○森本晃司君 私は、新進党を代表いたしまして、ただいま
議題となりました
特定住宅金融専門会社の
債権債務の
処理の
促進等に関する
特別措置法案など六
法案に関し、
総理初め
関係大臣に質問をいたします。
住専を
処理するために
国民の
税金を投入することに反対する世論は、現在も
国民の九割近くに上っております。にもかかわらず、
与党は、六千八百五十億円の
税金投入を含む
平成八年度予算を、数に物を言わせて
成立させました。これまで本
会議の場やあるいは
予算委員会で、
政府の
住専処理策に対して長い時間
審議をしてまいりましたが、全く
国民の理解を得られていないのが
現状であります。
申すまでもなく、
住専は、純然たる
民間会社であり、ノンバンクであり、
預金者もおりません。民間企業というのは、たとえ
政府・
与党の
経済無策による長期的な不景気により自分の
経営している
会社が倒産したとしても、
政府が救済してくれることは決してありません。
しかし、今回の
政府の
処理策は、
住専を救済するためでもなく、ただつぶすために
税金を投入するというものであります。
税金を投入しなければならない必然性についても、合理的な
理由が全く示されていないのであります。これでは、どんなに時間をかけても
国民の理解が到底得られるものではありません。
政府・
与党は、だめなものはだめということを明確に認識すべきであります。
国民は、憲法第三十条で納税の義務を負っております。これは、
国民の
税金を預かる
政府や
国会に対する信頼が
前提となっていることは言うまでもありません。
民間会社の倒産
処理に
税金を使うということは前代未聞であり、後世に悪例を残すものであります。
こんなことを多数によって決めるならば、
国民の納税意欲は著しく低下し、こんな
法律を
成立させ、さらに消費税をアップさせるなどということは、
国民に対する冒濱であります。
政府や議会に対しぬぐいがたい
不信を招く、いや既に
不信を招いているのであります。私は、
住専処理案を廃案にし、
国民の
税金投入を直ちに中止することが
国会の良識であると申し上げたいのであります。(
拍手)
政治に携わる者は、
国民の負託を受けて行動することは当然であります。
行政もまた、
国民の信頼があってこそ成り立つものであります。しかるに、
住専の
破綻をここまで放置し、
金融秩序が揺らぐほどの
不良債権問題を抱えるに至っております。にもかかわらず、政治も
政府も
金融機関経営者も、いまだだれ一人として
責任を明確にしょうとしていないではありませんか。
総理は、政治と
責任、特に
住専・
金融問題に関する
責任の
あり方に
いかなる
考え方を持っておられるのか、ぜひ
国民の前に明らかにしていただきたいのであります。
今回の
住専スキームを決定したのは村山内閣であり、
大蔵大臣は武村さんでありましたが、予算を編成し
国会に
提出しただけで、政権を投げ出してしまいました。
一人の方は、外でいろいろ言いながらも
国会の場での発言を求めても応じず、もう一人の方は、こんな枠組みをつくった張本人が敵前逃亡したという
国民の厳しい批判に対して、責めの一端を果たしたいと称して、
財政再建策として消費税一二%をもっともらしく述べていることは、
国会を軽視するとともに、無
責任きわまりないと思うのでありますが、
総理はこのことに対してどのようなお
考えをお持ちか、お答えを賜りたいのであります。(
拍手)
さらに加えて、今回のスキームづくりの中核的役割を果たした加藤自民党幹事長は、
住専から七十三億円を借り、これを
不良債権として破産した共和から一千万円のやみ献金を受けたとの疑惑を受けています。
いわゆる加藤問題は、ここ四年来、
国会で疑惑が取り上げられ続け、加藤氏は官房長官時代など四回にわたって答弁をされているのであります。しかし、疑惑は解明されないばかりか、去る三月四日、加藤氏の元後援会長が代理人を通じて司法クラブで、加藤幹事長の
住専・共和やみ献金問題について、現金の受け渡しに立ち会い、その後、加藤氏の依頼で一千万円を預かったなど事実の経過を明らかにしたことにより、
国会で虚偽の答弁を行った疑いがますます大きくなっているのであります。
我々は、決して党利党略で加藤氏の証人喚問を求めているのではありません。
住専や
金融問題を
審議するに当たり、まず
国民の
不信を取り除くことが政治の
責任ではないでしょうか。(
拍手)みずから進んで証人喚問に応じられるべきであります。
また、
住専に直結する加藤喚問は、
法案や
金融問題に先立って、まず
実現されなければなりません。先ほど
総理は、我が党の加藤議員の質問に対して司法の場にあるからと言って逃れられましたが、政治家としての
責任は
国会できちんとしなければなりません。金丸さんのときも病院にまで行って喚問をやったではありませんか。
加藤さんが回避すればするほど、
国民の政治
不信は高まることを認識されるべきであります。
与党各党の閣僚や議員の皆さんが一致して加藤喚問を勧告し、一日も早く
実現されることを念願するものであります。特にこの問題について、
総理、大蔵、経企庁長官に
見解を求めたいと思います。
四年前の六月、社民党の幹部は「政治スキャンダルを解明せずして
法案の
審議を十分することは難しい」と述べて、加藤証人喚問を要求いたしました。疑惑が一段と明確になった今日、なぜ証人喚問を要求されないのですか。かつて社民党は真っ先に証人喚問を要求してきたではありませんか。
村山前
総理は「何かあったらすぐ証人喚問と騒ぎ立てるのはどうか」などと言っておりますが、これには
国民も唖然としているのではないでしょうか。立場が人を変えるといいますが、これでは、公約も
国会での主張も何の
意味も持たないことになるのではないでしょうか。
国民やかつての社会党を支持されてきた多くの皆さんの失望と悲しみの声が聞こえてまいります。私は、この場で社民党諸君の猛省を促しておきたいと思うのであります。
総理、あなたは、今日の
住専問題を生むことになった総量規制、三業種規制の通達をお出しになった当時の
大蔵大臣としての御自身の政治
責任をどのように感じておられるのか、率直に語るべきです。
住専を
破綻するままに放置をし、
金融機関に対する
監督を怠ってきたと言わざるを得ない
大蔵省、農林系統
金融機関の
住専に対する貸し込みを黙認してきた農林水産省、後に
税金投入の根拠となる法的には何の効力もないあの覚書を交わし、国政を壟断したとも言えるこの両省の
責任を
総理はどのようにお
考えか、この両省に対する
行政監察を実施する
おつもりはお持ちかどうか、お伺いいたします。
法案関係についてお伺いいたします。
住専処理に投入される六千八百五十億円の積算根拠であります。
参議院
予算委員会の証人喚問で、角道農林中金理事長は、負担額は前農相に善処をお願いしており、五千三百億円の積算根拠は知らないと証言し、橋本全銀協前会長は、六千八百五十億円の
税金投入は突如決まったと証言をしております。当事者の知らないところで、
政府内の談合によりこの
処理スキームは決められたのですか。
なぜ六千八百五十億円なのかという
説明も、納得できるものではありません。これまで
政府は、農林系統
金融機関の負担五千三百億円の積算根拠についても、ぎりぎりの負担を積み上げたとの一点張りで答弁をしてきました。これら証人の証言を踏まえ、
総理、農水大臣に、六千八百五十億円、五千三百億円の積算根拠をお尋ね申し上げます。
次に、
住専処理機構の二次
損失と
債権回収についてお伺いいたします。
住専処理機構で
回収できない
債権を二次
損失とし、二次
損失以降は
損失額の半額を
税金で補うことも
政府は閣議において了解しております。
住専処理が
金融システム安定化のためであるなら、一次、二次に分けず、なぜ一括して迅速に
処理をしないのでしょうか。分割
処理とする
理由は一体何でありましょうか。また、二次
損失の
財政負担はいっから支出されるつもりですか。
また、昨今の地価の下落により
住専の
不良債権額は
拡大しているはずでありますが、どのぐらい
拡大していると判断されているのか。直近の地価に基づき
処理策を作成し直すお
考えはお持ちでしょうか。もし
処理策をし直さない場合、
政府は、二次
損失について一兆二千億円程度の
損失が出る見込みであると
説明してまいりましたが、地価の下落などを考慮に入れれば、増加することは明らかです。
政府は、なぜ今から二次
損失の半額を
国民の血税によって穴埋めすることを決定されたのですか。これでは、まるで
国民が
政府に白紙の小切手を渡すようなものではありませんか。半額は
税金と決めた
理由と、最終的に
総額どれだけの
税金が必要になると算定しておられるのか、具体的な数字を
総理、
大蔵大臣に御答弁をお願いいたします。
政府は
住専七社を一括
処理する方針ですが、
住専七社には
経営内容、資産の傷みぐあいにかなりの相違があり、一括に
処理してしまうのはまさに
責任逃れのためとしか
考えられませんが、この点についてどう
考えておられるのでしょうか、お答え願います。
東京
協和、安全の
破綻二
信組の
事業を受け継いだ東京共同
銀行、民間
債権処理のために設立された共国
債権買取
機構の
債権回収がはかばかしく進んでいないことを見ても、
住専処理機構には強力な
債権回収など到底期待できないと
考えますが、
回収の
見通しは立っているのかどうか、それぞれ明確にされたい。
次に、
住専の
経営者、設立母体
金融機関の
経営責任の追及について伺います。
昨今、借りた金を返さずに優雅な暮らしを続けている悪質な借り手企業に検察・国税当局の捜査が入り、そのい
いかげんな
経営の実態が明らかになりつつあります。
住専各社は、低い担保権で
巨額の融資を行ったり、同一の不動産に何度も担保権を設定するなど、新進党が以前から指摘をしてきたずさんな融資
状況が次々と明るみに出ております。
また、
住専の設立母体
金融機関つまり母体行は、その紹介融資の金額が
債権放棄額を上回る
銀行が六行あり、二倍を超える
銀行が三行あります。紹介融資
総額の九割が
不良債権となっており、駆け込みで
資金回収をした
金融機関も多数に上っております。このようなずさんな
経営をしていた
住専並びに母体行の
経営者の
責任を
総理はどのようにお
考えでしょうか。
住専各社から
住専処理機構に営業
譲渡をする場合、
経営責任の追及、役員への
損害賠償請求権は、包括的、網羅的に
住専処理機構に
譲渡されることになると
政府はしております。しかし、
住専で一番のしにせである日住金の個人株主が五〇%を超えていると聞きます。営業
譲渡のための決議が危ぶまれていますが、完全に
住専処理機構に移転し、損害賠償と
責任の追及をすることができるのでしょうか。既に
住専処理のスキームは
破綻していると言っても過言ではないと思います。(
拍手)
総理の明確なる答弁を求めます。
次に、
経済企画庁長官にお伺いいたします。
長期にわたる景気の低迷が
国民生活に深刻な影響をもたらしている中、例を見ない超低金利政策により、
金融機関は史上空前の
業務純益を上げております。これは明らかに
銀行優遇策であり、年金生活者などの低所得者から
銀行への所得移転であります。この低金利政策が
国民生活にどのような影響を与えていると認識しておられるのか。
また、五月の月例
経済報告では、景気は穏やかながら回復の動きを続けていると判断されております。
金融機関の抱える膨大な
不良債権の
処理に根本的な対策を打ち出せないでいる
政府が、景気と
不良債権処理の関連をどのように
考えておられるのか、これからの景気
見通しも含めて御
説明願いたいのであります。
さらに、今日の膨大な
不良債権を生む元凶となった
バブル時代の
経済政策を
経済企画庁はどのように総括されておられるのか、明確に御答弁をお願いします。
与党自民党の幹部は「ダムに穴があいたら、だれがあけたのかとか何であいたのかと言っている暇はない。早く穴をふさがないと、ふもとの村が水浸しになってしまう」と言って、今回の
税金投入を正当化しようとしております。これは、全く見識を欠いた発言と言わなければなりません。
不良債権問題が
住専問題のみであり、これが解決すれば
不良債権問題は解決するかごときの物の言い方は、問題の本質を矮小化し、
国民の判断を誤らせるものでしかありません。まさに木を見て森を見ずのたぐいであります。
住専という氷山の一角だけを見て膨大な
不良債権が見えないのでは、日本丸は座礁し、沈没することは必至であります。こんな
政府・
与党にかじ取りを任せているわけにはまいりません。(
拍手)
住専処理機構による
債権回収が始まり、担保物件が処分され、借り手企業が次々と倒産に追い込まれることになれば、錯綜する
債権債務関係が、他の
金融機関、ノンバンクなどにも波及することが十分に予想されます。その際、
金融秩序の安定
維持には、この
住専処理法案では何ら役に立ちません。
金融システムの安定
維持のための公的
資金投入については、明確なるガイドラインがなければなりません。それは、あくまでも
預金者保護であり、
経営者の厳しい
責任追及及び「
破綻金融機関は存続させない」が
原則と
考えます。
我が新進党は、
不良債権全体の
処理を視野に入れた中で、
住専処理は、
自己責任と
市場原理の大
原則に基づき、法治国家として
国民に開かれた
状況の中で行うのが最善と
考えます。
総理、かつて「過ちを改むるにはばかることなかれ」と言った人が
与党首脳の中におられますが、この過ち多く、
総理御自身が「
住専処理に
税金を投入することに
国民の理解が得られていない」と述べておられる
住専処理法案は、廃案にすべきだと重ねて申し上げます。
先ほど、我が党の加藤議員の新しいスキームでという質問に対して、
総理は全く
考えておりませんとおっしゃいましたが、では、けさの官房長官の記事は
いかがなのでしょう。
総理の御所見をお伺いいたします。
橋本内閣は、
住専処理策にとどまらず、
経済政策や外交政策を見ても、何ら展望を
国民に示しておりません。自民党、社民党、さきがけによる連立内閣も
国民の審判を受けたものではなく、その行き詰まりが指摘されております。私は、一日も早く衆議院を解散し、総選挙によって
国民の信を問うべきだと申し上げ、
総理の
見解を伺い、私の質問を終わります。(
拍手)
〔内閣
総理大臣橋本龍太郎君
登壇〕