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1996-02-16 第136回国会 衆議院 本会議 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年二月十六日(金曜日)     —————————————   平成八年二月十六日     午後零時三十分 本会議     ————————————— ○本日の会議に付した案件  橋本内閣総理大臣の「新防衛計画大綱」及び「   新中期防衛力整備計画」に関する報告及び質   疑     午後零時四十五分開議
  2. 土井たか子

    議長土井たか子君) これより会議を開きま す。      ————◇—————  内閣総理大臣発言(「新防衛計画大綱」及び   「新中期防衛力整備計画」に関する報告
  3. 土井たか子

    議長土井たか子君) 内閣総理大臣から、「新防衛計画大綱」及び「新中期防衛力整備計画」に関する報告のため、発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣橋本龍太郎さん。     〔内閣総理大臣橋本龍太郎登壇
  4. 橋本龍太郎

    内閣総理大臣橋本龍太郎君) 新防衛計画大綱及び新中期防衛力整備計画について御報告を申し上げます。  国際情勢を見ますと、冷戦終結後、東西間の軍事的対峙の構造は消滅しましたが、宗教上の対立民族問題等に根差す対立が顕在化するなど依然として不透明、不確実な要素が残っており、我が国周辺地域においてもいまだ種々不安定要因が残っております。他方、国際関係の一層の安定化を図るための各般の努力も継続されております。  また、自衛隊の主たる任務である我が国防衛に加え、大規模災害等への対応国際平和協力業務安全保障対話等を通じた、より安定した安全保障環境構築への貢献という分野においても、自衛隊役割に対する国内外の期待が高まってきております。  このような認識を踏まえ、また、格段に厳しさを増している経済財政事情等にも配慮しつつ、政府は、昨年十一月、安全保障会議及び閣議において新防衛大綱決定いたしました。  新防衛大綱は、まず第一に、防衛力役割について、直接間接の侵略に対する「我が国防衛」が今後も防衛力の主要な役割であり続けることを基本としつつ、これに加え、「大規模災害等各種事態への対応」、「より安定した安全保障環境構築への貢献」という点を防衛力役割として明確にいたしました。  第二に、ポスト冷戦時代における日米安全保障体制意義を明らかにいたしました。日米安全保障体制は、我が国の安全の確保にとって不可欠なものであり、また、我が国周辺地域における平和と安定を確保し、より安定した安全保障環境構築するためにも引き続き重要な役割を果たしていくとの認識を明らかにしております。  第三に、我が国が保有する防衛力内容について見直しを行いました。すなわち、防衛力についてその合理化効率化コンパクト化を一層進めるとともに、必要な機能充実防衛力の質的な向上を図ることにより、多様な事態に対して有効に対応し得る防衛力整備することとしております。  また、政府は、昨年十二月、安全保障会議及び閣議において新しい中期防衛力整備計画決定いたしました。もとより、防衛力整備は、中期的な見通しに立って、継続的かつ計画的に行っていくことが必要であります。このため、政府としては、昭和六十一年度以降、中期防衛力整備計画策定し、これに基づき各年度の防衛力整備を行ってまいりました。現在の計画平成七年度で終了するため、政府としては、新防衛大綱策定を受けて新たな計画策定したものであります。  新中期防は、新防衛大綱もとでの最初中期的な計画であり、先ほど申し上げたような新防衛大綱に示された防衛力内容を実現することを目指すものであります。したがって、計画には、現行の防衛力規模及び機能見直しに係る各種施策を盛り込んでおります。これらの施策実施に当たっては、種々事情を勘案して計画的かつ段階的に行っていくことが肝要であります。  政府としては、新防衛大綱もと、新中期防に従い、適切な防衛力整備を行ってまいる所存であります。  議員各位におかれましては、今後の我が国防衛力あり方について、国会で御論議され、御理解、御協力くださいますようお願い申し上げますとともに、国民の皆様におかれましても、一層の御理解を切に希望する次第であります。(拍手)      ————◇—————  内閣総理大臣発言(「新防衛計画大綱」及び「新中期防衛力整備計画」に関する報告)に対する質疑
  5. 土井たか子

    議長土井たか子君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。大野功統さん。     〔大野功統登壇
  6. 大野功統

    大野功統君 新しい防衛大綱並びに中期防について、自由民主党、社会民主党・護憲連合新党さきがけを代表いたしまして質問をさせていただく前に、北海道豊浜トンネル崩落事故に関し、一刻も早くとうとい人命救出されますよう心からお祈り申し上げるものであります。  昨年は、冷戦時代昭和五十一年につくられた防衛大綱が見直され、十九年ぶりに新しい防衛大綱策定されました。また、引き続いて平成八年度から五カ年間の防衛力整備規模を定める新中期防策定され、我が国防衛政策にとって一大転換の年でありました。  まず、東西冷戦終結により、ポスト冷戦時代防衛政策あり方世界的に模索され、当然のことながら、我が国防衛政策も見直すべき時期でありました。さらに、新しい防衛大綱は、村山政権下連立与党三党が徹底した議論を行った結 果策定されたという点で大きな意義があり、かかる観点から申し上げますと、まさに幅広く国民的な合意を得た防衛大綱ができ上がったと私は信じております。  今回の論議を通じて最も重要なことは、何といっても防衛政策基本認識の一致であります。  基本認識の第一は、日米安保体制重要性であります。  冷戦終結で、確かに世界的規模での武力紛争可能性は低下しました。しかし、宗教民族問題等に根差す対立は、むしろ顕在化しております。我が国周辺地域におきましても、朝鮮半島における緊張など不透明、不確実な要素が残されていて、我が国の安全に重大な影響を与える事態が発生する可能性は否定できません。こうした国際情勢考えると、核兵器を持たない我が国安全確保のためには、日米安保体制を引き続き堅持することが重要であります。  一方、アメリカは、在欧州兵力冷戦当時の約三十万人から約十万人に削減しながらも、アジア太平洋地域においては約十万人の兵力を引き続き維持する等、アジア太平洋地域の平和と安定を重視しているところであります。  このように、日米安保体制は、我が国にとっても米国にとっても、ひいてはアジア太平洋地域にとっても、極めて重大なものとなっております。  昨年来日した米国の識者が「もし安保を廃棄するようなことになれば、日本が再軍備や核武装に動き出したのではないかという懸念から隣国との関係が悪化し、アジアでの軍拡競争に拍車をかける。日本軍事力強化コスト負担を強いられるばかりではなく、地域不安定化などマイナス要因を抱えることになる。それは日本にとっても得策ではないだろう」と語っております。そのときは、新しい防衛大綱ができていない段階でありました。  しかし、今では、我が国日米安保体制に関する確固たるスタンスが新しい防衛大綱に明記されているのであります。すなわち、新しい防衛大綱では、日米安保体制信頼性向上を図り、これを有効に機能させていくための諸施策が示されており、また、このような日米安保体制を基調とする日米両国間の緊密な協力関係は「国際社会の平和と安定への我が国の積極的な取組に資するものである。」と明記されております。また、米国との関係でいえば、今後、我が国は、アジア太平洋地域ひいては世界の平和と繁栄のために応分の責務を果たす、より対等のパートナーとなっていかなければならないと私は思っております。  橋本総理総理は再三、本会議予算委員会において、外交の基軸は日米関係であると述べておられます。総理は、四月の日米首脳会談前の二月二十三日に急速訪米を決断されました。私たちはこの総理の決断を高く評価するものでありますが、その際ぜひとも、二十一世紀に向けた日米関係あり方基本は、新しい防衛大綱に明記されているように日米安保体制強化であり、このことがアジア太平洋地域ひいては世界の平和と安定にも貢献するということをクリントン大統領に直接おっしゃっていただきたい。まず私はこのことを総理にお願いする次第であります。  しかしながら、昨年九月米兵による少女暴行事件の発生を契機として、沖縄米軍基地整理統合縮小について、今真剣に議論されているところであります。沖縄米軍基地歴史的背景米軍基地沖縄に過度に集中している、このような事実を踏まえ、沖縄県民の声に十分耳を傾けながら、できることから早急にかつ具体的に沖縄基地問題の解決を図っていくべきことは言うまでもありません。  基本認識の第二は、日米安保体制という土台の上に構築される自衛隊防衛力、すなわち基盤的防衛力であります。  新しい防衛大綱では、我が国防衛力合理化効率化コンパクト化するという趣旨が述べられておりますが、このほかに、もう一つ特徴的なことがあります。それは、自衛隊国民生活との接点が広がり、かつ深まっているということであります。昨年の阪神・淡路大震災では、自衛隊救援活動に大活動いたしました。また今、北海道豊浜トンネル崩落事故について、自衛隊災害派遣実施いたしております。国民の間に「まさかのときには自衛隊」との声が高まってきているのは当然のことであります。  また、近年、我が国国際社会貢献することが強く求められるようになりました。ゴラン高原等PKO活動ルワンダ難民救援活動などを自衛隊が行っているということは、国際社会における我が国のイメージを著しく高めているゆえんであります。これらのことを新しい防衛大綱では明記している次第であります。  第三の基本認識は、信頼醸成重要性であります。  我が国防衛は、既に申し上げましたように、その土台日米安保体制であり、その土台の上に一階部分として自衛隊、すなわち基盤的防衛力構築されております。信頼醸成は、この一階部分の上にさらに構築されるべき二階部分であります。新しい防衛大綱においては、安全保障対話防衛交流を引き続き推進することをうたっておりますが、しかしながら、その将来の青写真は必ずしも明確ではありません。二階部分設計図は未完成なのであります。信頼醸成予防外交は、紛争を未然に防止する極めて重要な活動であります。今後、信頼醸成予防外交をどのように進めていくのか、池田外務大臣及び臼井防衛庁長官の御所見をお伺いしたいと思います。  私は、二十一世紀に向けた防衛政策あり方は、以上申し上げました三つの基本認識で明確に示されていると考えております。総理は、当時副総理として新防衛大綱決定に参画されておられますが、改めて、新防衛大綱の全体像につき、今、総理としての御所見をお伺いしたいと思います。  次に、新中期防であります。  新中期防は、新しい防衛大綱で示された防衛力内容を具体的に実現するため、継続的かつ計画的に防衛力整備を図るものであります。新中期防理念的裏づけである基盤的防衛力構想は、必要最小限防衛力を持つというものでありますから、理の当然として軍縮という概念にはなじまず、また、この構想を全うするために、例えば警戒態勢充実は極めて重要であります。こうした観点から、空中給油機導入はぜひとも早急に進めるべきではないでしょうか。新中期防について臼井防衛庁長官はどのように考えていらっしゃるのか、御所見をお伺いしたいと思います。  最後に、御答弁は求めませんが、新防衛大綱策定後、宿題として残されております集団的自衛権武器輸出三原則、PKO法見直しをめぐる諸課題を早急に解決し、日本安全保障に、また国際社会において日本の果たすべき役割に、後世に憂いを残さないよう対処していくことが、好むと好まざるにかかわらず、世界の中の日本のこれからたどらなければならない道であることを強くお訴え申し上げまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。(拍手)     〔内閣総理大臣橋本龍太郎登壇
  7. 橋本龍太郎

    内閣総理大臣橋本龍太郎君) 大野議員にお答えを申し上げます前に、北海道豊浜トンネル崩落事故におきまして、現在も人命救出のために全力を尽くしている最中であり、一刻も早い救出のために全力を尽くします。  日米安保体制強化についてのお尋ねでありますが、今回の訪米は、クリントン大統領との個人的な信頼関係構築することがその主要な目的でありますけれども、その際、私は、日米関係が、我が国にとりましても世界にとりましても最も重要な二国間関係であること、そしてアジア太平洋地域そして世界の平和と安定のかなめであるという認識もとに、こうした日米関係の中核をなす日米安保体制というものを強化し、これに基づく 日米間の協力関係をさらに発展させていく、その重要性についてクリントン大統領との間で再確認をしてまいる考えであります。  さらに、私は、四月のクリントン大統領訪日の際には、これまでの安全保障分野における日米間の緊密な対話の成果を踏まえ、日米安全保障体制というものの重要な役割を改めて確認する共同文書を発出し、二十一世紀に向けた日米同盟関係あり方について内外に明らかにしていく考えであります。  また、昨年決定された新防衛大綱も踏まえまして、日米安保体制信頼性を一層高めていくための具体的な施策につき積極的に検討し実施してまいります。そして、そのためにも、沖縄における米軍基地整理統合縮小への努力日米両国にとって大切であることも、この際訴えたいと思っております。  また、新防衛大綱につきましてお尋ねがございました。  新防衛大綱は、冷戦後の国際情勢自衛隊に期待される役割変化等を踏まえ、二十一世紀に向けての我が国防衛力あり方についての新たな指針を示すものでありまして、幅広い観点から総合的な審議を経ました上で、安全保障会議及び閣議決定されたものであります。私としては、その内容を高く評価しているところでありますし、これに基づいて適切な防衛力整備維持及び運用に努めてまいりたいと考えております。  残余の質問につきましては、関係閣僚から御答弁をいたさせます。(拍手)     〔国務大臣臼井日出男登壇
  8. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 大野議員から二つの御質問をちょうだいいたしました。  初めに、信頼醸成進め方についての御質問でございました。  冷戦終結後の今日の国際社会におきましては、より安定的な安全保障環境構築という課題が大変重要な課題になってきております。こうした安全保障上の課題変化我が国が置かれている国際社会における地位、こうしたものを考えますと、御指摘のとおり安全保障対話防衛交流の積極的な進め方というものは極めて重要でございまして、新防衛大綱におきましても、新中期防におきましても、この重要性確認いたしているところでございます。  このような観点から、防衛庁といたしましては、これまで実施をいたしてまいりました周辺諸国との二国間の安全保障対話ASEAN地域フォーラム等多国間の枠組みの中における取り組み、これをさらに充実いたすとともに、各種の新たな事業も始めたい、こう考えている次第でございます。  例えば、平成八年度におきましては、我が国といたしましては初めての各国国防政策立案担当者対話の場を提供するために、アジア太平洋地域内のハイレベルワークショップを開催することを考えております。また、各国防衛政策透明性向上を図る観点から、「北東アジア戦略概観」これは仮称でございますが、この発刊を予定いたしております。  いずれにいたしましても、防衛庁といたしましては、安全保障対話防衛交流、これらの事業というものを着実かつ実効的に実施をいたすべく努力をいたしてまいり、もって地域信頼関係の確立やより安定した安全保障環境構築のためにさらに努力をいたしてまいります。  次の御質問でございますが、新中期防についてのお尋ねでございました。  新中期防は、新防衛大綱もとでの最初中期的な防衛力整備計画でございまして、防衛大綱に示されました我が国が保有すべき防衛力内容を実現するために、引き続き継続的かつ計画的に節度ある防衛力整備に努めることといたしているものでございます。  この新中期防には、新たな支援戦闘機F2の整備情報本部の新設、即応予備自衛官導入、また、先ほどお話にございました空中給油機能についての取り扱いなど、従来からの課題についてもそれぞれ方針を明確にいたし、内外から高い評価を得ているものと確信をいたしております。防衛庁といたしましては、新中期防に従い、所要の施策を講じつつ、引き続き適切な防衛力整備に努め、我が国防衛に万全を期してまいりたいと考えております。(拍手)     〔国務大臣池田行彦登壇
  9. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 大野議員にお答え申し上げます。  我が国安全保障の上において、信頼醸成予防外交が大変重要であるという議員の御指摘、私も全く認識を一にするものでございます。  そして、大野議員は、日米安保条約という土台、そして自衛隊という一階部分の上に立つ二階という例えをおっしゃいましたが、私もそのように思いますし、また、見方を変えれば、そのような建物の立つ敷地を堅固なものにし、あるいは平らかなものにして、そういったその建物に住む人の安全を確保する、そういった役割信頼醸成措置というものは果たしているのかな、こんな感じのするところでございます。  いずれにいたしましても、日米安保体制自衛隊と並んでそのような努力をこれからも推進してまいらなくてはならぬと考えております。とりわけアジア太平洋地域におきましては、多数の国において軍事力近代化が進められておる、あるいは朝鮮半島を初めといたしましていろいろ不確定な要因を内包している、こういうことであるだけに、信頼醸成の大切さが痛感される次第でございます。  こういった地域の全域的な対話協力枠組みといたしましては、御承知のとおりASEAN地域フォーラムという組織がございます。これは、九二年にASEAN拡大外相会議政治安保対話が始まったのがいわばその先駆けでございますが、前駆的な形態でございますが、翌年、九三年七月に中国、ロシア等も含めまして、今では十九の国や地域を包含する、この地域全体としてのそういった信頼醸成を進めていく仕組みになっているわけでございます。これからもこういった地域のことを大切にしながら、漸進的にその役割を高めてまいりたい、こう思います。  なお、そのほかにも、先ほど防衛庁長官から御指摘のございましたバイのいろいろな交流仕組みもございますし、また民間におきましても、アジア太平洋安全保障協力会議等々、いろいろな場もあるところでございます。そのようないろいろなバイあるいはマルチの仕組みを活用しながら、外務省としても全力を傾けてまいりたいと思います。  もとより、我が国外交努力全般が、そういった我が国の安全に資する、そういった観点から進めていくべきことは申すまでもございません。(拍手)     —————————————
  10. 土井たか子

    議長土井たか子君) 石井一さん。     〔石井一登壇
  11. 石井一

    石井一君 私は、新進党を代表して、ただいま議題となりました新防衛計画大綱及び新中期防衛力整備計画に関する報告に対して質問をいたします。  防衛計画大綱及び中期防衛力整備計画は、中長期的な視点から我が国安全保障を展望し、それに基づいて必要な施策を講じていくための指針を示すものであります。国防という最重要課題決定するに当たって、シビリアンコントロールの趣旨に沿って政治が強力なリーダーシップをとるべきことは言うまでもありません。  にもかかわらず、新大綱決定最終段階での与党三党の議論は、防衛問題の本質を論じて国民に将来の展望を明らかにするものではなく、核廃絶武器輸出の禁止をめぐる各党間での立場、見解の相違から、言葉の遊びに終始したのであります。また、中期防衛計画決定に当たりまして も、中身の議論ではなく、初めに数字ありきで、与党各党の主張の間をとり、現中期五カ年計画平均伸び率である二・一%と同率の伸び率で総額を設定したのであります。  安全保障政策のばらばらな三党連立政権にそれを求めるのは無理なのかもしれませんが、国防という国策の基本問題についての明確なビジョンを示さないのは、国民に対する責任放棄であると言わなければなりません。  以下、具体的に問題点指摘しつつ、政府見解お尋ねいたしたいと存じます。  まず、情勢認識についてであります。  新大綱は、我が国周辺地域に「核戦力を含む大規模軍事力が存在」し、「朝鮮半島における緊張が継続するなど不透明・不確実な要素」があると客観的な表現で述べているだけであり、国民に対する説明としては極めて不十分かつ不明瞭であります。政府は、我が国防衛の対象となる脅威、リスクは一体何なのかを明確にし、その論理的根拠国民の前に明らかにしなければなりません。国民が納得する防衛力に対する評価ができるような説明が必要なのではないかと考えますが、これについての総理の御所見最初にお伺いいたしたいと存じます。  今後の我が国防衛政策米国との密接な連携の上に構築されなければならないことは、論をまちません。昨年予定されていた日米安保の再定義が、これからの防衛政策の大前提であります。  残念ながら、クリントン大統領訪日は今春に延期されたのでありますが、政府としては、この時期を無為に過ごさず、我が国安全保障ビジョンをむしろ積極的に米国側へ示して、イニシアチブをとるべきであります。そして、日米両国民の理解の上に、新しいパートナーシップの確認を行い、日米安保の再定義を行うことが今後の我が国安全保障政策で最も重要な課題であると思いますが、総理の御見解を求めたいと存じます。  今述べましたように、新たな角度からの日米安全保障体制あり方が問われているわけでありますが、新大綱には、これからの日米役割分担相互支援についての考え方が示されておりません。我が国がどのような役割を分担していくのかを明確に示すべきであります。  その際、在日米軍駐留経費を負担していることもあり、米国プレゼンスに依存していくだけでなく、我が国も確固たる安全保障戦略を持って、日本のみならずアジア世界の平和と安定のためにディシジョンシェアリング、すなわち決定権の共有を新たな日米関係基本にする必要があるのではないでしょうか。これがなされてこそ初めて、まさしく橋本総理外交基本方針である「自立」と言えるものであると考えるのでありますが、総理の御見解を伺いたいと存じます。  次に、当面の緊急課題である沖縄米軍基地問題についてお伺いをいたしたいと存じます。  日米安保条約は、戦後の日本安全保障並びアジア太平洋地域の安定に重要な役割を果たし、沖縄米軍基地の果たしてきた役割は極めて大きいと考えます。在日米軍基地の円滑な運用には、国民理解、とりわけ基地周辺住民の支持と協力が不可欠であります。  ところが、沖縄基地問題に対する政府の具体的な方針と明確な意思が必ずしも感じられません。政府は、沖縄米軍基地問題の解決のために、地位協定の改定問題も含めて、どういう方針で臨むおつもりなのか。米国は、在日米軍の四万七千人体制維持及びアジアで十万人の米軍プレゼンスを表明しておりますが、この体制に対する我が国見解はどうなのか。また、外交演説で、基地縮小努力すると表明している以上、この体制について踏み込んだ外交交渉をしていくべきではないかと思いますが、外務大臣見解をお伺いしておきたいと存じます。  次に、国際協力の問題についてお伺いいたします。  新大綱では、より安定した安全保障構築のため国際協力の推進に寄与すると主張しております。国際協力の推進に寄与していくには、国連の安保理常任理事国入りを目指すことが必要不可欠なことであります。安保理常任理事国入りについて、与党三党の政策合意は消極的で、背伸びせず慎重に対処するとなっております。しかし、さきの代表質問で、総理は「多くの国々の賛同を得て、安保理常任理事国として責任を果たす用意がある」と答弁されております。与党方針政府方針にいささか食い違いが見られます。安保理常任理事国入りについて賛成なのか反対なのか、総理の明快な御答弁を願いたいと存じます。   ゴラン高原のPKO部隊は、ようやく本月九日に本隊が現地入りし、活動が開始されましたが、この間、昨年の八月、十一月と二度にわたって派遣が見送られ、日本政府の消極姿勢は、国連を初めとする国際社会に強い失望を与え、我が国国際社会における信頼を損ないました。  この派遣決定に当たって、与党は、武器弾薬の輸送はしない、要員の安全を守るための共同訓練にも参加しないなど、言を左右し、集団的自衛権の解釈に苦慮いたしたのであります。集団的自衛権見解をあいまいもことせず、明確にした上での派遣でなければ、現地の自衛隊員が安んじて活動することはできないのみならず、国際平和のための各国努力に寄与できません。他国から歓迎されるような形の参加をすべきであると思いますが、防衛庁長官の御所見を伺いたいと存じます。  政府は、PKFの凍結解除、武器の使用の見直しを含むPKO協力法の見直しについて、いまだ明らかにいたしておりません。PKO協力法は、政府自身に三年後の見直しを求めておるのであります。昨年八月に施行後三年が経過いたしましたが、政府は検討中と言うのみで、今もって何らの明確な方針を示しておらないのであります。どう処理されるおつもりなのか、総理の御所見を伺いたいと存じます。  次に、新大綱で初めて登場した防衛力の「合理化効率化コンパクト化」という用語の持つ意味についてであります。  これは、連立政権の無責任な姿勢を象徴するかのごとき用語にほかならないのであります。一体、防衛力強化するのか、現状程度を維持するのか、あるいは削減するのか、何を意図しているのでありましょうか。総理の明確な御答弁を願いたいのであります。  あわせて、昨年の参議院選挙では、当時社会党書記長であった久保大蔵大臣は「平成八年度を軍縮元年にする」と声を大にして公約されたのでありますが、その平成八年度の防衛予算の対前年度比伸び率は二・五八%増であります。これは、昨年度の伸び率〇・八六%増を大きく上回り、平成四年度以降四年ぶりに二%を超える伸び率となっております。これでも平成八年度を軍縮元年と位置づけられておられるのか。また、平成八年度予算が軍縮予算だと評価されているのか。総理の御見解をお伺いしておきたいと思います。  質問の最後に当たり、私は、防衛計画あり方について、同僚議員の皆さんへの御提案を踏まえつつ、総理のお考えをお伺いいたしたいと存じます。  初めにも触れましたが、防衛計画大綱は、国防という我が国の最重要問題についての方針であり、また、中期防衛力整備計画は、防衛計画大綱を受けて防衛力整備内容を五年間にわたり決定し、総額を拘束するものであります。かかる重要政策については、国民の代表である国会が開かれた議論を尽くし、国民合意の上でその決定に関与するシステムを確立する時期が来ているのではないでしょうか。役人任せの原案を最終段階与党のみが密室内で協議し、言葉遊びに終始することは、シビリアンコントロールの上でも問題があると思います。  現在の国会は、かつてのように安保外交の問題について神学論争に拘泥する場でなくなっていることは、ほかならぬ橋本総理を初め与党の皆さ んが一番承知しておられるはずであります。防衛計画大綱及びこれを受けた中期防衛力整備計画に関し、国会の承認を受けることを骨子とした新制度の導入を検討すべきであると考えます。かかる制度の導入について、橋本総理の前向きな御答弁を期待いたします。  二十一世紀を前にした我が国の進路を決定していく重責は、国民から直接選ばれた我ら国会議員全員に課せられた責任であることを同僚議員の皆様にも強く訴え、最後に、北海道のトンネル事故の早期解決と、関係者に対して心からのお見舞いを申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣橋本龍太郎登壇
  12. 橋本龍太郎

    内閣総理大臣橋本龍太郎君) 石井議員にお答えを申し上げます。  まず、新防衛大綱策定に当たっての情勢認識でありますけれども、新防衛大綱は、我が国の周辺地域におきまして依然として大規模軍事力が存在し、また朝鮮半島における緊張が継続するなど、不透明、不確実な要素が残されており、安定的な安全保障環境が確立されるには至っておりませんけれども、他方、極東ロシアの軍事力の量的削減等の変化が見られるほか、二国間対話の拡大等地域の安定を図ろうとするさまざまな動きが見られるものという認識に立っております。  また、日米安保につきまして「再定義」という言葉を使ってお尋ねをいただきましたが、私は「再確認」という言葉を使ってお答えをいたしたいと思います。  日米安保体制は、冷戦後の国際社会が依然として不安定要因を残しております中で、我が国防衛のために必要不可欠であります。また、日米安保体制は、日米協力関係政治的な基盤をなし、アジア太平洋地域の平和と繁栄にとって極めて重要な役割を果たしており、これを堅持してまいります。  私は、四月のクリントン大統領訪日の際には、これまでの安全保障分野における日米間の緊密な対話の成果を踏まえながら、日米安保体制の重要な役割を改めて確認する共同文書を発出し、二十一世紀に向けた日米同盟関係あり方につき内外に明らかにしていくつもりであります。また、昨年決定されました新防衛大綱も踏まえながら、日米安保体制信頼性を一層高めていくために、具体的な施策について積極的に検討し実施してまいります。さらに、今月の訪米に際しましても、クリントン大統領との間で日米安保体制信頼性向上のために日米両国がともに協力していくことの重要性を再確認してまいりたいと考えております。  次に、我が国は、これまでも、我が国みずからの適切な防衛力を保持するとともに、日米安保体制に基づく強固な信頼関係を基盤として、米国とも緊密に協力をしながら平和と安定のために努力をしてまいりました。御指摘のとおり、外交面における私の基本方針は「自立」であり、米国を初め関係諸国と緊密に協力をしながら、みずからのイニシアチブで行動する外交を展開し、新しい国際秩序の構築に向けて積極的、創造的な役割を果たしてまいりたいと考えております。  また、日米協力して世界の平和と安定のための国際的な努力貢献していきますためには、日米安保体制に基づく強固な信頼関係というものが両国間において堅持されることが不可欠であり、我が国としては、このような観点からも、御指摘在日米軍駐留経費支援を初めとした日米安保体制信頼性のさらなる向上に役立つ施策実施していく考えであります。  次に、我が国安保理常任理事国入りの問題について、政府としての立場は、連立政権発足以来、国連総会における演説等で述べてまいりましたとおり、憲法が禁ずる武力の行使は行わないという基本的な考え方のもとに、多くの国々の賛同を得、安保理の常任理事国として責任を果たす用意があるということであります。最近の世論調査を見ましても、国民の御理解が相当程度進んでいると承知をいたしておりますけれども、いずれにしても、この問題につきましては、政府は、今後とも新たな連立政権の三党合意も踏まえながら、より多くの国々の賛成と国民の皆様の一層の御理解を踏まえ、取り組んでまいる所存であります。  国際平和協力法の見直しにつきましては、現在政府として検討を行っているところであり、これまでの派遣の経験も踏まえた上で、国会等における御議論にも十分耳を傾けながら検討する必要があると考えております。なお、我が国としては、これまでの経験も踏まえながら、今後とも、平和維持活動等国連の活動に必要な面で、人的な面で積極的に貢献してまいりたいと考えております。  防衛力の「合理化効率化コンパクト化」という用語の意味についてお尋ねがありました。  新防衛大綱におきましては、冷戦後の国際情勢自衛隊に期待される役割変化等を踏まえ、現行の防衛力についての見直しを行い、その合理化効率化コンパクト化によって、規模については一部削減を図ることとしておりますが、他方、必要な機能充実と質的な向上を図り、多様な事態に対し有効に対応し得る防衛力整備を図ることといたしております。  平成八年度の防衛関係費についてお尋ねがありましたが、平成八年度の防衛関係費は、国際情勢自衛隊に期待される役割変化等を踏まえ先般策定された新防衛大綱及び新中期防もとに、一層の効率化合理化に努め、極力経費を抑制するとともに、容易ならざる事態に立ち至っている財政事情をも勘案し、必要最小限度の経費を計上いたしたものであります。  最後に、防衛計画大綱中期防衛力整備計画について国会の承認を受けるような制度の導入を図るべきだという御指摘がございました。  防衛計画大綱中期防衛力整備計画国防に関する重要事項であり、両者とも安全保障会議設置法に基づいて安全保障会議に諮った上で、政府が責任を持って決定すべきものだと理解しておりますが、これらにつきまして、国権の最高機関である国会で十分御議論をいただくことは重要なことだと考えております。  残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)     〔国務大臣池田行彦登壇
  13. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 石井議員の私への御質問は、沖縄米軍基地をめぐる問題でございました。  政府といたしましては、沖縄の県民の皆様が長年にわたり耐えてこられました苦しみ、悲しみというものに最大限の配慮をいたしまして、この問題に対応してまいりたい、こう考えておりまして、現在も、新たに設けられました特別行動委員会等を通じまして、安全保障条約の目的との調和を図りながら、基地の整理統合縮小に最大限の努力をしておるところでございます。  石井議員からは地位協定への言及がございましたけれども、基地の存在あるいは駐留に伴う諸問題、騒音あるいは安全あるいは訓練に伴う問題等々がございますが、こういった問題につきましては、早期に動かせるものから一つ一つ取り組んでまいりまして、実質的な改善を図ってまいりたい、こういうことで、実は昨日も特別行動委員会のワーキンググループで熱心な審議をしたところでございます。  次に、駐留米軍の規模についての御質問がございました。  御承知のとおり、アメリカは、現在の国際情勢もと安全保障に対する米国のコミットメントを達成していくためには、日本で四万七千人、アジア太平洋地域で十万人のプレゼンスというものが必要である、このことを繰り返し表明してきておるところでございます。我が国といたしましては、米国日米安保体制に対する確固たるコミットメントを評価しておるところでございます。  第三点といたしまして、私が外交演説で基地の縮小に触れている以上、この米軍の駐留の水準に ついても踏み込んで交渉すべきではないかといった御指摘がございました。  この点については、私は、現在の米軍の水準というものを前提といたしましても、さまざまな創意工夫あるいは合理化努力によりまして、基地の統合・縮小というものも可能であるし、また、駐留に伴う先ほど申しましたような諸問題についても、地元の方々の御負担の軽減は図れると思っておりますし、ぜひそのような努力をしなくてはならない、このように今せっかく努めておるところでございます。(拍手)     〔国務大臣臼井日出男登壇
  14. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 石井議員の御質問は、ゴラン高原に派遣をされております我が国部隊に関する御質問でございました。  今般、UNDOFに参加をいたしております我が国部隊は、UNDOFで我が国部隊に期待をされております食料品等の日常生活物資等の輸送等の業務を行っております。このほか、活動を安全かつ円滑に実施するために現地で行うことが必要な訓練を、実施計画で定める国際平和協力業務に附帯する業務として行うことといたしております。これらの業務は五原則を含む国際平和協力法に基づき行われるものでございまして、憲法の枠内で行われることは当然のことでございますから、我が国部隊は安んじて業務の実施に当たることができると考えております。  なお、これらの業務を我が国の部隊が行うということにつきましては、国連本部及び現地UNDOF司令部とも事前に十分の調整を行い、了解が得られているところでございまして、我が国部隊の参加が他国から歓迎されていると理解をいたしているところでございます。(拍手
  15. 土井たか子

    議長土井たか子君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  16. 土井たか子

    議長土井たか子君) 本日は、これにて散会いたします。     午後一時三十九分散会      ————◇—————