○平田
委員 それはお気持ちはわかりますが、ここらでぴしっと立て分けて
考えていくというのが、
大蔵大臣がおっしゃった新しい時代の
金融システムじゃないのですか。
今までは護送船団だったのです。自分のところの我が子、もう目に入れても痛くないという、それほどかわいがってきた
金融機関なんです。
銀行局は
金融機関を、そして農水省は系統の
金融機関をそれまでかわいがってきたのです。だから、そのような御発言になってもやむを得なかったかもしれません。
しかし、これからは違うんだ、新しい時代は。これは市場原理、自己
責任でやるんだ、こういうふうにおっしゃっているわけでありますから、これは突き放さなきゃいかぬですよ。それは今までかわいくてかわいくでしょうがなかった
金融機関でありますから、生木を裂かれるように苦しいのかもしれませんが、そんなことはないですよね、お役所ですから。これはもう決めた大原則のもとでぴしっとやらなくてはいけないわけです。
そうしたら、今おっしゃられたような系統の
金融機関にかわってという御発言は、私は本来あってはならないと思うのです。系統の
金融機関の
預金者の立場に立ってと、そうでなければおかしいんじゃないですか。系統の
金融機関の
経営者のだったら、
責任を免れたいとかそういう発想まで背負わざるを得なくなるわけです。そうであってはならないわけですよ。系統の
金融機関の
預金者であり、あるいはそこの組合員でしょう。また、組合員イコール
預金者でしょう。結局
預金者ですよ。その立場から
考えたらどうなのかということでこの
住専処理スキームをもう一遍
考え直さなければいけないのじゃないかと思うのです。
どうもその辺があいまいになってきて、ずっと予算
委員会からの農水大臣の御答弁、あるいは農水省の政府
委員の御答弁を伺っていると、どうも、系統の
金融機関の
経営者の立場、何かもう自分のところの
金融機関のように思われてしまって、まだ乳離れがしていないというか子離れがしていないというのか、新しい発想になっていないのです。
我々は戦後五十年、確かにいい日本をそれなりにつくってきましたが、もう古い物差してはだめなので、新しい物差しで物事を
考えましょうというのがみんな共通した認識なのですが、いざ行動をしますと、新しい物差しとは何だったのかなとわからないものですから、古い物差しを持ち出してきてそれで行動する癖があるんですよ。ですから、今、大原農水大臣、もう頭脳明断な方でございますし経験豊かな方でございますが、真剣に答えるとなると、
思いが系統の
金融機関の
経営者の立場になった発言になってしまう。
これは、皆さんにこやかに聞いておいでになりますが、私は極めて重大なことだと思うのです。我々の発想の転換が本当に十分になされているんだろうか。これは、与野党ともに
政治家も、官僚も、いや、マスコミの
人たちも、
経済人も、日本をいろいろな立場で指導しておいでになる
方々すべてが常に反省をしなければならないことなのであって、何も大原農水大臣お一人のことを私は申し上げているわけではありません。これは誤解のないように。
そういう
意味で、私は、この
住専の
処理スキームというものは、どうも系統の
金融機関の立場あるいは母体行の
金融機関の立場というものを
考え過ぎた、自然と
考えてしまった、体にしみついたものとして出てきてしまって、そこの
預金者の立場というものを
考えているようで忘れてしまっている。
銀行のこと、あるいは系統の
金融機関のことを
考えていれば
預金者のためになるんだという錯覚、
思い違い、その
考え方で発想してつくったのではないのでしょうか。
きのう、
参考人質疑がありました。その際に、慶応大学の池尾参考人がおっしゃっておいでになりましたが、
銀行に
追加措置を求めるというが、私はある
銀行に預金をしている立場であるけれ
ども、
銀行のお金というのは
預金者のお金ですよ、
銀行のお金などというものはありません、
預金者のお金であり株主のお金ですよ、言えば
預金者のお金ですよ、それを出せ出せと言う、それを出すんだったら、そこの
銀行から私は預金を引き揚げます、こうおっしゃいました。
私は、なるほどなと。我々は、どうも
銀行の
経営者、
銀行そのものと
銀行の
預金者というのを一体だと思ってしまっている。それは分けて
考えなければいけないということになれていないのですよ。ですから、西村
銀行局長が、先ほどから、
金融システムの安定のためだとか
預金者の保護だとかとスローガンのごとくおっしゃっていますが、本当に
預金者の保護になるのかどうか、
預金者の立場に立って私
たちは
考えたことがあるのだろうか。どうも
金融機関の立場、そして、細かく言えば
金融機関の
経営者の立場に立って物事を
考えてしまったのではないですか。
ここにお並びの総理大臣、
大蔵大臣、農水大臣は、この
処理スキームを前の内閣からそのまま受け取ったお立場であって、そのときにどこまで突っ込んだ議論がされたかということはよくおわかりにならないかもしれないけれ
ども、私は、与野党を超えてこれからの新しい時代にふさわしい
金融システムをつくるんだ、そのとおりで、私
たちもそれをつくらなければいけない、これは一致しているわけですよ。一致しているのに、何で出てくる結論が違うんだ。どうもそれは、癖がまだたくさん残っている
人たち、そう言ってはちょっと失礼かもしれませんが、それを持っていた人がつくったものをそのまま受け取ってしまった今の内閣、それをそのまま引きずっておいでになる。
もう一遍ここで、
預金者の保護というものは何なのかということをよく
考えなければいけない。だから、真摯に僕は見直すべきだと思うのですよ。それは
与党の中にもいろいろ御事情があるかもしれないけれ
ども、しかし、それだったら、新しい時代の
金融システムをつくりますということは胸を張っては言えないと
思います。そういうものを乗り越えなければ、新しい時代を我々は切り開くことはできないのですよ。既成のいろいろな利害、既得権益、そういうものを乗り越えて初めて私
たちは新しい時代を打ち立てることができるわけであります。これは、
与党であろうと、野党であろうと、政党がどこであろうと
関係ない話です。同じ行動原理のはずですよ。そうじゃないですか、総理。
私は、頭から、野党だから政府案に
反対だとかというのではありません。今
国会で政府が出された案で、唯一
反対しているのは
住専関係の法案だけですよ、新進党が
反対しているのは。新進党は政府案を、賛成のものはどんどん法案審議を
促進させ成立させているじゃないですか。その真摯な野党の、真剣な野党の新進党の
意見をなぜ聞かれないのか、なぜ耳をかそうとされないのか。
我々が何でピケを張ったんですか。こんなことをやったら日本を過つ。今まで第一
委員会室でピケをやった政党なんかどこにもありませんよ。座り込みするようなことは、私
たちは胸張ってやれることではないと思っています。しかし、嫌であったとしても、国のため
国民のためには、それを忍んでやらなければいけないと思ってあの廊下に座りました。二十二日間も嫌な
思いをして座っていました。しかし、それは、国のためであり
国民のためなんですよ。そういう我々の気持ちがわからない
与党であったならば、私はやはりおかしいと思う。
議会というのは、それは確かに多数をとったものが
運営していくのは当たり前です。議院内閣制でもあります。多数決です。それが民主主義です。しかし、同時に、少数者の
意見にもきっちり耳を傾けて正当な議論を
国会で行う、そして、本当に正しいものであれば、真剣な提案であれば、真剣な警鐘であれば、それをきちっと受けとめて対応していくというのがやはり国を預かっている政府・
与党の立場じゃないのでしょうか。(発言する者あり)
国民の審判を受けていないという御批判もございますが、それはさておいたとしてもですよ、私は、いずれにしても、政府・
与党の立場としてはそういう姿勢がなければならないと思うのです。
しかも、
国民に六千八百五十億どころじゃなくて、第二次損失は、最近いろいろなデータがありますが、第二次損失は四兆円だという話もある。四兆円だと、半分は
国民負担ですから、二兆円。すると、二兆六千八百億円も負担をさせてしまう。それに対して新進党は真剣に警鐘を鳴らしているわけですよ。それをお聞きにならないというのは、私は政府・
与党としてはやはりおかしいと思うのです。立場が違うということではないんですよ。
先ほど申し上げたように、この
処理スキームが、総理、
大蔵大臣、農水大臣が真剣に議論されて、最後の
政治決断をされておつくりになってきたものなら、それはそれなりに
責任があるでしょう。しかし、前の内閣からそのまますっと受け取られた。どうも今の
政治家というか、今の
政治家だけじゃない、我々は前の古い物差しで物を
考える癖がある。その癖が強く出て今回の法案になったんじゃないか。
預金者の保護よりも、お題目は
預金者の保護と言うけれ
ども、どうも
預金者の保護よりも
金融機関の保護、あるいは
金融機関の
経営者の立場、そういうものを重視した発想で
処理を
考えてしまった、そういうことをやはり深く自省してみる必要があるんじゃないでしょうか。どうですか、総理。