○正森
委員 第三節で
規定されておりますように、今
民事局長が言われた三つの種類の
手続を決めておるということなんですが、例えば百七十条を見ますと、これは例えば二項等を見ますと、新設でありますが、「
裁判所は、弁論準備
手続の期日において、証拠の申出に関する
裁判その他の口頭弁論の期日外においてすることができる
裁判及び文書の証拠調べをすることができる。」というようになっております。これは今までにはなかった
規定で、これは、事実上証人尋問以外大抵のことができる、文書の取り調べもできるということになっているわけで、従来からもこういうようになっていたというのとは相当大きな違いがあるというように言わなければならないと思います。
しかも、後で口頭弁論のところでもう一度述べるつもりですが、この準備
手続、準備的口頭弁論とかに非常に大きい比重が置かれまして、例えば百七十四条、百六十七条等が準用されますが、攻撃または防御の方法を提出するという場合に、それに対して
一定の制限を加えられるというようなことになるわけであります。私は、これは非常に問題ではなかろうかというように
考えるわけであります。
それとの関係で、口頭弁論の本来的な問題との関係を申し上げたいと思いますが、例えば、口頭弁論というのが本来的な形ですが、ここでも相当新しい
規定が盛り込まれておりまして、例えば百四十九条「
裁判長は、口頭弁論の期日又は期日外において、
訴訟関係を明瞭にするため、事実上及び法律上の
事項に関し、
当事者に対して問いを発し、又は立証を促すことができる。」これは現在の法律には期日外というのはございません。
したがって、これらを両方、釈明権と呼ばれておりますが、釈明権という名前のもとに、「事実上及び法律上の
事項に関し、」つまり法律上だけでなしに事実上の問題についても
当事者に対して問いを発して、したがってまた心証をとることができるということになるわけであります。
あるいは百五十一条を見ますと「釈明処分」というのが書いてありますが、この中でも新設の
部分がありまして、第二号では「口頭弁論の期日において、
当事者のため事務を
処理し、又は補助する者で
裁判所が相当と認めるものに陳述をさせること。」事実上心証をとることができるようになっております。
これは、我々が関係の
弁護士等に調べたところでは、これが最も活用されるのは、例えば労働
事件における労務担当の課長とかあるいは課員、あるいは公害
裁判において公害関係のいろいろの技術的なことを知っている課長あるいは職員というようなものが一番これに該当するそうであります。そうすると、口頭弁論期日でもあるいはその準備
手続でも、正規な証人調べではなしに
裁判所が、釈明権を行使するとか、あるいは釈明権、釈明処分ということで、事実上心証をとることができるようになる、それが準備
手続の方にもずっと広がっていくということを
感じざるを得ないわけであります。
そこで、さらに伺いたいと思うのですが、百五十六条を見ていただきますと「攻撃防御方法の提出時期」で「攻撃又は防御の方法は、
訴訟の進行
状況に応じ適切な時期に提出しなければならない。」となっています。これは
現行法では、「攻撃又ハ防禦ノ方法ハ別段ノ
規定アル場合ヲ除クノ外口頭弁論ノ終結二至ル迄之ヲ提出スルコトヲ得」こうなっておりまして、証拠の随時提出主義をいわゆる証拠の適時提出主義に改めるものであります。
今まででも、余りにも攻撃防御方法が時機におくれて不当である場合、
当事者が故意または重大な過失でおくれた場合には一審であっても
裁判所はこれを却下することができることになっていたのは、百三十九条、御承知のとおりであります。それなのにこういう
規定を置くというのは、一体どういうことだろうかという危惧が関係者から非常に出ているということを申し上げておきたいと思うのです。
例えば、これでおくれた場合には、今度の新しいのによりますと、
裁判所はぎりぎり聞きませんが、
当事者から、何でそんなにおくれたかその
理由を言えということを問いただすことができるようになっております。条文は一々申しません。ところが、実際にあったことからいいますと、これは私のおります大阪の
事件ですが、三洋電機のパート労働者が大量に解雇されました。大阪だけでも約千八百名、全国では三千名を超える労働者でしたが、会社側の言い分は、大阪でつくっていた輸出用テレビのラインは全部メキシコに移したので
仕事がなくなった、だからあなた
たちにやめてもらうのもやむを得ないのだということでありました。ところが、仮処分を申請して何年もたってから、これがうそであって、鳥取や三重や長野などの子会社、関連会社に対して
仕事を移している。だからメキシコへ行ったなんていうのは真っ赤なうそであるということがわかりまして、これは結局、仮処分の
異議の段階になってからこれらの事実が明らかになって、労働者側に有利な
結論になったわけであります。
このケースについて見ますと、なぜ労働者側にそれがわかったかといえば、これはここで申し上げませんが、実は内部告発等を含む非常に微妙な問題からそういうことがわかった。そうしたら、なぜ
裁判を起こしたときに出さなかったのだ、なぜ今になって出したのだというときに、実は内部告発でおたくの会社の何々
部長さんが教えてくれたというようなことは絶対に言えないことなのですね。ところが、今度の法律では、会社側はそれこそまさに知りたいことだから、ぎりぎりとそういうことを聞いてくる。そして、
裁判になってから何年もたっているのだから時機におくれた攻撃防御方法だ、相手方に重大な過失があるのだということで、
裁判所はどう
判断するかわかりません、時機におくれていないということで採用する
かもしれませんが、相手方がそういうことで、つまり事実を隠していた強者がそういうことでこの
規定を濫用する可能性は十分にあると言わなければなりません。私はこういう
規定は非常に問題があると思いますが、いかがですか。簡単で結構です。