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1996-06-04 第136回国会 衆議院 金融問題等に関する特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年六月四日(火曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 高鳥  修君    理事 小里 貞利君 理事 尾身 幸次君    理事 大島 理森君 理事 小沢 辰男君    理事 松田 岩夫君 理事 森本 晃司君    理事 早川  勝君 理事 錦織  淳君       伊吹 文明君    石橋 一弥君       柿澤 弘治君    金子 一義君       木村 義雄君    岸田 文雄君       栗原 博久君    高村 正彦君       白川 勝彦君    中村正三郎君       野呂田芳成君    原田昇左右君       穂積 良行君    堀之内久男君       山本 公一君    横内 正明君       安倍 基雄君    愛野興一郎君       江田 五月君    加藤 六月君       鹿野 道彦君    北側 一雄君       笹川  堯君    鮫島 宗明君       野田  毅君    平田 米男君       村井  仁君    坂上 富男君       田中 昭一君    永井 哲男君       細谷 治通君    小沢 鋭仁君       田中  甲君    穀田 恵二君       佐々木陸海君    吉井 英勝君       海江田万里君  委員外出席者         参  考  人 加藤 紘一君         参  考  人         (全国銀行協会         連合会会長)  橋本 俊作君         参  考  人         (東京国際大学         経済学部教授) 田尻 嗣夫君         参  考  人         (慶應義塾大学         経済学部教授) 池尾 和人君         参  考  人         (全国農業協同         組合中央会常務         理事)     高野  博君         参  考  人         (弁 護 士) 清水  直君         参  考  人         (東京大学名誉         教授)     館 龍一郎君         金融問題等に関         する特別委員会         調査室長    藤井 保憲君     ――――――――――――― 委員の異動 六月四日  辞任         補欠選任   金子 一義君     白川 勝彦君   岸田 文雄君     山本 公一君   穂積 良行君     高村 正彦君   田中  甲君     小沢 鋭仁君   吉井 英勝君     穀田 恵二君 同日  辞任         補欠選任   高村 正彦君     穂積 良行君   白川 勝彦君     金子 一義君   山本 公一君     岸田 文雄君   小沢 鋭仁君     田中  甲君   穀田 恵二君     佐々木陸海君 同日  辞任         補欠選任   佐々木陸海君     吉井 英勝君     ――――――――――――― 六月四日  住専問題の早期解決徹底究明等に関する陳情  書外十件  (第三四七  号)  住専関連法案の廃案に関する陳情書外百二件  (第三四八号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  特定住宅金融専門会社債権債務処理促進  等に関する特別措置法案内閣提出第三五号)  金融機関等経営健全性確保のための関係法  律の整備に関する法律案内閣提出第九四号)  金融機関更生手続特例等に関する法律案  (内閣提出第九五号)  預金保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第九六号)  農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する  法律案内閣提出第九七号)  特定住宅金融専門会社が有する債権時効の停  止等に関する特別措置法案保岡興治君外五名  提出衆法第三号)      ――――◇―――――
  2. 高鳥修

    高鳥委員長 これより会議を開きます。  内閣提出特定住宅金融専門会社債権債務処理促進等に関する特別措置法案金融機関等経営健全性確保のための関係法律整備に関する法律案金融機関更生手続特例等に関する法律案預金保険法の一部を改正する法律案農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案及び保岡興治君外五名提出特定住宅金融専門会社が有する債権時効停止等に関する特別措置法案の各案を一括して議題といたします。  これより参考人加藤紘一君に対して質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高村正彦君。
  3. 高村正彦

    高村委員 この三カ月間、政治的謀略によって加藤参考人に対し疑惑なるものがでっち上げられて、誹謗中傷が繰り広げられてまいりました。でっち上げられた疑惑は、大別して、共和からの一千万円献金静岡信連からの一億円献金北朝鮮への米援助にまつわるものの三つあるわけでありますが、私は主として共和からの一千万円献金についてお聞きいたします。  加藤参考人が、平成二年二月八日から十日の間に、新宿センチュリーハイアットホテル共和森口五郎元副社長から現金一千万円を受け取ったのではないかということは、平成四年、加藤参考人官房長官時代にも指摘されましたが、二月八日から十日は加藤参考人は地方に行っていたことが立証できて、決着がついた問題であります。  しかるに、水町垂範氏が本年三月四日に、平成二年一月三十一日に加藤参考人センチュリーハイアット共和森口氏から一千万円受け取ったと声明を出したことによって、解消されたはずの昔の疑惑が日付を変えて蒸し返されているわけであります。  ちなみに、声明が出された三月四日という日は、新進党が、我が国会始まって以来初めて座り込みピケによって国会を三週間もハイジャックするという暴挙を開始した日と一致するわけであります。  そして、わずか三日後の三月七日に、極めて手回しよく、新進党山田正彦議員らは加藤参考人所得税法違反だとして東京地検に告発いたしました。その後、証人喚問要求が出て、それを実現することがピケを解く条件だ、予算を通す条件だとエスカレートしていったわけであります。  我が党の中では、疑惑をでっち上げて予算等を人質にし無理やり喚問して相手方に打撃を与えるという五五年体制下の悪弊にいいかげんに終止符を打とうということで、参考人招致にも応ずるべきでないという筋論が強かったわけでありますが、国民の前に真実を明らかにしたいという加藤参考人の強い意向で、本日、参考人招致が実現したわけであります。  そこで、加藤参考人にお尋ねいたしますが、この間の、心境をお聞かせいただきたいと思います。
  4. 加藤紘一

    加藤参考人 過去約三カ月でございますけれども、私の個人のことにつきまして、例えば共和の問題、それから北朝鮮疑惑、この疑惑最後になりましたら、まあ笑止千万でございますが、私がサリンを輸出するのに関与したという話までエスカレートいたしました。にせ札をつくったのじゃないかというところまでエスカレートいたしました。いずれこの問題は新進党さんからきょう、疑惑を出されたわけですから御質問が丁寧にあると思っておりますが、それにしっかりお答えしたいと思っております。それから、静岡信連から一億円をもらったという話まで出されました。  私は、政治家個人といたしましては、こういう問題についてはぜひ発言したいというふうに思いました。しかし同時に、よく考えてみますと、私は自由民主党の幹事長でありますし、その公的立場は非常に大きいものだと思っております。私の記憶している限り、与党第一党の三役クラスの人が、国会中に、現職のときに、幹事長ないし総務会長とか、こういう方が証人喚問に出されたケースはなかったと思っております。過去三、四十年、そういうことはなかったと思っております。  そういうことがなぜ起きるようになるのだろう、そう考えると、私は、どうも新しい選挙制度関係なしともしないのではないかという気もいたしますが、そういう公的な立場から出るべきではないという同僚の皆さんの意見との間の相克でございました。きょうここで、私の知り得る限りをお話しできることをありがたく思っております。
  5. 高村正彦

    高村委員 所得税法違反で刑事告発されたことについては、どのように感じておられますか。
  6. 加藤紘一

    加藤参考人 所得税法違反は全くの潔白でございますし、それから、その他いろいろ、政治資金規正法等議論がされておりますけれども、私は政治資金規正法上は取扱責任者ではございません。そういった意味で、告発されておりますけれども、私は、その身の潔白がいずれ、早晩明らかにされると思っております。
  7. 高村正彦

    高村委員 加藤参考人は、水町氏とはどういうきっかけ知り合いになられたのでしょうか。
  8. 加藤紘一

    加藤参考人 私が水町氏と知り合いになりましたのは、昭和五十六年の五月で、鈴木善幸内閣の初の訪米のときでございました。この訪米は、そのときに日米共同声明が出されて、そこで日米同盟関係にあるということを政治声明に言ったということで、その後、伊東正義外務大臣辞任に至るという大変ドラマチックなことになった訪米でございますが、そのとき私は随行議員としてつきまして、それから、水町氏が随行医として、鈴木首相主治医として同行されました。それが初めての出会いでございます。  私たちの、派閥と言って言葉がいいのか、グループのリーダーの主治医、命を全部預けている方でありますし、それから、水町さんの当時の奥さん岸信介さんのめいごさんに当たるということも聞いておりまして、やはり政界の方を大変多く知っておられる方、私よりずっと若いんですが、いろいろな人を知っている人なものですから、まあ話がいろいろ弾んで、その後、ゴルフをしたりのつき合いが続いたということでございます。
  9. 高村正彦

    高村委員 加藤参考人は、昭和六十二年九月四日、水町氏の結婚仲人をしておられますが、その前に、当時の奥さんという話が出ましたけれども、これが四度目の結婚だということは当時御存じでしたか。
  10. 加藤紘一

    加藤参考人 今言いましたように、前の奥さんは、つき合いというか、水町さんと一緒に食事したことがありましたが、実はその方が初めての結婚御相手だと思っておりまして、だから、私は二度目の仲人をしたという意識でございました。四度目の結婚であったということを知ったのは、ごく最近でございます。
  11. 高村正彦

    高村委員 マスコミ等では水町氏のことを加藤参考人の元後援会長と言っているわけでありますが、実際はどういう立場にあった方なんでしょうか。
  12. 加藤紘一

    加藤参考人 今回、水町氏がいろいろ御発言なさるときに、水町氏当人は言っていないと思うんですけれども、新聞の見出しに元後援会長という名前が出るものですから、正直言いまして、本当後援会長本当連合後援会長さんから大分おしかりを受けております。それから、地元の後援会長さんからも抗議が来ております。  我々政治家というのは、田舎には各市町村単位後援会がありますから、田舎にはいろいろな名前後援会長さんが四、五十人、三、四十人いて、地域ごとですから、そして最後連合後援会長さんがいるという仕組みに大体皆さんなっているんではないかなと思います。東京後援会長さんと言われる方は一人でございます。これはもう二十数年来私を面倒見てきている御長老でございます。  ただ、私を囲む会というのが幾つかできます。例えば同級生仲間で囲む会ができたり、それからゴルフ仲間で囲む会ができて、そして、まあ年に一遍ずつこれで飲もうやみたいなことになると、あ、これが後援会だね、じゃ、あなたが言い出しっぺだからあなたが後援会長さんになりなさいと冗談ぼく言う、まあそういうケース、よくあると思うんですが、そういった幾つかの囲む会がある中の一つ会長さんでございます。
  13. 高村正彦

    高村委員 水町氏を中心とした会は、政治資金団体としても登録されていたのではありませんか。
  14. 加藤紘一

    加藤参考人 そういう通称囲む会というのは、別に任意団体でできるわけでございますから、届け出も何もしない、ごく当たり前の集いと言っていいと思いますが、水町さんがやってくれておりました紘和会というのは、政治資金団体としての資格を得るための届け出をしております。  通常、最近はそういうものはたしか一つしか許されなくなったと思いますが、平成二年とか、政治資金規正法改正以前、政治改革以前は、比較約何といいますか自由でありまして、当時、私は十一ぐらい持っていたと思います。水町氏の紘和会もそういう届け出をしたという意味では普通の囲む会とは違う性格を持っておりますが、政治資金団体というのは、ほとんど実際上は、事務はそれぞれの代議士さんの事務所でやっていくわけですが、この水町さんの紘和会だけは水町事務所で直接東京都に届け出をしていたという関係でございます。
  15. 高村正彦

    高村委員 紘和会経理、あるいは紘和会には会員がどういう人がいるんだとか、あるいはどれだけ収入があったんだとか、どういうことに使ったんだとか、そういう経理水町サイドでやっていたということですが、水町さんから参考人サイド加藤事務所の方に、これだけ金が入ってこういうことで使ったんですよという報告はその都度あったんでしょうか。
  16. 加藤紘一

    加藤参考人 実はそこが問題でございました。  初めて政治資金団体として届け出していただくときに水町さんは、これでしっかりとあなたを応援していきます、政治資金規正法上の届け出もしっかりやっておきますので御心配なく、かりそめにもあなたが後ろ指を指されたりするような事態にはならないようにしますからということをいろいろおっしゃっていまして、その後も、ちゃんとそこはやっておきますからということを私に言ってくれていました。  ただ、秘書の方は、紘和会にどなたがどういう資金を下さっているのか、それから、それがどういうふうに使われているのかということの、お尋ねしても報告がないものですから、余り教えてもらえないものですから、それは、代議士がカンパしてくれた人に会ったときのお礼の仕方、接し方もありますから、ぜひそこは教えておいていただきたいということを何か大分言ったらしく、しょっちゅう何かトラブっていたような気がします。  まあ我々代議士というのは、そういう資金団体事務を任せておれば、秘書がどうやっているか、後援会の方がどうやっているか、そんな細かなことまで聞くのも失礼ですし、それだけの時間がございませんので、余り私自身はつまびらかではありませんでしたけれども、しょっちゅうトラブっていたことは事実だったようであります。
  17. 高村正彦

    高村委員 このたび水町氏が、仲人までしてもらった参考人に対し、明らかに敵対者として振る舞っているわけでありますが、四度目ということになると一生に一度の仲人に対する感じ方と違うのかもしれませんが、それにしても、普通では考えられないことだと思います。何か特別の理由、思い当たることはありますか。  加藤参考人性格からしますと、自分仲人した人のことをあれこれ言うのを好まないと思いますので、水町氏が六月七日付週刊ポストで語っていることをもとにしてお聞きいたします。  水町氏の話を要約すれば、水町氏が経営するクリニックにつき、一億円の増資を計画した。そのうち五千万をD氏に出してもらうことを期待した。しかしD氏は断ってきた。D氏はその際、このことは加藤先生御承知のことですと言った。加藤氏に電話したところ、加藤氏は、「付き合う相手をきちんとしたいと思うのは、経済人として当然の判断だと思う」と平然と言った。それで水町氏は怒った、こういうようなことを週刊ポストに語っているわけであります。  そのようなこと、あるいは当たらずといえども遠からずというような、そういうことでもいいですが、そういうようなことはあったのですか。
  18. 加藤紘一

    加藤参考人 プライベートなことでございますので余り語るべきではないと思いますが、その種のことはございました。  ただ、一つだけ申し上げておくのは、私が水町氏に、私の別のスポンサーといいますか、支援経済人を紹介いたして、それで、そこでおつき合いが始まったようですが、私がその融資の話に関与したことはありませんし、私がそれにどうしろこうしろと言ったつもりはありません。その経済人の方に、水町氏のいろいろなクリニック経営等については厳しく指導してあげてくださいということを、紹介するとき、つまり四、五年前だったと思いますが、三、四年前か四、五年前に言ったことは事実でございます。そういったことを何か誤解されたのかもしれませんし、もう一つ、私、つき合う相手をしっかりしろというのは、水町氏のことではなく、ちょっと誤解があるようでございます。  時間がありませんから、ごたごた申しません。その件が、確かに意思疎通を欠くようになった原因であるということは言えると思います。
  19. 高村正彦

    高村委員 加藤参考人とすれば、そのことを、プライベートのことだから詳しくは述べたくないけれども、そのことが、水町氏が敵対者として振る舞うようになった直接のきっかけだった、こういうふうに考えられるということですか。
  20. 加藤紘一

    加藤参考人 そうだと思います。そういう意味では、非常にプライベートな話だと思っております。
  21. 高村正彦

    高村委員 加藤参考人共和の元副社長森口五郎氏とは、どういう関係だったのでしょうか。
  22. 加藤紘一

    加藤参考人 私は、直接は存じ上げません。私は、私のために水町氏がやってくれておりました、先ほど言いました紘和会というところで、年に一、二回でしょうか、私が国会報告をし、みんなで水割りを飲んで食事をするという会が、まあパーティーみたいなものが百人前後の数でやられたと思うのですが、その年一回か二回のパーティーに一、二回顔を出されたりしたという関係であったと思います。  それから、その水町さんがやったゴルフコンペに私も一緒に行っていたということが写真等で、後で紹介されておりました。
  23. 高村正彦

    高村委員 そういう会に森口さんが来ておられて、ああ森口さんが来ているな、そういうことに気がついたとか、そういうようなことは記憶にありませんか。
  24. 加藤紘一

    加藤参考人 そうですね、森口氏も平成四年のあの事件以来有名な方ですから、今になれば当然そう思うでしょう。しかし、そうですね、代議士というのは、そういう会にいろいろ出ていきますが、自分で組織したり、例えば、この方とこの方にこの会に入ってもらいたいというような、そんな依頼をして、自分で主導的につくった会は、それが仮に百人でも全部覚えている場合がありますけれども、人様につくっていただいた会とか、人様のための何十人、百人近いコンペ自分もちょっと招かれて行ったという場合にはほとんど覚えないというのが実態ではないかなと思います。
  25. 高村正彦

    高村委員 森口さんと少人数で会ったことはないということですか。
  26. 加藤紘一

    加藤参考人 はい、その紘和会及び水町さんの会の関係以外ではお会いしたことはありません。
  27. 高村正彦

    高村委員 加藤参考人は、平成二年一月三十一日、新宿センチュリーハイアットホテル共和森口五郎社長から一千万円を受け取ったことがあるという疑惑を持たれているわけでありますが、そういったことはありますか。
  28. 加藤紘一

    加藤参考人 平成四年にも、またそれから今回のいろいろな報道等においてもいろいろ話題にされましたので、私なりにいろいろ考えてみましたけれども、その覚えはどうしてもございません。
  29. 高村正彦

    高村委員 覚えがないということは、あったかどうかよくわからないということですか。それとも、幾ら考えても、覚えがないということは、そういうことはないということなんですか。
  30. 加藤紘一

    加藤参考人 私にとりましては、覚えはないということは、そういうことはないということであります。
  31. 高村正彦

    高村委員 平成四年、共和からの献金について国会で質問された前後に、事実確認のために水町氏に会ったことがありますか。
  32. 加藤紘一

    加藤参考人 ございます。当時、国会でいろいろ議論になりました。衆参で議論になりまして、その際に、そういうことをいろいろ言われているけれども、自分には覚えがないのだけれども、実態はどうなんだろうということを申しました。そうしたら水町氏は、そういうことはないから自信を持ってしっかりと答弁してください、そんなことはありませんということをきつく私に言ってくれました。
  33. 高村正彦

    高村委員 当時、二月八日から十日の間に会ったんではないかということが問題になっていたわけでありますが、その二月八日から十日の間にはないと。だけれども、一月三十一日には本当はもらっているんですよというような話が水町氏からあったことはありますか。
  34. 加藤紘一

    加藤参考人 そういうことはありません。特に当時の話題は、八日、九日の日程というのが国会大分話題になりましたから、そのところはほとんどそれに集中しておりましたけれども、そのほかの日にちのことについては言及はありません。とにかくそういうことはないんだから、そう答弁をしっかりやっていくのが筋じゃないでしょうかということを言われました。
  35. 高村正彦

    高村委員 共和森口氏から直接一千万円を受け取ったことがないにもかかわらず、加藤参考人水町氏に一千万円を預けているわけでありますが、これはいつごろ、どういう理由で預けたんですか。
  36. 加藤紘一

    加藤参考人 いつごろかと言われますと、そこがはっきりいたしません。いずれにしても、平成四年の上半期であろうと思っております。  理由といたしましては、水町さんにいろいろお聞きして、そういう事実はないということで、そう答弁しておったわけでありますけれども、当時、森口さんのサイドとか共和管財人人たちのリストというのがありまして、それで、平成二年の二月ですか、加藤紘一サイドにという表現で一千万円行っているという記述があって、それが大分話題になりました。後ほどそれは、あるものは事実上ない、つくられたものだということが最近わかったようでありますけれども、当時そういうことが非常に話題になって、当時私は内閣官房長官でもありました。だから、その管財人会議で、政治家に渡ったお金は、もちろん私だけではないのでしょうけれども、返してもらうべきだという議論大分あったようで、それが報道もされました。だから、これは内閣に迷惑かけちゃいけないなと。  それからもう一つセンチュリーハイアットでということを当時言われていたのですが、それはそういうわけで記憶はありませんのですが、水町さんはさっき言いましたように紘和会という正規の私の後援団体をつくっていただいているわけでありまして、そこに、経理は我々よくわからなかったということは先ほど申しましたが、お金が来ている関係可能性はある。水町氏と森口氏との非常に親密な関係ですから、お金が来ている関係もある。そして、その共和が破産した。  そうしますと、これは皆さんもよくあるケースかと思いますが、政治資金の応援をいただいていた相手先が破産しちゃった。すると、これまでいただいたお金は返さなきゃいかぬのかなという気というのはどうしてもありますですね。そこは難しいところなのです。返す場合もあるし、それは別な話だと思うときもある。そういう社会的責任みたいなものもありまして、そんなことで、水町氏の方に、チャンスがあったら、そして献金が事実ならば、事実そういう献金ということがいろいろな形であったならば、それはチャンスを見て返しておいてほしい、水町氏と森口氏の方は連絡がとれているわけですので、そういうのでお渡ししたものでございます。
  37. 高村正彦

    高村委員 水町さんはそれを了承して受け取ったわけだと思いますが、実際に水町さんに一千万円を手渡したのはだれですか。
  38. 加藤紘一

    加藤参考人 私ではなくて、私の秘書の森田でございます。
  39. 高村正彦

    高村委員 ひょっとしたら紘和会の方に献金があったのかもしれない、そういうことで、参考人官房長官であったわけでありますから、内閣に迷惑をかけてはいけないということで、一千万円を返しておいてくれと言って預けたというのは極めて自然で、納得できることであります。  一方、水町氏は週刊ポストで、加藤氏は、一千万円はだれかに預けたいと言い出した、「とはいえ森口氏からの一千万円はもう使ってしまってないんですよ、」「だから自分で捻出した金を預かってほしいということです。」加藤氏は、「私が総理大臣か外務大臣になったら返してください」と言ったと言っているが、これは極めて不自然で、すなわちあり得ないことだと私は思います。  職務権限があることを頼まれて、例えば名画をもらった、そんなことであれば、置いておいたら危険だから、だれかにほとぼりが冷めるまで預かっておいてくれと言うことは一般的にはあり得ても、現金、それも使ってしまった金をわざわざ捻出して、預かってくれと言うことは、何のメリットもない、不合理、非現実的、一般的にもあり得ないことであります。  念のために聞きます。総理大臣か外務大臣になったら返してくれと言ったことはありますか。
  40. 加藤紘一

    加藤参考人 そんなばかなといいますか、そういうことはありません。  それから、問題は、一番重要なことは、管財人会議等で、政治家に渡ったお金は、あるのならば返してほしいというようなことが言われて騒がれているというならば、もしそういう事実があるならば返してほしいということを水町氏に言ったのであって、そういう気持ちで渡したのであって、今言ったような話はあり得ないことでございます。
  41. 高村正彦

    高村委員 当時、ひょっとしたら紘和会が一千万円森口氏から受け取っているのかもしれないと思った、こういうことでありますが、今、水町氏が森口氏もしくは管財人に一千万円を返していないということはどういうことだと思われますか。
  42. 加藤紘一

    加藤参考人 本当にいろいろな形の献金があったならば、一千万円をお返しいただいていると思います。
  43. 高村正彦

    高村委員 水町氏が加藤参考人に対して五千万円融資の件で逆恨みをして悪意を持っていたこと、加藤参考人水町氏に一千万円預けた理由は、加藤参考人が述べたことが極めて自然であることが明らかになりました。  実際にあったことを立証するのは容易でありますが、事実がなかったことを立証するのは不可能に近いことから、古来、悪魔の証明といって裁判でもそのようなことは要求されないことになっておりますが、このたびは、幸いにも、加藤参考人が一千万円を直接受け取ったというのはでっち上げたということが国民にもおわかりいただけたと思います。  加藤参考人は今、水町氏に対してどのような感情を持っておられますか。
  44. 加藤紘一

    加藤参考人 先ほど申しましたように、自分仲人した人間でございます。それから、私といろいろな、ゴルフをしたりのつき合いもございました。そういう人物とこういう個人的にまずい関係になってしまったということは、やはり私もいろいろ考えなければならないところが多い、こう思っております。  しかし、それは私たち個人関係でございまして、またよくなる場合もあり得る、そういうふうに思っておりまして、個人関係個人関係としてそっとしておいていただけないかという気持ちでございます。
  45. 高村正彦

    高村委員 水町氏の加藤参考人に対する敵対行動でありますが、二月二十二日に水町氏が加藤参考人の森田秘書に電話して、その会話のテープを隠しどりしております。あるいは、二月二十四日に水町氏の代理人岡田弁護士が一千万円の受領の催告状を発送しております。そして、二月二十五日に水町氏が何か参考人に私信を出しておるのですか。そして、二月二十八日に岡田弁護士名義で一千万円を供託している。三月四日に水町氏が声明を出した。そして、三月七日に新進党代議士らが告発状を提出しているというふうに、極めて計画的に行動しているように見られます。これらは政治的謀略のための証拠づくりのためになされたものとしか考えられないわけであります。  しかも、右の一連の行為が開始されたのは住専問題に関する与野党の攻防が始まった二月二十日以降であり、このことは、本告発が自民党幹事長である加藤参考人に打撃を与えることにより、住専問題を野党側に有利に展開しようとする政治戦略に基づくものであることを物語っておると思います。  本年三月二十四日付の公明新聞の一面トップに、「貸し手静岡信連から一億円」という見出しで、あたかも加藤参考人が一億円の政治献金を受け取ったと断定するような記事が出ているわけでありますが、こうした疑惑を公党の機関紙があなたに対してかけているわけですが、身に覚えのあることですか。
  46. 加藤紘一

    加藤参考人 全くございません。  政党の機関紙でございますから、それぞれの主張があって、そこでお書きになったことを、名誉毀損していいのかというような議論も党内でいたしました。しかし、政党の機関紙ならば何を書いてもしようがないことではないか。ちょうどここの国会の中で発言されたことはいかなることでも免責になるということで、いろいろな議論がされておって、例えば先ほどの北朝鮮疑惑にしましても、どうしてこんなことをおっしゃるのだろうと思うようなことも発言されております。  まあ静岡の問題につきましては、後ほどまた新進党の方がお聞きになったときに正確にお答えします。疑惑をお持ちになった以上、それはお聞きにならないことはないと思いますので、正確にそのときにお聞きいたしてみます。
  47. 高村正彦

    高村委員 食糧難に悩む北朝鮮に対し、我が国は平成七年六月、緊急輸入した外国産米五十万トンを、一部無償一部有償で援助することを決めました。ところが、実際、北朝鮮に援助米が輸出された際、その中の一部に国産米が含まれていた、それを実行させたのが加藤幹事長であると疑わせるような国会質問が新進党代議士によってなされました。そして、一部マスコミによって、加藤幹事長北朝鮮疑惑として世間に流されました。  最近、カンボジアで逮捕されたにせドル札事件に絡んで、北朝鮮ににせ札づくりの印刷機を出したのも加藤幹事長が行ったなどという報道すらあるわけであります。  こうした加藤幹事長北朝鮮疑惑は事実に基づくものでしょうか。
  48. 加藤紘一

    加藤参考人 これも後でお聞きになられると思いますが、全くございません。私は、北朝鮮に行ったこともありませんし、それから、金日成さんにも金正日さんにも会ったこともありません。  ただ、連立三党として日朝関係の打開というのをテーマにしようと三党の責任者会議で決まったときに、政調会長でありますから、その仕事に従事いたしました。この仕事に従事するとどうしてこんなことまで書かれるのだろうかと憤りさえ感じます。こういうことでは私は日本の外交は進んでいかないと思っております。  この点につきまして、まあお米の、国産米が入っているかどうかというような議論新進党の米田さんからかなりされましたけれども、農林省は完璧に否定しております。(発言する者あり)怒っています、農林省は。したがって、この点については今、議会で調査されていると思っておりますけれども、その点についても後ほどまた他党に対し御答弁させていただきたいと思います。
  49. 高村正彦

    高村委員 静岡信連の問題にしても北朝鮮の問題にしても、これだけの問題を新進党が提起しているわけでありますから、少しでもそういう資料があるのであれば、せっかく加藤参考人が来ていただいているわけでありますから、これからその資料に基づいて厳しい追及があると思いますが、的確に答えていただきたいということをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
  50. 高鳥修

    高鳥委員長 これにて高村正彦君の質疑は終了いたしました。  次に、松田岩夫君。
  51. 松田岩夫

    ○松田委員 新進党の松田岩夫でございます。  加藤幹事長、きょうは御苦労さまでございます。  ただいまお伺いしておりますと、何か水町さんを使った政治的謀略だとかでっち上げたとか、あるいはまた水町氏の人格を傷つけることを印象づけるようなやりとりもございました。そうであれば、なぜ水町氏をここに呼んで詰問しないんですか。それをしないのもさせないのも、自民党の幹事長加藤さん、あなた本人ではないのですか。今のやりとりをお聞きして、まず冒頭そのことを申し上げて、イエスかノーか、できるだけ簡潔にお答えをしていただきたいと存じます、与えられた時間がわずかでございますので。  さて、加藤さん、先般この委員会でも話題にしましたが、プロヒューモ事件というのを御存じでしょう。一九六二年から六三年にかけて、英国の現職のプロヒューモ陸軍大臣とコールガール、キーラーとの接触、及びキーラーとソ連海軍武官との接触をめぐって起きたスキャンダルでございますが、性モラルの問題あるいは国家機密漏えい問題といったことでイギリス内外を沸かせたものでございます。当のプロヒューモ氏は、下院でこの問題に関してうその発言をした、性モラルやあるいは国家機密漏えいの問題からではなく、議会を欺いたことを理由に大臣並びに下院議員を辞職されました。  あなたは、もしあなたが日本の議会、国会でうそをついていたことが判明した場合、どう責任をおとりになるのか、プロヒューモさんのように辞職をなさるのか、まず明確にお答えください。
  52. 加藤紘一

    加藤参考人 私がそういうようなことをしたら、それなりの責任をとらなきゃならぬのだと思います。
  53. 松田岩夫

    ○松田委員 それではここで、いわゆる一千万円のやみ献金、何か先ほど、最近急にまた問題となったというようなこともおっしゃいましたが、たびたびこの国会で質問が続けられてきた問題でございます。これまでのあなたの答弁は真実、事実を、うそを述べていないかどうか、真実を述べてこられたかどうか、確認をしていきたいと存じます。  平成四年二月二十日、衆議院予算委員会において草川昭三委員からこう質問を受けておられます。  平成二年の一月の総選挙、一月二十四日に解散、二月の十八日に投票が行われたわけでございますが、「この間加藤さんは新宿のホテルセンチュリーハイアットに行かれたと思うのですが、どうでしょう。」「そこで加藤さんと森口社長会長のドクター」、水町さんのことでございますが、「といろいろなお話し合いがあったというのですが、その点御記憶ございませんか。」「ございません。」「森口社長はそこで加藤さんと、短時間のようでございますけれどもお会いになったというお話があるのですが、その点はいかがですか。」「そういう事実はございません。」  これは真実でございますか。
  54. 加藤紘一

    加藤参考人 そういう記憶はありません。したがって、事実ではありません。  それからまた、その質問は、二月の八、九、十、いたかということですが、そのときにはいません。だからはっきり言いましたが、その当時、前提として、情報等で全部二月八、九、十でございました。それから、その二月八、九、十にかかわらず、私はそういうことがあったように記憶はございません。
  55. 松田岩夫

    ○松田委員 そんなことはこの草川昭三先生の質疑では問題にされておりません。ただお会いになったかどうかということをお聞きしましたら、そういう事実はございません、こういう答弁でございました。その点は、そういう事実はないということでございますね。(加藤参考人「はい」と呼ぶ)はい。  続きまして、平成四年三月十七日、参議院予算委員会、佐藤三吾議員から、「平成二年二月十日ごろに東京新宿のセンチュリーホテルで共和森口社長水町医師と会っておりませんか。」「会っておりません。」そこで、「一千万を森口が渡したと言っておるんですが、これはいかがですか。」「そういう事実はございません。」  これは正確ですか。
  56. 加藤紘一

    加藤参考人 そういう記憶もありませんし、そういう事実もありません。
  57. 松田岩夫

    ○松田委員 正確ですとか、はい、そうですと、それで結構ですから。  平成四年六月十日、国際平和協力等に関する特別委員会において、上原康助議員から、「加藤氏に倒産共和から一千万の政治献金があったということが明確になっている、」これに対して加藤国務大臣、「そのいわゆる一千万の問題、私には記憶がございません。また、私たちの方の資料で調べましても、その事実はございません。」  これも先ほど同様正確だと、真実を述べておられると。——はい。  高沢寅男さん、高沢委員からでございます、同じ日でございますか、共和の元副社長の「森口五郎氏が、今回の共和事件にかかわる使途不明金がたくさんありました。」「それの精算の報告を破産管財人に対して提出をしたわけであります。」「そのリストの中に加藤官房長官、あなたに対して一千万円、こういうふうに記載されているわけであります」「あなたに一千万円を渡した」ということが、しかも破産管財人に対する報告書の中で出ている。このことをあなたは一体どうお考えか、お尋ねしたと。これに対して、加藤国務大臣、「私たちの方の資料にはそういうものはございません。また、私の記憶にはそういうものはございません。」  正確でございますか。真実でございますか。
  58. 加藤紘一

    加藤参考人 そのとおり、答弁したとおりでございます。
  59. 松田岩夫

    ○松田委員 ありがとうございました。  続いて、加藤国務大臣、その後ずっと一連の審議の中で、「私が申し上げたいのは、リクルート事件で私はかなり懲りましたので、お金には直接タッチしないように、それ以来原則を貫いております。したがって、私が受け取ることはございません。」  これも真実を述べておられますね。
  60. 加藤紘一

    加藤参考人 そのとおりです。
  61. 松田岩夫

    ○松田委員 わかりました。要するに、受け取っていない、会っていない、そういうことでございますね。これまでの国会質疑ではそういう御答弁をされ、先ほど高村委員からの御答弁にも同趣旨のことを申されておられました。果たしてそれが真実かどうか、これが今問われておるわけでございます。  さて、そういう中で、愛知和男議員からこの前もまた、つい最近でございますが、御質問がございました。そのときも同様に、「彼に会ったとかどうとかということについては、私は記憶がありません。」こういう御答弁だけをされておられます。  私どもが読みますと、これだけ何回も質問されながら、記憶がありませんという答弁はいかがなことかな、しっかり、本当に会っておられないのであれば、会っていないということをなぜ明確に申されないのかな、そういうふうに……(発言する者あり)
  62. 高鳥修

    高鳥委員長 静粛に願います。
  63. 松田岩夫

    ○松田委員 私は調べまして受け取りました、それはちょっとこっちへ置いておきましょう。  さてそこで、今の献金問題について、具体的に改めてきょうここでお聞きしてまいります。簡潔にひとつお答えをいただきたいと存じます。  あなたは、平成二年二月十日には、先ほどもおっしゃいましたし、この国会答弁の中でも出てまいりますが、金品の受領をしていない、そのときは東京にいなかったということをるる述べておられます。金品を受領したのは平成二年一月三十一日ではなかったのですか。
  64. 加藤紘一

    加藤参考人 そういう記憶はない、したがって、そういう事実はないと私は思っております。だから、その日付がどうのこうのという話ではございません。
  65. 松田岩夫

    ○松田委員 一月三十一日に受け取っていない、平成二年一月三十一日、金品を受け取っていない、こういうことでございますね。
  66. 加藤紘一

    加藤参考人 そういう記憶はありませんし、そういう事実はないと思っております。
  67. 松田岩夫

    ○松田委員 事実はないわけでございますね。事実があるという前提でお聞きしてまいりますが、なければないで結構でございます。  受け取られた場所が……(発言する者あり)
  68. 高鳥修

    高鳥委員長 静粛に願います。
  69. 松田岩夫

    ○松田委員 受け取られた場所はホテルセンチュリーハイアットだと……(発言する者あり)
  70. 高鳥修

    高鳥委員長 静粛にしてください。
  71. 松田岩夫

    ○松田委員 言われておりますが、これも事実ではないのですか。(発言する者あり)
  72. 高鳥修

    高鳥委員長 静粛にしてください。
  73. 加藤紘一

    加藤参考人 ちょっと今ごたごたして、質問の意味がわかりませんでした。
  74. 松田岩夫

    ○松田委員 平成二年一月三十一日、お金を受け取られたと言っておられる方があるわけですが、その場所はホテルセンチュリーハイアットであったと言っておられます。これは事実ですか。
  75. 加藤紘一

    加藤参考人 そのセンチュリーハイアットで、そういう、会った記憶はございません、こういうふうに申し上げております。
  76. 松田岩夫

    ○松田委員 記憶がないのですか。事実がないのですか。
  77. 加藤紘一

    加藤参考人 記憶がないし、事実もありません。
  78. 松田岩夫

    ○松田委員 それで結構ですから、なければないとはっきり答えていっていただければいいのです。  あなたは、一月三十一日午後八時ごろから九時ごろまでおられたそうですね。そのとき既にそのホテルの部屋には水町氏と共和森口社長が待っておられましたか。お答えください。
  79. 加藤紘一

    加藤参考人 そういう記憶がありませんし、会ったということを、いろいろその後、今回も議論になりましたからいろいろ考えて、そして手繰ってみたけれども、その記憶もないし、ということは、そういう事実はないのであります。だから、今そのところを何時何分、それでどうのこうの聞かれても、それはちょっと困るのでございます。
  80. 松田岩夫

    ○松田委員 わかりました。  さてそこで、森口氏からあなたに一千万円が渡され、そのときあなたは水町氏に、ちょうだいしてもいいんでしょうかねと聞き、水町氏がよろしいのではないですかと答えたので……(発言する者あり)
  81. 高鳥修

    高鳥委員長 静粛にしてください。
  82. 松田岩夫

    ○松田委員 森口氏に、ありがたいことですと言って、紙袋を受け取りましたね。事実ですか、事実でないですか。
  83. 加藤紘一

    加藤参考人 事実でありません。
  84. 松田岩夫

    ○松田委員 すべて否定をされました。  一月三十一日、水町氏の言うところによれば、この日、今私がお聞きしたことが厳然としてあったと申されておられます。水町さんが、後でまた出てまいりますが、録音テープとともに東京地検特捜部に提出されました水町クリニック秘書が当時記録しておりました当時の業務日誌で見ますと、この日水町氏は、今お聞きしたような一月三十一日のその時間にそちらに行っておられるということが確認されておるわけであります。  恐縮でございますが、こうして水町氏がそういうことをおっしゃっておられる。それを全部否定されるということであれば、一月三十一日の加藤幹事長の行動日程を明らかにしていただくわけにはまいりませんか。古いことではございますが、まさにいただかれたかどうか。直接あなたが森口さんにお会いになって、いただかれたかどうか。そのことがこうして長い間問われてきておるわけでございますから、一月三十一日の行動日程、ここで明らかにしていただけませんか。
  85. 加藤紘一

    加藤参考人 それは四年前に問題になりまして、当時も調べました。そのときに、主な日程は、二月の八、九、十だったと思いますが、その前後一、二カ月の日程を全部調べろという話でありまして、当時、一月三十一日という特定の日は話題にも上がっていませんでした。(松田委員「いや、きょうは一月三十一日の行動日程を」と呼ぶ)だから、答弁は聞かれましたことに答弁いたしておりますので、お聞きください。  それで、当時もいろいろ調べたんですが、松田先生御承知のように、あれは選挙が、解散して、そして次の投票が行われるまでの告示の二、三日前というのが一月三十一日ぐらいだったんじゃないかと思います。  いずれにしても、その時期というのは、東京事務所とそれから選挙区の事務所、これはプレハブ事務所をつくられて、両方で日程コントロールをするという、代議士にとりましては一番整理がつかないときでありまして、そのときの日程をいろいろ調べました。調べましたけれども、なかなか具体的な日程というのはそのときは上がってきませんでした。  そこで問題なのは、そのときに東京にいたかどうかということなんだろうと思うんですが、地方遊説していたという記録は、現在もいろいろ調べようとしているんですが、地方に出ていたという事実はありません。
  86. 松田岩夫

    ○松田委員 恐縮でございますが、一月三十一日、これがポイントの日になっております。ぜひ、加藤紘一幹事長のためにも、この日の行動日程を御提出くださいますよう、今からお調べいただいてわかる範囲で結構でございます、御提出してくださいますよう、委員長、よろしくお願いをいたします。  平成三年十二月に、今日の住専問題の発端となりました共和事件が発覚をいたします。平成四年一月十三日に阿部文男代議士が逮捕された前後から、これに対する善後策を、加藤幹事長、当時御検討されたようであります。場所は、幹事長が、加藤さんが事務所に使っていた全日空ホテルの七〇一号室、メンバーは、あなたと、あなたの第一秘書森田氏、弁護士の三宅氏、TBSの城所氏等々、これらのメンバーが集まって、善後策について協議されましたか。事実を、そうでなければ、ないとかあるとかで結構でございますので。
  87. 加藤紘一

    加藤参考人 私が水町氏と二、三回お会いしたことはございます。  ただし、その場所は全日空ホテルではありません。ニューオータニです。
  88. 松田岩夫

    ○松田委員 そうすると、以後お聞きするわけでございますが、全日空ホテルの七〇一号室というのは、あなたの事務所であったことは事実ですか。
  89. 加藤紘一

    加藤参考人 それは事実でございます。  ただ、私がなぜニューオータニにしたかというと、当時官房長官でありまして、そして水町氏に会う用件と、それから別途、公務でいろいろ人に会ったり指示するという意味で、二つ別に部屋をとって会っていた。水町氏に会う別の部屋をとっていたということは言いませんでしたけれども、そういったことがあったものですから、私の記憶に残っておるのです。
  90. 松田岩夫

    ○松田委員 しばらく、ちょっとその会合のことについてお聞きしていくわけでございますが、平成四年二月二十日夜、すなわち先ほど言いました衆議院予算委員会で、草川昭三議員が、あなたが共和森口社長に会ったかどうかを質問した夜でございますが、その日も、今申した関係者、全部かどうかはともかく、関係者の方と対策会議といいますか、会合を持たれましたか。
  91. 加藤紘一

    加藤参考人 私は、水町氏に会いまして、こういうことが国会で、またマスコミで話題になっているんだけれども、そういうことがあるんだろうかと、私が忘れているということもあるし、そういう可能性もあるわけだからどうなんだろう、私は全く覚えがないけれどもと言いましたら、水町氏は、そういうことはありません、だから自信を持ってないということをしっかりと答えてくださいと言いました。
  92. 松田岩夫

    ○松田委員 先ほど高村委員の質問の中でも同様に答弁されておられますね。水町さん自身が、加藤さん、あなたが森口さんからお金をもらったことはないということをはっきりおっしゃっておられます、こうおっしゃっておられましたね。その水町さんが、いや、直接会って、彼がもらっているんですよと一方でおっしゃっておられるわけでございます。  先ほども申しましたけれども、それならなぜここに一緒に、私どもは、一緒に呼んで、加藤幹事長のためにも、この不名誉を青天白日のもとに明らかにすることがあなたにとってどんなに大事かということで、水町氏の証人喚問もお願いしておるわけでありますが、きょうは残念ながら実現できていない、こういうわけであります。(発言する者あり)
  93. 高鳥修

    高鳥委員長 静粛にしてください。
  94. 松田岩夫

    ○松田委員 さて、引き続いてお聞きします。  さらに、平成四年三月十七日の夜、すなわちこれも、先ほどの参議院予算委員会で佐藤三吾議員が、共和からあなたへの一千万円のやみ献金問題を質問した日の夜のことでございますが、また同じく関係者が集まって協議をされましたね。
  95. 加藤紘一

    加藤参考人 そういう具体的なことを覚えておりません。ただ、二、三回水町氏には会いました。  それからもう一つ、何人かの人が一緒に会ったということはありません。  例えば、TBSの記者さんの話がありましたけれども、その方は社会部の記者でございます。この問題の取材に来られたということはあります。しかし、それが具体的にどういう場面であったか、その日は覚えていませんが、そんな方と一緒に対策を立てるわけはありません。(発言する者あり)
  96. 松田岩夫

    ○松田委員 荒唐無稽ではなくて、会合がしばしば持たれておるものですから。しかも、その質問の日の夜とか、問題が起こったときに、問題が起こったと言うと語弊がありますか、相談をしたいなと思われても不思議ではないなという夜、会合が持たれておるわけでございます。  したがいまして、正確にお答えをいただきたいわけでございますが、御記憶にないからわからないのか、三月十七日の夜、水町さんほか何人かの方とお会いになったかどうか。  もう一度確認しますが、と申しますのは、この一連の会合がなぜ持たれたのかなということを私自身はけげんに思うわけであります。三月十七日、そして先ほどの二月二十日夜、ともに質問があった日でございますけれども、覚えておられませんか。  それでは、これまた恐縮でございますが、こうした一連の会合、実は私どもとしては非常に大事に思うわけでございます。といいますのは、きょうここに来ておいてほしかった水町氏のお話によれば、こうした会合を通じていろいろ対応を協議していきました、こういうことでございますので、三月十七日夜、なかったんですか。夜、会合はあったんですか、なかったか、もう一度確認しておきます。
  97. 加藤紘一

    加藤参考人 私は水町氏とその前後二、三回会ったということを申しました。ですから、それがどの日であったかは覚えておりません。だから、三月十七日であったかもしれません。四年前のことでございます。  それで、もう一つ申し上げたいのは、はっきり申し上げられるのは、今いろいろな人の名前が出されましたが、その人たち一緒に会合を持ったことはありません。持つわけがありません。
  98. 松田岩夫

    ○松田委員 わかりました。一緒に会合を持ったことはない、弁護士の三宅さん、先ほど名前を申しましたが、こういった方々と一緒に持ったことはない、この一月以降。わかりました。  さて、この三月十七日の夜会合を持たれた際、あなたは、ちょうどこれは佐藤三吾議員の質問の終わった夜でございますが、佐藤三吾君の質問についての手は打っておいた、こうおっしゃったと報じられておりますが、これは事実でございますか。
  99. 加藤紘一

    加藤参考人 手を打っておいたというといろいろな誤解を受けますけれども、申します。私は、佐藤三吾議員から質問を受けて追及されております。
  100. 松田岩夫

    ○松田委員 これはどういう意味ですか、じゃ。何か手を打っておかれたのですか。
  101. 加藤紘一

    加藤参考人 よく国会で手を打ったというのは、手心を加えてほしいというような手を打ったというふうに週刊誌等に書かれます。書かれております。しかし、私は佐藤三吾議員からこの問題について追及を受けております。
  102. 松田岩夫

    ○松田委員 改めて申しますが、なぜこの会合を持ったかどうかということをお聞きしておるかと申しますと、私どもがお呼びしたかった水町氏のお話によれば、彼の手帳には、この一連の、森口社長から一千万円いただかれたやみ献金問題について、その対応を協議するため、質問のあるたびとかその他必要なときに、今二、三回とおっしゃいましたが、たびたび会合を持たれた。その会合の記録が、日取りが彼の手帳には書いてあって、確かに会合を持って、加藤幹事長加藤先生も入っていろいろ対応を協議した、こうおっしゃっておられるものですから、それでわざわざお聞きしておるわけでございます。  ところが、今のお話でございますと、今申したようなメンバーではないが、水町氏とは二、三回、この質問に関連して、佐藤三吾さんのこととか、今おっしゃいましたね、関連してお会いしたことはあるということですか。正確に教えてください。
  103. 加藤紘一

    加藤参考人 いろいろ報道されておりましたので、その事実があったかどうかということを自分覚えていないけれども、水町さんにお聞きしたいということで会いました。それからまた、その後管財人の、いろんなリストみたいな騒ぎが当時たしかあったように思います。そこで、そういうことはどういうことなんだろうという意味水町氏と会ったことはございます。  ただ、そのノートがあるとかいろいろおっしゃいますけれども、まず第一に、会っておりましたのはホテルニューオータニでございます。だから、そこの事実関係からまず間違えていると。正確かどうかということは問題があろうと思っております。
  104. 松田岩夫

    ○松田委員 場所の点については今おっしゃったわけですが、会合をされたことは幾たびかあったということは確認していただいたわけであります。  さて、先ほどの返金の問題について話を移します。  平成四年、時期はどうも上半期と先ほどおっしゃいましたが、水町氏があなたから一千万円を預かることとなる経緯の中で、あなたが、この先ほど話題にいたしましたいつもの会合で、「国会にもマスコミにも、ノーといって突っ走るには、足元に一千万円があっては俺にも良心の呵責がある。やはり足元には置いておきたくない」と報じられております。これは事実ですか。
  105. 加藤紘一

    加藤参考人 そういう発言をしてはおりません。
  106. 松田岩夫

    ○松田委員 水町さんが、そういう発言をされたとおっしゃっておられるわけであります。ここでも大きな食い違いがございます。  さて、水町氏が預かることになりまして、水町氏はあなたに対して、預かりますが、いずれきちんと返しますからと言ったところ、あなたは、総理か外務大臣になったら返してくださいと言われたそうですね。  先ほど、そんなばかなことを言うはずがないと答弁をされておられましたが、私からも改めてお聞きいたします。水町氏の話では、確かにあなたはこうおっしゃったと言っておられるわけであります。もう一度確認をしておきます。
  107. 加藤紘一

    加藤参考人 先ほど高村さんにも申しましたけれども、私が当時考えておりましたことは、やはり、管財人のリスト等の問題に、名前が出たということで、もちろん国会でも取りざたされたけれども、マスコミでも取りざたされた。それは宮澤内閣というものに対して大変迷惑をかけることになるわけであります。したがって、特に平成二年二月分というようなことで何かたしか書かれていたというふうに思いますので、その点はどうしても、非常に困ったなと思いました。  それから二番目に、水町氏と森口氏との非常に親しい関係から、正規の政治資金団体としてこれはちゃんと水町さんが届けてくれているものですけれども、その紘和会というところに資金が来ているという可能性は、私は、あるというふうに思いました。この辺は、余り経理はどうなっているのですかということを聞くと水町氏には失礼ですから、そういう会話はいたしておりませんけれども、そういう可能性は十分にあったわけでございます。  それから三番目に、これは松田さんも地元でよくあると思うのですけれども、資金を受けていた会社が倒産したと、そうしたときには、まあ気持ちとして……(松田委員「質問に答えて」と呼ぶ)はい。でも、ここは重要なところですからお聞きいただきたいと思うのですが、そういうことからも……(松田委員「質問にだけ答えてください」と呼ぶ)はい。どうしても社会的責任からそういうことは、お返ししておかなければいけないのではないかという、その三つの動機で考えるわけでございまして、そういう関係からいえば、水町さんの足元に置いていいという話ではない、チャンスがあったら森口さんないし管財人の方にお返ししておいてください、献金の事実があったらお返ししておいてくださいというのが論理というものではないかと思います。
  108. 松田岩夫

    ○松田委員 私の質問に直截簡明に答えていただければありがたいわけであります。  さて、今いみじくも話題にされました点に、では触れさせていただきますが、あなたは、三月一日の記者会見で、献金問題が浮上した平成四年に、何月かこれ、はっきりおっしゃいませんが、それは何月かわかりますか。平成四年の上半期と先ほどおっしゃいましたが、お返しになったのは。
  109. 加藤紘一

    加藤参考人 水町氏はそれを二月とおっしゃっていたようですけれども、二月ということはないと思います。で、具体的な日にちは我々もわかりません。かなり後になってからだったのではないかなという気はしますが、ちょっとわかりません。
  110. 松田岩夫

    ○松田委員 この点は非常に大事でございまして、加藤さん、一千万円をお返しになるわけですよ。そんな、ポケットに入っているようなお金じゃありませんよね。しかも……(発言する者あり)ああいう感覚で日本の政治が行われるとすれば大変でございますが、一千万円ぐらい何とでもなるよとおっしゃいましたが。  さて、そのお金を、三月一日の記者会見で初めて、この水町氏に秘書を通じて現金を届けたということを明らかにされたわけでございます。そして、その理由としてあなたは、先ほども、そして今もまた、「私は現金の授受には直接」、こう言われて、これは正確ですか、これは朝日新聞の報じたところを読み上げているんですが、「私は現金の授受には直接タッチしないことにしている。しかし、内閣に迷惑をかけてはいけないと思い、後援会の金からねん出した。本当献金があったのならば、共和の元副社長管財人に返却したらいいと思って渡した」と言われて、その上で、「政治資金収支報告上の義務違反になっていることは申し訳ないと思っている」と報じられているわけでございますが、これは正確でございますか。会見された中身と正確でございますか。  まず、その点を確認します。
  111. 加藤紘一

    加藤参考人 不正確でございます。
  112. 松田岩夫

    ○松田委員 どの点が不正確でしょうか。簡潔にお願いします。
  113. 加藤紘一

    加藤参考人 私は、献金が事実——まあ当時の記者会見の様子は、ちょっと資料を見ないとよくわかりませんが、献金が事実ならば、どうして返却しておいてくれなかったんだろうということを言いました。ただ、その献金水町さんは否定しておられました、そのセンチュリーハイアットですね。  それで、どうして渡したかということについては先ほど言いました。紘和会という正規の団体に来ている可能性も十分にあるし、それから、資金団体管財人リストでいろいろ言われていることもあるし、それから、宮澤内閣にいろいろ迷惑をかけてもいけないし、そういう意味でお預かりしていただいておった一千万でございます。  だから、現実にお金はそちらに、水町さんの方に行っているわけですから、もし献金が事実だったら、そのお金をどうしてお返ししておいてくれなかったんでしょう。そこは私は腑に落ちないところなのであります。
  114. 松田岩夫

    ○松田委員 私どもからすれば、献金の事実を加藤さん自身否定されながら、返却をされること自身まことに不自然そのものでございます。本当にあなたに献金があったからこそ返却されたのではないですか。あなたがいただいてもいないそんなお金を、あなたが、あなたの後援会の金からなぜお返しにならねばならないのか。極めて不自然でございます。本当献金があなたになかったのに返金をされる。全く理解できないところでございます。どうしてでしょうか。
  115. 加藤紘一

    加藤参考人 ここは高村議員にも先生にも何度も私なりに御説明したつもりですが、そのセンチュリーハイアット記憶は、私はありません。そしてまた、そこを当時水町さんにどうだったんですかと聞いたら、それはないから自信を持って答えてくださいと言っていたわけです。じゃどうして騒ぐのか、共和管財人がですね。  そうすると、私としては、水町さんと森口さんの親しい関係から、正規の紘和会という政治団体があるわけですから、そこには、収支報告、僕らは余りよくわかっていない。しかし、団体でお金を受け取るようになっているわけですからそっちに来ている場合もあるなと思って、万が一献金がいろいろな形であったならばそれでお返ししておいてほしいということを申したのでございます。
  116. 松田岩夫

    ○松田委員 まことに不自然な話でございます。献金の事実を否定されながら、返却をされる、まことに理解に苦しむところでありますが、それではさらにお聞きします。  後援会から捻出したということですが、どこの後援会から捻出したのでございますか。捻出したことを証明するものがありますか。あったらお出しください。
  117. 加藤紘一

    加藤参考人 私の事務所からの報告によりますと、私の政治団体であります社会計画研究会から捻出いたしました。平成四年度分の社会計画研究会の収支報告は、支出で二億一千百八十万九千五百四十三円、二億一千百八十万ですが、そのうち政治活動費として一億一千四百五十五万使っております。その中の一部がこの一千万に、捻出に使われております。
  118. 松田岩夫

    ○松田委員 水町さんのお話ですと、これまた大きく意見の食い違っているところでございますが、水町さんの方は、受領した当事者でない水町さんが返却するというのもまことに奇妙なことだ、なぜ私が加藤さんからお預かりして返さねばならないのかということをおっしゃっておられます。この点についてはどう思われますか。  あなたは水町さんがもらった——ところで、先ほどから非常にあいまいになってきたのですが、水町さんの紘和会はいただかれたのですか、この一千万円を、あなたの理解では。あなたの理解ではこの点はどうなんですか。
  119. 加藤紘一

    加藤参考人 冒頭に申しましたように、水町さんの主宰してくださっております紘和会というのは、政治資金団体届け出を出している団体でございます。そして、これは正規にいろいろ集めていろいろ使われている。それで、その団体にいろいろな方から資金カンパをいただいているということも僕らは仄聞して聞いておりました。  しかし、具体的に・・(発言する者あり)御質問にお答えさせてください。具体的にどういう人から何ぼいただいてどういう形に使われていましたかということを聞かせてくださいと秘書が申しても、聞かせてもらえなかった。なおかつ、私がそれを直接聞くわけにもいかぬでしょう。そういうわけで、もしかして森口氏と水町氏との親しい関係から紘和会お金が来ている可能性もある、そういうこともあり、一千万ということを我々の方から捻出してお届けして出したということでございます。
  120. 松田岩夫

    ○松田委員 今のお話はまことに隔靴掻痒の感でございまして、ここに水町さんがおられれば、はい、どうですかと、これですぐわかるわけでございます。まことに残念でございますが、今の答弁ではまことに我々は理解ができません。  さて、いただかれたのかどうか、本当紘和会がいただかれたのかどうか。水町さんは、当然のことながら、あなたが直接森口さんからいただかれた、こうおっしゃっておられるわけでございます。あなたは、いただいたのかどうかはっきりしないが、よく彼は教えてくれなかったから、あるいは紘和会でいただいているのかもしれない、こういうことですね。こういうことですか。もう一度確認します。
  121. 加藤紘一

    加藤参考人 何度も申しておりますけれども、水町先生は、当時どうだったんですかと言ったら、そういう事実はありませんから自信を持って答えていてくださいと言っていたわけです。それで、突然今度はあると。そうすると、今度またあるときにはないと言うのかもしれません。したがって、また仮にあるならば、どうしてそれを返しておいていただけなかったのか。趣旨は違うんですけれども、お渡ししていた趣旨は違っているんですけれども、しかし水町さんのところにはちゃんと一千万の現金をお渡ししてあるわけですから、社会計画研究会の方から。じゃ、どうして返しておいていただけなかったのか。そこが私、脇に落ちないところだということを申し上げているわけであります。
  122. 松田岩夫

    ○松田委員 そのまさに水町さんとの間のやりとりでございます。水町さんの方で本当にもらわれておられるのかどうかについても、いや、もらっていないから安心していらっしゃいと言われたり、いやそうでなかったりした、こういうお話でございます。まさにこの点は極めて重要な点であります。一千万円が一体だれがいただかれたのか。水町さんが本当にいただいたのか、あるいはまた加藤さんがいただかれたのか。ここに水町さんがおられれば本当にすぐ解決する問題でございます。  さて、その水町さんは、したがいまして、今のお話でございますと、政治資金収支報告上の義務違反も水町さんの責任ということになる。紘和会の義務違反だ。水町さんは、本件一千万円は加藤代議士自身に対する政治献金であって後援会に対する寄附金でないことは余りにも明白であり、これは事実の歪曲であると同時に責任転嫁以外の何物でもない、こうおっしゃっておられるわけでございます。いかがですか。
  123. 加藤紘一

    加藤参考人 十数年前、水町さんが私のために後援会をつくってくださる、後援会といいましても囲む会ですが、それで、それを政治資金団体で届けるというときに、水町さんは、ぽつりと私にこう言いました。先生、頑張ってください、そして、政治資金団体届け出をする以上、私はその手続はしっかりやっておいて、かりそめにも先生がいろいろ問題になるようなことはしないようにしておきますと。そういう責任者をやってくださっておったわけで、それから、その時々、その後も、その辺はしっかりやっておきますからというふうに言っておられました。  その意味で、政治資金規正法上の手続にいろいろ不備があったとすると、それは当然責任者の水町さんの責任になるわけですけれども、しかし私はそれをここでは申しません、本当に私を支援してくれた人ですから。  しかし、やはり問題は、政治資金団体の責任者というのは、すべてのことについて手続をしっかりやっていただくというからこそ責任者なんじゃないでしょうか。それをやれない場合に、危ないと思うと代議士事務所でやることになるわけです。そうすると、これは政治資金団体というのは本来代議士とは独立て行われるべきなのに、代議士事務所で全部秘書が仕切って、そして細かくやって、そしてまた問題も起こるのですかという、いつもの政治改革のぐるぐるの議論になってくる。やはりそれは、政治資金団体の長にお願いしたらそこは信頼して、大船に乗ったような気持ちでやっていくというのが実は本来政治家政治資金団体の責任者の関係だったんではないかなというふうに思います。
  124. 松田岩夫

    ○松田委員 極めて不明瞭な答弁の連続でございますが、さらに私は指摘しておきます。  平成四年、この水町さんから現金をいただかれたころ、まさに国会では質疑が続いておったわけでございますが、ついこの間の三月一日に初めて、この水町さんに秘書を通じて一千万円お返ししたというお話をされておられるわけであります。初めてわかったわけでございます。しかし、なぜこのことを国会質疑の中で今まで一度も明らかにされなかったのですか。まことにこれも不自然であります。国会でうその答弁をしてきたと言っていいと思います。なぜこの一千万円お返しになったことをこれまで国会で明らかにされなかったのですか。
  125. 加藤紘一

    加藤参考人 国会で聞かれもしませんし、別に述べなければならないことではないと思っています。
  126. 松田岩夫

    ○松田委員 もらったかどうか、そしてもらってもいないのに一千万円を返金される。そしてまた、その水町さんが、私のもらったお金ではない、こうおっしゃっておられるわけであります。  そのお預かりしたお金性格でございますが、これまた加藤さんの言われるのと水町さんの言われるのとでは大いに違うわけでございます。  水町さんは、あなたから預かっていた一千万円をあなたに返すべく、あなたに連絡をとろうとあなたの自宅に電話をしたそうでございます。しかし、あなたは電話に出ない。秘書の森田さんに電話をして、お金を返したいからあなたに連絡をとってほしいと頼んでおるのに、あなたからは連絡がなかった。そこで、やむなく二月二十八日、東京法務局に供託されたわけでございますが、そのことをあなたは当然知っておられると思います。  逆にあなたは、記者会見で、水町氏がいきなり一千万円の供託という挙に出たかのような発言をされておられます。これまた水町さんとあなたとの間に大きな違いがあるわけでございます。  さて、これまでのそういったあなたの不誠実な対応のために、水町さんはそのときの秘書との電話の内容を念のために録音しておいた、こういうことでございます。その記録によりますと、あなたの森田秘書は「一時預かったような形になっているんだよな—」、こう森田秘書は答弁しておられます。答弁というか、お答えしておられます、電話の中で。ここにそのテープを起こした原稿も持ってまいりましたが・・(発言する者あり)本当かどうか、水町さんがここにおられればすぐ解決することであります。(発言する者あり)
  127. 高鳥修

    高鳥委員長 静粛に願います。
  128. 松田岩夫

    ○松田委員 ここにいろいろやりとりもあります。もう時間が限られてまいりましたから申しませんが、一つのポイントでございます。あれは「一時預かったような形になっているんだよな—」、先ほど私は質問の中で申しました、「預かりますが、いずれきちんと返しますから」と言ったところ、あなたは「総理か外務大臣になったら返してください」、こう言われた。これもうそだと言われましたが、水町さんはそうおっしゃっておられます。  まさに一時預かったような形になっているんだけれども、このお金がまさに、七十三億円住宅ローンサービスから借りた共和、そこから来ている金だということで、水町さんは、これはまさに返すべき金だ、破産管財人に返すべき金だということで供託されたわけでございます。  さて、このあなたの森田秘書、「一時預かったような形になっているんだよな—」、これはどういうふうに理解したらいいのでしょうか。これは事実でないということでしょうか。事実だとしたら一体この一千万円は何なのか。あなたから一時預かっている金だ、いずれお返しする金だ、こういうやりとりがあなたの秘書との間でされておるわけであります。  改めて、このお金性格を聞きます。
  129. 加藤紘一

    加藤参考人 同じことを申しますけれども、もし献金の事実があったならばそれを返しておいてほしい、共和側に。それまで預かっていただくという金であって、事実ならば、献金が事実だとおっしゃるならば、なぜ返しておいてくださらなかったのでしょう。森口さんと水町さんの方の連絡は常にとれるし、そういう関係になっているし、なぜ返していただけなかったのかと思います。  それから、もう一つ申します。  水町氏は私の友人でございました。私との会話を、電話を録音するような性格の男ではございません。どうしてそんなことを彼がやるようになったのでしょう。
  130. 松田岩夫

    ○松田委員 あなたの対応が不誠実であったため、そうされたということであります。(発言する者あり)
  131. 高鳥修

    高鳥委員長 静粛にしてください。静粛にしてください。
  132. 松田岩夫

    ○松田委員 時間が限られてまいりましたけれども、今の質疑を通じてまことに明確になってまいりましたことは、あなたの言っておられることと水町氏が言っておられることとがことごとく異なっているということでございます。あなたがうそをついているのか、水町さんがうそをついているのか、国民の前に明らかにすべきことであります。  水町氏は証人喚問に応ずると言っているのに、なぜあなたやあなたの所属する与党は、あなたと水町氏の証人喚問をかたくなに拒むのか。あなたは参考人なら応ずると言われました。なぜか。水町氏の証人喚問は絶対に認められないと自民党は強く主張いたしました。なぜ水町氏を証人として喚問することを拒むのでしょうか。  今回のあなたへの質疑を通じて、あなたと水町氏の証人喚問の必要性はますます強くなりました。委員長、ぜひ、両氏の証人喚問を改めて要求して、私の質問を終わります。委員長、よろしくお願いをいたします。
  133. 高鳥修

    高鳥委員長 これにて松田岩夫君の質疑は終了いたしました。  次に、田中昭一君の質疑に入ります。(発言する者あり)静粛に願います。静粛に願います。(発言する者あり)静粛に願います。次の質疑に入っております。静粛に願います。  田中昭一君。  自席にお戻りください。お戻りください。  田中昭一君。——静粛にしてください。
  134. 田中昭一

    田中(昭)委員 社民党の田中でございます。私に与えられた時間は極めて少ないわけですが、国民の皆さんに対して政治に責任を持つ政権与党第一党としてのかなめである幹事長の責任は極めて重たい、私はこう思っております。  私は、加藤幹事長個人的には尊敬をいたしております。私の地元で起こりました公害の原点である水俣病の問題につきましても、四十年間なかなか解決がつかなかった問題について、幹事長が政調会長時代に決断をされました。六千名もの被害者が救済をされました。私は、政治家の決断としては高く評価をすることができるのではないか、こう実は思っております。ですから、今回のこの問題について、いろいろと幾つかの疑惑が投げられていることについては極めて残念ですし、極めて遺憾であるし、これらの問題については明確に疑いを晴らさなければいけない、こう思っております。  今お二人の方から共和の問題についていろいろと質問がございました。時間がございませんから多くを申し上げませんけれども、私は、この問題については、例えば水町さんがここに来て言われたとしても、どちらを信頼するかの問題ですから、決着はつかないと思います。これは司直の手に移っているわけですから、司直の手で明確に解明される以外にはない、こう思っております。したがって、司直の手で明確な判断ができれば、その判断については責任を持って対応するということは明確にしておかなければいけないだろう、こう思います。  そのことを前提にいたしまして、私は、今お二人の御意見などもお聞きをしながら、私自身としてすっきりしない点、少しうさん臭い点などもたくさんございます。こういう点について少し幹事長の御見解などもいただきたい、こう思っております。  それは、幹事長水町さんとの関係についてです。仲人もされた、再三ゴルフにも行かれた、そして加藤幹事長を大変激励をされてきた、そういう水町さんが、今、ずっと昔のことを取り上げて、なぜ加藤幹事長と対決をしなければならない状況になったか。こういう問題については、加藤さんと水町さんとの関係についてはもう少しやはりメスを入れなければ、この問題で国会の審議の状況に影響が出ている問題ですから、ここらの問題についてもう少しはっきりする必要があるのではないかな、こう思っております。  今、事実関係については幹事長は否定をされております。私は、水町さんが後援会会長であるし、政治資金団体でもある、こういう状況の中では、そういう事実関係について、もし仮にそういう事態があったとしても、私は、なぜ政治資金団体立場から政治資金規正法に基づいてきちんとした処理をしなかったのか、こういう点について疑問を持ちます。  また、水町さんの団体がしないにしても、加藤さんに対しては激励をする立場で、頑張ってくれということをそのときも再三言っておられたわけですから、なぜ、きちんとこの問題については政治資金規正法に基づいて処理をするというような、そういうことを提言をする責任と義務があったのではないかな、そういう社会的地位の人であった、私はこう思うのですけれども、責任を果たさずに、そういうことをやらずにおいて、今になって、やみ献金だ、やみ献金だということで騒いでおるということ、そして二流三流の週刊誌にいろいろ口を出して正義漢面をしているという問題については、私は極めて問題があると思います。  四年前に私たち日本社会党も、参議院の予算委員会やらあるいは衆議院のPKOの特別委員会で、この問題についてはいろいろと質疑をいたしております。その際も、事実関係については否定をされているわけであります。  これも週刊誌によりますと、加藤氏を通じてあっせんを依頼をしておったいわゆるクリニックに対する増資五千万の問題について、結果的にそのことができなかったために腹いせにこういう問題に飛びついた、こういうことも週刊誌に言われているわけです。しかし、今いろいろと言われる問題は、週刊誌に根差していろいろ意見を言っているわけです。ですから、週刊誌にはそういうことが書いてあるわけです。  私も政治家の端くれですから、いろいろ経験がございます。例えば、就職の問題などについて依頼がある、それがうまくできればいいのですけれども、できなかった場合には、手のひらを返すような行動に出られる方もおられるのです。  そういう意味では、私は、水町さんがやはり加藤さんの政治資金団体として、後援会としていろいろやっておった、そしていろいろ増資などの問題についても依頼をした、それがうまくできなくなったから、手のひらを返すような形で、今敵対視をするような、そういう状況になってきているのじゃないかな、こういうことを感じるわけでありますが、こういうことを是認するとすれば、私は、これは政治家に対する大変な恐喝行為にもなるのではないかな、こういうふうに思うわけであります。  しかも、今の時期になぜそうかという問題ですけれども、クリニックの母体になっている医学研究機構というのがあるそうでございますが、ここの機構に対しては、告発をする直前に五千万の増資がされているということも、これも週刊誌に書いているわけであります。  したがって、そういうことを総合的に見た場合には、この問題はやはりうさん臭いところがある、だれか仕掛けている、政争に利用している、こういう面が私はあるのではないかな、こういう気がするのですけれども、この点について、率直に、加藤幹事長水町さんとの個人的な関係、今日に至った経過について幹事長はどのようにお考えになっておるか、率直に申し上げていただきたいと思います。
  135. 加藤紘一

    加藤参考人 時間が余りありませんから、手短に申しますと、やはりきっかけはその五千万の増資の話だったと思います。五千万というのは大きな金です。したがって、私が紹介した経済人水町氏が依頼し、そこで話し合いになっていたということを聞きましたけれども、しかしこれは、経済人の方が水町氏の経営方針等いろいろ聞き、そして厳しい判断をされたとしたら、我々政治家が、そういう民間の人たちの五千万の融資する、しないにはなかなかタッチできないところがあった。私としては、もっと強引に頼むべきことなのかなと今も反省したりはしておりますけれども、しかし同時に、それはいいことではない、そんな経済人人たちが判断した場合にはそれはいかぬと。  いずれにしても、これは個人の話、私と水町という人間の個人の話でございます。それがどうして途中から、彼がうちに電話をかけたときに録音テープがとられたり、告訴になったり、こういう話になるのか。私は非常に、今後、政治とそういう問題点については考えておかなきゃいけないときに来たのではないかと思います。
  136. 田中昭一

    田中(昭)委員 もうあと五分しかございません。もう一つ、私は、幹事長立場でこの際明確にしてほしいことがございます。  それは、先ほども少し触れられておりましたけれども、北朝鮮との関係についてであります。米の問題もいろいろございますけれども、私はそれ以上に、このにせドル問題について、いろいろ国会の場でも提起がございますね。これは、いわゆるにせ札の識別機が日本から北朝鮮にたくさん送られておるという問題とか、先ごろ日本で発見されたにせドル事件に加藤事務所が関与をしている、こういう問題などが、これは国会の場で触れられておるわけです。実際に国会で問題提起がされておるわけです。それから、週刊誌にも書かれておるわけでありまして、そして、加藤さんのところの事務所の人の氏名も出されておるし、それから国交のない北朝鮮と我が国の外交問題でいろいろと下働きをしている方の名前なども出ておりまして、加藤グループとして北朝鮮との間でにせ札問題なども含めていろいろ問題あり、こういう指摘がございます。  私は、これは与党第一党の幹事長としては、この問題についてはやはり明確にしておかなければ国民の皆さん方の政治不信は払拭できないと思いますから、時間がございませんから、この点について幹事長の見解を明確に申し上げていただきたいと思います。
  137. 加藤紘一

    加藤参考人 この問題は本当新進党に聞いていただきたかったと思います。どうしてお聞きにならないのか。  我々がにせ札だとかサリンに言及することはございません。我々は、北朝鮮の問題については……(発言する者あり)
  138. 高鳥修

    高鳥委員長 静粛に願います。静粛に願います。
  139. 加藤紘一

    加藤参考人 北朝鮮の問題につきましては、我々は、与党三党の間で、村山政権のテーマとして北朝鮮との関係の打開ということを考えなきゃならぬと思いました。最高責任者会議で決まりました。そこで、我々は、当時政調会長であったものですから、その問題にタッチいたしました。そして、人道的な米の支援の問題もタッチいたしました。  そういう中で、北朝鮮との国交がない中で、外務省も、またいろいろ北朝鮮問題に関与をされたり努力されている政治家皆さんがコンタクトのチャネルとしているのは、朝鮮総連と、それからもう一つは吉田猛という人でありました。私は、米の問題をやるということになって初めてその吉田猛という人を知りました。そして、渡辺美智雄さんを団長とする例の訪朝団なんかの段取り等について、いろいろ知識を聞いたりしました。もう完全に北朝鮮とのコンタクトのできる人だというふうに思っていました。  その人とうちの事務所が、約三、四カ月いろいろ事務処理をお手伝いいただいたということだけで、どうしてここまでサリンだとかにせ札だとか書かれるのでしょうか。  私は、北朝鮮は今、あの体制はよくないと思っています、あんな体制は。そして、いずれ経済崩壊するおそれのある状況だと思います。その崩壊を待って三十八度線を越えてくるように考えるのか、それとも、その前に国際社会に引き出すのか、または、そういうことをしていませんと……
  140. 高鳥修

    高鳥委員長 簡潔に願います。
  141. 加藤紘一

    加藤参考人 つまり、沖縄の四万五千人、六千一人の数も減らないという中で、我々は北の問題を考えなきゃならぬと思っています。  したがって、この北の問題にかかわるとすぐこのように書かれるということだったら、日本の政治家はだれもこの問題はタッチできなくなるのではないかということを危惧いたします。
  142. 高鳥修

    高鳥委員長 申し合わせの時間が来ておりますので、終わりにしてください。
  143. 田中昭一

    田中(昭)委員 はい、わかりました。  共和からの一千万の問題は、先ほど申し上げましたように、司直の判断に従っていただく。  それから、後から出てくると思いますけれども、静岡信連の問題とか北朝鮮の問題などは、これは確実な証拠も何もないわけですから、会期末も迫っているわけですから、これらの問題と絡めて国会審議が妨げられる、こういう状況でなくて、今申し上げましたような立場から、会期末に向けまして、金融六法を含めまして早急にやはり国会の審議を急ぐということが必要であるということを最後に申し上げたいと思います。
  144. 高鳥修

    高鳥委員長 終わりにしてください。
  145. 田中昭一

    田中(昭)委員 最後になりました。  委員長、先ほどの説明の中で、二流、三流の週刊誌ということを申し上げましたので、この点については取り消しをしていただきたい、こういうふうに思います。  終わります。
  146. 高鳥修

    高鳥委員長 これにて田中昭一君の質疑は終了いたしました。  次に、小沢鋭仁君。
  147. 小沢鋭仁

    小沢(鋭)委員 私、新党さきがけに与えられた時間は八分でありますので、超特急でお聞かせいただきたいと思います。どうか御理解をいただきたいと思います。  まず第一点ですが、先ほど来ずっと質疑を聞いておりまして、加藤参考人はないとおっしゃっている、それから、水町さんはあるとおっしゃっている。しかし、その中でつくづく思うのは、水町さんは政治団体の責任者であって、もしあるとすれば、あの当時の政治資金規正法で十分これは処理、全く問題なく処理できるはずの問題、加藤さんはいわゆる職務権限、全く関係ありません。なぜそれを水町さんが、あると言いながらしなかったのか、私はここのところがまず問題だと思います。ただ、これは、時間がありませんから、裁判が起こっておりますので、その裁判の中で明らかになっていくと思います。  そういう中にあって、私は加藤参考人にぜひお聞きをしたいのでありますが、この裁判の中で、もし万々が一有罪というようなことが確定されましたときは、これは私、大変残念でありますが、政治家の大先輩としてそれはきちっと身を処していただかなければいけないと思うわけであります。新党さきがけとしてもそう思うわけでありますが、そのお気持ちをお聞かせいただきたいと思います。
  148. 加藤紘一

    加藤参考人 私は、今告発されている問題につきましては、完全に潔白だと思っております。当然のことだと思っております。万が一今みたいなことがあったら自分の身を賭して処するのは当たり前のことだと思っています。
  149. 小沢鋭仁

    小沢(鋭)委員 まずその一点を、本当に聞かせていただきたかったわけであります。明快な御答弁をいただきました。  それで、時間がありませんから、私は、この場は金融特でありますから、まさにこの問題とそれから住専処理の問題、金融問題の関係があるかないか、その点に絞って聞かせていただきたいと思います。  これはまさに、新進党皆さんが、例えば今回の参考人のこの問題のときにこういうふうにおっしゃっています。五月二十九日、山岡賢次委員の質問でありますが、金融安定化とか景気対策とか、国民を欺くような美名のもとに導入されようとしているこのスキームが、実態は、加藤紘一氏主導による種々の住専不正の隠ぺいのものではないのだろうか。これがこの問題の焦点だと私は思うわけでありますので、そこをお聞かせいただきたいと思います。  まず、覚書ができたときに官房長官であられて、そしてそれを先導したという話が、指摘が、山田正彦議員の二月二十六日の予算委員会の質問でありましたが、このとき、加藤参考人はもう既に官房長官ではありませんでしたね。それをまず一点。  それから同時にまた、住専スキームが決定された十二月の時点、これは政策決定の現場の責任者ではなかったですね。私も一緒にやらせていただいたのですが、その二点。  それからもう一つ、それに加えて、私は、この問題が加藤参考人一人の力でねじ曲げられたということは、与党に対する大変ないわゆる侮辱だと思っております。私も、一年間この問題をやってきておりました。その中で、与党三党の政策決定のスキームの中で、加藤参考人が一人でこの問題を自分に都合のいいようにねじ曲げることができるのかどうか。こんなことを言われたならば、新党さきがけとしても、与党の一角として大変不名誉であります。そこについて、一緒加藤参考人もずっとやってまいった中で、どうお考えになっているか。まさにそのスキームを変えられるような与党の今の政策決定メカニズムかどうか、その点を聞かせていただきたいと思います。
  150. 加藤紘一

    加藤参考人 例の住専についての覚書がつくられましたとき、私は官房長官ではありません。自由民主党幹事長代理でございます。それから、昨年十二月に住専スキームが決まりましたときに、私は、政調会長をやめて三、四カ月、自民党の幹事長でございました。その二つとも責任者の立場からは離れております。ただ、幹事長であったり幹事長代理でありますから、政策決定にはかなりの責任がある執行部の人間であるということはそのとおりでございます。  ただ、小沢鋭仁さんが御指摘になった点は、私は非常に重要な点だと思います。私も私なりに党内で影響力はあると思っておりますけれども、しかし、連立三党の政策決定というのは、一人の幹事長とか政調会長で物が決まる仕組みではありません。ここがほかの政党とちょっと違うところじゃないかなと思います。  我が党は、全員、ボトムアップといいまして、下から何度か会議を盛り上げて、そして最後に調整して決めるという仕組みでありまして、私一人が住専、農協、そんなことで物を決めていたと言われたら、恐らく与党三党の上から下までの方が怒られるんじゃないかと、名誉のために申し上げておきたいと思います。
  151. 小沢鋭仁

    小沢(鋭)委員 時間がありません。  最後に急いで質問しますが、静岡信連の問題というのが先ほどから出ています。これは、まさに系統を救うためにこのスキームをつくったのかどうか、そこにもまさに直接的に関係する話でありまして、この住専処理加藤問題ということであれば、これがもし真実であれば、ここが中心であります。まさにこの問題こそが中核の問題であります。  それで、新進党皆さんは、先ほど私が申し上げた山田正彦議員の二月二十六日の予算委員会の質問でこれをなさっています。その後、調査にも出られています。そして、各報道にもそれは発表されております。  そういう中で、私の耳にも伝わってくるのでありますが、いわゆるこの問題はオーバーランであった、いわゆる静岡新進党の議員の方々から静岡信連に、質問趣意書までつくって申しわけなかった、この問題はこれでもう終わりにしたいという、そういう話が入った、そういう話も聞こえてくるわけなんです。真実かどうか私はわかりません。しかし、そういった話が、例えばきょうの問題でも全くこの問題は議論にならない。これは議論にならないのはどういうことなのか。これこそが、もし本当であれば、住専問題の核心のはずであります。  これは新進党皆さん本当はお聞きしたいんですが、加藤参考人、これをどうお感じになっていますか。
  152. 加藤紘一

    加藤参考人 静岡信連というのは、いわゆる全国の信連の中で一番住専に対して貸し込みが多かった一番深刻な県信連じゃないかなと思います。したがって、そこから私が一億円を受けていたとするならば、それは大変な影響力を持つ、まさに実はあの共和事件よりも住専処理の審議としては重要な部分だろうと思います。その事実は全くありません。  そして、笹本という専務でしたか、ということのようですが、これはもっともっと調べて本当にそんなことがあるのか明確にしていただきたい。私の名誉のためにも申し上げたいと思います。
  153. 小沢鋭仁

    小沢(鋭)委員 以上です。ありがとうございました。
  154. 高鳥修

    高鳥委員長 これにて小沢鋭仁君の質疑は終了いたしました。  次に、穀田恵二君。
  155. 穀田恵二

    穀田委員 今の質疑の中で肝心な問題は、もらっていないが返したということが多くの方々が納得できない中心問題だと思うんです。  そこで、今回の処理をめぐって水町氏には二、三度会ったことはお認めになりました。そうすれば、私は、紘和会に金が入ったかどうかというのをなぜ確認しなかったのか、それはいかがですか。
  156. 加藤紘一

    加藤参考人 それはいろいろな信頼関係もございますし、そして、その部分は、私からもどうなんですということをいろいろ聞きましたけれども、その事実はありませんということでした。  ただ、あり得る場合もあるなという感じはいたしておりました。
  157. 穀田恵二

    穀田委員 そこで、ではお聞きしますけれども、二番目に、ちょうど九二年上半期にお金を渡したと言われていますが、その当時、共和森口社長は保釈中です。ですから私は、森口氏にも尋ねたらよい、つまり、献金元がしたかどうかということを聞いたらいいんじゃないかということが一つ。  二つ目に、今お話があったように、尋ねなければ、本人に、水町氏に、幾らだったのかということも、逆に言うと、なぜ一千万だったのかという根拠が私は不明だと思うのですね。その二つ、いかがですか。
  158. 加藤紘一

    加藤参考人 それは、管財人報告書というのが当時出回っておりまして、そこの中に、平成二年二月、加藤紘一サイドですか、あてというのですか、そこで一千万という言葉があって、それが騒ぎになって、管財人会議というのがありまして、債権会議ですか、そういう中で政治家に対する献金というのは返してもらうべきではないかという議論があって、それが大騒ぎになっていたから一千万ということでございます。
  159. 穀田恵二

    穀田委員 それもおかしな話で、紘和会がもらっていたら紘和会の方に返しなさいと言えば済むことですよ、それは、普通は。普通の常識で言えば。それは、そういう点を指摘しておきたいと思うのです。  そこで、森田秘書も、現金授受に立ち会ったと言われている三人のうち二人が認めておられる。あわせて、森田秘書は、水町氏との電話のやりとりで、平成二年に受け取りがあって、森口が直接渡しているんだよねとの問いに、うんうんと確認していると報道されています。これは報道されています。これは森田秘書に確かめましたか。
  160. 加藤紘一

    加藤参考人 それは森田にも確認しました。彼は、一体どういう会話なのかわからないので、すべてうんうん、うんうんというので、相づちではなくてただ聞いていますよという意思表示だけだった、それがどうしてうんうんというふうになるのか、まあいろいろその辺、感じが違うと思われれば、そのテープを、僕らの手元にはないですけれども、お聞きいただけばいいと思います。
  161. 穀田恵二

    穀田委員 加藤参考人は先ほど、一千万の返却資金は社会計画研究会からだと答弁されました。その政治活動費という中からお出しになったと。そのうちのどの項目なのか、明らかにしてください。
  162. 加藤紘一

    加藤参考人 私はそこまで詳しくないのですけれども、先ほど言いましたように、二億一千ほどの私の後援会の収支報告書の中の政治活動費が一億一千四百で、その中の一部、そしてその他活動費という部分とかなんとか聞いていましたが、そういう細かなことはわかりません。
  163. 高鳥修

    高鳥委員長 時間ですから、御協力をお願いします。  これにて穀田恵二君の質疑は終了いたしました。  次に、海江田万里君。
  164. 海江田万里

    ○海江田委員 今加藤参考人からお話がありました、その管財人のリストでございますね、これは今私も手元に持っておりますけれども、ずっと名前が書いてあって、そこに、三十六番目、加藤紘一、一千万、平成二年の二月、センチュリーハイアットにおいて水町立ち会いのもと選挙費用貸し分と書いてあるのですよね。それで、加藤紘一氏依頼分と。  それから、一つ新事実としまして、この加藤紘一さんの後に、当時の代議士、今落選をしておりますけれども、代議士名前が括弧して書いてありまして、この方の二百万も含めて一千二百万円分、貸し分という形で書いてあるのですよね。  これはやはり借りたのじゃないですか、一千二百万円。これは、紘和会とかそれから水町とかいう名前じゃなくて、加藤紘一氏に貸したというふうに書いてあるのですよ。少なくとも共和の側はそういう認識を持っておるのですが、そういう事実はありませんか。
  165. 加藤紘一

    加藤参考人 いわゆるセンチュリーハイアットで会った記憶はございません。  それから、例の管財人報告書というのは、当時も我々、大分話題になったのですが、果たして本物であるかどうかというのも今大分議論になっているようでございまして、そして、いずれにいたしましても、センチュリーハイアットで我々がお会いして、そういうことがあったという事実、記憶はありませんし、そういう事実もありません。
  166. 海江田万里

    ○海江田委員 それから、社会計画研究会の会計報告を見ますと、加藤紘一さんが個人で寄附をしている部分があるのですよ。だから、ここで借りておって、個人が借りておって、ここで個人が借りたお金を寄附するということはあり得ることですからね。そうすると、実はつじつまが合うのですね、これは。だから、そういうようなことも考えられるのじゃないだろうかということをやはり一度考えていただかなければいけない。  それから、あともう一つだけ。  やはりこれだけ意見が違うと、水町さんを政治家として告訴した方がいいと私は思うのですよ。きょうもこれから記者会見をやって、きょうの質疑に対する、加藤参考人の答えに対するいろいろなことを言うそうですから、やはりそれを聞いて、場合によっては告訴するということも考えませんと、言われっ放しては、これは大問題だろうと思うのですね。
  167. 加藤紘一

    加藤参考人 この点につきましては、今現在司法的に黒白がつけられる段階になっておりますので、それにお任せしたいと思っております。
  168. 高鳥修

    高鳥委員長 これにて海江田万里君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして加藤参考人に対する質疑は終了いたしました。  午後一時十五分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ————◇—————     午後一時二十四分開議
  169. 高鳥修

    高鳥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  特定住宅金融専門会社債権債務処理促進等に関する特別措置法案外五案の審査のため、参考人として全国銀行協会連合会会長橋本俊作君、東京国際大学経済学部教授田尻嗣夫君、慶應義塾大学経済学部教授池尾和人君に御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本委員会での審査に資するため、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  次に、議事の順序でありますが、橋本参考人、田尻参考人、池尾参考人の順序で、お一人十五分程度に取りまとめて御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。  それでは、橋本参考人にお願いいたします。
  170. 橋本俊作

    ○橋本参考人 全国銀行協会連合会会長を務めております橋本でございます。  銀行界としての意見を申し述べさせていただきます前に、住宅金融専門会社の問題につきまして、世間をお騒がせし、国民の皆様方に大変御迷惑、御心配をおかけしておりますことをまず深くおわび申し上げます。  さて、私ども金融界は、相次ぐ金融機関経営破綻の表面化、住専問題などにより、国内外におきまして我が国金融システム全体に対する信頼感は著しく低下している状況にございます。こうした金融システムに対する信頼感の低下は、我が国経済の先行きに不透明感をもたらしている結果となっております。私ども金融界にとりまして、住専問題に限らず不良債権処理を早期に完了し、一日も早く金融システムの安定性に対する懸念を一掃しなければならない当事者であり、その責任を痛感しているところであります。  それでは、法案につきまして申し述べさせていただきたいと存じます。  第一に、特定住宅金融専門会社債権債務処理促進等に関する特別措置法案についてであります。  住専各社の経営が事実上破綻している現状、多数の金融機関を通じた金融システム全体の安定性に与える影響も大きく、不良債権問題の中でも緊要な問題であることから、住専問題の処理を具体的に実行していくスキームを含む本法案の早期成立が不可欠であると考えております。  もし処理が先送りされることになれば、海外からの信頼を損ない、ジャパン・プレミアムの増大など、我が国金融機関の海外での資金調達が困難となることが考えられますほか、ひいては株価等に著しい悪影響を及ぼし、回復してきている我が国経済に重大な影響を与えかねないと考えます。  私どもといたしましては、本問題の一刻も早い解決を目指して、政府の処理スキームに沿って、住専向け債権の放棄を行うことに加えて、金融安定化拠出基金への拠出や、住専処理機構への低利融資などの最大限の対応をしてまいる所存でありますことは、今まで御説明してきたとおりでございます。  しかしながら、これまでの国会での御審議の過程でいろいろと厳しい御意見をいただいており、公共性の高い金融機関として何か金融システムの安定に貢献できる新たな寄与について模索しておりますが、私企業としての限界もあり、なかなかいい案が思い浮かばず、苦慮しているところであります。  私どもとしましては、現在の関係者の合意が得られている処理案のスキームが崩れると、もう一度合意を形成するには容易な道でないことを感じておりますので、ぜひとも原案どおりで法案が早期に成立することを望んでおります。  次に、金融三法案と言われる、金融機関等経営健全性確保のための関係法律整備に関する法律案金融機関更生手続特例等に関する法律案預金保険法の一部を改正する法律案につきまして申し述べさせていただきます。  金融システムの安定化のためには、当面する不良債権問題の早期処理に向け個別金融機関が取り組んでいくことはもちろんでありますが、基本的には中長期的な安定性維持のために、市場規律の発揮と、金融機関や預金者の自己責任原則の徹底を基本とした透明性の高い金融システムを早期に構築していく必要があると考えております。  金融三法案は、今後の我が国の金融システム安定のために必要な包括的枠組みや諸施策を実現するものであり、あわせて当面の金融機関の破綻処理にかかわる預金の全額保護等を行うもので、極めて必要度が高く、法案が早期に成立することを望んでおります。  三法案の第一の金融機関等経営健全性確保のための関係法律整備に関する法律案につきましては、早期是正措置と言われる金融機関経営の状況に応じとるべき措置に関する規定の整備金融機関等のトレーディング取引への時価法の導入が盛られており、その必要性から望ましいことと存じます。  なお、早期是正措置の導入に当たりましては、経営の自由度を損なうことのないように、発動基準を明確化し、健全性を判断する基準である自己資本比率の測定につきましては、客観性を確保することで制度の公平な運用がなされることを期待しております。  三法案の第二の金融機関更生手続特例等に関する法律案につきましては、金融機関の破綻処理について、従来の任意の営業譲渡等による処理に加え、司法上の倒産手続を用いる法制面の手当てが行われており、妥当なものと考えます。  本法案では、現行法制では会社更生手続を用いることができない協同組織金融機関についても、会社更生手続をベースとする処理手続を認める特例を設けています。これにつきましては、破産手続により事業の解体を行うことは利用者や地域経済に大きな影響を与えるケースが考えられるため、更生手続を選択できるようにしたものと理解しておりますが、破綻処理最小化の考え方のもとでの運用が期待されるところであります。  三法案の第三の預金保険法の一部を改正する法律案につきましては、預金者保護、信用秩序の維持の観点から五年間は預金者に預金の全額を払い戻すこととし、そのためのペイオフコストを超える特別の対応が設けられておりますが、時限的措置としてはやむを得ないものと考えております。ただし、五年間の預金全額保護につきましては、預金者や金融機関経営者のモラルハザードを助長する問題もあるため、あくまでも時限的措置として位置づけておくことが必要であると考えられます。  預金保険料につきましては、合計で昨年度の七倍とされる引き上げが予定されていますが、金融機関の負担度合いという点において見れば、昨年十二月の金融制度調査会答申においても触れられておりますように、個別金融機関経営状況のありようにはおのずと差があることを考えますと、限界の水準であると思われます。  なお、預金保険料の負担増加につきましては、昭和四十六年の預金保険法案に対する附帯決議も認識しております上、保険料負担は金融機関一つの義務と理解しておりますので、預金者に転嫁することなくみずからの経営努力で極力吸収してまいる所存であります。  今後五年間に生じ得る信用組合の破綻処理の円滑化につきましては、受け皿・回収機関として整理回収銀行を用い、民間金融機関の特別保険料による財源が不足する場合に財政資金を投入するという時限的な枠組みが不可欠であり、信用組合以外の破綻処理への財政資金の投入は現状必要ないと政府が判断し、法整備がなされているものと理解しております。  いろいろと申し上げてまいりましたが、銀行界にとっての課題は、重要課題であります住専ほか不良債権問題を早期に処理して、来るべき二十一世紀に向けた世界に通用する金融システムを構築していくことであります。住専を初めとする不良債権処理を具体的に実現していくためにも、法案の早期成立が不可欠であります。何とぞ皆様の御理解を賜りますようお願いいたします。  以上で終わります。(拍手)
  171. 高鳥修

    高鳥委員長 どうもありがとうございました。  次に、田尻参考人にお願いいたします。
  172. 田尻嗣夫

    ○田尻参考人 東京国際大学の田尻でございます。本日は、私のような者に意見陳述の機会を与えられましたことをまことに光栄に存じます。  私は、本日、平成金融危機の当面の打開策並びに今後の金融システムのあり方につきまして、若干の私見を申し述べたいと存じます。  一九九〇年の初めに起こりましたバブル崩壊をきっかけといたします平成の金融危機は、既に市場の反乱を招く、そういう危険な段階に立ち至っておるという現状認識を持っておりまして、それを阻止するための時間的な余裕は極めて残り少なくなってきたというのが私の基本的な認識でございます。  と申しますのは、一九九〇年から約四年間、この問題はバブル経済の崩壊に伴います資産デフレが中心でございました。しかしながら、一九九四年から九五年にかけまして、金融機関の倒産が続発いたしまして信用不安が拡大するという、クライシスとしては第二の段階にステージアップしたわけでございます。そして、昨年から、政府の危機管理あるいは政策対応能力というものに対する国際的な不信感が広がるという、危機の段階としては第三の段階に悪化をしたわけでございます。実物経済と金融経済の両方をいかに制御するかという日本の手腕が、今国際的な関心の中心にあると言っていいかと思います。  不良債権問題が表面化いたしましてから五年、住専のスキームが公表されましてから既に相当の時間を経過しておるわけでございます。国内外の金融市場、資本市場は、それに対するいら立ちと、また警報を繰り返し発しておる現状があるわけでございます。そういう意味で、現在の住専処理法案並びに金融三法案は緊急性の高いものだというふうに認識をいたしております。  ところで、平成金融危機の本質でございますけれども、第一には金融システムに生じた巨額の不良債権の問題がございます。これはようやく進み出したところでございます。第二は、金融スキャンダル、モラルハザードの問題でございまして、これは着手されたばかりでございます。第三の問題は、金融システム、行政の機能不全の問題でございまして、これは実はこれから着手しなければならないという問題でございます。  そういう意味で、住専処理法案を初めといたします関連法案の問題というのは、平成金融危機の打開への入り口であって、終わりの始まりでは決してないということでございます。  金融に関する記憶は極度に短い、その結果、金融上の大失態がございましても素早く忘れられてしまうというのが欧米社会における歴史の教訓でもあるわけでございまして、我が国においてこのようなことが繰り返されることがあってはならないと思うわけでございます。そういう意味におきまして、議会におかれましてこの問題を長期的、体系的、主体的に御議論いただく特別の議論の場を創設されるなどの取り組みを期待しておるところでございます。  さて、焦点の公的資金の投入の問題でございます。  実は、財政資金の投入をまつまでもなく、公的資金の投入はなし崩し的に既に巨額に上っておりますし、そのルートも極めて多様になってきております。  第一には、簡易保険や年金資金による株式買いがございます。いわゆるPKO資金でございました。  第二は、日本銀行による特別融資でございます。さらには、法的に疑義の多い出資の問題がございました。  第三の形態といたしましては、日本銀行が通常行います日銀貸し出しや公開市場操作におきます問題銀行との取引シェアの問題があるわけでございます。  四番目は、預金保険機構からの資金贈与、あるいは出資、融資の形態を通じた公的資金の投入でございます。  五番目は、都道府県段階での財政資金の動員が行われております。  六番目は、共国債権買取機構の創設などを通じまして税法上の減免措置が講じられておる、活用されておるという現実があるわけでございます。  そして、ただいま一般会計からの財政資金の投入問題が議論されておるわけでございます。  申し上げたいことは、国民の共有資産であります公的資金投入ということが既にこれだけ進行しておるわけでございまして、六千八百五十億円の財政資金の投入の問題もこの全体の中で位置づけて御議論いただかないといけない、そのように私は考えております。  さて、債務超過をいたしました金融機関処理でありますが、住専は預金受入機関ではございません。しかしながら、その先に控えております問題銀行等々の不安要因を考えてみますと、債務超過をいたしました金融機関処理は、最終的には、預金の切り捨てか、公的資金の投入かという政治的な決断を迫られる問題でございます。五年間ペイオフをしないという方針が有効である限りは、公的資金の投入は避けては通れない問題であろうかと認識いたしております。  ところで、財政資金の投入を抑えるというそのかわりに、日本銀行の資金を動員するという案が浮上いたしているやに仄聞しております。しかし、これは極めて危険な考え方であると申し上げねばなりません。日本銀行の無原則な資金動員というものは、中央銀行までを不良債権漬けにしてしまうおそれがあるからでございます。  中央銀行には最後の貸し手機能がもともと要求されておるわけでございますが、これは一時的な流動性不足への対応に限定されるべきものでございまして、金融機関の中長期的な支払い能力の確保、維持にまで中央銀行が踏み込んではならないというのが国際的な常識でございます。  現代のような管理通貨の時代におきましては、中央銀行の健全な財務体質と、またその政治からの独立性ということが通貨に対する信頼の基盤になっておるわけでございます。日本銀行の財務体質を悪化させるような代案は、円通貨に対する国内外の信頼を損なうばかりか、日本経済の基盤を根底から突きますおそれのある考え方だと申し上げたいと存じます。  しかしながら、先ほど申しましたように、広い意味での公的資金の投入は、避けては通れないと申しますか、既に進行中であります。したがいまして、公的資金の投入には、アカウンタビリティーと申しますか、説明責任の原則を明確にしていただくこと、そして、投入されるに当たっての基準は一体何なのかということを議会においてぜひ枠組みを、大枠を設定していただければと願っております。今日、市場の規律を活用するということが言われておりますけれども、そのためには、まず何よりも政府の規律が必要な段階にあろうかと存じます。  不良債権処理の問題をめぐりまして、いろいろな法的あるいは社会的な障害があることは私も承知いたしております。しかしながら、障害は、実は金融ビジネスの新たなビジネス機会に変えられるものでございます。  かつて国債の大量発行という事態に直面いたしましたあのケースでは、財政上の大いなる問題であり、障害でございました。しかしながら、国債の大量発行が金融市場を育て、金融自由化を促進する非常に大きなエネルギーになっていったわけでございます。そういう意味では、現在巨額の不良債権問題も、その見方を変え、発想を変えることによって、東京金融市場の拡大と新しいビジネスあるいは金融革新のエネルギーに変えていくことは十分可能なことでございます。そういう意味での法的な体制づくりが今必要だというふうに認識いたしております。  次に、今後の金融システムのあり方について申し上げたいと存じます。  一九九〇年代は、世界的に、政治的、経済的な動乱期にあるというふうに考えております。したがいまして、国際システムのサブシステムであります金融も当然ながら変革をしなければならないわけでございまして、これまでの金融行政あるいは金融界にありましたいろいろな慣行だとか伝統だとかしきたりだとか、そういったものはすべて百八十度転換する必要があるということは確かなことでございます。  同時に、これまで世界経済は、一九六〇年代までは数量ベースでいろいろな市場の矛盾を解決してまいりました。七〇年代は価格で調整をいたしました。八〇年代は金融で調整を図ったわけでございます。そういう意味で、一九九〇年代は、金融経済が余りにも肥大化したことの合理化をどうするか、そして巨大化した金融市場をどのようにコントロールするかということについて各国とも苦悩しておるのが現状でございまして、金融危機は何も日本だけの、あるいは日本的な特徴ということでは決してないわけでございます。先進国共通の課題であるという考え方をいたしております。  そういう意味で、現在、各国とも、市場の規律をどのように活用するか、もう一つは透明性をいかに確保するかということについての国際競争の時代に入っておるというふうに認識をいたしております。  これまでの護送船団行政に対していろいろな批判があることも確かでございます。しかしながら、恒常的な資金不足の時代におきまして、この護送船団方式は、マクロ経済に対して一定の貢献をしたこともまた否定できないことでございます。今日、その一方で、非効率な金融機関が残り、かつ、競争原理の働かない金融サービスの現状だとか、あるいは金融機関・市場の国際競争力が劣後しておる問題等が残されておるということも確かでございます。  この十一年余り、日本は金融自由化政策を進めてまいったわけでございます。金融自由化は、理論的にはいろいろなメリットのある政策でございます。事実、日本におきましても、預金者、投資家に資金の運用、調達両面で非常に選択の幅を広げることになりました。あるいは、非常に安いコストで金融サービスを受けることができるようになりました。金融機関も、資金の運用、調達両面で収益機会とリスクカバーの技術を手にすることができたわけでございます。全体として金融システムが効率化の方向に向かい始めたということもメリットの一つであろうかと存じます。  しかし、その一方で、金融革新がいかに進みましても、金利とか為替変動リスクがなくなるわけではございません。むしろ集積されていく問題がございます。  第二は、金融革新によって、社会全体の債務がどうしてもふえていく傾向にございます。  三番目は、金融市場が極めて複雑、相互依存的になりまして、リスクが拡散、拡大する傾向にあるわけでございます。  そういう意味で、この金融革新というのは、理論的にはいろいろなメリットがあるわけでございますけれども、国民経済にとって真の福音かどうかということを考えるには、まだまだ対応すべき課題が多いということでございます。金融行政の失敗の問題と、もともと市場メカニズムに構造的に潜んでおります問題点とを峻別いたしまして、施策が必要であろうかと存じます。  現実の日本型金融自由化は何を残したかということでございますが、第一には、金融自由化のメリットが、社会的な階層間に非常にその波及の違い、格差をもたらしたということでございます。言いかえますと、金融による所得移転効果が加速されたという面があるわけでございます。国内で個人で小口という三つの要素を抱えた庶民にとっては、金融自由化の果実はまだ行き渡っていないのが現実でございます。  さらに、金融界あるいは預金者、投資家等に自己責任原則が極めて不徹底な状況にございますし、モラルハザードの問題もなお残されておるわけでございます。  金融機関の破綻処理のルールが未整備なことが、バブル崩壊のショックをより深刻化させたということも指摘しておかねばならないかと思います。  最後に申し上げたいことは、これからの金融行政でございますが、これまでの十年間の自由化政策は、古い制度を少しずつ改めていくという過去からの発想でございました。これを私は相対的な金融自由化と呼んでおります。しかしながら、今後は、しかるべき市場経済のあるべき姿から逆算をいたしまして、今何をしなければならないかという未来からの発想が必要でございます。そういう意味で、絶対的な金融自由化が必要な時代が来たと申し上げたいと存じます。  具体的には、三つの提案を申し上げて終わりたいと存じます。  第一は、金融行政は、業務の原則自由と、それから市場の規律を柱にいたしまして、大蔵省の規律から市場の規律へ転換をすることでございます。言いかえますと、裁量的な金融行政からルール主義的な金融行政への転換というのが第一の柱でございます。  第二の柱は、金融当局と金融機関の情報公開を国際的な水準にまで引き上げることでございます。金融機関経営の効率性と安定性という問題は相反関係にございますがゆえに、情報公開によって常にマーケットを安心させておく必要があるわけでございます。  三番目は、金融監督機能を大蔵省から分離いたしまして、新しい独立機関と日本銀行による新たな二元体制を確立することでございます。権限の一元化は金融革新を阻害する問題が大きいわけでございます。行政、監督機関の間にチェック・アンド・バランスの関係をつくり出すことが必要かと存じます。そのためには、大蔵省設置法と日本銀行法の改正を同時にやっていただくことをお願いしたいと存じます。英国の金融・証券自由化のパッケージとして提出されましたビッグバンの日本版、日本型ビッグバンの早期の確立を期待したいところでございます。  どうもありがとうございました。(拍手)
  173. 高鳥修

    高鳥委員長 ありがとうございました。  次に、池尾参考人にお願いいたします。
  174. 池尾和人

    ○池尾参考人 慶應義塾の池尾と申します。本日は、意見を陳述する機会を与えていただき、大変ありがとうございます。  私が今日の日本の金融システムの最大の欠陥と思いますのは、金融機関の破綻を処理するための制度的基盤、すなわち、そのための法的手当てでありますとか組織的準備が全くと言っていいほど欠如しているということが、私が考えますに、日本の金融システムの最大の欠陥であるというふうに思っております。本日は、この欠陥を早急に正す必要性を中心に、私の意見を陳述させていただきたいと思います。  私は、銀行などの金融機関を特別扱いにする必要は全くないというふうに考えておりますが、金融機関に一般の事業会社とは異なる事情があることはやはり確かであると思っております。その異なる事情とは、金融機関は預金者という名前の膨大な数の債権者を抱えているという点であります。こうした点に対する適切な配慮を欠いたまま金融機関を破綻させるならば、それはやはり社会的な混乱を生じかねないということは言うまでもないことだと思います。  しかしながら、このことは逆に申しますと、そうした金融機関の持つ固有の事情に対して適切な配慮を可能とする体制さえ整えておけば、金融機関だから破綻させてはならないということではないということであるかと思います。したがいまして、必要なことは、金融機関の破綻処理のための制度的基盤を整備するということだというふうに考えます。  ところが、これまでの我が国では、銀行はつぶれないし、つぶさないんだという、いわゆる銀行不倒政策がとられてまいった結果といたしまして、破綻処理のための制度的基盤整備が全く怠られてきたということが指摘できるかと思います。こうした制度整備を怠ってきたということを棚に上げたまま、金融機関を破綻させると社会的混乱が生じるからよくないというふうな議論を行うことは、私としては本末転倒であるというふうに考えております。この種の議論をしている限りは、護送船団行政からの脱却ということはかなわないのではないかというふうに思っております。  本委員会で住専処理法案とともに審議されております、いわゆる金融三法案、農水産業協同組合貯金保険機構の改正案を含めますと金融四法案とも言われますが、こうした金融四法案は、今申しました我が国において欠如しております金融機関の破綻処理のための制度的基盤を形成するための第一歩であるというふうに私は理解しておりまして、その内容に関する実質的な討議を十分に行われた上で、できるだけ早期に成立させていただきたいというふうに思っております。  金融四法案はあくまでも第一歩でありまして、十分な金融機関の破綻処理のための基盤を確立するためには、まだまだ我々は多くの努力をしていかなければならず、その第一歩を踏み出すためだけに余り長い時間をかけている余裕はないというふうに考えております。  今申しましたように、なぜ私がその金融四法案があくまでも第一歩にすぎないというふうに言うかと申しますと、それらが基本的には協同組織金融機関、とりわけ信用組合だけを対象としたものにとどまっているという点があるからであります。換言いたしますと、信用組合以外の業態の金融機関につきましては、その破綻処理をいかなる体制で進めるのか、とりわけその資金的手当てをどうするのかという点は全く未確定のままであります。  金融自由化を言う限りは、信用組合だけでなく、普通銀行につきましても破綻処理のための体制の整備を整えることは当然必要であります。金融自由化に伴う構造対策として当然に必要であるというだけにとどまらず、当面の危機対策としても、やはり破綻処理のための体制整備ということが必要であるというふうに私は考えております。  現に、最近、普通銀行であります太平洋銀行が破綻しております。この太平洋銀行の破綻処理に見られますように、いわばその場その場でアドホックに処理のスキームを考えて、いわゆる関係金融機関に支援を求めるというふうなやり方は決して好ましいことではありません。こうしたやり方は極めて不透明であり、事前的ルールが存在していないということを意味するからであります。  こうしたやり方が続く限りは、日本の銀行は、いつ他の金融機関の破綻に伴って損失の負担を求められるかもしれないという、いわば偶発債務を常に抱えているということになってしまうわけであります。こうした、いつ損失の負担を求められるかもしれないという偶発債務の存在が、日本の比較的優良とされる銀行に対してもジャパン・プレミアムが要求されるということの基本的な原因になっているというふうに思っております。したがいまして、法治国家である限り、あらかじめ明確な損失負担ルールというものが存在し、そのルールに従って淡々と損失の負担がなされるということでなければならないというふうに考えております。  なお、住専の処理に当たりましても、その法的処理を見送った理由といたしまして、法的処理では時間がかかり過ぎるといったような点が指摘されているわけでありますが、時間がかかり過ぎる云々ということは、いわばそれは技術的レベルの話でありまして、法的処理をするか否かということは原則の問題だというふうに考えております。そうした原則の問題を技術的な理由だけで決めてしまう、原則問題を技術問題と取りかえてあいまいにしてしまったということが今日の混迷を招いた一つの原因ではないかというふうに思っております。  とにかく、普通銀行につきまして破綻処理の体制をいかに形成していくかという点については、本格的な議論すらいまだなされていない状況にあるわけでありますので、早急な取り組みの開始を要望しておきたいというふうに思います。  このように、信用組合にとどまらず、普通銀行を含め、破綻処理体制の整備のために早く第二歩、第三歩を踏み出さなければならないというふうに考えるわけでありますが、まずその第一歩である、現在御審議されております金融四法案に関しましても、全く問題がないということではないと思われます。とりわけ、いわゆる早期是正措置と呼ばれるようなものの制度化に関しましては、慎重な討議が必要ではないかというふうに考えております。  早期是正措置というアイデアの核心は、私が理解いたします限りでは、問題の先送りを避けるために規制・監督当局に対して縛りをかけるということが早期是正措置の核心であるというふうに理解しております。  すなわち、金融機関の破綻処理を行うということは決して愉快な作業ではないわけでありまして、むしろできることなら避けたい嫌な作業なわけであります。したがって、破綻処理を開始するかどうかというふうな面に関しまして規制・監督当局に裁量の余地が与えられておりますと、その裁量の余地をいい方に使うのではなくて、むしろ破綻処理の開始を先延ばしする方向に使われてしまうということがあるわけであります。したがって、問題の先送りを避けるためには、むしろそうした面に関する裁量の余地は狭めた方がよい、機械的に破綻処理を行わざるを得ないようにすることが望ましいというのが、まさに早期是正措置の考え方の基本であるというふうに私は理解しております。  そういたしましたときに、果たして、現在我が国で制度化されようといたしておりますものは、こうした本来の早期是正措置の考え方を具現化するものになっているのかどうかということがやはり問われなければいけないというふうに思います。ところが、肝心なところが政令、省令にゆだねられてしまっておりますために、本来の考え方とは異なり、規制・監督当局の裁量の余地を実質的に残し、むしろ規制・監督当局の金融機関に対するグリップを強めるというふうな逆の結果になりかねない危惧が残っております。私は、本来の趣旨での早期是正措置の制度化をぜひ図っていただきたいというのが私の意見でありましくそのためには原案のままでよいのか、修正が必要であるのかにつきましては、ぜひ本委員会で十分に検討していただきたいというふうに考えます。  最後に、私が日本の金融システムの再生がなぜ重要であると考えるかという点につきまして付言しておきたいというふうに思います。  金融システムの再生は、何も金融機関や金融関係者のために必要だというふうなことでは決してなくて、私自身を含みます国民の将来を惨めなものとしないために、どうしても金融システムの再生ということは必要であるというふうに考えております。  御案内のように、我が国では高齢化が急速に進行しているわけであります。高齢化社会を乗り切っていくためには、現在一千百兆円とも一千二百兆円とも言われております家計の資産を有効に活用していくことが不可欠なはずであります。ところが、家計が保有する資産に対します収益率は趨勢的に低下しているというふうな現状があるわけであります。このことは、いわば国民の貴重な財産が現状では満足に活用されていないということであると言わざるを得ません。そうしたことの責任は日本の金融機関にあるというふうに私は考えております。  ところが、こうした点の認識は意外なほどに低いと懸念される面もございまして、例えば、我が国は既に貯蓄超過型の経済構造に転換して久しいわけであります。このことは、言いかえますと、総合すれば、我が国にはお金を借りている人よりも貸している人の方が既に多いという、そういう経済構造にあるということであります。そうであるにもかかわらず、いまだにかつての資金不足時代の記憶のまま、借り手の利益を第一義に考えて、金利は低い方がいいというふうな、そうした考え方が見受けられたりいたします。こうした考え方は、決して国益と一致しているということはないというふうに思っております。  現在の低金利で被害を受けているのは、一部の年金生活者にとどまるものではなくて、これから老後を控えて貯蓄をしていかなければならない四十歳以上の世代は、すべて現在の状況から被害を受けているというふうに言って過言ではないというふうに思っております。このまま家計保有資産の収益率の低迷ということが続くようでありますと、高齢化社会の本番を迎えたときの我が国は極めて悲惨な状態に陥りかねないわけであります。  こうしたことを避けるためには、急いで金融システムを立て直し、国民の行う貯蓄に対して正当な収益が確保されるというふうな状況にしなければなりません。国民の期待にこたえられない金融機関は破綻してしかるべきでありまして、国民の利益に貢献できる金融機関のみが生き残るというふうな、こうした金融機関の淘汰と選別を可能にするような体制を構築することこそが現下の最優先の課題であるというふうに私は考えております。  以上です。(拍手)
  175. 高鳥修

    高鳥委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  176. 高鳥修

    高鳥委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大島理森君。
  177. 大島理森

    ○大島委員 橋本参考人、田尻参考人、池尾参考人本当に御苦労さまでございました。審議入りが若干おくれましたこと、お許しいただきたいと思います。  それでは質問に入らせていただきますが、それぞれの参考人の皆様方から、現状認識と、あるいは今後の考え方、そして今の法案に対するそれぞれの所見を伺いました。私は、もう少し前の段階からの日本の金融問題、今起こったバブル経済、そういう経済の中における金融界、金融政策、そういうものからそれぞれの参考人皆さんの御意見を伺いたい、こう思うのです。  と申しますのは、私どもは過去に起こった問題を今処理する仕事と、そして二度とこういうことが起こらないようなスキーム、システムをつくらなければならない、この二つの政策をいわば法律の中で示して議論しておるわけでございます。  一九八〇年代の後半から起こりましたいわゆるバブル経済、このバブル経済というものが発生して十年だろうと思うのです。そういう中で急激なバブルの膨張と崩壊を経験したわけですが、そのバブル経済が残した負の遺産、特にその最大の負の遺産は不良債権だと思うのです。そのことを今私どもは大変議論をし、乗り越えていかなければならないわけでありますが、そして、今この問題を考えるときに、その当時の、つまり発生、そして崩壊、そして今処理、こういう中の冷静な分析と自省というものが、もちろん政治の我々の立場でも、行政の立場でも、そしてまた、広く言えば民間、特に金融界でも、あるいは国民全体でも、それぞれ自省をいたしながら今後のあるべき姿を考えていかなければならないのだろうと思うのです。  私どもは、例えば住専問題というのは、まさに今日までの金融機関の不良債権の問題を解決していく突破口、そして、過去に起こった問題の処理、それをすることがまず第一だ。その次に、まさに先ほど池尾先生も金融四法、これは基本的に賛成であり、いろいろな問題があるとしても早くこれは処理していただくことが大事だ、つまり、今後の金融システムの安定のために必要だという御議論をされました。  したがいまして、まず橋本参考人に対して第一点お伺いしたいのは、金融界の会長として、このバブル経済の発生、それが続きました、そして崩壊しました、そして今処理の過程であります。そういう中で、金融界としてどのようにその時代のことをしかと認識され、自省をされておられるのか、また分析されておられるのか、そのことを伺いたいと思いますし、また、田尻参考人あるいは池尾参考人から、まさにバブル経済の発生、崩壊、処理のその過程を見て、金融政策の問題もあったでしょう、あるいは金融界への責任という観点からどのような所見を持っておられるのか、この点について御所見を賜われればありがたいと思います。
  178. 橋本俊作

    ○橋本参考人 先ほど田尻先生から、九〇年から九四年、バブル経済の崩壊、こういう時期であったというお話がございました。  このバブルの発生につきましては、経済全体に右肩上がりの幻想が生まれたことに加えまして、長期にわたって金融緩和が持続されたということも一つの原因と考えます。また、資産価格が経済的な合理性を欠いた水準まで急激に上昇した中で、金融政策の引き締めやあるいは不動産融資への規制強化等が契機となりましてバブルが崩壊した、先ほどの先生の、いわゆる資産デフレ、こういう状態が起こったということであろうというふうに認識しております。  銀行界として振り返りますと、当時は金融の自由化や国際化という大きな環境変化の中で、例えば社債市場や海外金融市場の拡大によりまして、これまで伝統的でありました金融機関の貸出業務の成長性にも陰りが見え始めまして、収益競争のもとで、資金需要の多かった不動産関連の融資が着目されるようになりまして、多くの銀行がこの分野に傾倒して、結果として今日の不良債権を抱えることに相なったと思うのでございまして、このことは金融界に身を置く者として十二分に反省しなければならないところである、このように思っておる次第でございます。
  179. 田尻嗣夫

    ○田尻参考人 バブル経済そのものは日本資本主義の歴史そのものでございまして、バブル経済は今回に限らず今後も起こることは不可避であろうと思います。  もう一つ申し上げたいのは、一九八〇年代後半からアメリカ、欧州、日本と、順を追ってこのバブルが崩壊をしていったわけでございまして、現在の日本経済の困難な状況は、そういう意味で、バブル崩壊の調整の一番最終列車であるという意味で、あたかも日本だけがおくれておるかのように見えるわけでございますが、そういう点も考慮すべきであろうかと存じます。  バブル経済の原因でございますけれども、これは一言で言ってしまいますと、金融政策を為替政策の犠牲にしたということで言い尽きるかと存じます。  一九八五年九月のプラザ合意で円高・ドル安に転換をしたわけでございますが、八七年二月のルーブル合意をもちまして以降、為替レートを人為的に固定化する方向に変わったわけでございます。  つまり、それまでの状況を、為替レートを維持する、一定のレベルに、範囲に維持していくということ、もう一つは、日本国内の内需をさらに拡大するという国内外からの要請があったわけでございます。その結果として、異常な低金利が必要以上に長期にわたって行われたという結果、一般物価は極めて安定しておりましたけれども、資産物価の方に貨幣が集中する結果を招いたわけでございます。当然、金融当局はその過程でいろいろな問題に気づいてはおったかと推察いたします。しかしながら、当時のG7体制、国際協調という大枠の中で金融政策を政治的に封じ込めてしまったという反省は必要ではないかと存じます。  もう一つは、金融自由化政策の失敗でございます。  銀行が不動産融資等々、投機的な融資に傾斜をしていったということの経営責任は免れるものではございません。しかしながら、行政面から考えますと、当時の金融自由化は、量的な拡大と金利の自由化を先行させたわけでございます。一方、銀行の業務の自由化とか商品の開発の自由化は後回しになっておりました。その結果として、銀行の経営は、大量に入ってまいります過剰な資金で一定目標の運用利回りを上げる効率的な方法として、不動産融資等右肩上がりの相場絡みの融資に手を出していったわけでございます。  そういう意味で、先ほど申し上げましたように、銀行経営は効率性と安定性が相反関係にあるわけでございます。その問題点が金融自由化政策の失敗によりまして大きなひずみとなってあらわれたという点、これは金融行政の責任ではないかと存じます。
  180. 池尾和人

    ○池尾参考人 我が国の八〇年代後半におきますバブル経済の生成に関しましては、マクロ的な財政金融政策の運営に問題があったという面ももちろん指摘できるわけでありますが、それに加えまして、基本的な背景といたしまして、私は、金融制度の改革が立ちおくれていたということが非常に大きいというふうに考えております。  すなわち、我が国の金融制度は戦後直後に、その当時の日本の経済構造、すなわち資金不足型の経済構造を前提として、それに適合的な制度としてつくり上げられたわけでありますが、既に一九七〇年代の半ば以降日本経済は構造転換を遂げ、資金不足型の構造から、俗に金余りとまで言われます資金余剰型の経済構造に転換を遂げたわけでありますが、そうした実体経済の転換が生じているにもかかわらず、それに対する金融制度面の対応が非常におくれた、その結果、幾つかの金融機関が構造的に資金運用難というふうな事態に陥るというふうなことが基本的な背景としてあって、そこにマクロ的な財政金融政策の運営のミスが重なってバブルが発生したのではないかというふうに理解しております。  田尻先生からも御指摘がありましたように、バブル的な現象は我が国についてだけ見られたことではなく、先進諸国で共通して見られたわけでありますが、そのことによる影響といいますか、そのことによるダメージの大きさは金融制度がおくれていた国ほど大きかったということが言えると思います。我が国は、まさに金融制度がおくれていたがゆえにその打撃が非常に大きかったということではないかと理解しております。
  181. 大島理森

    ○大島委員 田尻、池尾両先生から共通した問題提起というのもあったと思います。今橋本参考人から、まさに金融の自由化、それから国際化、それが不完全な状態でスタートしたものだからそういうふうな今のような結果になったと、田尻先生、池尾先生からそういう指摘をいただきました。そこは私どももまさに自省もし勉強もし、これからの糧にしていかなければならないことだと思っております。  そういう状況の中で先ほど田尻先生は、今次のバブルの最大の本質は、まず不良債権がありました、それからモラルハザードがありました、それから行政機能不全がありました、こういう御指摘をされました。  そういう状況の中で、まさにモラルハザードという点についてもう一度田尻参考人から伺いたいのですが、当時の金融状態、確かに制度的、政策的、そういういろいろな問題があったとしても、その当時としては、いわば大きな国際化と自由化をどうソフトランディングさせるかという現実の政治の実態があったこともまた御認識いただかなければならぬと思いますし、為替という問題についても、気がついてみたら大きな日本経済があって、そして、本格的に国際金融秩序のそれ相応の責任を持たなければならないという問題もあった。そういうものを一挙に解決していかなければならないつらい時代でもあったのかもしれません。  そういう状況の中で金融界は、ある意味ではそういう状況にどう対応していくかということの中で、まさに橋本参考人がお話しされましたように、収益性、これを求める道はどこだったのか。御自身のお言葉の中でもいわば反省の弁がございましたが、それが不動産に向かった。その不動産に向かって、その向かい方とそれから進め方、そういうところに、いわばそれは当然なんだと言うには余りにもいろいろな問題があった進み方があったのではないか。そこに、恐縮でございますが、金融界のモラルというものが問われていたんじゃないだろうか。そういう観点から田尻さんに何か御所見があればお伺いをしたいと、私はこのように思うんです。
  182. 田尻嗣夫

    ○田尻参考人 金融界のモラルという点は、社会的な責任という問題と健全な銀行の財務体質を守っていく、両面から議論をされるべきでないかと存じます。  その両面にかかわっておる問題でもございますけれども、実は、バブル経済の発生以前から世界的に先進国の銀行経営は本来の銀行業務から逸脱しかねないような危ない状況が生じておったわけでございます。一九七〇年代以降、一言で言いますと、銀行ビジネスが一種のファッション化をしていったと私は呼んでおります。一九七〇年代は、石油危機が二度も繰り返され、世界インフレの中でいろいろな問題が生じました。  銀行業務は何をしたかと申しますと、非産油途上国に対する貸し付け、いわゆる国際協調融資ということで一斉に国際業務の拡大に走ったわけでございます。それが、八〇年代に入って大きな累積債務問題を国際的に発生させることになりました。これに限界が生じましたために、八〇年代前半になりますと、世界的に、債券、ボンドでございますが、債券ディーリング等の投機的な利益に大きく収益の部分を依存する構造が広がっていったわけでございます。ところがそれにも限界が出てまいりまして、ボンドだけではなくて、外国為替ディーリングでの収益拡大ということもまた大きな——いわゆる八〇年代前半はディーラーの時代と言われたものでございました。  これを銀行内部から見ますと、伝統的な預金貸出業務で育っておりました人たちよりも、むしろ、華やかな国際金融の世界、あるいは新しい、売った買っただけで一瞬にして巨額の収益を生み出しますディーリングの世界にいる人たちとの間のモラルのギャップが生じてまいりました。いわゆる保守的な銀行経営哲学というものがその十年間に大きく崩れたわけでございます。そうしたところにこのバブル経済が米、欧、日という形で発生をいたしましたことが、世界的に銀行をして本来のあるべき姿から逸脱させる結果を招いたのではないかと、これがまあ一般的な指摘としてできるかと存じます。  もう一つ、金融市場の構造でございますが、開放経済に入りますまでの我が国の金融界は、護送船団行政と言われますように、一種の村社会でございました。これには功罪いろいろございますが、村社会のいいところは、実は相互監視、相互牽制がきくわけであります。つまり、仲間のルールに反したこと、仲間のしきたりに反したことはやれないという相互牽制のメカニズムが働いておるわけでございます。ところが、開放システム、新しい金融市場になりますと、国際的にさまざまの新規参入者が入ってまいりまして、クラブ的なアプローチと申しますが、そういうクラブアプローチによる牽制システムというのは機能しなくなったのが国際金融市場の共通の現象でございました。  そういった金融市場の構造的な変化に対しまして、我が国の金融行政は村社会のまま、この仲間うちの相互牽制システムに依存したというところに基本的な誤りがあったというふうに考えております。
  183. 大島理森

    ○大島委員 そういう大きな流れの中で、金融界というのはいわば国際化と自由化の大きな波の中にあって、そして金融界そのものの性格の中で、自由化、国際化、そういう環境が、一層、今先生のお言葉をもってすればファッション化あるいは投機化の危険性というものが存在している。一方、金融システムにとって何が必要かと言われますと、いわば私どもあるいは与野党ともにそのことは金融政策として議論する、それはよく金融システムの安定とか信用秩序の維持ということを私どもは申し上げるわけであります。  先ほど池尾先生のお言葉の中で、企業として銀行は特別扱いする必要はないんだというのが自分の基本だということをおっしゃいました。これは大変おもしろい議論で、そこはまた後で時間があればお聞かせ願わなければなりませんが、いわゆる金融システムの安定、信用秩序の維持というものは、ひょっとしたらその実態の中身は、時代とともにその中身の変化というものがあっているんだろうと私は思うんです。  しかし、金融システムの安定、信用秩序の維持ということをマスコミもいろいろな人も使うわけでございますが、お三方の参考人から、金融システムの安定、信用秩序の維持というものは何なのか、どう考えておられるのか、いや、金融界にはそういうものは必要ない、こう思っておられるのか、恐縮ですが、簡単にお答えをいただきたいと思います。
  184. 橋本俊作

    ○橋本参考人 金融システムの安定性あるいは信用秩序の維持と申しますのは、金融機関に対する信認というものが確保されまして、決済サービス、いわゆる金融仲介サービスが円滑に提供されている状態のことであるというふうに考えております。  信用秩序の維持のためにこれまでとられてまいりました行政手法は、競争をむしろ制限することによってすべての金融機関を破綻から守ることであったというふうに思います。しかしながら、金融自由化の進展する中で、リスクというものは非常に多様化しておりますので、保護的規制といった手法にも限界がありましょうし、今後は、金融機関や預金者の自己責任原則が徹底された中で、市場のチェックを通じて、金融機関が自己規制を働かせていくということが求められているもの、このように認識しております。
  185. 田尻嗣夫

    ○田尻参考人 一般論といたしましては、金融システムが安定いたしておりませんと通貨の安定は期待できない、通貨が信頼される存在でありませんとその国の金融システムは安定しないという意味で、不即不離の関係にあるというのは確かでございます。  金融システムと申しました場合に、二つの観点から検討が必要かと思います。一つは、先ほどお話がありました決済システム、金融仲介機能をどのように健全に維持していくかという問題でございます。もう一つは、預金者保護あるいは投資家保護と呼ばれる、市場参加者の利益を保護、弱者を保護していく、そういう問題でございます。  そういう二つの問題がかかわっておりますこの金融システムに直接参画しております銀行の社会的責任は、一般企業よりもはるかに高いものがあるわけでありまして、私は、そういった意味で、銀行は一般事業会社とは違う特別の立場にあるというふうに考えております。逆に申しますと、決済システムにかかわっておりますだけに、大変不適切な言葉かと思いますが、銀行が決済システムを人質にとるという形での行動をとる、あるいは要求を社会的に続けていくということがあってはならないわけでございます。  そういう意味で、社会的に特別の責任を持ち、逆に言いますと、特別の影響力も行使し得る立場にある銀行に対しては、監督はさらに強化していかなければならない、規制はどんどん緩めて撤廃する必要がありますが、監督は強めていく必要があるというのが私の考えでございます。
  186. 池尾和人

    ○池尾参考人 私も、金融システムの安定性を確保することは極めて重要であるというふうに考えております。今申しましたように、それはあくまでもシステムの安定性を確保することが重要だとということであります。  従来、システムの安定性を確保するというやり方といいますか、アプローチの仕方といたしまして伝統的にとられておりましたのは、そのシステムの直接の担い手である金融機関を特別扱いすることによってシステムの安定性を維持するというふうなアプローチがとられておったかと思うわけでありますが、私は、それに対しては反対である、システムは守る必要があるけれども、システムの構成員である個々の銀行を守る必要はないというふうに考えておるという意味であります。
  187. 大島理森

    ○大島委員 いずれも、三参考人とも、金融システムの安定、また秩序の維持というものが、その国、その社会、あるいは世界、そういう経済社会が成り立つために絶対に必要な条件である。それで、田尻先生のお言葉をもってすれば、まさにそういう意味で金融界の責任というのは非常に重いものがある。池尾参考人のおっしゃることも、私は、だから金融界を、国の力で企業を保護してやるという意味ではなくて、そこには多分非常に重い責任があるというふうなことをおっしゃっている意味では同じではないか、こう思っております。  そこで、橋本参考人に伺いますが、そういう意味で、金融界そのものに、他の事業者と違った、ずばり言えば公的責任、こういうものがあるとお思いになられますか、それとも、他の普通の事業者と同じなんだというお思いで金融界の会長さんとして御認識なされておられますか、そこを参考人にちょっとお伺いしたいのです。  つまり、公的責任、私はもう公的責任というものを自分の気持ちの中に倫理観として、あるいは職業としての倫理観の中に当然そういうものがあってしかるべきものだろうと思っておりますが、公的責任ということに関してどのようにお思いになられますか。
  188. 橋本俊作

    ○橋本参考人 先生おっしゃいますとおり、公共性の非常に高い存在であるというふうに認識しております。  先ほどからのお話のとおり、銀行は、貯蓄手段の提供であるとか、あるいは資金の供給、それから決済というような、国民経済的に見ても、また社会的に見ましても重要な機能を担っておる、そういう公共性の高い存在である、このように認識しておりますが、バブル期におきまして、自由化とかあるいは競争激化の流れの中で、収益力強化を図るために行き過ぎた営業があったということは否定し得ないところであろうというふうに反省をしております。  したがいまして、今後は一層、公共性の観点から、みずからをチェックいたしまして経営の健全性を維持することが基本的に必要でありますが、工夫を凝らし国民の多様な金融ニーズにこたえていくということが銀行の社会的責任であろう、このように思っております。
  189. 大島理森

    ○大島委員 橋本参考人にさらにお伺いをしたいのでございますが、私は、梶山官房長官との紙面上の論戦を改めて言葉じりをとらえて申し上げる意図は持っておりませんが、橋本参考人の新聞報道による会見内容で、ただ一点、ここだけはちょっと御訂正というか、してもらいたい点があるのでございます。  つまり、金融政策、金利政策は日銀の専管事項であるというふうにおっしゃったと。確かに、公定歩合という政策あるいは買いオペ、売りオペ、これは日銀でありましょう。しかし、金融政策は本当に日銀の専管事項だろうか。だとすれば、私どもは、こういう中で金融特別委員会というものをつくって、日本の金融政策はどうあるべきかということを議論する必要は全くないし、大蔵省の金融局、あるいはまたいろいろな問題を議論する必要はないのじゃないか。もし報道が間違いであれば、そういうことではございませんでした、こうおっしゃっていただければ結構ですし、金融政策はすぐれて私は政策、政治の問題でもあると思っておりますので、その点、参考人のそのときのお気持ちをちょっと聞かせていただきたい。
  190. 橋本俊作

    ○橋本参考人 二十四日の梶山官房長官の御発言の内容をよく知らないままに私が二十八日の日に申し上げたことでございまして、大変官房長官の感情を害したということに対しまして、あの発言を取り消しいたしまして、おわびを申し上げたわけでございます。  今先生のおっしゃいました、金融政策が日銀の専管事項であるか否か、こういう問題につきましては、公定歩合の変更につきましては日本銀行の政策委員会の管掌事項である、このように理解しております。  ただ、金融政策が日銀の管掌事項であることをもって日銀以外の人が個人的考えも述べるべきではないというようには思っておりません。経済情勢や金融情勢につきまして国民の間で議論が活発になって理解が深まるということは、我が国経済の健全な発展のために大変意義のあることである、このように存じております。
  191. 大島理森

    ○大島委員 さらに会長に、さっき会長として公的責任の痛感を述べられました。私は、それは一つの見識であると思います。ぜひそういう見識をお持ちになってこれからやっていただきたいと思いますが、そういう中で、先ほど池尾先生から低金利の問題が出されました。違った観点からいろいろな議論をされたのですが、率直な国民の声という中で、低金利政策の結果として大変な利益を上げた、しかしその陰で高齢者が、あるいは年金受給者が大変な叫び声を上げている。そういうふうな国民の声があるわけです。そういうふうなことに対して橋本参考人のお気持ちを私は聞かせてほしい、こう思います。
  192. 橋本俊作

    ○橋本参考人 国民の皆様にとりまして、現在の低金利のもとで、ローンの金利の低下はありますが、一方で預金金利の低下というデメリットをもたらしまして、とりわけ、利子所得に多くを依存している方々に大きな影響が出ているということは痛感いたしておるところでございます。そのことによりまして金融界に対しても大変厳しい目が向けられているということを実感いたしております。  こういうような状況を踏まえまして、私どもといたしましては、一般よりは金利の高い福祉定期預金であるとかあるいは年金受給者を対象といたしました優遇金利預金商品を創設、品ぞろえいたしましてできる限りの対応を行っているところでございまして、国民の皆様にも私どもの姿勢につきましてぜひとも御理解をいただきたい、このように思っております。
  193. 大島理森

    ○大島委員 きょうは主に私は、金融問題、そういう中で金融機関の責任という問題について、これからの金融システムを考える上で、あるいはまた今日までの起こった処理をどうするかという問題で、その公的責任という観点からいろいろ参考人の皆様方の御意見を拝聴させていただきました。私自身、やはり結論として、金融機関、それは非常に高い責任がある、このことは三参考人とも御認識いただいたものだと思っております。私もそう理解しております。そして、橋本参考人から、バブルの発生のとき、確かに政策的ないろいろな環境というものがあった、しかしそのときにも公的責任という高い立場にありながらそのことをしっかりとやってきたのだろうかという、これは私どももいろいろな人も考えなければならぬ問題です、そういうふうなことの中で金融界としての御発言もございました。  私は、三木武夫先生あるいは河本先生に教えをいただき、多くの先輩にいただきました、信なくば立たずということをよく言われ……(発言する者あり)海部先生にも、それは。信なくば立たずというのは、これは政治の場だけではなくて、社会全体に言えることなのではないのかと思うのです。そういう中から、今我々は金融界と国民の間、ここにまさにこの問題があるような気がしております。  そして、政治の場で、我々は、与党は政府と一緒になって法案を提出し、野党は野党の立場で御議論をいただいて、今議論をしている。そして、例えば住専処理の問題についても、私どもは大変な議論をしながら何とかこれを処理したい、そしてまたお互いにぎりぎりの努力をしながら一つの案をつくった。しかし、国会の場においての議論、それから国民の間における金融界に対するいろいろな目、そういうものを考えて、この住専をまず処理し、そして内外ともに信用される、自己責任に基づいた公正、透明な金融界をつくっていかなければならぬ、そのためにも早くこの住専問題というものを処理するということが私どものスタンスであります。これは、田尻参考人も、金融問題というのは喫緊な問題だ、こうおっしゃっておる。そこで、そういうふうな大きな、もちろん金融界というと系統の皆さんもそうでございます。あるいは信用組合の皆さんもそうでございましょう。多くの金融界、私は総論としてそういう目が向けられているとは思うのです。  しかし、住専問題を迅速に処理をするという私どもの今いろいろな議論の中で、内外の、国会の中、国民の声、そういう中で、橋本会長も多分御承知のことだと思っておりますが、新たな措置、新たな寄与、こういうふうなものに対して、橋本会長としては、先ほど冒頭の陳述ではお話しされましたが、今そういういろいろなことを考えながら、この問題に対して、御要請あるいはまた声というものに対して今後どのように取り組もうとされておられるか、決意されておられるのか、その辺をお聞かせ願いたいと思います。
  194. 橋本俊作

    ○橋本参考人 銀行業にとりましての根本は、まさに御指摘の信用ということでございます。バブル以降大きく失われた信用の回復という意味で、日々の業務の中で基本に立ち返りまして、お客様から信頼され評価されるべく、銀行界を挙げて努力をしているところでございます。もちろん、信用を回復するための当面の最優先課題は、一日も早く不良債権処理して金融システムの安定化を図ることにあると考えております。  冒頭の意見陳述で申し上げましたように、母体行といたしましては最大限の対応を行う考えであることはこれまで説明してきたとおりであります。しかしながら、これまでの国会での御審議の過程でいろいろ厳しい御意見をいただいておりますし、また大蔵大臣からも直接、新たな寄与を検討してほしい、こういう問いかけもございまして、公共性の高い金融機関として何か金融システムの安定に貢献できる新たな寄与について模索しておるわけでございますが、私企業としての限界もいろいろあり、なかなかいい案が思い浮かばず苦慮しているところであります。  金融界と申しましても、いろいろな立場の業態もあり、それぞれ経営状態の相違もございまして、全体としてのコンセンサスが生まれるのは大変難しいところがあるということはどうか御理解を賜りたいわけでございますが、私といたしましては、いい案が見つかるものなら検討を進める可能性が生まれると考えておりますが、業界の事情も考えると、乗り越えるべき課題も多いというのが率直な感じでございます。
  195. 大島理森

    ○大島委員 今の橋本参考人、銀行協会の会長は、大変今までの御答弁から踏み込んでいただいたような気がします。  つまり、いい案が見つかるものならば検討を進める可能性が生まれるかもしれない、こういうことをおっしゃっていただきました。いい案が生まれるならばと、このことについては与党そして我々もいろいろな知恵を出します。そういう中で、ぜひそのことに対して積極的に御努力をいただきたい。  先般金融委員会で、尾身議員がいわば株主訴訟に対抗するアイデアも一つお話しされました。我々も努力しなければならぬと思うのです。大事なことは、やはり信なくば立たず、信を取り戻すことだと思います。そのためにもぜひそういう今の会長のお言葉をしっかりと心に入れて頑張っていただきたいと思いますが、もう一度その点についてお答えをいただきたい、こう思っております。
  196. 橋本俊作

    ○橋本参考人 今のことでございますか。今のことをもう一度申し……(大島委員「はい。後段の部分」と呼ぶ)はい。  金融機関として何か金融システムの安定に貢献できる新たな寄与について模索しておりますが、私企業としての限界もあり、なかなかいい案が思い浮かばず苦慮しているところであります。  金融界といっても、いろいろな立場の業態もあり、それぞれ経営状態の相違もあります。全体としてコンセンサスが生まれるのは大変難しいところがあるのは御理解をいただきたいと思います。私としては、いい案が見つかるものなら検討を進める可能性が生まれるかもしれないと考えておりますが、業界の事情も考えると、乗り越えるべき課題が多いというのが率直な感じでございます。  以上でございます。
  197. 大島理森

    ○大島委員 きょうは三参考人にいろいろなお話をちょうだいしました。改めて私どもは申し上げたいのでありますが、住専処理、そして関連金融四法、これらは何としてもこの国会で早期に成立をさせて、そしてまた新たな日本の金融システムをさらにさらに私どもは通用するものに育てていかなければならない、こういう思いでございます。  参考人の皆様方、本当にありがとうございました。  以上をもちまして終わります。
  198. 高鳥修

    高鳥委員長 これにて大島理森君の質疑は終了いたしました。  次に、村井仁君。
  199. 村井仁

    ○村井委員 三参考人には、大変お忙しいところ、それぞれに貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。  新進党の村井仁でございます。  私ども、現在審議をしております金融関係の各法に関連いたしまして、大変参考になる御意見をちょうだいいたしましたことにお礼を申し上げながら、若干お尋ねを申し上げさせていただきたいと存じます。  もう端的に入らせていただきますが、田尻先生そしてまた池尾先生の御議論を伺っておりますと、一言で言いますと、今までの大蔵省当局による護送船団方式、この保護的行政というのはだめだ、それからその場しのぎの対応、これも限界がある、こういった点で非常に共通した御見解がございまして、そしてここで思い切って金融行政の形を変更していかなければならない、こういう御見解でいらっしゃいます。ただ、少し違ってまいりますのは、具体的に例えば住専の処理という問題になりますと両先生の御見解、少しずつ違っているように拝聴をさせていただきました。  私、そこで端的にお伺いしたいのでございますけれども、池尾先生が法的処理ということの必要性を仰せになりました。日本は法治国家である以上、これはたしか以前、先生、予算委員会で公述人として御意見を賜りましたときに仰せになりましたが、最終的には、日本は法治国家であるのだから法的な処理がきちんとできなければおかしいのじゃないか、こういうような御見解だったと思います。一方で、しかしそういうことをしたら金融システム、先ほど大変話題になりましたけれども、その中に混乱が起こる、こういう御意見もよく聞くわけでございます。  先日もこの委員会の場で議論のあったといいますか、委員の質問の中にあった一つのテーマでございますけれども、例の昭和金融恐慌、このときの経験を引用しまして、例えば若槻内閣提出した震災手形二法案、あれの処理に際しまして、当時の議会が情報開示だとかあるいは責任問題、そういったような問題を現在と同様に論じて、そして昭和金融恐慌を深刻化し、当初一億円程度の処理費で済むというのが実は七億円もかかってしまったというような引用、御批判もございました。  しかし私は、例えば現在日銀法も預金保険法も、あるいは貯金保険法あるいは銀行法、非常に当時に比べれば整備されている。そういう意味で、それなりにスタビライザーがある。それはもちろん十二分と言えないことは、両先生あるいはきょうの参考人の御意見でもよくそこはあらわれておりますけれども、しかし昭和金融恐慌のときのような事態が直ちに起こるというようなのはいささかオオカミ少年的な見解ではないかなという感じがしているのでございます。  このあたり、案外金融の問題というのはわかりにくい話でございます。恐縮でございますが、田尻先生、池尾先生からまずはこのあたりにつきましてぜひ御見解をお伺いさせていただければありがたいと存じます。     〔委員長退席、尾身委員長代理着席〕
  200. 田尻嗣夫

    ○田尻参考人 不良資産問題の処理に法的な処理を軸とすべきであったというのは一つの選択肢であったろうかと思います。  私も、法的処理を排除をするものではございません。しかしながら、金融不安の発生というのは極めて社会的、心理的な緊急性の高い対処を必要とするものでございます。したがいまして、先ほど先生からもお話がございましたようないろいろな諸制度、スタビライザーとの組み合わせにおいてパッケージとして出される必要があったわけでございます。  ところが、今回の平成金融危機の対応過程におきましては、その全体像と申しますか、総合的な政策対応の構図というものが全く示されないままに、まさになし崩し的に対症療法的に行われてきたわけでございます。その結果として、先ほど申し上げましたように、財政資金の一般会計からの投入を御議論いただいておるわけでございますけれども、もうそれをはるかに上回る公的資金国会の場あるいは国民的な議論を経ない形で既に流出をしておるわけでございます。  いわゆるPKOと言われますリスキーな資本市場に対して簡易保険だとかそういった老後がかかった資金を投入することの是非について、どの程度国民的な理解を求める努力がなされたかということについても、私は疑問を持っております。  しかしながら、今申し上げましたように、その法的な処理の問題とスタビライザー、あるいは政治的に動員し得る政策手段、動員できるものはすべて動員して対応するというのが金融危機に対応する不可避の姿勢ではないかと存じます。  もう一つの御質問は、昭和金融恐慌のような事態に一気に発展する可能性ありやなしやという御質問でございます。  その判断材料の一つは、その当時と現在の一般国民の経済知識あるいは金融知識にどの程度の違いがあるかということでございます。これはいろいろな見方がありますので、私の独断を申し上げるのは避けたいと存じますが、高橋亀吉先生らのお書きになりました昭和金融恐慌の本の中におもしろいくだりが出てまいります。  昭和金融恐慌のさなかに、預金の取りつけ騒ぎに動転をいたしましたある御婦人が、郵便局からお金を引き出してきた。そして、通行人のある紳士に、今慌てて貯金を引き出したわけだけれども、これをどこへ持っていったらいいでしょうかというふうに聞いたそうでございます。そうしたらその紳士は、あなたが預けていたあの小さな郵便局よりも、駅前の大きな郵便局の方が安全であろうと答えたという話が記されております。  高等教育がこれほど普及いたしました我が国の経済社会におきまして、一般国民の金融知識というものは相当高いものが現在はあろうかと思います。それに対して金融当局がどの程度の情報を提供し、理解を求める努力をなされたか、私も一国民としては極めて不満足な思いを持っておるわけでございます。  もう一点は、一つの事件が全体の金融システムを破壊しかねないというシステミックリスクの問題がいろいろ取りざたされたわけでございます。これは理論的、また現実にもそういう事態はあるわけでございます。常に金融不安の最初のきっかけは、極めてローカルな小さな出来事が一気に燃え広がっていくという心理的な怖さがあるわけでございます。  もう一つは、現在のようにグローバリゼーション、あるいは金融市場が統合されております時代には、電子的な回路を通じまして、資金移動と誤った情報が一気に地球を駆けめぐるという、電子決済時代の群集心理と私は申しておりますが、その怖さがあるわけでございます。  そういう意味では、昭和金融恐慌の時代よりも、実は日本の金融危機の問題というのは、単に東京市場の問題だけではなくて、それはニューヨーク市場の問題であり、あるいはロンドン市場の問題でもあるという意味で、我が国の国際的な責任は極めて大きいというふうに申し上げたいわけでございます。
  201. 池尾和人

    ○池尾参考人 先ほども申し上げましたが、信用秩序の維持と預金者保護を図るということは極めて重要な課題でありまして、ぜひとも達成しなければいけない目的であると考えるわけでありますが、それをいかなる形でやるかということが同時に問われなければならないというのが私の考えでありまして、従来は、例えば、金融機関をつぶさないことによって、結果として預金者を保護するというふうな政策がとられておったわけであります。それがまさに護送船団行政でありまして、現在我々が問われている、我々に求められておりますことは、そうした意味での護送船団行政から本質として脱却するということであるかと思います。そのためには、やはり明確な原則に基づく破綻処理のための体制づくりということをやっていく必要があるという点が、本日最も申し上げたかったことであります。  それで、御質問ですが、もちろん、昭和初期に比較いたしますと、現時点におきまして、我が国における信用秩序維持のためのさまざまな装置といいますか、いわゆるセーフティーネットは整備されてきてはいるわけでありますが、決して、残念ながら、完全なといいますか、完全に完備した形で金融機関の破綻に対して対処する体制は今なお整っていないという状況があり、そのことが逆に、最初に申しました意味での護送船団行政からの本格的な脱却を妨げているという状況があるかと思います。その点が問題であり、したがって、破綻処理体制の整備を急いでいただくことが、結果として護送船団行政からの脱却を促進することになるという意味で必要ではないかと思っている次第であります。  そして、金融恐慌が現在起きる可能性があるかどうかという点に関しましては、やはり政府が明確に預金者に対して預金を守るんだという姿勢を示すことによって、そのおそれはかなりの程度において抑止することができるというふうに考えております。  例えば、アメリカのSアンドLの処理の際に関しましても、八九年の段階で、新たに大統領に当選されましたブッシュ新大統領が二月に有名な演説をされて、一セントたりともアメリカの預金者には損失を及ぼさないということを宣言したということが、SアンドLの処理に本格的に入るための前提をつくった、信用不安を招かないであれだけの金融混乱を収拾できるための条件を整えたということではなかったかというふうに理解しております。  そういう意味で、本委員会を含めまして、明確な預金者保護に対する政府の責任ということを明らかにしていただくことが金融恐慌を起こさない条件になるのではないかというふうに考えております。
  202. 村井仁

    ○村井委員 大変明快なお答えをちょうだいをいたしまして、感謝をいたします。  私は、先ほど田尻先生仰せになりました中で、確かに、いわゆるPKOですとかいろいろな形で公的資金が既に金融システム維持のために使われているというのは、一つの御見解だと思います。ただ、今度一つ大きな違いは、財政が明確に六千八百五十億円というものを住専処理ということのために出すというのを予算に書き込んで、そして住専処理法案という別の法律を出して、そして国会の審議を求めてきた。  ところが、これは私は一般論として言えば、住専処理法案というのは、あくまで、日本の金融システム全体を覆っている大きな不良債権のごくごく一部にすぎないということはよく言われていることでございまして、政府も非常にそこはよく認めておりまして、これをよく、金融システムに関する問題解決の突破口だ、こんなような表現をとっている。  私どもが恐れますのは、突破口の先に、トンネルを掘るときに破砕帯というのがございまして、幾ら掘っても掘っても次から次へと崩れてくる状態がある、実はそういう状態がまだ先にあるのではないか。突破口をあけてみたら、さらに大変な破砕帯がある。手法として、今度とろうとしている政府の手法は、どうも完了形ではない。これから手をつけて、そこから、じゃ、本当に大きな、日本の大きな不良債権の全容に対応していくためにどうしていくんだというところのビジョンが欠けている。この辺のところに私どもは非常な問題意識を感じるわけでございます。  そういう意味で、私、もう時間の制約もございますので、具体的な問題にさらに入らせていただきますけれども、特に池尾先生には、金融制度調査会の委員として大変御貢献をいただいたこともございます。そういうところも踏まえて、ひとつ御見解をいただければありがたいと思うわけでございます。  まず、私は、公的資金というものを投入する原則といいましょうかルールといいましょうか、田尻先生も池尾先生も、お二方とも、いわゆる大蔵省の護送船団方式のなにからルールに基づく行政に変えていかなければいけないということを非常に強調しておられるわけでいらっしゃいますが、そういう意味でいいましたときに、公的資金を投入するルールというものはどうあるべきだろうか、それにつきまして、それぞれ両先生から御高見をいただければありがたいと存じます。
  203. 池尾和人

    ○池尾参考人 現状、我が国が抱えております不良債権問題に関しまして、いまだにその全貌に関して十分な情報が開示されていないという極めて残念な事態があるわけであります。したがって、その限りにおいては、個人的な憶測ということを超えて意見を述べることが極めて難しいという状況にありますが、私の個人的な見解といたしましては、まことに残念であり、まことに腹立たしいことではありますが、国民が一定の犠牲と負担を払わないで現在の不良債権問題の解決を図るということはもはや不可能なほど問題は深刻であるというふうに私は考えております。これは繰り返しになりますが、極めて腹立たしいことであり残念なことでありますが、問題はそれほど深刻ではないかというふうに考えております。  そうしますと、田尻先生の御意見の中にもありましたが、債務超過金融機関処理は、最終的には預金カットか公的資金の導入かしか論理的にはあり得ないわけでありまして、その際に、預金カット、預金者に損失を押しつけるということが、預金が決済手段として用いられているというふうな事情をも考えると、適切ではないと判断されるならば、財政資金の投入ということは避けがたい面があるわけであります。しかしながら、それはやはり、くどいようですが、明確な原則にのっとった投入でなければ国民の了解は到底得られないことであろうというふうに思っております。  その際の原則は、言及されました金融制度調査会の金融システム安定化委員会報告書にも明確に述べられておりますが、破綻した金融機関は救済しない、破綻させる、しかし、その際に、預金者にその損失を負わせることは適切ではないので、預金者保護に限って、預金者保護に必要な範囲で最小限の公的関与というのは考えられるんだというのが基本的な考えであり、これは、多くの国々、諸外国においても、公的資金の導入に当たっての基本的な原則として共通に了解されていることではないかというふうに思います。そうした原則を守るということが、国民の信頼を得て、犠牲を求め、不良債権問題の解決を図っていくための基本前提になるのではないかというのが私の意見であります。
  204. 田尻嗣夫

    ○田尻参考人 公的資金の導入はもはや避けて通れない問題であるということは、るる申し上げてきたとおりでございます。  しかし、かような事態に立ち至りました原因を考えてみますと、最大の問題は、実は、そういった事態に立ち至る前に、学ぶべき教訓は欧米社会にたくさんあったわけでございます。  例えばアメリカの場合には、SアンドLの倒産旋風が吹き荒れました八〇年代半ばにおきまして、この対応を誤ったことがその後の財政資金投入を極めて大きなものにした。日本円にいたしますと約十五兆円余りの財政資金を投入せざるを得なかったわけでございます。アメリカ当局は、その苦い経験をすぐに生かしまして、八九年以降の大手商業銀行を中心といたしますいわゆる銀行危機に対しましては、極めて早く対応をいたしましたし、法的な処理と緊急対策の組み合わせの中で自己責任原則を貫いたわけでございます。その結果、SアンドLも大手商業銀行の経営危機も同様に二千億ドル前後の不良債権を抱えたわけでございますが、大手商業銀行の対応の場合には、その八五%までを、自己責任と申しますか、銀行界の努力によって乗り切ることができたわけでございます。  さらにさかのぼりますと、一九七〇年代前半の英国におきます中小金融機関の危機に対しまして発動されました、通称ライフボート作戦と申しますが、それにも同様の原則と対応の仕方が盛り込まれていたわけでございます。  そのような歴史の教訓と申しますか目前の状況を、我が金融界、金融当局がどのようにして生かすことができなかったのか、極めて残念な思いがするわけでございます。  公的資金を投入いたしますための原則、基準を早く確立していただきたいと私は最初に申し上げたわけでございますが、そのためには、まず、どのような選別基準と申しますか、どのような対象にどの程度のお金を投入するのが許容範囲であるかということについての議論が必要でございます。そういう意味での原則、基準をまず国民の前に明確にすることだろうと思います。  次には、その原則、基準を現実にどの金融機関に適用するか、どの破綻ケースに適用するかということについてのより分け作業が必要になるわけでございますが、これは金融当局だけに任すべき作業ではございません。これは、一般経済社会の各層の代表者を入れた公の場で選別されるべき問題であろうかと存じます。  それから、英国のライフボート作戦等で学びます三番目の教訓は、回収の問題でございます。現在、日本の不良債権処理の問題につきましては、実物資産としての土地、不動産あるいは債権をどのようにして回収するか、売却するかという、実物資産としての処理に焦点が合わされておるわけでございます。しかしながら、最初に申し上げましたように、これを証券化すること、あるいはプロジェクトに組みかえることによりまして金融資産としての価値を新たに持たせることができますれば、そこに新しいエネルギーを注入することが可能になるわけでございます。そういう意味で、欧米社会におきましては、この回収の方法につきまして、我々よりもはるかに進んだ手法と成果を上げておるという実例が数多くあるわけでございます。  それからもう一つは、回収したものをだれが最初にポケットに入れるかという問題でございますが、英国の場合におきましても、これは公的な当局に真っ先に還元されるべきものであるという原則もはっきりしておるわけでございます。  そのように、幾つかの原則を国民の前に示しまして、公の場でそれを適用するより分け作業をやっていくということが我が国においても必要ではないかと考えます。     〔尾身委員長代理退席、委員長着席〕
  205. 村井仁

    ○村井委員 ありがとうございました。  今、田尻先生のお話でも、いろいろな基準が必要だ、明確に示されなければならないという御指摘がございましたけれども、私は、それが今度の住専の処理につきましては余り示されたという感じにはどうも受け取っていない。このあたりは、また十分この委員会議論をさせていただきたいと思っております。  一つ、これは池尾先生にぜひお伺いしたいのでございますが、住専につきまして、私も、金融制度調査会の審議の経過というのを大蔵省から取り寄せましてある程度調べてみたのでございますけれども、調べてみますと、去年の八月八日の第三回の金融システム安定化委員会で一回議論が行われている。それから後、九月二十七日に経過報告をまとめておられるわけですが、そこでちょいと触れておられる。そして、後ずっとどうも議論がないようでございまして、いきなり十二月の二十二日、こう言ってはなんでございますけれども、その金融制度調査会の最終答申が出ますときに、それまで信用組合につきましてのいろいろな議論がずっと書いてございまして、最後のところに住専問題になった途端に答申は大変歯切れが悪くなりまして、自分の考えを述べないで、政府の閣議決定を引用しまして、そしてその上で、そうすることも「やむを得ない」、何とも皮肉たっぷりと思えるような表現をしまして、政府の審議会、調査会の答申にまず類を見ないそういう形で締めくくっておるわけでございますね。  ここは先生、どんな形で議論がされたのでございましょうか、ひとつお教えをいただければありがたいと存じます。
  206. 池尾和人

    ○池尾参考人 私が金融システム安定化委員会に参加しておりました範囲で、私が受けた印象でありますが、その範囲で申し上げさせていただきます。  金融システム安定化委員会では、住専問題の処理に関して、それ自体を取り上げて本格的に議論を行うということはやっておりません。住専問題に関しての処理は、いわば今御指摘になりました八月の時点におきましては、当事者の合意努力をまつという姿勢でありまして、当事者に最大限の努力をしていただくということで、金融システム安定化委員会としては、当事者の議論を見守るというふうな姿勢を当面とっておったわけであります。  そうした形で期待をしておったわけでありますが、最終段階になりまして、率直に申しまして、どこで、どういうふうな形で決まったのか私はわからないのでありますが、処理案というものが決まりまして、それが金融システム安定化委員会にも提示されるということに至ったわけであります。この段階では、もう閣議決定というような形でまとまった段階で提示されるということになりまして、それに関しましては、率直に申しまして、委員の中でかなり議論が分かれているといいますか、評価が分かれていたということで、全面的にそれでいいというふうな雰囲気ではなかったということで、御指摘のような表現にならざるを得なかったということではないかと理解しております。
  207. 村井仁

    ○村井委員 ありがとうございました。大変重要なお話をお伺いしたと存じます。  もう一つ、池尾先生、先ほど、当委員会にかかっております金融関係法案、六本あるわけでございますが、その中で、金融関係三法案あるいは貯金保険法の改正も含めまして四法案、これにつきましては、いわば破綻処理が可能な体制整備のために早期にこれを、いろいろまだ問題はあるけれども、処理するべきであるという御見解をお述べになられました。  しかし、逆に住専処理法案につきましては、先生、御見解をお述べになられなかったという感じがございます。ある意味では裏からお述べになったとも理解できるわけでございますけれども、このあたりにつきまして、恐縮でございますが、先生は住専処理法案につきましてどうお考えになるか、お聞かせをいただけませんでしょうか。
  208. 池尾和人

    ○池尾参考人 私は、住専処理に関しましては、かなうことなら、今の段階であっても法的処理が望ましいというのが私個人の考えでありますが、予算が既に通過しているというふうな状況を考えたときに、今可能な選択ということについて実行可能性等を含めまして検討するという点では、私個人としては、それだけの材料を十分持たないということもありまして、積極的な形での意見表明は控えたわけでありますが、原則としては、やはり今でも遅くないから法的処理をしていただきたいというのが私個人の意見であります。
  209. 村井仁

    ○村井委員 大変よくわかりました。ありがとうございます。  もう一つ、これは非常に具体的な話でございますが、金融三法案あるいは四法案にも関連いたしますけれども、いわゆる早期是正措置の問題、これは今度出ております金融三法案の中で非常に重要な問題だと思っております。特に自己資本比率という形でとらえまして、そしてこれを省令で定めた発動基準で運用していく、これが現在の政府の提案でございます。  ただ、これも先般実はこの委員会で与党の委員からも提起された問題提起でございましたけれども、金融機関に対する権限強化をかえってもたらすものではないかというような指摘がございまして、それに対しまして大蔵省からは、現在は全くフリーハンドでいわばやっておるんだ、これを省令という形で明らかにするから透明性が増すんだというような答弁がありまして、どうもちょっとおかしいな、こういう感じを持ったわけでございます。このあたりは、池尾先生も、また田尻先生も大変御関心の深いテーマでございますから、ぜひこのあたりどうあるべきか、御高見を賜われればありがたいと存じます。  なお、私ども、例えばの話でございますけれども、金融機関に対して行政が行った指導を事後的にもせよ国会に文書で報告する制度をつくるとか、そういうような形でもチェックができるんじゃないか、これは過渡的な方法かもしれませんが、そんなアイデアもありました、いろいろございますけれども。  いずれにいたしましても、両先生のお話をちょっとお伺いしたいと思います。
  210. 池尾和人

    ○池尾参考人 最初に行いました意見陳述の中でも述べさせていただきましたが、御指摘のように、早期是正措置に関しましては、早期是正措置の本来の趣旨どおりの制度化ということはぜひやっていただきたい、望ましいことだというふうに私は考えておりますが、現在制度化されようとしておりますものが果たしてその趣旨を十分に実現する内容のものとなり得るかどうかという点に関しましては、一定の懸念を抱いております。  それは、ある種の基準に基づいて是正措置等を発動するということであります。そして、その基準は、現時点では実質自己資本比率のようなものを基準として行うというふうな説明が行われているわけでありますが、考えますと、それも奇妙なことでありまして、銀行は財務諸表等を現在公表しておりまして、そこで自己資本比率というものを発表しておるわけですね。そういう自己資本比率とは違う何か実質自己資本比率を持ってきて、それに従ってやるという形になっておるわけです。  そうしますと、これは逆に申しますと、ふだん財務諸表等の形で、そういうような計算書等の形で報告されている銀行に関する財務内容のデータは、一体あれは何なんだという疑問が出てこざるを得ないわけでありまして、そうしますと、そういう公表され、会計監査を受けているようなものとは別途実質自己資本比率を計算するということになりますと、その実質自己資本比率の計算に関して裁量が入り込む余地がかなりあるのではないかという懸念が生まれざるを得ないということであります。  もちろん、不良債権等の評価というのは極めて技術的に見ても難しい問題でありまして、客観的に損失率等を計算するということはできないという、そういう面での困難さの存在は認めるにやぶさかではないわけでありますが、そうした技術的な困難性を超えて、評価に判断が入り込む余地がかなり残されているように思われてならない。そうした余地はできる限り排除し、かなうならば、現実に公表されている銀行の財務諸表自体をより実態に近いものに直していく。  銀行等に関しましてはさまざまな会計上の特例が認められておりまして、商法の原則からの乖離ということは著しい現状があるわけですが、せめて商法の原則への復帰ということを図り、銀行の財務内容が公表されているデータからでもより明確に現在以上に読み取れるような状況にしていくというふうなことが条件整備としてあって、初めて早期是正措置が行政の裁量を排除して、速やかな、問題先送りを起こさないような形での破綻処理を可能にする仕組みとして機能することになるのではないかというふうに考えております。
  211. 高鳥修

    高鳥委員長 田尻参考人。——いいですか。
  212. 村井仁

    ○村井委員 申しわけございません。はい、結構でございます、時間の制約がございますので。もう一点、今度はこれは田尻先生にもぜひお聞かせいただきたいと思います。  私は、既に両先生からもうお話のあったことでありますけれども、日本の銀行行政というのがある意味では大変透明性を欠くために、例えば日本の優良な銀行の財務諸表だけ見ても本当実態がわからない。体力があればもっと負担しろという世界になりますと、先ほどもちょっとお触れがございましたけれども、ジャパン・プレミアムがそういう意味でも上がるというような大変妙なことになっている、こういう御指摘、私はある意味でそのとおりだと思うんですね。  最近出ております今度の住専処理の問題、私は、本質的な問題は考え方の問題だと思っているんです。しかし、どうも、それを単に今六千八百五十億を国の財政から投入するかしないか、要するに税金から使うかどうかという次元の話と考えて、そしてそこを何らかの形で埋めれば、それで問題が解決するかのごときにとらえる向きもなきにしもあらず。そこで、いわゆる新たな寄与をせよというような議論があるわけでございまして、まあおいでになる前で恐縮でありますけれども、たまたま全銀協会長のお立場にあられる橋本参考人から、先ほどは、いい案が見つかるなら検討を進める可能性は生まれるかもしれない、しかし乗り越えるべき課題が多いと、大変厳しいといいますか苦しいお話があった。  私は、このあたりのところにつきまして、恐縮でございますけれども、橋本参考人は結構でございます、田尻先生と池尾先生とお二方のコメントをちょうだいして終わりたいと存じます。
  213. 田尻嗣夫

    ○田尻参考人 銀行が追加的な負担の能力ありやなしやということに、質問を突き詰めてまいりますとなるかと思います。現在、銀行が史上最高の業務純益を上げている中で、追加的な負担ができないのかという疑問は非常に強いものがございます。  ただ、誤解を恐れずに申し上げますれば、現在のこの利益は、金利の低下局面で発生しておる技術的な部分もかなりあるわけでございます。逆に今後金利が上昇局面に転じますと、銀行の純益は一般事業会社よりも先に縮小していくということになるわけでございます。そういう問題が一般的には言えるわけでございます。  しかしながら、今回の、平和時としては戦後先進国で例のない異常な超低金利が長期にわたって続けられておるという現実、しかもその背景には、資産デフレ対策であり、その資産デフレの原因には銀行経営に責任の一端があるという現実があるわけであります。  もう一つは、一般事業会社の収益がこの四、五年極めて厳しい状況にあります中で、銀行が、金利格差の拡大ということから、棚からぼたもちとは申しませんけれども、結果としてそういう利益を得てきたという現実も無視できないわけでございます。そういう意味で、さらに還元せよという要求が出るのは、私も理解のできることでございます。  もう一点は、金融による所得移転効果ということを最初に申し上げましたが、これが今般の場合、極端な形で社会的に問題になっておるわけでございまして、そういう意味でも銀行の対応が今期待されるところでございます。  ただ、民間追加負担を求めるに際しまして一つ気になりますのは、株主代表訴訟を押さえ込む法的な措置をとってくれればという声があるやに聞いております。これは極めて乱暴なことでございまして、株主代表訴訟というのは市場経済体制の国におきます基本的な権利でございます。それが一業界あるいは一政策当局の都合によって、時によって制限されるということは絶対にあってはならないことでございます。そういう意味で、民間資金の追加負担というのは、そのような条件があるのであれば、私は受け入れることができないというふうに考えます。
  214. 池尾和人

    ○池尾参考人 何度も同じことを繰り返して申しわけないんですが、私は、ルールを守るということが非常に重要だというふうに考えておりまして、まさに金融行政に関しましても、護送船団行政を脱してルール型の行政をやっていくんだということがコンセンサスになっている状況におきまして、事前的なルールに基づく処理ではなくて、事後的に損失負担のルールが後からつくられるというふうなことは決して好ましいことではないというふうに考えております。  そして、今も田尻先生のおっしゃったことですけれども、私は、銀行の責任というふうな言い方をされた場合に、例えば銀行の経営者が私財を投げ出して責任をとってくださるんだったらまだ話は別なんですが、銀行の金というのはないのでありまして、銀行の金は銀行に預けている預金者の金か銀行の株主の金でありまして、銀行の預金者ないし銀行の株主に責任をとらせるということは、銀行の経営者に責任をとらせるということとは全然別のことでありまして、私も母体行と言われるような銀行に少しばかりの預金等をしておりますが、そういう銀行が追加負担に応じるということになりますと、自分自身の預金はやはりそういう銀行からは引き揚げたいというふうに思う次第であります。
  215. 村井仁

    ○村井委員 終わります。
  216. 高鳥修

    高鳥委員長 これにて村井仁君の質疑は終了いたしました。  次に、坂上富男君。
  217. 坂上富男

    ○坂上委員 社民党の坂上富男でございます。  三人の参考人の先生方、御苦労さんでございます。  そこで、私の質問時間は十五分でございます。でありますから、私は、答弁は簡潔に結論だけお答えをいただけば結構でございますので、お願いをいたしたいと思います。  まず、橋本参考人でございますが、さっきの御所見によりますと、いわゆる追加負担については、公共性の高い金融機関として何か金融システムの安定に貢献できる新たな寄与について模索しておる、私企業としての限界もありなかなかいい案が思い浮かびません、苦悩しておるところです、いい案が見つかるものなら検討を進める可能性が生まれるのでないかと考えております、こういうような御答弁ですが、これは間違いないですか。  さてそこで、まずひとつお聞きをしたいのでございますが、二月の十五日、橋本会長の前会長であります橋本会長ですが、前会長参考人にこの席に出られまして、次のような答弁をなさっておりました。今直ちに名案はございません、もちろん工夫の努力は今後もやってまいります、こういう答弁をなさっておるわけでございます。これはいわゆる公的資金六千八百五十億円について、皆さんの方で何とかなりませんか、御負担いだだけませんか、こういう質問に対する答弁なんでございます。  これから見ますと、もう四カ月たっているのでございますが、皆さん方の方では、この工夫あるいはいい案、どのような努力をなさったんですか。
  218. 橋本俊作

    ○橋本参考人 先ほどの答弁でも申し上げておりますが、金融界といいましてもいろいろな立場の業態もございまして、また経営状態がそれぞれ違っておりますので、全体としてのコンセンサスが生まれるのが大変難しい、そういう現状にあるわけでございます。
  219. 坂上富男

    ○坂上委員 いい案が見つかるならばというお話ですが、どんなことを考えているのですか。
  220. 橋本俊作

    ○橋本参考人 具体的な案についてはまだ思い浮かんでおりませんが、とにかく、民間、私企業としての限界の範囲内で、合法性があり、かつ経済合理性があり、公益性がありというような条件を満足できるような案がないものかということを現在模索しておる最中でございます。
  221. 坂上富男

    ○坂上委員 だから、どういう案を模索をしているのか、こう聞いているのですよ。全くないのですか、まだ。  そこで、では私の方から指摘しますが、母体行約百五十一社ある。公的資金六千八百五十億だ。大体これは、割りますと一社で四十五億になりますね。こういうことに対する体力は母体行はあるのですか、ないのですか。
  222. 橋本俊作

    ○橋本参考人 体力的にどうかということを申しましても、個々の金融機関経営状況のありようにはおのずと差がございまして、なかなか一概には申し上げられないわけでございます。
  223. 坂上富男

    ○坂上委員 なかなか一概に言えないというと、今言ったようなことの負担に耐えられない銀行があるのですか。
  224. 橋本俊作

    ○橋本参考人 中にはそういう金融機関もあろうかと思います。
  225. 坂上富男

    ○坂上委員 その銀行、指摘できますか。
  226. 橋本俊作

    ○橋本参考人 個々の金融機関経営状況を私どもは承知をするような立場にはございませんので、個別の金融機関名を挙げるということは御容赦願いたいと思います。
  227. 坂上富男

    ○坂上委員 それはそれでいいでしょう。  それでは、こういうふうにお聞きをいたします。いいですか。  きょうの新聞の報道の中では、あなたが本日ここで答弁をする中に、絶対拒否の今までの姿勢から、受け入れ可能な案が出れば検討する考えを表明する、こうおっしゃいましたね。こういうことは、きのう記者会見で何かおっしゃったのですか。あるいは、記者の方でいろいろ事情を聞かれて、何かお答えになったのですか。
  228. 橋本俊作

    ○橋本参考人 私は、きのうはどの記者とも会っておりません。申し上げておりません。
  229. 坂上富男

    ○坂上委員 そういたしますと、「全金融機関の参加や元本保証などの前提が満たされれば、追加負担に応じることもやむを得ないと判断した。」というような報道もあるのですが、これもあなたは全く考えていないのですか。
  230. 橋本俊作

    ○橋本参考人 私の考えは、先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。
  231. 坂上富男

    ○坂上委員 さてその次に、前の橋本さんはこういうことを言っているのですが、これはどうですか。  法で許される最大限まで負担をしていく。すな  わち貸国債権を全額放棄する、その上で金融シ  ステム安定化のために、金融安定化基金への拠  出、それから住専処理機構への低利融資、そう  いった形でぜひ金融システムの安定化に貢献し  てまいりたい。そういう判断で、私どもは今後最善を尽くしてこの住専問題の解決に一生懸命汗を流したい、こういうふうに言っているわけです。  これは、皆さんの方で債権放棄なさいましたが、母体行で、もうこれが法的な限界だとあなたは解釈しているのですか、あなたとしては。
  232. 橋本俊作

    ○橋本参考人 本来は、母体行といたしましては、住専に貸しておる金の全額放棄でもって責任を果たしたと。ただ、それに加えまして、拠出金であるとかあるいは低利融資だとか、そういう御協力を申し上げよう、政府案に従ってこの処理を進めていくためにそういうことをやっていこう、このように考えておるわけでございます。
  233. 坂上富男

    ○坂上委員 私の質問しておりますのは、債権放棄がもう法的な限界なんだ、こういうことですかと聞いているのです。
  234. 橋本俊作

    ○橋本参考人 法律上の限界というのは、貸借関係に基づく限界は、貸した金の範囲内ということが貸借関係に基づく法律上の限界である、このように解釈しております。
  235. 坂上富男

    ○坂上委員 それでは、こういうことはどうですか。あなた方の方で、いわゆる母体行が子会社に対してほとんど全部責任を負って解決をしておる、こういう銀行が多いのじゃないですか。どうですか。
  236. 橋本俊作

    ○橋本参考人 いわゆる系列ノンバンクのことを御指摘になったのかと思いますが、系列ノンバンクにつきましては、会社の存立意義ということがございまして、私どもがそれぞれ系列ノンバンクについては支援を続けておるわけでございますが、住専につきましては、もはや営業を継続する基盤が失われたという状況であろうというふうに認識しております。
  237. 坂上富男

    ○坂上委員 三菱銀行のダイヤモンド抵当証券、富士銀行の芙蓉総合リース、第一勧銀の東京リース、こういうものについては、他行には迷惑をかけさせないで、この母体行が全部といっていいぐらい責任を負ったことを知っていますか。
  238. 橋本俊作

    ○橋本参考人 承知をしております。
  239. 坂上富男

    ○坂上委員 それでは、株主代表訴訟で取締役に責任ありと判断したのは、裁判上では、商法禁止の自己株式取得の三井鉱山事件、それから、間組がわいろを地方自治体の町長さんに提供した間組事件、この二つだけだというふうに私は見ているのですが、これも知っていますか。
  240. 橋本俊作

    ○橋本参考人 代表訴訟で敗訴した事例については、それだけであるのかどうかということは存じ上げておりません。(坂上委員「知っていますか、この事件については」と呼ぶ)三井鉱山事件というのは、詳細は知りませんが、知っております。
  241. 坂上富男

    ○坂上委員 そうしますと、橋本さんは、いわゆる信用不安の表面化の可能性あるいは金融システム全体の安定性の維持、これが大事だと、これは株主代表訴訟のいわゆる合法性の基準の一つになるのじゃないですか。それから、追加負担についての国会の要請あるいは大蔵大臣の要請、そういうようなものも、取締役の行為の適法性の判断、これも一つの大きな基準になるのじゃないですか。この点の理解はどうですか。
  242. 橋本俊作

    ○橋本参考人 株主代表訴訟は、個々の銀行が置かれた状況によりまして個別に判断されるものでございます。何かあれば代表訴訟のおそれが一律に軽減されるということとは、必ずしも、異なるわけだと思います。
  243. 坂上富男

    ○坂上委員 これは、この間ここの特別委員会で法務省がきちっと答弁しているのです。そういうことは適法性の判断の要素になりますということを言っているわけです。それは、例えば債権放棄とかあるいはいろいろの資金援助、それから母体行と住専の関係の深さ、母体行の信用失墜の可能性、そういうようなものを考えてみると、それから今言った信用不安とそれから追加負担の国会の要請、こういうものは重要な要素になる、こう言っておるわけであります。  そこで、いわゆる東海銀行事件で、やはり金融システムの安定化が行政上要請されていた場合については重要な行為の適法性の判断になるとして、東海銀行さんの方はその責任の追及を免れて、いわゆる勝ったのですね。株主さんの方が負けたのです。こういうのを知っているのですか。
  244. 橋本俊作

    ○橋本参考人 詳しくは存じませんが、そのようなことを聞いたことはございます。
  245. 坂上富男

    ○坂上委員 そうだといたしますと、あなた方の、前の橋本会長は、ことしの二月の十五日にここで、いろいろ工夫して努力をする、こうおっしゃった。それから、あなたもきょう、いわゆるいい案があれば検討して協力したい、こうおっしゃっている。  そこで、今指摘しましたいわゆる株主代表訴訟等に対する裁判所の見解、大蔵当局の答弁、そういうものを総合いたしますと、あなたのおっしゃるところのいい案というのは大体もう出ているのじゃないですか。どうですか。
  246. 高鳥修

    高鳥委員長 この答弁で、時間が来ておりますので、終わりにしてください。
  247. 橋本俊作

    ○橋本参考人 経営判断といたしまして、株主代表訴訟に抵触するおそれがあるからということだけが唯一の判断根拠ではございません。先ほど先生がおっしゃいましたとおり、重要な要素になる、このように私どもは考えております。
  248. 坂上富男

    ○坂上委員 両先生、大変申しわけありませんでした。時間を切らしてせっかくの御意見を賜りませんで、大変失礼しました。  ありがとうございました。
  249. 高鳥修

    高鳥委員長 これにて坂上富男君の質疑は終了いたしました。  次に、田中甲君。
  250. 田中甲

    田中(甲)委員 新党さきがけの田中甲であります。  私は、九六年の三月決算で、全国銀行ベースで十一兆円、超低金利政策によりまして十一兆円を超す巨額の償却財源、これは銀行のリストラによる努力ではなくして、今お話をさせていただきましたように、超低金利政策によって発生した超過利潤である、これはまさにいわば国民の犠牲の上に成り立ったものであるということを前段に申し上げて、質問に入らせていただきたいと思います。  母体行が追加負担を行っていく、そういう方向を、一見よい方向に進んでいくというものが感じられるようではありますが、実は、そのツケというものは預金者が、何度も申し上げますが、超低金利政策の中で預金者一人一人にのしかかってきているということがあるわけですから、六千八百五十億円、この税金を、国民の負担で今措置をとろうとしている、あるいは母体行の追加負担ということは、低金利政策の中でやはり国民の犠牲の上にこれが行われようとしている、こういう認識を私は持っているのであります。私だけではない、多くの国民の方々がそう思っていると思います。  私はよく、みずから進んで被災者の皆さん方にお会いしに神戸に向かいます。私は千葉県の国会議員でありますけれども、仮設住宅に何泊もし、被災者が被災者を救済しているという姿を目の当たりにしています。  二階建てのプレハブの建物に、実は地域型共同住宅といいますが、テレビにも映されていません、新聞でも報道されていません。四畳半に区切られたその部屋には水も引かれていないというのが実態です。本来ならば、高齢者は特別養護老人ホームに入る、あるいは障害を持つ方々が障害の施設に入る、こういう方々が四畳半に押し込められている。先ほど言ったように洗面所もないのです。あるいはトイレもないのです。さらに、もちろんふろもない、共同で使うような形になっています。行政の方が土曜日、日曜日はいません。そのほかの日は監視役としてついています。火災を発生しないか、自殺をしないか、あるいは徘回をしないか、こういうのが実態です。  私は、六千八百五十億円を、この公的資金を使うならば被災地に使えという同じ土俵で考えている、そんなつもりでお話をしているのではありません。その方々がつめに火をともすようにしてこつこつと積み上げた、やっとためた預貯金のその利息というものを年金にプラスして生活している、その実態というのが、まさに日本全国に押しなべて言えることでありますが、顕著に示されている地域だと思い、お話をさせていただきました。  二万円の利息で年金にプラスしてどうにか生活をしている方がたくさんいる、それは被災地だけではないと思います。この日本の姿、その中にこういう姿があるということをしっかりと御理解をいただきたい。まず、その点について、この現実というものを銀行経営者は謙虚に受けとめていただきたいと思います。参考人の御意見、橋本さんにお聞かせいただければありがたいと思います。
  251. 橋本俊作

    ○橋本参考人 確かに低金利政策によりまして、今先生のおっしゃいました利子収入に生活を依存されている年金生活者等の方々にとりまして、極めて厳しい環境になっているということも十分承知をしておるところでございまして、こうした観点から、先ほども申し上げましたが、そういう方々のために、金利優遇預金の商品等につきましても民間金融機関としてできる限りの努力をしているところでございます。  追加負担の問題につきましても、私どもといたしましては、全額放棄に加えて、拠出金であるとかあるいは低利融資だとか、あるいは預金保険料のアップというようなさまざまな状況の中で、何かできることはないかということで大変苦慮しておる状況であるということも御理解を賜りたいと思います。
  252. 田中甲

    田中(甲)委員 私は、母体行また一般行、国民から見ると全くみずからの身を削っていない、リストラの努力はしていない。ですから、今回超低金利政策の中から追加負担をするということで国民が理解、納得をするか。私はしないと思います。自分の身を削って痛みを持ったリストラということを行っていない。今賞与の面では削減がされているようでありますが、給与においてもあるいは退職金においても一律の削減ということを、減俸ということをしていかなければ、私は国民の皆さんは納得しないだろう。  あるいは、さらに例を挙げるならば、消費者の皆さん方に理解をいただけるならば、その支店というものを廃行していくというようなことでリストラの努力をやはり行っていかなければ国民の理解は得られないだろう。それは実は私どもにも言えることでありまして、政治においてもあるいは官僚の方々においても、そういう面での国民に理解のいただける行動ということをしていかなければならないと思います。  菅厚生大臣の例を若干挙げさせていただきますが、国庫に返納をいたしました。同時に、業務局長や事務次官も減俸をいたしました。職員は自主的に返上するという形をとりました。この住専問題でも、閣僚があるいは官僚がそういう姿勢をみずから国民に示していく、その姿がなければ国民の理解は到底得られるものではない。そういう行動を行って、政界においても官界においても、あるいは銀行、皆さん方の御努力によっても、その姿を見て初めて国民の皆さん方は理解を示せるという状況に至るのではないでしょうか。こういう問題にぜひ理解を示していただきたい。  今後国民の皆さん方が見て納得のできる銀行の姿ということを、全国銀行協会連合会の会長でありますから、どうぞ橋本さんにしっかりとその道筋をつけていただきたい、判断を、英断を下していただきたいという思いを持たせていただいております。どうぞよろしくお願いをいたしたいと思います。  さて、今のお話は私の思いを伝えさせていただいたということで、参考人でいらしていただきました田尻さんにお聞きをいたいしたいと思います。  冷静に経済政策として、今回住専処理策によりまして株価は二万円に回復をする、ジャパン・プレミアムというのは解消されたやにも思われる、どういう状況に至ったわけであります。結果的に見るならば、五兆円を使った公共投資の追加よりも、経済効果というものは、景気浮揚というものに実際につながったかどうかは御判断を専門家にお任せしますが、そういう面での評価というものはどうごらんになられているのでしょうか。  また同時に、もしこの住専の処理というものを先送りするようなことが、そういう場面が万一あった場合に、この後どのような予測がされるのでしょうか、ぜひお聞かせをいただきたいと思います。国民の皆さんにわかるように、ぜひお聞かせをいただきたいと思います。
  253. 田尻嗣夫

    ○田尻参考人 最初に申しましたように、住専処理をこれ以上先送りする時間は、市場の地合いから申しますと、ほとんど残っていないというのが私の現実認識でございます。  今国際的にも日本の政府並びに当局が市場感覚を持っているのかどうかということについて極めて厳しい目を向けられているさなかでございます。日本の国内の市場だけではございませんで、このところ海外の、欧米市場も日本の動きに対して極めて敏感になってきておるわけでございます。  先生の御質問を、もしこの住専処理を解決を見ないまま先送りしたらどうなるかという御質問だというふうに理解をいたしますれば、これは極めて重大なことになりかねない、そういう状況にあるということではないかと思います。  私は、そういう意味で、今回の金融危機の中に円の信頼性を損なうことがあってはならない、円を巻き込む前に回避しなければならないと申し上げたわけでございます。  円相場が急落をするようなことになりますと、現在、食糧価格あるいはエネルギー価格は国際的に上昇しておりますので、輸入物価の上昇となって国民生活にもはね返ってまいります。あるいは、株式市場の打撃が現実化いたしますと、今御議論の銀行の追加負担等も含み資産の急減ということでまた別の次元に移っていかざるを得ないわけでございます。あるいは債券相場の下げ圧力がかかってまいりますと、これは逆に長期金利の上昇ということで、景気あるいは家庭に響く問題でもございます。  信用不安の問題というのは、単に取りつけ騒ぎが起こらなければそれでよいという問題ではございませんで、市場を通じて、相場変動を通じて、あるいは金利の変動を通じて国民生活に直接間接に大きく響いてくる問題でございます。  そういう意味で、今の問題をこれ以上先送りしていただくことは困るというのが私の考えでございます。
  254. 田中甲

    田中(甲)委員 ありがとうございました。
  255. 高鳥修

    高鳥委員長 これにて田中甲君の質疑は終了いたしました。  次に、佐々木陸海君。
  256. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 時間が限られております。橋本参考人にお伺いをしたいと思います。  金融システムの安定に貢献できる新たな寄与で、いい案が見つかるものなら検討したいというふうにおっしゃいました。金融システムの安定という点では、何よりも国民の信頼が第一だと思います。この住専処理で国民に押しつけられようとしている負担、これを、言ってみれば可能な限り少なくし、その分を母体行が引き受ける、極めて単純ですけれども、これが一番いい案だと私は思いますが、参考人はいかがでしょうか。
  257. 橋本俊作

    ○橋本参考人 民間の金融機関といたしまして負担をする場合には、やはりその合法性それから経済合理性及び公益性というものが必要条件かと思います。そういうものに合致する案が見つかればということで、今大変苦慮しておるわけでございます。
  258. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 合法性ということを言われましたけれども、子会社の破綻に際して親会社が面倒を見る、再建のときには最大限面倒を見ますが、つぶすときには余り面倒を見ない、途中で終わりにしてしまうというのはこれは身勝手な論理でありまして、これまでの社会の常識からいっても親会社が子会社の面倒を見切るというのが当たり前の常識ではないかと思うのです。  それにも増して、法的根拠ということをいいますと、民間のノンバンクの破綻に、その処理に国民の税金をつぎ込むなんというのは本当に法的根拠がない。だからこそ今こんな法案をつくってそれをやろうとしているというわけであります。だから本当に、こんな法案を通すのではなくて、この処理策といったものに拘泥されるのではなくて、拘束されるのではなくて、もっと新しい考えを拘束されないで考えればいい案がどんどん浮かんでくるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  259. 橋本俊作

    ○橋本参考人 住専の場合は関係当事者が非常にたくさんございまして、それらの間で最初は話をまとめようとしておったわけでありますが、当事者の間ではなかなか多数であるためにまとまらなかった。しかしながら、この処理がおくれますと、国際的あるいは国内的にも信用問題が出てまいりますので、そこで政府の方のお手を煩わせまして昨年の暮れに一つのスキームができ上がった、こういう経緯がございますので、その処理に従って私どもとしてはやっていこう、こうしておるわけでございます。
  260. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 合意、合意とおっしゃいますし、関係者が多数とおっしゃいますが、関係者は基本的に四者なのですよ。母体と一般と農協と国民。そして、この国民は合意してはいないのですよ。ですから、処理策なんかにとらわれずに、母体行がこの合意していない国民の分を全部持つというふうにすれば問題はすっきり解決する、私はそう主張したいと思いますし、まさにそれが国民の望んでいる方向、そしてこの国民の望んでいる方向を満たすことが、本当金融機関への国民の信頼を取り戻し、金融システムの安定を図るという方向にもつながる。  ぜひその方向で検討していただきたい、そのことを最後にもう一度橋本参考人に要望して、私の質問を終わります。
  261. 高鳥修

    高鳥委員長 これにて佐々木陸海君の質疑は終了いたしました。  次に、海江田万里君。
  262. 海江田万里

    ○海江田委員 私の持ち時間はたった二分でございます。即席ラーメンができる前にもう質疑を終えていなければいけませんので、お力添えをお願いしたいのです。  橋本会長にお尋ねをしたいのですが、先ほど追加措置、金融システムの安定に貢献できるいい案があれば検討の余地があるということですけれども、新聞報道なんかを見ますと、例えば農林系統もやはり追加負担がなければ銀行としての追加負担はできないのか。それとも、もう農林系統の追加負担は別に関係なくて、それは農林系統の追加負担がなくても独自に追加負担をやる、いい案があればですけれども、やるおつもりなのかどうか。
  263. 橋本俊作

    ○橋本参考人 当然金融界全体のコンセンサスが必要な問題であるというふうに思いますから、農林系統についてもそうである、このように存じております。
  264. 海江田万里

    ○海江田委員 それから、先ほど来議論が出ておりますけれども、やはり低金利でかなり利子収入が不足をしまして困っている方はたくさんいるということは事実でございます。  三月期の決算を見ますと、都市銀行の中でも、これは体力差がかなりあるのですね。その体力差があるところを、せっかく金融が自由化をして、一応流動性預金の自由化も終わって、日本も世界的に見れば、金利の自由化は一応達成をしておるということになっているわけです。  そうしますと、とりわけ今まで日本は金利の自由化がなくて流動性預金の金利が非常に低かったわけですよね。ここで多大な収益を上げていたわけですよ。普通はもうちょっと、金利が自由化すれば流動性預金と定期性預金の金利が詰まるはずなのですけれども、ところが、金利の自由化が終わったにもかかわらずここが全然詰まっていないということがありますので、やはりこの流動性預金の金利を、特に体力があるところは優先をしてもう少し上げるべきだと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  265. 橋本俊作

    ○橋本参考人 現在、年金生活の方々に対する商品といたしまして、流動性預金につきましても一般よりは高い金利をつけた商品を実施いたしております。
  266. 海江田万里

    ○海江田委員 もう時間がありません。どうもありがとうございました。
  267. 高鳥修

    高鳥委員長 これにて海江田万里君の質疑は終了いたしました。  これにて御出席いただいております参考人に対する質疑は終了いたしました。参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。参考人各位には、御退席いただきまして結構でございます。ありがとうございました。     —————————————
  268. 高鳥修

    高鳥委員長 引き続き議事を進めます。  特定住宅金融専門会社債権債務処理促進等に関する特別措置法案外五案の審査のため、参考人として全国農業協同組合中央会常務理事高野博君、弁護士清水直君、東京大学名誉教授龍一郎君に御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。本会議などの都合で若干予定の時間よりおくれましたことをおわび申し上げます。本委員会での審査に資するため、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  次に、議事の順序でありますが、高野参考人、清水参考人、館参考人の順序で、お一人十五分程度に取りまとめて御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。  それでは、高野参考人にお願いいたします。
  269. 高野博

    ○高野参考人 私は、平成二年七月から全国農業協同組合中央会の常務理事を務めております高野でございます。  初めに、今回の住専問題につきまして国会審議取りまとめのため、諸先生方におかれましては大変な御労苦をおかけしておりまして、まことに申しわけなく、御努力に心から感謝申し上げます。  次に、私の担当しております業務についてでございますが、一言で申し上げますと、農協組織の当面する政策的課題の解決に努力するというものでございます。この立場から、系統組織全体の意向あるいは主張等につきまして説明させていただきたいと思います。  まず初めに、本委員会で審議されております各法案につきまして、私どもは賛成の立場からいろいろと御意見を出させていただきたいと思うわけでございます。  初めに、住専問題につきまして、私どもの基本的な主張について申し上げたいと思います。  住専問題は、当然農協の経営問題ではございません。基本的には住専の経営破綻をどうするかという問題でございます。破綻に至った経過を踏まえ、各関係者の責任の度合いにより負担をどうするか、そういう問題でもあろうかと思うわけでございます。  破綻の直接の責任は当然住専の経営者にありますが、事実経過に沿って考えますと、母体行は住専を子会社として設立しました。役員を派遣しました。紹介融資等事業に深く関与いたしました。実質的に経営を支配してきたと私どもは考えております。それはまた第一次、第二次再建計画が住専と母体行の責任で作成された経過からも明らかであります。したがいまして、私どもは、住専の整理に当たり、母体行が最大限の責任と負担を負うべきだと一貫して主張してまいりました。  ちなみに、系統の協同住宅ローンにつきましては、他の金融機関には、金利減免も含め一切の迷惑はかけず、系統の全責任で対処してきております。他の住専七社につきましては、昨年来数次にわたる交渉を行いましたが、関係当事者間の話がつきませんでした。  そうした中で、景気回復、金融システム安定化等の立場から政府案が示されたわけでございます。私どもは、これが現時点で一番現実的な解決策であると考えております。  次に、系統の負担についてであります。  昨年十二月に閣議決定されました住専処理策において、農協の対応は協力、具体的には資金贈与とされました。これは、住専の経営とその破綻に直接関与していない私どもに他と同様の措置をとることは適切でないとの配慮によるものと理解しておるわけでございます。系統の資金贈与五千三百億円につきましては、系統信用事業の基盤を守りつつ負担できるぎりぎりの水準が協力要請されたものと考えております。  ちなみに、信連、金庫の平成六年度経常利益は合わせて千九百億円であり、今回の四千億円の負担がいかに厳しいものであるか、御理解いただけると思います。  このような状況下で、目下、逐次各信連とも七年度の決算総会を迎えてきておりますが、金庫を初め多くの県信連が赤字決算となる見込みであります。  御存じのとおり、そもそも農協は、農協法の規定によりまして、一般企業のように自己の利益をあくまで追求していく、そういう団体ではございません。それはできないことになっております。組合員のために利益を還元していく団体でございます。この特性を御考慮の上、御理解いただきたいと思います。  さらに、今回の資金贈与と関連して、組合員、預金者の方々にも御心配をおかけしておりますが、私どもは、余裕金の取りましや経営の合理化を早急に行い、系統一体となった経営努力の中で事態を克服していく考えであります。御理解いただきたいと思います。  次に、ここで系統の組織整備について御説明申し上げます。  私たちは、平成六年の第二十回JA全国大会で決議いたしまして、既に農協系統の事業、組織の改革に取り組んできております。  具体的に申し上げますと、平成六年度当初二千八百JAございましたが、平成八年度の当初では二千三百まで縮小し、合併を進めてきております。最終的な合併構想は五百六十六JAでございますが、現在、二百三十三JA、四一・二%が既に実現いたしまして、また、JAの全国連の直接利用も始まっております。  こういう状況に加えまして、住専問題の処理方策の策定を機にJA改革への取り組みを加速させる必要が高まったことから、全中といたしましては、本年一月にJA改革要綱を決定いたしまして、組織を挙げて取り組みを進めているところでございます。  具体的には、JA改革本部及びJA改革専門委員会を設置いたしまして、一つは、県連と全国連の合併、統合でございます。信用事業で申し上げますと、中金と信連の合併でございます。それから、農協の広域合併の一層の推進でございます。二つ目は、徹底した経営の合理化、効率化を目指すということでございます。三つ目は、経営の健全性の確保でございます。これらの課題につきまして、問題点を洗い出し、具体的な実行方策を策定するため、鋭意検討を進めております。  なお、御存じのとおり、これらの課題につきましては、政府におきましても農政審議会の場において検討されております。本年夏をめどに結果を取りまとめる予定と伺っております。したがいまして、これらの審議経過も見ながら、歩調を合わせて対策をまとめる考えであります。  次に、貯金保険法案について申し上げます。  今回議論されます農水産業協同組合貯金保険法の改正は、貯金者保護の観点から、保険金の支払い制度の改善等を行うものと承っております。住専問題の処理とは別個のものと存じておりますが、既に系統組織といたしましては、系統信用事業の安定を図るため、自主的な取り組みといたしまして相互援助制度を有しております。これを八年度からさらに充実させ、経営破綻を未然に防止するための措置をみずから講じることといたしております。  今後、貯金保険制度の改善並びにみずからのこの相互援助制度を充実し活用していくことによりまして、農協貯金者の保護並びに信用秩序の維持に万全を期していく所存でございます。  次に、健全性確保の法案についてでございます。  金融機関等経営健全性確保のための関係法律整備に関する法律につきましては、系統全体に関する事項といたしまして早期是正措置の導入がございます。農林中央金庫に関連する事項として、トレーディング勘定への時価評価の導入、監査機能の強化が盛り込まれていると承っております。  この中で、早期是正措置の導入について申し上げたいと思います。これは、経営健全性確保経営破綻の未然防止に向け、行政が是正措置を早期に発動する権限を確保していくものと言えると思います。もちろん、その趣旨には反対するものではございませんが、その発動基準につきましては、各業態の実情を踏まえた十分な議論を尽くし、策定していただきたいと存じます。また、発動の上での客観性を確保していただきたいと考えています。  最後に、処理策の早期解決決定について申し上げます。  当初、私どもは、住専処理機構が四月一日以降発足し、一方では、幾つかの借り手について報道されるような資産隠しを許さない借り手に対する厳しい追及がなされ、他方、関係者の協力により、この問題の解決に向けた迅速な対応がなされるものと考えておりました。  しかし、現実は、処理策について皆様の御理解を得るため時間が経過しております。この結果、私どもにとりましては、一月以降、一カ月間約二百億円に上る利払いが停止されたままになっております。このように、処理策があいまいなままさらに時間が経過するとすれば、系統農協を初め経営体力の弱い中小等の金融機関にとりましては、大きな負担が生ずることになります。このままでは、借り手等加害者への追及あるいは破綻について直接責任のある者の追及が迅速になされないまま、系統にさらに過酷な負担を現実に負わせる結果となることを強く危惧する次第でございます。  金融システムの一端を担う系統の立場から、国民の皆様の理解を得て、一日も早く解決が図られますことを念願いたしまして、意見陳述といたします。(拍手)
  270. 高鳥修

    高鳥委員長 ありがとうございました。  次に、清水参考人にお願いいたします。
  271. 清水直

    ○清水参考人 私は、参考人の、東京弁護士会に所属しております弁護士の清水直でございます。本日は、金融関連六法案につきまして意見を述べさせていただく機会を与えていただきまして、大変光栄に存ずる次第でございます。  さて、私どもといたしましては、この法案についての法律家としての専門的な立場からいろいろ検討もいたしましたし、また私の友人あるいはまた後輩、こういった多くの弁護士の知恵も集めましていろいろ検討させていただきました。その結果について本日申し上げるわけでございます。  まず、予算委員会での審議の場合もそうでございましたが、なぜ国民が六千八百五十億円の支出について同意しないか、納得しないかということは、一私企業の倒産の処理になぜ公的資金が使われなければならないのだ、これは納得がいかない、これが国民の意見であります。  私は、三十四年間にわたりまして、中小企業の再建に二百数十社関与してまいりました。公的資金を補助してもらったことは一回もございません。興人のときには、関連下請を助けるために、平松大分県知事が副知事の当時でございましたが、大分に飛び、あるいはまた熊本に飛びしながら、下請の中小企業のおじさんたちをそれぞれ十五分、二十分置きに呼びつけて、そしてこれらの人から資金繰りを聞きながら、また、静岡のカナサシ造船所のときにも、同じように下請企業のおやじさんたちに次々に聞きながら、労働組合の要求の一時金を払う前にまず下請を助けるということをやってまいりましたので、私が今日までにやりました事件で連鎖倒産は一件もございません。  私は、中小企業庁の倒産対策委員を拝命しておりました間に、中小企業の倒産防止のための保険あるいはまたいろいろな法律の作成に関与いたしました。これにおきましても、結局、信用保証協会の保証枠を広げるとか、あるいはまた無担保・無保証で貸し付けるということの制度はできましたが、倒産関連企業の救済のために公的な資金を補助金として出すということは、これまでに一度もございません。  やはり倒産事件については、倒産に関連あるものが自己の責任において処理する、これが鉄則でございます。他の者の債権を払うためにさらに融資をするということは銀行は絶対にいたしません。したがいまして、他の債権者の債権、元金、利息を払うために金を貸してくれと言って借りられたことは一度もございません。合理化をするための退職金あるいはまた設備投資の資金、こういったものを借りるということはできますけれども、他人の債権の弁済のための借り入ればできないのでございます。  また、会社更生法で更生債権を更生計画で支払う場合も、裁判所は、更生計画で定めた更生債権を払うために共益債権としてさらに他の金融機関から金を借りるということを絶対に許可いたしません。したがいまして、更生会社は自己の力によって、営業収益または資産によって弁済をするというのが、これまた鉄則でございます。  にもかかわらず、住専に限り六千八百五十億円からの公的資金が導入されるということに国民は納得しないのでございます。もちろん、私は預金者保護、金融システムの維持ということについては、皆さん方と同じ意見でございます。そのためには、五兆円かかっても十兆円かかってもやる必要があると私は思っております。しかし、住専の処理のために六千八百五十億円が出されるというこの一点に限って、国民は納得していないのでございます。  そのために、今日これだけ長い期間の審議が行われ、そしてまたこの住専関連法案本当はこの関連法案の審議こそ三月、半年かけてもよろしい内容なのでございますけれども、いかんせん六千八百五十億円の審議で長期間かかりましたために、この法案の審議は短い期間になってしまったということは大変残念でございます。しかしながら、いろいろな点を考えてまいりますと、私はやはり、本件については早期処理をする必要がある、こういうふうに考えます。  私の結論といたしましては、六法案中のいわゆる住専処理法案と時効停止に関する法案、この二つは廃案にすべきものであると考えます。そして、あとの四法案は、健全化法案にいたしましても、公認会計士等による監視を入れるというふうな点を見てまいりますというと、健全化法案などは当然のことでございますし、それからまた預金保険法あるいは貯金保険法、こういった関係の法律につきましては、これは早期にこれを成立させて、そしてその上で、今盛んに金融システムの崩壊、あるいはまた不安と言われている部分を早く解決しないと、農協の預金が減少しているということも言われております。第二地銀の預金が少なくなっているということも言われております。  これは国民が、やはりじわりじわりと預金者保護ということが果たして行われるのかどうかということについて不安を持っているということを示すものでございます。その意味におきましても、国際的な信用を回復するためにおきましても、早くこの金融関連の法案につきましては成立させる必要があると思うのでございます。  それとあわせまして、私どもは、今回の法案を検討させていただきました結果、やはり政府といたしましても短い期間にこの法案を作成されたと見えまして、学識経験者からの意見の聴取、あるいは法制審議会における審議、こういったことが十分になされないままにこの法案ができたような節が多々見られるのでございます。  そしてまた、私どもは、東京と大阪の倒産関係にベテランの弁護士が集まりまして、年二回研究会をしております。これはもう既に十年ぐらい続いております。その中でも、破産法、会社更生法、和議法、商法のこの四つの法律、手続的には五つあるのでございますが、これが古い。会社更生法が最も新しゅうございますが、破産法、和議法等になりますというと明治時代からできた法律でございますので、今日の時代の要請に合わない。したがって、これを今の時代に合うように改正する必要があるということをすべての関係者が言っております。  そこで、私は、どうかこの委員会、この国会におきまして、この住専あるいはまた金融関連法案の決議に際しまして、この法案を成立させると同時に、また破産法、会社更生法、和議法、商法の既存の倒産関連法の改正を行いまして、そして今回の特例法との整合性を保ち、もって時代の要請にこたえるようにすべきである、この点についての附帯決議をしていただければ大変幸いである、かように考える次第でございます。  次に、住専処理法案について簡単に述べますというと、これは予算委員会のときにも私は若干触れさせていただいたのでございますが、住専の各社に管財人を送り込めば、管財人が直接取り立てもするし、責任追及もするし、証拠も直接集められるから、最も迅速でかつまた的確に行えるということを申し上げたのでございますが、これが住専処理機構に一たん移る、それからまた住専処理機構で取り立てが難しいものは今度は預金保険機構に行くと、二重、三重に取り立ての手続が移行するわけでございます。その段階で間接的になっていく。  特に、法案を読んでみますというと、隠ぺいその他難しいものについては、これは預金保険機構にやってもらいなさいと書いてある。そうすると、住専処理機構は、まあほどほどに、余り努力しなくても、暴力団と渡り合ってなんて危険なことをしなくても、簡単に回収できるものだけ回収して、難しいものはどんどん預金保険機構に御連絡申し上げてそちらにやっていただく。預金保険機構は、またこれは委託を受けて取り立てるのですから、自分債権債務ではない。他人のものをかわって取り立ててあげるということですから、これまた取り立てに腰が入らない。  ですから、住専処理機構もいいかげんならば、預金保険機構もいいかげんになるのは間違いないのでございます。やはり住専そのものに管財人が入れば、管財人自分の責任とそれから権限において取り立てをするというのでございますから、極めて迂遠な制度をつくってしまう。その結果、際限なく公的資金が導入されるという構図ができ上がっている。まさに無責任体制をつくるものであると私は思います。  それから、すべての手続の着手が遅過ぎると私は思います。私が、住専について会社更生法によって処理すべしと申し上げたのは一月でございます。予算委員会で申し上げたのが二月でございます。既にそのときからはや三カ月、四カ月たっているのでございます。去年の十月、住専についての方針をお決めになったその時点でもし更生法の適用申請をさせていたならば、今日では既に更生手続を開始し、管財人あるいは保全管理人による債権の取り立ても行われ、債権調査も進み、そして管財人の調査報告で住専の実態をきちんと国民にわからしめることができていたと思います。  その意味におきまして、これからやっとこの法案が成立し、それから住専各社について解散あるいは営業譲渡の決議をし、そしてその上でこの手続が始まるということになりますというと、営業譲渡の決議につきましても、これまた公取の手続も要るでございましょう。このようなところを考えてまいりますというと、本当に住専処理機構が動き始めるのは、ことしの九月かあるいは下手をすると十二月ごろにならないと実際の活動はしないのじゃないかというふうに思うのでございます。  この間に、前の予算委員会でも申し上げましたが、住専の資産の状態は日に日に劣化しております。新聞報道にもございますように、もう既に二〇%の社員がやめていっている。大体こういう場合には、やめるのは優秀な社員からやめるのでございます。  そして、金融関係者に言わせますというと、結局は住専処理機構ができたときには現在の社員でやることは非常に難しいと。みんなそれぞれに解雇するなり再就職させて、母体行から全然新しい社員を住専処理機構に出向させるのでなければ仕事はできないだろう、こういうふうに言っております。いかに住専処理機構というものが関係者にとって魅力のない存在ということになりつつあるかということについて、御記憶願いたいのでございます。  それから、住専処理機構につきましては、先ほど申しましたように、債権の取り立てについてだれも責任を負うべき立場の人がいないということでございますので、このために、無責任体制ができ上がるということは言えると思うのでございます。難しい債権は預金保険機構にやってもらいましょうということでございますから、また預金保険機構は単に委託を受けてやるだけでございますので、自分のものではないというところにもう一つ腰が入らないということになりますので、無責任体制ができ上がってしまうということになろうと思うのでございます。  それから、住専処理法案につきましては、否認権もございませんし、調査権限も弱くて、いろいろな点で会社更生法あるいは破産法よりも権限が弱いのでございます。したがいまして、十分な成果を上げられるか甚だ疑問でございます。  それから、関係者に意欲をかき立たせるスキームもございません。そのために、関係者は傍観視するような立場でしか協力しないのではないかということが言えると思うのであります。  次に、時効停止法案について申し上げたいと思います。  時効停止法案につきましては、これはこの権利の性質によって一年、二年等の定めがございますので、その時効停止についてこの法案で決めましても、それは法のもとの平等に反するのではないかという意見もございます。それからまた、その特定の者に限り有利に認めるというところに問題があるのでございまして、この時効停止についての法案というのにつきましては、非常に大きな問題があるということを申し上げたいと思うのでございます。  そして、今日、住専処理法案がこれだけ長くかかってまいりましたために、日々に財産は劣化し、それからまた関係者の意欲もそがれつつございます。このような状態の中で、今回各関連法案が審議されるわけでございますが、この中で特に申し上げたいことは、やはり預金者の保護ということは大切でございますけれども、その預金者保護ということの美名が、それが曲げて使われているという面がございます。  それにつきまして、例えば農協系の預金者の保護ということにつきましては、それはそれでそういった手だてを考えればいいのでございまして、住専は預金がないのでございますから、したがいまして、住専そのものについての処理はドライに処理しても大丈夫と私は思うのでございます。この点につきましては、私は、先般著書におきまして、住専につきまして十五年間のシミュレーションをいたしたものを発表してございます。それをごらんいただけばわかります。金利を払って全部弁済できるということが記載してございます。その意味におきまして、この点を十分御検討いただきたいと思うのでございます。  私どもの持ち時間としましてもう余りないようでございますので、最後に申し上げたいと思いますが、この住専関連法案及び今回の各種の法案につきましては、それぞれの必要性はございますけれども、特に先ほど申し上げました二つの法案については、これは廃案とすべきものであって、あとのものにつきましては、それぞれしかく御検討願いました上で成立させていくべきものであると考える次第でございます。(拍手)
  272. 高鳥修

    高鳥委員長 ありがとうございました。  次に、館参考人にお願いいたします。
  273. 館龍一郎

    ○館参考人 ただいま御紹介いただきました館でございます。  本日は、意見表明の機会を与えていただきまして、大変光栄に存じております。多少とも皆様方の審議の参考になればと思って、私の考えを申し述べさせていただきます。  大変古いところから話を始めさせていただきまして恐縮でございますが、我が国では大正九年に金融恐慌が起こりまして、それを踏まえまして金融機関の監督・検査の充実と、それから銀行法の改正が行われたわけであります。それによりまして銀行の資本金が一度に増額されました。その結果、金融機関の整理統合が行われるということになって、その後戦時に突入していったということもございまして、金融システムは今日、最近に至るまで安定を保ってきたわけでございます。  一方、外国の例をとって考えてみますと、外国、特にアメリカを例に挙げますと、一九二九年の有名な金融恐慌を契機にいたしましてペコラ委員会が設立されました。そこで審議を重ねた上で各種の規制が設けられたわけであり、一番有名なものは金利の上限規制、金利規制でありますし、いま一つは証券と金融との分離という、そういう政策をとるということになった次第でございます。  アメリカでは、御承知のように、一九七〇年代の世界同時インフレの際に、市中の金利と上限規制が行われている金利との間に金利格差が生じまして、そして銀行から資金がほかの金融機関の方に流れていくということが生じました。そういう意味での銀行離れが起こった結果、これを防止するためにも金利の自由化を進めなければならないということで、預金金利の上限規制が撤廃されることになりました。その結果、ほとんどすべての金利が自由化されるという状況になり、その影響は、国際化の進展した今日でありますから、ほかの国にも影響を与えていきまして、世界を挙げて金利の自由化が進展するという状態になったのは皆様御高承のとおりでございます。  それで、金利を自由化するということは、それまでは陰に隠れている金利リスクが表面にあらわれてくるということになり、それまでは主に資金量のところで調整が行われることになるわけでございますが、金利が変動するという形で金利リスクが表面化するということになり、金利自由化の結果としてリスクの顕在化が生じました。そこで、このリスクを回避するために、金融の証券化であるとかあるいは新しい金融商品の導入が活発に行われるというようになり、また金融の国際化も急速に進展するという状況が続いてまいったわけであります。  ところで、このリスクの増大に対してどういう対策がとられてきたのかということを考えてみますと、御承知のようにBIS、国際決済銀行がいわゆるBIS規制を設けまして、自己資本の充実策を各国に勧奨するという形で、BIS規制によってリスク対策を行っていくという政策がとられたわけであります。日本も当然そのBIS規制を守っていくという状態になりましたが、その当時の経過を振り返ってみますと、日本はBIS規制を何とかして回避したいということで、含み益をその中に算入するように非常に強く求めるというような状態が続いたことは御高承のとおりであります。  しかし、そういったBISによる規制はございましたけれども、各国のリスクに対する対応策というのは、今日の観点から見ますと必ずしも十分なものではなかったという反省がなされるのではないかというように考えております。  今申しましたような状況のもとで、これもよく皆様御承知のように、一九八〇年代になりますと、日本、アメリカを初めイギリス、北欧諸国において不動産、株式価格が上昇し、やがて不動産、株式価格が急落して、上昇して急落いたしますから、その結果、各国で多額の不良債権が発生するということになってしまったわけであります。自由化が行われますと金融機関の競争は激しくなりますから、その結果、預金を集めるためには高い金利を提供する、そうしますと、採算を維持するためにはハイリスク・ハイリターンの貸し出しをしなければならないということになりまして、その方向に進んでいったということも、このときバブルが各国で起こり、そしてその後不良債権を抱えることになった重要な原因であるというように考えております。  そういう意味で、日本のバブルとその崩壊は、日本に特有な現象であったわけではございません。世界は挙げて、その時期と程度には違いがありますが、ほんの少しの時間差を置いて、各国で同じようなバブルとバブルの崩壊に伴う不良債権の発生という状態が生じたわけでございます。  そのうち最もよく知られているのが、これも皆様既によく御承知のとおり、アメリカのSアンドLの問題、つまり貯蓄信用組合の多額の不良債権の問題でございます。このアメリカにおけるSアンドLの問題も、当初はSアンドLのシステム内で問題を解決しようとして努力をしたわけでございますが、すぐに資金が不足するという状態になり、預金保険機構に支援を求めるということになります。しかし、預金保険機構自体もまた資金不足に見舞われて、結局倒産という、預金保険機構自身が倒産するというような状態になって、そこで財政資金を投入するということになり、同時に、これを契機にいたしまして、預金保険機構の保険料を引き上げるという政策をとる、あるいは早期是正措置を導入するといったようないろいろな対策がこの時期に講じられるということになってまいったわけであります。  そのほかの国、先ほどアメリカ以外に北欧を挙げましたけれども、これは国情の違いから全く違った対策をとっております。御承知のように、北欧では大銀行の破綻が生じましたから、そこでシステミックリスクがほかに波及していくことを憂慮した当局は、資本市場に参入いたしまして株を買うという形で結局銀行を国有化する、最終的には銀行の国有化という形でこの危機を乗り切るというような政策をとっておるというように、国によってこれに対する対応策はいろいろでありました。しかし、日本の立場から最も参考になるのは、アメリカのSアンドLの処理策ではないかというように私どもは考えているわけでございます。  いろいろの対応策があるというように申しましたけれども、その根幹をなすものは何かと申しますと、言うまでもなく、第一には信用秩序の維持でございますし、第二に預金者を保護する、それをできるだけ早急に処理を済ませていくというのがこれらの国に共通に見られるところ。ややもたつきを見せたのはアメリカのSアンドLの処理で、それがおくれたということが、意外にアメリカにおける不良債権処理に手間取り、かつ途中の経過では大量の公的資金を導入しなければならないという事態を引き起こした原因であるというように考えられているわけでございます。  不良債権処理がおくれるとどういう問題が生ずるか。これももう皆様がよく御承知のことを申し上げることになると思いますが、まず第一に、日本の場合でいいますと、系統金融機関の預金者を含む国民に対して不安を与え、その結果預金のシフトが生じ始めるということが第一に問題点として挙げられるわけであります。そして、預金シフトが大規模に生ずるということになりますと、信用秩序に混乱が生じてくるという問題が起こります。  それから、先ほどの参考人の陳述の中にもございましたように、不良債権処理がおくれますと、利子一つをとってみても、毎日金利支払いはふえていくことになるというところにも典型的に見られますように、どんどん不良債権の劣化が進む、あるいは健全であったものが不良債権になってくるというようなことも起こってくるということがございます。そして、それは結局国民の負担にはね返ってくる、何らかの形で国民の負担にはね返ってくるということを考慮しておかなければならないというように考えるわけであります。  さらに、三番目でございましょうか、将来同種の問題が生じた場合の日本の処理能力に対する海外の不信感というものが、日本の処理がおくれているということになりますと、その不信感がだんだん増大してまいりまして、海外に対する日本の金融システムの信頼そのものが揺らぐという状態になってくるということが懸念されるわけであります。そこで、今申しましたように、早急にこれを処理していくことが必要であるというように考える次第でございます。  さて、その処理に当たって留意すべき点として、幾つかの点を申し上げたいと思います。  まず第一に、既に発生した不良債権処理という問題とそれから今後における不良債権発生を防止するという問題と、二つの問題が現在の日本では同時にその処理を迫られているという状態にあるわけでございますが、観念的にはこの二つのものを明確に区別することはできるわけでございますが、実際問題としては、既に発生してしまった不良債権処理をどのように行うかということが将来に非常に大きな影響を与えてくるということがあるわけでございます。  したがって、この問題の処理に当たっては、事後処理であっても将来の金融機関の行動に与える影響のことを考えまして、できるだけ厳正で、そして透明性の高い手段でこれを処理していくということが望まれるということになるわけでございます。  と同時に、将来の日本の金融がどうなるかということ、日本の金融システムそのものの基礎を弱めてしまうような処理策にならないように配慮しながらこの処理を進めていただきたいというのが私ども学者の希望でございまして、そのことを考慮しながらこの対案を考えていかなければならないというのが第一の点でございます。  第二は、従来、過保護行政というように呼ばれていましたように、金融機関はつぶさないという保護政策、非常に手厚い保護政策がとられてきました。そういうような政策に戻ってしまうということがありますと、ちょうど、かつての過保護政策がモラルハザードを引き起こして実は今度の不良債権問題を非常に複雑にしたと同じことを繰り返すことになりますから、大蔵省による過保護行政が再び繰り返されないということを念頭に置きながらこの処理策を考えていくということが必要ではないかというように考えるわけであります。  それから三番目には、先ほど申しました、できるだけ速やかにその処理を進めてもらいたいというのがこの場合留意しなければならない点であると私は考えております。  そこで、今度、今ここで議論されております各種の処理策を検討した場合、私はこれ以外にどのような選択の余地が実際にあり得るだろうか、しかも早急にやっていく、そういう処理策があり得るだろうかというように考えた場合、その選択の余地はほとんどないというように考えるわけでございまして、そういう意味で、私は今審議されている提案に賛成という立場を明確に申し上げておきたいというように思います。  なお、最後に一言、皆さんに御理解をいただくとともに、国民の皆様にも御理解をいただきたい点があるわけでございまして、それは何かといいますと、国民は現在公的資金の導入に対して極めて違和感を強く持っておるということは否定できない事実でございます。  ところで、政府は既に預金について、大口であるか小口であるかを問わず、一定の期間にわたってその預金を保護するということを保証するんだという約束をしているわけでございます。そういう約束をされますと何が起こるかといいますと、自分の預金は絶対に安全であるというように国民は皆考えるわけでございまして、そこで、自分の預金が安全であるならば金融制度が将来どうなるかということについては、思い煩う必要がなくなってくるわけでございます。  自分の預金は保護されているんだという、そういう前提に立ちますと、結局、差し当たりそういう状態であるならば、公的資金の導入が妥当であるかどうかだけを問題にすればいい。だれも負担は負いたくない、これはだれでも共通に抱く考え方だと思います。一方で保証がされていて、公的資金を導入するかしないかと聞かれれば、いや、それはしないで済むものならしないで済ませたい、こう考えるのは当たり前のことですね。つまり、その保証を与えることによって国民がみんながフリーライダーになる、ただ乗りができるという状態になってしまった。  そこで、本当に、将来の預金金融機関がどうなるかということについて、真剣な関心を必ずしも多くの国民は持たなくなってしまっているという状況が生じてしまったのですね。その結果、公的資金を入れるということに対して非常に激しい反発が起こっておるということではないか。これは大変不幸なことなんですね。現在も、さらに将来も、国民が、特に預金者が、その預金している金融機関本当に健全に運営されているかどうかということについての十分な関心を持ち、監視をしていただかなければ、どんなシステムも存続し得ないわけでございます。自由化が進んだ経済においては存続し得ないわけです。  なぜならば、現在の銀行制度は部分準備制という、要するに、預金に対して全額健全な国債のようなもので準備を持っているわけではないわけですね。大部分は貸し出しに充てている。そういう部分準備制である以上、国民の監視が弱まれば今回と同じような事態が繰り返される危険があるわけでありますから、国民の皆さんがそういう関心を現在も持ち、将来も持ち続けてもらうよう努めていくように先生方から説得していただかなければ、日本の金融はついにほかの国におくれてしまうという状態から脱却することは難しいんだということを、この際最後に申し上げておきたいというように思う次第でございます。  大変急ぎまして十分な説明になりませんでしたが、以上で私の陳述を終わります。(拍手)
  274. 高鳥修

    高鳥委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  275. 高鳥修

    高鳥委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。  なお、時間が若干延びておりますので、質疑はなるべく簡潔に、御説明も簡潔に御協力をお願いいたします。  岸田文雄君。
  276. 岸田文雄

    岸田委員 自由民主党、岸田文雄でございます。  本日は、高野参考人、清水参考人、館参考人、お三方の参考人におかれましては、本当にお忙しいところ当委員会に御出席いただきまして、貴重な御意見を聞かせていただきますことを心から感謝を申し上げます。ぜひ参考人の皆様方のお話をしっかりと聞かせていただきまして、しっかりと参考にさせていただきたいと存じます。どうかよろしくお願いいたします。  さて、まず最初に、高野参考人にひとつお伺いをさせていただきたいと存じます。  今、日本の国を挙げて住専問題につきまして議論が続いておるわけでありますけれども、私はこの住専問題につきまして、金融のモラルの立場から見まして、母体行の責任は重いと考えております。母体行みずから全額債権放棄が法定限度いっぱいである、そのためこれ以上の責任は負えないという趣旨の主張をされておられるわけでありますけれども、住専の母体行の場合、みずから住専の業務分野に進出して、そのことによって住専の経営破綻の原因をつくったとか、あるいは紹介融資等の存在も指摘されております。そういった諸点を考えますと、今後一層の責任ある対応が母体行側からされてしかるべきではないかと思ってはおります。  しかるに、一方で、農協系統金融機関が住専に貸し込んでいたということについて、農協系統金融機関にリスク管理の問題を初めとしまして問題があるという指摘があるのも事実であります。住専問題について、農協系統には住専の経営責任を問うことはできない、これはもちろんであります。しかし、幾らバブルの時代、資金が豊富であったとしましても、率直に申し上げまして、住専という一つの業態にこれほど大量の資金、五兆五千億に上ると言われております多額の貸し付けを行っていたということは、結果といたしまして金融機関としてのリスク管理の面で本当に十分だったのかという気がいたすわけでございます。この点につきましては、大原農林水産大臣も、当委員会におきます与謝野委員の質問に対しまして、「今となってみますと、やはり自省、自戒がなかったらうそであります。」という答弁をされております。  これら農協系統金融機関の判断の甘さあるいは責任につきましてどのようにお考えになっておられるか、まず高野参考人に見解をお伺いいたします。
  277. 高野博

    ○高野参考人 ただいま系統の責任といいますか、そういう問題について御指摘を受けたわけでございます。  今回の住専問題につきましては、系統といたしましても、住専及び母体行との話し合いに誠心誠意取り組んでまいりましたが、話し合いが不調に終わりまして、結果として政府の御決断を仰ぐことになったわけでございます。そして、国民の皆様にも御心配をおかけしましたことにつきましては、まことに心苦しく、遺憾に思う次第でございます。  ただ、御理解いただきたいと思いますのは、先生の御発言にもございましたが、住専の経営責任につきましては、その設立の経緯やあるいは経営への関与の経緯等から見まして、私どもは住専の経営に全く関与してこなかったということでございまして、その点で、住専破綻につきまして経営上の観点から責任を問われますとまことに苦しいわけでございまして、受け切れないという気持ちでございます。  先生も御指摘なさいましたように、農協系統が相当額を住専に貸し付けたことにつきましては、確かに金融貸し付けということで、私どもとすればいろいろと主張もしたいわけでございますが、しかし、そういうことを考慮いたしましても、なお結果的に見れば金融機関としての対応のあり方に十分じゃなかった面があったのではないかと、深く反省いたしております。  このような認識に立ちまして、これを機に農協系統の事業、組織のあり方について、先ほども申し上げましたが、抜本的な見直しを行いまして、大胆なリストラを進める考えでございます。そして、再びこのような事態が生じないよう、経営体質の強化に組織を挙げて取り組んでまいりたいと思っております。     〔委員長退席、尾身委員長代理着席〕
  278. 岸田文雄

    岸田委員 ありがとうございました。  続きまして、法的整理ということでひとつお伺いさせていただきたいと思います。  一部に、この住専の問題は、初めに財政資金を投入するのではなくして法的整理手続によるべきだという意見があるわけであります。本日の清水参考人も基本的にそういう御意見だと理解しております。  その法的整理ということでありますが、昨年九月から十一月にかけまして、この住専の問題、解決策を求めて当事者の間で話し合いが行われたわけであります。そうした中で、母体行の関係者の一部から、住専は法的整理を行うべきであるという意向が示されたわけであります。  それに対しまして系統の関係者の皆様方は、法的整理は住専の経営への関与とか責任問題を無視するものであり、また法的整理を行えば、債権者が多数存在することから、解決が長引き、金融システムや国民経済に大きな混乱をもたらすという反発をされ、なおかつ、それでもなお法的整理を強行するというのであるならば、系統としても、母体行による住専の実質支配ですとかあるいは競業避止義務違反等に基づく損害賠償請求を申し立てるというような強硬な意見もおっしゃられておったわけであります。  私は、このような経過を振り返ってみますと、もし万が一法的整理手続にゆだねるということになった場合に、お互いに多くの訴訟が提起され、大変な混乱が生じるのではないかという気がしてならないわけであります。加えて、先般衆議院の予算委員会で、農林中金の角道理事長が参考人として、この問題に関して系統は受けて立つというような発言をしたことを曲解して、農協系統も法的整理に賛成だという見当違いの宣伝をされておられる方もおられるわけであります。  私は、農協系統の関係者の皆様は決してそのようなことは考えておられない、法的整理に対して肯定的な考えは持っておられないと思っておりますが、この点につきまして、まず高野参考人に見解をお伺いできますでしょうか。
  279. 高野博

    ○高野参考人 法的整理の問題でございますが、法的整理につきましては、私どもは反対でございます。  その理由につきまして、結論を先に申し上げますと、この方法では、一つは、住専の破綻に最大の責任がある母体行の負担が責任に応じたものにならないのではないか、そういうことを懸念するわけでございます。二つ目は、いわば貸し手でございます私どもにさらに過酷な負担が強いられるおそれがあるのではないかと考えるわけでございます。三番目は、解決を長期化させまして、金融システムの混乱に結びつくのではないかと考えるからでございます。  現在、具体的には会社更生法の適用による対応が議論されているように理解しておりますが、私どもの理解では、この方法の前提は、会社を更生することが社会的にも有用でありまして、かつ、多くの債権者がそのことに利益を見出し、協力の姿勢があるということが前提ではないかと思うわけでございます。このとき初めて管財人を中心に更生計画がまとめられまして、事業がスタートするのだと思うわけでございます。  今回の住専問題について経過を振り返ってみますと、第一に、母体行は既に個人向けの住宅融資を実施しておりまして、住専事業の継続を必ずしも必要としていないのではないかと私どもとしては感じるわけでございます。  第二に、過去二回にわたる再建計画で、母体行は責任を持って再建するということで、書類も出しまして、私ども初め関係者に協力を求めてきたわけでございますが、昨年一転いたしまして、住専は整理、清算するという姿勢になったわけでございます。清算のときは一般債権者と同じ責任しか持たない、具体的には、ロスは債権額に応じて負担してくれというのが基本的な姿勢でございまして、再建のときには責任を持ちます、整理のときにはそういう責任は持てないというような形で、経過を見ますと母体行の態度は移り変わってきているわけでございます。  こうした経過の中で、会社更生法を適用した場合に更生計画がどのような形で立てられるのかということを考えてみますと、母体行のおっしゃるとおりの計画ならば立つと思いますが、私どもの主張する母体行責任を基本とした公平負担といいますか、言い方を変えますと、実質的公平負担という表現もあるように思いますが、そういうものを基本とした更生計画が果たして合意が可能なのか。私どもの判断では不可能ではないのか、不可能に近いのではないのかと考えるわけでございます。  そうなりますと、一たん元本並びに利子の支払いがすべて凍結されます。その上で、それ以降住専の管財人による債権の回収とその配分、これが行われていくわけですが、そのときに、実質的な公平負担の実現を目指して簡単に合意ができればよろしいのですが、できない場合には、一つ一つ私どもは損害賠償請求等の訴訟を起こして解決を目指していかざるを得なくなるのではないかと考えるわけでございます。  そうしますと、当事者は住専だけで七社ありますし、母体行は約百八十社ございます。私の方も九十余り債権者になっております。ここが入り乱れて訴訟を起こした場合、事態は錯綜します。解決には長期間を必要とするのではないかと考えるわけでございます。そしてまた、このこと自体、莫大な費用がかかりますし、大きな社会的なロスにつながると考えておるわけでございます。  住専処理に係る責任及び損失負担がこういう形でなかなか早く確定しないで、しかも次々と訴訟が起こっていく、そういう状態が長期間継続いたしますと、社会的に信用を売り物にしているのが金融事業でございますので、金融事業にとりましては致命的なダメージになると考えるわけでございます。  さらに、金融の取引は網の目のように重なり合っておりますので、現在の金融取引を考えてみますと、一部の金融機関の破綻、混乱は連鎖的に広がっていくものと私どもとしては考えざるを得ないわけでございます。したがいまして、関係者の合意のもと、政府の住専処理策が決定されましたので、これが現時点では最も現実的な解決策だと考えているわけでございます。  それから次に、法的整理につきまして、系統側から受けて立つ旨の答弁がなされているとの御指摘でございますが、これは法的整理に賛成の立場から行ったものではございません。法的整理には反対であります。ただ、母体行等が法的整理論をたびたび発言いたしまして、私どもに対して譲歩を迫るといいますか、譲歩を求めるといいますか、そういう局面が多々あるわけでございますが、その場合に、私どもは訴訟も何も起こさずに母体行の言いなりになる、そういうことはございませんよ、そういうことを決意として表明したということでございますので、御理解いただきたいと思います。
  280. 岸田文雄

    岸田委員 ありがとうございました。  続きまして、同じく法的整理につきまして、清水参考人にひとつお伺いさせていただきたいと存じます。  清水参考人におかれましては、会社更生法等を中心として法的整理を行うべきだという御主張だと理解いたしますが、私も、今高野参考人のお話の中にもございましたように、例えばその会社更生法を適用する場合、裁判所の開始原因の決定の部分において、事業の維持あるいは更生の可能性についてどのような判断がされるのかとか、あるいは計画案の策定、どんな案ができ上がるのだろうか、それから関係者の合意がその案に対して得られるのだろうか、そういったことを考えると、いろいろ疑問に思うところもあるわけです。  加えて、先ほど清水参考人もおっしゃっておられましたけれども、住専そのものから優秀な社員がどんどん逃げていくという中で会社更生法を適用すること、これは本当に現実的な選択なんだろうかという気がいたしております。  しかし、これは実現可能性に対して、清水参考人は大丈夫だとおっしゃるのでありましょうし、私は疑問を持っているということでありまして、きょうは時間がありませんので、その部分に対する議論はちょっと置いておきまして、どういった処理策を選択するかという場合、実現可能性という部分ももちろんしっかり考えなければいけないわけでありますが、加えてコストあるいは時間、こういったものがどれだけかかるかということも考えなければいけないと思うわけです。公的資金を初めとするコスト、あるいはその処理に要する時間、これがどの処理策においてどれだけかかるのか、これは重大なポイントとして考えなければいけないと思うわけなんです。  そうしますと、先ほど清水参考人お話しの中で、預金者保護あるいは金融システムの維持、これは絶対やらなければいけない、その点については異存がないとおっしゃった上で、五兆円かかっても十兆円かかってもこれはやるべきだというお話をされたわけでありますが、清水参考人の案において、一体どんな経過を経てその五兆円かかっても十兆円かかっても、そもそもどれだけコストがかかるのか、そしてどういった経過を経てそんな多額の資金が導入されることになるのか。その点についてお考えをまずお聞かせいただけますでしょうか。  それから、時間ということに関しまして、先ほど清水参考人、早期処理の必要はあるとおっしゃったわけであります。この早期処理の必要性ということを考えた場合に、今法案として提出されておりますこの住専処理策と清水参考人のお考えの処理策、この二つを比較して、どのようなその処理までの時間的な違いがあるのか。コストと時間、この二点につきまして、お話を聞かせていただけますでしょうか。
  281. 清水直

    ○清水参考人 ただいまの御質問にお答えいたします。  まず、コストということをおっしゃったのでございますが、会社更生の手続によりますと最もコストがかからないということは、もう既にいろいろな事例で示されているのでございまして、私どもに言わせれば、今回の住専処理法案というのは余りにも金がかかり過ぎるという感じがまず第一にいたします。  そんなにしなくても、私どもは、この四月に銀行研修社というところから「検証 住専」という本を出しました。総合住金の方と私どもの共著でございますが、その中で私は、十五カ年間による弁済計画のシミュレーションを発表しております。これによりますと、一・五%の金利をつけて債権の弁済ができる。もちろん母体行は全額放棄すると言っていらっしゃいます。ですから、また一般行は四十何%を放棄するとおっしゃっているので、それを前提としまして、六千八百五十億円を投入しないでやる方法を実際にシミュレーションで発表しております。それは結局、基本的にこの住専という会社を直ちにたたんでしまうということをしないで、そして再建する過程で、その中で実際に正常債権二兆五千億を、有効にこれを活用することによって弁済財源ができるということになっているのでございまして、その意味におきまして、この住専処理に関しまして、余りにも短絡的に清算をするという方向ではなくていけば、六千八百五十億円の投入なくして十分いけるのではないかということを申し上げているのでございます。  そこで、先ほど来おっしゃっておられます、なぜこの住専についてそのような形の手続がとられないのかということにつきましては、私どもといたしましては甚だ残念でございまして、この会社更生の手続によれば、そのような資金を投入しなくても十分に弁済ができるということでございます。
  282. 岸田文雄

    岸田委員 時間の話はいかがでしょうか。  要は、処理に要する時間的な問題につきまして、その両案の違い、その点についていかがでございましょうか。
  283. 清水直

    ○清水参考人 時間につきましては、会社更生手続による方がはるかに早いと思います。  まず第一に、管財人が入りますことによって、直ちにこれは責任の追及、取り立てに着手いたします。私ども、現在、三和建物という会社の管財人をして、ちょうど二年になりますが、取り立て、回収はほぼある程度の段階まで来ております。責任追及も大分進んでいるところでございます。そういった状況を考えますというと、この住専処理法案でいくよりか会社更生手続でいった方が着手が早い。この法案の審議で既にもう小一年たとうとしているのでございます。もし去年の十月で会社更生法を適用していれば、保全管理人、管財人によって責任の追及も債権の取り立てもできておりますから、時間は非常に短い期間でそれぞれの効果を発揮することができます。  更生会社というのは、更生計画認可までの期間が忙しいだけで、認可になったら、後はそのとおり進むだけでございます。認可まではせいぜい二、三年でございます。後は機械的に進むといいましょうか、経済的な行為が行われるだけという段階になるのでございます。  その意味におきまして、私は、今回の住専処理法案よりかはるかに会社更生手続による方が時間的に早いと思います。    〔尾身委員長代理退席、委員長着席〕
  284. 岸田文雄

    岸田委員 今コストあるいは時間につきまして清水参考人のお話を聞かせていただいたのですが、例えばそのコストの部分に関しましても、どうもお話を伺っても、本当にそのとおりいくのかなという気がいたします。それから時間の問題につきましても、確かにその処理までの時間、短く済むと清水参考人はおっしゃるわけですが、一歩譲って、その処理までの時間が短いとしたとしましても、要するに先の見通しのある長期間と、短期間であっても全く見通しのない期間と、こういった二つの状況、時間的な状況を考えた場合、生きている経済を相手にした場合に、そのどちらが悪影響が大きいかという部分を考えますと、この清水参考人処理策で進んだとした場合に、生きた経済にどういった影響があるのか、本当にそれが期待されるような効果であるのか、この辺はちょっと疑問に思っておるところなんです。  そこで、館参考人にひとつお伺いさせていただきたいと思います。  この時間という部分に関しまして、先ほど館参考人早期解決の必要性を強調されたわけであります。館参考人のお考えとしまして、今回の住専の処理に当たって、今政府が法案として提出しておるスキームと法的整理を行った場合との違い、その時間的な影響、そしてそれによって経済がどういう影響を受けるのか。見通しのある長期間、見通しのない短期間、こういった時間に対する考え方、そういったことも含めまして、館参考人の考え方をお聞かせいただけますでしょうか。
  285. 館龍一郎

    ○館参考人 お答えいたします。  ある意味では、本当の専門家でございませんので、専門家としてお答えすることはできないのですが、私が理解する限りでは、住専問題はそもそも住専をつぶすという前提に立って処理が行われているわけでございますし、更生法そのものは更生を目的としているというのが基本であったわけでございますから、したがって、そこでの了解を得ていくような形で、まず認められるかどうかというところから始まって、いろいろな問題の処理ということが入ってくるわけでございます。  そういう意味で、しかも、関係する人々が非常に多いということを考えますと、通常の場合のように、仮に受け入れられたとしても、順調に短い期間に処理が進んでいくというような性質のものではないというように思うのですね。相当の時間を必要とするということになり、その間、負担がどの程度であり、分担がどの程度であるかということがわからないという状態が続いていくというようなことは、到底私としてはそういう方法の方がいいという結論には達し得ないというのが、私の所感でございます。
  286. 岸田文雄

    岸田委員 ありがとうございました。  続きまして、高野参考人にお伺いいたします。  去る五月二日に行われました証人喚問に際しまして、農林中金角道理事長は、五千三百億の積算根拠は承知していない、説明は受けなかった旨の発言をしたと報道されました。五千三百億を負担する当事者がその積算根拠を知らないのだから政治的に決められた額だとか、やはりつかみ金だったとか、そういった批判がされたわけであります。もしこのようなことが本当であればゆゆしいことでありますが、五千三百億の負担について、経緯及び認識についてお伺いさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
  287. 高野博

    ○高野参考人 お答え申し上げます。  まず初めに、今回、どういう立場から系統の支出といいますか負担といいますか、それが求められたかということでございますが、今回の政府の処理案では、従来系統が主張しておりました母体行責任を御理解いただきました上で、金融システムの安定を確保し、内外の信頼を回復するために、その一端を担う系統に一定の協力といいますか、具体的には資金贈与が求められたと理解しているわけでございます。系統の五千三百億円につきましても、そういった位置づけといいますか性格づけの中で持ってもらいたいということになったと思うわけでございます。  昨年十二月、政府において、当事者同士の話がつかない中で御判断いただいたものでございます。その時点では、算出根拠につきまして私どもは十分承知しておりませんでしたが、その後、説明を伺っております。  詳細は経済局長が御答弁なさっておりますが、要約いたしますと、利益金を充当し、余裕金を取りまし、それらを行って支出していくといたしましても相当数の信連が赤字に転落する、そういう中で、しかし系統信用事業の基盤は守りつつ、この基盤まで壊してしまうことはできない、そこは守りつつ、負担できるぎりぎりの水準、そういうものとして協力が要請されたものと考えているわけでございます。  今回の資金贈与の協力は、系統事業の経営実態からすれば極めて厳しいものでありますが、系統としましては、今言ったような趣旨から、政府の御決断を真剣に受けとめまして受け入れることにしたものでございます。現実の推移を見ましても、農林中金が過去に経験したことのない大幅な赤字に転落することになるわけでございまして、それを初めといたしまして、信連も相当数が赤字決算を余儀なくされる。五千三百億円の資金贈与が、実際、系統にとりまして大変厳しいものになっておる、現実にそうなっておるということを御理解いただきたいと思います。  ちなみに、御存じと思いますが、平成六年の経常利益は千九百億円が信連と中金の合計額でございます。これに対しまして倍近い四千億円を負担するということでございますので、その厳しさのほどを御理解いただきたいと思うわけでございます。  以上でございます。
  288. 岸田文雄

    岸田委員 ありがとうございました。  続きまして、本年三月末に住専七社から農協系統に対し、本年一月以降の住専貸付金にかかわる利息の支払いをやめる旨の通知があったと聞いております。農協系統の貸付金、全体五兆五千億ということからしますと、一月−三月の利息は約六百億だということが推定されるわけであります。  この問題に関しまして、五月二日の角道農林中金理事長の証人喚問におきまして、利息分については農林中金としては本年三月期決算に収益として計上しない方針であると証言しておられました。これを受けて農協系統としては、一月から三月の利息の受け取りはもはやあきらめたのではないかというような報道がされておりましたが、農協系統の対応がどうなっているのか、高野参考人に伺わせていただきます。
  289. 高野博

    ○高野参考人 御指摘を受けましたように、住専各社からことしの三月、一−三月分の利子の支払いにつきましてこれを停止したいという要請を受けております。利払いをしないということではない、停止したい、こういうお話でございました。現在利息は受け取っておりません。  私どもの考えは、利息につきましては住専との個別の融資契約に基づいて支払われるものでございますので、その融資契約に変更がない以上、これは当然住専が経営を続けている間は支払われるべきものだと考えております。したがいまして、系統の各団体は支払い請求を行っておりまして、その折衝の過程で、この利払いの性格が、今申し上げましたようにそういう性格のものだということにつきましては、住専七社も認識しているものと理解しているわけでございます。  これも御指摘ありましたが、一−三月期で約六百億円となりますが、この決算手続上の処理につきましては、確かに農林中金は未収計上いたしておりませんし、その他の信連でも同様のところがあろうかと思います。その点につきましては、経営の安全性といいますか保守性といいますか、そういう観点から、なかなかこの利払いについていろいろな情勢がございますので、その判断に基づいて各団体で処理しているのではないかと思うわけでございますが、しかし、今申し上げましたような考えで、今後折衝する中で支払いを受けていこうと私どもは考えております。  以上でございます。
  290. 岸田文雄

    岸田委員 ありがとうございました。  それでは、当委員会に三人の参考人皆さん来ていただきまして、最初にこの住専問題におきます系統金融機関の判断の甘さあるいは責任についてお伺いし、その後法的整理についてお伺いさせていただき、さらには系統の資金贈与についてお伺いをさせていただき、そしてさらには、今利払い問題につきましてお伺いさせていただきました。そういった諸問題について参考人の皆様方からお答えをいただいたことを踏まえて、次に聞かせていただきたいと存じますのは、各方面から、国家財政への新たな寄与という観点から追加負担問題を関係金融機関は真剣に検討すべきだという声が出ている、この問題についてであります。  現在、母体行は、先ほども申しました、全額債権放棄が法定限度いっぱいなので、これ以上の追加負担は株主代表訴訟が提起されるおそれがあり、できない旨主張しておりますが、住専問題への責任の重さから見てかかる考え方が許されるのだろうかという気はいたします。  すなわち母体行は、みずから住専の業務分野に進出し、また経営破綻の原因をつくったほか、紹介融資等による責任も取り上げられておるわけですから、追加負担問題におきましても主体的に対応するべきだ、取り組むべきだと思うわけであります。  その点につきましては、先ほど橋本全銀協会長参考人としてお越しいただきました、そのときに、従来よりは踏み込んだ発言だと理解いたしますが、いい案が見つかれば検討する可能性が生まれるというふうにおっしゃったわけであります。一段と踏み込んだ発言をされ、この発言にぜひ期待をかけたいと思うわけであります。  そういった母体行側の動きを頭に入れた上で、農協系統については、先ほども申し上げましたように、住専の経営に参画していないわけですから、さらには経営破綻の原因をつくったというようなこともないわけでありますから、その点は勘案しなければいけない。その点は十分認識しておりますが、関係金融機関の一員とした場合、今回政府が提出しているスキームが成立しなかった場合、先ほど高野参考人もおっしゃっておられました、農協系統にとりましても、それから日本経済にとりましても大きな影響が発生してしまう、大打撃を与えてしまうという認識を先ほど聞かせていただいたわけであります。  そういった認識に立って、そして今回のスキーム、関係者の合意を形成して国民の理解を得るということのために、もちろん他の関係者も一層の努力をするという前提のもとに、何らか系統の関係者の皆様方としても新たな措置、負担を考えることができないだろうか、検討することができないだろうか、そのように思うわけですが、それにつきましていかがでございましょうか。
  291. 高野博

    ○高野参考人 追加負担の問題につきましては、国会審議の経過も踏まえまして久保大蔵大臣が母体行の負担を再三発言されておられるわけでございまして、また、最近各所でそういう議論が出ておるということにつきましては、報道等を通じて存じておるところでございます。  住専処理の負担問題につきましては、系統といたしましては、先ほども申し上げましたが、破綻に至る経過を踏まえまして、責任の度合いに応じた負担がなさるべきであると考えておりまして、その立場から、母体行が最大限の負担を負うべきであると一貫して主張してきたわけでございます。今もその考えは同じでございます。  ところで、現在の住専処理策につきましては、利害が錯綜する中、昨年関係者間で必死になっていろいろと議論を重ねました結果、それを踏まえて政府において決断された内容でございます。したがいまして、この追加については容易ではないと判断しておるわけでございます。  特に私ども、農協法で定められました非営利的な協同組合組織でございまして、一般企業と同じように収益を計上したりあるいはそれを留保するというようなことは、組織としてそういう組織でございませんでして、そういう対応は今までしてきておらないわけでございます。そこら辺からも、この追加につきまして大変厳しいということについては御理解いただきたいと思うわけでございます。  特に、本日の情勢について今お聞かせいただいたわけでございますが、私どもは、昨日までの情報で考えておりました。その中ではいろいろと、再三母体行の追加負担が発言されておりますが、母体行は、低金利政策のもとで膨大な業務純益を上げておられますが、一切追加に応じる姿勢がないというぐあいに私どもには感じられたわけでございます。そういう状況の中で、このテーマを農協組織として議題にのせることはとてもできないという状況でございます。系統組織といたしましては、五月十六日に全中の理事会で、系統の追加負担に反対し、住専処理策の早期決定をお願いしていく決議をしているという事情でございます。  ただいま、本日の午前中の会議で橋本さんが、よい案があれば検討の可能性があるといいますか、生まれるといいますか、そういう御発言をなさったということをお知らせいただいたわけでございますが、私ども直接話の内容を十分確認できておらないわけでございまして、このお話の中身が追加負担に応じるという意味を含むのか、あるいは単に検討するということを表明したのか、あるいは検討の可能性に触れただけなのか、よく判断がつかないわけでございます。  そういうことでございますので、この場で私の方から系統の今後の対応について申し上げるということはできかねますので、後日誠意をもちまして対応させていただきたいと思います。
  292. 岸田文雄

    岸田委員 ありがとうございました。  もちろん、今この場で高野参考人に系統の皆様方の方針を決めていただこうという気はさらさらないわけであります。今お伝えしたように、母体行側も一歩踏み込んだ発言をされております。ぜひ何らかの対策、対応がされることを期待するわけでありますから、系統の皆様方におかれましても、この新たな状況を踏まえていただきまして、ぜひこの状況を持ち帰ってしっかり検討していただいて、前向きに、このスキームが維持されることによって系統の皆様方そして日本経済全体に大きな影響がある、公的な役割を果たさなければいけない系統の皆様方のお立場もぜひ考えていただき、このスキームをぜひ成立させるという見地から積極的な御対応をお願いしたいと存じます。どうかよろしくお願いいたします。  そしてもう一つ、高野参考人にお伺いさせていただきたいと存じます。農協系統機関の再編整備のお話でございます。先ほど少し触れておられました。  再編の基本的パターンは、従来の市町村、県、全国、三段階方式を平成十二年で組織二段階方式に改めるということによって、機能の強化、効率化、こういったものを図るということであると理解しております。この取り組みにつきましてちょっとお伺いしたいと存じます。  農協系統は今日いかなる役割を果たすべきか、それからまた、今回盛んに指摘されておりますリスク管理、審査能力の部分に関しましてどう向上を図っていくのか、そのあたりにつきましてお話を聞かせていただけますでしょうか。
  293. 高野博

    ○高野参考人 農協組織の整備といいますかリストラといいますか、これにつきましては、先生方からも再三御指摘いただいておりますが、農業、農村をめぐる情勢そのものが大変大きく変化してきておりまして、また金融事業につきましても、現在議論されておりますように大変厳しいといいますか、新しい、厳しい情勢に立ち至ってきているわけでございまして、そういう中で農協の将来像を見据えて事業、組織の改革をしていかなければならないと考えているわけでございます。  そこで、先ほども幾つか御紹介いたしましたが、私どもが考えております内容につきましては、一つは、これは先ほど申し上げましたが、県連と全国連を合併して二段階にしていきながら、コストを削減し、経営体力をつけていくということが一つでございます。  しかし、そういうぐあいに県連と全国連を合併します場合にも、単協の数が非常に多いと、これが果たして効率化になるのかということがございますので、JAの数そのものをやはり各県に幾つかというぐあいに集約して、それが一つの連合会と結びついていくというぐあいに、横と縦の動きが一緒につながっていかなければならない。しかも、それは金融事業だけじゃございませんでして、経済事業も共済事業もそういう方向に向かっていかなければならない。JAは一つでございまして全部やっておりますので、そういうことでございまして、その点を踏まえて取り組んできておりますし、今後も加速したいということでございます。  で、経営の合理化でございますが、これは、よく紹介されておりますが、二〇〇〇年に向けまして労働生産性を三〇%向上させていきたいと考えております。そして、雇用の問題につきましても、現在おられる方を最優先して引き続きお働きいただくということは当然でございますが、採用につきましては、採用調整を行いながら全体としての経営の効率化を図っていくという考えでございます。  それから、経営の健全性につきましては、これは今回の法律でも、金融制度調査会の御指摘を受けまして、例えば外部監査の導入とか、いろいろと健全性の確保のための措置が講じられるわけでございまして、私どもも一般の金融機関と同様に、それに沿った対応をしていくということで、法律で決められましたものはすぐ行いますし、今後検討すべきものは早急に検討していくという考えでございます。  そういう中で、系統事業の経営の体質強化ということを図っていきまして農家の負託にこたえていきたいと考えておりますので、先生方の御指導も今後また引き続きよろしく申し上げたいと思っております。
  294. 岸田文雄

    岸田委員 ありがとうございました。そういった努力をぜひ引き続きましてわかりやすい形で進めていただきますことを、心からお願い申し上げる次第であります。  それにつけましても、そういった前向きな努力をしていただくためにも、その前提となりますのは今論議されておりますこの住専の問題、これを処理しなければいけないわけであります。この問題を処理して乗り越えた上で、今おっしゃったような将来があると理解いたします。ですから、先ほどもお願い申し上げました、このスキーム、処理策が成立するために、ぜひ系統の皆様方もこの重大性を勘案していただきまして、より一層の努力、検討していただきますことを心からお願い申し上げまして、本日の質問を終わらせていただきたいと存じます。  本当に、参考人の皆様、本日はありがとうございました。
  295. 高鳥修

    高鳥委員長 これにて岸田文雄君の質疑は終了いたしました。  次に、平田米男君。
  296. 平田米男

    ○平田委員 新進党の平田米男でございます。御三方の参考人に対しまして、心から御礼を申し上げます。  今、系統のお話が随分続きましたので、まず系統の関係から先にお伺いをさせていただきたいというふうに思います。  高野参考人、また館参考人にお伺いをしたいわけでございます。  まず高野参考人の方からでございますけれども、先ほど、五千三百億の贈与はぎりぎりの負担だ、こういうふうにおっしゃいました。経営責任がない、母体行には経営責任があるんだ、こういう御趣旨の御発言があったわけでありますが、一般行には経営責任があるのでしょうか。私は、一般行には経営責任は、系統と同様に、ないと考えております。  しかるに、今回の政府・与党のスキームは、その負担の率が著しく違うわけでありまして、系統は一割を切っております。しかるに、一般行は五割近い、大変高い負担をさせられているわけであります。私は、高野参考人のような御主張ならば、系統も一般行もともに平等に負担をすべきなのではないか、こういうふうに思うのですが、その点どのようにお考えでございましょうか。  それから、ぎりぎりの負担だというふうにおっしゃったわけでございますけれども、しかし、結局六千八百五十億円を第一次損失として一般国民に御迷惑をおかけをしてしまう、しかも第二次損失は少なくとも六千億円の負担を国民におかけをする、場合によるとそれが一兆円を超えるかもしれない、こういう事態に立ち至ってしまった、この政府・与党案、このスキームをあなた方は了とされた、賛成だとおっしゃるわけでありますが、国民に対してどのようなお気持ちなんでしょうか。  私は、深い責任、強い、重い重い責任を感じられなければおかしい、こう思うわけであります。もしお感じになっているとするならば、どのような責任のとり方を系統の金融機関皆さんはお考えなんでしょうか。それをぜひともお聞かせをいただきたい、このように思います。  それで、もう一点でございますが、系統金融機関がやっておられます住専というのがございます。協同住宅ローンでございます。先ほど高野参考人は、もう住専の存在意義はないのではないか、こういうような御趣旨の御発言がございました。であるならば、この協同住宅ローンももう要らないんですか。すなわち、もうつぶすおつもりでございますか。この辺はどのようなお考えなのか、お聞かせいただけますでしょうか。  館参考人につきましても、同様に、もうこのスキームは選択の余地がない、もうこれしかないんだというふうにおっしゃいました。そういたしますと、八社ありますうちの七社の住専は全部解散、清算されるわけでありまして、消滅をいたします。ならば、唯一残りますこの協同住宅ローンはいかがすべきなんでしょうか。それについてのお考えをお述べいただきたいと思います。
  297. 高野博

    ○高野参考人 負担の問題につきまして一般行の問題が御指摘されたわけでございますが、先生も御存じのとおり、銀行につきましては、あるときは母体行でございまして、またあるときには一般行という形で住専の経営に関与しているわけでございます。それからまた、国会での議論の中でも明らかになりましたように、もちろん銀行によって差はございますが、紹介融資等々を行いまして、一般行もそういうものを盛んに行っておるわけでございます。そういうものがこの不良債権に結びついておるというようなことでございまして、そういう事情を考慮いたしまして今回のような処理策ができたということに理解しておるわけでございます。  それから、政府案について、国民に御迷惑をおかけしているという発言についてどのような感じを持っておるのかということでございますが、先ほども申し上げましたけれども、住専問題が起きましたのは、普通の一般の不動産事業に対するお金の貸し借りというようなことと少し違いまして、これはもう再三議論されておりますが、国の全体としての金融政策の中であるいは住宅政策の中で住専がそれなりに位置づけられまして、そういう中で母体行が関与し、しかも我々もお金を貸すというような形で、一つ一つそれなりの経過といいますか、そういうものを持ってここまで来たわけでございます。  そういう中で、この破綻をどういうぐあいに解決するかということにつきまして、もちろん母体行、我々、住専経営者、農水省も大蔵省も支援する形で、かなりの期間にわたりまして大変な議論をいたしまして、現時点でこの解決しかないであろうというところで現在の処理案がつくられておりますので、そういう点で、私どもは、結果としていろいろ御迷惑をかけるということについて深く反省するわけでございますが、この処理案が現実性のある最善の策というぐあいに考えて、この処理案で住専問題の処理をお願いしたいと考えておるわけでございます。  それから最後に、住専は要らないのかという御質問でございますが、私が先ほど申し上げましたのは、七社を会社更生法で更生じていこうという考えはあるかもしれませんが、母体行は、一次、二次と住専を再建しようと、いわば更生しようとなさったのです。なさって、それはもうやめたとほうり出されたんです。その現時点で更生計画ができますでしょうかということを申し上げたわけでございまして、母体行が住専を必要としていないと感じているんじゃないでしょうかということを申し上げたわけでございまして、私どもは、住専は引き続き経営していくという考えでございます。
  298. 館龍一郎

    ○館参考人 お答えいたします。  まず、二つ御質問があったと思いますが、一般行とそれから母体行との間になぜ違いがあって、そしてその一般行と……(平田委員「いや、協同住宅ローンだけで結構ですから」と呼ぶ)ええ、協同住宅ローンとの間に違いがあるのかという、そういう御質問だったと思うんですね。  それで、一般行と申しましても、一般行は、預金保険機構に加入する形で相互に援助するという精神に立って同一の預金保険機構に加盟しているわけでございますね。そういう意味では、一般行は、系統金融機関と違った性質を持って、そういう立場に立って負担をするということになったんだ、こういうように思っております。  それで、その点が性質が違う。結局、系統と……(平田委員「短くしていただけますか、時間がありませんから」と呼ぶ)はい、そうですが。それが第一です。  それから、二番目に、農業系統については、これはこの機会に農業系統の金融のあり方全体について見直しをすべきであるというように私は考えております。
  299. 平田米男

    ○平田委員 高野参考人にお伺いいたしますけれども、まず、六千八百五十億円あるいはそれ以上の負担を国民におかけすることについての責任はどう感じておいでになるかということについてはお答えになりませんでした。もういろいろな議論をしてこうなったんだからという、そういうお考えなんでしょうか。こうなったとしても、このような結果を招来したことによって国民にこれだけの負担をかけてしまったという責任、金融機関経営者としての責任、これはぜひともお感じいただかなければおかしいと思うんです。それについてはお感じになっていないのかどうか。お感じになっていないというのならばないで結構でございますが、お答えいただけますか。
  300. 高野博

    ○高野参考人 先ほどから申し上げておりますが、問題は、住専の経営が破綻したということでございます。その破綻について、どういう経過の中でだれがどんなふうにかかわってきて責任があるのかということを考えながら負担については整理されるべきだということを再三申し上げているわけでございます。そこを考えますと、住専の経営者の責任、これはもう説明するまでもないと思います。それから、母体行の責任につきましても、先ほどるる申し上げましたが、そういうことだと思います。  それから、今申し上げましたように、住専の問題は、全体的な経済政策、住宅政策、資金政策、あるいは住専そのものに対する国の政策、そういう政策の流れの中で我々関係者が事業を展開する中で起こったということでございまして、そういう点も総合的に勘案する中で、もちろん私どもも貸し手として、先ほどから貸し手の責任の問題については御説明申し上げましたが、それなりに、そういう立場にあるわけでございますので、その関係者が徹底的にお互いのそういう関与の仕方等々を議論して、現時点でこの解決策というところに来たわけでございますので、そういうことでこの問題については整理されるべきというのが私どもの考え方でございます。
  301. 平田米男

    ○平田委員 責任はお感じにならないということならやむを得ませんが、私ども国民の常識からいったら、自分たちの営業活動によってこのような結果を招来し、それを国民に持ってくるというのは本来許しがたいことでありまして、どのような理由をつけようと、私は、明確に謝罪すべきだ、このように思いますが、これ以上水かけ論をやっても仕方がありませんので質問を移りたいと思います。  先ほど、一般行とそれから系統の負担について差があることについては、一般行は経営に関与していたんだと、こういうふうにおっしゃいました。  しかし、経営に関与していたといっても、それは自分のところの、母体行になっているのとは違うわけでありますから、同じことを言えば、系統の金融機関も協同住宅ローンで経営に参画しているわけです。それから、一般行の中には、全く経営に参画していない、そういう金融機関もあります。しかし、全部一律に系統の三倍、四倍の負担を負わされてしまっている。これについては余りにも不合理であって、今のような御説明はだれも納得できることではないのではないかというふうに思いますが、もう一度その点、確認をしたいと思います。
  302. 高野博

    ○高野参考人 私は、先ほどから、私どもの負担の問題について、私どもが理解しております内容をるる説明したわけでございまして、一般行の負担の問題につきまして、私どもが、何が妥当であるとか妥当でないとか、そういうことを要請したことも要求したこともございませんわけでございまして、その点は御理解いただきたいと思います。  それから、先ほどの御発言で、六千八百五十億はあたかも、全部農協系が負担すべきものを政府が負担したのでその責任を感じなさいというような御発言と受け取られたわけでございますが、それは全く私どもと考えが違いまして、私どもは、母体行が負担すべきものを負担しないためにこういう問題が起きているという考えでございますので、御理解いただきたいと思います。
  303. 平田米男

    ○平田委員 大変、国民に対してそのような態度をおとりになっていることに対しては、あいた口がふさがらないという思いがいたします。おたくのようなお考え方であったとしても、結果としてこのような問題を、母体行ときちっと話ができなくて国民の方へしりを持ってきたということについては、だれでもやはり申しわけないという気持ちになるのは当たり前ではないかと思いますが、そういう考えではないということがよくわかりましたので、質問を移りたいと思います。  清水直参考人にお伺いさせていただきたいと思いますが、これまで弁護士として三十四年間、主に会社の再建あるいは清算、それに従事をしておいでになられて、二百数十社を超える会社に関与しておいでになられたということでございますが、業種としてはどんな業種をやってこられたのか、また債権者数、そういうものの規模ですね、一番大きなものはどの程度のものなのか、簡単に御説明いただければと思います。
  304. 清水直

    ○清水参考人 私どもがこれまでに関与してまいりました企業の再建の業種はあらゆる分野に属しております。造船所それから海運会社、建設会社、リース会社あるいはまた紡績会社、そしてまた、中にはバルブメーカーとか、さらに北海道テレビ放送に見ます岩澤グループ全体に関する問題でございます。これは、タクシー会社もございますし、放送事業もございます。その意味におきまして、あらゆる業種に関与してきたということが言えるのではないかと思うのでございます。それらの業種に関与して今日まで参りましたので、二百数十社に達したというところでございます。  債権者の数におきましては、特に一番大きかったのは、興人と思います。昭和五十年に行われました、紡績及び医薬品それから発酵事業等をやっております興人が一番大きかったと思いますが、これは従業員の数も何千人でございますし、債権者の数も何千人になるなどという状況でございます。関連会社も、子会社、孫会社でも三十五社いるという状況でございます。  また、岩澤グループにつきましては、これは北海道テレビ放送を初めとしまして、タクシー会社が十数社、それからまた札幌トヨペット等のディーラー、こういったものを合わせますというと相当の数の従業員がいたのでございます。また、債権者の数も多かったのでございますが、そういった意味におきまして、債権者の数におきましては何千人単位というものは幾つもございました。  それからもう一つ、本件にある程度御参考になりますのは、東京佐川急便の自主再建をいたしました。これについての金融機関の数は約百社でございます。これは法的な手続によらないで再建をいたしました。  以上でございます。
  305. 平田米男

    ○平田委員 先生は、住専は法的処理をすべきである、こういう御主張をしていただいているわけでございます。法的処理というといろいろあるかと思いますが、今話題になっておりますのは会社更生でございますが、きょうは国民の皆様も聞いていただいているかと思いますので、この会社更生というのは一体どういうことなのか、ごく簡単に御説明をいただけますでしょうか、また破産とどう違うのか。
  306. 清水直

    ○清水参考人 会社更生手続というのは戦後できた法律でございまして、アメリカに学んだものでございますが、結局、一たんできた企業を清算すると非常にロスが多うございます。例えば売掛金を回収したいと思っても、会社が存続していなければ、アフターサービスがないので売掛金が回収できない。在庫品を処分してお金にかえたいと思っても、破産ですとこれは、在庫品は本当の二束三文になってしまう。ところが、企業が存続しておりますというと、売掛金の回収もスムーズに行われるし、また資産の回収も行われる。この意味におきまして会社更生は大変大きなメリットがあるのでございます。  その会社更生手続というのは、企業、特に株式会社でございますが、この中に裁判所が管財人を送り込みまして、その公的な立場管財人経営を行い、それから債権の調査を行い、財産の評価がえを行いまして、更生計画案を立案し、そしてそれを実行する。裁判所が初めからおしまいまでその企業の再建手続の面倒を見るという意味におきまして、企業の更生については最も信頼のある手続でございます。  このように、ですから、会社更生というのは比較的なじみが薄いようでございますけれども、利害が錯綜する事案について、公的な手続において企業を再建させて、より破産よりも多くの配当をするというところにメリットがございますし、今回の住専処理案に比べますというと、はるかに透明性があるという点に利点がございます。
  307. 平田米男

    ○平田委員 会社更生は、いずれにいたしましても、基本的には会社の再建を目的とするということでございますが、状況によっては清算になるケースもあるのでございましょうか。その点はいかがでございますか。
  308. 清水直

    ○清水参考人 会社更生手続の開始申し立てをする企業で、最初から立派な更生計画の見込みが立つ会社は一社もございません、それだから倒産したのでございますから。したがいまして、住専七社について私は財務諸表をつぶさに検討いたしましたが、私どもがこれまでに更生させたいろいろな企業に比べてはるかに更生は楽だと私は思います。  その手続的な内容について細かく入ることはございませんが、いずれにいたしましても、この会社更生手続によって再建するということにつきましては、これはいろいろな方の御経験がないので、皆さん方これについてのいろいろ批判をなさいますけれども、実際にはこれほど有効なものはないという状況でございます。
  309. 平田米男

    ○平田委員 清水参考人のお立場から見られまして、今回の政府・与党の住専処理スキーム、さまざま問題点があるというふうに御指摘をいただいておりますが、そのうち重要な点を挙げるとしますと、幾つか挙げていただきますと、どんなものが挙がりますでしょうか。
  310. 清水直

    ○清水参考人 先ほど意見書の中で申し上げましたが、何といいましても、この住専の債権債務を新しい法人に移行させてそちらで処理をするということでございますが、そちらに債権譲渡その他によって移行させるというところで一回間接的になるわけでございます。それからまた、その債権の取り立てについて難しいものはまた預金保険機構に委託するという、二重、三重にその債権の回収等につきまして間接的な方向に持っていかれる、そのために、迅速にして有効な回収ということがますますしにくくなる。  それからまた、先ほど申し上げましたように、預金保険機構、これは委託によって取り立てる、それから住専処理機構につきましても、取り立てができなかったらそれは民間資金と公的資金で補てんしてもらえるというものが初めから決まっておりますので、そんなに努力をしなくてもいいということで、無責任な体制が初めからでき上がっているというところに致命的な欠陥がございます。  それから、我々が管財人として仕事をするときの大きな理由は、何といってもやはりその仕事に対する使命感というもの、それからまた、その仕事をすることによりまして喜んでもらえる人の顔が見えるということでございますが、住専処理機構については、そこでもってどのように債権の回収をしようとも、これについてだれもうれしい顔を見せてくれる者はいない。非常に砂をかむような思いで住専処理機構で仕事をするということになる。そうすると、そこに働く人は、使命感もなければ労働の喜びもない。  私は金融機関の方とお会いすることがしばしばございますが、もう住専処理機構にみんな行きたくないというふうに言っております。会社の命令なら行くかもしれません。しかし、それはほどほどの仕事しかしないと私は思います。もし住専七社を会社更生にすれば、そうすれば、この会社を再建するんだということで意欲を持たせていくと思うのでございます。  その意味におきまして、法律的な、技術的なものの前に、まず人間の心理として、住専処理機構というのは、初めから公的資金を際限なくふやすシステムができ上がっているということが致命的な欠陥ではないかと私は思います。
  311. 平田米男

    ○平田委員 あと、管財人が会社更生法の場合はつきますね。破産の管財人と同様に否認権というものを持っておりますが、今回の政府・与党の処理スキームではそういうものが全くありませんね。これが一点大きなものなのではないかというふうに思います。  それから、住専の役員の責任が一番重いと高野参考人も先ほどすごく強調されましたが、この方々の責任追及というのはこの処理スキームで十分に行えるのでしょうか、その点。  否認権というものはどういうものなのかという御説明と、それからその責任追及の問題、これを御説明いただけますでしょうか。
  312. 清水直

    ○清水参考人 まず否認権でございますが、これは会社更生法と破産法に認められていることでございまして、破産宣告あるいは会社更生手続の開始決定、その前後に行われた駆け込み担保あるいは不当な債権の回収、そういった法律行為について、これを管財人が否定する、そして打ち消してもとの状態に戻す。今ある財産だけで富の配分をしたのでは不公平だ、その直前あるいは直後ごろに、裁判所の手続に来る前の段階でいろいろ不正な取り立てあるいはまた担保の設定をしたものは打ち消さなければならない。これは破産あるいは会社更生手続に必ず出てまいります。私どもが現在行っているものにつきましても、幾つも否認いたしました。否認して相当大きい単位の財産の取り戻しをしております。  したがいまして、この破産、会社更生法における管財人の否認権というのは、財産の充実、弁済配当率を上げるという意味では大変重要な役割を果たすのでございまして、これをなぜ住専処理機構に持たせるようにしなかったのかわからないのでございます。  これはまた、住専処理機構を公的な機関ではなくて株式会社という形にしたために——株式会社というのは、そもそもこれは利益を追求する会社です。これにいかにも検察庁のような仕事をしろ、また裁判所のような仕事をしろということを期待するのがおかしいのでございまして、私はそれを初めから、この住専の処理法案というのは哲学が間違っていると申し上げたのです。  それは、この住専処理法案の法案の名前を見ていただけばわかりますように、住専の持っている債権債務処理促進に関する法律とございます。資産と負債の処理をするだけであって、住専という法人を一体どうするのだということの基本的な哲学がないのでございます。そこが欠けているから今のような矛盾が出てくるのだろうというふうに思います。  次に責任追及でございますが、この責任追及につきましては、皆さんよくお考えいただきたいことは、現在、末野興産とか桃源社、あるいはまた木津信用組合、コスモ、こういったところについては責任追及が行われておりますが、住専各社の役員に対する責任追及及び兵庫銀行に対する責任追及は全くなされておりません。これはマスコミでも何ら取り上げられておりません。その二つの場所には、住専七社及び兵庫銀行には、大蔵の高官がたくさん天下っているのでございます。ということは、大蔵高官の天下った金融機関については責任追及が行われるようなシステムをとらないということが基本にあるのではないか、だから、会社更生を逃げる、破産も逃げるということなのではないかというふうに国民は不信の念を持っております。  責任追及をするには、やはりその意味におきまして法的手続による必要がございますし、過去におきましては幾つもございます、山陽特殊製鋼の例、あるいはまたリッカー。リッカーについては、平取締役に至ります全員について損害賠償請求をしております。もし私が住専七社のいずれかについて管財人に就任したとしましたら、まずは、これまでに受け取られた退職金は全部返還してください、それから役員賞与も全部返還してください、役員報酬については生活費もあるからやむを得ませんが半分は返してください、これを少なくとも要求すると思います。その要求におこたえにならないときには、徹底的にその役員の責任を調査いたしまして、損害賠償請求査定に基づいて追及するということをやると思います。  しかし、このようなことが、今回の住専処理法案の中にはどこにも規定していないのでございます。その意味におきまして、政府はこれらの責任は追及しますと抽象的におっしゃいますけれども、追及する具体的なシステムが法律のどこにもないということでございます。
  313. 平田米男

    ○平田委員 ありがとうございました。大変わかりやすい御説明をいただきました。  否認権というのは、専門用語でなかなか難しいのですが、要するに、不正の財産隠しとか、あるいは責任逃れを許さない、そういう管財人の権限だ、それを行使することによって、財産を回収することによって多くのお金債権者に弁済することになる、こういうふうに理解してよろしいわけですね。ありがとうございました。  それで、先ほど住専の役員の責任追及はほとんど不可能だと。現実問題として、兵庫銀行が破綻をいたしました。大変大きな銀行でございます。ここの頭取は大蔵省の御出身だそうでございますが、それが今回、みどり銀行という新しい銀行に移行をするということでございますが、参考人御指摘のとおり、いまだ兵庫銀行の経営陣の責任追及ということは寡聞にして聞かず、全く今責任追及をされていない。これを例にとられて、住専の経営者の責任も、この処理スキームでは全く追及されないことになるだろう、こういう御指摘だと思いますが、私もそのとおりだ、そのように思うわけでございます。  そういう意味からも、高野参考人が一番責任が重いと御指摘になった住専の経営者が責任逃れをするこの住専処理スキームは、国民から許されるはずがない。六千八百五十億円を投入するかしないかという前に、きちっと正義を守る、責任ある人が責任を果たす、追及される、そういう処理スキームを国民が求めているのだろう、私はこのように思うわけでございます。  ところで、政府の処理スキームでは、住専八社のうち系統系の協同住宅ローンを除き、あと残りの七社の住専は全部解散をする、消滅をさせる、こういうスキームになっているわけでございます。そもそもそういう結論が正しいものなのかどうか、また、正しいかどうかというのはだれが判断をするのか、この辺についてはお考えはいかがでございましょうか。
  314. 清水直

    ○清水参考人 この春に早々と、日住金、第一住金等につきまして、取締役会で営業を継続しないということを決議なさっておりますが、これは余りにも株主を無視した、行き過ぎた行為だと私は思います。  その会社についての解散をするか、営業を継続しないかということは、やはり最終的に株主が決めることでございまして、それを先行して取締役が決めるということは、やはり本件住専処理のこの法案の審議に少しでもプラスするようにということで先走って決議したのではないか。というのは、そのような決議をすれば、直ちに株価に影響するわけでございます。株は暴落するでありましょう。そういったことをかんがみますというと、この住専処理に関しまして、取締役会のみでそのようなことを決めるということはもってのほかでございまして、最終的には株主総会で決められるべきことであると思います。  ところで、御承知のとおり、株主総会での決議につきまして、日住金では、これは危ぶまれております。現実に行われるかどうかわかりません。五七%の一般株主がおりますので、もしこれについての決議が行われないときには、新聞報道によりますと、和議によると言っておられます。あくまでも会社更生は逃げたいという姿勢でございます。それは、責任追及を逃れたいということ以外にないと私は思います。  和議という手続は、御承知のとおり、履行されない手続ということで、倒産処理では、履行されない手続として最も信用がない手続でございます。それをあえて日住金ほどの規模の会社が選択するということに、非常に大きな疑問がございます。
  315. 平田米男

    ○平田委員 地銀生保住宅ローンという住専がございますが、ここは母体行が大変大きな債権を持っておりまして、母体行が債権を放棄いたしますと、まず一次損失は全部消えてしまう。一般行や系統は贈与も放棄も要らない、こういう状況にあるわけでございます。このような住専については十分再建の見込みがあるのではないかと私などは思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  316. 清水直

    ○清水参考人 結局、政府の住専処理案というのは、七社を十把一からげに処理するというところに非常に粗っぽい処理があるのでございます。  地銀生保住宅ローンの関係者から私は話を聞いたことがございます。その関係者の方は、我々の会社は、母体行が放棄をしたら全く赤字がなくなってしまう、その状態なのに、なぜほかのもっと悪いところと一緒にならなければならないのだということで大変不満な意見を述べておられました。そのことはまた、ある雑誌に載っております。  それから、私どもがこれまでにいろいろいただいた資料等を見ますというと、住専七社と申しますけれども、ある意味で犯罪の巣窟かなと思われるような会社もあれば、それに対して比較的内容がよくて、これは更生が十分できるのではないかというものもございます。それらを十把一からげにしたところに大きな問題があるのでございまして、地銀生保住宅ローンについては、これは法的手続をとらなくても、十分再建も可能ではないかと私は思います。
  317. 平田米男

    ○平田委員 きょうの新聞によりますと、新京都信販が破産の申し立てをした。負債総額は三千五百億円、大変大きな会社の破産申し立てがあったわけであります。  ところで、政府は、この住専処理法案以外に金融機関更生手続特例等に関する法律案というのを出しているわけでございます。そして、ここの中で、破綻に瀕した金融機関、銀行を含めて金融機関の会社更生の申し立てあるいは破産の申し立てを、金融機関の監督官庁に申し立て権を与える、こういう法案を出しているわけであります。ということは、基本的に、一般原則からするならば、こういう金融機関については監督官庁が判断をして会社更生なり破産という法的処理、法的手続をやるべきだという大原則をうたった法案だろうと私どもは理解をするわけであります。  にもかかわらず、なぜ住専については会社更生なり破産の法的手続をしようとしないのか。これは相矛盾していると私は思うのですが、清水参考人、いかがでございましょうか。
  318. 清水直

    ○清水参考人 まさに御指摘のとおりでございまして、今回の住専処理に当たりまして、政府は、本件は会社更生によるのでは妥当な処理はできないと言ってこのような考えを持ってきたにもかかわらず、金融機関に関する会社更生法の特例法案を提出してこられました。  ということは、金融機関について、まさに会社更生手続による処理が必要であるということを政府は痛感されたのだと思うのでございます。それは何も信用組合だけではございません。住専も貸金業者でございます。それから、ノンバンクもそうでございます。  そういった点を考えますというと、いわゆる金融機関全体について会社更生の必要があるのでございまして、たまたま信用組合等は株式会社でないので、この法律によらなければ更生手続にのせられないというのでこの中に入れてきたと思いますが、申し立て権という点でいきますというと、これは何も今回の特例法案の中で特定することなく、住専あるいはその他のノンバンクについても会社更生手続開始申し立てについて監督官庁が行うということの規定を設けてしかるべきであると思います。その方がより金融行政の維持のためにはよろしいのではないかと思うのでございます。
  319. 平田米男

    ○平田委員 ありがとうございました。  あと残りを高野参考人にお伺いをさせていただきますが、住専を法的処理することは反対だ。反対の理由はお述べになったのですが、法的処理をすると系統の金融機関が破綻をするという可能性はあるのでしょうか。私は、ないのではないかというふうに思っているのですが、いかがでございましょうか。  それで、一番私が心配をいたしておりますのは、住専には五兆五千億なんですが、ノンバンクには七兆七千億円もの貸付金が系統金融機関にございます。先ほどの新京都信販が三千五百億円の負債で倒産した。この中には、地元の地方銀行や信用金庫、農協系まで含めた多数の金融機関が融資をしていると出ているわけでございまして、これからノンバンクの破綻ということが非常に心配をされているわけでございまして、これによって大きな影響が系統の金融機関に生ずるのではないか。  しかし、政府・与党は、ノンバンクの破綻については公的資金、財政資金の投入は一切しない、このようにもうお決めいただいているようでございますが、そうなりますと、系統の金融機関は厳しい状況に立ち至るのではないか、このような心配をするわけでございますが、その点、どのようにお考えでございましょうか。  それから、系統金融機関は貯貸率、要するに自分のところで集めたお金を今度貸し付ける割合、それが他の金融機関に比べて著しく低い。この実態がございまして、これが住専にお金を貸し込んでしまったという一番の原因になっていると言われておるわけでありますが、先ほど系統の再建についてお述べになりましたが、しかし、一番肝心なこの貯貸率の改善については何一つ御主張がございませんでした。それではこの厳しい状況の中から系統金融機関が脱することはほとんど不可能なのではないか、このように私は思うわけでございますが、その点、どのような対応をしていかれるおつもりなのか。  また、農協の金融については、経済事業、いろいろな薬品、農薬ですね、あるいは農機具、段ボール箱、そういうものを売買するような経済事業と金融等の信用事業を分離する、こういうようなことについても農水大臣が国会において検討課題である、このようにおっしゃっておいでになりますが、高野参考人は、その点はどのようにお考えでございましょうか。
  320. 高野博

    ○高野参考人 法的処理につきまして、法的処理を行えば系統は破綻するのかというお話でございますが、どういう形で法的処理がなされていくのかということにかかるわけでございまして、自動的にそうなるというぐあいには考えておりませんが、いずれにしましても、住専問題に絡んで、今までのいろいろな経過をつぶさに考えて、母体行の今までの動き等を考えますと、先ほどから申し上げておりますとおり、母体行中心の解決策になりやすいのではないかというのが私どもの判断でございまして、そういうものについて私どもは反対しておるということでございます。  二番目に、ノンバンクの問題でございますが、ノンバンクには確かに七兆七千億円の貸し付けを行っておりまして、約五百八十億円のものが不良債権になっておるというぐあいに聞いておるわけでございますが、いずれにしましても、確かに私どももこのノンバンクの問題は今後最大の注意を払っていかなければならない、そういう問題だと考えております。  しかし、この問題は系統だけではございませんでして、御存じのとおり、全体では四十兆とも百兆とも言われるノンバンクの超過債務ということが今後我が国の大きな問題になっていくのだろうと考えております。私どもも、そういうことでございますので、現状はそれほど深刻な状況とは思っておりませんが、それに油断することなく、万全の注意を払って対処していかなければならない、そういうぐあいに考えております。  それから、貯貸率の問題がございましたが、確かに私ども、そういう点で体力が弱いと申しますか、十分今後改善しなければならないという点があるわけでございます。ただ、私どもの協同組合という金融事業の制約がございまして、預金の受け入れも貸し付けも一定の制約の中で事業展開をしているというようなこともございまして、なかなか普通の銀行のような形での活動はできないわけでございます。しかし、そういう中でも現状は極めて不満足なものと思いますので、関係官庁の御指導、これからいろいろと系統金融事業のあり方について農政審でも議論いただいておりますので、そういう中での御指導も受けながら、またみずからも貸付先の拡大に取り組みながら、こういう点の改善を図っていきたいと考えております。  それから、経済事業等々につきましても、先ほど申し上げましたが、自由化という大きな波の中で苦吟しているわけでございまして、私どもは、我が国の農業が決してこのまま廃れてしまっていいものではないという点について国民の皆様の理解を得ながら、むしろ我が国の農業が何とかやっていけるようなそういう方策を、例えば今私どもは新たな農業農村基本法の制定をお願いしたいと思っておりますが、求めておりまして、そういう中で、先生方の御指導もいただきながら我が国の農業の活路を、また経済事業の活路を見出していきたいと考えております。よろしくお願いいたします。(平田委員「分離の話。そこだけ答えてください」と呼ぶ)
  321. 高鳥修

    高鳥委員長 もう時間が来ておりますので、簡潔に願います。
  322. 高野博

    ○高野参考人 私どもの信用事業につきましては、もう明治時代から取り組んでいる仕事でございまして、それなりの長い歴史を持っておりまして、農業そのものが、金融事業、生産事業、購買事業、販売事業、生活事業、全部絡んでおりますので、分離して事業を展開するというようなことは考えにくうございますし、考えておりません。  以上でございます。
  323. 平田米男

    ○平田委員 ありがとうございました。
  324. 高鳥修

    高鳥委員長 これにて平田米男君の質疑は終了いたしました。  次に、細谷治通君。
  325. 細谷治通

    ○細谷委員 参考人皆さん、御苦労さまでございます。当委員会の審議に御協力いただきまして、深く感謝を申し上げる次第でございます。  持ち時間が大変短うございますので、端的にお尋ねを申し上げたいと思います。  実は私、きのう当委員会が夕方から開かれるということでございましたので、現地で、地元の農協の幹部の方々とお会いしてまいりました。意見交換をいたしました。その中で皆さんが異口同音におっしゃるのは、最近、農協の預金の目減りが非常に目立っている、これはかつてないことである、この原因は要するに住専問題が長引いているということだと考えている、一日も早い政治レベルでの決着をお願いしたい、こういうお話、強い要望がございました。  今、日本の農業というのは、ある意味でちょうど大きな曲がり角にあることは御承知のとおりでございます。極めて大切な時期にあって、日本の農業をしっかり守っていく、そして農家の預金を保護していくという点では、いろいろありますけれども、与野党立場を同じくするのじゃないかと思っております。そういう観点で見ますと、この農協の果たす役割というのは大変大きいし、私は一日も早くこの住専問題というものを片づけていくことが必要ではないかというふうに考えております。  そこで、高野参考人にお尋ねを申し上げますが、農協預金の減少と住専処理策の審議のおくれ、先ほど指摘がございましたが、この関係について、どんな御認識をお持ちでございましょうか。また、住専処理策がさらにおくれるということになるならば、どんな影響が出てくるというふうにお考えになるのか。そして、こうした点を踏まえまして、今系統の方々がどんな御希望、御要望をお持ちなのか、率直な御意見をお聞かせいただきたいと存じます。
  326. 高鳥修

    高鳥委員長 御説明は簡潔に願います。
  327. 高野博

    ○高野参考人 御指摘のとおり、住専処理策の決定は大幅におくれてきておりまして、この結果、私どもにとりましては、一方では政府の処理策に沿った決算処理等を進めてきておるわけでございますが、しかし、果たして本当に結果はどうなるのか、そこら辺が不明でございまして、また先ほども申し上げましたように、住専からの利払いも停止されたままとなっておるわけでございます。でございますので、何と申しましょうか、気持ちを表現しますと、混乱の一歩手前というような感じもするわけでございます。  私どもにとりまして、そういう状況でございますが、今御質問がございましたが、農協貯金の伸び率について申し上げますと、御指摘のとおり下がってきておりまして、本年三月末の対前年同月比で申しますと、マイナス〇・一%ということで、史上初めて、残念ながらマイナスを記録したわけでございます。また、四月末では、マイナス〇・六%ということで、さらに減少幅を拡大しているわけでございます。  この要因につきましては、もちろん農産物の価格の低迷というようなこともありますし、売り上げが伸びないということもございますし、景気の後退の長期化によりまして、農家所得が減ってきておるというようなこともございます。あるいは、金利水準が下がってまいりましたので、利息収入が減るというようなこともございます。そしてまた、一部金融機関経営破綻が出ておりますので、そういうことも絡んでおると思っております。  しかしながら、先生の御指摘にもありますとおり、住専処理策の決定のおくれ、これにかかわるいろいろな報道というようなものも強く影響してこういう結果になっておるのではないかと大変危惧しているわけでございます。  いずれにしましても、このように処理策があいまいなままさらに時間が経過いたしますと、系統農協を初めといたしまして、経営体力の弱い中小等の金融機関にとっては大きな負担が生ずることになります。したがいまして、再三申し上げておりますが、国民の金融システムに対する信頼性を回復するために、また景気の回復のためにも、住専問題の早期解決をぜひお図りいただきたいと思うわけでございます。  以上でございます。
  328. 細谷治通

    ○細谷委員 高野参考人には、もし後ほど時間がございましたら、もう一問お尋ねを申し上げたいと思いますけれども、次に移らせていただきます。  清水参考人にお尋ねをいたします。  参考人は、住専処理に当たっては、会社更生法による法的整理の手続によるべきであるという主張を先ほど来お述べになっていただいておるわけでございますけれども、そこでお尋ねを申し上げます。国民の皆さん方がごらんでございますので、ひとつわかりやすく御説明をしていただきたいと思います。  まず系統金融機関、要するに農林系の系統金融機関皆さん方は、住専の責任は挙げて母体行にある、母体が全責任を負うべきだ、こう主張なさっているわけでございます。  ところで、更生手続におきまして、系統がこの主張を仮に貫き通すということになりますと、一体会社更生手続はどうなるのかということでございます。なぜなら、系統と母体行、両者の間で利害が鋭く対立しているという限りにおいては、会社更生案というものが成り立たないのじゃないかというふうに思うわけでございます。というのは、系統は、住専七社のいずれに対しましても三分の一以上、一番少ないところでも三八%、多いところは五一%の債権額を有しているということでございまして、三分の一以上になっております。  会社更生法第二百五条によりますと、更生計画案を可決する要件は、更生債権者の三分の二の議決が必要だということになっておるわけでございまして、先ほど言いましたが、系統の皆さん方がどうしても法的手続は嫌だ、先ほど高野さんはそういうふうにおっしゃいましたが、そういうようになりますと、更生計画案そのものが成立しないということになるわけでございますけれども、これはどういうふうに考えたらよろしいのでございましょうか。
  329. 清水直

    ○清水参考人 ただいま御指摘のとおり、更生計画につきましては、更生担保権者の組、それから一般更生債権者の組というふうに分かれまして、更生担保権者ですと四分の三とか、条項によっては五分の四、一般の債権者で三分の二の同意を必要とするということでございます。  その意味におきまして、系統金融機関が反対した場合には、更生計画案は成立いたしません。可決いたしません。したがいまして、系統金融機関の賛成というのは、絶対に更生計画が樹立てきるためには必要でございます。  しかしながら、私どもがこれまで取り扱いました更生計画で順調にまいりました更生手続の中で、更生計画案が管財人から提示されたのに、その計画案に対する修正を求めるということはございますけれども、計画案そのものを、圧倒的多数で反対をして否決されるという例はほとんどございません。私自身経験がございません。それは結局、否決した場合には破産に移行するだけ。破産に移行することになれば、更生計画よりもはるかに少ない配当になってしまう。それを系統金融機関が選ぶわけがないということが言えるわけでございます。  それから、本件におきましては、既に母体行は債権を放棄すると言っております。したがいまして、更生手続にのせる前に、母体行からそれぞれ債権放棄についての事前の放棄手続をとっていただく。一般行については、現在お決めになっている範囲でその手続をとっていただく。もしそれをとらないのであれば、更生計画で将来そのような形の計画を立案されても異議はないという書面を裁判所に提出していただいた上で更生手続にのっければよろしいと思います。  したがいまして、また私どもがこれまで取り扱いましたものでも、例えばカナサシ造船所あるいは静信リース、いずれも親会社、母体行に当たるところについては債権の九九%または一〇〇%を切り捨てております。そのような形で公平さを保つことができているのでございまして、今回の住専処理スキームと同じ形の更生計画案ができないというわけではございません。そしてまた、そのような形の更生計画ならば、系統金融機関も必ずやそれは賛成するものと思います。賛成しなければよりマイナスの状態になるわけでございますから、更生手続にのれば、更生計画案は賛成をしていただけると思います。
  330. 細谷治通

    ○細谷委員 いやいや、そういうことは当然系統の方々はわかった上で、なおかつその手続は法的手続を選択しないとおっしゃっているのですから、その場合に会社更生計画なるものは成立しないのではないかということを大変心配いたしておるわけでございます。  それからもう一点、先ほど住専処理機構に関連してお答えがございましたけれども、住専の経営者の損害賠償責任の追及の問題で、管財人の否認権ということでこれを行使して、ばちばちと査定をしていくというふうにおっしゃいました。ボーナスも全部取り上げる、退職金も取り上げるということをおっしゃいましたけれども、査定をして、仮に相手方が納得しなければ、これは損害賠償請求の裁判になるのじゃないですか。ということになれば、住専処理機構だって当然、住専の経営者に対する損害賠償の請求権を持っているのですから、同じことじゃないでしょうか。私はそんなに違わないと思いますが、どうでしょうか。
  331. 清水直

    ○清水参考人 会社更生法の規定の中には、損害賠償請求査定の申し立ての方法としまして、訴えと、それとは別に損害賠償請求査定についての手続が簡略にできるように規定がございます。その疎明をすればよろしいということになっております。したがいまして、管財人から損害賠償請求査定の申し立てをするのは、一般の損害賠償請求訴訟よりもはるかに時間的にも短く、それから証明も疎明で足りるという形で行われているのが一般でございます。三年も五年もかかってやるというようなことはございません。  それに対しまして、現在の住専処理法案に基づく損害賠償請求でございますと、一般の損害賠償請求訴訟という形になりますので、これは時間がかかると思います。
  332. 細谷治通

    ○細谷委員 いや、時間がかかるという話をしているのじゃないのです。そういう方途があるのかないのかということを申し上げているのです。この辺は国民の皆さん方が御判断をしていただけるのじゃないかというふうに私は思います。  最後に、館参考人に一点だけお尋ねをしたいと思います。  公的資金投入について、住専には投入するけれどもノンバンクには投入しない、信組には政府保証という形で最終的に公的資金を投入するが、信金、第二地銀、その他の金融機関には投入しない。この点に関して、公的資金の投入に当たっては客観的で明確な基準が必要だ、その点では今回の処理策は合理性を欠くという批判が特に野党の皆さん方からもなされております。それに対して、臨時異例の措置ということで例外的とする今回の住専処理に対する政府の考え方、この妥当性はあるのかないのか、どういうふうにお考えになっておるのか、一点だけお尋ねを申し上げたいと思います。
  333. 館龍一郎

    ○館参考人 ただいまの点については、一つの問題点であるというようにはもともと考えておりました。しかし、金融制度調査会の中間報告でも述べておりますように、そこでは住専問題を念頭に置きながら、金融機関による破綻が生ずる以前の段階においても、不良債権処理がおくれてそれが金融システム全体に悪影響を及ぼすおそれがあるという場合には、公的資金の導入を含む措置がやむを得ないという意見があるということを踏まえまして、そして同時に当事者間でお互いに相談をしていただきたいということを経過報告でお願いしたわけでございます。  いろいろ検討をした末、やはりテーブルに着いて話を進めていくためには、どうしても公的資金を導入するということを申さないと進展が得られない。一方で、これを早急に解決しなければ、先ほど来申し上げましたような国際的な信用も落ちてまいりますし、不良債権がさらに劣化していくというような、債権が劣化していくというような問題もあるので、そういう措置をとらざるを得ないというように考えた次第でございます。
  334. 細谷治通

    ○細谷委員 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。
  335. 高鳥修

    高鳥委員長 これにて細谷治通君の質疑は終了いたしました。  次に、錦織淳君。
  336. 錦織淳

    ○錦織委員 新党さきがけの錦織でございます。私に与えられた時間はわずか十分でございます。要領よく御質問をさせていただきたいと思いますし、また、参考人の方々には簡潔にお答えをお願いを申し上げておきます。  まず私は、限られた時間の中で、住専をめぐるいろいろなキーワードがあると思います。いろいろな責任論もございました。わずかな時間でございますので、二つのキーワードを手がかりに御質問をさせていただきたいと思います。  まず第一点は、行政の責任ということでございます。広い意味での政治責任と言ってもよいと思います。  そこで、館参考人にお伺いをいたします。  金融制度調査会の諸委員会の中でこの問題を取りまとめられた、そして、その審議経過も公表をされております。ところで、その中には、残念ながら、私が見るところ行政の責任というものがいかなるものであったかということについてほとんど触れられていない、こういうふうに受け取っております。  ただ、審議経過を、概要を報告したところを見ますと、住専の設立についてどういう経過があったのかということが簡潔に触れられております。あるいは公的な住宅金融機関が住専の仕事にどういう影響を与えたか、こういったことを推測させるくだりもございますが、基本的には、結論に至る過程でそうした行政責任がどういう役割を果たしたかということについて触れられていないのではないかという懸念を持っております。  そこで、これは実はノンバンクと住専との相違、公的資金導入に当たってどういう基準をこの際適用すべきかということにかかわる私は重大な争点だと思います。  もちろん館参考人は、昭和四十八年の十二月二十五日の金融制度調査会答申、御存じだと思います。当時、その金融制度調査会のメンバーではなかったというふうには思いますけれども、少なくとも金融制度調査会というのは、大蔵行政に大変あるいは決定的な影響を与えたそうした答申というものが存在をして、そして住専は、国策と言えば言い過ぎであれば準国策、あるいはそれに準ずるような国家的な政策、特に一般の、事業者あるいは資産家のようにそうした融資を受けることのできない非常に力の弱い一般国民に住宅ローンをつくろうということで推奨されていった。  こうした経過の中でその住専が破綻に追いやられていった。そういうことについて行政責任をどのように評価されたのかをお伺いしたいと思います。
  337. 館龍一郎

    ○館参考人 最終的な報告書でも述べておりますように、行政がその時々に適切な対応を欠いたという問題があったということは誤りない事実であるというように述べておりますし、私どももそういうように感じております。
  338. 錦織淳

    ○錦織委員 時間がありませんので、次の質問に移ります。  次に、母体行責任に絡んでお伺いをしたいと思います。高野参考人にまずお伺いをいたします。  高野参考人の先ほど来の御答弁の中で、もし政府・与党のスキームが崩れた場合、このとおりにならなかった場合、果たして農協系統の金融機関は破綻するのかという問いに対して、もちろんそれはお立場上そうした危険があるということを正面から肯定されることはなかなか忍びない、こういうことはよく理解できます。  しかし、考えてみますと、もしこうした法的手続にゆだねられた場合にどういう結果を招来するのか。五・五兆円は丸々返ってこない。つまり、配当手続にのせられていくわけでございますから五・五兆円は返ってこない、しばらく。このしばらくというのがくせ者であって、これが一年なのか、二年なのか、三年なのか、はたまた十年なのか、そうしたことについてはいろいろな議論があり得るわけでございます。いずれにしても、配当手続にのっていく以上は五・五兆円は利息どころか元本も返ってこない、こういう状態が長期化をしていくということがございます。  そしてもう一つ、政府の処理案では、実はこの処理の仕組みの上で母体行、一般行、農協系統の三グループが融資をする、約六・六兆円ぐらいの融資をするということ、そしてその融資があって、そしてそれが還流をして五・五兆円の全額返済という格好をとっているわけです。もしこうしたことが前提になっていなかったならばこのスキームに同意されましたか、端的にお答えください。
  339. 高野博

    ○高野参考人 今回の処理策につきましては、御指摘なさいましたとおり、そういう幾つかの中身が盛り込まれているわけでございまして、そういうものを全部含めまして私どもは検討いたしました結果、受け入れるということを決定したわけでございます。
  340. 錦織淳

    ○錦織委員 そうしますと、私は、このスキームが崩れた場合には農協系統にとっては致命的な打撃を受けるであろうという予測を立てております。  ところで、もしそうであるならば、農協系統として強く母体行責任を歴史的な沿革等から主張されるのは理解できます。理解できるのですが、そのことを前提にした上で、しかしそれでもこのスキームが崩れたことによる決定的な不利益に比べたら、いろいろなスキームについての御協力の余地というのは多面的にあるのではありませんか。その点についても端的にお答えください。
  341. 高野博

    ○高野参考人 この現在の処理策につきましては、先ほども申し上げましたが、私どもももちろんでございますが、いろいろな関係者がまさに激論を闘わせましてようやく到達した内容でございますので、これが崩れた場合には、もちろん私どもにつきましても容易ならざる状況になるということはそのとおりでございますが、この処理策に合意してきましたおのおのの関係者につきましても、やはり容易ならざる状況といいますか、そういうものが出てくるのではないかと私ども考えるわけでございまして、そういうことにならないように処理策の早期決定をお願いしているわけでございます。
  342. 錦織淳

    ○錦織委員 最後に清水参考人にお伺いをいたします。  実は、私的なことを申し上げて恐縮でありますが、私自身も、かつてある上場企業のメーカーの会社更生を申し立てたことがございます。残念ながらこれは受け入れられませんでした。そして破産に至った。そして既に十五年を経過をしておりますが、まだ、先般非常に優秀な管財人がおつきになっておるけれども完結をしていないという報告がございました。そうした経験を我々は踏まえながら国会での議論をやっているということを重々御承知おきいただきたいと思います。  そのことを前提にして申し上げます。  清水参考人の御意見、大変傾聴をいたしております。しかし、幾つか重要な点で疑問を感じます。  一つは、更生の見込みについて、そもそも更生の見込みがなくても清算型の会社更生というのがあり得るから、更生の見込みがなくても会社更生申し立てが通るのだという前提に立っておられるのか。そうではなくて、住専七社の全部または一部について、この会社更生の見込みがあるという判断を前提にした上で会社更生にのせようとしておられるのか、そうしたことについて多くの疑問がございます。  しかし、そこら辺を議論しますと私の持ち時間では到底こなすことができませんので、もっと初歩的で素朴な質問をさせていただきたいと思います。  それは、先ほど来の清水参考人のお話をお伺いをしておりますと、前提がございます。まあきつい言葉を言わせていただければ、一つのからくりがあるのではないか、こういう気がいたしてなりません。  それは、住専処理に当たって政府・与党の処理スキームを無意識のうちに前提にしておられるのではないかということでございます。先ほど来、地銀生保住宅ローンのお話をされました。三・五兆円を母体行が放棄するんだから再建できるんだ、こういうことを言われました。そういう前提は、私どもは立てることはできないのではないかということを申し上げているわけでございます。つまり、政府・与党の処理スキームを前提にするのであれば、三・五兆円の放棄、一・七兆円の放棄、同時に農協系統の五・五兆円の全額返済、それは、実は先ほど申し上げた三つの債権者グループの六・六兆円の融資というものとセットになっているわけでございます。  したがって、住専七社の解体の清算方式を、破産法にあろうが、会社更生にゆだねるかという、そういう選択肢の次元と……
  343. 高鳥修

    高鳥委員長 簡潔に願います。
  344. 錦織淳

    ○錦織委員 そういう選択肢の次元と、その債権者三グループ間のそうした損失負担をどうやって考えていくのかということは、次元の異なる問題ではないか、こういう点はいかがでございましょうか。
  345. 清水直

    ○清水参考人 幾つかございますが、まず、更生の見込みについてでございますが、これは学説、判例とも、更生の見込みについては、倒産する会社でございますから、最初から、このように力強く更生できますというふうな更生の見込みがある企業は一社もございません。みんな、何とか努力すれば更生の見込みなきにしもあらず、この状態で申し立てするのでございます。したがいまして、更生の見込みについては、住専七社は、法的に申し上げれば住専七社全部更生の見込みがございます。また、そういう更生の申し立て書が書けます。  そうしますと、裁判所は、そのような申し立てがあるのに受理をしないということはできません。したがいまして受理いたします。その次に、受理したら、社会的にこれだけ影響の大きいものを放置するわけにまいりませんから、必ず保全管理命令を出します。直ちに保全管理人が翌日か翌々日には就任すると思います。  したがいまして、本件について、住専は清算するんだというのは大蔵省なり母体行が決めただけでありまして、本当に更生の見込みがあるかないかについては、別途これは有権的に裁判所で判断してもらうべきことであると思います。私は、本件について、更生の見込みありとして更生の申し立てをすることができると申し上げたのでございます。  仮に、そして開始したけれども見込みがない場合でも清算型があると申し上げているのでございまして、清算型を目的として初めから申し立てをするということは申し立てておりません。しかし、私が取り扱いました事件では、開始決定の前に既に更生の見込みなしとして、清算的更生手続に入ることを前提として開始したものもございます。  その意味におきまして、更生手続は、すべて強力な再建見込みがなければないという場合ではないということを実務の例として御理解いただきたいと思います。  それから、その次に……
  346. 高鳥修

    高鳥委員長 時間が来ておりますので、簡潔に願います。
  347. 清水直

    ○清水参考人 はい。  六・六兆円の融資が前提となっているということでございますが、私が発表いたしましたシミュレーションでは、系統金融機関からは二・二兆円の融資をいただかなくても、系統金融機関については六千八百五十億円の三分の一を負担していただければ、一・七%の金利を払って十分弁済できる計画ができております。そしてまた、更生手続中では、回収した債権をいずれかに預金しなければなりません。それを農協に預金すれば、農協は資金繰りは足ります。預金したものは結局更生計画で弁済に充てます。だから、系統金融機関更生手続によって何ら資金的に困ることはございません。
  348. 錦織淳

    ○錦織委員 残念ながら時間が参りましたので終わりますが、この続きはどこか別のところで徹底的に議論をさせていただきます。  ありがとうございました。
  349. 高鳥修

    高鳥委員長 これにて錦織淳君の質疑は終了いたしました。  次に、佐々木陸海君。
  350. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 時間がありません。館参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。  昨年九月二十七日に金融制度調査会金融システム安定化委員会の審議経過報告が発表されました。当時、あなたはこの委員会の責任者でありました。  その報告では、住専問題の解決の基本方向についてこういうふうに述べております。「経営にあたっている住専自身及び母体行が主体的役割を果たし、今後の基本的な方針や債権処理の仕方等につき合意形成を行うことが必要である。」というふうに述べられております。極めて当たり前のことで、しかし当時の住専問題解決の前提となるルールだったのではないかと思いますが、その点だけ確認をさせていただきたいと思います。
  351. 館龍一郎

    ○館参考人 ただいまの御質問について、私、正確に今のような言葉で述べたかどうかということについては自信がございませんが、考え方としてはそのとおり、そういうように考えていたと思います。
  352. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 今その報告から引用したのだから私は正確なものだと思っております。  そこで、高野参考人にちょっとお伺いしたいと思うのですが、この九月二十七日の時点では「経営にあたっている住専自身及び母体行が主体的役割を果たし」て、住専の処理方法や「債権処理の仕方等につき合意形成を行うことが必要である。」というふうに述べられていたのです。  しかし、あの九月から十一月にかけての経過を見ますと、母体行が本当に主体的役割を果たして合意形成を仕上げるという役割を果たしたとはとても思えないのですが、その一番の合意形成の対象になった農協系から見ておられるとどんな状況だったか、その点を感想的にもお聞きしたいと思います。
  353. 高野博

    ○高野参考人 昨年何回も話し合いを行いましたが、母体行は大変数が多いわけでございまして、私どもの印象では、私ども以上にと言いますと失礼に当たりますが、なかなか母体行の方の意見調整は大変な様子だということを身にしみて感じておるという状況でございます。
  354. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 要するに、九月二十七日の金融制度調査会金融システム安定化委員会報告では、母体行が主体的役割を果たして、そして合意を形成しろ、だから母体行が農協系統なり一般銀行なりに頭を下げて、そしてどういう負担をするのかということを決めるべきだったし、私に言わせれば、主体的役割を果たすというのは、農協系も一般銀行もいろいろ出してくれる、しかし、穴があいてしまうということになれば、主体的役割を果たす母体行がその穴は全部埋める、体力がある限り埋めるというのが常識の線だっただろうと思うのです。  しかし、実際の住専の処理策というのは、この九月二十七日の言っていた方向とは全く異なりまして、母体行は主体の役割を全く投げ出して、言ってみれば政府が主体になって、政府が母体行や系統などにこういうふうに出してくれないかというお願いをして、母体行は言ってみれば政府から要請を受けるお客さんになってしまった、ここにこの住専処理策の出発点の一番大きな問題点があるということを指摘したいと思うのです。  なぜそうなったかという理由を論議していますと時間がかかりますから、館参考人最後に一言だけお聞きしたいのですが、九月二十七日の言っていた方向とは違った方向に政府の処理策がなってしまっている、このことは間違いないことではないかと思うのですが、その確認を求めたいと思います。
  355. 館龍一郎

    ○館参考人 その直後に、その文書の先のところに、話し合いがうまくつかないということがあり得るということを考えておりましたから、行政にもそれに対応して条件整備するための努力をしてもらいたいということを申し述べていると思います。
  356. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 最後ですが、「行政当局は当事者間における議論を踏まえつつ、」「当事者間の合意形成を促進する必要がある。」というふうに述べているだけなのですよ。だから、主体を全部引き受けてしまって、母体行をお客さんにしろなんてことは書いていないのです。ですから、やはりこれは方向が違ってしまっていたということを確認せざるを得ないということをはっきり申し上げて、質問を終わります。
  357. 高鳥修

    高鳥委員長 これにて佐々木陸海君の質疑は終了いたしました。  次に、海江田万里君。
  358. 海江田万里

    ○海江田委員 私の持ち時間は二分でございますので、よろしく御協力のほどお願い申し上げます。  きょう一日質疑をしまして、やはり一つの成果というのは、橋本全銀協会長が、金融システムの安定に貢献できるいい案があれば追加負担について検討の余地があるというような発言があったことではないだろうかと思います。ただ、この全銀協の追加負担については、やはり農林系統の追加負担も条件である、前提であると私の質問に対してはっきり答えているわけですけれども、この農林系統の追加負担について先ほど  これは高野さんお一人で決められることではありませんけれども、やはり検討の余地があるのか、それとも全く検討の余地がないのか、白紙なのか、そこのところをお答えいただきたいと思います。
  359. 高野博

    ○高野参考人 先ほども申し上げましたが、よい案があれば検討の可能性が生まれるという表現が、本当に銀行が負担に応ずるという意味なのか、単に検討を表明したのか、あるいは検討の可能性に触れただけなのかわからないわけでございまして、そこら辺を十分確かめまして、私だけではいろいろ申し上げることができませんので、後日誠意を持って対応させていただきたいと考えております。
  360. 海江田万里

    ○海江田委員 私は、それは検討をするということに理解をさせていただきます。  それから、先ほど議論になりました、これは平田委員の質問に答えまして、協同住宅ローン、これは農協系統の住専でございますけれども、これは引き続き経営をしていくというお答えがありましたけれども、農協は本体でも住宅ローンをやっているわけですよね。今度七社全部一応、地銀生保住宅ローンも処理をするというのは、それはやはり住宅ローンそのものを本体でやり始めましたから、都市銀行だとか地方銀行だとか、住専そのものの本来の役割がもう終わっているから全部手じまうわけですよね。そういうことからいったら、協同住宅ローンをどうしても残すというのは、私どうも納得いかないのですね、これは。やはりある程度時間を置いてですけれども、これはやはり当然のことながら処理をするということでないと納得いかないと思うのですが、いかがでしょうか。
  361. 高野博

    ○高野参考人 母体行が個人向け住宅融資を住専とすみ分けてきちっとやっていこうと考えれば、私はできることだと思うわけです。今回は母体行がそういうぐあいに考えないために整理の方向に話が向かっているというぐあいに——七社につきましてはですよ。私どもは、やっていく、すみ分けしながらやっていくという考えでございます。
  362. 海江田万里

    ○海江田委員 はい、わかりました。ありがとうございました。
  363. 高鳥修

    高鳥委員長 これにて海江田万里君の質疑は終了いたしました。  これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。予定より三十分ほど延長いたしましたことをおわびいたします。委員会を代表いたしまして、御出席に厚く御礼を申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時十五分散会