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1996-06-14 第136回国会 衆議院 安全保障委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年六月十四日(金曜日)     午前九時三十分開議 出席委員   委員長 松岡滿壽男君    理事 瓦   力君 理事 浜田 靖一君    理事 町村 信孝君 理事 佐藤 茂樹君    理事 西村 眞悟君 理事 平田 米男君    理事 田口 健二君 理事 前原 誠司君       麻生 太郎君    大野 功統君       熊代 昭彦君    高橋 辰夫君       中谷  元君    中山 利生君       中山 正暉君    野田 聖子君       平泉  渉君    宮下 創平君       森  喜朗君    渡瀬 憲明君       赤松 正雄君    大石 正光君       河合 正智君    神田  厚君       月原 茂皓君    渡辺浩一郎君       大出  俊君    東中 光雄君       山花 貞夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 池田 行彦君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 臼井日出男君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      秋山  收君         防衛庁長官官房         長       江間 清二君         防衛庁防衛局長 秋山 昌廣君         防衛庁教育訓練         局長      粟  威之君         防衛庁経理局長 佐藤  謙君         防衛庁装備局長 荒井 寿光君         防衛施設庁長官 諸冨 増夫君         防衛施設庁総務         長       大野 琢也君         防衛施設庁施設         部長      小澤  毅君         外務大臣官房長 原口 幸市君         外務省総合外交         政策局軍備管  河村 武和君         理・科学審議官         外務省総合外交         政策局国際社会 朝海 和夫君         協力部長         外務省アジア局         長       加藤 良三君         外務省北米局長 折田 正樹君         外務省中近東ア         フリカ局長   法眼 健作君         外務省経済協力         局長      畠中  篤君         外務省条約局長 林   暘君  委員外出席者         内閣官房内閣情         報調査室内閣調 佐野 智則君         査官         公安調査庁次長 河内 悠紀君         安全保障委員会         調査室長    下尾 晃正君     ――――――――――――― 委員の異動 六月十一日  辞任         補欠選任    渡辺浩一郎君     愛知 和男君   山花 貞夫君     土肥 隆一君 同日  辞任         補欠選任   愛知 和男君     渡辺浩一郎君   土肥 隆一君     山花 貞夫君     ――――――――――――― 六月五日  米海兵隊実弾砲撃演習場北海道移転反対に  関する請願古堅実吉紹介)(第二八七〇号  ) 同月十日  米海兵隊実弾砲撃演習場北海道移転反対に  関する請願東中光雄紹介)(第二九三三号  ) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 六月四日  沖縄米軍キャンプの宮城県への移駐反対等に関  する陳情書  (第二八〇号)  沖縄普天間基地岩国移転反対に関する陳情  書外四件  (第二八一号) 同月十日  米軍普天間基地嘉手納基地への移転機能強  化反対に関する陳情書  (第三九五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国の安全保障に関する件      ――――◇―――――
  2. 松岡滿壽男

    松岡委員長 これより会議を開きます。  国の安全保障に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。町村信孝君。
  3. 町村信孝

    町村委員 自由民主党町村でございます。三十分という限られた時間でございますから、要点だけきょうは質問をさせていただきたいと思います。  最初に、海上自衛隊リムパック派遣部隊事故であります。  日米共同訓練中ということで、私は、訓練だからこそある意味では事故が避けられないといいましょうか、もちろん起きない方がいいわけですけれども熟練度が低いから訓練をする、訓練過程事故が起きるということは、ある意味ではやむを得ないこともあろうかと思うんです。  ただ、先日、火曜日に、私はこの委員会理事懇談会防衛庁の御説明を受けたのですが、その概要は大体報道されているとおりで結構なんですけれども、やや驚きかつあきれたのは、その事故原因というのは一言も何にも触れていないんですね。もう一週間たっております。あれから九日たっておりましょうか、十日たちましたでしょうか、何にもわかっていない。  不思議なのは、その翌日から日本側が六名、米海軍側八名が「ゆうぎり」という艦艇に乗って調査を始めているという報告を私ども聞いておりますが、何にもない。本当に大臣のところまでその原因について報告がないんでしょうか。もし、ないとすると、こういう言い方はあれかもしれませんが、ある意味じゃ、これは海上自衛隊の大変か秘密主義とも言うべきことであって、これはいささか異常だと長官はお考えにならないだろうか。  この原因一つが、訓練経費を非常に予算節約でカットしている、そんなことも一つの大きな頂因かなと私は思ったりもしますが、いずれにしても、何らいまだに事故原因について報告がないとすると、その点について長官はどうお考えか、御所見を伺います。
  4. 臼井日出男

    臼井国務大臣 六月四日に発生をいたしました海自のリムパック派遣部隊事故につきましては、まことに遺憾である、このように考えている次第でございます。  事故直後から、現地においては米側協力をいたしまして事故調査を開始いたしております。また、六月六日に、海上幕僚監部内に監察官を長とする事故調査委員会を設置いたしております。既 に担当官四名を現地派遣をいたしておりまして、昨日十三日から「ゆうぎり」に乗艦いたしまして、事故時の現場状況の正確な確認及び事故原因分析調査に当たらせているところでございます。  現時点では、調査に着手したばかりでございまして、事故原因についてお答えができる段階にはございません。事故重大性にかんがみ、できるだけ速やかに事故原因を追求し公表いたしたい、こう考えている次第でございます。  なお、その事故状況については、私のところには逐次報告は参っております。しかしながら、現在艦内には当事者のみしかおりません。したがいまして、調査団の到着を待って、客観的な立場事故原因状況を分析して、結論が出た時点で公表すべきである、このように考えております。調査の途中で断片的な事実だけを取り出して明らかにすることは、むしろ客観的な事故調査に好ましくない影響を与える、このように考えておりまして、今後、できるだけ早く事故原因というものを究明し、公表いたしたいと考えている次第であります。
  5. 町村信孝

    町村委員 おっしゃる意味はわかりますが、きちんとした報告原因の解明に努めていただきたいと思います。実際、米海軍搭乗員二名が軽傷で済んだということは、本当に不幸中の幸いであったと思いますし、私どもも心からお見舞いを申し上げたい、かように思っております。  さて、日米安全保障共同宣言を四月十七日に両国首脳が発表されました。この作成に当たって努力をされた橋本総理池田大臣また臼井防衛庁長官の御努力に対して心から敬意を表するものでございます。  私は非常に重要な共同宣言であったと認識をいたしております。その重要性についてはつとに言われていることでありますけれども米軍が東アジアにおいて軍事的プレゼンスを維持するということを明確にしたことやら、あるいはガイドライン見直しを始めるとか、沖縄基地整理縮小・統合していくとか、あるいは中国との協力を強調したことなど、私は非常に重要な意味のある共同宣言だと思います。  改めて、外務大臣のお立場で、この共同宣言の歴史的な意義についてどのようにお考えであるのか、さらに、この共同宣言に基づいて今後どういうことに具体的に取り組んでいくのか、どういう課題があるのかということについてお伺いをいたします。
  6. 池田行彦

    池田国務大臣 今回、日米首脳会談において発出されました日米安保共同宣言でございますが、ただいま委員指摘のとおり、極めて大きな意義を有するものと考えておる次第でございます。  それは、何と申しましても、冷戦が終えんいたしましてかなりの時日が経過いたしました。その間、国際社会情勢、とりわけ我が国を含むアジア太平洋情勢にも大きな変化があるわけでございます。  しかし、そういった大きく変わった世界の中で、どのようにして我が国の安全を守っていくか、また、このアジア太平洋地域の平和と繁栄を維持していくか、こういうことを考えました場合に、この日米安保条約中心とする日米安保体制というものが今日から将来に向かって極めて大きな役割を担わなくてはならないんだ、そのことを両首脳の間で改めて確認いたしまして、そのことを、両国国民はもとよりでございますが、世界に対してもそれを発出した、そういった意味において大きな意義を有するものだと思います。  さらに、そういった認識の一致を踏まえまして、具体的にこれから何を進めていくべきか、こういったことにも触れておるわけでございます。そういった意味で、いわばこの共同宣言はこれまでの総括というものだけではなくて、むしろ今日から将来に向かって、未来に向かっての出発点となるものであろう、こう考えております。  具体的な措置という観点から申しまして、いろいろございますが、大きく申しまして三つあろうかと思います。  第一は、日米安保体制の将来にわたっての効果的な運用、そしてそれが期待される役割を果たしていくためには、どうしてもこの日米安保体制を運用していく上でこれまで担ってこられた沖縄方々の御負担をよく考えまして、その御負担を軽減しながらも、しかし、将来に向かってもやはりその御理解安保支持をちょうだいしなければいかぬ、そういった意味合いもございまして、沖縄にあります米軍基地整理統合縮小につきまして、首脳会談に先立って作業を進めておりましたいわゆるSACOの中間報告を取りまとめまして、それが確認、発表されたわけでございますけれども、これをまずきちんと進めていくということが安保体制そのもの有効性を確保するためにも肝要である、このように考えております。  それから二つ目といたしましては、いわゆるガイドラインでございます。このガイドラインにつきましては、従来からあったわけでございますけれども、これもいろいろな事態対応する上で、まずいろいろな情勢変化対応した見直しを行わなくてはなりませんし、またこれまでいわば作業が十分進んでいなかった分野もございます。それについてもきちんと進めていこうということでございます。  さらに申しますならば、ガイドラインとも関連するところではございますが、それ以外に、我が国あるいは我が国周辺で起こり得るもろもろの緊急事態に際してどのように日米協力を進めていくか、こういったことについても周到な研究を進めておく必要があるであろう、こういうことも合意されたわけでございまして、これについてもこれから着実に作業を進めてまいらなくてはならない。こういった三点が具体的な問題としては意味があろうと思います。  それからまた、委員先ほど御指摘されました中国との関係でございますけれども、この問題につきましては、一部に今回の日米安保宣言というものがひょっとすると他の国にいろいろ懸念を抱かせることがあるのじゃないか、こういうことを言われることがございます。我々の意図は決してそういうものではございません。いかなる国をも別に対象にするわけではございませんし、とりわけ中国につきましては、これからのアジア太平洋、ひいては国際社会全体の安定、繁栄考えます場合には、やはり非常に大きな役割を担っていかなくてはならない大きな存在でございます。  そして、我が国としても、また米国としても、中国との間では本当にパートナーとしての関係を保つことが大切である。こういったことで、これからアジア太平洋社会の安定なり繁栄を図る上において、中国に肯定的なまた建設的な役割を期待するということもこの宣言においてうたわれたところでございます。
  7. 町村信孝

    町村委員 ありがとうございました。  それらについて、順次一言ずつぐらい伺っておきたいのですが、最後に言われた中国ですが、核実験をまたやった。甚だ遺憾なことでありまして、我が党内にはもう円借款もストップしろという声が相当強くございます。  これについては、今御答弁は要りませんけれども、やはり厳しい対応というものをお考えをいただきませんと、日中間は重要でありますが、しかし、だからと言って、我が国でもODA四原則というのがありますし、またこれに対する国民感情というものもありますし、隣国であるということ、日本の平和と安全を脅かすおそれが将来ある彼らの今の軍事予算膨張ぶり、あるいは核実験、こういうものに対する国民の不安、不満というものも相当強まっているということを踏まえて、私は、いたずらに何か卑屈な日本政府対応になっているのじゃないかという懸念も相当ありますから、その点について注文だけをつけておきます。  それから次に、ガイドラインですが、今かなりお触れいただきましたけれども、具体的なスケジュールについてどのようにお考えか、御答弁をいただきたい。
  8. 折田正樹

    折田政府委員 ガイドライン見直しは、両首脳間でさきの共同宣言の中で合意されたわけでご ざいます。我が国の安全を確保する上で極めて重要な課題であると受けとめておりますが、他方、現在、政府部内で緊急事態対応検討というのを内閣官房中心に行っておりまして、この検討進捗も踏まえる必要があるということで、現時点スケジュールについて具体的に結論が出ているわけではございません。これからの検討作業項目洗い出し作業等を行っていく過程でだんだん定まってくるものだろうと思います。  先般、ホノルルで日米非公式実務レベル協議を行いましたが、九月の下旬に日米安全保障協議委員会、いわゆる2プラス2を会合するということを今一応計画しているわけでございますけれども、その際に、それまでの作業のいわば進捗状況につきましての一種のプログレスリポートを行うのはどうであろうかということで、事務的には話をしておるということでございます。
  9. 町村信孝

    町村委員 私もうろ覚えですが、たしか前回のガイドライン策定作業というのは、二年ぐらいでしたか、かかっていたのかなと思います。相手もあることですし、慎重な検討も必要だと思いますが、しかも今こういう状況で皆さんが関心を持っているときですから、可及的速やかな作業を精力的に両国政府間でやっていただきたい、こう思っております。  今、局長の方から、これは五月十三日でしたか、総理の方から緊急事態対応策検討ですか、御指示があって、難民の問題とかあるいは在外邦人の保護の問題とかあるいは沿岸とか重要施設の警備の問題、そして今言った日米間の緊急事態での対米協力措置という御指示があったというふうに聞いております。これはガイドラインとある部分では全く表裏一体をなすものだ、こう理解をいたしております。  私は、きのう、実はたまたま自民党の中で宮澤元総理の御講演を聞く機会がございました。元総理自身も、例えば極東有事の前段階、要するにガイドラインのむしろ第二項めの方ですが、日本緊急事態が発生した、侵略を受けそうになったとき、受けたときの対応一言で言いますといわゆる有事立法という言葉になっておりますが、このことについて、法制化前提にしないで作業はやってもいいという国会のお許しを得たので勉強だけはしましたけれども、およそそういう立法化前提にしたと言った瞬間に、言うならば内閣がつぶれてしまうからそういう作業にはなっていなかった。しかし、今やそういう作業ができるような政治的状況社会的状況が整ってきたということだから、総理大臣の職にあり、あるいは重要な閣僚のポストにある方としてかねがね非常に気にはなっていたけれども、ようやくそういう環境ができたのは大変に喜ばしいといいましょうか、日本にとって重要なことが作業できるということはいいことだ、こうこれまでの御経験を踏まえて言っておられました。  私はまさにそのとおりだと思いますから、この際、この緊急事態対応策検討の中には、既に有事立法について政府で数年間勉強して相当蓄積もあるわけでありまして、今度はこれをどう具体化するかということも含めて検討を進めていただきたいなと思っておりますが、いかがなものでございましょうか。
  10. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 今委員指摘のとおり、現在のガイドラインのもとでいろいろな研究がなされてまいりました。その研究の中に、いわゆる第二項に言うところの我が国武力攻撃をされた場合の研究もなされているわけでございます。  そして、委員指摘のとおり、このガイドラインに基づく研究は、両国立法予算ないし行政上の措置を義務づけるものではないという前提でスタートしたわけでございますけれども、当然のことながら、この研究の成果は両国のそれぞれのいろいろな計画には反映されているわけでございます。  他方で、我が国が侵略された場合のいわゆる我が国有事の場合の有事法制研究というのは進んでおりまして、その有事法制研究はすべて終わったわけではございませんけれども防衛庁立場としては、なるべく早くこの法制化についてはお願いしたいという立場でございます。
  11. 町村信孝

    町村委員 この緊急事態対応策は、法律の改正を前提にはしないとは言うものの、必要があればまたやるんだという対応だろうと思いますから、ぜひそういう柔軟性を持って臨んでいただきたいと御要望を申し上げておきます。  次に、沖縄の問題でございます。  先般、県会議員選挙もあったわけでありますが、その選挙の結果いかんにかかわらず、基地問題の解決については、沖縄県と関係市町村両国政府は緊密な協力前提にして作業をしていかなければならないことは言うまでもないと思います。もちろん、沖縄県民の長年にわたる御経験なり気持ちなりに私どもは十分な理解と配慮をしなければならないのは当然だと思います。  ただ、最近、県のアクションプログラムというのがいろいろな場で報道され、政府にも御説明があり、二〇一五年までに基地全面撤去ということがうたわれているようでありますが、これが言うならば作業前提ということになると、これまた制約条件としてはちょっとハードルが高過ぎるのじゃないのかな、私はこんなふうにも思っておりますし、県内からもこの全面撤去については相当いろいろな意見があるやにも聞いております。でありますから、いずれにしても、これは基地の問題だけに限ってやるといろいろ難しいこともあると思います。  私ども自由民主党でも、安保あるいは基地という問題に加えて、沖縄開発発展全体を包含した形で一体としてこれは取り組んでいくべきものだということで、我が党内にはそういうチームもできて作業を始めたところでありますから、政府におかれましても、これは沖縄開発庁だ、これは外務省だ、これは防衛施設局の方だとか言わないで、本当にチームとして一体的に取り組んでいっていただきたい、こう思っております。  そしてもう一つは、駐留軍用地特別措置法というのが今大きな問題として出てきております。今の楚辺通信所のある意味では異常な状態と言うのがいいのか、さらに来年の五月十四日までに十二施設ですか、これについての使用権原の取得が本当にできるのだろうか。  過去の経験に照らすと、この期間内にこれを達成するのはどうも非常に難しそうだというのが過去の経験から容易にわかるわけでありまして、これへの立法措置をも含めての対応政府では内々御検討をしているやに聞いておりますが、これは三千名を超える土地所有者のうち、いわゆる一坪地主反戦地主とも言われているようでありますが、この方々が二千九百名近くいるというのは極めて容易ならざる事態で、普通の対応ではこれは答えが出ないのだろうなと私は思うのです。  そこで、現在ある駐留軍用地特措法問題点昭和二十七年に公布、施行されたある意味では古い法律であります。当時想定できない事態が今起きているのだろうと思いますけれども、この特措法問題点は何であるのかということを防衛庁の方に伺っておきたいと思います。
  12. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 お答えします。  現在、まさに駐留軍用地特措法に基づいて私ども手続をしておる最中でございまして、そういう実務経験から、現在の制度におけるいろいろな問題点というか、楚辺通信所みたいな状況が発生した原因といいますか、それはどういうところにあるのかというような観点から申し上げますと、現在の制度の基本的な趣旨は、市町村長等機関委任事務をしておるというのが大きな制度の柱になっておりますが、その中で一つ申し上げられるのは、第一点は、事務処理期間、いわゆる収用委員会が私ども裁決申請を受けまして裁決を処理するまでの事務処理期間には法的な定めがございません。したがいまして、過去の実例からいきますと、数カ月といいますか、長いときには一年以上かかっておるというような事例が一つございます。  それから、第二点目といたしましては、これは調書の作成であるとかあるいは公告縦覧とか、そ ういういわゆる法律に基づく幾つかの手続がございます。その手続を執行する際に、これは機関委任事務でございますので、私どもは一応当初は関係市町村に対してお願いをするわけでございます。そこの関係市町村がこういう署名押印を拒否したり、あるいは公告縦覧をしないというような意思決定をいたしますと、次は県知事の方に私どもお願いをするわけでございます。県知事さんの方でもこれを拒否されますと、現在の制度では、総理府の長たる総理大臣所管大臣からいわゆる勧告命令という手続をいたします。この勧告命令にも従わないというような場合には、やむを得ず私ども高等裁判所の方に訴訟を提起いたします。訴訟を提起して、国が勝訴をいただきました段階で初めて代行ができる、こういう仕組みになっております。  それから三つ目には、緊急の必要に応じた迅速化ということ。ちょっとわかりやすく申し上げますと、一般の土地収用法以外に公共用地特別措置法という制度がございまして、重要な事案については建設大臣が代行するというような制度がございますが、私ども駐留軍用地特措法にはこういう制度がないということで、大体大きく三点が挙げられるかと思います。
  13. 町村信孝

    町村委員 この三点、昭和二十七年にできた古い法律であるというのも一つの当時の社会的な状況を反映しているのでしょうけれども、やむを得なかったのかなと思うのです。  今日の事態にしてみるといろいろ問題があります。今言われた公共用地特措法、これは昭和三十六年に公布、施行された法律でありますから、緊急・迅速化のためのそういう緊急裁決建設大臣でできるというようなことも、きっと戦後十何年の経験で出てきたのだろうと思います。  ですから、そういうことで、今の駐留軍用地特措法については、率直に言って問題点があるのだろうと私は思いますので、そうしたことについて、これも来年の五月ということを念頭に置けば、余りのんびりとした検討作業をやっておるわけにはいかないと思いますから、これも大車輪で政府部内において関係方面ともよく詰めていただきたい、かように思っております。  また、今施設長官の御答弁にもあったけれども、同じように自衛隊の用地だって土地収用法という一般法でやっているわけですが、これについても、今現実の問題がないにしても、潜在的にはこうした緊急・迅速化措置というものがやはり必要なのかなと思うのでありまして、そのことも含めて御検討をいただければ、かように思っているところであります。  時間がなくなりましたので、最後に一点。  平成八年度予算が通ったばかりですが、もう平成九年度予算について我が党内でも議論を始めておりますし、また皆さん方もぼつぼつお考えを始めておられることと思っております。新しい大綱ができ、中期防二年目ということで、いろいろ取り組むべき課題がたくさんあろうかと思います。  私も地元の自衛隊関係者あるいはOBの皆さん方と会って話をしますと、大分改善されたとはいうものの、依然として自衛官の待遇の改善とか、居住環境をもっと整備してもらいたいとか、こういう身の回りの問題もいろいろあります。それから、さっき申し上げた、訓練にしわ寄せが行っているというような実態というのは、やはりまずいと私は思います。  さらには、正面装備あるいは基地周辺対策、先ほど言った沖縄の問題、来年度すぐ幾らかかるということではないかもしれませんが、将来に向けては、移転で滑走路をまた新しくつくる等々を含めると、相当な金額になることが考えられる。これを現在の防衛予算の枠内で対応することはなかなか難しいのだろうと私は思います。  したがって、新しい沖縄枠といったようなものでも多分考えなければ、平成九年度にすぐ必要かどうかはわかりませんが、早晩そういうものが必要になってくるのだろう、こう私は思っておりまして、そうしたことを踏まえながら来年度予算の編成に当たってもらいたいな、概算要求をつくってもらいたいな、こう思っております。  そして、一点だけ。  即応予備自衛官の制度につきましては、先般、二月に私は質問をさせていただきましたが、それから四カ月ぐらいたって、いろいろな方々の話を聞くと、第一線に出てもらう人だ、したがって、当面はそんなに人が急に集まらなくても、とにかく立派なすぐれた人がいる、レベルの高い人がこの即応予備自衛官にはついているのだというような基本的な位置づけが必要なのだろう、こういう声が大変多うございます。  そのための訓練の内容をどうするかとか、日数をどうするかとか、処遇をどうするかとか、その際、今までの予備自衛官との関係をどうしたらいいかとかいうこともまた出てくるでしょう。あるいは民間会社の相当な協力、勤務先への補償、さらに、それらを実行するためにはやはり立法措置といったようなことも必要になるのだろうと思いますが、現時点での即応予備自衛官制度の導入について、その後検討を進めておられると思いますので、検討進捗状況について何かございましたら伺って、私の質問を終えたいと思います。
  14. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 即応予備自衛官につきましては、新防衛大綱のもと、現在の新中期防におきまして、改編する師団及び旅団の一部の部隊を即応予備自衛官を主体として編成するというふうに決定されておりまして、防衛庁といたしまして、この部隊改編に合わせまして導入を図ってまいりたいと考えております。  そして、新中期防におきましては、この即応予備自衛官を円滑にかつ実効性のあるものとして導入するため、所要の施策を講ずるということが明記されておりまして、防衛庁といたしまして、ただいま委員から御指摘のありました、例えば即応予備自衛官の運用構想ですとか訓練日数を含む教育のあり方ですとか、あるいはまさに訓練出頭しやすいような環境整備といったような実はなかなか難しい問題がたくさんございますけれども、今鋭意検討してございまして、具体的な施策をできるだけ早く取りまとめて、九年度の概算要求に間に合わせるべく現在やっている最中でございます。
  15. 町村信孝

    町村委員 どうもありがとうございました。
  16. 松岡滿壽男

    松岡委員長 前原誠司君。
  17. 前原誠司

    ○前原委員 新党さきがけの前原でございます。  通告をしました数点について御質問させていただきます。  まず、特定通常兵器使用禁止制限条約、CCWの改正、いわゆる地雷規制の強化について御質問をさせていただきたいと思います。  この特定通常兵器使用禁止制限条約の改正というのは、四月二十二日から五月三日にかけましてジュネーブにおいてその再検討会議というものが開催をされまして、新たな内容を盛り込んだ第二議定書というものの改正に合意をして採択されたということであります。  その内容については、スコープを国内紛争までに拡大をした。従来は国際紛争のみであったのが国内紛争にまで拡大をした。また、地雷の使用の制限を大幅に強化した。例えばプラスチック製地雷には金属片をつけて後でわかりやすいようにする、こういった諸点が盛り込まれておりまして、私は、この議定書については非常にすばらしいものだと思います。  そこで、まず御質問をしたいのは、この国際会議での改正を受けて、今後、日本でどういうタイムスケジュールでこの内容について取り組んでいかれるのか、外務大臣にお伺いをしたいと思います。
  18. 河村武和

    ○河村(武)政府委員 今前原委員から御説明がございましたとおり、五月にいわゆる第二議定書の改正に合意したわけでございます。我が国といたしましては、関係省庁とこの議定書を作成する段階から協議をしておりましたけれども、今後、さらに明年の通常国会に向けて、この新しい改正議定書の国会の承認ということを検討するという形で作業を進めてまいりたい、このように思っております。
  19. 前原誠司

    ○前原委員 事前に関係省庁とも相談をされてということでございます。これは、これで大変結構なことだと思いますけれども、私は、これよりまたさらに一歩踏み込んだ内容のものを取り組むべきではないかと思っております。  日本もPKOでカンボジアに行きましたし、今ゴラン高原にも行っております。私もゴラン高原に行ってまいりましたけれども、地雷禍が非常に多いということであります。  何か話で聞きますと、現在、全世界で一億個に上る数の地雷が埋設をされているということでございまして、大変な量であります。それを取り除くだけでも大変な労力と資金が要るわけであります。日本もその点について相当の資金を今までも出されているわけであります。  言ってみればマッチポンプ的なこの地雷というもの、確かに軍事的に必要だという理屈にはなるのでありましょうけれども、そういうふうに埋設されて、そして平和が訪れたときに、その地域に住んでいる人たちが亡くなられたり足が吹き飛んだり、そういう状況は少なくとも避けなくてはいけないし、それは人道的な見地から見ても避けて通ることができないことだと私は思っております。  そこで、対人地雷の使用の制限ではなくて、さらに踏み込んで使用の禁止というものをぜひ国際社会で取り組んでいくべきだろうというふうに私は思っております。この使用の制限ということではなくて使用の禁止まで踏み込めば、将来的には製造の禁止というものにまで行くわけでありますので、日本として国際貢献というものをこれからさらに積極的にやっていこうとしていく中で、この使用の禁止というものもできれば日本が主導権を握って、イニシアチブをとって、例えばサミットが目前に控えておりますが、そういうときに日本が先進国に対して提案をする、これぐらいの方針で臨むべきだと私は思いますけれども外務大臣、その点についてのお考えを御答弁いただけますでしょうか。
  20. 池田行彦

    池田国務大臣 前原委員指摘のとおり、今世界に随分地雷が残されたままでございます。御指摘のございましたカンボジアのほかに、アフガニスタンとかアンゴラとか、大変な数量でございます。  先般もアンゴラの政府の方と話をしておりましたら、例えば食糧生産しようと思っても、まず地雷の処理をしなくてはそれに手がつかないのだということでございました。そんな話を聞くにつれ、この地雷の処理というものはよく考えていかなくてはいけないと思います。  それと同時に、対人地雷を中心とする地雷の全面禁止につきましても、国際的な機運がぐっと盛り上がってきているところでございます。今回のCCWで、それは使用、移転などの禁止でございますが、これの全面禁止という国際世論も大分高まってまいりまして、米、独、英等々みんなその方向に行っております。今主要国の中でそういった面について態度を明らかにしてないのはロシアぐらいではないか、こういうふうに考える次第でございます。  我が国といたしましても、先ほど政府委員から答弁申し上げましたけれども、まず関係省庁、防衛庁等ともよく協議しながら、この条約については前向きに対応してまいりたいと思いますし、さらなる地雷問題についての取り組みにも国際社会において積極的な役割を果たしてまいりたい、こう考えておりまして、今月の下旬に開かれますリヨン・サミットにおきましても、まだ議題が決まったわけではございませんけれども、そういった観点から、この地雷の問題についても我が国の積極的な立場を踏まえた対応をしてまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  21. 前原誠司

    ○前原委員 積極的な態度ということでありましたけれども、さらに突っ込んで御答弁をいただきたいと思いますが、今度は防衛庁長官にお伺いします。  対人地雷の使用については、我々の国の専守防衛という観点からも、今までは必要である、有効であるというお立場をとっておられたと思いますけれども、現在の防衛庁考えとしては、いまだにそういう考え方を持っておられるのかどうか、その点についてお伺いをしたいと思います。
  22. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 我が国の防衛力整備の基本に、専守防衛を前提としたいわゆる基盤的防衛力整備というものがございまして、この基盤的防衛力整備は、陸海空自衛隊のいろいろな装備品を前提にした整備でございます。その中に対人地雷の所有というものも含まれております。
  23. 前原誠司

    ○前原委員 現時点ではそうだということでありますが、これは起きたらいけないことでありますし、外交的な努力あるいは防衛力をある程度整備する中で、日本に対する侵攻あるいは攻撃の抑止というものは絶対に最大限一〇〇%やっていかなくてはいけないわけであります。  しかし、仮に、本当に万が一どころか億が一兆が一という可能性で考えていただいたらいいと思いますけれども、現代のような近代兵器といいますか、ミサイルあるいは戦闘機等が発達した中で、従来のような着上陸侵攻作戦というものが本当にとられ得るのかどうかといったところは私は大きな疑問だと思います。  したがって、もしそういう状況になったようなときは、地雷もへったくれもない、こういう極論を言ってもいいのではないかと私は思うわけです。したがいまして、そういう非常に可能性の低い、また実行性の乏しいことを理由に、現在もその作戦というものを、計画を持っているということ自体、私は見直すべきであると思います。  この点については、やはり政治の立場から大臣に御答弁をいただきたいと思うわけでありますけれども、今後、全面禁止の可能性について大臣としてもやるべきであるとお思いになっているかどうか、その点について御答弁お願いしたいと思います。
  24. 臼井日出男

    臼井国務大臣 先ほど来、CCWの第二議定書の件について、外務大臣外務省の方からお話がございました。その件については、適切に対応すべく政府部内で鋭意検討中であるわけでございます。  御指摘の対人地雷の全面禁止につきましては、防衛庁といたしましても、我が国対応ぶりの決定というものに資するために、現在、国際社会の取り組み方というものを見詰めつつ、我が国の平和と安全を守るという我々の任務の遂行、そうした観点を含めて、改めて対人地雷の我が国の防衛上の位置づけあるいは代替手段の可能性等、そういうものにつきまして鋭意検討を行っているところでございます。  今後とも、関係省庁とも御相談をしながら、この問題については対応する方法について考えてまいりたい、このように考えております。
  25. 前原誠司

    ○前原委員 確かに軍事的な問題というのは他国の動向を見据えなければいけない、それはわかります。こちらだけ突出して、気がついだらばしごが外されていたということではいけないわけでありますけれども、しかし、私が今質問したのは、対人地雷ということに限定しているわけでありまして、何も対戦車とかといった地雷まで今申し上げているわけではありません。  今、全世界の悲惨な状況で、紛争が終わった後も、さっき外務大臣が御答弁になりましたように、民生の安定に資するため、例えば農地にするとかあるいは土地をいろいろ使おうというときにも地雷に悩まされる、あるいはけがをする、亡くなられるということが多いわけであります。  私は、人道的な見地から、やはり対人地雷に関しては、他国との横並びとかいう状況ではなくて、もっと積極的な日本の姿勢、立場というものを鮮明にすることが必要なのではないかと思います。それが、むしろ今後PKO活動に日本が出ていく際の留保条件にしてもいいぐらいのものではないかと思うわけであります。  そういった点を踏まえて、もう一度、外務大臣防衛庁長官、今後の取り組みについて、決意、熱意をちょっと示していただきたいと思います。
  26. 池田行彦

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたように、 国際社会においても、対人地雷の問題については何とか積極的に前向きに進めていこうという機運がずっと盛り上がっております。しかし、一方におきまして、先ほど防衛庁から御答弁のございましたような事情もございますので、まず国内においてよく相談をしてまいりたいと存じます。  また同時に、国際社会においても、先ほど若干申し上げましたけれども、より正確に申しますと、対人地雷の全面的な禁止について、その方向を明確に支持している国は英、独、仏、カナダあたりでございます。米国は、例えば自己破壊の装置のついているようなものは例外にしたらどうかとか、そういった若干の条件をつけながら対応しているというところでちょっと違いがございます。そして、先ほども答弁申しましたけれども、ロシアはまだこれについて態度を表明していないということでございます。  そういったことでございますので、先ほど申しましたような国内における調整を進めると同時に、国際社会においても、主要国における合意が形成されるという面で我が方も積極的な役割を果たしてまいりたいと思います。  その合意が形成されるまでにも、例えば探知だとか除去といった技術面での貢献、それから、不幸にして対人地雷で例えば身体に障害を残すような状態になられた方のリハビリとか、そういったまず当面できる問題については、これは先ほども申しましたが、リヨン・サミットの場等においても我が国がリードするような格好で対応してまいりたい、こう考える次第でございます。
  27. 臼井日出男

    臼井国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたとおり、対人地雷の全面禁止の問題につきましては、国際社会の取り組みというものをしっかりと見詰めながら対処しなければならない。他方我が国の平和と安全を守るという任務遂行の立場、そういうものを踏まえながら、今後、鋭意検討してまいりたい、このように考えております。
  28. 前原誠司

    ○前原委員 ぜひリヨン・サミットで日本が積極的な対人地雷全面使用禁止に向けてイニシアチブをとられますことを期待して、この問題については終わらせていただきたいと思います。  次に、日米防衛協力の話、集団的自衛権の絡みについてお伺いをしたいと思います。  先般、先週でありますけれども、アメリカに行かせていただきまして、向こうの共和党、民主党の議員とも話をさせていただきました。率直な印象というのは、今、大統領選の前でもあり、アメリカの議員は安全保障の問題には余り関心を持っていない、こういう率直な印象を受けて帰ってまいりました。  むしろ話が出てくるのは、コダックでありますとか航空協定の話、それから保険、半導体、こういった経済の話がほとんどでありまして、こちらから安全保障の問題をしむけないと、なかなかその議題にならない、こういう雰囲気でありました。  ペリー長官も、日本ガイドライン見直しについては日本の憲法の範囲内でいいというような発言をされておりますし、それは我が国としても当然そういう方向性で進んでいくものだと思っております。  しかし、その言葉の中で、日本検討作業をしていって、結局グレーゾーン等の問題があって何もできませんでしたということで提出したときには、私は、相当向こうの失望を買うということも今回印象として受けてまいりました。  ガイドライン見直しをして、そして有事の法制とか日本のできることまで細部にわたって検討に入るということなので、それなりの答えが出てくるのは当たり前だ、こういうふうな話が各議員から出されておりまして、もし、日本として検討した結果、どうも今の日本の憲法の範囲内では何もできませんねという答えが出てきたら、そのときに日米安保そのものがおかしくなってしまう、そういう危険性を私は持ったわけであります。  何度か外務大臣にはこの御質問をしておりますけれども、これから作業を鋭意進めていかれるわけでありますけれども、もう一度その点について、今私が申し上げたことも含めて決意並びに方針をお示しいただきたいと思います。
  29. 池田行彦

    池田国務大臣 御指摘のとおり、日米安保共同宣言におきまして、今日から将来に向かっても日米間で安全保障面の協力をきちんとやっていこう、そのことが我が国はもとよりアジア太平洋地域の安定にも資するものだ、こういうことを確認したわけでございますけれども、それを現実に担保する、それを保証するためには、具体的に日本が何をやるかということをきちんとしなくてはいけない、御指摘のとおりだと思います。  そして、政府といたしましては、こういった協力を進めていくに当たりましても、当然のことながら、日本国憲法の枠内でございますし、また集団的自衛権等にかかわるこれまでの政府の解釈というものは踏襲していく、こういう方針でいっております。  しかし、そういった場合に、具体的に一体何ができるのか、何ができないのかという点については、あらかじめきちんとやっておかなくてはいけないと思います。それは、個別具体的な議論になりますと、現実の個々のいろいろな条件が提示されなくてはいけないということはそのとおりでございますけれども、それにいたしましても、なるべく具体的なケースについて想定をしながら整理をしていくという作業はやっておきたい。  それで、そのことを明確に示す、これはできるけれどもこの部分はできないぞということを示すということが、日米間の信頼、そしてまた安保体制の信頼性、有効性を確保する上でも大切だと考えておりますので、今後、国内においても、また日米間においてもそういった作業を鋭意進めてまいる所存でございます。
  30. 前原誠司

    ○前原委員 集団的自衛権の問題等々でさらに少し突っ込んでお話を伺いたいと思います。  今までのいろいろな答弁の積み重ねはありますけれども、原点に返った場合、九条に書かれております武力行使に当たるかどうかといったところが原点の問題だと思うわけです。  憲法には個別的自衛権という言葉もなければ集団的自衛権という言葉もないわけでありますから、この作業を進めるに当たっては、憲法九条に書かれている趣旨というものを今までの概念にとらわれず、もちろん別に今までの積み重ねを放棄せよということではありませんが、この原点からもう一度考えていく必要があるのではないかと思うわけです。  今までのいろいろな場面での答弁を見ておりましても、集団的自衛権に当たるかどうかという問題も、武力行動あるいは武力の行使に当たるかどうかといったところから判断を加えられるべきである、こういうことなのですね。  つまり、これは当たり前のことでありまして、憲法九条にこれは禁止をされているということでありますから、武力の行動、武力の行使というものに当たるということであれば、それは当然ながら、集団的自衛権とか個別的自衛権とかいうことではなくて、できないということであります。  となると、裏返して言えば、武力の行動・行使、そして、よく言われておりますけれども、一体化というふうに見られなければ、それは憲法上許されるのだというふうに判断をしていかないと、個別事例の積み上げでは、これは法制局も、私はまたお話を聞くのは酷だと思うのですね。  ですから、私が今申し上げたように、今後の作業の展開として、基本に立ち返って、武力の行動、武力の行使、またその一体化に当たるといったものが憲法上否定をされているのであって、そうではないというものについては憲法上認められる、こういう判断で作業を進めていくということでいいのかと私は思いますけれども、今の私の考えに対して、法制局、ちょっと簡単にコメントをいただければと思います。
  31. 秋山收

    秋山(收)政府委員 先日来お答えしておりますように、この一体化の理論と申しますのは、仮にみずから直接武力の行使をしていないとしても、ほかの者が行う武力の行使への関与の密接性などから、我が国も武力の行使をしたという法的評価を受ける場合があるということで、憲法九条の「武 力の行使」などという文言の解釈から出てきている問題でございます。  したがいまして、今委員が御指摘のとおり、武力の行使についての判断基準、これは境界をどこに引くかということは、いずれにせよデリケートな問題があろうかと思いますが、現在の政府の解釈は、実力の行使、いわゆる戦闘行為を中心概念といたしまして、それと一体化するような後方支援については憲法上問題があるのではないかというふうに考えておりますので、今後、具体的な事例に即した検討が行われるとしましたら、そのような判断基準に照らして一般的には判断していくべきものと考えております。
  32. 前原誠司

    ○前原委員 もう一度私の考え方を整理しますと、武力の行使との密接性ということをおっしゃいましたけれども、今までの法制局の答弁なんかの積み上げでも、例えば施設・区域の提供というものは当たらない、情報の提供も当たらない、経済的な支援というものも当たらない、経済的な支援の中に含まれると思いますけれども資金の提供もそれに当たらない、こういうことでありますよね。  武力行使との一体化ということは、今のようなものが含まれないとすれば、ともに戦闘行動を行っているという、今おっしゃいましたけれども、密接性、一体性というものがある程度だれが見ても客観的に判断できるような場合でないと、私はそれが本当に武力行使と一体化をしているということにはならないと思うのです。  さっき申し上げたように、憲法の中に書いてあるのは、武力の行使あるいは武力の行動というものがだめであって、そして、それに本当に一体化となって、密接になってやっている以外は、今申し上げたような部分を今まで法制局の答弁としては認めているわけであります。  そういった観点からすると、極めて近い距離で同時進行で武力行使等が行われる場合を除いて、我々の憲法としては認められるというふうな判断ができると私は思うのでありますけれども、その点について、本当に簡単で結構であります、御答弁をいただきたいと思います。
  33. 秋山收

    秋山(收)政府委員 これも従前から申し上げているところでございますけれども、先ほど申しましたような他国による武力の行使と一体をなす行動に該当するかどうかは、戦闘活動が行われているまたは行われようとしている地点と我が方の行動がされる場所との地理的な関係、それから当該行動の具体的内容、それから他国、例えば米軍の武力行使の任に当たる者との関係の密接性、それから協力しようとする相手方の活動の現況などの諸般の事情を総合的に勘案して、要するに、それが武力の行使と一体と評価されるかどうかということを事例に即して判断していくべきものというふうに考えております。
  34. 前原誠司

    ○前原委員 これ以上続けてもしょうがないような気がしますけれども、そういう判断をされるというところが、どういう文言からそんなものが読み取れるのかということがいまいち私は不明確だと思います。答弁をされて、それがそうだということであれば、私も政府委員になって答弁を積み重ねていきたいような気持ちになりますけれども、この点についてはまたさらに深めていくということで、最後の質問を簡単にさせていただきたいと思います。  外務大臣、イスラエルで総選挙が行われまして、ネタニヤフさんというリクードの党首が今度総理になられるわけであります。パレスチナを国として認めないとか、あるいは入植地、ユダヤ人の入植について、またそれを再開をするとか、そういった非常に強硬的な発言を選挙前にされていたわけでありますけれども、このイスラエルの総選挙をどういうふうに総括をされ、今後の中東和平をどういうふうに見られているか、また、日本の今後の取り組みについて御答弁をいただければと思います。
  35. 池田行彦

    池田国務大臣 今般ネタニヤフ新首相が政権の座に着かれたわけでございますが、確かに選挙過程におきまして、中東和平の問題につきましては、ネタニヤフ新首相、そしてリクードは、これまで政権の座にございました労働党に比しますと、より慎重といいましょうか、あるいはアラブに対しましては強硬な路線を主張しておったところでございます。しかし、中東の和平そのものを実現しなくてはいけないということは、これははっきり明確に言っておるわけでございますし、特に選挙後、政権成立後、その点はきちんと立場を明らかにしておられると思います。  しかしながら、一方においては、具体論になりますと、おっしゃいますように、パレスチナ国家の存在を認めるかどうかとか、ウェストバンクをどうするとか、あるいはエルサレムの中をどうするかとか、いろいろな点においてこれまでの立場とは違っている、差異が出ております。  そういったところをこれから具体的にどうされるかでございますけれども、我々といたしましては、何としても中東における和平のプロセスを維持し、さらに進展させなければいけない、こう考えておりまして、実は、日本政府といたしましても、新政権に対しまして、既にそういったことをメッセージ、書簡として発出したところでございます。  今後、国際社会においてもいろいろな場でそういった相談といいましょうか、協議が行われると思います。そういった場におきましても、ただいま申しましたような我が国立場を踏まえまして、各国と協調してその和平プロセスが進展するように、またイスラエルの新政権もそういった方向に歩みを進めていくように働きかけ、慫慂してまいりたい、こう考えている次第でございます。
  36. 前原誠司

    ○前原委員 時間が来ましたので終わりますが、早い時期に総理もしくは外務大臣が中東に行っていただいて、日本の中東和平に対する取り組みの真剣さ、熱意、中東和平の今の流れを逆行させないという日本のメッセージをぜひ伝えていただきたいということを要望して、質問を終わらせていただきます。
  37. 松岡滿壽男

    松岡委員長 平田米男君。
  38. 平田米男

    ○平田委員 きょうは三十分というわずかな時間でございますが、質問をさせていただくわけでございます。  この安保委員会でさまざま議論をされまして、日米安保共同宣言が出まして、日本が新しい姿勢でアジア太平洋安全保障、ひいては世界安全保障について大きな関心と、また貢献を米国とともに協力をしてやっていくという流れができたと私は思っているわけでございまして、世界の経済大国であり、また平和を願う国として、そのような我が国考え方で米国とともに協力し合ってやっていくということは、私は大変意義深い重要なことだというふうに思っているわけでございます。  そういう意味で、今回の日米安保共同宣言の方向性については賛同をする立場にいるわけでございますが、前回も御質問させていただきましたが、それに見合った日本の国内体制というものがきちっと整備されていかなければ、それは机上のものになってしまうわけであります。また、アメリカあるいは同盟諸国、あるいはその他の国々の日本に対する期待を裏切ることになるのではないかというふうに考えているわけでございます。  そういう意味で、ACSAの問題あるいは有事法制の問題がまだまだ大変おくれているわけでございまして、これは積極的に取り組んでいただかなければならない。これまでの答弁では、余り前向きの御答弁に接することができなかったような印象があるわけでありますけれども、今の連立与党の中ではなかなか進まないものなのかなというふうに半分理解を示しながら感じているところでございます。  そういう国内体制の一つのあり方の問題として、情報の問題が大きなテーマなのではないかというふうに私は考えております。安全保障考えるとき、外交ということが極めて重要でございます。最後に来るのは軍事力ではありますけれども、外交というものが極めて重要でございます。また、軍事力を行使するに当たっても、情報というものが極めて重要であるわけであります。  外交、安保観点から、安全保障等に絡む情報を日本が的確に収集し、それを分析し、また、的確な、正確な評価をしていくことができるかできないか。さらに、それが国家の指導者、総理あるいは外務大臣防衛庁長官等々に迅速に、また、加工されないで伝達されるかどうかということが重要なのではないかというふうに思っているわけであります。  本来、そういう大きなテーマは予算委員会等で議論をするのが適当なのかもしれませんが、今の時期におきまして、私は、問題提起としてこの委員会をおかりしまして御議論をさせていただきたいというふうに思っているわけであります。  きょうは、外務省、それから防衛庁、各大臣以外に、公安調査庁あるいは内調からもお越しをいただいていることになっているわけでありますけれども、事は最終的には内閣の機構の問題に絡むことになるわけでございます。  ただ、外務省防衛庁、この中でも幾つか重要な問題点があるのではないかというふうに思うわけでありまして、例えば外務省につきましては、ルワンダに対するPKOの派遣の問題に絡みまして、いろいろな批判がされているわけであります。その批判が正当かどうかということは、私はここで検証をする気は基本的にはございません。しかし、その問題点指摘は、十分に我々は認識をしなければならないのではないかというふうに思うわけであります。  そこで言っておるのは、情報と政策が未分離なのではないかとか、批判の具体的な中身としては、危険なところにあえて外務省は危険であることをぼかしながらPKOを派遣した、こういうような批判があるわけであります。  私は、そのような姿勢は外務省に基本的にないとは思いますが、しかし、現実に行ってみましたら、大変危険なところであった、閣議決定をした後にその危険さが明確にわかった。行って、なお一層その危険さがわかったということがあるとするならば、逆に言えば、情報収集能力という観点にまた疑問符を打たざるを得ない、こういうことになるのではないかというふうに思います。  今、外務省にお伺いしましたところ、各国の情報は在外公館を通して各地域局に入ってくる。また、国際関係情勢については国際情報局が基本的な責任を持って情報収集をしておって、情報と政策を混同して、すなわち、政策に合った情報のみを外部に公表しあるいは官邸に上げる、そして政策に合わない情報は捨象する、そういうような意図的なことは全くやっていないというお話を聞いているわけでありますが、そうだろうというふうに善意に私は理解をしたいと思います。  ただ、今の外務省の体制として、国際情報局をきちっとつくってやっておいでになるということはよくわかるわけでありますが、その中身を開いてみますと、これは相当貧弱な状態にあると言わざるを得ないのではないかと思っているわけであります。  外務省から資料をいただきましたら、内部部局の人員は約二千名おります。在外公館を入れまして五千五人である、こういう報告をいただいておりますが、内部部局、本省は千九百三十二名であるというのですが、国際情報局はそのうち六十一名しかいないわけであります。一番多いのは経済協力局の百七十一名でございまして、国際情報局は局としては下から二番目でございます。中南米局が四十二名、その上に六十一名という国際情報局が人員としては位置づけられているわけであります。  政策立案をするということが地域局の主要なことだろうと思いますが、そのために必要な情報を集める。したがって、地域局も情報収集に大きく寄与している、その責任を負担しているわけでありますけれども、しかし、独立して国際情報局として情報の担当部局をつくっているという観点からしますと、この六十一名というのは余りにも少な過ぎるのではないか。本省二千名のうち六十一名というのは、たったの三%ということでございます。  これはやはりもっと増員をして、政策立案とは違う、純粋に情報を収集、分析、評価をする部局として、その責任の大きな位置づけというものを示していく必要があるのではないかというふうに思います。  同時に、基本的に外交官として外務省の職員は採用されているわけであります。伺いましたところ、情報収集・分析をやりたいということについての希望もとるという話でございます。これは、上級職だけではなくて専門職の中にも、専門職、上級職ともに、これからの情報の重要性という観点からすると、そういう人員、情報関連の専門家をきちっと養成をしていくことがぜひとも必要なのではないかというふうに思うのです。伺いましたところ、現在、その辺についてきちっと明確な外務省の方針がないというふうに思わざるを得ない状況にあるのではないかと思うわけであります。  そこで、大臣にお伺いをさせていただきたいわけでありますが、今私が申し上げましたような問題意識、またその観点から申し上げました国際情報局等の強化、あるいは情報専門家の養成、こういうことについて大臣のお考えをお聞かせいただければと思います。
  39. 池田行彦

    池田国務大臣 敵を知りおのれを知れば百戦危うからずと申します。また、戦わずして勝つことが最良の策であるとも申します。  委員指摘のとおり、我が国の安全を守る上でも、あるいは外交活動を展開する上でも、情報を十分に収集し、それを適切に分析し、その上に立って政策運営をやっていく、そういったものが一体となって運営されるということが極めて肝要である。委員指摘のとおりの認識を持っております。  さて、そういった中で、今の外務省の情報に関する体制なり運用、そしてそれの政策との結びつきいかんという点でございます。  確かに私ども地域局と情報の専門の部局と両方ございますけれども、それは、情報につきまして、裁然とこの情報はこちら、この情報はこちらとなっておるわけではございませんで、お互いに集まった情報を連絡し合うわけでございますし、また政策判断に当たってもそれを活用していくわけでございます。  また、ルワンダのPKO派遣に関連して、どうも政策の方向をあらかじめ決めて、それでフィルターにかけて、有利な情報だけをやっている嫌いがあるのではないか、そういう批判があるがという御指摘も一点ございました。  私どもは、そういうことがあってはこれは本当の意味での情報の活用にもあるいは適正な政策の決定にも至らないわけでございますので、関連するあらゆる情報を集めまして、そういった中でいろいろな政策的なオルタナティブズと申しましょうか、選択肢をいろいろ考え、それぞれについてのプラス面とマイナス面を検討して政策決定する、そういうふうに心がけておるところでございます。しかし、そういった点につきましても、また部局間の連携についても、今後、一層遺漏なきを期してまいりたいと存じます。  さらに、情報専門部門の陣容が貧弱ではないかという御指摘、あるいは専門の人材を育成すべきではないかという具体的な御提言もございました。六十一名という人間の見方はいろいろあるかと思います。  私どもも、外交活動全般につきまして、これを十分に遺漏のない展開をしていくためには、何といっても人が中心の仕事でございますので、これまでも各方面の御理解をちょうだいしながら定員の確保に努めてまいり、御指摘もございましたように、現在、内外含めて五千五人という陣容をもちましてやっておるわけでございますが、今後、これについてもさらなる充実を図ってまいりたいと思いますし、その中で、できることならば情報関連につきましても充実を図ってまいりたい、こう考えます。  また、専門家の育成という点につきましてもいろいろあると思います。専門にずっと入った方がいいか、あるいは外交活動のほかの面、政策判断 とか実際の実務に携わった経験も踏まえた方が情報の関係の仕事をする上でもプラスの面もあると思います。そういったところを総合勘案しながら、御提言はよく受けとめさせていただきます。  今後の外交活動、とりわけ情報面の機能の充実強化に当たってのありがたい御助言、御示唆として受けとめさせていただきたい、こう考える次第でございます。
  40. 平田米男

    ○平田委員 ぜひ御努力をいただきますようお願いを申し上げます。  次に、防衛庁でございますが、防衛庁も今回設置法を改正いたしまして情報本部を新たに設けるというような大改革をされたわけでございます。私はこれは大変いいことだというふうに思いますが、これをどのように構成し、運用をしていくかということについては、庁内の情報委員会でさらに検討中だというふうに伺っているわけであります。  旧来いろいろな、防衛局にも調査一課、二課ですか、それから各幕僚監部にもそういう調査の部局もありますし、統幕議長のもとにもそういう情報の部局もあった。今伺っている限りは、情報本部には大分集約されるけれども、まだそういうところにも幾つか残る、あるいは各隊にも調査隊あるいは中央調査隊というのが残るということでございます。  これも有機的なきちっとした全体的な機能を持って、そして総合的に正しい情報分析、また評価というものが行われて防衛庁長官に提供される、また政策と分離をした情報というものが提供される、そういうシステムをぜひとも構築をしていただきたいということをお願いを申し上げたいわけでございます。  それを前提にした上で、いざとなったら、これは防衛庁だけの問題ではなくて、内閣総理大臣への情報の提供、また決断を仰ぐということが極めて重要になってくるわけであります。  各省には情報があるけれども官邸は情報の欠如に泣いているんだという御指摘があるわけでありますが、今総理のもとには総理秘書官というのがおるわけであります。あと情報が流れるルートは、総理秘書官以外には直接官房長官に、あるいは官房長官の秘書官を通じてとか、あるいは官房副長官を通じてとか、あるいは場合によれば各省の次官や局長が直接総理に会いに行って説明をする、そういうようなことによって情報提供がされているということでございます。  冷戦が終わって、日本の国あるいはアジア太平洋安全保障について日本が重大なる関心と責任を持ってやっていくとするならば、先進諸国と同じように、安全保障に関する情報というようなものは、毎日、的確に定時的に、官邸に、内閣総理大臣のもとに届けられなければならないと私は思っておりますが、今のところ全く内閣にはそのような体制ができておりません。  恐らくまだ防衛庁もそこまで手が回らないのだろうというふうに思うのですが、外務省防衛庁ともに、そういうのを将来的には、将来的にと言いましても、それは何年も先の話ではなくて、近々の時間の中で対応していただく必要があると思います。それは問題提起とさせていただきます。  まず具体的に、今の現状の中で防衛庁の情報ができるだけ迅速的確に総理のもとに届けられるためには、今置かれております総理秘書官、ここには外務省出身の総理秘書官はおります、警察庁出身の総理秘書官もいる、あと大蔵省と通産省でございましたか。しかし、防衛庁出身の総理秘書官はいないのですね。  今、安全保障に関する情報は、基本的には警察庁出身の秘書官を通じて総理のもとに届けられるという慣例になっているようでございます。確かに警察庁出身の秘書官も大変優秀な人だというふうに思うわけでございますけれども、国内の治安を維持するためにどうすべきかというようなことについてはいろいろ訓練を受けておられる方だろうとは思いますが、対外的な、しかも安全保障にかかわる問題についてはやはり素人に近い、そういう立場なのではないかというふうに思うわけであります。  そういう意味では、防衛庁出身の総理秘書官というのが今の体制の中では早期に設けられることがぜひとも必要なのではないかと思います。それについて、防衛庁長官、どのようなお考えなのか、お伺いしたい。  私は、諸外国を見ますと、防衛庁は今シビリアンコントロールということで、制服組が表に出ることについては非常に抑制的であるわけでございますが、的確な情報を伝えるという意味ではやはり武官、軍人がそのような役割を担うということも極めて重要なのではないかと思うわけでございます。  そういう意味で、総理秘書官というものを防衛庁から出すというようなお考え防衛庁にあるとするならば、文官だけに限定するのではなくて、軍人も自衛官もそのような立場に置くということがぜひとも検討される必要があるのではないかと思うわけでございますが、防衛庁のお考えをお伺いしたいと思います。
  41. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 大臣答弁の前に、一言私の方からお答えさせていただきたいと思います。  防衛庁といたしましては、案件に応じまして内閣総理大臣に直接、あるいは今委員指摘のございましたように、秘書官を通じて、さらには内閣情報調査室を通じて内閣総理大臣に各種の情報を提供している、報告しているところでございます。  情報本部の設置によりまして、防衛庁の情報機能の充実ということを我々は考えているところでございますが、同時に、内閣の情報機能の強化にも積極的に寄与したいと考えておりまして、情報本部設置に当たりましても、内閣、特に内閣情報調査室とは緊密な協議をしてまいりました。今後とも、迅速かつ適切な報告、連絡体制を検討し、情報本部作成の情報を初めとした各種の情報を官邸に報告していきたいと考えております。  現在のところ、先ほど申し上げましたように、次官ないし私が直接内閣総理大臣に御報告することもございますし、案件によりまして秘書官を通じて上げていただくということもございます。現状においては、我々、現在のスタイルでも何とか対応していっているというふうに考えているところでございます。
  42. 臼井日出男

    臼井国務大臣 情報本部の設置によりまして、防衛庁内の新たな情報の収集、処理は充実する、こういうことは間違いないわけでございますが、引き続き、委員指摘総理に対する情報伝達等については、これからもさらにいかにあるべきかということを検討していく必要があるかと思っております。  今、局長から御答弁がございましたとおり、私どもの得ました情報はほとんど即時に総理のもとにお届けをするような体制をつくり、また努力もいたしているところでもございます。また、安全保障室あるいは内閣情報調査室には防衛庁から職員を出向させております。また、内調にも制服組が行っている。こういうことでもございますが、御指摘のように、総理をいかに補佐する体制をつくっていくかにつきましては、今後ともさらに努力をいたしてまいりたい、このように考えております。
  43. 平田米男

    ○平田委員 ぜひとも具体的な結論を早期に出していただきたいというふうに思います。  きょうは、内調と公安調査庁にもお越しをいただいておるのですが、日本の官邸における情報の集約の仕方あるいは伝達の仕方というのは、非常に旧時代的といいますか、ほとんどシステム化されていないと言っていいのではないかと思います。先進諸国では情報集約機関というものをきちっと置いております。インテリジェンスコミュニティーというそうでございますが、あるいは全情報を統括するチーフセクレタリーというものを置いている、こういうふうに言われているわけでありますが、実際上、内調はそのような機能を今果たしておりません。  先ほど申し上げましたように、ほとんど秘書官とか官房長官とか官房長官秘書官あるいは官房副長官を通しての情報伝達という形になっていて、 しかも三ルート、四ルートもあって、それぞれの省庁がばらばらのルートを通してやるので、総理は混乱した情報しか手に入れられないという事態になっているわけであります。これでは日本の正しい国家運営を迅速に行う、的確に行うということはおぼつかないだろうというふうに私は思うわけでございます。  内調は、きょうは説明員の方、内閣調査官にお越しをいただいているそうでございますが、せっかくお越しいただいたので、若干お伺いをいたします。  現在、内調は百三十名の陣容がいるそうでございますが、そのうち出向者が六十八名ということであります。警察庁から三十名、防衛庁から八名、あと外務省、公安調査庁等からも出向者がいるわけでございますが、外務省、公安調査庁から何名来ておいでになるのか。  また、恐らぐ出向でございますので、二、三年で異動するのではないかというふうに思います。したがって、要するに情報に関する専門家というものの養成というのはほとんどなされていない。ですから、チーフセクレタリーを置きたいとか、あるいは情報の集約機関としての機能を果たしたいと言っても、要するに人材的にはそれに対応し切れない、そういうシステムになっているのではないかというふうに思うのでありますが、私の今指摘した問題点あるいは質問に対してお答えをいただけますでしょうか。時間がありませんので、簡単にお願いいたします。
  44. 佐野智則

    ○佐野説明員 お答えいたします。  外務省からの出向者は次長を含めて三名、公安調査庁からは調査官以下四名の出向をいただいているところであります。  先生御指摘でございますけれども、警察庁を含めていずれもそれぞれ広い意味での情報にこれまでかかわってきた分野の人間が大多数を占めているという現状は、御理解いただきたいと思います。ただ、プロパーの育成、約六十名の職員がおりますけれども、それについては、御指摘のとおり、今後も努力してまいりたいと思っております。
  45. 平田米男

    ○平田委員 最後に、公安調査庁でございますが、公安調査庁は基本的には破壊活動防止法に基づいて活動しておいでになるわけでありますが、破防法対象の団体を調査するに当たっては、さまざまな情報、とりわけ、今我々が心配しております朝鮮有事に関連する情報収集の大きな役割を実際上は果たしておられるわけであります。  そういう意味で、公安調査庁の情報機関としての機能というのは、我々は正しく評価をしなければならないのではないかと思います。オウムの問題が起きて、オウムのことだけやっているのではないか、オウムの問題が終わったら、これで公安調査庁の責任は終わりなのではないかというようなことを言われる方も中にはいるようでございますが、私は、日本のこれからのあり方から考えますと、公安調査庁の役割というのは看過できないものだろうというふうに思っているわけであります。  その公安調査庁は、それなりに専門家を教育をしておいでになりまして、研修所を持ち、教官は十名おいでになる、適宜さまざまな研修を繰り返しやっている。私は、これが本当の情報収集の専門家の教育のあり方だろうと思います。  確かに仕事をやりながらトレーニングをするという内調のあり方、あるいは各省庁のあり方を否定するわけではありませんが、しかし、情報の複雑性あるいは専門性あるいは機器の発達を考えますと、これについては適宜専門的な教育を繰り返しやっていくというやり方がぜひとも必要だろうと思いますので、公安調査庁の具体的なやり方について私は十分に知っているわけではありませんが、その方向性というものは正しいものがあるのではないかと思うわけでありまして、外務省防衛庁あるいは内調もぜひ御関心を持っていただければというふうに思うわけであります。  その上で公安調査庁にお伺いするのですが、公安調査庁に集まった情報、とりわけ北朝鮮の情報等が多いかと思うわけでありますが、これは的確に外務省あるいは防衛庁等と情報交換はスムーズに行われているのかどうか、この辺を御答弁いただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  46. 河内悠紀

    ○河内説明員 お答えいたします。  政府の政策に必要と思われる私どもの収集した情報につきましては、今御指摘防衛庁あるいは内閣調査室とも十分協議した上で、内閣官房に設置されている合同情報会議内閣情報調査室を通じまして提供したり、あるいは官邸の求めに応じて提供したり、あるいは当庁独自の判断で官邸に連絡するなど、十分意を尽くしてやっておるところでございます。
  47. 平田米男

    ○平田委員 もう時間が来ましたので終わりますが、最後に申し上げたいと思いますが、先ほど合同情報会議というようなものがある、月二回開いている、官房副長官中心者にして、内調を事務局にしてやっているわけでありますが、これは法的な根拠は全くありません。しかも、情報を収集し分析し評価をするというような機能を持たすには、そのメンバーというのはちょっと地位が高過ぎまして、要するに局長クラスばかりでございまして、果たしてそれでできるのだろうかと思うわけでございます。  それで、外務大臣防衛庁長官答弁を求めるわけではありませんが、日本の情報の体制というのは極めて不備でございまして、特に官邸におけるインテリジェンスコミュニティーという情報の集約システム、集約機関というものが欠如している実態というのは、本当に目を覆うばかりでございます。  何も、先進諸国も最初からあったわけではありません。例えばイギリスは、あのフォークランド紛争のときに、こういう機能がなくて大失敗をいたしまして、多くの損失を出して、その反省のもとでその機構の整備を行ったというふうに聞いているわけでございます。  日本がそういう大きな失敗をしたからようやく整備ができたということではなくて、この間の阪神・淡路の大震災で失敗したということも言えるわけでありますが、早くこれに対する手を打つということがぜひとも必要だろうと思います。内閣の一員でいらっしゃいます両大臣からもぜひとも積極的に御提言をいただきまして、対応方をお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  48. 松岡滿壽男

    松岡委員長 西村眞悟君。
  49. 西村眞悟

    ○西村委員 西村眞悟です。  私の質問は、外務大臣に対して、国連のいわゆるクマラスワミ報告書に関して始めさせていただきたいと思います。  いわゆる従軍慰安婦に関して、クマラスワミ、どういう人か、女史かわかりませんけれども、この方の報告書がことしに入って国連の人権委員会に提出されまして、私としては、内容を読みましたが、これを盲目的に歓迎する一部日本人の言動に唖然としております。  私の感想はともかく、東京でクマラスワミ女史ほか二名の随員に対して、歴史学者、千葉大の秦郁彦教授が説明したわけですけれども、秦教授によりますと、国連にクマラスワミ報告書が出されてから異議申し立て書を提出されまして、秦教授がクマラスワミ女史に説明した趣旨が正確に要約されていないという異議申し立て書を配付された。  また、文芸春秋五月号に、秦教授が、「従軍慰安婦問題 歪められた私の論旨 誤認と誤断に満ちた国連の報告書に異議あり」の中で、この報告書は「学生レポートなら落第点」であるというふうにまで決めつけた報告書を出されております。  これと並行して、日本政府は五十ページに上る反論書を国連に提出し、二十カ国以上に配付された。これは報道で私は知っておるのですけれども、この反論書を見たいと思っておるのですけれども、報道による要約では、この反論書は、五十年、六十年前の問題を正確に調査するのは難しい、事実関係の情報収集に誠実な努力がなされていない、したがって、このクマラスワミ報告書が国連 で採決されれば委員会は信頼性を失うとまで断定された反論書でございます。そしてまた、客観的、公正であるべき報告書の基準に合わない、極めて強い断定の反論書を日本政府は送られた。  この評価はともかく、一国の政府がこれほどまでに断定的な反論書を各国に配付された以上、その反論書の主張を裏づける資料はお持ちであろうと私は確信するのです。  それで、一点だけお聞きいたしますが、政府がこのような反論書を書かれる前提としての資料、日本政府がいわゆる慰安婦を戦争中において強制的に組織的に連行したことを示す資料が存在するのか否か、その反論書を書かれた時点に存在しているのか、存在していないのか、ちょっとお伺いいたします。
  50. 朝海和夫

    ○朝海政府委員 クマラスワミ特別報告者の報告書に関しましては、事実に関連する部分と法律関係にかかわる部分、いずれにおいても大きな問題があると私ども考えております。  御質問の事実関係の部分につきましては、私どもが提示しました文書の中にも言及がございますけれども、平成五年八月四日に政府としまして調査の結果を発表してございます。  それによれば、例えばでございますけれども、御質問の点に関しては、慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧によるなど、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、官憲などが直接これに加担したこともあった、そのようなことが判明いたしております。  ただ、私どもの基本的考え方は、このクマラスワミさんの報告書に関する限り、あの方の調査は二週間に満たない短期間のものでございますし、いわゆる従軍慰安婦の状況は、場所、時期によって異なっておるのであって、事実関係確認することは困難である、そういった意味で、私どもも注意深く歴史的な資料などを検討しましたけれども、この報告者の事実面における記述については重大な留保を付している、そういうことでございます。
  51. 西村眞悟

    ○西村委員 私がお聞きしているのは、平成五年八月四日時点の政府の評価ではなくて、資料があるか否かをお聞きしているわけです。その資料というのは、今お答えになったことではなくて、日本政府が慰安婦を組織的に強制的に連行をしたことを示す資料があるのか否か、これをお聞きしているわけです。
  52. 朝海和夫

    ○朝海政府委員 ただいま御質問のような事実についての詳しい資料を持ち合わせておりませんけれども、先ほど申しましたとおり、例えば募集の問題に関しては、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たった。その場合、意思に反したこともあった、そういう事実は把握しておるわけでございます。
  53. 西村眞悟

    ○西村委員 募集と強制は違う、募集は任意的であり、強制は文字どおり強制的だ。  私が聞いておるのは、昨日このことについてお答えいただきたいといって質問予定事項を提出しておりますのは、日本政府が強制的に連行した事実はあるのかということを聞いておるのです。その資料があるのか。評価はよろしい。その資料はあるのかということを聞いておるのです。
  54. 朝海和夫

    ○朝海政府委員 政府といたしましていろいろな調査をいたしたわけでございますが、その結果として、先ほど来申しておるとおりでございますけれども、官憲等が直接これに加担したこともあったということでございまして、そういった点は平成五年八月四日の官房長官談話において明らかにしたとおりでございます。
  55. 西村眞悟

    ○西村委員 お答えになっていないのです。  平成五年八月四日の官房長官談話というのは、やはり歴史の審判を受けるべきものである。私は、我が国の歴史、我々の祖父、父親の代に対する歩みに対して、同じ日本人なら温かい思いを持って暮らしたいし、また、私どもの子供たちにもそのように歴史を認識してもらいたいのですけれども、このような報告書が出て、そして何か傷つけられたという思いがするのですね。  したがって、この点は、今のお答えはお答えになっていないと思うのです。募集とか業者に頼んでとかというレベルではない。募集は任意的に来る、業者に頼んだというのは文字どおり頼んだのだ、断られる場合もある。  私が聞いているのは、繰り返しになりますからよろしいですが、日本政府のこの五十ページに及ぶ反論書と平成五年八月四日時点での官房長官談話を出された前提としての資料。これはクマラスワミ報告書が国際社会にばらまかれた以上、私どもはそればかりが目に入るわけですけれども、それに対する日本政府としての反論書と平成五年八月四日時点で政府があの談話を出すに至る前提としての資料は、日本国民は知る必要があると思うのですが、この委員会に対しても議院に対しても提出されることはできないのですか。
  56. 朝海和夫

    ○朝海政府委員 政府の側でこの件につきましていろいろ調査しました結果に関しましては、関係者のプライバシーを保護するための適切な措置をとった上で公開してございます。したがいまして、内閣官房においても、これらの写しを一括して整理して、プライバシーを保護するための適切な措置をとった上で公開しておると承知しております。  反論書につきましても、これは国連に私どもが正式に提出した文書でございまして、提出とともに公開してございます。
  57. 西村眞悟

    ○西村委員 わかりました。初めにこれをお聞きしたかったのです。  次に、先ほど来出ておりました日米共同宣言外務大臣は先ほど評価の御答弁をなさいまして、私もそのとおりだと思っております。それは、共同宣言政府同士の共同宣言ですけれども、私としては、共同宣言とともに「橋本総理とクリントン大統領から日米両国民へのメッセージ 二十一世紀への挑戦」、日米両国民に政府間の共同宣言とともにメッセージを送られているということを非常に重視したいと思います。直接両国民に語りかけておるわけですから、重視したい。  安全保障委員会ですから、防衛協力の点についてちょっと申し上げますと、このメッセージにおいては、   我々の同盟関係は、アジア太平洋地域の平和、安定及び繁栄にとり中心的な重要性を持っています。また、日米安全保障体制は、日米両国にとり極めて重要です。 それから、本論に入りまして、  「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」を基盤とする両国間の安全保障面の関係が、共通の安全保障上の目標を達成するとともに、二十一世紀に向けてアジア太平洋地域において安定的で繁栄した情勢を維持するための基礎であり続けることが再確認された。 また、続きまして  この文脈において、米国は、日本を常任理事国として安全保障理事会に加えることを強く支持する。 こういうふうに両国民に対してメッセージが送られました。  一つ外務大臣にお聞きしたいのですが、両国民に対してメッセージを送られた以上、アメリカ国民は、アメリカの世論はこのメッセージをどのように受け取っているかということを、漠然とした質問で恐縮ですが、まずお聞きしておかねばならないと思いますので、お答えいただきますようにお願いします。
  58. 池田行彦

    池田国務大臣 委員指摘のとおり、先般の日米首脳会談におきましては、日米安保共同宣言だけではなくて、むしろ安保面も含めました日米両国間の緊密な関係の存在、そしてまた将来にわたってのそれの重要性というものを両国国民へ向かって送るといった両国民へのメッセージ、いわゆる「二十一世紀への挑戦」という文書も発出されたわけでございます。  それがどういうふうにアメリカの世論なり国民に受け取られたかという点でございますけれども、私もこのメッセージ自体についてどういう評 価をするかといったいわば事後的な調査をしておるわけではございませんけれども、米国におきましても、今回の日米首脳会談全体につきましての評価は肯定的なものであり、また、それに同意をし歓迎するものであったと信ずるところでございます。  そしてまた、両国民が、特に米国におきましても、いろいろ日米間でいわゆるイシューと言われるものがございましたり、あるいは国際社会に処する場合に意見の異なる場合もないわけではございません。しかし、全体として見ますならば、両国関係は非常に幅広くまた深いものであるということは認識されておるわけでございますし、そしてまた、このことを将来に向かって大切にしなければいけないという認識もあるのだと思っています。  とりわけ、安全保障面につきましては、我々日本国民立場からすると、我が国の安全にとって、また我が国もその一員でございますアジア太平洋地域の平和と繁栄にとって大切だ、そういった基本的な認識の上に認められておるわけでございますが、米国の側でどうかと申しますと、これは米国自身のインタレスト、国としてのあるいは国民としての利害という点から申しましても、米国自身がアジア太平洋地域一つの国であり存在でございます。  それから、御承知のとおり、経済面での貿易あるいは投資等々のつながりも、今や世界の成長センターと言われますアジアでございますので、むしろアメリカから見ましても、ヨーロッパをしのぐ勢いで、それは幅広いものなりまた緊密なものになっておるわけでございます。また、そのことは文化、政治、その他の面でも同じでございます。  そういったことを踏まえて、アメリカの国民から見ても、アジアとの関係、とりわけその中心的な存在とも言うべき日本との安全保障面も含む緊密な関係が将来に向かっても大切なものだ、そういう認識の上に立って、全般として、先ごろの首脳会談、そしてこの両国民へのメッセージも肯定的に受け取られ、評価されているものと考えておる次第でございます。
  59. 西村眞悟

    ○西村委員 ありがとうございます。  そのとおりなのですが、アメリカ国民は、同盟関係というものを突き詰めればともに肩と肩を並べて戦う決意をした国民の信頼関係である、このように把握すると私は思うのです。私は、アメリカ国民はこの日米共同宣言国民へのメッセージを受け取れば、やはり日本は真の同盟国としてともに共通の利益のために戦う決意をしたと受けとめると思うのです。これが国際的に正しい同盟関係の受けとめ方だと思います。  次に、私の問題意識を申し上げますと、外務大臣防衛庁長官にお聞きするわけですが、今アメリカ国民の受けとめ方を聞きました。先ほども委員の質問に対して外務大臣がお述べになっておられましたけれども共同宣言及び両国民へのメッセージの実効性を担保する前提我が国にあるのか、この点について非常な危惧の念を抱く。  仮に、有事の際というのはいつ起こるかわかりませんから、あす起こるといたしましたときに、我が国には共同宣言及びメッセージでうたったような防衛協力態勢をとる法制度もない。そして今、共同宣言及び両国へのメッセージを出されながら集団的自衛権の行使はできないという日本政府は、非常に薄氷の上にあるような感じがするわけです。  つまり、有事になった場合に、アメリカ国民、アメリカ政府共同宣言に対する歓迎の意思は、直ちに失望と、経済問題から目をそらすための二枚舌外交を使ったのではないかという怒りに転化して、日米同盟関係は危うくなるのではないかと私は危惧の念を持っております。  具体的には、防衛計画の大綱、昨年十一月で我が国の防衛に対して自衛隊での独力排除の方針を削除、放棄したわけでございます。日本国は日本人が守るという国防の基本がないわけでございます。こういう国がどうしてアジア太平洋地域においてアメリカと防衛協力し得るのかという私の疑問。貧困国ならともかく経済大国である、これはただ乗りではないか、私がアメリカ国民ならそう思います。  そして、独力排除の方針を削除した我が国においては、我が国の防衛はアメリカの集団的自衛権行使によって守られるという前提で動いておる。自国の防衛は他国の集団的自衛権行使によって守るということを受け入れておきながら、肝心の我が国は集団的自衛権を行使しない。いざとなれば、これが露呈すれば利己主義国家ではないか。これは奇妙きてれつな憲法解釈を口実にしてなすべきことをなさないずるい国家であって、同盟国の名に値しない。  一朝有事のときはアメリカ国民はこのような世論のもとに日米同盟関係を廃棄する方向に動くと思うのですが、外務大臣、私の危惧の念に対してどのようにお考えになっておりますか。
  60. 池田行彦

    池田国務大臣 日米の同盟関係、その中核に安全保障面の同盟関係があるのは当然でございます。しかしながら、日米関係はさらに幅広いものでございまして、経済、政治、文化、あらゆる側面での両国の交流、深い関係、もう切っても切れない仲と言ってもいいと思いますが、そういった中でこの日米同盟関係ができているのだと思います。それが今回の一般メッセージにもいろいろな分野がうたわれ、盛り込まれているゆえんでもございます。しかし、その中でやはり安全保障面での協力関係、同盟関係が大切であるということは、委員指摘のとおりでございます。  さて、その中で、集団的自衛権の行使を認められないという日本のあり方、これでは、今回のメッセージその他日米関係のあり方を歓迎しているアメリカの国民も、何か事が起こったときにむしろこれは絶望し、あるいは反発してこの同盟関係の廃棄に向かうのではないかという説でございますけれども、そこのところは私はこう考えております。  アメリカの中にもいろいろな世論がございますけれども、少なくとも米国にも、政府首脳部あるいは政権の座にない政党も含めて、日米関係あるいは安全保障問題を考え方々、さらに申しますと米国社会におけるオピニオンリーダーズと目される方々も含めまして、大勢としては、日本の現在のあり方、特に安全保障面でのあり方、とりわけ集団的自衛権の行使はできないという憲法解釈に基づくあり方、その上での日米安全保障面における同盟というものをよしとしておるのだと思います。そして、そういった枠組みの中で日本ができ得ることを、またなすべきことをきちんとやっていく、こういうことが米国の期待であろうかと思っております。  そういった意味では、これも委員が御指摘になりましたけれども我が国として国内的にはガイドラインだとか、あるいは有事法制という言葉もございましたけれども、そういった面でまだ十分整備をされていない面があるという御指摘については、それは私も率直に十分ではないことを認めざるを得ないと思います。  さればこそ、今回の安保共同宣言におきましても、ガイドラインについての作業、あるいはいろいろな緊急事態に当たっての日米協力研究を深めていこうということを明記しているわけでございまして、政府といたしましては、それをマテリアライズするためにきちんと着実にその作業を進めて、米国あるいは米国民日米同盟関係に対する信頼、支持というものを将来にわたって確保してまいりたい、こう考える次第でございます。  それからいま一点、新防衛大綱についての御議論がございました。これは防衛庁からお答えいただく話だとは思いますけれども、小規模な侵略にさらされた場合に、まず自衛隊が独力で対処する、そういうことがこれまでの大綱にあったわけでございますが、それがなくなって日米共同対処ということになったという点でございます。  これは委員が今懸念されたように、日本がみずからなすべきことをなさずに、専らアメリカの集団的自衛権に基づく、そして日米安保条約に基づく責任、責務の履行に寄りかかっていくというこ とでは決してございません。現実にいろいろあり得べき我が国が危機にさらされた状況というのを考えますと、それは当初から日米で共同対処するということではないのだろうかということであり、我が国の自衛隊は当然のこと、我が国を守るために全力をもってそれに当たる、さらに、安保条約に基づく米軍協力といいましょうか共同対処もある、こういうことであると理解しておる次第でございます。
  61. 西村眞悟

    ○西村委員 私は、おわかりいただいていると思いますけれども、繰り返しませんが、アメリカの母親が、自分の息子は日本周辺海域において戦死した、そのときに日本は何をしていたのだろうということが有事の際は起こり得るのですから、そのときに、政府のプロじゃなくて、国民にメッセージを出しておるわけですから、そういうふうなアメリカ国民の気持ちというものに対して、予測可能な、賢明な対策を講じねばならないと私は思うのです。  先ほど、政府間のプロにおいては、日本国は集団的自衛権を行使しないことを前提としての協力関係にあるというふうな御答弁をなされました。私は、そのことで、集団的自衛権というのは国際的な用語ですから、国際的な用語において、我が国においてなされている集団的自衛権の定義が国際的に通用する定義であろうかな、ここの点にちょっと疑問を持っておりますので、お聞きいたします。  集団的自衛権という概念は、アメリカ南北大陸で、モンロー主義下のアメリカで出てきました積極的な概念なのですね。例えば、カリブ海で何かが起こった場合に、第三国が攻撃された。アメリカにとっては、自国に直接の攻撃はない。しかし、自国に直接攻撃がないけれども、緊密な第三国が攻撃されたことが自国への攻撃と認め得る場合には、固有の権利としての自衛権の発動としてその第三国と共同するという権利なのですね。  政府の定義は、「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」これが集団的自衛権であると定義づけておりますね。本来の国際的に通用する集団的自衛権の定義は、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃が自国に対するものと認められた場合に、実力をもって阻止する権利。日本の定義は、何か自分のところと関係のないところにちょっかいを出しに行くような権利であるかのような定義をしております。  これは防衛庁長官、集団的自衛権を行使しないという枠の中での自衛隊の運用の責任者であられますから、果たして我々が使っている、日本政府が使っている集団的自衛権の定義と、日本国が集団的自衛権を行使しないということを認めているというときのアメリカが使う集団的自衛権の定義と同じなんでしょうか、違うのでしょうか。この点はちょっとコメントをいただけますでしょうか。
  62. 江間清二

    ○江間政府委員 お答えをいたします。  集団的自衛権に関します学説上の定義については、種々あると承知しております。また、その中には、ただいま先生のお述べになりました、自国に対する攻撃とみなされるような場合云々というふうな定義をされておられる学者もおられるわけであります。  ただ、政府としましては、先ほど先生もお述べになられましたように、従来から一貫して集団的自衛権につきましては、「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」というふうに解釈をいたしてきておるわけであります。  この解釈は、憲法制定以来、昭和二十九年の自衛隊の発足、あるいは国連加盟とともに安保条約の締結、あるいはその解釈、あるいは安保条約の改定、そういう経過の中で、またその議論の中で形成されてきたものというふうに理解をいたしておるところでございます。
  63. 西村眞悟

    ○西村委員 政府理解はそうです。しかし、国家の存在は一国だけで存在しているのではなくて、緊密な両国関係があるということは事実で、他方の国家が崩壊した場合に、その崩壊は自国に対する非常な脅威となってはね返ってくるという関係にあることも事実です。  したがって、国連が、国際社会が固有の権利として認めておる集団的自衛権というものの定義は、その実態に即したものとして定義されねばならない。今のままで神学論争を詰めていきますと、日本国民が与えられる情報は、集団的自衛権というものは全く関係のないところにちょっかいを出しに行く権利であるというふうなイメージでしか理解されない。これは、防衛論議というのは極めて具体的な論議であらねばならないときに極めて不幸である、このように思うわけでございます。  次に、今、防衛論議は具体的でなければならない、観念的であってはならぬ。そしてまた、橋本総理も、具体的ケースを想定する、また、先ほど前原委員の質問に対して、外務大臣は、できるかできないか、これを詰めていかねばならないと申されておりましたので、具体的ケースについてお聞きしていきたいと思います。  外務大臣におかれては、これからは防衛庁長官に主にお聞きしますので、しかるべき時間に御退席いただいて……  私は、防衛議論というものは、先ほどの外務大臣のお答えですけれども、できるかできないかの前に、なすべきかなさざるべきかの政策的決断、国策の決断がなければならないと思うのですよ。集団的自衛権行使ができないというふうな妙なドグマの中に縛られていますから、その本来の防衛議論ができずに、同盟関係におけるなすべきこと、なすべからざることを議論できずに、できるかできないかの議論でとまってしまっているわけです。これは非常に不幸です。  しかし、政府は集団的自衛権行使を認めないという前提でグレーゾーンというものがあるようなことを設定しまして、これからそのグレーゾーンのモザイクのような線引き作業を複雑に始めねばならない、こういうことですから、私もそのプロセスに合わせまして具体的にお聞きしたい。  これは朝鮮半島有事の際の、主に海上自衛隊の対米支援について、これはできるのかできないのか、大ざっぱにお伺いします。  まず、朝鮮半島有事の際を前提にしてください。日本国が直接攻撃、ミサイルは飛んできていないという事態を想定していただいて、アメリカが出動するという事態を想定していただきましたときに、まず、我が国領海内におけるアメリカ艦艇の安全のための機雷除去及び処理はできるのか。隊法九十九条によって機雷除去は海上自衛隊はできるのですけれども、有事の際にアメリカ艦艇の安全のために日本国領海においてできるのか、これはいかがですか。  これから項目ごとに具体的に聞いていきますので、なすべきかなさざるべきかは政府の議論ではできませんので、簡潔にできるかできないかだけで結構です。
  64. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 委員御質問の前提として、朝鮮半島有事、あるいは米軍が戦闘に参加している、我が国には攻撃がなされていないというような状況で、我が国領海内での米軍の艦艇に対する機雷攻撃の除去が可能か、こういうふうに今御質問を承ったわけでございます。  機雷の除去に関しましては、現在自衛隊法第九十九条がございます。この第九十九条は、御案内のとおり、我が国船舶の航行の安全にとり障害となっている場合、そして、その航行の安全を確保するためにこれを除去する行為ということで、憲法九条の武力行使に当たらないということで可能と考えているわけでございますが、御質問の点がいわゆる憲法九条の武力行使に該当するということであれば、これは対応不可能というふうに考えるところでございます。(西村委員「不可能ですか」と呼ぶ)御質問の点が、憲法九条に言うところの武力行使に該当するということであれば、それは対応不可能であると考えております。
  65. 西村眞悟

    ○西村委員 まずできるかできないか言ってくだ さい。できないわけですね。それで、できない理由を言ってください、次に質問を進めますから。  公海上において機雷を除去する、有事においてこれはできるのか、いかがですか。
  66. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 現在自衛隊が行える九十九条による機雷の除去につきましては、その必要性があれば、その規定に基づき公海上で掃海することは可能と考えております。
  67. 西村眞悟

    ○西村委員 領海内では武力行使ですから不可能、公海上ではできるという答弁になってきました。  我が国には三十隻の掃海艇があって、第七艦隊には二隻しか掃海艇がない。韓国政府の了解のもとで韓国領海内の機雷を除去及び処理することはできるのか、いかがですか。
  68. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 先ほどちょっと冒頭の答弁で申し上げましたように、自衛隊法九十九条に基づく機雷掃海は最初に御答弁申し上げたとおりでございますが、委員御設定のような条件のもとで、その機雷掃海の行為が憲法九条に言うところの武力行使に該当するということであれば、我が国の領海に限らず、公海でも、それから韓国の領海内、仮に韓国の了解といいますか、承認を得たとしてもそれは不可能と考えております。
  69. 西村眞悟

    ○西村委員 機雷という武器をつぶすのは武力行使なんですよ。だからみんなできないのですね。具体的なケースで検討するといったって、日本は三十隻の世界一の掃海能力を持っておる。第七艦隊は二隻しかない。韓国にはないと思いますよ、それはちょっと不正確ですけれども。だから必ず要請されて、朝鮮戦争で仁川沖で、掃海作業日本は行きましたよ。  時間がありませんから、そして、例えば武力行使ではないという前提で、北朝鮮が放った機雷を掃海している部隊がおる、何のために掃海するか、そこを通る船のために、そこを通る船はアメリカ艦艇であるという前提のもとで、武力行使でないなら出られるとおっしゃった。武力行使でないなら出られるといっても、敵さんから見れば、相手方から見れば武力行使なんです。  ペルシャ湾でも問題になりましたけれども、この掃海艇がみずから防御する根拠というのは、政府の判断の前提では隊法九十五条の武器等防御のための武器使用、これしかないわけです。たとえ武器使用、武力行使ではないという三百代言を弄してアメリカの要請でなし崩し的に出したとしても、防衛出動の下令なき出動になってきまして、隊員の生命を守れない。これは三八式歩兵銃でガダルカナルに兵隊を送った政府と同じ思考ですよ。政府答弁で陥っていくのはそこなんです。  防衛出動の下令があって初めて防御の態勢を整えて掃海作業ができる、有事の場合は。したがって、防衛出動の下令は、この掃海艇の派遣は集団的自衛権行使という前提のもとでなければならない。政府が陥る危険性、我々が歴史の教訓から学んで、陥ってはならないという状態に有事の際は陥ってしまう。現地部隊は全滅するか超法規的に暴走するかしかないのですよ、集団的自衛権行使を認めなければ。  日本政府の解釈として、それは武力行使でないなら出せるとおっしゃったけれども、相手方から見たら武力行使なんですよ。そういう怠慢を犯して我々は日米共同宣言の実効性を担保する議論がどうしてできるのですか。  飛ばしまして、洋上補給について申し上げますと、これは我が国領海及び公海において、米軍後方支援艦艇への水、食料、修理部品等の洋上補給は私はできると思うのですが、防衛庁長官、どうですか。
  70. 荒井寿光

    ○荒井政府委員 当該行為が米軍の行う武力の行使と一体となる場合には憲法上許されないものと考えておりますが、武力の行使と一体をなすかどうかという判断基準について申し上げますと、戦闘活動が行われている地点と当該活動がなされている場所との地理的関係、我が方の該当行動の具体的内容、各国の武力行使そのものとの関係の緊密性、協力しようとしている相手方の活動の現況といった諸般の事情の総合的勘案により個々に判断されることになると思います。  このような観点から、戦闘行為のところから一線を画されるようなところでの後方支援部隊などに水や食料を補給するような場合には、武力の行使と一体をなす活動に該当しないケースはあり得ると考えております。
  71. 西村眞悟

    ○西村委員 具体的にケースを詰めなければいかぬという議論のときに、わけがわからぬですね。何キロ離れたらいいのですか、それなら。今のミサイルは射程何キロだと思うのですか。日本国と朝鮮半島の距離というのは、何秒かで飛んでくるじゃないですか。それなら、ミッドウェーがハワイ沖で補給したらいいのですか。  しかし、情けない、具体的に議論できないとは。防衛庁長官、有事においてはあらゆることが起こる。補給部隊は、米軍の後方支援艦艇は戦闘海域にすぐ行けるところにいなければ後方支援部隊にならないじゃないですか。何たることだ。それで、武力行使とみなされない場合は出せるという答弁ですな。  しかし、軍事的常識がないのですか。洋上補給部隊というのは、アメリカ軍の作戦の過半数は補給部隊、補給作戦なんです。したがって、一朝有事のときも、相手方から見て、補給部隊をたたくというのが最大の戦略価値ある攻撃目標なんです。今、射程は大砲の照準でドンパチやって、最大射程二十キロとか、そんなんじゃないんでしょう。何百キロ飛んでいく。その自衛隊が補給はできるとおっしゃったから言いますけれども、最大の攻撃目標じゃないですか。  それを今、政府の解釈では、防衛庁長官、集団的自衛権を認めない、武力行使ではないという前提で出して、どうして隊員の生命を守れるのですか。現地部隊は全滅するか暴走するかですよ。シビリアンコントロールはどうして守れるのですか。長官、ちょっとお伺いしたい。余りにも議論ができない。
  72. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 御指摘の点につきましては、実は、まさにこれから政府部内で議論をしていこうという分野の問題でございます。今政府部内で議論をしようとする前提、あるいは日米の防衛協力ガイドライン、その見直し、そういった作業の大前提として、我が国の憲法、あるいはこれまでの憲法に関するこれら分野に係る問題の解釈というものを前提にしてやろうということになっているわけでございます。  したがいまして、我が国が攻撃をされていない、あるいは我が国において例えば自衛隊法の第七十六条に言うところの防衛出動が下令されていないという状況のもとで、我が自衛隊が武力行使を行う、あるいは武力行使の一体化となるようなことはできない、そういう範囲内で何ができるのかということにつきまして、今検討を進めようとしているところでございます。  なお、先ほど私の答弁の中で、恐縮でございますがちょっと明確にしておきたいのは、我が国の船舶の安全を確保するための機雷掃海につきまして、現在の自衛隊法の九十九条に基づいてこれは領海を問わず公海でも行うことができる、そういう状況であれば機雷の掃海はできるわけでございまして、それが例えば相手の領海内であれば相手国の了解をとる必要があると思いますけれども、それは今申し上げたような状況のもとでできるわけでございまして、仮に先生が御設定されたような状況のもとで、その機雷掃海の行為が今申し上げましたような武力行使と一体化となるような状況であれば、それはできないということを申し上げたわけでございます。
  73. 西村眞悟

    ○西村委員 今のお答えは、私が期待していたお答えなんですよ。  しかし、いざとなった場合は日本の安全のためにできます、間接的にアメリカ軍部隊、それからまた韓国の安全も守れますということなんですが、主目的が、アメリカ軍が血を流しているときに、そのアメリカ軍の艦船の安全を守ることを主目的にせずに、名目上は日本の艦船ですよ。日本の艦船なんかペルシャ湾にも行かなかったのですから、怖くて行きませんよ、戦闘海域の近くは。 そういうふうな二枚舌的な行動で果たして同盟国としての信頼関係は守れるのかという問題意識がある。個別的にお聞きしても実に暗たんたるもので、防衛庁長官、ちょっと私のこの件に関する感想をお聞きいただきたい。  憲法解釈上のドグマが我が国には二つあった。五十年前は統帥権の独立というドグマ、五十年からこっちは集団的自衛権の行使禁止というドグマ。この二つは正反対の作用をしておるように見えますけれども、実は、躁うつ病が正反対の症状は出るけれども一つの病気のように、我が国に巣くう一つの病気なんですよ。法律解釈なんて、百人おったら百人の解釈が可能なんですよ。弁護士はいろいろ解釈をひねくり回して、原告に勝つ有利な解釈を見つけ出すことによって法律専門家と言われるのですよ。  それで最後に、ちょっと問題点。例えば有事の際の前提で、在韓国の米軍及びその家族等の救出は隊法百条の八でできるわけですけれども、これはどうしても政府専用機とか輸送用飛行機のみでしかできない。そしてまた、安全が確認されたらできる、危険だったらできない。危険でなかったら逃げる必要はないのですよ。そういうことではだめなので、やはりこの法律は改正されねばならない、こう思うのです。  そのときにどういうふうに改正するかといえば、危険でないなら助けに行く必要はないんで、危険だから助けに行くので、そして助けるものとしては飛行機では不十分だから艦船を使う、この艦船の艦種を前みたいに限定してはならぬと思います、すべての護衛艦は回転翼を積んでいますから。それで、危険であるから行くのであって、救出機のための安全を確保する部隊の随行も認めてよろしい、こう私は思うのですが、これは将来の法律改正の問題点でちょっと指摘しておきたいのですが、防衛庁長官、この点いかがですか。
  74. 臼井日出男

    臼井国務大臣 先ほど来、委員のお話を伺ってまいりました。我が国に対する急迫不正の攻撃があった場合、我々は断固としてそれに対処する、これは当然のことでございます。  しかしながら、基盤的防衛力整備、こういう必要最小限度の自衛力しか持つことのできない我が国にあって、我が国を守っていくためには、もう一本の柱として日米安全保障条約というものを私どもは有しているわけでございます。しかし一方、私ども日本国憲法はいわゆる集団的自衛権というものを行使してはならない、こういうふうに私ども理解しているわけでございまして、これらの状況の中でもっていかにしてこの日本を守っていくか、多くの課題を有しているということは事実でございます。  したがいまして、今般総理から御下令がございました日本の危機に対していかに対処していくか、この検討の経過の中、あるいは新防衛大綱のもとでこれから見直そうとしているいわゆるガイドライン見直し過程の中、こうした中で、新たに我が国の危機の状態においていかに対処していくかという問題は真剣に研究をし、また、対処の方法というものを将来に向けて考えていかなければならない、こうした感想を持っている次第であります。
  75. 西村眞悟

    ○西村委員 この安全保障委員会委員初め防衛庁長官は、この際、頭の中をガラガラポンで先入観をなくしていただかなければ、これは議論が進みません。必要最小限の防衛力とか基盤的防衛力、さっぱりわかりませんな。これはだれが決めるのですか。中共ですか、北朝鮮ですか、ロシアですか。我が国が必要最小限だと言っても、その必要最小限で我が国がひとりよがりしていて、空母を持ってうろうろされたら、これは必要最小限でも何でもないということになる。  最後に一点だけ、あと五分という通知が来ましたので。これは案外重要なことなのです。  米軍日本国内に十数万トンの武器弾薬を保管しております。我が自衛隊は、弾薬は十万トンぐらいです。自衛隊以上の弾薬を米軍我が国内に保管している。朝鮮半島有事の際に、我が国内において米軍の弾薬、また兵員を輸送できるか。これはいかがですか。
  76. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 御質問が、冒頭の前提条件を踏まえての御質問ということであれば、その行為が武力行使の一体化とみなされるのかどうかという点についても十分検討の上、今後判断してまいりたいと考えております。
  77. 西村眞悟

    ○西村委員 時間を余しましたけれども、やめます。  ありがとうございました。
  78. 松岡滿壽男

    松岡委員長 午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二分休憩      ――――◇―――――     午後二時六分開議
  79. 松岡滿壽男

    松岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。赤松正雄君。
  80. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 午前中、同僚議員、先輩議員からの質問がありまして、若干重複する部分があるかもしれませんけれども日米共同宣言、あるいはまたそれに伴う日米防衛協力の指針、ガイドライン見直しの問題、あるいはまた先ほど本会議で衆議院として決議なされました中国核実験への問題等々、若干の質問をさせていただきます。  まず、一連の日米間における交渉、外務大臣あるいは防衛庁長官、大変に御苦労さまでございますと申し上げさせていただきます。  同時に、朝の冒頭、町村先輩が、宮澤元総理大臣のお話を通じて、日本安全保障に関する環境が大きく変わってきたというふうなことをおっしゃっておりましたけれども、私もその認識を持つわけです。  ただ、言ってみれば、先輩諸氏を前にして申しわけない言い方でありますけれども、自民党と今の社民党、いわゆる旧の社会党、この二つの大きな政党が五五年体制下にあって日本の防衛に関するさまざまな議論を展開してきた。結果的には、私なんかが学生時代、少年時代、青年時代を過ごしてきたころ、盛んに日本の社会の中で言われてきた、日本が戦争に巻き込まれるというふうな事態はなかったわけであります。  これについては、自民党の皆さんのリーダーシップがよかったのか、あるいは社会党、あるいは私が所属をしておりました公明党の野党としてのチェック、十分たるそういうチェック能力がうまく機能してそういう事態を続けることができたのかどうか、このあたりは若干議論は分かれるところかもしれませんが、私は、非核三原則だとか、あるいは日本の防衛予算GNP比一%枠といったさまざまな健全な野党の提案というものが、日本の防衛のありようというものをうまくリードをしてきたというふうに確信をしておるわけでございます。  そういった流れの中で、これからの日本安全保障というものを考えたときに、まさに新時代における責任野党といいますか、あるべき野党のチェックのありようというものを真剣に考えていかなければならないなということを自戒の念を込めて今考えているところでございます。  何だか大仰なまくら言葉になりましたけれども、そういうふうな観点に立ちまして、日米共同宣言、新防衛計画大綱の滑り出しのもと、安保再定義を踏まえて日米防衛協力の強化が図られようとしているわけでございます。  その日米共同宣言につきまして、いろいろな見方があろうかと思いますけれども、非常にイメージ的な言い方で恐縮なんですけれども、端的にわかりやすいためにイメージ的な評価を使わせていただくわけですけれども、いわばアジアの警察官としてのアメリカ、それに日本がまさにサブ警察官というのですか、副警察官というのですか、従来極めて受け身の姿勢であったのが、かなり本格的な副警察官の役割を担って、一緒に――先般、私は防衛庁長官等に御質問をさせていただきましたけれども、防衛計画の大綱に見られるいわゆる日本の限定小規模独力対処という格好から日米共同対処、そして極東という地域に対する考え方が アジア太平洋という、どう考えても少し大きく枠が広げられている。  こういった事態を踏まえて、今申し上げたような、しっかりと日米がこのアジア太平洋の区域の中で警察官、副警察官といいますか、例えがちょっと古めかしい例えでございますけれども、そういうふうなイメージでとらえられる。  つまり、日米安全保障体制というもののいわば実質的な変質というものがこの日米共同宣言を通じて見られるという指摘があり、私もそういった指摘の正しさというものを懸念として持つわけでありますけれども、まず冒頭、こういった点に関しまして、外務大臣また防衛庁長官からお考えを聞かせていただきたい、反論を聞かせていただきたい、こう思います。
  81. 池田行彦

    池田国務大臣 今回、日米共同宣言が発せられました。そして、日米安保体制というものが、今日のアジア太平洋情勢、あるいは将来に向かってもこの地域の安定と繁栄の基礎であり続ける、こういうことも確認されたわけでございます。  しかしながら、そのことをもって安保条約が実質的に改められたとか、あるいは変質したという御指摘は当たらないのではないか、こう考えております。  私どもは、従来どおりの日米安全保障条約が、国際情勢アジア太平洋状況も随分変わりましたけれども我が国の安全を守ると同時にこの地域の安定にもいい効果を持つものである、そういうことを確認したわけでございます。  そして、今委員は、アメリカがこの地域の警察官であり、日本が副警察官というような例えを言われましたけれども、我々はそんな考えではございません。あるいは仮にそうおっしゃっている意味が、従来いわゆる極東地域と言われたのをアジア太平洋地域全般の安定に資するという言い方で拡大したのじゃないか、そしてそこらの安全保障について全部責任を担っていくのじゃないか、こういうふうなとらえ方をしておられるのだとするならば、決してそうではございません。  我々は、従来どおりこの日米安保条約のもとにおいて我が国の安全を守ると同時に、我が国周辺地域、極東地域の安定を守っていくということでございますけれども、そのように日米安保体制がしっかりしているということが、アジア太平洋地域全般にとっていわば安心感をそういった諸国にもたらす、そのこともございまして、作用としてあるいは効果として、アジア太平洋地域の安定にも好ましい影響を持つ、資する、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  82. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ただいま外務大臣からもお話がございましたけれども、今回の日米共同宣言によって日米安保というものが再確認をされた。このことによって、現在の国際情勢の中、引き続き日米安保条約というものは我が国にとってもまたアジア太平洋地域にとっても極めて大切なものである、このことが再確認されまして内外に発表された、こういう意義があると思うわけでございまして、私はこのことは大変よかった、こういうふうに思っております。  しかしながら、今委員のお話にもございましたような、安保自体が変質をしつつあるというふうなとらえ方は私どもは持っておりません。  もし、強いて変化があったというふうなことを申し上げるならば、私どもが新防衛大綱というものを昨年作成をしたことによりまして、従来は一本の核であった我が国の防衛に加えて、より安定した安全保障環境構築への貢献というものが加えられてきた。アジア太平洋地域における信頼醸成というものにより積極的に日本努力をしていくのだ、こういう姿勢が打ち出されたというふうにもし見る方があるならば、それはそうした意義もあるのではないか、私はこういうふうに感じている次第であります。
  83. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 外務大臣防衛庁長官の今のお話は、実際の行政当局の方の意見としては、多分そうであろうと思います。  私なんかがこういう問題を考えるときに懸念をいたしますというか、一つの机上の考えかもしれませんけれども思いますことは、こういうことであります。例えば、日本は第二次大戦後、私なんかは一九四五年生まれでございますので、私の年齢がちょうど第二次大戦後の期間と一致するわけですけれども、今、日本はいまだ普通の国たり得ていないというふうな状況であって、それでいい、そういう現状はやむを得ないというふうに私は考えております。  つまり、戦後五十年、日本がアジアの諸国にさまざまな影響を与えた、迷惑をかけたというふうなことに端を発して、いろいろな意味において、地球上にもちろんいろいろな国があるわけですけれども日本がいわゆる普通の国としての条件、十分の資格を持っていないというふうなことについて、それを何とかしなくちゃいけないという余りに、いろいろなことを段階を経ずに急いでやることについては反対であるという立場を私は持っております。  ただ、そのことと日本が自主的な外交を展開する、かつて私なんかは公明党の機関紙にいまして、盛んに日本外務省のあり方に対して対米追従外交なる言い方をしてきましたけれども、そういった外交の自律性ということとはまた別の問題だろうと思います。  日米安保の片務性あるいは双務性というふうな議論が長い間されてきておりますけれども、私は現時点であえてきちっと確認をしておきたいことは、要するにアメリカに対してノーと言うべきときにノーと言えるかどうか。言ってほしい。仮にアメリカが国連決議に基づかない形で他国に侵略、介入を企てるというふうなことがあったとしたら、そのときは日本は明確にノー、関与してはならないと言うべきである。  こういった意味をしっかりと押さえておきたいという意味で、先ほど日米共同宣言をつらっと見るときにそういった懸念が少しばかり起こってくるというふうなことで申し上げたわけでございますけれども、いわばベトナム戦争世代の人間でございますので、今申し上げたことについて改めて外務大臣に御見解を伺いたいと思います。
  84. 池田行彦

    池田国務大臣 まず、普通の国という言葉が一体どういうことを意味するのか必ずしもわかりませんけれども世界の国それぞれにいろいろな条件があり、いろいろないわば国柄というものがあるのだと思います。我が国我が国としてのありようを国民みんなで考えながら、みずからの存立、繁栄を図っていくべきものだ、そしてまた国際社会に処していくべきものだ、こういうふうに考えている次第でございます。  それから、米国との関係でございますけれども、もとより、日米関係我が国の外交というか、先ほど申しましたような、我が国国際社会において存立していく上においても極めて大切な、二国関係で申すならば一番大切な関係である、このように私ども認識しております。しかしながら、そのことは、何でもアメリカのよしとすることはよしとする、アメリカのだめということはだめとする、そういった意味での日米関係考えているわけじゃございません。  対米追随外交ということをおっしゃいましたけれども、これまでも日本の外交は基本的に日米関係を大切にしながらも、やはり主権国家として、日本独自の利害あるいはその理想とするところに従って自主的に判断し、そして国際社会に向かって、また米国に対しても対応してきた、こういうことでございますので、御懸念は不要かと存ずる次第でございます。
  85. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 今回の日米共同宣言で、普天間基地など十一の基地の返還について取り決めがなされたわけであります。当初、沖縄を初めとして日本国全体に大きな期待があったわけでありますけれども、現在、沖縄中心にこの基地の返還という問題についてかなりの失望感が広まっているという話を私は現地沖縄の人から聞きました。  幾つかあるわけですけれども、その代表的なもの、第一に今沖縄の人々が挙げているものは、普天間返還と引きかえに建設されるヘリポート。  ヘリポートというのは、我々を含めて一般的に そんな大きいものだという意識がなかった。なかったのは、その認識が悪いと言われれば若干言い返す言葉はないわけですけれども、千五百メートルの滑走路を持つものという点で、通常の基地返還に伴うイメージとかなり逸脱している。  結局は、新たなる基地移転基地機能が普天間から若干違うところに行くだけで、実際には何ら本質的には変わらないということではないのかという指摘沖縄では強く沸き起こっているというふうなことがあります。  この普天間の基地と引きかえにヘリポートをどこにつくるのか。聞くところによりますと、嘉手納弾薬庫周辺の森林地域、弾薬庫周辺というか、その弾薬庫そのものは森林地域の中にあるのだろうと思いますけれども、そういうものを伐採してつくるという構想があるということに地元では強い反対の声が上がっている。こういう指摘をどう考えられるか、この問題についてお答えを願いたいと思います。
  86. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 ちょっと事実関係を御説明しておきますが、今先生御指摘のように、先般の普天間飛行場の返還に関しましては、五ないし七年以内に、沖縄県における他の米軍基地内にヘリポートの建設を含む所要の措置をとった上で返還されるということが日米間で合意されているところでございます。  現段階では実際にどこに移設するのか、あるいはどういう規模のヘリポートをつくるのか、こういうことについては、現在私ども、六月七日に、日米合同委員会のもとに施設特別委員会というのがございますが、その中にSACO中間報告にかかわる特別作業班というのを設けて、内容等をこれから詰めていくことにしておりますので、現時点で規模及び移設先等が決定されているというようなところではございません。
  87. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 今、施設長官はそういうふうにおっしゃいますが、さまざまな報道あるいはまた現地のいろいろな感触を通じて、実際には既にそういう約束が行われている。つまり、千五百メートルの滑走路を持ったヘリポートではないのかということが言われているということを指摘をしておきたいと思います。  実際、この基地移転というものは非常に重要なテーマでありますから、そのことについて私がとやかくいちゃもんをつけるというような気持ちはありませんけれども、何となくイメージ的に大きく基地が返還をされるということで喜びが広まっている分だけ、実際の基地返還というもののありようというのが、沖縄県民の皆さんにとって実質的にプラスになる、あるいはそれがまたさらなるマイナスを引き起こすというふうなことにならないようにぜひとも交渉を続けていただきたい、こんなふうに思います。  そのことに関連いたしまして、沖縄における在日米軍基地の集中という問題で考え方を聞いておきたいのです。  日本国内における基地移転、これは余りいい表現ではないかもしれませんが、結局は基地転がしというふうな指摘があります。  日米共同宣言の中で、繰り返しアジア太平洋の安定のため、アジア太平洋の安定のためということが考え方としてベースに深くあるわけですけれども、そういったアジア太平洋全体でアジア太平洋の平和というものを考えていくという観点からすれば、今のように韓国、日本米軍基地がかなりの程度、ほとんど一方的に集中しているという形から、むしろASEAN諸国だとか、あるいはまた太平洋地域に基地機能を拡散させていくという考え方が論理的に正しいのじゃないかと私は思うわけです。  そういったことについてどうお考えになられるのか、現在の考え方を聞かせていただきたいと思います。
  88. 池田行彦

    池田国務大臣 我が国が在日米軍に施設・区域の提供、いわゆる基地の提供をしておりますのは、日米安保条約に基づきまして我が国の安全を確保していく、また極東地域の平和と安定を確保していく、そういった目的のために必要なものとして、米軍日本に駐留し、そして我が国基地の提供をしておるわけでございます。  そして、先ほども申しましたけれどもアジア太平洋地域全般にこの日米安保体制が好ましい影響を及ぼす、これはいわば日米安保体制の効果というか作用というものでございまして、そのことが直接に、我が国も含めて、この日米安保体制のもとで、広くアジア太平洋全域の安全保障、さらに言えば、あるいは委員考えておられるかもしれません、狭い意味での防衛あるいは軍事的な役割を担っていくなんというものではないわけでございます。  したがいまして、日本における米軍基地の存在というものは、先ほど申しましたような日米安保条約の目的を達成していくために必要なものということで提供している、このようにお考えいただきたいと思います。  なお、別途アジア太平洋地域においては、それぞれの国がそれぞれ自国の安全、またその地域の安定のためにもいろいろ努力しておる、そういった場合に、米国との間でいろいろな取り決めなりなんなりがあるということは、それはそれとしてあってしかるべきことかと存ずる次第でございます。
  89. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 今外務大臣が最後におっしゃったのは、各国とアメリカとの関係の中においてそういう問題が出てきたら、それはその中で解決されることだということですね。
  90. 池田行彦

    池田国務大臣 そういうことでございます。  米国の場合には、日本との間に日米安保体制を持っておりますけれども、また世界各地において、またアジア太平洋地域におきましても、日本以外の国とも安全保障上のいろいろな関係を持っておるということも事実でございまして、そういった中で、規模の大小は別といたしまして、基地的なものをそういった関係にある米国の相手方の国から提供を受けているというケースもあるわけでございます。また、将来においてもそれはあり得ると思います。
  91. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 今、外務大臣立場としてそういうことを言うのは恐らく難しいのだろうと思いますけれども、これからアジア太平洋地域のいわゆる安全というもの、そういった雰囲気というものを醸成していく流れの中で、将来においてそういうことが提案できる雰囲気というものは大事ではないか、こういうことをぜひとも指摘しておきたいと私は思います。  日米共同宣言におきましては、ガイドライン、「日米防衛協力のための指針」の見直しということが提起をされているわけでありますけれども、まず、昭和五十三年にこの日米防衛協力の指針が決められて以来十八年がたつわけですけれども、今見直しの時期に当たって、概括的にこのガイドラインの十八年間の役割について、このガイドライン意義、あるいは今ここで見直しをする必要性の理由について、改めて的確にお答えを願いたいと思います。
  92. 臼井日出男

    臼井国務大臣 現行の「日米防衛協力のための指針」は、前大綱の考え方を踏まえまして、昭和五十三年、「侵略を未然に防止するための態勢」、「日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等」、「日本以外の極東における事態日本の安全に重要な影響を与える場合の日米間の協力」の三点にわたりまして、日米防衛協力のあり方につき研究を行うための指針を示したものでございまして、この指針に基づきまして、これまで共同作戦計画の研究等が進められてきたところでございます。  これらの研究の成果は、日米共同作戦を行う際の作戦計画のベースとなるなど、自衛隊と米軍が共同対処行動を円滑かつ効果的に実施する上で参考にし得るものとなっているわけでございます。  また、この指針によりまして、日米防衛協力のあり方についての基本原則を明らかにされ、これに基づく共同作戦計画等の具体的研究等が行われてまいりましたことは、日米安保体制の有する抑止効果をさらに高め、我が国の安全及び極東の平和と安全を一層効果的に確保することに資するものだった、こういうふうに考えております。  他方、この指針が前大綱の考え方を踏まえてつくられたものである、また、作成後、その後の日米協力関係の進展というものは大変目覚ましいものであること、また、昨年十一月に新たに新防衛大綱がつくられたこと等によりまして、この内容も新たに見直していく必要ができてきている、このように考えているわけでございまして、こうしたことも踏まえまして、今後とも、米側協議をしつつ、さまざまな角度から幅広く検討いたしてまいりたいと考えております。
  93. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 今、防衛庁長官がおっしゃった、いわばプラス、マイナスに分けると、プラス面というのは、果たしてきた役割として、アジア太平洋地域日米安保条約のもとにおける「日米防衛協力のための指針」、ガイドラインが抑止効果を持った。一方、後の部分についていま一歩明確ではなかったのです。  要するに、防衛計画の大綱が新しくなる、あるいはまたこの新しい時代における云々ということですが、これをさらに突っ込んで言いますと、先ほどおっしゃったガイドラインの一項、二項、三項、いわゆる未然防止という一項と、日本に対する武力攻撃の対処という二項と、極東における事態での日米協力という第三項でありますが、この第三項が、結局、集団的自衛権行使の問題、先ほど普通の国云々の話がありましたが、日本が集団的自衛権を権利として持っているけれども行使はしない、できないというふうに判断をしているというこの観点に立って、極東有事についての日米協力という部分が主たる見直しの対象になる、こういうふうに見てよろしいのでしょうか。
  94. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 日米防衛協力の指針は、また別にガイドラインと言っているわけでございますけれども、そのガイドラインに基づいてまた研究が行われるわけでございます。  そういう点について申し上げますと、現在のガイドライン、一項、二項、三項のうち、今御指摘になった三項について、ガイドラインとしてもちろんその記述があるわけでございますが、問題は、ガイドラインに従って研究が実はほとんどなされていないという問題があることは事実でございます。  その問題を一応別にいたしましても、実際、現在ガイドラインに記述されている一項、二項、三項につきまして、今大臣の方から御答弁がございましたような観点を踏まえ新たに見直しをしようということで、三項に重点を置いてという意味ではございません。
  95. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 今、秋山局長は、研究がなされていないという言い方をされましたけれども、ちょっと異な感じがいたします。いわゆる机上で、こういう場合はこう、ああいう場合はこうというようなことで研究は盛んになされてきたというふうに私なんかは思っておりましたが、全くそれがなされていない。それでは、このガイドライン第三項というのは名目だけで、実際にはそこに書かれていることの機能がほとんど発動されなかったということなのですね。
  96. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 一項、二項につきましては、それなりに研究をし、しかるべき報告もし、文書もまとめてまいりました。三項について、研究はもちろんしなかったわけではございませんけれども、まとまってこういったものができたという形にならなかったということでございます。
  97. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 今おっしゃったようなことになった原因というものは、集団的自衛権の問題に帰着するのだろうと思いますが、きょうは法制局第一部長秋山さんに来ていただいておりますので、いろいろな場面で何回もお聞きをしていることでありますけれども、この集団的自衛権をめぐる問題について、法制局の考え方を改めてここで確認をさせていただきたいと思います。
  98. 秋山收

    秋山(收)政府委員 集団的自衛権についてのお尋ねでございますが、国際法上、国家は、集団的自衛権、すなわち、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにかかわらず実力をもって阻止することが正当化される地位、そういうものを有しているとされておりまして、我が国が国際法上この集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上当然でございます。  しかしながら、政府は、従来から一貫しまして、憲法第九条のもとにおいて許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものでありまして、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とする集団的自衛権の行使は、これを超えるものとして憲法上許されないとの立場に立っているところでございます。
  99. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 そういう集団的自衛権に対する法制局の見解のもとで、その枠の中でこれからガイドライン見直し作業に入られるわけだと思いますけれども、そうしますと、その主たるテーマというものはどういうことになるのか。  四月九日でしたでしょうか、梶山官房長官が集団的自衛権のグレーゾーンという言い方でもって、日本のごく身近な地域で起きたことに対して、集団的自衛権のゾーンにも入る、あるいは個別的自衛権のゾーンにも入るというふうな両方にかかわる分野があるのではないか、集団的自衛権は憲法の枠を超えるけれども、集団的自衛権的というか、日米安保条約と自国の個別的自衛権が接する部分には今後判断をしていかなければならない問題があるというふうな言い方で、このグレーゾーンの部分についてそういう見解を述べておられます。  まさにこういった考え方は、このグレーゾーンにかかわる部分が新しい日米ガイドライン見直しの対象になる、そういうふうに考えていいのでしょうか。
  100. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 日米防衛協力の指針のみならず、現在、五月十三日に総理大臣から指示をされました我が国周辺における緊急事態対処についての検討を始めているところでございますが、いずれにしましても、両検討作業は憲法の範囲内あるいはこれまで政府が表明してきた憲法の解釈の範囲内でということでございますので、集団的自衛権を行わないという範囲内での検討になるわけでございます。  しかし、その範囲内で検討していく過程で、今委員の御質問にございましたような、これはどうなのか、これは集団的自衛権に係る話なのかどうかという議論は、当然最終的になされていく課題であると考えております。
  101. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 今局長がおっしゃった具体的な検討の中で、これはどうなのか、集団的自衛権にかかわる問題なのかどうかといった議論が展開していかれる中で、従来から指摘をされていることといいますか、議論の最大の大きなテーマになっているのは、武力行使と一体化であるかどうかという議論だろうと思います。  この武力行使一体化論といいますか、武力行使と一体化するということはどういう事態を指していうのか、この辺のことにつきまして、もう一度法制局秋山部長に、現時点の武力行使との一体化というのはどういう基準でもって見るのかについて確認をしておきたいと思います。
  102. 秋山收

    秋山(收)政府委員 いわゆる一体化理論についてのお尋ねでございますけれども、この一体化の理論と申しますのは、我が国がほかの国の武力行使と何らかの関連のある行動をとります場合に、我が国の行動そのものはみずから直接は武力の行使をしていないとしましても、ほかの者が行う武力の行使への関与の密接性などから、我が国として憲法第九条との関係で許されない武力の行使をしたとの法的評価を受けることがあるという考え方でございます。  例えば現に戦闘が行われているところへ武器弾薬を輸送するというような行動は、それ自体が武力の行使でないとしても、我が国として他国と一体化して武力の行使を行っているとの評価を受ける、そういうような例を挙げて従来から説明してきているところでございます。  この他国による武力の行使と一体をなす行動に該当するかどうかにつきましては、例えば戦闘活動が行われているまたは行われようとしている地 点と我が方の行動がされる場所との地理的な関係、あるいは当該我が方の行動の具体的内容、あるいは他国の武力行使の任にある者との関係の密接性、あるいは協力しようとする相手方の活動の現況、そのようなもろもろの事情を総合的に勘案いたしまして、事例に即して判断されるべきものであると考えておるところでございます。
  103. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 というふうなことが従来から法制局の見解として言われているわけですけれども、非常に古い時代の戦闘であったら、今おっしゃったようなことでもって武力行使と一体化云々というものを事例を見て検討するということが可能だったかもしれませんが、現代のさまざまな世界における紛争というものを見たときに、今の御説明のような見解ではいささか、非常に不明確で、当事者といいますか、現場においては非常に難しい問題がさまざま起こってくるのではないかというふうな気がいたします。  そういう意味では、武力行使についてはもう一歩きちっとした、武力行使一体化というものはどう見ていくのかということについて、今おっしゃったことをもう少し具体化し明確化する、そういう基準をつくる必要があるのではないか、こういう感じがいたしますが、そういった考え方につきまして、これは法制局というよりも防衛庁長官、どういうふうに考えられるのでしょうか。
  104. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ただいま法制局の方から御説明がありましたように、一体化であると見られるもの、そうでないものというのは、極めてその時々の条件で変わってくる、こういうふうに考えられるわけでございます。  したがいまして、従来のガイドラインではっきり結論を出し得なかった第三項の極東有事についてもしっかりと今後詰めていく必要がある、このように感じているわけでございまして、先般総理から日本の危機についての対処のあり方について研究を進めるようにというふうな御指示がありましたのも、いわゆるこうしたことに基づいていると思うわけでございます。  今後とも、こうしたことをしっかりと、できるだけ早く詰めていく必要がある、このように考えております。
  105. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 一つだけ具体的なケースをお聞きしておきたいと思うのです。  例えば、今いろいろなところで言われているケースの一つでありますけれども、北朝鮮の沖で米軍と北朝鮮が交戦をした場合に、墜落した戦闘機から負傷した米軍搭乗兵が脱出をする、そういったときに、この脱出した米兵を救出するあるいは治療をするということを求められた、こういうケースを想定する。  これは何だか先般のリムパックにおける非常に残念な事故と何となく似ているケースでありますが、似ているケースといいますか、実際は違うわけですけれども、形態としては似ているケースでありますけれども、こういった場合について、防衛庁としてはこういう事態を今の現行法制の中でどういうふうに、あるいは集団的自衛権の今の一体化論とはどういう角度で考えておられるのか、この点について、具体的なケースとして考え方を聞かせていただきたい。
  106. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 墜落した米軍機――失礼いたしました。墜落したかどうかわかりませんけれども、今の御設定のような状況のときに、日本、特に自衛隊ということだろうと思いますけれども、憲法上あるいは法律上どういうことが可能なのかというのは、もう少し具体的な状況のもとでございませんとなかなか判断が難しいわけでございます。  ただ、一般的に申し上げまして、自衛隊法第八十三条の災害派遣の要件に該当するような場合には、当然遭難した米兵の捜索、救難を行うことは可能でございますし、憲法上も問題がないと思うわけでございます。また、それが領海内であろうと公海であろうと、その条件が整っておれば問題ないと思うわけでございます。  さらに、負傷した兵隊を自衛隊の例えば病院等で治療をするといったような医療行為をすることにつきましては、一定の手続をとりますれば、現在の法制上も可能でございます。
  107. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 そうしますと、救出については自衛隊法八十三条の適用でできる、この問題についてはいわば集団的自衛権の問題等、一体化という問題が出てくる余地はない、こういうことなんですね。
  108. 秋山收

    秋山(收)政府委員 今設定されたような例の中で、例えば我が国においてそういう負傷をした外国兵の治療を行うというようなことは、一般的に申し上げて、概して憲法九条との関係で問題が生ずることはないと存じますが、戦闘行為によって行方不明になっている兵士を我が国が救出あるいは捜索することができるかどうかにつきましては、先ほど申しましたような一般的な基準に照らしまして、地理的な関係あるいは相手方との密接性などの点を十分に検討をしてみる必要があるのではないかと思います。  いずれにしましても、今後、具体的な事例に即した検討関係省庁において行われ、そして法制局に意見を求められるといったようなことがございましたら、当局としても、十分にお話を伺った上で、適切な意見を申し上げていきたいと考えておるところでございます。
  109. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 今のことに関連するのですが、結局、例えば六月四日付の読売新聞でしたでしょうか、外務省首脳という格好で、米軍への物品・役務の提供が有事にも行われる可能性があるという考えを示したという記事が出ておりました。この間締結されましたACSAは、平時の場合に限定されたものだから、仮に有事の事態でも、別のところで訓練をするといういわゆる平時の形をとって、そこへ日本の自衛隊が物品・役務を提供する、それを受けてアメリカの方が戦闘場面の有事のところへ持っていくというふうな際立ってややこしい、回りくどいやり方でもって、そういう有事にも可能性があるのだという考えがあるというふうな記事が出ておりました。  これも踏まえて、ガイドラインを見直すという場合、便宜供与のあり方について細かくガイドラインの中に方針を書き込むのか、あるいはまた、今のガイドラインはさまざまな政令とか国内法に細かいことはゆだねるという書き方になっておりますが、今度見直すという限りにおいては、もっとさらに突っ込んで、単に法的な部分にゆだねてしまうという書き方ではなくて、もう少し細かくガイドラインそのものに書いてしまおうという見直しなのかどうか、そういう見直しの形態について現時点考えられることがあったら示していただきたいと思います。
  110. 池田行彦

    池田国務大臣 本日成立いたしました自衛隊と米軍との間の物品・役務の協力の協定にかかわる外務省の発言ということでございましたが、その点について私から御答弁申し上げておきたいと存じます。  御指摘の発言というのは、今委員が示唆されたように、今回承認をされました協定を使って、事実上戦闘行為を行っている米軍に物品ないし役務を供給しよう、そんなことを意味しているわけでは決してございません。  基本的に申しますと、この協定というのは、平時か有事かという切り口から物事を規定しているわけではございませんで、要するに、共同訓練、PKO、人道的な国際救援活動、そういう際に物品・役務の協力をする、こういうことになっているわけでございます。  そういうことでございますので、仮に極東のどこかで有事と言われるような、有事の定義も必ずしも一定はしておりませんけれども、戦闘活動が行われるような状況事態が起き、そこに米軍が参加して戦闘行動を行っているということがあったとしても、全く違ったところで、例えば米国の本土において日米共同訓練が前からずっと行われておった、そして、そこでこの協定に基づいて物品・役務の面での協力関係が行われておるとするならば、いわゆる有事と言われるような事態が極東のどこかで起きたから従来から行われておったその協力も直ちにストップしなくちゃいけないか というと、これは極めて常識に反することではないか、こういうことを申し上げているわけでございます。  いずれにしても、そういった状態の中でまず共同訓練を行うかどうかという判断があり、そしてまた新しい協定に基づく物品・役務の協力があるか、こういうことになるわけでございます。  それからもう一点申し上げますならば、そういった有事といいましょうか、我が国あるいは極東地域で緊急の事態が起きたときに日米間でどういう協力をするか、この点についても研究を深めていこうということが今回合意されておるわけでございますので、そういった協力研究をしていく面において、またいろいろ対応していく、あるいは対処していくということを考えるということはあり得ると思います。
  111. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 ガイドライン見直しに当たっての例えば記述の仕方といったような質問、その性格についての御質問がございました。  まず第一点でございますけれども、確かに現在のガイドラインは、そのガイドラインの中に書いてあるわけではございませんけれども立法予算あるいは行政上の措置両国に義務づけないということが前提になっておりました。考えてみれば当然のことではございまして、立法予算、行政上の措置はそれぞれの国の判断で行うということでございましたが、それがむしろ措置をとらないというふうに理解され、あるいはそういう経緯をとってきたといったような感じもないわけではなかったわけでございます。  しかし他方で、今回のガイドライン見直しに当たりましてこれを義務づけるということは、これは大変大きな条件になるわけでございまして、ガイドライン見直しそのものも非常に大きな制約を受けると思います。そういうようなことはないと思いますけれどもガイドラインの性格なり、あるいはこれまで言われてきたような前提条件については一度考えてみたいというふうに思っております。  他方で、ガイドラインの記述の仕方でございますけれども、御案内のとおり、現在、一項、二項につきまして、侵略を未然に防止するための態勢、あるいは日本に対する武力攻撃がされた場合の対処行動等について書いてございますが、これは一応基本的な考え方が書いてあるわけでございまして、具体的な対応ぶりまで書いているわけではございません。  ただ、御指摘があったかと思いますけれども、第三項の記述は非常に簡単に書いてあるわけでございまして、この一項、二項、三項、現在の分類でいきますと、それぞれ書き方が違っておりますけれども、どの程度書くのか、その辺につきましては、これから日米間あるいは政府部内で十分検討してまいりたいと考えております。
  112. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 先ほども少し申し上げましたが、もう時間がなくなりましたので端的にお答えいただきたいのですが、リムパックの事故、非常に残念なことでありますけれども、本当に手短に述べていただきたいのですが、今回のリムパックの事故の全容、原因現時点でわかっていることを報告していただきたいというのが一点。  それから、リムパックは日本防衛のためということで、日米の実際的な軍事協力というものの実戦場面の演習なんでしょうけれども、このリムパックの今日までの経過、この辺につきまして、かいつまんで報告をしてください。
  113. 粟威之

    ○粟政府委員 リムパックの実績の方から申し上げます。  リムパックは、米海軍第三艦隊が計画する総合的な訓練でございまして、外国艦艇の参加を得て、主として中部太平洋で昭和四十六年から行っているものでございます。  海上自衛隊は、昭和五十五年のリムパック(80)から今回のリムパック(96)まで、毎回、合計九回参加しております。参加規模は、当初は護衛艦二隻、航空機八機というものでございましたけれども昭和六十三年のリムパック(88)以降は、護衛艦八隻、潜水艦一隻、補給艦一隻、対潜哨戒機八機ということで参加しております。今回もほぼ同じ規模でございます。  これは、九回のリムパックの参加によりまして、米海軍の最新の戦闘技術を習得することができ、海上自衛隊の戦技・技量の向上を図る上で大変有益であるとともに、他の日米共同訓練と同様に、我が国有事において日米共同対処行動を円滑に実施するために必要不可欠であって、日米安保体制の信頼性の向上に資することができた、こういうふうに評価しておるところでございます。  それから、事故の概要でございますが、現在までに判明しているのは、六月四日、日本時間で十四時十二分に、リムパック(96)に参加している護衛艦「ゆうぎり」が、近接する米海軍攻撃機A6、これはインディペンデンスの搭載機でございますが、標的を曳航して、米海軍の駆逐艦ファイフ、それから海上自衛隊の「ゆうぎり」と「ひえい」の三隻で標的に対してCIWSによる対空射撃訓練を実施していたところ、「ゆうぎり」が、まず実射を伴わない射撃手順の訓練を二回やりまして、それに引き続き最初の実射時にA6型機を撃墜した、こういうことでございます。  このときのA6型機は、「ゆうぎり」の左舷側、船の左側でございますが、左舷側から接近し、左舷装備のCIWSから発射された弾が機に命中し、「ゆうぎり」の右、右舷側に墜落した、こういうことでございます。  さらに、事故調査につきましては、事故直後より現地において米国と協力して事故調査を開始しておりまして、さらに、六月六日には、海上幕僚監部内に監察官を長とする事故調査委員会を設置して、担当官四名を現地派遣しまして、昨日十三日でございますが、「ゆうぎり」に乗艦して、事故時の現場状況の正確な確認及び事故原因分析調査に当たっているところでございます。  現時点では調査に着手したばかりのところでございますので、事故原因についてはお答えできる段階にはありませんが、いずれにせよ、事故重大性にかんがみて、できるだけ速やかに事故原因を究明し公表したい、こういうふうに考えているところでございます。
  114. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 昨年でしたか、同じ自衛隊機同士のこういった事故があったと記憶しております。二度と再びということは、こういう事故が起こるたびに出る言葉でございますけれども、しっかりと原因を究明した上で、こういう事故が起こらないようにしていただきたい、こう思います。  最後に、先ほど衆議院本会議で、衆議院としまして、中国核実験に対する決議案が全会一致で成立をしたわけであります。私は、あのとき、橋本総理大臣のお言葉、一層の努力を払うという余り抑揚のない、際立って平板な言い方でおっしゃったというのが非常に印象に残っているのですけれども、ぜひ外務大臣にお聞きしたいのは、その中国に対する円借款の停止という問題で、停止しないということを早々と表明された、こういう印象を受けるわけです。もう少し何かの方策があってよかったのではないか、いかにもすんなりとという感じが非常に強くいたしますが、この点。  それから、中国をどう見るかという問題は、二十一世紀に向けてこれからの非常に大事な問題でありますけれども、近く出される防衛白書において、一部報道におきましては、中国に対する見方、中国に対する認識というものについて、防衛庁が従来の考え方を変えたかのごとき報道があります。こういった点について最後に考えを聞かせていただきたい、こういうふうに思います。
  115. 池田行彦

    池田国務大臣 従来から我が国は、中国であれ、あるいはいかなる国であれ、核実験を行うことには反対という態度を持してまいりました。そして、中国に対しましても、繰り返し核実験をやめるように申し入れてきたところでございますが、先般八日に、そういった我が国あるいは国際社会反対にもかかわらず、また中国核実験が行われたところでございます。  その際、私は直ちに在京の中国の臨時代理大使を招致いたしまして、我が国として今回の核実験は極めて遺憾であるということを申し入れると同 時に、今後一切核実験を行わないよう、九月にもう一回だけ行うと言っておりますけれども、それも受け入れることはできないということを申し入れました。それからさらに、現在、CTBT、包括的核実験禁止条約の締結に向かっての作業が進められているところでございますが、中国としてもそれに全力を尽くすようにと申しました。それから、中国核実験をやめるという決定をし、それを明らかにしない以上、現在、日本政府がとっています無償援助の原則的停止といった措置は継続するということを申しました。それからさらに、経済協力を含め日中間協力というのは、我が国国民理解と支持を得て進めなくてはならないものであるから、そのような我が国国民理解を危うくするような、あるいは支持を危うくするような行動というものは、中国としても差し控えるのは当然である、したがって、そういった観点からも核実験を直ちに停止するように強く申し入れたところでございます。  一方、円借款につきましては、これは中国が進めておりますいわゆる改革・開放路線を支援する大きな日中間協力の柱である、このように考えております。そして、そのことは、日中両国関係を促進、増進するのみではなくて、広くアジア太平洋全域の安定と繁栄にも資するものである、こういうふうに考えているところでございまして、そういったことで申しておるわけでございます。  日本政府として円借款をやりますよという方針を早々と明らかにしたという委員の御指摘でございましたけれども、私が中国側に申し入れましたのは、先ほど申し上げたようなことでございます。あるいは総理が記者団のいわば追っかけ質問に対してお答えになったことが、そういうふうな角度から報道されたという点をとらえておられるのかもしれませんけれども総理のその御発言というのは、先ほど申しました円借についての基本的な見方、そして、中国アジア太平洋地域の建設的なパートナーとして引き入れていくということが、我が国にとってもあるいは国際社会にとっても非常に大切である、そういう認識を踏まえての御発言であったと私は思いますので、特にそのことを解釈して云々ということではございません。我が国の解釈として云々という報道が、そのまま総理の真意あるいは政府のもう既に明らかになった方針とは言い切れない点があると思います。  先ほど申しましたように、今、核実験は再びやるなということを日本は申し入れているわけでございますし、そして、経済協力日本国民理解と支持が必要なんだ、そのためにも核実験をやめろと言っているんだということを御理解いただきたいと思います。
  116. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 防衛白書についての御質問がございましたが、白書自体については現在作業中でございますので、その中身についての御説明は御容赦いただきたいと思います。  現在、中国の軍事力について防衛庁としてどういう認識をしているのかということについて、簡単に御報告させていただきたいと思います。  中国は、軍事力につきまして量から質への転換を図っているのではないか、そして、近年国防費を、これは名目でございますけれども、かなりの勢いで増額していると同時に、軍事力の近代化を進めているというふうに認識しております。  そして、この軍事力の近代化は、同国が経済建設を当面の最重要課題としていることなどから、今後も漸進的に進むものと見ておりますが、核戦力や海空軍力の近代化の推進、海洋における活動範囲の拡大、台湾周辺での軍事演習による台湾海峡の緊張の高まりなど、その動向には注目していく必要があると考えております。  なお、もし中国を脅威と見ているのかというような御質問でございますれば、御案内のように、その脅威は侵略し得る能力と侵略しようとする意図が結びついて顕在化するものでございますが、意図というものは変化するものでございまして、我が国の防衛を考える場合には、我が国周辺における軍事能力について配慮する必要があると考えているところでございます。  このような考え方のもとに、従来、防衛庁といたしては、侵略し得る軍事能力に注目し、その時々の国際軍事情勢などをも含め総合的に判断して潜在的脅威という表現を実は使用してきたところでございますけれども中国につきまして、中国軍の現状あるいは現下の国際情勢にかんがみれば、これを潜在的脅威であるというふうには考えるわけにはいかない、こう思っております。
  117. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 終わります。
  118. 松岡滿壽男

  119. 東中光雄

    東中委員 先ほど、リムパックのA6撃墜事故について教育訓練局長答弁がありました。それによりますと、結局、米海軍攻撃機A6型機が標的を曳航して、護衛艦「ひえい」などが標的に対してCIWSを用いて対空射撃訓練を実施しておった。そして、実射に入った段階で、左舷側から接近してきたA6機を「ゆうぎり」の左舷装備のCIWSによって撃墜をした。そして、A6は右舷側へ落ちて沈没した、こういう筋道です。  つづめて言えば、標的に対する射撃訓練をやっておって、その標的ではなく、接近してきた標的の曳航機をとらえて撃墜してしまった、こういう事故なのです。  こんなものは常識では普通考えられません。自衛隊の実射訓練はいろいろあるでしょうけれども、あるいはどこかの軍隊でもいろいろ訓練があるでしょうが、そういう式の、標的をねらっておって、そして標的の曳航機を撃墜してしまった、こんな事故の例が今までありますか。ちょっとお伺いしたいと思います。
  120. 粟威之

    ○粟政府委員 海上自衛隊においてはこれまでそういう事故はございません。  外国の例はよくわかりませんが、ただ、私どもが承知している範囲で申し上げますと、かつて台湾海軍で、CIWS実射中に標的を曳航する航空機を誤射して撃墜した事例があるというふうに聞いております。
  121. 東中光雄

    東中委員 だから、これはこの間の理事会で状況をちょっとお伺いしました。曳航機が飛んできたのは、高度は七百フィートと言いました。だから二百メーター余りですよ。速度は三百四十ノットという話だった。秒速百七十メーター余りです。そして、標的の曳航距離は一万八千フィートというのでしょう。だから五・五キロですよ。  そうすると、曳航機が左舷から近づいて、左舷におって、左舷で撃たれて右舷へ落ちたというのですから、A6はほとんど近くに来ておったということです、約二百メーターぐらいの高度で。二百メーターの高度といったら、小型機が着陸時に飛行場を回るときの高度ですよ。だから、すごいそばにおるのです。  そういう飛行機が曳航しておる標的は五・五キロ先だというのでしょう。そして、それは直径十八センチ、長さ二メーターというのでしょう。とてもじゃないが見えないですよ。それが接近してきたからといって、手動であろうが自動であろうが日射であろうが何であろうが、二十ミリの機関銃で撃墜するというのは、曳航機をねらって曳航機を落としたということですよ。標的と全然関係ないのですよ。これは漫画です。どうしてこういうことになるのであろう。  そういうことについての調査を今まで何もしていないでしょう。ついこの間の海幕長の新聞発表を見ると、合同調査が始まるのだから余計なことを言ったら予断を抱くことになるから何も発表できないと、これは本当に異常だと思います。  だから、その場面を想定してみますと、それはおかしなことです。どこがどうで、自動であったとかなんとかということよりも、そういう極めて異常な状態であるということの認識がありますか。極めて重大であるなんて抽象的に言いますけれども、これは本当に異常な事故が起こっているのだということについて、どうですか。
  122. 粟威之

    ○粟政府委員 リムパックの事故の件につきましては、事故直後より現地でアメリカと協力して事故調査を開始しております。また、海上幕僚監部にも監察官を長とする事故調査委員会を設置し て、現にその四名をアメリカにも派遣して、今、「ゆうぎり」に乗艦して事故時の現場状況の正確な確認及び事故原因分析調査に当たらせているところでございます。  そのため、事故原因についてお答えできる段階にはないのですが、いずれにしても、事故重大性にかんがみて、できるだけ速やかに事故原因を究明して公表したいと考えております。  なお、調査の途上におきまして、事故の全体像を示し得ない段階で断片的な事実を取り上げて明らかにすることや、さらに推測をいろいろ加えることは、事故原因に対して予断や誤解を与え、ひいては冷静かつ客観的な事故調査に好ましくない影響を与えるというふうに考えております。したがって、事故原因が究明された段階で、関連する事実関係についても公表したいと考えております。
  123. 東中光雄

    東中委員 そんな、何を言っているのですか。それならばこう聞きましょう。  私が理事会で聞いたということで、今スピードだとか距離だとか高度だとかを申し上げました。それで間違っていることがあるかどうか、それをまず確認してほしい。  それからもう一つ申し上げますが、CIWSの二十ミリ機関銃の射程は千五百ないし二千というふうに理事会で説明があったが、これも間違いないかどうか。  そうだとすれば、私が今言ったようなことでいえば、標的は射程距離の三倍ぐらい向こうにあるのだし、標的に対する射撃訓練でしたら、全然対象がない状態である。それで、目の前に来ている曳航機を、CIWSというような一分間に三千発一秒間に五十発も出てくるような機関銃で撃ち落、とす、こういうことが起こっているのですから、それが調査しなければわからぬというふうなことで済むのか。これから調査するとか途中で予断を与えるとか、そんな問題じゃないんですよ。この事態をどう思うんだ。非常に異常だということを思わぬか思うかということについて聞いているんです、データ関係とそれについての判断。
  124. 粟威之

    ○粟政府委員 先日申し上げたデータについては正しいと思っております。さらに、事故につきましては、過去にも海上自衛隊として例のないような事件だ、こういうふうに思っております。  それから、事故調査につきましては鋭意やっておるところでございまして、今は、全体像がわからない段階でいろいろと推測することは、先ほど申し上げたような都合であったと思います。
  125. 東中光雄

    東中委員 抽象的ですが、とにかくかつてないような異常な状態だ。  もう一つ聞きましょう。十一月二十二日の能登半島沖のF⑮J機のミサイル事件です。  これも要するに、一番機のF⑮Jが二番機のF⑮Jに対してレーダーミサイルによる攻撃訓練を二回やった。そして、赤外線ミサイルによる攻撃訓練もやった。その直後に本物のミサイル、AIM9Lミサイルというものですか、これが発射されて撃墜されているんですよ。二機で相互に訓練をやっておって、それで、ミサイルなんか撃つつもりはないのに、レーダーや赤外線でやっているつもりなのに、本物が出ていった。それで撃墜した。これも極めて異常です。どういうことなんだろうと思います。  それで、それに対する調査報告、よくわからぬ調査結果ですけれども、私はこれを聞いたら、これがまたますますわけがわからぬですね。   ミサイルが発射された原因は、一番機のミサイル発射系統が導通状態になっており、それを示す表示が出ていたにもかかわらず、 だから出ていたことを認めているんですね。  操縦者が操縦操作に集中し表示の意味するところまで気付かず、通常訓練と同様に発射操作を実施したことにある。 と書いてある。  やったらミサイルが出ていくぞという表示が出ておった、それを見ておった、しかしそれについてその意味を気づかずに撃ってしまった、こんなことが書いてあるんですよ。これは私が防衛庁からいただいたものです。  しかも、何でそういうことになったのかということについて言えば、機体側に何か事故があったのかということについて調べたら、  ミサイル発射系統が一時的に導通状態になった要因については、特別調査の結果から異物の混入や回路の絶縁不良等の異常は認められず、機体側には事故原因に結び付く要因はない と書いてあるんです、そういうふうに製造会社は述べていると。  一番機操縦者はマスター・アーム・スイッチを操作していないと口述していると言っているんですね。マスターアームスイッチを操作しなかったら、そんなものは出ていかないですね。  しかし、本人は  マスター・アーム・スイッチを操作していないと口述していること等から、これを特定することはできなかった。 要するに、わからなかったということです。わからなかったけれども、起こらないような極めて異常な事態が起こって、F⑮Jが墜落しているんですよ。  こんなことがこの間出てきたんです、半年近くかかって。一体どういうことだと思いますか。
  126. 粟威之

    ○粟政府委員 事故原因につきましては、マスターアームのところは、先ほど先生がおっしゃったとおり、パイロットの方の証言もありまして特定できませんでしたが、今回の事故は、少なくともパイロットが、ヘッドアップディスプレーと申しますか、表示装置に電気が通っているぞという表示が出たにもかかわらず、それに気づかずに通常の訓練と同じようにピックルボタンを押した、こういうところは特定されているところでございまして、今回の原因は、パイロットのそういうところが原因でございます。
  127. 東中光雄

    東中委員 だから、それがちょっと常識では考えられませんね。私も飛行機に乗っておった関係があるのでその感じはわかるのですが。  表示が出ているのを見れば、発射すればえらいことになるというのはだれだって、射撃訓練をやっているのですから、ミサイルを積んでおることは知っているのですから、これは常識では考えられませんね。そういうものだと思いますと言って、しかしマスターアームスイッチを入れたと言ってないので、だから入っているとは言えないと。だから、何やわからぬ。  もう一つついでに申し上げておきますが、八八年の「なだしお」事件です。「なだしお」のとき、私は内閣委員会安保特別委員会の二回細かく質問しましたけれども、今と同じです。原因についてはなかなか言わない。  ところが、あれは明らかにおかしい。「なだしお」を山下艦長が操艦したことが刑事事件として起訴されて、海上自衛隊の潜水艦の行動は公の行動ですね、それが業務上過失往来妨害罪、業務上過失致死傷罪。あれは三十人亡くなりましたね。これなんか禁錮二年六月でしょう、執行猶予がついたにしても。これも異常ですよ。あの浦賀水道の集中したところで起こしている。あれは訓練じゃなくて実際の航行なんだから。  そういう状態というのは、軍隊として言うならば、あるいは普通の船の操縦という点からいっても、本当に異常ですね。それが、あの「なだしお」の論告なり判決なりを見たら、艦長の証言、供述は虚偽の供述をしているということを論告で言っていますよ、項目をつくって。判決は、その内容は措信せずということで、面かじいっぱいと命令したとかなんとかということ自体は正しくないと判決で書いています。そんなことで、これはちょっと考えられませんね。ちゃんと責任を持ってやったんだったら、ごまかす問題じゃないです。  そういう経過があるので、これ全体を見まして事故が異常である、しかも、今まで経験したことのないことでございますということだけで済むような問題じゃないということを私は指摘をして、もう時間がなくなりますので次へ進めます。  「なだしお」について私が何回か質問したとき、 記録が変わったということで随分やりましたけれども、なかなか答えがなかった。ところが、判決になって四年たって明らかになってくる、こういう状態であります。それだけ指摘をしておいて、時間があと十分しかありませんので、次の問題、ガイドライン関係について聞きたいのです。  日米安保共同宣言で、日米防衛協力のためのガイドライン見直しを開始することで意見が一致した。   両首脳は、日本周辺地域において発生しうる事態日本の平和と安全に重要な影響を与える場合における日米間の協力に関する研究をはじめ、日米間の政策調整を促進する必要性につき意見が一致した。 こうなっているのですが、ガイドラインのどこをどう変えるというのか。見直すという場合、現にある七八年のガイドラインをまるっきり全然別のものにするのか。その中のどこをどう見直すのかということについて、方向があるのかないのか、これは外務大臣にお聞きしたい。
  128. 折田正樹

    折田政府委員 ガイドライン見直しについて両首脳間で意見が一致したというのはそのとおりでございますが、今、政府部内において真剣に検討を行っているところでございまして、見直しの方向性、内容につきましては、まだ何ら結論が出ているわけではございません。  また、内閣官房中心として行われておりますいわゆる緊急事態対策検討進捗も踏まえつつ、検討していく必要があろうかと思います。
  129. 東中光雄

    東中委員 そうすると、見直すと言っておるけれども、何を見直すのかもわからぬで見直すということについて両首脳が意見を一致させた、こういうことなのですか。外務大臣、そこはどうなのですか。
  130. 池田行彦

    池田国務大臣 これは本日の本委員会におきましても、他の委員の御質問に対して防衛庁からの答弁もございましたけれども、これまでもガイドラインがございましたけれども、三つの分類の中で一つの分類、第三につきましては、いろいろ研究を進めてこなかったわけではないけれども、これをまとめるということをやっていない。その部分については、やはりきちんと取りまとめてということは必要であろうということがございます。  それから、第一分類、第二分類につきましても、これまでございましたけれども、その後のいろいろな諸情勢変化等々を踏まえるならば、これが現時点において従来のままでいいのかどうなのか、改めるべき点はないか、補うべき点はないか等々についても見直さなくてはいけない、そういう認識がございまして、そういうことを踏まえてガイドラインについて見直し作業を進めるということを合意したわけでございます。  なお、これは今北米局長から御答弁を申し上げましたけれども、同時に、いろいろな緊急事態に対して日米間でどういうふうに協力していくか、これについても研究をしよう、こういうことも合意されております。それもガイドライン見直しとかかわってくる部分があると思うわけでございます。  首脳間でございますから、個別にこの事項を、この点をということは申しませんけれども、今申しましたような認識のもとに合意をした、こういうことでございます。
  131. 東中光雄

    東中委員 共同宣言でこういう言葉があるのですよ。「日本周辺地域において発生しうる事態日本の平和と安全に重要な影響を与える場合における日米間の協力に関する研究」とあるのですね。ところが、七八年のガイドラインの三項は「日本以外の極東における事態日本の安全に重要な影響を与える場合の日米間の協力」というのですね。それでその中身は、米軍に対し行う便宜供与のあり方についての研究とか、米軍に対して行う便宜供与のあり方について条約に基づいてやると書いてあるのです。  それは同じことを言っているのじゃないかと思うのですが、「日本周辺地域において発生しうる事態」、日本周辺地域と言っているが、こっちは日本以外の極東地域と言っているのです。あと、「日本の平和と安全に重要な影響を与える場合」、ガイドラインの方は「日本の安全に重要な影響を与える場合」。ただ、平和という言葉がないだけの話です。これは概念が違うのですか、あるいは言葉は違うけれども概念は一緒なのですか。
  132. 池田行彦

    池田国務大臣 共同宣言で言っております日本周辺地域で起こる緊急事態我が国に重要な影響を与えるような事態に対してどういうふうな協力考えるかという点は、ガイドライン日米協力よりは幅の広い概念であろうと思います。もとより、そういった中にガイドラインにかかわってくるところがあるのは事実でございます。  ガイドラインの方は、あくまで日米安全保障条約に基づく米軍と自衛隊との共同行動の指針ということでございます。
  133. 東中光雄

    東中委員 日米安保条約に基づかない関係ですか、共同宣言で言っているのは。
  134. 池田行彦

    池田国務大臣 ガイドラインの方は、条約に基づいて米軍、自衛隊が行う共同行動、当然のことでございますね。  それで、共同宣言の方にございますのは、我が国の周辺地域で起こり得る緊急事態に対していろいろ日米協力していくということ。そういった協力の中には、もとより米軍と自衛隊の間での協力というものにかかわってくるものもございますけれども、そうでないものもあると思います。例えば多量の難民が発生したというのもそうかもしれませんし、それは安保条約上の協力もございますけれども、それ以外の、広く日米関係全体の中で協力していくという行動もあると思います。
  135. 東中光雄

    東中委員 どうもよくわからないのですね。  「日本以外の極東における事態日本の安全に重要な影響を与える場合の日米間の協力」の中で、ガイドラインによりますと、日本米軍に対して行う便宜供与のあり方について研究をしていくというのですね。これがガイドラインの表現なんですよ。それではだめだから見直すということなのか。それはそのとおりなんだが、もっと別に違うことを共同宣言で言っておるんだというのだったら、ガイドライン見直しということの意味が、ガイドライン三項で「日本以外の極東における事態日本の安全に重要な影響を与える場合」の米軍に対する日本の便宜供与をどこまでできるかできないかということの研究をやると書いてあるのですが、それではだめなんだということで見直すということになっているのか。それはそれでいいんだということならば見直しは出てこないはずで、そこのところはどうなんだということを聞いているのですよ。
  136. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 ガイドライン見直しにつきましては、先ほど防衛庁長官の方からも御説明がございましたけれども、とにかく現在のガイドラインは旧防衛大綱のもとでつくられた。その後、日米の防衛協力の進展も非常にあった。そして、現在、新防衛大綱では日本の防衛力の役割についても新しい視点で出している。そのほか、外務大臣からもお話がございましたように、いろいろと我が国を取り巻く情勢変化もある。  そういうことを総合的に勘案して、例えば現在のガイドラインでいえば一項、二項、三項になりますが、それらを全部ひっくるめて見直しをしてみようということでございまして、今委員御質問のように、現在の三項の極東有事における便宜供与が問題だから見直すというわけではございません。
  137. 東中光雄

    東中委員 いや、それが問題だからと何も私は言っていないのです。  ガイドラインには一項、二項、三項があるのだから、一項については申すまでもなしに「侵略を未然に防止するための態勢」ということで、なぜこういう体系になったのか、それはいろいろ経過があるのでしょうけれども。それから、二項は「日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等」ということになって、武力攻撃を受けた場合どうするのか、こうなっていますね。共同作戦計画とかいろいろ出ています。  それで、三項はいわゆる極東有事でしょう。その表現が、極東有事といった段階から、今度は日 本周辺地域において発生し得る云々という言葉に、大綱が変わったということは承知していますよ。しかし、その内容は、安保条約上はそういう言葉は今までなかったけれどもガイドラインでは「日本以外の極東における事態日本の安全に重要な影響を与える場合の日米間の協力」というのだから、日本以外の極東地域。それが今度は、日本周辺地域というふうに表現が変わった。それは概念が違うのだという答弁がありました。  しかし、それは日本の平和と安全に重要な影響を与えるという地域で、その状況によって変わるのだという説明を今まで総理大臣もしていたし、されているわけでしょう。  ところが、「日本周辺地域において発生しうる事態日本の平和と安全に重要な影響を与える場合」という言葉は、ガイドラインの三項では「日本の安全に重要な影響を与える場合」と言っている。違うのは、「平和と安全」の「平和」がないだけで、概念的には一緒じゃないのか。極東地域というのは「日本以外の極東」というふうに言っているけれども、今度は「日本周辺地域」と言っている、そこの違いだけなのですね。  だから、そのことは、その範囲がどうなるかということについて今議論しているのじゃなくて、同じ場合を想定して、それに対する日米協力というふうに書いてあるけれども、中身を見れば「米軍に対し行う便宜供与のあり方について、あらかじめ相互に研究を行う。」と同じことなのですよ。  しかも、このガイドラインを変えるというから、このガイドラインを変えるということになれば、便宜供与について研究を行うというのじゃ足らぬ、もっと何かせいということがある、これじゃだめなんだということを言っているようにとれるので、それならどこをさらに追加するんだということを聞いているわけです。普通の日本語で見れば同じですよ。
  138. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 現在のガイドラインの三項には確かに「極東」という言葉が使われておりまして、その極東の意味するところは、これまでも何度か答弁しておりますように、安保条約第六条に言うところの「極東」の考え方と同じというふうに御理解いただいて結構だと思います。  それから他方で、新防衛大綱にも同じような表現が出てまいりますが、我が国周辺日本周辺というような表現が出てまいりまして、これはまさに安保条約第六条に言う「極東」というのと全く同じというわけではございません。  したがいまして、今度ガイドライン見直しに当たりまして、もちろんその三項だけということではないことは先ほど申し上げましたけれども、  一項、二項、三項それぞれ見直しするに当たりまして、その極東地域という言葉を使うべきなのかどうかという点については、まさに日米の防衛協力の指針として、今の時点で、新防衛大綱あるいは新しい情勢のもとで、そして日米間で議論した結果、どういう形でガイドラインをつくったらいいのかというのは、まさにこれから議論をしていく、そういう状況でございます。
  139. 東中光雄

    東中委員 時間が来ましたからやめますけれども、極東ということと日本周辺地域というのは、概念が一緒だと私は言っているわけじゃないのです。あなた方が違うと言うなら、それは違うでいいです。  どう違うのかと言ったら、日本の安全に対して重要な影響を及ぼすという関係で一緒になっている、安保条約では「極東」という言葉がある。結局、このガイドラインというのは、安保条約に基づくガイドラインでしょう、見直すとかと言っているのは。それを、安保条約にない日本周辺地域というわけのわからぬことを言い出したものに変える。これは、漠然とすることによって範囲をアジア太平洋地域というふうに広げていくということのあらわれだと我々としては言わざるを得ないです。だって、説明がつかない。  そういうことを指摘しておいて、終わります。
  140. 松岡滿壽男

    松岡委員長 以上で本日の質疑は終了いたしました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十五分散会