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1996-05-24 第136回国会 衆議院 法務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年五月二十四日(金曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 加藤 卓二君    理事 太田 誠一君 理事 佐田玄一郎君    理事 志賀  節君 理事 山田 英介君    理事 山田 正彦君 理事 山本  拓君    理事 細川 律夫君 理事 枝野 幸男君       塩川正十郎君    白川 勝彦君       橘 康太郎君    萩山 教嚴君       古屋 圭司君    横内 正明君       江田 五月君    加藤 六月君       貝沼 次郎君    左藤  恵君       山口那津男君    佐々木秀典君       坂上 富男君    正森 成二君       小森 龍邦君  出席国務大臣         法 務 大 臣 長尾 立子君  出席政府委員         法務政務次官  河村 建夫君         法務大臣官房長 頃安 健司君         法務大臣官房審         議官      山崎  潮君         法務省民事局長 濱崎 恭生君         法務省刑事局長 原田 明夫君  委員外出席者         総務庁長官官房         地域改善対策室         長       川邊  新君         最高裁判所事務         総局総務局長  涌井 紀夫君         最高裁判所事務         総局民事局長  石垣 君雄君         法務委員会調査         室長      河田 勝夫君     ————————————— 委員の異動 五月二十四日  辞任         補欠選任   阿部 昭吾君     江田 五月君   熊谷  弘君     山口那津男君 同日  辞任         補欠選任   江田 五月君     阿部 昭吾君   山口那津男君     熊谷  弘君     ————————————— 五月二十二日  外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出第七八号)(参議院送付) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  民事訴訟法案内閣提出第八四号)  民事訴訟法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案内閣提出第九三号)  派遣委員からの報告聴取      ————◇—————
  2. 加藤卓二

    加藤委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所涌井総務局長石垣民事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 加藤卓二

    加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ————◇—————
  4. 加藤卓二

    加藤委員長 内閣提出民事訴訟法案及び民事訴訟法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。  この際、去る二十二日、両案審査のため愛知県に委員を派遣いたしましたので、派遣委員からの報告を便宜私からいたします。  派遣委員は、団長として私、加藤卓二と、太田誠一君、佐田玄一郎君、志賀節君、山田英介君、山田正彦君、山本拓君、細川律夫君、枝野幸男君、正森成二君の十名でありました。  なお、現地において、佐藤泰介議員が参加されました。  現地における会議は、ホテルナゴヤキャッスルにおいて開催し、まず、私から、派遣委員及び意見陳述者の紹介並びに議事順序等を含めてあいさつを行った後、意見陳述者より意見を聴取し、これに対し各委員から熱心な質疑が行われました。  意見陳述者は、中日新聞論説委員前田弘司君、名城大学法学部教授松浦馨君、毎日新聞中部本社編集局編集委員溝口節二君、弁護士森山文昭君の四名でありました。  以下、その意見陳述内容につきまして、簡単に申し上げます。  前田君からは、ジャーナリストの立場から、公務秘密文書について、インカメラ手続からも除外し、秘密判断を全面的に官庁側にゆだねてしまうのは問題であり、提出拒否の要件を厳格に絞り込んだ上、拒否が正当か否かを裁判所判断できるように修正してほしい等の意見が述べられました。  松浦君からは、法制審議会民事訴訟法部会委員立場から、時宜を得た望ましい案であり、成立を強く希望する旨、文書提出義務範囲が狭まることはなく、現行法の体系内で許される進歩的な法案である旨、及び行政情報公開との関係では、行政改革委員会結論等を得て再検討することが適当である等の意見が述べられました。  溝口君からは、第一線で取材活動を経験した立場から、公務秘密文書提出拒否に関し裁判所判断が及ばないことについて修正が必要であり、官公庁のみの判断文書提出、非提出を決めることには強い疑問がある旨、及び行政情報国民共有の財産である等の意見が述べられました。  森山君からは、弁護士立場から、公務秘密文書について、その提出に関する承認拒絶範囲が著しく広く、インカメラ審理の対象から除外され、現状より後退するのではないかと危惧し反対する旨、及び行政情報国民に広く開示されるべきものである等の意見が述べられました。  以上のような意見陳述が行われた後、各委員から、公務秘密文書秘密該当性判断権者、これを行政官庁にゆだねることの妥当性現行法第三百十二条第三号に関するこれまでの判例の及ぶ範囲裁判所における法令解釈立法者意思関係、及び情報公開法に対する影響の懸念等について熱心に質疑が行われました。  以上が会議の概要でありますが、議事内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。  なお、今回の会議の開催につきましては、地元の関係者を初め多数の方々に多大の御協力をいただきました。ここに深く感謝の意を表し、報告を終わります。  お諮りいたします。  ただいま報告いたしました現地における会議記録ができ次第、本日の会議録に参照掲載することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 加藤卓二

    加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔会議記録は本号(その二)に掲載〕     —————————————
  6. 加藤卓二

    加藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。江田五月君。
  7. 江田五月

    江田委員 おはようございます。  私は、実は本来この法務委員会オリジナルメンバーというわけじゃないのですが、きょうは最初の質問者として三十分時間をちょうだいしまして、委員皆さんの御配慮に心から感謝をいたします。  裁判官出身国会議員というわけで、今度の民事訴訟法改正、ここまで関係皆さんが大変御努力をしてこられたということに深く敬意を表しますし、また、本当に片仮名でわかりにくい民事訴訟法がいよいよやっと平仮名になるかという、そんな思いもあって大変感無量でございまして、強い関心も持って今日まで質疑を注目をしてまいりました。  そこで、しかし、幾つかやはりどうしても疑問に思うこと、改めなきゃならぬのじゃないかと思うこと、そんなこともございますのでぜひ聞きたいのですが、法務大臣法律の細かなことを別に聞くわけじゃありませんので、ひとつ法務大臣の広い、高い見識からお答えをいただければと思います。  私は裁判官になったのが一九六八年でして、あそこに最高裁石垣民事局長もいらっしゃいますが、同期でして、当時やはりいろいろな思いを持って裁判所に入った。濱崎民事局長はもう尊敬すべき先輩、山崎君はまさに畏友といいますか、恐るべき後輩というようなことで、みんな仲間みたいなものでして、当時の民事裁判というのは、どういいますか、裁判官というのはポーカーフェースでじっと座っているんだ、目の前で原告、被告、当事者がいろいろやり合って、最後にそれじゃというんで裁判所が出ていって一言言う、判決主文口頭弁論なんていったって、準備書面を出して書面のとおり陳述ですねと言って、それじゃ次回というのでわずか三分か五分で、しかも、次の口頭弁論期日は一カ月も先とか、証人尋問となると三カ月も先とか、これで一体国民期待にこたえられるのかという、そんな思いを持ちながら、そんなんじゃだめだ、やはり時代が大きく変わっているのだから、もっと民事裁判というものも変えていかなきゃならぬ。  処分権主義といいまして、訴えがなければ裁判はないんだという、そういう意味では裁判というのは消極的なんですけれどもね。しかし、訴えが出てくる、当事者がそれに応訴をする。そうなった以上は、やはり裁判所は積極的に事案の解決のためにもっと当事者主張立証を促したり、あるいは、これは本当はこんなところが問題じゃないかというところは、そういうところにもひとつ訴訟活動を行うよう促していったり、あるいは解決をするためにこれは新たな解決方法が要るんじゃないかと。  例えばスモンでしたか、今最高裁裁判官ですか、可部裁判長が、新しい時代の新しい紛争には新しい解決方法が要るんだ、こう言って、本当に大がかりな和解の枠組みをお出しになってあのスモンというものを解決をしたとか、いろいろなそういう民事裁判のこれまでの苦労があるわけで、その中で言えば私は、これは言葉が適切かどうかわからないけれども司法消極主義司法積極主義、そういう言葉で言えば、やはり民事裁判をやる当事者、これは裁判官もあるいは弁護士皆さんも、司法というものを上手に動かしてもっと本当に積極的に司法紛争解決していこうという、そういう努力をいろいろ積み重ねて、そして今日のこの改正になっている。  今日の改正は、単に片仮名平仮名に直すだけではなくて、やはりそこにいろいろなそういう思想といいますか、哲学といいますか、裁判に臨む姿勢というものが随所にあるのですね。私は、この際法務大臣に、そういう司法が新しい時代国民期待にこたえるように、むしろ積極的に紛争解決のために汗を流そうという姿勢がこの底に流れているのだ、これをぜひ確認をしていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  8. 長尾立子

    長尾国務大臣 温かいお言葉をいただきまして、ありがとうございます。  委員から御指摘をいただいておりますように、現在の民事訴訟全般におきましては、裁判に大変時間がかかり過ぎるといった問題点指摘国民皆様から多く寄せられているところでございます。このような問題点解決をいたしまして、より適正でかつ迅速な裁判を実現をいたしますためには、訴訟進行当事者に任せきりにするのではなくて、今委員から御指摘をいただきましたように、当事者が適切な時期に適切な主張立証をするように裁判所訴訟運営する必要があるということであると思います。そのためには、適切な訴訟運営ができるような法律上の手当てを講じる必要があると思っております。  このような考え方から、本法律案におきましては、争点及び証拠整理手続整備を初めといたしまして、さまざまな措置を講じているところでございまして、裁判所によります適切な訴訟運営が可能になるというふうに考えているところでございます。
  9. 江田五月

    江田委員 まさにそのとおりだと思うのです。今大臣は、一つ訴訟進行という言葉をお使いになって、もう一つ訴訟運営という言葉を使われた。ここは実は若干違いがありまして、進行というのは期日をどういうふうに入れていくか、運営というのはもうちょっと多分広い。  そこで今、当事者主張整理であるとかあるいは証拠の収集であるとか、そういうことについても言及されました。全体に、先ほど私は処分権主義ということを言いましたが、これは訴えられなければ裁判なし、そのほかにもう一つ弁論主義というものがありまして、当事者主張してくるもの、当事者が出してくる証拠、そういうことに基づいてやるんだ。そこについても、当事者任せにするのではなくて裁判所がいろいろやっていこう、本当に適切な紛争解決のために一定リーダーシップを果たすんだということですね。それと進行、これは裁判所はもともと職権進行主義で、裁判所進行を決めていくということなんです。  そういう意味で、司法というのはもともとは消極的なものですけれども、しかし、時代の動きに合わせて紛争解決のために司法裁判所当事者協力を得ながらリーダーシップを果たしていこう、そういう積極的姿勢というものが考え方哲学として根底にあるんだ。これは民事局長いかがですか。
  10. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 委員指摘のとおりであるというふうに思っております。
  11. 江田五月

    江田委員 そこで、全体としてそういう大きな流れがある中で、もうずばっと飛んでしまいますけれども文書提出関係の今回の改正は、どうも全体のそういう、司法積極的役割期待し、それを果たすことができるようにしようという考え方、その哲学、理念からすると、そこの部分だけすぽっと違う考え方がやはり入ってきているのじゃないか。  確かに、一号から三号までに加えて四号で一般義務化をした、それは一つの前進と言えるでしょうが、一般義務化をして、そして文書についても、広く当事者裁判所に書証を集めていこうということに、法としても、裁判所としても協力をしよう、そういう役割を果たそうと言いながら、公務秘密文書というのですか、公文書で、しかもそれは秘密なんだということを文書を持っている役所の側が言いさえすれば、その秘密性とかあるいは承諾をしないということについての合理性とか、そういうものは裁判所は一切判断できない。その考え方が、司法役割を果たそうという流れと全体に違うのじゃないですか。法務大臣、そこはどう思われますか。
  12. 長尾立子

    長尾国務大臣 今委員からも御指摘がございましたけれども、私どもは、今回の法律の中で文書提出命令につきましても範囲拡大をさせていただいたということでございます。この範囲拡大をいたします際にとるべき考え方として、現行の各法律におきまして公文書に関して取り扱われております一つあり方、例えば議院証言法等でございますが、こういったものを踏襲させていただいたという点があるわけでございます。  この点につきましては、本委員会でも何回も御答弁をさせていただいているわけでございますが、行政情報をどのようなルールでどういったやり方で公開をしていくのか、こういう観点につきましては、現在広いお立場議論がされているわけでございます。その中で一定方向が示されましたならば、私どもとしては、その趣旨を十分に踏まえまして所要の検討をさせていただきたい、このように考えているところでございます。
  13. 江田五月

    江田委員 私の質問の仕方が悪いのか、質問に対するお答えにちょっとなっていないところがあるような気がするのです。つまり、今踏襲という言葉を使われましたけれども、その他の点では踏襲じゃないのですよ。  今までの民事訴訟法考え方、例えば当事者双方裁判所に来ない、あるいは原告は来たけれども何もせずに退廷する、そうするとこれは休止という手続にするのですが、休止をして、幾らですか、三カ月でしたか、満了になって訴えは取り下げとみなされる。しかし、三カ月が二カ月二十日ぐらいたって期日指定の申し立てが来ると、そうすると、大体今まではまた期日を指定して、それで弁論が開かれる、当事者が来ない、また休止、また二カ月幾らかたって期日指定などというのを続けたりしていたのですよ。しかし、それはやはり違うというので、今回は当事者が来なければ休止で、休止満了は二週間でしたか、ちょっと幾らでしたか。
  14. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 今回は一カ月に改めることにしております。
  15. 江田五月

    江田委員 失礼しました。一カ月。いや、どうも一夜漬けというのはあるのですが、きのうの夜余り時間がなくて、きょうは急に来ているので、細かなことをちょっと点検しておりませんが、一カ月。三カ月を一カ月に縮める、そういう改正になっているわけです。  あるいは釈明といいまして、裁判所の方から当事者に、この点はどうですか、あの点はどうですかと、発言、主張提出を促す、こんなことも随分以前とは違って積極的にいろいろなことができるようになっているわけです。  争点整理手続をこれだけ整備をされる。これもなかなか大変なことで、本当に当事者がこの争点整理手続豊富化に十分対応して訴訟活動を積極的にやっていただけるかどうか、私は若干心配をしておりますが、それでも裁判所がその気になって、弁護士皆さん方もこれにこたえてということになれば、こういう多様な争点整理手続のメニュー、これが生かされれば、随分今までと民事裁判の様相は変わってくるだろうと思うのですが、それだけこの民事訴訟というものについての考え方を変えて、いろいろなところを従来とは踏み出して改正をされておるのに、なぜ一体この文書のこと、しかも公文書の点についてだけ踏襲という考え方でいかれるのか、踏襲でいいのか。ほかの点では踏襲じゃない、改革をしようというのに、なぜその点だけが踏襲になるのか。これはいかがなんですか。そこを聞いたのです。
  16. 長尾立子

    長尾国務大臣 お答えをさせていただきます。  今、委員からお話ございましたように、民事訴訟の中におきましては、いろいろな意味の工夫をさせていただいて、先生のお言葉でございますと、積極的な訴訟運営ということに努力をさせていただきたい、こういう趣旨であるわけでございますが、民事訴訟分野のことの部分につきまして、積極的ないろいろな仕組みの取り入れをさせていただいたということと今、文書提出命令につきましてこのような規定をさせていただいたということとは、若干その趣旨を異にする面があるということは御了解をいただきたいと思います。  それは、先ほども申し上げましたように、官公庁が持っておりますいわゆる行政情報、こういったものを訴訟の場におきましてどのような形で提示していただくかということについては、これはもう先生も御承知のように、刑事訴訟法等においても規定があるわけでございます。こういった意味では、一般的にこういった行政情報をどういうふうに取り扱うということがそれぞれの立場の中で最も適正であるのかということについての議論を、今まさにしていただいているという状況の中でございますので、そのような状況の中で私どもとして法案提出させていただいた、こういう事情はお酌み取りをいただきたいと思っております。
  17. 江田五月

    江田委員 今、大臣の方から、行政情報公開ということについての言及がございました。  一言聞いておきたいのですが、行政情報公開、私は、これは今、時の流れだと思います。大きな時代の趨勢だと思いますけれども大臣御自身は、行政情報というものはもっと公開されるべきだというふうにお考えですか、それとも別のお考えをお持ちですか。
  18. 長尾立子

    長尾国務大臣 現在の流れの中で、行政情報をもっと公開をしていくべきであるという方向自体について、私は何ら異議があるものではございません。  しかしながら、行政が持っております情報は極めて広く、多岐にわたっております。このものの中には、やはり行政として、国の行政を預かる立場から一定範囲公開ができがたいということを申し上げざるを得ない部分もあることも事実であろうと思います。そういったものを、皆様方納得のいく範囲で、どの範囲にそれをとどめるのかということにつきましては、さまざまな観点から広い御議論がされるべきものであるというふうに考えております。
  19. 江田五月

    江田委員 もちろん、議論の最中ですから、いろいろな広い角度からの議論をするのは当たり前で、しかし、今までの行政情報公開についての我が国あり方、これでは新しい時代にそぐわない。もっと行政情報というものが国民に開かれたものになる、その意味で透明な社会に我が国がなっていく、これが必要だということについては、これは基本的にですよ、それは大臣、そういうお考えだと伺ってよろしいわけですね。
  20. 長尾立子

    長尾国務大臣 そのように考えております。
  21. 江田五月

    江田委員 そこで、ですから、今、時代流れというのは、やはり情報公開公文書というものもなるべく、もちろんいろいろな限定はあるでしょう、それは手続もあるでしょう。しかし、なるべく国民に、国民共有情報にしていこうという流れがある。その大きな時代流れについて、今回のこの証拠法についての改正プラスになるのかマイナスになるのか、どっちの方向へ働くのか、それとも中立なのか。そのことについては、これはいかがですか。
  22. 長尾立子

    長尾国務大臣 先ほど御答弁を申し上げましたように、私ども中立立場というふうに考えております。
  23. 江田五月

    江田委員 ですから問題だと思うのですね。つまり、こういうことなんですよ。今までの行政文書公開についての制度なり考え方なり、これではもういけないんだ、ですから行政情報あり方というのを変えていこう、もっと公開方向に動かしていこうというのが、今の時代流れなんです。今までの情報管理の仕方ではだめなので変えていこう。変えていこうという大きな流れがあるときに、今までの情報管理の仕方そのままで、プラスでもマイナスでもないものを、ぼんと持ってきたらどういうことになるか。  石というのが、それはじっととまっていますね。しかし、やはり流れの中に石をどんと置くと、それは妨害することになるのです、流れを。高速道路で、八十キロでみんな走っているときに、いや、私、前へ進んでいるんですとは言いながら四十キロで走られると、これはやはり渋滞の原因になるのですよ。そうじゃありませんか、時代が今大きく動いているので。  そうしますと、その時代流れに、八十キロで同じように走れとは言わなくても、せめて六十キロぐらいでは走ってもらわないと、それは四十キロで走る車が来たら困るわけですよね。それで、しかも、いや、私たちも前へ進んでいますと言われたのでは、やはりこれはブーイングが起きるのも当たり前だ、ブーイングぐらいじゃないという意見もありますがね、そうじゃありませんか。  いや、本当に、これはやはり今の時代流れの中でせっかく変えようというなら、その流れのせめて邪魔にならない、できればその流れ方向に沿うものですよという、そのぐらいのものでなければいけないので、中立立場というのが実は今多くのところから批判をされているんだと思いますが、こういう点について大臣、率直な御感想で結構ですよ、きょう細かなことまで詰めているわけではないですから。お考えいかがですか。
  24. 長尾立子

    長尾国務大臣 先ほど来お答えをさせていただいておりますが、現在、行政情報公開について議論がされております中で、民事訴訟手続の場面において、現段階で何らかの結論を出していくということは困難であるということを申し上げているわけでございます。  先生の今の例えでございますと、高速道路で今後どのスピードで走っていくのかということにおいて議論をされている。その議論の中には八十キロ、百キロという議論もあるかと思いますが、私どもとしては、現在各法制で定められております四十キロなら四十キロという線を、やはり民事訴訟という分野では守らせていただくということでございます。
  25. 江田五月

    江田委員 やはり、これからの民事訴訟を、本当に時代の要請にこたえるような訴訟あり方にしていくには、これはさっきもちょっと言いましたが、裁判所だけが幾ら焦ってみても、裁判所だけが幾ら肩を怒らせてみてもうまくいかないので、むしろ逆に裁判所だけが何かやたらに焦ると、かえってこれは司法ファッショじゃないかとか、いろいろなそういう批判さえ出てくる。民事局長、そうですよね。やはり当事者納得当事者協力のもとに裁判運営というものはしていかなければならぬ。  そんな意味で、今回のこの争点整理手続も、準備的口頭弁論にしても、その他の、期日外でいろいろな文書を取り交わすとかいうようなことにしても、これはやはり当事者が、よし、ひとつそういうことでやっていこう、国民のために司法というものを円滑に動かしていこうという気持ちになっていかなければいかぬ。  そのためには、今回のこの民事訴訟法改正というのは、国民みんな、とりわけ民事訴訟運営当事者の代理人として最もかかわってくる弁護士さん方が、これはいい改正だ、よし、頑張ろう、そういう気持ちになっていかなければいけないと思うのですが、そこで、今弁護士さん方が、公務秘密文書関係で随分、これでは困るという異論を言われているわけですね。これだけ大勢の皆さんが異論を言っている。  公聴会、参考人とか公述人とかいろいろ呼ばれたわけですね。あれだけ大勢の皆さんが、これでは困る、そういう意見を言われた。しかも、いや、賛成だという、法制審議会の委員皆さんでしょう、賛成だと言われたのは。その皆さんが反対だと言うわけはないので。そういう皆さんでさえいろいろと動揺を隠されなかった。これはちょっと、多くの皆さんに祝福されている改正とはなかなか言いがたいぞ、そんな雰囲気があると思いますが、いかがですか。
  26. 長尾立子

    長尾国務大臣 今回の改正文書提出部分についていろいろな御議論をしていただいているということは十分承知をいたしておりますが、先ほど委員も御指摘をいただきましたように、今回の改正は、従来の提出義務の対象となります文書範囲拡大をしようというものでございまして、現行法提出義務の対象となる文書においてはそのまま提出義務の対象となる上で、第四号を新設させていただいているわけでございまして、その意味では、この点につきましては、私どもとしては前進をさせていただいたという気持ちはあるわけでございます。
  27. 江田五月

    江田委員 大臣、私は、法律の細かなところについて、大変恐縮ですが、余り踏み込んだお答えをされずに、民事局長の方に言われた方がいいのではないか。  つまりこういうことなのですね。例えば、今これまでのもの、一号から三号、それを変えるということではないのだ。それはそのままでさらに広げるのだとおっしゃるけれども、しかし、例えば中野貞一郎さんは、例の拘置所の診療録の点について、これはこう変わったら、三号の文書ではなくて四号の方に入って、そして役所がノーと言えば出ないことになる、そういう答弁をされたのではないですか。  だから、そういうようなことについては、ちょっと大臣は大所高所で話をされた方がいい。余り細かなところはむしろ、大臣お答えくださればもちろんそれは結構なのですけれども法律実務というのは法律実務家でなければわからぬ点は確かにあるので。それはちょっと余計なおせっかいですが。  今情報公開についての制度に関する議論の帰趨を見てというお話ですが、それはそれで、国の法体系の中ではそういう言い方もできるかもしらぬけれども、地方自治体では、もう情報公開条例ができているわけです、現に。その地方自治体の情報公開条例が関係してくるような紛争も国の裁判所に来るのですね。地方裁判所といったって国の裁判所ですから、自治体の裁判所ではないわけですから。  ですから、国の裁判所の制度としては、地方自治体の条例までちゃんと視野に入れて考えないと、国の制度だけ考えていたのでは整合性があるとさえ言えない。しかも、整合性があるだけでは今はだめなのだ。従来の法規の整合性を乗り越えていかなければいけないということになっているわけで、当事者からこれだけいろいろな異論がある部分でございます。  全体としては、ほかにもいろいろあるのですよ。聞きたいことはいっぱいありますが、しかしそれはちょっとおいて、全体としてはいい改正である、何とかこの改正を実現させたい、そういう思いで私たちもいるわけで、しかし、ここに、のどに刺さったとげがある。何とかこのとげはみんなで、もし皆さんが、いや、行政立場からいうと、行政全体の整合性でこれ以上動けませんと言われるなら、それはもう与野党一緒で、立法がこの部分についてはとげを抜く、そういうことをしなければいかぬと思いますが。  私ども新進党ですが、対案を懐へ入れているのですが、それを出すと、この委員会全体での議員立法ということにならないかもしれないので、懐へ入れっ放しで今来ているわけでね。  立法府が、行政全体のあり方を変えて、情報公開という点で前へ進めていくために修正をしよう、その立法府の意向というものが今だんだんできつつあるような気がしますが、これについては大臣、どういう感想をお持ちになりますか。
  28. 長尾立子

    長尾国務大臣 私どもとしては、民事訴訟法改正につきまして、本案をぜひ成立させていただきたいという趣旨で提案をさせていただいたわけでございます。  今委員が御指摘になりましたように、立法府におきましてどのような御議論があり、どのような形でこの法案を御修正いただけるかという問題につきましては、私から何か申し上げるというのは差し控えさせていただきたいと思います。
  29. 江田五月

    江田委員 そういう姿勢で、行政でできないところを立法がやる、いや、立法がむしろイニシアチブを発揮していく今の時代ですから、ひとつそこはよろしくお願いいたします。  終わります。
  30. 加藤卓二

  31. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 自民党の佐田玄一郎でございます。質問をさせていただきます。  私も当初から、この民事訴訟法改正につきましては、委員会そして参考人招致、そしてまた先日は地方公聴会、名古屋まで行ってきたわけでございます。この中で、わけても参考人招致そして地方公聴会というものは、これは国民の声を聞く、そういう場から感じたのは、やはり、今回の改正については、情報公開について後ろ向きではないか、こういう意見が大半を占めた。これは否定しがたい事実である、かように思うわけでございます。  議論もここまで来まして相当煮詰まってきたわけでありますけれども民事局長にお伺いしたいのですけれども、当初は、これはとにかく今の情報公開について一般化し、広げていくのだ、こういう御主張を繰り返されておるのでありますけれども、今でもこれは広げておるのだ、決して後ろ向きではないのだ、そういうふうにお答えできますか、ひとつ。
  32. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘の点については、従来考えているところと現在も変わっておりません。  これは、先ほど来大臣からも御答弁申し上げておりますように、現行の三百十二条の一号から三号まではそのままにして、四号を新たにつけ加えたということでございますので、後退すべきところは一つもございませんし、今の御指摘のような御議論のあるところでありますが、その制約の範囲内で拡大しているということは、従来申し上げているとおりでございます。
  33. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 そういう御意見で、繰り返しの話になってしまうわけでありますけれども、私は、この法案につきまして素人、決してプロでも何でもありませんから、非常に率直に感じたところで御質問をさせていただきたいのでありますけれども、この文書提出命令ということが、今回の法案におきまして、要するに証人義務と同様の一般化、こういうことが非常に私は目玉になっていると思うのですね。  これは、すんなりと議論をしてきたわけでありますけれども、この文書提出というものを証人義務と同一化していく、果たしてこれが情報公開プラスになって、要するに広げていくことになってくるのか、こういうことも私はちょっと疑問にも感じますし、もう一つは、一緒にしていいものなのかどうか、なじむものなのかどうか、こういうこともちょっと疑問に感じておるわけでございます。  わけてもこの証人義務につきましては、もう御案内のとおり、刑事訴訟法の百四十四条と現行民事訴訟法の二百七十二条で、官公庁判断に任せておる、こういう条文があるわけでありますけれども、証人義務につきまして、この法律において真実の追求に支障があったとか、証人が出ないことによって真実が追求できなかったとか、そういう判例が今まであったのかどうか、これをちょっとお聞きしたいのです。
  34. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 証人尋問の場合に、特に公務員を証人として尋問する場合に、どういう事例においてどういう拒絶の事例があったかというようなことにつきましては、具体的な資料もございませんし、最高裁でもそういった事例を特に調査して集めておられるわけではないということでございますので、現実にどういう事例があるかということは承知しておらないところでございますが、一般的に、証言拒絶権の行使によって特に不都合が生じたということが多々あるというふうには民事訴訟法の場面においては聞いておらないところでございます。  ただ、証人尋問文書提出証拠法にそれぞれ違いはあるわけでございますけれども、今問題になっております公務上の秘密が公表される結果になるという点では実質的に同じ問題であるということから、今回の法案におきましてはその両者を基本的に同じ枠組みで取り扱うこととしているものでございます。
  35. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 今お答えがあったとおりだと私も思うのでありますけれども、要するに、証人尋問につきまして、今まで真実追求につきましても支障がなかったし、これは現行法にある、あるからこそ今回は画期的に文書提出証人尋問と同じような形で一般化していく、であるからこそこれは差し支えないじゃないかと。  ただ、私は、資料提出というものと証人尋問というのはどうしてもなじまない部分が出てくるのじゃないか、こういうふうにも今感じておるわけでございます。そういうところから、やはり今回のような、非常に細部にわたって検討を重ねてこられたと思うのですけれども、そういうところに落とし穴ができてきているのじゃないか、こういうふうにも感じておるわけでございます。  先日名古屋に行って、各公述人の方々からいろいろな意見をお聞きしたわけでありますけれども、わけても今回の改正につきましては、情報公開に非常に後ろ向きだということを松浦公述人以外の方々はすべて述べておるわけであります。中でも一番の問題点となっているのは、行政に対して国民がコントロールを非常に失っているのじゃないか、こういうことを言っている方が二人おりました。  ただ、私もそのときに感じたのは、三権分立ということもあって、やはりグーチョキパー的なところがあると思うのですね。ですから、我々が、例えばこういう地方公聴会なり参考人招致によっていろいろなことを、国民の声を聞き、そして慎重かつかんかんがくがくの議論をして、それを立法に還元していく、こういうことが非常に私は大事になっているのじゃないかと。そういうことを考えますと、私は、これは私見ではありますけれども、今回の二百二十条の四号のロというのはどうも多少大ざっぱな点があるのじゃないかな、こういうふうな感も否めないわけでございます。  その中で、一週間ぐらい前に日弁連の方の御意見を聞いたときには、一号—三号、こういう既存の文書に対して四号のロがかかってくるのじゃないか、こういう意見があったわけであります。要するに、四号ロによってかなり制約されるのじゃないか、こういう意見があったわけであります。これについて局長はどういうふうにお考えでしょうか。
  36. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘のようなお考え指摘されているということは承知しております。  一つの御意見は、今まで三号の文書として取り扱われていたものが、今回四号をつけ加えたことによって四号の分野で取り扱われることになるのではないかという御指摘。それからもう一つは、四号のロにおいて、公務上の秘密に関する文書については監督官庁の承認がなければ提出義務の対象にならないということが規定されたことに伴って、これまで三号の文書として公務上の秘密ということが問題になっていた場合には、承認といったようなことを要件としないで裁判所がその中身を判断していた、それが、四号のロが新しく規定されることによって三号の取り扱いにおいてもそういうことが類推適用されるおそれがあるのではないかというような御指摘であるというふうに承知しております。  しかし、こういった問題につきましては、従来から申し上げておりますように、一号から三号までの文書は、法文の形式におきましても、平仮名、口語化という形でそのまま改正法の条文にしているという外形。それから今申しましたようなおそれがあるかないかということについては、法制審議会においても十分検討して、今回の趣旨は、ともかく拡大するという趣旨であるから、その趣旨を理解いただければそのようなおそれがあるということはないという議論がされて要綱がまとめられたわけでございますし、私どもも、今ここでこうやってそういう趣旨ではないということを明確に申し上げさせていただいているわけでございますので、そういったことは、改正法が成立した場合には関係皆様方にも十分理解していただけるものであるというふうに思っております。
  37. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 局長の今の御発言、ちょっとニュアンスが違うのでありますけれども、私が不思議に思っているのは、一号から三号の文書が、今までは日弁連の方々は、四号のロがかかってきてロによって制約されるのじゃないか、こういう御意見であったのですけれども、徐々に変わってまいりました。先般の参考人招致のときにも委員の方から質問があったのは、それが多少ニュアンスが変わりまして、判断するときに、これは司法判断だと思うのですけれども、今まで三号文書だったものが四号に組み入れられる、こういうふうになってくる可能性があるのじゃないか、こう多少変わってきているのですね。ニュアンスが多少違うのです。今局長が誤解されても当然のことだと思うのですけれども、多少変わってきているというところがあるわけであります。  そうなってくると、一番現実的に考えたときにやはりそうなってくるのじゃないかなと私は思うのですけれども、そのときに、例えば今までは、ほかの文書について、一号から三号、当然これは司法判断だと思うのですけれども、今までの判断の仕方と、今回、例えば四号が加えられた場合に四号にするのか、それは全然違ってくるわけですね。今まで一、二、三号とまた別の要するに公文書、そしてまた一から三号の文書、これがあったわけでありますけれども、四号との区別、四号とほかの、例えば三号文書との違い、これは司法判断のプロセスですけれども、私、素人ですのでこの辺をよくお聞かせ願いたいと思うのです、判断の仕方を。
  38. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘の、一号から三号までの文書、とりわけ重要なのは、三号のいわゆる利益文書あるいは法律関係文書と言われているものの意義であります。この解釈につきましては、これまで裁判所の解釈、運用上の努力によりまして、漸次広く解釈されるようになってきたという経緯がございます。  ただ、個々の裁判所裁判官判断の問題でございますので、同じ性質の文書についても、ある裁判所ではこれは三号の文書に該当するという判断がされ、あるいは別の裁判所ではそれは当たらないという判断がされるという場面もございますが、いずれにしても傾向としては、この利益文書あるいは法律関係文書範囲拡大的に解釈される傾向にあるというふうに理解しております。  その解釈が、今回、四号を追加したことによってかえって狭められるのではないかという御指摘であろうと思いますが、その点につきまして、先ほど申しましたような経緯で、今回の立法の趣旨に照らしそういうおそれはないということについて法制審議会で十分な議論をして、確認がされて、今回の改正要綱に至ったわけでございます。  以上でございます。
  39. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 そうすると、やはり司法判断ということですから、四号か、また一号—三号か判断するのは、やはり裁判官が決めるということですね、これは。
  40. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 もちろん御指摘のとおり、裁判官が解釈、運用されるということであります。
  41. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 これは、今回いろいろ行政官庁に承認を得なくてはいけないということで、裁判官中立であるからこそこれはやらなければいけない、こういうふうな意見があるわけでありますけれども、結局、四号にするか否かということは裁判官が決めるということは、中立たるべき裁判官が決めるわけですね。であるからこそ、やはり、必ず三号であるべきものが四号にいく、そういうことは中立的な裁判官が決めることである以上は、これは問題はないということですね。
  42. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 先ほどの答弁を補足させていただきますと、ある文書が三号に該当するというふうに判断されれば、三号の文書として提出命令の対象になるわけでございます。しかし、裁判所の方で、これは現行法の解釈としてもあるいは新法の解釈としても三号の文書には該当しないという判断をされた場合におきましても、今度は、それは四号の文書として提出命令の対象になり得る、そういう関係にあるわけでございます。  したがって、三号に該当するかどうかということは、これは裁判官判断されるわけでありますけれども、その判断基準が、これまでの判断基準よりもこの改正によって後退するというおそれがないということを申し上げているわけでございます。
  43. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 しかし、裁判官もやはり人間でありますから、いろいろな考え方をお持ちの方も私はいらっしゃると思うのです。そういうことを考えますと、確かに、参考人並びに今回の地方公聴会の公述人の皆さん方意見の不安というのは私もわからぬでもないわけであります。  ぜひともそういうところにも留意されながら、はっきり申し上げまして私の意見としては、二百二十条の四号のロというのは非常に大まか過ぎて、拡大解釈されるおそれもある、確かにそれはあると思います。  それでは次に移らせていただきますが、これはまた繰り返しになって恐縮なのでありますけれども、今回の法案ができるに当たって、二月二日に部会の取りまとめがあり全会一致、二月二十六日の総会、これも全会一致。そしてまた、その後に、これは当然法務大臣に対して提出され、そして閣議決定を三月十二日にされた。その前にも法制審で五年間の議論がなされた。この中で、私は当然法務省の方も関与はされておると思うのですけれども、そのプロセスの関与の仕方を教えていただきたいのです。
  44. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 法制審議会は、法務大臣の諮問に応じまして、民事法、刑事法その他法務に関する基本的な事項について調査審議をする会議でございます。そういう基本法についての調査審議であるということから、委員といたしましては、各分野の専門家等の学識経験者それから法務省の所管部局の立案スタッフ、双方が一体となってそういった一種の立案準備作業としての審議を行う、こういう審議会でございます。  そういうことでございますので、法制審議会の部会が中心でございますが、部会の審議におきましては、法務当局の職員もそのスタッフとして参画するとともに、また一方、いわゆる事務当局として審議に関与する、いろいろな原案等の資料の作成といったような作業を行う、そういう関与をいたしております。
  45. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 もう大分議論が煮詰まってきたので、これも前に出た話でありますが、局長からもはっきり言っていただきたいのですけれども、この議論の中で、二百二十条の四号のロというものは、急に入ってきたという意見が相当出ております。  要するに、この一つ流れの中で、各省庁からの圧力は決してなかった、これはあったかどうか、これをお答え願いたいと思います。
  46. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 法制審議会の答申で示された案以外のものについて各省庁に意見を伺ったということはございません。したがいまして、それ以外の案について各省庁から圧力があったということは一切ございません。
  47. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 そういうしっかりとした御意見を聞きたかったわけであります。  そういうことによって、とにかく法務省は法務省として、やはり法律は、この間も申し上げましたように国民のためにあるわけですから、国民を守るためにあるわけでありますから、しっかりとして、他省庁からの圧力に負けずに、しっかりとしたものをつくっていっていただきたい、かように思っております。  先ほどお話がありましたけれども、審議会の中に法務省の方も関与されておった。今お話があったわけでありますが、この中で、全会一致というのが取りまとめのときと、そしてまた総会の方でも全会一致、こういう話になっております。もちろん、この間からのいろいろな質問の中にもありましたように、日弁連の方も入っておる。雰囲気的なことがどうも私もいま一つよくわからないのですけれども、これは完全な全会一致だったわけですか、これをお願いします。あと、雰囲気も含めて。
  48. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 審議の経過におきましては、この案について反対の御意見もございました。しかしながら、そういう御意見を闘わせた結果、最終的に民事訴訟法部会及び総会において、いずれも全体について原案に賛成する、全会一致ということになったわけでございます。
  49. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 全会一致ということで、日弁連並びにマスコミ等もそうでありますけれども、これだけの異論が出るというのも不自然な話だな、こういうふうにも感じるわけでありますけれども、この部会長は三ケ月部会長でしたね。  この三ケ月部会長が、要するに取りまとめに際しては、情報公開法の成立を見てこの規定を見直す、こういうことを言ったということを私もお聞きしておるんですけれども、いろいろな委員からの御意見で、それだけじゃ結局情報公開法も今回の民訴に制約されるんじゃないかとか、いろいろなことが言われておる。私は、これを払拭するためには、やはり三ケ月部会長が言われたことについて法務省としても、これは例えば情報公開法がもしも成立したときには、例えば半年なら半年の期限をしっかりと決めて、一定期間なんというあいまいなことじゃなくて、半年なら半年、一年なら一年と決めて、その中で議論をし、そして規定も変えていく、こういうふうに言っていかなければ、これは払拭もできないしと思うんですけれども、どうですか。
  50. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 先ほど来、大臣からも御答弁申し上げておりますとおり、私どもとしては、行政情報公開に関する議論を踏まえて、これを民事訴訟法上の文書提出命令の制度にどのように反映させるかということについては、今幅広く議論されている行政情報公開についての議論及びその結論を踏まえた上で、それを民事訴訟法の場面でどのように受けとめるかということを考えるのが適当であり、それが将来に向かっての適正な民事訴訟法文書提出命令制度を定立するという意味において適当であるというふうに考えているところでございます。  御指摘の三ケ月部会長の報道されておりますような御発言も、そういう趣旨を踏まえての御発言でございます。したがいまして、私どもといたしましては、行政情報公開法律として制定されるということになりましたら、できるだけ早い期間にその検討を終えて、文書提出命令についてのあり方を定立していきたいというふうに考えているところでございます。
  51. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 局長、結局、今の速やかにとかそういうふうなあいまいな言葉を並べている以上は、なかなか国民納得しない、こういう感を私は否めないわけであります。  きょうの新聞にも、局長、これはもう五年前からこの法案議論をされてきた、非常にタイミングがよく今回情報公開についてのいろいろな議論がマスコミ等からも沸き上がってきている。もちろん日弁連もそういうふうに言っておる。要するにそういう一つ時代流れというものを、先ほど江田委員の方からもありましたけれども、やはりこれを無視するわけにはいかないわけであります。  きょうの新聞、「もんじゅ」でも設計ミス、もしもこういう議論がなければこれも出なかったわけでありますから、はっきり申し上げて。そういうことを考えますと、今、わけても枝野委員も、一生懸命エイズの資料提出の問題につきましても頑張っておられる。そしてまた名古屋の方の地方公聴会においても官官接待の問題がいろいろ議論に上った。そして、もちろんTBSの問題も、あんなようなことではまだまだ国民が理解をしていない。こういうふうな現状をかんがみた場合に、ぜひともわかりやすく、そして法務省が国民に説得をして、説得できない場合にはしっかりとそれは考えを変えていく、こういうところがないと私は国民の負託にはこたえられないんじゃないか、かように感じるものであります。  法は国民を守るものであり、役人も国民の公僕である以上は、これは、本当にぜひとも国民の理解できる、先ほど局長が言われたとおりで、これは今までとは違って随分開かれたんだ、情報公開をこれからしていくんだ、今回の法案は開かれているんだと、堂々とそして説得力のある説明ができるようにぜひともこれからも心がけていただきたい。そして、それをお願い申し上げまして、質問にかえさせていただきます。  終わります。
  52. 加藤卓二

    加藤委員長 横内正明君。
  53. 横内正明

    ○横内委員 自民党の横内正明でございます。  民訴法の二百二十条の文書提出義務規定の是非をめぐりまして大変長い議論が、この委員会でも参考人招致も含めて行われてきたわけでございまして、その間、大体論点というものがかなり出されてきたというふうに思います。それらの諸点につきまして、ただいま佐田議員の御質問もありましたが、できるだけその重複を避けながら法務省の見解を伺っていきたいというふうに思います。  最初に、参考人招致の参考人の議論の中で、例えば猪瀬さんあたりがそういうことを言っておりましたが、今回の改正法の二百二十条四号ロのこういう規定が新設されたことに伴って、現在、これから行われようとしている情報公開法案の議論に悪影響を及ぼすんじゃないか、悪例になるんではないかということを言っておりましたですね。  つまり、今回のこの二百二十条四号のロの規定で、公文書公開については監督官庁の承認に係らしめて、司法判断は一切及ばないんだという先例ができたことに伴って、これから情報公開法議論をしていくときに、民訴法の方にそうなっているんだから情報公開法の方もやはりそうあるべきだというような議論が起こって、情報公開法議論マイナスの影響を及ぼすんではないか、悪例になるんではないかということを言っている方が何人かおりました。必ずしもそういうことではないんだろうと私は思いますけれども、それについての法務省のお考えをまず、局長で結構ですから。
  54. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 先ほど来、私ども文書提出命令あり方ということについては、行政情報公開制度がどういうふうになるかということを踏まえて検討させていただきたいというふうに申し上げておりますが、これは開示されていない情報裁判所提出されることによって開示されるという結果になるという意味で、両者に共通性のある問題でございますので、そういうふうに申し上げているわけでございます。  しかしながら、情報公開制度は、まさに国民に対して情報公開すべきかどうか、そのこと自体を目的とするものでございますが、民事訴訟法文書提出命令の場面における問題は、司法に対する協力義務の一環としてどこまで行政府が裁判所の審理に協力すべきかということが問題になるものでございまして、基本的にその趣旨、目的を異にするものでございます。したがいまして、今回、民事訴訟法において現行の仕組みの枠内でこういう立法をするということが情報公開議論自体に影響を及ぼす、それはプラスにもマイナスにも影響を及ぼすという関係にはないものと考えております。
  55. 横内正明

    ○横内委員 次に、何人かの委員が言っておられたのですけれども、先ほどの局長の御答弁で、今回の民訴法案のこの公文書公開規定について、各省からの圧力というようなものは全くなかった、こういうふうに先ほど答弁をしておられました。  ただ、法務省の幹部が複数の国会議員のところを回って、それで、こういう規定が必要だという説明として、こういう書き方、こういう立て方でないと各省庁が通りません、法案の各省折衝の過程でこういうふうに、公文書公開については監督官庁の承認という規定でないと各省庁が通りません、事務次官会議が通りませんというようなことを複数の国会議員に言って回ったということが言われておりますね。新聞なんかにもそんなようなことが書いてあるのですが、そういうふうな説明をしたのかどうか。多分、複数の国会議員にそういう説明をしたということですから、そういう趣旨の話があったのだろうと思うのですが、それは真意はどういうことであったのか、そこのところを伺いたいと思います。
  56. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 私ども、この法律案について御理解をいただくために、いろいろな機会にいろいろな方々に対して私ども考えている立場を御説明させていただいているわけでございます。  その一つ一つについて、どのように申し上げたかということを正確には記憶しているわけではないわけでございますが、ただ、先ほど来申し上げておりますように、現行の仕組み、枠組みというものを大きく変更して、すべての行政情報について秘密性判断権を裁判所に与えるということにつきましては、行政情報公開あり方という大きな問題が現在まさに議論の対象とされている中で、その議論を先取りして民事訴訟法の場面でそういう答えを出すということは困難であるというふうに考えてまいりましたし、また今のような段階でそういう案を仮に考えたとしても、内閣として意見の一致を見ることも困難ではないかという認識は私どもとして持っておりました。そういう趣旨のことを申し上げたということはあろうと思います。  その趣旨を若干違う形で受けとめられて、新聞報道等になっているということなのかなというふうに考えております。
  57. 横内正明

    ○横内委員 わかりました。  次に、この二百二十条の四号のロについては、日弁連の修正案というものが公表をされているわけでございます。日弁連の修正案は、言っている趣旨は、現在の政府提案は公文書提出するかどうかは監督官庁の承認に係らしめているわけですけれども、要するに監督官庁の判断なのですが、これを裁判所が最終的に判断をすべきだということが一点。それから、裁判所はその判断をするために、いわゆるインカメラ手続公文書の中身を検分する権限ですが、それを与えるべきだ、要するに公文書の中に含まれている秘密公開するかどうかについての判断裁判所がやるべきだ、こういうのが日弁連の修正案の趣旨でございます。  しかし、こういうふうに政府案を修正した場合には、それはまたそれでいろいろと問題が出てくるのだろうと思うのですね。  まず一つの問題といたしまして、民訴法の文書提出義務規定だけを直せばそれでいいのかということがあると思うのですね。他の規定はほっておいて、文書提出義務の二百二十条の規定だけ日弁連の案のように直せばそれでいいのかというと、これは法体系としてバランスを欠いていくことに当然なるわけでございます。民訴法の百九十一条に公務員の証人尋問規定がありますし、それから刑事訴訟法の文書の押収とか証人尋問規定があります。それらについてはすべて監督官庁の承認を要するという立て方をしているわけですから、そういうものも全部一緒に直していかないと、法務省関係法律は少なくとも全部同じ立て方で直していかないと、民訴法の二百二十条の文書提出義務部分だけを日弁連の案を取り入れて直すということになると、法体系としての整合、バランスを欠くことに当然なるだろうというふうに思います。  具体的にも不都合が生じてまいりますのは、例えばある裁判所で、ある事実を立証するために公務員を証人で呼ぼうとした、そうしたところが監督官庁が証人として公務員を出すことについて承認をしなかった、証人を拒否した、したがってできなかったという場合に、では一方で、文書の方で同じ事実を立証しようということにすれば、今度は行政庁の承認は要らないわけですから、できてしまう。同じ事実を立証するのに、証人喚問と文書提出とが法律の体系として違っているというのは、これは明らかにおかしいわけですね。だから、直すとすればそういうものも全部直していかなければいかぬ、刑事訴訟法の規定も直していかなければいかぬ、こういうことになってくるのではないかというふうに思いますが、その点は法務省はどうお考えになりますか。
  58. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘のとおり、それらの制度との整合性という点も考慮して法案を立案させていただいているわけでございます。御指摘のとおり、それらの間の整合性ということを考えて立案をする必要があるという問題であるというふうに思っております。
  59. 横内正明

    ○横内委員 それからもう一点、日弁連の案はどうも裁判官が万能であるという考え方に立っているのではないかという気がするわけでございます。  例えば、国政の中には高度な機密というのが当然あるわけでございます。外交交渉上の機密だとかあるいは国防上の機密だとか、それがオープンになると非常に大きな国益の損失をもたらす、内閣総理大臣の首が飛ぶような高度な機密というのがあると思います。そういうような機密を含んだ公文書についても、それを出すかどうかの最終的な判断裁判官だ、それも決定手続という簡易な手続でそれを出すかどうかは決めるのだ、裁判官判断をするのだというのは、どうもちょっと、うまく説明できないのですけれども、三権分立の行政司法との関係からいっておかしいのではないかなという感じはするのですね。そういう非常に国益上重大な、高度な機密というのは、やはり内閣が内閣の政治責任において出す出さぬということは最終的に決めるべきだというふうに思うわけでございます。  そうなると、日弁連の案だと、結局裁判官が全部最終的に決める、もちろん即時抗告はできますけれども、決定手続という簡易な手続で決まっていく。裁判官だって神様ではありませんから、間違うことは当然ある。もし過って裁判官が間違った判断をして公文書が、機密が出ていって、それが非常に国益上マイナスになったときに、だれがその責任を負うのか。(発言する者あり)しかし裁判官は、責任を負うといったって、国会の場へ出てきて国民の前で釈明をすることはできないわけですね。しかし裁判官判断したわけですから、内閣が責任を負うわけにもいかないというような機密があるのだろうと思うのですね。そういうことも含めて一切合財裁判所判断でやるというのは、どうもちょっとおかしいなという感じがするわけでございますが、その点は法務省はいかがでしょうか。
  60. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 委員指摘のとおり、公務員の職務上の秘密といってもさまざまなものがあるわけでございまして、そういうことを踏まえて、その種類に応じてどういう対応をすべきか、そういう区分をする必要があるのかないのか、必要があるとすればどういう文書がそれに該当するのかというような点、これはまさに行政情報公開制度に関して行政改革委員会の場で検討されている大きなテーマであるというふうに承知しております。  私どもといたしましては、そういう議論を経て、その結果を踏まえて、そして文書提出命令の場面で、今御指摘があったようなことをも踏まえて、どう受けとめるべきかということを考えるべき問題であろうというふうに考えている次第でございます。
  61. 横内正明

    ○横内委員 今局長が言われたように、公務員の職務上の機密というのは非常にさまざまな機密、秘密があるということだろうと思います。そういう秘密の種類というか性質に応じて扱いが違ってくるだろうというふうに思うわけですね。  ですから、そういう意味からすると、今の政府案もおかしいというか、それは全部行政庁、監督官庁の判断で、司法判断は一切及ばないのだというのは、これはやはりおかしいと思うのですよ。これは、問題は問題だと思うのです。しかし、さればといって、それではもうそれは全部裁判所判断なのだ、裁判所が最終的に一切合財の秘密判断するのだというのも、これはまたおかしいわけですね。  だから、結局はその中間にその回答というのはあるわけで、それぞれの機密の性質、性格に応じて、行政庁と裁判所がどういうふうにかかわりを持って、開示するかしないかを決めていくかという問題になるのだろうと思うのですね。そのことを、今局長も言われたのですけれども行政情報公開法の議論で今やっているわけですね。行政改革委員会でこの間案が出て、十二月何日までにまとめる、その間、幅広く国民意見を聞いて、まとめていくということになっておりますから。  局長が言われたように、やはり民訴法だけ先行してある一つの形を決めてしまうというのがなかなかできにくいという感じは、私はわかるわけでございます。したがって、法務省が言っておられるように、情報公開法の方の議論を待って、そっちが確定したら、恐らく一、二年の間に固まるのでしょうから、そうしたら、それを受けて民訴の方も、多分刑事訴訟法や議院証言法も同じだと思いますが、そういうものも含めて措置をするのだというお考えは、そうするべきなのだろうなというふうに私は思っているわけでございます。  そうすると、では一つのやり方として、これの処理の仕方として、とりあえず継続審査にしておいて、この法案議論をしばらく塩漬けにしておいて、それで、情報公開法が恐らく一、二年たったら大体固まりますから、それまでこの民訴法の議論を継続審議で凍結しておいたらどうか、こういう案もあり得ぬわけではないのだろうと思うのですね。  先ほど佐田議員の質問にもありましたように、そもそもこの部分法制審議会の議論というのがどうも十分煮詰まっていなかったのではないかという疑念があるわけです。日弁連がかなり強い反対をした。しかし、そう長い時間の議論がないままに、結局は何か非常に日本的な、今局長は全会一致でと言われましたけれども、全会一致でまとまってしまった。どうもそこで十分詰めた議論が、煮詰まった議論がなされているようには思えないわけでございます。  そこで、法務省に伺いたいのですけれども、まず一点、やはりこの部分については少し議論が拙速過ぎたのではないか、民訴法案をまとめるのが少し早過ぎたというか、拙速に過ぎたのではないかという反省が今の時点でありますかどうですか、ちょっと伺いたいと思います。
  62. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 今回の改正は、民事訴訟国民に利用しやすく、わかりやすいものにする、それから訴訟手続を現在の社会の要請にかなった適切なものとする、とりわけ民事裁判は遅いと言われているのを、可能な限り迅速化のための手続的な手当てをするということを目的とするものでございまして、今問題になっております文書提出命令についての改善、これは一つの重要なテーマでございますけれども、それ以外に大きな項目、小さな項目、さまざまの点において、審理の適正、迅速化、それから手続を現在の社会要請に合わせていくというための改正を実現しようとしているものでございます。  今回の法制審議会の審議におきましても、民事訴訟法全体を全部書き改めるということになりますと、これは審議も何十年かかるかわからない。しかしながら、できるだけ早い期間で、重要なもの、必要なものに焦点を絞って、できるところから改正していこうということで、目標として五年ということに限定して審議をスタートした。五年より若干長くかかりましたけれども、そういうことで答申があり、それに基づいて法律案提出させていただいているわけでございます。  これらの改正につきましては、裁判の実務の上で、一刻も早くその改正内容に沿った法律が実施できるようにということで期待されているわけでございますので、何とぞそういった点について御理解を賜りたいというふうに思う次第でございます。
  63. 横内正明

    ○横内委員 もう一点、さっきちょっと申し上げましたが、情報公開法の方のまとまる状況を見て、ここについても見直し、再度検討をしていくということであるとすれば、それまであと一、二年、継続審査にしておいて、この民訴法を通すのを待っていたらどうだ、向こうが大体固まったら、その時点でこの政府案を修正してやったらどうかという意見があり得ると思うのです。あり得ると思うのですが、それについてはどうお考えになりますか。
  64. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 今御答弁したのもその趣旨でございます。  裁判が迅速、適正に処理される、とりわけ昨今、金融機関等の、あるいは住専問題をめぐるいろいろ、さまざまな問題の解決というものは、最終的には裁判所判断によらなければならないというところが多いわけでございまして、そういう観点からも、裁判所の運用の充実、それを支える適正、迅速な処理をするための手続の充実、こういうことは社会から大変急がれているということであろうと思っております。  そういうことでございますので、先ほど来御答弁申し上げておりますように、御指摘されている問題につきましては、条件が整いましたら、私どもとしてはできるだけ早く検討して成案を得たいというふうに考えておりますので、何とぞこの原案の状況において一刻も早く成立をさせていただきたい、切にお願い申し上げる次第でございます。
  65. 横内正明

    ○横内委員 民訴法は、確かにこの点だけでなくて、いろいろな重要な課題を含んでおります。今局長がおっしゃるように、裁判の迅速化が社会的に非常に焦眉の急務になっているということは全くそのとおりでありまして、そういうことからすれば、継続審査でいつまでもいつまでもというふうに延ばしておくわけにはいかぬということはよくわかります。  では、そこでこれをどうするかということになるわけでございますけれども一つは、このまま無修正で通すという考え方がある。それからもう一つは、例えば日弁連の案のように大規模な修正を加えるという考え方もあります。三番目のやり方として、とりあえず無修正でいくのだけれども情報公開法の方の議論の成熟を待って、それに平仄を合わせて民訴法の方も再改正をするという案がありますね。法務省はその三番目の考え方をとっておられるというふうに思います。  そこでもう一回、これについてはもう再々法務省が答弁をされているわけですけれども、法務省の今の考え方を正確にお述べをいただきたいと思うのです。さっき局長の答弁で、何かどうももう一つ歯切れが悪いのは、このようなことを言っていましたね。その情報公開法の方が固まったらできるだけ早くこっちも検討をして、そのあり方について何か提出していかなければいかぬとか、何かよく聞こえなかったのですけれども、どうもそこのところが歯切れがもう一つ悪いのですね。  だから、要するに、情報公開法案の方で、公開すべき情報公開すべからざる情報、それについての行政司法のかかわり、そういったルールが決まったら、この民訴法の方も可及的速やかに、もちろん法制審議会を開いて再改正しますと。そこで見直しをするとか検討をするとか、本当にやるかどうかわからないというのではどうもなかなか納得しにくいところがありまして、はっきりもう再改正をしますと。確かに、秘密かどうかを行政庁の、監督官庁の承認に係らしめて、司法判断が一切及ばないというのは、やはり今の状況からするとちょっとおかしいことはおかしいのですね。  したがって、これは情報公開法の方が多分それよりもっと進んだ形にいくわけでしょうから、それに即して民訴法の方も再改正をしますということをはっきりここで明言できるかどうか、見直しますとか検討しますとかそういうことでなくて、そこまでお約束できるかどうか、その点につきまして伺いたいと思います。
  66. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 これは、行政改革委員会設置法という法律に基づいて今鋭意それをつくるという方向で検討がされておるところでございますし、その方向についても大筋における中間報告が出されたところでございます。したがいまして、その法律はそう遠くない時期にできるであろうと思っております。  その法律がどういう形のものになるかということは、私どもとして今予測することができるものではございませんけれども、今議論がされているような方向法律ができれば、それは民事訴訟法の場面においてもこの部分について再改正をする必要があるということになるだろうと思っております。  情報公開法がどうなるかということはあくまでも予測の問題でございますので、したがいまして、今そのいかんにかかわらず必ず再改正をするというふうに申し上げることはできませんけれども、今の方向法律ができれば、その必要は当然出てくるものであると思っております。
  67. 横内正明

    ○横内委員 質問を終わります。どうもありがとうございました。
  68. 加藤卓二

    加藤委員長 貝沼次郎君。
  69. 貝沼次郎

    貝沼委員 新進党の貝沼次郎でございます。  先般、本会議で代表質問をさせていただきました。あの代表質問の中身と現在の私の認識は変わっておりません。全く同じです。  つまり、何を主張したかといいますと、大部分においては評価いたします、しかし、問題点があります、これは修正しなければなりませんということで何点かお尋ねをいたしました。総理並びに法務大臣から答弁をいただきました。この答弁が余りよくわからない。しかし、再質問がありませんからできませんでしたが、きょうはその答弁の中身をちょっとお尋ねしたいと思っております。  そこで、まず初めに、行政情報公開法制定との関係でお尋ねしたわけですが、そのときの答弁は、行政情報公開の「議論の結果等を踏まえまして、必要があれば、今後これとの整合性を図る見地などから改めて所要の検討を進めてまいりたい」、こういうことですが、ただいまの答弁を聞いておりましても何かよくわからないのですね。  これは法務省では、そのつくられるであろう情報公開法というのは、今民事訴訟法で私どもがこうやっているものよりももっと公開性の高いものができ上がるという判断をなされておっしゃっているのですか、そこのところをお尋ねいたします。
  70. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御質問趣旨、必ずしも正確に受けとめたかどうかわかりませんけれども情報公開法がいつ制定されるか、それからその内容がどういうものになるかということは、ただいまも御答弁申し上げたとおり予測の範囲を出ないわけでございます。その法律ができました場合に、その法律規定内容、そこに示された情報公開あり方に関する考え方、そういったものを踏まえて、民事訴訟法の今御議論いただいております文書提出命令の制度に関しまして、必要な検討を加えてまいりたいということを大臣の方から御答弁申し上げたと理解しております。
  71. 貝沼次郎

    貝沼委員 ですから、ただいまの答弁でも、要するにわからない、予想がつかない。ですから、その公開法がまだできていませんから、うんと公開性の高いものができ上がるものか、ぐっと後退したものができ上がるものかわからないのですよ。合わせるといったって、変なものに合わされたら困るのです。ですから、わからないものに合わせるとおっしゃった、それがまたわからない。  それからもう一つは、合わせるというには作業があるわけですが、その作業は、例えば情報公開法は立法ですから国会でやるのですが、それに対して、そのとき、その時期もいつなのかはっきりしませんが、その時期に法務省はそれをやりなさいということをおっしゃっているのですか。立法府がやることです、これは。そのときの内閣に対してその改正案を出しなさいということをおっしゃっているのですか。そういう提案する側、内閣、あるいは立法する国会、これに対して法務省は縛る権限があるのですか。
  72. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 もちろんそのような権限はございません。あくまでもそういう法律が制定された場合にはということを申し上げているわけでございます。
  73. 貝沼次郎

    貝沼委員 したがって、ここで答弁された中身は何の拘束力もないのですよ。ただ希望を述べているにすぎない。ところが、うっかり聞いていると、情報公開法ができたら何かそこの方へすっと調整されていくのじゃないかという感じがしますけれども、作業は別の人がやるわけで、それが何年後かになれば、内閣はかわっているかもしれない、政権がかわっているかもしれない。国会議員だってかわっているわけですから、世の中だって変わっているのですから。そのことをあたかもでき上がるがごとき発言をされるということはちょっと問題ではないか、こう思っております。  したがって、この本会議答弁は、中身は何もない。この法律案改正趣旨はわかりやすくということですが、今私は一国民として質問させていただいておりますが、わかりやすく御答弁いただきたいと思いますけれども、要するに、あの答弁の中身はないということだと思いますが、御確認いたします。
  74. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 私どもといたしましては、あくまでも推測の問題でございますけれども行政改革委員会設置法、その趣旨に照らし、どのような内容のものになるかは別といたしまして、行政情報公開に関する法律が制定されるということになる可能性が高いであろうという、これはもちろん推測でございますが、そういう推測を持っているわけでございます。それを前提として申し上げているわけでございまして、その推測が全くナンセンスだという御指摘であれば別でございますが、そういうことでございますので、私どもとしては意味がないものであるというふうには思っておらない次第でございます。
  75. 貝沼次郎

    貝沼委員 それからもう一つは、総理が御答弁になりました。だれがやっても同じ文言で出てくるのだろうと思いますけれども公文書提出命令手続部分で、公務秘密文書の定義及び承認拒絶要件をさらに具体化するには、行政情報公開法の制定を待たなければ現段階で対処することは適当でない、こう言っているのですね。この具体化するということは、法案のどの部分で具体化ということをおっしゃったのですか。そして、なぜ今この法案の中でその具体化がなされていないのですか。
  76. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 そのときの御質問趣旨がどうであったかということとも関連すると思うわけでございますが、私どもの理解といたしましては、現行法においても、あるいは改正案においても「公務員の職務上の秘密に関する」という表現を使っているわけでございます。こういう抽象的な概念をもう少し具体化するという御指摘、それから今回の法案におきまして、承認を拒絶できる場合として「公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある」という概念を用いております。これをさらに具体化するということはできないか、こういう視点からの御質問と承ったわけでございます。  今、現行法でもあるいはこの法律案におきましてもそういう抽象的な概念を使っている、一般概念を使っているということ。これをもう少し、公開していいもの、公開すべきでないものという形で具体化するということ、これが現在検討されております行政情報公開に関する議論一つの重要なテーマであるというふうに承っておりますので、そちらの方でそういうものがきちっと線を引かれれば、それを踏まえて民事訴訟法の場面でもいま少しこれを具体的に明確にできるような表現がとり得るかどうかということが検討課題になるのではないか、そういう観点から申し上げたものと理解しております。
  77. 貝沼次郎

    貝沼委員 私、なるべく簡単に質問しておりますので、できるだけコンパクトにひとつお願いいたします。この後本会議があって、私は延びることができないんです。
  78. 加藤卓二

    加藤委員長 民事局長、簡潔にやってください。
  79. 貝沼次郎

    貝沼委員 それで、どうですか、こんなことはちょっと聞いていいのかどうか知りませんが、行政情報というのは一体だれのものなんでしょうか。
  80. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 私、所管でございませんので責任ある答弁をすることができませんが、だれの所有という、所有権、所有という概念もなかなか難しい問題でございますので、なかなか難しいお問いかけではないかというふうに思っております。
  81. 貝沼次郎

    貝沼委員 いや、所有だと私は思いますよ。これは三権分立の立場からいけば、国民主権の立場からいけば、主権である国民の共有財産という話になっているのじゃないですか。違いますか。
  82. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 そこで言われている共有というのは、いわゆる所有権という意味での共有とは違う概念ではなかろうかと思っております。
  83. 貝沼次郎

    貝沼委員 いや、そういう狭い意味でなしに言っているわけですよ。  ですから、要するに国民の財産なんだ、だから国民が、今まで、例えば明治憲法下においてはそうじゃありませんけれども、今はそうなっているはずですよ。したがって行政情報は、じゃ別の言葉で聞きますと、行政府の独占物ですか。
  84. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 現行公務員法上、公務上の秘密はこれを漏らしてはならないという基本になっております。そういう制約のものとで、行政機関の独占物ということではないだろうというふうに理解しております。
  85. 貝沼次郎

    貝沼委員 独占物じゃないのでしょう。したがって、この文書提出してくださいという場合に行政府が勝手にノーと言うことは本当はないのですよ。本来、国民皆さん、これは出していいでしょうか——これは国のために出さない方がいいと思いますと。何とか出さないようにという気持ちなのじゃないでしょうかね。  そこで、今までは、例えば国家公務員、公務員の守秘義務とかいろいろなのがありますからなかなか難しい。そこで私どもは、国会において、これは開示しなくて結構ですよということを国会の名において決めてやりましょうというのが情報公開法のもとになるのじゃないですか。違うのですか。どうですか。
  86. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 申しわけございませんが、私ども、その行政情報公開制度を担当する部署ではございませんので責任ある答弁は差し控えさせていただきますが、御指摘のようなことが重要な目的であるということであろうというふうに理解をいたしております。
  87. 貝沼次郎

    貝沼委員 そこで、そういう気持ちがまず必要だ。したがって、今回のこの公務秘密文書関係でいきますと、監督官庁がノーと言ったら出てこないのだ、いわゆる承認がなければ。どうも刑事訴訟法だと承諾がなければ、あるいは、横並びだと言っていますが議院証言法その他では疎明が必要だと。要するに、みんな国民に気兼ねしながら何とかお願いしたいと。ところが、今回はもう頭からだめ、はねつけたら終わり、こういう性格のものなのですが、気持ちはどうなっているのですかね。
  88. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 今、刑事訴訟法、議院証言法との比較がございましたけれども、議院証言法は別といたしまして、民事訴訟法と刑事訴訟法では、承認と承諾という言葉の違いはございますが、これは実質的に同じ枠組みになっているというふうに理解をいたしております。
  89. 貝沼次郎

    貝沼委員 これだけ文言にやかましい法務省が、本当に横並びなら承諾にしておけばよかったのじゃないですか。やはり違うのですよ、恐らく。私はよく知りません、専門家ではありませんから。国会においてだって承認と承諾は全然もう別々に扱っていますから。そういう議論、今やろうと思ってはおりません。わかりやすくとなっているから、国民の一人一人がわかるようにお願いしたいということを言っているのです。  そこで、時間がちょっと思うように進みませんので、別のところへ入りましょう。  例えば証拠収集手続の拡充ということがありまして、大変結構なことなのですが、拡充をすることは。ただ、このでき上がった、いや中身も問題ですよ。先ほどから二百二十条四号ロというのは問題なのです。これは要りますが、しかし、それが決まってきたいきさつ、経緯、ここのところにちょっと疑惑があるのですね。どうもはっきりしない。国民はわからないと思いますよ。  そこで、マスコミの報道によりますと、昨年十二月、法務省は文書提出義務規定の二百二十条四号ロを法制審議会民事訴訟法部会に提案した折、それを盛り込んだ法案を国会上程するときに、二百二十条四号ロ、これを入れないと事務次官会議の了承が得られないとか、他省庁を説得できないといった趣旨の説明を行ったとあるわけですね。  先ほどの局長の答弁を聞いておりましたら、何となくそういう趣旨的な話はしたと言うけれども、その趣旨の中身がどういう趣旨の中身なのか。要するに、法案趣旨だけを説明されたという意味なのか、マスコミで言っておるところの趣旨なのか、これがはっきりしなかったのですよ。  これは、こういうことをやった事実があるのかないのかということを確認するわけですが、単なる一つの新聞ではない。例えば、法制審議会のメンバーの一人も、この規定は審議が大詰めを迎えた昨年秋になって突如加えられた、反対すれば各省庁の同意が得られず、民訴法改正ができなくなると説明された、非常に不公平なやり方で、国会で修正すべきだと打ち明けたということですから、これ、別の人の話ですね。だけれども、どうも中身は同じなのですね。大体において同じ。  それからさらに、これは権威ある日弁連の書類でありますが、ここには——済みません、時間かけて申しわけありませんが、間違うといけませんから。こう書いてあります。   昨年十二月一日の改正要綱案第六次案で、公務秘密文書提出は監督官庁の承認にかからしめること、裁判所はこのため監督官庁に照会しなければならないこと、承認の要件は公務員の証人尋問に関する改正法案第百九十一条第二項の規定が準用されること、インカメラ手続の対象からはずされること、などが具体的要綱の形で示されました。民訴法部会の改正要綱審議は当初の予定では十二月までには終るとされていましたから、なぜこの時期まで具体的提案がされなかったか、何らかの作為があったのではないか疑われるところです。日弁連推薦委員・幹事はもちろんこの提案には反対しましたし、裁判所、学者の委員も一様に不快感を示したと聞いています。しかし法務当局は、これを入れなければ法案提出のための各省了解はえられず、民訴法改正ができなくなると説明し、裁判所と学者の委員はやむをえないという雰囲気となってしまったとのことです。 ですから、三つ今挙げましたが、一人でやっている話ではないので、たくさんの人がおるわけですが、これはどうも、こういう姿から見ると、まんざらうそではないのではないかという感じがいたします。真実はどうなのでしょうか。どうせわかることです。はっきりお願いします。
  90. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 いろいろ御指摘をいただきましたところを拝聴しておりますと、恐らく二つの場面の私どもの言動が問題になっているのではないかと思っております。  一つは、法案提出の段階、あるいは提出後の段階におきまして、さまざまな機会にさまざまな形でこの法案についての私ども立場を御説明させていただいた。特に関係の議員の方々に御説明をさせていただいた。そういう場でどういう発言をしたかという問題。それからもう一つは、法制審議会の審議の過程において、私どもの担当者がどういう発言をしたかという問題。この二つの問題が指摘されているのではないかと思われます。  前者の問題につきましては、先ほど御答弁申し上げたところと重複いたしますけれども、これは現在、行政情報公開あり方という大きな問題がまさに議論されている状況で、その議論を先取りするような民事訴訟法の場面だけでの改正を政府提案として提出する、その前提としての内閣としての意見の一致を見るということは難しいのではないかというような認識を持っていたことは事実でございまして、そういった趣旨を申し上げたことがあるかもしれないと思っております。  それから、法制審議会の審議の過程の問題でございますけれども、この点につきましても、これは内閣提出法案として提出するためには、各省の了解が得られるということが必要であって、そのような趣旨を事務当局の説明の際に述べたということはあろうと思います。  いずれにつきましても、そういった発言が何らかの形で、正しく理解されない形で報道され、あるいは御指摘のような文章になっているのではないか。あるとすれば、今申し上げたような趣旨で申し上げたものであるというふうに考えておるところでございます。
  91. 貝沼次郎

    貝沼委員 各省が了解できない、必要なためにという話ですが、了解できないということは圧力なのですよ。いや、できないことが圧力ではないのですよ、あなたが賛成してくれないと困るのですよという話ですから。  それから、この審議会、どういう言い方をしているか、今の話だとよくわかりませんね。だけれども、これは大変な、なぜ、突如という話が今ありますね、突如。一番この秘密文書、今現代型訴訟と言われているときに、これが出されるのが一番問題なのですから。ただそのことはわかり切った上で、ずっと何かこの結論を出さないで、出さなかったのか議論しなかったのか、そこは私は入っていませんからわかりませんが。だけれども、ここの審議会のメンバーが、突如として出てきた、ここのところがどうしてそうなったのだ、一番大事なところが。そうして今度は、そこに参加しておった人が、不愉快であった、これはただごとではないですよ。  ですから、どうですか。今局長が答弁なさいましたが、まずひとつ、この国民の疑惑、国民に対して明快に説明する必要があるわけですが、そのためにも、この議事録、これを当委員会提出していただきたいと思います。そうしなければわかりません。この審議の経過がわからなければ、これはどうして入ったかがわからなくなる。  したがって、この議事録につきましては山口委員の方からも要求しておりまして、委員長いろいろやっていただいたわけでありますが、私からもこれを御要請申し上げたいと思います。委員長には、そのことにつきまして、手続をよろしくお願いしたいと思います。出してくれますか。
  92. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 法制審議会におきましては、総会及び部会につきまして議事録が作成されておりますが、その取り扱いにつきましては、昨年九月二十九日付の閣議決定を受けまして、本年二月二十六日、審議の公開の是非について検討を行いました結果、会議における独立かつ公正な立場からの自由な討論を確保する等のため、従前どおり非公開とすることとするけれども議事要旨を作成して公開するというふうに決定されております。  このような事情がございますので、法務当局として議事要旨を提出するということができるということで先ほど、今御指摘の対応をさせていただきましたが、議事録自体を提出するということは困難であるというふうに考えております。
  93. 貝沼次郎

    貝沼委員 そういうことを言うと、初め決めた、この会議録はという条文を盾に言っておるんですけれども、その後公開することになるんでしょうが、とにかくそういうことばかり言っているとやはり隠しているということになるんですよ。  要点といったって、だれがどの頭で要点書いているかわからないんです、わからない。ぐあいの悪いことなんか書かないですよ。それが今の行政の体質なんだ。みんなそこが問題になっているわけでしょう。そこへもってきて、公務秘密文書の必要不必要、いわゆる必要性については、その判断権は行政が持つ、こういうことにしようという話ですから、これは国民はそう納得しません。  したがって、本当に法務省に誠意があるならば、できるだけそれに近い、そういうものでこたえるべきだと思いますが、いかがですか。
  94. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 申しわけございませんが、私、法制審議会の議事録について直接所管する立場にないわけでございますけれども、各種審議会の議事録といったものの公開をどうすべきかということも、これは現在検討されております行政情報公開の中の議論一つであろうと思っております。  したがいまして、そこでどういうことになるかという問題があるわけでございますが、現段階におきましては、閣議決定の趣旨を踏まえて、今申しましたような取り扱いを法制審議会として決定しているところでございますので、御理解を賜りたいというふうに思います。
  95. 貝沼次郎

    貝沼委員 委員長さん、こういうわけで、まだ本当はちょっと細かいことを聞かなきゃいけない。例えばどういう話でまとまらない——じゃ、一点だけ聞きましょう。  こうしないとまとまらないと思いますという意味の話なんですけれども、これだとなぜまとまらない、ほかのことだとなぜまとまらない。まとまるとかまとまらないとかということは普通ないんです。この法案で御理解いただきたいというのが普通なんです。ところが、これでないとまとまりませんとかという話は何かやはりおかしなものがあるから、その説明される人がこれでないとまとまらないと言われたら、じゃ、うんと言わなきゃいけないのかな、何か別なものがあるのかな。そこに圧力性を感じるのですよ。ですから、その中身は何ですか、ちょっとそこだけ教えてください。
  96. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 まとまらないという問題につきましては、これは先ほど来申し上げておりますとおり、行政情報公開あり方ということについて行政改革委員会等の場で幅広い議論がされている、それを、その議論を待たないで、今の段階で、民事訴訟の場面においてそれを先取りするような改正案というものを今の時点でまとめることは困難である、そういう観点からの御議論でございます。
  97. 貝沼次郎

    貝沼委員 私の言っているのは違うんです。  あなたがいろいろとこの法案の説明に歩いて、説明をした。それで、この法案で何とかやらしてくれと説明をした。当たり前ですよ、そんなことは。当たり前なんです。それから、審議会にも説明をした。そうしたら、突如出てきたのは全然先ほどからその理由がないんですけれども、とにかく説明をした。ところが、みんな不快感を持った。そこにおった人はそんな素人じゃないですよ。御存じのように、みんなそれだけのメンバーですよ。その方々が疑問に思うということは、そのやった行動について疑問に思うということは、これはただごとじゃないんです、それで決まっちゃっているんですから、そこで。それを今度は、ほかのところへ行って説明に歩いているときに、やはり無理を押しながら説明して歩いているんですよ。  ですから、その疑問にあなた方、そういう、これはかなり無理だという感じが相手方はあったなという感じはなかったんですか。
  98. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 今おっしゃっている相手方というのがどの相手方を指しておられるのか定かでないんですが、法制審議会のメンバーの方であるとするならば、それは、何らかの圧力といったようなものを法制審議会のメンバーの方が感じられたということは、それは断じてないだろうと思います。それぞれの委員の方がどういう受けとめをされたか、その内心は推しはかるすべもございませんけれども、私どもとしてはそんなことはないであろうと確信しております。
  99. 貝沼次郎

    貝沼委員 私は法務省を信頼しておるんです。だから、ほかの省庁、具体的には今厚生省は随分言われていますが、そういう、法務省おまえもかみたいなことを言われないように、ぜひ、真実というものをきちんと出すことが信頼なんですから、それをお願いしたいという気持ちで申し上げているわけですから、誠実にお答え願いたいと思います。  それで、突如だけ、じゃどうしても聞いておかないといかぬですね。なぜ突如、このときぽんと出てきたんですか。
  100. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 十二月一日という日でございますが、この文書提出命令の要綱案について、現在の条文に近い形で提示されたのが、しかも書面が小委員会の場で提示されたのが平成七年の十二月一日であったということでございます。  しかしながら、その実質、すなわち文書提出命令の対象文書を一般化する、一般義務化するという場合には、その前提としてそれを拒絶することができる事由が、現行制度のもとにおける証言拒絶の事由と横並びという形で実現するという方向議論がされてきたのはもっと前の段階からでございます。それが条文形式に近い形で出てきたのが十二月一日ということでございます。
  101. 貝沼次郎

    貝沼委員 まあ、いろいろと説明はできるんですよ、幾らでも。だけれども、そこに出ておった人が、突如出てきたとみんな言っている。  そこで、これはここで議論しても仕方がないことですから、委員長さんにお願いいたしますが、何らかの方法で、当委員会の名誉でありますから、これはそこの審議会のメンバーの方々に、どういうことだったのか、ひとつ何とか確かめられる方法を御検討いただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  102. 加藤卓二

    加藤委員長 後日理事会に諮って決定さしていただきます。
  103. 貝沼次郎

    貝沼委員 ありがとうございます。  それでは、次の話は、宇佐美先生が、三月十四日の内閣委員会で、情報公開との問題で質問がありました。そのときに、宇佐美議員の質問に対して法務省官房参事官は、宇佐美先生行政委員会と打ち合わせを行ったのかとただしたのに対しまして、官房参事官は、法令協議を行わせていただいた、こう答弁しております。これは議事録で確認しております。したがって、これはいつ、だれと、どんな協議をされたのでしょうか。
  104. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 私、本人から聞いておりますところでは、このとき突然の御質問でございましたので、必ずしも適正な答弁であったかどうかという問題はございますけれども、今回の法案内閣提出法案として提出するに際しては、通常どおり、いわゆる法令協議という形で、法務省から各省庁に案文を示して協議をしたわけでございまして、通常協議をする相手方である各省庁に、通常どおりのそういう協議をさせていただいたということを答弁したというふうに聞いております。
  105. 貝沼次郎

    貝沼委員 どういう内容で、だれとやったかと聞いているのに、通常どおり説明した、それじゃ話にならないのですよ。もうちょっと答えてくれませんか。  それで、なぜこれを聞いているかといいますと、この行政委員会の方は情報公開の方と関係していますね。そのいわゆる非開示事項の基準が、これがどこに設定されるか、もちろん国会が決めるのですけれども、その案がどういうふうに設定されるかということが議論されているさなかにこの民訴法の方が出てきた。民訴法の方は、行政官庁秘密性判断はゆだねられておりますから、したがって、これに合わせられたら大変だな。あなた方は、いや、できたら合わせるのですよと言ったって、できるものが何かと聞いてみたらわからないというのですから、それはもう話にならないのですけれども、これができているのです、今できるのです。それに合わせられたら大変だなというので、両方の官庁の方はどんな話をしたのだろうかな、これが関心事なのですよ。そうしたら、いや、通常どおり。何かよくわかりませんけれども、だれとどういう内容のお話を協議されたのですか。
  106. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 先ほど、担当者の答弁質問に必ずしも対応していなかったおそれがあるということを申し上げましたが、結論的に申し上げまして、行政委員会の事務局と直接この問題について相談をし、協議したということはないということでございます。  通常のルートで総務庁あるいは総理府といったようなところにも法令協議をしておりますが、行政委員会事務局そのものと相談をしたり、行政委員会事務局そのものに協議をしたということはないということでございます。
  107. 貝沼次郎

    貝沼委員 そうすると、ここでは、秘密性判断の基準になるいわゆる、今回は監督官庁の承認ですべて決まるのですけれども、そういう中身について、行政情報について、関係しておる人は総務庁あるいは総理府も行ったと言っておりますから、いろいろな方と会ったのでしょうけれども、そういう内容の話は何もしていなかったのですかしたのですか。
  108. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘のような話はしておらないということでございます。
  109. 貝沼次郎

    貝沼委員 していない。まあ私はわきにおらないわけですから、していないと言ったら、ああ、そうだろうなとしか思いようがありません。  しかし、先ほどから、新しい法律をつくるときは、やはりそこだけが突出するわけにいきません、今までの、今ある現行法のいろいろな法体系があります、あるいは基準もあります、だからそういうものに合わせて私どもはやったという趣旨の話がありますね。そうすると、情報公開法制定のときの存在する法律、それはこの民訴法じゃないですか。裁判のところでどうせ争われるのですから。そうすると、これがやはり基準になっていく可能性は十分あるんじゃないかと私は素人ながら思います。  ある方のお話ですと、先に制定する法律に後から制定する法律が矛盾しないように配慮するのが従来の手法だが、新民訴法と情報公開法関係も、法令協議の結果、情報公開法を新民訴法に合わせるような話になるのではないかと心配をしていると。これはもうたくさんありますよ、心配は。  また、他省庁の中にも、情報公開法による行政情報開示は新民訴法の文書提出命令と矛盾しない形で行われるはずだと理解しておる、省庁の名前も書いてあるのですけれども、ここでは言いません。そういうところもあるようですが、こういうことはお考えですか。何か御存じですか。
  110. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 今御指摘のような文書は私承知をいたしておりませんが、御指摘の問題につきましては、これは、民事訴訟法文書提出命令の制度と今議論されている、あるいは既に条例という形でできております行政情報を一般国民に開示するかどうかという問題とは、相互に関連性は、中身において関連性はございますけれども、制度の目的は違うということでございますので、民事訴訟法現行の基本的な枠組みの中での法律の制定が行政情報公開あり方に対する議論に影響を与えるという関係には一切ないというふうに考えております。
  111. 貝沼次郎

    貝沼委員 影響を一切与えないなんて、そんなことないですよ。決めなければならないんですから、情報公開の方は。ここからここは国益その他で出してはいけませんという非開示事項をちゃんと決めてあげなければ情報公開にならないのですから。そうでしょう。片や裁判では、行政判断でばんばん行く、こっちの方は、今度は、ここは行政判断するとかしないとかにかかわらず、国会の名において決めてあげますよという情報公開でしょう。全然違う。それは理論は違うのです、建前は。だけれども、一人の人間が何かをやろうとするときは同じことになってくるんです。私は一国民として心配しているのですから。  ところが、その情報公開法の行方そのものが方向もよくわからない、先ほどの答弁ですね。ですから、これは何を審議しているのか、お互いにわからなくなってくるのですけれども、要するに、これが参考に絶対にならない——今の民訴法のこういう基準というものが参考になるんじゃないかという考えと矛盾しない形で行われるのじゃないかとある省は言っているわけですから、そういうことはあり得ないということを、どうですか、大臣、明言できますか。
  112. 長尾立子

    長尾国務大臣 ただいま民事局長お答えしたとおり、私もそのように思っております。
  113. 貝沼次郎

    貝沼委員 局長は明言していないのですよ。明言してください。
  114. 長尾立子

    長尾国務大臣 今回御審議をいただいております民事訴訟法規定情報公開の今後の法律の制定の内容に影響を直接お与えをするというようなことはないということを申し上げました。
  115. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから、今回のこの法律案ができ上がるまでいろいろ審議されたことは、私敬意を表しております。  しかし、まだやはりやり足りないところがあるんじゃないか。まあ人間のやることですからそれは幾らもあるのでしょうけれども、それにしても重要な問題として、例えば各自治体に情報公開条例がありますね。それから、これから制定されるであろう情報公開法、これはまだわからないというわけですからそれはいいですが、それから、行政庁が拒絶しても別途訴訟によって開示されてくる、こういう自治体のものがありますね。  こういうことを考えると、先ほどからちょっと議論が出ておりましたが、この辺の整合性の話ですね、これが詰まっていないんじゃないか。はっきり言えば、法制審議会における公務秘密文書情報公開条例、あるいはやがてできるであろう情報公開法との関係議論というものが、はっきり言って不十分に終わっているのではないかという感じがいたしますが、この点はいかがでしょうか。
  116. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 先ほど来申し上げておりますように、国民あるいは市民に対する直接の行政情報開示の制度と、民事訴訟法文書提出命令の場面における裁判所の要請と行政庁との協力関係あり方というものとは別個の目的を持った制度でございますので、情報公開に関する条例があるということと、民事訴訟法上、現行法のもとでは一般義務化されているわけではないわけでございますが、それが論理的に矛盾しているという関係にあるというものではないと理解をいたしております。  ただ、行政情報公開あり方に対する議論、その動向、そういった場面における考え方というものを民事訴訟法文書提出命令の場面でも十分考えながら検討していかなければならない問題である。そういう関連性は持っているけれども、制度上当然に論理上結びつかなければいけないという性質のものではないというふうに考えております。
  117. 貝沼次郎

    貝沼委員 私、難しい話はわからないのですよ。それで、早い話が、地方自治体の情報公開条例、これがうっかりすると民訴に追随するのではないかという心配があるのです。  例えば情報公開制度に伴う不服申し立てに関する訴訟でも、監督官庁の判断公務秘密文書提出をされず司法判断が及ばないことになる。情報公開制度に伴う行政不服審査でもインカメラ手続を採用しないようにするなど、情報公開法が新法に追随するのは必定ではないのかということ。  それから、今自治体の情報公開条例でもインカメラでやっているところもあるわけで、そういうところはちょっと心配なのですね。したがって、この辺はどう考えたらよろしいのでしょうか。
  118. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘のいわゆるインカメラ手続の対象になるかどうかということは、これはそのもととなっております当該行政文書秘密性に関する判断裁判所がするのか行政庁がするのかということに由来するわけでございまして、現在の法律案考え方は、行政庁が、監督官庁が判断するということでございますので、そこでインカメラ手続にも入らないという措置を講じているところでございます。  したがいまして、その審査の対象になるということを前提にして考えればそれはインカメラの対象となるということを検討する必要がある問題でございまして、今の点についても、民事訴訟法規定が条例の規定あり方に影響を及ぼすという関係にはないものと思っております。
  119. 貝沼次郎

    貝沼委員 ないものと思うというのはどう受け取ればいいのでしょうね。ないのじゃないですかという話ですね。そういう心配がいろいろと国民の側から出てくる。それほど知らされていない。わかりやすくというけれども、これは余りわかりやすくないですよ。  それから、いろいろありますが、公文書秘密性の、これは後にしましょう。先ほどちょっと話が出ておりましたが、どうも済みません、それでは判断権者の方。  公文書秘密性判断権者、これはこれでいいのかという話なのですが、現在の公文書提出命令手続での最大の論点、これは秘密性判断権者をどこに置くかということが一つあると思いますね。  それで、監督官庁に任せっきりにするか、今任せっきりになっている。任せっきりです。あるいは司法のチェックができるようにするか司法に任せるのか。私らの頭で考えると大体そういう判断になるのですが、そこで、これは司法判断権を帰属させたならばどんな不都合があるのでしょうか。
  120. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 私ども現行の制度の枠組みは、秘密性判断は当該所管行政について責任を負っている官庁がするという制度になっている、それをすべて裁判所判断するようにするということは、これは三権の権限の権衡を大変大きく動かすものであるということを踏まえて慎重な検討が必要であるというふうに考えているところでございまして、裁判所判断するという制度が絶対にあり得ないというふうに申し上げているつもりではないわけでございます。  ただ、現段階ですべての行政上の秘密について裁判所に一挙に判断権を移すということについては、今行政情報公開制度に関していろいろな秘密があるということ、それについての取り扱いの部分をどうするのが適当であるのか、あるいはそういう必要がある文書がどういうものであるのかといったことが議論されているところでございますので、そういう議論を先取りして今民事訴訟の場面で一定結論を出すということは困難であり、適当ではないのではないかということを申し上げているわけでございます。
  121. 貝沼次郎

    貝沼委員 ですから、ここの議論を聞いていますと、あるものは改革しなければならないから先に行くんだ先に行くんだという話。それで具体的な話になると、いや、今までこうだからそれに合わせなきゃいけない。こんなアクセルとブレーキを一緒に踏んでいるようなことでは、七十年ぶりの大改革というのは、結局片仮名から平仮名に変わって、そしてみんなが反対するものがくっついちゃったという感じになってしまったら、いいところは評価されないですよ。  私は先ほど申し上げましたように、おおむね大変結構だと言っているわけですよ。だけれども、こういう部分が問題だと言っている。その部分について何とかならないか、国会ですから、何とかならないか、国民皆さん納得いくようなものにならないかという議論をしているわけですよ。ところが役所の方は、いや、提案したんだから私はそれ以上のことは言えない、後は国会で何とかするなら勝手にしろという話なんですけれども、とにかく開かれた国会というのは、あるいは国会のあり方からいっても、ここの議論が全部生かされて、そしてよりよい法律になっていかなきゃならぬわけですよ。そういうところから私は申し上げているのですが、何が不都合があるかと言うと、いや何とかかんとかと言っているだけで、結局何が不都合だったのですか。
  122. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 行政情報公開の場面でも議論されておりますように、その文書があるかないかということを示すこと自体、公表することによって公益が害されるというものもございます。それから、いわゆるインカメラ手続の中に入れること自体が問題であるというような文書もあるという問題が指摘されておるところでございます。そういったものの議論を全然踏まえないで、いきなりすべての情報について裁判所秘密性判断をするということについては、そういった観点からの問題が生ずるおそれがあるというふうに思います。  それから、公務員の職務上の秘密に該当するかどうかを判断するためには、当該情報についてそれを見たり審査したりするだけでなくて、その周辺の情報も踏まえて判断することが必要になる。そこで、その民事訴訟における付随の手続である文書提出命令の申し立てについての審理の中において、それら周辺の情報についての秘密の漏えいという危険もあるというような問題があるというふうに考えております。
  123. 貝沼次郎

    貝沼委員 ですから、そういう課題があるということなんですよね、やるとすれば。司法判断権を与えればそういういろいろなことをやらなければなりませんということであって、それをクリアできれば不都合でなんかないのです。そうでしょう。そういうことだと思いますよ。今は困るのかもしれません。だけれども、理論的に不都合ではないです、それを整えたらいいのですから。  そこで、ではうんと極端に、今公文書提出の可否という問題を局長御発言になりましたから、この可否問題について、裁判所による司法チェックは全くすべて排除する法律というのは考えられますか。
  124. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 すべてという趣旨がどういうものであるか定かでございませんが、改正法案におきましては、今回新たにつけ加える、一般文書化する四号でございますが、この文書についてだけ、今御指摘のような判断権の配分という制度で法案提出させていただいているわけでございます。三号の場面で、その三号に規定する利益文書法律関係文書に該当するかどうかという判断の一要素として秘密性というものが問題になっている場合には、現在の実務の運用におきましてもその秘密性判断について裁判所が介入するという取り扱いがされている、これは動くわけではございません。  それから、将来の方向という点についての御指摘でございますれば、これは情報公開に関する議論、その結果というものを踏まえて考えるべきものであろうと考えております。
  125. 貝沼次郎

    貝沼委員 だから、司法のチェックのないものなんか考えられないわけですよ。そこで、だから今回の場合も、とにかく監督官庁がだめと言ったら出てこない、この姿勢。いや、これはどうしても国防上、日本国が大変なことになりますからひとつ出さないようにお願いしたい、出さなくてもいいようにお願いしたい、こう言って、裁判所の方が、いやよくわかりましたと。三権といったって、三権分立はばらばらじゃありませんからね。そうでしょう。分担しているだけでしょう。  先ほどいろいろな質問がありましたが、判断したから裁判所がすべて責任で云々という話じゃないですよ。国会だって裁判所だって行政府だって、全部責任はあるわけですよ。また、一人の人が判断しているわけではない。いろいろな人でやっているわけですからそういう極論というのはないのですが、とにかくやはり、しかも現時点においての議論ですから、今行政情報が出てこないということは世界の話題ですよ、日本の場合。そこへわざわざ逆なでするみたいに、いや、監督官庁が判断すればよろしいんだということを言う。これはもう納得いきませんよね、一つは。  かといって、行政を信頼してないというわけじゃないのです、私は。信頼していますよ。それは信頼しておりますが、なぜ承認という形でばさっとやってしまうのか。もっと司法がその判断のために加われるそういう形、機構と言うとまたややこしくなりますから形、そういう気持ちのあらわれたものというものは考えられなかったのか、あるいは考えてはいけないのですかということをお尋ねしておるわけです。
  126. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 委員指摘のとおり、そういった問題についてはいろいろな取り扱い、考え方があろうと思います。そういったものにつきましては、先ほど来繰り返し申し上げておりますように、今後の宿題とさせていただきたいということを申し上げているわけでございます。
  127. 貝沼次郎

    貝沼委員 そういうふうに一つ一つ素朴な国民の感覚から専門家にお尋ねしてみますと、何かぎすぎすしているなと。そして、一番みんなが関心を持って、国会がもう何日この議論をやっているのですか。ほとんどが二百二十条四号ロの話でしょう。ほとんどと言ったら語弊があるかもしれませんが、大部分ですよ。これだけの議論ですよ。それも今度は、弁護士会の皆さんやらあるいは民間団体やら、もう陳情がわっさわっさ来ています。  そういう関心のあることを、この審議会が、突如出てきて決まったというのですが、突如出てきてからどれぐらいの期間、議論されたのですか。
  128. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 突如出てきたという御指摘に対しましては、先ほど御答弁したとおりで、私どもとしては突如ではないというふうに考えておるところでございます。  法制審議会の部会の要綱案の決定は本年の二月二日、総会の決定は二月二十六日ということでございます。
  129. 貝沼次郎

    貝沼委員 そうではないのですよ。突如の話はさっき聞いたのです。  だから、国会は今何日も、公聴会やったり、参考人の皆さんに来ていただいたり、各与野党の議員が一生懸命やっているけれども、その話題はほとんどここに集中しているではありませんか。それほど重大な話なのですよ。いかに専門家の集まりとはいえ、その審議会においてどれだけの時間をかけてこの議論をされたのですか。審議会のメンバーは、突如ということが頭に入っているらしいですから、どれだけの納得のいくような審議をされたのですかということをお尋ねしているのです。
  130. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 法制審議会の審議の全体は平成二年の七月からしているわけでございますが、この問題に関連する審議につきましては、文書提出命令の問題に関連する審議、これが直接対象になりましたのは平成七年の五月ごろ以降でございます。しかしながら、先ほど申しましたような、間接的な意味における行政情報の開示のあり方という問題につきましては、証言拒絶等の場面で、もっと前から議論の対象になっている次第でございます。
  131. 貝沼次郎

    貝沼委員 時間が来たので、また次の機会があれば続きをやらせていただきますが、とにかくこの秘密性判断を基本的に司法に置くべきである、帰属すべきである、私はそういう主張なのです。ところが、その議論を、いろいろ中身を聞こうとすると、何か昔の故事来歴みたいなことばかり言って、肝心かなめなところが答弁が出てこない。  これは改めてやる機会があればやるかもしれませんが、いずれにしても、今回、第二百二十条四号ロですか、ここのところは消化不良ですね。そこで、どうしてもこれを、今回、ほかのところは大部分はいいわけですから、まだ問題はありますよ、いろいろあります、本会議指摘したようにありますが、しかし、これがどうしてもだめというならば、これはそこを削除すべきだと思います。そうでなかったら、文言を変える、修正をやる、私はそれを要求したいと思っておる、これは私の個人的なあれですが。そうしなければ、国民納得いかないと思います。そういう私の決意を述べさせていただきまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  132. 加藤卓二

    加藤委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十五分休憩      ————◇—————     午後二時十九分開議
  133. 加藤卓二

    加藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。細川律夫君。
  134. 細川律夫

    細川(律)委員 社会民主党の細川でございます。  私の方から質問をいたしますけれども、これまでに今度の改正案についていろいろな審議がなされてまいりましたけれども、その審議の大部分は、文書提出命令におきます公務秘密文書の除外の点に集中をしてまいりました。この点につきましてのいろいろな疑問点などにつきましては、大体論点が出尽くしたというふうに思いますし、また問題点も浮かび上がってきたというふうに思います。  それで、私の方はこの点について、少し私の意見を交えながら簡単に質問をいたしまして、この民訴法の改正につきましてはさらにほかにもいろいろな問題点がございまして、特に上告の制限の改正につきましては、国民裁判を受ける権利というような立場からいたしましても大変問題のある改正でもあろうかと思いますので、その点についても質問をさせていただきたいというふうに思います。  まず、文書提出命令におきます公務秘密文書の除外の点につきましては、これまでのこの審議の過程におきまして、いろいろな質問なりあるいは参考人の意見あるいは公聴会での意見陳述などを聞きまして、私もいろいろな疑問を持っているところでもございます。私は、三点ばかり疑問がございますので、まずその点について申し上げておきたいというふうに思います。  今日の現代訴訟というふうに言われます製造物責任あるいは公害とかあるいはエイズのような薬害訴訟、住民訴訟、そういうような訴訟におきましては、行政管理をしております証拠というものが裁判所提出をされないことによりまして人権が救済をされなかったり、あるいは真実の発見ができなかったりというようなことが大変強い。そのことは、当事者の実質的な平等あるいは武器対等の原則の障害になっているというふうに思います。  そこで、今回の民事訴訟法改正の目的の一つが、証拠収集手続の拡充が挙げられておりますけれども、どうもこの点については、これに逆行をするのではないかというような気がいたします。  それから第二点目といたしましては、現行法の不備なところを、裁判所が苦心をしながら拡張解釈をしてまいりました。そういう文書提出命令におきます判例法あるいは裁判の実務が、今度のこの規定によって後退をしていくのではないかというような、そういうおそれがあります。  それから第三点目といたしましては、行政情報公開というものが、自治体から始まって、国の段階でも行政情報公開法が制定をされるよう準備がされているときに、民訴法の改正規定では流れに逆行するというような気がするわけでございます。  今私が感じておるところはその三点でありますけれども、そこでお聞きをいたしたいと思いますのは、この改正法の二百二十条が、これまでの現行法の場合よりも提出命令を出すのが多い、そういう説明になっております。  それは、現行法の三百十二条の一号ないし三号がそのまま規定をされて、そして新しく四号が規定をされるということですから、間違いなく広くなるのだ、文書提出命令が広く適用されることになるのだというふうに言われておりますけれども、どうも私はそうならないのではないか、実態としてそうはならないのではないかという心配がございます。  これは、もう既に今までもいろいろな方から指摘を受けておりますけれども法律関係文書または利益文書、そういう中に公務秘密文書や自己使用文書というもの、そういうものが含まれる。しかし、それが今度、四号によって規定をされることによって、それらの文書というのが四号の文書として扱われるのではないかというような危惧がございます。  それから、これまで三号の法律関係文書文書提出命令が出されていたのが、新しい規定によって今度出されなくなるのではないか、適用が狭まるのではないかというのがございます。これは、せんだっての参考人の質疑の中で私も質問をいたしましたけれども、拘置所内における暴行のときのカルテ、これの提出命令が、これまでは判例によって提出命令が出されたのが、中野貞一郎参考人は、これはもうだめだというような意見を言われておりました。そういうように、この規定によって提出命令の範囲が狭まってくる、そういうおそれがあるわけでございます。  そのほかにも、これまで文書秘密性については裁判官が直接に判断をしていたのが、これが判断ができなくなる。そして、その承認の要件というのが、公共の利益を害し、または公務の遂行に著しい障害のおそれがある場合には、これが拒否される。しかも、インカメラ手続も採用されない、こういうことでありますから、二百二十条の規定によって文書提出命令が適用されるのが拡大をされるというふうな説明がありますけれども、私はどうもそういうふうに思わないわけでございます。  そこで、質問をさせていただきますが、二百二十条の四号に掲げる文書というものは一体どういうものがあるのか。この四号の規定によって提出命令が裁判所の方から出される、そういう文書というものは一体どういうのが予想をされるのかということについてお聞きをしたいというふうに思います。  これは、二百二十条の一号から三号までに当然該当しない文書になりますし、かつ四号イからニまでの除外理由に該当しないという文書になりますから、先ほどから申し上げているように、法律文書でもなく利益文書でもない、公務秘密文書でもなくて自己使用文書でもない、そういう文書というのは、一体どういうのが考えられるのか。その点について、具体的にちょっとお聞きをしたいと思います。
  135. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 いろいろ御疑問の御指摘があったわけでございますけれども、今回の改正は、繰り返し申し上げておりますように、今までの一号から三号までに規定する文書、要するに、挙証者とある一定関係にあるかないか、当該文書の性質上そういう関係があるかないかということが大変議論の対象になっていたわけでございますが、そういう関係を何ら問うことなく、例外規定に該当しない限り新たな提出義務の対象となるということでございます。  具体的にどういうものがということにつきましては、個々の場合にいろいろなことが想定されますのでなかなか一概には申し上げかねるわけでございますが、例えば、医療事故あるいは交通事故等において挙証者の相手方、当事者である患者の診療録、通常は原告が受診した診療録、これにつきましては現行の三百十二条三号に該当するという考え方もありますが、一般的には、利益文書法律関係文書に該当しないという考え方の方が強いのではないかと承知しております。  今回の法案考え方によれば、その患者が当該事故、当該負傷等を原因として訴えを提起しているということによって医師の側の守秘義務を免除したというふうに認められることが多いと思いますが、そういうふうに認められる限り、これまでの三号文書についてのどのような考え方をとる立場においても提出義務の対象となる、一つの例を挙げればそういうことであると考えております。
  136. 細川律夫

    細川(律)委員 適用になる文書というのをいろいろお考えになって今言われたと思いますけれども、拡張になるということですからぽんぽんぽんとたくさん出てくるのじゃないかと私は思うのですけれども、もっとほかにたくさんありますか、具体例。あればたくさん言ってください。
  137. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 ただいま申しましたように、個々具体的な事情によってイからニまでに該当するかどうかということが変わってくる問題でございますので、一般的にこういう文書はということを申し上げるのはなかなか難しいというふうに考えております。
  138. 細川律夫

    細川(律)委員 この問題は前々から指摘をされていたところでありまして、二百二十条が新しく四号を加えたということによって証拠収集が拡充されるかというと必ずしもそうでない、逆に心配をする点がたくさん出てきているというふうに私には思えてならないわけでございます。  そういうことで、私自身は、この文書提出命令の件につきましては先ほど申し上げたようないろいろな疑問があるということで、先に進ませていただきたいというふうに思います。  次に、今度の改正によりまして上告の制度というのが大変大きく変わっております。これまでは、上告の理由といたしまして、憲法違反のほかに、判決に影響を及ぼす法令違反というのが上告理由に認められておりました。ところが、改正案におきましてはこれが削られるということになりまして、それにかわりまして、法令の解釈に重要な事項を含むというふうに判断をしたときには最高裁の方で上告を受理するという裁量上告という制度になっております。  この改正によりまして、これまでに上告ができた、上告することによって最高裁判所で審判を受けた、そういう事件というのが大変大幅に制限をされて、審判を受けることがないようになってくるわけでございます。  これは、採用した理由というのは上告事件数が多くてとても十五人の裁判官では仕事が忙し過ぎるということにあるようでございますけれども、しかし、国民立場に立ちますと、最高裁を終審といたします三審制というものを侵すことになりまして、ひいては国民裁判を受ける権利をも侵害をする可能性が強いというふうに思うものでもございます。  したがって、この制度を採用するに当たっての理由をまずお聞かせいただきたいと思います。
  139. 山崎潮

    山崎(潮)政府委員 ただいま御指摘の上訴制度全般の見直しの理由でございますが、最高裁判所は本来、憲法あるいは法律の解釈を統一するという機能がございますが、これを十分に発揮してもらいたいという点からこのような改正を加えていったわけでございます。  具体的には、現在、議員御指摘のように、憲法違反あるいはそれ以外の絶対的上告理由あるいは判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反、この三つが上告の理由とされております。しかしながら、最近は、もちろんバブルが終わった後の事後処理という点もございますし、また今後法律判断を仰ぐ事件が非常に多くなってくるという傾向にございまして、事件が大変増大をしております。  その中で、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反という理由の中には、本来、最高裁判所判断することはできない事実認定に対する不満というものが相当数含まれております。そういうことから非常に最高裁判所の負担が多く、本来、重要な法令解釈あるいは憲法判断、こういうものをじっくりやる時間を奪われているという実情にございます。そこが第一点でございまして、そこを本来の姿に戻したいということから上告受理という制度を設けたわけでございます。  もう一つの点は、これは判決ではございませんで決定の関係でございますが、決定事件に関しましては最高裁判所には特別抗告というルートしか行かれないわけでございます。この特別抗告というものにつきましては憲法判断しかできないわけでございます。通常の法律判断はできないことになっております。  しかしながら、最近、非常に、民事執行法あるいは民事保全法それから家事事件、こういうものを通じまして大変重要な解釈問題が生じるわけでございますが、これが高等裁判所が最終の判断のところだということになりますと、典型的な例では東京高等裁判所と大阪高等裁判所で解釈が全く反対で結論が出まして、そのままで終わってしまっているという場合もあるわけでございます。非常に法令解釈が統一されませんと世の中の実務が動かないという支障があるわけでございますので、こういうものも最高裁の責務としては積極的に取り入れるべきであるという考えが出てまいりまして、今回の法案につきましては、決定事件に関しましても必要なものは最高裁判所判断をしていただくということから、許可抗告という制度を設けまして、その分はむしろ積極的に拾い上げるという思想でできているわけでございます。
  140. 細川律夫

    細川(律)委員 今度の改正の大きな理由というのは、何といっても上告事件数が多いということで、裁判官の仕事が過重になり過ぎているということだろうと思います。  ただ、国民の側からいいますと、事件がたくさんあって裁判官がなかなかこれに対応し切れない、忙し過ぎるというような場合に、一体どういうふうにしたらそれが解決がつくか。今回のように制度を改正をして、そして上告される事件数を絞り込むというようなやり方もあれば、一方では、裁判官の数をふやす、足りなければ裁判官の数をふやして、そして十分な審理をしていくということも十分考えられるわけでございます。  特に、最高裁判所裁判官が十五人であるということについては、これはもう前々から少ないのではないかというような指摘がされておりまして、明治憲法下では三十人から五十人の最高裁裁判官がおられたわけでありまして、そういう人的な数をふやす、裁判官もそうですけれども、またあるいは調査官の数もふやすというようなことで問題も解決できるのではないかというふうに今私は思います。  いずれにしましても、上告の事件数が多いということは、裁判に対して、結果に対して国民の不満があるから最高裁に上告をするわけでありまして、数をふやすということでの解決ができなかったのか。私は余りにも裁判の効率ばかりを考えた今度の改正になっているのではないかというふうに思いますけれども、その点、裁判官の数、適正な数とか、そういうことも踏まえて、この点についてはどういうふうに考えているかお答えいただきたいと思います。
  141. 石垣君雄

    石垣最高裁判所長官 代理者今回の改正趣旨が、先ほど法務省の方からもお話がありましたように、真に最高裁判断するにふさわしい事件に精力を集中できる環境を整えるという観点からのものであるというふうな理解を私どももしておりますが、現行法の制度を改めて、法令違反について上告受理の申し立て制度を導入して、法令の解釈に関する重要な問題を含む事件については上告審として受理するかどうかを判断するこの上告受理制度といいますのは、先ほどの改正の目的からしても必要不可欠なものであろうというふうに考えておるところでございます。  ただ、今委員から御指摘がありましたように、例えば最高裁裁判官の増員やあるいは調査官の増員などの人的な拡充という方策、これも一つの方策としては当然考えられないわけではないわけでございますが、御承知のとおり、大法廷は全員の裁判官で構成をされるものでございます。それで、この大法廷を適切に運営するという観点から見ますと適切な規模というものがおのずからあろうかと存じますので、裁判官の増員にはおのずから制約があるのではなかろうかということが一つでございます。  それから、より基本的には、やはり裁判官の労力が、先ほど申し上げたような、最高裁判断すべき重要な事件だけにかけられているかどうかという、この今問題になっている問題点を十分検討しないままに裁判官の増員を検討するというのはいかがなものかという感じがしておるところでございます。  なお、調査官等のお話がございましたので若干申し上げたいと思いますが、民事、行政事件の調査を担当する最高裁の調査官というのがございますが、この数につきましては、昭和三十年代当時、正確な資料は十分掌握できませんが、三十年代の当初は十名程度であったようでございますが、現在、平成八年四月では二十一名になっております。事件の動向によってこれらはまた動いていくものではなかろうかというふうに考えておるところでございます。
  142. 細川律夫

    細川(律)委員 その点につきましては、今後裁判官の増員などについてはいろいろ検討もしていただきたいと思います。  最後の質問になりますけれども、この上告受理制度の、三百十八条でございますけれども、これの一項で、法令の解釈に関する重要なもの、こういうことで、法律、政令あるいは規則などに下級判決、下級審の判決でそういうのがあれば上告が受理をされるということ、そうでなければいわゆるもう門前払いに全部なるわけなんです。そこでちょっと具体的になりますけれども、こういう場合には上告にならないのではないかということで心配な点がありますから、この点について聞いておきます。  高等裁判所が法令に違背をして誤った結果、主文の判決を下した場合、その違背が単なる法令適用の誤り、あるいは重要でない法令解釈の誤り、あるいは契約、約款等の解釈の誤り、あるいは審理不十分、あるいは釈明が不十分、あるいは事実認定につき社会通念上明白な誤り、経験則上の違背があったような場合、こういう場合には受理をされないのではないかということで心配の向きがあるのですけれども、この点どうなりますでしょうか。
  143. 山崎潮

    山崎(潮)政府委員 ただいま御指摘の点につきましては、確かに、この上告受理制度は法令解釈につきまして重要な事項を含んでいるかどうかがポイントになるわけでございます。したがいまして、重要な解釈を含んでいるものは受理をされる、含んでいないものは不受理、こういう形になるわけでございます。  しかしながら、いずれにしましても、受理、不受理、どちらでありましても、最高裁判所裁判官判断をするという構造は全く変わっておりません。その判断を下す仕方が違うということでございまして、不受理ということになるか上告棄却ということになるかの差でございます。そこのところは御理解をいただきたいと思います。  ただいま先生が御指摘になられましたいろいろの事例でございますが、そういう点につきましては現行法の解釈と変わりはございませんが、その中に解釈上重要なものを含んでいるかどうか、そこで決まってくるわけでございまして、もちろん適用の場面、解釈の場面、両方含まれますけれども、そういうことで決まってくるわけでございます。  念のために申し上げますと、経験則違背の問題もございますけれども、これは現在の法律の中でも法令の解釈に関する事項であるというふうに理解をされておりまして、この法案におきましても、その中に重要な事項を含んでいるということになれば上告が受理されるということで、その重要性の問題だけが一つの要件がつけ加わるだけでございまして、そのほかの解釈は同じでございます。
  144. 細川律夫

    細川(律)委員 時間が参りましたから、これで終わりにいたしたいと思います。ありがとうございました。
  145. 加藤卓二

  146. 枝野幸男

    枝野委員 まず最初に、午前中の質疑に関連いたしまして民事局長にお尋ねさせていただきます。  午前中の質疑の中で、この法案文書提出命令の話について、事務次官会議が通らないということを理由に何とかこのままでという話をしたのかどうかという話の中で、受け取る方が違って受け取ったのじゃないかというような趣旨の御発言がございました。まさにそのお話を伺って、事務次官会議が通らないからという理由でこのまま通してくれと言われたということは、私はこの委員会でも公言しておりますし、私が聞き方を間違えたという御趣旨でございますか。
  147. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘の新聞報道の取材源がどなたであるのかということは、私ども承知しておりませんでした。  正確にどのように申し上げたか今定かに記憶しておりませんが、先ほど申し上げました趣旨は、先ほど御答弁申し上げましたような認識を持っていたことは事実であって、そういう趣旨のことを申し上げたことはあるかもしれないと。要するに、そういう趣旨で申し上げたということがどういう原因であるかということはともかく、そういう発言と受けとめられたのかもしれないし、また、記者の方で別の受け取られ方をしたのかもしれないし、あるいは私の発言の仕方が適切でなかった、あるいは誤解を招くような発言の仕方をしたのかもしれませんし、いずれにいたしましても、何かの原因で私ども考えている真意が伝わらなかったということが考えられるのではないかという趣旨で御答弁したつもりでございます。その答弁の仕方、表現に失礼な点があったとすれば、おわびを申し上げたいと思います。
  148. 枝野幸男

    枝野委員 時間もないのでこれだけやっていられませんので、きょうの速記などが上がった段階で、場合によっては理事会で御議論いただきたいと思いますので、あらかじめ委員長にお願い申し上げておきます。
  149. 加藤卓二

    加藤委員長 はい、承知しました。
  150. 枝野幸男

    枝野委員 次に、文書提出義務部分についての絡みで一点確認をさせていただきます。  誤解はないとは思いますが、民事訴訟法法案ということでございますので、いわゆる市民対市民、企業対市民ということがどうしても民事訴訟法という題名からは想定されますけれども、この民事訴訟法規定は、例えば国が被告の損害賠償請求事件、国が当事者の事件にも適用になる、これは間違いございませんね。
  151. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 そのとおりでございます。
  152. 枝野幸男

    枝野委員 そこのところの認識が若干御答弁の中でずれているのではないか。国が第三者として持っている情報を出すという話と、国が当事者として、まさに被告として情報を求められる場合というようなこととでは意味が大分違いますし、その両方をカバーしている場合には、必要性の高い、国が当事者、被告である場合というのを前提に物事を考えていかないと間違えるというふうに思います。  さてそこで、従来法務省がずっと御答弁になっている話を仮に前提として考えますと、大変な矛盾が生じるのではないかと思っております。  二百二十条一号から三号までは従来どおりである、四号、新しく加わった部分についてだけ司法権が及ばないという御答弁であります。そして、なぜ四号の部分について裁判所判断にしないのか。情報公開法ができるのを待って、情報公開法で、出していい情報と出して悪い情報をいろいろ議論しなければならないから情報公開法を待たなければならないというお話をされています。  しかし、もしも四号の部分について情報公開法ができるのを待って、そこでいろいろな基準を定めてもらわないと話が進まないという話であるならば、三号だって一緒ではないですか。三号と四号の違いは、たまたまその当事者との法律関係、あるいは利益文書に当たるかどうかという要件の違いは三号と四号ではありますが、行政サイドから見たときに、秘密であるかどうかという問題点は、三号文書であろうと四号文書であろうと、例えば国の命運を決するような重大な外交・防衛上の秘密という文書が三号に当たる場合もあり得るわけでありますし、四号で出てくる場合もある。あるいは、個人のプライバシーにかかわる、第三者のプライバシーにかかわる重要な問題が文書にある場合というのも、三号に絡む場合もあるし、四号に絡む場合もある。  もし皆さんがおっしゃる理屈で、情報公開法ができるまでは判断基準をはっきりさせるわけにはいかない、判断基準がはっきりしないのだからという理屈でおっしゃるのだったら、三号についても一緒にしないとおかしくなりませんか。
  153. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 三号につきましても御指摘のような解釈、運用がされておるわけでございますが、これはあくまでも現行の三百十二条第三号の文書範囲を画する基準として文書秘密性ということが考慮の一事情というふうになっている、そういう場面について、裁判所の解釈、運用として、その場合には秘密性判断についても立ち入るという取り扱いが一般的であるということであると承知しております。  そういうことでございますので、三号の文書とそれからそういった一定法律関係が何らない、そういう関係のない四号の文書とで実際問題として取り扱いに差があるということが必然的に論理矛盾であるということではないと理解しております。
  154. 枝野幸男

    枝野委員 それでは、こう聞きます。短くお答えください。  従来の三百十二条三号については秘密かどうか、例えば従来の三百十二条三号の中にも、場合によっては防衛秘密に当たるような非常に高度な秘密もあるかもしれない。それらは従来の三百十二条三号も今度の二百二十条三号も全然規制はしていないわけですから、枠ははめていないわけですから、いろいろなものがある。高度に政治的なものもあるし、高度にプライバシーにかかわるものもある。それについては裁判所秘密かどうかを判断する能力があるというのが前提でないと、三号について今のままの規定ではおかしくなりますね。  裁判所に能力はあるわけですね。そうですね。短くお答えください。
  155. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 結論を申しますと、判断される能力はある、そういう判断をすることの適否の問題であるというふうに思っております。
  156. 枝野幸男

    枝野委員 では、何で四号だけ情報公開法ができるのを待たなければならないのかというのは、全く理屈が通らない。これは高度に政治的なもので裁判所が立ち入らない方がいいだろう、これは高度にプライバシーにかかわるから入らない方がいいだろう、そういう判断を今でもちゃんと三号文書についてできるのだったら、その基準を基本的にはすぽっと四号のところに持ってきて、一般文書だからその秘密範囲を若干広げてもいいかなというぐらいの判断はあるかもしれませんが、それにしても情報公開法を待たなければ判断できないなどということは到底考えられない。もしも四号ロを正しいとおっしゃるのだったら、三号にもむしろかぶせないとおかしくなります。そういう指摘をさせていただきたいと思います。  それからもう一つ、これも多くの委員皆さんは誤解がないとは思うのですが、念のために申し上げます。  例えば、ロをなくしてしまって、ほかの民間の場合、私人の場合と同じようにしようという修正の議論が今なされておりますが、そうなった場合、例えば現行の案の二百二十条四号ハの場合、これは民間人の秘密、例えば弁護士とか医者の秘密についてです。これについては司法審査が及ぶということになっています。  例えば、地方裁判所が普通第一審です。地方裁判所証拠提出が問題になります。地方裁判所裁判官のところにこれは証拠として出してください、ところが相手方は、例えば弁護士や医者が、いや、それは職務上の秘密だから出せませんということを言ったときには、裁判所判断をして、いや、それは秘密ではありませんとか秘密ですとかという判断をすることになります。仮に、では、それは秘密ではありません、お医者さん、弁護士さん、出してくださいという判断になったときは、その地方裁判所裁判官の決定だけで結論は固まるのですか、出ることになってしまうのですか、今の法制度は。違いますね。
  157. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 提出命令に対しては即時抗告をすることができるということになっております。
  158. 枝野幸男

    枝野委員 さらに、午前中の議論でもありましたが、仮に行政情報について同じような仕組みをつくった場合、高度に政治的な問題というふうなお話がありましたが、高度に政治上の問題には裁判所は踏み込まないのだ、いわゆる講学上は統治行為という理論がありますが、これは憲法上の理論として、最高裁苫米地訴訟判決という判決で、最高裁判決として、高度に政治的な判断については裁判所は踏み込まないという理論はございますね。
  159. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 承知をしております。
  160. 枝野幸男

    枝野委員 ということは、即時抗告で高等裁判所に上がった、高等裁判所もそれは秘密ではないから出せと言ったときに、いや、それは高度の政治的な判断だと行政側が主張すれば、特別抗告の対象になって最高裁まで上がる、これも間違いないですね。
  161. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 特別抗告は憲法違反を理由とするわけでございますので、当該問題は憲法違反であるかどうかということによって決まってまいります。
  162. 枝野幸男

    枝野委員 ですから、その前に憲法上の理論として苫米地訴訟判決があるという話をお伺いしたのです。  ということは、仮にこれを裁判官にお任せをしますと言ったときに問題になる裁判官というのは、地方裁判所裁判官ではないのですよ。仮にハと同じような条文にしたとしても、判断をするのは、一時的に判断をするのは、最初に判断をするのは地方裁判所裁判官ですが、行政が、いや、それは出せません、どうしても出せません、そんな地方裁判所裁判官だけで決まってしまっては困りますと言ったら、高等裁判所に上がり、最高裁判所に上がり、結局、最高裁判所裁判官十五人がどう判断するか。これは出すべきものか出すべきものでないかということを判断する。それまでは表には出ないのですよ、ハと同じような、私人の秘密と同じような扱いにしたときには。そのときには、最高裁判所の十五人なんです。しかも、その最高裁判所には、高度に政治的な判断については踏み込まないのだという最高裁の確定判決があるのです。  しかも、では、それが裁判所がそれをやるにふさわしい権限、適当なものかと言われたときに、行政の長はいろいろな人がいます。大臣だったらいいです。大臣なら、百歩譲って、いいです。国民から選ばれた、国会が選んだ、総理大臣が選んだ、まだいいです。行政にもいろいろあります。では、最高裁判所はどうなんだ。最高裁判所裁判官というのは、これは民主的な手続なんです。皆さんも御存じのとおり、国民審査というやり方によって、最高裁裁判官国民に対して責任をとることは可能なんです。おかしなことを、国を危うくするような判断をしたら、憲法の手続に基づいて国民審査によって首をとることができるのです。  ところが、何かわけのわからない、国民の直接のコントロールが及ばない、わけのわからない役所の長については、少なくとも理屈の上では、国民に公務員を首にする権限はあると憲法上ありますが、首にする手続は整っていないのです。どちらが民主的か。どちらが主権者、つまり国民全体の、国家全体の利益を判断すべき主権者の立場に近いか。最高裁判所の十五人の方がずっと近いのです。ですから、裁判官判断させることがいいことかどうかという議論をしたら間違える。最高裁判所の十五人に判断する能力があるのかどうか、そこが問題なんです。  そこで、裁判所にお伺いします。裁判所としては、最高裁判所の十五人の裁判官には、例えば、本当は高度の政治的な判断で、踏み込むべきではない情報について踏み込んで公開をしてしまうような、そんな愚かな最高裁裁判官だとお思いになっているのですか。
  163. 石垣君雄

    石垣最高裁判所長官 代理者最高裁としては職務を精いっぱい遂行されるであろうと思っております。
  164. 枝野幸男

    枝野委員 最高裁判所裁判官判断能力というものを否定をしてしまったら三権分立は成り立たないのです。最高裁判所、それは確かに民主的な及ぼし方というのは非常に間接的かもしれませんが、それは公務員、行政だって一緒なんです。基本的には三権分立というのは、国民から選ばれた国会、確かにだらしないところがたくさんあるかもしれない。問題もたくさんあるかもしれない。  しかし、この国の権力の正統性は、国民から選ばれている国会、そして国会が指名した総理大臣、総理大臣が指名した大臣がやっているから行政はその権力を行使できる。裁判所も、最高裁の判事は、これは内閣が指名をするのです。行政と同じぐらいの、国民と、主権者との距離感なんです。しかも、さらに直接首にすることができるという国民審査という制度まであるのです。どちらを信用するかといったら、むしろ、基本的な司法の一般原則に基づいてこの場合は最高裁判断をさせる、最高裁を信頼するというのが当たり前で、それと違うことをすること自体がイレギュラーだということを指摘したいと思います。  最後に、さまざまな議論がなされてまいりました。さまざまな質疑がなされてまいりました。法務省がどんないろいろな言いわけをなさっても、現在の二百二十条四号ロというものには明らかに矛盾がある、問題があるというのはほぼこの委員会の認識であると私は理解をいたしております。  ところが、余りにも法務省の態度はかたくなである。かたくなであるのは結構でございますが、幸い、今この委員会の中では、委員長の差配もあり、野党の皆さんの御理解もあり、とにかく円満にうまく事を進めましょうという話になっていますが、いつまで野党の皆さんがそういった理解ある態度でいてくれるかわかりません。そうなったときに政権を揺るがす話だということはわかっていますか、大臣は。政権を揺るがす話だということ、この連立三党の枠が壊れるかもしれない。少なくとも連立三党の中で分裂する党が出るかもしれない。そういう政治問題になることをわかっていますか。そういったとき、あなたは責任とれるのですか。どこまでそういうことを考えていますか、大臣
  165. 長尾立子

    長尾国務大臣 この法案について今熱心な御議論が行われておりまして、私どもも、その御議論を踏まえて、今後の私どもの対処の仕方、これについては真剣に検討しなくてはいけないということは十分承知をいたしているつもりでございます。
  166. 枝野幸男

    枝野委員 質問お答えになっていません。政治問題になったときに、あなた、責任とるつもりがあるのですね、橋本さんに対して。いいですよ、それで政権が壊れて選挙になって、自民党がもし単独過半数とれば、それは橋本さんは喜ぶかもしれないけれども、そこで自民党が負けて、橋本さんが総理をやめることになったら、あなた、橋本さんに責任とれますか。そういうリスクを負っているのですよ、あなたが今やっていることは。  もうちょっときちんと政治的な根回しを、政治家出身じゃないから難しければ政務次官とかにお願いをして、ちゃんとなさらないと、橋本さんの、総理大臣の首があと一カ月ぐらいで飛ぶかもしれないわけですよ。そういう話を総理にちゃんと伝えてくださいよ。どうですか。
  167. 長尾立子

    長尾国務大臣 先ほど申し上げましたように、この法案について所管をいたしております私の責任は十分痛感をいたしておりまして、その私の責任でできる限りのことをさせていただく、これを申し上げさせていただきます。
  168. 枝野幸男

    枝野委員 民事局長はそういう重大な問題だということをわかっていらっしゃいますか。認識していますか。政治問題になるのですよ。政治問題にならないのは、幸い委員長がいい仕切りをしていただいているのと、与党の筆頭も与党の各理事さんも、まして、さらには野党の皆さんが、こういう大事な法案だから政治問題なんかにしてつまらないことをやるよりもできるだけ円滑に話を進めましょうということで御理解をいただいているから、今のところ円滑に進んでいるのですよ。こんなかたくなな態度を続けていたらいつまでも続かないですよ、こんなことは。そういう現状をわかっているのですか。
  169. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘のような御尽力を賜っていること、大変ありがたく受けとめておるところでございますが、ただ、政治の関係については、私ども、どういう問題があるのか十分に承知することができる立場にございませんので、御了承願いたいと思います。
  170. 枝野幸男

    枝野委員 時間がなくなりました。最後にお二人にもう一度だけ。  行政立場として、一度出してしまった以上はこれが正しいんだということを言い続けなければならないかもしれない立場はよくわかります。少なくとも政治ベースでこれは立法府が立法府の判断でそれぞれに議論をしてうまくまとめましょうという話を、表じゃやらないでしょうけれども裏でこちょこちょと邪魔をするようなことは絶対にしないでください。約束してください、お二人。
  171. 長尾立子

    長尾国務大臣 そのようなことはいたしません。
  172. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 私どももそのようなつもりは毛頭ございません。ただ私どもといたしましては、政府提案ということで提出させていただいておりますので、これを何とか可決成立させていただきたいということで努力をさせていただいているところでございます。
  173. 枝野幸男

    枝野委員 今のお話を伺って、これでこの法案は修正されることは決まったなという認識をお示しいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  174. 加藤卓二

    加藤委員長 正森成二君。
  175. 正森成二

    ○正森委員 私が既に参考人に対する質問や、あるいは第一回目の質問でも申し上げたことですが、さらにそれを深くきょうはお伺いしたいと思います。  公務員の証言拒絶権というのがあります。これが文書提出命令と非常に関連するんですが、この証言拒絶権については、民事訴訟法と刑事訴訟法と国公法の規定の整合性が十分でないということがかねてから指摘されてまいりました。これを受けまして、平成三年十二月に公表された民事訴訟手続の検討事項では「公務員等又は公務員等であった者を証人として職務上の秘密について尋問をする場合の当該監督官庁等の承認に関し、当該監督官庁等は、国の重大な利益を害する場合を除いては、これを拒むことができないものとするとの考え方(刑事訴訟法第一四四条及び第一四五条参照)」を検討課題として掲げておりました。この趣旨は、監督官庁の承認拒絶の要件が明確でないので、民訴法等では刑訴法の規定に合わせてこれを明確にすることを検討事項としたと参事官室の補足説明では言っております。  次いで、平成五年十二月に公表されました要綱試案では「公務員等又は公務員等であった者を証人として職務上の秘密について尋問をする場合における監督官庁等の承認の拒絶につき要件を設けるかどうかについて、なお検討する。」こうして、検討事項で、必ずしも立法への成案が得られていないということをこの段階では明らかにしていたわけであります。  ところが、私が指摘しましたように、平成七年十二月一日に至って、今国会で提案されているような内容の条文が民事訴訟法の小委員会に出されて内部で少し論議されたら、今度は二月二日には民事訴訟法部会に報告書が上がり、早くも二十六日には全体会議で決まり、国会に提出されるということになりました。  ここでは繰り返しませんが、小委員会では若干の論議は行われたでしょうが、少なくとも平成五年等のように広く国民に知らされて国民の論議にさらされるという期間は全くありませんでした。中野さんなどは、五年間で、つまり平成七年の暮れまでには案を出すように大体前からなっていたんだということを言いましたが、それならば、十二月一日になって突如として法案として出してきたという性急さは、国民観点から見ていかがなものであるかということが言われなければならないというように私としては考える次第であります。  そこで、きょうは時間が短うございますので伺いますが、公務員の職務上の秘密について刑訴と民訴では明らかに差異があると思いますが、その差異の合理性についてそれぞれ民事局長と刑事局長から、答えるなら答えてください。
  176. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘のとおり、民事訴訟法と刑事訴訟法では、公務員の職務上の秘密の開示について承認を拒絶する事由に差が設けられております。これは、一方の刑事訴訟法は国家の刑罰権の発動をするという前提としての真実の発見、探求の要請ということであり、一方の民事訴訟法におきましては私人間の紛争解決して司法秩序の安定を図る制度としての真実の発見、探求に対する要請ということでございまして、その間には程度において差異があるということからそういう差が設けられているものというふうに理解をしております。
  177. 原田明夫

    ○原田政府委員 刑事訴訟法の関係についてお答え申し上げます。  御指摘のとおり、刑事訴訟法におきましては、公務員が知り得た事実につきまして、本人または監督官庁から職務上の秘密に関するものであることを申し立てたときは、監督官庁の承諾なしに証人として尋問することはできないといたしまして、ただし、「監督官庁は、国の重大な利益を害する場合を除いては、承諾を拒むことができない。」と規定しているところでございます。  この趣旨は、もともと刑事訴訟法の基本的な物の考え方といたしまして、国の刑罰権を発動する前提といたしまして、刑事訴訟法は実体的真実をできるだけ発見していこうという一つの要請がございますとともに、しかし、それにも関係者の人権を守りながらという手続的な要請、適正な手続を図っていくという観点を調和させる一つの思想があるんだろうと思います。この場合も、実体的真実を明らかにするという刑訴法の利益と申しますかその目的と、公務上の秘密保持という国家的な利益との調整を図るというのが本条の趣旨であろうかと存ずるわけでございますが、この場合は、公務上の秘密が国の重大な利益を害する場合に限りまして、この公務上の秘密が刑事訴訟法的な利益に優先するというふうにとらえられているものと考えます。
  178. 正森成二

    ○正森委員 今述べられたようなことでありますが、それについて私の意見を言う前に、もう一つ聞いておきます。  私は、民事訴訟は単に私人間の権利義務について判断するだけではないと思います。多くの場合、行政訴訟もございますし、その場合は行政行為と、そしてそれによって一定の損害を受ける私人もしくは一定の団体というものとのどちらに軍配を上げるかという意味を持っております。ですけれどもその点は後に置くとして、私人の証言拒絶権と、私人にも証言拒絶権があります、公務員の証言拒絶権とは、その性質で差異があると思われますが、その差異がある理由は何だと思われますか。
  179. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 公務員の証言拒絶と私人の証言拒絶に差異があるその理由でございますが、一つには、公務員は職務上知ることができた秘密について守秘義務を負っておるわけでございまして、証人等として職務上の秘密に関する事項を発表するには監督官庁の許可を要するものとされております。これは国家公務員法あるいは地方公務員法の規定によってそうなっているわけでございます。そういうような守秘義務が解除されていないという場合には証言拒絶権を認めるということにしないと、証人がその両者の要請の矛盾、抵触ということに当面するという問題があるということでございます。  いま一つは、証言拒絶の当否について公務員の場合には裁判所判断しないで監督官庁の判断にゆだねられているということでございますが、これは公務員の職務上の秘密にはさまざまなものがございまして、その秘密秘密として保持すべきかどうか、あるいは公表して差し支えないかどうかということについては、当該行政について三権の一翼を担うものとして責任を負っているその行政機関が判断するのが適当である、そういう現行法考え方に基づいて、そういう差が設けられているものというふうに理解をいたしております。
  180. 正森成二

    ○正森委員 民事局長はそれなりに答弁されたわけですが、私が答弁を求めた趣旨とは若干違いますので、それをこれから言いたいと思います。  その前提として、民事局長、あなたは職務上知り得た秘密と職務上の秘密を全くイコールに答弁されましたが、講学上も、職務上知り得た秘密というのと職務上の秘密というのは違うのですよ。それはあなたも少し頭をひねればおわかりになるだけの能力をお持ちだと思いますが、時間がありませんので、この点についてあなたにその問題の講義をするのは次に譲らせていただいて、さらに進んでいきたいと思います。  そもそも私が申し上げたいのは、私人の証言拒絶権と公務員の証言拒絶権の性質の違いはどこにあるか、こう言えば、公務員が保持する秘密というのは、すなわち職務上の秘密というのは、本来、公共の利益のために保持する秘密にほかなりません。つまり、公務員が持っている情報というのは、本当は広く国民に還元すべきなのだけれども、その中でいろいろ秘密がありますけれども、それは本来、公共の利益のためにこれは秘密として保持するということで、ここに公務員の守秘義務というのがあるのです。  ですから、それを特定の公法上の義務、ある証人としての義務あるいは押収、捜索を受ける義務と言ったらおかしいですけれども、官側からいえば当然の権能というのに対して、あくまでこれは職務上の秘密であるから拒否できるのだというためには、公共の利益に損害を与えるというだけでは足りないのです。公共の利益のためにそもそも公務員の持っているさまざまな情報資料というのはあるのだから、それをさらに拒否するためには、公共の重大な利益に、国家の重大な利益に損害を与えるから、そこでそういう押収、捜索、証言あるいは文書提出について一定の抑制的行為をとってくださいということが言えるのでなければならないのです。  ですから、公務上の秘密だという今度の改正法の百九十一条二項では「公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれ」などと言っておりますが、これはある意味では同義反復であって、文書提出拒否したり、証言を拒否したりする理由には本来なり得ないものなのですね。だからこそ、刑事訴訟法においては、国家の重大な利益を害するというようにさらに絞っているわけであります。  ところが、それなのに、今回の民事訴訟法では、いろいろ言いながら、こういうように非常に広げた範囲にして、しかも二百二十条の四号ロについては、インカメラといいますか、裁判所判断権も奪ってしまうというようなことは、繰り返し言いますが、私は到底許されることではないというように思います。  さらに一つ、非常に整合性のない問題があります。  例えば国家公務員法の百条というのは、公務員の秘密を守る義務を課しておりますが、その百条の四項を見ていただきますと、人事院の調査や審理の場合には、人事院から、この点について証言しなさいというように言われたらこれを拒否することはできない。監督官庁の承認を得る必要もない。逆に、それを拒否すれば三年以下の懲役または十万円以下の罰金に処せられるということになっている。  それはなぜかといえば、ここに私は鵜飼教授の説を持ってまいりましたが、講学上広く言われているのは、人事院というのが独立した行政委員会というか官庁であること。それから、公務員がいろいろ不利益処分を受ける場合には、単にこれは公務の秘密であるというだけでなしに、場合によっては十分弁明して公務員の権利を守らなければならないというために、公務員法の百条の四項では特別にそういう規定を設けたのだということになっているわけです。講学上はですよ。  そうしますと、裁判所は、ある意味では人事院よりもずっと独立しているじゃないですか、三権分立で。しかも裁判所は、憲法に適合するかどうかを決める最終的な決定権を持っておる。国会の法律が憲法に違反するかどうかさえ決められる。それなのに裁判所には人事院に劣る権能しか与えないというのはどういうわけですか。今まで私どもは、情報開示で今条例などで行われている、今度また中間報告で出た不服審査会がこれは判断できるし、インカメラ制度で提出を求めることもできる。それと今回の民事訴訟法規定は明らかに整合性がない、顔向けができないということを言いましたが、国家公務員法の百条の規定からしても、百条の四項にはそういう規定が行われているのになぜ今度の民事訴訟法ではかくも裁判所判断権を制限するようになったのですか。
  181. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 この文書提出命令の申し立てについての審査というのは、もうこれは委員に御説明するまでもなく、行政機関として当該情報を開示すべきかどうか、その行政機関としての行為の当否というものを審査する手続ではないわけでございます。あくまでも民事訴訟手続における付随の手続として、裁判証拠としてはそういう資料が必要であるという要請と、他方、行政機関としては秘密のいわば管理について責任を負っている、そういう権限と責任を持っている、そういう両者の権限の権衡の問題としてどうあるべきかという問題でございまして、行政行為の当否について裁判所が審査をするという関係ではないということから、相互の権限の権衡の問題として現行の制度が、現行の枠組みがとられているということであると考えております。  その将来のあり方についてはいろいろ御議論がありましょうが、現行制度はそういうことであるというふうに理解しております。
  182. 正森成二

    ○正森委員 今の答弁は非常に苦しい答弁で、ちゃんと静かに理性的に聞けば、答弁になっておらない。  行政上の当否についてといいますが、人事院は、不利益処分だとかあるいは勤務条件だとか、いろいろな問題について行政上の当否を審査いたしますが、裁判所だってそうですよ。行政訴訟は全部、行政上の当否を判断するのではありませんか。だから、本質的には同じことだと思うのです。それについてそういうような差異を設けたことについて、十分な説明ができません。だから、刑事訴訟法や民事訴訟法や国公法との整合性とか、いろいろなことを言っているけれども、現在、いろいろその目的等に応じて違った規定がされているんだから、民事訴訟においても、ある分野についてそういう差異が認められても、それが憲法上許され、合理的なものである限りは一向に差し支えがないと言わなければならないのですね。  それからまた、もうそろそろ時間がまいりましたから終わらせていただきますが、あなたが私のこの前の質問に対しても繰り返し言っているのは、三百十二条の一号から三号まで、法案の二百二十条の一号から三号までは、文言も全く変わらない、それについての判例も今までどおり維持される、その他の一般義務化についてのみ四号ロなどが適用され、あるいはインカメラ制度が排除されるというように言いましたが、これまでの審議の中で、例えば民訴小委員会の中野さんなどは、法務省からいただいた資料を持ってまいりましたけれども、ここでの各委員の繰り返しの質問に対して、小委員会における審議条項の要旨をこの間、五月十七日にいただきましたが、その中で、三権分立の建前からすると司法判断に服せしめるのは不可能ではないかとか、行政庁が承認を受けずする場合には、三権分立の観点から、行政庁の判断と異なる判断裁判所が行うことは控えるべきであろうから、裁判所承認拒絶の当否に関する判断権を認めるのは困難ではないかというような論議がもう平然とされておって、それは当然のことであるという見解を述べ、これからは、裁判所判断で従来は三百十二条の一号から三号、特に三号とされたものも四号とされる可能性があり、四号とされた場合には裁判所判断権は及ばない、こういうようになるだろうと公然と言っているのです。  そうすれば、幾らあなたがこの前の私のときに判例はすべてそのまま維持されると言いましても、判例というのは、ここで繰り返しませんが、例えば有名なあの家永訴訟でも、教科書裁判ですが、非常に問題があった法律関係に入るかどうかというような問題についても、例えば、  判定に先立って作成される文部省調査官の調査意見書、評定書、審議会調査員の調査意見書、評定書、審議会の審議録、審議会の判定を記載する書面、修正意見書ならびに答申書は、すべて、文部大臣が検定によって行なう表現、学問の自由の制限の理由を確知するための資料として、検定制度上作成を要請されている文書と見るべきである。もちろんこれらの文書が、同時に、行政庁内部における事務処理上必要な文書としての性格を有することは否定できないが、それのみに止まると解することは正当でない。また、審議会の上述の役割からみれば、これらの文書が文部大臣の固有の思考過程に属する文書に過ぎないとすることも失当といわなければならない。 こう判断をして、「本件法律関係について作成された文書である」、こういうようにして、そして救っているのです。  しかも、裁判所がこういう行政庁の判断に文句を言えないなんというのは頭から考えないで、職務上の秘密に当たってこれは裁判所判断できると言って、こう言っております。  開示に伴ない、審査に当った公務員の意見がおのずから知られることがあっても、それは担当者としても所管行政庁としても当然是認すべきことであり、それがため国家利益や公共の福祉に重大な損失或いは不利益がおよぶとは考えられない。要するに、個々の担当者の意見が同条にいう職務上の秘密に該当すると解することはできないから、論旨は理由がない。 こう言って、文部省やら国側はぼんと負けているのですね。  あなたは、それは維持されると言いましたが、しかし、民訴の小委員会の責任者は維持されないであろう、こう言っているのです。そうしたら、立法者としては疑問の余地がないように法文をきちんと整理するということが大事で、国民の権利を重んずる裁判官ならこっちに行くが、ちょっと気の弱い裁判官ならこっちに行くというようなことではよろしくないんじゃないですか。  そういうことを申し上げて、二十分が過ぎましたので、私の質問を終わらせていただきます。言いたいことがあったら言ってごらん。まあ、余り言わぬ方がいいのと違いますか。
  183. 加藤卓二

    加藤委員長 小森龍邦君。
  184. 小森龍邦

    ○小森委員 時間が極めて限られておりますから簡潔に質問をいたします。また、できるだけ簡潔にお答えをいただくようにお願いいたします。  前回の質問でもお尋ねをいたしましたが、この民訴法に関する秘密の取り扱い、つまり、それは行政官庁秘密だと言えば秘密になるというのは、これは極めて不合理な考え方であります。当事者秘密だと言えば秘密になるというのでは、利害関係人は全く納得のいかないことであります。独善のそしりは免れないと思います。  少し言葉が過ぎるかもわからないけれども、昔、朕が国家なりという言葉がありました。つまり、朕とか殿様とかというのは自分の思うとおりに物事をやっていける、こういうことを言った言葉なのでありますが、民事訴訟法において国と個人の利害が衝突した場合には、この秘密なるものが特に重大な問題となります。先般来論議を通じて、きょうもまた、今回のこの秘密なる問題についてその不合理性を各議員がこもごも立って指摘をいたしました。  法務大臣は、今日の議論を聞いた段階でもなお原案にこだわられますか。こだわるとすれば、法務省とすれば各議員が言っておることの内容については、こういう反論、これは一々は時間の関係があって述べられないと思いますが、こういう反論があるから我々はこれを合理的だと思うのだというようなことについて法務大臣の所見をお聞きしたいと思います。
  185. 長尾立子

    長尾国務大臣 お答えを申し上げます。  法案の第二百二十条第一号から三号までの規定によって提出される文書範囲が、現行法よりも狭く解釈されるのではないかというこれまでの御審議における御指摘につきましては、今回の改正趣旨は、文書提出義務の対象となる文書範囲を拡張することにあり、現行法規定により提出義務の対象となる文書のほか、これに該当しない文書についても一般的に提出義務の対象にしたものでありますので、そのような解釈にはならないものと考えております。  また、今回の改正によって新たに提出義務の対象となる文書のうち、公務員の職務上の秘密に関するものの提出について監督官庁の承認を要することにしたのは、現行法証人尋問や刑事訴訟法における押収や証人尋問において採用されている考え方の枠組みの中で、法制度全体としての整合性を考慮したことによるものであります。  これまでの御審議におきましては、このような現行法考え方の枠組み自体について、より広く行政情報公開を進めるべきであるとの観点から問題点指摘がされているものと認識しております。行政情報公開あり方については、現在、行政改革委員会の場等におきまして幅広い議論の対象とされているところでありますので、その議論の結果等を踏まえて所要の検討を進めてまいりたいと考えておりますが、当委員会における御審議で御指摘いただきました諸点につきましては、その検討を進めるに当たり極めて重要な御指摘であると受けとめさせていただきます。
  186. 小森龍邦

    ○小森委員 二百二十条第四号、それは枠を狭めたのではなくて枠を広げたのだ、こういうことを法務省は説明されるわけでありますが、そうでないと、みずからがこの問題を合理的な法文だというふうには認定できないわけです。だから、私はそこへ寄りかかっておるということはもう前から知っております。  しかしながら、三権分立で、つまり行政の行き過ぎをコントロールするというのが司法権の立場ですね。立法、司法行政の間それぞれがコントロールするというのが三権分立ですね。ところが、ある一定分野については、仮にそれが犯罪的なことであったとしても行政にかかわることについてはちょっと及ばないということになりますと、それは三権分立の意味というものは著しく後退しますね。そういう意味で、私は独善だと言っておるのです。  この前も申し上げましたように、憲法の第十三条は、「すべて国民は、個人として尊重される。」のです。つまり、国家に対して言うとるのです、個人として尊重しなさいと。国及び行政機関は、立法その他国政の上で、最大の尊重をしなさいとなっているのですね。最大の尊重が後ろへのけられておるから、私は、これは不合理だ、こんなことを言っておるわけですね。一々また答弁してもらっておるとなかなか時間がどうにもなりませんから、法務大臣が今言われたことに対しては私の考えをそういうふうに申し上げておきたいと思います。  そこで、それに関連をしますから、きょう総務庁においでをいただいておると思いますが、総務庁の方にお尋ねをいたします。  同和問題の解決は、これは同対審が言っておるように市民的権利の保障であります。その市民的権利の保障というのは、先ほど憲法第十三条で申しましたが、「すべて国民は、個人として尊重される。」相手が国であろうが、利害が衝突した場合には、これはお互い相対的に、どっちかが絶対的な立場ではないのであります。ところが今回のこの法文でいくと、国が絶対的な立場に立つ。特に行政機関が絶対的な立場に立つ、こういうことで、私は、我が国には市民的権利意識とか市民的権利感覚というものがまだ非常に未成熟である、そのことのあらわれだというふうに思うのですが、これは総務庁としてはどうですか。市民的権利と国家が行使する行政権というものとは、憲法第十三条からいったらどっちが優先されるべきものと思っていますか。人権担当だからお尋ねするのですよ。
  187. 川邊新

    ○川邊説明員 同和問題が憲法に保障されました基本的人権にかかわる重要な問題であるということは、先生指摘のとおりだと思っております。ただ、私ども総務庁も含め、同和問題、同和行政につきましては、関係省庁共同で行政を進めているということだと思います。  先生の御指摘、基本的には民事訴訟法改正案の問題ということでございますので、これは所管省におきまして適切に対処されるものというふうに考えております。
  188. 小森龍邦

    ○小森委員 きょうもある委員から指摘がありましたように、この法務省の今回の法案について、他省庁が納得をしてくれなければ実は全体が流れるのだというような意味のことが言われた。そういうことが前段にありますから、総務庁事務次官もこれにはオーケーを与えておるのだろう。こういう観点から、今のような民権と国権、これが要するに長い間の人類の歴史の中で人間が自由を求める大きな問題点だったのですね、民権と国権の争い。その国権側の、これは秘密だと定めることについては、それは秘密だから仕方ありませんよというような形では、私は我が国における人権行政というものを進めていくことはできないのではないか。憲法第十三条は、個人の尊重をすべてに優先してやりなさいということになっておるし、それを受けなければ第十四条の、「人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、」ということは成り立たないのであります。そういう意味で私は尋ねておるわけなのでありまして、総務庁の事務次官もこれに賛成されたということなんですか。だとすると、うなずいておられるから、それは言葉でなくてもよろしいですが、次の質問に答えていただきたいと思います。  そういうことになりますと、今与党人権プロジェクトでもいろいろ問題が出ておりまして、場合によったら人権啓発法ぐらいまではひとつつくりたい、こういう意見が交わされております。すると、人権に関する啓発を行うというのに、総務庁が今のような考えでいかれたら、民権より国権が優先するということになるから、これは大変な問題が起きると思いますね。だから、一体この人権啓発をやるという場合、その中で、今与党人権プロジェクトで問題になっておるのは同和問題が中心部分として問題になっておるわけですが、そんな観点だったら、どういうことを啓発しようとするのですか。国権のためには民権は後へ下がっておけというような意味の啓発をされようと思うのですか、その点をお答えいただきたいと思います。
  189. 川邊新

    ○川邊説明員 差別意識の解消に向けました教育及び啓発の推進につきましては、五月十七日に地域改善対策協議会の意見具申がございまして、その意見具申の中の重要な柱の一つとされているところでございます。その意見具申におきましては、「今後、差別意識の解消を図るに当たっては、これまでの同和教育や啓発活動の中で積み上げられてきた成果とこれまでの手法への評価を踏まえ、すべての人の基本的人権を尊重していくための人権教育、人権啓発として発展的に再構築すべき」である。また、「その中で、同和問題を人権問題の重要な柱として捉え、この問題に固有の経緯等を十分に認識しつつ、国際的な潮流とその取組みを踏まえて積極的に推進すべき」という指摘をされているわけでございます。  私ども、今後、関係省庁と具体的に検討し、また今御指摘ございましたように、与党のプロジェクトチームの動向にも留意しながら差別意識の解消に努めてまいりたいと考えております。
  190. 小森龍邦

    ○小森委員 最後に一言申し上げて終わりたいと思いますが、その啓発ということは、可能な限り国民に市民的権利意識とか市民的権利感覚とか、もっと大上段に構えれば憲法的感覚というものをどう定着させるかということが問題なのであります。そういうときに、こういうふうなことが、国の側から民事訴訟法改正がこんな中身をもって出てくるということを私は非常に恐れておるのです。どんなことになるかということを非常に恐れておるのです。  それで、先ほどは部会報告のことを言われましたけれども、せっかく同対審が同和問題解決は焦眉の急だと言っておるのに、部会報告の中に、長くかかっても仕方がないというところがあるでしょう。いろいろ国はやったけれども、もうここになったら長くかかっても仕方がないと言っておるでしょう。そういうふうに国は勝手なことを言うから、したがって啓発の場合にそういう思想を吹き込まれたら、これはもう元も子もなくなってしまうということを恐れて実は本日のような質問をさせていただいたわけであります。法務省もよくひとつお考えいただきたいと思います。
  191. 加藤卓二

    加藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十六分散会      ————◇—————   〔本号(その一)参照〕     —————————————    派遣委員の愛知県における意見聴取に    関する記録 一、期日    平成八年五月二十二日(水) 二、場所    ホテルナゴヤキャッスル 三、意見を聴取した問題    民事訴訟法案内閣提出)及び民事訴訟法    の施行に伴う関係法律整備等に関する法    律案(内閣提出)について 四、出席者  (1) 派遣委員    座長 加藤 卓二君       太田 誠一君    佐田玄一郎君       志賀  節君    山田 英介君       山田 正彦君    山本  拓君       細川 律夫君    枝野 幸男君       正森 成二君  (2) 現地参加議員       佐藤 泰介君  (3) 政府側出席者         法務大臣官房長 頃安 健司君         法務大臣官房審         議官      山崎  潮君  (4) 意見陳述者         中日新聞論説委         員       前田 弘司君         名城大学法学部         教授      松浦  馨君         毎日新聞中部本         社編集局編集委         員       溝口 節二君         弁  護  士 森山 文昭君  (5) その他の出席者         最高裁判所事務         総局民事局長  石垣 君雄君         最高裁判所事務         総局総務局第一         課長      服部  悟君         法務委員会調査         室長      河田 勝夫君      ————◇—————     午後一時開議
  192. 加藤卓二

    加藤座長 これより会議を開きます。  私は、衆議院法務委員長加藤卓二でございます。  私がこの会議の座長を務めますので、よろしくお願いいたします。  この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。  皆様御承知のとおり、現在、当委員会におきまして、内閣提出民事訴訟法案及び民事訴訟法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案の審査を行っているところでございます。  当委員会といたしましては、両案の今後の審査の参考に資するため、当地において各界各層の皆様から御意見を拝聴することになり、かかる会議を開催することとなった次第でございます。  御意見をお述べいただく方々には、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただくよう、よろしくお願いいたします。  それでは、この会議運営につきまして御説明申し上げます。  会議議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、座長の許可を得て発言していただきたいと存じます。  なお、この会議におきましては、御意見をお述べいただく方々は、委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  次に、議事の順序につきまして申し上げます。  最初に、意見陳述者皆様から御意見をそれぞれ十五分程度お述べいただき、次に、委員から意見陳述者皆様に対し質疑をすることになっております。なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。  出席委員は、自由民主党の太田誠一君、志賀節君、佐田玄一郎君、新進党の山田英介君、山本拓君、山田正彦君、社会民主党・護憲連合の細川律夫君、新党さきがけの枝野幸男君、日本共産党の正森成二君、以上でございます。  次に、各界を代表して御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。  中日新聞論説委員前田弘司君、名城大学法学部教授松浦馨君、毎日新聞中部本社編集局編集委員溝口節二君、弁護士森山文昭君、以上の方々でございます。  それでは、前田弘司君から御意見をお願いいたします。
  193. 前田弘司

    前田弘司君 中日新聞論説委員前田でございます。  私は、いわゆる法曹界に身を置いた者でもございませんし、それから法律学の専門家でもございません。一介のジャーナリストでございます。したがいまして、そういう立場から、今回の民事訴訟法改正の問題についての率直な私自身の考えを申し上げたいというふうに思います。  御列席の国会議員先生方を前にして私がこういうことを申し上げるのはまことに僣越でございますけれども、近代民主主義国家の基本といいますか、基本的な仕組みというのは、要するに、国の政治あるいは地方自治体の活動を問わず、すべての行政活動に対して主権者である国民のコントロールが及ぶという点にあると思います。  国民が国なりあるいは地方自治体の活動をコントロールできるようになる一番基礎的な条件は、国会の審議の場はもちろんでございます、それから、公式の発表のような場合も含まれます、あるいは法廷への提出といったようないろいろな形をとることが想定されますけれども、とにかく、国なり自治体の活動に関してできるだけ正確かつ大量の情報公開されるということにかかっておると思います。こういう情報が、ゆがめられないで正しい姿のまま、しかもできるだけ迅速に国民の手元に届くといいますか、届けるというのが私どもジャーナリストの非常に大きな責務の一つであると我々ジャーナリストだれもが考えておるところでありますけれども、きょうは、そういうジャーナリストの立場からこの問題に接近して意見を若干述べさせていただくことにしたいと思います。  さて、今回の民事訴訟法改正は、大正十五年以来の抜本的なものであるというふうに伺っております。大正十五年、つまり昭和元年とダブるわけでありますけれども、一九二六年、ちょうど今から七十年前で、七十年来の大改正ということになるわけでございます。日本が近代国家として生まれたのが明治維新ということにいたしますと、日本の近代国家の歴史の中の半分以上の期間、この民事訴訟法というのは同じ姿で続いてきたことになりますけれども、今回の改正は、七十年間同じ形であったものを改正する抜本的なものであるということになるわけでございます。  七十年の間、特に昭和二十年の太平洋戦争の終戦を境目にいたしまして、政治、経済、それから司法などを含めた我が国の社会全般にわたっての非常に大きな変化があったわけですけれども、民事事件の手続法をそういう大変化を経た我が国の現状に対応するものにすべく全面的な見直しをするということは、まことに時宜を得たものであるというふうに考えております。  日本の国民性といいますか、これは近代以前ももちろんそうであったと思われますけれども、近代国家に日本が生まれ変わった後も、日本人の国民性というものは、刑事事件の場合は別といたしまして、特に民事事件の場合、法廷で争うことは余り好まないというのが日本の国民性であるというふうに言われておりましたが、近年は、訴訟に持ち込むことを必ずしもためらわない、そういうふうに変わってきたようでございます。民事事件に関する訴訟例もかなりふえておるようでありますけれども国民の間の一般的な印象といたしましては、裁判というのは時間と金がかかり過ぎる、しかもなかなか決着がつかない、こういうような、言うなれば不平に近いような印象を持っている国民が多いようであります。  今回の改正案の内容を拝見いたしますと、例えば少額訴訟手続というようなものが盛り込まれておりますが、これはもうほとんどどの方面からも異論がないようでございます。こういう訴訟をスピードアップする上での、どこからもまず異論がないような内容が盛り込まれておるという点も考え合わせますと、民事訴訟法改正すること自体は大変喜ばしいといいますか、望ましい方向であると思います。民事訴訟法改正するだけで裁判がスピードアップされるとは必ずしも思いません。ほかにもいろいろな要因がございますので、幅広く今後も目配りをしていく必要はあると思いますけれども、とにかくその一つとして、訴訟法、手続法が改正されるというのはまことに結構なことであるというふうに総論的には考える次第でございます。  マスメディアの論調を見ましても、一般的には民事訴訟法改正自体については好意的な受け取りをしている論調が多いようであります。私も、そういう論調については格段異論を差し挟む余地はないというふうに考えております。しかし、冒頭に申しました情報公開という点から考えますと、今回の改正案の内容の一部がむしろ後ろ向きではないかという印象を受けざるを得ません。行政官庁国民から遊離していくような傾向がかえって促進されるのではないか、加速されるのではないか、そういう危惧の念をぬぐい去れないのであります。  紛争が生じましてそれが法廷に持ち出された場合、正しい解決を図るために、今回の改正案では証拠収集の可能性を高めることを重要な柱の一つとしております。その一部分といたしまして、文書所持者の提出義務の範囲を広げております。現行法文書提出義務範囲を個別列挙しているのに対して、改正案は、一定の条件を備えた例外的なものを除き文書提出義務一般義務化しております。このこと自体は、旧法といいますか現行法といいますか、基本的な考え方を百八十度転換したことになりまして、評価してよいと私は思います。  ところが一方で、公務員の職務上の秘密に関する文書で当該監督官庁が承認しないものは提出義務がない、こういう規定を新設しております。その上、この手の文書については、裁判官のみで現物を調べ提出拒否が妥当であるかを判断する手続からも除外されております。要するに、職務上の秘密判断を全面的に行政官庁の側にゆだねる、こういう結果になっております。これでは、訴訟の場で官庁側が握っておる重要な情報国民の前に公開させる制度的な保障がなくなってしまう。文書提出一般義務化という、形の上では非常に望ましい形がとられておるにもかかわらず、肝心のところでそれが骨抜きになっておると言わざるを得ないというふうに考えます。  国民にとって非常に重要な情報文書官庁側によって隠されていたという例として、最近では、エイズ薬害訴訟の問題、それから住専問題などがしばしば例に挙げられております。中部地方にかかわりの深い事例としましては、福井県にございます動力炉・核燃料開発事業団の高速増殖炉「もんじゅ」のナトリウム漏れの事故が最近起こっておりますけれども、この事故の際の事実隠しといいますか、これが当地方にとってはまことに記憶に新しいところでございます。  私はさらに、最近各地の自治体で問題になっております接待あるいは空出張をめぐる情報とか文書類を、行政官庁情報隠しといいますか、そういうものの例につけ加えたいと思います。  各地で伝えられるところによりますと、例えば空出張による裏金づくりとか、そういう一部の自治体の公務員の行動は、およそ住民の委託を受けて、公金つまり住民の税金を使って職務を執行するという基本的な自覚すら欠けているのではないかということを疑わしめるものが多々ございます。  自治体の公費の違法な支出は、現在情報公開制度が設けられておる自治体ではその制度に基づいて公開請求が行われたり、あるいは住民訴訟の場を通じてその一部が明らかになってきております。しかし、官庁側の一方的な判断文書提出拒否を正当化できるようになりますと、このような情報も今後さらに隠ぺいされることになるのではないか、こういうふうに危惧するものであります。  例えば外交とかあるいは防衛、警察など司法機関の捜査、こういった情報は当然のことながら非公開もやむを得ない。そういう場合はもちろんございます。極論いたしますと、例えば国立大学の入学試験の問題についての情報公開せよと言うことが非常にばかげておることは常識から考えてすぐわかるわけでございますけれども、こういうだれが見ても非公開が妥当であるという情報は除きまして、少なくとも提出拒否の正当化の要件をもっと厳格に絞り込むべきではないか。その上で、提出拒否行政官庁の一方的な判断にゆだねられるのではなくて、裁判官判断できるようにする。これは最低限修正していただきたい事項であるというふうに私は思います。  事の是非はともかくといたしまして、我が国においてもそうですけれども、現代の先進国家においては、国民生活のあらゆる分野で、国、自治体を問わず、行政機関の果たす役割が大きくなっております。これは、必ずしも官僚機構の肥大化というような言葉で呼ばれることだけではなくて、国民行政需要そのものが非常に増大しております。例えば福祉とかいろいろな問題をめぐって国民行政需要が増大しているのは事実でありますので、ある意味では、行政の介入とかあるいは行政役割が大きくなるような事態は避けられないことであります。安価な政府とかあるいは小さい政府とかいうのは大変理想的なものでありますけれども、事実上なかなか実現は難しい。事の是非はともかくといたしまして、現実にはそういう傾向そのものは認めざるを得ない。  それはともかくといたしまして、こういう現在の状態に対応いたしまして、行政官庁国民と相対する訴訟当事者になる機会は今後ますますふえると思います。また、訴訟当事者ではなくても、行政官庁が、問題になっておる事件の関連の情報あるいは文書類の所持者であるという機会はますます多くなってくると思います。  また、事実、今日では行政官庁に蓄積されておる情報の量というのは実に膨大なものに上っておると思われます。民間の企業、団体あるいは個人が持っておる情報ではとても太刀打ちできない。社会生活のあらゆる分野についての情報行政官庁には非常に大量に集積されておる。ですけれども、そういう官庁に集積されておる情報というのはだれのものでもございません。国民共通の財産でございます。特定の公務員あるいは特定の官庁の私有物ではありません。原則として国民のために還元されるべきものであるというふうに考えます。  近代国家における行政官庁あるいはそこに勤務しておる公務員の集団は、マイナスシンボル、マイナスイメージを込めて、官僚制とか官僚機構という言葉で呼ばれる場合がございますけれども、法令に基づいて職務権限が定められているとか、専門的能力による任用とか、公平な職務執行とか、必ずしもマイナスでない特色も持っておるのです。しかし、国会議員先生方と違いまして、官僚機構の中にある一般公務員というのは原則として選挙の洗礼を受けない、あるいは独特の身分保障によってどうしても国民から遊離し、国民のコントロールから逃れやすい。それを防ぐには、官庁や公務員の活動についての情報の開示、特に法廷での争いになった場合、情報文書提出を制度的に保障することができるようにすることが不可欠であろうと考えます。  御出席の、国会からいらっしゃった先生方の冷静な御高察を期待して、つたない意見陳述を終わらせていただきたいと思います。
  194. 加藤卓二

    加藤座長 ありがとうございました。  次に、松浦馨君にお願いいたします。
  195. 松浦馨

    松浦馨君 私は、名城大学法学部の松浦馨でございます。  本日は、意見陳述者といたしまして、このたびの民事訴訟法案につきまして意見を述べさせていただきます。  実は、私は法制審議会民事訴訟法部会の末席におきまして審議に参加した者でございます。したがって、本日の意見陳述につきましても、どちらかと申しますと守る立場から、しかも守るということになりますとどうしても専門的な説明になりますので、そういう意味では私の意見陳述というのは甚だ不利なのでございますけれども、そういうことでやらざるを得ないということで、その点、御了解をいただきたいと思います。  このたびの民事訴訟法案は、法制審議会民事訴訟法部会が五年余りの歳月を費やしまして、ハードなスケジュールをこなしまして、その総力を結集して取りまとめた法案でございまして、その間二回にわたりまして、すなわち、最初は検討事項の選定の段階、その次は改正要綱試案審議の段階、この二回におきまして相当規模の意見照会を行いました。裁判所弁護士、法曹関係団体、それから大学、学者による研究会、経済団体、労働団体、消費者団体等につきまして広く意見調査を行いまして、国民各層の意見を徴した上で、それを反映させながら審議をしてまいったものでございます。  申すまでもないことでございますが、先ほど前田さんのお言葉の中にもありましたように、現行民事訴訟法は大正十五年、一九二六年に制定されたものでありまして、これは古色蒼然たる趣を帯びております。これに基づく民事裁判制度というものも当然十分ではない。時間と費用がかかり過ぎるとか利用しにくいという批判が強くなされていたわけでございますけれども、本法案はこの批判を正面から受けとめまして、市民にわかりやすい、利用しやすい、迅速な司法を目指しまして打ち出されました、内容、形式ともに、形式と申しますのは口語体になっておるわけでございますが、斬新な法案でございまして、もとより見方によりましては十分でないというところもあるでございましょうけれども、現在の時点で見まして非常に時宜を得た望ましい法案考えられるわけでございまして、私といたしましては、強く本法案の成立を希望する次第でございます。  次に、本法案に関しまして最も問題視されておりますのは文書提出命令でございまして、先ほどの前田さんの意見陳述におきましても半分以上がそれにかかわっていたように思います。そこで、この点に絞りまして私の意見を述べさせていただきたいと存じます。  今日の民事訴訟におきましては、薬害訴訟、環境訴訟、PL訴訟、消費者訴訟その他多くの訴訟におきまして、特に原告の側に証拠資料がない、むしろ被告あるいは第三者である官庁とか企業に証拠が偏っている、いわゆる証拠の偏在という現象が顕著でありまして、これを是正する最も有効な手段がこの文書提出命令であります。  今回の改正に当たりましては、どういうふうにすれば文書提出命令制度を強化拡充して証拠の偏在を是正することができるかという観点から検討が加えられまして、その結果、この文書提出義務につきまして、従来の範囲でございました現行法の三百十二条の一号から三号まで、これはそのまま維持する。そして、新法におきましては、それに加えまして、これは二百二十条の四号に新しい項目を加えまして、第一号から三号に該当しない文書、第一号ないし三号といいますのは、いわば特定義務によって提出が義務づけられている文書と言うことができると思いますけれども、それ以外の文書、つまりそういった特定義務に該当しない一般義務的な文書につきましても、秘密等が記載されているような文書等を除く範囲におきまして文書提出義務の対象に加えたということでございます。  これに伴いまして、新しく加えました一般義務的な文書、これが新しい規定でありますので、それにつきまして必要な法規をあてがったということなのでございますけれども現行法におきまして一般義務とされております証人義務につきまして、証言拒絶事由がある場合には証言を拒むことができるということがございますので、今度新しく追加されました一般義務的な文書につきましては、証言の場合と同じように取り扱いまして、証言拒絶事由と同様の事由がある文書につきましては、それは提出しなくてもよいという断りを加えたわけでございます。  それからなお、証人尋問の場合に、公務員の職務上の秘密について尋問するときには監督官庁の承認が必要であるというふうになっておるわけで、その公務員の証人尋問の場合におきましては、承認がない場合には証言を拒むことができるというふうになっております関係から、それを横滑りに持ってまいりまして、公務員の職務上の秘密に関する文書提出を命ずる場合につきましても、やはり監督官庁の承認を要するものであるというふうにしているわけでございます。  しかし、ここのところでちょっと誤解をしないようにしていただきたいことは、そういった監督官庁の承認が必要なのは、新しくつけ加えられました一般義務的な文書、つまり法案の二百二十条四号文書に限ってそういう監督官庁の承認を必要とするということでございまして、二百二十条一号ないし三号に該当いたします特別義務的な文書、これは従来三百十二条の一号ないし三号に該当するものでございますけれども、これにつきましては何ら監督官庁の承認は必要ないということでございます。  大体そういうようなことでつくられているわけでございまして、今申しましたような規定になりましたのは、要するに、民事訴訟法以外の現在の日本の法律を見回してみましたところ、例えば刑事訴訟法における押収に関する規定でありますとか証人尋問規定、それから議院証言法の規定などにおきましてそういう扱いになっておりますので、民事訴訟法におきましても、それと横並びで、同じような趣旨規定にするほかないというふうな判断でそういうことになったわけでございます。  次に、これも文書提出命令の問題でございますけれども法案の二百二十条四号のロにおきまして、公務員の職務上の秘密に関する文書提出につきまして監督官庁の承認を要する、先ほどちょっと説明したところでございますけれども、そういう規定を設けるということになりますというと、この新しい二百二十条の趣旨に反して、現行法よりも文書提出命令の対象文書を狭めることにならないかということが言われるわけでございますけれども、これも決してそうではないということでございます。文書提出命令に関する私の先ほどの冒頭の説明でも申し上げましたように、今回の改正は、徹頭徹尾、法制審議会におきましては全員一致で、専ら提出義務の対象たる文書範囲を拡張する、そういう目的で審議がなされたわけでございます。  そういうことで、現行法では三百十二条一号ないし三号で賄われているわけでございますが、この三百十二条一号ないし三号というのは新法の二百二十条の一号から三号にそのまま吸収しておるわけでございまして、従来行われたものは全部認める、さらにその上に四号を加えまして、そういうことで足りないところを補うというふうなことで新法がつくられているわけでございます。  ですから、新法の採用によりまして現行法の三百十二条一号ないし三号よりも狭くなるということは絶対にあり得ないということでございまして、そういう議論をする方の中には、狭くなるというのはなぜ狭くなるのかと申しますと、文書の所持者が、おれの持っている文書は、おれの持っているというのは公務員を考えていただきたいんですが、公務員、官庁が持っている文書は職務上の秘密に関するんだというふうなことを言った場合に、一号、二号、三号の文書につきましても四号に規定された監督官庁の承認というものがかぶってくる。今まではかぶらなかったわけですね。それがかぶってくることになるから狭くなるんだ、そういう議論をする方が多いわけでございますけれども、それは、先ほど申しましたように、審議の経過から申しまして、そういうことはあり得ないということでございます。  最後に、今回の文書提出命令に関する法案内容が、現在行われております行政情報公開を図ろうとする政府の方向に反するのではないかという意見がございますけれども、この点につきましても必ずしもそうではないということでございまして、今回の改正におきましては、現行法の体系で許される範囲で進歩的な法案をつくっておる。さらにこれ以上進歩的なものにつきましては、情報公開法ができました段階におきまして改めて検討するということでございます。  なぜ情報公開を審査する委員会でやっているような検討作業を民訴部会でもやらないのかということになりますけれども、それは、民訴部会の構成から申しましても、それから対象となっております事項の関係から申しましても、民訴部会でやるよりは現在やっております行政改革委員会等で審議すべき問題ではないかということでそうなっているだけだということでございます。  長くなりましたが、以上でございます。
  196. 加藤卓二

    加藤座長 ありがとうございました。  次に、溝口節二君にお願いいたします。
  197. 溝口節二

    溝口節二君 私は、入社後、中部本社の編集局第一線で、主に警察、司法行政部門などの取材活動を経験した立場から、今回の新しい民事訴訟法案に対する意見を述べます。  最初に結論をかいつまんで申します。  私自身、最も重要な問題と思っているのは、公務員の職務上の秘密に関する公文書について、官公庁判断提出拒否できるとしているほか、専門的にはインカメラ手続と言われているようですが、その拒否の適否について裁判所司法判断が一切及ばないとされている点です。報道機関の端に連なる者として、このことは近い将来の制度化が検討されております国の情報公開制度に大きく影響し、情報公開の促進という時代流れに逆行するのではないかとの懸念を覚えます。残された審議時間が少ないようだとの情報にも接しますけれども、国会でさらなる論議を深めていただき、国民全体が納得、理解できるような形への修正が必要であろうと考えます。  さて、今回の新民事訴訟法案は、大正時代にできた現民訴法の七十年ぶりの全面大改正と言われ、利用しやすく、迅速な裁判を実現するという時代の要請にこたえるものと聞いております。民事、刑事を問わず、日本の長過ぎる裁判については既に早くから問題が指摘されております。また、民訴法を初めとして、制定後相当長期間を経た現在の法律が、取っつきにくい、あるいは社会の変化に対応し切れなくなっているという批判も聞いております。司法に対する信頼の回復と確立は秩序ある民主社会の維持、発展に不可欠であり、この意味での法の抜本的改正は必要なものと思います。  こうした大きな意義や目的を持つ今回の改正ですが、提案された新法案を見ますと、いわゆる文書提出命令関係の条文の中には、素人目にもなかなか理解しがたいなというところが多々見受けられます。具体的に言いますと、改正法案の第二百二十条の文書提出義務に関するもの、第二百二十三条の文書提出命令等に関するものなどであります。  国、法務省の説明によりますと、今回のこれらの改正趣旨は、民事裁判で、提出義務の対象となる文書範囲現行法より広げ、証拠集めをより容易にしようというものであるとしています。しかし、これに対しては、日弁連サイドなどは全く逆の解釈に立っております。  つまり、形式的には拡大化の体裁をとっているものの、公務員の職務上の秘密に関する文書について、提出するかどうかが官公庁の承認の有無によって決まるという明文規定が設けられることで、かえって提出文書範囲が狭まるという見方であります。現在では裁判所努力提出対象とされている文書も、改正法のもとでは、この規定によって堂々と提出を拒絶できるケースが生じるとしております。例えば、その可能性のある文書として、拘置所内の暴行事件に関し、最近、裁判所提出を求めた拘置所内にあるカルテについて、改正法下では公務秘密文書として提出拒否でき得る文書例として挙げられております。  この問題については、私ども毎日新聞を初め各マスコミも、例えば、「公文書については、官公庁などが承認しない場合、裁判所判断なしに提出拒否できるとしたのは問題だ。」とか、「秘密主義に傾けば適用除外が不当に広がり、秘密保護法にもなりかねない。」、さらには、今後の国の情報公開制度と関連づけて、「国会審議で明らかになってきたのは、政府の行政改革委員会の部会で検討が進んでいる情報公開法との矛盾である」などと、情報公開法への影響や矛盾点を指摘する論評も出されています。  これら各方面からの指摘からもわかるように、この論議の根本にあるのは、公文書提出あるいは非提出判断官公庁のみにゆだねられ、しかも非提出とされる秘密文書がどんなものを指すのか、その範囲や基準が新法案の条文からでは具体的に浮かび上がってこないという点にあるような気がいたします。承認を拒むかどうかの判断は、「公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある場合」という物差しが準用されるようですが、表現が抽象的であり、これに基づく官公庁判断に対し裁判所のチェックもないわけです。薬害や公害、各種行政訴訟など、現代型裁判がふえている中で、これでどうやって民事裁判の改善を図るのか、行政情報公開を促進させるのかと多くの危惧が出されていますが、これはすなわち、現在の官公庁や公務員の秘密情報の扱いに抜きがたい不信があるからではないかと思われます。  少し話が飛びますが、私ども新聞の重要な機能の一つに、中央、地方を問わず、行政の監視ということがあります。国民の貴重な税金が使われる行政施策が適正に行われているかどうか、多くの強大な権力が集中する国、地方の各級公務員、政治家の周辺に不正や腐敗はないかなどを監視し、行政機関あるいは公務員が持つさまざまな情報に肉薄しながら行政の実態を報道することが、結果的には納税者の福祉増進あるいは豊かな地域づくりに資するという考え方であります。  また、近年では、地方での情報公開制度がある程度整備された結果、この制度を利用した行政情報の入手による行政監視ということも市民オンブズマンなどの市民運動として活発化しております。このことは、我々マスコミにとっても従来になかった取材対象の広がりとなっているほか、マスコミ自身も情報公開制度を新たな情報入手手段として利用するケースもふえております。  最近では、顕著な例として、官官接待の問題に代表される公費の不正あるいは不明朗支出の問題があります。全国各地と同様、この東海地方でも、県や市の各行政機関で食糧費や補助金などの不明朗支出の問題が、公開された資料で明らかになり、さまざまに報道されております。この取材活動の中で、実は、お役所、公務員の秘密情報に対する考え方を特徴づけるような出来事も浮かび上がってきております。  同僚記者の手で既に報道されたケースですが、ある県の東京事務所が、同じ会食日、同じ金額、同じ様式の二枚の請求書に基づき懇談会経費を二回も支払ったという問題がありました。県側は、飲食店が同じ請求書を二枚送り、職員が気づかず二重払いしてしまったと釈明しましたが、ミスによる二重払いなのか別の用途に使われたかは、それ以上突き詰めることができず、疑惑は解消されないまま終わっています。この事実が表面化したのは、公開された請求書に通し番号の請求書番号が記載されており、二枚のうちの一方に再発行であることを示す米印がついていただけで、全く同じ番号だったことから同一飲食店への二重払いがわかってきたわけです。  ところで、この問題が新聞で報道された後のことですが、それ以後に市民オンブズマンが別の請求書の公開を求め、入手したところ、その請求書からは請求書番号が抹消されて出てきたのです。オンブズマンの問い合わせに対し、県側の回答は、請求書番号もプライバシーに当たる、さきに出したのは消し忘れだったという説明だったそうです。また、これら食糧費関係文書には店名や相手方、懇談目的などは伏せられていますが、飲食明細書で、飲食した品名欄に記載されているはずの品名までが消され、数量と金額のみが公開されたものもあったそうです。それだけでは何の意味もない請求書番号や料理名までもプライバシーとして非公開にしてしまうところに、今のお役所の秘密文書に対する考え方が如実に出ているのではないかと思います。  本題に戻りますが、国は、現在の公開義務文書は新民訴法でも変わらないとした上で、公開、非公開判断官公庁に任せてもらって大丈夫、問題が生じた場合は情報公開法制定時に再調整すればよいとの考え方もあるようです。その根底には、我が国特有の官優先の考え方が横たわっているようであります。しかし、現在、日本の官僚制のあり方についてはさまざまな角度から論議があり、行政情報関係では、最近の薬害エイズ禍で見られたいわゆる情報隠しで、官庁の情報管理に対する信頼は失墜しております。今国民にとって重要なのは、信頼される、信頼できる行政の確立であると思います。そのためには、情報公開、ガラス張りの行政が早道であろうと思われます。  今改正法案をめぐり、何が公共の利益を害し、公務遂行に支障を生じる秘密文書なのかが不明なまま、官公庁のみの判断文書提出、非提出を決めることには強い疑問が提起されております。この疑問を解消しないままの法案成立は将来に深い禍根を残すものと言わざるを得ません。  行政情報国民の共有財産であるという認識に立つ、後世に誇り得る法の制定をお願いいたします。  以上であります。
  198. 加藤卓二

    加藤座長 ありがとうございました。  次に、森山文昭君にお願いいたします。
  199. 森山文昭

    森山文昭君 弁護士をしております森山と申します。  私は、今回の民事訴訟法案には、例えば文書提出命令における公務秘密文書の取り扱いに関する問題ですとか、あるいは弁論準備手続公開制限に関する問題ですとか、さらに上告制限に関する問題などなど、幾つかの問題点が存在していると言わざるを得ませんけれども、とりわけこれらの問題の中でも、文書提出命令に関する問題につきましてはその問題性が極めて重大である、かように考えております。したがいまして、本日は時間の都合もございますので、それ以外の問題点については割愛をさせていただきまして、この文書提出命令の問題に絞って意見を述べさせていただきたいと思います。  最近、行政情報国民の目から隠され、長い間真実が明らかにされなかったという事例が幾つか相次いで起こりました。例えば、HIV訴訟の中における厚生省の保管していたファイルの問題などはその最たるものであります。それから、先ほど前田先生の方から御紹介がありましたように、「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故ですとか、あるいは官官接待の事例などを見ましても、いかに行政情報国民の目から隠されようとしているかということを指摘をすることができると思います。こういう状況の中で、今国民の中では、行政情報の広範な公開を求める声が非常に強くなっております。  今回の民事訴訟法改正ですが、この改正作業に当たりましては、文書提出命令範囲拡大ということが一つの大きな目玉とされてきました。その背景にはやはりこうした情報公開を求める国民の声があったのではないかというふうに指摘することができると思います。ところが、残念ながら、今国会に提案をされました民事訴訟法案を見ますと、当初の期待には大きく反しまして、とりわけ公務秘密文書については、その提出範囲が大きく後退させられるばかりか、現状よりもさらに後退するのではないかという危惧の念すら抱かざるを得ないものになっております。先ほど申し上げましたように、行政情報公開を求める国民の声が非常に強くなってきている今、こうした流れに逆行する民事訴訟法改正には強く反対をするものであります。  そこで、こうした観点に基づきまして、私は今回の民事訴訟法案の個々の条項の問題点についてお話をさせていただきたいと思います。  大きく言って三点ございます。  まず第一点は、公務秘密文書については監督官庁の承認がなければ裁判所提出を求めることができないとされている点であります。  この点につきましては、民間人の場合も、例えば医師とか弁護士には守秘義務が課せられておりまして、こうした場合、民間人であっても文書提出を拒むことができるという内容になっております。ところが、民間人がそういう申し立てをした場合には、果たしてそれらの主張が適法であるかどうかということについて全面的に司法審査が及ぶというふうにされているのであります。ところが、公務秘密文書につきましては、監督官庁がその提出を承認しないと言っただけでその中身の判断裁判所が立ち入ることができない、こういうふうにされていることは極めて重大だと思います。  このような官民格差は一体いかなる理由によって合理化できるのでしょうか。私は、これはいかなる理由によっても合理化することのできない官民格差ではないかというふうに思います。  この点につきまして、先ほど松浦先生の方から、公務員の証言拒絶権との均衡の問題が指摘をされました。確かに、公務員の証言拒絶権を定めた規定の中には、裁判所が職務上の秘密について公務員に証人として証言を求める際には監督官庁の承認を得なければならないという規定があります。  私の意見は、そもそもこうした規定も現在の情報公開流れに反する内容を持っているものでありますから、将来的にはこの証言拒絶権に関する監督官庁の承認という要件も削除するべきものであろうと思います。しかしながら、少なくとも現在のこの現行法を前提として考えてみました場合にも、証言の場合は、その証人が法廷に出てきて証言をしてみなければ何を話すのかがわからないという問題があります。これに対しまして、文書の場合は、画一的にその内容が決まっておりますから、その中身を公開させるべきかどうかということについては十分裁判所の一義的な判断が可能であります。こういう違いがあると思います。それから、現在の裁判実務の中では、とりわけ書証、つまり証拠としての文書ですね、これの持つ意味は極めて大きいと言わざるを得ません。  こうした意味におきまして、現行法を前提としましても、公務員の証言拒絶権との間でこうした若干の取り扱いの違いがあったとしても著しく均衡を失することにはならないのではないかというふうに考えております。  第二番目の問題は、監督官庁が承認を拒絶することができる範囲が著しく広められているという点でございます。  この点につきましては、法案の二百二十二条二項が百九十一条二項を準用しまして、公共の利益を害する場合か、あるいは公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあれば当該文書提出を拒むことができるという規定になっております。  ところで、この百九十一条二項というのは、先ほども若干触れました公務員の証言拒絶権を規定した規定でございますけれども、そもそもこの百九十一条二項がこのような規定にされたこと自体が、私は極めて重大な問題を含んでいると思います。  と申しますのは、現行民事訴訟法は、公務員に職務上の秘密に関する事項の証言を求める場合には監督官庁の承認が必要であると規定をするだけで、監督官庁がどういう場合にその承認を拒むことができるかということについては何ら規定をしておりません。この点につきましては、刑事訴訟法の百四十四条が同様に公務員の証言拒絶権を規定しているわけですけれども、刑事訴訟法では、監督官庁は、「国の重大な利益を害する場合を除いては、承諾を拒むことができない。」としております。したがいまして、現在の民事訴訟法の解釈としましては、民事訴訟法においても、刑事訴訟法と同様、監督官庁は国または公共の重大な利益を害する場合でなければ承認を拒むことができないというふうに一般に解釈、運用されております。  ところが、今回の法案によりますと、この要件が大幅に緩和をされまして、「公共の利益を」害する、これは刑事訴訟法と比べてみますと、刑事訴訟法が「国の重大な利益」と言っているのと比べまして、この「重大な」が抜けております。そして、これに加えてさらに、「公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれ」があっても承認を拒むことができるという新たな類型を設けているわけであります。  このように、法案は公務員の証言拒絶権が認められる範囲を著しく拡大をしておりまして、この点において刑事訴訟法と著しく均衡を失する内容になっております。したがいまして、私は、この公務員の証言拒絶権を規定をしました百九十一条二項もぜひ修正をしていただいて、刑事訴訟法と並んで、国または公共の重大な利益を害する場合を除いては、監督官庁は承認を拒むことができないというふうにするべきであろうと考えております。  そうして、これと合わせまして、文書提出義務範囲につきましても、監督官庁の承認にその結果をゆだねるのではなくて、公共の重大な利益を害する場合でなければ公務員はその文書提出を拒むことができないというふうに修正をするべきであろうと考えております。  三番目の問題点としましては、今回の改正法案ではインカメラ審理が導入をされておりますけれども、このインカメラ審理の対象からも公務秘密文書が除外をされているという点でございます。  先ほども申し上げましたが、民間人が守秘義務を理由に文書提出を拒んだ場合には、裁判所はとりあえずその文書裁判所提出をさせて、裁判官が直接その文書内容を見て、果たしてその文書が本当に守秘義務によって提出を拒むことができるものであるかどうかを判断することができるようにしております。ところが、公務秘密文書の場合はこういうことが一切できないことになっているわけであります。これは、民間人の言うことは信用できないから裁判所が直接これを点検するけれども行政が言うことはもう無条件で、盲目的に信用しなければならないと言っているに等しいものでありまして、恐るべき官尊民卑の思想であると言わなければならないと思います。  このように見てきましたが、今回の民事訴訟法案は、民間の情報よりもむしろ行政情報に関する秘密を厚く保護する、こういう結果になっております。しかしながら、そもそも行政情報というものは私たち国民一人一人が支払った税金によって得られたものであります。したがいまして、行政情報は、国民一人一人が本来自由に利用することができるべきものでありまして、原則として国民に開示されるべきものであるというふうに考えます。不開示が認められるのはよほど特殊な例外に限られるべきであろうと考えるわけであります。したがいまして、行政情報公開流れに沿った改正を行うのか、それともこれに逆行した改正を行うのかということが現在問われている最も重要なポイントなのではないか、こういうふうに考えております。  さて、今回の法改正によって少なくとも文書提出命令を求めることのできる範囲は広がっているという議論があります。そこで、この点に関する私の見解を最後に簡単に述べさせていただきたいと思います。  先ほど松浦先生は、現行よりもかえって狭まるのではないかと言っている意見は、現在の一号から三号文書提出要件に監督官庁の承認という要件がかぶさってきて狭まるのではないか、こういう議論ではないかという御紹介がありました。私は、これは若干正確でないというふうに思います。  といいますのは、判例が大変苦労をしまして一号から三号文書範囲拡大し、特に三号の法律関係文書を拡張解釈しまして、これまで三号文書に当たるとして提出を命じてきた文書が、今回の法改正が行われることによって、すなわち新たに四号文書というものがつけ加えられることによりまして今後は四号文書に当たるとされる、その結果、監督官庁の承認がなければ提出を命ずることができなくなってしまうのではないか、このような危惧を私たちは感じているのであります。  例えば原発訴訟などにおきまして、法律関係文書に当たるかどうかという要件につきましては、法律関係それ自体を記載した文書にとどまらず、法律関係関係のある事項を記載した文書でもよいし、あるいはまた法律関係の形成過程において作成された文書でも構わない、こういう形で範囲が拡張されまして、原子力委員会議事録が提出を命じられたという例がございます。これなども、新しい民事訴訟法案のもとでは四号文書に当たり、上級官庁の承認がなければ提出を求めることができないというふうになってしまうおそれがあるのではないか、このように危惧をしている次第でございます。  最後に、アメリカの第四代大統領のジェームス・マディソン氏の言葉を引用しまして、私の意見陳述を締めくくらせていただきたいと思います。すなわち、彼は「情報を持つ者は、常に持たない者を支配する。それ故、自ら統治者となろうとする人民は、知識の力によって武装しなければならない」と述べました。今回の民事訴訟法改正が、官僚による情報隠し、情報操作を容易にし、その結果人民が官僚によって支配されるような国家を助長することのないように、今国会におきまして慎重な審議を遂げられて、国民の利益になる民事訴訟法をぜひとも成立させていただきたい、このことを心から念願いたしまして、私の意見陳述を終わりたいと思います。
  200. 松浦馨

    松浦馨君 座長、発言をお許し願えないでしょうか。
  201. 加藤卓二

    加藤座長 松浦馨君。
  202. 松浦馨

    松浦馨君 ただいま森山先生から御指摘のあった点でございますけれども、新法が採用されることによりまして、従来三号文書であったものが新法の四号文書に移行するのではないかということでございますけれども、私は、そのようなことは絶対にあってはいけないし、あり得ないことであるというふうに考えます。
  203. 加藤卓二

    加藤座長 ありがとうございました。  以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  204. 加藤卓二

    加藤座長 これより委員からの質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。志賀節君。
  205. 志賀節

    志賀委員 御指名をいただきました、私、志賀節でございます。  先ほども委員長からお礼の言葉がございましたが、私からも、御意見を私どもの前で御開陳をいただきますことにつきまして心から厚く御礼を申し上げ、また、今までの御高見もしかと承りました。ありがとうございました。  私の出身地は岩手県でございます。岩手県の県南に現在室根村というところがございまして、現在そこの一部をなしております釘子というところからかつて直訴をした人間がいました。当時の肝いりでございましたが、昆野八郎右衛門という義民でございました。彼は、伊達綱村公に仙台で直訴に及びました。御存じのように、直訴は死罪でございました。苛斂誅求の中で自分の同胞の農民たちが塗炭の苦しみの中で倒れていくのを見るに忍びなくて、みずからの命を賭して直訴に及んだわけでございます。私は、この民訴法の今先生方が大変中心点として御理解をしておられる点、あるいは今後つくられるであろう情報公開法の源にはこういう問題があったのだという認識でございます。  要するに、殿様は一般民衆の苦しみを知らない、その情報を身をもってお伝えしなければならないというその使命感から彼は縛につき、命を捨てたのだと思っております。でありますから、私は、きょうのこの問題点というものは非常に大きな問題をはらんでおるのであって、先ほど来意見陳述皆様方のお言葉を一言隻句聞き漏らすまいと思って拝聴いたしておりました。  私は、今いろいろお話を聞いて痛感をいたしますことは、先ほど官尊民卑という言葉もございましたが、しかし一方においては、官がいかに民から不信の念で見られているか。もう一つ申し上げたいことは、その民が果たして官を不信の念で見るほどにしっかりしているのかなということ。例えば、今まで先生方も再三御理解いただいていると思いますが、内部告発という名前の、私どもが最も嫌う密告というものを事とする御時世が今来ておる。しかも、こういうことをやる以上は、昔だったならば、今の昆野八郎右衛門ではないけれども、命を賭したのです。あるいはまた、自分の主君に対して忠告をする場合に諫言という言葉がございますが、諫言は命にかえて行ったものと私どもは承知しております。ところが、そんなことはしないで、もうお遊びというかあるいは売名というか、三文小説の主人公にもなれないようなばかなことをやってきているということが一方にございまして、私は、官民ともに何という御時世かと考えておる一人でございます。  そこで、きょうはそれやこれやを承ってまいりたいと思うのでございますけれども、今まで確かに、今度の民事訴訟法改正では、秘密文書官公庁からの許可なくしては出してはいかぬというようなことになったままでおかしいという御意見がございました。しからば具体的に、これを改めるにはどうしたらいいか。先ほど来のお話からは大体お察しがつきます。裁判所にゆだねられるようにしたらいいだろうというような御意見かと思うのでありますが、それぞれ先生方のこうやるべきだという御意見は明瞭にまだ承っておりませんので、お聞かせをいただきたい、かように思う次第でございます。  前田先生から順次お願いします。
  206. 前田弘司

    前田弘司君 私の意見陳述の中でそれらしきことは申し上げたつもりでありますが、私といたしましては、要するに、行政官庁側が、これは公務執行にかかわる秘密文書であるというような非常にあいまいな理由で提出拒否するのではなくて、その提出拒否ができる条件をもっと法文で厳格に定めるということがまず一つ。これは最後の森山先生陳述の中にも一部そのようなことが出てきたと思いますけれども提出拒否を正当化できる理由を厳格に法文で定めるということが一つ。もっと絞り込むということですね。  それからもう一つは、そういう正当化された条件に当たりますよと言って行政官庁側が提出拒否した場合に、裁判所のいわゆるインカメラ手続が可能であるようにする。本訴に証拠物件として利用する以前に裁判所が現物を提出させて、果たして提出拒否が正当であるかどうかを裁判官が審査できるようにしてほしい。この二点でございます。  もし、本訴にかかわる裁判官提出拒否が正当であるかどうかを定める文書を事前に見てしまうのは予断を与えることになるというのならば、本訴とかかわりのない別の裁判官が判定に当たってもよいと私は思います。  それから、もう少し付随して申し上げれば、行政官庁が一方的に提出拒否を決定してしまえる、提出拒否判断をしてしまって、裁判所が一切それに関与できないというのが一番大きな問題だろうと思います。例えば、行政官庁側の方が専門家がそろっているのだろうからというような議論がひょっとして出てくるかもしれません。裁判官というのは行政官庁提出拒否をした文書についてその提出拒否の正当性が判断できるかどうか、判断できるような能力が裁判所にはないのではないかというような議論が出てくるかもしれません。けれども、それは全く逆だと思います。行政官庁が一方的に情報を握り込んだままで、一種のカースト化してしまったような状態で、おれらの言うことが正しいのだと言うことこそ民主主義の理念に反することだと思います。  以上です。
  207. 松浦馨

    松浦馨君 公務員の秘密文書でございますけれども、これは、その秘密文書が二百二十条二号または三号に該当する文書であるか、四号に該当する文書であるかということによって取り扱いが違ってくるということでございまして、二号、三号に該当する文書の場合は、現行法におきましても新法におきましても、裁判所が、これは果たして秘密に該当するかどうかということについて審査することができるということになっております。四号文書といいますのは、現行法では二号、三号に当たりませんので、現行法としては何ともしようがないものなのでございますけれども、新法によりますというと、四号につきましてもそれを文書提出命令の対象とすることができる、ただし、その場合におきましては監督官庁の許可が必要だということになるわけです。それが新法の立場でございます。  私自身の個人的な希望といたしましては、そういう四号の文書につきましてももう少し裁判所が踏み込んで審査ができるようなことを考えてもいいのじゃないかということは一応は考えます。しかし、立法というものは結局はコンセンサスができたところでそれを法律にするというふうな制約があるわけでありまして、それが理想だからといって直ちに法律にしてもいいということにはならないと思うのです。したがいまして、現段階といたしましては、四号文書に該当する場合には、横並びを考えまして、刑訴法とかあるいは議院証言法なんかの規定も考慮いたしまして、この程度で処理する必要があるのじゃないか。将来情報公開法なんかがちゃんとできました段階で改めて、もう一歩先へ進むかどうかということを考えればいいのじゃないかというふうに考えております。
  208. 溝口節二

    溝口節二君 私は、法律の専門家でありませんので、一号文書、二号文書ということで、具体的にこれがどういうものかというのはわかりませんので、一般論でお答えします。  まず、行政情報で、これはやはり出してはいけない、公開してはいけないという情報は必ずあると思います。人権の問題その他、そういう部類のものはあります。したがって、一次的には行政機関が、出すか出さないかということは行政機関の責任として決めるべきであろうと僕は思います。  ただ、先ほども申しましたように、行政機関といっても神様ではありません。あるいは法律の完全な専門家ばかりいるとは限りませんので、一号文書か二号文書か四号文書判断の誤りもあるでしょうし、ミスリード的な、保身的な、あるいは恣意的な判断もあろうかと思います。したがって、判断行政が第一次的にはするけれども、それを行政以外の第三者がチェックできる機能はどこかに持っていなければいかぬと思います。現社会のシステムの中で、行政以外にそれを公平に、公正にチェックできるのはやはり裁判所であろうと思います。したがって、裁判所のチェック機能はやはりどんな場合でも確保すべきであろうと思います。  そしてもう一つは、裁判所といえどもこれは出せないという情報もひょっとしたらあるかもしれません。国防の問題とか、あるいは第三者に言っただけでその情報の価値がなくなる種類の情報。これは人から聞いたのですが、ノウハウに関する情報などは、人に一言しゃべっただけでそのノウハウの情報価値がなくなるということがあるそうです。したがって、そのノウハウの問題は別としまして、その手の情報がもしあるかもしれませんので、それは厳密に考えていただく。しかし、たくさんはないと思いますので、その部分については厳密な審査の上であらかじめ明示したらどうかと思います。したがって、その部分については裁判所もタッチできないという方法ができないか。しかし、これは条文ではっきりと限定的に明示すべきであろうと思います。私は、そうやって情報公開を担保すべきであろうと思います。
  209. 森山文昭

    森山文昭君 私が、文書提出命令規定との関連でぜひともこれだけは修正していただきたいと考えている点が五点ございます。また、先ほども申し上げましたように、これだけの修正ですべて足りると考えているわけではございませんで、ほかにもいろいろ問題点はあると思いますけれども、とりあえず本日は文書提出命令の問題に絞って修正意見を述べさせていただきたいと思います。  まず第一点は、法案の二百二十条四号ロが、「公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出について当該監督官庁が承認をしないもの」を文書提出義務から除外をしているわけですけれども、この規定を、「公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の重大な利益が害されることになるもの」、このように修正をしていただきたいと思います。  二番目には、それとの関係で二百二十二条を削除するということであります。これは技術的な問題でして、二百二十二条は監督官庁の承認をするかどうかについての照会に関する規定ですので、これが不要になるということです。  それから三番目は、二百二十三条の三項でインカメラ審理規定をされているわけですけれども、このインカメラ審理の対象から二百二十条第四号のロが除外をされておりますので、この二百二十三条の三項に二百二十条四号のロを加えていただきたいということです。  それから四番目は、百九十一条の二項です。これは公務員の証言拒絶権に関する規定ですが、法案では、「前項の承認は、公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある場合を除き、拒むことができない。」とされておりますけれども、これを、「前項の承認は、公共の重大な利益を害する場合を除き、拒むことができない。」というふうに修正をしていただきたいと思います。  最後に五番目ですが、これは時間の関係で先ほど意見陳述の中で触れることができませんでしたけれども、二百二十条の四号ニです。ここで、「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」というものが文書提出義務から除外をされております。この規定も、行政文書に無限定に適用をされる結果になっては困りますので、厳格に、「専ら文書の所持者の私的な利用に供するための文書で、その提出により所持者の正当な利益を害するおそれがあるもの」というふうに修正をしていただいた方が望ましいのではないかと考えております。  以上です。
  210. 志賀節

    志賀委員 ありがとうございました。  それから、これに関連して、森山先生にもう一つ承りたいと思います。  今まで、弁護士会等からの意見書といいますか、陳情書といいますか、そういうものを通読をさせていただきますと、三権分立の中で裁判所がその判定を行うのに一番妥当、適当なところであろうというような御趣旨でございますが、一体裁判所でいいのかどうか。  例えば、大変失礼な言い方になるかもしれませんが、事実を事実として言えば、裁判官もまた役人の一種でございます。公務員でございます。そういう役人がそういう判定を下すのに、ただ地位だけでこれを判断するのは、短絡的に過ぎるかもしれませんけれども、しかし、考え方によっては、果たしてこれでいいのかどうか。もっと別の機関を設けるというような積極的な御意見等があるのかないのか。もちろん森山先生がお持ちであってもなくても、そういう御意見があるのかないのか、そういうこともひとつ承っておきたい。  また、裁判官がこういうことに携わって、もとより、今までのお話を承ると、そうたくさんこういうケースは訪れないかもしれませんが、しかし、そのことによって裁判官国民の不信を買うというようなことが万一起こることだってあるかもしれない。そういうときには、それに対するはっきりした国民の意思をあらわす場面は弾劾裁判所その他、何かあるのかないのか、あるとすればどういうものを設けたらいいのか、設けない方がいいのか等についてはいかがなお考えをお持ちか、法曹人としてのお考えをちょっと承っておきたいと思います。
  211. 森山文昭

    森山文昭君 まず三権分立との関係ですけれども、私は、現在のその三権のそれぞれの権能の性質、中身から考えまして、裁判所判断をするのが最も適切だろうというふうに考えております。  すなわち、行政行政の、立法は立法の、それぞれの権能があるわけですけれども司法の本旨というのはやはり判断というものに本質的な作用があるわけです。三権分立というのは、それぞれの権能にそれぞれがお互いに干渉をしないという内容も含まれているわけですから、この司法判断権に対して行政が介入するというような結果になるのは好ましくない。  つまり、現行法案では、行政がこの文書は出せないと言えば、もう司法判断権をその限りでは奪ってしまって、文書提出しなくてもよくなってしまうというわけですから、その限りでは司法権の一部が侵される結果になってしまうのではないかというふうに思います。したがいまして、むしろ私は、三権分立の考えからいきまして、司法権の実質的な審査が最後まで保障されるべきだというふうに考えております。  次に、ではその判断権を裁判官だけに任せておいてよいのかどうなのかという問題です。  この点に関しましては、遠い将来の立法論ということから考えますとさまざまな考え方もあろうかと思いますが、私は、少なくとも現状では、裁判所の権能をより強化する方向で改善をするのが望ましいのではないかというふうに考えております。といいますのは、確かに、先ほど委員が御指摘になりましたように、裁判官も公務員でして、我々毎日裁判実務に携わっておりまして非常に感じることは、裁判官もやや官僚的なところがぬぐい切れないなという気がするわけでございます。  特に、最高裁判所司法行政の中で、本来裁判官の独立は最大限保障されなければならないにもかかわらず、裁判官の自由が束縛をされて、裁判官の自由な判断が制約をされているというような実情もありまして、例えば、行政訴訟においてはなかなか住民の側が勝訴できない、裁判所判断が常に行政寄りになるというような事例もいろいろ指摘をされているところだと思います。  それで私は、この問題につきましては、憲法の精神にものっとって、裁判官の独立を最大限に保障して、そして裁判官がいかなる権力からも拘束をされないで、みずからの良心と憲法、法律のみに基づいて的確な判断ができるようにする、このことを保障していくことが、現在最も重要なことではないだろうかというふうに考えております。
  212. 志賀節

    志賀委員 ありがとうございました。  先ほど来のお話をずっと承って私が感じましたことは、やはり民には優しく官には厳しい、大体先生方の雰囲気はそういう雰囲気に受けとめました。  これは今回の民訴法の改正とはかかわりが直接はないのでございますけれども、やはり考えさせられますことは、アメリカ大和銀行あるいは今回のTBSの松本弁護士の例のビデオを見せた見せないの事件。それから、規制緩和と言われているあの規制の中の、普通どなたもが頭に思い浮かべられるのは官製の規制でございますが、民製の規制というものがあって、私はこれが一番厄介だと言っているのであります。それの最たるものは談合ではないだろうか。あるいは談合に基づくような、なれ合いといいますか、ぐるの、隠微な、刑法上の犯罪になるかならないかは別としての一種の犯罪的行為、こういうものが非常に厄介なものであると考えておりますし、あえて言わせていただくならば、この愛知県下でも起こりましたが、いじめによる自殺事件等の、いじめは談合の一形態であると私は理解をいたしております。  そういうようなことを考えれば考えるほど、なれ合いといいますか、八百長といいますか、そういうことが恐るべき結果を招くわけでございまして、そのことがいわんや官の中にあってよかろうはずがない。  そこで、今回の民訴法の改正につきましては、私も、考え方といたしましては、原則情報開示、しかし例外はすべて世の中にあるんだ、その例外をいかにして明確化していくかがこの法律のキーポイントではなかろうか、こういう理解をいたしておりまして、きょうの御意見を十分にしんしゃくし、生かしながら、これらにさらに取り組んでいかせていただきたい、このことを申し上げさせていただいて、私からの質問を閉じたいと思います。  ありがとうございました。
  213. 加藤卓二

    加藤座長 山田英介君。
  214. 山田英介

    山田(英)委員 新進党の山田英介でございます。  最初に、松浦公述人に御意見をいただきたいと思うのです。  細かい説明は省きますけれども現行民事訴訟法のもとにおける文書提出命令についての枠組みというのは、当該公文書公務秘密文書に当たるか当たらないかという判断権は裁判所が持っているということ、そして、当該公文書公務秘密文書すなわち職務上の秘密性に当たると判断されれば文書提出義務は免れる、これが現行法下における文書提出義務規定の枠組みである、私はかように理解をいたしております。  それで、問題の核心でございますが、この新しい民事訴訟法案提出者の説明によりますと、公務秘密文書提出するか否か、公務秘密文書提出することの可否についての最終的な判断は、司法判断を排除して監督官庁の判断にゆだねる、こういうふうにおっしゃっているわけでありますが、果たしてこのことに妥当性があるのかどうか。要するに、現行法の枠組みというものを覆して、司法判断を排除して、当該公文書秘密性に該当するかしないかという最終判断を監督官庁に全面的にゆだねてしまう、このことの妥当性ありやなしやということなんです。  まず私の考え方を申し上げますけれども妥当性がないのではないか。その理由は、訴訟における文書提出命令や各地の公開条例における非開示不服審査などにおいて、行政による不当な文書提出拒否情報公開拒否の実例が非常に多数あり、このことが恒常化している、常態化しているという事実が厳然と存在するわけです。それからもう一つは、いわゆる行政側の秘密性についての判断が常に正しいということにはなっていないわけです。そのことは、これが現代型訴訟訴訟遅延の大きなもとになっているわけでありますが、文書提出をめぐって争い、情報公開拒否する行政判断が不当であるということで、行政判断を覆す裁判所による文書提出命令あるいは不服審査機関の公開決定のしばしばなされる事実によって明らかである。  したがって、この二つの理由から見ても、最終的な秘密性についての判断権を裁判所から取り上げて監督官庁に全面的に判断権をゆだねる、そういう制度、システムをつくるということは立法政策上、妥当性を欠くというふうに私は思うのですが、松浦公述人の御意見をお聞かせいただければと思います。
  215. 松浦馨

    松浦馨君 今、山田先生がおっしゃいました内容なのでございますけれども、従来は、公務文書につきまして職務上の秘密があるというふうな場合に、裁判所がその点について審査をいたしましてそれは不当であるという場合は、それにもかかわらず文書提出命令を出していたということは、そのとおりでございます。ただ、今度この新しい法律が通りました場合にも、そういったことは全く変わりはございません。  今度新しい法律が成立いたしました場合に、官庁の方で、それは職務上の秘密に関する、そう言った場合に監督官庁の許可を要するというのは、従来、文書提出命令の対象とならなかった一般的な文書、一般義務的な文書につきましては、そういうことで監督官庁の許可がなければならないということにはなります。  しかし、新法のもとにおきましても、従来の文書提出命令の対象となりました三百十二条一号ないし三号の文書、新法で申しますというと二百二十条の一号ないし三号の文書、これにつきましては、現行法どおり、そういうふうなことを所持人の方で、官庁の方で申しましても、裁判所の方で、その点について本当に職務上の秘密なのかどうかということを審査をいたしまして、そして該当しない場合は文書提出命令を出すということなので、その点は全く変わりがありません。そこのところを変えまして、すべての文書につきまして監督官庁の許可を要するというふうになったと考えますと、それは誤解であるというふうに言わないといけないと思いますね。
  216. 山田英介

    山田(英)委員 要するに、私が申し上げていることは、新しく加えられた二百二十条四号の文書であっても、いわゆる公文書公務秘密文書について、本当に秘密なのか、本当に職務上の秘密性があるのかないのかという最終判断をどこがするかという話なんですね。  したがって、一号から三号について影響を及ぼすか及ぼさないかというのは、この後、僕はまた申し上げますけれども、問題は、松浦公述人も公述なさいましたように、いわゆる現代型訴訟における弊害、その唯一最大のものは証拠偏在である。したがって、行政側に資料が専ら保有されていて、それがもし裁判所証拠として提出させることができない場合には、原告といいますか、挙証者側は司法の救済を受けられないわけです。そこを是正しようというのが、今回の民事訴訟法の全面改正といいますか、七十年ぶりの改正のまさに目的であるわけですよ。現代型訴訟証拠偏在型のこの弊害というものをどうクリアしていくか。おっしゃいますように、国民にわかりやすい、迅速な、充実した審理をどう実現するか、そして、時代、社会の要請に適切にかなう訴訟制度にどういうふうに改めていくかというのが、この改正の大テーマになっているわけですよ。  ですから、一号から三号文書に影響を与えるとか与えないとか、そういう矮小化をしないで、要するに、公文書公務秘密文書についてその秘密性の最終判断はどこがするんだというのが一番大きな話になるわけであります。  そういうふうに考えると、現行法では、一号—三号文書しか規定がないわけですから、最終的に秘密性の有無についての判断権は裁判所にあるんだということを前提とすれば、なぜここでその判断権を裁判所から取り上げて、新設する、新たに加えられるいわゆる四号文書についてもなぜ司法の最終判断をさせないのか。  何かそのことをさせる、裁判所司法判断をさせるということについて、具体的に、実際的にこういう不都合がありました、裁判所判断権を与えておいたがゆえに、こういう公共の、国家の重大な利益を害する事例がありました、重大な不利益をこうむるようなことが多発しております、すなわち弊害がありますという、立法事由というのですか、立法事実というのでしょうか、それがなければ、枠組みをも変えてしまうそういうやり方ではいけないのではないのか。そこには立法政策上の合理性妥当性というのはないのじゃないのかというふうに私は考えるわけでございます。  松浦公述人、裁判所に四号文書秘密性の有無についての判断をさせるという、いわゆる判例が営々として築き上げてきた流れあるいは判例法というものを全く否定してまで変えてしまわなければならない、すなわち監督官庁に判断権を全面的にゆだねてしまわなければならない理由が何かあるのかどうか。
  217. 松浦馨

    松浦馨君 そこのところは、絶対一ないし三号文書と違う取り扱いをしなければならないという必然性は全くないと思います。これは一つの政策の問題だと思いますね。  ですから、四号についてはそういうふうな監督官庁の許可を必要とするというのも一つの政策的な判断でありますし、それから先生がおっしゃいますように、この際一挙に、一号ないし三号と同じように四号につきましても裁判所判断に任すべきであるという態度をとることは、立法論としましてはいずれも可能であることは言うまでもありません。  ただ、今回の場合にそこまで踏み切れなくて、こういった状況で踏みとどまったというのはなぜかと申しますと、それはそういった新しい思い切ったやり方、そこに踏み込むということにつきまして必ずしも十分なコンセンサスが得られなかったということではないかと思います。  そのコンセンサスが得られなかったのはなぜかと申しますと、これは先ほど私が申し上げたことと重複するわけでございますけれども、刑訴とか衆議院の議院証言法とかいうふうなものとの横並びの関係もある。  それから、踏み込みますと、いろいろ検討しないといけない問題が非常にたくさん出てまいります。国家公務員の秘密ということになりますというと国家機密ということになります。ですから、それは非常に瑣末な問題から行政のトップシークレットに至るいろいろな場合があるわけでございまして、そういうふうないろいろな場合を検討いたしまして、その上で裁判所の審査権を及ぼすというふうなことをしないと必ずしも十分な対応はできないという面もあるわけです。そういうことをやるためには、むしろ情報公開法の進展を見た上で判断した方が過ちがない判断ができるのじゃないか、そういうふうなことではないかと思います。
  218. 山田英介

    山田(英)委員 要するに、四号文書について、司法から秘密性の有無についての判断権を取り上げて、官庁の判断に全面的にゆだねるということの合理性とか、あるいはそうしなければならない現行制度の枠組みについての問題、弊害というのはないのですよ。それは先生の今の公述の中にも明確にあらわれていると私は理解をいたします。後ほどどうぞ御意見があったら言ってください。  それで、先に進みますけれども松浦公述人は、特に三号文書について、これを狭めるものでは決してないと。しかし、微妙な言い方なので僕は気にしているのですが、そういうことが監督官庁の承認が必要になるというようなことになってはならないし、ならないだろう、こう表現をされたわけであります。  具体論でちょっと伺いたいのですけれども、例えばここに私は判例を一つ持っておりますが、現行法三百十二条三号文書、いわゆる利益文書とか法律関係文書についてどういう判例があったかというと、事故調査報告書というのがございまして、これは東京高等裁判所、昭和五十四年四月五日決定の判例でございます。簡単に言いますと、自衛隊所属のパイロットの事故死による国家賠償訴訟で、原告、遺族が、航空事故調査委員会が作成し、防衛庁が保管する航空事故調査報告書の提出を求めましたところ、裁判所は、この文書は、当然公文書です、利益文書にも法律文書にも該当するとして提出を命じているのです。そういたしますと、これはまさに三号文書に該当するということで提出義務、特別義務と先生はおっしゃいましたけれども、これがあると判例は認めた。  新しい民事訴訟法のもとで、裁判所の最終的な判断というのは残るのですか、あるいは裁判所判断はもう排除されるのですか、どうなるのでしょうか。
  219. 松浦馨

    松浦馨君 その点は、日本はいわゆる英米方式の判例法国じゃなくて成文法国ですよね。ですから、判例というものが直ちに法律と同じ効力を持つというわけではございません。しかし、実際問題といたしまして、判例法国である、あるいは成文法国であるとを問わず、今日におきましてはそこの区別というものは余り出てこなくなって、かなり成文法国におきましても判例の効力というふうなものが強くなっております。ですから、法律と判例というふうなものがかなり不可分の関係で理解されるというふうなことが一般的な状況になっているわけですね。  したがいまして、新法が成立するとして、現行法から新法に移ったという場合に、今まで営々として裁判所が積み重ねてきた文書提出命令に対する判例が一体どうなるのかということが当然問題になりますけれども、私それから多くの方々の理解といたしましては、当然、これは条文は全く変わらないわけで、積み重ねられてきたその判例も原則として引き継がれるというふうに理解しております。
  220. 山田英介

    山田(英)委員 先般、参考人質疑を当委員会で行いました。そこで、法制民事訴訟法部会部会長代理中野参考人が意見を述べられた中に、このパイロットの事故報告書は僕が質問で取り上げたことですから中身に触れたのですが、その折に、同じこの三号文書法律関係文書に該当するという判例がごく最近実は出たのです。そして、三号文書に該当するという判例が出たこのケースは、新法、この法律現行どおり仮に成立してしまった場合に、裁判所のいわゆる判断というものは及ぶのですかと同僚委員が尋ねたところ、及びませんと。それは、利益文書でもない、法律関係文書でもない、そのほかの公務秘密文書に該当するわけだから、結局新設された四号文書としてこれは裁判所判断は及びませんという趣旨答弁が実はあったわけでございます。  ですから、松浦公述人には大変御無礼ですが、松浦公述人が、そういうことはあってはならない、判例は大事にされるはずです、ないでしょう、きっとないはずだと幾らおっしゃっても、それを主張するのは今度は監督官庁ですから。監督官庁が、四号文書に該当して、これはいわゆる公務秘密文書に該当するものだから、我が官庁としては承認しません、そしてまた重ねて、それは公務の遂行上著しい支障を生ずるおそれがある、提出によっておそれが出てくる文書だから提出しませんと言えば、これは幾ら提案者の方々が、そんなことはありません、判例もそのとおり運用されるはずです、されるのですと言われても、しかも申し上げましたように、中野部会長代理が、司法判断はその場合は新法のもとでは及ばないと思います、こうおっしゃっているわけですから、繰り返すようですが、監督官庁が結局秘密であると言えば出さないでいいという仕組みのもとにおいては、これはもうそういうふうになっていく。なっていくと我々は考えて、この原案でいいのかという議論を今しているわけでございますが、その点は申し上げておきたいと思います。  どうぞ簡単に一言。
  221. 松浦馨

    松浦馨君 中野先生は私もよく存じ上げております。非常に精密な方でありますので、日本は判例法国じゃありませんから、したがいまして厳密な意味で及ばないというふうなことでおっしゃったのではないかと思います。  しかし、実際問題といたしまして、判例の効力というふうなものはそんなに簡単に否定できるものではないと私は思います。ですから、理論的には、判例法国じゃないから判例は及ばないよと言えば、それはそのとおりなのですね。しかし、実際問題といたしましては、そういうことではないのじゃないかというふうに思います。  それからもう一つ、監督官庁が、これは三号じゃなくて四号だ、だからおれが許可するのだと言ったって、三号か四号かのどちらに該当するかということは裁判所判断すべき問題でありますから、裁判所の方としてはそれに従って対応していくということになると思います。
  222. 山田英介

    山田(英)委員 先に進みたいわけでありますが、そういう御公述をいただきますと、一言また申し上げたいわけであります。  要するに、今まで、三号文書に該当すると判断され、文書提出命令が発令されましたよね。それが、例えば事故調査報告書とか、今申し上げましたように五つも六つも判例があるのです。今までも官庁は、それは国家の重大な機密に属する文書だから出さない、一貫してそういう態度を貫いてきたわけですよ。しかし、司法の審査、判断によって、いやそれはいわゆる公務秘密には当たらない、あるいはその秘密性は非常に小さいと。したがって、法律関係文書を拡張解釈するという中で、できるだけ公文書証拠として裁判所提出させるように努力してきた、もう御案内のとおりでございます。  ですから、その三号文書を根拠に、それを理由として文書提出命令の申し立てをした場合に、この四号の規定が置かれれば、官庁側に、いやこれは三号文書には当たりません、四号文書なのです、こう言われたらもう終わりなのですよ。それ以上何ももう前へ進まないわけです。そういう規定のしぶりになっているわけです。そういうことを一言申し上げておきます、また時間がありましたら議論をしたいと思いますけれども。  さて、時間がなくなってまいりましたので、私は、ただ机上の空論と言ったら御無礼ですが、頭の中で形式的に、いわゆる文書提出義務の一般化をしたのだ、要するに一号から三号以外に広げたのだから広がったのだという議論なのですけれども、では本当に広がったのかというふうに考えてみますと、必ずしもそうはいかない。  それから、今回の大改正と言われる改正趣旨、目的の大きなところが、冒頭申し上げました証拠偏在型の訴訟を改善していこうということになれば、それがまた時代の要請、社会の要請に適切にかなう対応、改善ということになれば、例えば先ほど来しばしば出ておりますいわゆるエイズ薬害訴訟における厚生省の五年以上にわたる資料隠しというものが今大きな指弾を浴びているわけでございますが、仮に、公務秘密文書であって、監督官庁が承認しないもの、これは提出命令のらち外に置かれる、インカメラ等を含めて司法判断は及ばない。公務の遂行上著しい支障が生ずるおそれあり、したがって出せませんと言われたら、これはもうどうしようもない。現実的な話として、そういう明文規定を置いたときに、それはエイズ薬害訴訟におけるあの許しがたい厚生省の資料隠しというものを法的に追認してしまう、法的にそれを許してしまう、こういうことになりかねないわけです。  ですから、法理論上のいろいろなやりとりはそれはあるのでしょうが、大事なことは、国民にとってわかりやすく、利用しやすく、充実、迅速な審理の実現、それから時代の要請にかなった訴訟制度の確立という大眼目からすれば、そういう国民的な要望あるいは意見というものにこの新法案というものが本当にこたえているのかどうか。それは、厚生省の資料隠しというあの体質あるいはそのやり方というものを法的に追認してしまう。  ある方が言っておられました。現行法のもとだったら、少なくとも資料を隠していることによって、あるいは出さないことについて、厚生省なりの行政官庁は一種の後ろめたさを感じていたはずだ、感じているはずだ。しかし、こんな明文規定が、法的に追認される規定が制定されてしまったら、それは秘密ですと一言言うことによって出さないで済むわけですから、開き直ることができるのではないのかという指摘まで実はされているということも、松浦公述人にはぜひひとつ、もう一度御検討をお願いをできればと、こういうふうにこれは要望を申し上げておきたい。  住専も同じです、先生。これから恐らく次々に住専訴訟が起きてきますよ、相手が七社ですから。その中で、住専の責任を追及する、問うという場面において、大蔵省から関連するこういう資料を出してくれ、当然これは原告側から、挙証者から出てきますよ。そのときに、こんな規定、こんな法律ができてしまったら、いわゆる公務秘密文書です、四号文書ですから秘密に該当する、したがって私どもはこれは出せません、不承認です、そしてまた、こんなのを出してしまったら大蔵省の公務遂行に著しい支障を生ずるおそれがありますというふうにして、全部拒むことだってできるわけですよ。  それからもう一つ、北海道の古平でトンネルが崩れ落ちた大変な事故がありました。もしかしたら、道路、トンネル管理が正しかったかどうかということを争点に、トンネル訴訟が起きるかもしれません。そのときに、この規定がこのように明文化されてしまったら、これはすべて公務秘密文書です、我が建設省なり国土庁なり何とかなりの監督官庁の今後の公務の遂行に重大な支障を生ずると。それはそうでしょう。管理に手落ちがあったなどということが出たら、その限りにおいては、それは大変な彼らの不利益なんでしょうから。  しかし、先生が言ってやまない本当の秘密というものはそんなものじゃない。国家の外交、防衛上の秘密とか、一定のものがあるでしょう。そういうものすらこの規定を理由にして、これは出せませんと。それは本当に出せない資料なのかどうなのかという判断権を司法から取り上げてしまうわけですから、監督官庁に一〇〇%ゆだねるわけですから、これは妥当性がないのじゃないのですかと私は申し上げているわけでございます。  時間が参りましたので、これで終わります。
  223. 加藤卓二

    加藤座長 志賀節君より発言訂正の申し出がありましたので、これを許します。志賀節君。
  224. 志賀節

    志賀委員 先ほど私、松本弁護士と言ってしまいましたが、それは坂本弁護士の誤りでございましたので、謹んで訂正させていただきます。どうも松本サリン事件が頭にありまして、失礼いたしました。
  225. 加藤卓二

    加藤座長 細川律夫君。
  226. 細川律夫

    細川(律)委員 社民党の細川でございます。  四人の先生方には貴重な御意見をいただきまして、大変ありがとうございました。  私の方からは、まず松浦先生にちょっと確認の意味でお聞きをしたいと思います。  せんだっても委員会の方でお聞きをいたしましたし、今山田委員の方からも大分詳しく聞かれました。それと全く関係をいたしますけれども、ごくごく最近の判例で、ことしの三月二十六日の東京高裁での、拘置所内における暴行事件での賠償請求の決定がございます。先ほど溝口先生の方からもお話がありました。  これと同じ事例を考えた場合、二百二十条の三号の法律関係文書だと原告の方が主張いたしまして文書提出命令の申し立てをした、しかし、被告の国の方は、いやこれは三号文書ではないんだ、四号のロに当たるんだ、そして、公務の遂行に著しい支障を生ずるからだめだ、こういうふうに主張をしたときに、裁判官としてはその文書提出命令の申し立てに対してどう判断をされるのか。先生の今までのお話だと、今までの判例の積み重ねも尊重するからというような話がありましたけれども、具体的に、当事者がこう主張した場合にどういうような判断でやるのでしょうか。
  227. 松浦馨

    松浦馨君 恐らく、原告の方、被害者としては三号だと主張しますね。それに対して官庁は四号だというふうに主張するだろうと思います。四号であって、そしてこれは職務上の秘密に関するというふうに主張すると思いますね。その場合に、三号か四号かということ、これは裁判所の専権事項です。ですから、もし四号であるとした場合に、しかも、その書類が職務上の秘密に属して監督官庁としては許可できない、こう言えば、四号であるということと許可しないということが相まって、その監督官庁の意見が通るわけです。しかし、その前の段階で、その文書が三号か四号かという問題につきましては監督官庁は全く権限がありません。それにつきましては自由に裁判所判断することができますし、またしなければいけない問題です。
  228. 細川律夫

    細川(律)委員 そうしますと、公文書が三号か四号かどっちに当たるのかということについては大変大きな問題になりますね。
  229. 松浦馨

    松浦馨君 非常に利害が深刻になるわけです。
  230. 細川律夫

    細川(律)委員 そうしますと、三号と四号の区別、それはどういうふうにして区別をされるわけですか。その基準というものはどういう基準になるのでしょうか。
  231. 松浦馨

    松浦馨君 その場合に、もちろん担当裁判官判断すべき問題だと思いますけれども、私の考え方によりますというと、現行法時代の判例というものが大きく影響する。ですから、現行法上三号とされているものは三号だというふうに判断されることになると思います。
  232. 細川律夫

    細川(律)委員 そうしますと、先生の御判断では、これまでの判例で三号に該当したものは三号に該当して、それ以外は全部四号ということになりますか。
  233. 松浦馨

    松浦馨君 いや、それは限りません。三号と認められたものは三号です。恐らく三号として通ると思いますけれども、それ以外に三号と認められるかどうかということにつきましては、この文書については三号に当たらないという判例が確定しておりますとその影響は避けられないと思いますけれども、何か新しい文書が出てきた場合にそれが三号の文書なのか四号の文書なのかということは、従来の判例とは無関係に新法下の裁判所判断していくということになると思います。
  234. 細川律夫

    細川(律)委員 この点につきましては、せんだって中野先生の方からは、先ほど山田委員からお話がありましたように、四号でいくんだというはっきりした回答がなされまして、そういうことならば、むしろこれまでの判例の積み重ねによって提出がされてきた文書まで新しい法律によってできなくなるだろうということで、こういう立法ではおかしいじゃないかと私どもは大変心配をしていたところでございます。その点につきましては、先生は中野先生と違うようでありますから、それはそれで、きょうはそういう意見だということで承りたいというふうに思います。  次に、皆さんにお聞きをしたいと思います。  先ほど松浦先生は、文書提出命令についての今度の立法については、現行法である刑事訴訟法あるいは議院証言法、そういう法律との横並びの関係で今回のような立法になったんだ、こういうこともおっしゃられたわけでございます。それで、新しく情報公開法ができたときにはまた新しい民事訴訟法をそれに合うような、整合性のあるような形に変えればいいじゃないか、こういう御意見だと思いますけれども情報公開法ができてからそれに合うような形で訴訟法を変えればいいのではないかというこの御意見に対して、前田先生あるいは溝口先生森山先生はどういうふうにお考えか、御意見をいただきたいと思います。
  235. 前田弘司

    前田弘司君 私どもは、情報公開法ができたらそれに合わせて民事訴訟法の問題の条文についてもう一度検討し直せばいいじゃないかという声が、特に法律学者の先生方の間であることは承知しております。しかし、私ども立場から見ますと、情報公開法の方がむしろ民事訴訟法文書提出命令提出義務に関する新たな行政官庁の恣意的な扱いを認めるような方向に引きずられてしまうのではないか、そういう危惧の念を持っております。  国の情報公開法だけでなくて、現在自治体には情報公開条例に基づく公開制度を持っておるところがかなりございますけれども、そういうところで、現在ですらいろいろな理由、いろいろな口実を設けて情報公開範囲を狭めようとする動きがある。これは、先ほど先生方から御指摘があったとおりでございます。それから、実際開示するにしても、肝心なところを抹消したような形でしか出てこない。そういうやり方がむしろ民事訴訟法改正の現在の状態に引きずられて正当化されるような方向にいく。国の情報公開法も自治体の公開条例もむしろそっちの方へ引きずられていってしまうのではないかという危惧の念を持っております。
  236. 溝口節二

    溝口節二君 情報公開法を逆行させるのではないか、そのおそれがあるということについては、今の前田さんの御意見と同じであります。  それ以外に、将来そういう問題が起きたときに改正すればいいのじゃないかという考え方に対して少し言いたいのですが、時がたてば時代も移り社会も変わってくる、そして法律が適用できなくなるという意味で、法律改正ということは当然されなければいかぬと思います。今回の民訴法の改正もそういう趣旨だと思います。  ただ、今現在こういう問題があるのにそれはそのままにしておいて、将来改正すればいいという考え方法律づくりというのは私としては納得できません。せっかく今七十年ぶりに大改正していい法律をつくろうというときに、欠陥とまで言っていいかどうかわかりませんが、とにかく疑問のある法律をつくってしまうなどということは、およそ我々国民の一人としてはおかしなことだと思っております。だから、今つくるときに、この問題はきっちり決着をつけて正しい法律にしてつくっておくべきである。そして、その法律が将来もしどこかでまた、欠陥といいますか、時代に合わなくなればその段階で改正は当然しなければいかぬだろう、私はこう思います。
  237. 森山文昭

    森山文昭君 私も今のお二人の公述人の御意見に全面的に賛成です。それに若干私の意見をつけ加えさせていただきたいと思うのです。  私も、情報公開法ができるときに民事訴訟法を見直せばいいのではないかという御意見をよくお聞きします。ただ、現実の問題としてはそういうふうにはならないのではないかと思います。  といいますのは、現在民事訴訟法改正するに当たりましても、現行法体系との整合性ということが問題とされて、こういう改正でやむを得ないという議論が行われているわけですね。そうしますと、将来情報公開法を制定するときに、必ず現行法体系との整合性という問題が提起されて、民事訴訟法がこうなっているんだから、これと矛盾するような情報公開法はつくれないのだという議論が出てくるのではないかと私は思うわけでございます。したがいまして、今回の法案に見られるような民事訴訟法改正が先に行われますと、これは後の情報公開法の制定に非常に大きな悪影響を与えるのではないかと危惧しているところです。  この点について言いますと、情報公開法というのは、だれでも理由のいかんを問わず情報公開を求めることができるという基本的な考え方に基づいているわけですね。これに対しまして、民事訴訟法上の文書提出命令というのは、現に裁判を提起している当事者訴訟立証することを迫られている、その必要がある特定の文書について提出を求める制度です。この文書提出命令というのは、ほかの制度でその文書を手に入れることができないときに機能する制度であるわけですから、文書提出命令で出てこないような文書情報公開法によって出てくるということは非常に考えにくいことだというふうに思います。  したがいまして、将来の情報公開法の制定をにらんだ場合、今回の民事訴訟法改正が非常に重要な意味を持っておりますので、ぜひともこの点はよくお考えいただきまして、適当な修正を加えていただきたいと考えている次第です。
  238. 細川律夫

    細川(律)委員 先ほど、森山先生だったと思いますが、行政の持っている情報というのは国民の税金によって集められたものであって、これは国民共通の財産だ、したがって原則公開にすべきで、特別の場合に例外にすべきではないか、こういうことを言われたと思うのです。その原則と例外の例外に当たるような秘密といいますか、それは一体どういう秘密情報なのか、先生方、例を挙げて簡単に説明していただきたいと思います。
  239. 前田弘司

    前田弘司君 抽象的に列挙すれば、外交、国防それから捜査、こういったものがそれに該当すると思います。
  240. 松浦馨

    松浦馨君 私もそうだと思います。しかし、いろいろあるわけですね。いろいろありまして、その場合にどの範囲まで許すかということは、当該文書提出が求められている訴訟をやりやすくする利益というのがあるわけでしょう、その利益とその秘密の重さの比較考量になるわけですね。ですから、常に最高クラスの秘密でなければいけないというわけではないわけです。相当程度の低いものでありましても、その訴訟で問題となっている利益との比較でこれは保護しなければいかぬとかいうことになるわけですから、秘密といいましても本当にピンからキリまであるわけなんですね。  書類を訴訟に出してもらうことによってその訴訟が利益を受ける、その利益との考量で秘密に関する文書提出拒否を認めるかという問題なのでして、非常に難しい問題なんです。ですから、私も繰り返して申し上げておりますように、民訴のところではちょっとできない。いろいろな公務上の秘密というものがあるので、それを一々チェックしながら、それに見合った規定をつくっていかないといけませんので、どうしてもやはり今回はだめだ、それまで待つべきだ、そういうことを言っているのです。
  241. 溝口節二

    溝口節二君 具体的にどの情報秘密情報か、何がそうだということを今ここで言うことが私できませんが、一般論として、国防とか、公表されることによって個人の人権が侵されるものというようなことが考えられます。ただそれは、実際に具体的に何々の情報ということが出た場合に、それを厳密に審査して、本当に国防の問題なのかあるいは個人の人権を侵害しているのかということを審査した上で、それに該当するというものであればそれは秘密文書に該当するであろう、こう思います。
  242. 森山文昭

    森山文昭君 私は、どういうものが開示しなくてもよい秘密に当たるかという問題につきましては、例えば実施前の試験問題ですとかあるいは競争入札をする際の予定価格ですとか、それらが公表されることによってその事業そのものが成り立たなくなってしまうような情報、これが典型的なものであろうというふうに考えております。それ以外のものにつきましては個別的な判断が必要になってくるのではないかというふうに思いますが、一番問題になるのは、外交、防衛に関する機密と言われているものだと思うのです。  この点につきましては秘密性を認める見解もかなり強いと思うのですけれども、私の見解は、こういう防衛、外交に関する情報というのは、基本的に国の進路にかかわる情報ですから、国民の知る権利が優先をするというふうに思います。ですから、外交、防衛に関する情報だからといって安易に、開示しなくてもよい情報だというふうにすることには慎重であるべきだというふうに私は考えております。
  243. 細川律夫

    細川(律)委員 大変貴重な御意見をありがとうございました。また、これからの審議に生かしてまいりたいと思います。  きょうはありがとうございました。
  244. 加藤卓二

    加藤座長 枝野幸男君。
  245. 枝野幸男

    枝野委員 さきがけの枝野でございます。  陳述人の皆様方には、きょうはありがとうございます。  私は、二百二十条四号ロ及びこれに関連する条項を修正すべきであるという立場からお尋ねをさせていただきたいと思います。  まず、これは前回参考人においでいただいたときにも同じことをお伺いしたのですが、ちょっと具体例を申し上げますので、お聞きください。  先ほど来、情報公開法ができたとき云々という議論がなされておりますが、そもそも現在多くの自治体で情報公開条例がございます。したがって、都道府県の情報については、そのかなりの部分情報公開条例で司法審査を経て公開されるという例が現実に起こっています。  そうした前提の中で、この改正案が成立をして、情報公開条例のある地方自治体を相手に裁判が起き、そして、二百二十条四号に基づいて、県の持っている情報を出しなさい、出してくださいという申し出があった。この場合に、県が、それはロに当たる、だから出せません、秘密だから出せませんということが起こる、これはあり得る話です。そこで、情報公開条例の方で公開してください、当然、万やむを得なくそういったことを当事者はするでしょう。そこでも県は当然、秘密だから出せませんと言うでしょう。ところが、現状の情報公開条例では、それは司法審査の対象になる。県が秘密だと言っているのが正しいのかどうか、情報公開条例に基づいて裁判所判断をする。  民事訴訟法に基づいた民事訴訟手続の中では、司法審査すらできずに、県がだめだと言ったらそこでおしまいになっている、万やむを得なく情報公開条例で求めたら、司法審査が行われて、場合によっては、県は間違っていました、情報を出しなさいというケースは起こり得るわけです。しかも、ではその間民事訴訟の方はどうしておくんだという話が出てきます。先にやって、その情報がないために負けていたらどうするんだという話が出てきます。  こういう不合理をどういうふうに理解したらよろしいでしょうか。四人の先生方、短くそれぞれお答えください。
  246. 前田弘司

    前田弘司君 私は、今枝野先生おっしゃったような事態は起こり得る、可能性はあると思います。ただ、恐らく、起こっても非常に件数は少ないであろう、あるいは起こらないうちに事態が変化してしまうであろうというふうに考えております。  つまり、民事訴訟法で今問題になっておるような条文が成立してしまえば、情報公開条例そのものを、国の法律がこうなっておるんだからもう改正してしまおう、民訴法に引きつけた形で今よりも公開の度合いを狭めてしまおう、そういうふうに改正されてしまうと思います。  現在でも情報公開条例でいろいろな制限をつけております。プライバシーにかかわるものとか、事業の遂行に重大な影響を及ぼすものとか、あるいは信頼関係を損なうようなものとか、いろいろな理由で、情報公開の請求があってもそれを狭めるような手だてが幾つか仕掛けてあるわけですけれども、民訴法の方で文書提出に関するこういう条項が成立してしまえば、情報公開条例そのものがそちらへ引きつけられるであろう。だから、民訴法でやっておった訴訟について文書提出命令を出してもらいたいという申し立てをしても、行政官庁が、それは公務の秘密に関するということで出さない、ところが情報公開条例で請求したら出てきたという事態は、恐らく現実には起こらないであろうというふうに私は思います。
  247. 松浦馨

    松浦馨君 そういった場合に、先ほど山田先生、それから細川先生の御質問にもありましたけれども、官庁は恐らく四号の文書だと言うと思います。しかし、四号か三号かということは、官庁が四号と主張したから四号になってしまうというわけでは決してありません。恐らく、大多数の文書は三号の文書に当たるはずなんですね。特に、これまで判例によりまして非常に三号が拡張をされておりますので、四号文書ということはほとんどないのじゃないかと思います。そういう意味で、民訴の場合に非常に困るというふうな状況はないのじゃないかと思いますね。  それから、そういった場合に、文書提出を請求する当事者といたしまして、民訴の手続、民訴の文書提出命令の申し立てを選ぶのか、情報公開法公開条例といったものを選ぶのかということなんですけれども、それはどちらでも選べるのではないか。しかし、私自身といたしましては、情報公開法あるいは条例がちゃんとしているという場合は、そちらの方を優先してやった方がいいのじゃないかと思います。  しかし、そういった場合に、もし情報公開条例あるいは情報公開法によって手続が進んで、そのために時間がかかる、その間に訴えを起こしている民事訴訟が終わってしまうというようなことは困るわけで、情報公開に基づいて文書が取得できるまでその民事訴訟を中止してもらうというふうな措置はとれるのじゃないかと思います。
  248. 溝口節二

    溝口節二君 今おっしゃったことは、今度の民訴法が仮に制定されたときに想定される矛盾点の一つだと思います。もしそうなった場合は、単純に考えますと、法律と条例との優劣関係といいますか、その上位下位関係で、将来的には恐らく法律の方に吸収されていって、条例の制度が縮小していく方向になるのではないか、こう思います。
  249. 森山文昭

    森山文昭君 私も、枝野委員が御指摘されるような矛盾した事態が起きる可能性はあると思います。それも、今回の民事訴訟法改正の含んでいる一つ問題点ではないかというふうに考えております。  ただ、さらに問題なのは、先ほども申しましたけれども、法体系、法解釈の整合性という観点から、裁判例が情報公開条例の解釈にこの新しい民事訴訟法の解釈を類推適用をするおそれがあるのではないかという危惧も感じております。  つまり、現在の民事訴訟法文書提出命令規定では、公務秘密文書についての提出拒絶ということは一切書かれていないわけですけれども、それでも、証言拒絶の規定を類推適用、準用して、一定の場合提出を拒むことができるという解釈を判例はしているわけです。そうしますと、これと同様の考え方が民訴法と情報公開条例との関係でも適用されて、情報公開条例でこれまでは司法審査の対象が及ぶとされていたものについても、民事訴訟法との整合性上、上級官庁の承認がないとそういう場合には開示を求めることができない、そういう裁判例がひょっとすると出てくるのではないかという危惧も感じております。
  250. 枝野幸男

    枝野委員 ありがとうございました。  私も、まさに今森山さんがおっしゃったようなことを危惧しておりまして、利害関係を有する、その証拠が出てこないと個人の権利が侵害されるおそれがあるということで民事訴訟を起こしている場で出てこない証拠が、県民ならだれでも請求できるところで出てくるという話はどう考えても話が逆だというのは、逆に法律家でなければ、一般人ならますます普通の話だと思いますし、それが逆になるというような現実が放置されるのは、逆に理屈がおかしいだろう。したがって、その矛盾点は、前田先生がおっしゃったような形で条例が縮んでいくのか、森山先生がおっしゃったような解釈で縮んでいくのかはいろいろあるでしょうが、引きずられることは間違いないだろうというふうな思いをしています。  それから、今、松浦先生、三号、四号の話をまたおっしゃいましたが、確かに既にある判例の部分については、これだけ法務省が、大臣まで含めて、判例は変えませんということを立法者の意思としておっしゃっているならば、まあ変わらないと、百歩譲ってするとしましょう。確かに、三号の拡張解釈の部分というものについては具体的な例は幾つか出てきています。先ほどの航空機事故の調査文書とかということですね。これと同じもの、これに準ずるもの、これは出てくるかもしれません。三号の拡張解釈の範囲として、今、学説として、ああ判例でここまでいっているんだから、具体例でここまでいっているんだから、これに類するものでここまでは大丈夫なんだろうな、三号で大丈夫なんだろうなという部分で言えばかなり広いかもしれません。しかし、判例として、前例として意味を持つのはどこなのか。  航空機事故調査の資料というのは、確かに三号の拡張解釈で前例がある。だけれども、似ているけれどもちょっと違う文書については、確かに三号の拡張解釈をしたあのときの趣旨からすれば入るのかもしれないし、しかし、前例となっているのはその航空機事故の調査なんだということで、それが及ばないかもしれない。これは、事前にどこまで確信を持って言えるのかというのは違うのじゃないでしょうか。  これは法律家である松浦先生森山先生に。済みません、時間がないので短くお答えください。
  251. 松浦馨

    松浦馨君 それは厳密に言うと違います。しかし、広くなるか狭くなるかはわかりません。広くなるかもしれません。
  252. 森山文昭

    森山文昭君 それは個々の裁判官が決めることですので、どうなるかはわからないというのが実際のところかもしれません。ただ、私が指摘したいのは、現在、裁判所が判例で三号文書範囲拡大をしているということですけれども、これは、すべての裁判例が共通してそういう結論をとっているというわけでは必ずしもないということなんです。  例えば、先ほど御指摘がありました、拘置所における暴行事件で国家賠償請求がされたときに、診療録、カルテが文書提出命令の対象になったという事件につきましても、原審である東京地裁は、これは三号文書に当たらないとして文書提出命令の申し立てを却下しているわけですね。それ以外の、例えば原発訴訟における議事録ですとか、さまざまな文書につきましても同様に、やはり違う意見もあるわけです。  現在の一号から三号までしかない状況で、判例は苦労をして、これは三号に当たるのか当たらないのかということで、できるだけ広げるように努力したい、こういうことをやっているわけですけれども、新しく四号がつけ加わりますと、余り無理して三号に押し込むことなく、まあこれは素直にいけば四号ではないか、そういう解釈が広まってくるのではないかということが考えられます。したがいまして、将来的には、今若干意見が分かれているところがあるわけですけれども、その場面においてむしろ四号文書に当たるとされる例がふえていくのではないか、そんな気がいたします。
  253. 枝野幸男

    枝野委員 まさにそこが問題だろう。やってみないとわからない。  結局、裁判官判断を条文以外で我々立法者が縛るということは、まあ立法者の意思を推測してくれるだろう、考慮してくれるだろう、それから、前例を踏襲してくれるだろうということであって、それを決めるのは裁判官です。最高裁裁判官十五人に来てもらって意見を伺えれば、それは担保になるのかもしれませんが、私は何の担保にもならない。したがって、三号と言われていた文書が四号に当てられて、結果的に縮むということは十分あり得るのじゃないかなと思います。  松浦先生にお伺いしたいのですが、先ほど来の先生の御意見を伺っておりますと、先生御自身は、例えば森山先生がおっしゃったような、要するに四号文書についても司法判断を加えるということでもいいんだけれども、それではコンセンサスが得られないから、まあこれでも問題はないです、だからこれでいきましょう、こういう御意見と理解してよろしいのですか。それとも積極的にこの方がいいとおっしゃっているのですか。
  254. 松浦馨

    松浦馨君 私自身は、やはり広くすべきだと思っております。しかし、そういうことを言っても通りません。立法というものは、いろいろな人のいろいろな意見があって、コンセンサスをつくりながらつくっていくべきものなんですね。ですから、ここで私の理想論を述べましても何の意味もないというふうなことです。
  255. 枝野幸男

    枝野委員 大変恐縮なんですが、松浦先生、この場合、法をつくるコンセンサスというのは、法制審議会の内部におけるコンセンサスでも、法務省におけるコンセンサスでも、役所の中の、内閣のコンセンサスでもなくて、我々立法府の人間のコンセンサスなんです。既にお聞きいただいていておわかりいただけますように、そして、これから共産党さんが御質問されますが、多分、従来の話でお変わりないと思いますが、むしろこのままじゃだめだと言う方が、この委員会の、立法府の多数であるというのは御理解いただけるんじゃないか。コンセンサスということでは、むしろこのままではだめですよ。  例えば私は、原案のままでしたら、むしろ流産をさせた方がいいという立場でございます。このままだったら民訴法はむしろ先送りしましょう。先生がコンセンサスということでおっしゃるならば、むしろ先生は御自身の御主張をここでしていただいた方が、この法律が修正の上可決をされる、ほかの部分が日の目を見るという可能性は高いというのが実は政治状況でありまして、先生の、法制審の中や法務省との話というのは、その中ではそういうコンセンサスかもしれませんが、こういうお話を聞いていかがでしょうか。
  256. 松浦馨

    松浦馨君 かなり私の意見も動揺していることは確かですね。だけれども、それは動揺しているだけで、先ほども申しましたように、現在の判断といたしましては、やはり情報公開法を待って対応するのが一番ベターではないかというふうに思います。
  257. 枝野幸男

    枝野委員 たしか、先生、その情報公開法を待って、こういった秘密はこうだからとかという、いろいろな場合分けをしなければいかぬというような趣旨のことを先ほど来おっしゃっています。  ただ、お話を伺っているとむしろ逆じゃないか。まさに利益考量をしなければならない。特に、民事訴訟手続などで出てくる場合には、秘密としての守らなければならない重要性と、当事者の正義、人権を守るためにそれを公開させなければならない必要性との利益考量という言葉松浦先生はおっしゃいました。こんな利益考量は、裁判の現場で公開を求めている当事者証拠として出してほしい当事者主張、利益というものと考量しなければ出てこない話です。  それから、防衛秘密という一言で言ったって、例えば防衛庁の職員の給料の話から、まさにスパイが探してくるような秘密まであって、こんなもの本当に分類できるかといったら、分類することを考えれば考えるほど、それは抽象的な、しかしながらしっかりとした基準を設けて、信用できるところ、今の日本では裁判所というのが少なくとも一番公平、中立だろうという前提で、そこが判断を加える。それが正しいかどうかは別として、我々はそういう憲法の社会に生きているわけですから、むしろその方が先生のおっしゃる趣旨にかなうのじゃないのでしょうか。
  258. 松浦馨

    松浦馨君 今伺いましたことをよく反省いたしまして、将来考えていきたいと思います。
  259. 枝野幸男

    枝野委員 それから、もう一点だけ松浦先生にお伺いをしたいのですが、今回の改正に当たって、民事訴訟法部会の中に、憲法の特に統治の部分、人権の方でなくて統治の方の専門家がどれぐらい入っていたのか。それから、そこの部分とこの改正案との兼ね合いについてどれぐらい議論がなされたのか、教えてください。  要するに、憲法は人権の部分と統治の部分とに分かれていますね。国家組織をどうつくるかという部分と、それから人権の部分とで憲法は成り立っています。その憲法の統治機構をどうするかという部分の専門家がいたのかどうか、それからそれがどう議論されたのか教えてください。
  260. 松浦馨

    松浦馨君 これは私がお答えすべきことかどうかよくわかりません。ですから、私の認識の範囲内でお答えするということなのでございますけれども法制審議会の民訴部会は、大きく分けまして、裁判所関係の方、法務省関係の方、それから弁護士の方とそれから学者、それから裁判官の方ということなのです。その中で、学者以外の方はいろいろな方面に認識を持っていらっしゃるのじゃないかと思いますが、学者として民訴部会に参加している人はほとんどすべて民事手続関係の方でございます。
  261. 枝野幸男

    枝野委員 この特に二百二十条四号ロの話というのは、民事訴訟法の話というよりは、むしろ憲法の三権分立をどうとらえるのかという性質のところなのじゃないかな。私は学者ではありませんが、大学では憲法が専門だったのですが、私のつたない勉強の限りでは、三権分立の見地から考えて余りにもイレギュラーかな、憲法的な見地からするとイレギュラーかなというふうに思っております。  それはいろいろな御見解があるのかなとは思いますが、いずれにしても、お三人の先生方が修正に御賛成で、松浦先生も修正自体がまずいという御意見ではないようでございますね。
  262. 松浦馨

    松浦馨君 修正は必要だと思いますが、現在は必要ないと。
  263. 枝野幸男

    枝野委員 いや、先生、必要があるかどうかじゃないのです。修正をしようと思っているのは我々ですから、必要性は我々はあると思っているのです。要するに、それをやったらまずいかどうかという話です。
  264. 松浦馨

    松浦馨君 私は、まずい、少しまずいと思います。
  265. 枝野幸男

    枝野委員 先ほど来のお話を伺っていると、まずいという話にはならないのじゃないかなというふうに思いますが、時間ですので終わります。  ありがとうございます。
  266. 加藤卓二

    加藤座長 正森成二君。
  267. 正森成二

    ○正森委員 日本共産党の正森でございます。  松浦公述人にまず伺いたいと思います。  あなたは冒頭で、私は民事訴訟法部会の一員なので、いわばこの改正案を守る立場で不利な立場だというようなことを言われました。その発言に注目していたのですが、同僚委員の次々の質問に対して、個人としては文書提出命令拡大に賛成だとか、あるいは、しかし理想論は述べても何の意味はないとか、あるいは、最後は動揺しているのが事実だとかいうように言われましたが、私ども五月十七日に中央で六人の参考人をお呼びしました。その中で、民事訴訟法委員会委員長を務められたと思いますが、中野さんだけは終始一貫改正案を堅持されましたが、同じ民事訴訟法部会に入っておられたある大学の教授は、当初から内容については疑問を呈されたわけです。だから、民事訴訟法部会の一員だからといって、何も無理して守る立場になったり、不利な立場に追い込むことはないので、あなたの御意見を率直にお述べになったらいいのではないかということを最初に申し上げておきます。  そこで伺いたいのですが、冒頭に、民訴部会は五年間やって、二回ほど広く各界に意見の照会をしたという意味のことを言われて、この改正が非常に民主的に行われた印象を与えられましたが、私どもがこれまでの法務委員会での質疑で知っておりますところでは、この肝心の文書提出命令が今回のような法案要綱として出されたのは昨年の十二月一日、小委員会に初めて出された。民事訴訟法部会に審議経過とともに出されたのはことしの二月二日である。そして、二十六日には早くも総会で決まって、国会に提出されたということで、少なくとも国民や、今ここにマスコミ関係者は二人おられますが、そういう方に法案として示して広く意見を問うということは遺憾ながら非常に不十分だった、あるいはほとんど行われなかったということは指摘していいのではないですか。
  268. 松浦馨

    松浦馨君 正森先生からごらんになりますと不十分であったというふうな評価になろうかと思います。しかし、これは法制審議会の他の部会の審議形式なんかと比べてみますというと、相当そういった外部に対する配慮を行っているということでございまして、正森先生は二回の調査について知らなかったのじゃないのですか。
  269. 正森成二

    ○正森委員 そうじゃないのです。  二回やったけれども、この文書提出命令については行われなかったのではないですかと言っているのです。
  270. 松浦馨

    松浦馨君 それは、最初の場合は検討事項ですね。この立法をする際にどういう事項について注意をして立法するかという検討事項の照会ですよね。ですから、必ずしも入っていなかったかもしれません。しかし、二回目の場合は入っておったと思います。
  271. 正森成二

    ○正森委員 時間がございませんが、私もジュリストその他を読んでおりますが、二回目のときにも、検討中というだけで、今回出ていたような要綱案としては全く出されておりません。そのことを私は申し上げておるのです。結構です。次の論点に移ります。  今までに森山公述人あるいは松浦公述人からいろいろお話がございまして、重複するかもしれませんが、あるいは答えがある程度出ておりますが、現行法の三百十二条の三号の法律関係文書、現在では二百二十条三号になりますが、これについて判例が非常に前向きに権利救済を図ってきたことはすべての人が認めておられます。  例えば、昭和四十四年十月十五日の有名な家永裁判では、東京高裁は二つ判断をして、まず、国側及び特に文部省が当事者との法律関係文書ではないということを強硬に主張したのですが、法律関係文書の中に含まれるという点で一つ救いました。それからさらに、それが教科書検定官の個人的な意見を明らかにするという意味でこれは秘密文書であるというのに対して、秘密というのは国家または公共の重大な利益に損害あるいは損失を与えるものをいう、だから、教科書検定官の意見が外部に知られるということは多少問題があっても、それは国家や公共の重大な利益から考えれば受忍されるべきものだということで、文書提出命令を出したのですね。  そこで、今まで議論になりましたけれども、これは一号から三号までしか規定がない場合に、裁判所法律関係というのをどういうぐあいに広げて権利擁護をするかということで次々に判例が出たのですけれども、今度のように四号文書が出て、広く四号文書一般義務化されたのだから、そういう条件のもとで、新たに法律関係というのをやはり法律的に厳密に規定しなければならないのだということを行政官庁としては当然言ってくると思うのですね。  また、仮に裁判所でその点が論戦になれば、今までは裁判所判断すれば一義的に決まっていたのですが、行政官庁が、本来四号文書なら裁判所判断権のないことだったのだ、こう言って執拗に争い、あるいは、仮に裁判所が決定しても従わない。もちろん、従わなければ不利に認定されるというようなこともあり得るかもしれませんが、そういう点で、やはり今までどおり判例が維持されるといいましても、全く同一の事案の同一判例なんというのは希有のことで、それぞれの事件についてやはり異なった法律関係あるいは法律関係関連文書が出てくるわけです。  だからそういう点で、あなたの御主張にもかかわらず、拡大されるのではなしに、逆にこの影響で狭められるおそれがあるということが言えるのではないでしょうか。そして法律というのは、いかなる裁判官でも疑問の余地がないように国民の権利義務が守られるようにすることが大事で、ある裁判官国民のことを考えるから拡大判断するが、ある裁判官は新しい法律ができたからといって消極に判断するようでは困るのではないでしょうか。この点について、あなたの御意見と、後で森山公述人の御意見を簡単に伺います。
  272. 加藤卓二

    加藤座長 質疑の途中で申しわけありませんが、御紹介いたします。  ただいま現地参加議員の佐藤泰介君が到着いたしました。  質疑を続行します。松浦馨君。
  273. 松浦馨

    松浦馨君 確かに、これまでの法制審議会における審議の経過を全く無視した場合は、まさに四号ができたということによりまして三号がすぼむというふうなことはあるかもしれません。しかし、従来の審議の経過から見まして、そういうことは絶対あり得ないというふうなことは強く断言できるわけです。  そういうことから申しまして、もしそこのところがどうしても気がかりだということでありますと、附帯決議をつけていただくとか、あるいは附則としてそういうことを盛っていただくというふうなことも不可能ではないと思います。
  274. 森山文昭

    森山文昭君 私も正森委員の御指摘のとおりだと思います。  将来、三号に当たるのか四号に当たるのかということを判断をするのは裁判官であるわけですけれども、その裁判官判断するに当たり何を基準にするのかということになりますと、法制審における審議の経過とか、あるいは国会における大臣答弁というのは、これは判断のための材料の一つでありまして、それ以上のものではないわけです。  裁判官としましては、それも参考にしながら、新しい法律の解釈として何が最も素直で、最も解釈論として筋が通るかということをも十分考え判断をするわけです。中には、情報公開流れにさお差してはいけないということで、四号文書が新たにつけ加わっても引き続き三号文書拡大をしていくというふうに頑張られる裁判官もおられるかもしれませんけれども、しかし、やはり先ほど言いましたような関係で四号文書に当たると考えた方が素直だ、こういうことで四号文書の方に流れていく裁判官もかなり出てくるのではないかというふうに考えます。
  275. 正森成二

    ○正森委員 ありがとうございます。  松浦さんに伺います。  しかし、少なくともインカメラ制度を裁判官から公務秘密文書については取り上げてしまうというようなことは非常に問題だと思いますし、あなたはこれに関連して、それは全般的には情報公開法の制定あるいは考え方を待つべきだという意味のことを言われましたが、そうだとすれば、逆に、この部分についての完成について、より権利を保障すべき当事者の権利関係を審判する民事訴訟法改正で場合によったら狭めてしまう可能性があることは待つべきではないかということに、あなたの論理からすれば必然的になるのではないですか。
  276. 松浦馨

    松浦馨君 その点につきましては、これまでたびたび申し上げましたように、民訴部会でやるよりは、他の、先ほど枝野先生がおっしゃいましたように、統治関係も含めて、そういうところでやはりじっくりといろいろな場合を検討した上でおつくりになった方がいいのじゃないかと思います。
  277. 正森成二

    ○正森委員 私はきょう参ります前に、判例タイムズの一九九三年四月一日に出ました中に載っている「民事訴訟とは何だろうか」というあなたの論文を読んでまいりました。これは、あなたが名古屋大学で最後の講義ということでされたものだそうで、あなたの一生の御関心は、人間とは何なのかという哲学的な疑問と、民事訴訟とは何だろうかという訴権論的な目的論だというように書いてありまして、非常に感銘を持って読ませていただきました。  その中を読ませていただきますと、「民事訴訟の目的は、実体的正義と手続的正義に叶った、紛争ないし紛争状態の解決・調整・好転でなければなりません。」ということをまず御指摘になった上で、いわゆる現代型訴訟の多発ということについてお触れになり、そしてその後でこういうように言っておられます。  「現代社会においては、私的ならびに公的団体が実際上重要な社会的・経済的・政治的機能を発揮しており、これら団体は訴訟外はもとより訴訟上も絶大な実力と影響力を行使しているといえます。ことにゲゼルシャフト的団体(企業、労働組合など)や地方自治体、国が被告となり、これを複数または単独の個人が訴える現代型訴訟等においては、原告と被告の訴訟追行能力の隔差は極めて顕著です。そこでその不均衡を是正しなければ相当な司法救済を与えることは不可能です。」こう言って、外国の例なんかをお引きになった上、「新堂教授の武器平等の原則の実質化のための諸方策が参考になるでしょう。」こう言われた上で、結論は、「民事訴訟の目的論によって、現代型民事訴訟や団体を当事者とする現代民事訴訟において、個人と団体に相当かつ迅速な司法救済が与えられるための基礎理論が提供されるときに、それこそ真の民事訴訟の目的論といえるのではないでしょうか。」こう言っておられます。  このあなたの理論からすれば、薬害訴訟その他がある場合に、強大な権力を相手方にして自分の権利を守るということが現代型訴訟の場合に、むしろその文書提出命令を広く与えるということがこのあなたの学説に合致するものであり、当初に述べられた守る立場だからなんというのはあなたの学説を曲げるものではないですか。
  278. 松浦馨

    松浦馨君 決して学説を曲げるものではございません。  やはり、理想は私ははっきりと高く持っておりますけれども、だからといって一足飛びにそれでいかなければいかぬというふうなことでは法律学は通らないということでございまして、理想は理想、それからどういうふうにして、どういう過程を経て進めていくかということは、また別の考量が働くわけでございます。  それから、先ほど私が動揺しているとか迷っているとかいうふうなことを申しました。これは非常に一般的な意味で申し上げたわけです。ゲーテが、人間は努力する間は迷うと言っておりますけれども、私も今努力しておりますので迷っている、それだけの意味でございます。
  279. 正森成二

    ○正森委員 ありがとうございます。  大いに努力して迷っていただいて、いい結論に達していただくことを心から希望しておきたいと思います。  その次に、前田公述人とそれから溝口公述人にお伺いします。  時間がございませんが、実は中日新聞の五月四日に社説が出ております。あなたも御関与なさったかもしれませんが、「公害、薬害、消費者訴訟などでは、行政や企業側が大事な証拠を握っていることが多く、原告側は「秘密の壁」を前にしばしば涙をのまされる。」という出だしで、「国民一般にとって重要な情報文書を隠したがる官僚機構の体質は、エイズ薬害の例だけを見ても明らかだ。まして、民事訴訟証拠として公文書が必要になるのは、多くの場合、行政の責任を追及する時である。そんな場面で、官僚に公正、客観的な「秘密判断期待できるとは到底思えない。」こういうぐあいに断じられた後で、「官庁の文書提出拒否権が新設されたのは、現行法にもある公務員の証言拒否権と整合させるためという。このまま成立させれば、情報公開制度の骨抜きを狙う官僚機構が、今度は民訴法との整合性維持を口実に、情報公開法からインカメラ手続きを削除させようとするだろう。」こう言っておられます。時間がございませんので、残念ながら毎日新聞の社説を読み上げる時間がなくなりましたが、ほぼ同様のことを言っておられます。  これらの点について、二人の公述人から簡単に御意見を承りまして、もう時間がほとんど残っておりませんので、私の質問を終わらせていただきます。
  280. 前田弘司

    前田弘司君 その社説に関しましては、我が社の公式見解でございます。その社説の筆者その他については立場上申し上げるわけにいきませんけれども、私の見解もほぼ同じでございます。
  281. 溝口節二

    溝口節二君 毎日新聞の社説についての考え方に対して、私はほとんど同じ考え方であります。  他のマスメディアで出ている同種の社説についても同感できるところは多いと思っております。
  282. 正森成二

    ○正森委員 ありがとうございました。
  283. 加藤卓二

    加藤座長 これにて委員からの質疑は終了いたしました。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  意見陳述の方々におかれましては、長時間にわたり貴重な御意見を述べていただき、まことにありがとうございました。  拝聴いたしました御意見は、法案の審査に資するところ極めて大なるものがあり、厚く御礼を申し上げます。  また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして心より感謝を申し上げます。ありがとうございました。  これにて散会いたします。     午後四時一分散会