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1996-06-05 第136回国会 衆議院 法務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年六月五日(水曜日)     午前十時開議  出席委員   委員長 加藤 卓二君    理事 太田 誠一君 理事 佐田玄一郎君    理事 志賀  節君 理事 山田 英介君    理事 山田 正彦君 理事 山本  拓君    理事 細川 律夫君 理事 枝野 幸男君       安倍 晋三君    奥野 誠亮君       白川 勝彦君    橘 康太郎君       萩山 教嚴君    横内 正明君       阿部 昭吾君    貝沼 次郎君       左藤  恵君    富田 茂之君       佐々木秀典君    三野 優美君       正森 成二君    小森 龍邦君  出席国務大臣         法 務 大 臣 長尾 立子君  出席政府委員         法務政務次官  河村 建夫君         法務大臣官房長 頃安 健司君         法務大臣官房司         法法制調査部長 永井 紀昭君         法務省民事局長 濱崎 恭生君  委員外出席者         法務大臣官房参         事官      柳田 幸三君         最高裁半所事務         総局民事局長         兼最高裁判所事         務総局行政局長 石垣 君雄君         法務委員会調査         室長      河田 勝夫君     ――――――――――――― 委員の異動 六月五日  辞任        補欠選任   古屋 圭司君    安倍 晋三君   愛知 和男君    富田 茂之君   坂上 富男君    三野 優美君 同日  辞任        補欠選任   安倍 晋三君    古屋 圭司君   富田 茂之君    愛知 和男君   三野 優美君    坂上 富男君     ――――――――――――― 六月五日  婚外子差別を撤廃する民法等改正に関する請願  (山元勉紹介)(第二七五五号)  同(古堅実吉紹介)(第二七六五号)  同(池端清一紹介)(第二八〇八号)  同(後藤茂紹介)(第二八二〇号)  夫婦別姓選択制法制化に関する請願加藤万吉  君紹介)(第二七五六号)  同(加藤万吉紹介)(第二七六六号)  民事訴訟法改正案修正に関する請願(宇佐美  登君紹介)(第二七五七号)  治安維持法犠牲者に対する国家賠償のための法  制定に関する請願古堅実吉紹介)(第二七  六七号)  選択的夫婦別姓の導入など民法改正に関する請  願(岡崎トミ子紹介)(第二八三二号)  同(岡崎トミ子紹介)(第二八四三号)  法務局更生保護官署及び入国管理官署増員  に関する請願正森成二君紹介)(第二八七五  号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 六月四日  民事訴訟法改正に係る公文書の秘密扱い反対  等に関する陳情書外五十九件  (第二七〇号  )  夫婦別姓民法改正反対に関する陳情書外一件  (第二七一号)  婚姻制度など民法改正に関する陳情書外一件  (第二七二号)  神戸地方法務局山崎出張所統廃合白紙撤回に  関する陳情書  (第二七三号)  治安維持法犠牲者国家賠償法制定に関する陳  情書  (第二七四号)  商法の合併法制改正に関する陳情書  (第二  七五号)  有料駐車場賃貸借契約に係る貸借人保護及び  規制法律制定に関する陳情書  (第二七六号)  土地所有権移転手続に係る本人確認制度法制  化に関する陳情書  (第二七七号)  除籍簿、消除された戸籍の附票等保存期間の  延長に関する陳情書  (第二七八号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  民事訴訟法案内閣提出第八四号)  民事訴訟法施行に伴う関係法律整備等に関  する法律案内閣提出第九三号)      ――――◇―――――
  2. 加藤卓二

    加藤委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所涌井総務局長石垣民事局長行政局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。      〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 加藤卓二

    加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ――――◇―――――
  4. 加藤卓二

    加藤委員長 内閣提出民事訴訟法案及び民事訴訟法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。富田茂之君。
  5. 富田茂之

    富田委員 新進党の富田でございます。  本日は、文書提出命令修正の問題が今話題になっておりますが、その部分を除いて政府原案について質問をしようということですので、これまでの委員会審議を見ておりましてなかなか触れられていない点について、まずお尋ねをしたいと思います。  まずその一点目は、上告制度を整備するということで提案がされておりますが、上告が制限されるのではないかということで、弁護士会を初め各方面で、憲法の定めた三審制に反する制度が設けられるのではないかという懸念が出ております。その点について、何点か当局の方にお尋ねしたいと思います。  大臣提案理由説明によりますと、最高裁判所憲法判断及び法令解釈統一という重大な青務を担っているけれども、現在は、実質的に上告理由がない上告事件が極めて多数になっている、そのために、最高裁判所がその処理に追われてしまって本来の任務を果たせないのじゃないか。また、決定手続処理される事件について、憲法違反理由とする場合のほかは最高裁判所抗告ができない、その点も改めるんだというような御説明がございました。もっともらしい理由なんですけれども、本当にそうなのかな、実際に裁判の現場におりました人間の一人として、この提 案理由をそのままどうも受けとめることはできないなというふうに私自身感じております。  衆議院の法務委員会調査室の方から今回の民訴法改正に関する関係資料というのを事前にいただいて勉強させていただきましたけれども、その中にも、平成八年三月三日付の毎日新聞の日曜論争ということで、片方弁護士会代表、また片方最高裁判所裁判官経験された方の代表という形なんでしょうか、それぞれ、この上告制限について賛成だ、反対だという立場からさまざまな議論が展開されておりまして、非常によくコンパクトにまとまった論争になっているなというふうに私自身も読んで思ったのですが、この論争を読んでいて、ちょっと疑問に思った点がございます。  最高裁判所裁判官経験者の方の、今回の上告制限理由があるんだという論拠一つが、まず年間受理件数が四千件から五千件に及んでいる。最高裁小法廷が三つあるわけですから、このうちの三分の一の事件記録に目を通す必要がある。五人で合議するので、自分が主任でなくても全部とにかく記録は読まなければならないんだ。記録を読んでみるけれども、この大半のケースは適法な上告理由もない、重要な事項も含まれていない、当然上告棄却になるものだ、自分経験でもそう言える、こういう経験が重要な事件に多くの時間を割けなかったんだということが一つの大きな根拠として挙げられておりました。  もう一つ憲法審査法令解釈統一などに最高裁裁判官精力を傾けられるようにするべきだ。今回の改正は、法令解釈に関する重要な事項を含む事件については裁量によって上告審として事件を受理できることになって、司法審査権の行使がより積極的になるのじゃないかということも論拠として挙げられておりました。  小さな論拠としては、重要な事件審理が手厚くなるとか、少数意見も活発に出てきて訴訟活性化にもつながるのじゃないかというような御意見でございました。  今回、法務省の方がこういうふうに上告制限規定を設けられたという実質的な根拠は、今私が申し上げた最高裁裁判官経験者の方が言われたその二点が大きな点なんでしょうか、その点、まずお聞かせ願いたいと思います。
  6. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 今回の改正で、上告制度さらには最高裁に対する抗告制度について改正を加えることといたしました趣旨は、今委員の方からいろいろ御説明があったところでございます。  繰り返しになりますけれども最高裁に対する上告事件が増加しておる、最高裁憲法問題に関する終審裁判所として判断を求められる事件が今後とも一層増加することが予想される。そういう状況の中で、現行法では広く原判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反ということが上告理由とされておりますが、形式的には上告理由として法令違反主張しているものの、その実質は結局事実認定に不服を言うというものが多い。そういうことでありますけれども、その主張がされれば最高裁としては一々実体に立ち入って判断をしなければならない実情にあるということでございます。そういうことで、本当に最高裁判所としての重要な使命である憲法判断、それから法令解釈統一という責務を果たすことが困難になりつつあるという状況一つございます。  一方では、決定手続処理される裁判に対する不服申し立てであります抗告につきましては、現行法上、憲法違反理由とする特別抗告を除きまして最高裁には行かないということになっておりますが、御案内のとおり、民事執行法あるいは民事保全法制定に伴いまして、それらの手続におきましては決定判断される。そういう事項の中には重要な判断が含まれるものが多くなっておりますけれども、それらについては法律判断である以上は最高裁判所には事件が行かないということで、解釈高裁段階で分かれたままになっている。そういうことは、訴訟を利用する当事者訴訟代理人にとっても、どちらにしたがって処理したらいいかということで大変不便を生じている。そういった問題については最高裁判所法令解釈統一するという機能を果たすことにする必要がある。  そういう両方の要請から、最高裁判所が、重要な判断を要する事件について十分な審査をしてできるだけ速やかな結論を出せるように、それから決定手続に関する裁判についても、必要な場合にはその本来の機能を果たすことができるようにということから、上告について規定を整備する。一定限度上告の制約ということを伴うわけでありますが、そういう措置を講ずる。他方では、決定事件についても一定限度最高裁判断する機会が与えられるようにする。その両々相まって最高裁判所機能を十分に果たしていただくということができるようにしようというのが今回の改正趣旨でございます。
  7. 富田茂之

    富田委員 決定手続に関して、これまでのはちょっと不備があるのではないか、最高裁の方できちんと判断できるような救済の範囲を広げようというところはぜひやっていただきたいと思うのですけれども憲法審査法令解釈統一ということが、そういう任務が果たせなくなるほど、最高裁への上告事件一般民事行政刑事事件最高裁裁判官負担が過大になったと言えるほど本当にふえているのか、これは一つ疑問だと思うのですね。確かに年間四千件、五千件、そのうちの三分の一を処理するというのは大変な仕事だと思います。  私自身最高裁裁判官経験者の方に初めてお話を聞いたのは、団藤重光裁判官司法研修所の方に来てくださって自分の日常の業務というのを話してくださったときでありました。学者の世界と違って本当に朝から晩まで記録読みだ、体力をつけるために、夏休みには、自分の小さな軽井沢の別荘があるけれども、そこへ行って昔の自転車を持ち出してきて坂道を一生懸命走っている、そういうことをしなければもたないほど最高裁裁判官は大変なんですよと当時おっしゃっていました。これほどの大学者でもそこまで大変な仕事なのかと思いました。  実際に、最高裁上告事件数を、最高裁判所の方から最高裁ができて以降の統計をいただきまして見てみましたら、ここ十年が物すごく、四千件とか五千件と急に多くなって、最高裁判所裁判官負担が急に過大になったのだということではどうもないようです。三十年前ぐらいからかなり多数の上告事件があった年がありまして、年間七千件を超えるような年もあります。民事はそれほど変わりがないのですが、刑事事件では、昭和二十六年などは一万件を超える上告事件があった。それが、二十年代は五千件とか六千件を維持して、三十年代になって三千件、四千件とある程度下がってきて、四十年、五十年、六十年といく中で、刑事上告事件は一千件台に大体落ちついてきたというような経過のようであります。民事事件上告件数は百件ぐらいずつ、ここ十年ぐらいふえてきている。  調査室の方からいただいた資料では、昭和六十年以降の事件数だけ載っておりましたので、このグラフを見ましたら確かに最高裁裁判官はここ十年で大変になったのだなと思うのですけれども、実際の統計を見てみますとそれほど変わりないのじゃないか。事件数がふえて本来の憲法判断とか法令解釈統一というところに精力をつぎ込めないというのは、ちょっと裁判所の逃げ口上ではないかなというふうに、この数字の経緯をはっきりわかった上で判断すれば一般国民は思うと思うのですが、その点はどうなんでしょうか。
  8. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 ただいま委員からも団藤元最高裁判事経験談についてのお話がございましたけれども、私どもも、直接間接に最高裁判事の御経験の方からいろいろなお話を伺っております。それは、調査官という補助者がいるわけでございますけれども調査官はあくまでも下調べということでございまして、その調べられたものについて全部目を通して自分判断をしなければならないということは、裁判官としては当然のことでございます。そういうことでございますので、実情 は、団藤先生お話として今御紹介があったような実情であるというふうに承っております。  事件数も、今御指摘があった数字推移でございますけれども事件数だけでなくて、近時、訴訟複雑化高度化ということがございますので、とりわけ時間と精力を要するという特別に大きな事件、そういうものの増加も加わっているのではないかと思っております。実情といたしましては、ただいま御指摘がありました団藤元判事の御紹介になった実情にある。それはそれで、現在最高裁裁判官あるいはそれを補助する調査官等で懸命に処理をされているわけでございますけれども、これは大変な労力であると私ども認識しているところでございます。
  9. 富田茂之

    富田委員 私が団藤さんの発言を紹介したので、何かそれを逆手にとられたような感じでちょっとあれなんですが、毎日新聞に載っております最高裁裁判官経験者の方の体験談によりますと、今局長が言われたように、調査官方たち大分手助けを受けている。年間一千件以上の記録を読まなければならないということになりますと、実際に、一審、二審を経て上告審に来ているわけですから、一件自体の記録も相当膨大だと思いますし、全部目を通されているわけはないなというのはわかるのですが、この三月三日付の毎日新聞を読みますと、調査官のつくられた報告書ですか、その報告書をとじたのが資料と言われるらしいのですが、記録資料が一緒に自分の机の上に回ってくる。少なくとも資料にはすべて目を通さなければならないというような言われ方をしているのですね。  そうすると、実際の事件記録原記録はまずほとんど見ていないのだろう。この資料をもとに御自分判断をされる。それは、もともと上告棄却に当たるような事由なのかもしれない。それは、訴訟の引き延ばしを目的に単に上告したという事件も中にはあるかもしれませんけれども、重要な事件とか大事な事件というのは実際に記録を全部見てみなければわからないのじゃないかと僕は思うのですね。小さな、少額の事件だから重要じゃないというわけにもいかないと思いますし、民事訴訟当事者あるいは刑事事件の被告にとっては、全部重要な事件なんですよ、日本のこの国民性の中で裁判所まで駆け込むわけですから。それを一審、二審、しかも最高裁まで争う。そういう中で、重要な事件とか大きな事件という分類をあらかじめしてしまうというのはどうなのかなというのが、一つ疑問としてあります。  それは、確かに最高裁裁判官は十五人しかいませんから、十五人の方たちに、憲法判断法令解釈統一に本当に一生懸命取り組んでいただきたいと思いますけれども、そのほかに、三審制が保障されているわけですから、上告されてきた事件についてそれなりの対応をするというのもやはり最高裁裁判官責務だと思うのですね。事件数推移を見ている限り、今回の法案のように上告制限をするのはどうなのかなと思います。  また、弁護士の方の意見の方で、調査官をふやせばいいじゃないか、こういう上告制限をするのじゃなくて、事件が多過ぎて本当に精力を注ぐべき事件にかかれないのだというのであれば、もともと資料しか読まないのだから、原典に当たっていないのだから、資料を作成する調査官をふやせば、最高裁裁判官自分たちで本当に重要だと思うところに精力を注げるというような意見も出ております。現在、調査官は三十人規模らしいのですが、それをふやしたり、あるいは最高裁裁判官経験者の方でも、調査官事件にしかついていない、事件単位調査官がつく、そうじゃなくて、最高裁裁判官にもそれぞれ調査官を何人かつけてもらったら自分たち仕事はやりやすいという意見も出ております。  簡単に制度をいじるのではなくて、実際の最高裁審理あり方等考えますと、まず調査官増員するということを考えるべきではないかと思うのですけれども、その点、法務省、また裁判所の方はどのようなお考えでしょうか。
  10. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 まず法務当局からお答えさせていただきます。  ただいま御指摘ありましたように、最高裁裁判官事件処理に当たっての仕事あり方ということにつきましては、それぞれ各裁判官がいろいろ工夫して当たっておられることと思いますが、基本的には、報告書だけを見ればいいということではないのではないだろうか。それは、現在の執務体制のもとで処理せざるを得ないという事件もあるのかもしれませんが、基本的には、できるだけ必要な範囲記録を当たっていただくということが、あるべき姿なのではないだろうかというふうに私どもとしては思うわけです。そういうことを可能にするためということでもあろうかというふうに考えております。  それから、調査官執務あり方ということにつきましては、これは最高裁当局から御答弁いただくのが適切かと思いますが、先ほど申しましたように、あくまでも調査官というのは補助者ということでございますので、調査官判断が間違ったから結論が間違ったということがあってはならない。したがって、その補助者である調査官をふやせば、それで対応できるということではないのではないだろうかなというふうに私どもとしては考えているところでございます。
  11. 石垣君雄

    石垣最高裁判所長官代理者 今回の法改正が、最高裁憲法問題や重要な意味を有する法令解釈の問題について速やかな判断を示す、そしてその本来の責務を十分に果たすことができるようにする、真に最高裁判断するにふさわしい事件のみに精力を集中できる環境を整える必要がある、こういう認識のもとで行われるものであるというふうに理解をしておりますが、先ほど来、最高裁判所裁判官執務状況、あるいは、調査官仕事の点について御指摘がございました。  実は、この最高裁負担過重問題といいますのは、かなり長い期間継続して常に問題になってきたところでございますが、先ほど委員も御指摘いただきましたように、最高裁経験者のいろいろな経験談というのがございますが、こういう経験談を伺ってみますと、現行法のもとで事件処理の方法を改善することでは到底対処し切れない部分があるというふうな感じを持っておるところでございます。  そこで、先ほど申し上げたような改正趣旨を達成するためには、現行法で、形式的に法令違反主張されてさえいれば法令に関する重要な事項を含まない事件でも上告審として判決手続審理をしなければならない、こういう制度を改める必要がどうしてもあるのではなかろうか。それで、法令違反について上告受理申し立て制度を導入する。そして、法令解釈に関する重要な問題を含む事件について最高裁上告審として事件を受理することができる制度、こういうことが不可欠ではなかろうかというふうに思っているところでございます。  そして、調査官の問題でございますが、当然、裁判官調査官との間には、その資格あるいは役割におのずと大きな差がございます。調査官裁判官役割を賄うというわけにはもちろんいかないわけでございまして、ただ、事件動向によりまして、最高裁としても調査官増員につきましてはいろいろ検討を加え、御協力を、あるいは御配慮をいただいてきたところでございまして、昭和三十年代の初めには十名程度であったようでございますが、先ほど御指摘がございましたように、民事関係で申しますと、現在は合計で二十一名ということになっております。この点につきましては、今後の事件動向によって、また検討を加えられるべきものではなかろうかというふうに考えているところでございます。
  12. 富田茂之

    富田委員 調査官もふえているのだということですが、あと裁判官調査官、それは確かに任務が違うというのはよくわかりますけれども最高裁調査官は、一審、二審の裁判官の中でかなり経験豊かな方がなられて、最高裁調査官を終えた後、また一審、二審の方へ部長さんとか、あるいは所長さんで出ていかれるような方たちです ので、一般に言われる裁判官と全然違う人がなっているわけではないので、それは最高裁裁判官ではありませんけれども、かなりの経験、知識もあると思うのですね。最高裁裁判官のある程度の部分を肩がわりできるのではないかなというふうに私自身は思います。  民事だけでも、十人が二十一名にまでふえたんだということですけれども、こういうところはもっとどんどん予算要求をされて、与野党がこういうところで対立するわけはないと思いますので、もう少し大きな司法に向けて、裁判所の方も、または法務当局の方も考えてもらいたいなと思います。こういう意見もありますので、大臣にもよく検討していただきたいなと思います。  あと、今裁判所の方から、最高裁裁判官経験談で、現行法ではちょっともう対処できなくなっているんだというふうにお話がございましたけれども、ちょっとまた統計を持ち出して申しわけないのですが、民事刑事あるいは行政事件最高裁における審理期間のここ五年ぐらいの統計を、裁判所の方にお願いして、いただきました。これを見てみますと、平成六年までしか出ていないのですが、六年の分でも、刑事事件も、また民事行政事件も、六カ月ぐらいで大体八割ぐらいの事件審理が終わっているのですね。  先ほども言いましたけれども、一審、二審でかなり長期間審理をして膨大な記録になっているものが、半年で約八割も審理が終わってしまうということを見ますと、本当に最高裁過重負担なのかなと。もう一丁上がりだみたいな感じで、もともとこんなのは上告理由にないんだということで、かなりそういう処理がされているのではないか。本当に審理して、これはだめですよと言うのならわかるのですが、この数字を見る限り、現行法ではもう対処し切れないのだという答弁にはちょっと納得しかねるのですが、その点、裁判所の方はどういうふうなお考えでしょうか。
  13. 石垣君雄

    石垣最高裁判所長官代理者 最高裁審理期間が、このところ短縮してきているのではないかという御指摘がございます。大体、傾向としてはその状況があることは事実でございますが、ただ、先ほど来申し上げておりますように、多くの事件は、形式的な法令違反主張というものがかなり多いわけでございます。  それで、当然、審理期間短縮のためには、最高裁判所裁判官の努力、あるいは、事件のいろいろな軽重の問題はあるかと思いますが、基本的にその形式的な法令違反というものが相当あるということも御理解をいただければと思っておるところでございます。
  14. 富田茂之

    富田委員 形式的な違反があるから早く終わるんだということですけれども、それだったら、そこには余り時間も労力もかからないと思うのですね。今のままだって、実際に憲法判断が必要な事件とか法令解釈統一が必要な事件について、きちんと仕事ができるのではないか。  もっと言えば、それほど今の最高裁憲法判断について積極的にやられているのかなという根源的な疑問もあるのですが、その点はちょっと除くとしても、今の答弁では、形式的なのが多いから早く終わっているんだというのは、実際にその訴訟当事者になった国民から見たら、それはないんじゃないのと。やはり、最後は最高裁でどうにかしてくれるんじゃないかという思いがあるから裁判所に頼るわけでして、そのあたりのことをちょっと理解していただきたいなと思います。  それに、これだけ上告事件が多いというのは、やはり一審、二審の裁判の実際の運用のあり方に相当問題があるのではないか。中には、全部納得できなければ何でも最高裁まで持っていくんだという人もいるかもしれませんけれども、実際に民事事件で、一審ではある程度の証拠調べがきちんとされておりますけれども、今の高裁に控訴してかかると、大体第一回目で終わってしまうのですよね。  私は、千葉で弁護士をやっておりましたけれども、控訴事件で東京高裁に行きますと、第一回期日で、では結審します、それで和解しますかと。それがもう大体民事裁判の常套ですよ。弁護士しか行かなければ、まあそんなものだというふうに自分を納得させることもあるのですけれども当事者から見たら、一審でだめでも、一審の裁判官はちょっとおかしかった、二審の裁判官は三人できちんとやってくれるんだろうと思っているのに、もう最初の期日で終わりだと。何の証拠調べもしないというような運用が実際に多く行われているから、控訴審で判決をもらっても、やはり最高裁にという事件が多くなっているのではないかと思うのですね。  特に、控訴審の実際の裁判あり方ということを検討していかないと、こういう上告制限を設けても、やはり国民に納得してもらうということは難しいのではないかと思うのですが、控訴審における審理あり方ということを、そこの充実も図らないと、こういう制度を設けたからといって簡単に解決する問題ではないと思うのですが、その点、最高裁の方はどう思われますか。
  15. 石垣君雄

    石垣最高裁判所長官代理者 裁判所としては、一審、二審、上告審、いずれの段階におきましても、精いっぱいの審理を尽くすということで心がけてきておるところでございますが、ただいま、仮に新しい制度ができます場合に、一、二審の重要性ということについてどう考えるかという御指摘かと思います。  私どもとしては、この制度が十分に生かされるというために、あるいは国民の権利が十分に擁護されるというためには、一、二審の審理というものが従来にも増して重要なものになるであろうというふうに思っております。この一、二審の審理あり方につきましては、今後とも各方面から御意見を伺いながら、十分な負託にこたえられるような努力をしていきたいというふうに思っております。
  16. 富田茂之

    富田委員 ぜひ今のようにやっていただきたいと思います。法律の改正に伴って、先ほどの調査官増員等もそうですけれども、体制の整備または実際の裁判での運用のあり方も、本当にいろいろな意見を聞いていただいて改善していっていただきたいと思います。  次に、文書提出命令の関係で、証言拒絶等の規定との整合性ということが、この委員会で大分話題になっておりました。ちょっとその証言拒絶等の規定との整合性という問題に関しまして、何点か質問させていただきたいと思います。  証言拒絶規定との関係で、法制審議会でどういう議論がされてきたのだという質問が何度かこの委員会でもされておりました。また、今回改正案として出されている文書提出命令規定が、なぜ証言拒絶の規定と同じような形になっていったのだということで、各委員方たちから繰り返し質問がされておりましたけれども、政府側の答弁としては、おおむねこういう答弁でまとまっていたのではないかと思うのです。  法制審議会でどういう場面で議論されたかということにつきましては、主として証人尋問の手続における監督官庁の承認拒絶、その要件をどうするかという場面で議論がされた。またあるいは、甲乙丙案が出たときに、甲案とか丙案というのは、当然証言拒絶規定とパラレルに考えるというような前提で、法制審議会で議論をしてきたのだというふうに民事局長は御答弁されておりました。  その上で、山口那津男委員の質問に対して、山口那津男委員はこういう質問をされたのですが、なぜ一号から三号まで、これまで裁判所判断ができたのに、あるいは証人の場合も、立証事実が職務上の秘密にかかわるような場合、この秘密性はやはり裁判所判断してきた。にもかかわらず、今回改正法で、四号ロのところだけ行政庁、監督官庁が判断できることになってしまったのだ、これはおかしいのではないかというような質問をされたのに対して、民事局長はこういうふうに答えていらっしゃいます。  これは、現行の民事訴訟法における証人尋問の場面におきまして、公務員を証人として職務上の秘密について尋問する場合には、裁判所は当 該監督官庁の承認を得ることを要するということになっております。その規定解釈といたしましては、官庁が承認するかどうかという場合において、秘密に属するかどうかという判断も監督官庁が有するという考え方で定着しているわけでございます。さらに、刑事訴訟法においても同様の仕組みになっているということでございますので、今回、文書提出命令の対象文書の範囲一般化するという場合におきましても、いわゆるそのスキームの範囲内、枠内で拡張するということとしたものでございます。 という御答弁をされているのですが、今回の改正法では、百九十一条二項で承認拒否事由ということで、「公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある場合」というように要件を挙げているのですけれども局長が言われた、刑事訴訟法でも同じようになっているのだというふうに言われるのですけれども刑事訴訟法の百四十四条では、「国の重大な利益を害する場合」という文言になっているわけですよね。文言上も明らかに違うと思うのですね。これが刑訴でも同じような取り扱いをしているから、今回の改正法でこういうふうに変えたのだというふうに考えられるというのは、ちょっと合理的な理由にはなっていないのではないかと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  17. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 今回の、文書提出命令の対象文書の範囲を拡大するに当たりまして、その除外事由といたしましては、民事訴訟法上の証言拒絶事由、それから、また刑事訴訟法上の証言拒絶事由の並びにおいて、その枠内で政府原案のような改正案とさせていただいたということの御説明、ただいま御指摘があったとおりでございます。  今刑事訴訟法との関係について御質問でございますが、これまで御説明いたしました趣旨は、刑事訴訟手続における証言拒絶におきましても、その情報を、訴訟手続に協力するという観点から公表するかどうか、そういう判断は当該行政官庁が行う、こういう基本的な枠組みになっておりますので、その枠組みの中で、文書提出命令の問題についても考えさせていただいたということであります。  もちろん御指摘のように、その拒絶する事由につきましては、刑事訴訟法におきましては、国の重大な利益を害する場合ということでございますし、今回の民事訴訟法法案におきましては、公共の利益を害する、あるいは公務の遂行を著しく困難にするおそれがあるという規定の仕方をしておりまして、この間に差異があるということは、私どもも十分認識しているところでございます。  この今回の民事訴訟法法案におきます拒絶の要件、これは、これまでいわゆる公務上の秘密の解釈として一般的にとられている解釈論、これを前提にして、それを法文の形で明確化するという考え方で立案したものでございます。  刑事訴訟法と民事訴訟法で違いがあるという点につきましては、これは、一方は国の刑罰権の発動をする前提としての真実発見の要請であり、民事訴訟法の方は、私人間の紛争を解決し、もって法的秩序の安定を図る制度としての真実の発見、探求に対する要請ということでありますので、その要請の程度において差異があるのではないか、そういうことから、国民一般裁判への協力義務のあり方についても、刑事訴訟民事訴訟で差異があるのではないかという考え方に基づくものでございます。  この協力義務の差といいますものは、現行の証言拒絶事由におきましても、例えば民事訴訟法では、事実を証言するとみずからの恥辱に帰すべきことになる、現行法では「恥辱二帰スヘキ事項」という表現をしておりますし、改正法案ではこれを現代語化して「名誉を害すべき事項」というふうに表現しております。これは民事訴訟法では証言拒絶事由になっておりますが、刑事訴訟法ではそういう事由が証言拒絶事由として取り上げられておりません。  それからもう一つは、民事訴訟法では「技術又ハ職業ノ秘密二関スル事項」というのが証言拒絶事由として掲げられておりますが、刑事訴訟法ではそういう事項は証言拒絶事由になっておらない。そういうところにも、既に一般国民訴訟への協力義務のあり方の差があらわれているというふうに考えておるところでございます。
  18. 富田茂之

    富田委員 確かに今局長指摘のように、一般私人の協力義務の規定上の差というのは民訴、刑訴であると思いますけれども、最初に私が指摘させていただいたのは、公表拒否基準をなぜ同じようにできないんだ。刑事裁判民事裁判、確かに制度も目的も違います。ただ、同じような規定、同じような制度がある中でパラレルに考えていくんだという御説明をずっと、これまでの審議を聞いていますとやられているわけですね。その体系の中でここの文言だけ変わってしまって、今回の民事訴訟法改正の中でどうも官庁に対してハードルを低くしているんじゃないかというふうに一般国民から見たら思うわけですよ。同じ国語の体系の中で何でこんなことをわざわざ変えるんだ。同じように民事訴訟法の証言拒絶規定にも根拠を求め、また刑事訴訟法にも根拠を求めていて、文言の部分だけ刑訴の方はどこか放てきしてしまうという疑問があると思うんです。その点は今の御説明だけではちょっと納得いかないんですが、どうですか。
  19. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 民事訴訟法のこれまでの証言拒絶に関する規定におきましては公務員の職務上の秘密という要件が規定されておるだけでございまして、それに加えて、具体的にどういう場合に拒絶できるんだという規定は置かれておらないわけでございます。これは秘密の解釈にゆだねられておったということであろうと思いますが、法制審議会の審議の過程におきまして、これはやはりどういう場合に拒絶できるんだということの規定を置くべきだという議論がございまして、その中でさまざまな議論がされたわけでございますけれども刑事民事とでは違うということは、今申し上げたようなことによって議論がされたわけでございます。  また一方、民事訴訟法の場面で、行政機関が保有する文書を民事訴訟手続に協力するという観点から公表していいかどうかというその基準として考えました場合に、国の重大な利益を害する場合というような規定をいたしますと、例えば、行政機関が保有している文書の中には個人のプライバシーに関するものもあり、あるいは企業の情報に関するようなものもございましょう。そういうものについて、例えば一つ一つの文書を取り上げて、これを公表すると国の重大な利益を害するかどうかという見地から見ますと、必ずしもそういうものの保護に十分ではないのではないかというような問題があろうと思います。  そういうことを総合考慮いたしまして法案のような規定ぶりにするということで、法制審議会の結論も、経過におきましてはさまざまな議論がございましたけれども、そういうことになったという経緯でございます。
  20. 富田茂之

    富田委員 ちょっと納得しかねるんですが、時間がなくなりますので次の質問に行きます。  この委員会に、参考人として京都大学の谷口先生がお見えになって意見を述べられました。その中で、立法の整合性ということについて民事訴訟の方と刑事訴訟の方と御指摘がありましたけれども、特に民訴の方の証言拒絶の点との整合性についてこういうふうにおっしゃっておりました。  立法の整合性ということから、証人となるにはその監督官庁の承認が、承諾が必要であるということと文書提出について承認がなければ提出を強制されることはないということとは整合していることであって、したがって新しい法律案の四号のロというところで言っていることは現行法の体制として全く矛盾することではないのである、むしろ整合的なことなのであるという説明がなされているようでございますけれども、もしそうだといたしますと、従来の裁判所が行ってきました解釈、つまり秘密であるかどうかということについて裁判所判断をしていたということは、実は既に現行法のもとでも違 法な、あるいは許されないことをしていたということになるのではないかと思われるわけでございまして、もしそういうことだといたしますと、従来の解釈は、新しい法律ができたということによって全面的に変更される、これは立法者の意思がそういうことだということで今後は変更されるということにならざるを得ないのではないか。少なくともそのおそれが大きいということが言えるのではないかと危惧するわけでございます。 というふうに指摘されているんですね。これは、これまで大臣局長も、今までの解釈は変わらないんだ、それにプラスして一般義務規定を設けたんだということをずっと言ってこられたんですけれども法制審議会の委員であられる谷口先生が、立法の整合性ということは根拠にならないんじゃないか、実際にこれまで裁判所が本当に苦労されて三号文書について拡大解釈、できる限り真実発見のために当事者に証拠を持たせようということで努力されてきたことが違法だということになるんじゃないか、今のような改正案のやり方をすると。こういう指摘をされているわけですけれども、その後に谷口先生は「もともと証人となるということと文書を提出するということとは少し性格の違うものであるということを、裁判所自身、従来の判例を通じて明らかにしてきたところではないかと思うわけでございます。」というふうに結論づけているわけですね。私もこのとおりだと思うんですが、この谷口先生の考え方からすると、これまでの局長の答弁とはちょっと矛盾が生じてくると思うんですが、その点はいかがですか。
  21. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘の谷口参考人のおっしゃられたことと私どもがこれまで申し上げていることの間に違いがあるかとおっしゃいますと、それは違いがあると思っております。ただ、旧来から申し上げておりますとおり、一号から三号までの規定は、これはそのまま平仮名、口語化して存置するということであり、四号を全く新しいものとしてつけ加えているということでございますので、一号から三号までの解釈に影響を与えるということはないというふうに考えているところでございますし、谷口参考人が法制審の委員としてこの議論に直接御参加された機会があったかどうかは、私、今ちょっと定かではございませんけれども、少なくとも法制審議会におきましてそのような懸念についての議論があり、かつそういう懸念はない、まあ文理上の問題のほか、今回の改正趣旨は提出文書の範囲を拡大するということを目的とするものであり、かつそのことは、当国会において私ども説明で申し上げさせていただいているということから、そういう趣旨は関係者に周知されるであろうということも含めてそういう懸念はないだろうという議論がされたという経緯もつけ加えさせていただきたいと存じます。  なお、もしそうであるならば、今まで違法なことをやっていたことになるのではないかという御指摘でございますけれども、これもこれまで説明申し上げておりますとおり、現行の一号から三号までは、挙証者と一定の関係にあるそういう文書、とりわけ三号におきましては、挙証者の利益のため、あるいは挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成された文書、そういう文書に該当するかどうかという判断の一要素として公務上の秘密に属するかどうかということが判断されるものであり、四号は、そういう文書との関係というのを一切問題にしないで一般義務化するということを前提としての新しい規定であるということから、三号の取り扱いと四号の取り扱いで差があるということについて論理的な矛盾はないものと考えております。
  22. 富田茂之

    富田委員 これまでの扱いとかなり矛盾してくると私自身は思うのですが、今の答弁はちょっと納得できませんけれども。  実は、山口那津男委員の方で法制審議会の議事録を出せというふうにずっと要求されておりまして、議事録を出していただくところまでいかないのですが、山口委員の方に例えば小委員会における審議状況というようなメモをいただきまして、私もそれを見せていただいたのですが、その中で一番最後に、法制審議会民事訴訟法部会小委員会における審議状況改正要綱案)というのの五ページ目ですか、こんな議論が載っているのですね。  平成八年一月十二日小委員会、もう最後の方の委員会だと思うのですが、審議中の議論として、従来の第一号から第三号により提出命令が出されていた範囲が狭くなるのではないかとの指摘もされたが、そうならないと考える。これはこの委員の方の意見だと思うのですが、その後に、最終的には実務運用次第であるので、このような審議の経緯が実務に反映されるような努力がなされることを期待しているという、非常に無責任な御意見なんですね。このように実務運用次第だと思うのですよ。本当にこれまで裁判所がせっかく拡大するために努力されてきたのに、わざわざ一般義務化した規定ができたために、実務の運用でこれまで出るものが出てこなくなってしまうということになるのではないか。  谷口参考人だけじゃなくて、中野貞一郎参考人も細川委員の質問に対して、監獄での暴行事件についての診療録、これも出てこなくなる可能性があるというふうに明確に言われておりました。診療録を出せという決定裁判所の方にお願いして、いただきましたけれども、こんなものも受訴裁判所では出さなくていいというふうに言ったのかと思うような内容でした。東京拘置所の房舎の番号が書いてあるから警備上問題になるとか、何かちょっとわけのわからぬような理由でもともと出さないというふうに言っていたみたいで、それを東京高裁の方で、これはもう必要な文書だというふうな決定を出してくれたわけですよね。これまでそういう努力を裁判所はしているわけですから、それを妨げるような一般義務化というのは本当に意味がないのじゃないかなというふうに思います。  あと、文書と証人というのは証拠方法としては私はちょっと異なるものではないかと思うのですが、証言拒絶規定とパラレルに整合性をとるという議論の中で、実際の裁判における証拠方法として文書と証人の証言というのは性格が違うのじゃないか、そういう点からの議論が法制審の中で行われてきたのでしょうか。その点、もしわかっていればわかっている範囲でお答えいただけますか。
  23. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 これまで御説明申し上げておりますように、証言の場合でも文書の提出の場合でも、問題となっている秘密という観点からは、証言しあるいは文書として提出することによってその事実が公表される、そういう結果を招くという意味で実質的に同じ事柄であり、したがって公務員の職務上の秘密に関する文書についても証人尋問の場合と共通の考慮が必要になるという考え方で法案を立案させていただいているものであります。  ただ、もちろん、御指摘のとおり、証言と文書の提出ということでは証拠方法としての差異がございますし、それから事実の公表の仕方という意味においても差異があるわけでございます。したがって、そういう差異があるということについては御議論の対象になった上で、しかしながら、先ほど申しましたように、事実が公表されるという観点から現行制度の枠内で同様の取り扱いをすることが現在の制度のもとでは適当であろうという考え方のもとに最終的な法制審の答申になったということでございます。
  24. 富田茂之

    富田委員 やはり証人の証言と文書というのは、もう証拠方法の観点から見ても全然違うものだと思うのですね。証人の場合には、例えば法廷で追及をしていても、その証人が公務員である場合には守秘義務を持っていて証言できないという立場に立たされて、その本人を助けるという意味でこういう規定が置かれている。公務上の秘密ですからということで証言拒絶できるというふうになっていると思うのですけれども、文書はもう文書そのものとして存在しているわけですから、客 観的にあるものと法廷でどういう証言をするかわからないという状況とでは全然違うと思いますし、また、証人に対してはいろいろ質問を変えて、追及の仕方を変えてある程度証拠を収集することが可能なわけですよね。文書の場合にはその文書しかないわけですから、やはり証言拒絶規定との整合性ということを今回の文書提出命令根拠にするというのは余り理由がないのじゃないかなというふうに一つ思います。  あと、これも山口那津男委員が質問していて、民事局長の方から山口委員の言うとおりだというふうに答弁された、法案の二百二十三条四項、文書提出命令決定に対して即時抗告できるという規定がありますけれども、公務秘密文書だということで文書が出てこなかった場合に即時抗告しても意味がないのじゃないかという質問に対して、局長は、もう御指摘のとおりだというふうに言われているのですが、それだと、この二百二十三条四項というのは何のためにつくったのか。公務所の方から文書が出てこない場合には文書提出命令を申し立てた当事者にとっては何の意味もない、即時抗告権があるというふうに規定されていても意味のない規定になるのじゃないかと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  25. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 今回提出しております民事訴訟法案は、再三御説明申し上げておりますとおり、公務員の職務上の秘密に関する文書についてそれを開示すべきか否かという判断権は基本的に監督官庁が持っているということとして提案しているわけでございます。そういう前提で考えます限り、監督官庁が承認しないということの当否ということは裁判所判断の対象にはならない。もちろん一般論としての承認権あるいは拒絶権の濫用という場面での議論はこれは別個あろうと思いますが、そういう場合を別といたしますれば、裁判所判断が及ばないということを前提にしているものでございます。したがって、その点に関しては、即時抗告をしても即時抗告審でも同様の判断がされるということによって、その点に関する限りは実質的に即時抗告の実益がないということは御指摘のとおりであろうと思います。  しかしながら、他の理由によって申し立てが却下された、文書が存在しないとか特定が十分でないとか、そういった理由で却下された場合に、そんなことはないということで即時抗告によって争うということはあるわけでございますし、もとより文書提出命令の申し立てについての決定一般について即時抗告制度が意味があるものであるということについては、委員も御理解をいただいているものと思っております。
  26. 富田茂之

    富田委員 今の点が問題だと思うのですね。濫用の場合は別としてというふうに局長は言われましたけれども、百九十一条二項で承認拒否事由として「公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある場合」と規定していても、こんなものは出せないんだと官庁の方が言った場合に、出せないと言われたから文書提出命令出てこない。その場合に、即時抗告できないわけでしょう。仮に即時抗告したとしても、上級庁で結局判断できない。  どこで救済を受けられるのですか。即時抗告権が認められているということは、当事者に救済を与えるためにそういう制度をつくったわけでしょう。全然救済されないじゃないですか。司法救済をする制度自分でつくっておきながら、それを拒否しているのと一緒ですよ。そうなりませんか。その点だけお聞きして、終わりたいと思います。
  27. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘の点について、行政情報公開の議論との関係で、さまざまな御批判を既に当委員会においていただいているところでございます。この点につきましては、私どもといたしましては、行政情報公開制度に関する大変幅広い議論の推移及びその成果を踏まえて、民事訴訟法の場面でも考えさせていただきたいということも申し上げているところでございます。  ただ、政府原案におきましては、裁判に協力するという観点から公務上の秘密を開示するかどうかという判断は、先ほど申しましたように、行政庁が持っている。これはその行政について権限と責任を負っている行政庁が持っている、こういうスキームのもとで法案を提出させていただいているわけでございますので、その点については、御批判はいただいておりますが、御指摘のような制度で立案をさせていただいているわけであります。
  28. 富田茂之

    富田委員 その最終的な判断行政庁が持っているという前提がやはりおかしいから、こういう規定を設けていてその規定で救われないということが出てきてしまうのじゃないかというふうに私自身は思います。その点、本当によく考えてもらいたいなというふうに思います。  また、法務省の情報公開ということについては、大臣にも質問通告してあるのですが、ちょっと時間がございませんので、申しわけございません、これで終わります。
  29. 加藤卓二

    加藤委員長 山田英介君。
  30. 山田英介

    山田(英)委員 今回の民事訴訟法改正につきましては、既に、各党二巡目の質疑が終わり、参考人質疑も行い、名古屋における地方公聴会も済ませました。きょうは、いわば三巡目の各党質疑と理解をいたしておりますけれども、その中で、民事訴訟法改正というのは、実に七十年ぶりの改正である。その改正趣旨あるいは改正の目的というものは、御説明がございましたように、国民にとってわかりやすい、あるいは利用しやすい訴訟制度をつくっていくんだ、改善をしていくんだ。あるいはまた、現代型訴訟等に見られる諸問題、これらの時代の要請に適切に対応できるような、そういう仕組みに改善をしていくんだ、そのような大きな、また重大な立法の改正の目的があるわけでございます。     〔委員長退席、佐田委員長代理着席〕  そこで、私は、少額訴訟に関する特則というものが新たに立法されようとしているわけでございますが、この少額訴訟に関する特則につきまして最初にお尋ねをしたいと思っております。  それで、まず法案第三百六十八条に「少額訴訟の要件等」が規定をされているわけでございますが、この少額訴訟の仕組みを新たに設けられたその目的、それから少額訴訟制度の概要につきまして御説明をいただきたいと思います。
  31. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘の少額訴訟に関する特則の対象は、訴訟の目的の価額が三十万円以下の金銭の支払いの請求を目的とする訴え、これを対象としております。現行法上、訴額が九十万円以下の訴訟事件を管轄するのが簡易裁判所でございます。簡易裁判所手続におきましては、一定範囲において簡易で迅速に紛争を解決することができるように一定の特則が設けられておるところでございますが、簡易裁判所はあくまでも三審制度のもとにおいて地方裁判所とともに第一審裁判所と位置づけられておるわけでございますので、その特則も基本的には地方裁判所と同一の訴訟手続が適用されていることを前提としております。  その中でも、特に少額で、しかも複雑、困難でもないというものにつきましては、手続として当事者から見た場合になお重過ぎるのではないかという面も否定できないわけでありますし、また、そのために、時間や費用の点でも、利用しやすさの点でも、一般市民が自分でアクセスするという観点からは十分なものではないのではないかということが指摘されております。  そういう観点から、今申しましたような特に少額な事件につきましては、一般市民が訴額に見合った経済的な負担、時間的な負担で迅速な解決を求めることができるように、原則として一回の期日で審理を終了して、しかも判決は原則として直ちに言い渡す。しかも、その上訴についてはこれを手続内における異議という形に制限する、上訴は制限するという特別の制度を設けているわけでございます。  なお、この少額事件判決におきましては、裁判所判断によって支払いの猶予といったことも認めることができるという規定も設けているところでございます。
  32. 山田英介

    山田(英)委員 この特則につきましては、今回の改正の大きな眼目の一つ、目玉の一つとして位置づけられていると思います。そこで、ねらいの一つは、そういう意味ではより多くの国民のニーズに合致をする形で、より多くの国民がこういう少額、簡易な訴訟事件についてこの制度をたくさん利用していただきたい、こういうところだろうと思っております。  そこで、以下、実際に私自身が、例えば訴額三十万円以下の金銭の支払いの請求を目的とする訴えをこの制度を使ってやってみようと思った場合に幾つかわからない点があるものですから、その点を簡潔に、わかりやすくひとつ御説明をいただきたいと思うのです。  まず、この三百六十八条のただし書きに、同一の簡裁において同一の年に最高裁判所規則で定める回数を超えてこれを求めることができない、このように規定が置かれておりますが、なぜこの規定が置かれているのか。そして、最高裁規則で定める回数はおおよそどの程度になるのか。この点について御説明をお願いします。
  33. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 少額訴訟は、通常の一般的な手続とは別に、これと並んで、併存する手続として用意しようとするものでございます。これによって、広く一般国民に対して、少額の紛争について裁判による解決を求める道を開くということを目的とするものでございますので、そこで国民が平等にこの手続を利用する機会を確保し、そのメリットを享受することができるようにする必要があろうと考えられます。  ところが、裁判の実務の現状におきましては、同じ人あるいは同じ法人が同じ裁判所に多数の訴えを提起する場合もあるわけでございまして、そういう事態が少額訴訟手続について生じますと、その当該簡易裁判所において少額訴訟手続を希望するすべての者にそのメリットを平等に享受させることができなくなるおそれがある、そういうことでございますので、この手続につきましては、同じ人が同じ裁判所で一年間に何回も無制限に利用することができるということを制限する、こういう制度として用意するのが適当なのではないかと考えられたわけでございます。  具体的にどのぐらいになるかというお尋ねでございますが、日常生活において一般の市民がその生活上生ずる法的な紛争の頻度ということを考えますと、差し当たり同一の簡易裁判所について年間十回とするということを最高裁当局の方ではお考えと伺っております。この回数につきましては、その訴訟の運営を担われる裁判所におかれまして、この改正法の施行後の各簡易裁判所における利用状況とか運営の実情等に照らしまして適切な回数を設定するのが適当であろうということで、最高裁規則で定めることとしているわけでございますが、当面はそういうことでスタートして、その後の状況を見て、また最高裁当局において御検討されるものであろうというふうに考えております。
  34. 山田英介

    山田(英)委員 法案第三百七十条では、「一期目審理の原則」ということで、原則として「最初にすべき口頭弁論の期日において、審理を完了しなければならない。」こう規定を置いております。一日でともかく判決を言い渡せ、審理を終了せよ、こういうことと理解しておりますが、これは必ずしも一日で終わらない場合もあるのではないかと思います。「最初にすべき口頭弁論の期日において、審理を完了しなければならない。」こう大原則といいますか、決めつけているというか、規定しているわけでありますが、一日で終わらないケースも想定されるのではないかと思いますが、その場合はどういう仕掛けになっておるのでしょうか。
  35. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 こういう制度を設けます以上は、これはあくまでも、基本的には一回で審理して即日判決の言い渡しをする、そういう制度として用意するのが適当であろうということで、原則としては最初の期日で審理を完了すべきものと定めておるわけでございます。ただしかしながら、事案によってはもう一回期日を続行して言い分を聞く、あるいは証拠調べをするということが必要であるという事例も、それはもちろんないではないだろうと考えます。  そういうことでございますので、これはあくまでも原則として、例外は認める。それが三百七十条一項の「特別の事情がある場合を除き、」という規定を設けた趣旨であります。そういう場合には口頭弁論の期日が続行されるということでございまして、二項におきましても、原則は、攻撃防御方法はその期日あるいはその前に提出しなければならないということですが、一項の規定によって続行されたときは、その期日においても提出することができるというアローアンスを設けているわけでございます。
  36. 山田英介

    山田(英)委員 「証拠調べの制限」という第三百七十一条の規定がございますが、「証拠調べは、即時に取り調べることができる証拠に限りすることができる。」この少額訴訟の特則の性格あるいは趣旨からして、まあこういうことなんだろうと思いますが、雑な証拠調べになりはしないか。とはいえ、雑な証拠調べということにならないよう最大限努力しなきゃならないのだろうと思うのですけれども、この辺はどういう御見解でございますか。
  37. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 原則として一回で終結するということを予定する以上は、期日の呼び出しをして出頭しなかったらまた続行するというようなことであってはこの原則が全うできないということでございますので、例えば証人でございますと、任意に同行してもらって即日調べるというような処理をするということでございます。こういう取り扱いはこの法案の百八十八条、これは疎明についての規定でございますが、そういう場面においてもそのようになっているところでございます。  この少額訴訟手続は、事件一定の少額なものに限定をいたしまして、しかも、当事者の意思によって、この手続に入るか、それとも一般手続を使うかということを選択していただくということになっておりますので、こういう手続を選択されるということである以上は、これは通常の証拠調べよりも簡易な証拠調べということで対応するということになりましょうし、当事者の意思としても、そういうことを予定してこの手続を利用していただくということであろうと思っております。もちろん、その範囲内において証拠調べが余りにもずさんになるということは運用上避けていただくような御配慮をお願いする必要があろうと存じます。
  38. 山田英介

    山田(英)委員 わかりました。要するに、少額訴訟の特則でやりたいと原告が申し出る、被告が一定の時期までに通常の手続でやりたいというふうにすれば、これは当事者が合意して少額訴訟の特則を使うということにならないから、この少額訴訟の特則を使うのは原告、被告とも、当事者ともに合意をして、この仕組みのもとで決着を図ろうということだから、まあこういう即日に、即時に取り調べるというようなことでいけるんだ、それはよくわかります。  それから、だからといって、今度はどうなんでしょうか、三百七十二条に「証人の尋問は、宣誓をさせないですることができる。」できるということで、裁判所のこれは裁量、判断なんですけれども、やはり少額訴訟といえども証人には真実を語っていただく必要があるということになれば、宣誓にどれだけの時間がかかるのか私にはよくわかりませんけれども、これは「させないですることができる。」ということの規定ぶりは問題はないのでしょうか。
  39. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 この証人尋問について宣誓をさせるということは、宣誓をさせれば、偽証罪の制約のもとで真実の供述が担保されるということでございますけれども、しかしながら、先ほど御指摘のような当事者のいわば合意、了解に基づくこの簡易な手続においてそこまで証人に偽証というような負担を負わせて、すべての証人についてそのようなことをするまでの必要はないのではないかということで、こういう規定を設けているわけでございます。  もちろん、「することができる。」ということでございますので、裁判所判断として、この証人についてはやはり宣誓させた方がいいということであれば宣誓させる。しかしながら、証人によってはそこまでの負担を証人に負わせる必要がないのではないかという場合も考えられますので、そこのところは簡易な手続の一環としてそういう選択肢も設けているということでございます。
  40. 山田英介

    山田(英)委員 要するに、少額訴訟の特則の基本的理念といいますか、冒頭もお尋ねしたわけでありますが、いずれにしても国民にとって利用しやすい、できるだけわかりやすい訴訟、そのシステムをここに用意をした、こういうことだろうと思います。  それで、具体的にちょっと次に伺いたいのですが、どの程度の国民の利用、どの程度の利用者数といいますか件数といいますかを想定をされているのか。したがって、これは仮に現行法のもとで、三十万円以下の金銭の支払いを目的とする事件が、過去一年でも過去三年でもいいのですけれども、おおよそどのくらいの件数に上っているのか。それから、この新しい少額訴訟の特則というシステムを組み込むことによって、あるいは新設することによってどの程度利用件数が、あるいは利用者数がふえるというふうに想定、予想されておられるのか。かっちり固まった数字じゃなくても結構ですが、大体イメージがっかめる程度の数字で結構でございますが、三十万以下の金銭支払いを目的とする事件数は、過去三年間なら三年間でどのくらいありましたのか。それが、この新しい仕組みをつくることによってどの程度ふえると予想されているのか。
  41. 石垣君雄

    石垣最高裁判所長官代理者 事件数にかかわろことでございますので最高裁の方から申し上りますが、まず簡易裁判所における民事通常訴訟事件、これは簡裁の通常訴訟の全体でございますが、これを先に申し上げますと、平成四年が十六万八千五百八十八件、五年が二十二万七千七百九十一件、六年が二十四万四千百三十一件でございます。そのうち、今回問題になっております訴訟の目的の価額が三十万円以下の金銭請求事件ということに限って見ますと、平成四年が八万七千二百五十四件、五年が十一万四千三百五十八件、六年が十二万一千六百四十件でございまして、新受件数全体に占める割合で申し上げますと、平成四年が五一・八%、五年が五〇・二%、六年が四九・八%となっております。ざっと申し上げますと約半分ということになるわけでございます。  ただいま御質問がございました、予想される件数ということになりますと、いろいろな条件が重なりますので、少額訴訟の場合には、先ほど来出ておりますように、まず原告が訴え提起の際に少額訴訟手続による審理を選択し、それに対して被告が通常の手続への移行を求めなかった、それから裁判所も少額訴訟手続による審理を行うことが相当であると判断した場合に実施されることになるということが一つ。  また、少額訴訟につきましては、先ほど来出ておりますように、同一裁判所を利用する際の利用回数の制限ということが予定をされておりますし、なかなか現段階で利用件数の見込みを想定することは困難であると思っておりますが、私どもとしては、せっかくのこの新しい制度でございますので、この手続の利用が十分に図られますように、弁護士会にも御協力をお願いして、手続の存在について国民に周知を図るとともに、裁判所としても積極的に手続教示、かなり重要なことだと思っておりますので、手続教示にも努めていきたい、こういうふうに思っているところでございます。
  42. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 ただいま最高裁当局から御答弁のとおりでございますが、私どもとしては、この手続を設けることによって、これまで裁判による解決ということをあきらめていた人、したがって現在の制度では訴訟という方法がとれなかった者も、積極的に訴訟という場を利用していただけるということがふえるのではないかということも期待しているところでございます。
  43. 山田英介

    山田(英)委員 そうすると結局、先ほど御報告いだだきました平成四年、八・七万件、平成六年、十二万一千件余り、これを基準にしてふえそうなのか減りそうなのか、その辺も予測がつかない、ついておらないということですか。     〔佐田委員長代理退席、委員長着席〕
  44. 石垣君雄

    石垣最高裁判所長官代理者 実は、今まで裁判手続を利用されない方々がこの手続によって利用されることになるであろうということが一つ予想されますのとともに、逆に、先ほどお話が出ておりましたように、同じ手続を多数回数利用しているいろいろな業者の方々等もございますが、これにつきまして利用回数制限の問題等がございますので、全体的に見ますと、先ほど申し上げたような数字までにはいかないのではないかなという私の感じではございます。
  45. 山田英介

    山田(英)委員 冒頭ちょっとお伺いいたしましたけれども法案第三百七十条におきまして、一回の口頭弁論期日において審理を完了しなければならないと規定されているわけであります。とすると、少額訴訟制度とはいえども、現在の手続以上に当事者における事前の準備が相当程度必要になると考えられると思います。今までも、例えばプロの弁護士がついてやっても、訴額九十万以下の少額、簡易な訴訟でも一回でなかなかうまくいかないというようなところを、今度は三十万以下ということで、確かにこの特則によりまして手続的にはいろいろ工夫されているんだろうとは思いますけれども、結局その利用者たる国民が単独でこの手続を上手に利用していくということはなかなか、それでもなおかなりの困難が伴うのではないのか。  ですから、まず分けて、一回で訴訟を完了させるということと、これを利用する当事者が事前の準備が現在の手続以上に相当程度必要になるのではないかというあたりについては、どういう見通し、御見解をお持ちでございましょうか。
  46. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 最初に申しましたように、この手続の対象は、三十万円以下の金銭訴訟ということでございます。したがって、一般的にはそう難しい法律上の争点を含むものではないのではないだろうかというふうに思いますし、また、当事者といたしましても、三十万円未満であっても複雑な争点を含む、法律問題を含むというような訴訟については、この制度を利用するということを避けるのではないかというふうに思われます。  ただ、一回で結審するということのためにはそれなりの準備をしていただかなければならぬということでございますが、その点については、裁判所の窓口において、どういう準備が必要かというようなことを、要するに例えば証人がいれば当日連れてきてくださいというようなことを含めまして、適正を欠かない範囲内で窓口で教示をするというようなことも、あわせて裁判所の方で御努力いただけるのではないかというふうに思っております。
  47. 山田英介

    山田(英)委員 御答弁でございますけれども裁判所のそのようなサービスあるいは努力というものが、局長おっしゃいますように、非常に大事だと思っております。ただ、裁判所の窓口におけるそういうサービスあるいは手続に関する助言についても、それだけで利用者たる国民がこの少額訴訟制度というものを使いこなすといいますか、これを利用するということが、それでもなお困難性を伴うのではないのかなと。余り訴訟になじみのない国民性といいますか、うまい言葉が見つかりませんけれども、そういう歴史的な経緯から、あるいは風土的なことからしても、そう簡単にいくのかなという感じを実は持っております。  そのことについては、また後ほどお伺いしたいと思いますが、もう一つ現行法のもとにおいて三十万以下の金銭の支払いを求める訴訟において、これは一回で終わる場合もあるし、複数回、ずっと期日を使って、口頭弁論を経てということになると思いますが、現行法のもとにおける訴額三十万以下の金銭の支払いを求める訴訟では、一回の口頭弁論に要する時間、私は法律の実務家、専門家ではありませんのでわかりませんが、一回 の口頭弁論では大体どのぐらいの時間を要しているのか、おおよそで結構ですが、お知らせをいただきたいと思います。
  48. 石垣君雄

    石垣最高裁判所長官代理者 大変難しい御質問でございまして、事件によりけりと言わざるを得ないと思いますが、例えば相手方が出席をしていない事件、まあ欠席判決になるような事件というようなものでありますれば、ごく数分ないし十数分というふうなこともございましょうし、実質的な弁論をしている事件については十分単位の時間がかかっているということもあろうかと思います。  大変恐縮でございますが、統計的なところまでは把握をしておりませんので、御容赦いただければと思います。
  49. 山田英介

    山田(英)委員 同じような質問になって恐縮でございますが、なかなかこれはやってみなければわからない話かもしれませんけれども、この新たに新設、導入をされる少額訴訟手続において想定される一回の期日、一期目口頭弁論――一回で終わるわけでしょう、少額訴訟の場合は。一日の口頭弁論期日に要する時間は、およそどのくらいというふうに想定をされておられますか。
  50. 石垣君雄

    石垣最高裁判所長官代理者 これも大変難しい問題でございます。十分に意見を述べていただいて、しかも審理として過不足なく行うというためには、それに相当する時間が必要であろうと思いますが、事件と申しますのは、御案内のとおり、いろいろ内容あるいは当事者の数等によって異なりますので、一概にはなかなか申し上げにくいような感じがいたします。しかし、従来、欠席判決事件処理がされていたような事件処理ということは、まずあり得ない。かなり時間をとって、懇切な審理を心がけなければいけないものと思っております。
  51. 山田英介

    山田(英)委員 私が、なぜこんなことを何点かにわたって伺っているかといいますと、このせっかくの制度をつくられたわけですから、国民に十分に利用していただいてこの制度を生かしていかなければならない、十分国民に利用していただくようにしていかなければならない、そういう思いがあるからでございまして、制度をつくっただけで結局は利用されなかった、効果を上げることができなかったということにしてはならないだろう、こういう覚悟でございます。  以上、るるお尋ねしてまいりましたけれども、御答弁にありますように、仮にこのシステムが稼働する、機能し始めた直後からいきなり、先ほど御報告がありました件数が何十%も、何倍もふえるということでは恐らくないのだろうと私にも思えますが、しかし、より国民に利用していただくという努力が実っていけば、だんだん事件数というのはふえてくることは言えることだろうと思っております。  そう考えた場合に、この制度の新設を成功させるためにも、やはり将来を展望して、事件数増加をしっかり踏まえてこれを十分に処理をしていくそのシステムとか、あるいは裁判官とか施設の充実、拡充というものもあわせて必要だろうと思っておりますけれども、人数とか施設とか、事件数が伸びていく、それに対応できるような諸条件の整備が必要だと思いますけれども、この点については局長さん、いかがでございましょうか。
  52. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 まず、立案当局から申し上げさせていただきたいと思いますが、この制度が実現しました場合には、運用は裁判所の方でやっていただくことになるわけですが、この制度を立案いたしました立場といたしましても、この制度がより多く、うまく利用されるということを切望していることは、委員の気持ちと全く同様でございます。そのためには、まずもって、この制度法案が成立いたしました場合には、早速に最高裁において、どういう体制でこの事務体制を整えるかということについて十分御検討いただけるものというふうに考えておるところでございます。  あと、運用につきましては最高裁当局から御答弁があろうと思います。
  53. 石垣君雄

    石垣最高裁判所長官代理者 この少額訴訟は、一般市民を対象として、少額の紛争を一回の期日で解決する手続ということになりますので、この運営に当たりましては、裁判官、書記官、その他の裁判所職員が共同して運営に当たるということが重要であろうと思います。特に訴訟になれておられない一般市民の利用が期待されるということになりますと、裁判所の後見的な関与が必要となるというふうに思っております。法改正後、この手続一般市民に浸透すれば、委員指摘のように、事件数も増加していくのではないかということも考えられますので、今後とも事件数推移あるいは処理状況等を見ながら、まず適正な人員配置に努めていきたい。  それから、手続が懇切丁寧であるということが要請されると思われますので、当事者が気軽に利用しやすい物的整備を図ることも必要になるものと思われます。そういう観点からいたしますと、ラウンドテーブル法廷のような、和やかな雰囲気の中で手続を進めることのできる法廷の整備や、あるいは受付窓口の設置方法などについて、特にこういう施設面への配慮も検討していく必要があるのではないかというふうに思っているところでございます。
  54. 山田英介

    山田(英)委員 手元に「民事訴訟法学会 民事訴訟雑誌41 一九九五」という書籍を持っておりますが、この中にシンポジウムが特集されて掲載されておりまして、その中で、いろいろな大学の教授の先生や御専門家の方々がこの少額訴訟特則についてのいろいろな意見を展開されておられます。  先ほど、裁判所の窓口でもこの手続については適切な指導というかサービス、あるいは助言をしていきたいということでありますが、それだけではきっと間に合わないのかなという気持ちもするものですから、例えばこの中で、法律の専門家、これはきっと弁護士の方々、それからここでは準法律家という言い方、司法書士等の準法律家という言葉を使っておりますけれども、こういう方々の協力というものがやはりこの制度をよりょく機能させるためには必要なのではないかということが真剣に議論されているところでございます。  その中で、具体的には、基本的に当事者同士が即日に判決を得て決着をつけるという趣旨ですから、それが弁護士を代理に立ててという、これはこの制度趣旨とは合わないのだろうと思いますが、そういう意味ではなくて、例えば裁判所の窓口における手続の面におけるいろいろな助言とかサービスと似たような、弁護士司法書士の方々に何らかの形で協力をいただく、あるいは求める、あるいは共同作業といいますか、何かその辺の工夫があってしかるべきかな、あるいは視点があってしかるべきではないのかと思います。こういう点、法律家あるいは準法律家の協力なりを、制度を完成していく上で、あるいは十分機能させていく上でどのように考えておられるのか、大事な質問ですからお答えください。
  55. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 委員に申し上げるまでもないところでございますが、司法書士の業務としては、裁判所に提出する書類の作成が一つの業務の内容となっております。この少額訴訟においては、今御指摘のように恐らく弁護士が代理人として関与するということはほとんど考えられないのではないか、本人訴訟という形で利用されるということになろうと思います。したがって、この手続において当事者が作成する訴状等の書面の作成事務の面で司法書士が一定役割を果たしていただくということが考えられようと思います。  そういった問題を超えて、今御指摘がありましたように裁判所に協力するという形で、弁護士さんあるいは司法書士さんがどういう協力をいただける面があるのかということについては、今これは、そのこと自体は運用の問題でございますので、今法務省としてどういう考えを持っているということではございませんけれども、運用の問題でもどういう方法があり得るのかということは、私ども司法書士法を所管する立場でございますので、考えてみたい、念頭に置いておきたいとい うふうに思っております。
  56. 山田英介

    山田(英)委員 これは中央大学の小島武司教授の御発言でございますが、「事件類型いかんでは一定司法書士に対して助言の提供を許容することも少なくとも地域によっては検討に値するかと思います。」という御発言があります。今の局長の答弁とあわせて積極的にひとつ、日本司法書士会連合会等と意見交換をなさるなりという御努力は、そしてまた御検討はぜひお願いをしたい。  それから弁護士の方々に対しては、要するに、簡易裁判所弁護士の方々にも当番でといいますか、そういう言い方は適切ではありませんが、御協力をいただいて、少額訴訟手続を利用なさる方々にいろいろと助言をしてあげられるような、そんな仕組みも考えられるのではないかというような御提言も、ちょっと今どの箇所にあるか出てこないものですから申しわけないのですが、そういう御提言もなされております。  したがって、裁判所自身の努力、サービスの提供、これはもう当然必要な、大事なことだと思いますが、加えて法律の専門家、準法律家等の職能の方々にもぜひひとつよく意見交換なり御相談をなさって、それらの方々の適切な貢献といいますか協力といいますか、運用の面ということでございますが、ぜひそれは真剣に御検討いただきたい。局長、もう一回これは御答弁を。
  57. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 運用される裁判所とも御相談しながら、念頭に置いて考えてまいりたいというふうに思っております。
  58. 山田英介

    山田(英)委員 次に、時間の許す限りでございますが、弁論準備手続について、特に傍聴制限のところがいろいろと議論が集中をいたしておりまして、この点についてまずお尋ねをしたいと思います。時間の関係でお伺いしたいところだけということになりますが、簡潔にひとつわかりやすくお願いをしたいと思います。  まず、弁論準備手続とは何を目的に新設をされたのか、どういう趣旨で弁論準備手続という規定を置かれたのか、新設されたのか、これを簡潔にお答えいただきたいと思います。
  59. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 この制度を設けました目的は、訴訟を迅速、適切に解決するためには、まず事件の本当の争点は何かということを早期に確定し、その上でその確定した争点に絞った集中的な証拠調べが行われる、そういうめり張りのきいた手続が行われることが何よりも重要であろうという考えからでございます。  そのうちの一つ手続としての弁論準備手続、これは、御案内のとおり現行法上準備手続という規定があるわけでございますが、現行法の準備手続規定については、必ずしも十分に使われていない、使い勝手が悪いという指摘があるところでございますので、それをより利用しやすいものにする、こういう観点から、弁論準備手続については、実質的に現行の準備手続制度を改善するという観点から規定を整備したものでございます。
  60. 山田英介

    山田(英)委員 確認ですが、私の理解では、弁論準備手続というのは、争点あるいは証拠の整理というものを実際の法廷における審理に先立ってあらかじめしっかりと整理しておく、そして迅速な運びになると。したがって、いわゆる弁論準備手続そのものが判決の結果に直接影響を与えるということは言えないのかなと思うのですが、それはそういう理解でよろしいのですか。
  61. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘のとおりでございまして、弁論準備手続で行われた整理の結果は、改めて口頭弁論が開かれた際にそこで結果を上程するということでございます。準備手続で書証の取り調べをすることができる、証拠書類の取り調べをすることができるという規定を設けておりますが、しかしながら、証人尋問等の実質的な証拠調べというのはもちろん口頭弁論で行われるということでございます。
  62. 山田英介

    山田(英)委員 ただ、そうしますと、今最後の御答弁のところだと思うのですが、現行法では準備手続はあるのですが、それは一般には公開はされていないということでございます。  ところが、本法律案におきまして、第百六十九条の規定ぶりでは「裁判所は、相当と認める者の傍聴を許すことができる。ただし、」と規定が置かれているわけですから、一定の制限つきであっても公開を許したというこの法律案趣旨理由はどういうことになるのでしょうか。
  63. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘の点に関連する今回の改正点といたしまして、一つは、この手続は「当事者双方が立ち会うことができる期日において行う。」という規定を設けました。現行の準備手続にはこの規定がないわけでございますが、これを一方ずつ聞くというような運用はしないということで明確化したという点がございます。  いま一つが、「傍聴を許すことができる。」という規定を設けたということでございます。現行の準備手続については、傍聴に関する規定がございません。運用としては、当事者に準ずるような人あるいは一定の利害関係人が立ち会うという運用はされておるように承知しておりますが、しかしながら、一般的にはこれは傍聴を許さない手続であるということで運用されているのではないかというふうに思われます。  しかしながら、この弁論準備手続は、口頭弁論期日ではございませんけれども、その手続に支障がない限りにおいては関係者の傍聴を認める、公開するということであっていいのではないか、そういう考え方から、その準備手続を行う上において支障がないというふうに裁判所判断する範囲内におきましては傍聴を許容することができるという規定を用意することにしたわけでございます。
  64. 山田英介

    山田(英)委員 そういうことかとは思いますが、現行法では準備手続についてこれを公開していない。それを、一定の制限つきながらも本法律案でいわゆる傍聴を許す、公開を許したというその意味は、先ほどの質問にも関連するのですけれども、準備手続とはいえ、その後の裁判手続に大きな影響を及ぼし得るという観点もあって、立法者の意思というのは、これは公正の担保という意味で傍聴自由に近づけようとされたのではないのか、私はむしろそのようにとらえているのでございます。  そこで、今も答弁にありましたけれども、「裁判所は、相当と認める者の傍聴を許すことができる。ただし、」ということで、この「相当と認める者」というのは具体的に何を、どういう人をイメージしているのか、だれを指すのか、「相当と認める者」の具体的な範囲というのを具体的に今おっしゃることができるのかどうか、したがいまして具体的範囲の想定がなされているかどうかということについてちょっと確認をさせていただきたい。
  65. 柳田幸三

    ○柳田説明員 百六十九条の第二項におきまして「相当と認める者の傍聴を許すことができる。」ということにした趣旨は、これは弁論準備手続は必ずしも公開を要しない手続ということでございますが、裁判所の裁量によりまして傍聴を認めても差し支えないというふうに判断した場合には傍聴を認めるという趣旨でございます。  具体的にどのような者が「相当と認める者」に入るかということにつきましては、裁判所の認定判断ということになろうかと思いますけれども、その弁論準備手続がどういう場所で行われているのかとか、あるいはその事案の内容がどういうものであるかとか、諸般の事情を総合的に考慮して裁判所が認定判断するということになるのではないかと考えておるところでございます。
  66. 山田英介

    山田(英)委員 ちょっと今の御答弁は重要な点をはらんでいるのではないかと受けとめております。それでは、裁判所の裁量で、相当と認める者は一人もいないという裁量もあり得るというふうにもとれます。そういうことなのかもしれませんが。  そこで、それでは傍聴を制限つきながら許すということであれば、場所的に相ふさわしいスペース、広さを必要とすると思われますけれども、このいわゆる弁論準備手続というのは、裁判所という建物があって、どこで行われるのですか。ひとつ簡単にお願いしたいのです。
  67. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 この弁論準備手続は公開ということを前提としておりませんので、裁判所におきましてどういう場所というふうに必ずしも決まっておるわけではございません。適切な部屋において行っておるというふうに承知しております。必ずしも一定の様式を備えたものには限られないということであります。
  68. 山田英介

    山田(英)委員 ということは、裁判官室、これはきっと狭いんだろうと思うんですね。そういうところで行う場合もあるという、当然答弁の中身を分析すればそういうことになる。そうすると、裁判官室のような狭い部屋もそれはあり得るという御答弁ですから、これは基本的には傍聴を許さない、相当と認めないということが裁判所の裁量でしばしぱ行われ得るということは、ただいまの複数の御答弁からも明らかでございます。  私は、先ほど、準備手続とはいえ、その後の裁判手続に大きな影響を及ぼすことがあり得るので、現行法では非公開としていたものを、制限つきながらも公開という規定を入れざるを得なかった、入れようとした。私は、むしろそのように立法者の意思を理解するわけでございまして、そういう立場に立ちますと、余りにもこれは、公正の担保、傍聴自由の確保という観点からすると問題があるのではないか。弁論準備手続といえども、実質的な審理というものはこの条文の規定を読んでもできることになっているわけで、それが、私が言うその後の裁判手続に大きな影響を及ぼす余地がかなり大きいんだというふうに理解をするわけでございますが、私は、時間が参りましたので、傍聴というのであれば、基本的にはやはり無条件な公開が原則ではないのか、たとえ弁論準備手続といえども、やはり公開が原則ではないのか、傍聴を制限するということは極めて例外的に規定をするべきではないのかという問題提起をさせていただきます。  したがいまして、結論として、弁論準備手続は、訴訟当事者のために、形骸化した現状の口頭弁論を活性化をし、十分な審理を尽くすための前提となる重要な手続でありますからして、少なくとも当事者が申し出た傍聴については、これを基本的に、原則的に傍聴を許すという規定にむしろ修正すべきじゃないかというぐらい大事な問題だということを、私の認識を申し上げまして、時間が参りましたので質問を終わらせていただきます。  以上です。
  69. 加藤卓二

    加藤委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ――――◇―――――     午後一時一分開議
  70. 加藤卓二

    加藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。佐々木秀典君。
  71. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 今回の改正案につきまして、大変熱心な討議が今日まで行われてまいりました。途中では参考人の方々にもおいでをいただいたり、また、私は参りませんでしたけれども理事を初めとする皆さん、名古屋までお出向きいただいて、公聴会も行われて、広く国民の皆さんからの御意見もお伺いしている。また、これをめぐって報道機関、マスコミなどからもさまざまな御意見が寄せられているということで、この七十年ぶりの民事訴訟法改正は今大変注目をされております。  国民の皆さん一般からは、民事訴訟法などというとなじみがない法律なわけですけれども、しかし、公務秘密文書、文書提出命令に関してということに集約されては、情報公開との絡みもあって、問題の所在がこれは国民の皆さんにも非常に集約された形で関心を持っていただくことになっているのではないかと思いますし、それだけに私どもとしても慎重の上にも慎重に、本当の意味での改正を期すことができるようにしたいものだと思っております。  しかし、きょうは、その部分は除く他の問題にということでございますので、それを意識して私としても質問をさせていただきたいと思います。  今回の改正の幾つかの柱の中で、やはりこの文書提出義務の拡張が、公務秘密文書とも絡んでですけれども一つの眼目になっているのは間違いありません。そして、現行法の三百十二条では、一号から三号まで、文書提出義務については限定的な規定の仕方をしている。  これについては、例えば水俣とかイタイイタイを初めとする公害訴訟、それからまた、最近のいわゆる薬害エイズの裁判を初めとするスモンとか森永の砒素ミルクとか大型の薬害訴訟、それからまた、これも種類はいろいろありますけれども、水害訴訟とか税金関係の訴訟というような行政訴訟など、こういう現代型の訴訟において、文書提出義務の範囲が非常に狭過ぎる、この種の訴訟における証拠の構造的な偏在、偏りだとか、あるいは実質的な武器の平等の原則ということにこの規定がもとっている、また真実発見という訴訟の要請にもそぐわないものになっているという批判がかねてから裁判当事者や学者の方々からあったわけであります。こういう批判に耳を傾けつつ、この法案の作成者は、三百十二条一号から三号までは残しつつ、さらに拡大しようという意図があるのだ、これがこの法案提出に当たっての法務大臣の御説明でもあったと思います。  これらのことについては、従来、裁判所においては、訴訟を通じながら三百十二条一号から三号の各文書の概念を解釈によって拡張するということで、先ほども申し述べましたような批判とかそれからまた要請にこたえようと努力をされてきたという経過があったと思います。  今回の改正は、この点にも考慮して、先ほど申し上げたように一号から三号までをそのまま残す、同時に、新たに四号を設けて、一定の、例外がない場合についての補充的な一般的提出義務を認めて、これによって対象となる文書の範囲を拡大したのだということが御説明でありました。しかし、これについては、特に四号のロが、公務員の職務上の秘密に関する文書について、その提出について監督官庁の承認を要するという規定を設けたことから、これが時代の要請に逆行するという批判が集中して、今その修正が求められているのが現状ではないかと思います。  この文書に関しては、いわゆる公務員秘密文書のほかに、実はもう一つ、文書の提出の例外として四号の二があります。四号の二では、「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」、これが例外として掲げられているわけでありまして、この文書は、従来いわゆる自己使用文書というように言われてきたものであろうと思われるのですけれども、自己使用文書の概念については、従来も、概念規定というか、概念があいまいなのではないかという御批判が学説からもあったと承知をしております。  そこで、ここで確かめておきたいのですけれども、私も、ちょっとこの文言からは、どういうものがこの文書に当たるのかということがぴんとこない。そこで、この文書の概念、それから、ここに掲げられる文書として具体的に考えられるものはこういうものだということ、これをお示しいただきたいと同時に、これについて例外的な扱いをすることの意味合い、理由、これをまずお示しいただければと思います。
  72. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」、自己使用文書というふうに略称しておりますが、これは読んで字のごとく、専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部の関係のない者に見せることを予定していない文書を指しているわけでございます。  まず、これを今回拡張する一般文書の範囲から除外することとしている理由でございますけれども、このように専ら内部者の利用に供する目的で外部者に見せることを予定していない文書につきましては、それが後で文書の所持者の意思に反して公表されるということになりますと、文書の所持者の不利益を受けるおそれが相当懸念されるという問題がございます。こういった文書にまで民 事訴訟に対する協力義務としての提出義務を一般に負わせるということにすることは、所持者の意思に反して適当ではないのではないか。こういう考え方から、これは一般義務化の場合の対象文書からは除外するのが相当であろうと判断されたわけでございます。  この基準があいまいではないかという御指摘がございましたけれども、文書の性質というものはまことに多種多様でございますので、これを一義的に、だれにも明確になるような基準というものを設けることは困難でございまして、結局、その趣旨に沿って、裁判所が個々具体的な事案に応じて、あらゆる事情を総合して判断されるということにゆだねざるを得ないことなのではないか。したがって、法律上の基準としてはこういう表現で規定させていただくほかはないのではないかというふうに思っているところでございます。  具体例としてということでございますが、一般的に申しますと、例えば、個人がつけておられる日記あるいは備忘録としてつけているメモといったものが考えられますし、また、企業等団体の内部における事務処理上の便宜のために作成されるいわゆる稟議書などがこの自己使用文書に該当することになるであろうというふうに考えております。
  73. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 今局長も言われたように、また私も指摘したように、この基準というか概念のあいまいさということが言われるわけですね。確かに、自己使用のためのというのは、今例示がありましたような日記、メモ、稟議書などというのは典型的なものだろうとは思うのですけれども、そのほかにも想定をされるのだろうと思いますけれども、ただ「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」というこれだけの表現では、どうも、その基準性がはっきりしてくるのだろうか。  仮に、こういう文書の存在があるということがわかっていて、それが訴訟当事者にとって欠くことができないということで提出を求めた場合に、果たしてこの条項に当たるかどうかということは最終的には裁判所判断することになるのだろうと思いますけれども、その判断の仕方というか、これについては、従来の裁判所の判例などの扱いと比べて、この規定を置くことによってどう違ってくるのか、その辺はどうなのでしょうか。
  74. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 これまでも、一号ないし三号の文書、特に三号文書に該当するかどうかという諸事情の一つとして、自己使用文書というものは一般的に除外されるという一つの事由になるということで、いろいろな裁判例において取り扱われてきていると思います。  これまで何度も申し上げておりますように、今回の改正によって従来の一号から三号までの解釈には何らの影響を及ぼすものではないというふうに考えておりますので、この点につきましても、一号から三号までの判断基準については、従来の考え方、これはさまざまな考え方がございますけれども、その延長線上で議論される問題であろうと思っております。もちろん、そこで議論されております自己使用文書についての解釈というものは、今回新たに新設されるこの規定解釈についても参酌されるという関係になるのではないかというふうに考えております。
  75. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 これから運用の面でどういうことになるのか。これが、今局長が言われたように、従来の、恐らく自己使用文書も三百十二条の三号文書の範疇の中に入るかどうかということでかつては考えられていたのかとは思うのですけれども、それと別個に設けたわけですね。それがそれだけの意味合いを持つようになるかどうか。これはやってみなければわからないのかもしれませんけれども、どうもその辺が、まだこれによっても概念があいまいである。その概念のあいまいさからすると、四号の一般的な文書の提出義務の範囲、これもまたあいまいなものになるのではないかという心配がないではないのですね。またそういう指摘もあるわけなのです。  これは運用にまっところもあると思いますけれども、私どもとしてはやはりこの点も意識をしておかなければならないと思っておりますが、まだ私自身も十分に研究を深めておりませんので、さらにこの辺はまた検討をしてみたいと思っております。  時間の関係もありますので、次の質問に移らせていただきましょう。  次は、今度の改正では、訴訟の事案の争点、それからそれに関する証拠の整理の手続、これを第三節で定めておりまして、ここに新たな規定が相当設けられております。これが一つの今度の改正の柱になっているという御説明でもあります。  そこで、この争点及び証拠の整理手続に関しての特に際立っている改正点、それから、その規定を設けあるいはそういう制度を新設することによって期待される効果、訴訟の促進ですとかあるいは実体的真実の発見だとか、そういう訴訟の目的との関係で期待される効果などについて御指摘をいただきたいと思います。
  76. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘のとおり、今回の改正一つの大きな柱が争点及び証拠の整理手続の整備ということでございます。  従来の審理あり方につきましては、これは運用上の問題でもあるわけでございますけれども、しかしながら、当事者主張が月に一回程度開かれる口頭弁論において準備書面の交換ということで行われる。したがって、当事者主張が出尽くして争点が明確になるまでに相当の時間を要してしまう。しかも、必ずしも争点がはっきりしない段階で証拠調べに入るということがややもすれば行われることになるため、せっかく行った証拠調べがむだになったり、また別の証拠調べをしなければならないという事態になったりというようなことが、訴訟に時間がかかり過ぎるという批判の一つの原因になっているという認識がございます。  そういう認識を踏まえて、訴訟あり方は、生ずもって、本件の本当の争点は何であるか、そのためにしなければならない証拠調べというものほどういうものであるかということをできるだけ早期に見定めて、そして、その上で集中した人証等の証拠調べを行う、こういうめり張りのきいた訴訟の運用をこれは手続面でもきちっとできるように整備をしたい、こういう観点から、争点整理手続について三つの種類の手続を用意することとしたものでございます。  一つは、口頭弁論の中で行う準備的口頭弁論、それから現行の準備手続を改善した形の弁論準備手続、加えて、当事者が遠隔の地にいるような場合に書面によって準備手続を進めるという書面準備手続、こういった三つの種類を設けて、それぞれの事案に応じてそのいずれかの手続を利用することができるということにしようとするものでございます。  この規定が整備されますれば、その適正な運用によりまして、あえて争点整理の必要がないような事件を除きまして、一般的に民事訴訟手続は、この争点整理手続を経て、しかる後に集中的な証拠調べを行う、そういう訴訟運営が定着するようにということを期待している次第でございます。これによって、まず第一に、審理の促進が図られるという効果を期待しておりますし、あわせて、争点が整理された上で証拠調べを集中的に行うことによって、事案の適正な解決ということにも資するものであろうというふうに考えております。
  77. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 これが運用される場合に、何といっても裁判所が主導的な役割を果たさなければならないということになるわけですが、今のお話に絡んで、具体的な点で裁判所にお尋ねをしたいと思います。  この第三節第二款、今お話に出た「弁論準備手続」の中で、百七十条の三項は、当事者が遠隔の地に居住しているときなどに、当事者意見を聞いた上で、「最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、」弁論準備手続を行うという規定が設けられておりますけれども、ここで言っている「音声の送受信により同時に通話をする」という方法ですね、こ れはどのようにして行うのか。また、どういう場所を考えておられるのか。実際にこれで円滑にできるのかどうか、その辺についてお答えをいただきたいと思います。
  78. 石垣君雄

    石垣最高裁判所長官代理者 今御指摘の音声による送受信装置といいますか、これは一般的には電話会議装置と言われているものでございまして、離れた場所にいる三者が電話を介して、あたかも同じ部屋で会話をするのと同様に意見交換などをすることができる装置、こう言われておりまして、この装置を裁判所に設置しておきますと、当事者の方は、一般の電話回線を通じて協議に参加することができることになります。  具体的に、裁判所の方は、これは弁論準備手続の一環でございますので弁論準備手続をする場所におりますが、当事者の方は、もちろん片方は必ず裁判所に出頭しているということがただし書きに書いてありますが、もう一方の方は事務所なりあるいは自宅なりで電話の応答ができる、こういうことになるわけでございます。  現在、この装置の利用方法につきましては日弁連とも協議をさせていただきまして、今使っておりますのは、期日の打ち合わせや和解条項案の調整などでございますが、改正法案におきましては、一定の場合に正式の期日を行うことができるということになりますので、その装置を利用して述べられた主張といいますのは、正式の期日で行われたのと同じ主張として取り上げられることができるということになります。  なお、改正法案では、書面による準備手続による争点整理においても、この電話会議装置を活用することが予定されておるわけでございます。そこで、こういう装置を利用して争点等の整理ができるようになりますと、従来、遠隔地に居住する当事者が準備書面を陳述するためだけに何度も裁判所に足を運ばなければならなかったという実情がございますが、これがどうも時間と費用がかかり過ぎるという批判を浴びておりましたけれど一も、この批判にこたえることができるものと期待をされるところでございます。
  79. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 時間の関係がありますので余り細かくお尋ねできないのですが、いずれにしても、本法だけではなかなか具体的なイメージがまだわいてきません。恐らくこの法改正が行われた後に、ここに書かれておりますように、裁判所規則でまた細かく決めていかなければならないのだろうと思いますね。お話がありましたように弁護士会とも協議の上でということでございました。何といっても、実務に携わる方々の御意見が私は非常に重要だと思いますので、十分に弁護士会とも御相談の上で適切な規則をつくっていただきますように、私の方からも要望しておきたいと思います。  最後の問題ですけれども、これも極めて限られておりますが、簡単にお聞きして簡単にお答えいただきたいと思います。  今度の改正が七十年ぶりの法改正とはいいながら、どうもあらゆる点について万全のというわけにはいかない、これは今度の証拠の問題でもそうですけれども。お聞きをしておりますと、例えば今度の改正の目的では、大臣お話しのように、裁判をわかりやすいものにする、それから迅速なものにする、それからまた国民の皆さんが気安く使えるようなものにするということは、一つは、費用などについても余り高いものにならないで気軽にという意味合いも込められているのだと思います。そういうことが絡みますと、例えば訴訟費用についてももっと低額化できないかとか、あるいは弁護士を頼む費用がなくても、弁護士の費用については勝敗の結果によって敗訴者に負担させるとか、これは現実には損害賠償請求などでは裁判所も考慮している点があるわけですけれども、そういうことについても検討されたと聞いたりしております。  それからまた、民事紛争もだんだん国際化してきているのは疑いありません。民事訴訟当事者に外国人だとか外国法人が登場するというようなことも次第に増加していく傾向にあるのではなかろうか。こういうことに対応するためにどうするかというようなことも法制審議会では若干議論されたようにも聞いておるのですけれども、いずれにしても、今度の改正ではこれらのことが盛り込まれておらない。これは今後の課題として積み残されているのかどうか、その辺の対応策などについてどんな審議があり、あるいは積み残しの課題として明記されているものがあるのか、その辺について簡単にお答えをいただきたいと思います。一々の中身については結構です。
  80. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 まず初めに申し上げておきたいと思いますが、七十年ぶりの改正ということでございますが、しかしながら、あらゆる問題について全部ここで一挙にということを考えますと、その審議は何年かかるかわからないという問題がございますので、今回の法制審議会の改正審議は、ともかく五年を目途にして、その間でできるものを実現しようということで進めてまいったわけでございます。したがいまして、多くの問題が議論されましたけれども、結局積み残しになったという問題がございます。  ただいま御指摘訴訟費用の問題、それから訴訟の国際化に伴う国際的な問題、例えば国際裁判管轄の問題、あるいは国際的な訴訟の競合が生じた場合の対応をどうするかといったような問題、これらについては、議論はされたわけでございますが、将来の検討課題ということになっているわけでございます。  訴訟費用の問題につきましては、法制審議会の今回の審議の経過をも踏まえまして、昨年の十二月に、これは官房司法法制調査部の所管でございますが、これに関する研究会を発足させて調査研究を行っているところでございますし、国際的な問題につきましては、現在、へーグの国際私法会議で、今申しましたような問題も取り扱う全世界的な条約のための作業が開始されたということを聞いておりますので、そういった問題を踏まえて検討するのが適当であろうというふうに考えられているところでございます。
  81. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 今お答えいただきましたように、確かに積み残しをされた問題、そしてまた今後取り組んでいかなければならない問題、やはりあるんですね。こういうことについては、例えば法制審議会の民事訴訟法部会その他の部会で今後の取り組み課題として、あるいは取り組む体制というのはもうつくられているのでしょうか。あるいは、これからそういう問題については取り組む体制をつくるということになるのでしょうか。その点だけお答えいただきたいと思います。
  82. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 また言いわけになりますけれども法制審議会として立法課題、大変たくさんございます。そういう状況でございますので、今直ちに法制審議会の審議が開始されるという状況にはなっておりません。そういう諸状況を見ながら基礎的な研究をし、それを踏まえてまた適切な時期に審議をお願いしたいというふうに考えているところであります。
  83. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 どこまで深く討議がされたかはともかくとして、あらゆる問題について一応協議の対象になったということはあるように承っておるわけですね。そこでの課題というのは出されているのだろうと思いますので、このことについては十分認識をされながら、やはりこれからその対応を考えていかれるように、もちろんいろんな課題がありますから法制審議会も大変だろうと思いますけれども、これはやはり速やかにそうした協議を始められるように、ぜひお願いしたいと思います。そのことを申し上げて質問を終わります。  ありがとうございました。
  84. 加藤卓二

    加藤委員長 枝野幸男君。
  85. 枝野幸男

    ○枝野委員 今回の民事訴訟法改正一つの目的は、長期化の問題が指摘されている裁判の迅速化にあるというふうに考えております。  その裁判の迅速化という意味では、実は一番大きいのは文書提出の問題だと思いますが、きょうはそれ以外のことでということでございますので、この文書提出命令部分以外に裁判の迅速化 を図る上で今回の改正のポイントになっている部分、ここのところがこうなっているから裁判の迅速化が図れるというふうに考えているという部分について法務省の御見解をもう一度お教えください。
  86. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 まず、迅速な裁判の実現という観点から一番大きな改正点は、争点及び証拠の整理手続の整備ということであると考えております。この点につきましては、ただいま佐々木委員の御質問にもお答えいたしましたとおり、それぞれの事案に応じた争点整理手続を選択することができるようにということで、準備的口頭弁論、弁論準備手続、書面による準備手続という三種類の手続を設けているところでございます。  それから、少額訴訟手続の創設ということがございます。これは三十万円以下の金銭支払い請求事件につきまして、原則として一回の期日で審理を遂げ、即日判決の言い渡しをする、そういう特別の簡易な手続を設けて、そういう事件についても市民が訴訟を利用しやすくするということと同時に、特別な迅速な解決を図ることに資するということを目的とするものでございます。  また、大規模訴訟に関する特則といたしまして、これは当事者が著しく多数であって、尋問すべき証人等が著しく多数であるという訴訟、これらはおのずから長期化するわけでございますが、これをできる限り効率的に証人尋問等を行うことができるように、合議体の裁判官の人数を五人とする、そして裁判所内で受命裁判官による証人尋問等をすることができるようにする、そういう改正を加えております。  そのほか細かい点では、訴訟の迅速化に資するという観点からの改正たくさんございますが、その若干のものを申し上げますと、送達の困難を解消するための送達場所等の届け出制度の創設、それから期日外の釈明、さらに主張や証拠を小刻みに提出するということをできるだけ避けるための適時提出主義の採用、それから督促手続においてコンピューターを利用した迅速、効率的な大量処理をすることができるようにするための手続規定を整備するということ、そういった点が代表的なものとして挙げることができると思っております。
  87. 枝野幸男

    ○枝野委員 今御指摘をいただいた点の中には、実は従来からも運用上行っていた、例えば争点整理などについてのある部分は、例えば弁論兼和解の場所を使ったりとか、場合によったら通常の弁論の形をとった上でもかなり、特に東京などでは試験的にという言い方がいいのかどうかわかりませんが、運用上なされてきた部分も少なくないと思っております。  非常に迅速化のポイント、たくさん御指摘をいただきましたので、逆の聞き方をした方がいいのかもしれませんが、そういった中で、従来の運用で試験的にやっていたものを明文化したものというのはどういったものであるのか。全く新しく今度の改正で、今まではどうしようもやりようがなかったことの部分と、そうではなくて、今までの運用でできていたけれども明文化するという部分、ちょっと整理できますでしょうか。
  88. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 制度ごとに区分してということで説明するのは大変難しい問題でございますから、例えば争点整理手続について申しますと、準備的口頭弁論、これは今回の改正におきますと、口頭弁論の中を一つの仕切りをして、その仕切りの範囲内において集中的に争点の整理をするということでございますが、もちろんそういうことは現行法のもとでも運用として可能であったということでございますけれども、今回、そういう手続一つのメニューとしてある。これを、そういう手続を行うという裁判をすることによって明確化して、その実効性を上げるということにしているわけでございまして、これは、そういう手当てをしたということは、新しい規定を設けたわけですが、運用でもできたものをより一般的に活用し得るようにということでの法律上の手当てをしているわけでございます。  それから和解兼弁論という御指摘ございましたけれども、そういう現行法のもとでの実務上の運用努力がされているということはもう前提とされているわけでございますが、あくまでも実務上の工夫でございますので、いろいろ、どういう手続でどういうことができるのかということが明確でない。したがって、裁判所としてやりたいと思うことも十分にできない、あるいは当事者の側からすれば、現行の制度ではやり過ぎではないかというような指摘もある。そういった点を踏まえて、制度として手続上これだけはできる、これ以上のことはできないという形で明確化するということによって、従前の運用でやっていたところの険路を解消する、こういう法律上の整備をさせていただいた。準備手続について申し上げればそういう改正であろう。細かく申し上げると長くなりますが、そういう改正であるというふうに認識しているところです。  もちろん、先ほど例として申し上げました大規模訴訟の特別の手当てとか、あるいは少額訴訟手続とか、さらには送達に関する改正点であるとか、それから督促手続のコンピューター利用の促進のための手当てであるとか、これらはいずれも法改正なくしてはできない事柄であるということでございます。
  89. 枝野幸男

    ○枝野委員 それ交実際に、そういったことによって、改正によってどれぐらい裁判の迅速化が図れるかというのが一つ問題だと思っておりますが、これは定量的になかなかお答えいただくのは難しいというのは十分わかっています。  例えば、これによって平均の訴訟の時間がどれぐらい短くなるのか、こういったことが言えないのは十分わかっております。ただ、私ども弁護士である立場から見ても、条文を見て説明を受けても、実際の運用どうなるんだろうという話がなかなかわかりにくいぐらいでございますので、それ以外の方にはなかなかわかりにくいだろうと思いますので、できるだけ具体的に、例えば争点整理という今回の規定のさまざまな改正によって、これをうまく使っていくと、例えば今までこういうふうにやっていたのがこういうふうに整理をされるから、今までこれぐらいかかっていたのがこれぐらいになることは十分可能だ、あるいは大規模訴訟の例外、今までこうやっていたのがこの規定をうまく使えばこういうふうにやれるからこうやって早くすることが可能ですといった、具体的なちょっと説明をいただけませんでしょうか。
  90. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘のとおり、数字で申し上げることは難しいことを御理解いただいているところでございます。  それから、今回の改正によって裁判の迅速化がどの程度実現されるかということは、これは裁判所それから当事者、特に当事者訴訟代理人である弁護士の方々がこの制度を正しく理解いただいて、この改正趣旨に沿った適切な訴訟運営がされるかどうかということにかかっているということであろうと思っております。  具体的にということでございますけれども、一番個別の問題として御理解いただきやすいのは、送達がなかなかできないということによって訴訟が始まらないというようなものについて、今回送達に関する規定を整備することによって早く訴訟を開始することができるという点は、これは顕著な例であろうというふうに思っております。  それから、争点整理手続の整備の効果でございますけれども、これは従来から御答弁申し上げておりますように、これまでの訴訟あり方というのが、実態としては一カ月に一回程度の弁論期日に準備書面のやりとりが行われるという運用が行われている実情にあった。そうしますと、当事者主張が出尽くす、あるいは争点がかみ合うというまでに相当期間がかかる。しかも、それが中途半端な状況で証拠調べがされるということになりますと、不必要な時間をかけて余り実効性のない証拠調べが行われた、また別の証拠調べをやり直さなければならないというような事態も間々あったのではないかというふうに思っております。  そういうことが今回の整備によって改善されて、およそ民事訴訟におきましては、特にそう いった必要のないような事件を除いては、原則として争点整理手続と整理された争点を踏まえての集中的な証拠調べ、これをきちっと区分して行われるということが定着すれば、数量的にというのは難しゅうございますけれども、かなり明確な形で迅速化の効用が生まれるのではないかというふうに思っております。  それから、大規模事件の合議体の員数を五人とするとして、受命裁判官による証人尋問等を実施することができるということにする効果というのは、これは現行制度のもとでは、合議体であれば、裁判所外で尋問する場合は別といたしまして、裁判所内で証人尋問、当事者尋問をする場合には必ず合議体でしなければならない。それが五人の裁判官で分担して行うことができるということになれば、この効果は極めて明確な形であらわれるのではないだろうかというふうに考えております。
  91. 枝野幸男

    ○枝野委員 今民事局長のお答えの最初にもありましたとおり、まさにこれ、裁判官の方あるいは弁護士当事者がいかに運用していくかということにかかっていると思います。しかも、若干この委員会でも出てきておりますように、裁判を受ける権利を害さないように気をつけなければならない、公開の原則を守るように気をつけながらなおかつ今の迅速化のための手段というのは可能な限りうまく使っていこうということでは、非常に難しい運用の仕方が出てくると思います。  そこでまず裁判所にお伺いをしたいと思うんですが、これを全国の裁判所裁判官に徹底をするというのは、率直に言ってなかなか難しいところがあるのではないか。例えば、先ほどお尋ねしましたとおり、今回の改正の中に入れ込まれていることの一部分は、従来も運用の努力によってやられてきた部分も、それを明文化してきた部分もある。ただ、運用の努力でされている部分というのも、例えば東京のような大規模庁とそうでないところとではかなり実態が違う。それは弁護士さんの協力その他の部分についても違いは原因として大きいんだろうと思いますが、やはり大規模庁とそうでないところとか、大都市と地方とかというところでそういった新しいやり方の工夫ということには現実に差があるかなというのは、私も短い弁護士経験の中で感じております。まして、この新しい法律に基づいて運用をしっかりやっていこうということについては、相当な周知徹底を行わないといけないだろうと思っています。  司法研修所で、五年目とか十年目とかだったと思いますが研修があるようですが、それだけでは足りないだろうし、これがもし成立をした場合、裁判官の皆さん、場合によっては書記官の皆さんなんかもそうだと思いますが、どういった形で、この法の趣旨それから国会審議などを踏まえた運用についての留意点、そういったものを徹底させるのか、その点のお考えをお聞かせください。
  92. 石垣君雄

    石垣最高裁判所長官代理者 ただいま委員の方から、この新しい法律ができました場合の趣旨の徹底あるいは周知の図り方について御指摘をいただきましたが、まさに非常に大事なことであり、身の引き締まる思いがしているところでございます。  私どもとしては、司法研修所におきます教育、これは、先ほど御指摘ありました恒常的な教育に加えまして、司法研修所に全国の裁判官を集めて新法の趣旨や新法下における運用についての研究会を開くことを一つ考えております。  また何よりも、裁判の現場であります各地の裁判所におきまして、裁判官や書記官が参加した研究会や協議会において新法の趣旨や新法下における運用等についての研究もしてもらいたいというふうに考えております。  さらに、新法の趣旨に沿った運用を確保するためには、何といいましても弁護士会の御協力が必要でございます。御案内のとおり、現在も全国のほとんどの地方裁判所において弁護士会との間で民事訴訟の運営改善に向けた協議の機会を持っているところでございますが、これが大変成果を上げているというふうに考えております。新法の成立後は、その施行に向けて、このような協議会の場で新法下における運用のあり方等の問題を取り上げて協議をしてもらいたいというふうに考えております。  その他、当然でございますが、最高裁として資料を刊行し配付するというようなことも検討をしていかなければならないと思っております。  以上でございます。
  93. 枝野幸男

    ○枝野委員 ぜひその点の徹底をお願い申し上げたいと思います。  これは通告しておりませんしお答えは結構なんですが、法務省最高裁双方にお願いをしたいんですが、例えば施行後一年とか三年とかというところで、その実施状況というかそういったものの、それは裁判所だけではなくて弁護士などを含めて、特に全国的な部分という意味で、実態調査といいますか実態把握の工夫をちょっと考えていただくといいのではないか。特に裁判所裁判官は独立して職務を行いますので、上からの指示でどうこうするという組織じゃありませんので、そうした中で、だからこそずれがあるとすれば把握をする必要も大きいだろう。これは裁判官の独立とかとの兼ね合いでやり方は非常に工夫をいただかなきゃいけないと思いますが、何らかのうまい形で全国的な実施状況、運用状況の把握をしながらフォローアップをしていく必要があるんじゃないかという御提言をさせていただきます。  それから、今裁判所の方から弁護士会との協力云々というお話をいただきましたので、これは同じことを法務省の方にも投げさせていただきたいんですが、ここも非常に難しいところがありまして、例えば地方で弁護士の数が少ないところですと弁護士会も小さくて、法曹三者の協議会というのは、弁護士全体に徹底するというのもある意味では非常にやりやすいのかなと。東京などですと、法曹三者の協議会で話をしたことがなかなか全体の弁護士に伝わるのが、数が多いということで弁護士会も非常に苦慮があるんだろうと思いながら、そしてなおかつ、法務省裁判所の立場としては弁護士会にどうこうしろと言える立場でないのもわかった上ででありますが、特に大きな弁護士会などとの関係で、現場の三者で協議をしてそれを弁護士会にうまく徹底をしてもらう、個々の弁護士に徹底をしてもらうというところでは、相当うまく話を進めなければならないだろうと思っています。  そういったことを含めて、弁護士会と例えば法務省というのは文書提出命令の話でも意見が分かれていろいろけんけんごうごうとやる部分もあるわけですが、こういった前向きの話でお互いに考え方の一致できる部分ではうまく協議をして、それで意見の違うところはぶつけ合うというのが大人の対応だと思いますので、そういった点を含めて弁護士さんにこの運用徹底をして、協力してもらえるところはしてもらうということについて法務省のお考えをお聞かせください。
  94. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 弁護士会との関係については、御指摘のとおり対立するところは議論を闘わし、協力するべきところは協力してやっていかなきゃならない、これからもそういう考え方で私どもの所掌の範囲においても対応してまいりたいというふうに思っております。  今回の法案を成立させていただきました場合には、御指摘のとおり、弁護士の皆さんに隅々までこの改正法の趣旨を理解していただくことが大変重要なことであるというふうに思っております。その広報活動は、直接には弁護士会の方に御尽力をいただくということであろうと思っておりますが、私どもとしても、その関係でどんな方法がいいかというような御意見も含めて、できるだけの協力をしてまいりたいというふうに考えております。     〔委員長退席、佐田委員長代理着席〕
  95. 枝野幸男

    ○枝野委員 ありがとうございます。  さて、民事訴訟法について直接かかわりはないのでございますが、非常に聞き方が難しいのですが、民事訴訟法と一緒に法制審議会で答申がほぼ同時に出ているはずの法律がなかなか出てきてお りません。これについては、各党いろいろな御意見があるのを理解しているつもりでありますし、それから、私自身は、法制審議会の見識その他についてはともかくとして、立法府からの立場としては、行政府の諮問機関であるということですので、法制審がどうこう言っているからといって我々がそれに縛られる立場でないことはむしろ強く言わなければならないというふうに思っておりますが、それはそうであるとしても、法制審で結論が、一応答申が出されてからもう既に三カ月、四カ月ぐらいになるのでしょうか、なかなか進んでいないというのは大変遺憾なことであるなというふうに思っております。  今国会の会期も残り少なくなっておりますが、今国会に提出をしたいという大臣の強い意思というのは既にこの委員会でも示されておりますが、残り少なくなっておりますが、最後までそういった方向で努力をしていただきたいと思っておりますが、まず、大臣の決意をお聞かせください。
  96. 長尾立子

    ○長尾国務大臣 民法の改正問題についてのお尋ねでございますが、選択的夫婦別氏制度の導入等を内容といたします民法改正につきまして、今国会に法律案を提出するため、関係各位の御理解を得るべく努力を続けてきたところでございます。  会期の点から厳しい状況にあるとは認識いたしておりますが、法務省といたしましては、なお関係各位の御理解を得て、民法及び戸籍法の一部を改正する法律案を今国会に提出したいと考えておりまして、そのための努力を続ける所存でございます。
  97. 枝野幸男

    ○枝野委員 通告がないのですが、時間があるので、お答えできる範囲で結構ですので民事局長、お答えいただければと思います。  これについてさまざまな議論がなされていて、いろいろなお立場がある。夫婦が同じ氏を名乗るという日本のそれを伝統という言葉をどう評価するかはいろいろありますが、ということについては積極的に評価をするという立場から、消極なお立場の方がたくさんいらっしゃることはそれはそれで十分理解しなければならないと思っておりますが、例えば、この夫婦選択別姓というものができそうだできそうだという期待をここ一年ぐらいの間ずっと持たされながら先送りになっているということが余り長く続きますと、私とは違う立場、つまり、夫婦選択別姓に消極のお立場の皆さんが心配している状況にむしろなるのじゃないか、つまり、事実婚が増加をするのではないか。  私自身も夫婦選択別姓を、今のところ特定の相手がいませんのであれなんですが、ある意味では、待っている立場としては、もし通らないのだったら事実婚だなというふうな考え方でありますし、私と同世代の同じような考え方の人たちと話をしていますと、そんなに国会がいつまでも決めないのだったら事実婚でも困らないからそれでいいよね、今さら戸籍がどうこう、婚姻届を出さなくてもいいよねというのは、むしろ夫婦選択別姓を待っている若い世代の、そして別姓にしたいと思っている人たちの多数の声であると私は理解をしています。  そうだとすると、戸籍制度の維持、私自身個人的にはそこについても若干意見はあるのですが、戸籍でできるだけ親族関係を把握するというような立場からすると、夫婦選択別姓が余りおくれるということは事実婚が増加をするという問題を牛んでくるのではないかというふうに思っているのですけれども、そういった点の御認識はいかがでございますか。
  98. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 選択的夫婦別姓導入の一つの動機といいますか、理由として、既にこれまでも氏を変えたくないということから、どうしてもしようがない事態に立ち至るまでともかく事実婚、まあ事実婚といっても対外的には全く通常の婚姻生活を送っておられる、ただ戸籍の届け出をしていないという方が次第に増加しつつある、これが一つ論拠になっているわけでございます。  確かに、御指摘のように、そういう事態が続くということになれば、それができるまでというようなことでそういう人々が増加するということの御懸念、まことにごもっともであろうというふうに思っております。  そういう点も踏まえまして、私どもなお努力を続けてまいりたいというふうに思っております。ただ、やはり関係各方面の御理解を得るということが何よりも必要でございますので、そのための努力をなお引き続き最大限続けてまいりたいと思っているところです。
  99. 枝野幸男

    ○枝野委員 私は、実は懸念を持っているのではなくて、むしろあおっていますので、みんないいじゃないかと、婚姻届を出さなくたって困らないよね、だから、別姓が余り遅くなるならみんな事実婚にいってしまおうと、むしろあおっておりますので、懸念ではないのです。  ただ、それは法務省の従来の立場からすれば問題だろうと思いますし、夫婦選択別姓に消極な立場の皆さんのある意味では価値観というものに立った場合でも、むしろこれがおくれることが、逆の方向に進むという御説明の仕方というのは、これは事実にも合致していると思いますので、ぜひそういった説明の仕方で御理解をいただくという努力をしていただきたいということと、これはお答えになれないかもしれませんが、法務省として政府提案にこだわる必要はないのではないか。  ある意味では、まさに、かなり個人の生き方にかかわる、価値観にかかわる問題でありますので、臓器移植などで党議拘束を外して云々という話が出されているのに近いという主張もあります。私自身は実はそうは思っていないのですが、政治に対するスタンスの違いでこれは判断が分かれると思っておるのですが、そういった見方もあるということを踏まえると、党議拘束を外す前提として、ある意味では政府提案ではなくしないといけないのかなという議論もあります。政府提案という形にこだわることをどの程度考えられているのか。  お答えを求めるとかえってこれは酷かもしれませんのでお答えは要りませんので、そういったことも含めて柔軟に考えていただきたいということをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  100. 佐田玄一郎

    ○佐田委員長代理 正森成二君。
  101. 正森成二

    ○正森委員 私は、これまで民事訴訟法で一番関心のありました文書提出命令を中心に質問させていただきました。まだ議論は尽きておりませんが、それ以外の幾つかの問題点についてきょうは質問をさせていただきます。  今度の民事訴訟法案の「第二編第一審の訴訟手続 第二章 口頭弁論及びその準備」というところがあります。それを見ますと、その中の第一節からいきたいと思いますが、第三節に最初飛ばさせていただきます。  第三節の百六十八条では「弁論準備手続に付することができる。」という規定がありますが、百六十九条の第二項では「裁判所は、相当と認める者の傍聴を許すことができる。ただし、当事者が申し出た者については、手続を行うのに支障を生ずるおそれがあると認める場合を除き、その傍聴を許さなければならない。」こうなっております。これは、傍聴が相当広い範囲でできるような印象も与えますが、原則的に憲法八十二条が裁判の公開を定めているという点から見ますと、憲法上非常に問題があるのではないかというように考えられます。  憲法八十二条は、もちろん「対審及び判決」についてはというようになっておりますが、この裁判の公開の規定は、別の条文によります刑事裁判と同様に、裁判当事者だけでなしに、裁判所も国民に広く公開されて、国民の監視監督のもとに正々堂々と行われるということを保障したものだと私どもは承知しております。  私自身弁護士で相当裁判をやってまいりましたが、公開の法廷で、傍聴人やあるいはマスコミも全部いる中で、原告、被告あるいは仮処分の場合、我々の場合は公開でしたが、申請人等の論述が行われるということが裁判の公正さを担保する上でも非常に意義があったというように思っておりますし、国民の司法に対する親近感あるいは司 法参加という意味でも大きな意味を持っていたと思います。この点について、こういうように制限をされた理由及びこれを改めるお気持ちがないかどうかを伺います。
  102. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 まず、憲法との関係について申し上げますれば、これは既に委員御案内のところの繰り返しになると思いますけれども、この弁論準備手続は、口頭弁論の準備のための争点と証拠の整理をする手続でございまして、本格的に審理を行う前段階としての準備手続にすぎません。したがって、憲法で公開を要するものとされております対審には該当しないものと考えておるところでございます。  現に、現行の準備手続につきましてもこの傍聴の規定はないわけでございますけれども、この規定憲法の関係で議論されているということは、私ども承知をしておらないところでございます。  ところで、今回の改正の最大の眼目として、迅速な裁判の実現ということがございます。そのためには、争点整理手続というものを充実して、原則として、民事裁判は争点整理を経て、その整理された争点について集中的に証拠調べを行うということが迅速化の第一の道であろうということから、事案の性質に応じて選択できる三種類の手続を設けたわけでございます。  したがいまして、事案の性質によって準備手続、争点整理手続を公開の法廷で行うのが適当であるというものについては、準備的口頭弁論という方法を使っていただく。しかしながら、事案によっては、争点を整理するという手続は、やはりひざを交えた場所で自由な意見交換を踏まえてやった方が適切であるという事案もあるわけでございまして、そういう事案については、傍聴自由ということではない手続も用意する必要があるのではないか、こういう考え方で弁論準備手続というものが設けられているわけでございます。  ただ、その手続の中でも、そういう事案の性質上、傍聴を部分的に許容しても差し支えないものについては、現行のように規定を置かないということではなくて、一定範囲で傍聴が可能であるということを明確にする方が適当であろうということで、今御指摘のような規定を用意しているわけでございます。
  103. 正森成二

    ○正森委員 第三節で規定されておりますように、今民事局長が言われた三つの種類の手続を決めておるということなんですが、例えば百七十条を見ますと、これは例えば二項等を見ますと、新設でありますが、「裁判所は、弁論準備手続の期日において、証拠の申出に関する裁判その他の口頭弁論の期日外においてすることができる裁判及び文書の証拠調べをすることができる。」というようになっております。これは今までにはなかった規定で、これは、事実上証人尋問以外大抵のことができる、文書の取り調べもできるということになっているわけで、従来からもこういうようになっていたというのとは相当大きな違いがあるというように言わなければならないと思います。  しかも、後で口頭弁論のところでもう一度述べるつもりですが、この準備手続、準備的口頭弁論とかに非常に大きい比重が置かれまして、例えば百七十四条、百六十七条等が準用されますが、攻撃または防御の方法を提出するという場合に、それに対して一定の制限を加えられるというようなことになるわけであります。私は、これは非常に問題ではなかろうかというように考えるわけであります。  それとの関係で、口頭弁論の本来的な問題との関係を申し上げたいと思いますが、例えば、口頭弁論というのが本来的な形ですが、ここでも相当新しい規定が盛り込まれておりまして、例えば百四十九条「裁判長は、口頭弁論の期日又は期日外において、訴訟関係を明瞭にするため、事実上及び法律上の事項に関し、当事者に対して問いを発し、又は立証を促すことができる。」これは現在の法律には期日外というのはございません。  したがって、これらを両方、釈明権と呼ばれておりますが、釈明権という名前のもとに、「事実上及び法律上の事項に関し、」つまり法律上だけでなしに事実上の問題についても当事者に対して問いを発して、したがってまた心証をとることができるということになるわけであります。  あるいは百五十一条を見ますと「釈明処分」というのが書いてありますが、この中でも新設の部分がありまして、第二号では「口頭弁論の期日において、当事者のため事務を処理し、又は補助する者で裁判所が相当と認めるものに陳述をさせること。」事実上心証をとることができるようになっております。  これは、我々が関係の弁護士等に調べたところでは、これが最も活用されるのは、例えば労働事件における労務担当の課長とかあるいは課員、あるいは公害裁判において公害関係のいろいろの技術的なことを知っている課長あるいは職員というようなものが一番これに該当するそうであります。そうすると、口頭弁論期日でもあるいはその準備手続でも、正規な証人調べではなしに裁判所が、釈明権を行使するとか、あるいは釈明権、釈明処分ということで、事実上心証をとることができるようになる、それが準備手続の方にもずっと広がっていくということを感じざるを得ないわけであります。  そこで、さらに伺いたいと思うのですが、百五十六条を見ていただきますと「攻撃防御方法の提出時期」で「攻撃又は防御の方法は、訴訟の進行状況に応じ適切な時期に提出しなければならない。」となっています。これは現行法では、「攻撃又ハ防禦ノ方法ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外口頭弁論ノ終結二至ル迄之ヲ提出スルコトヲ得」こうなっておりまして、証拠の随時提出主義をいわゆる証拠の適時提出主義に改めるものであります。  今まででも、余りにも攻撃防御方法が時機におくれて不当である場合、当事者が故意または重大な過失でおくれた場合には一審であっても裁判所はこれを却下することができることになっていたのは、百三十九条、御承知のとおりであります。それなのにこういう規定を置くというのは、一体どういうことだろうかという危惧が関係者から非常に出ているということを申し上げておきたいと思うのです。  例えば、これでおくれた場合には、今度の新しいのによりますと、裁判所はぎりぎり聞きませんが、当事者から、何でそんなにおくれたかその理由を言えということを問いただすことができるようになっております。条文は一々申しません。ところが、実際にあったことからいいますと、これは私のおります大阪の事件ですが、三洋電機のパート労働者が大量に解雇されました。大阪だけでも約千八百名、全国では三千名を超える労働者でしたが、会社側の言い分は、大阪でつくっていた輸出用テレビのラインは全部メキシコに移したので仕事がなくなった、だからあなたたちにやめてもらうのもやむを得ないのだということでありました。ところが、仮処分を申請して何年もたってから、これがうそであって、鳥取や三重や長野などの子会社、関連会社に対して仕事を移している。だからメキシコへ行ったなんていうのは真っ赤なうそであるということがわかりまして、これは結局、仮処分の異議の段階になってからこれらの事実が明らかになって、労働者側に有利な結論になったわけであります。  このケースについて見ますと、なぜ労働者側にそれがわかったかといえば、これはここで申し上げませんが、実は内部告発等を含む非常に微妙な問題からそういうことがわかった。そうしたら、なぜ裁判を起こしたときに出さなかったのだ、なぜ今になって出したのだというときに、実は内部告発でおたくの会社の何々部長さんが教えてくれたというようなことは絶対に言えないことなのですね。ところが、今度の法律では、会社側はそれこそまさに知りたいことだから、ぎりぎりとそういうことを聞いてくる。そして、裁判になってから何年もたっているのだから時機におくれた攻撃防御方法だ、相手方に重大な過失があるのだということで、裁判所はどう判断するかわかりません、時機におくれていないということで採用する かもしれませんが、相手方がそういうことで、つまり事実を隠していた強者がそういうことでこの規定を濫用する可能性は十分にあると言わなければなりません。私はこういう規定は非常に問題があると思いますが、いかがですか。簡単で結構です。
  104. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘の百五十六条の規定は、これまでいわゆる随時提出主義の規定があったことから、当事者としてはとかく弁論終結まで出せるのだという意識が強かったのではないか。しかしながら、当事者もやはり迅速な訴訟の進行に協力していただくという義務があるであろうということから、一般的な当事者あり方としては、口頭弁論終結まで随時ということではなくて適切な時期に出していただく、これがあるべき姿であろうということから、この規定を従来の規定から改めたわけでございます。  具体的な適用の場面につきましては、今委員指摘がございました次の条の、時機におくれて提出した防御方法の却下の規定の適用の問題になるという点については、これは変わりがないことでございまして、御指摘のような場合には、それがこの規定によって却下すべきものかしからざるべきものか、それは裁判所において適切に判断されるべき問題であろうというふうに考えております。
  105. 正森成二

    ○正森委員 抽象的な一般論としてはそれでも通るかもしれませんが、私が非常に問題だと思うのは、例えば百六十二条を見てください。「裁判長は、答弁書若しくは特定の事項に関する主張を記載した準備書面の提出又は特定の事項に関する証拠の申出をすべき期間を定めることができる。」となっています。これは現行法では、「裁判長ハ準備書面ヲ提出スヘキ期間ヲ定ムルコトヲ得」となっているだけであります、二百四十三条。今度はわざわざ「特定の事項に関する」「証拠の申出をすべき期間を定めることができる。」ということで、証拠の提出についていつまでに出さなければいけませんよということを決めることになっております。ところが、それが決められてしまってから、今言いましたような内部告発等でメキシコへ行っておるのが実は日本でうろうろと操業しておるということがわかることになったときに、少なくともこの条文からはなかなか救済されることが困難になる。少なくとも相手方は、一たん期間が決まってその間に出さなかったではないかということを言う可能性があります。これは非常に問題であるというように言わなければならないと思います。  時間がありませんので短い時間で問題点を幾つか指摘しなければならないので、次へ移りますが、今度は、民事訴訟法は書面を非常に重視しております。例えば二百五条を見てください。二百五条を見ますと「尋問に代わる書面の提出」という点がありまして、「裁判所は、相当と認める場合において、当事者異議がないときは、証人の尋問に代え、書面の提出をさせることができる。」云々、こうなっております。もちろん、私がこう聞きますと、濱崎民事局長は、「当事者異議がないとき」こうなっておりますから大丈夫でございますという答弁が目に見えるようなので、時間の節約から私があなたのかわりに答弁をしておきますが、しかし「当事者異議がないとき」ですが、相手方は当然こういう書面を準備するのですね。それで、証人尋問にかえて提出するということはあきらめるにしても、当事者の供述がありますから、これを証拠として提出しますと言えば、これは現行法であれ新しい民訴法であれ、証拠として自由に出せるというのは当然のことであるというように言わなければなりません。  そこで伺いますが、今度の改正によりますと、関係の法令改正が一緒についておりますが、その中で公証人法も改正をされることになっております。それの五十八条ノ二を見ますと、公証人の面前での宣誓供述書というのが新たにつけ加わることになっております。こういうものをなぜつけ加えたのですか。今までは公証人にはこういうことはなかったですね。普通は遺言書だとか供述調書だけでしたね。あるいは特殊な場合に確認をする、これは期日がいつだったかというようなことをやるために。それが今度は、一般的に供述書なんかについて公証人が認証する。これは明らかに、民事訴訟法においてそういう書面を出すことを当然に予想してこういうことを決めたのではないのですか、だから公証人法の改正が関係法令に入っているのでしょう。
  106. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘のとおり、宣誓供述書という制度を設けましたのは、民事裁判の場面において書証として提出される私署証書、その記載の正確を担保するためにこの制度を新設したわけでございます。これは、公証人制度というものが私的紛争の未然の防止ということを図る制度として位置づけられていることから、その公証人制度も、そういった将来の紛争に備えての書証としての私署証書の正確性の確保ということに資するのが適当であろうという考え方に立っているものでございます。
  107. 正森成二

    ○正森委員 公証人法の改正も今回の民事訴訟の書証提出を意識に置いたものであるということを民事局長が初めて公然と認めました。  しかし、今度の法律を見ますと、公証人の面前で宣誓をして署名する、間違えばたしか十万円以下の罰金か何かの罰則がついていることになっていますね。しかし、そんなことで真実が担保されるなんて思っていたら大間違いなのですよ。多くの公害裁判でもあるいは労働事件でも、裁判所で宣誓をして、そして偽証すれば罰則で厳重に処罰される。懲役刑を含むものであっても、公然とうそをつく証人というのは幾らでもいるのですよ。  最高裁行政局長、来ておられますか。事前にお話をしておきましたが、東京電力の思想信条による差別事件、これは五つの地方裁判所判決があり、いずれも東京電力は敗訴しました。そして東京電力は、ついに十九年ぶりに、いわゆる労働者側の全面的勝訴に近い和解で解決したことは、新聞で広く報道されたところであります。また、同じように関西電力や中部電力でも労働者側がいずれも勝訴しました。  この損害賠償請求事件判決というのが横浜地方裁判所の第七民事部で行われました。ここに判決の原本を持ってまいりましたが、膨大な事件で、こういうものが四冊あります。あらかじめ言っておきましたから、その中の第一分冊、これは裁判所判断が記載されているところですが、その裁判所判断の六十一ページには「被告会社の主張の特異性」というところがありますね。それから六十二ページには「第二 被告会社の立証の特異性」というのが数ページにわたって書かれております。これは間違いありませんか。
  108. 石垣君雄

    石垣最高裁判所長官代理者 委員指摘の箇所に御指摘のような記載があることは間違いございません。
  109. 正森成二

    ○正森委員 最高裁行政局長にその判決を読んでいただくのはやや失礼ですから、そこに民事局長がおられますから、誤りがないことを保証してくださるでしょうから、私が読み上げます。  この裁判所判決でこう言っております。会社に対して、  ところが、原告らの職務遂行能力及び勤務実績が劣悪であると主張しながら、その人事考課に関する資料は証拠として何も提出しない。事柄の性質上、そのすべてを証拠として提出することを期待するのは困難であるとしても、少なくとも原告らが被告会社主張の不都合行為をしたとの事実関係に関するものくらいは提出することができると思われるが、その資料すらもほとんど証拠として提出せず、被告会社の従業員又は元従業員の作成した膨大な陳述書とこれらの者の証言をもって立証しようとしている。 いいですか。会社がつくらせた陳述書で、会社に不都合な行為をした、だから差別するのは当たり前だということを立証しようとしている、こう言った後で、これら  職制でもあった者などが早いものでも本訴提起後約一〇年を経た昭和六一年に、遅いものは平成四年になってから、古いものは二〇年も前、 新しいものでも十余年も前の出来事を記憶に基づいて述べるものである。このような時期に作成された陳述書や本訴における証言がそれ以前に原告らについてなされた勤務評定の資料でないことは明らかである。のみならず、以下、第四で各原告ごとの職務遂行能力及び勤務実績についての被告会社の主張について判断する際にも述べることになるが、その内容は、不都合行為の日時、場所、行為の態様等が抽象的に過ぎるものであるか、他の従業員もしている程度の些細な事柄をことさらに悪く述べているものであるか、云々と書いて、中途省略しますが、陳述書は、その形式からも明らかなように、すべて本訴になってから被告会社の主導で作成され、陳述者が記載したのはその署名だけというものであり、その内容も、原告らの勤務態度をかなり悪し様に述べているが、反証のあげようのない抽象的な、いわば言いっ放しのものである。これらは、中には、陳述者が証人として出頭することを拒んだり、作成者を証人として取り調べてみると、反対尋問にあって、陳述書作成後間がないというのに、ほとんど陳述書に書いてあるとおりであると述べるだけで、その記載に関連する事実については忘れたとか知らないといった供述しかすることができず、ついには、当該原告は同僚とチームワークを保ちながら仲良く仕事をしていたといった陳述書の内容と全く相反する供述をしてしまうようなものもあり、こういうようなことで、非常にでたらめなものであるということを裁判所が言っているのです。  ですから、陳述書というのは、まさにこういう性格を持つ可能性が非常に厳しいわけであります。  あるいは別の事件で、申しませんが、ここに「格闘としての裁判」という本があります。その裁判を見ますと、芝信用金庫で、女性職員を含めて、寄ってたかって暴行を受けて、余りひどいから告訴したら、同僚を告訴したのはけしからぬといって首を切られた事件であります。  裁判所で宣誓をさせて、本人が、だれだれさんとだれだれさんが胸をつついたり、髪を引っ張ったり、ペンで突いたり、いろいろなことをやったと言っても、全部それを否定する陳述者が出てきました。そして、裁判官の面前で宣誓をして、全部そんなことはなかったと言ったのです。  ところが、民事訴訟法に対質質問の規定がありますが、対質質問をしたときに、その女性がひそかにスカートの下に小型のテープレコーダーを入れておって、それを命がけでスイッチを入れておったのですね。そうしたら、そこへ、目の前で、裁判官の前で偽証した連中がどなり上げたり、このやろうとかなんとか言っているのが全部入っておって、その女性が悲鳴を上げながら、だれだれさん、やめてください、やめてくださいと言うのも全部入っておる。裁判所の態度は一変して、厳しい追及が行われて、全面的な勝利になったのだ。  陳述書というのは大体そういう危険性を持っているのです。それを非常に重視して、そして反対尋問も何か全然行われない、公証人のところで宣誓をして、署名をしたからといって、それを証拠としてどんどん出していける、そして証人尋問をできるだけやらないでも済むようにしようなどというのは、強者のために有利な民事訴訟法改正であっても、弱者にとっては問題にならないものではないですか。
  110. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 ただいまいろいろ御指摘がございましたけれども、そういった極端な、供述調書あるいは陳述書といったものが悪用されるという事例は、必ずしも少なくないのではないかというふうに推測されます。そういった問題はあらゆる証拠について共通の問題でございますので、裁判官の適切な対応、よく言われる見破る目というものに期待されているのであろうというふうに思います。  今御指摘の宣誓供述書の問題にいたしましても、また二百五条の、取り調べに行かない場合の尋問にかえての書面の提出の問題にいたしましても、あるいは、さらに一般的に運用上行われております陳述書といったものにつきましても、これはそれぞれの事案に応じて、その信用力というものは、やはり諸般の証拠を総合して裁判官が最後に判断していただくということにゆだねられざるを得ないのではないか。やはり制度としては、いろいろな証拠調べの方法があるということを用意しながら、その中で裁判官の御判断にゆだねられざるを得ない問題なのではないかなというふうに思っておるところでございます。
  111. 正森成二

    ○正森委員 時間が参りましたのでそろそろ終わらせていただきますが、一点だけ確認しておきます。  現在の民事訴訟法では、二百九十六条で対質質問を行うことができるようになっております。また、三百三十七条にも同様の関連規定があります。この規定は、新しい民事訴訟法では引き継がれておりませんね。
  112. 柳田幸三

    ○柳田説明員 今回の改正法案には盛り込まれておりませんけれども、現在検討中の民事訴訟規則の中で規定されるということが検討されているところでございます。
  113. 正森成二

    ○正森委員 本法に規定されていないのは残念ですが、もし規則に規定されるならぜひ規定してほしいと思います。なぜなら、今私が言いました、もう判決になっております芝信金の問題でもこの対質の規定を使って、そして暴行を受けた女性従業員とそして暴行を行った当事者あるいは支店長が対質させられて、そこで真実が明らかになったという規定があります。  なお、上告制限の問題について質問する予定でございましたが、残念ながら時間が参りましたので、私の質問はこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。
  114. 佐田玄一郎

    ○佐田委員長代理 小森龍邦君。
  115. 小森龍邦

    ○小森委員 今回の民事訴訟法改正案にかかわりまして、手続の簡略化をすることによって速やかに訴訟結論を出せるようにというようなことも配慮してあるようでございますが、私はまず、裁判官のうち民事事件、あるいは行政事件も含めてでありますが、刑事事件以外の事件にかかわる裁判官が我が国の裁判官の総数のうちどれぐらいおられるか、ここをまずお尋ねしたいと思います。
  116. 石垣君雄

    石垣最高裁判所長官代理者 現在、平成八年で申し上げますと一裁判官の総数は二千八百七十九人でございますが、そのうち民事事件担当の裁判官ということになりますと、実は大規模庁におきましては民事事件のみを担当している裁判官もいるわけでございますが、御承知のとおり中小規模庁では、民事事件だけではなくて刑事事件や家事、少年など複数の事件を担当しているのが一般でございます。どの事件にどの程度の裁判官を担当させるかということは、各庁で事件数動向を見ながらいろんな要素を考慮して見直しをしながら配置をしているというようなことでございまして、なかなかある時点をとらえて民事事件を担当している裁判官の数を正確に出すということは困難でございますが、取り急ぎ、例えば東京地裁で伺いましたところ、民事担当裁判官は全体の約七割というふうに言っておるところでございます。
  117. 小森龍邦

    ○小森委員 以前もこの委員会で、外国の裁判官の数を我が国の裁判官の数に比較をして答弁があったような記憶もございますが、この際、少し面倒でも諸外国の実情をお知らせいただければ、かように思います。
  118. 永井紀昭

    ○永井政府委員 委員の御質問が民事担当裁判官ということでございますと、これは制度的にも私ども把握しておりませんが……(小森委員「全体でよろしいです」と呼ぶ)全体でございますと、例えばアメリカでございますと約三万人、それからイギリスでございますと約三千二百人、ドイツですと約一万七千九百人、それからフランスですと約四千六百人、それから韓国ですと千三百人ぐらい、こういうふうに聞いております。
  119. 小森龍邦

    ○小森委員 外国の事情をこうして聞かせていただきますと、総じて日本の裁判官の数は少ないようにお聞きします。したがって、さらにまた判断を私は進めていくためにお尋ねをいたしますが、民事事件に関して、判決もしくは和解によって事件の解決に至る平均的な所要日数といいますか、所要期間というものについてお知らせをいただきたいと思います。
  120. 石垣君雄

    石垣最高裁判所長官代理者 民事事件の最も典型的な第一審の裁判所でございます地方裁判所におきます民事訴訟事件及び行政訴訟事件について申し上げますと、民事行政合計での平均審理期間は掌握しておりませんが、平成六年の地方裁判所の第一審民事通常訴訟既済事件の平均審理期間ということで申し上げますと九・八カ月、それから平成六年度の地方裁判所の第一審行政訴訟既済事件の平均審理期間といいますと十九・七カ月となっております。とりあえずそこまででございます。
  121. 小森龍邦

    ○小森委員 国民の裁判を受ける権利というものについては、私の理解では、少なくとも公平にして迅速な裁判でなければ、幾ら寿命が長くなったといってもやはり限られた人生でありますから、物事の間に合わないというようなことも考えられます。したがって、この程度、つまり先ほどお話がございました程度の時間がかかるということは、果たして憲法が要請しておる裁判を受ける権利を有すということに関して、諸外国と比べて、まあこれは私はきょう具体的な数字をお願いを申し上げておりませんから数字まで必要ありませんけれども、日本は先進諸国に比べて見劣りがしておるのかどうか、この点はいかがでしょうか。     〔佐田委員長代理退席、委員長着席〕
  122. 永井紀昭

    ○永井政府委員 今手元に正確な資料は持っておりません。  ただいま最高裁判所の方から、日本の平均審理期間についてのお話がございました。平均審理期間そのものをとってみますと、諸外国に比べて決して、それほど引けをとらないと言われておりますが、ただ、いろいろ当事者が争いのある事件で複雑な事件になってきますと相当時間がかかる。さらに、一審だけじゃなくて控訴審に行きますとさらに日数がかかる。そういう面では、非常に長期化する事件が多いという、そういうようなことが言われております。  ただ、外国なんかでも、例えばアメリカですと、例えば陪審裁判ですとトライアルまでに相当、数年間待機させられるという、そういったケースもございまして、必ずしも諸外国と比較して日本が絶対的に遅いと言えるかどうかということは断定しがたいと思っております。ただ、非常に長期化する事件が多いということは言われているところでございます。
  123. 小森龍邦

    ○小森委員 そこで、さらにお尋ねをしますが、民事事件を担当なさる裁判官年間どれくらいの事件を担当しておられるのだろうか。これも数字要求しておりませんから、きめ細かく正確な答弁をお願いは申し上げません。この間、そういうことに関する解説をしておるNHKのラジオを私ちょっと聞いておりましたら、年間四百件ぐらいのように解説をしておりました。もしこれが私の聞き間違いでなかったら、それはもう大変なことで、果たして本当に民事事件に対する判断裁判官がすることができるのだろうか、こういうふうな気持ちにもなりました。  この民事事件について、一人の裁判官というものが年間どれくらいの事件処理されておるのだろうか、大ざっぱでよろしいですから、この点ひとつお答えいただきたいと思います。
  124. 石垣君雄

    石垣最高裁判所長官代理者 具体的に、それぞれの各裁判官が例えば民事事件をどの程度負担をしているかということになりますと、これは先ほど来申し上げておりますように、さまざまな種類の事件を同時並行的に抱えているということもございますので、なかなか難しいことでございます。私ども現場における裁判官経験からしますと、数百件という例はないわけではございません。例えば民事事件だけを担当しているという場合にはそういうことはないわけではございません。ただ、これが一体重いのか軽いのかということになりますと、これもなかなか一概に申し上げにくいところでございます。  ただ、いずれにしても、国民に信頼される司法を築いていくというためには、人の点も含めて、やはり遺漏のないように十分な手当てを考えていかなきゃいかぬというふうには思っております。いずれにしても、こういう事件動向等を見ながら充実強化を図っていきたいという気持ちには変わりございません。
  125. 小森龍邦

    ○小森委員 民事裁判で、判決に至るまでにしばしば和解を裁判官の方から、提案というのか指導というのか、そういうことが一節挟まることを経験をし、また聞かされてもおります。民事事件における判決に至るまでに和解というのは、これは邪推かもわかりませんけれども、物事、円満に片づければこの上もないということもありましょうが、判決に至るまでに相当の時間もかかるし、裁判官も足りないし、つい和解、こういうことが差し込まれているのではないかというふうにも私は思いますが、その点はいかがでしょうか。
  126. 石垣君雄

    石垣最高裁判所長官代理者 ただいま委員の方から、判決が大変なために和解へ傾斜しがちだという傾向がないのかどうかという御指摘であったと思います。  私ども現場で裁判をしております者の経験から申し上げますと、決して強引に和解を勧めて、判決が嫌だから和解に持ち込むという感じではございませんで、当事者双方がやはり和解を望むという事件が相当あるわけでございますので、これはまさに当事者のニーズに応じた解決というふうに考えているところでございます。世界的に見ましても、最近は和解解決という方向へかなり各国の裁判所が力を入れているということも漏れ伺って一おるところでございます。
  127. 小森龍邦

    ○小森委員 そこで、今回の民事訴訟法改正案を提出された法務省側にお尋ねをいたしますが、この法務委員会における審議におきまして、訴訟手続を十分に承知されております弁護士出身の委員から、さまざま、細々と質問をされてまいりました。  そこで、要するに訴訟手続の簡略化とかスピード化とか、例えば少額訴訟については即日判決というようなこともこの法律の中で規定をされておるようでありますが、問題は、裁判というのは、いかにして実体的真理に到達するかということが、これはもう一番大きな問題であります。したがって、その実体的真理に到達するということについて、裁判官の人数が足りないということを考慮して、簡略な判決へのコースを開いたのではないか、こんなことを思いますが、この裁判というのは、どこまでも実体的真理に到達するということが第一義的であって、そのために多少の金がかかるとか人が要るとかということは、これは近代合理社会としてはそこを素通りしてはならないことだと思います。そういった私の心配については、法務省はどう思われますか、民事局長
  128. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 裁判官の員数がどの程度が適正であるかということについてはさまざまな御意見があるということを私ども承知しておるところでございますが、今回の改正の主要な目的が、裁判の迅速処理ということにあるということでございます。しかしながら、この裁判の迅速処理ということと訴訟事件について一件一件を慎重に処理するということとの間には、やはり一定の拮抗関係があるという関係にあることは否定できないと思います。  しかしながら、今回の改正審議におきましては、今委員指摘弁護士界からの選出の委員も含めまして、そういった迅速処理と一件一件慎重な処理、さらには実体的真実の追求という観点からの兼ね合いというものを十分考慮して審議が太れ、結論を得たものというふうに思っております。
  129. 小森龍邦

    ○小森委員 時間が来ておるようでありますが、答弁は要りません。  最後にもう一回だけ私の見解を申し上げておきますけれども裁判官が書類を自宅に持ち帰って処理しなければならぬということは往々にして聞いております。したがって、やはりこれは、足りないということはもう事実ではなかろうか。すると、その辺は行政的に配慮して、裁判所も努力をされて、本当に国民のニーズにこたえるような、公平な審理ができるような、真実に迫るような体制の確立ということが必要であろう、このことを申し上げておきます。  それから、私とすれば、恐らくこれは皆さん方のいろいろな配慮によりまして、小会派であるにもかかわらず、数回にわたって発言を許していただきまして感謝をいたしておりますので、例の二百二十条の四号のことについて一言だけ触れておきます。  これは、やはり行政事件などのことを考えると、個人と国とが利害衝突ということもあるわけでありまして、これは、民主主義社会においては国も個人も対等なのであります。その対等な一方の方が、要するに資料を出すとか出さぬとかという権利を持つということは、これは非常に民主主義に対して挑戦するものだ、こういう考え方を持ちますので、あの条項を、じゃ全部削ったらよいかということもありますが、それはいろいろ苦労して、なるべく証拠をたくさん出すようにという配慮もあったのでしょうから、削るというようなことでなくて、さらに裁判官が本当に秘密かどうかということを判断できるような内容を入れるということが一番適当であろう。各党いろいろ考えておられるし、また折衝もされておるようでありますが、私などのような小会派はなかなかまたそういう話に入れませんので、私の見解としてそういうことを申し上げて、終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  130. 加藤卓二

    加藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時五十分散会