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1996-05-24 第136回国会 衆議院 外務委員会農林水産委員会運輸委員会科学技術委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年五月二十四日(金曜日)     午前八時三十二分開議  出席委員   外務委員会   委員長 関谷 勝嗣君    理事 小杉  隆君 理事 田中 直紀君    理事 玉沢徳一郎君 理事 赤羽 一嘉君    理事 東  祥三君 理事 松沢 成文君    理事 井上 一成君 理事 前原 誠司君       佐藤 剛男君    斎藤 文昭君       坂本三十次君    櫻内 義雄君       鈴木 宗男君    二階堂 進君       原田昇左右君    伊藤 英成君       石田 勝之君    岡田 克也君       小坂 憲次君    中野 寛成君       秋葉 忠利君    伊藤  茂君       佐藤 泰介君    園田 博之君       古堅 実吉君    吉岡 賢治君   農林水産委員会   委員長 松前  仰君    理事 鈴木 宗男君 理事 二田 孝治君    理事 仲村 正治君 理事 初村謙一郎君    理事 井出 正一君       荒井 広幸君    金田 英行君       岸本 光造君    栗原 博久君       七条  明君    浜田 靖一君       穂積 良行君    松下 忠洋君       山本 公一君    木幡 弘道君       須藤  浩君    野呂 昭彦君       堀込 征雄君    山岡 賢次君       山田 正彦君    石橋 大吉君       永井 哲男君    野坂 浩賢君       山崎  泉君    小沢 鋭仁君       藤田 スミ君    徳田 虎雄君   運輸委員会   委員長 辻  一彦君    理事 武部  勤君 理事 細田 博之君    理事 村田 吉隆君 理事 久保 哲司君    理事 古賀 敬章君 理事 高木 義明君    理事 赤松 広隆君 理事 高見 裕一君       佐藤 静雄君    橘 康太郎君       林  幹雄君    堀内 光雄君       江崎 鐵磨君    実川 幸夫君       田名部匡省君    東  順治君       米田 建三君    緒方 克陽君       左近 正男君    寺前  巖君   科学技術委員会   委員長 井上 喜一君    理事 小野 晋也君 理事 原田昇左右君    理事 村上誠一郎君 理事 上田 晃弘君    理事 笹木 竜三君 理事 今村  修君    理事 渡海紀三朗君       萩山 教嚴君    上田 清司君       近江巳記夫君    穀田 恵二君       牧野 聖修君   出席国務大臣         内閣総理大臣  橋本龍太郎君         外 務 大 臣 池田 行彦君         農林水産大臣  大原 一三君         運 輸 大 臣 亀井 善之君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      中川 秀直君   出席政府委員         科学技術庁研究         開発局長    加藤 康宏君         科学技術庁原子         力局長     岡崎 俊雄君         科学技術庁原子         力安全局長   宮林 正恭君         外務大臣官房審         議官      谷内正太郎君         外務大臣官房審         議官      西田 芳弘君         兼内閣審議官         外務省総合外交         政策局軍備管理         ・科学審議官  河村 武和君         外務省アジア局         長       加藤 良三君         外務省欧亜局長 浦部 和好君         外務省経済局長 野上 義二君         外務省条約局長 林   暘君         農林水産大臣官         房長      高木 勇樹君         水産庁長官   東  久雄君         資源エネルギー         庁長官     江崎  格君         運輸省航空局長 黒野 匡彦君         海上保安庁長官 秦野  裕君         気象庁長官   小野 俊行君   委員外出席者         外務委員会調査         室長      野村 忠清君         農林水産委員会         調査室長    黒木 敏郎君         運輸委員会調査         室長      小立  諦君         科学技術委員会         調査室長    吉村 晴光君     ————————————— 本日の会議に付した案件  海洋法に関する国際連合条約及び千九百八十二  年十二月十日の海洋法に関する国際連合条約第  十一部の実施に関する協定締結について承認  を求めるの件(条約第三号)  排他的経済水域及び大陸棚に関する法律案(内  閣提出第八六号)  排他的経済水域における漁業等に関する主権的  権利行使等に関する法律案内閣提出第八八  号)  海洋生物資源保存及び管理に関する法律案  (内閣提出第八九号)  水産資源保護法の一部を改正する法律案内閣  提出第九〇号)  領海法の一部を改正する法律案内閣提出第八  五号)  海上保安庁法の一部を改正する法律案内閣提  出第八七号)  海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一  部を改正する法律案内閣提出第九一号)  核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関  する法律及び放射性同位元素等による放射線障  害の防止に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第九二号)      ————◇—————
  2. 関谷勝嗣

    関谷委員長 これより外務委員会農林水産委員会運輸委員会科学技術委員会連合審査会を開会いたします。  関係委員長との協議により、私が委員長の職務を行います。  海洋法に関する国際連合条約及び千九百八十二年十二月十日の海洋法に関する国際連合条約第十一部の実施に関する協定締結について承認を求めるの件、排他的経済水域及び大陸棚に関する法律案排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利行使等に関する法律案海洋生物資源保存及び管理に関する法律案水産資源保護法の一部を改正する法律案領海法の一部を改正する法律案海上保安庁法の一部を改正する法律案海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一部を改正する法律案核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律及び放射性同位元素等による放射線障害防止に関する法律の一部を改正する法律案の各案件を一括して議題といた します。  各案件の趣旨の説明につきましては、これを省略し、お手元に配付しております資料をもって説明にかえさせていただきますので、御了承願います。  これより質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中直紀君。
  3. 田中直紀

    田中(直)委員 外務委員会田中でございます。海洋法条約外八件について質問をいたします。  今回の条約で設けられました国際海峡自由航行の確保につきましては、大変重要なこの条約の柱であろうかと思います。この内容につきましては、領海で覆われておる海峡におきましても軍艦あるいは潜水艦航行が可能である、こういう状況になったわけであります。我が国は五十二年に領海の幅を三海里から十二海里に拡大をいたしましたけれども、御存じのとおり、宗谷、津軽、対馬東西水道、大隅の五海峡につきましては、特別水域として三海里の領海を継続したわけであります。今回、国際的に見てこの五海峡国際海峡である、こういうことで認識をされるところでありますが、我が国におきましては、今回の条約で三海里を継続していく、こういうことであります。領海が覆われても国際海峡である、こういうことでありますから、こういう条件下において、やはり十二海里等の拡大を図っておく、こういうことがごく当然の対処ではなかろうかと思いますが、今回も引き続き三海里を堅持するというのは、どういう見地から堅持をされたのか、外務大臣にお伺いをいたしたいと思います。
  4. 池田行彦

    池田国務大臣 委員承知のとおり、我が国は主要な海洋国家でございます。そういった立場を踏まえまして、諸外国が重要な海峡において自由な通航を維持する政策をとる、こういったことを促進していきたい、こういうことを考えておりまして、国際航行の要衝でございますいわゆる五海峡につきましても、今回現状を基本的には変更しない、こういうふうなことにした、こういうことでございます。
  5. 田中直紀

    田中(直)委員 結論は外務大臣お話のようなのでありますが、これから国際海峡につきましての取り扱い等運用につきまして各国での対応が出てこようかと思いますし、当然、国内法でどういうふうに国際海峡を位置づけていくか、あるいは領海との関係はどう考えていくかということだと思うのです。特に、今まで外国軍艦原子力潜水艦通過につきましては大変神経をとがらせてきたところでありますが、冷戦終結後の対応ということで、地域紛争等で新防衛大綱の問題も決めました。あるいは、これから極東有事におきましての法人救助あるいは難民の流入を防ぐ、こういう大きな課題を抱えておりますので、そういう意味では安全保障の面の観点からこの国際海峡あるいは特別水域という問題を、今回きちっと政府としての見解を出されておいた方がよろしいのではなかろうか、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
  6. 池田行彦

    池田国務大臣 ただいま委員指摘のような各方面への十分な配慮をしながら、今後いわゆる五海峡取り扱いその他についても遺憾のないように対応してまいりたいと思います。  なお、この関係でいわゆる核搭載艦の問題などが時々提起されるわけでございますが、その関係につきましては現在までの我が国の非核三原則のこの方針に全く変わりはない、こういうことは申し上げておきたいと思います。
  7. 田中直紀

    田中(直)委員 せっかくの機会でありますから、事務局の方から、国際海峡通過通航制度につきましての通過通航権について、政府見解といいますか、解釈というものをつけ加えておいていただきたいと思います。
  8. 谷内正太郎

    谷内政府委員 通過通航制度についての御質問でございますけれども領海の幅を従来の三海里から十二海里に拡大することに伴って、新しく今回の国連海洋法条約で創設された制度でございます。今先生指摘のように、いわゆる五海峡につきましては、領海部分が三海里になっているということでございますけれども、この通過通航制度は、領海において認められますいわゆる無害通航よりもより自由な、特に上空飛行を含むような、より自由な通航が認められるわけでございます。  私どもが今やっておりますことは、念のために申しますと、その三海里に限定いたしますけれども、その外側の部分につきましては公海部分を認めまして、いずれも海峡内に航行上及び水路上の特性において同様に便利な公海の航路を設けるわけでございますから、国連海洋法条約との関係では問題がないというふうに認識しておるわけでございます。
  9. 田中直紀

    田中(直)委員 では、ほかの問題に移ります。  排他的経済水域及び大陸棚に関する法律につきまして御質問申し上げますが、我が国排他的経済水域の範囲及び我が国が持つ大陸棚について、国内法の第一条及び第二条を適用いたしまして、二百海里の線あるいは隣国との重複水域につきましては中間線設定する、こういうことで全面設定を今回するわけでございます。  我が国は世界で六番目か七番目ほどの大変な水域を持つ、こういうふうに言われておりますから、そういう意味で、海洋国家我が国にとっては大変国益としても大きなものではなかろうか、できるだけ大きな水域設定を可能な限りやっていく、こういうことではなかろうかと思いますが、一つは、この法律に従って全面設定をいたした場合には、我が国経済水域は、広さはどの程度になるのか、こういうことが一つ。それから、二百海里以遠大陸棚が、該当するというものがあろうかと思いますが、これはどういうところが具体的に考えられるのか、この二点をお伺いいたしたいと思います。
  10. 谷内正太郎

    谷内政府委員 まず御質問の第一点の、排他的経済水域の広さがどれぐらいになるのかという点でございますけれども、この点につきましては、私どもは具体的な測定を行っているわけではございませんので正確な数字は有しておらないわけでございますけれども、大体四百万平方キロメートルであるというふうに想定しております。これは我が国領土の約十倍強に当たる大変広い水域になるというふうに考えております。  それから第二点の、二百海里以遠大陸棚限界設定の見通しについての御質問でございますけれども、御承知のように、国連海洋法条約大陸棚定義、これは第七十六条でございますけれども、この定義によりますと、岸から二百海里までは海底地形のいかんにかかわりなく沿岸国大陸棚であるとされるとともに、二百海里を超えて領土の自然の延長が続いている場合には、一定の要件を満たす限界まで我が国大陸棚となるというふうに規定されておるわけでございます。  我が国大陸棚につきまして、国連海洋法条約規定に照らして、二百海里を超えて延びている可能性につきましては、これは太平洋岸について考え得るわけでございますけれども、現在入念な海底調査が行われているというふうに承知しております。
  11. 田中直紀

    田中(直)委員 今政府委員からお話はありましたけれども外務大臣にお伺いいたしたいと思います。  この条約批准するということになれば、やはり国連提出をして締結をするわけでありますから、いわゆる全面設定をしていくわけでありますから、そういう意味では、四百万平方キロというお話以上に、もっと正確な、結局、線が大体わかるような形での数字をしっかり出していただきたい。これによってしっかりと我が国のいわゆる経済水域設定をされるわけでありますから、今概略の数字でありますが、もっときっちりした数字政府として確認をしていただきたい、そして我々にも発表していただきたい、こういうふうに思いますし、大陸棚の問題につきましても今調査中だ、こういうことでありますけれども科学技術庁長官もおられますから、深海底のところはちゃんと調査をされているわけでありますから、こことこことということをきっちりと出していた だきたい、こういうふうに思います。  時間がございませんので先に移りますが、国内法の第二条で、そういう意味で、我が国は二百海里から大陸棚ということで、今調査中ということでありますが、第二条の表現中間線規定をしておるわけでありますけれども大陸棚というのは本来、ずっと深海底の方に本土から移るわけでありますから、もともと中間線という形が、この第二条でうたっておるわけでありますけれども、どうも大陸棚の実際の形状からいって中間線、こういうものが、この文章だけで、我が国が主張しております中間線というのが規定できておるのかどうか。これは、どこが大陸棚の一番端なんだということになりますと、中間線ということを規定するだけで、実際に、本当に中間線我が国が主張できるのかどうかという内容ではなかろうかと思いますが、いかがですか。
  12. 谷内正太郎

    谷内政府委員 ただいま先生おっしゃいましたように、確かに中間線という表現になっておるわけでございますけれども、その中間線と申します場合に、どこからはかつて中間線考えるのかという問題があるわけでございまして、恐らく先生は、いろいろと領土の問題もあるではないかということを前提にお聞きになっておられると思いますけれども、私どもとしては、当然我が国領土を基点として、また相手国領土との間の中間線を当然考えておるわけでございまして、それは国内法上もそのことが当然の前提になっておるわけでございます。
  13. 田中直紀

    田中(直)委員 相手国との関係は当然これから出てくるわけでありますけれども大陸棚我が国が取得する条件としての、大陸棚深海底にずっといくわけでありますから、それの中間線という規定になるわけであります。そういう意味で、具体的に言いますと、日中間での大陸棚一枚岩であるとかいうことを前提にしておるのかとも思いますが、一枚岩でなくても、中間線我が国国益が守れるようないわゆる大陸棚設定できるのかどうか。  本来、国内法設定するのであれば、一枚岩ではなくても、それだけの日中間の主張ができるような規定にしておかなければいけないと思うのですけれども、これでいきますと、そういう大陸棚前提がなければ中間線がなかなかとり得ないというような解釈にもなろうかというふうに思うのですけれども、その辺はいかがですか。
  14. 谷内正太郎

    谷内政府委員 日中間の問題につきましての御質問でございますので、その点に焦点を絞ってお答え申し上げますけれども日中間にあります大陸棚につきましては、私どもは、今先生一枚岩という表現をお使いになりましたけれども一つ大陸棚であるというのは私ども認識でございます。したがって、一つ大陸棚でありますから、双方領土を踏まえまして中間線を引く、こういう考えでございます。  他方、中国の方は、中国大陸自然延長が、日本列島といいますか、沖縄トラフのところまで延びているんだから、そこまでは自分の大陸棚であるという見解を恐らく示してくるだろうと思いますけれども、まさに先生がおっしゃっておりますように、大陸棚は、地形がどうあろうとも二百海里はともかく確保できるわけでございます。それからまた、日中間は、双方からはかりまして四百海里以内でございますから、そういうところでは専ら距離基準に基づいて四百海里未満のところで中間線を引くという考え方は、国際法上も十分成立し得る考えであるというふうに私どもは自信を持っておるわけでございます。
  15. 田中直紀

    田中(直)委員 では、あと二間ほど質問いたしたいと思いますが、国連公海漁業条約が昨年の八月に国連で採択をされております。ことしの十二月までに署名期限が来る、こういうことで認識をいたしておるわけであります。  我が国マグロ消費国でありますが、今回の海洋法では、高度回遊性魚種ということで、公海も含んでの魚種である、こういうことであります。我が国マグロ漁業は、消費国でありながら便宜置籍船あるいは非加盟国の、まあ野放しの状態だ、こういうことで大変打撃を受けておるところでございます。  これからの資源保護という問題からしまして、我が国がイニシアチブをとってこの国連公海漁業条約について十二月までに早急に署名をすることが妥当ではなかろうか。そしてまた、世界的な資源管理保存我が国が主導的な立場で臨むべきではなかろうか。農林水産大臣がお出ましてございますので、その点お伺いをいたしたいと思います。
  16. 東久雄

    東政府委員 水産庁長官でございます。  先生指摘のとおり、マグロ高度回遊性魚種ということで、今度の国連海洋法条約でも、関係する沿岸国漁業国地域漁業管理機関を通じて保存管理をやれと。公海漁業条約につきましても、まだこれは発効しておりませんのは今先生指摘のとおりでございますが、同じような規定になっております。我々は、これはやはり非常に重要なポイントであると思っておりまして、そうなると、その非加盟国の跳梁というものが問題になってくるわけで、我々は、できるだけ多くの国に、あらゆる機会にこの国際管理機関に入ってもらうということをまず第一にしております。  それから、国際管理機関がまだ設定されていない地域が二カ所ございます。我が国周辺北太平洋地域それから中西部太平洋でございまして、これは日本とアメリカとで話し合いまして、この間、五月に北太平洋、さらにこれから中西部太平洋会議をやりまして、科学委員会の設立に向かって努力していく構えでおります。  そういうふうに、外のものをできるだけなくすという方向。それから便宜置籍船も、FAOにおいての協定の案文ができ上がっております。まだこれも発効しておりませんが、そういう形での牽制ということをやりながら、しっかりした資源管理のもとでマグロ漁業をやっていくということを心がけていきたいと思っています。
  17. 田中直紀

    田中(直)委員 国連公海漁業条約につきましては、水産庁はそういう見解大変期待をしておるということであろうかと思いますし、ことしじゅうが署名する期限だということでありますが、外務大臣のお考えをひとつお伺いします。
  18. 池田行彦

    池田国務大臣 ただいま水産庁の方からもお話がございましたそういった事情も踏まえながら、一方において、委員指摘のとおり、この協定マグロあるいはタラ、カレイ等も対象になっておりまして、いわば海洋法条約関連規定を踏まえて総括的に、高度回遊性魚種あるいは経済水域の内外に生息する魚種について包括的に規定したものでございますので、これは資源保存管理持続的利用にとって大変意義のある協定だというふうに考えております。  そういったことで、先ほど水産庁から指摘のありましたような事情もよく勘案しながら、関係省庁で今後とも協議して対応してまいりたい、こう考える次第でございます。
  19. 田中直紀

    田中(直)委員 今回の条約批准は、資源小国日本にとって大変重要な案件であろうかと思います。  特に我が国は、マンガン、ニッケル、コバルト等自給率はゼロに大変近い、こういうことでありますし、深海底開発につきましては、マンガンにつきましての発掘ということで大変期待をされておりますし、今回の条約批准によって、我が国資源海洋に求める、こういうことが大きな課題になろうかと思います。  そういう意味で、科学技術の中でも海洋開発というものが大変重要な内容になってくるわけでございますけれども、今後の取り組みにつきまして科学技術庁長官にお伺いをいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  20. 中川秀直

    中川国務大臣 お答え申し上げます。  科学技術庁においては、海洋実態解明を目指した研究、また、その基盤となる技術開発、この二点に重点を置いた海洋科学技術推進を図っている次第でございます。  具体的には、海洋科学技術センターにおきまして、「しんかい六五〇〇」「かいこう」等の潜水調査船を用いた深海調査研究、第二に、太平洋及び北極海域における総合的な海洋観測研究及び大型海洋観測研究船、「みらい」と先ごろ名づけましたが、この整備、第三に、地球環境の変遷、また地震発生メカニズム等解明のための深海掘削船システム開発研究等推進しているところでございます。また、関係省庁と協力しつつ黒潮の開発利用調査研究等海洋調査研究実施いたしております。  今般の国連海洋法条約において、海洋科学的調査に関しては、本条約の第十三部に規定があり、専ら平和的目的のために実施すること等を条件に、各国海洋科学的調査の発展及び実施を促進し及び容易にすること、こうなっておるところでございます。これにより、海洋科学的調査に関する国際的な法秩序というものが確立をされた、したがいまして、海洋調査研究が一層推進されるものと期待をしているところでございます。  今後とも、委員指摘のような見地で、海洋開発推進に積極的に取り組んでまいります。
  21. 田中直紀

    田中(直)委員 では、終わります。
  22. 関谷勝嗣

  23. 前原誠司

    前原委員 新党さきがけを代表して質問させていただきます。  この海洋法審議に当たりまして、領域、領海あるいは接続水域、また排他的な経済水域等々の設定ということで、漁業の問題も絡みまして、周辺諸国との話し合いをしていただいているところであります。  一つ私が今回指摘をさせていただきたい問題点といいますのは、台湾との問題であります。  台湾は、我が国といたしましては、中国の一部であるという前提に立ちまして、この海洋法にかかわる問題についても、表の面では中国と交渉する、話をするということになろうかと思います。しかし、実際的に台湾という、国と言っていいのか地域と言っていいのかわかりませんが、そういったところが実効的な支配をしているわけでありまして、それにかかわるいろいろな問題点が出てきていて、その問題をどう政府として取り組んでいかれるのか、この点について御質問をさせていただきたいと思います。  まず漁業の問題であります。  昨年六月でありますが、外務委員会で沖縄の方に視察をさせていただきまして、八重山諸島の与那国島の与那国町の町長さんから要望をいただきました。「与那国島と台湾の間の公海上において、台湾による射撃訓練が平成六年七月から行なわれており、当該海域での漁業操業が著しく制限されている状況にあります。」こういう要望をいただいているわけであります。  また、漁業そのものに関しましても、日本近海における台湾漁船による不法操業の確認隻数というのが過去五年間で、統計をいただいておりますが、平成三年が百四十六隻、四年が六十六隻、五年が二百四十三隻、六年が二百十三隻、七年が三十一隻ということで、この五年間で不法操業の確認隻数が六百九十九隻にも上っている。そのうち検挙をされたものも十八隻ございますし、うち領海内だと確認されたものも半数以上に上がっているということであります。  こういった問題においては、実際、中国と話をしてもらちが明かない部分があるわけでありまして、こういった問題じゃどういうふうに政府としては漁民の利益を確保するために対処されるおつもりなのか、お伺いをしたいと思います。
  24. 池田行彦

    池田国務大臣 ただいま委員指摘のとおり、我が国は、中国との関係で共同声明に基づいたああいった基本的な立場をとっております。そう一いった関係で、台湾との関係はこれは非政府間の実務上の関係、こういうことになっているわけでございます。そういったことでございますので、漁業の分野につきましても、ただいまお話のございましたいわゆる不法操業の問題、あるいはまた台湾によるいろいろな射撃訓練等もあるわけでございます。そういった関係について一体どういうふうに対応するか、なかなか通常の場合と違って難しい面があるわけでございます。  現在のところ、漁業につきまして、台湾との間では国家間の関係は、当然そういうことはあり得ないわけでございますが、民間ベースにおいてもそういった取り決めというものは結ばれておりません。  しかし、これからそういった点をどうしていくか。それから、今御指摘のございましたような漁業関係の方々の御要望あるいは台湾側のいろいろな主張もあるいはあるかと思います。そういったものも踏まえながら、場合によってはそういった何らかの調整を行う必要が生じるというケースも考え得るわけでございますから、そういった場合には、先ほど申しましたような非政府間の関係であるという、その基本を踏まえながら適切に対応していく、こういうことになろうかと存じます。
  25. 前原誠司

    前原委員 今後は非政府間の事務上の関係という前提条件の中で、しかし問題解決については台湾当局とは御議論されるということでございますが、その中にまた含めていただきたい問題として一つ提起をさしていただきたいのが、防空識別圏の話でございます。  これも、昨年の外務委員会で沖縄へ訪問しましたときに要望されていたことでございます。ちょうどこの防空識別圏というのが、与那国島が東経百二十三度の真下にあるわけでありますけれども台湾の防空識別圏と日本の防空識別圏がその与那国島の真上を通っているということであります。  防空識別圏といいますと、それに届け出をしていない進路で飛行機等が入った場合においては、スクランブル発進をされて、そして警告を受けたり、もっとエスカレートすると非常に危険な状況になるということでございます。我が国の国土の上に防空識別圏があるというのはこれは全くおかしな話であります。確かに、この防空識別圏というのは国際法上の観念としてないということは伺っておりますし、また、これが領域とか領海の問題にかかわるものでもないということは十分承知をしておりますが、しかしそれでも、そういうスクランブル発進が行えるその限界の線を我が国の領域の中に引いていると、しかも与那国島という我が国領土の上に引いているということ自体は、私はこれは全く健全ではないというふうに思っております。  しかも、さらに百二十四度、つまり、与那国島よりさらに沖縄本島に寄ったところに飛行情報区、飛行制限区域が入り組んでいると、つまり日本の領域内に、与那国島よりさらに沖縄本島に寄ったところにこういう飛行制限区域を台湾設定をしているということについては、これは全く私はおかしな話だと思いますが、その点について問題認識をされているかどうか。また、先ほど話をいただきました今後の交渉というものあるいは実務上の話し合いというものにこういう問題をのせていただけるものかどうか、外務大臣、御答弁をいただきたいと思います。
  26. 池田行彦

    池田国務大臣 ただいま委員御自身も御指摘なさいましたように、いわゆる防空識別圏というものは国際法上確立した概念でもございませんし、また、その識別圏の設定の仕方によって領土であるとか領空というものが変更されるものではない、これは明確であると考えております。  一般的には、各国が自国の安全を守るために、国内措置として、領空に接続する公海の上空に識別圏というものを設定する、こういうものであると承知しておる次第でございますので、私は、この識別圏の設定のあり方によって領土あるいは領海、領空ということに問題が出てくるとは思っておりませんけれども、ただいま委員指摘のように、我が国領土の上にあるんじゃないかということになりますと、そこのところはただいま申しましたような一般的なとらえ方によって対応が可能なのかどうなのか、ちょっとそれは疑問だと思います。事実関係をつまびらかにしました上で、必要があれば適切に対応してまいりたいと思います。  具体的な、どこに線があるかという点については政府委員からひとつ答弁させたいと思います。
  27. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 FIRが委員指摘のような位置に引かれているという事実は私たちも承知いたしております。そして、この防空識別圏あるいはFIR、この法的性格というものについては、ただいま外務大臣から答弁申し上げたとおりでございます。  なお、私どもといたしましてもかねてこの件については問題意識を有しておりまして、例えば平成五年三月二十三日に、政府関係者、これは内閣の外政審議室、外務省のアジア局の関係者でございますが、実際に与那国町へ赴きましてヒアリングを行った経緯もございます。  そういうことで全く事実関係として申し上げれば、過去においていわゆる台湾からスクランブルがかけられたということはほとんどないわけでございますが、特にここ数年は、与那国に離着陸する我が方の航空機に対してスクランブルがかけられたことはない、こういう事実があるということを一言申し添えさせていただきます。
  28. 前原誠司

    前原委員 最近は、私の持っている資料でもスクランブル発進とかはございませんが、そういう事実は過去にもございますし、また、与那国飛行場が新たな飛行機を導入して、そして進入経路を変えるというようなことになれば、この点の見直しというのは出てくるわけです。  私も専門的なことはよくわからなかったんですが、運輸大臣に御答弁いただきたいんですけれども、VOR・DMEを使用しての進入の実現というものを求められているということでございますが、それについての可能性があるかどうか、運輸大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  29. 黒野匡彦

    ○黒野政府委員 与那国空港につきましては、現在でもVOR・DMEを使いまして安全な運航をしております。  少なくとも、今問題になっている件に関連いたしまして航空の安全に支障を及ぼしていることは一切ございません。
  30. 前原誠司

    前原委員 すべての問題を含めて今後は非政府間の実務上の関係というものに取り組むべきであると、また、そういう御答弁だったと思います。  全体の日本台湾の問題について、私は持論も踏まえましてちょっとお話をしたいと思うわけでありますが、今まで、中国との兼ね合いで台湾へ対しての遠慮というものが私は非常にあったんではないかと思います。また、台湾というものを重視するといわゆる反北京だとか、あるいは、中国との関係を重視する余り反台湾だとか、こういう二元論というのは全くおかしいと私は思っています。他国との関係というのは、あくまでも我が国国益をどのように実現をしていくかといったことで、そして、それに応じて問題が対処されなくてはいけないし、私は別に親台派とか親中派とかそういう自分で色分けをしようとも思いませんし、そういうことはナンセンスだと思いますが、そういった観点で台湾との関係というか交渉というか、その実務上の窓口、パイプというものをもっともっと太くしていくべきではないかと私は思っているところであります。  一つの資料として申し上げたいんでありますが、G7の中で、台湾と国交のない主要国が台湾に訪問しているケースというのはたくさんあります。カナダの鉱業資源大臣とか運輸大臣、運輸大臣は二回、過去四年間で行かれております。また、オーストラリアも貿易大臣がこの四年間、過去二回台湾に訪問をしています。アメリカも一九九四年に運輸長官が訪問をしている。ドイツも経済大臣が台湾を訪問しているということなんですね。  要は、国交のない国であっても、みずからの国の利害関係の絡むことについては、大臣が台湾に訪問して話をしているという経緯がほかのG7の国でもあるわけです。外務大臣が行かれるとか、ましてや総理が行かれるとか、これは、私は、今の中国との関係では無理だし、それはすべきではないと思いますけれども、しかし、こういう実際の問題が起きていることについて、やはりもっともっと、中国のことを気にせずに、これは国益という観点から、このG7のほかの国々がしているように、日本ももうちょっと大胆に、そしてみずからの主義主張を私はすべきではないかと思うわけでありますが、その点のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  31. 池田行彦

    池田国務大臣 我が国といたしましては、日中共同声明に基づきまして、台湾との関係は非政府間の実務的なものとしてそれを維持するという、こういう基本的な枠組みを持っているところでございます。そういった中で、委員指摘のように、その実務関係が安定的に推移していくように、そういった配慮は、これは当然払ってまいらなくてはいけない、こう考えております。  御承知のとおり、現在、基本的に、民間ベースのいろいろな交流というのは、安定的にというか、非常に活発に行われているところでございます。特に今大きな支障が生じているとは思いませんけれども、そういうことのないように今後とも配慮してまいりたい。  そして、今各国対応についていろいろお話がございましたけれども我が国の場合には、交流協会、そして先方の亜東関係協会でございますね、そのルートで必要な場合にはいろいろ実務的に相談もし、対応もしていける、そういった枠組みもございますので、そういったルートも十分に活用しながら今後とも実務関係が安定的に推移するように配慮してまいりたい、こう考えている次第でございます。
  32. 前原誠司

    前原委員 実務的なレベルで話がつく問題とつかない問題があると思うわけでありまして、じゃ、つかない場合一体どうするのか。実務者レベルではあるけれども正式な政府との関係を持たないということ、しかし日本国益にかかわる問題で、じゃ、実務者レベルで詰められなかったらどうするんだということについては、私は、やはりある程度幅を持たせて、その点についてはもっともっと前向きに取り組むべきだというふうに思います。その点については後の質問と絡めて要望をさせていただきます。  時間も余り残っておりませんので、台湾の問題をもう少し詰めさせていただきたいと思うわけであります。  台湾は沖縄を日本領土と認めていないということであります。いわゆる琉球という呼び方をしておりまして、琉球はその領海に対する日本の主権を認めていないというようなことが正式な台湾の外交部のスポークスマンの口から出ているわけですね。それによって、先ほど申し上げた漁業の問題あるいは防空識別圏あるいは制限空域というふうなものが出てきているんだと思います。  やはり、こういったことを考えると、確かに日中の関係、そしてそれで交わされた原則というものは今後も尊重し、継続していかなきゃいけないと思うわけでありますが、先ほど申し上げたように、実務上でそういった問題が詰められなくて日本国民の利益というものを害される場合、一体どういう対応政府として責任を持つのかといったことについて、再度御答弁をいただきたいと思います。
  33. 池田行彦

    池田国務大臣 ただいま委員指摘の点につきまして、台湾立場でございますけれども、これは一九七一年に台湾がその立場を明らかにしたことがございます。その際のその主張というのは、沖縄群島の帰属については、カイロ宣言、ポツダム宣言に基づいて主要同盟国の協議の上決定すべきものであった、それにもかかわらず、米国がそういった協議を経ずに沖縄を日本に返還したことは不満だ、そういった台湾としての立場を表明したことがございます。その後、昨年も外交部のスポークスマンが記者の質問に答えて、これは台湾の警備艇が日本の、我が国領海に入った、そういったケースをどう考えるのかという質問に答えまして、それは領海侵犯に当たらないんだ、先ほども言われたような基本的な姿勢を踏まえてでございましょうが、そういったことを答えた、こういうことがございます。  その際には、どうなんだということを確かめましたところ、これは記者の質問に答えたものであって決して外交部としての正式の声明というものではないんだ、そういうふうな説明があったところでございます。  いずれにいたしましても、我が国といたしましては、沖縄が我が国領土であるということは、これはもう論をまたないところでございますので、沖縄の帰属をめぐっての争いが生ずることはないと考えている次第でございます。
  34. 前原誠司

    前原委員 時間も参りましたので、簡単に、最後、一言だけで御答弁いただきたいと思います。  今回民主的な方法で李登輝総統が選ばれたわけであります。今までの経緯として、なぜ李登輝総統の訪日に対する入国許可をおろさなかったのかということと、それから、今後もそういった方針については変わらないのか、その点について政府の現在のお考え方をお聞かせいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  35. 池田行彦

    池田国務大臣 ただいま李登輝氏の訪日の計画があるとは承知しておりません。  いずれにいたしましても、我が国といたしましては、日中共同声明を堅持して、先ほど申しましたような日台間の関係の基本的な枠組みというものを前提としながら今後対応してまいりたい、こう考える次第でございます。
  36. 前原誠司

    前原委員 終わります。     〔関谷委員長退席、松前委員長着席〕
  37. 松前仰

    ○松前委員長 石橋大吉君。
  38. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 総理大臣、連日何かと大変御苦労さまでございます。  私は総理の出身の岡山県と背中合わせみたいになっておる島根県の選出でありますので、竹島が島根県の所属になっておりますから、きょうは非常に限られた時間でもありますので竹島問題に絞って何点か質問をさせていただきたい、こう思います。  最初に三月二日のアジア欧州首脳会議における総理と金泳三大統領との間の確認というか、合意事項に関連して見解をお尋ねしたい、こう思います。  私の手元には新聞ぐらいしかありませんので三月三日の朝日新聞の記事を材料にして総理の見解を承りたいと思いますが、その記事によりますと、「アジア欧州首脳会議を終えた橋本龍太郎首相は二日午後五時から、バンコクのホテルで、韓国の金泳三大統領と首相就任後初めて、一時間半近く会談した。」そこで、これからが大事なところですが、「首相は、国連海洋法条約批准に向けて、日韓の争点として再燃している竹島(韓国名・独島)領有権問題について、「両国間に緊張が醸成され、国民感情に影響を及ぼしていることを憂慮している。日韓関係への否定的影響は避けたい」と表明。領土問題を当面棚上げし、新たな漁業秩序作りに向け、実務的協議を開始するよう提案した。」これに対する金泳三大統領は、「「排他的経済水域設定問題は領土問題と関係がないという前提の下で協議していくことが好ましい」と賛意を表し、水域の境界画定や新たな漁業協定の協議を外交・水産当局者間で始めることに合意した。」こういうふうに報じられているわけです。  この記事がどこまで正確なものかどうかは、ちょっと当事者ではありませんのでわかりませんが、これに関連して二、三、以下質問したいと思うのです。  まず一つは、首相の、領土問題は当面棚上げする、大統領の、排他的経済水域設定領土問題と関係がないということの意味はどういうことを意味するのか、これが一つです。  私の考えるところでは、排他的経済水域設定にしても漁業水域設定にしても、スタートラインは領海基線でありますから、この領海基線は当然のこと、領土と不可分のものとして切り離すことはできない、こういうふうに思うわけです。それが竹島問題に限って無関係ということは、今回の排他的経済水域設定、いわゆる海洋法全面設定、全面適用という原則との関係でどういうことになるのか、これが一つです。  二つ目は、この際、領土権の帰属問題はさておいて、何らかの便法、方法でもって経済水域漁業水域設定を協議する中で、竹島問題、領土問題抜きに双方円満に解決すべき方法あるいは具体策があると考えられていたとしたら、それは一体どういうものが考えられていたのか、これが二つ目。  三つ目の問題は、この新聞記事には「当面」という形容詞がついているわけですが、この「当面」ということの意味がかなり重要な意味を持っているのかな、こういうふうな感じもするわけです。軽い意味で言うと、とりあえず入り口だけは棚上げた、しかし避けて通るわけにはいかないから、交渉が詰まった段階では当然竹島問題も一定の議論の俎上にのせる、こういう意味での「当面」なのか。あるいは、今度の海洋法条約批准に伴う排他的経済水域漁業水域設定に関する交渉全般を通じて棚上げする、不問に付す、こういう意味の「当面」なのか。  この辺、以上三点について、総理の見解をまず念のためお聞かせをいただきたい、こう思います。
  39. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 誤解を避けますために、そのときの速記そのものを冒頭読み上げることをお許しをいただきたいと思います。他の部分は省きまして、竹島に関する部分だけ読み上げます。  まず私の方から、   竹島の問題で両国間の緊張が醸成され、これ  が両国国民の感情に影響を及ぼすのを見て憂慮  している。日韓両国は隣国として竹島以外にも  お互いに協議する問題がたくさんあるし、両国  関係の持続的発展は両国政府及び国民にとり非  常に重要である。御承知のように、竹島問題に  ついての日本政府立場は一貫している。日韓  両国が新たな海洋秩序を構築する国連海洋法条  約の締約国となることによって、両国関係が悪  化するようなことがあってはならない。した  がって、日韓両国が国連海洋法条約批准に  伴ってとる措置が、竹島に関するそれぞれの立  場に影響を及ぼすものではないことを前提条件  としたい。これにより、国連海洋法条約批准の  問題が日韓関係に否定的影響を及ぼすことを回  避したい。その上で両国間で排他的経済水域の  境界画定につき協議を行うこととしたい。これが私の発言であります。  これに対して金泳三大統領が述べられましたのが、   独島は歴史的にも国際法上も韓国の領土であ  ることが明らかであり、現在韓国が実効的に領  有していることを明らかにしたい。日本側が、  日本の独島領有権を主張しているのは我が国と  しては容認できないし、非常に遺憾に思う。韓  日両国関係の発展のためには、領土の尊重が原  則的かつ重要な問題であるから、これに対して  明確な認識が必要であると思う。   総理が言われたEEZの設定問題はこれが領  土問題とは関係ないという前提の下で、両国外  交当局間で協議していくのがよいと思う。これに対して私の方から、   大統領の言われた通り、排他的経済水域の境  界策定作業については、早急に協議を始めた  い。   日韓漁業協定交渉については、まずは水産当  局者間において協議を行うべく調整中である  が、本件は早急に結論を得ることにつき国内よ  り強い圧力がある。可能な限り双方が満足でき  る結論を早急に得るためには、精力的に交渉を  進めていく必要があるので、韓国側の協力をお  願いしたい。これに対して大統領は、   そういう方向で対処していきましょう。という返事をされたということであります。  ですから、まず冒頭私から申し上げておきたいことは、どこの報道でありましても、当面棚上げするといった言葉を一度も使っておりません。今読み上げましたものがそのとおりのものでございます。  そして、これに対してどういうふうなまとめをされたのか、私はマスコミの報道自身はわかりませんが、これはまさに国連海洋法条約批准に 伴って生じ得る問題、いろいろなものがあると思いますけれども、竹島の領有権に係る問題とは切り離して協議するという合意であります。  問題を切り離すということは、一方におきまして、竹島問題については今後ともに両国間で平和的な解決を図るべく外交努力を重ねていきます、他方において、排他的経済水域の境界画定については、韓国との協議の中で、国連海洋法条約の趣旨を踏まえながら、双方にとって受け入れ可能な合意を達成するように鋭意努力するということであります。  政府として、竹島問題について、その解決のための努力を行わずに放置するというような意味で棚上げを図るつもりはない、まずこれが第一点であります。そして、双方の問題について解決の努力をそれぞれ鋭意図っていくということでありますし、私は、金大統領の発言もそのまま私は受けとめ、同じような考え方で同意をしていただいたと考えております。  また、こうした交渉が開始されました場合における対処の方針というものは、これは大変恐縮でありますけれども、相手もあることであります。現時点で申し上げることは差し控えさせていただきたい。これは、我々としてはお許しをぜひ国会にもいただきたいと思うのであります。  そしてまた、棚上げするという言葉を使っておりませんので、議員から今確認をされ、それはとりあえずか、あるいは全体かというようなお話がございましたけれども、棚上げするという発言自体をいたしておりませんので、その点はどうぞ誤解のないようにお願いを申し上げたいと思います。
  40. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 これだけでもう半分時間がなくなってしまいましたけれども。いや、総理大臣が悪いわけじゃないんですよ、質問時間が全体に制限されておりまして。  棚上げをすると言ったことはない、交渉の中でとりあえず切り離して扱うけれども、竹島の領有権問題については引き続き日韓の間で交渉を重ねながら解決をしていく、こういうことですが、もう一つ、差し当たっての排他的経済水域漁業水域設定との関係でどうなるのかということがもう少し、ちょっとわからぬのです。次の質問との関係がありますから、次の質問である程度その辺を明確にすることができるかな、こういうふうに思いますから、時間もありませんから、次の質問をさせていただきたいと思います。  それは、竹島問題と二百海里の海の線引きをどうするか。ひょっとしたら今の総理の最後のところと関係して、答えられないというような質問かもしれませんが、これは外務大臣質問しますから。  今棚上げという言葉は使ったことがないということですから、それは一応そのように受けとめておきます。どっちにしても、竹島問題を中心にして、海の境界線の引き方をどうするかということは非常に重大な関心事でありますし、大きな問題点でもあろう。特に、東経百三十五度以降の山陰沖など日本海沿岸は、七七年の暫定水域からの対象外にされておったというようなこともありまして、この際何としても海洋法設定をしてほしい、こういう切なる要望もあるわけであります。  そういう意味質問しますが、世界には資源をめぐる大陸棚海底分割だとか漁業水域、海面の設定などに多くの線引きの事例があると思うのです。海洋法経済水域漁業資源を合わせた線引きでありますが、日韓のように異なる境界線を主張した例も多い、こういうふうに言われているわけであります。しかし、多くは二国間協定や国際司法裁判所の判決などで解決され、それなりに国際的にはノウハウも蓄積されているというふうに言われているわけですが、その一つの方法は島の存在を無視して線引きをする方法だ、こう言われているわけですね。  今総理にお尋ねしたことの延長線で申し上げると、排他的経済水域漁業水域設定に当たって、領土問題としての竹島問題を棚上げする——棚上げという言葉はないと言われましたが、一応棚上げする、すなわち、日韓双方とも竹島という島は存在しない、こういうことで問題を解決するということであれば、ここで島の存在を無視して線引きをするということになると思うのですね。そうすると、具体的には隠岐島と韓国の鬱陵島との中間に線を引くということになる。その場合には、竹島は韓国の経済水域に入るのではないか、こういうふうな感じもするわけですが、この点まず一つどうかということ。  それから二つ目は、日韓双方が竹島を基点にして、両方とも領有権を主張しておるわけですから、それを基点にして排他的経済水域の線を引く、いわば二重の線を引くということになるわけですが、そして経済水域が重複をしても国際法上余り問題はない、こういうふうに言われていますし、資源開発や収益の配分については別途また両国で交渉して、協定なりなんなりをつくって、それでちゃんとやるというやり方がある、こういうふうに言われているわけですね。  北方領土周辺の日ロの二百海里境界線が大体そういう重複水域になっておって、日ソ地先沖合漁業協定締結して、そこではお互いに水域内での操業を認め合う、この協定のいかなる規定もいずれの政府立場または見解を害さない、領土問題には関係ない、こういうことだろうと思うのです。こういう形で領土問題を当面の海域の設定から除外をして話を進める、合意を形成する、こういうやり方、二つぐらいですが、海洋法上はそのほかに共同管理というような言葉もあるわけですが、この辺、具体的にどういうふうに扱われようとしているのか、外務大臣見解を承っておきたいと思います。
  41. 池田行彦

    池田国務大臣 先ほど総理から明確に御答弁申し上げましたように、我が国は、領土問題を棚上げするのではなくて、切り離して、日韓それぞれの立場に影響をすることなく話し合っていこう、こういうことでございます。そうして現在、EEZの境界画定交渉をなるべく早く開始しようということで、実は、四月三十日に行いました日韓外相会談で合意しておりますので、その早期交渉開始に向けて調整の真つただ中でございます。そういうさなかでございますので、先ほど総理からも御答弁ございましたが、恐縮でございますが、現段階でこれからの交渉の対処方針を申し上げるのはお許しいただきたいのでございます。  ただ、今委員指摘のように、いろいろな知恵がある、またいろいろな例があるのは御指摘のとおりでございます。しかし、現段階で、そういったものを含めまして我が国としてどういうふうに対応するかはひとつお許しいただきたいと存じます。
  42. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 これで予定された時間が来てしまいましたが、いずれにしましても、さっきもちょっと言いましたように、島根県だとか鳥取県だとか山陰沖の県民だとか漁民にとっては非常に重要な問題でありますので、ぜひひとつ、できるだけそういう地域期待にもこたえられるような処理をこの際お願いをしておきたい、こう思います。  最後にもう一つ、一点だけ。せっかくの機会ですから、竹島の領有権問題の帰属について外務大臣に一言、予定した質問をちょっと省きますが、それだけちょっとお聞きをしたいのです。  要するに、一九五二年以来、最近に至っては韓国は竹島に軍隊を駐留させたりしているわけですから、実効支配というか、むしろ不法占拠と言ってもいい状態ではないか、こう思うのです。こういう状態を放置しておく——外務省の立場からすると、事あるごとに抗議をしておるわけだから放置をしておるわけではない、こういう答えが出てくることは予想されますが、しかし、そういう抗議だけではやはり弱いのじゃないか。このまま韓国の軍事的な占拠状態がずっと続くと、やがては事実の持つ既判力というか、そういうことによって、フォークランド諸島におけるイギリスとアルゼンチンとの関係みたいに、やがて国際的に竹島は韓国の領土として認められる、そういう結果を招きはしないかと非常に心配をしているわけで す。そういうことがないようにひとつできるだけ早く解決をしてほしい、こう思いますが、その点について一言で結構ですから。
  43. 池田行彦

    池田国務大臣 国際法上実効的な支配が確立するためには、国家活動が平穏かつ継続的に行われることが必要だ、こういうことになっておりまして、これは、他国から例えば抗議等があった場合には平穏かつ継続的に行われていることにはならない、こういうことでございますので、御承知のとおり、竹島の問題については機会のあるごとに我が方は我が方の立場を申し入れておるわけでございますので、韓国のいわゆる実効的な支配が既に確立しているとかあるいは確立するということはない、こういうふうに考えるところでございます。
  44. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 時間が参りましたから、残念ですが、これで終わります。どうもありがとうございました。     〔松前委員長退席、関谷委員長着席〕
  45. 関谷勝嗣

    関谷委員長 東祥三君。
  46. 東祥三

    ○東(祥)委員 新進党の東祥三でございます。おはようございます。  海洋法条約の審査に入ります前に、これは質問事項として投げかけていないことでございますが、昨日来から各種報道機関におきまして、朝鮮半島で何か起こっているのではないのか、朝鮮民主主義人民共和国からミグ19の戦闘機に乗った空軍大尉が韓国に亡命してきたことに関して、報道機関で報道されている以上の情報をお持ちでしょうか、総理。そしてまた、現在どのような状況になっているのか、その点について把握されている情報がありましたら、開陳願いたいと思います。
  47. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 現時点におきましては、大体報道をされております以上の細かいものはございません。と申しますのは、昨日から、亡命という認定のもとに御当人に対し事情聴取が継続をいたしております。そして、その事情聴取がある程度の時間を要するということでありまして、その内容等、途中の部分につきましての連絡はございません。また、軍事的な意味での半島における緊張感がこれによって高まったという情報もございません。  ただ、むしろその意味では、昨日北朝鮮側の艦艇による越境り問題がございました。そして、そういう全体を私どもとしては極めて注視はいたしております。しかし、御指摘部分につきまして、現在の時点におきましては、報道されている以上の詳報はないというのが事実であります。
  48. 東祥三

    ○東(祥)委員 それでは、海洋法条約の問題に移らせていただきます。  海洋法条約批准に際しましては、排他的経済水域設定をし、さらにまた、大陸棚の境界を画定する必要性がある。他方、それと同時に韓国、ロシアとの漁業協定交渉にも入らなければならない。一部、現在入っているわけでございますが、この漁業権の問題に関しては極めて日本国益に伴う問題である。  そういう意味におきまして、今まで総理、そしてまた外務大臣の方からこれらの問題に当たっての方針なるものが答弁として出てきたわけですけれども、どうも不鮮明である。排他的経済水域設定の問題、そしてまた大陸棚の境界線をどのように引くのか。何が不明瞭な点になっているかといえば、その最大の要素は、領土問題をどのように位置づけるか、ここに帰着するのだろうというふうに思います。  当然、日韓、日中というこの二国間関係をとらえた場合、極めて長い歴史的な経緯があり、そしてまた今日における友好関係が確立されているわけでございます。したがって、そのような二国間関係の現状をどのようにまず位置づけるのか。その上で、この両国間にある問題とりわけ韓国との間にある竹島問題という領土問題をどのように位置づければいいのか。  領土問題はまさに主権の一部でございますし、そういう意味においては、安易なる妥協をすることはできないだろうと僕は思います。妥協するためには、それなりの原則が明確になければならない。しかし、さはさりながら、二国間関係に決定的な影響を与えるような状況になっていいものかどうなのか、ここも判断しなければならない重要なポイントなのだろう、このように思います。  そういう意味におきまして、とりわけ竹島問題に関して、日韓関係の今日の状況を踏まえた上で、日韓関係の友好関係を踏まえた上で領土問題というのをどういうふうに位置づけるのか。まずそこから総理、そしてまた補足で外務大臣の御発言があればしていただいて、あとの質問をさせていただきたいと思います。
  49. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 まず、先ほど本委員会におきましての、三月二日に行いました日韓首脳会談におけるこの竹島に関連する部分についての発言は、もう二度とここで繰り返す必要はなかろうと存じます。  そして、その席上でも、私は竹島問題についての日本政府立場は一貫しているということを明確に述べた上で、この国連海洋法条約批准に伴って生じ得るさまざまな問題というものは領有権に係る問題とは切り離して協議していこうということを言い、韓国側もこれに同意をされました。  御承知のように、この会談の当時というものは、日韓関係は竹島の領有権問題をめぐる状況の中で大変厳しい状況になっておりました。しかし、一方で我々は、例えば北朝鮮の核開発の問題に伴いまして今進めておりますKEDOの問題、あるいはそのほかにも協議すべき問題を多数抱えておるわけでありますし、議員も今お話しになりましたように、両国関係を持続的に発展させていくということは、私は両国の政府にとりましても、また両国の国民にとりましても非常に大切なことだと考えております。幸いに韓国側も同様の認識を持たれましたので、この領有権問題と竹島の問題とは切り離してということで合意をすることができました。  しかし、この問題を切り離すということは、これは当然のことながら、一方において竹島問題については今後ともに平和的な解決を図るべく外交的な努力を重ねていくということであります。そして一方では、排他的経済水域の境界画定については、韓国との間で協議をしながら、海洋法条約というものの趣旨を踏まえた双方の受け入れ可能な合意というものを達成するようにお互いが努力をするということでございます。  ですから、先ほども申し上げたことでありますけれども、我々は竹島問題について解決への努力を行わない、ほっておこうというのではありません。この点はどうぞ誤解のないようにお願いを申し上げたいと思うのであります。  しかし、今韓国と日本というものを考えましたとき、一つはまず、例に引きましたようにKEDOの問題がございます。また、先般クリントン大統領と金泳三大統領から呼びかけの行われました、何らの前提なしに北朝鮮及び中国を加えた四カ国会談というものが提案をされ、これに対して北朝鮮側の回答を米韓両国は待っておられるという状況にあると思います。  私は、この声明が出されました時点で、日本政府としてはこの方向を非常に強く支持したい、そして、その中でその四カ国の隔意ない話し合いの中から朝鮮半島における永続的な和平というものが芽生えることを強く期待するし、その中において我々が果たすべき役割があればこれにいつでも応ずる用意はありますということを表明し、この状況を見据えているというのが今の状況であります。  この四者会談を進めていくという一点をとりましても、我々は緊密な連係プレーを必要とする関係にあるわけでありまして、竹島の領有権問題をめぐって両国の国論が感情的になることを私は本当に好んでおりません。
  50. 東祥三

    ○東(祥)委員 再三再四総理が御答弁してくださっているそのことの意味を私なりに理解させていただければ、竹島の領有権問題は排他的経済水域の画定あるいはまた大陸棚の境界線を設定するに当たっての問題と切り離して考える、そういう ふうに理解してよろしいですか。
  51. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 仮にこの問題を竹島の帰属を決定することから始めようとした場合に、どれだけの時間を将来に対して必要とするでしょう。  現実に、第二次世界大戦後五十一年既に時間が経過をいたしました。そして、今日に至りましても、この帰属につきましては両国の主張は対立したままであります。その対立した主張から境界画定作業にかかる、あるいは漁業交渉にかかるとするならば、私はこれは本当にいつまで時間がかかるものか見当がつきません。しかも、その間に、私は感情的な対立も非常に険しいものになるだろうと思います。それは私はとるべき手法ではないと思っておりますから、議員が御理解いただきましたような考え方で私自身も恐らく違いはないのだと思います。
  52. 東祥三

    ○東(祥)委員 そうしますと、どこまで詰められるかどうかわからないのですけれども排他的経済水域の画定、さらにまた大陸棚の境界を画定するに当たって、この竹島の領有権問題というのを数学でいえば外生変数扱いすることができる。内生変数だと、絡まってきちゃうわけですね。もし外生変数だとすると、現在竹島領有権問題というのは存在するのですけれども、存在しないととらえた上でこの排他的経済水域の問題、大陸棚の境界を設定する、こういうアプローチになってくるのじゃないでしょうか。どうでしょうか。余り詰めちゃいけないのでしょうか。
  53. 池田行彦

    池田国務大臣 私も外生変数、内生変数、余りその辺は詳しくないのであれでございますが、先ほど来総理が御答弁なさいましたように、竹島の領有権の問題と排他的経済水域の問題を切り離して交渉しようということで、話し合うということで日韓間で合意があるわけでございます。  したがいまして、この切り離しというのは、排他的経済水域の結論がどうなるにしても、そのことが竹島をめぐるそれぞれの立場に影響するものではない、そういう合意である。こういうふうにお考えいただければいいと思います。
  54. 東祥三

    ○東(祥)委員 内生変数扱いしますとどういうことになるかというと、日本は竹島を基線にしてウルルン島との間に中間線を引くということになります。さらにまた、韓国側から見れば、竹島の領有権を内生変数としてとらえれば、竹島とそして隠岐との間の中間線を引くということです。外生変数としてとらえれば、竹島の領有権、この問題はおいておくわけですから、あるのですけれどもない扱いにするわけです。そうすると、隠岐とウルルンとの間に中間線を引く、こういうことになるわけです。  ということは、総理並びに外務大臣が言われているのは前者の二つの方法ではなくて、最後の線だというふうに理解してよろしいですか。
  55. 池田行彦

    池田国務大臣 今の委員の御指摘は、領有権の方を変数としてお考えになるわけですから、排他的経済水域の決定の方が領有権の方の言ってみれば関数になっている、変数と関数になっている。そういうお考えでございますが、私が先ほど御答弁したのは、それを逆転して御答弁したつもりでございました。  逆に、排他的経済水域についての合意あるいは決定がどういう形になったとしても、そのことが領有権についてのそれぞれの立場を害する、あるいはそれに影響するものではない、そういうふうに申し上げた、関数と変数の関係を逆転してお答えしたつもりでございます。
  56. 東祥三

    ○東(祥)委員 それでは一つ一つ聞いてまいります。  韓国との間で、排他的経済水域設定に当たって我が国は竹島を基線とするのですか、どうなのですか。
  57. 池田行彦

    池田国務大臣 先ほど他の委員の御質問にもお答え申し上げましたけれども、この問題につきましては早期に協議を開始しましようという合意が四月三十日の外相会談で行われまして、今文字どおり協議開始に向かっての作業を進めているところでございます。  したがいまして、協議が始まった段階で一体どういうふうなことになるのか、あるいは我が国としてどういう立場を主張するかということは、恐縮なんでございますが、現段階ということ、またこの協議が当然のことながら相手がございまして、相手もまた非常に難しいいろいろな事情を勘案しなくてはいけないという立場にある。我々とそういう面では同じような事情を抱えているわけでございますので、現段階でどういうふうに協議に対応するかという具体的な点については、ちょっと答弁を差し控えることをお許しいただきたいと存じます。
  58. 東祥三

    ○東(祥)委員 そうであるとすると、苦しいお立場にあるというのは僕はよくわかります、外交交渉ですから。手のうちをさらけ出すことはできません。  ただ、総理が言われる領有権問題を切り離すという意味は、そういうふうに一つはとれるということと、つまり外生変数扱いして理解することができるということと、そしてもう一つは、領有権問題は両国間にあるのだけれども、領有権の問題のことを議論したとしても、つまり排他的経済水域を議論するに当たって領有権の問題を切り離すか切り離さないか、これしかないわけですから。  切り離して考えられるとするならば、竹島問題というのは存在するのだけれども存在しないとしてとらえるか。存在するとするならば、この竹島の領有権問題を前提にして議論したとしても、今二国間にわだかまる一つの大きな問題として二国間には影響を与えない問題ですよ、そういうところまで合意されているかと、二つしかないわけです。だから、総理の答弁を聞いていると切り離す切り離すということをおっしゃっていますし、また外務大臣の御答弁を聞いていても切り離すと言っている。  ただ、僕は、詰めていくとそれは外交交渉の問題ですから、この問題は差し控えさせてくださいということを言っているとすると、結局竹島とウルルンとの間の中間線を引くということも前提にあって議論されている。また、議論される前提にこのことを持っていないとするならば、今この問題を先に出してしまうと、交渉事になってしまうのでそれは言えない。そうするとわからないわけですよ、基本方針はあるというふうに言っていたとしても。どこに原則があって、何を交渉しようとして、どういう結果を得ようとするのかということがわからなくなってしまう。それを私は申し上げているのです。  したがって、外生変数なら外生変数で、領有権がどちらに帰属するかということを今ここで争っているならば、当然二国間の全体的な関係に影響を与えてくる。それのみならず、排他的経済水域の境界画定にも影響を与える。さらにまた、大陸棚の魔界設定にも影響を与えてしまう。したがって、今のあるがままを一つ前提として、まさに外生変数として直接かかわり合いないものとして考えるとするならば、おのずと答えというのは出てくるわけですね。それを基本方針にして考えているということを言ってくださるならば、頭の悪い私でもクリアカットに整理することができるということです。
  59. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 総理が既に繰り返し御答弁されております趣旨、すなわち切り離しということは、領土問題については領土問題の文脈においてこれまでのように粘り強く対応を続けていくということであり、それから経済水域の境界画定の問題につきましては海洋法条約、これに従いまして日韓双方が満足のいく解決を見出そう、そのための交渉を続けよう、こういうことであろうと思います。  そして、海洋法条約の文脈と申しますものは、境界画定は衡平な解決、エクイタブルな解決を達成するために国際法に基づいて合意を行うということでございますから、この部分についてどういうアイデア、具体的な考え方というものがあり得るのかということになりますと、これはその交渉の中身に今から入るということに加えまして、やはりいろいろな考え方があろうかということだろうと思います。外生変数でございますか、内生変 数でございますか、今委員がおっしゃられたような仕切りで一刀両断にできるということでは必ずしもないと思います。
  60. 東祥三

    ○東(祥)委員 外交交渉というのはそんなに簡単なものではありませんよ、そういうふうに教えてくれているのだろうと思います。  ただ、問題は、煙に巻かれたということなのだろうと思いますが、当然、排他的経済水域設定に当たって竹島を基線として交渉に臨む、こういう要素もある。さらにまた、韓国側も竹島を基線として中間線を引いてくる。だから、これに対してちゃんと対処する準備はできている。さらにまた、先ほど局長が言われたとおり一刀両断でいかないというわけですから、いろいろなバリエーションがある。そして、それを考慮した上で、日本国益にとって、国益がそがれないように、そういうふうにちゃんとして臨む、そういう青写真を持っているということですか、外務大臣
  61. 池田行彦

    池田国務大臣 これからの交渉事でございますからなんでございますけれども、合意を得る道といいましょうか、また合意される答えというのはいろいろなケースがあるのだと思います。そしてまた、それを理論づける、あるいはそれを説明する仕方にもいろいろなことがあろうと思います。そういった中には、当然委員指摘のようなこともあり得るのだと思います。  ただ、現在の段階で、具体的にどういった理論あるいは立論の上に立って対応するかということはお許しいただきたいと申し上げているわけでございますが、我が国といたしましては当然、委員指摘のように、我が国としての利益というものを大切にしてあらゆる交渉に臨んでいくということは論をまたないところでございます。ただ、そういった交渉を踏まえまして韓国との間に合意に達しました暁には、そのことが、例えば排他的経済水域に関する合意というものが竹島をめぐる両国のそれぞれの立場に影響を与えるものではない、こういうことも合意されているわけでございます。
  62. 東祥三

    ○東(祥)委員 総理、大統領とお会いしたときに、交渉ですから、当然交渉過程がすべて密室の中で行われるということは今のこの世の中であり得ないですね。交渉過程の中で当然その情報というのは漏れてきてしまいますね。それで、大統領との話の中で当然、この海洋法条約批准に当たってのもろもろの、排他的経済水域の問題あるいは大陸棚の問題、こういう問題に関してある一定の形を整えなくてはいけない、それを前提として僕は会談されているのだろうというふうに思います。そのときに、どうしても領有権の問題というのが余りにも先鋭化してしまうと、その上にある、下にあるのかよくわかりませんが、両国の二国間関係にひょっとして何らかの傷を残してしまうかもわからない、大統領、何とかしてそれがないようにしたいですね、多分そういう趣旨の会談が僕は行われたのだろうと思うのです。  したがって、この排他的経済水域の境界を画定する場合、大陸棚の境界を画定する場合、当然これを避けて通ることはできないわけですから、だからどんなことがあったとしても一切二国間関係には影響ないように、こういう強い信頼関係に結ばれた会談だったのかどうなのか。そうであるとするならば、多分私がやっている質問というのはある意味意味のない質問になってくるのかな、こういうふうに思うのですが、どうなんでしょうか。
  63. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 必要ならばそのときのやりとりをもう一度読み上げても結構でありますけれども、大統領と、先ほど委員が聞いておられましたような、この竹島に関連する問題について、漁業協定及び排他的経済水域設定についての問答をいたしました。  そのときの客観的な情勢は、むしろ既に竹島の領有権の問題をめぐって韓国側の世論が非常に高ぶっている状況の中で、韓国側としては日韓首脳会談を行うこと自体に疑問符を呈せられるようなマスコミの報道もある時期でありました。また日本のマスコミの中でも、果たして日韓首脳会談が行えるのかどうかに対して疑問符を呈しておられる状況でありました。  その中で、冷静な話し合いのできる状況をつくり出すために私は努力はいたしたつもりであります。そして一応それなりに円満な関係はつくり上げたと思っておりますし、事実その後における、例えばKEDOの問題等々に関連し行われております日韓あるいは日米韓それぞれの話し合いというものは円滑に動いております。また、四カ国会談というものに対する米韓両国の大統領の共同会見に対する日本側のいち早かった支持声明についても非常に好感を持って受け入れられております。  しかし私は、それで完全に日韓関係が一〇〇%の信頼関係に立っている、例えば竹島問題をオープンに議論をして何ら両国国民の間に感情的な高まりが出てこないと言い切れるほどの自信を残念ながら持ってはおりません。むしろ両国の政府関係者は、こうした双方の国民感情というものに常に配慮をしつつ、同時にそれぞれの問題における相手側の立場にも理解を持ちながら自国の利益を追求していくような話し合いの努力が必要、私はそう考えております。
  64. 東祥三

    ○東(祥)委員 ここに、島根県が昭和四十年に出しております、田村清三郎さんの著作になる「島根県竹島の新研究」というのがあります。昭和四十年に出て、そしてこれは復刻版として今すごくベストセラーになっているそうです。ここにはまさに私が知らなかったいわゆる竹島問題の経過、そしてまた現在、韓国がどのようなことを主張されているのか、それに対してどのような根拠のある批判ができるのか、十分なる研究がなされております。そういう意味で、ただこれは紹介させていただきたいなと。東京だと、なかなか竹島問題、私は率直に申し上げますが、今回の海洋法条約の問題が出てこなければ、ある意味で全く頭の片隅にあった問題で、今回の条約を通して改めて、こういう問題が存在して、なかなかその解決は難しいな、このように思わざるを得ない、そういう状況になっている。  排他的経済水域の問題あるいはまた大陸棚の境界の画定とは離して、今、竹島問題について若干質問させていただきたいと思いますが、もう既に前委員会においても答弁がございましたが、もう一度、韓国による竹島の不法占拠状態というのですか、普通、実効支配、ところが政府は実効支配じゃないというふうに言っているわけですけれども、その点について、国際法上の実効支配とそして韓国の現実の支配との間でどのようなまず差があるのか、この点について教えていただければと思います。
  65. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 竹島についての私ども立場は、さきに答弁していただいたように、事実上の支配というものが韓国によりそこに及ぼされている、しかしこれは必ずしも実効的支配を意味しないということであろうと思います。  一般国際法で申しますと、実効的支配というものの要件といたしまして、例えば平穏、継続的に国家がこれを占有しているということが挙げられていると思います。この平穏ということの中に、他の関係国と申しますか、そういう関係者から反対の意思表示、抗議、こういうものが行われていないということが含まれております。竹島については、日本の方から累次にわたりあらゆる適当な機会を通じて我が方の一貫した主張というのを伝達しているわけでありますので、この平穏さという要件を欠いているのではないか、そういう観点から、これは事実上の占有、事実上の支配ということが韓国により続けられているけれども、そのことは必ずしも実効的支配というものがそこに確立されていることではないというのを申し上げておる次第でございます。
  66. 東祥三

    ○東(祥)委員 約四十年強にわたって今の現状がずっと続いてしまっている。ある方は、物騒なことを言われる人もおります。つまり、竹島は歴史的研究を踏まえた上でも日本の固有の領土なんだから、その領土が他の国によって支配されている以上、それを実力をもってしても奪還すべきじゃないのか。僕はこういう声というのはやはり余り勢いづかせてはいけないのだろうというふうに思うのですね。日本国憲法があり、さらにまた急迫不正、不正であることは間違いない、しかし急迫ではないわけですし、さらにまた、徹底的に実力行使以外の他の手段がちゃんと使われているのかどうなのか、ここに問題を収れんさせていかなければいけない、集中させていかなければいけないのだろうと僕は思うのですが、この四十年間強にわたる日本政府対応というのはどうもはっきり見えてこない。司法裁判所に訴えようとしたけれども韓国側はそれに乗ってこなかった、したがって、訴訟の対象にもなっていないという現実がある、そういう状況の中で、総理、総理はお生まれになっていたと思うのですが、総理のせいではありませんけれども、過去の、一九五〇年代前半のそのことから端を発している問題です。  そうしますと、この問題を解決するに当たってどのようなプログラムが考えられるのか、どのようなことをしていかなければならないのか。ただ単に文言として平和的に解決するということではなくて、平和的解決をなし遂げるために具体的に日本政府として何をやっていこうとするのか、この点についてぜひ御答弁願いたいと思います。
  67. 池田行彦

    池田国務大臣 我が国の竹島の領有権に関する立場は、委員承知のとおり一貫したものでございますけれども、そういった我が国立場というものを実現するためにどういうふうな手段、方法をもって対処していくかということにつきましては、あくまで平和的に解決を目指していく、こういうことで一貫してきておるわけでございます。  そして、これも委員指摘でございましたように、一九五〇年代の前半、たしか五四年、昭和二十九年だったと思いますけれども我が国としては、国際司法裁判所でこの問題の解決を図ることにしたらいかがだろう、こういうことを考えたことがございます。しかし、そのときは韓国の合意を得るに至りませんでした。御承知のとおり、国際司法裁判所は両当事者がその場において問題、紛争の解決を図るという合意が成立した上で初めて動き出すものでございますので、その仕組みがワークしなかったわけでございます。  その後も我が国としては何とか平和的な解決の方途はないかとその道を模索しているわけでございますけれども、現時点においては、まだ具体的にその手段、方法が見えてくるというには至っていないというのが現状でございます。今後とも粘り強くそういった方針で対応してまいりたいと考えております。  しかし、先ほど政府委員から答弁いたしましたように、現在の我が国対応、つまり我が国立場機会をとらえて鮮明に申し入れている、こういうことでございますので、竹島のいわゆる国際法上の実効的支配が確実なものではないし、ましてやこの領有権が現在の韓国の事実上の支配を通じて我が国立場を害するような形で確定することはあり得ないということは申し上げておきたいと存じます。
  68. 東祥三

    ○東(祥)委員 要するに、今後取り組んでいく方針もまだわからない、お手上げ状況であるということですか。
  69. 池田行彦

    池田国務大臣 いえ、あくまで平和的な手段、方法で解決を図りたい、こういう方針は確定しておるわけでございます。それを実現する具体的な手段、方途はまだ今の段階では見出すに至っていない。しかしながら、この問題は、やはり日韓関係全般の友好な親善関係をずっと増進していくということを通じまして何らかの道を見出すことができないものかと考えている次第でございます。
  70. 東祥三

    ○東(祥)委員 解決するということが目的であって、その解決するための手段として平和的に解決したいと決意だけ外務大臣はお述べになられていて、解決するための具体的な手段に関しては、これはない、そういうふうに僕には聞こえます。しかし、それほど難しい問題であるということならよくわかります。  しかし、では、例えば最近におきます、接岸の施設を充実させている、こういう情報も入ってきております。では、それに対して日本政府として何をやっているのか。アジア局長が在日の韓国の公使あるいはスタッフの方々を呼んで、遺憾ではないか、これはだれでもできることです。そういうこと以外に具体的に何をやられているのか。国際司法裁判所で韓国側が一緒に乗ってこない、したがって、だめになりました。では、そのほかに、第三者を経由して何か方法がないのかどうなのか。何をおやりになっているのですかということを私は具体的に聞いているのであって、今まで何もやってないとするならば、どういう方法があるのですか、それは時間が解決する問題なんですか、二十一世紀なんですか、二十二世紀なんですか、そういうことを僕はお尋ねさせていただいているのです。  非常に難しい問題であるということをわかった上で、みんなが心配していることであり、みんながじくじたる思いで聞いている問題だ、このように私はとらえます。.
  71. 池田行彦

    池田国務大臣 委員指摘になりました中で、例えば接岸施設の工事等に対して外交ルートを通じての申し入れ、こういったもので解決の方途は見出せない、それはあるいは御指摘のとおりかもしれません。これは先ほど申しましたような、いわゆる実効的支配が確立するのを阻止する、そういう効果にとどまると言われればそのとおりかもしれません。しかし、そのことも大切な日本としての対処であろうと考えております。  さて、領有権の問題そのものを解決するために具体的な手段が見えてこないじゃないか、それはそのとおりでございますけれども、今委員が御指摘になりましたような第三者の仲介によるいろいろな話し合い、あるいは仲介なくして双方で話し合いをしましようという合意に基づく話し合い、そうしてまた、国際司法裁判所を通ずるいろいろなこの問題の処理、可能性としての道は、手段はいろいろ考え得るわけでございますけれども、現段階において、そのいずれの道も具体的に進められるような状況にはまだ立ち至っていないということは残念ながら事実でございます。  そういったことで、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、やはり韓国と我が国との間の関係を全般的にさらに増進させ、友好親善の関係をしっかりしていく、そういった中で何らかの具体的な道をお互いの合意の上に立って進めていくことはできないか、そういうことを模索していくということでございまして、残念ながら、現段階で、それが一体いつで、またどのような道になり得るかということは明確に見通すには至っていないところでございます。しかし、あくまで平和的にやってまいりたいと思います。
  72. 東祥三

    ○東(祥)委員 やはりまだ日本と韓国との間においては本当に何でもざっくばらんに話し合えるようなそういう信頼関係が樹立されていないということを一方において言っているのかな、僕はこのような印象も受けます。もし本当に総理が目指されている二国間関係の充実した、また永続的な関係を結んでいく基盤ができているとするならば、僕は、何らかの解決策というのは見出せるのじゃないのか。  例えば竹島の領有の問題に関しても、韓国側でもいろいろな研究が進んでいると聞いています。日本でも研究が進んでいる。しかし、それがお互い言いっ放しで、どうにもかけ橋がない。そのかけ橋をつくってあげるというのだって、僕は、当然政府はできる問題だろう。しかし、そういうことも何もしないで、ただ言葉で、決意だけで平和的に解決しますと言うのは、それは問題の先送りじゃないのか。これだけ情報通信手段が発展してきている。韓国で起こっていることがすぐ日本に伝わる、日本に起こっていることもすぐ韓国に伝わる。日本は、私たちも含めて、何とかして韓国との間にもっともっと緊密な友好関係を築きたい、そういうふうに思っている。しかし、その意思がなかなか届かないとするならば、そういうふうに思っている人でも、本当にこの関係でいいのかな、こういうふうに思ってくることは、まさに二十一世紀における二国間関係において危ない状 況になってくるという可能性もあるわけです。だから、そういうことを踏まえるならば、ただ単に今までの問題は今までの問題として、これから一歩進めていくためには、やはり政治家がイニシアチブをとって一歩踏み込んでいただいてやっていただかないと、何が何だかわからなくなってしまう、それも私は強く感じる次第です。  済みません、僕は四十五問用意していたのですけれども、六問で終わってしまいました。総理、最後に決意と、そしてまたビジョンをお示しになって、さらにまた排他的経済水域の問題、妥協案を本来ならば国民の前に示すべき問題だろうというふうに僕は思います。それによって国民のバックアップを受けて、支持を受けてまた交渉に臨んでいける、そういう使命が国民の代表である政治家に本来あるのだろうと僕は思いますが、それもなかなか示せない状況であるということは外交交渉の難しさで、それもよくわかります。そうであるとするならば、結局、海洋法条約批准された後、後の責任は行政府に行ってしまうわけですから、その結果に対してはちゃんと責任をとっていただきたい、こういうことを私は申し上げておきたいと思います。どうか、最後に総理、一言、一言でも構いませんので言っていただいて、お願いします。
  73. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 ちょうど初めて国会に当選いたしましてしばらくたちました昭和四十年、私は、党の指示によりまして、学生たちを数名連れまして韓国の大学所在地を全部回りました。そしてそのとき、我々が知らなかった韓国を、といいますか朝鮮半島を、我が国が植民地支配として合併いたしておりました当時のさまざまな状況というものを如実に知らされました。しかし、学校教育において私はそういうことを学んだ記憶は全くありませんでした。今日もそうしたものは必ずしも日本の教育の中で教えられていると私は思っておりません。そして、そのとき非常なショックを受けましたし、一緒に参りました学生たちも大変なショックでありました。ちょうど日韓条約のイニシアルの終わった直後でありましたが、韓国の全土には韓日屈辱条約粉砕というプラカードが立ち並び、場所によっては私たちの一行の移動が警備を必要とするような状況でありました。  それから随分の時間がたちましたが、本質的に、私は、その当時から必ずしも両国の関係が本当に根づいたものになってきていないような気がしてなりません。  一時期、私はボーイスカウトの活動を通じて、若い人々の交流から何とかこうした方向に行かないかという努力をした時期もございます。そして、そういう交流は今それなりに続いてはおりますものの、細々とという感じに次第になってきているように思えてなりません。  同時に、先ほど議員御自身が触れられましたように、この海洋法条約の論議がなかったら竹島の問題というのは本当に遠い問題だったというお話がありました。恐らくそうでありましょう。しかし、あの水域漁業権を持つ、これは鳥取、島根あるいは山口、日本海側の各地、中国五県の関係者、これにとっては決して遠い問題ではないわけであります。そして、そういうことをこの機会に国民が思い起こしていただいただけでも一つの前進があった、私はそう思いたいぐらいの気持ちであります。  そして同時に、私は、この問題に対して冷静な対応というものを、我が国のマスコミに余り感謝することはありませんけれども日本のマスコミがこの問題に対して冷静な対応をしていること、これに対しては本当に多としております。韓国側で非常にボルテージの上がりましたとき、同じレベルで日本側のマスコミが反応いたしましたなら、それ自体が非常に厄介な事態を生ずると私は思います。そして、この問題について日本の主張をきちんと続けながらも冷静な報道を続けていることに、私はこれは感謝をしたいと思います。  そして、どうすればもっと両国の国民の間の相互理解が進むのか、そしてそのベースにある問題を皆が知るのか、一度原点に返ってここから考えなければいけないのではないだろうか、私は、実はこのところそうした感じを持つようになりました。そんな思いを持ちながら、私はこれからも努力をしてまいりたいと思います。  また、先ほど、外交交渉の難しさを十分御理解の上で、ある段階においては当然政府としてこれを明らかにする責任があり、また行政府としての責任の持ち方をどうするかという御指摘がございました。  私は、最終的な境界画定のための合意が得られました場合には、当然国会に提出し、国会の御論議をいただくというのが筋だと思います。  ただ、そのプロセスにおきましては、交渉過程の一部始終を公表することは決して我々にとって有利ではありませんので、その点についてはどうぞ御理解をいただきたい。そして、党派を超え、国会として政府の交渉努力に対しての支援を心からお願いを申し上げます。
  74. 東祥三

    ○東(祥)委員 終わります。ありがとうございました。     〔関谷委員長退席、辻委員長着席〕
  75. 辻一彦

    ○辻委員長 高木義明君。
  76. 高木義明

    高木(義)委員 新進党の高木義明でございます。持ち時間の範囲で総理並びに関係大臣にお尋ねをしてまいりたいと思います。  まず、お尋ねの前に、今回の国連海洋法条約批准並びに国内関係法律の整備につきましては、我が国において、まさに海洋国家の大きなシンボルとして、ことし七月二十日は海の日、記念日として国民の祝日に制定をされた。このことからいっても、我が国は海に面し、そしてその恩恵をこうむりながら、地理的にも歴史的にも海とともに発展をしてきたその経緯を考えますと、私は、本年このことがこの国会で成立をして、国際社会の中で海洋国の、むしろ海洋先進国として大きな一歩を踏み出す貴重な時期だと考えておるわけであります。  私は、特にこの時間帯、いわゆる海洋法の趣旨に基づいた実効性を確保するために、法秩序の維持、海上保安体制の整備についてお伺いするわけでありますけれども、どうしてもこの際お聞きをしておきたい、そう思っておることがございます。  実は、先ほどからも議論があっておりますが、私どもは、この海洋法条約審議を通じて、政府の答弁によって明らかにされておるのは、この海洋法条約我が国にとって国益に沿うものである、こういうことが言われておるわけであります。私は、国益とは一体何ぞやということを、この審議に当たって、政府の最高責任者にどうしてもお聞きをしておきたいわけであります。  国益というのは、言うまでもなく、国の政治的行動の基盤でありますし、外交にとっては最も重要な政策目標になるはずであります。国の安全、平和の問題、経済的利益の追求の問題、あるいは領土領海の保全などであります。そういう意味で、私は、この国際法条約批准することが我が国国益につながるのだという政府見解に基づいて、改めて総理、国益とは一体何か、御所見を賜っておきたいと思います。
  77. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 先日、外務委員会にお招きをいただきましたとき、同様の御質問がございました。そしてそのとき、私はこういう言い回しを使いました。「その周囲をすべて海に囲まれております日本、この国にとりましては、まさに長い間海というものが生命線という言葉を使われるぐらいの重みを持った存在でありました。今日、航空路が非常に発展してくる中で、いつの間にか我々は必ずしもその海の重要性というものを意識しなくなっております。しかし、資源の乏しい我が国資源を確保する輸送路は、ほとんど海洋によるものであります。そして、これからも日本海洋国家であり続けるでありましょうし、その海洋の秩序が守られ、平和であることが我が国にとって最も望ましいものであることは申し上げるまでもありません。」これが先日外務委員会で私が申し上げたことでありました。  そして、まさにこの中にすべてを私は言い尽くしておるつもりでありますけれども、周囲すべてが海で囲まれております日本にとりましては、ある意味では海は交通路であります。そして、すべての資材、我が国が必要とする資材、また輸出していく商品、その大半は海を渡るものであります。そして、いつの間にか航空路の陰に隠れておりますけれども、実は、海が果たす輸送という面における役割の大きさ、これは非常に大きなものがありますし、これが安定的に活用できるということは、日本にとって極めて大きな国益でありましょう。  同時に、資源供給の源としての海がございます。我が国におけるたんぱく資源の非常に多くの部分を水産加工物が占めておりますことは既に御承知のとおりでありまして、これは、他の国々に比べて有意に差のあるところであります。そして今後も、私は、日本人の好むたんぱく供給源としての海というものは存在し続けると思います。  さらに、海底に眠る、よく言われますマンガン塊、あるいはその他のものが言われますけれども、そうした海底における現在活用されていない資源活用という意味でも、我々は、有限の資源をさらに活用していくという将来に向けての夢をここにかけることができます。あるいは潮力発電でありますとか、そうしたものまで広げていけば、私は、もっと海というものは我々に大きなものを与えてくれておると思いますし、さらに、地球環境に与える海というものの大きさまで言うならば、これはもう国益という範囲を超えまして、全地球的な役割ということかもしれません。  しかし、いずれにいたしましても、大陸国ではない日本、まさに海洋国家であります日本にとりまして、海というものはある意味では無限の可能性を持ったものであります。そして、これが安定的に平和を保っていくことと、そして活用されていきますこと、これはまさに国益にかなうという以外の何物でもない、私はそう考えてまいりました。そして、この海洋法条約批准に伴い、そうした恩恵を将来ともに享受し得る環境をつくり出したい、そのように願っております。
  78. 高木義明

    高木(義)委員 まさに国益は私どもの最も大切なものであります。同時に、国際社会の連携と協調の中で、いかにして国益を守っていくかというのが私ども政治家の大きな使命であり、責任であると思っております。  そういう意味で、もう一度海洋法条約を改めてここで引用させていただきますと、「この条約を通じ、すべて.の国の主権に妥当な考慮を払いつつ、国際交通を促進し、かつ、海洋の平和的利用、海洋資源の衡平かつ効果的な利用、海洋生物資源保存並びに海洋環境の研究、保護及び保全を促進するような海洋の法的秩序を確立することが望ましい」という認識に立ってという部分があります。私は、まさにこれは国連憲章が規定する国際社会の平和友好、協調の精神を海洋の中で、地球は一つ、そういう中でお互いに権利と義務を果たしつつ努力をしていく、こういうことだろうと思っております。  そこで、先ほども議論がありますけれども、私は、国益の最大のテーマは何といっても領土領海の問題ではないかと思っております。領土を画定することが何よりも先決である。したがって、先ほどから竹島問題も出ておりました。これは水産業の重要な課題もありますので、いわゆる新聞論調やマスコミでは棚上げと書かれておりますが、今、総理初め外務大臣は、棚上げではない、切り離すんだ、こういう見解でございましたけれども、私は、大変この問題国の意思をもう少し明らかにして、そして強く行動をとるべきではないか、このように思っておるものであります。領土あっての領海でありますし、接続水域であります、あるいは排他的経済水域であります。領土がもめておってはいわゆる海洋保全の行動はできない、私はそう思うわけであります。したがって、改めて私は竹島問題、そして尖閣諸島の問題、そして長く国民的課題となっておる北方領土の問題、この領土問題について、どうこれから進展させていこうとするのか、この際ひとつ決意を聞いておきたい。
  79. 池田行彦

    池田国務大臣 領土の問題が国益の最たるものであるという御主張は、そのとおりであると思います。しかしながら、それが先決かどうか、領土問題をまず解決しなくてはほかの問題に取り組めないかとなりますと、ここはまたいろいろな考え方があるんだと、こう考える次第でございます。しかし、いずれにいたしましても我が国といたしまして、我が国外交の基本課題あるいは中心的な課題としまして、領土をきちんとしていくというのは当然でございます。  そして、今具体的におっしゃいました三つの問題でございますが、竹島の問題につきましては、御審議を通じて繰り返し御答弁申し上げておりますけれども我が国としては、我が国の一貫した立場をこれからも粘り強く実現すべく努力を払ってまいりたいと思いますが、それはあくまでも平和的な解決を目指すという道を進む、こういうことでございます。  そして尖閣諸島の話もございましたが、ここにつきましては、私ども我が国の固有の領土であるということに何らの疑念はない、中国との間に領土問題は存在していない、こう考えている次第でございます。  それから三つ目に御指摘のございました北方領土の問題でございます。この問題につきましては、かねてから日ソ間、現在では日ロ間の未解決の大きな懸案でございます。何とかこの問題を解決いたしまして、ロシアとの間の完全なる関係を結びたい、こう思っている次第でございます。これにつきましては、先般モスクワで原子力安全サミットが行われました際に、総理とエリツィン大統領の間で首脳会談が行われました。その際、一九九三年のいわゆる東京宣言というものを再確認し、それを今後さらに発展させていく、そういうことが確認されたわけでございまして、そしてこの北方領土の問題をめぐる外相間の協議というものを再活性化していこう、こういうことも合意されたわけでございます。具体的には、ロシアにおける大統領選挙が終わりました後に、次官級の作業部会、これをまず行って話し合いを進めていきたい、こう考えている次第でございます。  いずれにいたしましても、私ども今抱えております領土問題につきましても、我が国国益という観点から大切に考え、適切に対応していく所存でございます。
  80. 高木義明

    高木(義)委員 この問題を引き続きするわけにいきませんので……。高度な外交交渉も理解できるわけであります。私は、その中にありましても、我が国の固有の領土という、そういう基本的認識、領有権の堅持を貫いて頑張っていただきたい、この点については強く要請をしておきたいと思います。  そこで、国益一つであります、いわゆる我が国の水産業を安定させていくということも大きな課題であります。  本年五月の十三日に、対馬の舌埼灯台から北東九・九海里の我が国領海内で操業する韓国のまき網漁船に停船を命じたが、同船はこれを無視して逃亡した、警告のために投てき具を使用した、こういう報道がございます。韓国の聯合通信は、これに対して、対馬の北東十一マイル、十二・六六海里と言われますが、航行中の韓国漁船が日本の巡視船と見られる船から四、五発の銃撃を受け、集魚灯五個程度が破損したと報道しておるのです。  一見平和に見えるこういう海の中で、数限りないところで極めて厳しい状況があることを認識されるわけであります。この事実と、それからその対応について、これは海上保安庁ですか、ちょっとお示しいただきたい。
  81. 秦野裕

    ○秦野政府委員 事実関係について御説明いたします。  御指摘のとおり、今月の十三日の午後十一時二十五分でございますが、私どもの巡視艇の「あきぐも」というものが、対馬の北東九・九海里の我が国領海内におきまして漁業活動中と思われます韓国のまき網漁船を視認いたしました。そこで同船に立入調査実施すべく停船命令を発したわけでありますが、同船はこれを無視しまして、体当たりをするかのような、いわゆるジグザグ航行でございます、これを繰り返して逃走いたしましたために、警告投てき具を使用したものでございます。警告投てき具と申しますのは、ソフトボール程度の大きさでございまして、これが色なりあるいは音、光を発するものでございます。  その後、ただいま先生お話しのように、韓国のマスコミの方から、日本の巡視艇が韓国漁船に対して威嚇射撃を行ったというような報道がございました。事実関係は今申し上げたとおりでございまして、いわゆる威嚇射撃を行ったという事実は全くございません。そこで、外務省に対しまして事実関係をお知らせすると同時に、報道機関に対しましても事実関係の広報を行いました。その結果、韓国のマスコミにおきましても、日本の巡視船は韓国漁船に銃撃を加えたのではなく、警告投てき具を発射したという旨の記事が載っておるところでございます。
  82. 高木義明

    高木(義)委員 水産庁長官にお尋ねいたしますが、水産の各業界においても、ある意味では利害が異なる場合があるのです。  しかし、沿岸漁業にとりましては、私ども我が国の今後の沿岸漁業はいわゆる栽培型漁業を中心にしてますます振興を図らなきゃならぬという一つの基本方針もありますが、この沿岸漁業にとりましては、この条約批准によって二百海里の全面設定、全面適用、これはもう長年の悲願であります。なぜなら、いわゆる外国漁船による不法操業、密漁あるいは漁具の被害が後を絶たない状況であります。  例えば、長崎県の五島、壱岐、対馬などの離島の近海では、平成六年度では、被害件数、韓国漁船によるものが三百三十八件、五千六百万円の損害、中国漁船による被害は百三件、二千二百万円、こういう状況が示されております。韓国、中国のまき網、底びき網漁船によってシイラ漬け、タコつぼ漁、はえ縄漁、こういったロープが引きちぎられるという事件が後を絶たない。また、対馬におきましても漁業被害として、イカ釣り船が集魚した魚群を、韓国底びき船が根こそぎそれをとっていく、こういうことで、現地では非常に死活の問題だという悲鳴が、これはもう既に承知のとおりなんです。こういった状況の中にあります。  しかし、これは運輸省が発表しておりますが、これらの監視、取り締まり状況の推移を見ますと、漁業水域における韓国の漁船の検挙、警告、退去の件数は減少しておるんですが、領海内では警告、退去の件数は年々ふえ続けておる。平成七年は百八十八件、前年の二・七倍にもなっている。そういう状況が間々あるわけでありますが、外務省として、これらの事実について厳重な抗議をしておるんですか、いかがですか。
  83. 加藤良三

    加藤(良)政府委員 我が国の周辺水域での韓国漁船の操業実態につきましては、地元の関係者の皆様からも我々も連絡をいただいて、これを承知しておりまして、この問題の重要性を強く認識しております。  それで、これまでも、首脳の間あるいは外務大臣のレベル、それらを初めとする日韓間の協議の際にも、韓国政府に対して、韓国漁船に対する指導、取り締まりの強化をずっと一貫して粘り強く働きかけてきております。また、中国につきましても、近年周辺海域において中国漁船による我が国漁船の操業妨害、漁具の損傷などのトラブルが発生しているために、日中漁業共同委員会などの場において中国側にその改善を申し入れておりまして、中国側も、監視船を派遣し、操業秩序の維持に当たるというような措置を講じているところでございます。  最近では、五月の九日、十日、東京で第一回の日韓漁業実務者協議が、四月三十日の日韓外務大臣会談を受けて行われたわけでございますが、この際にも、韓国側から、取り締まりや違反防止の努力によって韓国漁船の漁業協定自主規制措置違反の件数は減少しているという説明がなされたのに対しまして、日本側からは、西日本水域では違反操業、件数は減少しているけれども、北海道水域においては増加しているということを指摘して、また無許可の小型トロール漁船の操業が増加していて、そのほとんどが船名を隠ぺいするなど悪質なものがあるという点も指摘いたしておりまして、さらには大型機船底びき網漁船の違反操業などへの厳正な対処を要請した、そういう経過もございます。
  84. 高木義明

    高木(義)委員 漁業の被害もさることながら、最近では薬物、銃器の密輸入、あるいはまた密入国、こういう事案もふえておるんです。  大蔵省が発表しておりますが、大麻やけん銃などの密輸入動向によると、コカインの密輸入の急増などで不正薬物の摘発件数が九四年の丁三倍に当たる四百五件に上り、過去最高となっている。押収量は二百六十四キロ、けん銃の密輸入は、押収量は前年をやや下回る八十五丁だったが、摘発件数が十件上回る三十七件だった、こういうことも言われております。  また、過去日本の近海、これは南西諸島でございますが、吐喝劇群島から静岡県の清水港に向かって大量のけん銃が運ばれるという通報があった。これを察知して、警察、税関、海上保安庁三者合同して捜査を行ったが、余りにも広い海原でとうとう捕まえることはできなかった。結果的にはその船は和歌山県に入港しておった、こういう事例もあるわけです。  したがって、いわゆる領海十二海里、接続水域二十四海里、こういう取り締まりの管轄権が当然我が国にあるわけでありますが、もちろん公海における追跡権も今回認められるわけでありますけれども、海上保安庁が今まで以上に持つ任務、これが大きく海洋法批准によって変わってくるのではないか、今までの国としての基本方針を新しく、いわゆる発想の転換をしていくときではないかと思っておるんですが、その点についてどのように認識をされておりますか。
  85. 亀井善之

    ○亀井国務大臣 海洋法条約批准排他的経済水域設定によりまして、先ほど来委員指摘の密航の問題あるいは薬物、けん銃、この取り締まりの業務も大変深刻化しておるわけでもあります。あるいは監視区域がさらにふえるわけでありまして、そういう面では、今約四十六隻の大型巡視船でいろいろ努力をしておるところであります。  したがって、これらに対応するために巡視船艇あるいは航空機の整備、これが必要なわけでありますし、さらにこの整備には、水域が約七分の一くらい拡大をする、こういうことになりますので、当面はそのような保安体制が十分確立できるような内的、人的な整備とあわせて航空機、巡視船艇の整備、この両面の体制の強化が必要なわけでありまして、これら、予算編成に当たって関係省庁とも緊密な連携を得て、その勢力の配備等々に最大限の努力をしてまいりたい、このように考えております。
  86. 高木義明

    高木(義)委員 海洋法の百五条に、「海賊船舶又は海賊航空機の拿捕」という項がありまして、「いずれの国も、公海その他いずれの国の管轄権にも服さない場所において、海賊船舶、海賊航空機又は海賊行為によって奪取され、かつ、海賊の支配下にある船舶又は航空機を拿捕し及び当該船舶又は航空機内の人を逮捕し又は財産を押収することができる。」このようになっておるんですが、これは海上保安庁、今後このとおりになされますか。
  87. 秦野裕

    ○秦野政府委員 現在の体制では、公海上におきましてはいわゆる旗国主義の原則がまだございまして、自国の、日本で申しますれば、日本の船舶に対して私ども海上保安庁が取り締まるということはもちろん可能でございますけれども、ただいま先生お話にございました一般的な海賊行為に対する規定につきましては、まだ現在法制度が整備されておりませんので、今後関係省庁と検討の上対処してまいりたいというふうに考えております。
  88. 高木義明

    高木(義)委員 この問題はやはり大切な問題と思うんですね。まだ今から法整備をしていこうという話ですが、非常に時宜を失していると私は思うんですよ。だから、今私はこの海洋法の、これもタイミングというのがあるんでしょうけれども、もっともっと早い取り組みが必要であったんじゃないか。これまでも委員会で各委員からかなりの議論が出ております。今の海上保安庁の人員体制あるいは装備、これは例えば一万二千人体制なんですが、海上保安大学校、海上保安学校、なかなか海に働く方々が少なくなっていくという社会的な状況、そういう中にあって、一体これをどう確保できるんでしょうか。  時間もありませんからまとめて申し上げますが、装備についても、平成八年度までに代替整備の対象となる艦船が四十隻、平成十三年までに代替整備の対象となる船が百三十五隻となっております。いずれもいわゆる老朽化と言われる耐用年数が過ぎた船の代替建造でこの状況ですから、これに、先ほど私がいろいろな事例をとらえて申し上げましたが、足の速い船、情報収集を的確にする機材、こういうものを装備するには、これは並大抵のことじゃないですね。だから運輸大臣も、委員会でもかなり来年度予算に対する心構えとかあるいは一つの中長期の整備計画、こういうものを言われておりますが、これは運輸省という一つの省の問題でなくて、この際、日本海洋国家としてしっかりした法整備あるいは体制を確立することが私は何よりも大事であろうと思うわけです。  きょうは海上の保安の問題を中心にしましたけれども、そういう意味で、外務大臣領土も大切なことなんです。領土領海を守る、これが国益の大きな要件だろうと私は思っております。  最後になりましたが、総理大臣、海上保安について私が危惧することがないように、改めて、新しい発想で整備をするお気持ちがあるか、海上保安庁には大変関心の深い総理でございますので、その辺の決意なり御所見を賜っておきたいと思います。
  89. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 先日外務委員会で同様の御質問を受けましたときに、ありがとうございますとつい思わず申し上げまして、後であちこちから大分しかられました。  ただ、私は本当に今の御質問を心の中でうれしく拝聴しておりました。そして、この機会に、少しでも多く海上保安庁の業務というものに国民の理解を得ることができれば、かつて運輸大臣を務めた一人としても非常に幸いに思います。  ちょうど運輸大臣になりましたとき、たまりかねまして「海上保安友の会」というものをつくらせていただき、私はその会員の第一号になりました。同時に、非常におくれておりました航空機の装備、ジェット化を進め、あるいはその他高速船艇の整備等、私なりにお手伝いをしてきたつもりであります。しかし、なかなか保安官の業務そのものを国民に見ていただく機会が少ないだけに、必ずしも国民的な関心を今日まで呼んでまいったとは思っておりません。それだけに、私ども政府として、今後、今議員が御指摘になりましたようなこと以外にも、例えば海上環境汚染犯に対する対応といったものも入ってくるわけでありまして、量的にも質的にもこの業務は拡大をするわけでありますから、人的な要請をも含めて、近代的装備を有する船舶の整備、航空機の整備等を含め、執行体制の一層の拡大に私なりに努力をしていきたい、そのように思います。  国会の御支援をこの場で心からお願いを申し上げます。
  90. 高木義明

    高木(義)委員 時間が参りましたので、終わります。     〔辻委員長退席、松前委員長着席〕
  91. 松前仰

    ○松前委員長 野呂昭彦君。
  92. 野呂昭彦

    ○野呂委員 総理以下関係閣僚の皆さんには大変御苦労さまです。また、自民党在籍当時には大変お世話になりましたことを、この席をかりてお礼を申し上げておきます。  海洋法質疑もきょうこの連合審査でおおよそ最後の質疑ということで、しかし海洋法そのものの法案、これは先ほど来いろいろと話がありましたように、国益に関する法案として、ほかの法案と比べても直接国益関係してくるということでも大変大きなものでありますし、また国際的に、地球というものを視野に入れながら、海洋についての、領海やあるいは公海海峡排他的経済水域大陸棚深海底、その他もろもろ、紛争解決まで含めて総括的に取り決めをしていくということで、本当に極めて意義あることだ、こういう認識に立っております。  そういう意味では、我が党としても非常にこの海洋法、これは政府でも積極的な取り組みと同時に、我々国会としてもこの事態を大きくとらえて取り組みを一丸となってやっていかなければならないことだ、こういうふうに思っております。特に、私の立場からは、水産業の立場、そういう立場で、この法案を衆議院を通していく段階の中で政府関係の皆さんに幾つか確認をしてまいりたい、こう思うわけであります。  特に、排他的経済水域設定、あるいは新たなTAC制度の導入、こういった事柄というのは全く水産業を取り囲む状況、新しい段階を迎える。米ではウルグアイ・ラウンド等の問題がありましたけれども、水産業界にとりましてはそれに匹敵する大きな問題であります。漁業経営の問題だとかあるいは流通加工だとかあるいは組合だとか、あるいは地域そのものの振興等までかかわってくる大変大きな変革になるものだ、こういうふうに思うわけであります。  その今回の海洋法の中で特に注目すべきことは、漁業権等非常にこれまでの難しい状況を抱えておる漁業そのものの中で、今回のこの海洋法一連の問題について、TAC制度の導入ということについても水産の関係業者がやはりこの際思い切って取り組んでいかなければならない、そういう認識に立っておる。先ほどいろいろと中国や韓国のいろいろなトラブルといいますか、漁船問題等も含めた海上保安問題の御指摘もございましたけれども、そういったこともあってのことではあるけれども、しかし、この問題に対する非常に大きな意識の切りかえ、こういうものが漁業者の中にも起こってきておる、このことは非常に評価をしたいと思うのであります。  しかしながら、こういったものについては、先ほどから何度も確認はしておることでありますけれども、この二百海里の全面設定あるいは全面適用というものがきちっとなされるということがまず第一の基本でありまして、実は国内的な問題もそこからいわばようやくスタートできるという状況であります。ですから、これが全面設定、全面適用がいささかでも崩れていくということになりますと、実は関係者のスタートとなる土台がぐらぐらしてくる、こういうことになります。したがって、これはやはりまず対外的にこの全面適用、全面設定ということを政府として毅然としてやってもらわなければならない、ただ単に国益というだけではなくて、国内的な整備の中でもそれが基本のスタートとなるのだ、そういう意味から、これは何度も総理にほかの皆さんも決意を伺っておるところでありますけれども、スタートとして総理にぜひこの辺の決意をさらに確認をさせていただきたいと思います。
  93. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 繰り返し申し上げてまいりましたけれども排他的経済水域設定につきまして、今般提出をいたしました排他的経済水域及び大陸棚法案におきまして、一部水域の除外は行っておりません。
  94. 野呂昭彦

    ○野呂委員 それで、実は日韓、日中の漁業協定の交渉というものが非常に注目をされるわけでありますけれども、この辺の交渉の見通しとかそういったものについては、外務大臣、どのような決意でもって当たられておるのか、その辺も含めて外務大臣からもお答えいただきたいと思います。
  95. 池田行彦

    池田国務大臣 韓国並びに中国との間の漁業協定に関しましては、政府としての方針は二月二十日に閣議了解をしたところでございます。そこで了解いたしました基本的な考え方というのは、両国との協議によりまして沿岸国が生物資源の維持に係る適切な措置をとるという今回の海洋法条約の趣旨を十分に踏まえた新たな漁業協定を早期に締結するよう鋭意努めていく、こういうことでございます。  そういった基本方針にのっとりまして現在両国との間のいろいろな協議を進めるべく努力しているところでございまして、韓国との間におきましては、今月の九日と十日に漁業実務者の間の協議を、まず第一回を行ったところでございます。また中国との間では、四月の九日及び十日に漁業等、また海洋法関係につきまして、非公式協議を行ったところでございまして、次回の協議については今外交ルートで調整中、こういうことになっております。  こういう段階でございますが、これからどういうふうな進展をしていくか、この見通しがまたちょっとなんでございますけれども、私どもといたしましては、いずれにいたしましても、先ほど委員指摘になりましたような海洋法条約そしてそのもとでの新しい漁業秩序の形成というものの持つ意味というもりも十分考え、そして先ほど申し上げましたような基本方針にのっとりまして、早期にまた合理的な合意に達するように鋭意努力してまいる所存でございます。
  96. 野呂昭彦

    ○野呂委員 その辺の御努力をこれはもう本当に精力的にやっていただかなければいかぬのですが、事がうまくいけばそれはいいのでありますけれども、国内的にも今回時に整備を進めていかなければならない、しかし、これが順調にいかない、だんだん長引いていくということになりますと、どうしてもその前提がまた崩れてくるということになるわけであります。  そこで、この二国間の協定では、通告をして一年とか三カ月後にその協定を自動的に終了させる、こういうこともできるわけですね。これはいろいろと、我が国だけではない、隣国との友好的な問題ありますけれども、しかし、この問題はやはり国益の基本になるところだけに毅然たる態度が必要だろう、こう思うわけであります。そういう意味では、これはもしも順調に話し合いが進展しないというようなときにはもう終了通告を出すとか、それぐらいの腹構えがないと、またそういう毅然たる態度でいかなければ、やはり二国間の協定の話も順調に進まないのではないか。そういう意味では、そういう腹構えも持っておられるのかどうか。そこもお伺いしておきたいと思います。
  97. 池田行彦

    池田国務大臣 現行の協定委員指摘のような規定があるのは十分承知しておりますし、また関係方面からいろいろ今お述べになりましたような趣旨の、強い決意を持って臨めというお話をちょうだいしております。  私どもといたしましては、そういったことも十分踏まえながら交渉に当たってまいりたいと存ずる次第でございますけれども、しかし、私どもといたしましては、先ほど申しましたように、今非公式の折衝であるとか実務者の交渉に入ったばかりで、これからいよいよ交渉を本格化していこうということでございますので、その交渉が順調にいかない場合にどうするかということを現段階であれこれ考えて申し上げるのは、ちょっと政府としては適切ではないと思うわけでございます。  いずれにいたしましても、私どもは全力をかけまして、早期にしかも円満な解決が得られるように努力をしてまいりたい、こう考える次第でございます。
  98. 野呂昭彦

    ○野呂委員 五月十三日現在で条約の締約国は九十カ国になり、五月十五日には中国が全人代で承認をしたというようなことで、中国も韓国も含めてこういうふうな状況になってきております。でありますだけに、この海洋法の基本的な考え方というのはもう両国ものんでおるのでありますから、そういう意味で、どうぞ御努力をいただいて、それが早期に解決することを心からお願いを申し上げたいと思います。できたら、やはりいつまでにというぐらいの構えをひとつ十分に持ってやっていただきたい、このことをお願いを申し上げておきたいと思います。  それから次に、TACの関係について農林大臣にお聞きをいたしますけれども漁業管理制度というものが、今回のこのTAC制の導入ということで、これまでの漁業法等に基づいて入り口規制でやっておったのが、今回TAC制度を導入ということで、漁獲量、すなわち出口での規制に基本的には変わっていくわけですね。我が国においては、その両構えをしばらくとりながらということでございますけれども、しかしこのこと自体が、要するにこれまでと管理体制が百八十度、出口と入り口で変わってくるわけであります。  そのこと自体が漁業経営等に影響するところ極めて多いわけでありますし、また世界最大の水産物の輸入国というようなことからいたしましても、漁業を取り巻く環境は非常に厳しい状況にあります。そういう意味では、TAC制の運用というものがうまくいくのだろうかどうだろうか、この不安はやはりずっとつきまとうわけでございます。  そういう意味で、TAC制度の運用におきます基本的な姿勢、それからどうしてもこれを円滑に運用していただこうと思いますと、漁業関係者の皆さんの意向を十分に酌んでいただく、反映していただく必要があるわけでございます。そういう点に関してどのように取り組まれるのか、確認をしておきたいと思います。
  99. 大原一三

    ○大原国務大臣 委員指摘のとおり、新しい法秩序のもとでいわゆる資源管理漁業ということに相なるわけでございまして、資源の乱獲その他についてはやはり新しい規制がかぶっていかざるを得ない。現在、いろいろ日韓、日中の間にトラブルもあり、さらにまた密漁等を入れると漁獲量もわからないという面もあるわけでございますから、今後の折衝を通じてお互いの漁獲量もはっきりさせなければならないし、そしてまた、TAC制度における日本資源の実情等も、今まで以上にエネルギーの要る作業が待っている、こう考えております。  幸いに、委員も御指摘がありましたように、いろいろ、地域の漁家にとってはこの二百海里がプラスになったりマイナスになったりする地域もあるようでございますが、おかげさまで日本の漁家、漁民の方々、全面適用、全面設定ということでこの二百海里に非常に期待を寄せていらっしゃいます。そういう意味でも、今御指摘がありましたように、資源管理型の漁業システムが一日も早く確立されて、日本の漁家が長期に安定的な漁業ができる仕組みをつくっていかなければならぬと思っております。  いきなり入っていくわけでございますから、委員指摘のような不安も心配も我々もあります。試行錯誤もあると思いますが、そういった理想に向けて頑張ってまいる所存でございます。
  100. 野呂昭彦

    ○野呂委員 それで、TAC制度のもとで、大臣管理漁業と知事管理漁業、こういった間の不公平が生じないようにしていただくとか、こういった問題も極めて大事だと思います。  それから、例えばTAC制度で漁船の量だとかあるいは漁獲努力量なんて言ったって、これはなかなか今までのようにいかない。それが抑えられるというようなことになってきますと、削減だとかあるいは減船、廃業あるいは減収が起こってくる、こういう事態が参ります。これは、制度そのものを国が国際的な規模の中で変えていこうということに決定をしてきたことでありますから、そこら辺は個人の努力では何ともならないという大激変の状況にあるわけですね。  そうすると、やはりそういった対策、減船だとか廃業、減収が起こってくる、こういったことに対する思いやりといいますか手当てといいますか、こういったものが当然また大事なことになってきます。これらはちゃんと処置をしなければならぬというお考えで取り組んでいただくわけでしょうか。そこも確認をいたしておきたいと思います。
  101. 大原一三

    ○大原国務大臣 我々は、委員がもう既に御存じの、農林水産委員会でも御質疑がありましたが、いわゆる知事の管理権限、国の管理権限、その中に漁業調整組合がたくさんあるわけでございますけれども、そういった総合調整を万全にしていく必要がまず必要であろうと思います。  さらにまた、さきの減船等の問題でございますけれども、特に二百海里の外側で漁業をしていらっしゃる方々がたくさんあるわけですね。これらの方々が、二百海里によって締め出されるのではないかという御不安を非常に抱いていらっしゃる方々があることも承知しております。それらの実情を踏まえながら、委員指摘の問題についてはやはり適時適切に対処していかなければならぬ、かように考えております。
  102. 野呂昭彦

    ○野呂委員 大変大きな関心事でもありますから、その点はしかとよろしくお願いを申し上げておきたいと思います。  それから次に、水産物全体の自給力とかいったようなことについてでありますけれども、今世界の水産生産量というのは一億トンぐらいで、大体頭打ちの状況で推移しておると言われてもおりますけれども、一方で地球上の人口爆発という大変深刻な事態が今進みつつあるわけでございます。そういう世界人口の急増が予測をされる中で、水産物の重要性というものもこれも実は一段と高まってきておる。しかしながら、我が国においては水産物の自給率が低下もいたしてきておるわけであります。ここ数年、少なくとも水産の生産量も減少傾向にございます。一方で、我が国においては輸入水産物は世界の全水産物貿易量の約三割を占める。これは実は農業や林業と比べてみましても、農業では農産物の輸入がふえてきたといっても八%程度、あるいは林業関係でも二〇%程度、そのことから比べても極めて水産物の輸入は多いわけであります。もちろん、国民の水産物の食料確保という意味からいけば、輸入においても秩序ある輸入体制というものが必要でありますし、また、国内生産においても、いわゆる生産を持続することのできる活力を維持していくということが大変大事であります。  そういう意味では、輸入水産物の秩序ある輸入体制でありますけれども、これは一兆七千億円ぐらい金額でいくとあるわけでありまして、こういった輸入水産物の規制というような問題についてどうお考えなのだろうか。あるいは輸入関税が大体八百五十億円ぐらいになるということでございますけれども、この際、こういう大激変の水産業界を考えますと、我が国漁業が国際競争力が持てるように、やはりこういうものをそういった目的に活用していく、こういう考え方も極めて妥当な考え方ではないのかな、そこらのことも含めてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  103. 東久雄

    東政府委員 ただいまの輸入制度の問題をまずお答えさせていただきますが、御承知のとおり、沿岸、沖合の主要魚種につきましては、これはまだ我が国は輸入割り当て制度のもとに置いております。それで、今輸入が急増しておるものは、マグロ類とか遠洋のもの、それからサケ、マスというようなものが中心でございまして、それらのものにつきましても、需給会議等で過剰な供給にならないような話し合いといいますか、そこまで具体的ではございませんが、需給の秩序ある輸入ができるようなことを期待いたしましてそういう会議等をやっております。  それからもう一つ、関税収入、今八百五十億と言われましたが、一般的にいいまして、特定の歳入を特定の歳出に充てるということは財政の硬直化というようなものがあるようでございまして、これはとるべきではないのではないかと思います。  ちなみに八百五十億と申されましたが、水産予算は約四千億くらいございますということを申し上げておきたいと思います。
  104. 野呂昭彦

    ○野呂委員 八百五十億というのは、やはりこういう大激変のときだけに手当てをより一層きちっとしていかなきゃならぬという思いがあるからこそ、例としてよくなかったのかもしれませんが、申し上げたわけであります。  しかし、とにかく、今回のこの海洋法のことで大激変を迎える漁業を取り巻く状況の中では、例えば生産の問題、流通の問題あるいは経営の問題、地域振興から漁協の問題、いろいろと各般にあり、そして、そういう中で水産業がきちっと経営をされていくということは、今後は、大きく言えば均衡ある国土の発展だとか環境保全だとか、それはまた地球規模にも貢献をする、そういう意図で海洋法というものも規定をされておるわけでありますから、そういう意味での取り巻く問題全体の取り組みがやはり大事だろうと思うのです。  例えば漁業とか漁村の活性化の問題あるいは担い手の問題、こういったこともありましょう。そして今、例えば漁業団体あたりでは、こういった全体的な問題に取り組むその効果的なものとして、基金を設けてほしいというような要望も出ておるところでございます。そういう大型の基金を創設なりすることによって、この際思い切ってやっていただかないとやはりだめなのではないか。例えば漁協なんかも、農協と比べましても、地域で担っておる重要度というのは全体規模は非常に小さいですけれども、購買事業なんか見ても、地域での依存度はかなり大きなものがございます。しかしながら、やはり今財政状況も悪い、何しろ規模、基盤とも零細で脆弱というようなこともございます。しかし、例えば、地域ではそういった中核的存在である漁業協同組合についてもどうしていくんだというようなこともございます。  それから、大体漁村のある地域というのは、もうこれは何度も何度も言われておることでございますけれども、大変家が密集しておるし、道路が狭いし、例えば下水道の普及率で見ても、中都市で五四%ぐらいの普及率であるけれども、漁村においては七・六%だとか、あるいは車が通らない、消防車がなかなか入らないぞというようなこともよく言われております。交通不能道の比率というものが四割近くあって、他の地域に比べても極めて高いわけでございます。そういったことを考えて、やはりこの際、かなり思い切った全般的な対応考えていただかなければならぬのではないかな、こう思うのであります。  そこで、実は農林大臣、この漁業におきましては沿岸漁業等振興法というのがございますね。これがいわゆる農業における農業基本法と同じような役割を果たしておるとよく言われておるわけでありますが、この沿岸漁業等振興法、沿振法ですね、これと農業基本法と比べてみますと、幾つかの点で非常に沿振法ではその規定が薄くなっておるといいますか、例えば沿振法では産業の位置づけということについて、農業基本法ではきちっとした位置づけがしてありますけれども、沿振法ではなされていない。あるいは、農業基本法においては長期見通しについて、これを立てて公表する、そしてそれに基づいて生産調整を行っていく、こういうことが書かれておるけれども、沿振法ではない。それから価格とか流通のところについても、農業基本法もそうボリュームがあるわけじゃありませんけれども、沿振法などを見てみますと、本当に条文の中の項目の中にわずかに触れてある、だけ。  こういうことを見ましても、やはり全体、こういう大激変の中で漁業を取り巻く環境全体をいろいろ対策していくということについては、まずこの基本法的なものすら不備なのではないかな、こう思われてなりません。そういうことからいきますと、やはりこの際漁業の基本法といいますか、そういったものがどうしても必要になってくるのではないかな、そのことを私は強く思うわけであります。どうでしょう、漁業の基本法としてそういった取り組みを、これは本来これまでにやっていただいて検討を進めてきていただきたかったけれども、しかし、同時進行的にこれからお取り組みをいただくことになりましたら、ぜひともこれは積極的に、政府もお取り組みをいただきたいし、我々としても取り組んでいきたいのですが、大臣の御所見をお伺いしたいわけであります。
  105. 大原一三

    ○大原国務大臣 先日もお答えしたところでございますが、三十六年に農業基本法でしたか、沿振法がたしか三十八年だったと思うのですね。戦後そういう形でスタートをしたわけでございますけれども、我々はこれを漁業基本法だ、したがって漁業白書もこの基本法に基づいて出すという仕組みがあったわけでございます。農業基本法も古びた箱になっちゃったから新しい革袋をつくらなきゃいかぬのじゃないかという動きがあることは、委員承知のとおりであります。ましてや海洋法という新しい秩序の中で、我々も委員指摘のような考え方を持っております。そのために、最近水産庁におきまして、東京水産大学の小野征一郎先生を座長とする水産研究会も発足させたばかりでございます。非常に重要な御意見と思いますので、今後十分検討させていただきたいと思います。
  106. 野呂昭彦

    ○野呂委員 ありがとうございました。  確かに農業基本法も新しい検討が始まっておりますけれども漁業権を含めた漁業調整の難しさもございます。そういった問題を網羅した中で基本法というものをひとつ進めていただきたい。そして、政府におかれては、全般、大変国益の極めて極めて重要なことだけに、今後一層取り組みを毅然たる態度でやっていただくことをお願い申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。     〔松前委員長退席、井上委員長着席〕
  107. 井上喜一

    井上委員長 上田晃弘君。
  108. 上田晃弘

    上田(晃)委員 新進党の上田晃弘でございます。科学技術委員会に所属いたしておりますので、原子炉規制法並びに放射線障害防止法の一部を改正する法律案に関連いたしまして、何点か総理大臣以下関係大臣にお尋ね申し上げたいと思います。  持ち時間が大変少のうございますので、まず大臣にお伺いをさせていただきますので、現状の認識並びに今後の施策の方向、そして決意等をまず関係大臣に端的にお述べいただきまして、余剰の時間がございましたら技術的なことを政府委員等の方々にお尋ねしたい、こんなふうに思っております。御協力よろしくお願い申し上げます。まず、橋本総理大臣にお伺いいたしたいわけでございますが、過日、総理大臣は原子力安全サミットへ行かれまして、その中で大きな課題でございました、ロシアが低レベル液体廃棄物を海洋投棄をしておった問題について、ロシアに行かれる前から総理大臣は、この問題が大変大きな課題である、ぜひともエリツィン大統領が改正ロンドン条約を受諾していただく決意を表明をしていただきたい、こういうような思いで行かれたということが新聞にも報道されました。しかるに、総理大臣が行かれまして、結果としてはエリツィン大統領からそういう決意表明があって、ロンドン条約の受諾も明確になった、これは大変喜ばしいことであると私も思っております。総理大臣も大変喜ばれました。  そこで、ちょっとお尋ねしたいのでございますけれども、まず基本的な認識として、現在よく言われておりますが、ロシアの核管理危機は世界の核管理危機である、とりわけ隣国である我が国にとって、ロシアの核管理というものが十分円滑に進むかどうかは決して人ごとではなく、我が国にとっての最重要案件である、こういう深い認識にお立ちになっているのかどうかということが一つ。あわせまして、それに伴いまして、海洋投棄をしないということは大変喜ばしいわけですが、海洋投棄をしないということは、いわゆる解体されて出てまいりますプルトニウムやウラン並びにミサイルの燃料、それから老朽原子力潜水艦から出てくるさまざまな廃棄物、これを全量陸地処理処分するということを意味しているわけです。しかるに、この状況が大変危ういということがさまざまなテレビや新聞でも報道されております。この辺のところの現状を総理大臣としてはどのように把握され、その辺についての危機感等をどうお持ちになっておられるのか、お尋ね申し上げたいと思います。
  109. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 まず第一に申し上げなければなりませんことは、ロシアは、非常に軍事上の機微な問題にわたるということから、核兵器の解体から生ずるプルトニウムなどの量あるいは管理の状況について全く明らかにいたしておりません。先般のモスクワにおける原子力安全サミットにおきまして、私は、そうしたことも念頭に置きながら、核兵器国が核兵器の解体から生ずる核物質を早急にIAEAの保障措置のもとに自発的に置くように強く求めたところでございます。今我が国にとってと言われましたが、我が国以上に、陸続きのヨーロッパ勢にとってはこの問題はもっと深刻な課題でございます。我々としては、ロシアの核物質のこうした管理の透明性の向上というものはこれからも強く求めていかなければなりません。  核兵器の解体から生じますプルトニウムなどの処理処分につきましては、その技術的方策と国際協力のあり方を検討いたしますための国際的専門家会合を今年中に開催することが原子力サミットにおいて決定をされました。日本としても、これには積極的に参加をいたしまして、プルトニウム等の取り扱いに関して我が国の有する技術あるいは経験をもとに貢献していきたいと考えております。  しかし、私は、議員御指摘のように、ロシアにおける核の管理というものは非常に心配をいたしておりますし、同時に、ウクライナにおける原子力発電所管理、これも同様にやはり非常に心配な問題という認識を持っておることを申し添えます。
  110. 上田晃弘

    上田(晃)委員 それでは、恐縮ですが、もう一点総理大臣に、所見で結構でございます。  現在、こういうことでロシアを中心として軍縮が進み、そこでさまざまな、ウラン、プルトニウム、核廃棄物等々の処理の問題が出てきているわけです。一方、素朴な庶民感情として不思議なのは、そういう解体によって出てきたものについての処理については話題になっている。また、老朽原潜を解体してそこから出てきた液体放射性廃棄物が日本海に投棄されたということは大きな話題になる。ところが一方、各国の現役の原子力艦船が作戦行動中に投棄しているであろう、そういう廃棄物問題については、話題にもなっていないし、またそれを制約する国際的な規制もないのですね。こういう問題についてどのように思われるか、簡単な総理大臣の所見で結構でございます。
  111. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 まず第一に申し上げなければなりませんことは、我が国は、原子力船「むつ」の実験の途上におきまして放射能漏れが生じたことから、これが大変な混乱を生じ、結局ほとんど実験ができないままに廃船という運命をたどりましたために、こうした問題について極めて関心がありそうでありながら、実はたまたまマスコミが取り上げた問題は非常に皆さんが心配されますけれども、それ以外の問題は全く気にしないというちょっと困ったところがある状況であります。そして、確かに、議員が御指摘のように、今そうした問題はほとんど取り上げられておりません。  ただ、私の知ります限りにおきまして、原子力を推進のための動力として活用する艦船が例えば我が国の港湾に入ります場合に、必ずと言っていいぐらい、その場合に、その周辺における放射能量の増大がないか測定がされ、何ら問題がないということが今までに報ぜられてまいりました。そして、恐らく議員の御指摘はあるいは二次冷却水等の廃棄あるいは交換といったものを示しておられるのかもしれませんが、ちょっと、それになりますと、技術的に私はどれぐらいの頻度で行われるものか十分な知識を持ちません。ただ、基本的には、二次冷却水であります場合には、もし放射能を有したとしても極めて低レベルのものでありましょうし、その中に放射性物質が漏えいしていることは考えられないわけでありますから、問題としてそれほど深刻なものとして世間がとらえていないのがあるいは正確なのかもしれません。  ただ、むしろ、先ほどちょっとお触れになりました点で申しますならば、今日本海側には、我が国の協力によりまして、ロシアの低レベル放射性廃棄物の貯蔵施設が整備されつつあります。そして、それを前提にして海洋投棄をしないということが明言されているわけでありますが、問題は、ロシアの抱える海域は我が国に面した部分だけではないわけでありまして、他の地域になりますとなお問題を残しているのではなかろうかと、ちょっと懸念を持っておることを申し添えます。
  112. 上田晃弘

    上田(晃)委員 時間が大分迫ってまいりましたので、次に、外務大臣にお尋ね申し上げたいと思います、関連事項でございますが。  日露核兵器廃棄協力委員会が九三年の四月に設置されまして、一億ドル前後出資が決まりました。対ロ協力プロジェクトとして四点既に決まっているわけでございますが、この四つの対ロ・プロジェクトのうち、二年近くたってやっと、一つのテーマであります、今話題にしていました液体放射性廃棄物の貯蔵施設が具体的な業者間の契約が済んだ。他の三つについては全然状況が見えていないのですね。核物質の貯蔵施設、それからミサイル液体燃料処理、緊急事態対処機材の供与、この三点についてはなかなか計画が進んでおりません。せっかく我が国としては一億ドルを出資しようということで詰めておるのですが、事務レベルにおいてはロシアの方にも、早く進めよう、こういう催促がされているやに聞いているのですが、いろいろな事情がおありのようでございまして、なかなか進まない。  今後の方針なのですが、ロシアの国内問題があるので、それがおさまるまではしようがないといって待ち続けるという姿勢でよいのかどうなのか。ロシア支援は、ロシアの支援をするとともに、先ほど来申し上げているように、ロシアの核管理危機は世界の核管理危機であり、当然私たちの日本の危機でもある、そういう大義の上から一億ドルが出資されて、早くそういったものはしっかり処理しよう、こういう趣旨で進めているはずのものが、全然進んでいない。  また、テレビなんかの報道によりますと、いまだにウラジオストク周辺に置き去りになっている潜水艦が、一説には百隻、一説には百六十隻とか、いろいろなことを言われていまして、解体がおくれて、そのうちに潜水艦が沈んでしまうのではないか、こういうような報道をされています。さらに、ロシアの環境保護資源省の安全局長は、テレビに出てまいりまして、これを解決するには二十五年かかる、こう言っているのです。これがテレビで全国に流れているのですね。これは一体どうなってしまっているのだ。こちらはやる気なのですが、向こうがまだ対応がまとまっていないので待ちの姿勢なのですということだけでよいのかどうなのかという問題です。  この辺について、外務大臣に、そのおくれている理由、今後の対応方針について、どういう御決意で臨んでいかれるのか、ちょっとお尋ねしたいと思います。
  113. 池田行彦

    池田国務大臣 委員指摘のございましたように、日本政府は九三年に旧ソ連に対して一億ドル相当の協力をすることを決定しました。そして、その後、ロシアも含めて四カ国との間で二国間協定を結んだわけでございます。ロシアとの間では、全体の七〇%、八十一億九千万円を拠出することを決めました。  具体的にその対象施設として四つの分野を考えておるわけでございますが、その中で、今御指摘のございました液体放射性廃棄物の貯蔵処理施設はかなりの進捗を見ております。それ以外にも、例えば核物質貯蔵施設の建設協力ということで、核弾頭の解体から生ずるプルトニウム及び高濃縮ウランを安全に貯蔵するための施設につきましては、ウラル地方に建設するという予定になっておりまして、これは米ロ日と三国の共同で進めることになっております。現在、米国が技術的協力を行いまして、施設の設計をロシアとで進めております。この大枠が固まった段階で具体的な役割の分担を決めることになっておりますので、これは決してとまっているわけではない、作業は進んでいるわけでございます。そのほかに、ミサイル液体燃料の処理、これはSLBMの解体に伴うものでございますとか、あるいは緊急事態に対処する機材の供与というものもございますが、これらにつきましても、それぞれ実施のための取り決めにつきまして日ロ間で協議を進めております。  しかし、御指摘のようなロシア側のいろいろな事情もございますので、我が方からも積極的にこれを促進するように働きかけてまいりたい、こう考えております。
  114. 上田晃弘

    上田(晃)委員 なかなか進まない理由は私もよく存じ上げておりますが、先ほど申し上げたように、せっかく出資をして、一日も早く進めてもらいたいというのが国民感情だと思いますので、ただ待っているという姿勢ではなく、その辺のところを鋭意御推進方よろしくお願い申し上げます。  もう時間になりますので、最後に、科学技術庁長官の方にお尋ね申し上げたいと思います。  過日の原子力安全サミットの宣言の中で、ちょっと難しい言葉ですが、防衛目的にとり不要とされた核分裂性物質という、これの取り扱いがいろいろ議論されたやに聞いております。この防衛目的にとり不要とされた核分裂性物質をどうするかという問題で、海洋投棄はしないということは決まったわけでございますが、陸地内で処理、処分、管理していくわけですね。その一つの選択肢として、MOX燃料にするという一つのブランチはどうかということが議論されたやに聞いております。いち早くカナダは、ロシアの廃棄核弾頭のプルトニウムを原発で平和利用してはどうだということで、手を挙げているようにも報道で聞いております。  さらには、これは個人的な見解ということのお話ですが、日本の原子力委員会の著名な先生である東大の鈴木先生も、日本でも、解体兵器からのプルトニウムを平和利用する、つまり燃料として燃やすということは十分可能である、またこれは軍縮への貢献ということで国民の理解も得られるのではないか、このような御発言も、個人的見解ということではございますが、原子力委員の著名な先生が発言をされております。  こういう状況にかんがみて、年末にまたパリでこの解体兵器から出てくるプルトニウムの取り扱いについての議論もなされるやに聞いておりますが、解体兵器から出てくるものをMOX燃料へ転換していくというこの路線について、今後我が国としてはどういう主張をしていくのかということが当然問われてくると思います。その辺について、どういう方向で我が国は主張していかれるおつもりなのか、お答えいただきたいと思います。
  115. 中川秀直

    中川国務大臣 いずれにしても、我が国の基本方針として、政策の基本として、私どもの場合は、自国の原子力発電所からの使用済み燃料を再処理し、回収されるプルトニウムその他の核物質をエネルギー源として平和利用する、そういう意味の核燃料リサイクルというのを政策の基本にいたしております。一方、核兵器解体によって発生するプルトニウム等については、再び核兵器に利用されないということを基本にして、一義的には発生国みずからの問題として適切に対処していただくというのがまた国際的にも重要なことである、こう主張をいたしてきております。  総理が先ほど触れた、本年フランスで開催される専門家会合等において、こうした我々の主張をきちんと申し上げながら、また同時に、我が国の持っている技術あるいはまた知見というものをこの専門家会合の参加の中で生かしていけるようにまた貢献をしてまいりたい、このように考えております。  したがいまして、鈴木先生の御提案についてはその詳細を承知いたしませんが、前述の我が国政策の基本を踏まえて慎重に対処してまいりたい、こう考えております。
  116. 上田晃弘

    上田(晃)委員 時間ですからもう終わりにしますが、最後に要望として、今回の安全サミットでMOX燃料化というブランチが出てきたということは、当然ロシアの戦略としては、余剰の。プルトニウムを、今後世界へ原子力発電所を売り込むための一つのビジネスとして外貨獲得の方途を開きたいという意図が明確だと思います。しかるにまた、カナダ等は手を挙げている。  そうなりますと、ロシアが余ったプルトニウムやウランを諸外国に売るという状況が恒常化してまいりますと、現在、今大臣お答えになったように、我が国はよその国から買わないのだ、我が国我が国から出たものをまた再処理して自己完結型でやるのだというものが、今回の「もんじゅ」の事件等も含めて広く国民の中で理解されるかどうかという新たな問題が出てくると思いますので、その辺についてのこれからの方向、またわかりやすい説明をひとつ御検討いただきたい、このことを要望しておきたいと思います。  では、時間になりましたので終わります。大変ありがとうございました。
  117. 井上喜一

    井上委員長 次に、古堅実吉君。
  118. 古堅実吉

    ○古堅委員 日本共産党の古堅です。  最初に、尖閣列島の領有権と、排他的経済水域、二百海里設定問題についてお伺いします。  総理は、五月十日の本会議答弁で、「尖閣列島は日本国有の領土でありまして、中国との間で解決すべき領有権の問題は存在いたしておりません。」と述べられた上で、「領土問題を切り離して漁業交渉を進めるということは、事実に反する」とも述べておられます。  この総理の御答弁を貫きますというと、中国との二百海里設定交渉では、日本領土である尖閣列島と中国との間で、中間といいますか、そういう間での境界を引く、条約でいえば衡平な解決を図る、こういうことになるかというふうに思いますが、そういうことは当然のこととして受けとめていいかどうか、総理の御所見を伺いたいと思います。     〔井上委員長退席、関谷委員長着席〕
  119. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 正確に申し上げますならば、御質問者の方から、領土問題を切り離して漁業交渉を進めるのかというお問いがありましたから、私の方からお答えを申し上げましたのは、尖閣諸島は日本国有の領土でありまして、中国との間で解決すべき領土権の問題は存在しておりません。御指摘のような領土を切り離して漁業交渉を進めるということは、事実に反するということであります。今後、中国との協議を進めていく上で、尖閣諸島に関するこうした考え方、我が国立場というものを踏まえて対応していきたいと考えており、国会の御支援もぜひお願いを申し上げたい。そのように確かに答弁をいたしております。
  120. 古堅実吉

    ○古堅委員 今、尖閣列島と中国との間における二百海里問題というのは、その間での線引きということになっていくのではないかというそこをお尋ねしたいのですよね。もう一度、そこらあたりについての御見解伺いたいと思います。
  121. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 中国との間では、今後必要がありますなら、国連海洋法条約規定などに従って排他的経済水域の境界画定についての協議を行っていく所存でありますが、いずれにいたしましても、我が国としては尖閣諸島に関する我が国立場を踏まえて対応することになるでありましょう。
  122. 古堅実吉

    ○古堅委員 二百海里交渉では、我が国は、尖閣列島の領有権問題を切り離さないでやる、そういう態度でありますけれども、しかし、中国の態度を見ますというと、やはり懸念が残ります。  中国政府は、五月十五日に全国人民代表者会議海洋法国連条約批准した際に、領海基準線に関する声明なるものを発表しました。それには、十二海里水域とともに西沙諸島周辺の領海を明示しながら、その他の領海は改めて発表するとも述べています。また、中国が一九九二年二月に制定した領海法では尖閣列島を中国領土と明記もしております。  このような中国の理不尽な態度を相手に、尖閣列島の領有権問題でもしも弱腰になると、将来に禍根を残すようなことになりかねません。政府が領有権を棚上げにするようなことはないと明確に表明できるかどうか、総理にその点を確認を求めたいと思います。
  123. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 なぜそういう御質問になるのでしょう。尖閣諸島というのは日本の固有の領土であり、現に実効的に支配をしている。領土問題というものが存在していないということを繰り返しお答えを申し上げております。解決すべき問題が存在しないものを棚上げのしようもございません。
  124. 古堅実吉

    ○古堅委員 そういう限りにおいては、この問題はおっしゃるとおり極めて明確と申さねばなりません。そのことを前提にして、いろいろ交渉もありましょうから、交渉の過程で、我が国固有の領土ということを明確にしておられる、そういう態度を堅持してやっていただきたい、そういうことを要望申し上げておきたいと思います。  次に、大陸棚にかかわる点です。  中国国家海洋局とフランス海洋開発研究院が、四月下旬、沖縄本島と宮古周辺を海洋調査しています。この海洋調査したフランスの海洋調査船アタランテ号が、五月二十二日、那覇港に入港もしています。  この調査は、どうやら報道などによりますというと、中国が沖縄舟状海盆までは中国から陸続きの大陸棚ということを証明しようとした動きのようであります。しかし、海洋法国連条約によりますと、二百海里までは陸続きであるとかないとかといったこととは関係なしに、「当該沿岸国領海を越える海面下の区域の海底及びその下であって当該基線から二百海里の距離までのものをいう。」というふうに明記もされております。したがって、中国の動きが大陸棚中国の陸続きと証明しようというのであるならば、海洋法上は意味のないものだと思われます。  外務省として、この動き、この問題についてどういう見解をお持ちであるか、お伺いしておきます。
  125. 池田行彦

    池田国務大臣 四月二十四日以降、中国船そしてフランス海洋調査船が活動しているのが確認されました。  それで、そういうことを踏まえまして、我が国からは、中国及びフランスに対して外交ルートで事実関係を照会しますと同時に申し入れをいたしました。その申し入れば、我が国の同意なく大陸棚資源探査または大陸棚における科学的調査を行っているのであればそれは認められないことだ、こういうことを申し入れしたわけでございます。  これに対しまして、フランス船は速やかに調査を中断いたしまして、そしてフランス側より、問題になっている水域での調査は行わないこととなった、このような通報があったところでございます。また、中国船はすべて日中中間線中国側の水域で航走をしておりました。  いずれにいたしましても、今回の活動はどういう意図、背景に基づくものか、これについて憶測することは避けたいと思いますけれども、いずれにしても、我が国としましては、先ほど総理から御答弁のあった基本的な立場で両国間の話し合いを行っていく、これは当然のことでございます。
  126. 古堅実吉

    ○古堅委員 次に、二百海里水域の全面適用問題について伺います。  中国のこうした行動などを見ておりますと、中国政府との二百海里設定交渉も相当長引くのじゃないかというふうな懸念も生まれてまいります。この交渉が長引きますと、これまでのように中国や韓国の漁船の無謀な操業によって西日本漁業は大きな被害を受け続けるということになります。したがって、一刻も早く排他的経済水域二百海里の全面適用、そのことによって無謀な外国船の操業を規制すべきだというふうに考えます。  その見通しについてですが、一年ほど後に全面適用ができるかどうか、そこらあたりを含めて御所見を賜りたいと思います。
  127. 池田行彦

    池田国務大臣 我が国といたしましては、中国、韓国との間では新しい漁業協定をつくる、そういうことで、それを早期に実現したいということで努力していく所存でございます。  そして、現実に、中国との関係では、四月の九日、十日に非公式の協議を行ったところでございますし、韓国との間も、今月の九日、十日に漁業問題についての実務者での協議を始めました。  これからまた鋭意努力を傾注してまいりまして、早期にその円満な解決を図り、新しい漁業協定を結んでいく所存でございます。
  128. 古堅実吉

    ○古堅委員 外交交渉にかかわることなだけになかなか明確なことはおっしゃりにくい面はあろうかと思いますが、漁業関係者は、今申し上げたような立場から、その一日も早い解決をということで望んでいるわけです。  今、一年ほど後にはという御見解も示していただけるのかどうかということも含めて申し上げましたが、今、早期にということをおっしゃっておられます。その早期にというのは、もう二年も三年も、あるいはそれ以上も後というふうなことではない、そういう意味合いも含んでおられるのかどうか。そこらあたりの外務省の、どうしたいというふうな立場からの御意見をお伺いしたいと思います。
  129. 池田行彦

    池田国務大臣 二月に政府で決めましたこの問題に取り組む基本方針におきましても、合理的期間内にその円満な解決を図ることにしております。  そしてまた、漁業関係者を初めいろいろな方から御要望も多々受けておりますし、また与党三党からも、早期に、年内をめどに解決を図るようにというふうな申し入れをちょうだいしているところでございまして、そのようなことも十分念頭に置きながら早期日満解決に向かって外交努力を傾注していく所存でございます。
  130. 古堅実吉

    ○古堅委員 次に、深海底開発問題について伺いたいと思います。  深海底とその資源について、海洋法国連条約は人類の共同財産と規定していますが、資金も技術も乏しい発展途上国の開発を本当に保障できるかという問題があります。  一九九四年七月の国連総会で、第十一部の実施に関する協定の見直しが行われました。見直し以前の規定では、締約国が発展途上国がつくるエンタープライズに対して長期無利子の借款や債務保証などの資金協力の実施義務や技術提供義務が盛り込まれていましたが、見直しの結果、義務規定ではなくなりました。開発可能な鉱区を留保してもらっても、資金も技術も乏しい発展途上国ではこれを開発できなくなるだろう、このように思われます。  発展途上国の経済主権の確立、南北格差の是正がいわゆる先進国の義務だとも申せると思いますが、どうして見直さなければならなかったのか、日本政府はその問題についてどういう主張をされたのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  131. 谷内正太郎

    谷内政府委員 深海底資源開発につきましては、客観的に見て、その実用化に至るまでなお相当の投資額及び期間を要するものと現時点でも見込まれておるわけでございます。そういった観点から、実施協定は、開発途上国を含む国際社会がこの点についての一致した現実的認識に立って条約規定する深海底制度を効果的に機能させるために作成されたものでございまして、我が国も作成作業には積極的に関与したという経緯がございます。
  132. 古堅実吉

    ○古堅委員 我が国はどういう主張をされたのか、そこらあたりを明確にしてください。
  133. 谷内正太郎

    谷内政府委員 海洋法条約につきましての議論につきましては一般的に、そこでどういう発言をしたかということにつきましては記録もとっておりませんし、また個々の発言の内容について申し上げるということにはなってないのですけれども、ただいまの先生の御質問につきまして、我が国としてはどういう考えに基づいて実施協定の作成に関与してきたかという点を申させていただきますと、いわゆるエンタープライズ、これは条約では事業体と訳されておるわけでございますけれども、事業体につきましては、深海底鉱業の現状を踏まえまして、独立して機能を開始することは先生が御指摘のように実施協定により延期されることとされたわけでございます。  このことを踏まえまして、締約国が事業体の操業に対して資金を供与する義務につきましては適用されないこととされ、事業体が独立した機能を開始する際の資金調達は事業体と開発者との合弁事業によって行われることとなったわけでございまして、私どもとしましては、事業体と開発者との合弁事業によって行うということによりまして資金的な面は十分に手当てできるのではないか、こういう判断を行ったわけでございます。  それからまた、契約者による技術移転義務でございますけれども、締約国の国民の知的所有権の有効な保護に関する必要性が認識された結果、適用されないこととなったという経緯がございます。他方、実施協定は、機構の事業体または開発途上国による技術の入手を容易にするために、深海底鉱業を行う事業者を有する国が当該要請に協力することを規定しておるわけでございます。我が国といたしましては、こういった内容のことであれば可能な技術協力を実施することがもちろん可能でありますし、現に我が国は平成五年に国際海底機構及び国際海洋法裁判所のための準備委員会が作成した訓練計画を実施した実績もございまして、こういった技術協力につきましては今後もさらに検討していく、こういう考えでございます。
  134. 古堅実吉

    ○古堅委員 海洋が人類共同の財産という大事な海洋法条約の趣旨があるわけですね。それを、力のあるものがそれなりの力に任せて利益を得る、そういうことになってはいかぬということが当然のこととして強調される面となっています。ところが、第十一部について見直しされたときに、先ほども申し上げたように、開発途上国が資金や技術などの乏しいという状況のもとで、共同の財産と言いながら、なかなか思うようにそういう趣旨が生かしにくいという立場があるのだが、それは義務規定から外された、そういういきさつがあるわけで、共同の財産を、発展途上国の立場をどう生かしていくか、そういう面からも、先進国としてあるべき対処の仕方というのが当然求められるのではないか、こう考えます。  そういう意味で、条約規定はそれとしても、日本政府は資金協力や技術提供を積極的に行う、そういう立場があってしかるべきではないかというふうに思いますが、大臣、それについてのそういうお考えがあられるかどうか伺わせていただいて、終わらせていただきます。
  135. 池田行彦

    池田国務大臣 先進国、開発途上国含めまして、世界全体、人類全体として、資源も含めました、海洋の適正な資源の維持とそして活用という観点から、今回の海洋法条約が合意を見、そして締結に至ったわけでございます。今後とも、我が国としても、そういったことを踏まえながら適切に対応してまいりたいと思います。
  136. 古堅実吉

    ○古堅委員 終わります。     〔関谷委員長退席、井上委員長着席〕
  137. 井上喜一

    井上委員長 それでは、牧野聖修君。
  138. 牧野聖修

    ○牧野委員 市民リーグ・民改連の牧野聖修です。ただいま議題となっておりますところの、今般の条約締結及び国内関連法の整備につきましては、国際社会における安定した海洋の法的秩序の確立という観点から、基本的には支持したいと考えております。そういう立場に立ちまして、若干の質問をさせていただきます。  第一点は、国連海洋法締結に伴う原子炉規制法及び放射線障害防止法の改正について、科学技術庁長官質問をさせていただきます。  今回の法改正によりまして、排他的経済水域における外国船舶の違反行為には罰金刑を科し得ることになっております。今までの領海内には罰金刑の上に懲役刑というものがあったと思いますが、この懲役刑は今回排他的経済水域にはなく、罰金刑のみとしたのは何ゆえであるかということと、しかも釈放手続の整備がなされて、保釈金制度が取り入れられたわけですね。そして、しかも保釈金を積んで帰ってしまえば出頭するに至らないというケースも出てくるという感じであります。そういたしますと、国民の素朴な疑問として、果たしてそれでよいのだろうかということは当然浮かんでくると思います。この点につきまして、長官見解を賜りたいと思います。
  139. 中川秀直

    中川国務大臣 まず第一点の領海排他的経済水域等における外国船舶による放射性物質の海洋投棄について、この罰則を罰金刑にしたのはこれで十分か、こういうお尋ねでございましたが、これは従来、そういった領海外の海洋投棄については基本的に沿岸国の管轄権が及ばないということで、規制実施し得なかったわけでございます。しかし、今般の海洋法条約によりまして、こうした違反に対して金銭罰のみ科し得るという条件のもとで管轄権が認められることになったことによるものでございます。  このように一定の条約上の制約があるわけでございますけれども外国船舶による放射性物質の海洋投棄については、ロンドン条約もございますし、また、従来我が国規制の及ばなかった排他的経済水域等まで今度は海洋法によって規制が及ぼし得るということになりますので、これは実質面において我が国周辺海域における放射性物質の海洋投棄の防止には大きく寄与するもの、こう考えております。  なお、金額でございますけれども、一千万円以下というふうになっておりますが、これは経済規制関連法令による法人処罰、例えば公取とかいろいろございますが、そういうものの法人処罰を除いた場合の我が国現行法令による最高の罰金額でございます。そういう意味で、放射性物質の海洋投棄にかかわる違反の重大性に合ったものだ、こう考えております。  それから、第二点目もあわせてお答えをさせていただいてお許しいただきたいと存じますが、いわゆる担保金制度、保釈金とおっしゃいましたが、担保金制度法律上なっておりますが、これは、先ほど申し上げましたことと関連いたしますけれども、今回の海洋法条約で、海洋環境の保護、保全に関して沿岸国の管轄権を排他的経済水域等まで拡大する一方、同時にまた、船舶の航行というものの利益にも配慮しなければなりません。そういうことで、外国船舶による違反が明らかにされた場合は、金銭上の保証等の合理的な手続に従うことを条件に速やかに釈放しなければいかぬという条約規定を受けて整備するものでございます。しかし、本制度外国船舶において違反を行った者を処罰する我が国権利を放棄するものではございませんで、以後の刑事手続の出頭を確保するためのあくまで担保金ということでございます。その担保金の金額についても、その出頭を担保するための目的に照らしまして、法定刑違反の程度、違反の回数を考慮して定めるということにいたしております。また、仮に違反者が求められた出頭に応じない場合は、この担保金は国庫に帰属することになるわけですから、事実上罰金と同様の効果を有すると思われます。  なお、さらに、外国船舶の旗国は、そういう当該船舶による違反行為を取り締まる条約上の義務を負っておりますので、我が国としては、そういう当該旗国においても適切な措置がとられるように、必要に応じて外交ルートを通じて要求することが可能でございます。そして、場合によっては義務違反の責任を追及することになっておる次第でございます。
  140. 牧野聖修

    ○牧野委員 丁寧な答弁、ありがとうございました。私は、数歩前進をしているというふうには意識をしておりますし、基本的には本当にいいことだと認識をしております。いずれにいたしましても、放射性物質等の不法投棄等は、その影響たるや、あるいは被害たるや金額では換算できないほど甚大なものである、こういう認識をしておりますので、一歩前進ではありますけれども、さらに監視も強化していただいて防止策に力を入れていただくように、あるいはまた、再発が起こらないようにぜひ検討を重ねていただきたいとお願いをいたします。  先ほど他の委員から御指摘等もございましたし、総理も外務大臣も御答弁をされてきたわけでございますが、一国のみがこの法律条約を遵守いたしましても効果は上がらないわけでございます。特に、ロシア等の不法投棄の問題に端を発しまして大変な大きな問題になっているわけですが、政府といたしましても、ロシア当局ともいろいろと交渉をしてそれなりの成果を上げている、そういうふうに伺っておりますが、北朝鮮あるいは韓国、中国等ともやはりもっと詰めた話し合いをされ、お互いに努力していかないと、協力体制をつくっていかないと、絵にかいたぼたもちで終わってしまうのではないかという感じがいたしますので、この点についての外務大臣見解をお伺いしたいと思います。
  141. 池田行彦

    池田国務大臣 ロシアとの関係につきましては、先ほどの審議の中でも、総理並びに私からも御答弁申し上げましたけれども、今回、ロシアがロンドン条約附属書の改正を受諾するようになったことは一つの大きな進展であったと思いますし、従来からの協力協定に基づいて我が国としても着実にその努力を進めていきたい、こう思っている次第でございます。  そして、それ以外の国との関係でございますが、中国及び韓国につきましては、これはどちらもロンドン条約の締約国として海洋投棄を禁止する同条約附属書の義務を負っております。そして、これまでのところ、両国の関係でこの義務違反の事実が生じたということは承知しておりません。だから遵守しているのだ、このように承知しておる次第でございます。  それから、北朝鮮の関係につきましても、放射性廃棄物の海洋投棄を行ったという事実が具体的に発生したということは承知しておりませんので、仮定を置いて御答弁するのは差し控えたいとは思いますけれども、一般論として言えば、仮に放射性廃棄物の海洋投棄ということを北朝鮮が行う、こういう事態が生じる場合には、我が国としては、当然のことながら海洋環境の保全等々、そういった観点を踏まえて適切に対処してまいりたいと思います。
  142. 牧野聖修

    ○牧野委員 時間も来ましたので、質問をここで終了させていただきますが、政府関係閣僚、総理大臣も先頭に立ちまして、APEC等の海洋部会等では一生懸命御努力をされていることは十分承知しております。それなりの成果も上がりつつあることもよく承知しております。  しかし、我が国海洋国家でありますから、この問題につきましてはさらに重要な関心を持って臨んでいかなければいけない、こういうふうに思いますので、改めて我が国が主導権をとって、どちらかというと海洋サミットというふうな感じで、ほかの問題のときにあわせてこれを行うというのではなくして、このことのみに専念をするような、そういった場を提案しながら、積極的に取り組んでいっていただきますことを心から要望いたしまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  143. 井上喜一

    井上委員長 以上で本連合審査会は終了いたしました。  これにて散会いたします。     午後零時二十二分散会