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寺前委員 時間があと五分という連絡が来ましたので、最後に、せっかく
大臣がお見えなのに、黙って座っておってもらっても値打ちがないかと思いますので、あえて最後に——今総理
大臣の橋本龍太郎さんが「政権奪回論」というのをお出しになりました。この本を読んでおりましたら、この本の出された時期は細川内閣のときなんでしょう、細川内閣の問題についていろいろ触れておられますので、御見解を聞きたいと思います。
ちょっと
紹介をいたします。長い本ですから全部
紹介するわけにいきませんが、「規制緩和の本来の目的」という項のところをちょっと読ませていただきます。
先日、私は友人の一人からおもしろい体験を聞かされた。個人タクシーに乗った際、運転手さんに細川内閣の印象を尋ねたというのだ。
「すごく頼もしいじゃないですか。自民党と違って柔軟なところがいい。とくに規制緩和がすばらしい。どんどんやってほしいものです」
運転手さんは、こう答えたという。そこで私の友人は、規制が緩和されたらどうなるかということを、細かく
説明したという。
つまり——個人タクシーの免許も規制の
一つなのだ。その規制がなくなったら、誰でも自由に個人タクシーを走らせることができるようになる。またタクシーの
料金も規制の対象だ。この規制がなくなれば、
料金は自由に設定できるようになる。そうなると、乗客はより安いタクシーを選ぶようになるから、今と同じ
料金設定では乗客がなかなかつかまらなくなるだろう。今と同じだけの収入を得るためには、
料金をもっと下げて、今以上にたくさん働かなければならなくなるかもしれない——。
これを聞かされて、その運転手さんはたちまち規制緩和反対になったというが、”規制緩和”という言葉が浸透しているわりには、具体的な
中身や緩和後の状況といった
情報は意外に一般には伝わっていない。
タクシーに関していえば免許や
料金だけでなく、車両台数を地域ごとに適正な数に制限する規制もある。これらの規制がなければ、
資金力を持った大手のタクシー会社がどんどん増車し、徹底的に
料金を下げ、他のタクシーをすべて駆逐してしまう可能性さえある。その結果、最後に残ったタクシー会社一社が、市場独占の利を生かして大幅な
料金値上げをすることも考えられないことではない。そうなったら、いちばん苦しい思いをするのはタクシーを利用する一般国民ということになる。
規制緩和はすべて国民生活にプラスに働くと決めつけることは、非常に危険な発想だ。規制緩和によって競争原理が生じ、新規参入を促すとともに競争による価格低下が期待できることは否定しない。しかし、ある
意味では野放し状態を容認するという危険性も必ずつきまとう。
タクシーにならって運輸の
関係で例を挙げれば、離島への船便や過疎地のバスなどだ。規制緩和による新規参入の自由は、同時に撤退の自由も保障することになる。離島への船便や過疎地のバスが、多くがそうであるように一社だけで運行されている場合、利益率が悪いからという理由で撤退してしまったらどうなるか。また、利益率を上げるために
料金を大幅に値上げしたらどうなるか。いずれの場合も、困るのはそれを利用せざるを得ない地域住民自身なのである。
以上のようなことをすべて考慮に入れて、それでも細川首相が、すべて自由競争が好ましいと判断し、国民もまたそれを支持するのであれば、規制全廃もいいのかもしれない。しかし、全廃したあとのことを冷静に考えれば、規制緩和がすべて正しいなどとはいえないはずだ。
ということで、「細川政権は、規制緩和といった改革の”手段”を示しているだけで、」、改革を唱えれば国民が支持するなんと思っておったら大きな間違いで、「将来の経済運営のあり方、
日本の姿というものを考えない”改革”には、我々はとても賛成などできない」、こういう話。
今、政権がかわってしまった。橋本さんが政権の座に着かれた。細川内閣の
時代にとられている方針に対するこういう批判までされた。さて、あれを踏襲するのか。洗い直しをして臨んでいかれるのか。
亀井運輸
大臣はいかなる態度をおとりになるのか、お聞かせいただきたいと思います。