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1996-05-17 第136回国会 衆議院 法務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年五月十七日(金曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 加藤 卓二君    理事 太田 誠一君 理事 佐田玄一郎君    理事 志賀  節君 理事 山田 英介君    理事 山本  拓君 理事 細川 律夫君    理事 枝野幸男君       奥野 誠亮君    塩川正十郎君       橘 康太郎君    萩山 教嚴君       古屋 圭司君    横内 正明君       阿部 昭吾君    加藤 六月君       貝沼 次郎君    富田 茂之君       山口那津男君    佐々木秀典君       坂上 富男君    正森 成二君       小森 龍邦君  委員外出席者         参  考  人         (奈良産業大学         教授)     中野貞一郎君         参  考  人         (ジャーナリス         ト)      櫻井よしこ君         参  考  人         (京都大学教授谷口 安平君         参  考  人         (日本弁護士連         合会会長)   鬼追 明夫君         参  考  人         (作    家)猪瀬 直樹君         参  考  人         (弁 護 士) 今井 敬弥君         法務委員会調査         室長      河田 勝夫君     ————————————— 委員の異動 五月十七日  辞任         補欠選任   愛知 和男君     富田 茂之君   熊谷  弘君     山口那津男君 同日 辞任         補欠選任   富田 茂之君    愛知 和男君   山口那津男君    熊谷  弘君     ————————————— 五月十七日  婚外子差別を撤廃する民法等改正に関する請願  (鳩山由紀夫紹介)(第二四〇二号)  同(山花貞夫紹介)(第二四〇三号)  同外一件(金田誠一紹介)(第二四五〇号)  同(東中光雄紹介)(第二四五一号)  同(松本龍紹介)(第二四七七号)  同(矢島恒夫紹介)(第二四七八号)  同(岩佐恵美紹介)(第二四九七号)  夫婦別姓選択制法制化に関する請願山花貞夫  君紹介)(第二四〇四号)  同(岡崎宏美紹介)(第二四五二号)  同(不破哲三紹介)(第二四五三号)  同(山花貞夫紹介)(第二四五四号)  同(横光克彦紹介)(第二四五五号)  同(大野由利子紹介)(第二四九八号)  同(岡崎宏美紹介)(第二四九九号)  同(鳩山由紀夫紹介)(第二五〇〇号)  同(秋葉忠利紹介)(第二五六二号)  同(岩田順介紹介)(第二五六三号)  同(大野由利子紹介)(第二五六四号)  同(田中昭一紹介)(第二五六五号)  同(野坂浩賢紹介)(第二五六六号)  同(前原誠司紹介)(第二五六七号)  治安維持法犠牲者に対する国家賠償のための法  制定に関する請願後藤茂紹介)(第二四〇  五号)  同(嶋崎譲紹介)(第二四〇六号)  同(土肥隆一紹介)(第二四〇七号)  同(松本龍紹介)(第二四〇八号)  同(森井忠良紹介)(第二四〇九号)  同(山花貞夫紹介)(第二四一〇号)  同(岡崎宏美紹介)(第二四五六号)  同(金田誠一紹介)(第二四五七号)  同(佐藤泰介紹介)(第二四五八号)  同(岩佐恵美紹介)(第二五〇一号)  民事訴訟法改正案の修正に関する請願阿部昭  吾君紹介)(第二四九六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  委員派遣承認申請に関する件  民事訴訟法案内閣提出第八四号)  民事訴訟法施行に伴う関係法律整備等に関  する法律案内閣提出第九三号)      ————◇—————
  2. 加藤卓二

    加藤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出民事訴訟法案及び民事訴訟法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案を一括して議題といたします。  この際、委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。  両案審査参考に資するため、議長に対し、委員派遣承認申請を行うこととし、派遣委員派遣期間派遣地、その他所要の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 加藤卓二

    加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 加藤卓二

    加藤委員長 次に、本日は、両案審査のため、まず、午前の参考人として、奈良産業大学教授中野貞一郎君、ジャーナリスト櫻井よしこ君、京都大学教授谷目安平君、以上三名の方々に御出席いただいております。  この際、参考人各位委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。  中野参考人櫻井参考人谷口参考人の順に、お一人十分程度意見をお述べいただき、その後、委員質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は、委員長許可を得ることになっております。また、参考人委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  それでは、中野参考人にお願いいたします。
  5. 中野貞一郎

    中野参考人 中野貞一郎でございます。  御承知のとおり、一九八〇年代に入りましてから、世界の主な国々では、消費者訴訟等の多発によりまして、裁判所に係属する事件が急増してはんらん状態に陥りました。そのため、各国とも裁判所における訴訟手続改革に乗り出し、また裁判外紛争解決の諸制度整備に躍起になるという状態が続いております。  日本も同じでございます。しかし、もともと近代国家の中で我が国ほど民事裁判が閑却され続けてきた国はないのではないでしょうか。三権分立と申しましても、一般会計歳出予算の中で裁判所の占める割合は一%に満たない、〇・五%を下回るという状態が続いているのであります。  日本民事訴訟法ができましたのは、今から百六年前の明治二十三年でありまして、明治二十四年一月一日から施行されております。この年、全国裁判所に訴えられた事件は十三万六千件であります。驚くことに、この数字が戦争中を除いてずっと変わらないのであります。昭和五十五年にやっと二十万件を超え、最近の二、三年はかなりふえまして、平成五年にやっと三十八万件を超える程度でございます。この数字は、国民総人口が民事訴訟法施行当時四千万でありましたものが一億二千四百万にふえておりまして、社会経済状態が大きく発展してきたことを考えますと、日本社会における民事裁判機能について疑問を持たざるを得ません。  この数字だけからいたしましても、当然裁判になるべき市民権利義務紛争が、それも莫大な数の紛争日本社会で放置されていると言わざるを得ないのです。我が国民事裁判に時間と費用がかかり過ぎるということは、今日では国際的な問題になっている、御承知のとおりであります。  民事訴訟法のできた明治二十三年というのは、日本司法元年でございまして、民法、商法、民事訴訟法刑事訴訟法裁判所構成法執達吏規則、その他司法に関する多くの基本法典ができております。現行民事訴訟法は、その十年余り前にできましたドイツの帝国民事訴訟法翻訳してできたものでございますが、全く翻訳なんですね。本当の翻訳であります。もともと日本社会に合っていないわけですので、大正十五年の改正で、職権でどんどん促進しようとしましたけれども、うまくいくはずがなかった。  そして、最近に至りまして、東京、大阪、その他全国裁判所弁護士会におきまして、民事訴訟の新しい運営改善努力というものがなされておりますが、これは日本向けのいわばマニュアルを整備するということで、放置すればますます現実の必要に押されて野放しになっていくことが予想されます。現行法のままでは限界があり、法改正が必要であります。  今回の民事訴訟法改正作業の目標として、民事訴訟国民に利用しやすく、わかりやすいものとするということが掲げられております。余りにも卑近な感じがするのですけれども、実は、日本社会で健全な訴訟運営を確保するという、民事訴訟法が百年前から抱えてきた宿題に挑んで、新しい法律をもって訴訟に対する国民期待にこたえようという趣旨でございます。  改正は、現行民事訴訟法の第一編から第六編に及びまして、全面的に平仮名、口語体表記現代語文に改められておりまして、規定の配列も合理化されております。しかし、このような体裁の背後にある実質的な改正のパノラマをぜひ見ていただきたいのでございます。  審議経過に即して申しますならば、手続改正の眼目は二つでございます。その一つ争点整理手続整備、他の一つ証拠収集手続拡充であります。  この概要につきましては、本会議趣旨説明等で既に先生方御存じのとおりでございますが、争点整理手続整備は、事件争点を早期に解決することにより、適正な裁判が迅速にできるようにするものでありまして、裁判に時間と費用がかかり過ぎるとの国民批判にこたえるための大変重要な改正であります。  もう一つ証拠収集手続拡充、特にそのための文書提出義務の拡張につきましては、さまざまな議論がされているようでありまして、若干の論点について申し上げたいと思います。  まず、法案二百二十条で文書提出義務を広げたことになるのかどうか疑われております。同条は、文書提出義務についての現行三百十二条を改めまして、従来は、文書提出義務特定義務構成してまいりましたものを一般義務に拡大したものでございます。言うまでもなく、最近の現代型訴訟、そこでは情報が偏在しておりますので、これに対応して、三百十二条三号についての判例上の拡大努力、こういうものにこたえまして法文を整備しようというものでございます。  統計によりますと、民事事件における文書提出命令の申し立てば増加傾向ですけれども、平成二年、三年に全国で千八百件程度でございます。実際に提出命令が出るのはずっと少ないようでございます。問題になっている三百十二条三号について見ますど、平成六年春ごろまでの裁判例を集めました判例体系という書物によりますと、三百十二条三号の利益文書についての過去の、明治以来の裁判例は全部で五十件、そのうち四十件近くまでが申し立て却下であります。法律関係文書につきましての裁判例は全部で九十五件、そのうち半数近くが申し立て却下です。  それらの却下例の多くは、利益文書に当たらない、法律関係文書に当たらないというのでけられているわけですけれども、改正案では、利益文書法律関係文書に当たるものについては、従来どおり、二百二十条三号で提出が命じられるのはもちろん、新設される四号におきましては、利益文書法律関係文書という制限はなくなりますので、これに該当しない文書も四号で拾い上げられ、あとは証拠としての必要性の問題が残るだけということになります。当然、文書提出命令が出るケースは増加するはずでございます。  新聞等では、二百二十条四号ロ規定は、公文書と私文書の不当な差別であり、官庁情報隠しを助長するものであると批判いたしまして、その批判は大合唱の趣になっております。しかし、私文書普通作成者の個人的な利害関係を伴うだけであるのに対しまして、公文書は広い範囲の公衆の利害に関係することが多く、そのため、形式記載要件につきましても法令で厳格に規定しているわけで、公文書と私文書を全部同じように扱うことはできません。民事訴訟法形式的証拠力の点で両者を区別していることは御承知のとおりであります。  監督官庁承認に関する部分は、公務員証人として職務上の秘密について尋問を受ける場合の証人尋問規定、それから刑事訴訟法の押収や証人尋問規定、さらには議院証言法規定と横並びになっているわけであります。  この点について、裁判所判断権を与え、監督官庁承認を不要にすべきであるという意見があることは承知しておりますし、法制審議会審議におきましてもそのような意見はたびたび述べられました。しかし、すべての行政情報について裁判所判断権を与えることは、このような現行法の枠組みを根本的に変更するものでありまして、ほかの類似の規定との整合性等について慎重な検討を要します。  現在、行政改革委員会におきまして、公務員職務上の秘密には外交秘密防衛秘密などさまざまなものがあることを踏まえて、その種類に応じてどのような対応をすべきかが検討されているところであり、民事訴訟法世界だけでこれを先取りすることは適当でないと考えられたわけでございまして、今回は現行法の考え方の枠内で前進するということで審議会でも承認が得られたわけでございます。行政情報公開についての議論が定まった段階で、必要があればさらなる改正を考える必要があるわけであります。  次に、これまで裁判所に近づくことのできなかった一般市民少額事件につきまして少額訴訟制度を新設したことも大きな期待を呼ぶものでございます。日常の市民生活から出てくるような三十万円以下の金銭支払い請求訴訟が、最寄りの簡易裁判所現実にできるようになるのです。原則として一回の期日で審理を終えまして、その日にすぐに判決がとれる、こういう手続でございます。無理にというわけではありませんで、当事者双方手続選択権があります。少額訴訟ならば、判決で分割払いとかあるいは期限の猶予を命じる判決もできるのです。  それから、最高裁に対する上訴制度整備、これは、識者によりまして痛恨の一事であると言われました昭和二十九年の、民事上告事件特例法が効力を失いまして以来、重く苦しい論議を長く引きずってきた問題ですけれども、これも改正法によりましてようやく解決の道が開かれました。つまり、最高裁につきましての上告憲法違反特別上告理由がある場合に限りまして、法令解釈に関する重要な問題を含む事件については上告受理手続を認める、法令解釈に関する重要な事項を含まない事件については決定で処理する、それから下から決定で上がってきました事件でも法令解釈の統一を図る必要があるものは、これまでは最高裁へ行きませんでしたけれども、今度は最高裁への許可抗告が認められます。  そのほか、裁判官裁判所書記官との機能分担の再構成、これも裁判官の少ない我が国では大変重要な宿題であります。これについても答えを出しております。OA機器の利用による技術的司法改革など、ほかにも注目される点が少なくございません。  私が申すまでもなく、立法はしょせん理想と現実との妥協でございまして、今回の改正法案に対しましても望蜀の思いは多く残るでありましょうけれども、現在の民事訴訟法改正案といたしましては十分にその負荷にたえるものであると考え、賛成の意見を申し述べる次第であります。  どうもありがとうございました。(拍手
  6. 加藤卓二

    加藤委員長 ありがとうございました。  次に、櫻井参考人にお願いいたします。
  7. 櫻井よしこ

    櫻井参考人 おはようございます。櫻井よしこでございます。  私は、法律専門家ではございませんので、自分取材体験を通して情報国民あり方ということに多々感じたことがございますので、そのことを中心にお話を申し上げたいと思います。  きょうここに参考人としてお招きをいただきましたけれども、私の基本的な立場は、この民事訴訟法改正反対立場でございます。なぜ私が反対するのかの理由を今から申し上げたいと思います。  ここ数年間、薬害エイズの問題を取材してまいりました。多くの方々にお会いして、なぜ彼らがこの薬害エイズにかからなければならなかったのかという実際のプロセスについてのお話を何十件となく伺ってまいりました。そのときに感じましたことは、日本という国は、国際社会の中では経済大国であり教育水準も非常に高いよい国だと言われているにもかかわらず、情報開示ということについては何とおくれているのだろうということを実感いたしました。  私が最初に会いました薬害エイズ被害者は、十二歳の小さな少年でした。彼に会いましたのはもう数年前のことでございますが、彼は既に亡くなっております。この少年に会いまして、この少年が生まれた小さな赤ちゃんのときからずっと非加熱血液製剤を打たれていたということを知りました。御両親は、たまたま自分たちのとてもかわいらしい子供が血友病患者であったということで、お医者様に言われて非加熱血液製剤をずっと打ち続けたわけですけれども、それが原因となりましてこの少年エイズにかかって、そして亡くなっていきました。  この少年がいかに多くの病を背負って苦しみながら死んでいったかということは、これはもう見るにたえないものがございました。そして、その少年両親たちがこうむった精神的な打撃であるとか経済的な打撃であるとか社会的な偏見のすさまじさというものを見ますときに、やはりこのような悲劇は私たちは起こしてはならないんだということを強く感じました。  では、どうしてこんな悲劇が起きたのかということを考えますと、ここに情報の問題というものが出てまいります。もし患者である被害者及びその家族がきちんとした情報というものをお医者様によって教えられていたならば、もしくは個々の医者がきちんとした情報をそれぞれの医薬品について受け取ることができるような仕組みというものがこの社会に確立されていたならば、この薬害被害というものは起きなかったと思います。  御承知のように、薬害エイズ裁判は和解という形で既に決着をしておりますけれども、真相解明ということについてはまだまだ多くの問題がございまして、余り進んでおりません。そして、なぜこの薬害エイズが起きたかという真相解明部分で、厚生省側であるとか行政側がおっしゃることの一つは、患者さん自体が非加熱血液製剤を使うことを望んだということが一つの柱になっております。患者がこの便利な非加熱血液製剤を使うことを望んだから医者もそれを供給したのであり、政府もそれを供給したのだという論理があるわけですけれども、ではなぜ患者がごの危険な非加熱血液製剤を望んだかということについては余り語られてはおりません。  エイズ研究班ができたのは一九八三年ですけれども、そのときに製薬メーカーから、この非加熱血液製剤の中にHIVのウイルスが混入しているかもしれないから、その理由はアメリカで供血をした人々の中にエイズ患者がいたから、危ないからこの非加熱血液製剤を回収しますという、世に言われる自主回収報告というものが厚生省に対して提出されたわけですけれども、これを厚生省は公表いたしませんでした。マスコミにも公表いたしませんでしたし、エイズ研究班にもこのことを報告した形跡はございません。つまり、ここで情報一つ隠されることによって非加熱血液製剤危険性を知らせるということができなかったわけです。このようなことによって非加熱血液製剤を使い続けるという体制が続きました。これが厚生省による、もしくは国による情報隠しの最たる例の一つだろうと思います。そして多くの被害者が生まれて、やがて薬害HIV訴訟手続がとられて裁判が始まりました。  裁判が始まったときに、また別の種類情報隠しが行われました。これは、六年間の裁判の中でたびたび原告側弁護団もしくは取材するジャーナリストの私たちが、エイズ研究班でどんな討議が行われたのか資料を出してほしいということをお願いいたしましたけれども、そのような資料の存在は確認できませんということで、この情報が出されることはありませんでした。その第二段階情報隠しによって救済が大幅におくれてしまったということがございます。これはやはり政府による情報隠し、二重の情報隠しによって薬害エイズ被害がさらに広がったという実感を私は持っております。  菅さんが厚生大臣になりまして状況はがらりと変わりました。なかったはずの資料が続々と出てまいりました。そして、菅厚生大臣がこれまでの厚生行政について謝罪をなさいました。しかし、謝罪をなさった後でプロジェクトチームというものをつくりまして、今までの情報を全部出すようにというふうに菅大臣が指示をなさいまして、さまざまなファイルが出てまいりましたけれども、このファイルの出され方についても、ちゃんと一どきに出されるのではなくて、五月雨式に、あっ、またありました、またありましたというふうに出されてきたのは皆様も御承知のとおりです。  つまり、大臣情報を出しましょうと決めた段階においてさえも行政の側では情報隠しの実態が存在するということです。表向き情報開示が始まりましたけれども、その実質はその表向きあり方とは正反対で、やはり隠そう隠そうとする動きがまだまだ根強いというふうに思います。  そのような意味からも、千八百人もの犠牲者を生みましたこの薬害エイズの教訓はまだ十分には生かされていないというのが現場で取材する人間としての実感でございます。  しかし、どの世界に、どの国に、千八百名もの国民の命を犠牲にして、なおかつ、そのことに対して、なぜこのようなことが起きたのかということをきちんと解明しようとしない政府があるのでしょうか。そのような政府があるとしたら、それはとても先進国政府であるとは言えませんし、先進国社会あり方であるとも私は思えないというふうに思います。  ですから、菅大臣謝罪意味は、これまで行政が行ってきた二重の情報隠しということについて深く反省するということを示していたはずだと思います。このようなことを二度としないということを意味していたはずだと思います。情報はできるだけ開示していきますということを決意表明したことだと思います。情報は基本的に隠さないということをメッセージとしてお伝えになったことなのではないかと思いますが、現在行われようとしておりますこの法改正は、このような趣旨とは真っ向から反対のものだというふうに思わざるを得ません。  ですから、この法改正というものを今許してしまいますと、私は国民の側がきちんとした情報を受け取る権利を未来永劫失ってしまうのではないかと危惧しております。すべての人が情報から遠ざけられて、そして情報を持っている一部の人間のみが、もしくは一部の力のみが自分たちに都合のいい情報操作というものをしていくことができるような、そんな状態がこの法改正によって生まれるのではないかというふうに思っております。  私自身の取材体験を通しまして、いかに日本情報という意味においては閉ざされた社会であるかということを実感いたしました。この閉ざされた体質というものをさらに深く、そしてより暗い方向へと閉ざしていくのが今回の法改正だと思いますので、私は自分の力の限りこの法改正には反対をしてまいりたいと思います。  どうもありがとうございました。(拍手
  8. 加藤卓二

    加藤委員長 ありがとうございました。  次に、谷口参考人にお願いいたします。
  9. 谷口安平

    谷口参考人 谷目安平でございます。京都大学民事訴訟法研究教育に当たっております。  私は法制審議会民事訴訟法部会委員でもございますが、本日は個人の一研究者としての立場から意見を述べさせていただきたいと思います。  今回、民事訴訟法改正の運びになりまして、私どもは今回の改正が、現在の社会情勢経済情勢国際情勢の中で十分やっていける民事訴訟法になることを期待していたわけでございます。そのような期待点はいろいろございますが、そのうちで最も重要な点の一つだと考えておりましたのは証拠の収集ということでございます。  現在の民事訴訟法は十九世紀的と申しましょうか、もともと一八七七年のドイツの法律をもとにしてつくられたものでございまして、その当時の社会思潮と申しますか、これをもとにして基本的な枠組みができているわけでございます。その後、世界の情勢を見ますと、二十世紀初頭、特に戦後に至りまして社会経済構造の根本的な変革ということがございまして、いわゆる証拠の偏在現象というものが顕著になってきたわけでございます。これに対処いたしまして、既に戦前から諸外国におきましては、これを法律によって是正して、民事訴訟の当事者間の実質的な平等をいかに確保するかということに努力をしてきたわけでございます。  我が国では、そのようなことが切実な問題となりましたのは戦後でございまして、戦後の一九六〇年代から公害訴訟などが起こりまして、切実な問題となって、裁判所がその対処に苦慮しつつ一定の展開をなし遂げてきたところでございます。この際、二十一世紀を間近に迎えまして、我が国民事裁判制度をいかに変えていくべきかというときには、この問題は避けて通ることができないものでございます。  そのような観点から、私ども民事訴訟法部会でもいろいろ議論を重ねてまいりました。その結果、最終的に証拠収集問題についてできました法律案につきまして、私は個人としては疑問の点がございますので、その点を申し上げたいと思います。  まず、ここで問題になりますのは、法律案の二百二十条に書いてございます文書提出命令でございます。従来の文書提出命令は十九世紀的と申しましょうか、本来は当事者が自分の持っている証拠自分で出してお互いにやり合うということを前提にしておるわけでございまして、もともと自分の持っているものしか出せない。だけれども、ある種のものにつきましては、相手が持っているものあるいは第三者が持っているものも出すことを強制できるという例外的な規定としてつくられております。  その例外にはいろいろございますけれども、一番よく問題になっておりますのが、法律関係文書とか利益文書とか言われております現在の三百十二条の三号に規定されている文書でございますが、これはもともと相手方あるいは所持者とそれから立証しようという人との間のいわば共通のものであって、たまたま相手あるいは第三者が持っているけれども、それは本来自分文書でもあるというふうな色彩を、性格を持っている文書につきましては、これは出すことを強制されても仕方がないじゃないか、それはもともとの伝統的な考え方のもとでもフェアなことではないかということでつくられた条文であるわけであります。  ところが、そのような考え方では今日の証拠の偏在のもとでは十分にやっていくことができないということでございまして、我が国裁判所もこの利益文書あるいは法律関係文書の範囲をいろいろな理屈をつけまして拡大する努力をしているわけでございますが、何分この条文の文言が非常に制限的でありますために、判例は必ずしも統一がとれておらず、矛盾するものもありますし、それから、多くの場合において文書提出命令却下されるという事態に至って、証拠を持たない当事者は、結局自分の主張を立証する手段を持たないまま敗訴せざるを得ないということになっているわけでございます。  ところで、今回の改正案はこれをどういうふうに扱ったかと申しますと、まず、一号から三号という点は、従来の、現行民事訴訟法と同一でございます。それで、それに第四号というのをつけ加えまして、ここで、その他どんな文書でも証拠として提出を求めることができる、これがいわゆる一般義務化と言われることでございますけれども、その場合にいろいろ除外がございまして、イ、ロ、ハ、ニとございまして、そのうち、公務秘密文書と俗に言われております公務所の文書というものについては、監督官庁承認しなければ提出を求めることができないという条文になっております。  この点につきましては、従来はそれほど裁判例が多いわけではございませんけれども、裁判所解釈は、秘密に当たるかどうか、あるいは隠しておくことができる秘密に当たるかどうかということを裁判所が判断した上で、提出を命じるべき場合には命じるという解決をとってきた。この点につきましては恐らく異論がないのではないかと思うわけでございます。  それで、公務員の証言義務につきまして、公務員職務上の秘密に関して証言する場合には監督官庁の承諾を得なければならないという規定がございますが、その解釈といたしまして、秘密に属するかどうかということはその官庁そのものが判断をするのであるという見解が、どちらかといえば有力であっただろうと思うわけでございますけれども、この文書提出命令の場合につきましては、少しそれとは違うと申しますか、秘密提出させてもいいものかどうかということを裁判所が判断するという立場をとってきているわけでございます。したがいまして、この新しい法律によりますと、この三号の利益文書ないしは法律関係文書として従来は提出が認められてきたようなものも、四号のロというところに規定されております文書として監督官庁承認が条件になるおそれがあるということでございます。  これにつきましては、立法の整合性ということから、証人となるにはその監督官庁承認が、承諾が必要であるということと文書提出について承認がなければ提出を強制されることはないということとは整合していることであって、したがって新しい法律案の四号のロというところで言っていることは現行法の体制として全く矛盾することではないのである、むしろ整合的なことなのであるという説明がなされているようでございますけれども、もしそうだといたしますと、従来の裁判所が行ってきました解釈、つまり秘密であるかどうかということについて裁判所が判断をしていたということは、実は既に現行法のもとでも違法な、あるいは許されないことをしていたということになるのではないかと思われるわけでございまして、もしそういうことだといたしますと、従来の解釈は、新しい法律ができたということによって全面的に変更される、これは立法者の意思がそういうことだということで今後は変更されるということにならぎるを得ないのではないか。少なくともそのおそれが大きいということが言えるのではないかと危惧するわけでございます。  ですから、もともと証人となるということと文書提出するということとは少し性格の違うものであるということを、裁判所自身、従来の判例を通じて明らかにしてきたところではないかと思うわけでございます。  それからもう一つ、この新しい法律案が他の法律と整合的であるという説明として、刑事訴訟法上の扱いというものが言われております。刑事訴訟法でも、公務員証人になる場合あるいは公務所に差し押さえ、押収をする場合には監督官庁承認を得なければならないということが書いてございます。そのこととも整合的であると言われているわけでございますが、この刑事上の押収というふうなことになりますと、これはいわば国家機関同士のことでございまして、検察庁なりがどこかの行政官庁に捜索に入って何か押収してくるという場合には、押収した方も、それはそれ自体公務所でございまして秘密を守る義務があるわけでございますから、信頼関係といったようなものもそこには存在するし、公務所を捜索するというようなことはよっぽどのことでございますから、従来もこれについて余り問題になった事例はないのでございます。  ですから、これを民事訴訟という全く証拠の偏在のもとで私人たる当事者が官庁文書証拠として必要とするという場合に、類推あるいはそれを同じ原理のもとで考えるということは適当ではないのではないかと思っているわけでございます。  それからもう一つよく言われておりますことは、現在情報公開法というものが審議中でございますが、これができたときには、それと整合的な民事訴訟法法律をつくらなければならないのであって、それが現在進行中であるときに、民事訴訟法の方で先走りをして何か新しいことをするというようなものではないという議論がしばしば行われておりますが、私は、これもそれほど説得力のある議論ではないのではないかと思うわけでございます。  と申しますのは、情報公開法というものは、これは、だれでもいつでも何のためにでも情報の公開が一般的に認められるということでございまして、これは非常に広い意味での開かれた行政、開かれた政府というものを実現するというためのものでございます。ところが、民事訴訟文書提出命令が公務文書について求められるというときには、既に一定の法律上の利害関係というものがはっきりとそこでは提出されているわけでありまして、だれでもどんな訴訟でも起こせるということではございません。  民事訴訟法には訴えの利益という要件がございまして、訴えの利益がない場合には訴訟却下されるということでございます。ですから、訴えの利益もあってこれは十分調べて判決をする必要があるという場合に初めてそこで文書提出命令ということも問題になるわけでございまして、そういう既にチェックがあってそこで問題になっておりますのは、国の法律のもとで保障されている権利というものがあるかないかということを調べているわけでございますから、これは一般的な情報公開の問題とは違うわけでありまして、情報公開で、ある一定の範囲の情報公開が行えるとしても、それよりももっと進んだ文書提出命令民事訴訟法規定するということは何ら矛盾することではないと考えるわけでございます。  これについて少し付言いたしますと、行政文書についての情報の公開につきましては行政庁は従来大変消極的であるわけでございますが、これはもちろん行政庁の立場になってみればよく理解できるところでございます。そういうことがありまして、なかなか出してくれない。そして、出してもらうための法律を何か考えるというときには、それは従来だんだんと先延ばしにしてきたわけでございます。  近いところでは、製造物責任法というものが最近できております。あの成立の過程の中でも、製造物責任訴訟の中で、行政庁が持っているような書類とか、この場合は企業が持っている場合の方が多いと思いますが、これを出せ。出させるための手続上の規定を製造物責任法に規定すべきだという主張もあったようでございますけれども、それに対しては、いや、現在民事訴訟法で根本的な改正を考えているから、そちらの方でやるのが本筋であって、製造物責任法のような部分的なところでやるべきことではないといって先延ばしになったと聞いておりますが、民事訴訟法改正が問題になりましたら、今度は情報公開法でやるから今はやらないというふうな議論が出てくるのはどうも納得のできないところでございます。  時間がちょっと延びますが、もう一点、二百二十条の四号につきまして申し上げたいのは、自己の利用のために作成した文書というものが一般義務化した文書提出命令の中からはまた除外されております。これは官庁文書とは必ずしも関係ございませんが、企業に対する訴訟のような場合には大変問題になってくるかと思います。これは自己利用文書、あるいは場合によりますと内部文書というふうな形でしばしば裁判例にあらわれてきておりますが、この概念は、従来の法律利益文書とか法律関係文書という形で非常に限定的に規定しておりました。これは利益文書であるかないかということを考える場合の一つのアプローチとして、これは内部的な文書であるから法律関係文書でないとかいうふうに使われてきたと思うわけでございます。  ですから、今や、四号によりますと、一般義務化した、どんな文書でもいいということでございますから、これが内部であるかどうかということ自体は基準になるべきものではないのではないか。もちろん個人のプライバシーに関するものとか営業秘密に関するものとか、いろいろ排除されるべき文書というものはございます。ございますが、それは内部文書というふうな従来裁判例が用いてきた名称で、自己利用文書という名称で呼ぶべきものではない。もしこの名称を使いますと、従来使われてきた、つまり従来現行法のもとで使われてきたものと同じ意味でそれが理解されるおそれがある。この点は考え直す必要があるのではないかと思うわけでございます。  どちらにいたしましても、今回の民事訴訟法改正に対しましては諸外国も大変注目をしているところでございまして、どんなものができるかということによりましては日本の国のあり方というものが問われるという面がございます。民事訴訟法を、使いやすいだけじゃなくて、現代社会のニーズにより適切に対応できるものとするということは、これは一九九一年ごろでしたでしょうか、アメリカとの間のいわゆる構造協議のフォローアップの会議のところで日本政府が約束したことでもございます。そういうことでございますから、ぜひともこの点を御考慮いただきたいと思うわけでございます。(拍手
  10. 加藤卓二

    加藤委員長 ありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。     —————————————
  11. 加藤卓二

    加藤委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横内正明君。
  12. 横内正明

    ○横内委員 自由民主党の横内正明でございます。  参考人の皆様、きょうは御苦労さまでございます。時間が限られておりますので、早速質問をさせていただきます。  最初に中野参考人にお伺いをしたいのですが、中野先生は今回の民訴法の改正を検討された法制審議会民事訴訟法部会の部会長代理でありまして、同時に、部会の下で実質上の検討作業を行った小委員会の小委員長だと伺っております。したがって、今回の民訴法をまとめた中心的な役割を果たされた方というふうに承知しております。  そこで、今お話がありましたように、改正案で、裁判所への文書提出義務に関する規定で、公文書提出については監督官庁承認に係らしめているという規定情報公開に逆行しているのではないかという点が非常に大きな問題になっているわけでございます。  そこで、多方面からこの点についての批判があるわけでございますけれども、私が特に重大だと思いますのは、日弁連が非常に強く反対をしているわけでございます。法曹三者の一つである日弁連が大変強い反対をしておられまして、反対意見書を出しておられます。私も読ませてもらいましたけれども、言っておりますのは、五年間にわたって法制審議会議論をしてきたのだけれども、この文書提出義務文書提出命令に関する部分については最終段階で出てきたのだということを言っておりまして、そして、日弁連としては平成七年十二月二十日に反対意見書を提出した、さらに、本年二月二十六日の法制審総会の場でも反対の意思を伝えたということを言っておりまして、結論的に、法制審議会で十分な審議が行われてきたとは言えないのではないかという言い方をしているわけでございます。  しかし、調べてみますと、この民事訴訟法部会の中にはかなり日弁連の推薦の委員さんが入っているわけですね。民事訴訟法部会委員は合計二十三名おられるわけでございますが、日弁連の推薦の委員さんは五人おられる。四分の一近く日弁連の推薦の委員の方が入っておられるわけでございます。したがって、日弁連が反対であれば部会では話がまとまらなかったのではないか、相当紛糾したのではないかと思うのですけれども、最終的にその日弁連の推薦の委員さんも了承をされてこの民事訴訟法改正要綱がまとまったのかどうか、その取りまとめの最終の経緯、それをお伺いしたいと思います。
  13. 中野貞一郎

    中野参考人 ただいまの御質問にお答えいたしたいと思います。  法制審議会で長い間議論をしてまいりまして、平成二年からずっと審議を進めてまいりました。殊に文書提出義務の拡張を含めますところの証拠収集手続につきましては、これはもう今回の改正作業の柱になりますような最も重要な事項でございまして、法制審議会審議におきましても、審議の当初から最も時間をかけて審議をしてまいりました。  殊に、今回の民事訴訟法部会審議におきまして特筆されることは、日弁連推薦の弁護士委員、幹事を増加したことでございます。これは、大正十五年の民事訴訟法改正が、官の側から弁護士さんの意見をほとんど聞かないで立案をいたしまして、そして、帝国議会において弁護士さんの方から反対が出て修正されるというような経緯があり、法案ができまして施行されました後も弁護士さんの協力が得られなかった、そのために改正が挫折したということがございますので、今回は、民事訴訟法部会における審議では、日弁連推薦の弁護士を三名から五名に増員し、また、幹事を一名から四名に増員しております。それらの方々にはこの改正作業の途中で実に目覚ましく活躍をしていただき、それらの方々意見は常に会議を大きくリードしてまいりました。そして、この公務員職務上の秘密に関する論議におきましても、もちろん弁護士会の方からたびたび御意見をちょうだいいたしております。  一番最初にこの問題が出てまいりましたのは平成三年の民事訴訟法に関する改正検討事項というものでございますけれども、ここでもこの問題が既に取り上げられておりまして、これに対して、弁護士会の方から判断権についての問題提起もございました。そして、十分に弁護士さんの関与を経て審議が行われてまいりまして、最終的には、要綱案という形でできました、現在のこの改正法案の基礎になりました、二百二十条の規定が形をとってまいりましたのは、これは平成七年の十二月でございますけれども、それまでに既に早くから議論はされておりまして、(後注)とか、あるいは甲案、乙案、丙案。  それで、甲案と申しますのは、これはいわゆる一般義務化案でございまして、証言拒絶事由に当たるような文書を除きまして、ほかは全面的に提出義務をかけるというもの。乙案というものは、現在の民事訴訟法三百十二条一号、二号、三号と、特定義務構成しておりますのを、これを拡大するというものでございます。これに対して、丙案というもので、この中間と申しますか、特定義務を拡大するというのではなくてむしろ一般義務化しまして、そして、一般義務化して、これに対して例外をつける、ただし、この文書提出義務の立証責任については挙証者側に残すという点が一般義務化案と違うということでございまして、丙案というものが出てまいりました。丙案を提示したのが平成七年の五月でございまして、その小委員会以降、この現在の提出されております改正案のような形で議論をしてまいりました。  これらにつきましては弁護士委員の方からもいろいろな意見が出まして、判断権の所在についてもいろいろ議論がございました。しかし、最終的に、平成七年の十二月にこの丙案で一本化されまして、現在の法律案の基礎になっている形ができましたときには、これは弁護士委員の方もすべて了承されておりまして、説得性に富む案であるというような御意見も弁護士委員の方からちょうだいいたしました。  そして一応、日弁連の方からは要望書という形で意見書はいただきましたけれども、反対はございませんでした。日弁連推薦の委員全員、それから幹事の方々反対は全くございませんで原案を決定しております。いろいろ内部的にはあったかもしれませんが、法制審議会審議に関する限り、全員反対はございません。そして、これを採択し、総会においても、意見は述べられましたけれども、それも反対はございません。意見は述べられましたけれども、反対はございません。  原案がまとまりますときには、最終的には部会長三ケ月章氏の最後の判定をお願いするという形で原案をまとめましたが、そこにおきましては、現在情報公開の流れがあるのでそれについては将来考える、しかし現在のところではこの案でいこうということで、全員反対がなかったものでございます。
  14. 横内正明

    ○横内委員 最終的には、全会一致で、日弁連の推薦委員も含めてまとまったということでございますね。  次に、谷口参考人に伺いますが、参考人民事訴訟法部会委員に入っておられて、議論に参加をしておられたわけでございます。ただいまのお話ですと、今回の民訴法改正公文書部分については疑問があるというお話があったわけでございますが、そういった疑念なり反対は民訴法部会の席上でおっしゃったのかどうか、最後のまとめる段階でそういう反対をされたのかどうか、その点について伺いたいと思います。
  15. 谷口安平

    谷口参考人 私は部会の委員でございますが、実は、この部会の中に小委員会というのがございまして、その小委員会で毎月一回とか毎月二回とか大変詰めた議論をなさって、そして部会の方には、年に一回か二回全体会議が開かれまして、そこで報告をされて議論をする、こういう構造になっております。中野先生はその小委員会委員長であるわけでございますが、私は、部会の委員ではございますが、小委員会には属しておりません。  現在問題になっておりますこの公務秘密文書の案が提出されましたのが十二月の一日でございましたかの小委員会でございまして、私はその場にはおりません。その後、何回か小委員会が行われましたようで、その審議メモというものを私は拝見しておりますが、それに基づきまして、二月の二日でございましたか、部会が開かれたわけでございますが、実は、その二月の二日は私は、外国出張の予定がかねてかちございましたものですから、出席できませんでした。  したがって、そのときには私は意見を述べさせていただいておりませんが、仮に出席いたしましたとしても、多分私は、反対意見は述べたと思いますが、改正案そのものについては、改正案全体につきましては賛成をしたと思います。ということは、改正をすることはもう一番大事なことでございまして、これが全部つぶれてしまうということはやはり選択すべきでない。したがって、少し問題はあるけれども、これはもうしょうがないということで賛成をしたと思います。これは、政府提出……
  16. 加藤卓二

    加藤委員長 参考人に申し上げます。  答弁は簡潔にお願いいたします。
  17. 谷口安平

    谷口参考人 政府提出法案としてのある種の限界がございますので、修正していただくのは国会の方でお願いすべきことではないかと思っております。
  18. 横内正明

    ○横内委員 もう一回中野参考人にお伺いしますけれども、今回のこの文書提出公文書についての規定については、ほかの立法例とかそういうものと整合を図るということで、監督官庁承認に係らしめるということにしたわけでございますが、ただ、行政情報公開という非常に大きな流れ、国民の要請があるわけですね。そういう中で、法律論としては従来のものとの整合をとるというのはよくわかるのですけれども、そういう流れの中で、さらにいま一歩進めるべきではなかったか、そういう検討をすべきではなかったかという意見が非常に強くあるわけですが、それについてどういうふうに今の時点ではお考えになりますか。
  19. 中野貞一郎

    中野参考人 お答え申し上げます。  公務員の持っている情報、これを広く国民にできるだけ公開する、これは大変現在の世界的な傾向でもあり、日本がおくれている、国の情報についてはおくれているということは明白でございますので、これが現在御審議になっている情報公開法ということであろうかと思います。  しかし、現行法の現在の体系におきましては、公務員職務上の秘密についてはこれを開示するかどうか、これは当該秘密の管理責任を有する監督官庁がその責任で判断をするということになっておりまして、民事訴訟証人尋問の場合だけではなくて、刑事訴訟における証人尋問あるいは文書の押収、あるいは議院証言法によって国会が証人尋問文書等の提出を求める場合でも監督官庁承認を必要としているわけであります。  それで、行政改革委員会におきまして、昨年から情報公開のあり方について御審議が始められておりまして、現在、鋭意検討が続けられておると聞いております。このような中で、私どもは、公務員職務上の秘密に関する文書提出命令がどういうふうでなければならないかということにつきましても十分検討したわけでございますけれども、民事訴訟における文書提出命令についてだけ情報公開の議論を先取りするという形はとれないわけであります。  なぜかと申しますと、民事訴訟というのは、甲が乙会社を訴える、その事件で事実、真実を追求していく、事実認定をする、実体的真実を追求していくという場合に、甲の乙会社に対する訴訟ですよ、そこである事実が問題になった、そこで公務上の秘密を書いた書面が必要になる、あるいは公務員尋問が必要になる、そこで問題になるということについての手続規定なんです。ところが、ある秘密国民一般に知らせるかあるいはある秘密を東京都の都民一般に知らせるかというような問題は、これは民事訴訟法だけではとても決められないですよ。口頭弁論に出ますと、口頭弁論は公開でございますから、広く一般に公開されてしまうわけです。  だから、ある秘密がありまして、ここで秘密を、どういう場合にその文書を、どういう文書ならば提出義務がある、そしてその提出義務がある場合に提出しないという場合にどういうふうにするか、そこはどういう形で申請をし、どういう形でそれを審理し、どういう形で提出命令を出すか、これは民事訴訟法が決められます。決められますけれども、その秘密を一般の人に見せていいのかどうかという、これはもともと民訴の問題ではないですよ。民訴に関連しているだけであって、民事訴訟法の問題じゃないのです。  そこを民事訴訟法で決めろ、そこについて規定を置けと民事訴訟法部会へ言われましても、民事訴訟法部会構成しております学者は民事法の学者でございまして、これはそういう、公法と申しますか、情報公開法などにつきましては不案内なところでございます。弁護士さんにつきましても、日弁連は民事訴訟法改正に適当な人材を推薦してくれと言われて推薦してきているわけでございまして、そういう官の秘密はどこまで国民に知らせるべきかという問題とちょっと違うわけなんですね。  ですから、民事訴訟法は関連はしておりますけれども、そこのところはメーンではございませんので、もしそこまで立ち入って民事訴訟法規定するならば、これは非常にゆゆしき問題になるのではなかろうかと私は考えております。
  20. 横内正明

    ○横内委員 櫻井参考人に最後に伺いますが、今回の民訴法の改正というのは、要するに、私流に理解をすれば、二段ロケットだと思うのですね。  まず最初に今一段ロケットが飛んでいるのですけれども、これは要するに、今までは公文書については一般的には文書公開義務の対象になっていなかったわけですよ。それを一般的に広げるということにしたわけですね。ただしかし、何でもかんでもというわけにいきませんから、そこでほかの立法例と同じように監督官庁承認に係らしめることにした、これが今回ですね。  さらに進めるべきかどうかという議論は、中野参考人が今おっしゃったように、一方で、今、内閣で情報公開の大議論が行われていて、一、二年後には法律ができるのだろうと思うのです。その時点で、それとのバランスで、もう一回この民訴法を、その情報公開の部分を再改正するかどうかの議論をするんだ、こうおっしゃっているわけですね。二段ロケットだと私は思うのです。そういうふうに解釈すれば、今回のこの問題についても理解がいただけるんじゃないかという気がしますが、参考人はいかがですか。
  21. 櫻井よしこ

    櫻井参考人 先ほど申し上げましたように、私は法律専門家ではございませんので詳しい条文のお話はすることができませんけれども、しかし、公文書というものは一体どういうものかということを、やはり取材の現場の人間としては考えてしまいます。  公文書というのは、お役所の方々の私物ではないと思うのですね。公文書は、本来、国民全員が共有すべき情報だというふうに思います。しかも、今回の改正案を見ますと、これは、公文書を出すか出さないかというのは当該監督官庁が基本的に決めるという構図だと思います。これを裁判官に見せることさえもしない、裁判官の裁量の余地も残さないということは、行政側が見せないと一たん決めてしまえば、すべて見せなくても済むという構造になるのではないでしょうか。  そうしましたら、裁判官に現物を見せることさえできないというのは、日本司法が公正な判断を下せないという判断に立つわけですから、この辺もほかのことと整合性がどのようになるのかなということを感じますし、それから、あくまでも現場の人間といたしまして、薬害エイズ訴訟を見ましたら、薬害エイズ裁判では多くの文書がずっと隠されてきましたが、このような民訴法の改正が行われましたら、今度は合法的に堂々とお役所による情報隠しがまかり通ってしまう。そんなことで果たしてよろしいのかなというのが私の率直な疑問でございますので、確かに、今御指摘の二段階の構えという論理もあるのでしょうけれども、しかし、そのような二段階の構えをする必要がなぜあるんだろうかというふうに私は感じました。ですから、この点については、御発言ではございますけれども私は納得はできません。
  22. 横内正明

    ○横内委員 時間が参りましたが、この問題については、一方で情報公開についての議論行政改革委員会で行われているわけですから、櫻井参考人が今おっしゃったような議論もそこであるんだろうと思うのですね。そういう中で、それとの関連で、関係する法案がたくさんありますが、そういうものの整備が行われていくのだろうと思います。そういう二段階というやり方というのは今回やむを得ないのではないかと私は個人的に思っておりますけれども、時間が参りましたので、これで終わります。  ありがとうございました。
  23. 加藤卓二

    加藤委員長 山本拓君。
  24. 山本拓

    ○山本(拓)委員 新進党の山本拓でございます。  きょうは、中野先生、櫻井先生、谷口先生にはおいでいただきまして、心からお礼を申し上げます。  先ほど、御三名の方の意見を拝聴いたしまして、きょうはここは法務委員会でございますから、いわゆる行政と立法と司法、三権分立の中で、行政側のいろいろなしがらみの中で、今回七十年ぶりに、ようやくいろいろな意見を取りまとめて国会に出されたわけでございます。その改正案を、では我々立法府として冷静に、どのような問題、国民意見を十分踏まえて、新たな法律をどうつくるかという議論をいたしているところでございまして、そういう観点から私どもは審議を進めているところでもございます。  そんな中で、中野参考人は当時の小委員長ということでもございますが、きょうは奈良産業大学の一学者の一人という立場でも私はお聞きしてみたいと思っているところでもございます。  そもそも中野さんの立場というのは、いわゆるインカメラの手続行政に導入するというか、そういう公務員秘密文書の問題については、後ほどの情報公開法をどうのこうのというのじゃなしに、一学者として、インカメラの手続行政文書に導入する等の考え方には、いずれにしても反対というお立場なんでしょうか。
  25. 中野貞一郎

    中野参考人 ちょっと最後はわかりませんでしたが、一般義務化することには個人として反対かと……(山本(拓)委員「個人の意見を」と呼ぶ)個人としてですか。私は、小委員長として皆様の御意見をまとめる方に回っておりまして、個人的に意見を言えと言われるのは大変困るわけなんですけれども、一般義務化するということについてはいろいろと問題があるので、これは慎重にやらなければいけないということを特に感じます。  行政上の、公務上の、公務員の持っている文書職務上の秘密にかかわるもの、非常に広い、いろいろな種類のものがございます。それで、そういうものを一からげにして民事訴訟法でつかまえていいのかということに大変疑問を持つわけでございます。したがいまして、現在の時点で一般義務化、全部出せというように持っていくことは、これは民事訴訟法としてはできない。やはり、できるだけ一般義務に近づけていかなければならないということは感じます。しかし、その場合、公文書の内容、種類、こういったものもいろいろ考えていかなければならない。  情報公開法におきましても、私は雑誌などで存じているだけでございますけれども、先生方の方で御審議されている内容として不開示文書というものがあると承っておるわけです。例えば不開示文書に当たるものというものが出てくれば、やはりそれは裁判所の方は出してほしいのだということでも、これをどうでも出してもらうというわけにいかないだろうと思うわけですね。  それで、今回の改正案としまして、証人尋問の方と横並びでございますけれども、こういう秘密のものにつきましては、ここへ、公共の利益を害する、あるいは公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある場合という要件を掲げました。これは、現在のところでは、このような要件を明示するということで、私はそこまでしかいけないのではないか、あとは情報公開法の審議の進展を見守るという以上にいかないのではないか。  「公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある場合」というのは、これは抽象的で、こんなものはだめだという御批判をこうむっているわけですけれども、このような要件が決められたことによりまして、これは、監督官庁の方では、抽象的にせよこのような要件が決められておりますから、今後は、承認を拒む場合には、この「公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある」ということを具体的に答えなければならない。裁判所の方は、抽象的に鼻をくくったような返事が来た場合は、もう一遍具体的な答えをしてくれということは言えると思います。言えると思いますけれども、言わない、言わない場合どうなるかというと、そこで無理に、これはもう承認がないということですから、承認がないという以上は仕方がない。  これは、現在、刑事訴訟法あるいは議院証言法その他そういう形をとっているわけですから、秘密を公開するかどうかについては、これは監督官庁に任せるということですから、本当に公共の利益が害されるのかとか、あるいは本当に公務の遂行に著しい支障を生じるのかどうなのかというところまで裁判所が立ち入って審理することは適当ではない。だから、どんなふうな文書は公開するということを情報公開法の方で決めていただきたい。それが決まれば、訴訟法の運用もこれに従っていくことになるだろう。だから、現在ではそういう形をとらざるを得ないと思っております。お答えになったかどうかわかりませんが。
  26. 山本拓

    ○山本(拓)委員 私どもが日ごろから申し上げておりますのは、さっき中野参考人お話しされましたけれども、今回、現行の枠組みの中でとりあえず決めたと。確かに、法律というのを役所がつくるときは、現行の枠組み、枠組みでつくっていくわけですよ。そうすると、今回この民訴法ができますとこれが現行になるわけですね、今後情報公開法を議論するときには。そうすると、情報公開法を議論するときには、今回決まった民訴法の現行の枠組みで情報公開法が議論されていくことになるのですよ。もちろんいろいろな意見、賛否はありますけれども、そういう議論になってくるのですね、過去の実例からいきますと。  だから、先ほどの中野参考人お話を聞いていて、現行の枠組みで決めた、そして今後の情報公開法の流れでまた改正すればいいじゃないかという考え方でまとめたということでありますが、きょうはこの場所でいろいろその問題を議論するつもりはありませんが、私が冒頭申し上げましたように、基本的には七十年ぶりに煮詰めて、そして先ほど自民党の委員から質問ございましたが、日弁連の推薦の弁護士も賛成したとかいろいろな話がありましたが、ただ、私どもとして、いろいろな人にお聞きしますと、結局、最後の場面で、反対したら全部つぶれちゃうよ、とにかく通して、おおむね賛成なんだからと。  我々もおおむね賛成なんですよ。おおむね賛成なんだけれども、肝心かなめのこの部分がおかしいから国会でこの部分だけひとつ修正しようという提案をいたしているわけでございまして、だから逆に、恐らく委員のメンバーの方も、お一人お一人、個人的に聞きますと、この部分は、みんな、おかしいという話を大半の方がしているのですが、みんな、それを反対してしまうと、例えばこれはよく新聞でも伝えられておりますように、法務省が幾ら情報公開の文書提出命令の問題もオープンに出そうとしても、ほかの役所の反対があって事務次官会議に出せない。そうすると元も子もなくなってしまうから、とりあえずこれを下げて国会へゆだねようということで出されたという経過を承知いたしているところでもございます。  だから、きょう、私は、あえてここで個人的な御意見、学者としての御意見をお聞きしたいと申し上げているところでございまして、櫻井参考人にはもう日ごろからお聞きしておりますから、今ペーパーもいただきますから、後でちょっと感想をいただきますけれども、谷口参考人京都大学の法学部の学者さんでありますから、先ほどもお話承りましたけれども、改めて一学者として、情報公開法のどうのこうのというよりも、個人的に、民訴法における公務員秘密文書の取り扱い、これはもう一度改めて先生のお考え方を明確にお示ししていただきたいと思います。
  27. 谷口安平

    谷口参考人 先ほど申し上げたとおりでございますが、中野先生が先ほどおっしゃったことはそのこと自体は当然のことであると思います。問題は、秘密であるかどうか、これは出さなくていいものであるかどうかということを裁判所が判断することが大事である。  今度の法律案でも、解釈の仕方によりましてはそういう解釈ができないわけではないと思います。と申しますのは、職務上の秘密でしたかに関する文書はと書いてございます。だから、そういう文書であるということが前提になっているわけでありまして、そういう文書であるかどうかということを一体だれが決めるのかという問題が先決問題としてございます。それで、これを裁判所がまず決めるのだという考えがもしとられるとすれば、私の持っている危惧はかなりの程度解消されるわけでございますが、そして、現に、現行法のもとではそのような解釈文書提出命令については行われてきたと思います。  その理由は、証言の、今度の改正法によりますと百九十一条二項だと思いますが、これは除外事由がありまして、つまり、こういう場合は承認しなくてはならないというふうな限定がございます。現行法にはこういう限定がございません。刑事訴訟法にはございます。ですから、そういう限定を裁判所は読み込んで、それは裁判所で判断するのだというのが今の立場であろうと思うわけです。ところが、今度の新しい法律によりますと、これをはっきりと書いてしまったものですから、公務上の秘密というものには二種類ぐらいありまして、秘密と言われているものが秘密であるということを前提にして、ただし公共の利益に重大な関係があるとか、あるいは公務の遂行に支障があるとかいうふうなものについては、秘密だけれども出さないといけない、こういう二段階秘密のようなものを前提にしている規定ができてしまっているわけであります。  これを今度は裁判官の方が見られますと、そうすると、とりあえずは官庁秘密だと言えば一応秘密なんだ、そして、それを出すか出さないか、つまり公益に重大な影響があるか云々というようなことは、これは官庁の方で決めることになっておるのだなというふうな解釈に変わってしまうということが大いにあり得ることでございます。その点を大変危惧しておるわけでございまして、現行法のもとと同じような解釈が行われるとすれば、これは私は大変うれしいことだと思いますが、これについての保証はございませんで、この点について新しい法律案はかなりあいまいに残されておりますので、その点を危惧しておるところでございます。
  28. 山本拓

    ○山本(拓)委員 だから、今一般に言われておりますように、情報公開制度と今回の民訴法の秘密文書の問題、これは基本的には別次元の問題ですよね。だから、情報公開制度は後からできるという話と今回の民訴法の秘密文書の問題の議論、これはやはり区別して、きちっと考えておくべきであるというお考えでしょうか、谷口参考人
  29. 谷口安平

    谷口参考人 先ほど申し上げましたように、そのとおりでございまして、情報公開の問題と文書提出命令の問題とは次元の違う問題であろうと考えております。  それで、文書提出の問題につきましては、裁判所の判断というものを介して利用に供するかどうかということでございまして、先ほど中野先生が危惧されておりました、裁判所に出されてしまえば、一般、つまり裁判の公開の原理のもとでだれでも知ることになってしまうのじゃないかという危惧がございます。もし、だれでも知るようになってしまえばおかしいようなものは、裁判所はその場合に認めなければよいわけでございまして、それは裁判所に任されていることであって、先ほどの中野先生のおっしゃいましたことはこの場合心配する必要はないのじゃないかというふうに考えております。
  30. 山本拓

    ○山本(拓)委員 きょうは、二十分しかありませんから、そう詳しく御質問できませんが、ただ、私も申し上げたいのは、先日来から、法制審議会審議資料、議事録をちょっと見せてほしいという話をいろいろ前からしておったのですが、なかなか役所はそれはできないということです。先日の委員会で、我が党の山口那津男委員の方から委員長に請求されまして、それを受けて、その後ちょっと法務省の担当の人に聞いたら、それはできないと言うのです。というのは、昨年の九月に政府の閣議決定でオープンにするという決定をしながら、その後は、ただ出せるとしたら二月以降ですということでした。二月以降というと、もう答申を出した後ですから関係がないわけでありまして、ただ委員長の取り計らいで出しなさいという決定をしていただいて、先ほどこれをいただいたのですが、大したことは載っていないのです。だから、これが果たして秘密文書扱いならどういうことかなというふうに思うわけであります。  時間がありませんので、最後に櫻井参考人にお尋ねしたいのですが、私も弁護士でもなければ法律的には素人でありますが、ただ私がいつも申し上げているのは、法律というのは裁判所とか弁護士会とかそういう専門家のものじゃなしに、国民のためにあるわけでありますから、国民にとって今非常に、日ごろから官民の情報格差というのですか、民間が出す情報、官が出す情報、それは今までのジャーナリストの活動の中で大きな壁の違いというのは十分お感じになっていると思いますし、また外国との比較をしましても大きな違いがあろうかと思います。  そういうことから、ひとつ櫻井参考人に、文書提出命令における官民格差と申しますか、情報についての官と民の格差についてジャーナリストとしてどういうふうに考え、そして国民は思っているか。また、先ほどお話はお聞きいたしましたが、そして今ほど失礼ながら中野参考人を初め谷口参考人にいろいろ、法律専門家でありますが、そういった方のお話をお聞きしたのを踏まえて、ちょっと御感想をお聞かせいただきたいと思います。
  31. 櫻井よしこ

    櫻井参考人 今お話を伺っておりまして、この議論の中で一つすりかえが行われているような気がいたしました。それは、公文書を公開するということは国民の利益になるのかどうかという観点から、裁判官に見せることさえもそれは利益が損なわれるのだというふうな議論があったような気がいたします。  裁判官公文書を見せることと、裁判官がそれをすぐに開示させることとは別のものであるわけです。私たちが今問題にしているのは、裁判官に見せることさえも拒む内容が今度の法改正の柱になっているということを問題視しているわけで、これは私は谷口さんと意見が同じでございます。  もし、本当に公開してまずいような資料があれば、それは今までの例から考えまして、裁判官がそれを公開しなさいということを言ってきたことはないわけですから、第三者といいますか、情報を持っている行政側だけの判断ではなくて、その行政側が持っている情報開示してよろしいのかどうかの判断は、やはり司法に任せる余地を残しておくべきだと思います。  この点について、今諸外国との比較についてということをおっしゃられましたけれども、当初も申し上げましたが、日本は大変な先進国だというふうに思われているにもかかわらず、やはり情報というものがある部署に集中して、隠されている、国民は知らされていないものが非常に多いというのが、これは国際的な日本に対する評価だというふうに思います。情報公開制度がこのような形でまだ確立されていない先進国というのは少数派に属するわけですから、私は、この点については情報は基本的にすべて開いていくものというふうに考えていただきたいと思います。  そしてまた、感想はどうかということをお尋ねになりましたけれども、薬害エイズ取材をしておりまして、エイズ研究班というものがございました。エイズ研究班でなぜあのような判断を下したのかということを考えますと、やはり情報を一カ所の人たちが持っていて、それをみんなが共有しなかった、情報開示しなかったというところが、エイズ研究班が大きな過ちを犯す大変大きな原因だったというふうに思うのです。  ですから、この法務委員会で、今回の民訴法の改正を通すようなことになりましたら、この法務委員会そのものが、もしかしてエイズ研究班と同じような、もしくはそれ以上の深刻な過ちというものを繰り返していくのではないかということを実感しております。それを大変に危惧しております。
  32. 山本拓

    ○山本(拓)委員 もう時間ですから。ありがとうございました。
  33. 加藤卓二

    加藤委員長 細川律夫君。
  34. 細川律夫

    ○細川(律)委員 社民党の細川でございます。  きょうは、三人の参考人の皆さん、大変御苦労さまでございます。私の方からは中野先生と谷口先生に同じ質問をいたしますので、それぞれ理由を述べて結論を出していただきたいというふうに思います。  今回の改正案での、先ほども出ました文書提出命令の件でありますけれども、中野先生は、現行法の現状の裁判よりは範囲が拡大をするんだ、そういうことで、よりょくなるんだというような御見解なのです。また谷口先生は、逆にむしろ文書提出命令の範囲が狭まるのではないかという心配をされております。  そこで、具体的な例をちょっと申し上げますので、それぞれお答えをいただきたいと思います。  こういう例はどうでございましょうか。例えばの話ですけれども、拘置所の中で収容されている被疑者が看守に暴行をされまして、そしてその暴行された者が国を相手取って損害賠償の裁判を起こしたという仮定をいたします。  そこで、その裁判の中で、被害を受けた原告の方から、拘置所内にある診療録、この診療録を改正案の二百二十条三号の法律文書として提出命令の申し立てをしたというふうにします。それに対して国の方は、いや、それは二百二十条四号の公務秘密文書に当たる、監督官庁承認がなければ提出をできないというふうに答えまして、そこでその監督官庁は、この診療録を提出いたしますと公務の遂行に著しい支障を来すから承認はできない、こういうふうに主張したといたします。その場合に、裁判所はこの文書提出の命令の申し立てをどうされるのか。認容されるのかあるいは却下されるのか、どういうことになるのでしょうか。理由をつけてちょっと結論を言っていただけますか。
  35. 中野貞一郎

    中野参考人 具体的なそういう裁判例もあったかと思いますけれども、現在、私の個人的な見解を聞くという仰せでございますので、そのように受け取らせていただきます。  公務所に収容されている者が他人に暴行されたということで国家賠償訴訟を起こした。その暴行された者の診療録を出せというのに対して、公務の遂行に支障があるからということで出せないと頑張っている、こういうような場合であります。  一般論としましては、このような診療録につきましては、従来、三百十二条の第三号というところで大変、いろいろな場合、医者に対する患者訴訟であるとかあるいは相手方と医者との間の診療録の問題であるとか、いろいろ議論のあったところでございます。  現在御審議いただいております改正民事訴訟法案におきましては、一般義務という形をとっておりますので、一応文書提出義務があるということになると思いますけれども、これについて、秘密があるのだ、職務上の秘密というものがそこに含まれる、その診療録について職務上の秘密があるのだということを申し立ててまいりました場合、裁判官としては、職務上の秘密はあるというふうに言ってまいりました場合、最終的にはやはり、これは秘密である秘密でないということは最終的には決定できないので、一応監督官庁に聞くということになる。監督官庁の方でそれは出せないということになれば、それはやはりこの点がひっかかるということになるであろうと私は思います。  それは、現在の法制の中での建前としてということでございまして、それはこのような場合だけ一〇でなく、いろいろな場合に問題になると思いますけれども、秘密になるかどうか、そしてそれを公にするという場合に、公共の利益を害し、公務の遂行に著しい支障を生じるかどうかというところは、裁判官としては最終的に判定できないというのが現在の法の仕組みなのですね。  というのは、裁判官としては、この国家賠償請求訴訟訴訟物は何か、それについてはどのような要件事実があるか、その要件事実についてはどのような間接事実があるか、そしてこの事実は審理に必要かどうか、これは判断できますね。しかし、その事実が一般に広く国民に知らせていいものかどうかという点については裁判官決定権がない。これが現在の形でございまして、この辺は、情報公開についての法律というものが整備されてくれば、議論はおのずから違うであろうというふうに考えております。
  36. 細川律夫

    ○細川(律)委員 続いて、谷口先生はその点どうですか。
  37. 谷口安平

    谷口参考人 ただいま伺いました実例につきましては実際の裁判例もあるようでございますが、結論的には、これは現行法のもとでは三百十二条の三号の法律関係文書として出されているものでありますが、もし新しい法律になりますと、これは出されない可能性が高いというふうに私は考えるわけでございます。  と申しますのは、法律関係文書というものはそれ自体大変明確な規定でございますが、これだけではどうしても困るというので、裁判所の方ではこれをいろいろ拡張した解釈をして、法律関係に関係するとかいうふうなことで拡張してこられたわけでございます。そして、公務上の文書につきましても、それが公務上の秘密として本当に秘匿されるべきであるものであるかどうか。それは、ただそう言っているだけで、そんなものは、裁判所が見るところ別に隠さないといけないものではないというふうな実質的な判断をいたしました上で、法律関係文書として提出を認めてくるわけであります。その法律関係文書であるかないかということ自体がかなり文言を離れた解釈で現在行われております。  今度もし新しい法律になりましたら、その四号というのが、その他の文書ということで全く限定のない、いわゆる一般義務化された文書が問題になってくるわけでございますから、今までのように苦労して法律関係文書に当たるか当たらないかということを議論する必要は全くなくなってしまって、今や四号文書として考えていきましょうということにならざるを得ないのではないかなと思うわけでございます。  ある方の説明によりますと、今までの一号から三号までのものは、今までの判例が築いてきたものはそのまま置いておいて、新たに四号をつけ加えたのだから広がったのだという議論がございますけれども、それはむしろ反対で、むしろ法律解釈としては反対の方向に行ってしまうのではないか。これは新しい法律の方が今の実務よりも狭くなると私が考えるゆえんでございます。
  38. 細川律夫

    ○細川(律)委員 はい、わかりました。  お二人の参考人の御意見では、先ほどの事例ではいずれも提出命令が出ない可能性が強いということになると思います。  中野先生、そうしますと、今先生がおっしゃったように、現行法のもとでは、こういう事例の場合には提出命令判例の積み重ねによって出されているわけなのですけれども、改正法ではこれが難しいということになるのです。その点について大変批判があるようなのですけれども、先生、その点はいかがですか。
  39. 中野貞一郎

    中野参考人 原則論としては、そういう場合に診療録は提出義務の対象になります。なりますけれども、そういうふうに秘密が含まれているとか、あるいはそれが公共の利益を害し、公務の遂行に著しい支障を生じるというふうに主張されてきた場合には、最終的な決定権は裁判官にはない。提出義務の対象に診療録がなるかと言われれば、なります。
  40. 細川律夫

    ○細川(律)委員 それでは、櫻井さんにお聞きをいたします。  櫻井さんは、今まで現場でのいろいろな取材からして、今回の法改正には反対だというふうに言われたわけなんですけれども、マスコミなどもこぞって、この公務秘密文書についての例外については検討し直せ、反対だというような意見が圧倒的に多いわけなんですけれども、そういう、櫻井さんも反対、それからマスコミなどでも反対をしているにもかかわらず、あえてこの改正案は櫻井さんの意向と違う方向に改正されている。一体この裏といいますか、どうしてそういうふうになるとお考えですか。
  41. 櫻井よしこ

    櫻井参考人 どうしてそのようなことになるのかは、むしろほかの、法律をおつくりになった方々お話を伺った方がよろしいと思うのですけれども、昨年十二月くらいからこの文書提出命令の件が急浮上してまいりました。そのころはちょうど、薬害エイズ問題に関しましては和解をするのかどうなのかということで、大変な交渉が行われておりました。その席で、やはり被害者となった原告団の皆さん方、そしてそれを取材する私どもの間で痛感していたことは、どうしてこんなに情報が隠されてきたのかしらということでした。  ですから、行政による情報公開、製薬企業による情報公開、そういったものが、やはり公正な業務行政であるとか厚生行政をしていただくためにはぜひ必要なんだという認識が強くなりつつあったころなんですね。そのときにこの文書提出命令法改正が出てまいりまして、これは国民一般も含めて情報をもっと広く公開してほしいという願いとは裏腹の動きで、国民を代表する法務委員会方々がどうしてこういうことをなさるのかなということで、大変理解に苦しむところでございます。  ですから、さっき山本拓先生がまとめて御説明になりました。このところに反対したら全体が崩れるのだという懸念があったから委員の皆様方も全員賛成なさったという御説明がありまして、なるほど、そうだったのかなということがわかったような気がするのですが、もしそうであるならば、この問題視されている部分だけを取り出して、もう一回きちんと論議をしていただきたい。  その論議の必要性実感していただくためには、例えば法務委員会委員の皆様方に、一度でもいいです、二度でもいいですけれども、どこの裁判所でもよろしいのですけれども、具体的に行われている裁判を傍聴していただきたい。いかにそこで行政側による情報隠しが行われているかという実態を認識していただければ、この法改正がいかに誤ったものであるかということは御理解いただけるのではないかと感じております。
  42. 細川律夫

    ○細川(律)委員 時間が参りましたので、私の質問はこれで終わります。
  43. 加藤卓二

  44. 枝野幸男

    ○枝野委員 さきがけの枝野幸男でございます。三人の参考人の皆さんには、きょうはありがとうございます。  私もちょっと具体的な例を申し上げましてお答えをいただきたいと思いますので、三人の参考人の方、お聞きいただきたいと思いますが、先ほど来、文書提出命令情報公開法との兼ね合いについてお話をされておりますが、既に日本には情報公開条例がたくさんあります。そことの兼ね合いでございます。  都道府県を相手とする訴訟が行われておりますときに、新しい民事訴訟法の二百二十条四号の文書提出命令を求めて都道府県が持っている資料を出せということをしましたときに、それは秘密である、四号ロに基づいてそれを拒否してきた、こういうケースは十分あり得ます。拒否をしてきたので、どうしようもない、困った。幸いその都道府県には情報公開条例がある。その当事者が、仕方がない、情報公開条例に基づいて情報の公開を求めようとすることは可能であります。その情報公開条例に求めても、民事訴訟秘密だと言っているわけですから、当該都道府県は当然、秘密だから出さないと言うでしょう。  この場合、情報公開条例に基づいて公開をしろと裁判を起こすことは可能であります。この場合、その情報公開条例に基づいた裁判では、裁判官が当然、裁判官の判断として秘密に当たるかどうかを判断して、場合によっては、それは秘密じゃないという判断で、証拠を出せ、文書を出せという結論が出ることは十分にあり得ます。こうしたケースがあり得るということを二人の民訴法の先生に、イエスかノーでお答えください。
  45. 中野貞一郎

    中野参考人 情報公開条例に……(枝野委員「イエスかノーだけで結構です、あり得るかどうかだけで結構です」と呼ぶ)ちょっとその問題の……
  46. 枝野幸男

    ○枝野委員 じゃ、お答えにならなくて結構です。  谷口先生どうですか。
  47. 谷口安平

    谷口参考人 あり得ると思います。
  48. 枝野幸男

    ○枝野委員 民事訴訟法の法理論上はさまざまな弁解のしようがあるのでしょうが、少なくとも一般人から見てきたときに、当事者として利害関係のある者として求めたところ、裁判所の判断も何もなしにだめだと言われることが、一県民、一都民として求めたときには出てくることがある、これは明らかに整合性を欠くのじゃないかと思うのですが、これは谷口先生と櫻井さんに、どう思いますか、お答えください。
  49. 谷口安平

    谷口参考人 情報公開条例に基づいて裁判所が最終的には公開を命ずるということと、民事訴訟手続の中で裁判所がやはり文書提出を命じるということとはこれは原理としては同じ、つまり最終的な判断は裁判所がするという意味で同じでございますが、その場合の判断基準はもちろん違うということはあり得ます。  ただ問題は、情報公開条例に基づく公開の拒絶の処分に対して抗告訴訟いたしまして、これは三審、最高裁判所に場合によっては行くということになりますが、それを待たなければ民事訴訟では使えないということでは、これは何年かかるかわからないという問題がございます。  裁判所が判断できるということでは同じであるならば、現に問題になっている民事訴訟手続内で裁判所がこれを判断して提出を命じればいいではないかというのが私の考えでいるところでございます。
  50. 櫻井よしこ

    櫻井参考人 裁判所の判断もなしに拒絶されるのは、国民としては納得いかないと思います。
  51. 枝野幸男

    ○枝野委員 今の情報公開条例の場合とこの改正民訴法案二百二十条四号ロの場合とで整合性がとれないケースが出るんじゃないかという議論は、民事訴訟法部会の小委員会等で問題になりましたか、なりませんでしたか、イエスかノーで中野先生お答えください。
  52. 中野貞一郎

    中野参考人 よく覚えておりませんが、情報公開条例におきまして——イエスかノーかで答えろというのは弁護士さんの常套手段ですけれども、大変答えにくい、私どもの言いたいことが言えないということになりますので。私は、その情報公開条例についてこれまでの五年間の審議の中でいっか議論になったか、こういう趣旨であれば、現在のところ、私はよく覚えておりません。
  53. 枝野幸男

    ○枝野委員 これはほかの委員の先生方も、傍聴されている皆さんも、今私が申し上げた例が明らかに一般人の常識として矛盾をしている、整合性がとれないというのははっきりしている。そしてそれを議論していたのかいなかったのか、少なくとも覚えていないような議論しかしていないということというのは、明らかに法制審の審議がいいかげんだったとしか残念ながら言いようがないと私は申し上げざるを得ないと思います。  それからもう一点申し上げます。  先ほど来、特に山本先生のお話の中でありましたでしょうか、裁判官が判断するかどうかという問題である。公開するかどうかの問題をここで問題にしているのではありません、文書提出命令は。裁判官が判断するかどうかということの問題であります。  中野先生、裁判官に判断させることもだめなのだということは、裁判官情報公開——情報公開といいますか、つまり文書提出命令が求められて、それが職務上の秘密であると行政が主張したことについて間違った判断をして、そして本来オープンにすべきでないものをオープンにするという判断をしてしまうような間違いを犯すおそれがあるというふうにお考えなのですか、イエスかノーで。違うのだったら、また理由を聞きますから結構です。
  54. 中野貞一郎

    中野参考人 そのイエスかノーかという質問は、これは大変困る質問です。私どもは意見を述べさせていただきたいと思います。一枝野委員「では、まずイエスなのかノーなのか。ノーだったらどうなのか」と呼ぶ)いや、イエス、ノーというような答えの仕方で片づく問題ではないのですね。ですから……
  55. 枝野幸男

    ○枝野委員 今私は、私の意見を申し上げて、これと先生の意見は同じですかどうですかということを申し上げたのです。違うのだったら、先生の違う意見をそれから伺えば私はいいので、私が申し上げたことと一緒なのですか一緒でないのですか。先生の先ほど来のお話を伺ってくると、裁判官は間違えることがあるから裁判官に判断させてはいけないという前提ではないと先生の理屈は成り立ちませんねと私が判断しました。だから、こういった考えですかどうですかと伺っているのです。  イエスなのかノーなのか。ノーだったら具体的にいろいろお伺いします。イエスなのかノーなのか、お答えください。
  56. 中野貞一郎

    中野参考人 それはノーです。
  57. 枝野幸男

    ○枝野委員 だとすれば、裁判官を信用すればいいのではないかというふうに思います。裁判官はそういった間違いを犯す可能性があるというふうに思っていらっしゃらないのだったら、そうしたら、裁判官を信用して、裁判官に判断してもらえばいいというのは当たり前のことだと思うのですけれども、今の私の話はおかしいですか、櫻井さん。
  58. 櫻井よしこ

    櫻井参考人 おかしいところは何一つないと思います。  私は、真実というのは意外に簡単な形をしているものだと思うのですね。ですから、このようなことは、万民が納得するということは意外に簡単なことで、当事者が文書提出を拒む権利を保留するということは、そもそも非常におかしい、中学生でもわかるようなことではないかと思っております。
  59. 枝野幸男

    ○枝野委員 もう一点、先ほど細川先生がお尋ねになったことについて、もう一度私からも確認、詰めていきたいと思うのです。  先ほど細川先生が例に挙げました事例の場合、従来の判例では、いわゆる三号文書の類推拡張解釈証拠として出てくる余地がある、そして、しかもそこで秘密かどうかということの判断は裁判所が行っていた。しかし、今度の新しい改正法ができると、四号ロによって、行政がノーと言ったら裁判所は判断できない。この結論は、先ほど細川先生にお話しになった両先生の結論だと思いますが、これはよろしいですか、両先生。谷口先生と中野先生。
  60. 谷口安平

    谷口参考人 イエスかノーかということでしたら、そのとおりでございます。
  61. 中野貞一郎

    中野参考人 ちょっとよく理解できませんでしたが、どういう趣旨でしょうか。
  62. 枝野幸男

    ○枝野委員 先ほど細川先生がお尋ねになった事例について、先生はこういう趣旨でお答えになりましたねとお尋ねしているのです。先ほど細川先生がお尋ねになったようなケースの場合は、新しい改正案では、四号ロによって、行政がこれは秘密ですと言えば裁判所には判断権がない、だから、そのことだけでもって法廷には出てこない、そういうふうにおっしゃいましたね。
  63. 中野貞一郎

    中野参考人 そうです。
  64. 枝野幸男

    ○枝野委員 実は、これは中野先生にもそれから谷口先生にもお答えをいただきたいのですが、きのう、この法務委員会の場で、法務省は、それは民事局長も、そしてさらに問い詰めて大臣にもお答えをいただいています。従来の文書提出命令の範囲が狭まることは一切ありません、一号から三号で従来出ていた文書は全部出てきます、解釈の変更は全くありませんと、きのう、大臣までおっしゃっているのです。この大臣の話と、法律の、民訴法の専門家であるお二人の見解、そしてしかも法制審等で議論をしてきたお二人の見解というのは明らかに食い違っていることとなると思うのですが、いかがですか。まず谷口先生から。
  65. 谷口安平

    谷口参考人 これは、もし新しい法律ができましたら、その後の裁判所の法解釈に係ることでございますから、現在、必ずこうなるということは申し上げられませんが、ただ、法律の条文というものは、全体を整合的に解釈しないといけないわけでございます。  現行法の一号から三号までの文書、特に三号文書につきましては、かなり無理をして、文言に少し反するような解釈をしてきたわけでございます。今後はそういうことをしなくてもいい。つまり、無理をして法律関係文書だと言わなくても、四号のその他の文書ということですんなりと、一応は提出義務が一般義務として認められるということになりますので、四号の方によるべきだ。三号の方はもう純粋に、どの観点から見ても法律関係文書あるいは利益文書と考えられるものだけに限定するというふうな解釈になっていくのが法律解釈の常道ではないかと思うものですから、先ほど申し上げたような危惧を持つわけでございます。
  66. 中野貞一郎

    中野参考人 これは委員会民事訴訟部会の審議の過程で、何度も確認されておりますように、現在の三百十二条の一号、二号、三号で提出義務がかかっているものは、今後も提出義務がかかっておりまして、それを拡張しているだけです。  さっき言われました例の場合は、従来からでも、三百十二条の三号の場合にやはり証人尋問についての規定の準用がありまして、秘密であるということになれば、それは出てこなかった。秘密監督官庁承認がないというものについては従来から出てこなかったわけですから、何も従来の一号、二号、三号で出た文書が出なくなるということはありません。これを拡大しているわけです。これは何度も委員会審議で確認されております。
  67. 枝野幸男

    ○枝野委員 中野先生、先生は民事訴訟法専門家ですからあれなのですが、細川先生が挙げたような例、まさに三号の拡張解釈の例の場合に、承諾があろうがなかろうが裁判所判断権がある。判断権があるということは、これは判例がほぼ一致している話であって、それが、判断権裁判所になくなると明らかに違う。これは先生、ちょっと判例の読み方をお間違いになっているのではないかなと申し上げざるを得ません。  時間もなくなってまいりましたが、最後に櫻井さんにお尋ねをしたいと思います。  薬害エイズの問題、私もいろいろやらせていただきましたけれども、櫻井さんはまさに被害者の皆さんの声、思いというものを一番知っていらっしゃる方の一人だと思いますので、お尋ねを申し上げます。  この問題について、HIV被害者の皆さんから私も非常に強い声をいただいております。こんな民事訴訟法改正は困るという声を非常に強くいただいております。  もちろん政治というものは理想だけではできない、理想と現実の妥協というものも十分わかっておりますので、被害者の皆さんの希望、望みだからといって、全部実現できるとは思っていません。ただ、まさに本質的な望みであるならば、まさにこれは譲れない望みであるならば、これは政治生命をかけてもその声にこたえなければならない。私も菅さんなどと一緒に、二月十六日の前後に、被害者の皆さんに政治家として責任があるということで頭を下げた一人として、そう思っております。  この問題は、HIV被害者の皆さんなどからの声を感じる立場として、まさにその譲れない線の問題なのであるとお感じになっていらっしゃるのか、それとも、できればこうしてもらったらいいのになというような思いであるのか、どちらでございますか。
  68. 櫻井よしこ

    櫻井参考人 被害者方々のほとんど全員の意見は、この点について一致しております。これは絶対に譲ることのできない線だという認識だというふうに思います。これを譲ってしまいましたら、先ほど申し上げましたように、既に千八百人余りの人々の犠牲を生もうとしているわけですけれども、これよりももっと深刻な被害というものがほかのさまざまな分野でも必ず起きてくるというのが、被害者の皆さん方の認識だというふうに思います。  一つお願いがございます。  薬害被害に苦しんでいる患者の方、被害者の方もしくは原告弁護団方々が、情報を隠されることによってどんな不正義がまかり通るかということを、この方々が一番よく知っていらっしゃると思います。ぜひこの人たち意見をこの点について聞いてくださる機会を設けていただきたい、そのようにお願い申し上げます。
  69. 枝野幸男

    ○枝野委員 時間になりましたから終わりますが、先ほど、櫻井さんがおっしゃられたとおり、この法務委員会が、そして法務委員会での各先生方のお話が十年後あるいは十五年後歴史の審判で法曹界における安部英等と言われないことになるように、学者の先生方も信念に基づいた御発言をしていただくように今後ともお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  70. 加藤卓二

    加藤委員長 正森成二君。
  71. 正森成二

    ○正森委員 まず最初に、中野参考人に対して伺います。  参考人は、法制審における審議について、弁護士会関係者の意見も十分に聞いたと言われましたが、同時に、意見を述べられた谷口さんのお話などを総合しますと、小委員会で甲案、乙案などでいろいろ議論はされていたでしょうが、今の法案の二百二十条四号ロあるいはそれに関連する規定というのが、これが要綱第六次案として出たのは十二月一日の小委員会が初めてだ、そして、総会どころか民事訴訟法部会審議経過ということで初めて出されたのも二月二日だ、そして早くも二月二十六日には総会で決められておる、そして三月にははや国会に提出されておる。こういうことになりますと、五年間にわたって審議された民事訴訟法、しかも文書提出命令という国民権利義務裁判の行方、薬害エイズ訴訟などを初め広く関係のあるものが、国民に開かれた論議をする暇が、怒りや意見を言う暇が全くないままに決められていったことになるのではないですか。  例えば、申し上げますと、法務省の民事局参事官室が民事訴訟手続に関する検討事項というのを出しましたが、これは平成三年の十二月であります。さらに、同じ参事官室が民事訴訟手続に関する改正要綱試案というのを出しましたが、これは平成五年十二月であります。この中には、現在国会に出されておりますような法案文書提出関係のものは全く形をあらわしていないのですね。しかも、平成五年のものについては、各界に広く意見を求めるということで、意見をまとめたものも公刊されております。  それなのに、一番大事なと我々が思うことについて十分に民事訴訟法部会でも論議されない、まして国民に広く知らされて各界各方面の意見を聞く機会がないということになったのは、少なくとも国民に開かれているという意味では非常に拙速で不十分だったのではないですか。
  72. 中野貞一郎

    中野参考人 今回の民事訴訟法案に対する準備作業というものを法制審議会民事訴訟法部会で始めましたのは、平成二年の七月でございます。当初から何を取り上げるべきかということにつきまして議論がございまして、現在日本で非常に立法が必要とされているものをいろいろ挙げられまして、倒産法はどうか、仲裁法については国際的にも見直しが必要ではないかというかなりの意見がございましたが、民事訴訟法ということになりました。  その前に、私どもは、私が関係いたしました民事執行法は、この検討作業を開始いたしましてから三十年かかっております。そのようなことではとても現在の情勢に対応できないということで、当初から五年でという結論の一応期間設定をいたしまして、結局は五年では済まなかったわけですけれども、そのために非常にたくさんの回数の準備会、小委員会を重ねております。そして、この間におきましてこの文書提出義務の問題は早くから議論されておりまして、一般義務化案と特定義務拡大案は、今先生おっしゃいました平成三年の検討事項においてもう既に両案が出てきておりまして、公務員尋問について判断権の所在というものについては、これはこの検討事項に対する日弁連の意見ですぐに出てまいりましたから、その後ずっと審議が続いております。  先生おっしゃいましたように、現在の法案のような形になったのは平成七年の十二月でございます。しかし、それは、その前に甲案、乙案、丙案でずっと議論しておりまして、その前は甲案、乙案で長く議論しております。それで、丙案として一本化されたのが平成七年の十二月でございまして、それはいわば訴訟で申しますと口頭弁論が続いて和解をしたというようなものでございまして、和解案についてさらに口頭弁論をするということは、それはございません。
  73. 正森成二

    ○正森委員 今までの審議の中で、特に中野参考人は、参考人だから意見を言いに来たので、イエス、ノーで答えろと言われても困るということを言われましたので、私は随分忍耐して長々と答弁されることをじっと聞いておりましたが、肝心の、国民には開かれていなかったのではないかということについては何ら答えないで、法制審議会でこうやった、ああやったということだけ言っておられるのですね。私の持ち時間が無限にあるのなら、中野先生、何時間でもあなたと御論議させていただきますが、各委員は十五分しかないのですね。その中で三人に聞かなければならないということもお考えいただきたいと思います。  次いで、第二番目の問題について伺います。  あなたは、私の聞いた理解に誤りなければ、裁判官訴訟法上の要件事実、その他についてはこれは判断権がある、しかし国民にこういうのを知らせたらいいのかどうかということについては裁判所判断権はないんだ、こうとれる御答弁がありました。大体この理解においては誤りがないと私は思っております。  しかし、もしそうしますと、これは今まで民事訴訟法で行われてきた、苦労された判例立場とも、また刑事訴訟における最高裁判所判例とも違うんじゃないですか。つまり、裁判所立場は、例えば昭和四十四年十月十五日に行われた有名な家永さんの教科書裁判があります。  これでは、文部省が出さないと言っていたのを出すということになったのですが、判断には二つあって、一つは、広い意味法律関係である、三百十二条の三号文書だという意味のことを言うと同時に、これが秘匿さるべき実質的な秘密というのに値するかどうかということで、これはそれに当たらない、国家や国民の重大な利益を損害、損ずるということにならないということで証拠開示が命ぜられたのです。ここでは、明らかに実質秘ではない、つまり裁判所あるいは裁判所関係者のみならず国民に対して秘匿する必要がない、こう言っているのです。  同じことは、伊方原発訴訟でも裁判所はそういう見解を踏襲しておる。あるいは刑事裁判では、さまざまな刑事事件で最高裁判所形式秘の立場ではなしに実質秘の立場をとって、実質的に国民に対して秘匿する必要があるかどうかという点については、国家や公共の重大な利益を害するかどうかというような点を主たる判断事項として裁判官の決すべきものである、こうしております。  こういうように民事の裁判でも刑事の裁判でもいわば確立された見解になっているものを、重大な民事訴訟法改正する民事訴訟法部会の小委員長ともあろう者が、裁判所国民に知らせるかどうかについて判断権はない、つまり判例、学説の大勢になっておる、実質秘かどうかによって秘密であるかどうかが決まるということを真っ向から否定するなんというのは、国家国民のために寒心にたえない、私はそう思いますが、あなたの見解を、イエスかノーかではありませんが、ごく簡単に述べてください。
  74. 中野貞一郎

    中野参考人 私は、申したいことがありますけれども、秘密かどうかという点ではなくて、秘密を公表するかどうかについて最終的な決定権は裁判官にないと申しております。
  75. 正森成二

    ○正森委員 もう一遍言ってください、最後のところは。
  76. 中野貞一郎

    中野参考人 秘密を一般の国民に知らせていいかどうかということは現在でも情報公開法で審議されているところでございまして、民事訴訟法の方でそういう点は、裁判官は必ず公開の場に出せというようなことについて最終決定権はないと考えております。
  77. 正森成二

    ○正森委員 これだけ言っても、最終的な決定権はない、こう言っているのですよ。つまりこれは、昭和四十四年の教科書裁判やあるいは原発訴訟の見解やあるいは刑事事件での最高裁判決というものを全部否定する、極めて特異な説を持っておる人が民事訴訟法改正を取り仕切ったということになるわけで、こういうことでは困ると思うのですね。  次の論点に移りますが、仮に国民全体に知らせるのがいいかどうかいろいろ議論があるとして、どうして二百二十三条で——インカメラといいますが、どういう内容のものだろうか、本当に裁判に必要があるのだろうかどうだろうか、これが公共の利益とどういう関係があるのだろうかということをやることから、ロだけは、つまり、イ、ハ、二は提出を命ずることができますが、櫻井さんも言われたように、ロについては行政庁の判断だけで、裁判官はインカメラの権限もない、こういうことになっているのです。これは必ずしも国民に知らせていいかどうかと即重なり合わないのではないですか。それなのにこれを二百二十三条で除いたのはいかなる理由からですか。  特に整合性の、この委員会ではまだ法律になっておりませんが、この間、行政改革の方の委員会で出された情報公開法では、不服審査会というのがありまして、総理府の中に設けられまして、そして、それは文書を出して検討することができるということになっているのですよ。それなのに、司法権の優位を非常に大きく認めている現憲法のもとで、裁判官判断権がないなんというのは、全く整合性がないのではないですか。こんなことを認めると、権利義務関係で争っている民事訴訟でも裁判所にすら開示されないのだから、そうすると、情報公開法ではますますその必要がない、事務次官などはそう言ってくるに決まっているのですよ。その先兵の役割を民事訴訟法改正で行う、そのまた最先端に立っているのが小委員長のあなただということになるのじゃないですか。
  78. 中野貞一郎

    中野参考人 この二百二十三条の三項、これは「二百二十条第四号イ、ハ又は二」というふうになっておりまして、ロが抜けておりますので、この点につきましては大いに議論がございました。そしてその結果、やはりこれでよろしいということになったわけでございます。  この点につきましては、やはり最終的に、現在の民事訴訟法としては、ほかの証人尋問規定とかあるいは刑事訴訟法規定とか、全体の枠組みの中で、やはりそれを持ってくる、ここにロを持ってくることができないということが皆さんに了承されまして、そのようになったわけでございます。
  79. 正森成二

    ○正森委員 時間がなくなりましたので、他の参考人にも聞きたいと思ったのですが、一点だけ櫻井参考人に伺います。  私は、あなたが中央公論五月号に書きました「やはり悪いのは厚生省だ」という論文を熟読させていただきました。非常に御立派な見解で、私はあなたの見解に全面的に賛成であります。  そこで、その中で、あなたがいろいろなことを書いておられますが、時間がございませんので、非常に興味を持ちましたのは、この中で、「変」とか「剤形変更」と言われることがありまして、その中で、特に厚生省プロジェクトチーム情報隠しというのを今なおやっているということで、特に剤形変更についての、山田兼雄教授がアンケートを二度まで書き直しをするということの非常な不自然さを御指摘になりました。その中の最後の部分で、「山田氏は「郡司さんが気の毒」と述べた。実はその想いは私も共有する。郡司氏は一貫して嘘をついているのではないか。しかもそれは自分を守るためというより厚生省を守るためではないか。そう思えて仕方がないのだ。」そして、山田氏の言として「日本の官僚組織のすごさというものを、自分たちの防衛のためには、何か少々の犠牲はかまわないというような感じを、この年になってはじめて知った気がします」ということを引用された上で、「その暗い穴をかくし、立派なビルに鎮座する厚生官僚たちに彼らの厚生省こそが薬害エイズ発生で最も“悪い奴”なのではないだろうか。」こういう結論を述べておられるのですね。  もう時間がございませんが、あなたに、こういう見解に至った心境について一言だけ述べていただいて、私の質問を終わります。
  80. 櫻井よしこ

    櫻井参考人 取材をすればするほど、情報を隠す壁というものが絶望的に厚くかたいということを実感いたしました。コンクリートの壁を素手でたたくような作業をしてもなおかつお役所からの情報というものは全く出てこない場面が多々ございました。  ですから、私は、菅厚生大臣謝罪が本物であるならば、今回の民訴法の改正の提案省庁として加わっている厚生省はこの提案者からおりるべきだというふうに思います。それこそが、この薬害エイズの大変深刻な被害を生み出したことに対する本当の謝罪の一部だというふうに感じます。私は、このような法改正がなされれば、今現在も非常に強い力で、見えないところで圧倒的な力で国民の前から情報を隠している日本行政の悪いところがもっと増幅されていくのではないかと思っております。
  81. 正森成二

    ○正森委員 ありがとうございました。
  82. 加藤卓二

    加藤委員長 以上で午前中の参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言お礼を申し上げます。  参考人各位には貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。  午後三時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十八分休憩      ————◇—————     午後三時開議
  83. 加藤卓二

    加藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出民事訴訟法案及び民事訴訟法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案の両案について審査を続行いたします。  午後の参考人として、日本弁護士連合会会長鬼追明夫君、作家猪瀬直樹君、弁護士今井敬弥君、以上三名の方々に御出席いただいております。  この際、参考人各位委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。  鬼追参考人、猪瀬参考人、今井参考人の順に、お一人十分程度意見をお述べいただき、その後、委員質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長許可を得ることになっております。また、参考人委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  それでは、鬼追参考人にお願いいたします。
  84. 鬼追明夫

    ○鬼追参考人 日本弁護士連合会会長の鬼追明夫でございます。連合会を代表いたしまして、このたびの民事訴訟法案につきまして意見を申し述べます。  本法案は、時間と費用がかかり過ぎる、利用しにくい、こういった久しく国民から批判を受けてきました民事裁判の現状を改革、改善しようという目的で検討されてまいりました。日弁連も、数年来、市民にわかりやすく、利用しやすい司法というものを目指して司法改革に取り組んでおりまして、本法案趣旨には大いに賛同いたしております。  そして、本法案の内容につきましても、弁論準備手続の非公開あるいは文書提出命令手続における公務員職務上の秘密に関する文書の取り扱い及び上告制限、この三点を除きましては一定の評価をしているところでございます。  しかしながら、以上申し上げました三点の中でも、特に公務秘密文書の取り扱いに関する規定につきましては、何としてもこの国会におきまして修正していただきたく、強く要望するものでございます。  日弁連の提案する修正案と修正を求める理由の詳細につきましては、お手元に配付させていただ  きました、当連合会の本年三月二十七日付「民事訴訟法改正に関する緊急意見書」に記載してございます。  当連合会の修正案を要約いたしますと、法案二百二十条四号ロの公務秘密文書秘密性の判断は裁判所がこれを行うことを前提とし、したがって公務秘密文書法案二百二十三条三項の提示手続、いわゆるインカメラ手続の対象とすべきであり、秘密性の判断基準というものは、公共の重大な利益を害する場合とするものであります。  ところで、本法案は、大正十五年以来実に七十年ぶりの民事訴訟法の全面改正案であります。この七十年の間に、我が国裁判にかかわる法制度はどう変わってきたのでありましょうか。  申し上げるまでもなく、五十一年前の太平洋戦争の敗戦を契機に、明治憲法にかわって現憲法が制定されました。国民主権と基本的人権の尊重が、恒久平和と並んで我が国の基本原理として打ち立てられたのであります。それに伴い、すべての司法権は最高裁判所及び下級裁判所に属することになり、戦前の行政裁判所のような特別裁判所は禁止され、行政機関は、終審、最終的な判断でありますが、終審としての裁判を行うことができない、このようになりました。そして、裁判所には違憲立法審査権が付与されまして、ここに、立法、行政司法の三権分立と三権相互の抑制、均衡の大綱が確立したわけであります。  このように、我が国七十年の歴史を振り返りますと、特に戦後におきまして、国民主権や基本的人権の尊重などを実現する方向に沿って司法裁判にかかわる制度改革されたわけでありますが、歴史の歩みはそればかりではございません。  今や我が国は高度な文明国家となって、複雑、多様な社会が現出してまいりました。このような我が国にありましては、産業、経済、教育、医療、文化、環境保全などなど、社会の運営と市民生活の全般にわたって行政の関与が求められております。今日、これらの行政の関与なくしては、我が国における産業活動や市民生活が成り立たないと申し上げても過言ではないかと存じます。  このような現代国家の特質からでありましょうか、近年、多くの民事訴訟におきまして公文書証拠として必要とされるケースが増加してまいりました。公文書証拠法において占める比重は、現行法制定当時、すなわち大正十五年当時からしますれば比較にならないほど大きくなっております。  言うまでもなく、民事訴訟の目的は、裁判所が、当事者主義を前提としながらも、証拠によって認定した実体的真実に基づいて法令を適用し、訴訟関係人たる市民や企業の正当な権利を擁護あるいは救済して正義を実現することにございます。したがいまして、証拠として公文書が必要であるにもかかわらずそれなしに行われる裁判は、十分な証拠に基づかない裁判というべきであり、そのような裁判は正義の実現に欠けるというべきであろうと考えるわけでございます。  本論に戻ります。  日弁連が本法案に最も期待を寄せておりますことは、国民に利用しやすく、現代社会の要請にかなった民事訴訟手続の実現でございます。その実現を図るための重要課題の一つとして、証拠収集手続拡充があります。さらにまた、その中心的な課題が公文書提出問題であると考えております。  ところで、現実民事訴訟におきましては、明らかに必要性、関連性があるとして市民などの側から公文書提出を求めましても、行政官庁はこれに応じないケースが多いのであります。裁判所提出命令が出されましても、行政官庁はほとんどのケースにおいて不服の申し立てをいたします。  このように、行政官庁が容易に公文書提出しない、こういった実情を踏まえるならば、提出の可否について、だれが、どのような基準で、どのような手続で判断すべきなのかが極めて重要な問題になろうかと考えます。  政府は、本法案二百二十条四号ロの御説明として、証言義務規定との整合性を図るといういわば形式論を根拠の一つとして、公務秘密文書提出監督官庁の判断にゆだねたとしておられます。したがって監督官庁の判断の当否については裁判所のチェックを受けないとも説明しておられます。  この御説明では、現代社会現実行政官庁の姿勢、国民権利擁護などを踏まえて、公文書提出監督官庁の判断のみに任せるのが民事訴訟の目的に照らして妥当なのかどうか、これまで公文書秘密性について裁判所が判断してきたことに公共の利益などから見て不都合があったのかどうかといったような実質的な検討が全くなされなかったのではないか、そういう疑問を強く抱くのでございます。  御承知のとおり、現行民事訴訟法下における裁判実務におきましては、裁判所は、本法案二百二十条一ないし三号と全く同趣旨現行法三百十二条一ないし三号の文書に当たる公文書につきまして、証言義務規定を類推適用しながら、監督官庁承認要件を問題とすることなく、公務秘密文書における職務上の秘密の実質的判断を行っております。そして、ここにいう「職務上の秘密」とは、「公表することによって国家利益または公共の福祉に重大な損失、重大な不利益をおよぼすような秘密をいう」と解する判例が広く知られております。また、これと同趣旨判例もございます。いずれも東京高裁、高松高裁の決定例でございます。  このように、裁判所が、証言義務規定を類推適用しながら、なぜ同じ規定に定めのある監督官庁承認要件を問題としなかったのでありましょうか。なぜ公務秘密文書秘密性の判断を監督官庁に任せなかったのでしょうか。  最大の理由は、一般に公文書証拠価値が極めて高いこと、及び公文書市民などの利害に大きくかかわる性質を持っていることに加えまして、提出についての判断を官庁に任せたのでは公文書提出期待しがたいからではないでしょうか。同じく訴訟の現場を担当する私ども弁護士としましては痛切にそのことを考えるのでございます。  ちなみに、最高裁判所は、国家公務員法百条一項に言う秘密が問題となったケースにおきまして、昭和五十三年五月三十一日第一小法廷決定をもちまして、「秘密とは非公知の文書であって、実質的にもそれを秘密として保護するに値するものをいい、その判定は司法判断に服する」と判示いたしております。  本年四月二十四日、行政改革委員会は、情報公開法要綱案(中間報告)を発表されました。そして、この秋にも最終報告が予定されております。民事訴訟法における公文書秘密性の判断を行政官庁にゆだねる部分が修正されずに本法案が成立するとすれば、やがて制定される情報公開法の内容に大きな悪影響を与えることを危惧し、さらに、全国四十七の都道府県を初め二百数十の市区町村の情報公開条例または情報公開制度における司法救済との比較においても大きな矛盾が生ずることを危惧するものであります。  最後に、マックス・ウェーバーの官僚制に関する論述の一部を引用いたしたいと存じます。  すなわち、彼は、「官僚的判断は、その傾向からいえば常に公開性を排除する行政」であると言っております。さらにまた、「「職務上の機密」という概念は、官僚制独自の発明品なのであり、この態度ほどの熱心さをもって擁護するものは何一つとして存在しないのである。」とまで分析しております。  国権の最高機関を構成される国会議員の皆様方の御見識に期待申し上げまして、私の意見陳述を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手
  85. 加藤卓二

    加藤委員長 ありがとうございました。  次に、猪瀬参考人にお願いいたします。
  86. 猪瀬直樹

    ○猪瀬参考人 国民の知る権利というふうな立場から意見を述べさせていただきたいと思います。  つい先ごろですが、五月十三日の日経ビジネスという雑誌をちょっと見ていましたら、今回の民事訴訟法法制審議会での審議のことについて青山善充法制審議会民事訴訟法部会委員、東大法学部長ですが、その方が日経ビジネスのインタビューにこのように答えているのです。官庁文書提出義務に幅広い拒否権が認められているのですがという質問に対し、情報公開法が先行してできていれば民事訴訟法改正案も違った形になったかもしれない、情報公開法と民事訴訟法改正の立法作業の時期が微妙にずれたことが議論を複雑にした、こういうふうに述べています。  さらに、法務省に対してほかの省庁から圧力がかかったのではないかというふうな質問に対して、法務省としては情報公開法などがない段階民事訴訟法だけが突出するわけにはいかないということだったのではないだろうかみたいな答え方をしていらっしゃいます。  ということは、情報公開法というものの流れと民事訴訟法改正の案とは少し微妙にずれていて、最後に所轄官庁民事訴訟法の一番の問題点で今問題になっておるところの所轄官庁裁判所文書提出命令に対しての判断権が所轄官庁にあるという部分は十分に議論し尽くされていなかったということが外にも明らかになっているわけであります。  ややその話にまた戻りますが、少し所見を述べさせていただきたいのですけれども、日本のお役所というのは非常に情報を隠すということが既にいろいろ言われております。日本のお役所に限らず日本の組織というのは、役所も民間企業もいろいろな団体もみんな年功序列、終身雇用ということが一種の社是になっておりまして、どうしても情報が外に出にくいというのが一般的にあると思います。これは日本の労働市場が転職をなかなかしにくいということがあって、そういう意味でなかなか外に出てこない、どうしても情報を隠すというふうなメンタリティーというものができ上がってしまっているということがあると思うのですね。  そういう我が社会の雇用構造というものが、広く、厚生省HIVだけの問題ではなくてTBSなんかの問題も含まれてきますけれども、割とこういうふうに雇用構造が、横に転職しにくいものがあって終身雇用でずっといきますので情報が外に出にくいという一般的な構造があります。そういう中で、さらに日本の官僚機構が最も外に情報が出にくいというふうな構造になっているのだと思います。そういう雇用構造を反映した精神構造がある上で日本のお役所というものがさらに存在しているというふうに、考え方としてまず前提に置いておいた方がいいのではないかと思います。  そういう中で情報公開法というものの必要性が特に強く認識されるのではないか、こう思っております。HIV訴訟などでも明らかになりましたけれども、官僚は、お役所は、行政は、自分の密室での政策決定過程というのはなかなか公表しないのです。その資料がなかなか外へ出てこない。したがいまして、情報公開法というものが急がれているわけです。  先ほど申し上げましたように、情報公開法が民事訴訟法改正案よりは微妙に後にずれていってしまっている、そういう一種の時差の中で今回の問題が出てきていると思います。基本的には先ほどの日弁連の鬼追さんと同じ立場で僕は申し上げているのですけれども、情報公開法の要綱案が民事訴訟法改正案よりもし先に出ていれば現在のような問題が出てきたかどうかということです。  現在の情報公開法にもやや問題点があって、官僚の裁量次第で不開示決定ができるような部分があるわけで、かなり例外規定が多いわけです。裁判所行政側証拠資料提出を命じた場合、例えばエイズ研究班資料のように厚生省が見当たらないというふうに言い張っていたような、つまり所轄官庁提出したくないような証拠を果たして出すのかどうかということなのですが、今回の民事訴訟法改正要綱案では、裁判所が命じても、公務員職務上の秘密に関する文書でその提出について当該官庁承認しないものは出さなくてもよいというふうなことが書かれている。  そうなると、現在の民事訴訟法では、行政側職務上の秘密を盾に証拠提出を拒んでも、裁判所が実質的な秘密と言えるかどうかという、それをある程度判断する形でとりあえずは不十分ながらも運営されているわけですが、この改正要綱案であれば裁判所判断権さえ奪ってしまう、判断権をすべて所轄官庁にゆだねてしまう、こういうことになってしまうわけです。そうすると、情報公開法で不開示の範囲がいろいろあるのですけれども、そこで不服審査とかいろいろ提出しても、もっと厳しい段階裁判所の方が証拠提出を命じた場合に、文書提出を命じた場合に裁判所の判断ができないとなれば情報公開法の意味がなくなってくるのではないかというふうに考えます。  そもそも、公務員の守秘義務というのは、国家公務員法第百条に「職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。」というふうなことが書いてあるわけですけれども、この規定に違反すると一年以下の懲役または三万円以下の罰金に処せられる、こういうふうにあるのですけれども、現行情報公開法の要綱案には罰則規定がないわけですね。したがいまして、公務員職務上の秘密、守秘義務ということについて、情報公開というか国民の知る権利という立場から考れば非常に弱いというふうになってしまいます。  実は、国家公務員法第百条ですけれども、公務員の守秘義務ということですけれども、戦前は官吏服務紀律というものがありまして、その第四条で、「官吏ハ己ノ職務ニ関スルト又ハ他ノ官吏ヨリ聞知シタル」、聞き知りたるということで、「聞知シタルトヲ問ハス官ノ機密ヲ漏洩」、漏らすことですね、「漏洩スルコトヲ禁ス」というふうになっているのですね。そういう意味では、戦前もそういう職務上の秘密ということはあったのですけれども、この官吏服務紀律には懲戒免職処分というものはないのですね。という意味では、戦後の国家公務員法百条の方が厳しいのですね。これは何で逆行しているのか非常にわかりにくいところがあるのです。  それで、公務員職務上の秘密とは何かというふうな問題になるのですけれども、秘密を公表することで、これはどういうものが秘密かという秘密の範囲ですけれども、秘密を公表するということで国民や国家にとって重大な損失や不利益がもたらされることであればそれは非常に問題なんですけれども、それだったら秘密を漏らしてはならないという意味が少しは理解できるわけですが、単に行政の不都合、自分の都合とか、自分のエゴイズムですね、役所のエゴイズム、そういうことによって隠される秘密というものはおかしいのではないか。むしろ、その場合の秘密というのは公開する方が公共の利益になるというふうに考えていいと思うのです。したがいまして、行政機関が保存する文書というのは本来国民の利益になるものであるというふうな考え方、そういう考え方をしていかなければいけないのじゃないか。厚生省エイズの調査資料なんかもそういうことになるわけであります。したがいまして、「職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。」というこの国家公務員法百条というのは、理解の仕方がちゃんともう少し限定したものとして考えるべきであろうというふうに考えております。  したがいまして、先ほど申し上げましたように、所轄官庁に全部判断権をゆだねる、つまり今回の改正案のように、裁判所文書提出命令を出したときに所轄官庁に全部判断権をゆだねるというふうなものであれば、この職務上の秘密の幅がいかようにも解釈されてしまうおそれがあるのではないかというふうに思っております。  先ほど知る権利ということを申し上げましたけれども、このように国家公務員法第百条のようなものが主権在民の憲法より実質的にランクが上になってしまっているようなことが、この官僚国家日本の現状ではないかというふうにやや考えております。恐れております。  そもそも、国民の知る権利ということで考えますと、憲法第二十一条に「言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」こうあるわけですね。そこから知る権利というものが出てくるわけですけれども、しかし、実際にこの憲法第二十一条がきちんと表現されているかどうかという考え方の問題で、どうもお役所が勘違いしているのじゃないかというふうに思うわけです。  憲法二十一条のことでちょっと申し上げておきたいのですけれども、言論の自由という言葉があります。それから出版の自由という言葉があります。言論の自由というのはフリーダム・オブ・スピーチを訳したものですが、出版の自由というのはフリーダム・オブ・プレスを訳したものであります。ところが、いろいろ資料を調べてみますと、憲法草案の作成過程でこの部分を担当したGHQのアルフレッド・ハッシー中佐という人がこの二十一条について覚書を残しておりまして、言論及びプレスの自由というのは、公務員あるいは公の機関もしくは公の行為を批判する権利が含まれている、こういうふうに言っているのですね。もう一度言いますと、言論及びプレスの自由は、これを保障する。この自由には、公務員、公の機関もしくは公の行為を批判する権利が含まれている。したがって問題は、プレスの自由というものを、当時翻訳したものですから出版の自由と訳してしまったのですが、当時の文書を見ると、このプレスの自由を定期刊行物の自由なんて訳したりもしているのですが、プレスという意味がわからなかったのですね、日本人は。  それで、このプレスというのは、実はもっと広い意味で報道の自由あるいは取材の自由、あるいはもっと広くとれば、それが公務員とか公の機関に対して情報をアクセスする自由だ、こういうふうにやはり考えるべきだ。つまり、憲法第二十一条というものが、これは当然情報公開法に結びついていく、そういう概念を持っているものなんですけれども、当時のGHQのつくり上げたコンセプトに対して、我が方の言葉の問題で、当時のあるいは思想的なバックグラウンドの問題でやや狭いものがあった。その狭いものがそのまま出版の自由という形で定着してしまったものですから、やや理解が薄くなっている、そういうことだと思います。  我々が本来、言論、プレスの自由というもの、そしてあわせて表現の自由というものをきちんと理解しておれば、この国家公務員法百条の問題というのもかなり違った形になっていただろうと思う。つまり、むしろこの国家公務員法百条が戦前より後退しているというふうなことが散見されるわけでありまして、このあたりが非常に問題ではないかというふうに思っております。  基本的にそのようなことでありまして、今回の民事訴訟法改正の問題で、とにかく裁判所文書提出命令に対して、その判断権を所轄官庁に与えてしまえば、今後厚生省エイズ問題のように表に出てこない、当然国民の利益のために出てくるべきものが出てこなくなるということが固定化してしまうのではないか。  そして、もう一度整理しますと、情報公開法という流れがあって、その情報公開法より先にたまたまそれができてしまう、法制審議会である程度決めてしまったことによって流れがちぐはぐになって、非常に変なものができ上がりつつあるのじゃないか、こういうことを非常に危惧しております。  情報公開法があって、さらにこの民事訴訟法改正案が、裁判所文書提出命令に対してかなり限定した範囲でのみその所轄官庁の権限が、文書提出の幅を狭くすることによってのみ初めて情報公開法が意味を持ってくるんだということになると思いますので、議員の先生方、その絡み合いをよく理解していただいて、この民事訴訟法改正案について考えていただきたい、こう思っております。(拍手
  87. 加藤卓二

    加藤委員長 ありがとうございました。  次に、今井参考人にお願いいたします。
  88. 今井敬弥

    ○今井参考人 御紹介いただきました今井敬弥でございます。新潟県弁護士会に所属をしております。  民訴法改正案は、平成二年七月、法制審議会民事訴訟法部会改正要綱試案を発表をし、各界の意見聴取をもとに約五年の歳月を経て改正作業が進められたものであります。その改正の目的は、国民に利用しやすく、わかりやすいものにするとされております。  しかし、上告制限の規定を設けたり、弁論準備手続における公開制限の規定などで、果たして国民に利用しやすくなったか否かは疑問であります。  まして、現行民訴法及びこれに基づく判例実務の到達点を基準にすると、公務秘密文書提出義務の範囲を著しく後退させるものであり、監督官庁承認の適否も当該官庁によってなされ、文書の提示手続、インカメラ手続でありますが、それも及ばないとするならば、実質的に司法判断を排除するおそれが強いことになります。  昨今、薬害エイズ訴訟等で厚生省官僚の文書隠しが行われたとされる事案や原子力発電所「もんじゅ」事故における資料の隠匿問題等を考えると、司法審査の対象とならない公文書の聖域をつくることになりかねず、国民が利用しやすい改正にはなり得ないと思われます。  しかもこの改正案は、審議を終えた最終段階平成七年十二月一日の改正要綱第六次案に急速盛り込まれたものであり、各界の意見聴取もないまま改正案として上程されました。  御案内のとおり、各地方自治体では数年前から情報公開条例をつくり、この条例を利用して市民オンブズマンが各地で官官接待の実態をある程度暴くことに成功しております。行政改革委員会では、最近、情報公開法要綱案を公表しております。欧米では当たり前の情報公開法がやっと要綱案として浮かんできました。不十分ながら行政手続法が施行されたのは平成六年十月であり、不十分な製造物責任法、いわゆるPL法が施行されたのが平成七年七月のことでありまして、欧米よりも数十年もおくれているのであります。これら遷延させた原因は私は官僚と財界にありと考えております。  今回の公務秘密文書の突如の盛り込みは、法務官僚側が主導したのではないかとも危惧されるのであります。民事訴訟法学界では多くの俊秀が育っているのに、このような改正案をまとめた法制審部会長が最長老の方とお聞きしては、これでよろしいのであろうかという感さえ抱くのであります。この公文書問題は、明らかに情報公開法案の考え方と矛盾するものであります。新潟県弁護士会は、三月二十六日付で改正案反対の会長声明を出したところであります。そして、修正案につきましては、日弁連の案に従いたいと思います。  私は、常日ごろ、民事裁判を活性化させる道は、単に訴訟法を改正するだけで足りるものとは考えておりません。適正、迅速な裁判国民の負託にこたえるためには、裁判官の数をふやし、法廷を増設するなど物的施設を拡大することが第一であります。この考えは、日弁連の年来の考え方であります。  明治二十三年、裁判制度ができたとき、総人口三千九百九十万人で、裁判官の定員は千五百三十一名で発足をいたしました。敗戦後の昭和二十三年、総人口八千十万人と増加したのに、定員は千百九十七名と減少し、昭和六十一年、総人口一億一千五十万人の増加に定員は二千九人で、増加率は一・三一倍となったにすぎません。  平成七年度の裁判所便覧によりますと、アメリカの裁判官は、連邦と州を合わせて三万百七十人であり、イギリスの裁判官は三千百五十六人、ドイツの裁判官は一万七千九百三十二人、フランスの裁判官は四千五百九十一人、我が国はこれに対しまして二千五十八人で、一人当たり六万七百五十五人となり、数の少なさでは断然一位となります。  これを事件数で見ますと、民事行政事件昭和二十四年の新受件数が十一万余件に対し、昭和六十年が約七十六万件となって六・七四倍、同二十四年の刑事事件の新受件数が十一万余件に対しまして、同五十九年には二十七万余件となって、二・三八倍になりました。この間、昭和二十四年の裁判官定員千四百十一人が、五百八十一人ふえまして同五十九年度は千九百九十二人となり、増加率は一・四一倍とわずかにふえたにすぎません。つまり、激増した事件数に対応した定員増が図られてこなかったのであります。  他方、最高裁は、昭和六十三年に裁判所の適正配置の名のもとに、百一庁の独立簡裁を廃止し、平成一年十二月に、支部の適正配置方針から、新潟地裁管内では、村上、柏崎、六日町、糸魚川の四支部が廃止されました。一番北の山北町の人たちは、二十八キロメートル離れた村上支部から、六十キロメートル離れた新発田支部へ通う不便を余儀なくされているのであります。  私は、昨年春、日弁連の便宜供与により、ドイツ・フライブルクに滞在をし、各裁判所の運営の実態を調査研究をする機会を得ましたが、管轄人口百四十三万人から百八十万人に対し、地方裁判所民事部に三十名、刑事部二十七名、区裁判所通常部に十四名、家庭部に七名、刑事部に十五名、労働裁判所に十三名、行政裁判所に三十五名、社会裁判所に十・五名、合計百五十一・五人の裁判官で運営していることに驚きを禁じ得ませんでした。これを新潟地方裁判所本庁で比較いたしますと、そこでは所長を含めわずか十五名で運営されているのであります。  にもかかわらず、平成七年十月十九日のこの委員会におきます審議におきまして、最高裁人事局長は、最高裁の代表が合格者を千人あるいは千五百名に増員することを提言しながら、裁判官の増加採用については、「あるべき裁判官数を想定することは極めて困難である」と言って逃げておるのであります。  法曹養成制度改革協議会が昨年十一月意見書を提出し、その中で、法曹人口を中期的には千五百人に大幅に増加させ、修習期間は大幅短縮でいいとする多数意見を発表しました。この意見は、司法基盤整備を一体として行いながら千名程度に増加させるという少数意見を排除して成り立っておりますが、法務省や最高裁意見と同じであります。つまり、判検事の増員は余り考えず、弁護士の大幅な増員を考えようという魂胆なのであります。  しかし、法務大臣官房人事課編による六十二年八月のジュリスト増刊号で、検事定員がふえないために、肩がわり現象と申しまして、副検事が地方事件の五割以上を担当し、区検事件を検察事務官が六割を担当しているという事実を学者や主婦連の外部協議員は知っているはずなのであります。また、裁判官不足の実態も日弁連法曹養成問題委員会意見書や資料で知っているはずであります。にもかかわらず、裁判官については、「積極的に増員を図る」が、「事件数の動向等を踏まえて」という条件がついたのは残念であります。  新潟地検は、昭和六十年の十名体制が平成八年には七名となり、新潟地方裁判所は六十年の十二名体制が平成八年の十・五名体制となりました。五十期の実務修習の新潟配属は八名で、弁護士会ではこれを千名体制に合わせて十五名に増加してもよいのでありますが、検察庁が人員減のために困難なようであります。  さらに、利用しやすくするためには、民事訴訟費用等に関する法律改正し、アメリカのように貼用印紙額を最高百二十ドルとするように改めるべきでありましょう。また、先進国日本だけがない法律扶助法を制定をし、国の補助金を、イギリスの千五百六十億円、アメリカの三百二十八億円、ドイツの二百六十二億円のように抜本的に引き上げることが肝要と考えております。  これらの諸施策を総合的に改革することなしには、国民に利用しやすく、わかりやすい民事裁判にはならないことを最後に申し上げまして、私の意見陳述を終わらせていただきます。(拍手
  89. 加藤卓二

    加藤委員長 ありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。     —————————————
  90. 加藤卓二

    加藤委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐田玄一郎君。
  91. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 御紹介いただきました自民党の佐田玄一郎でございます。  時間もありませんので、質問をさせていただくと同時に私の所見も多少話させていただきたい、かように思うわけでございます。  今回の改正は大正十五年以来七十年ぶりの改正ということで、これは大変重要な意味を持っておると私も思っておるわけでございます。まさにこれから百年の計、これにかんがみて、本当に大事な改正ではないか。そのためには十分に慎重には慎重を期していかなくちゃいけない、かように思っているわけでございます。  今回、言うまでもなく、訴訟の迅速化を図るための争点整理手続整備、そしてまた最高裁の負担過重を減らす上告制限、こういうこともあるわけでございます。  先ほど、鬼追参考人、日弁連の会長様でありますけれども、今回の改正につきまして、一定の評価というふうなお言葉を聞いたのでありますけれども、この一定の評価というのはどういう意味合いで話されたのか。現状において、いろいろな意味で、住専問題そして債権回収の迅速化が図られることが望まれている今でありますから、そういうことも含めてお話を願いたい、かように思います。
  92. 鬼追明夫

    ○鬼追参考人 簡単にお答えを申し上げます。  先ほど申し上げましたように、日弁連の評価といたしましては、どうしても賛成できないという点は三点ございます。その他は、さまざまな意見はございますが、それぞれに評価をいたしております。高く評価をしております部分もございますれば、それほど評価が高くないという部分もあるわけでありまして、そのそれぞれについて申し上げるわけにはいきませんので、何さま十分間で意見を述べろ、こういう御指示でございますので、一定の評価と申し上げたわけであります。
  93. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 今回の改正につきましても、先ほどの今井参考人の方からもありましたように、今現在、訴訟に関しましては、お金がかかるとか時間がかかる、こういうふうな意見を私もよく聞きます。そういうことを考えますと、やはり国民に開かれた裁判所、そしていろいろな訴訟が経費節減でできる、こういうふうなことをぜひともお願いをしたいわけでございます。  今回、一番争点となっておるのは、いろいろな訴訟において証拠が一方に偏在する、その証拠収集手続拡充を図っていく。御案内のとおり、改正案の二百二十条の四号のロ、現状においては、一、二、三号、これにつきましては訴訟の関係でありますから、基本的には裁判所が判断をしている。そしてまた、その中において、真実の秘密であるとかそういうものにつきましては、先ほどのお話にもありましたように、これは申すまでもなく判例の積み重ねで行われてきた。今回は、四号ということで、要するに証言並びに文書提出を一般化していく。これは非常に大事なことであろう、私はこう思っているわけでありますけれども、この後が問題なわけでございます。  ロということで、このロが全体にこれからかかってくるのではないか、こういうふうな意見も聞くわけであります。ということは、この法案改正があるにもかかわらず、現状、今のいろいろな社会状況を見た場合に、いろいろな不手際が出てきておる、それに対してやはり情報を公開しなくてはいけない、こういうふうな一つの方向性が今出ておるわけでございます。  実は私は、前に逓信関係をやっておりまして、今回のTBSの問題、我が法務委員会でもやらせていただきましたけれども、この法務委員会においていろいろな参考人も呼ばせていただきました。そして、私の意見としましては、こういうふうな非常に非常識な資料並びにビデオ隠し、こういうことがある以上は、これは徹底的に追及していかなければいけない、こういう気持ちが今でもあるわけでありますけれども、その中で、これはもう放送法も電波法もあるわけでありますから、放送法に抵触する以上は電波法によって電波停止ということもあり得るわけであります。ところが、放送法においては、ビデオが放送されない場合には放送法適用にならないのです。要するに、これは、ビデオを放送をしなかったので大変なことになったのであります。  そういうことを考えますと、非常にこの法律自体が非常識になっている。法律というものは、基本的には国民の側に立ち、そして常識的な判断を下していく基本にならなければいけない。そういうことを考えますと、私は、このTBSの問題も、やはり資料提出そしてビデオの提出、これがあればサリン事件も起きなかったのではないか、こういうふうな感もするわけでございます。  わけても、今議論されておりますけれども、HIV訴訟の問題につきましてもそうであります。数年にわたりまして、国民の公僕でありますお役人さんが資料を隠した。私は、これはもう決して秘密ではない、こういうふうにも思っているわけでございます。しかも、このエイズ訴訟の問題につきましては、一九九四年二月六日に、NHKの「埋もれたエイズ報告」ということでテレビに放送されて初めてわかって、これがなければ、まさにその資料の存在すらわからなかった。こういうことを考えますと、非常にこれは大変なことじゃないか。そしてまた、最終的には、二年たって一九九六年の一月にやっと発見された。発見されたにもかかわらず、この全般的な厚生省エイズに関する対策資料の一半というものは提出をまだされていない、こういうふうな現状もあるわけでございます。  「もんじゅ」の問題につきましては山本委員から前にるる御説明がありましたから省かせていただきますけれども、いずれにいたしましても、大変に情報公開が叫ばれておるわけでございます。そういう中におきまして、先ほど御指摘がありましたように、今訴訟の中に、被告側が国であるとか企業であるとか、こういうことが非常に多くなってまいりまして、公害、欠陥商品、そして薬害、いろいろなことが起きておるわけでございます。そういうことを考えますと、ぜひとも、何とかその辺の整合性を図っていかなければいけないのじゃないか、かように思っております。  しかしながら、私は、その中で、このロが拡大解釈されるということもまた心配なのでありますけれども、ただ、行政公文書の中には、やはり国益にかかわる外交の文書であるとか、防衛上の機密の問題であるとか、捜査資料であるとか、また個人的なプライバシーにかかわる問題、こういうことも絡んでくるわけであります。そういうことを考えますと、では、これからのこのロというものについての仕切り、要するにここまでは公開していいとか、そういう仕切りにつきまして参考人のお三方はどういうふうにお考えなのか、お伺いしたいと思います。
  94. 鬼追明夫

    ○鬼追参考人 今のお尋ねは、外交あるいは防衛にかかわる機密文書、あるいは犯罪捜査にかかわる文書、個人情報にかかわる文書、それについての仕切りをどうするか、こういうお考えのようでありますが、その前提といたしまして、本法案のままでありましたならば、行政官庁に、承認するかしないか、つまり、裁判所文書として提出をするかどうか、それについて承認をするかどうかということがそこでもう決まってしまいます。裁判所の判断はそれに及ばないという御説明でありますので、それはまさに行政官庁の責任においてその仕切りをお立てになるのだろう、こう思うわけでありますが、果たして行政官庁のお立てになった仕切りが正しいのかどうなのか、これはだれにもわからないわけなんでありまして、行政官庁秘密だと言えば秘密だということでありまして、これは何としても不合理だな、かように思っております。  もしも、私ども日本弁護士連合会が御提案申し上げておりますような修正案、すなわち、公務秘密文書でありましても裁判所に少なくとも提示はしていただく、つまりインカメラ手続ですが、そうなりましたときに、それじゃ先生お尋ねの、そういった、言うならば最高機密に属するようなものはどうするんだということであります。その前提として、訴訟の場合にまず考えなければいけませんのは、私は、そういうようなトップシークレットを裁判所に提示しなければならぬかどうかというようなケースは極めてまれなケースであろう、論理的にはもちろん考えられるわけでありますけれども、実際の実務の上においてはほとんどないのだろうというふうに思っております。  何となれば、御承知のように、訴訟証拠に出します場合には、証明すべき事実との関係におきまして関連性を必要とします。そしてまた、証拠として採用するかどうかについては、証拠としての必要性裁判所が判断するわけでございます。必要性、関連性の判断を経た上で、そして、もしインカメラ手続が導入されておりました場合には、裁判所はそれをごらんになって、そして、公開すべきものかどうなのか、つまり、少なくとも訴訟に上程すべきものなのかどうなのかという御判断をなさるわけであります。  私は、先ほどの意見陳述のときに申し上げましたように、司法権、つまり裁判所にすべての司法権を憲法がゆだねておる、司法に対して高い信頼を憲法が与えておる。我々国民もまたそうでありますが、そうである以上は、裁判官の目に触れるところまではやむを得ないことであろう。何となれば、裁判所は違憲立法審査権さえ持つわけでありまして、そういったことが裁判の対象になった場合にはかなり高度の機密にまで触れることもあり得るだろう、当然それは憲法は予定しているだろう、このように思うわけでありまして、その仕切り、歯どめというものは、裁判官の見識、裁判官の良心というものにかかわってくるわけではないだろうか、このように考えております。
  95. 猪瀬直樹

    ○猪瀬参考人 概念的に申し上げまして、情報公開法というのはある意味では事前のものと考えて、民事訴訟法の中の裁判所提出命令というのは事後の情報公開法、こう考えていただいた方がいいと思うのですね。そうすると、事前のものというのはある程度普通に請求して見ることができるけれども、事後のものはもう少し一段と厳しいものであっていいと思うのですね。  というのは、裁判所でそれを調べるというのは、今鬼追参考人も申されましたけれどもインカメラ方式でできますので、かなり高度な秘密にかかわるものでもインカメラ方式できちんと見ることができるわけですね。そういう意味で、情報公開法というものが二つの、民事訴訟法改正されるべき方向である裁判所文書提出命令に対してきちんと出すということがあって初めて、情報公開法の前段と後段が二つになって完成するというか、そういうふうな考え方をすべきではないか、こう思っております。
  96. 今井敬弥

    ○今井参考人 昭和二十二年に日本国憲法が制定されまして以来、法治主義の原則に従って日本の政治が運営されるという建前になったことは、間違いないと存じます。  七十年ぶりに民事訴訟法改正しようというこのときになりまして、司法の判断が入らないような分野をつくろうということ自体、私はいかがなものかという感じがしてならないわけであります。  すなわち、先生おっしゃったような、ロを設けまして、これに提示手続すら裁判の判断を及ぼさないようにしようということ自体が大変おかしいのではないだろうか。やはり先ほどの鬼追参考人と同じように、まず提示手続をさせて、そして裁判所に公正な、秘密秘密でないかという判断をさせましょうというような形でやる。そして、ではあれをどういうふうに考えるかということにつきましては、私も法律家の一員でございまして、これはもう裁判所といいますか裁判官を信頼する以外にないと私は考えております。
  97. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 裁判所の判断に任せる、こういうふうな御意見であるわけでございますけれども、行政文書公文書といいますと相当膨大な量になろうかと私は思うのです。これが非常に歯どめなく、あらゆる関係で公開を求められた場合に、事務的にどうなのかということをちょっとどなたかにお伺いしたいのです。
  98. 鬼追明夫

    ○鬼追参考人 今の先生の御質問は、情報公開の場合にはあるいはそういった現象も起こるかもしれないと思っております。しかし、事訴訟、特に民事訴訟に限って申し上げますと、先ほど申し上げましたように、民事訴訟の分野では、要証事実との関係で、関連性のあるもの、必要のあるものを裁判所がまず採否について判断をするわけでありまして、その上に立って、初めて証拠決定をする。しかも、訴訟は、何人もそういった情報開示せよというような手続ではありませんので、いわゆる訴訟当事者がみずから主張する事実を証明する、それに必要かどうかということでございますので、裁判実務の上では先生御懸念のようなことはまず起こらないというように私は考えております。
  99. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 ぜひとも、そういうふうな形で円滑にいくように——私がこう話をさせていただいておるのは、やはりその中で、先ほども申し上げましたように、非常に国民被害を受ける、そして非常識な現実がある、そういうことを回避していく、このために法律をしっかりとしたものにしていかなければいけない、そういうふうな一点で私は御質問もさせていただいておるわけでございます。そういう中において、ぜひとも御理解をいただきたいと思っております。  せっかく日弁連の会長がおいででありますから、一つ質問をさせていただきたいのであります。  法制審の中の民事訴訟法部会議論が始まったのは、先ほど、五年前というふうなことで、平成二年七月に法制審の方で議論が始まって、随分議論が積み重ねられてきたとは思うのですけれども、そのときに、平成二年十月十八日に、これは日弁連の中に民事訴訟法改正問題委員会というものが設置されたということをお聞きしておるのであります。  この中で、この五年の長きにわたりまして、午前中質問があったそうでありますけれども、要するに部会の中に日弁連の方の委員会の方から行かれている方、連絡も随分されていると思うのですね。フィードバックもされていると思うのです。そういうふうな過程をちょっとお話し願いたいと思うのです。
  100. 鬼追明夫

    ○鬼追参考人 まず最初にお断り申し上げたいと思いますが、私は、日本弁護士連合会の民事訴訟法問題の関係の委員会にこれまで関係したことはございませんので、みずから直接見聞したというわけではございません。そのことをまずお断りしておきたいと思います。  平成二年に、法務省の御依頼によりまして、日本弁護士連合会が法制審議会民事訴訟法部会に、五名の委員、三名の幹事を御推薦申し上げたということは事実でございます。それは日本弁護士連合会も、今回の民事訴訟法改正については、在野の組織ではありますけれども、やはりこれは御協力申し上げなければいけない、我々が、やはり市民との接点に立つ、そういった仕事をしております以上は、市民のそういった切実なニーズというものを一日も早く実現しなければならない、また、それによって司法改革されていくのであろう、こういう観点から、むしろ進んで御協力を申し上げたわけでございます。  御協力を申し上げる以上は、その五名の委員、三名の幹事の方々は、当時約一万四千の我が日本弁護士連合会の会員の中でかねて民事訴訟法等に関して造詣の深い会員の方々の中から五名、三名を選んだわけであります。しかし、いかに有能な方々でありましょうとも、これは弁護士が、自分の本来の業務をやりながら法制審議活動に参画をするわけでございますので、いかにすぐれた人材でありましても、限度、限界がございます。  したがいまして、日本弁護士連合会では、先生御質問の委員会をつくりまして、そういった推薦をいたしました委員方々の、言うならばお手伝いといいましょうか、あるいはバックアップと申しましょうか、そういうようなことを目的にして委員会活動をしてまいりました。したがいまして、当然に、委員会活動の結果、委員会の結論、あるいは委員会のいろいろな研究調査の過程にあらわれたさまざまな成果といいますものは、委員、幹事を通じまして民訴法部会に反映されておりましょうし、また、民訴法部会での御議論につきましては、そういう委員、幹事を通じまして日弁連の委員会などに伝えられていようか、かように思います。  問題は——そういうような状況でございまして、ただ一点御理解をいただきたいと思うのでございますが、法制審議会は、日弁連としては委員の御推薦をしておりますけれども、やはり委員それぞれの方々の責任と見識において意見をお述べになる、最終の段階ではそうなろうかと思います。したがいまして、日弁連は委員方々の発言を拘束したり、命令したり、そういう関係には実はございません。むろん、日弁連委員方々は、日弁連の委員会での議論を体して、そういう在野の実務家としての切実な要求を民訴法部会に反映してくださったものと思いますし、また、他の部会の委員方々の御理解を得て、日弁連の方から御提案申し上げたことが実現した問題もあります。そういう関係があるということを御理解いただきたいと思います。
  101. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 時間が終わって大変恐縮なのでありますけれども、短目に一つお伺いしたいのです。  これから行革委員会の方から情報公開法が出されるわけでありますけれども、今回の四号のロとその情報公開法との整合性、これはどういうふうなあり方であるべきかということを、一言ずつ、参考人の皆さん方にお伺いしたいと思うのです。
  102. 鬼追明夫

    ○鬼追参考人 必ずしも情報公開法の専門家ではございませんので適切なお答えができるかどうか心もとないわけでございますが、たしか四月二十四日でございましたでしょうか、行政改革委員会から情報公開法要綱案(中間報告)というものが公表されました。拝見いたしておりますと、その中には、不服審査手続といたしまして不服審査会を設ける、そしてその不服審査会の手続の中では、非公開の決定をしたものにつきましては審査会に提示をさせる、審査会で、果たして非公開決定が正しいかどうか、つまりその秘密性が高いかどうかというような御判断をなさる、そういうような規定を設ける、そういうふうに私は拝見いたしました。  最終的に情報公開法がどういう形で制定されるのかは、今のところ私は決して悲観もしておりませんけれども、楽観もいたしておりません。先ほど申し上げました行政官庁の体質からして、かなりその公開については抵抗があるのだろうなということを私は想像しております。しかしまた、要綱案のような形でもし結実するならば、当然、行政の不服審査会にはインカメラ手続を導入して、そして司法の分野では公文書の場合はインカメラ手続には入れない、こういうようなアンバランスなことはおよそ考えられない発想であろうかというふうに私は思っております。  したがいまして、もう既に、情報公開法につきましてこういう形になりそうだなということが出ているわけでありますから、御遠慮なさらずに、民事訴訟法においてもそれを導入をされて、むしろ情報公開法の先導的な、先駆的な役割を果たしていただきたいものだ、かように願っております。
  103. 猪瀬直樹

    ○猪瀬参考人 先ほど申し上げましたように、情報公開法と民事訴訟法改正の中に、本来望ましい改正であれば、文書提出について裁判所判断権が所轄官庁判断権に優先するというふうなことをきちんと明記されるべきであります。そうでなければ、情報公開法というものの意味が——情報公開法と今の民事訴訟法が重なって一つ情報公開という概念になっていくのだというふうに考えるべきであります。  したがいまして、この民事訴訟法が、僕の側から言わせると改悪だと思うのですが、もし改悪された場合には情報公開法が意味がなくなってくるのではないか、こういうふうに思っていいと思います。
  104. 今井敬弥

    ○今井参考人 先ほども申し上げたかと存じますが、法治主義の原則を貫くとすれば、この民訴法改正案の中の、特に公務秘密文書についても法治主義、つまり、裁判所判断権が及ぶ範囲を貫かなければならないと思いますし、それから情報公開法案、これはいろいろ紆余曲折があろうかと存じますけれども、仮に情報公開法案ができるといたしましても、そこにもやはり法治主義の原則が貫かれる、それによって整合性を保っていかなければいけない、こういうふうに考えております。
  105. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 終わります。
  106. 加藤卓二

  107. 富田茂之

    富田委員 新進党の富田茂之でございます。  参考人の皆様には、本日は貴重な御意見を本当にありがとうございました。三名の方の意見、本当に大事にしていきたいというふうに思っております。  私の方からは、まず鬼追参考人に、文書提出命令に関する規定について本当に法制審において論議が成熟していたのかどうかという点についてお尋ねをしたいと思います。  先ほどの意見陳述の中で、公文書提出監督官庁に任せるのが妥当か、また、これまで公務秘密文書について裁判所が判断してきたことについて何か不都合があったのか、こういうことについて実質的な検討が全くなされてこなかったのではないかというような御指摘がありました。  実は、一昨日のこの委員会におきまして、山田英介委員の質問に対しまして、民事局長の方がこういう答弁をされております。一般義務化する案、いわゆる甲案の前提といたしましては、拒否することができる場合は証言拒絶の場合と同様のスキームで取り扱うということを前提として議論していた、それが一つと、文書提出命令の関係について法制審議会の最後の段階においても改めて相当議論した、こういうような御答弁がありました。これは本当なのかなと、この二点、まず疑問に思いました。  それと、本日の委員会、午前中の審議におきまして、中野貞一郎参考人の方から、日弁連の推薦された委員の皆様は、意見は述べたけれども、この文書提出命令規定に関して反対はしていなかったということを何度も言われました。日弁連推薦の委員反対しなかったからこの規定でいいのだという御趣旨のようにも受け取れたのですが、先ほど今井参考人お話では、平成七年十二月一日に突然出てきた案なんだというような御提起もございました。  そのあたりを踏まえて、民事局長の答弁のとおりなのか、また中野貞一郎参考人が言われたとおりなのか、鬼追参考人が御存じの範囲で結構ですので、ちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  108. 鬼追明夫

    ○鬼追参考人 先生御承知のように、法制審議会は非公開になっております。したがいまして、日弁連推薦の委員、幹事といえども、私どもに対しましても、非公開の趣旨を体して節度を持って臨んでおられるわけでございますので、法制審における状況をつぶさに私どもはわかるということではございません。したがいまして、この委員会におきまして法務省民事局長がいろいろ御説明なさったこと、あるいはきょう午前中、中野貞一郎先生がおっしゃったことなどを手がかりに、実は私もテレビで拝見しておりましたので、そういったことを手がかりに御質問にお答え申し上げたいと思います。  まず、法制審での御議論を仄聞するところによりますと、いわゆる甲案なのか乙案なのかというような御議論に随分時間をお使いになったように伺っております。そして、御承知の第六次案ということでもって初めて、職務秘密文書に関する承認照会の制度、さらにまた四号のイ、ハ、ニの文書についてのインカメラレビューの導入というような条項が示された、それが昨年十二月一日であった、こういうわけであります。  いろいろ一般的な御議論は確かになさったのだろうと思うのです。しかしながら、具体的に、承認のための照会をするとか、あるいは公務秘密文書についてのみインカメラから外されてしまったとかいうようなことは、まさに十二月一日に青天のへきれきみたいな形で出てきたのではなかろうか、このように私は推察しております。  そこで問題は、二百二十条四号ロ、確かに形式的な論理からいたしますと、現行法の一号から三号を本法案の二百二十条でもそのまま踏襲しておりますから、四号が加わったということによって形式的には広がったかのごとく見えるわけでありますが、法律解釈というのは必ずしも形式論理の積み重ねだけでは済まないところがあるのではなかろうか、かように思っております。まして、これまでに形成されてまいりましたいわゆる判例法、判例の到達点ということもあわせて考えますと、やはり現在の公務秘密文書裁判所の判断によって提出を命ぜられる、その線からかなり後退するおそれさえあると私は思っております。  以上でございます。
  109. 富田茂之

    富田委員 昨年の十二月一日に、試案の中の第六次の二案という形で、丙案をとった要綱試案が出てきたということですが、その点に関して、そういう要綱試案について日弁連の方に法制審の方から、この案はどうですかというような問いかけ、照会等はございましたでしょうか。
  110. 鬼追明夫

    ○鬼追参考人 当時、私はまだ連合会長の立場ではございませんので、これも直接見聞したわけではございませんということをまずお断り申し上げたいと思いますが、私の承知しております範囲では、法制審議会の方から日弁連に対して、これでよろしいかという御照会等については、あったように聞いておりません。
  111. 富田茂之

    富田委員 私自身の感想なんですが、この文書提出命令のいわゆる丙案がとられたということについて十分な議論が本当になされたのかなという思いがいたします。  これは一昨日の委員会で山口委員の方からも質問が出ておりましたが、法制審の委員に入られている滝井弁護士さんが、ジュリストの一九九四年四月一日号で、「民事訴訟手続に関する改正要綱試案をめぐって」と題する研究会の中で御発言をされておりました。その段階では甲案、乙案をずっと検討していたようなんですが、甲案でも今のような規定がもしかしたら出てくるのかもしれない、そういうことをすごく懸念するんだというようなジュリスト誌上での御発言でした。それに対しまして柳田参事官は、まだその点は議論していない、これから十分議論していかなければならないというような発言をその誌上でされているわけですね。その後、本当にこの文書提出命令規定に関して議論がされたのかというのが、公刊されているものでは何も出てきていないのですね。  そういうことからしますと、いろいろマスコミ等が批判しておりますように、最終的な二百二十条の四号のロというのはちょっと何か不自然な出方だな、本当に法制審で十分な議論がされたのかなというふうな思いをいたしております。  鬼追参考人の方に先に回答していただいてしまったのですが、これまでの一号から三号文書判例が一生懸命解釈して、できる限り国民の手に証拠を持たせようというふうにやってきましたけれども、今回四号が加わったということでこれからどうなるんだろうという疑問がございます。これは、この委員会でも随分質疑がありましたし、午前中も質問がございました。  先日の委員会では、大臣も局長も、これまでの分は全く変わりないんだ、一号から三号で認められた分については全く変わりないんだ、四号が加わったことで広がったんだという御説明だけでした。法制審でもそれを前提に議論したんだから、それは間違いないんだという御説明でした。  しかし、本日の午前中の委員会審議を聞いておりますと、法制審のメンバーでありました中野貞一郎参考人までが、細川委員からの質問に対して、これまで三号文書として認められたものが多分四号の方で認められなくなるだろうと。谷口参考人も同じように言われておりました。新しく立法をするわけですから、これまでの解釈を一蹴して新しい法律の方を適用するんだというのがやはり現場の裁判官の感覚になっていくんではないか。法制審でどんな議論がされたか、またこの委員会でどんな議論がされたかということが本当に裁判の現場でそのとおり拘束力を持っていくんだろうかというすごい疑念がございます。  その点につきまして、鬼追参考人と今井参考人、これまで弁護士として現場でかなりの経験があると思いますので、法務省が説明しているように、四号が加わったことで本当にこれまでの解釈上認められた文書は大丈夫なんだというふうに肌で感じられますでしょうか。鬼追参考人は先ほどちょっと言っていただきましたが、加えるものがあれば御説明いただいて、今井参考人の方からも御意見をお願いいたします。
  112. 鬼追明夫

    ○鬼追参考人 今先生御質問の、大臣及び局長の方から、一号ないし三号についてはこれまでどおりである、それに四号がくっついたのであるから、したがって範囲が拡大された、こういう説明があったということでありますが、伝聞ではございますけれども私もそのようにお聞きいたしております。  確かに条文そのものはこれまでの一号ないし三号を、現行法のものをそのまま本法案の方に持ってきておりまして、さらに四号をくっつけたわけでありますから、一号ないし三号は変わらないことは間違いないわけですね、形式的には。  問題の複雑さは、この条項につきましては、先生御質問のように、裁判所は大変な御努力をなさって現在の到達点に達してきておる、ここを忘れてはいけないわけであります。しかも、大正十五年につくられた法律でありますから、そのときには官吏というのは大変偉いものでありました。したがって、法廷に出てきてもらうのも、証言をしてもらうのも大変なことでありました。官庁がだめだと言えば証人にさえも採用できないという時代でありました。  それを、現代型の訴訟、特に現代型の訴訟などでは、公文書が大変重要な役割を果たす、先ほど申し上げたとおりでございますが、そういうところから、裁判所は大変な御努力をなさって、一号ないし三号、特に三号の利益文書あるいは法律関係文書でありますけれども、言うならば目いっぱいの拡張解釈といいましょうか、そういうものをなさって、何とかそれを法廷に出させる、そして国民権利救済に役立たせるようにしようというような御判断でしょう、文書提出を認めた判例は、そういう努力をなさってきたわけであります。  ところが、それに四号が加わりますと、三号の法律関係文書解釈が普通の解釈になってしまう、あるいはかなり、少なくとも現在到達したものよりも後退してしまうというおそれがありはしないかと思うわけであります。これは、法務大臣がどうおっしゃろうと民事局長がどうおっしゃろうと、実際にその裁判を担当なさる裁判官の判断でありますから、法務大臣のここでの御発言は何の保証にもならない、民事局長のお話も何の保証にもならないわけでありまして、これから裁判所がこれをどう使っていかれるのかということを注意深く見守る以外にはないわけであります。  そこで、きょう午前中出ておりました中野先生あるいは谷口先生のお話、いずれも我が国の民訴法学界の有数の先生方であります。その有数の先生方が、午前中のテレビを拝見しておりますと、拘置所内における看守の不法行為による国家賠償の場合でどうだ、カルテでしたか診療録でしたか、それがどうかというようなケースであったように思いますが、これは出ない可能性があるというようなお話であったわけであります。こういった学者の人たちも、本法案をお読みになった場合に、これは出ない可能性があるなというような結論に達せられる。特に中野先生の場合には、御議論の中に入っていらっしゃる当の御本人でありますから、その方が出ないおそれがあるとおっしゃっておられるわけです。  どなたのおっしゃっていることが客観的に正しいかどうかは別として、事ほどさように、法律解釈というものはそう単純にはいかないものであるということが一つと、今申し上げましたように、大臣がおっしゃろうと局長がおっしゃろうと、それはこれからの裁判官が判断することである。しかも、大変な混乱要因をここに持ち込んでくださったなというふうな感を否めないわけであります。
  113. 今井敬弥

    ○今井参考人 午前中のこの法務委員会参考人招致の質疑につきまして、私もテレビで拝見させていただいておりました。  今お話しのように、谷口参考人が、新しくこのように改正案が新設をされますとロの問題がひとり歩きしはしないかという危惧をされておりましたけれども、私も谷口さんの危惧と全く同一でございます。  先ほどもちょっと触れましたが、私は昭和三十二年の卒業ですけれども、我々が大学で勉強しているときの第一線の民訴法学者が三ケ月さんであり中野さんであったと思うのです、谷口さんは僕らと同期ですけれども。こういう方々が約四十年間たってなおかつ民訴法部会の部会長や部会長代理などをおやりになってこういう案をまとめたとするならば、もっと優秀な民訴法学者が育っているわけですから、そういう先生方の声もお聞きになった方がよかったのじゃなかろうかという感じさえしております。
  114. 富田茂之

    富田委員 大変積極的な御意見をいただきました。  時間もありませんので、次に、情報公開との関係について聞きたいと思います。  これは鬼追参考人と猪瀬参考人に御質問させていただきますが、これまでの本会議の質問答弁、またこの委員会の質問答弁等で大臣は、情報公開法の方の審議の経過をしっかり見て、検討結果が出てから整合性を考えるとか、あるいはそちらの方の結果の趣旨が生かされるような所要の検討を進めたいというふうに答弁されるだけなんですね。これは大臣が、情報公開法の方がきちんとできれば民事訴訟法の方もまた変えるんだというふうに言っているととる方もいますけれども、そこまで積極的な発言はまだされていないと思うのですね。  先ほど佐田委員からの御質問の最後に三人の参考人の先生方、情報公開法との関係について御答弁されておりましたけれども、民事訴訟法の案ですら最後の段階でこういうふうにいろいろ何か複雑になってしまうどいう状況を見ておりますと、せっかく情報公開法について行革委員会の方で一生懸命審議されて、この一年ちょっとの間に会議だけでも三十六回、また小委員会も大分やられているということで、物すごい積極的な議論をしてきております。二年以内に勧告しなければならないということで、かなり煮詰まった議論をしているわけですね。先ほど鬼追参考人もおっしゃっていましたが、そこまで来ているのがわかっているのだから、民事訴訟の方で先導的な役割をしたらどうだという御意見でございました。本当に、なぜ今民事訴訟法の方の文書提出命令規定を急いで変えなければいけないのか、もう少し待ったらいいじゃないかというふうな素朴な疑問も出てくるわけであります。  また、今回の文書提出命令の丙案の出方を見ておりますと、逆に、情報公開法の方も最後の最後に骨抜きにされるのではないか、また次官会議で、ほかのいろいろな省庁の方の同意を得られなかった、中間報告で出したけれどもこれはだめだったんだと、ぐっと後退した案に、この民訴法の改正ができたがゆえになるのではないかというような懸念を持っております。  その点について、仮にこの審議をもう少し延ばしてでも情報公開法の制定を待つとか、あるいは情報公開法の方にきちんといい影響を与えるようなこの委員会での審議をしたらいいんじゃないかというふうに私自身は思うのですが、その点について鬼追参考人の御意見を。  そして、猪瀬参考人の方には、実は猪瀬参考人の、ことしの三月三日付の読売新聞「メディア時評」というところに、この件に関しましてかなり積極的な御意見を出されておりました。この「メディア時評」、私は大好きでよく読ませていただいているのですが、参考人法律家ではないのに、法律家以上に法律の実体に食い込んできている御意見だというふうに思います。この中で本当に、先ほどもおっしゃっていましたけれども、知る権利という観点から考えていかなければいけないのだということをこの「メディア時評」の中でもおっしゃっておりました。官僚の癖ですか、官僚というのはどうしても隠したがるのだということもおっしゃっておりました。  民事訴訟法文書提出命令規定情報公開法を今後どういうふうに審議していくべきかという観点から、猪瀬参考人の御意見をいただければと思います。
  115. 鬼追明夫

    ○鬼追参考人 先生御質問のように、情報公開法はまだ中間報告の段階であります。実際にこれが日の目を見たときにどういう姿形になるかということは予断を許さないと思うわけであります。そのときに、民事訴訟法でこの文書提出命令について、一般義務化されたものではあるにしても、公務秘密文書が全く行政官庁の判断だけで出す出さないということが決まってしまうというようなことで国会議員の先生方もそれで了承されたというのであれば、情報公開法もかなり後退したものでいいのではないかというようなことを恐れるわけであります。  私は先ほど、国権の最高機関である国会を構成なさっておられる国会議員の先生方の御見識に本当に御期待申し上げる、御信頼申し上げると申し上げたのはそこでありました。今この時代、何が必要なのか、どうするべきなのかということの所与の条件の中にあって、やはり最善を求めていただきたいと思うのであります。  その前に、もともと私ども日弁連の主張しておりますような案が、果たして行政の聖域を侵す、あるいはトップシークレットまで無理やりに出してくれというような手続なのかどうなのかということをもう一度改めて御吟味をいただきたいわけでありまして、訴訟の場において当然一定の制約があり、そして憲法が高い信頼を与えておる司法の、その裁判官の目にさらすことがなぜそれほどいけないのかということをよくお考えをいただきたいと思うわけであります。  私どもは依然として、この民事訴訟法改正そのものは、極端に申し上げますと一日も早く改正案として制定を見たい。そして、やはり司法改革の一環として、言うならば一つの有力な手だてとして司法改革運動に取り組んでまいりたいと思っているわけでございまして、決してこの法案をつぶそうだの何だのということは日弁連としては考えていないわけでありますが、しかし、やはり日弁連として意見を申し上げなければならない。それでも地球は回るというような問題だろうと思うわけでありまして、この部分については格別の御配慮をちょうだいしたい、このように思っております。
  116. 猪瀬直樹

    ○猪瀬参考人 議員のおっしゃること、先ほどおっしゃることは非常によくわかりました。  去年の十二月の段階で、急に民事訴訟法改正の一部に所轄官庁の判断が優先されるという文書提出についてのそういう規定が盛り込まれたわけですけれども、基本的には日弁連の鬼追さんのおっしゃることが、いつも大体僕も同じ意見でありますが、そのときに僕は、日弁連が何でそんな腰が引けたのかなと、十二月の段階で何で、前の会長さんですから今は関係ありませんが、何でそんなに突っ張ることができなかったのか非常に不思議でございます。  それはそれとしておきまして、また新聞やメディアの側、テレビも含めたメディアの側でも、これは法制審議会会議秘密——秘密というか公開されないということがありますものですからなかなか外に漏れてこないので、それはメディアの食い込みもちょっと遅かったのではないか。今はもういろいろな新聞が書き立てておりますけれども、もう少し早くこの問題を広く知らせる必要があったのではないかな、こういうふうに思っております。  そういうふうな中で、いろいろお役人の側から漏れ伝わってくるところによりますれば、彼らが資料を出すということの場合に、情報公開制度のように文書公開を仕事として行う、そういう場合と裁判所から協力を求められて行う場合では明らかに違うんだと。情報公開制度と異なって、裁判を適切に進行させるために我々が何で協力しなきゃならないんだ、墨を塗ったり、いろいろ大変じゃないかと。墨を塗って、いろいろ黒塗りをして、必要なところだけまた再コピーして出す、そういう手間がかかるというふうなことを何かぶつぶつ言っているということを聞いたこともありますけれども、なぜそんな負担を自分たちがしなきゃいけないんだというふうなことをお役人さんが述べているような話も漏れ伝わってまいります。  それはともかくおきまして、そういうことで、全般に民事訴訟法改正というのは、いい意味で前向きで、いろいろないいことばかり盛り込まれているものですから、一番肝心な部分だけぽんとつけ加えられてもなかなか外にはわかりにくかったということなんです。そういう意味では、日弁連というか、法律専門の先生方のそういう腰の弱さというのが非常に今回は責任が大きいと思いますよね。  それはともかくおきまして、この情報公開というものが、一方で行政改革情報公開部会というのがあってそこで審議している、それとまた法制審で審議している、別々にやっている。こういうこと自体がもう既に問題なんでありまして、情報公開という、もしそういう思想とか概念があるならば、情報公開部会だってしょっちゅう公開していかなきゃいけないわけだし、法制審議会の方もしょっちゅう公開していかなきゃいけない。そういうことがまずできていないこと自体がもう問題だというふうに考えていいと思うのですね。  先ほど最初に意見を述べさせていただきましたけれども、どうも日本には情報公開という発想、あるいは情報公開というよりも、主権在民とは何かという、我々がやはり行政の持っている情報を知る、アクセスする、そういう積極的な意思を持って、そして我々が判断していいんだという、つまり情報というのは国民のものだという考え方、思想がやはり戦後民主主義という建前だけの中で築かれてこなかったのですね。それがやはり一番問題だろうというふうに思っております。  さらに言うならば、新聞の記者クラブ制度なんかも割と、行政のいわゆるリリースされたものとか、あるいは行政が非常に上手に説明しますから、その説明した資料とかをもらって、そしてどうしても新聞が行政寄りになっていく。だから、極端な言い方をいたしますと、これは僕も新聞にいろいろ書いたりするのであれですが、新聞がやや行政の機関紙的な、官報的な要素を持ってしまう、そういう構造があるということですね。個々の記者は一生懸命やっていることはわかりますけれども、構造的にそうなっているということで、やはりこの記者クラブ制度というのは非常に問題だというふうに考えていいと思うのですね。  普通だったら、記者クラブがあるのなら、法制審議会審議している内容を個々の委員にどんどんどんどん聞いて、もっと情報をとればいいのですよ。そして、こういうことをやっているんだということをもっと早く知らせるべきだ。まあ一部の新聞、一部の記者は一生懸命やっていたことはよく承知しておりますけれども、全体にどうも我が国のジャーナリズムは行政に振り回されてきたという歴史があると考えていいと思うのですね。  これについてはまだいろいろ言いたいことはたくさんありますが、とりあえずそういうことを申し上げておきます。
  117. 富田茂之

    富田委員 時間が参りましたのでこれで終わりますが、今猪瀬参考人の方が、日弁連の方が腰が引けていたのじゃないかというお話でしたが、私も弁護士出身ですので、一言、弁解ぎみになりますが、谷口参考人がこの小委員会出席していなかったというような御発言が午前中ありました。出席したら自分反対意見を言った、ただ改正案には賛成しただろう、改正が大事なんだと。そして最後に、修正は国会の方にお願いしたい、この言葉を重く受けとめて、何としても修正してまいりたいと思います。  本日は、本当にありがとうございました。
  118. 加藤卓二

    加藤委員長 坂上富男君。
  119. 坂上富男

    ○坂上委員 三人の参考人の先生方、御苦労さまでございます。社民党の坂上富男でございます。  私の時間は十五分でございます。先生方一人一人に御質問しますと五分ずつでございますので、最初に鬼追先生に御質問させていただきます。四問ございます。もう大体お話を聞いてある程度のことがわかったような気もしているのでございます。したがいまして、もう説明はできるだけ省いていただきまして結論だけひとつお答えをいただきたい、こういうことを希望しながら、まず質問させていただきたいと思います。  鬼追先生、民事訴訟の現在の状況をどのように認識、評価されておりましょうか。簡単で結構です。
  120. 鬼追明夫

    ○鬼追参考人 民事訴訟の現在の状況、いろいろな切り込み方はあろうか、このように思いますが、私は、主として現行民事訴訟法ができた当時と対比してどうなんだろうかということを考えてみたわけでございます。  御案内のように、最近ではいわゆる現代型訴訟というのが随分多発いたしております。どういうことかと申し上げますと、時代によって多少の消長はございますけれども、例えば公害事件あるいは災害事件あるいは消費者事件、いわゆるPL事件もそうでございます。あるいは、金融関係も場合によったら一つの消費者事件の延長線としてあるのかもしれません。そういったかつて見られなかったような現代型訴訟というのが随分多発しているというのが特徴的であろうか、このように思います。  早い話が、御案内のように国家賠償法というのも大正十五年当時にはなかったわけでありまして、そういった裁判も今日随分多くなっております。これもすべて民事訴訟法で賄われる、そういうことになります。  以上でございます。
  121. 坂上富男

    ○坂上委員 その次に、ただいま日弁連の民訴法改正に関する緊急意見書をちょっと拝見させていただきました。ちょっと質問がダブるようでありますが、その一つは、公務秘密文書につきまして官庁承認要件を外せと主張される理由をもう少し簡単に言ってください。
  122. 鬼追明夫

    ○鬼追参考人 二つございます。  一つは、訴訟法の枠内の判断は裁判所の判断を受けるというのが正しい、このように考えます。その中で異質の判断権者を設けるというのはおかしい、このように思っております。それが一つ。  もう一つは、先ほども申し上げましたが、裁判例判例の努力というものによって裁判所が判断してきたものを、実質上この法案では行政官庁の方に言うならば取り上げてしまうといったような結果になる。しかも、その行政官庁は元来、文書などについては提出したがらない体質を持っている。これは古今東西そうであります。証明を要する必要がないほど明らかな事実であります。そういうところからこういう意見を申し上げております。
  123. 坂上富男

    ○坂上委員 次に、秘密性の判断基準を公共の重大な利益が害されることとしたという理由、それから想定されます秘密の範囲について具体的におっしゃっていただきたい。簡単で結構です。
  124. 鬼追明夫

    ○鬼追参考人 先ほど意見陳述のところでも申し上げましたが、日弁連の考え方は刑事訴訟法参考にいたしました。さらにまた、職務上の秘密は何かといったこれまでの裁判例、そういったものも参考にいたしましてこういう御提言を申し上げておりますが、百九十一条二項を準用いたしております、公共の利益を害し、職務遂行上著しく支障がある、この要件では大抵のものがそれに入ってしまうというような懸念を持っております。  それもこれも、やはり官庁というのはそういった情報を出したがらない、場合によっては隠したがるという体質が、申し上げたように古今東西を問わずあるというところから、お断りになるならかなり厳格な要件を課さなければ実効性がない、かような確信からこういう御提案を申し上げております。
  125. 坂上富男

    ○坂上委員 いま一つ、公務秘密文書をインカメラの対象とすべきであるとの理由をもう少し。
  126. 鬼追明夫

    ○鬼追参考人 裁判所に判断をしてもらう、そのためであります。
  127. 坂上富男

    ○坂上委員 では先生、しばらくお休みください。  それでは、今度は今井先生にちょっと質問いたします。  今、参考人の先生並びに委員の先生方にお配りをいたしました「改正法案検討図と簡単な説明」、これは日弁連の民訴法改正問題委員会の平山副委員長に図示していただきました。大変私たち素人にもわかりやすい図解説明でありますので、これをもとにいたしまして質問をさせていただきたいと思っておるわけであります。  午前中それから現在までの先生方のお話を聞いておりまして私も痛感しているのですが、法律は立法者の意思を無視してでもひとり歩きをする、このことが危険なものだからきちっとしてくれよ、こういうお話なんだろうと私は思っているわけです。  そこで、私も今思うのですが、私たちの本当に偉大な先輩なんですが猪俣浩三という弁護士先生、終戦後、新潟選挙区から国会議員に出ておられました。この方がこういうことを言っておられました。私たち、国鉄労働組合の事件で鉄道公安官に労組員が暴行を加えたということで、あれは公務執行妨害か何かで裁判になったときに僕も弁護を担当したのですが、猪俣先生がこう言っておられました。  実は、鉄道公安官に関する法律は私がその立法に参画したんだ。そしてそのとき、国会の審議ではいわゆる労働争議について、労働行動について、いわゆる鉄道公安官は使用しない、こういう答弁であったので私も積極的にこの鉄道公安官の法律を制定のために努力した。しかるに、この裁判ではいわゆる鉄道公安官に対する妨害行為が公務執行妨害で裁判になっている。立法の趣旨と相反する。しかしながら、現実にこうやって起訴になった。非常に私は労働者諸君や国民の皆様方に申しわけない、こう言っておられることを、私は朝から参考人の先生方のお話を聞きながら思い出しておったわけです。多分、猪俣先生は、ほかの裁判所でもそういう証言をなさったろうと思うのです。  今井さんは当時東京にいたから、やはりあの先生とやられたのではないかと私は思っています。でありますから、さっき日弁連会長さんが、法務大臣が何を言おうと民事局長が何を言おうと余り価値はないんだ、裁判官解釈をどうするかという問題だ、こう言うのでございますが、それは少し極端だろうと私は思うのです。やはり立法者の意思というのは法律解釈の上においては大事な材料になるのだろうと、私は実はそう思っているわけでございます。  そこで、そういう意味でこの図を見ますと非常に勉強になることで、これは各先生方が専門的立場でこの間から随分やっておられるのです。この図解説明は私たちが読むには非常にわかりやすい文書、こういうようなことで、この中から法律がひとり歩きするという心配を如実にこの図面であらわしているのではなかろうか、こう実は思っておるわけでございます。  そこで、今井参考人に質問ですが、ごらんになってください。  まず第一図ですが、今までの文書提出の一号から三号のA文書、これは今までのもので承認要件を問題としないで、秘密性のみを裁判所が判断をした。それでこのA′の文書、これはいわゆる秘密公文書等について裁判所判例上つくったものである。それからB文書、これが今新しい四号なんですが、秘密性と承認要件を必要とする、こう書かれているわけであります。これが第一図。  第二図は、判例は、A′を承認不要の解釈も可能かとしながら、秘密性のみを裁判所が判断をすると言って、第一図との違いを指摘をされているわけであります。  そこで、問題は第三図なのです。  A文書、これは一号から三号に該当する文書なのですが、これは、秘密性のみ裁判所が判断し、承認要件は問題としない。括弧して(又は、承認要件不要の解釈も可能か)と。二つの解釈があるということなのだろうと思うのでございます。そこで、この四号の中には、さっき言いましたとおりB文書があるわけであります。しかし、A文書は今度四号になるおそれがある、こういうふうにきちっとこの図解で説明をなさっているのですね。  それから、第四図でございます。  第四図は、一号から三号のA文書、これは、秘密性のみ裁判所が判断する。「承認要件については新法四号に準じてあらかじめ承認必要の解釈が生ずるおそれあり。」こう言って、いわゆるA文書もさらに第四号の枠がかけられるおそれがある、こういう指摘をしているのですね。  そこで、今井先生、この四図の御意見をちょっと賜りたいと思います。
  128. 今井敬弥

    ○今井参考人 今坂上先生がおっしゃったとおりで、これは副委員長の平山先生の図案だと思いますけれども、これは、第一図、第二図が判例立場だと思いますが、第三図は、このように「秘密性のみ裁判所が判断」して「承認要件は問題とせず」とか、括弧して(又は、承認要件不要の解釈も可能か)ということはございますが、改正されてしまいますと、午前中の質問、討議にもございましたように、解釈でございますから、解釈論では、できない、全然不可能だということはないとは思いますけれども、極めて難しいのではないかというふうに考えております。  第四図は、先生のおっしゃるとおりで、今度は現行のA文書がかかってくる秘密性とか、あるいは新法の四号に準じて承認必要の解釈が生ずるおそれ、これが多分にあるというふうに考えております。
  129. 坂上富男

    ○坂上委員 いま少しこの問題を私たちは大事にしたいと思うのは、判例解釈がA′文書に対しても二通りの解釈があるのですね。判例があるのです。しかし、これは判例ですから、やはりこの際、この部分法律で統一をすべきだろうと私は思うのです。  これは、この間までの法務省の答弁をお聞きしますと、従前どおりやりますから御心配要りませんということなのでございますが、積極説の方なのか消極説の方なのかということを、きちっとやはりこの際、法改正でございますから、統一した条文というものはここで一つ要るのじゃなかろうか、こう私は思っておるわけです。この点は、今井先生、どう思いますか。
  130. 今井敬弥

    ○今井参考人 私もおっしゃるとおりだと思います。
  131. 坂上富男

    ○坂上委員 それから、今度は第五図です。  いわゆる承認拒絶事由について、現行の慣行では、民訴に規定はない、刑訴に規定はある。そこで、今度は改正法案によりますと「規定を新設」、いわゆる(百九十一条二項の準用)「監督官庁の自由裁量の範囲が拡大」する。(しかもイン・カメラ手続から除外されているため、裁判所の判断は事実上不能)である、こうまできちっと言われておりまして、百九十一条第二項の観点からも大変危険性が出てきている、こう御指摘があるわけでございます。この点についてもお聞きをいたします。  それから今度は、第六図はちょっと飛ばしまして、第七でございます。  「二百二十条四号の「専ら自己使用文書」の新設が、従来の「A′文書」の認定に障害とならないか。  A′文書は、すべてB文書の取り扱いとなり、「いわゆる内部文書」の提出はますます困難になるおそれ」がある。でありまするから、この四号の専ら自己使用文書もどうもこの枠にはめられちゃうのじゃなかろうか、こういう心配をなさっておりまして、なるほどなと私は思っておるわけでございます。  この二点がやはり大きな問題点になるのじゃなかろうかと私は思っております。その点は一言だけ、どうぞ。
  132. 今井敬弥

    ○今井参考人 第五図に関しまして、それから第七に関しましても、先生のおっしゃるとおり私も危惧をしております。
  133. 坂上富男

    ○坂上委員 第六図をごらんいただきたいのであります。  これは法務省の立場に立って、この部分もきちっと確定をしていただきたい私の要請的な質問なのでございますが、第六図。  「二百二十条四号ロにおいて承認要件が規定されたことにより、三号については」今までの条文ですが、「三号については承認要件は不要と解釈できる」のでなかろうか、反対解釈として。条文ができたから、かえって反対解釈としてこの承認要件は不要なのじゃなかろうか。この点はぴしっとおっしゃっておるわけであります。  そうであるとすると、「この第六図の解釈が」今言ったような解釈が「確定し、かつ、A′文書もあくまで三号文書として、承認不要となれば、一歩前進となるのでは」なかろうか、こういう指摘を副委員長先生がしているわけです。この点、どうですか。
  134. 今井敬弥

    ○今井参考人 これは平山副委員長の希望的な観測ではないかと考えておりまして、そういうふうに解釈できるのであれば結構だと存じますけれども、一たん改正案が実現をいたしますと、果たしてこのようになるかどうかということについては、私はなかなか難しいのではなかろうかと考えております。
  135. 坂上富男

    ○坂上委員 終わりますが、今申しましたとおり、判例も、積極、消極の判例がある。これはひとつ国民の利益の立場に立って、やはり条文上明確にすべきなのじゃなかろうか。ただ、法務省は、従前どおり判例で積み重ねた部分はそのまま使います、こうおっしゃっているのですが、せっかくの改正ですから、きちっとやはり利益につくるべきなのではなかろうか、私はこうは思っておるわけであります。  それから、今おっしゃいましたとおり、いわゆる第四号が全体にかかってきて結果的に改悪だ、こういうふうなことになっては、これはもう大変なわけでございます。しかし、この間からの法務省の答弁を聞きますと、そうではございません、これはみんなかかりません、新たに一般規定として入れただけでございまするからこの第四号が三号全体にかかるなどということはありませんという答弁なのでございますが、先刻申しましたとおり、法というものはひとり歩きをするわけでございます。したがいまして、やはりこの辺は、どういうふうに修正するかはわかりませんけれども、どうにかして今指摘した部分は明確にしなければ、これから私たち裁判する上にも困るし、国民的な権利擁護の立場からも困るのだろう、私はこうは思っておるわけでございます。  そこで、猪瀬先生、先生の論説も読ませていただいております。大変質問がおくれて恐縮だったのでございますが、今のような問題点を踏まえまして、特に法律がひとり歩きするというような観点から、ひとつどのような御所見をお考えになっているかをお答えいただきたい、こう思います。
  136. 猪瀬直樹

    ○猪瀬参考人 この民事訴訟法の問題を、情報公開法の後でもう一度またその部分だけやれば、やり直せばいいんじゃないかというふうな意見が結構あるようなんですけれども、そういうひとり歩くという意味では、多分情報公開法の問題が終わった後にやると、やらない、この民事訴訟法改正をこのままなおざりにされたままで終わってしまうような気がいたしておりますので、今回できるだけ詰めて、不都合がないようにやっていただきたいというふうに思います。
  137. 坂上富男

    ○坂上委員 ありがとうございました。終わります。
  138. 加藤卓二

  139. 枝野幸男

    ○枝野委員 参考人の先生方にはきょうはありがとうございます。  まず私が最初にお尋ねしたいのは、実は、これは外でもある程度おっしゃっているのかなと思いますが、法務省がこの法案を私のところに説明に来ましたときに、こういう言い方をして説明に来られました。文書提出命令のところにはいろいろ問題があって、いろいろ意見があるのはわかっているけれども、まあ一部である、ほか全体は物すごく前進しているのだから、一部分いろいろな意見があっても、目をつぶってここは通すべきだというような言い方をおっしゃって私のところに説明に来られました。  この文書提出命令という問題は、他の民訴法全体の前進、よくなっている部分、改善されている部分とそれからこの文書提出命令の問題点というのを比較したときに、ほかが前進しているのだからこの問題点というのは見過ごしても仕方がないと言えるような小さな問題だとお考えでしょうか、それともそうではないとお考えでしょうか、三人の先生方の御所見をお伺いします。
  140. 鬼追明夫

    ○鬼追参考人 今次の民事訴訟法の全面改正が、弁論準備手続の導入、さらに証拠収集手続拡充、この二つを大変大きな眼目にいたしております。その中にありましても、文書提出命令は中心的な課題であろうか、このように考えますと、大変大きな問題である、このように思っております。
  141. 猪瀬直樹

    ○猪瀬参考人 全体に前向きな改正であるといえども、一番その重要な部分、つまり他の情報公開法などに波及する、あるいはそれを侵すおそれのある文書提出命令のこの問題は非常に大きな問題で、この問題を抜きにこの民事訴訟法改正というものはあり得ないというふうに考えております。
  142. 今井敬弥

    ○今井参考人 ただいまいろいろ議論がされておりますように、公務秘密文書を設定といいますか新しく設けようとしていること、それから上告制限をしていること、弁論準備手続におきまして公開の制限をしていること等を考えますと、必ずしも全面的に賛成できる法案ではないと私は考えております。殊さらと申しますか、特にやはり一番今問題になっております情報公開法あるいは条例等の関係におきましても、公務秘密文書を修正することは、大変大きな課題ではないかと考えております。
  143. 枝野幸男

    ○枝野委員 もう一つ、この法案が国会に出てくるまでの過程の中の話、余りこの話をすると、私もう既に厚生省から大分嫌われて、法務省から余り嫌われたくはないのですが、法務省の体質についてちょっと御意見を伺わせていただきたいのです。  私のところに従来から、いろいろなところからうわさで聞くところによるとというお話が出ていますが、私は直接この耳でお聞きをしたのですが、ここのところをこのままじゃないと事務次官会議が通らない、文書提出命令についてはこのままでないと、皆さんがおっしゃるような修正を加えたものであると事務次官会議は通らない、だからこのまま通してくれというような論調で私にも説明に来られました。私は冗談じゃないと拒否いたしましたが、多分私のところに来ているぐらいですから、いろいろなところで御説明をしているのでしょう。むしろ、司法の、法の番人である検察官の皆さん、法務省の皆さんが他の役所を説得し切れないから、ちょっとぐらい問題があるものでもまあ通してくれやという姿勢というのでは大変問題があると思うのですが、今のお話を聞いて、これは、鬼追先生と猪瀬先生に御見解をお尋ねしたいと思います。
  144. 鬼追明夫

    ○鬼追参考人 法務省がこれまで今回のこの問題につきまして大変な御努力を重ねられたことについて、私どもも敬意を表しております。恐らく各省庁に大変な御努力で説得をなさったのであろうというふうに私は思っております。逆に、法務省を除く省庁が大変この問題については、言うならば守旧的であり過ぎたのではなかろうかという感想を持っております。
  145. 猪瀬直樹

    ○猪瀬参考人 先ほどもちょっと言いましたけれども、日弁連が非常に及び腰だったと思います。現在はそうではないので、非常にありがたいと思って見ています。  それからもう一つは、やはり議員の方が、今の枝野議員もそうですが、この問題について非常に憂慮していた。にもかかわらず、メディアの側の追いかけが足りなかった。これは反省した方がいいと思っています。したがいまして、この問題をできるだけ早くもう少し知らしめるメディアの役割というものが発揮されるべきであったというふうに考えております。  しかしながら、日弁連なんかでも、そういう問題が来たときに、何でもっと早くメディアの側にそれを伝えなかったのか。伝えなかったというか、これは大変な問題なんだということを伝えなかったのかということは非常に大きいと思います。  それから、議員の側にも申し上げたいのだけれども、こういう問題、これは大変な問題なんだということを、やはりメディアの方はどうしても行政の側に行ってしまいやすいけれども、議員の方でメディアを自分の側に引きつけて、きちんとそれを説明する、そういう努力をやはりもっとしてほしかったというふうに思っております。そういうふうなそれぞれの努力があって、官庁情報秘匿というか、そういう官庁のある種のエゴイズムを抑制することができるのだろうというふうに考えております。
  146. 枝野幸男

    ○枝野委員 ありがとうございます。  先ほど来、日弁連の姿勢ということで猪瀬参考人からお話をいただいておりますが、改めてこの場で確認をさせていただきたいと思います。  日弁連からの緊急意見書を読ませていただきますと、原案のまま通るのであれば反対である、若干おくれても、修正がないのであれば、このまま通ることには反対であるというのが日弁連の見解ということで理解してよろしゅうございますか。
  147. 鬼追明夫

    ○鬼追参考人 私どもは、ありていに申し上げて、私どもがお願いしております修正案が通らないわけはないと確信いたしております。
  148. 枝野幸男

    ○枝野委員 私もそう信じておりますが、まさにこれは姿勢の問題でございますので、ある意味では、その全部が通らない、おくれるのは困るという気持ちというのは、これは私も弁護士でありますから、全体がおくれるということに問題がたくさんあるということ自身わかっております。しかし、まさに重大な問題であるならば、仮におくれても修正をすることが大事であって、とのまま通るぐらいだったらおくれる方がいいという姿勢を示していただかないとなかなか迫力がないと思うのですけれども、その辺どちらなんでしょうか。
  149. 鬼追明夫

    ○鬼追参考人 大変難しい御質問なんですが、実は私は、この問題は民事訴訟法の問題だけではない、来るべき情報公開法の問題でもある、このように理解しているわけでございまして、そういう意味では、私は通らないわけがないと確信しておりますが、万々一という場合に、私どもはこの修正提案を引っ込めるつもりはありません。
  150. 枝野幸男

    ○枝野委員 ありがとうございます。私どもも自信を持ってそれで進めさせていただきたいと思っております。  実は、これは午前中の学者さんに本来は聞くべき筋かもしれなかったのですが、午前中の学者さんは民事訴訟法の学者さん、民事訴訟法の専門で、ほかのところは専門ではありません。弁護士の先輩ということで、両先生、弁護士は憲法も含めて法全体についての知識を一応試験されているということで、ちょっとお尋ねしたいと思うのです。  余り私は憲法憲法と叫ぶのは好きじゃないのですが、この問題はむしろ民事訴訟法という問題にとどまらず、憲法との問題ということを考えなければならない問題が実はあろう。抽象的に言えば、国民裁判を受ける権利との兼ね合い、それからもう一つは、三権分立の中で行政権に対して司法権が及ばない範囲をつくってしまうということでは、三権分立という統治制度の仕組み、憲法の統治の仕組みを揺るがす問題ではないかなと思っております。こうした憲法上の問題について、鬼追先生と今井先生の御見解を教えていただければと思います。
  151. 鬼追明夫

    ○鬼追参考人 枝野議員のおっしゃるとおりでありまして、すべては憲法より発すると思っております。声高にただ空念仏のように憲法憲法と言うのはいかがなものかとは思いますけれども、やはり法律家であります以上は、すべての尺度については憲法をまず考えなければいけないのではないかと思っております。そういう意味では、先生御指摘のとおり、この問題については裁判を受ける権利あるいは知る権利等々に絡んでくる問題であります。  憲法が公布されまして五十年足らず、来年で施行五十年ということでありましょうか、そういうことになりまして、本当に我が国で過去五十年間憲法が健全に作動、機能してきていたのだろうかどうなのだろうかということを私ども在野法曹も含めて反省をし、次なる五十年に向けて本当に憲法が生き生きと国民各層の中に定着し、あるいは憲法の理念が少しでも実現するような方向で努力しなければならない、かように考えております。
  152. 今井敬弥

    ○今井参考人 私も、実務家としては憲法違反とかということを振りかざすのは余り好きではございませんが、先生おっしゃるとおり、やはりすべての法律が憲法に源を持っているということは厳然たる事実でございまして、そういう観点から民訴法ということも考えていかなければいけないと考えております。  先ほど申し上げましたように、民事訴訟法もドイツから輸入されたものでございまして、そういう観点からいいますと、法律のほぼ一〇〇%とは申せないまでも、相当のパーセンテージのものが欧米から輸入と申しますか、欧米のものを翻訳をして日本に適用した法律だというふうに考えております。そういった観点からするならば、先ほど申し上げましたように、PL法の問題とか、あるいは行政手続法の問題等はもっと早くまねをしなければならなかったわけでございますが、これが数十年日本国ではおくれております。この辺はやはり、先生おっしゃいますように、官僚の優位と申すのでしょうか、行政の優位と申すのでしょうか、そのことがこういうふうにおくらせた一番の原因ではないか。やはり事あるごとに、特にこの法務委員会等では、司法の優位という観点からひとつお考えいただきたいと考えております。
  153. 枝野幸男

    ○枝野委員 実は、私は大学では憲法が専攻でございまして、しかも、実は人権の方ではなくて統治の方が専攻でございまして、三権分立みたいなところが専門だった者でございますが、この三権分立というような見地から、この問題、司法行政との兼ね合いで問題がある。同時に、もう一つここで我々が考えなければならないのは、立法と行政との関係で、国会が行政から出てきたものを通すか通さないか、オール・オア・ナッシングだけでやっていたら立法の意味がない。三権分立は働かない。そうした意味で、もう一つ意味で、今我々は三権分立という憲法の基本原則が問われているのかななどと思っております。  最後になりますが、猪瀬先生に、政治家も含めて今まで従来の経緯について鋭い御指摘をいただいております。今後のこの委員会審議に対して、この委員会の動かし方に対して、どういう行動をとっていくかに対して、猪瀬先生のお立場から我々法務委員会委員に対してメッセージがあればお伝えをいただければと思います。
  154. 猪瀬直樹

    ○猪瀬参考人 この情報公開法というものが一つ今重要な問題でありますが、この情報公開法と民事訴訟法改正の問題というのは、本当に一つの流れとして考えなければいけない。ちょっと大げさになりますけれども、日本の現在の厚生省の問題からいろいろな問題、動燃の問題からいろいろな問題を含めて、情報隠しということが日本国の未来を非常に危うくしている、そういう危機意識を持っております。情報公開法が既に幾度も議員立法として出てきながら、一度もついには日の目を見ないで今日に至ってきた。そして、その結果、情報公開法の審議が、情報公開法の要綱が非常におくれている。そういうおくれているその結果、民事訴訟法改正の問題が先になって、そしてそごが生じているのだという、ちょっと大げさに言えば、そういう歴史的認識の上に立ってこの民事訴訟法改正の問題を考えていただきたい。  何度も申しますが、裁判所判断権よりも所轄官庁文書提出判断権をその所轄官庁にゆだねてしまう、そういうことが今どき出てくることが信じられないです。本当にそういう意味では、お役所の時代感覚というか、そういうものが信じられないぐらいのものだというふうに考えていただいて、議員の先生方には積極的にこの問題を、情報公開法と絡めて真剣に、もう一歩も退くことなく考えていただきたい、こう思っております。
  155. 枝野幸男

    ○枝野委員 ありがとうございます。御指摘に反しないように頑張りたいと思います。どうもありがとうございました。
  156. 加藤卓二

    加藤委員長 正森成二君。
  157. 正森成二

    ○正森委員 まず最初に鬼追参考人に伺いたいと思います。  今先ほど坂上委員の方から御指摘がございましたので、私はあえて申し上げる必要はないかと思いますが、改正案の二百二十条の一号から三号、現法の三百十二条の一号から三号について、従来の解釈判例ですね、それを何ら変更するものでないということを十五日の本委員会質疑で各委員質疑に答えて、民事局長あるいは法務大臣も明言をいたしました。それについて鬼追参考人が、何の保証にもならぬ、こう言われたのですが、これはやや言葉足らずではなかろうかというのが私の見解であります。  といいますのは、もちろん条文の合理的な解釈によって物事が決まっていくので、判決によってそれが具体化されることはもちろん当然のことであります。しかしながら、裁判所判例をつくり上げていくためには、時代の流れと同様に、立法者の意思というのにはやはり一定の影響を負うというのは、我々が大学の時分に習ったところでありまして、法務大臣や民事局長が法案審議の中でどのような見解を持っておったかということは、判事の、あるいは裁判官解釈に一定の影響を与えます。ですから、解釈についてどんな悪い答弁をしても、逆に言えばそれもまた何ら関係がないのだ、そういう見解になるので、それでは法務委員会において質疑をして、少しでもいい方向に持っていこうというのがむだになる可能性があります。  ただ、もちろん私は坂上先生と同見解かどうかわかりませんが、それにしても今回の場合は余りにも国民権利義務に悪い影響を与える。したがって、疑問の余地のないように、例えば日弁連提案の趣旨に従って、あるいは権利義務のために闘っておられる多くの弁護団の提案に従って条文そのものを修正することが絶対に必要であるということで、広く各党とも協力して、そのために努力したいと考えております。これが私の立場でありますが、念のために申し上げておきますが、鬼追参考人の御意見も私のこの見解と大きく隔たるところはないのではないかというように思いたいと思いますが、それとも違いますか。
  158. 鬼追明夫

    ○鬼追参考人 口述試験の試験官から助け船を出されたような感じがいたしますが、おっしゃるとおり基本的には大きく変わるものではないと思います。  ただ一つ申し上げさせていただきたいのでありますが、私が先ほど申し上げましたのは、判例の動向はどうか。判例が変わるか変わらないかということ嘆これは個々の裁判官の御努力の積み重ねで決まることでありまして、これは立法者の意思とかどうとかということとはまた次元の違う話ではないだろうか、かように思いましたので、先ほどあのように申し上げたわけであります。
  159. 正森成二

    ○正森委員 次に伺いたいと思います。  鬼追参考人が冒頭の言明の中で、現行法の三百十二条の三号の解釈について、裁判官が非常に努力をして権利義務を守る方向に努力されたということを言いまして、東京高裁あるいは高松高裁の名前を挙げられましたが、恐らくこれは、私が午前中も言いました有名な教科書裁判ですね、あるいは伊方原発の裁判を指されたものだと思います。また、刑事裁判についても、官公庁の職務上の秘密というのは単なる形式秘では当たらないで実質秘を必要とし、それについては司法が判断すべきであるというのは確立された判例であり、また通説であると私どもは思っております。  ところが、午前中に法制審の民事訴訟法の小委員会中野参考人に伺いましたら、この方の解釈というのは、裁判官というのは、民訴法上のそれぞれの要件については判断権を持っておるけれども、広く国民に知らせるべきかどうかについては判断権がないと。余りおかしな見解だから私も二度ほど聞きましたが、二回ともそういうぐあいに答えるのですね。  これは、鬼追参考人には言うまでもないことですが、民事、刑事のこれまでの判例にも反し、かつ学界の通説にも反する極めて特異な見解であります。こういう特異な見解を持った人が、今度の七十年ぶりの民訴法の改正について、まさに一定の責任を負う法制審の民訴法の小委員会委員長になったということは、私は日本国の利益のために非常に不幸なことであるというように考えております。  それについて、きょう、今、一時間半ほど前に同僚委員の要望によりまして、法制審の議事録の要旨が出てまいりました。これを早速、私この委員会審議を聞きながら拝見しましたら、なるほど中野氏がこういうことを言うのも無理ないなということが要旨の中に出ているのですね。これは国会へ出されたものですから、鬼追参考人も日弁連出身委員からあるいは報告を受けていないことかもしれませんが、こう書いてあります。  例えば、行政庁が承認を拒絶する場合には、三権分立の観点から、行政庁の判断と異なる判断を裁判所が行うことは控えるべきであろうから、裁判所承認拒絶の当否に関する判断権を認めるのは困難ではないか。あるいは、別の人だと思うのですが、三権分立の建前からすると、司法判断に服せしめるのは不可能ではないか。こういうことを言っているのですね。  だから私は、法制審の民訴法の小委員会に出る人はその道の権威であり学者だと、少なくも漠として思っておったのですが、この人たちは、教科書裁判も知らず、伊方原発も知らず、ラストボロフ事件などでの最高裁の刑事判決も知らず、それで、全く行政権優位ということでずっと審議をしてきたということがこの議事録の中でも明々白々にわかるのですね。これについての、これは最高裁が一時間半ほど前に出してきたものですから、鬼追参考人の御見解を承りたいと思います。
  160. 鬼追明夫

    ○鬼追参考人 議員の先生方にはもう釈迦に説法のような話でございますが、三権は分立しているだけではなくて、相互に抑制、均衡、いわゆるチェック・アンド・バランスの関係にある、これは憲法の言うならばイロハでございます。これが現代の民主政治の中で、一つの言うならば公理のようなものになっていようかというふうに思うわけであります。我が国の現憲法はそれを改めて宣明をした。  とかく戦前の明治憲法下におきましては、どうしても司法が、劣位とまでは申せないにいたしましても、立法、行政に比べますとどうしても、例えば司法省の管轄にあったとかいろいろな形で、司法そのものの立場が弱かったということの反省も踏まえて、しからばどうするかということで裁判官の独立、いわゆる司法の独立、さらに違憲立法審査権を与えた、このように理解いたしております。  法令さえ違憲だどうだという判断が可能でありますから、ましていわんや、行政庁の秘密に関する判断が正しいのかどうなのかということを判断できるのは当然のことだと考えております。
  161. 正森成二

    ○正森委員 今私が言いました中で、最高裁が出されたと言いましたが、法務省がみずから自発的にお出しになったようですから、その部分については訂正をしておきたいと思います。  その次に、情報公開法との関連について、鬼追参考人は楽観も悲観もしていないという表現があったかと思いますが、必ずしも今の中間報告について、それがそのまま通ると楽観していないという意味の御見解であったと思います。  そこで伺います。この法務省が一時間半ほど前に出してきた資料を見ますと、その点についても、ほかにもありますが一つだけ読みますと、インカメラの手続行政文書にまで導入すると、司法行政との関係という大きな問題に立ち入ってしまうであろうということで、そんなことは立ち入らずに、やらない方がいいという意味のことを言っているのですね。一方、情報公開法では、今各参考人が言われましたように、不服審査会というものがあって、それはインカメラで見ることができるようになっておるということで、非常に整合性が欠けるというのはそのとおりであります。  しかし、こういう見解を法制審で言っていたことを見ますと、私がいい方に解釈すれば、不服審査会というのは司法ではない、総理府の中に置かれる、やはり一つ行政委員会みたいなものだ。だからここでは、行政庁一体の原則か何か知りませんけれども、お互いに利益をかばい合って、めったなものは公開されないだろう。しかし裁判所となるとそうはいかないという意識がこの中にあるのではないかというように思わざるを得ないのです。  そこで、この間も私は申し上げたのですが、東京新聞が、この危険性を危惧してこう言っているので、参考人の各御意見を承りたいと思います。こう言っております。五月四日の社説ですが、   国民一般にとって重要な情報文書を隠したがる官僚機構の体質は、エイズ薬害の例だけを見ても明らかだ。まして、民事訴訟証拠として公文書が必要になるのは、多くの場合、行政の責任を追及する時である。そんな場面で、官僚に公正、客観的な「秘密」判断を期待できるとは到底思えない。   この法案は、行政改革委員会情報公開部会が検討中の情報公開制度との間の整合性も欠けている。 こう指摘した上で、こう危惧を述べているのですね。   官庁文書提出拒否権が新設されたのは、現行法にもある公務員の証言拒否権と整合させるためという。このまま成立させれば、情報公開制度の骨抜きを狙う官僚機構が、今度は民訴法との整合性維持を口実に、情報公開法からインカメラ手続きを削除させようとするだろう。 こう言っているのですね。  私はこのことを、官僚が二段階戦略を持っておる、まず民事訴訟法裁判所からインカメラを奪って、そして、裁判所もこうなんだから、情報公開法でも行政不服審査会がそういうのを持つ必要はないというようになるだろう、こういうようになるんじゃないかということを指摘したのです。そういう点を考えますと、国民の知る権利情報公開を徹底させる意味からいっても、まず緒戦の 民事訴訟法で、少なくともなどと言ったら失礼ですが、日弁連が主張しておられるような修正は実現する必要があるというように私は思うのですが、今聞いておりますと、修正されることを信じておると、日弁連会長としての公的な立場から言葉を多少遠慮されたと思うのですが、やはり修正は絶対必要であるという決意を表明していただきたいと思います。
  162. 鬼追明夫

    ○鬼追参考人 今申し上げましたように私どもは信じておりますし、またそうあるべきであるというふうに考えております。これは必ずしも法曹だからそう申し上げているというわけではございません。私ども在野の弁護士といたしましては、具体的な訴訟の現場でそのときそのときに大変なバリケードに遭っているわけです。十分理解を示されて文書提出命令をお出しいただく裁判所もあれば、行政庁の主張に引きずられて申し立てを却下される裁判所もあります。その現場現場で大変な苦労をいたしておりますが、そういった日常の業務の思い、そういう原体験もございます。さらにまた、先ほど来述べておりますような、憲法から発するいろいろな議論がございます。  どの面から見ましても、少なくとも日弁連がお願いいたしておりますような修正はぜひ実現をしていただきたい、かように申し上げたいと思います。
  163. 正森成二

    ○正森委員 最後に、時間が参りましたので猪瀬参考人に一言だけ伺います。  あなたが読売新聞の三月三日にお書きになりました論壇がございます。その中で、きょうおっしゃいました日本の憲法二十一条、プレスの自由について、アルフレッド・ハッシー中佐の覚書を引用されました。  この読売新聞の中では、その中で、アメリカの建国理念だということで、合衆国憲法制定会議のメンバーで第四代大統領になったジェームス・マディソンの言葉を引用しておられます。  その中で、「人民に情報を与えず、あるいは情報獲得の手段を与えないでおいて、人民の政府だなどというのは道化芝居の序幕か悲劇の序幕かのいずれかである。いやその両方であろう。」こう言って、「自分たち自身が統治者であろうと欲する国民は、知識が与える力で自らを武装しなければならない」という言葉を引用しておられます。  この点について、もう時間が残り一分足らずになりましたので、簡単に御意見を承って、私の質問を終わります。
  164. 猪瀬直樹

    ○猪瀬参考人 今読んでいただいたので改めてつけ加えることはわずかですが、情報の故意の不開示ということがありますね。さらにそこから突き詰めますと、公務員の守秘義務に罰則規定があるのであれば、この間のHIV問題のような情報の故意の不開示にも、わざと見せない、そういうものに対しても罰則規定が必要だろうというふうに考えております。そのぐらい考えていかないと、情報公開の問題を含めて、この民訴法の改正の問題は解決に至らないだろうというふうに思います。  それが、この憲法の趣旨からずっと敷衍した僕なりの結論でございます。
  165. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  166. 加藤卓二

    加藤委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言お礼を申し上げます。  参考人各位には貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。  回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十三分散会