用をしたらいいんではないか、会社更生法の適用がいいんではないか、日銀の融資でいいんではないか、いろいろ野党の方からの提起もございます。いろいろございます。  なぜ法的な処理でいけないのかという問題などについて、私はやはり、時間的な問題とか金が入ってくる時期の問題とか総括的に考えた場合には、先ほど申し上げましたように、今日ある法的な処理では今回できないんではないかというふうに思います。やってみて問題があれば変えればいいじゃないかということではいけないという立場で、そこのところについてももう少し、破産法の適用の場合にはこういう問題が出てくる、会社更生法適用の場合にはこういう問題点が出てくる、こういうような問題について、やはり国民の目線で、もう少しわかるように政府は主張したらいいんではないかな、私はこう思っております。  それから最後、四つ目でございますが、系統関係でございます。これも国民の皆さん方の意見では、なぜ系統だけは債権を全額保証をして五千三百億の贈与になるのかという問題について、まだやはりすっきりしない、ここの議論を通じてもすっきりしないわけであります。  例えば積算根拠があるとか積み上げ方式だ、こう一方では言いながら、一方のマスコミ報道ではこれは政治的なマクロの解決だということを言われたり、この点のところはやはりまだきちんと、すとんと国民の皆さん方の胸の中には落ちていないんではないかと思います。特に、今日まで農村地帯、町でも同じですが、例えば郵便局と銀行と農協預金などについて競り合ってきたという状況などもございます。なぜ系統だけを特別扱いにしなければいけないかという問題などについては、それぞれの立場から疑問が提起されておるのは事実でありますから、この点についてももう少し私はきちんと整理をした方がいいのではないかと思っております。  今までのこの予算委員会議論を通じて多くの意見が提起をされておりまして、したがって、私は、そろそろこの四つの問題などについてはもう少し国民の目線で理解と納得ができるという整理をする時期に来ているのではないかな、こう思います。そして、このことについてある程度納得をいただければ、今後の債権回収の努力の方法論であるとか、あるいは住専処理機構の体制づくりの問題であるとか、そういう問題に議論が展開をすることができると思いますし、金融システムをどう改革をしていくのか、どこに問題点があったのか、かてて加えて大蔵省の分割とか分散とかいろいろ意見も出ております。線香花火のようにいっぱい出ておるわけでありますから、したがって、そういう問題への議論の転化が可能になるのではないかな、こう思っております。  そういう立場から、今申し上げましたような四つの問題を、そろそろ政府としてはきちんと今までの議論を集約して、整理をして、国民の皆さん方の前に公にすべきではないかな、こう思っております。  そういう立場から、総理並びに大蔵大臣に、私は今申し上げましたことを今ここで聞こうとは実は思っていないのです。そういう時間もございません。したがって、三つの点について御提案を申し上げたいと思います。  その第一は、今申し上げましたように、国民の目線で国民の理解と納得を求めるという立場で今日までの議論を集約をして、政府の態度として国民の皆さん方に具体的な提起を行う、こういうことをこの際きちんとしていただきたいというのが第一点。  それから二つ目の問題は、今の問題については、国会内の議論を通じて行うことも必要でございますが、テレビとかそういうものを通じて総理がじきじきに国民の皆さんにこの際訴える。いわゆる国民福祉税の場合に細川内閣もやったことがございますし、村山さんもやったことがございます。そういう提起をこの際やはり国民の皆さん方の前できちんとする、こういうことが必要ではないかな、こう思っております。  それから三点目は、大蔵省の改革の問題とか金融システムの改革の問題については、いろいろ線香花火のように打ち上げるのではなくて、中期的とか長期的とかいう形でなくて、きちんとした時期を定めて、責任ある対応を政府としてするという態度をきちんとこの際表明をしたらいいのではないかな、こう思います。  この三つの点について、総理並びに大蔵大臣の決意なりをお伺いをしたいと思います。
  169. 久保亘

    久保国務大臣 今田中さんから社会民主党としての三つの基本態度、四つの課題ということでお話がございました。私も党の役員の一人でもございます。今お話がございましたことを誠実に実行しなければならないと考えております。  特に申し上げたいことは、国民の理解を得るための情報の開示ということにつきましては、情報開示に当たってのいろいろな法的制約をどのようにして取り除いて開示するか、こういう基本的な立場でこれまでも努力をしてまいったつもりでありますが、今後も一層そういう立場で進めてまいりたいと思っております。  また、責任と回収の問題につきましては、今度私どもが住専問題を処理しようといたします基本態度は、いかなる債務も一切これを棒引きしない、すべての債務、これに損害賠償責任の追及も含めて、私どもは徹底して債権を回収しなければならないと思っております。  また、責任の問題につきましては、今日このような状況を招きましたすべての責任が明らかにされなければならないと考えております。そのためにも、この債権の回収を進めてまいります過程においても、責任を明確にする努力全力を挙げてやらなければなりませんし、法的な責任も徹底して追及されるべきものと考えております。  今、田中さんから三つの御提言がございました。このことにつきましても、私どもとしても誠実に、そして全力を挙げて、そのことの積極的な取り組みをしていかなければならないと思っているところでございます。  そして国民の皆さんの御理解を得ますためには、御提言のありましたようなこともいろいろ検討しながら、今日早期の処理が求められていること、そしてこの問題の処理を誤れば、経済の問題はもちろん今後の金融システムの不安がもたらします混乱、不安、こういうものは内外を通じて非常に大きく深刻なものとなろうということにつきましても、この処理の、いろいろな御提言のあります手段等によって行います場合に何が問題なのかということも含めて、私どもが今御提起申し上げております処理の方法について御理解を得られるよう、努力してまいりたいと考えております。
  170. 田中昭一

    田中(昭)委員 私の提起についてはきちんと受けとめられた、こういう理解をいたしました。住専問題については、時間がございませんからこれで終わらせていただきたいと思います。  第二点目でございますが、時間がございませんのではしょって申し上げますけれども、橋本政権施政演説の中で、「長生きしてよかったと思える社会の創出に向けて」ということが大きな柱になっております。これは、私は村山政権時代の「人にやさしい政治」、これを引き継いだものだ、こう受けとめておりまして、私どもは、やはり人に優しい、そして、「長生きしてよかったと思える社会の創出に向けて」人間一人一人を大事にする、そういう丁寧な政治姿勢というものは極めて必要ではないかな、こう思っております。  そういう観点から幾つか提起をしたいのですが、時間がございませんので、私は二点の問題について簡単に提起をして担当の大臣の御見解をいただきたいと思います。  その第一は、水俣病問題の完全解決の問題でございます。  これは四十年間にわたって未解決で、いろいろ難しい場面がございました。大変難しい問題でございましたけれども、村山内閣の「人にやさしい政治」の中の重要な案件として、昨年ようやく一定のめどを立てることができました。今行政の中で具体的に作業が進められている、こういう状況でございます。  もちろんその中身については、四十年という長い日時の問題がございまして、解明ができない点などもございますし、基本的な対立もございまして妥協の産物であることは間違いがございませんけれども、しかし、生きているうちに救済をという立場で昨年解決ができたことを私どもは大変喜んでおりますし、患者、被害者の皆さん方もやはり感激をしているわけでございます。  そこで、私申し上げたいことがございます。  その一つは、今回のこの対象者は、環境庁長官はもう環境行政のベテランでございますからいろいろ説明をする必要がないと思いますが、対象者が総合対策医療事業適用者に実はなっておるわけですね。その他の人が実は何千もおるわけですね。非該当者が何千もおるわけです。この人たちは、今後はいわゆる行政がつくった診断書と本人の自己診断書二つによって判定検討会で検討がされていく、どういう形に実はなっておるわけです。  私は、過日の環境委員会でも、今回のこの問題の解決がやはり全面的に解決をするという立場、そういう趣旨を踏まえるならば、改めてまた判定検討会で次から次に振り落とされていくという、そういう対応で改めて紛争が出るような、そういう状況に決してしてはいけない、こういうことについて提起をいたしました。当時の大島環境庁長官、大変な御尽力をいただいたわけですけれども、そういう趣旨について御確認をいただいておるわけです。  したがって、今後、具体的に作業が進められておるわけで、したがって、これらの問題について、環境庁長官としてどういうお考え方に立ってこの問題の最終的な結末をつけようとされておるのか、この点についてまず簡単にお聞きをしたいと思います。
  171. 岩垂寿喜男

    ○岩垂国務大臣 最初に、田中先生が長い間、本当に長い間、水俣病問題の解決のために御尽力なすったことに心から敬意と感謝の気持ちを申し述べたいと思います。  もう今から私が申し上げるまでもなく、この問題については田中先生御自身が、三党合意をつくり上げるために、そして特にそのスキームの運用を含めて御努力をなさった経過がございます。したがって、そのお立場、そして三党合意を尊重しながら、今御指摘をいただきましたような気持ちに沿って頑張ってまいりたい、このように答弁させていただきます。ありがとうございました。
  172. 田中昭一

    田中(昭)委員 岩垂長官は、もう私以上によく御理解をいただいておる方でございますから、最終的な解決に至るように、改めて紛争の状態に至るようなことのないように、ぜひ積極的な御指導、御協力をお願いをしたいと思います。  時間がございませんから次に行きますが、「人にやさしい政治」という問題の中で、当面の課題としまして、私は、HIVの被害者救済と薬事行政の問題があると思います。この点についても、菅厚生大臣が大変な御努力をされておるということについて、マスコミ報道などを通じてよく理解をいたしております。  また、新三党合意では「被害者救済は重大な課題であるという共通認識のもと、HIV訴訟に関する早期和解を推進する。薬事行政の中でHIV問題に関し、責任問題も含め、必要な調査を行い、薬害再発防止のための万全の措置をとる。」こういうことで三党合意がなされております。このことについて、橋本総理も施政演説の中でこのことを確認をいたしております。  先週までの状況でございますが、国は、元の厚生大臣のときだったと思いますが、おわび発言をいたしておりますが、被害者が求めているように、心からの謝罪と責任の明確化という問題については必ずしもきちんと応じてないんではないか。また、製薬会社なども、経営に重大な影響があるといって和解案について難色を示している。したがって、全面解決の見通しは極めて厳しいんではないかな、こういう報道などがされております。  したがって、これらの解決を求めて、被害者団体は二月の十四日、あしたからでございますが、厚生省の前に座り込みを行う、こういうことで、私などにもそのお誘いがございます。この座り込み行動などということは、先ほどの水俣病の際に、私はもう何十回も経験をしたことでございまして、被害者、患者の皆さん方がこの寒い中でセメントの上に座り込みをするというような、そういう状況が続くということは決して好ましいことではないし、「人にやさしい政治」をとる立場からは、そういう事態にならないようにやはり行政、政治としては責任を持つことが必要ではないかな、こういうふうに感じておりまして、きょうはそういう点で、座り込みがなくても真摯に、そして謙虚に議論をしていく、こういう態度表明をいただきたいと実は思っておったんです。  ところが、これも御承知のように、先週末に厚生省が今までないと言った資料、隠してあった資料が発見をされた。その中で、一九八三年当時、厚生省内に非加熱の血液製剤が危険だという認識があったということがその文書の中で明らかになった、こういう報道がなされております。私はそのことについて厚生省から聞いたわけでもございません、マスコミの報道だけでございますが。  したがって、この報道などによりますと、既に第一次和解で示されております裁判長の所見を大筋受け入れられることになるんじゃないかな、したがって、国の責任を明確にして、和解交渉の結実に向けて国はこの際きちんとした対応が可能になるのではないかな、こう思います。  そして、この第一次和解を踏まえまして、恒久対策などについても今後真摯に議論を継続することができる、こういうことになるのではないかなというふうに私は実は感じておりまして、したがって、これらの問題について厚生大臣の御意見をいただきたいと思いますし、できればあすからの座り込み行動などの事態に至らないように、きょうのこの場でこれらの先行きの問題などについて一定の御見解をいただければそれが一番いいのではないかな、こう思っておりますので、この点についての御見解をいただきたいと思います。
  173. 菅直人

    ○菅国務大臣 今田中先生の方から、HIVの問題についていろいろと御心配の御質問をいただきました。  実は、この問題は、御承知のように東京地裁、大阪地裁の方から昨年十月に和解案が提示をされておりまして、その和解には国は正式に、もう前大臣の段階で和解の交渉のテーブルに乗っておりまして、今、週に数回という頻度でかなり具体的な議論が進んでいるという報告を受けております。  そういう中で、先週九日、一月二十三日に省内につくりましたHIVの調査プロジェクトの方から、従来見つからなかったとされた資料が見つかったということが報告がありまして、若干まだ時間が十分ではありませんが、少し中身を精査をしつつあるところですが、そういう中では、従来裁判所が所見の中で、国はこういう注意義務を怠ったじゃないかとかいろいろなことを指摘をされておりますことについて、やはりそれを受けとめなきゃいけないのではないかと思われるようなものも入っておりまして、そういう点ではこれから十分精査をして、そして必要なものは裁判所にも提出をさせていただいて、その中で結論を求めていきたいと思っております。  そういうことで、あすから始まるというふうに私も聞いております座り込みについては、確かに私も座り込みの支援などをやった経験からしても、寒い中なかなか大変ですし、患者の皆さんの問題も心配ではあります。そういう点では、おっしゃることは同様に考えておりますが、その行動される皆さんの方は、そういった問題を全国民の皆さんにも理解してもらいたいという趣旨もあるようでありまして、具体的にこの点とこの点がどうなればどうするというような形には必ずしもなっておりません。そういった意味で、時間は余りありませんが、具体的な提案がありましたら、それをできる限り前向きに受けとめていきたいと思っております。  ただ、和解の中身につきましては、他のいわゆるメーカーなどの被告とか、いわゆる裁判官のこれまで進められたこともありますので、基本的には和解の場で積極的な形で取り組んでいきたい。これは総理の施政方針演説の中でも言っていただいておりますし、先ほどの三党合意の中でも言っていただいておりますので、和解による早期救済ということについては、この座り込みがあるなしにかかわらず全力を挙げたい、このように考えております。
  174. 田中昭一

    田中(昭)委員 ぜひこの問題については、被害者、患者の皆さん方には何一つやはり責任はないわけですから、したがって、この和解の場で早急にこの問題の結実ができるように、さらなる御努力をいただきたいと思います。  それから、できればきようでも患者の皆さん方、代表の皆さん方と話し合いをしまして、今後の話し合いの展望などについて意見交換をして、できればあすからの座り込みなどについてはそういう事態に至らないように、私はやはり大臣としての御努力をぜひお願いをしたいと思います。  それから、時間がございませんが、私は橋本総理に少しお聞きをしたいのですが、人間の生死にかかわる問題です。人間の尊厳にかかわるこのような問題。裁判でも争われて大変なこのような状況の中で、大変大切な資料が隠されておった、それが簡単に発見された。こういう状況は、私は、非常に重大な問題じゃないかな、こう思うのです。  勘ぐってみれば、お役人の皆さん方がみずからの保身のためにそういう資料を故意に隠しておったんじゃないかな、こういう疑念で国民の側から見られても、私は、仕方がないんじゃないかな、こういうふうに思うわけですが、こういう点について、「人にやさしい政治」をつかさどる橋本総理として、どういう御見解なのでしょうか。私は、水俣病をやったときも、冷血とか厚顔とか無責任とか、そういう言葉を何回もやはり被害者や患者の皆さん方からお聞きをいたしましたけれども、今回の問題も、厚生省の中に必要な資料を隠しておったという、こういう状況については、私は許しがたい行為だと思いますが、いかがでしょうか。
  175. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今委員は、水俣の際の御体験を踏まえてお話しになりました。私は、スモンの和解のときに、やはり被害を受けられた患者の方々あるいは御家族から、当初随分厳しい言葉を浴びせかけられました。  今回の、資料が今まで発見されない、ないと言われていたものが発見されましたこと自体は、私はむしろ発見されたということで一つの喜びを感じております。同時に、それまでの探し方に対しては、残念でありますけれども、なぜもっと真剣に探してくれなかったのかという思いはございます。  しかし、今、隠されていたという委員は表現を用いられましたが、私は隠されていたとは思いたくありません。むしろ探し当てた、その資料が今後和解の上で基本的に大きな役割を果たしてくれることを、そしてまさに、何ら責任のない発症者に対し、あるいは原告の方々に対し、公正な結論が出されることを願っております。
  176. 田中昭一

    田中(昭)委員 スモンの際の当時の橋本厚生大臣の御活躍はお聞きをいたしておりますし、菅厚生大臣の御努力もよく理解をいたしておりますから、ぜひ、コンビを組んでいただきまして、これらの問題の早期解決にさらに御努力をいただくようにお願いをしたいと思います。  持ち時間がなくなってしまいまして、社会民主党御出身の労働大臣と郵政大臣に御質問をする予定でございましたけれども、時間が切れてしまいまして、次の機会にさせていただきたいと思います。  終わります。ありがとうございました。
  177. 上原康助

    上原委員長 これにて田中君の質疑は終了いたしました。  次に、錦織淳君。
  178. 錦織淳

    ○錦織委員 今、政治の側に立つ者が議論し、解決しなければならない問題は、住専以外にもたくさんあるわけでございます。そういう意味では、私も多くのことについて質問をしたいと思うわけですけれども、わずか二十分という限られた時間でございます。そしてまた、この住専問題を早く決着をつけないといろいろな不都合が生じてくる、こういうこともございますので、本日もあえて住専問題のみ質問をさせていただきたいと存じます。  ところで、いろいろこの予算委員会議論をしてまいりまして、相当程度論点が絞られてきたかなという気がすると同時に、まだやはりこの全体像についてきちんとした整理が行われていないというもどかしさも感じます。特に、新聞、テレビ、いろいろなものを見ておりますと、意図的に、あるところだけに争点を絞って、そしてそこだけをほじくって議論をする、こういうようなものも非常に多いわけでございます。そこで、やはり私は、こうした国民の側に、この問題の所在と、そして政府・与党の提案をした解決方法の当否を正しく判断してもらうためには、ここら辺で論点の整理が必要ではないかな、こういうふうに思います。  そこで、一つのかぎは、母体行責任という問題でございます。母体行責任の重さについては、ほとんどの方が共通をして指摘しておられます。したがって、これは、お互いにもう共通の前提と考えていいのかな、こう思うわけでございます。  ところで、私は、住専問題の前に与野党なしということを前回申し上げました。そして、与野党なしという観点に立つならば、野党の方々からも具体的な解決方法の御提案をいただきたい、その解決方法というのは全体の一部を解決するものではなく、全体についてどう解決するかというものでなければならない、こういうことをお願いをしておきました。本日、草川委員の方から大変示唆に富む御提案をいただいたということは、少しずつこの予算委員会議論も争点が整理されつつあるのかなという意味で、非常に私自身は個人として好感を持って受けとめたわけでございます。  そこで、母体行責任についていろいろ言われているけれども、この母体行の責任というものが、いわゆる経営責任なのか法律的な責任なのか、それとも単なる道義的責任なのか、そういったことについてきちんとした定義づけもないまま母体行責任というものが議論をされております。そして、仮にここで住専の損失額の負担をどう分けるかということになりますと、最後は金額、数字という問題になってまいります。当然そこには法的な観点を入れていかなければならないわけでございます。  そこで私は、野党の、特に新進党の方が提案されておられる法的手続にゆだねるということの意味が非常にあいまいであるというふうに思います。なぜならば、住専という七つの会社を解体をして、そしてその清算手続、これを破産法にゆだねるのかあるいは再建型の会社更生法にゆだねるのか。そのことはともかくとして、住専とそれから母体行との関係、そうした母体行責任は、ではだれが、どこで、どういう理屈で、どういう手続でその有無を決定するのかということが明らかになっていない、こういうふうに思うわけであります。  それで、母体行責任というのは、これはあくまで経営責任ではありますが、法的に考えれば、例えば共産党の方々が言っておられるように、これは、住専の七社は独立した存在ではない、こういう言い方を共産党の方はしておられます。その言い方を突き詰めてまいりますと、母体行責任というのは、つまりその子会社たる住専七社の法人格を否定することになります。そうなりますと、当然、親会社たる母体行が子会社七社のすべての債権債務を引き受けなければならない、こういうことになるわけですから、住専七社に対して債権を持っている例えば系統金融は、そのまま母体行に対して全額その貸し金の返還請求をすることができる、こういうことになるわけでございます。そういう意味での母体行責任なのかどうかという点が一つ。  そうしますと、逆にこれを母体行側から見ますと、そうした重大な法的な責任を裁判手続を経ないで認めることができるかという問題がございます。例えば母体行には株主が背後に控えておりますから、当然株主から見ますと、みずからの出資をした株式会社の銀行が、法的な手続、裁判手続も経ないで母体行責任を法的に、例えば丸々住専の債務を全部引き取るというふうなことを認めることができるかどうか。こういうふうに考えてみますと、これはなかなか困難であろう、常識的に見てそう思うわけでございます。  そのように考えてみますと、母体行責任、母体行責任と言うけれども、ではそれをどういう手続で、だれが判断するのか、こういったことについてはっきりさせておかなければ、この議論はただ混乱するだけで、ちっとも前に進まないわけでございます。  私は、そういう意味で、今回の政府・与党の提案をしたこの枠組みというものは、そうしたものについてさまざまな判断から、総合的な見地から、今のような法的な責任、経営責任、あるいは場合によっては行政の側の責任も踏まえた上で、総合的な見地からこうした点についての一つの解決案を、いわば仲裁判断と申しましょうか、仲裁裁定といいますか、そういう形で指し示したもの、このように理解をいたしておりますが、大蔵大臣、いかがでございましょうか。
  179. 久保亘

    久保国務大臣 母体行の責任の重さについては、皆様方からも多く御指摘をいただきましたし、また、今回の住専問題の処理に当たりましても、そのことは私どもといたしましても強く考え、この処理方策をまとめてきたものでございます。  ただ、今、錦織さんは法律の御専門家でいらっしゃいますから、私も注意深くお話を伺いました。母体行に対して法的に責任を問うことができるかどうか、それは、今後責任問題を追及します中で、そういう問題があり得るのかどうかということは、今後の解明に係る問題があると思います。  しかし、今日、母体行に対しては、設立以来の経営にかかわってきた母体行の責任を重く考えた上で、母体行に対して債権の全額放棄ということを合意を求めているのでございまして、それ以上の法的な、強制できる母体行の責任のとり方というものは、私どもはそれを今申し上げることは大変難しいと思っております。
  180. 錦織淳

    ○錦織委員 結局、三つの考え方が今出ているように思われます。一つは、政府・与党の提案でございます。もう一つは、新進党の、まあ全体かどうかわかりません、少なくとも一部の方が言っておられる会社更生法とか破産法にゆだねるべきだ、これが二つ目の考え方でございます。三番目の考え方は、共産党の方の、全面母体行責任ということでございます。  私は、三番目の全面母体行責任というのは、法律的に果たして、それを現段階で、裁判などの手続を経ずして一〇〇%すべてのものを持たせるという意味で負担させることができるかどうか、これは大変重い問題であるという難点があろうかと思われます。そして新進党の方々の御提案は、結局、七社についての解体の手続あるいは再建の手続についての提案はあるけれども、母体行責任の判定、それがあるかないか、では金額はどうやって決めるのか、そうした点についての御提案をいただかない限り、これは対案として私は完結をしない、こういうふうに思っております。そういう点で先ほど来の質問を申し上げたわけでございます。  そこで、政府の側にお願いでありますが、そうした議論の整理をもう少し政府の側も積極的にやっていただいて、わかりやすい御説明をお願いをしたい、このように考える次第でございます。  そうした点から、少し具体的な問題に入ってまいりたいと思いますが、今般、政府の側から提案をされました特別措置法でございます。これについて、まず幾つか重要な問題がございます。  これはこの法案の生命にかかわる問題であり、また、これが果たして、公的資金導入する、税金を使う、こういう意味で正当性を持ち得るかどうかということにかかわる非常に重大な点でございますので、ぜひ総理に確認をしたいのでございますが、今回の住専の処理に関する特別措置法の対象となっている「譲受債権」という言葉が出てまいります。これは、現在のこの法案の八条のところに、「譲受債権等」ということで、「貸付債権その他の財産」という言葉が出てまいります。この中に損害賠償請求権が入るということは、銀行局長が既にお答えをいただいております。  私は、当然、この住専処理機構が七社の積極財産、プラスの財産はすべて引き受けるべきだ、また、この法案はそういうふうに読むべきだ、こういうふうに思っておりますが、それでよろしいのかどうか、これが第一点でございます。  そして次に、それに直接にかかわりますが、法律の目的でございます。この法律の目的の中に、住専の「債権債務の処理を促進する等のため、」このようなことがうたわれております。しかし、この法案に、公的資金導入する以上、何らかの公的利益がそこで確保されていなければならない、このような観点もございます。  また、八条の「譲受債権」の中に、関係者に対する住専七社の持っている損害賠償請求権、こういったものが譲り受けられるならば、そしてその損害賠償請求権が適切に行使されて、そして例えば担保の評価割れを起こした結果債権が満額回収できなかったが、それを損害賠償請求権とかあるいは不当利得返還請求権とか、もろもろの方法でもって返還請求を求めて、そしてそれを回収することができるならば、結果としてその分だけ担保の目減りした分をリカバーできるわけでございます。そうなりますと、理の当然の結果として、国庫に対する負担は軽くなるわけでございます。  したがって、この法案の基本的な考え方として、そうした損害賠償請求権やあるいは不当利得返還請求権などのすべての債権を譲り受けること、そしてその反面として、そうした関係者に対する民事責任を徹底的に追及していくということがこの法案の目的に入っている、このように理解をいたしておりますが、そのような理解でよろしいのかどうか、ぜひとも総理の口からお答えを賜りたいと思います。
  181. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 大変大事なポイントをお尋ねいただきましたが、住専処理機構が譲り受けをいたします一切の資産の中に損害賠償請求権は含まれております。そして、当然のことながら、これにつきましても回収の努力全力を挙げて尽くすわけであります。  そして、法案の目的の中には、民事的な責任の追及によりまして回収を進め、財政負担を減らすことも含まれておる、そのように私も理解をいたしております。
  182. 錦織淳

    ○錦織委員 それでは、次いで少し技術的な質問に移ります。  これは銀行局長で結構でございますが、そうしますと、住専処理機構という新しい会社を設立をいたしまして、そして住専七社の各社から「譲受債権等」と定義された債権その他の資産を譲り受けるわけでございます。その場合に、どういう契約書あるいは協定書を結ばれるかという細かいことはよろしいのですけれども、その譲り受けるべき資産は住専七社の持っているすべての資産が含まれているかどうか、こういう点でございます。  先週の金曜日の九日の日の御答弁によりますと、特定の問題が議論されております。ある程度特定されているというような表現をしておられますけれども、しかしそれは、例えば、できるだけ特定した方がよろしいという次元の問題と、それからまた、特定していないと債権譲渡の対抗力を債務者に対して持てない、こういう技術的な問題はともかく、基本的な考え方として、住専七社の持っている積極財産、プラスの財産、それらはどのような名目のものであろうとも、どのような種類のものであろうとも、すべて住専処理機構が包括的にこれを譲り受ける、こういう契約をこの法律によれば締結することを要求されている、このように考えますが、いかがでしょうか。
  183. 西村吉正

    ○西村政府委員 今回のスキームにおきましては、住宅金融専門会社の貸付債権その他の資産のすべてを住専処理機構が譲り受け、積極的に回収処分することとしているところでございます。  なお、お尋ねのございました、損害賠償請求権はどのような形で特定される必要があるのかという点でございますが、損害賠償請求権については、まず第一に、債務者及び責任の事由がある程度特定されたもの、例えば、特定の機関の取締役全員の商法第二百六十六条に該当する行為であるとか、そういうようなある程度特定されたものであるほか、第二に、その他住専が保有する損害賠償請求権を譲渡の対象とすることができると理解をしております。  したがって、この第二に述べましたものも含めますと、非常に広い意味での損害賠償請求権を承継するというふうに理解をしております。
  184. 錦織淳

    ○錦織委員 もう一度整理、確認いたしますが、要するに、住専七社とそれから住専処理機構との間に最終的に契約を締結するわけですね。その契約締結の対象となっている譲り受け資産というものが何であるのか、こういう問題でございます。  私は、先ほど来申し上げているように、すべての資産、すべての損害賠償請求権あるいは不当利得返還請求権、一切のそうしたプラス財産が住専七社から住専処理機構に移るということでなければならないと考えるわけであります。  その場合に、例えば、観念的には既に発生している、例えば非常に悪質な仲介者がいて、そして住専に対して悪質な貸付先を詐欺的な手口によって紹介をした、その結果、住専のある一社がその貸出先に貸したお金が回収不能になった。こういうことを想定をいたしますと、場合によっては、その紹介者、これは別に母体行でなくたって暴力団であろうと何であろうと構わないわけですが、そうした詐欺的な手口によって貸出先を仲介、あっせんした、こういうようなことがあった場合に、その紹介者に対して損害賠償請求権を行使することは可能なわけです。そういうことがあるいは発生しているかもしれぬ。  しかし、譲り受ける契約を締結する段階では、そうしたものは具体的にまだ姿がはっきりしておりません。しかし、それは、過去の事実に基づく以上、その請求権は理論的には住専七社に既に発生しているわけです。しかしそれを、相手方がわからないからということで表現することはできないわけですが、しかし、その協定なり譲り受け契約の中に、そうしたものも含んで一切の債権、プラスの資産を引き取る、こういうことをきちっと明示する必要があるのではないかということを申し上げているわけです。  もう一度確認をいたします。
  185. 西村吉正

    ○西村政府委員 これは、御指摘のように、承継するときの譲渡契約の内容をどのように決めるかということでございますけれども、例えば、その譲渡契約の内容といたしまして、取締役及び監査役全員のこのようなことに関する損害賠償請求権とか、あるいはどこどこの銀行の民法七百九条に該当する行為により住専がこうむった損害に関する損害賠償請求権、これもかなり包括的でございますけれども、さらに加えて、その他住専に対する不法行為、債務不履行等により住専がこうむった損害に関し住専が有する損害賠償請求権というような契約内容といたしますならば、住専が持つ損害賠償請求権をほぼ網羅的に住専処理機構に譲渡することはできるのではないかと理解をいたしております。
  186. 錦織淳

    ○錦織委員 時間が参りましたので、御要望だけ申し上げておきますが、いずれにしても、総理御自身のお言葉で、この法の目的というものの中に、関係者に対する法的な責任の追及、特にこの法案の構造からいきますと、民事責任の追及というものが骨格になろうかと思われます。そこで、法的な責任を追及すべきだ、あらゆる相手を捜し出してきちっと責任をとらせる、こういうことが今国民の大変関心事でございます。そういう点で、そうした法の目的が十分に達成されるよう、例えば契約締結作業あるいは住専の処理機構の仕組み、そういったものを十分今後も詰めていただきたい、これを最後に要望いたしまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  187. 上原康助

    上原委員長 これにて錦織君の質疑は終了いたしました。  次に、松岡滿壽男君。
  188. 松岡滿壽男

    ○松岡(滿)委員 新進党の松岡滿壽男でございます。  本国会は住専国会と言われておるわけでありますが、私も予算委員の一人として今までいろいろな議論を伺ってまいりましたが、まさに今、日本が置かれている非常に厳しいさまざまな問題、例えば中央集権から始まりました一極集中、過疎過密の問題、官と業との問題、あるいは人間としてのやはり品格の問題、さまざまな問題がこの住専議論の中から浮き彫りにされてきておるわけであります。  まさに大きな構造改革を伴う、痛みを伴う変革をしなければならない時期に日本が差しかかっておる。愛知さんがこの席でも発言しておりましたけれども、革命とか戦争とか、過去におきましてはそういう角度での変革がなされてきたわけでありますが、平和裏に痛みを伴うさまざまな改革をしていくということは、これはもう大変苦しいことだというふうに思います。  たまたまその時期に当たりまして、橋本総理が大変御苦労をなさっておる姿を拝見させていただいておるわけでありますが、私は、きょうは、先行議員は法律家とかいろいろな方々が出られましたが、私はやはり、国民の率直な気持ち、心、立場、そういうものに立ちまして幾つかの質問をいたしてまいりたいと思いますので、よろしくひとつお願いを申し上げます。  この連休三日間、山口県の田舎に帰ってまいりまして、我々新進党といたしましても、それぞれの県で県民会議住専に税金を投入するなということで組織しまして、街頭演説あるいはまた署名運動を展開をいたしてまいりました。  私自身も実は、総理幹事長時代、消費税の導入で大変御苦労をなさったわけでありますが、消費税のときには、一つの大義といいましょうか、やはり直間比率を是正していくとか高齢化社会に備えるとかいうものもありましたし、そのときに反対をなさった社会党の皆さん方も、その後はやはり、来年の四月から消費税を五%にするという形での一つの大きな流れというものができてきておるわけでありますが、どう考えても、この住専問題の処理は、国民の方から見ても納得できる話では全然ないわけなんですね。だから街頭演説しましても、だんだん山口県も人口が減ってきておりますけれども、随分集まられますし、ほとんどの方が進んで署名をされています。あっという間に、もう万を超すぐらいの署名が集まってきておるわけであります。これは何に原因があるんだろうか。  確かに、大きな制度を変えるときには、さまざまな、いろいろな意見が、今の時代ですから当然あります。しかし、やはり私は、今回の問題、国民から見て、国民感情から見て、どうも理解できない。我々もここで伺っておって、どうものど元の通りの悪いお話をなさる。結局、全体像というものがやはり見えないし、群盲象をなでるの例えじゃございませんけれども、どうもしっぽをつかまされて、これが住専だよというような話になる。  例えば金融システムの安定化と大蔵大臣すぐおっしゃいますけれども、国際公約、そうであるならば、先ほど来先行議員もいろいろ意見が出ておりましたが、ノンバンク、これにはもう絶対公的資金は出さないという言明をされておられるわけでありますけれども、あるいはその他の金融機関不良資産は山ほどあるわけですね、二百数十兆ある。しかも一極集中の弊害で過疎過密が出て、地域の農民、農村は大変苦しんでおる。そういう全体像の中で農協があるんだというような話ならいいんだけれども、そういう話じゃ最初はなかったわけですね。だんだん議論しているうちに一つの大体のものはおぼろげながら見えてきました。  しかしながら、それだからといって国民に一人当たり五千五百円を負担させると、こういう説明にはこれはなり得ないわけですね。ですから、その辺のまず、知らしむべからず、よらしむべし、おまえらは黙ってお金を出しなさい、こういう姿勢では、やはり今は個の時代になっておるわけですから、やはり十分な説得にならないだろうというふうに思うんですね。  そういうことで、当初御就任のときに非常に支持率が高かったわけですけれども、きのうきょうの新聞を見ますると、一気に一五%、二〇%支持率の低下になってきている。これは、やはり当初、社会党から自民党にかわったということでの期待というものが国民の中にあったんで、それぞれ最初から一五%ぐらい上げ底だったんじゃないかというようなことを言っているマスコミもおりますけれども、大変失礼なことでお許しいただきたいと思うんですが、そういうことから見ても、国民の怒りというものはかなり大変な盛り上がりになってきておると思うんです。  ですから、こういうことじゃなくて、全体像がどうなんだと、こういうことだから、日本の国がこういう病状に今なっているんだと、だから、ばんそうこうを張ったり、それこそ西岡さんの話じゃないけれども、まだお医者に診てもらわずに、病状もわからぬのに薬だけ先に出てきちゃったと、こういうことに今やはり国民は私は怒っていると思う。だから、どこが悪いから切開すればどうなるんだというきちっとしたことを、情報を全面的に開示する、そして、悪いことをした人の責任はきちっとこうやってとらせるんだ、こういう部分がないとやはり国民は納得しないんじゃないかと思うんです。国民のそういう声に政治家は謙虚にやはり耳を傾ける、政府はこれを重視して政策に誤りなきを期すということがやはり基本でなければならないというふうに思うんです。  で、なぜその国民の批判や疑問に一切答えずに、ひたすら緊急だ、急ぐと、いっときも早く六千八百五十億円を投入しなきゃいかぬのだというお話でございますけれども、六千八百五十億円というのはこれはもう大変なお金なんですよね。我々山口県、百五十五万しかおりませんけれども、一年の予算が大体六千億から七千億、そして、本当に去年一年間で一万五千件の中小企業が倒産しているんですよ。それで、それぞれ法的処理に従って清算してきている。これも十年ぶりの高い水準なんですね、倒産が。  民間はそれだけ苦しみ、中小企業の皆さん方だって五千万近い方が働いておられる。ところが、そういう皆さん方は、二十兆円近い税金をつぎ込みながら――ことしだって中小企業庁の予算は千八百五十億円ですよ、たった。それで中小企業対策をやっているんだ。やはりそういうさまざまな矛盾の中で、バブルで破綻した民間会社のツケを国民が負担しなければならない。しかし、阪神大震災で家をなくした市民は今住宅ローンを払い続けているじゃないですか。  私は、こういう庶民の素朴な疑問に対して総理はどのようにお答えになるのか、ひとつ国民にわかるようにお答えをいただきたい。お願い申し上げます。
  189. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 現在我が国の景気は、ようやく明るい指標が見え始めたといいながら、雇用におきましても、議員みずから御指摘になりましたように、中小企業の景況におきましてもなお極めて厳しいものを持っております。しかし、ようやく回復の兆しというものが見えてまいりました。しかし、その景気の流れというものも、必ずしも力強く間違いなしに、これで完全に回復基調に乗ったと言い切るだけの力がありません。  その原因の大きな一つは、私は、我が国のやはり金融システムに対する不安、もっと率直に申しますなら、我が国の金融が抱えております不良資産、そしてその不良資産の処理というもの、これについての方向性が定かになっておらないというところに一つの原因があろうかと思います。  もちろん、それだけが原因ではありません。その流れの中には産業構造の変化も当然あります。製造業の海外移転とそれに伴う国内における空洞化、さまざまな問題が組み合わせられていることは事実でありますが、その中の一つの大きな要因として、やはり私は金融機関の抱える不良資産というものが影を落としていることは否めないと思います。  そして、大蔵省金融機関調査の結果、今申し上げておりますのは、その資産総額が約三十八兆円ということであります。そして、その三十八兆円に上る不良資産の中で象徴的な存在となり、また喫緊の課題として処理を迫られているものがこの住専の問題であります。それは、関係者が多数ありますこと、そして、その多数の母体行あるいは一般行の入り乱れております中にまさに一つの横の大きなけたあるいは柱のような形で系統系金融機関がかかわっている。まさに一つの象徴的な存在であります。  そして、まずこの住専問題を処理し、不良資産の処理を早急に進めていくことが、我が国の金融システムに対する信頼を取り戻すことであり、同時に、この間の金融自由化の流れの中から当然変化していかなければならない金融行政というものが、いわゆる護送船団方式と言われた時代から自己責任原則に基づいた金融行政へと変化をしていく、その変化をしていきますためにもこの問題を急いで処理する必要性があることは、繰り返し申し上げてきたところであります。  ところが、この住専問題と申しますものが、いろいろな言い方はできましょうけれども、本委員会の御論議の中でも、処理が次第次第におくれて、そのたびにその傷口を広げてまいりました。もうこれ以上後ろに送ることはできない、あるいは先送りすることはできない、この機に決着をさせなければならない、これが私どもの思いであります。  そして、昨年の春以来、政府部内においても、また与党の中におきましても、さまざまな議論がなされてまいりました中で、殊に昨年の十一月、十二月、関係者の中でぎりぎりの議論を行ってまいりました結果、最終決定をしたスキームというものを今各位に御論議をいただいておるわけであります。  そして、この予算委員会の最初に米沢幹事長質問に立たれました。その最初の御質問に際して、関係者のぎりぎりの論議を行っている、その結果として逆に、国民に対する情報の開示がおくれ、説明がおくれたことは本当に申しわけがないと思いますということから私は答弁を開始した記憶がございますが、そうした情報開示等のおくれについては、私ども、おわびを申し上げなければなりません。  しかし、国会が始まります前にもでき得る限りの資料政府としては提出をいたしてまいりました。そして、国会から御要請のありました資料につきましても、所定の手続を踏ませていただきました上で、でき得る限りの開示に今日も努めてまいっております。  こうした努力を積み重ねていきます中で、少しでも私どもは国民に御理解をいただき、この住専問題を処理していくことが、次のステップである日本金融システム全体の抱えております不良資産の処理につながっていく、そしてそこに、信用組合はちょっと別にいたしますけれども、私どもは、預金保険機構の保険料率を引き上げていくことによって、その中でその必要な財源は賄っていこうと考えているわけでありまして、これからの金融システムの信頼再構築のためにも、ぜひ国民の御理解を賜りたいと願っております。
  190. 松岡滿壽男

    ○松岡(滿)委員 まあ、総理基本的なお考え方だろうと思うのですけれども、私は、やはり今の国民は情報の開示というもの、これは基本的に、政治をやっていく場合に大切なことだというふうに思いますね。  私ども新進党としては、この委員会が始まりますまでに、八十項目につきまして資料の開示をお願いいたしまして、前日に四十一項目、そういうことで、三十日の初日に米沢幹事長がここで立ちまして、改めてまた十項目御要望申し上げ、それが受け入れられなかったものですから退席をいたしました。もちろん、これに対して国民のいろいろな御意見は私どもに届いておるわけでございますけれども、しかしながら、そういうことをしなければ資料が出てこないということも現実であったわけですね。だから、それはもう過去のことは振り返りません。  しかし、いずれにしましても、基本的に大事なことは、「もんじゅ」のときもそうでありますし、今回のHIVの問題、これは後ほど触れたいと思いますけれども、やはり私はそういう物事を包み隠す、臭いものにふたをするという姿勢ですね、これは改めなければならないことだと思うのです。  今度の問題も、だから、例えば十三兆住専問題は貸出残高があって、そのうち八兆ぐらいある。それを一次処理、二次処理に分けて出している。しかも、その後また何かあるかもわからない。しかし、マスコミ情報が最近いろいろな、各種のテレビあるいは新聞、いろいろなのがございますから、国民の方には情報がどんどん行くわけですよ。どうも何か、ノンバンクが何ぼあって、その他金融機関ではどうなっているんだ、銀行の方は頭取の年収額がこれだけだとか、わあっといろいろな情報が、中島さんがどうなったとか、我々なんかよりよっぽどよく国民の皆さん方は情報がわかっているわけです。  ところが、正面切ってお願いすると何も出てこない。隠してしまう、うそを言う、そういう姿勢に対する不信が基本的にあるということは十分おわかりいただいておると思うわけでありますが、今回の住専問題につきましても、どうもその辺がすっきりしない部分が実は最初にあったということを申し上げておきたいというふうに思うんです。  それで、今回の問題につきましても、私はどうも、久保大蔵大臣の御答弁いろいろ伺ったわけですけれども、今度は武村さんがまたいろいろな話をしておられるわけですよ。そうすると、国民の方から見て、一体どっちの意見が本当なんだと。最初は、住専問題については、金融システムの安定と、国際的な公約もあるというような御説明だったのだけれども、どうも覚書その他の存在があって、これはやはり農協の問題らしいと。それはそれで私は非常に大事なことだと思っているのですけれども、そういう流れがずっと出てくるということになると、最初の話から変わってきている。  例えば、武村さんが、二月十日付の朝日を見ますると、農協系金融機関贈与する五千三百億円の積算根拠について、その根拠となるデータを見ていないと言っておられるのですね。ここの議論では、五千三百億円きちっと積み上げたというような御説明があったわけですが、要するに、この数字については結局何ら根拠はなくて、大所高所から総合的判断だということになっておるわけですね。そうすると、これまで政府が主張してきた、関係省が積み上げ数字という答弁と正反対の証言が行われておるわけであります。  私は、金融システムの安定のためには、第一に政府の厳正的確な財政運営、第二に金融機関への国民の信頼が不可欠だと思うのですね。ところが、実際にこの予算をつくられた大蔵大臣、前の大蔵大臣がそういうことを言っておられる。つかみ金として五千三百億円を出せば、残りは財政資金、つまり国民の税金で穴を埋めるというやり方で、どこがこれは金融システムの安定なんでしょうか。  大蔵大臣に伺いたいわけですけれども、武村大蔵大臣に、この発言について確認されたことがあるのかどうか、ちょっと伺いたいと思います。
  191. 久保亘

    久保国務大臣 直接確認をいたしているわけではございませんが、このインタビューにかかわる新聞の記事を詳細に見てみますと、確かに「資料としては見ていない。」こう言っておられますが、「農協系体力が弱く資金に余力がない。信連の半分くらいが赤字に転落すると聞いた。」つまり、この損失の負担いかんによって信連が半分くらい赤字に転落するという報告武村さんも受けておられるわけです。したがって、そのような報告には当然一つ根拠があって報告がされているのではないかなと思っておりまして、最初の「資料としては見ていない。」という部分だけではいけないんじゃないかと思っております。  それから、「これが緻密でない、いいかげんな数字というのではなく、大所高所からの総合的な判断というふうにとってほしい。」ということも言っておられるのでありまして、私も、お目にかかる機会がありましたら、この問題についてはしっかりお聞きしてみたいと思っておりますが、言われるように、何にも資料なしで手づかみでやったというようなインタビューの回答ではないように私は思っております。
  192. 松岡滿壽男

    ○松岡(滿)委員 私は、この予算を組まれた当事者としては非常に重大な発言だというふうにやはり受けとめざるを得ないと思いますね。だから、こういういいかげんな数字根拠に国民に負担を転嫁するということは、私は許されないことだというふうに思うんですよ。  それで、確かに信連の問題、地方にとりまして重要な存在でありますし、今回の贈与につきましても、農家戸数で割ると九万幾らというような負担にもなるわけですね。だから、そういうことにつきまして、私は、このスキームを決めた前任者に対して、これを直接担当する大臣としてきちっと話をつけていただかないと、そういう前大蔵大臣の言っていることが真相に近いことであるならば、久保大蔵大臣の今までの発言というものについては、これは撤回をされなきゃいけないということになるわけですから、どちらかが正しくてどちらかが間違っているとしか私は思えないわけですね。だから、そういう御答弁ではやはりちょっと納得ができないという思いがいたします。
  193. 久保亘

    久保国務大臣 当委員会におかれても、政治家に関しても参考人招致をなさると承っております。武村さんが参考人として出席されるのかどうか、私正確には存じませんけれども、そのような機会を通じて直接御本人の口からその真実についてただしていくことでこの問題ははっきりするのではないかと思っております。
  194. 松岡滿壽男

    ○松岡(滿)委員 片方の方がおられぬわけですから、ここで議論しておっても仕方ないわけでありますが、もう一つ、先ほど草川議員も追及をされたようでありますが、母体行の抜け駆け回収の問題であります。  金融システムの安定のためには金融機関に対する国民の信頼というものがどうしても前提として必要なわけですね。ところが、こういう住専問題の全容がだんだんだんだんおぼろげながら見えてくるに従って、国民の金融機関に対する不信というものがどうも広がってくるような感じがいたすんですね。住専の母体行と言われる金融機関が、住専を利用して確実、有利な融資先を奪って、住専には問題のある融資先を紹介をする、さまざまな実態が次々に明らかにされてきておるわけです。  今回、地銀生保住宅ローンの母体行である銀行三行が住専処理策の決定後に住専への貸出金を回収していた、こういう事実が報道されています。住専処理の六千八百五十億円の財政負担を求めるために、政府は、母体行が債権を全額放棄、三兆五千億ですか、することで合意したと説明してこられたはずでありますが、母体行が抜け駆けの債権回収に走る、政府処理策は抜け穴だらけになる、不良債権のツケは限りなく国民にしわ寄せされる、これをでたらめと言わずして何をでたらめと言ったらいいのかという思いが実はいたすわけです。  こういう母体行の抜け駆け回収についてどのようにお考えなのか、金融機関のこのようなていたらくで、金融システムの安定、そういうことが言っておられるのかどうか、お伺いをいたしたいと思います。
  195. 久保亘

    久保国務大臣 再建計画に明示されておりますいわゆるニューマネーの優先返還条件というものが、三兆五千億、債権全額放棄の中に完全に包含されるのかどうかについて、私も詳細報告を受けて調査してみたいと考えております。  それで、この問題は、もしその再建計画における、明文化されておりますニューマネーの優先返還の条件も含めての全額放棄ということでありますならば、今御指摘の点については当然に母体行に請求せられるべきものと思っておりますが、それを含んでいたのか。草川さんに申し上げましたけれども、三兆五千億という債権の総額の見方と全額放棄ということと二つの条件を満たしていく中に、このニューマネーの優先返還条件というのがどういうふうにかかわるのかということによって決まってくると思っております。
  196. 松岡滿壽男

    ○松岡(滿)委員 一次損失処理におきましても、先ほど取り上げました武村大蔵大臣のつかみ金、そういう話や今の抜け駆け回収、非常に国民不在の大きな問題を抱えておるというふうに思うわけであります。  さらに、二次損失の処理については、ほぼ回収不能債権一兆二千億円の処理に当たることになっておるわけでありますけれども、回収可能債権と言われている五兆五千億円の中に回収困難債権が二兆円あるというふうに言われておりますが、回収可能債権が母体行によって抜け駆け回収されたり、また、地価の下落、これによりまして回収不能債権が限りなく膨らんでいくのではないかという危惧を持たざるを得ないわけです。  政府住専の債権に係る地価は九五年の路線価によって計算されていますけれども、国土庁が発表した本年一月一日時点での地価動向調査では、三大都市圏で、三カ月前に比べて住宅地で全体の六三・八%、商業地では九五・七%の地点で地価が下落をしておるわけであります。  こういう状況を見ますると、政府の二次損失処理も、極めて甘い机上の計算にすぎないと言わざるを得ないわけでありまして、前のあれですから大蔵大臣が考えられた処理案ではないけれども、前の方でありますけれども、自信を持ってこの二次処理案以外にないということを言い切ることができるんでしょうか。お伺いしたいと思います。
  197. 久保亘

    久保国務大臣 先ほどのお答えに少し追加をいたしますと、もしも母体行の責任に照らして優先返還の条件は認められないということになります場合には、この返還は三兆五千億を超えてくるわけでありますから、当然に全体のスキームが変わってくるものと思っております。  今改めて御質問ございました二次ロスとの関係でございますけれども、これは今申し上げました六兆四千百億の損失負担と一環のものとして全体のスキームができるわけでありますから、この二分の一の国の負担ということがもしだめであるということになりますれば、全体の仕組みが成り立たないという問題もございます。これはそこだけを論ずるというのではなくて、全体のスキームとして御検討いただき、ぜひ御理解を賜りたいと思うのでございます。
  198. 松岡滿壽男

    ○松岡(滿)委員 住専不良債権の問題は、平成三年から四年にかけて大蔵省が行った調査でその実態が明らかになっておるわけであります。しかし、何らの処置もとらずに、平成七年には不良債権が一・七五倍に膨らむという事態を招いてしまったわけです。この間大蔵省は、農水省の担当局長との間で住専再建は母体行が責任を持つという覚書を交わし、大蔵省は農水省に対して融資の元本は必ず返すという密約をしているというふうに伺っておるのですけれども、こういう事実はあったんですか。確認をいたしたいと思います。
  199. 西村吉正

    ○西村政府委員 住専問題の第二次再建計画を策定するに際しまして、関係者の合意を得べく農水省と大蔵省との間で努力をしたことは事実でございますし、その際、両者のこの問題に対する取り組みの姿勢を文書でまとめたのも事実でございます。しかしながら、その内容については、今御指摘のような元本を返すという密約があったということではございません。
  200. 松岡滿壽男

    ○松岡(滿)委員 寺村前銀行局長は、金融機関の再建は自己責任であり公的資金導入は考えられないと言っているけれども、梶山官房長官は、保証したのは事実というふうに言っておられるようでありますが、こうした重大な問題がやぶの中に置かれたまま真相がいつも隠される、責任の所在がいつも不明確になる。そうなってくると、どうしてこの財政資金投入なのかという理由すら極めてあいまいになってくるわけであります。  梶山官房長官は、大蔵省が農水省に元本を保証したということは、これ、おっしゃったわけでございましょうか。事実なんでしょうか、そういうふうに記事に出ておったんですけれども。
  201. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 元本を保証したというようなことを私は申し上げたことはございません。申し上げているのは、新しい金利が決まって損失を与えないということが言われたというふうに私は表現をした覚えはあります。
  202. 松岡滿壽男

    ○松岡(滿)委員 密約があったとすると、銀行局長が勝手にこのような重大な約束を秘密のうちに行っていいのかどうなのか、仮に密約を大蔵大臣が指示したのかどうなのかということになっていくわけですね。何かすべてやぶの中で、どうもお役所でやったことの後始末をさせられるとか、そんな感じがするわけですね。だから、責任の所在が非常にはっきりしない、そういう資格のある人たちが本当に話し合っているかどうなのかということすらわからないという状況であるわけです。  こういう覚書を仮にきちっと、覚書はもう我々もいただいているわけですけれども、それが法的な裏づけになるのか、裏づけがあるものなのか、あるいは政府の政策というものはあれで拘束されるものなんでしょうかね。これはちょっと、どなたにお伺いしたらいいのか。総理、その辺を教えていただけませんか。拘束されるものでしょうか、仮にそういう覚書があったとしたら。
  203. 西村吉正

    ○西村政府委員 私どもといたしましては、この住専問題は、量的にも質的にも非常に金融システムにとって大きな問題でございます。そういう問題を円滑に解決するために行政として可能な限りの支援をするということは、私どもの重要な任務であると考えているところでございます。  なお、覚書の件でございますが、この覚書は、先般も御説明いたしましたように、再建計画に沿って母体金融機関責任を持ってこの再建計画の遂行をしていくということについて農水省と大蔵省がその姿勢を定めたものでございますが、このこと自体が今回の問題の解決に直結しておるというふうには私どもは考えておりません。
  204. 松岡滿壽男

    ○松岡(滿)委員 結局、お金のやりとりというのは、やはり借りた方の責任、借りたものはきちっと返す、これがやはり基本ですよね。貸した方も、それだけのリスクがあるにしても、これで何らかの利益を得たいという思いで貸しておるわけですね。  ところが、それが焦げついてしまった。いろいろなやりとりで、こういう議論をしていると、都市に住んでいる人間と農村に住んでいる人間が憎み合わなければいかぬとか、あるいは官僚と民間が、おまえがけしからぬ、おまえがどうだという話になっていくわけですよ。これは日本全体にとって不幸なことです。ところが、お金を返すという段になると、通りすがりの国民に、おまえ、済まぬけれども焦げついてしまってな、だから五千五百円ほど出してくれや、これは山口弁で話してちょっと申しわけないのですが、そういう話になってしまうわけですよ。  だからこの辺、いつまでもその真相がわからずにやぶの中におる。やはり情報を明確に国民に知らせ、そして責任の所在をきちっとしていくという姿勢がないから、やはりみんな不安だし、先も見えない、疑問だということになっておるわけです。  私は、この覚書が住専処理に伴う損失負担を決定する上においてどうも重要な役割を果たしたように思わざるを得ないのですね。こういう法的な拘束力もない、何の根拠にもならない覚書は、本来私どもはやはり無効だと思うのですけれども、どうもそうでもない。そして私は、住専問題と信連の問題、やはり切り離してきちっとした対処を私たちはして、国民の総合的な理解協力、お互いが理解し合って、都市に住む人間も農村に住む人間も生きていくということが一番大事だと思うのですね。  何か今度の問題は、それをいたずらに仲を裂いてしまって、民間の人たちの官に対する怒りをあおるような形になってきている、それをやはり非常に心配を実はいたしておるわけです。  これはどうなんですかね、無効なんでしょうか。それと全然関係なしにやっておられるのでしょうかね。ちょっとその辺を教えていただきたいと思うのですがね。
  205. 西村吉正

    ○西村政府委員 昨年の夏以来、この覚書について世の中の御関心が高まった時点において私どもが覚書を公表いたしまして、その内容について御理解を求めたところでございます。したがいまして、決して私ども、本来覚書というようなものは公表すべき性格のものではございませんけれども、しかしながら、そういうことに御関心がある以上、私どもはその内容も公開して皆様の御判断にゆだねたところでございます。  なお、内容につきましては、先ほど申し上げましたように、再建計画について促進をするために関係者の間で意思統一を図ったものでございまして、そのことが直ちに直接今回の問題の決着に結びついているということでは私どもは理解をいたしておりません。
  206. 松岡滿壽男

    ○松岡(滿)委員 私は、過去官僚の皆さん方が日本のために果たしてこられた役割、非常に大切な役割を果たしてこられたし、その実績も評価するのですよ。しかし、昔は、いわゆる廃藩置県までは三百諸侯で地方分権だったわけですね。明治に入って、中央集権によって、先進国に追いつけ追い越せということから、いわゆる明治憲法の中で天皇の官僚、そして官僚立法ということもずっと行われてきたわけですね。それだけの質の高い人たちがそういう仕事をしてこられた。  ところが、敗戦によりまして、憲法第十五条で、これはやはり国民の固有の権利なんですね、皆さん方の採用と、それから罷免と。それで、全体のやはり奉仕者でなきゃいけない。一部の奉仕者であってはいかぬわけですよ。業界とか政治家とか、特定の人たちの奉仕者じゃいけないわけですね。だから、その原点にやはりここで立ち返らなきゃいけない、そういうところに来ておるのですね。  だから、国民から見ると、何で経済局長と銀行局長との覚書によって我々が、国民が五千五百円、また一万円、二万円になるかもわからない、それがわからないわけですよ。だから、そういうことになっていくと、官僚そのものに対する憎しみ、恨み、そこに中島主計局次長の話も出る、田谷さんの話も出る。そうすると、一体どうなっているんだ。それから、やれ空出張やらいろいろなことを北海道庁なんかでもやっている。だから、そういう不信が出ているときなのですね。  だから、これがあるから有効だ、これはお上で決めたことだからということになると、これはとんでもない話になると私は思うのです。だけれども、それはもう無効だ、そんなことはもう関係ないです、ただ金融システムの安定とか国際公約とかということならまだはっきりするわけですけれどもね。(発言する者あり)どうもその後ろにまた、後ろの方から不規則発言もありますが、だれそれの影があるんだとかいうことになると、ますます一体どうなっているんだ、そういう感じがいたすわけであります。  今度は住専処理機構の問題です。  これも回収を目的にして処理機構を設置するという方針が決定したわけですけれども、これまた何か複雑怪奇な機構でありまして、実効性ということになるとどんなものだろうかと実は思うのですね。住専機構の回収プロジェクトチームは住専の職員が当たるというわけでありますけれども、大体、住専の職員が、企業に飛び込んでとにかく金を借りてくれやと融資を頼んで歩いた人が、今度は取り立てに行く。私も十何年サラリーマンをやりましたけれども、これは大変なことじゃないかと思うのですね。  しかも債務者の大半は倫理観に欠けた借り手であるという可能性もあるわけでしょう。だから、もう既に開き直っている人もいるわけでしょう。払えぬのじゃなくてわしは払わぬのじゃということを言っている人もおるわけですよ。あるいはまた暴力団絡みの問題、いろいろ取りざたされているわけですね。そういうことで、非常に心配になってくるわけですよ。こういう実態の中で、公権力も持たない民間会社の処理機構がまともに債権回収ができるのか、極めて私は疑問に実は思わざるを得ないわけであります。結局、預金保険機構に回収を委託しなきゃならぬということはもう明らかな感じがいたすわけであります。  この住専処理機構は十五年にわたって設置するということでありますが、この機構を維持管理するためにどの程度の経費がかかるのでしょうか、これをちょっとお伺いいたしたいと思います。
  207. 西村吉正

    ○西村政府委員 この新しい仕組みをつくり出すに際しましては、二つの観点を考えたわけでございます。一つは、できるだけ効率的な債権回収を弾力的に行っていくという観点でございます。もう一つは、債権回収を強力に行っていくためには、やはり公共的な背景を持たなければいけないということでございます。その二つの要素を勘案いたしまして、今回の処理方策では、預金保険機構という公的な存在とそれから住専処理機構という株式会社組織による弾力的な存在と、両者が相まって準公的な機能を発揮することができるように考えた次第でございます。  そして今、経費についてのお尋ねでございますけれども、そのような二つの機構が最も効率的に運営されるように、経費についても最小限度の経費で、しかし弾力的な運用ができるように工夫をしながら考慮してまいりたいと考えております。
  208. 松岡滿壽男

    ○松岡(滿)委員 最小限度の経費といいますけれども、とにかく人員とか規模とか大体の経費、そういうものはわからないんですか。
  209. 西村吉正

    ○西村政府委員 預金保険機構につきましては、従来の業務のほか、新しい業務につきましては五十億円の出資金の運用益等をもって運営していくわけでございます。現在、預金保険機構には十数名の職員が働いておりますけれども、これを新しい組織としてつけ加える部分としてどの程度の人員にしていくか、今検討をしておるところでございます。  なお、住専処理機構につきましては、現在の住専では約二千人の職員がおりますけれども、先ほど、それを引き継いでいくようでは効率的な仕事ができないではないかという御指摘がございましたが、私どもは、その従来、現在でも住専で働いている人たちをそっくりそのまま引き継ぐということは全く考えておりません。  しかしながら、住専で働いていた人だからといって、これをまた完全に排除するという必要もなかろうかと存じます。この新しい組織を効率的に運営する上で、現在住専で働いている方々のうち、どのような人たちをどの程度、雇用を再びしていくということが適切かということは、新しい組織に不動産の精通者だとか法律の専門家だとか、そういう方々をどの程度織りまぜていくかということをも考えながら今後検討をしていきたいと考えております。その具体的な人員とか内容については、現在関係省庁の間で議論をしておるところでございます。
  210. 松岡滿壽男

    ○松岡(滿)委員 アメリカの整理信託公社、RTCの場合、五年間という期限の中で徹底的な債権回収に取り組み、成功したと言われておるわけであります。住専処理機構はなぜ十五年なのか。債権が雲散霧消するまで待つためなのかどうか。どのような理由、根拠によって十五年としたのか。  最初の説明ですと、この処理が、処理機構をつくった方がこれは早く済むのだという話でしたが、いろいろな議論の過程の中では、やはり法に従って破産処理あるいは会社更生法、豊田商事ですら五年間で整理できているわけですから、なぜこの十五年になったのかということにつきましての御説明をいただきたいと思います。
  211. 西村吉正

    ○西村政府委員 今回の処理案では、十五年以内を目途に処理計画をつくることにしておりますけれども、これは、住専から譲り受けた債権の回収につきまして、できるだけ損失を少なくしながら、しかしながら最も適切にこれを処理していくというために与えられる期間の限度と考えております。  もとより十五年かからずに処理をできる状況になれば、その方が好ましいわけでございますが、先ほど松岡委員アメリカの例をお引きになりましたけれども、アメリカの場合には、債権の流動化だとかあるいは不動産の流動化という面で、日本の現状と比べますと、非常に不動産というものをドライに処理していくという社会経済的な環境がございます。したがって、比較的短期間でかつ損失の額を少なく抑えながら処分をしていくということが可能なのでございますが、日本の場合に、アメリカと全く同じように進めていくということには、まだまだ社会経済的な地盤、環境が整っていないという面もございます。  したがいまして、そのような環境の中で、損失額を最小限に抑えながら、しかしながらできるだけ迅速にこの処分をしていくということで、十五年間の期間をお許しいただきたい、こういうことでございます。
  212. 松岡滿壽男

    ○松岡(滿)委員 そういう日米の環境の違いということもあるのでしょうけれども、政府住専処理機構について、RTCのシードマン元理事長が、住専問題の悪者を排除するという最低限の条件すら満たしていないと批判した、こう伝えられておるのです。債権回収の専門家発言として重いものがあるというふうに思うのですが、これは、大蔵大臣としてどのようにこの問題についてお答えがいただけるでしょうか。
  213. 西村吉正

    ○西村政府委員 RTCのシードマン元理事長は、このような問題の権威として、私どももその御発言にかねがね注目をしておるところでございます。  今御指摘の悪者の追及という問題でございますが、今回の住専問題の処理方策に関しましても、総理大蔵大臣からもるる御説明をしておられるように、責任の追及ということにつきましては、いろいろな方策を尽くしていると考えております。
  214. 松岡滿壽男

    ○松岡(滿)委員 私は、いかなる大義名分があろうとも、国民の血税を積算根拠もなく予算に計上してはならないと考えるのです。特に、多くの問題があり、疑問が解けない住専処理について、つかみ金のような形で財政負担をしてはならないと思います。このような処理策を許すならば、我が国の財政秩序は土台から崩れる、財政金融システムを混乱させ、国民生活に深刻な打撃を与えることになろうというふうに思うのです。  この際、政府は、このような処理策の誤りは誤りとして、財政負担について予算案から削除すべきだというふうに考えておりますが、大蔵大臣にお答えをいただきたいと思います。
  215. 久保亘

    久保国務大臣 国民の税金をこのような巨額に使用をいたしますことは、大変重要な責任を伴うものだと考えております。しかし、今日、日本の金融に対する内外の信頼を確保しながら、信用秩序を維持していく上での大変大きな懸念を生じております中で、特に住専をめぐる問題につきましては、速やかにこれを処理しなければならない事態に立ち至っていると思っております。  この投入いたします公的資金、つまり国民の税金は、住専を救済をしたり、あるいは住専に債務を負いながらこの債務を履行しない者を免責したりするようなものではございません。それらの問題を今後追及をしてまいります。そして、債権の回収に全力を挙げるために必要な処理機構をつくってまいります。そのことのために、私どもとしては、今回、日本金融システムの安定という大きな目的のために国民の皆様方の税金を使用させていただいて、そして、そのことによって国家の今日遭遇いたしております大変困難な状況を越え、武村さんの言葉をもってすれば日本経済の霧を払う。そのことのために私どもは今日このことが必要なことであると考えておりますので、今松岡さんからお話がございましたこの六千八百五十億を削除するという考えはございません。
  216. 松岡滿壽男

    ○松岡(滿)委員 今回の住専処理策は、どう考えましても、国家国民のための施策として理解することができないわけであります。少なくとも大蔵省、母体行、住専、貸し手、借り手の責任を明確にして、その上で国民が納得できる処理策を検討すべきではありませんか。このまま政府・与党が突っ走れば、国民の政治不信は回復不可能になると私は思うのですね。私は一人の政治家として、何よりもこのことをやはり恐れるのです。消費税のときはいろいろな大義が私はあったと思いますよ。今度の場合はどう説明のしようもない。  そういう中で、国民の不安は、とにかく今度の予算でも、国債発行二十一兆円。今までの二百二十兆プラス二十一兆円。それに、今、国鉄の二十七兆があります。いろいろな隠し借金を入れると三百兆ぐらいになるだろう。そのほかに、地方の起債残高といいましょうか、借入金残高、これは百二、三十兆に膨らんできているのですよ。そういう中で、どうも来年は、村山内閣で既に御決定のように、まあ九月までに議論するわけですけれども、消費税を今の三%から五%に上げる。  しかし、片方では、日本の産業構造が大きく変わってきて、特にいわゆる若い人たちも去年は十六万人が学校を出ても就職できない。ことしは恐らく二十万人ぐらいになるだろうと思う。後で時間があれば労働大臣の方にもお伺いするのですけれども、三・四%という厳しい失業率で、若い人たちのストレスより、むしろ中高年といいましょうか、今までの産業で働いている四十代、五十代の方々が先々一体どうなるんだろうかという思いで働いておられる。  その中で、住専、金融不安も出てくる、消費税も上がるらしい、高齢化はどんどん進んでいく、福祉は一体どうなるんだ、介護保険も何か導入するらしい。全体がこう見えないし、不安があるわけですね。そういうものにやはり的確に、日本の産業構造、こう変えていくんだ、今の過密過疎のいわゆる一極集中に対しては地方分権をこういう形で進めていくんだ、お役所についてもリストラするんだ、民間と同じ汗を流して、今四百四十何万おる国・地方の公務員の数はどうやっていくんだ、そういう姿のものがやはり出てこないといかぬと思うんですね。  今回だって財政危機宣言はしておられるけれども、じゃ、これから財政再建に一体どういうふうに取り組んでいくんだ。そこまで言うとこれは大変難しい話になってきますけれども、補助金問題は後ほど触れようと思いますが、国と地方とのかかわり方、いろんな問題について、もっときちっとした方針をやはり政府が示される、政治が示していくということをやらぬとみんな不安なんですよ。そこへもってきて、何か大きな石がまたぱっと飛んできたというような受け取り方だと私は思うんですね。  ですから、今回の住専問題について国民がどう考えているのか。国民の税金をこの金融システムの安定のために使うということであれば、やはり私は国民にこういうことを、まあこれからのスケジュール、よくわかりませんけれども、強行採決とかそういうことを仮にされるとすれば、そのした後でも、住専問題についてこれでよかったのか悪かったのか、民意を聞くということをやられるべきだというふうに思うんです。  それから同時に、自社さきがけ政権の中で今回自民党の橋本総裁が首相になられた。これはやはり、私は今までの社会党の首相と全然違うと思うんですね。だからそういうものについて、政策合意と言うけれども、そんなものは国民わかりませんよ。私は、やはりこういうことについて、この自社さきがけ政権でこれから困難な日本の荒波を乗り切っていくが、こういう方向で頑張るけれども、ひとつこれで認めてくれるかという形での信の問い方もあるだろうと思うんですね。  私は、橋本総理に、そういう基本的な政治姿勢といいましょうか、この困難な時代、本当に大変だろうと思いますよ、いろんなものをやりかえなきゃいけない、この際、三月ぐらいの時点で、そういう基本的なもろもろの問題を含めて国民に信を問うというお気持ちがおありかどうか伺いたいというふうに思います。
  217. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、何よりもまず日本の景気の回復がこの時期求められておると思っております。そして、その景気の回復のためには、先ほども御答弁を申し上げる中で現状への認識を申し上げましたが、何としてもやはり、ようやく明るさの見え始めました、そして方向の見え始めました景気というものが完全に回復軌道に乗りますためには、新しい予算というものが、年度がわりと合わせて切れ目のない形で続いていかなければなりません。そして、その予算の中にあります公共投資というものが民需を起こしてくれる、それだけの態勢を一刻も早くっくらなければならないと考えております。  しかも、それ以外にも、国際的にもさまざまな、例えばクリントン大統領の訪日を初めとするさまざまな問題を控えておる状況の中で、私は、景気の切れ目のない回復というものをまず求めたい、そのように考えております。
  218. 松岡滿壽男

    ○松岡(滿)委員 今回の一連の金融不祥事件、いろんな問題が出てきておるわけですけれども、公務員に対する国民の不信といいましょうか、そういうものがやはり高まってきている感じがいたします。まことにこれ、残念なことだと思うんです。元大蔵省主計局次長大蔵省幹部職員の不行跡についてここで申し上げる必要はないというように思いますけれども、官僚をチェックすべき所管大臣の対応が余りにも甘いのではないか。  前の大臣は文春にその擁護論とおぼしきものを書かれまして、城山三郎さんが大変怒って反論をしておられるわけであります。国民はこの政官のもたれ合っている構図を非常に疑問に思っているし、腹立たしい思いも実は私は持っていると思うのですね。だから、この前の例の「もんじゅ」の問題、その折のビデオフィルムが隠されていたという事件がありました。また最近は、血液製剤によるHIV感染の問題で、厚生省当局の、ないと言ってひた隠しに隠していた資料が発見されておるわけですね。  こういうものは、それぞれ人命にかかわる問題ですよ。人の生命にかかわる問題です。ここで既に多数の人たちが無念の死を遂げられておる事件でもあるにもかかわりませず、当局が責任回避のためにうそをついていたのじゃないかというふうに皆思っているのですね。国民の生命を犠牲にして省益だけを守るとか、みずからの官僚組織を守る、そういうことをしていたのじゃないだろうかという疑いを持っておるわけであります。  大蔵大臣、厚生大臣科学技術庁長官、それぞれのお立場から、この認識と全体の対応についてお伺いをいたしたいと思います。
  219. 久保亘

    久保国務大臣 公務員の綱紀の粛正につきましては、御指摘を受けるまでもなく、厳正に処していかなければならないと考えております。  大蔵省におきましても、幹部の中にそのようなことで国民の不信を招くような行為のありましたことについては、まことに遺憾に思っております。特に今後、監督官庁としては、業界との緊張感を絶えず持ち続けるよう努力をいたしたいと思っておりますし、また、公務員の綱紀にかかわる行為に対しては厳格な処分をもって臨みたいと考えております。
  220. 菅直人

    ○菅国務大臣 松岡委員のお尋ねの件ですが、御承知のように、先週の金曜日に薬務局長の方から、昨月二十三日にスタートいたしましたHIVの感染に関する調査プロジェクトとしていろいろ調査を進めていたところ、幾つかの従来見つからなかった資料が見つかったという報告を受けました。それについては今精査をしておりまして、裁判所でもいろいろと指摘をされた問題もありますので、できるだけ早い時期に公表を行いたいというふうに考えております。  その経緯につきましては私もいろいろ事務当局から聞いておりますが、先ほど総理もおっしゃいましたけれども、隠していたという言い方までしていいかどうか、これは国民の皆さんが判断されることかと思いますが、私の立場としては、一月の二十三日にそういったプロジェクトをつくって、一カ月をめどにして徹底的に調査をしてほしいということを指示をいたしまして、それにある意味ではこたえてこうした資料が見つかった、そういうふうに前向きに受けとめていきたい、このように考えております。
  221. 中川秀直

    ○中川国務大臣 「もんじゅ」事故につきましては、事故の発生はもとより、その後の情報公開等において不手際、不適切な対応がございまして、国民の皆さんにいろいろな不信感と不安感を与えたことは、極めて遺憾であると思っております。その意味で動燃事業団の責任は重いものがございますが、それを監督する当庁の責任もこれは当然明確にしていかなければならぬものであろう、こう思っております。  そもそもこれからの行政というものは、私は、アカウンタビリティーといいましょうか、説明する義務、責任が行政の側にある、こういうことが言えると思いますし、特に原子力の開発利用といったような問題に関しましては、やはり科学的安全と同時に社会的安全、言いかえるならば安全と安心、両方が必要だろう、こう思っております。そういうことを通じて国民の理解と御協力を得るということが大切でありまして、その意味では不透明な体制では進められませんし、また、安全や国民の損益に関するそういう情報については、徹底的に積極的に情報を公開していくということが肝要であろうと思っております。  先般、二月九日の金曜日の日に、とりあえずの当庁の調査結果を取りまとめて公表させていただきましたが、引き続きこの事実関係の把握に全力で努めてまいりたい、かように考えております。
  222. 松岡滿壽男

    ○松岡(滿)委員 ぜひお答えのようにしていただきたいというふうに思うのですが、先ほどもちょっと触れましたように、明治憲法の天皇の官僚から、戦後は、憲法十五条で言われておりますように全体の奉仕者というふうに位置づけられておるわけですけれども、どうもこの百二十年間、一貫してやはり明治憲法の精神というものが生き続けておる。これはいわば、一つには中央集権というシステムがずっと続いてきているということと、戦後の復興期に官僚の皆さん方の優秀な頭脳、力量というものが十分に発揮された時期がずっとあったわけですね。歴代の政治家、首相もほとんど官僚出身の政治家であったということが私は大きく背景としてあったというふうに思うのです。  しかし、基本的にやはり全体の奉仕者であるという立場にきちっと立ち返るべきでありますし、特定の業者の利益を優先したり、国益より省益を優先したり、まして組織のために天下り先を開拓するとか、そういうことがやはり今回のいろいろな一連の問題に背景としてありはしないかということを非常に危惧しているのですね。そして、その優秀な人たちがひたすら隠したりうそをついたりしているのではないかという疑問を、率直に国民の人たちが今持っているという現実が実はあるわけですよ。だから先ほど申し上げたように、官と民とのいろいろなトラブルが出てくる、あるいは都市型住民と農村のトラブルが出てぐる。そういうことにならぬように、お互いがやはりきちっと意見を交換し相手を尊重して、相手の立場に立って対応していくということが私は大切なことだというふうに思うのです。  こういう官僚、公務員のモラルの低下というものについて、やはり私どもは目を向けていかなければならないと思いますし、基本的に、住専問題で申し上げた、情報をとにかくオープンで開示していくということと、責任を明確化していく、いろいろな問題が起きたときに、この習慣だけはきちっとつけていかなきゃいかぬと思うのです。  今月の文春に城山三郎さんが官僚の自殺という巻頭言を出しておられます。その中で、前の武村大蔵大臣に対して激しく批判をしておられるわけでありますけれども、昔の明治憲法下の官僚は「右手に算盤、左手に論語」を持って頑張ったということを言っていまして、みずからを厳しく律しながら国家国民のために頑張っておる。最近はどうだ。「右手に権力、左手に私欲」、これは非常に残念だと思いますね。  やはり私は、それこそ明治時代の儒学者じゃないですけれども、私欲はあるべからず、公欲はなかるべからずなんですね。公のためにどんな欲望を出したって私はいいと思う。国民の幸せのため、国家の安全のために公の欲は大いに持ってほしいと思うんですよ。どんどん持ってもらいたい。だけれども、私欲だけは勘弁してもらいたい。これがやはり今国民の率直な感情だろうというふうに私は思うんですね。こういう問題について、総務庁長官の御認識、また御見解を承りたいというふうに思います。
  223. 中西績介

    ○中西国務大臣 松岡委員の御指摘については、私はそのとおりだと思います。したがって、こうした問題等につきましては、今まで出ておるいろんな問題については大変遺憾な思いを強くいたしております。  今後は、国民全体の奉仕者として、国民の疑惑、不信を招くことがないように、政府は官庁綱紀の保持を重要課題として取り組み、徹底を図っていかなくてはならぬと思います。そうすることによって、私は、今出ておるいろんな問題等につきまして官庁綱紀の保持をするためには、公務員一人一人の自覚と日々の努力を追求していかなくてはならぬと思っています。  そうした意味で、総務庁としてはこれから後、各省庁の皆さんにも御協力いただきまして、こうした事態が出ないようにぜひ私たちは総務庁全員で対処していかなくてはならぬ、こういう気概を持つべきだということを今皆さんに徹底をしておるところであります。  以上です。
  224. 松岡滿壽男

    ○松岡(滿)委員 今総務庁長官からお答えをいただいたわけでありますが、たまたま十日の日にテレビを見ておりましたら、大宅映子さんとそれから五代利矢子さんですか、対談をしておられました。それで、これは御謙遜で言われたんでしょうけれども、就任して一カ月になるけれども、あいさつ回りが忙しくてとても仕事の方まではということをちょろっとおっしゃったものですから、これは一体どういうことなんだろうかなと。大変今総務庁、行政改革でありますとか規制緩和の問題、今の公務員のモラルの問題、非常に重要な時期に、まあこれは御謙遜で言われたんだろうと思うんですけれども、お役所の方は、大臣御就任なさると一カ月ぐらいあいさつ回りに回られるということでしょうか。  今民間の方は、そんなことやったら皆会社は倒産しますよ。就任して一日二日で皆あいさつは済ます。それで、今回も製造業も若干利益を出したところもありますけれども、ほとんどリストラですよ。もうとにかく人員整理をして生き残ろうということで頑張っておるわけですよ。そういう中でさまざまな問題が出てくるから、みんな国民は怒るわけです。  これは、総務庁長官はそういうことはないだろうと思うんですが、たまたまテレビを拝見しておりましたらそういうお話が出ておりましたので申し上げたわけでございますが、お許しをいただきたいと思うんですけれども、総理、この公務員のモラルの問題ですね、これは本当に大事な、国民にとっても大きな財産ともいうべき官僚、そういう方々が、それだけ物すごく水準の高い方々でありながらいろんな事件が起き、そしてそれを皆、一番国民の嫌がる、隠したりうそをついたりしている現実がある。こういうことに対して、総務庁長官のお答えもいただきましたが、総理も国民に向かってお考えをひとつぜひお述べをいただきたいとお願い申し上げる次第です。
  225. 中西績介

    ○中西国務大臣 松岡委員の御指摘の点でございますけれども、全体的な中での言葉でありますが、誤解の点が少しあるようですから、釈明をしたいと思います。  五代利矢子さんの方から質問がございまして、行政改革、いろいろなさまざまなお役所の仕組みについて大変なことですね。改革すると一言で言うと大変ですけれども、具体的に動き出すといろいろなところから反論が出てくる。その辺の感じをどのように受けとめているかという質問があったわけです。  したがって、私の方から言ったとおりを申し上げたいと思います。  まだ、ようやく今就任したというあいさつ回り程度ですから、具体的に各省庁がどういう考えを持っているとか、そういう問題等について、まだ直接そういうことに接しておりませんので、これからだと思います。ですから、総括したり調整したりするために私たちがどのようにこれからしていくか提言できればと思っています。こういうことで答弁したのでありまして、私がこのときに特に主張をいたしましたのは、行政改革を初めとする問題点は、戦後五十年のこの行政のあり方なりが今問われておる。特に行政改革等を考える場合には、国民の目線で軸足をどこに置くかということを明確にした上で取り組まなくてはならないと思う。  したがって、あくまでもやはり、今総務庁の持っておる五対策室なりあるいはその他の局の我々の任務というのは、何としてもこうしたことにこたえるためであるから、少なくとも私たち自身がこれらの問題について、戦後民主主義が何であったかということをもう一度問い直して、我々自身が民主主義をどう確立していくかということが極めて重要であるということを私は主張したつもりであったわけであります。  したがって、指摘のありました点等については、言葉が足らないといたしますならば、これから注意をしていきたいと思っています。  特にまた、松岡委員行政経験豊かですから、いろいろこうした問題等につきまして御指導をいただきたいと思います。私も、今後こうした問題等については全力を挙げて取り組んでいく所存でありますので、御理解をいただきたいと思います。
  226. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、改めてこの場を拝借して、国家公務員すべての諸君に対し、主権在民という言葉とともに、まさに公務員は全体への奉仕者だということを思い出してもらいたいと思います。そして、その言葉だけきちんと思い起こし、自分の胸に刻み込む、それをもっておのれの行動を律する規範としてくれるなら、私は再び国民の信頼される公務員の姿が出てくる、そう考えております。  先ほど来例に引かれました情報の秘匿あるいはその他の問題については本当に情けない話ばかりでありまして、そうした指摘を受けることを行政の最高責任者として恥ずかしいと思います。それだけに私は、主権在民という言葉と、公務員は全体への奉仕者ということだけをもう一度思い出してくれることを心から願っております。
  227. 松岡滿壽男

    ○松岡(滿)委員 総理総務庁長官、また各大臣も、今の総理の御答弁に従って対応をぜひよろしくお願いをいたしたいと思います。      〔委員長退席、三野委員長代理着席〕  公務員のモラル、綱紀の問題に関連しまして官官接待の問題。どうも私も野党なものですから嫌な話ばかりで申しわけないと思うのですけれども、この官官接待の問題、我々も、新進党では石田幸四郎先生がプロジェクトの座長でいろいろ検討、対応をいたしたのですけれども、これが国民世論から大変やはり批判をされております。  全国オンブズマン連絡会議という市民団体が調査したところでは、五十道府県・政令指定都市の食糧費は、一九九三年度で二十九億五千万円あったということです。この調査では東京事務所、秘書課、財政課の三部門に限ったものでありまして、氷山の一角だろうというふうに思います。関係者は、全国で使われている官倉接待費は三百億円を下らぬだろうというふうに見ています。これは、接待をする地方自治体側に問題があるのか、接待に応じる中央官僚に問題があるのか、この辺は鶏か卵かの関係だろうというふうに思うのです。  しかし、現在の国と地方との関係、特に国庫補助金制度に官官接待を生み出す土壌があるということは、新進党も指摘しているし、みんなが指摘しているところなんですね。今のいろいろなもろもろの問題、くどくど申し上げておりますが、中央集権の中からさまざまな今の日本に合わない状況がやはり今出てきている。だから、この官官接待をとめる根っこは、やはり地方分権をきちっとやる、そして補助金問題についても一般財源化するとか、具体的な対応をしなきゃいかぬだろうと思うのです。  新進党側から見ても、例えば、人間としてのつき合いだからやはり相互理解は要る、アメリカのようにもう上限を決めたらどうだ、ランチは幾らでと。この前新聞に出ておりましたように、五軒もはしごして一晩で十二万もかかったとか、こんなことはやはりいけませんよ、どう考えても。その節度をどこに求めるか、これはやはり人間関係、ある面では必要な部分もある。一番大事なことは、やはり、もう一回国・地方の関係を根底から見直して、補助金行政のあり方というものにきちっとメスを入れていく。そして、今、日本にもう合わなくなってきている中央集権を、分権化を進めていく。  私は、日本新党にかつて行きましたときに、細川さんが政治改革を貫徹し、官尊民卑を正し、地方主権を確立する、この叫びに私は寄っていったんですね。やはり基本的に、今いろいろな腐敗現象、もううみも出さなきゃいけないところに来ておりますよ。だから、この部分は切開する、この部分はばんそうこうで張っていく、そういうことをきちっとやらなきゃいかぬところに来ておるわけでありまして、いろいろな理由づけがあるといっても、公務員の公費によって多額の飲食を行うという慣習は、やはり国民感情が許すものでは私はないと思うんですね。  国家公務員の規律、倫理の面から、これについて総務庁どのように考えられ、どのように御指導をされるのか、また自治大臣は、地方自治体の食糧費のあり方、私自身も市長をやっておって、市長交際費とか食糧費とかいろいろやった経験があるわけでございますが、地方団体の官官接待、こういうものについてどのように考え、どのように対処されるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  228. 倉田寛之

    ○倉田国務大臣 地方公共団体におきましては、昨年の事務次官通知を踏まえまして、みずからの予算執行上の点検と食糧費等の経費の支出の改善に積極的に取り組ませていただいているところでございます。  こうした地方公共団体の取り組みに当たりまして最も肝要なことは、行政運営が住民の皆様の負担をもって賄われていることの重さを厳しく認識をいたしていただくことであるというふうに考えております。  したがいまして、具体的な改善策につきましては、地方公共団体自身が、社会的な批判の厳しさや住民の皆様の疑念を改めて自覚をしていただきまして、それぞれにおいてみずからがお取り組みをいただくことが一番大切なことだと考えております。  また、議会の監視機能、監査などを通じましてチェックをされ、最終的には住民の皆様の目によって判断されるということではないか、こういうふうに考えているところでございます。  松岡委員既に御承知かと思いますが、昭和五十四年の十一月の二十六日の官房長等の会議の申し合わせにおきまして、四項目にわたりまして官庁の綱紀の粛正について申し合わせが行われておりまして、これに準じまして綱紀粛正について万全の措置をとるよう地方公共団体にも通知をいたしているところでありまして、政府といたしましては、昨年の八月の閣僚懇談会におきまして昭和五十四年の申し合わせを各省庁間で改めて確認をいたしまして、その趣旨の徹底を図っておるところでございます。
  229. 松岡滿壽男

    ○松岡(滿)委員 私も、ちょうど市長時代に二本松市の市長さんが市長会で配られた、二本松藩士に与えた戒銘石を紹介したいと思うのです。「爾の俸、爾の禄は民膏なり、民脂なり。下民虐げ易きも、上天欺き難し。」  やはり私は、こういう二本松藩士が登城のときに必ずそれを見ながらみずから戒めていった。やはり公務員として、主権在民、先ほど総理がお答えになりましたような、そういう原点にやはり返ってこれから国家国民のために頑張っていただきたいということを強く期待いたしまして、まだたくさん実は予定しておったのですが、御丁寧な御答弁をいただいたものですからもう時間がなくなってしまいまして、これで私の質疑を終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  230. 三野優美

    ○三野委員長代理 これにて松岡君の質疑は終了いたしました。  次に、谷口隆義君。
  231. 谷口隆義

    ○谷口委員 本日は日銀から総裁が来ていただいておりますので、初めに日銀の関係の質問と申しますか、それを何点かさせていただきたいというように考えております。  例の平成五年の二月三日の覚書がございました。大蔵省銀行局長と農水省の経済局長との間の覚書でございます。これは政府自身が国会で認められたように、覚書には何らの法的根拠もなくて拘束力もない、それどころか公務員の職権を逸脱した行為というのは職権乱用罪にも当たる、こういうように言われておるわけでございますが、この覚書が今回の住専処理スキームの中で極めて大きな位置を占めておるというように私は考えるわけでございますが、前回、二月の六日に質問をさせていただいた折に、ちょっと時間がなかったものですから若干触れただけで終わりましたので、その後のフォローと申しますか、一点御質問をいたしたい。  それは、この覚書が、平成五年の覚書でございますが、金利の減免をその項目の中にうたっておるわけでございまして、母体行が〇%、一般行が二・五%、農林系金融機関が四・五%、このようになっておるわけでございますが、この覚書が結ばれたのが、先ほど申し上げましたように平成五年の二月三日でございます。平成五年の二月四日、翌日でございますが、翌日に公定歩合が引き下げられておりまして、当時三・二五%から二・五%に引き下げられておるわけでございます。これは極めて時期が一致したといいますか、そういうようなことで、大蔵省、日銀、また農水省のあうんの呼吸でされたのか、こういうようなことも言われておるわけでございまして、このあたりにつきまして、まず初めに日銀総裁の御見解をお願いいたしたいと思います。
  232. 松下康雄

    松下参考人 御質問の、平成五年二月の公定歩合引き下げでございますが、その当時の国内の経済情勢を見ますというと、最終需要の低迷がなお続いておりまして、行き過ぎた投資や在庫をめぐりまして厳しい調整が続けられていた局面でございます。また一方で、物価は安定の度合いが一段と明確化をしておりまして、また金融面でも貸し出しやマネーサプライなどが極めて低い伸びで推移をしておりました時代でございます。  こうした状況を踏まえまして、当時、日銀といたしましては、我が国経済の調整の痛みをできるだけ緩和をし、インフレなき持続的成長への移行をより確実なものにしていくために、金融緩和の実体面への効果の浸透をさらに促していくことが適当であると判断をいたしまして、公定歩合の引き下げを実施したものでございます。  この引き下げは、全く、ただいま申し上げましたような経済に対応するための有効適切な手段として考えられ、実行されたものでございまして、御質問のような覚書との関連は全く意識していないものでございます。
  233. 谷口隆義

    ○谷口委員 もう一回繰り返しますと、一般行の金利が二・五%、これが翌日に公定歩合が引き下げられて二・五%になるのですね。これを私は申し上げておるわけでございまして、多分、日銀の総裁の御答弁は今おっしゃったような御答弁になるんだろうなというようにも思っておりましたが、ただ、国民の方は、翌日に一般行の金利、これが覚書の引き下げ後の金利になるわけでございますが、そういうような状況というのは、これはやはり何かあるんじゃないか、こういうように受け取られてもいたし方ないようなタイミングと申しますか、こういうようになっておりまして、そうすると、日銀の独立性と申しますか、この公定歩合政策というのは日銀の専権事項でございますので、それを大蔵省また農水省が知っておって、例えばそういうような覚書にその金利がもし盛り込まれたとしたら、これは極めて大きなことであるなというように私は思っております。今まあ総裁のお話で、そういうことには関係ないというようなお話でございましたので、これはそういう事実の指摘にとどめさせていただきたい。  あと、前回も私、申し上げましたのですが、今回大蔵省平成三年から四年に一回、また平成七年に一回と、この二回にわたって大蔵省立入調査が行われておるわけでございます。一方、日銀も、日銀考査というようなことがございまして、今まで、銀行の検査と申しますか、考査と申しますか、二つ重なってやっておられたというような実態をお聞きするようなことが多いわけでございます。  そこでお聞きいたしたいのですが、これは大蔵大臣とまた日銀総裁に御見解をお聞きいたしたいのですが、大蔵省の検査と日銀の考査、この目的とその違いと申しますか、このあたりを御答弁お願いいたしたいと思います。
  234. 松下康雄

    松下参考人 大蔵省の行っております検査は、これは基本的には銀行法等の関係法令の所管庁といたしまして、法令の遵守状況を把握をするということに主たる力点が置かれているものであると承知をいたしております。  日銀の方はと申しますというと、私どもの考査は、日銀の基本的な使命でございます通貨価値の安定と金融システムの安定、この二つの目標を達成をいたしますための手段として実行しているものでございます。  簡単に内容を申しますと、金融システムの安定とはどういうことかと申しますと、一つ一つ金融機関につきましては、ある程度範囲以内のリスクであればそれはそれでよろしいわけですけれども、システム全体として見まして、多くの金融機関が一斉に同じようなリスクを持つということになりますと、それが集中をして安定を阻害するようなおそれがございます。こういうことでありますとか、あるいは、金融機関同士の取引による決済というものが市場として円滑に、確実に行われているかどうかとか、あるいは日銀が金融政策をとります場合に、金利の上げ下げをいたします場合に、それが金融機関にどのように受けとめられ、どのように波及をしていくかとか、そういうことを日常把握して、また、必要な場合には指導もいたすというのが、私どもの行っております考査の内容でございます。
  235. 西村吉正

    ○西村政府委員 大蔵省の行います検査でございますが、監督の一環といたしまして、銀行法第二十五条におきましては、「大蔵大臣は、銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するため必要があると認めるときは、当該職員に銀行の営業所その他の施設に立ち入らせ、その業務若しくは財産の状況に関し質問させ、又は帳簿書類その他の物件を検査させることができる。」このような根拠に基づいて行っておるものでございます。
  236. 谷口隆義

    ○谷口委員 今、日銀の総裁に御答弁していただいたんですが、いずれにしても、与信の審査と申しますか貸し出しの審査、チェックが主な仕事になるんだろうと思うのです。そういう意味でしますと、大蔵省の検査とほぼ同じような状況が重複して行われておるというのが現状じゃないのかなというように私は思います。  まあ大蔵省の検査は、大体私聞いておりますと、行為の違法か合法かというような判断、また、日銀の方は銀行経営として適当かどうかというような判断でなされている、このように聞いておるわけでございますが、先ほども申し上げましたように、大蔵省の方は二回にわたって立入調査を行われた。その結果、いろいろ検出事項と申しますか、発見した事項が出てきておるわけでございますが、一方、この日銀の考査の場合に、今回のこの住専の問題にかかわる母体行、一般行の考査に関しまして、特別な考査は行われましたのでしょうか。
  237. 松下康雄

    松下参考人 日銀といたしましては、住専自体はいわゆるノンバンクでございまして、直接これと取引関係がございませんために、住専に対しまして直接に考査あるいはモニタリングを行って経営動向を把握するということはいたしておりませんのです。  ただ、日銀といたしましては、この不動産融資の累積という問題の重要性にかんがみまして、当時、母体行等に対する考査あるいはモニタリングを通じまして、住専の実情把握に努力はいたしてまいった次第でございます。その結果といたしまして、私どもとしましては、やはりノンバンクを通じる不動産関係の融資が増大をする傾向が認められるのは将来のリスクにつながりかねないという意味で、金融機関に対しまして節度ある融資を要請をする、また、貸出行を通ずるノンバンク動向のフォローに努力するということはいたしてまいったところでございます。
  238. 谷口隆義

    ○谷口委員 今この住専の問題の金融機関の貸し出しですね。回収可能性の観点からするとかなり、第一次処理案で六兆四千億というような金額が出ておるわけでございますので、これに対して日銀の考査、もう一つ深く言いますと銀行経営のあり方、こういう融資が果たして妥当なのかどうかという観点で見たときに、日銀としても特別に金融機関調査をする予定はございませんか。
  239. 松下康雄

    松下参考人 日銀といたしましては、これまで、住専の再建計画の策定以後、大蔵省等監督当局と関係母体行その他のいろいろな協議に際しましては、私どもとしましても平素いろいろと接触がございます情報の提供、交換を行いますとか、意見を申し上げるとかということはいたしてまいったわけでございます。  しかし、一方で、そういう場におきましてのこの住専問題に関する再建ないし処理というものの体制が進行いたしておりましたので、それに対しまして、日銀として別の観点からの特別の調査ということは行わなかったわけでございます。
  240. 谷口隆義

    ○谷口委員 今、日銀法の抜本的改正と申しますか、今の日銀のあり方をめぐって改正論議が交わされておるわけでございます。  その中の一点に、今私が申し上げましたこの日銀考査の問題、これを抜本的に見直して権限を強化しようかというようなことも言われておるようでございますが、それに関しまして、今、日銀の総裁に御答弁いただきましたので、総理、この日銀法の改正、先ほどの考査の問題、また後でお聞きしますが日銀特融の問題も含めまして、ちょっと御見解を述べていただきたいと思います。
  241. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、現行の日銀法の規定のもとにおきまして、日銀の政策運営上特に支障となるような問題は現在発生をしておらないと思います。ですから、現時点におきまして日銀法の改正が必要であるとは考えておりません。特に、一般論といたしまして、通貨価値の安定と信用制度の保持育成という観点から、中央銀行がしっかりとした独立性を保持していくことが重要であることは、もう申し上げるまでもないことでございます。
  242. 谷口隆義

    ○谷口委員 それでは、日銀特融について若干お聞きいたしたいんですが、これは、九五年の十月の末に、例の信用組合の問題であるとか兵庫銀行の問題であるとかということで、もう一兆円を超えたというようなお話でございます。これは日銀法二十五条、信用秩序の保持育成に基づく特別融資で、破綻金融機関の最終処理が決まるまでのつなぎの資金、こういうような位置づけであろうと思います。  これに、一つは、回収可能性の観点から見まして非常に貸し倒れになる確率が高いという意味で、日銀の方は貸倒引当金を積んでいかなきゃいかぬなというようなお話も出ておるようでございますが、この日銀特融、この住専処理スキームだけではなくて、金融システムの保全という観点から見ましても、これから日銀特融をどういう形で発動させていくのかという極めて重要な問題であるのだろうと思います。このあたりのところを、日銀特融の発動要件と申しますか、このような観点で、総裁、御答弁お願いいたしたいと思います。
  243. 松下康雄

    松下参考人 金融機関の破綻処理に当たりまして日銀が資金を供与いたします、いわゆる特融に際しまして満たすべき基本的な要件はというお尋ねでございます。  これは要約をいたしますと、第一には、この特融を行わないとしたならば金融システム全体に対するリスクが顕現化するおそれがあるということ、それから第二には、処理方策を策定します上で日銀の資金供与が不可欠でございまして他に資金の源泉がないということ、それから第三に、モラルハザードを防止いたします観点から関係者責任が十分に追及されることというのが前提でございます。  もう一つ申し上げますと、今度は日銀自体の資産内容の健全性維持にも配慮する必要がございます。日銀の資産は、日銀の発行する銀行券のこれは裏づけとなるものでございますから、銀行券に対する信認の低下を防止いたしますためには、資産の内容の健全性を保つ必要がある、こういう点から私どもは、流動性の供給を行うことが基本でございまして、損失の穴埋めに本来使うべきものではないという考えを持っておりまして、これらの原則で今後の対応をいたしてまいりたいと考えております。
  244. 谷口隆義

    ○谷口委員 今お聞きいたしましたが、今度の住専の問題で財政支出ということで六千八百五十億を投入しよう、こういうようなスキームでございまして、これは、今の日銀総裁の御答弁によりますと、回収できないものに融資できない、こういうお話ですか、御答弁お願いします。
  245. 松下康雄

    松下参考人 今回の住専の処理の関連におきましては、私どもの資金を供与いたします内容は、住専処理機構の資本金の充実に充てますために民間銀行からと日本銀行からとそれぞれ資金を拠出をいたします、その部分だけでございまして、その他の部分につきましては住専関係で日銀資金のことは考えておりません。
  246. 谷口隆義

    ○谷口委員 今、日銀の総裁に何点か御質問さしていただいたんですが、日銀の問題、先ほど申し上げましたように、常に言われておるのは独立性の問題でございまして、これは中央銀行としてあくまでも独立性を持っていかなければいけないわけでございます。しかし、巷間、先ほど覚書のことに関しましてもそういう疑惑があるといいますか、そういう観点で見ますと、必ずしも、独立性の保持という観点で見ますとそれが明確に保持されておるかどうかということには疑問があるわけでございまして、今後もそういう日銀、日銀法の改正という観点からまた議論をさしていただきたいというように思っておりますが、本日は、日銀に対する質問はこの程度で終わらしていただきたいと思います。  あと、次に質問を移しまして、本日の午前中にも同僚議員の質問にございました、これは先日の武村大蔵大臣のマスコミのインタビューに対する御見解を聞いておったと思うんです。何回も同じことを聞いて申しわけないんですが、村山前総理も七年の十二月の十九日に、零細な農家の皆さんの上につくられており、社会的役割を果たしている、農業は大事な産業であり、農林系金融が破綻すれば農政上混乱が大きくなるというようにおっしゃっております。  それに対して橋本総理は、この二月五日の予算委員会におきまして、それぞれの当事者にぎりぎりの負担を求める中でこの処理策が決まった、金融システムの安定と預金者保護するもので農林系の救済ではない、こういうような御答弁をきょうの午前中も引き続きなさっておったようなことで理解しておるわけでございます。この住専処理のスキームの議論が進むにつれて、だんだんだんだんこの農林系金融機関負担の問題といいますか、このあたりが非常に明確になってきたんじゃないかと思うわけでございますが、総理、相変わらず今までの御答弁、ずっと継続してされるんでしょうか、御見解お願いいたします。
  247. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、何遍も、例えば農協系あるいは系統系だけを救うものではないということは申し上げてまいりました。そして、それは私はそのとおりだと思っております。  それは、例えば、母体行に対してもさまざまな角度からのその負担に御議論がございますし、母体行を除きました一般行につきましても、その金額についてさまざまな御論議が出ております。それぞれにやはり問題を抱えている中で、そのスキームをつくってまいりましたわけです。  その中には、確かに先般来の、農水省から繰り返し御答弁を申し上げておりますように、信連の経営情勢あるいは農林中金の経営実態、そして、それを支える農協への預金者方々状態、そういうものも当然ながらあります。当然ながらあります。しかし、それだけではありません。金融システム全体を安定させていくというその大きな目的の一環であることは、私が繰り返して申し上げているとおりであります。そして、その点では、私は村山総理とも食い違っておらないという御答弁を申し上げたようにも思います。     〔三野委員長代理退席、委員長着席〕
  248. 谷口隆義

    ○谷口委員 明快に、当初の御発言は農林系金融機関救済ではないというように今おっしゃったわけでございまして、それに対しまして、先ほどのその武村大蔵大臣、また村山前総理もそのような発言をされておるわけでございます。  それで、先日、二月の六日に私質問をさせていただいた大きなポイントの一つは、農水大臣に、例の信連積み上げでやっておるのか、また、そうではなくて案分なのかというような質問をさせていただきました。  まず、この農協系金融機関負担金額五千三百億円、これを二千億円が農中、二千億円が信連、あと一千三百億が単位農協ということでやっておられるわけでございます。その計算根拠算出過程におきましても、二つあるというようなお話をされました。  これは要するに、一つは、あの農林系金融機関の金利軽減分を十年間これを計算して、三年間もう既にたっておるので、あと七年の未経過分を計上するとこの五千三百億になるのだというようなことと、それぞれの積み上げ金額の結果五千三百億になるのだ、こういうような二つの見解があのときに明確になったわけでございます。こういう二つの計算過程が存在すること自体おかしいわけでありまして、これはあくまでもどちらか一つしかないはずなのだろうと私は思うのですね。  その後、きょう理事会を通しまして、この信連の二千億の積み上げの計算というのをいただきました。私はあのときに、これは案分じゃなくて積み上げなのですか、こういうように農水大臣に申し上げたはずなのですね。ところが、きょういただいて、「試算」と書いてあるのです。理事会からきょういただいたのですよ、金曜日に何か配ったようでございまして。  これを見ますと、「各信連贈与は、それぞれ住専七社向けの貸付残高に応じて行うこととする。」これを見ますと、これは融資残高に応じて信連贈与額が案分されているのですよ。これは積み上げとは言いません。これは融資金額に応じて二千億を案分されていますよ。だから、これは農水大臣がおっしゃったのとは全く違うのですよ。案分ですよ。農水大臣は、これは各信連積み上げ計算だとおっしゃったのです。発言を撤回されますか。
  249. 大原一三

    大原国務大臣 何回か申し上げたのでありますが、積算をする過程でいろいろのアプローチをいたしたことは事実でございます。  ぎりぎりの大蔵大臣農林大臣折衝の過程で、いろいろなアプローチをしたのでありますが、中には、三千億を出したらどうなるか、二千五百億を出したらどういう影響信連に及ぶかということをいろいろやってまいりまして、やはり三十以上信連赤字が出るということは、これから先の信連金融に至大の関係があるので、せいぜい半分ぐらいが妥当なところではなかろうか。最初は、我々としては実は負担は出したくなかったのでありますけれども、いろいろ、その後の折衝過程や、あるいはまた金融秩序の安定という大所高所からの判断で、半分ぐらい、それでいきますと三十信連経常利益赤字になる、これだって大変なことでございますが、そういう判断をする過程でいろいろの積算をしてまいりました。  それはまた、一つ信連の計算利益と、そして一方で融資してある金額がございますから、案分でいかざるを得ない面は、御承知のように借りていなくても黒字信連というのがあるのですね。そこは、御承知のように全然住専に融資額が少ないということで、そこは利益を全部吐き出させるわけにはまいりませんので、そういう試行錯誤の計算をしたということを申し上げたわけでございます。
  250. 谷口隆義

    ○谷口委員 今御答弁されたのですが、これも本当に見ますと、おっしゃったことと全く違うので、私はびっくりしているのですよ、実は。  あのときにおっしゃったのは、これはまさに先にこの二千億ありきですよ。それを案分しているのですよ。積み上げと案分というのはどう違うかといいますと、結果が先に来るか後から来るかということですよ。こういうあいまいな算出根拠を国民の前に提示しておると、この処理スキーム全体がやはりどんどんどんどんぼけてくるわけでしょう。  今何を求められているか。私は地元へ行って、いろいろ街頭にも立ち、署名もさせていただいた。いろいろ国民からの声が上がってきます。これは総理も御答弁されておりましたが、要するに不透明なんですね。このスキームそのものが明快でない。それと責任の問題が明確にされていないということで、これは早くやってください、こういうことなんです。  これを見ますと、これは私が先ほど申し上げましたように、あの二月の六日に本予算委員会資料要求をさせていただいたのですよ、これは積み上げたという御答弁でしたから。ですから、そういう積み上げなら積み上げのような算出根拠をきちっと資料の形でいただきたいというようになって、きょういただいたこの資料を見ますと、これは明快に案分です。私ずっと、さっき電卓を入れてやっておりましたら、初めのところに案分と書いてあるのですが、きちっと融資残高に応じて割り振っておられるのです、この二千億を。そうしますと、農水大臣、あなたのおっしゃった答弁を撤回しなければいかぬわけですよ。積み上げじゃないのです、これは。これは積み上げとは言わないですよ。  農水大臣、これは積み上げでしょうか。いや、農水大臣、一遍答弁してくださいよ。農水大臣答弁してくださいよ。
  251. 堤英隆

    ○堤政府委員 私の方から御説明させていただきます。お手元の資料でございます。  この考え方を詳しく御説明させていただきますと、まず一つは、「試算の前提」というふうに書いていると思います。これは、それぞれ、この間大臣から申し上げましたように、信連ごとに計算をしたということでそのとおりでございますけれども、その際、信連ごとの当期利益、それから、その前の信連ごとの経常利益、これが、それぞれの各信連贈与した場合の負担との関係はどうなるかということで、それぞれ信連ごとに見てみなければ全体の負担額が出てこない、そういうふうに大臣から申し上げたところでございます。  そのためには、一たん信連が幾ら贈与するかということを決めるわけでございますが、そのためには、住専七社向けの貸付残高に応じて一応配分するということがまずないと、各信連ごとの経常利益との比較、信連ごとの当期利益との比較ができないわけでございます。  そういう意味で、ここに「試算の前提」というふうに書きました後で、今年度の各信連の利益につきましては、経常利益平成六年度の経常利益をもとに、その水準から①の信連ごとの贈与額との関係をどう見るか。それから、当期利益は、それによって算出されました経常利益赤字となります場合に、一般貸倒引当金を可能な限り取りますという考え方で考えてみたということが一つございます。  それから、当年度だけでなくて、翌年度におきましても、平成六年度の経常利益をもとに、どういう変化が起こるかということを考えているわけでございますけれども、三つございまして、農林中金からの配当の減少見込み額、それから住専向け貸付金返済に伴います利息の減少見込み額、それから贈与に伴います運用収入の減少見込み額、これが約一千億を超えるわけでございます。この三つを考えまして、翌年度の信連の利益はどうなるかということを判断したわけでございます。  そこで、そういう試算の前提を置きまして考えるわけでございますが、具体的な贈与の限度額は幾らであるか、二千億か二千五百億か、どうするかということを考えます場合に、私どもとしましては、ここでも何回か御説明いたしておりますように、農協信用事業の存立の基盤を守り得るぎりぎりの水準ということで、どういうものをそういうものとして想定するかということで二つ想定さしていただきました。  これは、先ほど大臣がお答えしたとおりでございますが、まず一つは、資金贈与に伴いまして、今年度に赤字に転落する信連経常利益ベースで過半、具体的には三十でございます。それから当期利益ベースで二十というふうに置きました。要するに、これ以上の赤字を予定しますというと、これは、午前中総理の方からもお答えがございましたように、六十八兆円の受信業務をやっておりますし、二千五百という非常にたくさんの信用事業をやっている農協の問題がございますので、不測の事態ということも考えなきゃなりません。そういう意味で、農協信用事業のぎりぎりの安定ということに私どもとしても配慮をしなきゃならない、そういう考え方でございます。  それから、翌年度につきましても、これは赤字が継続するということはやむを得ないというふうに見たわけでございますが、この今申し上げました三十ないし二十がどんどんふえていってしまうということでは、これまた信用不安が生じるわけでございますので、おおむねことしと同じ程度の二十というふうに見込んだということでございます。  この今申し上げました具体的な要件を満たすものを、冒頭申し上げましたように、今年度の経常利益それから当期利益、翌年度の利益ということにそれぞれ信連ごとに積み上げて、その条件を満たす額として二千億という形に私どもとしてはぎりぎりのものだという算定をした次第でございます。
  252. 谷口隆義

    ○谷口委員 あのときは、経済局長、あなたも積み上げたと言ったんですよ。今の質問に対して答えになってないんですが、要するに、これは貸付残高に応じて案分しているんです。間違いなくこれは案分されているわけですね。  この信連それぞれの中に、やはり財政内容というか財務内容の差もいろいろあると思うんです、負担できるところと負担できないところ。だから、積み上げというのは、それぞれの状況を十分加味しながら積み上げていくというのが積み上げなんです。これは、先ほど申し上げたように、融資残高を基準にして、もうぴちっとですよ、ぴちっと案分されていますよ、今計算したんですから、私。これは、大臣がおっしゃっていることと、このいただいた資料とは違うわけで、だから、そういう極めてあいまいなやり方をやっておると、これは国民の間にどんどんどんどんそういう不信感がたまってきますよ、おっしゃることと、この資料と全然違うんだから。  だから、農水大臣、あなたのおっしゃったその発言を撤回されるか、新たに積み上げなら積み上げ資料をいただきたいんです。これは明確に案分資料ですよ。各信連を案分しているんです。きちっとどちらかやっていただきたい。こういうあいまいな資料を出していただくと、これは極めて問題ですよ。私が申し上げていたのは、こういう資料じゃないですよ。案分なら案分と言っていただいたらいいんですよ。私が案分ですかと言ったら、積み上げですとおっしゃっているんです。  こういうことを続けておると、さっきも何回も言いますけれども、国民の方で、果たして積算根拠は妥当なのかどうか、急に拙速にこの六千八百五十億を財政支出するのじゃないかと言って、このように危惧しているわけですから。だから、きちっとそのあたりを説明できるようにやはりやっていただかぬと、これは問題だと思いますよ。ここで私も、とめるつもりはありませんので、農水大臣、一遍これはきちっと御回答いただきたい。
  253. 大原一三

    大原国務大臣 私が積み上げと申しましたのは、いろいろの積算をしたということでありまして、そのあなたの言う積み上げというのはどういう意味かよくわかりませんが、いろいろの前提を置いて積算をしていって、だって、借りてないところに負担させるということはできませんから、それは最終的には案分が答えになるのは当然でありまして、借りてないところに負担しなさいと言うことはできません。だから、いろいろの積算をしたという意味で、積み上げという意味はそういうことでございます。
  254. 谷口隆義

    ○谷口委員 これはもうどなたでもわかりますよ、案分と積み上げとは違うのですよ。そういう資料を示してくれということじゃなくて、この結果、どういう形でこういう信連二千億が出てきたのかと。これは、案分なら案分とおっしゃったらよかったのですよ。案分とおっしゃらなくて積み上げとおっしゃるから、その資料を要求したわけですよ。これはかなり前提が詳しく書いてあるのですが、この前提は関係ないのですよ。この最初の、試算の結果は案分した、これだけですよ。案分しているのですよ、これ。あといろいろ、今年度の利益であるとか翌年度の利益と書いていますが、これは関係ないのです、この結果から見ますと。  この試算に対する農水大臣の御答弁と、出ているこの案分資料、これに関しまして、委員長、一遍理事会に諮っていただいて、私の申し上げている趣旨を御勘案いただいて、早期にまた御回答いただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
  255. 上原康助

    上原委員長 はい。理事会で協議をいたします。
  256. 谷口隆義

    ○谷口委員 だから、きちっと頼みますよ。もういいかげんなことやめておいてもらいたいのですよ。きちっと、やられるなら根拠に基づいて発言していただきたいと思うのです。  先ほど同僚議員の方からも質問ございましたが、今回の地価動向についてお聞きいたしたいと思います。  先日、短期地価動向調査の結果が出ておりました。まず初めに、この短期地価動向調査の結果によりますと、三大都市圏で三カ月前に比べて地価一下落しておる地点が、住宅地で全体の六三・八%、商業地で九五・七%が地価下落いたしておる、こういうようなことでございます。  その前にちょっとお聞きいたしたいのですが、まず初めに大蔵大臣、今の地価は安いのか高いのか妥当なのか、ちょっとその御見解をお聞きいたしたいと思います。
  257. 久保亘

    久保国務大臣 地価の動向から見ました場合には、住宅地で横ばいないしわずかな下落、商業地では下落傾向というような結果が報告されていると思います。しかし、地価は需要供給の関係で決まってくるのが原則的なものだと思っております。そういう意味で、現在の地価が高いのか低いのかということについては一概に評価はできないのじゃないかと思っております。
  258. 谷口隆義

    ○谷口委員 総理も同様に、今の現行の地価水準についての御見解をお願いいたしたいと思います。
  259. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 名目GDPと比較をしました場合には、おおむねバブルの以前の水準に戻ったということが言えるのではないかと思います。  そして、これは実は今大蔵大臣もおっしゃいましたように、高い低い、これは一概になかなか言いづらいものがあります。と申しますのは、一つは構造的な問題として、住宅の問題あるいは我が国の経済構造上高コスト構造といった視点からこれを見る考え方もあろうと思います。  いずれにしても、地価動向というものは我々としては注意深く見守っていく必要があるわけでありまして、土地の有効利用に資するような方向で物事を考えていきたいというのが率直な感じです。
  260. 谷口隆義

    ○谷口委員 地価を考える場合に、土地の利用という面から考えて土地基本法がございますが、土地基本法の精神から考えて土地はまだ高いのじゃないかという意見が一方であると思うんです。また一方では、今回のこの住専状況の中で見ていただいたらわかるわけですが、どんどんどんどん担保不動産の土地の目減りが進んでまいりますと、二次損失がまた当初の予定より大きくなってくるわけです。  これは明確にそういう状況になるわけでございますが、極めてこの土地政策、どういうように持っていくかということをはっきりしておかないと、土地をもう少し下げたいのか上げたいのか、これをやらないと、一方で土地税制で厳しくやっておる、一方でまたこう筒抜けになって土地が上がるようにしたい、こういうような二律背反なことを一緒にやろうとするからおかしいわけでありまして、今どういうように政府として土地を持っていきたいのか、これについてもう一度総理、御答弁をお願いいたしたいと思うんです。
  261. 鈴木和美

    鈴木国務大臣 先ほど総理及び大蔵大臣から答弁がございましたが、現在の状況でございますが、これはもう先生御案内のとおりですから、これは省略させていただきたいと思うんです。  それで、バブルの状態と比べまして、現在おおむねバブル前のところに水準が戻ってまいりました。しかし、いずれにしても、経済の動向から見れば、土地の流動化ということは欠かせない問題だと思うんです。  したがいまして、現在行われておりますのは、土地の優良な、つまり促進策ということに力を入れておりまして、現在のところは三つの角度から、一つは、都市圏においては、東京においては今まで八つの区と国土庁との間に調整をとっておったんですが、今度は二十三区に広げて、土地有効利用の協議会をつくってそこで調整をする。さてそこで、そういうような問題と、それから公共用地の取得の問題と民間活用の問題をしながら、つまり土地の有効な利用というところにこれは重点を置いていくべきだと思うんです。  今高いか安いかというような問題については、先ほど総理からも、また大蔵大臣から述べられたように、一概にはなかなか答えられないというのが現状だと思います。
  262. 谷口隆義

    ○谷口委員 御答弁になってないんです。私が言っているのは、例えば今土地が低過ぎるとしたら、政府の政策としてそれを上げるような施策を講じなきゃいかぬわけです。高いとするなら、またそれは税制も考えなきゃいけませんし、いろいろ方法を講じなきゃいかぬわけで、この認識が極めてあいまいになっておると、これがはっきりしないと、これはどんどんどんどん国民が混乱状況になるのは目に見えてわかるわけでございます。  例えば、一つは土地税制  税制なんかの話をしますと、新規取得土地等にかかわる負債の利子課税の特例というのがありまして、新規取得土地の金利は損金算入がしばらくできないんですね。これはバブルのときにこういう税制があったんです。これは今もずっとこのまま続いておるわけなんですね。これはバブル抑制税制ですよ。だけれども、今この住専のときに極めて大きな問題になっておりますね、土地の値下がりが第二次損失を膨らますわけでしょう。土地がどんどんどんどん下がってくる、だから早くしたいというような答弁もございましたね、土地が下落しておると。そういうような観点でいくと全く方向が違うわけでして、この方向をきちっと明確にしておかないと、これは政策として明確な方向を打ち出せないんじゃないですか。今ちょっと私、税制のことを申し上げましたが、大蔵大臣、御答弁をお願いします。
  263. 薄井信明

    ○薄井政府委員 御答弁申し上げます。  土地税制につきましては、バブルが生じたときに、土地税制に例えば評価の問題等々において欠陥があることがバブルを招いた一因ではないかということを指摘されました。そういうことで、総合的な土地対策の一環として税制の手直しをしたわけでございます。  それより以前に、今御指摘の利子の問題、これは仮需要を起こしてしまうのではないかということで、借金して法人が土地を買ってしまう、そういう状況はストップさせなくちゃいけないということで、あの平成二年、三年の改革前に、昭和六十三年だったと思いますが、措置したものでございまして、その点、違いがあるということと、それから税制につきましては、平成六年、七年、八年と確かに地価が下がってきておりますので、その状況のもとで対応できる調整をしてきております。  特にことし、今出しております法律で、取得、それから保有、譲渡の三つの局面におきまして状況に合った改正をさせていただいているということを申し述べさせていただきます。
  264. 谷口隆義

    ○谷口委員 今、土地抑制税制のお話を御答弁いただいたのですが、要するに政府一つの方針としてはっきりしてもらいたいのです。土地が今安いのか高いのか、それをはっきりしないと、今金融機関不良債権の問題がどんどん出ております。この不良債権の問題が出てまいりますと、例のBIS基準なんかにひっかかるところの金融機関が多いと思うのですね。そうしますと、その次のステップとして貸し出しを抑制しなきゃクリアできないというようなことになってくる。そうしますと、まだ資金が市中にめぐり回らないというようなことであるとか、これは地価をより一層下落させる要因ですね。  だから、今はまだバブルの土地抑制政策がずっと継続的に続いている、このように私は考えておるわけでございますが、一方、この住専処理スキームの中で、私今申し上げましたように、二次損失の問題があって、どんどんどんどんこれが増大するわけですから、そうしますと、あとまた国民の血税を、財政支出を、これを持っていかなきゃいかぬというようなことになると、これはやはり問題だと思うのですね。だからひとつその方向を、明確な方向をやはり決めなきゃいかぬのだろうと思うのです。  そういうことで、ぜひ一貫した政策と申しますか、打ち出していただきたい。市中におきましては、土地の動向が、政府がどういうように考えておるのかわからないということで、極めてある意味では混乱状況になっておるわけでございまして、そういう状況を十分勘案していただいてやっていただきたいというように思う次第でございます。  時間が参りましたので、私の質問はこれで終わらせていただきます。
  265. 上原康助

    上原委員長 これにて谷口君の質疑は終了いたしました。  次に、石井啓一君。
  266. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 新進党の石井啓一でございます。  今国会は住専問題中心に御議論が進められておりますけれども、本日は午前中に総括審議が終了したということもございまして、私は、きょうは外交問題、特に朝鮮半島をめぐる外交問題につきまして、主に総理と外務大臣にお尋ねをいたしたいと存じます。  まず、質問通告はしておりませんけれども、大変話題になっております日本海の竹島の問題につきまして御見解を総理及び外務大臣にお伺いをしたいと存じます。  若干御説明いたしますと、国連の海洋法条約、二百海里の経済水域の設定に伴いまして、日本海の竹島の領土問題が我が国と韓国との間で再燃をしたわけでございます。そして、連立与党の訪韓団の訪問が延期をする、こういう事態になりましたし、また、最近伝えられるところによりますと、この竹島の周辺におきまして韓国の軍の演習が行われる、こういうニュースも入ってきております。  極めて残念な状況にあるわけでございますけれども、そこで、お伺いしたいのが二点ございまして、一つは、竹島に関する我が国の立場を改めて表明をしていただきたいと存じますし、もう一つは、現在ぎくしゃくし始めましたこの日韓の現状、状況をどのように回復していくのか、総理及び外務大臣にお答えをいただきたいと存じます。
  267. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  まず、竹島につきましての我が国の立場でございますけれども、我が国は従来から一貫しまして、歴史的な観点から見ましても国際法上から見ましても我が国の領土である、こういう立場でございます。一方、韓国におきましては、やはり歴史的な観点あるいは国際法上から見ても韓国の固有の領土である、こういう主張をしておられまして、さらに、いわゆる実効支配をしているということも踏まえて、両国間に領土問題はない、そういう主張をしておられる、こういうところでございます。  さて、そういうことを踏まえまして、今回の問題でございますけれども、これは竹島におきまして韓国側が従来から警備の要員等を配置しておるわけでございますが、その船舶の接岸あるいは荷揚げ等の設備の工事をする、こういうことを確かめたものでございますから、我が国といたしましては、先ほど申しましたような従来からの立場を踏まえまして、遺憾の意を伝達したところでございます。これに対しまして、韓国側はやはり先ほど申しました韓国側の立場に立って、こちらの申し入れは受け入れられない、内政干渉である、こういうことがあった、こんなことでございます。  そして、与党の訪韓団のお話がございましたが、この問題につきましては、いろいろな事情を勘案されまして、より適切な時期に訪問することが適切であろう、韓国側とも相談なされて、そういうことで延期をされた、こういうふうに聞いております。  それから、いま一点お話ございました、韓国軍の演習云々の話でございますけれども、これは韓国軍のスポークスマンによりますと、これまでも四半期ごとにあの海域で演習は行ってきた、そうして、ことしの第一・四半期についてもそういう計画はある、しかし、具体的にそれをいつ実施するかはまだ確定していない、そういうことを軍のスポークスマンが表明した、こういうふうな情報を得ているところでございます。  さて、そうして最後に二つ目の御質問の、これからこの状況にどういうふうに我が国として対応していくか、こういう点でございますが、私どもといたしましては、まず韓国との国交関係、これは大切に考えております。何と申しましても共通の価値観を有しております。また、安全保障上その他のいろいろな面で共通の利害を有する国でございますから、この両国間の関係はそのものとしてももとよりでございますが、さらにこの極東アジア地域の平和と安定を維持していくという観点からも極めて重要であると考えております。  したがいまして、竹島問題についての我が国の立場は先ほど申しましたように一貫したものでございますが、この問題に関する両国の立場の相違というものが両国民の間の感情的な対立に発展して、それが両国の友好協力関係を損なうということがあってはならない、こういうふうに考えておりまして、両国間で冷静に、静かに話し合いを積み重ねてまいりたい。そして、適切な道を模索いたしまして両国の友好関係をしっかりと維持してまいりたい、このように考えているところでございます。
  268. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、外務大臣から大変詳しくお話を申し上げましたが、私どもの立場として、あくまでも隣国であります大韓民国との間は友情を持って話し合える状況を持ち続けたい、それが第一であります。殊に、我々は過去の歴史の重みを背負っております。それだけに一層、お互いの間で意見のそごを来さないように努力をしなければなりませんし、その必要性はこれからも変わらないと思います。  同時に、現実に竹島の問題が存在することは事実でありますし、日本としてこの問題に対してこれまでとってまいりました姿勢を改めるという種類の問題ではこれはございません。私としては、でき得る限り両国の国民が冷静な政府間の話し合いを認める雰囲気にぜひなっていただきたい。そして、領土の問題が即刻解決するかどうかということとは別に、お互いの経済水域の問題あるいは漁業の問題等で、現に話し合うべき問題が冷静な雰囲気で話し合えることを心から願っております。また、そうした方向に動くような御協力を、私どもは院からも、またあるいは民間等におかれてそうしたことに自信をお持ちの方がありましたならぜひ力をかしていただきたい、そんな思いでおります。
  269. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 何はともあれ隣国でございますので、粘り強い対話でお願いをいたしたいと存じます。  それでは、北朝鮮に対する米支援の問題についてお尋ねをいたしたいと存じますが、外務大臣にお尋ねをいたしますけれども、昨年六月三十日に、我が国といたしまして、第一次米支援といたしまして無償十五万トン、有償十五万トン、合計三十万トンの米支援を決定をいたしました。続いて十月の三日に、第二次の支援といたしまして有償二十万トンが決定をされました。  さらに、最近でございますけれども、本年一月、さきがけの堂本参議院議員が訪朝した折に、北朝鮮の全容淳朝鮮労働党書記が、「水害によるコメ不足が続いており、第三次の援助交渉に入ってほしい」というふうに要請した、こういうふうに報道されておりますけれども、政府はどのように御承知をされていますか。
  270. 池田行彦

    ○池田国務大臣 委員御指摘のとおり、昨年、第一次、第二次合わせまして、有償、無償合わせて五十万トンの米支援を行ったところでございます。これは昨年、異常気象等で食糧事情が大変逼迫しているということがあった、また、我が方におきましては緊急輸入米の在庫があった等々の事情にかんがみまして、全く特別の、異例の人道的な配慮からする援助として実行したところでございます。  しかし、いわゆる第三次についてどうかというお話でございますけれども、私どもといたしましては、現在、第三次の追加支援の要請というものには接していない、こういうことでございます。堂本議員の訪朝のときにある種のお話があったということはお伺いしておりますけれども、私どもといたしましては、要請を受けているというふうには考えていないところでございます。
  271. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 確かに正式な政府ルートあるいは外交ルートを通じての要請はないというふうに思いますけれども、まあそれ以外のルートを使っていわゆる北朝鮮のメッセージが我が国に届いている、こういうふうな状態であろうかと思います。したがって、そういうメッセージに対して我が国はどういう方針で臨むのか、第三次米支援要請がありとすればどういう方針で臨むのか、御見解を総理及び外務大臣にお伺いしたいと存じます。
  272. 池田行彦

    ○池田国務大臣 先ほど申しましたように、私どもとしては、政府としてさらなる米の支援の要請を受けているとは承知していない、理解していない、こういうことが一点ございます。  それからまた、先ほども申し上げましたけれども、昨年行いました二次の支援というものは、我が方におきまして在庫緊急輸入米が活用できる事情があった、こういうこともございます。そういったことも踏まえて、あくまでその範囲において人道的見地から特殊例外的に実施したものだ、こういうことでございます。それで、現在におきましては、そのような活用し得る緊急輸入米の在庫というものが存在しない、こういうこともあるわけでございます。  さらに申しますと、北朝鮮の食糧事情につきましてはいろいろな情報がございまして、確かに困難な状況にあることは事実でございますが、それがどの程度のものかということにつきましては、国際的にもいろいろな見方があるということがございます。それからまた、これまで支援された米が確実にいわゆる民生の面へ行き届いているのか、こういう点についても透明性が必要だ、こういうこともございます。  最後の点につきましては、私ども既に部分的には報告を受けているところでございますけれども、そういうようないろいろな事情もございまして、現在、当面北朝鮮に対しましてこれ以上の追加的な米の支援を行うということは考えていないところでございます。
  273. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 それでは、一次、二次支援について振り返ってお尋ねをしたいと思いますけれども、これは農水省にお伺いしますが、まず、一次、二次の支援米の船積み状況について、現状、どういう状況になっているのか御説明いただきたいと思います。
  274. 高橋政行

    ○高橋政府委員 お答え申し上げます。  北朝鮮への援助米の船積みの状況でございますが、ただいまのお話のように二回あったわけでございます。まず初めの、昨年六月三十日に三十万トンの供与を決定いたしておりますが、これにつきましては十月十四日に船積みが完了しております。それから追加支援、これは昨年の十月三日に合意した分で、二十万トンでございますが、これは二月九日現在で、船積み、出港したものが十五万トン、それから船積み中のものが三万トン、合計十八万トンという状況でございます。
  275. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 事前にちょっと私もその説明を伺っていたのですが、若干疑問に思いましたのは、一次支援については六月三十日に契約をして、船積みが終わったのが十月十四日ということで、三カ月半かかっております。時間がかかっております。二次支援米については十月三日に契約をいたしまして、既に四カ月過ぎた段階で、約九割でございますけれども、まだ全部は船積みをされていない。食糧不足に対する人道援助ということでございますけれども、食糧不足であればなぜもっと早くとりに来ないのか、単純にちょっと思うのでありますけれども、どういうふうにお考えでしょうか。
  276. 高橋政行

    ○高橋政府委員 我々の方も船積みを早くしてくれるようにということで、いろいろ向こうと連絡をとりながらやってきておるところでございますが、向こうの配船計画といいますか、船の調達がなかなか難しいというようなことが向こうの挙げている主な理由でございます。
  277. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 若干ちょっと解せないところがございます。  さらに、一次支援を決めた折に、朝鮮赤十字会から日本赤十字社に対し、その配分状況に関する資料を提出するというふうにされておりますけれども、この資料は提出をされたのでしょうか。
  278. 池田行彦

    ○池田国務大臣 一次支援のうち無償分にかかわる十五万トンでございますが、これは日本赤十字社から北朝鮮の赤十字会のルートを通して配分されたわけでございます。その配分状況に関する資料は、去る一月の中旬に北朝鮮の赤十字会より日本赤十字社に対して提出されております。その報告によりますれば、九道二市にわたって幅広く配付されているということでございます。  あるいはその詳細が必要でございましたら、政府委員から答弁させますが。
  279. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 それでは、赤十字経由の無償分十五万トンについての配付状況を申し上げます。  ピョンヤン一万一千トン、それからファンヘナムドウ、これは日本語読みにいたしますと黄海南道だと思いますが、こちらが三千トン。それからファンヘプクドウ、これは日本語読みいたしまして黄海北道、八千トンでございます。それからピョンアンナムドウ、日本語読み平安南道、これが一万トン。ピョンアンプクドウ、平安北道でございますか、こちらが二万五百トン。カングォンドウ、江原道でございます、こちらが三万四千三百トン。ハムギョンナムドウ、咸鏡南道でございます、二万三千トン。それからハムギョンプクドウ、咸鏡北道七千トン。それから南浦市、これが二千トン。リャンガンドウ、両江道ですが、二千七百トン。最後にチャガンドウ、慈江道と書きます、こちらが二万八千五百トン。  以上を合計いたしまして十五万トンの配付状況をお示しした次第でございます。
  280. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 そもそも、そういう資料を求めていたのかもしれませんが、この配分状況というのは、どの地域にどれだけの米を配分したかという状況でありますけれども、いわば地域割だけなんですね、ここで得られている情報というのは。  先ほどちょっと外務大臣もおっしゃいましたけれども、この我が国が支援した米が本当に食糧不足に困っている民衆の口に達したのかどうか、この透明性というのは確かにこれだけでは全くわかりません。  例えば昨年八月全容淳書記の発言として、米は畜産にも軽工業にも使えるので多い方がよい、後でこれは発言は否定されたかどうかはっきりわかりませんが、人道援助の食糧用として供給されたこの米が、あるいは畜産とか軽工業用にも使われている可能性もある、こんな状況でございますけれども、外務省としてはどのようにお考えですか。
  281. 池田行彦

    ○池田国務大臣 確かに、配付が適正に行われているか、本来の目的に沿った用途に供されているか、この点の透明性が大切であるということはおっしゃるとおりだと思います。  しかし、私どもは、先ほど政府委員の方から御報告申し上げました北朝鮮の赤十字会から提出された報告書につきましては、これはそのものとして適正な報告書であるというふうに認識しておりまして、その限りにおいては民生用に適正に使用されており、我が国の人道的観点からする米の支援の目的は達成されつつある、こういうふうに認識しているところでございます。
  282. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 北朝鮮からの資料では、どの地域にどれだけ米を配分したかというのはわかるのですけれども、その地域の中でどういうふうに配分されたかは、残念ながらわからないわけですね。  多くの皆さんがやはり懸念をいたしますのは、民生用消費のために適正に使用されるというふうになってはおりますけれども、それをどう確認するのか。もう少し言いますと、この支援米が軍事転用された可能性があるんじゃないか、可能性が高いんではないか、こういう懸念を抱いているわけでございますけれども、この点についてはいかがでございましょうか。
  283. 池田行彦

    ○池田国務大臣 何と申しましょうか、疑えば切りがないという言葉がございますけれども、確かに、どこまでチェックをすれば十分であるかとかいろいろあると思います。  しかし、今回の援助につきましては、北朝鮮が異常気象等の影響で大変な食糧の不足状態になったという、このことは事実でございます。そして、私どもといたしましても、あくまで人道的な見地からする特例的なものである、これは確実に民生用に使ってほしいということを念を入れて実行したものでございますし、そしてまた北朝鮮の赤十字会からも、その趣旨に沿ってこのように配付させていただきましたという報告を得たわけでございますので、私どもとしては、昨年我々が行いました援助に関する限りは、その目的に沿った配付が行われておる、このように認識している次第でございます。  しかしながら、おっしゃるように、全般として、もう少し北朝鮮側においていわゆる情報の開示と申しましょうか、その事情を適切に示していくということが、我が国だけではなくて、国際社会からのいろいろな場合における支援その他に資するという点は確かにあるかと存じます。
  284. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 それでは防衛庁にお尋ねをいたしますけれども、この北朝鮮の軍事備蓄米についてどれぐらいの量が想定されているのか、お答えをいただきたいと思います。
  285. 小池寛治

    小池政府委員 お答えいたします。  種々の情報によれば、北朝鮮は大量の軍事用備蓄米を保有していると一般的に言われております。しかしながら、その具体的な保有量については、少ないものでは百万トン程度から多いものでは百七十ないし百八十万トン程度というぐあいに、多くの推定がなされている状況でございます。防衛庁としては、北朝鮮の軍事用備蓄米の保有量について正確に把握はしておりません。  以上です。
  286. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 いずれにしても、少なくとも百万トン、多い想定では百七十万トンということですから、相当程度、我が国の支援米の二倍以上の備蓄米がありそうだ、こういうことでございます。  もう一つ防衛庁にお伺いしますが、北朝鮮の軍の動向でございますけれども、昨年洪水の後、北朝鮮が軍事境界線から約四十キロ前後にある三カ所の予備基地に九十機以上の軍用機を配備した、これはここ数年例のない異常な動きである、こういうふうに伝えられておりますけれども、防衛庁としてはどういうふうに把握をされているのか、あるいはそれ以降変わった動きがあるのか、御説明いただきたいと思います。
  287. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 北朝鮮は現在大変経済的に困難な面に直面をいたしておりますが、にもかかわらず、その国力の大変大きい部分を軍備の面に向けております。そして、軍事力の近代化というものを図っているということが現況でございます。また、そのほかにも核開発疑惑あるいは弾道弾ミサイルの長射程化、そういうものを行っているわけでありまして、そうしたものは、私ども周辺諸国のみならず国際諸国に対して大変大きな脅威になっているということを私どもは心配をいたしているわけでございます。  私どもは、いろいろな情報の中から、今委員お話をいただきました飛行機の大きな移動あるいは軍組織の改編、そういった動きが昨年の後半あったということを承知をいたしております。しかし、現在のところ、北朝鮮軍については大きな動きがないということを私どもは理解をいたしております。  いずれにいたしましても、北朝鮮は、非武装地帯に全陸軍の陸上兵力の三分の二というものを前方展開いたしておりまして、即応態勢というものをとっている、こういうことから、今後とも私どもといたしましては引き続き細心の注意を持って見守ってまいりたい、こういうふうに考えております。
  288. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 いずれにいたしましても、北朝鮮の軍の動きも大変不穏な動きをされているということでございまして、先ほど申し上げましたように、この支援米の軍事転用の可能性というのは私は非常に大きいのではないか、このように思います。  二月十二日の読売新聞で、防衛庁の防衛研究所の第一研究室長さんの意見がちょっと紹介されていますけれども、「北朝鮮では、通常の物資は五〇%、コメについても七〇%が軍の備蓄に回されていると見るのが妥当だ」こんな意見もあるようであります。  また、一月二十六日付の、これも読売新聞でありますが、「(北朝鮮)の人民軍下士官で、昨年十二月に休戦ラインを越えて韓国に亡命した崔グァンヒョク氏が二十五日、ソウルで記者会見し、韓国が昨年提供したと見られるコメの一部が所属部隊に搬入されていたと明らかにした。」こういう、亡命下士官が示唆発言をしたというような報道もされております。  先ほど外務大臣おっしゃいましたように、やはりこの点についての透明性というのをしっかりしていただかないと、我々が、我が国の税金で支出をした米が何に使われているかわからないというようなことであってはどのようなものか、いかがなものか、このように存じます。  また、昨年六月三十日に一次支援を決定した折の外務大臣の談話では、こういうことをおっしゃっております。「本件支援は、人道上の観点から行うものであり、北朝鮮との国交正常化交渉の問題と直接関連するものではないと考えるが、本件コメ支援が同交渉をめぐる日朝間の雰囲気に好影響を与えることを期待する。」  こういう談話を発表されておりますけれども、では、一次、二次の米支援を通じて、期待されるような好影響が出ているのかどうか、外務大臣、お答えいただけますか。
  289. 池田行彦

    ○池田国務大臣 昨年行われました一次、二次の米の支援は、今委員も御指摘になりましたように、直接的に正常化交渉と関連しているものではない、これは河野前外務大臣答弁申し上げたとおりでございます。  それで、しかしながら、それがいわば雰囲気に好影響を与えておるかという御質問でございますが、その点につきましては、御承知のとおり、今第八回までやりまして中断しております日朝の国交正常化交渉は、依然として中断したままでございまして、今具体的なめどが立っているわけではございません。  しかしながら、あえて申し上げますならば、いろいろなところから入ってまいります情報で、北朝鮮側も必ずしもいわゆる正常化交渉を拒むものではないというふうな雰囲気と申しましょうか、雰囲気までいかないかもしれませんが、プレ雰囲気みたいなものが若干伝わってきているというふうに考えておるところでございます。
  290. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 プレ雰囲気という新しい言葉を教えていただきましたけれども、どういう雰囲気かよくわかりませんが、総じて、一次、二次の米の支援を振り返ってみますと、私はやはり、疑問といいますか疑念といいますか、残念ながらそういうものが多く存在するということでございます。  先ほど申し上げましたように、本当にきちんと民生用使用がされているのか、困った民衆に本当に届いているのか、特に軍事転用された疑いが残念ながらぬぐい去れない、こういうことでございます。さらに申し上げれば、今、外務大臣はプレ雰囲気は多少よくなっているようなことをおっしゃいましたけれども、どうもそのようには伝わってまいりませんので、なかなか期待したようなことも、日朝交渉の前進も図られたようなことではないようでございます。私は、現時点で申し上げれば、決して成功したとは言えないのではないか、こういうふうに言わざるを得ません。  したがいまして、先ほど、当面第三次の米支援はお考えになっていないということでございましたけれども、私は、今後のことを考える前に、まずこの一次、二次支援について、透明性といいますか、どういうことであったのか、きちんと疑念を晴らすようなことをしていただかないと、今後の話は当面進め得ないであろう、このように思いますので、御見解をいただきたいと思います。
  291. 池田行彦

    ○池田国務大臣 先ほども申しましたように、当面、追加援助は考えていないところでございます。  また、委員御指摘のように、やはり透明性といいましょうか、適切に本来の目的に沿った配付が行われているかどうかというところは当然明らかにされなければいけませんから、先ほども申しましたように、我が国の支援だけでなくて、全般的に考えまして、北朝鮮にはもう少し情報の開示ということを期待したいと思います。  それから、一、二次の米支援の成果があったかなかったかという点でございますが、この点については、先ほどの我が国の国交正常化交渉に対する影響いかんという問題のほかに、こういうことがあろうかと思います。  我が国による支援が一つの契機になりまして、御承知のとおり、韓国からの支援が行われました。これはただ、その後問題がございましてなんでございますけれども、そういう支援が行われた。そういう日韓からの支援というものの延長線上とでも申しましょうか、そういうことで、北朝鮮が洪水の被害について国際社会に非常にいわゆる情報開示いたしまして、支援を要請する、こういうことがございました。そういう流れにつながった。こういう観点から申しますと、我が国の支援が、北朝鮮が国際社会に向けて開かれていくということをエンカレッジするというか慫慂するという観点から、一定の成果があったというふうな評価もできるのじゃないか、このように考えている次第でございます。
  292. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 それから、そもそも北朝鮮のこの米支援の経緯が、実はよくわからないところがたくさんございます。  公式には、昨年五月二十六日に訪日した朝鮮国際貿易促進委員会の李成禄会長が与党関係者に対して米の貸与を申し入れた、こういうふうにされておりますけれども、いろいろ報道されているところによりますと、在米韓国人の女性実業家、マダム・パクこと朴敬允女史が、当時自民党の政調会長でありました加藤紘一幹事長に米支援の話を持ってきた。次に、そのマダム・パクのルートが通じなくなり、かわりの民間ルートが使われた。こういうことも種々報じられておりますけれども、この間の経緯は外務省は承知していらっしゃいますか。
  293. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 今委員御指摘のような報道等には我々も当然接しております。御指摘のとおり、北朝鮮からの要請が当初与党を通じて接到したということは事実でございますけれども、政府としては、北朝鮮側が与党にまず要請を行ったという意図につきコメントする立場にはございません。  ただ、いずれにいたしましても、その後は、与党と政府が緊密に連絡をとりながら本件に対処したことは、御承知のとおりでございます。
  294. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 もう一つ、昨年三月与党が訪朝された折に、吉田猛という人物が、「加藤紘一事務所 吉田猛」という名刺を携えて参加をした、これは加藤幹事長もお認めになっていらっしゃいますけれども、念のため、これは外務省も随行されたと思いますが、事実でいらっしゃいますか。
  295. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 御指摘の吉田氏が訪朝されたということは事実だと思います。
  296. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 この吉田猛という方はどういう方かといいますと、新日本産業株式会社という北朝鮮専門の貿易商社の社長さんですね。日朝貿易を手がけている業者の方、まあ厳しく言えば利権に絡むような人物、これが与党訪朝団の一員として参加するのは、私はいかがなものかと思います。しかも、加藤紘一幹事長の秘書であるかのような名刺を持参させた。これは総理は、自民党総裁としてこのことをどういうふうにお思いになりますか。
  297. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 事実関係を全く存じませんので、ちょっとコメントのいたしようがありません。
  298. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 これは加藤幹事長みずからお認めになっていますから、このことは事実でいらっしゃるんですけれども、私は、これは軽率に過ぎると思うのですよ。これは、一緒に行っているということは今外務省もお認めになっておりますし、加藤幹事長も、「加藤紘一事務所吉田猛」という名刺を持って一緒に訪朝したということはお認めになっていますので、その上でちょっとお答えをいただきたいと思いますけれども。
  299. 池田行彦

    ○池田国務大臣 ただいまのお話でございますが、その人物が訪朝団に同行したというところまでは外務省としても承知しているところでございます。そしてまた、今委員加藤幹事長も認めているとおっしゃったわけでございますが、その加藤幹事長が認めておられるというのが一体どこまでの事実関係かということもつまびらかにいたしませんので、ちょっとこの場で推測の上に立って御答弁するということは差し控えさせていただいた方が適当かと存ずる次第です。
  300. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 いずれにしても、同行されているということは事実でございます。  ところで、昨年の文芸春秋の十二月号によりますと、この吉田猛氏の父親が北朝鮮のスパイだったという、久仁昌氏という方の手記が載っております。  表題が「手記 私が愛した「北朝鮮スパイ」」小見出しで「ヨメ外交のパイプ役・吉田猛氏の父親の正体」、こういう手記が出ておりまして、この久仁昌氏というのは関東公安調査局の第二調査部長を最後に退職した元公安調査庁の職員の方でいらっしゃいますけれども、若干ちょっと読まさせていただきますと、  一九八二年、私は公安調査調査第二部の課長補佐として、朝鮮半島情勢の情報収集と国内の北朝鮮スパイ活動の調査を担当していた。  日朝貿易の専門商社「新日本産業」の吉田龍雄社長から、「至急、会いたい」との連絡が入ったのは、その年の十一月十八日であった。吉田氏は北朝鮮出身者で、のちに日本に帰化した人物である。七十歳近い彼は、肺機能が弱っていて、いつも携帯用の酸素ボンベに頼っていた。翌日の十九日夜、私は約束場所の東京・大手町にあるパレスホテル地下二階の寿司屋「和田倉」に出向いた。小部屋で待っていた吉田氏は、「北朝鮮の党幹部が、あなたに会いたがっている」と言って、一枚の紙片を私に見せた。その紙片には、次のように記されていた。 ちょっと省略しますけれども、  この連絡は猛氏が北朝鮮の重要幹部から指示を受け、国際電話で日本にいる父親に伝えてきたのである。 それでこの中に、ちょっとはしょりますが、 北朝鮮のコムト・プレストという機関を紹介しておりまして、それについて、日本における「コムト・プレスト」の活動としては、日朝貿易に従事している商社の中の在日朝鮮人や帰化朝鮮人の経営する商社幹部が、その在日エージェントとして指示のままに情報収集活動にあたっていた。  吉田氏がそのエージェントの特定幹部の一人であることは容易に想像できた。 こういうような記事がずっと出ております。  この手記の事実関係、私も確かめようがないわけでありますけれども、まあ軽々に云々することはできませんが、与党の訪朝団に随行されたこの吉田猛氏自身が、非常に北朝鮮当局と密接な関係があるのではないかというふうに疑いを持たざるを得ない人物である。私は、こういう人物を与党訪朝団の一員として加えたということは、我が国の国益を損する行為ではないか、このように思いますが、総理の御見解を伺いたいと思います。
  301. 池田行彦

    ○池田国務大臣 ただいまの雑誌の論文でございますけれども、委員御自身も、その事実関係を確認できないところであるがとおっしゃったように、私どもも、そこに記述されておることが事実かどうかわからないところでございますし、軽々に判断をし、あれこれ御答弁申し上げることは控えさせていただきたいと存じます。  いずれにいたしましても、北朝鮮との関係であれ、他の国との関係であれ、我が国の外交が適正な姿で行われなくちゃいけない、この点は我々としても心してまいりたいと思っております。
  302. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 時間が参りましたので、最後に一言申し上げまして終わりにいたしますけれども、私は、この一次、二次の米支援を振り返りますと、どうも政府が与党の動きに引きずられたといいますか、そういう印象を免れないところでございます。  もちろん、国交がない状況でございますので、与党が政府の前さばきをするといいますか、そういうことはあってもしかるべきかと思いますけれども、今申し上げましたように、その訪朝団の一員に、どうもこれは疑わしいといいますか、そういう疑いを持たざるを得ないような人物が一緒に同行していたり、私は若干、何といいますか、政党の独走に引きずられるようなことがあれば、これは我が国の国益を損することになりかねないという懸念を抱かざるを得ません。あくまでも政府間の交渉、外交交渉を筋としてであることを指摘をしていきたいと存じますし、また今後の、米支援を含めまして、この北朝鮮との交渉については慎重に当たっていただきたい、このように存じますが、最後に総理の御見解を伺います。
  303. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 我々は、いずれにいたしましても、朝鮮半島の今後というものの中でさまざまな動きを必要とする場合に韓国との間で十分な連携をとりながら対応していかなければなりません。それは、今委員から御指摘のありました米の問題だけではなく、軽水炉供与の問題等々、既に話し合いの枠組みをきちんと守りながら行動しておるものもありますし、今後新たな問題があるいは派生じました場合にも、十分関係する国々、殊に韓国との間での緊密な連携の上で行動していくということは当然必要であろうと考えております。
  304. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 以上で終わります。
  305. 上原康助

    上原委員長 これにて石井君の質疑は終了いたしました。  次に、小池百合子君。
  306. 小池百合子

    小池委員 新進党の小池百合子でございます。  本日は、被災地兵庫県の声を代弁する立場で被災地の復興問題、そして住専問題について伺わせていただきたいと思います。  昨年の一月十七日、あの忌まわしい阪神大震災が起こった、突然起こったわけでございますが、一年が経過いたしまして、先月の一月十七日、新旧の内閣のメンバーが、皆さんが兵庫県神戸市の方の慰霊祭にもお出かけいただきまして、そして六千三百八名の死者の慰霊も行っていただいたわけでございます。それに相前後して、全国のマスコミも兵庫県に久々に詰めかけて、そして、被災の状況その後ということで、震災から一年という、そのような特集を相次いで組んで放送ができたわけではございますけれども、しかし、全国的に見ますと、既にローカルニュースになってしまったような、そういう感が否めないわけでございます。被災地の人間といたしましては、先日の、一年を経過したあの阪神大震災、もう既に儀式化、もしくは年中行事の一環として全国の人はとらえているのではないか、そういう思いがして、ある意味で大変無力感、そして怒り、こういった思いが交差していたところでございます。  さて、今回この住専の問題が出てきているわけでございますが、特に被災地におきましては住専に国税をつぎ込むということに対しては猛反対の声が上がっているわけでございます。それはある部分で感情的なものもございましょう。しかし、年中行事や儀式化しているのが全国的な感覚かもしれないけれども、被災地現地といたしましては毎日がその現実の中で暮らしている。後ほども伺いますけれども、仮設住宅の中では現在九万人が暮らしているというそういう状況でございます。暮らしているだけではなくて、将来にどうしたらいいのかという展望を抱けないままあの寒い寒い仮設におられる。その中での住専国会が開かれているということで、私は、被災地ということをまず念頭に置いた形で質問させていただきたいと思います。  まず最初に、橋本内閣が誕生したわけでございますけれども、一年前にやはり我が国の危機管理ということが大変問題になったわけでございます。被災地の人間からすれば、一刻でも早く政府が駆けつけてくれて、そしてしかるべき対処をてきぱきとやってもらいたい、その思いは当然あったわけでございますが、しかし、残念ながら、危機管理ということについては、前内閣は私は迅速な対応をしていただいたとは思っていないわけでございます。  今回橋本内閣ができ、そして官邸の主として満を持して橋本総理がなられたわけでございますけれども、もしとか、たらとか、ればとか、そういう言葉は使いたくはないのですけれども、もし橋本総理が昨年の一月十七日に官邸の主であったならばどのような対応をとられたのか、ぜひとも伺わせていただきたいと思います。
  307. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 まさに私は、その御質問はお答えをすることが大変難しい御質問ではないかと思います。  と申しますのは、私は、昨年のどの時点でありましたか、たしか参議院の答弁の中であったと存じますけれども、このような御答弁を申し上げた記憶がございます。自由民主党政権がずっと続いてきた時代、さまざまな局面で我々は危機管理のノウハウを積み重ね、それぞれの事態に対応して行動し得る一つのマニュアルをつくってきたつもりであった。しかし、何回か閣僚経験を持っている自分が振り返ってみて、県庁の通信機能が完全に喪失し、市、町の通信機能が失われ、警察あるいは消防の方々が逃げ惑う被災者方々のお世話に、あるいは救助のために連絡をとるいとまもないといった事態のマニュアルというものを我々は、振り返ってみれば持っていなかった。これはかって閣僚経験を持つ我々にも責任があると思うということを申し上げた記憶があります。それは私自身の実感でありました。  それだけに、その後内閣としてさまざまな対応の場面を想定し、マニュアルを想定いたしておりますけれども、今後も私たちは、とっさの応用問題を常に、ある場合総理個人の責任、あるいはその時点に居合わせた責任者責任判断をし、その判断を後でトレースするような場面が出てくるのではないかと感じております。
  308. 小池百合子

    小池委員 情報の伝達の方法が途絶えていた、そして、国道であるとか路地であるとか、もう瓦れきで埋まってなかなか救助ができなかった。多々反省点もありますし、また法律面で、マニュアル面で不備があったということが今回明らかになったわけでございますので、例えば災害対策基本法を改正するなど、そういう作業もさしていただきました。  しかしながら、私はそこで感じるのは、やはりトップのリーダーの資質、そこでマニュアルがあっても、それを、どのマニュアルをすぐに稼働させるのかどうかといった一種の責任感と、運動神経とでも申しましょうか、政治責任としての運動神経、これが問われてくるのではないかというふうに思いますので、橋本総理個人のリーダーとしての資質が問われてくるというふうに思っているわけでございます。その点、いかがでしょうか。
  309. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、危機管理における資質が問われるということは、そうした危機が発生するということでありますから、むしろそういう事態はないことを心から願います。むしろそういう事故は本当に発生しないことを心から願いますけれども、問題が起きましたときには、必要があるならば自分の全責任で行動することを恐れるものではございません。
  310. 小池百合子

    小池委員 そうすると、古い話を引っ張り出して恐縮でございますけれども、一月十七日の午前五時四十六分に阪神大震災が起こったわけでございます。そして、長田区などで火の手があちこちで上がった、そしてその日のうちにはかなりの部分は明らかになった、それはテレビを見ていればわかったというようなことでございました。にもかかわらず、一月十八日に、時の総理でありました村山さんは財界人との朝食会に出ておられたわけですけれども、橋本さんだったら、総理だったらどうなさったでしょうか。
  311. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 大変申しわけありませんが、私は、それぞれがその時点におきましてどのような情報をみずからが得ていたかによって判断は変わるものと存じます。
  312. 小池百合子

    小池委員 しかし、既にその当日に阪神高速道路がばたんと倒れていたわけでございます。あのシーンを見て、やはりただごとではないと思うのが私は国民の今、安全、財産を守るべき人のなすべきことではないかと思うんですが、官房長官、聞くところによりますと、乱世の梶山というふうにも言われるそうでございますが、官房長官としてのこの危機管理についての考え方について伺わせていただけますでしょうか。
  313. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 昨年の阪神・淡路大震災を教訓として、政府は大変災害時の危機管理体制の充実に努めていることは御案内のとおりであります。そして総理も、常日ごろ、就任以来、危機管理、特に災害対策に念には念を入れるようにという指示もございますし、総理は絶えず、システムと人の問題であると。ですから、まずもって情報収集をどうするか。そのためには二十四時間態勢のいわば情報収集センターも設立をいたしました。  ただ一番怖いことは、この東京に直下型の大震災があったときに対応できるかどうか、これが、私たちが日夜今頭を悩ましている問題であります。人それぞれが健全であれば大概の対策は前の教訓を生かせばできるわけでありますし、またマニュアルもあります。そのとき総理が万一事故に巻き込まれたらどうするか、副総理がそうであればどうするか、そういうことを考えますと、大変いろんな問題がございます。  それから、これは一義的には国ではなくて地方の問題であります。地方が責任を負うべき本部ができるわけでありますから、それとの連携がどうできるのか。それから、上からのそういう体制はできたとしても、国民が受ける不断の災害というものに対する認識、これが高まっておりませんと、幾らやってみてもこれは大変なパニックを起こすわけでありますから、両々相まってやらなきゃならないために、総理の指示を受けて今このために全力を尽くしている。ないことを祈念いたしますが、あったときにどうするかということにこれからも専念をいたしたいと思います。
  314. 小池百合子

    小池委員 ありがとうございました。  危機管理の鉄則というのは最悪の事態に備えるということで、今官房長官御指摘になりましたその最悪のケース、多々あると思いますが、そのいずれにも適応するような、そういう体制をぜひともとっていただきたい。さもないと、いつまたどこで何が起こるかわからない。現実に今北海道であのトンネル事故が起きているわけでございます。国家国民のその責任、安全、そして命を預かっているという最低線のことはぜひともお忘れなきようお願いしたいと思います。  このように申させていただきますのも、せんだって神戸の商工会議所の牧会頭が、このように阪神大震災のことについておっしゃっているんです。「震災が国家の非常事態だという認識が地震当初、政府になかった。それが今のいろいろな問題につながっている」そして「復旧は国でやるが復興は地元でやれという考えだ。日本は本当に情けない国だ」これは、今神戸の方にいらっしゃいましたならば、まだまだ復旧、復興が進んでいないそのいら立ちを、この被災地の、そしてその責任を負っておられる会議所の会頭がおっしゃっているということをぜひとも肝に銘じていただきたいというふうに思います。  さて、今回の阪神大震災による直接的な被害、これは大変大きいものがございましたけれども、最新、最終の数字として、総額一体幾らの直接的な被害が出たのか、国土庁長官、お答えください。
  315. 村瀬興一

    ○村瀬政府委員 被害の総額でございますけれども、昨年推定いたしました数字でございますけれども、九兆六千億という数字がございます。  内訳を申し上げますと、建築物等がそのうち六兆三千億円、それから交通基盤施設が二兆二千億円、ライフライン等が六千億円、その他五千億円、締めて九兆六千億円という推計をいたしておるところでございます。
  316. 小池百合子

    小池委員 九兆六千億円というお言葉でございましたけれども、兵庫県が当初出させていただいた数字というのは二十兆円に上るわけでございます。私はこれは、現実を見ておりますと、二十兆円にほぼ近いというふうに思います。ということは、その被害の総額の見積もりでさえ半分にも満たない、この乖離が今の、先ほど申し上げました牧会頭の言葉の中に、端々に隠れているのではないかというふうに思っております。  それでは、全壊、半壊の被害住宅の件数、そしてその世帯数についてはどうなっていますでしょうか、一番新しい数字でお答えください。
  317. 村瀬興一

    ○村瀬政府委員 住家の被害でございますが、全壊が十万三百二棟、それから半壊が十万八千七百四十一棟という数字でございます。
  318. 小池百合子

    小池委員 それでは、現在仮設住宅に住んでいる人々、一体何人いらっしゃるのか、最新の数字でお答えください、厚生大臣大臣が答えると言っているんだから、菅さんにお願いします。
  319. 菅直人

    ○菅国務大臣 私も、震災直後と同時に、大臣就任後、十七日の慰霊祭の前の日に行ってまいりまして、仮設住宅、西神の大きいところから幾つか見てまいりました。  今小池委員からの直接の御質問は、現在の仮設住宅がどのくらいあるのかということですが、先ほど小池さん自身も言われていましたが、現在は、兵庫県において四万八千三百戸、大阪府において千三百八十一戸、合計四万九千六百八十一戸が設置されており、二月一日現在、その中に住んでおられる皆さんは、兵庫県で九万四百五十人、大阪府において三千三百十人、合計九万三千七百六十人というふうに地元の自治体から報告をいただいています。
  320. 小池百合子

    小池委員 ありがとうございました。  ということで、約十万人と言うことができると思います。十万人と一言で申しましても、我が国はGDPでいうならば世界第二位の国でございます。地震から一年がたって、いまだに十万人があの仮設住宅で暮らしているというのは、これは全く、自慢といいましょうか、恥ずかしいといいましょうか、非常に私どものこの震災に対する復興というものの対処がおくれている、それを象徴する数字ではないかというふうに思います。  また、この十万という、一口に申し上げますけれども、そのほか親戚の方々のところにいらしたままの方、そういった方は数字には含まれていないわけです。さらには、今、六十五歳以上のお年寄りが占める比率というのが大変高うございます。その方々というのは、これからまた新たにローンを借りるにしても、年齢制限でお金も借りられない。子供さんがいるじゃないかと言われても、中には本当に身寄りのない方々もいる。そして、そういった方々というのは、神戸がかつての空襲でやられたとき、洪水でやられたとき、そういったときに一生懸命働いて何とかやってきたけれども、しかしながらもう年齢には勝てないというような、まさに、一言で言うと弱者の方々がどんどん残ってこの十万人という数字になってきているわけです。  また後ほども触れさせていただきますけれども、今、被災地の最大の問題というのは、ほかに元気な方でも二重ローンという問題があるわけで、これが最大の問題なわけでございます。住専の問題につきましては、この人たちも住専からお金を借りて、そしてうちを買って、またマンションを買って、いまだにその住専にけなげにお金を払おうとしているわけです。ところが、その住専の大口の融資を受けたところ、これはおいしいものだけ食べて、たらふく食べて、そしてもう今度は返せないからごめんねというような話になっている。そうすると、本当に一生懸命働いている人が、一生懸命返そうとしている人が、これは単にばかを見るということになってしまうわけでございます。違いますでしょうか。  私は、ぜひとも住専の問題で、そこで被災地のこの人たちのことをもっと考えて、そしてこの人たちが非常に、今置かれている、につちもさっちもいかないからこの住専問題に対しての怒りになってきているわけです。であるならば、まずこの被災地の方々の問題をまず片づけて、もしくは、もう遅過ぎるぐらいだと思うのですね、もっと早く片づけて、そしてこの住専問題に取りかかる、それならまた話は別だと思います。被災地の問題も中途半端、そして住専問題も、何が何だかわからないまま国税を投じようとしている。これが今の多くの国民が、国税をこの住専に対して投じようとするときの世論調査、七〇%、八〇%の人が反対しているわけでございます。こういった問題を一つ一つ片づけるということ、そしてまた時期を逃さないということ、これが最大のポイントだと思います。  そして被災地の問題でございますが、先ほどこの被災地での被害総額について九兆六千億円という国土庁からの御報告がありました。これまで政府が行った予算措置でございますけれども、基本的には、私的なものについては自分でやりなさい、そして公共の施設については国もしくは地方自治体がやりますということで、この予算措置、合わせて三兆三千億に上るはずでございます。ということは、今申し上げましたこの九兆六千億のうち、わずか三分の一しかまだカバーし切れていないということでございます。九兆六千億ということを数字にとった場合でございますが、私はもともと二十兆だと思っているのですけれども、わずか三兆三千億ということになっている。  そして、これまでの政府の関連法案を改正することなどによって、三本柱と言われるわけですけれども、国庫、そして地方財政の支援あるいは補助、これが一つ。そして、各種政府機関から融資に向けました政策金融、そして税の減免措置という、これが震災復興の三本柱ととらえてきているわけでございますけれども、これらは、これまでの法律を基本にして策定されたものであります。本当に地震で困っている人々にとっては十分な機能を果たしていないというのが現実なんです。なぜかといいますと、これまでの法律を基本にして策定されている、ここがポイントになる。  今回の阪神大震災というのは非常に大規模であり、そして都市型の災害であったわけです。これまでの災害といいますと、例えば山川のはんらんであるとか、それから奥尻の津波の問題であるとか、どちらかというと地方が多かった。しかしながら、今回の問題というのは、まさに大震災で、そして阪神地区、阪神という大変重要な地域を襲ったわけでございます。先ほど官房長官御指摘になりましたように、最も恐ろしいのはこの東京を襲う地震が来たときにはどうなるのかということでございますけれども、それならば、最悪の事態を考えるという危機管理にのっとって、それに対しての措置と申しましょうか、対応策、あらゆることを考えて、今からやっても遅くないというのが阪神大震災での学んだことじゃないかなというふうに思うわけでございます。  ですから、この今ある法律から考えての策定をしたということ、ここから根本的にまず間違っているというふうに私は、これはずっと災害対策特別委員会などで申し上げてきたことでございます、今初めて言うことではございません。発想を変えろということを申し上げているわけでございます。そして、税制、規制を根本から変えて、地震からの復興を促すという発想でもって、改めて、ここからもう本当に新たにお願いいたします。地震の被災地に対しての復興策、これを新たな、橋本政権らしい、まさに、ああこれが新しい内閣なんだなと、ううんとうならせるぐらいのをつくってくださいませんか。  本当に毎日そこで住んでいる人たちのことをどう考えておられるのか。私は、かつて優しい政治という言葉を聞きましたけれども、何か強いもの、住専のように強いものは助けて弱いものを切り捨てるなんといったら、これは私は、本来ずっと厚生族などと言われて、弱き人を助けるということを政治の哲学に置いておられる橋本総理、ぜひともここをもう一度考え直していただきたいというのが、私の被災地を代弁しての声、ぜひともよくお聞きいただきたいと思っております。  さて、この地震の問題でございますが、土地、不動産というわけですけれども、動かないから不動産と書くのですね。ところが、地震というのは、まさに地が動いて動産になってしまって、そして、例えば六甲山系などは、これも何度も私は主張させていただいているのですけれども、宅地がいっぱいこうあって、段状になって、階段型になって、その宅地がそもそもがけ崩れによってまさに滑り落ちた形で、こういうふうな階段になっているから土地があって家があったのですけれども、その土地がなくなったところというのが多々あるのですね。  そうしますと、住専の問題ではありませんけれども、土地がなくなっちゃっているのですね。その人たちにもう一回土地をつくれなんというのは、私的な財産なんだから自分たちでつくりなさいというのがこれまでの法律です。確かにそれを国が全部面倒を見るというのは大変なことでありましょう。しかしながら、現実にそういう問題がここかしこに起こっている。  それから、動産、まさに動いたということで、芦屋や神戸の浜の方の埋め立ての地域というのは液状化の問題がいまだにございます。ジャッキアップしてもジャッキアップしても、その分下がっちゃうのです。これは不動産としての担保価値というのをどんどん下げている。  これに対して、もうローンの支払いが終わっている人ならいいですよとは言えませんね。もう既にそこには住めないような状況で、また新たにそこにお金を、私費を投じなければならないわけでございますけれども、土地がなくなって、もしくは液状化でもう使えないような状態で、かつ上物が壊れて、もしくはかしいで――上物はまだいいと思うのですね、まだいいといったってこれも大変なのですけれども。土地を個人で直すことの大変さというのは、これはもし皆さんがそういう場合だったら声を大にしてこの問題は大変重要だと言っておられるに違いないのです。土地がなくなった人に、もう一回土地を削ってつくりなさい、無理です。  それで、その方たちのローンがあるわけです。ところが、それでも一生懸命まだ、なくなった土地に対して、家に対してそのローンを払い続けているというまじめな人たちが住んでいるところなんですね。その人たちのことはどうなるのですか。この二重ローンに対してどういうこれからの検討を立てていかれるのか。  もう一つつけ加えさせていただきますと、この二重ローンの方々、担保価値が、上物の担保価値も土地の担保価値も減っているわけですね。その担保価値の査定が非常に難しいものだから解体さえできない。だから、瓦れきが九割片づいた、そうじゃないんです。解体もできないんです。そして、つぶせもしないし、将来の設計も立たないというような状況。  さて、こういった住民が、この人たちは仮設に入っている人もいるし入っていない人もいる。いかがでしょうか。この二重ローンの問題、どのように政府は考えているのか、明快にお答えください。
  321. 西村吉正

    ○西村政府委員 先般の震災に際しましては、民間金融機関等に対しまして、災害関係の融資につきまして被災者の便宜を考慮した特別措置を講ずるよう指導を行ったところでございます。これを受けまして、民間金融機関においては、住宅ローンを初め新規の貸し付けにつきまして低利の融資制度を創設したほか、既存債務につきましても、被災者方々と相談いたしまして、返済猶予や毎月の返済額の引き下げなど、返済条件の緩和等の対応を行ってきたところでございます。  ちなみに、住専に関しましては、大口は返せないから返さない、それに対して、返そうとしている人がばかを見るという御指摘がございましたが、住専について、大口の債務者に対しまして返さなくていいという措置を講じているわけでは決してございません。むしろ今回の措置は、このままではそういうことになってしまうのを、そういう人たちの債務についてもできるだけ回収していく、こういう趣旨のものであることを御理解いただきたいと存じます。
  322. 小池百合子

    小池委員 なかなか理解できません。そしてまた、今二重ローンの問題でさまざまな対策を講じているということではございますけれども、それならば、なぜまだ九万人の方々が仮設に住んで、そして行くあても途方もないというふうにおっしゃっているんでしょうか。それはすなわち、これまでの対策ではもうにつちもさっちもいかない。この九万人の人はどうなってもいいんでしょうか。それについてもう一度明快な――でも、聞いてもしようがないですね。要は、個人に対する補助はないということですね。  被災地では、もう自力でやるしかない、これは基本的に彼らが夢を捨てていない、希望を捨てていない、ありがたいことだと思います。しかしながら私は、これでは勤労意欲、そして納税意欲、そして国に対しての信頼、愛国心、こういったものに大きな傷をつけるというふうに思うわけでございますけれども、何か聞くのがむなしくなってしまいますので……。  本当に私、この問題については、この二重ローンの問題を、発想を変えた方法、これがどうしても必要だと思います。例えば住専枠をとるのなら、どうして被災地枠というのをとってくれないんですか。それで基金をつくってくれないんですか。  この九万人の方々というのは、これからの、将来の見通しがないからということでお金を借りられない。確かに、将来、その人たちにまたお金を貸すというのは、また不良債権をつくることになるかもしれない。しかし、この人たちは少なくとも、土地のバブルで踊って、そしてあわよくばもうけてやろうという人たちじゃないわけなんですよ。これまでしっかり納税をしてきて、それも阪神地域の方々というのは、この方々というのはサラリーマンの方々が多い。  サラリーマンが多いということは、税金の捕捉率というのは一〇〇%です。一〇〇%捕捉されて、しっかりそめお金を払ってきた、まさに税金を払ってきた、まさに表彰してもいいぐらいの納税者がたくさん住んでおられます。かつ、あの震災のさなかにあちこちで肉親が亡くなって、そして自分自身、着るものもなくはだしで飛び出して、そして寒い寒い体育館に行って、そして炊き出しを順番に列をつくって、割り込みもなしに、本当にその人たちはまじめにまじめにやってきた人たちなんですね。その人たちにどうして基金をつくっていただけないんでしょうか。これだけ住専に対して、六千八百五十億というお金がぼんとつく。だったら被災地の人たちに対して、どうしてそういう基金をつくるという方法で助けようという気にならないのでしょうか。またその人たちは立派な納税者になって、そこでまた立ち直ってやってくるじゃないですか。不良債権のことよりも、もっともっと建設的だと思います。  それについて、橋本総理、どういうふうにお考えになりますでしょうか。
  323. 鈴木和美

    鈴木国務大臣 小池先生の御意見は御意見なりに、私も被災地を先般お訪ねいたしまして、いろいろなところで話を聞いてまいりました。  しかし現状では、阪神の大震災ということは従来のものとは違いますから、特別に金融の制度においても、金融公庫の貸し出しの低利の問題であるとか、それから、今お話しのように住宅が一番問題なのですね。したがいまして、現地からの要望であります、先般も答えましたが、今十二万五千戸つくらにゃならぬ。けれども、一万五千戸は既にもう着手しておりますから、そういたしますと十一万戸。十一万戸の中で、三年間で七万七千戸公的住宅をつくろう、こういうことで今対応いたしまして、既に七万戸については着手をしたところでございます。  さて、今基金の問題につきましては、現在の制度の中では国としての基金、なかなか難しいという意味などもございまして、地方公共団体及び地方の県の段階で、この基金の創設についての話を今進めているわけでございます。  それからもう一つ被災者を救うという意味では保険制度というのがあるわけでございますが、これは、先般兵庫県の知事さんからも保険制度についての提唱がございまして、被災地からの貴重な経験として受けとめておりまして、今中身についても検討をしているところでございます。
  324. 小池百合子

    小池委員 今国土庁長官から、現在の制度においてはという言葉を何度か伺いました。  私先ほど申し上げました。今回のは大規模であって、そして大都市である。これ、いつまた東京であるかもしれないのですよ。であるならば、発想を変えてくださいと申し上げたではありませんか。基金をつくる。今回のRTCだって、発想を変えてできるわけでしょう。違うのですか。日本金融システムを破綻させないためにということで、新しい発想でこのRTCをつくるというのでしょう。そうしたら、なぜ被災地に対して新しい発想が出てこないのですか。違いますか。  私は、今こそ新しい発想を、きちっと新しいビジョンをつくっていただきたい。さもないと、あの阪神の地域での復興、おくれにおくれます。そして、九万人の人々、この人たちは二年たっても出られない。そして、今おっしゃいましたように、恒久住宅ということで今市営住宅等の建設が行われております。しかしながら、この家賃というのは、その方々がこれまで入ってこられた家賃の数倍するであろうと言われているわけでございます。だからこそ発想を変えてほしいというふうに申し上げているわけなのです。  現在の制度がどうだこうだ、私はもう聞く必要はない。聞きたくもない。また、被災地でそういうことを言ってごらんなさい。きっと石投げられます。それぐらいみんなもういらついているか、もしくは無力感で投げる気もしないか、どっちかだと思います。もっとこの問題について真剣に考えていただきたい。この基本、こういった人々、住宅の問題についての基金をつくっていただけますように、私は提唱したいと思います。  そして、もう一つ伺いたいのでございますけれども、兵庫県が提唱している住宅地震災害共済制度というのがございます。住宅に対しての哲学的解釈、そして憲法問題、いろいろありましょうけれども、この共済制度の可能性、今の政府の見通しについてお答えください。
  325. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、小池議員が主張されるお気持ちを全く理解しないで聞いていたわけではありません。  ちょうど雲仙・普賢岳の噴火が起きましたとき、規模は阪神・淡路大震災とは違いますけれども、個人資産の補償というのでは同じような問題が当時発生をいたしました。そして、全国から寄せられました善意の方々の寄附というものをその核に置きながら、国はお手伝いに回り、基金構想でここに対応をいたしました。そして、同じような構想で阪神・淡路大震災につきましても復興基金が昨年スタートしていることを委員は御承知のはずであります。出資金、長期借入金を合わせてほぼ六千億の規模になっておりますし、この中には、まさに全国から阪神・淡路地域の震災復興のためにあるいはお見舞いのためにと送ってくださっております義援金約九百億円というものも含まれております。  私は、今の議員の強い御主張というものを、既に昨年の四月一日からスタートをいたしております、そして平成七年度から十年間に実施をしていこうとしているこの基金の中には、住宅対策、産業対策、生活対策、教育対策といったものがその目標として掲げられているわけであります。既にできているこの復興基金というものをいかに活用しながら御要望にこたえられるかを真剣に一層考えてみたいと思います。
  326. 小池百合子

    小池委員 九百億円の義援金というのは、これは国民の真心のものであります。政府のものではありません。私は、ここに、今申し上げましたように、住専の問題にこれだけの巨額のお金を投じるのならば、それも農林系を救うというようなお話を伺っております。であるならば、農民も国民だからということをどなたかテレビの報道でおっしゃっていましたけれども、私は、被災地の人々も国民だということ、これを新たに言いたいわけでございます。  どうぞ、住専に今、内閣が一丸となって向けておられる情熱をぜひとも被災地の復興に尽くしていただきたいというふうに思います。それは全国民が見ているわけです。いつ何がどこで起こるかわからないということですから、みんな、あすは我が身かと思って見ているわけですから、今回の阪神大震災についてのその対応、これをしっかりと、間違わずに、タイミングも外さずに、ぜひとももっと積極的にやっていただきたいというのが私の願いでございます。  さて、今回の住専の処理でございますけれども、六千八百五十億円、国会審議もなしに決定されてしまうということでございますけれども、しかも関連法律も拙速で、穴だらけのままで提出されているというふうに受け取っております。  これまで政府答弁を聞いていますと、村山さんは、これは農民補助だというふうにはっきりとおっしゃった。ところが、橋本総理農協を救うためではないとおっしゃった。そして最近、自民党加藤幹事長は、農協の援助だと、これはもうはっきりと明言されておられます。本当は農協も一兆一千億円程度は負担しなければならないが、負担能力がなかったので財政資金を投じたと言い切った方がわかりやすいというふうに述べておられる。世論の動向で回答がくるくると変わってしまうということでございます。  地震で被害を受けた私たちにはほとんど補助が認められないで、建築に関する法律改正もなく、農協救済の方は大幅に進んでしまう。こういった理不尽な政治状態を私どもは認めることはできません。  農水大臣、いかがでしょうか。あなたは、今回の農林系統金融の負担額がぎりぎりの金額だと、もうここで何度も何度も何度も、この予算委員会にはギリギリスがいるというようにマスコミがやゆしているようでございますけれども、ぎりぎりの金額だとおっしゃっておられます。そのぎりぎりの予算のために税金を投入すると自民党幹部は言い出しているわけでございます。これまでの農水大臣説明と違うじゃないかということでございますが、先ほどの震災の二重ローンの話にまた戻させていただきますけれども、被災地でそういう状況があることについて、また二重ローンで苦しむ人々には何の補助もないというところで、農水大臣、あなた個人はどういうふうにお考えになるのか伺わせていただきたい。
  327. 大原一三

    大原国務大臣 何回も答弁さしていただいておりますが、今回の住専対策の公費の投入というのは農民を救うためだけのものではないと政府ははっきり答えております。どこへだれがどう言われたということはよくわかりませんが、その御答弁には私は責任を持ちかねます。  二重ローンの問題については私から答弁の限りではございません。
  328. 小池百合子

    小池委員 農水大臣としてではなく個人としてどうお考えになりますかと伺いましたので、御自由に御発言いただければと思います。
  329. 大原一三

    大原国務大臣 ただいま申し上げましたとおり、個人としての意見は差し控えさせていただきます。
  330. 小池百合子

    小池委員 いろいろお立場がおありなんでしょうけれども。  しかしながら、税金投入ですけれども、この農林系に対しての、六千八百五十億にとどまらない、今からもう二次損失の六千億が閣議決定されて、合わせて一兆三千億という税金投入、いとも簡単に決定されてしまうという運びになっているわけでございますけれども、しかしながら、ここで同僚議員が再三伺っておりますように、これまでのいわゆるデュープロセス、そして金額の積算根拠、明確でありません。こういったことについて地震の被災者としては本当に許せない気持ちを持っているということは改めて申すまでもないわけでございます。  さて今回、大蔵省もまことに気の毒としか言いようがない、たまにはそういうふうな表現もしてもいいかなと思うんですが、当初、農林系の系統の金融機関に一兆一千億円の負担を予定していたけれども、十一月に入って、自民党の農林議員などからごり押しがあって五千三百億円に値切られたということで、今ではまるで農協救済が大蔵省責任のように何か転嫁されて、おまけに大蔵省解体論まで出てきてしまっているということなんですけれども、銀行局長、本心を明らかにされてはいかがでしょうか。
  331. 西村吉正

    ○西村政府委員 プロセスにおいていろいろな議論はあり、また私どももいろいろな検討をしたことは事実でございますけれども、そういうプロセスを経て十二月十九日にこのような政府の提案となったわけでございます。
  332. 小池百合子

    小池委員 今回のこの住専の問題でございますけれども、とにかく被災地といたしましては、これまで一生懸命税金を、まじめに働いてきた人々が多いということ、その人たちから見れば今回のこの住専問題、特に農林系だけを助けるというような動き、これに対しての怒りというのが大変強いものであるということ、これをぜひともよく理解しておいていただきたいというふうに思います。  また、被災地の声といたしまして、ウルグアイ・ラウンド予算ということで、これまで農業を何とか、あのときも日本農業のシステムを破綻させないため、今回の、そこの日本農業の部分を金融に変えたらそっくり同じになるわけでございますけれども、ウルグアイ・ラウンド予算にいたしましても、本当の意味で農業のこれからの新しいビジョンづくりに役立っているかどうかというと非常に疑わしい部分がある。もちろん農業については、これから日本としても、二十一世紀は食糧難、人口爆発による食糧難ということで、非常に大所高所から考えなければならないことは事実でございます。  ウルグアイ・ラウンド予算、そして農水省、ことし予算として三兆ですかがついておりますけれども、しかしながら、こうやってお金をつぎ込んでもつぎ込んでも、例えば新潟とか山形とか、一体どれぐらいの後継者がいるのですか。たしか新潟県で今二十歳未満の人たちというのは三けた、百数十名だというふうに思います。(発言する者あり)子供だけではないならば、もう少し、法人化を進めるところをもっと強力にするとか、これまでの、新しい発想ということをこれから打ち出していかなければ、金融システムの破綻と同じように、農業にいっぱいお金はつぎ込んでも結局何もならない、水の泡に消えてしまうということになったら、またまた納税者はどうすればいいのですか。  もっと大きなビジョンで、住専、そしてノンバンク、そしてこれからの農業、こういった大きな大きなビジョンでもってくくって話をしてほしい。  今回の住専問題というのも、これからの金融の問題のごく一部でございます。その中の、また最初にちょろっと出して、そしてだんだんとそれで……(発言する者あり)ちょっと静かにしてください。お願いします。どうぞお静かにしてください。
  333. 上原康助

    上原委員長 お静かに願います。
  334. 小池百合子

    小池委員 住専問題につきましては、その一部でございますけれども、こういうところでさえデュープロセスが見えない、そして、ディスクロージャーがはっきりしていないということでございます。  それでは、住専についても伺いたいと思いますけれども、地価にはいろんな目安がございます。これはどなたに伺えばいいのかわからないのですけれども、国土庁とか国税局とかいろいろまたがっているのですけれども、土地の価格の目安というのは幾つあるのか。どなたに伺えばよろしいのでしょう。国土庁長官、いかがですか。
  335. 深澤日出男

    ○深澤政府委員 土地の価格につきましては、一月一日時点で、地価公示ということで目安を発表して、正常な価格を発表しております。  それから、七月一日時点で都道府県が地価調査を行いまして、それを発表しております。あと、四半期ごとにまた動向を発表しておりますが、国税庁の方では、相続税等の路線価のもとに路線価価格を発表をしております。  それぞれの立場で価格が示されているところでございます。
  336. 小池百合子

    小池委員 つまり地価というのは、今ございましたように、国土庁の公示価格、そして都道府県の調査価格、国税庁の路線価、そして市町村ですと固定資産税の基準ということ、プラス実勢価格というのがあるわけで、一物五価と言ってもいい状態でございます。  そしてこれは、今国土庁の方からお答えありましたように、相続税を払うというのは路線価を基準にしている。これは土地神話があった時代の一種の、これまた発想を変えないといけないと思うのですけれども、相続税として払えないと、実勢でそのままやっちゃったら、これはもう全部取っていかれるわけですね。ですから、例えば十のところを路線価だったら七というような、そういう価格、七割ぐらいになっていた。ところが、今何が起こっているか。相続税が払えなくて、物納されているわけですね。これはすなわち、路線価と実勢価格がこれまでのような構図にはもう当てはまっていないということだと思います。  ですから、この路線価の考え方にしても、今ばらばらにいろんなのがありました。それぞれの省庁の都合によって、またそれも現実のニーズもあったことは認めますけれども、しかし、どうでしょうか、一つの品物にそんなに幾つも目安があってもいいものかどうか。現実にはなかなか難しい問題かもしれないけれども、少なくともこの路線価というものの基準のあり方というのを、土地神話が終わり、そして土地の価格が常に右上がりではない時代、これに即応したものにすべきではないかと思うのですけれども、御担当の方、いかがでしょうか。
  337. 若林勝三

    若林政府委員 お答えいたします。  路線価格と申しますと、これは納税者が相続税等を申告するに際しましての便宜、さらには課税の公平といったことで、なるべく簡易でかつ的確な時価を算定することができるというようなことで、国税庁において定めておるわけでございます。  この路線価につきましては、毎年一月一日を評価時点といたしまして、公示価格水準の八割程度により現在評価いたしておるわけでございます。この八割程度にいたしております理由は、やはりこの路線価というのは一年間使用されるわけでございまして、その間の変動というようなことの安全を見越して八割というふうに決めておるわけでございます。
  338. 小池百合子

    小池委員 さて、今回のスキームでございますが――テレビも入らないのにこういうのをつくってきちゃったんですけれども、(パネルを示す)まあ、わかりやすく。  これまで、この住専七社資産合計額十三兆円ということでずっと動いて――まあ、いいんです、皆さんにわかっていただければ。もう十分おわかりだと思いますけれども、改めて。  この十三兆円というのが、もう既に当たり前のこととしてひとり歩きしている。しかし、どうでしょうか。けさも同僚議員が何度かお尋ねもしているわけですけれども、路線価というのは変化するわけですね。まず、この十三兆円、そして一次損失六兆四千百億円、このように数字がまことしやかに連なっておりますけれども、まず、これを積算する際の根拠根拠と私たち言っているわけですけれども、今一物四価、そして実勢価格を含めれば五つあると申しました。どれをとって計算なさったのか。まあ大蔵省お答えになるから、国税庁、路線価なんでしょうけれども、その辺のところを伺いたい。また、いつの路線価を基準にしておられるのか、伺わせてください。
  339. 西村吉正

    ○西村政府委員 今御指摘の十三兆円というのは住専七社の全体の資産の額面でございますが、それを住専処理機構に移します場合にいかなる評価をするかという点で六兆二千七百億程度の目減りがあるのではないか、こういう計算をしておるわけでございます。そのときに使いました担保の評価に当たりましては、最新時点、すなわち昨年八月に発表されました路線価を基準として用いて評価をしておる、こういうことでございます。
  340. 小池百合子

    小池委員 昨年八月に発表された路線価ということでございますが、一月一日の段階でまたことしの路線価を調査なさったということでございますね。もう既に各国税局の方からその数字は上がっていることかと思うわけでございますけれども、今私どもがずっと議論しているのは、では昨年の路線価に従って計算をしているわけでございますね。もちろんこちらの十三兆円というのは最初の各住専の会社の持っているその書類からということでございますけれども、そうしますと、今、土地の動向、これから地価の動向というのは一体どうなるのか、伺わせていただきたいと思います。
  341. 深澤日出男

    ○深澤政府委員 最近の地価動向でございますけれども、昨年の十月一日からことしの一月一日までの短期の地価動向調査、これを行いました。それによりますと、大都市圏の地価は、住宅地では横ばいないしわずかな下落、商業地では下落となっております。それから地方圏は、住宅地では横ばい、商業地ではやや下落というふうになっております。  当面の地価の動向につきましては、大都市圏の住宅地では一部の地域につきまして下げどまる傾向が見られ、全体としては横ばいないしわずかな下落で推移するというのが大方の見方でございます。また、大都市圏の商業地、これは下落を続けるというのが大方の見方でございます。
  342. 小池百合子

    小池委員 今度は、これは路線価。今御説明いただいたところでございますけれども、二月十日の日経新聞にも出ているわけでございますけれども、商業地の九五%で地価下落が続いているということでございます。ずっとまだまだ下落は続いているということでございます。  そして、今、昨年の路線価でもって話を進めているわけでございますし、かつ相続税で物納されるということは、相続税と実勢価格との乖離があるからこそ実物で払わざるを得ないという状況になっているわけで、そうしますと、実際にこのRTCが動き出し、そしてこの住専に対して我々のお金が動く、国税が動くというのは、これはこれからの話でございますから、今のお話でございますと、地価はさらに下落する。一部は地価がとまるというお話もございましたけれども、日経の報道によりましても、まだまだ下げどまりの感はないし、一方で、これからの地価動向、もしくは土地に対して安いのか高いのかと言っても、これに対しても明確なビジョンはない。  そうすると、マーケットの原理に従って、さらには今回の住専が抱えている不良資産を、お金を回収するために売るというんでしょう。マーケット、これまた緩むわけですから、これは当然よほどのことをしなければ、ますますこのお金というのは膨らんで、やれ一人当たり五千五百円だとか、それから一万円だとか言っていますけれども、そういう問題じゃなくなるんじゃないかということを私は申し上げたいわけでございます。  よって、一番申し上げたいことは、今小出しに自分の都合のいいような数字ばかり出して、物事をわかりにくくして、何が何かわからない間に、そしてこの委員会もとめる意思がなく、とにかく強行突破でこれを決めちゃうというようなそういう流れでございます。  いいですか、予算委員長、もしこれが沖縄問題で、沖縄の人たちが六千八百五十億円の税金を払って米軍基地を拡大するというようなことが開かれているようなときだったら、どうしたらいいんですか。昔だったら何度もとめたでしょう。どうでしょうか。今はこういう状況なんですよ。  さて、いかがでしょうか、皆さん。私が申し上げたいのは、まずは積算根拠、これがどんぶり勘定ならどんぶり勘定ですと言ったらいいじゃないですか。農林系を助けるのがもう最大の目的なんです、そうだったら言ってください。そして、小出しにしないで、本当の姿をきっちりとあらわして、そしてその上で、こうしたいというふうに言っていただかないと、そのたびにくるくると答弁が変わり、数字が変わり、そしてなおかつ本当のやり方が見えてこない。これでは全く納税者として税金を払うにふさわしいものにはなっていないというふうに思うわけでございます。  おすし屋さんで、回転ずしなら一枚お皿で百円だったら百円とか二百円とか勘定できるんですけれども、これはいきなり食べた後の請求書だけ突きつけられている。そして、我々みんなそれを食べているならいいけれども、人が食べた請求書をこれで回される、明細はついていない、白地小切手を切れ、これでは、私は納得できないわけでございます。  今回の住専の予算でございますけれども、憲法第十四条、平等の原則に違反する。そして憲法第十五条、天下り先の特定民間企業を特別扱いする大蔵省は、職権乱用として公務員の規定違反ではないか。そして憲法第八十三条、財政の公正と民主性に違反するのではないか。見積もりの根拠もなく、白地小切手のような欠陥予算を審議するのは無理というふうに強く申し上げまして、そして、被災地の復興をどうぞお忘れなくということを、また具体的に進めていただくことをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  343. 上原康助

    上原委員長 これにて小池君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十四日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十五分散会