○
佐藤主査 御
異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
—————————————
平成四
年度農林水産省決算概要説明
農林水産省
平成四
年度における農林水産省の歳入
歳出決算につきまして、その
概要を御
説明申し上げます。
一般会計の歳入につきましては、当初
予算額は四千二百九十八億三千四百五十一万円余でありますが、
予算補正追加額十五億七千九百四十七万円余の増加がありましたので、歳入
予算額は四千三百十四億一千三百九十九万円となっております。
これに対し、収納済歳入額は四千九百五十二億二千五百二十六万円余であり、これを歳入
予算額と比較いたしますと六百三十八億一千百二十七万円余の増加となっております。これは、日本中央競馬会納付金が予定より多かったこと等の理由によるものであります。
次に、
一般会計の歳出につきましては、当初
予算額は二兆八千七百六十八億七千五十四万円余でありますが、総合経済対策の一環として内需拡大等を図るため
地方公共団体等が施行する農村
整備事業の
事業費の一部補助に必要な
経費等として
予算補正追加額四千百七億九千九百九十九万円余、既定
予算の節約等による
予算補正修正減少額二百五十九億八千五百五十七万円余、北海道における農業農村
整備事業を実施するために必要な
経費等について
総理府所管から移替えを受けた額三千四百三十六億八千七百九十七万円余、前
年度からの
繰越額六百三十五億四千百十三万円余、風水害等対策に必要な
経費等として予備費七百四十九万円余の増減がありましたので、
歳出予算現額は三兆六千六百八十九億二千百五十六万円余となっております。
これに対し、
支出済歳出額は三兆五千三百四十一億九千五百一万円余であり、これと
歳出予算現額との差額は一千三百四十七億二千六百五十五万円余となっております。
この差額のうち、翌
年度への
繰越額は一千百四十四億百六十六万円余であり、
不用額は二百三億二千四百八十九万円余となっております。
このほか、これら
一般会計とは別に、大蔵省
所管産業投資特別会計に係る
支出済歳出額は百七十五億二十二万円余となっております。
次に、施策別にその主なものについて、御
説明申し上げます。
第一に、二十一世紀に向けた先進的農業の育成に要した
経費であります。
その
支出済歳出額は、四千十五億三千八百四十一万円余であります。
まず、多様な水田農業と水田利用の展開、効率的な生産単位の形成を通じた生産性の向上、地域輪作農法の面的拡大と質的向上を
推進するため、水田農業確立後期対策を実施いたしました。
また、生産性の高い農業の実現、高品質な農産物の生産、環境保全に配慮した農業の展開等を図るため、二十一世紀に向けた先進的農業というべき効率的で環境にやさしく、かつ、農業者にとって魅力ある生産活動を
推進する先進的農業生産
総合推進対策を新たに実施し、地域の自主性と活力を基盤に各般の生産対策を総合的かつ計画的に実施いたしました。
さらに、牛肉の輸入自由化等に対処するため、肉用子牛生産安定等特別
措置法に基づき、牛肉等の関税収入を特定財源とした肉用子牛等対策を引き続き実施するとともに、新たに畜産活性化総合対策を発足させ、生産から流通・消費に至る各種
事業を総合的に実施いたしました。
このほか、生産コストの節減を図るため、広域的な農作業受委託を
推進する農業機械銀行の育成、肥料費節減の優良事例の普及・啓発等農業生産資材対策を実施いたしました。
第二に、構造政策の新たな展開に要した
経費であります。
その
支出済歳出額は、一兆二千八百九十五億二千九百二十三万円余であります。
まず、経営規模の拡大と生産性の向上を図り、経営体質を強化するため、関係機関の密接な連携の下に、農地流動化の
促進活動を強力に展開するとともに、地域の立地条件に即した方向で農業・農村の活性化を支援するため、農業農村活性化農業構造
改善事業を実施いたしました。
また、新規就農者を含めた担い手対策を引き続き進めることとし、都市と農村の青年の相互理解を深めるための交流等を実施いたしました。
さらに、農業農村
整備事業により、良質な食料を安定的に供給できる効率的な農業の実現及び農業と農村の健全な発展を図るため、第三次土地改良長期計画に基づき、農業の基礎的条件である農業生産基盤の
整備について、NTT資金の活用も併せ、着実かつ効率的に実施いたしました。
第三に、農山漁村の生活の質的向上と開かれた農山漁村の
整備に要した
経費であります。
その
支出済歳出額は、七千六百四十九億四千七百五十一万円余であります。
まず、都市部に比べて立ち遅れている農村の生活環境の
改善を図るため、農業集落排水
事業、農村総合
整備モデル
事業等を実施するとともに、農村景観や親水等にも配慮した
整備を進め、豊かな農村空間の創出による活性化を図るため、農村総合環境
整備事業を実施いたしました。
また、生産基盤、生活環境等の
整備と併せて景観形成、環境保全等に配慮した農山漁村の
整備を行う美しいむらづくり特別対策を創設いたしました。
さらに、中山間地域が有する多面的な機能を生かした農林業の確立と農山村の活性化を図るため、中山間地域農村活性化総合
整備事業の実施や農林水産業の振興と併せ、安定した就業機会の確保、総合保養地域の
整備、都市と農山漁村との交流等を
推進いたしました。
このほか、山村・過疎地域等における快適で活力ある地域づくりを
推進するため、新山村振興農林漁業対策
事業、農山漁村活性化定住圏創造
事業を創設いたしました。
第四に、技術の
開発・普及と情報化の
推進に要した
経費であります。
その
支出済歳出額は、一千二百九十四億九千二百八十三万円余であります。
まず、農林水産業に関する重要政策課題に対応するために畑作農業・農山漁村地域の振興、生態系調和
促進型農業の
推進に資する
研究及び高度化・多様化する消費ニーズ、地球環境・熱帯農業問題に対応した
研究を実施するとともに、農林水産業・食品産業等の生産性の飛躍的向上、農産物・食品の高付加価値化等を図るため、イネ・ゲノム解析
研究をはじめとする基礎的・先導的
研究等を実施いたしました。
また、国と民間企業等との
研究交流を
促進するため、官民交流共同
研究及び国際
研究交流を
推進するほか、民間の
研究開発に対する支援を実施いたしました。
これらの
技術開発の成果等について農家への普及等を図るため、協同農業普及
事業等の効果的な
推進を図りました。
さらに、農村地域等における情報交流を進めるため、各種情報システムの
開発整備等を図りました。
このほか、農林水産業の構造等の
実態を的確に把握し、農林水産行政の効率的かつ適正な
推進に資するため、各種統計調査等を実施いたしました。
第五に、健康で豊かな食生活の保障と農産物の需給・価格の安定に要した
経費であります。
その
支出済歳出額は、三千二百三十四億九千三百二十八万円余であります。
まず、国民に健康で豊かな食生活を保障する観点から、消費者への情報提供業務の充実、規格・表示の適正化等消費者対策を
推進するとともに、牛乳・果実等の農水産物の消費拡大対策の
推進を図りました。
また、農産物の価格については、需要の動向と生産性向上の成果をより的確に、かつ可能な限り反映し、農産物が国民の納得の得られる価格で安定的に供給されるよう努めました。
このほか、世界の農業・食料情勢の調査・分析等を行うとともに、飼料穀物等の備蓄対策を
推進
いたしました。
第六に、食品関連産業の振興と輸出
促進対策に要した
経費であります。
その
支出済歳出額は、二百六十四億九千五百九十四万円余であります。
まず、農業サイドと食品産業サイドとの連携の下、原料農産物の安定供給と利用の高度化等を図るため、食品産業原料対策を講じるほか、地域食品の高付加価値化による地域食品産業の高度化を図るため、加工
施設の
整備、市場開拓等を総合的に
推進するとともに、地域食品のマーケティング力を強化するため、ふるさと食品の情報提供等を実施いたしました。
また、食品産業の体質と経営基盤の強化を図るため、食品産業における廃棄物再生利用技術等先端技術の
開発を進めるとともに、食品産業の大宗を占める中小企業の技術水準の向上を図るため、汎用性の高い技術の
開発等を
推進いたしました。
さらに、生鮮食料品等の流通の合理化を図るため、卸売市場の計画的
整備を図るとともに、消費者ニーズの多様化・高度化、流通コストの上昇等に対処するため、食品流通の総合的な構造
改善対一策を
推進いたしました。
このほか、
我が国農林水産物の販路を拡大し、農山漁村の活性化等に資するため、輸出
促進対策を
推進いたしました。
第七に、地球環境保全対策と国際協力の
推進に要した
経費であります。
その
支出済歳出額は、六十億七千四百六十八万円余であります。
まず、地球環境保全対策としましては、地球的規模における環境保全の
推進を図るため、西暦二千年における熱帯林の持続的木材生産量の推計及び熱帯木材の需給の予測、更に、持続的な農業・農村
開発に必要な調査等を実施いたしました。
また、多様な生物を保全するため、アジア・太平洋地域の
開発途上国における動物遺伝資源保全のための地域行動計画の策定等を実施いたしました。
さらに、地球温暖化対策として、その主因である炭酸ガスの固定能力に着目した森林造成技術指針及びモデル造林計画の策定についての調査、また、
開発途上国における農業由来の温暖化ガス発生等環境汚染の防止に関する指針の策定等を実施いたしました。
このほか、
開発途上国の現状に即した農林水産業協力の一層の
促進を図るため、中長期的な農林水産業協力の
推進方策等の策定のための基礎調査等を実施するとともに、国際連合食糧農業機関のフィールドプロジェクト及び国際熱帯木材機関への拠出等国際機関を通じた協力を
推進いたしました。
第八に、農林漁業金融の充実に要した
経費であります。
その
支出済歳出額は、一千三百十七億四千五百二十万円余であり、農林漁業生産の経営構造の
改善、基盤
整備等の
促進に資するため、
農林漁業金融公庫資金、農業近代化資金等の各種制度資金について、所要の融資枠の確保、融資内容の充実を図るとともに、農業信用保証保険機能の充実を図りました。
第九に、多様な森林
整備の
推進と国産材時代への条件
整備に要した
経費であります。
その
支出済歳出額は、四千九百十五億九千三百五十三万円余であります。
まず、国民のニーズにこたえる多様で質の高い森林の
整備を図るため、森林
整備事業計画を策定し、その初
年度として造林・林道
事業を計画的に
推進したほか、第八次治山
事業五箇年計画を策定し、その初
年度として治山
事業の計画的
推進を図りました。
また、松くい虫被害対策特別
措置法を延長し、総合的な松林保全対策を実施するとともに、林野火災予防対策、健全で質の高い森林を
整備するための間伐
促進強化対策、緑化対策等を
推進いたしました。
さらに、林業・山村の活性化と担い手の育成確保のため、生産・生活環境基盤、森林・林道
施設等の
整備対策の
推進、市町村森林
整備計画の計画的
推進等森林の流域管理システムの確立を図るとともに、林業機械化の
推進、森林組合等林業
事業体の体質強化、就労条件の
改善・
整備、林業技術の
改善等を
推進したほか、林業構造
改善事業、特用林産産地化形成総合対策
事業等を実施いたしました。
また、国産材流通体制の
整備と木材産業の体質強化を図るため、地域材を中心とした木材の需要拡大、国産材の加工・流通拠点等の
整備を
促進するとともに、本質資源利用分野の
開発等を
推進いたしました。
このほか、国有林野
事業については、国有林野
事業改善特別
措置法に基づき策定された「国有林野
事業の
改善に関する計画」に即して、経営
改善を
推進いたしました。
第十に、二百海里体制の定着等に即応した水産業の振興に要した
経費であります。
その
支出済歳出額は、三千五百九億七千七百七十五万円余であります。
まず、第八次漁港
整備長期計画及び第三次沿岸漁場
整備開発計画に基づき、NTT資金の活用も併せ、漁港及び沿岸漁場の
整備を
推進いたしました。
また、新たに環境に配慮したむらづくり対策を
推進するとともに、沿岸漁業構造
改善事業等の施策を講じました。
さらに、
我が国周辺水域の漁業振興を図るため、資源管理型漁業
推進総合対策を行うとともに、栽培漁業、養殖業、さけ・ますふ化放流
事業、技術の
開発・普及の
推進等の諸施策を講じたほか、水産資源保護対策、漁場環境保全対策を実施いたしました。
また、漁協・水産業の経営対策として、金融自由化の進展等に対処して新たに漁協
事業基盤強化総合対策
事業を行うとともに、水産業関係資金の円滑な融通等を
推進いたしました。
さらに、新漁場、新資源の
開発、海外漁業協力を行うとともに、外国漁船取締強化のための違反操業対策を実施いたしました。
このほか、水産物の需給の安定を図るとともに、流通消費及び加工対策等の施策を
推進いたしました。
第十一に、その他の重要施策に要した
経費であります。
その
支出済歳出額は、三千七百三十二億四千九百四十三万円余であります。
まず、海岸
事業については、第五次海岸
事業五箇年計画に基づき、NTT資金の活用も併せ、海岸保全区域における
事業の実施を図りました。
また、災害対策については、農作物共済等の各共済に係る所要の共済掛金国庫負担金等を農業共済再保険特別会計に繰り入れたほか、農業共済団体の事務費等を助成し、農業災害補償制度の円滑な実施を図るとともに、災害営農資金等の利子補給に対する助成を図りました。
さらに、台風・豪雨等により被災した農地、農業用
施設、山林
施設、漁港
施設等の災害復旧
事業を実施いたしました。
このほか、農業団体の
整備についても、農業
委員会等に対して、引き続き
助成等を行いました。
以上をもちまして、
一般会計歳入歳出決算に関する御
説明を終わります。
次に、各特別会計の
決算について御
説明申し上げます。
第一に、食糧管理特別会計であります。国内米管理勘定等の七勘定を合わせて申し上げますと、収納済歳入額は二兆三千八百八十億九千八百五十七万円余、
支出済歳出額は二兆三千六百九十八億八千八百二十三万円余でありまして、歳入歳出差引き百八十二億一千三十三万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、翌
年度の歳入に繰り入れることといたしました。また、このうち食糧管理勘定の損益計算上の損失は二千二億一千六百三十万円余でありまして、調整資金を取りまして整理いたしました。
これにより、食糧管理法、農産物価格安定法及び飼料需給安定法に基づき、米、麦、でん粉、輸入飼料の買入れ、売渡し等を管理することにより価格の安定と国民食糧の確保を図り、国民経済の安定に資するための
事業を実施いたしました。
第二に、農業共済再保険特別会計であります。農業勘定等の六勘定を合わせて申し上げますと、収納済歳入額は一千二百一億九千二百六十九万円余、
支出済歳出額は七百四十九億三千九百五十三万円余であります。歳入歳出差引き四百五十二億五千三百十六万円余のうち、翌
年度へ繰り越す額百七十二億二千八百十万円余を控除し、二百八十億二千五百六万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、それぞれ翌
年度の歳入に繰り入れ、又は積立金として積み立てること等といたしました。
これにより、農業災害補償法に基づき、国が農作物共済等の各共済についての再保険
事業を行うことによって、農業経営の安定等を図るための農業共済
事業の円滑な実施を図りました。
第三に、森林保険特別会計であります。収納済歳入額は百二十九億六千三百七十六万円余、
支出済歳出額は三十五億三千百八十四万円余であります。歳入歳出差引き九十四億三千百九十一万円余のうち、翌
年度へ繰り越す額九十三億八千八百六十一万円余を控除し、四千三百二十九万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、積立金として積み立てることといたしました。
これにより、森林国営保険法に基づき、国が森林の火災、気象災及び噴火災を保険事故とする森林保険
事業を行うことによって林業経営の安定を図るための
事業を実施いたしました。
第四に、漁船再保険及漁業共済保険特別会計であります。漁船普通保険勘定等の五勘定を合わせて申し上げますと、収納済歳入額は四百八十七億六千三百七十八万円余、
支出済歳出額は三百五億九千六百四十万円余であります。歳入歳出差引き百八十一億六千七百三十八万円余のうち、翌
年度へ繰り越す額二百六億九千四百四十三万円余を控除し、二十五億二千七百五万円余の
決算上の不足を生じました。この不足金は、補足すべき積立金がないので、このまま
決算を結了すること等といたしました。
これにより、漁船損害等補償法、漁船乗組員給与保険法及び漁業災害補償法に基づき、国が再保険及び保険
事業を行うことによって漁業経営の安定に資するための
事業を実施いたしました。
第五に、農業経営基盤強化
措置特別会計であります。収納済歳入額は五百三十六億七千六百六十七万円余、
支出済歳出額は百八十三億一千三百五十八万円余でありまして、歳入歳出差引き三百五十三億六千三百八万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、翌
年度の歳入に繰り入れることといたしました。
これにより、農地法等の規定に基づき、国が自作農創設のために行う農地等の買収、売渡し等に関する
事業、農地保有の合理化を
促進するための
事業に対する助成及び農業改良資金助成法の規定に基づく農業改良資金の貸付
事業を実施いたしました。
第六に、国有林野
事業特別会計であります。国有林野
事業勘定につきましては、収納済歳入額は五千七百二十九億七千九百七十七万円余、
支出済歳出額は五千七百九十四億二千六百二十三万円余であります。この勘定の損益計算上の損失は一千五十九億五千百二十二万円余でありまして、法律の定めるところに従い、損失の繰越しといたしました。治山勘定につきましては、収納済歳入額は二千百十六億三千四百九十二万円余、
支出済歳出額は二千百十五億五千十八万円余でありまして、歳入歳出差引き八千四百七十四万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、翌
年度の歳入に繰り入れることといたしました。
これにより、国有林野法に規定される国有林野の管理経営の
事業及びその附帯業務に係る
事業並びに治山
事業の計画的
推進を図る
事業を実施いたしました。
第七に、国営土地改良
事業特別会計であります。収納済歳入額は五千百八十四億八千五百八十五万円余、
支出済歳出額は五千二十六億三千六百九十五万円余でありまして、歳入歳出差引き百五十八億四千八百八十九万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、翌
年度の歳入に繰り入れることといたしました。
これにより、土地改良法に基づき、すべての国営土地改良
事業、受託工事及び直轄調査に関する
事業を実施いたしました。
以上をもちまして、
平成四
年度の農林水産省
決算の
説明を終わります。
なにとぞ、よろしく御
審議の程お願い申し上げます。
…………………………………
平成四
年度決算農林水産省についての
検査
の
概要に関する
主管局長の
説明
会計検査院
平成四
年度農林水産省の
決算につきまして
検査いたしました結果の
概要を御
説明いたします。
検査報告に掲記いたしましたものは、意見を表示し又は
処置を要求した
事項二件及び本院の
指摘に基づき
当局において
改善の
処置を講じた
事項二件であります。
まず、意見を表示し又は
処置を要求した
事項について御
説明いたします。
その一は、水田農業確立助成補助金の地域営農加算額の
交付に関するものであります。
農林水産省では、稲作と転作との合理的な組合せによる地域輪作農法を確立し、水田農業の体質強化を図ることを主眼として、水田農業確立対策を実施しており、その実施に当たっては、農業者に対し転作等の面積に応じて水田農業確立助成補助金を
交付しております。この補助金には、農業者が自主的に土地・水利用及び営農方式の調整を行い、地域の水田農業の確立を計画的に
推進することを助成する目的で
交付される地域営農加算額があります。地域営農加算額は、市町村、農業協同組合、農業者等が中心となって作成する水田利用合理化
推進計画に農業者が参画し、自らが資金を拠出すること、この拠出額と地域営農加算額とを併せるなどして基金を造成することなどの
交付要件を満たした場合に
交付することとされております。そして、基金は、地域営農加算額の
交付の趣旨に沿って、小規模な土地基盤
整備事業等を実施する場合の財源とすることになっております。そこで、
事業が制度の趣旨に沿って実施されているかなどについて
検査いたしました。
その結果、地域営農加算額が、計画の策定、基金の造成などの
交付要件に定める実施体制が
整備されていない区域に対して
交付されていたり、
交付目的に沿って適切に使用されていなかったりしている事態が見受けられました。
このような事態を生じているのは、農業者、農協及び市町村において、制度の趣旨、目的、
交付要件等についての理解が十分でなく、それぞれの役割、責任を十分果していなかったこと、道府県において、市町村が行う
審査・確認事務に対する指導・監督が十分でなかったこと、また、農林水産省においても、農業者、農協及び市町村の三者それぞれの役割や責任を十分明確にしておらず、基金に対する拠出方法及び基金の使途について、関係機関へ
周知徹底が十分でなかったこと、市町村等での有効な
審査・確認体制を
整備していなかったことなどによると認められました。
この地域営農加算制度は、五
年度からの水田営農活性化対策においても「地域営農
推進助成」として実施されることになっております。
したがいまして、農林水産省におきまして、制度の趣旨に沿った効果的な
事業を執行するため、要綱等で、農業者、農協及び市町村の三者それぞれの役割、責任を明確にし、基金への拠出方法及び基金の使途に関する規定を
整備するとともに
審査が実効性のあるものとなるよう確認資料等の書式を改め、また、農業者、農協及び市町村に対しては、制度の趣旨、
交付要件等を
周知徹底し、都道府県に対しては、
交付要件の確認、基金の管理状況についてその
実態を十分把握するよう指導するとともに、今後、不適切な事態が生じた場合には、具体的かつ厳正な
措置を講ずるよう
周知徹底するなどの是正
改善の
処置を要求いたしたものであります。
その二は、農地保有合理化
促進事業の実施に関するものであります。
農林水産省では、農業経営の規模の拡大等を
促進するため、農地保有合理化
促進事業を実施しております。これは、農地保有合理化法人が
事業主体となって、農用地等を買い入れて、これらの土地を規模拡大農家に売り渡すなどする
事業でありまして、
一般事業、特別
事業等の四つの
事業があります。このうち特別
事業は、農業団地の形成、農用地の
開発等を行う
事業と連携して実施されるもので、自立経営を志向する農家を生産組織の中核的担い手として育成することなどを目的として、利用増進特別
事業及び
開発関連特別
事業の二つに分けて実施されております。
そして、特別
事業の実施に要する資金につきましては、社団法人全国農地保有合理化協会が合理化法人に対して無利子で貸し付けておりますが、農林水産省では同協会に対し、この貸付金の原資又は利子について助成を行っております。
農林水産省では、農業経営の規模の拡大等を図るため合理化
促進事業を積極的に活用することとし、なかでも、特別
事業の規模を拡大させておりますことなどから、その実施状況につきまして、農業経営の規模の拡大に寄与しているかどうかに着目して
事業効果の観点から調査いたしました。
その結果、利用増進特別
事業において、売渡しを受けた後の当該農業者の経営面積が経営規模拡大の目標として設定された面積に達していなかったり、売り渡した農用地が転売などされたりしている事態が、また、
開発関連特別
事業において、
開発事業により造成され、換地処分がされた農用地が売り渡されないまま、合理化法人において保有されている事態が、それぞれ見受けられました。
このような事態となっているのは、農業の担い手の減少、農業従事者の高齢化など近年の農業・農村をめぐる環境変化の影響もありますが、農林水産省において、合理化法人が定める農用地の売渡し後の目標経営面積についてその達成時期を具体的に定めていないこと、また、売り渡した農用地の利用状況を把握する体制の
整備や、換地処分がされた農用地の売渡しの
促進について、合理化法人等に対する指導が十分でないこと、などによると認められました。
したがいまして、農林水産省におきまして、農用地の売渡し後の目標経営面積の達成時期を具体的に定めるとともに、合理化法人にその達成状況や農用地の利用状況を把握する体制を
整備させたり、農用地の売渡しを
促進するよう適切な指導を行ったりなどして、
事業の効果が十分発現するように努めるよう
改善の意見を表示いたしたものであります。
次に、本院の
指摘に基づき
当局において
改善の
処置を講じた
事項について御
説明いたします。
その一は、肉用牛産地拡大
推進事業の助成金の
交付及び対象牛の年齢の取扱いに関するものであります。
農林水産省では、肉用牛生産の拡大を
推進するため、畜産物の価格安定等に関する法律に基づき、畜産振興
事業団に、指定助成対象
事業として、全国農業協同組合連合会ほか三団体が
事業主体となって実施した肉用牛産地拡大
推進事業に対して、助成を行わせております。この
事業の実施に要する
経費は、畜産振興
事業団が農林水産省からの
交付金等を財源として社団法人全国肉用子牛価格安定基金協会に造成させた基金をもって充てております。
そして、この
事業には繁殖雌牛の規模拡大
事業ほか五
事業があり、畜産農家等から構成される生産集団の構成員が、満十二月齢以上の繁殖雌牛の飼養頭数を増加させた場合などに、助成金が
交付されるものであります。
今回、これらの助成金について調査しましたところ、繁殖雌牛の増加頭数の確認が十分でなく、実際の増加頭数を上回る頭数を助成の対象としていたり、繁殖の用に適さない高年齢の繁殖雌牛を助成の対象としていたりしている適切でない事態が見受けられました。
このような事態が生じていたのは、農林水産省において、
交付要件の確認をする際の確認内容等について具体的な取扱方法を示していなかったこと、繁殖雌牛の規模拡大
事業における助成金の
交付対象牛の年齢に上限を設定していなかったことなどによると認められました。
当局の見解をただしましたところ、農林水産省では、五年十一月に畜産振興
事業団に通達を発し、
交付要件の確認をする際の確認内容等についての具体的な取扱方法を示すとともに、一定年齢以上の雌牛については、繁殖雌牛の規模拡大
事業の助成対象から除外するなどの
処置を講じたものであります。
その二は、輸入麦の受渡業務の方法に関するものであります。
食糧庁では、国民の食糧の確保及び国民経済の安定を図ることなどを目的として、食糧用及び飼料用の輸入麦を輸入業者から買い入れております。
この輸入麦の港における受渡方法には、本船を接岸させて直接サイロへ搬入する接岸取りと本船からはしけに移して運送のうえサイロへ搬入するはしけ取りがありますが、はしけ取りの
経費は接岸取りの
経費に比べて割高であるので、食糧庁では、接岸取りを優先的に行い、はしけ取りは可能な限り行わないこととしております。
今回、千葉港ほか六港においてはしけ取りを行った本船について、入港時における接岸取りが可能なサイロの収容余力を調査したところ、本船入港時のこれら接岸サイロの収容余力がはしけ取りした数量を上回っている事態が見受けられました。したがって、輸入港食糧事務所が受渡方法を決定するに当たっては、本船入港時における接岸サイロの正確な収容余力を把握していれば、割高なはしけ取りに代え、接岸取りを行うことが可能であったと認められたものであります。
このような事態が生じていたのは、食糧庁において、輸入港における接岸サイロの収容力が逐次増大してきているのに、これを有効に活用する配慮が十分でなかったことなどによると認められましたので、
当局の見解をただしましたところ、食糧庁では、五年十一月に輸入港食糧事務所に対して通達を発し、受渡方法を決定するに当たっては、接岸サイロにおける収容余力の把握を的確に行い、原則として、接岸サイロの収容余力がある場合には、接岸取りにより行うことを
周知徹底する
処置を講じたものであります。
なお、以上のほか、
平成元
年度決算検査報告に掲記いたしましたように、国営木曽岬干拓
事業により造成された干拓地について、及び
平成三
年度決算検査報告に掲記いたしましたように、新農業構造
改善事業等による
施設の設置及び運営並びに水田農業確立特別
交付金の
交付について、それぞれ意見を表示し又は
処置を要求いたしましたが、これらに対する農林水産省の
処置状況についても掲記いたしました。
以上をもって
概要の
説明を終わります。
—————————————
平成四
年度農林漁業金融公庫業務概況
農林漁業金融公庫
平成四
年度における
農林漁業金融公庫の業務の概況についてご
説明申し上げます。
国においては、二十一世紀に向かって明るい展望が持てるよう、生産性と品質が高い農林水産業を育成するとともに、農山漁村の生活の質的向上と活性化を図ることを基本として諸施策が展開されました。
こうした国の施策に即応して、当
公庫は、業務の運営にあたりまして、関係機関との密接な連携のもとに、農林水産業の生産基盤の
整備及び経営構造の
改善のための融資を
推進するとともに、多様化する資金需要に対応して、融資条件の
改善を含め、融資の円滑化に配慮してまいりました。
平成四
年度における貸付計画について申し上げますと、貸付計画額は六千億円を予定いたしました。
これに対する貸付決定額は四千六百五十五億六千四百四十一万円余となり、前
年度実績と比較して五百四十七億一千六百三十一万円余の減少となりました。
この貸付決定額を農業・林業・水産業に大別して申し上げますと一、農業部門 三千二百五十七億七千十八万円
余二、林業部門 四百七十七億二百九十万円余三、水産業部門 五百二十六億六百八十八万円余四、その他部門 三百九十四億八千四百四十四万
円余となりまして、農業部門が全体の七十・〇%を占めております。
次に
平成四
年度の貸付資金の
交付額は四千六百五十八億七千六百六十五万円余となりまして、これに要した資金は、
一般会計からの出資金八十億円、資金運用部からの借入金三千四百二十七億円、簡易生命保険からの借入金三百九十三億円並びに貸付回収金等七百五十八億七千六百六十五万円余をもって充当いたしました。
この結果、
平成四
年度末における貸付金残高は五兆三千百七十六億三千三百九十五万円余となりまして、前
年度末残高に比べて三十九億七百八万円余〇・一%の減少となりました。
貸付金の延滞状況につきましては、
平成四
年度末におきまして、弁済期限を六か月以上経過した元金延滞額は三百八十八億八千百十二万円余となりまして、このうち一年以上延滞のものは三百七十一億九千百十一万円余となっております。
次に
平成四
年度における収入支出
決算の状況についてご
説明申し上げますと、収入済額は、収入
予算額三千六百八十四億二千六百五十万円に対し三千七百四十三億一千九百五十一万円余となりました。また、支出済額は、支出
予算額三千八百二十二億七百四十二万円余に対し三千六百五十三億八千七百七十二万円余となり、支出に対し収入が八十九億三千百七十九万円余多くなっております。
最後に、
平成四
年度における当
公庫の損益計算の結果について申し上げますと、貸付金利息等の総利益は四千三十億七千五百二万円余、借入金利息等の総損失は四千三十億七千五百二万円余となり、利益と損失が同額となりましたため、利益金はなく国庫納付はありませんでした。
これらの業務の遂行にあたりましては、常に適正な運用について、鋭意努力してまいりましたが、
平成四
年度決算検査報告におきまして、総合
施設資金等の貸付けにつきまして不当
事項として
指摘を受けたものがありますことは、まことに遺憾に存じております。
指摘を受けました
事項につきましては、直ちに適切な
措置を講じましたが、今後はこのようなことの再び起こることのないよう業務運営の適正化に一層努める所存であります。
以上が、
平成四
年度における
農林漁業金融公庫の業務の概況であります。なにとぞよろしくご
審議のほどお願いいたします。
…………………………………
平成四
年度決算農林漁業金融公庫について
の
検査の
概要に関する
主管局長の
説明
会計検査院
平成四
年度農林漁業金融公庫の
決算につきまして
検査いたしました結果の
概要を御
説明いたします。
検査報告に掲記いたしましたものは、法律、政令若しくは
予算に違反し又は不当と認めた
事項七件であります。
検査報告番号二三五号から二四一号までの七件は、総合
施設資金等の貸付けが不当と認められるものであります。
これらの資金の貸付
事業は、農林漁業者等に対し、農林漁業の生産力の維持増進等に必要な長期かつ低利の資金で、
一般の金融機関から融通を受けることが困難な資金を直接又は金融機関に委託して貸し付けるものでありますが、総合
施設資金等の貸付けに当たり、借入者から事実と相違した内容の借入申込みや
事業完成報告がされているにもかかわらず、これに対する
審査及び確認が適切でなかったなどのため、貸付金額を過大に算定しているものであります。
以上、簡単でございますが
説明を終わります。
—————————————
平成五
年度農林水産省決算概要説明
農林水産省
平成五
年度における農林水産省の歳入
歳出決算につきまして、その
概要を御
説明申し上げます。
一般会計の歳入につきましては、当初
予算額は四千四百三十億二千四百九十六万円余でありますが、
予算補正追加額等三十一億六千百九十四万円余の増加がありましたので、歳入
予算額は四千四百六十一億八千六百九十万円余となっております。
これに対し、収納済歳入額は五千四十九億七千二百四十六万円余であり、これを歳入
予算額と比較いたしますと五百八十七億八千五百五十六万円余の増加となっております。これは、日本中央競馬会納付金が予定より多かったこと等の理由によるものであります。
次に、
一般会計の歳出につきましては、当初
予算額は二兆九千四百二億三千二十二万円余でありますが、緊急経済対策の一環として内需の拡大等を図るため
地方公共団体等が施行する農村
整備事業の
事業費の一部補助に必要な
経費等として
予算補正追加額一兆六千三百六十一億一千三百二十二万円余、既定
予算の節約等による
予算補正修正減少額三百九十五億二千百三十一万円余、北海道における農業農村
整備事業を実施するために必要な
経費等について
総理府所管から移替えを受けた額四千六百三億四千九百九十六万円余、前
年度からの
繰越額一千百四十四億百六十六万円余、山林
施設災害関連
事業に必要な
経費等として予備費五十五億一千百八十一万円の増減がありましたので、
歳出予算現額は五兆一千百七十億八千五百五十八万円余となっております。
これに対し、
支出済歳出額は四兆四千三百八十五億二千百万円余であり、これと
歳出予算現額との差額は六千七百八十五億六千四百五十七万円余となっております。
この差額のうち、翌
年度への
繰越額は六千六百四億八千九百七十八万円余であり、
不用額は百八十億七千四百七十八万円余となっております。
このほか、これら
一般会計とは別に、大蔵省
所管産業投資特別会計に係る
支出済歳出額は四十八億一千五百二十七万円余となっております。
次に、農林水産省の
一般会計の主要
経費別支出実績について、御
説明申し上げます。
第一に、社会保障関係費であります社会保険費につきましては、「農業者年金基金法」に基づく農業者年金
事業の実施及び農業者離農給付金の支給等に要した費用として一千百億二百六十八万円余の
経費を支出いたしました。
第二に、文教及び科学振興費であります
科学技術振興費につきましては、農林水産業に関する試験
研究及び
試験研究機関の運営等に要した費用として九百二十九億五千六十五万円余の
経費を支出いたしました。
第三に、公共
事業関係費につきましては、総額で二兆七千七百六十四億三千万円余の
経費を支出いたしました。
その内訳といたしまして、
治山治水対策
事業費につきましては、山地災害の防止、水資源のかん養等を図る治山
事業並びに海岸保全
施設の
整備等により海岸地域の民生の安定及び国土の保全を図る海岸
事業等に要した費用として三千四百五十一億一千百四万円余の
経費を支出いたしました。
港湾漁港空港
整備事業費につきましては、
我が国水産業の発展を図るため、その基盤である漁港
施設の
整備に要した費用として三千百四十九億四百十七万円余の
経費を支出いたしました。
農業農村
整備事業費につきましては、農業の生産基盤の
整備、農村の生活環境の
整備及び農地等の保全管理のための
整備に要した費用として一兆六千四百三十三億七千二百七十一万円余の
経費を支出いたしました。
林道工業用水等
事業費につきましては、山村地域の基盤
整備を図る林道
事業並びに沿岸漁業の安定的な発展を図る沿岸漁場
整備開発等の
事業に要した費用として二千九百五十六億九千六十七万円余の
経費を支出いたしました。
調整費等につきましては、国土の総合
開発等の調整に要した費用として十一億八千五十二万円余の
経費を支出いたしました。
災害復旧等
事業費につきましては、災害を受けた農業
施設、山林
施設及び漁港
施設の復旧
事業に要した費用として一千七百六十一億七千八十七万円余の
経費を支出いたしました。
第四に、経済協力費につきましては、
我が国海外漁場の確保と国際漁業協力を一体的に
推進するために要した費用として五十億六千八百二十七万円余の
経費を支出いたしました。
第五に、食糧管理費につきましては、生産性の高い水田営農を
推進するための費用並びに食糧管理特別会計の調整資金に充てること等のために要した費用として三千八十三億五千三百四十万円余の
経費を支出いたしました。
第六に、その他の
事項経費につきましては、農林水産本省等の
一般行政に要した費用として一兆一千四百五十七億一千五百九十八万円余の
経費を支出いたしました。
次に、本
年度において実施した主な
事業概要を施策別に御
説明いたします。
第一に、経営体の育成と農地の効率的利用の
推進に関しての
事業概要であります。
まず、「新しい食料・農業・農村政策の方向」に沿って、経営感覚に優れた効率的・安定的な経営体が生産の相当部分を担う農業構造を実現するため、「農業経営基盤強化
促進法」を柱として、法人化の
推進、経営指導の強化等により農業経営体の経営体質の強化を図ったほか、関係機関の密接な連携の下に農地の利用集積活動を
推進いたしました。
また、農家子弟以外の者も含め、次代の農業を担う意欲と経営能力に優れた青年農業者等を育成確保するため、新規就農者対策の充実を図りました。
さらに、「新しい食料・農業・農村政策の方向」に即し、二十一世紀の
我が国の農業農村の基盤を築くため、魅力ある農業を実現するための生産基盤の
整備、快適で美しい農村空間を形成するための総合的
整備及び安全な国土の維持・形成に資するための
整備を課題とする第四次土地改良長期計画を策定し、この計画に基づいて農業農村
整備事業について、NTT資金の活用も併せ着実かつ効率的に実施いたしました。
このほか、生産性の高い土地利用型農業の確立及び地域資源の
整備・活用等による活力ある農村社会の
建設のため、農業農村活性化農業構造
改善事業等を実施いたしました。
第二に、中山間地域等の活性化と国土保全機能の維持に関しての
事業概要であります。
まず、自然的、経済的に不利な条件下に置かれている中山間地域の活性化により、健全な地域社会の維持・発展を図り、併せて国土保全機能の維持等に資するため、「特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤
整備の
促進に関する法律」(特定農山村法)を制定するとともに、山村・過疎地域等における快適で活力ある地域づくりを
推進するため新山村振興農林漁業対策
事業、農山漁村活性化定住圏創造
事業等を実施するほか、地域の立地条件に即した農業生産基盤、農村生活環境基盤等の総合的な
整備を実施いたしました。
また、農林水産業の振興と併せ安定した就業機会の確保、都市と農山漁村との交流等を
推進いたしました。
さらに、都市と比較して立ち遅れている農村の生活環境基盤を
整備し農村の生活の質的向上を図るため、農業集落排水
事業、農道
整備事業及び農村総合
整備事業等を実施するとともに、農村景観や親水等にも配慮した
整備を進め、豊かな農村空間の創出による活性化を図るため農村総合環境
整備を実施いたしました。
このほか、生産基盤、生活環境等の
整備と併せて景観形成、環境保全等に配慮した農山漁村の
整備を行う美しいむらづくり特別対策を実施いたしました。
第三に、技術の
開発・普及による農業生産の効率化に関しての
事業概要であります。
まず、農林水産業に関する重要政策課題に対応するために、高生産性土地利用型農業の確立に向けた地域農業の現場に即した革新的
技術開発の実施等農業の生産性向上を図るための
研究、高度化・多様化する消費ニーズに対応した
研究、環境問題・熱帯農業問題に対応した
研究を実施するとともに、農林水産業の生産性の飛躍的向上、農産物・食品の高付加価値化等を図るためイネ・ゲノム解析
研究をはじめとする基礎的・先導的
研究を実施いたしました。
また、国際的な
研究交流を
推進するほか、民間及び都道府県の
研究開発に対する支援を実施いたしました。
これらの
技術開発の成果等について農業者への普及等を図るため、協同農業普及
事業等の効果的な
推進を図りました。
さらに、農村地域等における情報交流を進めるため、各種情報システムの
開発整備等を図りました。
このほか、農林水産業の構造等の
実態を的確に把握し、農林水産行政の効率的かつ適正な
推進に資するため、第九次漁業センサスをはじめ、各種統計調査等を実施いたしました。
第四に、消費者ニーズを重視した農林水産行政の展開に関しての
事業概要であります。
まず、国民に健康で豊かな食生活を保障する観点から、消費者への情報提供業務の充実、規格・表示の適正化等消費者対策を
推進するとともに、牛乳.果実等の農水産物の消費拡大対策の
推進を図りました。
また、農産物の価格については、需要の動向と生産性向上の成果をより的確に、かつ可能な限り反映し、農産物が国民の納得の得られる価格で安定的に供給されるよう努めました。
このほか、世界の農業・食料情勢の調査・分析等を行うとともに、飼料穀物等の備蓄対策を
推進いたしました。
第五に、活力ある農業生産の展開に関しての
事業概要であります。
まず、生産者・生産者団体の一層の主体的取組みを基礎に、地域の自主性の尊重を旨として、「新しい食料・農業・農村政策の方向」に示された基本方向に即し、水稲作・転作を通じた望ましい経営の育成を図りつつ、生産性の高い水田営農を
推進するため、水田営農活性化対策を実施いたしました。
また、生産性の高い農業の実現、高品質な農産物の生産、環境保全に配慮した農業の展開等を図るため、二十一世紀に向けた先進的農業というべき効率的で環境にやさしく、かつ農業者にとって魅力ある生産活動を
推進する先進的農業生産
総合推進対策を地域の自主性と活力を基礎に総合的かつ計画的に実施いたしました。
さらに、牛肉の輸入自由化等に対処するため、肉用子牛生産安定等特別
措置法に基づき、牛肉等の関税収入を財源とした肉用子牛等対策を引き続き実施するとともに、畜産活性化総合対策により、生産から流通・消費に至る各種
事業を総合的に実施いたしました。
このほか、生産コストの節減等を図るため、革新的農業機械等の
開発・実用化、広域的な農作業受委託を
推進する農業機械銀行の育成、肥料費節減の優良事例の普及・啓発等農業生産資材対策を実施いたしました。
第六に、地球的規模の環境問題等への対応と国際協力の
推進に関しての
事業概要であります。
まず、地球環境保全対策としましては、熱帯林保全対策として、熱帯林の保全・造成を
推進するための
開発途上国の林業技能者及び普及担当者の育成、さらに、持続的な農業・農村
開発に必要な調査等を実施いたしました。
また、砂漠化防止対策として、東アフリカ地域及び中央アジア地域の基礎調査等を実施するとともに、地球温暖化対策として、温暖化が農林水産生態系に及ぼす影響の予測技術及び農業系から排出されるメタン等の
実態把握と制御技術の
開発、
開発途上国における農業関連の温室効果ガス対策の策定についての助言支援等を実施いたしました。
さらに、多様な生物を保全するため、海と干潟の生物環境の保全のための調査等を実施いたしました。
このほか、
開発途上国の現状に即した農林水産業協力の一層の
促進を図るため、中長期的な農林水産業協力の
推進方策等の策定のための基礎調査等を実施するとともに、国際連合食糧農業機関のフィールドプロジェクト及び国際熱帯木材機関への拠出等国際機関を通じた協力を
推進いたしました。
第七に、食品関連産業の振興と輸出
促進対策に関しての
事業概要であります。
まず、農業サイドと食品産業サイドとの連携の下、原料農産物の安定供給と利用の高度化等を図るため、食品産業原料対策を講じるほか、地域食品の高付加価値化による地域食品産業の高度化を図るため、加工
施設の
整備、市場開拓等を総合的に
推進するとともに、地域食品のマーケティング力を強化するため、ふるさと食品の情報提供等を実施いたしました。
また、食品産業の体質と経営基盤の強化を図るため、食品産業における廃棄物再生利用技術等先端技術の
開発を進めるとともに、食品産業の大宗を占める中小企業の技術水準の向上を図るため、汎用性の高い技術の
開発等を
推進いたしました。
さらに、生鮮食料品等の流通の合理化を図るため、卸売市場の計画的
整備を図るとともに、消費者ニーズの多様化・高度化、流通コストの上昇等に対処するため、食品流通の総合的な構造
改善対策を
推進いたしました。
このほか、
我が国農林水産物の販路を拡大し、農山漁村の活性化等に資するため、輸出
促進対策を
推進いたしました。
第八に、農林漁業金融の充実に関しての
事業概要であります。
農林漁業生産の経営構造の
改善、基盤
整備等の
促進に資するため、
農林漁業金融公庫資金、農業近代化資金等の各種制度資金について、所要の融資枠の確保、融資内容の充実を図るとともに、農業信用保証保険機能の充実を図りました。
第九に、多様な森林
整備の
推進と国産材時代への条件
整備に関しての
事業概要であります。
まず、多様で質の高い森林の
整備を図るため、森林
整備事業計画に基づき、造林・林道
事業を計画的に
推進したほか、第八次治山
事業五箇年計画に基づき、治山
事業の計画的
推進を図りました。
また、健全な森林の育成を図るための間伐総合対策を実施するとともに、松くい虫被害対策特別
措置法に基づく総合的な松林保全対策、林野火災予防対策、緑化対策等を
推進いたしました。
さらに、林業・山村の活性化を図るため、林業の担い手の育成強化、高性能林業機械の
開発、林業就労条件の
改善・
整備、林業構造
改善事業、特用林産振興対策等を
推進するとともに、山村の定住条件
整備と都市と山村の交流
促進のため、林道の
整備、集落周辺の森林の多様な
整備等を実施したほか、森林計画制度の適正運用の確保を図りました。
また、国産材供給体制の
整備と木材需要の拡大を図るため、木材産業の体質を強化するための木材産業ビジョンを策定するとともに、木材産業の生産性の向上、木材の有効利用の
促進等のための
技術開発を
推進したほか、国産材の利用の
促進、国産材の低コスト安定供給体制の
整備等を
推進いたしました。
さらに、林業
改善資金について、林業の担い手の養成・確保を図るための新資金の創設等を行うとともに、木材の低コスト供給体制の実現等を図るため、国産材産業振興資金を木材産業等高度化
推進資金に組み替え、その内容を拡充する等、林業金融制度の充実を図りました。
このほか、国有林野
事業については、国有林野
事業改善特別
措置法に基づき策定された「国有林野
事業の
改善に関する計画」に即して、経営
改善を
推進いたしました。
第十に、二百海里体制の定着等に即応した水産業の振興に関しての
事業概要であります。
まず、国際化時代に対応した漁業を
推進するため、国際漁業資源の調査や管理・増大対策を行うとともに、新資源の調査・
開発、国際漁業協力の
推進、外国漁船の違反操業対策等の諸施策を講じたほか、水産動植物の保護対策、漁場環境保全対策を実施いたしました。
また、第八次漁港
整備長期計画及び第三次沿岸漁場
整備開発計画に基づき、NTT資金の活用も併せ、漁港及び沿岸漁場の
整備を
推進するとともに、環境に配慮したむらづくり対策、沿岸漁業構造
改善事業等の施策を講じました。
さらに、
我が国周辺水域の漁業振興を図るため、資源管理型漁業
推進総合対策を行うとともに、栽培漁業・養殖業の振興、さけ・ますふ化放流
事業の
推進等の諸施策を講じたほか、水産新技術の
開発、試験
研究の強化等を
推進いたしました。
また、漁協・水産業の経営対策として、金融自由化の進展等に対処して漁協経営基盤の強化や漁業経営の体質強化等の諸施策を講じるとともに、水産業関係資金の円滑な融通等を
推進いたしました。
このほか、水産物の需給安定対策を講じるとともに、新たに水産物流通加工活性化総合
整備事業を実施する等、加工流通体制の
整備を中心とした流通消費及び加工対策等の施策を
推進いたしました。
第十一に、その他の重要施策に関しての
事業概要であります。
まず、海岸
事業については、第五次海岸
事業五箇年計画に基づき、NTT資金の活用も併せ、海岸保全区域における
事業の実施を図りました。
また、災害対策については、農作物共済等の各共済に係る所要の共済掛金国庫負担金、農作物共済に係る再保険金支払財源不足金借入金利子等を農業共済再保険特別会計に繰り入れたほか、農業共済団体の事務費等を助成し、農業災害補償制度の円滑な実施を図るとともに、災害営農資金等の利子補給に対する助成を図りました。
さらに、台風・豪雨等により被災した農地、農業用
施設、山林
施設、漁港
施設等の災害復旧
事業を実施いたしました。
このほか、農業団体の
整備についても、農業
委員会等に対して、引き続き
助成等を行いました。
以上をもちまして、
一般会計歳入歳出決算に関する御
説明を終わります。
次に、各特別会計の
決算について御
説明申し上げます。
第一に、食糧管理特別会計であります。国内米管理勘定等の七勘定を合わせて申し上げますと、収納済歳入額は一兆六千八十四億四千九百十四万円余、
支出済歳出額は一兆四千九百七十九億三千八百七十九万円余でありまして、歳入歳出差引き一千百五億一千三十五万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、翌
年度の歳入に繰り入れることといたしました。また、このうち食糧管理勘定の損益計算上の損失は七百七十億八千七百三十万円余でありまして、調整資金を取りまして整理いたしました。
これにより、食糧管理法、農産物価格安定法及び飼料需給安定法に基づき、米、麦、でん粉、輸入飼料の買入れ、売渡し等を管理することにより価格の安定と国民食糧の確保を図り、国民経済の安定に資するための
事業を実施いたしました。
第二に、農業共済再保険特別会計であります。農業勘定等の六勘定を合わせて申し上げますと、収納済歳入額は四千八百八十九億一千五十三万円余、
支出済歳出額は四千六百五十三億六千十七万円余であります。歳入歳出差引き二百三十五億五千三十五万円余のうち、翌
年度へ繰り越す額百七十七億三千三百五十六万円余を控除し、五十八億一千六百七十九万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、それぞれ翌
年度の歳入に繰り入れること等といたしました。
これにより、農業災害補償法に基づき、国が農作物共済等の各共済についての再保険
事業を行うことによって、農業経営の安定等を図るための農業共済
事業の円滑な実施を図りました。
第三に、森林保険特別会計であります。収納済歳入額は百二十七億二千二百二十四万円余、
支出済歳出額は三十四億一千九百十一万円余であります。歳入歳出差引き九十三億三百十二万円余のうち、翌
年度へ繰り越す額九十二億五千四百二十五万円余を控除し、四千八百八十七万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、積立金として積み立てることといたしました。
これにより、森林国営保険法に基づき、国が森林の火災、気象災及び噴火災を保険事故とする森林保険
事業を行うことによって林業経営の安定を図るための
事業を実施いたしました。
第四に、漁船再保険及漁業共済保険特別会計であります。漁船普通保険勘定等の五勘定を合わせて申し上げますと、収納済歳入額は四百八十四億三百六十一万円余、
支出済歳出額は三百四十三億三千六百六十二万円余であります。歳入歳出差引き百四十億六千六百九十八万円余のうち、翌
年度へ繰り越す額二百三十四億五千八百十一万円余を控除し、九十三億九千百十二万円余の
決算上の不足を生じました。この不足金は、補足すべき積立金がないので、このまま
決算を結了すること等といたしました。
これにより、漁船損害等補償法、漁船乗組員給与保険法及び漁業災害補償法に基づき、国が再保険及び保険
事業を行うことによって漁業経営の安定に資するための
事業を実施いたしました。
第五に、農業経営基盤強化
措置特別会計であります。収納済歳入額は五百八十七億二千三百五十四万円余、
支出済歳出額は百九十八億二千八百六十七万円余でありまして、歳入歳出差引き三百八十八億九千四百八十六万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、翌
年度の歳入に繰り入れることといたしました。
これにより、農地法等の規定に基づき、国が自作農創設のために行う農地等の買収、売渡し等に関する
事業、農地保有の合理化を
促進するための
事業に対する助成及び農業改良資金助成法の規定に基づく農業改良資金の貸付
事業を実施いたしました。
第六に、国有林野
事業特別会計であります。国有林野
事業勘定につきましては、収納済歳入額は六千二百三十七億八千七百六十三万円余、
支出済歳出額は五千八百十五億六千三百九十八万円余であります。この勘定の損益計算上の損失は一千六十五億七千二百三十九万円余でありまして、法律の定めるところに従い、損失の繰越しといたしました。治山勘定につきましては、収納済歳入額は三千七百十八億五千三百三十五万円余、
支出済歳出額は三千七百十七億三千九百七万円余でありまして、歳入歳出差引き一億一千四百二十八万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、翌
年度の歳入に繰り入れることといたしました。
これにより、国有林野法に規定される国有林野の管理経営の
事業及びその附帯業務に係る
事業並びに治山
事業の計画的
推進を図る
事業を実施いたしました。
第七に、国営土地改良
事業特別会計であります。収納済歳入額は五千五百六十五億四千三百十八万円余、
支出済歳出額は五千三百三十二億二千百九十七万円余でありまして、歳入歳出差引き二百三十三億二千百二十一万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、翌
年度の歳入に繰り入れることといたしました。
これにより、土地改良法に基づき、すべての国営土地改良
事業、受託工事及び直轄調査に関する
事業を実施いたしました。
以上をもちまして、
平成五
年度の農林水産省
決算の
説明を終わります。
なにとぞ、よろしく御
審議の程お願い申し上げます。
…………………………………
平成五
年度決算農林水産省についての
検査
の
概要に関する
主管局長の
説明
会計検査院
平成五
年度農林水産省の
決算につきまして
検査いたしました結果の
概要を御
説明いたします。
検査報告に掲記いたしましたものは、法律、政令若しくは
予算に違反し又は不当と認めた
事項八件、意見を表示し又は
処置を要求した
事項一件及び本院の
指摘に基づき
当局において
改善の
処置を講じた
事項二件であります。
まず、法律、政令若しくは
予算に違反し又は不当と認めた
事項について御
説明いたします。
検査報告番号一六一号は、北海道が実施した地すべり対策
事業におきまして、施工が設計と著しく相違していたため、排水路工等が工事の目的を達していないものであります。
検査報告番号一六二号は、新潟県が実施したかんがい排水
事業におきまして、設計が適切でなかったため、橋台が不安定な状態になっているものであります。
検査報告番号一六三号は、山梨県東八代郡豊富村の中木原壮蚕飼育組合が地域農業生産総合振興
事業により設置したモデル共同利用壮蚕用蚕室を補助の目的外に使用しているものであります。
検査報告番号一六四号及び一六五号の二件は、長野県が実施した災害関連緊急治山
事業及び復旧治山
事業におきまして、施工が設計と著しく相違していたため、モルタル吹付工が工事の目的を達していないものであります。
検査報告番号一六六号は、鳥取県が実施した漁港改修
事業におきまして、施工が設計と著しく相違していたため、護岸工等が不安定な状態になっているものであります。
検査報告番号一六七号は、佐賀県東松浦郡鎮西町の上場農業協同組合が実施した畜産活性化総合対策
事業におきまして、設計が適切でなかったため、擁壁が不安定な状態になっているものであります。
検査報告番号一六八号は職員の不正行為による損害が生じたもので、家畜衛生試験場鶏病支場におきまして、資金前渡官吏の補助者として小切手の作成等の事務に従事していた庶務課係員が、債権者への支払に当たり資金前渡官吏を受取人とする小切手を作成し現金化するなどして前渡資金を領得したものであります。
なお、本件については、五年九月までに同人が返納したり債権者に支払ったりしたことから、国の損害は全額補てんされております。
次に、意見を表示し又は
処置を要求した
事項について御
説明いたします。
これは、飼料用外国産小麦の売渡しによるふすまの増産に関するものであります。
農林水産省では、家畜飼料の需給及び価格の安定を
推進し、畜産経営の安定に資することを目的として、外国産の麦類、どうもろこし等の買入れ、売渡しを行っております。
その一環として、ふすまの需給不均衡を是正するため、昭和三十二
年度から、外国産小麦を飼料用小麦として輸入し、この小麦から採取する小麦粉の割合を低くしてふすまを増産することとしております。
飼料用小麦は、主食用小麦と何ら異ならないものでありますが、ふすまの増産を図るため、玄麦重量に対して五〇%以上の歩留りでふすまを生産しなければならないなどの一定の売渡条件を付して、主食用小麦よりも低い価格で加工工場に売り渡されております。
そこで、飼料用小麦の売渡しを受けた加工工場において、売買契約で付された売渡条件を適正に履行して増産ふすまの生産を行っているかなどについて
検査いたしました。
その結果、調査した五十七加工工場において、売渡条件に反して、売渡しを受けた飼料用小麦の一部を主食用に転用したり、五〇%に満たない歩留りではん砕したりなどしていて、飼料用小麦からの規定生産量の増産ふすまの生産がなされていない事態が見受けられました。
そして、そのうち二十三加工工場においては、規定生産量に不足する分の全部又は一部について、他社で生産された増産ふすまを購入して充てたり、増産ふすまの実物の伴わない取引を行ったりして、規定生産量の増産ふすまの生産、販売が行われたかのようにしていて、著しく適切を欠いていると認められました。
このような事態が生じているのは、各加工工場において売渡条件の履行について不誠実であったことにもよりますが、売渡条件の履行状況を確認するための食糧事務所の立入調査、財団法人日本穀物検定協会の検定等が実効性のあるものとなっていないこと、ふすま増産制度を取りまく状況が制度創設当時と大きく変化してきていて、現行制度が飼料用小麦の売渡数量、売渡条件、加工工場の配置等の面でその変化に十分適応できておらず不合理な状態が生じているのに、抜本的な見直しをしていないことなどによると認められました。
したがいまして、農林水産省におきまして、食糧事務所の立入調査、財団法人日本穀物検定協会の検定等を実効性のあるものとするために、要領の改正、加工工場等に対する指導体制の確立等の
措置を講ずること、増産ふすまの生産の
実態、当面の増産ふすまの需給見通し等を調査し、現行制度における飼料用小麦の売渡数量、売渡条件、検定規格等について、合理的なものに改めること、また、中長期的観点から、今後の飼料の需給見通し等を考慮した上で、加工工場の指定やふすまの増産の方法等、さらにはふすま増産制度全体の在り方について一定の期間内に検討を行い、抜本的な見直しを行うことなどにより、不適切な事態の再発を防止するとともに、より合理的に制度の目的を達成するよう是正
改善の
処置を要求いたしたものであります。
次に、本院の
指摘に基づき
当局において
改善の
処置を講じた
事項について御
説明いたします。
その一は、家畜伝染病予防
事業及び家畜衛生対策
事業に係る経理に関するものであります。
農林水産省では、家畜伝染病予防法等に基づき、畜産の振興を図ることを目的として、家畜伝染病予防
事業及び家畜衛生対策
事業を実施する都道府県に対し、その
事業に要する
経費の一部について、国庫負担金又は国庫補助金を
交付しております。
今回、青森県ほか二十四県の百三十七家畜保健衛生所等において上記各
事業がそれぞれ適正に区分して経理されているかなどについて調査しましたところ、
事業ごとに区分して経理しておらず、また、各
事業の実績額を把握することなく実績報告を行っていたり、
事業と関係のない
経費などを補助の対象としていたりしていて、国庫補助金等相当額計一億五千三百五十三万余円の
交付が適切でないと認められました。
このような事態が生じていたのは、農林水産省において、県が
事業ごとの実績額を的確に把握していなかったのにこれに対する指導が十分でなかったこと、補助対象
経費の範囲を明確に示していなかったことなどによると認められましたので、
当局の見解をただしましたところ、農林水産省では、六年十一月に都道府県に対して通達を発し、
事業ごとに経理を区分し、
事業実績額を的確に把握するよう指導の徹底を図るとともに、補助対象
経費の範囲を明確に示すなどの
処置を講じたものであります。
その二は、ブルドーザによる掘削押土費の積算に関するものであります。
林野庁では、林道開設工事を実施する都道府県、市町村等に対して毎
年度国庫補助金を
交付しており、その工事費は、林野庁制定の積算要領等に基づき算定しております。
この積算要領の土工に使用する作業機械を定めた表において、「掘削」と「押土」の欄にそれぞれブルドーザが記載されていたので、「掘削」と「押土」の各作業についてそれぞれ作業時間を算出するものと誤解して、これにより掘削押土費を積算しているものが見受けられました。
しかし、ブルドーザによる掘削と押土の作業は一連の作業として行われており、作業時間の算定式は、この一連の作業に要する時間を算出することとして定められております。このため、掘削作業と押土作業に区分し、それぞれにこの算定式により作業時間を算出すると、この算定式に含まれる固定の時間が重複し、これを基に掘削押土費を積算した場合には、固定の時間に係る費用が重複して計上されることとなります。その結果、積算額が過大になると認められましたので、
当局の見解をただしましたところ、林野庁では、ブルドーザにより掘削押土作業を行う場合、掘削と押土を一連の作業として積算することを明確にして、掘削押土費の積算が適切に行われるよう積算要領を改正するなどの
処置を講じたものであります。
なお、以上のほか、
平成元
年度決算検査報告に掲記いたしましたように、国営木曽岬干拓
事業により造成された干拓地について、並びに
平成四
年度決算検査報告に掲記いたしましたように、水田農業確立助成補助金の地域営農加算額の
交付及び農地保有合理化
促進事業の実施について、それぞれ意見を表示し又は
処置を要求いたしましたが、これらに対する農林水産省の
処置状況についても掲記いたしました。
以上をもって
概要の
説明を終わります。
—————————————
平成五
年度農林漁業金融公庫業務概況
農林漁業金融公庫
平成五
年度における
農林漁業金融公庫の業務の概況についてご
説明申し上げます。
国においては、二十一世紀という新しい時代に向けて政策の展開方向を示した「新しい食料・農業・農村政策の方向」等に沿って、生産性の高い農林水産業を育成するとともに、農山漁村の生活の質的向上と活性化を図ることを基本として諸施策が展開されました。
こうした国の施策に即応して、当
公庫は、業務の運営にあたりまして、関係機関との密接な連携のもとに、農林水産業の生産基盤の
整備及び経営構造の
改善のための融資を
推進するとともに、多様化する資金需要に対応して、融資条件の
改善を含め、融資の円滑化に配慮してまいりました。
平成五
年度における貸付計画について申し上げますと、貸付計画額は六千億円を予定いたしました。
これに対する貸付決定額は四千六百四十二億一千四百五十七万円余となり、前
年度実績と比較して十三億四千九百八十四万円余の減少となりました。
この貸付決定額を農業・林業・水産業に大別して申し上げますと
一、農業部門 三千三百億八千八百八十二万円余
二、林業部門 五百七十三億二千五百八十六万円余
三、水産業部門 五百五十二億六百九十五万円余
四、その他部門 二百十五億九千二百九十二万円余
となりまして、農業部門が全体の七十一・一%を占めております。
次に
平成五
年度の貸付資金の
交付額は四千六百二十四億一千七百六十五万円余となりまして、これに要した資金は、
一般会計からの出資金三百五十億円、資金運用部からの借入金二千八百六十四億円、簡易生命保険からの借入金三百二十六億円、農業経営基盤強化
措置特別会計からの借入金二十五億七千三百五十六万円余並びに貸付回収金等一千五十八億四千四百八万円余をもって充当いたしました。
この結果、
平成五
年度末における貸付金残高は五兆二千四百四十億七千七百七十八万円余となりまして、前
年度末残高に比べて七百三十五億五千六百十七万円余、一・四%の減少となりました。
貸付金の延滞状況につきましては、
平成五
年度末におきまして、弁済期限を六か月以上経過した元金延滞額は四百四十八億五千七百五十九万円余となりまして、このうち一年以上延滞のものは四百三十億三百九十三万円余となっております。
次に
平成五
年度における収入支出
決算の状況についてご
説明申し上げますと、収入済額は、収入
予算額三千五百六十七億一千九十九万円余に対し三千五百十七億一千七百四十一万円余となりました。また、支出済額は、支出
予算額三千七百十二億四千四百十四万円に対し三千五百五十五億八百四十七万円余となり、支出に対し収入が三十七億九千百六万円余の不足となっております。
最後に、
平成五
年度における当
公庫の損益計算の結果について申し上げますと、貸付金利息等の総利益は三千八百二十七億五千六百十七万円余、借入金利息等の総損失は三千八百二十七億五千六百十七万円余となり、利益と損失が同額となりましたため、利益金はなく国庫納付はありませんでした。
これらの業務の遂行にあたりましては、常に適正な運用について、鋭意努力してまいりましたが、
平成五
年度決算検査報告におきまして、農地等取得資金等の貸付けにつきまして不当
事項として
指摘を受けたものがありますことは、まことに遺憾に存じております。
指摘を受けました
事項につきましては、直ちに適切な
措置を講じましたが、今後、このような事態の発生を防止するため業務運営の適正化に一層努める所存であります。
以上が、
平成五
年度における
農林漁業金融公庫の業務の概況であります。なにとぞよろしくご
審議のほどお願いいたします。
…………………………………
平成五
年度決算農林漁業金融公庫について
の
検査の
概要に関する
主管局長の
説明
会計検査院
平成五
年度農林漁業金融公庫の
決算につきまして
検査いたしました結果の
概要を御
説明いたします。
検査報告に掲記いたしましたものは、法律、政令若しくは
予算に違反し又は不当と認めた
事項四件であります。
検査報告番号二一八号から二二一号までの四件は、農地等取得資金等の貸付けが不当と認められるものであります。
これらの資金の貸付
事業は、農林漁業者に対し、農林漁業の生産力の維持増進等に必要な長期かつ低利の資金で、
一般の金融機関から融通を受けることが困難な資金を直接又は金融機関に委託して貸し付けるものでありますが、農地等取得資金等の貸付けに当たり、借入者から事実と相違した内容の借入申込みや
事業完成報告がされるなどしていたにもかかわらず、これに対する
審査及び確認が適切でなかったなどのため、貸付金額を過大に算定するなどしているものであります。
以上、簡単でございますが
説明を終わります。
—————————————