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1996-06-13 第136回国会 衆議院 科学技術委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年六月十三日(木曜日)    午前十時一分開議 出席委員   委員長 井上 喜一君    理事 小野 晋也君 理事 原田昇左右君    理事 村上誠一郎君 理事 上田 晃弘君    理事 笹木 竜三君 理事 鮫島 宗明君    理事 今村  修君 理事 渡海紀三朗君       小渕 恵三君    古賀  誠君       萩山 教嚴君    林  義郎君       上田 清司君    近江巳記夫君       斉藤 鉄夫君    藤村  修君       吉井 英勝君    後藤  茂君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      中川 秀直君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     工藤 尚武君         科学技術庁科学         技術政策局長  落合 俊雄君         科学技術庁原子         力局長     岡崎 俊雄君         科学技術庁原子         力安全局長   宮林 正恭君  委員外出席者         参  考  人         (動力炉核燃         料開発事業団理         事庁)     近藤 俊幸君         参  考  人         (動力炉核燃         料開発事業団理         事)      中野 啓昌君         科学技術委員会         調査室長    吉村 晴光君     ――――――――――――― 委員異動 五月三十一日 辞任          補欠選任   斉藤 鉄夫君     鳥居 一雄君   藤村  修君     渡部 恒三君 同日  辞任         補欠選任   鳥居 一雄君     斉藤 鉄夫君   渡部 恒三君     藤村  修君 六月四日  辞任         補欠選任   藤村  修君     鴨下 一郎君 同日  辞任         補欠選任   鴨下 一郎君     藤村  修君 同月七日  辞任         補欠選任   藤村  修君     鴨下 一郎君 同日  辞任         補欠選任   鴨下 一郎君     藤村  修君 同月十一日  辞任         補欠選任   吉井 英勝君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   松本 善明君     吉井 英勝君 同月十三日  理事渡海紀三朗君五月二十四日委員辞任につ  き、その補欠として渡海紀三朗君が知事に当選  した。     ――――――――――――― 六月四日  高速増殖炉もんじゅ事故徹底解明に関する陳  情書外一件  (第三四〇号  ) 同月十日  鹿児島県馬毛島に無人有翼往還機HOPEの着  陸場誘致実現に関する陳情書  (第三九六号) は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  参考人出頭要求に関する件  原子力開発利用とその安全確保に関する件  (高速増殖原型炉もんじゅにおけるナトリウム  漏えい事故問題)      ――――◇―――――
  2. 井上喜一

    井上委員長 これより会議を開きます。  理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 井上喜一

    井上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  それでは、理事渡海紀三朗君を指名いたします。      ――――◇―――――
  4. 井上喜一

    井上委員長 原子力開発利用とその安全確保に関する件、特に高速増殖原型炉もんじゅにおけるナトリウム漏えい事故問題について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として動力炉・核燃料開発事業団理事長近藤俊幸君及び同理事中野啓昌君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 井上喜一

    井上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
  6. 井上喜一

  7. 中川秀直

    中川国務大臣 昨年末の「もんじゅ」の事故につきましては、地元方々国民皆様に大変な不安感不信感を与えるという極めて遺憾な結果を引き起こし、心からおわびを申し上げます。  今回の事故については、専門家の参画を得て鋭意調査を進めてまいりましたところ、事故原因となった温度計破損原因の究明の見通しが立ち、他の調査項目についても明らかとなってまいりましたので、先般五月二十三日に「動力炉・核燃料開発事業団高速増殖原型炉もんじゅナトリウム漏えい事故報告について」を取りまとめ、公表したところでございます。  本報告書の詳細については、原子力安全局長より後ほど説明いたさせますが、特に今回、事故の経緯と寄せられた種々の批判を真摯に受けとめ、科学技術庁として深くみずからを省みて、率直に反省すべき諸点を明記しております。私を含め当庁の職員はこれらを重く受けとめ、今後の行政に反映してまいります。これに関連して、別途当庁の責任を明らかにいたしました。  私としては、本報告書により事故の状況、原因等について相当の部分が明らかとなり、現在とり得る限りの対策の方針がかなり明確になったものと考えておりますが、なお解明すべきことが残っており、報告書にこの点を個々に明記しております。  科学技術庁としては、引き続き残された諸点についての調査を継続しているところであり、その一環として、先週七日にナトリウム漏えい燃焼実験が行われたところであります。また、今後、本報告書で明らかにした対応及び改善策についても速やかに着手し、一つ一つ着実に実行に移してまいります。  また、動燃事業団に対して、本報告書を踏まえ、動燃事業団としての責任を明らかにし、適切な対応を行い、地元方々国民皆様信頼を回復するため最大限の努力を尽くすよう指示しました。動燃事業団は、直ちに理事長が引責辞任し、さらに関係者責任を明らかにしたところでございます。  原子力安全委員会におかれては、独自の立場から、「もんじゅ事故原因再発防止対策について調査審議が行われるとともに、研究開発段階原子力施設安全確保あり方及び事故時の情報公開あり方について鋭意検討が行われているところであり、それらの結果については十分に尊重して対応してまいります。  最後に、今回の事故への対応を含め、まず安全対策を徹底するとともに、情報公開、安全を最優先する体制対策確立等に努め、常に国民本位の姿勢に立って原子力行政を進めてまいる決意でありますので、委員長を初め委員各位の御指導、御鞭撻を心からお願い申し上げます。
  8. 井上喜一

  9. 宮林正恭

    宮林政府委員 引き続き御説明させていただきます。  お手元の方に、まず五月二十三日に提出させていただきました「漏えい事故報告について」という本文がございます。それから数葉のペーパーでございますが、「平成八年六月科学技術庁」という同題のペーパーがございます。この本文の方は非常に長うございますので、これの方で御説明させていただきたいと思います。なお、後ほど、同封しております「ナトリウム漏えい燃焼実験-Ⅱについて」という資料についても御説明させていただきます。  まず、今回の五月二十三日の報告でございますが、これにつきましては科学技術庁全体として報告をさせていただきました。二月九日の報告原子力安全局ということで報告をさせていただいたわけでございますが、今回は科学技術庁全体として御報告させていただくものでございます。それで、これにつきましては、いろいろな調査項目が相当程度明らかになりましたので公表することといたしましたものでございまして、引き続き調査を実施するということにいたしております。  まず、今回の事故の受けとめ方でございますが、放射性物質によります。辺環境あるいは従事者への影響はございませんでしたし、原子炉も安定に維持されておりまして、原子炉施設の安全は確保された、こういうふうに考えております。  次に、安全規制観点からは今回の事故は非常に重いものである、こういうふうに受けとめているところでございます。  一番といたしまして、高い信頼性確保すべきものとしていたにもかかわらず、現実漏えい発生したこと、それからナトリウム火災拡大に至らないように適切な措置ができなかったこと、それから情報原子力安全局に正しく速やかに提供されなかった、また公表も速やかに行われなかったという点について、そういうふうに考えておるわけでございます。  また、本件につきましては、ナトリウム漏えいというのは現実に起こらないだろう、こういうふうに地元では考えられていたようでございまして、しかしながら現実発生をし、それがある時間継続したということから、非常に強い衝撃を地元方々を初めとする国民に与えたという認識をいたしております。かつまた動燃によります不適切な対応がございまして、不安感及び不信感を与えることになったというのが基本認識でございます。  まず、漏えい事故発生原因でございますが、これにつきましては、この温度計さや設計におきまして、当時のアメリカ機械学会技術基準を正確に理解しないまま設計を行ったというふうなミスがありまして、そのために高サイクル疲労細管部に生じ破損したということが判明しております。  それから、漏えい後の拡大防止でございますが、これにつきましては、異常時運転手順書の記載に問題がございましたのですが、やはり運転員判断適切性が欠けていた、こういうように考えております。お手元にありますような、特に五つのポイントについてそういうふうに考えているということでございます。  それから、ナトリウム漏えいによります影響でございますが、放射性物質による環境への影響はなかったということを確認いたしております。  また建物健全性、これは建物内部ナトリウム燃焼をするといいますか、火災の形をとったわけでございますが、その結果といたしましては、建物内部につきましては健全性確保されておりますけれども、足場が損傷しているとかあるいはナトリウムとコンクリートの反応を防ぐために敷かれていた鋼板の温度上昇があった、こういうふうなことにつきましては、今後引き続き検討する要因として残っております。  それから、動燃事故時の対外対応でございますが、これにつきましては、情報が的確に科学技術庁に提供されなかったという事実を説明しております。特に二度目の入域調査、これは十二月九日の十六時に実施されておりますが、この中身につきまして、ビデオを編集したものを本物というふうに説明をいたしました結果、事故隠しという批判を招き、信頼感が非常に失われるという結果になったという認識でございます。  それから、このような事態を招いた要因といたしましては、動燃は、信頼感あるいは安心感情報公開密接不可分関係にあることについての認識が不足していたこと、あるいは事故対応を指揮する立場の者が十分その役割を果たし得なかった、それから十分な人的支援が行われたとは言えない、こういうふうなことを指摘いたしております。  それから、事故発生時の原子力安全局対応でございますが、これにつきましては、本文に列挙いたしておりますが、これは二月九日に出しました資料を再掲しているというところがほとんどでございます。しかしながら、今回の事故につきましては、能動的対応に現地の運転管理専門官の行動などが欠ける点があり、事故の際の正確かつ迅速な情報把握ができなかったということにつきましては、非常に反省をいたしているところでございます。  次に、科学技術庁として反省すべき点を五点述べておりまして、これらにつきましては、真摯に受けとめまして、今後の行政に的確に生かしていくということにしたいということでございます。  まず第一点は、温度計そのもの審査でございますが、これを許認可の対象とせずに、自主的活動にゆだねてきたこと。  二つ目といたしましては、先ほど申し上げました事故時の対応につきまして、科学技術庁としても能動的対応に欠ける側面があったこと。  三番目といたしまして、原子力に対する安心感信頼感を得るための努力につきまして、十分地元方々の御期待にこたえるような形で努力をしてこなかったのではないか。  それから、情報開示につきましては、やはり動燃情報開示をためらわせるような雰囲気を十分科学技術庁把握をし切れず、それについて適切な指導をしてこなかったこと。  それから最後に、経営面についての科学技術庁監督が不十分であったということでございます。  これらいろいろと調査をしました結果につきまして、これに基づく対応及び改善策を全部で八項目挙げておりまして、一つは、二次系の温度計の取りかえと科学技術庁による審査及び検査。ナトリウム漏えい後の措置充実運転員が的確に判断をし、的確に行動できるような支援システム、これはハード、ソフト両方ございますが、そういうものを十分やること。事故時の対応のための体制の整備。動燃自主保安体制あるいは意識といったものの強化科学技術庁によります安全性点検。これは、安全性点検そのもの動燃がやるわけでございます。その確認体制を整備していくこと。運転管理充実強化運転管理専門官強化等でございます。それから、原子力に対する安心感信頼感確保というふうなポイントについて指摘しているところでございます。  以上でございます。
  10. 井上喜一

    井上委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。原田昇左右君。
  11. 原田昇左右

    原田(昇)委員 今回の「もんじゅ」の事故でございますけれども、これは「もんじゅ」のみならず、原子力開発利用全般に対する国民不安感を増大させることになっておると思うのです。どうしてもこれは一刻も早く事故の実態を明らかにするとともに、反省すべきことは反省し、改善すべき点は改善して、原子力行政の立て直しを進める必要があると思うのですね。そうでなければ、国民不信感によって原子力開発利用というのはもう極めて制約されてくるおそれすらあるわけでありまして、全国的に今原子炉をもって発電をやっておるところ、市町村においても大変な影響が出てくる兆しがあります。  したがって、今回の報告作成は困難であったと思うわけでありますけれども、私はこのような観点から報告書を見ますと、疑問や不十分な点がたくさんあるのではないか。まだ私は聞いていないのですが、この報告科学技術庁報告で、原子力安全委員会というのはどういうことになっているのですか、この報告。後でまだ報告があるのでしょうか。
  12. 宮林正恭

    宮林政府委員 原子力安全委員会の方につきましては、五月二十三日に開催されました臨時会議におきまして、科学技術庁の方から、先ほど御説明申し上げました報告書中身につきまして御報告したところでございます。  これに対しまして、原子力安全委員会の方は、既に設置されております高速増殖原型炉もんじゅナトリウム漏えいワーキンググループにおいて、この中身について具体的に今後検討を進めていくというふうな考え方を表示しておられますほか、科学技術庁あるいは動燃両方とも、引き続き調査を行って、報告を逐次取りまとめていくように、そして原子力の安全に関する国民技術的信頼社会的信頼を回復するために万全を尽くすことを期待するというふうなことを述べておられるところでございます。
  13. 原田昇左右

    原田(昇)委員 ちょっと、どうも明確でないじゃないですか。私が聞いているのは、原子力安全委員会報告するのか、しないのか。
  14. 宮林正恭

    宮林政府委員 原子力安全委員会の方としては、調査審議を引き続き行われまして、それで、取りまとめ時期については、これは時期を決めてやるというふうな考え方をおとりになっておりませんけれども、できるだけ早期にやりたいということで、現在鋭意ワーキンググループの方で御審議をされているというところでございます。
  15. 原田昇左右

    原田(昇)委員 できるだけ早期報告をするというように今お答えになったと理解したのですが、それでいいですか。
  16. 宮林正恭

    宮林政府委員 ワーキンググループの座長の方は、二、三カ月のうちにはやりたい、ア・フユーという表現を使っておられるのですけれども、そういうア・フユーという期間の間にやりたい、こういう表現を昨日記者会見でお述べになっているということでございます。
  17. 原田昇左右

    原田(昇)委員 報告するの、しないの。
  18. 宮林正恭

    宮林政府委員 報告されます。報告するとおっしゃっております。
  19. 原田昇左右

    原田(昇)委員 そうすると、この報告は中間的なものだというように考えていいですね。大臣、どうなんですか。
  20. 中川秀直

    中川国務大臣 今原田委員お尋ね安全委員会のことは、あくまで独立した第三者機関でございますので、私どもが言及する立場にございませんが、安全委員会から、やはり同じような分野の仕事をしておるわけですから、伺っているところでは、二、三カ月のうちに報告書をおまとめになる、このように聞いております。  それから、私どもの五月二十三日に報告したものは、今お尋ねのとおり、最終報告ではございません。この時点でわかったことを二月九日に引き続いて報告をさせていただいたということでございまして、まだまだ五、六点、調査実験、いろいろなことを分析をしなければならぬ点がございますし、また改善策も四十数項目にわたっておりますけれども、この具体化についてもまだまだいろいろ検討を加えていかなければならぬこともございます。あくまで中間的なものでございます。
  21. 原田昇左右

    原田(昇)委員 それでは、少し細かくなりますけれども、今度の事故の内容について触れておる点を読みますと、要するに、このナトリウム漏えい原因として、温度計さや設計に問題があった。すなわち、参考にした当時の米国機械学会技術基準を正確に理解しないままに設計を行ったということを挙げておられるわけですが、この設計者はだれなのですか。つまり、動燃の人なのか、だれが設計したのですか。  それから、勘違いしたということで、チェック体制はできているのか、できていないのか。上司がチェックしているのか、していないのか。読売新聞の社説では、「折れた温度計を指して、「わざわざ壊すために作った試験材料のよう」」なものだと学者に指摘されておる。もう全くぼろくそですよね。それで、「原子力部品を手掛ける町工場経営者からは「機械屋としての常識に欠けた設計」」だ、町工場おやじさんがそう言っている、酷評されておるわけであります。私は、これはだれが見てもわかるようなミスではなかったのかな、それをチェックできなかったのはどういうわけかな、こういうように思うのです。  今の点、設計者はだれなのか、そしてチェック体制はどうなっているのだ、二つについて明快に答えてください。ぐだぐだ答えないで、質問は単純ですから、単純に答えてください、明快に。
  22. 中野啓昌

    中野参考人 中野でございます。  先生の今お尋ねは、最後に確認されましたが、二点かと存じます。設計はだれがやったのか、そしてそのチェック体制はどうなっているのかということかと存じます。  一義的には、設計メーカーが実施いたしております。この実施に当たりましては、動燃がこの仕様を提示いたしまして、その仕様に基づきメーカー側が、特に機械的な強度とかそういったものを勘案しつつ設計を行ったわけでございます。  そこで、そのチェック体制がどうなっているのかというところに移りたいと思いますが、私ども、まず動燃事業団の中に「もんじゅ」の設計、製作、施工管理に当たりましては、まず品質保証管理規程というものを大枠として設けております。そして、そのもとに「もんじゅ品質保証計画書」というものを定め、これに従いまして各種の規定とか要領書などをつくっておるわけでございます。この設計に当たりましても、当然こうした要領書参考にしつつやったわけでございます。  この要領書と申しますのは、軽水炉の実績とかあるいは日本工業規格、JISでございますね、そういったものを取り入れてつくっておるわけでございます。  そのほか、高速炉用構造等技術基準に従って動燃の側で、そういう品質保証体系の中でそれぞれの情報が出され、それをチェックしそして確認していくというやり方をしておるわけでございます。もちろんその体系の中に、各メーカー品質保証体系もそのもとにつくられておりまして、そこで一つ一つ管理していくことになっておるわけでございます。
  23. 原田昇左右

    原田(昇)委員 要するに、メーカーがやったのだ、設計したのですよ、それで、メーカしにもチェック体制があるし、こっちにもあるのだ、こういうことだと思います。  では、メーカーはどこですか。この際、メーカーの名前を明らかにしてもらいたい。このような初歩的なミスをやるようなメーカーというのはどういうメーカーですか。  それから、チェック体制。こういう事故があると、すぐ科学技術庁なり監督官庁は、許可制にするとか、一つ一つ科学技術庁でチェックして許可しなければつけられないようにするとか、そういうことになりがちなのですが、私は必ずしもそれはいいとは思わない。むしろ自主的な責任を持つ体制にして、そのチェック体制監督官庁基準でチェックするというようなことが望ましいのではないか。余りがんじがらめ規制強化するというのは、必ずしもいいことにならないと思うのです。  その辺も含めてこれから検討されると思いますけれども、いずれにしても、今のチェック体制についてはもう少しきちっとしないと、町工場おやじさんが見てもこれはおかしいな、折れるよというようなものを外へ出してしまうというのは、余りにもおかしいのではないかと思うのですね。  第一、東海村か何かで試験をやっているわけでしょう、もう事前に。そのときになぜこれをやらなかったのかな。それから、同じ設計さやはなぜ一カ所だけ壊れたのでしょうかね。ほかにもあるのでしょう、ずらっと。これだけが壊れたというのは、それもわからない。ちょっとその辺、御説明いただけますか。
  24. 中野啓昌

    中野参考人 お答えいたします。  まず、先生最初に御質問ございました、どこがこの設計を行ったのかという点でございますが、この二次系のナトリウム配管部分につきましては、全体として株式会社東芝が受注いたしてございます。特に、この温度計部分に関しましてはIHI、石川島播磨が担当して設計をいたしました。  それから先生お尋ねの、大洗等であらかじめ実験を――先生東海とおっしゃいましたが、主体的には大洗工学センターというところでやっておりますので、やらなかったのかということでございます。  私ども、この施工設計に当たりましては、特に高速炉の場合、注意しなければならない重点項目として、これはまた高速炉の特徴でもあるわけでございますけれども熱応力に対する十分な配慮、それから溶接部に対する十分な配慮、この二点に非常に重点的に視点を置いて設計施工をやってきたわけでございます。もちろんカルマン渦等についても、今回の事故原因になりました渦等についても検討はいたしましたが、当時の知り得る情報の中で、ASME情報をもとに設計をいたしたわけでございまして、そのASMEの方法といいますのが一般的に使われておりましたので、特に取り上げて試験をするという必要もなかろうということで、試験は実施いたしておりません。  それから、この一個だけなのか、そのほかはなぜ壊れないのか、こういう御質問最後にあったかと存じますが、今後残された問題、先ほど来、大臣それから宮林局長からもございましたが、今後まだまだいろいろ検討していかなければならないということの一つでございまして、なぜこの一つだけが壊れたのかということは、これからの我々の課題だというふうに思っておるところでございます。
  25. 原田昇左右

    原田(昇)委員 今のお答えで十分ではないのですけれども、ともかくこれからどういうように改善するかということが一番問題だと思うのです。  いいかげんな仕事をしているメーカーには今後ペナルティーを科す必要もあると思うのですね。そんなところに仕事をやらないということだって、一つの方法だし、メーカーに依存するのなら、そこにきちっとした改善策をとらせることも必要だし、そういう点も含めて、動燃だけがやるわけではなくて、恐らくはかの部分もみんなメーカーに発注するのでしょうから、その辺をどういうように考えるかということがこれから非常に大事ではないかなと思います。  それから、損害賠償の問題も生ずるのだろうと思うのですが、そういうのはどういうように考えておられるのか。  以上、お伺いをしておきます。
  26. 中野啓昌

    中野参考人 先ほど申し上げ足りなかった点でございますが、いずれにしろ、そういう品質保証体制をつくって、それなりに体系をつくってやってきたわけでございますけれども、結果としてああいう事故を起こしたわけでございまして、今後は、破損に至った品質保証上の問題点を摘出し、品質保証上の監査等によって、再発防止のために、今先生御指摘のように、メーカーの品質保証システムの改善も、我々の改善も含めて実施していきたい、まずそう思っております。  そこで、いわゆるこういったメーカーに続けて発注するのかという先生の御指摘もございますが、こういった考えもあろうかと存じますが、先ほども申しましたように、まだ原因につきましては全部究明し切れたわけではございません。現在究明中でございます。したがいまして、すべての解明が終わりましてから改めてメーカー対応について総合的に判断したい、かように現在のところ考えておるわけでございます。  それから、損害賠償上の問題について先生最後お尋ねであったかと思いますが、本契約は瑕疵担保期間内における損害賠償責任について定めがございます。本事故は実は瑕疵担保の終了後に起きたものでございまして、具体的に申し上げますと、設備の引き渡しが平成四年十二月十六日、それで、そこから瑕疵担保が発生いたしまして、終了いたしましたのが平成六年十二月十五日でございます。こういったこともございますので、先ほど申しましたように、いずれにしろ原因究明に関するすべての解明が終わった時点で再度総合的に考えていきたい、そのように思っておるところでございます。
  27. 原田昇左右

    原田(昇)委員 しっかりやってください。  それから、先日行われました、何かナトリウム漏えい実験というのを拝見したのですが、これは大変ショッキングなんですね。鉄板まで穴があいてしまうのですね。これ、どうなんでしょうか。今までなぜそういうことをやっていなかったのか。床を鉄板にしてその下にコンクリートがある、穴があいてコンクリートまで入ってしまったらこれは大変な始末になることは明らかでありまして、そういう点を、材料は、いや、これはいろいろテストしてこれならもう大丈夫というような材料を使わないのかなという点とか、あるいは窒素を封入しておけば大丈夫だとか、そういうようなことについてはどういうふうに考えておられるのですか。
  28. 宮林正恭

    宮林政府委員 御説明させていただきます。  まず、ナトリウム漏えい燃焼実験の結果でございますが、同封をしてございます資料をごらんいただきたいと思います。  ちょっと図面の方で一番最後の図を見ていただきますと、実験前の床ライナーといいますか床の状況はこういう図にありますような状況で、熱電対の保護管とかサンプリングポットといったものが置かれているところでございまして、その後ライナーなどが破損した部分が下の図面でございます。こういうふうなことでございますので、この中身につきましては今後タスクフォース等で検討させていただきたい、こういうふうに考えているところでございます。  それで、窒素封入という件につきましては、こういう御意見が専門家の中にあるということは私ども十分承知をいたしております。これにつきましては一つの改善方法であろう、こういうふうに私ども感じているところでございますけれども、今回の、先ほど申し上げましたような実験におきましては、これは必ずしも当該部分につきまして、特に床ライナーの部分につきましては「もんじゅ」の実態とは必ずしも一致しないような状況の中で行われているということがございますので、そのあたりのところも十分吟味をいたしまして総合的に今後タスクフォースの中で判断をさせていただくということで、窒素封入ということも必要かどうかということにつきましては十分検討をさせていただきたい、こういうふうに思っておるところでございます。
  29. 原田昇左右

    原田(昇)委員 動燃に聞きたいのですが、どうも今の局長の話はふわっとしてしまっていてわからない。私が聞いたのは、鉄板に穴があくような状態で鉄板を使っていいのですか、もっと新しい材料を使ったらどうですか、それから、新しい材料が見つからなければ窒素封入したらいいんじゃないのか、そういうことを少し端的に、どう考えているのか、専門家としての話を聞かせてもらいたい。素人はそう思って来るわけだから。
  30. 中野啓昌

    中野参考人 先生お尋ねでございますので、技術屋としての視点からお答えをさせていただきますと、そういうような実験を過去にやったのかという御質問が最初にあったかと思いますが、私どもナトリウム漏えい燃焼試験に関しましては、十年ほど前から大体百二十ケースぐらいについてやってございます。非常に大量のナトリウムを外に漏出させること、一方非常にわずかなナトリウムしか出さないということまで含めまして、幅広くやってきたわけでございます。  この百二十回の間にかなり、百五十トン規模ぐらいで出したこともあるのですけれども、それでも当時床に穴があいたという実験例はございませんでした。今回の実験では、今宮林局長からもございましたけれども、これまで見られなかった現象、例えば床ライナーの温度が極めて高くなったとか反応生成物の異なった堆積状態、下にたまったものが「もんじゅ」のときのようにこんもりとたまらないでほとんど流れた状態になったとか、実際の場合とかなり違った現象が見られました。したがいまして、実際の原子炉でこのような現象が起こり得るのかどうなのか、それから実機とこういった実験の場合とではどういうような差が出てきたのか、この辺を今詰めておるところでございます。  したがいまして、今後、得られましたデータを詳細に分析いたしまして、タスクフォースの御指導を仰ぎつつ解析していきたい、これがナトリウムに関することでございます。  それからもう一点先生御指摘の、窒素雰囲気などにして封じ込めたらどうだ、こういう御指摘であったかと思います。  先生御案内のように、「もんじゅ」の場合にはナトリウムの冷却系として一次系と二次系がございます。一次系の場合は、これはすべて、ナトリウム系統を含めて窒素雰囲気の中に存在してございます。それから、二次系のナトリウムは、これは今先生おっしゃるように普通の空気の状態の中に置いてあるわけでございます。もともと、原子炉を運転し原子炉を管理していく上で我々としてはできるだけ保守点検がしやすいような状況に設計施工していくというのが基本でございます。  そういう意味から、二次系を先生御指摘のように窒素雰囲気にいたしますと、通常の点検が実はできなくなるといったような反対側の効果も出てまいります。そのあたりを考えながら、一次系は通常近づきにくい、一次系は放射能が非常に高うございますから近づきにくい、だけれども二次系は普通放射能が含まれておりませんので、現在の設計ではそういう考え方でできておるわけでございます。
  31. 原田昇左右

    原田(昇)委員 それでよければいいのですよ。私は、今の実験は特異な話で、実際はこんもりと盛られるから全然損傷はしないんだなんというような推定をしておられるとすれば大変おかしな推定だな、実験のときそういうことが起これば実際でも起こる可能性はなきにしもあらずじゃないですか。そういう場合、それに耐える材料があるのかないのか、ステンレスにすれば間違いないのだろうけれども、しかしステンレスにしたら相当コストが高くなるのだろうからもっと安い材料を見つける実験をいろいろ繰り返す必要がないのかどうか、もしないとすれば窒素封入も考えなければならないのじゃないか、こう申し上げた話なんですよ。ぜひ御検討をいただきたいと思います。もう少し実験を繰り返してやっていただかないとこれはもう非常に不安ですから、その辺のスタンスを決める上で大変大事なことではないかな、こう思って御質問申し上げた次第であります。  そこで、科学技術庁の現地事務所を拡充して責任をとれるようにするということですが、それでうまくいくのですか。そんな中途半端なことをするより、むしろ動燃なら動燃がぴしっと責任をとる、その監査体制なりなんなりを科学技術庁がしっかりやる。要するに自己責任である程度やってもらわないと、こんなものいつまでたったって進歩しませんね。先ほども申し上げたけれども余りがんじがらめ規制をして、一つ一つ科学技術庁の判こをとらなきゃだめだ、判こを押す人が第一自信がないんだな、何を持ってきたのかわからない。それならむしろ、一番経験のある、しかもこの道において一筋でやっておられる人たちの責任体制をしっかりさせることが大事じゃないですか。私はそう思いますよ。その点はどうでしょうか。
  32. 宮林正恭

    宮林政府委員 お答えさせていただきます。  先生御指摘の、動燃自主保安体制をしっかりして、そして動燃責任を持ってやるということ、これは原子炉規制法の基本的な考え方でございます。したがいまして、それはもう当然そういうふうに指導もし、要請もしていきたい、こういうふうに思っております。  しかしながら、やはり今回の事故のときの反省といいますか、それにかんがみまして、私どもはむしろ現地における外部とのいろいろな接触点が、特に安全規制サイドを十分持っていなかった、こういうふうなことなどから、現地に安全管理事務所を設け、所長として本庁の課室長クラスを充てる、それから、これまでの運転管理業務そのものに加えて、地方自治体との連絡とか、あるいは運転管理業務に関連いたします対外対応ということについて一定の責任を持つ、それからまた、現地で実際に、これはもう私ども想像したくないことでございますが、何かそういうトラブルが起こるというふうなことになりましたときは必要な措置がとれるように体制を整備しておく、こういう趣旨でございまして、先生の御指摘のとおり、基本的にはやはり動燃が全責任を持ってやっていただけるような形にぜひやっていきたい、こういうふうに思っておるところでございます。
  33. 原田昇左右

    原田(昇)委員 新理事長が就任されたわけでございますけれども、今後、動燃の体質改善についてどのような方針で対応していかれるか、御決意を承りたいと思います。同時に、今まで動燃のこの事故に対する対応が非常に悪かった。事実を隠ぺいしたりなんかしたということは、非常に心証を悪くし、信用をなくしたわけですね。そういったことに対しても、あなたのこれからのお考えを聞かしていただきたい。
  34. 近藤俊幸

    近藤参考人 御指摘のように、「もんじゅ」の事故によりまして、地元を初めとして国民皆様に、動燃に対する技術的な信頼あるいは社会的な信用というものを失いまして、不信、不安を与えたことを深く反省しております。現在、「もんじゅ」につきましては徹底した原因究明を行っているところでございますが、これからの信頼回復に向けて、以下三つの基本方針で取り組んでいきたいと思っております。  一つは、安全に徹した動燃にしていきたいということでございます。これは当然のことでございますが、安全に徹した動燃にしていきたい。プルトニウム等の核物質を取り扱う事業団としまして、放射線安全並びに核不拡散に対する取り組みはもちろんのこと、ナトリウム技術、これを初めとする施設全般の安全確保についての取り組みを強化してまいりたい。特にこの機会に、より安全性を高めるために、設計やその基本的な考え方など根源に立ち返って見直し、総点検を行い、一つ一つ確実に対処していきたいと思っております。  それから二番目には、開かれた動燃にしていきたいと思っております用地元を初め国民皆様の理解と信頼、また今日では国際的にも理解を得るということが大事な時代でございます。そのためには徹底した情報公開が不可欠であると認識しております。情報公開に努め、開かれた動燃にしたいというのが二つ目でございます。  それから三番目には、地元重視の動燃にしたいと考えております。プルトニウムを取り扱う施設など社会的に危険視されております施設を受け入れていただいている地元、これを重視して、地元の声をよく聞き、事業を推進していくということが非常に重要なことだと認識しております。地域の方々安心感を持って事業団を受け入れていただくよう、最善の努力をしていくつもりでございます。
  35. 原田昇左右

    原田(昇)委員 ありがとうございました。大いに頑張ってください。  それから、長官に最後に伺いたいのですが、原子力について、この「もんじゅ」の事故以来どうも国民原子力開発利用に関する信頼が少し薄らいだような感じが見られるわけです。これに対して政府としてどういう方針でおやりになるのか。何か原発地域では住民投票をやるとかいろいろなことで、非常に不穏な動きが出ておるわけであります。この際、しっかりと開発利用についての国民の理解を求める必要があると思うのです。安全行政に対する信頼を回復する、そのために長官としてのお考えをぜひ伺っておきたい。それで質問を終わりたいと思います。
  36. 中川秀直

    中川国務大臣 委員御指摘のとおり、この事故を契機に原子力全般に対する信頼というものが相当損なわれてきているということは、もう大変重いことだ、重大なことだ、こう受けとめております。  既に御案内のとおり、そういう意味で原子力委員会のもとに原子力政策円卓会議というのを設けまして、また三県知事さんの御提言も受けまして、そのような取り組みを今一生懸命始めさせていただいております。既に東京で三回、また京都で一回、四回開かせていただきました。いろいろな御意見が出ておりますけれども、これから五回目以降は、問題点も絞り込みまして、さらに深い議論をしていただこう、こう考えております。今と未来、そして日本のみならず世界、安全、環境、エネルギー全般について共通認識というものは何なのだろうかということを徹底的に御議論をいただくということがまず一番大切なことだ、こう思っております。  また、原子力モニターの方も、既に千名の方、従来長計のときは五百名でございましたが、倍の千名強の方に御委嘱を申し上げました。七月の中旬ぐらいまでにいろいろ御意見をいただいて、これは一般公募でございますが、円卓会議にその御意見も反映してまいりたい、こう考えております。  シンポジウムや地域フォーラム、また敦賀で、私も参りました「大臣と原子力を語る会」等々の取り組みも今続けさせていただいておりまして、いずれにしても、徹底した情報公開に努めながら、そしてまた「もんじゅ」に関しては徹底的な原因究明を進めながら、こういう幅広い分野の方々の御意見を積み上げてまいりまして、その論点というものを適切に政策に柔軟に反映させていくという努力を続けてまいりたい、このように考えております。そういうことしかまた信頼を回復する方法はない、このように考えております。
  37. 原田昇左右

    原田(昇)委員 終わります。ありがとうございました。
  38. 井上喜一

  39. 小野晋也

    ○小野委員 よく、禍福はあざなえる縄のごとしというふうに申します。不幸だと思ったことが、後になってみれば幸せのもとになってみたり、幸せいっぱいだと思っていたことが、その同じことが不幸の種になったり、人生の不思議さ、また、深さをあらわしている言葉だと思います。  昨年十二月、「もんじゅ」の事故が起こりました。そして、その後の動燃科学技術庁対応等には、いろいろな問題点も指摘されてまいりました。私は、最初は、この高速増殖炉の開発という面から考えてみれば、傍流の部分で、しかも、その中でもささいな部分で非常に瑣末なトラブルを起こして、その事故処理の不適切さから必要以上に問題を拡大をしてしまって、この未来の日本のエネルギー開発が、計画がおくれざるを得なくなっている状況に対して、一面、憤りすら覚えるような時期もございました。  しかしながら、時がたつにつれまして、この事故は、日本の今後の原子力開発を大きく高い見地から眺めてみるならば、逆に天の恵みともいうべき事故であったかもしれないと、皮肉な言い方ではございますけれども、そんな気持ちにもなってきている次第でございます。  それは、今回の事故が、人身を傷つけることもなく、人命を失うこともなく、そしてまた、周辺環境に対して何らの汚染も引き起こすこともない小さな事故でございました。しかしながら、その小さな事故が大変大きな問題になることを通して、これまでの原子力行政あり方、また、安全という問題を改めて問い直そうというような問題、また、事業者と地域との関係事故想定の持ち方、そして、その対応というものがこれでいいのかというような見地等々のいろいろな問題が、今回のこの事故を通して表面化をいたしまして、むしろ、ナトリウムが漏れたということ自身以上に、原子力開発を推進するということについての本質的な部分でこの問題が問い直されたということが非常にいい効果、意味を持っていたのではなかろうかと思うわけでございます。  私は、以前の当委員会でも申し上げたことがあるわけでございますけれども原子力開発というのは、もともとは非常に日本の皆さんの持つ原子力へのアレルギーというものも関与したのでありましょうけれども、開発者も憶病であったと思うのです。そして、細心に、慎重にその安全問題というものに対して取り組みを進めてきたというふうに私は思っております。しかしながら、数十年の実用期間を経てまいります中で、これで、いつしか日本の原子力というのは安全であると思い込み、そして、それがさらにおごりにつながってくる部分が散見されるようになったのではなかろうかと思います。そしてさらに、システムが当初のものに比べればどんどん大型化する、また一方、いろいろな分野の開発を進めるに従って複雑化もしてくるということの中で、全システムに対して細かく気配りをしながら問題をチェックできるという人材もだんだん少なくなってきているという現実も起こってきているのだろうと思います。  今回は、これらの問題の中にこの事故発生し、そして、予想外の事故であったということを前提にして対応の面にも問題があらわれたということでございましょうから、そのようなことを考えますと、本質的な部分の重大な問題が今回あらわになった、だから、「もんじゅ」問題ということではございますけれども、むしろ日本の原子力政策全般としてこの問題を真剣にとらえるべきだろうと考えている次第でございます。  例えとしてよくないかもしれませんけれども、小さなけがをして、入院しろと言われて入院したその患者にしてみれば、何だ、このぐらいのけがで何で入院しなければいけないんだと不平不満を言っているわけでありますけれども、ついでにそこで検査してみなさいと言われて検査してみたら、もっと大事な、命にかかわるような病気が見つかったというような例えに今回の場合は当てはまるのではなかろうかという気持ちがいたしております。  したがいまして、今回の事故は、「もんじゅ」の研究開発を進めるという一つのプロジェクト単位で見るならば、開発スケジュールが大幅におくれたわけでございますから、大変いろいろな課題を背負い込んでしまったわけでございますし、今後、改善措置をいろいろと打っていかれること、また、住民の間の不信を解消していくことなど、かなり多くの、幾多のイバラの道を歩まねばならないという事態に今至っていると思います。  しかしながら、目を大きく広げれば、この高速増殖炉実用化というのは、まだ二十数年の時間的余裕を残した計画でございますから、多少のおくれがあったとしても、十分過ぎる時間がまだ残されているということもございますし、また、この事故を通して、より多くの教訓を得られるならば、むしろこの失敗が逆に財産になってくるという見方もできようかと考えております。  文殊菩薩の知恵とは、同じ一つの事柄をいかにとらえ、そして、いかに対応していくかを教える知恵であろうと私は考えております。この問題に当たって、小さく縮こまった矮小な問題として処理するのではなくて、むしろ未来の人類に対する大きな福音となるように、そんな切なる思いで、広く、大きく、深く、考え得る限りの問題を考えていただいて、これから勇気を持って、「もんじゅ」も、また日本の原子力行政も立ち上がっていただきたい、心から念願を申し上げたいと思う次第でございます。  大臣には、ことしの一月の御就任でございますから、「もんじゅ」の事故直後の御就任、そして、多くの御批判のあらしの中でいろいろな御苦労をしてこられたものと思います。そしてまた、いろいろな面でこれまでの原子力行政を見直し、いろいろな対策を打ち出してこられた、この数カ月であったかと思います。  万感の思いを持たれながら、きょうはこの席に座っておられると思うわけでございまして、せっかくのこの「もんじゅ」を中心にした今回の委員会でございますから、この事故、そしてその後の対応の中で、どのような教訓を感じてこられたのか。そして、その渦中で、人間として率直に感じられたものにどういうものがあったのか。さらに、今後の決意において、どういう決意を持って取り組んでいこうとしておられるのか。ぜひ、これは長官自身のお言葉で、国民に向かって語って  いただきたいと思う次第でございます。
  40. 中川秀直

    中川国務大臣 委員には広範な見地からの御意見を賜りましたことは、心から感謝をいたします。  まず、今度の事故に何を教訓として得たかということでございますが、現地へ参りましても、また当委員会におきましても、また、さまざまな場でも申し上げていることは三点ございます。  やはり、原子力政策を進めていくためには、地元の皆さんの御理解なしには進められぬぞという意味で、原子力施設と背中合わせで暮らしておられる方々立場に立って、地元重視ということで物事を考えていかなければならぬというのが一点。  二点目に、これはもう就任当初から申し上げておりましたが、これは全般もそうでございましょうけれども、これからの日本の発展というものも、やはり健全でダイナミックな市民社会の発展にかかっておるわけで、そういう意味で、原子力のみならず、情報公開説明する責任、義務というものは、行政や、また事業者や、そういうものに一層求められている。特に原子力の場合は、安全は市民のものでございますので、命にかかわる、そういった心配というものについては、できる限り正確な情報をわかりやすく、正しくお伝えをしないとまた信頼を得られないという意味で、情報公開の重要性ということを二点目に申し上げております。  また、先般のモスクワの原子力安全サミットでも宣言として確認されておりますけれども、やはり技術開発、特に原子力開発には絶対ということはあり得ないわけでありますが、しかし、そういうことを謙虚に受けとめて、何よりも安全を最優先に物事を考え臨んでいくという認識に立って、事故発生を抑えるべく技術者の良心に基づく英知を結集して、最大限の努力を傾注するということが重要であるという、そういった技術に対する安全最優先の謙虚さといいましょうか、そういうものが私の教訓でございます。  最後に、原子力研究開発あるいは原子力開発そのものに、あるいは発電のシステムそのものに本来的に絶対安全ということは、委員御指摘のように、ないわけでございます。常に潜在的な危険性を持っておるわけでございまして、それをありとあらゆる技術的手段で安全にするという努力を続けていく、これが原子力の宿命であろう、このように思います。その意味で、あくまで技術的な安全というものは、発電所周辺に放射能被害を及ぼさないということを目標に多重の安全対策を講じていくということであろうと思います。  しかし、また、人は誤り、機械は故障するということを多重防護の積み重ねで防止する、そういう技術的安全性と、一方、一切の故障を許さないという社会的な安心みたいなものでしょうか、そういう社会的な安全みたいなもの、この落差をどう埋めていくかということが今問われているような気がしてなりません。その落差を埋めるありとあらゆる努力を続けていく、そういうことが今求められているのだろうと思いますけれども、それをどう総合的に判断していくか。また、よく申しておりますけれども、何かあればすぐとめますよ、あるいはまたすぐお知らせしますよ、絶対うそはつきませんよというような、そういう中から信頼をまたいただく。その落差をどう埋めていくかという努力を今円卓会議でも御議論もいただきながら、また関係者みんなで真剣に取り組んでいかなければいかぬというふうに考えております。非常に抽象的ですが。
  41. 小野晋也

    ○小野委員 今大臣は、完全な安全、安心と、現実はそうはいいながら問題が起こり得るというこの落差をいかに埋めるかということが原子力行政の最大の課題であるということをおっしゃられまして、それを実現する姿勢として、情報公開であり、謙虚であり、そして安全に対する慎重さというような要素をお取り上げになられました。私は、今お話をお伺いしながら、先日亡くなられました司馬遼太郎さんの言葉をちょっときょうは準備させていただいたのですが、まさに大臣がおっしゃられることと一緒だなという印象を持ったわけでございます。  それはどういう言葉かと申しますと、司馬遼太郎さんが日露戦争のころのことを描いた文章でございますけれども、ちょっと御紹介をさせていただきたいと思います。   日本海海戦勝利を経て、日本がロシアに勝利した後、大山巌、児玉源太郎は、早期講和を戦勝にうかれる東京に要請した。  それは、彼らが日本の国家は、まだ、ひ弱なものでしかないということを、徹底的に認識していて、それを戦略と政略の基礎にしていたからである。それだけではなく、彼らは自分達こそが、日本国家を作ったという実感があり、国に対して薄いガラスの器を扱うような感覚があり、それに対する責任意識も強い。  弱者だから、常に臆病で、常に危機感があり、綱渡りのように、一歩踏みはずしたら奈落の底だという意識が、彼らをして、知者たらしめた。 という文章でございます。  人間というのは、またいかなるものであれ組織というものは、悲しいことでございますけれども、厳しい環境を一度脱して、他人から褒め言葉をいただくような環境になってくると必ず油断が出てくるものでございます。また、その油断とともにおごりも出てくるところがあると思います。しかしながら、大きな力を持つ者は、その責任において決して細心の注意を怠ってはならないし、またおごりを持つような人生姿勢を持ってはいけないというふうに私は思います。  大臣は以前、実体がないにもかかわらず期待だけで膨らんだバブル的なものは、経済であれ政治であれ必ず破裂してしまうのだということをあるテレビ討論会の席で言っておられたのをお伺いしたことがございます。私は、この原子力の問題におきまして、実体として、実質として私たちが決して忘れてはならないものというのは、絶対的安全と世界人類への貢献という目的意識、この二点であろうと思います。この両者を忘れて表面的成功に浮かれるとするならば、それは必ず、力を持つがゆえにバブル的感覚に陥りがちである、そしてそのバブル感覚は必ず大きな失敗を導き出してしまう、こう感じているわけでございます。今回の事故報告書を全編読ませていただきましたけれども、技術的解明、また科学技術庁自身の問題、動燃の問題、さまざまな視点が持たれているわけでございますけれども、もう一つ、やはり本質の部分にさかのぼってどうあるべきかという議論もこれから必要であろうかと考える次第でございます。  ところで、最近、京セラの会長の稲盛和夫さんが「成功への情熱」という本をお出しになられました。これを私は読んでみまして、京セラという会社が、アメリカの企業、経営がうまくいかなくなった企業を買収したときにまず何をしたかというと、心から相互に信頼し合う関係をつくり、そのために基本的な思想における共有関係を持つことの必要性を唱えたということでございました。アメリカという国は非常に個人主義的な国でございますから、思想の面まで、親会社といいながら、そんなものを持ち込んでくるということに対しては会社内挙げて大変な反発があったそうでございますけれども、その反発を超えて説得に努力をしながら最終的に役員皆さんの共感を得たときに、この会社は見事に立ち上がって立派な収益を上げる企業になった。その実績をもとにして、アメリカで出版した本をもう一度日本語に訳したのがこの本だということでございます。  この本の中で基本を貫いている部分一つの柱に、成功の方程式というのがあるわけでございます。それはどういうものかというと、あるものの結果、ここでは「人生の結果」ということで書かれているわけでございますけれども、それは「考え方×熱意×能力」であるというのであります。そして「熱意」や「能力」というのは、全く何もないならゼロである、一番フルに発揮したら一〇〇である。だから、ゼロから一〇〇までの幅を持つのが「熱意」であり「能力」である。ところが、もう一つ残りました「考え方」というのは、これは悪い方向に「熱意」と「能力」を持って作用すればマイナス一〇〇になってしまうんだ、それに対して、いい方向でベストを尽くしてやればプラス一〇〇になる。だから、マイナスからプラスまでの非常に幅広いものを含むものであって、まず一番大事なのはこの「考え方」の部分ではなかろうかということを語っているわけであります。  そこで、この部分に非常に私は示唆を感じたわけでございますけれども、日本はいろいろな大きなプロジェクトを推進するときに、外国からその技術体系を導入してまいりました関係上、その管理手法というものも同時に外国から輸入をしている部分があると思います。その外国というのは多くの場合に、日本の場合はアメリカという国でございましょう。ですから、非常にアメリカ的な個人主義的な考え方をもとにして、大きなプロジェクトにいかにトラブルが少なく、また期日内にそれを実現できるかという視点に立つプロジェクト運営をやってきたように私は思います。恐らく、今回事故を起こしました「もんじゅ」の開発におきましても、かなりの部分このアメリカ流の管理手法を導入しておられるだろうと思っております。  しかしながら、この稲盛さんの本を読んでみますと、むしろ私たちに今必要なのは、そのドライな手法というものを超える開発者間の心の交流であり、また考え方の共有であり、そして全体を個々の人が見詰める視点というものなのではないだろうか、こんなことを感じたわけでございます。技術領域が今大変細分化されてまいりますと同時に、責任や権限もミクロ化をしております。技術者は、自分の存在する場所もよくわからない、一個の歯車として仕事を推進することを余儀なくされております。  私は、このようなビッグプロジェクトの管理手法をこの際やはり見直すべきではなかろうかということを感じている次第でございます。研究者や発注者、開発者、施工者、いろいろな人が絡みながら大きな計画を動かしてまいるわけでございますけれども、その皆さんが、単に全体の中の一部を担う存在というのみではなくて、全体として大きく考え方が共有されながら、ある意味では一つの方向に向かっての運命共同体であり、さらに言うならば使命共同体であるというような認識を涵養しつつプロジェクトを進行させるということを日本的な管理手法として再認識をする必要があるような気持ちがしております。  この報告書を見ますと、マニュアルを再点検をして、マニュアル上でトラブルが起こらないようにという観点から今後の方向を考えておられますけれども、それのみではなくて、先ほど言いましたように、開発側の皆さん方が心の共有をいかにしてなし得ていくのか、また、仲間として、他人の領域であったとしてもおかしな部分についてはきちんと指摘をし合っていきながら、よりよきものをつくっていくというような気持ちを持ち合うような運営というものが実現できるためにはどうしたらいいのかというような観点をこれから大事にしていかなくちゃならないような気持ちがしているわけでございます。  ちょっとこれも抽象論に終始するようなお話を申し上げてしまったわけでございますけれども、大臣におかれましては、このような視点から、開発側の皆さん方が心や考え方を共有し合うような体制をつくっていくというようなことに対しまして、どのような御所見をお持ちになられますでしょうか。
  42. 中川秀直

    中川国務大臣 ただいま小野委員御指摘の点は極めて重要な点だと思います。もちろん「もんじゅ」の事故に関連してのお尋ねでございますから、その限りに置きかえてお答えを申し上げたいと存じますが、やはり高速増殖炉の開発を企図して今日まで進めてまいりました理由というのは当然あるわけでございます。将来にわたるエネルギーというものをどう安定して確保するか。基本的に申し上げまして、我が国の原子力が今寄与しているのは発電比率で三割を超えたということはよく言われていることですが、エネルギーの自給率ということも考えなければなりません。もしすべてを除きますと、我が国の自給率というのは発電のみならずすべてでも六%足らず、こう言われているわけで、そういう点も踏まえながらどう考えるかということで企図されてきたナショナルプロジェクトがこの「もんじゅ」だっただろうと思います。  しかし、御指摘のとおり、そうではありましょうとも、やはり先ほど触れた技術的安全性、多重防護によって絶対放射能被害を起こさないということと、しかし、人は誤り機械は故障するという当たり前のこと。しかし、その当たり前のことを地元の方や国民から見れば、それは単なる故障ではなくて大変なことだ、そういうことも絶対なくしてほしいという願い。これは社会的安心、安全であろうと思いますが、そういう落差をどうやって埋めていくかという姿勢、真摯な努力、誠実な姿勢、そういうものが社会的安心、安全を確保していく唯一の道だと思うのでありますが、そういう安全最優先の考え方で、開発者も、そしてまた事業者も、そしてまた国も、この場合は国、動燃メーカーということになりますが、そういう共通の認識、共通の心、委員御指摘の努力、熱意、考え方、そういうもとで一致団結して臨んでいくということが非常に重要だということが今回のことでも明らかになった、このように考えております。  そういう意味で、今回の事故を振り返って、この認識が十分浸透したかということになると謙虚に反省する点がたくさんある、このように私は思うわけでございまして、今後、こういうものを一層踏まえまして、関係者間の連携、共通の認識考え方、心というものを形成していけるように一致して臨んでいきたい、このようにまた努力をしてまいりたいと考えております。
  43. 小野晋也

    ○小野委員 いい御答弁をいただきまして、本当にありがとうございました。  私どもは、少年時代、アポロ十一号の月面着陸等をテレビを通して見てきた世代でございますけれども、あの当時の、夢を追いかけ人類の可能性を切り開くというような熱気の中に行われたアポロ十一号計画という中で、皆さんが、技術者の人も打ち上げに従事している人たちも心を一つにしながら、その夢に向かい、新しいフロンティアに向かい挑戦している姿は大変感動的なものでございました。技術というものは感動を伴うべきものでありまして、余りにもドライに、余りにも小さくまとめてしまうようなやり方をしてしまうと結果的に逆の部分に問題を引き起こしてしまうというような気持ちがいたしますので、この点はなかなか容易な問題ではないかと思いますけれども、心の片隅にそれぞれの方がお持ちをいただきまして、今後の開発作業に取り組んでいただければと御要望を申し上げたいと思います。  そしてさらに、先ほど大臣の方からも少し触れられました住民に対する問題でございますけれども、やはり私は、住民に対しましてもこの心の共感また一つの使命に対する思いの共有というようなものを本当にやっていかなきゃならないところに来ているのだろうと考えているところがございます。  今回の事故の反省をいろいろと拝見しておりますと、自分たちはこう相手が理解してくれているはずだというような部分というのが結構多かったと思うのですね。科学技術庁動燃の間の連絡体制の問題等は特にその顕著なものでございましたけれども、当然こういうことで動いているのだから動燃はこうするはずだ、逆に、科学技術庁はこういうふうに動いてくるはずだとそれぞれ勝手に思い込んでいただけであって、相互に理解し合っていなかったがゆえにいろいろなトラブルが生じてしまった。これは開発側における問題でございますけれども、まさに開発側と住民または国民という両者の間にも同じ図式が見られているような気持ちが私はしてなりません。  原子力の問題は公開を原則とするということで取り組んでおりますけれども、恐らく開発側にしてみれば、公開ヒアリングも開催しているじゃないか、そしてまた、原発が立地する場所に行けば展示館もちゃんとつくって、この原発はこんなものですよということもきちんと説明しているはずなのに理解しない方がおかしいなというような形の、ある意味の思い込みを持たれている部分があるのでしょう。逆に、住民側にしてみればまた逆の意味の思い込みを原子力発電所等に対してお持ちになっておられるということを考えてまいりましたときに、これからは原子力分野一般の問題として、対住民、対国民、さらにはこの問題というのは世界的問題にもなるわけですから、世界人類というようなところに対して、先ほど申しました考え方共有への取り組みを進めていくということを考えていかなくちゃならないじゃなかろうかと思っております。  この種の問題というのは、プロジェクトが大きくなればなるほど、そして利害関係者が広範に広がれば広がるほど理解を求め、考え方を共有していただく作業というのは困難をきわめてくるということでございますが、ただ、今後の日本のエネルギー政策中に原子力というものを、先ほども少し触れられましたけれども、きちんと位置づけながらやっていこうということを考えるならば、ここを抜きにしてはもう進行しないのじゃないかという気持ちがいたしております。  そこで、お尋ねを申し上げたいのは、住民に対して熱意を持って理解をいただいていく、ある意味では日本の国にとってはこれだけの重要性を持っているのだということの共有をいただくために具体的にどういう形でこの問題を考えておられ、対応しているのかという点についてお尋ねを申し上げたいと思います。
  44. 中川秀直

    中川国務大臣 大変そこのところが今問われているし、また求められていることであろう、こう思います。  精いっぱいまた我々も最善を尽くしていきたい、こう考えている点でございまして、従来からも確かにいろいろな努力を、双方向の意見交換のために、対話のために、勉強会、さまざまな討論会に講師を派遣しましたり、あるいはパソコンネットワークを使ったり、あるいはまた測定器の貸し出しをしたり、情報提供の努力をしてきた、こういうことを聞いておるのでございます。しかし、今日の事態を見れば、質量ともに、また方向、イメージ、スタンス、いろいろなものを含めましてやはり十分ではなかった、このように思います。  そういう意味で、今回モニターの数も、自治体の推薦だけじゃなくて一般公募も含めて大幅にふやして、今御意見を求め始めているところでございますし、また円卓会議も現地でも開催することも考えておりますし、また、批判的な立場方々にも積極的に御参加なさっていただく、私たち専門家ではないのですがという方々にも御意見を出していただいて、共通の認識をどうやってつくっていくかという努力を徹底的にしたい、こう考えております。  私自身、地元にも何回か参りました。新動燃理事長も二回参っておりますが、ありとあらゆる機会をとらえて生のお声を伺い、そしてその立場に立ち、物を考え、そして私どもの考えも、そういうものをお伺いした上で考えさせていただいた考えをまたお伝えをし、そういうことを徹底的に繰り返しながら御理解をいただいて、不断の努力をしていきたい。これは一回理解を得られたからしばらくはもういいのだなじゃなくて、四六時中やはり努力をしていかなければいけないことなのだろうと思います。同時にまた、これは立地地域の地元住民だけではなくて、電力を消費している国民一人一人が本当にみずからの内側の問題として考えていただくような、そういう方向へ持っていかないと、また立地地域の地元方々の御理解もいただけない、このように考えております。
  45. 小野晋也

    ○小野委員 大変根本の議論ばかりで失礼をいたしました。  今長官が御答弁をされましたとおり、「もんじゅ」の問題にしろ今後の日本の原子力政策にしろ、不断の努力を繰り返していきながら、本気で説得をし、本気で一つ一つの問題を乗り越えていく作業なしにはこれからの原子力政策は暗礁に乗り上げてくるような時期にやってきつつあると思います。それだけに、長官を初め科学技術庁の皆さん、動燃の皆さん、その他関係の皆さんが心を合わせながらこれからの困難に立ち向かっていただいて、倒れたものは必ず起こさなければいけません、どうしてもこれを起こして日本の未来を切り開いていかなければならないわけでございますから、皆さんのこれまで以上の御尽力、御努力を心からお願いを申し上げまして、質問を閉じさせていただきたいと思います。
  46. 井上喜一

  47. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)委員 新進党の斉藤鉄夫でございます。  事故報告書、読ませていただきました。この事故報告書によりまして、どういう経過でナトリウム漏えい事故が起きたか非常によくわかりました。そして、その原因温度計さや管の設計ミスにあった。太い部分と細い部分、あれだけの段差がついていれば折れるのは当然だ、こういう議論もあったわけでございますが、この報告書を読みますと、一応流体力学的な振動の計算もされている。そのときにはいわゆる非対称のカルマン渦、この振動が大体百十六ヘルツ、細い部分の固有振動数が二百六十ヘルツ、だからもうこれは全然共振しない、だから段差があったとしても細径のあのくびれで振動による疲労は起こらない、こういう判断をしたというふうなところもございました。  ところが、実際には非対称渦、カルマン渦だけではなくて、大きさ的にはその十分の一程度なのだそうですが、対称渦が生じた。その渦の周期がたまたま細い管、さや管の固有振動数二百六十ヘルツと一致した。それは、摂氏二百度、一〇〇%流量でずっと長いこと試験をしましたけれども、その流体条件での対称渦の周波数と細管の固有振動数がたまたま一致してしまった。小指で大きなつり鐘を動かせる、その原理で共振をして折れてしまった。その対称渦の存在というものを見逃してしまった、そこに設計ミスがあったというふうに私は読ませていただきました。  ところが、この対称渦の存在というのは当時人類が知識として持ち合わせていなかったかというと、決してそうではなかった。その知識もあった、こういうことでございます。ですから、既に存在していた人類の知識を設計に生かせなかったその設計ミス、せんじ詰めればそういうことになるのではないかと思うわけです。ある意味で何でもないところのミス、こういうふうに思います。  最近、科学技術庁の所管するビッグプロジェクトでこういう何でもないところのミスで大きな失敗をするということが続いております。例えば一昨年の技術試験衛星竹型、きく六号、これはアポジエンジンのミス、それから昨年のHYFLEX、これの海没事故、これは縄が切れるという、これも考えられないようなミス、そして今回のこの温度計さや管のミス、いずれもみんなが注目をしているところではないささいなところのミス、こういうふうに感じます。  新しい研究開発プロジェクトですから、すべてがうまくいく、失敗は許されない、こう言うつもりはございません。しかし、新しいこの部分がうまくいくのだろうか、そういうところでうまくいかなかったというのは、これは許されるような気がします、それがうまくいくかどうかを知るために実験しているわけですから。例えば今回の「もんじゅ」でも、二次系のナトリウムと水、これが非常に近くに接する熱交換器、この部分はある意味では人類で初めての試みであったわけです。常陽で成功していたとはいえ、あれだけ大きな規模でナトリウムと水が非常に近くに存在する、そのシステムがうまくいくだろうか、そこでもしうまくいかなかったとしても、それはそれがうまくいくかどうかを調べるために実験しているのですからまだ許せる。ところが、そうではないところで失敗。科学技術庁のプロジェクト、三年連続でそういうことが続いている、これは何かどこかに問題があるのではないか、こういうふうに思うわけです。  宇宙開発事業団、動燃科学技術庁の今進めている大きな科学プロジェクト、その進め方、運営の仕方というのでしょうか、どこかに何か欠陥があるからこういう事故が続くのではないか、こういう問題意識できょうは大臣と、それを克服するためにはどういうことが必要なのだろうかという議論をさせていただきたいと思います。  まず第一の質問ですが、「もんじゅ」の運転、それからメンテナンス、この第一義的な責任原子炉設置者である動燃にあるというのはわかるのですが、その「もんじゅ」を設計し建設する、その段階での第一義的な責任者というのはだれなのでしょうか。その責任の所在はどこにあるのでしょうか。
  48. 宮林正恭

    宮林政府委員 お答えさせていただきます。  原子炉施設につきましては、これは核原料物質、核燃料物質及び原子炉規制に関する法律によりまして、原子炉施設のすべてについて、設計施工、運転、保守につきまして、一義的責任原子炉設置者、今回の場合は動燃にあるという考え方になっております。  しかしながら、国は、同法に基づきまして安全確保観点から所要の規制を行う、こういう形になっているわけでございまして、そういう意味で、規制を的確に遂行するということにつきましてはこれは国の責任である、こういう整理になっております。
  49. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)委員 国は規制という形で責任を及ぼすわけですが、第一義的には原子炉設置者である動燃設計、建設の責任を持つということがわかりました。  では、動燃が「もんじゅ」を設計し建設するわけですが、動燃だけでそれを建設できるわけではないので、いろいろな企業の組み合わせで「もんじゅ」を設計し建設するわけですけれども、その組み合わせばどういうものであったか、別の言葉で言えば発注形態がどういう全体像になっていたか、その全体像と、それから特に温度計さや管の部分については、一番上の第一義的責任者である動燃から、そのさや管を実際に製作した、これは町工場かどこかわかりませんけれども、そこまではどういう段階になっていたか。全体の大まかな発注形態とさや管に注目した発注段階、これをお聞きしたいと思います。
  50. 中野啓昌

    中野参考人 お答えいたします。  「もんじゅ」の発注形態でございますが、全体機器に関しましては、一括して四社に発注してございます。四社と申しますのは、日立製作所、東芝、富士電機、三菱重工業、この四社でございまして、それぞれ分担をしていただいております。  日立製作所には一次冷却系の設備をお願いし、東芝には二次冷却系設備、そして富士電機には燃料取扱設備、それから三菱重工業には原子炉容器設備という大まかな四つの分け方で分担してもらっております。契約形態としては、四つをまとめて一つでやったということでございます。  それから当該の温度計でございますが、これは今申し上げましたように、二次冷却系を東芝が受け持っておりますので、東芝の発注の中に入ります。東芝は、これをさらにIHIに出しまして、石川島播磨でございますが、そことの契約の中でこれが実施されたわけでございます。  今先生全体像とおっしゃいましたので、全体像はそんなところでございます。
  51. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)委員 温度計さや管のIHIの先ほどうなっているでしょうか。
  52. 中野啓昌

    中野参考人 お答えいたします。  IHIは、この温度計設計を実施し、製造については下請の会社に出しております。
  53. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)委員 わかりました。全体像ということでは、四つの企業、その上に動燃がいて、動燃が全体について責任を持つということでございますね。  このように、日立、東芝、富士電機、三菱、それがいろいろな部署、分割して責任を持つ。その下にも多分いろいろな企業体がその中に入っていると思うわけでございますが、このように企業体が水平にも、水平というのは、同格の日立とか東芝という意味です。それから、そのそれぞれの下にもいろいろな企業がある。これは垂直的、こう言うとしますと、水平的にも垂直的にも幾重にも企業が重なって「もんじゅ」の設計、建設を担当しているわけでございます。そういう中で、第一義的に動燃責任を有する、こういうことですと、どういう形で動燃が、下請という言葉を使ってはいけないのかもしれませんが、第一次下請、第二次下請、第三次下請のやった仕事に対して責任を持つ体制があるのか。これはちょっとうまく言えないんですけれども、ある意味ではプライムコントラクターとしての、第一義的責任者としての動燃は、その下請構造の中でどういう責任をとる体制をつくっていたのか、その点をちょっとお聞きいたします。
  54. 中野啓昌

    中野参考人 お答えいたします。  私ども、このプロジェクトを遂行するに当たりまして、事業団はいろいろなプロジェクトを持っておるわけでございますけれども、まず事業団全体といたしまして、品質保証管理規程というものを基本として持っております。この品質保証管理規程に基づきまして計画を立てるわけでございますが、「もんじゅ」に関しましては、特に「もんじゅ品質保証計画書」というものをつくりました。「もんじゅ」の設計施工、建設に当たりましては、この品質保証体系の中ですべての行動、行為がチェックされるという形をとったわけでございます。  まず一義的には、その最初の契約者といいましょうか、契約者との間でこの品質保証体系の中に入っていただく。そしてさらにそれぞれのコントラクターがその受け持った中でまた品質保証体系をつくっていただいて、そして我々の品質保証体系との中でそれをジョイントさせていただいて、その間で全体を我々が管理していくといいましょうかコントロールしていくといいましょうか、という形で実施してきたわけでございます。  こういう品質保証体系をつくることによって、メーカーの役割分担を明確にするとともに、この間の連携についても密にするようにやってきたわけでございます。  先生の御質問に対しては、一応そういうことかと思います。
  55. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)委員 非常によく理解のできるお答えで、品質保証体系をつくってやってきたということでわかるんですが、あれだけシステムが巨大になりますと、末端まで行きますとかなり膨大な情報量になる。まさに百万、ミリオンを超える部品、その一つ一つ品質保証体系がずっと上に組み上がってきて、最終的に動燃がその体系の頂点に立って品質を保証するということで、体制としてはわかるんですが、現実にあれだけ大きなシステムになるとかなり無理が出てくるんではないか、このように感じるところがあります。  例えば、私は、第一義的責任者というのは、人間でいえば脳でなきゃいけない。脳にすべての情報が集まる、それでそのすべての情報を処理して一定の判断を下す。ですから、動燃は、「もんじゅ」建設の中で脳でなきゃいけなかった。ところが、先ほどの品質保証体系の組み合わせば、すべての神経が脳に集まっているんではなくて、一つ一つぶつ切りになっておる、こういうふうに感じるわけです。例えば、足には足の脳があって、まずそこに一たん来てそこで情報がとまって、次に足から胴体に情報が入ってくる、そこでまた一たんぶつ切りにされて、かなりの段階を経て脳に情報が入ってくるというふうなシステムなんじゃないか、こう思うんです、ちょっとうまく言えないんですが。  アメリカの場合は、例えばNASA等では、プライムコントラクターということで、これは民間企業が例えばあるシステムを受注したとすると、その全責任はそのプライムコントラクターがとる。その場合は一応、一応といいましょうか、すべての情報がプライムコントラクターに集まって、プライムコントラクターとして責任がとれるような大規模情報システムが今進んでいる。  日本の場合、例えば、ちょっとわかりやすい例を出せば、ビルですね、こういうビルディングを建設する場合は、プライムコントラクターと言わなくてどういうわけかゼネラルコントラクター、ゼネコンが一切の責任をとるわけです。どんな事故だって、最終的にはゼネコンが責任をとる。ですから、ゼネコンはすべての情報を集めようとします。例えば、コンクリートならコンクリートの細かい技術的なこともすべてゼネコンの係員は知っている。何か事故が起きたときにゼネコンが責任をとれるような体制になっている。ですから、ゼネコンの現場の係員というのは、ある意味ではその現場の脳になっているわけです。神経がまさに末端まで張りめぐらされている。ビルですと、その要素の数が万とかせいぜい十数万ですから、これは人間で対応できる。  ところが、科技庁が今進めているようなビッグプロジェクト、科学プロジェクト、これはまさに規模がヒューマンサイズではなくなってきておりまして、人間の能力では脳としての機能をなかなか果たせなくなってきている。そこに、最近こういう巨大科学プロジェクトで何でもないところで見落としがあって事故が起きている、その原因があるんじゃないかな、こういうふうに思うわけでございます。その点についてはどうでしょうか。
  56. 中野啓昌

    中野参考人 大変難しいといいましょうか、一つは、私ども動燃事業団の場合、事業団の性格といたしまして、研究開発企業体でございますので、この「もんじゅ」のプロジェクトは、これを建設し運転することだけではなくて、これを通して次の技術への伝承、技術の開発というものを実施していくわけでございます。  そういう意味で、今先生の例示されましたようなビルを建てる場合のゼネコンのような発注の仕方ではなくて、むしろそれぞれの得意なところに得意な技術を展開していただいて、我々のところでそれを集大成してプロジェクトを完成していく、そういう形態をとっておるわけでございます。  先生の御指摘は、私、考えまするに、我々は品質保証体系でそれなりにきちっとやったつもりでございますが、巨大ではございますけれども、この運用において、末端までのきちんとした運用の仕方の徹底にいささか欠けているところが今回あったのではないか、そのような反省をしておるわけでございます。  先生、今、脳ということで例示なさいましたけれども、何せこういう非常に幅の広いものでございますから、すべての情報が上がると先生がおっしゃいましたけれども、やはり段階に応じた情報が段階に応じたところで判断をされて実施されていく、そしてその集大成が全体として上に上がってくる、これが品質保証体系ではないか、そのように思っております。  したがいまして、今回先生等に御指摘いただいた点を反省してみますと、要するに運用、これに関してもっとしっかり我々はやっていかなければいかぬのじゃないか、そのように思っておるところでございます。
  57. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)委員 中野理事のおっしゃることも非常によく私はわかるわけでございますが、一般に、動燃やNASDA、いわゆる科学技術庁傘下で巨大な科学技術プロジェクトをやっている組織への批判として、いわばお役人の、発注官庁的な色彩が濃くて、責任体制、そして情報管理体制がぶつ切りになっている。例えば、このシステムはあなたのところに全部任せるんだから全部やってよ、これが仕様だ、仕様どおりのものをつくってこいという形で投げて、でき上がってきたものに対してそれを知ろうとしない、こういう批判もあるわけです。  私は、確かに全情報がすべて何の重みづけもされることなく素データとして脳まで上がってくる必要はないと思います。ある程度のところでいろいろな演算が施されて、重みづけがされて、最終的に動燃に来るときには動燃として判断ができるようなヒューマンサイズの情報にされていなければ判断できないわけですから。しかし、そういう演算がされる過程では、すべての情報が一応その演算の過程に加わっているべきなのです。ところが、現在の動燃やNASDAでは、それがぶつ切りでされていない、こういう批判があるのですが、いかがでしょうか。
  58. 中川秀直

    中川国務大臣 科学技術庁所管の宇宙開発事業団も含めた御指摘でございますので、私からお答えさせていただきます。  委員御指摘の情報の集中あるいは共有化、そういうものを図るためのシステムインテグレーションといいましょうか、そういうことについての御指摘は、本当にそのとおりだろうと思います。  動燃においても、いただいている説明を私も聞きましたが、今メンテナンスの情報も含めてそういうデータベースのシステムをつくるということにしているようでございますし、また、信頼性を評価するシステムも開発をしているようでございます。今回のことは十分そういうことに反映すべきだと我々も考えております。それから、NASDAについても、前回も御指摘いただきましたし、委員にはこの問題についてはかねてより委員会においても御指摘をいただいておることも承知をいたしております。  一番大事なことは、前のこの委員会の一般質疑でも申し上げましたが、また委員も御指摘がございましたけれども、ごく当たり前のイロハのイ、足元の技術、そこには、だれかがチェックしておるから大丈夫だろうといって結局空白になってしまうという御指摘もいただきましたが、一番大事なのはそこのところだろうとも思います。  つまり、もしやという意識を常に持って、まさかそんなことはもうイロハのイで一番基本的なことだから、学校でいえば小学校の低学年の分野であるから、そこは大丈夫だと見落としてしまうところに危険性が大いにあるわけでございまして、そういう点についても、人間は誤る点があるということが幾つかの事故の中で、あるいは故障の中で指摘をされてきているのだろうと思います。  そういう意味において、やはりそういうことをチェックするシステムというものは常に考えておかなければいけない、そういう方向でそれぞれのプロジェクトについて努力をしていただくように、私どもからもきちんと指示も出し、また努力を続けていただきたい、こういうふうに考えております。御指摘のとおり努力を続けてまいることを申し上げておきます。
  59. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)委員 まさに大臣のおっしゃるとおりだと思うのです。それで間違いを起こす、空白が生じる、人間の努力としてそういうことがないようにしなければいけないのですが、それはやはりどうしても起こる可能性があるものですから、それをシステムとして防ぐようなそういうシステムをつくらなければいけないのではないか、こういう観点から今御質問をさせていただいております。  今回の温度計さや管の事故にしましても、例えばその情報がぶつ切りになっているのではなくて共有化されて、クロスチェックがされていたら防げたかもしれない。また、常陽の経験というのも、これはいろいろなところで非常にうまくいった常陽の経験が常陽の技術者の頭の中だけに入っていて、情報として共有化されていない。動燃がいろいろな技術的判断をするときに、果たしてその常陽の経験が生かされたのだろうか、そういう問題もございます。  それから、ASME米国機械学会の対象物の問題にしても、そういう情報がきちんと動燃情報システムの中に入っていれば、これは当然設計の段階で防げたわけでございます。もっと言えば、スーパーフェニックスで温度計さや管の溶接部からナトリウムが漏れ出した事故がございました。そのときも温度計さや管の振動についていろいろな研究、実験がされている。温度計さや管からのナトリウム漏れ出しということもそのときにいろいろ議論された。そういう情報がきちんと入っていれば、今回の事故は防げたかもしれない。  ある情報を有効に、有機的に使って一つ判断ができるような大規模情報システム、先ほど小野委員がCALSというふうなこともおっしゃっておりましたけれども、時間的、空間的に、時間的にというのは計画から設計施工、運転、メンテナンス、いろいろな情報がやはり一つ情報センターに入っておる。例えば、そのメンテナンスで得た情報が運転にフィードバックできるかもしれない。  あと、空間的には、例えば一次系、二次系、いろいろな領域がある。それぞれ別なメーカーが担当しているわけですが、それらの情報一つ情報センターに入っている。そういう中でいろいろなチェックがされる。こういうシステムにしなければ、もはやこれからの巨大システムは安全に運行できない、このように思うわけでございます。  例えば、ジャンボジェット機などはもう部品数が人間の判断を超える部品数になってきておりますので、このCALSというシステムを使って一元的な情報管理をしている。その第一義的な責任者が頭脳の働きを、脳の働きをしなければいけないのですが、その助けをコンピューターができるようなシステムになっている。判断をするときの情報の落ちがないようなシステムになっている。そういうものをこれからの科学技術庁のビッグプロジェクトには考えていかなければいけないのではないか、これをこの三年続きの事故を見て感ずるのですけれども、大臣、いかがでございましょうか。
  60. 中川秀直

    中川国務大臣 常陽から「もんじゅ」ということに関しての御言及がございましたが、常陽の技術者は「もんじゅ」へ異動し、そして引き続き担当する等、人事の交流もやっておりますし、技術の継続性また共有化という点の配慮はそれなりにはされてきたのだと思います。また、建設段階においてもそういうデータベース的な情報を共有化するような取り組みもわざわざ株式会社みたいなものを設けてやってきたようでございます。  しかし、今回の事故等を考え、そして今科学技術庁全体のプロジェクトについての御言及でございますから、全体を考えまして、やはり人間工学の専門家の会長さんに、この前、京都の原子力政策円卓会議へお越しをいただいてお話をしていただいたのです。私、短時間でしたが、出席をさせていただいて聞かしていただきましたが、人間工学的に考えても、安全というものを、安全工学というものを満たしていくためには単なる教育訓練だけでは絶対に足りない、最先端の技術が必要だとその会長さんはおっしゃっておられました。  そういう意味でも、今CALSの例もお引きになりましたが、これは本当に現実の問題として、そういう最先端の、脳に当たるような部分のシステムをつくり、チェックもし、先ほど技術に対する謙虚さということを申し上げましたが、最先端の技術を活用して常にそういうものを確保するということが謙虚さになることであるし、現在の技術の中では、このようなことを起こさない一番早道といいましょうか、近道なのではないかということを私も感じております。  そういう方向で、またそれぞれが努力をしていただくように、来る八月にもADEOS等の打ち上げがございますが、きのうもわざわざ副理事長メーカーのところまで足を運んでおるようですけれども、細心の注意を持ってやってまいりたいと考えております。
  61. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)委員 ぜひ大臣にイニシアチブをとっていただいて、新しい時代の科学ビッグプロジェクトが安いコストで、うまく、事故なく安全に進むように、そういう大規模情報システムの導入ということをぜひ一度御考慮いただけたらと思います。  そういう意味で、この中間報告書の五十ページに、動燃自主保安強化、それからメーカーの品質保証体制監督強化するというふうなことが書いてあるのですが、ちょっとピントがずれているのじゃないかな。もちろん動燃としての自主保安強化、それからメーカーの品質保証体制強化指導する、これはもう当然でございますが、もっとその奥底に情報のやりとり、共有化、そしていわば脳が間違いなく判断できるような情報の伝達システム、そういうものをつくる方がもっと本質的だろう、こういうふうに思うのですが、理事、いかがでございましょうか。
  62. 中野啓昌

    中野参考人 巨大プロジェクトを円滑に進めていくという意味で、先ほど来先生から情報の共有化あるいはまたその展開の仕方についていろいろ御指摘をいただいておるわけでございますが、私も全くそのとおりだと思っております。そう思いつつ、今お伺いをさせていただきました。  先ほど来私の方からも御説明させていただいておりますが、我々の体系の中に品質管理体系をつくるとともに、今先生のお話のありました、今日計算機が非常に発達いたしております。そういった計算機を用いてデータベース化をして一元的に管理をするとか、そういった具体的なことも実施しておるわけでございます。  さらに重要なことは、海外での動向を踏まえながら、高速増殖炉に適した最新の手法、最新のやり方というものをきちっとその中に取り込んで実施していかなければいけないというふうに思っておるところでございます。
  63. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)委員 動燃、それから動燃責任を持つすべての「もんじゅ」の建設システム全体、その情報がうまく流れて、きちんと判断されて、そのレスポンスが出るということが外からわかるようになれば、これは原子力に対して、また動燃に対しての信頼も高まってくる、このように思いますので、その点の御努力をよろしくお願いしたいと思います。  情報ということが出ましたので、では、動燃の持っている情報、それは科学技術庁が親みたいなもので管理監督するのでしょうが、要するに、科学技術庁とはまた独立している原子力委員会原子力安全委員会、また地元自治体、その間の情報の共有化だとか情報システム、これについては何かお考えがありますでしょうか。私はそういうものも進めていかなければいけないと思っているのですが。
  64. 岡崎俊雄

    ○岡崎政府委員 先生の御指摘のとおり、この巨大プロジェクトを進めるに当たって、開発をする主体の中の情報の共通化、共有化というのは大変重要なことだろうと思いますし、今御指摘のございました社会的に大変影響のあるこういうプロジェクトを進めるに当たって、政策当局者あるいは開発主体、さらに加えて地方自治体との情報の緊密化というのは大変重要なことである。これは今回の「もんじゅ」の事故を契機としてさらに我々もその重要性について深く認識をしたところでございます。  したがいまして、こういった自治体との情報あり方についても今安全委員会の中でも御検討をいただいておるところでございますし、あるいは円卓会議等での一つの大きなテーマでもございます。今後の情報公開あるいはそれぞれの情報連絡のあり方についてさらに改善をしていくべきだと認識いたしております。
  65. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)委員 今回、情報の流れ、その管理といいましょうか、また、第一義的責任者として、脳のような働きを第一義的責任者がしなければいけない。そのためには、今のシステムでは、今のままではそれはやはり不可能であろう。新しいシステムをお考えいただきたいという観点から質問させていただき、大臣からも考えてみるという御答弁をいただきました。  基本的に、高速増殖炉というのは、世界貢献できるかどうかわかりませんが、日本が世界貢献をしていく一つのものだろう、私はこういうふうに思っておりますので、つまらないことでこれが挫折することがないよう、そういう新しい信頼を得るシステムをつくり上げていただいて頑張っていただきたい、このように思います。  質問を終わります。
  66. 井上喜一

    井上委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時三分休憩      ――――◇―――――     午後零時五十五分開議
  67. 井上喜一

    井上委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上田晃弘君。
  68. 上田晃弘

    上田(晃)委員 新進党の上田晃弘でございます。  先ほど来の斉藤委員のシステムインテグレーションにつきましての深い御議論もございましたが、それにも関連しながら、また私の方は多少素朴な視点から、今回の「もんじゅ」の事故と今後の対応について、大臣並びに動燃理事長方々に基本的な対応、姿勢と申しますか、思想とまで言うとちょっと大げさになりましょうが、その辺のところをお尋ねさせていただきたい、こんなふうに思っているところでございます。  私も科学技術委員会理事を仰せつかっているわけでございますが、今回の「もんじゅ」の事故等にかんがみまして、いささか巨大な科学技術というものに対して懐疑的になっている感じがいたします。先ほどの御議論も聞いておりましたが、巨大な科学プロジェクト、それをシステム的に集中管理するためには、さらにまたさまざまな複雑な回路が必要になってくる。何かイタチごっこじゃございませんけれども、複雑な技術はまたさらに複雑な管理体制を生み、最終的には、人類にとって科学技術の肥大化というか、ひとり歩きというか、巨大科学プロジェクトが人類を不幸にした元凶になったというようなことに将来したくない、こういう強い思いでいっぱいでございます。  それだけに、今回の「もんじゅ」の事故、これは各委員も御指摘のとおり、壊れた箇所を一部修正してすぐ立ち上げたいという発想ではなく、先ほど理事長もおっしゃっておりましたが、もう設計思想の根源から問い直す、どうかその御発言のとおり、時間がかかったとしても対応をお願いしたい、こういう気持ちでいっぱいでございます。  それに関しまして、まず第一番目といたしまして、絶対起きてはいけないナトリウム漏れという事故が万が一起きたわけでございます。また、万が二起きたとしたらこのプロジェクトをどうするか。万が二起きたらとめるんだというぐらいの強い御決意のもとで今回の対応に当たっておられるのかどうなのか、簡単に一言ずつで結構でございますので、大臣と近藤理事長、御答弁をお願いいたしたいと思います。
  69. 中川秀直

    中川国務大臣 かねてからいろいろなところで申し上げておりますけれども、まず何よりも、まさか起きないだろうではなくて、もしやという気持ちで非常に基本的なところ、イロハのイのところから徹底的な点検をし、またチェックをしながら進めていくということでなければならない、このように考えております。  今お尋ねの、万が二ということでございますが、原子力の場合は、その際は、特に「もんじゅ」のような研究開発の段階にある原子炉等につきまして、またナトリウムのリークなどということにつきましては、直ちにシステムをとめる。そしてまたすぐお知らせをする。そして絶対に事実関係については虚偽を申さない。正確にお知らせをしていく。こういうことがまず信頼の第一歩である、こういうふうに考えております。
  70. 近藤俊幸

    近藤参考人 今の段階は、とにかく原因究明を徹底的にやりまして、失われた信頼、信用を取り戻すという段階でございます。今、万が一とまった場合はどうするかというようなお話でございますけれども、例えばでございますけれども、かなり大規模な人身事故を含むような事故が起きたというようなときには、国民方々地元の方あるいは一般の方たちからも恐らく認めていただけないと思っております。
  71. 上田晃弘

    上田(晃)委員 特に今理事長の方からは具体的な決意もお述べいただきましたので、その辺のところは私も肝に銘じておきたいと思います。  それでは、その御決意のもとで、具体的なことについて何点かお伺いしたいのですが、今回の事故の場合も火災報知機が六十六回発報をしておるわけでございまして、しかも第一回目から十分間の間に十四回、火災報知機が発報しています。それでも停止せず、当直長はプラント一課長を捜し回った、こういう経緯があるのですね。  これは、一般的に現場を預かる技術者としてよくありがちなことなのですが、報知機が鳴っても、これは本当の危険を知らせている警報なのか誤信号なのか、これをまず確かめたいという意識がどうしても働くやに聞いております。そうなりますと、現場の技術者の心理として、もしこの警報が誤った信号であったとしたならば、そこでいきなりとめてしまったら自分は技術者として笑われるのではないかとか、また悪くすれば配置転換に遭うのではないかとか、また誤信号であった場合、もしとめてしまったら、また再び機械を立ち上げるには大変な労力とコストがかかるし機械に負荷がかかる、したがって、誤信号であるかどうかがはっきりするまでは基本的には動かし続けたいというのが現場の技術者の心理として一般的にあろうかと思います。こういう問題についても今回は、誤信号であったとしても何であろうとも、今後は警報が鳴ったらとめる、こういう基本的なマニュアル改定をされるおつもりかどうか、そこをまずお伺いしたいと思います。
  72. 中野啓昌

    中野参考人 お答えいたします。  私ども今、今回の事故を反省いたしまして、いろいろな事項に関し検討しておるところでございますが、その中の一つといたしまして、今後ナトリウム漏えいの信号が鳴ったようなときには直ちに原子炉をとめる、そして、従来はとめるに至るも、今先生御指摘のように一課長の判断を仰ぎ、あるいは中間管理職の指示を仰ぎというような多少持って回ったようなマニュアルになっておったわけでございますけれども、今後は直ちに当直長の判断でとめる、そのようにすることにしてございます。
  73. 上田晃弘

    上田(晃)委員 わかりました。  それでは次に移りますが、これも前回の委員会でも各委員皆様が指摘をされていた部分でございますが、大リーク、中リーク、小リーク、現在のところはこの三つの概念に大枠分かれておって、それに伴っていろいろマニュアルと申しますか、いわゆる手順が違ってくるようになっておるわけでございますけれども、この大中小リークという概念、これを改定する方向で御検討中かどうか。
  74. 中野啓昌

    中野参考人 お答えいたします。  先ほどの御質問で若干その辺触れさせていただいたつもりでございます。  大中小、従来のマニュアルではそういう区別がございまして、大の場合は、これは直ちにとめるということになっておりました。小の場合につきましては、十分現場を確認した後に措置するということでそれぞれに決めておりましたのですが、今回の事故を反省いたしまして、漏えいの信号が鳴りましたならば直ちに原子炉はトリップ状態に持っていく、このようにいたしておりますので、先生の今御質問のような大中小の区別はなくなっております。
  75. 上田晃弘

    上田(晃)委員 大変明快な御答弁をいただきました。  次に、現在の「もんじゅ」の建物全体でございますけれども、いろいろ今回の中間報告等を拝見いたしましても、破断された細管と同じ部品はすべて取りかえるとか、その辺については具体的にかなり報告がされているようなのですが、これは私のうがった見方かどうかわかりませんが、どうも、壊れた部分を修正して、基本的には今の全体の建屋は大修正をする必要もなく稼働できるのだというものも、何となく水面下に透けて見えるような気がしてなりません。これは私がうがった見方をしているのかもしれませんが。  それで、今回も大洗の実験で、溶けるわけがないとされていた鉄のライナーが溶けた。そうするとそれに対して早速、これは宮崎さんという大阪大学の教授の御発言ですか、新聞に載っておりましたが、「もんじゅ」の現実事故よりも今回の実験の方が期せずして厳しい状況になってしまっていた、それはいろいろな計測器が下に置いてあったからだ、だから余計温度が上がってしまった、こういうお話で、これは先ほど原田先生も御指摘されていました。ただ、可能性としては、たまたま漏れる箇所の下にバケツ一個でももし置いてあったとするならば同じようなことになってしまうということになるわけですが、何かというとこの前の事故よりも実験の状況の方が厳しい状況になってしまっていたのだというような、すぐこういう反応が出てくるというところに、何か本当に大丈夫なのかなという思いがするのですね。  また逆に、一部新聞では、鉄板に穴があいたがら、ライナーはもう根本的な設計の見直しが必要で、四千平米の床の取りかえが不可避である、こう書かれている。何かいろいろ情報が錯綜しておるわけですが、その辺のところについていかがでございますか。
  76. 中野啓昌

    中野参考人 先般、六月七日でございますが、私どもナトリウム漏えい燃焼試験、これは第二回目でございますが、実施させていただきました。  この漏えい試験の主たる目的は何かと申しますと、現地で「もんじゅ」の炉でナトリウム漏れが起きた際に、床に一体どれくらいの温度がかかったのだろうかということでいろいろ事故後、推計、推定といいましょうか、評価をいたしております。その段階では七百度ぐらいかということでございましたが、そのあたりを先日の実験で確認をしてみたいというのが主たる目的であったわけでございます。  そこで、第一回目も実はそういう実験内容があったのですが、大体一時間半ぐらいで終わりまして、第二回目の場合は「もんじゅ」とほぼ同じ時間漏えい試験をいたしまして、その漏えい量及び時間については大体実際の状況と同じような結果を得たわけでございますが、漏えいさせた後の形態がかなり変わった状態になりました。  それは、例えば今先生のおっしゃいましたようなライナーに穴があくとか、もうちょっと申し上げますと、そのライナーの穴のあいた上の部分に、「もんじゅ」の例の場合ですと、ナトリウムの化合物の堆積物が大きく積もっておりますが、今回の場合は全くそれが見られなかった、全くというわけではございません、ほとんどそれが見られなかったというように、かなり実験結果が違った状態であらわれてきております。  先生御指摘の大阪大学の宮崎先生が、それは計測器等を張りつけることによって、ちょうど落ちる部分のところに計測器の線を何本か張ったものですから、それが計測器の上に落ちまして、ナトリウムが飛び散りまして、早目に酸化して、そして水酸化ナトリウム化して流れてしまった、こういう現象を恐らく先生想像されてそういうふうにおっしゃったのではないかと我々想像しているところでございます。  いずれにしろ、実験が終わりまして、ただいま資料を採取したり解析をしたり、またタスクフォースの先生方、宮崎先生もそうでございますが、御評価いただいておる最中でございますので、それを待ちたいというふうに思っておるところでございます。
  77. 上田晃弘

    上田(晃)委員 私がなぜこういうことをねちねちお尋ね申し上げているかと申しますと、スーパーフェニックスがやはり一たびナトリウム漏れ事故を起こしまして、それを立ち上げるまでに四年かかっている。これは新聞のインタビュー記事なのでございますが、スーパーフェニックスのジロー社長が語るということで、この社長がおっしゃっているには、ナトリウム漏れというものを抑えるという意味においては半年ほどでもとに戻せるものなんだ、ところが、四年かけたのはどういう理由かというと、今まででは想定されないような事故が起きるということを前提として、抜本的な建屋の改修を行って、それで国民的コンセンサスを得るために時間がかかったんだ、こういうふうにお答えになっているのですね。  これを見ますと、二次冷却系にある直径一メートルのパイプが真っ二つに切断されて、全量が霧状に飛び散ってスプレー火災を起こすというすごい設定をされているのですね。その上で、いわゆる防火壁をつくったり、火災発生した蒸気を外に逃がす弁を格納容器にあける大工事を行うとか、大変な工事をされたようでございます。この点についても、日本の「もんじゅ」の事故の想定では、二次系のパイプ亀裂の最大面積は約十五平方センチ、しかも、霧状にはならず、ぼたぼたと床に落ちるという想定をしている。  これは、かなり基本的な考え方として、実際では起きないであろうぐらいの事故が起きたとしても大丈夫だという、こういう対応をしたスーパーフェニックスの再開までの四年、このスタンス、これを学び取られまして、どういうお考えと申しましょうか、これにまさるとも劣らない対応をしていこうというお気持ちがあるかどうか、この辺のところをお聞かせいただきたいと思います。
  78. 中野啓昌

    中野参考人 スーパーフェニックスでのトラブル、事故を参照にされまして、この幹部が話されたことを紹介されたわけでございますが、「もんじゅ」の場合も、安全審査におきましては、いわゆるスプレー状に飛び散るということを前提にいたしまして評価をいただいておるところでございます。  それから、午前中も申し上げましたが、私ども、このナトリウムの取り扱い及びナトリウムの技術的な開発に関しましては、百二十ケースぐらいの事例をいろいろ研究いたしまして、最大百五十トン規模のナトリウム漏えいさせるなどの試験を行ったりして、できるだけのことはやってきたつもりでございます。  その意味では、先生御指摘の中身と負けずとも劣らずといいましょうか、その程度の技術的なレベルのことはやってきておるものと思っております。
  79. 上田晃弘

    上田(晃)委員 次に、これは午前中もたしか御質問が出たと思いますし、多くの技術評論家の方や技術者の方もお話になっているのですが、今後の二次系の安全対策について、基本的な考え方として、ナトリウムというものは無数にある溶接部分から必ず漏れるんだという前提に立ってこの二次系も窒素を封入した方がよい、こう言う方は結構多数ございますね。一方には、溶接部から絶対漏れないだけの溶接技術を確立するんだ、こう言う方もおられます。これについては、現時点においては両論あるという方向性で御検討されていますか。
  80. 中野啓昌

    中野参考人 午前中、原田先生の御質問に関連してそのあたり御説明させていただいたかと思いますが、これは高速増殖炉に限らず一般的に原子炉に言えることでございますが、可能な限り原子炉のそれぞれの施設設備に接近をして保守をし、点検をし、確認することができるように設計していこうというのが基本的な設計思想かと存じます。  ただ、原子炉の場合、御存じのように、炉心周り、炉心に近くなりますと非常に放射能レベルが高くなるわけでございまして、現実的には接近できない。接近できないかわりに、そこには接近しなくてもいいような措置をとっていくという考え方設計が進められていくわけでございます。  午前中も申し上げましたが、高速増殖炉「もんじゅ」の場合、一次系のナトリウムのところには、先生今御指摘のように、窒素の雰囲気にして密封してございます。これは放射能が非常に高くなります。ナトリウム自身も放射化されますのでそばへ寄れないということから窒素雰囲気にして固めてあるわけでございます。そういう意味で、二次系も同じように封じ込めたらどうだというのが先生のお考えかと存じます。確かに、考え方としてそういう考え方もあろうかと存じます。  一方、溶接部分をきちっとして、それをいつでも確認できる、検知できる、そういった対応策をさらにきちっとしていくということで、点検のしやすさも含め、安全もまた確保されるという考え方もあろうかと思います。  私ども、これから、そういう安全を確保していく中でどういう方策がいろいろまた考えられるか、そんなことも含めて考えていきたいというふうに思っております。
  81. 上田晃弘

    上田(晃)委員 今の御答弁ですと、二次系も窒素で封入するというブランチは今の時点で捨て去ったものではない、こう理解してよろしいのですね。  と申しますのは、実験段階で予期せぬことが起きて、その予期せぬことが二度と起きないようにするためにはさまざまな安全施策を講じる、そうすると当然コストが上がっていくわけですね。何事も費用対効果の問題ですから、いわゆるこの「もんじゅ」問題というのは、安全を完璧に守るということが大前提ではございますが、それがどっと肥大化していくと、今度はそこからとれる利益に対してコストが余りにもかかり過ぎるためにこのプロジェクト自体を放棄せざるを得なくなる危険性があるがゆえに、コストが膨大に膨らみそうな方向については最初から捨て去る、こういう誤解がやはりあろうかと思うのです。誤解なのか真実なのかわかりませんが、それについてもうちょっと補足をお願いします。
  82. 中野啓昌

    中野参考人 一般的な話でございまして、我々、具体的にコストを計算したわけではございませんけれども、確かに窒素の雰囲気に二次系全体を覆ったとしますと結構お金はかかろうかと思います。  しかし、今先生御指摘のように、まずどうすることが一番安全確保が図れるのかということが第一だと思っておりますので、私どもは両方の面から、安全確保のためにどういう方法がいいのか、それに加えて、コストの面から見てさらにいいのかということも加えて検討を続けていきたい。したがいまして、先ほど先生確認されましたけれども、我々は両方の面から考えていきたい、そのように思っております。
  83. 上田晃弘

    上田(晃)委員 大変ありがとうございました。  それでは次に、科学技術庁の方にいろいろお尋ね申し上げたいと思うのですが、今回の事故を奇貨といたしまして、やはり多くの学者の皆さん、例えば学習院大学の田中先生とおっしゃるのですか、いわゆる危機管理という問題に関しまして、自然科学そして工学、それに社会科学の領域がともに協調した研究をしていかないとこういう危機管理というものは難しいのではないのか、つまり、自然科学、工学の関係専門家の皆さんだけが集まって議論していてもだめで、国民に正しく理解をしていただき、しかも一朝有事の、有事と言うと変ですが、一朝何か事故が起きたときにはきちっと安全が守られる、こういう意味においては、そういう社会科学系の専門家も含めた研究というものに力を入れていかなくてはいけないのではないか、こういうようにおっしゃっています。  こういう声は最近非常に多くて、今科技庁としてまとめておられる科学技術基本計画におきましても、末尾に必ず出てくる言葉としては、自然科学と人文科学、社会科学等の調和云々とか、科学技術の発展と環境の保全、調和云々と必ず最後は出てくるわけです。では、こういったことをトータルに研究しているところはどこにあるのかというと、なかなかそういった研究機関が明確にはないわけで、きょうの段階では、別に何年度からどこの研究所でこれをやりますという御答弁は要りませんが、こういうものに対しての意識というか、方向性としては今どのように考えておられるのか、その辺についてお教えいただきたいと思います。
  84. 落合俊雄

    ○落合政府委員 ただいま御指摘ありましたように、科学技術基本法、昨年制定していただきました法律の第二条の第二項におきまして、「自然科学と人文科学との相互のかかわり合いが科学技術の進歩にとって重要であることにかんがみ、両者の調和のとれた発展について留意されなければならない。」という規定があるわけでございます。  これの背景といたしましては、ただいま危機管理の話がございましたが、危機管理以外の部分でも自然科学と人文科学が調和をして発展をしていくという、例えば一つの例といたしまして、論理学がコンピューターの科学の基礎となったり、また、人工知能の研究に言語学ですとか心理学ですとかが支えになっている。一方で、自然科学の発達、例えば放射性同位元素の半減期を用いて正確な年代測定を決定するということで人文科学の発達を促すというような、相互の調和といいますか、相互がお互いに融合し合って発展し合うというような状況がますます強まっているというような実態かと思いまして、先ほど御指摘ございました科学技術基本法におきます規定も、このような状況を背景に規定されたものと私ども認識をいたしております。  現在、御承知のとおり、科学技術基本法に基づきまして科学技術基本計画の策定作業を私どもやらしていただいておりますが、この計画の中でもこのような趣旨が十分に生かされるような方向性というものを出していきたいということで検討を進めているところでございます。
  85. 上田晃弘

    上田(晃)委員 大変その辺の部分が我が国においては欠落している部分だと思いますので、鋭意、具体的な方針が示されますようよろしくお願い申し上げます。  次に、話は変わりますが、このたび中川大臣の大変な肝いりでスタートいたしました原子力政策円卓会議が開催されているわけでございます。ともすると、国民の皆さんというのは、こういう各種委員会とか審議会というのを案外懐疑的な目で見ておりまして、ガス抜きの場ではないのかとか、ただ聞きおくという場ではないのかとか、それから、しょせん選ばれるメンバーは行政サイドの方が多くて、実は逆算で日程が決まっていて、いつまでには意見を取りまとめをしたい、こういうシナリオのもとで行われているんではないのかというような声がやはり多数寄せられているわけです。  これは、今までの、別に科技庁がということではなく、一般の審議会とか外に開かれた委員会と称するわけですが、何となく実は逆算で日程が決まっている、こういうものがやはり我が国では多かった、そういうせいだと思うんですが、今回中川大臣がせっかく肝いりでスタートされたこの原子力政策円卓会議、これはそういう性格のものではあってはならない、私自身もぜひこれは応援したいと思っておるわけでございます。  したがって、いつまでに何か取りまとめてしまうとか、そういうような性格のものではないとは思うんですが、その辺について確認をさせていただきたいということと、それから、とはいってもいつかの時点では意見を取りまとめるんだと思いますので、その最終意見を取りまとめる段階の審議の過程というのはすべて公開されるのかどうか、その辺についてお聞かせいただきたいと思います。
  86. 中川秀直

    中川国務大臣 御指摘賜りましたように、この円卓会議は単に聞きおく場として設けたものではございません。そしてまた、一時的なものではなく、原子力委員会に常設した場として今後は位置づけてまいりたいと考えております。  と申しますのも、今現に起こっている原子力政策に対する各界各層からの不安や不信というものは、そんな一時的な対応だけでできるものでない。まさに国民としての共通認識批判的なお立場の方も推進的なお立場の方も、何が共通認識であるかということ、そこからスタートしまして合意というものを形成していく努力を不断に続けていかなきゃいかぬというふうに考えておりますので、もうほぼ常設のような形でやってまいりたい。  今現に四回やらせていただきました。私も、たとえ短時間であろうとも出席したいということで出させていただいております。まさに批判的なお立場方々も毎回御出席をいただいて、市民としての御発言、あるいはまた、みずからいろいろ考えられてこうあるべきだという批判的な御意見、毎回幅広くお出しをいただいているわけであります。すべて会議公開して行われて、いろいろテレビ等でも、また通信衛星放送で取り上げていただく等々の今経緯をたどっておるところでございます。四回やりまして、いろいろ自由濶達な御議論を、極めて重要な御示唆も含む御意見をたくさん私はいただけたと思います。  これまで四回は特定のテーマを決めずに御議論いただいてまいりましたが、そういう中から大体の議論の幅というものは、相当お出しいただいたんじゃないかと思いますので、五回目以降は、それについて、これまで出された御議論の抽出した議題あるいはまた問題点等を整理し、モデレーターの方々に今お願いをいたしておりまして、そういう分野を設定して、これから自由討論を中心に議論を行ってまいりたい、こう考えております。  今、モデレーターの方を中心に、原子力委員も加わってその選定を御相談いただいておるところでございますけれども、私としては、本当に、今と未来、そして日本のみならず世界も含めまして、安全と環境とそしてエネルギーと、これはどういう組み合わせがあり得るのか。例えば原子力にかわるべきエネルギーは何があるのか。あるいは、それじゃ原子力がなければ安全なのかという議論もあるかもしれません。さらにはまた、次の世代にはどういうふうにエネルギーが、特に日本の場合は自給率が低うございますが、確保されるのかという御議論も賜りたいと考えております。  そういう議論を深めていただきながら、結論に予断を持たずに、そしてそのいただいた議論、場合によってはこの円卓会議、年内いっぱい、これからずっと続けてまいりますけれども、月二回ペースぐらいでやってまいりますが、もうそろそろ何かの方向を出せと言いましても、一番重要な問題はもう両論のまままだ詰まらないという、幅が狭まらないという問題もあると思います。それはさらにまた論議を深めていかなきゃならぬでしょうし、また、共通認識でここまで来たというものは、これはもう直ちにそれぞれの役所やあるいはまた審議会等でその問題をお取り上げいただけるようにしてまいりたいと存じますし、そういう絞り込んでいく過程の中で、絞り込む作業もできる限り多くの方々公開されたような形で進めてまいりたい、そのように私は考えております。
  87. 上田晃弘

    上田(晃)委員 もう時間でございますので、最後質問にさせていただきたいと思います。  ただいま大臣の方からも大変力強い御決意がありました。私はこの円卓会議は大変期待もいたしておりますし、そういう意味では、技術上のクリアだけではなく、先ほど来申し上げているように、社会的コンセンサスをどうつくり上げるかという意味においては大変時間もかかるし労力も要るし、忍耐の必要な作業だと思いますが、この部分に本当に魂を入れるかどうかが今回の最大のポイントであろうかとも思っておりますので、鋭意御努力をお願いします。  最後に、私、過去に二度ばかりこだわりを持ってお願いをしてまいったところでございますが、今回の現場レベルの指揮系統や危機管理、さまざまな機械のいわゆる運用をめぐって、ボイスレコーダーをぜひ設置すべきであろう。確かに現場の方からすればお嫌なのはよくわかるんですが、このボイスレコーダーがあるというこの一事が、さまざまな意識の喚起から、もう二度と間違いを起こしてはいけないというさまざまなシステム改善にもつながっていくと私は思いますので、一見瑣末にお聞こえになるかもしれませんが、これは大事なポイントとしてぜひボイスレコーダーの設置をお願いしたい。  これを改善策の中でぜひ具体化していただきたいんですが、その辺の方針について、方針というか、その辺の方向についていかなる状態になっているのかということをお聞かせいただいて、終わりたいと思います。
  88. 中野啓昌

    中野参考人 十二月の当委員会の席で、先生からそのような御提案をちょうだいしたということを承っております。  今先生がお話しのように、ボイスレコーダーを中央制御室のようなところに置きまして、その間の会話を録音し後で確認をしていくというのも確かに一つの方法だろうと思っております。それからまた、先生がおっしゃいましたように、ボイスレコーダーがあるということで現場の職員が緊張感を持って対応するということも、これもそういうことが考えられようかと思います。  反面でございますね、それがあるということで、四六時中何かこう監視されているんじゃないかという運転員の精神的な負担というものも逆に考えられもいたします。  そういうようなことをいろいろ考えておりまして、例えば一つの選択肢として、何かある程度以上のトラブルが起きたようなときには自動的に録音機のスイッチを入れて、そしてその後の会話というのは自動的に入っているというようなやり方とか、ソフトの面をあわせた格好でいろいろ検討していきたいと思って考えておる最中でございますので、どうも先生、御提案ありがとうございます。
  89. 上田晃弘

    上田(晃)委員 では、終わります。ありがとうございました。
  90. 井上喜一

    井上委員長 笹木竜三君。
  91. 笹木竜三

    ○笹木委員 新進党の笹木竜三です。質問を始めさせていただきます。  きょう、この委員会で今まで何人かの委員質問をされたわけですけれども、その中の発言で、ある委員からは、非常に小さい事故だった、そういう発言もありました。確かに放射能漏れとか、そういった事実はなくて済んだわけですけれども、私は決して小さな事故とは思っておりません。いろいろ原子力の開発にかつてかかわってこられた研究者の方々、そういった方々にもこの数カ月いろいろお話を伺ってまいりました。そういった方々から、決して二人や三人じゃありませんけれども、非常にお粗末な事故だ、設計画も、いろいろな組織の管理上の問題も非常にお粗末きわまる、それと、こういう状態では必ずまた事故が起きる、そういった発言をされた方がたくさんおられます。私も同感、そういった気持ちを同じく持っております。  この中間報告書も読ませていただきましたけれども、非常に不十分な点がたくさんあると思っています。そういった点も含めて、今のこの程度の見直しでは必ずまた事故が起きる、そういった懸念を持つ者として質問をさせていただきます。  最初に、このさや管の構造について、この設計ミスについてですけれども、科技庁を通して資料をお願いしました。動燃から東芝、東芝からIHIへの納入仕様書、あるいはIHIから下請への発注図面、それと製造記録、こういった資料についてもお願いをして資料を出していただいたわけです。  まず役所、科技庁の方にお伺いをしたいわけですけれども、この動燃から東芝へ、東芝からIHIへの納入仕様書、あるいはIHIから下請への発注図面、私がいただいた資料で言いますと、添付一と添付二の資料をいただいていますけれども、これでこのさや管の構造についてはすべてなのか、そのことをまず確認をさせていただきたいと思います。
  92. 岡崎俊雄

    ○岡崎政府委員 委員から御要望のございましたこの関連の資料につきまして、動燃事業団にも確認をし、できる範囲の資料を御提出したつもりでございます。
  93. 笹木竜三

    ○笹木委員 これは動燃理事の方は今お持ちでしょうか。
  94. 中野啓昌

    中野参考人 ただいま持っておりません。
  95. 笹木竜三

    ○笹木委員 資料、これは出てくるまでに何日か日にちが非常にかかって、精査をしているということで時間もかかったわけですけれども、出てきた資料について早速専門の方に見ていただきました。これはもうとても正式な図面とは思えない、まず図面番号とかそういったものの記入がない、あるいはコーナーのR指示がないため工具が選定できない、表面仕上がり状態、粗さの表示がないため送り目をどうするか判断できない、まずこれが納入仕様書。これでは全くつくれないという御意見でした。  それについて科技庁の方にお答えをいただきたいわけですけれども、これはどういうふうに手に入れられて、どの程度の集め方をされたのか、もう一回確認をしたいと思います。
  96. 岡崎俊雄

    ○岡崎政府委員 先生から、動燃事業団から東芝、石播あるいはその下請のルートにおきましてさや管が発注されました発注書でありますとか、あるいはそのときの製造記録について動燃事業団が得ている資料について提出をしてほしいという要求がございました。したがいまして、動燃事業団に照会をし、その資料について提出をさせていただいたものと理解をいたしております。
  97. 笹木竜三

    ○笹木委員 今お話ししましたように、例えばこのさや管についても、納入仕様書には三面図さえない。これでは絶対につくれない、この程度の情報しか出てこなかったわけです。  ここで長官にまずお聞きをしたいわけですけれども事故発生直後、いろいろ動燃とか、科技庁も含めてですけれども情報公開について非常に問題があった、あるいはビデオ隠しの事件とかも起きた、そういったことで、徹底して情報公開を進めながら今後問題点を洗い出していく、そういったお話でした。今回も、IHIからの下請がどこかとかそういったことについてはプライバシーの面でいろいろ差しさわりがあるからと、今はもう廃業されて個人になっているからということで先ほど動燃理事の方はお話しされていましたけれども、なかなか名前も出てこなかった。  いろいろありますけれども情報公開しない、公開する――今回の場合でも基本的な質問についての資料さえ三日もかかって非常に粗いものしか出てこない。こういう科技庁の現状について、どの程度まで情報公開されるのか、特に例外として公開されないのはどういう原則で公開されないのか、そのことを長官にお答えをいただきたいと思います。
  98. 中川秀直

    中川国務大臣 けさ、笹木委員からの資料の御要求についての経緯を、ほんの短い時間ですが、報告を聞きました。事実関係の正確を期するために調査に時間がかかったこと等々の説明もございました。少し時間がかかったことは申しわけなく思っております。  第二のお尋ねの点ですが、私は、ともかく説明する責任というものは行政側、事業者側にあるぞ、そういう意味のアカウンタビリティーというものを原子力行政はやはり大事にしなければいかぬ、こう就任以来ずっと申してきております。  そういう観点の中でやはり例外に置かなければならぬのは、いわゆる核不拡散上の機微情報といいましょうか、核不拡散を担保していくための、逆に言えば核拡散を防いでいくための機微情報、こういうものはやはり保護しなければならない公益というものがあるだろうと思います。  第二点は、企業の営業活動あるいは生産活動の中でやはり保護されていかなければならないノウハウやそういうものは法律上あるのではないかと思います。それに、公開することによりまして不利益を得たと国家賠償を請求されるというようなケースに当たる場合にどうするかということは、これはやはり検討しなければならない面があるだろうと思います。しかし、そのようなことについては、アカウンタビリティーは行政や事業者側にある、このように考えております。
  99. 笹木竜三

    ○笹木委員 よくわかりました。  ただ、今の企業の営業活動にかかわるもの、不利益になるものということについては、これは個々にまた情報公開についてはお願いしながら、実態についてはお話ししていきたいと思いますけれども、住専の問題でも薬害エイズの問題でも、非常に重大な事柄に関しては企業のそういったプライバシーに対しても情報公開せざるを得ないという面は当然あるわけです。このFBRというプロジェクトは、二十一世紀の半ば以降、末ぐらいにかけて世界のエネルギーに対してどうするかという非常に大きな夢を持ったプロジェクトであるわけですけれども、その反面、今の体制では、さっきお話ししたようにまた必ず事故が起きると思っていますけれども、もし起こった場合に非常に壊滅的な被害をもたらす可能性が高い。ぜひ企業の営業活動にかかわるものについても積極的な検討をお願いしたい、そう思っております。  それではまず、動燃参考人の方にお伺いしたいわけですけれども、この温度計さや管、担当の部はIHIのどこだったのか、お答えをいただきたいと思います。
  100. 中野啓昌

    中野参考人 お答えいたします。  温度計設計を担当いたしましたのは、石川島播磨重工の原子力事業部開発プラント設計部でございます。
  101. 笹木竜三

    ○笹木委員 それで、動燃参考人でも科技庁の方でも結構ですけれども、この設計は、メーカー、IHIのオリジナルと考えていいのかどうか、お答えいただきたいと思います。
  102. 宮林正恭

    宮林政府委員 お答えさせていただきます。  設計メーカーは、「もんじゅ」のような段つきのある温度計さや管の製作実績はこれまでございません。同様の設計のものとして参考としたものはないというふうに申し述べておりまして、そういう意味ではオリジナルである、こう言えるのではないか、こういうふうに考えております。  なお、さや管を配管に管台を介して取りつける、こういう方式につきましては、これは原子力、火カプラント、いろいろなもので使われている一般的なものでございます。
  103. 笹木竜三

    ○笹木委員 メーカーのオリジナルということですけれども、先ほどから、設計ミスがあった、それについての質問も続いているわけです。参考人の方にお答えいただきたいわけですけれども、もう一度まとめまして、どうしてこの設計ミスが起こったのか、このメーカーのオリジナルのさや管についてどうして起こったのかについてお答えをいただきたいと思います。
  104. 中野啓昌

    中野参考人 お答えいたします。  動燃は、この設計をするに当たりまして、今申し上げましたように、東芝を通し、石川島播磨にこの設計と製作を依頼したわけでございます。  その過程の中で我々いろいろ仕様をつけておりますが、その仕様をつけております中で、ASME参考にしろとかいろいろなことを言っておるわけでございます。そしてまた、その設計ができ上がった時点で、我々それを品質管理規定に従いましてチェックをしておるわけでございますが、先ほど以来お話ししておりますように、主に設計のチェックのポイントを、FBRの特徴でございますところの熱応力また溶接部健全性というところに重点を置いてやってきたわけでございます。  今回の場合、このような部分につきましては、一般的な原子炉、軽水炉等においても使われているような汎用品であるというような考え方から特にチェックいたしませんで、しかもその段つき構造等に対する指摘に至らなかったわけでございます。そういう意味で、ナトリウムバウンダリーを構成する部品についてはより慎重な配慮を払うべきであり、このような偏ったチェックになったことについては十分反省すべきところだと思っておるところでございます。
  105. 笹木竜三

    ○笹木委員 もう一回お聞きしますと、先ほどから、この段つきの構造については非常にお粗末な設計だ、常識では考えられない設計だ、そういった指摘もこれは事故後あるわけですけれども、IHIの中に、あるいは東芝の中に、今言った関心がメーカーにおいても熱と溶接に集中し過ぎていたということですが、機械とかあるいは振動、こういった専門家はこのIHI、東芝、メーカーの中にいたのかどうか、今どういうふうに把握をされていますか。
  106. 中野啓昌

    中野参考人 メーカーの中には機械関係専門家はおりまして、しかもそれは大学卒ないしは高等専門学校卒業の技術者が当たったというふうに報告を受けております。ただ、その中に振動そのもの専門家がいたかどうかというのが今の先生の御質問かと存じますが、特別に振動の専門家がいたというふうには聞いておりません。
  107. 笹木竜三

    ○笹木委員 動燃の中には振動の専門家はおられたのかどうか、お聞きをしたいと思います。
  108. 中野啓昌

    中野参考人 お答えいたします。  動燃の方にもそれぞれの担当者がおりまして、この部分設計を担当しております者は機械出身の者でございます。その機械出身の者も特に振動の専門家というわけではございませんで、動燃にも振動の専門家という意味ではおりません。
  109. 笹木竜三

    ○笹木委員 科技庁にお答えいただきたいわけですけれどもメーカーにも、第一義的な責任を持つ設置者にもその専門家はいなかった、科技庁にはそういったことをチェックする専門家はおられたのかどうか。
  110. 宮林正恭

    宮林政府委員 科学技術庁の一次審査の場合は、科学技術庁の職員だけではなしに、いわゆる技術顧問と言われる方にいろいろ御意見を伺って、それで審査をさせていただくわけでございます。それで一次審査のときには、これは一人振動の専門家の方に入っていただいております。しかしながら、この温度計そのものにつきましては、科学技術庁の方は審査をしておりませんので、当然そこのところでは何か判断をするという行為は行われていないということでございます。
  111. 笹木竜三

    ○笹木委員 科技庁は構造については検査をする立場じゃなかったからということで、メーカー動燃には振動の専門家はいなかった。機械とかについては専門家は当然いるということですけれども、じゃ、もう一回確認をしますが、振動の専門家じゃないと今回のこの設計ミスは避けられなかったと今総括をされているかどうか、参考人にお伺いしたいと思います。
  112. 中野啓昌

    中野参考人 振動に関しまして、全く関心がなく、見過ごしたというわけではないと思っております。先ほど来出ておりますが、この振動の場合に非常に複雑な振動が起きておるわけでございまして、流れ方向の振動と、それからそれに伴って起きる横振動と、二つの重なった振動が起きたために今回の事故になったわけでございます。その設計をいたしました際には振動も当然考慮されておりまして、いわゆるASME基準の中に合致することということで動燃事業団はその振動に関しては条件をつけておるわけでございますし、また、それに対応した形で評価をし、IHIの方では我々に承認を求めてきておるわけでございます。  したがいまして、今回のミスという意味で、縦横両方の振動がこの設計から当時すぐ見破られなかったのか、専門家がいなかったから見破られなかったのかという御趣旨の御質問かと存じますが、当時としては、汎用品でそのASME基準の中に入っておれば大丈夫だというふうに言われておりましたので、今のような形になったわけでございます。
  113. 笹木竜三

    ○笹木委員 一つは、ASME基準それ自体を誤解して解釈していたというふうに報告書でも書いてありますけれども、さらに、九一年に新基準的なものの追加があった、それが全く考慮されなかったのはどうしてなのか。まず科技庁の方にお伺いしたいと思います。
  114. 宮林正恭

    宮林政府委員 お答えさせていただきます。  ASME基準につきまして、それをやっていたとしたら振動の専門家でなくてもこういうことは起こらなかっただろうということを今回の報告書で、そういう前提、認識でまずこの報告を書いております。  それから、確かに九一年にASME基準で追加をしておりますけれども、これにつきましては、この書かれている部分が実は異なっておりまして、それでメーカーの話によりますと、メーカーは、九一年の基準は受け取って、その部署では認識をしていたものの、具体的にこのさや管を担当する部局には連絡がされていないというふうなことになっていた、こういう報告を受けております。
  115. 中野啓昌

    中野参考人 今の先生の御質問に関連しまして、私どもの得ております情報の中でお答えさせていただきます。  九一年の改定があったことについて見過ごしているのではないかというのが先生の御指摘だと思いますが、メーカーの方では、九一年に改定された情報を取得いたしておりました。取得いたしておりまして、これは当然そのときに見直すべきであったと我々今思っておるわけでございますが、メーカーの方に聞きましたところ、直接の設計部門がその情報を入手していなかった、そのために見直すところまでにいかなかったというのが実際でございます。そのあたり、我々、今大変反省をいたしておるところでございます。
  116. 笹木竜三

    ○笹木委員 長官にちょっとここで感想をお伺いしたいわけですけれどもメーカーにおいて、今言った基準についての誤解ですとか、あるいはその後の見直しについても、どういう経緯かわかりません、縦割りだか何かわかりませんけれども、それについての検討がされなかった。こういったメーカーミス動燃もそのまま通過する、科技庁ももちろん通過した。  こういうケースがほかにないと断言できるかどうか。僕はもう十分、ほかのいろいろな部品について可能性は非常に高いと思っておりますけれども、感想をお伺いしたいと思います。
  117. 中川秀直

    中川国務大臣 そのことについて、あるという断定も、ないという断定も、する材料を私は持ち合わせておりません。  したがいまして、今度の中間報告書の中でも、そういう点についてこれから全体的な安全総点検というものを徹底させる。また、そのための基準あるいは考え方、評価、確認、これを当庁もやる。こういうことで、この作業をきちんとしなければいけない、こう考えております。
  118. 笹木竜三

    ○笹木委員 今、その可能性があるともないともお答えする立場にないというお話ですけれども……(中川国務大臣立場ではなく、材料がないということです」と呼ぶ)材料がない。万が一の可能性に備えることをぜひやっていただきたいと思います。  阪神の大震災の後、アメリカのFEMAが来て、いろいろな資料を読ませていただきました。非常にびっくりしたのは、ありとあらゆる、本当にこんな可能性があるのかと思うようないろいろな危機を想定して、それへのマニュアルができているということでした。  大プロジェクトで、先ほどお話ししたように、壊滅的な危険を与える、影響を与える可能性もあるわけですから、最悪に備える、万が一に備えるということで、その可能性はあるのだ、他の部品についてもあるのだという前提でぜひ検討していただきたいと思います。それがないととても国民としては納得ができない、そう思います。  それと、この温度計の断線によって、動燃に対して報告もなしでメーカーが交換をしているということが、この中間報告書が出た後で報道されました。動燃はいつメーカーに対して履歴の特異なものの有無を調べるように依頼をしたのか、温度計さや管について。
  119. 中野啓昌

    中野参考人 ことしの四月三十日でございます。
  120. 笹木竜三

    ○笹木委員 四月三十日に依頼をして、五月十一日にメーカーは初めてわかった、それで間違いありませんか。
  121. 中野啓昌

    中野参考人 先生の御指摘のとおりで間違いございません。
  122. 笹木竜三

    ○笹木委員 先ほど、図面とかそういうことについて、こんなものしかないのですかというお話をしましたけれども、この温度計資料と、交換したという資料は、動燃内部でも保管されていなかったということですね。
  123. 中野啓昌

    中野参考人 そのシースの中身を交換した、それは動燃に引き渡される前でございますけれども、みずからの点検の中で異常を発見して交換したということについては、動燃の方に全く報告がございませんでした。
  124. 笹木竜三

    ○笹木委員 その資料動燃の中にはなかったということですね。
  125. 中野啓昌

    中野参考人 さようでございます。
  126. 笹木竜三

    ○笹木委員 まだはっきりした原因究明はされていないにしても、こういった交換がされていた、それに対して報告もない、資料もない。こういった状態、メーカー動燃関係、これはやはり非常に異常な状態だと思います。  先ほどからお話ししている部品の設計の問題、あるいは今言った資料の問題、報告の問題、やはり非常にお粗末な現状だと思います。他の委員も指摘をしているように、全体を管理するシステム自体をどうしても見直さないといけない、そう思います。動燃理事長にまず御感想をお伺いしたいと思います。
  127. 近藤俊幸

    近藤参考人 この機会により安全性を高めるために、設計やその基本的な考え方など、根源に立ち返りまして見直していきます。総点検を行い、一つ一つ確実に対処していくということでございます。
  128. 笹木竜三

    ○笹木委員 ぜひお願いしたいと思います。  科技庁にまたお伺いしたいわけですけれども、一次と二次系の温度計の構造が違うということ、これはいつ把握をされていましたか。
  129. 宮林正恭

    宮林政府委員 事故後に二次系、一次系の温度計を全部把握をするように努めました結果、判明いたしたと理解をしております。
  130. 笹木竜三

    ○笹木委員 そうしますと、それ以前は一次と二次系の温度計の構造、形が違うということは把握されていなかったということです。  確認させていただきたいのですけれども、科技庁は先ほど構造について、振動とかの強度については、それをチェックすることにはこれまではなっていなかったというお話でしたけれども、じゃ、使用前検査では何をやることになっているのか、お答えいただきたいと思います。
  131. 宮林正恭

    宮林政府委員 こういう計測計につきましては、その個数でございますとか性能でございますとか、そういうふうなものについてチェックをする。したがいまして、いわゆる能力といいますか、そういうものをチェックをするというふうな考え方になっておりまして、これは、設計・工事方法の認可の対象がそういうふうなことになっているということでございます。
  132. 笹木竜三

    ○笹木委員 中間報告書の十七ページに、「科学技術庁は設工認において、検出器の種類、計測温度の範囲、警報設定値が設定できる動作範囲及び個数について確認しており、これらについて使用前検査を行っている。」ことになっているという記述がありますけれども、ちょっと素人の考えとして、形が違うことも気がつかない検査というのはどういう検査なんでしょうか。個数とか種類とか、当然図面とかそういったことも、一応資料としてはありそうなものだと思うわけですけれども
  133. 宮林正恭

    宮林政府委員 お答えさせていただきます。  今御指摘がありました、あるいは私が申し上げましたように、中身は性能に類すること、それから個数、こういうふうなたぐいのものでございますので、これは温度計が設置された後でも十分確認ができることでございます。したがいまして、確認作業は温度計を設置して、見えない状況でやっているものが多いということでございます。
  134. 笹木竜三

    ○笹木委員 資料等による検査は一切なかった、そう理解していいわけですね。
  135. 宮林正恭

    宮林政府委員 当然、性能等につきましては、性能を実際に計測したデータとか、そういうものはチェックをいたしておりますので、資料等によっている部分も当然ございます。
  136. 笹木竜三

    ○笹木委員 それと、先ほど設計のことで、情報公開のことで御質問したわけですけれども、もう一度質問させてください。  この二日以上かかってやっと上がってきた図面が非常にお粗末なものなわけですけれども、これは、科技庁にもともとあったのでしょうか、なかったのでしょうか。全くなかったということですね。
  137. 岡崎俊雄

    ○岡崎政府委員 今回、先生の要求に基づきまして、動燃事業団から入手したものでございます。
  138. 笹木竜三

    ○笹木委員 動燃事業団では、これ以外の資料もたくさんあるけれども、それを抜き取る作業が非常にお粗末だった、そういうことでこのようなものしか出てこなかった、そういうことですね。
  139. 中野啓昌

    中野参考人 図面に関しましては、動燃事業団も今回入手したものでございます。
  140. 笹木竜三

    ○笹木委員 私が持っている資料、これも動燃事業団は今回初めて入手をした……。
  141. 中野啓昌

    中野参考人 失礼いたしました。今申し上げましたのは、資料ではなくて図面でございます。図面は今回入手したものでございます。
  142. 笹木竜三

    ○笹木委員 もう非常に問題がある現状だと思います。  次の質問に移らせていただきますけれども、中間報告書で、ビデオ隠しですとか虚偽の入室調査の問題について、いろいろ報告がされております。  事実関係だけこの報告書のとおり言いますと、事故が起こった翌日の朝の二時半、未明の二時半、入域調査した者からの報告が緊急対策本部に対してあった。その後、推定の時間で二時四十五分、消防署員とか、福井県及び敦賀市の職員に報告をした。しかし、三時四十分、実際科技庁ですとかに対する報告としては、消防署員、福井県及び敦賀市の職員に対して報告した、床に高さ三十センチぐらいの漏えいナトリウムの堆積物らしき塊があるのを見た、こういった報告については、今言った福井県及び敦賀市の職員には報告したけれども、三時四十分のファクス第六報ではしなかった、そういった説明がされています。  そういった中で、どうして最初に撮ったビデオを見せなかったのか、あるいは、オリジナルのビデオがあるのだけれども編集して違うものにつくりかえたのかということについて、中間報告書はどういうふうに総括をされているか、科技庁の方にお答えいただきたいと思います。
  143. 宮林正恭

    宮林政府委員 調査報告書では、信頼性の高い内容を把握できたものとして記載している中身は、九日二時、入域調査に際して撮影されたビデオが速やかに公表されず、本社及び科学技術庁にも連絡しなかったことについて、技術的事項担当の副所長は、まずは入り口部に入室した段階でナトリウム漏えいがあったというはっきり確認された状況のみを伝えることが重要と判断したと述べており、所長も了解したことを否定していないというように記載しているのが一つでございます。  それから、九日十六時の入域調査の際に撮影されましたビデオを編集したことにつき、そして、編集したものをオリジナルのものとして提供したことにつきましては、「「事故の現場の映像が刺激的であり、説明なしの公開は不安をあおる」との所長及び技術的事項担当の副所長の判断」で行われたという記載をいたしております。  なお、十六時の二回目の入域調査でございますが、オリジナルビデオの存在が判明いたしましたのは昨年十二月二十日でございました。また、二時入域調査のビデオの存在が判明いたしましたのは十二月二十二日でございました。
  144. 笹木竜三

    ○笹木委員 そういった報告がこの中間報告書で非常にページを割いてしてあるわけですけれども、この報告書が二十三日に出た後二週間ぐらいで、六月三日には、動燃内部調査、これとは違ったような事実が出た。「新聞ならいいが、テレビに出すのはまずい」「(写真に解説が付く)新聞には出してもいいが、テレビは説明なしで映像を流すためまずい」そういったことで、ビデオはそのまま出さなかった。あるいは、午前十時の虚偽の入室調査について、実際していないけれども入室したと報告があったことについて、いろいろその原因について報告書は書いてありますけれども、これも報告書とかなり違って、この六月三日の内部調査によりますと、午前二時過ぎの調査を隠している、しかし、先ほどお話ししたように消防署員や福井県及び敦賀市の職員には報告している、この食い違いをどうしようかということで、幹部が、午前十時に再度入って中を見てきてはどうか、現場の職員が、危険を冒してまで同じことをする意味があるのかと反発して入らなかった、しかし、幹部は本社や科技庁に午前十時入室をファクスで報告した、こういった内部調査が六月三日には明らかになっております。  この中間報告に当たって、科技庁は、動燃に対していろいろ調査をしたと思うわけですけれども、どうしてこんなにお粗末な結果しか出てこないのか、それについて、最後参考人と科技庁の方にお伺いしたいと思います。
  145. 宮林正恭

    宮林政府委員 お答えさせていただきます。  先生の御指摘のあった内部調査というのは、恐らく新聞でそう報じられた中身のことではなかろうかと思うのでございますが、私ども動燃の方に確認をいたしましたところ、そういうことについては内部調査したものはない、こういうことでございまして、あれの新聞報道につきましては、私ども、ちょっと中身について承知はしていないわけでございます。  それから、私ども調査につきましては、原子炉規制法六十八条に基づく立入検査という形で実施したものでございまして、約五十人の関係者の事情聴取の結果を取りまとめたものでございます。なお、幾つかの点につきましては、御当人たちが、関係者の方が、実際に記者会見などで述べられているということもございます。
  146. 中野啓昌

    中野参考人 私の方からその件についてお答えいたします。  私どももその新聞報道については承知いたしておりますが、私ども内部調査ではそのような事実は出てきておりません。その後、数社からそのような問い合わせもございましたけれども、我々は承知していないということでお答えしております。
  147. 笹木竜三

    ○笹木委員 時間が来たので、これで最後にしますけれども最後に、長官と理事長に一言ずつお答えをいただきたいわけです。  この調査さや管の問題、調査を出した後にも、いろいろな取りかえの事実とかが出てきております。ビデオのことについても、私は、この報告書を見て、非常に納得ができない。質問したいことがたくさんございます。あるいは、ナトリウム漏れの実験の結果も当初の予想をはるかに裏切るようなものだった。こういったことで、この程度の報告書では、原因究明では、とても相当進んだとは私は思っておりません。  もっと言えば、何度も繰り返しますけれども、必ずまた事故が起きると確信をしております。ぜひ今後、今言った総点検において、組織のあり方ですとかシステム全体の管理のあり方設計すべて、そういったことの総点検を必ずやっていただきたいと思います。長官にお答えをいただきたいと思います。  それと、理事長には、動燃の次の報告書はいつ出るのか、さや管の問題とかはもう大分はっきりしてきている面もあるけれども、そういったことだけ分離してでも早く報告を出すおつもりはないのか、あるいは、動燃においても、危機管理とか組織、システム、体制、すべて見直すような、そういった御覚悟があるのかどうか、最後にコメントをいただきたいと思います。
  148. 中川秀直

    中川国務大臣 いろいろ御指摘を賜りましたが、ただ一点、前もって申し上げておきたいことは、事実は事実、事実でないことは事実でないということは正直に申し上げなければなりません。いろいろ報道もなされておりますけれども、それについても、真剣に、真摯に確認をいたしました。  ビデオのことにつきましては、既に中間報告で出しておりますとおり、技術事項担当の副所長が、二十二日に関しては、まずは入り口に入ってナトリウム漏えいがあったと確認された状況のみ伝えればいいと、所長の了解を得てこの正確な入域のことは言わなかった、入り口で見ただけだということである、ビデオを撮ったということも言わなかった、こうはっきり認めておるわけであります。  それについて、後ほど行われた報道では、新聞に出してもいいが、テレビは説明なしで映像を流すためにまずいという意見が後から出ましたけれども、ニュアンスとしては、入り口で確認したものだけで、それだけ伝えればいいと判断したという中の、想像をすれば、後ほど新聞で出たようなニュアンスのようにとれなくはありません。しかし、五十数人の方々に事情聴取をして、そして本当の事実関係は何かというと、そういうことではなくて、この入り口の部分だけを見たから、それだけ伝えようと思ったというのが、副所長と所長の間の了解事項で、そういう結果になったということでございます。  二番目の、危険を冒してまで十時に再度入る提案をしたのだけれども、そこまでやる必要はなかったのではないかという事実関係は、内部調査の結果でも再度こちらも確認しましたが、そういう事実はございません。  いずれにしても、これは中間報告であることは再々申し上げておるとおりでございますが、床ライナーの問題、またナトリウムエアロゾルの機器に対する影響等々、五点以上、調査を継続しなければならない点も、いまだたくさんございます。そういうことをきちっと詰めまして、事実は事実、事実でないものは事実でないということはきちんと御報告をしていく、そういうことで臨んでまいりたいと存じます。  先ほど情報公開のことで、いささか私、誤解を招く答弁をしたと多少憂慮する点があるので、再度言わせていただきます。  企業情報だから、商売上、国家賠償請求をされるようなものは検討は一応しなければいけないということは申し上げましたけれども、ともかく他の公益、笹木委員御指摘のとおり、原子力安全確保という公益、これと比較考量して判断されるべきでありまして、原則としては、そういうものはきちっと公開をしていくというニュアンスは持って御答弁したつもりでございます。
  149. 近藤俊幸

    近藤参考人 御指摘の危機管理の問題でございます。これは早速に、さらに見直します。さらにそれから、実際場面に臨んでこれが動く必要がございますので、日常の研修、実習ということが必要だと思います。  それから、ビデオ隠しの問題でございますが、こういうことはもう絶対あってはならないことでございます。今、原因調査中でございます。職員に向かっては、意識の改革を図るということで、こういう点を軸にして職員に指示しております。  それから、報告の件でございますが、六月七日にやりました、前段に紹介がございました実験の解析等を今進めている段階でございます。そういうものを含めて報告するということになろうかと思いますので、時間をいただきたいと思います。
  150. 笹木竜三

    ○笹木委員 質問を終わります。
  151. 井上喜一

    井上委員長 今村修君。
  152. 今村修

    ○今村委員 社会民主党の今村修であります。  今回の事故報告書についてお伺いをしていきたいと思います。  今回の科学技術庁事故報告書を見ますと、福井県民やあるいは国民の疑問、不安に率直にこたえていない、こんな感じがするわけであります。特に、国民あるいは県民と国との間に相当大きな温度差がある、こんな感じがいたします。  そこで、まずお伺いをしておきます。  福井県は、今回の事故核燃料リサイクルの中核とされる高速増殖炉の安全確保の根幹にかかわる重大な事故だ、こういう認識を示しています。しかし、国は、「もんじゅ」の技術的な、いわばナトリウム漏えいという限定をされた認識をされている。この認識の差には、いろいろな質問が出ていましたが、国とは相当開きがあるのではないのか。その開きが結果として事故報告書にいろいろ影響を及ぼす。事故の技術的、社会的重大性をどのように受けとめているのか、この違いが出ているような気がいたします。  地元で、京都大学の先生などを中心にしながら、原子力に携わっている方々が国に対抗して事故報告書を出していました。この報告書を読みますと、国との報告の違いがこんなにもあるのかという余りの違いにびっくりしました。情報公開されていない点、疑問が解明されていない点、この点だけについても相当な量に上る、こういう状況であります。  この温度差をどう受けとめているのか、大臣と動燃理事長に、まずもってお伺いをしておきたいと思います。
  153. 中川秀直

    中川国務大臣 お答えをいたします。  今村委員御指摘の点は、私も理解しているつもりでございます。  先ほど、午前中の質疑のときにも申し上げましたが、地元のお立場からすれば、ともかく社会的な安心、安全まで確保しなければ、安全とは言えないわけでございます。生命にかかわる安全、この安全は、行政のものでも事業者のものでもなく、市民の安全でございます。そういう意味では、いかなる故障あるいはまた事故もあってはならないわけで、完全無欠なそういう絶対安全というものを、もう限りなく追求しなければならない、こういうお立場であろうと存じます。  他方、原子力については、潜在的な危険性というものは常に内包しておるわけであります。しかし、それをありとあらゆる技術的手段で抑え込み安全にする、特に、放射能災害を起こさない、あくまで発電所周辺にそういう被害を起こさない、こういう考え方で、それを目標にして多重の安全対策を講じるというのが技術的安全でございます。  すなわち、技術的な安全対策というのは、人は誤り、機械は故障するという至極当然の前提をもとに多重防護をする、こういう考え方でありますし、他方、社会的安全というのは、そういう故障や事故も含めて、仮に放射能災害が起きなくても、そういうものもなくせというのが市民の安全感覚でもあろうと思います。その溝を、落差を埋めていく努力をどのようにしていくか、そういう真剣な努力をしていくことが社会的安心、安全につながっていくことである、こう言いかえざるを得ないところでございまして、これは文明社会における技術というものの存在というものが市民、社会から受け入れられて初めて存在する、こういう観点に立てば、あらん限りの努力をしてそういう社会的安全に近づけていかなければいけない、こういうふうに私どもは考えておりまして、その意味で「もんじゅ」のナトリウム漏えい事故は極めて重く受けとめている、こういうふうに考えている次第であります。
  154. 近藤俊幸

    近藤参考人 先生のおっしゃる国と国民との間の温度差に対する答えにならないかもしれませんけれども、中央にいた私と、それから辞令をもらいまして早速現場を回った、敦賀、福井等を回らせていただきました私が感じた温度差というのは、確かにこちらにいて感じたものよりも現場の反響は非常に厳しいものがございました。今後どう落差を埋めていくかということは、一つの大きな課題だと受け取っております。
  155. 今村修

    ○今村委員 今のお答えではちょっと納得できないわけでありますけれども、具体的に二つの点、御指摘をしておきたいと思います。  一つは、事故報告書が、「放射性物質による周辺環境及び従事者への影響はなく、また、炉心の冷却は損なわれず、原子炉は安定に維持され、災害防止上の観点からの原子炉施設の安全は確保された。」安全は確保されたということを強調していますね。  ところが、報告書の中にも説明は全くありませんけれども、トリチウムという放射性物質が漏出をしていたという資料が載っています。このトリチウムという放射性物質の漏出については、民間の調査報告では、あの段階で済んだから問題はなかったけれども、四〇%以上、もっと運転がなされていたとしたら重大な問題になっていたのではないか、こう指摘をされているわけです。放射性物質が漏れていたという記述は全く事故報告の中にはないんですね。これは確かにないはずですよ、漏れていたんですから。しかし、安全を強調する、人体や環境影響がなかったから安全だという記述。しかし、県民からすると、放射性物質が漏れていたというのはショックなんです。全くどこにも報告がないわけですね。そういう問題があります。  もう一つは、この科技庁の報告書を出した、つくったワーキングやタスクのメンバーの中に、安全審査を担当したメンバーが六人入っていますね。見る方から見ると、安全審査をしたその人間が今度は事故調査をしている、この報告を信用できますか、こうなりますよ。  ですから、県民との落差というのは、こういう点からいくと相当離れているな、こう感じますので、この点についてはどうでしょうか。
  156. 宮林正恭

    宮林政府委員 お答えさせていただきます。  トリチウムにつきましては、そういう可能性ということは私どもも十分念頭に置いてこの報告書を作成いたしております。しかしながら、報告書の二十九ページにも述べておりますように、モニタリングポストあるいはモニタリングステーションあるいはモニター、こういうふうなものの指示値につきましては、通常時の変動の範囲内である、したがいまして、環境への影響はなかった、こういうふうに判断をしたわけでございます。それが第一点でございます。  それからもう一点、安全審査をされた方が、参画された方が今回の調査のメンバーの中においでになるということにつきましては、それは確かにそういう方がおいでになることは事実でございますけれども、こういう分野といいますのは、専門家というのはやはり必ずしも数が多くございません。  したがいまして、かつまた今回の事故原因になりました温度計につきましては、これは、先ほどからも申し上げておりますように、安全審査なりそういうものの対象とされてきていないものでございますので、そういう意味で、むしろ、そういう皆さん、安全審査についていろいろとおやりになった方の経験というのも生かすという意味でお入りをいただいているところでございます。しかしながら、その方がマジョリティーを占めるというふうなことはないようにいたしているところでございます。
  157. 今村修

    ○今村委員 今の答弁、これはこれ以上追及しません。しかし、第三者、国民から見て、安全審査をした人が事故調査をやって事故報告書を出したというものを、ああごもっともですと受け取る国民がいますか、いないでしょう。その辺のずれがあるのですよ。そこは指摘をしておきます。  それから、なぜ今回の設計ミスが、俗にダブルチェックだと言われながらミスとして通ってしまったのか。これは本当に素朴な疑問なんです。何で許認可の対象になっていなかったのか。もっと許認可の対象になっていない箇所はいっぱいあるのではないか、こういう疑問が出てくるわけです。そういう点では、なぜメーカーミスミスとして通ってしまったのか、もっとこういう箇所があったのではないか、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  158. 宮林正恭

    宮林政府委員 御説明させていただきます。  国の安全審査につきましては、災害を防止する、すなわち一般公衆の安全を確保する、こういう観点から必要なものについて審査を行っている、こういうことでございます。  御指摘の温度計につきましては、このような考え方に照らしまして安全審査の対象ということにいたしておりませんでした。つまり、自主保安によって動燃事業団の方で安全性を確認をするというふうになっていたわけでございます。しかしながら、報告書でも書いておりますけれども、今後は科学技術庁審査、検査を行うというふうなことにいたしたい、こういうように思っております。  なお、これ以外にも審査の対象となっていないものがあるのではないかということでございますが、これは先ほど申し上げましたような観点でございますので、それは幾つもあるというふうに言わざるを得ないと思います。例えば、例示をいたしますと、流量計でございますとか圧力計の計装品、あるいは主配管に接続されている枝管、こういうふうなものでございます。  今回、特にこういうふうな事故があったということにかんがみまして、安全性点検を「もんじゅ」システムについて行うということをやろうとしておりますので、今後審査の対象とすべきものというものがその段階ではっきりいたしますれば、当然そういうものにつきましては審査をしていくというふうにしていきたい、こういうように考えております。
  159. 今村修

    ○今村委員 今のお話も、これは国民から見ていてなかなか理解できない話なんです。原子力発電所やこういう施設は、国がダブルチェックをして全部チェックする、安全だ。これはみんなそう思っているんですよ。具体的な事故発生したら、安全審査をしているところと全く審査をしていないのが施設の中にあった、こんな話は、これだって国民から見て、ああなるほどごもっともですという話にならぬ話だと思いますよ。やはりなぜミスができたのか、その原因責任は徹底的に追及していただきたいと思います。  今お話があったように、この報告書によると、先送りをされた、今後なおかつ調査をしていかなければならぬ、こういう内容のものが約五十項目近くあるわけですね。そして全体もまた点検をする、こういうお話。とすると、全体の点検や先送りをした課題、これはいつ国民の前に明らかにされるのですか。この点について明らかにしていただきたいと思います。
  160. 宮林正恭

    宮林政府委員 安全性点検につきましては、私ども現在いろいろとその中身について検討を始めている段階でございます。したがいまして、現段階でどういうふうな安全性点検をするかということもはっきりいたしませんし、いつごろまでにその安全性点検の結果を出していけるかということについては、申し上げられるところではございません。  しかしながら、当然のことといたしまして、総点検の結果につきましては国民皆様方に御報告すべきもの、こういうふうに考えているところでございます。
  161. 今村修

    ○今村委員 まだやっていないから、それはいつになるかというのはわからぬという話だけれども国民が疑問に思っている点についてはできるだけ早く答えを出していただきたい、そのことだけ指摘をしておきたいと思います。  これも何人かの委員の方から指摘があったわけであります、フランスのスーパーフェニックスで一九八五年七月に温度計取りつけ部分からナトリウムの漏れがあった、なぜ、このフランスの温度計さや管の短縮改善等ナトリウム漏れ対策の経験が生かされなかったのか、こういう問題があります。  いろいろお答えがありました。しかし、フランスの事故が起きて、フランスで取り扱った経過については、文書については、全部動燃で入手をしていますね。しかし具体的に対応されなかった。今回の事故が起きて初めて動燃はフランスへ出かけていってその事故調査をしている、こういう結果になっているわけでしょう。それでは、なぜ動燃が当時フランスの事故を克明に調査して対策をとらなかったのか、ここに疑問が残るのです。  これは、動燃と科技庁に、なぜ対策をとらなかったのか改めてお聞きしたいと思います。
  162. 中野啓昌

    中野参考人 先生の御指摘は、フランスのスーパーフェニックスで一九八五年七月に温度計の取りつけ部分からナトリウム漏れがあった、なぜこの際のフランス側の対応策を十分に反映させなかったのか、そういう御趣旨の御質問かと存じます。  先ほど来お話しさせていただいておりますが、「もんじゅ」の温度計設計、製作は、常陽の経験に基づきましていろいろな基準を適用して実施いたしました。  一番目といたしまして、ナトリウムの流れに対する強度、熱応力に対する強度を十分に確保すること、二番目としまして、溶接部からのナトリウム漏えいを防止すること、三番目として、カルマン渦による振動を回避すること、こういったことを条件に、メーカー設計、製作を依頼したわけでございます。  先ほど先生からございました、一九八五年七月にスーパーフェニックスで起こりました二次系の温度計部のふぐあいにつきましては、これはカルマン渦による振動と溶接部の欠陥によるものであるというふうに我々情報を聞いております。その際のナトリウム漏えい量はわずか五cc程度でございまして、そのカルマン渦と溶接部の欠陥によるということの対応として、さや管を短くし、そして振動を少なくしたというふうな情報を得ております。  それから、スーパーフェニックスで問題となりました振動につきましては、カルマン渦との共振を回避するために、メーカーに、温度計さや管の固有振動数とカルマン渦による振動数を算出して、これらが十分離れていることを確認させたわけでございます。  また、溶接部につきましても、信頼性の高い完全溶け込み溶接をするように指導してまいりました。熱応力評価についてもチェックをいたしました。さらに、ナトリウムバウンダリーとしての重要性を考慮するように指示をいたしております。  その後、いわゆる対称渦ということに関する言及がそこにはなかったということと、その当時それが我々としては知り得ない一つ情報であったということから、そこに書いてございましたカルマン渦に対する対策は「もんじゅ」でも当然とれているということで、フランスでとった対応策をそのまま使うということをしなかったわけでございます。  いずれにいたしましても、常陽の経験はもとより、スーパーフェニックスの経験を今後活用してやっていきたいというふうに思っております。
  163. 宮林正恭

    宮林政府委員 ただいま動燃の方から動燃関係のところは御説明がありましたので、科学技術庁関係部分を御説明させていただきますけれども規制当局といたしまして本件についてどういうふうな情報を入手していたかということにつきましては調べてきておりますけれども、現在のところは、直接情報を入手していた、こういうふうな記録はございません。公的な情報交換の場といたしまして、日仏規制情報交換会合、こういうものもございますけれども、これにおきましても本件については話題にならなかったというふうに承知しております。
  164. 今村修

    ○今村委員 これも体質を云々するわけではないですけれども、一九八五年にスーパーフェニックスで起きたもの、これは、温度計四十五本のうち、振動の少なかった八本を除いて三十七本を短くしているわけですね。こういう改造がなされている。一九八七年の三月のナトリウム漏れでは、運転の手順書を含めていろいろ直されている、こういう結果になっているわけです。  今「もんじゅ」の事故が起きて、事故が起きた後行くぐらいだったら、何でその当時行かなかったのですか。「もんじゅ」の事故が起きてしまって、その後にフランスへ行って当時の事故をさかのぼっていろいろ調査するなんというのは、国民から見たら、一体どうなっているんだ、こういうことになるのですよ。  私は、ここに動燃の体質があったと思います。高速増殖炉というのは日本で開発をした炉だ、我々は経験を積み重ねてきた、他のものを参考にしなくても我々はちゃんとやれる、この体質が結果として引き継がれてこの事故につながったものだ、こう言われても仕方ないのではないですか。この点についてお答えいただきます。
  165. 中野啓昌

    中野参考人 先ほど申しましたように、一九八五年のスーパーフェニックスでの事故、また八七年の対策等につきましては、当時学会でフランス側が発表いたしました。それらの資料をできるだけ詳細に集めまして、先ほど申しましたような評価をいたした次第でございます。  今回のトラブルが起きまして、事故が起きまして初めて腰を上げたという先生の御指摘でございますが、実はスーパーフェニックスにつきましては、八五年当時は動燃とスーパーフェニックスの間で技術協力協定あるいは情報交換協定というものは持っておりませんでした。最近になりまして、スーパーフェニックスとの間で、お互い技術を交換し情報を交換し合おうではないかという協力協定を結びました。したがいまして、その協力協定に基づいて昨年からことしにかけて調査に行かせていただいたわけでございます。
  166. 今村修

    ○今村委員 今の説明を聞いて納得する人はいないと思いますよ。報告書を全部入手をしていた、とすれば、その報告書を分析をして、協定があろうがなかろうが重大な事故だと思えばちゃんと調査をして、その経験を、知見をちゃんと生かすというのが普通の話ではないですか。そのことを何もしていなくて、協定ができましたから事故が起きてからフランスへ行って調査しました、こんな話なんというのは納得するわけないでしょう。ここは指摘をしておきます。  それから、先ほどもちょっと出ましたが、設計ミスだということになると、これは賠償責任の問題が当然出てくると思いますね。これは、損害額がどのぐらいになるのか、あるいは保険でどのぐらい補償されたのかわかりません。それらを含めて、損害賠償というのは一体どうなっていくのか、改めてこのことだけ確認をしておきたいと思います。
  167. 中野啓昌

    中野参考人 最近メーカーは、さや管に対するナトリウムの流れによる振動及び応力集中の回避ができなかった温度計設計に問題があった、いわゆる設計ミスであったということを認めております。  この責任問題につきましては、今後さらに原因究明で残された部分の解明をいたし、その総合的な判断のもとに実施していきたいと思っております。例えば、この設計に基づいてつくられた温度計は四十八本あるわけでございますが、壊れたのはこの一本だけでございます。原因究明の中で、ではなぜほかの温度計は壊れなかったのかといったようなこともこれから調べていくわけでございますが、そういったことを含め、今後の解明をまって総合的に判断してまいる所存でございます。  また、損害の賠償をメーカーに求める等の措置につきましても、すべての解明が終わったところで決めたいと思っております。  それから、先生から今、損害保険の話がちょっと出たかと思いますが、「もんじゅ」の保険は、施設及び各種機器設備などにつきまして建設中に不測かつ突発的な事故により生じた損害を総合的にカバーする、こういった保険に入っております。今回事故の場合、一方で損害の賠償請求に関してメーカーとの問題もこれからあるわけでございますが、今回の事故に対する当該保険の適用の可否及び範囲につきましては、現在保険会社と協議を進めておるところでございます。  以上でございます。
  168. 今村修

    ○今村委員 いずれにしてみても、この問題も国民の税金が使われているという点ではっきりさせていただきたい、そのことだけは強く要請をしておきたいと思います。  次に、再実験の問題についてお伺いをしておきたいと思います。  今月七日に大洗工学センターで行われた実験で、ライナーに三カ所の穴があいた、こういうことが指摘されているわけです。想定事故の経過からいえば、温度も上回っていたという内容もあるわけであります。想定していなかった事態がいろいろと発生をしたということでは、事故想定の甘さが指摘されるわけでありますけれども、今回の事故報告書の中で、「床ライナの機能は十分に保たれ、ナトリウムが床のコンクリートと直接接触して水素を発生するようなことはなかったことが確認された。」こう記述をされているわけですね。再現実験とこれは食い違うわけで、事故報告書のこの記述は変えなければならぬと思いますけれども、その点だけお伺いしておきます。
  169. 宮林正恭

    宮林政府委員 今回の実験結果につきましては、少なくともこれは「もんじゅ」で起こった事象と同じこととなっておりません。「もんじゅ」につきましては、これはライナーの部分を切り出しまして、それでいろいろ調査をしました結果、この報告書にあるようなことであるということが確認をされているわけでございます。  しかしながら、それを実験的に確認するというねらいも持ちまして今回実験をしたわけでございますが、その実験の結果は、確かに穴があいたということでございます。これにつきましては、今後タスクフォースにおいて詳細に検討を進めていきたい、こう思っております。  現在、データのいろいろな解析作業を進めているところでございますので、この段階で断定的なことを申し上げるのは非常に困難だと思いますけれども、ただ、けさお配りさせていただきましたお手持ちの資料の中にございますように、必ずしも「もんじゅ」と同じではないような床における状況があったということ、それから、部屋も約十三分の一程度の小さなものであったことなど、十分検討すべき問題が残っている、こういうふうに考えております。  しかしながら、今回、ライナーが条件が悪いときには穴があくことがあるという事実につきましては、これはやはり重く受けとめて十分検討しなければいけないことであろう、こういうふうに考えているということも申し述べさせていただきたいと思います。
  170. 今村修

    ○今村委員 今の御答弁も、これは専門家でない我々にするとなかなかわかりにくい答弁です。実験がうまくいけば、実験は我々が主張したとおりだと、うまくいかなければ、いや、この実験は現状と違っているから違うのです、国民から見るとこう言っているように受け取れるのですね。  それでは、なぜそんな実験をやったのですか。再現実験をやったというのは、同じ条件のもとに再現することでやったのでしょう。出てきた結果を見たら、それは再現実験ではないです、条件が違っています、こんな話をされたら、国民はどう理解したらいいのですか。それは理解に困るのではないですか。そんな実験なら、やらなければよかったのではないですか。もう一回答弁をお願いします。
  171. 中川秀直

    中川国務大臣 やりとりを聞いていまして、いささか説明の十分でない点が、表現の仕方が若干足らないような気もいたしますので、あえて答弁させていただきます。  今村委員御指摘のとおり、この問題は重要な問題だと思って、この床ライナーについては最初から再現実験をやるという予定で、この報告書にも「引き続き調査を進める。」こういうふうに記載したところでございます。しかし、現実事故の現場においては、床ライナーについての影響はこういうことだったということが二十九ページ以降に書いてあるわけでございますけれども現実に、実際の板厚はほとんど影響を受けておりませんし、また、機能は保たれていた。これは、「もんじゅ」の現場の話を記載しておるわけでございます。  しかし、現実ナトリウムが漏れてダクトに穴があきまして、そしてまたグレーチングの足場も崩れたというようなことを考えれば、厳重の上にも厳重に調査をしなければいかぬということで、これは「引き続き調査」ということで残して、再現実験もいたした次第でございます。  それでは、再現実験が現場と同じようにできるかといいますと、あくまで実験で計測をしなければならぬものですから、現場にない温度計をたくさんあちこちに設けておるわけです。また、そのための土台もあるわけでございます。そこら辺が違っていたということで、再現実験をするためにわざと違う条件にしたということではなくて、究明するためにどういうデータをとる必要があるかということで、計測機能のためにいろいろなものを置いた。それが実際は、「もんじゅ」のような事故にはならず、堆積する形にはならず、現実には堆積せずにライナーに三つばかり穴があいた。  したがって、これはもっともっと厳密にいろいろ実験をして、この辺の実態というのを徹底的に究明しなければいけない、こう考えている次第でございます。
  172. 今村修

    ○今村委員 ぜひとも国民が理解できるという形で対応していただきたい。  次に、プルサーマル計画についてお伺いします。  福井県知事は、「もんじゅ」の事故が解明されない限り福井県における原発のプルサーマル計画については了解できない、福島や新潟の知事も同じことを言っているわけです。そして、十四日から、通産では総合エネルギー調査会の原子力部会を開催してこの見直しに入る、こういうことになっています。この問題は、今後の原子力長計やプルトニウム需要計画に大きな影響を与えることになるわけです。この見直し問題について現時点でどうなっているのか、お伺いをしたいと思います。  この問題は、同時に、青森県六ケ所における再処理工場のプルトニウム工場建設の問題にも絡む話でありますので、この問題についてお伺いをしたい。  同時に、「もんじゅ」の事故が起きた後にMOX燃料の製造の契約を結んでいる、こういうのがありますね。関西電力がことしの一月に入ってからイギリスのBNFLとMOX燃料製造の契約を結んでいます。この事実だって、福井県や新潟県や福島県や、「もんじゅ」に問題を持っている人たちから見ると、頭から水をかけるような話ですよ。ここに、国民との温度差があり、問題があると思っています。この点についてお伺いをしておきたいと思います。  同時に、時間がありませんから一回でやってしまいます。  円卓会議であります。円卓会議、一体何をやる円卓会議だ。極端な言い方をしますが、国民の持っている不満のガス抜きにやるという円卓会議であれば何も意味ないよ、こういう指摘があります。この円卓会議についてお伺いをしたいと思います。  以上であります。
  173. 中川秀直

    中川国務大臣 まず、プルサーマルについてのお尋ねでございますけれども、我が国のエネルギー自給率というものは一六%ぐらいと言われております。これは電力もその他のものも全部含めてでございますけれども原子力発電の電力寄与度が三割ぐらいでありますが、そういうものを差し引きますと、本当の自給率というのは六%ぐらいじゃないかと私は教えられております。そういう意味での資源小国、自給度の低い国ということは、これはやはり私どもは率直に見詰めなければならぬ問題だと思います。  そういう意味のエネルギーの安定確保という点と、それ以上に大きな問題は、原子力発電所が現に動いておりまして、軽水炉で原子力燃料が燃やされておりまして、その使用済み燃料というものがどんどん発電所にたまっているわけであります。この使用済み燃料をどうするか、これについては本当に真剣な議論をしなければなりません。放射性廃棄物をどうするか、低レベルもあれば高レベルもございます。そのための環境に対する負荷を低減するという両方の見地から、我が国はこの使用済み燃料の再処理、そういうことを志向しておるわけでございます。  いずれにしても、プルトニウムの利用に当たっては、平和利用の堅持、安全の確保ということがもう大前提でありますし、また同時に地元の皆さん、国民の皆さんの理解を得る必要がございます。その意味で、三県知事からいろいろ、特に福井県知事さんからお話のある点も受けまして、この問題についても円卓会議でしっかりと議論していただこう、そういう努力を今始めておるところでございます。  円卓会議についてでございますけれども、これは単に聞きおく場とかガス抜きだとか、そんなつもりでは全くやっておりません。事実上常設の機関として、不断の国民合意を形成していくためでありまして、その意味でも、この努力に終わりはないものと我々は考えております。  四回やってまいりましたが、回を重ねるごとに論点の幅が大体わかってまいりましたので、モデレーター、原子力委員、相談を今いたしておりまして、そしてその論点を今度は絞り込んだそれぞれのテーマに合わせて、これから五回以降続けてまいる予定でございます。  そういう中で、先ほどの質疑でもお答え申し上げましたが、本当の共通認識、合意というのは何であるかということを探ってまいりたい、こう考えておる次第でございます。  欧州との契約につきましては、これは政府委員から御答弁を申し上げます。
  174. 岡崎俊雄

    ○岡崎政府委員 委員御指摘のとおり、東京電力並びに関西電力が、それぞれ欧州の企業とのプルトニウム燃料加工に関する契約を締結しておるところでございますけれども本件は基本的には、このプルサーマル計画の実施主体でございます電気事業者が、その具体化のために、例えば燃料加工に必要なリードタイム等を踏まえつつ、事業者としての判断によって行われた燃料調達の一環と認識をしておるところでございます。  もとより、実際のプルサーマル利用に当たりましては、先ほど大臣の御答弁にもございましたとおり、何はともあれ地元の了解を得、さらにはその後に国の安全審査等の手順を踏みつつ実施していくことになるということでございますけれども、いずれにしても、国としても、地元を初め国民の理解を得られるように最大限の努力をしていくべき課題であろうかと思っております。
  175. 今村修

    ○今村委員 最後に一言だけ言わせていただきたいと思いますけれども、今御答弁いただきましたけれども、プルサーマル計画は先延ばしにする、これは、プルトニウム需給計画もまた延ばさざるを得ないだろう、そして、地元の合意がない限り前に進まぬ、こう言っているさなか、東京電力は今、秋からMOX燃料、ベルギーで始める。契約が終わっていますから、もう始めることになっています。生産が始まる。「もんじゅ」が事故を起こした後に関西電力はMOX燃料の契約を結んで、これまたMOX燃料の生産に入る。  こういうことを、国民はどう見ます。言っていることとやっていることが違うではないか、こう指摘されるわけですよ。ですから、信用がなくなる、こういう形になるわけでしょう。そこをやはりちゃんと整合性が立つような形にぜひともしていただきたい。そのことを強く要請して、終わります。
  176. 中川秀直

    中川国務大臣 あえてお答え申し上げますが、ともかく、現在でも、四千万キロワットを超えて軽水炉でウラン燃料を燃しておるわけでございます。その中で使用済み燃料がどんどん出てくるわけでございます。それを現在は海外で再処理をすることにいたしておりますが、再処理したものは引き取らなければなりません。引き取っていくためには、それは何らかの形でMOX加工をして、それをどこかで燃すということをしない限り、この処理はできないわけでございます。そういう意味での欧州での契約という、そういう流れがあるということも御理解をいただきたいと存じます。  整合性がつくように、努力を大いにしてまいります。
  177. 今村修

    ○今村委員 終わった後ですけれども、ただ言葉ではなくて、態度で示さなければならぬわけですね。幾ら美辞麗句を並べても、出てくる結果が違うと国民は信用しません。一回うそをついたものを取り返すなんというのは大変なことなんです。また同じことを繰り返しているような感じがします。そこだけ指摘をして終わります。
  178. 井上喜一

  179. 吉井英勝

    吉井委員 私は、二月二十一日の衆議院の予算委員会の方で、一九八五年に大洗工学センターナトリウム漏えい燃焼実験を行ったあのビデオ、動燃のビデオを繰り返し繰り返し何度も見せていただいて、それを踏まえて質問をいたしました。このときに大石前理事長は、百数十回のナトリウム漏えい実験をやって安全を確認したという答弁でありました。  私は、実はこの八五年のビデオも、それから「動燃技報」九十二号も、これは漏えい実験をまとめた論文等が載っているものでありますが、読ませていただきました。しかし、六月七日の実験ビデオ、今度の再現ビデオもしっかり見せていただきましたが、その六月七日の実験ビデオにあるような熱電対のケーブルの火災は、あれではなかったわけですし、床ライナーに穴のあく実験というのはやっていないわけですね。  ただ、いずれにしても、八五年の実験でも、ナトリウムというのは漏れたらすぐ火がつく、これはよくわかったわけです。ですから、八五年の実験というのは、「もんじゅ」のナトリウム漏えいの実際とはかなり、ほど遠い実験であったのではないかと思うわけですが、この点はどうでしょうか。
  180. 中野啓昌

    中野参考人 お答えいたします。  確かに先生御指摘のような、いわゆる実際に事故が起きた現場と全く同じサイズの部屋とか場所とかいうところではございませんけれども、その他いろいろな条件につきましては、例えば流量とか流量速度とか、それから酸素の供給量とか、そういう点については模擬してやったというふうに思っております。
  181. 吉井英勝

    吉井委員 個々の条件程度の違いなら、私もそんなことはやってきましたからよくわかるのです。しかし、余りそれを言い出すと再現実験の意味というのはなくなるわけですよ。六月七日の再現実験のビデオを私も見せていただいて、排気ダクト、グレーチング、床ライナーの鉄材が溶けているというのを見ましたが、八五年の実験では、実際に溶かしてみるという、そういう実験はやっていませんね。
  182. 中野啓昌

    中野参考人 先生御指摘のように、やってございません。
  183. 吉井英勝

    吉井委員 ですから、実はその八五年の実験というのは、今度の「もんじゅ」で起こったようなことをかなり深く想定もし、検討もし、やったというものではなかったということを、私は二つのビデオをしっかり見比べて感じました。  大洗工学センターでの千七百四十三億円かけてのナトリウム実験というのは、あれは一体何だったのか。原子力船「むつ」の大体一・五倍もナトリウム実験だけで使ってきたわけですね。それで「もんじゅ」で起こった事故を想定した実験をやっていなかった。  それどころか、私はあの「もんじゅ」の事故前後にいろいろ伺ったのですが、ナトリウム技術は完成しているという過信が生まれていました。これは現場へ行って技術屋さんから聞きました。現場でナトリウム漏えい火災発生していても、それを認めずに三時間も運転を続けて事故拡大を図ってしまったということもあったし、最近明らかになったように、さや管の設計メーカー任せにしておったということもありますが、温度計を知らない間にメーカーが取りかえておったという問題とか、そういうことをあわせて考えてみたときに、ナトリウムを取り扱う能力とか資格とか体制などの面で、これは私は、かなり根本的な反省と検討というものが要るのじゃないかと思うわけです。  この点については、新しく理事長になられた近藤理事長の方から伺っておきたいと思います。
  184. 近藤俊幸

    近藤参考人 今回のナトリウム漏えい燃焼実験の結果につきましては、今後詳細な解析、評価を行いまして、先ほどお話が出ましたライナーの破損メカニズムなどを明確にしていくことにしております。そういう意味では極めて重要だと認識しております。
  185. 中野啓昌

    中野参考人 今、理事長からこの後の考え方について申し上げましたが、一つ我々非常に大きく反省しておることといたしまして、先生今御指摘のように、約千七百億円のお金をかけていろいろな形の実験をさせていただきました。これは、その燃焼試験だけではございません。先生よく御存じのように、いわゆる「大どぶ」の試験とか「小どぶ」の試験とか、結構お金のかかる実験ではございますが、それらの知見につきましては、「もんじゅ」の設計に当たりまして、「もんじゅ」の建設に当たりまして、そのまま反映させておるところではございますけれども、御指摘のような、ああいうような形態で漏れた、そして燃焼を起こしたようなことについては、確かに例の中になかったことは事実でございます。  ということと、これらの技術をずっと同じレベルで継承していなかったということについても我々反省をしているところでございます。
  186. 吉井英勝

    吉井委員 その辺でとどめておこうと思ったのですけれども、例えば、常陽を扱ってきた技術屋さんの目から見ても、なぜあの温度計を上から下につけるのか、横から差し込むのかとか、その場合にノズルの部分ナトリウムがたまる問題とか、いろいろ深い検討が必要だということとか、それから、大体あのカルマン渦によって振動が生じて金属疲労が生まれるなんというようなことは技術屋の常識なんですね。  私は、これは「もんじゅ」の技術屋さんでない、ずっとこの分野を大学で研究してきた友人なんかからも聞いていますけれども、本当に初歩的なところで問題をたくさん持っているのですよ。一千七百四十三億円という国費を使いながら、これは本当に原子力船「むつ」の一・五倍ですよ。それで、肝心なことがメーカー任せになってしまっておったり、想定もしていなかったということ自体がとんでもないことなんですよ。  私は、そういう点で、これはやはり本当に、ナトリウムを取り扱う能力、資格、体制などの面で根本的な反省や検討を加えなかったならば、余りのんきな答弁を聞かせてもらったのじゃ、これは話にならぬと思うのですよ。  もう一遍、理事長に答弁を求めておきたいと思います。
  187. 近藤俊幸

    近藤参考人 確かに「もんじゅ」は、ナトリウムの取り扱いの技術というのが大変重要な部門でございます。今後とも、これは研究を重ねてしっかり取り組んでいきたいと思います。
  188. 吉井英勝

    吉井委員 今後の決意だけじゃ、とても国民は納得できるものじゃない、根本的な反省や検討が必要だということを重ねて申し上げておきたいと思います。  次に、動燃の八五年の実験ではナトリウム漏えい時間が非常に短いのですね。「動燃技報」の九十二号を見ておりますと、あれは千八百秒ですから、三十分ですね。一番長いもので三十分です。先日、六月七日の再現実験というのは三時間四十二分ですから、七分の一の時間でやっておった。最高温度も五百三十度までしかできていないもの。  そういう中で、ナトリウム燃焼しながら落下しても、あの八五年の実験というのは、私、ビデオを何度も見てよくわかったのですが、落下しても、床ライナーに勾配がとってあるから、すぐに連通管へ行って、下の貯留槽に行ってしまう。そこには燃焼抑制板が入っていますから、すぐ消火される。そういう構造なんですね。その実験でもって「もんじゅ」は大丈夫だ大丈夫だと安全PRには使っておったけれども、一番大事な、そこから本当に大事なことを学び取ろうという姿勢がなかったということは、十年前のビデオを見て本当に私は残念な思いがいたしました。  六月七日の実験では、床ライナーの方は溶けて穴があいたのですね。実は、八五年の実験のときにも、連通管は焼けて穴があいてしまっているのですよ。そういう映像を私は確認しております。  だから、ライナーというのは大丈夫なんだということは必ずしも言えないわけで、安全審査のときに、やはり床ライナーに穴があいた場合のことも想定してチェックするということが必要であったと思うのです。こっちの方は科学技術庁の方に伺っておきたいのですが、その床ライナーに穴があいた場合どうなるかという、それを想定したチェックを安全審査でやっていますか。
  189. 宮林正恭

    宮林政府委員 安全審査では、そういう想定はいたしておりません。
  190. 吉井英勝

    吉井委員 ことしの二月二十一日のときに、あなたの答弁ですね。「ナトリウム漏えい実験の結果は、それを検討し、安全審査に使用された計算コードの検証などに反映されてきております。また、ナトリウム漏えい対策設備が有効に働くことを実験により確認をするということもやっております。」安全審査をやっていなくて、こういうのんきな話をしておったのですね。大体床ライナーに高温燃焼で穴があいて、それ以降の問題が起こるということは審査項目に全く入っていなかったということですね。
  191. 宮林正恭

    宮林政府委員 御指摘のとおり、その点については審査をしていないというふうに私ども思っております。
  192. 吉井英勝

    吉井委員 実は、フランスのスーパーフェニックスの事故に対する報告書ですね、これは動燃の方の動力炉開発推進本部国際部もんじゅ建設所技術開発部翻訳というもので、私も随分以前にもらった報告書です。この報告書の中では、これはフランスの産業貿易省の原子力施設安全局が出しているものですが、九二年に、コンクリートからの水素放出の可能性を指摘して、あらゆる爆発の危険を排除できるようにせよとしていたものです。ナトリウム・コンクリート反応が警告されてもおりました。  私は実は、二月二十日の本会議質問でも、翌二十一日の予算委員会質問でも、今回の「もんじゅ」の事故というのは水素爆発の可能性もあった重大な事故だったということを指摘いたしました。  当局の方は、九二年のこの報告書が出たころには、実は科学技術委員会で私はこれを取り上げたことがあるのですが、こういう報告書はない、手に入っていないということで隠して、私は何とかフランス語版の方を先に手に入れて、私が追及してとうとう公開されたという、動燃で翻訳されたものがありますということで公開されたというものでありますが、今回の事故があってものんきな受けとめ方があった。私はこの報告書を見て、今指摘したようなことがスーパーフェニックスで指摘されているわけですから、そのことを私が国会でやっても、科学技術庁の方にしても随分のんきな受けとめ方をやっていたというのは、本当にひどい話だと実は思っているのです。  たまたま爆発には至らなかった、それは事実です。しかし、六月七日の実験によれば、ライナーに穴があいたわけですね。コンクリート・ナトリウム反応の痕跡もうかがわれるようであります。水素爆発の可能性を考えねばならないものであったわけです。ですから、水素爆発の可能性について安全審査で一顧だにしないということであれば、私はこれは欠陥審査ということになってしまうと思うのです。私は、こういう審査あり方そのものについてやはり根本的に考えなければならぬと思うのですが、これはどうなんですか。
  193. 宮林正恭

    宮林政府委員 まず、先ほど申し上げましたのは、ライナーが破損する、こういうことについては、これは想定外であるということでございます。しかしながら、ナトリウム・コンクリート反応が起こる可能性ということにつきましては、これはライナーを敷いているわけでございますので、当然それは審査のときに考慮をしております。
  194. 吉井英勝

    吉井委員 あなた、わかって答えているのか、わからぬと言ったのかよくわからないのですが、ライナーが溶けて穴があく、そこヘナトリウムが来れば、ナトリウム・コンクリート反応が起こるのですよ。高温燃焼の中で水素が発生したら、水素爆発に至るのですよ。  だから、ライナーに穴があくというものを考えていなかったということは、なるほど、ライナーの横のちょっと上がったところ、そこから上のコンクリートの部分ナトリウム・コンクリート反応が起こるか起こらないかという、それは想定したかもしれないけれども、ライナーに穴があいたときのナトリウム・コンクリート反応、つまり水素爆発の問題については、これは安全審査で考えていなかったということでしょう。私はそこが問題ですよということを言っているのです。そうでしょう。
  195. 宮林正恭

    宮林政府委員 御指摘の点につきましては、今回の実験の成果を十分解析をした上で、それが不十分であったのかどうかというふうな結論が出せるものだと思っております。  当然、ライナーにそういう穴があくという現象が起こるであろうということは想定されていなかったということは事実でございますけれども、「もんじゅ」という施設、あの施設においてライナーに穴があくような現象が起こるかどうか、これにつきましては、今後十分検討をしまして結論を得ていきたい、こういうふうに考えているところでございます。
  196. 吉井英勝

    吉井委員 随分ひどい答弁だと思いますね。  大体、「もんじゅ」で穴があいていたかあいていなかったかということもありますが、ライナーが変形しておったことはもう報告されておるのですね。  一方、再現実験で穴があいたのですよ。その再現実験どおり、実際に「もんじゅ」で起こるかどうかというのは、これは確かに、全く同一にするということはなかなか大変な面があるということは、私も実験屋ですからわかりますよ。しかし、一方の再現実験で穴があいたということは、最大限の可能性として、「もんじゅ」でもライナーに穴があくということを考えなければいけないのですよ。穴があいたときには、ナトリウム・コンクリート反応が起こるのだ、その可能性はあるのだ、水素爆発の可能性はあるのだということを考えなければいけないのですよ。  それを考えないでやってきて、今後いろいろ調べてみて、解析の中で問題があったらこれから考える、その姿勢そのものが、私は根本的に、科学技術庁の方が本当に今回の事故について責任を感じているという姿勢とはとてもみなせないというふうに思います。  大分時間が迫ってまいりましたので、最後に私は大臣に伺っておきたいのですが、動燃の申請書を追認するだけで、独自に実験をやったりコンピューター解析をやったりしたということはなかったわけです。少なくとも、それを指示して動燃にやらせるということもやっていないですね。ダブルチェックだとかクロスチェックだとかいろいろ横文字は使っても、実際に科学技術庁の安全審査には重大な欠陥があったということは、今回の事柄を通じて明らかになってきたと私は思うのです。  これまで動燃責任はかなり追及されてきました。しかし、監督官庁科学技術庁の担当の皆さんが、私に言わせれば、何かまるで人ごとのような感じで、本当に責任を感じてやってくれているのか、やっておるのかという思いがいたします。  そこで大臣、私は、企業とかあるいは原発推進の立場に立った官庁から独立して、純粋に科学的、技術的に安全審査を行う独立した機関というものをつくって、そこへは専門の科学者、技術者を十分配置するという人員配置も行って機能するようにしないと、これは国民信頼は得られないことになると思うのです。円卓会議も結構ですが、しかし、やはりそういう機関というものをこの際真剣に考えていかなければいけないときじゃないか。せめて、アメリカのNRC並みの体制を持った機関をつくるべきだと思うのですが、最後に、こういうことについて、これは中川大臣の政治家としての見解というものを求めておきたいと思います。
  197. 中川秀直

    中川国務大臣 今御議論を伺っていまして、一、二点つけ加えて御答弁申し上げたいと存じます。  大洗等々のさまざまな過去の実験、いろいろそういうものも、最新の科学的知見といいましょうか、そういうものに常に柔軟に反映させていく姿勢が重要である、こう思っております。  その意味で、今回のライナーの実験についても、正直、「もんじゅ」で起きた、少し変形したところがあった、それは金材研にも持ち込んで解析をしたり、そういういろいろなことは実はいたしておるわけですね。この五月二十三日の段階では、ライナーについてはこうだということでありました。だがそれでも、委員御指摘のとおり、実際にグレーチングが溶融しておったり、あるいはダクトが崩れ落ちておったりということもあるので、再現実験しようということで、実際、ライナーにああいう影響、穴があくという影響が出たわけでございます。  局長は多少、私と違いまして、正しいことを言っておるのですが、大変失礼だけれども、言外の姿勢までうまく表現できないところもありまして、私があえて言いますが、私ども、これからも決して、事態を覆い隠そうとか、そういう結果を小さく受けとめようとかいうことではなくて、動燃においても、これについての徹底的な解析あるいはまた再実験も含め、一度でもそういう結果が出ておるわけですから、そういうことについての結論、評価をきちんと出していただいて、それをまた安全委員会安全委員会できちんとこれについての確認や評価あるいは審査をしていただけるものと、このように考えております。  それで、先ほど今村先生からもお話がございましたが、今、事故調査に当たる委員で安全審査にかかわった者もおるではないかという御指摘や、今の安全委員会についての御指摘や、科技庁についての御指摘が最後にございましたから、まとめてお答えいたします。  まず、ちょっと私、今手元に数字がありませんけれども、全体からいうと、たくさんの専門家が集まっておりますけれども、タスクフォースでは、事故調査した人の中で安全審査をした人は十二人中四人でございます。それから、安全委員会ワーキンググループの場合は、全体十四人中四人でございます。この四人が多いか少ないかということはいろいろ議論があると思います。先ほど局長が言ったように、過去のことも知っていなければ専門的にチェックできないという点もあることは御理解いただきたい。しかし、過半数を占めているとか、ほとんどすべてそうであるとかいうことでないということだけは、あえて私はちょっと補足させていただきます。  そして最後に、科学技術庁責任、そして安全委員会の存在についてお答えをさせていただきますが、科学技術庁には責任がございます。それは、炉規法上、規制面において安全を確保していかなければなりません。そういう意味での、規制面においての責任があるわけですから、そこは重く受けとめて、正すべきは正し、改めるべきは改めなければいけない、このように考えております。  そして、動燃に対しても、先ほどナトリウムのことがございましたが、直ちに指示をして、「もんじゅ」の現場にもナトリウム専門家を、総括責任者を置いて一元的にやらなければいかぬということで、既にそういう体制はおとりをいただいたり、いろいろなことを、まだまだそんなのは一部だと思いますけれども、やらなければいけないと思っております。  最後に、独立した機関ということでございますが、私は、今の原子力安全委員会がアメリカのNRCのように本当に独立した機関でなければいかぬと思うのでございます。これは、法令上も独立した機関なのですから。そういう意味で、今安全委員会においても安全審査あり方情報公開あり方についてみずから検討していただかなければいかぬ、このように思っておりましたところ、安全委員会でも既にそういう御検討をいただいている。また、安全委員会がさらにそういう機能を強化できるように御自身でもお考えいただくと同時に、行政側の我々としてもさらに真剣に考えていかなければいかぬ、こういうふうに考えております。
  198. 吉井英勝

    吉井委員 時間が参りましたので、終わります。
  199. 井上喜一

    井上委員長 後藤茂君。
  200. 後藤茂

    ○後藤委員 大分長時間にわたりまして、それぞれ専門的な立場、また技術的な立場からの質問が続いておりました。私は、少し角度を変えて、特に長官にいろいろお考えをお聞きをさせていただきたい、こういうように思っているわけであります。  先ほど来、現地と中央との温度差の問題であるとか認識の相違であるとか、あるいはまたパーセプションギャップであるとか、これは、それを統一していくといいますか一致させていくということは非常に困難なことでございます。例えば、日米経済協議においても同様でございまして、折衝者というものは歯ぎしりをする思いがするわけでありまして、特に、きょうは参考人としておいでになっております近藤理事長中野理事におきましても、現地でそうした認識の相違というようなものについて大変苦労をされていると思うのです。  角度を変えて申し上げて大変恐縮でございますけれども、長官は瀬戸内海の波を子守歌にしながら育ってこられた経験がおありだと思います。私も瀬戸内海の播磨灘で産湯を使った者であります。その間にあります岡山県に、明治の詩人で名随筆家と言われておりました薄田泣菫という人がいるのです。私はこの人の随筆集というのが大変好きで、よく時間があると開くわけでありますけれども、その中で泣菫が「桜鯛」というエッセーを書いているわけです。  この「桜鯛」というエッセーは、春の訪れを何で知るか、都大路の女性たちの衣服の変化で知るとか野山の草木の芽生えで春を知るとかいうこともあるだろうが、瀬戸内海の寒村に育った泣菫は、桜鯛の売り声を聞きながら、ああ春が来たな、こう思うというわけです。そして、私は何か書くときには時々引用するわけですけれども、こういうような言葉があるわけであります。泣菫が、春になって網に揚がってきた桜鯛にこう言っているのですね。  桜鯛よ。網から引き上げられて籠に入ったお前は、タニスで発見せられた名高いニイルの河神の石像に彫りつけられた河魚のように、いつも横向きになっていて、つぶらな唯一の眼しか見せていない。鯛よ。お前の眼は、これまで外界の自然を、自分の行動と平行してしか見なかった。左の眼でみたものは、右の眼でみたものとは、すっかり違っていた。一つの眼が神を見て、それと遊んでいる同じ瞬間に、今一つの眼は悪魔を見て、その醜い姿に怖れおののくこともあったに相違ない。 こういう、随筆家というのは、詩人でもありますし、なかなか表現がうまいなと思うのですけれども、私はこの「桜鯛」というエッセーを読むたびに、今日の原子力あるいはプルトニウムをめぐる論議といいますか認識の相違というものを感ずるわけであります。  長官になられましてすぐに現地に行かれたわけでありまして、あの現場を見たとき、率直にどういうようにお考えになられたか、まずお伺いをしてみたいと思います。
  201. 中川秀直

    中川国務大臣 私も、過去、通産政務次官あるいはまた商工部会長等をさせていただきまして、原発の、普通の軽水炉の現場等は訪れておりました。「もんじゅ」へ参りまして、理論は承知していたつもりでございますけれども現実事故の現場へ立ちまして、ナトリウム漏えい後の堆積物等はもう取り除れてはおりましたけれども、ダクトが崩れたところ、あるいは足場が崩れたところ等々拝見をしまして、福井、敦賀の市民、地元の人たちは、ああいう姿をテレビ、新聞等でごらんになられて、それはやはり大変な御心配をされただろう、本当にそのことが当然だろう、こういうふうに思いました。  そして、今日、そういうことについて、事実は事実、真相も正式に正確に申し上げながら、また市民の公募で選ばれて抽せんされた方々とも、直接私自身参りまして対応しながら、今日に至っておるわけでございますけれども、やはり地元の御理解なしにはなかなか原子力開発というのは進められません。また、その御理解をいただくためには、やはり間断のない対話、そして正確な情報公開、そしてまた御説明、これを本当に不断に努力していかなければいかぬ、こういうふうに痛感をした次第でございます。  何よりも、安全というのは市民のものでございますので、安全最優先という立場ですべての物事を考えて、地元立場で考えていかなければならぬ、こういうふうに今は思っております。
  202. 後藤茂

    ○後藤委員 地元の皆さん方の不安感ということにつきまして、今長官がお答えになりましたような認識を持たれながら対応されて、誠心誠意努力をしなければならぬと思うのです。私のお聞きしたのは、あのナトリウム漏えいしたところの場所、あそこをごらんになってどういう印象をお持ちになられたかということをお伺いしたわけですが、再度お聞きしてみたいと思います。
  203. 中川秀直

    中川国務大臣 事故の現場を見た感じは、やはりナトリウム漏えいしたということで、私も、崩れたところあたりはまだ残っておりましたから、拝見したわけでございます。それを見た市民の方は大変な御心配をされただろう、まず最初にそれを思いました。  それから、二番目に、先ほどもお尋ねがあったのですけれども、放射能災害という観点から考えますと、確かに二次冷却系、非放射性ナトリウムと言っておりますけれども、超微量のトリチウムというものは確かに二次系冷却材にもにじみ出る部分はあるわけでございますが、しかしそれはもう本当に超微量であって、そのトリチウムのいろいろな測定データというものも通常の範囲内であったということも事前に聞いておりましたから、そしてまた漏えい現場は二次系配管室でありますし、その向こうは一次系の原子炉があるわけでございますけれども、厚いコンクリートの向こうでございますから、その現場に立って、例えば私が恐ろしいとかあるいは大変な危険を身に感ずるとかいう気持ちは、その現場に立ったときはございませんでした。
  204. 後藤茂

    ○後藤委員 私はあの情報が入ったときに、一つは、一次系なのか二次系なのかということをお聞きをしましたら、これは二次系だ、このナトリウムは放射能を含んでいない。そのことで、これは原型炉ですから、当然といったら大変失礼ですけれども、いろいろなトラブルというものは経験をするだろうというように思っておりましたので、ここでまず一つ安堵いたしました。ということは、逆に言いますと、長い常陽からの研究で十九年間にわたります成果というものは相当生かされているというようにも実は感じておったわけであります。  ただ、あのさや管のレプリカをすぐに取り寄せてみまして、これはもう皆さん方から厳しく指摘をされておりますので繰り返すことは差し控えたいと思いますけれども、常陽の場合のさや管と「もんじゅ」の場合のさや管が、温度計が少し設計が違うわけですね。素人が見ても、どうもヨーロッパのフェンシングの剣のように非常に鋭く、しかも、正確精密に温度をはかっていきたいという思いはあると思いますけれども、どうもその後ナトリウムの流れの圧力に抗し切れないで折れはしないかというのが、これは素人の判断でございますが、そういうことを実は感じたのです。  この間、つい二週間ばかり前に、余り混乱しているときに行って現地の皆さん方に御迷惑をかけては、こう思いましたので、二週間ばかり前に私は現地へ行ってまいりました。もちろん、もう漏えいしたナトリウムは取り除かれておりますし、想像している以上に、漏れたところの、三十センチばかり堆積したというのですけれども、その範囲は小規模でありましたし、また、破断をさせて金属材料研究所なりあるいは原研の方に持っていかれておったのでしょうけれども、その現場を見まして、私はこの種の事故というものは、事故というかトラブルというか、何という表現がいいのか、結局事故という言葉になるのでしょうけれども、本当によかったなということとあわせて、動燃なり原研なりあるいはそれぞれが長く努力をしてきた成果というものは相当なバリアになっているなということを実は痛感したのです。  そういうときに、一昨日社民党の村山党首が現地に行かれまして、そして記者会見の中で、長期計画についても再処理等の問題を含めて見直す必要があると言っているわけでございます。新聞等にはそれが大変大きく書き立てられているわけで、増殖炉の撤退も視野に含めてというような形に言われているわけです。  与党を構成されておりまして、そして本会議等で長官も御答弁されておりますし、また橋本総理も答弁されておる。原子力利用の長期計画というものは、それは大切にしていかなければならぬという趣旨の答弁をされているわけでありますけれども、与党の連立の一翼を担っている党首があそこに行きまして、そしてそこですぐに増殖炉の撤退、こういう言葉が出てまいりますと、現地の新聞等を見ましても、大変センセーショナルに書かれているわけであります。  二月の中間報告あるいは今回の報告を見ましても、そういうことであったのかどうか。これはぜひひとつ動燃も、あるいは科学技術庁等も、慎重に冷静にこうした問題というものは情報を伝えていかなければ、こういう増殖炉の撤退ということになっていってしまうということを私は大変心配をするわけでございますけれども、私の認識と社民党党首の認識と長官の認識、一体どこがどう違って言っているのだろうか。そして、報告書にあるようなことを一体どう理解をしたらいいのだろうかということについて、長官、お伺いしたいわけであります。
  205. 中川秀直

    中川国務大臣 まず最初の、先生、村山党首の記者会見あるいは敦賀へ参りました御発言の前に触れられた点についてお尋ねだと思いますので、ちょっと私お答え申し上げますが、ともかく原子力関係者に対する、あるいは原子力に対する市民の信頼というものは私は本当に極めてもろいものがある、このように受けとめております。それだけに、そのことを忘れずに、本当に真剣な努力を、常に正直にいろいろなことを真相を包み隠さないという態度でやっていかなければいかぬ、こういうふうに考えております。  商業用の原子炉原子力発電の運転と規制ということに関しては、日本とアメリカは、放射能災害という面では私はやはり大変な努力をして、またロシア等々に比べればかなり高いレベルの成果を上げてきている、このように考えております。  ただ、この「もんじゅ」の場合は、実験研究開発段階でございまして、そのために温度計を二次冷却系でもあんなに多数、真ん中まで差し込む、こういうことだったのだろうと思います。常識的に考えれば管の外でも測定できるのではないかとかいろいろな議論は、私も正直言って感じないと言ったらそれはうそになります。しかし、これは研究、実験ということでそういうことだったのだろうと思います。だからといってこの事故が起きていいということではないので、細心の注意をもって設計段階から目配りをし、安全審査の面でも徹底しなければいけなかったのだろうと考えております。  最後に、村山前総理の御発言でございますけれども、いろいろ事故原因の徹底究明や情報公開、それから高速増殖炉の撤退を含む原子力開発利用長期計画の見直しなどのお考えを述べられたことは承知をいたしております。今私どもは、この一点目に関してはもとより、また二点目に関しても、一点目というのは情報公開やあるいは原因究明でございますが、二点目の長計の見直しということに関しても、御承知の円卓会議を設置して、高速増殖炉を含む原子力政策に関しまして、改めて国民の共通理解あるいは合意形成というものを目指して、いろいろ各般の議論を始めさせていただいている。その中で上がってくるいろいろなものについては柔軟、的確に原子力政策に長計も含めて反映させる、こう申し上げておるところでございます。  村山前総理も、直ちに撤退かと  ちょっと今この記者会見のやりとりを、どこかにあったのでありますが、ちょっと御質問を伺っていて……(後藤委員「もうそこはいいです、時間がありませんので」と呼ぶ)直ちに撤退ということではない。原点に返って見直せ、こう申し上げて、撤退先にありきという見直してはない、こうおっしゃっていたと記憶をいたします。
  206. 後藤茂

    ○後藤委員 私は別にそれにこだわるわけではないのです。  ただ私も、思いは、昭和二十九年から当時の中曽根先生等と、あるいは松前重義先生等と一緒に、おまえも手伝えということで、私も鉛筆をなめながら、原子力基本法を、あの自主、民主、公開等の原則を入れていきながらつくってきた経験を持っておりますだけに、これからの日本の、小資源国であり、そしてエネルギー構造の脆弱な日本において、まず軽水炉から出発をして、そして今、高速増殖炉、核燃料サイクルということをやっているときに、私が申し上げたいのは、リーダーの方々というのは、もっと腰をしっかりと据えて、国民の皆さん方に十分に理解ができるように努力をしていくという責任を負っているのではないか。  しかも、あの常陽というのは十九年間、恐らく私は、これはもう本当に不思議なことに思えるほど、事故なく、トラブルなく今日まで来ている。これをもう一度振り返って、あの常陽の技術というもの、あるいはすぐ隣で「ふげん」が十八年間動いているわけです。ここでもプルトニウムを使っているわけです。こうした技術というものをしっかりひとつ、こうした中間報告とか、報告書を出すことも大切だと思いますけれども、どうしてあれが全く安全に、安定して運行してきているか、その日本の技術者の努力というものを背景に置きながらそういうレポート等も出していく。それで、今回の「もんじゅ」の事故というものの教訓を大きく引き出していく努力をしていただきたいと思います。  私は、スーパーフェニックスが臨界になった翌々日に行ってまいりました。そして、そこであの現場責任者のお話を聞いたときに、いや、なかなかうまくいきました、しかしこれから何回も恐らくトラブルがあるでしょう、そのトラブルを私たちはこの原型炉で克服していくんだ、そういうように言っておったことを今も記憶しているわけです。  ラプソディーからフェニックス、そしてスーパーフェニックス、あるいはスーパーフェニックス2というのは今は経済的な混乱でとまっておりますけれども、必ず私たちは、原子力開発利用という道をとる以上は、高速増殖炉です。化石燃料がいずれは枯渇していく、そうした中で、二千年、三千年、人類が大きくこれからも生きていくためには、四十五億年もかけて地球がつくり上げてくれた化石燃料や、あるいはこうしたウラン資源というものを大切に使っていかなきゃならぬと思うのです。これは我々の責任ですよ。  そのときに、こうしたいろいろな認識の相違なり、あるいは意識の相違なりというものがあることは確かでありますけれども科学技術庁というものは、しっかりやっていただかなければならないと思う。そこが腰がふらついておったら余計混乱をしてくると思うのです。  長官も新聞記者の経験がございます。私も短い期間でありますけれども新聞記者の経験をしてまいりました。どうしても駆け出しの記者というのは、その木だけを見て森を見ることを忘れるわけでありまして、現地の新聞をずっと取り寄せてみましても、大変な恐怖感をあおるような、不安感をあおるような形になっているということに対して説明をして理解を求めていくということは、実は大変だろうと思います。  先ほども出ております大洗の保護鉄板に穴が貫通している、これなんかだって、お忙しい人は、これが大洗でやっていたのか「もんじゅ」であったのかということはわからぬわけです。しかも、過酷な条件を全部やって、四時間も空気を吹き込んで、そして漏えいした、漏れたナトリウムを燃していってしまう。そうすれば鉄板にもあくでしょう。あるいは、鉄板にあくから、今度はそれのバリアをどうするかということをこれからやっていくわけですから、それぞれまだ研究段階である。フランスの場合はもう既に実証炉に入っておるわけですけれども、なおまだ研究段階です。  こうした中で、科学技術庁に、ぜひひとつ腰をしっかりと据えて、そしてもう現地にどこまでも出かけていき、あるいは国民の皆さん方や、この円卓会議をガス抜きの場所にしていくのじゃないかというような意見もありますけれども、そういうことに腰をふらつかせないで、その前に立ってひとつ、これからの将来のエネルギーの確保のためにはこの道を我々はとっていかなけりゃ、地球、人類に大切なこの地下資源というもの、化石燃料というもの、そしてこれからのエネルギーを確保していくためにはそういうことをやっていかなきゃならないんだ、我々は重大な使命を持って取り組んでいるんだということで理解を得る努力をしていただきたいと思うわけであります。  もう時間が参りまして、大変短い時間でございますので、もっと言いたいことがいっぱいあったわけですけれどもやめたいと思いますが、近藤理事長、いろいろ御苦労だと思います。まだ就任されて間がないわけでございますけれども、いろいろな話がある、そこには謙虚に耳を傾けていただきたいと思いますけれども、私たちの技術開発というものについては、これからも幾つかの、あるいは多くのハードルを越えていかなければならない困難があるだろうと思います。しかし、私たちは、あの昭和三十年に原子力基本法をつくって、この道を選択したわけであります。そして、そのおかげで今日の経済の基礎を築いてきている、あるいは生活の基礎を築いてきている。これをしっかりとひとつ踏まえて、動燃には重い任務と責任があると思いますけれども、そのことを私は申し上げて、答弁は要りませんが、努力をいただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。
  207. 井上喜一

    井上委員長 これにて質疑は終了いたしました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十六分散会