○正森
委員 今御答弁がありましたが、私の方の資料でそれをさらに明確にしますと、例えば戦後間もなくの昭和二十一年十月二十六日に発表されな
米国陸軍、国務省から
日本に派遣された
日本財閥調査使節団の報告書というのがあります。それにはどう書いてあるかといいますと、
財閥が
日本経済に及ぼしていた支配力は他の如何なる資本主義的産業国家にも類例がない程厖大であった。一九四四年現在、十七財閥が所有した払込済資本金は、
日本の全株式会社の払込資本の殆んど四分の一におよんだ。更に各個の産業についてみれば、この支配力は一層顕著であって、十五財閥傘下の生産額が各産業において占めた比率は次の通りであった。すなわち石炭五一%、アルミニューム六九%、紙・パルプ五〇%、レーヨン二〇%、蒸気機関八八%、蒸気機関車六九%、絹糸五〇%、化学染料四九%、火薬三〇%、このほか財閥は普通銀行の資本金の五七%、貸付金および貸越金の七一%を占め、又貯蓄銀行の資本金の九九%、信託会社資本金の六九%、火災保険会社資本金の七四%、生命保険会社資本金の三八%を有していた。
こう言っております。そしてその後で、三井財閥や三菱などを例に挙げまして、その中で持ち株会社が果たした役割について詳細に論じております。
御承知のことと思いますが、この調査団の団長を務めましたコーウィン・エドワーズという人が論文を書いております。その論文の中でこう言っております。
日本の対外侵略に対する財閥の責任は、人的なものではなく主として
制度的なものである。すなわち
個人の財閥の
組織が軍事的侵略に都合のよい手段となったのである。
日本の産業は
日本政府によって支持され強化された少数の大財閥の支配下にあった。産業支配権の集中は労資間の半封建的関係の存続を促し、労賃を引下げ、労働組合の発展を妨げて来た。また独立の企業者の創業を妨害し
日本における中産階級の勃興を妨げた。かかる中産階級がないため、
日本には今日まで
個人が独立する
経済的基盤が存在せず、従って軍閥に対抗する勢力の発展もなく、ために他国では軍事的意図に対する反対勢力として働く民主主義的、人道主義的な
国民感情の
発展も見られなかったのである。さらにかかる特権的財閥支配下における低賃金と利潤の集積は、国内
市場を狭あいにし、商品輸出の
重要性を高めかくて
日本を帝国主義的戦争に駆りたてたのである。
日本財閥は政府の庇護の下にあったため、陸軍および海軍が政府の政策を壟断することに反対する意志はあったにせよ、自己の弱体を知っていた財閥は、政府に対して強硬な態度を取ることができなかった。その結果必然的に財閥は外交政策上政府の手足となった。かかる財閥が
日本国家に対する忠誠のためのみでなく、自己の利益に忠実に働くことを念願としたことは当然といわなければならない。上述せる結果をもたらす財閥の特権形態を破壊し、他の民主主義諸国の如く軍国主義者に依る政府支配に対抗し得る
グループを育成することが
米国の対日財閥政策の
中心目的である。
こう言っております。これはもちろん
アメリカ側から見た見解でありますが、現在から見ても、当時の財閥の
状況や、それが
我が国の
経済及び社会に果たした役割を一定程度評価している、こういうように言わなければならないと思います。
そこで、現段階ではどうかということを伺いたいと思います。
今、同僚
委員からも
質問がございましたが、公取は、少なくとも昨年の五月ごろまでは、持ち株会社の全面解禁などというのは到底考えられないと思っていたのではありませんか。
例えば、私が持ってまいりましたが、おたくには企業課という課がございますか。その企業課長に舟橋和幸という人がおられたようであります。この人が、去年の三月二十四日に
日本経済新聞に「持ち株会社
禁止は必要」という論文を出しております。それからまた、もう
一つ持ってまいりましたが、
日本経済研究センターの一九九五年七月一日の会報には、同じ方が、五月三十日に開催されたシンポジウムだろうと思いますが、そこで意見を発表しております。長いから多くは述べませんが、現段階でも
日本経済において持ち株会社を
禁止する十分な、相当の理由があるということを詳細に述べております。この一部を引用しますと、
市場メカニズムが十分に
機能するためには、個別の商品・役務だけでなく、
経済全体としても特定の事業者に事業支配力が集中し、複数の
市場にわたってその影響が及び事業者の自由かつ自主的な判断が制約されないようにすることが必要となる。持ち株会社は、その
機能が他の会社の事業
活動支配そのものであり、かつ、それ自体が
経済力集中の手段である。そのため、事業支配力の過度の集中をもたらし、
市場メカニズムを阻害する恐れがある。よって、
独禁法ではこのような持ち株会社のもつ性格に注目し、その手段自体を
禁止しているのである。
こう言った上で、
わが国では、
法人による株式所有がほとんどで、上場会社の約七〇%が金融
法人・事業
法人によって所有されている。
念のために大蔵を通じて全国証券取引所協議会の所有者の分布をとりましたが、それに符合しております。大蔵の人に聞こうと思いましたが、その必要はないと思いますので、聞かないことにします。
これは
個人所有の株式比率が五〇%を超えている
米国と
比較すると、異常ともいえる高い比率である。
ちなみに
日本では二三%程度であります、
個人所有が。
また、企業総数では〇・〇〇九%を占めるに過ぎない上位二百社が、金融業を除く全
法人企業が所有する株式の四分の一を所有しているという実態もある。
これはまさに戦前の財閥と同じぐらいの比率に達しているということであります。
更に、六大企業集団(三井、三菱、住友、芙蓉、三和及び第一勧銀
グループ)の株式所有と
グループ内取引の関係には、明らかに正の相関が見られ、株式の相互持ち合い関係が深くなればなるほど、
グループ内との取引が多くなっている。もし、持ち株会社が解禁されれば、これまでの横並びの持ち合いの関係から、更に、持ち株会社を頂点とした垂直的な関係にシフトすることによって、むしろ系列を強化することにつながるであろう。
こう言って、これは、
わが国が取り組んでいる
市場開放や公正かつ自由な
競争の促進への流れに逆行することになるのではないだろうか。
こういうように言った上、
外国では持ち株会社解禁が多いという議論に対して、これは非常に短絡的な議論だとして、
持ち株会社解禁の是非については、前述したような
日本の持ち合いなどの株式所有の
状況や「系列」・企業集団の存在を考えなければならない。
日本と同様に企業集団の存在が認識されている韓国では、持ち株会社が
禁止されている。
云々、こう言っております。
これは私は、一企業課長の見解ではない、こう思っております。なぜかならば、去年の三月六日に参議院で
質問が行われましたが、その中で小
粥委員長自身がこれと全く同種の答弁をしておられます。ここに議事録がありますが、私は時間の関係であえて読みません。
少なくとも五月段階まではこういう見解だったのではありませんか。