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太田(誠)
委員 そこで、犯罪があると思料される場合という、犯罪があるというのは大変狭い定義であって、せめてこれを違法行為があると思料される場合というふうに改めてはいかがかというふうに私は思っているわけでございます。違法ということと犯罪があるというのは違うのですね。犯罪というのは刑事罰の
対象になるような世界のことで、違法というのは普通
法律に違反しているという
意味だろうと思うのですが、広い話になると思います。
犯罪があるとかあるいは違法行為があるということが現実にはっきりわかっておって、そして告発をしなかったという
公務員は、実は我々が知っているだけでも大勢いるわけであります。例えば住専のときに我々、私もきょうは本当は歴代大蔵大臣に来ていただいて一人一人からお聞きをしようと思っていたけれ
ども、余りそういうことばかりしていると何かパフォーマンスとか言われるからやらなかったのですけれ
ども、例えば住専問題で言えば、実際に露見したというか、はっきり住専があのような状態であったということがわかったのは、はっきりしたのは具体的に言えば去年でありますけれ
ども、それにさかのぼること三年前に銀行局の検査部はあのようなことが生じているということを知っていたわけですね。それは新聞にも大きく出ていたから皆さんもよく御承知のことでありますけれ
ども。検査部の職員は、それが犯罪のおそれがある、あるいは事実上犯罪に近い、あるいは違法行為であるということが多分そのときにはわかったというふうに思います。
それからもう
一つは、大和銀行事件のときに、あの例の、武村大蔵大臣だったけれ
ども、西村銀行局長が大和銀行のあの事件を知って、そしてそれを隠した、そして三十五日ぐらいたってやっと武村大蔵大臣に
報告をしておるということがあるわけであります。これも現に、大和銀行は犯罪を犯したということで
司法取引もして、みずから認めているわけでありますが、現に犯罪があったのだけれ
ども、そしてそのことを結局は大蔵省も知っておった。大蔵省はこの間も、前回ここで質問したときに大蔵省に聞いたらば、信託業法違反か何かになっておる、それで処分しましたと言っておるから、犯罪になるということはだれだってわかるはずなのに、それを黙っていた、三十五日間にわたって大臣にすら黙っていたということでありますから、これは、犯罪があると思われる場合の告発の
義務を果たさなかったということははっきりしておるわけでございます。
HIVの訴訟、エイズの問題については私は余り詳しくないからなにでございますけれ
ども、これもまた、あるいは厚生省の薬務局のだれかは、明らかに犯罪に近いことが行われているとわかっていてもそれを告発しなかったということがあるわけでございます。枚挙にいとまがないほどそういうことがある。
そして、
刑事訴訟法における犯罪が伴う場合の告発
義務には何の罰則もないというふうにお聞きをいたしております。ですから、全体の
公務員の
守秘義務に関する
法律の、ほかにもたくさん
法律があるのかもしれない、私は今たまたま目についたものを言っているだけですけれ
ども、その
法律の体系の中で大変偏った
法律の体系になっておる。
守秘義務を守らせることについてはいろいろ手が打たれているけれ
ども、犯罪を告発するということについては手がない。ただ単なる訓示
規定のようなものである。それは今後の
法律の
考え方として、むしろ逆に、違法行為であるという、違法行為のおそれがある場合ということも含めて告発
義務を課し、そして告発
義務を果たさなかった場合には厳重な罰を加えるというのが当然だろうと私は思っております。
今ちょうど当
委員会にも、メンバーではないかもしれませんが、保岡議員が一生懸命監査役や監事の
権限の強化とか一連の、大蔵省の金融三法もそうでございますけれ
ども、さまざまな
報告義務とかそういうことについての罰則を強化する準備をいたしております。住専問題に絡んでしておりますが、実はその中で私は抜けておると思うのは、例えば官庁に対する、それこそ
監督官庁に対する、はっきり言えば大蔵省に対する
報告というものが、おびただしい数の
報告を金融機関は出させられておるわけでございますけれ
ども、そのおびただしい量の金融機関に関する
報告の中に虚偽の事実があってはならない、虚偽の事実があったらば刑事罰を受けるという
規定が盛り込まれておるわけでございます。これは大変難しい問題のある箇所でありますけれ
ども、これは議員
立法の話でありますから、どうぞお気になさらないでいただきたいのですけれ
ども、そういう問題提起がなされておる。
ところが、もしそれをやるのならば、要するに金融機関の職員が大蔵省に
報告するものについて虚偽があったらばこれを罰するというのならば、その大蔵省の、監督をしておる機関の職員がそのような不正とかあるいは違法行為がある場合を看過しておった、あるいは上司に
報告しなかった、あるいは
法律上の
権限のある大蔵大臣に
報告していなかったということになれば、それは刑事罰を科されるべきであるというふうに思うのでございます。そういうふうにして初めて、つまり
守秘義務ということと犯罪があると思料される場合ということは同じウエートを持って、同じ法体系で臨まなければいけないというふうに私は思うのでございます。
我々もうっかりしておって、十五年も
国会議員をやっておってついつい気がつかなかったことでありますけれ
ども、本来ならばすべての
法律には、
法律でもって各省庁に
権限をゆだねるのならば、そのゆだねたと同時にその
権限をどう行使しておるかということを組織的、体系的に、定期的に
報告をする
義務を
法律の中に書くべきであったなというふうに思うわけでございます。
権限を委任したものは渡しつ放してはない、委任したものは渡しつ放しということはないわけでありまして、委任したものは、必ずその委任したものをどう
執行しておるのか、どう使っておるのかということを
報告をしなければいけないというのが私は当然の世の中の道理であろうかと思うのでございます。
時々間違える人がいて、委任されたものは全部自分のものというふうに思う人が多いわけでございます。
法務省には決してそんな悪い人はいない、きょうここにいるほかの省にも悪い人はいないけれ
ども、しばしば各省庁の中には委任されたものをすべて自分のものと思って
所管の大臣に
報告もしない人が大勢いるわけでございます。大臣はえてして専門家ではないわけでございますから、みんなでつるんで蚊帳の外に置こうと思えばいつでもできるわけでございます。そして、しばしば我々の同僚議員もそういう目に遭っておったわけでございます。私もよくそういう
場面に遭遇するわけでございますけれ
ども、そのことは決してよい結果にはならないわけであります。この人が素人でよくわからないとしても、つまり素人にさえわかるように
報告をするということがひいては組織の自己規律というものに結びついていくわけでありまして、ゆめゆめそこは、
法務省においては今のようなきちんとした姿勢でまたお仕事をお続けいただきたいと思うのでございます。
そこで、今だんだんと
国会の話ばかりになってまいりましたけれ
ども、
国会と
行政の間には、先ほど申しましたように
議院証言法というのがございます。
議院証言法の場合にはどういうことかというと、これは衆議院全体でもってこれを、資料を出せあるいは
証言をしろということを言えば、これは相当の威力を持って、
行政は対応をするわけでございます。そして、衆議院全体あるいは参議院全体ということで言うならば、恐らくこれは決議が必要なんだと思います。そういう
議院証言法というものに訴えるためには決議が必要なんだと思う。
委員会もそれはできる。
委員会もできるけれ
ども、
委員会は多分、
委員会の決議をしなければ、それは
議院証言法を活用することはできないということになっていようかと思うのでございます。これは当たり前のことのように思われるかもしれませんけれ
ども、これは非常にきつい話であります。
国会議員一人一人は、衆議院であれば五百十二人、それぞれ十万前後の有権者の信任を得てここに当選してきているのに、一人ずつではいかんともしがたい。ほかの人にも同調してもらわないと
国政調査権すら行使できない。一人の
国会議員では発動できない。あんな大変な運動をして、あんなにたくさんの人から名前を書いてもらっているのに、それでもまだ個人としては発動できない、
権限を持っていないということであります。大変これは屈辱的な状態だということをぜひ皆様方にも申し上げておきたいわけでございます。
それで、それに対して、
情報公開法がもし
中間報告のとおりできれば、実は
国民一人一人が、一億二千万の
国民一人一人は直接
行政府に対して
議院証言法と似たような
権限を持つことになる、
情報開示を求めたりすることになるわけでございます。一億二千万人全部が、五百人の我々よりも、我々一人一人じゃだめなんです、
国民は
情報公開法では一人一人が
情報開示を
要求できる。我々は、
国会議員として一人ではいかんともしがたいわけでございます。
権限なしに等しいわけでございます。まとまらなくちゃだめです。一山幾らの状態にならないと私は発言しちゃいけないというのが今の
議院証言法でございます。
そうすると、それでこれは、
国会議員はそれぞれ
国民から委任されておるのに、
国政調査権があるじゃないか、二言目には
国政調査権があるじゃないか、マスコミなんか特に申しますけれ
ども、そんなものはないわけです。何もない。それはあなた方がないものをあるというふうに言いくるめておるだけであって、我々には
国政調査権、実際には活用できるものはないということでございます。
そこで、では今度の
民事訴訟法の
関係でまいりますと、これは
裁判官の数というのをこの間聞いてみたらば二千人ぐらいだそうですね、簡裁の判事まで入れて。そういうお答えでありましたけれ
ども、まあ遠くない数字だと思いますが、二千人いらっしゃる。違っていたらばいいですけれ
ども、余り正確なことはいいです。大体二千人ぐらいです。
裁判官二千人。二千人の
裁判官は、この民訴法によれば、今度の新しい
改正で、単独で、たった一人で、
裁判官一人で、
文書提出の申し立てを受けたことを、理由があるかどうかを
判断する、理由があるかどうかはその人が
判断する。
判断して、そしてそれを、
行政に対して出せということを言うことができる。その中身は別ですよ。
権限の強さは別だけれ
ども、要するに手続としては、五百十二人の
国会議員は一人ではいかんともしがたいことを、
裁判官の場合は、二千人の
裁判官の一人一人が自分の
判断でもって、原告か被告か知らないけれ
ども、言われたものを
要求できるということでありますから一これは実は相当恵まれた話でございます。我々よりもよっぽど恵まれた話でございます。
だから、私もジェラシーに狂って、こういうものはもういい、原案どおりでもいいというふうに言いたいぐらいであります。しかし、そういうふうに言うのは後ろ向きの態度であって、もう少し前向きにこれは、この問題もやはり考えていくことがよいのではないかということも思わないではないわけでございます。
先ほどからいろいろな、特にプロフェッショナルな局長さんとかあるいは審
議官とか参事官の話をお聞きしたり、あるいは特に弁護士の
先生方、この問題についてプロフェッショナルな方々と
お話をしていると、時々この方々は、実は、原告と被告、原告か被告か知らないけれ
ども、
文書提出を求めた、申し立てた人が申し立てたから、自動的に何か
行政に対して
文書提出を求めるように取り計らっているだけというふうな、そういう受け取り方をしておられる方も時々おられるわけです。いや、同じ人があるときはそういうことを言うんです。
そこはやはり違うのであって、これは明らかに、間にいる
裁判官は、単に原告、被告がそれを
要求したというだけじゃなしに、自分もそれに理由があるということでもってそこで判こをついて出すわけですから、それは明らかに原告、被告の
権限ではなくて、まさにその
裁判官の
権限になっておるというふうに思うのでございます。そこははっきりしておかなければいけない。ゼロと半分関与しているということは全く大違いでございますから、半分は関与しておる、
裁判官は
文書提出に関しては内容についても半分は関与しておるというふうにみなすべきであって、半分関与しているのであれば、これは
裁判官の責任でやっておること、
裁判官の
権限でやっておることだというふうに
理解しなければなりません。そういう
裁判官の大きな
権限に関することであります。
先はどのように、私も
情報公開法の悪口をさっきから言っておりますけれ
ども、悪口を言っておるというのは、私たちに何もないというのに
国民全部は持てるということに対する憤りもあるし、
裁判官二千人はなぜか一人一人がそういう
権限があるということも非常に憤りがあるわけであります。しかし、それはそのことに憤るよりも、我々自身が自分で
立法をして
自分たちの
権限をもっと高めて、
国民一般よりもあるいは
裁判官よりもよっぽど
情報開示についてあるいは
情報の
報告を受けるについて、
自分たちで工夫して立派な
法律をつくればいいんだということでございますから、それは前向きに考えるべきだと思うのでございます。
そこで、だんだん時間もなくなってまいりました。
司法と
行政の
関係について戻るわけでありますけれ
ども、
文書提出命令について、各省の意見は各省から意見聴取をされたと思うのでございますが、各省は一体どんなことを言っておったんですか、今度の法
改正について。各省の意見。