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1996-05-15 第136回国会 衆議院 法務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年五月十五日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 加藤 卓二君    理事 太田 誠一君 理事 佐田玄一郎君    理事 志賀  節君 理事 山田 英介君    理事 山田 正彦君 理事 山本  拓君    理事 細川 律夫君 理事 枝野 幸男君       奥野 誠亮君    塩川正十郎君       白川 勝彦君    萩山 教嚴君       蓮実  進君    古屋 圭司君       横内 正明君    阿部 昭吾君       貝沼 次郎君    左藤  恵君       星野 行男君    山口那津男君       佐々木秀典君    坂上 富男君       正森 成二君    小森 龍邦君  出席国務大臣         法 務 大 臣 長尾 立子君  出席政府委員         法務大臣官房長 頃安 健司君         法務大臣官房審         議官      山崎  潮君         法務大臣官房司         法法制調査部長 永井 紀昭君         法務省民事局長 濱崎 恭生君         法務省刑事局長 原田 明夫君         法務省訟務局長 増井 和男君  委員外出席者         内閣官房内閣参         事官室内閣参事         官       大谷 泰夫君         人事院事務総局         職員局職員課長 佐久間健一君         行政改革委員会         事務局主任調査         員       藤井 昭夫君         総務庁行政管理         局行政情報シス         テム企画課長  松村 雅生君         会計検査院事務         総局第一局司法         検査課長    小林 誠治君         最高裁判所事務         総局総務局長  涌井 紀夫君         最高裁判所事務         総局経理局長  仁田 陸郎君         最高裁判所事務         総局民事局長  石垣 君雄君         法務委員会調査         室長      河田 勝夫君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十五日  辞任         補欠選任   橘 康太郎君     蓮実  進君   熊谷  弘君     山口那津男君   左藤  恵君     星野 行男君 同日 辞任      補欠選任   蓮実  進君     橘 康太郎君   星野 行男君     左藤  恵君   山口那津男君     熊谷  弘君     ――――――――――――― 四月二十五日  婚外子差別を撤廃する民法等改正に関する請願  (緒方克陽紹介)(第二〇四五号)  同(近江巳記夫紹介)(第二〇四六号)  同(佐藤泰介紹介)(第二〇八三号)  同(寺前巖紹介)(第二〇八四号)  同(楢崎弥之助紹介)(第二〇八五号)  同(細川律夫紹介)(第二〇八六号)  同(中島武敏紹介)(第二一二一号)  同(濱田健一紹介)(第二一二二号)  同(早川勝紹介)(第二一七三号)  夫婦別姓選択制法制化に関する請願細川律夫  君紹介)(第二〇八七号)  同(阿部昭吾紹介)(第二一二三号)  同(武山百合子紹介)(第二一二四号) 五月十日  婚外子差別を撤廃する民法等改正に関する請願  (大野由利子紹介)(第二二二六号)  同(大畠章宏紹介)(第二二八二号)  同(岡崎トミ子紹介)(第二二八三号)  同(森井忠良紹介)(第二三一九号)  夫婦別姓民法改正案反対に関する請願(石井  一君紹介)(第二二五六号)  夫婦別姓選択制法制化に関する請願渡海紀三  朗君紹介)(第二二五七号)  同(岡崎トミ子紹介)(第二二八四号)  同(加藤万吉紹介)(第二二八五号)  同(田口健二紹介)(第二二八六号)  同(細川律夫紹介)(第二二八七号)  同(池田隆一紹介)(第二三二〇号)  同(細川律夫紹介)(第二三二一号)  同(岩田順介紹介)(第二三三三号)  同(細川律夫紹介)(第二三三四号)  同(辻一彦紹介)(第二三五九号)  同(細川律夫紹介)(第二三六〇号)  同(野坂浩賢紹介)(第二三七九号)  治安維持法犠牲者に対する国家賠償のための法  制定に関する請願岩佐恵美紹介)(第二三  〇四号)  同(穀田恵二紹介)(第二三〇五号)  同(佐々木陸海紹介)(第二三〇六号)  同(志位和夫紹介)(第二三〇七号)  同(寺前巖紹介)(第二三〇八号)  同(中島武敏紹介)(第二三〇九号)  同(東中光雄紹介)(第二三一〇号)  同(不破哲三紹介)(第二三一一号)  同(藤田スミ紹介)(第二三一二号)  同(古堅実吉紹介)(第二三一三号)  同(正森成二君紹介)(第二三一四号)  同(松本善明紹介)(第二三一五号)  同(矢島恒夫紹介)(第二三一六号)  同(山原健二郎紹介)(第二三一七号)  同(吉井英勝紹介)(第二三一八号)  同(網岡雄紹介)(第二三三五号)  同(岩田順介紹介)(第二三三六号)  同(遠藤登紹介)(第二三三七号)  同(小泉農一君紹介)(第二三三八号)  同(五島正規紹介)(第二三三九号)  同(穀田恵二紹介)(第二三四〇号)  同(左近正男紹介)(第二三四一号)  同(志位和夫紹介)(第二三四二号)  同(中島武敏紹介)(第二三四三号)  同(濱田健一紹介)(第二三四四号)  同(東中光雄紹介)(第二三四五号)  同(藤田スミ紹介)(第二三四六号)  同(吉井英勝紹介)(第二三四七号)  同(左近正男紹介)(第二三六一号)  同(佐々木陸海紹介)(第二三六二号)  同(関山信之紹介)(第二三六三号)  同(矢島恒夫紹介)(第二三六四号)  同(山原健二郎紹介)(第二三六五号)  同(小森龍邦紹介)(第二三八〇号)  同(辻一彦紹介)(第二三八一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月二十六日  神戸地方法務局山崎出張所統廃合白紙撤回に  関する陳情書外一件  (第二  二九号)  民事訴訟法改正に係る公文書秘密扱い反対  に関する陳情書外六件  (第二三〇号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  民事訴訟法案内閣提出第八四号)  民事訴訟法施行に伴う関係法律整備等に関  する法律案内閣提出第九三号)      ――――◇―――――
  2. 加藤卓二

    加藤委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所涌井総務局長仁田経理局長石垣民事局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 加藤卓二

    加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ――――◇―――――
  4. 加藤卓二

    加藤委員長 内閣提出民事訴訟法案及び民事訴訟法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  両案審査のため、来る十七日、参考人出席を求め、意見を聴取することとし、その時間及び人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 加藤卓二

    加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  6. 加藤卓二

    加藤委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。太田誠一君。
  7. 太田誠一

    太田(誠)委員 民事訴訟法改正案につきまして本当は順序よく質疑をするべきところでございますけれども、ちょっと時間の配分が私も自信がないものですから、まず、話題になっております部分からスタートをさせていただきたいと思います。  いわゆる文書提出命令ということでありますけれども文書提出命令に関しては、これはどういうふうに考えるか、あるいはどういうふうな枠組みで考えるかということをまず最初に申し上げたいわけでありますけれども、これは、我が国憲法に基づく政治行政システムの全体をまず頭の中に置いて、その政治行政システムの中の情報流れというような視野でこの問題をとらえる必要があるのではないかというふうに思っております。  まず、憲法の本質は、人によっていろいろでありましょうけれども、私は国民主権であるというふうに思っております。国民主権であるので、そこで、その主権者たる国民国会負託をしておるというところが一番根本である、すべての始まりは主権者たる国民国会負託をしておるというところにあるというふうに思うのであります。  それで、国民国会負託をしておるのは立法権であります。すなわち、国民が、自分たちがみずから従わなければならないルール国会にゆだねてそこでルールづくりをさせる、主権者たる国民が、みずからが従うべきルール国会負託をして立法をさせるということであろうかと思います。そして国会立法をして、そして、その結果である法律がそこにできるわけでありますけれども、その法律に基づいて行政府執行権が与えられるということだと思います。そして同時に、それらの法律をよりどころとして司法判断という仕事がそこに出てくるわけでありまして、また司法は、判断と同時に、判断の結果として執行もすることになるわけでございます。  そうすると、その考えるべき構図というものは、まず国民があって、そして国民から負託を受けた国会があって、国会立法の結果執行権を与えられる行政府がある。そして、同じように国会から法律がもたらされ、それによって判断執行を行う司法権司法というものがここに存在する、国民-国会-行政司法、こういうふうな構図を頭に置いて物事を考えなければいけないのではないかというふうに考えております。  そういう権限委譲主権者から国会へ、そして国会立法をする結果、その執行権あるいは判断をする権限というのが司法の方に与えられてくる、こういう構図を、権限委譲していくその順序というものを思い描くということが適当ではないかというふうに思いますが、民事局長、どう思いますか。
  8. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 我が国憲法のもとにおける主権者たる国民、それから国会行政司法、それぞれの関係についての御高見と承りましたが、私ども、そういう立場からお考えを申し上げる立場にないことを御理解賜りたいと思います。  いずれにいたしましても、それらのそれぞれの三権のよって立つ根源が国民であり国民主権であるということについては、そのとおりであろうというふうに理解しておるところでございます。
  9. 太田誠一

    太田(誠)委員 こういう権限をゆだねるという一つ順序流れというものと、もう一つの注目しておくべき流れは、任命権罷免権流れだと思います。これは、権限の委任とは少し違う形になろうかと思います。  まず、主権者たる国民選挙によって国会議員を選ぶわけでございます。国会構成メンバー選挙で選ばれるわけでありますから、言ってみれば、国会議員のあるいは国会全体の任免権国民にあるということであろうかと思います。そして、国会議員以外の、あるいはこれは、国政の場合は国会議員だけでありますけれども国会議員以外の公務員はどうかというと、憲法十五条には、公務員任免権国民にあるんだと、国民に固有の権利であるということが憲法十五条には書いてあるわけでございます。めったに引用されることがない十五条でありますけれども、そういうととが書いてあるわけであります。そこで、選挙で選ばれる国会を通じて、結局のところ行政機関司法機関も、国民任免権国会を経由した国民任免権のもとにあるということが言えるのではないかというふうに思います。  ただ、それが権限委譲ということから見ると少し違うというのは、まず国会は互選によって内閣総理大臣指名をする。そして次に、内閣総理大臣国務大臣任命し、また罷免もできる。総理大臣国務大臣任免権者であるわけでございます。一方、国務大臣所管行政機関公務員任免権を究極的には持つことになるわけであって、したがって、国民公務員任免権を持っておるという憲法十五条の考え方は、このようにして、国会を経由し、そしてまた内閣総理大臣を経由してすべての公務員に及んでおるのではないかというふうに思うのでございます。  そしてまた同時に、国会指名をされました内閣総理大臣は、最高裁の判事を初め、すべての裁判官任命権を持つことになるわけであります。ただし、裁判官任命権はあるけれども罷免権内閣総理大臣にはなくて国会にあるということではないかと思います。一つ一つ言葉遣いを厳格に言えば、いやここは天皇だとかいろいろあるかもしれませんけれども、全体の任免権流れというのはこういうことに理解をしてよろしいですかね。
  10. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 これも私ども所管の問題ではございませんけれども、大筋において委員指摘のとおりであるというふうに理解をいたしております。
  11. 太田誠一

    太田(誠)委員 そこで、今は権限委譲とそれから任免権ということの流れについて所見を申し上げましたけれども、もう一つ、今まさにこれから議論をいたします情報の問題がございます。  それは、先ほどの、国民があって国会があって、国会から行政司法にその権限が派生しておるという、そのような構図で言えば、国会法律によって行政執行権を与える、その執行権の中にその行政対象への調査権検査権あるいは報告を徴取する権限などの監督権が含まれております。監督権を持っておるというのは、国会はどこに監督権を持っているかというと、行政司法に対しては一応監督権があるとも見られるわけでありますけれども、はっきりした監督権というのは、行政行政対象に対する監督権を持っておるということに尽きると思うのでございます。司法は、私の理解ではそういう監督権のようなものは持っていない。  そういう調査権検査権報告徴収権といった監督権があるがゆえに、必然的にこの国の、どこの国でもそうでありますけれども行政に、三権分立とはいいながら行政情報が集中をしてくる、集積をしてくるということになろうかと思います。  そういうふうに言ってよろしいでしょうか。
  12. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 今三権関係についての御高見を賜ったわけでございますが、我が国国会内閣それから最高裁判所、それぞれが三権ということで独立した立場を認められておるということでございますが、国会行政との関係につきましては、御指摘のとおり、議院内閣制のもとで国会行政に対して国政調査権等による監視機能を持っているということであることは御指摘のとおりであろうと思っております。  なお、国会司法との関係ということにつきましては、これは、先ほど来御指摘のとおり、国会負託に基づく内閣において裁判官任命がされる、抽象的に、大ざっぱに申しますと、そういう関係にある。また、裁判官罷免については国会権限を持っている。そういう関係で、一定の国会あるいは内閣からの関与というものがあるわけでございますけれども、それを越えた関係においては、国会司法を直接監視、監督するという関係にはない、そういう面においては国会行政との関係とは異なった面があるのではないか、そういうふうに理解をいたしているところでございます。  なお、最後の御指摘の、情報行政に集中するという御指摘でございますが、それぞれ国会司法情報を持っているわけでございますけれども、それは、事実の問題として、行政情報量というのは大変大きなものであるということは私ども一般論として認識しているところでございます。
  13. 太田誠一

    太田(誠)委員 そこで、国民三権の間を結ぶあるいはその間を調整する法律がさまざまに頭の中では考えることができるわけでございます。  例えばこの間、中間報告が出ました情報公開法(仮称)というものは、さっきの構図で言うと、国会を飛ばして、国民行政との間を直接結ぶ線というものを思い描いておられるようで、国会はそこでは飛ばされているということでございます。そういう意味では、私は情報公開法についてはいろいろ申し上げたいことがあるんだけれども、しかし大変そういうことに頭がいった、特に情報公開法については、その要綱なのか、中間報告の一番最初に「国民主権」という言葉が登場するわけでございまして、大変新鮮な驚きを持ってその言葉を見たわけであります。  なぜかというと、いずれにせよこの行政改革委員会事務局役所の方がやっておって、文章も役所が書いたんだろう、役所国民主権ということを言うというのは大変珍しいことで、日ごろは全然忘れているのではないかとか、あるいは忘れさせようとしているのではないかというふうなことを思っておりましたので、大変新鮮な驚きがありました。しかし、そういう意味ではよくやっているというふうに思います。いろいろ問題はあるけれども、よくやっておられるというふうに思います。  そして、先ほどの構図で言うと、民事訴訟法刑事訴訟法証言文書提出にかかわる部分というのは、この構図で言えば、国民があって国会があって行政司法があって、行政司法との間を結ぶ線をどうするのかという、そういう位置づけになろうかと思うのでございます。その線は、民事訴訟法刑事訴訟法証言文書提出というものが一つ律するルールになっておる。  それからもう一つ、ではほかの線はどうなのかというと、国会行政を結ぶルールというのは何かというと、これは具体的に言えば私は議院証言法だけではないかと思います。国会法とかいうのがあるけれども、それ自体は具体的に両者の関係を律する有効なルールにはなっていないというふうに思うのでございます。  そういうふうに、議院証言法というものがあり、そしてこの行政司法を結ぶ民事訴訟法刑事訴訟法というのがあるというふうな理解というか、そういうふうに整理をいたしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  14. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 先ほど来三権関係についていろいろお話を承っているところでございますが、その中で行政司法との関係ということについて御指摘がございました。  例えば、行政庁の処分に不服がある場合に行政事件訴訟法に基づいて抗告訴訟等を起こす、それは、裁判所行政のあり方についてそれを直接の審理の対象として判断をするという関係一つあるわけでございます。それと、今回問題になっております民事訴訟法における証言義務あるいは文書提出義務、今回の改正案で問題になっている文書提出義務、それから刑事訴訟法における押収あるいは証言拒絶、そういう場面の問題とは若干異なる面が、若干といいますか、基本的に異なる面があるものであるというふうに思っております。  民事訴訟法は、私的紛争解決する、その解決裁判所によって行われるべきである、こういうことになっているわけでございますが、その民事紛争解決の場において証拠としてある証言が必要であるという関係にある場合に、他方、行政立場としては、それが公務上の秘密に属する事項であればそれをみだりに開示してはならないという行政としての立場がある。その裁判所司法作用要請と、それから行政立場要請と、その関係をどう調整するかという問題であるというふうに考えておりまして、これは決していわゆる縦の関係ということではなくて、横の関係という位置づけがされるべきものではないだろうかというふうに思っているわけでございます。  そういう関係において、現行法上の刑事訴訟法規定あるいは民事訴訟法証言拒絶場面規定というのは、これはそれぞれの権限調整の問題として、公務上の秘密秘密として保持すべきかあるいは開示すべきかということは、当該行政について責任と権限を負ういわゆる監督官庁行政庁が決定するんだという基本構造のもとにその間の調整が図られているというふうに考えているところでございます。
  15. 太田誠一

    太田(誠)委員 文書提出命令というこのテーマに関しては、常に公務員守秘義務という言葉がついて回るわけであります。  そこで、人事院にお聞きをいたしますが、公務員守秘義務は、国家公務員法の百条に規定されているということだと思いますが、その考え方といいますか、それを御説明をいただきたい。
  16. 佐久間健一

    佐久間説明員 国家公務員法第百条にいわゆる守秘義務という規定がございます。これは、先ほど法務省の方からもお話がありましたとおり、守るべき義務として公務員に課されている重要な義務でございますけれども、一方、百条で言う秘密というものがいかなるものであるかということについてはいろいろな説が実はございます。  ただ、昭和五十二年の十二月十九日の最高裁の判決において「国家機関が単にある事項につき形式的に秘扱いの指定をしただけでは足りず、秘密とは非公知の事項であって、実質的にもそれを秘密として保護するに値すると認められるものを言うと解すべきである。」ということですので、私どもとしても、単に形式的に秘密であるということではなくて、実質的に秘密として取り扱うべきそういう秘密公務員として守る必要があるということだろうと考えております。
  17. 太田誠一

    太田(誠)委員 今言われたのは、形式秘という言葉実質秘という言葉理解してよろしいわけですね。
  18. 佐久間健一

    佐久間説明員 今先生が御指摘になりました。語の問題は、我々として確定的に実質秘形式秘という用語で統一されているということではありませんで、いわゆるそういう最高裁の判例によるような考え方を実質的な秘というふうに呼んでいるということでございます。
  19. 太田誠一

    太田(誠)委員 それでは国家公務員法においては、守秘義務対象となっていることをどこかでしゃべらざるを得ないとか、あるいは文書にせざるを得ないというふうになったときには、それは公務員としてはどうするのですかね。だれの許可を得るとか……。
  20. 佐久間健一

    佐久間説明員 今先生指摘のいわゆる秘密を発表するというそのことでございますけれども国家公務員法の百条の二項に規定がございます。「法令による証人、鑑定人等となり、職務上の秘密に属する事項を発表するには、所轄庁の長一退職者については、その退職した官職又はこれに相当する官職所轄庁の長)の許可を要する。」このようになってございます。
  21. 太田誠一

    太田(誠)委員 戦前はその所轄庁という言葉本属長官と言っておったというふうにお聞きしておりますが、よろしいですか。
  22. 佐久間健一

    佐久間説明員 戦前官吏については、勅令官吏服務紀律というものがございまして、その第四条に現在の国家公務員法百条に相当する規定がございます。その中では、ただいま申し上げました「所轄庁の長」に相当する表現として、同じように「本属長官許可ヲ要ス」という規定がございます。
  23. 太田誠一

    太田(誠)委員 そこで、所轄庁と言うにせよ、本属長官でもいいわけでありますけれども、それはもっと具体的に言えばその公務員任免権者であるというふうに思ってよろしいのでしょうか。
  24. 佐久間健一

    佐久間説明員 ほとんど御指摘のとおりになるだろうというふうに思います。
  25. 太田誠一

    太田(誠)委員 そこで、公務員守秘義務について、それを解除するというふうなことができるとすれば、任免権者であるということになるわけでございます、これはまた後で触れますけれども。  この公務員守秘義務に関して、内閣参事官室昭和四十七年五月に「秘密文書等の取扱いについて」という服務心得のようなものを出しておられるわけでございます。これは各省に対して出したというふうにお聞きをいたしております。その骨格について、簡潔にちょっと教えていただけますか。
  26. 大谷泰夫

    大谷説明員 昭和四十七年五月二十六日付の首席内閣参事官通知について御説明を申し上げます。  秘密文書の管理に関しましては、昭和四十年四月十五日の事務次官会議におきまして「秘密文書等の取扱いについて」という申し合わせが行われておりました。各省庁は、これに基づきまして文書取扱規定を整備して、秘密文書の取り扱いに万全を期しておったところでございますが、その後、沖縄返還交渉に関する外務省秘密漏えい事件を契機といたしまして、秘密文書の取り扱いに関し種々議論が行われました。  そのため、昭和四十七年五月二十六日に、先ほど申しました首席内閣参事官名をもちまして、各省に対しまして、四十年の事務次官会議の申し合わせの趣旨を徹底するようにということを申し上げたところでございます。  またその際に、各省庁の実情を勘案いたしまして、各省の秘密を分類いたしまして、国家機関における各種の秘密の基準というものを参考までに作成し、各省庁にお示しいたしたところでございます。
  27. 太田誠一

    太田(誠)委員 どういうものを秘密というのかということをそこで例示をされたようにお聞きをしておりますが、四項目あるらしいと。  外交、防衛という、国家の安全にかかわるものが一つ。それから、個人のプライバシーあるいは企業の利益にかかわるものというのが二つ目のカテゴリー。そして三番目はその職務の特殊性、警察の捜査とかあるいは監視船の配置とか、そんなことだというふうに聞いております。三番目が職務の特殊性。四番目が、為替相場のように、後に秘密にする必要はないけれども一定期間は秘密にしておく必要があることというふうに、大体四項目あって、それぞれ例示がしてある、こういうふうなものだというふうに理解しています。それでよろしゅうございますか。
  28. 大谷泰夫

    大谷説明員 ただいま御指摘のとおりでございます。
  29. 太田誠一

    太田(誠)委員 そしてこれは、秘密だと言うぐらいだから、こういうことが秘密だと言っていることも秘密になるんだと思います。思いますが、それを受けて各省において、これは極秘だとか秘密だとかいう分類をする省内の規約というのか、規律というのか、そういうものをそれぞれお決めになっておるというふうにお聞きをしております。それもしゃべつてはいけないということであれば別ですけれども、官房長。
  30. 頃安健司

    ○頃安政府委員 お答えします。  法務省におきましても、文書取扱規程でその旨規定しております。
  31. 太田誠一

    太田(誠)委員 すなわち、官邸を中心にして各省はそれぞれ現実の世界で行政をしておるわけでありますから、余りしゃくし定規にいろいろなことを言っても、公務員守秘義務ということを言っても、これは仕事にならないわけでございますから、その中での秘密の性格あるいは秘密のレベルというものを定義をされるというのは当然のことであります。政府内ではそういうことになっておるということだと思います。  そこで、行政改革委員会中間報告のことを今余り根掘り葉掘り聞いても気の毒だと思いますけれども、今描いておるようなこういう構図の中では、話す材料がほかに何もないものですから、恐れ入りますが、中間報告について、特に不開示、開示しない情報というものを、中間報告ではどういうものが列挙されたかということを教えていただければありがたいと思います。四
  32. 藤井昭夫

    ○藤井説明員 御指摘行政情報公開部会中間報告、四月二十四日に出されたものでございますが、この第六に「不開示情報」といたしまして、一番目に個人に関する情報、二番目に法人その他の団体に関する情報、三番目に、国の安全を害するおそれがあるとか、他国もしくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ、通貨の安定が損なわれるおそれ、他国または国際機関との交渉上不利益をこうむるおそれがある、そういったいわゆる外交、防衛関係情報、四番目は犯罪の予防と捜査関係情報、五番目は、いわば行政内部とか機関相互の審議、検討等の途中の情報、六番目は、その他もろもろの、行政運営上公開すると業務の適正な執行に支障が生ずるおそれがある情報、こういったものの類型を挙げてございます。
  33. 太田誠一

    太田(誠)委員 今の情報公開法(仮称)に盛り込まれました六項目は、内閣参事官室の、先ほど申し合わせと言われましたけれども、その四項目とそれぞれ対応があるわけでございます。  一の個人情報、二の法人、企業は、行革委の情報公開法中間報告の分は内閣参事官室の二番目のカテゴリーに入るわけでありまして、三番目の外交、国防というのは内閣参事官室の第一番目のカテゴリーに入るわけでございます。それから四番目は先ほどのカテゴリー三の職務の特殊性といったことに共通点が多かろうと思います。  中間報告に出てくる項目で内閣参事官室のところにないのは、行政機関内部で協議されたこととかあるいは行政機関相互の間で協議されたというふうなことを秘密とする、あるいは監督検査などの結果を秘密とする、多少そこはダブりがあると思うのですけれども、監督検査結果をあれするというのは、厳密に言えば、内閣参事官室の想定したものよりも少し秘密の範囲が、五と六については広がっておるのではないかと思います。  別にきょうは情報公開法のことを議論するわけではありませんので、ただ、対応関係が十分にあるということだけを指摘させていただきたいと思います。  ですから、人間の考えることは、いつの時代もそう変わらないわけでありまして、昭和四十年とか四十七年に官邸で各省代表が話し合ったことと、今度の情報公開法で衆知を集めて協議をされた結果というのは、人によってそう違ったことを考えるわけではないということがわかるわけでございます。いずれこのような情報公開についての制度が整備されればこの辺は、全部が入るとは限らないけれども、いずれも常識的にだれもが納得のできる不開示、秘密の基準というものはこういうものであろうかというふうに想像するわけでございます。  そこで、これはちょっとだれに聞いていいかわからないのですが、申しわけないのですけれども人事院にお聞きします。  例えば内閣参事官室の通達というか、取りまとめたものの分け方というものと、先ほどおっしゃった、実質秘形式秘と俗語で申し上げますけれども、そういうことは関係があるとお考えになりますか。個人的な御所見で結構なんですけれども
  34. 佐久間健一

    佐久間説明員 突然の御質問で私も準備が十分できておりませんけれども、実質的な秘密なのかどうかというのは、先ほどまさに説明申し上げましたとおり、各役所が形式的に秘という判こを押したから秘である、そういうものではないという意味での関係でございまして、では具体的にどこまでいけば実質になるのかどうかということについては、それは個々の問題を議論しないと一般的にはなかなか申し上げづらいというふうに考えます。
  35. 太田誠一

    太田(誠)委員 まことに申しわけない。きょうは皆さんに予告なしで質問しておりますので、個人的な御所見を言っていただければいいということで。  そこで、それはあえて言うならば、実質秘形式秘という分け方と、この役所、政府部内で、今内部で一つの規律としてやっていることのこの四項目とか六項目とかいうこととは直接の関係はもちろんないわけですけれども、本当に秘密にする必要があるのかどうか。ただ単に偉い人がそう思い込んでおって、いつまでたっても秘とか部外秘とかいう判こを押したがるということを形式秘と言い、本当に秘密にしなければいけないものに実質秘というような言葉を使うのであれば、そこには極めて密接な関係がある、一致はしないかもしれないけれども極めて密接な関係があるというふうに思うのですけれども、個人的にいかがですか。
  36. 佐久間健一

    佐久間説明員 恐らく、その当該省庁において判断される場合に、それが形式的に秘扱いにすべきだということと、実質的にやはり秘なんだということが通常は一致することが多いだろうというふうには思いますけれども、後になってこれがどうだったのかというときに、いや実際的には形式的な重みしがなかったのではないかということが後々わかるということも、それはあり得るだろうというふうには考えております。
  37. 太田誠一

    太田(誠)委員 よくわかりました。  先ほど人事院の方への御質問で、所轄庁の長、あるいは戦前言葉で言うと本属長官というのは任免権者であるという言葉がございました。  そこで法務省の方にお伺いをいたしますけれども、この民事訴訟法で言う監督官庁というのは一体何なのか、一体どういう人なのかということをお聞きをいたしたいと思います。
  38. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 当該監督官庁という言葉は、現行法証言拒絶に関します民事訴訟法二百七十二条一項で用いられている用語でございます。  これは、公務員の職務上の秘密に属する事項を開示するかどうかということの判断権を付する者ということで用いられているわけでございますので、その意味するところは、その問題について権限を有する者を指す用語として用いられているものと考えておりますが、具体的場面においてどういうものがそれに該当するかということは、現行法の解釈の問題といたしまして、それぞれの公務員に適用される個別の公務員関係法令の規定によって定まるものというふうに考えられているところでございます。  したがいまして、問題となっております職務上の秘密が国家公務員秘密である場合には、先ほど来お話に出ております国家公務員法百条二項の規定によって所轄庁の長というものがこれに該当しますし、地方公務員秘密であるという場合には、地方公務員法三十四条二項の規定によりまして任命権者がこれに該当することになるものと考えられております。  民事訴訟法では、それらを総称する用語として当該監督官庁という用語を用いているというふうに理解をいたしております。
  39. 太田誠一

    太田(誠)委員 その監督官庁というのは、国家公務員の場合には任免権者では必ずしもないということですか。
  40. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 国家公務員法の解釈につきましては私ども所管ではないわけでございますが、先ほど人事院の方から御答弁のありましたように、実際上、所轄庁の長というのは任命権者がこれに該当するのが一般であろうという御答弁であったように伺っております。  そういう意味では、一般に任命権者がこれに該当するということが多いのだろうと思いますが、厳密にすべての場合がそうであるかどうかということにつきましては、個々の場合においてその任命権者と当該職務について監督権限を持っている者とが違っているという場合があるのかどうかということは、私ども、すべての場合につまびらかにしておりませんので、御容赦願いたいと思います。
  41. 太田誠一

    太田(誠)委員 そこで、この監督官庁という言葉は実は私は大変抵抗のある言葉であって、つまりこの国の法体系は、さまざまな例外はあるにせよ、おおむね国家公務員の場合には主務大臣に権限をゆだねる、国会法律を定めるときに主務大臣にその権限を与えるということになっておると思うのでございます。そして、その主務大臣に権限を与えるということと、その主務大臣がその所管の官庁の公務員全体の任免権を持っておるということが、先ほどから申し上げております国民主権、そして国会立法権をゆだねておる、そこから行政権限が発生をしておるという国民主権という観点から見れば、そこは私は外せないのではないかというふうに思っております。  そこで、何でこんな言葉が使われておるのか僕はわかりませんが、国家公務員法所轄庁の長という言葉は、これは戦前勅令ですか、本属長官という言葉はそのときは近代的な言葉に直したのだというふうに理解をいたしますが、民事訴訟法監督官庁という言葉は、実はもう戦前、それこそ大正十二年から使われておるという言葉でございます。  そうすると、言いたいことは、要はこれらの国家公務員法に言う所轄庁の長という言葉にせよ、民訴法に言う監督官庁という言葉にせよ、これは旧憲法のときの言葉遣いであって、新憲法になって国民主権になったというとき以後は、これは国民が直接選出をすることのできる都道府県知事とか、あるいは市町村長とか、あるいは国会議員たる閣僚とか内閣総理大臣とか、国民が選ぶことのできる、国民任命権を持っている人に公務員任命権を与える。冒頭に申し上げました憲法十五条の精神はそういうことにあるのではないかというふうに思うのでございます。  だから、ここで言葉を正確に使うとすれば、私は、監督官庁という言葉のかわりに主務大臣ないしは、首長という言葉法律言葉ではないのですか、首長というのか、市町村長とかいうふうに書けばいいというふうに思うのでございます。それはだらだらして長ったらしいじゃないか、主務大臣及び首長――市町村長というふうに言えば長ったらしいじゃないかというふうに反論があるかもしれませんけれども我が国法律の中にはだらだらと長い名前は幾らでもあるわけでございます。  私が覚えておりますのは、大蔵省の出先機関のことを総称するのに財務局及び福岡財務支局というふうに、財務支局というのは日本じゅうに福岡にしかないものですから、財務局及び福岡財務支局という非常に長ったらしい名前をつけるわけでございます。正確を期そうとする法律の条文の中ではそういう言葉を使っていいわけでありまして、ちっとも不便はないと思うわけでございます。そこはどうお考えですか。
  42. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 任命権者がだれであるべきかということについての先生のお考え方を踏まえての御質問と承りましたが、個々の公務員任命権者がいかにあるべきかということは私ども所管するところではないわけでございますけれども、現行の国家公務員法規定によりますと、国家公務員法五十五条の一項本文におきまして「任命権は、法律に別段め定のある場合を除いては、内閣、各大臣」括弧は省略いたしますが、「会計検査院長及び人事院総裁並びに各外局の長に属するものとする。」という規定がございますが、二項で「前項に規定する機関の長たる任命権者は、その任命権を、その部内の上級の職員に限り委任することができる。」という規定があると承知しております。  また、地方公務員法におきましては、地方公共団体の長ということだけではなくて、議会の議長とか選挙管理委員会あるいは代表監査委員、教育委員会、人事委員会、公平委員会並びに警視総監、道府県警察本部長、市町村の消防長、その他法令または条例に基づく任命権者というような規定がされているところでございまして、それぞれの法令あるいはこれらの法律及び下位法令等によって、任命権者は具体的な場面においてはさまざまであるということであるというふうに理解しております。  監督官庁という言葉が今の時代にマッチした用語であるかどうかという点については、いろいろ御意見があろうかと思いますが、この監督という言葉は、具体的に当該問題になっている公務員の職務を監督する権限を有している者という意味の監督ということでございます。もとより公務員任命権は、根源は国民に由来するわけでございますけれども、具体的に個々の公務員にはだれが任命権を持ち、したがって監督権限を持っているかということは、今申しましたように現実問題としては具体的な場合に応じてさまざまでございますので、民事訴訟法規定としてはそれらを総称する一定の概念を用いざるを得ない。  そこで、改正法案につきましても、現行法が用いている、あるいは刑事訴訟法でも用いている当該監督官庁という言葉を踏襲させていただいているわけでございます。この用語につきましては、言葉を変えるということについて部内的には検討はさせていただいたわけですが、しかしなかなかこれにかわる適切な言葉がないということ、また概念を変えれば意味が変わったのかというようなことで混乱を招くおそれもないではないというようなことから、この用語を踏襲させていただくことにしているわけでございまして、御理解を賜りたいというふうに思います。
  43. 太田誠一

    太田(誠)委員 これは国家公務員については、主務大臣という言葉を使って恐らく支障はほとんどないと思うわけであります。主務大臣がいない独立した機関というものも確かにあるわけでありますけれども、それは何か適当に処理できるのではないか、主務大臣等と言ってもいいと思いますけれども。  そのようにしてだれなのかということを明示しておかないと、監督官庁という抽象的な言葉を使うと、本来は想定しておるのは私は中央の省庁で言えば担当大臣だろう、主務大臣だろうと思っておるのですけれども、実は大臣の仕事なのに濱崎局長がおれの仕事だと思うかもしれないという心配もあるわけでありますし、それから課長は自分のことだと思うかもしれないし、係長も自分のことだと思うかもしれない。そこは明示しておかないと、だれの権限だかわからないということでは困るのだと思うのでございます。えてして我が国の場合には、大臣の権限を実は自分の権限だと思っている人も中央の省庁には大勢おられて、大変戸惑うことが多いわけでございます。  それはよろしいのですけれども公務員守秘義務という話を続けさせていただきます。刑事訴訟法に、犯罪があると思料される場合に告発の義務があるというようなことが規定されておると思うわけでございますが、公務員守秘義務刑事訴訟法のその規定との関係について刑事局長にお聞きをしたいと思うのです。
  44. 原田明夫

    ○原田政府委員 お答え申し上げます。  先ほどからの委員の御指摘の点は、さまざまな法律に定められております規定のいわば法益と申しますか、その法律規定が達成しようとする目的に関するさまざまな事態を想定して、それについての御議論だと承りました。  ただいま御指摘の、公務員に一般的に課せられております守秘義務の問題と、それから公務員が職務を遂行するに当たりまして犯罪がありと思料するに至った場合の刑事訴訟法上の告発の義務という点は、確かに委員指摘のとおり相互に関連してくる場合が生じ得るであろうというふうに考えるわけでございます。  刑事訴訟法二百三十九条二項は、ただいま申し上げましたように、公務員はその職務を行うことによりまして犯罪があると思料するときは告発しなければならないと定めてございますので、この要件を満たす場合には原則として告発する義務が課せられていると考えられます。  一方、先ほど来御指摘、また答弁ございましたように、国家公務員法百条の公務員守秘義務は、国家公務員または国家公務員であった者がその職務上知ることのできた秘密または職務上の秘密に属する事項をゆえなく漏らすことを禁止する趣旨の規定でございます。その相互の関連ということになるわけでございますが、その解釈に当たりましては、刑事訴訟法上の所定の告発義務の履行として、いわばその公務員が正当な手続によりまして知り得た、職務を行うことによって発見した犯罪を、まさに改めて正当な手続に従って告発するという場合には、法令により当然行うべき正当行為ということになろうかと思いますので、そのような場合には守秘義務違反は成立しないというふうに解されているものと存じます。
  45. 太田誠一

    太田(誠)委員 そこで、犯罪があると思料される場合という、犯罪があるというのは大変狭い定義であって、せめてこれを違法行為があると思料される場合というふうに改めてはいかがかというふうに私は思っているわけでございます。違法ということと犯罪があるというのは違うのですね。犯罪というのは刑事罰の対象になるような世界のことで、違法というのは普通法律に違反しているという意味だろうと思うのですが、広い話になると思います。  犯罪があるとかあるいは違法行為があるということが現実にはっきりわかっておって、そして告発をしなかったという公務員は、実は我々が知っているだけでも大勢いるわけであります。例えば住専のときに我々、私もきょうは本当は歴代大蔵大臣に来ていただいて一人一人からお聞きをしようと思っていたけれども、余りそういうことばかりしていると何かパフォーマンスとか言われるからやらなかったのですけれども、例えば住専問題で言えば、実際に露見したというか、はっきり住専があのような状態であったということがわかったのは、はっきりしたのは具体的に言えば去年でありますけれども、それにさかのぼること三年前に銀行局の検査部はあのようなことが生じているということを知っていたわけですね。それは新聞にも大きく出ていたから皆さんもよく御承知のことでありますけれども。検査部の職員は、それが犯罪のおそれがある、あるいは事実上犯罪に近い、あるいは違法行為であるということが多分そのときにはわかったというふうに思います。  それからもう一つは、大和銀行事件のときに、あの例の、武村大蔵大臣だったけれども、西村銀行局長が大和銀行のあの事件を知って、そしてそれを隠した、そして三十五日ぐらいたってやっと武村大蔵大臣に報告をしておるということがあるわけであります。これも現に、大和銀行は犯罪を犯したということで司法取引もして、みずから認めているわけでありますが、現に犯罪があったのだけれども、そしてそのことを結局は大蔵省も知っておった。大蔵省はこの間も、前回ここで質問したときに大蔵省に聞いたらば、信託業法違反か何かになっておる、それで処分しましたと言っておるから、犯罪になるということはだれだってわかるはずなのに、それを黙っていた、三十五日間にわたって大臣にすら黙っていたということでありますから、これは、犯罪があると思われる場合の告発の義務を果たさなかったということははっきりしておるわけでございます。  HIVの訴訟、エイズの問題については私は余り詳しくないからなにでございますけれども、これもまた、あるいは厚生省の薬務局のだれかは、明らかに犯罪に近いことが行われているとわかっていてもそれを告発しなかったということがあるわけでございます。枚挙にいとまがないほどそういうことがある。  そして、刑事訴訟法における犯罪が伴う場合の告発義務には何の罰則もないというふうにお聞きをいたしております。ですから、全体の公務員守秘義務に関する法律の、ほかにもたくさん法律があるのかもしれない、私は今たまたま目についたものを言っているだけですけれども、その法律の体系の中で大変偏った法律の体系になっておる。守秘義務を守らせることについてはいろいろ手が打たれているけれども、犯罪を告発するということについては手がない。ただ単なる訓示規定のようなものである。それは今後の法律考え方として、むしろ逆に、違法行為であるという、違法行為のおそれがある場合ということも含めて告発義務を課し、そして告発義務を果たさなかった場合には厳重な罰を加えるというのが当然だろうと私は思っております。  今ちょうど当委員会にも、メンバーではないかもしれませんが、保岡議員が一生懸命監査役や監事の権限の強化とか一連の、大蔵省の金融三法もそうでございますけれども、さまざまな報告義務とかそういうことについての罰則を強化する準備をいたしております。住専問題に絡んでしておりますが、実はその中で私は抜けておると思うのは、例えば官庁に対する、それこそ監督官庁に対する、はっきり言えば大蔵省に対する報告というものが、おびただしい数の報告を金融機関は出させられておるわけでございますけれども、そのおびただしい量の金融機関に関する報告の中に虚偽の事実があってはならない、虚偽の事実があったらば刑事罰を受けるという規定が盛り込まれておるわけでございます。これは大変難しい問題のある箇所でありますけれども、これは議員立法の話でありますから、どうぞお気になさらないでいただきたいのですけれども、そういう問題提起がなされておる。  ところが、もしそれをやるのならば、要するに金融機関の職員が大蔵省に報告するものについて虚偽があったらばこれを罰するというのならば、その大蔵省の、監督をしておる機関の職員がそのような不正とかあるいは違法行為がある場合を看過しておった、あるいは上司に報告しなかった、あるいは法律上の権限のある大蔵大臣に報告していなかったということになれば、それは刑事罰を科されるべきであるというふうに思うのでございます。そういうふうにして初めて、つまり守秘義務ということと犯罪があると思料される場合ということは同じウエートを持って、同じ法体系で臨まなければいけないというふうに私は思うのでございます。  我々もうっかりしておって、十五年も国会議員をやっておってついつい気がつかなかったことでありますけれども、本来ならばすべての法律には、法律でもって各省庁に権限をゆだねるのならば、そのゆだねたと同時にその権限をどう行使しておるかということを組織的、体系的に、定期的に報告をする義務法律の中に書くべきであったなというふうに思うわけでございます。権限を委任したものは渡しつ放してはない、委任したものは渡しつ放しということはないわけでありまして、委任したものは、必ずその委任したものをどう執行しておるのか、どう使っておるのかということを報告をしなければいけないというのが私は当然の世の中の道理であろうかと思うのでございます。  時々間違える人がいて、委任されたものは全部自分のものというふうに思う人が多いわけでございます。法務省には決してそんな悪い人はいない、きょうここにいるほかの省にも悪い人はいないけれども、しばしば各省庁の中には委任されたものをすべて自分のものと思って所管の大臣に報告もしない人が大勢いるわけでございます。大臣はえてして専門家ではないわけでございますから、みんなでつるんで蚊帳の外に置こうと思えばいつでもできるわけでございます。そして、しばしば我々の同僚議員もそういう目に遭っておったわけでございます。私もよくそういう場面に遭遇するわけでございますけれども、そのことは決してよい結果にはならないわけであります。この人が素人でよくわからないとしても、つまり素人にさえわかるように報告をするということがひいては組織の自己規律というものに結びついていくわけでありまして、ゆめゆめそこは、法務省においては今のようなきちんとした姿勢でまたお仕事をお続けいただきたいと思うのでございます。  そこで、今だんだんと国会の話ばかりになってまいりましたけれども国会行政の間には、先ほど申しましたように議院証言法というのがございます。議院証言法の場合にはどういうことかというと、これは衆議院全体でもってこれを、資料を出せあるいは証言をしろということを言えば、これは相当の威力を持って、行政は対応をするわけでございます。そして、衆議院全体あるいは参議院全体ということで言うならば、恐らくこれは決議が必要なんだと思います。そういう議院証言法というものに訴えるためには決議が必要なんだと思う。委員会もそれはできる。委員会もできるけれども委員会は多分、委員会の決議をしなければ、それは議院証言法を活用することはできないということになっていようかと思うのでございます。これは当たり前のことのように思われるかもしれませんけれども、これは非常にきつい話であります。  国会議員一人一人は、衆議院であれば五百十二人、それぞれ十万前後の有権者の信任を得てここに当選してきているのに、一人ずつではいかんともしがたい。ほかの人にも同調してもらわないと国政調査権すら行使できない。一人の国会議員では発動できない。あんな大変な運動をして、あんなにたくさんの人から名前を書いてもらっているのに、それでもまだ個人としては発動できない、権限を持っていないということであります。大変これは屈辱的な状態だということをぜひ皆様方にも申し上げておきたいわけでございます。  それで、それに対して、情報公開法がもし中間報告のとおりできれば、実は国民一人一人が、一億二千万の国民一人一人は直接行政府に対して議院証言法と似たような権限を持つことになる、情報開示を求めたりすることになるわけでございます。一億二千万人全部が、五百人の我々よりも、我々一人一人じゃだめなんです、国民情報公開法では一人一人が情報開示を要求できる。我々は、国会議員として一人ではいかんともしがたいわけでございます。権限なしに等しいわけでございます。まとまらなくちゃだめです。一山幾らの状態にならないと私は発言しちゃいけないというのが今の議院証言法でございます。  そうすると、それでこれは、国会議員はそれぞれ国民から委任されておるのに、国政調査権があるじゃないか、二言目には国政調査権があるじゃないか、マスコミなんか特に申しますけれども、そんなものはないわけです。何もない。それはあなた方がないものをあるというふうに言いくるめておるだけであって、我々には国政調査権、実際には活用できるものはないということでございます。  そこで、では今度の民事訴訟法関係でまいりますと、これは裁判官の数というのをこの間聞いてみたらば二千人ぐらいだそうですね、簡裁の判事まで入れて。そういうお答えでありましたけれども、まあ遠くない数字だと思いますが、二千人いらっしゃる。違っていたらばいいですけれども、余り正確なことはいいです。大体二千人ぐらいです。裁判官二千人。二千人の裁判官は、この民訴法によれば、今度の新しい改正で、単独で、たった一人で、裁判官一人で、文書提出の申し立てを受けたことを、理由があるかどうかを判断する、理由があるかどうかはその人が判断する。判断して、そしてそれを、行政に対して出せということを言うことができる。その中身は別ですよ。権限の強さは別だけれども、要するに手続としては、五百十二人の国会議員は一人ではいかんともしがたいことを、裁判官の場合は、二千人の裁判官の一人一人が自分の判断でもって、原告か被告か知らないけれども、言われたものを要求できるということでありますから一これは実は相当恵まれた話でございます。我々よりもよっぽど恵まれた話でございます。  だから、私もジェラシーに狂って、こういうものはもういい、原案どおりでもいいというふうに言いたいぐらいであります。しかし、そういうふうに言うのは後ろ向きの態度であって、もう少し前向きにこれは、この問題もやはり考えていくことがよいのではないかということも思わないではないわけでございます。  先ほどからいろいろな、特にプロフェッショナルな局長さんとかあるいは審議官とか参事官の話をお聞きしたり、あるいは特に弁護士の先生方、この問題についてプロフェッショナルな方々とお話をしていると、時々この方々は、実は、原告と被告、原告か被告か知らないけれども文書提出を求めた、申し立てた人が申し立てたから、自動的に何か行政に対して文書提出を求めるように取り計らっているだけというふうな、そういう受け取り方をしておられる方も時々おられるわけです。いや、同じ人があるときはそういうことを言うんです。  そこはやはり違うのであって、これは明らかに、間にいる裁判官は、単に原告、被告がそれを要求したというだけじゃなしに、自分もそれに理由があるということでもってそこで判こをついて出すわけですから、それは明らかに原告、被告の権限ではなくて、まさにその裁判官権限になっておるというふうに思うのでございます。そこははっきりしておかなければいけない。ゼロと半分関与しているということは全く大違いでございますから、半分は関与しておる、裁判官文書提出に関しては内容についても半分は関与しておるというふうにみなすべきであって、半分関与しているのであれば、これは裁判官の責任でやっておること、裁判官権限でやっておることだというふうに理解しなければなりません。そういう裁判官の大きな権限に関することであります。  先はどのように、私も情報公開法の悪口をさっきから言っておりますけれども、悪口を言っておるというのは、私たちに何もないというのに国民全部は持てるということに対する憤りもあるし、裁判官二千人はなぜか一人一人がそういう権限があるということも非常に憤りがあるわけであります。しかし、それはそのことに憤るよりも、我々自身が自分で立法をして自分たち権限をもっと高めて、国民一般よりもあるいは裁判官よりもよっぽど情報開示についてあるいは情報報告を受けるについて、自分たちで工夫して立派な法律をつくればいいんだということでございますから、それは前向きに考えるべきだと思うのでございます。  そこで、だんだん時間もなくなってまいりました。司法行政関係について戻るわけでありますけれども文書提出命令について、各省の意見は各省から意見聴取をされたと思うのでございますが、各省は一体どんなことを言っておったんですか、今度の法改正について。各省の意見。
  46. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 今回の改正全般につきまして、またこの文書提出命令制度の改正の問題も含めまして、法制審議会の審議を踏まえまして検討事項の段階、それから、いわゆる中間試案の段階で公表して、各界から意見を聞いてまいっております。ただ、そういう意見照会に対して各省庁から意見があったということはございません。  この文書提出命令について今回提出しております改正案についての各省庁に対する意見照会というのは、これは法制審議会の民法部会の要綱案決定、これが二月の二日にあったわけでございますが、その民法部会において、内容的には今回改正法案として提出させていただいているような内容で検討が煮詰まりつつあった段階におきまして、その内容で、すなわち現在法案として提出させていただいております内容の改正をすることについて、事務的に各省庁の意見をお伺いしたということがございます。それで、その説明をして、その改正について了解があったということで、そういうことを踏まえて民訴法案を提出させていただいているところでございます。  なお、先ほど民法部会というふうに申し上げたかと思いますが、民事訴訟法部会の誤りでございますので訂正をいたします。
  47. 太田誠一

    太田(誠)委員 大変ありがとうございました。今の点は、実は報道などには、各省庁と協議をした、そこで、各省庁と協議をしたらばこういうふうにつくれというふうに文書提出部分を言われた、そのプレッシャーを受けて、一部の法制審議会のメンバーが、いや、ほかの省庁が承知しないからこういうふうにするのだというふうに言ってきたというふうなことを言ったということが報道されたりしております。  私はそんなことはないと思いますけれども、ただ、現に出てきた法案を見るとやや、何かどこかで屈服したかなという印象がないでもないわけでございまして、ゆめゆめこれは、司法というものを確立をするということがまさに法務省としては、司法行政の何とかといつもおっしゃるとおり、それは法務省としては崇高な使命があるわけでございますから、そんなことは心配しなくてもいいのかもしれないけれども、ゆめゆめ経済官庁などに押されないように、しっかりした姿勢でもって他の省庁との協議があるならば臨んでいただきたいというふうに申し上げて、終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  48. 加藤卓二

    加藤委員長 山田英介君。
  49. 山田英介

    山田(英)委員 新進党の山田英介でございます。  民事訴訟法案につきまして順次質問をさせていただきますが、既に趣旨説明、本会議における質疑応答がなされたわけでございますが、委員会における実質的な審議はきょう初めて始まるということでございます。  それによりますと、民事訴訟法案につきまして、新しい法律案をつくった目的というのは、「民事訴訟を国民に利用しやすく、わかりやすいものとし、訴訟手続を現在の社会の要請にかなった適切なものとするために、新たな民事訴訟法を制定」する、こうなっておりまして、骨子が、証拠収集手続の拡充整備とか、大きく五点ほど挙げられております。その骨子の中で一番国民が関心を持っておりますところが、証拠収集手続の拡充整備というところだと理解をいたしております。  したがいまして、私は、きょうの午前中四十分、午後四十分の質疑時間を、特にこの証拠収集手続の中の核心部分文書提出義務に関する改正に焦点を絞って順次質問をさせていただきたいと思っております。  いずれにいたしましても、新しいこの民事訴訟法案で公文書行政文書の取り扱いがどういうふうに変わるのか、どうなっていくのかということは、国民各層の極めて強い注目をするところ、あるいは極めて大きな関心事でございます。  それで、これはちょっと確認といいますか、現行民事訴訟法のもとにおける公文書あるいは公務秘密文書、この取り扱いというのはどうなっているのでしょうか。私の理解するところによれば、現行法には公務秘密文書の取り扱いについての明文規定がないわけであります。しかし現行法三百十二条で、第一号から第三号、この文書の所持者はその提出を拒めない、出さなければならないということで、一号から三号文書規定されているわけですが、この例えば引用文書とか、あるいは閲覧・引き渡し請求できる文書とか、あるいは利益文書法律関係文書とか、こういうものの中に、いわゆる公文書あるいは公務秘密文書というものも、これは当たるものがあるわけでございます。  申し上げましたように明文規定がいわゆる公務秘密文書についてはないわけですから、これは結局どういうふうになりているかというと、裁判の実際では判例の解釈にゆだねられている。それで、結論づけていえば、公務秘密文書であるか否か、その公文書秘密性に該当するかしないかの判断はまさに裁判所がするわけであって、その裁判所が当該公文書について秘密性がある、このように判断をすれば文書提出義務を免れる、こういうことに現行法のもとにおける公文書等の取り扱いはなっていると思うのですけれども、そういうことでよろしいですか。
  50. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 今委員指摘のとおり、現行法の提出すべき文書の範囲といたしましては、民事訴訟法三百十二条の一号、二号、三号、それぞれ列挙されているわけでございます。  基本的な現行法考え方というものは、これは、これらの文書に該当する以上は、基本的にはその当該文書秘密性というようなものを考慮しないで提出義務対象になるということであるというふうに思っております。例えば、当事者たる行政庁が訴訟においてある文書を引用した、その文書をみずから持っているというときに、引用した以上は、それは相手方から求めがあれば提出しなければならないということであろうと思っております。  ただ、実際の実務の運用といたしまして、これは現に、具体的には三号の文書の範囲でございますが、三号の文書の範囲は、法文上は、挙証者の利益のために、あるいは挙証者と文書所持者との間の法律関係につき作成されたものというふうに……
  51. 山田英介

    山田(英)委員 質問に答えていません。要するに、現行法の枠組みのもとではいわゆる公文書公務秘密文書というのは、最終的にそれは、秘密性があるかないかは裁判所判断をして、そして、もし秘密性がその公文書についてはあると認められれば文書提出義務というものはない、免れるという仕組みになっているのじゃないですかと確認しているわけです。そこを、そうだったらそう、そうじやなかったらそうじゃないと。
  52. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 それを説明させていただいているつもりでございます。その道行きがいささか長くなりまして申しわけございませんが。  繰り返しになりますが、この各号に該当する文書であるということであれば、基本は文書秘密性というようなことは問題にならないということでありますが、ただ、三号の文書につきましては、この文言よりも、解釈上の努力といたしまして相当幅広く解されつつある。法律関係についてということに必ずしもこだわらないで、法律関係と密接な関係にあるという文書については三号の文書に当たる、あるいは、挙証者の利益のためにというものも裁判例によってはかなり幅広く解釈、運用がされているという傾向にあるわけでございまして、そういう場合に、公務上の秘密あるいは企業の秘密というものもございましょうが、そういうものに該当するものがその対象に、範疇に入り得るという場面が出てきているわけでございます。  そういう場合につきまして、裁判例の考え方といたしまして、そういう場合には、現行法証言拒絶に関する規定の趣旨を類推適用して、一応三号の文書に該当するけれども公務上の秘密に関する文書であるから結局のところ三号に該当しないというような考え方をとっている裁判例があるというふうに承知しております。そういう場面におきましては、その秘密性の該当の判断というのは裁判所でされておるということでございます。しかしながら、それはあくまでも現行の三号の適用、解釈の場面の問題として、そういう解釈、運用がされているということでございます。
  53. 山田英介

    山田(英)委員 もう十一分経過でございます。  確認でございますが、要するに三百十二条第一項第三号文書、利益文書法律関係文書については、今の答弁を踏まえて申し上げますと、この公文書とか行政文書というものが三号文書に当たるのかあるいは三号文書に当たらないかというのは、それも裁判所判断をする。したがって、三号文書に関して言えば、当該公文書行政文書がいわゆる公務員の職務上の秘密に当たるかどうかという最終的な判断裁判所が行って、それで現行法文書提出命令の枠組みというのは、もし秘密性が認められるとすれば行政側は文書提出命令を受けない、または裁判所側からすれば発令しない、こういうことになっている。こう理解していいわけですね。一言。
  54. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 繰り返しになりますが、三号の適用、解釈の場面において、裁判例においてそのような取り扱い、解釈がされておるということでございます。
  55. 山田英介

    山田(英)委員 そうすると局長、この新しい民事訴訟法案、本法案によって、そこのところはどういうふうに変わるのですか。  もうちょっと具体的に言えば、三号文書について、それが公文書であった場合、秘密性があるかないか、あるいは利益文書法律関係文書に当たるか当たらないかというようなことを含めて、現行法のもとでは裁判所が最終的あるいは専権的に判断をしている。それが新しい民事訴訟法案によって、今度はだれが最終判断をするのか、どこが秘密文書であるかそうじゃないかというようなことを判断することになるのですか。
  56. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 これは委員既に御案内のところかと思いますが、今回私どもが提出しております文書提出命令についての改正案は、現行の一号から三号までの文書はそのままにしておいて、そしてそれ以外にこれをさらに広げるために第四号を追加しようということでございます。  一号から三号までの文書というのは、これはいろいろ要件が書いてございますが、要するに、当該文書の性質上挙証者と一疋の関係を有する関連文書、そういうものについてのみ提出の対象としているわけですが、これをそういう関連を問題にしないで文書一般にまで拡張しようということでございます。その拡張する場面においてのみ、一定の秘密に属するものについてはその対象から除外するという考え方でございます。  したがいまして、一号から三号までの適用の場面におきまして、今申しましたような裁判所における解釈、運用がされているということについては、今回の改正は一切影響を及ぼすものではないというふうに考えております。  ただ、四号の場面におきましては、公務上の秘密に属するかどうかということについては、これは、当該行政について責任を持っている監督官庁判断によるという考え方をとっているわけでございます。
  57. 山田英介

    山田(英)委員 私は、具体的に質問通告というのはしていません。質問通告しようがないのです。私は、文書提出命令の諸規定についていろいろな角度から質問しますというふうに、そういうふうに申し上げてあります。ですから、何かあらかじめ答弁書を用意されて答弁されてもかみ合わないのですよ。  今僕が聞いているのは、現行法三百十二条の第三号とおっしゃいますから、第三号の利益文書法律関係文書に当然公文書公務秘密文書も入ってくる。したがって、御答弁があったように、現行法のもとでは裁判所秘密性があるかどうかを判断するんだ、あれば出す必要がないんだ。では、今度新しい民訴法で、これは秘密性があるのかないのかということをだれが、どこが判断するのか。どこだと、一言で済むのですよ。
  58. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 今度追加することとしております四号の文書につきましては……(発言する者あり)失礼しました。三号の適用の場面におきましては、現在の解釈、運用がそのまま維持されるというふうに考えております。
  59. 山田英介

    山田(英)委員 後ほどそこのところはまたやります。  それで、これまで裁判所判断をしてきたものを、今度は行政に、官庁にその判断をゆだねる。これが、今局長が言いましたけれども、新しく公務秘密文書に関する取り扱いの規定を置いたから、前の一号から三号文書判断とは全く違うというふうにおっしゃったのだろうかと思いますけれども、いずれにしても、当該公文書行政文書が職務上の秘密に該当するかしないかということは、従来裁判所がその判断をしていたのを、今度は行政に、官庁にそれをゆだねるというか判断をさせる、この民事訴訟法案というのはこういうことになっているのじゃないのですか。
  60. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 これもくどくなるというおしかりを受けるかと思いますが、先ほど来申しておりますように、現行の第一号から第三号までの関係、特に第三号の関係において公務上の秘密に属するということがその三号に該当するかどうかという要素として判断される場合には、それは裁判所判断をするという運用がされているということは今申し上げたとおりでございます。しかしながら、今度追加しようとしております四号は、先ほど申しましたように、そういう挙証者と一定の関係にあるということを問わない一般文書でございます。  そういうことでございますので、三号までの文書と四号の文書というのは文書の性質が違うということにかんがみまして、四号の関係については行政庁のみならず、私人、私企業につきましても一定の制限を設けるということにしているわけでございまして、そこのところは基本的な性質の違いがあるというふうに考えているところでございます。
  61. 山田英介

    山田(英)委員 その答弁を受けとめたとして、それでは、こういうふうに聞きましょう。新設した二百二十条第四号の特にロの規定、いわゆる公務秘密文書の提出に関しては、公務員の職務上の秘密に関する文書監督官庁が承認しないもの、こういう新設規定を置いた、この四号のいわゆる最終的な公文書秘密性があるかないかというのは、これは裁判所から、要するに官庁が判断をするというふうにした、一つはそういうこと。  それから、では、現行法三百十二条の三号文書の中にも、公文書行政文書というのはあるわけですよね、実際に。今までの現行法下における問題として、それは公文書等も三号文書に当然該当するものが出てくる。この場合は、裁判所が最終判断をして、秘密性がない、あるいは利益文書法律関係文書に当たらない、いずれにしても裁判所判断していたわけですよ、それはそれと。  それから、新しい法案の中では、四号の規定を置いたけれども、特にロの規定については、公文書については、裁判所のいわゆる秘密性に当たるかどうかの判断権というものは取り上げて、それで官庁にこれをゆだねる、こういうことになっているわけですね。
  62. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 繰り返しの答弁になって恐縮でございますが、現行の三号の条文の中には、もとより公務上の秘密に属する文書公務員秘密に属する文書というような概念は出てこないわけでございまして、あくまでも三号の適用、解釈の問題として今のような問題が生じてきており、そのような処理がされている裁判例があるということでございます。  今度四号を追加するということに伴って、初めてこの点を明確にする必要があるという問題が生じてきて、そのことをこういう形で明確にする法律案を提出させていただいた。その理由は聞かれておりませんので、さらに申し上げる機会があれば申し上げたいと思いますが、そういうことでございます。
  63. 山田英介

    山田(英)委員 私は、十二時過ぎぐらいまでしかないので、幾つも実はとんとんとんと行きたかったのですが、ここで今突っかかっておるのですけれどもね。私は何時間でも、理事会で協議の上、時間をちょうだいして、全部やりますよ。ですから、先へ行くのはこだわらないでやりますよ。では、いいですよ。  判例の解釈では――公文書公務秘密文書が提出できるのかできないのか、それが本当に国のあるいは公共の重大な利益を著しく害するというようなおそれがあるかないかということについては明文規定がないわけですから、判例の解釈による、判例を積み上げてきた、これは局長も今認めておられる。当然のことですから、これは事実ですから。  それでは、三号文書のところで余りこだわっているとかみ合いませんので、新設の四号のロ、いわゆる公務秘密文書の取り扱いなんですけれども、何で裁判所のいわゆる判断権を取り上げて、それが秘密に本当に該当するかどうかというそういう判断というものを取り上げて、それで官庁にその判断をゆだねることという、そういう規定にしたのか、その理由、根拠を教えてください。
  64. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 私ども、今裁判所が持っている判断権を取り上げたというふうに考えているものではないということは、先ほど来申し上げたとおりでございますので、その点は申し上げさせていただきたいと思います。  なぜこういう改正法案を提出したかということでございますが、今回の改正は、提出命令の対象となる文書についても、そういった挙証者との一定の関係ということを問題にしないで、一般にその提出義務国民に負ってもらうということにしようということで、そういう議論から改正をしたわけでございますが、その提出義務対象となる文書を一般化するという場合におきまして、現行法のもとで一般義務とされております証言におきます証言拒絶事由、これとの並びの範囲内において、そのスキームの範囲内において提出文書の範囲を拡充しようということで議論をしてまいったわけでございます。  証言拒絶場面におきましては、公務員が職務上の秘密に関して証言を求められた場合にはその監督官庁の承認を必要とする、承認がなければ証言を拒絶することができるということになっていること、それと同じ考え方の範囲内でこの改正案を立案させていただいた、法制審議会の審議においてもそういうことで答申がされたということでございます。
  65. 山田英介

    山田(英)委員 いずれにしても、それは取り上げたと同じなんですよ。だって、明文規定がないのですから判例の解釈を積み上げていく以外ない。そこでもって運用する以外ないわけですから。それは裁判所がやっていたのですよ。裁判事例というものを、それは裁判所判断してつくっていくわけですから。判例法というのがあるわけでしょう。  ですから、新設する二百二十条第四号のロの文書について、これは取り上げたんじゃないというけれども、それをなぜ監督官庁判断にゆだねたのか、その根拠を聞いたわけですが、今おっしゃるようなそういう形式的なことではなくて、実質的に、要するに、裁判所の最終判断に、秘密性があるかないかということの判断をゆだねることによって、何か不都合でもあるんですか。今まで、あるいは不都合でもあったんですか。裁判所に、秘密性の有無、秘密性に該当するかしないかということを最終的に判断してもらうということについて、判例を含めてですよ、そういうふうに官庁が全部判断をするというふうにしなければならないような、そういう新規立法というか、この新法をつくらなければならないような――繰り返しますが、裁判所秘密性の有無について最終的に科断をさせることについて何か不都合がなければ、おかしいと思いますよ。国に重大な損害を与えたことがあるんですか。裁判所が最終的な判断をすることによって、あるいは今まで実質的にしていたことによって、何か実質的に不都合なことでもあるのか、そういうことが多発しているのか、弊害があるのか、具体論でお答えください。どういうことがあるんですか。
  66. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 繰り返しになりますが、現在の裁判所の運用というのは、三号の文書の範囲、すなわち挙証者の利益のために、あるいは挙証者と文書の所持者との間の法律関係につき作成された文書、それに、その解釈の範囲内に入り得る文書対象として、そういうものの中に秘密に属するものがあるということが問題になっている場合の問題でございます。そういう場面において、裁判所がその秘密性について三号の要件の一つとして判断されるという限りにおいては、特に弊害がある、あるいは弊害が生じているということを聞いているわけではございません。  しかしながら、今回の改正は、繰り返しになりますが、そういう関係がない文書についてもその文書としての属性を問わないで出してもらうということになるわけでございますので、そういう場面を考えますと、三号の適用解釈の問題とは全然別次元の問題であろうというふうに考えているわけであります。
  67. 山田英介

    山田(英)委員 それはだめですよ、それは。具体的な根拠はないと言っているんだから。だから、公文書行政文書秘密性があるかないかを判断するのを官庁に専属的にやらせるなんてことはおかしいじゃないですか、それは。  要するに、証言義務規定が一般化されている、証言義務が一般義務化されている、今度文書提出義務も一般化する、文書提出も一般義務化する。両方一般義務化になるのだから、証言義務規定のところで、職務上の秘密に関する事項について尋問を公務員が受けるときは監督官庁の承認が必要だ、この規定を機械的に、極めて形式的に当てはめようというのが今の御説明ですよ。そういう形式的なことを僕は聞いたのじゃなかったのです。これについては、そうおっしゃるのだったら、これはこれでまたやりますよ、きっちり。午後もあるのだから、二巡目、三巡目もあるのでやりますけれどもね。  余りにも形式的なんですよ。文書提出義務を一般義務化したから、だから、既に一般義務化されている証言義務規定にある公務上の秘密についての事項について尋問を受けるときは監督官庁の承認が必要だ、だから、こっちも一般義務化なんだから必要だ。書証と文書証言、ここのところの規定、そのいわゆる証拠方法としての違いも無視しているし、それから、したがってそこから出てくる規定のありようの違いも無視して形式的に一つにさせようとしているのですね。これはおかしいですね。合理性、説得性ないです。  それでは、その先に進めますよ。  四月の十七日に当委員会で四人の弁護士の方々に来ていただいて、ここで参考人として意見の陳述を私どもは受けました、なさいました。そのときの四人の方々のお話を聞いてみても、結局今日的な問題というのは、官庁とか行政側が不当に情報隠しをしているということが今、そのときも指摘されたし、今日的な社会の要請あるいは期待というのは、時代の要請というのは、それはいかに今まで不当に秘匿されてきた、隠されてきた、あるいは提出を拒否されてきた、そういう情報を、そういう資料を裁判所に証拠としてもっともっと出してもらいたい。  それが、いろいろ参考人の意見陳述を聞いてみても、行政、官庁側からは不当な拒否、拒絶、提出拒絶、あるいはその秘密判断、出せないとする判断理由が非常に不当である、説得力がない、ともかく自分たちに不利になるようなことは出したがらない。それは、公務遂行上著しい支障が生じるおそれがあるからとか、公務上の、いわゆる職務上の公務員秘密だからということを盾に、そこのところが今批判されているわけです。  それをどういうふうに、裁判所へ証拠として資料がもっとよく出てきて、当然出てくるべきものが、今までそういう手段、方法がなかったわけですから出てこなかった。それを新しい民事訴訟法の中でどうやって是正していくのか、出やすくしていくのかというところが一番大事なわけであって、むしろ、いわゆる公務秘密文書であるかないかということを最終的に判断するのは、それは裁判所のはずなんですよね。それを、みずから拒否し、みずから提出しないことについての不当な判断をしてきていると極めて強く批判されている官庁にすべて秘密性有無の判断を、判断権を上げてしまう、任せてしまう、こんなことはおかしいのじゃないですか。こんなことじゃ七十年ぶりの民事訴訟法の大改正が泣きますよ、そこのところにきちっとこたえられなきゃ。今まで行政が出したがらなかった、正当な理由もなくともかく出さなかった、それをどういうふうに出させられるようになったのですか、今回の民事訴訟法案で。  それから、それは出したとしても、国家の秘密だとか公共の重大な利益なんかは、国家の利益は失われません、そういう歯どめもかかった上で、大丈夫ですよという、そういう堂々としたやはり審議というものがなされなければ、あるいは質疑応答を積み重ねていかなければならないと思います。ですから、逆のことをやっているのですよ、この文書提出命令の諸規定をこういうふうに置いたのは。そうでしょう。  繰り返すようですが、国民的な物すごい大きな批判があるじゃないですか。HIV訴訟における厚生省の対応。資料を六年間も秘匿して出さなかった。それによって二千人の血友病患者の方々が感染をする。注射打たれちゃうのですから、エイズ菌の入った非加熱製剤を。二千人がエイズになる、四百人が既に死んでおる。なぜそこまで被害が拡大したのか。それは、もっと早く資料が出ていれば、いろいろな対応策ができたはずじゃないですか。厚生省という行政が、厚生省という官庁が、ゆえなく、不当に、不法に、犯罪的ですらある、そういうやり方でもって、真実を知らせてくれと言っている患者の、原告団の希望を無視し続けて、五年、六年、資料を出さなかったじゃないですか。まさにそこが問題なんですよ。それをどういうふうにこの新しい民事訴訟法で是正していくかということが一番の命題なんですから。マスコミだって、学界だって、法曹界だって、国民的に全部ここは厳しく批判しているじゃないですか。  ですから、判断権が三号については法律的にはあるとか、それは法律的には明文規定はないのですが、裁判所判断してきたということは明らかじゃないですか、判例というのがあるのだから。そういうやりとりでは、これはもう国民が失望しますよ。  こうして見ると、判断権を新設の二百二十条四号の特にロの部分、そういう規定を置いて、秘密かどうかの判断権は官庁に全面的にゆだねるという規定の仕方は、これは間違いです。  民事訴訟法改正の目的は、社会の要請に適切にかなうような、そのような訴訟制度の改善を、改革をしていこうというところにあったはずじゃないですか。全然逆じゃないですか。これは、本法律案策定の目的、立法の目的と全くそごを来しますよ。逆のことをやっているということになりますよ、法務大臣。
  68. 長尾立子

    ○長尾国務大臣 先生、先ほど来私どもの局長から御説明を申し上げているところでございますが、民事訴訟の現段階の、現行の法律の中で、公務上の秘密にかかわりますような文書につきましてもできる限り訴訟の真実を明らかにするために提出を求めていくという実例の積み重ねがございまして、このことは明らかに踏襲をされていくということでございます。  問題は、先生が御指摘になっておりますように、文書提出義務を一般義務化する、今までよりも範囲を広げていくという考え方のときにどういうようなスタンスで私ども改正に臨むかということになるかと思います。  この点につきましては、局長から申し上げたことの繰り返しになって恐縮でございますが、私ども民事訴訟法ということで議論をさせていただいているわけでございますが、現在のすべてのさまざまな分野におきますこういった一般義務化の中におきますような諸規定、これを私どもが、それとは違う形で、先行する形でやっていくということは、私どもの現在の立場からはできなかったということを繰り返し申し上げているわけでございます。  先生は、一般に今行政情報を公開すべきである、こういうことについて行政立場は大変に不熱、心であるという御批判をいただいているかと思っております。  このことにつきましては、先ほど太田委員からも御質問がございましたように、行政情報をどういう基準で公開すべきかということについては御議論がなされているというふうに伺っているところでございまして、私どもといたしましては、その御議論の結果というものがどういう線としてまとまっていくのか、そのことを注目させていただきたい、このように思っております。
  69. 山田英介

    山田(英)委員 大臣、せっかくの御答弁でございますが、一々にそうかなというふうに思ってしまいそうなのですけれども、実は、僕はそれは大分違うと思うのですね。  それは午後僕はやろうと思っていたので、もう間もなくでしょうから午後に譲りますけれども、例えば、情報公開法との関係で今最後におっしゃいましたけれども、大臣、それは違うのじゃないですか。こっちが先に――一つだけ申し上げますよ。法二百二十条の四号で、公務秘密文書監督官庁が承認しないものは提出することはないということですよね、承認しないものは。いわゆるそういうことで、司法判断をこれは排斥しているわけでしょう、監督官庁判断するということだから。司法判断を排除しているわけですよ。もし仮に、この後上程されるでありましょう情報公開法において、先般要綱案なるものが明らかにされまして、私も私なりにそれを読ませてもらいましたよ。では、情報公開の中で、行政庁に対してこの情報を開示してくださいと請求した者がいて、いや、それはかくかくしかじかの事由で非開示です、開示できません、公開できません、そのときに不服審査会というのが設けられると書いてありました、要綱案には。そこでもって不服審査をやって、その不服審査委員は、必要があればその当該官庁に、見せなさい、その文書をということで決定を下すという、そういうシステムが今用意されようとしている。  ところが、ここでもって司法審査が閉ざされてしまうんですよ、結論からいえば。官庁が秘密かどうかの判断権を一〇〇%握るわけですから、四号ロの規定については。そうすると、情報公開法の中で開示してくれなかったことを不服と思って、不服訴訟、今度は司法に救済を求めるわけですよ。そのときに、司法、この民事訴訟法が、それはもう官庁が秘密と言えば言いなりで、最終判断も何もできない、全部排除されてしまっているわけですから。そのときどうするのですか。司法による救済は求められないじゃないですか。できないじゃないですか。  したがって、それはいろいろな意味があるのですよ。こんな規定ができたら、情報公開法なんというのは骨抜きになりますよ。こんなのは情報公開法つぶしじゃないかと言う人だっているのですよ、この文書提出命令の新しい規定は。  それから、もう一つ言わせていただければ、何で裁判官でもない不服審査委員に我々行政庁文書を見せなきゃいけないんだ、こうなるじゃないですか。ならないとは言えませんよ。いやそれは、民訴法はこれでもって先に決めました、後から、山本拓理事も先般の質問で大臣に伺いましたけれども、後から情報公開法が、もっとしっかりしたものができるでしょう、そうしたらこっちを合わせればいいんだ、これはそんな話じゃないですよ。  そうなのかもしれません。しかし現実は、民訴法の司法審査の場面司法の審査権を全部奪っておいて、官庁に一〇〇%秘密性ありやなしやの判断権をゆだねておいて、それで情報公開法が立派に制定されると思いますか。  両面あると思いますよ、大臣のおっしゃったことと私が言っていることと。しかし、私が申し上げていることの方がこれは危険性が高いですよ、どう考えても。情報非開示、不服訴訟、司法の救済を求めてきたときに、この規定じゃ何も救済されないということですよ。情報公開を請求する国民司法救済はこれで閉ざされるという規定なんですよ、これは。  時間ですから、やめます。午後とその後にやります。答弁要りません。委員長、終わります。
  70. 加藤卓二

    加藤委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時六分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  71. 加藤卓二

    加藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。山田英介君。
  72. 山田英介

    山田(英)委員 午前中の質疑応答を総括するといいますか、まとめて二点ほど確認をさせていただきたいと思いますが、いわゆる公文書行政文書につきまして、それが秘密性に当たる、秘密性があるといった場合にどういうことになるのか。  それで、民事訴訟法案という一つ法律の中に、局長の答弁を伺っておりますと、二百二十条三号文書については、その公文書秘密性を持つあるいは持たないということの最終判断裁判所にあるということです。ところが、新設といいますか、新しく設けられた四号ロの文書、いわゆる公務秘密文書監督官庁の承認のないもの、これは提出しないでいい、この部分については監督官庁判断をする、秘密性があるかないかについて最終的に官庁が判断する。同じ一つ法律判断権者が二つに分かれるというような立て方があっていいのか、おかしいのじゃないかというふうに私は思ったのですが、この点はいかがですか。判断権者が二つある、同じ公文書でです。
  73. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 結論的に申し上げますと、私どもは、三号文書と四号文書は性質が違うということから、そういうことになるということも合理性があるというふうに考えております。
  74. 山田英介

    山田(英)委員 そういうお答えなんですけれども、これは法制審議会の民事訴訟法部会でその点は議論があったのでしょうか。一つ法律の中に、一方では裁判所の公文書秘密性についての判断権を裁判所に与える、与えるというか置いておく。新設の四号文書については、同じ法律の中で官庁がその公文書秘密性の有無について判断権を持つということが果たしていいのか悪いのか、何か問題点がないのかということを法制審議会の審議の中で議論されたのですか。
  75. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 繰り返しになりますが、三号の問題はこの規定の適用上の、解釈、運用上の問題でございます。その場面で今御指摘のような処理が実務上されているということは法制審議会でも十分前提として議論をされております。  そういうことを踏まえて、四号のロの文書の取り扱いについては、現行の制度のもとではこういうことでいくほかはないという判断をされたわけでございまして、御指摘のような、実際問題として、実際の運用上、三号と四号で取り扱い、その点についての対応が異なるということは、それは議論の対象になり、それも是認すべしということになったという経緯がございます。
  76. 山田英介

    山田(英)委員 もう一つなんですけれども、要するに、およそ五、六年ずっと、平成二年あたりから法制審議会は新しい民訴法案についてどういうふうに組み立てるかということをずっと審議をされてきた。ちょうど期間が重なって、東京や大阪ではこの五年、六年、ちょうど期間が重なるのですが、HIV薬害エイズ訴訟というものがずっと進行していた。その間、厚生省は資料がないということで出さなかった。それで、それがことしになって、一月何日でございましたか、膨大な資料が見つかったという話でもって公表されてくるというようなことが、ことしの一月二十六日ですよね。  このことについては長くは触れませんけれども、したがって、そういう極めて今日的な国民の関心あるいは批判、これはどうしても改善せよというそういう声が上がっている中で、いわゆる公務秘密文書についての規定をこういうふうな形で、すなわち裁判所秘密判断は排除する、官庁に全部判断させる、官庁が秘密だと言えばそれは言うなり、出せない。本当に秘密だということの判断の妥当性も、インカメラが提示命令手続から外されているものですからだれも見ることはできない。本来提出を拒絶すべきではない文書秘密だと言われて出されなくなっても、これはだれも不当性について触れることができないというようなことをこの法制審議会の中で、具体的に、四号のロの文書について官庁に任せていいのか、判断権を全面的にゆだねていいのか、いややはり第三者、しかも最も中立的な第三者、裁判所監視のもとに置くと言ったら言い過ぎかもしれませんけれども判断をさせるべきではないのかというような、恐らくこれはかんかんがくがくの法制審議会において激論が交わされてしかるべきであったと私は思うのですけれども、そこのところはどういうことだったのですか。あったのですか、そういう議論がなされたのでしょうか。
  77. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 経緯を申し上げますと長くなりますが、できるだけ短く御答弁させていただきたいと思います。  法制審議会の議論におきましてその点が一番焦点として議論されたのは、むしろ証人尋問の手続におきまして、先ほど来申し上げておりますように、公務員秘密に属する事項については監督官庁に承認権、拒絶権というものがあるということになっておる、それはそれでいいのかという点についてこれはかねてから議論がございました。この点につきましては、申し上げるとなんでございますが、日弁連の側からは、やはり裁判所判断するという方向での改善を考えるべきではないかという御指摘がございました。その御議論がございましたけれども、まあこれは民訴の場面だけで解決することは困難であるということで議論が推移したという経緯があります。  片や、文書提出命令の範囲を拡大する、その一般義務化をするという案と制限列挙をとりながらそれを広げていくという案、二つの案が並行して審議されてまいったわけでございますが、一般義務化をする案の前提といたしましては、拒否することができる場合は証言拒絶の場合と同様のスキームで取り扱うということを前提として議論がされたという経過がございます。そういうことで、かねてから裁判所判断すべきか監督官庁判断権を持つべきかということについては議論がされてきた経緯にございます。    〔委員長退席、太田(誠)委員長代理着席〕  それから、HIV訴訟を中心とする最近の動向というもの、そういうものが世間で取り上げられてきたのは比較的近い時期のことでございますけれども、そういう状況も踏まえまして、法制審議会の最後の段階におきましても、文書提出命令関係につきましては、最後まで日弁連の側からは、秘密性について裁判所判断するというような改正をすべきであるという御意見が提示されておりました。  その点について相当改めてまたその段階で議論がされたわけでございますが、最終的にはそういう情勢を踏まえて、そしてまた秘密に属する文書としてどういう種類の文書があるかというようなことについてのヒアリング調査も踏まえながら、今行政改革委員会行政情報公開部会の場で大変幅広い大きな御議論がされている最中であって、その議論を今この段階で、民事訴訟法場面だけで一定の線を引くということは困難である。したがって、そういう議論の推移、結果を踏まえて、それを受けとめて民事訴訟法でこの問題についてどういう対応をすべきかということを考えることがより適切な解決が得られる事柄であるというような法制審議会全体としての最終的な御判断で、今提出しておりますような内容での改正要綱が確定されたという経緯があるわけでございます。
  78. 山田英介

    山田(英)委員 いみじくも御答弁でお認めになられたように、法制審議会における審議の中心は、証言義務規定にある監督官庁の承認を要するというところといかに整合性を合わせるかというところにどうもポイントが置かれた議論がなされてきたようでございます。したがって、それは確かに局長がおっしゃるように、ひいてはその延長線上には、四号文書について、四号ロの条文について、これが官庁か裁判所のどちらに最終判断を任せるのかという議論にも間接的にはなるのだろうと思います。  しかし、やはりこれだけHIV訴訟をめぐる官庁側の対応が非常に大きな世間の批判を浴びる、あるいはまた、それはもう数千名、数百名の人命にかかわる大きな問題であった。  それから、あえてもう一つ挙げれば、昨年十二月に発生したあの福井県の原子炉「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故で、いわゆる実施機関たる動燃が情報たるビデオを隠した。一分編集したのがありません、おかしいと言われて、あと四分ありました、未編集のものですと。しかし、もうないのかと言ったら、あと四分未編集のものがありましたと。実は、その一分と四分の前半のものは、二回目に出てきた四分のものは未編集じゃなくてもう編集されたものだった。もうないのですかという話になったら、いや、実は事故が起きた六時間後に撮影したフィルムがあと十何分かあった。それは行政機関、いわゆる監督官庁という位置づけではありませんが、いわゆる監督官庁の指導とか監督に服して一定の分野の事業を実施するというようなところにも、やはり実施機関のそういう体質というものがある。  ですから、そう考えてくると、やはり証言義務規定に整合性を持たせるのだという、そこに実は焦点があるのじゃなくて、この七十年ぶりの民訴法の大改正というのは、まさにその改正の大目的にあるように、今の社会の要請あるいは期待に適切にこたえ得る訴訟制度をつくるためにはどうするのだというところを大方針としてぴしっと据えているわけです。  ですから、それはまさに時代、社会の要請、証拠偏在型訴訟、現代型訴訟というのは官側あるいは企業側、そういうところにほとんどすべての証拠たるべき資料が偏在をしている、それを是正していこう、それで社会の要請にこたえようというのが今回の大改正の大目標であったわけでありまして、むしろこういう規定を置くことによって、例えば今大問題になっているHIV訴訟をめぐる厚生省の対応を見たときに、果たしてそれは文書が出るようになっていくのか、あるいは「もんじゅ」事故における動燃の、情報を隠す体質というのでしょうか、情報非開示体質みたいなものが露呈されたわけですけれども、例えばそういうものをこういう規定ぶりにすることによって助長してしまうのか、あるいはそれをやはり改めさせる、是正させる方向に行くのかというところが法制審議会でまさに十二分に、それから真剣に、時間をとって何回も何回も議論がされていくべきだというふうに私は思います。それは間接的には審議をされたのかもしれませんけれども、どうも今の御答弁ぶりではそういうふうに理解せざるを得ないところでございます。    〔太田(誠)委員長代理退席、委員長着席〕  したがって、この民事訴訟法案の、特に公文書公務秘密文書の提出に係る諸規定については、すべてそれは一〇〇%官庁の裁量にゆだねた、官庁の判断にもう任せた、官庁が秘密だと言えばもう言うなり、その秘密だと決めた理由、妥当性があるのかどうかというのは裁判所を初めだれも触れることはできない、もうアンタッチャブルということにすることが果たして時代の要請に、国民の期待にこたえ得る七十年ぶりの大改正なのかということを私は申し上げたいわけでございます。  それでもう一つ、午前中の答弁を聞いていますと、三号文書に該当するかしないかということの裁判所のいわゆる判断あるいは判例、裁判例というのが年々とかく拡大解釈されてきた。本来利益文書法律関係文書であるかないかというところなのに、要するにちょっと広くそれを解釈して、官庁側が国家秘密に属する文書だと言っても実際には排除してきた例が幾つもあるのですけれども、判例法として確立していると言ってもいいのですけれども、そういう中で、結局三号文書になるのか四号ロの方にそれはゆだねられるのか、三号文書の話ではありませんというあたりがどうなるのかをちょっと聞いてみたいのですけれども、具体的に聞きたいと思います。  航空自衛隊の航空事故によって亡くなった自衛官の遺族や被害を受けた住民から、国を相手取った国家賠償訴訟事件というのが幾つもありましたし、あります。そこでは、自衛隊内部の航空事故調査委員会が調査報告書を取りまとめて、これを防衛庁、自衛隊に提出をした。この航空事故調査報告書をめぐりまして、文書提出義務ありやなしやということがずっと争われてきた。私が知っているだけでも五件ぐらい東京高裁の判決が示されています。  こういう事故調査報告書、これはもう明らかに公文書です、行政文書です。また、どの訴訟でも共通しているのですが、このいわゆる事故調査報告書の提出を争う訴訟等で、国側は、これらの調査報告書の提出は重大な国家的な利益を侵害するものであって、したがって公務秘密文書に属する、こういう立場で一貫していずれの同種の訴訟においても争ってきた。  ところが、現在の民事訴訟法及び裁判の実際では、調査報告書の公務秘密性について裁判所判断をして、一様に、国家の重大な利益が侵害されるという国側の主張を排除した、排斥してきた、こういうことでございます。そうすると、このたび提案された民事訴訟法案になって、このような場合の事故調査報告書の取り扱いは一体どうなるんだ。従来どおり三号文書でやるのか。午前中、局長は、ちょっと拡大解釈の嫌いがあるのでこの際これを交通整理した、それが四号の規定の新設ということにつながっていくわけだと私は思っているのですが、これは三号文書でいくのですか、あるいは四号文書でいくのですか、これはちょっと教えていただきたいのですが。
  79. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 午前中の答弁についての言及がございましたが、現在の解釈、運用が拡大され過ぎているから整理するというようなことを申し上げたつもりはございません。むしろ、現在運用上いろいろな工夫がされているということでありますけれども、しかし、その解釈にはおのずから限度があるということで、三号では入らない文書ももちろんある、そういうものについてまで一般義務化することによって広げたいというのが今回の改正の趣旨でございます。  それから、御質問の直接のお答えといたしましては、午前中も申し上げましたように、現行の一号から三号までについては全くそのまま残しているわけでございまして、これまで解釈によっていわば広げられてきたという状態はそのまま維持される。そこの点については今回の改正は何らの影響を及ぼすものではないということで、法制審議会でもその点について十分議論がされ、そういう前提で要綱が確定され、そして法律案を提出させていただいているわけです。それは、今回の改正は、ともかく現行の対象文書よりも範囲を広げるということを目的とするものであるということから、今までの解釈がむしろ後退するということは心配する必要がないというふうに考えているわけであります。
  80. 山田英介

    山田(英)委員 四号の規定を置くことによって、従来からの一、二、三号文書についての取り扱いといいますか、裁判所判断については、従来判断なされた範囲はこれは影響を受けないということを今おっしゃったわけであります。それがどういう形で担保されるのかということは、ちょっとまだ、いまだにわかに、ああそうですがと今私は言える状況ではありません。もうちょっとこれは検証する必要があります。  ですから、法の枠組みとしては、新しい民訴法で一、二、三号文書と四号文書とは明確に分けているのだというふうにおっしゃるけれども、分けてあるということとその運用はまた違うわけでありまして、実際これから起こるであろういろいろな国家賠償訴訟のようなときに、これははなから、従来はそれは三号文書かもしれないけれども、局長そうおっしゃるけれども、これはちょっと拡大した解釈、判断だったのではないのか。したがって、監督官庁側が今回の規定を盾に、これは四号の規定に該当する文書なんだというふうに出てこないとも限らない。その出てこないという保証はどこにあるんだというこの点はまた議論させてもらいたいと思います。  ですから、私が申し上げたいのは、今まで裁判所判断をして、そして公文書においてそれがいわゆる職務上の秘密性がないというふうに判断をして、それで提出命令を発令して、現実にそのようになった、発令して、じゃそのとおり国側が、あるいは官庁側がその文書を出してきたかというのは、これは必ずしも通常出していないようでございます。  ただ、出さない場合には、原告側の、挙証者側のその点についての、その文書についての言い分を真実と認めて、国は敗訴を甘受しなければならない、あるいは賠償しなければならない、それに甘んじなければならない、しかし文書は出さない、こういう事例が多いようでございます。それはそれといたしまして、私は、そういうことで、今まで裁判所判断で出されていたものが出されなくなってしまうおそれなしとしないというふうに申し上げて、次に行きたいと思います。  それじゃ、もう一つ伺いますが、今まで、裁判例で具体的にお伺いしますけれども裁判所が当該官庁に提出、いわゆるその文書を訴訟上必要だから裁判所に出してもらえないか、訴訟の審理を迅速充実させるために、それは証拠としてどうしても必要だと思われる文書だから出してくださいと言っても行政側が出さない。その場合に、裁判所に証拠として提出を求める最後の手段として、文書提出命令の申し立てというのがなされる。しかし、これは現行法の限定則挙された文書提出義務規定ですから、その限界ということでもあるのですが、利益文書に当たらない、あるいは法律関係文書に当たらない、行政内部で自己使用目的のためにつくられた内部文書だというようなことで、要するに提出命令を出せない、あるいは申し立てを却下せざるを得なかった、そういう判例というのが実はたくさんあるわけです。  例えば、その一つは、水害訴訟における河道計画調査報告書、これはやはり該当しないということで提出命令の申し立てが却下されている。それから、住民の健康影響調査などというのが大阪府で行われた。それが、ある訴訟の上で極めて重要な証拠資料となると思われるので、裁判所が大阪府に対して資料を出してくれと。しかし、それは出せない。それで文書提出命令の申し立てをやった。しかし、結局裁判所はこれも、現行法のやはり文書提出命令規定の限界ですよね、利益文書にも法律関連文書にも該当しないということで却下をする。  こういうものは、それは案件によりますよ。案件によりますけれども、より行政情報を公開していこう、あるいはしてほしいという、これは世界的な、あるいは国際的なというか、時代の大きな流れである、潮流であるというふうに私は理解をすれば、それがある、潮流が、大きな流れが。とすれば、案件にはよりますけれども現行法のもとでは裁判所が却下せざるを得ない、あるいは提出命令を発令することができないというような、そういう一つ一つ文書というものが、できる限りやはり裁判所に証拠として提出されるような仕組みあるいはシステムというものをつくっていくことが大事なんだというふうに思います。  そういう観点からすると、二百二十条四号の特にロの規定を置いたということ、それはすなわち、裁判所ではなく監督官庁にその公文書行政文書秘密性ありやなしやの最終判断権を一〇〇%ゆだねてしまったという規定を盛り込んだ今回の改正法案では、かえってますます裁判所に証拠として提出されなくなるということを僕は言いたいわけです。逆なのですね。七十年ぶりのこの大改正の目的というのは、今までの現行法上の限界点というものをどう克服して、出されることが望ましい、そういう方向にこれを是正していくか。実際に、具体的に文書が、こういうものが新法によって出るようになりますということが大事であり、そしてそうあってほしいと思うわけでございます。  それからもう一つ、同じような意味で言えば、ベビーベッド事件というのがありまして、これはもう御案内のとおりかと思いますが、僕の記憶では二件そういう事件が起きたのですが、乳幼児がネットとベッドのマットレスか何かの間に体が転がって、顔面が下に押しつけられたまま窒息死をした。その遺族から、メーカーとかあるいは国を相手取って、損害賠償訴訟というのが起こされた。実はこれとは別に、通産省は事故情報処理システムというものを持っていて、そのもとでテストをする。通産省の事故情報処理テスト報告書というのを通産省は持っている。保有をしていた。それは、国側あるいはメーカー側その他、原告が賠償を求めて訴訟を起こしたときに、その通産省の検査所が客観的にテストした報告書はぜひ証拠として裁判所に提出してください、そういうことになった。  しかし、結果的に、それはいわば通産省内の行政を適正に遂行するためにつくった文書であり、それは外部に見せることを予定していないから、いわゆる内部文書だから出せませんと拒否し続けたわけです。それで、文書提出命令の申し立てをやった。それは却下された。裁判所の却下の理由というのは通産省側の理由とほぼ同じものである。ですから、それはまさにこれまた現行法上の、一面、現行法の限界なのですね。利益文書じゃない、法律関係文書じゃない、いわんや一号、二号に該当する文書じゃない。それで、結局出せない。でもしかし、何でそんな通産省の客観的に行ったテスト報告書のような文書裁判所に証拠として出されないのだろうとだれだって思いますよ、こんなものは。そんなものは使えて当たり前なのだから。そうでしょう。  それで、法務省の提案者の説明を聞いていると、そういうようなものを、要するに専ら自己の使用に供する文書はこれは提出する義務がないと四号で決めているわけですよ。明文規定を置くわけですよ、この改正法案で、この新しい法案で。では、何でそんなことになるのかと聞けば、それを見せることによって文書の所持者、この場合で言えば通産省が、文書の所持者が受ける被害が余りにも甚大過ぎるということになるわけです。それはそんな文書ですか。それすら裁判所に証拠として出されなかったわけですよ。  だから、多くの方々が、法曹関係者だけじゃなくて、国民が一様に期待していることは、そういう証拠として使えて当たり前だろうという文書がこの改正法案によって提出されるように道が開かれるのじゃないか。改正の目的はそうなのですから、開かれるはずなのだ。そうなっていないのですよ。これはますます出にくくなるのですよ。ますます出にくくなりますよ。  それから、ちょっと重複しますけれども、「もんじゅ」、このビデオ情報隠しという体質、本法律案が原案のとおりこんなものが決められてしまったら、これはそういう情報非開示体質というものを助長しますよ。逆にそういう役割を果たしますよ。それは今日的な時代の要請にこたえるどころか逆行ですからね。  HIV訴訟における厚生省の非協力的な態度。資料を出さない。ない、見つからないと言って、五年間も六年間も逆の意味で頑張ってきて、とうとう出さざるを得なくなった。この法律案規定が通れば、この規定の仕方はそういう厚生省の対応を法的に追認するという話なのですよ。そこのところをもっと深刻に、そこのところをもっと真剣に考えなければいけません。  まだありますよ。  住専問題で大蔵省がなかなか資料を出さなかったじゃないですか。あれだけ国会で大騒ぎをして、やっと小出しに出してくる。相手が民間で、原告、挙証者が私人ということで、国民で、仮に被告が国側であって、こんな規定を置いたら、将来住専訴訟か何か起きたときに、新しく規定を設けた二百二十条四号ロの規定によって、それは職務上の秘密公務秘密文書であるということで、一切大蔵省は資料を出さないかもしれませんよ。  こういう訴訟が起きるかどうかわかりませんが、先般北海道でトンネルの崩落事故があった。たくさんの人命が何百万トンという土砂の下で亡くなられた。そのトンネル道路の管理責任を問うて賠償を求める訴訟が将来起きないとも限らない。そのときに、こんな規定ぶりの民事訴訟法が原案のとおり通ったら、道路の管理日誌だとか事故調査報告書だって秘密文書だと言って出されなくなる危険性がある、しかも公務の遂行に著しい支障を生ずるという理由で、しかも御丁寧におそれがあるというようなことを盾にして、この新設される二百二十条第四号ロの規定によって出されなくなる危険性がある。  挙げれば切りがありません。  本年一月二十六日、郡司ファイルが見つかった。同時に、三十冊のHIV関連のファイルが見つかった。うち、まだ現時点で二十六冊が未公表だそうじゃないですか。先般、たしか同僚委員の枝野委員がこの委員会で確認をされております。そして、そのときの答弁は、今見ています、どういう方法で公表するか、検討中ですというような趣旨の話があった。まさかそんなことはないと思いますが、こんな法律が通ってしまったら、その残り、二十六冊だって、それを盾に出さないということだって可能じゃないですか。  したがいまして、私はこの民事訴訟法案における、特に公文書あるいは公務秘密文書の提出手続をこのように規定したということについて容認することはできません。大臣、最後に一言御所見を伺っておきたいと思います。
  81. 長尾立子

    ○長尾国務大臣 文書提出部分についての改正でございますが、先ほども説明をいたさせていただきましたように、今回の改正は提出義務対象となる文書の範囲を拡大したいということでございまして、情報公開という大きな流れに逆行するということではないというふうに思っております。  しかし、現在の規定について今委員から大変厳しい御指摘もいただいたわけでございますが、行政情報の公開のあり方、これは今行政改革委員会におきましていろいろな角度から非常に幅の広い御議論が行われているところでございます。その御議論の結論が出ました段階で、その結果等を踏まえましてその趣旨が生かされるような所要の検討を進めさせていただきたい、このように思っております。
  82. 山田英介

    山田(英)委員 最後に一言申し上げたいと思いますが、繰り返すようでありますが、今まさに民事訴訟のこの法案がここで審議されているわけで、始まったわけです。後に整備される情報公開法との関係で将来直していくというようなことじゃなくて、今現に、適正な、正しい、社会の、時代の要請にこたえられる、やはりそういう民事訴訟法改正をあるいは制定を期すべきでありまして、将来、では情報公開法ができてそこで一定の線引きがされて、そうすればまたそこと整合性を合わせて、不都合があれば変える、そういう話じゃありません。それは逆転です。  しかも、もう一回繰り返しますけれども情報公開法の中で情報不開示、これを不満として情報公開訴訟が起こされた場合に、司法判断を求めてこられた場合に、今この民訴法案で一〇〇%公文書は、この当該公文書が職務上の秘密に当たるかどうか、公務秘密文書であるかどうかという判断権を一〇〇%監督官庁にゆだねるということであれば、これはもう出てこないという話ですから、その情報は。情報公開訴訟における請求者の司法救済というものは、これはなくなってしまう。司法の救済を受けることができなくなってしまう。  そういう危険性を、極めて大きな危険性を柱にした民事訴訟法案が、時代の要請に合致している、あるいは充実した審理、迅速な審理、そして国民にとってわかりやすく、利用しやすい、そういう訴訟法の改善を目指した目的とは全く相入れない、そういうことではないのかということを最後に申し上げまして、本日の私の質問は終わらせていただきます。
  83. 加藤卓二

  84. 山口那津男

    ○山口(那)委員 新進党の山口那津男でございます。  午前中からの各委員の質問と重複する点もあろうかと思いますけれども、ひとつ大事な問題ですので、繰り返しの質問もお許しいただきたいと思います。  そこでまず、私の方からは、今回の民事訴訟法改正に際して、情報公開制度との関係をお尋ねをしてまいりたいと思います。  現行の民事訴訟法三百十二条で提出義務が生じる文書という中には、当然に行政情報に関する文書も含まれている場合があろうかと思います。公開の裁判で行政情報に関する文書の提出義務が生じる場合においては、広い意味でその裁判を通じて行政情報国民に公開をされていく、こういう結果をもたらすわけでありまして、私は広い意味情報公開制度に当たると。いわば一般的な情報公開制度を条例あるいは法律でつくるとすれば、この民事訴訟法文書提出命令に伴う行政文書の公開というものは特殊な情報公開制度である、このように考えられると思うのでありますが、この点の御認識をまずお伺いしたいと思います。
  85. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御案内のとおり、民事訴訟法上の文書提出命令というのは、訴訟の当事者が訴訟の審理に必要な文書を相手方または第三者から提出させるという制度でございます。文書提出命令が認められれば、結果的に行政情報に関する文書が裁判の場に提出され、審理の公開や記録の閲覧等によって文書が公になることになるわけでございまして、公知でないものが公知のものになるという意味におきましては、御指摘行政情報公開制度と共通性があるということであろうと思っております。  しかしながら、この制度は情報公開そのもの、それ自体を目的とするものではないわけでございますので、そういう意味におきましては、情報公開の一つの形態という位置づけではないのではないだろうか、共通性と性格の違いと両方を持っているのではないかというふうに考えております。
  86. 山口那津男

    ○山口(那)委員 念のため、今法務省の御見解であったわけでありますが、これから行政情報公開制度をつくろうとする立場であります総務庁並びに行政改革委員会事務局ですか、そちらの方から御答弁をいただきたいと思います。
  87. 松村雅生

    ○松村説明員 一般に情報公開法とは、何人にも目的のいかんを問わず行政機関の保有する情報に対して開示請求権を与える制度である、こういうふうにされておるわけでございますけれども行政情報に対する民事訴訟法に基づきます文書提出命令につきましては、民事の訴訟手続に関して、行政機関が当事者または第三者として職務上の秘密が記載された文書を証拠として提出する場合に関する制度であります印したがいまして、それぞれ趣旨、目的を別にする、いわば別次元の制度である、こういうふうに考えております。  これらをあわせて広く情報公開制度と呼ぶかどうかにつきましては、その言葉遣いの問題ではなかろうかというふうに考えております。
  88. 藤井昭夫

    ○藤井説明員 ただいま総務庁の松村課長から申し上げたとおりなんでございますが、ちなみにこの四月二十四日に発表されました情報公開法要綱案中間報告においては、開示請求権制度というものが、国民主権の理念にのっとって、行政運営の公開性の向上を図るということと、政府の諸活動を国民説明する責務を全うする、そういうような観点から、松村課長が申し上げましたように、基本的に何人に対しても目的を問わず与える請求権というような形になっております。  そういうこともありまして、部会での御論議でも、今までのところ、民訴法に基づく文書提出義務というものにかかわる問題が情報公開の一環であるかどうかというような形での御論議は今までやられておりません。   以上でございます。
  89. 山口那津男

    ○山口(那)委員 今、民事訴訟法文書提出命令行政情報公開制度一般とはおのずから目的度が違う、こういう趣旨の御答弁がありました。  そういうとらえ方もできるかと思いますけれども、しかし、訴訟を行う当事者から見れば、これは行政情報公開制度一般を使ってある特定の行政情報文書を入手しようという場合もあるわけでありまして、その当事者の利用という観点から見た場合は、これは、文書提出命令でいった場合とそれから行政情報公開制度に基づく請求でいった場合と、どっちが利用しやすいかというだけの話でありまして、どちらも同じ民事訴訟を遂行する目的に役立てる、こういう意図で利用されるわけでありますから、私はそういう意味ではやはりこの情報公開制度の一環、特殊な形態、こう言い切っていいだろうと思っておるわけであります。  ちなみに、行政改革委員会の方でそのような観点からの御議論がなされていないということであれば、大いにこれからもっとその点について議論していただきたい、こう思うのですね。これはさまざまな部分情報公開制度、あるいは特殊な情報公開制度というものが現行法でもあろうかと思います。それとの体系的な関連性あるいは競合関係が生じた場合の処理等々、これから大事な問題点だろうと思いますので、ぜひその点の御議論も深めていただきたい、こう思います。  さてそこで、この情報公開制度が今日必要とされる、これだけ議論が盛り上がってきているわけでありますが、今日必要とされるその理由について、一般的にお答えをいただきたいと思います。これは行政改革委員会事務局、いかがですか。
  90. 松村雅生

    ○松村説明員 少々古い話になりますけれども、現在の情報公開制度の検討が始まったという意味で、昭和五十八年三月の臨時行政調査会の最終答申におきまして、情報公開制度については、「公正で民主的な行政運営を実現し、行政に対する国民の信頼を確保するという観点から、」「積極的かつ前向きに検討すべき課題である。」こういうふうに言われております。さらに、その背景として、社会全体の情報化の進展及び行政機能の拡大により、行政機関に大量の情報が集積し、かつ国民行政情報に対する関心と行政過程への参加意欲が高まっているという状況変化が挙げられております。  さらに、先ほど出ましたけれども、ことし四月二十四日の行政改革委員会行政情報公開部会が明らかにいたしました情報公開法案要綱の中間報告でございますけれども、その中では、「行政運営の公開性の向上を図り、もって政府の諸活動を国民説明する責務が全うされるようにするとともに、国民による行政監視・参加の充実に資することを目的とする」、こういうふうにしておりまして、このことも同様の趣旨であろうかと考えております。
  91. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そのような今日的必要性を考えますときに、私は、明治憲法下でこのような情報公開制度は実際には議論すらされなかったと思うわけでありますが、明治憲法下で果たしてこのような要請があっただろうか、あるいは現在の日本国憲法が制定された当初、そういう要請があったかどうか、これは今日とは大分違った状況があったのではないかと思うわけですね。この行政情報公開制度の必要性という点について、明治憲法下そしてまた日本国憲法下で必要性がどのように認識が変わってきたか、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  92. 松村雅生

    ○松村説明員 今御答弁いたしましたけれども、政府におきましては従来から、公正で民主的な行政の実現、あるいは行政に対する信頼性確保の観点から情報公開制度について検討を進めてきているところでありますが、四月二十四日に公表されました行政情報公開部会の中間報告におきましては、いわゆる情報公開法につきまして、「国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する国民の権利につき定める」というふうにしておりまして、国民主権の理念がその基礎にあるという考え方が示されているところでございます。  なお、明治憲法下での情報公開制度の必要性について御質問ございましたけれども、これにつきましては研究会等でも議論をいたしておりませんし、見解を述べるのは難しいということについて御理解をいただきたいと思います。
  93. 山口那津男

    ○山口(那)委員 言うまでもなく、明治憲法では国民主権が明定されておりませんでしたから、その意味では今日のようなこの制度の必要性というものは存在しなかった、もちろん議論もされなかった、こう言っていいだろうと思うのですね。しかし、日本国憲法のもとにおいては、戦後一貫して憲法を条文改正されたわけではありませんので、ここでどうしてこの五十年間、そういう認識が変わってきたのか、この点についてはどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  94. 松村雅生

    ○松村説明員 明治憲法そのものの解釈とかそれとの情報公開制度の必要性云々につきまして見解を申し上げるのは差し控えさせていただきますけれども、先ほど答弁いたしましたように、憲法の理念、憲法で定める国民主権の理念、どういうものが情報公開法の基礎にある、あるいはそれと密接な関連を持つという考え方中間報告を出されておりますし、それからまた、昨今の社会経済情勢、行政に対する考え方、こういうものの変化というものも情報公開法の制定の要求の基礎にあるというふうに考えております。
  95. 山口那津男

    ○山口(那)委員 明治憲法下のことを答えよと言ったわけじゃなくて、日本国憲法から五十年たっているわけですよ。理念的にはもう制憲当初から変わらないはずなんです。それがなぜ今日その必要性がかまびすしく議論されるようになったか、では憲法制定当初はそういう必要性は全くなかったのか、こういうことをお伺いしているわけですよ。
  96. 松村雅生

    ○松村説明員 御答弁を的確にやろうかと思っておりますけれども憲法との関係につきましては研究会でもいろいろ議論がございまして、いわゆる知る権利との関係について、情報公開法の制定に絡んで、知る権利を目的規定等の関係で明記すべきかどうかという議論も種々なされておりますけれども、知る権利につきましては、その言葉が多義的であるとかあるいは情報公開制度、知る権利の、狭義の意味での知る権利として国民行政に対する情報を請求する権利というふうに考えることができるかと思うのですけれども、それを憲法上直接要請されているというふうに考えることはなかなか難しいのではないかというようないろいろな議論がございまして、中間報告では「国民主権の理念にのっとり、」ということで、憲法国民主権考え方情報公開法制定の基礎にあるのではないか、こういうことを目的規定としてあらわすということで先生方の考え方が示されているところでございます。
  97. 山口那津男

    ○山口(那)委員 まあいずれにしても、日本国憲法国民主権の原理が基礎にあってこの情報公開制度が今日必要になっている、こういうお答えと受けとめておきましょう。しかし、その基礎というものは、何度も繰り返すようですが、憲法制定当時から存在したということなのです。ですから、今日的な必要性というものは、今御答弁の中にあったように、憲法上の理念のみならず、社会経済的にこれら行政情報国民に公開されることが今日強く求められているというところがやはり今日議論される大きな理由の一つになっているわけです。ですから、この点を見落として情報公開制度を議論していきますと、これは中途半端な議論に終わってしまうと私は強く思います。  さて、そこで法務大臣にお伺いいたしますけれども、大臣としていわば政治のサイドからの責任を担う、そういうお立場も含んでいるわけでありますが、大臣としてこの日本国憲法下における情報公開制度の意義、今日的意義というものをどうとらえていらっしゃるでしょうか。
  98. 長尾立子

    ○長尾国務大臣 お答えを申し上げます。  行政の透明性の確保、それから公正で民主的な行政運営を実現する、これは、行政に対します国民の皆様の信頼を確保するという観点から、行政情報の公開ということは大変に重要なことだと認識をいたしております。こういった重要性を十分に踏まえました上で、適正な行政運営の確保、また一人一人が持っていらっしゃる個人情報の保護、こういうことにつきましても遺漏がないように努めなくてはならないと考えております。
  99. 山口那津男

    ○山口(那)委員 今の大臣の御答弁ですと、いわば法務省所管事項についてもこの制度の意義を充分に生かして国民情報を提供する、こういう積極的な努力が必要である、こうお伺いしてよろしいでしょうか。念のため御答弁いただきたいと思います。
  100. 長尾立子

    ○長尾国務大臣 ただいま申し上げましたように、行政情報の公開ということの重要性は十分に認識をしているつもりでございます。
  101. 山口那津男

    ○山口(那)委員 さてそこで、現行の民事訴訟法三百十二条の提出義務の解釈、運用に当たって、この現行法戦前、明治憲法下で制定されたものであり、以来条文は変わっておりません。しかし、情報公開を求める機運といいますか、その必要性というものについては今の議論にあったようにまるっきり変化をしてきている、そう思うわけであります。明治憲法下と日本国憲法下では理念が全く違いますし、さらに、日本国憲法下でも制定当初と今日では大きな違いがあるということであります。  これらの情報公開の必要性が変化をしているということが、この七十年続いた現行の民事訴訟法三百十二条の解釈、運用のあり方にどのように反映されてきているか、この点の御認識をお伺いしたいと思います。
  102. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘ございましたように、現行の民事訴訟法三百十二条の提出義務の範囲につきましては、特にその三号のいわゆる利益文書及び法律関係文書に関しまして、適用上の解釈、運用上、次第にその範囲を広く解する裁判例が多く見られるようになっておりますし、また、学説上もその範囲を広く解するという考え方が次第に支配的になりつつあると承知しております。これと御指摘情報公開の一般の問題との関連性ということは私どもつまびらかに承知しておりませんが、広い意味での行政情報というものについての開示のあり方についての考え方の変化というものもその背後にあるのではないだろうかと理解しているところであります。
  103. 山口那津男

    ○山口(那)委員 今法務当局の御認識を伺ったわけでありますが、一方で、この民事訴訟法の運用の担い手である裁判所として、この点についてどのような御認識をお持ちでしょうか。
  104. 石垣君雄

    石垣最高裁判所長官代理者 ただいま法務省の方から申し上げたこととほぼ同様でございますが、先ほど来いろいろ御指摘がありますように、現行民訴法上は、この文書提出義務といいますのは、その規定ぶりからいいますと、限定的な義務というような規定になっているかと思いますが、三号文書の範囲を中心に、三百十二条各号に該当する文書の範囲を広く解釈する裁判例が多くなってきております。そして、学説上もそのように広く解釈すべきであるというものが多くなっているというふうに考えております。
  105. 山口那津男

    ○山口(那)委員 これは法務当局の御答弁にもありましたように、単に訴訟上の真実発見の要請にこたえるというばかりではなくて、広く行政情報を開示していこうという社会的な機運も背景にあるということがこの判例の動向にも色濃く反映しているのだろう、こういうふうに私も思うわけであります。  そこで、条例による行政情報公開制度というのが各自治体でつくられておりまして、都道府県ではもう大半ができ上がっております。市町村レベルにおきましても、二百を超える自治体でこれらの制度が実際に施行されているわけであります。この条例による行政情報公開制度の体系というものと、それからこの民事訴訟法文書提出義務との関係をどのように理解していったらいいかということについて若干のやりとりをしたいと思います。  個別の条例は幾つかの差異があるわけでありますけれども、しかし、概括的に見れば、一つの体系、条例による行政情報公開制度の体系というものができ上がっていると私は思っております。そこで、これらの制度と、それから現行民事訴訟法文書提出命令、これが行政情報を開示する機能を持つ、結果においては同じような機能を担っている、こう理解するわけでありますけれども、そうした観点からした場合に、この情報公開制度と民事訴訟法というのはいわゆる一般法と特別法といったような関係に当たる、こう理解してもよろしいでしょうか。  まず、行政改革委員会事務局、この点いかがですか。
  106. 藤井昭夫

    ○藤井説明員 お尋ねの件でございますが、一つは、あくまで地方公共団体の制定しておる条例でございますので、それとの関係についての判断をする立場にはないということと、まして民訴法の解釈をする立場ではないということで、直接お答えすることはできないと思います。  ただ、これまでむしろ、文書提出義務の問題にストレートな問題ではなく、いわゆる公務員守秘義務の範囲、それと情報公開法の不開示情報の範囲、これはどうあるべきかというのが実は情報公開部会での主要な論点となっておりました。ただ、そうはいっても一これは部会での議論の中で、そもそも今の守秘義務規定の仕方というのは極めて一般的、包括的な規定の仕方で、範囲を検討するにしてもちょっと検討しようのないところもあるということでございまして、実は今の中間報告を策定する前に、ことしの一月十二日に検討方針というものを策定しているのですが、当面は、まず情報公開法としての不開示情報の範囲をきっちりと検討する、その上で守秘義務との関係も検討するというふうな考え方が示されておりました。したがいまして、先月二十四日に出ました中間報告についても守秘義務との関係については何ら触れられてないということを御了解いただきたいと思います。
  107. 山口那津男

    ○山口(那)委員 いずれにしても、一般法、特別法の関係があるかどうかなどという議論はなされていない、こういうことのようでありますので、この点については、国が行政情報公開法をつくるに当たって個別の情報開示機能を持つ制度との関係というものは必ず問題になろうかと思いますので、ぜひこの点も御議論いただきたいと思います。  さて、法務当局としてはこの点についてどのように考えますか。
  108. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 先ほどの御質問に対するお答えと重複することになると思いますが、申し上げましたとおり、条例による行政情報公開制度と民事訴訟法上の文書提出の制度とはそれぞれその目的を異にするものでございまして、これは並列する別個の制度であるというふうに理解をいたしております。したがって、いわゆる一般法、特別法という関係にあるものではないというふうに私どもとしては理解をいたしております。ただ、開示する側から考えますと、行政上の情報が公開されるという意味で、先ほども申しましたように、共通性があるということでございます。  したがいまして、行政情報公開制度、これは国の場合、条例による場合、それぞれでございますが、そういう制度がどういうものであるかということは、訴訟の場合の文書提出命令がどうあるべきかを考える上で、その基礎となるべきものであるというふうに考えているところでございます。
  109. 山口那津男

    ○山口(那)委員 現行の民事訴訟法三百十二条のいわゆる二号文書、これは、引き渡しまたは閲覧を請求できる文書対象となっているわけでありますが、この閲覧を請求できる文書とそれから条例に基づく公開請求がなされた場合の対象文書というのは、条例で公開請求権が制定されている、こういう意味で一種の公法上の請求権があると思うわけでありますが、この民事訴訟法三百十二条の二号文書、これは従来は私法上の請求権を持つ文書理解されてきたのだろうと思いますけれども、念のため、この条例に基づく対象文書との、同じものになるのかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  110. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘の、現行民事訴訟法三百十二条二号に規定しております引き渡し請求権、閲覧請求権を有する場合というのが私法上のものに限られるのか公法上のものを含むかということにつきましては、学説上は両方の考え方があるわけでございますけれども、現在の一般的な考え方、あるいは、これは高裁段階でございますけれども、裁判例の考え方におきましては、これは私法上の請求権を有する場合を言うものであって公法上の請求権によるものはその対象にならないという考え方であるというふうに承知しております。
  111. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そうしますと、例えば登記簿の閲覧請求権、これは公法上の請求権の一例だと思いますけれども、こういう文書がなぜこの民訴法の二号文書対象にならないのか、あるいは、現行法ですが、民訴法の三百十二条の対象文書にしないということでよろしいのでしょうか。
  112. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 理論上の問題はともかくといたしまして、現実問題としては、そういう形で、登記簿謄抄本につきましては、だれでも所定の手続を経てこれを閲覧し、謄抄本の交付を受けることができるということになっているわけでございますので、そういうものについて文書提出命令対象にするということは、実益もないし、かえって適当ではないのではないかというふうに考えております。
  113. 山口那津男

    ○山口(那)委員 今おっしゃったように、この公法上の請求権のあるもの、今まで挙げられた例というのは、請求すれば必ず出てくる文書である、だからあえて民訴法の対象文書にしなくても、当然書証として使う余地があるわけだから、保証されているわけだから、この解釈に含ませなくていい、これで済んできただろうと思うのですね。  しかし、私は、ここで、従来行政情報公開制度というものが余り議論されてこなかった、これは比較的最近のことでありますから、民事訴訟法制定者はそういう問題意識がなかったと思います。従来からも、公法上の請求権を含まないということで通用してきたと思いますけれども、しかし、出るか出ないか保証の限りではない、こういう文書が多数存在するわけですね。それについて、情報公開制度というものがつくられつつあるわけでありますから、私は、この情報公開制度に基づく請求権のある文書についても、この文書民事訴訟法文書提出命令対象文書として取り込む、こういうことを議論してもいいのではないか、こう思っているのですね。ですから、これは、従来の考え方とこの情報公開制度が今日議論されるようになった時代の考え方というのは、解釈、運用が変わってきてもいいのではないか、こう思うわけでありますけれども、この点についての御認識を伺いたいと思います。
  114. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 先ほど、現在の一般的な考え方、裁判例における考え方を申し上げましたけれども、その理由とするところは、公法上の閲覧請求権等を有する場合には、挙証者がこれを行使すれば目的を達することができるものであるからということでございまして、それを拒否するという処分がありました場合には、別途行政訴訟によって解決を図るべきものであるということを理由としているわけでございます。したがいまして、現行の仕組みのもとでは、これは行政訴訟においてその実現を図るべきものであるという考え方のもとに取り扱われているわけでございますし、現段階においても、そういう考え方、そのように解されるものではないかというふうに思っております。
  115. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そうすると、地方公共団体の持つ行政情報については現行の民事訴訟法対象文書にはならないものが多い、こういうことになってしまうわけですね。それで、必要があれば、その条例に基づいて開示請求権を行使して、そこで入手した場合に、できた場合に初めて、訴訟でお使いなさい、こういうのが現行法の運用だということになるわけですが、これでは非常に迂遠であり、かつ不十分ではないかと私は思うのですね。やはり直接この文書提出命令対象になるような道を開くべきではないか、こう考えるわけでありますが、いかがですか。
  116. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 その開示が拒否された場合には、最終的には行政訴訟、抗告訴訟ということで司法判断対象になるわけでございますが、その司法判断というのはまさに、行政当局といいますか、条例の場合でございますと地方公共団体の不開示という処分の適法、不適法ということを、そのことを直接の審理の対象として、行政訴訟手続に基づいて行われる裁判でございます。他方、文書提出命令の手続は、これは、ある一定の私的紛争解決するための民事訴訟手続のいわば付随の手続として、その手続も、決定手続という、本案の裁判とは格段に簡易な手続でされるわけでございまして、しかも、その審理の中心は別のところにある民事紛争解決ということを目的とする手続の中でのものでございます。  したがって、今御指摘の問題につきまして、行政訴訟手続で別個にやってくるということを改めて、民事裁判手続で文書提出命令の中で処理するということは、これは現在の行政庁裁判所との権限の配分といいますか、そういうものを基本的に大きく動かすものであるということでございまして、考え方としては両方の考え方があろうと思いますが、慎重な検討を要する問題なのではないだろうかというふうに考えております。
  117. 山口那津男

    ○山口(那)委員 条例と現行民事訴訟法関係を今伺ってまいりましたけれども、これらの関係というものは、基本的には改正法、改正民事訴訟法第二百二十条の解釈とそれから行政情報公開条例との関係でも同様のことになるのでしょうか。この点いかがですか。
  118. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 仮に、今されている検討を踏まえまして、国の行政文書についても一般国民が開示の請求権を有するという形での制度ができるということになりますと、その関係は、今条例に基づくものについて申し上げたと同様の関係であるというふうに考えております。     〔委員長退席、佐田委員長代理着席〕
  119. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そこで、現行法では一号から三号までしかありませんが、改正法では四号をつけたわけですね。そして一般義務化した、広がった、こういうふうに法務省説明をしているようでありますけれども、そうしますと、これまで条例で対象となりながら現行民事訴訟法では対象とならなかった文書については、この改正法で文書提出命令対象にする道を開いた、こういう理解はよろしいのでしょうか。こういう理解はできますでしょうか。
  120. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 先ほど来申し上げております関係は、今回改正しようとしております四号の文書につきましても基本的には同様であるというふうに考えております。  したがいまして、情報公開法令に基づく手段とそれから文書提出命令制度に基づく手段と、その両者が併存して存在する、それぞれそのいずれをも利用することができる、こういう関係になるものと考えております。
  121. 山口那津男

    ○山口(那)委員 また改めて伺いますが、国で情報公開法法律をつくった場合には、この改正民事訴訟法第二百二十条との関係というものは、今まで述べてこられた関係と同様のものと理解してよろしいでしょうか。
  122. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 先ほど来大臣からも申し上げておりますように、情報公開法がつくられたという場合には、それを受けて、この民事訴訟法上の手続についてもその整合性を確保するための検討をしたいと思っておりますが、しかしながら、情報公開法がつくられ、かつ民事訴訟法規定は今回お願いしておる改正案のままということであれば、その関係は先ほど来申し上げておるところと同様であると考えております。
  123. 山口那津男

    ○山口(那)委員 今までの御答弁ですと、情報公開制度、これは条例であれ法律であれ、これによって開示請求できる情報について文書提出命令制度とも私は競合する場合があると。つまり、利用者にとってみれば、民事訴訟において書証で、書類上の証拠で使おうとする場合、どっちの制度でいくかということを選ぶわけですね。競合関係が生じる。その場合に、並行して、それぞれ目的が違うから当事者がどっち選んでもいいですよというのが当局のお答えだったと思います。しかし、実際には、この改正法二百二十条の四号のロで「公務員の職務上の秘密に関する文書」、いわゆる公務秘密文書に当たる場合には行政庁側がこれは承認しない、提出を承認しないということが多分に予想されるわけですね。そうしますと、競合しますよ、どっち選んでもいいですよといっても、事実上は文書提出命令はこの場合機能せず、やはり情報公開制度に頼らざるを得ない、こういう結果になると思うんですが、そう思いませんか。
  124. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 論理的には先ほど申し上げたとおりでございますので、委員指摘の点、実際問題としてそうではないと申し上げることは難しいと思っております。  ただ、事実問題といたしましては、条例ができ、あるいは仮に国の行政情報につきましても情報公開制度ができ、その中で、いかなる文書は開示すべきものである、いかなる文書のみが開示しないことができるということが明確にされるということは、それは文書提出命令場面におきましても、行政庁としてその承諾をするかしないかという判断の基礎、基準としては非常に大きな意味を持つという効果はあるのではないだろうかというふうに考えております。
  125. 山口那津男

    ○山口(那)委員 国民が利用するわけですから、あくまでやはりこういう制度をつくる場合、利用者の立場に立って物事を考えていくのが筋だろうと思います。そうした場合に、どっちを使ってもいいよといっても、事実上これは情報公開制度を利用せざるを得ないということになってきますと、利用者としてはやはり不便を感ずるのではないかと思うんですね。せっかく民事訴訟法に簡易な手続で文書提出命令というのがあるわけですから、こちらで出るものだったらぜひ出してもちいたい、訴訟との関係も明らかである、こう考えるわけでして、ですから、文書提出命令制度というものを余り情報公開制度と離れて狭く解釈、運用しますと、これは先ほど来私が述べておりますように、広い意味での情報公開制度の趣旨から離れてしまう、こう思うわけであります。したがいまして、この改正法、改正民事訴訟法の議論に当たっても、この点は重々留意しつつこれからの議論を進めていかなければならない、こう思うわけですね。この点、大臣、うなずいていらっしゃいますが、いかがお考えですか。
  126. 長尾立子

    ○長尾国務大臣 今、行政情報公開につきまして、行政改革委員会行政情報公開部会で大変熱心な御議論を踏まえて中間報告が公表され、この中間報告をめぐって、またさらに議論が深められていく状況にあると承知をいたしております。このような流れは私どもとしても十分に注目いたしまして、このような全体の流れが私どもの仕事の上に反映されるような、そういう姿勢で臨みたいと思っております。
  127. 山口那津男

    ○山口(那)委員 まだ改正法は成立しておりませんので、ぜひこの審議の中でその姿勢を生かしていただきたい、こう思います。  情報公開法要綱案(中間報告)というのが出されましたけれども、ここでは、司法救済の場合に、インカメラの制度については言及がありません。その解説の文書によりますと、司法救済の場面ではインカメラの制度は採用しないこととする、こういう結論になっておるようでありますが、どうしてこういうふうになったのでしょうか。
  128. 藤井昭夫

    ○藤井説明員 実は、情報公開部会で当初この制度を検討するに当たって、情報公開法の開示、不開示決定に対して裁判になった場合インカメラを導入するかどうかということは、一つの重要な論点となっていたことは事実だと思います。ただ、その中で多々論議されたのですが、一つはやはり憲法第八十二条あるいは憲法第三十二条との関係で、これは積極説もあるんですが消極説もあるというような、なかなか学界でもまだ議論が煮詰まっていない段階であるということとか、あるいは御存じかと思いますが、情報自由法ではインカメラができることになっているわけですが、実際の運用状況を見ますと、そんなに多く実際にインカメラを使っておられるわけではないというような報告があったとか、あるいは情報公開条例、これらの裁判例なんかを見ていましても、いろいろな工夫でもって、そのインカメラというものがなくてもある程度審査していただいているということもございまして、いろいろ総合的に検討された上で、中間報告の段階ではインカメラ導入ということについては見送りになったということでございます。  また、インカメラ審理にかわる有効な手段の導入ということも検討していただいたのですが、現実には種々の工夫によって現行訴訟法でも対応が可能ではないかとか、また別途、部会での議論でも大きな論点となったのは行政救済ではございますが、行政不服審査法の手続にプラス諮問機関型の不服審査会を設けるという考え方でございますが、その中でインカメラ審理とか、あるいはこれも御承知かと思うのですが、アメリカ情報自由法では判例でなされておりますボーンインデックス、こういう方法をとるというようなことを指摘しておられまして、そういう不服審査会での争点整理とかいろいろな議論、そういったものが、その後の訴訟が出た場合においても、より充実した裁判所における審理というものを可能にするんではないかということを期待するというような御意見もございました。  ということで、今回はむしろ行政不服審査会、これの機能、機能を充実させるというようなことで中間報告ができているということでございます。
  129. 山口那津男

    ○山口(那)委員 今、憲法を理由に挙げられました。条文の引用だけではなくて、それを日本語で、一般の人がわかりやすい言葉でちょっと言っていただきたいのです。  それから、インカメラ制度を取り入れないとする場合、ほかの有効な手段、さっきボーンインデックス等挙げられましたけれども、これを具体的に考えられるもの、これは導入は、代替手段の導入ということははっきり目指すわけですね。その場合に考えられる選択肢をちょっと列挙してください。
  130. 藤井昭夫

    ○藤井説明員 失礼いたしました。  憲法第八十二条はいわゆる裁判の公開と言われている条項でございます。それから、憲法第三十二条は裁判を受ける権利、いわば公正な裁判を受ける権利ということかと思いますが、そういう条項でございます。  それから、ボーンインデックスということについてはちょっと説明を省略して恐縮でございましたが、これは先ほど申しましたアメリカの情報自由法に基づく判例でできておるものですが、ある文書がいわばその情報公開法上の一つの問題になっている文書である場合、できるだけその内容を個別、具体的に明らかにして、その上で審理するという考え方に立っておりまして、文書全体をある程度、どういう項目があるのか、そしてそれぞれ項目ごとにどういう内容が触れられていて、そして公開できないとすればどうして公開できないかというようなことを整理した書面、そういったものを裁判所に提出する。これは当然相手方も見ることができるわけです。相手方も見て、お互い討論し合うだとか弁論し合うというような形になるということでございます。  先ほどちょっと工夫と申しましたが、私申し上げましたのは、裁判所制度そのものでボーンインデックスを採用するということではなくて、行政不服審査法のいわば特例的な不服審査会、そういうものの審理の中でボーンインデックスを、類似の手続をとるということが、中間報告で申しますと第二十の二項というのがございますが、そこで触れられているということでございます。  以上でございます。
  131. 山口那津男

    ○山口(那)委員 今、司法救済でインカメラの制度を導入しなかった根拠として憲法を挙げられたわけでありますが、まあそれは確かに一つの根拠にはなろうかと思いますが、絶対的な理由ではないように思うんですね。現に、それらの憲法上の要請がありながら、この改正民訴法の二百二十条では一部インカメラの制度を公文書以外の分野で取り入れているわけでありますから、司法救済といいますか、司法制度の中にインカメラがおよそ入り込む余地がないということは憲法から直接導かれる話ではないだろう、こう思います。  それと、この中間報告の方では、不服申し立て手続の中でインカメラ的な制度を取り入れるということも触れているんだろうと思いますね。ですから、これが不服申し立て制度の中で採用されながら司法で絶対的に拒まれなければならないというところは、私は理解しがたいところでありまして、この点についてもっと議論を重ねていただきたいな、こう思います。  そこで、情報公開請求に関する行政不服審査会の裁決を争うような行政訴訟が起きたような場合に、裁決手続の中であらわれた資料、とりわけこのボーンインデックスあるいはインカメラの制度によって審査会が見た、確認した、そういう資料が、今度はその訴訟の中で、裁決の効力を争うような訴訟の中で文書提出命令対象になる余地があるのかどうか、この点についてはいかがですか。
  132. 藤井昭夫

    ○藤井説明員 先生指摘の不服審査会でいろいろできまするところの資料、書面等でございますが、一つは、答申については公表することとなっております。それから、不服申し立て人にも書類の閲覧権等を認めることとなっております。ですから、原則的にはこういったものはすべて訴訟の場合でも使い得る文書かと思うんですが、ただ、先ほど申しました、インカメラで提出された文書については、これは公表しないということになっております。  以上でございます。  あと、ボーンインデックスなんかでできた資料については、当然これはまた閲覧できて、訴訟に使うことができるということでございます。
  133. 山口那津男

    ○山口(那)委員 法務当局は、この点どう御理解されますか。
  134. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 私どもは、今検討されている行政情報公開制度の内容、まあ概要は承知しておりますけれども、的確に承知しているわけではございませんので、どうなるかということについては責任ある御答弁をすることはできない立場にございます。ただいまお聞きしておりまして、そういうことになるのであろうかなというふうに思っているところでございます。
  135. 山口那津男

    ○山口(那)委員 この不服審査会がインカメラの制度で見た資料及びその結果について、司法救済の場でこの資料を使えないということになりますと、やはりこの司法救済の道が大きく私は制約されるんではないか、このように思うわけですね。  一方で、インカメラというのは、当事者に見せないで、審査する側の判断の資料を得る、こういう一つの大事な制度ですから、ここは非常に微妙な調整の余地があるんだろうと思いますけれども、この点についてぜひ、これから情報公開制度をつくるに当たって突っ込んだ議論を重ねていただきたい、こう思います。  そこで、午前中から文書提出命令制度について議論が重ねられているわけでありますけれども、現行の民事訴訟法三百十二条の解釈、運用に関しての判例の枠組みは改正によって変更されないんだろうと思います。先ほどそういう趣旨の御答弁があったかと思います。これは、その枠組み、変更しない枠組みというのはどういうものを具体的に指すのか、この点について法務当局はどういうふうにお考えでしょうか。
  136. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 先ほど来答弁申し上げておりますとおり、現行の三百十二条一号から三号までのものにつきましては、全く内容に変更を加えませんで、片仮名から平仮名、口語、言語体に直したというだけの引き写しをしているわけでございます。  その趣旨は、現行の制度のもとで、先ほど来御質問ございましたように、裁判所における適用の運用においていろいろその対象文書を漸次広く解釈する運用がされている状況をそのまま引き継ぐということを確保するという観点をも含めまして、この一号から三号まではそのまま引き写すという形で立案をしているところであります。
  137. 山口那津男

    ○山口(那)委員 条文はなるほどそのまま引き写しているわけですが、判例で拡張的に運用されてきた内容、これをちょっと具体的に確認したいと思うんです。  例えば、三号文書指摘されている法律関係文書というのがありますが、直接の法律関係文書ではないにしても、それと密接な関係を有する事項について作成された文書等も、判例では三号文書に当たる、こういう運用がなされていると思います。これは、改正される法律のもとでもこの解釈、運用は変わらないということですか。
  138. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 そうなるものと考えております。
  139. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そうしますと、この改正論議の過程で、試案の中に、拡張すべき事項を検討するという一節が入っていた時期があったと思いますけれども、これは判例の運用を念のために議論したということであって、法令を変えようという立場で議論したというわけではない、こういうふうに考えてよろしいでしょうか。  例えば、要綱試案のところの乙案というのがありまして、一号から三号までの文書に加え、「挙証者と所持者との間の法律関係と密接な関係を有する事項について作成された文書についても提出義務を負うものとする。」こういう案があったわけですね。これは、いわゆる列挙主義に基づいてこの一号から三号以外に加えた、こういう議論のスタイルをとっているわけでありますが、しかし、現行法の解釈、運用では、新たに加えなくても、当然三号文書一つとして認められるわけでしょう。ですから、試案で議論されたことというのは注意的な規定というスタイルになるんだろうと思うんですが、この点について念のためお考えを伺います。
  140. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘のとおり、いわゆる乙案、制限列挙の制度のもとで新たな対象文書を加えるという改正案は、現在の解釈を前提として、そういうものについてはその対象になるということをはっきりさせるという趣旨での改正案でございます。
  141. 山口那津男

    ○山口(那)委員 さらに、判例で確立された運用として、一号から三号の文書に該当するものであってかつ公務員の職務上の秘密が記載されているような文書、こういうものが存在すると思います。これについて、その職務上の秘密に当たるか否かという秘密性の判断、これはこれまで裁判所がなしてきたと思いますけれども、この運用も改正法の解釈として認めるということですか。
  142. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 その点も、現在の解釈はあくまでも三号の対象文書の解釈問題として取り扱われている事柄でございますので、改正によって変わるところはないという考え方でございます。
  143. 山口那津男

    ○山口(那)委員 その場合に、公務秘密文書に該当をするか否かは裁判所判断をします。それで、該当すると判断した場合に、それではそれを出さなくていいですよという決定をする前に、裁判所としては、これは秘密に当たるけれどもお出しになりますかという監督官庁の承認を求めるような運用というのはこれまでなされてこなかったわけですね。この点どうですか。
  144. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 相手方が訴訟当事者であります場合には、当然そういう文書提出命令についての申し立てについて意見を言う機会がございますし、第三者であります場合には第三者を審尋するということになっております。したがって、意見を聞くということは当然あるわけでございますが、拒絶権があるというような考え方ではございません。
  145. 山口那津男

    ○山口(那)委員 つまり、判例の確立した運用としては、監督官庁の承認を得るという手続は不要とされていたわけであります。  以上の三つが、この確立した判例の枠組みであり、これは改正法でも動かないところ、こう理解をいたします。  さてそこで、改正法の二百二十条四号のロの場合に、公務秘密文書秘密性についてはだれが判断することになるんでしょうか。このロには、秘密の定義と、定義といいますか秘密の文言と承認の手続に関する記述と、全部一つの文章で入っているわけですね。まず、この公務秘密文書に当たるかどうか、この秘密性はだれが判断するんですか。裁判所ですか、それとも行政庁ですか。
  146. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 職務上の秘密に属するかどうかという判断は、当該監督官庁がするということであります。
  147. 山口那津男

    ○山口(那)委員 ここで、なぜ一号から三号まで裁判所判断できたのに、あるいは承認の場合も、立証事実が職務上の秘密にかかわるような場合、この秘密性はやはり裁判所判断をしてきただろうと思うんですね、第一次的には。にもかかわらず、何でこの改正法の四号のロのところだけ行政庁監督官庁判断できることになってしまうんでしょうか。
  148. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 これは、現行の民事訴訟法における証人尋問の場面におきまして、公務員を証人として職務上の秘密について尋問する場合には、裁判所は当該監督官庁の承認を得ることを要するということになっております。その規定の解釈といたしましては、官庁が承認するかどうかという場合において、秘密に属するかどうかという判断監督官庁が有するという考え方で定着しているわけでございます。さらに、刑事訴訟法においても同様の仕組みになっているということでございますので、今回、文書提出命令対象文書の範囲を一般化するという場合におきましても、いわゆるそのスキームの範囲内、枠内で拡張するということとしたものでございます。  この制度が現在どうしてそういうことになっているかということでございますが、これは、司法サイドにおきまして真実を発見するということも極めて重要な利益でございますが、他方、行政サイドにおきまして行政上の秘密が適切に保持されるということも、これと並ぶ重要な利益であるということから、しかも、訴訟というのは行政情報開示の当否を審理の対象としているものではない。あくまでも私的紛争解決あるいは適正な刑事罰の適用という観点からのお互いの協力関係規定であるという観点から、現在の仕組みは、行政秘密の管理ということについては、それについて責任を負う監督官庁行政庁判断するのが適当であるという考え方のもとにそういう規定になっておるというふうに理解しております。  そういう枠内で改正するということでございまして、もとよりそのあり方についていろいろ御議論があるということは承知しているところでございますが、その枠組みを動かすということは、ひとり民事訴訟法場面だけですることは適切でない、しかも、先ほど来大臣からも申し上げておりますように、行政情報開示のあり方そのものが大変大きな議論がされている中で、民事訴訟法の枠内でのみその議論を先取りして一定の結論を出すということは、困難でもありかつ適当でもないということから、この検討については将来の課題にさせていただくということで立案をさせていただいているところでございます。     〔佐田委員長代理退席、委員長着席〕
  149. 山口那津男

    ○山口(那)委員 監督官庁文書の提出を承認しなかった場合、裁判所は、承認要件があるかどうか、これは秘密に当たるかどうかということと判断が同じになるのかもしれません。言いかえれば、公共の利益を侵害するとかあるいは公務の遂行を著しく妨げるとか、こういう実質的な承認要件に当たるかどうか、不承認の要件に当たるかどうか、これについて裁判所は何ら判断を加える余地はないわけですね、改正法によれば。
  150. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 基本的にはそういうことでございます。その判断権限監督官庁が持っているということでございます。  ただ、これは、解釈の問題といたしましては、一般の承認権あるいは拒絶権の濫用というような場面で議論がされるという余地は全く否定するわけにはまいらないだろうというふうに思っておりますが、そういう特殊の場合を除いては御指摘のとおり、今申し上げたとおりでございます。
  151. 山口那津男

    ○山口(那)委員 この文書提出命令監督官庁側の不承認によって申し立てを却下する決定をするとした場合に、これに対する即時抗告ができるわけですね。しかし、抗告人としては、一体何を争ったらいいのか。秘密に当たるかどうか、なぜ不承認にしたか。裁判所判断も出ていないし役所も形式的な判断しか出てこない。そうすると実質的に争えないのじゃないのですか。ですから、即時抗告の制度をせっかく設けながらその実が上がらない、こういうことになりはしないでしょうか。
  152. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 ただいま申し上げました考え方を前提といたしますと、即時抗告をしても同じことであるということは御指摘のとおりであろうと思います。
  153. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そうすると、意味のない即時抗告を置いたってしょうがないじゃないですか、この点に関しては。この点はやはり重大な問題が残っているだろうと思います。  それから、この一号-三号、一号から三号について公務秘密性は裁判所判断権がある、そして四号については行政側に判断権がある、こうやって分かれていることの合理的な理由というのがいま一つ説明が十分じゃなかったかと思うのですが、もう一度念のため言っていただけますか。
  154. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 繰り返しになるわけでございますが、現行法の一号から三号までの文書、これはいわば文書の性質上、その文書作成の経緯とかあるいは目的等々に照らしまして、その文書の性質上、挙証者すなわち文書を提出してもらいたいと言っている者と一定の関係を持っている文書、そういう性質を持っているからそういう文書は提出命令の対象になるというのが現行法考え方であると思っております。そういう文書の範囲についていろいろ解釈論があり、そしてその解釈が次第に拡張的に解釈された結果、その中には行政上の秘密に属するというような文書も出てくる、その場合の取り扱いをどうするかということで、証言拒絶における秘密性の保護というような考え方を類推適用して、その秘密性の程度、秘密性の存否、程度というものをしんしゃくして三号文書に当たるものと判断すべきかどうかという取り扱いが実務の上で行われているということでございます。  したがいまして、そういう一定の関係を持っている文書であるかどうかという判断の中での取り扱いの問題と、今回新たに追加しようとしている、そういう関係を無視した、そういう関係がなくても訴訟に協力してもらいたいという場合の対象文書におけるそういう問題の取り扱い方、その両者において取り扱い、今御指摘の問題について差異が生ずるということについては、これは必ずしも不合理なものではないというふうに考えている次第であります。
  155. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そうすると、一号-三号に当たる文書については、職務上の秘密が含まれるかどうか以前に、一号、二号に当たるという基本的なベースがあるということで、仮に職務上の秘密が記載されたものであっても、そこには一方的な行政判断だけではなくてやはり裁判所判断するという余地を加えていい、こういう理解なのかなと、一歩譲ってそう理解しましょう。  そこで、そうしますと、この四号のロに当たる文書、これは行政側の事実上一方的な判断でもって出さないことができる、こういうふうに機能してしまうわけでありまして、仮にそれが妥当か否かということは、裁判所もチェックできないし当事者もわからない、こういうことになってしまうわけですね。これは行政に全くブラックボックスを与えてしまうようなことになるわけで、これは到底情報公開制度の趣旨に合致するものではないだろうと思います。  そうしますと、先ほど来行政情報公開制度が制定された暁にはこの民事訴訟法文書提出命令との調整を図る余地もあるやに御答弁しているようでありますけれども、そうすると、暫定的にこのような制度を置くということが私は納得がいかないわけですね。しかも、行政情報公開制度の方では不開示の事由というものをかなり多岐にわたって類型化して挙げております。ここでは、職務上の秘密という概念と、それから先ほど申し上げた公共の利害、公共の利益を害するということあるいは公務の遂行を著しく妨げるというような概念が使われているわけですね。これだけしか使われていないわけですね。しかし私は、行政情報公開制度のその不開示事由の判断と最終的には一致すべきものだ、こう思っているわけであります。そうすると、ここでいわば中途半端な差異をそのまま見逃してしまって制度をつくってしまうということについては、これは非常に疑問がわくわけですね。この点についてお考えを伺いたいと思います。
  156. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘のような御議論があるということは承知しておりますが、この文書提出命令改正というものは、今回の法制審議会の審議の過程において大変重要な問題の一つとして議論されてまいったわけであります。その中で、先ほど御指摘のように制限列挙の中で号数をふやすという考え方と、それから一般化、一般義務化するという考え方との二つの考え方がございました。しかしながら、号数をふやすということでは、先ほど御指摘がありましたように現行の解釈とちっとも変わらないではないか、やはり現行のものよりは拡張するということのためには一般化するということが重要であるということで、最終的にこういう形の改正案を提出させていただいた。ただ、公務員秘密に属する文書につきましては、先ほど申し上げたような理由で、委員の御指摘によればいわば中途半端なということでございますけれども、現行の枠の中で拡張させていただいたということであります。  そういう制約は行政文書についてはあるわけでございますけれども、しかしながら、文書提出命令対象を一般化するということについては私どもとしては大変大きな意義があるのではないかというふうに考えておりますし、法制審議会の議論でもそういうことでこの案を採用させていただいた。委員の御指摘の観点からいえば十分なものではないということではございましても、現在よりも前進であるということは私ども確信しているところでございます。
  157. 山口那津男

    ○山口(那)委員 法制審議会における議論の経過について若干の疑義がございます。  法制審議会委員であった滝井さんという弁護士さん、この方が、行政情報文書提出命令改正案のような形でいくと出にくくなってしまう、この点についての議論が必要だ、こういう指摘をされておりまして、これはジュリストの一九九四年四月一日号の二十一ページにそういう言及がございまして、これに参加された柳田参事官も「これまでの審議では、議論されておりませんので、今後の検討課題であろうと思います。」こうお答えになっております。  そして、ことしの九六年四月二十九日に出ました日経ビジネスという雑誌の記事によりますと、同じく滝井委員が、この文書提出命令の制度の部分については、恐らく本音ではだれ一人賛成という人はいなかったんではないか、少なくとも弁護士出身や学者出身を問わず、賛成の委員はいなかったのではないか、こういう言及をされているんですね。ということは、この滝井委員の認識によれば、九四年当時指摘した、議論がなされていない、そして、最終的にできあがった時点でも議論が不十分で、なお賛成する委員が実質的にはいないはずだ、ただ、最終場面ではこの部分だけを切り離して論議するのではなくて、全体を一括して賛成していただかないと、事務次官会議等でその他の役所の反対に遭ってこれは到底日の目を見ない、改正案そのものは日の目を見ない、こういう言葉もあって、大を生かすために小を殺した、そういう結果をもたらしたんだ、そのような記事になっておるわけですね。そうしますと、この点についての議論は、法制審議会の中でも私は十分に行われていなかったのではないか、こう思うわけであります。この点が一点。  それから、法制審議会は、これは審議会のあり方として私は公開が促進されてしかるべき委員会だ、こう思っております。これまで委員の自由な発言を担保する意味でこれは公開されてこなかったと思いますけれども、しかし、昨年の九月の閣議決定におきまして、審議会等を二つに分類をいたしまして、一般的な審議会、すなわち法制審議会のようなもの、法案の改正論議等を行うようなそういう一般の審議会については公開を原則とする、議事録をその都度つくって公表する、こういうことも閣議決定されているわけですね。わざわざこの一般原則が当てはまらない審議会については列挙されておりまして、その中には法制審議会は含まれておりません。したがいまして、閣議決定の趣旨からいって、この法制審議会の議論というのはどんどん公表すべきものに分類されているわけであります。しかも、この民事訴訟法改正というような内容については、自由な発言を担保するために非公開にしなければならないほどの要請はない、むしろどんどん議論を公開して広くいろいろな意見を集めるべきだ、こう私は思うわけでありますね。そういう背景がありながら、こういう滝井委員のような発言が出てきてしまうというのは、私は残念でなりません。  この点について、その議論の経過とそしてまた法制審議会の公開の趣旨、閣議決定後この運用が変わったかどうか、これから変えるつもりがあるかどうか、これらについてまとめて御答弁をいただきたいと思います。
  158. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 まず、文書提出命令の御指摘の点についての法制審議会の審議が十分でなかったのではないかという点の御指摘についてお答えを申し上げます。  この問題について、私どもとしては十分な御議論をいただいたというふうに思っておるわけでございまして、その中身につきましては、午前中も御答弁申し上げたところでございます。  この秘密性について裁判所判断すべきか、行政庁判断すべきかという問題については、そのときも御説明申し上げたとおり、主として証人尋問の手続における監督官庁の証人拒絶、その要件をどうするかという場面で議論がされた。それを踏まえて、文書提出命令の拡張についてもその枠内でという議論の経過で最終的な結論になったわけでございます。  最終的にこの問題についていろいろ御意見が最後までございました。その最後の段階で、これは現在行政改革委員会等の場で大変幅広い大きな議論がされておる、そこでは対象となる行政秘密というものについてもいろいろな性質のものがある、それを一律に同じ取り扱いをしていいかどうかというような問題もある、そういう議論を経ないで民事訴訟法の民事訴訟の手続の場だけで一定の線引きをする、一定の結論を得るということは困難であるし、また適当でもないのではないかというようなことで、最終的な答申、これは御指摘のように、それをやむなしとして全員一致ということになった経緯がございます。  議論が十分であるかどうかということにつきましては、これはお立場によっていろいろ受け取り方の違いがあるということはある程度やむを得ないところでございますけれども、そういうことでございますし、現在私どもといたしましては、先ほど来申し上げておりますように、行政情報公開に関する審議、その結論を踏まえて最もよい民事訴訟法上の制度のあり方についてできるだけ早く検討したい、こういう決意を持っているところでございます。  なお、法制審議会の議事録の公開の関係については、担当の調査部長の方から御答弁をさせていただきます。
  159. 永井紀昭

    ○永井政府委員 委員指摘の昨年九月二十九日付の閣議決定を受けまして、法制審議会は、ことしの二月二十六日の総会におきまして、この審議の公開等の是非について検討を行いました。その結果、審議の公開に関する従前の取り扱いを一部変更いたしました。すなわち、会議及び議事録につきましては従前どおり非公開とすることといたしましたが、今回の閣議決定に従いまして、新たに総会、部会の会議ごとに議事要旨を作成してこれを公開することといたしまして、これ以降現に公開しているところでございます。
  160. 山口那津男

    ○山口(那)委員 その公開を決定した以後のこの民訴法改正についての議論がありましたら、それはぜひ資料をいただきたいと思いますし、その以前のことについても、この文書提出命令に関する議論にかかわる部分で結構ですから、法制審議会の議事録、これを資料要求したいと思います、委員長。  最後に、この閣議決定が出た後の昨年十月二十日、これは行政情報公開部会で法務省がヒアリングを受けました。その折に、審議会の情報について、法制審議会などが一般的な法律を取り扱う場合、独立公正な立場から自由な討論が阻害されるというおそれがあるので、これはその確保のために公開しないんだ、こういうことを述べておられるわけですね。しかし、閣議決定が出た後、行政情報公開部会で呼ばれてなおこういうことを法務当局が答えているというのは、やはり時代錯誤も甚だしいと私は思うわけであります。先ほどの大臣の情報公開制度全般に対する前向きな取り組みとは全く相反する姿勢だろうということを申しつけ加えさせていただきまして、私の質問を終わります。
  161. 加藤卓二

  162. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 社会民主党の佐々木秀典です。  けさからの本民事訴訟法改正審議に当たっては、いわゆる公務員秘密文書に関する問題、これがこれまで中心的に論議をされてまいりました。私もここのところは大変重要なところだと思っておりますので、後ほど触れたいと思いますが、一応総括質問でございますので、全般的なことについてもまずお伺いをしてみたいと思います。  そこで、この改正に当たって長尾法務大臣から提案理由の説明がございました。その趣旨を拝見する中で、まず今度のこの七十年ぶりの民事訴訟法改正の趣旨、眼目ということが幾つか強調されておりますけれども、その一つとしては、現在の民事訴訟法の規律について、これが現在の社会的な状況に適合していない部分があるんだということが言われております。それに適合していない部分というのは、具体的には、内容的にはどういうことなのか、これをもう一度お示しいただきたいと思います。
  163. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 お答え申し上げます。  御案内のとおり、現行法は大正十五年に立法された当時の民事訴訟の構造を基本的に維持したままになっております。そういうことでございますので、まず第一に、社会経済の発展等によってテンポが当時よりも著しく速くなっている現代社会の要請にこたえがたいものになっている。そのため、国民の間には民事訴訟には時間がかかり過ぎるという意識が大変強く見られるというような事態になっているということが挙げられます。  また、社会経済の発展等に伴いまして、あるいはその複雑化に伴いまして、民事紛争も複雑化、多様化をしております。そういうことで、情報が当事者の一方に偏在するといった訴訟もふえておりますが、現行法における証拠収集手続は、大正時代における当事者対等の思想に基づくものでございますので、そういった訴訟を必ずしも想定していなかったということから、その証拠収集の手続として必ずしも十分でないという指摘があったわけでございます。  さらに、社会経済の発展等に伴いまして、公害訴訟とか薬害訴訟とかいった、そういう当事者が多数にわたる大規模な訴訟事件が生じておりますが、現在におきましては、そういう訴訟について、そういう訴訟は勢い長期間を要するわけでございますけれども、それに対応するための特別の規定が存しない。  あるいはまた、最近の情報化、OA機器の発達は大変著しいものがあるわけですが、現行法上そういうOA機器を訴訟の場において活用する裏づけとしての規定も用意されておらない、そういったようなことが挙げられると考えております。
  164. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 もう一つ、今もお話がありましたし、提案理由の説明の中では、一般の方々から、我が国の民事訴訟、民事裁判というのは、一つは時間がかかり過ぎるではないか、それからまたお金がかかり過ぎるという御批判があることについて触れられておられます。  そこで、今も局長から若干触れられてはおりますけれども、この訴訟のいわゆる迅速化、それと訴訟にかかる費用、費用といっても一概に言えない。弁護士を頼んだ場合の代理人、刑事の場合では刑事弁護人費用になるわけですが、民事訴訟では訴訟代理人、これに対する報酬の問題もあるとは思うけれども、今、この訴訟法の方では、弁護士費用というよりは訴訟にかかる経費あるいは費用、これは訴額を含めてということになると思うのですね、印紙を含めてということになりますけれども。そうしたことを意識されておられるわけですが、今度の改正でこういう時間だとか費用が本当に節減されることになるのか、その効果は期待されるのか、その辺について見通しを述べていただきたいと思います。これは裁判所の方の御意見もいただければと思っておりますが。
  165. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 今回の改正によりまして、民事訴訟にかかる時間、費用がどの程度節減されるかということを具体的な数字をもって予測することは困難でございますけれども、この法律案におきましては、争点及び証拠の整理手続の整備とか少額訴訟手続の創設とかそういったことを初めといたしまして、民事訴訟の手続を現代社会のテンポに合ったものとするための改正を行うことにしておりますので、この改正が実現し、そして訴訟関係者によって改正の趣旨に沿った適切な訴訟運営がされるということがとりわけ重要でございますが、そうすることによって時間が相当程度短縮されることになるということは自信を持って申し上げることができるというふうに思っております。  また、費用につきましては、これは口頭弁論等の期日の回数などの訴訟にかかる時間というものに左右されるところが多いわけでございますが、今申しましたような制度の整備、創設によりまして訴訟が迅速になる、これに伴って弁論の期日等も回数が減るといったようなことによってそういう面でも大いに効果があるものと考えておりますし、また、電話会議システム、テレビ会議システム等OA機器の活用ということが可能になること、あるいは細かいことでありますけれども、送達制度についての改善等によりまして、そういった方々の関係の費用も軽減されるということが見込まれるわけでございます。したがって、民事訴訟にかかる費用その他の負担も相当程度節減されるという効果をもたらすものと考えております。
  166. 石垣君雄

    石垣最高裁判所長官代理者 裁判所の方からは、訴訟の促進関係について特に申し上げたいと思いますが、現在の民事裁判に対して、時間がかかり過ぎるというような御批判があることは承知をしておりますが、全体として現在短縮化の傾向にあることは事実でありますけれども、なお当事者が真剣に争うような複雑な事件では、最終的な解決に至るまでに相当の年数を要しているというのも事実でございます。  その原因の一つとして私どもが注目をしておりますのは、法廷がいわゆる書面の交換の場、単なる書面交換の場になって、口頭弁論というものが十分に機能していないのではないか。そして十分な争点整理がされないままに証拠調べが行われている、そのためにいわゆる五月雨審理ということがなされているということが一つの大きな問題であろうというふうに思っております。  そこで、裁判所としては、昭和六十年ころから運営改善というものに取り組んでまいりましたが、これによって集中的な証拠調べを実施をして迅速な処理を図るということに努力をしてまいりました。今回の法改正では、早期に争点を整理し、その争点に絞って集中的に証拠調べを行うための方策がいろいろと手当てをされております。こういう訴訟運営のための環境が法制面で整備をされるということになりますので、一方において運営改善のための努力は続けていかなければいけませんが、他方、こういう整備面の手当てによりまして相当程度の審理の促進が図られるものではないかというふうに考えております。
  167. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 今、民事局長の御答弁の中で、大規模訴訟あるいは少額訴訟の点にも触れられておりますので、質問通告では順序が後になっておりましたけれども、この段階で少し聞かせていただきたいと思います。御了解ください。  それで、まず少額訴訟ですけれども、これは今度の改正案では三百六十八条以降、これはいずれも新設であるわけですね。ここで、訴訟の目的物の価額、つまり少額訴訟とは何かの基準ですが、これは金額、訴額を三十万円以下ということにされておられます。これは、三十万というのが少額訴訟の基準として妥当なのかどうかということについての議論はどのようなものだったのか。私どもの感覚からいうと、どうも最近の貨幣価値などから見ていると、むしろ三十万というのはそれこそ少額に過ぎるのではないだろうか。いわゆる算定不能の金額とのバランスなどということもありますけれども、たしか今その点は九十万ですかになっていると思うのですが、せめて五十万ぐらいにした方がよろしいのではないかというような考えも、聞く人によっては聞くのですけれども、これが三十万ということに定められた経緯、その合理性などについてお示しをいただきたいと思います。
  168. 山崎潮

    山崎(潮)政府委員 ただいま御指摘の点については、四つほど理由がございます。これもかなりいろいろ御意見がございまして、慎重審議を経たわけでございますが、まず、この少額裁判手続といいますのは、原則として一回で審理を終わり、判決をし、不服申し立てもその審級で異議を申し立てることはできますけれども、上級審には行けない、こういうような手続構造をとっております。そういう関係から、余り訴額を上げてしまいますとほかの裁判との違いがどうかという、まず比較の問題でございます。  それから二番目は、この法案を審議するに当たりまして二回ほど意見照会を各界にいたしておりますけれども、その中でも圧倒的に三十万円以下という意見であったことでございます。なお、諸外国の例を調べましても、やはり三十万円以下のものが多いということ。最後にもう一点は、簡易裁判所の事件、確かに九十万円以下の事件でございますけれども、大部分の事件は、五〇%ぐらいの事件は大体三十万円前後の金額であるという点を考慮したものでございます。
  169. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 確かに、今度の改正によって非常に手っ取り早くできることにはなるのですけれども、一方、訴えられた被告の側からすると、私も弁護士経験でそういう経験を持ったことは幾つもあるのですが、しみじみ簡裁なんかの少額訴訟を見ていまして、やはり代理人のついていない、本人の訴訟による場合が非常に多い。そして、これが専らいわゆるサラ金業者、カード業者などに大変に利用されているという傾向が目立つわけですね。見ていると、簡易裁判所そして裁判官が何かサラ金業者の取り立てのお手伝いをするような、そんな感じさえすることがあって、大変嫌な思いをしたことがあるわけです。  これを速くすることによって権利の救済ということはあるかもしれないけれども、逆に、時にはやはり誤って非常に不当な請求ということもないわけではないものですから、そういう点での権利の救済にもとることがないように、特に本人訴訟の場合なんかは十分に配慮していただかなければいけないだろう。もちろんそれに対する手だてがあることはあるのはわかっておりますし、それからまた、細かくはまた規則も定められることになるのだろうと思うのですけれども、これは運用の面でも相当な配慮をしていただかなくてはいかぬだろうと思うのですね。裁判所、その辺は大丈夫でしょうか。
  170. 石垣君雄

    石垣最高裁判所長官代理者 今委員からも触れられましたが、このせっかくの少額訴訟がその目的にのっとった形で運用ができるかどうかということを考えますと、確かに一定の業者だけが占拠してしまうというような形になることは非常に好ましくないというふうに思います。  現在のところ、先ほど御指摘ありましたように、具体的な回数等につきましては最高裁規則において検討をするという方向で運んでおりますが、同一裁判所において同一の年には十回を限度とするという方向で検討が進められるものと考えております。
  171. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 いずれにしても、今申し上げたように一部の業者などに不当に利用されることがないようにしたいと思いますし、それからまた、訴えられた側にも十分にその事情などを聞く機会を与えて、その権利の行使に誤りなからしめていただきたいということを特にこの際申し上げておきたいと思います。  それから、もう一つの大規模訴訟の方ですけれども、これについても、二百六十八条ですか、これを新設されるわけですね。ところが、「大規模訴訟に関する特則」として新たに置かれた規定は二百六十八条と二百六十九条のニカ条だけなんですね。二百六十八条では「受命裁判官による証人等の尋問」、それから二百六十九条は「合議体の構成」で、地方裁判所において五人の裁判官の合議体での審理、裁判をする旨の決定をその合議体ですることができるということになっておるわけですけれども、これだけで大規模訴訟に対する手当てとして間に合うのかどうか。この辺はどうなんでしょうか。特に裁判所にお伺いしたいのですが。
  172. 石垣君雄

    石垣最高裁判所長官代理者 法文上の手当てとしてはただいま御指摘のありましたような内容になっております。  現在仮に法律が成立されました場合にどういう方向で裁判所規則の手当てをすべきかという問題もあわせて内々頭に置いておりますが、その中で、大規模訴訟につきましてもなるべくその審理の促進に役立つような規定ぶりがないか、これはあくまでも規則でございますから細目的なものではございますが、あわせて検討をしていかなければいけないのではなかろうかというふうに思っております。  いずれにしても、適正迅速な事件処理を図れるように努力をしたいというふうに考えておるところでございます。
  173. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 そこで、大臣の提案理由の説明では、もう一つ、この法律案は、民事訴訟を国民に利用しやすく、わかりやすいものとし、訴訟手続を現在の社会の要請にかなった適切なものとするために、新たにこの法律を制定して、民事訴訟手続の改善を図ろうとするんだ、こういうように述べられているのですね。  ここで言われている現在の社会の要請にかなった適切なものに訴訟手続をするということについて、その前段に書かれている国民に利用しやすく、わかりやすいものとするという要請のほかに、何か具体的なイメージを持っておられるのか、その点について、法務大臣の御見解があれば法務大臣、民事局長にもあわせてお聞きをしたいと思います。
  174. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 まず事務当局からお答えをさせていただきたいと思いますが、今御指摘の現在の社会の要請というのは、これは先ほど御質問いただきました、現行法が現在の社会状況に適合しなくなっているということ、これに対応して、その要請に対応できるような対応を考えたいということでございます。  したがって、そのイメージというのは、先ほど申し上げたところと重複するわけでございますが、とりわけ先ほど申し上げたように社会経済の発展に伴って社会活動が大変テンポが速くなっている、それに対して、裁判には時間がかかり過ぎるということ、これが一番大きな問題であり、それに適切に対応するということが一番大きな要請なのではないかというふうに思っております。とりわけ最近では、住専問題あるいはそれに続くと言われております不良債権問題等に関係いたしまして、そういう問題の解決のためには民事訴訟あるいは民事執行といったものが適切にかつ迅速に機能しなければならないということで、大変御指摘をいただいているところでございますが、その対応については、運用上裁判所御当局に努力をいただくところが多いのかと思いますけれども、そういった面で、手続の面でもその迅速処理ができるだけ可能なような対応をしておくことが必要であるというふうに私どもも認識しているところでございます。  今回の改正の主要点は、そういう社会の要請に対応して、訴訟の迅速処理ということに手続面でできるだけの貢献をしたいということ、これを一つの大きな主眼としているわけでございます。
  175. 長尾立子

    ○長尾国務大臣 現在の社会の要請にこたえるというのは、いろいろな面で我々が心がけていかなくてはならない問題だと思っております。  政府委員からも御答弁を申し上げておりますように、確かに現在の民事訴訟におきます問題は、訴訟に時間がかかり過ぎる、裁判に時間がかかり過ぎるということが最大の問題であると私も認識をいたしております。このために、裁判が効率的に、そしてかつ十分な審理が尽くされるようなシステムをつくっていくこと、これは今回の改正におきまして一番考えなければならない、そして最大の課題であったというふうに考えているわけでございます。  それからもう一つは、やはり皆様にとってわかりやすいといいますか、そういうことが非常に要請されておると思います。民事訴訟法は大変古い法律でございまして、片仮名の法律で、今の若い方にはわかりにくいような言葉が入っておりますし、この点は今回全面的に改正をさせていただきまして、法令用語というのはわかりにくい面があるわけでございますが、できる限りわかりやすく、そして現代語に直してきたということも今回の改正の大きなねらいでございます。  それから、今の社会の中では、OA機器の進歩は大変に著しいものがございますし、今後行政のさまざまな分野でこの機器の利用によりまして国民の皆様の利便を向上していくということは非常に大きな課題だと思っております。今回の民事訴訟法の中で取り上げました幾つかの試みは、ある意味では今後さらに検討していかなくてはならない課題になってくるかと思いますが、現段階で可能な限り取り入れさせていただいた、こういうことであると思っております。
  176. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 おっしゃることはよくわかります。そういうことを目途にした今度の法改正であることも理解はできるのですけれども、しかし、一般的に言われる訴訟の迅速化あるいは費用の節減というようなことも、実はこれは民事裁判についても目的ではなくてあくまでも手段なんですね。やはり、民事裁判の目的というのは、権利の救済、権利を持っている人がそれを実行できないでいる、それを国家が国家的な力によってその権利救済をする、あるいは権利の実現を図る。もう一つ、あわせてそれは実体的な真実とも結びつかなければならない。要するに、正義を貫くというか、不正をまかり通させないということとも絡んでいるんだろうと思うのですね。  ただ、それがおくれにおくれて時間がかかるということになると、権利があっても、救済のつもりでいても、その判決がおくれればその権利の実行を期しがたいというようなこともあるから、それを早くしようというようなことなのであって、何でもいいから裁判を早くすればいいというものでないことは、これは釈迦に説法ですから、皆さんもおわかりのとおりなので。  ただしかし、ともすればそちらの要求、つまり迅速化などという要求に合わせる余り、実体的な真実の発見などということがわきの方に置いていかれるとか、あるいは本当の意味での権利の救済にもとるところがあるとすれば、これはまた大問題なわけですから、その点については私どもとしても心していかなければならないと思いますし、運用に当たられる関係者、特に裁判所においてもその点は十分に心していただいて、これから規則の制定も手がけられるのでしょうから、十分にその辺を御留意いただきたいということを特に申し上げたいと思います。  それとまた、今大臣から、これを片仮名から平仮名にしてわかりやすくというお話もあったのだけれども、平仮名になったけれどもわかりにくいのですね、やはり刑法のときも私ども改正で、皆さんも苦労をされたけれども、随分苦労をして苦労をして言葉を易しくもしたけれども、それでもなかなか一般の人に見てもらうとわからないと言っている。特にこれも平仮名になったからといって、見てもらって、恐らくこれで裁判をやれるなんという人はだれもいないわけで、これもまた苦労するのだろうと思います。  だからこそ、これは少額裁判などでも、本人訴訟ということも意識してのことなんだろうとは思うけれども、訴訟代理人の存在、弁護士の関与、専門家の関与ということが私はどうしても特に民事裁判の場合には切っても切れないと思うのですよ、手続をどんなに簡便にしていっても。そうだとすると、やはり今言ったような民事裁判の目的を達し、それを充実させる方向に進ませるためには、やはりこの手続の改善だけでは私は問題がある。  どうも、今度の改正についても、言ってみれば現状の司法の態勢の中でいかにこれを効率的にしていくか、合理化していくかという点が強くあらわれているのではなかろうか。もちろんこれによって改善される面は私は多々あると思いますけれども、これだけで目的を達せられるものではないと思っております。  例えば代理人をもっと使いやすくするためにも、これはもうかねてからの議論ですけれども、弁護士の数をふやすということもさることながら、やはり訴訟扶助の問題、これを充実させるなんということが非常に大事になってくると思う。  それから、大規模裁判についても、さっき指摘しましたように、五人の合議体というようなことも考えられるけれども、しかし、現状の裁判官の数、裁判所の態勢からいって果たしてこれができるのか。これは人的な裁判官の増員の問題、それに伴った書記官やあるいは事務官や速記官の問題、それからまた人的な問題だけではなしに物的な問題、こういうこともどうしてもあわせて充実をさせていかなければ、とても手続の合理化だけによってはそういうことの実行は期しがたいと私は思っております。  それからまた、長尾法務大臣御指摘のように、裁判をもっとなじみやすいものというか、わかりやすいものにする、そして裁判所あるいは司法自体についても、国民が利用しやすくするというためには、ハードの面と同時に私はソフトの面でもいろいろ考えなければならないことが多々あるのではないかと思うのですね。  これも長年弁護士をやりながら考えるところですけれども裁判所の建物なんかが改善され、よくなっても、ところが、例えば証人に来ていただく方の待合室に対する配慮なんというのは、私はまだまだ足りないと思っているのです。言ってみれば証人というのは裁判所にとっての大事なお客さんであるにもかかわらず、証人の待合室が非常に殺風景で、お茶一つ――サービスしろとは言わないけれども、せめて自分でお茶ぐらいは飲めるような設備をしておくとか、あるいは子連れの証人については、家庭裁判所なんかではそういう配慮がありますけれども、そうでない地方裁判所、高等裁判所になるとその子供に対する手当てなんというのも必ずしもできていないというようなこともあって、そういうようなことまでやはりきめ細かく考えていかないと、国民の皆さんの司法に対する親近感というか、そういうことはなかなかに、なじめといってもなじめないし、利用しなさいといっても利用しがたいということがあるのですね。弁護士の事務所でさえ敷居が高いといってまたぎにくいというようなことがあるわけですから、まして裁判所になるとそういう傾向は非常に強いと思うのですね。  そういうこともあわせて全体的な司法改革として考えていかなければ、手続だけを幾ら簡便化しても私はそれで済むものではないと思っておりますので、こういうことは、またこれからもあらゆる機会をとらえて皆さんと一緒に議論をし、また改善の方向を目指していきたい、こんなふうに考えておりますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。  そこで、許された時間の範囲内で、一番の眼目になっております証拠収集手続の改正について私も触れてみたいと思います。またこの後も、明後日でしょうか、参考人の方々が来られて御意見をお伺いすることになっております。これは、それぞれの各界の識者の方々もおいでになることだろうと思いますから、私どもとしても心してその御意見を聞きたいと思いますし、どうか法務省におかれても、裁判所におかれても、十分にこの参考人の御意見をちょうだいした上で全きを図っていきたいものだと思っておりますので、この点もひとつあらかじめ申し上げておきたいと思います。またその後も、恐らく本委員会での審議は続けられると思いますので、後にある機会もまた使わせていただきたいと思いますが、若干だけきょう私は触れさせていただきたいと思います。  それで、午前中からの論議の中でもさまざまな御指摘がなされました。民事局長お話だと、今度の改正の眼目の一つが現在の証拠収集の問題、この問題が眼目なのだということが言われております。そして、現在の民事訴訟法に比べると、特にこの書証について、文書の提出については、限定的であったものを一般文書化して枠を、対象を広げたのだという点での改正である、改善だということを言われる。  それに対してさまざまな御批判の意見がさっきから出されております。特にやはり考えなければならないのは、今度の改正について、最も日常的にこの手続によって裁判の実務に当たっておられる弁護士の方々がこの点について納得をしておられないということは極めて重要なことだと私は思っております。  しかも、今一番問題になっているのは公務秘密文書であるわけですけれども、考えてみますと、我が国司法制度の中で、戦後憲法改正されたことによって日本の政治の仕組みがすっかり変わったということもあって、それに伴って訴訟のあり方というのも、訴訟法そのものはそんなに変えられなかったけれども、先ほどのお話のように、理念だとかそれからあり方というものは、私はやはり変わったのだろうと思うのです。  とりわけ、昭和二十二年に国家賠償法が制定されて、公権力の不当な行使によって損害を受けた場合に、国民が国家に対してもあるいは行政機関に対しても賠償請求を求めることができる、賠償請求できるというのはこれは大変な変革であったろうと思うのですね。戦前では、お上に対して盾突く、まして裁判をやるなんということはおよそ考えられなかったことで、何といっても、この点は主権在民、先ほどもお話がありましたけれども憲法が主権在民をうたった、国民一人一人が政治の主人公なのだということ、そしてまた、その国民の権利はしっかり守られなければならないという基本的人権尊重主義というのがこの憲法の理念としてはっきりうたわれているということに発するものだと思うわけですね。しかも公務員については、御案内のように憲法の十五条で、これは選定罷免権国民にあるということにもなっている。  そういうようなことを考えますと、行政というのは、立法もそうですけれども、また司法もそうですけれども、まさに主権者である国民のためのものでなければならないし、また司法もそうでなければならない。そしてまた行政、そしてその行政に関連をしてつくられる、作成される文書あるいは情報などというものも本来は国民のものなのだ、国民の財産だという主張というのは、私はやはりこれは忘れてはならない事柄であろうと思うのですね。  そういう中で、日常司法の実務をつかさどられる弁護士さんたちが、これでは困ると言っていることの意味の重さを私たちは本当に真剣に考えていかなければならないのではなかろうかと思います。そしてまた報道関係の方々も押しなべて、これはもうどの論説を見ても社説を見てもと言っていいんじゃないかと思いますけれども、やはり今度の改正案の中の二百二十条の第四号については大変な批判的な論説、見解を出されているということ、これも私は重視しなければならないのではなかろうかと思うわけであります。  その批判的な見解というのは、大体これまでの御議論でも出されておりますけれども、従来の現行法の三百十二条の一号、二号、三号の文書について、これまで裁判所が、これは裁判所だけではなしに、それに関与される訴訟関係者、特に弁護士の方々の御努力もあって、その判例としての傾向がある、解釈が積み重ねられて一定の成果が上げられている、そうしたことについては変わることはないのだと民事局長は言っておられるわけですけれども、しかし、先ほど、もうお話がありましたように、変わらないということの担保はどこでどういうふうに保証されているんだ、担保はあるのかと御指摘がありました。この点について私ももう一回確かめておきたいと思うんです。  局長、これはどうなんですか。その今までの判例の積み重ねなどが変わることはないんだということについては、何らかの保証はあるんでしょうか。少なくとも、その点については条項の中では何も記載されることはないわけですね。何によって担保されることになるのですか。
  177. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 もとより委員御案内のとおり、改正法、民事訴訟法案、これが法律になりました場合には、その適用、運用はそれぞれの裁判官がされるわけであります。したがいまして、個々の事案ごとに応じた裁判官の対応によってそれが運用されるということで、そういう意味で、物理的な担保があると申し上げることができる性質の問題ではないというふうに思っております。  しかしながら、先ほども申し上げましたように、今回の改正案に至ります法制審議会の審議におきましても、そういうことである、今回の改正の目的はこういうことである、したがって、今までの解釈上の努力をもとに戻すというような性質のものではないという議論がされておりますし、またこの国会質疑におきましても、現に私どもこういう形で立案者、立案担当者としての考え方を申し上げさせていただいているわけでございます。  そういった立法の趣旨というのは、これはこの法案が成立いたしました暁におきましては、私どもも、また最高裁当局におきましても、こういう趣旨での改正であるということの周知ということに努めなければならない。国会の議事の経過についても、それが関係者により適正に承知いただけるように努めなければならない。そういうことによって、今までの解釈が後退するというような効果を招くおそれはないというふうに考えている次第でございます。
  178. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 ないと考えているというお話だけれども、どうも、それが何によって担保されるかということについては必ずしも的確なお答えがなかったと思うんですけれども、追加されることはありますか。今の答弁でよろしいのですか。その担保の方法。
  179. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 追加する点といたしましては、条文の書き方としても特に工夫を凝らしまして、一号から三号までは動かさない、全く同じ文章を現代語化するということにとどめ、全く新たな形で四号をつけ加えるという形での改正をさせていただいたというのも、そういう趣旨が徹底するようにということを考えてのものであるということをつけ加えさせていただきたいと思います。
  180. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 局長の御説明ですけれども、しかし局長の御説明だと、三号までは動かさないでおいている、さらにそれに四号をつけ加えたから広がったのだという御主張のようなのですけれども、逆に、心配される方々は、これがつけ加わることによってかえってマイナスになる、こういう指摘をしているのですよ。確かに、今までないものができるわけですから。  しかも、できたものを見ると、ロでは、先ほども御質問があったように「当該監督官庁が承認をしないもの」こうなっている。なるほど証言の条項と整合させるのだというような御指摘ですが、現行法の二百七十二条では「官吏又ハ官吏タリシ者ヲ証人トシテ職務上ノ秘密ニ付訊問スル場合ニ於テハ裁判所ハ当該監督官庁ノ承認ヲ得ルコトヲ要ス」こうなっている。  この点では、現にこういう監督官庁の承認という運用があるわけですけれども、先ほども質問がありましたけれども、今度は、この改正の四号のロで言っている公務秘密に関する文書、これについて、改めて当該監督官庁の承認ということがうたわれるわけですけれども裁判所は、これまでの現行法の運用で、この証言の方ですけれども監督官庁の承認というのは先ほどもありましたけれども、この承認権者、これはどの辺を考えていたのですか。  例えば、今度の改正の中で、ロの「当該監督官庁」その後に括弧書きがあって、衆議院、参議院の議員の場合にはその院、こうなっていますね。それから、大臣の場合には、内閣総理大臣その他の国務大臣の場合には内閣、こうなっているわけですね。割合はっきりうたわれている。ですから、仮に文書などでの回答ということになれば、これは院の場合だと、両院のそれぞれの議長ないしは内閣総理大臣名ということになるのかなとも思ったりするのですけれども、そうでない公務員秘密文書の場合には、この承認権者というのは具体的にはどうなのですか。その省庁の大臣ということでもなさそうなのですね、先ほどの話だと。  例えば、その文書の作成者、保持者が、ある省の何々係長だという場合に、その上の課長などでも承認権者になれるのかどうか、なるのかどうか。どうなのですか。それは今までどうだったのですか。
  181. 石垣君雄

    石垣最高裁判所長官代理者 この二百七十二条の解釈につきまして、承認権者がだれであるかということについて深刻に争われたという事例を私今ちょっと承知をしておりませんが、従来、具体的場面において、当該監督官庁に該当するのがだれであるのかということにつきましては、現行法の解釈としては、それぞれの公務員に適用される個別の公務員法の規定によって定まると考えられておるようでありまして、したがって、問題になります、例えば国家公務員秘密が問題の場合には所轄庁の長、国家公務員法百条二項でございますが、所轄庁の長、地方公務員秘密である場合には地方公務員法三十四条二項の任命権者がそれぞれ当該監督官庁に該当するというふうに考えられているようであります。  以上でございます。
  182. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 この辺も、非常に私はやはり問題があると思うのですね、この書き方だけでは。そうかといって、規則などで、その内容についてどうだというようなこともそう書き切れないのではないか。  これは、非常にそういう意味では、先ほどからお話がありましたように、司法判断を全く排除して、司法に関与させないで、それで一方的にこういうものを、文書についてはもう出さないということを決められてしまうというようなことは、まことにおかしなことになるのではないかと思います。  それから、もう一つ強く言われているのは、官民格差の問題ですね。全く同じような性質の文書でありながら、公文書である場合、官公庁の文書である場合とそれから民間の文書である場合とで全く扱いが異になるのではないか。  例えば、例えばですけれども、余り例はよくないかもしれませんが、この間、例のTBSの問題で、ここでもいろいろな議論がありました。TBSは、最初に調査をして報告書をつくった。それが違っているということで後でまたつくり直すわけですけれども、そういうような報告書を、監督官庁ということはないけれども、郵政省がそういう報告書を求めて取得した。仮に、そのことに関与して裁判が起きて、それでその文書の提出を求めた場合に、TBSそのものに求めた場合には、TBSとしては出さざるを得ないということになるのだろうけれども、全く同じ文書を郵政省に出すように言った場合には、郵政省はこれを出さない、出すことについて承認しないという場合は、一体どういうことになるのか。  それからまた、例えば病院だとかその他の施設でも、私立の病院の場合とそれから公立病院の場合と、これで全く扱いが違うことになりはせぬかというような指摘もあるわけですね。この辺についてはどういうふうにお答えになります。
  183. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 証言拒絶の場合を含めまして、現行の制度は、先ほども御答弁申し上げましたように、司法作用における実体の、事実の認定ということが一つの大きな重要な利益であると同時に、他方、行政作用において行政上の秘密が適切に保持されるということも、これと並ぶ重要な利益である。そういうことから、相互の関係においては、行政上の秘密を保持すべきかこれを開示すべきかということについては、国の一つの機関である内閣に代表される行政機関、これがその権限と責任において判断すべきである、そういう位置づけのもとに現在の制度が組み立てられているというふうに理解しているところでございます。  そういうことでございますので、そういう内閣に代表される行政というものと一般市民あるいは企業との間で違いが生ずるということは、これは合理性のある一つの枠組みであるというふうに考えている次第でございます。  もちろん、最近、先ほど来御指摘がございましたように、その行政の責任というのが情報開示の面では十分に果たされていないではないかという大変厳しい御批判を受けている実態がございます。そのそれぞれの問題について、私どもがコメントする立場にはないわけでございますが、そういう御批判を踏まえて、行政としては襟を正さなければならぬということであろうと思っておりますけれども、しかしながら、現在の制度は、そういう行政行政としてその権限に基づいた適正な運用ということをすべきものということが期待されている、そういう枠組みでの制度であるというふうに考えている次第でございます。  なお、今御指摘のありました病院の問題、例を挙げられますと、これは、国立病院と私立病院でどう違うかということを御説明するのは大変難しい問題でございますが、これは、公務員というものについては、それを個々に区分けして考えるということはなかなか難しい。公務員というものとそうでないものとの区分けをどこで引くかという問題であろうというふうに考えておるところでございます。
  184. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 事ほどさように、やはりこれで万人を納得させるだけの合理性をこれ、持っているかというと一そうはいかないのですよね。まだまだ問題点はあります。ほかの同僚委員指摘しておりますけれども、私もまだお聞きをしたり意見を述べたいことがたくさんありますけれども、時間が終わりましたので、この次の機会にまたぜひやらせていただきたいと思います。  何にいたしましても、先ほども申し上げましたように、私はやはり、司法というのは国民のためにあるものなのだ、国民のための権利を実現するためのものなのだという視点を忘れてはならないし、そのための法律であり法改正でなければならないと思っております。  そういうことで、さまざまな意見が出されているこの条項については、私たちはやはり慎重な対処をしなければならないのではなかろうか。どのようにするかということについても、あわせてこの委員会の審議を通じて何とかよい方向を見出せないものかと考えておりますので、そのことについても、余りかたくなではなくて、みんなでよいものにしようという方向でぜひお考えいただきたいものだと思います。  そのことを申し上げて、時間が参りましたので質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  185. 加藤卓二

    加藤委員長 枝野幸男君。
  186. 枝野幸男

    ○枝野委員 民事訴訟法改正案についてはさまざまな問題点がございますが、先ほどの質疑の中でも法務省から、この改正は裁判の迅速化を図るという目的も非常に大きいということを御回答いただきました。そうした見地から、最高裁判所の今なさっていることにそうした方向と若干違うことがあるのじゃないかという問題点を私は持っておりますので、そのことをまず最高裁にお尋ね申し上げます。  それは速記の制度のことでございます。私の弁護士をしておりました経験からいたしますと、証人尋問等をした後で速記がどれぐらいの早さで上がってくるかということが裁判の迅速という意味で非常に意味が大きいと思っています。証人尋問をして、そしてその結果の速記録を見て次回の戦略を考える。速記録が尋問してから半月も一カ月もたってから上がってきたのでは、それから次の戦略を立てなければならない、一回の期日と期日の間に一カ月、ニカ月ぐらい置いてもらわないと準備ができない。例えば実際に裁判官の数をふやそうが弁護士の数をふやそうが、裁判の迅速を図るという意味ではそうした部分の改善がされなければならないというふうに思っております。  そうした中では、速記の方の養成そして待遇、そうしたものを改善していかなければならないというのは自然の流れだと思いますが、私が聞き及ぶところによると、むしろ最高裁事務総局は、速記の養成をやめようではないか、そしてテープでとって、外注をしてそのテープ起こしをしてもらって、それで済まそうじゃないかというようなことを検討しているというふうにも聞いております。もし本当だとすると二つの点で問題があります。  一つは、外部に発注するわけでございます。テープをとって、テープを起こして、それを外部に頼むと、行ったり来たりする間も時間がかかります。現状の速記官の方が一生懸命努力をしても時間がかかっているのが、外部の人に頼むと、行って来てという部分で時間がかかります。  もう一つは、そのでき上がってくる調書の信用性という問題で、国家公務員としてのさまざまな規律のもとに服している速記官の方がつくったものと、そして外部の民間の方に委託するものとではやはり信用性に大きな違いがあると言わざるを得ません。  端的にお答えください。現状で速記の養成をやめて外部発注しようということを検討しているのかしていないのか、イエス、ノーでお答えください。
  187. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 今裁判所における逐語録の作成システム、速記制度でございますが、それについて全面的な見直しの検討作業をやっていることは事実でございます。実はまだその方向自体決めておりませんで、今方々の意見を聞きながら、どういう方向がいいのかということをいろいろな観点から検討しているところでございます。
  188. 枝野幸男

    ○枝野委員 確かに、いろいろお話を伺いますと、速記の方を養成するといっても大変エネルギーも要する。それは、裁判所としても実際に養成を受ける方の立場としても非常にエネルギーを要するというのも事実でございますし、今行革の流れの中で速記官の方の数を膨大にふやそうということ自体難しいというのは重々承知をしております。  しかし、私が最近知りました情報で、私自身も実際目の前で見たのでありますが、これはほかの委員の方に念のために申し上げますが、速記といいましても、裁判所の速記は、今、国会で目の前でしていただいている手書きの速記ではなくて機械速記であります。機械をたたく、タイプライターのようなものをたたいて、それもいわゆるタイプライターなどとは違うシステムで、しゃべる速さと同じ速さでそれをたたいていく。それで、たたかれたものが、記号のようなものが打ち上がってきて、後でそれを見ながら日本語に直していく、こういうシステムであります。  そして、幸いにも機械でたたいておりますので、その機械を電気的に変えれば、そしてコンピューターにつなげば、タイプのようなもので打ったものを日本語に直すという手間をかけずに直接機械が日本語に直してくれる。もちろん同音異義語とかさまざまな補整をしなければならない部分は残るわけでありますが、コンピューターにつないでいれば、とりあえずラフなものはたたいたその場で日本語になって出てくるわけであります。テープを起こしたり速記した記号を見ながら日本語に直したりという手間がかかりません。現実に、速記官の方々が独自に自主的な努力でコンピューターをつなぎ、機械をつなぎ、ソフトを開発し、そうしたシステムが今でき上がっています。私も目の前で見せていただきました。しゃべったものを速記の機械でたたいて、普通にしゃべる速さでそのままたたいていって、その場でコンピューターの画面からきちんと日本語で出てまいります。  これを使いますと、現実に試験的に使っていらっしゃる方のお話を伺いますと、まだソフトなどの点が十分完備されていない、例えば辞書のソフトなどの点が十分完備されていない状況の中で、しかもこれは独自にやっておりますから組織的なトレーニングなどをしていない状況でも、従来の速記のシステムに比べて二倍以上の速さで処理ができる。したがって、現状の人員でも二倍の処理ができる。しかも、そうやってコンピューターにつながっていきなり文字が出てくるわけですから、当事者にとってみても、調書ができ上がってくる日数も大幅に早くなる。こんなすばらしいシステムが開発されてほぼ実用段階にあると私は目の前で見せていただいて思いました。これから辞書の整備その他に若干のものがあれば、当然さらによくなるわけであります。  こうしたシステムがつくられているということを御存じでありますか。イエスかノーでお答えください。
  189. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 今委員指摘のようなシステムを何名かの速記官の有志がいわば私的に研究しておるということは十分承知しております。ただ、その評価の面につきましては、今先生指摘のようなところとは大分違う問題点を我々の方では感じております。
  190. 枝野幸男

    ○枝野委員 評価をどうするかというのはいろいろあるのでしょうが、私自身目の前で見ておりますので、何なら次の委員会のときに持ってきて実際にほかの委員の方に見ていただくというのは、委員会でできるのかどうかよくわかりませんが、してもいいと思っています。もちろんソフトなどの面でさらに整備は必要でしょうが、これにある程度の予算をつければかなり実用化できるというのは間違いないと私は思います。  そして、これは単に裁判所の速記だけの話ではないと私は思っています。というのは、例えば聴覚障害などの皆さん、耳の不自由な皆さんなどにとって、音を文字に変えなければならない。現状でもいろいろな努力がされていますが、しゃべるスピードで文字にしていけるというようなシステムが、もちろんこの速記タイプをたたくという技能については速記官の方の特殊技能でありますが、特殊技能の方にお願いをすれば、しゃべる速さで、同音異義語などは問題があっても、少なくともその場で画面に文字が出てくるというのは聴覚障害者の方にとっては非常に画期的なことであります。  むしろこういったものを育てていくべき状況じゃないかと思いますが、現状で裁判所はこうしたものの開発に予算、人員をかけていない、これは間違いございませんね。
  191. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 結論だけ申し上げますとどうも我々の方が理由のないことをやっているように思われますので、二点だけ申し上げさせていただきます。  このシステムの評価として先ほど委員の方から、このシステムを使えば今までより二倍の量の仕事ができるじゃないかということをおっしゃいました。しかし、実は裁判所の速記システムといいますのは御承知のように非常に容量の小さい入れ物でございまして、現実の速記官がどれだけの時間立ち会いまして速記録をつくれるかといいますと、週四十時間の勤務時間がございますけれども、平均いたしますと一人当たり週二時間程度しか実は速記録はつくれない、そういう状況はあるわけです。  いろいろ理由はございますけれども一つ大きな理由は、今の裁判所の速記制度というのが機械を使う打鍵作業でございますので、これがやはり健康上問題がありまして、それ以上立ち会い時間を拡大できないという問題があります。今委員指摘のコンピューターを使いました新しいシステムというのも基本的にこの速記タイプを前提としておりますので、立ち会い時間自体を延ばすことはできない以上、委員指摘のように二倍の容量にするということは非常に難しいということ。  それともう一つは、実は裁判所の速記官が現実にやっております速記といいますのは、機械で全部とり切っているわけではないということなのです。これは各法廷でごらんいただきましてもわかると思いますけれども、ほとんど例外なしに速記官は録音機を併用しております。つまり、機械だけではとり切れないところが随分ございまして、そういうものは録音テープの力をかりて録取しておるわけでございます。そうしますと、その点につきましては、コンピューターを使いましてもやはり手入力による修正作業がどうしても必要になってまいる、そういうふうなところを考えて能率化の程度を厳格にはかってまいりますと、とても二倍というふうな数字にはなりません。  現に、このシステムを開発しました名古屋の速記官自身が、そういうふうな非常に能率が上がるシステムというふうにこれをとられては困るのだということを言っております。速記官の中にも、そういうふうな一部の人がそういう評価をして宣伝のようなことをしておるのは自分たちとしては非常に心外だというふうな声もあるところでございます。そのあたりはひとつぜひ御理解いただきたいと思います。
  192. 枝野幸男

    ○枝野委員 二倍かどうかということについてはいろいろな評価に分かれるのでしょう。私も、実際にお使いになっている方から二倍の能率でできるというふうに聞いておりますし、それから、確かに法廷に立ち会える時間数ということについて、一般論としては確かにそうでありましょう。例えば、テープというか速記を起こして日本語にする作業と、それから実際に法廷で速記タイプをたたく作業とのエネルギーといいますか、疲労というもので、単純に速記官の事務室の方で起こす作業が短くなったからその分を法廷でのタイプをたたく時間に回せるとは思いません。  しかしながら、例えばテープを聞いて修正をするにしても、今現状で、速記タイプで打った記号のようなものを事務室に帰ってきて自分の机の上でそれを見ながら日本語に起こし、テープを聞きながら確認をし、それを日本語で手書きをしたりワープロをたたいたりするという作業の相当大幅な部分が、もう既にコンピューターの画面に日本語の文字として出てきているものを修正するわけですから、明らかにこれは、どんな素人がどう考えたって圧倒的に作業量が少なくなる。現状、法廷に二時間しかつけないというのも、一気にそのあいた分をふやせということはおっしゃるとおり不可能だと僕は思いますが、若干ふやせるでしょうし、二倍という評価はともかくとして、かなり現実に検討に値するシステムであろうということは当然だろう。なぜそれにお金をかけようとしないのかということは全く不自然で仕方がありません。  そこで、逆にお伺いします。  平成七年度に予算をつけて、裁判所の全速記官にワープロを貸与することにした。それまで長年要望がありながらやってこなかったのに、平成七年度になってようやく全速記官にワープロを貸与することになった、これは間違いございませんね。イエス、ノーで答えてください、時間がありません。
  193. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 速記官にワープロを貸与するといいますか、官給の常使用器具としてワープロを利用できるような体制をつくったことはそのとおりでございます。
  194. 枝野幸男

    ○枝野委員 会計検査院、来ていただいておりますね。会計検査院によく聞いておいていただきたいのです、今までの話も含めて。少なくとも、どの程度の効率がよくなるかという評価はある程度分かれるにしても、今お話を伺っていて、私の言っている話が全然むちゃくちゃな話ではなくて、ある程度の説得力がある、調べてみるに値するものであるということは御理解いただいていると思います。  去年ですよ、平成七年度の予算でワープロを入れたのです。コンピューターを入れてやっておけば、今コンピューターでもワープロは打てるわけですから、そして今のコンピューターやワープロの価格のことを考えれば一世代古いのでもいいわけです。要するに、ワープロ機能が働けばいいわけですから。一世代古いパソコンを買って、それにワープロソフトを乗っけてそれで代用しておけば、こうやってコンピューターに速記タイプをつなぐというシステムを開発して、それをやれば物すごくエネルギーが楽なわけですよ。ワープロを買って与えても、速記官の人たちは法廷で速記タイプをたたいて、それで打ち上がってきた日本語じゃないもの、速記の記号を見ながら日本語のキーボードをたたいて、ワープロでですね、調書をつくっているわけですよ。それを、コンピューターだったら直接つないでしまって、ラフなものだけれども画面にそのままもう日本語で出てくるようなシステムが、効率の点は評価は分かれるにしても、でき上がっているわけですよ。そのことを知っていながら、なぜこんなむだな金を使ってワープロを買ったのか。ワープロを買わないでパソコンとワープロソフトを買った方が、むしろ値段的にも、私が聞いている限りではワープロもOASYSの最高機種を買っているようですから、値段的にもパソコンとワープロソフトを買った方が安いですよ。  しかも、裁判官にもパソコンを貸与する時代ですよ。パソコンとパソコンの互換は簡単なんですよ、フロッピーの交換は。パソコンとワープロのフロッピーの交換は面倒くさくてしょうがないのです、私もやっていますが。これは、明らかに金のむだ遣い、税金のむだ遣いだと思いますので、会計検査院はぜひしっかりと調査していただきたいと思いますが、会計検査院の御見解は。
  195. 小林誠治

    ○小林会計検査院説明員 お答えいたします。  裁判所に対します会計実地検査は毎年実施しておりまして、その際には、物品の購入、管理等についても検査を実施しております。  委員お尋ねのワープロの購入に関しましても、当然検査の対象になるわけでございますが、そのコンピューターあるいはパソコンを利用しました調書作成のシステムにつきましては、私ども、まだ内容をよく承知しておりませんので、これにつきまして最高裁判所から事情をよく聴取した上で検討いたしたいと考えております。
  196. 枝野幸男

    ○枝野委員 最高裁だけ聞いたのでは片手落ちだから、私に言っていただければちゃんとわかっている速記官の方につなぎますから、ちゃんと調べてください。  何が問題かというと、最高裁は、裁判を急がなければならない、早くしなければならないといって民事訴訟法改正も急げと言っている。それから、弁護士の数が足りないから弁護士をふやせふやせということで一生懸命やっている。それはそれでいいですよ。でも、速記を一日も早く、法廷が終わったら弁護士、当事者のところにくださいと。こんなに裁判を迅速化する直接的な効果があるものはないのですよ。そちらの方のところを、これはいちゃもんをつければこのシステムにだっていろいろあるでしょうが、積極的に評価して、どうしたらうまくできるかということをやるべきなのです。  どうも最高裁の態度を見ていると、大蔵とか何とかに遠慮して、どうもこれも、速記官の人たちをやめさせてしまって、外部発注で記録をとるようにして、速記官の人員で、なかなか裁判官や書記官の数がふやせないから、その分裁判官や書記官の数をふやそうという姿勢ではないか。それはなぜか、大蔵省に遠慮しているから。最高裁は大蔵省の了解がなくても予算を出せる権限を持っているということはこの間指摘したとおりですから、それぐらい毅然とした態度で裁判官をふやさなければならないのだということをやらないのだったら、裁判官をふやすのを来年から反対しますから、来年も現職かどうかわからないけれども。  それで、本題のというか、もう一つのテーマの文書提出義務について、提出命令についてお話いたしますが、朝からずっと二百二十条の三号、四号の話をしています。結論だけもう一回確認させてください。  二百二十条三号の解釈については、従来の三百十二条三号の解釈と変わるのですか変わらないのですか。イエス、ノーで答えてください。
  197. 加藤卓二

    加藤委員長 イエス、ノーで答えてください、時間を気にしているようですから。濱崎民事局長
  198. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 変わらないと考えております。
  199. 枝野幸男

    ○枝野委員 変わらないとすると、明らかにおかしくなるのですよ。三号で要求をすれば、要件は若干厳しいかもしれないけれども公務上の秘密かどうかというのは裁判所判断をする、四号で請求をすれば、裁判所判断以前の問題として、役所が嫌だと言ったら出さない。これ自体明らかに矛盾だと私は思いますね。  それから、そもそも三号の解釈が変わらないというのは、それはちょっとうかつではないかなと私は思います。なぜかというと、従来一号から三号があった、一号から三号の文言は変わっていない、それはおっしゃるとおりです。でも、四号のロがふえているのです。四号のロで、「公務員の職務上の秘密に関する文書で」云々という条文が入っているのです。それは、役所の承諾がなければ出さなくていいということが入っているのです。  反対解釈という言葉は御存じですね、反対解釈になりませんか。四号で出てきているところについてはこうやって職務上の秘密文書についていろいろ書いてある、だからこれの規制に服する。だけれども、三号の文書については何も書いてない。ということは従来より広くなると見るべきではないですか、むしろ素直に読めば反対解釈で。三号で要求をしたら公務上の秘密であっても全部出せと。三号に該当するけれども公務上の秘密に関するから出しませんということは四号ロの反対解釈で出さないというのが条文の素直な読み方ではないですか。
  200. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 先ほど来、他の委員に対しても御答弁申し上げているとおり、三号の運用、解釈の問題として、公務上の秘密に関する文書についての取り扱いについて一定の裁判例が出ているということでございます。したがいまして、その解釈、運用は、あくまでも三号に規定している文書に該当するかどうかという判断の一内容として御指摘のような取り扱いがされているわけでございますので、御指摘のようなことにはならないというふうに考えております。
  201. 枝野幸男

    ○枝野委員 答えになっていないと思うのです。わかってお答えになっているのだろうと思うのですが、従来の三百十二条三号の解釈、判例の積み重ね、それはそれでいいのですよ。何もなければそれが引き続き続く、それはおっしゃるとおりです。  だけれども、四号のロができて、四号のロの反対解釈というのがむしろ自然じゃないですか。四号のロが出てきて、四号のロの反対解釈で、三号の場合は秘密なんか関係ないですよと読むのが条文の読み方として自然じゃないですか。反対解釈をしなくていいという根拠は判例の積み重ね以外に何かあるのですか、ないのですか。
  202. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 これは基本的には御指摘のように判例の積み重ねがそのようになっている。今回の改正は、その規定はそのままにして、四号をつけ加えるということであるという、そういう趣旨から、それと判例の積み重ね等によってそのような取り扱いになるものと考えております。
  203. 枝野幸男

    ○枝野委員 明らかに矛盾している。説明になっていない。広くなるのだからいいのです。三号で出せば、秘密だって全部出してもらわなければならなくなるというのは、その方がいいのです。だけれども、それはそれでまたおかしいのじゃないですか。  それから、そうじゃないとして、従来の判例どおりだとすると、三号と四号で解釈の差が出てくるという矛盾点をどう説明するのか。ずっと聞いていても説明になっていない。  もっとさらに言います。この法律案は、申しわけないけれども、残念ながら十分な検討の上になされていない、この文書提出義務についてはなされていないということについて、もう一つ出します。  情報公開法が今つくられようとしています。情報公開法で今少なくとも議論されているのでは、情報公開しませんという結論が出たときには、それについて裁判で争える、抗告訴訟が起こせるということになっています。そうなったときに、民事訴訟法のこの規定と、抗告訴訟ができるという情報公開法規定とは矛盾するとはお考えになりませんか。イエスかノーでお答えください。
  204. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 イエスかノーかで答えろということでございますれば、矛盾するものではないというふうに考えております。
  205. 枝野幸男

    ○枝野委員 情報公開法は、けさ太田先生お話しになりましたとおり、万人だれもが利害関係の有無にかかわらず公開を求めることができるというのが原則、基本的なシステムです。そして、それに対して行政がノーと言ったときには裁判で争って、行政がノーと言っているけれども、あれはうそじゃないかと言って争えるのです。行政の結論が最終じゃなくて、行政がこれは秘密だから隠しますと言っている判断について、おかしいと言って、万人だれでも裁判所に訴えることができるのです。  民事訴訟は、利害関係のある当事者が裁判で自分の権利を守るためにどうしても行政情報が必要なのだという問題についてです。別にこれは一般義務化をして、一般義務や一般義務化ということを言っていますけれども、裁判の判決に関係ないようなことを要求したって、民事訴訟では、その段階で、そこの条件で、関係がないということで提出は拒否されるはずですから。当事者の利害にとってどうしても不可欠だから出してくれと言って裁判で求めるわけです。より切実なわけです。ただ、そちらの方がより切実でより具体的な目的がある方については、民事訴訟法行政庁がノーと言ったら、そのノーという判断を争いようがない。一般義務として、一般的な一国民として要求したときには出てくるかもしれない。こんなばかな話があっていいのか。  もし民事訴訟で、証拠提出命令で出してくださいと言って、行政庁がノーと言いました。許可しません、秘密ですと言って出しませんでした。困って情報公開法に基づいて公開をしてくださいと言ったら、やはり行政庁は当然ノーと言うでしょう。ノーと言ったけれども、裁判に訴えたら、いやそれは行政庁判断が間違いです、これは情報公開法に基づいて出すべきです。別の行政訴訟は五年後か十年後かにそんな判決が出てきて、それまで民事訴訟を待っているのです、こんなむちゃくちゃな話になると思いませんか。
  206. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 行政情報公開に関する一般法が制定されて、国民に一定の行政情報について開示請求権が与えられたという場合を考えますと、その不開示処分に対しては、御指摘のとおり、取り消し訴訟が認められるということになるのであろうというふうに考えられますが、この取り消し訴訟、行政訴訟、取り消し訴訟におきましては、まさに行政庁の処分の適否を対象として審理が行われ、それについての裁判所判断がされるということになるわけでございます。  これに対しまして、文書提出命令の場合は、司法に対する協力義務の一環として、行政あるいは立法がどこまで裁判所の審理に協力すべきかという関係にあるわけでございまして、いわば公務員秘密を守る義務と審理協力義務とが対立するという場面におきまして、それをどういうふうに調整するかという問題であります。  すなわち、民事訴訟の場面では情報不開示という行為の適法、不適法について直接司法判断をするということではないわけでございますので、両者はそれぞれ異なる問題であって、異なる規律をしているからといって、必ずしも不均衡であるということではないというふうに考えております。
  207. 枝野幸男

    ○枝野委員 お答えになっていないのですけれども、さっきみたいな例でいいのか。  民事訴訟の方で、当事者が切実な問題として、この証拠がないと裁判で自分の権利を守れないと言って求めた。求めたけれども、国はこの四号のロに基づいて拒否をした。しょうがない、情報公開法に基づいて情報公開請求をした。当然そこでも拒否をするでしょう。拒否をした、しょうがない、裁判で争った。裁判で争ったら、裁判所判断として、いや、それは情報公開法に基づいて出すべきだということで出てくることになった。裁判所司法制度としてこんなみっともないことはないですよ。そんなことはあってもいいのですね。これはあり得ますよ。イエスかノーで、いいかどうかを答えてください。
  208. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 今大変大きな議論がされておりますが、その結果、行政情報公開に関する一般法が制定されて、内容がそういうことになるということになりました場合には、それとの整合性を、今御指摘の問題も含めて、真剣に検討させていただくつもりであります。
  209. 枝野幸男

    ○枝野委員 その答えを待っていたのです。  この話は情報公開法ができてからの問題じゃないのですよ。この問題は既にあるのですよ。情報公開条例というのはいろいろなところでできているのですよ。同じ問題が起きるのですよ。この民事訴訟法ができた瞬間に、全国に既にある情報公開条例で、裁判で争えるのですよ。どうするのですか。でき上がった瞬間にもう矛盾するのですよ。  先ほど言った例と同じで、当事者の利害にとって、自分の権利を守るためにどうしても必要な証拠を、民事訴訟法四号ロに基づいて国は裁判所へ出しませんと言われた。どうしても必要だ。幸いその県の情報については情報公開条例があります。その情報公開条例に基づいて、県に対して情報を公開しろ、出せ。県は嫌だと言った。嫌だと言ったから、情報公開条例があると訴訟を起こせるのですよ。情報公開条例の裁判を待っていたら、県の判断は間違いでした、県は情報を出すべきですということになった。情報公開条例と明らかに矛盾するのですよ。そんなものをつくってしまっていいのですか。
  210. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 矛盾するかどうかという理論上の問題については、先ほど申し上げたとおり、理論的には矛盾するものではないというふうに考えております。実質的妥当性の問題について申し上げたつもりでございます。  行政情報公開法の制定を待ってというような言い方をしておりますのは、これは事柄の実質として、まさに国の行政情報はどのようなものがあって、その中に一律に裁判所の審査の対象にしていいものかどうかというような問題、それからインカメラの対象としてもどうであろうかというような問題、これは現在大変幅広い議論がされている行政情報公開に関する議論、その成果を踏まえて検討するのが適当である。その前の段階で、民事訴訟法場面でのみその問題について先取りして結論を出すのは困難でもあり、かつ適当でもないという考え方を踏まえた上でのことでございます。
  211. 枝野幸男

    ○枝野委員 少なくとも情報公開法をつくったら、司法審査のどこかの段階では、最終的には司法審査になるのだなんという話は、これは情報公開法をやろうという人にとっては一般的な話ですよ。  そもそも現行の情報公開条例と矛盾してみっともないことになるということを、それは理論上はいろいろな言い方があるでしょうが、現実にみつどもないことになるのですよ。東京都は情報公開条例があるのだから。東京都は、これは公務員の職務上の秘密というのは国家公務員に限っていないのだから。東京都が相手のときがあるわけですよ、四号ロが。東京が相手のときには、もう情報公開条例がある以上は、これは矛盾するのですよ、明らかに。そんなものでさっきのようなおかしな結論になることを認めてしまうのか。そんなことで司法の信頼が守れるのかといったら、冗談じゃない、おかしな話です。  それから、もう一つ言いますよ。先ほどちらっと、もうちょっとで聞き逃すところでしたけれども、四号のロは協力をするかどうかという関係です、それは、確かに一般条項化しています、四号のイからニまでは。一般条項化しています。だから、国が当事者であるかどうかにかかわらず、一般義務として職務上の秘密に当たらないから情報を出せという条文になっています。だけれども、そういったケースの場合と国が被告の場合と両方あるのですよ。国が被告の場合を特に問題としているのですよ。  国の場合、行政の場合以外も、民間が当事者の場合でも、先ほど官民の格差の話がありましたけれども、民間の会社が当事者になって、被告になって損害賠償請求を起こされているというようなときは、こういった条項がないわけです。それは第三者のときは、先ほどおっしゃったような理屈もわからないじゃない。国が被告になっていれば、まさに薬害エイズのような、当事者のような話のときに、先ほどのいかに国が第三者として協力するかのようななんという話は、全然理屈が通らない。少なくとも四号を二つに分けて、国が当事者の場合と第三者の場合と分けるべきじゃないですか、先ほどの理屈は。  そして、先ほどの、繰り返している情報公開条例との矛盾、明らかにこれは私は残念ながら準備不足で法案を提出したと言わざるを得ないということを申し上げて、まだまだ何度も審議する機会があるでしょうから、きょうのところは以上で終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  212. 加藤卓二

  213. 正森成二

    ○正森委員 日本共産党を代表して、民訴法の改正案について質問をさせていただきます。  まず第一は、この民事訴訟法案というのは法制審議会において五年以上にわたって審議が行われたものであります。ところが、本日いろいろ議論になりました文書提出義務文書提出命令に関する意見の趣旨記載の規定については、これは改正法の二百二十条四号ロ等でありますが、平成七年十二月一日の法制審議会民事訴訟法部会小委員会において初めて、本改正規定の基礎となった要綱案第六次案として具体的に示されたものであります。  五年間も長々と審議していたのに、今一番本委員会でも問題になっているものは十二月一日に要綱案として出されて、正月を挾んでニカ月半ぐらいで法案になる。しかも、日本弁護士連合会は早速反対して、十二月二十日に要望書を提出しましたし、二月二十六日に開催されました第百十九回法制審議会総会でも、日弁連推薦の委員から、公務員の職務上の秘密に関する文書について特別な取り扱いをすることの不当性、及び情報公開法立法化への流れに反するものであるということが強く訴えられております。あるいは、閣議に付されるに先立って最小限の修正がなされるべきであるということも主張されております。  そこで、私は伺いたいのですが、五年も審議されておったのに、なぜ去年の十二月一日までこの最も現在争点になっている問題が法案として提出されなかったのか。その前に、甲案、乙案というようなものが出されましたが、それは二年以上前に参事官の要綱として出されて、そして広く各界の意見を求めるという手続をやっております。ところが、今度出されました二百二十条四号ロ等については全くそういうことがなされない。しかも、それだけでなしに、緊急にそれを成案として国会へ提出するということをやっている。それらについて、なぜこういうことをやったのか、答弁を願います。
  214. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 御指摘のとおり、今回の改正について法制審議会の答申を得るまでに五年以上の期間にわたる……(正森委員「もうちょっと堂々と大きい声で言ってください。声が聞こえないし、いかにも自信がない、もう修正必至というような感じに聞こえるからね」と呼ぶ)五年以上の期間をかけて、これは大変幅広い問題について検討がされてきたわけでございます。結果として成案を見たのは今回民事訴訟法案として提出させていただいているものですが、それ以外にも大変多くの検討事項対象にして検討が進められてきたわけでございます。  御指摘の証拠収集手続の拡充というものは、その中で一つの大きな柱として検討がされてきたわけでございますが、今御指摘がございましたように、この拡張の方向については早い時期から法制審議会の内部においても考え方が大方一致しておりましたけれども、その方法につきましては、御指摘のあった甲案、乙案、一般義務化の案と列挙主義の範囲内で範囲を拡張するという考え方があり、これについては関係各界においても意見が分かれておりましたために、これは両論併記の形でずっと長い間審議が進んできた。  そこで、この一般義務化を内容といたしまして法文に近い形で法制審議会に正式に案として示したのは、御指摘のように最終答申の約三カ月前、十二月という時期になったわけでございますが、しかしそれ以前の審議の段階における資料におきましても、具体的には七年の五月ごろでございますけれども、実質的に法案の趣旨に近い形での提案という形の書面が出されているわけでございます。  このいわゆる甲案を採用する場合に公務員秘密に関する文書の取り扱いについてどうするかということ、これの議論の実質は、午前中も御答弁申し上げましたように、もっと早い段階で、証人尋問の場合における拒絶事由の場合のあり方として現行は監督官庁の承認を要するものとしているわけですが、それでいいのかどうかという中で、かなり熱心に議論がされた。その際に、裁判所判断にすべきだという考え方も主張されたわけでありますけれども、これはいろいろほかの制度との整合性ということから、民事訴訟法場面だけでいきなり改正するのは難しいであろうという議論で推移してきた。  今の甲案をとる場合のいろいろな秘密の問題に対する対応については、抽象論といたしましては早い段階から、これは証言拒絶の場合と同様の制限のもとに一般義務化を考えるということで議論がされてきたというような経緯がございます。
  215. 加藤卓二

    加藤委員長 簡潔にお願いします。
  216. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 したがって、御指摘の十二月に初めて明らかにされたということではないわけでございます。
  217. 正森成二

    ○正森委員 長い割には余り要領を得ない答弁でしたが、持ち時間が限られておりますので、質問を続けます。  ここに三月十三日付のある有力紙の記事がございます。これは、民訴法改正案について「情報公開狭める恐れ」という見出しで載っている記事であります。その中でこう言っているのですね。「与党法務委員の一人は、法務省から先月末、正式説明を受けた際、「原案を認めてもらえないと、閣議決定前に開く各省庁事務次官会議の承認を得られなくなり、改正案全体が成立不可能になる」と迫られたという。」こう載っております。  これが新聞記事ですから、裏づけがあるかなと思って私なりに調べてみましたら、確かに裏づけがございまして、当委員会で三月十五日に審議が行われております。そこで民訴法の問題も出まして、名前は申しませんが、先ほども熱弁を振るわれた与党の一人の委員がこう質問しております。  「与党として承認しろ承認しろとさんざんうるさく言われたときに、法務省は私にこういう御説明をしたのですよ、ほかの役所がうんと言わないと。ほかの役所、少なくとも二庁は裁判所を信用するというような方向のことをおっしゃっていますよ。」というのは、この日に科学技術庁など二つの省庁を呼んだことを指しているのですね。「どこがとめたのですか、この解釈、この条文を。こんな、裁判官司法権が及ぶのか及ばないのかわからないような条文をこのままにしておくというのはどういうことなのですか。ほかの役所がうんと言わないからという説明を受けたのですよ、」こういうように言っているのですね。まだ長々とありますが。  だから、ここで言っていることは、各省庁の代表者である事務次官会議が通らない。だから、いきなり去年の十二月一日に出してきた二百二十条の四号ロというようなものを含むものを入れてもらわなきゃ困るということを強力に与党に働きかけたということは、もう紛れもない事実なんですね。この議事録を読みますと、この与党議員の怒りの心境というのがよくあらわれているんですね。  その同じ記事には、与党の法務調整会議、これは座長が社民党の衆議院議員、私もよく存じている方だそうですが、修正案を各省庁に納得させて閣議を通すのは無理だ、修正なら国会でもできると語って、国会にかけてから修正しようということにしたんだという意味のことが書かれておる。しかし、与党自身による修正があり得ることを前提に、法案を閣議決定し、国会へ上程するという手法は、あまりに奇異だ。この場合は行政文書提出の間口を狭めないための修正案をなぜ各省庁がそれほど拒むのかという点こそ十分に検討、点検すべきというふうに言っているのですね。これは、薬害エイズの問題やあるいは「もんじゅ」の問題やいろいろなものを見ますと、まことに当然だと思うのですね。  結局各省庁は、厚生省にしてもこれは自分が行政裁判で被告になるわけですから、そんなときに自分が握り込んでおる資料を出したのでは格好がつかない。だから、一説によると、事務次官会議の公式か非公式の席か知りませんが、各省庁は、全省庁を敵に回すのか、こう言って法務省の証拠提示に関する規定について、ぜひとも今出ているような案を入れろ、入れなきゃ事務次官会議は通さないということを示唆したというのですね。もってのほかじゃないですか。だから、私どもはこういうやり方というのは非常に問題があるというように思います。  この点については、最後の点でもう一度大臣に答弁を求めますからこの程度で終わっておきますが、その次に第二の問題に移ります。  これは各議員がお述べになったのですが、改正法案の法制審議会における審議の過程で、立法当局の説明では、改正法案第二百二十条一号ないし三号の要件を満たす文書については、現法律の三百十二条ですね、現行民事訴訟法第三百十二条一号ないし三号の取り扱いがそのまま踏襲され、改正案第二百二十条四号ロの適用を受けないとの説明がなされている、こういうように言われているのですね。これは法制審に出ておった委員も言っておりますから間違いのないところだろうと思います。きょう私は注意深く民事局長の答弁を聞いておりましたが、民事局長も、二百二十条一号-三号という点については、旧法の三百十二条一号-三号の扱いと変わらないという意味のことを基本的にはお述べになったというように私としては理解しているわけです。  しかし、それだけでは済みませんで、そうなりますと、三百十二条三号の類推または拡張解釈によって救済されてきた文書の取り扱いがどうなるかという問題があります。この点については裁判所が結局はお決めになることだという意味のことを言いましたが、それでは新法をつくる場合に困るわけなんですね。これまでは、判例は現行民事訴訟法の二百七十二条ないし二百七十四条、二百八十一条等を類推適用して、提出拒否事由としての職務上の秘密性の有無を裁判所判断するという方法が踏襲されてまいりまして、承認要件というのは全く問題にならないのですね、判例でもこれまでは。専らその職務上の秘密性の有無についてのみ裁判所判断してまいりました。  そこで、これの典型的な例は、申し上げるまでもございませんが、ここに持ってまいりましたけれども、これは家永さんの教科書裁判ですね。これは昭和四十四年の十月十五日の東京高裁の決定であります。  この東京高裁の決定では、三百十二条の三号文書に当たるかどうかという点で、これは請求者との法律関係について広く解釈して、これは当たるんだということをまず決めました。それからその次には「民事訴訟法第二七二条にいう職務上の秘密とは、」ということで論を進めまして、念のために読みますと、「公表することによって国家利益または公共の福祉に重大な損失、重大な不利益をおよぼすような秘密をいうと解するが、教科書検定に際して判定理由を開示することはむしろ検定手続の公正を保障するゆえんであるから、開示に伴ない、審査に当った公務員の意見がおのずから知られることがあっても、それは担当者としても所管行政庁としても当然是認すべきことであり、それがため国家利益や公共の福祉に重大な損失或いは不利益がおよぶとは考えられない。要するに、個々の担当者の意見が同条にいう職務上の秘密に該当すると解することはできないから、論旨は理由がない。」といって、行政庁はぽんと負けているのですね。  そうしますと、民事局長、自信を持って大きい声で答えてほしいのですが、こういう判例の立場は、あなたのあれによると、法制審での政府側の答弁でも維持されるのですね。つまり、三百十二条の三号、今の二百二十条の三号に当たるかどうか、少し類推して拡大解釈しよう、これを解釈して、今度は承認要件なんかは全然問題にせずに実質的に秘密を有するかどうかだけ判断して、それではんと結論を出す、こういうことでいいんですね。
  218. 加藤卓二

    加藤委員長 簡潔に答弁してください。
  219. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 これまでの解釈論がそのまま維持されるというふうに考えておりますし、その点は法制審議会でも十分議論がされております。
  220. 正森成二

    ○正森委員 法務委員会の審議というのは、立法者の意思として今後、非常に失礼な言い方ですが、裁判所判断をされる場合にも重要な参考になると思いますから、私は今の見解をこれからも維持していただきたいというように思っております。  そうすると、当然の論理の発展として、先ほど枝野議員がおっしゃいましたが、法律には反対解釈というものがあります。そうしますと、改正法案第二百二十条四号ロの承認要件の立法によって、四号文書についてのみ承認要件が限定的に立法化されているわけですから、その反対解釈として一号ないし三号の文書、これは、判例が教科書裁判で類推拡大した部分も含めて監督官庁の承認を問題としないという従来の実務慣行が実定法上も確定したと積極的に解釈できるということに論理必然上ならざるを得ませんが、それでいいのですね。
  221. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 その点については先ほども御答弁申し上げましたけれども、今回の改正によって、現行の一号から三号までの文書の範囲についての解釈論がそのまま踏襲される。したがって、プラスにもマイナスにも影響を受けるものではないと考えております。
  222. 正森成二

    ○正森委員 せっかく私が言ったのに、反対解釈で確定されるということについては少しごまかして、プラスにもマイナスにもならぬという意味のことを言いました。しかし、論理必然的には、あなたの答弁からぐっと推していくとそういうぐあいになるということは、これは当然のことであると思うのですね。  ところが、きょうの濱崎民事局長の答弁は、それはそれとして私は非常に貴重なものとして伺いますが、長尾法務大臣、あなたの四月十二日の同僚委員の質問に対する本会議の答弁は、その点は非常にあいまいで、むしろ反対にとれると見られるような答弁をしておられるのですね。覚えておられますか。四月十二日のことだからあるいは忘れておられるかもしれませんが、私が念のために読みますと、   このように、文書の提出義務を一般化するに当たり、証言義務については、現行法上、職務上の秘密について公務員を尋問するときは監督官庁の承認が必要とされ、承認がない場合には証言を拒むことができるとされていることなどから、公務員の職務上の秘密に関する文書につきましても、その提出について監督官庁の承認を要することとしております。   このような考え方は、刑事訴訟法における押収、証人尋問などにおいてもとられているところであり、今回の改正は、このような現行制度の考え方の枠内で提出命令の対象となる文書の範囲を拡大することとしたもの こういうように言っておるのですね。あるいはその後の別のところでも、   本法律案は、ただいま申し上げましたように、職務上の秘密に該当するかどうかの判断監督官庁がするという枠組みの中で文書提出命令対象となる文書の範囲の拡大を図ったものでありますので、公務員の職務上の秘密に関する文書につきましては裁判所の提示手続の対象 としなかったものであります。 こういうように言っております。  これは、長尾法務大臣に非常に好意的に解釈するとすれば、「文書提出命令対象となる文書の範囲の拡大を図ったものでありますので、」こう言っているから、四号ロについてのみはというように解釈する余地はあります。しかし、一号から三号については除くということは明白にはおっしゃっていないのですね。したがって、巷間ではこの答弁をもって、全面的に裁判所判断を除外して、秘密であるかどうかについては行政庁判断権を与えたものであるというように解釈をして、これは一大事だということになっておるのです。もし濱崎民事局長の答弁が正しいとするなら、より上位者である法務大臣の明確な答弁によって、この本会議での答弁を明確にされることを望みます。
  223. 長尾立子

    ○長尾国務大臣 お答えを申し上げます。  今回の改正によって提出義務の範囲が広がる部分について監督官庁の承認を要することとしているということを申し上げたわけでございまして、局長が答弁を申し上げたことと同じでございます。
  224. 正森成二

    ○正森委員 ありがとうございました。局長答弁と同じで、旧法というか現法の三百十二条の一号から三号については判例も含めて従来の解釈が生きてくるということを、立法の最高責任者として言われたことを多としたいと思います。  そこで、次の問題に移らせていただきますが、それは情報公開法との整合性の問題であります。この点については、先ほども同僚委員が詳細に御質問になりましたので、重複を避けまして、別の問題について同じ観点から質問をさせていただきたいと思います。  情報公開法は、四月二十四日に発表された行政改革委員会行政情報公開部会の中間報告のうち情報公開法要綱案、こういうものがあるのです。それのことを指しているのですが、こんな大きいものですから、いろいろたくさんございますが、そのうちの、今関心のあることについてだけ申します。今公開条例が各県、地方でございますが、それで不開示ということになりましたら、「不服申立てについて調査審議するための合議制の機関として、総理府に、不服審査会を置く」ことが第十八の「不服審査会の設置」というところで決まっております。  第二十では「不服審査会の権限」として「不服審査会は、諮問をした処分庁又は審査庁に対し、開示請求に係る行政文書の提出を求め、事件の審議にあたる委員をして、不服申立人に閲覧させずにその内容を見分させることができる。この場合において、諮問庁は、当該行政文書の提出を拒むことはできない」こう明確に書いてあります。これは、当委員会でもしばしば議論のありましたインカメラの制度であります。つまり一般的な、裁判のように特に争点があって利害関係があるというのでなしに、日本国民すべて、与党の質問者が、衆議院議員がえらい権限がないと言って怒られましたが、衆議院議員も国民の一人としては当然情報公開ができるわけですから、ある意味ではそう怒る必要はないと言えるかもしれないのですが、こういうことになっているのですね。  しかも、第二十六を見ますと「地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、その保有する情報の公開に関し必要な施策を策定し、及びこれを実施するよう努めなければならない」これは努力義務ですけれども、国の情報公開法に基づいて同じようなことを決めなさい、こう言っているのです。そうしますと、このインカメラの制度は、国の情報公開だけでなしに、地方自治体の情報公開でも全部適用されることが前提になっているのです。そうすると、今も言われましたけれども、とんでもないおかしなことが起こるのですよ。  情報公開で権利義務を争って裁判しているわけじゃない、ともかく情報が知りたい、国民の知る権利だといってやるものは、これは不服審査で申し立てれば、どんなに秘密だと言ってもここへ出しなさい、こう言って、ほんまに秘密かなといって判断することができる。それについては、今の規定では、不服だったら当然裁判所へも行ける。ところが、この法律が通ると、肝心の裁判所は、今の答弁で一号から三号書面についてはそうではありませんが、四号ロについては、インカメラもなければ、局長も答えましたが、行政庁判断権がある。こんなおかしなことがありますか。整合性が全くないと言ってもいいのですね。何でこんなことになるのか。  そこで、また長尾法務大臣、あなたが四月十二日に非常に重要な答弁をしているのですよ。どう言っているかといいますと、   御指摘のように、行政情報の公開につきましては、現在、さまざまな議論がされているところであると承知いたしております。この問題は、行政情報の公開のあり方という大きな問題にかかわる事柄でありますので、その議論の結果等を踏まえまして、必要があれば、今後これとの整合性を図る見地などから改めて所要の検討を進めてまいりたいと考えております。 こういうように答えているのです。つまり、いろいろあるかもしれないけれども情報公開がどうなるかという全体的な枠内で考えていかないかぬから、民事訴訟だけで考えることはできないのだと。それで、両方が整合性のあるように考えるのだ、必要があれば検討するということは、部分的に改正もあり得るという意味でしょうな。  ちょっと首をひねっておられますけれども、それはそういう以外に解釈のしようがないわけで、それで、私は、そんなあいまいなあるいは整合性のないものなら、もう既にマスコミでも出ているように、この部分情報公開と整合性を持つように一応凍結して、ほかの部分は通しても、それらについて意見がまとまるのを待って施行すればいい、それまでは現行法文書提出の点を生かすようにすればいい。借地借家法でもそういう規定はあるのですから、そういう考え方も成り立ち得るものだというように思うのですね。  時間がありませんから、もう一言言って、最後に法務大臣の見解を求めますが、ここに五月四日付の東京新聞があります。これは「民事訴訟の情報公開を考える」という表題ですけれども、これは情報公開制度との間の整合性が欠けているということを指摘した上で、「官庁の文書提出拒否権が新設されたのは、現行法にもある公務員証言拒否権と整合させるためという。このまま成立させれば、情報公開制度の骨抜きを狙う官僚機構が、今度は民訴法との整合性維持を口実に、情報公開法からインカメラ手続きを削除させようとするだろう。」こう言っているのです。  これはまことに、さすがマスコミらしい鋭い言い方、指摘だと思うのですね。民事訴訟法をやるときには情報公開その他との一般の整合が必要だとこう言って、それで、突破口として法務省国会に対して突撃をさせて民事訴訟法を改悪して、それで今度は、民事訴訟法でこうなったのだから一般の資料要求というのは民訴より狭くて当たり前だ、それなのに民訴より広いのをやるのは厚かましいということで、今度はそれを抑え込む。  我々の党には二段階革命論というのがありますが、官庁もそれを学んで、二段階革命で、まず法務委員会を陥落させて、次いで今度は総務庁を陥落させるということを考えていると見ざるを得ないのですね。これは私の決して邪推ではないのですよ。正常な感覚をもってすれば、さすが事務次官、官僚の古手だけあって、寄ってたかってうまいこと考えおったなというように思わざるを得ないのですが、そういうことに乗れば、司法の一翼を担うために大きな力を発揮しなければならぬ法務省が、自分の権益を守ろうとする行政庁の手先になったということになってしまうのです。そうならないための決意表明を伺って、私の質問を終わります。
  225. 長尾立子

    ○長尾国務大臣 行政情報の公開のあり方につきましては、今、行政改革委員会において幅広い御検討がされているものと承知しております。その御議論は、今後の行政情報はいかにあるべきかという基本的な大きな問題について御議論をいただいているわけでございまして、その御議論の結果ということにつきましては各省すべて尊重しなければならない、法務省ももちろん例外ではない、このように私は思っております。  しかし、今回の改正は、今まだ行政情報について具体的な方針がお示しをいただいていない段階におきまして、現段階におきまして文書提出命令の範囲を拡大をさせていただく、こういう趣旨でございますので、その点はよろしく御了承いただきたいと思います。
  226. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  227. 加藤卓二

  228. 小森龍邦

    小森委員 非常にきめ細かく既に議論がなされておりますので、きょうの議論でなお私の頭の中に十分入らないことをきっかけにお尋ねをしてみたいと思います。  まず、公務員の職務上の秘密というこの概念でありますが、例えば、これは国家公務員法とか地方公務員法で明確にその中身が法定されているかどうか、その点、お尋ねいたします。
  229. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 お答え申し上げます。  公務員の職務上の秘密という概念につきましては、これは、国家公務員法上の概念と民事訴訟法の概念、必ず全く同じものではございませんが、いずれにしても抽象的な概念で規定されているものでございまして、具体的にどういう文書がそれに該当するか該当しないかというのは、それぞれの法律の解釈問題ということであります。
  230. 小森龍邦

    小森委員 つまり、抽象的な概念であるものを判断をするのはやはり公務員判断をするということになるのでありまして、都合よく解釈をする余地が幾らでもある。やりようによったらそれは公権力の恣意というものをはびこらせる、これを私は非常に恐れておるわけであります。  そこで、私は、かねてから思っておったとおりだなというふうに判断をしたのでありますが、つまり、公務員の職務上知り得た秘密裁判所が証拠として出してもらいたいということがあって、しかしそれは当該官公庁の承認が要る、こういうことでございます。当該官公庁の承認は、例えば法務省の人権擁護局の総務課なら総務課の中身にかかわることについては、その官公庁の承認というのは具体的にはだれの決裁なのでしょうか。
  231. 濱崎恭生

    濱崎政府委員 監督官庁という概念を用いておりますが、これは、現行法の解釈といたしまして、それぞれの公務員に適用される公務員関係法令の規定によって定まると考えられておりまして、問題になっている職務上の秘密が国家公務員秘密である場合には国家公務員法百条二項によりまして所轄庁の長、地方公務員秘密である場合には地方公務員法三十四条二項の規定によりまして任命権者がそれぞれ該当することになると考えられております。  所轄庁の長というのが何であるかということにつきましては、一般的には任命権者というものがこれに該当する場合が多いのではないかと考えております。したがいまして、今御指摘の場合について言えば、通常の場合は任命権者たる法務大臣ということになろうと考えております。
  232. 小森龍邦

    小森委員 言葉じりをとるわけではないのですけれども、やはりそれは、濱崎局長、あなた自身も気づかれておると思いますけれども、通常の場合とか、通常の場合のときは法務大臣じゃとかというような、その通常の場合というような言葉を使うということは、これ自体がまた厳密でないということやね。そうすると、例えば、人権擁護局長がそれは出しちゃいかぬぞと言うたらそれで終わりかもわからないし、あるいは、人権擁護局の総務課長が係長に対して、それは公務上の秘密じゃ、だめじゃと言う場合があるかもしれないということを実は私は非常に懸念しておるわけですね。そうすると、この二百二十条の四号のこの問題というのは、やはり二重、三重の行政権力の恣意が働く欠陥を持っておる、私はそう思うのであります。  そこで、私が言うまでもございませんけれども、人類はたゆみなく自分の権利というものを確保するための闘争を続けてきたわけですね。これは人間の自由と平等に関する問題というような言い方をやりますが、その際に、例えばイギリスの一二一五年のマグナカルタ憲章を見ても、要するに、この自由獲得の闘争というのは、主として時の権力なのです、時の行政権力との闘争なのであります。そうなると、ここはもう民主主義社会を確立するためには非常に大事な根本的な問題ですね。それがあいまいだったら賛成できませんね、これがあいまいである限りにおいては、というふうに私は考えるのであります。  そこで、これは最終的に法務大臣にお尋ねをしなければならぬと思うのでありますが、私は、憲法の最も大事だと思うところは、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、」「立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」だから、薬害エイズの問題でも、秘密というのが先に出るから、二千人もその上もがエイズにかかるのですね。これは、「すべて国民は、個人として尊重される。」ということにポイントを置いておけば、個人を尊重するということの前には国家権力も頭を下げるというようなことになっていれば、こんなことにならないのです。これは薬害エイズのことのみならず、恐らく同僚委員の皆さんのところのお手元に、いろいろな関係者から、最近起きているいろいろな事件とその事件をめぐる訴訟、そして証拠の問題をめぐっていろいろな事例の問題が我々法務委員のところの手に届いておりますけれども、「すべて国民は、個人として尊重される。」それが、「立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」となっておるのに、この条文では、つまり、あいまいな恣意がはびこるかもわからないような条文で、がっとくくる。これはもう民主主義の根本理念の否定であると思うのですね。  それで、法務大臣にお尋ねをしたいことは、きょういろいろ議論をされておって、この法案を審議する立法府の委員のほとんどがこれに懸念を持っていることは、もうよくおわかりでしょう。みんな、これは困ったものだなと、三々五々の話では困った話だと、みんなこう言っているのです。それは各人によって多少の考え方は違うし、また、自分の所属しておる政党との関係で、声を大きく言えるか言えないかの別はあると思いますよ。だから、私は、限られたほんのわずかな時間ですから、もうえらい申しわけなくて、単刀直入にお尋ねをするのですが、法務大臣、これは荷づくりを変える気持ちはありませんか。そうすれば、我々も和気あいあいにいけるのですけれどもね。もし荷づくりを変えないということになれば、また我々は寄って相談しなければいかなくなる。ひとつ、単刀直入にお答えいただきたいと思います。
  233. 長尾立子

    ○長尾国務大臣 私どもといたしましては、この形で法案の御審議をいただきたいということでお願いを申し上げているわけでございまして、先ほど来申し上げておりますように、今後、行政情報の公開の原則について法制度が固まりました上で検討させていただきたい、このように申し上げているわけでございます。
  234. 小森龍邦

    小森委員 このままいくというようなお話ですけれども憲法上の原則からいって、例えば薬害エイズの問題を一つとってみても、情報公開がはっきりできておればあんなことになっていないのです。これは、人間一人の命というのは地球より重いのです。それは、量的に言うと二千人にも及んだのです。もう既に何百人も死んでおるのです。そういうことを考えたら、法務当局、こういう法律を出されるときには、やはり心の痛みというものを感じていただかなければならぬと私は思うのですね。  そして、ここで権力の恣意が働けば、すべて国民は裁判を受ける権利を持っている、裁判を受ける権利を妨げられない、こうなっておるけれども、本当の意味の裁判を受けられないじゃないか。もし、権力を相手とする、行政を相手とする訴訟の場合には、本当の意味の裁判にならぬじゃないか。だから、先ほどの答弁は、きょういきなりで、長尾法務大臣はそう言わざるを得なかったのでしょうが、まだこれ、本当の審議の結論を出すまでには時間がかかりますから、どうぞひとつ十分に再考をお願いしておきたいと思います。  終わります。
  235. 加藤卓二

    加藤委員長 次回は、来る十七日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十五分散会