○正森
委員 それでは私は、先日行われました坂本一家殺害
事件の冒頭陳述に関連して、TBSの対応の問題について
関係当局に若干の質問をさせていただきたいと思います。
坂本
事件の冒頭陳述を読ませていただきましたが、私がまず感じましたのは、
オウム真理教の六名がかりによる殺害
事件というのが我々が思ったより非常にずさんなやり方ですね。初め新聞で
報道されていたのは、薬を注射して比較的瞬時に殺害というような感じを持っておりましたが、それは実際上は行われないで、非常に野蛮なというか原始的な、絞殺による窒息死を三名ともさせた。それに対して相当な抵抗も行われまして、相当な血が出て、それを隠ぺいするために布団だとか、もちろん運び出すときに見えないということもあるでしょうが、パジャマ等々を持ち去ったというようなことも
報道されております。
私
どもは、同僚弁護士が
社会正義と基本的
人権を守るために奮闘しようとしているのに対して
オウム真理教がこういう残虐な行為をやったということで、天人ともに許すべからざる重大な犯罪であるというように思っております。この
機会に徹底的な真相解明と
関係者を厳罰に処することを改めて求めたいと思います。
その
関係で、私は黙視することができないのはTBSの対応であります。冒頭陳述あるいは
報道によりますと、八九年十月二十六日に、翌二十七日に被害者の会の
関係者の放映が行われることを知って、これを中止するように、そしてその
内容を知らせるようにということで、上祐、青山、早川という三名が赴いたということが書かれております。そして冒頭陳述によれば、先ほど同僚
委員から報告がありましたが、その席で詳細に
内容を知って、そして十月三十一日に坂本弁護士のところへ夜赴きまして、事務所で論争になった。そしてそこで、坂本弁護士は考えを改める
可能性がないということで殺害を決意した。
つまり、坂本弁護士を救出する会の方々が初め非常に
努力されたのは一体この
事件の動機が何であるかということで、すべての犯罪にとって動機というのは決定的に重要であります。明智小五郎とかシャーロック・ホームズとか何とかかんとかいろいろありますが、それらの探偵が一貫して追及するのは、動機が何であるか、その犯罪によって利益を得る者が何であるかということから捜査が進展するというのは、いやしくも
刑事事件に
関係する者にとって
常識であります。そうすると、この件は、坂本一家殺害
事件ひいては
オウム真理教のこういう暴虐な行為に対する原点の動機を示すものにほかなりません。
先日逓信
委員会でも
審議が行われたようであります。郵政省にも来ていただいておりますが、私は少し調べてみましたが、放送法の三条では「放送番組は、
法律に定める権限に基く場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。」こう規定されております。
そういう点からいいますと、
オウム真理教が三名押しかけて、
内容を執拗に聞いた上で、放映を中止しろということを言って、事実上、いろいろ言いわけをしているようですが、それに屈したというのは、いやしくも
公共の電波を預かる者として非常に問題のある行為である、これが第一点。
第二に、ただし、放送
関係者は一方に偏ってはならず、特に
政治とか
宗教とか
社会的に問題のある場合には、公平に問題を扱わなければなりません。そういう点がありますから、TBSの放送基準というものがあります。一九九二年四月一日に改定されたものであります。これは、同様の規定が放送法にも定められております。
それにはどう書いてあるかといいますと、その八号で、「放送番組は、すべての干渉を排し、事実を客観的かつ正確、公平に取り扱うとともに、電波の特性を生かして機動性と速報性の発揮に努める。」こう書いてあります。六項では、「
政治、経済、その他
社会上の諸問題に対しては、公正な
立場を守り、
意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにする。」こう書いてあります。
ですから、八九年十月当時では非常に鋭く
意見が対立していたわけですから、その両者の
意見を聞くとかあるいは放映するということであれば、これは何らとがめられることではありません。現に、この番組でも、水中で修行するというクンバカとかなんとかいうのを映して、それと一緒に被害者の会の声も放映するということになっていたようであります。仮に、被害者の会の、詳しく言いませんが、冒陳に全部書かれておりますけれ
ども、問題のある点を
指摘されたとするならば、それを一緒に放映するとか、あるいは接着した時期に放映するということであれば、これは
公共の放送機関としての役割を果たすことが十分にできるはずであります。それを一方的に抗議を受けて、中止してしまう。
そして重大なことは、その抗議を受けたということを坂本弁護士にも知らせない。
事件が起こってからも
関係者にも捜査
当局にも知らせない。このことがさらに重大な問題であるというように私は思います。そういうように知らせなかったから、TBSに抗議に来た青山、上祐、早川と、十月三十一日に坂本弁護士のところへ押しかけたのは全く
同一人物であります。普通の
常識のある者なら、これが共通の意図に基づいて行われたことは極めて明らかなはずであります。
しかも、
報道によると、十一月二日にサティアンで麻原が
関係者を呼び集めましたが、そのときの議題は、十月二日から
報道を開始した、「
オウム真理教の狂気」というのを連載したサンデー毎日の牧太郎編集長を殺すということだった、毎日新聞を爆破しようという声も出た、しかし牧太郎氏がなかなか家へ帰らないということがわかったので、今一番大事なのは坂本弁護士の殺害だというようになったと
報道に書いてあります。動機中の動機じゃないですか。
まず、郵政省に伺います。
私は、今言うたように、
意見が対立する問題は両方に公平に放映させるというようになっていますから、そういう意図で、一定の範囲で、坂本弁護士がこういう趣旨のことを雷っていると言ったことについては、けしからぬといってとがめ立てをするということに当たらない場合もあると思います。しかしそれは、その後公平に放映するとか、しかるべき態度がとられた場合のみであります。ところが、本件ではそれをやっておりません。しかし、その後、抗議に来たということを
当事者の坂本さんにも知らせず、
事件が起こってからも
関係当局にも一切知らせなかったということは、
報道機関として言語道断であるだけでなく、
社会的な、
一般的な
社会人としても絶対に許されないことじゃないですか。
十一月十五日には既に警察は公開捜査を行っております。また、
関係の横浜
法律事務所などは、いかなるささいなことでも情報提供を受けたいと
いうことを言い、その後、全国の弁護士、最後は日弁連まで、そういうことで、公開捜査で、懸賞まで出して情報の提供を求めております。そういうことであるのに、一切それに応じない。
一方、坂本弁護士がああいう
事件に遭ってから、十月の末から十一月に至って、TBSは、繰り返し、坂本弁護士の動く唯一の像であるといってそのインタビューを放映して、視聴率を稼いで、もうけることに一生懸命であるということをやっております。しかし、
社会的責任は果たしていない。言語道断ではないか。郵政省はどう思いますか。