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1996-02-21 第136回国会 衆議院 大蔵委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年二月二十一日(水曜日)     午後六時十四分開議  出席委員   委員長 久間 章生君    理事 石原 伸晃君 理事 大島 理森君    理事 金子 一義君 理事 青木 宏之君    理事 北側 一雄君 理事 村井  仁君    理事 永井 哲男君 理事 錦織  淳君       衛藤征士郎君    岸田 文雄君       栗本慎一郎君    佐田玄一郎君       中村正三郎君    中山 利生君       堀之内久男君    村田 吉隆君       茂木 敏充君    山中 貞則君       井奥 貞雄君    石井 啓一君       太田 昭宏君    竹内  譲君       谷口 隆義君    中田  宏君       中村 時広君    藤井 裕久君       宮地 正介君    吉田 公一君       網岡  雄君    早川  勝君       細谷 治通君    田中  甲君       佐々木陸海君    小森 龍邦君  出席国務大臣        大 蔵 大 臣  久保  亘君  出席政府委員        法務大臣官房審        議官       山崎  潮君        大蔵政務次官   鉢呂 吉雄君        大蔵省主計局次        長        伏屋 和彦君        大蔵省主税局長  薄井 信明君        大蔵省銀行局長  西村 吉正君        大蔵省国際金融        局長       榊原 英資君        国税庁課税部長  内野 正昭君 委員外出席者        農林水産省経済        局金融課長    須賀田菊仁君        参  考  人        (日本国有鉄道        清算事業団理事        長)       西村 康雄君        大蔵委員会調査        室長       藤井 保憲君     ————————————— 委員の異動 二月二十一日  辞任        補欠選任   上田 清司君     石井 啓一君 同日  辞任        補欠選任   石井 啓一君     上田 清司君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国の会計税制及び金融に関する件(財政金融  の基本施策)      ————◇—————
  2. 久間章生

    久間委員長 これより会議を開きます。  国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  各件調査のため、本日、参考人として日本国有鉄道清算事業団理事長西村康雄君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 久間章生

    久間委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     —————————————
  4. 久間章生

    久間委員長 財政金融基本施策について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉田公一君。
  5. 吉田公一

    吉田(公)委員 大臣、引き続き御苦労さまでございます。  まず、今回の住専問題を考えますときに、六千八百五十億円を投入すればこれですべて不良債権問題を一挙に解決するがごとくのように、私はどうも政府大蔵省大臣答弁だとこういう気がいたしておりますが、しかし、この不良債権実態は、発表したりするたびに数字が膨張したり変更したりする。大蔵省の、不良債権全体の額は四十兆円とも言われておりますが、しかし、アメリカ議会調査なんかでは、日本不良債権の総額というのは八十兆円ぐらいあるんじゃないかというような見方をしているようであります。そういうことだとするならば、この住専問題に六千八百五十億円を投入するということは、言ってみれば手付金みたいなものでございまして、この六千八百五十億円をとにかくしゃにむに認めればこの住専問題が解決すると大臣は本当にお考えでございますか。
  6. 西村吉正

    西村政府委員 日本金融界が抱えます不良債権という意味では、先般私どもが三十八兆円という数字を公表しておるところでございますけれども、御指摘のように、今回の住専に関連する不良債権はある意味ではごく一部でございます。したがいまして、この問題が解決すればすべて不良債権問題が解決するわけでは決してございません。  しかしながら、この住専問題というものは、関係者が多く、権利関係がふくそうしておりまして、これがネックになってなかなか不良債権早期処理が進まないという象徴的存在になっておりまして、そういう意味におきましては、この住専問題が解決することは今後の不良債権早期処理に大変大きく寄与するものではないかと考えておるところでございます。
  7. 吉田公一

    吉田(公)委員 とりあえずこの六千八百五十億円を投入することによってとりあえずは何とか解決できると。しかし、実態はとてもとてもよくわからないというのが本音じゃないですかね、不良債権実態住専実態についてもですね。  とにかく不良債権といったってこれは三つあるわけだ。一つは、倒産をしたのがあるでしょう、不良債権。それから、金利を納めること六カ月問もう金利は払えねえというのも不良債権だ。それから、今度は逆に銀行側金利も下げてやろう、減免処置してやろうといったのも不良債権。だから不良債権には三つあるわけだ。  じゃ一体、この不良債権問題でとらえられている六兆四千百億円というのはこの三つのうち全部を入れた六兆四千百億円ですか。そういうのも全部含んでですか。金利もいいよと、あんたのところの会社はもうそれは払えないんだから金利を安くしてやろうと、倒産したらもちろんのことですよ。そういう三種類不良債権をどういうふうにして六兆の中へ入っているんですか。
  8. 西村吉正

    西村政府委員 ただいま御指摘のように、三十八兆円と申しております不良債権三つの要素から成り立つものでございます。これは、アメリカにおいて同様の不良債権として公表されておるものとほぼ同じような意味合いを持っておるものでございます。  ところで、今回の住専処理に当たりましての六兆四千百億、なかんずくその中の六兆二千七百億の部分評価でございますけれども、これにつきましては、今回の住専処理というものは現実にこの七社の住専処理をするという非常に具体的なテーマでありましたことから、単に各社の自主的 な申告に基づく、以上のような定義の不良債権ということではなく、私ども大蔵省住専七社の資産の内容をつぶさに審査をいたしまして、それを積み上げて、損失がほぼ間違いなく発生するであろうと思われる額を積み上げたものが六兆二千七百億であり、さらに住専七社の累積損失一千四百億円を加えたものが、今回の処理対象にしております六兆四千百億というものでございます。  したがいまして、各社申告に基づくものよりもより厳格に査定をし評価をしたものと御理解いただきたいと存じます。
  9. 吉田公一

    吉田(公)委員 そうすると、今申し上げたように、不良債権には三種類ある。その三種類を全部含めたものがその六兆四千億の金額に精査してなったということでよろしいですね、理解は。  そうすると、この中に、金利支払いだけを減額したものも不良債権一つなのだ、こういうことですよ。ということは、これはまだ助かる可能性があるわけだね。一体その助かりそう——もう死んじゃったのか、瀕死なのか、まだ多少自分で動けるのか、そういうものをちゃんと区分けしたのですか。それで累積したのですかね。
  10. 西村吉正

    西村政府委員 通常、不良債権と申しておりますのは、確かにいろいろと問題がある、例えば、今委員指摘になりましたように、金利を減免しておる、これは必ずしも返ってこないという意味ではないけれども問題がある債権という意味でございます。そういう意味では、この三十八兆円という不良債権は非常に広い意味での不良債権になっておるわけでございますが、今回の損失見込み額六兆二千七百億円と申しますのはもっと厳格な意味でございまして、そういう中でもほぼ確実に返ってこない、損失となる可能性のある額ということでございまして、もっと厳格、もっと狭義の不良債権の中の損失見込み額、そのように御理解いただきたいと存じます。
  11. 吉田公一

    吉田(公)委員 そうすると、厳格にとらえてこの数字になったということは、今後また損失額がふえる可能性があるわけだ。今積算した中では、もう厳格に、倒産間違いないというのはやったのだけれども、今後倒産する可能性があるところもたくさんある、厳格にしなければ、ということですね。ふえる可能性があるわけですね。
  12. 西村吉正

    西村政府委員 例えば倒産破綻いたしました企業で、債権回収がまず難しいというようなものがありました場合でも、損失見込みとして計上しておりますものは、その中でもさらに担保等によりましてカバーできない、例えば十億円の破綻先企業に対する債権がある場合に、三億円は担保でカバーできているといたしますと、七億円に相当する部分を積み上げまして集計したものがこの損失見込み額、こういうことでございます。
  13. 吉田公一

    吉田(公)委員 いろいろな説明がありますが、要するに、損失が今後出る可能性があるかないか答えてくれればいいのですよ。  それから、今まで住専農協系信連に約三年間で七千億とも言われる金利支払いをしていると言われているのですね、既に。要するに、住専から信連に約三年間で七千億。利息を七千億も取っておいて、今度は五千三百億円しか負担できないというのはどういうわけですか。
  14. 西村吉正

    西村政府委員 御指摘のように、系統金融機関全体としては五兆五千億の元本に対しまして四・五%の金利を支払ってきたわけでございますので、今三年間程度計算をされたのだろうと存じますけれども、そういう利息住専七社は支払ってきた、こういうことになるわけでございます。  今回の系統金融機関贈与をいたします五千三百億円というものを算出するに当たりましては、そのことと直接関係するものではございませんが、そういう金利をも受け取りつつ運営されてきた系統金融機関が、ぎりぎりの負担をするとすればどれくらい負担をすることができるかという観点から算定をされたものでございまして、直接的に受取利息とは関連をしておらないところでございます。
  15. 吉田公一

    吉田(公)委員 いろいろな説明は要らないのですよ。要するに、七千億、農協系金融機関住専から利息を七千億払ったのか払わないのか、それをまず伺いたいと思います。払っているのか払っていないのか。
  16. 西村吉正

    西村政府委員 先ほど申し上げましたような計算をすれば、例えば三年程度に今御指摘の七千億程度金利を支払っているという計算はできると存じます。
  17. 吉田公一

    吉田(公)委員 そうすると、わかりました。約七千億の利息信連に払った。今度の負担は五千三百億円しか負担できない。その一つには、県信連赤字団体になる可能性が高い、こういう理由が主ですね。つまり、農協系金融機関負担額が少ないというのは、そういう基盤の弱い金融機関がもしもっと補てんをすることになれば要するに赤字団体になってしまう、こう言っておりますが、それだって根拠がないじゃないですか。どこの県信連赤字になるのですか、四十七都道府県あって。  委員長資料要求をしてもらいたいのですが、理事会でお諮りいただきたいのですけれども県信連赤字と言っていますが、では、どことどこの県信連がどれだけの赤字になるから運営ができなくなるかということについて理事会で、私、資料要求しておきますからお諮りをいただきたい、そう思います。
  18. 久間章生

    久間委員長 今の資料要求については、後ほど理事会検討させていただきます。
  19. 西村吉正

    西村政府委員 これは、あるいは大蔵省というよりも農水省からお答えすべきことかと存じますけれども、今まで農林水産省の方からその点について御答弁を申し上げてまいりましたのは、当期利益で二十程度信連赤字になる、赤字に転落するというようなことを念頭に置いてこの負担力の限界というものを計算いたしましたという御説明をしてまいってきております。
  20. 吉田公一

    吉田(公)委員 次に、住専は二戸建ての家の融資戸建て融資を主にしていたわけですけれども、途中から土地投機融資をするようになった。そうすると、投機という以上は、つまりリスクを背負うのは最初からわかっているわけですよ。例えば株の取引でもこれは投機先物取引だって投機だ。そういう投機に手を出した以上は、損するか得するかどっちかしかないわけですよ。  ところが、この住専は、土地投機に手を出した以上はもうかるつもりで手を出したのでしょう。それがたまたま土地バブル崩壊をして下落してしまって、担保能力がなくなってしまって、結局は倒産に追い込まれた。  何で投機家に、言ってみれば投資家国民税金負担をしなければいけないのですかね。大臣、お答えいただきたいと思うのですよ。
  21. 西村吉正

    西村政府委員 御指摘のように住専七社、今や大変にその経営状況が悪化いたしまして、それはある意味では、非常にリスクの高い不動産貸し出しに偏ったという結果でございます。  しかしながら、この住専各社も、当初よりそのようなリスクを負うということを想定してこのような融資をしたわけではございませんで、バブルの発生、崩壊という、この十年間における大変な経済激動の時期に不動産融資に偏る経営をしてまいったということのとがめが出ておる、こういうことでございます。  投機というお言葉もございましたが、意図としては当初からそういう意図を持っておったものではないと理解しております。
  22. 吉田公一

    吉田(公)委員 しかし、住専融資先を見れば、明らかに戸建て融資じゃないということはわかるわけですから。そういう意味では、土地投機の方が逆に言えばもうかる可能性があるわけだ、戸建てなんかに融資しているよりかは。もうかりそうな投機があれば、そこへ投機した方がもうかるから投資をしたわけですよ。そうしたら、今言ったように経済激動で話が全然違ってしまった。しかし、経済激動で損をした人はいっぱいいるんです。いっぱいいますよ。  今、ゴルフの会員権だって三分の一だ。当時は 物すごく高くて、一億円しなければ買えないとかなんとかいって、それから一年もしないうちに三分の一。それだってもうけようと思って会員権を買ったわけだ。小豆はもうかるぞ、よし一もうけしてやろうと投資をする。株だってそうでしょう、株の売買だって。損をしたら文句を言ってくるなんて話はないじゃないですか。そんな論理がまかり通るならだれも苦労しないんだ。  じゃ、中小企業なんかどうするんですかね、バブル崩壊倒産をしてしまって。持っていき場がないじゃないですか。政府が救ってくれるわけじゃないでしょう。しかも、後で申し上げますけれども、五十億円なんて運営費まで税金負担してやって。どういうことになっているんですか、これは。
  23. 西村吉正

    西村政府委員 まさにおっしゃるように、今回の処理策は、安易に不動産融資にのめり込んだ住専というものを救済しようというものでは決してございません。そういう意味では、ただいま例に挙げられましたような一般企業に対する措置と同じような考え方で、経営に失敗をした住専七社というものは消滅する、消滅させるための措置が今回の措置でございます。  また、住専から融資をしておりました不動産業者等立場というものは、決して救済されるというものではございません。債務を免除されるということではございませんで、このような借り手に対する追及というものは、債権回収というものはきちんとする、むしろきちんとするためにこのような措置が必要である、こういうことでございます。  したがいまして、今回、関係者債権の放棄あるいは贈与等により措置するとともに、国家財政といたしましても支援をお願いすることとしておりますのは、決して住専を助けたり債務者を助けたりということではなくて、この十三兆円という膨大な債権債務関係処理することの余波が金融システム全体に大きな影響を与え、ひいては預金者というものに大きな不安を与え、場合によっては預金が払い戻されなくなる可能性もある、そういうことを防ぐための措置であるという点を御理解願いたいと存じます。
  24. 吉田公一

    吉田(公)委員 しかし、金融政策というのはだれがやっているんですかね。経済政策というのはだれがやっているんですか。商店街の会長がやっているわけじゃないでしょう。金融政策経済政策も、大蔵省経済企画庁がやっているんじゃないんですか。産業政策は通産省がやっているんじゃないんですかね。じゃ、政策の誤りじゃないですか。  もちろん、住専を、その先の借り手を助けるものじゃない、当たり前の話ですよ。じゃ、何で税金なんか導入するのですかね。助けなければいいじゃないですか。それこそ日本法治国家なんだから、法的にきちっと整理するのが一番いいじゃないですか。何でこんなに急ぐんですか。  じゃ、経済政策金融政策はだれが責任持ってやっているんですか。それを答弁してください。
  25. 久保亘

    久保国務大臣 六千八百五十億円の税金住専問題の処理に当たって投入をするのはなぜかということでいろいろと御質問をいただいてまいりました。昨晩もこの委員会において、そのことについて政府考え方を申し上げたところであります。  一つは、この不良債権問題は、もはやこの住専問題において先送りを許されない状況になっているという判断がございます。  もう一つは、昨年の十月のG7において前大蔵大臣が、日本住専における不良債権の問題について、日本政府としては九五年中にこの処理対策を立てるということについて政府考え方説明をなさっております。  十月の段階では、この住専問題など不良債権をめぐって、海外における日本金融システムに対する信頼が非常に問題となってまいりまして、ジャパン・プレミアムが〇・五まで上昇したのであります。このことなど内外のいろいろな問題を検討をいたしました結果、これをこのまま放置することは国益にとって重大な問題であるという判断をいたしたわけでありまして、この判断に至りますまでには、昨年の四月以来、前政権においても、また政権与党においても、数多く協議を重ねられて、十二月一日に与党としてのガイドラインが示され、十二月十九日に閣議決定となるのであります。  この間の協議検討を通じて、金融システムの安定と内外信頼の確保、そして、もしこのことによって金融システムに深刻な不安を生ずるということになれば、このことは預金者影響を及ぼすことになるものである、預金者保護をどうするかという問題。そして、ようやく回復の基調に乗ってまいりました日本経済回復を一層促進させるために、今この住専問題を処理することは極めて緊急を要する重大な問題である。こういう立場に立って、当事者との間に全体的な処理システムについて協議を行い、その結果、このそれぞれの損失に対する負担を決め、また公的関与に当たっての公的資金の導入についても、これらの協議の上に、全体スキームの中で、六千八百億円の公的資金投入と五十億の預金保険機構の運営のための出資決定をしたということであります。  税金投入することが初めからベストだと考えたわけではありません。しかし、今そのような公的資金投入を行ってもこの問題を処理しなければ、将来的に非常に大きな国家損害につながるし、そのことはひいては国民にとっても不利益をもたらすものである、こういう政治的な判断に基づく処理方針だと御理解をいただきたいのであります。
  26. 吉田公一

    吉田(公)委員 大蔵大臣アメリカ議会アメリカ金融界やあるいはG7会議で、日本金融というのは一体どうなっているんだ、ちゃんとしてくれなければ、日本経済力というのは世界に影響があるんだからしっかりしてくれと言われたことは当然のことだろうと思うんですよ。  そういうこと、外交問題はともかくとして、大臣責任明確化ということを常々おっしゃっているわけですね。責任明確化ということはもちろん大事なことでありますから、それは了といたしておりますけれども、しかし責任明確化ということは、具体的にはだれをどこでその責任をとらせるのか、つまり、その責任明確化をするから、逆に言えば六千八百五十億円というものを認めてくれよ、率直な話、こうなるわけですね。  じゃ、今一体だれが責任とっているんですか。大臣もきのうのお話の中で、銀行が、母体行の人たちがこれで終わったんだなと思ったらとんでもない話だという御答弁をされておりましたが、一体だれが今責任を、大臣、とっておられるんですかね。
  27. 久保亘

    久保国務大臣 先ほど銀行局長が御答弁を申し上げましたように、この六千八百五十億の財政支出は、債務者を免責したり住専を救済したりするものではありません。また、特定の金融機関の救済のために拠出される、支出されるものでもございません。したがいまして、この六千八百五十億円の公的資金投入によって公的に関与してまいります住専処理機構は、十三兆すべての債権について、また経営にかかわって損害賠償請求のできる対象に対しては、法的な追及も含めてその損害賠償請求権住専処理機構のもとに移譲させられるのであります。  そういう立場に立って、今後十三兆全体にわたっての債権回収を進める中で、私どもは、今日このような事態を招いたことに対する責任は、債務者はもちろんのこと、整理、解散させます住専経営者、そして住専との間に債権債務関係を持ちます母体行、一般行、系統金融機関、特にこの住専の設立、出資、人事、経営その他に深くかかわってまいりました母体行の責任、こういったような問題は徹底して追及されなければならないと思っております。  また、この事態を招いたことに関して、行政判断は的確であったのか、またなすべきことをなしたのか、やってはならないことをやってはいな いか、そういうことについても、この処理機構並びに国会の御審議を通じても、私はこれらの問題が明確にされるべきものと考えております。政治責任ももちろんのことでございます。こういったような問題で、どの責任も免責されるものはございません。
  28. 吉田公一

    吉田(公)委員 住専破綻をした人たち、それからまたその先の借り手人たちが当然その責任をとらされるのは当たり前といえば当たり前の話ですね。もう一つ刑法上の問題、もう一つ民事上の問題で、それぞれ追及するところは追及して、それは法のもとに裁かれるということは当然のことであります。  ところが、行政責任政治家責任ということになりますと、これは刑法上や民事上は責任追及できないわけでありますから、具体的には大蔵省金融政策最高責任者であります、例えばこれにかかわってまいりました銀行局長の具体的な責任はどうするんだ、大蔵大臣をやった人の、政治家責任はどうするのか、ただ大臣のお言葉だけではなくて、責任を明確にしろと言う以上はそういう方もちゃんとしなきゃいけぬじゃないか。私は、大臣責任明確化の中には行政政治も入っている、そう解釈しておりますが、具体策大臣、何もないんですよね。
  29. 久保亘

    久保国務大臣 これは民事、刑事を問わず法律によって追及せらるべきものについては、我々が提供いたします情報等も生かされて、司法の手によって追及されるものだと思っております。道義的な責任あるいは行政上、政治上の責任をどう考えるかという問題につきましては、今後住専問題の処理が進むに従って、その状況というものはより明らかになるものだと思っております。  それで、そのことに対してどのような責任がとられるかということは、これは法的責任道義的責任、そういったようなものによってみずから決せられる問題もありましょうし、また社会的、政治的な追及によってその責任がとられる場合もあろうかと思っております。  今後の課題だと思っておりますが、全体像としては、今すべての分野について、この住専の問題にかかわりを持って今日の事態を招いたことに対して、その責任は回避することはできないということだと私は思っております。
  30. 吉田公一

    吉田(公)委員 とにかく責任明確化ということを何遍も大臣おっしゃっているんですから、これはもう、刑法民事上にかかわらずちゃんとした、政治責任でもそうですけれども行政責任というものだけはきちっとしないと、これはまさに予算委員会だけの答弁になってしまう、そう思って危惧をする一人でございます。  つまり、日本はもともと官僚政治だと私は思っているのですが、まさにこの金融問題の今回のだって、行政任せ、銀行局任せ、そういうことが今日の問題を招いたと思っているわけですから、私どもも国会議員の一人として、もうこれからは官僚政治行政任せにしないように、我々が責任を持つ政治にしていかなきゃいけない、そう思っているわけであります。  今度六千八百五十億円を、税金投入するわけでありますが、一たん投入すると、第二次、第三次あるいは第四次、そういうことになるんではないかと心配をしているわけですね。一つは消費税もそうでしたからね。消費税は最初三%に決めたときに、きっとこれは数字が、一たん決めたら数字がどんと上がっていくよということを危惧しておった。大臣なんかは消費税大反対の急先鋒でしたからね。一たん消費税を導入したら、後は数字がひとり歩きするよということを心配していたじゃないですか。そのとおりになったじゃないですか。だから今度も、第一次を認めれば第二、第三、第四となってくるのではないかという心配を国民はしているわけですが、大臣、その辺の心配はありませんでしょうか。
  31. 久保亘

    久保国務大臣 御指摘のように、私は、消費税がつくられるとき、そしてつくられた後もその反対の先頭に立ってきた一人であります。消費税というのは、その税の哲学に照らしても、またその制度の持ちます欠陥などからも、私は、今後も検討されなければならない税制一つだと思っております。  しかし、現在、来年の四月一日から五%とすることにつきましては、平成六年十一月にこれは国会の責任で法定されているのでございます。そして、その法定されております五%の消費税を、五%のまま来年の四月一日から実施するかどうかについての検討条項が六年十一月の法律の改正に当たってつけ加えられているのでございますが、この検討条項、四つの問題については今検討が進められているのでありまして、その結果、ことしの九月三十日までに変更が加えられることになればこの五%は動くのでありますが、私は、現在安易に消費税の税率を変えるということは問題が大きいのではないか、国民の各層の方々の意見等も、検討を加えるに当たっては十分にその参考としなければならないことだと思っております。  五%は、既に国会において成立いたしました法定の消費税率であります。
  32. 吉田公一

    吉田(公)委員 安易に税率を上げるということについてということでありますから、ぜひひとつそのことで御努力をいただきたい、そう思います。  例えば木津信用組合。たった一つの信用組合で、大臣、当初六千億円と言ったのだ、損失額。そして、精査していったら九千六百億円になってしまった。一つの信用組合でさえこんなに違ってしまうのだ、三千六百億も。ましてや今度の住専で、何だか数字がよくわからないようにあっちへ行ったりこっちへ行ったり。間違いないですかね、これ。たった一つの信用組合でこんなに違うのだよ。
  33. 西村吉正

    西村政府委員 大阪府の査定によります、六千億円と八月の段階で申し上げました検査の結果をさらに国も一緒に精査いたしました結果、九千億を超えるロスということで、その処理を目下検討しておるというのは御指摘のとおりでございます。  この木津信用組合、あるいは一昨年末に発表いたしました東京の二つの信用組合の問題、その検査の結果についてはいろいろな御批判もあろうかと存じます。地方公共団体の検査の結果ではございますが、いろいろな御批判もあろうかと思います。  私どもが直接担当しております検査につきましても、年々その方式については改良を加えておるところでございますけれども、今回の住専処理に際して六兆四千百億円という損失の見込み額を出すに際しましては、昨年の八月に七社一斉に厳格な基準を設けて調査をした結果でございまして、私どもといたしましては最善の努力をしたものと考えております。
  34. 吉田公一

    吉田(公)委員 一つの信用組合でさえこれだけ誤差があるわけですから、今度の住専問題では恐らく相当な誤差が出てくるだろうということは予想しているわけです。ぜひひとつ、国民が税負担をする以上は、少なくとも根拠はきちっとしておく、それはもう当たり前の話ですよ。  それから、三年も四年もこの住専の問題を延ばしてきた。そして、突如昨年の十一月になって、決着をしなければいかぬと言う。今大臣から御答弁があったように、これはもうとにかく何が何でもやらなければ国際信用も失墜してしまうというようなことで、予算を計上して、わずかここ二、三カ月で決着しよう、こう言ってきているわけでありますね。  一つは、私は、大和銀行のニューヨーク支店が発端じゃないか。つまり、あれはアメリカ議会側もそうですけれどもアメリカ金融界に、相当日本金融行政というのはいいかげんだなと。つまり、当時新聞にも発表になっておりましたけれども、国ぐるみで隠ぺい工作をしているのじゃないか、大蔵省は知っていながらやらなかったじゃないか、こういう批判もあった。  そこで、さっき大臣がおっしゃったけれどもG7等の会議で、大和銀行のニューヨーク支店のこういう不祥事件は年じゅう日本でやっているの か、不良債権だって八十兆とか百兆とかあるじゃないか、何とかしなければおかしいじゃないかと言われて、外圧で、そして急邊——歴代銀行局長だって先延ばし、先延ばししてきたのでしょう。何で急にこんなところで、急邊二、三カ月で決着しようなんという、しかも何だか根拠もあいまいな六千八百五十億円という金額を持ち出して、しかも六千八百五十億なんという、そんな予算なんかあるわけないでしょう。六千八百五十四億三千六百万とか、そういう百万単位まで出るのがちゃんとした積算根拠ですよ。ようかんを切るみたいに六千八百五十億円なんという、こういう数字を見ただけでいいかげんな数字だ、これは。  どうなのですか、これは外圧でやらされているのじゃないですか。
  35. 西村吉正

    西村政府委員 御指摘ではございますけれども、この住専問題、必ずしもことしあるいは昨年ということで始まった問題ではございません。ここ数年間常に大きな金融行政上の課題として指摘されてきたものでございます。  とりわけこの問題を具体的に取り上げましたのは、昨年の四月十四日の緊急円高‘経済対策でございますが、ここにおいて、金利減免等を行っている債権をも含めて、従来からの発想にとらわれることなく積極的に不良債権問題を処理しようということを決めましたのは、明らかに住専問題を意識していたことでございます。その後、六月二十七日にも、緊急経済閣僚懇談会におきまして、公的資金など公的な関与のあり方を含めて直ちに検討を開始するとされたところであり、さらに六月三十日には、与党三党の合意によりまして、公的資金の導入を含め不良債権問題の早期解決のための検討を急ぐということで、政府与党が一体となってこの問題の処理に取り組んできたところでございます。  さらに、具体的には、昨年の六月から与党の中に金融・証券プロジェクトチームというような組織も設けられまして、二十回を上回る検討を経た結果として昨年末に政府与党としての方針を取り決めたものでございます。  ただいま御指摘のような外国の関心というもの、もちろんそういうこともございますけれども政府といたしましては、この問題を早期に処理するということはっとに決意を固めておったところでございます。
  36. 吉田公一

    吉田(公)委員 言い方はいろいろあるでしょうけれどもアメリカ議会だとかアメリカ金融業界から言われて、とにかくあたふたしているということのように外から見ていると見受けられる。そんなことのないように、ぜひひとつ、外から金融改革を言われたり不良債権と言われて、それで泡を食ってやるようじゃ大したことはないね、それは。  そして、もう一つ関連して、去年二信組問題というのがあった、東京都で。安全信用組合、東京協和信用組合がいわゆる倒産をして、これは日銀の総裁、武村大蔵大臣が東京都庁を訪れて鈴木知事に面会を申し入れた。こんなことは前例がない。それはなぜかというと、東京都に三百億円を出資してもらいたい、社団法人東京信用組合協会に。  ところが、こういう話だって、さっきの木津信用と同じように、三百億円というお金を出資させておいて、そしてそれは一%で出資、東京都は貸してやる、後、五%で第三者へ貸せ、そうすると四%の利回りがあるから、それで十五年で返済できるじゃないかと。それで百八十億円になるわけです、計算すると。全く、こんなのはまさに机上の空論みたいな話だ。ではどこに貸せるんだ、今こんな五%で。  しかもスキームは大蔵省がつくったんじゃないの、これは。三百億円も穴があいていますよ、もう既に。武村大蔵大臣、何と言ったのか、答弁で。何が何でもやってもらうようにお願いをして、信じています。だからわざわざ日銀の総裁と大蔵大臣が都庁に会いに行ったわけだ。三百億円、もうないのですよ。東京都は財政難の折だから取りましてしまって、五十五万円しか残ってないのです。もう最初からつまずいているじゃないですか。  では、この東京都の三百億円は今後どうするんですか、二信組問題について。
  37. 西村吉正

    西村政府委員 昨年に、今御指摘のようなこの二信組の処理をめぐりますいろいろな経緯があったことは、そのとおりでございます。私も東京都庁にお供をいたしました。  ところで、ああいういろいろな経緯がございまして、東京都の二信組の処理につきましては、既に東京都の負担を前提といたしまして処理が進んでいるところでございますけれども、青島都知事は、コスモ信用組合の処理に当たっての財政支出二百億円を提案した都議会の審議において、二信組の東京都の財政支出についての公約にお触れになりまして、二信組処理に対する財政支出を行わないとの公約の撤回と受けとめられてもやむを得ない、あるいは、二信組の処理に関する財政支出について、もろもろの事情を総合的に判断した上で、都議会の意向を最大限に尊重して適切に対処してまいりたいと発言されているところでございまして、大蔵省といたしましては、当初の処理方策に沿った適切な対応が都においてなされるものと期待をしておるところでございます。
  38. 吉田公一

    吉田(公)委員 都議会は附帯決議をつけて否決をしている。二信組問題には支出をしないこと、こういう否決をしているわけだ。したがって、もし三百億円を捻出するとすれば、もう一回予算計上して都議会の議決を得なければいけない。私は都議会議員をやっていたのだからよくわかっているのですよ。そういう状況で、もう最初からつまずいているんだ、こういうふうに。  今度はこんなでかい住専問題が、今みたいに六千八百五十億円を何が何でも今回の平成八年度予算に投入しなければうまくいかないとかなんとか言ったって、こんな二信組問題で、大蔵大臣が、武村さんが行ってたってだめじゃないか。もう最初からつまずいている。スキームをつくった大蔵省としての責任というのはどうしたんです。三百億円なんか出てこない、もう五十五万円しかないんだから。そういうことを考えて私は、この問題は容易ならざる問題だ、簡単にいく話じゃない、そう思ってさっきから質問しているんですよ、こういう事例があるから。  そこで、住専の社長は大蔵省の、通称天下り、こう言われて、社長がいた。だけれども住専倒産する前だか何だか知らないけれども、やめていなくなってしまった。退職金だけはちゃんともらっているというのがどこかで発表になった。しかし、退職金にしても、普通の税務署へ行くと、大体月の三十六カ月分というのが退職金の平均なんだよ。それで、それ以上退職金をやると、退職金やり過ぎだといって税務署からチェックを受ける。今度のこの住専の社長方、旧大蔵省の方々は、そういう常識にかなった退職金をもらっているのですか。もともと利益が上がってこそ初めて分配権というのがある。こんな赤字を抱えている会社から退職金をもらってさっさとやめていってしまうなんということは道義に反することなんだ。そういう点はどうなんですか。
  39. 西村吉正

    西村政府委員 過去の経緯を見ますと、住専の場合、複数の母体により設立されました会社が多いというような事情もございまして、大蔵省に在籍した経歴のある者が請われて就職する例が見られたところは御指摘のようなことでございます。ただ、現在残っております経営者と申しますか役員は、会長一人、社長一人でございます。そのような者の退職金というようなものがこのような事態のもとにどうなりますかということは、これも経営判断の問題でございますけれども、今御指摘の過去の退職金の支払い、恐らく支払われた時点というのは経営状況もまた今とは違っていたとは思いますけれども、そのような問題につきましては、その時々の、また個々の経営判断に基づいて決定されたものであろうかと存じますので、私どもがそのことについてコメントをすることは差し控えさせていただきたいと存じます。
  40. 吉田公一

    吉田(公)委員 しかし、これは税金と連動して いるから私はそう聞いているんだよ。税金なんか出してないのだったら何も聞かない。それこそ経営判断だし、会社の自由だ。片方では税金を出してもらわなければにつちもさっちもいかないからと言っていながら、片方は大臣の、責任明確化と言いながら、税金を補てんしなければできないと言っているときに、そういうことが許されていいのですかということを私は国民立場で聞いているわけだ。  それからもう一つ。しかも、そのやめていった人方が退職金を取ってやめていった。今度は、農協系金融機関金融機関で、うちの方はこれしか負担できない。だけれども一般のサラリーマンが一万円ずつ負担をしなければならないということになっているとすれば、都市のサラリーマンの人なんというのは信用組合の看板さえ見たことないんだ。県信連なんていったって何が何だかわからない、普通のサラリーマンの人に。まさか農業協同組合の連合体だなんということを知ってない。その農協系金融機関に補てんをするために、何でサラリーマンが税金を払わなければいけないのですか。銀行局長、どうですか、それは。看板も見たことない。何の仕事をしているかわからない。農業関係以外の人は知らないですよ、信連なんといったって。東京都民だって東京都に信連があるなんということは知らない。大体、一体何だ、県信連なんといったって。そういう人たちの分まで何でサラリーマンの人が税金で取られなければいけないんだ、一万円も。
  41. 西村吉正

    西村政府委員 今回の措置は、決して系統金融機関を救済するという趣旨のものではございません。初めにも申し上げましたように、この十三兆円という大きな塊の住専金融問題を処理するに際しまして、その余波が金融システムに及びまして、個別の金融機関破綻というようなことを通じ預金者影響を与える、ひいては日本金融秩序全体に不安を与えるということが今の日本状況にかんがみまして非常に重大なことである、そういうことを避けるためにいかにすべきかという観点から支出をお願いをしておるものでございまして、県信連を救済するという趣旨のものではないことを御理解いただきたいと存じます。
  42. 吉田公一

    吉田(公)委員 住専問題の最後ですが、武村大蔵大臣が朝日新聞の二月十日にこう書いているのだ。「その額がどうなるかが勝負だった。財政融資や日銀特融の話もあったが、回収の見通しがないものに融資で対応するということはフェアでない、こういうやりかたはやめておこうと、」当時の大蔵大臣判断をした。しかし、フェアじゃないのは、国民税金に負わせる方がよほどフェアじゃないんじゃないの。何で日銀特融はフェアじゃないの。むしろ国がちゃんと責任を持って日銀特融や財政融資できちっとやるという方がフェアじゃないんですかね。まさに国民にとってはアンフェアですよ、こんな話は。その辺、何でそういう判断をしたんですか。
  43. 西村吉正

    西村政府委員 私どもも、この検討のプロセスにおいてはいろいろな方法をその対象といたしました。今御指摘の日銀の融資あるいは財政融資というようなものもその一つと言ってよろしいかと存じます。  しかしながら、武村前大臣も御指摘のように、今回の六兆四千百億円の処理というものはほぼ確実にロスになる可能性がある。もとより最大限この分につきましても回収努力をするわけでございますけれども損失になる可能性の高いものの処理だといたしますと、そのための手法といたしましては、返済を、返ってくることを前提といたします財政融資であるとかあるいは日銀の融資という手法でいわば実質的に先延ばしをするというようなことは、かえって国民に対する御説明としてはフェアではないんではないか、むしろ大変心苦しいことであり申しわけないことではありますけれども、率直に財政資金を直接投入するということについて御説明を申し上げた方がいいという選択をしたわけでございます。
  44. 吉田公一

    吉田(公)委員 時間がありませんからいずれまた時間をいただいて、住専については改めて質問したいと思います。  次に、間違いなく財政負担が来ると言われておりますから、あえて私はこの大蔵委員会で国鉄清算事業団について質問したいと思う。  これはもう間違いなく財政負担ですよね。不良債権でもって一万円だと言っているんでしょう。二十兆円も赤字があったら国民一人十五万円だというんだ。それで、最初の負担よりも最後になったらふえてくるというのはどういうわけですかね。大体役人が何か商売を始めてもうかったためしがないんだ。もうかるのは埋め立てたけだよ。あんなのは何にも要らないから、ただ人が突っ立っていればいいんだから。もうかったためしがないんだ。今度の土地を売るとかなんとかいったって、どういう売り方をしているんですか。
  45. 西村康雄

    西村参考人 お答え申し上げます。  国鉄清算事業団の債務につきましては、今御指摘のとおり、昭和六十年度首におきましては二十五・五兆円でございましたが、平成七年度首二十六・九兆円というように増加いたしました。この点については私どもも大変残念に思っておりますが、事業団の支出を先に申し上げますと、債務のための利払いが毎年約一兆円、そのほか共済の負担が約五千億円、現在四千五百億ほどございますが、その他費用等を合わせますと一・五兆円内外のものが毎年出ていくという構造になっております。  これに対しまして、実際に土地を処分していくということ及び株式を処分するというのが私どもの事業団の主たる収入源でございます。この間私どもも非常に努めてまいりましたが、事業団の発足当初国鉄から引き継いだ土地そのものは、そのまますぐ売れる状態ではございません。売れる状態にするためにいろいろなことをしなければならなかったという事情もございますが、やはり一番つらかったのは、緊急土地対策要綱が定められまして、この結果私ども土地は、特に規制区域内では原則として一般入札は禁止されました。地方公共団体等、公共用で直ちに必要とされるものに限って処分をするということが認められまして、平成三年に至りましてようやく上限価格つきという制度の中で一般公開入札をするということでございましたが、この制度の中では処分が思うように進みませんでした。  そういうような状況もございましたし、また、株式を処分できるような状況が、一度ようやく東日本の株式を処分するということができましたし、一昨年からJR西日本株式の上場に努めてまいりましたが、残念ながら株式市場が低迷する中でそれも果たせないということで、今日のような債務の増加という結果を招いたことはまことに残念に思っております。
  46. 吉田公一

    吉田(公)委員 それでもう一つ、これで終わります。  とにかく土地の売り方にしても、今土地なんというのは、普通の売り方をしたら売れないですよ。だからそういう意味では、もっと工夫して売らないと、入札をしたけれども人が来ないからしようがないじゃないかなんという話ばかりだ。そういうことじゃだめじゃないですか。少なくとも金利ぐらいはできるだけ負担をしていこうということでないと。今土地の売買は路線価以下ですよ。どういう売り方をしているんだか知りませんけれども、路線価以上でやるなんということだったら、何回入札やったって人なんか来やしません。今実態は、路線価の二割引きでなければ土地取引はできてないんですよ。  それから、二千四百五十三人の職員の人たちがいる以上は国鉄清算事業団がなくちゃならないね。そうすると、最後の人が退職するまで二十年だか二十五年だかかかるわけだけれども、それまで国鉄清算事業団というのは置いておくという発想ですか。——もういいですよ。——では、最後に一言だけ。
  47. 久間章生

    久間委員長 いや、時間が来ていますので、次に進みます。  中村時広君。
  48. 中村時広

    中村(時)委員 新進党の中村でございます。大変夜遅い時間でもありますし、また長時間にわたって皆さんお疲れとは思いますが、持ち時間一時間半、しっかりと質問させていただきたいと思いますので、御了承をいただきたいと思います。  住専問題でございますけれども、この問題は、予算委員会を中心にいたしまして今日まで議論が重ねられてきております。しかしながら、その議論が重ねられればられるほど、あるいはまた政府答弁を聞けば聞くほど疑問というものが、解けるどころか何か拡大していっているんじゃないか、そんな思いの国民というのは大変多いと思います。そして私は、個人的にではありますけれども、大変基本的なことなんですが、この議論を聞いておりまして、およそ近代法治国家における議論なのかな、そんなところまで疑問を感じざるを得ない。なぜならば、近代法治国家においては、適法性と透明性というものは絶対条件であるはずであります。その二つの尺度も非常に疑問を感じる。  また、入り口の段階でも大変おかしなことが起こっている。予算、支出を先に決めて、後から法案、要綱が出てくるという奇妙な形になっておりますし、また、これは幾度となく指摘はされておりますが、政策決定にかかわった責任者、その方が本来だったら最後まで陣頭指揮をとって国会答弁にも責任を持つということが当然だと私は思っておりました。昨年暮れ、武村さんも、大臣を全うして住専の課題に取り組むことが責任だと大見えを切っていたわけでありますから、本来このお部屋には武村さんがいてしかるべきだと思うんだけれども、その方もお見えにならない。入り口の段階からこんなことが起こっているわけであります。  そしてまた、内容に至っては、いまだに、何のために、どのような根拠でという最も基本的なことがまだまだ明確になっていないというふうにも思います。  そこで最初に、この最も基本的なことを確認させていただきたいのです。  手法といたしましては、まず法的な尺度をベースに置かせていただきまして、それから、幾度か、今日のスキームに至るまでには随分変遷がございます。その過程というものを追いかけていきまして、それぞれのステップでだれが得をしたのか、すなわちどこに配慮されてきたのかをだれでもが公平に判断できる数字というものを追いかけることによって浮き彫りにしていくのが最も手っ取り早いだろうというふうな観点でお伺いをしていきたいと思います。  そこで、まず最初の尺度をどこに置くのかということでございますが、これはやはり、昨年暮れの、十一月二十一日、政府与党調停案、これはプレスにも出ておりますし、修正母体行主義というものが初めて出てきたわけでありますけれども、これが起点になるのかなというふうに思います。ただ、ちょっと最初に確認させていただきたいのですけれども、修正母体行主義というのは全く問題がないのかどうか、それをちょっと確認した後で使うか使わないかを決めさせていただきたいと思います。  我が国の民事法体系のもとでは、担保権それからまた特別な先取特権を持つ者以外の債権者というのは基本的に平等である、こういう原則がございますよね。この原則を厳密に適用した場合、例えばある会社を債務超過で清算する場合は、まず株主というものが出資額を限度として責任を負う、こういうことになるわけであります。株主は、それ以上の負担をする法的な根拠は、この原則を厳格に適用すればないわけであります。  そこで、一つ目の疑問なのですが、母体行、この場合、住専の株主であります。要は、債権放棄など出資以上の負担を負って会社に損害を与えたときは、これは下手すると株主代表訴訟にもなるのではないだろうか。すなわち、会社の財産というのは株主に帰属をいたしますので、それをゆえなく正当な保障なくして奪っていくということになりますから、財産権の侵害に当たるということも言えるのかなというふうな思いがする。こういったことは許されないという立場に立つならば、取締役に債権放棄の裁量権が本当にあるのかどうか、私は素人ですからちょっとその辺がわからないわけであります。百歩譲ってあるとするならば、大体三つぐらいの根拠があるのかなと思います。  その一つは、先週の参考人招致のときに農中の理事長さんがおっしゃっておりましたけれども、たとえ整理をしたとしても、経営に参画をしていた母体行の持っている債権はその他の一般債権と比べると劣後債権だ、だから全額放棄というのは問題ない、こういうことをおっしゃっていましたけれども、ちょっとそれは無理があるような気もする。  あるいはもう一つ、法律の世界に子会社の法人格の否認の法理というのがありますけれども、これを適用して、子会社と親会社は一体だ、全責任を負え、こういうやり方もあるのかなと思いますが、この場合、住専は一〇〇%子会社ではありませんから、これもちょっと無理があるのかな。  そうすると、単に経営者が全額債権放棄というものを決定すれば、株主代表訴訟の問題はこれは彼らの話でありますから別でありますが、それでこの全額放棄というのは可能なんだということになるのかなと、三つぐらいなのかなと思うのですが、その点に関して、ちょっと法務省、見解をお伺いしたいと思います。
  49. 山崎潮

    ○山崎(潮)政府委員 一般論で申し上げたいと思いますけれども一般論として言えば、債権者が自己の債権を放棄するということは自己の判断に任されております。しかし、会社の場合には、取締役は会社に対して善管注意義務というものを負っております。その善管注意義務に取締役が反するかどうかという問題につきましては、その債権放棄をするに至る経緯、目的、あるいはその放棄の対象債権の実質的な価値等、そういうものを考慮して、その取締役がそのような判断をした当時の状況に照らして著しく不合理かどうかという、そういう基準で判断がされるということでございます。
  50. 中村時広

    中村(時)委員 基本的には取締役の判断ということになるのだろうと思いますので、それがあるという前提で、それでは最初のベースに先ほどの十一月二十一日の政府与党調停案なるものを置かせていただきたいと思います。  実は、この政府与党調停案のポイントというものは三つあったと思うのです。  その一つは、今申し上げた修正母体行主義なるものを初めてここで正式に打ち出されたということが第一点であります。  二つ目のポイントというものは、損失見込み額、現在第一次損失見込み額六兆数千億と言われておりますが、少なくともこの段階では七兆五千億円という一次損失数字を明確にこれは掲げられていたということが二つ目の特徴だろうと思います。  三つ目の特徴は、一般行と系統金融機関は同じ貸し手として同等に扱われていた。これが十一月二十一日の段階での案であったと思うわけであります。  そして、この案に基づきまして、母体一般、系統三者の負担額をはじき出していきますと、母体行は三兆五千億円、一般行は一兆七千億円、系統は二兆二千億円、こういうことになっていたわけであります。それはよろしいですね。この十一月二十一日の段階です。
  51. 西村吉正

    西村政府委員 御指摘の十一月二十一日とのことでございますが、私の記憶によれば、十一月二十一日に何か明確な政府としての方針が出たということはなかったと思います。  十一月二十一日と申しますと、住専各社母体行と農協系金融機関の第五回目の話し合いがなされた日でございますが、あるいは当事者の間でいろいろな議論があったのかもしれませんけれども政府としての方針を、あるいは指針をそのような際に示したということはなかったと記憶して おりますけれども
  52. 中村時広

    中村(時)委員 これは政府与党調停案として新聞にもでかでかと報じられておりました。ということは、こういう議論があったということはお認めになられますか。
  53. 西村吉正

    西村政府委員 もし、新聞の報道を御指摘だとすれば、そのころ、十月から十一月にかけまして、いろいろな推測を含みます各報道がなされておったということは私も記憶をしております。  ただ、私どもは、今御指摘数字も含めまして、政府として、あるいは与党としてそのような提案をした、そういう提案に基づいて報道がなされたというふうには理解をいたしておりません。
  54. 中村時広

    中村(時)委員 それじゃ、この段階で、今言ったポイント三つですよね、この三つをベースにした考え方が案の一つとしてあったということはどうですか。
  55. 西村吉正

    西村政府委員 私自身の記憶とかあるいは理解に基づく御説明という前提でお答えを申し上げたいと存じますけれども、修正母体行主義という考え方、これは昨年の割合早い段階、二月とか三月とか、その辺の段階で民間の学識経験者の方々から御提案があったように記憶をいたしております。そして、この住専問題の処理に際しまして、一方の系統の御主張である、完全母体行主義と言われている、母体行が全責任を持つべきだという考え方、それから民間の金融機関の方々の御主張である、破綻処理ということになると貸出額に応じた分担をするのが世界のスタンダードであるという考え方、そのような対立するお考えを調整するに際して、修正母体行主義という中間をとるような考え方があるのではないかという御指摘はございました。
  56. 中村時広

    中村(時)委員 そうすれば、考え方一つとしてあったと。  では、次のはどうでしょうか。十二月二日、これは与党ガイドラインがその間に出ておりますね、それを受けた政府調停案なるものがこれも大々的に報道をされております。  その前に、今の十一月二十一日の段階ですが、損失見込み額を七兆五千億円で当初は考えていた、この点については認めていただけますか。というのは、その三日前に大蔵省の素案なるものがマスコミに登場しておりまして、このときの損失額は七兆五千億円になっていたわけですから。その点、ちょっとお伺いします。
  57. 西村吉正

    西村政府委員 まず、七兆五千百億円という点に関しましては、もう少し前の段階でございまして、九月の十四日と記憶しておりますけれども、八月下旬に立入調査をいたしました結果を九月十四日に与党金融・証券プロジェクトチームに対して御報告をいたしました。同時に、公表をいたしました。そのときの損失懸念額というものが七兆五千百億円でございました。  なお、もう一つの十二月当初の段階でございますが、十二月一日に与党政策調整会議から、いわゆるガイドラインと言われておるものが私どもに対して示されたということは御指摘のとおりでございます。
  58. 中村時広

    中村(時)委員 このガイドラインで示されたポイントというのは、まさにこの七兆五千億円のうち、第三分類と言われる一兆二千億円の処理を分割した、それで一次損失の額を六兆四千億円に変更した、こういうことだろうと思うのですが、いかがですか。
  59. 西村吉正

    西村政府委員 このガイドラインにおきましてそのような数字が明示されているというわけではございませんけれども考え方といたしまして、「処理すべきロスについては、この際、果断に対処することとし、残余の資産等については受け皿となる機構を設立し対処する」という文言がございます。その際に、「果断に対処する」対象といたしましては、御指摘のような数字も念頭に置かれていたと考えております。
  60. 中村時広

    中村(時)委員 この一次損失の分割によって、一体だれが得をするのですかね。  というのは、その二週間後、大蔵省案というのがこれは正式に出てくるわけですね。十二月十六日です。このときのポイントというのは、まさに一次損失の金額が六兆四千億円になっているわけですよ。なおかつ、一般行の負担、これは予算委員会でも指摘をされておりましたが、一般行の負担というものが一兆七千億円になっているわけですね。これはダブルスタンダードというのをめぐっていろいろ議論がありましたけれども、要は、七兆五千億円をベースに計算をした一般行の負担額を六兆四千億円の損失の中に持ってきたということになっているわけであります。  なおかつ、それに伴って系統の負担が減っているということでありますから、随分と最初の時点と比べますと、母体行というのは数字はそんなに変わっていない、一般行は、本来六兆四千億円ではじけば、プロラタだけをやれば一兆二千億円であったものが、七兆五千億円を分母に計算をしましたので、一兆七千億円にふえていますよね。この点は認められますか。
  61. 西村吉正

    西村政府委員 私、すれ違いはないと思いますけれども与党政策調整会議のガイドラインが十二月一日に出ましたときに、「果断に対処する」というロスとしては六兆二千七百億円というようなものが念頭に置かれていたと思うと先ほど申し上げたわけですけれども、そこは委員の御理解と違いはないと思います。  その後、今十二月十六日と御指摘がございましたが、私ども大蔵省としてその時点で何らかの提案をしたということは、私の記憶ではございませんで、あるいは新聞の報道でそのようなことがあったかもしれませんけれども、正式に大蔵省として、この住専処理について数字を挙げて提案をしたということはなかったと思います。十二月の十九日に政府与党の合意及び閣議決定がなされた時点で、その処理について公にされたということだと理解をしております。
  62. 中村時広

    中村(時)委員 それでは、これはもう予算委員会での確認事項なのですが、一兆七千億円については、これは七兆五千億円で計算した数字ということはお認めになられますね。要は、その理由としては、予算委員会においては、ばらばらでやるよりは効率的だからこれぐらいのぎりぎりの負担というものを求めるのは筋が通っている、こういう御指摘だったでしょう。
  63. 西村吉正

    西村政府委員 一兆七千億円というのは、これも予算委員会で御説明したことがございますが、七兆五千億円をベースにして、修正母体行主義という考え方を基礎にして計算すると、一つのそういうような数字も算出されるということは御指摘のとおりでございます。  ただ、それを大蔵省として、そういう計数をプロセスにおいて全体構想の中で提案をしたかという点につきましては、それぞれの段階でいろいろな考え方を並列的に議論の対象にしたことはございますけれども、最後にそういう考え方関係者の御理解をまとめようという考え方を固めたのは、これは十二月の十九日ということでございます。
  64. 中村時広

    中村(時)委員 それを受けまして、最後に、二日後の十八日に例の武村・野呂田会談が開かれていくわけであります。このときのポイントというのは、系統負担を、体力責任論か何か知らないけれども五千三百億円に一夜にして決定する、それで翌日には、その分を埋め合わすかのように財政投入の六千八百億円という数字が出てくるわけであります。  だから、幾ら理由、数字は出していないとかいろいろ言っておられますけれども、変遷をたどっていけば、そのたびごとにやはりこれは、僕は系統の言い分はあると思うのですよ、ただ、この数字、マスコミ世論に伝えられたいろいろな話を総合的に判断すると、やはりそのステップごとに系統の負担が減っていっているというのは紛れもない冷厳な事実だと思うのです。その点はいかがですか、大蔵大臣
  65. 西村吉正

    西村政府委員 先ほど申し上げましたように、議論のプロセスにおいて複数の考え方がそれぞれの立場に応じて主張されたということは、これは おっしゃるとおりでございますし、このような問題の処理のプロセスとしては当然のことかと思います。  今御指摘のように、系統金融機関負担が逐次減っていったという点に関しましては、そのような数字のとり方もできるかもしれませんけれども、それはいろいろな案を主張しているいろいろな立場の方々の複数の案のうちの一つをとった場合にそういったとり方はできるかもしれませんけれども政府考え方として逐次減らしていったとかそういうふうに御理解をされているとすれば、それは実態と少しずれがあるように思います。
  66. 中村時広

    中村(時)委員 いや、それはもう言えっこない話でありますからそういう御答弁になると思っていましたけれども、やはり議論の過程でそういう形で数字が変遷していったのは僕は事実だと思いますよ。そして、なおかつ、最後に出てきた、この武村・野呂田会談の系統五千三百億円の負担を受けて六千八百五十億円が出てきた。まさに六千八百五十億円の根拠というのはこれ以外ないのでしょう。だから、ほかの積算根拠を幾ら示してほしいと言っても今日まで出てくることもないし、それ以外考えられないわけであります。もうそれは答弁を受けたって同じ答えしか返ってこないから、自分たちが少なくとも知る範囲、報道で知った情報を集めた範囲においては、もうそれ以外根拠はないと言い切ることが私はできると思います。コメントだけいただきましょう。     〔委員長退席、大島委員長代理着席〕
  67. 西村吉正

    西村政府委員 今まで私どもがたびたび御説明をしておりますのは、ある意味では今御指摘のとおりでございまして、この六兆四千百億という損失処理住専問題を解決するためには一日も早く片をつけなければいけない、関係者の間の話し合いを進めなければいけない、その場合に、関係者がそれぞれの立場でぎりぎりの負担の限界というものを探っていくという作業を続けたわけでございます。その結果といたしまして、母体行が三兆五千億、一般行が一兆七千億、そして系統金融機関が五千三百億という負担の限界をお示しになり、その結果として六千八百億というものの処理財政に求めざるを得なかったということは御指摘のとおりでございます。  しかしながら、それぞれの負担、三兆五千億の債権全額放棄なりあるいは一兆七千億の一部放棄なりという積算の根拠、それから全体の六兆四千百億という損失の積算の根拠については、既に資料をもって明確にお示しをしておりますように、十分御理解をいただける根拠に基づいておるものと私どもは考えております。
  68. 中村時広

    中村(時)委員 水かけ論になりますけれども理解できないからこそこの問題が尾を引いていることを申し上げておきたいと思います。  次に、これも簡単で構わないのですが、系統は今回元本全額返済という立場にあるわけでありますが、その根拠というのをもう一度確認をしたいと思います、本当にあるのかないのか。  それはやはり覚書によるところが大であろうと思いますが、この覚書というものは司法上の法的拘束力というのはないのだろうというふうに思いますけれども、ただ、その覚書を交わした当事者の意思によっては、契約というような概念から拘束力を持つものなのかなというふうな思いもございます。  そこで、この前、この契約を交わした当事者の方が参考人として予算委員会出席をされました。この当事者の話にまさるものはないわけであります。  この中で、まず寺村前銀行局長は、元本保証というのは住専破綻したときの話で、そのことは議論していない、仮にそれを認めたら合意は成立せず、覚書すら存在しなかった、したがって覚書では元本保証には一切触れていないということを予算委員会の場でお話しされたわけでありますが、銀行局長、これで見解相違ありませんね。
  69. 西村吉正

    西村政府委員 今、覚書に関して契約の当事者という表現がございましたが、あの覚書は法的な契約という性格のものでございませんので、その点は別といたしまして、先般寺村前局長が御説明をされたことは、私どももそのように理解をいたしております。
  70. 中村時広

    中村(時)委員 それでは、今度は農水省にお伺いしたいのですが、この同じ日に眞鍋経済局長も御出席をされたわけでありますが、その発言内容というものは、元本保証の期待を持ったというのはあり得る、ただしあくまでも、大蔵省から住専七社を再建する大前提のもとに農林系に協力してほしいという要請があって、それに基づいて行ったものである、それで、どの程度協力するかは農林系の経営上の判断と考えて、大蔵省と問題の進め方についての覚書を取りまとめたものである、その後、農協関係者に対しこのような協力を行うかどうかは当事者の判断の問題ということを述べながら説明をした、こういうふうに言われておりますが、この文言からいえば、これも法的な拘束力はないというふうにとらえられますが、いかがでしょうか。
  71. 須賀田菊仁

    ○須賀田説明員 覚書自体の性格でございますけれども、ただいま銀行局長の御答弁にもございましたように、当時、大蔵、農水両省間で当事者間の協議が円滑に行われるよう再建問題の取り進め方について議論を整理したものでございまして、法的拘束力とか当事者の間の権利義務関係を制約するといった性質のものではないというふうに理解をしております。
  72. 中村時広

    中村(時)委員 そうすると、これに基づいて元本保証をしたという根拠はないということになってしまうわけであります。  それでは、何で、そういう元本保証の根拠をどこに求めてなったのかということをぜひお示しいただきたいと思います。
  73. 西村吉正

    西村政府委員 元本保証という御指摘は、恐らく今回の処理に際しまして五兆五千億を一たんお返しをした上で五千三百億円の贈与をするというような形をとったということを指しておられるのだろうと思いますけれども、この五兆五千億を系統金融機関にお返しするということは、必ずしも平成五年二月三日の覚書があったからそのようにしたということではなくて、いろいろな過去の経緯あるいは関係者の間の今までの話し合いの状況、総合的に判断をして、それぞれのお立場での最大限の努力という中で一つ系統金融機関に関する結論が出された、こういうことでございます。
  74. 中村時広

    中村(時)委員 本当にわけのわからない答弁でありまして、それは関係者だったら納得する話かもしれません。しかし、一般人たちにいろいろな経緯であるとかそんなことを言ったって、それは納得するものじゃないですよ。その辺の限界というのは感じられませんか。
  75. 西村吉正

    西村政府委員 いろいろな経緯と簡単に申し上げましたが、それは一つは、例えば母体行が設立に関しましてこの住専というものにどのようにかかわってきたか、あるいはその後の経営にどのように参画をしてきたかというようなことをも含めまして、この住専をめぐります二十年以上にわたる長い経緯をも含めての問題を申し上げておるわけでございます。
  76. 中村時広

    中村(時)委員 結局、そのあたりの経緯というものは、細かいことについては、いつだれがどういうことをやったのかとか、そういう経緯というのは覆い隠されたままこれが進められてしまおうとしているところに一番の大きな問題がある。すなわち、この五兆五千億の元本保証というのはいわば明確な法的な根拠とか理屈というのはないということに私は思わざるを得ないということを指摘させていただきたいと思います。それは皆さんの間ではいろいろな経緯ということで通用する話かもしれませんが、およそ関係のない人たちにはさっぱりわからない。そのことは多くの国民も同じ気持ちだということを指摘させておいていただきたいと思います。  次に、系統に絡んでまいりますが、五千三百億円の根拠の問題であります。  この根拠につきましては、これは便宜的な説明 のために使ったというふうに後で変わるわけでありますが、最初は、九三年の住専再建計画で決めた系統負担のうち、いまだに実行をしていない金額、すなわち十年減免措置の八千五百五十億円、その三年分は消化したから残りが五千三百億円だからということを、これは正式に農林水産大臣がおっしゃっていたわけであります。  その後、一月に入りますと、ぎりぎりの負担という何遍となく聞かされたこの文言が登場してくるわけであります。しかも、ぎりぎりの負担であるからそれは積み上げに積み上げてきた数字なのだ、こういうふうな答弁に終始してきたわけでありますけれども、昨日、この点について、これは積み上げた数字じゃないのじゃないのかというようなことをめぐって、同志の谷口議員の方から予算委員会で質問がなされました。そして、農林水産大臣はきょうの答弁の中で、これは積み上げた数字ではありませんでした、案分した数字だということに方針転換されましたよね。その辺、農林水産省、事実関係を言ってください。
  77. 須賀田菊仁

    ○須賀田説明員 五千三百億円あるいは信連分の負担二千億円、こういうものは、まず数字があって、それを単に案分しただけではないかという御指摘をいただいたわけでございますけれども、この際、五千三百億円の算出根拠につきまして明確に御答弁を申し上げておきたいと思っております。  まず、その五千三百億円をどういうふうな基本的考え方で出したかといいますと、当事者間、関係金融機関の間で最大の努力を払えということが求められておったわけでございまして、そういう当事者間での最大の努力を払うという認識のもとに、農協系統信用事業の存立の基盤を守り得るぎりぎりの水準というもので協力しようという考え方に立って算出をしたものでございます。  そのときに、どういう基本方針のもとにこのぎりぎりの水準というのを考えつくかということでございますけれども、まず末端の農協に、農協段階で約九百万人の農家・組合員から貯金六十八兆を受けております全国で約二千五百の単協があるわけでございますけれども、この経営に悪影響を及ぼしまして、農協をめぐりまして新たな信用不安が起きるということをぜひとも回避したいという基本的方針に立ったわけでございます。  次に、この農協系統信用事業の存立の基盤を守り得るぎりぎりの水準の条件につきまして、まず信連につきましては、その資金贈与に伴いまして当該年度に赤字に転落する信連が経常利益ベースでは過半に、三十でございますけれども当期利益ベースでは二十程度に上ることを予定をいたしまして、その翌年度、赤字信連数が今年度を上回るようなことになりましたら構造的な経営問題につながるということで、これはぜひ回避したいということで、今年度とおおむね同水準になるようにしたい。信連についてはこういう条件をぎりぎりの水準の条件というふうにしたわけでございます。  さらに、農林中金につきましては、このぎりぎりの水準というのを、本年度に大幅に赤字に転落することはやむを得ないとしても、翌年度は何とか系統金融の全国団体として最低水準の役割を果たし得るような利益は確保したい。こういうことをぎりぎりの水準の条件として設定をしたわけでございます。  次に、具体的な算出根拠といたしまして、まず信連につきまして、一定の算出方法に従いまして今年度の利益、経常と当期と両方あるわけでございますけれども、それから来年の利益、翌年度の利益、これは収益減の要素を勘案して計算したものでございますけれども、こういうものを計算いたしまして、先ほどのぎりぎりの水準を満たす額といたしまして信連全体で約二千億円という額を算出したわけでございます。  それから、農林中金につきましても、農林中金の場合は、実は系統系の住専であります協住ローン、これに約二千億のロスがあるということで、今年度の経常利益はそちらの負担、一部の負担、八百億円程度負担に回すということを予定をいたしまして、残り、可能な限り、有価証券の益出してございますとか、貸倒引当金の取りましてございますとか、任意積立金の取りましてございますとか、こういうものをやりまして、来年度、先ほど言いましたように、全国団体として最低水準の利益を上げるという額といたしまして二千億円の水準というものをお出ししたわけでございます。  そして、この信連の二千億と農林中金の二千億を合わせて四千億、これを信用部門の贈与限度額として算出した上で、共済系統というのもあるわけでございますけれども、共済系統は最近支払いの予定利回りが運用利回りを大幅に上回っておるという非常に苦しい経営をしておるわけでございますが、信用事業並みの負担は行うという考え方に立ちまして、住専貸付残高案分で信用と共済というふうにいたしますと、共済の部分が千三百億円ということになりました。これでも相当全共連を中心にして赤字になるわけでございますけれども、信用部門の四千億と共済部門の千三百億を合わせまして五千三百億円という額を贈与限度額として算出したものでございます。  こういう内容は農協系統にとって大変厳しいものでありますので、これを機に大胆なリストラを進めるという考え方に立ったものでございます。     〔大島委員長代理退席、委員長着席〕
  78. 中村時広

    中村(時)委員 信連は個々に計算されたのですか。
  79. 須賀田菊仁

    ○須賀田説明員 改めて申し上げますけれども信連について申し上げますと、繰り返しになるようでございますが、農協系統信用事業の存立の基盤を守り得るぎりぎりの水準、先ほど言いました三十とか二十とか、あるいは翌年度同程度以下という条件をまず設定したわけでございます。その次に、各信連ごとに今年度の経常利益、当期利益それから翌年度の利益を計算することといたしまして、その利益と信連ごとの贈与額を比較いたしまして、先ほどのぎりぎりの水準の条件を満たす額、三十とか二十とかの水準でございますけれども、額として信連全体の贈与限度額二千億円を算出したものでございます。  この算出に際して、各信連ごとの贈与額と利益を比較したわけでございますけれども、この贈与額、信連ごとの贈与額を出します場合に、信連全体の贈与額を住専融資額に応じて計算した上で、それを利益と比較したということでございます。  その限りにおいては、全体の贈与額を信連住専融資額に応じて計算したわけでございますけれども、それ以外にその利益と比較する方法はなかったわけでございます。したがいまして、まず金額ありきというものではなくて、あくまでも各信連ごとの経営への影響を見ながら水準をお出ししたわけでございます。
  80. 中村時広

    中村(時)委員 ここにある信連理事責任者の方のコメントというかプレス記者会見があるのですが、こんなことを言っているのですよ。「県信連負担額は一月十八日の全国信連会長会議でも示されておりません。しかしながら、住専への貸し出しの金額を考えると、報道されている幾ら幾らに近い数字になるのは覚悟しております。」この点については、この信連の場合は「一括拠出しても赤字決算転落はない。」と強調しております。「九五年度も、負担額を一括処理しても黒字にとどまる。」ということをプレス発表で明言している、こういう信連もありますし、共済連は「負担額決定しても、積立金の取りましなどは必要ありません。経常利益の中から、本年度で一括拠出をいたします。」それから、信連もう一つありまして、「配当や奨励金などは、事業計画どおりきっちりと支払っていきます。」こういうふうな信連もあるわけですよ。  各信連ごとで計算して、参考にして積み上げていったとは全く思えない。きょう農林水産大臣も案分とはっきり認めたわけでありますから、案分でしょう。これは初めに数字ありきなんですよ。それ以外説明しようがないでしょう。
  81. 須賀田菊仁

    ○須賀田説明員 繰り返し申し上げますけれども、各信連ごとの利益と贈与額を比較1どういう案分、計算をするかということでございますが、信連ごとの利益と贈与額を比較いたしまして、それで、四十七信連のうち、今年度経常利益の赤字が三十、当期利益赤字が二十程度。翌年度は、今年度と同水準と見込むというぎりぎりの水準を算出するために、信連全体の贈与額はどのぐらいになるかということを計算したものでございます。  ですから、基本は各信連ごとの利益が基本になっている。その三十ですとか二十ですとかの条件に合うような額がどれになるかということを計算いたしまして、二千億円というのを算出したわけでございます。  具体的に計算するに当たって、二千億円を各信連ごとの住専融資額に応じて計算  案分という言葉を使って言うなら案分をいたしまして、利益と比較して条件の合う額を見たということでございます。
  82. 中村時広

    中村(時)委員 こればかりやっていると時間がなくなってしまいますので、これはこれからも予算委員会でも同僚議員が質問すると思いますけれども、もうこれは今みたいな説明じゃだれも納得しませんよ。初めに数字ありきで案分したというのをお認めになった方がいいんじゃないですか。  次に、今までのたかだか四十分ぐらいの議論の中でも、どうも不明瞭な点が多過ぎる。過去の経緯というものを追いかけていくと、お認めにはならないけれども数字的に見たら、系統へ配慮をされたというのは、これはもう国民の多くがそう見ているわけでありますよね。それも認められない。また、六千八百五十億円の根拠というのもわからない。あるいは五千三百億円も、今みたいに案分だか積み上げたか非常に不明瞭な答弁しか出てこない。  あるいは、一次損失の六兆四千億円という数字自体にも私はいささかの疑問を感じるのだけれども、この六兆四千億円というのは、損失の算出基準になったのは昨年初めの路線価ですよね。今現在の時価と比べて、その路線価というのはどうなんですか。高いと思いますか、低いと思いますか。
  83. 西村吉正

    西村政府委員 昨年八月に一斉調査をしました時点で、統一的に担保評価を行いますために、土地につきましては、御指摘のように八月に発表されました路線価を採用いたしました。  これが高いか低いかということは大変に難しい問題ではございますけれども、路線価は公示価格のおおむね八割というような見当で設定をされておりますので、私どもといたしましては、客観的に利用できる土地評価としては、非常に慎重に見込んだと言えるのではないかと考えております。  調査地点が非常に多いとかいう点においても、路線価を選ぶということは、私どもがこの評価をするに際して適切な措置であったと考えております。
  84. 中村時広

    中村(時)委員 実態的に言えば、一年前と比べて、今、日本全体の土地というのは下がっていると僕は思いますよ。だからこの数字というものも、それは客観的に利用されて納得のいくデータであるとおっしゃられるけれども実態というのは当時から比べたらやはり下がっているということを考慮しておくべきだと私は思うのですよ。だから、この六兆四千億円というのも何かしっくりこない。これほど不明確な点が現実に残されて、いまだにこの時点でも残されているわけであります。要は、関係者の納得する話じゃなくて、広く国民が今言ったような説明で納得するかといったら、絶対納得しませんよ、すべての点において。  それだけの不透明な話が残されたまま出されている予算案でありますから、これはもう最初の原点になりますけれども、近代法治国家の最低限の絶対条件というのは透明性、適法性、この二点、絶対曲げることはできない条件。それを考えた場合、およそ近代法治国家の打ち出すような予算案ではないと私は思う。だからこそ、その透明性に大きな問題があるからこそ削除をすべきだ。金額の問題ではないのですよ。不透明だから削除すべきだというふうに思いますが、大蔵大臣、御見解をお示しください。
  85. 西村吉正

    西村政府委員 予算委員会におきましても、また大蔵委員会におきましてもたびたび御説明を申し上げ、また、私どもといたしましては最大限の努力をもって資料を提出しておるところでございます。ただいま不透明というような御指摘もございましたけれども、私ども、今回提案しております処理策の積算の根拠、あるいはその説明につきましては、今なし得る最善の努力をしていると申し上げても差し支えばないのではないかということで、ぜひ御理解を賜りたいところでございます。
  86. 中村時広

    中村(時)委員 それは自己満足の世界の話であります。  要は、大事なことは、マスコミだってわからないと言っている、国民だってわからないと言っている、こういう厳然たる事実が今存在しているわけですよ。だからこそ、これは党派とか関係ない。これだけ不透明なものを、賛成するのかしないのかということについては、それこそ党派を超えた、各政治家一人一人のモラルとか良心、こういうものが最終的に問われてくるのだろうというふうに僕は申し上げておきたいと思います。  次に、一月中旬でありましたか、久保大蔵大臣はパリに行かれて、先進七カ国の蔵相・中央銀行総裁会議出席をされております。そのときに、日本財政金融問題についてさまざまなお話を会議の場で申し上げられたということであります。またその機会に、フランスの蔵相、アメリカの蔵相と個々に会談を持たれて、日本住専問題等々について、方針について報告もしたということでございます。それに対して、これは新聞で見ただけですけれども、ルービン米財務長官のコメントとしては、ディザイアブル・アンド・コンストラクティブ、望ましくもあり建設的でもある、こんな表現をされておりましたのは新聞では拝見いたしました。  ただ、どうも納得できないのでありますけれども、僕はかつて国際貿易業務を六年間やっておりました。特に、欧米社会とのビジネスを通じまして、そういった欧米の文化とも触れてきたつもりであります。一言で言えば、彼らの世界というのは契約社会であります。コントラクト・イズ・コントラクト、この理念というものが徹底して底流に流れておりますから、法的な根拠を越えるものとか非合理的なものについては決して認めない。その分訴訟も多いわけでありますけれども、そういう体質を基本的に持っておりました。この今回の処理案の細部をもし彼らが知ったとするならば、到底評価はしないんじゃないかな。自分の過去のそういった欧米社会との経験から考えてみますと、僕はしないような気がする。  例えば、ある外資系の人のコメントが載っておりました。彼らは、今申し上げましたように、法律で物を判断していきますから、当然系統の問題に触れているケースが多いようであります。この外資系の方は、系統は契約書に基づくビジネスとして住専融資をしていたんだ、これは当然でありましょう。だから、本来ある程度の法律的な責任をとるべきなのに、それをなぜ国民に転嫁するんであろうか、これが通ること自体が国際ルールからいえば不可思議である、こういうコメント。  英国の格付機関にIBCAというのがありますけれども、ここも今と同じような論理で、農林系の問題というのがどうも国際ルールから見ると納得できない、こういうふうなコメントを出されております。  そこで、ちょっとお伺いしておきたいんですが、フランスの蔵相であるとかアメリカの蔵相に説明されたということでありますが、どのような説明をされたんですか、何分ぐらいの時間をかけて、この住専問題をどこまで掘り下げて説明され たんですか。そのあたりを久保大蔵大臣、お教えいただきたいと思います。
  87. 久保亘

    久保国務大臣 先進諸国家G7に参加いたします各国の蔵相や中央銀行総裁は、住専問題についてもかなり関心を持って、内容についても承知をしていると私は感じました。  まず、特に十月のG7のときに武村前大蔵大臣が、年内に、去年の年内ですね、日本政府としては住専問題処理対策を決めたいということも報告されたと聞いております。そういう中で、私、一月の二十日のG7会議にパリへ参りました。全体のG7会議に先立ちまして、アルチュイ・フランス経済大臣それからルービン・アメリカ財務長官と大体三十分ぐらいずつお目にかかりました。  それからG7会議では、私の方から、日本財政事情等も含めて、特に前回のG7以来各国から注目されておりました住専問題の処理について、既に前内閣の閣議決定があり、一月十九日、この住専問題を処理するに当たっての関係閣僚懇談会での申し合わせもございました。そういう経過を経ておりましたので、私としては、閣議で決定をいたしました住専問題処理の概要について説明をいたしたところであります。  これはどういうふうに受け取られたかというのは、個々にお会いしましたお二人の方、アルチュイ議長、フランス経済大臣G7終了後の記者会見において「日本から、金融システムの安定化策、とりわけ住専の問題について説明があり、こうした説明について、勇気づけられた。」という会見の発言がございます。  また、ルービン氏は、アメリカ財政問題での議会と大統領との対立がございまして、これらの問題の処理のために途中で帰国することになりました。彼は、六時ごろ終了いたしましたG7会議を四時半ごろ退席して帰国いたしました。その後、サマーズ財務副長官がずっと最後まで出席をいたしました。  この副長官がルービン長官にかわって記者会見を行ったのでありますが、これは記者団から、住専の問題についてはG7でどのような議論があったのかという質問がありまして、これに対してサマーズ氏が答えましたのは、「日本の蔵相より、提案されている対処策について説明があり、国際社会として望ましくかつ建設的であるとの一般的な認識が示され、できる限り早急な実施を期待するとのことであった。」これがアメリカのサマーズ財務副長官の会見の発言でございます。  その後、私も内外の記者団とも会見の機会がございまして、このG7での各国の反応によって住専問題の処理については確信が持てるようになったのかという意味の、ちょっと正確ではございませんが、今度のG7は国会でのこの問題を決めるためには力になったかという意味の質問がございました。私は、今日のように経済金融がグローバル化してくる中で、日本金融システムにかかわる問題についてG7会議で我々の考え方を報告したまでである、そのことをもって国会の審議の後ろ盾にしようなどというそういう考えは全くない、我々が述べたことに対して、日本側が述べたことに対して、G7の各国がどのように受けとめたかということを率直に我々はそのことを受けとめ、そして各国の期待がどこにあるかを考えながら、日本政府住専問題処理方針検討願って進めるだけであるということを申し上げてまいりました。
  88. 中村時広

    中村(時)委員 その対処策をどの程度まで突っ込んでお話しされたのかということを私はただ単に知りたかっただけなんですけれども、そのときに、資料か何か使われましたか。
  89. 久保亘

    久保国務大臣 G7会議は議事録はございません。一切そういう記録を残さないのだ、残さないというか議事録を残さないのだということを私も終わってから知りました。私は議事録を後で送ってもらえるものだと思っておりましたら、そうではないことに気がつきまして、そういう意味では議事録はございません。
  90. 中村時広

    中村(時)委員 議事録じゃなくて、例えば、アメリカの蔵相、フランスの蔵相とは個々にお話をされているわけですよね。そのときに、口頭だけでやられたのか、それとも何らかのこういう案でやるんだよという資料を使われたのか、その点をお聞きしたんです。
  91. 久保亘

    久保国務大臣 すべて口頭で報告申し上げましたので、相手方に対して文書で渡したりというようなことは一切ございません。
  92. 中村時広

    中村(時)委員 それは、今、例えばアメリカなんかにおきましても、米国内の銀行資産のうち、アメリカ企業向け融資の一七%を日本金融機関が占めている。日本投資家は八六年以来米国債の新規発行分の九・三%を保有している、こういう状況でありますから、日本金融システムが破壊しては困るというのは、そういう事情は向こうにもあるわけであります。だから、あくまでもこれは僕の邪推かもしれませんが、日本金融システム、今大変なんだ、特に住専という問題について大量の不良債権があるんだ、この件に関しては政府公的資金を導入してでもきちっと安定化を図っていく、こう言ったら、確実に称賛の拍手が向こうから出てくるのは間違いない。  ただ、私が申し上げたかったのは、欧米社会の感覚からいえば、今回のような不透明なやり方というものに対しては僕は評価はしないと思う。その点を知るために、一体どのようなお話をされたのか、あるいはそのとき使われた資料があるのならばそれを見させていただきたい、こういうふうな意図で質問をさせていただいたわけであります。  しかし、結局これはつついたってまた水かけ論ですよ。資料もない、議事録もない、何にもない。当事者は大蔵大臣大蔵大臣が細かく説明したんだと言えば、それ以外のことを証明することは不可能だ。ただ、私は、そこまで細かい説明、今回のスキームの細目にわたった説明というものは恐らくなされていないのじゃないかなと思わざるを得ないということを、感想として申し述べさせていただいておきます。  次は、無税償却の件についてお伺いしたいと思います。  この無税償却の問題につきましては、これも予算委員会で何度かやりとりがあったように記憶をいたしております。本来であれば、有税であれば二兆数千億円のものが生まれる、その分が丸々無税償却で処理されることはいかがなものかというような質問もあったでありましょう。  その中で、どうしてもよくわからないのが、例えば母体行と一般行については、これは一次損失分を無税償却されるということですよね。その一次損失というのは、たとえ処理機構債権回収しても利益を得ることができない額、そういうふうに判断をするならば、損金扱いということも認められるのだろうなというふうにも思えるのです。  ただ、系統も、これは課税対象の寄附金に当たらない、贈与という名目で出すにもかかわらず課税対象の寄附金に当たらない、こういうことになっておりますが、このよって立つところの根拠というものはどこに求められるわけでありますか。
  93. 内野正昭

    ○内野政府委員 お答えいたします。  いわゆる無税償却という用語は、先生御承知のように税務上の用語ではございませんが、今お尋ねの、系統金融機関の資金贈与について損金処理ができるかというお尋ねかと思いますが、金融機関に限りませず、法人が資金贈与あるいは債権放棄などを行いました場合、これは企業会計上、資産が消滅をいたしますので損失として処理をされるわけでございます。法人税法第二十二条第三項第三号におきましても、これらの損失につきましては寄附金に該当するのでない限り損金の額に算入されることとされております。  この場合、子会社等を整理するために親会社ですとか利害関係者が行う債権放棄や資金贈与によります損失負担につきましては、それが社会通念上やむを得ないものである等、相当な理由がある場合には、従来から税務上損金の額に算入する こととされておりまして、これは判例等でも定着している考え方でございます。  現在の住専処理のスキーム及びその策定経緯を前提として考えますと、今回関係者に生じることが予想されます債権の放棄ですとか資金贈与等による損失は、この課税上の取り扱いに照らしますと、基本的には損金として処理される性格のものであろうというふうに考えられます。  なお、こうした考えは、従来から、金融機関に限りませず一般事業法人等すべての法人に適用されている考え方でございます。
  94. 中村時広

    中村(時)委員 とすると、系統についても、恐らく今のは法人税の基本通達だと思うのですけれども、要は、子会社等を整理する際の損失拡大を防ぐための利益供与は無税扱いというこの基本通達をもとに適用されるのかなというふうに聞き取れたのですが、それでよろしいのですか。
  95. 内野正昭

    ○内野政府委員 先生の御指摘のとおりでございます。
  96. 中村時広

    中村(時)委員 とすると、系統もいわば巨額の融資を通じてある程度経営に関連していたという判断が必要になるはずなんですよね。ということは、親子関係に類似する関係というものを持ってこないとその基本通達を適用するようなことにはならないのじゃないでしょうか。
  97. 内野正昭

    ○内野政府委員 お答えいたします。  通達には確かに「子会社等」というふうに書いてございますが、この「子会社等」とは、経済的な利益を供与する法人にとりましては、供与することにつきまして事業活動としての必要性がある者を言うこととされておりまして、資本関係にある親子関係などは明白でございますが、そのほか取引関係、人間関係、資金関係など密接な関係を有する者がこれに該当することになります。  一般的に子会社等を整理する場合の損失をだれがどの程度負担するかということにつきましては、その損失規模や責任の度合いですとか分担能力等のさまざまな要素を考慮しまして当事者間で決定されるものでございまして、資本関係にない者が損失の一部を負担したからといいましても、社会通念上それがやむを得ないものである等、相当な理由がある場合には、寄附金に該当するとは言えないというふうに考えておりまして、損金に算入することとしております。  繰り返しになりますが、こうした考え方は、金融機関に限らず従来より一般事業法人等すべての法人に適用されている考え方でございます。
  98. 中村時広

    中村(時)委員 ちょっと何か納得できないのです。というのは、もう一回お聞きしますけれども、要は、系統も巨額の融資等を通じて、実質的にはないのだけれども、親子関係に類似するような関係というふうな位置づけのもとに「子会社等を整理する」云々の基本通達を適用されるのか。その点だけちょっと簡単にお答えいただけますか。
  99. 内野正昭

    ○内野政府委員 系統金融機関は、確かに直接の資本関係はないというふうに承知しておりますけれども、多額の貸付債権を有するなど、資金関係など密接な関係を有する法人でございますのでこれに該当するというふうに判断しております。
  100. 中村時広

    中村(時)委員 というのは、「子会社等を整理する」というところにこだわっているのですけれども、要は、親子関係に類似する関係判断されているのかということをちょっと明確にお答えいただけますか。
  101. 内野正昭

    ○内野政府委員 お答えいたします。  親子関係というのは一定の例示でございまして、それ以外に、密接な取引関係、人間関係、資金関係などを有する場合にはこれに該当するというふうに判断しております。
  102. 中村時広

    中村(時)委員 どうも何かその辺が使い分けをされているような気がしてならないのですね。一般的には、系統というのは住専経営には全くかかわっていない、親子関係もない、だから元本も回収されるというのは、ほかの一般行なんかと比べてもそういう優先的な扱いをされるのは当然だ、こう言い続けている。ところが、何かこの基本通達では、非常に深くかかわっているんだというようなことを物差しにしてこれを認めていくというようなことの手法を使われているような気がしてならないのですけれども、この辺、本当につじつまが合うのですか。
  103. 内野正昭

    ○内野政府委員 お答えいたします。  繰り返しになって大変恐縮でございますけれども、親子関係といった場合、要するに「子会社等」と書いてございますけれども、これは例示でございまして、必ずしも資本の直接の親子関係にある場合に限定された考えではないということを申し上げておきます。
  104. 中村時広

    中村(時)委員 それでは、もう一つ別の角度から。  系統は元本全部返ってくるのですよね。だから、その時点で終わりではないのですか。その後に贈与するわけでしょう。そうすると、その対象になるというのはどう考えてもつじつまが合わないのではないですか。
  105. 内野正昭

    ○内野政府委員 お答えいたします。  系統金融機関の貸国債権回収は、今回の住専処理スキームを前提として初めて行われると承知しておりまして、今回の住専処理スキームにとりまして必要な資金贈与ということであれば、これにつきましては寄附金に該当せず、損金に算入されるというふうに判断しております。
  106. 中村時広

    中村(時)委員 私も素人ですから勉強不足でありますので、この点についてはもうちょっと私も専門家の意見を聞いて、再度、法案が出てきたときに取り上げさせていただきたいと思います。ちょっと今の段階では、今の御答弁では消化し切れておりません。  次に、預金保険機構についてちょっとお伺いしたいのですが、間もなく法案が出てくるということでありますが、閣議決定もされていることでございますし、またその内容につきましては既に新聞にも発表されておるわけでありますので、その知る限りにおいてお伺いをしたいと思います。  この中で、預金保険機構の中に金融安定化拠出基金というのをつくられることになっております。お伺いしたいのは一点でありまして、この金融安定化拠出基金が元本割れを起こした場合、同預金保険機構の一般勘定から繰り入れ可能にする、こんなところを記事で目にいたしました。  ちょっとわからないのは、預金保険機構にプールされているお金というのは一体だれのものなのかということなのですが、理屈の上では預金保険機構のお金ということも言えると思うのですけれども、ただ、元来は、これは小口の預金者も含めて預金金利の一定の割合を、自動的というかそこはわからないですけれども、プールしておく制度ですよね。それは、使用目的も預金保険法ではっきりと明確に打ち出されているわけです。すなわち、預金者保護を図るために必要な保険金の支払い並びに破綻金融機関の合併などへの資金援助、こういう明確な目的の上にプールをするお金として、一般の小口の預金者も含めた預金者のすべての預金から一定割合を吸い上げている、こういうことでありますから、これは預金者の財産という気がするわけです。  ところが、今回の案でいきますと、それを勝手に別の目的に使ってしまえという非常に乱暴なやり方をなされようとしているわけであります。法律的にこれを追及するのは難しいのかもしれないけれども、うがった見方をすれば、預金者の財産権を国家権力で不当に侵害する行為にも当たりかねない行為ではないかというふうに思えるのですけれども、御見解をお伺いしたいと思います。
  107. 西村吉正

    西村政府委員 預金保険機構は、預金者保護あるいは信用秩序の維持を目的とした組織でございますが、今回の住専問題解決の意義から考えますならば、預金保険機構の業務の特例、この業務の特例を今回提案しております法律で決めておるわけでございますけれども、業務の特例といたしましてこの住専処理スキームを位置づけることは適当だと考えております。そのような住専処理スキームの一環といたしまして、今御指摘金融安定化拠出基金を造成し、そしてその基金の残高が拠出金の合計額を下回った場合に一般勘定から繰 り入れるというような仕組みをとっていくというのも、全体の考え方として十分説明し得るところだと考えております。
  108. 中村時広

    中村(時)委員 自分が預金者だったら、こういう形で法律がいきなり変えられた、当初の目的とは違う目的に——私はそう思うのですよ、使われるということに対しては、どうも釈然としない。いかがでしょうかね。私は、そういう声の方が預金者から上がってくるおそれがあるのではないかというふうな気がしますよ。
  109. 西村吉正

    西村政府委員 この預金者保護あるいは信用秩序の維持ということは、いろいろな手段、手法をもって追求され実現されるべきことかと思います。一つは、御指摘のように一千万円以下の保険金を支払うというような形で預金者に還元される、そのような手法を通ずることもありましょうし、あるいは資金援助という仕組みを通じてこの信用秩序の維持が図られるということもございましょう。今回の住専処理スキームというものも、その信用秩序の維持あるいは預金者保護を図るための一つの手法としてとられているというふうに理解をしております。
  110. 中村時広

    中村(時)委員 この点もうちょっとお伺いしたいのですけれども、時間があともうわずかになってしまったので、これはまた法案が出てきてからやっていきたいと思います。  最後に、法的整理という問題についてお伺いしたいと思います。  今回の住専問題というものを鳥瞰図的に眺めてみますと、責任があるなと思われるのは、極めて大ざっぱでありますが、七者ぐらいに分類できるのかな。七者というのは、一つには、住専からお金を借りて不動産投資し大損をした不動産業者の経営者。二人目は、住専、その不動産業者に貸し付けた住専経営者。そして三人目は、この住専を設立し、また役員として大半を占めていた母体行の幹部。それから、この住専に貸し付けを行ってきた一般行の幹部。そしてまた、この住専に実に借入金の四十数%という巨額のお金を貸し付けてきた系統の幹部。そしてまた行政政治。七者あるわけでありますね。  政府はしきりにこの責任者の明確化ということをうたっておりますが、政府のスキームで責任が浮き彫りになるのは、具体的にはこの不動産業者、これは当然であります。それから住専経営者、これも明らかになっていくでありましょう。しかし、ここの部分は法的整理であっても変わらないわけであります。ただ、残りの五者については、政府の案をやってしまったらその責任を浮き彫りにすることが極めて困難になるという、そういうふうな本質が見え隠れするわけであります。  西村銀行局長も、予算委員会答弁の中で、時間がかかるというふうな議論の中でこんな答弁をされているのですね。  私どもが十五年を見当に時間をかけてと申し上げておりますのは、現在の住専債務者住専との関係、これを整理をしていくということには相当の時間がかかるであろう、 こう申し上げておるわけでございます。   今議論の対象になっておりますのは、住専住専にお金を貸しているところとの関係の整理にどれくらい時間がかかるか、こういう問題ではないかと思っておるわけでございます。お金を貸しておる銀行ないしは系統金融機関住専との関係の整理の問題といたしますならば、私どもは、今回の処理案によりますれば迅速に解決できるのではないか、このように考えております。 こういう答弁をされている。  これは聞こえはいいんですよね、「迅速に解決」。しかし、本来だったら、貸し手、母体行、一般行、系統を含めたこの貸し手の間の責任明確化という問題は、民事の法廷で争う以外明確にすることはできないはずなんですよ。いろいろな責任がありますよね、行政の監督責任、介入責任あるいは紹介融資責任、さまざまな責任があるけれども、それを第三者が計量的に測定して、はい、おたくは幾ら、おたくは幾ら、こんなことはできるはずがない、私はそう思います。  だから、この政府のスキームというのは、本質の部分で、今全七者の問題を話しましたけれども、不動産業者、住専経営者以外の関係者責任を覆い隠すことの手助けになってしまう、そういうふうな結果が見えている、そう思います。いかがですか。
  111. 西村吉正

    西村政府委員 このような問題を処理する場合に、必ずしも法廷で争わなければならないということではないと思います。一番迅速で円滑でありますのは、当事者同士が話し合いをして解決できれば一番いいわけでございます。また、私どもは、そういう道をも随分と時間をかけて探りました。しかし、結果的に、そういう解決、当事者同士の解決というのはできなかった、こういうことでございます。  他方において、今回のような解決策でなくて法的な解決をとった場合の問題点は、今まで何回もお答えしておることなので繰り返しをいたしませんが、そこで、今回のような処理方策をとった場合に、御指摘のように関係者責任追及があいまいにされるかという点につきましては、私どもは決してそのようには考えません。むしろ、そういう点について明確化できるための処理方策ではないかと考えておるところでございます。
  112. 中村時広

    中村(時)委員 それはやはり論弁ですよ。紹介融資責任とか、これは行政の監督責任も踏まえて、こういうものをあぶり出すためにはやはり当事者間で訴え合うしかないじゃないですか。それを、行司役がしゃしゃり出てきて、まあまあこの辺で話し合いましようということをすれば、お互いそういうものを訴え合うという、よって立つ根拠が失われてしまうから、結局何も来ないでそのまま素通りされてしまう、こういう結果になるんじゃないですか。  しかも、私は先週の予算委員会参考人質疑を聞いていておやつと思ったことがあるんですけれども母体行は、新聞紙上でも、地銀の会長、銀行協会の会長を含めて、幾度となく、法的整理も辞さない、これはもう昨年暮れからコメントとして出していました。それは出していましたよね。それで、心配だったのは、農協系統がこれを受けられないのかな。確かに系統の言い分も一理あるんですよ。紹介融資実態とかいろいろと聞いていきますと、これはひどい話だなと私も思います。ただ、系統にはそこまでの腹はないのかなというふうな見方をしていたのですが、先週の参考人質疑におきましては、農中の理事長が、銀行が法的整理をするならば受けて立ちましようと国会の場ではっきりと明言されたわけであります。  当事者が、片や法的整理も辞さない、片やそれを受けて立とう、にもかかわらず、第三者が出てきて、まあそんなに熱くならないで、まあ熱くならないで二人とも法的整理なんかやめて税金使いましょうよと。どう考えたっておかしいですよ、これは。この当事者たちの、特に先週の予算委員会における農中理事長の発言というのは、私は極めて重大だと思います。  当事者が法的整理オーケー、こう言っているのに、なぜそこでしゃしゃり出て、税金を使いましょうよということを提案しなければならないのか。この点について最後に、この農中幹部の発言を受けとめて、撤回をし、法的整理をするということが、これはもう当事者の間でもそういうことでいいと言っているんですから、国民の声でもありますし、そのような方針に転換されることを強く要請して、私の質問を終わりたいと思います。  最後に、一分ありますから、大蔵大臣、コメントだけお願いします。今の農中幹部の発言についてどのような思いを持たれているか、その点について大蔵大臣の御答弁をよろしくお願いします。
  113. 久保亘

    久保国務大臣 質問者の方で最終的に御意見をお述べになって、それで私の方にはもう発言の機会がないんだと思っておりましたけれども、与えていただきましたので申し上げます。  この問題は、住専問題の処理に当たっての政治的な政策判断、選択の問題であると思っております。もし、今政府の方から御審議をお願いをいたしております処理策について、これがどうしても御主張のように撤回すべきものという御主張の場合、それではこの問題は、民事の問題として政府は一切関与せず放置すべきなのか、あるいは何らか、かわるべき手段はどういうことが考えられるのか、そのようなことについて私は、予算委員会でも大蔵委員会でも注意深く皆様方の御主張を伺ってまいりました。  そういう中で、今日、日本金融システムの今後を考えた場合に、国の将来にとって、また大局的に見て、国民の利益を守るという立場に立って、どういう判断、選択をすべきかということになりますれば、やはり政府が今お願いを申し上げております考え方を御理解をいただく以外にないのではないかと考えております。  その意味では、今中村さんが最終的に御主張になりましたことに対して、私が今日同意をする考えはございません。
  114. 中村時広

    中村(時)委員 本当はお伺いしたいことがあるのですが時間が来ましたのでやめますが、残念ながら農中幹部の発言に対するお答えはいただけませんでした。  終わります。
  115. 久間章生

    久間委員長 次に、佐々木陸海君。
  116. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 大蔵大臣の所信表明の中に、住宅金融専門会社の問題で次のように述べられております。  「住宅金融専門会社をめぐる問題は、金融機関不良債権問題における象徴的かつ喫緊の課題であります。」こういうふうに述べられておりますが、これは決まり文句のように繰り返されている言葉ですけれども、改めて聞いておきたいと思うんですが、まず、この「象徴的」というのはどういう意味合いで言っておられるのか、お答えを願いたいと思います。
  117. 西村吉正

    西村政府委員 象徴的存在となっているということは、私どももそのように考えておりますし、また、内外ともにそのように見ていると思います。  なぜならば、それはこの住専問題が極めて膨大な債権債務関係であり、かつ複雑に入り組んでいる、当事者も、母体行だけでも百六十八、関係金融機関が三百に上る、そのような当事者同士ではなかなか解決が難しい、日本の現在直面しております不良債権問題を前に推し進めるためには大きな障害になっている、そのような意味で象徴的な不良債権問題というふうに考えられていると理解しております。
  118. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 大臣の所信表明について伺ったのですが、銀行局長から答弁がありました。  それでは、大蔵省がこれまで発表している日本金融機関不良債権、三十八兆八百六十億円ですか、これとこの住専との関係はどうなっているんでしょうか。
  119. 西村吉正

    西村政府委員 三十八兆円と申しますのは、預金受け入れ金融機関の現在直面しております不良債権の総額でございます。この中には、住専に対する貸付額の中で破綻先あるいは延滞あるいは金利減免となっておりますものが含まれております。おおむね六兆円程度かと考えております。
  120. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 そうすると、この「象徴的」ということの意味ですけれども住専問題を首尾よく解決すれば、残りの、三十二兆円になりますか、この辺のところはそう心配なく解決をしていくものというふうに大蔵省は見ているのでしょうか。
  121. 西村吉正

    西村政府委員 先ほどお答えしたところでございますけれども、必ずしも、住専問題が解決すればすべて日本不良債権問題が解決するというものではございません。御指摘のように、四十兆円近い不良債権の総額がある。その中で住専関連の不良債権は一部でございます。しかしながら、先ほど「象徴的」ということの御説明で申し上げましたように、不良債権問題の中でも住専問題は、関係者が入り組んでいる、当事者の意欲と努力だけではなかなか解決が難しいということで、不良債権問題の中でも非常に注目されておった問題でございます。  この問題を解決できますならば、あと多大な不良債権の額はございますが、恐らく当事者の意欲と努力をもってできるだけ迅速に解決することが可能なものである、そのように考えております。
  122. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 大臣の所信表明の言葉の、次の「喫緊の課題」という言葉意味はどんなふうに解釈したらよろしいでしょうか。
  123. 西村吉正

    西村政府委員 本問題の解決を先送りいたしました場合には、住専問題に係る多額の損失の分担が確定しない不透明な状態が長期間継続することとなり、金融システムに対する信頼の低下を招き、ひいては善意の預金者に御迷惑をかけるような事態にもなりかねない。また、ようやく明るさを取り戻しつつあります景気に悪影響を与えるとともに、せっかく回復いたしました海外の金融市場における信頼を損ないかねず、日本経済に取り返しのつかないダメージを与えるおそれがある。こうした事態は何としても避けなければならない、ぜひとも早期に本問題の解決を図る必要があることから、本問題の解決を喫緊の課題であると申し上げている次第でございます。
  124. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 この喫緊性という問題も、先ほど言いました三十八兆円の問題の中でも住専が飛び抜けて緊急を要しているという理解でよろしいのでしょうか。
  125. 西村吉正

    西村政府委員 日本不良債権問題全体を早期処理を図るという観点から、この住専問題というものは喫緊の課題であるというふうに考えております。
  126. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 象徴的かつ喫緊の課題であるということで今度の処理案が提案をされているわけですが、日本不良債権の中でも本当に複雑に入り組んでいて、しかも早く解決しなければ金融システム全体に大きな影響を与えかねない。住専問題がそういう問題であるという点については私も根本的に、それは政府が言っていることはうそだと言うつもりはありませんけれども、例えば、この問題に関連して、この間の日曜日のNHKのテレビ番組などでは、与党・自民党の政調会長が、金融システムという家に火事が起こっている、だれが放火したのか騒いでいるときではない、まず火事を消すこと、消さないと経済社会全体が灰じんに帰す、こういう表現をしておられるわけですが、大蔵大臣もこれと同じ認識でしょうか。
  127. 久保亘

    久保国務大臣 どのような表現で、今日のこの不良債権が大変大きくなっております事態金融システムの安定という立場から考えるかということは、それぞれの方によって違うと思います。私は、先ほど銀行局長が御説明申し上げました、不良債権問題の象徴的でかつ先送りを許されない喫緊の課題、こういうことに尽きると思っております。
  128. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 それはわかるのですけれども、しかし、与党の政調会長がテレビの番組の中で、国民全体に響き渡るところで、この火事を消さないと経済社会全体が灰じんに帰す。確かに、住専問題、重要な問題で、象徴的で喫緊の課題であるということは私も思いますよ。思いますけれども、こんな表現をして国民をおどすようなことは適切ではないし、そしてまた、大蔵大臣、人によっていろいろ見方はあると言いますけれども、しかし、大蔵大臣はこういう見方を肯定されては私は困ると思うのですけれども、いかがでしょう。
  129. 久保亘

    久保国務大臣 山崎さんがおっしゃったことを私が論評するのは非常に難しいと思います。
  130. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 難しいといえば難しいでしょうけれども、しかし、こういう、言ってみればこれは、端的に言ったらおどしですよ。国民をおどして、そして何が何でも六千八百五十億円、国民への負担を押しつける、こういうやり方は本当に少し行き過ぎではないかということははっきりと申し上げておきたいと思うのです。  そして、象徴的かつ喫緊の課題だということを、山崎さんの言われるような意味でないにしても認めるとしても、それではそれに対する対処方法、当然、私たちは民間の法的処理に任せておけばいいという立場ではありません。政府が乗り出して関与すべきだとは思いますよ。しかし、関与の仕方もいろいろあるわけでありまして、公的な関与イコール公的資金の支出ということには絶対にならないはずだと思うのですが、その辺、論理的に大蔵大臣どうお考えですか。
  131. 西村吉正

    西村政府委員 私どもも、財政措置を講ずるということが避けられればそれにこしたことはない、そういうことを避けられないかという努力は随分と時間もかけ、いろいろな場を通じて努力をしてきたところでございます。  しかしながら、今まで何回か御説明しておりますように、関係者の間で最大限の努力を求めましてもなお解決できない部分がある。この部分を放置してこの問題を先送りをするか、この問題の緊急性、緊要性を勘案して財政資金の投入をお願いするか、この選択を迫られた結果、一日も早い問題の解決が重要であるという結論に達した、こういうことでございます。
  132. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 きのうからのここの議論の中でも、政府がこういう処理方策を発表したことによってジャパン・プレミアムも〇・五から〇・〇幾つに減ったとか、あるいは株価の方も少し上向いてきたとか、景気もいい芽が見えてきたとかということが言われているのですけれども、これは公的資金を出すことを決めたからそうなったという単純なものではなくて、要するにこの住専問題、この象徴的かつ喫緊の課題に日本政府が乗り出して解決をするという方向をはっきりさせたということに対する評価であって、別に公的資金がこの中に入っていようがいまいがそれは関係のないことだと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  133. 西村吉正

    西村政府委員 もし、こういう方法をとらずに、よりよい方法によって住専問題を解決することができれば、それは一つの解決方法だと考えております。  しかしながら、先ほど申し上げましたように、関係者の間でぎりぎりの努力をし解決策を探求したところ、これ以外にこの問題を先送りせずに解決する方法がないという結論に達した、こういうことでございます。
  134. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 関係者がぎりぎりと言うのですけれども国民負担をさせられるわけでありまして、国民は納得はしていないのは事実でありまして、関係者のぎりぎりの結論だと言われても、それを受け入れるわけにはいかないわけであります。  そこで、この住専の問題で、この法案というのかこの処理方向を決めた当時の最高責任者であった村山前首相も、真相解明を先送りにして決定したその手順は順序が逆だったというふうに言っていますし、それから久保大蔵大臣自身も、責任をさらに明確にしていかなければいかぬということを繰り返し強調しておられるわけです。  この住専問題での責任、それはいろいろそれぞれの責任があるでしょうが、既に我々は今日までの議論の中でも、母体行の責任というものが、詳しくは説明しませんけれどもとりわけ大きいということを強調してきましたし、これは大蔵大臣自身も強調していることですし、与党の中でもそういうことが大いに強調をされているわけですが、そういう論議の中で母体行の責任というものがより大きくなってきたとしても、このスキームを決められてしまっていれば母体行にこれ以上負担をさせることができないというものを押し通した上で、母体行の責任母体行の責任と幾ら声高に叫んでみても、それは結局意味をなさなくなってくるのじゃないか。その点についてはどうお考えでしょうか。
  135. 西村吉正

    西村政府委員 この処理案の中には、今御指摘のような意味におきまして、もし法的な責任があるという者がいるならば、そのような責任追及損害賠償請求をし、その結果として住専処理機構に資金が入ってまいりますならば、それを国庫に還流するような方策をも講じているところでございます。  この処理案全体を見渡していただきますならば、事前に追及するというだけではなくて、この処理を進めていく中におきましていろいろな方法、これは民事、刑事両面を含めまして責任追及していくというプロセスが組み込まれているということは御理解いただけると思います。
  136. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 それはおかしいと思うのです。つまり、民事とか刑事とかあるいは損害賠償とかという問題以前に、今のスキームそのものだってそれぞれの一定の責任というものが背後にあってそれでこういうものが決まってきているわけですから、それを一たん決めてしまった上でその上に少し何か継ぎ足そうというような責任のとらせ方では全然国民は納得しないし、それは筋が通らない、私はそう思いますが、大蔵大臣はどうでしょうか。
  137. 西村吉正

    西村政府委員 今回のスキームにつきましても、例えば母体行に関しまして、住専の設立あるいはその後の経営等に関与いたしましたそのようなかかわりをも考え合わせまして、全額放棄というような分担になっているわけでございます。  したがいまして、今回の処理方策自体が当事者それぞれの立場責任、関与というものを反映したものであることはお認めいただけると思いますけれども、さらにこの処理策を実施してまいります過程の中で明らかになることがございましたら、そのような局面において責任追及損失の分担を追加していくというようなプロセスも、この処理案の中に含まれているということを御理解いただきたいと申し上げたわけでございます。
  138. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 やはり順序が逆だということを申し上げざるを得ないのであります。  例えば、九二年ですかの夏に、当時の政府から、不良債権問題での一つの解決策みたいなものが当時の首相あるいは大蔵大臣から打ち上げられたこともありました。そこでももう最初から公的資金という問題が言われていた経過がありますし、さらに記録を見ますと、昨年十月のG7会議の中でも、当時の大蔵大臣は武村さんでしたけれども公的資金ということを最初から言っておるわけですね。  だから、公的資金政府が出す腹でこの問題の解決に乗り出そう。最初から政府の関与ということは公的資金の支出ということを不可分一体のものとして問題を提起しているから、ぎりぎりの交渉だ、ぎりぎりの交渉だなんて言っても、政府にも一定程度出してもらえるのだという腹が最初から母体行にもあったわけで、だから、そういう解決ではなくて、最初に公的資金ありきというような形の問題の提起ではないスキームを初めから考えるべきであったので、もともとボタンをかけ違ってここに来ているのだ、だから国民も怒っているのだということを申し上げたいと思うのですが、大蔵大臣、ひとつ答えてください。
  139. 久保亘

    久保国務大臣 私の知ります限りでも、昨年の春ごろからこの問題については経済対策閣僚会議等におきましても議論が続けられてきたのでありまして、その中では、公的資金の導入を図っても公的関与を行ってこの問題を解決しなければ、これ以上先送りをすると大変な事態になるという認識のもとに議論が繰り返されてきたと思っております。  最終的には、特に与党三党のプロジェクトチームは、十一月の末まで二十回にわたる会議を、協議を続けまして、そして十二月一日にガイドラインを発表いたしたのでありますが、その段階でも公的資金の問題についてまだ議論が続いていたものと私は思っております。最終的には、十二月十九日の閣議において公的資金の導入を決断をする、こういうことになったものと思っております。
  140. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 ともかく最初から公的資金を出すという話はあったわけですよ。そのもとで政府が乗り出して関係者の合意を図ったというのですけれども、ぎりぎり、ぎりぎりという言葉がはやり言葉になっておりますけれども、そういう前提のもとでのぎりぎりですから、これは本当に納得できないし、いろいろな議論の中で明らかになってきておる母体行の責任というものをもっとはっきりさせて、体力もあることもはっきりしているわけですから、やはりこの六千八百五十億円は母体行にきちんと足りない分は負担させるという方向で解決を図るべきであるということを申し上げておきたいと思います。  国税庁も来ておられるようですので、一つだけちょっと聞いておきたいと思いますが、一月二十五日付の朝日新聞の夕刊、これは関西版ですけれども、大阪の国税局が被災者に、一万一千三百人くらいですか、一たん簡易計算で適用したものを適用できないということにして修正申告を求めたという記事がございますが、これについての経緯を簡単に説明していただきたいと思います。
  141. 内野正昭

    ○内野政府委員 お答えいたします。  所得税の計算に際しましての雑損控除の適用に当たりましては、災害により被害を受けた住宅または家財等の資産の損害額の計算につきまして、被害のあったときの時価を基礎として個々に損害額を計算することとされております。  ただ、先生御承知のように、阪神・淡路大震災におきましては、被災された方が多いことや被害が甚大であったことなどによりまして、被害を受けた資産につきまして個々に損害額を計算することが困難な場合が多いというふうに考えられましたところから、大阪国税局におきまして、納税者の便宜を考慮し、簡易な計算の方法により損害額を計算してもよいというふうに取り扱ってきているところでございます。  これは、マンションなど住宅に係る損害額の算定につきまして、簡易な計算の方法による場合には、ある程度大きな被害を受けた方を対象に、被害を受けた住宅の柱や床、屋根などのいわゆる主要構造部に受けた被害の程度によりまして一定の被害割合を乗じて計算をすることとしておるところでございますが、主要構造部に損壊を受けているかどうかが、この簡易な計算の方法で損害額を計算していただいてよいかどうかの判断基準となっているわけでございます。  簡易な計算の方法で損害額を計算していただいてもよい場合には、最低でも被害を受けた住宅の時価の二〇%相当額が損害額として算定されることになっているわけでございますが、申告をされた方の中には、主要構造部に損壊がなく、例えば窓ガラス等が壊れた程度といった場合におきましても、主要構造部に損壊があるとして、この簡易な計算の方法によりまして損害額を計算して申告をしているケースがございました。  このため、納税者間の公平を図る観点から、このような方につきましては、個々の資産の損害額の積み上げにより損害額の算定をしていただくようお願いしているところでございまして、当初申告時に計算された損害額が誤っていた場合には、修正申告書の提出をお願いしているところでございます。先生御質問の報道につきましては、このことについて取り上げられたものと承知をしております。
  142. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 要するに、この一万一千三百人の方については、最初は簡便法で受け付けていたんだけれども、それが不適切ということで修正申告をしてもらっているということになったということですね。
  143. 内野正昭

    ○内野政府委員 お答えいたします。  ただいまお答えを申し上げましたように、当初申告時に計算をされた損害額が誤っていたケースにつきまして修正申告書の提出をお願いしているわけでございます。
  144. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 しかし、当初は一応罹災証明書で認めていたわけでしょう。
  145. 内野正昭

    ○内野政府委員 震災直後の時点におきましては、市役所等の発行いたします罹災証明書を添付しているケースにつきまして、早いうちに申告があったものにつきましては一応申告書を受理しておるケースがございました。  その後につきましては、この罹災証明書につきまして、必ずしも、先ほど御説明を申し上げましたように、建物の例えば主要構造部につきまして何らの損壊を受けていないケースにつきましても、例えば窓ガラスが割れていた程度のケースにつきましても罹災証明書が発行されていたケース等もございました。  マンションにおきまして、ある居住者の方につきましては、窓ガラス等が壊れたので、例えば五万円の雑損が生じたというようなことで申告をしてまいります。ある方につきましては、この罹災証明書をつけて、最低でも二〇%相当額の損害額を算定されまして申告書を提出したケースもあったわけでございます。  私どもといたしましては、その後、実情等を調査いたしまして、納税者の公平を図る観点から、当初申告時に計算されたこの損害額の算定が誤っていたケースにつきまして修正申告書の提出をお願いしているわけでございます。
  146. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 去年の五月九日に私はここでこの問題で質問をいたしましたときにも、課税部長は、マンションなんかで複雑な構造物の場合に、専門家の調査や診断結果が無理な場合は無理であるということで、特段の調査結果を示す書類がなくても簡便法を適用していただいて結構であるということでそれを受け付けてきたわけですから、それをある一部の人たちに対しては途中から変更することになったということですね。
  147. 内野正昭

    ○内野政府委員 繰り返しの説明になって恐縮でございますけれども、この簡易な計算の方法で損害額を計算していただいてもよい場合といいますのは、先ほども申し上げましたように、いわゆる主要構造部に損壊を受けているかどうかという点がポイントになるわけでございます。  したがいまして、例えば、窓ガラス等が壊れたということで、あの混乱時におきまして、罹災証明書がつけられていて申告書を仮に受理をいたしたケースにおきましても、他の納税者との関係におきまして、明らかに主要構造部に損壊を受けていない場合、すなわち、この簡便な計算法が適用を予定していないケースにつきましてこうした申告書が提出されている場合には、私どもとしては修正申告書の提出をお願いせざるを得ないこととなるわけでございます。
  148. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 この記事によりますと、大阪国税局は、もうこれで頭を下げてお願いするけれども、あくまで修正を拒否されれば是正せざるを得ないと、かなり強い姿勢も示しているようですけれども、そんなことをしないように、やはり被災者のためのこういう法案をここでも審議して決めたわけですから、できるだけ趣旨にのっとった弾力的な運用をして、運用のトラブルが起こらないように努めていただきたいということを要望しておきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
  149. 内野正昭

    ○内野政府委員 私どもといたしましては、納税者間のあくまでもバランスを欠き課税の公平を失する場合につきまして修正申告を出していただきたいということでございまして、今後とも、先生御指摘のように、納税者の心情にも十分配慮をいたしまして、個々の具体的な内容に応じて適切に対処してまいりたいと思います。
  150. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 終わります。
  151. 久間章生

    久間委員長 次回は、来る二十三日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後九時十七分散会