○平田
委員 この点はこの程度にいたしまして次に移りたいと思います。
私は、今回の
住専の
処理につきましては法的
処理をするのが一番最適だと考えております。冒頭に申し上げましたように、
国民の倫理観等、遵法精神等のことを考えますと、本来やるべき方法で
処理をする、これが一番正しいのではないかというふうに思うんです。
民間会社が再建不可能と判断された
処理のスキームは破産でございます。これ以外の方法は通常ございません。これが
大原則でございます。
そして、私も弁護士でございますが、
債権回収のためには一日も早く破産申し立てをするというのが鉄則でございます。時間の経過によってへ破産する
会社の
資産が散逸する可能性があるとともに、債務者の
資産隠しなどにより回収の困難性が高まるからでございます。今
住専七社が自己破産の申し立てをすれば、裁判所は速やかに破産宣告をするでありましょう。すなわち、直ちに
債権回収が始まるということでございます。しかし、今はほとんどなされておりません。
私は、
大蔵省に債務者数を聞こうと思いましてお願いをしましたが、まだその数字さえ出ておりません。その上で、どれだけの債務弁済契約書ができ上がっているのかどうか、そういう情報さえ公開されておりません。新聞報道されるのは、
不良債権隠しばかりの事実でございます。
総理も
大蔵大臣も、破産手続は時間がかかるとおっしゃいます。
今回の
処理スキームより早く着手できる点では、破産の方がすぐれていると思います。また、その後の
債権回収のための権限も、破産管財人の方が
住専処理機構より極めて強力である、このように思います。
住専処理スキームは、
国会の審議を経て予算を通した上、さらに法案の成立がなければなりません。しかし、現在その法案さえいまだ
提出をされておりません。そして、
法律施行の後には、上場
会社二社も含めまして、
住専七社について株主総会の決議を得なければ
処理は始まりません。実際、この決議を得ることは極めて難しい。
この決議は商法上の特別決議でございまして、株式の過半数を有する株主が出席する株主総会で、議決権を有する三分の二以上の議決権で決議をしなければならない、三分の二以上の賛成を要するということでございます。
また、決議を得たといたしましても、
処理機構に権利の移転の手続に大変な手間と費用がかかります。破産の場合はその点は全く問題がないわけであります。株主総会の決議も不要でありますし、破産すれば何らの手間を要せずすべての権利が破産管財人の管理下に
法律上直ちに置かれるか
らであります。株主総会では恐らく、決議をする前に経営陣の
責任などへの追及もされまして、紛糾するでありましょう。何回も何回も株主総会を開かなければできない、こういう状況が当然予想されるわけであります。
確かに権利の移転につきましては、登録免許税等は免除をするというふうに言われておりますが、しかし、所有権の移転等をしなければならないはずでございます。それから、
債権の譲渡の通知もしなければなりません。膨大な事務量と費用がかかります。破産管財人の場合はそのようなものは一切必要はありません。また、
債権回収の権限も破産管財人の方が強力であります。
まず、法的権限が破産法により特に与えられておりまして、債務者の行為を
法律上否定し、効力を失わさせる否認権も破産管財人にはあります。これに対し
処理機構は、これらの権限が全くございません。法案を新聞報道で見ましたが、そのような規定はない。これは、
債権回収のためには重大な欠陥であります。
もう
一つは、破産管財人には弁護士がつきます。
法律の専門家であるだけでなく、庶民のために日常的に暴力団とも闘っている弁護士の豊かな経験は他の人々にはかえがたい力でありまして、そのノウハウは、
債権回収のためには絶対の力を発揮いたします。
これに対し、
処理機構は
住専の社員の再就職先でしかなく、これらの人々には失礼ですが、
債権回収能力は弁護士たる破産管財人に比べ極めて弱く、また、暴力団に対しては無力と言ってもよいかもしれません。また、
住専の元社員が
債権の回収に当たれば、債務者はこれまでの
住専とのさまざまないきさつ、関係や事情を持ち出し、返済に容易に応じてこないだろう、これも当然推測されることでございます。
もちろん、
住専処理機構が弁護士を雇用することを当然お考えではありましょうが、破産管財人たる弁護士の立場と、
処理機構の代理人たる弁護士の立場を比べたとき、破産管財人の方が先ほど申し上げました否認権など権限が強いため、交渉の際も立場が強く、したがって、任に当たる弁護士の意識も質的に相違するものであります。
こういう点から考えますと、圧倒的に破産管財人の
債権回収の方が有利なわけであります。
破産手続には時間を要するということを言われます。破産手続そのものに時間がかかるわけではありません。破産による
債権回収でも裁判などを提起しなければならないわけでありますが、その裁判が長引くために、時に破産
処理に数年を要することもあるわけであります。
しかし、これは
処理機構も全く同じであります。
処理機構だから裁判が早く進むというわけではありません。しかも、
処理機構では十五年間もかけて
処理をするスキームであります。破産で十五年間も要するということは通常考えられません。通常は数年、これが我々の一般の相場でございます。あの豊田商事の破産ですら五年で終わっているわけであります。
このように
住専の
処理のためには破産の方が圧倒的にすぐれているのに、なぜ
大蔵省は破産より著しく劣った
処理スキームをつくったのか。こういう
会社の倒産
処理の専門家から見まして、全く不思議であります。つくられたスキームは、倒産
処理については全くの素人がつくったとしか言いようがありません。我々専門家側から見ましたら、このような
処理スキームで
処理ができるはずがないじゃないか、このように言わざるを得ないわけであります。そのような欠陥
処理スキームを
大蔵省がなぜつくったのか、そこに
国民は大きな疑問を持っているわけであります。
その理由は、我々
国民にはまだわかりません。不思議です。私は、これこそ
大蔵省の、大和
銀行事件、それに続く大失策だろうと思います。
二月の二日、大和
銀行は
アメリカから放逐されました。
日本の
金融史上の大汚点であります。
私は、昨年末、大和
銀行事件の
調査のためにワシントン、ニューヨークに行ってまいりまして、
アメリカの
銀行監督当局にほとんど会ってまいりました。そのときに、彼らは外交的配慮のもとで、
言葉は極めてソフトではございましたが、
日本の
大蔵省当局の対応に対しまして厳しい批判をしておいでになりました。四十日間も通報をしない。ある
監督当局者は、私たちは自宅の電話番号さえ教え合っているのです、こう言っておりました。何か懸念のことがあったならば夜中でも何でも電話をお互いの家までするというのが日米の
金融当局の約束事だ、それなのに四十日間も放置をした、我々の信頼を根底から覆した。心の中は恐らく煮えたぎってみえたのではないかと思います。まさに大失策であります。
そして、今回の欠陥
住専処理スキーム、これをつくったことは、私は、それに続く、いやそれを上回る大失策なのではないかと思います。一次損失で六千八百五十億円の財政資金、二次損失は少なく見積もって六千億円、下手をすると一兆、二兆になるかもしれない。その財政資金をどぶに捨てる、いや、結果として暴力団に渡してしまうような結果となる
処理スキームには
国民のだれもが納得できないのは当たり前であります。
総理、今私は専門家の立場から破産
処理の有利な点を幾つか挙げて申し上げました。私のこの
説明をそのまま素直に聞いていただければだれでも、じゃ、すぐに破産申し立てしてすぐやろうじゃないか、こういうことに私はなると思うのです。
国民が、みんながこぞって反対している今の欠陥
処理スキームを無理やり通していくなどというのは為政者たる者がとるべき道ではない。国を過つと冒頭申し上げたのもそういう意味でございます。
ほかに方法がないではないか、早くやりなさい、同感でございます。しかし、ほかに方法はありますというふうに私は懇切丁寧に今申し上げたわけであります。破産管財人が、
債権回収、
会社の
処理のためには一番強力な現行法上のスキームであります。
住専処理機構のシステムはそれを上回るものでは決してありません。権限においてもマンパワーにおいてもはるかに劣るものであります。にもかかわらずこれを無理やり進められるのでしょうか。いかがですか。