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塩川参考人 木村
委員から、私の本まで詳しく読んでいただいたということで、まことにありがたいというように思っております。
私
自身、この
エイズの問題に
関係しまして、
昭和五十八年からでございまして、非常に長い間たっておりますが、その間にこの
エイズについての学問的な
知識というのは、もう初めと終わりは大変変わっております。この
昭和五十八年というような
段階におきましては、本当に原因もわからない、治療法もわからない、その本態が全くわからなかった病気であったわけでございます。そういうところから始まりまして、現在、もうかなりよくわかってきて、まだわからないところもありますけれ
ども、そういう
状況まで来ている次第でございます。
この第一号症例というお話でございますけれ
ども、これにつきまして、今ここに比較表をいただいておりますけれ
ども、
エイズの診断につきましては、「診断の手引き」というものがございまして、これはよく調べてみましたら非常にたくさんございます。これはやはり学問の進歩に伴って次々に改定されてきているわけでございまして、現在は、非常にわかりやすい、診断のしやすい手引になっております。いわゆる順天堂大症例が認定されたという
昭和六十年のところでございますけれ
ども、このときは
昭和五十九年三月の「AIDSの臨床診断の手引き」、これは
研究班の
報告書に出ておりますけれ
ども、これに基づいて認定をしたわけでございます。
認定の詳細でございますけれ
ども、簡単に申しますと、このときは、この
エイズという病気は主として原因不明の細胞性免疫不全によって特徴づけられた疾患で、下記のごとき点が診断に役立つというふうに書いてございます。ですから、そういうことでこの症状に基づいて
判断するということになっておりますが、この詳しいことは省略いたしますけれ
ども、「臨床症状」というものが3のところに出ております。
一つは「全身症状」、発熱、盗汗、まあ寝汗、リンパ節腫脹、肝・脾腫、食欲不振、下痢、体重減少というようないろいろな症状がまずあるということでございまして、この順天堂大症例は、ごらんのとおり、著しい疲労感、リンパ節腫脹、関節痛、筋肉痛、血小板減少というような一般的な全身症状がございます。
それから、第二に「臓器症状」というのがございまして、これには日
和見感染ということが書いてありますが、その中で細菌、真菌、ウイルス等の多臓器の感染症というのが載っておりまして、この症例では単純性ヘルペス、その他のカンジダ症、そのほか血小板減少性紫斑病というものが載っておりまして、こういう症状を伴っているということで
エイズと診断するということになったわけでございます。
また、このときには既に抗体検査が行われるようになっておりまして、一番最後にありますように、
エイズのウイルス抗体検査がございます。
この時点の
エイズの診断というのは、ですから、抗体検査があって、そして臨床症状があるということで認定するということになっていた次第でございます。
そういうことで、この症例につきましては、当時、この
委員会におきまして、まず小
委員会というところがございまして、そこで
専門の
先生方が
検討する、そしてこの
委員会に出してこられて、そして認定したということでございます。
それから、その先の十年というようなお話は、これは、私たちは患者さんの認定ということはいたしますけれ
ども、その後どうなったかということにつきましては、国内の方はわかる方もありますけれ
ども、大
部分わからないし、また、それは特別
調査いたしませんけれ
ども、特に外国に行かれた、帰った方は、その後もタイなどからたくさんの外国人の女性が来まして、これは
エイズということで診断されたわけですけれ
ども、その後は、こういう人たちがどうなったかということは全くわかっておりません。ですから、私たちはその後の経過はわからないというふうに
考えていただいていいと思っております。
そういうことで、この症例は、当時、この「診断の手引き」に従って診断をしたということで御了承いただきたいと思います。
なお、もう
一つ、一言申し上げさせていただきますと、この症例につきましては、現在行われている
エイズの「診断の手引き」によるとこれは該当しないのじゃないかということが言われておりますが、確かに「診断の手引き」が変わってきておりまして、現在は
エイズに特徴的な疾患と言われる二十三疾患の
一つに該当するものがなければいけないということになっておりますけれ
ども、私は、この症例をもう一回見てみますと、下痢それから体重減少ということが当時訴えられていたという記載がございます。ですから、現在は消耗性
症候群という、その二十三疾患の
一つに該当するのじゃないか。そのときは詳しいそういう
調査はしてありませんけれ
ども、そういうふうにも
考えている次第でございます。
以上です。