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1996-05-28 第136回国会 衆議院 金融問題等に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年五月二十八日(火曜日)     午前九時開議 出席委員   委員長 高鳥  修君    理事 小里 貞利君 理事 尾身 幸次君    理事 大島 理森君 理事 小沢 辰男君    理事 松田 岩夫君 理事 森本 晃司君    理事 早川  勝君 理事 錦織  淳君       伊吹 文明君    石橋 一弥君       柿澤 弘治君    金子 一義君       岸田 文雄君    栗原 博久君       七条  明君    中村正三郎君       野呂田芳成君    蓮実  進君       原田昇左右君    穂積 良行君       堀之内久男君    松永  光君       与謝野 馨君    横内 正明君       安倍 基雄君    愛野興一郎君       江田 五月君    加藤 六月君       鹿野 道彦君    北側 一雄君       笹川  堯君    野田  毅君       平田 米男君    松岡滿壽男君       村井  仁君    山田  宏君       山田 正彦君    坂上 富男君       田中 昭一君    永井 哲男君       細谷 治通君    田中  甲君       吉井 英勝君    海江田万里君  出席国務大臣         内閣総理大臣  橋本龍太郎君         法 務 大 臣 長尾 立子君         外 務 大 臣 池田 行彦君         大 蔵 大 臣 久保  亘君         文 部 大 臣 奥田 幹生君         厚 生 大 臣 菅  直人君         農林水産大臣  大原 一三君         通商産業大臣  塚原 俊平君         運 輸 大 臣 亀井 善之君         郵 政 大 臣 日野 市朗君         労 働 大 臣 永井 孝信君         建 設 大 臣 中尾 栄一君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     倉田 寛之君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 梶山 静六君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 中西 績介君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      岡部 三郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 臼井日出男君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      田中 秀征君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      中川 秀直君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 岩垂寿喜男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 鈴木 和美君  出席政府委員         内閣法制局長官 大森 政輔君         警察庁刑事局長 野田  健君         防衛庁参事官  澤  宏紀君         防衛庁参事官  別府 信宏君         防衛庁教育訓練         局長      粟  威之君         防衛施設庁建設         部長      田中 幹雄君         経済企画庁調整         局長      糠谷 真平君         経済企画庁調査         局長      中名生 隆君         法務省民事局長 濱崎 恭生君         法務省刑事局長 原田 明夫君         大蔵大臣官房総         務審議官    武藤 敏郎君         大蔵省主計局次         長       伏屋 和彦君         大蔵省主税局長 薄井 信明君         大蔵省証券局長 長野 厖士君         大蔵省銀行局長 西村 吉正君         大蔵省国際金融         局長      榊原 英資君         国税庁次長   若林 勝三君         文部大臣官房長 佐藤 禎一君         農林水産大臣官         房長      高木 勇樹君         農林水産省経済         局長      堤  英隆君         郵政大臣官房審         議官      品川 萬里君         労働大臣官房長 渡邊  信君         労働省労働基準         局長      松原 亘子君         建設大臣官房長 伴   襄君         自治大臣官房長 二橋 正弘君         自治大臣官房総         務審議官    湊  和夫君         自治省行政局選         挙部長     谷合 靖夫君         自治省税務局長 佐野 徹治君  委員外出席者         議     員 保岡 興治君         議     員 永井 哲男君         金融問題等に関         する特別委員会         調査室長    藤井 保憲君     ————————————— 委員の異動 五月二十八日  辞任         補欠選任   金子 一義君     与謝野 馨君   栗原 博久君     蓮実  進君   穂積 良行君     七条  明君   江田 五月君     山田  宏君   松岡滿壽男君     鮫島 宗明君 同日  辞任         補欠選任   七条  明君     穂積 良行君   蓮実  進君     栗原 博久君   与謝野 馨君     金子 一義君   山田  宏君     山田 正彦君 同日  辞任         補欠選任   山田 正彦君     江田 五月君     ————————————— 五月二十八日  住専処理への税金投入反対、真相の徹底究明に  関する請願(中島武敏紹介)(第二七四〇号  )  同(山原健二郎紹介)(第二七四一号)  同(穀田恵二紹介)(第二七五一号)  同(古堅実吉紹介)(第二七五二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  特定住宅金融専門会社債権債務処理促進  等に関する特別措置法案内閣提出第三五号)  金融機関等経営健全性確保のための関係法  律の整備に関する法律案内閣提出第九四号)  金融機関更生手続特例等に関する法律案  (内閣提出第九五号)  預金保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第九六号)  農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する  法律案内閣提出第九七号)  特定住宅金融専門会社が有する債権時効の停  止等に関する特別措置法案保岡興治君外五名  提出衆法第三号)      ————◇—————
  2. 高鳥修

    高鳥委員長 これより会議を開きます。  内閣提出特定住宅金融専門会社債権債務処理促進等に関する特別措置法案金融機関等経営健全性確保のための関係法律整備に関する法律案金融機関更生手続特例等に関する法律案預金保険法の一部を改正する法律案農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案及び保岡興治君外五名提出特定住宅金融専門会社が有する債権時効停止等に関する特別措置法案の各案を一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。与謝野馨君。(発言する者あり)始めます。
  3. 与謝野馨

    与謝野委員 それでは、ただいま……(発言する者あり)質問を始めてよろしいですか。  それでは、総理大臣並びに大蔵大臣にお伺いしたいのですが、私ども日本社会は、大体この十年間いわゆるバブルの時期というものを経験したわけでございます。その中で、一九八五年にプラザ合意がございまして、日本円高を容認する、もしくは円高を誘導していくということを先進国合意をしたわけでございます。その後、円高に伴いまして国内円高不況がございました。  政府また日銀は低金利政策というものをやりまして、それが一つの原因となってバブルが発生したと言われておりますけれども総理大臣または大蔵大臣でも結構ですので、経済企画庁でも結構でございますけれども、大体十一年前に始まりましたバブル経済時代というものが一体どういうことで起こったのか、また、それに対してどういう責任政府は感じておられるのかということについて簡単に御説明をいただきたいと思っております。(発言する者あり)
  4. 高鳥修

    高鳥委員長 静粛に願います。
  5. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、大変申しわけありませんが、十分聞き取れなかった部分がございます。  しかし、そのプラザ合意以降、今日に至るまでを考えてみましたら、プラザ合意というものは、当時の国際経済の中で為替の安定した姿をつくり出すために、主要国の間で議論をされ採用された、私は手法であったと思います。そして、そのプラザ合意を受けまして、各国の為替調整というものはそれなりに進んでまいりました。  そして、日本におきましては、そのプラザ合意というものは急速な円高を招致したわけであります。そして、当然のことながら、その円高我が国経済に大きな負担を与える状況になりました。そして、その円高による不況というものを克服するために通貨の調節その他の手法が行われ、それが結果として、軌道を変えるタイミングを失する中でバブルを生じてしまった、私はそのような受けとめをいたしております。
  6. 高鳥修

    高鳥委員長 与謝野君、じゃ、ちょっと待ってください。  今、理事間で打ち合わせの結果、発言を求められておりますので、森本晃司君の発言を許します。
  7. 森本晃司

    森本委員 委員長の御配慮によりまして、発言の場を与えていただきましたこと、感謝申し上げます。また、与謝野委員に対しましては、質問の途中でございますが、我々の主張を述べさせていただく機会を与えていただきました。いましばらくの間よろしくお願い申し上げます。  本日、金融問題等に関する特別委員会開会宣言を先ほど委員長からなされました。私どもにとって、新進党にとって、こういったやり方に対して強い抗議を申し上げるものでございます。  金融問題等々については、国民皆さんが大変な関心を持っております。いわんやまして税金を投入するということに対しては、九割の国民皆さんが反対しているさなかでございます。この金融問題特別委員会は極めて大事な問題でございまして、我々も国民皆さんの前で大いに十分なる審議をしなければならないと思っているところでございます。その点を理事会等々で主張してまいりました。  同時に、予算委員会から持ち越されている加藤喚問問題につきましても、十分な検討をし、そして合意文からの約束事でございますので、ぜひ加藤喚問を実現して、そして国民皆さん政治家責任を明確にした上でこの審議に入るという姿勢を貫いてまいりました。  そういったことをこの理事会等々をあわせまして我々は主張してまいったわけでございますが、きのうの理事会におきまして、私どもがまだ納得していない、協議の最中にもかかわらず、しかも私どもは、あすから三日間総括審議をするのであれば、あすというのは二十九日から、当初は四日間の総括審議をやろうということを主張いたしましたが、どうしてもだめだということでございますので、あえて三日間の総括審議ということで、二十九日から三日間審議に入ろうということを我々は提案したわけでございます。  我々は審議に入ろうと言っているわけでございます。にもかかわらず、委員長は、委員長職権でもうきようからどうしても入りますということでございました。委員長職権を受けた後、与党理事の方から、我々が抗議しているにもかかわらず、何かおっしゃったようでございます。しかし、我々は抗議の最中でございましたので、我々にとっては聞くことができませんでした。終わりますと、今私の手元にございますが、こういうペーパーが配られてきたわけでございます。  開会九時からということも我々は納得しておりませんし、また、こういった、与謝野先生初め三人の自民党の委員先生方が御質問に立たれるということについては、我々も全く、その内容等々あるいは時間割り等々については、何ひとつ我々と協議をしないままにこういうことが掲載されたわけです。勝手に言って、勝手に決めた。通常理事会の場合には、こういった場合にはこの時間割り等々についてもよく話し合いをして、その上で民主的に進めていくのが本来の姿であります。  しかもその後に、本日の午後の休憩後に新進という欄がございまして、ここに四時間我々の質問時間が書かれているわけであります。これは考えてみますと、我々はまだだれが質問に立つかということも決めていない。そして、きょう質問に立つならば、通常でございますとゆうべの間に各省庁に質問通告というものをしなければなりません。それをやらなければなりませんが、きのうの終わった時点からは、とてもじゃないけれども質問通告はできない時間帯であります。にもかかわらず、そういったことがなされたわけであります。  我々は、理事会で五十五項目にわたる資料要求をさせていただきました。これがきのうの午後に出されて、そして質問する委員がこの資料に基づいて質問内容を吟味しなければならない、そういった意味で、あさってから委員会に入って十分な審議をやろうと主張したにもかかわらず、無理やりにこういった開会をされることにつきましては、我々は大変遺憾に思っております。この委員会やり方、それから委員長職権を通じての強硬なやり方には、我々は納得できません。  思い返しますと、この前の予算委員会のときもさようでございました。委員長がどんどんどんどん職権で、そして物事を進めていく。我々は、審議を行うについても、あるいは資料がないからしばらくの間休憩をとってもらいたいということを主張しても、にもかかわらず時計はどんどんどんどん進めていきます。  そういった状況を考えましたときに、私はあえてここで委員長に申し上げたいわけでございますが、既にきょうの委員会はこういう形で強硬になされてまいりましたけれども、今後も私は、きょうの開会については我が党は納得しておりませんが、今後の委員会のあり方も、また予算委員会と同様の進め方、強引なやり方をされるのですか。 ぜひそういうやり方をせずに、理事会等々でよく話し合った上での委員会進め方をされることを強く要望いたしますと同時に……(発言する者あり)  委員長、人が発言中にああいった不規則発言をするという人たちもいるわけでございます。我々は、そういったことにも一々抗議をする気はありませんけれども、いずれにしてもこの委員会、ぜひ委員長の公正なる運営をお願いをしたいと思うところでございます。予算委員会のときのような強引な進め方をぜひなさらない。しかも、この法律は六本ございます。十分な審議時間を我々野党にぜひ与えていただき、我々も一生懸命審議をさせていただきたいと思いますので、その点十分御理解をいただきたいと思います。  時間をちょうだいいたしまして感謝申し上げますとともに、ぜひ委員長におかれましては公正なる運営をされること、与党皆さんにはぜひ野党の我々の意見も十分聞いていただきますことを主張いたしまして、私の動議とさせていただきます。  ありがとうございました。
  8. 高鳥修

    高鳥委員長 森本君の発言は承りました。  それでは、質疑を続けます。与謝野馨君。
  9. 与謝野馨

    与謝野委員 そこで……(発言する者あり)
  10. 高鳥修

    高鳥委員長 静粛に願います。
  11. 与謝野馨

    与謝野委員 そこで、プラザ合意以降、円高にしようということで先進諸国合意をして、大蔵日銀政府を挙げて円高に向かったわけでございますが、そのとき恐らく金融当局が考えていた円高水準と実際市場で起こった円高水準というのは、むしろ円高が進んでしまった。その結果どういうことが起きたかというと、やはり大変な不況感国内であって、いわば円高不況という言葉が生まれて、政府もその対応に追われたわけでございます。しかし、どういうわけかその当時の政府は、財政でこの景気対策をやろうということよりは、むしろ金融政策、すなわち公定歩合を下げていくことによって景気を維持しようとした。  実際、六兆円という、有名な、大き過ぎる、遅過ぎるという予算ができましたのがその翌年でございまして、実際少し公定歩合政策円高不況を頼り過ぎたのではないかという反省が今あるわけでございますが、それに対しまして総理大臣あるいは大蔵大臣、その当時のことをよく、特に総理大臣よく御存じなので、その点は過去のことでございますけれども円高不況に対する対応というものが果たして後になって正しかったと思われるのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  12. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、よく申し上げることでありますけれども、その時点その時点におきまして、政策担当者最善と思う努力を当然のことながら選択いたしておると存じます。  ただ、確かにプラザ合意以降の為替の流れを振り返ってみましたとき、議員が御指摘になりましたように、予測よりもその上昇幅が大きかった。そして、それは我が国経済に非常に大きな負担を生じた。そして、これを解決するためにとられました施策というものはそれなりに有効でありましたけれども、今振り返ってみますと、そのどこかのタイミングで切りかえるべき時期があるいは見失われたのか。そして、早目に変更されるべきものがおくれたために、結果としてバブルを生じたという御批判を受ける部分はあったかもしれない。そのよう反省は私自身も持っております。
  13. 与謝野馨

    与謝野委員 それから、バブルに関して、政府日銀金融政策に関しては、確かにバブルは起きた、過剰流動性を発生して株価は上がる、また株価が上がるから土地が上がる、土地が上がるから株価が上がる、株価が上がるからまた土地が上がるといういわゆるらせん状物事が進んでいったわけですが、バブルを収束させるときの手段もまた少し乱暴過ぎたのではないか、ソフトランディングが失敗したのではないかという批判も実はあるわけです。その点については、総理は何か御感想はございますか。
  14. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 確かに、本院でも予算委員会等で御答弁を申し上げましたように、私自身大蔵大臣を拝命いたしました時点、既に地価というものが極めて大きな問題になっておりました。そして、その地価上昇をいかにして食いとめるかということは、国会における御議論の中でも非常に大きなウエートを持っていたと考えております。  そして、それに対して当時二つの問題が提起をされていたと思います。一つは、土地というものに対して基本的なルールをどう定めるか、これは後に土地基本法の方向に進んでまいりました。また、土地に対する税をいかに活用するか、そしてそれによる地価上昇に対するブレーキを考えるか、これは後に地価税の構想に収束していったと考えております。しかし同時に、土地というものに対する投機的な取引を抑制する手法として、資金の供給にブレーキをかけるということがもう一つの課題でございました。  そうしたものを振り返りましたとき、先ほども申し上げましたように、そのときそのとき最善と思う方法を選択して行動してきたとは言い条、後にバブルの崩壊という現象が出てきたことを考えましたとき、反省すべき点がなかったと、そのように申すつもりはありません。
  15. 与謝野馨

    与謝野委員 例えば東京をとりますと、実際バブル最盛期を一〇〇としますと、現在行われております土地取引というのは大体二〇です。実際、担保をとってあったものを抵当権を実行しますと、平均の回収率というのは一〇〇に対して一六とか一七とかいうことで、土地担保にとっていても実際貸したお金はなかなか回収できない、そういう状況にあります。  しかし一方では、一般国民は、土地の価格が常識的なところにあれば固定資産税もそうたくさん払わなくていいし、また相続のときも常識的なことで物事処理できるということで、国民は喜んでいる面もありますし、住宅も建てやすい。そういうことでございますが、事土地神話に頼った銀行金融機関は、この土地暴落でとにかく貸したお金が全く回収できない、そういういわゆる不良債権問題というのが発生しているわけでございます。  この住専の問題も実はそういう不良債権問題の一環でございまして、住専ばかりでなくて、一般金融機関、またノンバンクすべてもこういう問題を抱えておりまして、この総額が一体どのぐらいになるのかということは、公表されている不良債権あるいはまだ公表されていない債権、これはもう我々の常識を超えた不良債権を抱えて我が国社会というものは今走っているわけです。  そこで、銀行局長にお伺いしたいんですが、今公表されている不良債権というのは、金融機関としては一体どのぐらいあるのか、またノンバンク数字は恐らく持っておられないと思いますけれども、そういうものを足し合わせると、日本国民としてあるいは政府として、あるいは金融機関として、ノンバンクとして処理しなければならない不良資産というのは今一体幾らわかっているのか、それをお伺いしたいんです。
  16. 西村吉正

    西村政府委員 不良債権として私ども都市銀行から信用組合に至るまで総計をいたしまして発表している計数がございます。昨年の九月末現在の数字として三十八兆円ということを申し上げてきたわけでございますけれども最新時点、ことしの三月末におきまして三十四兆六千八百二十億円となっております。これはノンバンクに対する銀行貸し付けのうち不良債権化したものをも含んでいるわけでございます。  よく、ノンバンク不良債権を加えなければいけないではないかという御指摘もございますが、ノンバンク貸し付けの原資はほとんどが銀行等でございますので、それを加えるということになりますとダブルカウントになりますので、私どもはそういうものをも含めまして三十四兆六千八百二十億円、これが日本の全体の不良債権という考え方で臨んでいるところでございます。
  17. 与謝野馨

    与謝野委員 いずれにしましても、これだけ三十数兆という不良債権を持っている金融機関が、産業資本にあるいは商業資本資本を供給する、あるいは非常に積極的な姿勢金融業務というものをやりませんと、やはり日本景気というものは本物にならないということですから、私ども金融機関不良資産問題というのを、そう一年二年では解決できませんけれども、やはり今後二十一世紀を迎える日本としては、きちんと解決をして新しい時代を迎えなければならないと思っております。  そこで、今回の問題になっております住専処理の問題も、実はこれは金融機関不良債権問題の処理の第一歩でございまして、日本金融機関が抱えている不良債権問題の象徴的な存在としてこの住専の問題を政府与党挙げて取り組んでいると私は思っております。  しかし、大蔵大臣にお伺いしたいと思いますけれども、必ずしもこの問題は国民皆様方が十分まだ御理解いただけていない、まだ相当な批判が残っているという中で、大蔵大臣としては、やはりもう少し広く国民にこの問題の本質を御理解いただくという努力をしていただかなければならないと思いますが、その点はどういうふうにお考えでしょうか。
  18. 久保亘

    久保国務大臣 御指摘いただきましたように、住専不良債権処理に関しましては、まだ国民皆様方に十分な御理解をいただくに至っていない点がございます。特に私は、この処理方策の中で財政支出を行うことの必要性について御理解をいただく努力をさらに続けなければならないと思っておりますが、皆様方の両院を通じての熱心な御論議によりまして、住専問題を早期に処理しなければならないということについて、そしてまたこの住専問題の処理を通じて金融システムの安定のために、新たな時代における金融のあり方というものについても早急にその基本的な立場を確立しなければならないということについては、国民皆様方の御理解を相当に深めていただいたものと考えております。  今後この法案を成立をさしていただきましたならば、住専処理機構の今後の活動を通じて、その努力を通じてさらに国民の御理解をいただくよう努力をしてまいりたいと考えております。
  19. 与謝野馨

    与謝野委員 そこで、政府が使っておられる金融システムの安定という言葉は、実は非常にわかりづらい言葉でございます。私もこの住専処理策をつくるときに与党の一員としてかかわったわけでございますけれども、私は財政資金をなぜ投入するのかということについてもう一度考えてみました。  これは、住専が持っている資産十三兆のうち六兆五千億がもうとても返ってこない、六兆五千億、ちょうど半分だめになっちゃった。これは一体六兆五千億をだれが負担するかというときに、まあ金融機関銀行は五兆二千億を負担します、系統の方は五千三百億負担しますというところまで話が来たんですが、そこから先は話が進まない。進まないんだけれども、六千八百億を投入すれば全部の問題が一挙に解決できるというときに、これは六千八百億を惜しんで投入しないでその後の混乱を招いた方がいいのか、六千八百億を投入して問題をその場で解決した方がいいのかという選択を、恐らく大蔵大臣も相当悩まれたと思うわけでございます。  そこで、大蔵大臣にもう一度お伺いしたいのですが、財政資金を投入した方がいいという判断、大蔵当局として、やはり財政資金を投入してでもこの住専問題は解決した方がいい、国際社会からの要請からいっても、あるいは日本景気を浮揚させるためにも、また社会的な混乱を起こさせないためにも、やはり財政資金は投入した方がいいんだという判断を多分どこかの時点で私は大蔵省としてされたと思うのですが、そういう判断をされた背景について、少しわかりやすく御説明をいただければと思います。
  20. 久保亘

    久保国務大臣 これは、時間的に申し上げますならば、昨年の十二月十九日の閣議決定を行いました際に、財政資金の投入が最終的に決められるわけであります。その間に、かなり長い期間にわたりまして、政府におきましても、また与党協議におきましても、金融制度調査会におきましても御議論をいただいてきたところでございます。  最終的に財政資金の投入を行うことを決めますに当たりましても、これはやむを得ざる措置であるという判断であったと思います。これは、今与謝野さんがお話しになりましたように、日本経済の将来、それから日本の金融が、グローバル化が進みます中で国際的に果たすべき責任、そしてこの問題が早期に解決されなかった場合の影響、そういった問題について諸般の立場からの検討を重ねた結果、この際は、政策判断として、当事者であります銀行、系統金融機関等負担し切れない部分について財政資金を投入してもこれを解決することが、将来、日本経済日本の金融の問題を考えてまいります場合に最もとらざるを得ない、やむを得ざる措置だったと考えているのでございます。
  21. 与謝野馨

    与謝野委員 今大蔵大臣が触れられましたように、この問題というのはどうしても系統の問題になっていくわけです。系統という言葉はなかなか国民皆様方にはわかりづらい言葉でございます。これは農協、あるいは農協の連合体の県信連、あるいはその上部団体の農林中央金庫、この三つと県の共済連を入れたものを系統と我々呼んでいるわけでございますけれども、あの当時やはり農林系統の金融機関にも金余り現象が私はあったのだろうと思うのです。  それで、系統の方は貸出先がなかなか見つからないということで、やはり住専に大きく貸し込んでいった。それは総量規制があったから貸し込んでいったというよりは、むしろやはり金余り現象があって、優良な貸出先がない、十分な金利が確保できないという中で、私は、系統の方々の経営方針というのはそう精緻なものでもなかったし、今考えると十分利口であったかどうかは別にして、系統の方の考え方が、やはり住専という会社は銀行が出資している、役員の名前を見てもみんな銀行出身の人たちが来てやっている、中には大蔵省の方もそこに行っているということで、農林系統の方から見れば、住専というのはこの世で最も信用のできる金融機関に映ったに違いない、ノンバンクに映ったに違いない。  その点は私は系統には同情的なんですが、実際は、この住専処理スキームというのは何を目指しているかというと、系統金融が住専に貸し込んだ五兆五千億のお金が無事系統に戻るような仕組みを実はつくっているわけです。  その点、農林大臣、多少財政資金を使って、六千八百億も使って農林省の監督のもとにある系統金融を実際は救済しているんだという声がありますけれども、これはやはり真実の一面を私は含んでいると思いますが、農林大臣はその点についてどういうふうに思われますか。
  22. 大原一三

    ○大原国務大臣 今委員指摘ように、当時として、確かに住専というのは大蔵省の監督下に置かれたノンバンクでございますし、さらにまた、その設立の母体行の極めて優秀な銀行が関与していらっしゃること、さらにまたそのメンバーは、御指摘ように役員は大蔵省あるいは超一流銀行の重役の方々。  御承知のように、今御指摘がありましたように、金余り現象、御指摘のとおりであります。貯貸率が非常に悪い。それが農林中金に参り、あるいは系統からいわゆるノンバンクである、しかも大蔵省直轄でございます住専に行ったという実情はまさに御指摘のとおりでございます。  さはさりながら、大蔵大臣からお話ありましたように、十二月十九日の決着に際して、系統としては、いわゆる母体行責任ということをるる強調をいたしたわけでございます。その辺はもう何回も、委員の最初の予算委員会での御質問にもお答えしたところでございますが、何らかの負担を要請をされました。いろいろ計算してみますと、底は浅い、内部留保は少ない、そういう状況の中で、我々としては、ぎりぎりと申しますが、これ以上の負担をすれば次からの系統の金融の運営に支障があるということで、五千三百億円を前農林大臣のときに決定を見たと思っております。その際に、六千八百五十億円が投入されるということは我々としては全く関知していなかった、農林水産大臣はかように私に引き継ぎをいたしたわけでございます。  いろいろ、委員指摘ように解釈のしょうはございます。六千八百五十億がなければ一体どうなったであろうかということを考えますと、やはりあの決着のスキームの中でやむを得ない決断であったのではないのかな。御指摘ように、今回のスキームが壊れますと、五兆五千億円という融資が返ってこないという事態も予想されるし、さらにまた、利子の不払いが六百億ほど残っていますが、これについても焦げつきが出てくる可能性がございますので、我々としては、委員指摘のとおり、現在のスキームが最上のもの、何とか早く決着をしてほしいというのが本音でございます。
  23. 与謝野馨

    与謝野委員 やはり農林大臣、これは全体のスキームとしては、実は農林系統を救済するという色彩が非常に強いスキームなんですよ。別に農協とか県信連を助けようとしているわけじゃないですよ。これは、農協の系統の金融機関が持っている預金量というのは七十兆を超えているのですよ。七十兆という預金というのは一体どのぐらいの預金かと申しますと、日本全体の個人が持っている預金というのは大体七百兆をちょっと超えたところです。だからその十分の一を農協が持っているわけです。私どもは、農協という農業団体を助けたとは思っていないのです。農協という金融機関が今後健全性を確保していくためにこの住専処理スキームをつくったと思っております。  七十兆というお金は並大抵のお金じゃないです。ちょっと三年ぐらい前の数字からいえば、イギリス国民が全体で持っている個人の総預金量というのは大体七十兆です。フランスも大体七十兆ですよ。だから、七十兆という預金量を持っているということは、金融機関としては相当の責任があるのです。その相当責任のある農林系統の判断が住専に五兆五千億も貸し込んだということについて、多少今、自省自戒の心はないのか。  確かに金余りがあった。確かに住専というのは見かけは大変信用のあるノンバンクに見えたけれども、果たして系統金融が正しい判断をしていたのかなと私は疑問に思っているのです。同情すべき点はたくさんあります。住専というのは、見かけは大変優良会社です。しかし、そこに経営判断としての甘さがあったのではないかという御指摘については、農林大臣どういうふうに思われますか。
  24. 大原一三

    ○大原国務大臣 今となってみますと、やはり自省自戒がなかったらうそであります。二度とこういうことが起きないような、いわゆる現在までの、端的に言えば農協系統金融機関は護送船団の代表選手でもあったかもしれません。その自己責任原則と透明性、ディスクロージャー、こういったことを果断に組織の改編と同時にやっていかなければならぬ使命を、私たちはしっかりこの問題を通じて委員指摘のとおり自省自戒して受けとめなきゃならぬ、かように思います。
  25. 与謝野馨

    与謝野委員 そこで総理に伺いたいのですが、この住専処理のスキームを実行しなくても金融不安は起こらないという人もいるわけです。いや、そうじゃなくて、やはりこれをちゃんとやっておかないと日本の金融の将来に対して多少不安だなという人もいる。この不安は起きないという人の主張も不安が起きるという主張もどっちも証明できないというときに、政治家はどう判断すべきかという問題が実はあるわけです。  不安は起きない起きないという主張をする方もいるし、やはり将来ちょっと懸念されることがあるよというこの二つの主張があったときに、政治家はどっちの道を選ぶべきか。総理はどういうふうに考えられますか。
  26. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、大蔵大臣、また農水大臣からもそれぞれの角度で御答弁を申し上げましたように、私はこれは問題があると思っております。そして、本院におけるこの住専問題の御議論の中でも、私ども日本金融機関の抱える不良資産の問題を処理していくためのこれを突破口にしたい、喫緊の課題としてとらえました。一方で、氷山の一角というとらえ方をされていた御論議もあります。  そして、仮にこの住専処理法案が成立をしないといった事態が起こりました場合に、系統への五兆五千億というのは、これは返ってまいりません。当然ながら大変な混乱を生ずることになります。そして、住専問題というものが、非常に多額の損失をめぐって多数の関係者の利害が非常に錯綜しているという状況であることはもう既に御承知のとおりでありますから、関係当事者間の話し合いだけでは解決を得られない深刻な状況を呈しておりました。  そうした中におきまして、私は今回の住専処理策というものが国民の皆様の預金を守る、そして経済の動脈としての我が国の金融というものに対する内外の信頼性を確保する、そしてそれが景気回復を確実なものに、そうした考え方の中におきまして、我が国の命運に責任を持たなければならない政府与党の立場として、まさに国民のために決断をしてきたもの、そういう位置づけをいたしております。
  27. 与謝野馨

    与謝野委員 私は、橋本総理の御意見は正しいと思うのです。そういう金融不安は起きないという人と、それから起きるかもしれないという両説があって、どちらも証明できないときは、やはり政治家は安全な道を選ぶべきだと私は思うのです。  こういう金融問題で国民を巻き込んで実験をするということはできないです。だから、用心深く用心深く政府がやるということは私は当然のことだし、今回、先ほど申し上げましたように系統の金融には七十兆の預金があって九百万人の預金者がいるわけです。今は世の中が発達していますから昔みたいな取りつけというのはなかなかないわけですけれども、我々が心配しなければならないのは、静かかつ大量の預金の移動ですよ。これもある種の形を変えた取りつけなんです。そういう預金シフトが起きますと、やはり金融機関経営というのは危殆に瀕する。  これは、私はこの予算委員会での住専問題の議論をずっと聞いておりますと、昭和二年の金融大恐慌のときの議論とそっくりの議論をしているのですよ。まず、その当時も政党間の政略的な争いがありました。そういう中で、昭和二年に政府提出しました震災手形二法という法律が実は国会で議論されたわけです。  そのときもどういうことが起きていたかというと、大正時代に第一次世界大戦があって日本は大変な好景気になった。その後関東大震災が来て、その前の好景気の反動プラス関東大震災ということで大変な大不況になった。そこでこの震災手形というのが振り出されて、震災地で手形を出せばそれを金融機関割り引いてくれて、それを日本銀行が再割引するということで、日本銀行に膨大な不良債権がたまった。  そこで、これは何とかしなければならないということで、その当時の若槻内閣が震災手形二法という法律を出して、一億円を限度として日本銀行のそういう債務を面倒見ましょうということだったのですが、まあ国会では大きな騒ぎになって、橋本総理のお父様の時代政治家で星島二郎さんとか武藤山治さんとかという議員が質問に立って、質問は今野党皆さんがやっている質問と全く一緒です。一つは、国民の膏血を一部政商に投入するのはけしからぬ。それから、情報開示なんというしゃれた言葉はなかったのだけれども資料を見せろ、要するに情報開示をしろ、責任問題を明らかにしろ、こういう三つのことを延々とやっていたわけです。  延々とやっていて結論が出ないうちに、三月十四日に、その当時の片岡大蔵大臣予算委員会の場で、きょうとうとう渡辺銀行が破綻に至りましてという答弁をした途端に渡辺銀行、中井銀行ほか二行が取りつけに遭って、金融恐慌のスタートがあったわけです。  それで、衆議院と貴族院は慌ててとにかくこの震災手形二法というのを国会で通す。しかし、その当時は天皇の御裁可を得なければならないから、枢密院というのがあって、四月十七日にこの震災手形二法というのを否決するわけです。否決する理由は、台湾銀行責任が明らかでないからこの法律は通せないということで、若槻内閣が倒れて田中義一内閣に移ったわけです。  それはいいのですが、実は、野党がその後この震災手形を処理しなければならないといって出した法案は、若槻内閣が出した法案と全く同じ。しかし、そこで政治がこういう金融問題を政治的に利用したために、結果的に政府の支出というのは、一億円であればよかったものが最終的には七億円のお金が要った。七億円、七倍のお金が要ったわけです。ですから、こういう金融問題を余り政党間の政治に利用しますと、結果は国民経済が大変な混乱になる。しかも、結果的には政府財政支出というのはその当時でも七倍になった。ですから、これは我々はやはり歴史に学ばなければならないところがあるわけですよ。  それで、この昭和二年に金融の問題の処理を国会が失敗したために、政治が失敗したためにどういうことが起きたか。昭和四年にはウォール街で株の大暴落があった。日本は大不況になりました。もう失業者があふれる、会社が倒産をする、いろいろな金融機関もどんどん倒産する、そういう一連の引き金を、実は政治の不手際が引き金を引いたのですよ。  だから私は、この住専の問題は政党の政略には利用してはならない。静かに迅速に解決するということがやはり政治が国民に対して果たさなければならない責任だと私は思うのです。これは、金融問題でそのときにとにかく失敗したために、五・一五事件とか満州事変とか二・二六とか、ずっと暗い時代の幕あけになった。やはりこれは、国会が政党の政略を離れて国民のために迅速に処理をしなければならない責任があると私は思うのです。  先ほど総理もそういうことをおっしゃいましたが、この住専処理というものは、実は住専の問題ではなくて日本の金融体系全体の問題だということを、やはり総理の言葉でこの場から国民にきちんとお訴えをする必要があるのじゃないかと思います。
  28. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今まで何回も繰り返して申し上げてまいりましたが、先ほど政府委員の答弁でも、日本金融機関の抱えております不良資産、三十八兆円と言われておりましたものが多少減価して、今三十四兆幾らという話がございました。しかし、その金融機関不良資産処理していかなければ我々は新たな金融秩序というものの再構築に向かえないわけであります。  そして、ここでも何遍も議論になりましたように、かつて、護送船団方式と言われる行政の指導の中で、我が国の金融システムというものはそれなりに安定してまいりました。そして私は、その時代においてはその護送船団方式と言われたやり方は正しかったと思います。しかし、その後金融自由化が進み、金融というものを取り巻く環境が大きく変化してくる中で、行政の対応がおくれたこともこれは事実です。そして今、自己責任原則というもの、透明性というものを非常に大きく掲げながら新たな金融秩序を構築しようとする時点におきまして、我々はこの不良資産の問題を処理しなければならないのです。  そして私は、ですから、氷山の一角と言われた野党の言い方も間違っているとは思いません。同時に、我々はこれを突破口として不良資産処理をしていこうとしているのだという我々の視点も間違ってはいないということだけはお認めをいただきたい。  そして、全力を挙げて、この住専問題を突破口として我々は不良資産問題を処理しながら新たな金融秩序の再構築に全力を挙げて取り組んでいく、そして金融自由化の時代にふさわしい金融の仕組みというものを、改めて国民の信任を得られるものにしていこうと全力を尽くしております。ぜひ御協力をいただきたいと思います。
  29. 与謝野馨

    与謝野委員 大蔵大臣金融機関に対して預金者が信頼を持つというのがやはり信用秩序の第一歩だと私は思うのです。  金融不安というのは起きないんだということをよく言う人がいますけれども、金融不安というのはちょっとしたことで実は起きるのです。  例えば、愛知県のある市の大変信用のある信用金庫で起きた事件をお話ししますと、その信用金庫に実は就職したいと思った女子高校生がいた。ところが、成績が十分でなくてその信用金庫に就職できなかった。帰りの電車かバスの中で友達とつり革につかまって、あんな信用金庫、近くつぶれるわよ、こう言ったのです。そうしたら、前に座っていたおばさんが多少慌てん坊で、その信用金庫が本当につぶれると思ってしまった。家に帰って、その信用金庫から自分の預金を全部おろすと同時に、親戚じゆうに全部電話した。親戚も全部預金をおろして、親戚もおしゃべりが多くて町じゅうの人に全部話した。そうしたら、その信用金庫にはもう町じゅうの市民が殺到して実は取りつけが起きたのです。それで、日本銀行の名古屋支店は現金をトラックでどんどん輸送して、その不安を抑えるために預金の払い戻しに応じたという有名な事件が、実はもう二十年ぐらい前にあったわけです。  そのぐらい、ちょっとしたマッチをすれば金融不安というのは起きるのです。金融不安が起きますと、直ちにそういう金融機関というのは経営危機に瀕するのです。だから、預金者が不安を持たないというのが金融行政の第一歩であり肝心かなめのところだろうと私は思うのです。  ですから、今回の住専処理スキームは、私は東京出身の代議士ですから何の農協に同情する余地はないし農協の方におつき合いはないのですが、やはり系統金融に預金をしている九百万人の預金者に不安と動揺を与えないというところが一番肝心かなめのところだと思うのです。  そのためには、少し農林系統の五千三百億は少ないのじゃないかという批判が、実は農林大臣、あるのですよ。もうちょっと出していただけませんかという声が実はあるのですが、五千三百億というのは本当に系統金融のぎりぎりの体力の限界なのか。これはこの前から農林大臣の答弁、いろいろ聞いていますが、本当にぎりぎりなのかという点についてはまだ私自身納得してない。その点についてもう一度御説明をいただけないでしょうか。
  30. 大原一三

    ○大原国務大臣 何回もお答えをしたつもりでありますけれども、五千三百億円が、農協にとってなお負担余力があるのではないかという御質問だと思います。  端的に申しまして、農協の内部留保というのは、協同組合でございますから、いわゆる内部留保をしない、必要最小限度にとどめるというのが協同組織の本則でございます。したがって、現在内部留保は、七年三月の決算では正直に言って一兆三千億円しかございませんでした。その中の五千三百億を拠出するのでありますから、金融機関としての経営に影響を与えるところは極めて甚大でございます。もし委員指摘ように破産が起き倒産が起きるということになれば、支払い余力がないではないかという御指摘も受けざるを得ないわけでございます。  しかも、五千三百億を端的に九百万の預金者で割っていただきますと、一人六万円でございます。その一人当たりで一家五人の場合は五、六、三十万、これを拠出しているのでありますから、これ以上農家、農民にさらなる負担をよこせというのは、いわゆる母体行の超大型の内部留保と、さらにまた預金者の負担ということを考えますと、明らかに均衡を失するのではないか、こう私は今考えております。
  31. 与謝野馨

    与謝野委員 大蔵大臣にお伺いしたいのですが、この問題は、しょせんは民間同士の問題じゃないか、政府がわざわざ口を出さなくても、裁判所に行って破産法とかその他の法規で解決すればいいじゃないかという議論が実はあります。私はこれには反対なんですが、これはやはり国民にわかりやすく、なぜ法的な処理が難しいのかということはちゃんと説明しておく必要が私はあると思うのですが、その点、大蔵大臣お答えになっていただけますか。
  32. 久保亘

    久保国務大臣 予算委員会で御審議をいただきました際にも、これは民事の問題であるから法的処理に任せよという御意見もございました。法的処理は、破産処分にする場合、もう一つは会社更生法を適用する場合について御主張がございましたが、まとまってこの方法でということで具体的な対案的なものとしての御意見はございませんでした。  これはなぜかといいますと、破産処理にいたします場合には、今与野党を通じて御意見のございます母体行責任ということに逆行するのではないか、そして、その負担は系統金融機関により大きくなっていくのではないか。仮に債権に対する比率で六兆四千百億を負担するということになりました場合には、経費を別にいたしまして、母体行の場合は一兆七千五百億、一般行の場合には一兆九千億であります。それで、系統金融機関の場合には二兆七千五百億ということになろう。これでは、今農水大臣も御答弁になりましたいわゆる母体行責任住専問題に対する母体行の責任ということを果たすことにならないのではないか、そういうことが一つございました。  それから、会社更生法を適用いたします場合には、果たして再建の見込みがないものに対して裁判所がその認定を下すことができるのかどうかということで御議論もございました。そのことは実際には難しいのではないか。  結局、政府が、今お話がございましたように、実験をしてはならない可能性を考える場合には、その可能性を政府責任において防ぐことが日本経済国民の利益を守る道である、こういう判断に立たざるを得なかったものであります。私といたしましては、そのような立場で決定をされました昨年十二月十九日の決定を、橋本内閣としてもこれを引き継ぐことを決定をし、この国会に御審議をお願いをいたしているわけでございますから、ぜひ御理解を賜りたいと考えております。
  33. 与謝野馨

    与謝野委員 一部の政党から、これは法的に処理しろ、こういう御意見が出ましたけれども、普通の会社の倒産とか破綻というような場合は、会社更生法を使う場合もありますし、和議を使う場合もありますし、破産法を使う場合もありますけれども、今回のこの問題は当事者が多過ぎる。まず、金融機関が大体二百ある。系統が九十五ありますから、これは掛け算したら、法律関係だけで二万の法律関係ができるわけで、しかも債権債務の関係が大変複雑になっていて、そんなこんがらかった糸をほどいている暇はないのです。それは十年、十五年かければほどけるかもしれないけれども、時間をかけて解決したのでは意味がない。  しかも、例えば、大体三百の当事者がいますから、一社十人弁護士の方に来ていただいて手伝っていただいたって、それは三千人の弁護士が必要なんです、三千人の。それで、日本国じゆうに一万八千人しかいない弁護士のうち三千人が住専問題をやっていたら、それは法律費用が物すごくかかる、社会的なコストが物すごくかかるということで、こういう法的処理というのは現実的でない。  しかも、一部会社更生法をやろうという意見がありましたけれども、今大蔵大臣が言われたように、再建の見込みのないものに会社更生法なんというのは裁判所は認定するわけがない。それから、実際、例えば認定したとしても、住専側が三分の一以上の議決権を持っているからこれは成立しないというので、実はこの住専処理スキームというのは、社会的コストの面では最も安い方法で処理をしているのです。  これは、法的に処理をするといったって、今東京地裁に行ってごらんなさい。東京地裁はオウム事件で忙しくて、民事部の裁判官も全部刑事部に行って、オウム裁判の応援をしているのですよ。住専からあるいは系統からどんどん民事訴訟が起きたら、こんなものはとにかく東京地裁、裁判所で処理ができないほどの争い事になる。十年、十五年かけてはこの問題の処理は意味がない。だから、一部の方々が主張していた法的処理というのは、確かにそういう方法はあるけれども、現実性がないということと、社会的費用、法律費用がかかり過ぎるということで、これはとり得ないというふうに私どもは考えました。  西村局長に伺いたいのですが、法的処理ということを大蔵の事務当局で考えたことがあるのか、あるいは考えたのだけれどもやはり難点が多過ぎて難しいというふうに判断されたのか、その点を簡単に御説明をいただきたい。
  34. 西村吉正

    西村政府委員 私どもも、金融機関の破綻処理において法的な手続というものが有効であることは承知をしておりますし、今回の御提案申し上げております法律の中にも、そういう手続をスムーズに行うための法案もございます。  しかしながら、ただいま与謝野委員指摘ように、今回のこの住専という問題について申し上げますならば、法的な手続というものによって解決することは非常に難点の多い問題だ、このような判断をいたした次第でございます。
  35. 与謝野馨

    与謝野委員 そこで、住専問題というのは急にきのう悪化したわけではなくて、徐々に徐々に悪化してきたわけですね。一次再建策、二次再建策と、こういろいろやってみたのだけれどもうまくいかなかったというのですが、国民の目から見ると、住専に対して、金融界、この母体である銀行も、あるいはこういうものを監督している大蔵省も、もう少し早く手を打てなかったのか、そういう実は批判があるのです。特に二次策については、問題を先送りをしたのではないか、そういう批判も実はあって、国民は行政に対する批判というのは割に、大蔵大臣、厳しいのですよ。問題を先送りをしてきたのではないか、その批判は実はあって、金融行政そのものをやはりちょっと見直さなければいけないなんという議論も出てきている。  これはもう過去のことですから、もう済んでしまったことですから今言ってもしょうがないのですが、やはり国民の気持ちとしては、この間、住専の母体である金融機関はちゃんと自分の子会社の住専を指導できなかったのか、あるいは住専を貸金業法を通じて監督している大蔵省は一体何をやっていたんだ、それから農林大臣、農林省は系統金融の監督官庁、一体何をやっていたんだ、みんな。そういう批判は実は非常に強いのですよ。  ですから、その反省の弁を込めて、大蔵大臣、農林大臣からちょっとその件についての御感想は承る必要があると思っています。
  36. 久保亘

    久保国務大臣 御意見がございますとおり、この住専の問題について結果的に先送りになりましたことがこの傷口を広げることになったと思っております。そして、今、これ以上の先送りを許されないという状況の中で、我々は、とり得る最善の策を考え、皆様方に御審議をお願いをしているわけでございます。  したがいまして、このような事態に至りますまで、その時点時点においては一生懸命に判断をしてまいったと思いますが、振り返って、的確な判断がなされたかどうかというようなことについては、十分に責任を感じなければならないことであると考えております。
  37. 大原一三

    ○大原国務大臣 我々としても一方の当事者でございますし、今大蔵大臣がおっしゃいましたように、その責任の重大さは極めて我々としてもしっかり受けとめなければならぬと思っております。同時に、先ほども申し上げましたが、今までの金融のあり方については、民間銀行以上に、市中銀行以上に、今後その再建、整備に当たってもっとドラスチックな改革手法をとっていかなきゃならぬ、かよう反省をいたしております。
  38. 与謝野馨

    与謝野委員 住専処理に公的資金、財政資金を投入するわけですから、この間得をするというような人間がいては困るわけです。借り手で、お金を借りておいてどこかに一千億もお金を隠していた人がいたり、私的に流用したりといういろんな不祥事が多分あると思います。そういう問題で、やはり住専からお金を借りている人の責任もちゃんと追及しないと、またそこから回収してこないと国民はなかなか納得しないという面もありますが、今後借り手責任住専に対する債務者の責任、これについて大蔵大臣はどのような御決意で臨んでいかれるのか、その点についてお伺いしたい。
  39. 久保亘

    久保国務大臣 今回御提案を申し上げております法案の中にも、預金保険機構に対して罰則で担保されました財産調査権を与えることにいたしております。  なお、既に、現行法において追及すべきものにつきましては、国税、検察、警察の全面的な協力のもとに毅然たる追及を行っているつもりでございます。
  40. 与謝野馨

    与謝野委員 そこで、今回、住専処理法案のほかにいわゆる金融三法というものも出しておりますし、あるいは民事執行法、あるいは商事債権時効を延長するというような議員立法も出ております。  金融三法については信用組合の将来の破綻に備えたスキームをつくるというわけですが、今回の住専処理法案と金融三法の関係というのは国民皆様方よくまだおわかりいただいておらないと思います。局長で結構ですから、住専処理法案というのはこういう法律です、それから金融三法という一緒に出している法律はこういう法律ですというのを手短に簡単に国民に御説明をいただきたい。
  41. 西村吉正

    西村政府委員 金融三法は、先ほど三十四兆円余りに上ると申し上げました不良債権問題をできるだけ金融全体として早期に処理すること、また金融機関経営の健全性を維持するためのいわば一般原則を示したもの、あるいは今後五年間の時限的な措置の一般原則を示したものと考えております。  これに対しまして住専処理法は、既に生じてしまった最大かつ象徴的な不良債権問題を緊急避難的に、一刻も早く処理するために、先ほど総理のお言葉では突破口というお言葉もございましたが、この不良債権問題解決の突破口とするための緊急避難的な処理策として御提案を申し上げている次第でございます。
  42. 与謝野馨

    与謝野委員 住専処理法案というのは過去起きたことに対する処理策、それから金融三法は今後起きるであろう信組を中心とした金融破綻を未然に防いだりあるいはそれに対する対応策を今からつくっておくという、将来に対するものと過去に対するものというふうに私は仕分けをしているわけでございます。  そこで、私がお伺いしたいのは、その中でまず預金保険というものの仕組みをさらに充実させなければいけない。要するに、預金保険といって威張ってみてもお金を持っていなければだめなんで、何かあったときに預金保険がちゃんと後始末ができるお金を持っているという必要があるのです。今回は今までの預金保険料が一挙に七倍になるということなんですが、七倍は二つの部分に分かれておりますけれども、これも西村銀行局長一般的な預金保険料の引き上げとそれから今後五年間の預金保険料の引き上げと、どこがどう違うのかということはまず第一にお話をいただきたい。
  43. 西村吉正

    西村政府委員 現在の預金保険制度のもとにおきましては、一千万円以下の預金について保護をしているわけでございます。しかしながら、現下の金融情勢あるいはディスクロージャーの状況にかんがみまして、今後五年程度の間は一千万円を超える預金もあわせて保護して金融システムの安定に資する必要があるのではないか、このような考え方をとっているわけでございます。  預金保険料を七倍に上げるわけですが、そのうち四倍相当分は従来の枠組みに対応するためのもの、三倍相当分はこの五年間の緊急事態に備えるためのもの、このような位置づけをいたしております。
  44. 与謝野馨

    与謝野委員 総理大蔵大臣、この議論の場で簡単にみんな自己責任原則なんという言葉を使うわけですよ。これは、しかしそんな簡単な話ではなくて、自己責任原則というのは、預けた預金がもしかしたら返ってこないという事態を国民に考えてくださいよということを言っているわけです。五年後には自己責任原則の世界に入りますというのです。預金保険料でカバーしている一千万円以上は政府日銀もだれも責任を持ちません、だから自分の銀行は自分で選んでください、自分の金融機関は自分が責任を持って選んで預金をしてくださいという話なんで、そのための預金保険料、今までずっとやってきましたけれども、今までは、たとえ仮に預金保険料が一千万円までしか掛かっていなくても預けた預金は全部返ってくるという仕組みを、実は金融行政全体が保証していたわけです。  ですから、木津信用組合みたいに、とにかく一兆三千億しか預金がないところが破綻をして、その中の不良債権というのは一兆一千億ですよ。一兆一千億を超えている。実際、木津信に残っているお金というのは千五百億か二千億しかない、そんなひどい金融機関に預けてあった人たちも、預金だけはちゃんと、どんな額であれ払い戻してもらった。とにかくもう日銀がどんどん現金を輸送して、とにかく店頭に札束を積み上げて、預金払い戻しに来る人にみんな払って、とにかく始末をしたわけです。みんな今でもそういう世界にいるのですよ。どの銀行に預けてあっても、どの信用金庫に預けてあっても、どの信用組合、どの場所に預けてあっても、幾ら預けてあっても、とにかく預金は返してくれるという仕組みが今の仕組みなんです。  ところが、自己責任原則、自己責任原則と、国民がわからないうちにそんな言葉が使われているのですが、これは、五年後には一千万以上は国も金融当局も一切責任持たないという世界をつくるわけですよ。これはよく国民皆様方理解をしていただかないと、金融機関大蔵省と日銀を信用して自分の退職金全部預けておいたのだけれども金融機関が破綻したら一千万円しか返ってこないという世界をつくり出せるかどうかということなんです。これはむしろ、大蔵大臣、制度の問題じゃないのですよ。国民の考え方を全部変えないとそういう制度に移行できないという問題があるのですが、五年後に本当にそういう自己責任原則の世界をつくり得ると、また、つくるためには一体どういうことをしなければならないかということを大蔵大臣からお伺いしたいと思うのです。
  45. 久保亘

    久保国務大臣 自己責任原則と市場規律に基づいて、新たな時代の金融システムが確立をされていくことが求められているわけであります。  今でも、預金保険機構としては一千万のペイオフを実施しようとすればできるわけでありますが、なぜ今はできないか。これはお話がございましたように、自己責任原則ということについて、国民全体がその理解の上に立ってお互いの約束事ができ上がっていないからであります。  なお、自己責任原則や市場規律を基軸とするということを主張いたします場合には、当然に預金者、つまり金融機関の利用者に対して情報が余すところなく開示されているということがなければ自己責任原則を押しつけることはできない、こう思っております。したがいまして、これから五年間におけるこの金融システムの確立に当たっては、そういう自己責任原則を中心に置きながら進めてまいります中で、情報の開示とあわせて、国民皆さんとともに、今後の新たな時代の金融のあり方について相互に十分な理解が生まれることが必要であると考えております。
  46. 与謝野馨

    与謝野委員 それで、今、大蔵大臣言われたとおり、やはり五年後には一人一人の預金者が、自分が預けてある金融機関の健全性が保たれているのかどうかということをみずから知る立場にないと判断ができないわけです。そのために今後、金融機関に対する検査・監視体制、そしてその検査・監視の結果の、ある種の情報開示という判断材料を国民が持っていないと、急に自己責任原則だから預金は一千万以上は払い戻さないよと言われたって、何にも知らないで預金をしていたのにひどいじゃないかという話になるのです。  しかし、今の、金融に対していろいろな検査とか考査とかというのをやっているのは、まあ大蔵省を中心にやっている部分と、それから日銀が個々の取引を各銀行とやっていますから、考査という制度を通じてそれぞれの個別の金融機関の健全性を見ている。また預金保険機構も、多少、預金を引き受ける以上はその相手の金融機関の健全性を見ていなければいけないわけですが、今の検査・監視体制で自己責任原則に移行するために十分なものになっているのか。今後さらに補強をして検査・監視体制が円滑に行われるような仕組みを考えた方がいいのか。  まだ結論は出ていないと思いますけれども、大体大筋、大蔵大臣としては、今後自己責任原則、五年後には自分の金融機関の健全性は自分で判断しなければいけない。そのためにはしっかり金融機関を見張っていなければいけないし、見張った結果、いろいろなことを国民、預金者に知らせる必要がある。今の金融行政の体制、検査の体制で十分なのか、あるいは多少改良、改善、改革の余地があるのか、その点はどういうふうにお考えになっておられますか。
  47. 久保亘

    久保国務大臣 今回御提案申し上げております金融法案の中にも幾つかの改善すべき点について取り上げていると思っておりますが、早期是正でありますとか外部監査の問題、モニタリングの徹底の問題などがあると思いますが、そのような検査、監査上の問題だけではなく、検査や監督の機構などについても十分に今後改善の方向で検討すべきものと考えております。
  48. 与謝野馨

    与謝野委員 そこで、人によっては、もういいじゃないかと。そんな五年も待たなくて、例えばアメリカと同じように、もう破綻したら一千万までしか返さないという仕組みで、二年後でも三年後でもいいじゃないかというのです。私は、まだ国民のメンタリティーというか、金融に対する考え方が変わっていないうちにそんな世界に突入すれば混乱を増すばかりだと思うのですが、なぜ今後五年間も自己責任原則を確立するまで待たなければいけないのか、そういう議論も実はあって、その五年間というのは一体何を意味するのか。これはちょっと御説明をいただきたいと思うのです。
  49. 久保亘

    久保国務大臣 少なくとも五年後にはということであると私は理解をいたしております。極力これらの体制を整備しながら、早く不良債権処理され、そして自己責任原則が確立される、そういう時期を見出さなければならないと思っておりますが、五年というのを最終期限としているものだと考えております。
  50. 与謝野馨

    与謝野委員 そこで、次に出ておりますのは、早期是正措置に関する法律です。  これは、私の理解では、例えば信用組合を診断してみたら少し体力が弱っているな、このままほっておくとどんどん悪くなるというときに早目に治療や手当てをする、そのためには政府大蔵省が会社更生法を準用してその信用組合を立て直す、そういう法律構成になっておりますけれども西村局長、これを非常にわかりやすく説明をしていただきたい、早期是正措置というのは一体何なのだと。
  51. 西村吉正

    西村政府委員 早期是正措置は、現在アメリカにおいて既に導入されているものでございますが、私どもも、そういうものを参酌しながらこの措置を導入したいと考えているわけでございます。  その趣旨は二つあろうかと思います。一つは、金融機関の健全性維持、あるいは破綻処理について迅速に手続を進める、迅速性の問題でございます。もう一つは、その判断をする場合に透明でなければならない、行政措置をとる場合の判断が透明であること、この二つの、迅速性、透明性というものを私ども、今までの行政の反省の上に立ちまして、この早期是正措置というものによって確保してまいりたい、このように考えているところでございます。
  52. 与謝野馨

    与謝野委員 過去、二信組の問題とかそういうときに、何か、お金を貸している理事長と借りている会社の社長が同じ人物だったり、何だか変だな、利益相反する人たちが商行為をやっているような感じもあって、信用組合なんかの役員というもの、あるいは監査制度というものをちゃんと充実しないとやはり信用組合の健全性は保てないという意見もあって、多分こういう法律ができてきたのだと思いますが、金融三法の一つの柱ですから、それについても、どういう趣旨でこの法律を出されたのか、御説明をいただきたい。
  53. 西村吉正

    西村政府委員 昨年の通常国会でも数々の御指摘をいただきました。その中に、信用組合等の役員が他の事業の役員を兼職しておるというようなことからいろいろな弊害が生じているのではないかという御指摘がございました。  今回の御提案に際しましては、このような役員の兼職禁止あるいは外部監査ということによりまして、協同組織金融機関等経営が健全性、透明性を保つような措置をもお願いをしておるところでございます。
  54. 与謝野馨

    与謝野委員 そこで、今回の住専処理スキームというのは、まずある一定の前提を置いているわけです。それは、土地の公示価格というものを前提に置いて、昨年の八月から九月にかけて全体の不良債権の額を確定したわけです。これはもうとにかくやむを得ないことであったと思いますが、その後の土地公示価格を見てみますと、特に都市部で若干の土地の値下がりというものが見られるわけですが、現在の公示価格の値下がりによって一次ロスの処理について問題が生じていないか、あるいはその当時考えた幅の中に一応おさまっているのか、あるいは公示価格が下がったことによって処理スキーム自体が大変窮屈なことになっているのか、その辺についてはどういうふうにお考えになっていますか。
  55. 西村吉正

    西村政府委員 現在の処理策の内容といたしまして、担保の評価でございますが、公示価格の八割程度に設定をされております路線価を基準にしております。その路線価の水準は、今年一月の地価の動向を見ましても、確かに、例えば東京圏の商業地では二割弱下落しておるということでございまして、私どもが想定いたしました状況がなかなか厳しくなっているということは私どもも否定をできないところでございます。  したがいまして、一層この債権の回収努力というものを深めていかなければいけないと思っているところでございますが、その点については、現在の体制におきましても、先ほど大臣が御指摘ございましたように、あらゆる努力を講じまして、既にある程度の成果を上げている点もあろうかと存じます。住専処理機構を発足させていただきますならば、一層の努力をしてまいりたいと考えております。
  56. 与謝野馨

    与謝野委員 住専処理スキームの中で私が非常に残念に思いますのは、日本銀行がこの全体のスキームに対する貢献度が非常に低い。実際は一千億しか出資していない。だけれども日本銀行というのは、それは最後の貸し手であると同時に、日本の金融秩序を維持していくためのやはり大事な機関なんですよ。それが、日本銀行はお公家様かもしれないけれども、こういうものに手を出さない、そんな結果になっている。やはり日本銀行がもう少しこういうものに対してきちんとした貢献をすべきなんです。日本銀行というのは、立派な建物の中に入って、余り世の中の風に当たっていないよう人たちがいっぱいいるのかどうか知りませんけれども、やはりこういう具体的な、大事な問題を日本銀行みずからもちゃんとやらなきゃいけない、私はそう思うんです。  そこで、今回は六千八百億という財政支出をしましたけれども、やはりこれは、いろいろな努力を通じてこの負担を軽減していくという努力はやっていかなきゃいけない。その中には、先ほど農林大臣にも申し上げたように、農林省ももう少し考えていただきたいなと思うんです。それから、日本銀行も少々貢献する必要がある。あるいはもっと貢献する必要があるかもしれない。それから母体も今みたいに逃げ回っていないで、やはり貢献できるものは貢献する必要がある、私はそう思っています。  それで、今はとにかく六千八百五十億がないと問題が解決しませんから、これは使わせていただくことにしても、将来そういうものを少しでも圧縮するということが、国民に対する誠意ある誠実な政府の態度であり、与党の態度であると私は思うんです。そういう中で、系統の立場、日本銀行の立場、母体行の立場、これを大蔵大臣、大変大局的な立場からそういうものに対して取り組んでいただきたいと私は実は思っているわけです。  それで、我々、昨年の四月に東京都知事選挙というのをやったんです。そのときに、機関委任事務で信組の問題は東京都が監督することになっていたので、その当時の東京都は三百億のお金をその信組の処理に使おうとした。その途端に、何と、自民党と公明党と社会党と民社党と連合が共同推薦した候補者が青島さんという人に負けちゃったんですよ。  だから、我々は、もともと公的資金を使うということについては、これは政治的になかなか大変だなと思っていたんです。しかし使わなければ問題が解決しないとしたら、やはり使うのが政治の責任なんです。しかし、使うと同時に、国民負担を軽減するということもあわせて考えていくということがやはり我々に課せられた非常に大きな責任だと私は思うんです。それについて、この住専処理法案は迅速に処理しなければならないけれども、引き続きそういう軽減策ということもちゃんと考えながら進んでいくということがやはり誠実な態度だと私は思うんですが、大蔵大臣、最後にそのことだけお答えをいただきたいと思っております。
  57. 久保亘

    久保国務大臣 仰せのとおり考えて、今日までも私の方でも可能な努力を続けてまいったつもりでございますが、とりわけ両院の御審議におきまして、与野党を問わず、今お話がございました点について政府は一層の努力をすべきであるという御意見がございました。これらの国会における御意見におこたえするよう、皆様の御協力もいただきながら今後も努力してまいりたいと考えております。
  58. 与謝野馨

    与謝野委員 どうもありがとうございました。
  59. 高鳥修

    高鳥委員長 この際、尾身幸次君から関連質疑の申し出があります。与謝野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。尾身幸次君。
  60. 尾身幸次

    ○尾身委員 政府が今国会にこの住専問題の解決案を提案をされているわけでございますが、この案の中におきまして、特に六千八百五十億の財政支出について国民理解が十分に得られているとは言えない状況であります。そして他方、総理大臣大蔵大臣は、関係金融機関等に新たな寄与を求めたいというような趣旨の発言をされているところでございます。  そこで、私は、この質疑におきまして、政府住専処理案の基本的性格、それからまた新たな寄与についての政府の御見解を伺いまして、国民の皆様によりよくこの問題を理解をしていただく、そういうことにしていただきたいと考えている次第でございます。  いわゆるバブル経済がはじけた後、いわゆる不良債権問題は、我が国経済を本格的な回復軌道に乗せるためにはどうしても避けて通れない、解決をしなければならない問題であります。不良債権問題というのは、例えて言えば、バブルの最中に、十億円の土地を持っていた会社がその土地担保にしてビルを建てる、そしてそのビルを売るなり貸すなりしたいということで、土地の値段は十億円でありますから、八億円借りてその上にビルを建てたい、こういうふうに考えたとする例があるわけであります。それに対しまして銀行は、当時、今の価格が十億円のものは来年は十二億になる、再来年は十五億になる、土地はどんどん上がっていく最中でありましたから、八掛けの八億円ぐらいならば絶対大丈夫だということで、安心してお金を貸しました。  ところが、バブルがはじけて土地の値段が十億円から五億円にどんと下がってしまった。もちろんビルを建てるどころではなくなって、お金も使っちゃった。それで、貸していた銀行が、土地担保にしてありますから、これを回収しょうと思ったら、十億円だった土地が五億円になっちゃって、八億円貸していた金が五億円しか戻ってこない、こういうようなことになってしまったわけであります。  このようなものがいわゆる不良債権でございまして、今不良債権日本経済全体でどのくらいあるか、大変大きな額でありますが、先ほど銀行局長のお話ですと、最近の、三月の調査では三十四兆七千億あるというお話でございました。この数字を信用すればそのとおりでありますが、一説によっては四十兆とか五十兆とかいう不良債権があるというふうにも言われているわけであります。この数字は、一年間の日本経済のGNPの約一〇%、一割に相当する大変な額であります。  この住専関係の不良債権は、大蔵省の試算でありますと約八兆円と言われているわけでありますから、日本全体の不良債権の大体四分の一から五分の一ぐらいだと考えているわけでありますが、その内容が実は極めて悪質なものでありまして、日本全体の不良債権処理における最大のがんである。したがって、この一番の中心の住専不良債権問題を解決しないと、日本経済は立ち上がれない、立ち直れないということになるわけであります。  したがいまして、この住専問題をどうしても解決しませんと、日本経済に対する国際的な信用にも響き、そしてまた景気の本格的な立ち直りも実現できない。そういう意味で、現在の最大の政治課題とも言っていいと思うわけであります。  少し復習をさせていただきますと、住専、七社でありますけれども、もともと住宅金融専門会社ということで、マイホームローンをやるために設立されたわけでありますが、その後、マイホームローンがだんだんだんだん銀行に仕事をとられて、不動産融資にのめり込んでいった、そしてバブルがはじけて大変な経営状態になったということでございます。  昨年の夏に大蔵省が調査をされましたら、住専については、七社合計で、一方で十三兆円の借金がある、借金といいますか、具体的には借金と資本金でありますけれども、債務と資本、そういうものがある。片方で、名目的には十三兆円の資産が同じくバランスシートに立っているわけです。  しかし、その十三兆円の資産をよく調べてみたら、実は甘く見てもそのうちの六兆四千億ぐらいはもう戻ってこない。先ほど申しましたような意味で、担保を競売にしてその金を取り戻すということにしても、六兆八千億ぐらいしか戻ってこない。したがって、ネットで六兆四千億が丸々赤字になっている。債務が十三兆円あって、ネットの資産が六兆八千億しかない。したがって、借りているお金と貸しているお金の差額が六兆四千億もあるということで、大変ないわゆる債務超過になっているわけであります。  そういうわけでありますから、もとよりこの住専経営を再建するなんということは到底できませんで、つぶれる運命にある。また、つぶさなきゃならないわけでありますが、先ほど申しましたように、損失、債務超過の規模が六兆四千億という非常に巨額な額になっているために、そのつぶし方、あるいはこれを考えて、社会的摩擦をできるだけ少なくするような形でこの住専をつぶして、そして日本経済を正常化させなければならない、そのつぶすときの摩擦及び国民負担を可能な限り少なくしなければならないということで考えた案が私は政府住専処理策であると思うわけであります。  その処理策の中身は、七社合計、合わせまして名目で十三兆二千億、実質で六兆八千億しかない住専の全体の資産を特殊会社であります住専処理機構に売却をする。売却する価格は、十三兆円はネットでないわけでありますから、六兆八千億がネットの実質的な価値、甘く見て六兆八千億でありますから、その六兆八千億で売り渡して、そして住専七社の権利義務関係をすべてこの住専処理機構で継承をして、そして債権回収あるいは整理を図っていこう、こういう考えであります。  それで、この問題が大変深刻な話題になりました昨年の十二月に、六兆四千億穴があいているわけでありますから、今までの債務が十三兆あるということは、ほかに、つまり貸している方が、会社が十三兆円分の、十三兆二千億分の債権を持っているわけです。それを六兆八千億にまで縮めなければいけないということでありますから、どうしてもその段階で、六兆四千億をこの債権者のうちだれが負担をするかということを決めなきゃならない。  そこで、片方で母体行と一般行と言われる銀行側、それからもう片方で農協系統と言われる農業関係者で、いろいろとどういうふうに負担をするかという議論を昨年の秋からしたわけであります。農業関係者、農協系統の方は、もともと金融機関の一〇〇%子会社なのだから、その金融機関、母体行が中心となって責任を持って六兆四千億を全部負担してもらいたいという主張をいたしましたし、片方母体行側は、これは債権の額に比例して比例配分的に負担をするのが商法原則であるということで、実は意見がまとまらなかったわけであります。そこで、先ほどの、解決しなければならない六兆四千億のいわゆる債務超過の負担をどこでだれが持つかということについて、どうしても手が握れない、話し合いが決裂という状態になりました。  その話し合いが決裂したときにどういう手段が我々政府あるいは政治家の方であったかというと、私は三つあったと思うのであります。一つは、今政府提出しているよう住専処理案を決めること、もう一つは、そのまま問題を先送りすること、それからもう一つは、破産処理手続、法律的手続でどんどん破産処理にしてやってしまう、そういうふうな三つの選択があったと思うわけであります。  しかし、その中で、最初のそのままほっておいて先延ばしするということは、後でも申し上げますけれども、非常に大きな摩擦と混乱を起こす。それから、破産処理手続でやるかどうかについては、これをやったらまた大変なことになるということで、結局、一番コストが安く、社会的摩擦も少ない、国民負担も少ない方法として今の政府の提案がなされたというふうに考えるわけであります。  そこで、住専処理策において六兆四千億の損失の負担についてどうやったかというと、実質的に経営をコントロールしてきた母体行に対しましては、設立の経緯とかその後の支配の状況等、実質的な非常に重い責任を考えて、母体行が出資している額全額と、それから住専貸し付けている債権の全額、三兆五千億を全部放棄していただく。それから、直接かかわっていないけれども一般行と言われている銀行等については、一兆七千億の負担をしていただく。農林系統については、もともと親会社の大銀行を信用をして五兆五千億という融資をしたわけでありますけれども、しかし、融資の額が五兆五千億という非常に大きなものでありました。そしてまた同時に、農林系統の体力、支払い能力等も考えて、最大限の負担、五千三百億をしていただいたというのが実態であります。しかし、それを全部合わせてもなお六千八百億不足していた、そこを財政資金で穴埋めをする、我々の税金で穴埋めをするという構想になったわけであります。  私は、この考え方というのは、講談にあります大岡越前守の三方一両損という考え方と似ていると思っております。昔、江戸時代に、お金を三両落とした人がおります。拾った人がいる。拾った人が落としたところの人に三両を持っていきました。あなたのお金を私が拾ったからお返ししますと。そうしたら、落とした人が何と言ったかというと、いや、これは一たん落としたものだから私のお金じゃありませんから、一たん落としたお金は受け取れませんと言いました。拾った方の人は、冗談じゃない、私は自分のものじゃないお金を拾ったんだから、落とし主の方に三両どうしても受け取ってもらわなきゃならない。  大騒ぎになりまして、裁判になった。大岡裁判であります。大岡越前守裁判長は、自分が懐から一両出して二人に二両ずつ分けて、自分が一両出す、落とした人は三両落として二両しか戻ってこないから一両損、拾った人は三両拾って二両しか手に入らないから一両損、そして私も一両出すから一両損で、三方一両損で、これで決着をしようという名裁きであります。  これは、この深刻な住専の問題の例え話としては大変不謹慎であるという感じもするわけでございますけれども、そして問題は、この裁判と違うところは、両当事者がこの負担をしたくない、お金を出したくないといって頑張って、どうしてもお金が足らないという状況になったわけであります。  そのままほっておくと、両者の話し合い、つまり農協系統側と母体行側の話し合いは決裂をして、住専処理策は、先ほど申しました二つの別の案、そのままほっておくことになるか、あるいは破産処理手続の法的な手続に入るか、どちらかしか選択がない。しかし、その選択をとった場合には、日本経済に大変な負担をかける。結果的には国民に非常に大きな負担をかぶせることになる。したがって、どうしてもここで話し合いをつけて処理案を出さなければかえって国民全体に大きな負担をかけるということで、この処理案ができたというふうに理解をしているわけであります。  私は、この住専処理案の一番のポイント、基本的な性格というのは以上のようなことであるというふうに考えているわけでございますが、この点につきましてどうお考えか、総理のお考えをお伺いしたいと思います。
  61. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、議員は大岡裁きの三方一両損という例えを使われました。私は、これが適切な状況かどうか、これは必ずしもそうは思いません。ただ、本来、確かに民間の債権債務関係である、だから当然のことながら民間当事者間で解決を図る、それができる状態であれば、それはそのとおりでありましょう。しかし、この住専というものが、ここでもしばしば議論になりましたように、非常に多数の金融機関が関係し、その利害関係が非常に錯綜している、そうした状況の中で、当事者の意欲と努力だけではどうしても解決を図り得ない状態というものが生まれておりました。  今回の住専処理策というものにつきましては、さまざまな御批判がございます。しかし、関係金融機関による最大限の負担というものを前提としながら、国民の皆様の預金を守ると同時に景気回復というものを確実のものにしていく、そうしたためにとりました決断であるということは繰り返し申し上げてまいりました。  細かいことを繰り返して私は今長々と申し上げるつもりはございません。しかし、この六千八百五十億円の財政支出というものは、各当事者が最大限の負担を行ってもなお埋め切れないその損失を処理して、住専問題の早期かつ円滑な処理というものを行うためには不可欠な措置、国民経済全体の立場から政府として決断をし、与党にもまた御決断を願った、そのようなプロセスであったことをもう一度申し上げたいと思います。
  62. 尾身幸次

    ○尾身委員 住専処理策について、実は今でも国民の間に非常に厳しい批判があるわけであります。その原因の一つは、税金を投入してまで解決する住専処理策について、住専自身あるいは住専経営者、そして住専からお金を借りている不動産業者等が、この国の支出する六千八百五十億でむしろ救済されるんじゃないか。普通の人ならば、借金をすれば当然全額返さなきゃならない。もし返せないようなことになった場合には、担保に自分の住んでいる住宅が取り上げられたり、あるいは、それで足りなければ一生働いてこれを返す、非常に厳しいわけでありまして、これが一般庶民が借金をしたときの状態であります。  しかし、我々が見ていますと、住専から莫大なお金を借りて返済しない本当に不届きな借り手が、高級車を乗り回している、高級住宅に住んでいる、そして優雅な暮らしを一方で続けている。そしてまた、返済のめども立たないようなルーズな貸し付けをした住専経営者も高給を取って普通に暮らしている。一体これはどういうことなんだ、そういう人たちを救うために国民税金を出しているんじゃないか、こんな不合理なことはないという憤りが国民全体の国民感情的な気分になっていると思うわけであります。  私は、これはある意味でいうと大変な誤解でありまして、政府がやはりこの点を明確に説明する必要があると思います。  一つは、これは案外国民皆さんが思っていることなんですが、住専はつぶれないで残ると思っている人が多いわけです。住専という会社は七社とも全部つぶすんだ、間違ってもこれを救済することはない。住専を整理しますなんて言っている説明がありますが、整理なんというんじゃ実はわからないので、住専は全部つぶす、そういうことをはっきりしていただきたい。  それからもう一つは、不動産会社等の借り手からは徹底的に取り立てる、その取り立てるための体制を整えるのが住専処理機構であり預金保険機構であるという、その点を明確にしていただきたい。今は高級車を乗り回して高級住宅に住んでいるけれども、何千億も何百億も借りている人は当然個人保証もしているわけでありますから、その住専処理策が決まって、やるときには、刑事や検察あるいは国税職員まで動員して、預金保険機構と住専処理機構で力を合わせて強力に取り立てるんだ、その点を実は明確にしていただきたいと思います。  この点についてまだ国民一般理解が得られていないと思いますので、この点はぜひ総理に明確にお答えをいただきたいと思います。
  63. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 確かに、今議員からも御指摘がございましたが、そうした誤解がなかなか解けておらないということは、私も時々感じる場合がございます。  そして、今回のその処理方策というものによりまして、住専はこれでつぶれるのであります。これは消滅をいたします。そして、住専という私企業を救済するものでは全くありませんし、同時に、この措置というものは、住専の借り手に対する救済といったものでないこともこれは言うまでもありません。殊に財政措置を伴うものなんですから、弁済が可能なのにもかかわらず弁済しないといった債務者がありますなら、それは決して許さず、その責任を厳しく追及してまいります。  それは、具体的に何遍も、ここでも、今まで予算委員会等で御説明をしてきたことでありますけれども、借り手の資産隠しに対処するためには、預金保険機構に罰則つきの財産調査権を付与すると同時に、回収困難な事案につきましては、預金保険機構みずからが取り立てることができるようにもいたしております。当然のことながら、回収に際して違法な妨害行為があれば、捜査当局と緊密な連携をとり、積極的に告発するなど、厳正に対処していくことになります。  たしか、副総理大蔵大臣が、地の果てまでも追い詰めるという言葉を使われました。私どもは、その同じ気持ちでこれに当たっていこうとしております。
  64. 尾身幸次

    ○尾身委員 バブルがはじけた後の不良債権処理の問題というのは、実は日本だけではありませんで、外国でもかなりの実例が見られるわけであります。  特に、アメリカにおきましては、一九八〇年代の終わりから九〇年代の初頭にかけまして、日本で言ういわゆる信用組合のような機関でありますSアンドL、セービングス・アンド・ローン、日本語で貯蓄貸付組合というのがありましたが、そのSアンドLが数多く倒産をいたしまして、この処理に大変苦労したと聞いているわけでございますが、アメリカの議会等におきましても、大激論の末、多額の財政資金を投入して解決をしたわけであります。  そこで、アメリカの実例でありますが、アメリカでは一体この不良資産処理、SアンドLのためにどのくらい財政資金を使ったのか、そしてまた、幾つぐらいの数の会社がつぶれたのか、また、刑事責任等を追及した人はどのくらいに上がるのか、そういう点につきまして、アメリカの問題につきまして大蔵省から御説明をいただきたいと思います。
  65. 西村吉正

    西村政府委員 アメリカの八〇年代後半におきます貯蓄貸付組合の破綻処理の問題でございますが、八九年のRTCの設立から九五年にRTCが解散されるまでの間、七百四十七の貯蓄貸付組合が処理されました。そのために使われた財政支出の総額は十八億ドル、約十九兆円と見込まれております。  なお、RTCの年次報告書によりますと、八九年から九四年末までに刑事責任を追及されたSアンドLの関係者の数は、二千二十八人ということでございます。
  66. 尾身幸次

    ○尾身委員 今のお話のとおり、アメリカでも十九兆円という巨額の財政資金を使ってSアンドL関係の不良債権処理を行ったわけであります。そしてまた、何千人もの人を刑事的な訴追もしたということであります。これに比べて、実は日本の金額六千八百億は、アメリカとの比較でいうと金額的に少ないわけであります。しかし、なかなか国民理解が得られていないというのが実情であります。  私は、どうしてそういう違いが出てきたかということを考えるわけでありますが、アメリカの場合には、SアンドLという組織が倒産をした、全部倒産をして、そのSアンドLに預金をしていた預金者の預金を保護する、預金者に財政資金でお金を返すという、そういうことにお金を使ったために、十九兆円のお金を使っても国民理解が得られた。  しかし、日本の場合には、実は、住専はつぶすわけでありますけれども住専処理、つまりつぶすことに伴う連鎖倒産を防ぐことによって預金者を保護する、預金を守るという間接的な方法であります。したがって、そのために、だれがこの処理策によって助かるのか、どうして国民経済的に見てこれが必要なのかというその一点で、なかなか理解が得られていないという実情があるわけであります。  先ほど与謝野議員から、農協系統の負担を少なくするのではないかという御質問もございましたけれども、いずれにしても、住専処理に伴って連鎖倒産が起こる可能性を断ち切っていくためには、先ほどの話のとおりの、ある種の和解策で六兆四千億の負担をして、そしてそれによって名目十三兆円の債権、実質六兆八千億の債権住専処理機構に全部移管をして、そしてその債権回収をそこで統一的に図るということが必要であるというのが政府の案だと思うわけであります。  この政府案は、実は国民負担をする額、税金の額という点から見ると非常に少ない点で、今の状況において最善の策だというふうに私も考えておりますけれども、しかし、これによって連鎖倒産を防いで間接的に預金者を保護するということで、直接的に預金者にお金を渡すアメリカ方式と比べて、非常に国民理解が得にくい。しかし、このやり方の方がはるかに国民的な負担が少なく、社会的摩擦も起こらないで問題を解決できるという点で、本来の国民の立場に立つならば、この案の方がはるかに、日本の実情を考えた日本対応策としてはベターであるというふうに考えるわけでありますが、これにつきまして政府側のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  67. 西村吉正

    西村政府委員 先ほど十八億ドルと申しましたが、千八百億ドルの間違いでございます。失礼いたしました。  ただいまの御指摘でございますが、アメリカのSアンドLの処理に際しましては、御指摘ように、預金受入金融機関でございますSアンドLの処理のために財政支出を行いましたために、比較的わかりやすい、見えやすい方策であったように思います。いわば事後処理、預金受入金融機関が破綻した後に対処する事後処理方式であったわけでございます。  しかしながら、今回の住専処理の問題は、その波及効果、系統金融機関等に対する波及効果が極めて大きく、また現下の金融情勢のもとにおきましては、はかり知れない経済全体に対する影響が懸念されるということで、事前処理住専そのものはつぶすのでありますが、その次に、いわば預金受入金融機関への影響という点においては事前処理という形をとったわけでございます。  いずれも、預金者保護という意味では共通しておると思いますけれども、その実情に応じまして、事前処理をとるか事後処理をとるかという点での違いがあったと考えております。
  68. 尾身幸次

    ○尾身委員 実は、先ほど申しましたけれども、今の政府案のよう処理策にかわる具体的な対策として、一つは、一時新進党の方で主張をしておりました法的処理による住専処理をしようではないか、したらいいではないか、それからまた、会社更生法を適用したらどうかというお話がございました。  先ほど与謝野議員からのお話にもございましたが、会社更生法はつぶれかかった会社を立ち直らせる法律でありまして、七社で合計で六兆四千億も穴があいている、つまり債務超過になっているような会社が立ち直れるはずがない。したがいまして、会社更生法の適用は当然できません。  破産処理の手続ということになりますと、これを法律的に裁判手続でやるにしても、一つ一つ担保を持った債権の価格を決めて、またその回収を図ってやらなければならない。これは実際に、言うはやすくほとんど行うことは不可能である。そして、それに伴います社会経済の大混乱も起こる。それからまた、先ほど大蔵大臣のお話のように、今の債権者平等の原則が適用された場合には、むしろ現在の処理案よりも母体行の負担が減って、資金的に力の弱い農協系統の負担がふえるというような結果になりかねない。そういう意味におきまして、この破産処理手続を法的手続でやるということは、国民経済的な観点、国民全体の利益から見て絶対にとり得ないというふうに考えているわけでございますが、これにつきまして大蔵大臣のお答えを言っていただきたいと思います。
  69. 久保亘

    久保国務大臣 法的処理ということになりますと、大きくは二つの考え方がございますが、会社更生法につきましては、今お話がございましたように、実際には困難なことだと思っております。そして、既に上場企業でございます二つの住専は、三月二十六日に役員会で再建を断念し、整理、清算に入ることを決めたのでありまして、そのような方法はとり得ないのではないだろうかと思っております。  また、破産処理の方法になりますと、今お話がございましたように、損失の負担割りが、今政府が当事者と協議をいたしまして合意を得ております処理スキームにおけるものとは全く違ったものとなってくるのでありまして、その場合、系統金融機関負担が五千三百億から急激に大きくなってくる可能性がございます。その場合に、そのことがどのような影響を持ってくるかということについて、私どもはいろいろと考えなければならないことが多いと思っております。したがって、予算委員会の御審議におきましても、最終的に破産処理によってやるべきだという対案的な御主張はなかったものと考えております。  そうなってまいりますと、今政府が六千八百五十億の財政支出を行って早急に処理ようといたしておりますこの財政支出は、絶対額としては決して小さなものではない、こう思っておりますが、やむを得ざるこの財政支出を通じて住専問題の早期の処理、そしてその早期の処理によって日本経済の順調な景気回復をもたらすことで六千八百億の財政支出を償う経済の発展が見られるならば、国民的な利益にかなうものと考えております。  また、お話がございましたように、この財政支出につきましては、その後の経済状況また金融機関の決算等を考えましても、今後新たな寄与について検討をいただくことが、国会の御意見もそうでありましたから私どもとしては必要なことだと考えております。     〔委員長退席、大島委員長代理着席〕
  70. 尾身幸次

    ○尾身委員 この六千八百五十億円の財政資金がなぜ必要かということについて、もう少し一歩踏み込んだ説明をいただきたいと思います。  この六千八百五十億を税金から出さないで、例えば母体行等の金融機関に肩がわりをさせればいいではないか、その分税金が少なくて済むではないかという意見も一方ではあります。そして、そういうことが一体できるのかどうか。私は、この六千八百五十億というものの性格論、先ほど最初に申しました。十三兆の債務のうち実質的にはそれに見合う債権が六兆八千しかないわけでありますから、どうしても六兆四千億のいわば債権放棄をしていただかないと、この七社の債権住専処理機構に譲渡するということができない。その六兆四千億の負担割合を決めるときに、農協系統と母体行の系統が話し合いをしたけれども、どうしても六兆四千億を埋めるということにならなかった。  そして、この話し合いが決裂をして第二、第三の道、つまり裁判的な手続による破産処理の方向に行くか、そのまま問題を先延ばしにしたときにはもっと大変なことになるという御判断で六千八百億の負担を決めたと思うわけでありますけれども、例えば三兆五千億に上る負担をしております母体行は、責任があるからもっと負担をふやして、そしてこの六千八百億の肩がわりをさせていけばいいではないかという議論が一方でありますけれども、私は、そのことは、実は六兆四千億の債務超過の負担の割合を決めるときに、その段階で母体行に現在の債権総額三兆五千億より余計追っかけてさらにお金を出させるということは、私は不可能である、法律的な責任論から見て不可能である、むしろこれは株主代表訴訟の問題にまで波及するような問題であるというふうに考えているわけであります。  この問題を先延ばしをすれば、住専がさらに生き続ける。そして、そこにお金を貸している農林系統その他の中小金融機関が元本の支払いまでも危なくなる。利子の支払いもとまっているという状態で、大変な大きな社会的混乱が起こる。したがって、どうしてもこの問題を今回解決しなければならないというごとになりましたときには、六千八百五十億はどうしても必要だというふうに考えるわけでございますが、その点について、もう一度大蔵大臣の方から明快な御説明をお願い申し上げます。     〔大島委員長代理退席、委員長着席〕
  71. 久保亘

    久保国務大臣 この問題につきましては、かなりの時間をかけて当事者との協議が行われた結果として、損失となります六兆二千七百億と会社の欠損となっております千四百億、合わせて六兆四千百億につきまして、これをどのよう負担をするかということで、母体行責任等も勘案の上決められていって、そして最終的に負担し切れなかった分について政府として六千八百億を負担することを合意してでき上がったスキームでございます。したがいまして、もし政府が六千八百億の財政支出を行わないということになれば、このスキームに関する合意が成り立たなくなるものと考えております。  しかし、その後のいろいろな状況等、また国会の御意見等も考えながら、政府としては、最大限母体行の負担などについても今後も努力を続けなければならないものと思っておりますが、合意されているスキームは、住専処理機構として発足をさせ、そして、この法律に従って今後強力な債権の回収を行う中でもし国庫に返還すべき部分の回収が可能となれば、その分また負担が変わってくるものと考えておりますが、今は、この合意に基づくものとして、六千八百億の負担と五十億の出資については、このスキームを早期に発動させて、そしてこの問題を決着をさせることが今日日本の金融、経済にとって絶対に必要だという判断に立てば、この方法をとる以外にない、こういうことだと思います。
  72. 尾身幸次

    ○尾身委員 今大蔵大臣の御答弁のとおりだと思うわけであります。  この問題が未解決のまま仮に先送りされてしまった場合に一体現象的にとりあえずどういうことが起こるかということでありますが、例えばことしの一月−三月の農協系統に対する利子の支払い六百億がもうできないでいる。このまま放置すれば、さらに四月−六月分の六百億、九月までいけば千八百億の利子の支払いが農協系統になされないというような大問題が生じてくるわけであります。  それからまた、この問題が処理できないことによります株式市場の動向、株価の下落等も実は大変に懸念をされている。それから、外国の日本の金融システムに対する信頼性という意味でジャパン・プレミアムの問題もある。  ジャパン・プレミアムというのは、日本銀行が外国の銀行からお金を借りるときに、日本銀行だけは、危ないから金利をその分だけ上乗せしてくれなければ貸しませんよというようなことを外国の銀行から言われる。そのジャパン・プレミアムがさらに上がる可能性もある。  こういういろいろな問題がとりあえずの現象として起こってくる。そして、それが全体として日本経済に大きなボディーブローとなって効いてくるというふうに考えているわけでございますが、この点につきまして、農林大臣及び大蔵大臣から実情をお話しをいただきたいと思います。
  73. 大原一三

    ○大原国務大臣 四・五%という金利でお約束をした五兆五千億に対する支払い金利、御指摘のとおり、一月からずっと滞っておることは事実でございます。  今、農協系統、ちょうど決算時期に入っているわけでございまして、三月決算がこの五月、六月で集計をされることに相なっております。本来なら、昨年の実績ですと、信連が千三百億の利益でございました。農林中金が五、六百億の利益でございました。それに対して、今委員指摘ような、金利が返ってこないということになりますと、これは相当な農協に対する決算上のロスを生む結果に相なるわけでございます。  そういったことも考えますと、やはり何とかこのスキームが委員指摘ように早く実現をされて、そしてすっきりした形で我々は再建に臨める、そういう試金石が今回のスキームである、私はこのように考えて重大に受けとめております。
  74. 久保亘

    久保国務大臣 ジャパン・プレミアムの問題につきましては、御指摘のとおりだと思っております。  これは、本年に入りましてからも、日本における不良債権処理に対する海外におきます期待感というものが強くなったり弱まったりする中でかなりな動きを示してまいりました。今この問題は、予算が成立し法案の審議が進んでまいりますと、ジャパン・プレミアムの問題にはよい影響を与えるものと考えております。  また、海外におきまして、日本住専問題の処理につきましては、IMF等におきましても、またアメリカ側からもいろいろな意見がありますが、この処理の方法につきましては日本が決めることということで私も申しているのでありまして、そして、その影響にかかわって国際的責任が大変重いものであるということで、海外の各国におきましても、日本住専問題の処理に対して大変大きな関心を持って、その処理が早期に行われることを期待しているものとG7等の会議を通じて私も強く感じているところでございます。
  75. 長野厖士

    ○長野政府委員 株式市場に関連いたします御指摘についてお答えを申し上げます。  昨年十二月十九日の住専問題処理の閣議決定以降今日まで、東証一部で時価総額が三十兆を上回る上昇を示しております。もちろん株価はさまざまな要因によって決定されるものと考えますけれども、この昨年末以降の株式市場の顕著な推移につきましては、為替相場の安定あるいは景気の回復期待感の高まりとともに、住専不良債権問題の解決への期待感というものが大きな要因であるというのは、市場関係者の一致した見方であろうかと存じますし、市場では、住専処理案が国会での御審議を経て速やかに実行されることを期待しておるものと考えております。
  76. 尾身幸次

    ○尾身委員 そこで、先ほどちょっと大蔵大臣が触れられましたけれども、母体行等の金融機関に対する新たな寄与を求めたいということを総理大蔵大臣も実はいろいろな機会に御発言をされているわけであります。これについて、住専の設立の経緯等について母体行等の金融機関がどうかかわってきたかということを一応考えてみたいと思っているわけであります。  一つは、住宅金融専門会社、住専は、もともとは個人のマイホームローンをするために銀行の子会社としてつくられた。そして、銀行住専お金を貸し、そして住専が直接マイホームを建てたい人にお金を貸している細かい仕事でありますから、住専という組織を通じて銀行からマイホームローンにお金が流れていたということであります。  ところが、ある段階から、銀行がそのマイホームローンの仕事を、悪く言えば住専の仕事を横取りをしてそちらの分野に進出をしてきた。そのために住専が、仕事がなくなってといいますか、貸出先がなくなって不動産融資の方にのめり込んでいく。時あたかもバブルの最中でありますから、不動産融資も見かけ上非常に利益の上がる金融であったということであったと思うのでありますが、その辺についての経緯について、大蔵省、どういうふうにお考えかお聞かせをいただきたいと思います。
  77. 西村吉正

    西村政府委員 住宅ローンという業務分野は住専だけにゆだねられているわけではございませんので、他の金融機関とも競争をしながらやっていかなければいけない分野であるということも認めざるを得ないと思います。しかしながら、住専が設立されまして以来、住専が主としてこの分野で銀行等の出資に基づきまして仕事を行ってきたわけでございますが、その後この分野におきます業務が、銀行本体及び住宅金融公庫等が活躍するという中で、住専が成り立ちにくくなってきたということは事実でございます。  こういう点につきましては、金融制度調査会の答申におきましても、住専の急激な事業者向け融資へ傾斜していった状況について、行政も十分な指導を行い得なかったという御批判もあるわけでございますが、経済情勢全体がこのように変わっていく中で、住専経営者あるいは行政全体を含めまして、いろいろと反省すべき点はあると考えております。
  78. 尾身幸次

    ○尾身委員 もう一つは、住専が実質的には、いわゆる母体行と称せられる金融機関の事実上は一〇〇%子会社であるという実態であります。  それで、どの銀行も本体がしっかりしている限りにおいては、自分の子会社である系列ノンバンクをつぶすような例はない、なかったというふうに考えております。なぜかといいますと、そういうことをやりますと銀行本体の信用にかかわってくる。したがって、相当な犠牲を払ってそれを支えながらやっているというのが実情であります。  しかし、住専の場合には、農林系統の方でよく主張しておりますように、親会社が、母体行が超一流銀行であるから銀行が自分の子会社をつぶすはずがない、そこを信用して、つまり住専自体を信用したのではなしに親会社を信用して貸したのだというふうに言っているわけでありますが、これは私は非常に理の通った話だと思うわけであります。  ただしかし、実態は子供一人に対して親が何人もいる。母体行の数が一つ住専に対して少ないところでも六つとか七つ、多いところは六十とかそういう数字になるような親企業がいるために、何となくその経営に対して、債務に対して、母体行としての、親企業としての責任感覚がなくなってしまったのではないかという感じがするわけであります。  今までこの日本の金融システム、経済システムがいわゆる護送船団方式とかなんとか言われておりますけれども、今までの常識的な世間国民一般感情から見れば、悪く言えば大銀行の子会社が借金を踏み倒して、子会社がつぶされるというようなことは考えてもみなかった。そこに非常に大きな強い国民感情があって、私は、この住専問題の処理というのは今の政府案しかないとは思っておりますけれども、しかしこの住専という大きな銀行の子会社にお金を貸したところの債権の一部が回収できなくなるということでこの問題の処理がなされるということは、銀行に対するあるいは金融システムに対する国民の信頼感というものを、実は極めて大きく損なう非常に深刻な問題であるというふうにも考えているわけであります。  したがいまして、本来ならば、一つ銀行一つの子会社のノンバンクを持っているような場合には、その自分の子会社、実質的に一〇〇%支配の子会社はつぶさないという原則もあるわけでありますから、母体行の持つその住専という子会社の経営実態に対する責任は大変重い。ましてや、人事その他の面で実質的に経営を支配してきたというふうにも考えられるわけでありますから大変重いと考えておりますが、その点について大蔵大臣はいかがお考えですか。
  79. 久保亘

    久保国務大臣 一貫して私どもの考え方を申し上げてまいりましたけれども、母体行が住専の設立の段階から出資、経営、特に人事を含めて、また経営の中では紹介融資等を含めて、母体行が住専問題の今日の状態に対して負うべき責任は極めて大きいと考えております。  その責任の重さから、債権の全額放棄、そしてこの住専問題処理のための低利融資、さらに金融安定化拠出基金への一兆円の拠出、こういったような問題で今合意をしているわけでありますけれども、さらにいろいろと御審議もいただきました中で、御主張のございましたことも含めて、母体行はもっとその責任にこたえるべきであり、それだけの体力も有しているのではないか、こういうことで、今私どもとしては母体行との協議をしなければならないと考えているところでございます。
  80. 尾身幸次

    ○尾身委員 銀行経営状態はどうかということでありますが、最近、銀行経営が大変によくなった。そのよくなった原因は、政府の低金利政策である。低金利政策というのは、本来企業活動を活発にさせる、新規投資を促進するという意味で行われているわけでありますけれども、その結果として銀行の調達金利が非常に低くなって、しかし貸出金利の方は、そう簡単に借り手との間の契約更改をしないために高いまま残っているという、その結果、実は銀行自身の自己努力によらない形での経営実態が大変よくなったというふうに聞いているわけでありますけれども、最近における銀行の利益の状況等につきまして、大蔵省から説明を願いたいと思います。
  81. 西村吉正

    西村政府委員 金融情勢の影響もございましょうし、銀行のリストラ等の努力の結果ということもあろうかとは存じますけれども部長銀、信託二十一行の七年度の決算は、債券相場が堅調に推移したことによる国債関係損益の増加を主因として、業務純益は前年同期比約七二%増加の四兆七千七百億円となってございます。
  82. 尾身幸次

    ○尾身委員 母体行は、設立の経緯から住専に非常に深くかかわってきた。人事的、経営的な支配も実質的にしている。そして他方、経営の実態から見ても、自分の自己努力によらないところの全体の景気政策、低金利政策等の結果として非常に利益を上げている。そしてまた、もう一つ実はあります。この経済の動脈である金融の機能を担っているという、実は銀行というのは、それ自体高い公共性あるいは社会責任を持っている。そういう責任も自覚していただきたいというふうに考えているわけであります。  先ほど大蔵大臣のお話のとおり、金融安定化拠出基金に対する出資の問題もあり、それから低利融資の問題もありますし、それからいわゆる六兆四千億の負担につきましては債権全額の放棄ということをしているわけであります。したがって私は、法律論的にいいますと、母体行は一〇〇%責任を果たしている、法律責任の追及はこれ以上できないという状態にまで来ているというふうに思うわけでありますけれども、さらにそれとは別に、道義的、社会的に母体行がこの問題の円満な解決のために一層の寄与をされることが妥当なのではないか。  そういうことを期待しているわけでございますが、国民のこの住専処理策に対する正しい理解を得るためにもぜひともこのことを実現をしていただきたいと考えるわけでございますが、この点につきまして総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  83. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 法的にぎりぎりの責任を追及をしている、だから法的にはこれ以上無理かもしれない、しかしなお道義的にと言われる、私はそのとおりだと思います。そして、よく私は、母体行の責任というものは一義的には御自身で判断されることという言い回しをさせていただいてきました。  私は、まさにこの問題を処理していく上で、金融機関として、法的に云々ということ以上に、道義的に問われている責任というもの、そしてあるいは紹介融資等において具体的にも例を挙げて厳しい御批判が出ているものに対して、みずから思いをはせていただきたいものと思います。
  84. 尾身幸次

    ○尾身委員 そこで、じゃ一体追加負担というものが、新たな寄与というものがどういう形でやれるのかということでありますけれども、先ほどのお話のとおり、母体行サイドからは、今申し上げます点については法務大臣及び総理からお答えをいただきたいと思っておりますが、この追加負担につきましては、母体行サイドで、今や法律的に許されるぎりぎりの負担をしているのであるからこれ以上の負担は株主代表訴訟に耐えられないという意見がございます。私自身も、先ほど申し上げましたように、現在の処理案における母体行の負担はぎりぎりの限界まで来ているというふうに考えておりますので、この母体行側の立場は大筋において、法律論としては大いに理解できるところであります。  そこで、この点につきましては、例えば住専法案の一部を修正して、例えばこういう規定を入れたらどうか。大蔵大臣は、住専処理機構の円滑な運営に必要があると認める場合には、例えば一兆円を超えない範囲内で特定住宅金融専門会社の出資者であった金融機関に対し金融安定化拠出基金への追加拠出を要請することができる、そんな種類の規定であります。  その種の何らかの立法措置を講ずることによりまして、母体行の経営者が仮にその規定によって追加の負担をした場合には、これは株主代表訴訟に耐えられるのではないか、そういう感じもするわけでございまして、むしろそういう環境を整えてやることが政治的に必要な感じもするわけでございますが、この点につきまして、まず法務大臣から御意見を伺いたいと思います。
  85. 長尾立子

    ○長尾国務大臣 お答えをさせていただきます。  株主の代表訴訟の個別具体的な事案につきましては、個別具体的な事情に即しまして、裁判所において判断されることであるというふうに思っております。  一般論といたしましては、株主代表訴訟とは、取締役の違法な行為によって会社に損害が生じた場合に、株主が会社にかわって取締役の責任を追及するというものでございますので、取締役の会社に対する善管注意義務違反、忠実義務違反等の違法行為の有無が問題になろうと思います。そのような義務違反の有無は、母体行の置かれた状況等諸般の事情を総合して判断されるものと思われます。  今委員が御指摘になられましたような措置が金融システムの安定性を確保するという観点から行われるものであるといたしますと、今申し上げました諸般の事情という一つとして、裁判所の判断に当たっての重要な要素として考慮されるのではないかと思っております。
  86. 尾身幸次

    ○尾身委員 今のよう法律論的なお答えが法務大臣からございましたが、これにつきまして総理大臣の御感想をお伺いしたいと思います。
  87. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、法律的には法務大臣が今述べられたことに尽きるのだろうと思います。  その上で感想を申し上げますとするならば、私は、そうした法律上の根拠規定を設けるということは確かに訴訟の場における裁判官の判断の一つの重要な要素にはなるだろう、そういうものがあれば、それは一つの武器になり得るのではないだろうか、そんな印象を持ちました。
  88. 尾身幸次

    ○尾身委員 そこで、一般国民の感覚というのは、この問題について、母体行等の金融機関にもっと負担をふやせば財政資金の六千八百五十億は出さなくてもいいのではないかというところに私はあるように感じているわけでございます。しかし、政府は、先ほど来のお話のとおり、六千八百五十億の削除は処理策のスキームを崩すからだめだというような説明をされているわけでございまして、私はもちろんそのとおりだと思うのでありますけれども、何となくその部分がわかりにくいような感じがするわけであります。  ですから、そこについては、実は先ほど来お話しのとおりに、六兆四千億の債務超過の分を関係者に負担をさせて、これを満額負担をして——十三兆の借金及び資本がある、出資の分がある。片方に十三兆の名目的な資産があるけれども、これは既に六兆四千億分は穴があいていて六兆八千億分しか戻ってこない。だから、名目十三兆ある資産を六兆八千億で住専処理機構に売り渡すときに、十三兆の金額の債権者に対して、どうしても六兆四千億の金額に見合う分は債権放棄なりなんなりの形で負担をしてもらわなければならないというのがこのスキームであります。  その中の負担の比率として、既に母体行側には債権の全額放棄という形で三兆五千億の負担をさせていることでありまして、これ以上この部分で、この六兆四千億の負担のうちの政府の六千八百億の負担を少なくするというこの部分において母体行の負担増をさせることは、これは母体行の負担能力は十分あるにしても、まさに株主代表訴訟の問題に耐え切れないで、法律責任論から見て不可能であるというふうに私は感じているわけでございますが、この点につきまして政府側のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  89. 久保亘

    久保国務大臣 今お話しのとおりだと思っております。  六兆四千百億の負担につきましては、これは母体行、一般行、系統金融機関、そしてその負担し得ざる部分について政府財政支出を行うことを合意をしてこの処理スキームはでき上がっているわけでありますから、今ここを変えるということは、この処理スキームを一遍白紙に戻すということにもなってくるわけであります。  しかし、この政府負担いたします、財政支出いたします六千八百五十億は、今直ちに税収としてこの分を特別に国民負担をお願いをするものではなくて、これは将来へのツケとして残るものであります。その返済のありようをどのように考えていくかという問題の中で、私はいろいろな解決の仕方、つまり国民の御負担を少なくするという方法を検討し得るのではないか、このように考えております。
  90. 尾身幸次

    ○尾身委員 私は、現在の経済情勢の中で、住専処理法案はどうしても今度のこの国会中に解決しなければならない、それが政治に課せられた最大の責務であるというふうに考えております。この問題の処理を一日でも延ばすというようなことになりますと、先ほどからお話しのとおり、農協系統などの力の弱い債権者にしわが寄って、大きな社会問題になりかねません。  そしてまた、時間がたてばたつほど、住専からの借り手の不動産会社、新聞等に出ております例えば末野興産の社長とか桃源社の社長などのそういう借り手の側における、担保資産を転売したり、あるいは転貸しをしたりして資産隠しを行ったり、そういうことがどんどん起こってくる。そして、ますます時間がたてばたつほど債権回収が困難になって国民負担が大きくなる、そしてまた、経済の混乱が非常に大きくなってくるという危険性があるというふうに非常に危惧をしております。  したがいまして、この問題は、いわゆる政争の具にはしないで、新進党を初めとする野党の皆様にも建設的な御意見を出していただきまして、どうしても一日も早く解決をしなければならない、そしてまた、我々与党側もこの問題の解決のために弾力的に話し合いをしていかなければならないというふうに考えている次第でございます。  我々は責任与党でございますから、本当の意味で国民のためになることならば、言いかえれば、本当に健康を回復するために必要なことであれば、苦い薬でも国民に飲んでいただかなければならない、そして、結果として健康を回復して、ああ、やはり薬を飲んでよかったというふうに思っていただくような日が一日も早く来ることを願っているものであります。  民主政治の社会でありますから、国民の皆様に理解と納得が得られていないような政策は行い得ません。そういう意味で、私はこの問題の解決のために、ぜひ国民の皆様の御理解をいただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。
  91. 高鳥修

    高鳥委員長 この際、原田昇左右君から関連質疑の申し出があります。与謝野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。原田昇左右君。
  92. 原田昇左右

    原田(昇)委員 平成八年度予算が成立しましてから既に十八日を経過したわけです。我々は、予算が新進党のピケによって、二十二日もピケを張られたということが原因で大幅におくれたことを大変遺憾だと思っておりますが、また、この十八日もおくれるということは甚だ遺憾でありまして、見えざるピケが張られておるという声も聞かれておるわけであります。一日も早く住専処理法案と金融関連法案を成立させて不良債権問題の解決に取り組み、国内金融システムの確立、国民生活と国民経済の安定と発展を図らなければならないと思います。これが、与党野党を問わず、本委員会に属する者の最大の使命であろうと思います。  問題を政争の具と化してはならないと思います。これは先ほど来与謝野委員あるいは尾身委員からも指摘があったとおりでありまして、我々は、この非常に重要な住専処理がおくれていることによって大きな経済の損失をこうむっておると思うのです。  こうしている間も、せっかく解消しかかっているジャパン・プレミアムが再燃するかもしれません。回復基調にある株価が急落するかもしれません。あるいはまた、巨額融資の借り手がその資産を不法に隠し終えてしまうかもしれない。問題処理をさらに長引かせると、金融機関の抱えている不良債権は一層減価して、その回収はますます困難になるかもしれない。また、特に農協系統の資金は凍結されたままでありまして、利払いも停止されているために、系統信連の経営は大きく圧迫されておるわけであります。いずれにせよ、これ以上問題処理をおくらせて、ようやく回復の兆しを見せてきた景気に再び水を差してはならないと思うわけであります。  また、G7などで公表されたことによりまして、住専問題の早期解決と新しい金融システムの確立は、今や我が国の国際公約となっているのであります。そして、それは、日本が国際金融に占める位置からいっても、その及ぼす影響からいっても、我々が果たすべき重要な責務であると思うわけであります。住専処理法案と金融関連法案の早期成立について、総理と蔵相の決意をお伺いしたいと思います。
  93. 久保亘

    久保国務大臣 ただいま御意見がございましたとおりに考えております。  住専問題を早期に処理しなければならないということについては、私は、おおよその方々が意見が一致しているのだと考えております。また、国民皆様方の御理解も、皆様の御審議を通じて深まっていると考えております。  その住専問題の早期処理の方策について、とりわけ財政支出をめぐって御意見がいろいろとございますことも十分に承知をいたしております。私どもとしては、やむを得ざる、早期処理のために避けて通れないものとして御審議をお願いしてきたわけでございまして、もし早期処理のためにかわるべき手段があれば、私どもとしてもできるだけ財政支出をすることなくこの問題が処理されれば最も望ましいことと考えておりますが、今日までの当事者との協議等も通じて検討してまいりました結果は、今日、財政支出をお願いをしてこの問題の早期処理を行うことが重要であると考えております。
  94. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今副総理からも述べられましたけれども、我々は、これを突破口として、我が国金融機関の抱える不良資産の問題の解決に当たりたい。そして、その努力の中で新たな金融システムを構築し、国民の信頼にこたえたい。その突破口として、何としても今国会におけるこの問題の解決を心から願っております。
  95. 原田昇左右

    原田(昇)委員 まさに突破口だと思うのですね。住専処理は、しかし国民理解と協力が必要だと思うのです。これまでの野党は、国会の内外で故意に住専の救済というようなあいまいな表現を使って、人々に住専を救うために公的資金が使われるという誤った印象を与えるように努めてきたと思うのですね。私は、国民に向けた政府住専問題解決案の打ち出しに手違いがあったように思います。  住専問題は、特に緊急を要する重大問題であります。国民は、これを一方的な押しつけだと受け取ってしまったのではないかと思う。最近になって、今度の住専問題解決案は住専を救うためのものではなくて、住専をつぶして預金者を保護するためのものである、新しい税金を納める必要はないことなどが理解されてきましたけれども、一たん燃え上がった火はなかなかおさまらないというのが現状であります。  政府は、住専処理問題の実態について国民理解を求めるために、先ほど来御答弁を聞いておりますと非常に的確な御答弁がありましたが、もっともっとこれを一般に知らせるための工夫と努力をしていかなければならないと思うわけであります。これについて、大蔵大臣どういうようにお考えか。
  96. 久保亘

    久保国務大臣 政府といたしましては、必要な広報活動なども通じて国民皆様方の御理解をいただくよう努めているところでございますが、何よりも国会における御審議等を通じて、今お話がありましたように、財政支出が破綻した住専を救うためのものでは絶対にないこと、それから、住専からの債務者に対してその債務を一円たりとも棒引きするものではない、それで、その債務者の債務の責任は徹底的に追及されなければならないし、法律を犯している者については、国家の権力をもってこれらの者たちに対してはどこまでも追及されなければならないということをずっと申し上げてきたのでありまして、皆様方から一層の御協力をいただくことも国民の御理解をいただく上で重要なことだと考えております。大蔵省といたしましても、政府の広報活動に一層努めてまいりたいと考えております。
  97. 原田昇左右

    原田(昇)委員 今国民の心を一番いらいらさせているのは、住専から金を借りている経営者の態度だと思うのです。世論調査によりますと、国民の四割以上が、我慢ならないのは、巨額融資を受けながらそれを返そうとしないで、相変わらず豪邸に住んで、高級車を乗り回し、豪遊を続けている不動産業者だ、こういうように感じているという結果が出ております。悪事はどんどん進行しているのに、役所や警察の対応はいかにも遅い。このままでは悪いやつにすべていいようにされてしまう。まあもっとも、最近ようやく大阪で一件、東京で一件逮捕がありました。悪いやつはまだまだたくさんいるはずだと思います。  国会審議の遅延から住専処理機構の設立がはっきりしないという影響もありますけれども、この事態について、当局はどういうように考えてどういうように対処しようとしておられるか伺いたいと思います。
  98. 倉田寛之

    ○倉田国務大臣 住専問題は、政府にとりまして現下の喫緊の課題であり、住専関連事件を含む金融・不良債権関連事犯に関しましては、警察庁及び関係都道府県警察において所要の体制を整備し、その捜査を推進をしております。昨日の住専大口融資先である不動産会社役員らによる競売等妨害事件の検挙等に見られるとおり、債権回収等にかかわる違法行為につきまして厳正に対処しているものと承知をいたしております。  警察といたしましても、今後とも住専処理機構の設立の前後を問わず、また貸し手、借り手を問わず、住専問題の処理の過程で刑罰法令に触れる行為を認めれば厳正に対処してまいるものと認識をいたしております。  なお、詳細につきましては、必要があれば政府委員よりお答え申し上げたいと存じます。
  99. 原田昇左右

    原田(昇)委員 政府委員から御答弁もいただきたいと思いますが、同時に国税庁に伺いたいのです。  なぜこうして企業が大規模な脱税を行っておるのに摘発できないということになってきておるのか。庶民は徹底的に源泉で取られちゃうわけですから、そういう中で余りにも不公平ではないかと思うのです。この辺も伺わせていただきたいと思います。
  100. 若林勝三

    ○若林政府委員 お答え申し上げます。  住専問題に係る関係者の課税問題につきましては、これが適正に行われているかどうかというということにつきまして国税当局としては大きな関心を持ってきたところでございます。このため、関係者の課税に係る資料、情報の収集に努めてきております。問題があれば調査を行うということで厳正に対処をしてまいったわけでございます。こうした中で、悪質、大口と思われる事案につきましては、査察調査も行っておるところでございます。  いずれにいたしましても、国税当局といたしましては、適正、公平な課税の実現のために、脱税者に対しては査察調査も含めまして厳正に対処するということで、税務行政に対しまして納税者の信頼が確保されるように今後とも最大限の努力を図ってまいりたいと思っております。
  101. 原田昇左右

    原田(昇)委員 しっかりやってもらいたいと思います。  何といってもこの住専問題で、あの巨額の融資を受けながら、返す気がなくて財産の隠匿、資産の隠匿に狂奔しておるという連中は絶対に許せません。これはもう地の果てまで行って財産を回収するということをぜひ考えていただきたいと思います。(発言する者あり)そういう法案になっているんだよ。黙れ。  国民住専問題に対して不安を抱いているもののもう一つは、二次損失の問題、これがどうもはっきりしないということにもあると思うのですね。ぜひこの二次損失についても、しっかりとこれから回収をしていただいて、この額をできるだけ減らすということにお努めいただきたいと思います。
  102. 久保亘

    久保国務大臣 そのように考えております。  なお、二次損失に限らず、今御意見ございました、債務者に対して財産隠し等を絶対に許さず、徹底してその回収に努めるということでございましたが、私どももそのように考えております。その回収の実を上げることによって国民の御負担が極力少なくて済むよう努力をしなければならない責任を負うているものだと考えております。
  103. 原田昇左右

    原田(昇)委員 国民にとってもう一つ大きな不安は、住専を含めて八十九兆円という巨額の貸付規模を持つノンバンク、さらには体質の弱い信用組合等の危機が叫ばれているところであります。これらの実態は住専の場合よりはるかにひどいという説もあって、預金者の心は揺らぐわけであります。人々のこうした心理状態をほっておけば、何かあったときにそれがパニックの引き金を引くおそれがあるわけであります。私は、これらの不安や不満を解消して日本の金融を健全化するために提案されているのが今度の金融関連四法案だと思います。  ですが、その問題に立ち入る前に、金融システムがこのような状態に立ち至ったことについて金融当局がどのような行政責任を感じておられるか、ぜひこの際伺っておきたいと思います。
  104. 西村吉正

    西村政府委員 金融行政は戦後の歴史の中におきましてさまざまな重点の置き方をしてまいったと考えております。当初は、預金者保護あるいは金融機関の破綻を起こさないようにするということを重点的に考えておったわけでございますが、その後の経済情勢の変化に伴いまして、自己責任あるいは市場規律ということを中心に行政を進めるべきであるという反省のもとに、現在そのような方向で努力を重ねておるところでございます。
  105. 原田昇左右

    原田(昇)委員 昨年破綻した木津信用組合、それから大阪信用組合の場合に見られるように、金融機関の破綻処理コストが巨額に上って、現行の預金保険制度の枠組みでは円滑に処理できなくなっていると思います。もし本格的な問題処理が行われないとすると、破綻した信用組合が持っている資産の劣化によって回収価値は日に日に下がっていって、最終的に損失は一層拡大することは必然でありまして、この事態をどういうように見ておられますか。
  106. 西村吉正

    西村政府委員 木津信用組合の破綻の状況は今までにないような大変に重いものでございまして、現在の制度をもとにいたしますと、預金者に負担をかけることなくこれを処理することは大変に難しい状況になっております。  このため、今回法案の御審議をお願いしているわけでございますが、もしそういうことが不可能になりました場合には、この処理が非常に難しくなると同時に、処理が先延ばしになることによって損害額もふえていくということを懸念しているところでございます。
  107. 原田昇左右

    原田(昇)委員 このような事実からしても、新しい金融システムが不可欠であることは明らかであります。  私は、この法案の目標は、自己責任の原則が貫かれた、市場規律による、透明度の高い、金融の自由化、国際化時代にふさわしい金融システムを確立することにあると考えておりますが、そう考えていいでしょうか。
  108. 西村吉正

    西村政府委員 今回御提案を申し上げております趣旨は、御指摘ようなことと私どもも考えております。
  109. 原田昇左右

    原田(昇)委員 その法案の内容ですが、簡単に言えば、我々の理解しておるのは、一つは、金融機関経営が健全に行われるために必要な制度を整備して問題の再発防止を図るための法案、第二は、預金者の保護を図りつつ金融機関の破綻処理を円滑かつ迅速に行い得る手続を創設するための法案、第三は、信用組合等が破綻した場合にも今後五年間は預金を全額保証するための預金保険機構の業務の拡充の法案、そして第四に、農協や漁協が経営困難に陥った場合にスムーズに対応措置が講ぜられるようにするための法案の四つから成っていると思いますが、それでいいですか。そういうよう理解してよろしいですか、大蔵大臣、農林大臣。
  110. 西村吉正

    西村政府委員 御指摘よう理解をいたしております。
  111. 原田昇左右

    原田(昇)委員 それでは、法案の個別の問題に移って御質問したいのですが、今度の法案では、住専以外のノンバンクにどういう対処をすることになっておられるのか。これだけ融資規模が大きくなってきたノンバンクでありますから、何らかの規制が要るのではないかと思いますが、いかがですか。
  112. 西村吉正

    西村政府委員 世界的に見まして、金融の規制を行います場合に、貸し付けというものを対象にするか預金の受け入れというものを対象にするかという大きな二つの流れがございます。私どもは、預金の受け入れということに着目をいたしまして行政を組み立てているわけでございますが、ノンバンクは預金受入金融機関ではないことから、銀行や信用金庫とはまた違った体系の規制、監督が行われてきておるところでございます。  住専をも含めまして広い意味でのノンバンクにつきましては、預金受入金融機関とは少し違った観点からの規制をしているわけでございますが、今回の経験をも踏まえまして、そのような観点から、どのような監督、規制が必要であるか、なお検討をしてまいりたいと考えております。
  113. 原田昇左右

    原田(昇)委員 しっかりと考えていただきたいと思います。  破綻金融機関処理の目的は、金融機関を救済することではなくて預金者を保護することだと思うのですね。この点は、住専の場合と同様に、国民の十分な理解を得ておかないといけない問題だと思うのですよ。救済のために公的な金を出すんだとか、すぐそういうような短絡的な考え方でやられますからね。  しかし、今度の法案では、今後五年間は預金を全額保護することになっておるわけであります。大口預金者を含めて一律に五年間全額保護しなければならないのはなぜであるか。例えば大口預金者については、そんなに五年間も保護してやる必要があるのかねという声もあるわけですよ。例えば当面は、三年間ぐらいはこれをやって、そしてもう一回その時点で見直すということにしたらどうだという考え方もありますが、いかがでしょうか。
  114. 西村吉正

    西村政府委員 すべての預金者を保護するということを、今後五年以内のできる限り早期に現在の建前でございます一千万円以下の預金を対象にするという努力をしてまいるわけでございますが、御指摘の大口預金についてはもっと早く何らかの措置がとれないかという点につきましては、金融制度調査会におきましてもいろいろな御議論がございました。  しかしながら、現在の金融情勢下におきましては、やはり実際に移動が起こりまして影響を及ぼすという点におきましては、大口預金は小口の預金よりもより大きな影響を及ぼす問題でございます。そのような点も考えますと、できるだけ早くそのような体制を整備するということに心がけつつも、今直ちにそういうふうに取り組むことはなかなか難しいかと考えております。
  115. 原田昇左右

    原田(昇)委員 御答弁よくわかりますけれども、大口預金者になれば、かなり自己責任原則というのに基づいて行動できるところではないかな、こういうように思うものですからそういう議論が出てくるのではないかな、こういうように思って申し上げた次第でございますので、十分御検討をいただきたい。  さて、相次ぐ金融機関の破綻に対処するため、法案では、預金保険料をこれまでの七倍に引き上げるということにしておるわけであります。果たしてそれで十分であるかどうか。また、農協の貯金についても、同様に保険料率を大幅に引き上げ、預金者保護のための十分な貯金保険料や特別保険料を設定する必要があるように思うけれども、これについてもどうであるか。
  116. 西村吉正

    西村政府委員 今般、預金保険料を七倍に引き上げることを前提にして制度の改正をお願いしておるわけでございますけれども、この預金保険料率の引き上げに当たりましては、預金保険機構の資金援助が初めて実施されました平成四年から七年末までに生じました破綻金融機関の損失額が二兆五千億円程度であったことにかんがみまして、今後処理を要する、木津信用組合等の処理も含めまして、今後五年間に同程度の破綻が生じた場合にも対処し得るようにするとの考え方に立ちまして、七倍程度に引き上げることとしたものでございます。  これによりまして、八年三月末の責任準備金残高三千八百六十五億円と合わせまして、今後五年間の利用可能額は二兆七千億円程度に上る見込みでございます。
  117. 大原一三

    ○大原国務大臣 委員指摘ように、貯金保険機構におきましても保険料率を引き上げることにいたしております。  五月の二十四日でございましたか、貯金保険機構の運営委員会におきまして、現在〇・〇一二というのを一・五倍に引き上げる、さらにまた、これは政令事項でございますが、特別保険料につきましても、現在の○・○一二を一倍程度にするということで、二・五倍の案が出ているところでございます。  七倍に対して何でそんなに低いのかという御議論でございますけれども、現在のところ、破綻系統というのが五年に一回ぐらい起きているわけですね、五年に一回。これは漁協もカバーするわけですが、漁協も五年に一回というケースがございます。しかしながら、一年に一回程度こういった事案が起きるという前提で計算してまいりますと、その程度で賄えるのではなかろうか。  さらにまた、特別保険料につきましては、御承知と思いますが、一千万円を超える貯金者というのは非常に少ないのです。一千万円以下でカバー率が両方とも、漁協並びに農協とも八割でございまして、高額の預金者というのは余りないわけでございますので、とりあえず一倍程度で賄えるのではなかろうか。  さらにまた、現在ございます積立金千五十数億円は健全に残っておりますので、その分は現在担保されております。  さらにまた、単協の預金というのは非常に零細でございまして、単協は二百四、五十億円が預金規模でございます。漁協が十三、四億円という数字でございます。  したがって、大型の倒産というものは現在予想されていないわけでございますので、将来万が一これが数がふえるということになれば、委員指摘ように、弾力的に対応していかなきゃならぬ、かように考えております。
  118. 原田昇左右

    原田(昇)委員 今の御答弁で、農協の方は二・五倍でいいんだというお答えでございます。まあ十分理解をいたすわけでございますが。  さらに、農協系統につきましては、組織の整備、改編、改革とかあるいは系統金融に対する監督、検査のための行政のあり方、こういったものもこれから非常に重要な問題として結論を出していかなきゃならないと思いますが、農林大臣のお覚悟をいただきたいと思います。
  119. 大原一三

    ○大原国務大臣 この点につきましても、これまで何回か申し上げたことでございますが、現在農政審議会におきまして、この夏までを期限といたしまして、信用事業はもとよりでございますが、農協三段階の組織の抜本的改革を御提言をし、御審議をいただいているところでございます。  幸いにして、JAも昨年からことしにかけて、組織としてのいわゆるリストラを、三〇%五年間で合理化を進めようという提案までいたしていただいておるわけでございますので、それにこたえるように、この審議会の審議結果を待って、そして法案を整備し、次の通常国会には改革案を提案したいと作業を進めているところでございます。
  120. 原田昇左右

    原田(昇)委員 よくわかりました。  法案では、信用組合の破綻について政府保証をするほか、整理回収銀行という受け皿を用意することになっておりますが、信用組合以外の金融機関が破綻した場合にはどういうように対処するのか。信用組合のみに限定して大丈夫でしょうか。大蔵大臣、いかがですか。
  121. 西村吉正

    西村政府委員 私どもは、金融機関が破綻した場合といえども、できる限りというか、原則として金融システムの中におきまして、金融機関の自助努力によりまして対応するというのが原則であろうかと思っております。したがいまして、通常金融機関につきましては、預金保険制度というようなものを含みます金融システム内の負担によって対応すべきものであると考えておりますし、アメリカにおいても、SアンドL以外の金融機関の破綻処理については、金融システム内の処理ということで対処したところでございます。  しかしながら、信用組合につきましては、なかなかそういうことだけでは対応し切れないのではないかということで特別の措置をお願いしておる、こういうことでございます。
  122. 原田昇左右

    原田(昇)委員 法案では、今後五年間において金融機関の破綻処理費用が不足する場合は、まず預金保険機構が借り入れをした上で、これを政府が保証するという形になっておると思うのです。住専の二次損失については、預金保険機構に対して直接に補助金を交付する仕組みになっておりますね。ともに信用秩序の維持、預金者保護のための財政措置であるのに、住専と信用組合でこうしたスキームが違うのはどういうことでありますか、国民によくわかるように説明していただきたいと思います。
  123. 西村吉正

    西村政府委員 住専の損失処理につきましては、仕組みといたしまして、損失が既に生じましたもの、あるいは生じました後におきましてどのように対処するか、そのような仕組みで現在の処理策を御提案申し上げているところでございます。  しかしながら、信用組合の処理に際しましては、今後どのような損失が生ずるかわからないわけでございますが、そのようなものが生じました場合におきましても、できるだけ預金保険等で対応する、そういう枠の中で処理をするということを前提といたしまして、万が一それによって対処できない場合には五年後に善後策を講ずる、このような事後的な処理方式になっているわけでございます。  既に損失が生じたものを対象とするか、あるいは今後処理すべきものを対象とするか、その違いによるものでございます。
  124. 原田昇左右

    原田(昇)委員 今の御答弁でかなりはっきりしたと思いますが、これについては、やはり国民の間で非常に議論のあるところになろうと思いますので、十分PRを、ひとつはっきり国民に対しても納得いくようにわかりやすく説明しておいていただきたいと思います。要望しておきます。  それから、信用組合の日常の監督は国の機関委任事務として都道府県知事にゆだねられておるわけですね。知事がそのような権限を持つ以上、破綻処理というプロセスでも知事はそれなり責任を負っていると思うのです。その意味から、都道府県に対しても、信用組合の破綻処理のための応分の財政支援をする等、その責任に応じた負担を求めるべきではないかと思うのですが、これについてはどうですか。
  125. 西村吉正

    西村政府委員 今までも、それぞれの都道府県の実情に基づいて、地域経済に与える影響や民生の安定等を勘案の上、公益上の必要性から自己の責任に基づく判断によって行われているところでございますが、今後ともこうした都道府県の財政支援が行われることが期待されると金融制度調査会の答申におきましても指摘をされているところでございます。私どもとしても、この考え方に沿って対応してまいりたいと考えております。
  126. 原田昇左右

    原田(昇)委員 法案では、金融機関経営の健全性を確保するために早期是正措置を導入することにしております。これは、行政当局の権限を場合によっては大幅に強化することにならないか、規制緩和に逆行するんじゃないかという意見もありますが、いかがでしょうか。
  127. 西村吉正

    西村政府委員 従来から、大蔵大臣には金融機関に対しましてこのような措置を講ずる権限が法律上、銀行法上与えられているところでございますけれども、私どもといたしましては、このような手続の発動に関しまして、迅速に対応できること、あるいは透明性を与えるべきであること、そのような観点から、今回早期是正措置という、アメリカの制度をも参酌いたしました仕組みを御提案申し上げているところでございます。むしろ、このことによって行政権の発動が迅速化、透明化される、こういう性格のものであろうかと考えております。
  128. 原田昇左右

    原田(昇)委員 信用組合の破綻のケースに、トップが、役員が暴走するとか、あるいは他の法人の役員を兼任する、こういうことが目立つわけでございますが、これを禁じるということは大変適切な措置だと思います。これによって暴走は防げると考えていいでしょうか。
  129. 西村吉正

    西村政府委員 そのような問題を防ぐためにはいろいろな措置が必要かとは存じますけれども、今回御提案申し上げております信用組合につきましても、銀行、信用金庫等と同様に、その常務に従事する役員等の兼職等を原則として禁止するということは、御指摘ような弊害を防止することにつながるものと考えております。
  130. 原田昇左右

    原田(昇)委員 アメリカの大手銀行等を見ますと、最近金利等の短期的な変動を収益機会として、これはいわばさや取りですか、そういったことをする、いわゆるトレーディング取引によって収益を得るという比重がどんどん増しておるのですね。新しい銀行の形態だと思うのです。我が国もこの分野で国際競争力を強化するにはどうしてもこの分野に進出していかなきゃならぬ。  そこで、その場合、リスク管理を充実するにはどうしても取引の実態を正確に反映する会計処理が必要だということで、トレーディング取引を時価に評価する制度を今回設けるということになったと思うのです。大変専門的で難しい話でございますけれども、こういうよう理解していいでしょうか。
  131. 西村吉正

    西村政府委員 かねてから、我が国金融機関の活動が国際的な競争、国際場裏における活躍に伍していけるようにこのような措置を講ずるべきだという御指摘は受けていたところでございます。  今回の法案におきまして、各業法にトレーディング業務の時価会計の導入を可能とする所要の規定を盛り込んでいるところでございますが、これは御指摘ようなことに寄与するものと考えております。
  132. 原田昇左右

    原田(昇)委員 新しい金融制度のあらましは大体以上で質問を終えますが、重要なのは、このような問題を扱うべき大蔵省への国民の信頼が揺らいでいるということではないかと思います。残念なことに、幹部職員のスキャンダルも絡んで、金融不祥事に関する大蔵省の責任は厳しく追及されているわけであります。  住専の大量の不良債権の発生の理由は財政当局の失政にあるとして、多くの人々が一斉に大蔵省の解体論とかあるいは改造論を唱えるに至ったのは御承知のとおりでありますが、ある新聞に至っては、社説に、現在提出されている金融関連法案についても、透明なルールによる破綻処理を目指しているけれども、その前提には大蔵省の改廃による金融行政改革が絶対に必要だ、こういう指摘をしておるわけであります。これについて、大蔵大臣どう考えますか。
  133. 久保亘

    久保国務大臣 ただいま与党におきましても、この問題についてのプロジェクトチームで御検討をいただいております。大蔵省といたしましても、みずから改革の方向を明確にすべきだと考えておりまして、去る四月二日に第一回の会合を持ちました新しい時代の金融行政のあり方について検討するためのプロジェクトチームが今鋭意検討を進めている段階でございます。できるだけ早く一つの方向を結論として、そしてその改革の実行に移さなければならないと考えております。
  134. 原田昇左右

    原田(昇)委員 大蔵大臣、今御覚悟を伺ったわけでございますが、非常に大事な問題です。ぜひ頑張っていただきたい。  さて、これまでの大蔵省の保護行政的な護送船団方式と情報の秘匿方式は既に過去のものになったと言われておるわけでありまして、自己責任の原則に立った透明性の高い新しい金融システムは、経済のグローバル化とか取引のスピード化など、未来に向けての時代変化にふさわしいものでありますとともに、万人が望んでいる景気の回復に役立ち、また、総理が今強力に推進しようとしておられる行政改革と財政再建の精神にもかなったものでなければならないと思うのです。  果たして今日の大蔵省にそういう方向に向けての管理ができるか、疑問とする声が少なくないわけであります。大蔵省幹部は、こういう声をどういうように受けとめておられるか。幹部から直接責任ある御答弁をいただきたい。
  135. 西村吉正

    西村政府委員 金融行政に関して申し上げますならば、この十年間、バブルの発生、崩壊という非常に困難な問題を抱えて行政を行ってまいりました。現在その後始末に追われまして、どちらかというと足元の問題の処理に追われているというのが現状でございますが、二十一世紀をにらみまして、我が国の金融のあり方、御指摘ような自己責任原則に立脚した、また市場規律を重視した、そのようなシステムの構築に取り組むという前向きの仕事に一日も早く取り組まなければならないと考えております。そのためにも、現在の足元の問題の処理を一日も早く片づけなければならないと考えております。
  136. 原田昇左右

    原田(昇)委員 私はかねがね、経済がよくなるためには土地が動かなければならないと思っております。つまり、住専金融機関不良債権として抱え込んだ土地が塩漬けになっておる、これを解消することが肝心ではないでしょうか。土地を流動化させ、それを有効利用させるということがこの際極めて大事な政策ではないかと思うのです。  この際、土地政策について思い切った改革をし、政策を実行していかなければならないと思いますが、いかがでしょうか。
  137. 高鳥修

  138. 原田昇左右

    原田(昇)委員 いや、いいです。私がちょっと申し上げておきます。  土地政策審議会で国土庁は提案されたようでございますけれども、恐らく御答弁は土地政策審議会でやっておりますという答弁だろうと思うので、とにかくここで、流動化のために阻害する要因の対策としてどうしてもこの際取り上げていただかなければならない、そういう意味で国土庁にお伺いした次第です。  どうぞ、やってください。
  139. 鈴木和美

    ○鈴木国務大臣 ただいまの先生の御質問でございますが、国土庁といたしましては、従来の土地のそういった有効利用の促進ということは大変議論はしてきたわけでございますが、そのときには三つの観点で議論してまいりました。  それは、一つは民間の土地機構の充実の問題、同時に公共投資の先行取得というものと、それから東京二十三区のこういう協議会と協議をしまして有効利用の促進を図ってきたところでございますが、それをもう一歩進めまして、有効利用のもう少し具体的なものを提示して、それで東京都とよく話をしながらやっていった方がいいのじゃないかということで、具体策の問題として、直接的な有効利用の問題と間接的な有効利用の問題を提起いたしまして、先般国土審議会にかけまして、間もなくその答申をいただきまして、今非常に土地の流動化というのは大切なことだと思いますので、全力を尽くしてやってまいりたい、そう考えているところでございます。
  140. 原田昇左右

    原田(昇)委員 余り知られていないことですけれども、私が聞いたところでは、例えば税制等についても、短期売買の譲渡益課税が非常に厳しい。そこで、競売への参加者を少なくしてしまうということになる。不動産業者も、競売に参加しても短期的に土地を仕入れる気がしない、こういうことだそうです。まさにバブル期のようなときならいざ知らずでございますが、この税制の問題についても、不動産市場の正常化に役に立つことであれば、時限的にさらに緩和することを考えてはいかがかと思っております。  それから、競売について、例えば占有者がいて処理が進まないという問題がありますけれども、これについては、我々の保岡議員を中心に法案が今国会に提出されているわけであります。しかるに、これが野党の趣旨説明要求によってたなざらしになっていまして、この委員会に付託されていない、こういうことをぜひ指摘したい。(発言する者あり)民事執行法の改正、よく覚えておきなさい。それをぜひやらないと競売の促進にならないということを指摘しておきたいと思います。  次に、新進党の住専問題に対する態度についてぜひ私は疑問を呈したいのは、新進党は当初から、六千八百五十億の削除を求めるのみで具体的な対策を示さなかったのですね。しかし、マスコミなどから無策と批判されたために、二月の末になってようやく対案と称するものを持ち出してきまして、それは、政府案の公的負担のかわりに、破綻した住専に会社更生法を適用することを骨子としているわけであります。これがうまくいかないということは先ほど来の御説明でも明らかでございますけれども、これに対して、大蔵大臣いかがですか。簡単に。
  141. 久保亘

    久保国務大臣 会社更生法の適用は、法律上のいろいろな規定もございます。三分の二の同意でありますとか、再建の見通しがあるかないかといったような問題についての制約がございますので、大変難しいのではないか、住専の場合にこれを適用いたしますことは非常に難しいのではないかと考えております。
  142. 原田昇左右

    原田(昇)委員 お聞きのとおりであります。  それにしても、この対案はいつ国会に提出されたのか。においだけは振りまかれたと思うのですが、本体の料理は食えないものということがわかってこっそり引っ込められたのかもしれないですね。まだ提案されているというのなら、委員長金融問題特別委員会としてその扱いをどうするか、委員長にぜひ確認していただきたい。対案があるのかないのか、我々ははっきりしないのです。  ぜひ委員長にお願いを申し上げたいと思います。
  143. 高鳥修

    高鳥委員長 原田君のただいまの御発言でございますが、委員長としては拝見しておりません。
  144. 原田昇左右

    原田(昇)委員 国民税金を私企業の失敗のしりぬぐいに投入するのは決して望ましいことではないけれども、我々がこれをどうしてもやらなければならぬというのは、現在の金融不安を早期に解消するための有効手段として考えておるわけであります。  しかし、この住専の問題を処理するだけで我が国の金融不安が解消されるわけではありません。そのほかに、ノンバンクなど、金融機関にはまだ多くの不安な要因が存在しています。我々は、住専問題が残した教訓をかみしめながら、住専処理法案と金融関連法案の速やかな成立を図り、来るべき二十一世紀に前途有為の人々が思い切って腕を振るえる、金融不安のない社会を実現しなければならないと思いますが、総理の御見解をいただきたい。
  145. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先刻来の御論議の中でもございましたように、国民が安心して預金ができる、また融資が受けられる、そうしたために金融システムの安定化というものがぜひとも必要でありますし、そのためにも、今回の教訓を我々は生かしながら、二十一世紀に向けて、市場規律を軸とした透明度の高い金融システムをつくり上げていく、そのために全力を傾けていく、我々にはそうしたことが求められていると考えております。
  146. 原田昇左右

    原田(昇)委員 最後に、金融問題、一日も早く解決することが必要だということを今まで御指摘してきましたけれども、喚問問題を持ち出して、なかなかその結論が出ないというのはまことに残念です。早く我々は審議をやらなきゃいかぬということで、私の聞いておるのは、理事会で、四日間審議の後に協議するということになっておるそうでございますけれども。  ところで、五月二十二日の各紙の夕刊に宗教団体のワールドメイトの脱税問題が大きく報道されたわけであります。宗教団体と税の問題、宗教と政治活動のあり方が、予算委員会からずっと議論されてきておるわけであります。この金融問題特別委員会は、金融、税制、財政制度について広く論議することを目的としており、また、四党の国対委員長合意によって、証人喚問問題についてはこの特別委員会で取り扱うことになっております。したがって、我々は、改めてこの特別委員会において、池田大作創価学会名誉会長、信平信子元創価学会北海道副総合婦人部長、高田明公明党板橋区議会議員、三人の証人喚問を要求いたします。  以上で質問を終わります。
  147. 高鳥修

    高鳥委員長 証人喚問問題につきましては、理事会において協議いたします。  これにて与謝野君、尾身君、原田君の質疑は終了いたしました。  午後二時四十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五十一分休憩      ————◇—————     午後三時三分開議
  148. 高鳥修

    高鳥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。早川勝君。
  149. 早川勝

    ○早川委員 いわゆる金融改革法案と住専問題がこの委員会質疑の中心でありますが、その前段としていわばバブル時代があるわけでございまして、バブルというのはちょうど十年ぐらい、つまりバブルが始まってから今日の終息というか、その中でいろんな問題をもたらしているわけですが、ピークを迎えてそれから低下していく。その中で総理は、時には大蔵大臣を務められ、そしてまた自民党の幹事長あるいは政調会長をやられ、そしてまた現在は総理大臣ということでございます。そういった中で、どうしてバブルが生じたか、あるいはどこに責任があるのかというのは再三質疑されているわけでございますが、このバブルの十年を通じまして一体我が国にどんな風潮が生まれているのかな、一体どんな問題が引き続き引き起こされているのかな、これについて総理に伺いたいわけでございます。  言葉で言えば、いろんな分野で不信が募っているだろうし、不安、その中の一つが金融不安であり、あるいは福祉不安であり、あるいは最近ですと雇用不安が起きている。また、国民の不満が非常に募っているということでございますが、こういったことを考えてみまして、この十年間のバブル時代ということを通じまして、総理我が国の今の時代風潮、世相についてどんな考え方、とらえ方をされているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  150. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 バブルの十年という言い方をされましたが、これを一言で申し上げることはなかなか難しい問題があろうかと思います。  殊に、午前中の御論議の中にもございましたけれどもプラザ合意以降、為替水準の変化に伴ってさまざまなその折その折の施策が講じられてまいりました。そしてその間において、一方では前川リポートに象徴をされますような積極的な我が国自身の構造改革といった方向も打ち出されておりながら、むしろ全体の流れの中で必ずしもそうした対応が十分に行えなかったということも、今から振り返るならあろうかと思います。そして、その間における人口構造の変化というものをある程度お互いが意識をしながら、その変化に対応する社会経済体制づくりが結果としてはうまく組み立て切れなかった、こうした問題もあるいはその中の反省として取り上げていかなければならないのかもしれません。  そしてその中で、特に本委員会で御論議をいただいております問題の性格に思いをはせますときに、例えば地価でありますとかあるいは株価といったようなものにつきまして、後から振り返ってみますと、経済的な合理性を欠いたレベルにまで高騰していた。しかし、それが経済的な合理性を欠いたレベルにまで上昇しているというとらえられ方は、必ずしも世間一般の見方ではなかった。そして当然のことながら、そうした動きというものは、マーケットの中である時点での急激な価格低下というものを惹起した。これは、考えてみますと必然的な市場の動きであったのかもしれません。こうした大規模な、また急激な資産価格、特に地価に象徴されます資産価格の上昇、下落といった事態は、第二次世界大戦後、少なくとも私どもの世代にとりましては初めての体験でもありました。それだけに、その後の実体経済への影響というものへの見通しが不十分であったということも否定できないと思います。  政府としては、恐らくその時点その時点において最善と考えられる施策を講じてきたものと思っておりますけれども、結果としてこうした事態を惹起いたしました以上、バブルの発生からその後の処理というものを振り返りましたときに、政策的にもどこかでミスがあったということを言われてもやむを得ない、私はそのような思いを持っております。そうした中におきまして、政治家もまた行政の指導者としてその責任の一半は受けなければなるまい、そのような思いでおります。
  151. 早川勝

    ○早川委員 私は、この十年間を通じて日本が非常に金万能な社会になってしまった、唯一最高の価値観になってしまっているんではないかというのが一つです。二番目は、責任の所在、責任のとり方というのが、法的に抵触、さわらなければいいのではないかとか、あるいは経済的な責任が有限であればそれ以上は責任をとらなくてもいいのではないか、こういったことを考えてみますと、一般生活、庶民の生活の中では道理があるわけですね、法律だとかいろいろな責任というのは、非常に高度な道理あるいは道義的な責任というものがあるわけですが、そういったものも非常に希薄になっているのではないかというふうに思います。  それからもう一つは、政治への信頼が揺らいでしまった、あるいは経済界に対してもそうだ、それから行政に対してもそうだ、とりわけ大蔵省、役所の頂点にある大蔵省に対する信頼も失われた、揺らいでいる。それから地方自治体、中央は少々まずくても地方はいいのではないかと言われていたこの地方に対しても信頼が揺らいでいる。こういった信頼が揺らいでいる社会ではないかと思っております。  その中で、先ほど言いましたように、不安の問題があるわけでして、そういった中で、この金融不安をとにかくこの委員会でこの機会になくしていくこと、これが私たちの、今政治に課せられた責任だと思っております。  そこで、まず大蔵大臣に伺いますが、今日の金融のいわば危機ですね、金融の安定が揺らいでいる、一体その状況認識について、大体どれぐらいの深刻さなのか、その点についての認識を伺いたいと思います。  幾つかの指標があるわけですが、例えば不良債権が三十四兆あるいは四十兆、八十兆とか、外国からは百兆、こう言われておりますね。それも一つの指標ではないかと思うのですが、今日本は本当に金融が深刻な状態にあるんだ、そのあたりの指標について、こういう側面から見て大変なんだというのを御指摘いただければ幸いだと思います。
  152. 西村吉正

    西村政府委員 初めにちょっと数字だけ申し上げておきますが、本年三月末におきます不良債権の総額は三十四兆七千億でございますが、これは半年前の時点と比較いたしますと三兆四千億円減少しておりますほか、債権償却特別勘定残高、すなわち備えが約五兆五千億、相当大幅な増加をいたしました結果、かなり不良債権対策というのは進んでまいっておるようには考えております。  ただし、これは全体としての問題でございまして、個々の金融機関あるいは業態別に見ますならば、まだまだこれから真剣に考えていかなければいけない部門がたくさん残っておると感じているところでございます。
  153. 久保亘

    久保国務大臣 御承知のように、日本金融機関の国際的な地位は、今日、今政府委員から申し上げました不良債権の巨額な蓄積といいますか累積等によって、非常に低い地位になってきているのだと思っております。  また、東京市場は、かつてニューヨーク、ロンドンと比肩できるような地位を確保いたしておりましたけれども、今日では東京市場の地位は著しくニューヨーク、ロンドンに比べて低くなっております。それだけではなくて、香港、シンガポールの市場も最近非常に活性化といいますか、活発な市場の活動が見られるようになりました。そういう中で、今、東京市場の活性化の問題も、非常に金融市場における日本の立場ということで問われている状況ではないかと思っております。  いずれにせよ、このバブルの発生から崩壊を通じて、日本の金融における国際的な立場を見ましても、問題がたくさん発生してきている中で、今日金融システムの安定化といいますか、経済の動脈にふさわしい金融の新たな時代におけるシステムづくりということが緊急の課題として問われているのではないかと思っております。
  154. 早川勝

    ○早川委員 午前中の質疑の中でも、アメリカのSアンドL、RTCの問題が出されました。いわばこの金融危機あるいは不良債権問題あるいはバブルの問題は、世界共通の現象でもあったわけですね。  それぞれ世界はどういった対応策を講じたかということを資料で整理をしてみますと、アメリカの場合には、約十八兆円、二十兆円の財政支出をした、処理をするに当たって財政支出をいわば軸にして投入してこの危機を打開していった。じゃイギリスはどうだったのかということなんですが、イギリスはどうもイングランド銀行通常の融資をやっただけだ。いわゆる政府の方からは財政支出を、公的資金を投入しなかった。それからフランスは、一切政府、中央銀行からの出資金あるいは財政援助はなしでやった。タッチしなかったんだ。それからドイツも、これもしなかった。北欧の方は、ノルウェーは財政資金を投入した。スウェーデンは金融支援庁を設立をして、そして財政資金を投入した。それからフィンランドも財政資金でこの危機を打開していった。  つまり、アメリカと北欧の方は大体財政資金を中心にして乗り切っていった、イギリス、ドイツ、フランスは通常の金融の融資とかそういった中で処理をしていった、こういうふうになっているわけです。この二つのパターンと比べたら、この最近の一連の信組、銀行を含めて、倒産なりあるいは新しいシステムづくりの中でいろいろな形で講じられているわけですが、こういったパターン化をすると、日本の金融危機対策あるいは不良債権対策はどういう特徴を持っているか。この点について、大蔵大臣でも銀行局長でも結構ですが、今対比して二つのパターンをちょっと紹介したわけですが、それと比べた場合、日本の対策はどこに特徴があるか、それを指摘していただきたいと思います。
  155. 西村吉正

    西村政府委員 御指摘ように、一九七〇年代以降、多くの先進諸国では金融危機に苦しんでまいりまして、それぞれの国の手法によりましてこの問題を解決してまいったわけでございます。我が国におきましては、幸い、最近に至るまでは、少なくとも戦後はそういうことを経験いたしませんでした。平成四年に至りまして初めて預金保険というものを実際に適用するケースが出てまいった、こういうことでございまして、それまではいわば破綻を経験することがなかったわけでございますが、あるいは破綻を未然に防ぐような方法をもって処理をしてまいるということが可能であったわけでございますが、バブルの崩壊過程以降、これを現実の問題として処理せざるを得ない、こういう事態に至っているわけでございます。  そこで、現在我が国において御提案申し上げ、あるいは試みようとしております処理手法でございますけれども、可能な限り金融システムの内部、すなわち預金保険というものを通じてこの処理を行う、すなわち預金保険料を最大限引き上げることによって、この中で処理をしてまいろうという考え方で臨んでおります。  私どもは、通常金融機関に関してはそのような考え方で対処をしていけるのではないかと考えておりますが、ただ、信用組合につきましては、その不良債権額に比べまして貸倒引当金等の手当てが脆弱であるということにかんがみまして、五年間の時限的な措置として、預金保険機構が行う日銀等からの借り入れに対し政府保証等の制度を用意する、こういう対応策を考えているわけでございます。  どちらかというと、イギリスの中央銀行に依存するような形というよりもアメリカの形に近いかもしれませんが、日本独自の方法だと考えておるところでございます。
  156. 早川勝

    ○早川委員 私は、例えば日本銀行が一連の、最近の東京共同銀行、ここへも日銀は出資をしたわけですね。いわば、かつてないことですね。昭和四十年の証券恐慌のときにも、あれは普通の融資ですね、日銀は。出資はしなかったわけですね。もちろん金融機関ですから、貸し出しをしていくのはこれはいわば通常だと思うのですが、よく見ていますと、先ほどの二つのパターンでアメリカ型に近い、こう言われたのですが、よく調べて私なりに理解しますと、三本柱でやっているのじゃないか、やろうとしているのではないか。  つまり、一つ財政支出の問題ですね。預金保険機構で信組勘定で整理回収銀行をつくっても、借り入れて、あるいは政府日銀から借り入れて、それに対して政府が保証するわけですね。政府保証をする。これは五年後に清算をする。そこで財政が出ていくという形になるわけですね。それから、今回の住専の問題についても、一つは、もう再三、最大の焦点になっているわけですけれども、六千八百プラス五十、六千八百五十億、これは財政支出が出てくる。それから、第二次ロスについても二分の一は財政負担するんだ、まさに財政が出てくる。これが一つの柱になっている。  それからもう一つは、先ほど指摘したよう日銀が関与してきている。もちろん、融資しているだけじゃなくて、出資という形をとってきている。日銀が入ってきている。  それからもう一つは、一般金融機関。しかも、東京共同銀行のときに、二信組が破綻してこの東京共同銀行が発足したときには、オールジャパンだと。すべての金融機関が、日本金融機関がこぞってこれをサポートするんだ、つまりオール金融機関、全日本金融機関がすべて入る。これは、預金保険機構の今回の四倍、三倍についても同じようですね。全金融機関が保険料を上げて負担ようじゃないかと。  そういうふうに考えてみますと、三本柱で我が国は金融不安、不良債権問題に対して対処しょうとしている、これがスキームじゃないか。いわゆるスキームというのは枠組みですね。私はそう思っているのですが、そういう理解が正しいのか、あるいは無理だというふうに考えられるか、これは大蔵大臣政治家としての判断を伺いたいと思います。  事実関係はそんなに違っていないのじゃないかと思うのですが、じゃ、最初に事実関係について。
  157. 西村吉正

    西村政府委員 今御指摘の点は、ある意味では御説のとおりだと存じます。ただ、私どもが順番として考えておりますのは、いわば逆の順序になりましょうか。  まず第一に一般金融機関、金融システムの中で最大限の努力をする。その場合も、今までは奉加帳方式というような御批判もございましたが、そのような形ではなくて、透明性のある預金保険制度というものを十分に活用した仕組みをもって金融システムの中で最大限の努力をする、これが大原則であろうかと存じます。  二番目に日本銀行でございますが、資金的な融通という点に関しましては、出資というような特殊なケースもございましたけれども一般的には資金的な融通という、つなぎ融資という側面におきましては、金融システムの安定のために中央銀行のお果たしになる役割は大変に大きいものと存じます。  第三番目に財政ということでございますが、以上のようなことをしてもいかなる方法もまだ足りない、あるいはそれを放置しておいた場合に経済にはかり知れない影響を与えるというような場合に限って、かつ時限的な措置としてこのようなことをお願いをするというのが私どもの考え方でございます。
  158. 早川勝

    ○早川委員 先ほど、日本の金融危機の現状についての認識ということで抽象的に伺ったのを、今銀行局長は、いわばその三本柱について、金融機関内部の責任で、それから日銀で、三番目が財政だ、こういう順序立てをされたわけですが、今までは、実質倒産金融機関等はあったわけですよね。救済合併したり、そういった形で処理してきたわけですが、今回の場合は日銀の出資を求めなければいけない。それから、財政がそこに負担をしていかなければ今日の危機状況は打開できないという不安は払拭できないと私は理解しているのですね。そこにこそ日銀が、二十五条で金融システムの安定のために出なくちゃいけない、それを背景にして、根拠にして活動しなければいけない状況にある。そしてまた、財政も必要とあらば負担しなければ今日の金融不安はなくならないんだ、それだけ深刻なんだと私は理解するわけですよ。  先ほど三十四兆の話をされて、都銀と地銀とあるいは協同組合関係の比率が全然違うということを言われました。私は確かにそうだと思うのですが、全体として、日本が直面しているこの金融不安というのは、この三本柱をきちんと使っていかないことには打開できないのではないか、私はそれぐらい今日の我が国の置かれている状況は深刻だという認識なんですが、その点大蔵大臣はいかがですか。
  159. 久保亘

    久保国務大臣 今回の住専問題の処理に当たりましても、最終的にやむを得ざる財政の支出を考えなければならないということでありまして、それぐらい今日の金融問題の深刻さというのはその解決を厳しく迫っているのであろうと考えておりまして、その点では、今早川さんが言われたことと認識は同じかなと思っております。
  160. 早川勝

    ○早川委員 その三本柱がこれからの、あるいは五年間という時限的な考え方に立ってもいいと思いますが、それがいわゆる日本の金融不安克服のためのスキームだ、枠組みだと私は理解するのですね。その中でこの住専問題、確かに預金者と直接つながっていないんじゃないかという議論があるわけですが、もっと大きなレベルでの発想をすれば、まさにそのスキームの延長線上にあるのではないか、これは私の理解するところですね。  この住専問題については緊急性がある。これは、私が緊急性と言うのは、世界が、日本がどういつだ枠組みの中で、どういったシステムの中でこの金融不安をなくしていくんだ、その取り組みの姿勢をきちんと出してほしい、どういった枠組みをとるのか、イギリス型になるのかアメリカ型になるのか、あるいは日本型かというのを見ているのではないか、あるいは見ていたのだと思うのですね。この住専のときに、そして今回の法案の中でその枠組みが提示できたということで、国際社会、国際金融の社会それなりに信頼を日本に抱いたと思うのですね。そういった意味での緊急性がある。そして、これを早く成立させるということがもう一つの緊急的な要素だと思うのです。  それからもう一つは、やはりスキームを維持しなければいけない。これは再々言っています。スキームは三本柱ですから、これを崩さないようにしなければいけないということです。  それから、これは言うまでもないことですが、公的資金、財政を使うわけですから、税金を使うという仕組みをとるわけですから、できるだけ負担は少ない方がいい。これは当然ですね。税金は少ないにこしたことはない。これは大体、今回の住専でいえば、結果としてという表現をされていますね。トータルとして負担が少なくなること。この住専問題については、実は私はその三つの原則が必要だというふうに考えています。  この点についてのスキームの話を私のよう理解をすると、量的な世界が残りますけれども、その柱の三本が立っていれば、その立っていることがスキームだと。それで、日本的なところには最大限どこがあるかというと、日銀金融機関ですから、財政と金融の世界に二分すればまさに財政のところにウエートがあるのじゃないかなというふうに私は考えます。それが住専におけるスキームのエキスじゃないかというふうに考えるわけです。六千八百五十億と一兆円が基金のところへ入って、それから住専処理機構を発足させてと、こういう数字の世界もあるわけですが、それ以上にその質のところが大切ではないかと思うのですけれども、この点はいかがですか。
  161. 久保亘

    久保国務大臣 いかにして不良債権処理するかというのを資金の面から見ますと、スキームというのは今お話しのような形で支えられるということになろうかと思っておりますが、処理スキームということの場合には、やはり預金保険機構という既存の機構を活用して、そして新たに住専処理機構を設置をすることによって、この二つの機構が一体的にどのように機能を発揮するかという機構面から見ました場合には、スキームというのは、そのようなことを土台にして、軸にしてでき上がっていると言ったらよいのじゃないかと思っております。ここへ投ぜられる資金的な面から見れば、今お説のとおりだと思います。
  162. 早川勝

    ○早川委員 したがって、これから追加負担の問題が、再々いろいろな機会にいろいろな方々から、責任ある立場の方々から発言されているわけですが、これは何としても、国民負担を少なくするという原理原則に即して言えば、あらゆる手だてを講じて実現をしなければいけないと思っております。  またその点については触れたいと思いますが、今大蔵大臣も、預金保険機構と住専処理機構、もちろんこの二つの機関が機能するという意味でもスキームの中に入っていますね。それで、六千八百億とそれから五千三百億と三兆五千億と一兆七千億というそれぞれの負担割合が議論されて、一言で言えばぎりぎり——ぎりぎりという言葉が年末になると流行語で取り上げられると思うのですが、ぎりぎりという意味はどういう意味なんだろうかなと自分なりに実は考えてみたのですね。そうすると、話し合いの中で進められてきたまさに合意点だと。合意が形成されるぎりぎり、これ以上の合意がないという意味でのぎりぎりだと思うのですが、合意の限界みたいなものがあるのじゃないかと思います。次に、これは農水大臣も答弁されていましたが、五千三百億というのはまさに体力の限界だという、そういう世界がありますね。それからもう一つは、株主の代表訴訟ですね、これに対抗できるという話がございました。  そういった意味でのぎりぎりだということなんですが、十二月の段階の与党政府合意の中に、これは農水大臣に伺いたいのですが、ノンバンクには公的資金を使わないという一項が入っていますね。これはぎりぎりの負担の限界の中に入るわけですか。つまり、入ればもう出さないということになるわけですけれども、最初から言っていますように、金融を守るためには三本柱でやつていくんだ、これが日本の危機対策だ、三つの要素だ、私はそう理解していて、そして住専もそれでわかりました。だけれども、評論家あるいは専門家の世界から指摘されるのは、ノンバンクこそ大変だよと言われていますね。このノンバンクには公的資金を使わないと、このぎりぎりの負担割合を決めたときに入っています。そうすると、今回のこのぎりぎりの意味の中に、ノンバンクについては公的資金を使わない、そう理解してよろしいのでしょうか。これは農水大臣でも総理でも大蔵大臣でも結構ですが、確認させていただきたいと思います。
  163. 久保亘

    久保国務大臣 今お話がありましたことは、昨年の十二月の閣議決定の際に確認をされたことだと思っております。
  164. 早川勝

    ○早川委員 閣議決定をされているということですので、そういう事態が生じないことを願うわけですが、ノンバンクがまさに危機的な事態を生じても財政資金は使わないんだ、これは内閣の意思だということで確認をさせていただきたいと思います。  そこで、母体行の責任があるわけですが、まず最初に行政の責任を整理して考え方を伺いたいと思っております。  まず、行政の責任というと、ほとんどが大蔵省の責任になります。一つは、住専というのは本来個人住宅のための融資機関だということでスタートしているのは御承知のとおりですね。ところが、事業者向け融資を拡大していった、転換をしていく。そうしますと、大蔵省は住専業務の是正勧告だとかあるいは告示の取り消しもしなかったのではないか、これは大蔵省の行政責任ではないか、これが一つですね。  二番目。母体行に住専の継続を断念するものが出てきているわけですね。それにもかかわらず住専の再建を画策したのじゃないか、大蔵省はなおかつ住専の再建を指導した、これはどういうことだということであります。つまり、平成三年だとか平成四年の第一次立入調査結果、大蔵省の行った調査の七社についての報告書を読みますと、早晩、早いうちに経営問題に波及するというふうにみんな書いているのです。七社について同じように表現しているのです。みずから大蔵省が検査結果をそう書きながら、なぜそれに逆行するようなことをやったのかなということであります。  三番目は、再々指摘されておりますように、平成五年の二月のときの覚書ですね。銀行局長と農水の経済局長ですか、覚書があります。つまり、これによって、民間事業における債務履行を保証します、あるいは農林系統金融機関には負担をかけません、大蔵省は努力する、または母体行に対しそういうふうに指導するというのがあの覚書の理屈だと思うのですね。そういうことで、ただしその結果としては、国民負担を求める結果になったのじゃないかということです。そういった責任があるのじゃないか。  しかもまた、念書というのがありまして、三、四年の、先ほど言いました住専の調査、検査結果を受けて、早晩経営基盤そのものについて判断を迫られていくだろう、そんな検査報告がここに書いてあるのですね。それを受けて母体行から大蔵省の銀行局にいわば念書が入っていますね。読むと大変な、今の力関係を如実にあらわすような文面になっているわけですが、ところが、結局、念書を出させておきながら、役所として母体行には債務履行をさせ得なかった、そういった責任もあるのじゃないかと思います。  そしてまた、その覚書の中では、系統金融機関に対しての融資継続を強要していった。これは行政の責任ですが、一言で言えば大蔵省の責任だと思うのですね。これが行政、大蔵省の責任です。  それから、母体行の責任についても考えてみたわけですが、先ほど言いましたように、住専というのはどういう機関かというのを的確にあらわしているのが、例えば日本住宅金融株式会社の設立趣意書というのを読ませていただきました。そうしたら、「協力体制の必要」ということで書いてあるわけですが、その中の二番目にこういう表現があります。「住宅金融の小口、煩雑な事務処理とリスク負担とを代行する専門的機能とを備えた住宅金融専門会社の設立をはかろうとするものである。」協力を求めるときにはこういう文書があるわけですね。小口だ、煩雑だ、リスクを代行するのだ、本来は銀行がやればいいのを、それをやらないでわざわざこういう機関を設けた。  そういったことの中で、母体行は、銀行みずからが個人住宅に融資を広げていくわけですね。本来はすみ分けをしておきながら、どんどんそちらに入っていく。じゃ、住専はどうなるか。住専はその時点でいわば店じまいをしてもよかったのじゃないか、住専責任においてやめさせてもよかったのじゃないか、そういったことをしなかった責任もあるのじゃないかというふうに思います。  それから、再々取り上げられておりますけれども紹介融資だとか迂回融資の責任が当然あるわけですね。したがって、これは一体どこまで法的に問い得るものか、まさに責任としてどこまで問い得るのかというのは問題があると思いますが、そういう責任があります。  そしてまた、先ほども出ましたが、念書を銀行局に出した。ここにありますが、私たち努力して再建を図ります、こういうことを書いてあるわけですね。「責任をもって対応してまいる」、こう言っているわけですが、結局、母体行としてはそれはできなかった、こういうことがあります。  それから最後に、やはり今回も国民負担に対して、問題が解決できないがために国民負担を求める結果になってしまった、こういった責任があると思います。  行政責任、母体行責任について、本当はその上には政治の責任があると思うのですが、私が今申し上げたよう責任の上に立って、あるいは追加負担の問題、母体行の責任に対してどういった形でこれから、つまり二重な意味で大蔵大臣に伺いますが、行政責任大蔵省の責任が非常に重いですよ、一方に母体行の責任もありますよ、そして、この二つを当面打開するためには、大蔵大臣に大いに努力をしていただかないと、また、していただく中で責任の一端を果たしていただけるのじゃないかと思いますが、その点いかがですか。
  165. 久保亘

    久保国務大臣 先ほど私、ノンバンクに対する公的資金の投入を行わないということを閣議決定と申し上げましたが、十二月十九日に、政府与党の確認書でございます、その点を訂正をさせていただきます。同じ日に、政府与党の間で確認をいたしまして、与党三党の責任者、幹事長、書記長、政策責任者等が署名をいたしたものであります。したがいまして、政府においても確認をされたものという点においては変わりはございません。  なお、今母体行の責任、行政の責任ということについてお話がございましたが、毎体行責任につきましては、私も予算委員会審議で繰り返し考え方を申し上げてまいりました。これは、住専の設立から破綻に至ります間、母体行がどのようにここに関与していったかということによって母体行が負うべき責任が極めて大きいということであります。  それから、行政の責任ということになりますならば、バブルの発生から崩壊に至る、そしてその影響下においてこれらの住専が破綻していきます過程において、適切、的確な行政の側からの監督指導というようなことが行われたかどうかということについて、振り返って、結果としてその責任は重く存在するものと考えております。  今この住専問題を処理するに当たっての負担関係において責任を論ずるならば、母体行は、銀行の持ちます公共性に照らしても、また住専問題における社会的な責任にかんがみても、もっと負担や寄与についてみずから考えるところがあってもよいのではないだろうかという立場で、今母体行側、銀行側ともいろいろと協議を行おうとしている、こういうことであります。  御質問の趣旨にきちっとお答えできたのかどうか、私も質問の意図がちょっとわからない点もございましたので、責任問題について申し上げましたが、もし足らざるところがありましたら、また御指摘をいただきたいと思います。
  166. 早川勝

    ○早川委員 やはり、先ほど言いましたように、行政というのは大蔵だけではないと思うのですね。でも、今回の金融の問題については非常に重いということと、先ほど紹介しましたように、住専の成り立ちからしても、またその経過においても、母体行としては、確かに法的に問われることはないだろう、しかし、まさに道義的な責任は果たす、そういう機会はあったはずだということをぜひ母体行にもっと知っていただきたいなというふうに思います。  そこで、国民負担をなくすためには、まさに処理機構が早くスタートして強力な回収体制をつくった方がいい、一日も早い方がいいと思います。  そういったことで、せっかくですから、議員立法が出されているわけですね。政府立法よりも議員立法こそ重視しなければいけないというその精神に立ってお伺いいたしますが、時効を今回わざわざ延長あるいは停止する、こういった法案だと思いますが、ごく簡単に、国民皆さんにわかるように、わざわざ今回の法案を議員立法でつくられたその趣旨をごく簡潔に説明をいただきたいと思います。
  167. 保岡興治

    保岡議員 住専処理機構が成立しまして、そして、住専から譲り受けた債権の回収を迅速かつ的確に行うためには、住専に所属する債権が二十万件余りありまして、そういう大量な債権を一時に移さなければならないという大変な事務量がありますし、その間、譲渡を受ける最中あるいはその事務を完了する直後に時効が完成するというようなものについては的確に時効の中断の措置をとらなければいけない、それをきちっと行わなければ債権の回収に全きを得ませんので、住専債権回収に万全を期する意味で、民法の消滅時効の一時停止の趣旨を考えまして、本法を成立させてそういう債権回収に支障がないようにする措置をとったものでございます。
  168. 早川勝

    ○早川委員 わかりやすく言えば、この債権回収をしやすくするために、そこへ移った途端に二年間延長するということじゃないですか。そういうふうに言っていただいた方が国民にわかりやすいと思います。  そこで、債権は移ったはいいのですが、本当に回収できるかというのは非常に重要な問題なんですね。移っただけで、当初の計画どおりの額面、もちろん減額しているわけですけれども、その額面により近い、あるいはそれを超えるような回収ができれば益金として国民負担が減額になるわけですね。そうすると、この回収の仕方、回収のシステムを本当に重視しなければいけないと思うのです。  一つの例を申し上げますと、二つの信組が消滅して東京共同銀行に、同じようないわば回収銀行ですよ。聞きますと、余り回収状況がよくない、六%ぐらいだとかいう話を聞いています。これは、多分、その回収する能力なりあるいはそれに携わる人の権限が弱いんじゃないか、一般的な金融機関の能力の範囲しか持っていない、権限しか持っていないんじゃないか、これが一つです。  それから二番目に、今度、いわゆる信組の、信用組合のために整理回収銀行をつくって、そこに移行していくというふうになっています。整理回収銀行の持つ権限と、やはり基本は回収ですね、信組はつぶれるわけですから回収です。今回住専処理機構がつくられますね、これも基本的に回収を中心にした機構ですね。そうすると、比べてみますと、整理回収銀行住専処理機構における能力に若干違いがあるのじゃないか、つまり、住専処理機構の方が強いのではないかなと思うわけですね。その事実関係とその理由について伺いたいと思います。  その際に、整理回収銀行も、やはり先ほど来言っていますように、今回は財政資金を投入するんだ、保証にしろとにかく使うんだというシステムになっているわけですから、できるだけ強力な回収体制と能力を持っていた方がいいと思うわけですね。ところが、比べますと、整理回収銀行住専処理機構に差がある。なぜ差を設けたのか、なぜ一緒にできないのか、説明をいただきたいと思います。
  169. 西村吉正

    西村政府委員 住専処理機構、整理回収銀行いずれも、回収を強力に進めるために、法律案におきまして、預金保険機構が行います両者に対する指導助言、あるいは財産調査、取り立て、報告の徴求権等、特例業務を定めているところでございます。また、住専処理機構、整理回収銀行とも、引き継いだ不良債権につきましては、法律家、不動産取引の専門家等の参加、協力を得まして、法的手段を活用しつつ、債権の回収を強力に進めることとしております。  以上のようなところは共通点でございますが、御指摘ように、若干の違いがございます。  それは、整理回収銀行に関する預金保険機構の行う債務者の財産調査でございますが、罰則で担保されていないという点が違います。この点につきましては、両者を比較考量し、法制局等におきましても御議論をいただいたわけでございますけれども、整理回収銀行が引き継ぐこととなる破綻信用組合の債権債務関係は、その処理に直ちに財政措置が講じられるわけではないということ、回収額が財政負担に直結する制度とはなっていないという点から、住専債権債務関係と同様の公的性格を有することとすることは困難ではないかということで、その点が差がついているということでございます。
  170. 早川勝

    ○早川委員 その差は財政支出のところを一つの根拠にされましたが、ただし、日銀から借り入れて使っていたときは保証がついているわけですね。後から、使った後からこれについていませんからというのは、後追いは許されないわけですね。やはり事前にきちっとそういった能力の面でも担保をしておいた方がいいのじゃないかと思います。  総理、最後に総理に伺いますが、先ほどの行政責任とそれから母体行責任でも、よく考えて、可能な責任の問題についてこれからの展望をすると、まさに行政のところにあると思いますね。行政のところを変えていって、覚書の問題にしろ念書の問題にしろ検査の問題にしろ、非常に内部だけの話で、情報公開もされていない、改善策も客観的に講じられてきているとは思われません。そういった意味で、行革を大変に重視されている総理に、この住専問題、金融問題からあらわれてくる改革、機構改革あるいは行政改革、こういった問題について御意見を伺いたいと思います。
  171. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 どう申し上げればいいのかちょっと迷いますけれども、私自身大蔵大臣として直面をいたしました証券不祥事の際、やはり非常に大きな問題になりましたその後の措置に向けての対策、これは通達行政の見直しというものでありました。そして、その当時、非常に膨大でありました通達全部を見直す中で、本来業界の自主的なルールに任せるべきもの、完全に事務的な通達としてそのまま存置し得るもの、むしろ法律にきちんと位置づけるべきものという仕分けをいたしましたとき、いわゆる許認可の件数としては、形の上ではふえたわけでありますけれども、実質的には、非常に膨大な通達行政というものを思い切って見直すことができたと思います。  今御指摘がありましたように、私は、従来のいわゆる護送船団方式と言われるような金融行政のあり方というものは、それなりに意味のあった時代が存在したと思っております。しかし、それが、金融行政というものが変化し、自由化が積極的に進むプロセスの中で、行政が変わらなかった。これはやはり、結果として、バブルの発生から崩壊というプロセスの中で、金融環境が激変をいたしました時期に行政が十分なチェック機能を果たさなかったという意味で、私はやはり大きな反省点であると思います。そしてやはり、行政の手法として通達あるいは覚書といった形のものに頼り過ぎていたということは、少なくとも私、真摯な反省をしなければならない点だと思います。  今後、当然のことながら、金融システムを再構築し、信頼を取り戻していく努力と並行して、金融行政の手法というものは当然のことながら見直されていかなければなりません。そして、その場合に基本に置かれるべきものは、まさに自己責任原則の徹底と同時に、市場規律を十分に発揮できるような透明性の高い金融システムを構築するということに尽きていこうかと思います。  そうした中で、さまざまな角度から本院におきましても提起をされておりますような視点を生かして、今後の仕組みは考えていくべき、そのように思っております。
  172. 早川勝

    ○早川委員 終わります。
  173. 高鳥修

    高鳥委員長 この際、永井哲男君から関連質疑の申し出があります。早川君の持ち時間の範囲内でこれを許します。永井哲男君。
  174. 永井哲男

    永井(哲)委員 社会民主党・護憲連合の永井哲男でございます。早川議員の関連として質問させていただきたいと思います。  まず、今いろいろと言われている中で、母体行責任が質的に違うということを大蔵大臣もおっしゃいます。そういう中で、では母体行の法的な責任とは一体何だろうかということについて少し分析をしたいというふうに思います。それは、単に設立の経緯に関係したということばかりではないというふうに思います。  第一に考えられるのは、母体行のいわば保証の責任ということであります。これは、融資当初、母体行が系統の借り入れに際して銀行保証をしたという例も多いというふうに聞いております。これが更新の際に、この保証がいろいろとなくなっていった、そういった経過もあるようであります。そして、その後に、再建計画の際に、これはいわば保証とする旨、紛らわしいそういったような文書を交付したようなことがある。また、この系統の融資引き揚げという際に、母体行も住専と一緒になって頼んだ、そういった経過を見るときに、これは明示的な保証ということを仮に言えなくても、黙示的な保証ということが問題になるのではないか。保証の責任ということになれば、これは全額の放棄をしたといっても、みずから問題になる責任を十分に負ったというふうには評価できないのは当然であります。  次に、二点目に、実質支配をしているという責任がございます。これは、紹介融資であったり、不良債権の押しつけであったり、そういう問題であります。これが非常にひどい場合には、場合により法人格の否認というところにまで行き着くわけでありますが、これもいろいろな事情というものがありますので、これも問題にする余地が大変にあるところであります。  三点目には、競業避止義務。これは、母体行がいわゆる個人向け住宅ローンというものを奪っていったのではないか、こういう形で問題になる点であります。  四点目には、不法行為の責任。これは、自己の不良債権住専に押しつけた、また、再建計画を、場合によりこれを実現できないと知りつつ、これを系統等の関係金融機関に押しつけたというようなことがあれば、不法行為責任というものも大きく問題になるわけであります。  五点目に、金融業界の慣行というものもあるようであります。この慣行というのは、子会社の破綻には親会社が責任をとる、こういったような慣行に金融界はなっていた。場合によったら、これは慣習法のところにまで高められていたかもわからないという問題もあるわけでありますが、こういったようなものが母体行で考えられる法的な責任というものの意味合いではないかというふうに思います。  しかし、これを裁判で明らかにするということは、これは要するに主張する側が全面的に立証しなければならない。この立証というのは非常に困難であります。エイズ訴訟でもわかるように、相手方の事情というものを反対側に立つ者が立証していくということは非常に困難。そうすると、どういう結果が起こるか。これは法的な責任と言われている問題、早い者勝ち、努力する者は報われる、そういう形で、例えば母体行なり一般行というものが特別に担保というものを持っていれば、その方が優先をする。債権額の平等ばかりでなく、そういったような形に変わった法的な責任が問われるというのが法律の世界での話だというふうに思います。  これが果たして妥当性があるというふうに国民皆さんに評価されるかどうか。そして、特にこれを放置していた場合に、どういうことになるのか。これは取引の相手方または外国の金融機関にとっても、銀行に対しては、例えばこれが裁判問題になったということを仮定して、母体行、銀行は、いわゆる系統の裁判に全面的に負けるのではないか、こういうふうに評価して相手の信用力を評価することは必至だと思います。系統も、そうは言っても、裁判をやっても勝てないのではないか、このようにして系統の信用力を評価するのは、これもまた同じ理屈であります。このことは、不良債権が、問題となっている不良債権額以上の、倍になってあらわれるということになるのではないでしょうか。  そういう中で、金融システム全体の維持の責任を持つ国として、ただでさえ不良債権で困っているところに、それが実際の額の倍にもなるというような事態を放置していいのかどうか、これが問われた問題ではないでしょうか。  そういう中で、経済金融システムは、何といっても決済システムというのが大きなところであります。現金が四十兆、要求払い預金というのが百三十二兆というような中で、金融システム、決済システムが担っている機能は、全銀システムで二千兆を超える、手形交換で千八百兆を超える、全部でこれは三千九百兆というものが、日本経済構造、経済の活動そのものを支えているわけであります。このシステムに異変があるということは国の経済運営にとっても非常に重大な問題である、そういうことになると思います。  そういう点を考え、最後のこの埋められなかった六千八百億というものを埋めて、金融システムが円滑に機能する、それを重視したというのが今回のこのスキームではないかというふうに私は理解するわけでありますが、総理はどのようにお考えになるでしょうか。
  175. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 何回もここで繰り返してまいりましたし、本院の中における御論議の中で私どもと異なる考え方が存在することをも承知した上で、あえてもう一度繰り返させていただきたいと思います。  この住専の問題というものを、私どもは、金融機関の抱える不良資産処理についての突破口というとらえ方をいたしてまいりました。そしてその中で、これを法的な手続にゆだねた場合にはその手続に我々は相当な時間を要すると考えておりますし、それは同時に、金融機関の損失額がはっきりしない状態が継続をするということになろうと思います。  そしてその間、体力の弱い金融機関経営不安にさらされ続けることになるわけでありますし、結果的に、預金者に不安が広がり、金融機関の破綻が多発するといった事態も起きかねません。そうなった場合に、現在御審議を得ております政府案以上の資金投入が必要になることすら考えられるわけでありますし、こうした懸念のもとにおいて、景気の本格的な回復も望み得ないものであろう、我々はそう考えます。  そうした思いの中で、責任を持たなければならない政府与党の立場として財政資金の投入を含む住専処理策を決定したわけでありまして、これは議員が先刻来組み立てられた御論議と基本的に方向を一にするものと思います。
  176. 永井哲男

    永井(哲)委員 今回、この住専問題を初めとして不良債権が発生するもとをたどれば、バブルの発生というところに行き着くわけであります。そしてまた、過去には狂乱物価というような形で苦い経験をしたことがあります。これから将来のことを考えた場合に、今、国全体で四百兆を超える負債、国債だけで二百四十兆を超えるというよう財政の危機的な状況というような中で、国としてのいわば危機管理というような形で考えた場合に、十分に日銀の機能が発揮できなかったのではないか、それがこのような事態を招いたのではないかという反省も成り立つのではないかというふうに思います。  今回のこの状況というものを見た場合に、危機管理というような側面から、今議論されている日銀の独立というような点について、大蔵大臣はどのようにお考えでしょうか。
  177. 久保亘

    久保国務大臣 日銀の役割というのが、今度のバブルの発生から崩壊に至る過程、そして今日本債権の巨額の累積が生じますこの過程においてどういう役割を果たすべきであったかというようなことについて、これは行政の立場も含めて、今日このことに学ばなければならないこと、教訓とすべきことは非常にたくさん将来に向かってあると思っております。  そういう中で、日銀をどう考えるか。今、独立性の立場からのお話であるといたしますならば、特に金融金利政策等に関して、日銀の独立した権限というのは今日でも保障され存在しているのではないかと思っております。その権限が有効に生かされたかどうかという問題は、これはまたいろいろと検討をしなければならない問題だと思っておりますが、日銀の独立性ということについて、今多くの方々の御意見がございます。日銀法の改正に及ぶ御意見等もございますけれども、今日までの行政と日銀との関係において、日銀がその独立性を著しく阻害されているというようなことはそんなに多く存在しているのではないのじゃないか、私はそのように思っております。  日銀の独立性というものを考えていく場合にどういう視点から考えるべきなのか、日銀法の改正の問題を含めて、今後慎重に検討しなければならないと思っております。
  178. 永井哲男

    永井(哲)委員 単に古くなったから、片仮名であるからという形ではない、世界の傾向がそうだからというばかりでない形で、やはりしっかりと日銀大蔵とのあり方がどうあるべきかという形で考えていただきたいというふうに思います。  この金融三法を党内で了承するとき、私どもは、政府保証を行うこととすることに伴い、金融機関に厳しい自己責任原則の確立を求め、あわせて今日の事態を招いた行政、金融機関等責任を明確にする、こう確認をしているところでございます。そういう中で、やはりこういった事態を招いた大蔵行政、これがどうあったか、そしてこれにどう対処しなければならないか、これも大きく求められているところだというふうに思います。  特に、なぜこれが先送りされて被害が、不良債権額がこのように大きくなるまで放置されたか、そのまま座視しなければならなかったか。いわゆる護送船団方式の指導というところに深く大蔵省が首を突っ込み過ぎていたのではないか。その大胆な整理というものを行うことによってみずからその責任が返ってくる、そういったところを恐れたのではないか、こういった疑問も提出されているところであります。いわば、大蔵省としてはこれからコーチ役といったようなものは廃止しなければならない。ある人は、大蔵の行政指導は政府公認のカルテルを認めるようなものだ、このようにも言っているところでございます。  こういう中で、透明な行政、こういうものが強く求められていくわけでありますが、大臣としてはこれからの行政をどのようにすべきだというふうにお考えでしょうか。
  179. 久保亘

    久保国務大臣 まさに今改革を求められる重要な問題点を御指摘になったと思っておりますが、ともすれば、大蔵行政の見直し、改革ということで、財政、金融の分離論とかそういう一つの前提を置いて考えるという見方がございますけれども、私は、そういう立場から改革を考えるということではなくて、今、世界の財政金融行政のあり方、こういうものを十分に念頭に置きながら、今日の新しい時代における金融行政のあり方はいかにあるべきか、また、財政構造改革で何が求められているか、こういったような問題に真剣に取り組むことが求められているのではないかと考えております。  確かに、金融行政を取り上げてみましても、今までの大蔵省の金融行政のあり方というものが時代にきちっと対応できるようなものであったかどうかということは、今永井さんがお挙げになりましたようないろいろな問題が起きてきている、そういう結果に照らしましても、今日改革を求められることはあると思っております。そういう立場から、大蔵省といたしましては、新しい時代の金融行政のあり方についてのプロジェクトチームが改革の方向の検討を鋭意進めているところであります。  一方また、大蔵行政のもう一つの分野であります財政構造改革についても同じように検討を進めておりまして、この二つを車の両輪として、どのように全体の改革の中で考えていくかという大変難しい問題でありますけれども、これらのことをやり遂げることが、今日の大蔵行政改革に対する私どもが担っている責任であろうと思っております。
  180. 永井哲男

    永井(哲)委員 そういった中で、例えば検査についても、これが本当に厳正にされたのかどうか、監督庁の意向を受けて、その中で手が緩んだことはないのかどうか、こういうことも言われているようであります。そして、その検査結果というものが、行政において有効適切に即時に利用されたのか。また、国民への公開という点から、こういった検査の結果というものを、これから期待される市場規律というものが支配する市場において、大蔵省が、どこかが握って知らしめないというような行為というのは、これは是認されないところだというふうに思います。そういう点で、場合によったら、その検査の独立というものも考えてみる余地があるのではないか、こういう問題があると思います。  そういう中で、やはり住専問題を契機にして、その問題を受けた大蔵の行政改革というものが国民理解される、そういった改革でなければならないと思います。それは同時に、痛みを伴うものでなければならないというふうに私は思うのでありますが、大蔵大臣はどのようにお考えでしょうか。
  181. 久保亘

    久保国務大臣 今日の改革は、今、痛みを伴うものというお話がございましたが、そのことをあえて大胆にやり抜くことができなければ改革の名に値しない、そう思っております。  したがって、今後の、特に規制緩和を進める中での改革、機構などについてもどのようにして圧縮できるのか、機構ができるから仕事が膨らむというようなことが長い間続いてきたのではないか、これは何も大蔵省に限らず、行政改革を考える場合に基本に置かなければならない問題だと思っております。  そういう意味では、今、痛みを感ずる改革という御意見でございましたけれども、そのような改革をどのようにして遂行していくかということが、今政府に課せられている非常に大きな課題だと思っております。  それから、今のお話の中でございました、情報を握って出さない、こういうことは今後の金融行政においては特に許されないことだと思っております。情報の公開が十分に果たされて初めて自己責任原則の確立が可能になるものだと思っております。
  182. 永井哲男

    永井(哲)委員 これは総理にお聞きいたしたいのですが、先ほど早川議員の質問にも答えられましたが、今、大蔵の行政改革というのは、また全般的に見れば大きな行政改革という一環でもあると思います。そういう中で、この政策立案と執行というものを大胆に分けるというようなこともいろいろと考えられているようでありますが、これから、住専を契機とする、国民理解される改革という点、そしてまた、行政改革を将来に向かってどう進めるかという点、それらに当たっての総理の決意というものを再度お聞きいたしたいと思います。
  183. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、金融行政というものを振り返りましたときに、先ほど来繰り返して申し上げておりますように、自己責任原則というものを徹底していくこと、市場規律の十分な発揮をいわば基軸とする透明性の高い行政を行っていくこと、これが必要であるということは繰り返し申し上げております。  そして、当然のことながら、そうした視点を持ちましたときには、不良債権のディスクロージャーの拡充でありますとか、あるいは早期是正措置の導入でありますとか、あるいは金融機関の破綻手続の整備、あるいは預金保険制度の拡充といった対応が必要になり、これが今、金融関連法案に所要の措置を盛り込んできた理由でございます。そして、こうした法律案の御審議を願って、早期の成立を願いますことと同時に、金融行政そのものが、今進展しつつある金融自由化の流れの中で将来変わっていくべき方向を決めていかなければならない、それは御指摘のとおりであります。  ただ、私は、この住専の結果としてとか、あるいはペナルティーを科すような発想での行政改革という考え方はとりたくありません。むしろ、将来どういう金融行政を必要とするのか、その中で行政当局としての監督責任はどうすれば果たせるのか、あるいは国際金融の世界の中で、殊に重みを増してきております国際金融機関との間にどのような業務が今後想定され得るのか、さらにその検査のあり方はどうか、私は、冷静な判断のもとに行政の見直しというものは進めるべきだと思っております。そして、そうした観点での関心はこれからも持ち続けたいと思っております。
  184. 永井哲男

    永井(哲)委員 新しい時代、これは大競争の時代とも言われているようでありますが、市場規律が全面的に、世界的に支配していく、そういったよう時代であります。とりわけ、世界経済の中で金融というのがボーダーレスというよう状況になって、世界化というものが最も推し進められる分野だというふうに思います。その中で、何といってもこれは透明性ないしは公開性といったようなものが第一に要求される、そういう観点で、透明な行政というものがそういった新しい市場からの要請でもあると私は理解するところであります。  そういう中で、市場経済ということを前提とするのでありますが、金融の中においても、大が必ずしも小を全部のみ込むということにはならないというふうに私は思っているわけであります。しかし、中小金融機関に依存する中小零細企業、これはそこから借りているわけでありますから、そういったところに支障がないというようなこともあわせて、この自由化を図りながらこれは考えていかなければならないところだと思いますが、その点どのようにお考えでしょうか。
  185. 西村吉正

    西村政府委員 大変難しい御指摘をいただいたと存じます。  先ほどから護送船団方式という御指摘をいただいております。私ども、決して護送船団方式という原則を守ってきたわけではございませんが、他方におきまして、やはり中小金融機関というものが中小企業者のために必要であるという観点も考えなければいけないという金融行政上の要請もございます。しかしながら、そういうことに余り重点を置き過ぎると、いわゆる護送船団方式という御批判を受けるということもございます。  この中小企業のニーズというものをどのように金融に反映させていくかということと、金融システム全体としてどのように効率性を維持していくべきかという、この調和点というものを常に追い求めてまいりたいと考えております。
  186. 永井哲男

    永井(哲)委員 世界の流れというものを十分に踏まえた中でそういうものはやっていかなければならないというふうに思いますが、そういった中で、いわば護送船団、さまざまこれは批判されておりますが、護送船団によって実現できたのは、いわば高度成長というふうな形で、いろいろな利益というものが雇用の拡大や所得の倍増、そういったものになって、それだけの余力があった、そういったよう経済的な事情、背景というものがあると思います。これからそういう時代ではなくなるという中で、低金利による年金生活者また勤労者の目減り、こういったものもこれは配慮されなければならない。  そういう中で、これは各種の審議会でもそうでありますが、日銀の政策委員というところで業界の代表が多い。この中になぜ利用者の代表がいないのか。こういった人たちを、しっかりと政策的なところで反映できる、当然専門家でなければなりませんが、そういうものも政策委員として考慮すべきではないか、そんなふうに思うのでありますが、大蔵大臣はどのようにお考えでしょうか。
  187. 久保亘

    久保国務大臣 日銀の独立性、役割というものを重く考えれば考えるだけ、今御指摘ございました日銀の最高意思決定機関でございます政策委員会の任務は大きくなると思っております。政策委員会でどのよう議論が行われ、どのような決定がなされたのかというようなことが、これがよくわかるようにすべきものだと考えております。  また、政策委員そのものをどうすべきかということについて、私がどういう方々をというようなことを申し上げる立場にございませんけれども、今御意見がありましたようなことは、今後の日銀の政策委員会のありようとして十分検討が求められている時代になったのではないかと思っております。
  188. 永井哲男

    永井(哲)委員 また、この住専問題を契機として、我々は、与党の中で法的な責任検討プロジェクトを設けているところであります。そこにおいて、今回の時効の停止法案、そしてまた金融の公共的な役割を重視した金融取り締まりの強化というものにも取り組んでいるところでございます。これはまだ各党の段階において検討されているところでありますが、人の預金を扱う、そして公共的な性格が強いということにかんがみれば、その経営者に十分な重い責任というものも課されて当然だと。SアンドLのアメリカにおいては、それを契機として刑期が五倍や六倍になるというような大改革も行われているようであります。  こういった金融関係の取り締まりの強化という動きについて、大蔵大臣はどのようにお考えでしょうか。
  189. 久保亘

    久保国務大臣 金融犯罪につきましては、今後これをもっと重罰にすべきではないかというような御意見等も多くございますことを承知いたしております。また、与党の検討プロジェクトにおいてもいろいろと意見が交わされているということを承知いたしておりますが、金融犯罪は極めて重大な犯罪であり、そのようなことがふえてまいりますことは非常に遺憾なことだと思っておりますので、今御意見がありましたような方向でこれらの問題は検討されなければならないと思っております。
  190. 永井哲男

    永井(哲)委員 同じようにこの議員立法で、今の競売が十分に進んでいない、昨日執行妨害で桃源社の人が逮捕されたようでありますが、そういうような暴力団、それに類する人たち、占有屋という人たちがそういう中に入っていって執行を妨害しているという状況、そういうものに対処するため、民事執行法の改正というものも提起したところでございます。  その中で問題になったのは、これは議員立法で前回、この民事執行法の問題が国会で修正されておりますが、その国会で修正された理由というのが、実はその中で、労働者不払い賃金を守るためのそういった活動に不測の損害を与えないかどうかというところでございました。私どもは、そういった経過にかんがみて、与党の中において労働者の賃金債権確保のプロジェクトチームというものをつくった次第であります。  税金と労働者の賃金債権、この優劣関係をどのようにするのか。同列に扱うところ、賃金債権の方を優位に扱う、そういった外国の法制もございます。そういった労働、破産法制との関係、そして賃確法などでの労働者保護のより充実、そういったようなものが必要ではないかという観点からでございました。こういう形で我々はこの与党の中で取り組んでいるわけでありますが、労働大臣としては、これらの動きについてどのようにお考えでしょうか。
  191. 永井孝信

    永井国務大臣 お答えいたします。  先生御指摘の賃金債権の確保に関する問題でありますが、現行法制では、抵当権により担保されている債権や租税公課は、賃金債権に優先するとされているわけであります。  ただし、民法、商法等の規定によりまして、賃金債権には、事業主の総財産の上に先取特権が与えられております。賃金債権をさらに上位に位置づけることにつきましては、取引の安全性あるいはこの債権者間のバランスの問題等をどのように考えるかという問題や、広範な現行法制度の根幹に触れる重大な問題を持っております。  他方、賃金は労働者にとって唯一の生活の原資であり、賃金債権の確保を図ることも重要なことでありますから、各方面の動向を見守りながら、各制度を所管している行政機関との連絡をとりながら対応してまいりたいと考えるわけであります。  なお、賃金の支払の確保等に関する法律がございますが、これは、景気の変動、産業構造の変化などにより企業が倒産しました場合に、退職した労働者の未払い賃金について国が立てかえ払いを行う等の措置を講じて、もってこの労働者の生活の安定に資する、このことを目的にしているわけであります。  未払い賃金の立てかえ払い事業や退職金の保全措置等、賃金の支払の確保等に関する法律に基づく施策につきましては、その実施状況、また各方面の御意見などを踏まえながら、今先生が御指摘になりましたように、労働者の生活保護の立場からこの問題については今後積極的に検討してまいりたい、このように考えているわけであります。
  192. 永井哲男

    永井(哲)委員 議員立法の関係での時効の停止法案についてお聞きしますが、もしこれを措置しなければどのよう債権時効にかかるかもわからない。今のところ、この七社の住専からの調査によると、どの程度そういう額が判明しているのか、その点についてお聞きいたします。
  193. 保岡興治

    保岡議員 特定住専七社に所属する債権のうち、本年度並びに来年度中に何らかの措置をとらなければ時効が完成してしまうという債権がございます。  本年度にそういう予定される債権は、件数にして約八百件、金額約一千億、それから来年度は、件数約二千件、金額にして三千二百億。非常に予想以上に大きな金額、件数でございますので、こういったものを万遺漏なきよう回収するために本法の成立が期待されるところだと思っております。
  194. 永井哲男

    永井(哲)委員 最後に、公的な負担というものを、国民皆さんにかかる負担というものをできる限り少なくするよう努力をしていかなければならない、これは当然のことだというふうに思います。  ただ、今それをやりさえずれば、これまでの行政のあり方、こういった住専問題がなぜ起きたのか、どう対処しなければならないのか、こういったことに対する改革の意欲というのが何か少なくなっているような感じがしないでもありません。国民皆さんにしっかりと理解をしてもらうという上にも、そういった制度の改革というものを大胆に進めることを要望申し上げまして、私の質問とさせていただきます。ありがとうございました。
  195. 高鳥修

    高鳥委員長 これにて早川君、永井君の質疑は終了いたしました。  次に、錦織淳君。
  196. 錦織淳

    ○錦織委員 新党さきがけの錦織でございます。  まず、冒頭に当たりまして、いろいろな紆余曲折がございましたが、とにもかくにも、こうして与野党がそろって総括質疑に入れたということを歓迎をしたいと思います。  私は、この一月の末から予算委員会委員として、また予算委員会審議が終わってからは金融特別委員会理事として、この住専・金融問題の審議にかかわってまいりました。そうした中で、いろいろと自問自答する機会が大変多かったということをまず申し上げておきたいと思います。  それは、こうした、ある意味では我が国経済が直面している大変な状態を前にして、国会あるいは政党、政治家というものが何をすべきなのか、そうしたことをめぐっての国会審議のあり方ということでございます。もちろん、与党野党に分かれて、それぞれ立場が異なるのは当然でありますけれども、国会の本来の任務あるいは政治家、政党というものは、やはり政策をめぐって激しく論争するということを期待しているのではないか、これが多くの国民の声ではないか、このように思っている次第でございます。  ところが、こうした一連の住専金融問題等審議が進む中で、国民の間から大変な、いろいろな厳しい声が起きております。特に、いろいろなマスコミの調査結果を拝見をいたしますと、政党支持率、つまり無党派層というものが増大をしているということが指摘をされております。つまり、政治一般への不信というよりも政党そのものへの不信感、こうしたものが進んでいるように思われるわけでございます。  そこで、最初に総理にお伺いをいたしますが、今、国民の間でこうした無党派層が増大しているということについて、その原因をどのようにお考えか、また、そうした状況を打破するために、一人の政党人としてどのようにお考えなのか、そうしたことを冒頭にまずお伺いをしたいと思います。
  197. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私どもがちょうど学生生活を終わり、社会人になります時期、これはちょうど昭和三十五年、安保大騒動の非常に極限に達しようかという時期でありました。そして、当時の学生生活の中に、いわゆる無党派という存在は許されなかったような雰囲気が学内にもみなぎっておりました。社会人になりましてからも、そうした空気は続いておったように思います。  しかし、その後、たまたま私はスポーツを通じて学生たちとの交流を今も続けておりますけれども、いつの間にか、そうした政治的にどちらかの立場の選択を迫るようなテーマが我々の身近からなくなっていったように思います。そして、それが、東西二大陣営対立という時代が終わり、ソ連が解体をし、いわば自由、民主主義、そして市場経済といった共通の原理をほとんどの国が追い求める状態になった。国際的にも、いずれかの一方を選択しなければならないといったテーマはだんだん我々の身近から少なくなりました。  私は、そういう中で自然に特定の党派というものに縛られないという方々がふえてきたのは、ある意味では自然の流れであり、それはそれなりに悪いことではないのかもしれないと一方で思います。しかし、政党人として、それだけの政党が特色を持って国民に訴え、呼びかけることができなくなっている事実、これは我々としては非常にある意味では情けない状況でもあります。  殊に、私はその無党派という言葉、実は余り好きじゃありませんけれども、よく使われている言葉ですからこの言葉を使わせていただきます。特定の政党政派に拘束されないということについては、私はそれを責めるべきだとは思いません。しかし、その結果が各種の選挙における投票率の低下というものに結びついていることに私はある種の危険を感じます。  それだけに、どうすれば政治というものに、これは国政、地方の政治を通じてでありますけれども、関心を寄せていただくことができるのか、そして、その中で選択を迫るようなテーマをつくり得るのか、これが我々のこれから考えなければならないところではないでしょうか。
  198. 錦織淳

    ○錦織委員 ありがとうございます。  私は、無党派層の増大というのが、総理のおっしゃられるように、必ずしもそれだけで悪いことだというふうには思っておりません。むしろ懸念をしておりますのは、投票率が低下をしているというような現象に見られるように、その無党派層の増大というものが国民の間から何かに対する期待感が失われているということについての危惧を持っている点は、まことに御指摘のとおりだと思います。やはり何といっても、政治家がきちっと政策を語り議論するということはもちろんのことでございますが、政党が政党らしく政策体系を語る。個々の政治家の持っている単純な政策の集まりではなく、きちんとした国づくりのビジョンを持った政策体系を政党が持てるかどうかということが私は今我々に共通して問われている問題ではないか、こんなふうに思っているところでございます。     〔委員長退席、大島委員長代理着席〕  そこで、私はことしの一月三十一日の予算委員会の冒頭の総括質疑のときに質問に立たせていただきまして、そしてそのときに、この予算委員会審議の主要なテーマである住専問題の前には与野党なしということを申し上げたわけでございます。つまり、この金融特のまず一番考えなければならないテーマは何かということを私なりに整理をいたしましたが、一つはもちろん今後どうするかということでございます。つまり、住専問題なりあるいは金融破綻、そうした事態についてどう対処するのかという、今文字どおり目の前に迫っている問題について具体的な対策を立てるということも一つの問題であろうと思います。  後ほど申し上げますように、私は、この点についてこの国会での議論が実りあるものになるためには、政府与党の提案に対して野党の側から対案が出される、そしてその対案と政府与党の提案とが議論を闘わせるという構造が望ましいのではないかというふうに申し上げたわけでございます。残念ながら、その予算委員会の経過の中では結局対案としてまとまったものが出たのかどうかすらはっきりしない。こういう状況については後ほど申し上げます。  しかし、もう一つ私がこの際この委員会できちんとさせておかなければならないのは、政治家あるいは政治の共通の責任は何かということでございます。  その一月三十一日の質疑のときにも申し上げましたが、この大量の不良債権の山を築いたその直接の原因は、バブル経済が形成され、それが崩壊し、そしてその形成から崩壊までの期間が比較的に短い期間であった、こういうことがこの問題を深刻にさせたということでございますが、問題はなぜこういうことが起きてきたのか、その原因の解明と対策でございます。つまり、この後処理をどうするかということももちろん当面の課題として大切ではありますが、我々はこの教訓から何を引き出すのかという点についての議論をきちっとしておかないと、同じ誤りが二度繰り返されることになるわけでございます。  そういう点で、このバブル経済の形成とその崩壊過程、予算委員会でも、また本日の朝からの質疑の中でもいろいろと質疑応答が交わされておりますが、私はいまいちこの掘り下げが必要ではないか、こういうふうに思っております。つまり、このバブル経済を形成した過程がプラザ合意に始まり、あるいは円高への対策、そうしたことにあったことは言うまでもありませんし、そしてその過程で予想外の地価株価の上昇があった、それについていろいろ対策をとらなければならなかった。その経過は確かにお互いに既に共有をしていると思います。  問題は、ではなぜそれを防ぎ得なかったのか、なぜ不良債権の山を築く結果になってしまったのかという点での分析でございます。その点で申し上げますと、確かにそのときそのときはよかれと思ってやった、最善の政策をとったということになるのかもしれません。私もそれは信じております。しかし、大変皮肉な言い方をすれば、地獄への道は善意で敷き詰められているという言葉もございますように、問題は、善意であった、そのときそのときは的確な判断だと思ってやったということだけでは不十分ではないのか。この点を突き詰めていく必要があると思います。  私は、はっきり言って行政庁のいろいろな施策に大きな問題があった、つまり誤りがあったということは、行政の側の政策の決定、形成についていろいろな誤りがあったのは確かに相当程度明らかになったと思いますが、政治の側が、あるいは国会の側、政党の側がそうした誤りについてそれを抑制できなかったということについての掘り下げがいかにも不十分であるような気がしてなりません。  特に、一月三十一日のときの質問で、繰り返しませんけれども、平成三年、平成四年、もはや大変な不況、そういうものが明らかになっているときにも、その当時の国会の議論を振り返ってみると、まだ景気は底がたいというような認識が語られておりました。そして、その認識の基礎になったものはこれこれの数字である、例えば消費者のこうした動向をあらわす数値がこのように表示されている、そうしたことを引用しながら、まだ景気は底がたい、こういうような論法が立てられているわけでございます。  私に言わせていただければ、まさに、ではその情報は一体だれがつくってだれが整理したものなのか。そして、それをうのみにした結果、こうした過ちになったのではないか。こうした点について、私はきちんと反省、分析を加える必要があるのではないかと思います。この点について、まず総理の御見解をお伺いをしたいと思います。     〔大島委員長代理退席、委員長着席〕
  199. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 確かに我々政治家は、政治家自身資料を持っておるわけではありません。そして、今議員の御指摘を拝聴しながら振り返りまして、我々もまたそのときそのときに行政から、あるいは報道を通じて、さらに経済界から提供される数字というものをベースにして物事の判断をいたしてまいりました。そして、その分析が足りなかったという御指摘は甘受しなければならないと思います。ただ、その上で私は、こうした場合に議員が私の立場におられたらどうされたか、一つのケースを挙げてみたいと存じます。  今、国鉄清算事業団の累積債務が非常に厳しい御指摘を世間から受けております。私は、清算事業団をスタートさせましたときの運輸大臣でありました。そして、当時、地価は依然として上昇を続けておりました。そして、清算事業団用地には世間の注目が極めて高く示されておりました。当時、むしろ私自身の気持ちを申し上げさせていただきますならば、それだけの需要があるわけですから、事業団用地を市場に提供することによって、私は地価ブレーキが少しでもかかるのではないかという期待がございました。しかし、入札が行われる結果、より地価をつり上げる可能性ありということで売却は許されなかったわけであります。自治体からもそのような御要請がありました。今日、その結果として債務の増大しております清算事業団には、大変厳しい御指摘が浴びせられております。  しかし、当時土地を売るなとおっしゃった方々は、その言葉を御自分が吐かれたことも忘れられております。だれがいい悪いではありません。これは、だれがいい悪いではございません。例えば東京都からも、その入札はやめてくれという話はあったのですから。  政策判断というもの、その折その折に非常に、後から考えればと思うものがある。これは率直に、私は自分の反省とともに申し上げたいことであります。
  200. 錦織淳

    ○錦織委員 私がお伺いをいたしましたことは、もちろん、後から振り返ってみればこのときこうすればよかったという意味で反省を加えるべきだということを申し上げているわけではございませんで、つまり、そのときの行政の政策決定の判断の仕組み及び政治の判断の仕組み、その仕組みのどこかに欠陥がなかったのかという問題でございます。  つまり、今さまざまなデータが行政庁によって集められているわけでございます。経済指標あるいはマネーサプライの量、いろいろなものが、もう大変な量が集積をされているということでございますが、当時、少なくとも平成三年あるいは平成四年当時は、多くの経済の最前線にいた方々は、これはもう大変なことだという認識を持っていたわけでございます。つまり、このような状態が続いていくならば経済活動は大変厳しい局面に入る、単に停滞をするというよりも、いろいろな、倒産をするところも出てくるだろうし、あるいは、まあ不良債権という言葉が当時頻繁に使われていたかどうかはともかくとして、そうした事態を予測している人もおったわけでございます。  問題は、そうした現場の認識と行政庁の認識との間のギャップというものがあったのではないかということを申し上げたいわけでございます。まず正しい情報が集められて初めて正しい政策判断が可能になる、そういう意味で申し上げているわけでございまして、もしできれば、その点についての総理のお考えがあればお伺いをして、次の質問に移りたいと思います。
  201. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先ほど私は、多少議員の御質問の趣旨を取り違えたかもしれません。その点はおわびをいたします。  その上で、あるいは今議員が御指摘になりましたような状態というものはあったのかもしれません。ただ、今振り返ってみますと、当時と現在と提供される数字の種類あるいは質、これは本質的な変化はしておらないと思います。そして、やはりその中で我々は、ある程度好況の続くことをといいますか、日差しの豊かな時間の長く続くことを無意識のうちに求めていたのかもしれない。そうした思いを持って数字を眺めたことがなかったとは、私自身振り返ってそれを否定することはできないと思います。
  202. 錦織淳

    ○錦織委員 次に、大蔵大臣に同じ問題についてお伺いをしたいと存じます。  私も、このバブル経済の形成から崩壊過程についての予算委員会大蔵委員会での質疑、答弁、こうしたものをずっと追っかけてみました。大変失礼ではございますが、当時の社会党の方々の御質問は、異常な地価の高騰という問題、そしてそれについて、その再発を防止すべきであるということに大きな論点が集中していたように思います。つまり、その一方で、先ほど来私が申し上げているような、急速な、非常に短期間でのバブル経済の崩壊によって非常に異常な事態が経済の現場で起きているということについてどうするのかということが同時に求められていたように思うわけでございます。  そこで、現在大蔵大臣のお立場で経済政策の運営に御苦労をいただいている立場から、今振り返って当時の国会論議に何か問題はなかったのかということをあえてお伺いをさせていただきたいと思います。
  203. 久保亘

    久保国務大臣 ただいまの御指摘につきましては、土地基本法を論議をいたします場合、どういう視点でこれを論じていたかというようなこととも関係してくるのかなと思いながら伺っておりました。  確かに土地の公共性というようなことにかんがみながら、できるだけ安い、そして庶民がみずからの居住のための土地あるいは家を手にすることができるような政策というものが求められているという点を強調をしながら考えてまいったと思っております。  しかし、そのことがまた一方では、土地をめぐる問題において総量規制ということにもつながっていくのだと思うのであります。金融機関のリスク管理体制も、つまり金融システムの基本的な立場というものも確立されていない、そういう中で市場に長期にわたる低金利のもとで金が大量に流れることによって株や土地に投機的に使われていった。そういう中で、ここでは非常に、経済政策の面から見ました場合には混乱があったように思います。そういうことが、結局的確な対策としての金融行政というものにつながり得なかったものがあったのではないかというのは、振り返って、今結果論としてその責めを感じなければならないのではないかと思っております。
  204. 錦織淳

    ○錦織委員 ありがとうございました。  次に、経済企画庁長官にお尋ねをいたします。  先ほど総理にもお伺いをいたしましたように、当時の、つまりバブル経済が形成され、さらにそれが崩壊していく過程でどのようなデータが集積されて、そしてそれについてどういう評価が加えられたのかということについてのやはりケーススタディーといいますか、そういう教訓といいますか、そうしたものをなすべきであるというふうに思います。なぜならば、明らかに経済の最前線で受けている実感と、そして経済企画庁等で発表される景気の動向あるいは見込み、そうしたものとの間に大変なギャップがあるということを多くの国民が感じておったのではないかと思います。  そこで、例えば現在も長引くこのバブルの後遺症、そうした中で景気が果たしてどういう状態なのかということについては、経済企画庁長官がこの間も何回か所見を発表されているわけでございますが、そうしたことにも絡めて、かつてのそうした過ちを、原因をどのように考え、かつそうした過ちを克服するためにどうしたらいいのかということについての御見解をお伺いしたいと思います。
  205. 田中秀征

    田中国務大臣 私は、平成三年から平成四年にかけて経済企画庁で政務次官をしておりました。そのときの長官は、後ろにおられるあの野田先生でありますけれども、今考えてぞっとすることがあるのですが、それは、平成四年に「生活大国五か年計画」というのが一月に宮澤総理から経済審議会に諮問がなされて、六月の三十日に閣議決定されたわけです。精力的な審議が行われたわけですが、百数十人に及んだそこに参加した委員皆さん、これは日本を代表する企業人、学者、言論人、それこそそうそうたるメンバーでありました。  しかし、この平成三年から四年と私が申し上げるとわかるとおり、そのときには既に不良債権がどうなっていたかということを考えますと、私はその部会、委員会にほとんど参加しました、二度ほど欠席しただけで全部、ほとんどと言っていいくらい参加したのですが、その審議は、白熱した議論といえば、これから労働需給が逼迫するから外国人労働者をどうするのだ、そういうようなところにあったわけですね。そういう議論と今の現状を考え合わせると、本当に経済政策とは難しいものだ、しかも、日本で最も一流と言われる人たちがそろって、そして考えて、議論して、そうだったのだということを私は思い起こすわけであります。  それで、経済政策の政策決定が的確に行われるためには、これは何よりも実体経済が正確に把握されなければいけない。正しい認識をしなければ、政策決定が正しいはずはないと私は思います。そうであれば、政策決定の場に、経済に関連する資料、情報が迅速に、正確に、かつ網羅的に集められなければいけない。これはもう前提条件だと私は思います。そういう点で十分ではなかったのじゃないかというような感じを今しております。  例えば、ある部局の情報、資料が、これはこの次、来月出そうと思っていたら、その分認識がずれるわけです。あるいは、これは出すと責めを負うかもしれないから出さないということであれば、また認識はずれる。当然です、これは。そうであるから、それがもしも経済社会の基本にかかわるようなものであればあるほど政策決定がゆがめられていくということを私は感じますから、情報収集体制の一元化というものが非常に大事なことだということを今痛感をしております。そういう体制を整備していかなければいけない。  そして、それを分析し、そしてそこから政策立案、幾つかの政策の選択肢が出ると思います。そういうものをつくり出す機能というものを整備して、それで最終的には、これは政治の役割ですが、どれを選ぶんだという政策決定を行う、そういう体制をつくって、そして、政治と行政が一体となってその経済政策を執行する、そういう体制が望ましいというふうに思います。そのために、行政の改革、行政と政治の関係の改革、こういうものが必要な、一番大事なことになっている。要するに、あの当時の時代まではよかったのだ、対応力は失ったのだという、そういう観点から、政策の意思決定のあり方まで含めての改革というのは必要だと私は思っております。
  206. 錦織淳

    ○錦織委員 ありがとうございます。  私は、今おっしゃられたような意味で、いろいろな情報を集積してくるシステムも大切だと思いますし、同時に、どうしてもひっかかってならないのは、なぜ失敗したのか。いろいろな原因があると思いますが、確かに日本の官庁、優秀な方がおられて、大変精緻な仕組みをつくっておられることも承知しておりますし、さまざまな努力をしていろいろな情報を収集し、それの分析を加えておられることもわかってはおるわけですけれども、しかし、ではそれを信用したら果たして正しい政策ができたのかという点で、いわば弘法も筆の誤り、そういう意味で、官庁のそうしたさまざまな数値にも落とし穴があったということをやはりはっきりさせておく必要があると思います。  そういう意味で、私は、情報の多元的な収集ルート、とりわけ政治が、あるいは政党、政治家が民間あるいは経済の現場から直接に情報を収集し、そしてそれらの情報と行政庁が集積した収集とを突き合わせる、そうしたような何らかの仕組みというものが必要ではないか、こういうふうに思っております。そこら辺については、いずれまた政府の方でもいろいろと御検討をいただきたいと思います。  この点についてはこの程度にいたしまして、時間の関係で次の質問に移らせていただきます。  先ほど冒頭に申し上げましたように、この住専問題の前に与野党なし、一つは、先ほど来質問してまいりました、過去の経過について政治の側が与野党の区別を超えてどういう教訓を学ぶかというのが一点でございます。  もう一つは、今後どうするか。これは非常に差し迫った当面の問題でございます。その関係では、この委員会に今六つの法案がかかっております。その中で、大蔵省から出された金融三法と農林水産省から出された一つ法律、金融四法案と呼びますが、この金融四法案と住専処理法案、これとの関係、相互の関係がどうなっているかということについてひとつお聞きをしたいと思います。  まず、いろいろなところからこういう御指摘がございます。住専には預金者がいないではないか、その住専についてこういう処理案をつくって、そして預金者のいるさまざまな金融機関にこのような金融四法案をつくるのはおかしいではないか、こういう指摘がございます。そこで、まず預金者保護という考え方、このことを少しきちっとさせておく必要があると思います。  まず、預金者をなぜ保護しなければならないかということでございます。  預金者を保護する理由は、預金者の数が多い、つまり大量の国民が預金者としてこの日本の国に存在をしている、その量が、数が多い、そしてそれは消費者という、そういう側面を持っている、こういうことが主たることなのか、それともそうではなくして、もうちょっと別の角度から預金者保護というものを考えていかなければならないのか、この点は非常に重大な問題である、私はこのように思います。  というのは、六千八百億あるいは六千八百五十億の公的資金を導入するぐらいだったらば、例えば阪神・淡路大震災の被害者をなぜ救済しないのか、こういうよう議論がある。あるいは、このお金を別のところに使えばいいではないか、こういうよう議論がなされております。そこのところをきちっとさせておく必要が私はあると思います。  例えば、預金者が大量に存在すること、それが消費者であるということ、したがって保護をしなければならないのかということになりますと、私は、その論理はこれは当然他にも拡大されていくということになります。つまり、同じように多数の被害者、消費者被害というものが存在をするということはございます。あるいは、消費者被害というふうにはくくれなくても、多くの国民に共通して存在をする被害、こうしたものが出てくる場合というのはあるわけでございます。そうした場合に、それをそれだけの理由で救済をするのかどうか、それ以外にも他の理由があるのかどうかという点ははっきりさせておかなければならないと思います。  そこで、これまでの予算委員会での議論を振り返ってまいりますと、金融システムを保護する、金融システムを守る、こういうのはいかにも抽象的で概念的過ぎて、そして何の実体もない、こういうよう議論も行われました。しかし、私はそのように思えないわけでございます。  つまり、今回金融機関のさまざまな行動が問題になりました。あらゆる私企業に当然企業の社会責任と呼ばれるようなものはございます。しかし、それは金融機関であろうとメーカーであろうと商店であろうと全く同じでございます。では、金融機関に特有の要請される行動規範、あるいは経済人としての規範、あるいはそうした金融機関として守らなければならないルール、こうしたものがあるのかどうか、こういう点も考えてみなければならないと思います。  そういう意味で、預金者保護、預金者保護と言えば泣く子も黙るということでは私はないと思うのです。もうちょっときちっと、なぜその預金者保護をすることが今必要なのか、そしてその預金者保護という根本に何があるのかということをはっきりさせておかなければならないと思います。私はそれは、金融機関というものの公共性、これを一般私企業とどう区別するのか、そういうこととかかわっていると思います。非常に大事な点だと思いますので、できれば大蔵大臣の方からお答えを願いたいと思います。
  207. 久保亘

    久保国務大臣 今最初にお話がございました預金者、つまり消費者を守るという視点、観点は重要な要素の一つだと思っております。もう一つ、もっと重要なことは、金融に対する、金融機関と言った方がいいかもしれませんね、銀行と言った方がまだわかりやすい、ここに対する預金者、つまり国民の信頼がなくなるということは、これは経済のみにとどまらず、社会的にもルールがなくなるといいますか、秩序を失うわけでありまして、このことは極めて重大な問題だと思っております。そういう意味では、預金者を守ることによって金融機関国民大衆との関係、つまり社会的なルール、秩序が守られることによって私ども社会的な安定を期することができるものだと考えております。
  208. 錦織淳

    ○錦織委員 端的に申し上げれば、住専の場合は、住専債権者というのは、母体行、一般行などの銀行、もちろん保険会社なども存在するわけですけれども、通称母体行、一般行と呼んでおります、そうしたグループと、それから農協系統、この三グループが存在するわけであります。住専七社が経営破綻をして、その住専七社を解体、清算をするということになれば、まず直接的に打撃を受けるのはその住専七社の債権者であります。つまり母体行と一般行とそして農協系統ということになるわけです。そこだけを見ておりますと、確かに、預金者というものはその債権者として、つまり住専七社に対する債権者としての預金者は存在をしないわけです、直接的には。  しかし、ではこの住専七社の解体、清算を、例えば破産法だとか会社更生法にゆだねた場合どういうことが想定されるか、これはかなりの時間が要します。つまり、現行法の会社更生法や破産法の仕組みでは、これはもう予算委員会で述べましたから繰り返し申し上げませんが、吸収主義をとっていない、ベスト主義をとっているために、債権者相互の紛争というものはその会社更生手続や破産手続の中では解決できないわけであります。そういうわけで、ベストで争いなさいということになるということでございます。したがって、母体行責任の有無のような論争を始めますど、これは大変長期の裁判をやらなければならない、こういうことになるわけですから、これは大変長期を要します。  他方で、会社更生法にゆだねたにせよ、あるいは破産手続にゆだねたにせよ、これは短期でやるといってもある一定期間はどうしてもかかります。私の経験した破産事件などでも、例えば二年間で破産手続が終わったとすれば、中規模の会社とすれば、まあまあ早く終わった方だということになると思います。  しかし、その二年間で終わった例えば破産会社の破産手続の内実を調べてみると、こういう問題がございます。破産管財人がどこか第三者に損害賠償請求訴訟を起こしたり、あるいはその破産財団に属する財産かどうかということを争って訴訟を起こした。ところが、その訴訟が大変難航している。ひょっとして最後までやれば勝てるかもしれないけれども、今持っている証拠を考えると勝てるかどうかもはっきり見通しを立てられないし、あるいは相当の時間がかかってくる、こういう場合もございます。  そういう場合には、破産管財人は裁判所と、この訴訟の見通しを考えて、これ以上この訴訟を続けていくことが適当かどうか、それよりも早く破産手続を終結させて配当すべきは配当していくかどうか、そういうことを相談するわけでございます。その場合に一つの価値判断が加えられて、その結果、例えば破産管財人が起こしている訴訟を相手方の同意を得て取り下げて、そして破産手続を終局させるということもございます。この場合に、仮に今回の住専ように、そんなことは許されない、損害賠償請求訴訟は最後までやれ、こういうような背景でこの手続が進んだ場合には、当然その損害賠償請求訴訟が大変難航し、時間もかかることもあるわけでございます。そういうことを考えますと、大変、この住専七社の解体、清算には相当の長期間を要するということを想定をしておかなければなりません。  その間どうなるかというと、当然、母体行はもちろん、一般行もそうであり、農協系統もそうでございますが、そうしたところが持っている債権というものは直ちには回収できないわけでございます。例えば農協系統が持っている五兆五千億、住専七社に今多額の現金があって、返してくれと言われればそっくり返せる、こういう状態であればともかく、それを破産手続にゆだねてしまえば、現金はゼロですから、当然住専七社の持っている債権を回収して、あるいは資産を処分して、そしてその中から配当するということになると、これは大変な時間がかかる。その間、農協系統は一兆、二兆どころか、五兆五千億そのものの回収がほとんど困難になって、それが事実上長期化していく、こういう事態が想定されるわけでございます。そうなれば当然、その農協系統にさまざまな権利関係を持っている組合員あるいは取引関係者、こうしたところにさまざまな波及効果が起きるわけでございます。  だから、私が申し上げたいことは、預金者保護、つまり直接に預金者がいるかどうかというような、そういう形式的な基準でこの問題を考えるのは適当ではない。むしろ住専七社のそうした債権債務の関係というものと、それから現在金融四法案で処理ようとしているさまざまな金融機関というものが破綻した場合と、それがどういう社会的な影響を与えるのか、それが我が国経済構造にどういう影響を与えるのか、こういう観点からきちっと論理的な分析を冷静に私はやるべきだ、こういうふうに思うのですが、大蔵大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  209. 久保亘

    久保国務大臣 先般、予算委員会で、錦織さんから御専門の立場からの御意見が述べられ、私どもはそのときの議事録も詳細にまた検討させていただきました。大変、私どもが今回の住専問題処理について考えておりますことを理論的にきちっと整理をされた御意見を述べられた、このように考えております。  さっき質問に立たれた早川さんが少し質問の中で述べられた住専問題処理の緊急性、必要性、重要性といったようなことについて、これは、緊急性、必要性、重要性というのは一体のものだと考えておりますが、そういう今住専問題の処理で求められている課題というものを錦織さんがただいま分析をしてお述べになりましたその考え方は、私どもと全く同じ考え方に立つものだと思っております。
  210. 錦織淳

    ○錦織委員 それから、金融四法案が対象としている領域と住専処理法案が対象としている領域とどう違うか、あるいはどこが同じかという問題でございますが、次の点はいかがでしょうか。  少なくとも住専七社は、平成三年に、あるいは平成四年にかけて調査をしたときに、大変な不良債権を抱えておったわけです。もう破綻寸前あるいは事実上破綻していた。そしてさらに、そのときに先送りされ、平成五年の調査を受けた。そのときにも、破綻をしていることが明らかになったけれども、解決策が最終的には講ぜられないまま先送りされた。そして平成六年、七年と徒過をした。そして、今我々のこの状態を迎えている。こういうことを考えるならば、これは文字どおり遅過ぎたとも言っていいわけでありまして、少なくともこれ以上この問題を先送りするのはできない。したがって、これはこれで独自の解決が必要ではないかというふうに思うわけでございます。  そういう点で、住専処理法案と金融四法案との関係でございますが、私は、これが論理的に共通性があるからとかないとかということだけでこれを比較をするのは必ずしも妥当ではないと思うのです。その点について、先ほど来自民党の方々もいろいろと御質問をしていただいております。この二つの関係をどう考えるのか、もう一度大蔵大臣のお考えをお伺いをしておきたいと思います。あるいは銀行局長でも結構でございます。
  211. 西村吉正

    西村政府委員 住専処理法案あるいは私どもから提出いたしております三法案、それぞれ金融システム安定のためにぜひ必要なものではございますけれども、三法案が、これから生じますこと、あるいは全般の問題を取り扱っておりますのに対しまして、住専処理法案は、既に起こりました、しかも一日も早く解決をしなければならない課題に取り組むものでございます。これにつきましては、一日も早く住専処理機構を設立をし、この課題に取り組めるように、よろしくお願い申し上げる次第でございます。
  212. 錦織淳

    ○錦織委員 それじゃ、予定した質問で、特に財務諸表の時価主義の問題についてぜひお伺いしたがったのでございますが、御準備いただいた方々には申しわけありませんが、時間が参りましたので、終わらせていただきます。ありがとうございました。
  213. 高鳥修

    高鳥委員長 これにて錦織淳君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十九日水曜日午前九時委員会、午後一時理事会開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十四分散会