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1996-03-25 第136回国会 衆議院 内閣委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年三月二十五日(月曜日)     正午開議  出席委員   委員長 大木 正吾君    理事 熊代 昭彦君 理事 宮路 和明君    理事 渡辺 省一君 理事 今井  宏君    理事 倉田 栄喜君 理事 弘友 和夫君    理事 山元  勉君 理事 宇佐美 登君       大野 功統君    唐沢俊二郎君       佐藤 信二君    塩谷  立君       鈴木 俊一君    津島 雄二君       虎島 和夫君    石田幸四郎君       石破  茂君    鹿野 道彦君       塚田 延充君    野田 佳彦君       五十嵐広三君    田口 健二君       金田 誠一君    松本 善明君       岡崎 宏美君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (内閣官房長官)梶山 静六君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 中西 績介君  出席政府委員         内閣官房内閣内         政審議室長   藤井  威君         人事院総裁   弥富啓之助君         人事院事務総局         給与局長    小堀紀久生君         内閣総理大臣官         房管理室長   安藤 昌弘君         宮内庁次長   森  幸男君         皇室経済主管  角田 素文君         総務庁長官官房         長       河野  昭君         総務庁人事局長 池ノ内祐司君         総務庁恩給局長 石倉 寛治君  委員外出席者         内閣総理大臣官         房参事官    戸谷 好秀君         国税庁課税部法         人税課長    大村 雅基君         郵政省貯金局経         営企画課長   藤岡 道博君         内閣委員会調査         室長      松下 英彦君     ————————————— 三月二十二日  皇室経済法施行法の一部を改正する法律案(内  閣提出第四号)  恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出第  五号) 同月十九日  国際常設仲裁裁判による旧日本軍の慰安婦問題  の解決に関する請願(岡崎宏美君紹介)(第四  六六号)  同(岡崎宏美君紹介)(第五〇六号)  非営利の芸術団体市民文化団体法人制度の  実現等に関する請願(田原隆君紹介)(第五九  三号)  衆議院解散に関する請願(中井洽君紹介)(第  五九四号) 同月二十二日  非営利の芸術団体市民文化団体法人制度の  実現等に関する請願(青木宏之君紹介)(第六  三〇号)  同(新井将敬君紹介)(第六三一号)  同(粟屋敏信君紹介)(第六三二号)  同(井奥貞雄君紹介)(第六三三号)  同(石田祝稔君紹介)(第六三四号)  同(今井宏君紹介)(第六三五号)  同(上田清司君紹介)(第六三六号)  同(岡田克也君紹介)(第六三七号)  同(鹿野道彦君紹介)(第六三八号)  同(海江田万里君紹介)(第六三九号)  同(海部俊樹君紹介)(第六四〇号)  同(金子徳之介君紹介)(第六四一号)  同(古賀一成君紹介)(第六四二号)  同(後藤茂君紹介)(第六四三号)  同(粟屋敏信君紹介)(第六四四号)  同(笹川堯君紹介)(第六四五号)  同(杉山憲夫君紹介)(第六四六号)  同(田名部匡省君紹介)(第六四七号)  同(中野寛成君紹介)(第六四八号)  同(中村喜四郎君紹介)(第六四九号)  同(中村力君紹介)(第六五〇号)  同(西岡武夫君紹介)(第六五一号)  同(西村眞悟君紹介)(第六五二号)  同(野呂昭彦君紹介)(第六五三号)  同(初村謙一郎君紹介)(第六五四号)  同(平田米男君紹介)(第六五五号)  同(二見伸明君紹介)(第六五六号)  同(船田元君紹介)(第六五七号)  同(松田岩夫君紹介)(第六五八号)  同(山田宏君紹介)(第六五九号)  同(山本幸三君紹介)(第六六〇号)  同(山本拓君紹介)(第六六一号)  同(若松謙維君紹介)(第六六二号)  同(渡部恒三君紹介)(第六六三号)  同(安倍晋三君紹介)(第六九四号)  同(阿部昭吾君紹介)(第六九五号)  同(相沢英之君紹介)(第六九六号)  同(逢沢一郎君紹介)(第六九七号)  同(愛野興一郎君紹介)(第六九八号)  同(青山丘君紹介)(第六九九号)  同(赤松広隆君紹介)(第七〇〇号)  同(赤松正雄君紹介)(第七〇一号)  同(秋葉忠利君紹介)(第七〇二号)  同(麻生太郎君紹介)(第七〇三号)  同(網岡雄君紹介)(第七〇四号)  同(五十嵐広三君紹介)(第七〇五号)  同(井上一成君紹介)(第七〇六号)  同(井上喜一君紹介)(第七〇七号)  同(伊藤宗一郎君紹介)(第七〇八号)  同(伊藤達也君紹介)(第七〇九号)  同(池田行彦君紹介)(第七一〇号)  同(石井智君紹介)(第七一一号)  同(石田勝之君紹介)(第七一二号)  同(今津寛君紹介)(第七一三号)  同(今村修君紹介)(第七一四号)  同(岩田順介君紹介)(第七一五号)  同(上田勇君紹介)(第七一六号)  同(浦野烋興君紹介)(第七一七号)  同(江崎鐵磨君紹介)(第七一八号)  同(江田五月君紹介)(第七一九号)  同(江藤隆美君紹介)(第七二〇号)  同(衛藤晨一君紹介)(第七二一号)  同(枝野幸男君紹介)(第七二二号)  同(遠藤登君紹介)(第七二三号)  同(小川元君紹介)(第七二四号)  同(小沢一郎君紹介)(第七二五号)  同(小澤潔君紹介)(第七二六号)  同(小野晋也君紹介)(第七二七号)  同(越智通雄君紹介)(第七二八号)  同(緒方克陽君紹介)(第七二九号)  同(大島理森君紹介)(第七三〇号)  同(大野由利子君紹介)(第七三一号)  同(大畠章宏君紹介)(第七三二号)  同(岡崎トミ子君紹介)(第七三三号)  同(岡崎宏美君紹介)(第七三四号)  同(岡島正之君紹介)(第七三五号)  同(加藤六月君紹介)(第七三六号)  同(狩野勝君紹介)(第七三七号)  同(柿澤弘治君紹介)(第七三八号)  同(片岡武司君紹介)(第七三九号)  同(金子原二郎君紹介)(第七四〇号)  同(金田誠一君紹介)(第七四一号)  同(亀井善之君紹介)(第七四二号)  同(川島實君紹介)(第七四三号)  同(河村たかし君紹介)(第七四四号)  同(河村建夫君紹介)(第七四五号)  同(菅直人君紹介)(第七四六号)  同(木部佳昭君紹介)(第七四七号)  同(岸田文雄君紹介)(第七四八号)  同(北村直人君紹介)(第七四九号)  同(久野統一郎君紹介)(第七五〇号)  同(工藤堅太郎君紹介)(第七五一号)  同(栗原裕康君紹介)(第七五二号)  同(玄葉光一郎君紹介)(第七五三号)  同(小泉晨二君紹介)(第七五四号)  同(小平忠正君紹介)(第七五五号)  同(小林守君紹介)(第七五六号)  同(小森龍邦君紹介)(第七五七号)  同(古賀誠君紹介)(第七五八号)  同(五島正規君紹介)(第七五九号)  同(河野洋平君紹介)(第七六〇号)  同(高村正彦君紹介)(第七六一号)  同(近藤鉄雄君紹介)(第七六二号)  同(左近正男君紹介)(第七六三号)  同(佐々木秀典君紹介)(第七六四号)  同(佐々木陸海君紹介)(第七六五号)  同(佐藤観樹君紹介)(第七六六号)  同(佐藤謙一郎君紹介)(第七六七号)  同(佐藤静雄君紹介)(第七六八号)  同(佐藤信二君紹介)(第七六九号)  同(佐藤剛男君紹介)(第七七〇号)  同(斉藤斗志二君紹介)(第七七一号)  同(斎藤文昭君紹介)(第七七二号)  同(坂井隆憲君紹介)(第七七三号)  同(鮫島宗明君紹介)(第七七四号)  同(自見庄三郎君紹介)(第七七五号)  同(白川勝彦君紹介)(第七七六号)  同(白沢三郎君紹介)(第七七七号)  同(須藤浩君紹介)(第七七八号)  同(鈴木俊一君紹介)(第七七九号)  同(住博司君紹介)(第七八〇号)  同(関谷勝嗣君紹介)(第七八一号)  同(関山信之君紹介)(第七八二号)  同(園田博之君紹介)(第七八三号)  同(田口健二君紹介)(第七八四号)  同(田中甲君紹介)(第七八五号)  同(田中昭一君紹介)(第七八六号)  同(田邊誠君紹介)(第七八七号)  同(田村元君紹介)(第七八八号)  同外一件(高橋一郎君紹介)(第七八九号)  同(高橋辰夫君紹介)(第七九〇号)  同(高見裕一君紹介)(第七九一号)  同(竹内譲君紹介)(第七九二号)  同(竹内黎一君紹介)(第七九三号)  同(武部勤君紹介)(第七九四号)  同(武山百合子君紹介)(第七九五号)  同(玉沢徳一郎君紹介)(第七九六号)  同(月原茂皓君紹介)(第七九七号)  同(虎島和夫君紹介)(第七九八号)  同(鳥居一雄君紹介)(第七九九号)  同(中尾栄一君紹介)(第八〇〇号)  同(中川昭一君紹介)(第八〇一号)  同(中川秀直君紹介)(第八〇二号)  同(中村正男君紹介)(第八〇三号)  同(中山正暉君紹介)(第八〇四号)  同(仲村正治君紹介)(第八〇五号)  同(永井英慈君紹介)(第八〇六号)  同(永井哲男君紹介)(第八〇七号)  同(長勢甚遠君紹介)(第八〇八号)  同(楢崎弥之助君紹介)(第八〇九号)  同(西博義君紹介)(第八一〇号)  同(西田司君紹介)(第八一一号)  同(錦織淳君紹介)(第八一二号)  同(野坂浩賢君紹介)(第八一三号)  同(野田毅君紹介)(第八一四号)  同(羽田孜君紹介)(第八一五号)  同(萩山教嚴君紹介)(第八一六号)  同(畑英次郎君紹介)(第八一七号)  同(鳩山邦夫君紹介)(第八一八号)  同(鳩山由紀夫君紹介)(第八一九号)  同(浜田靖一君紹介)(第八二〇号)  同(浜野剛君紹介)(第八二一号)  同(原健三郎君紹介)(第八二二号)  同(原田憲君紹介)(第八二三号)  同(東中光雄君紹介)(第八二四号)  同(平泉渉君紹介)(第八二五号)  同(平沼赳夫君紹介)(第八二六号)  同(不破哲三君紹介)(第八二七号)  同(福田康夫君紹介)(第八二八号)  同(福留泰蔵君紹介)(第八二九号)  同(藤尾正行君紹介)(第八三〇号)  同(藤村修君紹介)(第八三一号)  同(藤本孝雄君紹介)(第八三二号)  同(二田孝治君紹介)(第八三三号)  同(冬柴鐵三君紹介)(第八三四号)  同(古堅実吉君紹介)(第八三五号)  同(穂積良行君紹介)(第八三六号)  同(細田博之君紹介)(第八三七号)  同(堀之内久男君紹介)(第八三八号)  同(前原誠司君紹介)(第八三九号)  同(牧野聖修君紹介)(第八四〇号)  同(正森成二君紹介)(第八四一号)  同(増田敏男君紹介)(第八四二号)  同(松岡利勝君紹介)(第八四三号)  同(松沢成文君紹介)(第八四四号)  同(松下忠洋君紹介)(第八四五号)  同(松前仰君紹介)(第八四六号)  同(松本龍君紹介)(第八四七号)  同(三ツ林弥太郎君紹介)(第八四八号)  同(宮路和明君紹介)(第八四九号)  同(宮下創平君紹介)(第八五〇号)  同(宮地正介君紹介)(第八五一号)  同(宮本一三君紹介)(第八五二号)  同(武藤嘉文君紹介)(第八五三号)  同(村上誠一郎君紹介)(第八五四号)  同(村山富市君紹介)(第八五五号)  同(茂木敏充君紹介)(第八五六号)  同(森井忠良君紹介)(第八五七号)  同(森田一君紹介)(第八五八号)  同(谷津義男君紹介)(第八五九号)  同(山口俊一君紹介)(第八六〇号)  同(山口那津男君紹介)(第八六一号)  同(山下徳夫君紹介)(第八六二号)  同(山田英介君紹介)(第八六三号)  同(山原健二郎君紹介)(第八六四号)  同(山元勉君紹介)(第八六五号)  同(山本孝史君紹介)(第八六六号)  同(山本有二君紹介)(第八六七号)  同(横内正明君紹介)(第八六八号)  同(横光克彦君紹介)(第八六九号)  同(渡辺浩一郎君紹介)(第八七〇号)  恩給欠格者救済に関する請願(宮本一三君紹介  )(第六九三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  皇室経済法施行法の一部を改正する法律案(内  閣提出第四号)  恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出第  五号)      ————◇—————
  2. 大木正吾

    大木委員長 これより会議を開きます。  内閣提出皇室経済法施行法の一部を改正する法律案議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。梶山内閣官房長官。     —————————————  皇室経済法施行法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 梶山静六

    梶山国務大臣 ただいま議題となりました皇室経済法施行法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  改正点は、内廷費定額及び皇族費算出基礎となる定額は、皇室経済法施行法第七条及び第八条の規定により、現在、それぞれ二億九千万円及び二千七百十万円となっております。これらの定額は、平成二年四月に改定されたものでありますが、その後の物価の趨勢及び国家公務員給与の引き上げにかんがみ、内廷費定額を三億二千四百万円、皇族費算出基礎となる定額を三千五十万円にいたしたいと存じます。  以上が、皇室経済法施行法の一部を改正する法律案提案理由及び内容概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同いただくようにお願いをいたします。     —————————————
  4. 大木正吾

    大木委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。倉田栄喜君。
  5. 倉田栄喜

    倉田委員 新進党の倉田でございます。  今回の皇室経済法施行法は、平成二年の改正以来六年ぶりの改正ということで、今官房長官から御趣旨説明がございました。私は、そこで、いわゆる内廷費皇族費にかかわりまして、この定額というものが必要十分な額なのかどうか、その視点からまず第一に質問をさせていただきたいと思います。  御承知のように、皇室経済法及び皇室経済法施行法昭和二十二年制定法律であります。皇室経済法四条、六条に「法律で定める定額」、こういうふうになっているわけでありますが、そもそも昭和二十二年、その当時の内廷費及び皇族費、いわばこの議論のスタートとなるその定額というのはどのようにして定められたのか、まずこの点から御説明をいただきたいと思います。
  6. 角田素文

    角田政府委員 お答えいたします。  昭和二十二年、制定当時の内廷費定額は八百万円でございましたが、この定額の大筋の考え方というのは、当時内廷経費として実際にお使いになっていた費用基礎といたしまして、当時の物価情勢を加味し、その結果、八百万円という金額が算出されたと承知をいたしております。  その八百万円の内訳につきましては、御内帑金、これは御服装とかお身の回りの経費でございますが、その御内帑金が約五〇%、皇子の御養育費が約五%、供御供膳費用、これはお食事とか御会食経費でございますが、その供御供膳経費が約一〇%、公でない御旅行の費用が約一七%、お祭りの費用、用度の費用が残りというような説明がなされていたところでございます。  一方、昭和二十二年の皇族費定額でございますが、当初十五万円でございましたけれども、精査の結果、二十万円とされたわけでございます。これは、親王親王妃から構成される代表的な親王家を念頭に置きまして、当時の実際の所要経費その他を考え合わせまして、御一家が皇族として相当品位を保ちながら御生活になれる経費を計算して算出されたものであると承知いたしております。
  7. 倉田栄喜

    倉田委員 現在のその定額変更というのは、昭和二十二年、当初に決められた定額があって、それを、物価であり人件費でありもろもろの情勢を踏まえながら変更がなされている、こういうふうに考えるわけでありますが、私が問題として思いますのは、例えば、昭和二十二年当時の御皇室の御活動範囲というものがある、そしてまた現在の皇室方々の御活動範囲というものがある。そうだとすれば、例えば、昭和二十二年当時に今お答えいただきましたいろいろな項目費目というのがある。そういうものが今の時点から考えて、その基礎となる項目費目というものが、今の皇室の御活動のあり方に関して必要十分な項目あるいは費目というものがきちんとやられているのかどうか。そして、昭和二十二年当時と比べて現在の皇室の御活動範囲実情というのはどういうふうに変化をしてきているのか。その点についてまずお伺いをしておきたいと思います。
  8. 森幸男

    森政府委員 ただいま先生お話の、制定当時の皇室の御活動と現在の御活動、どんなふうに変わってきているのかという御趣旨かと思うのでございますが、制定当時と申しますと昭和二十二年になります。戦後間もない、そういう特殊な状況下にあった時期でございまして、その時期のものと現在とを単純に比較していいかどうか、問題もあろうかと思いますけれども、一応その当時の皇室の御活動というものを類型化してみますと、天皇陛下は、憲法で定める国事行為のほか、国内における式典、行事へのお出まし、御視察、内外方々とのお会いなどなど、そういう御活動をなされていらっしゃいました。また、皇族方々は、それぞれのお立場から天皇陛下のこうした御活動をお助けしていたというふうに言えるかと思います。  その後、いろいろ世の中の変化もございました。特に我が国の国際的な地位の向上とともに、皇室の御活動はその範囲がかなり広がってきておりまして、現在の時点で申しますと、両陛下につきましては、恒例的といいましょうか、毎年恒例に行っているもの、あるいは随時に行っているものも含めまして、国内行幸啓がございます。あるいは外国訪問など、外国との御交際もございます。それから国公賓を初めとする宮中晩さん、午さん、その他宮中における内外のさまざまな方々とのお会い、御会食等、いろいろなものが出てまいりまして、大変多様なものになっているところでございます。  また、皇族方につきましても、それぞれの御活動状況には相違があるところでございますが、全体として申し上げますと、やはり外国訪問や地方での公的な行事などへのお出ましが多く、その御活動範囲が広がってきているところでございます。  全体として申し上げれば、国際化の進展の中で、外国との御交際関係活動の比重が高くなってきているというのが最近の特徴ではないかと考えております。
  9. 倉田栄喜

    倉田委員 今お答えをいただきましたけれども、御活動範囲が広がり、そして制定当時と比べてその実情も、国際関係外国との活動等々も含めて大いに変化をしているとすれば、当初、昭和二十二年に制定をされた必要費目としての項目そのものもあるいはもう一度見直し、検討する必要があるのではないか、こういうふうに考えるわけであります。例えば、昭和二十二年当時の額を定額として、それからだんだんだんだん人件費とか物価とか経済情勢に合わせて積み上げていくだけでは果たして十分なのかどうか、そういう問題意識を私は持つわけでございますが、その点についてはいかがでしょうか。
  10. 角田素文

    角田政府委員 お答えいたします。  内廷費制定時の費目金額につきましては先ほど御説明したとおりでございますが、当時におきましては諸般の事情を考慮して決定されたものであったというふうに考えられるわけでございます。  その後、内廷にある皇族の御結婚、皇孫の御誕生等によりまして内廷の構成に相当変化があったということ、それからまた、御指摘のように皇室の御活動が広がっていったことに対応いたしまして、経費の弾力的、効率的使用を図っていくためには定額内訳を細かく定めることは適当でない、そういうふうな考え方に基づきまして、昭和三十九年度の定額改定の際、内廷諸費物件費及び給与費の三つの費目とし、さらに昭和四十九年度の定額改定の際、内廷諸費及び物件費物件費に統合いたしますとともに、給与費人件費と名称変更いたしまして、現在のような物件費人件費の二つの区分になりまして、時代の変遷に応じて内廷費の弾力的、効率的使用が可能になるように心がけてきているところでございます。  また、定額改定方式につきましては、委員承知のように、昭和四十三年に開かれました皇室経済に関する懇談会におきまして、物件費消費者物価を乗じ、人件費公務員給与改善率を乗ずるという改定方式が採用されまして、その後、この改定方式によりまして、経済情勢変化定額改定に反映させてきていると考えられるところでございます。
  11. 倉田栄喜

    倉田委員 弾力的、柔軟に対応できるように、こういうお話でありますが、例えば皇室経済法施行法、少し違う観点から申し上げますけれども、この第二条に、いわゆる賜与、譲り受けの価額、一号、二号で定めてございます。一号が、天皇及び一定皇族についての賜与の価額が千八百万円、譲り受けの価額が六百万円。それからこれ以外の皇族の方について「賜与及び譲受の価額は、それぞれ百六十万円とする。」このように皇室経済法施行法というのはなっているわけでありますが、例えば一つの例、この百六十万円という価額の額、これを、当時の貨幣価値としての百六十万円を現在の価値に直すとどのくらいの額になるのか、参考までにお尋ねしておきたいと思います。
  12. 森幸男

    森政府委員 お答え申し上げます。  昭和二十二年と現在の貨幣価値をどういうふうに比較するかという問題がまずあろうかと思いますが、ここで、全国の総合消費者物価指数を使ってそれを見てみますと、昭和二十二年と現在、平成七年の暦年で比較いたしますと、約十八倍ということになっております。したがいまして、今先生指摘の、宮家皇族方々限度額、これは現在百六十万円、そして昭和二十二年にはこれは十五万円であったわけでございますが、その十五万円に、今申しました、仮に十八倍になっているというのを掛けますと二百七十万円ということになります。  したがいまして、これを比べますと、現在の基準が若干低いということは言えるかと思いますけれども、内廷皇族宮家皇族通しまして、この賜与あるいは譲り受けの限度額というのは、おおむねそういう物価指数をもとに補正を行ってきたということができるのではないかというふうに考えております。
  13. 倉田栄喜

    倉田委員 我々の記憶にもまだあるわけでありますけれども、いわゆる宮杯問題というのがございました。この問題も、いわゆる皇室方々定額を定めるということについては考えてみなければいけない問題なのかなと私なりに思ったわけでございますが、この皇族方定額の問題、今御答弁をいただきましたけれども、昭和二十二年から今平成八年、この賜与の額あるいは譲り受けの額、限度額として定めてあるわけでございますけれども、内廷費皇族費を今回改定をする、そうだとすれば、この賜与、譲り受けの限度額というものも実情に合うように変えてみたらどうか、改定したらどうか、こういうふうに思いますが、この点についてはいかがですか。
  14. 森幸男

    森政府委員 内廷費及び皇族費は、それぞれ、内廷における日常の費用その他内廷諸費皇族としての品位保持の資に充てるための御生活などに必要な費用ということになっております。したがいまして、これまでも、物価上昇であるとか人件費上昇に応じまして一定改定を行ってまいりましたし、改定を行っていくことが必要であろうと考えております。  これに対しまして、先生今御指摘の賜与あるいは譲り受けの問題についてでございますが、災害などに際しましてのお見舞金であるとか、あるいは社会福祉事業などに対する御下賜金などを内容といたします賜与につきましては、これは皇室のお気持ちを示されるものである、そういう性格のものでございます。それからまた、地方への行幸啓お出ましの際に地方の特産品を受納されるというようなことを内容といたしております譲り受けにつきましては、これはその性格上、必ずしも積極的に奨励すべきものでもないということから、いずれも、物価上昇のみではなくて賜与及び譲り受けの実績も勘案いたしまして限度価額改定を行ってきているところでございます。  今申しましたように、内廷費皇族費、それに賜与及び譲り受け、この二つのものは性格を異にするものでございまして、従前も、内廷費及び皇族費改定の際に必ずしも賜与、譲り受けの限度価額改定してきているわけでもなく、今回は、実績等を勘案いたしますと賜与、譲り受けの限度価額改定を行う必要はないもの、そういうふうに判断をいたしたところでございます。
  15. 倉田栄喜

    倉田委員 制定当初、昭和二十二年が十五万円であったということから考えて、当時の十八倍という価額からすれば、先ほどお答えの中で二百七十万円という額になっている。一応現行の法律の中は百六十万だとすれば、やはりそこにも相当貨幣価値ということのみから考えても変化があるわけでございますから、やはり実情に合ってないのではないか、こう思うわけです。ぜひしかるべき検討をお願いしたい。また、改正の方向でされたらいいんではないのか、私はこういうふうに思います。  それから、いわゆる内廷費皇族費について、定額変更の基準というものが昭和四十三年、皇室経済に関する懇談会、これがございまして、定額の一割を超える場合について変更の要請をされる、こういうふうにございますが、この一割という基準で果たしてこれからの情勢にきちんと対応できていけるのかどうか。例えば、これから物価が、ずっと先のことはわかりませんけれども、基本的には下がっていく方向あるいは人件費もそんなに上がらないという方向であれば、一割を超えるという基準で果たして必要十分な定額というものが確保されていくのかどうか。  一方で、御活動範囲が広がっていく、こういうことがあるとすれば、この昭和四十三年の皇室経済に関する懇談会の基準というのも、また一度しかるべき時期に検討されたらよろしいのではなかろうか、こう思うわけでございますが、この点、いかがでしょうか。
  16. 角田素文

    角田政府委員 お答えいたします。  まず、なぜ一割になったかという点について御説明を申し上げたいと思います。  昭和四十三年に開かれました皇室経済に関する懇談会におきましては、今後、内廷費定額改定につきましては、「原則として、物価のすう勢、職員給与の改善その他の理由に基づいて算出される増加見込額が、定額の一割をこえる場合に、実施すること」とし、皇族費定額改定もこれに準ずることとされたところでございます。  具体的には、物件費の部分と人件費の部分とに区分いたしまして、物件費については消費者物価上昇率を乗じ、人件費につきましては国家公務員の給与改善率を乗じまして、それぞれ増加見込み額を算出することとしたところでございます。  そこで、なぜ定額の一割を超えると定額改定をすることとなったかという理由でございますけれども、職員給与の改善、物価上昇が一割を超えますと内廷費全体が非常に窮屈になってくるということ。それから、当時の経済情勢のもとでは、一割でありますと、二年に一回程度定額改定をお願いすることになる見込みであること、そういったことを総合的に勘案いたしまして、増加率について一割を基準として考えれば支障なくやっていける、そういうふうに判断されたものであるというふうに承知をいたしております。  そこで、御指摘の、その一割ということで状況の変化に対応できるかどうかという御指摘でございますが、これまでのところでは十分とまでは言えないのではないかというふうに思われるわけでございますが、いろいろとやりくりをして年度年度の経費に対応してきたのではないかというふうに拝察をいたしているところでございます。
  17. 倉田栄喜

    倉田委員 経済情勢の推移ということと皇室方々の御活動範囲の広がりというものが、必ずしも同一方向で動くものではないというふうに考えるとすれば、この点も十分社会の情勢に照らしながら、また皇室の御活動実情というものに照らしながら、十分検討をされなければいけないのではないのか、こういうふうに思うわけでございます。  時間もちょっと少なくなりましたけれども、次に、いわゆる宮家の財政と人件費という視点からお尋ねいたしたいと思いますが、宮家の財政については、品位保持の資、こういうことで必要十分な額が支出されなければならない、こういうふうに思うわけでございます。今私がお尋ねいたしたのも、基本的にはこの視点からお尋ねをいたしているわけでございます。必要十分な額であるのかどうか。  と同時に、私は、例えば宮杯問題に絡んで、例えば宮家の方々がその使途について、どういうふうに使ったか、そういうことを別に報告する義務がないからどうのこうのとか、そういう議論も新聞紙上の中にはあったのだろうか、こういうふうに思いますが、ただ、このことは非常に重要なことでございまして、私は、これらのことを理由にして宮家の財政あるいは皇族方々の私的領域に立ち入り過ぎたり、今申し上げましたように、その使途についての報告義務を課すとか、あるいはその報告を詳しく求めるとか、そういうことは必要ないのではないのか、そういうふうに思うわけでございますが、この点についてはどういうふうにお考えですか。
  18. 森幸男

    森政府委員 皇族費は、皇室経済法の規定の中で、「御手元金となる」というふうに規定をされておりまして、宮内庁の経理に属する公金とはしないこととなっております。いわゆる私経済に属することであるから、その使途を公表する性格のものではないというふうに考えておりますが、ただ、国会審議に資するために、今回のように定額改定をお願いする際には、御質問等があれば各宮家にお願いをいたしまして、物件費及び人件費の支出状況を伺い、その比率を申し上げているところでございます。  いずれにいたしましても、宮家経済の運営自体は宮家が独自に行うというものでございまして、御指摘のように、皇族方の私的領域に立ち入ったり、あるいは皇族費の使途について報告義務を課すというようなことについては私ども慎重に対応すべきものと考えております。
  19. 倉田栄喜

    倉田委員 問題は、宮家の財政についても申し上げれば、十分な定額なのかどうか、その点が問題だ、こう思うわけであります。  例えば、宮家のいわゆる報道等を読んでみますと、人件費等の問題で、人件費が非常に大きなウエートを占める。例えば宮家で雇用をされておられる人たちの身分や給与体系、定年、社会保障、さまざまな問題もあると思います。  同時に、社会生活変化の中で、私的に雇用をされなければならない、こういうことも仄聞をするわけでございますけれども、この点はどんなふうになっているのか。例えば、最後に申し上げました私的雇用、この必要性があるとすれば、それはどんなふうに考えていくことができるのか、これをお尋ねしたいと思います。
  20. 森幸男

    森政府委員 今先生指摘のいわゆる宮家職員につきましては、これは国家公務員ではなくて、各宮家において雇用されている私的な使用人という位置づけになろうかと思います。実際には、各宮家によっていろいろ違いはございますが、平均すると五人程度の宮家職員が雇われておりまして、家事等のお手伝いを行っているように承知いたしております。  宮家職員の給与につきましては、現在国家公務員の給与に準じた取り扱いがなされております。それから、宮家職員は特に定年制というものは設けておりませんが、各宮家において実情に応じて対応されているように承っております。  それから、宮家職員の社会保障につきましては、一般企業の従業員と同様に社会保険あるいは労働保険に加入をし、事業主負担につきましては皇族費から支弁をしているところでございます。  宮家職員の実情はそういうふうになっているのでございますが、私的な使用人、この問題、どういうふうにこれから考えていくべきかということについてあわせて触れさせていただきたいと思いますが、宮内庁は、宮家の皇族方に関するお世話を申し上げているわけでございますが、このうち、皇族方が公の立場で国民のためにお務めになるいわゆる公的行為につきましては、すべての事務につきまして宮務官を初めとする宮内庁の職員がお世話を申し上げる。そしてまた、必要な経費については、宮廷費で支弁させていただくということになっております。  これに対しまして、宮家の皇族方が私的に行われる行為につきましては、基本的には宮内庁は関与せず、皇室典範で決められた皇族の地位を保持していただくために必要な範囲で宮内庁でお世話を申し上げるというようなことになっております。  そういうようなもの以外の私的なお身回りのお世話につきましては、皇族という特別の地位を有する者として品位を保持していただくために皇族費が支出されていることにかんがみまして、従来から、各宮家において皇族費の中から直接私的に職員を雇用することにより対応をしていただいているというのが現状でございます。
  21. 倉田栄喜

    倉田委員 質問時間が終了いたしましたので、最後に一問だけ。  今、宮廷費ということがございました。皇室方々活動の広がりということから考えれば、この宮廷費についても、十分なのかどうかということを含めて同じような問題があると思いますが、最後にこの宮廷費について、問題点あるいは問題意識をお伺いをして、私の質問を終わりたいと思います。
  22. 角田素文

    角田政府委員 お答えいたします。  宮廷費は、皇室経済法第五条に、「内廷諸費以外の宮廷諸費に充てるもの」と規定されておりまして、具体的には、宮中の儀式行事に要する経費国公賓等の接遇に要する経費、公的な外国訪問国内行幸啓に要する経費皇室用財産たる土地建物の取得、管理等に要する経費などに充てられております。  近年の天皇陛下及び皇族方の公的御活動の増加に伴いまして、宮廷費におきましては、厳しい財政事情のもとではありますけれども、御所の新築経費、皇太子殿下の御結婚関係経費、天皇皇后両陛下の公的な外国訪問経費の増加等、従来の慣例にとらわれることなく、真に必要な経費は適正に計上していただいているというふうな認識を持っております。
  23. 倉田栄喜

    倉田委員 以上で終わります。
  24. 大木正吾

    大木委員長 次に、山元勉君。
  25. 山元勉

    山元委員 社民党の山元でございます。  この皇室経済法施行法の論議を私どもは与党調整会議でいたしまして、そして同じ気持ちということで、きょうは自由民主党、新党さきがけ、与党を代表してということでお尋ねをさせていただこうというふうに思います。  今回の改定は、平成二年以来、六年ぶりに内廷費及び皇族費改定しようとするものでございます。先ほども話がありましたように、天皇を初め皇室方々は憲法の定める国事行為、幅広い公的な活動をなされておられます。その上からも、この内廷費皇族費については、適時適切に改定する必要があろうというふうに私も思います。しかし、提案されておりますこの改定は六年ぶり、そして幅でいいますと、内廷費が一一・七%、皇族費が一二・五%という大幅のものでございます。  私は、少しこの点について問題があろうというふうに思います。それは、昭和四十三年に皇室経済に関する懇談会において、この宮廷費及び皇族費物価上昇や公務員の給与改定が一割を超えるような場合に実施する、こういうことが了承されているからだというふうにも思います。この方式が設けられた四十三年当時の状況でいいますと、それでも回数多く改定をされてまいりました。しかし、今の状況では、たとえ七%、八%、九%という上昇があっても、一割を超えなければ我慢をしていただかなければならないという状況になってしまうわけですね。現になっているわけです。  そして、特に今回は、過去二年間にわたって皇室経済会議の皆さんの御論議があって、厳しい経済情勢などを勘案して改定が二年間見送られたという状況がある。先ほど申し上げましたように、一二%というような大幅の改定になっているわけです。この間、相当皇室の皆さんに御不自由をおかけをしたんではないかというふうに思います。改めまして、この点について宮内庁、どういうふうにお考えですか、お伺いしたい。
  26. 角田素文

    角田政府委員 御指摘もございましたように、今回内廷費皇族費定額は、平成二年度に改定が行われて以降六年間を経過しておるわけでございます。その間、東京都区部の消費者物価上昇率は九・六%、国家公務員の給与改善率は一五・〇八%となっておりまして、これに基づきまして算出いたしました定額増加率は、御指摘のように、内廷費で一一・七%、皇族費で一二・五%となっておるところでございます。しかも、その上、御指摘になられましたように、内廷費皇族費とも平成六年度から定額増加率が一割を超えたわけでございますけれども、経済情勢等諸般の事情を考慮いたしまして、改定を見送ることとされたところでございます。  社会の変化とともに皇室の御活動範囲が広がっている一方、内廷職員や宮家職員の給与改善を行ったり、物価上昇に伴いまして御生活費が増加する等によりまして、内廷費及び皇族費全体が窮屈になってきておりまして、やりくりが難しくなっているというのが実情であると拝察いたしております。
  27. 山元勉

    山元委員 今、やりくりが難しくなっているというふうに明確におっしゃいましたけれども、私は、やはり今申し上げましたような六年ぶりとか一二%というのは当然だろうというふうに思います。  そこで、公務員も、去年でいいますと、〇・九%のアップでも勧告があって改定が行われているわけですね。さらには、恩給も総合勘案方式で改定をされるあるいは年金も直、物価スライドで改定をされる、そういう仕組みになっているわけですね。そういうことを考えると、やはり内廷費皇族費についてももっと適切に改定をする、そういう方式についてしっかりと論議をすべきだ、はっきりとすべきだというふうに思うのです。  いろいろの、先ほど申し上げましたような経済会議のこの経済状況についての配慮とか、いろいろ国民の感情とかいうのも常におっしゃいますけれども、やはりこれはきちっとした方式を新たにつくるということで、改定基準を改めるということについて、強く言えば踏み切られるべきだというふうに思いますけれども、宮内庁、どういうふうにお考えですか。
  28. 森幸男

    森政府委員 今回の改定に当たりましては、今お話に出ておりましたように、昭和四十三年に皇室経済に関する懇談会での御議論を踏まえて決められました方式に従って今回の改定をお願いをいたしておるところでございます。今申しましたように、昭和四十三年にできた方式でございますので、それから三十年近くにわたってこの方式で定着をしてきているというようなことを踏まえまして、今回もその方式に従って改定をお願いをしたというところでございます。  しかしながら、反面で、このルールに関しましては、今先生お話にもございましたように、いろいろな御指摘があることも事実でございます。本件は国民の象徴であられる天皇陛下を初め、皇族方のお手元金の改定をどうするかという極めて慎重な研究、検討を要する事項でございますし、また、皇室経済に関する懇談会という大変ハイレベルな場で決定をいただいた事項でございますので、その取り扱いにつきましては慎重を期する必要があろうと思いますが、今後どのような改定基準にするべきかということにつきましては、私ども中長期的な視野から、今後宮内庁としても研究をしてまいりたいというふうに考えております。
  29. 山元勉

    山元委員 先ほども申し上げましたように、今度の改定というのは私は妥当なことだというふうに思いますから、ハイレベルという言葉がありましたけれども、ちょうど官房長官もおいでです。ぜひ政府としてもこの点について勉強をしていただきたい、即着手をしていただきたいというふうに御要望を申し上げておきたいというふうに思います。  なお、関連いたしまして、これは私の地元の出来事でもございますけれども、大津市の市営のびわこ競輪で高松宮杯がございまして、そのお礼の気持ちとして毎年お渡しをしていた金額皇室経済法や施行法の定める限度額を超えておりまして、高松宮家から御返還をいただいたということがございました。多くの方々に御迷惑をおかけをしたわけでございますけれども、この問題について宮内庁として広く調査もされたというふうに聞いておりますけれども、その調査の結果についてお伺いをしたいというふうに思います。
  30. 森幸男

    森政府委員 先生今御指摘の、大津市でびわこ競輪の高松宮杯の問題につきましては、宮内庁といたしましても、まず宮杯に関連して授受された全員の趣旨金額等の事実を確認いたしますとともに、皇室経済法を初めとする法的な問題についても検討を行ったところでございます。  調査は、宮家関係者から聞き取り調査という方法で行いまして、この高松宮杯の関連で、昭和四十六年度から平成六年度までの間に総額一億二百七十五万円を授与されていたということがわかったわけでございます。この金員の授受につきましては、皇室経済法及び皇室経済法施行法に抵触するものであるということから、高松宮家におきましては、授受された金員を昨年十月二日及び三日に全額関係地方公共団体に返還されたところでございます。  宮家が関係地方公共団体から授受された金員については、いわゆるお礼ということで授受されたものと承知しておりますけれども、いずれにいたしましても法に抵触したことは事実でございます。まことに遺憾に思っているところでございます。  宮内庁といたしましては、このようなことが再び繰り返されないように、憲法及び皇室経済法趣旨などにつきまして、宮家、皇族方のお世話を行っております宮務官の会議を早速開催してその徹底を図るとともに、改めて法の趣旨などについて皇族方にも確認をしていただいたところでございます。それからまた、宮家、皇族方に関する事務を総括をする宮務主管というポストがございますが、その宮務主管を今回特別職ということにいたしまして、おそばでのお世話の充実を図ることとしているところでございます。  いずれにいたしましても、日ごろから憲法及び皇室経済法趣旨などにつきまして、さまざまな機会を通じて十分に申し上げるなど、皇族方のお世話に最善の努力を行ってまいりたい、このように考えております。
  31. 山元勉

    山元委員 今回のこの問題につきましては、地元で住民監査請求や住民訴訟が行われています。地元は地元で適切にこの問題について対処する、そういう努力が必要だということは申すまでもないというふうに思います。しかし、今もありましたように、宮内庁も宮家のお世話をする、特に現地で宮務官の皆さんが努力をしていただいているわけですけれども、こういうことがやはり二度と起こらないようにさらにきちっとした、制度の問題もありましたけれども、二度と起こらないような努力をぜひ強めていただきたいというふうに御要望申し上げておきたいと思います。  さて、官房長官もおいでいただいておりますので、日ごろ気にしていることについてお尋ねをしたいと思いますが、人権教育のための国連十年の問題です。  九四年の十二月に国連において、九五年、昨年から二〇〇五年まで国連人権教育の十年ということで、世界じゅうが努力をしようということが決定をされました。ことしでもう既に二年目に入っているわけです。この人権教育に関する国際的な計画といいますか、これは八〇年代から世界の各地でそういう十年という言葉も使った一つの流れがございました。そういうものを受けて国連がこのような決定をしたわけですけれども、大変深い意義を持っているというふうに思っていますが、政府として今、この国連の人権教育十年についてまずどのように認識をしていらっしゃるのか、お尋ねをしたいというふうに思います。
  32. 梶山静六

    梶山国務大臣 委員指摘のとおり、今日国際社会においては、一九九三年の世界人権会議の開催に見られるとおり、人権促進擁護が大きな潮流となっております。今後、この流れはますます強くなると思われますが、我が国においても人権が求められ、差別のない公正な社会を築いていくことが求められております。このために、人権教育を通じ、人権尊重の考え方を人々の間に普遍的なものとする人権教育のための、いわゆる年を限ってというか、十年という一つの目安をつけた国連十年の取り組みを積極的に推進することは極めて重要な課題であるというふうに認識をいたしております。
  33. 山元勉

    山元委員 この問題につきましては、昨年の十一月に、与党の人権と差別問題に関するプロジェクトチームが随分と論議をいたしました。たしか十四回目の会議で意思統一したのだというふうに思いますが、この問題について申し入れを政府にしているはずでございます。  その中では、我が国が国際社会において率先垂範して国連十年に取り組む必要があるというふうにうたいまして、そして、やるべきこととしては政府に推進本部を設けること、さらには国内の、国連の行動計画はありますけれどもそれをしっかり踏まえた国内の行動計画を策定すること、さらには必要な予算措置を行うこと、こういう申し入れを与党三党としていたしました。  それを受けて十二月に政府は、総理を本部長にして、官房長官以下五人の大臣が副本部長、こういうことで、閣議で推進本部の設置が決まりました。これが十二月の十五日でございます。三月前になるわけですけれども、私は、一つこれができてやっとという思いがありましたし、期待もいたしました。そこで、現在、政府でこの推進本部がどのように稼働をしているのか、どこまで進んでいるのか、現在の状況についてお伺いをしたいと思います。
  34. 梶山静六

    梶山国務大臣 今委員指摘のとおり、与党プロジェクトチームによって昨年申し入れがあり、人権教育のための国連十年に係る施策について関係省庁が密接に連携協力し、政府一体となった取り組みを推進するために、昨年の十二月に閣議決定によりこの推進本部を設置をし、今御指摘のとおり、総理みずからが本部長に就任をし、その後、関係省庁間で我が国としての取り組み方について検討を重ねてまいりまして、去る三月十八日に同推進本部の第一回会合を開催をし、人権教育のための国連十年に係る取り組みを積極的に推進をしていくことを確認をしたところであります。
  35. 山元勉

    山元委員 率直に申し上げますけれども、初回、初めての会議を持たれたということについては結構だと思いますけれども、一向に私どもに見えてこないわけです。この推進本部ができて、そして十年も二年目に入っている。急がなければならないという思いが、私だけではなしに、日ごろ差別を受けて人権を侵害されている人はもちろんのことですけれども、人権の確立について本当に日夜汗を流している皆さんにとっても、その状況が見えないわけです。ですから、今十八日に会議があったというふうに御答弁がありましたけれども、もう少し具体的に、中身についてどのような論議がされたのか、仕事の進捗状況についてお伺いをしたいというふうに思います。
  36. 梶山静六

    梶山国務大臣 中身については政府委員から答弁をさせますが、十年というスパンで物事を考えているために、なかなか一挙に具体的なものが全部出ないことも御承知おきを願いたいと思います。  今、各省庁力を合わせてその作業に取り組んでいるところでありますが、少なくともことしの夏、概算要求ぐらいまでには第一回目の、いわば目安になるべきものの施策を策定をし、これを明年度予算に要求をする、いわば中間的な、中間というより初期的な取りまとめが一応できることを期待をし、このために今回の第一回の会合にも相なったわけでございますので、若干時間がかかるかもしれませんが、この十年の間に実りある成果が、いやもっと早目に実りある成果が出るような施策をこれから講じてまいりたい、このように考えております。
  37. 藤井威

    ○藤井政府委員 国連人権教育の十年に向けての具体的な取り組みのあり方でございますけれども、今官房長官からもお話がございましたように、去る三月十八日に第一回の会合を持ちました。外務大臣初め法務大臣あるいは各担当の大臣から、それぞれ今後の取り組みに関する決意についての御披露がございました。人権教育は人権の促進、擁護にとって中核的な重要性を持つ。この十年の実施に当たって各国が国内行動計画を作成した上で実施に努めることが、今先生からも御指摘のございますように国連総会決議において呼びかけられておるわけでございまして、この本部において計画策定の作業にこれから全力を挙げていこうということを、各大臣との間で申し合わせが行われたところでございます。  我々事務局といたしましても、この本部の申し合わせに沿いまして、今官房長官からお話がありましたように、少なくとも次回の予算要求のころまでには、何か中間報告的なものをまとめていくような努力をいたしたいと考えております。
  38. 山元勉

    山元委員 先ほど申し上げましたように、十一月の与党からの申し入れも、時期は少し失していましたけれども、推進本部をつくること、あるいは行動計画をつくること、そうしてもう一つ予算措置をという申し入れがあったわけですね。先ほどは概算要求と官房長官はおっしゃいましたから、平成九年度の予算に反映してくるということは見えてきましたけれども、平成八年度予算の中に我々の願いが反映できてあるのか。これは既に今上程されている予算案ですけれども、予算の中身はどうなっていますか。ちょっとお尋ねしたい。
  39. 藤井威

    ○藤井政府委員 各省庁におきまして、人権教育に関連するような施策につきましては従来から経常的な予算の中で措置されてきておりました。ことしの予算につきましても、そういう考え方の継続の上に立って個々に措置されてきておりますけれども、それらを全部まとめて国連人権教育の十年のための予算というような形での把握は行われておりません。  先ほど申しましたように、来年度の概算要求に向けまして、何とか行動計画に関する中間報告のようなものをまとめて、国連人権教育の十年に向けての予算措置の充実についても考えてまいりたいと考えております。
  40. 山元勉

    山元委員 室長、去年までに子どもの権利条約あるいは人種差別撤廃条約などが批准をされた。私は、高く評価をしている、喜んでいるのです。しかし、例えば子どもの権利条約が批准されるときに、私は文部大臣に、何としてでもこれという予算が要るのだ、従来文部省の予算の中にあったから、今もおっしゃったけれども各省庁の予算の中にあったからというのでは、この国連の十年ということでやろうという大きな、国民の権利意識も変えていくような仕事にはならない。  だから、そういう意味でいうと、八年度は今からではもう遅いわけですけれども、そのことについてはぜひきちっと、政府も思い切って金を使って、言葉だけ、机の上だけで人権が大事なんだということに絶対にならぬように、見えるように、予算についても格段の論議をしていただきたいと思います。  そこで、こういう行動計画をつくるときは特にそうですけれども、特にこの問題は余計言えると思いますけれども、行動計画をつくるときに大事なのは、現実をどういうふうに踏まえるかということだと思うのですね。そうすると、そのことが大事とすると、各種の団体あるいは政党も含めて広く意見を聞いて、日本の人権の状態はこうなのだからこういう行動計画を立てようということが見えてこなければいかぬと思うのですね。内政審議室あるいは本部で、口悪く言うと、紙の上で書いた計画ではいけないだろうと思うのですね。  その点について、論議として、そういう各団体、国民の各界各層という言葉がよくありますけれども、できるだけ意見を聞こうな、実態を踏まえような、そういう気持ちは今おありですか。
  41. 藤井威

    ○藤井政府委員 先生が今御指摘の点は、我々にとりましても非常に重要な点であろうと思っております。国連十年の行動計画、国連のレベルでの行動計画におきましても、そういう今先生がまさに御指摘になったようなことが提言されてございます。  推進本部、第一回会合が開かれたわけでございますけれども、今後それをどういうふうに進めていくかということは当然同本部の御意向によるものでございますけれども、この取り組み自体が、まさに先生がおっしゃいますように、幅広い分野にまたがるということもございます。今後、国内行動計画の策定に当たりまして、御指摘のような点も踏まえながら、そのような点につきまして本部において適切な対処が行われていくもの、事務局としても当然それには従っていくべきものと考えております。
  42. 山元勉

    山元委員 私が一つ心配していることは、地対財特法が来年三月に終わる。長い間そういう努力をしてきた中で、特に人権にかかわっての努力は、例えば教育の場面でもあるいは就職の問題でもされてきました。けれども、終わると、ずっと後退をするのではないかと私は心配をしているのですね。そういうこともあります。  そういう切れ目のところに当たって、日本は、人権後進国という嫌な言葉がございますが、そうでなしに、やはり人権も先進国だというところにならないといけない。そういう時期に来ているし、この国連人権教育の十年というのは、大きなチャンスといいますか足場だというふうに思うのですね。  そういう点で、今までのと言ったら語弊がありますけれども、人種差別撤廃条約も子どもの権利条約も批准してきたけれども、文部省が言うように、一円も特別の予算は要らないのですという言い方をしてしまって私は歯ぎしりをしていたのですけれども、ぜひこのことについては最後に、時間なものですから、官房長官に、改めましてこの機会に、日本の人権について国民的な運動としてこの十年を生かすのだという決意をしていただきたいと思いますし、そういう気持ちをお聞かせいただきたいと思います。
  43. 梶山静六

    梶山国務大臣 長い間この問題に御関心の深かった山元委員の御意見を拝聴いたしました。  確かに現在縦割り行政の弊害はあるものの、できたら、あとう限り縦割りのむしろよさを生かして問題意識を早く積み上げる、現状を把握する、意見を聴取する。その集積として、これから後これをどう調整していくか。この努力を払いながら、あとう限り早い機会にその指針をまとめて実りある十カ年の教育計画を組んでまいりたい、このように考えております。
  44. 山元勉

    山元委員 一日も早くそういう図が見えてくるように御期待を申し上げまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  45. 大木正吾

    大木委員長 次に、松本善明君。
  46. 松本善明

    松本(善)委員 最初に、皇室財政問題と憲法とのかかわりを伺いたいと思います。  憲法には皇室財政についての二つの条文があります。一つは第八条、「皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。」ということ。もう一つは第八十八条であります。「すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。」というものであります。どちらも国会の議決ということを規定しております。  この規定は、戦前の憲法にはなかったものであることは言うまでもありません。この規定にこそ、新憲法のもとで行われた皇室財政改革の中心が示されていると思いますが、宮内庁はどういうふうに認識をしていますか、簡潔にお答えください。
  47. 森幸男

    森政府委員 皇室経済に関しましては、今先生お話しのように、憲法の中に、八条それから八十八条、二つの条文にその関係が出てまいります。  まず、八条につきましては、私どもこの八条の趣旨は、皇室皇室外の者との間における財産の授受を通じまして皇室の公正性が損なわれたり、あるいは皇室に不当に財産が集中したりすることを防止する、そういう趣旨で設けられた規定ではないかと承知しております。  それから、憲法の第八十八条、その前段でございますが、先ほど先生もお読みになられましたけれども、「すべて皇室財産は、国に属する。」とされているわけでございますが、この趣旨は、従前の旧皇室財産に関しまして公私の別を明確にし、皇室の私有財産となったもの以外の皇室財産につきましては、これを国有財産に移管するというものであろうと承知をしております。  それからもう一つ、八十八条の後段でございますが、これも先ほど先生お読みになられましたけれども、「すべて皇室費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。」とされておりますが、これは、国庫から支出される皇室費用はすべて予算に計上することを要するという趣旨であろうと思っております。  いずれにいたしましても、皇室経済は、これが憲法各条の趣旨にのっとりまして厳正に運営されるべきものと考えております。
  48. 松本善明

    松本(善)委員 官房長官に伺いますが、今宮内庁から答弁のあったとおりでありますが、戦前の皇室皇室自律主義で、莫大な土地、山林などを所有する日本でも最大の大資産家でありました。終戦前には、皇室が所有する山林からの収益は年間三千万円以上に及んでおりました。これは日銀の卸売物価指数で計算しますと、昭和十九年、一九四四年として計算しますと、現在のお金に換算をいたしますと百億円以上ということになります。さらに、山林の収益のほかにも、毎年国費から皇室経費として四百五十万円が支出をされていました。今で言えば十五、六億円ということになるのではないかと思います。こういう膨大なお金が支出されておりましても、当時は、国会はもちろん政府さえも、皇室財産に関与することは許されなかったわけであります。  しかし、戦後、国民主権を原則とする新憲法の施行とともに皇室自律主義は廃止をされました。皇室が再び莫大な私有財産を所有する存在になることを防ぐために、皇室財産は国有財産とされました。皇室に対する財産やお金の一定額以上を上げたりもらったりすることも、国会の議決のもとに置かれました。先ほどもそれを外れた問題について質問がありました。これは戦前の教訓から、特定の勢力や団体、個人が、財産を媒介として皇室と特別の関係を結ぶことがないようにしたものであります。天皇、皇族が公的あるいは私的生活をする費用も、国の予算に計上して国会の議決を受けるということになりました。  こういうように、現行憲法のもとで行われた皇室財政改革の中心は、皇室財政を国民の代表機関である国会の統制のもとに置いたということであります。これが先ほど来話をしております憲法八条と八十八条だと思います。  官房長官、この憲法のもとにおける皇室財政の中心はこういうことではないか。官房長官の見解を伺いたいと思います。
  49. 梶山静六

    梶山国務大臣 確かに、皇室財産に関しては、国会の厳格なコントロールのもとに置かれるためにこの二法があるというふうに理解をいたしております。そして、今松本委員が御指摘をされまして初めてわかったのですが、戦前の皇室財産あるいはその財産収入、こういうものと比べて今との落差を実はしみじみ感じたわけであります。今は民主的な象徴としての皇室のあり方、こういうものに徹しておられるということを感じ取っております。
  50. 松本善明

    松本(善)委員 そういう点で、憲法の立場からこの皇室財政の問題を審議するというのは、国会議員に課せられた責任であろうかと思います。  私が、今特にこのことを申しますのは、皇室経済法皇室経済法施行法が施行されてから来年で五十年になるわけでありますけれども、この間、政府や宮内庁の国会への対応がだんだん形式的で不透明になって、この憲法の趣旨から外れていっているのではないかというふうに心配をするからであります。  その具体的な問題として一つ提起をいたします。  昨年十二月十一日に宮内庁の鎌倉長官、当時は次長でありますが、鎌倉氏が内廷費皇族費改定制度について記者会見で次のように述べたということが報道されております。現在の皇室経済法施行法は「硬直的だ。内廷費皇族費から支払う人件費は毎年上がっている」、そして「現行の内廷費皇族費改定ルールを「来年度以降早いうちに見直す」」という考えを示しました。これは「国家公務員の給与や消費者物価などの上昇に応じて、毎年自動的に引き上げる方式などへの変更を検討すると見られる。」というふうに、これは日本経済新聞の十二月十二日付でありますが、そういう報道がされております。  聞きたいのは、まず宮内庁に、これが事実であるかどうか、また宮内庁鎌倉長官は、今の制度は硬直的だから毎年自動的に引き上げる方式に見直した方がよいと考えているのかどうか、この二点について宮内庁にまず聞きたいと思います。
  51. 森幸男

    森政府委員 今先生お話にございました、昨年末に、当時宮内庁の次長をしておられました鎌倉さんが発言された中身についてでございますが、鎌倉次長、当時でございますが、鎌倉次長の発言は、本日御議論、御審議いただいておりますこの定額改定ルールについてはいろいろな意見があるので、有識者の意見も聞き、慎重に検討する必要があるというような趣旨の発言をされたのではないかというふうに承知をいたしております。  それから、この内廷費皇族費についての自動改定方式に触れたのではないかということでございますが、これは今申しましたようなことで、どういう内廷費皇族費定額改定方式がいいかについて有識者の意見も聞きながら幅広く検討すべきだ、そういう際に考えられる方式として恐らく触れたものというふうに私ども考えております。
  52. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、宮内庁は、こういうふうに自動的に引き上げる方式に見直すということを考えているというのではないということですか。そして、この日経の報道は事実と少し違うということですか。簡単に答えてください。
  53. 森幸男

    森政府委員 私どもの考え方といたしましては、内廷費皇族費改定につきましては、今後中長期的な視野から有識者の意見もお聞きして幅広く検討をいたしたいというふうに考えているところでございまして、現在の段階で、何か特定の方式を念頭に置き、それに絞り込んで検討を進めていくというようなことを考えているところではございません。  いずれにしましても、この問題、大変重要な問題でございますので、今後いろいろな御意見を参考にしながら検討されるべきものだというふうに考えております。
  54. 松本善明

    松本(善)委員 官房長官に伺いますが、今お聞きのようなぐあいであります。もし、この報道されているようなことが事実でありますと、鎌倉長官の発言が事実であれば、今はそのニュアンスとしては否定的に発言をいたしましたけれども、事実であれば、これは憲法のもとでの皇室財政改革に逆行するものであります。公然とこれをマスコミに流すという、私は憲法違反、公務員の憲法を遵守する遵守義務からも問題があるというふうに思います。  内廷費皇族費を毎年自動的に引き上げるということになりますと、内廷費皇族費改定に国会を関与させないということになりますね。あるいは関与をできるだけ少なくしたいという、これはもうとんでもない考えになるんです。皇室財政は、憲法によって、国民の代表機関であり国権の最高機関である国会の審議と議決を通して決められる。国会の民主的な統制に置かれているということを先ほど官房長官も言われました。  この長官の発言は、正確に次長は当たってきていないようであります。だから、否定的なニュアンスの発言はしましたけれども、真偽はわかりません。私は、これはきちっと調査をして、これはもしそうであれば厳重な注意をすべきだ、撤回さすべきだというふうに考えますが、官房長官のお考えを伺いたいと思います。
  55. 梶山静六

    梶山国務大臣 実は不勉強で、鎌倉長官の発言と今の発言の相違性を、残念ながら私は発見できないというより承知をする立場に、今まで不勉強でできませんでした。  しかし、先ほど倉田委員が御質問になった趣旨を聞いておりまして、最近の物価上昇率やあるいは給与の引き上げ率、そういうものは極めて微弱というか少ないものでありますと、一〇%を超えなければ改正の機に至らないということになりますと、余りにも長くなれば一般の公務員との差をどうするか。あるいは、内廷費の中でやりくりをしているといいますが、果たしてやりくりの限界を超える場合があるのではないか。  私は、やはり皇室皇室らしく、国の象徴としての権威保持、立場が十分に行えるような費用をどうやれば出せるかという、厳格なコントロールのもとに置かれますけれども、それは必ずしも小さいということではなくて、適正なものが行われることが望ましいし、そのためにはどういう方式がいいかということはこれから稿を新たにして検討すべきことだ、このように考えております。
  56. 松本善明

    松本(善)委員 調査をして、もしそうであれば注意をされますか。処置をされますか。そのことだけお答えください。
  57. 梶山静六

    梶山国務大臣 調査をいたします。
  58. 松本善明

    松本(善)委員 内容についてのお話官房長官からありましたので、それに入りたいと思いますが、今回の改定は、内廷費皇族費を引き上げようとするものでありますが、内廷費をとってみますと、現行の年額二億九千万円を三億二千四百万円に引き上げるということのようであります。  宮内庁は、これまで内廷費を天皇の給料だと説明をしてまいりました。内廷費を天皇の給料というのも、給料が労働の対価という点から見ますと若干疑問がありますが、この天皇の給料には所得税が課税されておりません。つまり、手取り額であります。  そこで国税庁にお聞きしますが、三億二千四百万円に所得税などを課税したとして計算しますと、税込みで総収入額、幾らになりますか。
  59. 大村雅基

    ○大村説明員 お答えいたします。  先生承知のように、税込みの給与の収入金額と所得税税引き後の手取り給与の金額との関係は、種々の前提の置き方によりまして異なってまいります。したがいまして、あくまでも一定の前提を置いた仮定的な給与所得者を想定してお答えさせていただきますと、手取り給与の金額を三億二千四百万円、所得控除の金額の合計額を約三百六十万円としまして地方税は考慮しない、こういう前提で給与所得の総収入金額を計算いたしますと、約六億百万円ということになります。
  60. 松本善明

    松本(善)委員 試算、今おっしゃったように、前提がいろいろあるのですが、今のは最も低く出る方式で計算をしたものと思います。私どもが依頼した専門家の試算では七億円近いという数字もありますが、ここでは論争する時間がありませんので、六億百万円で話をいたします。  税込み収入年額六億百万円を月の給料でどのくらいになるか見てみますと、公務員と同じように一時金支給月数五・二カ月を加えた十七・二カ月で月額に直しますと、天皇の月給は約三千五百万円、賞与は年額で一億八千二百万円になります。総理大臣の給与は今、月二百二十五万四千円、衆参議長、最高裁長官とも同じであります。私たちから見ますとこの高い給与も、天皇の給与から見れば一割に満たない。天皇の方から見ますと、総理の給与の十五倍に当たります。  念のため申し上げておきますが、私たち、天皇制について意見をいろいろ持っておりますけれども、現行の憲法で象徴天皇制が認められている以上、皇室への妥当な予算を否定するものではもちろんありません。妥当かどうかというものの議論が国会でなされなければならない。果たして本当に皇室が、総理の給与の十五倍もの膨大な水準が必要なのか。国会答弁から見てみますと、そうは思われません。  先ほど、物価上昇、いろいろの話がありましたが、内廷費は、皇室経済法で、天皇や皇太子など内廷皇族の日常の費用その他内廷諸費に充てるということになっております。天皇一家の日常の諸費というのは、一般国民の家計から見まして、その生活費の費目は少ないというのがこれまでの国会答弁によって明らかになっております。  例えば、住宅は国有財産で家賃もないしローンもありません。食材の多くは、いわゆる御料牧場でとれたものが持ち込まれます。病気の治療費は、宮内庁病院で患者負担なしであります。衣装も、公的な場合は宮廷費から出ます。先ほど議論のありました、外国の賓客の接待、その他の費用はもちろん宮廷費であります。内廷費とは関係ありません。必要なのは私的なものだけで、費用がかかると思われるのは私的使用人の人件費であります。これは二十数人おりますが、これだけの人数が必要なのかという疑問はありますが、こういう人たちの人件費を除きますと、なぜ総理大臣の十五倍近い給料が必要なのか納得できる根拠が示されておりません。  そうした資料を出さなければ、国民を代表して何のために国会で皇室財政の審議をしているのかわかりません。ただ物価が上がったというだけでは済まないのですね。宮内庁は、内廷費引き上げの根拠となる内廷費内訳額、国民が納得する資料を示すべきだと思いますが、そういうふうになっていないのです。官房長官、どう思いますか。
  61. 角田素文

    角田政府委員 そもそも内廷費についてでございますけれども、日常の御生活費が入るのはこれはもちろんでございますけれども、例えば災害に際してのお見舞金、それから社会事業団体への事業御奨励のための賜り金、それから芸術、文化、スポーツ等の御奨励のための賜り金、それから宮中祭祀関係の経費のほか内廷職員の人件費等も含まれておるわけでございまして、毎日の御生活とお身の回りのことだけという意味の通常の御生活費よりもはるかに範囲が広いものでございます。
  62. 松本善明

    松本(善)委員 官房長官、あわせてお答えいただきたいと思いますが、これまでは一定の資料を出していたのです。終戦後の皇室経済法や施行法の審議の際には、一応、内廷費内訳についても額を明示して国会に提出をしておりました。ところが、近年は、今度はプライバシーを理由に構成比率の割合だけ、額については言わなくなってきたのですね。  私は、かかっているならかかっているでいいですよ。しかし、国会に出すべきです。そして、それをもとに、一体これはいいのかどうかということを審議をするというのが国会の審議でなければならぬはずです。それが、出さなくなったというところに問題があるのです。もちろん一般人とは違いますから違うものがあるでしょう。だけれども、それを出して議論をするというのが国会なんです。ところが、出さない。皇室予算を予算編成の方で事実上特別扱いをしていることも重大な問題であります。  一九八一年、臨調行革がスタートしましたが、その当時、財政危機という名目で、国民向けの福祉や教育予算が次々と切られたり抑制されてきました。いわゆる臨調行革路線です。一九八一年度予算額を一〇〇とした場合に、来年度予算、つまり九六年度予算の支出を見ますと、社会保障費は一六二、文教科学費は一三一であるのに対して、皇室費の指数は何と二二一という伸びであります。これは、当時の自民党政府のもとで聖域として突出させてきた防衛予算の伸び二〇一さえも上回っているのです。最高の伸び率なんです。このことは、政府が社会保障費や教育費など国民が最も必要としている予算に大なたを振るいながら、皇室費は事実上聖域として特別扱いをしていたことを示しております。  来年度の皇室関係費を見ますと、皇室費六十三億、宮内庁費百十二億、これは警察庁予算になっておりますが皇宮警察費が八十一億、皇室関係費は合わせて二百五十六億円になります。現在、皇族は全部で二十五人でありますから、皇族一人当たり年間の国費の支出は十億円に上っております。この経費は非常に膨大でありまして、この経過から見て特別扱いされていることは明白であります。  憲法はもちろん象徴天皇制を認めておりますけれども、このことは、天皇や皇室予算を他の一般会計の伸びに比べて特別扱いをして伸ばすということ、それが当然のことということになるものでは決してありません。官房長官、どう思います。先ほどの答弁とあわせて伺いたいと思います。
  63. 角田素文

    角田政府委員 事務的な、倍率をまずお答えいたしたいと思います。  昭和二十二年に比べまして、内廷費の伸びは四十・五倍、皇族費の伸びは百五十二・五倍、それに対しまして一般会計の予算規模は九百四十四・八倍、こういうふうになっておりますので、決して高過ぎることはない、こういうふうに考えております。  それから、二十二年当時、御指摘のように、これは制度が初めてできたときでございますから各項目別の具体的な金額を示しておりますけれども、それから、基本的に内廷費皇族費はお手元金、先ほど倉田先生の御指摘もございましたようにお手元金という性格でございますので、答弁におきましては慎重な姿勢をとっておるわけでございますが、昭和四十九年度以降は、国会の御審議で御質問があれば、人件費物件費の割合等を御説明いたしておるところでございます。
  64. 松本善明

    松本(善)委員 官房長官、答弁される前に、今、二十二年からと盛んに言われるんだけれども、あるいは御存じのようにそれから物すごいインフレなんですよね。それは基準にならないです。だから私は一九八一年の予算との関係で言ったんです。官房長官の御答弁を伺いたいと思います。
  65. 梶山静六

    梶山国務大臣 残念ながら、私は比較論をすべき資料をここに持ち合わせをしておりません。  十分に私なりに勉強したいと思います。
  66. 松本善明

    松本(善)委員 官房長官、もちろん宮内庁が細かいことは知っているということでありましょうけれども、担当大臣ですから、私は、憲法との関係も、それから予算の中での皇室費のあり方、その位置づけ、その比率、そういうことについてやはり内閣がもうちょっときちっと責任を持って国会に提案をしなければならぬ、そういうふうに思うということを述べて、質問を終わります。
  67. 大木正吾

    大木委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  68. 大木正吾

    大木委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。松本善明君。
  69. 松本善明

    松本(善)委員 私は、日本共産党を代表して、皇室経済法施行法の一部改正案に対して反対の討論を行います。  本案は、内廷費を現行の二億九千万円から三億二千四百万円に、皇族費算定の基礎となる定額を二千七百十万円から三千五十万円にそれぞれ引き上げようとするものですが、現行でも、内廷費及び皇族費は現行の三権分立に基づいて支給されている給与水準から見ても異常とも言える高過ぎる水準にあります。また、今回の引き上げについても、今も質疑で明らかにしましたように、納得できる根拠は見出せないということであります。  内廷費三億二千四百万円を、国民の給与と同じように所得税を課税すれば、答弁がありましたように国税庁の試算でも六億百万円になります。これは、総理大臣を初め両院の議長、最高裁長官など三権の長の年俸の約十五倍にも相当し、国家公務員の平均年俸の百数十倍にも相当いたします。皇室関係費は、あの臨調行革の中でも聖域とされ、来年度予算では二百五十六億円、皇族一人当たり十億円に上っております。これは皇室予算を特別扱いしてきたもので、認めることは到底できません。  さらに、今回の引き上げについても何ら納得できる根拠が示されていないということであります。これまでの国会審議でも、天皇家は内廷費で財テクをしたりして財政的に相当余裕があることが判明をしております。また、施行法制定当時の審議の際には提出をしていた内廷費金額別の費目資料の提出を拒否するなど、国会を軽視している問題として重大であります。  戦前、皇室財政は国民の目の届かぬところに置かれたためにいわゆる皇室の財閥化の弊を生ぜしめ、その教訓を踏まえて設けられた憲法八十八条は、皇室財政を国会を通じて国民の前にガラス張りにすることを要請しているのであります。宮内庁の秘密主義はこの憲法の趣旨に極めて反するものであります。今日、不況や震災で苦しむ国民の生活実態や生活感情から見ても、内廷費皇族費の引き上げを行うべきではないことを申し上げて、反対討論を終わります。
  70. 大木正吾

    大木委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  71. 大木正吾

    大木委員長 これより採決に入ります。  内閣提出皇室経済法施行法の一部を改正する法律案について採決をいたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  72. 大木正吾

    大木委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 大木正吾

    大木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  74. 大木正吾

    大木委員長 次に、内閣提出恩給法等の一部を改正する法律案議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。中西総務庁長官。     —————————————  恩給法等の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  75. 中西績介

    ○中西国務大臣 ただいま議題となりました恩給法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  この法律案は、最近の経済情勢等にかんがみ、恩給年額及び遺族加算額を増額することにより、恩給受給者に対する処遇の改善を図ろうとするものであります。  次に、この法律案概要について御説明申し上げます。  この法律案による措置の第一点は、恩給年額の増額であります。これは、平成七年における公務員給与の改定消費者物価の動向その他の諸事情を総合勘案し、平成八年四月分から、恩給年額を〇・七五%引き上げようとするものであります。  第二点は、遺族加算額の増額であります。これは、遺族加算の額について、戦没者遺族等に対する処遇の改善を図るため、平成八年四月分から、公務関係扶助料に係るものにあっては十三万二千六百円に、傷病者遺族特別年金に係るものにあっては八万五千五百十円にそれぞれ引き上げようとするものであります。  以上がこの法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。     —————————————
  76. 大木正吾

    大木委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。倉田栄喜君。
  77. 倉田栄喜

    倉田委員 新進党の倉田でございます。  私は、まず初めに、阪神・淡路大震災が起こりましてから既に一年を経過いたしましたけれども、まだ被災に苦しんでおられる方が大勢おられます。恩給受給者の方々相当数被災されておられます。昨年のこの恩給法改正のときについては、阪神・淡路大震災の被災者の方々に対してきちんとした配慮をするようにという附帯決議もつけさせていただいたところでございますけれども、阪神・淡路大震災における恩給受給者の被災状況をどのように把握しておられたのか、そして、これらの被災者に対してどのような配慮をしてこられたのか、まずこの点からお伺いをいたしたいと思います。
  78. 石倉寛治

    ○石倉政府委員 お答えをいたします。  当時、被災地の激甚地区につきましては、四万二千人ほどの恩給受給者がおられました。そのうち二百人が亡くなっておるところでございます。  局といたしましては、大震災の状況を踏まえまして、被災者の皆さん方の御負担にならないように、また恩給受給に支障を来すことがないように、次のような三つの措置を講じたわけでございます。  一つは、恩給証書の再交付でございまして、震災により恩給証書を紛失された方については、その旨の申し出により速やかに恩給証書の再交付を行いました。また、恩給を担保に国民金融公庫の融資を希望される方が恩給証書の再交付の申請を同時に行えるよう措置をいたし、皆さん方の便宜を図ったわけでございます。  二番目に、恩給受給権調査の関係でございますが、被災地域に居住されている方の恩給受給権の調査につきましては、申立書の提出期限を延長するなどによりまして、被災者の負担をできるだけ軽減するよう配慮したところでございます。  三つ目に、恩給の請求の件でございますが、被災地域に居住されている方からの恩給請求に対しましては、優先的に対応したところでございます。  なお、今後とも、被災された方々からの御相談にも応じて、親身になって対応してまいりたい、こう考えております。
  79. 倉田栄喜

    倉田委員 今恩給証書の再発行、それから受給権調査の実施等々、また恩給の請求については親身になって対応している、こういうお答えでございました。まだいましばらく、当時の混乱というのか、平生の日常生活に戻るまでは時間がかかろうかと思いますし、こういう問題についてお困りの方もなお現在もおられるのではないかと推測をしていますので、引き続きこの問題を当局は誠意を持って対応していただきたい、私の方からも強く要望をさせていただきたい、こういうふうに思います。  そこで次に、いわゆる恩給受給者の高齢化の問題、この視点から少しお伺いをいたしておきたいと思いますけれども、だんだん高齢になってくると、なかなか手続的に従来できたことができにくくなる、あるいは煩わしくなる、一人で動けない、かわりにだれか行ってもらわなければいけないようなこともある等々さまざま問題が出てくると思います。  そこで、恩給受給者の高齢化に対してどのような配慮がなされておるのか、まずお伺いしたいと思います。
  80. 石倉寛治

    ○石倉政府委員 お答えいたします。  受給者の高齢化は、もうやむを得ません事情ではございます。したがいまして、文書による御質問のみならず、電話相談窓口の強化を図ることなどによりまして、できるだけわかりやすい対応で御理解をいただくように努力をしておるところでございます。  なお、現在請求されている恩給のほとんどは、恩給受給者が亡くなられたことによる扶助料への転給請求でもございますので、直接恩給局へ申請をいただく、そういうことで対応することができるわけでございます。  今後とも、受給者の立場に配慮いたしまして努力をしてまいりたいと考えております。
  81. 倉田栄喜

    倉田委員 例えば、出向けなくなったらあるいは電話で相談できるとかいろいろあるかと思うんですけれども、実際に手続的に便宜を図るあるいは簡素化を図る、こういう視点から、特に高齢者のために配慮をなされたことがありますか。
  82. 石倉寛治

    ○石倉政府委員 先ほどは一般的な議論でお答えを申し上げましたが、最近でも、恩給受給者からの受給権調査の様式を簡素化するとかその他の努力に努めておるところでございます。
  83. 倉田栄喜

    倉田委員 これも引き続きまた、鋭意改善できるところは改善していただいて、御検討をお願いいたしたいと思います。  そこで、恩給受給者の点について一つ、これは私の問題意識でございますけれども、いわゆる恩給証書を担保に出してお金を借りる、こういうことが現実にございます。もちろん法的には、恩給を担保にするということは一定の場合を除いてできないことになっているわけですけれども、現実には、いわゆる町金融等々の中で恩給証書を担保にしてお金を借りる。しかも、その振り込み先の通帳まで一緒に預けてしまう。非常にお困りになっている方、お金を返したんだけれども実は恩給証書が返ってこないというケースも時々、それは非常に一般化される例ではないのかもしれませんけれども、聞いたりいたします。  それで総務庁は、恩給証書を担保にとられるということについて、その実情というのをどう把握をしておられるのか。そして同時に、この恩給証書が返ってこない、取り戻したいんだけれども、相手方、債権者の方は、いや、返してもらわなければ返せませんよということに対してどういう救済の方法があるのか、どのような対策を講じておられるのか、これをお聞きをしておきたいと思います。
  84. 石倉寛治

    ○石倉政府委員 今お示しのような案件につきましても、私ども何件か話を聞いております。これに対しまして、私どもといたしましては、私どもの恩給法の第十一条に国民金融公庫とそれから沖縄振興開発金融公庫、ここへの担保以外には担保提供を禁止いたしております。これに違反した場合には恩給を差しとめることができるということになっておるわけでございます。また、その恩給を受ける権利は、滞納処分による場合を除き差し押さえることもできないことになっております。  これらはいずれも恩給を受ける権利の保護を目的としたものでありますけれども、先ほどお申し越しのような内容の件につきましては、債権者がその恩給証書等を受給者に返還しない場合でありますけれども、その場合には、恩給の支給を差しとめるという形で当該恩給証書を無効にしてしまうという手段をとっておりまして、受給者に新たな恩給証書を交付するという形で対処いたしております。
  85. 倉田栄喜

    倉田委員 今お答えをいただきましたけれども、基本的には恩給証書を担保に入れることは禁止をされている。しかし、どうしてもお金の工面をしなければならないもので、やむなく、その恩給証書を担保にとったら金を貸しますよということで、担保に差し出す。しかし同時に、その差し出したことも、どうもこれは本来してはならないことをしているものだからなかなか強く出られない。一方、今お答えがあったように、恩給権そのものがなくなってしまうのではないかという心配もあって、なかなかしかるべきところに相談に行けない、こういう実情もございますので、そこは、債権者にとっては法に違反したことをしているわけですから、きちっと対応していただくと同時に、先ほど御答弁ありましたように、受給者の保護という側面からの立法でございますので、それはそれとして恩給証書の再発行はきちんとしていただく、そういう側面からいろいろな手続的なことあるいは場合、場合、ケース、ケースによっていろいろな事情はあるかと思いますけれども、そこは、恩給のみを生活の糧としておられる方々がお困りのないように、当局としては善処をしていただきたい、これも強く要望をしておきますので、その点だけもう一度御答弁をいただければと思います。
  86. 石倉寛治

    ○石倉政府委員 実際にお困りのケースを伺いますと、支払いがもう終わっているにもかかわらず恩給証書を返さないとかというようなことのトラブルのようなお話を伺いますので、こういうことがないように、私どもは、しかも本権を喪失させないような配慮をしながら、御相談があれば、先ほど申し上げたような法的な解釈からくる運用で対応いたす所存でございます。
  87. 倉田栄喜

    倉田委員 次に、外国特殊法人。これは相当期間がたちました。戦前の話の問題ではありますけれども、この外国特殊法人あるいは外国特殊機関についての未指定という問題がございました。御当局におかれては、いろいろ調査をされて、相当未指定の分というのはなくなってきているというふうに私も承知をいたしております。  そこで、この外国特殊法人及び外国特殊機関の未指定の件につきまして、今までの経過を御説明いただきたいと思いますし、同時に、なお未指定として残っている件もあるというふうに私は承知をいたしております。この点についてどのようにお考えなのか、お尋ねしたいと思います。
  88. 石倉寛治

    ○石倉政府委員 恩給法上、特定の外国特殊法人及び外国特殊機関について、その職員としての在職期間を一定の条件のもとに公務員期間に通算しているわけでございますけれども、これは各機関の組織の性格、業務の内容あるいは人事交流の実態等を考慮して、例外的な措置として認めたものでございます。  といいますのは、通算が認められている満鉄等の外国特殊法人及び外国特殊機関は、満州国等において我が国の三公社並みの業務を行っているあるいはその他の行政機関的業務を行っているというようなことで、我が国の公務員が国策遂行のため多数派遣されていたというような事実もございまして、このような実態を踏まえて政令をもって指定してきたわけでございます。  通算が認められない団体がまだあるというふうに御質問をいただいたわけでございますが、戦前、満州や中国には各種の特殊法人がございました。これらについて、先ほど申し上げました原則に基づいて、各機関の組織の性格なり業務の内容なり公務員の人事交流の実績なり、こういった観点から十分審査をいたしまして判断をしておるところでございまして、現在指定しております以外の団体につきましては、通算措置が講ぜられるだけの要件を満たしていないということで通算の対象外といたしておるところでございます。
  89. 倉田栄喜

    倉田委員 この問題については、政府は相当念入りな調査をされて、しかるべくその措置をとられたということは私も承知をいたしておりますけれども、なおかつその指定に漏れた方々にとっては、我々は指定された方々とどこが違うのか、こういう意識はおありだろうかと思います。いろいろ難しい問題あろうかと思いますが、私の方から、なおかつ何らかの措置がとれないものかどうか、なおかつその合理的理由というのを見出し得ないものかどうか、これは要望として申し上げておきたいと思いますので、御検討をいただきたい、こういうふうに思います。  同時に、戦地に勤務をするという観点からすれば、いわゆる戦地に勤務してこられた旧日赤救護看護婦さんの問題あるいは旧陸海軍の従軍看護婦さんの問題、これは慰労給付金の増額という形で折々に触れて措置を行っていただいているわけでございますが、今回の場合はどのようになっておるのか、これをまずお聞きしたいと思います。
  90. 安藤昌弘

    ○安藤政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御質問ございました旧日本赤十字社救護看護婦等の慰労給付金につきましては、ただいまお話ございましたように、その実質価値を維持するため、これまで昭和六十年度、平成元年度及び平成四年度におきましてそれぞれ増額措置を講じてきたところでございます。平成八年度におきましては、前回平成四年度の改定時からの消費者物価上昇率を勘案いたしまして、三・七%の増額措置を講ずることとしているところでございます。
  91. 倉田栄喜

    倉田委員 この問題も当局、それぞれ物価上昇等々を考えながら適宜措置をしていただいておりますけれども、またこれも引き続き適切な措置をしていただくようお願いをしたい、こういうふうに思います。  それから、これはずっといわゆる恩給受給者あるいは今申請をしておられる方々の問題で、この委員会でも問題になってきていることだと思いますが、恩給を申請をずっとし続けているのだけれども、なかなか認定をしてもらえない、こういうケースを聞くわけでございます。  そこで、もう戦後相当な年数がたっているのに、なお恩給の申請が続いているというこの事実をどう見るかということにもかかわるわけでございますけれども、現時点においてなお恩給を申請をしておられる数というものがどのくらいあるのか。そして、最近五年間ぐらい、そういう申請をしてこられた中でどのくらいの方が認定をされたのか。まず、その数字についてお聞きしたいと思います。
  92. 石倉寛治

    ○石倉政府委員 新規の恩給の請求の件でありますけれども、先生の御質問が恐らく傷病恩給のことであろうかと思っておるわけでございます。と申しますのは、年数で普通恩給を請求いたします方々というのはもうほとんどが済んでおりまして、むしろ御本人が亡くなって奥様に転給するというようなケースが普通のケースでございまして、最近特に申請でいろいろと御心配をいただいておるのは傷病恩給だろうと思いますので、この傷病恩給についての最近五年間の認定件数をお答えをいたします。  平成二年度から申しますと、請求が千二百五件でございますが、これの認定が三百七件。それから、三年は請求が九百五十五件に対して、認定が二百九十六件。それから、平成四年が請求が七百五十八件に対して、認定百四十七件。平成五年が請求千百九件に対して、認定が百三十二件。平成六年度の請求が五百八十四件に対して、認定が百九十八件、こういう状況になってございます。
  93. 倉田栄喜

    倉田委員 何回も繰り返し繰り返し請求をされるという方々もおられるわけだろうと思います。そういうことで、この数字の中にはダブって数えておられるのだと思いますけれども、しかし、今お答えいただきましたように、申請をされる方にとっては必死の思いで、相当な労力、あるいは疎明の資料を集めるためにさまざまな費用も使いながら申請をしてこられてもなかなか認定をされない、こういう現実が、今お答えいただいた数字の中でも直接あらわれてきておると私は考えます。  申請をされる方は決して私は、事実をどう見るかという問題はあったとしても、何かごまかしてとか、うそをついてとか、そういうことではないのだろうと思うのですね。いろいろお話を聞いていると、これは恩給をもらうよりもはるかに、相当の額を申請のための費用として費やしてしまっているケースも見られるわけであります。そして、しまいにはもうあきらめてしまう、こういう状況があるやに私も聞いておりますけれども、ここのところは何とかならないのかなという気がしてならないわけであります。  例えば、証明資料というのか疎明資料というのか、その辺の簡便化というか、あるいはその柔軟、弾力化というのか、本当にずっと長い間相当費用を、私も聞いている範囲においては相当費用相当な労力をかけてやっているのだけれども、なかなか最後の一枚のペーパーがないために結局認定をされないというケースがあるわけですね。この辺、何とかならないかと思ってしようがないわけですけれども、いかがでしょうか。その手続の上で何か弾力化を図れないのかどうか、あるいは疎明書類として何かかわりにほかのものでその必要書類のかわりにかえるという、そういう方途が考えられないのかどうか。この点、ぜひ柔軟に対応していただければなという思いでございますが、いかがでしょうか。
  94. 石倉寛治

    ○石倉政府委員 傷病恩給と申しますと、昭和二十年までに何らかの負傷なり病気をなさった方を対象とするものでございます。したがいまして、公的資料をおなくしになっている方もたくさんおられる、こういう実態を踏まえて、私どもとしては、いわゆるしゃくし定規に審査をするということはいかがかということを十分反省をいたしまして、請求者本人の申告や関係者の証言なども十分しんしゃくをいたしまして、公的資料にかえ得る十分な資料であると認定されれば使わせていただく、こういうことにいたしております。  また昨年から、傷病賜金につきまして、第一目症、第二目症の方々に対しましては、過去に傷病恩給を請求したことがある方が多うございますので、この方々につきましてはその簡素化を図っているところでございます。  それから、手続や証明書類の簡素化、弾力化、全体の問題でございますけれども、今後とも見直しを進める考えではございますが、恩給そのものが全額国費だということがございます。また、その性格上、厳格な審査がそういう意味で求められるという側面もございます。そういったことで、一定の制約があることは御理解をお願いしたいと思っております。
  95. 倉田栄喜

    倉田委員 確かに、これは国費の問題でございますので、無原則というわけにもいかないだろう、こういうふうに思いますけれども、証言であるとかあるいはかわるべき書類、かわるべきものであればそうしていただきたいと思います。  もちろん、一番最初に高齢化の話をいたしましたけれども、だんだん高齢化してくることによって出てくる病気を、あのとき受けた傷が原因だということを思って申請をされる。なかなか因果関係の問題があったり、あるいは今までしてこなかったのだけれども、いろいろ経済情勢が変わって新たにしたいと思ったのだけれども、なかなか書類が見つからない等々、いろいろなケースはあるかと思いますけれども、今お答えいただきましたように、しゃくし定規に対応するのではなくて、ここは弾力的に柔軟に、法の逸脱にならない限り認定をしていただければな、こういう思いでございますので、これは強く要望しておきたい、こういうふうに思います。  それからもう一点、いわゆる遺族年金に関して、我が国の法律は、いわゆる結婚をすれば、再婚をすれば受給資格を失う、こういうふうになっております。この規定そのものの合理性も、いろいろ議論すれば私は議論の仕方はあるのだろうと思いますけれども、一方で、再婚したがために受給資格を失った、一方で、あの人は一緒に生活をしているのだけれども、どうも届けをしておられないからもらっているのじゃないの、こういうふうに、不公平ではないのかという声もまた聞こえてくるわけであります。  御説明いただきましたら、事実婚の場合も法律婚と同様に扱って、事実婚であれば受給資格を失いますよ、こういうことだと思いますけれども、事実婚の場合はケース・バイ・ケースでいろいろあるわけですね。あの人はどう考えても、きちんと戸籍を入れた方よりももっと夫婦生活の実態があるのに、私は入籍をしたばかりにもらえなくて、あの人はもらっているというケースも実際聞いたりいたします。この辺を何とか考えられる余地はないのかどうか、あるいはそういう方々が持っている不公平感というものに対して当局はどんなふうにお考えになっておるのか、これも一応念のためにお聞きをしておきたいと思います。
  96. 石倉寛治

    ○石倉政府委員 これは公務扶助料なりその他の扶助料の基本的な考え方でございますけれども、恩給を受給することができることになった公務員が生存中に、公務員と同一生活共同体にあるという事実に着目しての扶助料でございますので、したがいまして、その配偶者が受ける扶助料につきましては、配偶者が公務員の死亡後に婚姻をするということになりますと失権をしてしまうという原則はやはり外すわけにはまいらないのではないかと思うわけでございます。  先ほどお話の出ました事実婚につきましても、事実を突きとめました限りにおきまして、同様に失権をさせております。これは、そういうことで地元の方々の御通知をいただいたりして事実関係を調べるというようなことで、なかなか私どもとしても不得意な分野ではございますが、そういったことで公平を維持するというふうに努力をしているところでございます。
  97. 倉田栄喜

    倉田委員 もうそろそろ時間がなくなってまいりましたので、最後にいわゆる恩給欠格者の問題、これについてお伺いをしておきたいと思います。  この問題はずっと、先輩の先生方も含めて、長い議論がされて今日に至っておることも承知をいたしております。しかし、なおかつ、なおこの問題は最終的な解決、これでいいなというふうな状況になっているとは私は思えません。  そこで、現在、恩給欠格者に対しどのような処遇がなされておるのか、この現状をお聞きしたいと同時に、これは考え方でありますけれども、これは一つの名目なり大義なりというものが必要だと思いますけれども、合理的理由というものがつけられる一定の時期には、例えば一時金等々いわゆる金銭給付みたいな措置が考えられないのかどうか、この点お聞きをして、私の質問を終わりたいと思います。
  98. 戸谷好秀

    ○戸谷説明員 お答えいたします。  恩給欠格者の問題でございます。この問題は、私どもいつも申し上げているように、国のために家族を残し危険な戦務に従事されましたそういう方々が、軍歴期間が短いということでございまして旧軍人軍属として年金恩給、こういうものを受給できない、そういう方々が国に対していろいろな何らかの措置を求めてきた、そういう問題でございます。  この問題におきましては、先生御案内のとおり過去に戦後処理問題懇談会というのがございまして、そこにおきまして慎重な検討が重ねられまして、その検討結果では、もはや国において措置すべきものはない、しかし関係者に対し衷心から慰藉の念を示すための事業を行う特別の基金を創設すべきであると御提言をいただいたところでございます。この提言の趣旨に沿いまして、政府としては、平和祈念事業特別基金という基金を設立いたしまして、関係者に慰藉の念を示す事業を現在行っているところでございます。  事業そのものにつきましては、まず恩給欠格者の方々について、御労苦を後世に伝えるための資料収集、調査研究、展示、このような事業を行うとともに、運営委員会の御議論を経まして、国として個々の方々に慰藉の念を示すため、外地勤務で加算年を含めて三年以上、そういう資格要件を満たされる方につきましては書状、銀杯並びに慰労の品を贈呈する、また平成七年度からは、書状、銀杯につきましては外地の勤務があれば加算三年以上なくても実役一年で贈呈するというような方途をとっているところでございます。また、平成八年度の予算の中では、これまで対象とされておりませんでした内地勤務者につきましても、加算三年以上の勤務年限があれば、書状だけでございますが贈呈を行うというような制度改善をお願いしているところでございます。  私どもとしては、このような基金法に定める事業を適切に推進することにより、関係者の心情にこたえてまいりたいというふうに考えております。  それから、先生の方から一時金というようなものはどうかというお話があったわけでございますが、これも先生御案内のとおり、既に恩給制度の枠内で実在職三年以上あるいは合算して三年以上の方につきまして一時恩給あるいは断続一時金というような措置がなされてきているところでございます。  先ほどの戦後処理問題懇談会も、そのような中で慎重に検討を重ねたわけでございますが、それについて国において措置すべきものはないというようなところで、関係者に慰藉の念を示す事業を実施するというふうな結論をいただいているところでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、今後とも基金法に定める事業、これを適切に推進するということで関係者の心情にこたえてまいる、そのように考えております。以上でございます。
  99. 倉田栄喜

    倉田委員 以上で終わります。
  100. 大木正吾

    大木委員長 次に、宇佐美登君。
  101. 宇佐美登

    ○宇佐美委員 新党さきがけの宇佐美登でございます。本日は、恩給法の改正について御議論をさせていただきたいと思います。  今回の恩給法等の一部を改正する法律案についてなんですけれども、既にもう倉田議員の方から御質問があった点と重なる点もあるかと思いますけれども、まずは与党側といたしまして基本的なところから質問をさせていただきたいと思います。平成八年度の恩給改善について、大臣にお尋ね申し上げます。  八年度の恩給改善に当たって、非常に厳しい財政事情、経済環境の中でございます。私の地元でいえば、町工場が日本で最も多いところなんでございますけれども、その三割がこの八年余りで姿を消すという悲惨な状態でございます。京浜工業地帯のメッカである大田区なんでございます。  そのような状況の中でありますけれども、総務庁として、恩給改善に精いっぱいこれまでも御努力をされているかと思いますけれども、今年度、平成八年度の恩給改善に当たってどのような基本的な考え方、認識に基づいて取り組まれたのでありましょうか。その内容について御答弁をお願い申し上げます。
  102. 中西績介

    ○中西国務大臣 恩給の改善に当たりましては、国家補償的性格を有するということでございまして、公務員給与の改定物価の変動等諸般の事情を総合勘案した上で、恩給年額の実質価値の維持などを図って今まできたところであります。今後ともこの基本的なこうした考え方につきましては変更なしに措置することが適当ではないか、こう思っております。  したがって、八年度の恩給改善につきましては、先ほど提案をいたしましたように、公務員給与の改定物価の変動等を総合勘案いたしまして、本年四月から、恩給年額を〇・七五%引き上げることにいたしました。もう一点は、戦没者遺族に支給される遺族加算につきましては、処遇の改善のために、本年四月から、公務関係扶助料受給者に支給されるものにありましては年額十三万二千六百円、傷病者遺族特別年金受給者に支給される内容は年額八万五千五百十円といたしまして引き上げるようにいたしておるところであります。
  103. 宇佐美登

    ○宇佐美委員 〇・七五%という数字が大きいか小さいか。当の恩給をもらっている方からすれば、本当に残念ながら小さい数字だと言わざるを得ないのだと思います。  今回の改善の中でも、その中でも戦没者の遺族に支給される公務扶助料、資料によりますと遺族加算七百円の引き上げとなっております。これまでの長年にわたるこの公務扶助料の議論もあるかと思いますけれども、戦没者の遺族に対する公務扶助料の遺族加算が寡婦加算よりも低額であるということは、遺族の方からすれば納得しがたいところであると思っております。  私の周りでも、もう祖父、祖母の年に当たる皆さんが、余命幾ばくかと御本人の口から言われる中で、少しでも加算をしてほしいというようなことをおっしゃるわけでございますけれども、今後ともの努力をすべきだと私は考えておりますけれども、その点についてのお考えを局長からお願いします。
  104. 石倉寛治

    ○石倉政府委員 お答えをいたします。  遺族加算の改善につきましては、平成元年度以来、戦没者遺族等の処遇の改善に配慮いたしまして増額を続けてきたところでございます。平成八年度の改善におきましても、その他の手当に、例えば寡婦加算の増額が見送られた中で遺族加算の改善を行ったところでございます。今後とも、その改善に努めてまいりたいと思います。
  105. 宇佐美登

    ○宇佐美委員 現在の恩給受給者は、さきの大戦において御苦労された旧軍人及びその遺族の方々が九五%以上を占めておりますけれども、戦後五十年を経まして、相当高齢化が進んでいるかと思います。先ほど申し上げたように、私の周りの方々を見ましても、九十を超える方が本当に多数いらっしゃるわけでございます。現在の受給者の平均年齢がどれくらいになっているのか、全体及び恩給種類別に情報として提供していただきたいと思います。
  106. 石倉寛治

    ○石倉政府委員 平成七年三月末の私どもの統計によりますと、受給者の総平均年齢は七十七・一歳でございます。内訳を二つに分けまして、文官と軍人に分けますと、文官は八十三・一歳、旧軍人は七十六・八歳となってございます。これをまた、普通恩給の支給対象者のうち旧軍人の平均年齢を見ますと、七十七・二歳でございます。さらに、公務扶助料の支給対象者であるいわゆる戦没者遺族の皆さん方の平均年齢は八十・二歳ということになってございます。
  107. 宇佐美登

    ○宇佐美委員 非常に高年齢化が進んでいるということで、何度も申し上げますけれども、これからの正直言って長くない生活の中で、どのように皆さんの改善をするかということが重要なわけでございます。  今申し上げた受給者の高齢化に伴い、将来急速に、非常に言いにくいことですけれども、受給者が減少していくのではないかというふうに考えられるわけでございます。恩給局として、今後の受給者数の推移についてどのような見通しで考えているのか、お聞かせいただければと思います。
  108. 石倉寛治

    ○石倉政府委員 ここ数年、予算上四、五万の減少を見ておるわけでございますが、恩給受給者の失権による減少の見通しというのはなかなか推計しにくうございます。しかしながら、仮に無理に推計をするといたしますと、簡易生命表で機械的に推計いたしましたところによれば、平成八年の恩給受給者が予算上百七十二万人でありますが、五年後で百四十八万人に落ち、十年後に百十万、二十年後になりますと三十五万人ということになります。  逆に、この数字を御説明いたしますと、そんなに続くのかという御懸念があろうかと思いますが、御高齢の皆さん方の極めて御健康な状態から見まして、高齢化を反映して、まず十年たちましても百万を切らないというような推計をいたしております。
  109. 宇佐美登

    ○宇佐美委員 二十年後に三十五万人というような数字を言われたかと思いますけれども、ということは、それまでに百三十七万人近い方々が次の世界へと移るということかと思いますけれども、それまでに何らかの措置をどうやって我々の世代がやっていけるのかということだと思います。  現在、恩給の支給、これは郵便局を窓口として行っているようです。恩給法の八十二条ノ三によりますと、郵政大臣の指定する出納担当というようなことで書かれているかと思いますけれども、総務庁の推進している行政サービスの向上という観点から見ますと、高齢化した受給者がなるべく便利なように、その受け取りができるように、例えば、隣に銀行があって郵便局の方が遠いという場合、銀行から受け取りたい、これは当たり前のところだと思います。郵便局だけではなくて、銀行でも受給できるようにすべきだと考えるわけでございます。  ただし、例えば私の選挙区の小笠原におきましては郵便局しかございませんので、その選択の幅を、郵便局と銀行等を含めて金融機関に広げていくべきだというふうに考えるわけでございます。その点について、総務庁としてどのように考えていらっしゃいますか。
  110. 石倉寛治

    ○石倉政府委員 御指摘のように、現在の恩給の支払い事務は郵政省にお任せをいたしております。郵政省におきましては、単に受給者に恩給給与金を支払うという単純な支払い業務のみではございませんで、恩給制度を円滑に実施するために不可欠な返還金債権の管理、いわゆる債権管理の問題だとか、あるいは恩給受給者からの相談あるいは諸手続の指導業務、こういったものを含めた窓口指導を行っていただいておるわけでございます。  こういった金融機関業務とはかかわりのない業務まで、さて、銀行その他の金融機関に処理させることができるかどうか、危うい問題もございますし、さらに一件単価の経費からいきましても相当高くなろうかと思いますので、なかなか困難ではないかと考えておるところでございます。
  111. 宇佐美登

    ○宇佐美委員 今の点について、それでは大蔵省の方とこれまで何度となく議論をされたことがあるんでしょうか。
  112. 石倉寛治

    ○石倉政府委員 長い間、懸案といえば懸案であったわけでございますけれども、先ほども申し上げましたように、私どもの実態上、今の手数料で果たして銀行が引き受けていただけるものかどうかというような問題もございまして、ペンディングになっておる事情がございます。
  113. 宇佐美登

    ○宇佐美委員 よろしいですか。今問題になっている住専の処理問題、これは金融システムの不安というものが、金融恐慌が起こらないようにということも含めて、与党・政府として提案をさせていただいているわけでございます。銀行等を含めて、その公共性というものはどの民間企業の中でも群を抜いたものだという認識から、もう渋々と言ってもいいと思います、公的資金を導入してもその債権の処理というものを円滑に進めよう、そこから始まっているわけでございます。  そういった意味でいえば、今石倉局長の言われたとおり銀行が受けられない、手数料が低いからというようなことを言われることもある意味で理解はできますけれども、反対をなさっている方々もいますけれどもこれから税金を入れよう、その公共性をさらに国民の目の前にさらけ出そうとしている中で、私はやはり、繰り返しますけれども、恩給の支給というものが郵便局だけではない、銀行であったり、信用金庫であったり、時に組合かもしれません、そのようなところで受け取れるように選択の自由を確保する、その方向にぜひとも進んでいただきたいということを申し上げたいと思います。  今、年に四回の支給がなされていると聞いております。たった四回だから少し遠くてもいい、少し不便でもいいといったものではございません。少しでも便利になるように、ただ、今のところ、休みのときにはその前に受け取れるようになっているということで、その点は評価されるべき点だと思いますけれども、選択の幅、窓口をさらに広げるといったこと、これは総務庁が推進している行政サービスの向上の一つの目覚ましい進歩になるんじゃないかというふうに考えておりますので、ぜひとも長官を筆頭に進めていただきたいと思います。  その中で、今、郵便局だけが指定の口座になっているということがあったわけですけれども、現在、預貯金の金利は非常に低い状態でございます。一年物の変動定期で〇・四%ということがきょうの新聞でも出ておりました。そんな中で、恩給の受給者の方々は、非常に苦しい生活をさらに強いられているわけでございます。高齢の年金受給者の方々はあわせてもろにその影響を受け、当てにしていた金利収入が入らず、生活設計に苦しんでいる方、多々いると思います。  こうした中で、一般の年金制度の中での遺族年金、障害年金等の受給者については、郵便局と銀行と一体になって福祉定期郵便貯金、まあ福祉定期預金でもいいんですけれども、そういうものがございまして、戦没者の遺族等の恩給受給者はしかしながら、その対象からも外されているわけでございます。私も地元で再三その改善について、こんな低い金利では、我々恩給だけをもらっている者はどうしても生活ができないんだということを言われるわけでございます。  恩給の支給を郵便局が独占するというか、郵便局だけにさせている中で、社会的弱者のための金利をプラス一%とか、これから要介護者に対して、今国会で郵政省の方からも提案されているかと思います。そのようなものが恩給受給者に対してもぜひ必要だと思いますし、推進すべきだと考えるわけであります。  ただし、その中で、恩給受給者と年金受給者、両方もらっている方もあるかと思います。数字として、恩給受給者の中で公的年金をもらえないでいる方、どれぐらいのパーセントでありますか、お答えいただきたいと思います。
  114. 石倉寛治

    ○石倉政府委員 お答えをいたします。  例えば公務扶助料でいきますと、六三%ぐらいの方が年金を受給しているというような実態がございます。
  115. 宇佐美登

    ○宇佐美委員 半分近い方が逆に言えば公的年金を受けられずに、恩給だけ、公務扶助料だけをいただいている方がいるということでございます。  最低保障額でいえば、遺族加算を含めて百八十九万二千六百円、一年間でこの数字でございます。こちらにいる、私もそうですけれども、一月分でいただいている歳費よりも正直言って少ない額を一年間として差し上げているという、皮肉なことでございます。  こういうことを言うと非常に反発もあるかもしれませんけれども、この数週間空転している国会の中で、歳費を返せというような声も、私の地元だけではなくたくさんあるかと思います。そんな中で、その百八十九万二千六百円が口座に振り込まれている中で、その口座の金利を少しでも上げてあげたいという気持ちは非常に素朴なものだと思います。郵政省としてどのように考えていられますか。
  116. 藤岡道博

    ○藤岡説明員 お答え申し上げます。  まず、恩給受給者の方は福祉定期貯金の対象に今なっておりませんので、その対象にすべきではないかという先生の御指摘でございますけれども、現在、この福祉定期と申しますのは、郵便局とそれから銀行、官民共通の商品という形になっております。したがいまして、いわゆる私どもの負担以外に、金融機関においても利子負担がそこの部分に結構あっている。あるいは、老齢年金等の受給者の方、そういった方も現在対象になっておりませんけれども、そういった方々との均衡の問題ということがいろいろございまして、現在、速やかに結論を出すという状況にはないということでございます。  それでは、その恩給を受け取っている方に対して、郵便貯金単独で金利の優遇ということを考えてはどうかということでございますけれども、そのためには新たな立法措置ということが必要になってまいりますし、その際には、他の経済的に恵まれない方々ですとか、あるいは老人の年金の受給者の方とのバランスといったことも慎重に検討しなければならないかなというふうに考えておるわけでございます。  そういった中で、郵政省といたしましては、先ほど先生からもお話ありましたけれども、本通常国会に、寝たきり等のいわゆる要介護者の方に対しまして金利を二割上乗せする、そういった法律案というのを出しておりますので、私どもとしては、その実現に全力をまず傾注してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  117. 宇佐美登

    ○宇佐美委員 本日の新聞でも書かれていることがございます。総務庁に対して行政監察の申請があった点。これはどういうことかと申しますと、郵便局がチラシをつくったということでございます。そのチラシの中には、この金融不安の中で、あなたのお金、大事なお金は郵便局へ、つまり金融不安が、今住専問題等で、ある中で、少しでも郵便局の貯金を獲得するためにそのようなチラシが配られて、だれが配ったかどうかは不明でありますけれども、総務庁に対して行政監察の申し出があったかと思います。  そんな中で、今言われた、郵便局がどんどんお金を獲得しよう、民業を圧迫をしようと言っている中で、今のお答えというものをそのまま受け取ることはできかねます。先ほど申し上げましたように、福祉定期郵便貯金とは別の形でもよろしいのでございます。恩給だけをもらっている本当に生活の厳しい方々が、どのようにこれから余生をつくっていけるのか、楽しんでいけるのかということをお話ししているわけであります。  郵便貯金のあり方そのものを、これまで民業圧迫という点から、私も再三、小さくすべきだ、例えば、コマーシャルでいえば、民間ができないほどのお金を使って、テレビで、これからの新入社員に向けて、郵便局で振りかえをしてくださいとか振り込んでくださいとかいうようなことをやっているわけであります。あくまで民に対しての補完の役割が官の仕事であり、銀行に対して、他の金融機関に対して、郵便局、郵便貯金のやる役割だという基本認識が全く欠如しているんじゃないか、そんな思いをするわけであります。  何にしましても、郵政省としてこれから多々改善すべき内容があるわけですけれども、少なくとも、この恩給受給者に対して金利の上乗せというものを考えていくべきだと思っております。  総務庁として触れられる点、あるかないかわかりませんけれども、長官としての、今申し上げた行政監察を含め、今までの質問に対しての見解をいただきたいと思います。長官、お願いします。
  118. 中西績介

    ○中西国務大臣 金融関係の問題を含めまして、これから総務庁としては、それぞれの機関なり内容がどうなっておるかということをあわせまして調査しながら、いつ、どこで、どのようにするかについてはまだ決定いたしておりませんけれども、こうした問題等についても重要視していかなくてはならぬだろう、こういうことで、今意思統一を重ねておるところであります。
  119. 宇佐美登

    ○宇佐美委員 先ほど恩給局長のお答えがあったように、今のところ郵便局が指定窓口になっているわけですけれども、総務庁が決断することによって他の金融機関を窓口にすることができ、今銀行では、先ほど申し上げたように、年金受給者がその口座を使った場合にはプラス一%の金利が上乗せをされているわけでございますけれども、民間の金融機関が自由金利である中で、そのような付加価値のつけられた口座というものを開かれる可能性がありますので、ぜひとも窓口を広げるということ、考えていただきたいと思います。  時間がまだ残っておりますけれども、早目に終わらせていただきたいと思います。
  120. 大木正吾

    大木委員長 次に、松本善明君。
  121. 松本善明

    松本(善)委員 恩給法等の一部を改正する法律案につきまして、今回の処遇改善は〇・七五%という低い引き上げ率で、超低率にとどまりました公務員給与の引き上げさえも下回るものとなっております。しかし、改正案は、不十分とはいえ、恩給受給者の国家公務員並みの引き上げをという願いに多少とも沿うものでありますので、賛成をするものでありますけれども、きょうは、寒冷地手当の問題について伺いたいと思います。主に人事院に聞くことになりますが、担当大臣、総務庁長官に最後に伺いますので、やりとりをよく聞いておいていただきたいと思います。  人事院は、年度内にも寒冷地手当の見直し案を示すというふうに言われておりますが、寒冷地手当削減は、公務員はもちろん、広範な労働者にも直接影響を与え、地域経済にも大きな打撃を与えるものであります。  人事院が寒冷地手当削減を打ち出して以来、一道二県六十九市二百七十九町百二十六村、合計四百七十七道県市町村議会で寒冷地手当見直し反対決議が全党一致で行われるなど、北海道、東北、北陸を初め、寒冷地手当削減反対の運動は広がって大問題になっております。地方自治体での寒冷地手当改悪反対の意見書採択の状況は、三月二十一日現在で、岩手県八三%、宮城県六一%、秋田県七九%、新潟県六二%、長野県では七六%の自治体で行われ、毎日のように増加をしております。  新潟県議会の意見書の要点をちょっと申し上げてみますと、「冬期間の生計費は夏期に比べ大幅に増額するのに加え」「温暖地では到底ありえない積雪寒冷地特有の出費などもあり、これらの生計費は年々増嵩傾向にある。」「国の助成等の費用算出に直接作用しており、単なる公務員の労働条件の問題に止まらず、積雪寒冷地を抱える地方自治体の地域経済に大きく影響を与える重大問題である。」これは県議会の全会一致の意見書であります。  人事院総裁、こういう地方自治体の議会で全党一致で採択される、あるいは保守系と言われる市町村長も労働組合の運動にメッセージをよこすというような大問題になっているのですね。こういう状況になっておることを、人事院総裁、どういうふうに受けとめておりますか。
  122. 弥富啓之助

    ○弥富政府委員 お答えを申し上げます。  御承知のとおりに、これは先生には昨年からもいろいろお答えを申し上げておるわけでございますけれども、寒冷地手当というのは、寒冷地に在勤する職員に冬期間における寒冷、積雪による暖房用燃料費等生計費の増嵩分を補てんする趣旨で支給をされている手当でございます。これは制度発足の昭和二十四年の寒冷地手当、石炭手当の法律提案理由趣旨の中にも書いておるところでございます。  ところが、昭和二十四年の制度発足以来、生活水準の向上に伴います生活様式、ライフスタイルが時代とともに変化をしてまいりました。寒冷、積雪によって増嵩する生計費につきましては、今いろいろ御意見ございましたけれども、寒冷地手当の支給地と非支給地の間で、現在支給されております寒冷地手当ほどの大きな差は見出せない状況にございます。したがいまして、寒冷地生計増嵩費を大幅に上回っていると思われる手当を支給しますことは、その公務部内の給与配分上の問題であると考えておる次第でございます。  このような状況を踏まえまして、寒冷地手当の支給水準につきましては、給与配分の適正化を図るという観点から見直すこととしたものでございまして、寒冷地手当を支給されていない約七五%の職員の給与にも直接かかわる給与配分の問題で、これは改めるべきところは改めなければいけないのではないかという基本に立って見直しを行うことが必要であると考えておりますので、ぜひ御理解をいただきたいと存ずる次第でございます。  なお、昨年来、各省庁関係やあるいは関係団体等の意見も十分に聞きながら検討をいたしておるところでございます。
  123. 松本善明

    松本(善)委員 私、今わざわざ新潟県議会の意見書を読み上げましたのは、今でも生計費は年々増嵩傾向にあるということを超党派で県議会で決議しているのですよ。そういう状況と、あなたの、人事院総裁の言っていることは全く違うのですよ。  昨年十月十九日の当委員会での私の質問に、人事院総裁は今述べたのと同じような、支給地と非支給地の間で大きな差が見出せないと。しかし、今まで寒冷地手当の支給地と非支給地の生計費の格差を根拠にしたということはなかったと思うのです。今の答弁でもありましたように、寒冷諸経費の増嵩分を対象にしてこれができたことは明白であります。その後の昭和二十四年から昭和六十三年に至るまでの改正、そういうような生計費の格差を根拠にしたということは一度もなかったと思うのです。もしそれを本当に言うならば、むしろ寒冷地手当は削減しないで、そして温暖地の給料を上げるということを考えなければならない。本来人事院というのはそういうところですよ。  これは総務庁長官も労働組合運動にはかかわってこられたからよく御存じと思いますが、憲法に保障された労働三権が公務員に完全に保障されていたら、これは賃下げですから大ストライキになるのですよ。人事院の本来のあるべき姿、そういう労働者の三権にかわって、代償措置としてやるのでしょう。そういう格差があるというなら温暖地を上げなければいかぬ、そういうふうに物を考えるべきではないか。  そのことと、それから、今まで支給地と非支給地の生計費の格差を根拠にしたことはなかったのではないかということについてお答えをいただきたい。
  124. 弥富啓之助

    ○弥富政府委員 たびたび申し上げておるところで恐縮でございますが、寒冷地手当は、冬期間におきます寒冷、積雪による寒冷生計費の増嵩分を補てんする趣旨で支給されておる手当でございまして、その水準につきましては、寒冷、積雪によって増嵩する生計費の寒冷地手当の支給地と非支給地との差を基礎にしてその水準を適正化していくところが原則でございます。これは先ほども申し上げましたとおりに、制度発足のときの法案の提案理由にもうたわれているところでございまして、よって立つ原則は現在までちっとも変わっていない、こういうふうに我々としては考えておるところでございます。  また、家計の実態につきまして、いろいろ増嵩しているというふうなお話がございました。  個人個人によりましていろいろな御意見があると思いますけれども、総務庁の家計調査というものがございまして、家計の実態については、同調査によりまして寒冷地手当を見直すために必要な寒冷生計増嵩費を算定いたしておるところでございます。先ほど来申し上げておりますとおりに、ただいまの支給格差、格差支給の格差を埋めるための支給の幅、それはちょっと多いというふうに我々として判断しておるところでございます。
  125. 松本善明

    松本(善)委員 制度の趣旨は生計費の増嵩傾向を補てんするということ、あなたの言われる支給地と非支給地の生計費の格差を根拠にするというのは制度の根幹にかかわるのです。制度の根幹にかかわるから、改正のときの理由にしたことは今まで一度もないのですよ。だから公務員の労働者は、労働組合の所属のいかんにかかわらず大問題になっているわけです。総務庁長官、連合もそうですよ。連合の寒冷地の労働者もみんな反対ですよ。そういう問題になっております。  今、総務庁の家計調査を基本にしたということを言われましたけれども、今申しましたように、これは制度の根幹にかかわります。この格差の問題としましては、生活実態は変化をしているか。唐突に寒冷地手当を半減するというふうに言いますけれども、寒冷・積雪地で働いている公務員労働者を初め、国民はそれは絶対に納得しないです。  冬期間、北海道などはマイナス十度、二十度でしょう。東京も暖房しますよ。だけれども、北海道の暖房は命の問題、やらなかったら死んでしまうのですから、これは質が違う。各家庭では部屋に大型のストーブを置いて暖房しなければ生きていかれないのですよ。  積雪の地方では、雪囲いだとか除雪も大きな負担だ。除雪を人に頼んだら少なくとも日当一万円ですよ。自分でたくさんやったら腰痛を起こします。その治療費も要りますよ。そういう問題があるのです。それから自動車も、寒冷、積雪のための、スノータイヤが要るでしょう。それから靴だって、滑らない靴が要りますよ。東京では滑らない靴なんて持っている人はほとんどいませんよ。それから自動車も、凍りますから事故が起こる。事故が起こりやすいから修理の費用も余計かかるでしょう。それは寒冷地手当削減どころではないですよ。もっともっと実態を調べればふやさなければならぬぐらいです。そういう寒冷、積雪の気候、気象条件は何ら変わっていないです。  あなたはかつて私に、寒冷地の生活実態も十分考慮に入れて検討を行っているというようなことを言ったこともありますけれども、到底生活実態を考慮したとは言えないと思いますけれども、どうですか。総務庁の家計調査というのは単なる参考にすぎないですよ。実際に自分で調べてみる必要がある。どう思いますか。
  126. 弥富啓之助

    ○弥富政府委員 先ほど来申し上げておりますとおりに、ライフスタイルが制度の発足以来変わってきているということをちょっと申し上げました。  それは、今言われましたとおりに、例えば昔は石炭ということでございまして、この間テレビなんか見ておりますと、今も一部では石炭をお使いになっているところもあるようでございますけれども、灯油になっている。それから、非支給地における、暖地におきましても灯油を使っているというようなこと。あるいは寒冷地の近年の家計支出を見てみますと、どうも暖房用燃料費の生活費に占める比重も低下している。かなりの部分が例えば教養娯楽あるいは交通通信、雑費等、必須的な生活費以外の部分で消費されているというようなこともありますので、やはりそれは冬になりますと暖地と違っていろいろかかると思いますけれども、やはり今、非支給地と例えば乙地の小樽、札幌でしたか、それと比べましても、二十万超しているような差がございます。それほどの差はないのではないかということが我々の考え方でございます。
  127. 松本善明

    松本(善)委員 石炭の問題を話をされましたけれども、確かに石炭手当から始まったのだけれども、その当時はみんな車も持たないですよ。さっき車の話をしたでしょう。その費用も結構莫大なものですよ。スノータイヤなんかしょっちゅうかえなければいかぬから。それは総務庁の家計調査というようなものを机の上で比べるというのではなくて、やはり実際に公務員の労働者がどういう生活をしているかということを調べなければいけないですよ。そのために人事院はあるのですよ。  この制度はさらに、寒冷地でよい職員を誘致する、同じ給料の程度だったら、それは東京で勤めた方が楽ですからね。寒冷地で公務員として生活をするというにはやはりちゃんと優遇しないと、人材の確保もできませんし、行政もきちっといかないですよ。そういう趣旨でやったのでしょう。  だから、あなたは格差を言われるのならば、自分で足を運んで調べてくるべきですよ。人事院として、実際に公務員の生活がどうなっているのかということを調べるべきじゃないですか。お聞きします。
  128. 弥富啓之助

    ○弥富政府委員 私も雪国の生まれでございまして、東北の寒さ、北海道ではありませんが、東北の寒さは十分に経験いたしております。人事院として職員がこれを実地に調査をするというのはしばしばやっておりまして、全然やっていないということはございません。  また、総務庁で行われております家計調査は、家計の支出を最も詳しく全国的に網羅的に精査をしておられるわけでございまして、また国が行う重要な統計資料として、統計法の規定に基づく指定統計になっているということでございまして、人事院としては十分にこれは信頼できるものと考えておるところでございます。
  129. 松本善明

    松本(善)委員 人事院総裁、調べているとすれば、あなたは見る目がないか、聞く耳を持たぬかですよ。私はそう思う。  あなたの目に触れているかどうかわかりませんけれども、北海道の倶知安で働く全気象の労働組合からあなたへはがきが来たでしょう。来ていませんか。見ていませんか。二月の末ですよ、まだ三月になる前。倶知安では、もう十メートル近くの降雪、二メートルになる積雪、日の平均気温マイナス十度以下、これが北海道の冬の生活の厳しさですよ。その公務員の大変さをやはり本当に体験しないといけない。子供のときは青森で生活したかもしれぬけれども、今どうですか。こういう声をちゃんと聞くべきではないか。重ねてやっていると言うけれども、やっていたらもうちょっと別の答弁になると思うのですよ。本気でやらなければだめだ。どう思いますか。
  130. 小堀紀久生

    ○小堀政府委員 生計費のお話になっておりますので、事務的にお答えさせていただきますけれども、総裁からたびたびお話し申し上げておりますように、この手当は、寒冷・積雪地の冬期間における積雪、寒冷による暖房用燃料費等生計費のかさむ分、かさんでいる分を補てんする、そういう趣旨で支給されている手当でございます。  そのいわばかさむ分が、今先生寒冷地のことだけお話しになっておりますけれども、実は比較的暖かいところでも、所得の上昇によりまして、実は暖房の方に回す経費が少しずつ多くなっている、そういう実態がございます。それに比べまして北海道の方は、ある程度上限まで暖房上の経費等が出ておりますので、その差が年々小さくなっている、そういう実態にあるわけでございます。  ところが、この寒冷地手当につきましては、寒冷地手当の中に俸給に比例して増加する部分がございます。したがいまして、給与を毎年改定するに従いまして、その部分は実は大きくなってくるわけでございます。  そういうことで、寒冷生計増嵩費といわば寒冷地手当、この額の差は年々大きくなっている、そういう実態がございます。したがいまして、その制度をそのまま放置することは適当ではないということで、制度改正を行う必要があるというふうに考えているものでございます。
  131. 松本善明

    松本(善)委員 いろいろ理屈を言うけれども、お二人とも心がこもっていない。ちっとも心に響かないですよ。東京の公務員がそれじゃ北海道はいいから北海道へ赴任すると希望しますか。そんなことないですよ。その根本を忘れてはだめです。理屈がついたらいいんだというわけにいかないのですよ、この問題は。  総務庁長官、伺いますが、お聞きいただいているようなわけですよ。一生懸命、何とか寒冷地を下げようと、手当を削減しようとしているのだけれども、それはますます反対運動が広がる。本当に私たちとは考えがかなり違う市町村長が反対だと言って、全労働、もちろん連合の方へも言われるかもしれませんけれども、メッセージをよこして、反対運動をもっと頑張ってくれと言うのですよ。もちろん自民党に所属をしていたり、新進党に所属をしていたりしている方々ですよ。それがそういう状況になっているのです。  先ほども申しましたけれども、人事院のあり方そのものの問題、これは人事院が、労働三権が奪われている公務員、私これは不当だと思いますけれども、その代償措置としてあるのです。労働者の、公務員の側に立って物を考えなければ、私ずっと答弁を聞いていまして、これは公務員の側に立ってないですよ。働く者の立場に立ってないです。  そういうあり方についてを含めまして、総務庁長官、私が人事院総裁にお聞きをしていた質疑を聞かれて、どういう感想をお持ちか伺いたいと思います。
  132. 中西績介

    ○中西国務大臣 寒冷地手当の問題については、国家公務員の寒冷地手当に関する法律に基づいて、専門である第三者機関、人事院が調査研究をする、そういう立場にあるわけでありますから、それに沿って、国会あるいは内閣に対して勧告があるようになっておるわけであります。総務庁としては、やはりそれを待った上で、どう処置をするかについては、特にこの寒冷地手当などについて、どのような論議が推移したりあるいは調査が進んでおるかということを、私たちまだ十分認識をいたしておりません。したがって、これが出された後でなければ、総務庁としてもこれに対しての見解なりなんなりを申し上げることは非常に困難であるわけであります。  ただ、今指摘をされましたように、代償措置としての人事院のあり方等についてはいろいろ論議されておるところでありますので、この点について、今私が行政官庁の一人としていろいろ意見を申し上げるというわけにはまいりかねるわけでありますので、この点はお許しをいただきたいと思います。
  133. 松本善明

    松本(善)委員 総務庁長官、閣僚の一人としてお考えいただきたいと思いますのは、これは、公務員の給与を全体として水準を上げると言えば一遍に解決するのですよ。人事院総裁、全体が、枠が同じだから格差がどうのこうのということを、へ理屈を一生懸命言うわけですよ。給料を全体として、寒冷地手当も含めまして、今の公務員の生活実態、これではぐあいが悪い、もうちょっと上げようということになれば、これは人事院総裁、苦労した答弁をしなくて済むのですよ。何というか、こんなに歯切れの悪い人ではなかったはずなのだけれども、聞いていると本当に気の毒になるようなことを言うわけですよ。それは、根本的にはやはり内閣の考えることなのです。  そういうことを申し上げて、私の質問を終わります。
  134. 大木正吾

    大木委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  135. 大木正吾

    大木委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  内閣提出恩給法等の一部を改正する法律案について採決をいたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  136. 大木正吾

    大木委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  137. 大木正吾

    大木委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、宮路和明君外五名から、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を聴取いたします。今井宏君。
  138. 今井宏

    今井委員 ただいま議題となりました自由民主党、新進党、社会民主党・護憲連合、新党さきがけ、日本共産党及び新社会党・平和連合の各会派共同提案にかかわる附帯決議案につきまして、提案者を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     恩給法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について速やかに善処すべきである。  一 阪神・淡路大震災により被災した恩給受給者については、その被災の状況にかんがみ、恩給証書の再発行、受給権調査の実施等につき特段の配慮を行い、恩給の受給に支障のないよう努めること。  一 恩給年額の改定については、国家補償としての恩給の性格、恩給受給者の高齢化等に配意し、今後とも現職公務員の給与水準との均衡を維持するよう努めること。  一 恩給の改定実施時期については、現職公務員の給与との遅れをなくすよう特段の配慮をすること。  一 恩給の最低保障額については、引き続きその引上げ等を図るとともに扶助料については、さらに給付水準の実質的向上を図ること。  一 恩給受給者に対する老齢福祉年金の支給制限を撤廃すること。  一 外国特殊法人及び外国特殊機関の未指定分の件について、速やかに再検討を加え適切な措置を講ずること。  一 戦地勤務に服した旧日赤救護看護婦及び旧陸海軍従軍看護婦に対する慰労給付金について引き続き適切な措置をとること。  一 恩給欠格者等の処遇について検討の上、適切な措置を講ずるよう努めること。  本件の趣旨につきましては、当委員会における質疑等を通じて既に明らかになっていることと存じますので、説明は省略させていただきます。  よろしく御賛同くださいますようお願い申し上げ、趣旨説明とさせていただきます。
  139. 大木正吾

    大木委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  140. 大木正吾

    大木委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、総務庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。中西総務庁長官
  141. 中西績介

    ○中西国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、今後慎重に検討してまいりたいと思っております。     —————————————
  142. 大木正吾

    大木委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  143. 大木正吾

    大木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  144. 大木正吾

    大木委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時五十八分散会      ————◇—————