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1996-03-25 第136回国会 衆議院 厚生委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年三月二十五日(月曜日)     午後一時三分開議  出席委員   委員長 和田 貞夫君    理事 衛藤 晟一君 理事 木村 義雄君    理事 鈴木 俊一君 理事 青山 二三君    理事 石田 祝稔君 理事 柳田  稔君    理事 横光 克彦君 理事 荒井  聰君       伊吹 文明君    稲垣 実男君       狩野  勝君    岸田 文雄君       熊代 昭彦君    田中 直紀君       高橋 辰夫君    竹内 黎一君       戸井田三郎君    長勢 甚遠君       根本  匠君    福永 信彦君       穂積 良行君    堀之内久男君       保岡 興治君    山下 徳夫君       赤松 正雄君    粟屋 敏信君       大野由利子君    鴨下 一郎君       北村 直人君    久保 哲司君       高市 早苗君    西  博義君       福島  豊君    桝屋 敬悟君       松沢 成文君    山本 孝史君       五島 正規君    田邊  誠君       森井 忠良君    枝野 幸男君       金田 誠一君    岩佐 恵美君       土肥 隆一君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 菅  直人君  出席政府委員         厚生大臣官房長 山口 剛彦君         厚生大臣官房総         務審議官    亀田 克彦君         厚生省保健医療         局長      松村 明仁君         厚生省薬務局長 荒賀 泰太君         厚生省社会・援         護局長     佐々木典夫君         厚生省児童家庭         局長      高木 俊明君         厚生省保険局長 岡光 序治君         厚生省年金局長 近藤純五郎君         社会保険庁運営         部長      横田 吉男君  委員外出席者         総務庁恩給局審         議課長     須江 雅彦君         厚生委員会調査         室長      市川  喬君     ————————————— 委員の異動 三月二十五日 辞任       補欠選任   近藤 鉄雄君     穂積 良行君   田中眞紀子君     田中 直紀君   根本  匠君     岸田 文雄君   持永 和見君     福永 信彦君   北村 直人君     松沢 成文君   福島  豊君     西  博義君   枝野 幸男君     金田 誠一君 同日  辞任       補欠選任   岸田 文雄君     根本  匠君   田中 直紀君     田中眞紀子君   福永 信彦君     持永 和見君   穂積 良行君     近藤 鉄雄君   西  博義君     福島  豊君   松沢 成文君     北村 直人君   金田 誠一君     枝野 幸男君     ————————————— 三月二十二日  戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す  る法律案内閣提出第二二号)  らい予防法廃止に関する法律案内閣提出第  一二六号)  平成八年度における国民年金法による年金の額  等の改定特例に関する法律案内閣提出第三  七号) 同月十九日  付添看護廃止経過措置延長健康保険による  よい看護介護に関する請願岩佐恵美紹介  )(第四七七号)  障害者介護施策の拡充に関する請願岩佐恵  美君紹介)(第四七八号)  らい予防法廃止患者医療生活保障、国  立ハンセン病療養所存続発展に関する請願  (今村修紹介)(第四七九号)  同(岩佐恵美紹介)(第四八〇号)  同(大石正光紹介)(第四八一号)  同(貝沼次郎紹介)(第四八二号)  同(日笠勝之紹介)(第四八三号)  同(三野優美紹介)(第四八四号)  同(今村修紹介)(第五二九号)  同(貝沼次郎紹介)(第五三〇号)  同(山口鶴男紹介)(第五三一号)  同(今村修紹介)(第五七一号)  同(貝沼次郎紹介)(第五七二号)  同(山口鶴男紹介)(第五七三号)  同(貝沼次郎紹介)(第六〇一号)  国民の食品の安全と健康の確保に関する請願  (長勢甚遠君紹介)(第五二八号) 同月二十二日  らい予防法廃止患者医療生活保障、国  立ハンセン病療養所存続発展に関する請願  (貝沼次郎紹介)(第六六八号)  重度障害者施設等における男性介護従事者の養  成等に関する請願羽田孜紹介)(第八七八  号)  重度心身障害者寝たきり老人とその介護者が  同居可能な社会福祉施設設置に関する請願  (羽田孜紹介)(第八七九号)  小規模障害者作業所に対する国庫補助制度の改  善等に関する請願羽田孜紹介)(第八八〇  号)  生活保護受給者医療券方式改善に関する請  願(羽田孜紹介)(第八八一号)  福祉医療の実施に伴う国民健康保険国庫負担金  減額調整措置廃止に関する請願羽田孜君紹  介)(第八八二号)  重度心身障害者とその両親またはその介護者及  び寝たきり老人とその介護者が同居入所可能な  社会福祉施設実現化に関する請願(羽田孜君  紹介)(第八八三号)  男性介護人に関する請願羽田孜紹介)(第  八八四号)  HIV問題の迅速な解決に関する請願枝野幸  男君紹介)(第八八五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す  る法律案内閣提出第二二号)  らい予防法廃止に関する法律案内閣提出第  三六号)  平成八年度における国民年金法による年金の額  等の改定特例に関する法律案内閣提出第三  七号)      ————◇—————
  2. 和田貞夫

    和田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案内閣提出らい予防法廃止に関する法律案及び内閣提出平成八年度における国民年金法による年金額等改定特例に関する法律案の各案を議題とし、順次趣旨説明を聴取いたします。菅厚生大臣。  戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案  らい予防法廃止に関する法律案  平成八年度における国民年金法による年金額等改定特例に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 菅直人

    菅国務大臣 ただいま議題となりました三法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  まず、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案について申し上げます。  戦傷病者戦没者遺族等に対しましては、その置かれた状況にかんがみ、年金支給を初め各種援護措置を講じ、福祉増進に努めてきたところでありますが、今回、年金等支給額を引き上げるとともに、引き続き戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給等を行うこととし、関係法律改正しようとするものであります。  以下、この法律案概要について御説明申し上げます。  第一は、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正であります。これは、障害年金遺族年金等の額を恩給の額の引き上げに準じて引き上げるものであります。  第二は、戦没者等の妻に対する特別給付金支給法の一部改正であります。これは、戦傷病者等の妻として支給を受けた特別給付金国債償還を終えたときに、夫たる戦傷病者等の死亡により戦没者等の妻となっている者に対して、特別給付金支給するものであります。  第三は、戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法の一部改正であります。これは、戦傷病者等の妻に対して引き続き特別給付金支給することとし、その場合、十年間の国債償還額を九十万円、六十万円及び三十万円とするものであります。また、特別給付金国債償還を終えたときに、夫たる戦傷病者等が平病死している場合、その妻に特別給付金として額面五万円、五年償還国債支給することとしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容概要であります。  次に、らい予防法廃止に関する法律案について申し上げます。  現行のらい予防法は、感染源対策としての患者隔離を主体とした法律でありますが、今日、ハンセン病は、現在の我が国においては感染しても発病することは極めてまれな病気であることが明らかとなっており、また、仮に発病しても、治療方法の確立している現在においては、適切な治療を行うことによって完治する病気となっております。したがいまして、らい予防法に定めているような予防措置を講ずる必要性はなくなっております。  こうした医学的知見を踏まえ、これまでらい予防法の弾力的な運用を図りつつ、国立ハンセン病療養所入所者に対する処遇改善に努めてまいりましたが、らい予防法の抜本的な見直しには至らず、その見直しがおくれたこと、また、旧来疾病像を反映したらい予防法が現に存在し続けたことが、結果としてハンセン病患者、その家族方々尊厳を傷つけ、多くの苦しみを与えてきたこと、さらに、かつて感染防止観点から優生手術を受けた患者方々が多大なる身体的・精神的苦痛を受けたことは、まことに遺憾とするところであり、行政としても陳謝の念と深い反省の意を表する次第であります。そして、こうした思いのもとに、今回、らい予防法廃止を提案することとしたものであります。  しかしながら、現在、国立ハンセン病療養所におきましては、約六千名弱の方々療養生活を送っておられます。これらの方々は、既に平均年齢が七十歳を超え、また、その大多数が視覚障害、肢体不自由などの後遺障害を有しておられます。さらに、社会の差別・偏見や、三十年以上の長きにわたる療養所生活の結果、社会復帰して自立するのが困難な状況に置かれておられます。  このような療養所入所されている方々の置かれた特別の状態にかんがみ、らい予防法廃止とあわせて、法の廃止後も引き続き、療養所入所者に対する医療及び福祉処遇維持継続を図ることとし、この法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。  第一に、らい予防法廃止することとしております。  第二に、国立ハンセン病療養所入所している方々等に対して現在行われている医療及び福祉措置を引き続き行うこととしております。  具体的には、国は、この法律施行の際、現に療養所入所している方々に対し、療養所において、引き続き、必要な療養を行うとともに、入所されている方々に対し、福利増進に努め、社会復帰に必要な知識及び技能を与えるための措置を講ずることができることとしております。また、都道府県知事は、療養所入所している方々の親族に対する援護を行うことができることとし、国は、その費用の全額を負担することとしております。さらに、国立ハンセン病療養所を一たん退所された方々につきましても、原則として再入所を認めることとし、入所者と同様の処遇を行うこととしております。  このほか、法律に用いられております「らい」という言葉を「ハンセン病」に改めるとともに、優生保護法その他の関係法律につきましても、あわせて見直すこととしております。  最後に、この法律施行期日は、平成八年四月一日としております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容概要であります。  最後に、平成八年度における国民年金法による年金額等改定特例に関する法律案について申し上げます。  公的年金制度及び各種手当制度につきましては、国民年金法等の定めるところにより、毎年の消費者物価指数変動に応じた物価スライドを実施することとなっております。  平成七年の年平均全国消費者物価指数が〇・一%の下落となったことから、国民年金法等の規定に基づけば、平成八年度において、これに対応した減額改定を行うこととなりますが、このたびの消費者物価指数変動が僅少であること、現下の社会経済情勢等にかんがみ、平成八年度における特例措置として、公的年金及び各種手当の額を平成七年度と同額に据え置くこととし、この法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  平成八年度において特例として、国民年金法による年金たる給付厚生年金保険法による年金たる保険給付児童扶養手当特別児童扶養手当障害児福祉手当特別障害者手当等原子爆弾被爆者に対する医療特別手当等並びに国家公務員等共済組合法地方公務員等共済組合法私立学校教職員共済組合法及び農林漁業団体職員共済組合法による年金である給付について、物価スライドによる年金額等改定措置を講じないこととしております。  なお、この法律施行期日は、平成八年四月一日としております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  4. 和田貞夫

    和田委員長 以上で各案の趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 和田貞夫

    和田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹内黎一君。
  6. 竹内黎一

    竹内(黎)委員 ただいま議題となりました援護法の一部改正案らい予防法廃止に関する法律案及び国民年金法による年金額等改定特例に関する法律案、この三法案はいずれもいわゆる日切れ法案であり、国民生活に大きな影響がある。その重要性は私は認識をするものでありますが、時間の関係上、私は専ららい予防法廃止に関する法律案について若干の質問を行いたいと思います。  そこで、まず厚生大臣に早速お伺いいたすわけでありますが、大臣は、去る一月十八日、全国ハンセン病患者団体、いわゆる全患協代表とお会いになりまして、その際に、国がこれまで行ってきたハンセン病対策について反省陳謝の意を表されたと承っております。私は、この大臣の態度を高く評価するものでありまして、また、ハンセン病対策上まさに画期的なことだと思いますが、今まさにらい予防法廃止審議が始まるときでありますので、いま一度大臣のその御意向、発言内容をここで御開陳願えませんか。
  7. 菅直人

    菅国務大臣 今、竹内委員の方からお話がありましたように、私が大臣に就任した直後の一月十八日に、ハンセン病患者皆さんとお会いをいたしました。その場で、今回法案として出し、今その趣旨説明させていただきましたけれども、らい予防法廃止するということと、療養所入所者方々に対する処遇維持継続内容とする法案を出そうと思っているということをお伝えすると同時に、政府としての基本的な姿勢をその場で患者団体皆さんにお伝えいたしたところであります。  その際、先ほどの趣旨説明の中でも申し上げましたけれども、らい予防法見直しがおくれてこの法律が存在し続けたことが、患者方々そしてその家族方々尊厳を本当に傷つけて、多くの苦しみを与える結果となったこと、さらには、優生手術などによって療養所におられた方々も多大な身体的・精神的苦痛を受けるようになったことについて、心からおわびを申し上げた次第であります。  特にその中で、患者皆さんからもお話がありましたが、先ほどの趣旨説明でも申し上げましたように、現在、ハンセン病というのは感染をすることも極めてまれであり、また、感染したとしても完全に治癒できる、そういういわば普通の感染病になっているということの認識国民皆さんの中でもまだ十分ではないのではないか、ぜひ大臣からも機会があるごとにそのことを強く国民皆さんに伝えてほしいということを申されまして、きょうの趣旨説明の中でも、現在のハンセン病というのはいわば普通の感染病と同じように、かかる可能性も少ない上に、かかったとしても完全に治癒できるのだ、そういう点で特別な、特に隔離を中心としたようならい予防法は、現在はもちろんのこと、もっと早い段階で、なくてもよかったのだ、このことを御理解いただきたい。竹内先生からの御質問にあわせて、そのことを加えて申し上げさせていただきたいと思います。
  8. 竹内黎一

    竹内(黎)委員 このらい予防法廃止法案につきまして、全患協皆さんは、特に二つの点についてなお熱心な要望を持っていらっしゃいます。  その第一は、患者給与金でございます。患者給与金をできることならばこの廃止法の中で明示をしていただきたい、こういう御注文でありますが、残念ながら、提案されている法案の中ではそれは触れられておりません。なぜ法律に取り込めないのか、その理由を伺いたいと思います。
  9. 松村明仁

    松村政府委員 御指摘患者給与金でございますが、これは、入所者日常生活の需要を満たすために入所者に対して支給されております国民年金障害一級相当、金額を申し上げますと月額八万一千八百二十五円でございますが、これ相当給付でございます。療養所内入所者の所得の水準の公平化を図る観点から、年金受給者につきましては、その年金額との差額を給付しているものでございます。  このように、患者給与金は、障害の程度に応じまして支給される年金など、全く性格の異なる給付間の調整を行うものでございまして、法定化になじみにくい、このような結論になったものと考えております。
  10. 竹内黎一

    竹内(黎)委員 法定化になじみにくいという御答弁ですが、それでは、一歩譲りまして、大臣患者が熱望しておる患者給与金を今後も維持継続する、さらに、必要な場合に応じては増額も考慮する、こういうお約束を当委員会でいただけますか。
  11. 菅直人

    菅国務大臣 今回の法律は、委員も御承知のように、らい予防法廃止と同時に、これまでの療養のそうしたものを維持継続するということ自体が非常に大きな柱になっておりまして、その中でも重要なこの患者給与金というものにつきましては、将来にわたって維持継続するということを前提として考えております。  法律の中でも、確かに直接患者給与金という言葉はありませんけれども、第二条で必要な療養維持する、あるいは第四条で福利増進を行うというふうになっておりまして、そうした医療福祉措置継続をするということがこの法律基本的方針でありますので、今委員の方からおっしゃいました患者給与金の将来の維持については、この場で維持継続をするということをお約束させていただきたいと思います。
  12. 竹内黎一

    竹内(黎)委員 どうもありがとうございました。  さて、先般、私どもは、和田委員長のお供をいたしまして、多磨全生園の視察に参りました。その際、たしか建物の正面近くに大きな看板が立っているのが私の目に入りました。目を凝らして見ますと、職員募集という看板で、看護婦それから介護人を募集します、こういう看板でございまして、私は、それを拝見して、この療養所職員充足に苦労をしているのかな、こう思いながら、なおかつ園内で直接園長先生に伺いましても、大変に御苦労されているというお話です。また、その際、患者代表の方からも、いわゆる賃金職員も半分も補充できない状況だ、こういうぐあいに伺ったわけですが、一体、国立ハンセン病療養所における職員充足状況というのはどうなっているのですか、それから、これを強化していく何か具体策はお持ちなんですか。
  13. 松村明仁

    松村政府委員 国立ハンセン病療養所におきます職員充足確保につきましては、ちょっと数字を申し上げますが、平成八年一月一日現在、定員三千百十四名に対しまして現員が三千九十五名でございます。これを充足率で申し上げますと、九九・四%となっているところであります。また、賃金職員の御指摘もございましたが、賃金職員充足確保につきまして、また数字を申し上げますが、平成八年一月一日現在、定員千百四十四名に対し現員九百十九名でございまして、全体的な充足率は八〇・三%となっております。このように、国立ハンセン病療養所職員充足は、それぞれの施設が非常に努力をいたしておりまして、こういう状況になってございます。  医師などの職種によりましては、立地条件等により採用が困難な施設もございますが、こういったところにつきましても、近隣の国立病院療養所からの応援体制を強化するなど、職員確保努力をしておるところでございます。
  14. 竹内黎一

    竹内(黎)委員 さて、今回の法改正によりますと、国立ハンセン病療養所も、ベッドが、旧来の結核とか精神とかとあわせた、そういう特別病床ではなくて、一般病床として勘定されることとなる。そうしますと、地域の医療計画全体の中でベッド数削減のおそれはないのかどうか、その点はいかがですか。
  15. 松村明仁

    松村政府委員 従来のハンセンの病床につきましては、一般に開放されているという状況ではございませんから、医療計画の中の既存病床数に算定するというのは適当ではない、こんなふうに考えておりまして、そういったことから考えると、ベッド数が減少するのに伴ってハンセン病療養所ベッド数が必要以上に減らされるということはないと思います。
  16. 竹内黎一

    竹内(黎)委員 さて、私も今まで質問の中でハンセン病ハンセン病、こう申し上げてきましたが、正式の学名らいなんですね。学会の名称も、日本らい学会だったり、あるいは国際的にも国際らい学会だったりする。いわゆるレプロシー、らいが正式な学名ですが、今回は設置法改正で、ハンセン病、こう設置法の中でも改めるわけです。  では、この正式学名ハンセン病という呼称とどういう関係になるのですか。これは、ハンセン病は通称として、あるいは厚生省はこれから公用語としてハンセン病を使う、こういう意味合いなんですか。
  17. 松村明仁

    松村政府委員 今御指摘のように、らいという病名は、これまで、いろいろなイメージといいましょうか、概念といいましょうか、こういったものと結びついてへ患者方々やその家族方々が長年にわたりこれに悩んでこられたところでございます。  そこで、患者団体を初めとする関係者におかれましては、らいという病名を、当該疾病の原因となる細菌の発見者にちなんだハンセン病、こういうふうに改めることによりまして、これまでらいという言葉から連想されますさまざまな偏見でありますとか、あるいは患者方々が実際に感じておられる不快感、こういったものを断ち切りまして正しい知識普及を図っていこう、こういうふうに考えて、ハンセン病という言葉普及、定着に努めてきたところであります。そこで、今回の法律廃止を機に、法律上もハンセン病という言葉に改めまして、今後は行政的にはハンセン病というものを用いていく姿勢を明らかにしておるところでございます。  また、学会お話も出ましたけれども、学会において用いられております病名についても、来月、日本らい学会の総会が開かれまして、病名変更についての決議がなされる見通しである、このように聞いておるところでございます。
  18. 竹内黎一

    竹内(黎)委員 ちょうだいした資料によりますと、ハンセン病患者さんで、現在、在宅あるいは通院している方が六百五十八人いるということのようでございますが、それらの人々の医療費は一体どうなっているのですか。
  19. 松村明仁

    松村政府委員 在宅患者さんの医療費の問題でございますが、これには二種類といいましょうか、二つのケースがございます。  まず、在宅患者さんの多い沖縄について申し上げますと、復帰前から在宅治療が、政府委託財団法人沖縄ハンセン病予防協会において実施されてきた経緯がございます。そこで、復帰後も、沖縄振興開発特別措置法に基づいて引き続き国庫補助事業として在宅患者診療事業が実施され、自己負担が解消されているところでございます。こういうことで、これらの措置につきましては、今回のらい予防法廃止とかかわりなく、沖縄特殊事情を踏まえまして、先ほど申し上げました特別措置法に基づいて今後も継続されていくと承知をしております。  また、その他の地域の患者さんにつきましては、ハンセン病以外の医療医療保険の中で対応されておりまして、ハンセン病治療についてはこれらの医療機関の協力を得て実質上対応がされている、こういうことでございます。
  20. 竹内黎一

    竹内(黎)委員 さて、もう一度大臣の御所見を承りたい問題があります。  今回のらい予防法廃止法案の中で、優生保護法関係については削除をしておるわけであります。優生保護法それ自体も大変な問題がある法律でありまして、そもそも優生という思想が許されるものか。あるいはまた人工妊娠中絶、これは、アメリカの大統領選挙でも大きな政策課題になっている、また、アイルランド共和国では先般国民投票までやったという、こういう大変難しい問題をはらんでいるわけであります。一体、大臣は現行の優生保護法についてどういう御意見をお持ちであり、また、機会を見て改正をしたい、こういうぐあいにお考えになっていますか、その点を明らかにしてほしいと思います。
  21. 菅直人

    菅国務大臣 優生保護法という法律の中では、「不良な子孫の出生を防止する」という今委員も言われました優生思想の法目的や、精神障害者や遺伝性疾患を有する者等に対して本人の同意なしに優生手術を行うことができる等の規定がありまして、近年においてはこのような考え方による法律の運用は行ってはいないわけですけれども、このような規定が残っていることについては、障害者団体を中心に、障害者に対する差別であるから早急に改正すべきだという意見が強く出されております。  今回のらい予防法廃止に関連いたしまして、この優生保護法の中にありましたらい疾患に関する規定は削除をするという、そういう取り扱いになっていることは今委員もおっしゃったとおりであります。  今おっしゃいました優生保護法あるいは優生思想というものに対する考え方ということでありますが、やはり人間の人格、人権というものを考えますと、現在の時代の考え方として、こういう考え方を中心とした考え方は必ずしも望ましいものではないというか、必ずしもそういうものが適切なものではないように、少なくとも私個人としては感じているところであります。  ただ、この優生保護法という法律につきましては、その優生思想という問題が一つ大きくあるわけですけれども、もう一つ、先ほどもおっしゃいました人工妊娠中絶の問題がありまして、この問題については大きな議論が従来から存在をしていて、また、その意見がかなり大きく分かれているという状況もあるわけであります。  そういう点で、法律改正について今私の立場で軽々に触れることは差し控えたいと思いますけれども、法律改正という問題に関して言えば、やはり各方面での議論を見守りながら、まさにこの国会での合意が必要になるわけですから、そういったことを念頭に置いて考えていかなければならない。  ただ、先ほど申し上げたように、優生思想という問題での御質問について言えば、こういう考え方に基づく法律というのは今後見直す、この法律がというのじゃなくて、優生思想という問題については見直す必要があるのではないかと私自身は思っております。
  22. 竹内黎一

    竹内(黎)委員 さて、先ほどの大臣お話にも出てきたわけでありますが、患者皆さんがいま一つ熱心に要望されていることは、ハンセン病に対する国民の理解の増進と申しますか、ハンセン病の啓発と教育活動の推進について熱心な期待を寄せておりますので、この項目につきまして、今後一体どのような具体的な措置を予定されておりますか。
  23. 菅直人

    菅国務大臣 ハンセン病に関します正しい知識普及啓発することにつきましては、毎年六月に「ハンセン病を正しく理解する週間」というものを設けて、ここを中心にして偏見や差別の払拭に努めてきたところでありますけれども、依然、ハンセン病に対する偏見あるいは患者家族に対する差別が残っていることは残念なところであります。  このため、厚生省としては、らい予防法廃止を契機として、従来からのこうした取り組みに加えて、新たに入所者皆さん社会交流事業等を実施するなどを通して、より効果的な、多様な啓発普及事業を行ってまいりたい、これに充てる予算なども少しふやしていただいておりまして、努力したいと思っております。  また、先ほど委員おっしゃいましたように、そうした施設を国会議員の皆さんが訪ねたり、あるいは、全生園は私も地元で何度かお邪魔をしましたが、地域の人と一緒にお花見を楽しんだりという、そういう地域の人たちとのいろいろな交流なども深めることで誤解とか偏見というものが薄らいでいく、そういう努力を、厚生省としてもお手伝いできるところはぜひ力を注いでやっていきたい、こう考えております。
  24. 竹内黎一

    竹内(黎)委員 そろそろ時間が参りましたようですから、最後に、私の若干の感想を述べたいと思います。  私も、らい予防法廃止法案質疑の準備のため、いろいろな患者さんの方にお目にかかりましたが、ある患者さんのお言葉が私の耳に強く焼きついております。  それは、こういうお話でございます。らい予防法廃止が実現してこそ、初めて私たちは人間に返ることができるのです、こういう言葉でございます。ハンセン病患者が今日まで受けてきた苦痛の歴史を振り返りますとまことにそのとおりだろう、こう思いますし、なおまたその患者さんは、国会でいよいよ廃止法案が審議になる、大変うれしい、でき得べくんばこれが二十年前であってほしかった、こうさらに重ねておっしゃられまして、本当に私は胸に強い痛みを感じたわけでございます。  らい予防法廃止の一日も早からんことを願いながら、無念の思いを抱いて亡くなった方も大勢いらっしゃるわけでございまして、私は、そういう患者さんあるいは家族の方には本当に心から相済まないな、こういう気持ちでいっぱいでございます。  そこで、大臣からもいろいろとお話があったわけでございますが、私は先ほど厚生省の方にらいという学名ハンセン病という呼称の関係を伺いましたが、あの御説明では私は若干物足りない感じがいたします。なぜかといえば、らいというスティグマを持っているこの言葉の響き、患者さんたちが嫌うのも家族の方が嫌うのも当然でございます。よってハンセン病と変えるというわけですが、私は、このハンセン病と変えるということに、もうこのらい予防法とはさようならする、絶縁をする、こういう気持ちがこもっての呼称の改称であった方が本来の意義ではないか、このようにも考えるわけであります。  らい予防法廃止になりますが、まだまだこれから私たちは患者さんのお世話をしなければならぬことはたくさんあるわけでございまして、私ども国会議員としても、これからもそういう患者さんが安心して老後を暮らせるような環境づくりに熱心に取り組むのが責務ではないかな、こう思います。  一言、私の感想を申し上げました。これで質問を終わります。ありがとうございました。
  25. 和田貞夫

    和田委員長 石田祝稔君。
  26. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 本日は三法案を一括して審議するということで、それぞれに大変大事な法案でございますけれども、私は、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案平成八年度における国民年金法による年金額等改定特例に関する法律案、これを中心に質問をさせていただきたいと思います。らい予防法廃止に関する法律案は同僚議員がこの後詳しく質問をさせていただきますので、よろしくお願いをしたいと思います。  私は、この法律案質問に入ります前に、エイズの問題で若干大臣にお伺いをしたいと思います。  三月二十日に東京、大阪の原告団が和解案の受諾を決定された、こういうことでございますが、この和解成立がほぼ確定された、この和解成立の確定により大臣としては問題が解決したと考えるのかどうか、まずお伺いをしたいと思います。
  27. 菅直人

    菅国務大臣 一応、今月の二十九日を両裁判所が和解の最終期限とされておりまして、先々週来、被告そして原告の受け入れという姿勢が表明をされまして、今、最後の詰めの協議を行っているところであります。そういう点で、まだ具体的な和解調書の作成あるいは必要となるかもしれない確認書の作成、あるいはさらに議論が、その後に残る問題などそういう問題についての詰めの段階ですので、まだ確定的とは申せませんけれども、大きい流れとしては二十九日に和解が成立するのではないだろうか、このように思っているところであります。  ただ、これですべて問題が解決したかという、そういう御質問であったと思いますけれども、もちろん、これで解決する問題もありますけれども、まだまだ解決しない問題が幾つか残されると思っております。  直接的な問題として、今申し上げた継続して議論をしなければいけない問題が、例えば、和解の所見の中でも、和解と切り離してさらにこういう問題は協議してほしいというような問題もありますし、また、いろいろな、治療体制等については和解までに物事が一〇〇%決まらない性格のものもありますので、そういうものも残ると思います。また、いろいろ厚生省としての調査もこの間続けてまいっておりますけれども、いろいろな事実関係がすべて判明したということにもなかなかなっていないのは御承知のとおりであります。そういった問題はこの国会なり別の機関なりがいろいろ努力をしていただいておりますので、そういった問題もさらに残ろうかと思っております。  さらに大きく言えば、行政のこういった問題に対する反省を踏まえてどういう形で責任を受けとめ、そして薬事行政を含むこれまでの厚生省の行政のあり方をどのように改革する必要があるのか、そういった問題はさらに残された問題だと受けとめております。  そういった点で、和解の成立というのは一つの大きな山を越えることにはなりますけれども、まだまだ残された問題は大きい、このように受けとめております。
  28. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 大臣は、和解が成立をしても残された問題が多い、その問題の解明もしなくてはならない、努力もしなければならないということですので、これはぜひ大いにやっていただきたいと思います。  もう一点、三月十九日に、厚生省の薬害エイズプロジェクトチームの報告書、大変膨大な量が調査の結果として発表になりましたけれども、残念ながら、ファイルのうちの一冊はまだ公表もされておりませんし、厚生省の調査ということで二回大きく発表されましたが、この真相究明という観点から、大臣は、三月十九日の厚生省としての発表で省としての真相究明の手はもう尽くした、これ以上省としてはできない、こういうお考えなのか、さらに努力をして真相究明に一歩でも二歩でも踏み込んでいくお考えがあるのかどうか、お聞きをしたいと思います。
  29. 菅直人

    菅国務大臣 三月十九日の時点で、それまで幾つかみずからこういう項目について調査したいというものについてはおおよそは公表させていただきました。ただ、今おっしゃるとおり、一つだけファイルが残っておりまして、これにつきましても、今月中はちょっと無理かもしれませんが、来月のなるべく早い、一週目とか二週目という早い段階では公表ができるように今その段取りを進めているところであります。  それを含めて、これで調査が終わることになるのかという御質問でありますけれども、確かに内容的には、まだ私から見てもこれでいろいろな事態がわかったというふうには言えない問題が多々残っております。ただ、今のような厚生省としての調査のプロジェクトを継続することでその不明な点がさらに明確になるのかどうか、率直に申し上げてやや限界を感じているところも幾つかあるわけであります。  そういった点では、四月の早い時点で今残されたファイルを提出する段階までにさらに調査ができるものについてはあわせて御報告をしたいと思っておりますけれども、その後の調査を同じような形で継続するのか、一たんこの調査プロジェクトとしては何らかの一つの区切りをつけて、必要であれば残された問題についてはまた問題ごとに調査をしていくのか、そういう扱い方についてはその時点までには何らかの方向性を出したい、このように考えております。
  30. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 ちょっと大臣の御答弁の中で、厚生省が省として調べることの限界があるのではないかというニュアンスのことをおっしゃいましたが、これはいわゆる厚生省の組織としての問題ですか、それとも、それは個人としてその衝に当たるそれぞれのポジションの方の問題ですか。全体、厚生省の持つ問題として自分の省のことについてこれ以上調べるのは大変難しい、そういう意味ですか。
  31. 菅直人

    菅国務大臣 例えば、今回も役所にいるメンバーだけではなくて、関係した、例えばエイズ研究班におられたメンバー、つまりは民間の方あるいはいろいろな企業や一部団体などについても調査をお願いしたわけです。そういう中で、例えば薬の使用量等を調べるのは、薬事法という法律権限がありますから、ある程度は法律に基づく調査ということも一部には入るわけですけれども、一般に言いますと、こういう問題についてぜひお答えいただきたいという形で、お願いベースで質問をして任意に答えていただいたものを公表している部分が多いというものであります。  そういう意味で、厚生省という役所の持っている権限の中で調査できる部分と、あるいは、何回聞いても、中身は疑問は残るのだけれども、お答えが、例えば、よく覚えていないけれどもこうじゃないかという、同じ答えが何回も返ってくるようになって、そういった意味を含めて、厚生省の持っている権限の中での調査が少し一部限界もあるのかなと申し上げたところです。
  32. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 このことはまた後日詳しくやらせていただくと思いますが、我が党を含め五人の証人喚問、党によっては四人の証人喚問も要求しておりますので、これはまたこの委員会で場を改めて、厚生省の省としての限界を超えた部分は我々も一生懸命取り組まさせていただかなければならぬと思っております。  続きまして、年金法についてお伺いをしたいと思います。  今回は、法律にそのままのっとれば年金を〇・一%下げなければならない、これをそのまま据え置くということで特例法がかかっておるわけです。大臣、今回は初めて下がったということでそのままにしておこう、こういうことでありますが、完全物価スライドという大原則からいくと、これは原則を崩す話なんです。これからこういう小幅な場合にも、万が一来年も〇・一%下がったらどうするかとか、こういう議論もあると思うのですが、小幅な部分とかいろいろなことに対して、これから今までのとおりの完全物価スライドで、極端に言えば〇・一%でもやるのかやらないのかとか、こういうことについては大臣としてはどういうふうにお考えでしょうか。
  33. 菅直人

    菅国務大臣 物価スライドのあり方につきましては、どの時点ですか、大分以前は五%を超えたときにスライドをさせるというような時期もあったと思うのですが、それでは余りにも幅が広いということでそれを四%にしたり、さらに下げたりする中で、完全にスライドにするということが決められて今日に至っていることは御承知のとおりであります。そういう点で、おっしゃるとおり、これまでは一年単位でいえば物価が上昇するということがずっと続いておりましたので、その想定のもとに完全自動物価スライド制が導入されてきておりまして、今回の物価の下落というのはそういった意味では初めての経験であるわけであります。  今後も下落も含めて小幅な物価変動が繰り返される可能性があることや、必要な事務経費等を考慮した制度運営を行う必要があることから、物価スライドの制度のあり方を見直すべきではないか、このように考えております。つまりは、非常に小幅なところまで、〇・一上がったり下がったりするということまで完全に自動的にやることの方がいいのか、多少の小さな幅であればそれは変えないでおいて、その幅を超えたときに変える方がいいのか、それについては検討する必要があるのではないかと思っております。いずれにしても、年金審議会等において幅広い観点から検討をいただきたい、このように考えているところであります。
  34. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 今回の法案の影響が及ぶ法律として児童扶養手当法がございます。これでちょっと確認をしたいのですが、老齢基礎年金を受給するようになったおじいさんですか、おじいさんに当たられる方が孫の面倒を見ている場合、老齢基礎年金を繰り上げ支給をしたということで児童扶養手当が打ち切りになった、こういう例があるように聞いておりますが、これは確認をしておりますか。
  35. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 児童扶養手当でございますけれども、児童扶養手当は、生別母子世帯等の生活の安定ということで一種の所得保障制度ということで支給がなされております。そういった意味で、公的年金を受給するようになった場合には、類似の所得保障制度ということもございますので、基本的には児童扶養手当の方が支給停止になるという格好でございまして、御指摘のケースにつきましては、最近では秋田県でそういった事例が発生をいたしております。
  36. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 児童扶養手当法の第四条第三項第二号で、老齢福祉年金以外の公的年金との併給は認めない、こういうことが書かれております。先ほど局長がおっしゃった秋田の例をちょっと申し上げますと、男性の方で、四年ほど前からお孫さんを養育されておる、そして月額四万千三百九十円の児童扶養手当を受けておったが、六十歳になったので繰り上げ支給を選択をして月額二万六百四十一円の老齢基礎年金を受給した、そうすると年金の併給は禁止、こういうことで児童扶養手当が打ち切られた、月額二万七百四十九円の収入減になった、こういう例なんです。  これは併給できないから自動的にばっさり切っているという例なわけですけれども、老齢基礎年金の平均受給額は大体三万円ちょっとなんですね。いろいろな意味で欠けて満額なかったりとか、繰り上げ支給を受給すると六十歳では満額の五八%ですか、ですから大変額の逆転が起きる。そして、これを私が聞きますと、税金で賄っているからという話もありましたけれども、老齢基礎年金は三分の一が国庫負担。ですから、この人の例などでいくと、税金の部分だけを調整すると、本来は別の形でもっともっと配慮がされるべきではないかと思います。この点について、これを見直すお考えがあるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  37. 高木俊明

    ○高木(俊)政府委員 公的年金児童扶養手当との併給の調整につきましては、ただいま申し上げたような考え方で調整をしておるわけであります。  ただ、御指摘のようなケースで、従前もらっておりました児童扶養手当の方が額が多くて公的年金の方が額が少ない、今回そういった事例が起きたわけでありますけれども、その際における調整の仕方等々、これは一つ問題として私どもとしても感じております。  そういった意味で、現在、母子家庭を取り巻く対策の一環として児童扶養手当も含めまして中央児童福祉審議会の中で御検討をお願いしておりますので、そういった中でこの辺の調整のあり方を含めまして御検討いただきたい、こんなふうに考えております。
  38. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 ぜひ十二分に検討をいただきたいと思います。この法律は、母子家庭にしか出なくて父子家庭には出ないとか、今の時代で見るとちょっと欠陥ではないかというところがいろいろありますので、ぜひ網羅的に御検討をいただきたいと思います。  それから、総務庁の恩給局に来ていただいておりますが、戦傷病者援護法関係でお伺いします。  今回、〇・七五%の改定ということになるわけですが、この改定のパーセントは恩給法に準じているということでお伺いをします。〇・七五%になった根拠はどういうふうになっていますか。
  39. 須江雅彦

    ○須江説明員 お答え申し上げます。  平成八年度の恩給改善につきましては、恩給の基本的性格である国家補償的な性格、そういった事情を踏まえまして、平成七年度におきます公務員給与の改定状況ですとか物価の動向等、諸般の事情を総合的に勘案いたしまして、本年四月から〇・七五%の引き上げを行うということにしたものでございます。
  40. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 総務庁にお聞きをしますが、昨年、〇・七五%というふうに改善率を決定したとき、そのもとになる物価上昇率は〇%で計算をされているはずなんですが、確定値はマイナス〇・一、そのことで今回国民年金法改正案審議をしているわけなんですが、そうすると、恩給改善率というのは、物価上昇率については推定値をこれからも使い続けていくということですか。
  41. 須江雅彦

    ○須江説明員 恩給改善につきましては、年末の予算編成時点で翌年度の改善額を決めるという方式をとっておりまして、その時点でのいろいろな諸事情を見るということで、物価についていえば、十二月の時点では見込み値でございました。
  42. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 ですから、私が聞いているのは、今回のように十二月の時点と数字が変わっている場合、数字が変わっても改善率は全然変えていないわけですから、そうすると、必然的に推定値であった数字を使ったままの改善率で出てきているわけですから、推定値を使って改善率をこれからも計算をしていくのですかという話です。
  43. 須江雅彦

    ○須江説明員 恩給改善につきましては、公務員給与の改善状況ですとか物価の動向ですとか、いろいろな事情を総合的に勘案して年末の時点で決めるということでございまして、予算編成時点で決める関係上、物価につきましては見込み値を使うということになるかと思います。
  44. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 それでは、時間の関係最後質問をいたします。  私もよく地元で御相談いただくのですけれども、恩給欠格者の方からの要求で、年数に足らなくていわゆる恩欠者と言われておりますけれども、そういう方がいらっしゃるのですが、同じような状況で、戦後、公務員になられた方は、その恩給相当部分というのが公務員と通算をされる。しかし、民間企業に行かれた方は、恩給の期間が足りなければそのままになってしまう。こういうことで、民間に行かれた方からも、なぜ同じ弾の下をくぐってこういうことになるのか、こういうことがずっと五十年間、ある意味でいえば恩給制度が復活してからかもしれませんが、思っていらっしゃると思います。そういう方が、同期会をやったときに、同じところに集まって話をしたときに、恩給が閉ざされている、閉ざされていない、こういう話になってくるわけですが、これはどこかで知恵を出して、一回かちっと区切りをつけないとずっと同じことになってくるのじゃないかと思うのですが、これについて、年金局長、何かいい知恵はないですか。
  45. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 お答えいたします。  先生の御指摘恩給欠格者の関係でございますけれども、軍歴期間を恩給期間というふうにみなしているわけでございまして、現行の地方共済とか国共済、これはまさに恩給制度を引き継いだものでございまして、したがいまして、共済年金制度におきましては、軍歴期間も含めまして恩給期間という形に見ているわけでございます。いわば、恩給恩給をつないだ形になっているわけでございます。  ところが、私どもの所管しております国民年金、厚生年金関係でございますけれども、これは、保険料の拠出をお願いいたしまして、その加入期間に比例をいたしまして年金額をお支払いする、こういういわゆる社会保険方式を適用しているわけでございまして、ここに軍歴期間を入れたような形というのは基本的な仕組みというものを損なうおそれがあるということでもございますし、軍人であった期間だけを民間の方を中心にする制度が取り込むというのは非常に難しい問題がある。  これは今までずっとこういう問題が出てきたわけでございまして、恩給の欠格の方を少なくする方向で総務庁の方で対応していただいたというふうに思っているわけでございますけれども、私どもの年金制度の方で対応するというのは、先生せっかくの仰せでございますけれども、極めて困難というふうに考えております。
  46. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 きょうは時間がないので、最後に申し上げますが、今も国家公務員は長期、短期ということで掛けているのじゃないですか。だから、厚生年金と同じく、掛けないで恩給という形でもらっていませんよ、今でも。ですから、公務員でしたら長期という掛金を掛けているわけでしょう。ですから、今は公務員も民間人もそれぞれ掛けているわけですよ。ですから、掛けないでいわゆる恩給という形でもらうという人は今は公務員にはだれもいないわけですから、その制度自体はまた今後議論させてもらいたいのですけれども、ちょっとそういう違うことを言われても困ると思います。  以上です。
  47. 和田貞夫

    和田委員長 青山二三さん。
  48. 青山二三

    ○青山(二)委員 新進党の青山二三でございます。  限られた短い時間でございますので、私の方からは、らい予防法廃止に関する法律案について質問をさせていただきます。  明治四十年に癩予防二関スル件が公布されましてから九十年、それを引き継いだ現行のらい予防法が昭和二十八年に成立いたしまして以来四十三年もの長い間、この法律のために患者家族にはかり知れない苦しみを与え、筆舌に尽くすことのできないひどい仕打ちが行われました。ですから、らい予防法廃止ハンセン病患者とその家族の長年の悲願でございました。  患者を山間僻地や離島に強引に隔離した第六条の強制入所、親の葬式にも行かせてもらえなかったという第十五条の外出制限、また、違反者には重い罰則を科す第十六条の秩序維持など、人権上重大な問題を持つ規定が存在いたしております。  また、脱走防止のために使用された園内通貨、プライバシーなど全くない雑居部屋など、過日、当委員会では高松宮記念ハンセン病資料館を訪問いたしまして、当時の様子をつぶさに見てまいりました。患者たちは生きることは死ぬことよりつらいことであったというお話を聞きまして、胸が締めつけられるような思いでございました。  らい予防法見直し検討会も、国によるらい予防法見直しはおくれたと言わざるを得ないと認めております。基本的人権の尊重をうたった憲法のもとで、四十年以上にわたってこのような人権侵害がなぜ放置されてきたのか、まずお伺いしたいと思います。
  49. 松村明仁

    松村政府委員 現行のらい予防法見直しがおくれた理由でございますが、まず、らい予防法に基づく医療及び福祉措置が予防対策の円滑な実施のための特別な政策的配慮に基づくという性格を有しておりました。したがって、らい予防法廃止されることになれば、入所者に対する医療及び福祉措置の実施が困難になるのではないかという危惧が私ども行政当局あるいは患者さんの団体を初め関係者の間にございまして、法見直しの慎重論となってきたことが挙げられると思います。  また、医学的にも、疾患の再発等万一の事態に対する危惧、こういうものがございまして、昨年の四月に日本らい学会が法の廃止を求める声明を行うまで法の抜本的見直しを具体的に提言されるに至らなかった、こういうこともあろうかと思います。  また一方、残念ながら、ハンセン病には古くから根強い差別・偏見がございまして、社会全体がらい予防法廃止を受け入れ、または求めるだけの環境に至らなかったこと、こういったいろいろな要素が重なり合って今日まで法の見直しに至らなかったのではないか、このように考えておるところでございます。  厚生省におきましては、入所、退所、外出等につきましては法の弾力的運用を図るなど、その時々の医学的知見を取り入れた配慮に基づいて行政対応を行ってきたところではございますが、現にらい予防法が存在し続け、その見直しがおくれたことは事実でございまして、そのことについては十分に反省すべきものとして厳粛に受けとめておるところでございます。
  50. 青山二三

    ○青山(二)委員 現行法は国民に、ハンセン病を恐ろしい伝染病だということで恐怖心をあおりまして、患者に対しまして、病気そのものの苦しみに加えて差別・偏見の二重の苦しみを与えてきたわけでございます。しかも、現行法施行の昭和二十八年当時は、プロミンという新薬使用により既にハンセン病は完治できる病気となっており、また、感染力の非常に弱いことも判明いたしておりました。その上、現行法成立の際の、近き将来改正を期すとの附帯決議を四十年以上も無視してきたことは怠慢と言わざるを得ないわけでございまして、今るる説明がございましたけれども、やはり国の責任は極めて重大である、このように思いますけれども、その点について御見解をお伺いしたいと思います。
  51. 松村明仁

    松村政府委員 昭和二十八年の現行法成立の際の附帯決議でございますが、おっしゃるとおりの文言が書いてございます。その附帯決議につきましては、患者家族に対する援護措置の実施などとともに法律改正を期す旨の決議がされておるわけなんですが、この援護措置につきましては、昭和二十九年に、らい予防法の一部改正ということで措置がされているところでございます。  しかしながら、その後今日に至るまで、医学的知見等に応じまして弾力的な運用には努めてまいったとは言いながらも、法律の抜本的な見直しを行わなかったことにつきましては、極めて遺憾とするところでございます。今般、陳謝の念と反省の上に立って法案を提案させていただいておるところでございます。
  52. 青山二三

    ○青山(二)委員 現行法の第三条には、患者または親族に対して差別的取り扱いをしてはならないとございます。しかし、日本社会は、その全く逆の処遇患者に強行しており、現行のらい予防法のような隔離主義は国際的に見ても異例でありました。  さらに、一九五六年、世界五十一カ国が参加した、らい患者の保護及び社会復帰に関する国際会議、いわゆるローマ会議でございますが、これでも隔離対策は否定され、開かれた一般医療と統合して実施する考え方が主流になっておりました。日本に比べて患者が多い諸外国においても、四十年前からこのような早期発見、早期治療の対策がとられており、国際的にも一九五〇年代に否定された隔離政策をなぜ日本だけが続けたのでしょうか。  もう一点、一九八一年、WHOが短期間治療法である複合療法を提唱いたしました。そのWHOの見解を受けて、強制入所や外出制限などの人権無視の現行法を改正すべきであったと思いますが、なぜ改正せずに存続させたのか、その理由もお伺いしたいと思います。
  53. 松村明仁

    松村政府委員 国際的な動向を今いろいろ御指摘がございました。当時の見解でございますが、国際的な見解といたしましては、隔離政策を全面的に否定したものではなかったのではないか、こんなふうに考えております。患者の潜在化や隔離によるコストというような問題の観点も含めて、感染性のある患者に対しては隔離も有効だというようなところも読めるわけでございまして、いずれにいたしましても外来中心主義が提唱されていたものとは存じております。  そういう状況の中でございましたので、厚生省といたしましても、先ほど申し上げましたように、運用面では、入所、退所、外出等について法の弾力的な運用を図るなど、その時々の医学的知見を取り入れた行政対応を図ってきたわけでございます。また、なぜそれが今まで続いたかということにつきましては、先ほど御説明を申し上げましたので繰り返しませんが、いずれにいたしましても、法の抜本的な見直しに至らなかったことについて十分反省すべきものと厳粛に受けとめております。
  54. 青山二三

    ○青山(二)委員 戦後、我が国は外国の情報を無視し、誤りに気づいても改めようとする医者や官僚がほとんどおらず、こうした問題を四十年以上放置してきた責任をとろうとしない姿勢や、本来はけじめをつけるべきものをあいまいにするという日本人の無責任体質は、今の守り手であるはずの厚生省においてあってはならないことであり、こうした姿勢が今日の史上最悪の薬害エイズ問題につながっているのではないでしょうか。  ハンセン病対策の転換をこれほどまでにおくらせてきた原因を大臣はどのようにお考えなのか、お尋ねをいたします。
  55. 菅直人

    菅国務大臣 今回、らい予防法廃止ということになったわけですけれども、本当に、四十年来長きにわたって、この法律のために患者家族皆さんに大変な精神的・肉体的苦痛をお与えしたことは、先ほども申し上げましたが、厚生省としても強く反省をし、おわびを申し上げているところであります。  なぜこれまでに転換がおくれたかということにつきましては、先ほど政府委員の方からもいろいろ話をさせていただきましたが、確かに、柔軟な対応とか処遇改善といったようなもので当面の問題について対応してきたということは、それはそれとしてその努力はお認めをいただけるかと思いますけれども、基本的に、人権という物の考え方、物の見方というものが、やはり行政において、あるいは日本社会においてもやや欠けていたのか、あるいは配慮が足らなかったのか、そういうことがあるのではないかという感じがしてならないわけであります。  つまりは、現実にいろいろな問題を少しでもよくしようという努力努力として、根本的に、隔離というある意味では人権を最も抑圧するようなやり方が、本当にそれでなければならないという時代はもうとっくにといいましょうか、もともとなかったとさえ言われているにもかかわらず、そういうやり方を一たん決めた法律ができていたために、その法律そのものを改めるということをしないで、扱いを改めるという形で対応してきた。そこには、今申し上げたように、人権というものに対するきちっとした強い見方が確立されていればもっと早い時点にこうした見直しができたのではないか、そういう感じもいたしております。  そういう点で、この人権の問題は、先ほど薬害エイズのこともおっしゃいましたけれども、あるいはこのらい予防法廃止に伴う優生保護法の一部改正の問題とも絡むかもしれませんけれども、日本において人権の問題と現実のいろいろな問題の比較考量というものが必ずしもきちっといっていない問題はまだまだあるかというふうに思っておりまして、そういう点では、今後そうしたことがないように、別な言い方をすれば人権というものに対する認識をもっと深めるように、厚生省としても努力をしていきたい、こう考えております。
  56. 青山二三

    ○青山(二)委員 そこで、らい予防法廃止の基本的立場として、予防法による患者の人権侵害を長期にわたり放置してきた責任を明らかにするためにも、また、長い間患者とその家族が受けてきた不当な差別による苦難の歴史を深い反省をもって一挙に終わらせるためにも、法の中に国、行政の誤ったハンセン病対策についての反省を明示すべきではないかと私は思うわけでございます。これを明記することが、患者及び家族にとって、終生隔離され、無念のうちに生涯を終えた人あるいは高齢化している入居者に対するせめてもの償いになるのではないでしょうか。大臣はどのようにお考えでしょうか。
  57. 菅直人

    菅国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、このハンセン病の政策変更、つまりはらい予防法廃止がおくれたということについては、国として、行政として、そのことがもたらしたいろいろな、患者家族皆さんに対する大変な苦痛をお与えしたことは、おわびを申し上げなければならないし、おわびを申し上げてきたところであります。この法律そのものにそういったことを盛り込むべきではないかという御指摘だと思いますが、先ほど法律提案理由の中に、今申し上げたような趣旨を加えて述べさせていただいたところであります。  法律の性格にもよりますけれども、法律提案理由というのは、このらい予防法廃止するということについて国として、厚生省としてなぜそういうことを提案させていただいたかという、ある意味では法律と一体のものといった性格もありますので、そういう中で国のそうした責任を明らかにすることによって、今御指摘をいただいたような姿勢を明らかにしてきているわけであります。そういったことで御理解をいただければと思っております。
  58. 青山二三

    ○青山(二)委員 ハンセン病とか結核、性病などの伝染病や感染症に出会うたびに、政府は予防法をつくってまいりました。エイズでも、政府がまず取り組んだのはエイズ予防法の制定でございました。これは多くの反対者がおりましたが、この反対を押し切ったという形でエイズ予防法が制定されました。  この法律はエイズの蔓延防止あるいは公衆衛生の向上を目的に掲げ、患者の人権保護をうたってはおりますけれども、患者感染者の救済について触れた条項はどこにもありません。これでは、患者救済よりも社会防衛を優先した法律であると言われても仕方がないわけでございます。  HIV訴訟の原告の多くの方々が本名を名乗れない現実は、ハンセン病患者の多くが仮名で生活をした姿とよく似ております。  日本らい学会の見解にも、現行法の廃止を主導せず、ハンセン病対策の誤りを是正できなかったのは、学会の中心を療養所関係会員が占め、学会の動向を左右してきたからだとございます。こうした関係者による意見に左右されるという状況は、まさに今日の薬害エイズ問題に続くものであり、勇気ある改革のメスを入れてこなかった行政の怠慢にほかならないと思うわけでございます。  こうした過ちを再び繰り返さないために、抜本的な厚生行政の転換に早急に着手しなければならないと考えるわけでございますが、大臣の御見解をお伺いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。     〔委員長退席、木村委員長代理着席〕
  59. 菅直人

    菅国務大臣 感染症のいろいろな病気、今も結核のこともお触れになりましたけれども、ほかにも法定伝染病と言われるようなものも従来から指定をされていて、感染性のものについて何らかの形でそれが拡大することを防いでいくというのも、もちろんこれは大変重要な施策であるということは、一般的に言えば、御理解をいただけると思うわけです。  ただ、そのことが、おっしゃるとおり隔離といった、しかもらい予防法の場合は、ある意味では一生にわたる長期の隔離ということが必要かということになると、それは、今考えてみて、明らかにもっと早い時点でらい予防法廃止して、そういうやり方でなくても、通院等によって十分対応できたのではないか、そういう御趣旨としてはよく理解をできるわけであります。  今、薬害エイズの問題も、いろいろな感染ルートについて、ある意味では逆に、例えば本人が非加熱製剤などによって感染されている可能性がある人が、本人そのものはまだそういう薬を使われたことがわかっていないといったような問題も残されておりまして、そういう点では、事実関係を把握したり、その感染の広がりを抑えるということももちろん非常に重要だと思っているわけです。  そういう点と、今言われました患者さんの人権あるいはそういったものをどういうふうにきちんと確保できるか。これは私も、役所としてもちろん努力しなければいけないところが大変多いわけですけれども、ある意味では社会そのものが、場面によっては逆に、もっと強く社会防衛的なことを要請するような雰囲気も状況によっては生まれる場合もありますので、そこは適切な感染予防ということと人権というもののバランスを常にきちっと考えられるような状況を、もちろん厚生省としても考えていかなければならないと思いますけれども、それぞれの立場でお互いに考えていく必要があるのではないか、そう思っておりまして、それに加えて、厚生省の現在のいろいろな問題、御指摘がありましたが、そういう視点からもあり方を十分考えてまいりたいと思っております。
  60. 青山二三

    ○青山(二)委員 大変ありがとうございました。これで私の質問を終わらせていただきます。
  61. 木村義雄

    ○木村委員長代理 大野由利子君。
  62. 大野由利子

    ○大野(由)委員 新進党の大野由利子でございます。  私も、らい予防法廃止法案について質問をさせていただきたい、このように思っております。  らい予防法によって、国の誤った強制隔離政策によって、ハンセン病患者の方またその家族方々が本当に大変な苦しみを受けられ、尊厳を傷つけられ、社会から切り離されて、そして、遺伝病でもないのに優生手術を受け子供を産むことさえ許されなかった、こういう大変な人権侵害の不幸な歴史があったわけでございますが、私も、この法律によって本当に大変な苦しみを受けながら亡くなられた方に心からお悔やみを申し上げますとともに、今在園していらっしゃる方に心からお見舞いを申し上げたい、このように思います。  初めに、私も、青山二三議員の方から今いろいろ質問がございましたので、ダブりは避けたいと思っているわけですが、やはりどうしてこんなにおくれたのかというのが、先ほどいろいろ局長大臣からも答弁がございましたけれども、今の質問を聞いていましてももう一つ何かぴんとこない、そういう状況でございます。  現在のらい予防法、昭和二十八年に制定されたらい予防法ですが、制定されたとき、既に昭和二十八年当時には、治療薬のプロミンによって、効果が大変明らかで短期間のうちに治癒をする、国際的にも患者隔離政策というのは否定されていた、そういう事実がございます。だからこそ、参議院の厚生委員会で「近き将来本法の改正を期する」という附帯決議がつけられたと思うのですけれども、このときからでも既に四十三年になるわけですね。一番最初のらい予防法から見ますともう九十年、そういう時を経ているわけです。  今、いろいろ答弁がございました。でも、もう一度伺いたいのですが、昭和二十六年に参議院の厚生委員会療養所の三人の園長さんがいろいろ反対の発言をなさったということ等々がこの見直しをおくらせた一つの大きな原因ではないかというふうなことも言われております。また、薬害エイズ事件におきましても、血友病患者の権威者であります安部英さんが、本当に大変な決定権を持っていらっしゃる方がアメリカからの加熱製剤を輸入することに大変消極的であった、それが日本の薬害エイズ事件を大きく拡大してしまった、そういう不幸があったわけです。  どうなんでしょう、代々の厚生大臣は、このらい予防法を見直すための審議会というのですか、諮問というのか、そういうのは過去にも行われたことがあるのでしょうか、それを伺いたいと思います。     〔木村委員長代理退席、委員長着席〕
  63. 松村明仁

    松村政府委員 現行のらい予防法見直しがおくれた理由につきましては、先ほども申し上げておりますが、法律廃止されました場合に、入所者医療及び福祉確保できるか、こういうことで我々にも不安がございましたし、また関係方々の中にも不安があった、こういうふうに言われておるところであります。それから、医学的にも再発など万一の事態に対する危惧があったとか、こういうことを言われております。さらに、残念ではございますけれども、社会全体にハンセン病に対する理解が十分でなくて、受け入れる環境が成熟していなかった。こういうようなことがいろいろ重なりまして、残念ながら見直しがこれまでおくれた、こういうことだと思います。  さらに、厚生省の中でこの見直しについて検討がなされたかということでございますが、それぞれの時代に処遇について検討はなされたというふうに理解をしておりますけれども、このように抜本的に検討がなされたのは今回が初めてではなかったかと思っております。
  64. 大野由利子

    ○大野(由)委員 先ほどもいろいろ話が出ましたけれども、一九七二年に沖縄が返還された際に、やはりこの予防法が大変問題になりました。沖縄では一九六一年から在宅通院治療を導入しておりまして、沖縄が返還されて、予防法を適用するのかどうかとまた検討されて、結局、沖縄振興開発特別措置法という法律でもって沖縄県には在宅治療を認めると。本土と沖縄とでは違ったハンセン病に対する治療の決断を下しているわけで、沖縄がこうであれば、当然もう本土についても同じようなことができてよかったわけですし、もう二十年以上も前の話でございますから、私は、当然この治療の方法についても厚生省としてもっと前向きにいろいろ諮問をしたり検討をしたりということが必要だったのではないかな、このように思うわけでございます。  この辺の真相究明というものをもっと徹底して行っていかなければ、薬害エイズも含めて将来に禍根を残すことになるのではないか、私はこのように思いますが、菅厚生大臣の御答弁をいただきたい、このように思います。
  65. 菅直人

    菅国務大臣 先ほど来、政府委員の方からも答弁申し上げておりますが、この問題は本当に長い歴史がありまして、昭和二十八年の現行法ができるときの状況については私もいろいろ説明は受けているわけですけれども、先ほど大野委員の方から言われたようないろいろな、その前の参議院の審議等がどういう形であったかという、その詳細のところは私も必ずしもすべては把握をいたしておりません。  しかし、そういう中で私なりに理解をいたしますと、大きく状況が変わりつつあった中で、しかし従来の、明治以来の法律の骨格をそのまま残した法律に、二十八年、そのまま存続をさせた、そういう事態が一つはあったのではないだろうか。そしてその後、確かに治療法などがよりしっかりして完治をする、あるいはもう菌が出ない、あるいは感染も非常に弱い、そういうことになった段階で方針転換がもっと早くなされるべきだったと私も思うわけですけれども、その時点その時点で必ずしもそういう構造的な転換をしないで、いわば運用上の扱いでもって弾力的にやる、そういうやり方を結果的にとってきたのではないか。なぜそうなったかということについては、私にもこういう理由だということを申し上げるだけの知識がありませんけれども、あるいはその要素の中に、この間のいろいろな経緯を見ておりますと、一度決めたことを変えることについてはよく言えば慎重、悪く言えば変えることに対して非常に抵抗をしやすいという、そういう行政のある種の体質もあるいはあったのかなという感じもいたしております。  ただ、最終的には、今回の法律も公衆衛生審議会で答申をいただいてこの廃止案を出したわけですけれども、その関係者皆さんもかなり以前かららい予防法廃止について努力をされてきたという経緯も、それは役所の関係者を含めてそういう話も聞いておりますので、それぞれの立場で努力した人はあったけれども、残念ながら廃止までこの問いかなかった、そういうことではないか。残念なことではありますけれども、こういうことが将来に向かってないように、これは行政もそうでしょうけれども、ある意味では国会としてもそういう見直しについては常に目を光らせていただく必要があるのかな、議員の立場も含めてそんな感想を持っております。
  66. 大野由利子

    ○大野(由)委員 法務省の役人の方にこうした人権侵害等々について御見解を伺ったわけですが、法務省も個人の人権侵害等々については意見を述べることができますけれども、厚生省云々という機関に対して意見を述べる立場じゃございません、このようにおっしゃっておりまして、私はやはり、それぞれの省庁の中でこれから、さっき大臣も人権ということをおっしゃいましたけれども、何にもかえがたい人権をいかに尊重するかということについて十分な配慮と尊重がなされなければいけないのではないか、このように思っております。  それで、大臣に、療養所に行かれて、亡くなられた方に対して心よりお悔やみを申し上げ、また、在園者の方々に心から謝罪をされるべきではないか、このように思いますが、大臣の御見解を伺いたいと思います。
  67. 菅直人

    菅国務大臣 一月十八日に全患協皆さんにおいでをいただきまして、きょう提案をいたしましたらい予防法廃止について申し上げ、同時に、それまでの国の姿勢についておわびを申し上げました。その席でも、患者皆さんから、この長い間に亡くなった方、無念の思いで亡くなった方についてぜひ納骨堂などをお参りをしてほしいということも要請をいただきまして、私もその場で、少なくともこの法律案が成立あるいは一つのめどがついた段階でお伺いをしたいということをお約束いたしております。  そういう点で、きょうこの衆議院の場でこの法案を通していただきましたら、そう遠くない時期に、少なくとも、私にとってもあるいは大野委員にとっても地元であります全生園の方にお伺いしてお参りをさせていただきたい、また、機会があれば他のところにも出かけさせていただきたい、このように思っているところであります。
  68. 大野由利子

    ○大野(由)委員 私も厚生委員の一人として、本当に心から反省をしている一人でございます。国も、本来なら大変な国家賠償に相当することであって、患者団体の皆様はそこまで要求をしていらっしゃらないわけでありますけれども、私は、現在六千人近い在園の方々がこの法律廃止された後も本当に安心して現在の医療福祉を受けられるように維持継続が保障されるということが何よりも大事ではないか。  この法律廃止されたときには約束しますと約束されるわけですけれども、これが十年たち二十年たって、どうしてハンセン病方々だけがこのように手厚い処遇を受けているのかというような声が上がってくるようなことが万が一あれば、これはとんでもないことではないか、このように私は思うわけです。そうじゃなくて、若いときにそれこそ強制隔離政策によって、そして強制的に家族と引き離されて療養所生活を余儀なくされた、そういうことへの大変な過ちを国は認めて、本来なら国家賠償に匹敵をする、そういう大変な問題であるということを深く認識した上で患者団体の皆様の要求にしっかりこたえていかなければいけない、このように思うわけです。  第二条の中に「必要な療養を行うものとする。」このように出ております。「必要な療養」というのはどういうことなのか。また、医療だけじゃなくて福祉事業も、在園の方々への患者給与金支給について、これも先ほど冒頭で質問があったようでございますけれども、患者給与金支給等々についてもこの制度の維持継続が必要でございますし、本来なら法文に明文化すべきであったろうと思うのですが、残念ながら明文化されていないのですけれども、この点について大臣から明快な御答弁をいただきたい、このように思います。
  69. 松村明仁

    松村政府委員 私の方から「必要な療養」について説明を申し上げます。  廃止法の第二条に規定しております「必要な療養」とは、国立ハンセン病療養所入所者療養生活を送られるに当たって必要となります医療及び医療を受けるために必要な生活の援助のことでございまして、通常の医療よりも広い概念として私どもは用いております。  なお、医療につきましては、もちろん、ハンセン病治療のみならず、合併症、その他の疾患の治療など疾患全般にわたる医療が含まれておりまして、その医療費は全額国費により負担することとしております。  今回のらい予防法廃止に当たりまして、医療及び福祉措置継続していくこと、これは基本的な考え方でございまして、現行の医療体制の維持継続については万全を期してまいりたいと思っております。
  70. 大野由利子

    ○大野(由)委員 在園の方々がこれから減ることはあってもふえることはないということで、在園の方々のために医療の充実とか住環境の整備ということが本当に必要ではないか、このように思っております。  私の地元の東村山市の全生園におきましても、病棟が雨漏りしたり、トイレのにおいがにおってきたりとか、また、独身寮は四畳半に板の間の廊下がちょっぴりついているだけとか、トイレも半間四方で、太った人であると立ったとき後ろのドアがきつくて十分閉められない、半開きになったまま用を足すというような大変ひどい状況でございまして、私は、今どき会社の独身寮や学生寮でも四畳半でこういうひどいところはないのじゃないか、このように思うわけです。  ここをついの住みかとして暮らしていらっしゃる方々、余生を本当に快適に過ごしていただけるようにというのがせめてもの過去への償いで、政府ができることはこういうことではないか、また、こうしていかなければいけないのじゃないか、こういうところに十分な予算をつけるべきではないか、このように思いますが、御見解を伺いたいと思います。
  71. 松村明仁

    松村政府委員 施設整備についての御質問でございますが、施設整備につきましては、老朽化いたした場合の居住者棟あるいは病棟、治療棟の整備、あるいは職員の宿舎の整備等は計画的に実施をしております。今後とも、施設整備に伴う環境改善に努めてまいりたいと思います。  具体的に申し上げますと、例えば目の不自由な方のために、盲導索の設備でございますとか視覚障害者の誘導システム、あるいは療養所の舗装道路の整備、入浴介助リフトの設備整備等、こういった新しいことも実施をさせていただいておりまして、平成八年度の予算ではこれらの施設整備費として四十五億七千万円を計上させていただいておるところでございます。
  72. 大野由利子

    ○大野(由)委員 若いときは強制的に入所、入園させられて、そして年老いてから、在園の方々が少なくなってきたからということで今度は強制的にどこか別の療養所に移転をするようにということが強要されるようなことがあっては絶対ならない。年老いて、やはり長年住みなれて、ここに住みたいと本当に思っていらっしゃる方が最後までそこに住み続けることができるということを保障すべきではないか、このように思っているわけです。  全国ハンセン病療養所十三施設において、国立の医療機関また福祉機関として存続させていくのだ、再編や統廃合でどこかへ移転するということはない、そういうことをぜひお約束していただきたい、このように思うわけですが、伺いたいと思います。
  73. 松村明仁

    松村政府委員 らい予防法廃止に関する法律におきましては、現在国立ハンセン病療養所入所している方々療養生活を、引き続きすべての入所者の方について生涯にわたり継続をさせていただく、こういうことになっております。  また、遠い将来のお話も出ましたけれども、これについては、入所者の動向等をよく調査あるいは検討いたしまして、適切に対応してまいりたいと思っております。
  74. 大野由利子

    ○大野(由)委員 このことで大臣にもちょっと答弁をいただきたいと思うのです。  この法律廃止されるときには当面は再編や統廃合は考えておりませんという局長の答弁だったわけですけれども、将来においてはそのときに検討させていただきますという、この辺が、ある面では非常に不安なものが在園、入園をしていらっしゃる方々にもあるのではないか、このように思うわけです。  私は、職員方々や在園していらっしゃる方々の意見というものを非常に尊重して、そして将来ハンセン病の方が、ハンセン病だけじゃなくてということはあるかもしれませんが、医療機関、福祉機関として生き続けることができる、そしてハンセンの患者だった方、治癒者の方もそうした方々と一緒に住むこともできるという、やはりその辺のことが必要であって、ここは人数が少なくなったからよそへ移転してくださいということはあってはいけない、このように思うわけですが、大臣の御見解を伺いたいと思います。
  75. 菅直人

    菅国務大臣 一般的にも、長年住みなれたところを離れるということはなかなか厳しいことですし、特に高齢になってから、事情はいろいろあるかもしれませんが、その住みなれたところを離れて別の環境の場所に行って適応するというのはなかなか厳しいわけであります。  そういう点で、大野委員が言われますように、今まで長く療養所の中で生活をされている皆さんができるだけこれまでと同じような形で生活し療養されるということ、そういう条件を維持していくということは、このらい予防法廃止に関連してそのことの継続を認めていくということは先ほど来申し上げているとおりです。  同時に、私も、長年この問題でいろいろ予算要求などの御意見を聞くときに、例えば病院施設などが、高齢化に伴いいろいろな医療施設が必要な患者さんが発生した場合に、必ずしもすべての園が高度な施設を完備できていないというような問題で、そういった意味で、何人かの患者さんをそういう施設が整ったところに移さざるを得ないというようなケースもお聞きをいたしております。そういう点で、大野委員の言われる考え方は、私たちも、厚生省としてもできるだけ継続をしたいということは当然前提としてあるわけであります。  ただ、そのことが、患者さんの数がだんだん、これから十年、十五年先に本当に少なくなった時点でどういう体制をとるかということまでお聞きになっているとすると、機械的に必ず十三の園が十年、二十年後そのままの形で存在するというところまではなかなか見通しが立たないものですから、その時点はその時点でまた考えさせていただきたいということを申し上げているわけでありまして、できる限り今の生活、条件を維持していくという点では厚生省としても万全を尽くしてまいりたい、こう考えております。
  76. 大野由利子

    ○大野(由)委員 入園の方々に年老いて悲しい思いをさせることのないように、これだけはぜひこの法律廃止を機会に厚生省に、政府に要望をさせていただきたい、このように思います。  また、在園の方々は、たとえ人数が少し減少されていかれたといたしましても、逆に高齢になりまして体の不自由度は以前に増して強くなる、そういう状況で、健康な人でも年をとると不自由になってくるわけですけれども、ましてハンセンの治癒者の方々、目がお悪い方、またそれぞれ手足に麻痺がある方、そういうことで健康な人以上に年をとられて体の不自由な方も多い、こういう状況だと思います。  全生園でも全体の三分の二が不自由者センターに、四百五十名の方がそこにいらっしゃるという状況でございますので、私は、介護の人また看護婦さんとか看護に携わる人をぜひ増員していただきたい。人の手をかりなければ到底快適な生活を送るわけにいかないわけですし、今も、例えばお買い物にいたしましても、二日に一回、職員の方にいろいろお願いするのが精いっぱい、そのようなことも伺っております。介護に携わる方、医療看護に携わる方の増員をぜひお願いしたい、このように思います。
  77. 松村明仁

    松村政府委員 国立ハンセン病療養所におきます職員確保につきましては、先ほども申し上げましたが、現在、定員が三千百十四名で現員が三千九十五名、こういうことで、充足率は九九・四%となっておるところでございます。  それで、今委員指摘のような状況は私どももよく理解をしておりまして、毎年必要な職員確保には努力をしております。また、今後とも努力を続けてまいりたいと思っております。
  78. 大野由利子

    ○大野(由)委員 今回のらい予防法廃止法案の提出に当たりまして、厚生省は入園者のお一人お一人に復帰への意思とか希望を持っておられるのかどうか、そういう聞き取り調査をされたのかどうか、伺いたいと思います。
  79. 松村明仁

    松村政府委員 社会復帰に対する希望調査を厚生省がやったかどうかということでございますが、現在、厚生省が主体的に社会復帰の希望調査をしておることはございません。今後、患者団体方々がそうした調査の実施を検討していきたい、こういうようなお考えもあるやに伺っておりまして、患者団体方々と十分に相談しながら、こういう情報の把握、それからその情報に基づく対応を考えてまいりたいと思っています。
  80. 大野由利子

    ○大野(由)委員 数は少ないかもしれませんけれども、希望を持っていらっしゃる、退園して、そして残り少ない人生を一般国民として生きたい、そういう切実な願いを持っていらっしゃる方も中にはいらっしゃるわけでございますので、その希望を持っている人には希望がかなえられるようにすることが必要ではないか、私はこのように思うわけです。  過去に退園された方、退園されるときに生業資金とか技能習得資金が一時的に出るようでございますが、それを受けられた方はどれぐらいいらっしゃるか、伺いたいと思います。
  81. 松村明仁

    松村政府委員 厚生省としましては、軽快退所、疾病が軽快をされて退所をされた、こういうふうなことで把握をしております方々の数は、累計でございますが、昭和二十六年以降平成六年までで二千七百六十四名となっております。しかし、ここ数年は、高齢化が進んだというふうなことが理由だと思われますが、軽快退所される方は年間二十名前後にとどまっておる、こういう数字でございます。
  82. 大野由利子

    ○大野(由)委員 今、局長の答弁がございましたけれども、実際は再入所された方もここには含まれているのじゃないか、このように思っておりますが、純然たる退園された方の数でしょうか。
  83. 松村明仁

    松村政府委員 今委員指摘のように、私どもが把握させていただいておりますこの数は、先ほど累計と申し上げましたように、入所されてまた軽快されて退所される、そういう方々、繰り返されておられる方々も含まれておりますので、現にその方が何人療養所の外で生活をされているかについては、正確な数を把握しておらないということでございます。
  84. 大野由利子

    ○大野(由)委員 第五条に「社会復帰の支援」とございます。「国は、入所者等に対して、その社会復帰に資するために必要な知識及び技能を与えるための措置を講ずることができる。」というのが第五条にあるわけですが、これは具体的にはどういうことを考えていらっしゃるのでしょうか。
  85. 松村明仁

    松村政府委員 社会復帰を希望される方に対する支援対策といたしましては、従来から、社会復帰された後の生活不安等を少しでも解消していただくということで、医療、老後、就職等について助言、指導を行う相談事業というようなことを実施しております。また、実際に社会にお出になって自立をしていただくわけでございますが、この自立をお助けするために、社会復帰希望者の希望に沿った各種の職業指導、例えば洋裁技術ですとか印刷技術、こういうようなものの職業指導も実施をしておるところであります。また、就労に必要な資金の援助もさせていただいておる、こういうことでございます。
  86. 大野由利子

    ○大野(由)委員 現在、軽快退所というのでしょうか、先ほどお話にありましたように、社会復帰される方々に生業資金として五万三千円、技能習得資金として三万二千円、合わせて八万五千円支給されるようになっているわけですが、この額はいつからこの額になっているのか、また、この額は退園されるとき一回こっきりだけ支給されているのではないかと思いますが、これらについて間違いないか、伺いたいと思います。
  87. 松村明仁

    松村政府委員 軽快退所される方に対する就労助成金につきましては、昭和三十九年度から事業を開始したものでございますが、御指摘のように、現在の支給額は八万五千円となっております。これは、昭和五十八年度からこの額になっております。
  88. 大野由利子

    ○大野(由)委員 昭和五十八年からずっと据え置きでこのままの額になっている、そういう御答弁だったと思うのですけれども、今回、らい予防法が撤廃されるわけでございますので、そういう意味で、私はやはり、退園を希望される方もいらっしゃる、そのための財政措置がなされなければいけない、このように思うわけですけれども、平成八年度の予算案の中には特別こうした予算が見当たらない、今までどおりの、らい予防法が存在していたときと全く変わらない予算のままという状況ではないか、このように思うわけです。  私は、その中にいらっしゃる方が、そのままずっと入園を希望される方は入園し続けることができるし、退園を希望する方は退園も可能、選択権が、本当に自由に御本人が選択もできて、そして退園される方にはそれなりの社会復帰のための支援がなされなければいけない、また、社会復帰したけれども、健康上の理由、いろいろなことで、試みてみたけれども思うようにいかなかったというときにはいつでもまた園に帰ることもできる、こういうことを手厚くすることが必要なのではないか、このように思うわけです。  例えば、入園されている方は患者給与金支給、これは今後も引き続いて支給しますという答弁をいただいたわけですが、私は、園にいらっしゃる方も退園された方もそういう意味では同じ扱いでなければいけないのじゃないか、入園していらっしゃるときは患者給与金が出るけれども、退園されるときは、出られるとき一回ぽっきりしか出ないということであれば、らい予防法が撤廃されたといっても、結局、引き続いて隔離政策が生き続けている、結果的には出たくても出られない、そういう状況になるのではないか、このように思うのです。  ですから、同じ一人の方なんですから、その方が入園されていても退園されても同じく、国は、今までのこともありますし、手厚い処遇を考えるべきではないか、このように思いますが、御見解を伺いたいと思います。
  89. 松村明仁

    松村政府委員 社会復帰の希望者に対していろいろな支援策を講ずるべきではないかということでございますが、私どもも、社会復帰を希望される方に支援していくことは非常に重要なことだと思っております。  しかし、いろいろなお話がございましたように、入園者の方々の置かれている状況をいろいろ考えますと、今後、この社会復帰を進めるためにいろいろな具体的な御要望をお伺いして、それに対応していくのがよろしいのかな、このように考えておるところでございます。  また、今回の法律案におきましては、既に御承知のように、社会復帰はしたい、してみる、しかし社会復帰が万一失敗したとか、そういう場合に国立療養所に再入所をしていくというような場合も、これは同じように再入所を認める、こういう措置を組み込んでおるところでございます。
  90. 大野由利子

    ○大野(由)委員 社会復帰をしたい方々にどういう支援ができるか、これから前向きに検討をしてくださるという御答弁だったと思います。  本来なら、この法案ができる前にそれもきちっとメニューをそろえて、そしてこの法案審議にかかるべきだったのではないか、ちょっとこれは遅いのではないか、このように私は思うわけでございます。一回ぽっきりの今八万五千円の手当金を少しふやして九万円にした、十万円にしたから手厚い処遇になったとは到底言えないわけでございます。退園された方が入園されている方と同じように恒久的に、一回ぽっきりではなくて毎月こういう患者給与金なり、また医療の面において今国費で医療が見られているように、そういう配慮がなされるべきではないか、このように思います。  もう一度、私は大臣の考え方も伺いたい。ここで明快な答えは無理かもしれませんが、大臣はどのように考えていらっしゃるか、伺いたい。そして、このことはぜひ前向きに一生懸命取り組んでいただきたい、このように思います。
  91. 菅直人

    菅国務大臣 この法案を、つまりらい予防法廃止という法案を考えるに当たっていろいろな事情を聞いておりますと、当初の問題意識は、らい予防法廃止したときに今の療養のあり方がきちっと継続されることをまず保障するということが大変念頭にあったようであります。そういう点では、少なくともその趣旨は今回の法律の中に十分組み込まれているのではないかと思います。  ただ、大野さんの方からのお話のように、いや、園を出て自立をして生活する、そういうことについて十分なフォローがないではないかという御指摘だと思いますが、確かに、その部分については必ずしも十分な仕組みを考えているとは言えないところはあると私から見ても思います。  多分それは、今申し上げたように、かなり高齢化されている平均年齢を考えて、余りそうした形で外でたくさんの人が自立をされるということを、扱いを間違えますと何か追い出すような、そういう誤解を生むことも若干心配があったというようなことも聞いておりまして、そういうこともあって、それは過剰な心配だったかもしれませんが、十分にそういう希望なりも把握をしていないというのもそういう面もあったように聞いているわけであります。  私も、新聞で、ある方が、らい予防法廃止されるに当たって、やはり年齢にかかわらず社会的に復帰して自立したいのだということを言われていた投書といいましょうか、それも読んでおりまして、そういう点では、そういう皆さんに対する何らかの支援は考える必要があるのではないだろうかと思っております。ただ、現時点では、先ほど来政府委員の方から申し上げておりますように、どの程度の方がそういうことを本当に考え、実行されようとしているかということを、まず希望あるいはニーズをよくお伺いした上で、どういう形の対応の仕方があるのか考えていく必要があるのではないか。  これは必ずしも十分検討した上での話ではありませんが、現在の月々の費用が年金障害一級を基準に出されているということでありますので、年金的な発想法でいえば、確かに、中にいても外にいても同じではないかという考え方もあろうかと思います。ただ、これもいろいろな経緯の中で園におられる方に支給している形になっておりますので、そういう仕組みの根本から変えていくためには、もう一度、場合によってはいろいろな仕組みに、患者給与金のようなものがさらに園から出た後も支給されるという仕組みなどを考えるとすれば、さらに十分な議論をして、一部法律的な手当てがあるいは必要になるのかなと思っております。  そういう点で、今申し上げたように、社会的に自立をされる方、社会復帰をされる方がどれだけ実際におられるかということを十分把握しながらいろいろな可能性について検討していきたい、このように考えております。
  92. 大野由利子

    ○大野(由)委員 今回、多磨全生園に隣接してあります国立多摩研究所が国立予防衛生研究所と統廃合されるわけですけれども、統廃合によって人員がちょっと削減される、事務職が削減されるということです。これからハンセン病制圧のために、WHOのハンセン病制圧計画の予算の八割を日本の団体が寄附で賄っているという報道を私は読みました。しかし、日本人はいわゆる顔の見える貢献をしていない。人員を削減するというのではなくて、もっと研究者なり技術者なりが一まだまだ世界的には約九十カ国で二百四十万人という患者さんがいらっしゃる、そういうことでございます。WHOでは、二〇〇〇年までにハンセン病を制圧する、こういう宣言をしているわけですけれども、日本がこういった分野でもっと国際貢献をする、積極的に顔の見える人的貢献をすべきではないか。  また、時間もないのであわせて伺いたいのですが、今、全生園の中に高松宮記念ハンセン病資料館がございます。差別や偏見の除去に対する啓発教育の一環を担っているわけですけれども、大変大きな役割を果たしていると思いますが、私は、これをさらに社会の中に、差別・偏見の除去に取り組んでいかなければいけない。それに対して政府はどのように思っていらっしゃるのかについて伺いたいと思います。
  93. 松村明仁

    松村政府委員 多摩研究所の問題でございますが、厚生省におきましては、試験研究体制について、時代の要請に的確に対応していくということから、二十一世紀に向けて厚生科学研究の一層の推進を図っていくことにしております。  このために、国立試験研究機関の重点整備、再構築を進めていくこととしておるわけですが、この中で、国立多摩研究所につきましては、研究所の組織の規模が比較的小さくて新規分野への対応及び先進技術の導入に限界がある、さらに、分子生物学及び免疫学の進展に伴って、ハンセン病のみを対象とするよりも感染症全般を対象とした研究体制の中で、他の分野の研究成果、こういったものの活用が図られる、こういったことから、国立予防衛生研究所と統合いたしまして、その支所としてハンセン病治療研究センター、こういう改組をすることとしておるわけでございます。  そこで、委員の御指摘職員定員についてでございますが、現在二十七名の定員が二十四名に減ることとなっておりますが、これは、統合に伴って職員の給与計算等の経理事務を国立予防衛生研究所で一元的に行うために事務部門の定員を減らすものでございまして、研究者の数につきましては、現在の十九名に変更はございません。  それから、国際協力につきましてでございますが、従来から、多摩研究所の専門家と東南アジアの開発途上国の研究機関等が共同で、国際的な共同研究を実施しております。また、国際協力事業団を通じて専門家の派遣もしておるところでございます。今後とも、厚生省といたしましても、こういったことを通じてハンセン病についての国際協力の充実に努めてまいりたいと思います。  それから、啓発普及でございますが、これは、先ほど来説明を申し上げておりますように、この法律廃止するに当たりまして、さらに一層啓発普及に努めてまいりたい、特に各地方自治体の方々あるいは医療等の専門団体方々にも啓発普及をお願いしていく、こういうことにしております。
  94. 大野由利子

    ○大野(由)委員 ありがとうございました。薬務局の方も来ていただいているのですが、済みません、時間がなくなったので、以上で質問を終わります。
  95. 和田貞夫

    和田委員長 五島正規君。
  96. 五島正規

    ○五島委員 今回、四十三年間続いてまいりました現行のらい予防法廃止されることになったわけでございますが、現在の時点においてらい予防法が時代にそぐわなくなったということでこれを廃止されるのか、それとも、らい予防法そのものの持っている問題点を考えて、こうした法律は制定されるべきでなかったという形でもって廃止されるのか、実は非常に大きな問題を持っていると思います。  そういう意味におきまして、今厚生省は、現行のらい予防法廃止に際しまして、この法律そのものの日本において持ってきた意義というものをどのようにお考えになっているのか、あるいはその意味をどのようにお考えになっているのか、らいの予防、治療、さらには日本の公衆衛生活動にどういうふうな影響を持ってきたか、その点についてまずお伺いしたいと思います。
  97. 松村明仁

    松村政府委員 国際的に見ますと、昭和二十八年のWHOらい専門部会の報告は、強制隔離の恐怖から患者はできるだけ自分の健康状態を隠してしまって、強制隔離は管理方式としては失敗に帰するということを指摘しております。しかし、隔離に際しましては、患者感染性の方と非感染性の方に分けて、感染性の患者のみを隔離すべきである、感染性のある患者隔離、有効な治療という視点からは隔離施設の存在は重要であるという、隔離の意義自体は一応認めておったところではないかと思っております。  また一方、当時の国内の状況でございますが、これも御承知のとおり、国内においては、ハンセン病の伝染を防止するための隔離政策は有効であるというのが支配的な考えであったと思っております。したがって、隔離政策を基本としたらい予防法が制定されたものと考えておるわけでございます。  二十八年に改正されました現行のらい予防法において、今までいろいろな方々が御指摘のように、いろいろな問題点が指摘されていることは十分承知をしているわけでありますけれども、国立療養所入所された方々療養福祉増進に関する規定が二十八年の当時に新たに設けられたわけでありまして、これを足がかりとして、私ども行政といたしましても、療養所での入所者医療福祉の向上という問題について、この法律のもとにそういったことに努力をした、そういう面もあるのではないか、このように考えておるところでございます。
  98. 五島正規

    ○五島委員 今回、この法律廃止するというそのことについては全面的に賛成しながらも、今の厚生省の御説明に対しては、この間の日本の公衆衛生の中において、実はらい予防法というのは非常に大きな意味を持ってまいりました。それだけに、今の説明には納得できないものでございます。  先ほど菅大臣が、委員質問に対して、この隔離政策は明治以来の政策の継承として昭和二十八年に現行法が制定されたかのような御発言がございました。これは事実に照らしましても若干違います。  明治時代におきまして、いわゆる三疫と呼ばれた痘瘡やコレラや赤痢、これに対しては、兵力や労働力の保全ということで非常に緊急性があるということで、当時の明治政府は、今日の時代からいえば大変暴力的な隔離政策を進めてまいりました。しかし、このらいというのは余りそうした緊急性がないということがございました。  明治三十七年の全国調査で、当時、日本におけるらい患者は三万三百九十三名と報告されています。そして、それに基づきまして、明治四十年に法律第十一号が制定されまして予防措置が始まるわけでございますが、この明治四十年において実施されたのは、全国五カ所の府県連合の療養所が設けられ、ここに収容されたのは、扶養義務者のない患者に限られ、扶養義務者があることが判明すれば直ちに引き取りが命ぜられました。したがって、現在のような強制収容、強制隔離という政策はとられなかったわけでございます。  そうした政策が、強制隔離がされなかったにもかかわらず、昭和五年のらい患者は一万四千二百六十一人、半分以下に減少しております。すなわち、らい患者の減少というのは、そうした隔離とは関係なしに、いわゆる生活水準、文化水準の向上ということによって日本は明確にらいの減少の方向を進めていました。  ところが、昭和六年に全面改正がなされて、扶養義務者のある患者さんも、いわゆる扶養義務者の患者引き取り義務が撤廃されて、公費による無条件での療養所入所ということが設定されます。そして、本籍も追跡されず、偽名がそのまま通用するという状況に昭和六年からなってまいります。  昭和六年、ちょうど満州事変が始まったときでございます。その時期に、やはり忘れてはならないのは、皇紀二六〇〇年を迎えるに当たって、東亜の盟主として、文明国の恥辱の撲滅とか、血の浄化としての追らい政策といったようなものが国民運動として大きくつくり上げられてきた。そして、らいに対する恐怖というものが国民の中に盛り上がってくる。急性伝染病のペスト、慢性伝染病のらい追放、このことを一つのかけ声として国民の中にその疾病に対する恐怖をあおる中において、いわゆる社会防衛的にらい患者の収容所への追い込みというものが始まった。  この歴史的な事実を考えた場合、明治以来の隔離政策の伝統であったということは言えないのではないかというふうに思います。  また、戦後におきましても、今、松村さんおっしゃいましたけれども、忘れてはならないのは、この法律ができるその前年、昭和二十七年、WHOにおけるらいの専門委員会から、らい管理に関しては、政策を決定するのはあくまで公衆衛生上の立場からであって、公衆の恐怖や偏見から行われるものであってはならないという警告が出されています。にもかかわらず、昭和二十八年に、この法律がいわゆる隔離のための法律としてつくられました。まさに、公衆衛生の中における、あるいは厚生省行政の中における選別隔離ということが一番明確な形で貫徹したのがこのらい予防法であり、その被害というのは非常に大きかったと思います。  しかも、この法律が出されたときに、当時の事務次官通達が全国らい療養所所長に対して出されているはずでございます。これは当時の医学的知見らいっても非常に間違った、偏見に満ちた内容でございます。一度らいにかかれば治療は極めて困難であり、隔離する以外には確実な感染予防方法はない、この特殊な事情を考慮して患者療養所に収容し、全額国庫負担のもとで療養させる、新法に新しく設けられた福祉の規定に従い、今後はさらに十分な考慮を払うとともに、患者に国のらい施策の趣旨をよく理解させ、外出の制限、その他患者として守らなければならない義務を教え、療養に専念するよう指導する、そういう内容の通達が出されました。そして、それに基づきまして、外出から帰ってくることがおくれたということに対して懲罰まで設けるという政策がとられたわけでございます。  この事務次官通達というのはその後取り消されたのでしょうか、そこのところをお伺いします。
  99. 松村明仁

    松村政府委員 今委員指摘の事務次官通知でございますが、これは昭和二十八年の九月にらい予防法施行に伴って発せられた通知でございまして、形式的に申し上げると、現在も取り消されていない状態でございます。しかしながら、現実的には、先ほど来申し上げておりますように、医療の進歩等を踏まえて、国立療養所の運営については弾力的な運用に努めてきたところでございます。  今回、法の廃止について御審議いただいているわけでありますが、この廃止法を成立させていただければ、この廃止法趣旨の周知徹底とあわせまして、この二十八年の事務次官通知につきましても名実ともに廃止をしたい、こういうふうに考えております。
  100. 五島正規

    ○五島委員 このような法律の問題点というのは非常に早くから知られておりました。そして、私も、昭和四十五年、四十六年、僻地に赴任した中におきまして、この法律の存在そのものによって家族全体が非常に悲惨な状況に追い込まれたケースを何人か見てまいりました。僻地であるがゆえに感染の危険性がないということで、治療も受けられない。そして、地域の中においては、いわゆる村八分的な差別が存在している中において放置され、亡くなっていった患者さんがおられました。  そして、この法律が、例えばらい治療の進展やリハビリテーション医学の進展の中においてなぜ今日まで見直されてこなかったのか、その点についても非常に疑問でございます。  これは私自身も執筆した内容でございますが、日本公衆衛生学会におきましても、たしか昭和四十五年でしたか、四十四年でしたかの自由集会の中において、「ゆがめられた日本の公衆衛生」という小誌を出したことがございます。その中でもこの問題を取り上げました。  公衆衛生に従事している多くの医者が、このらい予防法、実際はこのようなものは骨抜きにしなければならないという認識がありながら、人権の全く欠落した日本の公衆衛生行政の一つのモデルと認識していた、それが古くからあったにもかかわらず、医学の進歩とかそういうものを反映した形で法の改正が全然できなかった。なぜそうした法律改正が、仮にこの法律廃止にまで至らないとしても放置してきたのか、その点についてはどのようにお考えなのか、あわせてお伺いしたいと思います。
  101. 松村明仁

    松村政府委員 先ほど来答弁申し上げておりますけれども、まず、このらい予防法廃止されることになれば、現に国立療養所入所されておられる方々医療及び福祉措置の実施が困難になるのではないかというような危惧を私どもも行政当局として感じたことがございますし、それから、患者団体方々を初め関係者の間にもそういう危惧があって法見直しの慎重論となってきたことが挙げられるのではないかと思います。  また、今委員指摘のように、医学界の中には既にそういう御意見もあったかもしれませんが、医学的に見ても、疾病の再発等万一の事態に対する危惧から、実は、昨年の四月に日本らい学会が法の廃止を求める声明を行うまで、法の抜本的見直しを具体的に提言されるに至らなかったというようなこともあると思います。  また一方で、残念ながら、ハンセン病には古くから根強い差別・偏見というものが現に存在しておりまして、社会全体がらい予防法廃止を受け入れるような環境になかった。  こういった種々の要素が重なり合いまして、まことに残念ながらこれまでこの法律の抜本的な見直しに至らなかったのではないか、このように私どもは考えておるところでございます。
  102. 五島正規

    ○五島委員 問題を二つに分けて議論していただかないといけません。  一つは、今局長おっしゃったように、社会的に非常にらいに対する恐怖心をあおり、社会防衛という名前、単に疾病に対する恐怖が社会的につくられた結果として存続している、そういう誤った恐怖心、そこからくるところのもろもろの社会的な疾病差別、そういうふうなものをどのように解消していくかという努力をしない。また、そういうふうな社会の存在の中において、辛うじてらい療養所に入り、みずからの権利、社会的自由を束縛する中において生活する、そのような形での福祉のもとに追いやられているという状況を行政が積極的に改善するということができない。そういうことを逆手にとって、それがあるから改正できなかった。これはまさに行政の怠慢であったし、立法府の怠慢であったと言わざるを得ないと思います。  もう一つは、そのことに対して医学の進歩あるいは医学の実態というものを絡めるとするならば、正確に言わなければならないと思います。らい治療の進歩の中において、少なくとも私自身が医者になったその時期、昭和四十年前後には、らい治療が、非常に難病であり再発を恐れて隔離しなければいけないと、らいそのものを疾患として見た場合に考えていた医者が本当にあったでしょうか。松村さん自身が医者になられたときにそう思っていましたか。そんなことを思っている医者はいなかったじゃないですか。にもかかわらず、それから後、非常に長い期間にわたってこの法律存続してきた。  同じことは、実は、現在まだ我が国にある伝染病予防法にも言えます。私は今回、らい予防法廃止に伴って伝染病予防法も廃止するのかなと思っていました。法定伝染病の中には、御案内のように日本脳炎とか猩紅熱とか、隔離してみたところで全く医学的に根拠のないものがいわゆる法定伝染病として、隔離疾患として放置されたまま残っているわけです。そして、法定伝染病ということにおいての、数多くの、そういう疾患にかかったということを理由として社会の中で何か後ろめたさを持たされるという状況が続いています。  そして、日本においては、残念ながら、疾病差別ということをもって社会防衛論的に患者を追い詰めていくというのは、今回問題になっております血友病患者さんのエイズの問題にとどまらず、性感染症の問題を含めてエイズという疾患を医学的にきちっと正しく理解していただく、そしてその上で正しい治療方法治療の体制、療養体制が整備されるというのではなくて、何となく社会防衛論的な形でもってこの問題がわいわい取り上げられている。  そういう状況を見た場合に、やはりらい予防法を残した大きな責任というものを感じなければいけないと思うわけですが、大臣、その点についてはどうお考えでしょうか。
  103. 菅直人

    菅国務大臣 先ほど、明治以来のいろいろな経緯について五島委員の方からお話を伺いました。私も、率直に申し上げて、この問題の経緯は必ずしも詳しく知っておりませんでして、そういう点で、五島委員から今言われた問題点の指摘というのは大変重要な指摘だという感じがいたしております。  特に、確かに感染症の病気について、かつては結核などはいろいろな形で予防するということが必要であったわけですから、そういう医学的知見からして本当に必要な予防なり、あるいは場合によったら一時的な隔離なりということが必要な問題と、今言われたように社会防衛という考え方を逆に膨らまして、一種のその疾病に対する恐怖心のようなものを社会の中に蔓延させて、そこからくるそうした強制隔離といったような問題は、当然のことながらきちんと分けて考えられなければならない問題であったろうと思っております。  そういう点で、このらい予防法ができた昭和二十八年という時点で、感染症として医学的知見から見てこうした強制隔離が本当に必要であったのかどうかというのは、今のお話を聞いている感じでいえば、確かに、スタートの時点からそうした医学的知見からの必要性というのは必ずしもなかったのではないだろうか。逆に言えば、それ以外の、社会的な慣習とか社会的な恐怖心が残っていたがためにそうしたものが維持された。そういうふうに考えますと、本当に、このらい予防法がこの四十数年間続いてきたこと自体がそのスタートからの大変大きな反省しなければならないことだと思っております。  特に、先ほど来の議論でも申し上げましたが、日本の社会というのはまだ人権といいますか、そういう感覚がどうしてもきちっとした形で認識をされ、あるいは制度の中で生かされるということが少なくて、どちらかといえば、全体のまさに流れの中ではまあ仕方がないじゃないかというような感じで抑え込まれてきているケースが多いわけでありまして、そういう点では、今最後指摘をされたエイズの問題なども本当に、必要な感染予防という問題と、それを超えて、何かそのことの恐怖心をあおることによって、あるいは恐怖心を余りにも強く持ち過ぎることによって非常に患者家族皆さんに対する差別を助長するということが間違ってもないように、私どもも全力を挙げて注意をし、また、そういう形で対応していかなければならないと、御意見を聞いて改めて感じたところであります。
  104. 五島正規

    ○五島委員 そこで、最後でございますが、二点についてお伺いしておきたいと思います。  一つは、先ほども御議論ございましたが、現在、療養所に入っている患者さんに対して支払われております患者給与金の問題でございます。  これは継続されるという大臣の意見の御表明でございまして、非常に結構だと思いますが、これはあくまで療養所の中で生活をするということが前提になっています。それで、この金額は国民年金障害基礎年金一級と同額ということに決められているわけですが、今後、この法律がなくなってから後、やむなく現在ある療養所の中で引き続き生活をされる方がおられるだろう。そのことは日本の非常に厳しい状況として、私も残念ながらそれはやむを得ない措置だというふうに考えますが、基本的には、こうした法律がなくなった中で、これまで療養所の中に入ってしか生活できなかった方々が広く社会全般の中で生活できる、その保障をしていくことが第一であるだろうというふうに思います。  その観点らいうならば、では療養所から出られた方に対してどうするのかという問題がございます。また、現在施設にお入りになっている方々の約半数ぐらい国民年金障害基礎年金の受給対象となる後遺症をお持ちだというふうに聞いていますが、障害基礎年金の受給対象にならない方はおられるのかどうか、もしあるとしたら、その方々はもし施設から出られた場合どのようにされるのかという問題。もう一つは、比較的数は少のうございますが、若年の方々に対して、この施設からお出になった後、年金権はどのようにされることになっているのか、その点について第一点お伺いしたいと思います。  時間がございませんので、もう一つあわせてお伺いしますが、療養所から出ていって社会の中で生活するということになれば、当然、社会の中で生活していく上において必要なさまざまな技能訓練その他職業訓練が必要になってまいります。それで、今回の法案の中には労働省の関連の中でそういうふうなものは特別な措置をされるようになっているかと思っていましたが、なっておりません。その点についてどのようにされる予定なのか。  この二点についてお伺いいたします。
  105. 松村明仁

    松村政府委員 患者給与金の制度につきましては、患者団体の御要望も強いことでございます。先ほど来申し上げておりますように、今後とも維持継続していきたいと考えております。  なお、現在、国立と私立を合わせた療養所入所者五千六百二十四名のうち、国民年金障害基礎年金を受給されている方は四千四百十五名でありまして、老齢基礎年金恩給等を含めますと、何らかの年金を受けている方が四千七百六十九名、こういうことになっております。年齢が若いということや、障害の程度が軽い等によりまして年金を受給されていない方は八百五十五名でございます。こうした方々には、年金額が低い方あるいは年金を受給されていない方にとっては患者給与金という形で給与が出されておりまして、今後とも、この制度も維持継続をしてまいりたいと思っております。
  106. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 この問題、年金制度の面から若干申し上げますと、ハンセン病療養所入所される方につきましては、国民年金の保険料が法定免除になっているわけでございます。その間に障害等級に該当いたしますれば、障害基礎年金は満額出るわけでございます。これは一級と二級があるわけでございます。  それから、老齢基礎年金でございますけれども、これは国庫負担当の三分の一相当が積算の基礎になるということでございまして、既に老齢基礎年金を受給されている方もいらっしゃるようでございますけれども、若い方につきましては、その入所期間につきましては三分の一が今後とも保険料免除期間として残る、こういうことでございます。
  107. 五島正規

    ○五島委員 この法律は、らい患者さんが発生した場合、療養所に入らないと罰金あるいは科料をもって強制させるという法律でございます。その中において、非常に大きな社会的な差別とハンディを受けて療養してこられました患者さんたちが、この法律がなくなったことによって、これから先、特に若年者の方々にとっても、年金その他において大きなハンディキャップだけが残っていくということがあったとしたら許されないことだと思っております。そういう意味で、今、患者給与金の問題につきましては引き続きやっていくということでございますので、そこの点はやっていただくとともに、ぜひ労働省とも打ち合わせして、そういう職業訓練その他についてより具体的に、社会復帰できるような、リハビリテーションできるような体制をとっていただくことを要望いたしまして、質問を終わります。
  108. 和田貞夫

    和田委員長 荒井聰君。
  109. 荒井聰

    ○荒井(聰)委員 新党さきがけの荒井聰でございます。  きょうは三法案審議されているわけですけれども、多くの方がらい予防法の問題等について御審議をいただきましたので、私は年金の問題について議論をさせていただきたいと思います。  ただ、その前に一つ、らい予防法にも関係するのですけれども、大臣の御所見を伺いたいと思っておりますのは、今般、午前中だと思いますけれども、HIV訴訟の原告団で最後までペンディングにしていたお一方が和解案に納得したというニュースが入りました。七年間、八年間でしょうか、続いた訴訟が、森井前大臣が和解をしようといって道筋をつけていただき、そして菅現厚生大臣及び厚生省の皆様方の大変な努力によって和解が現実的にその最終地点に至ったなというふうに思います。この間の皆様方の努力に本当に敬意を表したいと思います。  ただ、この間、患者の皆様といろいろな形で御議論をさせていただきました。その中で、患者皆さんが実名も公表できない、原告番号で特定をしていく、そういう悲しい状況、あるいは地方で本当に病院にかかれない、病院で拒否されるといったような、寂しいというか、とても大変な状況にあるというのは、これは何なんだろうか、何が原因なんだろうかというと、これはやはり病気に対する偏見、病人、患者というものの人権がきちっと守られていない、そういうところに行き着くのではないだろうか。この現象というのは、既に先ほど五島委員が力説されていましたとおり、らい病気について既に何十年もの間病気偏見の問題というのが社会的な問題としてさまざまな形で多くの問題を呈していたにもかかわらず、ここに来てまだこのHIVの問題についてはそれが解消されていないというか、全く同じような状況がここで現出している。  私は、病気偏見の問題をどのように解消していくのか、どのように努力していくのか、国民一般の理解と同時に、治療に当たるそのような関係者方々あるいは病院のあり方、そういうところにまでさかのぼって病気偏見の問題をしっかり議論しておかないと、せっかくらい予防法廃止してらいという病気偏見性の問題に解決の糸口をつけたにしても、また新しい病気で同じようなことを繰り返している、これでは今回法律廃止をしたというその意味が全くないのではないだろうかというふうに思うわけでございます。  このあたりにつきまして、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  110. 菅直人

    菅国務大臣 和解につきましては、私もそのニュースをまだ確認はしておりませんが、先ほどちょっと耳にしまして、特に原告団の皆さんとの間で与党三党の皆さんがこの間も引き続きいろいろ意見交換をしていただいていたことを知っておりまして、そういう皆さん努力、そして荒井さんからも今お話がありましたが、和解という場にきちっと道筋をつけていただいた森井前大臣の御努力を含めてここまで来たものだというふうに思っておりまして、何とか二十九日の期限までに和解を正式に成立できるように最後努力をいたしたいと思っております。  同時に、この問題を含むエイズに対する偏見の問題でありますけれども、私もいろいろな現場の方から話を聞いたり、若干いろいろ見てみたりしておりまして、一つはお医者さんや看護婦さんといったような問題ももちろんありますけれども、さらには、例えば病院でいうと他の入院をしている人とか外来で来ている他の人たちとか、もちろん一般社会の人たちの認識とか、いろいろな問題が重なって、今なお非常に厳しい状態を生み出しているのだと思うのです。  実名で頑張っている川田龍平君なども、十九歳になる、何か予備校のときだというふうに本人が何かに言われておりましたが、それまではやはりなかなか自分で名を名乗って裁判ができなかったという、本当にそういう厳しい中を勇気を奮って実名を公開されて、そしてそのことが、若い人を中心に非常に多くの共感を生むと同時に、今言われたようないわれなき偏見に対しても、それをなくしていく大変大きな力になってきているのじゃないかと思っております。  そういう点で、私も時折、例えばエイズ治療の拠点病院の公開などについて、本来なら当然公開をしたいのですけれども、そうしたときに、そういった医療機関が、いろいろな影響を受けるからちょっとそれだけは勘弁してほしいなんて言われると、どうそこを考えていくべきか大変戸惑うわけです。この国会審議を含めていろいろな機会に、エイズという疾患が決して、きちっとした形さえあれば、空気で伝染するわけでももちろんありませんし、単に接触したからといって伝染するわけでももちろんありませんので、従来の他の疾患に比べてもそれほど感染力が強いものではない。さきの審議のときに五島正規委員が言われておりましたが、肝炎の感染予防といった形がきちんとできる施設であれば十分にそれに対応ができるのだということを言われておりましたが、そういった専門家の知識も含めて、偏見という形が膨らんでいかないように厚生省としてもできるだけの努力をしていきたい、こう考えております。
  111. 荒井聰

    ○荒井(聰)委員 エイズの場合、肝炎よりも伝染性が低いのではないかといったような話は、もっと厚生省が積極的に普及をしていただきたいというふうに思います。そして、このエイズの和解を通じて、エイズという病気の実態というか、伝染性あるいは偏見性のひどさというものが随分世の中に知れ渡ったな、この病気を解決するというか偏見をなくするためには相当大きな力になったなという印象を私は持っておりますので、この流れをとめることなく、厚生省を中心として、この病気偏見をどうやったらなくすことができるのかということに積極的に取り組んでいただきたいと思います。  それでは、年金問題について入らせていただきます。  まず、このように低金利時代になりますと、公的年金の持っている意味というのは大変大きなものがあると思います。国民の老後における所得の保障の柱としてその充実が叫ばれてきましたし、また、その充実を図ってきたわけです。もはや国民生活になくてはならない存在になっていますけれども、具体的に、現時点で高齢者世帯の収入の中でどのぐらいの程度を年金額が占めているのかということについてお知らせ願えますでしょうか。
  112. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 国民生活基礎調査の五年の時点での統計でございますけれども、高齢世帯一世帯当たりの平均所得は三百二十万円でございまして、この中で公的年金は百七十五万五千円ということで全体の五五%ということでございまして、国民の老後生活の中心的な役割を果たしているわけでございます。
  113. 荒井聰

    ○荒井(聰)委員 我が国は、男女とも平均寿命が世界一の長寿国になったわけですけれども、それだけに、長い老後を過ごしていかなければならない。このような長い老後生活を確実に支えていくためには、公的年金制度というのは大変大事なわけですし、また、所得の五五%を年金が占めているということですから、公的年金制度の意味というのは大変大きなものがあるわけですけれども、しかし一方で、受給が非常に長いということはさまざまな困難を伴うのだと思うのです。そういう状況の中で、公的年金制度というのはどのような仕組みを講じてそれを支えようとしているのか、そういう点についてお伺いしたいと思います。
  114. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 我が国の公的年金制度におきましては、五年ごとに、前回は平成六年に行いましたけれども、財政再計算というものをやっておりまして、その際に、現役世代の生活水準の向上等に応じまして年金額改善するというのが一点。  それから、その間は、ただいま御審議願っておりますけれども、毎年の物価の変動に応じまして年金額改定する物価スライド制を導入するということで、これまで日本の経済というのはインフレ的な傾向が強かったわけでございまして、この問の実質的な価値を維持する、こういうことで物価スライド制が採用されているわけでございます。
  115. 荒井聰

    ○荒井(聰)委員 新聞にも時々出ておりますし、また、与党としてもこれから法案の提出ということを議論しようかという機運が盛り上がっております公的介護保険、この公的介護保険の問題というのは、年金制度の持っているさまざまな問題点あるいは医療保険の持っているさまざまな問題点、そういったものをどのようにクリアしていくのかというようなことの議論なくして、公的介護の問題というものの突っ込んだ議論ができないのだろうというふうに私は思ってございます。  今、物価スライド制が年金制度の中に取り入れられている。事実、今回の法案趣旨というのは、物価スライドがコンマ一%下がっているにもかかわらず、消費者物価が〇・一%下がったわけですから現行法律ですとコンマ一%下げる、そういう規定になるわけですけれども、このような金利の低減時代ということもあって現行水準にとどめ置くという、今回は物価スライド制の特例をつくったわけでございます。  この物価スライドなどによりまして年金額を引き上げていくということは、個人年金のようにみずから納めた保険料の範囲で給付を行う仕組みではもはや困難であろうということを、保険制度全体が制度として前提としなければならないのだと思うのですね。ですから、公的年金の財政は物価スライドの面においてどのような考え方で運営されているのか、そのあたりについてお聞かせ願いたいのです。
  116. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 公的年金は、個人年金とか企業年金とかと違いまして、年金受給世代の給付に必要な費用といいますのは現役の世代が負担する、こういう世代間扶養の仕組みという財政運営をいたしているわけでございまして、本来ならばいわゆる賦課方式ということになるわけでございますけれども、高齢化によりましてこれからどんどん給付がふえていく、こういうことでございますので、長期的な財政運営を図る、こういうことから、一定の積立金を積み立てておく、こういうことを考えているわけでございます。この積立金によります運用収入の活用を通じまして将来の保険料負担というものを幾分軽減する、こういう観点に立ちまして、計画的に、いわゆる段階的保険料の引き上げ方式、こういう形をとって運営をいたしているわけでございます。
  117. 荒井聰

    ○荒井(聰)委員 年金制度というのは、世代間扶養という物の考え方と、積み立てた年金をどのように運用していって運用利益でそれを補てんしていくのか、そういう二つの考え方が根幹になければ恐らく成り立たないのだと思うのですけれども、世代間扶養という公的年金制度の仕組みにおいては、年金受給者と現役世代との割合というのは実は非常に大きな意味を持ってくるのだと思うのです。高齢化が進行していきますと、当然のことのように、世代問で扶養していく割合というのは現役世代の割合が小さくなってくるということを意味しているわけですけれども、例えば現在は一人の受給者を何人の現役で支えているのか、それが二十一世紀の本格的な高齢化社会においてはどの程度になるのか、お知らせ願いたいと思います。
  118. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 先ほど申し上げましたように、世代間扶養の仕組みをとって財政運営を行っております公的年金におきましては、一人の老齢年金の受給者を何人の現役の被保険者で支えるか、いわゆる成熟化とか言っておりますけれども、年金制度を知る上で非常に重要な指標になっているわけでございます。  平成六年度末で申し上げますと、厚生年金の場合でございますけれども、被保険者の数は約三千三百万人でございます。老齢年金の受給者というのは五百九十万人でございまして、一人の老齢年金の受給者を五・五人の現役の方が支える、こういう状況になっているわけでございます。  一昨年の財政再計算の結果で申し上げますと、平成二十二年で、一人の老齢年金の受給者を、五・五人でありましたものが二・九人になります。それから、現在その計算で最終保険料率が二九・八%になります年度ということで平成三十七年を申し上げますと、一人の老齢年金の受給者を約二・四人の現役の被保険者で支える、こういう非常に厳しい見通しを持っているわけでございます。
  119. 荒井聰

    ○荒井(聰)委員 二・四人の成人で老齢者を支えていくという世界でもまれに見る高齢化率になっていくわけで、これはもう数字の世界で厳然たる事実だと思うのです。  そこで、今度は積立金の運用問題について触れさせていただきたいのですけれども、積立金の運用でどのぐらいの運用利回りというか運用利益が考えられるのか、それによって年金制度全体をどの程度支えていこうとしているのか。特に、今のような低金利時代では、運用に大変な意を用いなければ年金制度全体が破綻するというようなことにもなりかねないというふうに思うのですけれども、そのあたり、いかがでしょうか。
  120. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 現在、積立金の運用利回りでございますけれども、財政再計算の上では五・五%を見込んでいるわけでございまして、現在預託をしております資金運用部の利率は三・四%程度でございます。ただ、七年物という形で預けておりますので、今現在実際に回っておりますのは五・二、三%で回っているのかな、こういう状況でございます。この率はこのままの傾向が続きますと徐々に下がってくる、こういう見通しであるわけでございます。  公的年金は、賃金の上昇に合わせまして年金額改定する、それと同時に、先ほど申し上げましたように、物価上昇に応じました物価スライドをする、こういう形で行っているわけでございまして、この低金利が続くことによります影響をどう考えるかということでございますけれども、公的年金につきましては、給付の方は賃金とか物価に応じてふえるわけでございまして、一方、運用利回りというのは実勢の金利を反映して変動するわけでございます。賃金と物価それから運用利回りというのは経済の変動で、ある程度連動性を持っているわけでございまして、したがいまして、実質的な利回りというのが問題になろうかと思うわけでございます。  そういう意味で申し上げれば、低金利にはなっているわけでございますけれども、賃金の上昇率も下がっておりますし、物価の上昇率も、先ほど来申し上げておりますようにマイナスの〇・一、こういう形になっておるわけでございまして、当時想定いたしました運用利回りが五・五%、賃金が四%、それから物価の上昇率が二%、こういうのをすべて下回った水準で動いているわけでございます。  そういう意味で、一昨年の財政再計算の計算結果と現在の軌道というのはそれほど変わっていないのではないか。確かに一、二年のことでございますからそれほど大きな影響はないわけでございますけれども、金利と賃金、物価の関係というのが現在のような状況が続くといたしましてもそれほど大きく変わらないのではないのか、こういう見通しを持っておりますが、何分にも非常に高い保険料をこれからいただかなきゃいかぬということになりますとやはり安定した経済成長が必要になってくるのかな、こういうふうに思っております。
  121. 荒井聰

    ○荒井(聰)委員 年金制度の確立、安定的な運営ということのためには、積立金をどのように安定的に運営していくのかということと同時に、もう一つは、未加入者をいかに少なくするのかということなのではないかと思うのですね。  現在、介護保険などでもさまざまに議論しているのです。二十歳から保険料を取るということはどうなんだろうかという議論が行われているのですけれども、この年金制度でもやはり二十歳、学生からも保険料を徴収するというようなことで、徴収率については年代間での格差がかなりあるのではないかと思うのです。あるいは地域的に見ても、所得の高いところ、低いところといったような状況で、年金の加入、未加入の率というのは生じているのではないかと思うのですけれども、そのあたりはいかがでしょうか。
  122. 横田吉男

    ○横田政府委員 国民年金の未加入者の数についてでございますが、私ども、平成四年に全国一千八百地区、二十三万三千人の方を対象に公的年金加入状況等調査というのを行っております。この結果によりますと、国民年金の一号被保険者となるべき者のうち未加入となっている者が約百九十万人というふうに推計しているところでございます。  この一号未加入者の状況を都市規模別に見てみますと、人口二十万人以上の市に約六割、人口二十万未満の市に約三割、町村部に約一割となっておりまして、未加入者の大多数が大都市に集中しているという状況でございます。  また、年齢別の問題でございますが、約五割の方が二十歳代の方でありまして、未加入者は都市部の若年層に多いという結果になっております。  さらに、所得の状況でございますけれども、未加入者と加入者の家計支出の分布状況を比較いたしますと、両者にはほとんど差が見られないということで、必ずしも低所得の方が未加入となっていると言えないのではないかと考えております。  また、未加入者の七割くらいの方が国民健康保険の方には加入しているというような状況にございます。
  123. 荒井聰

    ○荒井(聰)委員 このような未加入者の存在は、年金制度の基盤を揺るがしかねない問題だと思っております。その解消に向けてどのような取り組みを、あるいは対策を考えておられるのか、そして、これらの取り組みの成果が介護保険制度を検討する際にも大変大きな参考になるのだろうと私は思っておりますので、最後に、大臣からそのあたりの決意をお伺いさせていただきたいと思います。
  124. 菅直人

    菅国務大臣 国民年金の未加入の状況は今政府委員から御説明申し上げたわけですけれども、若年層が特に未加入が多いわけですが、それをどうすればいいかというのは本当に大変頭の痛いところであります。  先ほど来、公的介護の問題もこうした問題を踏まえてというように言われましたけれども、公的介護の場合の負担も、若年層からいただいた費用である程度高齢者の介護費用に充てるという意味では共通した部分もあるわけですが、場合によったら年金以上に、年度ごとの収支で介護の費用に充てていくということでいえば医療保険にも共通している側面がありまして、そういう点では、医療保険の考え方で徴収をするという考え方もあるし、あるいは年金というものと類似したような形で徴収するということもあり得るわけで、確かにそういう点では十分議論が必要かなと思っております。  そこで、未加入者の問題ですが、国民一人一人の将来の年金権を確保するとともに、公的年金制度の健全な運営を図っていくためには、未加入者の解消は極めて重要な課題であるというように認識しております。  このために、二十歳到達者の全員加入を目指して、現在、約九割の市町村が二十歳になった若者に対して年金手帳送付による適用を実施するようにいたしております。つまりは、希望者に送るのではなくて、手帳をお送りして、基本的にはもう入ることになっていますよということを伝えると同時に、そういう扱いをするということを行っております。  また、未加入者の七割が国民健康保険に加入しているということから、国民健康保険との連携を強化して、総合窓口の推進などを積極的に進めているところであります。  さらに、平成九年一月から、公的年金各制度に共通する基礎年金番号の導入を図ることとしておりますが、これが実現すれば、より根本的、効率的な未加入者対策ができるようになる、このように考えております。  こうしたほか、年金制度に対する国民の理解と信頼を深めるための広報活動の強化充実を図るなど、総合的な対策を講じることによってこの未加入者の解消には全力を挙げて努力していきたい、こう考えております。
  125. 荒井聰

    ○荒井(聰)委員 終わります。
  126. 和田貞夫

  127. 岩佐恵美

    岩佐委員 まず、人骨問題について伺いたいと思います。  今から七年前の一九八九年七月二十二日、新宿区戸山町の国立予防衛生研究所の現在の所在地である旧陸軍軍医学校跡地から、百体を超える人骨が発見されています。この軍医学校の一画には、細菌兵器の研究開発部隊である七三一部隊の司令部ともいうべき防疫研究室がありました。この七三一部隊が戦時中、中国人や朝鮮人、ロシア人の捕虜をマルタと呼んでチフス菌やペスト菌、炭疽などの細菌を使った生体実験をやったことは、これは明らかになりつつある事実であります。この跡地から百を超える人骨が見つかったことから、この人骨が人体実験された外国人捕虜あるいは民間中国人らの遺骨ではないかという疑念が持たれています。  当委員会でも、九二年二月に、山下徳夫厚生大臣がこの件について調査を約束しておられます。その後、どういう調査になったのか、教えていただきたいと思います。
  128. 亀田克彦

    ○亀田政府委員 御指摘の、人骨が発見されました旧陸軍軍医学校跡地は、現在、国立予防衛生研究所の敷地となっております。このことから、厚生省といたしましては、人骨が発見された土地の管理者という立場から、人骨の由来につきまして調査を行っておるところでございます。  調査の内容でございますけれども、旧陸軍軍医学校関係者約三百人に対しまして、郵送によるアンケート調査を行っております。また、そのうち一部の方につきましては、直接訪問をしてお話をお伺いする、あるいは電話によりまして聞き取り調査を行っているところでございます。また、あわせまして、例えば「陸軍軍医学校五十年史」あるいは「大東亜戦争陸軍衛生史」等々の陸軍軍医学校関係の文献調査等も行ってきたところでございます。  現在、これらの三つの調査、アンケート調査、聞き取り調査、それから文献調査でございますが、これらの調査内容の関連等につきまして引き続き調査をしておるというのが現状でございます。
  129. 岩佐恵美

    岩佐委員 大臣に、時間がありませんので、三点について検討をお願いしたいと思います。  もう七年もたっているわけですけれども、今お話があったように、まだ調査結果がきちんと出ていないわけです。最近まで、予防研究所の歴代所長、副所長の多くが軍医学校や七三一部隊関係者で長年占められてきました。もうそうした関係者は高齢に達しています。ですから、早急に調査をしていく必要があると思います。まず第一点は、専門の調査班を設けて、ぜひ取り組んでいく必要があるというふうに思います。その点について検討をいただきたいと思います。  それから、新宿区が札幌学院大学の佐倉教授に依頼をした人骨に関する鑑定書が九二年四月二十二日に公表されました。  内容については十分御承知だと思いますけれども、念のためちょっとかいつまんで申し上げたいと思いますが、「(一)人骨の土中経過年数は数十年から百年以下。(二)固体数は前頭骨だけで六十二体、全体では百体以上。女性は四分の一で未成年者も含む。(三)モンゴロイド系の異質な人種が混在しており、一般日本人集団の無作為標本ではない。(四)切断、刺創、銃創、の痕跡、ドリルによる削孔、鋸断、破切など人為的加工の痕跡あるものを含み四肢骨の多くはいろいろな位置で意味不明の鋸断跡がある。」などが明らかにされています。  単純な身元不明の行き倒れ人集団ではありません。戦争犠牲者の可能性が高いと言われています。しかも、非戦闘員の女性あるいは未成年者が含まれているわけです。数十年を経過した百体以上の主に外国人の人骨で人為的加工、つまり殺害の痕跡が認められるというふうになれば、真相の究明なしに焼却することは許されないと思います。国としても、鑑定を行うなり、今の区の鑑定結果について検討するなりの必要があるというふうに思います。厚生省として真相を究明し、結論が出るまで人骨をきちんと保管すべきだと思います。この点が第二点です。  また、新宿区の小野田区長は、北京市東城区との友好交流都市提携の際に、遺骨が中国人被害者のものと判明すれば中国に返還をする、そういう約束をしておられます。中国の敬蘭芝という方は、日本政府に対して、遺骨の中に夫のものがあるかもしれないという申し立てを行っております。敬さんの申し立てにこたえるためにも、少なくともDNA鑑定などが必要であるというふうに思います。  以上、三点について大臣のお考えを伺いたいと思います。
  130. 亀田克彦

    ○亀田政府委員 先ほど申し上げましたように、ただいま鋭意調査をしておりまして、できるだけ早くとりあえずのまとめをいたしたい、こう考えておるところでございます。
  131. 岩佐恵美

    岩佐委員 大臣九二年二月に、大臣は調査をいたしますということで答弁をされて、もう九六年ですから四年になるわけですね。鋭意調査をしておりましてという段階ではないと思います。  それで、毎年毎年、新宿区はこの骨についてもう焼却をするという予算を計上しているわけです。この問題がうやむやにされるということは私は許されないというふうに思います。戦後処理の点についても、外国人の、日本人でない、そういう骨の疑い、可能性が非常に強いという場合には外交問題にもなるというふうに思うのです。  そういう点で、政府として積極的にこの問題に取り組んでいかなければいけない、事務方に任せているだけでは済まない、そういうふうに思いますけれども、大臣のお考えを伺いたいと思います。
  132. 菅直人

    菅国務大臣 この問題、以前から時折耳にはしておりましたが、きょうの質疑でこういう形で御質問があるというのは、私も十分承知をしておりませんで、必ずしも細かい状況を私自身はまだ把握をいたしておりません。  ただ、今の質疑を聞かせていただいておりまして、従来、以前の大臣が国会に対して調査のお約束をしておられるわけでありますので、当然、その調査をきちんとした上で、報告できるところまで来ましたら報告しなければいけない。私も、もうちょっと状況を把握した上で、そうした方向についてどのようにできるか検討させてみたい、こう考えております。
  133. 岩佐恵美

    岩佐委員 それでは、大臣、非常にみんなが心配しているのは、うやむやのうちに焼却をしてしまうということがないようにという心配を非常にしているわけですね。そういうことだけは、その焼却という結論だけは急がない、こういう約束はされますか。その点、いかがですか。
  134. 亀田克彦

    ○亀田政府委員 例えば、建築工事現場等から遺骨等が発見されまして引き取り者が判明しない、こういう人骨につきましては発見地の市町村において埋火葬を行う、こういうことになっておるところでございますが、本件につきましては、先ほど申し上げましたように、大変難しい調査でございますけれども、人骨の由来につきまして現在調査を進めておるところでございます。  したがいまして、この調査の結果でございますとか、あるいは新宿区に対しまして現在裁判が起こされておりまして、最高裁で審理が行われております。そういう結果等を見ながら、大臣とよく相談をしながら対応を検討していきたい、こういうふうに考えております。
  135. 岩佐恵美

    岩佐委員 時間もありませんので、次に、らい予防法廃止に関する質疑に入りたいと思います。  そもそもの立法から九十年経過しました。現行法制定からも四十三年がたちます。この間、肉親とも引き裂かれ、実家に帰るごとはおろか、肉親の葬儀に立ち会うこともできず、社会から一切隔離され、ハンセン病患者は差別・偏見隔離政策の中で、人間として生きる権利を奪われてきました。患者ばかりか、家族や親類までが結婚や就職で差別を受け、自殺や一家心中などの悲劇に追い込まれてきました。一九五〇年代の国際らい学会あるいはWHO報告などで既に患者隔離を否定する考えが表明されていたにもかかわらず、今日まで四十余年もの長きにわたって誤りを改めることができませんでした。私は、そういう日本は本当に不幸な国だというふうに思います。  大臣はその原因について、先ほど人権意識の欠如ということで答弁をされました。加えて、過ちがわかっても改めない、反省も謝罪もしない、だれ一人として責任をとらない、そういう無責任な体質が国民の悲劇を拡大しているというふうに私は思います。  現行法が施行された一九五三年には、既に特効薬プロミンが開発をされ、感染力が非常に弱い、簡単に治癒する病気であることもわかっていました。日本の植民地支配の影響で隔離主義をとった韓国、台湾なども、六〇年代には次々と隔離政策を廃止をしていました。ですから、誤りを改める、そういうチャンスは何度もあったと思います。薬害エイズの問題もハンセンの問題も、厚生行政の本質が問われていることだと思います。これはもう先ほど同僚議員が異口同音に指摘をしている点であります。  ハンセン病資料館運営委員の平沢さんは、全生園に入所したころは、病気を治すようなところではなく、刑務所のようなものだったと言っておられます。外出もできず、囚人服のような同じものを着せられ、年齢差に関係なく炊事、洗濯、掃除をやり、病棟に寝泊まりしながら、軽症の人が重症の人を看護する。手紙は検閲を受け、夫婦や兄弟の面会でさえ立ち会いがつき、また、所内には監禁室がつくられ(破れた長靴の交換を要求したとかちょっとしたことでほうり込まれ、厳寒の中でも布団は一枚、多くの患者病気が悪化して亡くなっていきました。  しかも、患者さんたちは死んでも差別され、全生園の初代自治会長が亡くなったとき初めて座って入る座棺をやめて、死んだときぐらい人並みにしてほしいと要求して寝棺になりました。本当に人間性を否定された患者さんたちの人生、歴史だったと思います。闘わなければ何も得られない九十年だったと思います。  らい予防法廃止も、患者皆さんの命をかけた必死の闘いなしにはなかったというふうに思います。この九十年間は、ハンセン病患者自身が人間の復権をかけて闘い抜いた九十年だったというふうに私は思います。その点について大臣はどういうふうにお感じになっておられるか、伺いたいと思います。
  136. 菅直人

    菅国務大臣 先ほど来多くの委員皆さんからも同様な御指摘をいただいております。また私も、そういう皆さんにお答えをしておりますように、このらい予防法が今日まで存続をした背景というものは、岩佐委員も今言われたようなことを含め、いろいろな背景があったように思います。  特に、先ほどの五島委員からのお話の中でも、本来の医学的知見に基づいて感染症として感染を防止するという考え方と、それとは全く別に、過剰なといいましょうか、本来の医学的見地とは関係のない恐怖心をあおることによって、あるいは恐怖心を多くの人が持つことによってそうした隔離政策というものを進めてしまう、そういうある意味での状況というものが区別されなければならないわけですけれども、このらい予防法においては、そのことが区別されなないまま、らい予防法というものを生み出し、スタートの段階から今日まで継続してきたというふうに感じております。そういった点では、岩佐委員が今言われましたけれども、少なくともスタートからの間違いであったにしても、もっと早い時期にそのことを認識して、もっと早い時期に廃止されるべきであったろうと思っております。  そういったことの原因は、これも先ほど申し上げましたように、日本における人権というものに関する感覚がやはりどうしても相対的に弱いのではないかなという感じがいたしております。ですから、ある種のバランスを考えたときに、一人一人の人権をそれほど厳密に考えることよりも、何となくこれまでやってきたこと、あるいはこれまでの社会的な環境、状況といったものに押し流されてしまう。あるいは行政においても、必ずしもそういった人権というものを厳密に強く感じるよりも、何か事がほかに波及するということを少しでも抑えようとする。それが余りにもバランスを欠いた形で受けとめられるためにここまで延びてきたのかな、そういうふうに考えますと、本当に国の責任としても大きなものを感じております。
  137. 岩佐恵美

    岩佐委員 患者さんの命がけの闘い、人権を、それこそ人間の復権をかけた闘いについてどうお感じになっておられますか。
  138. 菅直人

    菅国務大臣 私も古い歴史というのはそう細かく知ってはおりませんが、かつてそうした映画がつくられたということも若干聞いておりますし、また、全生園の中でのいろいろなものを拝見したこともあります。また、そういった意味で、私が議員になってからも毎年のように、患者皆さんがいろいろな活動をされている中に私も何度か御一緒したことがあります。  まさに患者皆さん自身が、自分たち自身の人間としての生き方をかけて運動され、そして、今日のこうした結果を生み出されたのだ。そういう点では、患者皆さんのそういう活動があって初めてこのらい予防法廃止につながった。逆に言えば、それまできちっと対応できなかった行政あるいは政治にある私たち自身の立場からの反省も強く感じている次第であります。
  139. 岩佐恵美

    岩佐委員 そういう意味でも、私は、全患協皆さんの九項目の要望に本当に誠意を持って対応していくべきだというふうに思います。  先ほどもちょっと議論にあったのですが、引き続き療養所での生活を希望する人たちが地域で差別・偏見にさらされることのないよう万全を期すことはもちろんですけれども、社会復帰を希望している人たちのためにも、住宅の確保を初め安定した生活の保障、職業訓練や就業の保障、就業準備金の支給などが求められると思います。企業に対する教育も必要だと思います。また、入所二、三年の方と十年から二十年の方では復帰の条件も異なってくると思います。個々の条件に応じて柔軟な対応が求められると考えられます。  御本人の意思はもとよりですけれども、私は、全患協など関係者と十分話し合って、本当に社会復帰をしたい、そういう希望にこたえられるように積極的に対応していく必要があるというふうに思います。大臣のお考えを改めて伺いたいと思います。
  140. 菅直人

    菅国務大臣 社会復帰につきましては、先ほども申し上げましたが、患者皆さんの中でそうした希望を持っておられる方がいるということを私も承知いたしております。たしか、どなたか新聞の投書にも出されて、それがなくてはこのらい予防法廃止された本当の意味は実現できないのだということを言われていたこともよく頭に残っております。  どういう形で社会復帰の支援をしていくかということで、きょう朝以来いろいろな委員からも御指摘をいただいておりますが、必ずしも社会復帰というものに対して、今回のらい予防法廃止に伴う政策の中では積極的な手だてを講じているとは率直に申し上げて言えないかと思っております。そういった意味では、これからそうした希望のある方について、直接にあるいは全患協の方を通して十分に状況を聞かせていただきながら、そうした方に対してどういう対応ができるのか、そのことを一つ一つ努力していかなければならないと思っております。  先ほど、職業訓練の問題、住宅支援の問題、あるいは今支払われている費用を園から出た後にどういう形で給付ができるかといった問題もあろうかと思っておりますが、そういった問題につきましては、今回の制度では必ずしもすべてがカバーされておりませんので、十分希望を聞きながら対応してまいりたい、検討してまいりたいと思っております。
  141. 岩佐恵美

    岩佐委員 一九六五年ごろまでは、結婚の条件に断種や中絶が強制されてきました。六五年以前のハンセン病理由とした不妊手術を伺いたいと思います。
  142. 松村明仁

    松村政府委員 優生保護法に基づく優生手術につきましては、本人の同意を得て行うこととされておりますが、かつて療養所の夫婦寮への入居の条件として優生手術に同意をせざるを得ない状況があったという指摘がされており、そのような意味での半強制的な優生手術につきましては、おおむね昭和三十年代前半、遅くとも昭和四十年代以降には行われていないというのが関係者の共通の認識でございます。  そういう共通の認識の中でこれを調査いたしますと、優生保護法制定以前の優生手術については、統計資料が存在していないこと、また、今申しましたように半強制的とされる優生手術か否かについて明確に線を引くことはできないわけなんです。そういうわけではございますけれども、昭和二十四年から昭和四十年までのハンセン病患者またはその配偶者に対する優生手術件数を申し上げますと、男性二百九十五件、女性千百四十四件、合計千四百三十九件である、こういう数字がございます。
  143. 岩佐恵美

    岩佐委員 九州弁護士会連合会人権擁護に関する協議会らい予防法廃止問題調査委員会は、一月に九州・沖縄地区のハンセン病療養所方々のアンケート調査を行っているのですけれども、その中で、男子のいわゆる優生手術が在園男性の約四割に対して行われたということです。  先ほどからもこの議論があるのですけれども、優生保護法からハンセン病を外すというのはもちろんですけれども、「不良な子孫の出生を防止する」という法の目的、優生思想自体が人権思想と相入れないものだと思います。これはもう大臣も言っておられました。  九四年の国際人口・開発会議や昨年の北京女性会議でも、性や妊娠、出産などについての女性の健康と権利の保障、リプロダクティブヘルス・ライツが確認をされています。優生保護法自体、根本的ないろいろな問題があるのですけれども、その中でも優生思想の部分、これは大問題です。障害者に対する差別や偏見を助長するような用語、資格制度における欠格条項の見直しを定めている障害者プランから見ても、まず優生という思想自体、全面的に削除をされるべきだと思います。  先ほど大臣は、私個人としてはそう考えるというふうなお話をされておられましたけれども、私は、厚生省としてもこうした優生という思想自体を改めるということで具体的に努力をしていく必要があるというふうに思いますけれども、改めて大臣のお考えを伺いたいと思います。
  144. 菅直人

    菅国務大臣 今回のらい予防法廃止に伴いまして、それに関連した優生保護法の規定は削除をされるわけであります。  今、岩佐委員からのお話のように、優生保護法の基本的な考え方の中に、「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」という法律の目的が規定されているわけであります。私は、このことが今の法制度や憲法との関係でどういった整合性があるのか、あるいは憲法の規定から見ても本来こういうものについては矛盾をしているという指摘もあるように思いますので、そういうことについて、現在のところ、これまでの議論がどういうふうに積み上がっているのかということを必ずしも詳細には承知をいたしておりません。しかし、こうした考え方が、少なくとも人権というものをきちんと重要視するという考え方からいえば、相当に矛盾した考え方だろうというふうには私自身認識をいたしております。  そういう点で、どういった扱いができるかということは、この法律に関連するいろいろな議論が他の部分でもあることは御承知のとおりでありますので、法律について今すぐ私の立場でどうすべき、あるいはどうこうとは言えませんけれども、少なくとも、この「優生上の見地から」云々という考え方については、今後どう考えるべきかということを、私なりにもあるいは厚生省の中でも、どういう扱いがあり得るのかということは検討をさせてみたい、このように考えております。
  145. 岩佐恵美

    岩佐委員 九十年余り、およそ一世紀にわたってつくり出された差別・偏見というのは容易に消すことはできないものです。全国を飛び回っている全患協の幹部の方も、自分のふるさとにだけは帰れない、あるいは実母の葬儀に参加できない、それから、先ほどの九州のアンケートですけれども、いまだに偽名を使っている方が三人に一人だ、こういう実態があるのです。  そういう中で、本当に差別・偏見を取り除くための努力というのは、これは容易なものでないというふうに思います。でも、早急にこのことに取り組んでいかなければならないというふうに思います。まず、国の誤りを率直に認めたハンセン病の歴史を明らかにした教育というのが私は必要であるというふうに思います。それから、謝罪を含む政府公告なども考えられるのではないかと思います。いずれにしても、こうした差別のない社会をつくるというために全力で取り組んでいただきたい、この決意を大臣から伺いたいと思います。
  146. 菅直人

    菅国務大臣 先ほど来、差別・偏見といった問題について多くの議論があったわけでありますけれども、この問題は、制度の問題あるいは法律の問題であると同時に、まさに社会そのもののそういう問題の受けとめ方というものが同時にあると思います。  そういう点で、制度として、先ほど岩佐さんからも話のありました優生保護法といったもののそういった部分の規定についての見直しということもやらなければなりませんし、また同時に、いろいろな活動を通して社会的なそういったものの解消に努めるということも重要だろうと思っております。そういった点で、厚生省としても、制度の変更あるいは法律的な見直しということを含めて、先ほど来申し上げているように、本来の医学的見地とは全く関係のない形で偏見や差別が行われることがないように全力を尽くしていきたい、こう考えております。
  147. 岩佐恵美

    岩佐委員 時間がなくなってしまったのですけれども、最後に、年金問題について二点だけ伺いたいと思います。  まず第一点目ですが、百三十一国会の国民年金法等の一部を改正する法律の採決に当たりまして、「無年金である障害者の所得保障については、福祉措置による対応を含め検討する」ということになっていますけれども、その後どうなったでしょうか。
  148. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 障害年金の問題につきまして、非常に難しい問題でございますけれども、国会におきます附帯決議等を受けまして、私ども厚生省内部で検討をしているところでございます。  この対応の方法として二つあるわけでございまして、一つは、年金制度における対応ができるかどうか、それから、福祉措置としての対応をどうするか、こういうことであるわけでございます。  年金制度の関係でございますけれども、これまでもいろいろ申し上げてまいりましたけれども、年金の保険料拠出があるところに年金給付がある、こういう現在の年金制度の建前、基本的な考え方からいたしまして、社会保険方式の年金制度としての対応というのには限界がある、こういうふうに考えているわけでございます。  しからば、公費による福祉的な措置として考えた場合にどうなるかということでございますけれども、もし構築するとする場合には年金の補足的な給付ということになろうかと思うわけでございますけれども、そのときに、現に出ている手当との関係をどうするのか、いろいろ財源の手当て、こういったような問題がございまして、今のところまだ方向を見出すには至らない。  こういうことでございまして、障害者プランの中におきましても、今後の検討課題ということに位置づけているわけでございまして、今後、各方面の御意見をさらにお聞きしながら引き続き検討してまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  149. 岩佐恵美

    岩佐委員 大臣、今答弁がありましたように、事務方とすればあれこれ考えて、結局、障害がいっぱい次々出てきてできないということになるわけですね。あの決議から一年半がもう経過をしている。ところが、あれこれ議論はするけれども、検討は進んでいないということですね。障害者が自立して生活できるようにするためには、所得保障、障害年金は欠かすことのできないものなんです。無年金障害者にとって、次期年金再計算の時期まで到底待てない。だから、あの国会前でも、本当に連日のように座り込みをするぐらいの、そういう取り組みがあったわけなんです。そして、それが附帯決議に盛り込まれたわけです。大臣、ちゃんと政治的にこの問題に取り組んでいくべきだと思うのですけれども、その点、いかがでしょうか。
  150. 菅直人

    菅国務大臣 障害者の方の年金問題ということについてどのような対応があるか、今年金局長の方からも現在の状況を答弁申し上げたのですが、いわゆる現在の社会保険としての年金制度、これは当然ながら、年金を掛けている人が一定の条件の中で障害者になった場合に障害年金を受けられるという制度になっているわけであります。そういう場合に、年金に加入していない人についてどういう対応をすべきかというのは、ある意味では年金制度そのものの問題としてどうそれを直接に組み込むことができるのか、あるいは直接ではない形で何らかの対応をすべきなのか、あるいはもつと別の形で、租税というか財政の立場から対応すべきなのか、いろいろな視点があろうかと思っております。  そういう点で、この問題は決して避けて通れる問題だとは思っておりませんが、今の政府委員の答弁もありましたように、どういう対応をすればいいのか、十分に検討をして、できるだけ早い時期に何らかの結論を得るように努力したいと思っております。
  151. 岩佐恵美

    岩佐委員 終わります。
  152. 和田貞夫

    和田委員長 土肥隆一君。
  153. 土肥隆一

    ○土肥委員 私は、戦没者追悼平和祈念館、仮称でございますけれども、いよいよ着工されるということで、その中身について改めて押さえておきたいと思いまして、質問させていただきます。  昨年九月二十二日、平成七年でございますが、戦没者追悼平和祈念館企画検討委員会座長見解というのが出ました。これは、平成六年一月に援護局長の私的諮問機関として企画検討委員会がつくられまして、そしてその結論が出たわけであります。そして、いよいよ開館に向けて具体的な準備を進めるので、「当委員会は終了し、新たに運営に関し調査・審議を行う有識者からなる会合を設けることが適当であると考える。」このような結論で締めくくられております。もう随分と長いことかかったわけでございまして、いよいよこの祈念館が出発するに当たり、改めて私の幾つかの問題提起をして押さえておきたい、このように思う次第であります。  これまでの経緯をやはり記録に残したいと思います。答弁をしていただいてもいいのですが、長くなりますので、私から申し上げます。  西暦で申し上げます。一九七九年十二月に、日本遺族会から戦没者遺児に対する個別給付にかわる戦没者遺児記念館一仮称一建設の要望が出ます。一九八四年十月に、やはり日本遺族会が厚生省からの調査費補助を受けまして、基本構想案をまとめます。その後、一九八七年十二月、戦没者遺児記念館に関する懇談会、座長向坊隆、これは厚生大臣の私的諮問機関、俗に言う向坊委員会、こう申しますが、懇談会ができまして、そして中間報告を出します。その後、戦没者遺児記念館基本計画案検討委員会、いわゆる八本委員会ができまして、これは援護局長の私的諮問機関でありますけれども、その報告を踏まえて、一九九三年に初めて建設費が厚生省の予算の中で計上されるわけであります。そして、その年六月には設計業者が決定し、そして翌年、建設にかかわる入札が行われ、施工業者が決定し、同年七月に東京都の建築許可を取得しております。  さて、それからでありますけれども、本施設のデザインがどうであるとか、あるいは展示内容についてもどうであるかということで一部見直しの検討を行った、このように報告書はございます。そして一九九五年、昨年でありますけれども、先ほど申しました企画検討委員会が結論を出しまして、いよいよ着工になった。  私は、一九九三年、平成五年でありますけれども、当委員会質問をしておりますが、百二十三億という予算をもってこの計画がつくられたわけでありますけれども、しかし、今回の計画を見てみますと、そのデザインも含めて当初の建築物の設計は全く新しいものに変わっておりまして、高さも、地上十階、約五十九メートルという高さから地上七階、四十二・五メートルの高さに抑制されております。スリム化されたとか壁面は優しい曲線を主体とするとか出ておりますけれども、これはもう大幅な設計変更でございまして、当初決められました百二十三億でこのままお建てになるのか、こういう施設整備の変更というものは厚生省では問題にならないのか、そして今度の建物は全く同じ予算の範鷹で行われるのか、その辺をお聞きしたいと思います。
  154. 佐々木典夫

    ○佐々木(典)政府委員 戦没者追悼平和祈念館(仮称)の関係のお尋ねでございますが、経緯につきましては、今先生お話しされたような経過をたどってまいったわけでございます。  それで、見直しの考え方につきまして若干御説明をさせていただきたいと存じます。  今回、この平和祈念館につきましては、平成五年に予算を計上させていただきましたけれども、その後、今お話がありましたように、各方面からいろいろ御意見もございました。それから、地元の住民の皆さんを初め区議会等でも御要請がございましたので、それを踏まえて検討がなされたわけでございますが、予算面からまいりますと、平成五年度の予算計上をいたしましたけれども、その後、平成七年度の予算におきまして、国庫債務負担行為を二年間延長していただきまして、これを三年の計画から五年の計画にしていただいたというところでございます。そういうこともしながら、各方面の御意見を踏まえ、いろいろな角度から検討をし、昨年九月に学識経験者から成る会合におきまして見直し作業を終えたというところでございます。  この見直しにつきましては、基本は、この祈念館のねらいにつきましては、戦争に関する歴史的な事実の中で、なかんずく国民生活の労苦を後の世代に客観的に伝えていきたい、これが主眼でございまして、この基本的性格は見直しの過程でも変わっておりません。ただ、特に、昨年九月の有識者から成る会合におきましては、展示の関係につきまして、さきの大戦についての歴史的認識の相違のある今日、本施設の歴史的展示事業として戦争の事実を客観的に展示することは困難であり、資料収集を重視すべきであるというような基本的な考え方に基づきまして見直しが行われたところでございます。  このような考え方に基づきまして、この施設の基本的性格は維持した上で、事業の中身につきまして、当初、展示の事業と資料、情報の収集、そして情報の検索・提供事業ということを入れてございましたが、そのうちの展示の部分につきまして、展示事業は先ほど申しましたような事情でこれを行わない、そういたしまして、これまで展示資料として収集を検討してまいりました戦中戦後の国民生活の姿を伝える実物資料を収集、保存、陳列するということによって、戦没者遺族の経験した当時の国民生活上の労苦を後の世代に伝えていくということを主眼として見直されたところでございます。  さて、この見直しに当たりましては基本的な性格を変えておらないということで御説明させていただきましたけれども、平成七年に国庫債務負担行為、先ほど申しました三年の計画を五年にするというふうなことで予算の上でも見ていただきましたけれども、こういう考え方にのっとりまして、制度の基本を変えることなく事業の見直しということで見直しをした、あわせてデザインにつきましても、周辺環境との調和等を踏まえて高さの抑制を初め必要な見直しを行ったということでございますので、当初平成五年に設定いただきました全体での百二十三億の予算の中で対応していけるものというふうに私ども考えているところでございます。
  155. 土肥隆一

    ○土肥委員 もう時間がありませんから意見だけ申し上げますと、私も民間福祉施設をたくさんつくってきましたけれども、この建物が十階から七階に縮まるのだというようなことをもし言ったら、厚生省の補助金は絶対つきませんね。おまえは何やつているんだ、出直してこい、こんな施設は認められないといって突っ返されるのが常でございまして、そういう意味からいうと、国がやったら建設省も、はい、いいですよと言って、百二十三億という金が合えば施設ができるというのだったら随分楽な施設整備だな、こう思うのであります。これは私の積年の恨みをちょっと申し上げているだけの話でございまして、別にそういうことはいいのですが……  もう一つ申し上げれば、委員会、検討委員会が全部なくなりましたから、また新たに厚生省が、どういう建物、どういう展示内容、運営、そして今度は厚生省が遺族会に委託をするときにどういう委託契約を結ぶかということはずっと国会で詰めてまいりましたが、いわばそれが、委員会が全部なくなって原点に戻って、援護局に今全部返ってきているわけですね。ですから、何とぞ十分な検討をしていただきまして、本当に国民に喜ばれる、そして、ああ九段のあそこの祈念館に行ったらよかったよと言われるような設備にしていただきたい。大臣、運営あるいは運営管理、その辺について大臣の御意見を伺って、終わります。
  156. 菅直人

    菅国務大臣 今、土肥委員の方から、この長い経緯についても御説明委員自身からいただきましたが、そうした本当に長い議論の中で現在準備的な工事に入っておりまして、そういう点ではまだまだ建設が完成するまでにはいろいろな紆余曲折があろうかと思いますが、今おっしゃったような面を踏まえて、これまでの議論が議論としてきちっと生かされるように努力してまいりたいと思っております。
  157. 土肥隆一

    ○土肥委員 ありがとうございました。
  158. 和田貞夫

    和田委員長 以上で各案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  159. 和田貞夫

    和田委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに各案について採決に入ります。  まず、内閣提出戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  160. 和田貞夫

    和田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、内閣提出らい予防法廃止に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  161. 和田貞夫

    和田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  162. 和田貞夫

    和田委員長 この際、本案に対し、衛藤自成一君外五名から、自由民主党、新進党、社会民主党・護憲連合、新党さきがけ、日本共産党及び市民リーグ・民改連の六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨説明を求めます。大野由利子さん。
  163. 大野由利子

    ○大野(由)委員 私は、自由民主党、新進党、社会民主党・護憲連合、新党さきがけ、日本共産党及び市民リーグ・民改連を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。     らい予防法廃止に関する法律案に対する附帯決議(案)   ハンセン病は発病力が弱く、又発病しても、適切な治療により、治癒する病気となっているのにもかかわらず、「らい予防法」の見直しが遅れ、放置されてきたこと等により、長年にわたりハンセン病患者家族方々尊厳を傷つけ、多くの痛みと苦しみを与えてきたことについて、本案の議決に際し、深く遺憾の意を表するところである。   政府は、本法施行に当たり、深い反省陳謝の念に立って、次の事項について、特段の配慮をもって適切な措置を講ずるべきである。  一 八ンセン病療養所入所者の高齢化、後遺障害等の実態を踏まえ、療養生活の安定を図るため、入所者支給されている患者給与金を将来にわたり継続していくとともに、入所者に対するその他の医療福祉処遇確保についても万全を期すこと。  二 八ンセン病療養所から退所することを希望する者については、社会復帰が円滑に行われ、今後の社会生活に不安がないよう、その支援策の充実を図ること。  三 一般市民に対して、また学校教育の中でハンセン病に関する正しい知識普及啓発に努め、ハンセン病に対する差別や偏見の解消について、さらに一層の努力をすること。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  164. 和田貞夫

    和田委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  165. 和田貞夫

    和田委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、菅厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。菅厚生大臣
  166. 菅直人

    菅国務大臣 ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして、努力をいたす所存でございます。     —————————————
  167. 和田貞夫

    和田委員長 次に、内閣提出平成八年度における国民年金法による年金額等改定特例に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  168. 和田貞夫

    和田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました各案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  169. 和田貞夫

    和田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  170. 和田貞夫

    和田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十九分散会      ————◇—————