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1996-07-18 第136回国会 衆議院 金融問題等に関する特別委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年七月十八日(木曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 高鳥  修君    理事 小里 貞利君 理事 尾身 幸次君    理事 大島 理森君 理事 小沢 辰男君    理事 松田 岩夫君 理事 森本 晃司君    理事 早川  勝君 理事 錦織  淳君       伊吹 文明君    石橋 一弥君       岸田 文雄君    栗原 博久君       野呂田芳成君    原田昇左右君       穂積 良行君    横内 正明君       愛野興一郎君    上田 清司君       河上 覃雄君    権藤 恒夫君       坂口  力君    笹川  堯君       鮫島 宗明君    塚田 延充君       富田 茂之君    平田 米男君       坂上 富男君    永井 哲男君       田中  甲君    矢島 恒夫君       海江田万里君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 久保  亘君         厚 生 大 臣 菅  直人君         労 働 大 臣 永井 孝信君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      田中 秀征君  委員外出席者         総務庁行政管理         局長      陶山  晧君         経済企画庁総合         計画局長    坂本 導聰君         国土庁土地局長 窪田  武君         法務省民事局長 濱崎 恭生君         法務省刑事局長 原田 明夫君         大蔵省主計局次         長       溝口善兵衛君         大蔵省主税局長 薄井 信明君         大蔵省理財局長 伏屋 和彦君         大蔵省証券局長 長野 厖士君         大蔵省銀行局長 西村 吉正君         大蔵省銀行局保         険部長     福田  誠君         国税庁課税部長 船橋 晴雄君         文部大臣官房会         計課長     矢野 重典君         厚生大臣官房総         務審議官    中西 明典君         厚生大臣官房審         議官      和田  勝君         厚生省生活衛生         局長      小野 昭雄君         農林水産大臣官         房長      高木 勇樹君         農林水産大臣官         房審議官    石原  葵君         農林水産省経済         局長      堤  英隆君         通商産業大臣官         房審議官    藤島 安之君         労働大臣官房長 渡邊  信君         労働省職業安定         局高齢障害者         対策部長    坂本 哲也君         最高裁判所事務         総局総務局長  涌井 紀夫君         最高裁判所事務         総局民事局長  石垣 君雄君         参  考  人         (預金保険機構         理事長)    松田  昇君         参  考  人         (日本銀行理事)山口  泰君         金融問題等に関         する特別委員会         調査室長    藤井 保憲君     ————————————— 委員の異動 七月十八日  辞任         補欠選任   安倍 基雄君     塚田 延充君   江田 五月君     坂口  力君   加藤 六月君     権藤 恒夫君   北側 一雄君     富田 茂之君   野田  毅君     河上 覃雄君   村井  仁君     上田 清司君   吉井 英勝君     矢島 恒夫君 同日  辞任         補欠選任   上田 清司君     村井  仁君   河上 覃雄君     野田  毅君   権藤 恒夫君     加藤 六月君   坂口  力君     江田 五月君   塚田 延充君     安倍 基雄君   富田 茂之君     北側 一雄君   矢島 恒夫君     吉井 英勝君     ————————————— 六月十九日  一、金融税制財政制度及び経済構造全般に   わたる改革並びに金融機関等の諸問題に関す   る件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  金融税制財政制度及び経済構造全般にわた  る改革並びに金融機関等の諸問題に関する件      ————◇—————
  2. 高鳥修

    ○高鳥委員長 これより会議を開きます。  金融税制財政制度及び経済構造全般にわたる改革並びに金融機関等の諸問題に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大島理森君。
  3. 大島理森

    大島委員 久しぶりにこの委員会を開かせていただきました。持ち時間は三十分でございますので、質問を十項目用意させていただきました。したがいまして、もう前置きなしで質問を簡明にしながら、その後の経過を、どのように進んでいるか、国民の前に明らかにしていただくことが肝要な委員会であろうと思いますので、しっかりとお答えをいただきながら、また、今後の見通しについてもできる限りの御報告をいただければと思います。  まず第一点でございますが、通常国会を終えまして、そして住専法等公布施行を受けたわけでございますが、まず、国民が最も関心を持ち、また我々自身も論議の中で必要なのはまず債権回収だ、債権回収をしっかりとやることだ、こういうことがまず基本であろうと思います。したがいまして、債権回収のための体制整備状況は一体どうなっているか、ひとつその点についてお答えをいただきたい、このように思います。
  4. 西村吉正

    西村説明員 住専処理にかかわります体制整備につきましては、住専法等公布施行を受けまして、まず預金保険機構につきまして、六月中に新たな理事長が任命されました。また、特別業務部が発足いたしまして、拡充された新たな業務が開始されたところでございます。この特別業務部につきましては、既に陣容総勢六十六名がほぼ出そろいまして組織整備が完了したところでございますが、今後、速やかに住専各社に対する債権保全等の指導を行うとともに、個別具体的な回収責任追及に向けた検討調査を行う予定でございます。  また、住宅金融債権管理機構につきましては、既に社長につきましては内定しているところでございますが、今月末までに設立すべく、現在、設立準備最終段階に入っているところでございます。
  5. 大島理森

    大島委員 今、体制整備状況を伺ったわけでございますが、そうしますと、局長、あれでございますか、まだ実際の回収作業そのものには具体的な着手、もちろん具体的に進んでいるとか、そういうふうな状況段階ではまだない、こういうことでございますね。
  6. 西村吉正

    西村説明員 住専債権につきましては、このような組織体制整備以前の段階におきましても、国税等協力も得つつ、既に債権回収には全力を尽くしているところでございますが、今回、預金保険機構も改組をされましたし、特別業務部は既に業務を開始しておりまして、具体的な債権回収準備も鋭意進めているところでございます。着々とその実も上がってまいるものと期待をしているところでございます。
  7. 大島理森

    大島委員 準備を進めつつ、しかし作業着手もしておられる。ぜひそれは準備を整えつつ、一方においての作業についてもしっかりとお進めになり、準備は早くされて積極的な作業に入っていただきたいものと思います。  そこで、その前提となります住宅金融債権管理機構設立準備状況、これが大事なわけでございます。伺いますれば、その前提となります、また裏腹になるわけですが、金融安定化拠出基金拠出についてなお調整中ということがありますが、その現状と見通し、その辺についてお答えをいただきたい、こう思います。
  8. 西村吉正

    西村説明員 住宅金融債権管理機構設立に当たりましては、その組織、人事、業務運営などさまざまな問題につきまして最終的な詰め検討を行っていく必要があるわけでございますが、現時点では、特に会社設立に不可欠な人材確保や諸規程の整備等中心に精力的に検討準備を進めているところでございます。  また、その設立に当たりましての前提となります資本金、すなわち基金前提になるわけでございますが、この点につきましても関係者、すなわち関係金融機関方々基金への出資につきまして近く最終的な結論を得ていただきましてできるだけ早期に出資を実施していただくように、これも最終的な詰めを行っているところでございます。
  9. 大島理森

    大島委員 少なくともいつごろまでに会社設立実現をさせるというめどぐらいはお話しされた方がよろしいかと思いますが。
  10. 西村吉正

    西村説明員 今月末までと考えておりますが、できれば来週中にも発足させたいと考えております。
  11. 大島理森

    大島委員 そういう来週中にもというお答えがあったわけでございますので、多分、その前提である金融安定化拠出基金拠出についても調整の山場になっておられるのだろうと思います。これ以上私は申し上げませんが、できるだけ精力的に、銀行局長お話によれば、きょうが多分国会答弁最後じゃないかと思いますので、全力を挙げてお仕事をされることを望みます。  さてそこで、住専債権住宅金融債権管理機構への譲渡までのスケジュールでございますが、どういうふうなスケジュールが今考えられるのでありましょうか。これもまた債権の取り立てあるいはその他のことについて非常に重要なことなわけでございますので、そのスケジュールについての見通し、お考えをちょっとお聞きしたいな、こう思っております。
  12. 西村吉正

    西村説明員 まず、その前提となりますと申しますか、住専各社住宅金融債権管理機構への営業譲渡に係る株主総会決議状況でございますが、既に日本住宅金融、第一住金及び日本ハウジングローンの三社は先月末の定時総会におきまして、また、総合住金につきましては昨日七月十七日の臨時総会におきまして、それぞれ解散に係る定款変更及び住宅金融債権管理機構への営業譲渡につきまして決議を行ったところでございます。他の三社につきましては、今後、臨時総会を開催し決議を行う予定と聞いております。  そこで、住宅金融債権管理機構は、預金保険機構による出資等の諸手続を経て、先ほど申しましたようなタイミングで設立をされました後に住専七社から貸付債権その他の財産を譲り受けることとなっているわけでございますが、これにつきましては商法等の一連の法的な手続あるいは契約内容等預金保険機構による承認手続等を要することから、会社設立後、相応の期間を要するものと考えておりまして、秋口にはそのようなことが可能になるような準備が整うように考えているところでございます。
  13. 大島理森

    大島委員 秋ごろには大体そういうふうなもののめどが終わるのではないか、あるいは手続として終えるのではないかというお答えでありました。  さてそこで、通常国会が終わりまして、政府与党声明というものが出されました。つまり新たな寄与策ということでございます。御承知のように、この政府与党声明というのは、 (一)関係金融機関農林系統金融機関を含む)等の新たな拠出による基金実現要請する。 (二)日本銀行資金性格にも留意しつつ、金融システム安定化に資する目的でその資金の活用を要請する。 (三)住専処理機構及び預金保険機構は、借り手及び貸し手責任について厳格に追及するとともに、住専に対する紹介融資にかかる損害賠償請求権については、徹底的に追及すること等、国庫への還元のための万全の措置を講ずる。 具体的に三項目挙げたわけでございます。  このことは、まさに通常国会与野党の御議論をしかと踏まえつつ、政府与党としてこたえ得るものは何かという中で出した一つ結論であったわけでございますが、そこで、まず大蔵大臣にこの新たな寄与策検討状況、具体的なことは局長お答えしていただいても結構でございますが、これに基づいて大蔵大臣としてどういう基本的な取り組み方を今日までなされてきたのか、その辺についてお伺いすると同時に、具体的な状況について局長からお答えいただければありがたいと思います。
  14. 久保亘

    久保国務大臣 ただいま政府与党声明に関連してお尋ねがございましたが、私も、六月十八日に関係の法案が成立いたしました後、直ちに農林水産大臣日銀総裁、そして金融機関の代表の方々と直接お会いして、新たなる基金の構想について協力を賜るよう要請を行ったのであります。その後、各分野におきましてそれぞれ真剣に政府与党声明並びに私からの要請を受けとめていただきまして、今日、この要請にこたえる立場で真剣な検討が行われていると考えております。  そして、これらについては近く結論に達するものと考えておりますが、その詳細につきましては銀行局長から報告をいたさせます。
  15. 西村吉正

    西村説明員 新基金についてのお尋ねでございますが、まず、民間金融機関による新たな寄与につきましては、去る六月十八日大蔵大臣からの要請を受けまして、各業態におきまして新基金内容等について検討が行われているところでございます。現在、金融安定化拠出基金、すなわち昨年に提案された、もとの基金でございますが、そのもとの基金拠出額の割り振りの最終的な調整が進められているところでございますが、その具体的な検討が行われている中で、新基金の金額につきましても、系統検討状況も踏まえつつ判断されていくものと考えているところでございます。  次に、系統による新たな寄与につきましては、去る六月十八日に、大蔵大臣より農水大臣に対しまして、系統による相応寄与を御要請申し上げたところでございますが、また七月十日には、与党筋から系統に対して、新基金に対する拠出について具体的な要請が行われたとの報道がなされたことについて私ども承知しているところでございますけれども、いずれにせよ、現在農水系統関係者間で検討が行われていると伺っているところでございます。  なお、日銀に関しましては、日銀資金性格にも留意しつつ、国民負担の軽減という観点とは別の見地から、民間系統による拠出とは別枠で拠出を行う方向と伺っておりまして、具体的にどういう形での拠出が可能になるかにつきましては、日銀において鋭意御検討いただいているものと承知をしているところでございます。
  16. 大島理森

    大島委員 局長、そういたしますと、この新たな寄与策の目途でございますが、先ほども住宅金融債権管理機構が近々に設立をされるんではないか、まあ来週にもというお話がございました。それとの関係も私はあるような気がするのでございますが、そういう中にあって、もし今の時点で、どのぐらいの規模であるいはいつごろというのはいよいよ詰め段階でなかなか言えないところがあるのかもしれませんが、その辺でさらにお答えできる点があったらお答えをしていただきたい、このように思います。
  17. 西村吉正

    西村説明員 旧基金と申しますか、まだ設立をされていないのでそのような呼び方をするのは変かもしれませんが、旧基金につきましては、これは住宅債権管理機構設立するための出資金に充てられる部分がございますので、これはどうしても機構設立までに結論を得、実施をしなければいけないものでございます。  しかしながら、いわゆる新基金につきましては、これは機構設立具体化をしていけば十分間に合うものでございます。しかし現実問題といたしまして、関係者議論としては旧基金の具体的な配分について現在最終的な詰めが行われつつあるわけでございますが、そのようなプロセスにおきまして、新基金につきましても基本的な考え方については合意を得べく、これも最終的な調整をしている、このような段階考えているところでございます。  規模につきましては、新聞報道等でいろいろな関係者検討状況が伝えられているところでございますけれども、私も、公式の場でまだその点について申し上げるということは適当ではない段階考えているところでございます。
  18. 大島理森

    大島委員 農林省、この新たなる寄与策に基づく系統関係についての状況、その他についてお答えをいただきたいと思います。
  19. 堤英隆

    堤説明員 ただいま大蔵大臣それから銀行局長からお話ございましたように、政府与党共同声明を受けまして、系統に対しましても相応協力という形での御要請がございます。  系統といたしましては、現在そういう御要請を真摯に受けとめまして内部で検討を進めているというふうに聞いておりますが、系統としましては、基本的にはやはり母体行の責任ある対応ということと、一−三月期の利払いというものが行われる、それから系統の実態を踏まえた具体化が行われる、こういった基本的立場ということを前提といたしまして、この御要請に対しまして真摯に現在検討を進めているというふうに聞いております。
  20. 大島理森

    大島委員 政府与党基本精神国民関心、そしてまた全体的なバランス、そういうものを考えなければならない寄与策であろうと思いますが、ひとつ政府与党のその原点をよく踏まえて、精いっぱいの調整作業最後努力をしていただきたいものと思います。  さらに、政府与党声明の中にもありますし、また国民皆さん、また与野党皆さんが、悪い者を取っ捕まえてくれ、この追及の手が一体どういう形になっていくのか、ここがまた大きな、フォローアップの大事な点なわけでございます。  今日までいろいろな新聞報道あるいはその他によって、いろいろな税務調査が入りました、あるいはまた逮捕しました、一斉捜査をしました、こういうふうな状況報道され、国民もそれを見ているわけでございますが、そういう中にありまして、住専関係者に対する司法当局及び国税当局による責任追及はどのように進んでいるのか、また基本的な方針としてどのような姿勢で臨んでいるのか、その辺について、まず国税そして法務、両方からお伺いをしたい、このように思っております。
  21. 船橋晴雄

    船橋説明員 お答え申し上げます。  住専問題にかかわる関係者課税問題につきましては、これが適正に行われているかどうか、国税当局といたしまして大きな関心を持っているところでございます。このため、関係者課税に係る資料、情報の収集に努め、問題があれば調査を行うなど、厳正な対応に努めてまいったわけでございます。  こうした対応の中で、大口、悪質と思われる事案につきましては査察調査も行っているところでございますけれども、今後とも、関係当局との連携を十分にとりながら住専問題の関係者の適正な課税実現に努めてまいりたいと考えております。
  22. 原田明夫

    原田説明員 お答え申し上げます。  住専をめぐる不良債権問題につきましては、貸し手借り手を問わず、関係者らの責任が可能な限り明らかにされる必要があると考えているところでございます。検察当局におきましては、このような観点を念頭に置きつつ、警察当局また国税当局等関係機関と緊密な連携を図りながら、鋭意所要捜査を進めているところでございます。  当委員会初め、国会での御論議の中でさまざまな観点から疑念が表明されました。その中で、基本となるような事実につきましては、広い観点から、既に住専会社役員らを特別背任罪で起訴いたしましたほか、住専からの大口借り手につきましても、関係者らを競売入札妨害罪強制執行妨害罪、その他場合によっては背任、詐欺あるいは議院証言法違反というような、考えられるあらゆる観点から捜査の上、所要手続をとらせていただいているところでございます。  また、今後とも、そのような観点から、引き続きまして住専問題全般を視野に置きながら幅広い観点から捜査を進めてまいるということになろうかと思います。関係者らの刑事責任追及すべきであると認められるような事実が判明した場合には、まさに法と証拠に基づきまして今後とも厳正に対処してまいりたいと考えております。
  23. 大島理森

    大島委員 個別案件について御質問申し上げても、捜査中あるいはまた調査中でお答えしづらいところがあろうかと思います。この問題については、今、一件一件これはどうなっている、これはどうなっているとお伺いをする時間はございませんけれども、ひとつこの点に関しては本当に幅広い観点から、また新たにできるであろう住専処理機構ともよく調整をとりながら、万全な体制でもって、先ほど、別件ではいかぬぞという、そういう番外発言もございました。本当に真剣に、一層の御努力国民期待あるいは国会議論に対する期待にこたえてほしい、このことだけを申し上げたいと思います。  さて、時間がだんだんなくなりまして、あと四問残っているわけでございますが、木津大阪信組処理の問題が新法に基づいてどのように処理されているか、具体的な事例として、なおかつこの問題はまたその地域の人にとっては大変大事な問題であろうと思いますから、この木津大阪信組処理をどのように進めていくのか、この点について局長の御答弁をいただきたい、こう思っております。
  24. 西村吉正

    西村説明員 木津大阪信用組合破綻処理につきましては、昨年の秋にその方針を公表したところでございますが、しかしながら、まだ昨年の秋の段階では私どもも十分な対応方策を持っていなかったわけでございます。  先般、金融三法の成立をお認めいただきましたことによりまして、破綻いたしました信用組合処理に当たっては、ペイオフコストを超える資金援助やあるいは破綻信用組合事業を譲り受けその債権回収に当たる整理回収銀行整備を図ること等が可能となるようにお認めいただいたわけでございます。  木津大阪信用組合処理に当たりましては、その損失額が巨額に上っていることから、前経営陣の私財の提供、関係金融機関の可能な限りの支援大阪府の財政支援をもってしてもなお不足する部分につきましては、金融三法によって措置をいたしましたペイオフコストを超えた資金援助により処理することを前提にいたしまして、大阪府を中心処理方策の取りまとめを現在鋭意行っているところでございます。  具体的には、木津信用組合整理回収銀行への組織全体としての事業譲渡を行い、大阪信用組合につきましては、不良債権部分につきまして整理回収銀行へ売却するとともに、正常債権等部分につきましては東海銀行への事業譲渡により処理する、そのような方針で臨んでいるところでございます。
  25. 大島理森

    大島委員 最後質問をさせていただきます。  我々は、通常国会から踏まえて、金融問題について、今日まで起こった問題に対して鋭いメスを入れつつ、今後のあり方というものに政治が責任を持って結論を出さなければならない。そういう意味では、当委員会はそのフォローアップをきちっとしていく責務があろうかと思います。  そういう意味で、きょう、こういう委員会を開かせていただいたわけでありますが、今後の問題、金融システムあり方の中で、特に中央銀行日銀の位置づけというものが一つ議論の大きなポイントであるというふうなことだと思います。そういう中で大蔵大臣に、日銀法の改正、そしてそういうものに対して現在どのようなお考えを持っておられるか、そしていつごろこういうものの結論を出したいか、そういうものをお聞かせ願えれば、当委員会においても、また議員の立場でいろいろと議論をしていかなければならぬことだろうと思いますので、最後にその点について大臣お答えをちょうだいしたい、このように思っております。
  26. 久保亘

    久保国務大臣 既に、与党におかれても「新しい金融行政金融政策構築に向けて」というのをお取りまとめいただきました。また、政府におきましても、今日の経済金融情勢の大きな変化に対応できる金融システム構築の中で、特に金融政策に関して主要な役割を持ちます日銀の今後をどのように考えていくかということで、日銀法の問題についてこの改正を検討すべきものという立場から、総理のもとに中央銀行研究会を有識者の皆様方によって設置をしていただきまして、現在、その研究に取りかかっているところであります。また、大蔵省といたしましても、金融制度調査会におきまして、日銀法の改正について今後さらに検討をお願いしたいと考えております。  これらの検討の結果を踏まえて、日銀法の改正について具体的に検討、取りまとめを進めてまいりたいと思っているところでございます。
  27. 大島理森

    大島委員 我々は、この金融問題を含めて、日本は公正な社会をつくれるかということも一方で非常に問われたような気がしてなりません。したがいまして、公正というのはルールに基づいて粛々と社会を進めていくということだと思います。  法務及び国税当局におかれては、あしきものは徹底的に追及していく。一方、二度とこういうことを起こさないというために新しい金融システムはどうあるべきかということで、一応の結論は出しました。どうぞ大蔵大臣におかれましても、そういう観点から、なおこの問題は解決をしたのではないという決意のもとで頑張っていただきたいと思いますし、大蔵省も謙虚に耳を傾けながら頑張っていただきたいと思います。  以上をもって終わります。ありがとうございました。
  28. 高鳥修

    ○高鳥委員長 これにて大島理森君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  29. 高鳥修

    ○高鳥委員長 この際、お諮りいたします。  最高裁判所涌井総務局長及び石垣民事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 高鳥修

    ○高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  31. 高鳥修

    ○高鳥委員長 ただいま参考人として預金保険機構理事長松田昇君に御出席をいただいております。  質疑を続行いたします。坂上富男君。
  32. 坂上富男

    ○坂上委員 松田理事長、大変お忙しいところ御無理に御出席をいただきまして、ありがとうございました。  振り返ってみますると、ロッキード国会ではピーナツとかピーシズなどという意味不明の名称がこの席上に出てまいりました。国民は真相解明を期待いたしまして、国会の証人尋問をテレビにくぎづけになって見守ったものであります。しかしながら、証人は、知りません、存じません、思い出せませんなどの答弁で、国会はこれが糸口すら解明することができずに国民をがっかりさせたものでありました。  しかし、これに対しまして検察陣は、ピーナツとは百個で一億円、ピーシズとは百五十個で一億五千万円であることを解明いたし、知りません、存じませんは偽証罪であり証言拒否罪であるとして関係者を逮捕して捜査に突入をいたしました。快刀乱麻、見事な切れ味でロッキード事件を解明し国民の留飲を下げることができたのであります。この検察の先頭に立って頑張っていただいたのが松田昇検事であります。  このたび松田氏は、まことに困難で容易でない住専解決の預金保険機構責任者に就任していただきました。松田理事長自身、お人柄からかたく何回も固辞されたのでないかと推察をいたしております。持っておられる誠実なお人柄と正義感から御就任を決意されたのでないかと感じ入っている者の私は一人でございます。まことに御苦労さまでございますが、国民のため頑張っていただきますことを期待して、決意をお聞きしたいと思いまして御出席をいただいたわけでございます。  まず、新聞報道によりますと、松田理事長は、「回収が極めて困難な債権については、罰則付きの特別調査権を与えられているし、管理機構から委託を受けて直接取り立てにも当たる」、こういうことで、何としても国民期待にこたえるべく全力を挙げて頑張ることの決意が申し述べられておるわけでございます。  特に、具体的に、罰則つき特別調査権等あるいは管理機構からの委託、こういうようなものに対して理事長としてはどういうような見方をされておるのか、それらの点について決意を含めてお答えいただければありがたいと思います。
  33. 松田昇

    松田参考人 お答えいたします。  今回の住専処理法の制定等によりまして、預金保険機構といたしましては、従来の業務に加えまして新しい独自の業務内容が付加されたわけでございます。その中に、ただいま委員が御指摘の罰則つきの調査権、それから委託を受けてみずから取り立てを行う機能と申しますか業務内容が規定をされているわけでございますが、罰則つきの財産調査権の方は、財産の隠ぺいなどのおそれが極めて強い悪質な、実態解明が特に必要な債務者等に対する財産調査権でございまして、これは預金保険機構みずからが調査を行うというように定められておるわけでございます。しかも、罰則がついておりますので、実効性の担保が制度化されているというように理解をいたしております。  また、債務者の権利関係が非常に複雑でございまして、その解明には特に専門的な知識が必要だというような場合におきましては、必要に応じまして預金保険機構みずからが、今後設立されます住宅金融債権管理機構の委託を受けまして、そういう難しい取り立ても行うことというように定められたわけでございます。  さらに、ちょっと付加しますと、住宅金融債権管理機構は、その職務を執行するに当たりまして犯罪があると思料するときは預金保険機構に対して報告をするというようにされておりまして、これら一連の新しい業務内容というものは、今回の住専債権問題等について公的資金が投入された経緯等から、預金機構といたしましても単に指導助言を行うことにとどまらず、管理機構と一体となってみずからも取り立てを行い、あるいは悪質困難な事案の解明あるいは告発を強力に指導するということを期待されているもの、私といたしましては、このように理解をいたしております。  住専債権の強力な回収及び関係者責任追及に関しましては、預金保険機構に対します多くの方々期待を踏まえまして、その責任を果たすべく、これらの権限の活用と告発についての体制整備等に微力ではございますが最善を尽くして地道な努力を続けてまいりたい、このように考えております。   以上でございます。
  34. 坂上富男

    ○坂上委員 ぜひひとつ頑張っていただきますことを期待いたしてやみません。また、私たちもできるだけバックアップいたしながら頑張りたいと思っておりますので、ひとつ頑張ってください。  さてそこで、住宅金融債権管理機構、これはまだ成立してないそうでございます。しかし、中坊先生が社長でございますか会長でございますか、御就任になっていただくという御内諾を得ておるそうでございます。中坊先生も本席に来ていただきたかったのでございますが、まだ内定だそうでございまして無理なんだそうでございますので、ひとつこの関連についてもお聞きをさせていただきたいと思います。  そもそも預金保険機構特別業務部というのが組織されるそうでございます。また、住宅金融債権管理機構では特別整理部というのがつくられるのだそうでございます。そこで、いわゆる預金保険機構は総勢九十名だそうでございます。それから、住宅金融債権管理機構の方は約一千名ぐらいの陣容でもって出発するのだそうでございますが、その中心となりまするのは特別業務部でなかろうかと思っておるわけでございますが、この組織の骨格あるいは住宅金融債権管理機構との関連、こういうものについて、その任務とあわせて御答弁をひとつ西村銀行局長さんからお聞きをいたしましょうか。
  35. 西村吉正

    西村説明員 住専処理法等の公布施行を受けまして、六月に新たに発足いたしました預金保険機構特別業務部につきましては、六十六名体制予定しておりますが、既に予定していた陣容がほぼ出そろっているところでございます。さらに事務局の拡充もございまして、預金保険機構全体といたしましては、先ほど委員御指摘のように、百名規模となることを予定しているところでございます。  ところで、預金保険機構特別業務部組織の概要でございますが、特別業務部組織の骨格については、部長、次長のもとに総務課、管理課、指導課を設けまして、住宅金融債権管理機構債権回収計画の管理、困難事案の指導助言や責任追及について検討等を行うとともに、住宅金融債権管理機構の特別整理部と連携しつつ債権回収に当たる現場といたしまして、特別調査課、特別整理課を設け、悪質な債務者等に対する財産調査住宅金融債権管理機構の委託に基づく取り立て等を行うこととしております。  このように、特別業務部は、預金保険機構におきます住専問題処理の中核となって活動をするというための組織となっているわけでございます。
  36. 坂上富男

    ○坂上委員 さて、その中で、預金保険機構の中に日銀金融界から二十八名の職員が出ることになっておるわけでございますが、これは御存じのとおり、住宅金融債権管理機構にも出るそうでございますが、今、刑事問題が大きく問題になっておるわけでございます。こういう金融界あるいは母体行あたりの方からこうやって出てこられますと、いわゆる犯罪の証拠隠滅、あるいは財産隠しなどが通報されたり、あるいは回収が困難になるというようなおそれが出てくるのじゃなかろうか、こう思っておりますが、この点はいかがですか。
  37. 西村吉正

    西村説明員 まず、この預金保険機構特別業務部責任者である部長は検察の御出身、現役の出向の方にお願いをしているところでございまして、厳正な仕事の運営を図っていただくことになっております。  なお、住宅金融債権管理機構の役員につきましては、過去の取引経緯、関係者の利害等にとらわれることのないよう清新な陣容で臨むことといたしまして、例えば債権回収の実務経験が豊かである、あるいは法律実務に精通しているなどの点を基準としつつ、公正な見地からの判断力にすぐれた人材を確保すべく、人物本位で各界から幅広く検討を進めているところでございます。  また、預金保険機構の職員につきましても同様に、例えば債権回収の実務経験が豊かである、あるいは法律実務に精通しているなどの点を基準としつつ、人物本位で幅広く各界から人材を集めているところでございますが、そのようなことでございますので、御指摘のような御心配をいただくことはないものと確信をしているところでございますし、そのような考え方のもとに万全を尽くしたつもりでございます。
  38. 坂上富男

    ○坂上委員 こういう点、母体行からまた出向してきてごちゃごちゃになることを私は大変恐れているわけでございますから、厳重なひとつ対応もぜひしていただかなければならないと思っておるわけでございます。  さて、今度、住専が解散いたしまして、債権譲渡等が行われます。そういたしますと、今までの国会答弁からいいますと、債権の総口数は約二十万件あるそうでございますが、これは争いがないようでございます。その二十万件を抵当権移転等をいたしますと、この二十万件の債権の抵当権等の移転によりますと、大体平均にいたしますと、一筆について五つぐらいの登記を必要とするそうでございます。そういたしますと、登記件数だけで約二百万件という膨大な数字になるそうでございます。  しかも、これは浦和地方法務局一年間の処理件数が百万件、そういたしまして従事する職員は三百四十人だそうでございます。そういたしますと、これは免税になっておるものだから、大体一年以内に移転手続が行われるのだろうと思いますが、一挙に二百万件の処理をしなければならないわけでございます。浦和法務局の二年分でございまして、この処理に当たる法務職員は、一年間に三百四十人がこの処理に当たっておりまして、残業残業が続いておるわけでございます。  そんなようなことから考えてみますると、まず、今この数字について、法務当局はどういうこの一年間の御認識があるのか、浦和法務局と対比しながらどう見ておられるのか、ひとつ法務省、御答弁いただきたいと思います。
  39. 濱崎恭生

    ○濱崎説明員 いわゆる住専各社から債権処理会社への権利の移転に伴う登記事件数の推計でございますが、ただいま委員御指摘のとおり、これはあくまでも推計でございますけれども、大都市圏を中心におおむね二百万件程度の登記事件が申請されることになるのではないかというふうに推計しているところでございます。  その処理につきましては万全を期さなければならないというふうに考えておりますが、必要な人的あるいは予算的措置については、関係機関とも十分協議の上、対処いたしたいというふうに考えておるところでございます。
  40. 坂上富男

    ○坂上委員 ひとつ浦和法務局の取扱件数と人数についてももう一遍御答弁いただきたいのでございますが、関係当局といろいろ相談の上に対応したい、こうおっしゃいますが、こういう数字を本当に充実しなければ、増員して充実をしなければ、結果的に仕事のおくれがほかの登記に関連をして国民に影響を及ぼすことは明らかなのでございますから、これは本当に国民に迷惑を及ぼさない住専解決のために、それにはもう大変な国のバックアップがなければこの問題の解決ができないわけでございます。  それから、今後十五年間かかってこれを取り立てをするわけでございます。十五年間かかって取り立てをするのに、これまた、差し押さえ登記、最後の抹消登記まで五つか六つの登記を必要とするそうでございます。これ全体を掛けますと、約一千万件の登記を必要とするのじゃなかろうか、こう言われておるわけでございます。これを十五で割りますと、相当な人数を必要とするのじゃなかろうか、こう思っておりますが、一体、法務当局、これは本当にこんなような状況で、大蔵も総務庁もこの対応で法務省の現状を御理解いただきませんと、結果的に仕事がおくれて、働く人たちは労働過重になって、あげくの果ては国民の迷惑、こうなるわけでございますが、法務省、御見解どうですか。
  41. 濱崎恭生

    ○濱崎説明員 ただいま御指摘の十五年間を目途として行うこととされております債権回収に伴う登記の事件数の御指摘でございますが、この期間内に差し押さえ等の処分制限の登記とか競売による所有権の移転登記、担保権の抹消の登記等が相当大量に申請されるということが予想されますが、その具体的な数字につきましては、これは債権回収状況あるいは競売の実施の状況等によって変わってくるものでございますので、具体的な数字の推計は困難でございます。  いずれにいたしましても、その推移を見ながら、これにつきましても必要な措置について関係機関とも十分協議して適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
  42. 坂上富男

    ○坂上委員 銀行局、今法務省はそういう答弁なんです。私の挙げた数字は確かに推計なものだからなかなか遠慮しているようでございますが、しかしこれは事実ですから、本当に浦和法務局二つの人員を必要とするんです。私は、多分一千名ぐらい増員しなければならぬと思っているのですよ。大蔵省、この点に対する認識は持っておられるのですか。
  43. 西村吉正

    西村説明員 住専問題が具体的な処理段階を迎えますと、御指摘のような問題は非常に深刻になってこようと存じます。それ以前の段階におきましても、バブルの崩壊後、御指摘のような問題が法律的な手続の面でネックを生じているというような点については、むしろ私ども大蔵省の中でも銀行局と申しますよりも予算の査定に当たります当局等におきましても、従来から、関係当局と十分意思の疎通を図りながらその問題に真剣に取り組んでいるというふうに私ども考えているところでございます。  今後とも、十分実情について関係当局と意見の交換を行いながら真剣に対応してまいる必要のある問題であると認識をいたしております。
  44. 坂上富男

    ○坂上委員 さて、裁判所からも来てもらっておりますが、裁判所ももう間もなく競売、あらゆる手続がこれから開始されるわけでございますが、裁判所はまさに申し立てがなければ受けられないからなかなか計算しにくいと思うのでございますが、裁判所は今これに対する認識、どう持っておりますか。本当に住専は何としても早く解決しなければならぬ、こういう問題でございますので。  それから、総務庁お出かけでございましょうか。総務庁、今言いましたとおり、法務当局、裁判所当局はもう大変な人手を必要とする事態が起きてくるわけでございます。これについて総務庁の対応、今後の決意をしてもらいたい、こう思っているわけでございますが、これも御答弁いただきたいと思います。  最後に、大蔵大臣、今言ったような問題点、相当あるわけでございますが、予算の上でも大変な決意をしていただきたい、こう思っておるわけでございますが、ひとつ最後にまとめの答弁をいただきたいと思います。
  45. 高鳥修

    ○高鳥委員長 時間が来ておりますので、簡潔に答弁してください。
  46. 石垣君雄

    ○石垣最高裁判所長官代理者 ただいま委員から御指摘のありました点は、裁判所としても大変重大な問題であるというふうに考えております。  当面、今お話ありましたように、競売手続の利用を余儀なくされる不良債権が一体どの程度になるのか、その回収作業の動向とか不動産の分布状況等につきまして情報収集に努め、民事執行事件の処理体制の充実強化につきまして万全を期していきたいというふうに思っているところでございます。
  47. 陶山晧

    ○陶山説明員 国家公務員の定員管理を担当する立場から申し上げますが、公務員の定員につきましては、一般的な考え方として、その総数を抑制しながら、行政需要の変化に対応して部門ごとに適正に配置をし、効率的な業務処理体制を確保することが必要であると考えております。  ただいま先生御指摘の問題につきましては、今後、法務省から当該増員について緊急不可欠なものであるということで御要求がございますれば、予算編成過程におきまして、法務省とよく相談しながら適切に対処してまいりたいと考えております。
  48. 久保亘

    久保国務大臣 住専債権処理の重要性にかんがみ、今後、預金保険機構並びに住専債権処理機構業務を遂行する上でどのような体制をとるべきかということについて、十分に検討してまいりたいと思っております。御指摘のありました点につきまして、関係当局とも十分に協議をしてみたいと考えております。
  49. 坂上富男

    ○坂上委員 ありがとうございました。
  50. 高鳥修

    ○高鳥委員長 これにて坂上富男君の質疑は終了いたしました。  次に、錦織淳君。
  51. 錦織淳

    ○錦織委員 限られた時間でございますので、私は問題点を絞ってお聞きをしたいと思いますが、私自身、さきの通常国会の間も、住専の対策会議のもとの法的責任検討プロジェクトチームというところで、こうした住専やあるいは金融機関等の破綻の再発防止ということでいろいろ検討をしてまいりました。そのうちの一つのテーマとして、会計監査の問題を取り上げております。  一連の金融機関の破綻それから住専七社の経営破綻、こうした問題について、やはり我々は、これを教訓としてそこから何を引き出すかということを考えていかなければならないと思うわけでございます。今度、金融三法、あるいは農協系統関係も含めますと四つの法律をつくって、その中でいろいろ外部監査、内部監査機能を強化するというようなことがうたわれているわけでございますが、しかし、既に破綻をした金融機関やあるいは住専については、実はぎちっとした監査法人が監査をしておったわけであります。それにもかかわらず、今回のような事態に立ち至ってしまった。そうしたことについて、一体どこに原因があったのか、どの点をどう直せばいいのか、こうしたことをしっかり受けとめておかなければならないと思うわけでございます。  例えば監査法人の監査機能そのものに問題があったのか、あるいは受け入れ側の、つまり監査を受ける側の企業体に問題があって、そしてそれが主たる原因であったのか、あるいは企業会計を含むいろいろな会計原則が、例えば商法の要求しているようなそうした処理のとおりになされていなかったとすれば、それはそこにどういう欠陥があったのか、いろいろなことが考えられるわけでございますが、この点について大蔵当局としてはどういうふうに受けとめておられるのか、そして、今後具体的にどういう対策をとっていかれるつもりなのか、こうした点についてまず包括的にお尋ねをしたいと思います。
  52. 長野厖士

    ○長野説明員 今回の金融機関あるいはノンバンクの破綻をめぐります企業会計上の問題は、私どもにとりましても、さまざまな教訓と申しますか将来の課題をちょうだいしたと思っております。  先生お尋ねの、会計監査という面から見たときにこの不良資産問題は一番どこに問題があったのかという御指摘で、監査の問題あるいは被監査法人の問題、それからルールの問題等の御指摘がございました。  従来の監査上の主たる事件のケースでございます例えば売り上げ除外といったような意図的なケースと異なりまして、今回の不良資産問題のポイントは、商法、企業会計原則上定められております貸付債権の取り立て不能のおそれのあるときの引当金の計上といったものにつきまして、どこまでその厳格性あるいは時期といったものを定めていくかという点につきまして、これから検討すべき課題を多々残しておるというふうに考えています。  そこで、御指摘がございました金融機関等の経営の健全性確保のための関係法律の整備に関する法律におきまして、まず被監査法人でございます金融機関自身におきまして、自己査定手続を行って引当金計上に係る商法、企業会計原則上のルールの適用といったものを厳密化していっていただき、それに対応する形で、公認会計士サイドにおきましても、これはただいま銀行等監査特別委員会を公認会計士協会に設置して検討を進めていただいておりますけれども、引当金計上に係る会計監査のより有効な発揮という視点から具体的な方策について検討を進めていただいておるところでございまして、その方向に沿って、私ども適切な対応をしてまいりたいと思います。
  53. 錦織淳

    ○錦織委員 ちょっとよくわかりませんでしたが、時間がないので、一点に絞ってそれではお尋ねします。  このようにいろいろな監査機能を強化するということで、例えば内部監査のための新たな役職を設けたり、あるいは外部監査を強制する、義務づける、こういうようなことが今回の新しくつくられた法律の中でも決まっておるわけですけれども、問題は、このような監査を行う監査法人、あるいはさらにはそうした内部に入る内部監査を担当する役職、あるいはそういう役職を担当しないまでも、監査を受ける企業体あるいは組合、こうしたところに大蔵省を中心とするいろいろな方が天下りをしておるのではないか、そのためにいろいろと、よからぬ誤解か正しい批判なのかわかりませんけれども、非常に不透明な関係があるのではないか、こういうようなことを指摘する向きもあるわけであります。  この点については、例えば、既に我が国に存在する監査法人にどれだけ大蔵省の方が天下っておるのかというようなことについては、具体的な数字も含めて、先般の通常国会開会中のこの委員会でも、参議院も含めて、質問があったようでございますが、こうした点について、このようなことをどう受けとめておられるのか、またそして、そうしたことについては今後そういうことがないようにすべきである、こういうふうに思うのですけれども大蔵大臣の御所見を賜りたいと思います。
  54. 久保亘

    久保国務大臣 住専問題や金融機関の破綻等に関しまして、会計監査が十分に機能していたのかどうかというようなことについての御指摘がございますことは、よく承知をいたしております。また、今お話がございました監査法人等の役職に対して大蔵省の出身者がその地位にあることは、これは弊害を生んでいるのではないかというような御指摘も、通常国会で両院を通じてお話があったところでございます。  ただ、監査法人の役職は、その専門的な知識とか経験を求められて、その法人の側から求められた人事ということがこれまで多かったのではないかと思っております。それで、これを一概に天下りというようなもので律せられるかどうかは別問題といたしましても、しかし、会計監査の重要な役割、今日の国民期待、使命、そういうものを考えます場合に、十分にその点は考えられなければならないことだと思っております。  私も、去る七月四日、第三十回の公認会計士協会総会に招かれましたので、その際、祝辞としては少し言い過ぎかなと思いましたけれども、そのようなことにかんがみて、専門家としての公認会計士の皆様方が、今日の公認会計士の重大な使命にかんがみて、今後の会計監査のあり方等について真剣な論議を行われることを希望するということを申し上げてまいりました。  今後、そういう会計監査のあり方については、今錦織さんから御指摘がございましたような視点から十分な検討が行われる必要があるものと考えております。
  55. 錦織淳

    ○錦織委員 時間が参りましたので簡単にいたしますが、最後に一点だけどうしてもお聞きしたいのですけれども、監査をする監査法人にも大蔵省のお役人が天下っておる。そして監査を受ける側、これは今後一挙に拡大をしていくわけです、新しい法律によって。拡大することは好ましいことではあるのですけれども、しかし、そこにもまた大蔵省の方が天下っておる。大蔵省だけでもなくて、いろいろな官僚の方が天下りをしておる。  そうすると、これは「李下に冠を正さず」という言葉がございますが、仮にちゃんとやっておっても、何かあそこの監査法人を選ぶときになれ合いがあったのではないか、監査法人をどこを選定するかというようなことにも疑問の声を差し挟むというようなことも出てきますし、それからまた、当該監査そのものが何となくかばい合っているのではないか、こういうふうに疑われる。  つまり、そういう外形的事実というものも大事だと思うのです。中身がよければそれでいいというわけではなくて、外形的に見て、そうした点で疑いを持たれることのないような、そういうことも必要ではないかというふうに思いますので、大蔵大臣、もう一度、その点についてどのようにお考えか、お答えをお願いしたいと思います。
  56. 久保亘

    久保国務大臣 厳密に申しますと、会計監査は監査法人が行うというものではなくて、公認会計士がその独任的な権限と責任に基づいて行うものだと私承知をいたしております。  しかし、いわゆる法人が存在をしてこれらの業務にかかわるということについて、その場合に、今言われました監督の立場にある者といわゆる業界との緊張関係というものに支障が存在するのかどうかというようなことについては、検討せられるべきものと思っております。  ただ、先般、私の方で明確にいたしました大蔵省関係の天下り自粛に関しまして、このことに監査法人が該当するかどうかという問題については、少し検討をさせていただきたいと思っております。
  57. 錦織淳

    ○錦織委員 どうもありがとうございました。
  58. 高鳥修

    ○高鳥委員長 これにて錦織淳君の質疑は終了いたしました。  次に、鮫島宗明君。
  59. 鮫島宗明

    ○鮫島委員 新進党の鮫島でございます。  初めに、大蔵省に。平成七年度の税収が見通しを七千億ほど上回ったという報道がなされていますが、そういう事実はございましたでしょうか。
  60. 薄井信明

    ○薄井説明員 七年度の税収につきましては、今月末に決算の最終的な報告ができるわけですが、概算でわかっている限り申し上げますと、一兆二千億円ほど、補正予算後の税収よりも税収は上ぶれをしたというふうに見ております。  ただ、内容的には、法人税が多分一兆円ぐらいであって、その他のものが残りの二千億を構成する。その一兆円のうち、どういう理由で何がふえたかというのは、これから分析しなければいけないと思っております。
  61. 鮫島宗明

    ○鮫島委員 今の法人税一兆円が見通しより上回ったということですけれども住専絡みの不良債権処理で多くの母体行がこの三月期に償却を積極的に行ったと思いますけれども、有税償却を行ったところと無税償却を行ったところ、母体行によって償却態度に違いがあったということも報道されていますが、これは事実でしょうか。
  62. 西村吉正

    西村説明員 税務処理をどのように行うかということはそれぞれの経営者の判断に基づくものでございますが、御指摘のように、三月期の決算におきまして二通りの処理の仕方があったということはそのとおりでございます。
  63. 鮫島宗明

    ○鮫島委員 そうすると、今の住専絡みの不良債権処理で有税償却を行った母体行が支払った税金の総額は約六千億円という推定値がありますけれども、これは大体その程度ということでよろしいんでしょうか。
  64. 薄井信明

    ○薄井説明員 お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたように、法人税で一兆円ほど補正予算よりも上回ったわけでございますが、その内訳についてはまだ分析がし切れておりません。ただ、現在、計数精査の段階で感触を申し上げますと、いわゆる有税償却による影響額はただいま申し上げました一兆円の約半分程度ではないか。詳細のところはまだ把握しておりません。
  65. 鮫島宗明

    ○鮫島委員 最近新聞報道で新基金という言葉が多用されるようになっていまして、どうも一カ月ほどブランクがあるもので内容がよくわからないのです。いわゆる住専勘定の中には、国が主に財政支出をする緊急金融安定化基金民間出資する金融安定化拠出基金、この二種類が住専勘定の箱の中にスキームとしては入っているわけですけれども、今、系統に千五百億負担してもらおうとかあるいは銀行にももっと協力してもらおうということで、与党が盛んに働きかけて基金を募っている新基金というのはどういう性格のもので、この基金がふえるとどういういいことがあるのか、御説明いただけないでしょうか。
  66. 西村吉正

    西村説明員 新基金あるいは新たな寄与というような言葉で表現されておりますのは、六月の十九日に政府与党声明が発せられましたが、その中におきまして提案されていることでもございます。  財政負担六千八百億円に対する厳しい国民の声には真摯にこたえるべきであり、結果として国民の負担をできる限り軽減するよう努力するとの観点から対応を図るという趣旨の中で、関係金融機関、これは農林系統金融機関も含みまして、「新たな拠出による基金実現要請する。」という項目がございます。これに基づきまして検討が行われておりますのが、いわゆる新基金と称せられているものでございます。  これにつきましては、現在、関係者の間でその構想の内容及び金額等について詰めが行われているところでございますが、今議論の対象になっておりますのは、委員が御指摘のような預金保険機構の中に基金を設けるということではなくて、今までの基金預金保険機構の中に設けることになっていたわけですが、それとはまた別の形で設けてはどうか、法人を設立してはどうかというようなことが関係者の間で議論をされているというふうに理解をいたしております。
  67. 鮫島宗明

    ○鮫島委員 きょうが最後だそうなので、なるべく簡潔にわかりやすくお答えいただきたいのですけれども、何のためにこの新基金を新たに募っているのですか、この新基金の機能は何ですかということを聞いているわけでして、つまり、この今の国民の負担をできるだけ軽減するということと新基金を大きく積むということがどういうふうに関係するのかを聞いているのです。
  68. 西村吉正

    西村説明員 新基金の趣旨、目的と申しますのは、一つは、先ほど申し上げましたように、結果として国民の負担をできる限り軽減するよう努力するという観点から、何らかの方策を講ずるべきであるという問題意識が一つございます。  他方におきまして、その基金を設けるという趣旨につきましては、その基金の設置が金融システムの安定に資する、そのようなものであるべきだという考え方も関係者の間で議論をされているところでございまして、そのために、この基金の使途といいますか、運用先といたしましては金融システムの安定に資するようなもの、例えば整理回収銀行を運用先とするようなことも一つの案ではないかというようなことが議論の対象になっているところでございます。
  69. 鮫島宗明

    ○鮫島委員 ちょっと質問と答えがかみ合わないのです。  では別の聞き方をしますと、幾ら新基金が積まれれば六千八百億の財政措置は必要なくなるのですか。それとも、この新基金が幾ら膨らんでも六千八百億の財政措置には何の影響もないのかどうか、この点だけはっきり答えてください。
  70. 西村吉正

    西村説明員 その点につきましては、先ほども申し上げましたように、結果として国民の負担をできる限り軽減するよう努力する、そのような趣旨で検討がなされているところでございまして、そのような観点からするならばどのような規模基金が適切かということをも含めて、今検討がなされているということでございます。
  71. 鮫島宗明

    ○鮫島委員 この間の大蔵省の民間の銀行等に対する圧力のかけ方なり指導については多くの疑義が出たと思いますけれども、何のためにどう使うのかわからない新基金、あるいはその新基金を積むことによって財政負担が減ることもはっきりわからない新基金を、出せ出せと言って歩くこと自身が道義的にも問題があるのではないかという気がいたします。  農水省の方に聞きますけれども、多分農協の方も新基金への拠出を強く要求されていて、本当はもう逆さにしても血は一滴も出ないと言っていたはずの系統が、六百億の利子を返してもらえれば千五百億ほど基金に積めると言っていると報道されていますが、そういう事実はございますでしょうか。それから、農水省の方としてはこの基金というのはどういう意味を持っているというふうにお考えなんでしょうか。
  72. 堤英隆

    堤説明員 基金の目的なり趣旨なりにつきましては、銀行局長の方からお答えがあったとおりというふうに私どもも理解をいたしております。  それから、先ほどもお答え申し上げましたけれども、こういった住専のこの負担に対します国民の厳しい御批判、それから衆参両院におきますさまざまな御意見、御指摘ということを踏まえまして、系統金融機関に対しましても一定の要請がございます。  系統といたしましては、非常に厳しい経営状況ということの中ではございますけれども、こういった両院におきます御指摘、御意見といったことも重く受けとめまして、真摯にこれを受けとめて、どういった対応をしたらいいのかということで現在組織内部で検討を進めております。非常に厳しい経営状況でございますので、苦慮しながらも、こういった御批判にどうこたえたらいいのか、こういうことでの組織内部の検討を進めている、こういうふうに承知をいたしております。
  73. 鮫島宗明

    ○鮫島委員 農水省の方は、一貫してぎりぎりの対応ということでやってきている。本当にそれがぎりぎりかと思うと、またその後ぎりぎりの対応というのがこの間何度か出てきているわけですけれども、そういう意味で、やや不信感を持たれているということをちゃんと意識していただきたいというふうに思います。  ちょっと戻りますけれども、先ほど住専絡みの不良債権処理で、有税償却を行ったことによって国に入った税金が五千億ほどありますと。これは本当は、税負担の公平性からいうと、住専絡みの不良債権処理については無税償却が認められているわけですから、母体行がすべて無税償却をするのが税負担の公正からいって自然な姿だと思いますけれども、完全に銀行全体がそのとおりになるかどうか不安を抱いた関西系の銀行幾つかが有税償却に踏み切ったと思いますけれども、こういうことで、少なくとも五千億の新たな税収を得た。それから、新基金系統もぎりぎり努力して千五百億結局は出すことになると思いますけれども、新基金も一応与党の圧力で積まれております。  本来、この有税償却で入った五千億というのはあくまでも住専処理に、どんぶりに入れないで別枠で使われるべきだと思いますし、この新基金を積むことによって国民の負担が軽減させられるという二つの要素を加味すれば、この六千八百億の財政措置というのは考え直してもいいのではないかという気がいたしますけれども、ここについては考えを変更する気はないのですか。つまり、新たな税収があったということが一つと、それから新基金の積み増しが一応順調にいっている、この二つのことを加味すれば六千八百五十億の税金投入は再考してもいいのではないかと思いますけれども、いかがですか。
  74. 薄井信明

    ○薄井説明員 先ほどの答弁に関連しますので、補足させていただきます。  平成八年三月期決算につきましては、その時点で損金に計上できないものであるということで、結果的に一兆円の約半分程度の増収につながりましたが、法律が通りスキームが動き出した今期におきましては、これは損金に経理されるわけですので、来期、つまり平成九年三月期の決算上は逆にマイナスに影響するわけでございます。そういう意味では、期間を通じて考えれば同じ問題である、損金に経理されるというふうに御理解いただきたいと思います。
  75. 鮫島宗明

    ○鮫島委員 大蔵大臣にお聞きしますけれども、今の国家財政にとっての最も重要な事項といいますか、トッププライオリティーは何かということだけ簡単にお伺いしたいのです。  私どもの認識では、やはり財政の健全化、それからミクロな課題としてはこの住専処理国民の負担をなるべく負わせない、このことが、マクロ的には財政再建であり、ミクロ的にはこの住専処理で負担をかけないということが今財政にとつての最重要課題だと思いますけれども大蔵大臣の御認識はいかがでしょうか。
  76. 久保亘

    久保国務大臣 財政の全体的な考え方といいますか、そういう立場からは、財政再建が今日先送りが許されない大変重要な課題であるということは、終始私は申し上げてきたつもりでございます。
  77. 鮫島宗明

    ○鮫島委員 そうしますと、この一兆二千億の見通しを上回る税収増は、当然、かなりの部分は赤字国債の償却に使われ、そして残りの一部はこの住専問題の処理に使われる、そういうふうに大枠では考えてよろしいのでしょうか。
  78. 久保亘

    久保国務大臣 今概算で出されております決算処理におきまして私が報告を受けておりますところでは、税収の伸びました部分は、その過半を公債の発行減に振り向けることになろうかと思っております。  なお、不用額とそれから公債の発行減となりました分を差し引いたものと合わせて九千億余りのうち、この税収の伸びに伴う地方交付税の伸びがございます。そういうものを差し引きますと、決算の処理としての残額といいますか、黒字額は六千億台になるのではないだろうかと今の段階では概算されております。
  79. 鮫島宗明

    ○鮫島委員 もう一度確認しておきますけれども、ことししか無税償却できませんというのは当然そのとおりだと思いますけれども、少なくとも幾つかの銀行が有税償却を行って住専絡みの不良債権処理で生じた税金ですから、これは実は優先的に、本当はひもつきで住専問題の処理に回すべきだろうというふうに私ども考えます。さらに、新基金の積み増しによって新たな国民負担軽減の措置がとられる。こういう二つの客観情勢があっても六千八百億の財政措置を見直すつもりはないというのが今の大蔵大臣のお考えでしょうか。
  80. 久保亘

    久保国務大臣 この住専問題の処理につきましては、予算を含めてその処理方針国会において御議決いただいたところでありまして、その方針に沿って執行してまいりたいと思っておりますが、なお御議論のありました国民負担をできるだけ軽減するような努力をすべきであるということにつきまして、今、国会における御論議を踏まえて私どもとしては努力を続けているところでございます。  新基金の問題につきましても、これは参議院におきます審議の段階では具体的に御論議もあったところでございます。なお、銀行の関係につきまして、特に、当委員会におきましても、母体行責任ということについて非常に厳しい御意見が与野党を問わずございました。そのような立場に立って、銀行協会の幹部の方も国会に出席された上で、これらのことに対する国会論議における要請も直接聞かれた上で御判断になっていることでありまして、今政府が銀行に対して強要しているというようなものではないと私は考えております。
  81. 鮫島宗明

    ○鮫島委員 今の全体の税収なり財政の動きからいって、私は、その六千八百億の財政措置、直接安定化基金に入れてそれを住専処理に使うという仕組みについては見直す必要があるのではないかと思います。  一方で、この六千八百五十億を税金から使って、そのことによってますます財政が悪化するから消費税を二%四月から上げますというのは、これは、いつ、どこで、だれが決めたことなのでしょうか。来年四月からの消費税の三%から五%への値上げは、報道では既にこれは決定されたことで動かしがたい事実というふうに扱われていますけれども、それはそういうことなのでしょうか。
  82. 久保亘

    久保国務大臣 平成六年の十一月の税制改正に関する法案の御審議を得て、その時点でこの国会において決定されたものと考えております。
  83. 鮫島宗明

    ○鮫島委員 ここではきょうはそのことが本筋ではありませんので多くは触れませんけれども、景気回復の確かな足取りが確認できること、あるいは行政改革をきちっとやってむだな歳出を削減することというのが大前提にあったはずでして、そのことを抜きに六千八百五十億の住専処理への税金投入を行い、そしてさらに財政構造が悪化したからといって安易に消費税を上げていくというような対応というのは、私は国家をますます破綻させる最悪のシナリオだというふうに思っております。  ちょっと話をずらしますけれども金融三法の中で、今後、金融機関の健全性の評価を自己資本比率に基づいて評価して、そして早期是正措置をとっていくというようになっておりますけれども、この自己資本比率に基づいて評価していくという場合に、これまでも多くの倒産した銀行が、実は自己資本比率という観点から見れば、必ずしも下回っていなかったという事実がたくさんあると思います。  兵庫銀行でもそうですし、その他静岡中央、沖縄海邦銀行、栃木、香川、四十ほどの銀行が実は自己資本比率はクリアしていたという事実を前にして、大蔵省としては、内部資料にアクセスできる特権をお持ちなわけですから、銀行が危機に至る過程でどういう警報が、どこに、いつあらわれるのかということを十分把握して、そして自己資本比率以外にも注目すべき項目があるのではないか、そういうことも十分把握しておられると思いますけれども、自己資本比率一本で、あるいはこれを中心にして健全性の評価をしていくというのはどういう御判断に基づくものなのか、お聞かせ願いたい。
  84. 西村吉正

    西村説明員 早期是正措置における客観的指標してどのような計数を用いるべきかという点につきましては、金融制度調査会におきましてもいろいろな議論がございましたし、また今でも世の中にいろいろな御議論があると存じます。  御指摘のように、金融機関の健全性を判断いたします指標は自己資本比率だけとは限りません。複数の指標、例えば私ども専門家の世界ではCAMEL方式というような言い方がございますが、CAMEL、すなわち資本金の妥当性、資産の質、経営陣の質、収益性、資産の流動性、このような五つの観点から金融機関の経営内容を判断してはどうかというようなことは、我が国においても意識されておりますし、アメリカにおいても適用されているところでございます。  しかしながら、これは行政の透明性あるいは指標の客観性という観点からいたしますと、複雑な手法をもって厳格にその資産の内容を審査いたしますと、それは別の観点からいいますと、当局の裁量の余地を残し過ぎるのではないか、このような御批判もあるわけでございます。  このように、透明性という観点と実態把握の的確性という観点とは矛盾をする要素もあるわけでございますけれども金融制度調査会におきましては、むしろこの際、行政の透明性あるいは指標の客観性という観点をより重視すべきである、そのような御議論があった上で、この早期是正措置の指標といたしましては自己資本比率を採用してはどうか、このようなことになっているわけでございます。  なお、その具体的な適用につきましては、専門家の間でさらなる御検討をいただくことを予定いたしております。
  85. 鮫島宗明

    ○鮫島委員 実態として、少なくともこれまでは、その自己資本比率と銀行が破綻するかどうかということは直接関係がないという数字がかなり積み重なっていると思います。恐らく自己資本比率といっても、銀行が不良債権を抱えたままではなくて、ちゃんと損切りといいますか償却をしていれば、それは自己資本比率に反映されると思いますけれども、不良債権を償却しているのか否かというところについては、相変わらず、今の局長の言葉とは裏腹になると思いますけれども、そこについては非常に行政当局の判断の余地というのが入ってしまって、預金者の側から見たら自己資本比率だけしか見えない。しかし、それが健全な自己資本比率なのか不健全な自己資本比率なのか、これは相変わらず預金者からは全く見えない。  しかもこの償却をすることの困難性はこれから住専処理機構が嫌というほど恐らく味わうわけでして、不良債権を抱えていないですぐそれは償却しなさい、償却すれば自己資本比率として体質が正確に反映されるはずだといっても、これは机上の空論の典型的なものでして、やはり自己資本比率以外にその債権債務の健全性というような指標をどうしてももう一本入れないと、ディスクロージャーをして預金者が金融機関の健全性を判断できるといっても、この自己資本比率だけでは余りにもはかないのではないか、不確かなのではないかという気がいたしますけれども、いかがでしょうか。
  86. 西村吉正

    西村説明員 今の鮫島委員の御質問には、二つの重要な要素が含まれていると存じます。  一つは、先ほどお答え申し上げた、その早期是正措置の判断基準が自己資本比率というような単一の基準でいいのかどうか、それは単純過ぎないかどうか、こういう観点でございます。  その点については、先ほどお答え申し上げましたように、確かにそういう御批判はございますが、私どもといたしましては、金融制度調査会での御議論をも踏まえまして、この際、行政の透明性、客観性ということに重点を置くことにいたしましたということでございます。  もう一つの重要な御指摘は、その自己資本比率という基準を採用するにしても、その計数が実態を正確に把握しておるのかどうか、どうも過去の経緯からすると、必ずしもそのようには思えないではないかという御指摘かと存じます。  この点につきましては、御指摘のように、私どもといたしましても、金融機関の決算におきまして公表されます経営指標が正確に、的確に経営実態を反映していくような努力はなお重ねてまいらなければならないと考えております。  今回の早期是正措置の採用に際しましても、この自己資本比率の算定に当たりましては、当局が判定をするという以前の問題といたしまして、金融機関みずからが自己査定をいたしまして、その結果を、毎年の決算及び中間決算に基づきまして、すなわち半期ごとに決算内容を公表いたします際に、自己資本比率が当局に報告されると同時に、また各金融機関から世の中にディスクローズされる、このような指標をもとにこの早期是正措置を発動してまいる、こういう考え方になっているわけでございます。その際、それぞれの金融機関が経営内容の実態を的確に反映した決算内容を発表するということが、当然私どもとしても望まれるところと考えているところでございます。
  87. 鮫島宗明

    ○鮫島委員 今大蔵省が把握しておられる数字で、グループ別にといいますか、都市銀行あるいは地銀、それから協同組合金融機関、そういうところを含めて、この自己資本比率の基準を既に下回っているところがそれぞれのセクターで何%ぐらいあるか、現在どういうふうに把握しておられますでしょうか。
  88. 西村吉正

    西村説明員 今委員の御指摘のその自己資本比率という内容は、恐らく資産の査定、資産の評価をして、その資産の評価をした場合に、いわば実質的な自己資本比率が幾らになるかというような問題についての御質問だと理解をいたしましたが、そういう物の見方に基づいて、例えば新聞雑誌等におきまして、金融機関の自己資本比率が実態はこうではないかというような報道がなされているということは私ども承知をいたしているところでございます。また、私どもは、検査という観点から行政としての資産の査定というものを行っていることも事実でございます。  しかしながら、その資産の見方ということにつきましては、これはいろいろな見方があるわけでございまして、金融機関といたしましては、みずからの判断に基づきまして適切と考える基準により判定をし、その結果を決算状況に反映させているわけでございまして、私どもといたしましては、先ほど申し上げましたような金融機関みずからの判断の結果としての決算の公表の内容をもってまずは判断すべきものと考えているところでございます。そのような観点からは、今御指摘のような内容とは多少のずれがあるのではないかと考えているわけでございます。
  89. 鮫島宗明

    ○鮫島委員 どうもよくわからないのですけれども、この早期是正措置にはすべての金融機関が対象になっているというふうに聞いています。系統金融も含めて早期是正措置の対象になっていると。  しかし、例えば協同組織金融機関の場合には、自己資本比率を何らかの事情で割り込んだ場合に、それを持ち上げるのが大変難しい。いわゆる普通の株の取得で出資ができるという場合は、その株式の取得に応じた発言権の増大というのがありますけれども、協同組織金融機関の場合には、金額の多寡に関係なく一人一票という発言権のもとに運営が行われているわけですから、こういうところでは特に、自己資本比率がある時期下回ったからといって、すぐにそれを持ち上げるような対応の仕方が大変難しいのではないか。  その評価の仕方、あるいは指導の仕方、六つのカテゴリーに分けるときの分け方、あるいはあるカテゴリーについての指針の出し方というのは、おのずから異なってくるのではないかと思いますけれども、その辺は全部一本でおやりになるのか、あるいはこういう協同組織金融機関と一般銀行とはやや分けた基準になるのか。いかがでしょうか。
  90. 西村吉正

    西村説明員 先般、私どもとしましてこの早期是正措置の適用基準の一例を世の中にお示しいたしましたが、しかしながら、実際にこれをどのように適用していくかということは、専門家の間でもう少し議論をしなければならないと考えております。その際に、協同組織金融機関というのは同じ取り扱いを受けるべきものであるのかどうかということは問題になろうかと存じます。  協同組織金融機関は、もともと仲間内の金融機関でございますので、いわゆる自己資本を充実しなければならないその必要性におきまして、株式会社組織金融機関とはまた違った要素があるのではないかということも一つの見方であろうかと存じますし、また、そのようなことの反映といたしまして、協同組織金融機関が自己資本を充実させる手段というものは、株式会社組織金融機関ほど多様化されてはおりません。なかなか難しい点があろうかと存じます。  そのようなことをこの問題にどのように反映させるかということも大変に大切な論点かと存じておりますので、そのような点も含めまして、専門家の間の御議論にゆだねてまいりたいと考えているところでございます。
  91. 鮫島宗明

    ○鮫島委員 ぜひ実態に応じて、適正な評価といいますか、早期是正措置の指標をつくっていただきたいというふうに思います。  これからその住専処理住宅金融債権管理機構が動き出し、あるいはノンバンクも含めて不良債権処理がかなりの巨額に上ると言われていますけれども、いずれにせよ、この不良債権が生じたのも土地を初めとする資産の値下がりによるわけでして、相変わらず土地の値段が、特に大都市の商業地域の土地の値段が下げどまらない。まだじわじわと下がり続けるという情勢の中では、二次ロスも幾らになるかわからない。それから、これからノンバンクがどんなふうに破綻してくるのかもわからない。  そういう観点からすると、やはり土地が全く動かない、不動産のマーケットが冷え切っているということがもう一つ見ておかなければいけないことでして、この不動産のマーケットを活性化するための措置というのをどんなふうにとらえておられるのか。  その前に、国土庁がもし東京と大阪商業地の地価動向を把握でしたら、直近の数字も含めて、特にまだ下がり続けているのか、下げどまりになっているのか、その辺のところを御紹介いただきたいと思います。
  92. 窪田武

    ○窪田説明員 お答えいたします。  地価公示によりますと、お尋ねの東京圏の商業地の地価は、平成三年の地価公示をピークにいたしまして、その後五年連続して下落しておりまして、特に平成七年一年間の下落率は一七・二%になっております。また、大阪圏の商業地の地価は同じく五年連続して下落しておりまして、平成七年一年間の下落率は一五・八%になっております。  今後の大都市圏の地価の動向、見通しにつきましては、私ども不動産関係団体等に対してヒアリングを行っておりますが、その結果によりますと、まず、住宅地につきましては大都市圏全体的にほぼ横ばいで推移するというのが大方の見方でございますが、お尋ねの商業地につきましては、オフィスの賃料とか空室率とかそういう動向について幾つかの指標に変化が見られておりまして、当面は、このような動向が定着するかどうかというものをきっちりと見定めないと的確な見通しは立てにくいというのが大方の見方でございます。
  93. 鮫島宗明

    ○鮫島委員 共国債権買取機構がこの二年間に行った実績からいっても、競売にかけて土地を処分した場合には、平均でいって担保額の一七%しか回収できていない。建物がついていても二二%しか額面としては回収できない。  この不動産市況が冷え切っていて土地価格というのが一体何によって形成されているのかわからなくなってしまったような今日的な状況の中で、あらゆる手だてを打って適正な水準に持っていくこと、あるいは不動産マーケットの活性化というのを図る必要があるのではないかと思いますけれども、大蔵省は、この住専処理に非常に責任を持つ省庁として、土地の流動化対策としての税制面の措置、追加的な措置も含めて、さらにどんな手を打とうとしておられるのか。この不動産市場の活性化に資すると思われる税制上の措置を何かお考えなのかどうか、御紹介いただきたいと思います。
  94. 薄井信明

    ○薄井説明員 御指摘の土地の流動化ということは、私ども単に土地が動けばいいということではなしに、有効にこれが利用されるという意味で移転しやすくなることが大切かと思っております。そういった意味で、平成八年度の税制改正におきまして、私ども土地の保有、譲渡、取得の各段階につきましての税制をかなり大幅に直させていただきました。  例えば個人の長期譲渡所得課税につきましては、一般の譲渡につきましては、四千万円以下の譲渡益について二六%、それから四千万円を超え八千万円までは三二・五%ということで、いわゆる平成二年以前の姿にここは戻っておるわけでございます。また、優良な譲渡につきましては、来年から手直しになりますけれども、これにつきましても二〇%の譲渡課税というものを残しているという形で、かなりこの一月以降の税制は土地の流動化にプラスに役立っていると思っております。  また、よく話題になります保有課税につきましては、平成四年に地価税ができました。この地価税導入のときには、〇・三%換算で申し上げますと七千八百億円の税収が入っていたことになりますが、地価が下がってきておりますので、地価税収はどんどん、毎年一千億ずつぐらい落ちてきておりまして、ことしは仮に〇・三%で動かした場合に三千四百億円ぐらいになっているかなと思いますが、これをさらに税率を半分にいたしました。この結果、千七百億円程度の予算を今計上しているようなことでございまして、ここ数年激減している。保有課税につきましても、そのような手をとらせていただいております。  またもう一つ、不動産を取得したときの登録免許税等につきましても、状況を踏まえた措置をことしとっております。来年以降につきましては、固定資産税の評価が平成九年一月現在で行われますので、これに対応してどうするかということを考えていかなければいけないと思っております。  要約いたしますと、土地の状況を勘案いたしまして、平成八年度改正でかなり大胆に改正をさせていただいているということを御報告申し上げます。
  95. 鮫島宗明

    ○鮫島委員 まあ打つべき手は打っている。しかし、まだマーケットにはその効果は反映されていないと思います。  バブル以前に戻したからいいということでもないと思っていまして、いわゆる土地神話の崩壊というのはもうちょっと構造的な意味を持っていて、多分、バブル以前に戻しても、あのころは土地は右肩上がりでいくという大前提があったわけですけれども、その大前提があったときの水準に戻したからといって、必ずしも流動化が促進される保証はないのではないか。しばらく様子を見てみなければわからないと思いますけれども、余りにそれでも動かないということになれば、また新たな税制上の措置を当然とるべきではないかと思います。  農水省の方にもう一度、ちょっと系統のことについてお伺いしたいのです。  早期是正措置の対象に農協系統金融機関も入っていますけれども金融機関の更生手続の特例等についての法律案、これには農協は対象にならないというふうに聞いております。そうしますと、早期是正措置で、先ほど言ったような配慮も含めて、協同組合型の金融機関はほかの都市銀行とは違うという視点も当然含めていいのですけれども、それでも、ある評価を行って、もうこれはやめさせた方がいいというような判断をどこがするのか、あるいはどちらがそのような措置をとるのか。  今、金融機関の更生手続の特例等については農協系統は除外されていますから、何らかの措置、つまり是正措置に基づいて評価をしたときに、これはもう破綻している、これ以上経営を続けさせない方がいいという客観的な事実が明らかになった場合、だれが猫の首に鈴をつけるのか。今の金融三法ではちょっと見えないものですから、農水省の方ではどうお考えになっているのか、教えていただきたいと思います。
  96. 堤英隆

    堤説明員 御指摘のように、系統金融機関につきましても、行政の透明性あるいは指標の客観性という観点から、金融機関の経営の早期是正措置ということの中で、自己資本比率を基準とした対応を私どももしていきたいということで検討を進めております。  御案内のように、農協の場合は総合事業という形でさまざまな事業をやっておりますが、今回の早期是正措置というのはあくまでも金融機関ということに着目してのものでございますので、他の金融機関と同様に、その点につきましては自己資本比率を指標として対応したい。もちろん、先ほども答弁ございましたように、農協が協同金融機関一つだということの中で、自己資本比率を決める際に協同組織としての性格をどう反映するか、これは銀行局長からもお答えがあったところでございますが、そういうことも十分考慮しながら、今申し上げましたように、自己資本比率ということを基本にしながら対応していきたいと思っております。  全体的な農協のあり方ということも含めての御指摘でございますけれども、結局、農協の経営がうまくいかなくなった場合に、従来でございますと、やはり合併という形で対応してきていると思います。系統の場合は三段階ということでございますので、それぞれの地域での合併という形の中で、決定的な形にならないように、組合員の皆さん方に決定的な御不便をおかけしないような形で、農協の合併ということの中で対応してきておりますし、それもまた三段階という形でさまざまな支援措置を講じていくということでやってきておりますが、今後ともそういう考え方で対応するべきものというふうに理解をいたしております。
  97. 鮫島宗明

    ○鮫島委員 これまでも系統金融については大蔵省と農水省の共管ですということを御答弁いただいていますけれども、多分、見方が違うのではないか。  農水省が見る場合には、あくまでも農協の総合的な経営という観点から見て、例えばの話ですけれども、多少信用事業部門の体質が悪化していても購買事業部門が非常に伸びていれば、それは総合的な経営としてはよいのではないかという判断が当然そういう見方からは出ると思いますけれども、もう一方、金融機関としての健全性ということできちっとチェックすれば、信用事業部門が赤字になっていたら、やはりそれはその事業を行う要件が欠けているという判断になると思います。  その辺が、農水省の見方と大蔵省の見方が常に二つこの系統という組織の中に存在していて、今後もそれが二つ存在し続けることはやはり系統金融の適正な判断の目を曇らせるというふうに思うのですけれども、大蔵省側としては、共管の片方の省として、信連、農協含めて、この系統金融の評価をどんなふうにしていくおつもりなんでしょうか。それとも農水省に任せるというなら、それはそれで一つの見解でしょうけれども
  98. 西村吉正

    西村説明員 大蔵省と農水省が共管をしているということは、今見方が二つという御指摘ございましたけれども、見方が二つということは、恐らくその背景に、実態が二つというか複雑であるということを反映したものと存じます。  すなわち、私どもは、共管をしておりますのは、金融という側面からこの問題を見させていただくために共管をしておるというふうに理解をいたしておりますが、農水省は、単に金融ということだけではなくて、その実態に即して、金融であり、また他の、農村社会の必要性を反映した農協の性格というものをも全体的にごらんになる立場からこの問題をとらえておられる。そのようなことから、大蔵省の見方と農水省の見方には、また別の観点もあろうかと考えております。私どもは、信用秩序あるいは金融システムという観点から、今後とも引き続き農水省と協力をしながら行政を進めてまいりたい、このように考えております。
  99. 鮫島宗明

    ○鮫島委員 その見方が違うのではないかというのは、私は根拠がなくて言ったわけではなくて、それが実は前回の、最終日のこの委員会での審議の場に端的にあらわれた事例があります。それは、ノンバンクヘの七・七兆円の融資のうち不良債権額はいかがですかという話の中で、大蔵基準で出した不良債権額と農水基準で出した不良債権額が五倍違っていたということが明らかになって、本当はそれに基づいて質疑したかったのですけれども、打ち切られたということがあります。  その観点からいくと、今協住ローンを系統は母体行として経営しているわけですけれども、ここが抱えている不良債権額は、大蔵省の方はどのぐらい不良債権額を持っているというふうに見ておられますでしょうか。農水省と両方お答えいただきたいと思います。
  100. 西村吉正

    西村説明員 昨年八月の第二次立入調査の結果ということでお答え申し上げたいと存じますが、協同住宅ローンの貸付金残高は、平成七年六月末現在で約七千億円であり、そのうち不良債権額は約三千億円というふうに私どもは理解をいたしております。
  101. 堤英隆

    堤説明員 協住ローンにつきましては、いわゆる住専ということでございますので、一義的に大蔵省の所管でございます。そういう意味で、今の不良債権額あるいは債権額につきましては、大蔵省からお答えになったとおりというふうに私どもも理解をいたしております。
  102. 鮫島宗明

    ○鮫島委員 この七千億円の貸付金のうち三千億円がしこっているというのは、必ずしもほかの住専に比べて成績優秀とは言えないと思いますけれども、この不良債権処理を今後どのように進めていくおつもりなんでしょうか。
  103. 堤英隆

    堤説明員 協住ローンにつきましては、六十三年以降かなり経営の、業務運営の改善ということに努めてまいりました。しかしながら、今御指摘のように、全体的な地価の下落といった状況の中で、協住ローンをめぐる経営の状況ということにつきましても非常に厳しいという認識は私どももいたしております。  そういう中で、現在協住ローンは自己努力という形の中で自己再建を進めているわけでございます。  内容的には三点ほどに分かれますが、一つは、不良債権回収等につきましては、農林中金等の支援によりまして償却を進めていきますということのほかに、回収専門部署ということで設置いたしまして、担保回収等による回収促進を図っていくということが一つでございます。  それから、農協との連携によりまして、住宅ローンの貸し付けでありますとか、それから住宅金融公庫のつなぎ資金といいますか、そういう形の中での優良資産をできるだけ積み上げる自己努力を重ねていくということが二つ目でございます。  それから、これまでも営業店の統廃合あるいは人員の削減ということを進めてきておりますけれども、今後とも経費の削減といった形の中で経営の合理化、効率化を図るということで、現在再建計画に鋭意取り組んでいるというふうに承知をいたしております。
  104. 鮫島宗明

    ○鮫島委員 ちょっと時間がないのではしょりますけれども系統金融を取り巻く環境というのはいまだに楽観できない状態にあると思います。この協住ローンが抱えている不良債権処理もやはり系統金融の圧迫要因ですし、それから新基金への積み増し、これは利息を期待できないお金を千五百億出さなくちゃいけない。五千三百億の贈与があり、また、二・二兆の融資についても恐らくそれほど高い金利は期待できない。系統金融を取り巻く環境は、この住専問題のスキームが動き出したからといって決して楽観できる状態ではないと私は思います。そういう環境の中で、系統の方も今の三段階を二段階にするような合理化措置を当然検討中だと思いますし、そういう構造が新たに生まれる中で中金の役割というのが実は非常に重要になってくるのではないか。  もともとこの系統段階の構造は、農業部門に資金を供給するために中金があり、信連があり、農協がありということで、上から下へ農業に必要な資金を流すためにつくられた仕組みが、いつの間にか土地の値上がりによって下から上への資金の逆流現象が起こって、そのことがさまざまな問題を生み出している。つまり、土地価格の上昇は農業活動そのものによって生まれたわけではなくて、農業以外の産業活動によって生まれた付加価値が土地の値段を通じて系統金融の世界に多量に入ってきた。  ところが、その運用する方は、相変わらず農業及びその関連事業あるいは地域の振興に資する事業に限定されるということですと、これは構造的な矛盾があるわけでして、この矛盾を抱えたまま今後とも何とかやれと言っても、入り口の方は自由にあいていて出口の方は絞られているというのでは、ほとんど首都高のラッシュ状態のような状態が続くわけでして、中金の貯貸率も四〇%と低迷しているというのもその辺に問題があると思います。  したがって、資金供給の多様性に応じた資金運用の多様化が同時に図られないと、この系統金融の持っている構造的問題というのは捨象できないのではないかと思いますけれども、中金の運用枠の拡大といいますか、機能の拡大についてどのようにお考えになっているのか。  例えば、もちろん中金法によって縛られているわけですけれども、海外業務を展開するときに、今の中金法では海外業務についても農業及びその関連事業に限るということが明文化されているのか、あるいは、そういう見解をかつて大蔵、農林水産省ではある種の公式な見解として出したことがおありになるのかどうかを伺いたいのです。
  105. 堤英隆

    堤説明員 系統につきましては、非常にこの住専問題を契機にさまざまな国民皆さん方の御批判がございました。そういう中で、今農政審議会で、農協の事業あり方組織あり方につきまして御検討をいただいております。八月の上旬を目途に農政審の御答申をいただいて、できるだけ早く農林中金法の改正、農協法の改正を私どもとしては何とか取りまとめまして御審議を賜りたいということで、現在鋭意作業を進めております。  その際、農林中金の役割につきましては、御指摘のように、単協、県連、農中という三段階の中で、単協の段階で六十八兆円に上ります貯金が上がってまいります。もちろん、単協や県連におきましてもそれぞれ自己努力によりまして何とか貸し付けをしていくということ、あるいは証券運用をするという形の中での自己努力はいたしておりますけれども、現在の状況の中では、やはりどうしても中金の方に資金余剰という形で上がってまいります。そういう中で、中金としては三段階の全国機関として、協同組織性ということを踏まえながらも、やはり貸し出し範囲の拡大ということにつきまして私どもとしても検討を加えなきゃならないんじゃないかというふうに思っております。農政審でもそういう御議論が強く行われているところであります。  その際、今御指摘のように、中金につきましてはもちろん海外業務も展開しているわけでございますが、海外業務につきましても、中金の協同組織性という観点から来ます制約がございます。そういう制約との関係の中で余剰資金をどういうふうに海外においても使えるのかということにつきまして、私どもとしては、これを一つの重要な検討課題ということの中で対応させていただきたいというふうに思っております。
  106. 鮫島宗明

    ○鮫島委員 ぜひ大蔵省の方でも、共管ということですので、この中金の機能の拡大、特に海外事業については、多分海外の組合員というのはいないんじゃないかと思いますけれども、柔軟に、中金が系統資金の運用について十分な機能を果たせるような措置をお願いしたいというふうに思います。  最後に、経企庁長官、お越しいただいておりますので一つだけ聞きたいんですけれども、今、この日本の金融を取り巻く環境の中で直接あるいは二次的にさまざまな事件が頻発しておりますけれども、これはある意味では、日本が長年の規制金利という金融秩序から今度は自由金利という金融秩序に移行していかなければいけない。  ところが、その自由金利を支えるためには、預金保険機構の充実を初めとしてさまざまな仕組みが要るにもかかわらず、そういうことが不備であった。したがって、自由金利にしたはいいけれども、兵庫銀行のような例が出たり、さまざまな金融事件が発生している。やはりアングロサクソン・スタンダードに沿ったさまざまな装置を日本なりに充実していかなければいけないというのが今の時代状況だろうというふうに思います。  ところが、そういう中で余りにも欧米的基準だけで金融機関の審査、評価をしますと、やはり日本と欧米の資本主義の成り立ちの違い、資本家の投資が経済活動の基礎である欧米と、日本のように相互扶助的な、つまり小口預金の大衆資本によって運営してきた経済との違いというようなことも十分考慮に入れながら今後金融の円滑化を図っていかなければいけないのではないか。  私は自己資本比率に少しこだわったのは、日本は必ずしも自己資本を充実していくということで経営体質を強化する方向に来なかったという中で、いきなりぽんと欧米の基準を入れても、なかなか日本の経済風土にそぐわないという面があるのではないかという点が一つと、あと、自由金利が標準になるように持っていきましょうと言いながら、一方で巨大な規制金利の塊である郵貯がそのまま存在しているという非常に構造的なおかしさもあるわけでして、こういう点をマクロの視点で踏まえて、今のこの金融の、新しい日本型の自由金利の世界の構築が急がれていると私は思いますけれども、経企庁長官の御見解を伺わせていただければ幸いです。
  107. 田中秀征

    田中国務大臣 最初に鮫島さんがおっしゃった、規制を撤廃して自由な市場をつくっていく、その中にいろいろな意味での混乱があるということ、これはもうある意味では避けられないことだというふうに思います。これは、自己責任という原則を一人一人が体得すること自体大変なことで、そういう意味では、過渡期にどうしても避けられない、あるいは乗り越えなければならないことだというふうに思いますし、今現在、そういう時期にあるのだというふうに思います。これは金融行政だけではなくて、あらゆる規制の緩和、撤廃に伴うものだというふうに思いますし、それをなるべく軟着陸できるようにしていく、それがまた政治や行政の役割であろうかというふうに思っているわけでございます。  いずれにしても、バブルの経済あるいは今までの金融行政の深刻な反省の上に立って、行政の恣意的な判断を排除して金融システムの透明化を図っていく、そして健全で活力のある金融システムというものを構築していく、これが何よりも今喫緊の課題であるというふうに私は思っております。そのことが、新しいさまざまな発展分野を含めて必要なところに必要な資金が回る、融資機能が円滑化していくための大前提だろう、これはもう委員も御異論がないところだというふうに思います。  早期是正措置についてのお尋ねだということで私は受けとめてまいりまして、今の御質問の中で、いろいろなことをおっしゃいましたので、どの点が私に対しての質問であるか、ちょっとわかりかねますので、具体的にもう一度一本に絞って御質問いただければお答えしたいと思います。
  108. 高鳥修

    ○高鳥委員長 鮫島君、時間が来ておりますので、簡潔に願います。
  109. 鮫島宗明

    ○鮫島委員 例えば、自己資本比率を六%から八%に引き上げなければいけないというと、貸出総額を二五%圧縮しないとできない。そういうふうに、自己資本比率を余りにも額面どおり運用すると、本来民間金融として出てくるお金が一時的に非常に縮小してしまう危険性がありますので、その自己資本比率の厳格な適用ということをする場合には、当然そのような視点も十分留意しなければいけないのではないか。マクロ経済を運営するお立場から、そういう点についてどういうふうにお考えでしょうかというのが具体的な質問です。
  110. 田中秀征

    田中国務大臣 先ほど銀行局長答弁にも、いろいろなものを検討した上で、やはり自己資本比率というものが客観性が非常に高い、そういう答弁がありまして、検討の上そういう結論が出たということを私は先ほど聞いていたわけですが、いずれにしても、行政の恣意的な判断を排除していく、そして金融システムの透明化を図っていくということがもう何より今喫緊の課題だ、そんなふうに受けとめております。
  111. 鮫島宗明

    ○鮫島委員 どうもありがとうございました。
  112. 高鳥修

    ○高鳥委員長 これにて鮫島宗明君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十三分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  113. 高鳥修

    ○高鳥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  ただいま参考人として、日本銀行理事山口泰君に御出席をいただいております。  質疑を続行いたします。坂口力君。
  114. 坂口力

    坂口委員 前国会は、住専に明け、そして住専に暮れた国会でございました。今朝からもさまざまな住専に関するお話が出ておりますが、いずれにいたしましても、第一ボタンのかけ違いがさまざまな形でいろいろの波紋を広げているというふうに思っております。民間企業の問題として処理をしていくべき問題であったものを、国がなぜここまでにというのが国民の感情であったというふうに思っておりますが、けさからも大島委員や鮫島委員が御質問になりました新基金、名前がついていないそうでありますので、新基金の問題を私もちょっと質問をしておきたいというふうに思っております。  六千八百五十億という税投入、これを、我々の側から見ればいささかカムフラージュをするためにというふうに見えるわけでありますが、新しくまた基金をつくって、そしてそこから果実を生み出していく、こういうお話のようでございます。どういう名前になるのか、あるいはどういう内容のものになるのか、まだけさからのお話をお伺いした段階ではつまびらかでございません。とにかく、けさ銀行局長さんがお答えになりました内容は、国民の負担をできるだけ少なくするということが一つの目的である、金融システムの安定に資するということもある、こういうお話でございました。  一つは、六月の幾日でございましたか、一応大蔵大臣日銀やそれから農水省や全銀協の会長さんなんかにお話しになりましたのは六月の十八日でございますか、そのように承っておりますが、日銀が入るということになりますと、これは預金者保護ということとのかかわりでどうなのかという問題がございますし、それから、きのうでございましたか、テレビのニュースで拝見をいたしますと、証券協会の方の会長さんか何かが、我々の方もそれに参加する意思があるというようなことをおっしゃったのがちらっと出ておりました。  それがこの新基金と同じものなのかどうかということがよくわかりません。あるいはもう一つの方の基金なのかもしれませんし、ここはちょっとよくわかりませんが、どの範囲にこの新基金は広げていかれるおつもりなのか。最初の銀行協会、それから日銀農水関係金融機関、ここにとどめておかれるのか、それともそこよりもっと広げられるおつもりなのか、これが質問の第一点でございます。それからひとつお聞きしたいと思います。
  115. 西村吉正

    西村説明員 いわゆる新たな寄与の問題といたしまして、国会でも与野党を通じて御議論のありました件につきましては、六月十九日の政府与党声明にもございますように、金融システム安定化、預金者保護の見地から、関係金融機関等の資金拠出によりまして相当額の新たな基金を設置するということが第一点でございます。  そして第二点として、その運用益を国庫に納付することによりまして、結果として国民負担を可能な限り軽減するように努める、こういう趣旨で今関係者の間で検討がされているところでございます。  ところで、そのような新基金につきまして、どのような範囲の方々協力を求めるのかという御質問でございますが、この点につきましては、系統金融機関を含みます関係金融機関等に協力をお願いしようとしているところでございます。その中には母体行の立場にあります証券界の方々ということも考えられるわけでございますけれども、今委員の御指摘のございました証券業協会の会長の御発言というのは、昨年末に設置を政府として決めました一兆円のいわば旧基金と申しますか、そちらの方のお話かと受けとめておるところでございます。  なお、日銀につきましては、日銀総裁に対しても先般大蔵大臣から協力をお願いしたところでございますが、ただ、日銀資金性格にも留意しつつ、国民負担の軽減という観点とは別の見地から、民間系統による拠出とは別枠で拠出を行っていただくという方向でお願いをしているわけでございまして、具体的にどういう形での拠出日銀として可能かについては、鋭意日銀において御検討をいただいているものと承知をしております。
  116. 坂口力

    坂口委員 先ほども申しましたように、この住専の問題は、民間企業である住専の救済になぜ国がそれほどまでに介入をするかというところにあったわけであります。それがまた今回、住専と直接関係のない、ただいま名前が出ました中でいいますと証券なんかは直接関係がないわけでありますから、そういうところにも広げていくということになってまいりますと、これはまたなぜ国がそこまで一民間企業のためにするかという、また屋上屋を重ねる話になってくるわけでございまして、そこは一体どうなのかなと。  六千八百五十億を何とかカムフラージュしたいという気持ちはわからないではありませんけれども、しかし、同じことをまた繰り返しておみえになるのではないかという気がいたします。それをちょっと大臣お答えをいただいて、次の問題に入っていきたいと思います。
  117. 久保亘

    久保国務大臣 今も坂口さんお話がございましたように、民間の問題でございますから、これは当事者間において解決することが、原則としてはそのとおりだと私は思っております。そういうことができる段階でこの問題を処理しなかったその責任というものも、今度の住専問題では問われているのだと私は思っております。  しかし、これが非常に深刻な事態になりまして、もしこの問題を非常に複雑な関係にあります民間処理に任すということになりました場合に、我が国の金融にどのような状況が生まれてくるのかというようなことに対して、政府としてこれに無関心であることはできないという立場で、この深刻な事態を乗り切ることなしに日本の経済、金融に対して責任ある政策を遂行することはできないという立場から、これに対してあえて公的関与を行うことが必要という判断をしたものであります。  そういう立場から、住専問題の処理に関する方針を決めまして、これに関連いたします予算並びに法律案を御審議願った、そして六月十八日に最終的に関連の法案等を御可決いただいたということであると理解をいたしております。
  118. 坂口力

    坂口委員 無関心であっていいとは決して私も申しておるわけではございません。これは当然のことながら最大の関心を持っていただかなければならないことは事実でございますが、関心の持ち方について私は申し上げているわけでございます。解決できる段階を超えている、そのことに対する大蔵省の責任の重大さというものについて述べられたと思いますが、ぜひそこはひとつしっかりと受けとめてもらわなければならないというふうに思います。  先ほど申しましたように、企業に次から次へと、新しい基金をつくりますからその中にひとつ出資と申しますか拠出をしてくださいよ、そしてこれはその運用益によってするのですからということで、だんだんその呼びかけを広げていくというようなことになってまいりますと、企業といいますけれども、企業は株主のものでございますから、株主は国民で、国民といいましても日本の国民だけが株主とは限りません。これは外国の人も株主のこともありますしいたしますから一概には申せませんけれども、多くは日本国民でありますしいたしますから、そういうことで、新しい基金ということで、性格も全体の置かれている立場も明確にしないままで広げていくということは、これは屋上屋を重ねることになるのではないか。  鮫島議員もきょう午前中に、これは考え直すべきだということを申しましたが、私もそのように考えております一人でございます。  この新しい基金の問題、まだ十分に詰まっていないようでございますから、きょうはお聞きをいたしましてもこれ以上わかってこないような気もいたしますので、その核心のところだけ指摘をしておきたいというふうに思っております。何かつけ加えていただくことがございましたら。
  119. 久保亘

    久保国務大臣 反論申し上げるつもりは全くございませんが、私、今お聞きいたしておりまして、新しい基金が、幅広くいろいろなところから寄附を求める形での新基金というものではないということを申し上げておきたいと思います。  これは住専問題にかかわります当事者としての責任、そして公的な責任を持ちます金融機関責任、この両面において当事者がこの新基金に対して出資の御負担を願う、こういうことで進められているものでございます。
  120. 坂口力

    坂口委員 これだけにしようと思いましたけれども、今一言お話がありましたので、もう一言だけ私もつけ加えさせていただきます。  当事者だけというふうにおっしゃいますけれども銀行局長お話しになりましたように、もしも証券あたりのところにお話が行くということになれば、ニュースで流れたのはこれは旧の方の基金だったかもしれませんけれども、しかし、証券も行く範囲の中に入っているという意味のことをおっしゃったから、それは住専と何も関係のないところに広がっていくではありませんか、こう申し上げているわけで、だから私は申し上げたわけでございます。
  121. 西村吉正

    西村説明員 私の御説明が足りなかった点があるかもしれませんが、まず、今の坂口先生の御質問は二つの意味があろうかと思います。  一つは、証券の場合にこの住専問題と関係があるかないかという点でございますが、協力要請しております証券界は、住専出資者、母体行というような立場にある方もおられるわけでございまして、そういう意味では住専問題にも非常に深い関係をお持ちの証券界の方々もおられるわけでございます。そういう意味において協力をお願い申し上げているという点が一つございます。  もう一点は、この問題は、国会での御議論もございましたように、責任という観点もございますが、広く金融システムの安定を維持するために関係者がどのような努力をしていくかという視点もあろうかと思います。そういう視点から申し上げまして、金融界に広く協力を呼びかけるということは意味があることと私どもは理解をしておるところでございます。
  122. 坂口力

    坂口委員 この問題はこれだけにしておきますが、境界線は甚だ不鮮明であると一言申し添えておきたいと思います。  きょうは日銀からお越しをいただいておりますので、先にその関係の問題を済まさせていただきたいと思います。  日銀の方でお出しになっております日本銀行月報六月号というのがございまして、厚いものですが、大変興味深く見せていただきました。この中で、一九九二年、一九九三年の財政支出と一九九五年の財政支出の比較というのがございます。この中で問題になっておりますのが、構造調整についてでございます。  この中に書かれております要旨は、一九九二年、三年のときには、このときにも政府需要というのは非常に大きかった。しかし民間需要は減退をしたままで、それについてはいかなかった。景気は低迷したままであった。しかし、一九九五年の場合には、政府需要は大変な増加であり、そして民間需要はこれに対して増加の兆しを見せ始め、景気は回復の過程に乗ったかに見える、こういう趣旨ではないかというふうに思います。  ここで指摘されておりますことは、一つは財政の規模の大きさでございます。それからもう一つは構造調整が進んでいるかどうかということの二つがここで指摘をされているわけでございます。一九九二年のときには、財政出動した規模の大きさ、そして構造調整の進み方、そうしたものが九五年と比べて小さかった、あるいは少なかったということを言っておみえになるのだろうというふうに思うわけでございます。  ここで日銀にお聞きをいたします前に、通産省の方にお越しいただいております。通産省の方に、現在の構造調整の進みぐあい、これは産業によりまして、製造業と非製造業によっても違うでしょうし、非製造業の中によりましてもさまざまな違いもあろうかと思いますが、押しなべてどうなのか、あるいはまたもう少し分けたらどういうことになるのか、その辺のところをひとつ先にお話をしていただきたいと思います。
  123. 藤島安之

    ○藤島説明員 我が国の産業構造の調整がどのように進んでいるかということについて、通産省はどういう認識を持っているかというお尋ねでございます。  御案内のように、日本の経済は、これまで石油危機とか円高とかいうことで、いろいろな意味で産業構造調整を迫られてまいっておりまして、そのたびに生産性を高めまして何とか乗り切ってきた、こういうことがあるわけでございますが、今回の産業構造調整というのは、バブル経済の崩壊あるいはアジア経済の急速な工業化等で追い上げを受けている、こういうような急激な経済環境の変化が我が国の産業構造の調整を迫っている、こういう事態かと思います。  こうした事態に対しまして、我が国の企業は、徹底した業務の効率化あるいは高度化あるいは組織の見直しまでもする形での構造調整に積極的に取り組んできたところであると理解しております。こうした大変な努力の結果、ようやく、先生も先ほど御指摘になりましたように、全体の景気回復の過程の中で企業収益の改善あるいは設備投資の緩やかな回復が見られる、こういうふうな状況になっているわけでございます。  しかし、細かく見ますと、失業率は依然として高い水準を示しておるわけでございますし、構造調整の進捗については、業種や企業規模の違いによっていろいろな跛行性が見られております。大企業の製造業におきましては比較的順調に進んでいる、こういうふうに見られますけれども、非製造業あるいは中小企業におきましては、設備投資の回復のおくれに見られますように跛行性という現象が見られている、こういう状況かと思います。  したがいまして、いろいろな見方があろうかと思いますが、構造調整がどの程度進んでいるか、大まかにどう見ているかとお尋ねでございますれば、私どもとしてはいまだ道半ばかな、こういうふうな認識でおります。  こうしたことに対応しまして、私どもは企業の構造調整努力支援する、こういう観点から、事業革新法あるいは中小企業新分野進出円滑化法を施行いたしまして構造調整支援策を講じておる、こういう状況にございます。  さらに、通産省といたしましては、中長期的な経済成長の発展基盤を整備するということから、高コスト構造の是正あるいは新規産業の育成のための環境整備等、経済構造改革を実施していくということが大変重要だ、こういうことで引き続きその努力を行ってまいりたい、こういうふうに考えております。
  124. 坂口力

    坂口委員 ありがとうございました。  では、引き続きまして日銀の方からひとつお聞きをしたいと思います。
  125. 山口泰

    ○山口参考人 我が国の景気動向に影響を与えております構造調整には幾つかの側面があると思うのでございますが、その一つは、ただいま通産省の方からも御説明がございました、アジア各国の急速な工業化に伴いまして我が国の産業構造が一層の高度化を迫られているという点であろうかと思います。  現在、輸入が大変著しい増加傾向を示しておりますので、産業構造の高度化を迫る圧力というのは引き続きかなり強いものがあると存じますけれども、その中にありましても、最近は企業収益がかなり回復を見せているというようなことがございますし、また製造業の設備投資を見ましても、新たな産業分野への広がりを見せながら、このところ回復傾向を示しております。これらの点から考えますと、企業の事業展開に対する不透明感といったものも徐々に薄まりつつあるのではないかというふうに考えております。  また、構造調整というのをもう少し広く考えますと、企業あるいは金融機関のバランスシートの調整という問題もございます。これは資産価格が下落したこと等によりまして自己資本の一部が目減りした状態を指しておるわけでございますが、これにつきましても、収益が改善しておりますところから借入債務の返済が進んでおりますし、金融機関の償却も大分進展しておりますので、こういう意味での構造調整も一定の進捗が見られている状態だと存じております。  ただ、もちろん構造調整の問題はこれですべて終わりというわけではございませんで、まだ進行途上にあるということも事実だと思います。したがいまして、今後そういう構造調整の問題が日本の景気回復のテンポにどういう影響を与えていくのかということを、日本銀行としても引き続き注意して見てまいりたいと思っております。
  126. 坂口力

    坂口委員 通産省と日銀の両方からお聞きをいたしましたが、この構造調整につきまして、通産省の方は道半ばというお話をされましたし、日銀の方も、近い表現ではございましたけれども、どちらかといえば、日銀の方がかなり構造調整は進んでいるというニュアンスが強かったような気もいたしました。これは私の受け取り方でございますから、皆さん方の御指摘の内容と私の受け取り方とに若干のずれがあるいはあるかもしれません。  一九九五年末の、九月二十日でございましたか、大型の財政出動は十四・二兆円、これは過去最大級の財政出動であったことは今さら申し上げるまでもありません。一九九五年の十月から十二月までの国内総生産は〇・九%でございましたし、年率で三・六%になります。ことしになりましてからの一月から三月までの間のGDPは三・〇%、年率にして一二・七%、これは前期比でそういうふうになっております。  この数字を見ます限り、これは九月の段階の出動だけではなくて、その以前からの継続の中で起こってきたことではありますが、かなり変動が起こっているのかなという感じもするわけでございます。ただし、これから先どうなるのかということが今のところわかりません。  そこで、日銀に引き続いてお聞きをしたいのは、これは景気に結びついたというふうに結論づけておみえになるのかどうかということをひとつお聞きをしたいと思います。
  127. 山口泰

    ○山口参考人 日本銀行の現在の経済情勢判断を申し上げますと、景気は現在緩やかな回復を続けていると考えております。  幾つか整理して申し上げてみますと、最終需要の面では、輸入が大変顕著にふえておりますので経常収支の黒字が減少傾向にございますが、反面、公共投資、住宅投資というのが高水準を続けておりますし、個人消費もこのところ緩やかに回復していると考えております。設備投資もこれまでは製造業あるいは大企業中心の回復でございましたけれども、そういうところから非製造業や中堅中小企業にも少しずつ回復の波が及んでいるように思われます。  それから、景気回復という点では、企業収益の動きが大事な要素でございますが、こちらも業種や企業規模を超えまして回復の動きが広がっておりまして、企業マインドも改善傾向にあると考えております。  以上が現状でございますが、まとめてみますと、景気回復のすそ野が次第に広がりを見せ始めておるということではないかと思いますし、こういう動きが積み重なりますと、自律的な景気回復へ向けての材料がやはり少しずつふえていくということになろうかと思います。  ただ、先ほども申し上げましたように、産業構造の調整圧力などが依然残っておりますので、これまでのところは景気回復のテンポ、スピード自体はなお緩やかなものにとどまっておりまして、例えば鉱工業生産の増加テンポなどはまだゆっくりとしたペースでございます。雇用情勢も、全体として見れば依然厳しい状態が続いております。  したがいまして、日本経済がこれから自律的な、ひとり立ちした景気回復の軌道にしっかりと移行していくためには、先ほど申し上げました幾つかの景気回復の材料というものがもう少し広がっていき確かなものになることが望ましい、必要である、このように考えております。
  128. 坂口力

    坂口委員 今の御指摘は、緩やかな景気回復過程に入ってきている。具体的に設備投資等もかなり回復をしている。回復のすそ野がかなり広がってきている。しかし、自律的な回復というところまではまだ至っていない。しかしそこに向かいつつある、こういうことを言われたのではないかというふうに思いますが、そこで問題になってまいりますのが公定歩合でございます。  これは日銀の方で決めていただかなければならない話でございますが、昨年の九月八日でございましたか、史上最低〇・五%まで下がった。そのまま今日を迎えているわけでありまして、以来一年間、住専論議のときにもよく言われましたように、個人から企業やあるいは金融機関への所得移転というものがかなり進んでいる。それから、金利収入というものを生活の糧にしておみえになる皆さん方にとりましては非常に苦しいときが続いている。しかし、一方において、景気の回復は必ずしもはっきりとしない、こういう状況が続いてきたわけであります。がしかし、私は、ここで日銀としてはかなり明確に景気の回復のことを言われたというふうに思います。  そうなってまいりますと、〇・五%というのはかなりこれは緊急避難的な数字ではないかというふうに思うわけであります。これをこのままで継続するのか、少なくとも緊急避難としてのこの数字はこの辺で変更するのかということは、大変重要な判断の時期に来ているのではないかというふうに思っておりますが、公定歩合について、これ以上下がるということはないわけでありますから、どういう条件になったら引き上げるということにされるのか、その辺のところのお考えがありましたらひとつお聞きをしたい。
  129. 山口泰

    ○山口参考人 公定歩合についてのお尋ねでございましたけれども、経済は何といっても生き物でございますので、日本銀行金融政策の運営につきまして、何かこういう条件ができれば金利を変更するというようなことを前もってがっちりと決めてしまうというようなやり方はとっておりませんで、私どもは、目標がインフレのない持続的な経済成長ということであろうかと存じますので、そういうところに向けて経済が着実に動きつつあるかどうかというところを総合的に判断しながら、適時適切に政策を考えてまいりたいと思っておるわけでございます。  日本経済につきましての日本銀行の現在の判断は先ほど申し上げたとおりでございますので、政策につきましても、現在は景気回復の基盤をより確実な、よりしっかりとしたものにするということに重点を置きまして諸般の情勢を注意深く見守ってまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  130. 坂口力

    坂口委員 多分そういうお答えだろうと思いまして、過去の、日本銀行政策委員会が公定歩合をお引き上げになりましたときの文章をちょっと集めてまいりました。  そういたしますと、平成元年の五月三十日でございますか、このときの引き上げの理由は、「市場金利が上昇してきている状況の下で、金融政策の適切な運営を確保するため、」こう書いてございまして、市場金利が上昇していることが一つの理由になっております。  それから、昭和五十四年の四月十六日のときの引き上げでございますが、このときには大きい項目が四つございまして、一つは卸売物価の高騰、それから経常収支の黒字縮小、それから内外金利差の拡大あるいは資本の流出と言っていいと思いますが、資本の流出、それから円安化、この四つが理由になっているわけでございます。  現在の動きは、確かに円安の方向に多少振れております。そう大きな振れではございませんけれども、一時のことを思いますと、円安の方に振れている。資本の流出は、これは紛れもなく続いている。私の手元に国際収支統計月報がございますが、これを見ましてもかなり流出が続いておることがわかります。証券投資だけでも五兆九千億円、約六兆円近くが昨年度は外に出ておりますし、公社債投資額では九兆円近くに達している、こういう数字がございます。そして、経常収支の黒字縮小も、これはもう御承知のとおりでございます。  ただ、卸売物価の高騰、これは現在のところございません。卸売物価は現在落ちついているわけでございますが、これにはいろいろの意見があるだろうというふうに思います。やはり海外に、特に先ほどもおっしゃいましたように、東南アジア等に企業が出ている。そしてそうしたところからのはね返りと申しますか、製品の逆輸入というようなこともございますし、また規制緩和が若干進んで、そして物価を抑えているということもございますし、さまざまな要因があろうかというふうに思います。これらの問題がありますから、卸売物価の高騰というのははっきりした形にはなっていない。  経常収支、内外金利差、円安、そしてもう一つ、平成元年のときの市場金利の上昇でございますが、このときには、長期プライムレートが五・七%でございまして、公定歩合が二・五〇でございましたから、その差は三・二でございました。現在、長期プライムレートは三・六ぐらいでございましょうか、公定歩合は〇・五でございますから、大体よく似た数字ではないかというふうに思っております。  こうした条件はございますが、これらの条件のほかに、過去を見ましても、国民の側から見ました、いわゆる預金者の立場からの問題というのは余り理由に挙がったことがないわけでございます。それは公定歩合が下がりましても、底になりましても、今回ほど下がっていない。しかし今回は〇・五というふうに非常な下がり方をしたということでありますから、預金者の側から見れば非常にこれはつらいわけでございますので、特別な環境だというふうに私は思うわけでございますが、この辺のところを日銀の方はどのようにお考えになっているかということをちょっとお聞きをしたいと思います。
  131. 山口泰

    ○山口参考人 金利全体の現在の状況、なかんずく預金金利につきましての御指摘はそのとおりでございまして、現在の低金利が、特に利子所得に多くを依存していらっしゃる方々にとりまして大きな影響を及ぼしておるということはよく承知しております。私どもといたしましても、その点はまことに心苦しく思っておるところでございます。  私ども期待しておりますのは、こういう金融緩和を通じまして、やがては経済活動全般がより活発なところに到達いたしまして、インフレのない持続的な経済成長という目標が実現できますならば、結局はそのことが雇用の安定とか所得の増加につながりますので、預金者の方々を含めまして国民全般に金融緩和の利益が少し時間差を置いてもたらされるのではないかということでございまして、この点をぜひ御理解賜れば幸甚に存じます。
  132. 坂口力

    坂口委員 今さら申し上げるまでもなく、日本銀行法の第一条の目的のところには「日本銀行ハ国家経済総力ノ適切ナル発揮ヲ図ル為」、こう書いてございまして、金融機関だけの日本銀行ではありませんで、全体を見てこれは決定をしていただかなければならないわけでございますので、その辺のところをひとつ、今までは余り引き上げのところの理由には挙がってまいりませんでしたけれども国民の方にも目を向けた姿勢というものも日本銀行の方も特段考えていただきたいということを、注文をつけておきたいと思います。  さて、大蔵大臣、先ほどから大蔵大臣に聞くべきだというお話も出ておりましたが、これは日銀の問題でありますと同時に、大蔵省の大きな決定事項の一つにもなってくるわけでございます。非常に際どい状況ではございますけれども、しかし、この景気をどう判断するかということは、次の通常国会あるいはもしこの秋にあるとすれば臨時国会、財政出動をどうするのかということにも大きくかかわる話でございまして、そういう意味でここの情勢判断というのはきちっとしなければならないと思うわけです。  日銀の山口さんは非常に慎重におっしゃいましたけれども、この日本銀行月報の中の書き方はかなり踏み込んで景気回復をとらえているというふうに私は思っております。日銀立場はそういう立場だというふうに私は思っておりますが、大臣は、今どのようにお受け取りになり、そして財政面からこれでうまく軌道に乗ったというふうに思っておみえになるのか、それとも今までのは呼び水であって、やはり手を差し伸べなければならないというふうに思っておみえになるのか、その辺の今の大臣のお気持ちを聞かせていただきたいと思います。
  133. 久保亘

    久保国務大臣 財政の出動と金融の緩和という二つの要因が景気の回復の下支えになってきたことはそのとおりでございます。  ところで、現在の景気の回復の状況を、なお強力な下支えを必要としているかどうかという判断は非常に難しいところでございますけれども、私どもといたしましては、ことしの、九六年の前半の動向をもう少し見きわめなければならないと考えております。  国際会議等におきましては、IMFの判断は、日本の経済の景気回復はG7諸国の中で最も順調な回復を遂げつつあって、成長率は、このまま行けば九六年で二・七、九七年で三・一という推計を挙げております。この数字は、九五年が二・三と高くなりましたことから見ますならば、なおこの推計の数字は上がってくるものと思われるのであります。そのようなことを根拠にしながら、IMFの日本に対する見方は、もう財政の下支えから脱却しなければならないのではないか。一方、OECDは、日本の財政赤字は維持不可能な状態になりつつあるのではないかというようなことから、財政の出動によります景気回復の下支えを見直すべきだという立場をとっております。  しかし、G7各国との協議の中で、特にアメリカからは、この秋、日本は景気回復を減速させないために補正予算等によって景気回復の下支えが必要だという発言もございます。  しかし、今政府といたしましては、九六年第一・四半期、つまりことしの一月から三月にかけて、先ほど坂口さんが挙げられましたように、三・〇、年率一二・七%という昭和四十八年以来の高い成長率を示しておりますが、これが、言われるように民需中心の自律的な回復の軌道を確実なものとしつつあるのか、その見通しを、この前期の六月までの状況を十分に見きわめた上で判断をしなければならないのではないか、そういう状況にあると思っております。  ただ、景気の回復の状況は、昨年の第一・四半期以来、五四半期続いて連続プラス成長となっておりまして、今確かに回復の軌道にあると言えるのではないだろうかと思っております。これと財政による下支えの関係をどのように判断をするかということが、特に財政の厳しい事情の中で今政府が求められている非常に重要な判断であると思っておりますが、もうしばらく時間をかけたいと思っております。
  134. 坂口力

    坂口委員 もう一度ちょっとお聞きをいたしますが、財政の下支えから脱却すべきときというふうにおっしゃったのは、これはIMFの意見がそうだということをおっしゃったのですか。それとも、大臣もそのようにお考えだということをおっしゃったのでしょうか。そこをもう一遍、ちょっと明確におっしゃってください。
  135. 久保亘

    久保国務大臣 IMFの見解として申し上げました。  それで私は、そのような状況となってきているかどうかを見きわめたいということを申し上げたのであります。
  136. 坂口力

    坂口委員 六月までの状況というのは、数字はきちっと出ていないかもしれませんけれども、大体私はアウトラインはもうおつかみになっているのではないかというふうに思います。我々もあらあらの状況というのはつかんでいるわけでありまして、大臣がつかんでおみえにならないわけはないわけでありまして、恐らくここはおつかみになっているだろうと思う。  ですから、つかんでからというふうにおっしゃいましたけれども、かなりもうせっぱ詰まった問題でありますだけに、そういつまでも考えていただくわけにはいかない、早々に決断をいただかなければならないときを迎えているというふうに思っております。非常に難しい問題、際どい問題だというふうにおっしゃいましたが、非常に難しい、際どい問題であるがゆえにお聞きをしているわけでございまして、つけ加えるべきことがございましたらもう一度ひとつつけ加えていただきまして、この章を終わりにしたいと思います。
  137. 久保亘

    久保国務大臣 昨年の九月に十四兆二千二百億の総事業費の経済対策をお決めいただきまして、そのとき五兆二千億余の補正予算が組まれたわけでございますが、この経済対策はその後の景気の回復に非常に大きな役割を果たすことになりました。しかし、これを含めて、平成八年度に繰り越されましたものもまた五兆円を超える大きなものでございましたし、五月に成立させていただきました八年度の予算もまた景気の回復に配慮を行ったものでございまして、現在はこれを執行中でございます。  それで、これらのものの執行の状況等も判断をしなければならないと考えておりまして、今日の段階ではそれ以上のことを申し上げますことはお許しをいただきたいと思います。
  138. 坂口力

    坂口委員 このお話はもうこれだけにしておきたいと思います。日銀の山口さん、ありがとうございました。  ちょっと時間がおくれてまいりましたが、変額保険のことを少しお聞きをしておきたいと思います。これは既に各委員会でもやられておりますし、大蔵大臣も、弁護団の皆さん方とお会いになったということも流れておりますし、よく御存じのお話ではないかというふうに思います。  なぜ今またここでこの問題をお聞きをするかと申しますと、住専問題が一応の決着を見まして、住専の前と後とではやはりこの問題に対する環境は変わったと私は思っております。  この変額保険の内容のことにつきましては今さらもう申し上げる必要もありませんが、平成五年の三月六日の草川さんの質問で、変額保険のいわゆる契約件数は百十九万件、それで保有金額は十二兆五千億円というふうに大蔵省の方から答弁がされておりますが、この数字はそれ以降変わっておりますか。
  139. 福田誠

    ○福田説明員 お答えいたします。  件数、金額ともその後減少いたしておりまして、平成八年三月末の保有契約件数は約九十万九千件、保有契約高は約八兆七千億円でございます。
  140. 坂口力

    坂口委員 成り立ちの経過は、昭和六十年の五月に保険審議会の答申がありまして、六十一年の十月に発売が開始されました生命保険でございます。日本は保険と位置づけられまして、一任勘定になっております。米国の方は保険であると同時に証券と位置づけられまして、自分の意思で投資先を選べる形になっております。ここが大きく違うと思います。  大蔵大臣にまずお聞きをしたいのは、この保険の許可と申しますか、許可の仕方に私は問題があったのではないかというふうに思っておりますので、まずお聞きをしたいわけでございますが、変額保険の場合、その投資によりますリスクを背負いますのは、生命保険会社ではなくて、これは個人の契約者が背負うわけでございます。  本来、生命保険というのは、掛金をする人すなわち個人の契約者は、貨幣価値の変動というのはありますけれども資金の運用につきましてはそのリスクは背負わないわけであります。しかし、この変額保険は保険会社の運用成果に応じて保険金額が変動するわけであります。これは損が出れば契約者がそのリスクを背負うということになります。これは保険の性格ではなくて、証券の性格だというアメリカのSECの主張の方が私は正しいと思っております。  これが審議会にかけられて日本で審議されて、そして発売されますときに、恐らく私は、もうアメリカあたりでは先行していたわけでありますから、そうしたSECあたりの意見というものも十分に加味をされたのではないかと思うのですが、しかし、それが十分に生かされずに日本の中で発売になった。ここに私は、出発点において大きな問題があったのではなかったか、こういうふうに思いますが、この点について、詳しい大蔵大臣でございますから詳しいことは申し上げませんが、どのようにお考えでございますか。
  141. 福田誠

    ○福田説明員 お答えいたします。今御指摘のように、この変額保険の本質は、自己の契約に対応します資産の運用成果を直接自己の契約の保険金額あるいは解約返戻金額に反映させたいという消費者ニーズに対応したものでございます。  ただ、御指摘のように、このような保険商品につきましては従来の定額保険とは異なる面もございますので、この実現に当たりましては、保険会社におきます変額保険を管理する分離勘定の設置、あるいは資産評価の方法、それから顧客へのディスクロージャー、さらに募集体制等につきまして所要措置を講じた上で、販売を認めたものでございます。  特に募集体制がいろいろ問題になっているわけでございますが、具体的には、当局におきまして、募集上の禁止行為として、例えば将来の運用成績についての断定的判断を提供する行為とか、あるいは特別勘定運用成績につきまして、募集人すなわち保険会社側が恣意に過去の特別期間を取り上げ、それによって将来を予測する行為、あるいは保険金額ないし解約返戻金額を保証する行為などを禁止行為といたしまして通達を発出するなど、所要体制整備を図って実現したものでございます。
  142. 坂口力

    坂口委員 所要措置を講じてというふうにおっしゃいますが、それが実行されていないものですから問題が起こっているわけですね。これで三百件以上の訴訟が起こって、大きい企業相手に、大きい銀行相手にこれだけたくさんのものが同種のことで起こったということはほかに余り例を見ないのじゃないかというふうに思いますが、こういったことが起こったということは、その所要措置が十分に行われていなかったということになるのだろうというふうに思います。  大蔵省の方が、初め通達を出されたことでありますとか途中で口頭で注意をされたとか、いろいろやられたこと、経緯というのは聞いておりますし、それはそれでやられたというふうに私も思っておりますけれども、しかし、その効き目が全然なかったということであります。そして、そのまま放置されて今日を迎えているということでございます。  昭和六十一年の七月に、最初、銀行局長通達ということで出されておりますし、それから六十二年の二月に某生命保険会社へ立り入り指導をしておみえになりますし、また六月にはリスク説明を指導しておみえになりますし、それから六十三年の五月には口頭指導もされたというようなこともございます。そういうことはありますけれども、しかし、それ以後、六十三年以後は何らなかった、そして問題が次々と発生をしたということでございます。  それで、住専との共通点を見ますと、いずれもバブルの中で起こったということでございます。しかも、銀行が主役を務めたということでございます。これは両方とも共通をいたしております。  ただ、違っておりますのは、住専の方は企業が、個人もあるかもしれませんけれども、企業が主体でございます。しかし、この変額保険の方は個人が主体でございます。これが違います。そして、住専の方は貸し手の方が困っておりますし、こっちの方は借り手の方が困っているという、結果から見ますと逆の結果になっている。  それで、大変な問題になって訴訟が相次いでいるわけでございますが、加入をしましたときの金利ですね。最初、銀行から借りました金利が一体平均してどのぐらいの高さであったのか。その金利は変わっていないわけですね。固定されている。そして生命保険の方にそれを出した、それで生命保険の方で運用する方は景気の変動によって動いている、こういうことでありますから、初めの、高いままの金利があるわけであります。これはわかっておりますか。
  143. 福田誠

    ○福田説明員 お答えいたします。  銀行が行ってまいりました融資の利率は、当然そのときの金利水準を反映して決められているものと存じますが、いずれにしましても、債務者と金融機関との間の私法上の契約に基づいて決定されておりまして、私ども当局といたしましては、資金使途別のそのような融資の利率については報告を求めるといったことは行っておりませんので、御指摘の変額保険に係る融資の際の金利というものについては把握いたしておりません。
  144. 坂口力

    坂口委員 これはどうされますか。高い金利のままになって大変な苦しみを味わっている。個人のそれぞれの契約ですから、契約するときにちゃんと見なかったといえば、それはそのとおりなのかもしれませんけれども、しかし、これは勧誘の仕方に問題のあったことも事実でありますし、それから、最初、これをスタートさせるときの許可の仕方にも私は問題があったというふうに思っております。  バブルの中で起こった特別な出来事として、住専の問題が大きく取り上げられて解決をされた。一方におきまして、バブルの中で特別な出来事として起こったことの一つのこの変額保険というものは、何ら手を差し伸べることなくそのままになっている。何らかの方法をここで講じないと、この人たちは、早く亡くなった人はよかったけれども長生きをした人こそ大変な目に遭っている、こういう事態になっておりますので、この辺につきましては政治が何らかの手を差し伸べるべきときに来ているのではないか。住専の前と後とでは環境が違うと申しましたのは、私は実はそのことでございます。  大臣、この辺のところは十分に御理解をいただいているわけでございますから、ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  145. 久保亘

    久保国務大臣 先ほどお話がございましたように、訴訟をされている方々の弁護団からのお話伺いました。また、つい先日、東京の世田谷にお住まいの方から長いお手紙もいただきました。  私も、これらの方々の御事情もよく伺っておりますので、大蔵省として何ができるのか、どういうことをしなければならないのか、よく検討をして、結論といいますか、やるべきことは何があるのかということをはっきりできるように努力をいたしたいと思っております。
  146. 坂口力

    坂口委員 ぜひひとつお願いをいたします。  大蔵大臣にお会いをした人たちは、よく大蔵大臣は聞いてもらった、大変いい人でした、こういうふうに言っておりますので、まあ言ったからどうのこうのというわけじゃありませんけれども大蔵大臣として、これは特別な環境の中で起こった問題でありますので、何かひとつ手を差し伸べる方法というのはあるだろうというふうに思います。住専も個人企業ならば、この人たちも個人、ぜひひとつ手を差し伸べるべきだということをつけ加えておきたいと思います。  さて、あともう一つの問題は、細かな問題をちょっと続けましたので、大きな課題をひとつお伺いをし、そして議論をしたいと思うのです。  まず、財政的に非常に厳しくなってまいりましたその中で、超高齢社会に突入をしようとしているわけでございます。これからの問題として一番大きな問題はこれにどう対処するかということでございますが、福祉財源というものを税で賄っていくのか、それとも保険を主体としていくのかということは、これは大変大きな問題でございますし、そしてまた、言われてからもう久しい問題でもあるわけでございます。  この大きな問題は、そのときそのときの内閣がかわったからといって、そう簡単に大きな方針が変わりましてもこれは国民が迷惑をするわけでありますから、例えば年金のあり方でありますとか、あるいはそのほかの福祉のあり方だという継続した問題は、これは引き続いてやっていかなきゃならない問題であります。それだけにこれはよく議論をし、そして決定をしていかなければならないというふうに思っております。  そこで、年金や医療は保険として今日まで成熟してまいりました。今回また、もし臨時国会がありましたら、恐らく介護の問題が出てくるのであろうというふうに思いますが、厚生省からは、介護保険ということで、介護保険制度というものが検討されております。もし介護保険ということで保険ということになりますと、これで年金、医療、介護と三つ保険がそろうわけでございます。  それはそれで一つのいき方であるかもしれませんけれども、そうすると、大体あらあら、この超高齢社会に向かいます財源は保険を主体にしていく。保険だけじゃありません。それは税の方も何割かの割合はあるということはよくわかっての上の話でありますけれども、主体としては保険を主体にしていくというふうに決まったかの印象を受けるわけでございます。  まずお聞きしたいのは、ここのところは、これはもう一番御関係の深いのは大蔵大臣と厚生大臣と、それから労働大臣も非常にこの問題には御関係が深いというふうに思いますが、ここは保険でいくということが正式に決まったんでしょうかというところをまず聞きたいわけでございます。
  147. 菅直人

    ○菅国務大臣 ただいま坂口委員の方から、社会保障に必要とする費用について、税かあるいは社会保険か、そういうことについての考え方、あるいは今後の方向としてそういう方向を決めてあるのかという御質問だったと思います。  若干一般論に戻って考えますと、社会保障に要する費用は高齢化の進展に伴ってやはりある程度増大せざるを得ない状況にあると認識しております。この財源については、一般的に言いまして、税、社会保険料、それ以外には受益者負担という、この三つがあると思いますが、個々の制度の性格に応じてこれらを適切に組み合わせて安定的な財源確保を図っていく必要がある、基本的にはそのように思っております。  そういう中で、先ほど坂口さんも言われましたが、年金、医療の分野では従来より社会保険方式で運営がなされてきておりまして、その考え方としては、社会保険料というのはある意味では受益と負担の関係が比較的明確であるということ、また、低所得者に生活保護のような形で税から給付をするということもあるわけですが、低所得者とかそういうことの限定なく加入者全員を給付対象とするという場合に社会保険というものがなじみやすいということ、さらには、利用者が一つの権利としてサービスの選択や受給ができるという面でも社会保険の方がよりマッチするのではないかということ、こういった考え方に基づいて、これまで社会保険料負担中心にこれら年金、医療についての枠組みをつくってきたというふうに理解しておりまして、今後とも、年金、医療に関しては基本的にはこうした考え方が必要ではないかと考えております。  そういう中で、ただいま介護保険あるいは公的介護制度についてのお尋ねでありますけれども、さきの国会開催中に、いろいろとそれまで一年余りにわたって老健審で議論をいただきました。また、その前には社会保障制度審議会でも議論をいただきまして、そういう議論の中では、公的介護制度についても社会保険の形で基本的には組み立てるのが適切ではないかという考え方の御提言をいただきまして、厚生省としてもそういう考え方に沿って一応案をつくり、法案要綱という段階までつくって提示をさせていただいたわけであります。  しかし、その内容についても、御承知のように、公費つまりは税からの負担も五割あるいはそれを超えるぐらいの負担を予定いたしておりまして、そういう点では、社会保険的な考え方には基づいているけれども、負担の全体の割合からいえば税が占める部分も半分あるいはそれを超えて、組み合わせで制度を一応考えているというのが、さきの国会の終盤における、その時点における政府関係審議会あるいは与党皆さんとの考え方での段階であります。  しかし、おっしゃるとおり、一般的に言えば、この問題、社会保障制度をどういう組み合わせでやるかというのはいろいろ議論があって私は当然だと思っております。ただ、聞いていただいた形で言えば、現時点の厚生省のさきの国会終盤で用意した公的介護の考え方は、やはり社会保険料を一つの柱とした制度で考え方を提示しているというのが現状であることを御理解いただきたいと 思います。
  148. 坂口力

    坂口委員 ありがとうございました。  大蔵大臣にも同じようなことをお聞きしたいわけでございますが、大蔵省は大蔵省としての考え方もあるのだろうというふうに思いますが、消費税論議が行われましたときに、高齢化社会に対応するための財源として消費税というものが議論になりましたし、これはそれだけの説得力を持っていたというふうに私は思っております。そういう意味で、これからの、主に福祉、残されているところは福祉でございますが、そこに要するものを税を主体としていくかあるいは保険を主体としていくかということは、これからの消費税論議あるいは税制全般の論議にも大きな影響を与えるものだというふうに私は思います。  そこで、大蔵大臣として、同じ質問をさせていただきますので、お答えをいただければ幸いです。
  149. 久保亘

    久保国務大臣 今、厚生大臣からお答えを申し上げましたけれども、いずれにせよ高齢化社会に向けて需要が大きくなってまいるわけでございますから、その財源をいかに確保すべきかということは、これからの大変重要な課題となってまいります。  したがいまして、今日までの議論の経過や、また国会あるいは政党におかれてのいろいろな御議論も十分尊重をしながら、どのような組み合わせになるかという問題であろうかと思っておりますが、この負担のあり方につきましても、国民的な議論を広く起こす必要があるだろうと考えております。情報の公開ということがその面でも大変必要になってくるものだと思っておりまして、そういう中で、今後の積極的な国民的御議論もいただいて、この組み合わせをどのようにしたらよいのか決めてまいることになろうと考えております。
  150. 坂口力

    坂口委員 きょうは労働大臣にも御出席をいただいておりますが、先日、橋本総理が六十五歳までの継続雇用のお話をされました。  これは、今まで厚生省、労働省の間で、年金の改革のときにも起こったことでありますが、年金改正で六十五歳まで引き上げていきますためには、どうしても雇用の延長というものが必要になってくる。定年の延長とまではいかないけれども、雇用を何とか延長するような方向にいかないかどうかという議論が出たことも記憶をいたしております。そして、五十五歳の定年から六十歳へ引き上げるのに、約十五年でございましたか、十年か十五年かかった。これから六十歳から六十五歳に引き上げるのにも、多分十年か十五年の年月は要するのだるりというような意見もあったと思うわけです。  一応数字としては、六十歳定年あるいは六十歳までの雇用延長というのは、九割近くがそうなっているというふうに数字としては出ているというふうに私もお聞きをしていたわけでございますが、最近、あちらこちらいろいろの御意見を聞いてみますと、企業として、制度としては存在をいたしますけれども、なかなかその制度どおりにいかなくて、六十歳までなかなかおれないような環境があちこちである。聞かれれば制度としてはあるんだけれども、なかなかそこまでいかないということを耳にするわけであります。  現在の経済情勢も反映しているというふうに私は思いますが、これは年金のこれからのあり方とも大変関係してくることでございますし、そしてまた、改めて六十五歳までの継続雇用というお話が出ましたので、新しい角度からのその辺の御検討がありましたら聞かせていただきたい、そんなふうに思いまして、きょうお願いをした次第であります。
  151. 永井孝信

    永井国務大臣 お答え申し上げます。  労働行政については、坂口先生、労働大臣も御経験されまして、大変御協力いただいておりますことに心から感謝を申し上げておきたいと思います。  今、先生から御指摘がございましたように、橋本総理が、六十五歳までの雇用の継続は極めて重要だということを内外に示されているわけでありまして、私も同じ考え方で、労働行政を預かる立場から、その推進を図ってきているところであります。  先生も御指摘になりましたけれども、六十歳定年制ということが十数年かかりました。それは、六十歳から年金の支給が始まっていくという、そのこととのリンクの関係もありまして、それに合わせていこうということで、大変な努力が労使双方でもございまして、ようやくこの六十歳定年制ということが法制化されまして、平成十年の四月一日からこれが施行されることになっているわけであります。  しかし、厳しい今の経済状況の中ではございますが、労使のたゆまぬ御努力もありまして、現在まだ義務化されていない段階で六十歳以上の定年制をとっているところ、これは全企業の八五・八%に上っています。そのうち、六十五歳以上の定年制を定めている企業が五・五%含まれておりまして、これは、主として六十歳あるいは六十歳以前で退職した人のいわゆるノウハウやあるいはその技術、技能というものを活用していこうということから積極的に高齢者を採用している企業などがありまして、六十五歳以上の定年制は五・五%という数字になっているわけであります。  しかし、御案内のように、リストラが盛んに叫ばれている中で、まだ六十歳定年制が義務化されていないという段階でありますから、一応労使間で六十歳の定年制を定めているところでも、いわゆる勧奨退職などという若年の退職がまだまだ最近は事例が多うございます。したがって、人生の生活設計をきちっと確立させるためにも、せっかくつくった六十歳定年制というものがその企業において実施をされていくとするならば、それを確実なものにしてもらいたいということを私ども指導をし、お願いもしているところであります。  また、六十五歳になりまして年金の支給が行われるという、この関係につきましては平成二十五年が予定されているわけでありまして、それまでに段階的に六十一歳から年金の支給開始の年齢が引き上げられていくわけでありますが、それに必ずしも合わせるのではなくて、それ以前の段階から、六十歳を超えた人たちで、働きたいという意欲を持っていらっしゃる方、希望を持っていらっしゃる方は全員就職できるように、そういう立場で今、高齢者の雇用継続給付なども行いながら対応しているところであります。  なお、そのほかに今考えておりますことは、六十五歳の定年制をしくまでの段階といたしましても、フルタイマーでなくてもいい、その人の希望によっては、三時間なり五時間なり、働ける時間帯で働けるような仕組みができないか。あるいは、自分の持っている技術、技能を生かして自分の家庭で作業することができないか。あるいは、パソコン時代でありますから、そういう情報通信の作業に高齢者の皆さんも積極的に進出してもらうような道筋ができないか。いろいろなことを今考えまして、検討を進めているところであります。  なお、その場合は、人事制度であるとか、労務管理などの制度がどういうふうにあるべきかということも当然のこととして検討していかなくてはなりません。そのことに今具体的に着手をしているところでありまして、それにいたしましても、六十歳以上の方々に働いていただくということは、保険料の関係からいきましても大きなメリットが労働者にも企業にも国にもあるわけでありますから、できるだけ多くの方に働いていただこう。  少子化社会ということがまた片方で言われておりますが、これまた先生もう御苦労いただいてまいりましたように、育児休業制度もできました。そしてまた、介護休業制度も平成十一年から制度化されようとしております。そのことによって、少しでも子育てにそれぞれが力を尽くすことによって、数字の上からでいきますと高齢化社会という率が少なくとも下がってまいるような、そういう取り組みも必要なのではないか、これも労働行政に課せられた大きな責任だと私は考えまして、今懸命の努力を続けているわけであります。  いずれにいたしましても、国民的なコンセンサスを得ながら、六十歳以上の方々の高齢者の就職機会をつくり上げていくこと、また、それに企業も社会もきちっとこたえていただくような、そういう仕組みをつくり上げていくこと、それに必要な雇用保険などについてはさらに充実をしていく必要がある、このような立場で取り組んでおりますので、これからも一層の御理解と御協力を賜りますように切にお願いを申し上げる次第であります。
  152. 坂口力

    坂口委員 ありがとうございました。  先ほど一つ聞き忘れたのですが、大蔵省が財政投融資の上乗せ金利を圧縮するというお話が、先日のある新聞にちょっと出ました。財政投融資の上乗せ金利を圧縮し、近い将来市場金利と完全に一致させる方針を固めたという記事が先日出たわけでございまして、これは議論の分かれるところであろうというふうに私も思っておりますが、年金財政を守るという立場に立つ者といたしましては、多少のことはやむを得ないのではないかというふうに私は考えてまいりました一人でございます。もしこのことが事実でありますならば、いろいろと慎重に御検討をしていただきたいと思いますが、もし関係の方、お見えになりましたら……。
  153. 溝口善兵衛

    ○溝口説明員 その件につきましては、研究会でそのような趣旨の御提言があったというふうに聞いておりますけれども、まだ省内では具体的な検討に至っているとは聞いておりません。ただ、そういう新聞報道、観測報道があったのは事実でございます。
  154. 坂口力

    坂口委員 ありがとうございました。慎重にひとつそこは御検討をいただきたいというふうに思います。  最後質問にさせていただきたいというふうに思いますが、いずれにいたしましても、年金であれ保険であれ、これから大変な山を登っていかなければならないことだけは事実でございます。  厚生大臣にもう一つだけお聞きをさせていただきたいというふうに思いますが、一番大きな問題はやはり介護だろうというふうに思います。それが保険なのかそれとも一般の財源なのかということは別にいたしまして、大きな問題は介護であることだけは事実であろうというふうに思います。  これも各地域から出ております言葉といたしまして、二年ぐらい前でございますか、新ゴールドプランを作成するという意味で、厚生省が中心になりまして各都道府県の実態調査をされまして、その調査に基づいて現在進めておみえになるというふうに思います。  その実態調査をされましたときのその数値というものが、厚生省で二〇〇五年なら五年に大体このぐらいな数値になるという数値をお示しになった、その示された数値に沿って皆がやっているものでございますから、現場の市町村が現在抱えております寝たきりやあるいはそれに近い人たちの数と、そのときに提出をいたしました数とが合わなくなってきているわけでございます。ぜひひとつその辺の事情を勘案していただきまして、早急にもう一度その辺のところをきちっとひとつ検討をしていただくようにお願いを申し上げたいと存じます。  御答弁をいただいて終わりにしたいと思います。
  155. 菅直人

    ○菅国務大臣 今の御質問といいましょうか要請は、寝たきりとかあるいは要介護者、そういう見通しということで理解してよろしいのでしょうか。——これは、確かに数字に若干の変化はあるかもしれませんが、子供の出生率ほど大きくは変化しないというか、見通しですから、もう今ある方の高齢化ですので大きな変化等はないと思っておりますが、御承知のように、平成五年が寝たきりの老人九十万というふうにありまして、平成十二年、ちょうど二〇〇〇年が百二十万、二〇一〇年が百七十万、そして二〇二五年が二百三十万、こういった勢いで伸びていくというふうに考えております。  また、その中で、若干今の御質問関係するかと思いますが、介護保険の保険給付の対象となる高齢者の方は、今の予測では、六十五歳以上の全高齢者で見た場合には約一三%、八十歳から八十四歳までの層では二五%、八十五歳以上では約五〇%というふうに見込まれております。こういう数字を前提として、先ほど申し上げたように一応の仕組みを現在考えて、大綱のところまで厚生省としてまとめたものをいろいろな形で御提示をいたしているところです。  先ほどちょっと答弁するときに加えればよかったのですが、私も、社会保険でいくべきか税でいくべきかというのは基本的にはこれは国民の選択であるというふうに思っております。  過去の経緯でちょっと見てみますと、ちょっと古いのですが、昭和五十七年の臨調とか、比較的新しいところでは平成七年の社会保障制度審議会などでは、先ほど申し上げたように、増大する社会保障の財源としては社会保険料の負担が中心となるのが適当であろうとか、当然であろうとかというような趣旨のこともいただいてはおります。  しかし、これから先、国民負担率の中でよく税負担が二〇%程度で社会保障関係が合わせると二〇%弱ということになっておりますから、これらのものをどういう形で負担をしていくかというのは、やはり国民皆さんの納得がいただける形というのが最も重要な要素ではないか、こう考えていることを申し添えておきたいと思います。
  156. 坂口力

    坂口委員 ありがとうございました。
  157. 高鳥修

    ○高鳥委員長 これにて坂口力君の質疑は終了いたしました。  次に、矢島恒夫君。
  158. 矢島恒夫

    矢島委員 きょうの質疑の中でも、新たな寄与、いわゆる新基金構想についての問題がいろいろ出されました。しかし、答弁その他を聞いておりますと、全然中身がはっきりしないという状況が今日の状況、具体的にどういう形になるかはそれぞれ検討中だというのが今の状況であり、基金の総額とか、あるいはそれぞれの拠出額というものもお答えいただけない、こういう状況に今あるわけです。  やはりいろいろ既に新聞報道もされているわけでして、ですから、大蔵省として、大蔵大臣も十八日にいろいろと要請されたわけですが、いわゆるこの新基金というものを、大体これくらいの目安でこれを運用していって、十五年後に、六千八百億円なら六千八百億円のどの部分、どれくらいの部分が実際に穴埋めできるのかというような、いわゆる国庫に戻る、それらの目安というものがあった上で要請するのだろうと思うのですよ。何もなくて、新しい基金をやりますからぜひひとつ御協力いただきたい、表面上はそうかもしれませんが、中身、具体的になるにはそうなる。  ですから、個々の金融機関の負担額がどうなっているかとかこうなっているかということじゃなくて、少なくとも、大蔵省のこの新基金に対する目安、どれくらいを考えているのか、そしてそれによって運用益をどう考えているのか、その辺お答えしていただけるのかいただけないのか。私の持ち時間は物すごく短いので、そのどちらかということだけでもお答えいただきたい。
  159. 西村吉正

    西村説明員 新たな基金を設置いたしまして、その運用益を国庫に納付することによりまして、結果として国民負担を可能な限り軽減する、六千八百億円の国民負担を可能な限り軽減するよう努める、このような趣旨で関係者にお願いをしているわけでございます。それをどのように具体化していただくかということは、関係者方々がどのように受けとめていただくかということにかかっているものと理解をしておるところでございます。
  160. 矢島恒夫

    矢島委員 やはり、大蔵省自身が持っておる目安についても、どうもお答えいただけないようであります。  ただ、実際に具体的な金額まで挙げていろいろ報道されているわけですよ。ですから、進行状況を可能な限り明らかにしながら論議していくということは今後とも必要なことだろうと私は思うのですが、そういう点をひとつ要求しておきます。  そこで、そういうお答えで、まだ大枠その他も決まってない形なのですけれども、この問題、先ほど大蔵大臣も、参議院の方では新基金の問題がいろいろ論議された、このようにお答えになったように、六月十七日の参議院の金融特別委員会で、我が党の筆坂議員が大臣質問しているかと思うのです。  そのときの筆坂議員の質問の中身というのは、六千八百億円というのは赤字国債に依存している、だから、結局それには利息がかかってくる。一方、この新基金の方は、ほぼ同額ということで当時で七千億円ぐらい。今は九千億円という報道も一方ではあるようですが、いずれにしろ大体同額。これを十五年間運用して、その運用益で穴埋めする、こういう方向だというので、結局六千八百億円に対する支払い利息を賄うだけにすぎないのじゃないかということを、おおよそそういうことを質問したかと思うのです。  それに対して、大臣の御答弁ですけれども、明確に特例公債で充当したということになれば、そういう解釈も成り立たないわけではありませんと。しかし、大臣は引き続いて、この新しい基金の問題に触れながら、「新基金構想は、一つ考え方として今そういう構想が成り立つかどうかの論議をしている段階でございます。」恐らく先月の十七日の状況はそういう状況だ。その後の進展状況をいろいろ見てみますと、やはりその方向でずっと新しい基金をつくる方向が進んでいる、こう見ることができると思うのですね。  そこで、そういう上に立って大蔵大臣にお聞きしたいのですけれども、この新基金構想で、六千八百億円という財政支出、これを軽減すると言っているけれども、本当になるのかなというのが、これが一番心配なところなんですね。  先ほど私は利息の問題を赤字国債との関係で取り上げましたが、まあお金に色がついてあるわけじゃありませんから、これがこっちでこれがこっちでというわけにならないと思うけれども、しかし、少なくともこの新しい財政支出が出てきたから赤字国債があのようにふえてきたわけなんだから、やはりそれはそう考えることも可能だと思うのですね。  そうしますと、本当に通常国会の中でいろいろ論議されました。大臣も認められたように、母体行の責任は重大である、それで新たな寄与を求めなければならない、それで国民の負担を軽減したい、こういうことになるのかならないのか。さらには、住専処理に血税を投入するなというのが圧倒的国民の世論であったわけですが、この国民の声にこたえるものにならないのじゃないかと思うのですが、その点、どうお考えですか。
  161. 久保亘

    久保国務大臣 これはもう長い時間をかけて国会でも御論議をいただいたことでございますが、国民負担をなくするようにという御意見もたくさんございました。  私どもとしては、住専問題を処理するというこの課題を解決してまいりますと同時に、このことに投ぜられた財政資金をどのようにして国民の負担とならないよう最善の努力を払うかということで進めてきたわけでございまして、新しい基金、新たな寄与を行うことによって財政支出がなかったと同じようになるかどうかということは今は断定的には申し上げられないと思っております。  しかし、そのことによって、国民負担となるべきものを軽減する努力が相当な部分にわたって行われたということはまた結果としても残るであろうし、今この新基金の方式を検討していただいております中でも、その運用益が国庫に納入されるということによって目指したものが果たされることになるだろうと考えております。
  162. 矢島恒夫

    矢島委員 そういうお答えですけれども、この新基金というものが、六月十八日に大臣がそれぞれ要請された、政府与党の追加負担に関する声明というものも出された、それにこたえるものとしてこの新しい基金というのが出てきたかと思うのですけれども、六月二十日付の日経の報道によりますと、これは梶山官房長官ですね、「金融機関はせめて三分の一程度は現金で出すべきだ」と。「「あんな作文なら……」と最後まで納得できない様子だった。」という報道もあります。  また、同日の朝日の社説の中には、「その中身たるや、」いわゆる新基金の中身です。「「金融機関などのリストラで税収を増やして、補てんする」とした三月の追加措置と同じように、つじつま合わせで国民の目を欺くものでしかない。」という報道もある。  この新しい基金なるものが、大臣のこれまでの国会での答弁に沿うものになっていないと私は思うのですが、大臣の本音をちょっとお聞きしたいのです。これで大丈夫なのか、それとも現金で三分の一、私たちはずっと一貫して母体行責任主義というルールを貫けということでやってきたわけですが、これとのかかわり合いで、どうお考えですか。
  163. 久保亘

    久保国務大臣 いろいろな場合を考えますならば、完璧なものができれば一番望ましいと思っておりますが、矢島さんも御承知のように、これは政府金融機関に対して強制できる性格のものでない、こういう中でどれだけ公的責任を感じて協力してもらえるかということで私どもは可能な限りの協力要請してきたのでありまして、これはつじつま合わせのまやかしたと言われると大変残念な気持ちがいたします。  もし、それじゃもうこれは単なるつじつま合わせにすぎないというなら、このことはやめた方がいい、こういう御主張になっているのかどうか、そこのところはやはり明確にしていただきたい。私はそう思わないからであります。
  164. 矢島恒夫

    矢島委員 この新基金の中身というものが、先ほど来出ておりますように明確になっていない。いずれにしろ各金融機関が今検討中という状況。それから、六千八百億円というものに対して、運用益が十五年間でどれほどになるかということももちろん明確にはなっていないし、大臣も今もお答えできる段階じゃない。そういうもので、じゃこれでいいぞとは、これはやはり言えないわけです。  しかし、私たちは、やはり母体行責任主義のルールという点からいけば、梶山さんも言っているのだから、ひとつ決断を要するときじゃないかなと思いますが、時間がいずれにしろありませんので、この基金の問題でもう一つどうしてもお聞きしておきたいことがありますので、そちらに移ります。  日銀要請している点なんです。  今までいろいろな報道の中でも、それから二月二十二日の松下総裁の講演の中でも、日銀としては、資金供与を行う際の原則、四つの原則があるわけですけれども、これとのかかわり合いでなかなか受け入れられないという状況が非常に強調されているわけであります。  きょうの西村局長答弁ですと、いろいろと検討し、どうやったらできるかということを日銀の方で今検討していただいているところだ、こういうわけですけれども日銀法の二十五条による出資とかあるいは特別融資、これらについて今までも幾つかの例があるようです。しかし、これは昭和四十年ぐらいからずっと余り事例はなかったけれども、最近、あの安全、協和の問題を含めて次々と発動されているという状況にあると思います。  そして、この住専処理にもこれでいこうということになりますど、私、この発動条件が緩和されて他のノンバンクあるいは第二地銀の問題、不良債権問題解決に日銀資金を次々と投入することになりかねないと非常に危惧するわけなんですけれども、もう一つの問題としては、日銀から国庫への納付金、これにも影響を与えていることが、九六年度の予算を見ますと昨年度より約千九百五十億円ぐらい減っていると思うのです。  それはともかくも、要するに日銀資金を使うということは母体行の責任を免罪することじゃないか、これは国会における大蔵大臣答弁に沿うものではないのではないかと思うわけです。その点について。
  165. 久保亘

    久保国務大臣 日本銀行総裁に六月十八日お目にかかりましたときに私が申し上げておりますのは、新たなる寄与、つまり国民負担軽減のための新たなる寄与日銀拠出をお願いするということを申し上げたのではありません。もし新たな基金等がつくられる場合、この基金の果たす公的役割というものに対して日銀金融機関等拠出とは別枠で協力することが金融システムの安定や預金者の保護等に役立つかどうか、そういうものが可能かどうかについて日銀としてもぜひ御検討をいただきたいということを私申し上げたのでありまして、この私の要請に沿って検討が行われているものと考えております。
  166. 矢島恒夫

    矢島委員 時間になりましたので、最後に一言、意見だけ申し上げたいと思います。  いずれにしましても、いわゆる穴埋めに公的資金を使うというので問題だということを指摘したいと思うのです。  六月十九日の政府与党の追加負担に関する声明というのにも、日銀資金性格に留意し、金融システム安定化の目的で日銀資金の活用を要請する、こういう非常に慎重な文章、つまり、金融システムの安定というところを重点にしながら、預金保険機構へのつなぎ融資だとかあるいは整理回収銀行にも融資できる機能を持たすとか、いろいろ検討されているようですけれども、一方で、日銀が融資すること、出資することによって他の金融機関出資しやすいようにする、いわば一石二鳥のねらいがあるのではないか。そうだとすれば、こういうこそくなやり方はやめるべきだと私は思うのです。私たちは母体行責任主義のルールということで追加負担、これを要求してまいりましたが、このことと本質的に異なるものではないかと思うのです。  私、まだ明確でない部分がたくさんあるので、この当委員会においても、委員長、ぜひやっていこうということ、それから、特に大蔵省には問題点についてぜひディスクローズを真剣に考えてもらいたい、この二つのことを申し上げまして、質問を終わります。
  167. 高鳥修

    ○高鳥委員長 これにて矢島恒夫君の質疑は終了いたしました。  次に、海江田万里君。
  168. 海江田万里

    ○海江田委員 通常国会も終わりまして一カ月ですが、地元を回ってみまして、やはりこの住専への税金投入、これは国民の怒り、国民のというより正確に言うとやはり納税者の怒りということなんですが、かなり厳しいものがありますね、これは。  そこで、これは税金の使われ道でちょっとこれまでの議論と違うのですが、大蔵大臣には、最後お尋ねをしますので少し聞いておいていただきたいのです。  私のところに、ある業者からこういう問題があるんだということで資料を持ってきまして、その資料というのは、役所、正確に言いますと、全国の大学や研究所が業者に物品の発注をするわけですね、注文書を出したり発注書というものを出すのです。今ここにありますが、その注文書、発注書を見ますと、これは東京工業大学のものですけれども、「宛先は「東京工業大学」としてください」「日付は記入しないでください」ということを発注書に書いてあるわけですよ。  これは東京工業大学だけではありませんで、科学技術庁のつくばの研究所も、これはことしの五月のものですが、「日付については、ブランクにてお願いします。」と注文書に、それからこれは滋賀県立大学の工学部の発注書なんですが、これも、「納品書、見積書、請求書」、これは「日付けなし」ということを、全部書いてあるのですね。もう例を挙げれば切りがありませんけれども、茨城大学工学部も「日付は、各書類とも空欄に願います。」と、わざわざ波線までついているのですね。  要するにこれは、物品を納めまして、この代金というのは税金で払うわけですけれども、今これは国ではまだ問題になっていませんけれども、地方自治体なんかでは領収書を偽造したりとかいわゆる空の伝票を回したりとかいうことがあるわけですから、やはりこの問題もそういうことにつながるのではないだろうかということで、きょうはたまたま文部省の説明員の方に来ていただいておりますので、こういうことが一般的なのかどうなのか、それから許されることなのかどうなのかということで、御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  169. 矢野重典

    ○矢野説明員 お答えいたします。  私ども、国立大学の支払い事務につきましては、かねてから関係法令に基づきまして適切な処理を行うように指導してまいってきているところでございますが、委員御指摘のような事態、そういうものがあるといたしますれば、それはまことにもって適切な処理とは言いがたいものでございます。そういう意味で、そういうものがございますれば、個別の問題につきましては、直ちに私ども調査の上、その是正につきまして指導を行ってまいりたいと考えておるところでございます。  あわせて、引き続き国立大学等に対しまして、支払い事務の適切な執行につきまして、さらに一層指導を徹底してまいりたいと考えているところでございます。
  170. 海江田万里

    ○海江田委員 今、他の委員の席からも発言がありましたけれども、個別じゃないんですよね。これはまだたくさんあるんですけれども、そんなにたくさん持ってきましても、限られた時間でお話しするわけにいきませんから。  もう全部最初から印刷してあるわけですよ、日付を空欄、日付空欄と。何でかね。だから、これはもう本当に一般的な問題、きょうはたまたま今文部省の説明員にお願いをしたのですが、先ほどの科学技術庁なんかも実はかんでおりますし、ほかの役所もそういうことですので、これはひとつ厳正にやっていただきたい。  それから、これは法律との関係で言うと、政府契約の支払遅延防止等に関する法律というのがありますね、大蔵省の所管になりますけれども。これは、請求書の受領後、工事代金は四十日、物品購入その他は三十日以内に支払わなければならないとなっています。じゃ、請求書の受領後と言うけれども、その請求書の日付が一体いつなのか。とにかく全く白紙で出してください、白紙でなければ受け付けませんよと。で、自分で勝手にゴム印を押してそこから三十日ということになると、実際問題として三十日にぴたっとおさまっていない、あるいは四十日にぴたっとおさまっていない例は幾らでもあるわけですよね。  それはこの法律との関係で、実はこの法律自体が半ばざる法になっているわけですね。それを大蔵省はどう考えるのか、これも納得のいく説明をお願いしたいと思います。
  171. 伏屋和彦

    ○伏屋説明員 お答え申し上げます。  今委員御指摘になりました政府契約の支払遅延防止等に関する法律でございます。これは戦後、昭和二十四年に、当時、支払い予算の不足によりまして支払い遅延が発生していたこととか、関係者にまだ事務的にも習熟していない者が多くて請求書の提出に相当の期間がかかったこと等の問題がございまして、それで、国の支払いが遅延いたしますと、当時の国民経済の均衡ある発展をも阻害するというような世論を背景といたしまして成立した法律でございます。  政府契約の支払い遅延防止等その公正化を図るという意味で、まさに先ほど委員が言われました第六条にそういう日にちの規定もございます。そういう公正化を図るとともに、国の会計経理事処理の能率化を促進いたしまして、当時、国民経済の健全な運行に資するということを考えたわけでございますが、今文部省からも答弁がありましたように、各省庁における支払いにつきましては、委員が御指摘になられました法律を初めといたしまして、関係法令に基づき適切な処理が行われるべきであるということは当然のことであると私ども考えております。
  172. 海江田万里

    ○海江田委員 昭和二十四年の当時は請求する側が遅かったからこの法律をつくったような言葉があります。昭和二十四年は私が生まれた年ですか ら、そこのところはわかりませんが、この法律の精神はやはり、資金繰りに困る中小企業に、日にちを設けてそこの間に払いなさいよというのが精神じゃないだろうかと思いますので、今まさにそっちのところで私は問題にしているということ。  それから大蔵大臣、今もちょっと話が出ましたけれども、やはり中小企業向けの官公需ですね。これは、景気も低迷をして、まあ景気は若干、大企業なんかはリストラが進んでおりますから明るさが見えておるのですが、中小企業はまだなかなかそういう状況にならないということで、やはり官公需をなるべく中小企業に出さなければいけないというのは全体の考え方だろうと思うのです。  昭和六十年度で調べてみますと、それでも官公需の中の中小企業向けの割合が四三・四%あるわけですね。ところが、平成六年度で調べますと四〇・八%になっている。大蔵省もそうなんですが、大蔵省は昭和六十年度で五八・九%あったのが、五一・七%になってきておるということで、官公需の中の中小企業向けというのが少し落ちてきてやしませんか。私はそのことが、特に大企業も、こういう時期ですから一生懸命になって受注をするというとき、どうしてもそっちの方に発注が行ってしまって中小企業向けが少なくなっているんじゃないだろうかと。  このあたりをいかがお考えかということを最後にお聞かせください。
  173. 久保亘

    久保国務大臣 私は、今申された数字については詳しく存じておりませんでしたが、ただ、一般的には日本経済の景気回復が言われるようになりましたけれども、実感として中小企業はそれをなかなか受けとめにくい現状が私どもの周辺でも多いと感じております。そのようなことが今の官公需の発注の比率等にもあらわれているのかなと思っておりまして、今御指摘のありました点については十分に検討をし、その是正に努めなければならないと考えております。
  174. 海江田万里

    ○海江田委員 どうもありがとうございました。
  175. 高鳥修

    ○高鳥委員長 これにて海江田万里君の質疑は終了いたしました。  本日は、これにて散会いたします。     午後三時六分散会