運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1996-04-09 第136回国会 衆議院 地方分権に関する特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年四月九日(火曜日)     午後二時開議 出席委員   委員長 月原 茂皓君    理事 野田 聖子君 理事 蓮実  進君    理事 山本 公一君 理事 岩浅 嘉仁君    理事 谷口 隆義君 理事 永井 英慈君    理事 畠山健治郎君 理事 田中  甲君       遠藤 利明君    小此木八郎君       佐田玄一郎君    中馬 弘毅君       西田  司君    浜田 靖一君       林  幹雄君    若林 正俊君       青木 宏之君    古賀 敬章君       佐藤 茂樹君    富田 茂之君       五十嵐広三君    山口 鶴男君       穀田 恵二君  出席政府委員         地方分権推進委         員会事務局長  東田 親司君  委員外出席者         参  考  人         (地方分権推進 諸井  虔君         委員会委員長)         参  考  人         (地方分権推進 西尾  勝君         委員会委員)         地方分権に関す         る特別委員会調         査室長     黒沢  宥君     ――――――――――――― 三月五日  地方分権の実現及び地方税財源確保に関する  陳情書  (第一五五号) 同月二十九日  地方分権推進に関する陳情書外二十件  (第一六七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  地方分権推進に関する件      ――――◇―――――
  2. 月原茂皓

    月原委員長 これより会議を開きます。  地方分権推進に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として地方分権推進委員会委員長諸井虔君及び地方分権推進委員会委員西尾勝君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 月原茂皓

    月原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  4. 月原茂皓

    月原委員長 この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  諸井参考人西尾参考人には、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  本日は、去る三月二十九日に、地方分権推進委員会から、これまでの調査審議状況を取りまとめ、内閣総理大臣に提出されました「中間報告」につきまして、その内容について諸井参考人から御説明いただき、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、諸井参考人にお願いいたします。
  5. 諸井虔

    諸井参考人 ただいま御紹介いただきました地方分権推進委員会委員長の諸井でございます。お隣は委員の西尾東大教授でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  本日は、当委員会が先月二十九日に取りまとめました中間報告について説明する機会を与えていただきまして、御礼を申し上げます。  それでは、まず当委員会の発足から中間報告までの主な審議経過について御説明いたします。  資料1をごらんいただきたいと存じます。  当委員会は、私を初め七名の委員により構成され、地方分権推進法が施行された昨年七月三日に発足いたしました。昨年十月には地域づくり部会くらしづくり部会を設置し、先月末の中間報告までの約九カ月の間に委員会、部会で延べ七十七回の会合を重ねてまいりました。  委員会では、主として機関委任事務、国の関与、必置規制国庫補助負担金地方税財源等のいわゆる制度的課題について審議を行い、部会では、地域づくり部会土地利用など主として地域社会の基盤にかかわる行政分野を担当し、くらしづくり部会が福祉、保健、医療など主として住民の暮らしにかかわる行政分野を担当して、個別行政分野別の課題について検討を進めてまいりました。  先月十五日には部会としての中間報告を委員会に提出し、委員会では、制度的課題の検討結果に両部会の中間報告を加えた委員会としての中間報告を先月二十九日に決定し、同日、内閣総理大臣に提出したところであります。  なお、地方分権の推進に関し国民各層から幅広く意見を聞くとともに、地方分権の必要性をアピールするため、一日地方分権委員会を広島市及び前橋市で開催いたしました。  以上が、当委員会の発足から中間報告までの主な審議経過でございます。  次に、本題の中間報告の説明に移らせていただきます。  この中間報告は、昨年度中に中間報告をまとめるようにとの各界の要請にこたえ、地方分権の推進のための改革の基本的な方向について、当委員会の現時点における考え方をまとめたものであります。  お手元の資料2の「地方分権推進委員会中間報告(要旨)」というのがございますが、それに沿って内容を御紹介させていただきます。  一枚おめくりいただきますと目次がございますが、その目次にありますように、この中間報告の構成は、第一章から順に、「総論」、「国と地方の新しい関係」、「地方公共団体における行政体制等の整備」、「地域づくり部会関係」、「くらしづくり部会関係」、こういう章立てになっております。  それでは、要旨一ページ目に入りまして、第一章の「総論」でございますが、ここでは地方分権推進の背景・理由、その目的・理念と改革の方向などについて述べております。  地方分権推進の背景・理由としては、まず、今日では中央集権型行政システムが新たな時代の状況と課題に適合しないものとなって、その弊害面を目立たせることになったのではないか、一種の制度疲労に陥っているのではないかということであります。さらに、変動する国際社会にあって国にしか担い得ない国際調整課題への対応能力を高めること、東京一極集中を是正すること、個性豊かな地域社会を形成すること、来るべき本格的な高齢社会と少子化社会に的確に対応することを地方分権推進の背景・理由に挙げております。  次に、地方分権推進の目的・理念と改革の方向として、まず、それは地域住民自己決定権を拡 充することであり、規制緩和と地方分権中央集権型行政システムの改革を推進する車の両輪であると述べております。さらに、この双方が並行して徹底して推進されたときに初めて、明治維新、戦後改革に次ぐ第三の改革が成就するとの認識を示しております。  新たな地方分権型行政システムの骨格としては、第一に、国と地方の関係を上下・主従の関係から対等・協力の関係へ改める、二番目に、国と地方の間の新しい調整ルールと手続を構築する、三番目に、法律による行政の原理を徹底し、行政統制から、国会による事前の立法統制と裁判所による事後の司法統制を中心とすることを挙げております。  また、地方分権を進めることは地方公共団体の自治責任の範囲が拡大し重くなることであるということ、地方分権型行政システムに期待される効果としては、第一に、知事、市町村長が国の機関から解放され、地域住民の代表、自治体の首長という本来の立場に徹することができるようになる、第二に、地方公共団体行政サービスが住民のニーズに即応し、地域住民による選択に基づいた個性的なものになる、第三に、国、都道府県、市町村間の事務が簡素化され、時間、人手、コストの節約になり、行政改革等に寄与することを挙げております。  第二章では、本中間報告のいわば中核である機関委任事務制度の廃止に向けた抜本的改革及びそれに伴う新たなシステムの構築が中心に据えられております。  まず、国と地方の役割分担については、地方分権推進法第四条にもうたわれており、中間報告もおおむねこれに即した表現となっております。ただし、③の全国的な規模・視点で行われねばならない施策、事業については、当委員会としては、ナショナルミニマムの維持達成、全国的規模・視点からの根幹的社会資本整備等に係る基本的な事項に限ることとしております。  次に、機関委任事務制度については、第一に、国と地方公共団体とを上下・主従の関係に置いている、第二に、知事、市町村長に地方の代表者と国の機関との二重の役割を負わせている、第三に、国と地方の行政責任が不明確となる、第四に、地方の裁量的判断の余地が狭くなり、時間とコストの浪費となる、第五に、縦割りの上下・主従関係が全国画一的に構築されるといった弊害が生じていることから、機関委任事務制度そのものを廃止する決断をすべきであるとしております。  機関委任事務制度を廃止することとした場合、これまで機関委任事務とされてきた事務を地方公共団体のどのような事務として再編成するかが問題となるところであります。  この際、地方自治法が前提としている、公共事務団体委任事務行政事務という事務区分も一たん白紙に戻して再構築することが適当であると考え、地方公共団体が担う事務を、仮称でございますが、自治事務とし、専ら国の利害に関係のある事務であるが、国民の利便性や事務処理の効率性の観点から法律の規定により地方公共団体が受託する事務を法定受託事務として、地方公共団体の事務を区分することとしております。  さらに、自治事務は、個別法律に定めのない自治事務と定めのある自治事務とに区分しております。法律に定めのない自治事務の実施は地方公共団体の随意であり、法律に定めのある自治事務は、地方公共団体が法律に従ってみずからの事務として処理することとなります。  こうした事務区分の再編成に合わせて、地方公共団体に対する国の関与のあり方も見直す必要が出てまいります。  地方公共団体が担う事務についての国の関与は、必ず法律の規定にその根拠及び態様等を定めることとし、国の関与の態様は、自治事務法定受託事務に応じて、「要旨」の二ページ中ほどにあるような範囲内のものとすることとしております。  すなわち、第一に、法律に定めのない自治事務に関しては、国は、地方公共団体からの報告徴収・届け出や技術的な助言・勧告のみを行うことができるとしております。  第二に、法律に定めのある自治事務に関しては、国は、法律に基づいて、報告徴収・届け出、技術的な助言・勧告に加えて、特に必要のある場合の事前協議、法令違反の場合に事後措置としての違法是正措置要求ができることとしております。  このうち、事前協議については、原則として意思の合致を必須の要件としないが、これによることのできない特定の場合については引き続き検討することといたしております。また、違法是正措置要求については、留意点として、著しく不適正で明らかに公益を害していると認められるときに、是正措置要求を認めるか否かについて引き続き検討してはどうかとしております。  法定受託事務については、国は、法律に基づき、報告徴収・届け出、技術的な助言・勧告、事前協議のほか、事務の適正な執行を確保するため、合法性、合目的性のチェックを含む指示を行うことができる、第二に、特に必要のある場合には、事前事後の関与として、認可、承認、代執行ができることとしております。  次に、このような地方公共団体が担う事務の整理についての基本的考え方を踏まえて、従前の機関委任事務の取り扱いについては、次のとおりといたしております。  まず、個別見直しの結果、役割や使命を終えたと判断されるものなどは事務自体を廃止するということです。今後とも存続が必要な事務については、原則として地方公共団体自治事務とすることといたします。その上で、専ら国の利害に関係のある事務については、国民の利便、事務処理の効率性の観点から、法定受託事務として地方公共団体が処理するものがあります。その例として、国勢調査などの指定統計、旅券の交付等を挙げております。さらに、地方公共団体が処理することが不適当と判断される極めて例外的なものは、国が直接執行するものもあり得るとしております。  次に、国、地方公共団体間の関係調整ルールの創設について御説明いたします。  ここでは、地方分権の推進により、国と地方公共団体間の調整は、対等・協力の関係の観点に立ち、立法統制司法統制にできるだけゆだねることになることから、新たに国、地方公共団体間の関係調整ルールを一般法で定めることを提唱しております。  (5)にあるとおり、これは、官と民の関係を律する行政手続法的な考え方に準じて、国と地方の関係についても、その調整のルールと手続を定めようとするものであります。  その内容についての基本的考え方は、(2)から(4)のとおり、各個別法における国、地方の関係調整の方式は原則として一般法のメニューの中から撰ぶ、国の関与等の基本的事項は法律で定める、法令の施行通達は報告要請や技術的助言に限るなどとしております。  第二に、また、条例が法令違反であると認められる場合には、国の側から条例の無効確認を提記することができるような争訟手段等を一般法で定めることを検討する。  第三に、国の関与のあり方等に関して国と地方公共団体との間の係争が生じた場合、裁判所とは別に、客観的、中立的な判断ができる第三者機関の仕組みを一般法で定めることについて検討すろとしております。  第四に、さらに、国に対して地方公共団体が責見の申し出ができるものとする場合と、それに対する国の応答義務を挙げております。  次に、必置規制の見直しの方向について御説明いたします。  必置規制、特に職員の必置は、社会福祉、保健医療、教育といった行政分野に多く見られますが、必置規制の結果、地方公共団体のそれぞれの事務の執行は担保される反面、現場での柔軟な対応が困難となっており、住民サービス行政改革の面から、そのあり方の改善が課題となっております。  このため、地方公共団体が地域の実情に即した自主的かつ責任ある行政を展開し、住民サービスの向上を図るためには、必置規制の思い切った見直しを行う必要があります。ただし、その場合、福祉サービス等行政水準の低下をもたらすことのないようにすることなどに留意する必要があります。  必置規制には種々の形態がありますが、それぞれの性格に着目して見直しの方向を提示しました。  すなわち、第一に、行政機関及び施設の設置義務づけについては、それがなければサービスや事務が成り立たないようなものを除き、各地方公共団体にその事務の義務づけのみを行うという方向で検討する。  第二に、職員の資格、職名、職員配置等の義務づけについては、事務遂行上必要な職員体制は、原則として地方公共団体自主的判断とする方向で見直しを行うものとする。  第三に、審議会等の附属機関の設置義務づけについては、設置義務づけが依然必要なもの、それから第二に審議機能を果たすことを義務づけることで足りるもの、第三に自治体の判断にすべてゆだねるものなどに区分してその必要性を検討するといったものを見直しの主な方向として挙げております。  次の国庫補助負担金と税財源については、権限や関与の問題と並んで重要な課題でありますが、十分な審議時間が確保できなかったため、政府が一昨年末閣議決定した地方分権大綱方針をベースとして取りまとめております。これらの課題については、今後本格的に検討していくこととしております。  最初に、国庫補助負担金は、第一に、国と地方の責任の所在の不明確化を招きやすい、第二に、地方公共団体の自主的な行財政運営を阻害しがち、第三に、行政の簡素効率化や財政資金の効率的使用を妨げる要因となるなどの弊害が少なからず見られることから、真に必要な分野に限定すべきものとしております。  2では、整理合理化を推進するに当たり国庫補助負担金の性格に応じて留意すべき点について、第一に、奨励的補助金は基本的に縮減、第二に、経常的国庫負担金は真に国が義務的に負担すべきものと考えられる分野に限定、第三に、総合的計画に基づく建設事業に係る国庫負担金は投資を重点化、第四に、国庫補助負担金一般財源化に当たっては必要な地方一般財源を確保といった点を挙げております。  一方、存続する国庫補助負担金については、統合メニュー化交付金化など、それから補助条件等の緩和、補助対象資産の有効活用、転用について引き続き検討すべきであるとしております。  また、これにあわせて、国庫補助負担金を通じて各省庁の過度の関与等がなされ、地方公共団体の自主的・自立的な行政運営が損なわれることがないよう、補助金適正化法の運用及びそのあり方について検討する必要があるとしております。  地方税財源充実確保については、第一に、地方税については、基本的に、地方における歳出規模と地方税収入の乖離をできるだけ縮小するという観点に立って、課税自主権を尊重しつつ、その充実確保を図っていくべきであるとしております。  地方交付税については、総額の安定確保を図る必要があるとしております。また、その運用のあり方については、地域の実情に即した地方公共団体の自主的・主体的な財政運営に資する方向で見直しを検討する必要があるとしております。  今のが二番目でございますが、三番目に、地方債許可制度及びその運用のあり方については、円滑な発行を確保し、自主的・主体的な財政運営に資する観点から、見直しを検討する必要があるとしております。  なお、その際、地方債の良好な発行条件等を確保していくため、優良な地方債資金の充実、地方債市場の整備育成、外債等資金調達先多様化等を図っていくべきとしております。  第二章の最後に、「その他の事項」として、国の地方出先機関地方事務官が挙げられておりますが、いずれも、今後、審議が深められるべき課題であります。  国の地方出先機関については、地方分権の視点に立って、国からの権限移譲などが行われることに伴い、今後、所要の見直しを行うものとする、また、地方事務官については、暫定的な制度であり、機関委任事務制度の廃止に向けた抜本的改革に伴う国、地方の新たな関係にふさわしい仕組みとなるよう、引き続き検討するものとするとしております。  次に、第三章ですが、地方公共団体における行政体制等の整備について提言をしております。  最初に、国と地方との関係の見直しにあわせて、都道府県と市町村との関係について見直しをしていかなければならないと考えております。機関委任事務制度が廃止されるということになりますと、都道府県市町村そのもの役割分担等も考えていかなければなりません。このため、都道府県と市町村との新たな関係のあり方につきましても、対等・協力の関係を基本としつつ、引き続き検討する必要があるとしております。  次に、新たな地方公共団体の役割を担うにふさわしい地方公共団体行政体制の整備と国の支援につきまして、次の五点を挙げております。  一つは、広域行政の推進であります。地域における行政も広域的な視点のもとに行うことが求められていることを踏まえ、一部事務組合広域市町村圏、広域連合などの多様な広域行政の仕組みに積極的に取り組んでいくべきであるとしております。  また、市町村における行財政能力を充実強化していくためには、市町村の自主的な合併を一層促進していく必要があるとしております。  さらに、小規模市町村権限移譲を行う場合には、市町村相互広域行政による対応、中心都市による周辺市町村との連携支援、都道府県による補完、支援の仕組みを具体的に検討すべきであるとしております。また、市町村の規模や行財政能力等に応じた段階的な権限移譲を行うことの配慮の必要性についても触れております。  次に、地方公共団体においては、今後とも、事務事業の見直しなど自主的・主体的な行政改革を一層強力に推進すべきであるとするとともに、人材の育成確保や人材の交流の促進を図る必要性についても提言をしております。  また、地方分権の推進により地方公共団体の役割がますます重要になってまいりますと、そこでの行政をできるだけ住民にわかりやすくしていく必要があります。このため、外部監査機能の導入も含め監査機能を充実強化する必要があるということで、地方制度調査会の審議結果の結論が早期に具体化されることを期待することを表明しております。  それとあわせまして、情報公開の重要性についても提言をしており、地方公共団体の情報のデータベース化を進めるなど情報提供に努めるとともに、情報公開体制の整備を一層推進することとしております。  また、条例等に基づく独自の行政処分等に係る行政手続について、行政手続法に準じた措置を早急に講ずる必要があることを提言しております。  また、分権化の推進にあわせて、住民の行政への参加の機会を拡大するなど住民の意見を積極的に地域の行政に反映させていかなければならないということで、現在既に定められている直接請求制度の見直しや住民投票制度について検討することについても提言しております。  さらに、昨今、非常に注目を集めておりますボランティア活動との連携協力を図っていくことが重要であるとしております。  それから最後に、地方公共団体が新たな地方自治の担い手にふさわしい体制の整備をしていく際に、例えば適正な定員管理ができるように国の関与、必置規制というものを抜本的に見直すことや、外部監査制度など新たな制度の導入の検討などについて国が支援をしていく必要があるとして おります。  次に、第四章の「地域づくり部会関係」について御説明いたします。  「地域づくり部会関係」につきましては、三月十五日の委員会において部会報告の内容が了承され、委員会の中間報告にそのまま盛り込むこととされたところであります。  地域づくり部会におきましては、主として地域社会の基盤にかかわる行政分野を担当し、部会の中間報告までに十八回の会議を開催いたしました。その結果、特に緊要度の高い土地利用関連行政町づくりに関連する行政を優先的に取り上げて審議を行ってまいりましたが、審議時間等の関係で、主として土地利用の取りまとめが進んでおります。  最初の土地利用関連行政におきましては、地方公共団体において、現在、都市計画、農業関係あるいは自然環境関係などについての総合行政が十分に実施できないという問題点があるため、次のように見直す方向で引き続き検討することとしております。  最初に、現行の土地利用制度の中で、都市計画区域の指定とか、市街化区域、市街化調整区域の区分とか、農業振興地域の指定とか、あるいは自然公園地域の指定など、都道府県内の広域的なゾーニングを行う事務を、都道府県自治事務とすることとしております。  さらに、保安林の指定・解除、あるいは農地転用の許可事務を、基本的に都道府県自治事務とすることとしております。  すなわち、現在、これらの事務につきましては基本的に国の機関委任事務として都道府県で行っているものが多いわけですが、これらについて自治事務とすることとしております。  それから、現在、国の権限として留保されている流域保全保安林の指定・解除権限、あるいは二ヘクタールを超える農地転用の許可事務も、基本的には都道府県の事務とすることとしております。  また、これらの自治事務につきましては、特に必要な場合には、国への事前協議など国の意見を反映できる仕組みとすることとしておりますが、地方公共団体の主体性を一層発揮させるため、これらについて留意点の中で、国に事前協議する場合を限定すべきではないかという視点で取り上げております。  次に、詳細な土地利用計画に関する事務につきましては、都市計画の中でも地域地区の指定とか都市施設の決定、農業振興地域の中の農用地区域の指定とか港湾の臨港地区の指定とかについて市町村が定めるという方向で改革をしていくこととしております。その際にも、広域的な観点からの意見の反映等のできる仕組みを検討すべきこととしております。  また、町づくりに関連する行政につきましては、第一に景観・建築、第二に都市公園、第三に排水処理、第四に地域交通の四点について指摘しておりますが、今後、本格的に検討することとしていることから、これらの事項について見直すべきであるとの意見もあることを踏まえ、引き続き検討を進めることとしております。  次に、第五章の「くらしづくり部会関係」について御説明いたします。  「くらしづくり部会関係」につきましても、三月十五日の委員会において部会報告の内容が了承され、委員会の中間報告にそのまま盛り込むこととされたところであります。  くらしづくり部会におきましては、主として住民の暮らしにかかわる行政分野を担当し、部会の中間報告までに十七回の会議を開催いたしました。その結果、特に緊要度の高い六分野十五項目を選び、検討を重ね、改革の方向を示したところであります。  最初の福祉・保健の分野につきましては、第一に、生活保護の決定、実施については自治事務とする方向で引き続き検討することとしております。  第二に、社会福祉施設などに関係する定員、構造設備、職員配置等の細かい国の基準のあり方については、地方公共団体の自主性を高め得るよう抜本的に見直すという方向で引き続き検討することとしております。  第三に、福祉事務所の所長及び職員の専任規定とか保健所長に係る必置規制としての医師資格規制については、廃止する方向で引き続き検討することとしております。  また、教育の分野につきましては、第一に、義務教育制度の教育課程の編成については、地方の裁量の余地がほとんどないと言われておりますので、より一層の弾力化を図る方向で引き続き検討することとしております。  第二に、子供さんがどこの学校に行くかという就学校の指定につきましては、現在、機関委任事務でありますが、自治事務とする方向で引き続き検討することとしております。  第三に、義務教育費の国庫負担金については、大変細かい報告等を徴収することとなっておりますが、その手続を大幅に簡素化する方向で引き続き検討することとしております。  第四に、教育長の任命承認制につきましては、この際廃止の方向で引き続き検討することとしております。  次に、文化等の分野につきましては、第一に、文化・生涯学習関係の所管については、教育委員会の所管にするか、首長部局の所管にするかは地方の判断にゆだねる方向で検討することとしております。  第二に、出土埋蔵文化財につきましては、現在、第一義的には国の所有となっているものの、実際の仕事は地方でやっていただいていることなどがあり、地方に所有権を移すなど、地方が主体的な管理を行えるようにするという方向での検討を提言しております。  このほか、第一に、福祉・保健の分野では、補助金要綱等による細部にわたる関与につき、第二に、衛生の分野では、産業廃棄物、一般廃棄物の処理について、第三に、幼児教育・保育分野では、幼稚園、保育所について、第四に、雇用等の分野では、勤労青少年ホームや都道府県における職業能力開発実施計画についてそれぞれ取り上げ、地方分権を推進する観点からの具体的な改革方向を提示し、引き続き検討することとしております。  中間報告の内容についての説明は以上で終わりますが、最後に、委員会の今後の予定を申し上げます。  この中間報告については、今後、各方面の関係者の意見を聴取するとともに、四月以降、全国各地で一日地方分権委員会を開催して国民の皆さんの生の声を直接聞くこととしております。また、中間報告で十分な改革方向が示されなかった制度的課題中間報告で取り上げられなかった行政分野、課題も残されておりますので、これらも含めてさらに審議を深めていくこととしております。  これにより、地方分権推進計画作成のための具体的指針の勧告の時期については、審議の状況にもよりますが、少なくとも緊要度の高い事項につきましては、できれば本年秋ごろまでに、遅くとも本年じゅうには行えるよう審議を進めてまいりたいと考えております。  以上で、中間報告に関する私からの説明を終わります。どうもありがとうございました。(拍手)
  6. 月原茂皓

    月原委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの説明は終わりました。     ―――――――――――――
  7. 月原茂皓

    月原委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中甲君。
  8. 田中甲

    ○田中(甲)委員 新党さきがけの田中甲であります。  自由民主党、社会民主党、新党さきがけの三十五分の持ち時間で、与党側の質疑をさせていただきたいと存じます。  地方分権推進委員会諸井委員長、本当に御苦労さまです。また、地域づくり部会の成田部会長さ ん、十八回という精力的な部会を開いてくださったやにお聞きしております。くらしづくり部会では、大森部会長さんが十七回、中間報告を提出するために本当に精力的に御努力をしてくださったことに対して、与党全員心から感謝を申し上げる次第であります。  事分権推進に関しましては、与野党はなしという気持ちでおります。逆に、各政党の中において、現実問題として、議員間で個々の温度差があるというのが実態ではないでしょうか。そういう中でありますけれども、今申し上げにくい点もあるのですが、本音でお話をさせていただく、そんな心がけをする中、新選挙制度で勝つためにはどうすればいいのかということばかりを考えている政党の今の姿では、皆さん方がこれだけ御努力をしてくださったことに対していささか申しわけないと思わざるを得ない、そんな場面が、中間報告を提出していただいた後にございました。そんなことも質問をさせていただきたいと思います。  少し余談にはなりますが、今話題に上り始めている鳩山・船田新党がもしできる際には、新党というものには地方分権ということが重要な柱になるという考えを持っている一人でもありまして、この地方分権推進委員会の皆さんの御努力を後押しできるように今後さらに頑張ってまいりたいと考えているものであります。  本当に、実質七十七回を超えるという話し合いをしてくださった中でありますが、この中間報告を提出されてから、マスコミのどのような取り扱いを受け、あるいは、事務局に対するどのような反響がおありになったか、冒頭お聞かせをいただきたいと思います。
  9. 諸井虔

    諸井参考人 マスコミの扱いは、私ども大体想像したよりも割と大きく扱ってもらったと思います、ニュースがいろいろ錯綜している中でございましたが。それから、各政党、地方団体、経済団体それから労働団体、あちこちで談話を出していただいておりますが、おおむね基本的には評価するという線でいただいたように存じます。  それから、まだそうたくさんではありませんが、事務局に御意見等が若干寄せられておるわけでございます。私ども、今度の中間報告の前書きよりは後書きに書いてございますが、今度の中間報告というのはやはり我々の現時点での考え方を前広に検討方向として示しまして、それについて各方面の忌憚のない御意見を存分に伺う、その上で勧告へ持っていくというふうに考えておりますので、今後も、ヒアリングあるいは一日地方分権委員会等で十分に御意見を承ってまいりたいというふうに存じております。
  10. 田中甲

    ○田中(甲)委員 事務局サイドから、何かその後の反響についてお聞かせいただくことがありましたらお願いしたいと思います。
  11. 東田親司

    ○東田政府委員 事務局長でございます。  中間報告を三月の末に出させていただきまして以降、個別の項目につきまして陳情がございまして、私が直接承ったことはございます。まだそれほど多くは来てございませんけれども、これから先、各方面からファクス、電話、手紙等で寄せられることになるものと承知をしております。  以上です。
  12. 田中甲

    ○田中(甲)委員 重立ったもので、何か伝えていただけるものがあったらお聞きをしたいのですが。
  13. 東田親司

    ○東田政府委員 私が直接承りましたのは、日本公衆衛生学会の理事長の方からでございますけれども、保健所の必置規制については必置規制を存続すべきではないか、それから、現在、保健所長さんはお医者さんであるべきという必置規制になっておりますが、これも継続する必要がある、この二点につきまして文書での申し入れが委員長あてにございまして、私が承りました。  以上でございます。
  14. 田中甲

    ○田中(甲)委員 ありがとうございます。  伝え聞く官房長官発言、この点を少しお聞きしたいと思うのですが、中間報告が出されまして、その後に官房長官が、分権委員会は、これは推進委員会のことだと思いますが、地方の側の観点から地方に強い関心を持った委員で構成されており、国にはきつい内容となっている、一挙に踏み切れるものではないなどという内容で発言があったようであります。与党としては非常に不満を持っているところでありますが、発言の正確な伝達ということもされていないやにも聞いております。  この点に関しまして、今後のこともあります、内閣に対して、委員長は今どのような御感想を持っているか、そして何を今期待されているのか、どうぞ忌憚のない御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  15. 諸井虔

    諸井参考人 私も官房長官の御発言については新聞等では拝見しておりますが、正確なところはよく存じないわけでございます。  先ほども申し上げましたように、かなり思い切って前広に、現時点での委員会検討方向を示したわけでございます。これはお立場によっては相当大変だなというふうなお感じを受けられる向きもあるのは当然ではないかというふうに思っておりますが、その後も官房長官ともお会いしておりますが、格別今お話ありましたようなそういうニュアンスは私は直接には承っておりません。  いずれにしましても、最終的な勧告というものは、やはり実現可能なしっかりしたものを我々も出さなくてはならぬと思っておりますし、それをまた実現していただくのはもう何といっても内閣のお仕事であり国会のお仕事だろうかと思いますので、また十分御理解を得られますように今後もよく御説明もしてまいりたいというふうに思っております。
  16. 田中甲

    ○田中(甲)委員 わかりました。具体的な内容に入る前に、もう少しフレームのことで御質問をさせていただきたいと思います。  現在は推進委員会があり、そして地域づくり部会くらしづくり部会となっております。この二つの部会だけで十分に今後対応していけるだろうかということを考えました。具体的に申し上げますと、税財源あるいは補助金の問題など、専門に部会をつくるのか、あるいは何らかの形で集中審議を行っていくような機会をつくられた方がよろしいんじゃないかという考えを持ったのですが、その点について、委員長いかがでしょうか。
  17. 諸井虔

    諸井参考人 この中間報告の段階ではまだ十分な時間がとれておりませんで、先ほどもちょっと申し上げましたように、そう踏み込んだ形のものになっておりませんで、これは四月以降の非常に重要な課題であると思っております。  それで、実は昨日の委員会で、補助金あるいは税財源に関する検討グループというようなものをつくるべしということで委員会の御決定をいただきまして、人選については堀江委員長代理と私とに一任されましたので、次の委員会ぐらいにはこの人選もおかけして、できれば五月くらいから早速活動に入っていただくというふうな、そういう段取りをいたしております。精力的にやるつもりでございます。
  18. 田中甲

    ○田中(甲)委員 税財源や補助金の問題というのは、これは分権を進めていく中で非常に重要なかぎを握ってくるというところだと思いますので、今お話を承りますとプロジェクトチーム等をおつくりになられて精力的に進められるということですから、ぜひ頑張っていただきたいとお願いを申し上げる次第でございます。  それからもう一点、勧告をなされるまでの間に、今、国会で御審議をされている新しい法案などについてもやはりチェックをしていく、そんな機関が必要かと思います。例えばNPO法案ですとか、来年四月に施行される予定でありますが、容器包装リサイクル法の実態ですとか、こういうものなども既に分権の精神にのっとって進められなければならないと思うのですが、そういう勧告までの間に審議されている法案に対するチェック機関をどのようにお考えになられているか、御所見をお聞かせいただきたいと思います。
  19. 諸井虔

    諸井参考人 実は、この点については委員会の中でも、こうやって審議している間にまたいろいろな新しい法律制度ができて、地方分権と反対 の方向といいますか、中央集権の方向での法律制度ができていくのではないか、そういう心配する声もいろいろあったわけでございます。  ただ、私どもとしては、まだ実は勧告の中身というのはきちんと固めていないわけでありまして、その勧告に沿っているかどうかということを今ちょっと言える段階ではないものでございますから、ちょっとこういうことを言っては失礼なのかもしれませんが、政府にしても国会にしても、この地方分権推進法をつくっていただいたわけでございますから、当然そういう考え方でお進めになっていただけるものというふうに考えておる次第でございます。
  20. 田中甲

    ○田中(甲)委員 ごもっともであります。ところが、実際には中央集権が根強く残っているという法案の内容を感ずる面も多々ありまして、私たち国会でも十二分に注意して地方分権推進するという考え方で進めてまいりますが、どうぞ推進委員会本体でも、もし現在取り扱っている法案を注意して検討する必要ありというような場面になりましたら、またその点にも御努力をいただきたいとお願いを申し上げます。  さて、私は、きょう与党の中で、代表ということではないんですが質問をさせていただいておりますが、自民党の理事の方から、また委員の方から、「レッツ・地方分権」という、このパンフレットですけれども、地方分権の普及会、これは地方分権推進本部内に設置されているものですが、この内容がいかがなものかという意見をもらいました。確かに、漫画を取り入れて非常にビジュアル的、カラーで見やすいというものでありますけれども、しかし書かれている内容を読む限りでは、国と地方団体の関係の対立的な側面だけがデフォルメされている、され過ぎているということが、その皆さん方の共通した意見であります。  こういうことは、国のやってきたことをすべて否定してしまう。それでは、行政システムの構築は今までの姿では不可能であるかのごとき書かれ方がされている。こういうものに対する問題点を指摘されたわけでありますけれども、委員長はもうこれをごらんになっているでしょうか。また、ごらんになっている際にはどのようにこれをお受けとめになられているか、御感想もあわせてお聞かせをいただければありがたいと思います。
  21. 諸井虔

    諸井参考人 これは拝見をさせていただきました。これはやはり地方公共団体側でおつくりになったものだろうと思います。ですから、おっしゃるように、そういう趣旨で貫かれていると思います。  したがいまして、お立場によってはちょっと一方的ではないかというお感じを持たれることも間々あろうかなというふうに考えますが、私どもとしては、やはり地方分権法律に基づいて進めていくという任務でございますので、そうひどい話が載っているわけではないのではないかなというようなところでございます。
  22. 田中甲

    ○田中(甲)委員 こういうお話をいただきましたが、車の両輪の姿ということを比喩してお話をされておりましたし、また、地方分権高齢社会対応するということで、未来社会とも言われているスウェーデンの実態を見てみますと、砂時計型といいまして、国と地方がそれぞれに役割を担っていく。それぞれの役割を担っていく中で、地方分権、ひいては住民が主体となって地域をつくっていくという姿がつくり出されていく。そういう中においては、一方的に今までの国の進めてきたやり方が非難されるような書かれ方というものは、地方分権を進めていくに当たりましてプラスになるばかりの面ではない、そんなことを感じましたので、指摘をさせていただきました。  今、途中でお話をさせていただきましたが、私は、推進委員会の皆さん方にもう少し森を見ていただきたいという気持ちを中間報告を読ませていただく中で感じました。正直なところをお話しさせていただきますと、猟師木を見て森を見ずと。個々の問題に対して一つ一つチェックをしていくことは、これは大変なことでありますし、御苦労の中で御努力されている姿というのはもちろん理解しているところでありますが、全体像を見ていく、そして全体の中でどの木を徹底的に分析すれば、枝葉がどこまで伸びて、そして根がどこまで張っているのかという、ポイントを絞って木を調査していくということも大事ではなかろうかと思うのであります。  その際に、国内の問題を見ていくと同時に、海外では地方分権をどのように進めてきたかということを調べていくことが、私はスウェーデンの話をこれからしようと思っていますが、日本の今の姿とスウェーデンの地方分権の姿、大体三十年日本より進んでいると言われていますが、ここを重ね合わせることによって、日本で最も問題になっているのがどの部分かというのが見えてくるように思います。  実は、つい最近、スウェーデンの地方分権の父と言われているアグネ教授とお会いする機会がありまして、いろいろお話をいたしました。先ほど私がお話しした砂時計型の分権というのはまさにスウェーデンの、中央集権的分権国家と分類した、基礎自治体とスウェーデンでは言われているようでありますが、中央と市町村が同じようにバランスを持って、緊張関係でバランスをとり合っている、そういう形がスウェーデンの代表的な地方分権のモデルであります。  私がここで生意気なことを申し上げるつもりはないのですが、ぜひスウェーデンの地方分権の姿を推進委員会でも参考にしていただきまして、日本の問題点がどこにあるかということを海外と比較して、また研究していただければよろしいのではないかなと思っております。高齢化社会というものに対応するすべは地方分権しかないのだということを力説されている教授でありまして、また、スウェーデンは、それを実践をしてくる中で、日本の極めて手本になる部分を持っている国であろうという認識を私は持っております。  その中で、スウェーデンの場合にも、機関委任事務の問題や自治事務、あるいはそれらの分類をされて、そこに集中をして審議をされている様子は私も認識をしているのですが、市町村の合併ということが同時に必要になってきた、そして実際に十分の一まで市町村の合併ということを進めてきた、そういうことが書かれております。  突然に質問して申しわけございませんけれども、やはり地方分権を進めていく中での受け皿面での市町村の合併ということ、今回は中間報告に扱われていないわけでありますけれども、委員長のお考えというものをお聞かせいただければありがたいと思います。
  23. 諸井虔

    諸井参考人 基礎的自治体としての市町村ということについて、考え方は後ほど西尾委員に答えていただきたいと思いますが、私も、確かに、三千三百の市町村すべてが同じような力を持ち、そしてまた分権を同じように受け入れて間違いなくサービスが行われるというふうには必ずしも言えないのではないか。  したがいまして、今度の中間報告でも、弱小の市町村に対する手当てとか、あるいは広域的な連合、連帯のようなものとか、あるいは都道府県のサポートとか、そしてさらに、できれば基礎的自治体がもう少し力を発揮できるように、そういう規模になっていくようにというふうなことは、個人的には考えておるわけでございます。
  24. 西尾勝

    西尾参考人 スウェーデンのことについては私も必ずしも詳しくはないのでございますけれども、議員が御指摘のように、スウェーデンの場合には市町村が非常に大きな責任権限を与えられているということ、そして市町村合併に極めて積極的に取り組んできた国であるということは十分存じております。  それで、市町村が大きな権限責任を持ち、そして一方では、基本的な制度の枠組み、そして全国的に最低限必要なサービスの提供は国が責任を持つという形で、それを砂時計型というふうにおっしゃって、中間団体が余り大きな役割を担っていないということを御指摘なのだろうと思います。  私どもの今回の中間報告におきましても、ナ ショナルミニマムの維持達成につきましては国の重要な役割といたしました上で、住民に身近な行政は身近な地方公共団体において処理するというのを原則的な考え方にしておりまして、その中でも、地方自治制度にとりましては基礎的地方公共団体である市町村こそが最も重要な存在であるというのは、大方の意見が一致しているところでございます。  特に、「第一章総論」の中で、「高齢社会少子化社会への対応」という項目で書いておりますけれども、そこでは、高齢化あるいは少子化に対応した行政というのは、総合行政が必要であると同時に、市民活動等との協働、公私協働が必要だ、そして、こうした総合行政と公私協働ができるのは市町村においてしかあり得ないということで、こうした関係行政市町村中心に組み立てられるべきであるという認識は示しているわけでございます。  ただ、原点に戻って考えますと、スウェーデンは御承知のように一千万に満たない人口の国でございますし、我が国は一億を超えております。人口の規模がいささか違い過ぎますし、市町村の数もかなり大きく違います。したがいまして、あらゆる行政分野について中間団体というべき都道府県の機能をそこまでいきなり縮小することができるかという点には、若干疑念を持っている次第でございます。
  25. 田中甲

    ○田中(甲)委員 もう少しスウェーデンの話で恐縮でありますが、約二十年がかりで行った市町村合併で、二千五百の市が、合併をした後に二百八十六市になったということであります。  海外に推進委員会で視察に行かれるという予定はおありでしょうか。
  26. 諸井虔

    諸井参考人 ちょっとそういうことも考えた時期があるのですが、前に行政改革委員会等で一応ヨーロッパの視察等をしておりまして、それから、連邦制の国というのは、アメリカとかドイツとか、これはちょっと日本と事情が違うような感じがするのですね。フランス、イギリスの分権も、ちょっと見た感じでは、あるいは前に総務庁で調べたような感じでは必ずしも非常に参考になるという感じでないものですから、今の段階ではそういう予定がございませんが、またよく検討させていただきたいと思います。
  27. 田中甲

    ○田中(甲)委員 私が申し上げたいことはおわかりだと思いますが、もし海外視察へ行かれるのでしたら、ぜひスウェーデンに行っていただきたい。多分、日本においても参考になる点は少なからずあるだろうというふうに思っております。  実は、島根県の匹見町という、町会議員が十二名という小さな町でありますが、ここでこのようなことがありました。町の社会福祉協議会会長を兼任したことが地方自治法の兼業の禁止規定に違反するとして、町議会で議員の失職を議決した。中村幸子さんという町議会議員であります。  この社会福祉協議会の会長というのは、全国三千二百余の市町村の首長が、約四割が兼任をしているのが実態であります。ところが、この匹見町という町は既に高齢化の割合が三五%を超えているという、ある意味では日本がこれから努力をし対応していかなければならない高齢化の、まさに先駆けてそういう対応をしているところなのですが、社会福祉協議会会長、あるいは社会福祉に非常に熱心な中村幸子さんという町議会議員が議員職を失職するということがございました。  これからの地方分権の一つの課題でもあると思うのですけれども、社会福祉協議会という公的に福祉を進めていかなければならないものを兼任している町議が失職をしなければならないというこの事態を、諸井委員長ももちろん御認識をされていたと思うのですけれども、まずはどのようにこれをお受けとめになられているか、また、地方分権を進める観点でこれをどのようにごらんになられているか、御所見があればお聞かせをいただきたいと思います。
  28. 諸井虔

    諸井参考人 大変申しわけないのですけれども、私、実はそのお話は初めて伺うわけでありまして、恐らく、法律的にもいろいろ微妙な問題ではないのかなという感じがいたすわけですが、こういう現場でのいろいろな実例というものを私どもとしてもなるべくたくさん伺って、それをベースにしていろいろ検討すべきであるというふうに思っておりますので、今の点もまたよく調べまして、参考にさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
  29. 田中甲

    ○田中(甲)委員 非常に福祉問題に精通された町議さんでいらっしゃいました。なぜならば、御主人のお母様が寝たきりで、介護をしている。それを匹見町という町で行っている中で、福祉充実ということを勉強し続け、社会福祉協議会、そして町議をされた。こういう方の意見もぜひ参考にして、これからの日本における高齢化社会に対応する地方分権の姿ということを検討していただければありがたいと思っております。  さて、先ほど私、途中で質問をしたのですが、地方分権基本というものは、住民がどれだけ自治意識を持てるか、地方分権を進めることによって住民が、どのように自分にメリットがあるのか、自分にどのように関係をしてくるのかということだろうと思います。  そんな中で、NPO法案、非政府・非営利団体、こういうものを今後の地方分権を進めていく中で重要視していかなければならないと考えておりますが、諸井委員長並びに西尾委員はどのようにお考えか、お聞かせをいただきたいと存じます。
  30. 諸井虔

    諸井参考人 この点については、西尾委員からの答弁ということでお許しを願いたいと思います。
  31. 西尾勝

    西尾参考人 最近は、さまざまな形の、ボランティアグループの活動というのが全国的に顕著になってきているわけですが、こうした活動こそが自治の原点というべきものではないかというふうに思っておりまして、これからの地方公共団体は、こうした市民のさまざまな活動との連携協力を図っていくということが重要な課題になるのではないかというふうに思っております。  そして、今回の中間報告でも、先ほどちょっと触れましたが、「高齢社会少子化社会への対応」というところで、特に公私協働ということの必要性を説いておりますが、保健医療福祉、教育などにわたる行政サービスは、市役所、町役場が提供していく行政サービスだけでは決して十分とは考えられないわけでありまして、NPOあるいはNGOと言われる諸団体、あるいはボランティアたちとの連携協力、場合によりましては民間企業の参入も得て、公私協働のサービスネットワークを形成していく必要があるのではないかというふうに考えて、我々もそう認識しているところでございます。
  32. 田中甲

    ○田中(甲)委員 同時に、地方公共団体情報公開ということは、これから間違いなく必要になってくることだろうと思います。マルチメディアと分権ということについても、これからさらに機会をつくって審議をしていただきたいと思いますが、その点に対する現在の推進委員会の御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  33. 西尾勝

    西尾参考人 まだ特にマルチメディアという問題に絞って、それと分権との関係ということを十分議論したわけではございませんけれども、地方分権推進するに当たって、情報の問題は極めて重要だというふうに今認識しております。  地方公共団体における情報公開制度の普及も当然でございますが、それ以上に、情報提供というものも重要であります。そしてまた、地方分権がいかに進められたといたしましても、国際的な盾報あるいは全国的な情報に接することも地方公共団体にとっては極めて重要でありますので、今後とも、国が地方公共団体の施策に係る情報提供をしていくということは、国の側の重要な役割の一つだというふうに考えているわけであります。  そうした中で、マルチメディアとおっしゃっていらっしゃるのは、恐らく多機能で双方向性を有するメディアのことを指しておられると思いますが、そうした全国的な情報基盤というものができてくれば、国と地方公共団体情報交流も、地方 公共団体相互間の情報交流も一層促進されることになりますので、地方分権に寄与することになるのではないか、そういうふうに考えております。
  34. 田中甲

    ○田中(甲)委員 ありがとうございます。  さて、規制緩和行政改革あるいは首都機能の移転、加えて地方分権をトータルで考えてもらいたいという総理の発言というものを、実は私は随分考えました。中間報告を提出されたその日に、与党の地方分権プロジェクトチームの代表の方々が、私もそこに同席をしたのですけれども、総理に、なお一層推進していただくようお力添えいただきたい、そういうお願いを伝えに参ったのですが、規制緩和行政改革、首都機能の移転さらに地方分権ということをもしトータルで考えていった場合に、私は、地方分権推進というものがかなりブレーキがかかっていってしまうのではないかということを感ずるのであります。  もちろん、それぞれの連携をとりながら進めていくことが必要な場面というのは当然あるでしょうけれども、その中でも、地方分権というものが他の行政改革規制緩和ということを引っ張っていく、規制緩和の最大の切り口は地方分権であるというような思いを持って今後も推進委員会の皆様方に進めていただきたいと思うのでありますが、御所見をいただきたいと思います。
  35. 諸井虔

    諸井参考人 昨日も、実は四審議会の会長、委員長の会合があったわけでございますが、総理が、特に規制緩和地方分権が反対の方向へ走ってしまうおそれはないのかという御心配をされているのはよくわかるわけでございます。  私ども、基本的に今やろうとしていることは、従来の過度の中央集権というものを、いわゆる官から民へと、国から地方へというような形で、民間あるいは地方の自己責任体制に切りかえていく、そういうことであろうかと思っておりますから、地方分権規制緩和というものは車の両輪であって、相反する方向ということは本来あるべきじゃない。  それで今度も、要するに、国はやはり国の役割というものをきちんと持っているべきであると思いますし、ただそれを一片の通達のような形でいろいろ縛ってくるということじゃなくて、国がしっかり考えておられることはきちんと法律で出していただく、国会で決めていただく、国会で国民の意思というものは決まるわけです。そこで決まった意思に対しては、地方というのは当然それは従っていくべきものだろうと思うのですね。そういう形で今後国と地方協力関係ができていくというふうに考えておりますので、これがバッティングするということではないというふうに存じます。
  36. 田中甲

    ○田中(甲)委員 時間が参りました。  具体的な指針を内閣総理大臣勧告するという重要な使命の中で、推進委員会の皆様方にさらに一層御努力いただきますようお願い申し上げまして、質疑を終了させていただきます。ありがとうございました。
  37. 月原茂皓

    月原委員長 富田茂之君。
  38. 富田茂之

    ○富田委員 新進党の富田茂之でございます。よろしくお願いいたします。  今回の中間報告が、「分権型社会の創造」という表題をつけられております。本当に委員の先生方の意気込みがあらわれてくるような表題であるというふうに思います。特に、機関委任事務制度について、制度そのものを廃止する決断をすべきであるという画期的な提言を行っていただいた点は高く評価できると思います。  昨年の地方分権推進法審議の際、私ども新進党は、機関委任事務制度また地方事務官制度については条文の中で明確に廃止をうたうべきだというふうに主張して対案を提出いたしましたが、なかなかそこは取り入れていただけなくて、きょうも委員席にいらっしゃいます山口鶴男元総務庁長官との間で廃止すべきかどうかという点についていろいろな委員がかなりやりとりを行いました。今質問されました田中甲理事は、当時は与党であったのですが、私も廃止の方がいいのじゃないかということを委員会の質問でされまして、新進党案にかなり賛意を表してくれたのですが、そこは多数決ですので、「地方自治の確立を図る観点からの」という修正文を入れて、この機関委任事務制度については整理合理化あるいは「その他所要の措置を講ずるものとする。」というふうになりました。  今回、先生方がずっと審議をされて、廃止すべきだというふうな決断を政府に迫るということで、これは本当に高く評価できるのじゃないかなというふうに思います。先ほど諸井委員長の方から、機関委任事務制度については五点ほど弊害があるという御指摘がございました。この弊害を乗り越えるためには枠組みを変えるんだ、本当に制度仕組みそのものを変えて、しかも自治事務法定受託事務という明確な新たな仕分けをしていただいた。この部分は、新進党もそこまではいきませんでした。そういう意味では、かなり貴重な御提言ではないかなというふうに考えております。  今回の中間報告に先立って、昨年の十二月二十二日でしたか、「機関委任事務制度廃止した場合の従前の機関委任事務の取扱いについて(検討試案)」ということで発表がされたのですが、この試案について西尾先生が、朝日でしたか、「論壇」に投稿されておりまして、二月だったと思うのですが、その中に、この試案の眼目ということで二点ほど強調されております。  ちょっと御紹介をさせていただきますと、「第一に、国と都道府県市町村関係を新しい対等協力関係に切り替え、その相互関係を一定のルール手続きに基づいた公正・透明なものに改める」、第二として、「「法律による行政」の原理を徹底し、各省庁による行政統制中心にした現行のシステムから、国会による立法統制裁判所による司法統制中心にした新しいシステムに変換することにある。」というような御指摘がされておりました。  この「論壇」の文章を見まして、これは中間報告が本当に期待できるなと思っておりまして、中間報告を読ませていただきましたら、多分先生が草案をされたんだなと思うような、この文どおりの案が出てきまして、これはやはりこのとおりやっていただいたんだというふうに心強く思いました。  ただ、気になりましたのは、十二月二十二日にこの試案が発表されて、中間報告の取りまとめに至るまでの間、各省庁からいろいろなヒアリングとかいろいろな議員さんたちからの問い合わせ等あったと思うのですが、機関委任事務制度廃止するんだということについて、ちょっと後ろ向きな議論とか、あるいは何でこんな試案を出すんだといったような、圧力までいかないにしても、反対意見等、各省庁あるいは政治家等からかなりあったのではないかというふうにマスコミの報道等でもされておりますが、そのあたりは具体的にはどうなのでしょうか。
  39. 諸井虔

    諸井参考人 この一月からずっとヒアリングをしてまいりましたし、そのほかにも直接私どもに面会を申し込んでこられてお会いしたようなケースもたくさんございます。  この機関委任事務廃止というのは確かに非常に大変革でございまして、今のこの中央集権の行政の骨格をなすものでございますから、これについてもちろん各省庁がすぐ賛成するということではございません。  ただ、私感じましたのは、機関委任事務廃止していくというその考え方そのものについて、もうとんでもないことだ、話にならぬじゃないかというような反対は実はなかったわけですね。むしろ、個々に、ではこの事務についてこういう点は機関委任事務廃止したらどうなるんですか、あるいは、法定受託事務自治事務にうまくきちんと分けられるのですかというふうな問題とか、それから、そこまでいかぬでも共同事務というような考え方もあるのではないかというような主張とか、それからまた、そういうふうに機関委任事務をやめたとしても、国は国の役割があるのだから国の関与の仕方というものをやはりきちんとして もらわないと困るのではないのかなとか、全国的な統一、公平というようなことも片一方ではやはり重要な視点であろうかと思います。そういう視点からの今申し上げたような主張とか、そういうふうな、何というのですか、ある意味で建設的な考え方が出てまいったと思うのです。  私どももそれを伺いましてもっともな部分もあるというふうに感じましたので、今御指摘の検討試案をある程度手直しをして、この中間報告ではいろいろな関与の仕方等も新たに加えて、あるいは国の役割とそれをまた果たすための方法というようなことも書き加えて、それで発表をしたわけでございます。  したがいまして、今後もまだ、何しろ五百六十一から機関委任事務があるのだそうでございますから、個別の問題で議論を各省庁ともやっていかなければならないと思いますが、できるだけお互いに建設的な議論でいい解決を見つけてまいりたいというふうに考えております。
  40. 富田茂之

    ○富田委員 今諸井委員長のお答えの中にこれから質問しようと思っていることが全部出てきまして、一つ、特に、国と地方の共同事務にしたらどうだというような御意見があった。それに関して、これは新聞報道だったのですが、委員の方が記者にこういうふうに言われたというような報道が一つありました。  紹介させていただきますと、「最初は統一性、公平性が失われると言って注文をつけ、時間稼ぎをしていたが、もう通用しないとみて、最近は国と地方の共同事務にしましょうと言い出した。本音は何としても権限を、国につなぎとめておきたいということなんですよ。国が上で、地方が下という関係を断ち切らないと、名前を変えても現在の機関委任事務と何ら変わらなくなる」。  こういう表現を本当にされたかどうか、これは新聞記事ですから確認できませんが、今のこの記事がこのとおりだとすると、委員長が、共同事務でどうだというような考え方を提示された議員さんもいた、建設的な意見だというふうに言われていましたが、どうも建設的というよりは、だんだん推進委員会の方に押されて、何とかここでとどまりたいというような感じで新たな提言をしてきたのではないかなというようにも私どもには思えます。  またもう一つ、自治事務法定受託事務をどうやってうまく分けるのだ、これが本当に問題になると思うのですね。委員会の方でこれから作業手順として、今委員長言われましたように五百六十一もの機関委任事務、これは法律単位で五百六十一だそうですからもっと細かくなっていくと思うのです。これを自治事務法定受託事務にうまく本当に仕分けできるのか、どういう基準を立てて分けていくのか、これがまた各省庁を説得していく一つの手段になると思うのですが、中間報告での御説明を見ておりますと、法定受託事務については、「専ら国の利害関係のある事務であるが、国民利便性又は事務処理効率性観点から法律規定により地方公共団体が受託して行うこととされる事務」という記載しかなくて、また、地域づくり、くらしづくりの各部会で、こういうのは自治事務にしていくんだというのを見ますと、何となく方向性はわかるのですが、まだ明確な基準といったものが委員会の中でもできていないのではないかな、そこはこれからの作業になっていくのではないかと私は思ったのですが、そのあたりについてはどのようなお考えなのか。  ちょっとその部分について、山本委員が新聞の記者に言われたんだと思うのですが、「警戒しなければならないのは、省庁が権限を残そうと、何でもかんでも法定受託事務にしようとすることだ。法定受託事務は、極めて限定的にしなければ」というふうに発言されているようなんですが、これはこのとおりだと思うのですね。基本的には全部自治事務にするんだ、基準を設けて、どうしても国で関与した方がいいというものについては法定受託事務にしていくという方向性であるべきだと思うのです。  そのあたりについて、これまで委員会の中でどのような議論がされてきたのか、またどういう方向に持っていこうとされているのか、お聞かせ願えればと思います。
  41. 諸井虔

    諸井参考人 今の法定受託事務自治事務の仕分けにつきましては西尾委員から答えていただきたいと思いますが、さっきの私の発言、ちょっと不正確でありまして、共同事務にするという考え方は、私は建設的だとは必ずしも思っておりませんので、訂正をさせていただきます。
  42. 西尾勝

    西尾参考人 議員が御指摘のとおりですが、機関委任事務制度廃止しました場合に、従前機関委任事務であったものをどう整理していくかということについて、私どもは四つの分類にしているわけであります。  この際、事務そのものを廃止してしまうものというのが一つであります。  次に、事務そのものは継続するというものにつきまして、原則として自治事務にしていただきた  しかし、専ら国の利害関係のある事務というものがやはり残らざるを得ないであろうということで、ここから三番目と四番目のカテゴリーが出るわけですが、そのうちの一部は、法定受託事務という形で地方公共団体で処理することにしてはどうか。  そして最後に、この機会に国の省庁に直接執行していただくということで、いわば従前は一部が機関委任事務になっていましたけれども、この際返上しますというものと、四つの類型があり得るのではないかと考えているわけであります。  したがいまして、この四月以降、従前の機関委任事務、先ほど法律で数えて五百六十一あるということなのでございますが、これを具体的にどの事務に当てていくかということを私どもの方で検討していかなければなりません。ただ、五百六十一の法律規定されているすべての事務について詳細に検討して、一つ一つに私どもが結論を出すことができるだろうかと考えますと、かなり難しいことではないかというふうにも思っております。  したがいまして、この五百六十一のものについて、ある程度の類型分けをしまして、その類型に属するものについて若干のものを詳細に検討してみれば、それが自治事務で処理できるか、法定受託事務にならざるを得ないか、あるいはこの際廃止してもいいのか、国に返上してもいいのかといったような区分けがつけていけるのではないだろうか。いずれにしろ、政府地方分権推進計画を策定される際に、どうしたらいいのだろうかということがおわかりになる程度には、この振り分けを具体化していきたいというふうに考えているわけであります。  ただ、私ども、十二月段階の検討試案のときには、法定受託事務について例示をしておりましたのは四つほどのものだったのですけれども、今回の中間報告でさらにつけ加えましたものはたった二つであります。新たにつけ加えましたのは国庫金の配分と国家補償だけで、依然として「等」とあって、この先に何があり得るのかということを示していないわけであります。実際にはかなり詳細なことを検討しておりまして、なお頭の中ではこれはどうしたらいいのだろうかと迷っているものがいろいろとございます。迷っている原因はいろいろでございますけれども、そうしたことを引き続き慎重に検討しながら、勧告までには詰めていきたいというふうに思っている次第です。
  43. 富田茂之

    ○富田委員 今の方向でぜひ推し進めていただきたいと思うのですが、今回の機関委任事務制度についての提言の斬新さに比べて、財源論についてちょっと踏み込めなかったのではないかということが各マスコミの評価の中にも出ておりました。先ほどの西尾先生の「論壇」への投稿でも、財源論についてまで今回の中間報告で発表しますよというようなのが最後にあったので、ここは私どもも期待していたのですが、まあいろいろ、調整が終わらなかったとか、ヒアリングが終わらなかったというようなこともあると思うのです。  自治事務法定受託事務に分けても、補助金についてどうするんだというのがはっきりしていませんと、結局、自治事務だとうたっても、これまでの機関委任事務が全部法定受託事務の方に押し込まれてしまう。先ほど私が言いましたようないろいろな動きがあるというのと別に、法制度と補助金の兼ね合いということから見まして、今回の概念の立て方から見ますと法定受託事務は国が全部負担すべきだというふうにも思えるのですが、そのあたりがまだこの中間報告でははっきりしていない、そこまでうたっていないということになりますと、補助金との絡みからいっても、自治事務法定受託事務の分け目というのがなかなか難しくなると思うのですが、そのあたりはどうでしょうか。
  44. 西尾勝

    西尾参考人 なかなか微妙な問題でございます。  法定受託事務というのは、国側からいえば委託し、地方公共団体からいえば受託する仕事でございますので、通常の委託、受託の考えからいけば、常識的にいえば、その費用は委託者が全額持つというのが普通ではないか、常識的ではないかというふうに思われるわけでございますけれども、本当にそういう考え方ですべてを推し進めていけるかどうか、この点が、法定受託事務というものの中にどういうものが最終的に入るかということとも非常に密接に関連しているところでございまして、現在のところでは、それは国庫負担であるべきであるというふうに断言する自信が私どもにはまだなかったというふうに御理解いただければ結構かと思います。
  45. 富田茂之

    ○富田委員 最終的な勧告についてちょっとお伺いしたいのですが、先ほどの委員長の御発言では、できれば秋、遅くとも本年度じゅうということ、そして最終的な勧告については実現可能なしっかりしたもの、実現するのは内閣、国会の方の仕事だという御発言でした。  きょうの新聞を見ておりましたら、きのうの委員会の後の記者会見で、ちょっと今年度じゅうは無理かもしれないというような委員長の御発言があったという報道もありまして、これからあと七十回くらい必要じゃないかということで、大変だと思うのですが、最終勧告をされる際に私は一つ希望しておきたいのは、今回の中間報告は先生方の御自分の考え方がかなり表現されたと思うのです。これを実現可能なものというところにいくときに、官僚の皆さんの表現が出てきてしまうとか、文章がどんどん直されていくというのだけはぜひともやめていただきたい。  第三次行革審の、亡くなられた鈴木永二会長が、私には大学の先輩になるものですから、何度かお話を聞いておりましたら、本当に、文章をつくっていく中で骨抜きにされてしまった、悔しくてしょうがない、そういうふうにさせないのは政治家の仕事だということを、亡くなられる前、かなり言われたのです。委員長は御一緒にずっと仕事をされていたと思いますので、そのあたりの鈴木永二会長の御苦労もよくわかっていらっしゃると思います。  委員長がこの立場につかれたということもそういう流れの中でできてきたことだというふうに期待しておりますので、最終勧告に当たって今の中間報告の趣旨が本当に生き切るように、これからまだ御苦労はいろいろあると思いますけれども、官僚の皆さんもどんどん説得していただいて、これまでと違った本当のすばらしい提案をしていただいて、国会の方も、それに従って本当に地方分権を進めるために、私たちも一緒に汗をかいていきたいなというふうに思っておりますので、その点をどうかよろしくお願いいたします。  残り時間は、同僚の佐藤茂樹委員の方から財源問題等について御質問させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
  46. 月原茂皓

    月原委員長 佐藤茂樹君。     〔委員長退席、永井(英)委員長代理着席〕
  47. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 新進党の佐藤茂樹でございます。  先ほど富田委員からもありましたように、私ども新進党は、昨年の地方分権推進法の論議の際にも、法案の中の「地方分権推進に関する基本方針」の中に機関委任事務制度廃止を盛り込んではどうか、そのことを強く主張していた。そういう観点から申しますと、今回のこの中間報告というのは、地方分権への一つの風穴をあけたものとして大筋で大変評価できるのではないか、そういう気がいたしております。ぜひこの中間報告の骨格を変えずに具体的な指針の勧告を行っていただきたいということを最初に申し上げまして、その前提に立って、残された問題につきまして、両参考人の御意見をお伺いしたいと思います。  一つは、先ほど機関委任事務についてのやりとりが富田委員の方からあったわけですけれども、それに関連して、もう一度確認の意味でお聞きしたいのです。  今回、そういう意味でいろいろ評価されているのは、関係省庁と調整せずにまとめてこられたがゆえに、逆にこれだけの踏み込んだ抜本的な制度改革を打ち出せたのではないか、そういうことが言われているわけです。しかしながら、これから、先ほどありましたように、五百六十一、都道府県が三百七十九、市町村が百八十二項目、そういう機関委任事務の例えば整理、振り分けをしたり、またそのときの振り分けの基準をどうするのか、それだけ考えただけでも大変な作業が待ち受けておりまして、どうしてもやはり関係省庁ともやりとりをしていかないといけないだろう。  そのときに、これはどこかで諸井委員長もインタビューで答えられたと思うのですが、関係省庁側の理論武装として、三つぐらいのことを盾にしてこれから個別事例の問題点を指摘してくるのではないか。その三つの理論武装というのは、一つは統一性の原則であり、もう一つは広域性の原則であり、そして公平、公正の原則というものを振りかざして、こういう事務はやはり国が持つべきですよというようなことをとうとうと細かい個別分野ごとにやってくるのではないかな、そういう感じが強くいたしておりまして、いよいよこれから本当の中央省庁の抵抗があるのではないかな。  そういうことも踏まえまして、きちっとした基準をつけるための理論武装なども含めて、今対応策をどのように考えておられるのか、諸井委員長でも西尾委員でも結構ですので、御所見をお伺いしたいと思います。
  48. 諸井虔

    諸井参考人 統一性、公平性、広域性というのは、大体各省庁とも同じように言ってこられる点であります。今回の中間報告で、我々はやはりその統一性、公平性、広域性というのを全く無視してやろうということではありませんで、必要な部分についてはそういうものが維持できるような国の関与の仕方、あるいは法律の決め方、基準の決め方というふうなことにも言及をしているわけでございます。  それから、広域性の問題については、まず第一にやはり関連する市町村あるいは都道府県が自主的に、相互に調整を行って、どうしてもその調整が自分たちでできない場合には国に関与してもらうというふうな、そういう手順も実は書き込んでおるわけでございます。  それで、私は、この面は一つ一つ議論をしていかなきやなりませんけれども、どうしても我々がやり込められて、今のやり方ではうまくいかぬじゃないかというふうなものが出てくるような感じは、ちょっと今のところはしておりません。全部当たってみませんとまたわかりませんけれども、大体これでいけるんじゃないかという感じがしておりますが、ちょっと西尾先生から。
  49. 西尾勝

    西尾参考人 例えば、新たな国の関与の中に事前協議というのを置いております。これは、今まで事前の権力的な関与の手段であった認可とか承認とか許可といったようなものをこの事前協議というものに変えたいというふうに考えているわけですけれども、この事前協議にも個別の政策分野ごとにいろいろな協議があり得るのではないか、協議の必要な密度が分野ごとにかなり違う可能性があるというふうに考えておりまして、事前協議という一言でなくて、そこにもさまざまなパター ン、類型を設定する必要があるかもしれないというようなことですね。例えば、その協議の密度と申しましても、都市計画とか国土計画とか施設整備計画といったようなものになりますと、国がお決めになるもの、都道府県が決めるもの、市町村が決めるものというのが最終的に地図、図面ですり合わされなければならないというようなものがあります。最終的に矛盾のない状態にしなければならないというような分野もございます。こういった問題について、今我々が言っておりますような事前協議だけで済むのか済まないのかというようなことがかなり重要な問題点の一つだろうと思います。  あるいは、私どもが挙げておりますさまざまな関与の手段の中に例示されていないものが現実の行政では行われている。例えば生活保護法に基づく生活保護行政の場合には、厚生省の方で事務の監査というものが行われているわけでございます。しかし、この事務の監査というものは我々が挙げた例の中にないではないか、その事務の監査というものは認められないのかというようなお話がございます。  お金を出しているわけですから、支出金を出しているわけですから、それに伴う財務監査というのは当然につくというふうに考えるわけですが、現在の生活保護行政で言っている事務監査が財務監査でカバーし切れるものなのかどうかということが一つの大きな論点であろうと思います。  これを詳細に考えていった結果、やはり財務監査ではカバーし切れない事務監査の性質があるのだ、そして、生活保護行政の場合には、非常に特例的だけれども、そういうことがどうしても必要な手段なのだということが納得いけば、そういう手段も一つそういう場合には認められるというふうにしていかなければならないといったように、これから個々に詰めていきますと、さまざまな微妙な問題が出てくるのではないかというふうに思っております。
  50. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 それで、先ほど委員長の御報告の中でもありましたが、これから補助金、税財源検討グループをつくって精力的に進められるそうなんですけれども、基本的な方向性だけちょっとお聞きしたいのです。  やはり、今回権限事務配分というものをどうしていくのかということを考えられたのですが、それはどこまでも財源と一体となって移されなければ実質の意味が出てこないだろう。その中で、特に今地方が国の過剰な介入ということで悩んでいる原因というのは、機関委任事務という事務の法的な性格よりもむしろさらに強い要素として、ひもつきと言われている、自治体のいろいろな事業活動に及んでくる補助金の部分ではないかなというふうに私は認識しておるのですけれども、逆に中央省庁から見れば、省庁が出す補助金によって自治体に対する影響力を保とう、そういうことで、それをなくせば口が出せないということにもなりますし、補助金制度見直しについては今まで以上に中央省庁また族議員、関連業界も動員されて強く抵抗してくると思うのです。  私は以前から、三年前の選挙で当選したときから、政・官・業を結ぶ不透明な利益誘導型のシステムを断ち切らないといけないということを一つの公約にして当選してきたわけでございますけれども、ぜひ今後、この半年ぐらいをめどに、本当に今回の大胆な事務配分の構想以上の補助金制度の抜本改革に取り組んでいただきたいと思うのです。そのあたりについて、今、大体の方向性といいますか、そのあたりを何かお持ちでしたら委員長の方からお答え願いたいと思います。
  51. 諸井虔

    諸井参考人 先ほど申し上げましたように、まだ十分な審議はしておりませんが、大体今の時点で、補助金の整理合理化につきましては、まず奨励的補助金、いつも問題になりますが、これは緊要度の高いものはあるかと思いますが、それを除いては基本的には縮減する方向ではないのかな。それから、経常的な国庫補助金につきましては、やはり本当に国が義務的に負担すべきであるというふうに考えられる分野にできるだけ限定をしていくべきじゃないのかな。それから、建設事業に係る国庫負担金について、やはりこれも広域的な効果を持つ根幹的な事業というようなものに限定をする、投資の重点化を図っていくということではないのかな。それから、この補助金がなくなっていった場合に、地方の方の一般財源というものを充実するということが片一方で出てくると思うですが、やはりこれも税財源の問題あるいは地方交付税、両方併用して充実をしていくというような方向ではないかな。大体大まかな方向としては、現時点ではそんな感じでおります。  さっき申し上げたように、プロジェクトチームでこれから精力的に議論をしてもらおうと思っております。
  52. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 今回の中間報告の不満足な部分だけ幾つかお聞きしているのですが、もう一つ今回、従来の審議会に比べて、中間報告の中にも書いていますが、「地方分権推進が広く一般の人々の日常生活に直接に影響する主題であることを周知徹底する必要を痛感してきた。」として、今まで以上に情報公開にかなり積極的であるという部分は評価できるかと思うのです。分権委員会のニュースであるとか、また一日地方分権委員会なども開かれたということです。  ただ、さらに生活者また住民視点から内容を見させてもらうと、今回まだ引き続き検討だとも言われていますが、例えば報告の第四章の「地域づくり部会関係」、第五章の「くらしづくり部会関係」の中で、各個別の分野改革方向というものを列挙されているのですけれども、その先に具体的に住民の日常生活がこのように変わりますよとか、また地方分権住民にもたらすメリットとか、分権したところで市民生活に具体的にどのような変化が生じるのかということをさらにわかりやすく説明していくような努力をしていただければ、住民の側からの論議が非常に起こってくるのではないかなと思います。そのあたりにつきましての御所見をお伺いしたいのです。
  53. 西尾勝

    西尾参考人 もう御指摘のとおりでございます。そこに「痛感してきた。」と書いてありますとおり、私どもとしてもそのことを非常に重要視をして、中間報告を書くときには随分苦労をしたつもりでございます。総論の中でも、「目指すべき分権型社会の姿」といったようなものを描いてみましたり、それから二つの部会が急いで取り上げる問題を選ぶときにも、できるだけ住民の生活に密着した問題から先にしようというような観点で、わかりやすいテーマから選んだつもりでございます。  ただ、何しろ依然として現在の中間報告の段階では改革方向という我々の検討方針を示す段階にとどまっておりまして、これが最終的な勧告ではございません。必ずこうなる、こうなってほしいという最終結論を出したわけではございませんので、そこで住民の生活がこう変わりますというふうに私どもが言うのは少し先走り過ぎるのではないかということを考えますと、なかなかいい工夫がなかったということでございます。いい御知恵がございましたら、御指導を今後ともいただきたいと存じます。
  54. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 あと一分あるので、もう一問だけ西尾委員にお聞きしたいのです。  これは事前に通告もしてあるのですが、今回のもう一つの物足りなさとして、都道府県市町村との新たな関係あり方について今後引き続き検討されるということで、先ほどの「要旨」ですと二行で終わっているわけですけれども、そのあたりについてお聞きしたいのです。  実は、西尾委員が当特別委員会に平成六年十一月三十日に参考人として来ていただいたときに、私の質問に対して都道府県市町村との関係について述べられた中で、権限の移譲について二つのパターンが起こると考えられるという趣旨のことを言われています。一つは包括的な法改正でやっていくという方法と、もう一つは国の業務をまず一たん都道府県におろしてしまう、そこで都道府県市町村間で協議してやるというやり方があるが、西尾委員の御見解としては、初めから法改正 のところで都道府県市町村のそれぞれの範囲というものを決める形になるのではないだろうか、こういう御意見をおっしゃっていただいたのです。今後この新しい関係あり方についてどういうように内容として盛り込もうと考えていかれているのか、そのあたりにつきまして西尾委員にお聞きしたいと思います。
  55. 西尾勝

    西尾参考人 基本的な考え方は変わっておりません。地域づくり部会ではまさに私が申し上げたような、包括的な法改正の方向土地利用関係の諸法について一括して検討しているわけでございます。そして、そこで改革方向として出されておりますように、広域的なリージョン単位のような地域指定のようなものは都道府県事務とするけれども、詳細な地区の指定とか施設計画などは市町村事務とすべきであるということを明確に示しておりますので、これは都道府県、これは市町村と決められるものはできる限りそういう形で決めていきたいというふうに考えているわけです。ただ、すべての問題についてそういうふうに明快に区分けがつくかというと、なかなか難しいのではないかと思っております。  と申しますのは、市町村にどこまでおろすかということを細かく議論しようとしますと、市町村が一様ではございませんで、町村にまでおろすもの、市にまでおろすもの、それから市の中に今度は中核市というのができていますから中核市にはおろすもの、政令指定都市にはおろすものというような何段階もの議論があります。もっと特殊なもので申しますと東京都心部の二十三区の特別区というような制度もございまして、市町村都道府県関係を決めていくときには非常に詳細な検討をせざるを得ないものがございます。そこまですべての問題について我々の委員会で結論を出すことはできなくて、当面は国と都道府県関係だけが整理されて、その先が整理し尽くせないという問題が将来に残る可能性は依然として多いというふうに思っております。
  56. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  57. 永井英慈

    ○永井(英)委員長代理 穀田恵二君。
  58. 穀田恵二

    ○穀田委員 今回は本当に御苦労さまです。私は、日本共産党の穀田です。  私は、前回おいでいただいたときにもお話ししましたけれども、地方分権というのは、地域住民の暮らしや福祉、安全を向上させるためにも、地方自治体の自主性を強化して住民参加を強め、さらに財源や権限制度的に保障していくものだと考えています。その意味で、今回中間報告が国と地方関係を、先ほどありましたように従来の上下主従関係から対等協力関係に改めるとして、機関委任事務制度廃止だとか直接請求制度など住民参加の拡大の方向を打ち出したことについては、私は評価しております。  ところが、新聞でも、「中央省庁には「市町村の合併を進め体力をつけるのが先決」と自治体の能力不足を指摘して地方分権をけん制する〝受け皿論〟が根強く残っている。」と報道されています。こういうものは前からそういう向きがありまして、今度の分権推進委員会の議論自身の中で、受け皿論を前提としないということが私は合意だと思っておりました。さらに、権限移譲の前に市町村合併だとか現行の二層制を改変するとか、こういうものが前提となっていないということだと私は理解していましたけれども、その点での基本認識を最初にお伺いしたいと思っています。
  59. 諸井虔

    諸井参考人 そういう新聞記事は私もよく読んでおりますが、ただ中央省庁の方が委員会に見えて議論を述べられるときに、さすがに受け皿論を言われる方はいないのですね。ですから、余り表立ってその話が出てきているわけではないのでございます。  ただ、今西尾委員が言われましたように、市町村にはいろいろな段階がありますから、この問題を全く無視して、二層制前提だ、あるいは都道府県におろせばいいんだということだけで動くというわけにもいかないのではなかろうか。その問題については我々としては、与えられている権限範囲がどこにあるかということは片一方ではありますが、やはり実際に地方分権がきちんと進んでいくことができるようなことは何かを考えながらやっていかなければいかぬ。ですから、広域行政の問題とか、小規模市町村に対する都道府県の援助とか、あるいは周辺の市町村との広域連帯とか、そういうようなことをいろいろ書いてあるのもそういう意識でありますし、あるいはまた段階的に権限移譲するということも考えなくてはいけないのじゃないのかというふうなことも述べておるわけであります。  いずれにしましても、私は、やはり権限とか人材、財源とかというのがないからだめだという議論と、一方ではそういう権限を与えないから伸びないんだという面もあるのじゃないかと思うのですね。やはりそういう基礎的な自治体が力をどんどん備えて、あるいは規模を拡大して、権限移譲がきちんとスムーズにいくような方向で、やはりそういう意識を持ちながら勧告を書いていかなくてはいけないのじゃないかな、これは個人的見解でございますが、そういうふうに考えております。
  60. 穀田恵二

    ○穀田委員 今お話ありましたように、権限移譲というものを先行していくといいますか、そういう考え方でやっていただきたいと私も思うのです。  そこで、先ほど田中委員からも質問が若干ありましたけれども、官房長官の談話というのは若干訂正があった模様ですが、私は、いかに訂正しようともどうも納得がいかぬという感じがあります。分権委員会地方の側の観点から地方に強い関心を持った委員で構成されている、こういうふうにまず言っておられます。そして、国にはきつい内容となっており、一挙に踏み切れるものなのかどうなのか、最後はどうなのかというふうになったらしいですけれども、いずれにしても、地方の側の観点からやっているというふうには私は思えないのですね。今の重要な問題は、中央集権的なあり方に対して地方自治を拡大する上からどうなのかということで皆さんに御苦労をいただいている。本来原則的な問題について、残念ながらもしこのとおりだとすれば、原則を踏み外した弊言じゃないかと思わざるを得ないのですね。  ですから、若干の訂正はあって、一挙に踏み切れるものではない、こう言ったものを、一挙に踏み切れるものなのかどうなのか、こういうふうになったといいますけれども、それがどうだというよりも、肝心かなめの、御依頼申し上げておりながら、地方の側の人たちばかりだなんというのは、ちょっとこれは明らかに原則を踏み外していると言わざるを得ないのじゃないかと私は率直に思うのですが、その辺、御意見はどうですか。
  61. 諸井虔

    諸井参考人 先ほども申し上げたように、具体的な御発言の内容を私自身はよく承知しておりませんので、ちょっと感想も申し上げにくいのでありますが、ただ、先ほど申し上げたように、今度の中間報告については、かなり前広に私どもの今の時点での考え方を述べておりました。そういう意味で、あるいは危ぶまれたり、少し過激な意員だというふうに思われる向きがあるのは当然であろうかと思います。  ですから、私どもも、何もこれを全部そのまま勧告にするということではなくて、官房長官も含めましていろいろな御意見を十分に承った後で、直すべきところは直し、しかし通すべきところは通して勧告にまとめ上げたいというふうに思っておりますので、今の官房長官の御発言が私どもの仕事にとって格別障害になるというふうには考えておりません。
  62. 穀田恵二

    ○穀田委員 私は、昨年十一月の参考人質疑の析に、税源移譲の問題についてお聞きしました。その際にも、当時まだ議論なされていないということが御報告ございまして、同時に私は、ですから国の責任で税源移譲をすべきだと主張しました。その際に委員長の方から、これから審議すべき重要な事項であるとお答えがありまして、さらにこの文言を見ますと、地方の経費が全体の中の三分の二あって、しかし財源は三分の一しかない、そ の点の調整をする必要がある、それから、乖離をなるべく少なくしていくのが使命だ、ここまで言っておられるわけですが、やはりもう一つ踏み込んで、権限移譲とあわせて税源の明確な移譲が必要だと私は思うのですね。その点での具体化の方向は、どういつだ点をお考えでしょうか。
  63. 諸井虔

    諸井参考人 そのときもたしかお答えしたと思うのですけれども、結局、分権をどういうふうな規模でどういう内容でやるかということもある程度あらあら出てきませんと、なかなか財源を具体的にどうするかという問題には突っ込めないということと、それから十二月に機関委任事務廃止に関する検討試案を出しまして、それについてのヒアリングで実は三月まで相当忙殺されまして、時間が足りないという苦情もいろいろあったわけでございます。そういうようなことから、この問題についてはやはり四月以降、先ほど申し上げましたプロジェクトチームをスタートさせて精力的にやってまいりたいと思いますので、ひとつ御了解いただければありがたいと思います。
  64. 穀田恵二

    ○穀田委員 その際に、私はぜひ、希望なのですけれども、きょうの「要旨」にもございましたが、例えば地方債許可制度の問題です。これは、確かにこういう文書で書いているのですが、私は一面では、分権委員会並びに地方行政委員会の中でも議論になったように、もともとこれは自治省の統制的な手段として役割があったことは否めない、こういう全体の認識がございました。そういう意味からいいますと、今回の場合は、これによりますと単なる財源問題として扱われている嫌いがありますし、さらに今お話ありました奨励的な補助金の問題でも、ある新聞の社説では、「自治体側は年間約四兆円ある奨励的な補助金のうち、二兆円を自治体の自主財源にするよう求めている。」こういうふうに自主財源として求めているという問題です。  今言いました、上から統制しているという問題、二つ目に、自主財源としてそういうものを変化させてほしいと求めている問題、それから三つ目に、国庫補助金について、一方現在の基準のもとでも超過負担になって自治体財政を圧迫しているという問題、これらもぜひお考えいただいて、御配慮願いたいと思うのです。その辺はどうでしょうか。
  65. 諸井虔

    諸井参考人 今申し上げましたように、これからそういうような面について突っ込んで議論をしようと思っておりますので、今の段階ではちょっと御回答申し上げることができないので、お許しをいただきたいと思います。
  66. 穀田恵二

    ○穀田委員 今お話ししました自治省の問題との関係で、私はちょうど一昨年の参考人のお話をお聞きした際に、その参考人の先生方から、地方分権の問題は、もう一つの側面は人の問題だ、こういうお話がありました。特に、天下りの問題は重視して、これをやめることが大事ではないかという御意見を拝聴させていただいた覚えもございます。その点では、今回この問題については余り書かれていないわけですが、その辺はいかがなものでしょうか。
  67. 諸井虔

    諸井参考人 具体的にそういうことまでは議論はしておりません。ただ、委員会の中でも、一体自治省の地方分権はどういうことになるのかなという議論は実は出ておるわけでありまして、我々もそういうことは十分意識しながら今後検討してまいりたいと思っております。
  68. 穀田恵二

    ○穀田委員 今お話ありました自治省の地方分権はどうなるのかという問題は、極めて大切だと私は思っています。  その点で、先ほど言いました起債の許可の問題があるわけですけれども、同時に、私はこの前地方行政委員会で議論した際に、例えば先ほどもボランティアが地方自治の原点という問題がございましたけれども、地方自治体の中でボランティア休暇をつくろうとする動きがございまして、そういった問題に対して自治省が事前にチェックをして、どちらかといえば国が決めるまで待てよみたいな話がありました。それは正確には、県の方がどうした、地方自治体がどうしたという経過はあるわけですけれども、いずれにしても今大切なのは、隗より始めよということがありますから、その辺では自治省自身も、単に今言いました起債の許可の問題にとどまらず、いろいろ起きている諸問題については目を光らせていただければなと思っているところです。  そこでもう一つ、お話ありましたように、規制緩和地方分権が従来の行政システムを変革する車の両輪と位置づけられています。このために今度の文書では、国の重大な立法政策に反する地方の独自行政には何らかの措置検討するという留意事項が設けてあります。この問題をめぐって記者会見では、その例として大店法の規制の点を挙げたと私は聞いております。規制緩和を進める国の方が大店法規制事務法令廃止した場合、地方自治体に規制条例をつくらせない措置も必要としているということは、私は分権の流れに矛盾するのではないかと思うのですが、その点での御見解をお示しいただければと思います。
  69. 西尾勝

    西尾参考人 大変に重要な、しかし難しい問題だというふうに思っております。私どもは、御指摘にもございましたように、両者が車の両輪だというふうに考えておりますけれども、地方分権を進める以上は、条例の制定権の範囲を拡大するということが当然の要請でございます。したがいまして、今回の中間報告でも「国と地方の新しい関係」の中の「基本的考え方」の第二の項目で「国の立法の原則」というのを掲げておりまして、その③では、法律等で基準を定める場合にも、できるだけ条例制定権の範囲を拡大するように配慮してほしいというようなことも述べているわけでございます。  そして、その条例制定権の範囲が拡大いたしますと、従来は地方公共団体で要綱行政と言われるような行政指導でやってまいりましたようなこともございますが、こうしたことも、条例制定権の範囲が制約されていたからこそ行政指導でやらざるを得なかったという問題が多々あるわけでございます。これがもし拡大をしていけば、きちんとやるべきことは条例定めて、条例に従って公正透明な規制を行うというふうに変わっていくことができるのではないかという意味で、そういう点でいえば、規制緩和の趣旨にも合致する面があるのではないかというふうに思っております。  しかし、一番今問題になっておりますのは、現在ある国の法令で規制が行われているものについて規制緩和をしようと国の側が考える、その際に、例えばということで大店法が挙げられましたが、大店法のようなものがそれではということで法律廃止されるということになった場合に、四十七の都道府県が新しく条例をつくりまして、従来の国の大店法に類似の規制をそれぞれの都道府県がやるようになったのでは規制緩和の効果は上がらないのではないかという御心配が、経済界その他各方面におありになるという話だったわけであります。ここで規制緩和地方分権がバッティングするのではないかという議論が出てきているということでございます。  大店法そのものの規制が必要か否か、あるいは現在の姿そのものは変えられるにしても同種のものが必要か否かについては、多々議論があるところだろうと思います。直ちに私どもがそのことについて意見を申し述べることはございませんけれども、一方で、国際社会において条約で決めてくるとか、あるいは先進国サミットで国際的な約束をしてこられるとかいう形で、国としてはどうしてもそれをせざるを得ないという場合もあると思うのですね。  国の意思として規制を緩和するのだ、そのときは、国が緩和するのみならず、地方公共団体もその種の規制を今後は行わないようにするのが国の意思であるという強い意思で、そういう必要があるとお考えになる場合にはそれに必要な立法措置を国の側でなさるということもあり得るのではないか。そういう立法例はこれまで極めて珍しいといいますか、ほとんどないわけでありますけれども、どうしてもその必要があるということであれば、そうされる手段は国の側にお持ちなのではな いだろうかということを私どもは述べているわけでございます。  しかし、それは例として挙げましたが、大店法が適切かどうかはわかりません。そういう規制緩和を必要とするとき、どうしてもやはりそれが必要だという場合であれば、国会がそれを立法する際に明確な意思でお示しになれば、地方公共団体はやはりそれに従うべきなのではないかという考え方を述べているということでございます。
  70. 穀田恵二

    ○穀田委員 時間ですので最後にしますけれども、今ありましたように、四十七都道府県が全部やるかどうかというのはこれまた疑問ですが、確かに、国としてのそういう立法政策としてやった場合と、今ありましたように条例制定権の拡大という問題をどう調和していくのかということは必要と私は思います。しかし、現実問題としては、四十七都道府県が全部決めるということではなくて、それぞれの住民に身近な市町村が、例えば中小小売店の問題でいいますれば壊滅したりするのは困るとか、それから高齢化社会を支える上でコミュニティーが大切だとか、そういう一定の規制をするというのもまたこれは住民自身が判断されるべきものであろうと私は思っています。  最後に、それらを踏まえて、先ほど一番最初に、実現可能なものはというお話がありましたけれども、私はどうしても実現していただきたいのは、最終勧告に向けて、機関委任事務制度廃止という問題については実現可能なものと私は判断するわけですが、そういう決意をぜひまた示していただいて頑張っていただきたいと思うところです。  ありがとうございます。
  71. 永井英慈

    ○永井(英)委員長代理 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  諸井参考人西尾参考人には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会代表して、厚く御礼を申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時七分散会