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小野委員 先ほどの大臣の答弁の中に、やはりこういう
時代は新しいものへの挑戦をしながら前向きに切り開かなきゃいけないんだ、この御
指摘は私も同感でございますけれ
ども、この新しいものへの積極果敢な挑戦というのは、やはり相当の危機意識から発するものでなきゃならないというように私
どもは
考えております。
しかしながら、この現在の
日本の風潮を見ておりますと、本当の
意味での危機意識が社会全体からあふれ出てきているかというとそうではなくて、非常に安易なスローガンが打ち立てられて、そのスローガンが大きな何かバラ色の未来を約束するかのように語られて、非常に危機意識を避けて、楽観的に物事を見過ぎているのではないかというような気持ちがするところが実はあるわけでございます。
先ほど、
田中長官のことを参謀長というようなことで申し上げたわけでございますけれ
ども、かつて
日本の歴史の中で、名参謀ということで名前を挙げるとするならば、やはり日露戦争のときの児玉源太郎等の活躍だろうと思いますけれ
ども、先日亡くなられました司馬遼太郎さんが、こんな文章を残しているのですね。
日本海海戦勝利を経て、
日本がロシアに勝利した後、大山巌、児玉源太郎は、早期講和を戦勝にうかれる東京に要請した。
それは、彼らが
日本の国家は、まだ、ひ弱なものでしかないということを、徹底的に
認識していて、それを
戦略と政略の基礎にしていたからである。それだけではなく、彼らは自分達こそが、
日本国家を作ったという
実感があり、国に対して薄いガラスの器を扱うような感覚があり、それに対する責任意識も強い。
弱者だから、常に臆病で、常に危機感があり、綱渡りのように、一歩踏みはずしたら奈落の底だという意識が、彼らをして、知者たらしめた。という文章でございまして、この十数年来、
日本の国の中での
国民の意識というのは、
日本は
経済大国であるという、実質がどこにあるかということを別にして、
数字的にあらわれる個人当たりのGNPが世界のトップクラス、場合によれば、トップになったと言っていいと思いますけれ
ども、そういう
部分的なものにとらわれて、
日本は既に強国になったんだというような意識が、
日本の国における危機感を失わせてしまっている
部分があるような気持ちがしてならないのでございます。
先ほど、二
正面作戦の問題を少し取り上げさせていただきましたけれ
ども、この二
正面作戦というのは、外部に対して
日本の持つ国力を二つに分けて対応しなきゃいけないという問題であると同時に、国内的に見るならば、相矛盾する二つの要素をこの
日本の国内に抱え込まざるを得ないという問題でもございまして、非常に国内的
対策を
考える中でも問題の多い
作戦になってくる。それだけ
政策立案をし、それを引っ張っていくというところには強いリーダーシップが求められることだろうと私は思っている次第でございます。
具体的なところを申し上げますと、ウルグアイ・ラウンドの交渉の最中も、国内は世論が二分された
部分があったと思いますね。先進的な自動車産業だとか電子工業だとかいう分野においては、これは自由化をどんどん進めていくべきであるというのに対して、農業者等におきましては、なぜ先進的な産業のために自分
たちが犠牲にならなきゃならないのかというような形の問題が表面化してきたわけでございます。
それらの矛盾や摩擦というものを
日本の
政策当局としては、自由化や自己責任というのが世界の潮流である、それがルールであるということで割り切りながら進んでいこうとされたわけでございますけれ
ども、結果的に見ますと、社会的には非常に殺伐とした雰囲気がこの国内に広がりつつあるなということも一面の問題として私は
感じてきている次第でございます。
先ほど申しましたとおり、
日本社会においては、困難に遭遇したときにスローガンが打ち立てられて、それが今回の場合、自由化であり、
規制緩和であり、自己責任というような
言葉になろうかと思いますけれ
ども、それを掲げて、その方向に進みさえずればさまざまな問題が解決できるというようなアピールをして、それ以上
議論を深めることなく進んでいこうという取り組みがかいま見られるところがあるわけでございますけれ
ども、私は、こういう取り組みをしていくときに、そのものばかりにこだわって進んでいくと、非常に危険なものもあるはずだ。
先ほど申しました日露戦争においては、参謀が、国というのは非常にもろいガラスの器であるという
認識を持ちながら誘導すればこそ、あの難しい国際情勢の中で
日本の国の生きる道が見つかったわけでありますけれ
ども、
日本の国は戦えば必ず勝つ、困難に遭えば神風が吹く、こういうことを言い始めた段階からの
日本の国というのは、非常に、戦いにおいても
国民に偽った情報を流しながら、とにかく負けるとわかっても突き進むような乱暴な
政策がとられていくわけでございまして、
日本の現在の
経済政策の中におきましても、マイナス面を十分に
認識をしながら、弱さを知りながら進む
部分というのを大事にしなきゃいけない。
ですから、無制限に自由化が善なんだとか、
規制緩和をどんどんすべきだとか、こういう乱暴な
議論に対してはやはり常識を持った対応が必要だろうと
考えている次第でございます。
昨年の十二月は、構造改革のための
経済社会計画ということで
一つの大きな計画が打ち出されておりますが、それも、先ほど言いましたスローガン主義を私は
感じてしょうがないのですね。
この点につきまして、大臣は、こういうふうな行き方について、マイナス面についての御
認識をどのようにお持ちになられながら推進されようとしておられるのか、この点について
お尋ねをしたいと思います。