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1996-04-11 第136回国会 衆議院 安全保障委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年四月十一日(木曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 吹田  愰君    理事 瓦   力君 理事 浜田 靖一君    理事 町村 信孝君 理事 佐藤 茂樹君    理事 西村 眞悟君 理事 平田 米男君    理事 田口 健二君 理事 前原 誠司君       麻生 太郎君    熊代 昭彦君       中谷  元君    中山 利生君       平泉  渉君    宮下 創平君       森  喜朗君    渡瀬 憲明君       赤松 正雄君    石井  一君       大石 正光君    河合 正智君       月原 茂皓君    渡辺浩一郎君       大出  俊君    早川  勝君       東中 光雄君    山花 貞夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣 臼井日出男君  出席政府委員         防衛庁参事官  小池 寛治君         防衛庁長官官房         長       江間 清二君         防衛庁防衛局長 秋山 昌廣君         防衛庁教育訓練         局長      粟  威之君  委員外出席者         外務省北米局日         米安全保障条約         課長      梅本 和義君         安全保障委員会         調査室長    下尾 晃正君     ――――――――――――― 四月九日  防衛庁設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第三〇号) 同月五日  AWACS導入撤回浜松基地配備反対に関す  る請願(小森龍邦紹介)(第一四五九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第三〇号)      ――――◇―――――
  2. 吹田愰

    吹田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出防衛庁設置法の一部を改正する法律案議題といたします。  趣旨説明を求めます。臼井防衛庁長官。     ―――――――――――――  防衛庁設置法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  3. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ただいま議題となりました防衛庁設置法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明いたします。  第一に、情報本部の新設についてでございます。  防衛庁といたしましては、冷戦後の国際情勢に的確に対応するためには、高度の情報収集分析等を総合的に実施し得る体制等充実が必要不可欠であると考えております。他方、現在、防衛庁においては、内部部局、各幕僚監部、統合幕僚会議等に置かれているそれぞれの情報組織が独自の情報業務を行っているため、防衛庁全体としての情報処理・分析能力が不十分であり、かつ、各組織が小規模であることから、能力の高い情報専門家の確保も困難な状況にあります。  このため、統合幕僚会議に、防衛に関する情報収集及び調査に係る統合幕僚会議事務等をつかさどる組織として新たに情報本部設置することとし、情報本部所掌事務及び情報本部長には自衛官をもって充てることを定めるとともに、情報本部内部組織については総理府令で定めることとしております。  あわせて、陸上自衛隊海上自衛隊及び航空自衛隊から統合幕僚会議に所要の自衛官を移しかえること等を目的として、自衛官定数を改めることとしております。  第二に、防衛大学校所掌事務の改正についてでございます。  自衛隊任務多様化国際化対応するためには、幹部自衛官等に対し自衛隊任務遂行に資するための高度の研究能力等を修得させることが極めて重要であります。このため、防衛大学校に、新たに大学院修士課程に相当する総合安全保障研究科設置し得るよう、現行の任務のほか、防衛大学校教育訓練を修了した者その他長官の定める者に対し、自衛隊任務遂行に必要な社会科学に関する高度の理論及び応用についての知識並びにこれらに関する研究能力を修得させるための教育訓練を行うことを新たに所掌事務として加えることとしております。  以上が、防衛庁設置法の一部を改正する法律案提案理由及びその内容概要でございます。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  4. 吹田愰

    吹田委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ―――――――――――――
  5. 吹田愰

    吹田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中谷元君。
  6. 中谷元

    中谷委員 自由民主党の中谷元でございます。  本日は、先ほど御提案がありました防衛庁設置法の一部を改正する案でございますが、この骨子は、自衛官定数の変更、そして二番目は、防衛大学校に今度は修士課程に相当する総合安全保障研究科ができるということでございます。  実は、私は防衛大学校の出身でございまして、母校にやっと総合安全保障研究科ができるということで非常にうれしく思っております。  やはり国として、国の安全保障を国が研究する機関を設けるということは当たり前のことでありまして、戦後、日本社会においては、この安全保障研究、また安全保障に関する考察が著しく欠如していた点でございまして、このたびこういう学課ができるということは、国にとりましてもいいことでありますので、ぜひ将来、制服自衛官のみならず、幅広く民間人等もここに入って、ともに研究できるようなことにしていただきたいと思います。  それからもう一つは、三番目に、情報本部を新設するということでございます。これは今までもない方がおかしかったわけでございまして、それぞれ外務省防衛庁等情報が二元化されていた面もありますし、また防衛庁の中でも、陸海空、統幕、また内局と、それぞれ情報が分散してかなりむだがあったように思いますけれども、今回、情報本部設置によりまして、本格的に世界軍事情報をここに集約して研究するということは非常に結構なことだと思います。  特に湾岸戦争、また中国天安門事件、またソ連邦の崩壊のときは、本当に世界を震憾させる大事件でありましたけれども日本対応は、CNNのテレビを見ながら対応したというのが現状でございまして、日本のマスコミも、情報源としては外務省防衛庁でございますけれども、頼りの外務省防衛庁へ行ってもなかなか情報がつかめないということでありますので、日ごろからこの本部において積極的に研究をし、情報を集約をし、世界の動きにおくれないような日本政府対応ができる組織として育っていただきたいというふうに思います。  そこで、まだ情報本部が立ち上がりができていないのですけれども、早速、日本を震憾させる事件が次々と起こっております。一つは、中台間の、台湾の大統領選挙をめぐる中国軍事行動でありましたけれども、もう一つは、去る三月二十九日に板門店で起こりました事件でございます。  この事件は、突如、三月二十九日に金光鎮人民武力部第一次官が強硬発言をいたしまして、板門店では休戦協定を無視した軍事的挑発行為が三日間行われました。防衛庁といたしましては、このような行動について、今どのように分析をし、評価をしておられるのでしょうか。
  7. 小池寛治

    小池政府委員 韓国国防省、それから在韓国国連軍司令部等によりますれば、四月五日から三日連続で、迫撃砲、無反動砲機関銃等の重火器で武装した一個ないし二個中隊の規模の兵士が板門店共同警備区域内に侵入して応急陣地等構築訓練などを行った後で、二、三時間後に撤収したという模様でございます。  このような北朝鮮軍行動直前に行われた北朝鮮軍当局発言との関連を私たちとしては注目しております。一つは、先生御指摘の三月二十九日の金光鎮人民武力部第一副部長の発言でありますが、朝鮮半島における休戦状態というのは限界点に達しているという発言。それから第二は、四月五日直前の四月四日ですけれども人民軍板門店代表部スポークスマン発言でございますが、休戦協定に基づいて負った軍事境界線と非武装地帯維持及び管理に関する任務を放棄するという発言がなされております。  これらの発言が本気であるということを示すために今回の行動が行われたものと考えられますけれども、今後、北朝鮮側動向について注意深くウォッチする必要があるというふうに考えております。また、北朝鮮は、従来から一貫して、休戦協定無効化を図るとともに、休戦協定にかえて、韓国を外した形で米国との間に平和協定を締結することを求めてきておりますので、今回の行動米国に圧力をかけるねらいの一環ではないかというふうに見られているところでございます。  いずれにしましても、北朝鮮は依然として地上勢力の約三分の二を非武装地帯付近に前方展開しておりますし、即応態勢維持に努めてもおりますので、その動向については、今後とも引き続き細心の注意を払ってまいりたいというふうに考えております。
  8. 中谷元

    中谷委員 今御説明がありましたけれども、このニュースソースは何かなというふうに思います。  今簡単に説明がありましたけれども、実は、北朝鮮側は、この非武装地帯迫撃砲とか無反動も持ってきておる、また休戦協定破棄ということで、もう既に中国軍がこの地域から撤退をさせられておりますし、また一方的に休戦協定違反を繰り返しているというような情報ですけれども防衛庁情報入手についてはいろいろと御苦労されていると思います。あくまでもこれは我々もテレビで見ている状況でございますが、国会としては、今のこの北朝鮮情勢については、やはり一般国民以上に対応しなければならないし、議論しなければならない場でございます。  従来ですと、この種の報告は、防衛庁内局の方が来て、ここでテレビ報道以下の説明を聞く程度でございますけれども、各国でもこの安全保障の問題については、やはり一番の大きな問題ということで、軍人報道官なり情報担当者が直接説明をし、また状況によっては秘密会ということで外部にも情報が漏れない形で各党間の議論が続いております。日本国会も、過去一度も制服国会へ来て答弁をするということが許されていなかったわけでありますが、やはり軍事情報軍人にしかわからないし、また軍人の判断が一番正しいと思うわけでありますので、将来、こういう情勢につきましては、日本軍事専門家が、またその現場の責任者国会でも答弁できるようにぜひしていただきたいというふうに私は個人的に思っております。  そこで、このような状況でございますが、実は一九九四年の十二月に、米軍のヘリが突然北朝鮮領内で撃墜されたという事件もございました。これは一説によると、そういった北朝鮮挑発行為に対して米軍が偵察を行っているときに撃墜されて、一名が死亡して一名が帰ってきたというようなことで、我々の知らないところで軍事的な緊張もいろいろと起こっておるし、またいろいろな事件も起こっていると思います。  今回の朝鮮半島のことに対して、日本防衛庁としてはどのように対応しようとするおつもりなのか、この点についてはどうでしょうか。
  9. 臼井日出男

    臼井国務大臣 委員お尋ね我が国防衛庁対応でございますが、防衛庁といたしましては、常日ごろから、航空機等によりまして、我が国領域及びその周辺行動する航空機あるいは艦船に対して常続的に警戒監視を行ってまいってきておるところでございます。  今回の北朝鮮情勢に関しましても、今般の北朝鮮軍動向等を踏まえまして、航空機等による情報収集を適宜強化するなどいたしまして、現在同軍の動向の把握に遺漏なきを期しているところでございます。
  10. 中谷元

    中谷委員 この事態は戦後三回目の非常に緊張した行動だというふうに思いますけれども、早速韓国では、アメリカ国防長官とか、また在韓米軍司令官等が集まって、米韓で密接にその情報交換なり対応をして、そして一致した行動をとるということでやっておりますけれども、私は、こういう場にぜひ日本も同じ歩調で同じ行動をとらなければいけない、そのためには、同じ情報を共有して、軍事的に見ましても同じ対応をするべく準備しておかないと、いざ偶発的な事件が起こると、それこそ大変なことになっていくと思います。ですから、こういう事態に対しても、制服等責任者が緊密に日米韓対応協議ができるように、やはり日ごろからそういうシステムづくりをしていただきたいというふうに思っております。  そこで、北朝鮮をめぐるこういう考え方日米韓でずれがあってはならないわけでありますけれども、一番大事なのは、その中でも日米間の関係だと思います。そういうことで、クリントン大統領訪日をいたしまして首脳会談をするに当たって、日米安全保障共同文書を発表することになっておりますが、この内容もほぼ固まりつつあるという報道がございます。  私は、この時期に我々国会議員が考えておかなければならないのは、やはり日米間、アメリカ実質何を考え、これからどう行動するのか、そして日本がこの日米関係をどう考え、そして何をなすべきかということでございます。  そこで、最初にお伺いしたいのは、アメリカ日本をどう見ているかという点に対する防衛庁認識でございます。この点について、今アメリカ二つ論争が起こっております。それは、ジョセフ・ナイの書きました東アジア戦略報告に基づくレポートと、それに反論したジョンソンさんという日本政策研究所の所長が書いた論文がございますが、これはフォーリン・アフェアーズの九五年の八月に掲載された誌上の論争でございました。  概要的に言いますと、ナイさんが言っているのは、日米間の関係は、現状維持し、さらに強化すべきである、特に安全保障は酸素のようなものであって、それが希薄になって初めてそれの大切さに気がつく、日米安保もそういうものである、しかし、冷戦後は非常にアジアにおいて変化が起こって、そのアジア不安定要因は、一つ中国パワーの増大、二つ目はいずれ再生するであろうロシアの台頭、そして日本役割、そして韓半島に対する国際システムがどのように適切に対応していくかというように位置づけております。  今までの過去の人類の歴史を見ますと、大きな力のある勢力が台頭してくると、必ずそこに紛争が起こり、戦争へと発展しているわけでありますが、この地域に起こりつつあるのは、一つ中国の軍事的なパワーアップ、そして北朝鮮が今後どうなるかというような不透明さではないかというふうに思います。その点をナイさんが指摘して、そして東アジア安全保障をめぐる五つの選択肢を示した上で、最後に、アメリカリーダーシップ戦略は引き続き必要であって、今後十年間はアメリカ東アジアにおいてもリーダーシップを発揮する以外にない、それに基づいて日米関係も新たな同盟関係基盤をつくり、さらにパワーアップをしていくべきだということで、非常に大国らしいアメリカなりの人のいい、好意的、友好的な、非常に日本立場も配慮した論文でございます。  これに対して、ジョンソン論文というのは、非常にクールでシビアでございますけれども日本で起こっている「普通の国」論ということに特に着目をしまして、もはやこの東アジアにおいては今までのアメリカパワーでは制御できないような状況に至りつつある、そういう中で、日本中国がしたたかに経済的に力をつけて、アメリカを利用するだけ利用して、虎視たんたんと日米安保破棄前提に物事を進めている上において、いまだにアメリカ自分パワーに酔いしれて、この地域安全保障責任を持ってやるということは、非常に時代おくれの考え方である。特に指摘している点は、「軍服を身にまとった軍隊だけが軍隊というわけではない。科学技術、そしてビジネス・スーツを身にまとった人々の闘争心が、われわれの目に見えぬ軍隊になるだろう」ということで、日本中国に対する脅威論まで言及しているわけであって、一言で言えば条約平和的解体を示唆したわけでございますが、こういう論争現実アメリカの世論の二つの流れだと思います。  そこで、外務省にお伺いしますけれどもアメリカで論議されていますこのナイ論文ジョンソン論文に対する評価、それからアメリカ国民が今日本を一体どのように評価しているかという点について、外務省見解をお伺いいたします。
  11. 梅本和義

    梅本説明員 ただいまのお尋ねにございました、いわゆるフォーリン・アフェアーズ誌に載りましたナイ論文、それからチャルマーズ・ジョンソン氏の論文でございますが、いずれもこれは個人の資格で書かれました論文でございますので、公的なものとして私どもがそれに対してこれを評価するというような立場にはございません。  そういう前提で申し上げたときに、ナイ論文につきましては、先生今御紹介ございましたように、東アジア戦略報告という昨年二月に出されました国防省報告を作成するこ当たった中心人物の書かれました論文でございますので、これは現在のアメリカ政府見方を反映したものというふうに考えております。  そこにございます、アメリカが引き続きアジア太平洋の平和と安定のために深くかかわっていく、そのためにアジアにおいてプレゼンス維持をしていく、そしてアジア太平洋におきますアメリカ戦略政策中心日本との同盟関係を置くんだという姿勢につきましては、私どももこれを基本的に歓迎をしておるところでございます。  チャルマーズ・ジョンソンさんの論文につきましては、これは必ずしも論旨が私どもも十分わからないところもあるのでございますが、現在の国際情勢のもとでの日米安保体制日米同盟重要性についてもう少しよく理解をしていただければなという気持ちを持っております。同時に、チャルマーズ・ジョンソンさんの論文の中にも、アジア太平洋地域というものがこれから非常な重要性を増していく地域であるということ、それから、その中で日本役割というのは今以上に大きくならなければならないというようなことは、ある意味では、今の政府見方とも共通した部分があるのではないかと思います。  アメリカというのは、御案内のとおり、いろいろな意見、多様な意見が共存する社会でございますけれども政府として見ておりますところでは、やはりアジア太平洋に対する関心というのは着実にあるのではないかというふうに思います。また、その中で日本役割に対する期待というのは、それぞれどういう期待をされているのかということについては異なる面はあろうかと思いますけれども日本が大きな役割を果たすべきではないかという期待については、かなり共通したものはあるのではないかなという気がいたしております。
  12. 中谷元

    中谷委員 今外務省の御見解を聞きましたけれども、恐らく外務省ナイさんの言われる戦略レポートに基づいて日本外交政策を組み立てていると思いますけれども、本当にそうなのかと私考えてみますと、実質、これはナイさんの言われるのは性善説であって優等生だと思います。ジョンソンさんの言われているのは、性悪説といいますか、現実論といいますか、本音論といいますか、そういう要素があって、現実にこの日本においても、ジョンソンさんが言われるように、日本が普通の国になるべきだというような発想、またアジアにも軸足を、重視するべきだという意見も今数多く、そう思っている国民も多いんじゃないかというふうに思います。  そこで、最近起こりました沖縄基地事件も、こういう二つの考えに基づく論争がまだ終わっていないという点を露呈していると思いますけれども日本人も非常にちゃっかりしているというか要領がよくて、西側諸国の一員には属しているけれども、しかし、みずからの国益の方が重要だと考えておって、アメリカ軍事的プレゼンス日本にも都合のよい資産であって、いわゆる安保ただ乗り論なんですけれども、こういう体質にも甘んじてきた面があるのではないかというふうに思います。しかし、国民のほとんどは日米安保は必要であるというふうに思っておるのは確かだと思います。  しかし、沖縄基地問題に象徴されるように、実際にそれが本土に移ってくる、自分たちの町や村に来る、また自分周辺基地ができるということに対しては本当に大きな拒絶反応を示しておりまして、非常に御都合のよい国民であるという点で、私は自分も含めて情けないというふうに思います。  そういう点で、今アメリカ本音に思っておるのは、韓半島で何かあったときに、確かにアメリカはそこに出動すると思いますけれども実質それを支える日本の努力がなければ本気で彼らも行動はしないだろうというのが本音だと思います。また、そうあってはいけませんので、私はこのジョンソンレポートをもうちょっと詳しく読んで、やはりアメリカからのショック療法によって日本の眠りを覚ますということ以外に日本の安全をきちっと考えていく手段はないんじゃないかなという気がいたしておりまして、今度のクリントンさんと橋本総理大臣本音の対論、また共同宣言に注目をいたしております。  そこで、現実的なお話といたしまして、今度のクリントン大統領訪日に伴う日米安保の再認識に関するスタンスはどういうものでございますでしょうか。
  13. 梅本和義

    梅本説明員 日米安保体制は、冷戦後の国際社会というものが、当初冷戦が終了したときに多くの人が期待したようなものでは必ずしもなく、依然として不安定な要因を残しているということがあるわけでございまして、そういう中で、我が国我が国の安全を確保していく上で必要不可欠だろうというふうに思っております。また、日米安保体制は、日米協力関係の政治的な基盤をなしておりまして、また太平洋アジア地域の平和と安定にとっても極めて重要な役割を果たしておるわけでございます。そういうことで、政府は累次にわたりましてこれを堅持していくんだということを申し上げているところでございます。  今度のクリントン大統領訪日に際しましては、過去一年余にわたりまして、安全保障分野において日米間で緊密な対話をやってまいりました。その成果を踏まえまして、日米安保体制の重要な役割、この冷戦後の国際社会でどういう役割を果たしていくのか、そのために日米両国がどういうことを行っていくのかということについて、改めて最高レベルで確認をするということが大変意義のあることだというふうに考えております。  そういう意味で、そういうような内容共同文書を発出したいということでただいま準備をしておるところでございます。
  14. 中谷元

    中谷委員 総論賛成、各論にいきますといろいろ問題があるようでございますけれども平時は何だかんだ言って仲よくやっていますけれども、要は、一番大事なときに、また相手が困っているときに何をしてくれるのか、そして自分たちが何ができるかという点が問題だと思います。  そこで、具体的に締結されるACSA条約、これが締結されるわけでありますけれども、今の報道内容によりますと、平時に対象が限定されている。いわゆる共同訓練とPKOのみに限定されておりますが、最初に言ったように、韓半島朝鮮半島情勢が非常に不測な事態も予測される中で、それでは日本は何ができるかという点を今我々が考えて行動しなければならない問題だと思いますけれども平時だけじゃなくて、有事にこのACSAが適用されていないという点についてどのように認識されているのか、そして、今後の日米間のACSAあり方についてどのように考えているのか、そしてまた、防衛庁といたしまして、今後ACSA締結あり方についてどのような充実発展を図っていくべきなのか、この御認識についてお伺いいたします。
  15. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 御質問のございました日米物品役務相互提供協定、これは仮称でございますけれども、現在、日米間で最後の詰めを行っている。今回、自衛隊米軍の間で平素から相互支援態勢を確立していくことによって日米安保体制を円滑に機能させる上で重要だという認識のもとで進めているものでございますが、この最終調整を経まして今国会に提出を目指したいと考えているところでございます。  現在、考えている内容は、今御指摘のとおり、対象といたしまして、共同訓練、PKO活動、それに人道的な国際救援活動を考えているところでございます。  防衛庁といたしましては、当面、これは長い日米間の話し合い、協議に基づいて出てまいりました、いわば米軍自衛隊の現場でのみそ、しょうゆの貸し借りといいますか、物品・役務、そういったものの相互の融通という形で、まさに共同訓練で効果的にやっていこうというところからスタートした、ニーズに対応した、そういうシステムづくりでございます。今後もそのニーズはよく見きわめて対応してまいりたいと思いますけれども、今御指摘にありましたように、極東有事あるいは危機管理といり観点からの点につきまして、これはいわゆる物品あるいは役務の相互融通といいますか、あるいは相互提供といったものを超えまして、別の観点からこれはしっかりと考えていかなければならない、また、そういったものをこれから議論していかなければならない、そういうふうに考えているところでございます。
  16. 中谷元

    中谷委員 ですから、今議論されているということは、日本アメリカがどれほど今後親密におつき合いをしていこうかというそのバロメーターを今問われているものだと思います。日ごろは仲がいい、仲がいいと言いながら、いざ困ったときにどういうことができるかという論点でございますけれども、いわゆる夫婦の愛情度のチェックであり、友達との友情がどれほどきずなが強いかというチェックであり、また御近所としての関係をどうするかという問題でありますが、もう一本の柱であります、いざ困ったときにどうしてくれるかという話の中で、日米防衛協力のためのガイドラインというのも議論をされていると思います。  しかし、これは昭和五十三年の冷戦時に研究が始まって一応の成果が出た問題でありますけれども、今冷戦後の世界になる中で、今後防衛庁としてはガイドラインをどのように研究を進めていくおつもりであるのか。また、このガイドラインの三項目めに対する研究について、昭和五十七年に開催された日米安全保障協議委員会において、これから研究を開始することで意見の一致が見られて、現在研究作業も進められているというふうに伺っておりますけれども、その後は具体的な進捗状況はどうでしょうか。また、米軍に対する便宜供与とは一体何を指すのでしょうか。この点についてはいかがでございますでしょうか。
  17. 臼井日出男

    臼井国務大臣 日米安保体制というのは、我が国の安全のみならず、アジア太平洋地域の安全と平和のために極めて大切なものである、必要不可欠であるということは、御指摘のとおりでございまして、その信頼性の向上を図るために、円滑かつ効果的な運用のために努力をしてまいることも必要でございます。  先ほど御指摘のとおり、日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等三項目について研究が進められてきているわけでございます。この指針は、前大綱の考え方を踏まえてつくられたものでございます。新防衛大綱が新しく策定をされました現在、この指針は新防衛大綱の内容に即して調整をすべきものと考えているわけでございます。いずれにいたしましても、防衛庁といたしましては、今後、関係省庁並びに米側と協議しつつ真剣に検討いたしてまいりたい、このように考えております。  また、先ほどお尋ねをいただきました指針の内容につきまして、防衛協力小委員会報告におきまして、研究協議の結論は、それぞれの国について判断するものである、立法、予算等の行政上の措置を義務づけるものではない、こういうふうなことを明らかにされているわけでございますが、こうした点も踏まえながら、今後、私どもも前向きの形でもって検討いたしてまいりたいと考えております。
  18. 中谷元

    中谷委員 日本安全保障体制、特に日米安保ももう五十年を迎えようとしているわけであって、アメリカの方も考えが変わっていますし、周囲の状況も変わっていますし、日本人自身も変わっている中で、日本の国の防衛というと、基本的にはみずからの国はみずからで守る、実際に困っているときに頼りになるのは自分しかないということであります。しかし、そういう点においては、日米安保によってアメリカの支援を得るということになっておりますので、そういう実際に困ったときにその信頼がいかに確保されるかという点を今議論していただいておるわけでありますので、そのときの状況を想定して今後ともぜひ日米間の協力の推進に努めていただきたいということをお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  19. 吹田愰

    吹田委員長 次に、赤松正雄君。
  20. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 新進党の赤松正雄でございます。  防衛庁設置法の一部を改正する法律案に関連をいたしまして、質問をさせていただきます。  最初に、一昨日、本会議でもお尋ねをさせていただいたわけですけれども、総理も防衛庁長官も若干答えてくださっていない部分といいますか、私としてはもう一度重ねてお聞きしておきたい部分がございますので、そこから入らせていただきたいと思います。  まず、この法案、防衛庁の一部改正する法律案について、改正が必要な理由として、改正の目的という資料をいただきました。その中にこういうくだりがございます。これは総理もあるいは長官も私への答弁の中でも繰り返しておられたわけですけれども、要するに、防衛庁全体としての情報処理・分析能力が不十分であり、かつ、各組織が小規模であることから能力の高い情報専門家の確保も困難な状況にある、こういうくだりがあります。  そこで、私は、先般、今度はそれを統一化する組織――それぞれの分野に散らばって情報マンがいらっしゃる、それを一括すればたちどころに情報専門家が優秀になる、こういうふうなことは少し甘いんじゃないのでしょうかというふうなことを申し上げたつもりでございますが、長官は、そのお答えとして、能力の高い情報専門家の確保については、組織規模の拡大等により基盤が整備されるものでございまして、今後、情報要員の体系的人事管理等によってその育成を図りたい、こういうふうな趣旨の御答弁をされております。  それで答えになっているのでしょうけれども、いささかわかりづらいということ。それから、率直に答えていただけるかどうか、答えづらいかもしれませんが、かつての、今までの流れの中で、情報処理・分析能力が不十分であったために不都合を来した実例なんというのはどういうケースがあったのでしょうか。以上二点につきまして。
  21. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 今回の情報本部設置の形は、現在、統幕あるいは内局、陸海空自衛隊、それぞれに存在する情報組織を一本化して統幕に新しい本部設置する、組織としてはそういう姿をとっております。  それはどういうことかといいますと、これまで統幕も内局も、それから陸海空それぞれの自衛隊も、すべてが、例えば世界戦略情報あるいは我が国を取り巻く戦略情報、そういったものをそれぞれの組織で集めて、そしてそれぞれで情報を集積して分析して、一つのニーズに応じて情報をつくっていくということをやっていたわけでございます。  例えば、ちょっと極端な例かもしれませんが、アメリカでボトムアップレビューというものが出されますと、今申し上げました組織がそれぞれみんなでそれを取り寄せて、実際そんなことはありませんが、ちょっと極端な言い方をしますと、それぞれで翻訳して、それを分析するといったような、ある意味で大変効率の悪い姿に防衛庁全体としてはなっていた。これを一本化することによって、少なくともそういった非効率な情報活動というものは相当改善されるだろうということを考えたわけでございます。  それから、今申し上げましたように、それぞれ分かれている情報組織でございますから、教育の仕方あるいは人事の仕方、あるいは組織でございますからポストのつくり方、そういったすべての面で、情報専門家として優秀な人たちを育て上げていくというにはやや組織上の問題があった。これを一本化することによりまして、教育、人事あるいは組織、全体の姿として、今後、多様な情勢の流れの中で的確な情報活動ができるようにしたいということでございます。  それともう一つは、もちろん情報活動にはお金もかかります。お金もかかるわけでございますが、これが一本化することによりまして、非常に効率的な資源配分ができるといったようなことも考えているわけでございます。  他方で、現在自衛隊組織改編ということを考えておりまして、人員の削減といったようなものも念頭こある。そういう中で、我々としては、むしろこの情報分野は充実させていきたい。こういうことを考えますと、何としても効率化し、効果的な組織にしたい。そういったようなことを考えて、この新しい構想を御提示させていただいたということでございます。
  22. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今御報告がございましたとおり、従来、三自衛隊でもってそれぞれ情報を掌握しておった。大切なのは、情報収集することも大切でございますが、それを集めながらどういうふうに総合的な判断を下していくか、こういうことが大切でございます。しかも、こうした時代になってまいりますと、即応性というのが極めて大切ではないだろうか。それらの情報をできるだけ早くまとめて総合的な判断を下す、こういうことが大切でございますので、今回の情報本部設置によってそれらの効率化というものがより図られるようになるということは事実だと思っております。  そうした中で、単に陸海空三自衛隊のそれぞれの立場ではなくて、幅広い立場でもって情報分析・処理し得る人材が育ってくる、こういうふうに私どもは考えている次第であります。
  23. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 迅速な情報収集ということを今大臣おっしゃったわけですけれども、例えば、防衛駐在武官の現地からの情報がなかなか本庁に届かないという指摘を、私は従来そのことについて詳しく知っていたわけではありませんけれども、最近読みました本、「情報、官邸に達せず」という本を読んだわけですけれども、その中に大変に詳しくその辺の、防衛駐在武官の現地からの情報の本庁への伝達というものが非常に滞っているという具体的な描写がありましたけれども現実にそういうことがあったのでしょうか。あるいはまた、あったとしたら、その原因はどこにあるというふうに分析をしておられるのでしょうか。
  24. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 防衛駐在官は外務事務官として在外公館に勤務いたしておりまして、大使の指揮監督のもとで、駐在国における軍事情報収集調査を主たる任務としております。  これはいろいろ経緯があるわけでございますが、この防衛駐在官が収集した情報につきまして、外務省ともいろいろ相談し、これまで一つのシステムができ上がっておりますが、外務省を経由して直ちに防衛庁の方に入ってくるという体制になっております。  現在、この情報の伝達が、今御指摘がございましたけれども、特に遅延いたしまして大きな支障が生じているという認識はしておりませんけれども、御指摘のようなことも時々我々も受けるものですから、外務省とも常日ごろこの辺につきましてはよく相談しながら、そういうことがないように我々としても十分配慮してまいりたいと考えております。
  25. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 先ほど来申し上げておりますように、防衛庁の中でのさまざまな情報を集める機関を一本化させるということによって従来よりも一段と効率化の進んだ体制ができるということは、なるほどそうだろうと思いますけれども政府全体という観点に立ったときに、今度は、今もお話が出ました外務省とのかかわり、あるいはまた運輸省とか、そういう省庁も同じくさまざまな国際社会の中における日本安全保障をめぐる問題についての情報収集をしていると思うわけで、私先般から繰り返し言っておりますことは、結局、防衛庁としても一本化する、それでは、その議論を広げていくと、政府全体も何か一本化しなければならないというふうな話になっていくと思うので、情報を一段と集約させて、高度な分析力でされるということは非常に重要なことだと思いますけれども、同時に、集めたけれどもそれがしっかりと政府、最高責任者のところに届かないというふうなことがないようにしていただきたいと思います。  この問題の最後に、情報本部で集約された情報というものを具体的にどういうふうなルートで首相官邸に上げるかということについて検討されているのか。伝えるべきもの、伝えないものを判断するというのは、情報本部長が判断するのかどうか。この辺、もし今の時点で明確に決めておられることがあったら。
  26. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 ただいま大変重要な点について御指摘があったわけでございます。  政府全体としての情報活動を考える場合に、これはどこの国も大体そうでございますけれども、ある程度のつかさつかさでそれぞれの情報組織がございます。そして、これを政府全体としてどう共有するか、あるいはその伝達をどう迅速にしかるべきところに持っていくかというのが非常に重要なことでございまして、我々としても、今回、自衛隊防衛庁の中に情報本部設置しようという構想を検討するに当たりまして、特に内閣との関係につきましては大分協議をいたしました。  これまでも我々は、分かれていた組織ではございましたが、官邸に対する情報の提供、官邸といいますか、まず内閣情報調査室がございますけれども、内閣との情報交換というものは十分意を尽くしてやってきたつもりでおりますが、今回、防衛庁情報本部という一本の組織にしようということでございますので、内閣あるいは官邸との関係につきましては、従来と同様、あるいは従来以上にそういう連絡を密にしたい。連絡のルートといいますか、コンタクトポイントといいますか、これは状況によりまして変わりますけれども組織的にいいますと、内閣情報調査室との関係をこれまでと同様、あるいはこれまで以上に相互に密にしていきたいというふうに考えております。  それから、どういう情報をどこに持っていくかということをだれが判断するのかというお話がございましたが、情報本部ができますから、情報本部長とか副本部長とか、こういうトップの人たちの判断というのは大きいと思いますけれども、同時に、情報本部につきましては、防衛庁の中に庁情報委員会というのを設置いたしまして、これは事務次官がリードする委員会でございますけれども、この庁情報委員会情報本部の運営の仕方、例えば連絡体制の問題につきましても議論をし指示をするということを考えておりまして、内局も含めて、防衛庁長官の指導のもと、そういった問題は対応してまいりたいと考えております。
  27. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 今おっしゃった「チョウ」というのは、防衛庁の庁ですね。情報本部長と、事務次官をトップにする庁情報委員会とで検討してというお話なんですね。――わかりました。  あともう一点、この問題に関しましてちょっとつけ加えて質問をさせていただきますが、防衛大学の中に、総合安全保障研究の大学院の二つ研究コースを設けるという話が今回の法案の中に入っておりますが、この総合安全保障研究の学問研究情報本部との直接のつながりはないんですね。そこの人材を積極的にその分野に投入するということを考えておられるわけではないんですね。その辺、ちょっと確認をさせてください。
  28. 粟威之

    ○粟政府委員 今度つくります総合安全保障研究科でございますけれども、これは自衛隊任務多様化、また国際化に伴って、幹部自衛官の職務を遂行する上で、安全保障とか国際政治等に関する知識、識見がより一層必要となってきております。このような状況自衛隊として適切に対応するために、幹部自衛官等に対して、安全保障全般にわたって社会科学の体系的かつ理論的な教育を実施することを目的として総合安全保障研究科を創設することにしたものでございまして、この研究科の設置は、自衛隊の人的基盤充実に資するものではございますけれども情報本部に対する人的資源の供給を直接の目的としたものではございません。
  29. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 次に、この法案の前提になっておりますというか、新しい防衛計画の大綱、過去二回の一般質疑の中で、さまざまな委員の皆さんがこの問題について取り上げられたわけですけれども、私も、若干その防衛計画の大綱につきまして教えていただきたいというか、考え方をただしておきたいという部分がございますので、順次お伺いをしたいと思います。  まず、この新大綱の国際情勢分析についてでありますけれども、既に言い古されていることでありますけれども国際情勢についてはこういう記述があります。   最近の国際社会においては、冷戦の終結等に伴い、圧倒的な軍事力を背景とする東西間の軍事的対峙の構造は消滅し、世界的な規模の武力紛争が生起する可能性は遠のいている。他方、各種の領土問題は依然存続しており、また、宗教上の対立や民族問題等に根ざす対立は、むしろ顕在化し、複雑で多様な地域紛争が発生している。  こういうふうに、いわば並列的に書いてあるというのか、どちらに力点があるのかなという感じがします。世界戦争の危険がなくなり、地域紛争の危険がある。この国際情勢分析について、どっちが危険なのかという問いかけも妙なものかもしれませんけれども、具体的にどういう事態を想定しておられるのか、このあたりをまずお聞きをしたいと思います。
  30. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 どちらに力点があるのかという御質問につきまして、必ずしも、ちょっと私正確にその趣旨が把握できないのですが、例えば危険についてどちらの方が大きいのかというような御質問だとすれば、これは正直言って態様がいろいろあると思いますので、一概にこちらの危険の方が大きい、こちらの危険の方が小さいという比較はなかなか難しいかと思います。  しかし、それでは発生の確率といったような観点から考えた場合に、これはまさに新防衛大綱に書いてありますように、世界的な規模の武力紛争が生起する可能性は遠のいた、しかし、他方で各種の領土問題ですとか民族問題ですとか、そういった地域紛争、その他のいろいろな危険の発生の可能性が出てきているというところは、まさにお示ししたとおりでございます。
  31. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 今お聞きしたのは、その地域紛争の危険という部分で、具体的にどういう事態が想定されるのでしょうか。
  32. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 今ちょっと申し上げましたが、世界における世界的な規模の武力紛争ではない形での紛争、いろいろな態様があると思いますけれども、宗教上の対立や民族問題に根差す対立、それからいろいろなタイプの地域紛争、これは領土の問題もあると思いますが、そういった紛争が既に世界各地で冷戦終えん後発生をしている。そして、我が国周辺を見てみましても、解決していない、冷戦時代から引き続いて続いているいろいろな危険というものが残っている。世界でいろいろ起こっている世界的規模の武力紛争ではない形の紛争を念頭に置きながら、我が国周辺におけるいろいろなタイプの危険というものを考えなければならない。  ただ、現時点でどんなタイプが考えられるかと言われると、なかなか難しいわけでございますけれども、新防衛大綱に書いてありますように、その辺が非常に不透明、不確実、なかなかつかめないところがあるという認識でございます。
  33. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 要するに、余りわからない事態に対して、対応だけは極めてはっきりしているというか、一段と際立った防衛の姿勢というものを強めているというふうな印象を受けるがゆえに、冒頭、今のような問いかけをしたわけであります。  旧の大綱から新しい防衛計画大綱までの経緯は約二十年を経ているわけでありますけれども、一般の国民として、この二十年間の経緯を踏まえて、冷戦の終結という今日の事態の中で、国民期待感というのは、一つ自衛隊のスリム化という問題であり、防衛費の適切なる圧縮という問題であり、また在日米軍及び米軍基地の大幅削減というふうな、こういったことに明確な期待をしていたというのが大勢だろうと私は思うわけですけれども、どうも今お話をお聞きしていると、例えば宗教的、民族的、領土的とおっしゃって、それでは我が国周辺に具体的にどうかというと、必ずしも宗教的、民族的云々というのはないように思います。不確実な要素というものを誇大に、少し強調し過ぎている傾向があるのではないかなという印象を受ける次第でございます。  そのことに関連して、今回のこの防衛計画大綱というのは、防衛庁の皆さん、あるいは、先般、総理大臣も、口を開かれると、特徴として合理化、効率化、コンパクト化ということをおっしゃっているわけですけれども、今回の大綱で「合理化・効率化・コンパクト化」というふうにされた主たる理由というものをまずお聞かせいただきたいと思います。
  34. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 新防衛大綱におきましては、基盤防衛力構想を基本的に踏襲しているところでございますが、他方、保有すべき防衛力の内容につきましては、国際情勢あるいは自衛隊期待される役割の変化、そういったものを踏まえますと同時に、近年における科学技術の進歩あるいは若年人口の減少傾向、さらに、格段に厳しさを増している経済財政事情、そういったものを一応考慮の要素といたしまして、この具体的なあり方を見直していく。そういう背景から、新防衛大綱では、防衛力につきまして、まず、防衛上必要な各種の機能を備え、後方支援体制を含めてその組織及び配備において均衡のとれた態勢を保有することを主眼といたしまして、規模につきましては、一部削減を行うことにより防衛力の合理化、効率化、コンパクト化を図っていくという考え方で、そういったことを明示したわけでございます。
  35. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 基盤防衛力の整備という姿勢を堅持しながら、また一方、こうおっしゃる。つまり、先ほど冒頭でお聞きしたように、世界的規模の紛争の可能性がなくなったと。したがって、いわばそういった大規模レベルの脅威が減ったから少しコンパクト化しよう、こういうことだとするならば、その辺の考え方については、ある意味でいわゆる所要的防衛力というんでしょうか、脅威対応型の考え方が同時にセットで入っているというふうな印象を受けるわけであります。  そういう点で、私は、この二十年ぶりの改定の防衛計画大綱につきましては、やはり一人一人の日本防衛に対する考え方立場によって、今回の大綱に対する評価というのが百八十度違っているような感じがいたします。  例えば、片方では合理化、効率化、コンパクト化、自衛隊を縮小させる方向だ、これはとんでもない軍縮傾向じゃないのかと。軍縮傾向がとんでもないというのはおかしな言い方ですが、心配だという角度の評価をされる向きと、それから、そうじゃない、言葉ではそういう言葉を使っているけれども実質的には軍拡化の傾向がある、こういうふうないわば五五年体制以来のイデオロギー的な見方というものを引きずった形で、この防衛計画大綱に対する評価というものが、先ほど来聞いていてもいささかわかりづらい部分がある。それに付随する格好で正反対の評価というものがあると私は思いますけれども、この辺、国民の目から見てさらにわかりやすくもう一度説明をされる中で、この正反対の評価があるということに対してどう考えておられるか、お聞きしたいと思います。
  36. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 国際情勢の変化というものが、今回の合理化、効率化、コンパクト化を含む新しい防衛大綱のもとにおける陸海空自衛隊の体制の見直しという一つの要素であったということは、先ほど申し上げたとおりでございます。  国際情勢の変化だけではなくて、特に軍事科学技術の進歩、これは非常に、省力化と言うとあれですけれども、少ない人数でもかなりの威力を持つ装備というものがどんどん開発されているわけでございます。それから、我が国における若年人口の低減傾向。自衛隊の隊員の年齢構成を見ましても、若年人口の動向というのは組織を構築していく上で大変重要な要素でございまして、この若年人口の低減傾向、これがまた一つの大きな要素である。それから、当然のことながら、国民経済的に考えましても、非常に厳しさを増している経済財政事情ということも念頭に置かなければいけない。  今、脅威対抗論という御指摘がございましたけれども、先ほど申し上げましたように、今回の新防衛大綱は、これは前防衛大綱の基本的な考え方でございました基盤防衛力整備という考え方を基本的に引き継いでおるわけでございます。しかし、その基盤防衛力構想あるいは基盤防衛力整備というものも、つまるところ、もちろんのこと我が国周辺戦略環境あるいは我が国の地政学的な特徴、そういったものを両々考えた上での体制づくりをやっているわけでございますから、脅威対抗論ということではない、そういう形での国際環境の変化というものがこの基盤防衛力整備にも当然影響はある。したがって、そういう意味では、国際情勢の変化というものが一つ要因になっているということは私も言えると思っております。     〔委員長退席、西村委員長代理着席〕  なお、合理化、効率化、コンパクト化という言葉がちょっとひとり歩きしているような嫌いがあるわけでございますけれども、新防衛大綱におきましては、「その合理化・効率化・コンパクト化を一層進めるとともに、必要な機能の充実防衛力の質的な向上を図ることにより、多様な事態に対して有効に対応し得る防衛力を整備し、同時に事態の推移にも円滑に対応できるように適切な弾力性を確保し得るものとすることが適当である。」そういう考え方で、今陸海空自衛隊組織、体制あるいは装備、そういったものの見直しを行っているということでございます。
  37. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 長官、今の点につきましてつけ加えるべきことがありますでしょうか。
  38. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ただいま防衛局長がお話しいたしましたとおり、国際情勢の不安定要素というものをアジア太平洋地域に抱えている、こういう環境もございますが、軍事的科学技術の進展あるいは若年層の減少の傾向等もございます。また、日本におきましては、現下の財政事情等、情勢が極めて厳しい中でございまして、それらの状況対応しつつ、なおかつ、日本の安全というものをしっかり守っていく体制をつくっていくにはいかがしたらいいかと知恵を絞りながら、ただいま申し上げました合理化、効率化、コンパクト化という点を進めてまいりたい、こういうふうに私どもは考えているわけであります。
  39. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 次に、旧大綱では限定的かつ小規模な侵略に対しては日本独力で対処するという方針が、今回の新大綱では盛り込まれていません。それに対して、日米共同対処という視点というか観点が逆にうたわれております。この辺の変化、ある意味でこのくだりは大変に大きな変化だと思いますけれども、これについてどういう考え方で変化させられたのか、お聞きしたいと思います。
  40. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 前大綱におきましては、限定的かつ小規模の侵略につきましては原則として独力で排除するということが明記されておりましたが、これは日米安保体制と相まって、すきのない防衛態勢あるいは防衛力の整備、それを構築するとの観点から、そうした目標、ある意味では防衛力の整備目標ということで書きあらわした、明示したというものでございます。  しかし、実際に直接武力により侵略事態が発生した場合に、それが限定的かつ小規模であれば、これは独力で対処するという行動ないし自衛隊のオペレーションとして、それは現実的かどうかということも今回いろいろ検討いたしたわけでございます。  前回の防衛大綱が決定されましてから、日米間の共同研究あるいは日米間の防衛協力といったようなものについての話し合いなり研究なり協議というものは大変進んでまいりましたし、特に共同訓練といったようなものも多くいろいろな形で行われるようになってまいりました。そういう日米間の防衛協力態勢という現状を踏まえますと、前大綱のような表現というのは現実問題として余り適当ではないのではないか。しかも、日米安保条約というきちんとした条約があるという中で、前大綱における限定・小規模・独力対処というある意味での防衛力整備の目標としたことを、自衛隊の運用のあり方まで含めたような印象を持たれるように書くのは適当ではないのではないかということで、今回そういう表現は外したということでございます。
  41. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 今のお話を聞いておりますと、要するに、限定・小規模な侵略ということは、具体的に現実にそういう場面が想定されがたい。むしろ現実日米関係というものから考えれば、言ってみれば机上の前段階というのでしょうか、そういうものを飛ばしてしまって、もっと敏速な反応というふうな印象が感じられました。  今の局長の御答弁もそうなんですが、例えば「セキュリタリアン」のことしの一月号に、局長の部下であられるのかどうか細かくは知りませんが、守屋政策課長が今のことにつきましてこんなことを言っています。今の局長と同趣旨なんですけれども、何かより一層リアルに感じてとらえられます。   我が国に直接侵略があった場合、自衛隊が即応して行動するのは当然としても、日米防衛協力が進んだ今日においては、共同の程度に差はあるにしろ、当該侵略が限定的小規模なものであるかどうかを判断するまでもなく、米国共同して対処するのが、運用上も自然であると判断していることによるものである。 要するに、私は、「当該侵略が限定的小規模なものであるかどうかを判断するまでもなく、」という、この辺の言い回しに自衛隊日本防衛庁のいわゆる自制心というか、平和に向けての土壌をつくっていく、これは防衛庁にそういうものを求めるのはお門違いということになるのかもしれませんが、政府全体としてのテーマということになるかもしれませんが、そういう平和醸成への努力というものが捨象されてしまって、ともかく日米防衛協力でどんなことでも対応していくのだというふうな、従来の防衛大綱にあった、きちっとした、自分で自制していくという雰囲気が抜けてしまっているというふうな印象を受けます。憲法の精神に照らしていささかおかしいなというふうに思うわけですけれども、この辺の考え方につきまして、長官、ぜひお考えを聞かせていただきたいと思います。
  42. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 限定・小規模侵略というのは、これは日本がコントロールして限定的・小規模に侵略を抑えるということはできない問題でございまして、今の御質問に対して若干お答えさせていただきますけれども、限定・小規模侵略というものを外したことが何か平和への考えにいささか後退があるのではないかといったような御指摘のように今とれましたが、我々としては、我が国を守る国防という観点からいたしますと、どんな侵略があるだろうか、こういう侵略があったらどうしようか、そういうことを考えるわけでありまして、侵略があることを考えることが平和への後退であるということであれば、若干そこは違うのではないかと思います。  それから、限定・小規模・独力対処というのは、先ほど申し上げましたように、我が国防衛力整備に当たっての一つの目標といったようなとらえ方をしていたわけでございますが、現実のオペレーションを考えますと、大変誤解のある話ではなかろうか。実際に我が国に対して武力をもって侵略が行われたときに、例えば具体的に考えますと、制空権、制海権、そういったものが我が国を守る場合でも大変重要になるわけでございます。  制空権、制海権ということを考えますと、日米安全保障条約のもとで、まさに今御引用がありましたけれども、どういう形態かはともかくとして、日米共同で対処するというのが我が国を守る上では大変重要なポイントであろうかと思います。当然のことながら第一義的に陸海空自衛隊対応するというのは、これは新防衛大綱にもそういう表現で書いてありますけれども我が国が侵略されたときのことについていろいろと防衛大綱で書いてあること自体について、そのことが平和への後退であるということではちょっと私は理解できない。  かつ、今回の新防衛大綱におきましては、「防衛力の役割」という中に、従来と同様、当然のことながら我が国防衛というものが第一の柱に立っておりますが、続いて、大規模災害等多様な事態への対応ですとか、より安定した安全保障環境の構築、そういったものを我が国防衛力のあり方の柱に入れたという点について御理解をいただきたいと思うわけでございます。     〔西村委員長代理退席、委員長着席〕
  43. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 局長の思いというか、おっしゃる意味はよく伝わってまいりますけれども、要するに、防衛当局者にとっては今のようなお気持ち、いかにもそうだろうとは思いますが、政府全体として、この防衛計画大綱に基づいて日本の平和というものを構築していく上における姿勢というものについては、今私の指摘したような角度も十分に成立する、そういう背景があるということをぜひわかっていただきたいと思います。  それに関連いたしまして、これは私も何となくそうだなという印象を受けていたのですが、現実に、ある報道機関が、去年の十二月四日付の新聞に、具体的に数えたのでしょう、この防衛計画大綱の中に日米安保体制という言葉が全部で十三カ所出てくる、前大綱の場合は三カ所ぐらいだと。日米安保体制という言葉が頻繁に使われております。  先般、私も本会議で総理に、日米安保条約というものは条約ですから、条約に対する解釈というものがあるわけですから、そう簡単に解釈を変えるというわけには当然いかないわけですから、その日米安保条約というものに基づいた上で、何となく茫漠たる言い方ですけれども、その体制そのものについてはかなり伸縮自在に考えようとされているのじゃないのかなというふうな感じを受けました。  日米安保条約あるいは日米安保体制、こういう言葉を巧みに使い分けておられるなという印象も受けておるわけですけれども、まず、世界的規模の武力紛争は遠のいた、こういう認識の中で、日米安保体制を強調される意味というものについて、なぜかくほどまでに日米安保体制を強調されるのか、その辺についての考え方基盤を聞かせていただきたいと思います。
  44. 臼井日出男

    臼井国務大臣 先ほど来御議論の中でたびたび既に出ているわけでございますが、日米安保体制は、冷戦終結前より、我が国の安全に対する直接的貢献、アジア太平洋地域の平和と安定のためになくてはならないものである、またさらに、日米関係の中核でもあり、我が国の幅広い外交関係基盤である、こういうことでございます。  冷戦終結後の国際情勢を見ますと、確かにヨーロッパにおいては緩和というものが見られておるわけでございますが、我が国周辺においては依然として不透明、不確実な要素が残っておる。こういうことを考えると、引き続き日米安保体制の確保、向上というものが必要であるということが私どもには考えられるわけでございます。  今後とも、来るべき橋本・クリントン会談においてその点をさらに再確認いたしまして、日本の安全と平和、さらにはアジア太平洋地域の平和のために努力をいたしてまいりたいと考えております。
  45. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 余り私の質問に答えてくださっていないのですが、要するに、前大綱から今大綱の間の中で世界的規模の紛争が起こる可能性がなくなった、地域紛争の可能性は残っている、それはわかります。それで、そういうふうな大きな認識の変化の中で、今までより以上に日米安保体制を強調していく。私なんかも生かじりというか半かじりな人間ですけれども、普通の市民が聞いた場合に、どうもそれはおかしいのじゃないですか、逆転しているのじゃないですかというふうな印象を受けることに対してどう答えるのですか。ここに一人の市民が来て、そういうふうに聞いたらどう言うのですかという観点で、ちょっと答えていただきたいと思います。
  46. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 冷戦下における日米安保体制あるいは日米安保条約というものについて、これは相対的な問題かもしれませんが、今ほど説明しなくても何となくわかるといったような状況があったような気も私はいたします。  しかし、冷戦終えん後、果たしてこの日米安保体制はどうなるのかということは、これは大きな国際環境の変化でもございますし、我が国防衛あるいは我が国周辺の安定と平和、そういったこととの関連でこの日米安保体制はどういうことになるのかという関心が、これは日本のみならずアメリカでも大きな関心のあった問題であろうと思うわけでございます。したがいまして、冷戦終えん後、今から逆算しますと二、三年前からでございますけれども日米安保体制あり方を含めて、日米間でまさに日米安保対話をかなり進めてきたという背景がございます。  そして、冷戦後の安全保障環境におきまして、今御指摘がございましたように、国際情勢が変化している。それに伴いまして国際的な課題も変化しておりまして、そうした課題に対する解決に向けた国際社会のいろいろな動き、積極的な取り組みというものがある。そういう中で、この日米安保体制につきまして、我が国の安全のみならず地域の平和と安定のためにどういう役割が今認識されているのかということは、この時点で国民にも明確に発信すべきではないか、そういう発想でかなり詳しく書いたということでございます。  他方で、詳しく書いた背景には、昭和五十一年に前防衛大綱が制定され、五十三年に「日米防衛協力のための指針」、いわゆるガイドラインというものが制定されまして、いろいろな面で日米間の防衛協力の研究が進んでまいりました。そういう意味で、日米間の防衛協力態勢が前大綱のもとでかなり高い水準まで来たというのもバックグラウンドにございます。
  47. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 長い間、冷戦期の世界情勢というものをどうとらえるかというときに、ソ連の脅威ということをどう見るかという観点の問題を考えるときに、ソ連の脅威ではなくて米ソ対決の脅威だ、ソ連の脅威じゃなくて米ソが対決しているという枠組みそのものが日本にとって脅威なんだという考え方を私は持っておりました。  今、先ほど来ずっと局長のお話を聞いておりまして、そのあたり、ソ連という国がなくなって、ロシアになって、その脅威が、脅威というか軍事力がかつてよりも大きく後退した。アメリカという国の今の世界における位置づけというものが一段と重要性を増してきた。そういう中で、日本アメリカとしっかりとコンタクトをとっていくという必要性が一段と増したというふうな考え方の組み立てなんでしょうけれども、その背景に、日米安保体制役割というものが、旧大綱の我が国に対する侵略の未然防止あるいは侵略への日米共同対処から、さらにアメリカの意図に従った形で、我が国周辺地域の平和と安定の維持へと日本もその範囲をずっと広げていく。それは結局、アメリカ東アジア戦略というのでしょうか、世界戦略というのでしょうか、そういう全体を助ける方向に行っているのじゃないか。  要するに、この大綱には戦略がないということを指摘する向きがありますけれども日本の大綱に戦略はなくて、アメリカ戦略に全面的に引きずられる格好でいっているものじゃないのか、そういう考えが私には起きてしょうがないのです。  いろいろ述べましたけれども、集約すると、そういうアメリカ東アジア戦略全体といいますか、この極東という範囲については先般総理から従来どおり変わらないんだというお答えをいただきました。片っ方で、そういう解釈についてはそうなんだけれども、実際の運用の部分では、極東をはるかに越えて、既に湾岸戦争以来そういう考え方はもう古いという感じになってきている傾向はありますが、この大綱の中でさらに一段とそういう範囲が広がってきているのじゃないのか、こういう印象を受けるということに対してどうお答えになられますでしょうか。
  48. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 まず最初に、日本防衛とか国防を考えるときに、すべての脅威といいますか、我が国防衛にとって考慮すべき要素を考えた場合に、これは率直に言って、一国で自分の国を守るというのはなかなか大変なことでありまして、事実上とり得ない政策であるという認識をしております。  他方で、長い間の積み重ねで、二国間の同盟といいますか安保体制でございますけれども、二国間の同盟としては世界でも最も強固と言われるこの日米同盟日米安保体制というものをある意味で我々は持っているということを考えますと、我が国防衛という観点から、我が国が適切な自衛力を保持すると同時に、この日米安保体制を堅持するというのが基本として疑いのないところであろうかと私は思います。同時に、極東あるいは日本周辺アジア太平洋、そういった地域の平和と安定というのは、日本安全保障にとっても当然また重要なことであります。  そういったことを考えますと、現在の安全保障条約におきましても、極東の平和と安定といったような目標がございますし、同時に、安全保障条約前提といたしました日米安保体制、あるいはやや広い意味で、日米の確固とした二国間関係といったものがこのアジア太平洋地域において大変大きな安定と平和のために寄与するという認識を我々持っているわけでございます。  他方で、先ほどからも質問の中にございましたように、東アジア戦略報告というものに示されておりますように、アメリカ自体が、これはアメリカの国益として、アジア太平洋地域に対する関与、あるいはアジア太平洋地域における平和と安定というものに強い関心なり政策目標があるというのも事実でございまして、アメリカにとって、アジア太平洋地域の平和と安定というものを確保するための一つの大きな存在が日米安全保障体制である。  そういうところで、今回、この数年間の日米安保対話の中から、新防衛大綱にお示ししているような今日的なあるいは将来に向けての日米安保体制の確認、そういったものがなされたということでございます。
  49. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 長い間聞いていると、何だかわけがわからなくなってくるのですけれども、要するに、かつての旧防衛計画大綱の段階では日米の関心が極東という地域に限定されていた。条約を正確に読めばそういうことなんでしょうが、今の答弁あるいは先般来の総理等の答弁を聞いていますと、要するに、今やそういうふうな段階からもっと広く、地球全体に、アジア太平洋だけじゃなくて地球の裏側にまでも、いざという場合、アメリカ戦略上必要だったら日本もそれに呼応していくんだ、こういうふうに聞こえますけれども、そういう認識でよろしいのですね。
  50. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 極東という言葉でございますが、地理学上正確に固定されたものはないわけでございますけれども日米安保条約における極東というのは、御案内のとおり、これまでも再三国会で答弁しているようなことでございます。一方、アジア太平洋地域、これは極東を含むわけでございますけれども、もちろんもう少し広い地域を指しているわけでございます。  これは、新防衛大綱が決定されたそのときに、内閣官房長官談話というものが出ておりまして、アジア太平洋地域と極東の関係というものが談話で出されておりますけれども、非常に簡単に申し上げますと、要するに、日米安全保障条約上の範囲というようなものは、これまでも答弁してまいりました極東という範囲に限られている。しかし、日米安全保障条約一つの基礎といたします日本アメリカ安全保障体制、あるいは日米安全保障体制をまた基礎にいたします日本アメリカの確固たる関係同盟関係と言ってもいいと思いますけれども、そういった二国間関係アジア太平洋地域、ひいては世界の平和と安定に寄与する、そういう関係になってきているのではないか、そういう仕分けで説明をしているところでございます。
  51. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 わかりました。  最後に、集団的自衛権の問題について、この新防衛計画大綱には記述がありません。念頭に全く置いておられないのかどうか。官房長官談話なるものがありまして、そこでは集団的自衛権のことにつきまして、「なお、集団的自衛権の行使のように我が国の憲法上許されないとされている事項について、従来の政府見解に何ら変更がないことは当然であります。」という平成七年十一月二十八日の内閣官房長官談話がつけ加えられておりますけれども、念頭に全く置いていないのかどうか。
  52. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ただいま委員の御質問の集団的自衛権ということにつきましては、我が国が国際法上、国連憲章第五十一条による個別的自衛権及び集団的自衛権を有しているということには疑いのないところでございます。  しかしながら、我が国憲法下で認められている自衛隊の自衛権の行使というものは、我が国に対する急迫不正な侵害に対してこれを排除するために必要最小限度の範囲のものである、こういうことになっているわけでございまして、したがいまして、個別的自衛権に限られる、こういうふうに解されるわけであります。すなわち、我が国は憲法上集団的自衛権の行使を認めていないものと解しております。  先ほどお話しの四月九日の記者会見における官房長官発言は、我が国憲法が集団的自衛権の行使を認めていないという趣旨を踏まえながら、個別的自衛権の範囲でいかなるものが可能なのか、なお一層検討する必要があるという趣旨を述べておられるものと認識をいたしております。
  53. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 そうしますと、平成七年十一月二十八日の官房長官談話、防衛庁のさまざまなものには常に内閣官房長官談話というのが大体くっついていますけれども、この官房長官談話の意味、このときの官房長官はどなただったのかあれですが――野坂官房長官の談話の持つ意味と、そして今長官おっしゃった四月九日の梶山官房長官の、集団的自衛権的な分野という言葉を使っておられますけれども、グレーゾーンというこの辺の関係はどうなんでしょうか。官房長官談話というものは相当に重いものなのか、余り大した重さはないのか、内閣がかわると変わってしまうのか、その辺はどうなんでしょう。
  54. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ただいま私がお話を申し上げましたとおり、野坂官房長官の談話も梶山官房長官の談話も本質的な相違はないものと理解をいたしておりまして、その発言を私どもは重く受けとめまして、今後とも、今後の事態に対処いたしていく、こういうことにいたしております。
  55. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 一昨日、総理に私は改めて集団的自衛権の行使についてお尋ねしました。ところが、私は総理大臣や長官の答弁をきちっと掌握するという能力に欠けますもので、あのときに自分が言ったことに正確に答えてくださったということについて、いささか、若干とらえ損なったところがあります。  というのは、集団的自衛権の行使について、政府が解釈をすることによって可能なのか、あるいは憲法明文の改正が必要なのかどうか、これをあのとき聞いたはずですが、どっちなのか。もうわかっているから言わなくていいじゃないかということじゃなくて、政府の解釈で可能なのか、あるいは憲法明文の改正を必要とするのか、この二つ一つを総理に答えてもらわなかったのですが、改めて防衛庁長官にお答えいただきたいと思います。
  56. 江間清二

    ○江間政府委員 お答えをいたします。  集団的自衛権の行使につきましては、先ほど大臣もお答えになられましたが、政府は、従来から一貫して、憲法九条のもとにおいて許容されている自衛権の行使は我が国防衛するために必要最小限の範囲にとどまるんだ、したがって、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とする集団的自衛権の行使はこれを超えるものとして憲法上許されないという立場に立っておるわけでございます。  それで、今の御指摘の点でございますけれども、これに対する有権的なお答えというのは内閣法制局の方にお尋ねをいただきたいと思いますけれども、私どもが理解しておるところで申し上げますと、憲法解釈あるいは解釈の変更と申しましょうか、それでもってこの集団的自衛権の行使を認めるようにするというようなことは問題があるのではないかというふうに認識をいたしておるところでございます。
  57. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 明文の改正が必要であるという認識だということですね。
  58. 江間清二

    ○江間政府委員 問題があるというふうに認識をしております。
  59. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 終わります。
  60. 吹田愰

    吹田委員長 この際、暫時休憩いたします。     午前十一時三十九分休憩      ――――◇―――――     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕