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1996-04-17 第136回国会 衆議院 法務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年四月十七日(水曜日)     午前十時開議  出席委員   委員長 加藤 卓二君    理事 太田 誠一君 理事 佐田玄一郎君    理事 志賀  節君 理事 山田 英介君    理事 山田 正彦君 理事 山本  拓君    理事 細川 律夫君 理事 枝野 幸男君       奥野 誠亮君    塩川正十郎君       白川 勝彦君    橘 康太郎君       萩山 教嚴君    古屋 圭司君       横内 正明君    阿部 昭吾君       貝沼 次郎君    熊谷  弘君       左藤  恵君    富田 茂之君       佐々木秀典君    坂上 富男君       正森 成二君    小森 龍邦君  出席国務大臣         法 務 大 臣 長尾 立子君  出席政府委員         法務政務次官  河村 建夫君         法務大臣官房長 頃安 健司君         法務省民事局長 濱崎 恭生君         法務省刑事局長 原田 明夫君         法務省矯正局長 東條伸一郎君         法務省保護局長 木藤 繁夫君         法務省訟務局長 増井 和男君         法務省人権擁護         局長      大藤  敏君         法務省入国管理         局長      伊集院明夫君         公安調査庁長官 杉原 弘泰君  委員外出席者         内閣官房内閣内         政審議室内閣審         議官      渡辺 芳樹君         警察庁生活安全         局生活環境課長 吉川 幸夫君         警察庁生活安全         局生活環境課生         活経済対策室長 園田 一裕君         警察庁刑事局捜         査第二課長   栗本 英雄君         警察庁刑事局暴         力団対策部暴力         団対策第二課長 宮本 和夫君         警察庁警備局外         事課長     米村 敏朗君         総務庁長官官房         地域改善対策室         長       川邊  新君         科学技術庁原子         力安全局原子炉         規制課長    武山 謙一君         公安調査庁次長 河内 悠紀君         大蔵省関税局業         務課長     塚原  治君         厚生省生活衛生         局乳肉衛生課長 森田 邦雄君         厚生省薬務局企         画課長     吉武 民樹君         厚生省薬務局監         視指導課長   松原  了君         農林水産省畜産         局牛乳乳製品課         長       井出 道雄君         食糧庁計画流通         部貿易業務課長 山岸 晴二君         海上保安庁警備         救難部管理課長 後藤 光征君         郵政省放送行政         局地上放送課長 伊東 敏朗君         労働大臣官房参         事官      長江 盛啓君         労務省労働基準         局監督課長   長谷川真一君         最高裁判所事務         総局民事局長  石垣 君雄君         参  考  人         (弁 護 士) 樋渡 俊一君         参  考  人         (弁 護 士) 清水  勉君         参  考  人         (弁 護 士) 秋田 仁志君         参  考  人         (海外貨物検査         株式会社常務取         締役)     大熊 貞行君         参  考  人         (弁 護 士) 鈴木 利廣君         参  考  人         (弁 護 士) 小島 周一君         法務委員会調査         室長      河田 勝夫君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十七日  辞任         補欠選任   愛知 和男君     富田 茂之君 同日  辞任         補欠選任   富田 茂之君     愛知 和男君     ――――――――――――― 四月十二日  民事訴訟法案内閣提出第八四号)  民事訴訟法施行に伴う関係法律整備等に関  する法律案内閣提出第九三号) 三月二十九日  婚外子差別を撤廃する民法等改正に関する請願  (細川律夫紹介)(第一一七三号)  同(鳥居一雄紹介)(第一二三五号)  夫婦別姓民法改正案反対に関する請願加藤  六月君紹介)(第一一七四号) 四月五日  婚外子差別を撤廃する民法等改正に関する請願   (秋葉忠利紹介)(第一二九一号)  夫婦別姓選択制法制化に関する請願江田五月  君紹介)(第一四三二号)  同(遠藤登紹介)(第一四三三号)  同(金田誠一紹介)(第一四三四号)  同(三野優美紹介)(第一四三五号) 同月九日  婚外子差別を撤廃する民法等改正に関する請願  (岡崎トミ子紹介)(第一四七九号)  同(海江田万里紹介)(第一四八〇号)  同(五島正規紹介)(第一四八一号)  同(輿石東紹介)(第一四八二号)  同(野坂浩賢紹介)(第一四八三号)  同(五十嵐広三紹介)(第一五八一号)  夫婦別姓選択制法制化に関する請願江田五月  君紹介)(第一四八四号)  同(左近正男紹介)(第一四八五号)  同(坂上冨男紹介)(第一四八六号)  同(山崎泉紹介)(第一四八七号)  同(松本龍紹介)(第一五三一号)  同(大野由利子紹介)(第一五八二号)  同(錦織淳紹介)(第一五八三号)  同(細川律夫紹介)(第一五八四号)  夫婦別姓民法改正案反対に関する請願山本  幸一二紹介)(第一五三〇号) 同月十二日  婚外子差別を撤廃する民法等改正に関する請願  (森井忠良紹介)(第一六四九号)  同(森井忠良紹介)(第一七七五号)  夫婦別姓選択制法制化に関する請願(松前仰君  紹介)(第一六五〇号)  同(鳩山由紀夫紹介)(第一七七七号)  選択的夫婦別姓制度法制化に関する請願(金  田誠一紹介)(第一七七四号)  夫婦別姓民法改正案反対に関する請願(伊藤  達也君紹介)(第一七七六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月十二日  治安維持法犠牲者国家賠償法制定に関する陳情  書  (第一七五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  民事訴訟法案内閣提出第八四号)  民事訴訟法施行に伴う関係法律整備等に関  する法律案内閣提出第九三号)  裁判所司法行政法務行政及び検察行政、国  内治安人権擁護に関する件      ――――◇―――――
  2. 加藤卓二

    加藤委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所石垣民事局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 加藤卓二

    加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ————◇—————
  4. 加藤卓二

    加藤委員長 内閣提出民事訴訟法案及び民事訴訟法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案を一括して議題といたします。  まず、両案について趣旨説明を聴取いたします。長尾法務大臣。     ————————————— 民事訴訟法案民事訴訟法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  5. 長尾立子

    長尾国務大臣 民事訴訟法案及び民事訴訟法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  現行民事訴訟法におきましては、その第一編から第六編までにおいて、民事訴訟手続に関する規定が設けられております。現行民事訴訟法は明治二十三年に制定されたものであり、民事訴訟手続に関する部分については大正十五年に全面的に改正されましたが、その後はその全般にわたる見直しがされたことはなく、今日に至るまで、基本的には、大正十五年改正当時の民事訴訟手続の構造が維持されております。しかし、この間の社会変化経済発展等には著しいものがあり、これに伴って民事紛争も複雑、多様化しており、民事訴訟手続に関する現行法の規律については、現在の社会状況に適合していない部分が生じております。また、裁判に時間と費用がかかる、訴訟手続当事者にとってわかりにくいものとなっている等の民事訴訟の現状に対するさまざまな問題点が指摘されている状況にあります。  そこで、民事訴訟法案は、これらの問題点に対処する見地から、民事訴訟を国民に利用しやすく、わかりやすいものとし、訴訟手続を現在の社会要請にかなった適切なものとするために、新たな民事訴訟法制定し、民事訴訟手続改善を図ろうとするものであります。  以下、この法律案の要点を申し上げますと、第一は、争点及び証拠整理手続整備することであります。  適正かつ迅速な裁判を実現するためには、事件争点が何であるかを早期に明確にし、これに焦点を当てた集中的な証拠調べを行う必要がありますが、現行法においては、争点及び証拠整理手続についての規定が不十分であり、利用しにくいものとなっております。そこで、これを改め、争点及び証拠整理のための手続として、準備的口頭弁論弁論準備手続、書面による準備手続の各手続を設け、手続の種類を多様化するとともに、その内容を充実する等の整備を図り、もって争点早期明確化に資することとしております。  第二は、証拠収集手続を拡充することであります。早期争点を明確にして、充実した審理ができるようにするためには、当事者が十分な準備を尽くすことができるようにする必要がありますが、現行法においては、証拠収集の手段として、文書提出命令等制度が設けられているものの、これらは当事者が充実した審理に向けて準備をするために証拠を収集する手続としては十分なものとはいえない状況にあります。そこで、文書提出命令対象となる文書を拡張するとともに、その手続整備するほか、当事者が主張または立証を準備するために必要な情報を直接相手方から取得することができるようにする制度を設けるなど、弊害が生じないように配慮しながら、証拠収集手続を充実することとしております。  第三は、少額訴訟手続を創設することであります。現行法は、訴額が比較的少額である民事事件については簡易裁判所訴訟手続特則を設けておりますが、この特則は、少額事件訴額に見合った経済的負担で迅速に解決するための手続としては十分なものとはいえない状況にあります。そこで、請求額が三十万円以下の金銭の支払い請求事件について、原則として一回の期日審理を遂げ、即日判決の言い渡しをするほか、被告による任意の履行がされるよう、被告資力等を考慮して分割払い等判決をすることができるようにするなど、一般市民がより利用しやすい特別の訴訟手続を創設することとしております。  第四は、最高裁判所に対する上訴制度整備することであります。最高裁判所は、憲法判断及び法令解釈統一という重大な責務を担っておりますが、現在は、実質的に上告理由がない上告事件が極めて多数に及んでいるため、最高裁判所がその処理に追われており、また、決定手続処理される事件については、憲法違反理由とする場合のほかは最高裁判所抗告をすることができないものとされているため、最高裁判所がその本来の責務を十分に果たすことが困難な状況にあります。そこで、最高裁判所に対する上告については上告受理制度を導入し、最高裁判所は、法令解釈に関する重要な事項を含まない事件は、決定で、上告を受理しないことができるようにするとともに、決定手続処理される事件のうち、法令解釈に関する重要な事項を含むものについては、法令解釈統一を図る見地から、高等裁判所の許可により、最高裁判所抗告をすることができるようにするなど、最高裁判所がその機能を十分に果たすことができるように最高裁判所に対する上訴制度整備することとしております。  なお、この法律制定に伴い、最高裁判所規則制定等所要手続を必要といたしますので、その期間を考慮いたしまして、この法律は、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとし、また、現行民事訴訟法につき所要整理をし、必要な経過措置を定めております。  次に、民事訴訟法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案について申し上げます。  この法律案は、ただいま申し上げました民事訴訟法案が可決されました場合、その施行に当たり、民法ほか四十三の関係法律について規定整備等を行うとともに、所要経過措置を定める必要がありますので、これらの改正を一括して行おうとするものであります。  以上が、民事訴訟法案及び民事訴訟法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案趣旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いをいたします。
  6. 加藤卓二

    加藤委員長 これにて両案に対する趣旨説明は終わりました。      ————◇—————
  7. 加藤卓二

    加藤委員長 次に、裁判所司法行政法務行政及び検察行政国内治安人権擁護に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  各件調査のため、本日、参考人として弁護士樋渡俊一君、弁護士清水勉君、弁護士秋田仁志君、海外貨物検査株式会社常務取締役大熊貞行君、弁護士鈴木利廣君、弁護士小島周一君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 加藤卓二

    加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  9. 加藤卓二

    加藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横内正明君。
  10. 横内正明

    横内委員 自由民主党の横内正明であります。  私は、前回二月二十三日の法務委員会で、オウム真理教事件をめぐる幾つかの問題について御質問をしたわけでございますが、その後、事情変化、事態の進展がありますので、きょうも引き続き、この問題につきまして幾つかの点を御質問をさせていただきたいというふうに思います。  第一点は、オウム真理教教団に対する破産宣告が行われたわけでございます。去る三月二十八日、東京地方裁判所オウム真理教教団に対して破産宣告をいたしました。それまでは、昨年の末に宗教法人法の解散が行われましたので、その宗教法人法に基づく清算の手続を進めてきたわけでございますけれども、今後はより強い権限である破産手続が進んでいくことになるわけでございます。  そこでまず、この破産宣告に至った経緯と、そして破産宣告を適当と裁判所判断したその根拠、その二点について裁判所にお伺いをしたいというふうに思います。
  11. 石垣君雄

    石垣最高裁判所長官代理者 宗教法人オウム真理教に対しましては、平成七年の十二月十一日に地下鉄サリン事件等被害者から、翌日十二日に国から、それぞれ破産申し立てがされたところであります。破産裁判所東京地方裁判所でございますが、破産裁判所におきましては、平成八年一月三十日、審問期日を開きまして、債権者、つまり申立人らでございますが、及び債務者、つまりオウム真理教ですが、双方から事情を聞くなどして、破産原因があるか否かについて審理を進めた結果、このオウム真理教につきましては、総負債額が総資産額を上回る債務超過の状態にあるとの結論に達し、先ほど御指摘ありましたように、三月二十八日に破産宣告がされた、こういう経過でございます。
  12. 横内正明

    横内委員 そこで、破産管財人として前日弁連会長阿部三郎氏が選任をされました。阿部管財人は、選任されて早速、山梨県の上九一色村のサティアンを初めとして、全国のオウム真理教施設所在地を訪問いたしまして、調査をされる。それから、管財人権限として、そういった財産を、これは破産財産になるわけでございますので、封印をする。それから、信者が居住をしている施設がありますから、そういうものについては、その信者に退去の勧告をする。同時に地元の自治体とも協議をいたしまして、地元の要望も聞くというようなことをされました。これは非常に大きい破産事件でありますけれども、非常に精力的に活動を開始しておられるわけでございます。私も破産管財人にお目にかかりましたけれども、大変に懸命な努力をして、早期破産手続を進めたいという意欲がうかがえまして、敬意を表している次第でございます。  そこで、この破産手続は、オウム真理教事件という前代未聞の事件事後処理といいますか後処理といいますか、後に残された問題をきれいに処理していくという意味で、極めて重要な手続でございます。  一つは、言うまでもなく被害者救済ということでありまして、二つのサリン事件、その他真理教事件によって被害を受けた皆さんや遺族の皆さんに対して、当然損害賠償請求権を持っているわけでございますが、オウム真理教資産換価処分をして、現金化をして、そういった被害者に対して賠償をしていくという意味で、被害者救済がこの破産手続を通じて行われるわけでございます。  それからもう一つは、地元地域住民の不安を解消していくという意味でも、この破産手続というのは大変大事でございます。御案内のように、地域住民は、依然としてオウム施設が所在している、それに対してこれを早期に撤去してもらいたいということ、それから、現在なお信者が残留している施設幾つもあるわけでございますが、そういった残った信者早期に退去してもらいたい、そして自分らの生活の平穏を取り戻してもらいたいという強い希望を持っているわけでございます。  この破産手続が進んでいくにつれまして、そういった信者が居留している施設については、信者を退去させて、最終的には強制執行をして信者を全部出させるということが行われるわけでありますし、そして、そういった施設については全部処分をしていくということでございますから、結果的に地元要請が満たされ、そういった地元の不安が解消されるということになるわけでありまして、この破産手続はぜひとも円滑に、迅速に進行させていく必要があるというふうに思います。そういう意味で、国、とりわけ法務省はこの破産手続にぜひ最大限の支援をしていただきたいというふうにお願いをしたいと思います。  なお、破産申立人に、国、法務省が入っているわけでございますけれども、これは表向きは犯罪被害者救済給付金求償権ということですね。国の債権があるということで入っておりますが、いろいろ関係者事情を聞きますと、やはりこの破産手続を国としてもしっかりバックアップをして円滑に進めたい、そういう法務省の意図があって国もこの申し立てに入ったというふうに聞いているわけでございます。そういうことで、ぜひこの破産手続の円滑な推進について国の支援お願いしたいと思いますが、法務大臣、お考えをお伺いいたします。
  13. 長尾立子

    長尾国務大臣 お答えを申し上げます。  ただいまお話がございましたように、三月二十八日に東京地方裁判所において破産宣告決定がなされまして、破産管財人によります資産調査等が行われているということと承知をいたしております。  今委員からも御指摘がありましたように、破産管財人の大変な御努力に感謝を申し上げるところでございますが、破産手続が円滑に進行していくということは大変重要なことであると思います。この問題は、法務省にとどまらず、政府のさまざまな分野の行政にかかわっていく問題であると思っておりますが、政府全体といたしまして、今お話がございました信者の方々の社会復帰、こういったこと等のために適切な対策を講じていくことが必要であると思っております。  破産管財人の方からの御要請がありましたならば、法務省といたしましても、関係諸機関と十分に連絡をとりまして、破産管財人の方に対しまして、法令の許す範囲内で、必要な情報、資料の提供、できる限りの協力をいたしたいと考えております。
  14. 横内正明

    横内委員 そこで、裁判所に伺いたいのですけれども、これからの破産手続スケジュールについて説明をしていただきたいというふうに思います。  言うまでもなく、破産手続ですから、債権者債権を届けさせて、債権確定するということと、それから他方で、財産を管理して、これを換価処分現金化をするということですが、そしてそれを配当していくということになるわけでございますが、そういうことをどういう手順で、いつごろまでにやっていくのかということであります。  形式的な答弁としては、それはもう破産管財人がやることだから破産管財人判断いかんです、こういう答弁になるわけですけれども、しかし、いろいろ聞いてみますと、東京地裁破産部というところは、言ってみれば、裁判ではなくて司法行政なわけですね。それで、いろいろと管財人に対する指導監督というようなことも行っているようでございます。管財人お話ですと、これから十カ月くらいをめどに方向づけをしてもらいたい、具体的には、十カ月ということですから、ことしじゅうか来年早々くらいに換価をする、現金にかえるとして、大体幾らくらいの資産になりそうだ、あるいはどういうところに処分をするとか、そういうためどをつけてもらいたいというようなことを、管財人にも地裁として言っているようでございますし、過去のこういった破産についてのいろいろな経験則から、地裁として、裁判所として、こういうスケジュールでいくのが望ましい、そういう方向で管財人を指導したいという考え方があると思いますので、そういうことについて説明をしていただきたいと思います。
  15. 石垣君雄

    石垣最高裁判所長官代理者 事件が現在進行中でございますし、裁判体のとられる措置のことでございますので、なかなか触れにくいところがあるということは御了承いただきたいと思いますが、私どもが承知をしている範囲で申し上げさせていただこうかと存じます。  本件の破産事件につきましては、既に御承知と思いますが、債権の届け出の期間が七月六日まで、それから、第一回の債権者集会期日及び債権調査期日が九月二十五日ということで指定されているということを承知しております。その他の具体的なスケジュールにつきましては、事件を担当します破産裁判所及び管財人が、事件難易度財産換価、配当の対象となる債権調査確定等の種々の作業の進行状況に応じて判断をしていくということになるわけでございますが、破産手続は、今御指摘ありましたように、破産者の全財産債権者に公平に分配し、その債権の満足に充てる手続でございますので、財産換価債権調査確定を迅速に進める必要があるというふうに存じます。事件を担当する裁判所におきましては、具体的状況を踏まえて、適切な、かつ迅速な事件処理に当たられるものというふうに考えております。
  16. 横内正明

    横内委員 もう一つ伺いたいのですけれども、破産宣告宣告文によりますと、このオウム真理教教団資産というものを二十三億六千六百万円というふうに見積もっております。これは新聞報道ですと、安全を見て比較的高目に見積もったのだということのようでございます。  その二十三億六千六百万で負債を支払い切れないから、したがって破産ということにしたのだろうと思いますが、当初、昨年の夏ぐらいは、オウム真理教団というのは一千億円ぐらいの資産があるというようなことも言われておりましたけれども、とてもとてもそんな資産はない。現在時点で二十三億六千六百万円というふうに見積もったわけでございます。そこで、この見積もりをした評価の方法とか根拠というものを少し詳しく伺いたいと思います。  例えば土地については幾らと見積もって、それは多分固定資産税評価額ですか、それから建物は幾らある、それは例えば再建築費を計算したとか、それから動産だとか、あるいは現金とかあると思いますが、評価の方法、額、それをちょっと説明してください。
  17. 石垣君雄

    石垣最高裁判所長官代理者 資産の評価は、申し上げるまでもなく破産裁判所が行うわけでございますが、今御指摘のありました破産宣告決定によりますと、土地及び建物につきましては、固定資産評価証明があるものについてはこれを基準とし、これがない場合には、適宜路線価や近隣の取引事例を基準として評価をしたということでございます。  なお、山梨県西八代郡上九一色村所在の通称第三サティアン、第五サティアン、第六サティアン及び第七サティアンと呼ばれる建物につきましては固定資産税が非課税のようでございまして、固定資産評価証明がないために家屋名寄せ帳を基準にしたというふうに承知をしております。  金額の点でございますが、ちょっと今手元に詳細を持ち合わせておりませんが、資産につきましては高目に評価をしたというような記載もございますので、そのとおりだろうと思います。
  18. 横内正明

    横内委員 土地家屋、動産、種類別の資産の額、これは後で教えていただきたいと思うのですけれども、高目に評価をしているということを今おっしゃいました。これは破産をする上で、安全を見てそういう評価をするのは当然だろうというふうに思いますけれども、果たしてオウム真理教団資産が、評価をしたその二十三億六千六百万円で売れるのか、処分できるのかということになると、これは極めて疑問だということになるのだろうと思います。  といいますのは、土地ですと、更地にすれば固定資産税評価額程度のもので売れるのだろうと思いますけれども、建物については、上九一色村のサティアンがそうですし、それ以外の亀戸の施設にしても富士宮の富士山総本部の施設についても、極めて特異な構造の建築物、しかもそれは教団手づくりの粗っぽい、頑丈ではあるけれども粗っぽい手づくりの建築物ということでありまして、汎用性がないわけですね。第三者がそれを買って利用するというようなことは、ちょっと常識的には考えられないような、そういう施設であるわけでございます。しかも、極めて忌まわしい事件の現場の建物だったわけでありますから、仮に競売をしても、とてもとてもその競売で物を買ってあのサティアンの建物を利用するなどという人は、通常の常識的な企業なり個人ならばそういうことは考えられない、出てこないだろうというふうに思うわけでございます。  地元が心配しておりますのは、仮にそうやって競売をしたときに、とんでもない者が買うのではないか。例えば、いわゆる暴力団対策法の対象団体のようなものがあれを買って、またそういうところへ入ってくる、そういうことを地元は心配しているわけでございますが、常識的な企業なり個人というものがあれを買って利用するというようなことは考えられないということだろうと思います。  そういたしますと、建物はやはり撤去する、きれいに更地にして、そしてその土地だけを売るという形になってくるだろうと思うわけでございます。そうしたときに、問題は、その撤去費用が非常に巨額に上るわけでございまして、例えばこれは山梨県からの情報でありますけれども、上九一色村にあるあの施設、これは十筆の土地に幾つかのサティアンがあって、建物の棟数では三十棟近い建物があるわけでございますけれども、これを評価をいたしますと、更地で評価した土地は、固定資産税の評価額の評価で四億六千万円という評価が出ています。それに対して、その建物を撤去するということになると、これは宗教法人法の清算をやった清算人の小野さんが専門家の業者に試算をさせたわけでございますが、五億円を超える撤去費用がかかる。結局、更地だけでは四億六千万で売れても、撤去費用を入れるとマイナスになってしまう、こういうことになるわけでございます。富士山総本部も、東京の亀戸の施設も、大体同じような状況だろうというふうに言われております。  結局、土地は売れても、更地では売れても、撤去費用を引くとマイナスになってしまう、したがって破産財団としてはお金が残らない、こういうことになる可能性が非常に高いというふうに言われておりまして、破産管財人はその点を一番心配もし、困っているという状況でございます。  そこで、資産がないということになりますと、これは破産をする意味がないわけですね。破産財団の資産換価をして、それを債権者に分配するわけですが、換価をしてお金が残らぬわけですから、破産をする意味がない、破産手続を続ける意味がない、こういうことになります。  そこで、こういう場合には、法律上は破産の廃止という手続がありまして、破産法の三百五十三 条に書いてございます。破産法の三百五十三条では「費用不足による廃止」とございまして、「破産宣告ノ後裁判所破産財団ヲ以テ破産手続ノ費用ヲ償フ二足ラスト認メタルトキハ破産管財人ノ申立二因リ又ハ職権ヲ以テ破産廃止ノ決定ヲ為スコトヲ要ス」、こういうふうに、財団に資産がないとわかったら破産を廃止するということになるわけでございます。  そこで、これをやはり裁判所に二点伺いたいのですが、一点として、そういうふうに土地を売り払った収入よりも撤去費用が上回ってしまって、結果的に資産がないという状態になる、そういう可能性があると思いますが、その点についてどうかということと、それからもう一点は、その場合には、法律上は破産の廃止という手続をとることになる。これは裁判所の職権で、あるいは申し立てによってとることになると思いますが、その二点についてちょっと伺いたいと思います。
  19. 石垣君雄

    石垣最高裁判所長官代理者 委員ただいま御指摘になりましたように、破産法三百五十三条によりますと、破産宣告決定後に破産財団が破産手続を進める費用をも賄うことができないと認められるに至った場合には、裁判所債権者集会の意見を聞いた上、破産廃止の決定をすることとされておりまして、財団不足の廃止と一般に言われているところでございます。  財団の換価に要する費用は破産手続の費用となると考えられますので、一般論としては、換価に要する費用が巨額になって、そのために財団が不足する場合には、財団不足による破産廃止の決定がされるということも考えられるわけでございますが、本件破産事件において建物がどのような方法で処分されるか、財団不足となる可能性があるかなど、具体的な点につきましては現在のところまだ承知をしておりません。  いずれにしましても、事件を担当する裁判所及び管財人において適切な判断をされるというふうに考えているところでございます。
  20. 横内正明

    横内委員 最高裁あるいは破産裁判所としては、そういう事態になるかどうか、まだ把握をしてないというお話ですからこれは仕方がないのですけれども、そういう可能性が非常に高いわけですよね。そうすると法律上は破産の廃止ということになってしまうわけですけれども、破産の廃止ということになると、これは非常に困った事態になるわけでございます。  端的に言うと、一たんは破産をして破産財団ということになったのですけれども、管財人は、破産の廃止になると、もう一回資産オウム真理教に戻さなきゃいかぬことになりますね。そして、信者が居留している施設もありますが、そういうところに引き続き信者はそのままとどまるということができるわけでして、要するに、現在の状態と全く変わらぬ状態がこれからもずっと続いていくということになってしまうわけでございます。  当然のことながら、被害者の救済はできないわけですし、地域住民としても、あの施設早期に撤去をし、信者の退去を希望しているわけですけれども、そういった地域のニーズ、希望というものが全く満たせないという状況になってしまうわけでございまして、破産の廃止という事態に至ることは何としても避けなければいけないというふうに思うわけでございます。  そこで、これを打開する方法というのは、いろいろ私も考えてみたのですけれども、これはもう、一つしかないというふうに思います。これは、具体的には、やはり国がしっかりと乗り出して後整理を、これは被害者救済あるいは地元の平穏を維持する、そういう対策ですから、国が乗り出してしっかりとてこ入れをしていく、そして破産を完遂をしていくということしかないというふうに思っております。  具体的に言いますと、跡地についてしかるべき利用計画を立てまして、そして国または公共団体がその土地を適正な価格で買収をして破産財団に代金を納入をしてやる。建物については、国なり公共団体がこれを撤去して、その跡地はしかるべき、公園でも何でも利用をしていくという形で、国なり公共団体が乗り出して、この施設をしかるべき適正な価格で買収をしていくということしか破産の廃止という事態に至るのを防止をする方法はないというふうに思っているわけでございます。そうやって、国なり公共団体が乗り出していくことによって破産が円滑に進んでいくということになろうと思います。  そういう意味で、地元の地方公共団体は、ぜひ国が直接あの土地を買収をしてもらいたいということを言っているわけですけれども、なかなか国が直接というのは難しいということであれば、地方公共団体が買収をする。しかし、それに対しては、財政力のない自治体でありますから、国が財政措置をしっかりとってやる、そういう国の関与がぜひ必要だというふうに思うわけでございますが、この点について大臣のお考えを伺いたいと思います。
  21. 長尾立子

    長尾国務大臣 オウム真理教に対する破産手続につきましては、破産管財人によって円滑に進行していくことを私としては希望いたしております。  今お話しのいろいろな問題があるということは十分承知をしておりますが、その解決のためにいかなる方策があるかということでございますけれども、オウム真理教問題関連対策関係省庁連絡会議という各省との協議の機関がございますが、こういったところの議論を踏まえまして検討してまいりたいと思います。
  22. 横内正明

    横内委員 今大臣の御答弁があったのですが、要するに、破産の廃止というようなことになりますと、オウム真理教のいろいろな残された、被害者救済とか地元対策、そういった問題が何ら解決をしないで続いていくことになるわけでございますし、それは破産申し立てをした法務省としても極めて好ましからざる事態になるだろうと思うのですね。  確かに、おっしゃるように、そういう関係省庁連絡会議もありますからその場で検討するわけですけれども、これは後で申し上げるのですけれども、内閣内政審議室が一応中心になってやっているわけでございますが、内政審議室というところはなかなかみずから仕事をやるというところじゃないのですね、司会をし調整をする役所ですから。やはり何かどこかの役所が中心になってプッシュをしていくということでないと、内政審議室だけの力では各省が動いていくということにはなりません。したがって、この問題は法務省も、国として申し立てをして破産を行った、その破産を完遂をしていく責務、責任があるわけでございますから、ぜひ法務省は、内閣審議室と一緒にこの問題が解決するように前面に出て取り組んでいただきたいというふうに思います。  もう一点伺っておきたいと思うのですけれども、現在、オウム真理教関係施設はたくさんありますが、そのうちの十九の施設で八百人近い信者が依然として残っている、そこに居住をしているということでございます。こういった信者が残留している施設は、売却処分をするために信者を退去をさせなければならないわけでございます。破産管財人としては、再三にわたって退去勧告をこれからやっていくということだろうと思いますけれども、最終的に、どうしても出ていかないそういう信者がいれば仮処分申請をして、そして強制執行裁判所の執行官に強制執行をしてもらう、そして退去をさせるということしか手はないわけでございます。  ただ、非常にそういう残留信者が多数に上るということと、それから中には病人や高齢者も、そういう介護を必要とする人もいるわけですから、強制執行でただ外にほうり出すというだけではこれはなかなか済まない。世論の批判も受けるということがあろうと思います。その辺のところについて、強制執行裁判所としては最終的にはやらざるを得なくなるわけですけれども、執行裁判所の立場でどういうふうにお考えになるか。いや、信者が残っていたってそれは仕方がない、外にほうり出すしかないのだということになるのかどうか、その辺をちょっと伺いたいと思います。
  23. 石垣君雄

    石垣最高裁判所長官代理者 現在、施設にどの程度の信者が残留しているかということにつきましてはまだ掌握をしておりませんので、大変恐縮でございますが、一般論として申し上げさせていただきます。  法律に基づく強制的な手続を個々の占有者を相手に行うということになりますと大変煩瑣でもありますし、時間もかかるということから実際的ではないということも多いわけでございまして、実務上は管財人の説得によって解決することが多いようでございます。  一般的には、建物の明け渡し等の執行におきまして病人や高齢者等がいる場合には、執行官が親族あるいは自治体の福祉関係者その他の関係者の協力を求めて、受け入れ先を手当てするなどの取り扱いをされることが多いようでございます。破産事件の場合におきましても、強制的な排除を要することとなった場合には、具体的事案の状況に応じて判断されるべきことでありますが、同様の取り扱いがされることになるのではないかというふうに思われます。  いずれにしても、本件破産事件についても破産裁判所指導監督のもとに管財人において適切かつ円滑な処理が行われるものというふうに考えております。
  24. 横内正明

    横内委員 以上、幾つか伺ってきたわけでございますが、集約をいたしますと、この破産手続被害者の救済とか地元の不安を取り除くという意味でぜひとも円満かつ迅速に進めていく必要があるわけでございますけれども、ただ、この手続進行させていく上で二つのことが条件になるということでございます。  一つは、施設なり土地なり建物を、施設財産を公的な機関がこれを買い取っていくということをしないと円滑に進んでいかないということが第一点でございます。それから第二点として、サティアンとかああいう施設に残っている信者の退去と社会復帰ということをやっていかないと、なかなか強制執行で追い出せば済むというものではないということでございます。この二つのことが満たされないと、この破産手続というのは円滑に進んでいかないということでございます。  この問題は、先ほど大臣もおっしゃいましたように幾つかの省庁にまたがる問題でございまして、なかなか一つ所管省庁というのはないんですね。だから非常に難しいわけでございますけれども、お話がありましたように、政府の中にオウム真理教関係省庁連絡会議というものがございます。内閣の内政審議室が取りまとめをしているわけでございますけれども、取りまとめの内政審議室にお伺いをしますが、ぜひ今のような点をこの会議の場で議題として検討対象にしていただきたいというふうに思います。  そこで、現在の連絡会議の検討状況とか今後のスケジュール、とりわけ破産手続破産管財人としては、執行裁判所から十カ月ぐらいをめどめどをつけろと言われているから、ことしじゅうぐらいには何かめどをつけなきゃいかぬという気持ちを持っておるわけです。そうすると、今のようなことも早急に政府として対応策を考えていかなきゃいかぬわけでございますが、まずその辺のところを伺いたいというふうに思います。
  25. 渡辺芳樹

    ○渡辺説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘の関係省庁の連絡会議の事務局を務めている立場で申し上げますが、この連絡会議は、主として信者等の社会復帰対策をめぐり、関係省庁の取り組みに関し共通認識を得つつ適時適切に対処するために随時開催してまいりました。今後とも、破産手続進行などオウム真理教をめぐる事態の推移の中で、破産管財人地元の地方公共団体と十分連携を図りながら、適切に対応できるよう連絡会議を随時開催する必要があると考えておりますし、そうした中で関係省庁の取り組みを促してまいりたいというふうに考えております。  また、本日教団資産の問題についても御指摘ございましたが、こうした教団の土地、施設等の換価を含む破産手続の適切かつ円滑な進行につきましては連絡会議の立場でも強い関心を有しており、先ほど法務省から御答弁させていただきましたように、確かに具体的な展開はなお不明な点が多い状況だと思いますが、今後法務省とよく相談をいたしまして、また、破産管財人御自身のお考えなども十分承りながら、関係省庁において、いかなる取り組みが可能なのかを研究してまいりたい、こういうふうに考えております。
  26. 横内正明

    横内委員 どうも答弁が非常に抽象的でございまして、前回二月二十三日に質問をしたときも大体同じような答弁でして、ほとんど同じようなことを答弁しているわけでございます。その後ニカ月たっんですけれども、どういうふうに具体的にやっておられるのか。関係公共団体と十分連携をとりながら、随時会議を開いて関係省庁で情報交換をやって共通認識を持っているんだということを言うんですけれども、もうちょっと具体的に答弁ができないものかと思います。  今ちょっとおっしゃった教団資産を公的機関、国または公共団体によって買い取っていくということしか私はないと思っておりますし、最後は恐らくそういうことでいくんだろうと思いますが、その辺について、どうですか。内政審議室がこうしますということは言えないかもしれませんが、しかし、これはほっておいても、例えば自治省がそうしますとか大蔵省がそうしますということにはならないわけですね。内政審議室として一定の方向を決めて、官房長官に相談をして、こうしますということで各省を説得しないとなかなか物事は動かぬだろうと思います。  それから信者対策につきましても、健康な信者はなるべく出していけばそれで済むんですが、特に病人とか高齢者とか非常にマインドコントロールがきつい人とか、そういう要保護、要介護者がかなりの数いるわけですね。そういう人はどこかの保護施設へ入れていかなきやしようがない。そうすると、いろいろな保護施設というものがありますけれども、やはり生活保護法の制度の体系の中で、これも上九一色村でやれと言っても無理ですから、それぞれの出身地へ帰して、出身地の県の生活保護施設、救護施設とかいうものがありますが、そういうところへ入れていくしかないんだろうと思います。  いずれにしても、内政審議室としてしっかりした考え方をつくって、それを各省庁に、そういう線で各省を説得していくということでないと、ただどうしましょうということで相談をしていてもこれは動かぬだろうと思うんですね。  それから、内政審議室は、地元の自治体、山梨県とか静岡県とかそういうところでやってもらいたいという期待をあるいは持っているのかもしれませんが、私も山梨県の出身なんですけれども、山梨県庁もオウム真理教関係の組織をつくって、やる気は大いにあるんですね、やる気は大いにある。働きたいと思っているんですよ。ただ、国が方針を示してくれないと、山梨県だけでやれと言われてもどうにもならぬわけですね。国としてこういう方針でやる、各省庁それぞれこういう分担でやるから、山梨県はこの部分をしっかりやりなさいよという位置づけをしないと、これは動かないんですね。そういう状況になってきているわけです。  今までは、この連絡会議でお互いに情報交換をするというだけでよかったんですけれども、これからは具体的な対策を立てていかなきゃいかぬ、そういう時期に来ています。ある段階で破産管財人から非常に強い要請が来るだろうと思いますので、内政審議室も立場上告しいかもしれませんけれども、ぜひそういう考え方でひとつ進めてもらいたいと思います。もう一回ちょっと答弁してください。
  27. 渡辺芳樹

    ○渡辺説明員 お答え申し上げます。  大筋におきましては先ほどのお答えから大きく踏み出すというようなことは、私、本日申し上げられる状況にはございませんのですが、先ほども申しましたように、実際にこの破産手続がどのように進んでいくのか、本当に破産手続として所期の目的を達することができるのか、こういった点を含めて法務省と十分相談をしていきたいと思っております。  また、これまでも、山梨県を含めて関係地方公共団体から私どもが直接何度となくお話を承ってきているというようなこともあり、そのお考えなどは、ある程度私どもなりに理解をさせていただいておるつもりでございます。  土地、施設等の換価の問題につきましても、かねてより県当局の希望などもよく承っておりますが、先生御承知のとおり、例えば何らの公共用の事業目的なく国または地方公共団体が土地、建物を購入するというようなことが、現在の法体系の中で予定されているわけでは全くございませんし、また、先ほどおっしゃいましたような当該土地が後日どのような公共用の事業の利用計画の対象になるのかという点につきましても、現時点で明確な展望が関係省庁、県当局あるいは地元の町村において明らかにされているという段階でもないというところでございます。  いろいろもっと頑張って関係省庁と相談するようにという御指摘でございまして、大変ありがたい御指摘だと思いますので、その御趣旨を十分踏まえまして引き続き努力をさせていただきたい、このように思います。
  28. 横内正明

    横内委員 よろしくお願いします。  それからもう一点、今度は別の話になるんですけれども、三日前の四月十四日の読売新聞の記事で、麻原彰晃の獄中の説法が口述筆記されたものがあって、それが東京拘置所に収監されている信者に弁護士を通じて渡された。それを受け取った信者は、取調官の取り調べに対して態度が変わったというようなことが報道されているわけです。きのう法務省お話を聞いたらちょっと事情が違うようですけれども、そこの正確なところを御説明していただきたいと思います。
  29. 東條伸一郎

    ○東條政府委員 お答えを申し上げます。  現在、東京拘置所には、オウム真理教関係者被告人それから既決の収容者も含めまして八十三名入っております。私どもも実は先生御指摘の新聞記事を見まして、このようなことがあるのだろうかと大変驚きまして、調査をいたしました。  その結果、記事によりますと、既に多数の東京拘置所に在監している信者に、東京拘置所の中に差し入れられたかのような記事でございますが、私どもが調査いたしました限りでは、本年の二月及び三月に関係被告人二名に対しまして、先生のおっしゃるような説法風の書面の差し入れをしたいという手続がございましたけれども、これら被告人につきましては刑事訴訟法八十一条の接見禁止の決定が出ておりますので、これで交付をするわけにはいかないということで拘置所当局で手元にとどめておりまして、私どもの調査した限りでは、東京拘置所に在監中にその被告人らに差し入れられたという事実は、現在のところ把握はいたしておりません。  以上でございます。
  30. 横内正明

    横内委員 それでは在監の信者にはそれは届いていないということですね。そういう弁護士からの申し出があったけれども、それは刑事官というのですか刑務官、それが自分のところにとどめて信者には届けていないということですか。(東條政府委員「そういうことです」と呼ぶ)そうですが。  ありがとうございました。これで終わります。
  31. 加藤卓二

    加藤委員長 橘康太郎君。
  32. 橘康太郎

    ○橘委員 自由民主党の橘康太郎でございます。  今回は、入国管理事務に関して御質問をさせていただきたい、このように思います。  まず、私は昨年来、法務小委員会におきまして、入国管理の中で特に興行目的で来日するそういう人たちが、本来の目的を当然やってはおるのでしょうけれども、それ以外の目的を入国管理法に反してやっておられるということについて、たびたび委員会において問題点を申し上げ、そしてまた、これに対する対策等も検討させてきていただきました。今回担当局の方でこれらに関する省令を改正されるということも小委員会等でお聞きしておるわけでありますが、私は、現実の諸問題等をも含めましてこの問題に解明をさせていただきたい、こう思うわけでございます。  私の経験から申しますと、このような入国管理法に違反するような事柄が行われることに対処して処置される担当の部署は法務省における入国管理局にある、このように思うわけでございますが、この方々が実際にやっておられるお仕事、これは私も実はよくよく存じておるわけでありますけれども、どうも人員が少なくてそこまで法律を徹底的に追及するというわけにはいっていないのではないかな、このように思ったりもいたしております。そういうこと等も含めて、今回余り効果が上がっていないと思われる点につきまして質問させていただきますと同時に、それに対応して今度は省令を改正されるということでございますので、今度の省令はどのように変わってきたのか、その辺のところについて少しく御説明お願いしたいと思うわけでございます。省令の内容を中心にして、どのように今度変えていこうとされておられるのか、御説明お願いしたい、このように思います。
  33. 伊集院明夫

    ○伊集院政府委員 興行の在留資格で入国、在留している外国人芸能人につきましては、先生御指摘のとおり、本来の興行活動ではなく、本来認められていないホステス、ウェーター、ウエートレス等として客の応対に従事する者が多い、それからまた招脾機関の方でも、実際の出演先を隠しての申請を行うとか名義貸し等、虚偽の申請を行う例も非常に多い、さらに外国人芸能人に客の接待に従事させるとか、場合によっては売春の強要が行われているというような情報も頻繁に寄せられておりまして、外国人芸能人に対する人権侵害が日常的になされているというような指摘も受けております。  そのようなことで、入管当局といたしましてもこのような状況は看過できないということで一昨年の五月から全国的な規模で実態調査というのをやってまいりました。その結果、昨年の五月から本年の三月末現在までの状況でございますが、五百八十七件を検査対象としましたが、そのうち四百四十四件について結果が出ておりまして、そのうちの四百十二件について、外国人芸能人が適切な活動を行っていない、または基準を満たしていないということが判明いたしました。これは、調査結果が出ている店舗についての約九三%に達しております。  その主な違反というか基準を満たしていない例でございますが、出演先であるバー、クラブ等に全く接待に従事する社交員を置いていないで、外国人芸能人が専らホステス等として稼働しているというような状況とか、必要とされている舞台設備が現実にないとか、必要とされている控室が全然なかったり、あるとしても現実には物置として使われていてその用をなさないというような実態が判明したわけでございます。  この四百十二件の問題のあったケースのうち、東京都が一番多くて百二十七件で大体三割を占めておりまして、続いて大阪府二十七件、神奈川県、福岡県が二十二件、愛知県十八件、沖縄県十七件、兵庫県十四件、北海道十三件、静岡県、埼玉県が十二件というような結果が出ております。  今御質問のありました、法務省が興行に関する基準省令をどのように改めようとしているか考えを述べろということでございますが、これまでにこのように実施しました外国人芸能人の在留実態調査の結果によりますと、大半の店舗において外国人芸能人による客の接待等を初めとする違反行為が行われているということがわかりましたので、法務省といたしましては、適正化を図るための方策の一つとして在留資格「興行」の基準省令を改正するということでございます。  現在検討中の改正案につきましては、これまで学識経験者等各方面の御意見を拝聴しながら検討を加えてまいっておるところでございまして、今後できるだけ早急に結論を得たいと考えております。  この改正案のポイントでございますが、調査の結果特に問題が多いといういわゆる風営店、風俗営業店を出演先とする場合の外国人芸能人の入国審査基準を見直しまして、上陸許可に際して満たすべき要件を適正化するということを一方でやりまして、他方で、公的な機関、テーマパーク等に招脾されて興行活動に従事する場合など、これまで特段の問題がないものについては基準の内容を緩和して、受け入れ要件を簡素化するという方向で見直したいと考えております。  先ほども申し上げましたとおり、いまだ検討中の段階でございますが、特に具体的な説明をということでございますので、現在法務省において検討しております改正案の内容を説明させていただきたいと思います。  まず第一に、日本に来る外国人芸能人本人にかかわる要件というのがございまして、これは今はその本国等で二年以上の興行活動に関する経験があることというのを絶対の要件としておりますが、今後はこれに外国の国や地方公共団体等の権威ある機関から認定された資格を有していることという要件と、それから教育機関において二年以上芸能に関する科目を履修していることという二つの要件を新たに加えまして、このいずれかの要件が立証されればこの外国人芸能人本人については要件を満たしているということにいたしたいと考えております。  第二番目に、招脾機関にかかわる要件でございますが、現行の基準では、招脾機関におきまして外国人の興行を管理する常勤職員一名につき十名以内の外国人芸能人を招脾できるということになっておりますが、招脾機関としての管理運営体制を強化するために、ここに言う常勤職員とカウントできる職員は当該招脾機関に六カ月以上継続的に勤務している者に限るというふうに改正したいと考えております。  第三番目に、出演先施設要件にかかわる要件でございますが、バー、キャバレー等の、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律規定するところの客の接待を業として行うような店舗を出演先とする外国人芸能人につきましては、ホステス等外国人芸能人として不適当な活動に従事していた実態が見られたことを踏まえまして、審査に当たっては一層厳正に対処できるよう規定整備を行うことを考えたいと思っております。  具体的に申しますと、このような店舗を出演先とする場合におきましては、専ら接客に従事する従業員が常時五名以上確保されていて、さらに外国人芸能人が客の接待に従事するおそれがないと認められる場合に限り外国人芸能人の受け入れを検討しております。  一方、規制緩和の方向といたしましては、我が国の国または地方公共団体、特殊法人、教育機関、国際的な文化交流を目的とした公益団体、大規模なテーマパークに招脾される外国人芸能人につきましては、基本的に月額報酬にかかわる要件を満たしてさえいれば在留資格「興行」による入国が容易に認められるようにしたいと考えております。  また、いわゆる民族料理店が自分の店に出演させるために招脾する場合におきましては、招脾機関にかかわる要件を緩和して民族音楽の歌謡や演奏を行う外国人を受け入れやすくしたいと考えておりますし、また外国人がピアノのソロ演奏など単独で興行活動に従事するような場合におきましては、舞台の面積等出演先施設に関する要件を緩和する方向で検討したいと考えております。  初めに申し上げましたとおり、この改正案は現在検討中の段階にありますので、できるだけ早く成案を得たく、成案が得られ次第できるだけ速やかに公布の上、外国人芸能人の入国、在留の適正化に向けた方策を積極的に実施してまいりたいと考えております。
  34. 橘康太郎

    ○橘委員 どうもありがとうございました。  小委員会でいろいろと検討しておったことが着実に実施されようとしておるわけであります。我が国におけるこの種のものが正常な形になりますように私どもは大いに期待をしたい、こう考えておりますし、ぜひ頑張っていただきたいと思うわけでございます。  そこで、私どもの調査によりますと、これは小委員会でやったわけでありますが、確かにこの省令の施行に当たって、実際に活動をされる部局につきましては、これは入国管理局にあると思うわけでございますが、私が調査したところによりますと、どうも入国管理局における現場の人員が少ないのではないか。特に最近は外国の船もふえております。それから、それぞれ地方の空港が外国航路を誘致いたしまして、それで入国管理事務をそれぞれの地方空港において行われるという実態等もありまして、その監視あるいは管理に当たる人員が少ないのではないかということで、私ども法務委員会におきましては、一昨年の暮れの予算要求に当たりましては武村大蔵大臣に我々グループで陳情に当たって、何としても人員を確保してもらいたいといって陳情したわけでございますが、私はいまだにこれは十分なものといえないのではないかと判断をいたしております。  と申しますのは、ある県でこういった事態があるのではないかということを我々のグループから申し上げましたところ、その実態調査に当たっては、そこの県に派遣しておられる入国管理の職員の方ではなしに、私の調査したところによりますと、もう一つ上のところから派遣されてわざわざ泊まり込みで調査をされておるというふうなことでようやく摘発されたというふうなことがあるわけでございまして、この人員の確保という面で少し問題があるのではないかと思いますが、その点いかがなものでございますか。
  35. 伊集院明夫

    ○伊集院政府委員 ただいま入国管理局の人員の体制につきまして大変御理解のあるお言葉をちょうだいしまして、また日ごろ人員の増強について御支援いただいていることを感謝申し上げたいと思います。  先生御指摘のとおり、入国管理局の仕事というのはどんどんふえておりますが、人員の増強も随時図っていただいていますが、なかなか仕事の量に追いつかないというのが実態でございます。今後とも、関係方面の御理解を得て、人員の増強ということについては努力してまいりたいと考えます。     〔委員長退席、佐田委員長代理着席〕
  36. 橘康太郎

    ○橘委員 今切実なお答えを入国管理局長さんからお聞きして、私も胸を痛くしておるわけであります。何とか行政担当者としてこの実態をしっかりと把握して対処したいと思っておられても、物理的にこれができないということになりますと、我が国の治安上心配な点があるわけでございます。こういった点を考えますと、この種の処理につきましては、単に入国管理局だけではなしに、他省庁とのいろいろな連係プレーと申しましょうか、はっきり申し上げますと警察庁あたりともう少し緊密な連絡をとっていただいて、それぞれの地方県警本部あたりの担当者が情報収集をして、そしてこれらを速やかに報告していただいて、それの対処は入国管理局でやるというくらいの、もっと密接な対応があってしかるべきではないかな、このような考えも、私素人でございますからよくわかりませんが、その辺のところについて、現状はどのようになっておるのか、御説明をいただきたいと思うわけでございます。
  37. 伊集院明夫

    ○伊集院政府委員 お答えいたします。  平成三年八月に、警察庁、労働省と入管局の間で、局長クラスで不法就労外国人対策関係局長会議、また本省の課長レベルで不法就労外国人対策等連絡協議会というものを発足させておりまして、定期的に不法就労者等に関する情報や意見交換を実施しております。また、地方レベルにおきましても、不法就労等外国人労働者問題地方協議会というものを設置しまして、警察等との連携を深めております。  中でも、ホステスとして資格外活動を行っている、在留資格「興行」で入ってくる外国人につきましては、我が国の公正な出入国管理の秩序を乱すことにもなるということで、今後とも警察等関係機関との連携を強化して、これらの外国人の摘発はもとより、悪質な招脾業者、それから雇用主等に関する情報を緊密に交換していきたいと考えますし、悪質なこの種の事案については、警察との合同摘発、それから不法就労助長罪の効果的な適用を今後とも推進していきたいと考えております。
  38. 橘康太郎

    ○橘委員 もう一つ心配な点は、そのまま入ってきました、そして不法行為を行ったというのを撤去される、それもありますでしょうけれども、不幸にして、そうならないで、そのまま居座っておるというふうな、いわゆる不法残留ですね。そういう格好で残っておるというのも、たまたま我々の調査では見受けられると思うわけでありますが、恐らく入国管理局におかれてもその辺はキャッチしておられるだろうと思うのです。どのくらいの不法残留の外国人がおるか、もうおわかりであると思いますので、ここで明らかにしていただきたいと思うわけです。
  39. 伊集院明夫

    ○伊集院政府委員 私どもが把握している数字は、出入国統計から電算機で推定したものでございます。一番新しい数字が昨年の十一月一日現在でございますが、これによりますと、二十八万四千七百四十四人という、依然としてかなり大きな数字になっております。
  40. 橘康太郎

    ○橘委員 二十八万人の不法外人がこの日本国内でうろうろしておるということを考えますと、何か肌寒いものを感ずるわけでございますが、これに対応する入国管理局の、二十八万人も変な者がうろうろしているということについて、どのような対応を今考えておられるのか、少しお聞かせいただきたいと思うわけです。
  41. 伊集院明夫

    ○伊集院政府委員 先ほどもちょっと入管局の人員が足りないということで、私どものやれることには、正直申し上げて限度がございます。  一つは、まず入ってくる段階で、不法残留とか不法就労を目的として入るような悪質なケースを水際で阻止するといいますか、そういう入国審査を厳格に行うということが、やはります第一に必要なことだと思います。それから、やはりこの興行のケースもそうですが、実態調査というのを、人数に限りがございますのでなかなか限界がございますが、今後とも続けていくというような努力、それから在留管理と申しますか、在留期間の延長の際とか、そういうときに厳格に審査をしていく。それから、やはり関係当局の協力を得まして、悪質なケースの摘発を推進していく。  それからもう一つは、送り出し国における広報といいますか、日本で認められていない活動を目的として日本に入国してもいいことはないよということを、やはり送り出し国で広報するというようなことも外務省等にお願いして推進していきたいと考えております。
  42. 橘康太郎

    ○橘委員 それともう一つは、今はこれは単に入管の方で、窓口調査によってやられたものなのですけれども、興行目的で入ってきて、そしてそのまま不法残留しているという者もあると思うのですが、これはどのくらいですか。
  43. 伊集院明夫

    ○伊集院政府委員 今興行の資格で入ってきている人のうちの不法残留者というのは、平成七年十一月現在で一万二千二百三十四名、そのうちの一万一千五百七十二名、九四・六%がフィリピンの人であるということでございます。
  44. 橘康太郎

    ○橘委員 やはり我々の調査と同じくらいの数字が出ておるわけでございまして、現実はこのような状況でございます。  そこで、やはり先ほど申し上げましたように、この種の問題については、単に入国管理事務を扱っておられる入国管理局だけに全責任を押しつけて、それで事足りるというわけにはいかないな、何としてでも各省庁の御協力を得て、そしてこのような、我が国は法治国家でありますから、法に違反する外国人がうろうろしておるという実態を一日も早く解決しなければならないのではないか、このように私は思うわけであります。それにはやはり一番やってもらいたいのは警察庁の方で、特に夜、この興行目的の来日の連中に関しては特に夜、これをチェックしなければならないということからしても、最も適切なのは警察庁の方々ではないかなと思うわけでございますが、警察庁の方で、今このような問題についてどのように対応しておられますか。生活環境課長さん、来ておられましたら、お答えいただきたいと思います。
  45. 吉川幸夫

    ○吉川説明員 興行資格で来日した外国人にかかわる不法就労事案につきましては、警察におきましても、その取り締まりに努めているところでありますが、この種事案の取り締まりに当たりましては、先ほど来御紹介ありましたように、地方入国管理局と合同摘発を行うなど、入国管理局との連携を密にしているところであります。  全体の件数、ちょっと持ってきておりませんが、最近の例でも昨年十一月に、これはキャバレーでの女性の件ですが、合同摘発しておりますし、また、十二月にも同様の件を摘発いたしております。
  46. 橘康太郎

    ○橘委員 警察庁においても関心を持っておられて、これには当たりたいのだということでございますが、先ほど入国管理局長さんにお伺いいたしましたとおりでございまして、実際には不法残留をしている外国人が全国で二十八万人、しかもその中で、興行に関する不法外人は、やはり一万二千人もおるということでございまして、少し手ぬるいのではないかなという感じもしないわけではありません。私は、一国民といたしまして、我が国は法治国家でございますから、法に反する人が二十八万人だとか三十万人だとか国内でうろつかれた日には、やはりこれはちょっとどうかなと思うわけでございます。いかがなものでございましょうか。
  47. 吉川幸夫

    ○吉川説明員 警察におきましても、御指摘のような不法就労事案あるいは不法残留事案等を認知した場合には厳正公平に対処をしているところでございますし、今後とも関係省庁と連携をとりながら、悪質な事案を重点として厳正に取り締まってまいりたいと考えております。
  48. 橘康太郎

    ○橘委員 実は、我々小委員会で、言うだけではなしに我々も実態調査をした、実態調査して、大変残念なことでありますが、警察の方あるいは入管の方に対して、こういうことがあるからもう一回調査してくれということでやって初めて摘発された事項が去年あるわけですよ。  したがいまして、警察庁の方でも一生懸命やっておられるのでしょうが、先ほどの我々の自由民主党の横内君も、オウムの件でいろいろと他省庁間にまたがる問題で問題点を出しておりますけれども、どうも警察の方は、これは実際に処理するのは入管だからおれの仕事ではないんだというような考え方で、ちょっと遠慮しておられるのでしょうか。一生懸命仕事はしておられるのだろうと僕は思いますけれども、何かそういう勘違いがあるのではないかな、そういうふうな感じもしないではないわけであります。もう少し実際のデータというものをしっかり把握していただいて、ちょっと力を入れていただければ直ると思うのです。  というのは、この前摘発をされた、その後また、白人外人が来たというふうな大きな看板でやっておるわけですよ。ですから、はっきり言うならば、摘発された者は摘発され損で非常に不公平な扱いが今この日本の中で行われているということなんです。少なくとも、そういう摘発されたところの警察庁の方々におかれては、これは入管の仕事だろうけれども、せめて情報提供ぐらいはもう少し緊密にやっていただけないものかなと思うわけです。僕は、二十八万人という膨大な数字をここで突きつけられますと、警察庁さんは何かこのごろは、オウムの一件を見ても少しどこか抜けているのではないかなという感じがしないでもないのですけれども、いかがなものですか。
  49. 吉川幸夫

    ○吉川説明員 決して警察庁として関心を持たないわけでもございませんし、力を入れていないわけでもございません。ただ、先ほど二十八万人という数字が紹介されておりましたが、大変数が多い中でどのように対処していくかということにつきまして、先ほど申し上げましたように、やはり悪質な事案、また不法就労を助長するような、そのもとになっているような事案、そういったものを中心に力を入れているところでございます。  ちなみに、昨年入管法違反で警察が検挙、送致した人数は、約四千名に上っております。  以上でございます。
  50. 橘康太郎

    ○橘委員 私は、これ以上のことを言っておっても水かけ論になりますから申しませんが、とにかくそういうすごい実態であることを、これはもう法務大臣、大変恐縮でございますが、大臣も十分御認識のことだろうと思うのです。少しこれらに対応して、法治国家でございますから、内閣のしかるべき対応を大臣としてお考えだろうと思いますので、この際ひとつお聞かせいただきたいな、こう思うわけでございます。     〔佐田委員長代理退席、委員長着席〕
  51. 長尾立子

    長尾国務大臣 今先生から不法残留者についてのいろいろな問題の御指摘がございました。国際化の波の中で、現在の不法就労者問題、法務当局といたしましても大変重大な問題と受けとめさせていただいておるわけでございます。  先生の御指摘は、やはり出入国管理体制というものを強化していく必要があるのじゃないか、これにつきましては、人員不足ということにつきまして大変御尽力をいただいておりますことを心より感謝を申し上げたいと思います。  それからもう一つは、関係当局との連携を密にしてこの問題に対処していけということであるかと思います。御指摘の御趣旨、大変ごもっともなことと思っておりまして、御趣旨を十分に受けとめさせていただきたいと思っております。
  52. 橘康太郎

    ○橘委員 ただいま大臣から非常にありがたいお言葉をちょうだいいたしております。どうぞ一日も早く改正省令を立派なものを出していただきまして、これを公表していただきますと同時に、先ほど警察庁の方々にも大変失礼なことを申し上げたかもしれませんが、現実に警察官よりも我々の方が逆に調査して事件を摘発しておるような状況でございます。  全国の警察官のヘッドが警察庁でございますから、単にこれだけではないと思うのですね。いろいろと水際作戦でやらなければならないことはたくさんあると思うのです。けん銃、麻薬、それから密輸、いろいろなこともあると思います。これは、警察庁さんだけじゃなく、我々も含めて、とにかく我が国の治安をしっかりとお互いに守っていかなければならない。そういうわけでございますので、どうかひとつ、我々国民が安心して生活のできる国でありますように、お互いに努力してやっていきたいと思いますので、ぜひまた御支援お願いしたいということを、高い席ではございますが、お願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  53. 加藤卓二

  54. 富田茂之

    富田委員 新進党の富田茂之でございます。  私は、きょうはオウム真理教に対する破壊活動防止法に基づく弁明手続について何点か質問をさせていただこうと思います。  その前に、先ほど横内委員の方から、四月十四日付の読売新聞の報道に関して御質問がございました。オウム真理教の麻原被告から、東京拘置所の信者に黙秘するように指示があったのではないかという報道でございますが、これに対して、先ほどの東條矯正局長の御答弁では、八十三名ほど収容されているが、そのうちの二名に対して二月、三月に文書の差し入れの申し入れがあって、刑訴法八十一条の接見禁止になっていたので本人の手には渡っていない、拘置所の方にとどめられているという御答弁でした。  この読売新聞の報道は、信者にこういうのが渡って信者が態度を変えた、脱会の意思を覆したとか家族の面会を拒絶するようになったというところの報道もあります。その点も重要だと思うのですが、麻原被告の方からこのような黙秘を指示するような指令が出ていたのかどうか、また、それがどこでどういうふうに文書化されたのかわかりませんが、報道によりますと、便せんにもうワープロで打たれているというような報道にもなっておりまして、先ほどの東條局長の御説明では、差し入れの申し込みがあったけれども本人には渡らない、拘置所の方で保管しているんだということですと、この報道にあるような文書が実際に存在したというふうにも受けとめられるのです。  それで、産経新聞をちょっと引用させていただきますと、読売新聞と、これを追うように産経新聞の夕刊とか、また日刊ゲンダイ等でも記事がありまして、これは恐らく法曹関係者に取材しないとこういう文書が出てこないのではないかと思うのですが、その中に、「皆さんへ」と題する書面というのを手に入れたということで、こんな表現をしております。「取調官の言葉の意味を全く理解しない、あるいは音としてすら認識しなかったとしたら、被疑者は取調官から与えられた一切の苦しみから解放されることになります」。この文書、読みようによっては、もう取り調べを無視しろ、あるいは、もう無視した上で、黙秘していれば救われるんだぞというふうな誘導をしているようにも読めるのですね。  実際にこういう文書が東京拘置所の方に保管されているのかどうか、その点ちょっと確認させていただきたいと思うのですが。
  55. 東條伸一郎

    ○東條政府委員 お答え申し上げます。  先ほど御説明申し上げましたとおり、現在未決の被告人としてオウム関係者八十一名を収容しております。  若干、前提事実を確定させておきたいと思いまして申し上げますと、この八十一名につきましては、全員現在接見禁止がついております。ただ、例えば実父との接見を除く等、一部解除のものもございますけれども、原則として全員接見禁止ということでございます。したがいまして、拘置所といたしましては、差し入れ物がございますと、この規定に基づきまして原則として渡さないということでございます。  今先生の御指摘の問題は、新聞記事等で引用されておりますような、いわゆる説法を内容とするような文書が存在したかどうかということでございます。  これは、拘置所に差し入れられたものの中に、全く同じかどうか、私、今ちょっと記憶をしておりませんが、それに類するようなワープロで打たれたようなもの、これが送付されたということはございます。そういう事実はございます。ですから、その文書が存在しないというわけではございません。それが、ただどのような形でっくられたのか、どのような形でいわゆる松本被告人から外へ出たのか、これは私ども、ちょっと把握している限りではございません。  以上でございます。
  56. 富田茂之

    富田委員 今の御答弁のように、文書の作成経過についてはわからないと思うのですけれども、実際に今言ったような内容の文書が存在するとすると、これからのそれぞれの被告人の公判の維持等にかなりの影響を与えるのではないかと思うのですね。本当に麻原被告人の方からそういう指令が出たのか、また、そのワープロで打たれているという文書がどういう形でつくられたのかというところを法務当局の方としてもきちんと追跡調査なりして今後の公判維持に対して万全な態勢をとるべきだと私は思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  57. 原田明夫

    ○原田政府委員 ただいま委員御指摘のように、多数人の関与いたします一連の事件につきまして、極めてその中枢にある人物から、捜査についてのあり方、また取り調べその他についての身の処し方についての一定の指示が出ていたということについての御指摘で、そのようなことが今後公判の維持に当たって重要な意味を持ち得るのでそれに対するきちんとした対策をとるべきだという御指摘だと承りました。  確かにこの種の事件におきましてさまざまなそのような問題を生じ得るということは一般的にもございますし、本件につきましても、報道された事実も含めて、検察当局はそのような事情をきちんと今後把握してまいるだろうと思います。その上で、いかなる事態に対しましてもきちんとした対応をして、真実発見のために公判廷に正しい証拠が適正に顕出される、そして正しい認定が裁判で行われるように最大限の努力を尽くしてまいるものと考えております。
  58. 富田茂之

    富田委員 よろしくお願いします。  それでは、破壊活動防止法に基づく弁明手続についてお尋ねしたいと思います。  昨年の十二月十四日にオウム真理教に対する弁明手続開始決定がなされまして、ことしの一月十八日と四月五日ですか、それぞれ弁明期日が開かれたようであります。この期日は、オウム真理教側が破防法適用に反論するための機会を設けたものだと思うのですが、これまで団体規制の手続自体、経験がない、また、証拠の提出方法とか証拠の価値判断といいますか、証拠能力についての規定等も破防法の中にはございません。そういうことで、この証拠の扱いをめぐって、本当に公正、公平、適正な手続を踏んでいくことができるのかどうかということがかなり問題となるのではないかなと思います。  四月五日の新聞、夕刊の報道等見ておりますと、当日の弁明手続において、教団側の代理人の弁護士さんの方がまだ手続が始まっていないのに突然意見陳述をされて、公安調査庁の職員が制止してもそれをやめなかった、五十分近くにわたって御自分たちの意見陳述をした。また、新聞に載っておりました写真を見ておりますと、手続をやめろみたいな、何というのですかね、垂れ幕みたいのを報道陣の方に見せてそれを写真に写させているというようなものも新聞に載っておりました。  お互いの言い分がかなり違いがあって、どういうふうに自分たちの主張を通していくのかということでそれぞれ御苦労されていると思うのですが、やはりオウム真理教側に対しても十分な弁明の機会は保障するべきだ。そのために相当御苦労されて期日の設定等をされていると思うのですけれども、オウム真理教側が要求しているような麻原代表の出席と、公開性の確保のためにテレビ、ラジオによる実況中継をしろ、この二点がかなり大きな主張のようなのですが、手続の公平さ、透明性の確保というのは、オウム真理教側に言われるまでもなく絶対必要だと思うのですね。その点に関して、公安調査庁の方でこの弁明手続においてどのように考えられて、またどういうふうにしていこうとされているのか、お聞かせ願えればと思います。
  59. 杉原弘泰

    ○杉原政府委員 オウム真理教に対する破防法弁明手続の公平性あるいは透明性に関する御質問でございますが、この弁明手続の公平性につきましては、破防法の十四条等で「事実及び証拠につき意見を述べ、並びに有利な証拠を提出することができる。」というふうに定められているところでありまして、委員承知のとおり、既に行われました二回の弁明期日においても、当該団体に意見を述べる機会を十分に与えているというふうに考えております。  公安調査庁といたしましては、この破防法の規定趣旨にかんがみまして、今後とも十分な意見を述べる機会を団体側に保障してまいりたいというふうに考えているわけでございます。  また、この弁明手続の透明性につきましても、破防法十五条三項は、当該団体が選任した立会人及び新聞、通信または放送の取材事業に従事する者に弁明手続を公開しておりますが、これまで実施いたしました二回にわたる弁明期日のいずれにおきましても、弁明会場で三十数社の報道関係者が傍聴をいたしまして、別会場で報道関係者手続進行状況の音声を聴取できるというような形をとっております。手続進行等につきましては、これらの報道関係者を通して広く国民一般に報道されているところから、透明性の面でも十分に担保されているものと考えております。  したがいまして、弁明手続において、例えばテレビによる実況中継の問題が提起されましたけれども、このテレビの実況中継につきましては、やはり当該団体が将来の危険性があるということで私ども手続を進めているわけでありますし、またこの破防法の弁明、破防法反対あるいは弁明手続粉砕を呼号していろいろんな不穏団体もありますことから、長時間のテレビ放映というような形をとりますと不測の事態の発生も予想されますし、弁明手続進行に重大な支障を来すおそれがあるということで、テレビの全面中継等につきましては、これを認めない措置をとったわけでございます。  またさらに、第三回弁明期日では、御案内のとおり、団体の代表者であります麻原こと松本智津夫を出頭させて弁明の機会を与えることにしておりますが、仮にテレビ中継を認めますと、麻原がその機会を利用して団体構成員に何らかのメッセージを送って治安に悪影響を及ぼすというおそれもございますので、そういったもろもろの事情から、既に申し上げましたような措置をとったわけでございます。
  60. 富田茂之

    富田委員 今後もその公平性、透明性の確保に向けてできる限りの処置をしていただきたいと思います。今の御説明は私はもう十分納得できると思いますので。  ただ、証拠の取り扱い等について、学者や、また法曹界等でもいろんな意見があるようです。いろんな新聞紙上でも論争等されております。その論争が起きる原因というのは、弁明手続法律的な性格がどういうものなのかということについてそれぞれの論拠に立って言われているからいろんな考え方の違いが出てくるんではないかな。  昨年の、ずっとこの法務委員会でも、弁明手続以降は準司法手続じゃないかということで議論が進んだりしました。確かに準司法的な性格もあると思いますけれども、本来、この破防法の適用に関する手続というのは、もともとはやはり行政手続としてずっと手続は流れている。ただ弁明手続以降は準司法的な性格を有するというところが出てくるんじゃないかな。あくまでも準という文字がつく司法的性格であって、完璧に司法と同じようなことが弁明手続以降でなされているわけではないというふうに私は思うんですが。  どうも公安調査庁側からの証拠の提出がいいかげんじゃないか。例えば供述調書等についても、複数人がこういうふうに言っているよというような形で、報告書の体裁をとっている。それでは供述調書とはいえないし、反論のしようがないじゃないかというような主張もなされております。これはやはり、こういう主張の根拠というのは、本当に司法的に、三面訴訟といいますか、三面的になるように、中立的な方が間にいて、それぞれが証拠を出し合って判断してもらうんだということを念頭に置いていると思うんですが、弁明手続自体がそういうふうになっていない、公安調査庁側が弁解を聞くというふうになっているわけですね。  手続の性格の掌握の違いでこういう論争が出てきているんではないかと思うんですが、弁明手続以降の法的性格について公安調査庁としてはどのように考えて臨まれているのか、教えていただければと思います。
  61. 杉原弘泰

    ○杉原政府委員 破防法上の弁明手続というのは、一般の行政手続において聴聞とかあるいは弁明の機会の付与というような形で呼ばれている、いわゆる一定の行政処分をするに当たって事前に行われる手続の一種であろうと思うのです。公安調査庁が破防法に基づき団体規制処分の請求を行うに先立ちまして、あらかじめ当該団体側に意見や反証を提出する機会を与えることによって、公平適正な処分請求を期するとともに、行政の民主的運営を図ることを目的としたものであろうというふうに理解をしております。  委員御指摘のこの弁明手続、一連の規制請求に関する手続法律的性格に関しましては、御指摘のとおり、これは行政手続ということになるわけでありまして、ある意味では、その形を見ますと司法に類するような形をとっておりますので準司法手続というような表現もなされておりますけれども、法律的には行政処分に関する行政手続であるということには変わりがないと思うのです。  そういう意味で、そこで提出されます証拠についても、刑事手続と比較いたしますと、証拠能力の制限というものは一切法律上ございません。したがいまして、この弁明手続で公安調査庁が提出いたしました証拠の中には、御指摘のような公安調査官作成の報告書がかなり含まれておるわけでありますし、また、問題となっております関係者の検察官に対する調書、いわゆる検事調書等も、その原本、そのもとのままの調書のスタイルで提出されていないことは御指摘のとおりでございます。  それにつきましては、刑事手続との兼ね合いもありまして、いろんな障害があり、険路があるために、例えば検事調書をそのままの形で謄本を提出できないとか、あるいは信者の供述を顕名で、つまり氏名を特定する形でそのまま弁明手続に提出できないとか、そういった事情がございますために、それにかわるものとしていろいろの工夫をせざるを得ない、こういう状況にあるわけでございます。それはやはり、刑事手続と、行政手続である弁明手続というものが同時進行することから出てくるやむを得ない事情でございまして、そういう制約された事情範囲内において、私どもとしては最大限の透明性といいますか、事実、証拠を明らかにするという努力をしたつもりでございます。  そしてまた、その証拠判断の問題につきましては、最終的には、仮にこれが規制請求をなされるということになった場合には、公安審査委員会において証拠の能力、証拠の価値についての判断がなされるわけでございまして、その段階で、果たしてその証拠で十分であるかどうかということはそこで問われるわけでございます。  私どもといたしましては、既に弁明手続において提出いたしましたそれぞれの証拠で十分この目的が達成できるというふうに考えておりますし、また団体側からもそれに対する反論、反証が可能であるというふうに考えております。
  62. 富田茂之

    富田委員 今の御説明はよく理解できるんですが、ただこのまま手続が進みまして、団体規制処分まで行った、解散というような形になった場合、解散の処分の効力が生じますと、破防法の八条で「当該団体のためにするいかなる行為」も禁じられることになる。この「当該団体のためにするいかなる行為」というのが非常に漠としていて、どんな行為が禁じられるんだかわからない、この不安感、解釈のしようによっては何でも入っちゃうじゃないかということで、その不安がかなり大きいんだと思うんですね。拡大解釈の危険というのはかなり指摘されております。憲法三十一条で法定手続の保障もされているわけですから、どんな行為が、仮にこういう解散の処分等の効力が生じた場合に処罰の対象となるのか、もう少し明確にする必要があるんではないかな。この法律規定があるんだからいいんだということではなくて、一般の国民、またこの解散の対象とされる団体の信者さんたちにもわかるようなメルクマールというかガイドラインみたいなものの設定が必要になってくるんじゃないかと思います。  そういう意味で、一月十三日付でしたか、朝日新聞が、公安調査庁の中でずっと検討していて、そういう指針の素案を出したんだというような報道もされておりました。また、長尾大臣も、新聞記者のインタビューに答えて、禁止対象となる行為と、ならない行為を具体的に明らかにして、信徒や国民に公表するというような発言も取材の際にされたようなのですが、この点について、公安調査庁なりまた法務大臣の方で、今後どのようにしていこうとされているのか、お聞かせを願えればと思います。
  63. 杉原弘泰

    ○杉原政府委員 オウム真理教に対する解散指定の処分がもしなされた場合に禁止される、団体のためにする行為の具体的内容はどうかというような御質問であり、またそれについての公表の意思があるかどうかということについての御質問でございますが、団体のためにする行為というのは、この団体の活動として行われる行為及び当該団体の活動として行われる行為には当たらないとしても、当該団体の存続、発展または再建のために直接その効果を団体に帰属させる目的を持って行われる行為がそれに該当するわけでございます。  具体的にどのような行為がこの団体のためにする行為に当たるかということについては、今後、私どもとして、しかるべき時期に明らかにしたいというふうに考えております。  申すまでもなく、団体規制に関する手続というのは、この法律施行されて初めてのケースでございますので、そういう意味でも、また、それから宗教団体としてのオウム真理教というものの組織の性格あるいはその活動の性格というものに即して、現に団体のためにする行為というのは具体的にどういうことになるのかという解釈、これについても、もちろん初めてのケースでございますので、やはり規制を受けます団体の関係者あるいは一般の国民に対しても、それがわかるような形でガイドラインを明らかにしたいと考えております。  このガイドラインにつきましては、目下、関係機関と協議中であり検討中であるということで御理解をいただきたいと思います。
  64. 富田茂之

    富田委員 ぜひ公表していただきたいと思うのです。  先ほど申しました、朝日新聞の方が記載しているものが、今仮にこういう流れで検討されているのだとすると、これはちょっと問題があるのではないかな。この記事の中でも、当局側の裁量が広過ぎるのではないかなということで二点ほど挙げておりましたけれども、内心面の信仰は、当然もう規制しようがない。ただ、それが外部に、外に行動としてあらわれた場合に、例えばこんなふうに書いてあります。入信を勧める目的で知人宅を訪問する、こういうこともだめだというふうになっているのじゃないかと。そうすると、内心面の信仰と、その内心の信仰の外部的な徴表である知人宅への訪問というのはどこで区切りをつけられるのだ。自分自身、宗教法人、宗教団体としての活動が解散の処分によって禁止されたとしても、個人が信仰を持つことは構わないわけですから、そこに対する規制にまでなってしまうのじゃないか、そういう意味では、ちょっとここのガイドラインのつくり方はかなり難しいと思うのですね。  もう一つ指摘されているのは、幹部の指導があるような行為はほとんどだめだと、ここに出ているような。自分たちの自主的に何かやるものはいいけれども、幹部から指導されて何か行動するというのは、もう全面的に禁止されるというような素案になっている。では幹部というのはどういうふうに認定するのだ、どこからが幹部なんだ、そういうところで、今検討されている素案というのは、ちょっと当局側の裁量が広過ぎるのではないかなというような指摘もなされております。  そういう点も十分考慮していただいて、今後のガイドライン、いろいろな関係省庁もあるでしょうから、設定していただきたいと思うのですが、一つちょっと、マスコミの方で、こういう危険があるから破防法自体だめなんだよということで、例えばそういうガイドラインが設定されたときに市民団体などが破防法反対の集会を開く、そこにオウム真理教信者が複数紛れ込むと、集会参加者全員が破防法違反の共犯者になるんだというような主張をされる方がおります。これは、こんなことあり得ないと思うのですけれども、仮に今後のガイドラインの設定でも、なぜこういう議論が出てくるのか、ちょっとためにする議論ではないかなと私は思うのですが、そういう一般市民に対して解散の処分の効力が及ぶということは絶対にあり得ないと思うのですよ。その点は長官、どうなんでしょうか。
  65. 杉原弘泰

    ○杉原政府委員 ただいま委員御指摘の点は、まさに私どもそのとおりであると考えております。ただ、そういったことについての説明をする機会というのは、私どもとしてはなかなか今日までなかったわけでございますが、せっかくの御質問でございますので若干御説明させていただきますが、やはり一般の新聞、雑誌等で報道されております、つまり公安調査庁が将来こういう規制をするんじゃないか、こういうことで一般市民も巻き込まれる可能性があるというようなことがいろいろ言われておることは私ども承知しております。  例えば、今御指摘のような、破防法反対の集会に信者が紛れ込んだ場合、その信者がその団体のためにする行為ということで検挙されるのではないか、それから、あるいは甚だしいのは、オウム服を着て二人の信者が歩いていたらそれだけで捕まるのではないかとか、それから、脱カルト研究会の方たちがオウムの信者社会復帰を促すために信者に接触をしてそのための活動をした場合に、その人たちも破防法で検挙されるのではないかとか、あるいはオウムの信者である在家信者の親子が、うちの中で二人でオウムの話をしていただけで捕まるのではないかとか、あるいはオウムの被害者対策弁護団の弁護士さんたちが、やはり脱カルト研究会の人たちと一緒にその信者に接触して、そして社会復帰を促すために何か活動をやった場合に、そういう人たちも問題になるんじゃないかとか、あるいはマスコミ関係者がオウムの信者に何か取材の目的で接触をしたという場合に検挙されるおそれはないかとか、そういったようないろいろな危惧が言われておりまして、それがまた、そういう場合に検挙されるんだというようなことが書かれているものもあることを知っております。  今申しましたようなことは、やはり法律的にはその団体のために当該信者が、関係者が、団体のためにする行為という概念の行為を行ったかどうかという評価の問題になるわけでございますが、挙げられていることはほとんどそれに該当しないと言って差し支えないと思うのです。そういったことについては、やはりいずれ具体的にわかりやすい形でガイドラインを公表しなければならないということはかねてから申し上げているとおりでございまして、その具体的な時期等についてはまだはっきりしておりませんが、今検討中でございます。
  66. 富田茂之

    富田委員 ちょっとそれと関連して、今回公安調査庁の方で、オウム真理教がこういう破壊活動をする団体であるというような情報が従前全くなかった、刑事事件が頻発してオウム真理教が関連しているんだというのがわかってから、ある意味では取っかかりを持って調査に乗り出したというようなことが去年の法務委員会でずっと出ておりましたけれども、そういう情報不足、破防法を適用しようとしても、もともと適用の前提となるような材料すらなかったということで、公安調査庁の方で組織を再編しようというような報道が一月になされておりました。  この組織再編の目玉として、狂信的、いわゆるカルトですかね、カルト教団調査するため新たに宗教集団部門を設置するというような、かなり大見出しで新聞報道がされておりまして、将来暴力主義的破壊活動を行う可能性のあるあらゆる団体に対する情報収集力を強化するんだというような指摘もなされておりました。この部門が設置されますと、十八万以上あると言われておりますが、宗教法人や、さらには法人格を持っていない宗教団体、五万団体ぐらい、これに対して破防法に基づき情報収集を行うことになるというような書き方もされておりました。  こういう組織再編を平成九年度を目指してやるんだというような報道でしたが、こういうことを本当に考えられているのか、どういう目的でわざわざ宗教集団担当部門というのをつくられるのか、私は非常に疑問に思うのです。  オウム真理教に対する破壊活動防止法の適用については賛成します。ただ、これはオウムが、本当にこれまで例のないような集団殺りく兵器を大量に準備していた、本当に政府の組織も転覆しかねないようなそういう集団であったからこの適用に賛成するのであって、オウムが一つ出てきたからといって、宗教団体全部を公安調査庁の調査対象団体にするというのはちょっと行き過ぎではないかなと思っている。  破壊活動防止法は、一条、二条、三条で法律の目的、解釈適用のあり方、または規制の基準というのをきちんと決めておりますね。特にこの法律の効力が大きいということで、団体の自由を侵さないようにというふうにかなり細かく規定されております。この一条、二条、三条との関係で、わざわざ公安調査庁内部に宗教集団担当部門を設けるというのはかなり問題があると思うのですが、どのような意図で設けられるのか、また、破防法一条、二条、三条との関係をどのように考えられているのか、お聞かせ願えればと思います。
  67. 杉原弘泰

    ○杉原政府委員 私ども公安調査庁も一つの国の機関として、時代の変化に即応して効果的な調査を実施できるようにやはり調査体制というものを常に見直していくという必要があることはよくわかっておりますし、また、そういう観点から、内部的には機構改革についてはかねてから検討はしております。ただ、今具体的にその内容を申し上げる段階ではございません。  今御指摘の、宗教集団担当部門というものを機構改革の中で現に考えているんじゃないかというお尋ねでございますが、多分それは、私の推測では産経新聞の記事にそのような報道がなされていたと思います。その記事の内容につきましては、私どもの公表したところではございませんし、事実と全く違うわけでございまして、現在のところ宗教集団担当部門というような特別の調査部門を設けるつもりはございません。
  68. 富田茂之

    富田委員 わかりました。  けさちょっと質問通告した件で、最後に一点だけ確認したいのです。  けさの読売新聞とか毎日新聞に、東京地裁の八王子支部の刑事裁判の過程で、検察側が法廷に提出した証拠が、事前に弁護側に開示されていた証拠と番号が違っていた。弁護側の方で不同意にする予定だったものを同意してしまった。それが二度目の法廷で弁護士さんの方で気がついて、裁判官がかなり怒られたというような報道をされております。  証拠番号で調書の同意、不同意をやられたのでこういうミスが出たと思うのですが、新聞報道では検事さんの方が悪いんだという形で書いてありますけれども、これは弁護の方も、日付とかもありますし、証拠番号と証拠の標目を見ればどういう調書が出ているかわかるわけですから、弁護側のある意味での不注意もあったと思うのです。  こういうことはこれまで本当になかったことだと思うのですね。実際に裁判官がこの調書を見てしまったわけですから心証としてもう絶対消えないと思いますので、この被告にとってはこんな不利益はない。本当に公平な裁判を受けるという意味で、形上、過って同意されてしまった調書について今後どういう取り扱いが可能なのか。この被告人にとって本当に不利益にならないような公平な裁判が今後やれるのかどうか。そのあたり、地検の八王子支部の支部長へのインタビューでは、事実関係を調べた上でしかるべき対応をしたいというふうに言われているようなんですが、法務省の方としてはこれをどのように扱われる予定なのか、ちょっとお聞かせください。
  69. 原田明夫

    ○原田政府委員 ただいま御指摘のような報道がなされていることは承知しております。現在事実関係の詳細は調査中でございますが、ほぼ報道のような事実があったものと認められます。このようなことは法務・検察当局としても厳しく受けとめなければならない事柄であると考えております。もとより、今後二度とこのようなことがないように細心の注意を払ってまいりたいと存じます。  ただ、本件の具体的な事案につきましては、裁判所を中心に、検察官また弁護人との間で、事態をどのように収拾するか、それをまさに誤解がないようにどのように公正な形で取り扱われるかということが当事者間で協議されてまいるだろうと思いますので、それを見守ってまいりたいと思います。  一般的には、このようなことはもちろんあってはならないことでございまして、検察官としても重々気をつけなければならないことであると考えております。
  70. 富田茂之

    富田委員 法律的にどう扱われるのか、私もちょっとよくわからないのですが、被告人に不利益にならないように、ぜひ法務省の方としても配慮していただきたいと思います。  これで質問を終わります。ありがとうございました。
  71. 加藤卓二

    加藤委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時七分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  72. 加藤卓二

    加藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。山本拓君。
  73. 山本拓

    山本(拓)委員  山本拓でございます。  きょうは三時まで時間をいただきまして、まず最初の一時間を参考人皆さんに来ていただき、あとの時間を役所サイドヘの質問に充てさせていただきたいと思います。  今回の民訴法改正法案に対しては来週から本格的に審議が始まるわけでございますが、それに先立ってのきょうは一般質疑という中で、日ごろから全国いろいろなところで弁護活動をやっている弁護士の皆さんの中で、特に行政との絡みの中で文書提出の壁にぶち当たって大変苦労をなされた経験のある弁護士の皆さんに三人おいでいただきました。  樋渡俊一弁護士、清水勉弁護士、秋田仁志弁護士、御三名の方には、きょうは本当にありがとうございました。今からお一人お一人、経験をもとにした、裁判での出来事、経過等、そしてまたそれぞれのこれからの、第一線から見た改正への提言と申しますか、そういったものも、限られた時間でございますけれども、ぜひともお聞かせいただきたいと思います。  それでは、最初に樋渡俊一弁護士の方からお話を承りたいと思いますので、十五分前後をめどにひとつお願いいたします。
  74. 樋渡俊一

    樋渡参考人 御紹介いただきました弁護士の樋渡と申します。東京弁護士会に所属しております。  私の方からは、私が担当しております東京都の西多摩郡にございます日の出町の一般廃棄物最終処分場の事件の経験から意見を述べたいと思います。  私が担当しております事件といいますのは、日の出町の東京都三多摩地域廃棄物広域処分組合というところが運営しております廃棄物処分場でございます。御案内のとおり、一般廃棄物処分場といいますのは、各家庭とかあるいは事業所などから出される一般廃棄物、すなわち産業廃棄物以外の廃棄物の最終処分をするところでございます。  一般廃棄物といいますと、普通ですと余り危険ではないのではないかと考えておりますけれども、実際には、最近はごみの中にも例えば電池ですとか蛍光灯ですとか体温計ですとかいろいろな有害な重金属などが含まれているものが入っておりますので、場合によってはそのごみが人体に対して影響を与える場合があるわけでして、廃棄物処分場の周辺の住民からいたしますと非常に不安であります。また、処分場にはごみを燃やした後の灰も埋め立てます。その灰の中には、これも御案内のとおり、ダイオキシンという非常に猛毒な物質もございまして、そういった物質が人体に入ることによって、自分だけではなく家族あるいは子孫にまで影響するのではないかという不安を住民としては抱いているわけでございます。  それで、先ほどの日の出町の最終処分場というのは、東京都の二十三区以外の多摩地域の二十六の市と一つの町の廃棄物の処理をしておるところでございます。それで、日の出町というのはその処分場のごみが持ち込まれるところではないのですが、日の出町の周辺の住民からすれば非常に心配なわけで、公害防止協定というのが、処分場ができるときに締結されております。公害防止協定の中では、周辺の住民から要求があったときには、組合は町を通じて資料を開示しなければならないという規定がございます。そういった規定を利用しまして、住民の方から日の出町あるいは処分組合の方に資料の開示を求めたというのがこのケースであります。  最初、手続としましては、公害調停という手続がございますので、公害調停という手続の中で、住民の側から処分組合の方に対して資料の開示を求めました。しかし、調停委員さんの方からいろいろ説得していただいたのですが、これだけの方が皆さん心配しているのだから処分組合の方でデータを出したらどうですかという説得をしていただいたのですが、結局出していただけませんでした。  それで、やむを得ず裁判所の力をかりることにしまして、証拠保全という手続がございますので、証拠保全という手続で、裁判所決定をいただきまして、裁判官に処分組合の事務所の方に出向いていただきました。そして、裁判官の方から処分組合に対して、住民が求めているデータを開示してはどうですかという説得をしていただきました。それでもデータは開示していただけませんでした。  開示されなかった理由というのは、これもいろいろ、公害防止協定の条文の解釈という問題もあるのですが、そのころ処分組合の事務局長の方が言われていたところによりますと、データの見方というのはいろいろ難しい問題があって、素人の方がそのデータの数字を見ると判断を間違うおそれがある、その結果重大な影響が起きるおそれがあるのでデータは見せられないというようなことをおっしゃっていました。  それで、証拠保全の手続でも見せていただけなかったので、やむを得ず今度は仮処分という手続をとりました。証拠保全と仮処分という手続の違いは、御案内のとおり、証拠保全というのは強制力がございませんので、裁判所の強制力をもらうために仮処分決定を求めました。これは、公害防止協定に基づいて、公害防止協定というのは一種の契約でございますので、契約上の地位に基づいて相手方、処分組合に対してデータの開示を求めたわけであります。それで、結局裁判所は、昨年の三月八日に仮処分決定を出していただきました。それで、その仮処分決定をもとに再度組合や町の方に開示を求めましたけれども、結局やはり出していただけませんでした。  それで、やむを得ず間接強制という手続で強制手続をとりました。間接強制という手続は、これも御案内のとおり、公害防止協定に基づいて仮処分決定が出てもなかなか直接的に強制するという方法は難しいですので、間接的に、データを開示しない場合には一日当たり幾らの罰金、間接強制金といいますが、間接強制金を支払いなさいという命令を出していただくことによってデータを見せていただくという方法です。それによって強制するという方法です。  間接強制という手続行政に対してとられたということは、余り例がないのではないかと思うのです。一般的によく知られていますのは、暴力団が組のために事務所を使うときに、事務所を使用してはならないという命令を強制する手段として使われたことはありますけれども、行政に対してそういった間接強制という手続がとられたのは、恐らくほとんど例がないのではないかと思います。  ですから、そこまでいけばさすがに処分組合の方もデータを見せてくれるのではないかと思ったのですが、結局見せてくれませんで、その後、データを見せない限り一日十五万円払いなさいという間接強制の決定が出ました。それでもデータを見せませんでしたので、今度はその金額を増額していただきまして、一日三十万円のお金を払いなさいという決定をもらいました。ところが、それでもしばらく見せていただけませんで、ようやく五カ月ぐらいたった昨年の八月ですが、やっとデータの一部を見せてきました。しかし、データの一部を見せたのはいいのですが、その時点で間接強制金の額は三千万円以上の金額になっておりました。  しかも、その際に再度、我々が最も重視していたデータというのがございますが、それはないということです。最も重視していたデータというのは、ちょっと専門的な話になるのですが、廃棄物処分場の下にはゴムシートというのが敷いてあります。そのゴムシートというのは何のために敷くかといいますと、廃棄物が漏れ出て周辺の土壌ですとか地下水などを汚染しないようにゴムシートというのは敷いてあります。当然ゴムシートは破れていないことになっているのですが、住民の方たちが一番不安に思っていたのは、ゴムシートが破れていてごみが外に漏れ出ているのではないかということを心配していたわけです。  それで、そのゴムシートが破れているかどうかということを判断する上で非常に重要なデータがありました。というのは、そのゴムシートの下に地下水を集めている管というのがあります。地下水集水管といいます。その地下水集水管の水の電気伝導度、つまり電気を通しやすいかどうかを調べることによってゴムシートが破れているかどうかがわかるというふうに考えられております。というのは、もしごみが漏れ出ていますと、ごみの中に入っている塩素ですとか重金属が地下水の中に溶け込みますので、電気を通しやすくなります。普通の自然水ですとそれほど電気は通しませんけれども、重金属などを含んでいますと電気を通しやすくなりますので、その地下水集水管に集められている水が電気を通しやすいかどうかというデータを見ることによって、ごみが漏れ出ているかということが判断できると考えたわけです。  それで、そのデータを見せてほしいということを我々前から言っていたのですが、突然八月になって、いや実はそのデータは存在しないのですというふうに言ってきました。これは我々もびっくりしたのですが、もし存在しないのであれば、もっと早い段階で存在しないと言ってくれるものだと思っていたのです。そうであれば、我々としてもまた別の対処のしようがあったわけですけれども、さんざん審議して、裁判所の仮処分決定も出て、間接強制決定も出て、お金も払われている、間接強制金も払われたその後になって、実はデータがないんですということで非常にびっくりしたのですが、そういうようないきさつがございました。  それで、結果なのですけれども、結局そのごくわずかですが処分組合に開示していただきましたデータを、我々も専門家の方たちに分析していただきました。その結果、一九九〇年ごろ、つまり平成二年ごろからどうも処分場のゴムシートが破れていたのではないかという専門家の御意見でした。  実はそのころ、平成二年当時、その当時既にゴムシートが破れているかどうかということはもう住民の方たちから相当問題になっていたのですが、処分組今ないし東京都の方は、いや別に安全性に問題はないですという回答だけでした。そういったデータをもしその時点で見せていただけていましたら、その時点で、処分場が安全かどうかということについてもっと真剣な議論ができたのではないかと思います。  それで、結論でありますけれども、結局処分組合の方はデータを開示することを徹底的に拒まれました。先ほどの間接強制決定が出ても従わなかったりとか、あるいはさっきもお話ししましたけれども、実は裁判官に対する忌避手続というのも行いました。処分組合、行政の側で裁判官を忌避するということも、これも余りないことかと存じますけれども、そこまでやってデータを見せることを拒みました。  その理由というのは、先ほども申しましたが、一つはデータを見せることによって、データの見方というのは難しいから、素人が下手にそういったデータを見ることによって、重大な影響が起きるおそれがあるのだ、そういった理由。それから裁判の中でもう一つ理由として述べていたのは、データを見たいと言っているのは一部の人たちなんだ、一部の処分場の運営に反対する人たちが政治目的でそういったデータを悪用するおそれがあるのだ、そういったことを申していました。これは、一般的に前者の方についてはよく出てくる、情報開示をめぐって、特に公害環境問題についての情報開示を拒む行政側の理由として、データを下手に開示すると一般に与える影響が大き過ぎるのでデータを開示しないということがよく出てくることでございます。  結果は、データを開示した結果、ごく一部でありますけれども、どういう結果が出たかといいますと、別にそれによってパニックが起きたりとか、そういったことはございませんでした。むしろそれを住民の方たちは専門家に判断してもらいましたし、また東京都は東京都の方でそのデータをもとに分析しまして、それはゴムシートが破れているのではなくて、もっと別の原因が考えられるという見解を東京都は発表されています。それからまた、住民側の科学者の方たちは、いやそれはやはりゴムシートが破れているとしか考えられないという結論を出しておられます。それをめぐって今論争が起きているわけですけれども、結局データが開示されたからといってパニックが起きるとかということではなく、より議論が進行したといいますか、どうしてそういう結果になったのかということをめぐって議論が行われたということはあっても、決してパニックが起きたりはしなかったということでございます。  ですから、特にこういった公害環境関係情報というのは、その周辺の人たちからすれば非常に不安なわけでして、そういったデータをどんどんやはり開示していただいて、それをもとに専門家の間で議論していただくということは重要なのではないかと思います。確かに、行政の側からすれば、データを出すということは非常に慎重になるのかもしれませんけれども、結果としては、そういう行政側が言っていたような心配というのは起きないということであります。  以上であります。
  75. 山本拓

    山本(拓)委員 民事局長、今の樋渡弁護士の話を聞いて、何か御感想ありますか。
  76. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 今参考人の方で御説明された事案の内容、今お話を聞く限りでお聞きした事柄でございまして、なかなか急の御指名でコメントをすることも難しいのでございますけれども、今回の法案との関係におきましても、重要なお考えの御披歴であったのではないかというふうに承りました。
  77. 山本拓

    山本(拓)委員 大臣には一番最後に総括して御感想をいただきますので、お願いいたします。  それでは、次に清水勉弁護士からお願いします。
  78. 清水勉

    清水参考人 私は東京弁護士会の弁護士ですが、薬害エイズの弁護団も七年間やってきた者ですが、この事件についてはまた後に弁護団のほかの弁護士が、情報を隠すということがどういう問題をもたらすかということを詳しく説明すると思います。  私からは、ごく日常的な事件としての、健康茶というお茶がよく出回っていますけれども、そのことに関する情報公開について、ごく普通の一市民がかかわった事件に私も代理人としてかかわりましたので、そのことについて御報告させていただきます。手元にB5のレジュメを用意してありますので、御参考にしてください。  今回私がここで言いたいことは、秘密を判断するということを果たして実施機関である行政機関が常に適切になし得るのかということに対する問題提起をしたいというふうに思います。  事件経過ですけれども、平成三年五月二十四日に新聞に、輸入健康茶から農薬が検出されたという報道がされました。この報道を受けて、この原告の方は六月十八日に東京都に対して情報公開請求をしました。これは東京都の検査結果としての報道だったものですから、東京都がこの情報を持っているはずであるということでの情報公開請求をしたわけです。  その動機としては、この原告の方、請求者の方は、お母さんもそれから本人も健康にかなり気を使っているというか、体の弱い方なものですから、健康食品とか健康茶には関心を持っていたということで、この情報公開請求をして、一体どういう商品からどういう農薬が検出されているのかということを知りたいということで、個人的な思いで情報公開請求をしたわけですけれども、東京都はその月、六月二十三日に全面非公開の決定をしました。つまり、何も見せないということです。これは、その当該商品名とか検出量とか、そういう部分の問題ではなくて、およそ何も見せない、そういう決定を下したわけです。  当然のことながら、これに納得できないということで、八月二十七日に異議申し立てをしまして、審査会の方は、翌年の七月までかかりまして、七月十四日に一部開示の答申をしました。ところが、この答申でも当該商品名を除くというものでした。この答申を受けて東京都の方では決定を出したわけですけれども、これも同じく当該商品名を除く一部開示というものでした。  請求者としては、商品名がわからなければ意味がないということで、その年の十一月十三日に提訴をし、ちょうど二年たった平成六年の十一月に全面公開の判決を受け、二週間の控訴期間を待たずに東京都の方は控訴しないという意思表明をされ、確定をしました。  ここで、東京都の最初の判断と審査会の判断裁判所判断、これが三つとも違うわけですけれども、それぞれどういった理由なのかということが問題になるかと思います。  東京都が全面非開示にした理由としては、ここに書きましたように、開示すると営業者の競争上または事業運営上の地位その他社会的地位を損なうおそれがあるというものでした。それは、もうちょっと具体的に言うと、この検査はすべての商品に行ったものではないし、また食品衛生法上の基準の範囲内にあるものであるので、そういった商品名や検出量を公にすることによって、本来は法的に何も問題ないにもかかわらず、その業者が不当に営業上の不利益を受けることになるということが理由だったわけです。  これに対して、審査会の一部開示理由のところでは、簡単に言いますと、商品名さえわからなければ別に出してもいいではないかということで、商品名を除いた部分の開示をしたということになります。  それに対して、裁判所がどういうふうに考えたかといいますと、商品の品質、性状に関する客観的な情報は、流通に置いた後はもはや事業者が秘匿する合理的な理由はなく、実際にも秘匿することはほとんど不可能である。つまり、一たん商品として出てしまうと、それは民間でも研究所で分析することは可能ですので、企業秘密だと言ったとしてもそれは無理なのだということを裁判所はまず言っています。そして、かかる情報の公表により消費者が商品を比較するために事業者の営業に影響が生じるのは当たり前であって、事業者はこれを甘受しなければならないのだというふうに言っています。つまり、消費者が出回っている商品についていろいろな性状、品質の情報を得て自分がどれを選ぶかというのは、消費者の行動としては当たり前のことであって、またそれを防ぐことはできないのであって、東京都がその商品について集めた情報は当然全部出しなさいということを言ったわけです。  問題ですが、本件の場合、実施機関の最初の判断は全面非公開だったわけです。それが最終的には全面公開になり、かつ実施機関もこれを納得しました。納得したというのは、控訴をしなかったということにはっきり態度にあらわれているわけです。  では、その全面非公開をした背景はどんな考え方があるのかというと、裁判経過、それから異議申し立てをしてきたときの相手方の答弁書の内容などからしますと、専門家、すなわち実施機関こそが最も適切な判断をなし得るという自信に満ちています。自分たちこそが適切な判断ができるのであるから、素人である消費者、国民が意見を差し挟む必要はないのだという態度がはっきりあらわれています。  それから、もう一つその反対側の問題として、実施機関が情報公開制度を十分に知らないという、制度についての理解がないということが非常に問題です。つまり、東京都は情報公開条例をつくってもう十年以上になるわけですけれども、実施機関でありながら、この情報公開制度のもとでは基本的に情報を公開しなければいけないのだという考え方がまだ身についていないということが出ています。そのために広報と情報公開の区別がほとんどついておらず、広報として出している情報範囲内、あるいはそれに若干プラスアルファ程度のものでいいのではないかというような安易な考え方が一般的にあるように感じられます。  それは、具体的には安易な非開示理由への当てはめというところにあらわれ、具体的には、非開示決定の用紙には非公開の理由を書く欄があるのですけれども、ここに非公開の理由が書かれることがほとんどありません。実施機関の方としては書いているつもりなのかもしれませんが、数年前までは非開示の理由欄には該当条文だけが記載されていて理由は書かれていませんでした。どの条文に該当するかということと、なぜその条文に該当するのかということは全く別問題です。この条文に当たるのだというだけでは、それは結論でありまして理由ではないわけです。しかし、そういったやり方が一般的になされていました。  別の事件ではありますけれども、私が代理人として最高裁まで行った事件がありますけれども、東京高裁、最高裁で、こういった理由の記載の仕方は理由の付記になっていない、理由を記載したことにならないということで、東京高裁でも最高裁でも否定をされております。  しかし、その後も、非開示の理由につきましては、本来であれば個々の項目ごとにどういうことが、中身そのものを指摘するのではなくて、どういうことが書いてあって、そのためになぜ開示できないのかということが具体的に指摘されなければならないにもかかわらず、そういったことがなされている非開示決定というのはほとんどありません。多くの場合が、条文の摘示とその条文に書かれている文言ですね、例えば正当な事業者の営業に影響を生じるおそれがあるんだとか、その条文の文言をそのまま引用したような理由が書かれているものが、あるいはそれと似たような書き方しかしていないものが非常に多いわけであります。  つまり、開示をしないということが、公開をしないということが本来は例外的に認められていることなんだ、したがって、それは説得的な理由をきちんと書かなければいけないという考え方が実施機関に浸透していません。そのために、異議申し立てをされるケース、それからさらには情報公開の裁判処分取り消しの裁判というものに発展していくことが多いわけですけれども、きょうはちょっと資料を持ってこなくて申しわけないのですけれども、この異議申し立てをした場合に、かなりの割合で全面非公開の場合は一部公開になりますし、一部公開でも公開の範囲が拡大されるというのは、情報公開をやっている者にとってはこれは日常茶飯事です。それから、裁判になる場合でも全面非公開のものが一部公開、一部公開が拡大される、これも日常的です。  通常、行政訴訟では、なかなか原告代理人は、原告側は裁判には勝てないと言われていますけれども、情報公開の裁判異議申し立てでは、多くの場合、五割以上と言っていいと思いますが、原告側が勝っています。これは、ほかの行政事件からすると異常な事態だと思います。それは、審査会の委員の先生方やそれから裁判所から見ると、従来の情報の秘密のあり方というのは非常に間違っているのではないかというふうに見られているわけです。決して請求者、情報公開を請求している者、原告だけが異常だというふうに考えているのではないということであります。  それでは、本件の場合、実施機関が心配していた本当のところはどういうことかといいますと、まずこれは情報集めのときに協力してもらっている事業者との関係が悪化するのではないかということを心配していました。しかし、この点に関しては、公になると崩れてしまうような信頼関係というものを東京都と業者が持っていいのかどうかということを、担当の実施機関と私どもで話し合ったことがありました、この裁判の後ですけれども。そして、そういった関係そのものを改善していくというのが情報公開の考え方だというところで意見の一致を見ることができました。  それから、マスコミに過大報道されることに対する懸念ということを表明されていましたけれども、これはマスコミ対策をきちんとするということで対応すべきではないか、情報を出さないということで対応するのは間違いではないかということで、これも意見の一致を見ることになりました。  文書提出命令等関係について言いますと、本件の例に見るように、秘密判断を実施機関が間違えるということが決してまれではない、それも全面非公開が全面公開になるということがあるということであります。そうしますと、秘密の判断について実施機関にゆだねてしまうようなあり方は問題があるのではないかというのが私の問題提起です。  以上で終わります。ありがとうございました。
  79. 山本拓

    山本(拓)委員 それでは民事局長清水勉弁護士の事例についてコメントを何かございましたらお願いいたします。
  80. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 今参考人の御指摘されました事例それから御意見、これは、今大変大きな議論を呼んでおります行政情報公開制度のあり方という問題を考える上において大変貴重な御指摘であったというふうに承りました。
  81. 山本拓

    山本(拓)委員 それでは、秋田仁志弁護士、お願いいたします。
  82. 秋田仁志

    秋田参考人 大阪から参りました弁護士の秋田仁志でございます。  許された時間の範囲内で、私の方から三点御説明させていただきたいと思います。  一点は、私が弁護士として経験しました行政訴訟、住民訴訟において、現在の文書提出命令規定がどのような問題点を有しているか、及びそれに対して、現実に行政証拠収集に対してどのような対応をとってきているのかということを御説明したいと思います。  第二点目は、今審議が開始されようとしております民事訴訟法改正問題、特に文書提出命令規定がこの問題にどのような影響を与えるのかということについて、私の意見を申し述べたいと思います。  最後に、第三点目としましては、法制審議会でこの問題がどのように議論されてきたのか、その点についての問題点の指摘を私の意見として述べさせていただきたいと思います。  まず第一点目の、私が弁護士として経験いたしました行政訴訟について御説明いたします。私が行いましたのは、地方自治法二百四十二条の二によって行われます、いわゆる住民訴訟という訴訟であります。典型的な証拠偏在型訴訟、つまり原告が証拠をほとんど持たずに訴訟をスタートせざるを得ない状況にある訴訟としてしばしば取り上げられる訴訟類型であります。  昨年、全国で官官接待の問題が取り上げられ、国民の非常に厳しい批判が起きたことは御承知のとおりでありますが、私が業務をしております大阪では、実はこれにさかのぼります七年前に同様の問題が発生しておりました。当時大阪市では、交際費と食糧費合わせまして約十億円の接待費が使われておったわけですが、そのことが、一職員の食糧費を使った、公金をだまし取るという事件を通じて発覚しまして、地検特捜部の捜査を通じまして、極めて税金の使い方の手続がずさんである、目的もでたらめであるということが報道されました。この問題は七年前ですが、大阪では非常に市民の関心を集めた問題であります。  この官官接待という問題は、確かに天下国家のあり方を決定するような問題ではないのかもしれませんが、やはり公務員のモラルの低下、それから、それに対する市民の行政、政治に対する信頼の低下を招くという意味では、決して見逃すことができない、小さくない、決して小さい問題ではないというふうに私は考えます。  この問題について、約十億円の食糧費がどのように使われていたのかということが住民、市民には明らかにされなかったために、市民の方から私に相談がありまして、この住民訴訟という手続をとってほしいという依頼がありました。私の方でその住民訴訟を提起したわけですが、やはり提起の段階ではほとんど証拠がないという状態で訴訟を提起したわけであります。  この訴訟でどういう証拠が、文書が、情報が必要になるかと申しますと、行政が食糧費という公金の予算を執行するに当たってつくった資料であります。いっ、幾ら、だれに対して、どういう目的でお金を使ったのか、それをだれが決裁したのか、そこにはだれが出席していたのかということが記載された文書であります。これは行政の機関の内部にきちんと保管されているわけであります。これに対して、これがわからなければ、原告の方としては、問題となっている支出が違法であるのかどうか、いつ行われたのか特定をすることすら難しいだけではなくて、本当にあったのかなかったのかすら正確にはわからない。裁判所にとっても同じことであります。  そこで、裁判所の方から行政、この場合は大阪市でありましたけれども、再三にわたって資料を裁判所に提出するように要請がなされました。けれども、大阪市の方ではその要請を全く拒否します。すべて拒否いたしました。証拠保全という形で、裁判官がみずから市に出向いてその要請まで行いましたけれども、それに対しても出せないということで断られております。  そこで、原告として最後の手段として、文書提出命令申し立てを行いました。ところが、その結論は、文書提出命令は認められないということで却下となっております。その理由は、大阪市の内部の文書であって、住民のためにつくられた文書ではないという、現行法の限界を私たちが痛感する決定でありました。結局私どもは、訴訟手続を通じては証拠を何ら入手することができなかったわけであります。  ところが、この事件の結論を先に申し上げますと、原告の勝訴という形で、形は和解でありますが終わっております。最初に申し上げるのを忘れましたけれども、住民訴訟といいますのは、自治体において違法行為があった場合に、自治体にかわって住民が訴訟を起こすということでありまして一住民が勝つということは、むだに使われた、違法に使われた税金が自治体に戻っていくということを意味します。本件でも、全体の額に比べれば少ないかもしれませんが、三千万円以上の金額が自治体に戻りました。  それでは、どうして訴訟手続を通じて証拠がとれなかったにもかかわらず被告賠償に応じなければならなかったかといいますと、この事件では、冒頭に申しました発覚した詐欺事件で、職員に対し有罪判決がおりておりました。地検の捜査が徹底的に行われた。その刑事記録が地検から裁判所に送られたからであります。その資料が出てきて初めて、被告らも違法な行為の存在を最後まで否定することはできなかったという経過がありました。  しかし、今申し上げたような、刑事事件証拠で使えるというのは極めてまれな事案でありまして、現在全国で多数起こっております住民訴訟は、この証拠収集の非常に厚い壁に阻まれて請求が認められないという状態が実情であると思います。この点につきましては、大阪市の一連の事件の中で判決自身も、裁判所自身も、この住民訴訟によって利益を受ける自治体がなぜ市民に協力しないのかと、そのことによって市民が非常に困難な訴訟を強いられたということを明確に指摘しております。  現行民事訴訟法では、このように住民が自治体における違法行為を立証する証拠収集方法を持っていない。それでは、今回の改正案でその点はどのように是正されるのであろうか。これは全国の多くの人々がかたずをのんで見守っていたところであります。ところが、残念なことに、私どもがこの改正案を見ます限りは、今後も証拠は出てこないのではないかというふうに考えております。  まず、理由は二点であります。  一点は、提出の拒絶要件としまして、「公務員の職務上の秘密」、それから公共の利益を害する場合、それから「公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれ」という、このどれかに、特に後の二者の要件については、どちらかに当たればこれは出さなくてよいということになっております。今全国の自治体で運用が始まっております情報公開条例の中で、この「公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれ」という規定によってどれだけの文書が出なくなっているか。仮にこの改正案がそのまま通りましたならば、今住民訴訟で出ていない文書は、同じくこの支障の生ずるおそれの部分で出てこないのではないかというふうに危惧しております。  私は、市民の、国民の一般の感覚からしましたら、盲官接待の資料が職務上の秘密に当たるのかというふうに疑問は持ちますが、必ずしも裁判所が、これは秘密ではない、支障が生ずるおそれはないというふうに言い切る状況では決してありません。非常に裁判所はその点は、謙抑的と申しますか、行政の裁量に踏み込むことに対しては消極的であります。  それから、第二点目ですが、今申し上げました裁判所判断の点について、今回の改正案では、先日の長尾法務大臣の御説明によれば、あくまで行政庁の判断の枠内で文書の提出の義務の拡大を図るのであるという御説明がありました。もし裁判所判断を仰がずに行政庁の判断のみによって文書提出義務の可否が決まるということになるのであれば、今後、今申し上げてきたような文書についてはもちろんのこと、非常に広範な文書について出ないということを、私は現実の経験から、これは間違いなくそうなるのではないかというふうに危惧しております。  私が属しております日弁連は、これに対して修正の意見を出させていただいておりますが、やはり証拠がきちんと提出されるためには、その提出を拒絶できる要件をきちんと絞るということと、裁判所がその文書を見てきちんと判断するということの歯どめがどうしても必要であると思っております。  裁判所がその文書を見なければどうなるかということについて一点だけ申し上げますと、平成四年に、ごめんなさい、ちょっと日を忘れましたけれども、最高裁の判決が、これも官官接待に関する資料について出されております。  そこでは、個人の名前が文書の中に書かれているかどうかが約十年間の訴訟の中で争われ続けてきたわけです。ところが、実際に私がその公開された文書を見てみますと、個人の名前なんか出ていない。ところが、行政側から出た証人は、個人の名前が出ているというふうに法廷で説明しているわけです。裁判所はその文書を実際に見ていないわけですから、そういうふうに言われてしまうと、出ているのではないかということで、それに対しても判断していかざるを得ない。裁判所がその文書を見ずに判断していくことがいかに困難であるかということを物語っている事案だというふうに私は思います。  最後に、法制審の議論について一点だけ意見を申し上げます。  法制審では平成二年からこの民訴法の改正問題について御議論されてきました。ちょうど私がこの事件をやっている六年間と重なります。また、今問題になっております薬害エイズ訴訟で、被害者の方が厚生省に資料を出してくれと言い続けてきた期間にも重なっております。  ところが、法制審で、この公文書の提出義務の範囲について、実際にこれからどのような文書を訴訟に出していくことによって司法を充実していくのかという議論が本当にされていたのか、こういう規定にすることによって、この文書が出なくなるのではないか、こういった文書が出てくるのではないかという議論が、このエイズの問題であるとか、古くから言われてきた住民訴訟の問題、それ以外の問題も含めて、具体的に検討されてきた形跡を私は見ておりません。極めて抽象的な議論に終始しておったというふうに私は思います。その結果が今回の改正案の内容だというふうに私は感じています。  何とぞ、行政のみの判断証拠を出す出さないが決まってしまうということではなくて、国民が正しい司法判断を受けるために必要な証拠がきちんと出てくるという民訴法の改正の出発点が本当に実現されるように、この国会の御見識に強く期待しておるところであります。  以上です。
  83. 山本拓

    山本(拓)委員 民事局長、再三済みませんが、秋田弁護士のコメントに対して、一言コメントをお願いします。
  84. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 ただいまの秋田参考人の御指摘の中心は、今回の民事訴訟法案についての御批判及び法制審議会の審議についての御意見であったと考えております。  私どもが提出しております今回御審議いただくことになっております民事訴訟法案趣旨につきましては、けさほど大臣から御説明をさせていただいたところでございますし、また、先般本会議貝沼先生の御質問に対して、どういう理由でこういう法案として提出させていただいているかということを御説明させていただいたところでございます。  この法案の趣旨あるいは法制審議会の審議経過等については、私どもからいろいろ申し上げたいこともございますけれども、まだ審議の段階でございませんので、大臣が申し上げた以上のことをこの場で申し上げるのは差し控えさせていただきたい、また、本委員会における審議におきまして、十分御検討いただき、また御質問があればお答えをさせていただきたいというふうに思っております。
  85. 山本拓

    山本(拓)委員 それでは最後に、大臣のコメントをいただく前に、三弁護士の皆さん、今ほど秋田弁護士には今回の民訴法改正についてのコメントも含まれておりましたけれども、樋渡弁護士、清水弁護士それぞれに一言ずつ、今回の民訴法改正案についてのそれぞれの立場からの御意見を簡単に承りたいと思いますし、また秋田弁護士につきましては、何か言い忘れたことがありましたら、引き続き一言お願いを申し上げます。  それでは、樋渡弁護士。
  86. 樋渡俊一

    樋渡参考人 改めて私から述べるほどでもないことですけれども、裁判において重要なことは事実だということでございます。裁判という手続は、事実を認定して、その事実をもとに法律を適用する、それが裁判手続かと存じますけれども、あくまでその前提は事実だということであります。事実が何かということがはっきりしなければ法律の適用のしようもないということです。その事実を認定するために、できるだけ多くの証拠資料が裁判所に出されることが望ましいわけでございます。  特に行政がかかわる事件につきましては、住民の側、国民の側は資料というものを十分持っていないことが普通でございまして、その証拠の偏在という問題があるわけです。裁判手続におきましては、行政住民もすべて平等でありますので、それぞれが持っている資料を出して、それで、それをもとにお互いに議論して、意見を交わして、それをもとに裁判所判断をする、それが裁判のあるべき姿ではないかと思います。  ですので、民事訴訟法改正につきましては、そういった事実ができるだけ裁判所に提出されるような、そういう法律づくりをぜひお願いしたいと思います。それが私の意見でございます。
  87. 山本拓

    山本(拓)委員 それでは清水弁護士、お願いいたします。
  88. 清水勉

    清水参考人 最初にも言いましたけれども、本来であれば、私は一般消費者の事件の話をしなきゃいけないのかもしれないのですが、きのうも薬害エイズの遺族の方と話をしていまして、なぜもっと早く事実を教えてもらえなかったのだろうかということをやはりお父さんが電話の向こうでおっしゃっていました。この裁判についても、そのお父さんの息子さんも、裁判を起こすときには生きていました。しかし、この七年間の裁判の間に亡くなりました。  そういった原告がたくさんいるわけですけれども、この事件が広がろうとしていた時期、八二年、八三年、あるいは私たちが裁判を起こした八九年でもいいのですけれども、とにかく事実を早く知らせてもらうということが、この被害の拡大、それから被害者が亡くなっていくということを阻止することに一番の意味があったはずです。そういったことをこの事件は教えているわけで、よりによってこの時期に民訴法改正をしてこういった重要な文書が出てきにくくなるということは、一体この日本という国は歴史の教訓というものをどう考えているのかということを疑わざるを得ないと思います。  人間の命が次々に失われていくというこの事件、その原因が情報隠しにあったということはもう明らかな事実であります。この事実を教訓にしなかったらば、民事訴訟裁判の中でも、今後、こういった事件、引き延ばしの中で被害者が亡くなっていく事件というのが繰り返されることになるかもしれません。いや、絶対になります。今の民訴法の手続よりももっと悪くなるのですから、なるに決まっています。そういったことをぜひ先生方で阻止していただきたいと思います。  私も、薬害エイズの弁護団の一員として、それから弁護士会の一員として全力で頑張りたいと思いますので、よろしくお願いします。  ありがとうございました。
  89. 山本拓

    山本(拓)委員 秋田弁護士、何かございますか。
  90. 秋田仁志

    秋田参考人 民訴法の改正の問題につきましては先ほど申し上げたことに尽きておるわけですが、一点だけつけ加えさしていただきますとすれば、やはり、国民の司法に対する期待、司法制度を充実させるために民訴法を改正しようとして始まったこの議論の出発点をきちんと確認していただいた上で、事実に基づいて、実態に基づいてこの議論をしていただくようにお願いしたいと思います。  一つは、確かに、規定上広がったのか広がっていないのかという議論はあります。そういう議論も必要ではあるとは思いますが、実際に新しい規定でこれだけ国民のために証拠が出るようになりましたと、それが出ても国政の運営、行政の運営にも支障がないようにきちんとした法律になっていますという議論を、実際の現場の状況をきちんと確認していただきながら議論を詰めていただきたいというのが最後のお願いであります。
  91. 山本拓

    山本(拓)委員 それでは法務大臣、きょうは今ほど、第一線で御活躍をいただいている弁護士三名の方からいろいろ御意見を承ったところでございますが、この三名の意見を承ったところで、大臣として感想をひとつお願いをいたします。
  92. 長尾立子

    長尾国務大臣 きょうは、三人の参考人の方から主として行政情報の公開ということについて御意見を承りました。大変重要な御指摘が多く含まれていたように伺ったところでございます。  その情報公開について行政機関側の認識が基本的にはまだまだ十分とは言えないのではないかと、例えば、情報公開と広報という全く違う種類の概念についての十分な区別がないのではないか、情報公開というものが住民にとってどれほど重要な意味を持っているか認識がまことに不十分であるという厳しい御指摘もいただいたように思うわけでございます。住民に開かれた情報、司法の分野におきましてもその前提に立った諸手続が行われていかなければならないという御意見であったかと思います。  これから民事訴訟法の御議論をいただくことになるわけでございますが、きょうの御意見、今後の御審議の中で私どもも考えさしていただく十分な、いろいろな観点を、論点を含んでおられたようにお聞きをいたしました。
  93. 山本拓

    山本(拓)委員 それでは、参考人の御三名の方にはありがとうございました。もうお引き取りいただいて結構だと思いますので、よろしくお願いいたします。
  94. 加藤卓二

    加藤委員長 参考人各位に申し上げます。  本日は、お忙しい中を御出席いただき、ありがとうございました。  御退席いただいて結構でございます。
  95. 山本拓

    山本(拓)委員 民訴法改正については来週から本格的な審議が始まるところでございます。  ただ、ここで一点だけ大臣に確認だけさしていただきたいと思うわけでありますが、さきの本会議で我が方の貝沼議員が代表質問をしたところでございます。その中で、行政文書の提出問題について、いわゆる情報公開法が決まったら、それと整合性を図る趣旨のことを答弁なされておられたところでございますが、今までの前例と申しますか、といいますと、法律というのは、既にできた法律がもとになって、そして検討されて、そして新しいものができていくというのがどちらかというと法律のでき方ではなかったかと思うわけでありますが、今回大臣が申し述べておられるように、後ほど情報公開の議論が決まれば、それに整合性を合わせる形でまた検討してまいりたいと。我々が心配しているのは、逆に今回の民訴法が原案のままで決まったら、それに整合性を合わせて後の情報公開の法律が進むのではないかと。過去の前例からいうと、大体決まったやつをもとにして整合性を合わしていくんですね。だから、大臣のその逆の御答弁というのは、まあいわゆる、今後できた法律は後でできた法律に合わせて大いに改正すべきだというそういう考え方の転換を意味すると理解してよろしいんでしょうか。
  96. 長尾立子

    長尾国務大臣 今委員が御指摘になりましたように、行政情報の公開のあり方につきましては今さまざまな形での御議論が行われておるわけでございます。私は、そういった御議論というものをやはり民事訴訟手続においても十分考えていかなければならないということを申し上げたわけでございまして、今委員は、具体的には、この民事訴訟法制定以後新しい情報公開のシステムが確立された場合には、それに即応した形でもう一度その部分を考え直すのかという御趣旨であると受けとめさしていただくならば、それはそのとおりであるというふうに申し上げられると思います。
  97. 山本拓

    山本(拓)委員 まあいずれにいたしましても、いつも大体そういう話はあっても、それが通ってしまうと、結局逆に、今決まった考え方でそれに整合性を合わせて新しい法律ができてくるというのが、今まで幾つ法律が成立した過程を見ますとそういう前例になっているわけでございまして、そういうことに対して我々は大変危惧をいたしているところでもございます。  特に、法律、いろいろな役所で検討する場合もございますし議員立法もありますが、特に、議員立法の場合は別でありますけれども、閣法、内閣から出してくる、役所サイドから検討するやつは大体それが前例でございますから、やはりそういう前例を崩すということが明確に今の答弁ではちょっと私は受け取れないところもございました。これにつきましては、今後の審議の中でまた議論を深めさしていただきたいと思います。  それではあとの残り時間、いろいろと私は、行政権限のあるところに最近行政責任がなくなったのではないかという日ごろからの疑問を持っておりまして、それに対しまして、せっかく時間をいただきましたので、他省庁の方にも来ていただいて、ちょっとそこらあたりを御質問さしていただきたいと考えているところでございます。  まず初めに、科学技術庁の方、来ておられますか。——私自身が住まいしているのが福井県でありますから、福井県といえば原発地帯であると。原発地帯の中で、特に「もんじゅ」につきまして我々として、福井県民として受け入れた経過から見まして、今回の「もんじゅ」の事故が起きまして、その後の対応につきましては非常に不信感がわいているところでもございます。  具体的にお伺いいたしますけれども、原子力行政の中で幾つ法律規定をされている中で、動力炉・核燃料開発事業団法第四十条には「事業団は、内閣総理大臣が監督する。」となっているわけでございますが、「もんじゅ」については、「もんじゅ」の事故防止の監督責任というのですか、監督責任というものが、この「内閣総理大臣が監督する。」というこの「監督」に含まれているのかどうか、そこらあたりをちょっと明確に教えていただきたいと思います。
  98. 武山謙一

    ○武山説明員 御説明させていただきます。  動力炉・核燃料開発事業団法におきましては、内閣総理大臣の監督といたしましては、動燃事業団の業務の中で、原子炉につきましては「ふげん」とか「もんじゅ」、これの研究、こういうことをやることについての監督はございます。  安全面につきましては原子炉等規制法、核原料物質、核燃料物質及び原子炉等に関する規制、これの法律でございますが、こちらでも見ておりまして、先生御指摘のところでございます動燃事業団法でどこまで見て、それから原子炉等規制法でどこまで見るかということは、必ずしも一つの線で明確に引き分けることはちょっとできないようなところがあるところでございます。  したがいまして、動燃事業団の監督において、研究においてどこまでの安全性というものを細かく見ていくか、ここのところはそれぞれの状況に応じて判断をしていく状況になる、このように理解しております。
  99. 山本拓

    山本(拓)委員 例えば、原発はいろいろありますから、では、「もんじゅ」についてまず聞きますけれども、「もんじゅ」は、福井に話を持ってきたときには、国が高速増殖炉事業を国策としてやりたい、だからそれを場所として受け取ってくれという話で、国から来ているわけですね。それで、県としては、国が責任を持ってくれるならいいですよということで受け入れた。ところが、それは当然国が直接やるわけじゃないですから、国の方から「もんじゅ」は動燃にやらせますよということで持ってきた。ところで、県は、動燃というのは心配ですから、動燃が実際やるなら直接監督、県レベルで、地方行政レベルできちっと権限を与えてくれという要請をした。ところが国は、それはできない、紳士協定は結べばいいけれども、きちっと国が責任持ちます、安全も国が責任持ちますということを一貫して言ってこられてきたわけですね。  ところが、今回「もんじゅ」の事故が起きて、中間報告のどこを見ても、要するに、「もんじゅ」、いわゆる動燃が悪いんだということでございまして、これは動燃が悪いのはわかりますけれども、我々は動燃を信頼してきたというよりも国を信頼してきてやっておるわけですから、この責任がどうも明確にはっきりしないところでございまして、だから科学技術庁、責任問題、別に具体的にだれが悪いこれが悪いというのじゃなしに、極めてそこが不明確なのが不安でならないわけでございます。  もともと原子力行政というのは、一元的に国に責任があるというふうに理解をいたしておるわけでありますが、これはやはり事業者にあるのです、国と同等に責任を持って、安全、事故防止ですね、あるのか、それともあくまでも原子力行政は国に一元的に責任があるのか、それとも事業者と抱き合わせて二元的にあるのか、それはどちらなんですか。
  100. 武山謙一

    ○武山説明員 御説明いたします。  原子炉の安全確保につきましては、先ほど申しましたが、原子炉等規制法で所要措置を講じるということになっておりまして、具体的に、原子炉設置者が保安のための措置、いわゆる保安規定制定いたしまして、それを守るということで、その安全確保を図るということになっております。  先生御指摘のように、今度の「もんじゅ」の場合には、いわゆる技術的な面の問題とそれから情報を適切に出さなかったという面がございます。その原子炉等規制法の前提になっておりますのは、保安規定を守るということでございますので、やはり最初の保安につきましては、一義的には動燃事業団がそのあたりの責任は負っている、このように解釈しております。  ただ、動燃事業団が情報を出さなかった、そのものにつきましては、それは原子炉等規制法の考えでいたものと少し離れたところになりますので、先ほど申されました動燃事業団を監督するという観点から、そのあたりはあるのかなというところでございますが、いずれにしましても、そのあたりの詳細の調査は現在進めているところでございます。
  101. 山本拓

    山本(拓)委員 私が聞いているのは、後の、事故が起きてビデオを隠すとか情報を隠すとか、そういう次元の話ではなしに、要するに、原子力の災害の場合、事故が起きて、そして例えば火事が起きたら初期消火、そういう問題の責任というものが明確になっていないと危なっかしくてしょうがないということなんですね。  では、これは何かはっきりしないから具体的に聞きますけれども、御存じのとおり、「もんじゅ」の事故が昨年十二月八日ですか、有名な、何遍もあれしているから知っていると思いますが、十九時四十七分ですか、火災警報が鳴りました。そしてナトリウム漏れの警報も鳴りましたよね。そのときのいわゆる現場責任者というのはだれになるんですか。
  102. 武山謙一

    ○武山説明員 御説明いたします。  保安規定におきましては、各職位においてその職務を制定しておりまして、運転に関しましてはプラント一課長、これが責任を持っているということになっております。その下に当直長がおりまして、プラント一課長のもとで当直長は実際の運転操作をするということになっております。かつまた、異常が発生した場合には当直長が応急の措置をし、その後プラント一課長対策を講じるということになっておりまして、その事故が発生した、警報が鳴ったその瞬間の判断の責任はということになりますと、やはりますは当直長が判断をして応急措置をする、それからプラント一課長がその連絡を受けて行うということになっております。  それとともに、原子炉主任技術者が制定されておりまして、原子炉主任技術者は、またそれらの連絡を受けて総合的に技術的な面での判断をする、このようになっておりまして、だれがすべての責任を負っているかということになりますと、保安規定上も当直長がまず第一のことはやるというふうに読める、このように考えております。
  103. 山本拓

    山本(拓)委員 保安規定に、十五条十五号ですか、これはもうよく言われているところですが、非常時のときにはとるべき、どのようにとるかということを前もって動燃から設置許可を出すときに保安規定を合意していますよね、認めていますよね。その中に、もともと「もんじゅ」のときには、ナトリウムというものは危険だから、漏れる漏れないの事故が裁判でも争われていましたから、これについてどうするかということは特に二重丸で裁判でも、科学技術庁含め、動燃も述べているところでございますね。  そういう中で、ナトリウムが漏れた、警報が鳴る。そうすると、保安規定には、まず炉をとめる、そして当然火災をとめないといけませんから窒息消火をしなければなりませんから、火災警報が鳴ったらすぐ窒息消火をする、ダクトをとめるという保安規定規定がありますよね。これは今回の「もんじゅ」事故のときに、この当直長はそれを実行されなかったですね。それはお認めになりますね。
  104. 武山謙一

    ○武山説明員 御説明いたします。  実は二月九日に科学技術庁安全局の方で取りまとめて公表いたしました資料にも書いてございますが、今回の場合、保安規定の下部規定になります異常時の運転マニュアルというのがございます。幾つかまた種類がありますけれども、その中の記載の整合性がどうもとられていなかったというところがございました。  実は、漏えいが起きた時点で、漏えいの規模がどのくらいであったかという初期の判断が非常に難しい面があった。当直長は小規模の漏えいと判断して、必要な措置は講じている。すなわち緊急の停止はせずに、原子炉の停止操作というのは十分後に行っております。したがいまして、結果として見た場合には、途中から緊急停止に切りかえたわけでございますが、この当直長の行った行為が保安規定に本当に外れているのかどうかということは、もう少し細かく調べてみないとちょっとわからない部分もございます。
  105. 山本拓

    山本(拓)委員 ここにその保安規定があるのですよ。これはもう役所にあるものですが、「火災検知器の信号で空調ダクトを全閉する、火災の拡大を防止できるようにする」ということが明記してあるわけですね。ナトリウムが漏れた、そうすると当然火災が起きるわけですから、火災が起きないように窒息消火する。大体もう、火事だといったときに、要するに火元を消す、そしてダクトをとめる、その二点なんですね。そうでしょう。違いますか。それが現実問題としては、ダクトを閉めたのは三時間以上たってからということであります。  科学技術庁として例えば安全管理をする場合に、動燃の事故が起きた、そして初期の段階での対応をする、そこらあたりの法的なマニュアルは唯一これですね、実際法律上裏づけされた手順というのは。それは認めますよね。どうですか。     〔委員長退席、佐田委員長代理着席〕
  106. 武山謙一

    ○武山説明員 御説明いたします。  先生が今、法律上裏づけされた規定とおっしゃいましたところでございますが、法律上認可しているのは保安規定でございまして、その下部のマニュアル類につきましては、設置者の自主保安の観点から作成しておりまして、その内容については認可事項には実はなっておりません。
  107. 山本拓

    山本(拓)委員 先月安全局長が、保安規定には、警報が鳴ったら、ダクトを閉めるということにきちっとなっておりますというふうに述べておりますが、その局長答弁は間違いということですか。
  108. 武山謙一

    ○武山説明員 御説明いたします。  保安規定には、異常時の具体的な手順というものは明記してございませんで、保安規定に基づいて動燃事業団が作成しております異常時の運転マニュアルの中に、火災報知器が発動した場合には炉を緊急に停止するフローチャートというのがございまして、そこのところを局長答弁をした、このように理解しております。
  109. 山本拓

    山本(拓)委員 立地している者、また広く国民にしてみれば、原発の事故が起きたときに、例えば「もんじゅ」で事故が起きたときに、火災が広がって、そして二次的に災害が起きて、サイトの外に拡散したときには手おくれなんですね。  結局、火災報知機が鳴ったときにまずとめるということ。これは、非常事態のときの監督責任というのは科学技術庁にありますね。
  110. 武山謙一

    ○武山説明員 御説明いたします。  非常時に火災拡大防止、そういうことで炉をとめるというところの監督責任でございますが、これは、先ほど申しました原子炉等規制法の観点からいいますと、保安規定で設置者がそこのあたりは責任を持ってやるというふうになっておりますので、異常があったから、即科学技術庁の方からすべてについて指示をするというような形には実はなっておりません。
  111. 山本拓

    山本(拓)委員 それじゃ明確にお聞きしますが、「もんじゅ」の事故が起きたときには科学技術庁には監督する責任はないと。非常時の手順というのが出されておりますけれども、それに沿ってきちっと守らせる監督といったものが科学技術庁にはないということで理解してよろしいですね。
  112. 武山謙一

    ○武山説明員 御説明いたします。  すべてについてないということではございません。今申し上げましたのは、事故が起きて直ちに対応をすることについて、それは科学技術庁にはないということでございます。例えばこれが放射性物質を外に出すような被害ということになりますれば、防災の観点から、科学技術庁がそのあたりを所掌しておりますので、そういうようなところは当然出てくる、このように考えております。
  113. 山本拓

    山本(拓)委員 放射性物質が外に出るときにはもう遅いのですよ。  だから、火災報知機が鳴ったときに初期消火をするという手順が、まず炉をとめる、そしてダクトをとめる、それが最低限必要だということはお認めになりますね。
  114. 武山謙一

    ○武山説明員 御説明いたします。  ナトリウムの特殊性ということを考えますと、やはり漏えいが起きたときには炉をとめて燃焼を防止するということの必要性は確かにございます。したがいまして、今事故調査を進めておりますが、そういうようなナトリウムの特殊性ということをも加味いたしまして、そのあたりの今後の対策というものも考えていきたい、このように考えております。
  115. 山本拓

    山本(拓)委員 今後の話では遅いのです。今の話を聞いているのです、私はつ  だから、今回の事故で、何遍も聞きますけれども、科学技術庁の安全局として、ナトリウム漏れのベルが鳴った、火災報知機のベルが鳴った、そのときには炉をとめて、ここに書いてあるように窒息消火をするということの必要性はお認めになりますねということをはっきりお聞きしているのです。
  116. 武山謙一

    ○武山説明員 御説明いたします。  確かに、報知機が発動し、ナトリウムの漏えい検出器も作動し、そのような状況になりますれば、直ちに炉をとめてナトリウム延焼が起きないように措置をするということは必要だ、このように考えております。
  117. 山本拓

    山本(拓)委員 そうすると、今回現場監督というのはそれを少なくとも怠ったということでございますから、逆に言うと、そういう必要なことをさせる監督責任というものは持っているということですか、持っていないということですか、科学技術庁として。
  118. 武山謙一

    ○武山説明員 御説明いたします。  そういうことをやることにつきましては、やはり原子炉等規制法の精神からしますと、一義的にはまず施設者にある、このように考えておりますので……(山本(拓)委員「監督」と呼ぶ)ですから施設者にあると考えておりますので、それを、施設者の意向を、何といいますか、横に置いて、科学技術庁がすべてについて監督するということはなかなかちょっと難しいところがあるかなと思います。  ちょっとそこのあたり、先生の御質問のところは非常にいろいろな事象が、事象といいますか、ことが関係しておりますので、そのあたりは慎重に検討させていただきたい、このように考えております。
  119. 山本拓

    山本(拓)委員 いろいろな事象が絡んでいるって、どんなことですか。そんな難しいことじゃないでしょう。  だから、日ごろから動燃がやっていることを一々目を光らせているわけにはいかないということはわかるのですよ。事故が起きた、ベルが鳴った、動燃はちゃんと科学技術庁に報告しているわけでしょう。報告した時点で監督責任がわくんじゃないですか。  炉が破壊してから、さあとなったときに国が出ていったって遅いわけで、今回の阪神大震災みたいなもので、地震だといったときにどうする。事故だといったときに、炉をとめる、ダクトをとめる。それが明記してあるんだったら、まず報告を受け取った監督者としては、それをやっているか、それが監督責任者としてのやるべきことではないですかということを言っているのですが、そういうことをやる責任は持たないということですか。どっちでもいいですよ、はっきりしてください。
  120. 武山謙一

    ○武山説明員 御説明いたします。  そういうような報告を受けて、炉をとめる、それから必要な措置を講じるということが行われているかどうか、それを見るという監督責任はあると考えております。
  121. 山本拓

    山本(拓)委員 ということは、今回十九時四十七分、ベルが鳴った。そして、少なくともダクトをとめたのが十一時過ぎだった。三時間です。だから火が少し燃えましたね。あれは早目にきちっと窒息消火しておけばよかったわけです。その監督責任はやはり怠ったということはお認めになりますか。
  122. 武山謙一

    ○武山説明員 御説明いたします。  適切な監督ができるかどうかという前提は、設置者の方から正しい情報が入ってくるかということにも関係してまいると思います。今回の場合はどういう情報が入ってきたかを考えますと、設置者の方からは、漏えいの規模から考えてとにかく通常停止を行った、とにかく炉は停止したんだ、こういうような情報が来ておりまして、そのほかの情報は実は非常に混乱しておりました。ですからそこのところで、今回のことに対して監督責任を怠ったかどうかということは、それはちょっと不明瞭なところがあると思います。  基本的には、規制当局といたしましては、それらの情報をもとに必要な指示はしていた、このように考えております。
  123. 山本拓

    山本(拓)委員 それでは、必要な指示はしていたということは、炉をとめろという指示はしたということですか。
  124. 武山謙一

    ○武山説明員 御説明いたします。  炉は既に停止操作に入った……(山本(拓)委員「ダクト」と呼ぶ)ダクトについては、これは情報として動燃の本社から入ってきたときには、どうもダクトはとまったらしいということがございました。それから、その後確認したら、どうもダクトについてはわからないということもございまして実は非常に混乱いたしまして、ここのところは、適切な指示があったかどうかということはちょっとわかりません。
  125. 山本拓

    山本(拓)委員 安全局長は以前どこかの委員会で、そういう指示はしなかったというふうに明言いたしております。それだけは確認しておきます。  そこで、情報が入ってこない。入ってこないから監督責任が逃れられるのですか、普通。入ろうと入るまいと、ランプがついた。そうしたら、まずやるべきことは二つでしょう。炉をとめる、ダクトをとめる。それ以外の判断は後回しですね。それはお認めになりましたね。  今の話だと、情報が入る入らないといったって、現場に運転専門官がいたじゃないですか、職員が一人。それはよそへ出ていって十時ごろに戻ってきましたけれども、それからまだ一時間半もほったらかしにしたというわけですね。だから、調べようと思えば調べられたわけでしょう。  だから、私が何遍もお聞きしているのは、監督責任は確かこ  あなたの言いわけが通るのなら世の中だれも、裁判のあり方も変わりますよ、刑事局長であれ、だれであれ。要するにそういう監督責任がある。結果的にそれがならなかった。その中間に、現場の情報が混乱していた。それはそれの問題として、結果的に監督責任というものは怠ったということは言えますよね。
  126. 武山謙一

    ○武山説明員 御説明いたします。  結果として監督責任を怠ったかということでございますが、そこのところが非常に難しいと考えておりますのは、動燃事業団の担当の当直長は、自分は正しいことをやったと考えておりますし、それらの情報に基づいて規制当局においても、確かに具体的な指示はいたしませんでしたが、その場では必要なことはやったのではないか、こういうふうに考えております。それから運転管理専門官につきましても、一応仕事が終わってすぐ連絡が入りましたのですぐサイトに向かい、サイトの状況を本庁に伝えるということで、そういう面では適切な仕事はやったというふうに考えております。したがいまして、監督責任を怠ったかどうかということは非常に不明瞭な、申しわけございませんが、不明瞭なところだというふうに考えております。
  127. 山本拓

    山本(拓)委員 しかし往生際が悪いですね。きょうは時間が十分ありますから、しつこく聞きます。  保安規定には、火災報知機が鳴ったらダクトをとめる、そういうことが書いてある。書いてあるんですよ。じゃ、そういうことは必要ないということですか。一番最初、ダクト。炉はとめました。しかし、このとめ方も遅かったですけれどもね。だけれども、少なくとも直ちにダクトをとめて火災を防止するということは、これはナトリウム漏れ事故の火災防止に対しては最低限必要だということは今お認めになりましたね。当然現場の責任者としては、事故だといったときにまずそこを確認、またそこを徹底することが責任者としての役割だったというふうに今になっても思いますね。そうですね。まあこれは時間がむだですから、確認です。  だから当然、現場監督の緊急時になすべきことについて、やはりその監督官庁である科学技術庁、とりわけ安全局の担当につきましては、それをまず確実にさせるということが監督責任としての役割ではないのですか。その役割はないのですか。怠ったか怠らないかと言うとなかなか逃げてしまうから、それをさせるのが監督責任として担っていることじゃありませんか。それは担っているということですか、それとも担っていないということですか。担っていないのなら、担っている人と話をしなければいけませんし。そうでしょう。
  128. 武山謙一

    ○武山説明員 御説明いたします。  規制当局の職務としましては、保安規定に基づいた措置がきちんと行われているかということを監督する責任は担っている、このように考えております。
  129. 山本拓

    山本(拓)委員 担っているということであれば、結果的に、火災報知機が鳴った、そしてダクトは結局、現実問題として何時にとめたというのが出ていますからね。十九時四十七分に火災報知機が鳴って、ダクトをとめたのが三時間後の二十三時ですから、これは直ちにと言うわけにいきませんね、三時間回しつ放しですから。わあっと燃えていたんですからね。下手に漏れ方がひどかったら大変な事故になっていたわけです。住専のおかげで科学技術庁は今回随分助かっていますけれどもね。この問題だけ取り上げたら大変な問題だったと私は認識しているのですが、そういう中で三時間、いわゆるその保安規定のとおりの措置は今回しなかった、結果的に。これは事実関係が出ていますから。それはお認めになりますね。
  130. 武山謙一

    ○武山説明員 御説明いたします。  先ほども申しましたとおり、ダクトをとめるということについては保安規定では明記されておりませんで運転マニュアルになっておりますが、要するに、異常時の場合にはまず応急措置をとる、それから必要な措置をとるということが書かれていまして、その中の措置の中にそういうことが入るということで、下の異常時の運転マニュアルの方に入っているわけでございます。  全体の操作を見ましたときには、通常停止に入りまして、それから途中で緊急停止に入りましてというところがございますので、保安規定の観点からするとそこから逸脱したものではないかもしらぬ、しかしながら、規模を早く適切に把握してすぐに原子炉を緊急停止すべきであった、また、ダクトが回っていたということも早く気がついてそれをとめるべきであったということは後になって判明しましたので、そのあたりは、今後そういうところを改善していくということで今検討しているところでございます。
  131. 山本拓

    山本(拓)委員 保安規定に載っていないといったって、今まで局長の話では、保安規定に書いてございますと。  そのマニュアルというのは、動燃が個別的に持っているマニュアルと、そしてもう一つは、ちゃんと最初に申請時に国に出しているマニュアルと、これは二つ別個別個にあるのですか。国に出してあるものにはきちっと入っていますよということで、全く国に出していない個人的なマニュアルにはまた違うことが書いてあったらしいですが、少なくとも最初の申請時に出してあるものはダクトも載っているというふうに答えていらっしゃいますが、どっちが正しいのですか。
  132. 武山謙一

    ○武山説明員 御説明いたします。  保安規定の異常時の措置というのは、原子炉施設に関し異常を発見した者は直ちに当直長へ報告する。当直長は、その報告を受けた場合には直ちに異常の状況、機器の動作状況等の把握に努めるとともに、原因の除去、拡大防止に必要な措置を講じ、プラント第一課長に報告する。プラント第一課長は、その報告を受けた場合には直ちにその原因を調査し、原子炉施設の保安上必要な措置を講じるとともに、所長及び主任技術者に報告並びに関係課長に通知するということが書いてございまして、具体的にその措置の詳細を定めたものは動燃事業団が作成をしております異常時の運転マニュアル、そこのところに書いてございます。
  133. 山本拓

    山本(拓)委員 全然答弁が違うのですよ。これはまた次の時間にやります。  参考のために言っておきますけれども、宮林局長はどう言っているかというと、これは二月の委員会ですよ、言っておきますよ。「窒息消火をするという件につきましては、火災報知機が鳴った場合は、それは窒息消火をしてダクトを閉める、そういう申請書の表現になっております。」と明確に答えているのですよ。  だから、これはあなたの解釈だと、その申請書に付随して添付書類として出ていると。以前の解釈は、当時の局長、これは答弁をやり直して答弁しているのですが、そういう答弁をしているのですけれども、今の解釈ではもうそれは切り離して、あの点はなかったということで解釈を変えたのですか。
  134. 武山謙一

    ○武山説明員 御説明いたします。  局長答弁いたしました申請書、それから添付書類と申しますのは原子炉施設の設置許可の申請書でございまして、それの添付書類の十という事故解析のところに、解析の手順としましてダクトをとめるということが書いてございまして、それは先ほども申し上げました……(山本(拓)委員「それが保安規定なんですよ」と呼ぶ)いえ、違います。それは設置許可申請書でございまして、保安規定はそれとは別のものでございます。
  135. 山本拓

    山本(拓)委員 一般的に福井県におきましてもどこでも言うのは、それが保安規定、非常時の際にどうしたらいいかということを国の正式な法律の設置許可  許認可権を持っていますからね、国は。それで、動燃から、万が一のときに、事故のときにどうしますかというマニュアルも、どのように処理するか、非常の事態にとるべき措置ということできちっと明記して、それに添付して出してあるわけですね。それに付随して出しているわけでしょう。  だから、それについて全く法的根拠がないということで今回は逃れるという解釈  解釈はそっちで一方的にやりますから。そういう中で、もう時間ですからこの辺でこの委員会ではやめますけれども、私がきょうまた明らかにさせていただいたのは、もうころころ変わるのですね、ころころ、答弁が。私は、別に委員会のあちこちで、科学技術委員会局長とかいろいろな人の答弁を収集して言っているのに、皆さん、そのときそのとき変わるわけでございまして、非常にもうあきれてしょうがないということでもございます。  そういうことで、ただ一つだけ申し上げておきたいのは、事故が起きたら、そんなマニュアルにあろうとなかろうと現実的に窒息消火でとめる、それは必要だということは、科学技術庁として監督官庁としてお認めになっているわけですよね。必要がないというのなら別ですけれども、それは必要なんでしょう。それを、今回そういう事故が起きたときにもやらなかったわけですね。それは現実問題としてデータが出ていますからね。  そして、監督責任ということが当然あるということを言っていますよね。結果的にやらなかった。そして、やらせる監督責任がある。普通の人間の社会、日本人の社会で言うと、こういうようなのは監督義務を怠ったというのですが、そういう常識は科学技術庁にはないと言うことですね。最後に一点だけ確かめておきます。     〔佐田委員長代理退席、委員長着席〕
  136. 武山謙一

    ○武山説明員 御説明いたします。  監督義務を怠ったかということでございますが、そこのところをとらえますと、やはり意図して怠っていたということではございませんし、先ほどから繰り返しになってまことに恐縮でございますが、適切な情報に基づいて指導するということがございますので、それをもって監督義務を全く怠ったとは理解しておりません。
  137. 山本拓

    山本(拓)委員 いずれにいたしましても、これは福井県民のみならず、原子炉破壊とかいろいろな大事故が起きた場合には、もう日本じゅう風向きによってはチェルノブイリみたいになるわけでありますから、その事故防止をする責任者が私は国、科学技術庁だと思っておりました。  今回、たまたま「もんじゅ」の事故は軽くて内部で済んでよかったですけれども、これは本来、今まで裁判におきましても絶対起きないと言っておった話が、できた話でございます。だから、そういうときに責任を持って科学技術庁が炉をとめる、ダクトをとめる。それをきちっと指導したとか、やらなかったら、済まなかった、私に責任があったけれどもということで、きちっと監督をやりますという責任があるものならば、今後とも安心して国の安全行政を支持していきたいと考えておったわけでありますが、今回のケーススタディーを見ますと、事故が起きて、そういうものは動燃、事業者に責任がある、何がある、そうだけれどもどうのこうの、監督はない、そういう責任逃れをするという話になりますと、そういう責任がないならもういっそのこと監督官庁なんてやめて、動燃自体に、事業者自体にやはり責任をきちっと明記してやらせた方が私はずっと安心した原子力行政ができるということを確信をいたしたところでございます。  次の質問もございますので、きょうのところはこれで結構でございますが、いずれにいたしましても、今の話を整理いたしますと、監督責任はある、当然。ないはずないですね。あるということだけはきちっと承りまして、しかし責任はとらないということもきちっと承りました。それだけでも情けない話ですけれども、もう答弁するのも嫌になる話でありますが、今まで私は原子力行政を推進をしてきましたけれども、少なくとも「もんじゅ」の事故の対応を見ますと、困ったものだなと。  ちなみに言っておきますけれども、運転専門官というのが科学技術庁から行っていますけれども、地元の人たちには迷惑をかけているのですよ。やめた動燃の所員なんかに聞きますと、我々に権限行使するのはいいけれども、があがあがあがあ権限だけ行使して、責任はとらずに逃げてしまう、非常に厄介な人たちだというのが通説でございまして、やるからにはちゃんと責任もきちっととるということだけは今後の行政の中で示していただきたいと思います。  それでは、次に移ります。  今度は、何か国に文句ばかり言っているようでありますが、厚生省ですね。厚生省については、私自身、薬害エイズの問題につきましては日ごろから大変議論がなされているところでございますが、そう詳しくは聞くつもりはありません。  ただ、一点だけ厚生省に私のわからないところでお聞きしたいのは、当時の非加熱製剤というものがいろいろ取りざたされている中で、薬事法を見ましたら、薬事法第五十六条六号に「病原微生物により汚染され、又は汚染されているおそれがある医薬品」というものの規定がありますね。この病原微生物により汚染され、汚染されているおそれがある医薬品というその六号の表現に当てはまる医薬品は、いわゆる当時の非加熱製剤、出回っておった非加熱製剤がその項目に当てはまる医薬品なのかどうか、厚生省の見解だけ、これは今の時点の見解をちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  138. 松原了

    ○松原説明員 お答えいたします。  今の視点で薬事法五十六条の六号の解釈をするということで、お答えをいたします。  薬事法第五十六条第六号に規定いたします「病原微生物により汚染され、又は汚染されているおそれがある医薬品」というのは、何らかの検査によりまして汚染が確認された個別に特定できる医薬品、または検査によりまして必ずしも十分には確認されないが、他の理由により汚染されていることが相当程度疑われる個別に特定できる医薬品をいうものとされております。したがって、そのときの非加熱製剤全体が不良、五十六条の六号に該当するか否かということではございません。  御質問の件につきまして委員からただいま質問主意書をいただいているところでございまして、現在鋭意検討しているところでございます。
  139. 山本拓

    山本(拓)委員 いや、質問主意書を出さないものとして答えてください。質問主意書というのは、私、暇だからどんどん出していますが、どうせ返ってくるのはかなりおくれますので、質問主意書があろうとなかろうと、この質問委員会でいずれせんならぬと思っていましたので、今の時点で汚染されているおそれのある医薬品かどうかというお考えをお聞かせいただきたい。
  140. 松原了

    ○松原説明員 現在質問主意書の準備中でございますので明確なお答えはなかなかいたしかねますけれども、委員の御質問については、先ほど申しましたように、そのときの非加熱製剤が全体的に五十六条の六号に該当するか否かというものではございませんので、個別に特定をしなければならないわけでございます。  六十年当時、現時点から見て五十六条六号に当たる具体的な医薬品があるかどうかについて、それを調査しなければそれが五十六条の六号に該当するかどうかについて判断はいたしかねるということでございます。
  141. 山本拓

    山本(拓)委員 そうすると、これもまたあれですか、今の段階でも、非加熱製剤というのはエイズウイルス、微生物に汚染され、またはおそれのある医薬品だという見解は今現在でもお持ちでないということでよろしいですか。  というのは、あなた、勘違いしているのは、質問主意書なんというのは代議士みんなが思い思い出すわけで、質問主意書でだれか質問したからそれに答えるまでここで答えられないという話ではないわけでありまして、質問主意書は質問主意書で答えてもらえばいいわけで、今ここで質問していることに対してちゃんと答えてください。ここで答えられない原因というのが、質問主意書でやっていますから、検討していますからという話には当たらないのですよ、これは。私は当たらないと思いますよ。委員長、そうじゃないですか。だから、きちっと答えてくださいよ。
  142. 松原了

    ○松原説明員 先ほどお答えいたしましたように、個別の具体的な医薬品について検討する必要があると申し上げました。その個別にそれが当てはまるかどうかということは、例えば当時のある特定のロットを有する非加熱製剤によって具体的にHIVのウイルスによって感染された例があったかどうかということを調査する必要があるわけでございまして、現在それは調査を始めているところであります。
  143. 山本拓

    山本(拓)委員 そうすると、今の時点で、厚生省としては、非加熱製剤というのはエイズウイルスに汚染されていたものではあるということは断定できないということの見解でよろしいですか。
  144. 松原了

    ○松原説明員 ただいま委員の御質問のとおりでございまして、現在の段階では調査中であるということでございます。
  145. 山本拓

    山本(拓)委員 そういうことであれば、これ以上質問したってしょうがありませんね。  では、今の時点で、厚生省としては、当時の非加熱製剤というのはきょう時点においてもエイズウイルスに汚染された医薬品ではあるということではないということでよろしいのですね、確認しますけれども。そうですね。
  146. 松原了

    ○松原説明員 現時点で非加熱製剤が不良医薬、五十六条六号に該当する医薬品であったかどうかはわからないということでございます。
  147. 山本拓

    山本(拓)委員 汚染されるおそれの、汚染されているということだけを書いてあるわけじゃなしに、汚染されるおそれのあるという医薬品も規定しているわけですが、そのおそれがあるということでもないということであれば、それもそれの見解の一つでありますから、謙虚に承っておきます。これもまたばかばかしくてやっていられないというか……。それでは、ちょっとこれはもういいです、時間がありませんから。  それでは、ちょっと警察庁に二、三お聞きいたしておきます。  その前に、ちょっとエイズの話とは全く関係なしに、一連の、ちょっと刑事局長に聞いて、答えられるかどうかわかりませんが、参考のために素人の浅はかさで聞くのですが、行政権限がある人、そして行政責任は当然ありますよね。行政責任を怠ったということに対して、いわゆる罰則規定がない場合、ある場合、これはいずれかケースが分かれると思いますが、例えば行政権限行政責任を怠ったばかりに国民に何か著しい被害を及ぼした、またおそれを生じたという場合に、行政責任を怠ったということがはっきりした場合に、これは検察として告発を受けなければ捜査しないのか、それとも告発がなくとも調べることもあり得るのか。そこはちょっとお聞きいたしたいのです。
  148. 原田明夫

    ○原田政府委員 委員の御質問が極めて一般的なものを含む質問でございますので、私も一般的な形ということでお答えさせていただきたいと存じます。  行政責任が国の機関あるいはその他行政当局にあるといった場合に、その行政責任が果たされなかった場合に果たしてどのような制裁があるのかという点がまず前提になろうかと思います。  その行政責任を果たさなかったことが何らかの刑罰法令に触れるという場合には、これは捜査当局としてはそのこと自体としては告発あるいは告訴ということがなくても捜査することは可能であろうと存じます、一般的な問題として。ただ、具体的な状況といたしまして、検察当局が実際に捜査を行うに足りるいわば端緒となる事実を掌握できるかどうかといった点は、また違った問題になってこようかと存じます。  そういうことが一般的にございますので、行政責任が果たされなかった場合に直ちに捜査ができるかどうかという点については個々具体的に判断しなければならないだろう、そういうふうに存じます。
  149. 山本拓

    山本(拓)委員 ついでに、これも答えてもらえぬかもしれませんが、薬害エイズ関係で、例えば刑事告訴、告発されている、三人ほどいますよね、安部さんとか郡司さんとか松下さんですか。これらについては、具体的な告発、告訴を受けているわけですから、これは捜査しているということで、どの程度とかそういう話は無理ですから、捜査しているということで理解してよろしいですか。
  150. 原田明夫

    ○原田政府委員 薬害エイズ関係で告訴、告発されている事件が御指摘のように数件ございます。それらの件につきましては、現在検察当局において捜査中であるというふうに承知しております。
  151. 山本拓

    山本(拓)委員 ところで、話は変わりまして、スーパーKと言われるにせ札が最近——どうぞ大臣、お引き取りください。スーパーKと言われるにせ札、百ドル札ですね、これは最近マスコミでよく報道されていますが、これは警察庁だと思うのですが、今までにこのスーパーKなるにせ札はどのぐらい発見されているのでしょうか。
  152. 栗本英雄

    ○栗本説明員 お答えいたします。  今先生御指摘のスーパーKにつきまして、報道等でいろいろ報道されていることは承知しておりますが、私ども警察といたしましては、スーパーKなるものがどのようなものかということについての確定的な内容を把握しておりませんので、それにつきましては答弁を差し控えさせていただきたいと存じます。  ただ、国内におきまして最近発見いたしております偽造米ドルの関係について敷征して御説明をいたしたい、こう思います。  最近の三年でございますか、偽造米ドル紙幣の発見状況につきましては、百ドル紙幣以外も含めまして、これは五十ドル、二十ドル等もございますので、含めまして、平成五年には四百五十五枚、平成六年には三百八十枚、平成七年には五百一枚を発見しております。その中で特に精巧に偽造がされていると見られる偽造百ドル紙幣につきましては、ただいま申し上げました数字の内数になるわけでございますが、そのうち、平成五年につきましては約九十枚、平成六年及び平成七年につきましては約百五十枚ほど発見をいたしておる状況でございます。
  153. 山本拓

    山本(拓)委員 にせ札というのは昔からありますけれども、最近はやたらと精巧らしくて、これはどうですか。我々として識別が難しいわけですから、普通のと違って、どのように対応をしたらいいかといっても、テレビでいろいろこんなことをやっていますけれども、これは極めて重大な事件に発展しかねません。また、どこかの国につながっているのではないかとかいろいろなうわさもありますけれども、日本の警察当局として、このにせ札についてはやはりどのような対応、どのような捜査をされておるのですか。
  154. 栗本英雄

    ○栗本説明員 今御指摘の偽造通貨事件につきましては、国内外に流通いたします通貨への信頼性にかかわる問題でございますので、警察としても重要視いたしておりまして、現在、それぞれ国内で認知いたしました事件について鋭意捜査中でございますし、また、外国通貨という特性からも、内容に応じまして外国の捜査機関等とも必要な捜査協力を行っておるところでございます。
  155. 山本拓

    山本(拓)委員 タイで捕まった田中容疑者というのが昔のよど号の犯人だと国内で言われておりますが、本人は北朝鮮の外交官パスポートを持って私は北朝鮮人だと言っているようでありますが、日本の捜査当局として、あのタイで捕まった田中さんというのは、これは日本人の田中義三ですか、あの人であるということは間違いないわけですね。
  156. 米村敏朗

    ○米村説明員 御説明申し上げます。  現在タイにおいて身柄を拘束されております田中義三につきましては、タイ当局の方からの照会によりまして、これを受ける形でタイの方から外交ルートを通じて送付されました指紋、これを日本側で照合いたしました結果、田中義三であるということを確認した次第であります。
  157. 山本拓

    山本(拓)委員 これは向こうの裁判が終わらない限り戻ってこないと思うのですが、送還されてこちらへ来るわけですね。大体いつごろだという見通しを持っておられるのですか。最後にその一点だけお聞きしておきます。
  158. 米村敏朗

    ○米村説明員 御説明申し上げます。  田中義三につきましては、先生御承知のとおりよど号のハイジャック犯ということでありますので、私どもといたしましても、外交ルートを通じましてタイ当局に対してできるだけ早期の身柄の引き渡しということを要求してきているわけでございます。しかしながら、タイ当局におきましても、同人につきましてはタイの法律にのっとった司法手続が現在とられているということでございまして、その辺のところの手続の推移というものを見守りながら、私どもとしても引き続き折衝を継続していきたいというふうに考えております。  いつごろになるかということにつきましては、今言ったような事情でございますので、ここで予見を持ってお答えすることはできかねるということで御了承いただきたいというふうに思います。
  159. 山本拓

    山本(拓)委員 まあ、田中容疑者は、今ならハイジャック防止法違反ということになるのでしょうが、田中容疑者のよど号ができてからハイジャック防止法ができましたから、田中容疑者はハイジャック防止法違反にはかからないですね。だから、それはなるだけ慎重に、厳しく取り扱っていただきたいと思います。  それでは、もう時間もございませんから二、三点まとめてお聞きしますけれども、以前、いろいろ質問が出ている中で、大和銀行のニューヨーク支店の問題で明らかになった日本とアメリカの虚偽報告の罰則における重さの違いですね、これは非常に大きいものがあるわけでありますが、例えば大和銀行の今回捕まりましたのは、向こうは最高懲役三十年、日本で、ダイワ・トラストの問題で虚偽報告で、外為法違反で捕まりはしなかったけれども違反で問われて処置したのが罰金幾らでしたか、五十万でしたか、それだけの差があるわけですね。  今後金融犯罪が重要視されていく中で、今の法体系の中で、与党の方ではそこらを強化する議員立法を考えておられる。我々も考えておりますけれども、法務当局として、現場サイドの話として、要するにうそをつくということに対する罰則強化、金融に対してですね。そういう点がそろそろ、やはり軽過ぎるのじゃないかという何らかの認識は当然お持ちだと思うのですが、私自身は罰則強化をすべきだというふうに思っているわけでありますが、その点の法務省の御見解だけ承っておきます。
  160. 原田明夫

    ○原田政府委員 まず、アメリカにおける法制と比較いたしまして我が国の金融犯罪に係る刑罰の法定刑が軽いのではないかという御指摘があることは承知しております。どのような犯罪に対してどの程度の刑罰が国として適当であるのかということにつきましては、それぞれの背景、事情もございますし、刑罰全体の体系、犯罪情勢を踏まえて決められることでございますので、単純な比較はもちろんできないわけでございますが、最近の金融機関に関するさまざまな事情の動向あるいは再発防止という観点を踏まえまして、御指摘のように議員立法の動きがあるということも承知しております。現在、さまざまな観点から御議論をなされているところと存じますので、当局といたしましてもその動向を見守ってまいりたいと思います。  中で、御指摘のとおり、やはり当局あるいはその他の機関に対する虚偽の報告あるいは報告しないということにつきまして、アメリカにおける事情と日本における事情が相当程度乖離しているということは御指摘のとおりでございまして、私ども、そのあたりについてどう考えていくかということについても大変関心を持って見守ってまいりたいと存じます。
  161. 山本拓

    山本(拓)委員 そこで、今の大和銀行の話が出たからついでに一点だけお聞きしますけれども、向こうで司法取引をされた大和銀行ニューヨーク支店の元支店長の津田、向こうで司法取引して、いろいろ証言していますよね。中身については、大蔵省に言われてどうのこうのとかいろいろな話もありますが、一般論として、昔ロッキード事件でコーチャンの尋問調書という話もありましたが、これは別にこっちで裁判をやっているわけではないですから、あそこの証言をこっちに持ってきて証拠能力をどうだこうだと初め聞こうと思ったのですが、そういうことはないわけですから、そういう次元の話ではなしに、一応日米司法協力、司法なんかやりとりをやっていますから信頼関係があるわけですよね。だから当然、我々が認識する場合に、向こうで日本人が司法取引、何であれ証言した、その発言というのは、やはりそういいかげんなものではないですね。信頼度というか、どの程度信頼を寄せたらいいのでしょう。
  162. 原田明夫

    ○原田政府委員 ただいまの御指摘は、法的観点ということではなくて、現在におけるアメリカの司法の実態と日本における実情を見据えた上での御質問と存じますので、私の立場ではなかなか申しづらい面があるわけでございますが、よく司法取引ということが言われまして、とり方によりますと、何か刑罰権を取引でもって左右するというような面が非常に強調されまして、いわば実体的な真実とは若干違うようなことが行われてしまうのではないかというようなことがよく指摘されるわけでございます。  しかし、実際に司法取引ということが行われている実情を、私も少ない経験でございますが、承知したところによりますと、やはり最終的に、これは検察官側とそれから被告の間、これも通常の場合は必ず弁護人が立ち会うわけでございます。それで、検察官側と同じく法律家であります弁護士との間でさまざまな背景、事情証拠の実情等につきまして、お互いにそれぞれの立場を考え合わせた上での、ある一定の結論を出すわけでございます。  しかもそれらの場合に、ほとんどの場合、これはもう一〇〇%と言っていいと思いますが、最終的にそれが裁判の形で決着する場合には裁判所がこれに関与するわけでございます。司法取引という話感からくるような、いわば取引的なことが行われるというより、むしろ客観的な証拠状況を踏まえまして、検察側におきましても、訴訟経済的な面もございましょう、それから早く事態を解決したいという面もございましょう、また、弁護人、被告側といたしましても、ある程度のところで罪状を認めて、そして再生を期したいという、いろいろな配慮がございます。そこらについての一種の法律的な、いわば客観的な情勢の認識を突き合わせた上の結論ということでございますので、それなりの重いものであろうというふうに考えられます。  そういうことでございますので、その過程で語られた供述あるいはさまざまな証拠というものは、それなりの重みを持つものであろうというふうに考えます。
  163. 山本拓

    山本(拓)委員 ニューヨーク支店長が、大蔵省の圧力というか大蔵省の指示でアメリカに対する報告をおくらせたという、司法取引の向こうの証言は大変重いものだということでございまして、まさしく日本の行政はしっかりしなくてはならないなというふうに改めて考えたところでございます。  どうもありがとうございました。
  164. 加藤卓二

    加藤委員長 坂上富男君。
  165. 坂上富男

    坂上委員 社民党の坂上富男でございます。質問させていただきたいと思います。  まず、全酪連のいわゆる牛乳等の捜査の状況について、私の県の新潟県長岡、それから宮城県で起きた事件でございますが、どうなっておりますか。
  166. 園田一裕

    ○園田説明員 お答え申し上げます。  御質問事件は、全国酪農業協同組合、いわゆる全酪連でございますけれども、この長岡工場及び宮城工場におきまして、生乳に水や脱脂粉乳などを加えたものを製造いたしまして、容器に「牛乳 成分無調整」と虚偽の表示をして販売していた事件でございます。  この事件につきましては、新潟県警察及び宮城県警察が全酪連の本所、本部でございますが、それからそれぞれの工場など関係箇所を食品衛生法及び不正競争防止法違反の容疑で捜索をしたところでありまして、現在、全容解明に向けまして捜査中でございます。
  167. 坂上富男

    坂上委員 警察庁にちょっと申し上げたいのですが、今の御答弁の中に、水を入れた、こう言っておりますが、これは警察、間違いです。きょうも我が党の農水部会でこの問題を取り上げて議論いたしました。いろいろ調査の結果、水を入れたというのは全く事実と違うのでございまして、このことが新聞報道なされました、そのことのために大変な迷惑を受けている、こういう報道もあったわけでございます。警察の方も、この点もひとつきちっと対応していただかぬと、今の答弁でも水を入れたと、こういうような答弁でございますが、これは事実と違うだろうと私は思っております。  そこで、農水省、一体こういう問題についてどういうふうな認識をしておられるのか。  それから長岡工場、宮城工場が営業停止ということになったために、酪農家の農家や輸送業者などはもう大変な被害をこうむっているわけでございます。とれた牛乳を捨てなければならぬ、本当にこういう事態があるわけでございます。これについて農水省としてはどのような支援と指導をなさっているのか、お答えをいただきたいと思います。  また、厚生省の方、営業停止、これに伴いまして、今言ったような状況が出ているわけでございますが、何かきょう新潟の方に関しては営業停止解除になるというようなお話も聞いておるわけでございますが、どうなっておるか。  しかし、営業停止が解除になりましても、牛乳の出荷はまだ見合わせる、こういうようなことになるという報道もあるわけでございます。そうなりますと、依然として酪農農家等には大きな影響があると思われるのでございますが、こういう点、厚生省、農水省とも、その立場において、どういうふうにお考えになっておるか、また、今どういう状況にあるか、御答弁いただきたいと思います。
  168. 井出道雄

    ○井出説明員 ただいまお尋ねの全酪連長岡工場の件でございますが、これまで長岡で、先ほど御指摘もございましたような、成分無調整牛乳と称して、牛乳の中に脱脂粉乳や生クリーム等を混入していたという事件でございまして、後ほど厚生省からお話があろうかと思いますが、本日、営業再開を新潟県の方から認めるということに相なったと聞いております。  御心配の点でございますが、全酪連の方では、明日から、とまっておりました機械の点検整備をいたしました上で、長岡工場の試験操業を再開いたすことといたしております。当面は、製造された製品をサンプルといたしまして、従来の取引先等を回って営業活動を再開することにいたしております。取引数量がまとまりました段階で、本格操業に入ることになっておりますので、生産実績が事件発生前の水準に復帰するというのにはかなりの時日を要するものと思っております。  このため、従前から、生乳の流通の混乱を回避するために、東京の方で中央酪農会議でありますとか全農等によりまして生乳の配乳がえをお願いいたしてきておりますので、これも引き続き実施を指導していきたいと考えております。さらに、長岡工場の本格操業の開始に向けて、農水省としても適切な助言指導をしていくこととしております。  以上でございます。
  169. 森田邦雄

    ○森田説明員 御説明いたします。  全酪連の長岡工場につきましては、牛乳に他物を加えていたというようなことで、食品衛生法第七条違反ということで三月十日から新潟県知事が営業禁止の処分を行ってきたわけであります。その後新潟県は施設の立入調査等、再発防止につきまして指導を行ってまいりまして、四月十二日に全酪連から本事故の再発防止のための報告書が提出されてまいりました。新潟県は、当該報告書の確認あるいは再度施設を立入調査するなどによりまして、全酪連の管理機能の確立てすとか内部監査機能が整備された、あるいは従業員の方の衛生教育が十分されたというようなことが確認されまして、食品衛生法に違反する行為の再発防止のそういう体制がとられたと判断いたしまして、本日営業禁止の解除を行っております。  私どもも、あるいは今後新潟県を通じまして、今後ともこういうようなことのないように、そして消費者の信頼を得ていくようなことで全酪連あるいは長岡工場にいろいろな面で御指導等をしてまいりたいと思っております。
  170. 坂上富男

    坂上委員 警察、農水それから厚生省、ありがとうございましたが、私が今指摘しましたことも踏まえまして、これらの被害を受けておられます酪農農家あるいは輸送業者、こういうような皆様方への対応もきちっとしていただきますこともお願いをいたしまして、ありがとうございました、お帰りになって結構でございます。  その次に、これまた大変な大きな問題にもなっておりますが、暴力団関係者に対しまして、テレビがいわゆる取材の謝礼と称しまして普通以上の謝礼あるいは経費負担をしたという点について、大変問題になっておるわけでございます。  報道によりますと、日本テレビが現金五十万円、TBSが三十万円、そのほか日本テレビが温泉旅行代と称して四十万円、TBSは取材期間中の宿泊代と称しまして五十五万円を負担した、こういうようなことも報じられているわけでございます。またTBSは、反社会的な存在の暴力団を取材するための現金払いとして、就業規則違反であるというようなことで、昨年、番組責任者三名を減俸処分をされたというようなことも言われておるわけでございます。  こういうようなことから見まして、これは法の規制の対象でないかもしれませんけれども、まさに放送倫理の観点から、私たちは暴力追放、暴力対策法等を施行してその推進に向けて努力をしておるやさきにおいて組関係者に、いわゆる特だね意識とでも申しましょうか、こういう相当常識以上の出演料等を払ってこういうことの放映をされるというところに大変大きな問題があるんじゃなかろうか、私はこう思っておるわけでございます。  そこで、まず郵政省、この点については郵政省の立場としてはどういうお考え、どういう見方をなさっているのか御答弁いただきたいと思います。
  171. 伊東敏朗

    ○伊東説明員 御指摘の件につきましては、私ども現在承知している範囲では、取材過程の問題でございまして、直接放送法上問題となるものではないというふうに理解をしておりますが、いずれにいたしましても、放送事業者が取材を行うに当たりましては、その公共性や放送としての使命を疑われることのないよう行うべきものだというふうに考えておるところでございます。
  172. 坂上富男

    坂上委員 ちょっと今の答弁によりますと、直接放送法上の問題となるものでない、こう言っているのです。何してもいいかということなんだね、放送のやり方さえ注意すれば。どんな手段でもって材料を集めてきてやってもいいという論理なんだね。一体こんなことが放送法上通るのですか。もう一遍御答弁
  173. 伊東敏朗

    ○伊東説明員 繰り返しになるかもしれませんが、私ども、法律上どのような問題があるかというものをまず最初に考えるわけでございます。そういう意味で、先ほど答弁させていただきましたように、もちろん現在私どもが承知している範囲でということになるわけでございますが、取材過程の問題だというふうに理解をしております。  ただ、何をやってもいいのかという先生からの御指摘に対しましては、先ほども御答弁させていただきましたように、その取材を行うに当たりまして、公共性とか当然社会的使命というものを持っているわけでございますので、そういうことが疑われることのないようにやるべきものだというふうに考えておるところでございます。
  174. 坂上富男

    坂上委員 これ以上になると水かけ議論になりますから郵政省結構ですが、警察庁の方はこの点どう考えておりますか。皆さん方、本当に暴力追放の第一線にあられるわけでございますが、こういうような対応がテレビにおいて行われているということになりますと、警察の立場としてはどういうふうにお考えになっていますか。
  175. 宮本和夫

    ○宮本説明員 御指摘の報道がなされております事案につきましては、警察として事実関係につきまして承知しておるわけではございませんけれども、いわゆる暴力団対策法の成立以降暴力団排除の国民的世論が高まっていることは御案内のとおりでございまして、この趣旨は、報道、取材に当たる報道機関においても十分御理解をいただいているところと考えております。
  176. 坂上富男

    坂上委員 理解がいただいておらないからこういうことになるのじゃないかと思っておるのですが、警察、どう思っていますか。理解いただいている、いただいているといいながら、結果的にこういう事態が起きているのです。警察、どう思っていますか。
  177. 宮本和夫

    ○宮本説明員 先ほど御答弁いたしましたとおり、警察として事実関係承知しておるわけではございませんけれども、いずれにいたしましても、警察としては一層の暴力団排除機運の盛り上げと暴力団取り締まりの徹底に向けさらに努力をしてまいりたいと考えております。
  178. 坂上富男

    坂上委員 どうも余りすかっとする御答弁ではないのでございますが。  これは罰則規定があると言っているわけでもないのです。だけれども、こういうようなことは、全国民が挙げてこういうことを撲滅しようとして努力をしておる、したがって特に公共性の強いテレビあるいは報道機関等においては特に自粛自戒というものが必要だと言われておる、こういう問題でございます。また警察は、いわゆるこの暴力関係者に五十万なり六十万なりの金が出たという事実、報道があるわけでございますから、きちっとやはりこういうことは押さえてもらって、もちろんこれ自体が法律違反ではないのでございますけれども、暴力対策法の関係から見るならばまことに好ましくない事柄が起きておるわけであります。だからこれが発覚をいたしますと社の内部において就業規則違反ということで処分対象にもなっておられるわけでございますから、警察当局としてもひとつきちっと対応していただきますことも要請をしておきたいと思います。  さて、きょう私は本題といたしますのは、今お配りをいたしましたこれを中心にして少し質問させていただきます。また、参考人、御苦労さまでございます。北朝鮮の支援米についての問題でございます。  今、委員部の方から配られました資料でございますが、実は、これにナンバー1、ナンバー2、ナンバー3と鉛筆で打っておいたのでございます。書いてもらえばよかったのでございますが、ちょっとこれが欠落をしておるようでございますから、少し言いにくいのでございますが、一つ一つ申し上げますので御理解をいただきたい、こう思っておるわけであります。  まず、一番最初の「北朝鮮向輸出状況一覧表(二次)」というものは、これは食糧庁がつくられた文書でございます。それから、その次の「北朝鮮向け第二次援助米(二十万トン・有償)輸出状況」マル秘、これは予算委員の先生が、入手をした文書である、こうおつしゃつて報道機関に配付をされました資料でございます。それから、「北朝鮮向け第一次援助米(三十万トン−有・無償)輸出状況」とある文書、これも予算委員の先生が新聞社に配付をされた文書でございます。その次は、これは英語だろうと思うのでございますが、その次のページに「船荷証券一仮訳)」とあります。これは横文字を訳したものでございまして、船荷証券でございます。これは私が農水省から写しとしていただいたものでございます。その次の、これも横文字でありまして、次のページでは「品質証明書」と日本語で書かれております。訳文でございます。  その次は、「取扱注意」左側に「海保」と書いてありますが、海上保安庁が米輸送船入港状況、こういうものを調査をなさったときの海上保安庁の書類でございます。この書類が公安調査庁に、報告といいましょうか情報提供をされたという形式の「コメ輸送船入港状況」の書類でございます。その次の、同じく「コメ輸送船入港状況」、これは公安調査庁から形式として私がいただいた資料でございます。この資料を海上保安庁と二つ見てみますると、形式は全く同じでございます。海上保安庁のものを情報として受け取って、これをそのまま保管してあるのだ。公安調査庁としては、これをもとにして別の資料をつくったことはない、こういうふうに聞いておる文書でございます。これをひとつ皆様方に示しながら確認をしたいと思っておるわけでございます。  なぜこの問題を取り上げるかといいますと、予算委員会のことしの四月五日、それから四月九日に、第二次の北朝鮮支援米について、国産米は支援米として使わない、外国の輸入米だけを使う、こういう閣議決定があったにもかかわらず、北朝鮮への第二次の支援米については国内米が輸出されたのではないかということが指摘されました。その指摘は、まず四月五日の予算委員会でありました。そして、これについて、海上保安庁、それから公安調査庁からは、文書は出した覚えがない、こういう答弁がございました。その次に、その委員さんが四月九日の委員会で、私の政治生命にもかかわることであるから、もとになりましたところの資料については、海上保安庁のセクションから公安調査庁のセクションに資料が情報として渡されて、公安調査庁から私が受け取った資料であるということで御質問がなされ、その資料は新聞社の皆様方に配付をいたしますと言って、その後配付なさった、その資料でございます。  そこで、私は、この問題は二つ重要なことがある、特に法務委員会として指摘しなければならない重要なことがあると思うのであります。一つは、もちろん、本当に国産米が北朝鮮に閣議決定に反して輸出をされたかどうか、これも明確にしなければなりません。法務の中で特に問題にしなければならぬのは、公安調査庁からこの資料をいただいて、いただいたといいますか、公安調査庁から出た資料がこれであるという形で質問がなされているわけでございます。そこで、さらに九日に、その公安調査庁のニュースソースの立場にある、いただいた公安調査庁のその人から同意を得てニュースソースを明らかにいたしますと言って、予算委員会で発言があったわけだ。これは大変なことでございます。  特に公安調査庁、いわゆる破防法、これはもう人権の侵害じゃないかといろいろ議論のあるところでございます。その公安調査庁から本当に資料が流出をしたということになりますと、これは本当に大変な問題でなかろうかと私は実は思っているわけでございます。特に人権にかかわる重要な問題、例えば私が公安調査庁の調査対象人となった、そしてその結果が、いろいろ調査をされた、その調査が第三者に漏れたというようなことになっていったら、本当に大変なことでございます。それと同じように、公安調査庁からこの資料が流れ出たということになりますと、これは本当に公安調査庁の存続にかかわる重要な問題なんじゃなかろうか、秘密漏えいにかかわる問題じゃないか、こんなふうに私は実は思っておるものでございまするから、こういう観点から、二つの点に焦点を合わせながら、実は質問をさせていただきたい、こう思っておるわけであります。  そこで、一番最初の「北朝鮮向輸出状況一覧表」これに色が塗ってあります。第七船、第八船、第九船、ずっと色が塗ってあります。これはいずれも外米だと食糧庁の文書では書いてあるわけでございますが、予算委員会の御指摘された委員の先生によりますと、これが国内米である、こういう指摘があった部分でございます。まずこの点、食糧庁、この文書は食糧庁がおつくりになったのだろうと思いますが、そういう御指摘はどうなんですか。
  179. 山岸晴二

    ○山岸説明員 先生御指摘の予算委員会の議員が公表されました資料と私ども食糧庁がつくりました資料、これは予算委員会理事会に提出しておりますが、この双方を照合いたしましたところ、かなりの部分に違いがございました。
  180. 坂上富男

    坂上委員 指摘だけしたところが問題の点でありますか、こういう質問です。
  181. 山岸晴二

    ○山岸説明員 今配られております資料の黄色く塗られた部分が予算委員会で指摘された部分のところでございます。
  182. 坂上富男

    坂上委員 さて、その指摘は、その次の「北朝鮮向け第一次援助米輸出状況」というのを見ていただくと、これは第一次援助米でございまして、第一次のものには国産米はなかったそうです。しかし、第二次援助米のページを見ていただきますと、一番右側、「輸出米量・産国」、こう書いてあるようでございますが、ここには、例えば一番上は「アメリカ産」あるいは「中国産」、こう書いてあります。七番目に三千トンありますが、名古屋でございますが、ここは白紙になっております。どこの産出なのかが書いてありません。以下ずっと書いてない部分があるのでございますが、この書いてない部分が国内米だ、こう指摘をされているところでございます。  そこで、このページの一番最後の欄を見ていただきたいのですが、欄外、「産出国名無しは、日本産米を示す。」こうあるのですね。そしてその上に、「内訳:日本米—五三、八四三トン(三〇%)」、右側の方は「H八・三・二七現在」、こうあると思うのです。その次はきっと氏名だろうと私は思うのでございますが、何ゆえか消されておるわけでございます。この消されておるところが一つの大きな問題なのでございますが、これはわかりません。  そこでまず、この文書は公安調査庁から流れ出たものだ、こう言われておるわけであります。しかも、予算委員会では、この資料は私たちの方に参りました、愛国者がおります、こういう質問もあるわけでございまして、どうも公安調査庁が、これを配った人は愛国者で、それ以外の者は愛国者でないような言い方なのでございますが、これはどうですか、公安調査庁。配ったのですか、出したのですか。
  183. 河内悠紀

    ○河内説明員 北朝鮮への支援米に日本産米が含まれているとの資料、情報の存在につきまして、本庁を初め私どもの各公安調査局や各公安調査事務所におきまして職員から事情聴取を徹底的に行いましたが、そのような資料、情報の存在は一切認められませんでした。したがいまして、衆議院の予算委員会で出されたと議員が指摘する資料は当庁の提供に係るものであるということはあり得ないことであります。
  184. 坂上富男

    坂上委員 さて、公安調査庁。海上保安庁から公安調査庁に情報、いわゆる書類が、報告書が渡されているのだ、こういうお話のようでございますが、さっき示しましたこれがそうですが。中が書いてありませんが、形式は。
  185. 河内悠紀

    ○河内説明員 御指摘のとおりでございます。
  186. 坂上富男

    坂上委員 さて、海上保安庁。海上保安庁はこの北朝鮮の支援米についていろいろ調査をなさったようでございますが、これは調査なさったのですか。そして、調査したことをここの資料の海上保安庁の「取扱注意」の「コメ輸送船入港状況」、こういうものに記載いたしまして、情報として公安調査庁にお渡しになっているのでございますか。どうですか。
  187. 後藤光征

    ○後藤説明員 お答えいたします。  海上保安庁は、海上保安庁法に基づき、海上における犯罪の予防、その他海上の安全の確保を任務とするものでありますので、北朝鮮向け米輸出船についても、当該船舶の動静あるいは密入国者の有無、周辺海域の特異動向の有無などの調査を行っております。  それで、私ども、この支援米の産地にかかわる情報はあくまでもこれらの調査の過程において参考までに知り得たということでございまして、今回取りまとめたこの資料を公安調査庁に提供したわけでございますが、それ以外の方には一切提供してございません。  なお、公安調査庁は公共の安全の確保に寄与することを目的として設置されておると認識してございますので、海上保安庁と同じような任務を要する密接な関係を有する機関であるということから、私ども海上保安庁の規定にも関係行政庁の緊密な連絡ということがうたわれておる関係上、平素からその秘匿性に配慮しながら関係機関との情報交換を実施しておるということでございます。
  188. 坂上富男

    坂上委員 文書に対する答弁は。
  189. 後藤光征

    ○後藤説明員 私どもから公安調査庁に提供いたしました文書は、先生お示しになりました同じ様式のものでございます。
  190. 坂上富男

    坂上委員 公安調査庁と海上保安庁の御答弁をお聞きいたしますと、私らがつくった文書はこれである、「コメ輸送船入港状況」である、こうおっしゃっているわけでございます。しかも、公安調査庁は、この資料をもとにしてまた新たな資料をつくったことはない、こういうわけでございます。そうだといたしますと、予算委員会で問題として指摘をされましたこの資料は一体どうなんだろうということが問題になるわけでございます。  そこで、私は思うのです。いわゆる第二次援助米のこの文書ですが、「注」とあって、「小計:一九四、六二〇トン、残・五、五八〇トン。(内訳:日本米−五三、八四三トン(三〇%) コメ産出国名無しは、日本産米を示す。 H八・三・二七現在」、そして消してある。これは第二次のいわゆる報告文書、これはもう皆さん全然見たことも聞いたこともない、こういう文書です。しかし、予算委員の先生はこれだ、こうおつしゃつている。  それから今度、第一次援助米の最後のページを見ていただきたいのですが、これを見てみますると、一番下段のところに、「注:第一次援助米量合計(平成七年七月十九日/同十月十四日)二九八、八三一トン。内訳・有償米量−一七八、四八七トン(五九%) 無償米量−一二一、三四四トン(四一%) 但し上記資料中、静岡県清水港出港船に限り積載量が不明。」とあるのですね。これはなかなかみそだと私は思うのです。というのは、海上保安庁が調査をなさって、いろいろ調査をしたけれども、清水港の出港船には積載量がどれだけだったかということがわからぬという添え書きなんですね。これは非常に真実味があるような文書なんですね。  そこで、第一次と第二次のこの文書を見ますと、非常にこういう専門的な人が書かれたもので、どうも同じ役所の職員がお書きになったものじゃなかろうかなと疑われるわけです。したがって、この点どうですか、海上保安庁、この二つの文書を読んでみて、私は文書としてはなかなかよく似ている文書だと思いますよ。そうだとすると、海上保安庁が書いたのか、あるいはある資料を手にして、そして発表するときあるいは別の資料として発表なさったのか、これはわかりませんよ。わかりませんが、まず海上保安庁、あなた方がこれをつくったおそれはないですか。
  191. 後藤光征

    ○後藤説明員 お答えいたします。  海上保安庁は、先生おっしゃられましたこの文書を作成したことはございません。  それで、先生がお示しになられました予算委員会の資料につきましてですが、これが、先ほど先生御指摘になりました私どもの資料との大きな相違点を申し述べますと、まず様式が大きく異なる、全くというほど異なる。それから、内容的にも主な次の点について違っておるということが言えると思います。まずその一つ目は、注書きにございます、海上保安庁資料にはない日本産米に係る記述があるということ。第二点としては、注書きに海上保安庁の資料にはない「第一次援助米量合計」、この記述がございます。  そのほかにも、相違点としては次の点などが挙げられます。その主なものとしては、海上保安庁作成資料中、右の欄には「参考事項」となってございますが、予算委員会で出されました資料の右の欄は「輸出米量・産国・有無償」というふうになってございます。それともう一点、予算委員会で出ました資料の「輸出米量・産国・有無償」欄の中に、海上保安庁資料にはない「寄港後は貨物船として積載後・出港予定」というような記述がございます。これらの点を見ますと、私どもの作成した文書では全くございません。
  192. 坂上富男

    坂上委員 さて、そうだといたしますと、予算委員の先生が示したこの文書、三月二十七日現在なんですね。しかし、その後も輸出されているのですね。食糧庁の三ページ目を見ていただきますと、三十一船、中国うるち、室蘭から、四月一日に入港して、出港日が四月四日、これが出ているのですが、これの報告がないのですね。これは海上保安庁、この分は報告したのですかしないのですか。それから公安調査庁、この室蘭の分はあなた方の形式によるところの状況報告書にはあるのですかないのですか、どうですか。
  193. 後藤光征

    ○後藤説明員 ただいまの点でございますが、この余の部分については提供はいたしておりません。その理由を簡単に申し上げますと、担当者が四月一日で転勤しておるということでございます。
  194. 河内悠紀

    ○河内説明員 私ども、この関係については提報を受けておりません。
  195. 坂上富男

    坂上委員 私は、これも一つの大きな問題だろうと思うのです。というのは、その先生が予算委員会で最初の質問をなさったのは四月二日なんです。その次が四月五日なんですね。その次が四月九日なんですね。ちょうとこれを見ますと四月四日の出港なものですから、予算委員会で問題になったものだからこれは報告が行っていないのだろうと私は思っているのですよ。また、その報告の文書がいわゆる協力者に流れ出ていないんだろうと私は思っているのです。でありまして、この辺もこの問題の一つ問題点でもあるのですね。なぜだろうかと。  今おっしゃるとおり、転勤したからもう報告しなかったというのは、これ、役所は転勤したらしなくたっていいのかという問題あるのですが、これ、やっていいか悪いかという問題もありますよ。それはもう今議論しません。ただ、さっき申しました二点が大きな問題ですから、そこだけ指摘をしておるわけでございます。いいですか、そういうようなことから、私は、予算委員会で問題になりましたものだから、報告がない、情報が外へ流れ出なかった、こう実は思っておるわけでございます。  さてそこで、食糧庁、これはもう絶対に予算委員会での発言は間違いです、こういう指摘をする方法は具体的にありますか。  実は、きょう参考人から来ていただきましたのは、品質証明書は船積みのたびにつくられるのだそうでございまして、この品質証明書の「品質」の欄で「日本国に保管されたタイ国産うるち精米が契約における品質条件に合致する事を確認した。」こういう品質証明書が出ているのですが、こういうものは一体どういうものなのか。今私が問題に指摘をしたことについて、どういう証明になるのか。そして、この文書は食糧庁にあるようでございますが、これは食糧庁に何のために提出をするのか。そしてまた、この品質調査をするとき、ここの会社だけでなくして、ほかに関係する人たちが結構その船積みのときおられるのかどうか。そういうような点について、ひとつ参考人、御答弁をいただきたいと思います。
  196. 大熊貞行

    大熊参考人 私、現在、海外貨物検査株式会社常務取締役を務めさせていただいている大熊貞行でございます。ただいま先生から御指摘になりました件について、簡単に説明させていただきます。  私ども、今回、北朝鮮向けの輸出米検査に当たりましては、北朝鮮と日本側、食糧庁の間に取り交わされました合意に基づき、食糧庁に委託を受けた代行商社の依頼も受け、全船にわたって検査を実施させていただきました。  私どもの検査の内容でございますけれども、本船スケジュールが決まり次第、食糧庁及び代行商社のつくる船積み計画、これに基づいて各港に我が社の職員を配置して検査の準備を開始する。検査は、搬出された米が本船船側に運ばれるときに、または本船船側に近い適切な場所で検査を実施しています。検査の内容は、産地、銘柄、品質、包装等、これは毎個検査、一袋一袋穀刺しで検定をしております。さらに、重量につきましても、任意に抽出した一〇%を基準に各袋の重量を検定しております。
  197. 坂上富男

    坂上委員 そうしますと、参考人、ここに「品質証明書」とありますが、それはもう一つ一つ品質証明書を出す、そして食糧部長がここに署名押印してあるようですが、これはそのとおりのことをするわけですね。  そこで、失礼な質問ですが、頼まれまして詰めかえをする、こういうようなことは絶対にありませんね。万々一そうだとするならば、この品質証明書なんというのは偽造文書になりますものですから、大変な事態が起きるわけでございます。でありますから、本当に、どちらかが間違っておるわけでございますが、きちっと答弁できますかな。それから、日本米はあったかないか、それもあわせて。
  198. 大熊貞行

    大熊参考人 私ども、会社設立が昭和二十七年、その目的が、当時、戦後日本が食糧不足に陥って、世界じゅうから大量の米を買い付けておりました。しかるに、昭和二十七年あるいは二十八年にかつて黄変米事件として問題になったとおり、日本が買い入れる、輸入する米の大部分が、契約に合致しない品質不良のものが大量に来る、これを防止するために、日本人がみずから産地に赴き、日本人の目で確認した適切な米を日本へ持ってくる、こういうことで設立されまして、以来、米を中心とする農産物全般にわたりまして、世界各地で営業しております。  今御指摘がありましたように、証明書あるいは検査の誤りというようなことがあったかどうかにつきましては、会社の、国際検査機関の立場からいって、また会社の信用性からいって、そのようなことは一切ございません。
  199. 坂上富男

    坂上委員 はい、ありがとうございます。  もう時間がありませんので、急ぎます。  さて、税関がお見えのようでございます。税関に全部申告書を調べてくれと言ったのでありますが、膨大な資料で調べられないという報告でございますから、では、できるだけ少ないところを私が指名をいたしまして、調べていただきました。  七年十二月十四日の名古屋、七年十二月二十二日の清水、八年一月九日の宇野、八年一月二十四日の坂出、これについて、申告ではどうなっておりますか。国産米が通関されたということになっておりますか、あるいは外米ということになっておりますか。これについて税関は検査をすると思われるが、いかがでございますか。簡単でいいですよ。
  200. 塚原治

    ○塚原説明員 御質問の四隻の船舶につきましては、食糧庁で作成されております資料で外国産米のみを積載しているとされておりますが、税関当局においても同様の認識を持っております。
  201. 坂上富男

    坂上委員 さて、警察庁、私は警察に要請をいたしました。これは重大な事件であると、よってもって警察としてはこれについての調査をしていただきたいということを要請いたしましたが、どうですか、警察。
  202. 園田一裕

    ○園田説明員 お答え申し上げます。  ただいま御質問の資料の流出の問題につきましては、国会の委員会における発言に関するものでありまして、重要な問題と認識しております。  警察といたしましては、公安調査庁、海上保安庁等関係機関と連絡をとりながら、文書の出所、出どころでございますけれども、これや、あるいは国家公務員法等の法令の適用など、いろいろな観点から検討を行っているところであります。今後とも具体的な事実関係の把握に努めまして、刑罰法令に触れる行為が認められれば、関係機関とも連携をとりまして、適切に対処してまいる所存であります。
  203. 坂上富男

    坂上委員 もう終わりますが、公安調査庁、海上保安庁、私は、この問題は今言ったように大変重要な問題だと思っております。  一つは、予算委員会での発言が正しいのかあるいは誤認なのか、この問題が一つあるわけであります。それから、海上保安庁から、この文書でない、もとになるような資料が流れ出たかもしらない、あるいはこの文書が流れ出たかもしらない。それから、公安調査庁も、もとになる資料が流れ出たかもしらない、あるいは、このものの現物が流れ出たかもしらない。この三つだろうと私は思っているわけでございます。  でありまするから、その先生はその先生の政治生命をかけておられるわけであります。また、私たち国民の立場から立って見ますると、公安調査庁の、人権にかかわる重要なことの調査がよそへ漏れたということになったら、これはもう大変なことでございますから、これはもう国家公務員法違反だろうと私は思いますよ。したがいまして、大変重大な問題だというのは、私はそのことを言うわけでございます。  でありますから、公安調査庁も海上保安庁も、この点、担当者だけ調べたってだめだと思うのです。私は、全体の周辺を調べる。それから、この文字、いわゆるパソコンの文字も調査をする。もうあらゆることでしてもらわぬと、そうでなくてもオウム真理教問題は人権問題だ人権問題だと言われている今日、公安調査庁がこうやって、仮に、予算委員会で指摘になったとおり、公安調査庁から流れ出た、その上、九日前に再度その人と確認したというのです。その委員の先生が直接受け取ったかどうかわかりませんよ、協力者から協力者、協力者からあるいはその先生に流れ出たかもしれません。どういう道をたどったのかわかりませんけれども、何はともあれ重大な問題だろうと私は実は思っているわけであります。でありまするから、皆さん方、これは国家公務員法違反でもあると思うのでありますから、それなりの御調査をいただきたいと思います。  そこで委員長お願いでございます。  私は、この問題は、今言ったように大変大事な問題だと思います。公安調査庁に任せていいのか、海上保安庁の調べを待っていいのか。これは委員会も独自で私は調査する必要があるのではなかろうか。  要請いたします、委員長。独自に委員会としてもこの問題の、いわゆる流れ出たという点についての調査をひとつ委員会で取り上げていただきますことも要請をして、質問を終わらせてもらいたいと思います。  以上でございます。ありがとうございました。——いかがでございましょうか、御検討いただけますか。
  204. 加藤卓二

    加藤委員長 理事会でまた皆さんにお諮りいたします。  枝野幸男君。
  205. 枝野幸男

    ○枝野委員 私は、本日、お忙しい中、鈴木利廣先生においでをお願いをいたしました。  きょうこの委員会民事訴訟法案が付託をされたわけでありますが、本日の議論の中にも出てきておりますとおり、文書提出命令を中心として、行政の秘密とされる部分裁判所に出てこないのではないかという部分がこの法案の審議に入れば間違いなく争点になるだろうと言われております。  それにも関連をいたしまして、薬害エイズ裁判は三月二十九日に和解を迎えましたが、その裁判の過程で資料がないと言われていたものが、ことしに入ってから相次いで出てきているという指摘がなされております。そのこと自体としても大変重大な問題でありますし、また、民事訴訟法案文書提出命令審議に入る前提といたしましても、そのあたりの事実関係というものをはっきりさせておきませんと、大昔の話ではなくてつい最近の話として、役所が、国が情報隠しを民事訴訟の場で行ったのかどうか、そしてそれによってどういった影響があったのかということを明らかにしていかなければならないというふうに思っています。そうした意味で、本日は、東京HIV訴訟弁護団の事務局長でいらっしゃいます鈴木利廣先生に参考人としてお願いをいたしました。  ただいまの観点から、鈴木先生の方から、薬害エイズ訴訟の中での情報の隠ぺいというような部分、そして場合によっては民事訴訟法とも絡めて、経緯あるいは御意見をお聞かせください、お願いいたします。
  206. 鈴木利廣

    鈴木参考人 御紹介いただきましたように、東京HIV訴訟、薬害エイズ訴訟と呼ばれていますが、この訴訟の原告代理人の弁護団の事務局長をしています。  本日は、この薬害エイズ訴訟を通して、今この国会で問題になっています民事訴訟法改正案、とりわけその中の文書提出命令についての意見を述べたいと思います。  まず初めに、御承知のように民事訴訟法は、その目的として、民事紛争の適正、公平、迅速な解決にあります。したがって、今回のこの改正案も、この民事訴訟法の理念に基づいて、民事紛争を適正かつ公平かつ迅速に解決をしていくということに資する民訴法改正なのかどうかということを検討する必要があるというふうに考えています。  そして文書提出命令は、とりわけ現代的な意義と申しますと、証拠の偏在、偏りがもたらす手続的な不平等を是正し、真実発見をより促進していくというところに文書提出命令の今日的な意義があるというふうに言われています。とりわけ公害訴訟あるいは環境訴訟あるいは製造物責任訴訟、そして行政訴訟あるいは薬害エイズ訴訟のような国家賠償訴訟では、証拠が企業や官公庁に偏在し、原告の立証活動は困難をきわめ、したがって文書提出命令を求める事案が最近とみに増加しているというふうに言われています。  国家賠償訴訟の現状でありますが、国家賠償訴訟は、御承知のように憲法十七条に基づいた、新しく日本国憲法下で認められた憲法上の国民の権利であります。憲法三十二条の裁判を受ける権利と相まって、誤った国政を是正する国民の権利として機能することが期待されている重要な権利の一つであります。  しかし現状では、情報公開制度やディスカバリーと呼ばれる証拠固不制度もなくしかも現行民事訴訟法文書提出命令が極めて限定されているために証拠の偏在が是正されずに、したがって、訴訟手続の適正、公平、迅速の理念が害されたまま、国賠訴訟において高い原告敗訴率が維持されています。  このような中で、原告敗訴率が高いにもかかわらず年々国賠訴訟が増加していることをかんがみますと、国民のこの国賠訴訟、国家賠償法に基づく訴訟に対する考え方として、国政の誤った点を是正するという国民の願いが年々高まっているというふうに言えるのではないかというふうに思っています。  以下、東京HIV訴訟、薬害エイズ訴訟においてこの証拠の偏在の問題、あるいは国の応訴態度がどのようであったのかということについて問題提起をさせていただきたいというふうに思います。  この薬害訴訟も、国の業務行政あるいは血液行政さらには疾病対策、そのようなもの、国家政策の誤りから二千名の血友病患者にHIV感染被害を生んだと主張されて起こされました。被害者たちの思いは、国家賠償訴訟という形ですが、いわば国政の誤りを正し、被害をきちんと救済をし、二度と薬害を起こさせないための問題提起としてこの訴訟にかけてきました。  しかし、このようなHIV訴訟において、国は一貫して重要な証拠の提出を拒み続けてきました。裁判所は、第一回期日、これは一九九〇年の初頭にありましたが、この第一回期日の直後から、当事者に対し、事実の解明の観点から手持ち証拠の開示に積極的に協力してほしいということを原被告双方に要請をしました。私どもは都合三百点を超える証拠書類を提出しましたが、国からは二十点未満、わずか十九点の既に公刊されている医学文献等が提出されたのみでありました。そして、国や企業は、エイズ研究班の資料はおろか、血液製剤の薬事法上の承認手続に添付される書類すら開示を拒んできたのであります。この訴訟は薬事法の承認そのものの違法を争う訴訟でありながら、その薬事法の承認手続の書類すら提出されないままに手続が進められてきました。  結審間際の九四年二月の六日、NHKスペシャルの「埋もれたエイズ報告」の放映によってその存在が明らかにされたエイズ研究班の資料その他の資料すら、求釈明に対し確認できないと国は弁明し、これらの証拠を隠し通してきたのであります。エイズ研究班の資料に関しては、平成六年十月四日付の国の準備書面十という書面の中で、研究班の討議内容及び厚生省ないし委員等からの配付資料については確認できないというふうに言われてきました。しかし、ことしに入りこのエイズ研究班の資料は、薬務局及び当時の公衆衛生局、あちらこちらの資料の中に存在することが確認をされてきました。  法廷の審理の中では明らかにされませんでしたが、結審後に私ども弁護団が入手したエイズ研究班の資料、これは厚生省が資料を開示する前に入手できたわけですが、この非公式に入手した資料は、国側の証人である当時の生物製剤課長、つまり責任が問われた時代、一九八三年の当時の生物製剤課長郡司篤晃氏の法廷における証言と明らかに矛盾するものでした。  研究班の配付資料には、次のように記載をされています。これは、第二回研究班の一九八三年、昭和五十八年七月十八日に配付された「資料2」と題する書面であります。これは後に、ことしに入ってから厚生省によっても開示された資料の中に登場してくる資料であります。この中には、HIV、エイズの伝播型式として「伝播様式としては、B型肝炎に類似していると考えられている。すなわち、患者の血液、精液を介して感染する可能性が強い。」ということが書いてあります。  もしこのことが当時の郡司証人の証言に先立って明らかにされているとすれば、当時国が否定をしていましたウイルス説、これが有力な感染原因の一つであるということを国は否定をし、感染原因の数多くある学説の中の一つにすぎないと言ってきたわけですが、このウイルス説そのものが強く補強をされることになりますし、濃縮製剤がプール血漿を用いているために全体として汚染をされ、肝炎などの感染の危険性が高くなったことと相まって、こうした危険な濃縮製剤が、プール血漿から血友病患者にエイズ、HIVを伝染させる、伝播させるということが疑われたのであります。そしてさらには、そのことによって日本の血友病患者に対するエイズ対策として、この危険な製剤を使わないという防衛策を立てられたということになります。  しかし、郡司篤晃氏の法廷における証言の中では、例えば、B型肝炎のモデルと同じように感染するとすればこれは大変なことになるわけですねという質問に対して、はい、しかしそこはわかっておりませんでしたと証言されています。  さらにはその証言の中には、B型肝炎との類似性を発見してエイズに対して何か新しい事柄が出てくるという理解はその当時はなかったと思いますというふうに証言されています。つまり、研究班で当時配付された資料と、後に郡司証人が、当時の生物製剤課長郡司氏が法廷で平成五年に証言した内容とは、明らかに矛盾しているわけであります。我々は、郡司証人が、国の資料が提出拒否されているということを背景にして偽証したということを確信している次第であります。  さらに、ことしに入りまして厚生省が調査プロジェクトをつくり、幾つかの資料が出てきました。本年一月二十三日、菅厚生大臣の政策のもとに厚生省内に調査プロジェクトが設置され、そして、その二日後である一月二十五日には、私どもがこの郡司氏を先ほどの偽証罪によづて告発をしました。その翌日の一月二十六日から、従来確認されていなかった、確認されない、確認することができないとされてきた資料が、三十冊を超え、続々と見つかったと言われています。この資料の中には、訴訟における国側の主張と明らかに矛盾するものが少なからず存在をしています。  一例を挙げれば、国はこの訴訟において次のような主張をしました。この主張は、平成六年、先ほどの十月六日付の準備書面十に出てきますが、加熱濃縮製剤を緊急輸入すべきであるとの議論があった形跡はなく、厚生省が積極的に検討したことも、郡司課長から研究班にその旨提案したこともないというふうに国側は主張しています。つまり、八三年当時、加熱製剤の緊急輸入についての検討を否定しているのが国の主張でありました。  しかし、ことしに入って出てきた内部資料によりますと、どうでありましょうか。完全にこの主張と矛盾するメモが出てきています。これは「取り扱い注意」と記載され、「AIDSに関する血液製剤の取り扱いについて」と題した昭和五十八年、一九八三年七月四日付の書面であります。この書面は、当時の生物製剤課課長補佐の藤崎氏が書いたものとされています。この中では、国が訴訟においては、加熱の緊急輸入は検討しなかった、その形跡すらないと言ったことに関して、相反する記載があります。すなわち、加熱製剤に関しては使用を推奨するとか、エイズ研究班にその使用を勧告させるとか、トラベノール社に対し輸入承認申請を急ぐよう指示するとか、加熱製剤導入による国内メーカーへの打撃について「この程度の打撃はやむなし」とか記載されています。  その一週間後の七月十一日のペーパーの中においても、「超法規的措置による承認は、以下の二点の理由から好ましくない。」ということが書かれています。つまり、この点において、厚生省の訴訟における主張と、ことしに入ってから出てきた厚生省の内部の資料、生物製剤課の公式のペーパーとの間には、大きな矛盾があります。つまり、国がこの訴訟において虚偽の主張をしていたということが、この内部資料の開示によって明らかになりました。  さらに、八九年五月から十月、これは八九年の五月に大阪訴訟が提起され、そしてその年の十月に東京訴訟が提起されるまでの、その間の期間についての大阪訴訟に対する薬務局の訴訟対策資料が一冊公開をされました。この薬務局の訴訟対策資料の中には、先ほど、存在が確認されないと弁明され続けてきたエイズ研究班の資料の一部が編綴されていることも判明しました。つまり、国は当初から提出を拒み、後に確認できないとまで述べていたこの資料が薬務局の訴訟担当資料の中から出てきたということは、国が訴訟の当初から意図的な証拠隠しや虚偽の主張をしてきた疑いを抱かせるに十分な事実であります。現在もなお、資料の開示を拒み続けています。  例えば、三十六冊出てきたとされている資料の中から、わずか十一冊しか開示をされていません。しかも、その資料の中には、八三年六月のエイズ研究班設置以前の公衆衛生局の資料は一切含まれていませんし、八四年四月以降、つまり実質的にエイズ研究班が機能しなくなった以降のエイズと血液製剤に関する対策の資料は、何一つ存在していません。さらには、七年間に及ぶ訴訟対策資料についても、当初の一冊が開示をされただけで、現在に及ぶ訴訟対策ファイルは一切開示をされていないのであります。このように、現在に及んでも資料の開示が拒まれていること、そのことが、現在行おうとしている真相究明を再び妨げている原因になっています。  HIV訴訟では、現行民事訴訟法文書提出命令の要件が余りにも限定されているために、その申し立てすらできませんでした。しかし、裁判所要請に基づいた資料が提出されていれば、当初から国の責任は明白となり、提訴から和解まで七年もかかることなく、迅速な裁判によって被害者たちは救済されたでありましょう。  今回明らかになった、この国賠訴訟における国の証拠隠しの実態を踏まえれば、情報公開制度とともに、民事訴訟法上、強力な文書提出命令の立法化が必要だというふうに考えます。しかし、今回の改正案では、薬害エイズ関連の資料を出すことは極めて困難ではないでしょうか。二千名の命が危機にさらされ、これほど不十分な証拠ですら責任が明らかになった、このような事件ですら証拠を一片も開示させることのできないような民事訴訟法改正が、なぜ今必要なのでしょうか。公務員の職務上の秘密や監督官庁の承諾、さらには、専ら所持者の利用に供するための文書などに該当するという、その要件を盾に文書提出を阻むことを許してはならないと考えます。  文書提出命令の除外要件は、証拠調べの必要性を考えても、なおその提出が重大な公共の利益を害する場合であり、なおかつ、裁判所が当該文書の内容を閲覧して判断できるなど、厳格なものにすべきだと考えています。監督官庁の意見を聞くことは必要でも、その承認を提出命令の要件とすれば、文書提出命令の現代的意義は薄れ、訴訟手続の適正、公平、迅速さは損なわれ、HIV訴訟の血のにじむような二千名の被害者たちの闘いの経験は何ら生かされないことになります。  なお、今回のHIV訴訟における国側の応訴態度については、国会がその訴訟対策資料のすべてを開示された上で徹底した検証を行い、今後の国家賠償訴訟のあり方に生かしていただきたいというふうに考える次第であります。  ありがとうございます。
  207. 枝野幸男

    ○枝野委員 ありがとうございました。  大変貴重な御意見を示していただいたと考えておりますが、訟務局と厚生省においでをいただいております。今のお話を聞いていただいていたと思います。両省に二つの点をお尋ねをさせていただきます。  まず、今、鈴木先生から指摘をされました問題について、どう対応しようと思っていらっしゃるのか。もちろん、過去を取り戻すことはできませんので、今さら証拠提出をできるわけではありませんが、結果的に、この訴訟の中での国の対応は、訟務局が悪いのか厚生省が悪いのかという責任の押しつけ合いはともかくとして、適切でなかったと私も思っております。それに対して、どういう対応をされるのか。  それから、最後に鈴木先生からお話ありましたこの訴訟の経緯というものは、今後の国家賠償請求訴訟のあり方、そしてこの民事訴訟法改正の議論を進めていく上で、どんな経緯でどんな議論をしてこんな証拠隠しが行われたのかという事実を私どもも知らせていただきたい。ぜひ関係の資料を、内部資料ではありますが、国会に示していただきたいと思います。  この二点について、訟務局とそれから厚生省、お答えください。
  208. 増井和男

    ○増井政府委員 お答えいたします。  今回の訴訟におきまして、法務省としては指定代理人として適切に訴訟追行に当たってきたと考えております。現在厚生省において続けておられます調査の結果等を踏まえまして、今後とも一層真実の発見に努めて、適切に対処していきたいと思います。  それから、今お話の中にありました、郡司証人の偽証、あるいは資料の隠ぺいということのお話がございましたけれども、この郡司証人の証言につきましては偽証罪に該当するということで現在告発がされております。この点につきましては捜査当局において対応されているというふうに思われますので、その経緯を見守ってまいりたいと思っております。  また、今般、厚生省におきましてエイズ研究班関連と思われるものを含む資料が発見されましたけれども、この発見がおくれたことが隠ぺいに当たるかどうかということにつきましては、法務省としては判断すべき資料を持ち合わせておりません。  以上でございます。
  209. 吉武民樹

    ○吉武説明員 今回のHIV訴訟に関連いたしまして、いわゆる、当時の生物製剤課長、担当課長のファイルが一月二十六日に発見をされたわけでございますが、この点につきましては、私ども、従来から求釈明、あるいは国会における御質問あるいは質問主意書の際に調査も行ってまいりましたけれども、その調査は不十分でございまして、その資料の発見が非常に遅くなったということにつきましては、まことに申しわけないというふうに思っております。この点につきましては、現在大臣の命によりまして厚生省内でその経緯につきまして調査を行っておりますので、いずれその調査の結果につきまして、厚生省としてその結果を申し上げるということになるのではないかというふうに考えております。  それから、全体のファイルでございますが、先ほどお話がございました郡司元課長のファイルのほかに、私どもの血液事業対策室から、やはり同じ一月二十六日に三十冊の、これはいわゆるHIV関係ファイルといいますか、非常に広義のファイルも含めまして三十冊のファイルを発見いたしております。このファイルの中に当時の生物製剤課の担当の補佐のファイル、一部研究班資料がございましたけれども、そのほかに、当時の内部資料といいますか、この点が相当ございまして、私どもは当初研究班資料ということで目を通しておりまして、全体のファイルの価値といいますか、ここを十分認識しないまま時間が経過したということがございます。これは先般公表させていただきましたけれども、そのほかにも現在公表いたしておりませんファイルは二十六冊ございます。  このファイルの中には、ごく一部、研究班資料が含まれているファイルもございますし、それからその後の、例えば献血血液におきます血液検査等についてのファイルでございますとか、いろいろなファイルがございまして、これはただいまよく見ておりまして、いずれにいたしましても、どういう形で公表させていただくか、よく検討をしてまいりたいというふうに考えております。
  210. 枝野幸男

    ○枝野委員 お尋ねをした本質には両者ともきちんとお答えをいただいていないのではないかなと思います。  例えば、鈴木先生の御指摘の中にあった、発見されたファイルに訴訟関係の資料と、それから、ないないと言われていた資料が一緒にとじられていたなんて話についてどう考えておるのかという話は全然お答えをいただいていません。それから、そもそもその発見できた資料かどうかという、確認できたできないという資料の前の段階で、一番最初の段階では、鈴木先生からも、一貫して証拠提出に、裁判所の勧告に対して消極的であったという姿勢に対しては今も何のお答えをいただいておりません。特におかしいと思いますのは、訟務局は、訟務局の立場としてどちらなのかよくわかりませんが、厚生省に対する指導監督という表現がいいかどうかわからないけれども、それが十分でなかったというお話が出るのか、反省をしていると出るのか、どちらかでないとおかしいのではないですかね。  時間がございませんので、今の両役所の答弁をお聞きになって、鈴木先生の方から重ねて、行政に対して、あるいは我々国会に対して、この問題をよりょくしていくために御意見あるいは御要望があればお話しください。
  211. 鈴木利廣

    鈴木参考人 この文書提出命令をどのように機能させるかということについて、この薬害エイズ訴訟は多くの示唆に富んだケースだというふうに思います。  法務省からは、指定代理人は適切な訴訟対応をなさったというふうに今お聞きしましたが、そうであるならば、これは厚生省についても同じでありますが、そうであるならば、この訴訟対応したその訴訟対策の資料をこの国会の場で検証するということなしにはどのような実態だったのかはわからないのではないかと思います。  国側が多くの国賠訴訟や行政訴訟に対してどのように対応しているのか、これは一目瞭然であります。資料を出さないということで原告側が請求を棄却されているというのが実態であります。ですから、そのことがいかに真実を訴訟に反映させることを困難ならしめ、いわば不正義が実際上定着をしているかということだと思います。  司法制度を十分に機能させるために、民事訴訟法が適正、公平な手続をより実現するために、そのためにこそこの薬害エイズ訴訟を一つのケースにして、法務省の訴訟対策及び厚生省の訴訟対策のファイルを少なくも国会の国政調査権に基づいてきちんと開示をさせ、国会の中で検証していただきたい。そのことの後に、法務省や厚生省が適切な訴訟対応をしたのかどうかという評価が国会の場で、そして国民によってされるのではないか。その結論を謙虚に受けとめるのが法務省、厚生省のいわば役所、国家機関としての務めであるというふうに考えています。
  212. 枝野幸男

    ○枝野委員 ありがとうございました。  委員長お願いを申し上げます。  今、鈴木参考人からお話をいただきましたとおり、この薬害エイズ訴訟に関する訴訟対策ファイル、内部の資料です。訟務局長は適正に行ったと胸を張っておっしゃったのですから、公開されても何ら問題はないはずであります。もし世間一般に公開されるということが問題であるならば、秘密会というやり方も国会ではございます。ぜひ何らかの形で、これは民事訴訟法審議に先立って公開をしていただくように理事会でお取り計らいいただきたい、正式なこれは申し入れとして述べさせていただきます。
  213. 加藤卓二

    加藤委員長 ただいまの要望については、理事会において協議いたしたいと存じます。
  214. 枝野幸男

    ○枝野委員 では、時間でございますので、終わります。鈴木先生、どうもありがとうございました。
  215. 加藤卓二

    加藤委員長 正森成二君。
  216. 正森成二

    ○正森委員 本日は、参考人として小島周一弁護士に来ていただきました。  小島さんは、坂本一家、オウム真理教によって殺害されましたが、その坂本弁護士と同じ横浜法律事務所に所属されて、この六年余り非常に御苦労をなさった方でございます。そこで、二、三お聞きしたいと思いますので、御所見を簡潔にお述べいただきたいと思います。  坂本一家が殺害されましたが、TBSが事前にビデオをオウム真理教側に見せていたことについて、当委員会でも非常に問題になりました。そこで伺いますが、麻原が坂本弁護士を殺害するに至った決意を固めた、冒頭陳述にも記載されておりますが、それについてTBSがビデオを見せたことがどういう影響を与えたか。ある意味では、麻原氏の認識などを変化させたというか、一定の影響を与えたのではないかというようにも思われますが、その点について御意見をお聞かせください。
  217. 小島周一

    小島参考人 私たちがこれまで裁判での冒頭陳述あるいは告知をされた関係人の供述内容、それから独自に調査をしてきた内容から判断しているところでは、結果として見るならば、坂本弁護士のインタビューテープを早川らが見て、詳細にその内容を麻原こと松本被告に報告をしたということがこの坂本弁護士一家殺害の動機形成の上で極めて重要な役割を果たしたことは間違いないだろうと思っております。  それまで坂本弁護士は、オウム真理教被害対策弁護団を組織して教団とさまざまな交渉を行っておりましたけれども、その中の主たる活動というのは、入信をして家出をした信者の子供とその親とを会わせる活動、そして血のイニシエーションなどの詐欺的なやり方を暴いていく活動だったのですが、オウム真理教の側から見ると、坂本弁護士の活動ではっきりと見えていたのは、子供に会わせろという活動が主たる内容だったと思われます。  しかしながら、このTBSのインタビューでの坂本弁護士の発言というのは、その問題にとどまらずに、オウム真理教のさまざまな詐欺的な手段を弄してのお布施の強要、あるいは麻原教祖の超能力、空中浮揚等の超能力のいわばインチキ性、そして子供たちの人権から見た教団問題点、こういうことについて全面的に彼は反論をし、批判をしているわけで、恐らくその詳細な報告を聞いて麻原教祖は、坂本弁護士が、単に子供と会わせればいいというだけの活動ではなくて、オウム真理教の活動の根本にかかわるところにまで踏み込んで批判活動をしているということを知ったのであろうと考えています。  したがって、そういう意味では、その内容を知ったことが、早川あるいは上祐らが十月三十一日に横浜法律事務所を訪れたことにもつながりますし、そこでの交渉の決裂を受けて殺害を決意したという流れにつながっているわけですから、そういう意味では、坂本一家殺害の動機形成の上である意味では出発点をなした事件、事実であると考えております。  ただ、一般に言われているように、TBSが坂本一家を殺害したというような評価自体は私たちは全くとっておりません。これは一部にそういう評価、例えばマスコミ論調などの中でありますけれども、当時のオウム真理教に対する認識というのは、これは恐らく坂本弁護士もそうだろうと思いますけれども、反対するものに対しては街頭宣伝車での宣伝、あるいは誹議中傷のビラをまく、あるいは直接マスコミ等に押しかけて抗議をする、かなり執拗な嫌がらせをする教団であるという認識はあったでしょうけれども、それを超えて、まさかこのような犯罪に踏み出すということまでは考えておらなかった。私たちも考えていなかった。  そういう意味では、結果として振り返ってみると、この問題が坂本弁護士一家殺害の動機形成に大きな意味を持ったとは思いますけれども、そのこと自体が直ちに、当時の状況に立ち返って、一家殺害に対していわば責任を負わなければならないというようなことまではその時点では私たちは考えておりませんし、そういう批判はしておりません。ただ、それを離れて、ビデオを見せたことそのものに関する問題というのは、私たちもそれはそれとしてこの間批判しているところであります。
  218. 正森成二

    ○正森委員 ありがとうございました。  ビデオを見たことが麻原らの坂本弁護士に対する認識を変化させたというようにとれる御発言ございましたが、それはそのとおりだと思います。  実は、本日付で、ある新聞に早川被告の供述の全文と言われるものが載っております。それを見ますと、子供たちに会わせろということを言っていたときのことについて、「この当時は私たちが坂本弁護士がYの関係だけで依頼された弁護士という認識であったと思います。」と。つまり子供を取り返すといいますか、あるいは会わせるということだけだと思っていた。ところが、その後になって麻原が殺害を言い出したということを述べた後で、「私なりに、麻原が坂本弁護士に殺意を持つに至った理由を考えてみると、一つには坂本弁護士に自分の本来の領域すなわち法律の場で行動しているのではなく、マスコミという他の圧力を利用してまで教団を攻撃したことを激怒したのだと思います。」云々というように書かれております。したがって、TBSでビデオを見たということが殺意を決定的にする、あるいはそれを増強する方向で働いたということはこの供述内容から見ても非常に明らかであるというように思います。  そこで、次に参考人にお伺いしますが、一般的に言って、取材に応じた者に断りなく敵対側といいますか、相手側にビデオを見せることについて、テレビ局が守らなければならないルールがあると思いますが、その点について、坂本弁護士と同じ事務所におられた弁護士としてどのような見解を持っておられますか、簡潔に述べていただきたいと思います。
  219. 小島周一

    小島参考人 この問題に関しては、これまでも報道倫理に反する行為であるということでさまざま批判がされておりますし、私たちも、同じ同僚としてもあるいは弁護士として見ても、その点は全くそのとおりだと思っているんですけれども、もう一点、私たちが非常に考えているのは、取材を受ける側の権利というものに対する認識が非常に希薄だったのではないかという点であります。  つまり、インタビューを受けた場合に、私たちもほかの事件でインタビューを受けることがありますけれども、ある程度の報道機関との信頼関係に基づいて、かなり突っ込んだ話をすることもあります。ただし、それは話の全体の流れの中で、いわば公にすることを前提としないような話をすることもあるわけでありますから、そういうような内容が何の断りもなく、特に敵対する相手に見せられてしまう、開示をされてしまうということになると、基本的に報道機関との信頼関係の根本が揺らぐことになるわけですし、この見せてしまったという問題には、取材を受ける側の権利というものに対する認識の希薄さ、あえて言えばなさというものがやはりあらわれているのではないだろうかということを考えます。  ですから、そういう意味では、この見せたという問題自体、重要な問題だとは思いますけれども、私たちはこれから先、取材をする側と受ける側、双方にどのような使命があり、権利があり、義務があるのかということを具体的な形でやはり論議をしていかないと、同じような問題がまた繰り返されるのではないかということもまた強く考えております。
  220. 正森成二

    ○正森委員 もう一点伺いたいと思いますが、八九年の十一月初めに事件が発生したわけですが、事件発生を知ってその後で、オウム真理教側と十月の二十六日夜に交渉をしたのと同じ当事者が横浜法律事務所へ取材に来られたと私どもは報道などで知っております。それなのに、オウムのTBSへの抗議等をあなた方事務所の方にも、もちろん捜査機関にも一切秘匿したということになっておるわけですが、それがあなた方の、坂本さんの行方を調べる点について、あるいは捜査について一定の影響を与えたというように思わざるを得ないのですが、その点についてどのような見解を持っておられるか、お話しいただきたいと思います。
  221. 小島周一

    小島参考人 私たちは、坂本一家が行方不明になったことを知った十一月七日の夜、磯子署に捜索願を出しましたけれども、その時点で、既にオウム真理教と坂本弁護士が厳しい対立関係にあったということは話しております。消去法で考えると、もうこのオウム真理教以外には疑い得るものはいないということもはっきりと捜査当局には最初の日から伝えておりますし、十一月八日、青山弁護士が事務所に来るというときにも、事務所に直ちに駆けつけた捜査当局の責任者と、どのような事実まで向こうに話したらいいのか、バッジを見つけたことを話すのか話さないのか、そういうようなことまで突っ込んだ話をしております。  しかし一方で、やはりオウム真理教に対する、的を絞ったといいますか、予断という意味ではありませんけれども、オウム真理教がどのような教団であり、どのような活動をしたのかということに対する当初の捜査当局の立ち上がりは、私たちから見るとやはり遅い、遅かったと言わざるを得ないのですが、その大きな理由としては、私たちが把握をしている事実だけでは、オウム真理教が坂本弁護士一家をねらう動機としては余りに弱いのではないかということがありました。  これは、私たち自身もその点が大きななぞでしたし、特に、十月三十一日に、なぜ予定をしていなかった早川、上祐が青山とともにやってきたのかということもなそのままだったわけです。ですから、そういう動機の点で非常に弱いということもまた、私たちから見て捜査の立ち上がりがおくれた、あるいはオウム真理教に対するいわば力を集中した捜査というものがおくれた理由になっているのではないか。  そういうような状況の中で、もしもこの十月二十六日に抗議に訪れ、坂本弁護士のビデオを見たという事実が明らかになっていれば、十月三十一日に横浜法律事務所に三名が来た意味というものもはっきりしますし、そういう意味では捜査の方向性あるいはその内容も随分違っていたのではないか。  これは結果論ですけれども、そうなった場合には、翌年にはもう波野村の事件で早川は逮捕をされているわけですし、きょう裁判のあった岡崎一明も、翌平成二年にはポリグラフをかけられての任意の取り調べを受けているわけですから、真相がかなり早期に解明される、そういう可能性もあったのではないか。そうすれば、その後のオウム真理教の肥大化と凶暴化も防げたのではないだろうか。  しかも、坂本弁護士のビデオを見せた当時は、オウム真理教がこれほど凶悪な集団だという認識がなかったというのは、これは私たちも認めるところですけれども、この一家が何者かによって連れ去られたのではないか、犯罪に巻き込まれたのではないかということが明らかになった十一月十五日の時点では、これはそういう発想というのはもう通らなくなっているはずでありますし、しかもこの三人にビデオを見せた、あるいは放映中止の交渉をしたその当事者であるプロデューサーが、その後横浜法律事務所に坂本事件の取材に来ているわけで、事務所にはその名刺も残っております。  ですから、現在の段階ではTBSは、見せたときにはまだオウム真理教が凶悪な集団だと私たちも考えていなかったし、世間も考えていなかったから坂本事件が起きた後もその認識のままだったという回答書を寄せておりますけれども、この回答だけでは私たちとしては到底納得しがたい。坂本事件の起きた後、知った後には、少なくとも、もしや、よもやということを思ってしかるべきですし、当時のマスコミの報道を今検証しておりますけれども、それを見ても、やはり疑惑の教団として一斉に取り上げられているわけであります。  ですから、そういうことからしても、そのときに早急に、抗議に来た事実、最低でもそういう事実を私たちに知らせる、あるいは捜査当局に知らせていただいていれば、その後の捜査の流れというのは大きく変わったのではないか。そして、なぜその事実を私たちあるいは捜査当局に伝えないままに五年有余の時を過ごしてしまったのか。  そしてさらに、そのもとをたどれば、この事実は一体TBSの中のどこのところまで、例えば常務のレベルまでなのか、あるいは担当プロデューサーのレベルでとどまっていたのか、どこまで把握していたのか。  このような事実と、そして伝えなかった理由、この二点をとにかく一刻も早く明らかにすることが、また逆に同じような事件が二度と起きないようにするための基礎になるのではないだろうか。こういう趣旨で、私どもは公開質問状も出しておりますし、これからも、そういう点でのTBSとしてのきちんとした回答を現在求めているところであります。
  222. 正森成二

    ○正森委員 ありがとうございました。  ほかに聞きたいこともございますが、時間の点がございますので、これで終わらせていただきます。参考人、どうもありがとうございました。
  223. 加藤卓二

    加藤委員長 参考人に申し上げます。  本日は、お忙しい中を御出席いただき、ありがとうございました。  御退席いただいて結構でございます。
  224. 正森成二

    ○正森委員 それでは、これからは政府に対して質問をさせていただきたいと思います。  きょうは一般質問でございますので、法務省以外からも来ていただいております。  ここ数日の間に、マツダとアメリカのフォードとの関係が報じられまして、フォードが三分の一以上株式を取得して、経営権をみずからの手中におさめたということについてのさまざまな影響や問題点が論ぜられております。これを全般的に論じるのは、予算委員会あるいは商工委員会その他適切な場所があると思いますので、きょうは、労働省関係についてのごく一部についてだけ質問させていただきたいと思います。  そこで、労働省、来ておられますか。−まず伺いたいと思いますが、いろいろ不況がございましたので、雇調法と呼ばれておりますが、雇用調整助成金、これが支給されていると思います。いろいろ資料がございますが、輸送用機器、つまり自動車関連についてだけ伺いますが、それの休業と教育訓練への支給状況について最近の額を、わかっている範囲でお答えください。
  225. 長江盛啓

    ○長江説明員 労働省でございます。  輸送用機械器具製造業につきましては、平成四年度以降、雇用調整助成金の支給対象業種になっておるところでございますが、平成四年度におきましては約百三十七万円、平成五年度におきましては約二十五億二千九百十二万円、平成六年度につきましては約八十一億九千八百二十七万円となってございます。平成七年度につきましては、現在集計中でございます。
  226. 正森成二

    ○正森委員 これは輸送用機器についてですが、私どもが別に持っております資料によりますと、雇用調整助成金、例えば平成五年度の実績を見ますと、休業については、大企業は百二億円ぐらい受け取っております。それから教育訓練については五十三億円、合わせて約百五十億円受け取っていると、労働省から別にいただいた資料にあります。そうすると、この雇調法のお金のうち、平成五年度でいいますと二十五億ですから、この分では約六分の一が自動車関係に支給されているというように言えると思うのですね。  ところが、ことしの春闘で、マツダの労働者が広島県春闘共闘委員会などと協力をして、アンケートをマツダの労働者に対して実施しました。そのアンケートが返ってまいりますと、その一部を読み上げますが、こういうように言っております。  「マツダの社員は、月二日間の強制休業(一時帰休)」、つまり雇調金の対象になるもの「を強いられている。この間の有休取得状況は社員にとってとても不利で、耐え難いものになっている。というのは、強制休業が実施されなかった頃は、労使協定で年十日の有給休暇を取得しないとその社員の上司が罰せられることになっていて、全社員がほとんど十日間の有休取得を守っていた。ところが、強制休業が実施されるようになって、労使協定が、月二日の強制休業を含んで年に十四日という内容に変わった。つまりその年は、十四日中十二日が強制休業のため、有給休暇は二日しかとれないことになる。入社五年目で、二十日の有休発生があるのに有給休暇を二日しかとることはできない。なぜこういうことになるのか。強制休業によりマツダは、国から補助金を得ているからである。これでは、補助金を国からだまし取っているような気がしてならない。国も強制休業を実施する企業については、有給休暇の使用に関する規定をはっきりすべきだと思う。」これは三十七歳の間接部門に勤務している労働者のアンケートに対する答えであります。  同じく間接部門に勤める女性からは、「有休の取得に休業の日数もカウントするのはおかしいと思う。あくまでも有休は休業と別のものとして考えてほしい。」こういうアンケートも来ております。  そこで伺いたいと思うのですが、有給休暇というのは労基法の三十九条に決められており、それに対しては、四項で時季変更権というのがありますが、事業の正常な運営を阻害する場合というのが条件になっておって、一時帰休なんというのは、不況だから、働かすに働かされないから休んでくれ、それで、そのかわり国家からは一定の助成金をもらうということなのに、それをやっているから権利としてある有給休暇はとってはいけないなどというのは、これは労基法の違反じゃないのですか。労働省は、雇調金を受け取って休業をした場合には、それを有給休暇にカウントせよというような見解をとっているのですか、それをまず伺いたい。
  227. 長谷川真一

    ○長谷川説明員 労働基準法の有給休暇の規定についてのお尋ねでございますけれども、御承知のとおり、年次有給休暇につきましては、労働基準法三十九条に基づきまして、原則として労働者の請求に基づき付与すべきということになっておるわけでございます。  先生先ほど御指摘ありましたように、労使協定によるいわゆる計画的な年休の付与というのが第五項に規定があるわけでございますが、労使協定がある場合につきましては、年次有給休暇の日数のうち五日を超える部分についてはその定めによって与えることができる、これが基準法の規定であるわけでございます。したがいまして、労使協定がない場合でありますとか、あるいは労使協定の対象でない年休の日数につきまして、労働者が仮に自由に年次有給休暇を請求することができないということでありますと、基準法上の問題が出てこようかというふうに思っております。  お尋ねのマツダのケースにつきまして、年休の取得促進という観点から計画付与を労使協定で実施していると聞いておりますが、このお尋ねの件につきまして基準法の規定上問題があるかどうかということにつきましては、具体的な実態を踏まえて判断をする必要があるというふうに考えております。
  228. 正森成二

    ○正森委員 いろいろ話がありましたけれども、雇調法に基づく一時帰休で強制休業をさせておるからそれを有給休暇にカウントするなんということは、労使協定があろうがなかろうが、あれば余計けしからぬことではないですか。実情を調べてもっと判断したいということだから、それではここで、そういう内部告発と言ったらおかしいけれども、アンケートについて答えているんだから、しかも、これは協定にそうなっているというように書いてあるのですから、その点を調査して、それが労基法三十九条に違反するかしないかということについて見解を私に報告してもらいたいと思いますが、もう一遍答弁してください。
  229. 長谷川真一

    ○長谷川説明員 先生の御指摘ございましたところでございますが、現在、広島の労働基準局におきましてもこの問題についての情報の収集に努めておるところでございます。必要に応じまして立入調査を実施することも含め、適切な対応を図ることにしたいと思います。
  230. 正森成二

    ○正森委員 それだけでなしに、マツダは残業代を払わないということを公然とやっております。  このアンケートによると、こう書いてある。「月平均八十時間の時間外労働でもう疲れた。全く手当がつかない(ここ一二年間ついていない)。労働組合で間接のノーペイ残業が今まで、ほとんどクローズアップされていない。」「ほぼ毎晩終電近くまでノーペイをやらないといけない状態。」こうなっておって、ここに、写真を私のところへ送ってまいりました。  これを見ると非常によくわかるのですが、遠方からは見えないと思いますが、こういうぐあいに本社で何時まで電気がついておるかというのを調べておるのです。これは皆、間接部門が働いているところですが、これを見ると、午後六時から始まって一番下のところは午前二時ですが、そういうところまで電気がついております。これは、現場じゃなしに間接部門で、夜中の十二時、一時、二時まで働いておるということを示しているのですね。  ほかにも投書がございまして、例えば「賃上げも重要だが、もうノーペイ残業は耐えられない。月平均六十時間残業だが、ここ三年金く支給されていない。基本給しかもらえない。」「なんとかしてくれ!」「ノーペイ残業では一時帰休の意味がない。」こう言っています。それで、これは現場でもはびこっているということが書いてあります。ある部長は、おれのところの部には「残業という概念はない。」こういうぐあいに放言している。余り言うとだれがこういうことを言ったかということがわかったらいかぬからこの委員会では言わないけれども、労働省が私のところへ来るなら、どこの本部の部長が言ったかということを教えてあげます。  この夜の写真を見ると、そこは午前一時ごろまでごうごうと電気がついておる。あるいは、休日出勤をさせられて、「有休の取得に休業の日数もカウントするのはおかしいと思う。あくまでも有休と別のものとして考えてほしい。」ということが書いてありますし、それから、「一時帰休が実施されているというのに休みは全くとれず、それどころか土日の休みも一日は出勤するという過密労働、もちろん夜も遅く二十二時以前に会社の門を出るという日はない程です。」こう言っている四十九歳の事務系の男性がいます。あるいは、女性もこう言っています。「私の彼は毎日家に帰るのが十二時前(毎日終電)です。土日も月に二〜三回は出社して仕事をがんばっています。こんなにがんばっているのに残業代はゼロでとってもかわいそうです。」「このままでは体をこわしそうです。何とかしてください!!」二十四歳事務の女、こういうのが来ております。  いいですか。残業というのは割り増し賃金で労に報いなきゃならないのに、割り増し賃金を払うどころか、そもそも残業代を払わない。もってのほかじゃないですか。これについては、労働基準監督署に労働者の団体が是正を申し入れているはずです。それを調べて、そういう状況について調査に入り、適切な手段をとって労基法違反が起こらないようにすべきではないですか。
  231. 長谷川真一

    ○長谷川説明員 御指摘の時間外勤務の問題、または休日労働の問題を含めまして、実態をよく調べて対処したいというふうに思います。
  232. 正森成二

    ○正森委員 最後に、刑事局長にお見えいただいておりますが、今お聞きになったとおりですが、これは労基法の違反で、それは百十九条に罰則があり、六カ月以下の刑を科せられるというようになっております。  私は、労働省の指導によって是正されればこれはまた事を荒立てなくてもいいかもしれないけれども、あくまで是正されないようならば告訴あるいは告発を行って、刑事当局に断固たる措置をとってもらわなきゃならない、そうでなければフォードに対しても日本の恥さらしになる、こう思いますが、いかがですか。
  233. 原田明夫

    ○原田政府委員 具体的事案における検察の対応等についての御質問でございますので、直接御答弁差し控えさせていただきたいと存じますが、一般論ということで申し上げさせていただきますれば、検察当局は、告発を受理した場合には適正に捜査いたしまして適正に対応するものと存じます。
  234. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  235. 加藤卓二

    加藤委員長 小森龍邦君。
  236. 小森龍邦

    ○小森委員 まず、総務庁の方へ、御出席いただいておると思いますから、お尋ねをします。  去る三月二十八日の地対協の総括部会報告がございますが、その中で、今後の問題として「法的措置の必要性を含め各般の措置について具体的な検討を要する」という文言がございます。その「法的措置」とはどういうものか。運動側は、基本法を要求しておる運動側でありますが、運動側は、そのことについて一歩前進だとか、あるいは基本法に向けた足がかりになるとのコメントも新聞紙上で見受けます。  この際、国政審議の舞台たる本委員会において、ここに言う「法的措置」とはどのようなことを意味しているのか、地対協としての正式な見解を総務庁からお聞きしたいと存じます。
  237. 川邊新

    ○川邊説明員 御指摘の「法的措置の必要性を含め各般の措置について具体的な検討」という表現は、地対協総括部会の報告書の総論に述べられております。報告書で述べております各論に当たる、今後の重点施策として述べられております分野全体にかかっているというふうに理解しているところでございます。  具体的な内容につきましては、政府において今後検討を進めていくこととしております。
  238. 小森龍邦

    ○小森委員 ちょっとまあ要領を得ませんが、次に移ります。  同じ総括部会報告におきまして、同和対策審議会の答申を踏まえなどと、同和問題の早期解決ということをその報告の中で述べられておりますが、一面においては、「教育、就労、産業等の面でなお存在している較差」ということについて、九三年の調査でそういうことを認められておるわけでありますが、「短期間で集中的に較差を解消することは困難」と、国の責務から逃避しておる姿勢をのぞかせておられます。  「問題の解決は焦眉の急」ということを同対審答申は指摘をしておりますが、同和地区住民社会的地位の上昇と解放への道を阻む要因として就労の問題が、あるいは産業の問題があるわけでありますが、そういう同対審答申の精神とは相反する総括部会報告の内容になっておると思いますが、論理的矛盾についてどういうふうに説明をされるか、お伺いをいたします。
  239. 川邊新

    ○川邊説明員 教育、就労、産業等の面でなお格差が存在しているということは御指摘のとおりでございます。  しかしながら、報告書では、「なお存在している較差の背景には様々な要因があり、短期間で集中的に較差を解消することは困難とみられ、ある程度の時間をかけて粘り強く較差解消に努めるべき」という指摘をしているところでございます。そこで、教育、就労、産業等のなお残された課題につきましては、一般対策に工夫を加えつつ対応するという基本姿勢に立つということになっているところでございます。
  240. 小森龍邦

    ○小森委員 このことについては多少、時間がもし余りましたら後ほど言及いたしますが、もう一つ予定をしておりますことを法務省の方へお尋ねをいたします。  総括部会報告の最も注目しなければならない内容の一つに、これまでは、整備された法務省人権擁護行政ということを法務省はみずから評価をしておりましたが、今回の報告は、「人権擁護制度の充実強化に取り組むべきである。」つまり欠陥を前提とした、そういう報告となっております。「人権侵害救済制度の確立を目指して鋭意検討を進めるべき」ともいたしております。  現行人権擁護委員制度には数々の欠陥が内包されておりますが、今回の「法的措置の必要性」云々の文言もあり、人権擁護委員制度に法改正を伴う整備を期待してよいものかどうか、お伺いいたします。
  241. 大藤敏

    ○大藤政府委員 お答えいたします。  これまで法務省は、平成三年の十二月に出されました地対協の意見具申におきまして、人権擁護委員を含め人権擁護機関の充実、強化に努めるべきであるという指摘を受けたところでございます。  この指摘も踏まえまして、法務省は、人権擁護委員の増員や実費弁償金の増額など、委員体制の充実強化に努めてまいりますとともに、委員の一層の活性化を図るという意味で、人権意識にすぐれた適任者の確保、さらには女性委員の拡大、若年齢化の推進などにいろいろ努めてきたところでございます。さらに、平成六年におきましては、御承知のとおり、子どもの人権専門委員を新たに設けたところでございますし、現に、さらに人権調整専門委員制度についても検討しているところでございます。  ところで、御指摘の、今回の総括部会の報告でございますが、御指摘のとおりでございまして、私どもはこれを真摯に受けとめておりまして、法改正の必要性の有無をも含めまして、人権擁護委員制度のあり方についてこれから検討を進めまして、人権擁護委員制度がより有効に機能するように努めてまいりたいと考えているところでございます。
  242. 小森龍邦

    ○小森委員 法改正を含めてということでありますから、かなり前向きなことのように受けとめさしていただきます。強く期待をいたしておりますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。  そこで、総務庁の方へもう一度逆戻りをいたしますが、要するに、仕事の問題というのは、明治以後の近代化の方向をたどった我が国社会の中にあって部落差別がずっとそのままの状況で存続してきたということは、近代産業の主要な生産過程に労働力として組み込まれなかったというところが最大の問題である、こう言っておるわけでありますが、その最大の問題をぼつぼつ解決すればよいということは、いかにしても私は納得がいかないのであります。  したがって、そのことをここで議論するほどのいとまはございませんが、少し角度を変えてお尋ねしますが、このことは早急に解決をしなければならないとか、その文言は「焦眉の急」、まつげに火がついてじりじりとここまで来るまでの間に解決をせねばならぬほどのことだ、こう言っておるのを、ぼつぼつというようなことは納得いきませんが、「焦眉の急」と同対審答申の言っておることをあなたは御存じですか。
  243. 川邊新

    ○川邊説明員 先生御指摘のとおり、昭和四十年に出された同対審答申で、就労問題等についてまさに「焦眉の急」の懸案であるという御指摘があることは事実でございます。私どもは、平成五年度の実態調査におきましても、いろいろな面で存在しておりました格差は大きく改善されたという前提に立っておるわけでございますが、その中でまだなお格差が残されている分野があるということでございまして、それについてどういう対策をしていくべきかという点の分析をした結果、やはりいろいろな要因もあるし、現実問題としては一般対策で対応していくべきではないだろうかというのが地対協総括部会の報告書の中身でございます。
  244. 小森龍邦

    ○小森委員 ここで一般対策とか特別の対策とかいうことを私は言っておるのではなくて、早く解決しなければならぬという意味のことが書いてある、そのことをどう思うかという尋ね方をしたわけであります。しかし、十分な答えがございません。そのことにだけ終始できませんから、もう一点だけお尋ねいたします。  要するに、この法的措置を含めということは、これまでの地域改善対策特別措置法とか地対財特法というような単独の法でできていないいろいろなことを一つにまとめてやるという意味なのか、それとも既成のいろいろな法律の中に少し加味するという意味なのか、あるいは、そういうこともやらないで、単なる行財政的措置というような意味で、法的措置を必要とすると言わずに、わざわざ「法的措置の必要性を含め」と、そこを少し言葉をごまかしたのか、その点いかがでしょうか。
  245. 川邊新

    ○川邊説明員 報告書におきましては、現行法の期限である平成九年三月末をもって現行の地対財特法は終了するということでございまして、なお残された課題については一般対策で工夫をしながら対応していくという基本姿勢に立つべきである、その際に、先ほど申し上げましたけれども、各論に書かれております各種対策につきましては、法的措置の必要性も含めて具体的に検討しろということでございます。法的措置の必要性も含め、具体的な内容につきましては、今後政府において検討していく中で決まっていくものだというふうに考えております。
  246. 小森龍邦

    ○小森委員 終わります。
  247. 加藤卓二

    加藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時十二分散会      ————◇—————