○菅国務大臣
病原性大腸菌O157による食中毒の
発生状況及びその対応、この関連について御
報告を申し上げます。
まず、このO157の食中毒に関連いたしまして、多くの皆さんが食中毒にかかられ、あるいは中には亡くなられた方もおられまして、そういう点について本当に心からお悔やみを申し上げたいと思いますし、感染されている皆さんには一日も早い回復をお祈りをいたしたいと思います。同時に、こうしたことに対応して、
厚生省も精いっぱい対応してきたつもりでありますが、必ずしも拡大が防げなかったことについては大変遺憾だと思っておりまして、おわびを申し上げたいと思っております。
病原性大腸菌O157といいますのは、赤痢菌と類似の毒素、ベロ毒素を産生する大腸菌の一種でありまして、
昭和五十七年、一九八二年に
アメリカにおいて、ハンバーガーを
原因とする集団下痢症で初めて見つかったものであります。我が国では、
平成二年十月、井戸を利用した飲用水が感染源となり、集団
発生をした例があります。これは埼玉であったと思いますが、
発生をいたしました。その後、毎年、集団
発生や散発的な
発生が
報告されております。
この菌は、家畜等のふん便中に時々見られる菌であり、本菌に汚染された食品等を通じて人に感染するおそれがあるものであります。感染後、四日から八日ないし九日の間潜伏するというふうに見られておりまして、その後、腹痛や水様性の下痢に続き出血性の下痢等の
症状を呈することがあります。
健康な成人では、一般的には自然治癒するケースが大半でありますが、昨日、京都では成人で亡くなられる方が出ましたので、必ずしもそうではないということも明らかになってまいりました。乳幼児などでは、溶血性尿毒症症候群など重篤な合併症を引き起こして、死に至る
可能性があるわけであります。後ほど申し上げますように、現在、その京都の例を含めて五人の方が亡くなっておられます。
予防対策としては、手指や調理器具の洗浄、消毒や食品の十分な加熱などが効果的でありますが、万一、感染、発症した場合には、すぐに
医師の診療を受けるとともに、
患者のふん便の衛生的な処理等、二次感染防止対策を徹底する必要があるわけであります。
本年の
病原性大腸菌O157による食中毒の
発生状況について述べさせていただきますと、
平成八年五月二十八日、岡山県邑久町において、保健・所に食中毒様
症状患者の届け出がありまして、五月二十九日に食中毒菌、このO157を検出、同町においては、現在まで四百六十八人の
患者、つまり有症者が
発生し、うち二人、いずれも小学校一年生の女の子でありますが、二人の方が亡くなっております。
しかし、残念ながら、このケースにつきまして、どの食べ物から感染したかということが、いろいろ調べたわけですけれども、どの食材によって引き起こされたかということがまだっかめておりません。
その後、O157による食中毒は一都二府三十五県で
発生し、七月二十二日、昨日の十八時現在、有症者累計八千三百十四名に上っており、入院中の者が五百六十五名、亡くなられた方が五人に及んでおります。
なお、この中で、堺市については、七月二十二日十六時現在、有症者累計六千三百三十三名、入院中の者四百七十八名、まだ幸いにして亡くなられた方は出ておりません。
厚生省の対応といたしましては、まず本年までの対応ということでは、
平成二年の埼玉県浦和市における
発生に対しては、
専門家による
会議からの
意見を踏まえ、
発生状況等の
実態把握に努めるとともに、当時
原因となった井戸水による飲用水の衛生管理について全国的な徹底を図ったほか、あわせて、食中毒の
発生防止について監視指導の充実を図ってまいりました。
さらに、
病原性大腸菌O157の早期発見のために重要な検査法に関する講習会を開催し、地方衛生研究所への普及に努めてまいりました。こういったことで、
患者さんから出る便の検便等については、現在、各地方衛生研究所へ持っていっていただければ
基本的には検査ができるという体制になっております。
本年の一連の
発生に対する現在までの対応につきまして申し上げます。
これまで、文部省、関係団体と連携をとりまして、全国の都道府県等の
行政機関や関係団体に対する
病原性大腸菌O157による食中毒防止の徹底の要請をいたしました。
食品衛生
調査会食中毒部会の中に大規模食中毒等対策に関する分科会を設け、さらに、腸管出血性大腸菌に関する
研究班においても対策の検討を
行っていただいております。
また、テレビ、インターネット等を活用した国民の皆さんに対するPR活動を行っております。
さらに、医療機関に対する
治療方法や予防方法の周知徹底なども実施をいたしております。
また、
厚生省に対策本部を設けまして、検食
期間を暫定的に一週間に延長することを決定し、周知徹底を図ってまいりましたが、後ほど
報告いたしますように、現在はそれのさらなる延長を決定をいたしております。
また、堺市における大規模な
発生に対しては、
厚生省から人員を派遣し、堺市、大阪府、
厚生省から成る
病原性大腸菌O1157食中毒
原因究明三者連絡
会議を設置し、
原因究明、二次感染の防止、医療体制の整備に当たっているところであります。
多くの
方々が発症している堺市における医療体制については、大阪府なども
協力し、万全の体制を組んでいるところであり、
厚生省も、
治療経験のある専門医を現地に派遣するなどの支援を行っているところであります。
今後の対応といたしまして、昨日七月二十二日に、腸管出血性大腸菌に関する
研究班においてさらに検討していただいた結果、検食の保存方法につきまして、マイナス二十度以下で二週間以上保存することとする検討結果が示されまして、本日夜開催される食品衛生
調査会食中毒部会において審議されることになっております。
潜伏期間が長い場合は八日とか九日ということですので、一週間では足りないということもありますし、また、長
期間の保存ですので、これまでの冷蔵による貯蔵から冷凍による貯蔵ということで、マイナス二十度以下ということにしたいということの
趣旨であります。
また、七月二十九日には全国食品衛生
行政担当者緊急
会議を開催するとともに、夏期食品衛生強化月間を七月だけではなく八月にも延長し、監視指導の強化などを図ることといたしております。
原因究明の
状況につきましては、O157による食中毒の
原因究明に当たっては、どの食材が、どの段階でO157に汚染されたかといった感染ルートの解明が最も重要な課題であると
認識しておりまして、全力を挙げて取り組んでいるところであります。
具体的には、
病原性大腸菌による食中毒が
発生した都道府県等において、食中毒の
原因となった
可能性のある食材の流通経路を全国的に、かつ早急に
調査を実施しているところであります。
こうした
原因究明の努力の中で、七月二十日土曜日に、神奈川県内で
病原性大腸菌O157による食中毒を発症した
患者が食べたと思われる同県下の飲食店から持ち出しました牛のレバーから、
病原性大腸菌O157の検出が確認され、
厚生省、神奈川県から公表したところであります。
今後、この神奈川県の事例も含めて、流通経路を
調査し、
厚生省及び全国の都道府県等が
協力して、
関係者への立入検査を実施するなど、
原因究明を実施したいと考えております。
なお、この件につきまして、私も先週の火曜日に堺市の方に行ってまいりまして、実際の給食のプランを練っておられるところにも行き、その食材のリスト、あるいはその食材が購入されている業者が幾つあるといったようなことも聞いてまいりまして、この中にも述べましたように、これは市だけで対応していただくには余りにも大きな問題であると考えまして、府と
厚生省の方で第三者機関を設け、今、すべての食材がどういうルートで来ているのかということを確認した上で、それぞれについて
調査の指示を出し、さらに、
調査を実施した結果を順次待っているところであります。
これにつきましては、食品衛生法に基づく
報告命令ということもあるいは必要になるかということで今検討を始めておりますが、現在までのところは、それぞれの自治体、それぞれの省庁の
協力のもとに進めているところであります。
また、官邸におきましても、総理が大変心配をされ、早い段階で農林省や文部省を含む対策推進
会議を官房副長官のもとでつくっていただいておりまして、きょうもその
会議が行われ、そうした結果を踏まえて、総理の方からもあるいは
発言があるというふうにも漏れ聞いているところであります。
なお、この菌がもともと
アメリカの方で発見されたという経緯などから、
アメリカのCDCに対してもいろいろ問い合わせを出しておりますとともに、近く厚生科学
会議を開いて、その
専門家会議の中に、米国国立保健研究所微生物学感染症課長、NIHというのでしょうか、そこの課長が今来日されておりますので、その方にも御出席をいただいて、
アメリカにおけるこの菌のいろいろな知識についてもいろいろお聞きをしたいというふうに思っております。
また、これは食中毒であると同時に、いわば感染症、つまり伝染病としての要素も大変強く持っておりますので、
厚生省内でいえば、生活衛生局だけではなく保健医療局もあわせて全力を挙げて対応するように特に指示をしているところであます。
こういったことで、各省庁の御
協力やあるいは総理の指導を含めて全力を尽くしているわけですけれども、残念ながら、どの食べ物からこのO157が口に入っていくのかという点では、これまでの中では
二つだけ検出がされております。岐阜における、おかかサラダから検出されたものと、川崎の先ほど
報告した牛レバーから検出されたもの以外は、まだ食べ物の方からは検出ができておりません。
これは、ないのか、あるいはあっても微量であるために検出できないのか、そういったこともまだ確たることが申せませんが、とにかく感染経路を明確にしないことには
根本的な対策もなかなかとり得ませんので、とにかく危ないと思われるものについてはできるだけのことをやっていきたいというふうに思っております。
また、国民の皆様には、まずは、一般的に言えば、肉等においては十分熱を加えて食べていただくこと、あるいは手や包丁などをよく洗っていただくこと、あるいは水なども場合によっては煮沸をして飲んでいただくことなど、それぞれ御注意をいただくこと、また、
患者さんが
発生した場合にはその第二次感染を防ぐための対応を確実にやっていくこと、こういうことをお願いいたしたいと思っております。
若干長くなりましたが、御
報告とさせていただきます。