○高野博師君 私は、
平成会を代表し、ただいま
趣旨説明のありました在
日米軍駐留経費
特別協定に関連して、
総理及び
関係閣僚に御
質問いたします。
その前に、去る四日、忌まわしいテロの凶弾に倒れたイスラエルのラビン首相の死に対し、我々
平成会は、謹んで深い哀悼の意を表するものであります。
歴史的な中東和平を推進してきた故ラビン首相の勇気と
努力の功績を高く評価するとともに、道半ばで倒れたことは、イスラエルのみならず、中東の、そして世界の平和を望むすべての人々にとって損失であり、まことに残念であります。
ところで、故ラビン首相の国葬には、クリントン大統領を初め世界の要人が参列されましたが、最高首脳としてはG7の中では
村山総理だけが欠席したのであります。その理由を
総理は、「
国会があるものだから。行けなくて残念だが、まあラビン首相とはこのあいだ話したばかりだしね」と説明した由でありますが、私はこの発言を知って唖然といたしました。そして、この発言ほど
村山総理の
政治姿勢、外交感覚、人間性を象徴しているものはないと感じたのであります。欠席という事実どこの発言は、これまでの我が国
政府の中東和平への
支援の成果を損ないかねないほどの重大性を有しており、そして我が国が本当に中東また世界の平和に役立とうとしているのかどうか、世界から疑われかねないと思うのであります。
そこで、
総理、葬儀出席よりも優先すべき国内の緊急
課題とは何だったのか、具体的に明らかにしていただきたい。もしそれが宗教法人法の
改正であるとすれば、余りにも
国際社会の中における
日本の立場を
認識しておらず、
国際感覚、外交感覚が
欠如していると断ぜざるを得ないのであります。
総理の明確な
答弁をお願いいたします。
それでは、在
日米軍駐留経費
特別協定について伺います。
御
承知のとおり、東西冷戦終結後、世界
情勢は激動しており、地域紛争、国際テロ、難民、貧困、麻薬、地球環境等、人類が抱える重大な問題が山積しております。これらの諸問題に対し、人類は英知を出し合って解決に
努力し、共生共存の世界を構築すべきであることは論をまちません。私は、激動する国際
情勢に対応するには、これまでの
考え方、視点ではとらえきれないと思います。すなわち、我々は大きな発想の転換を迫られていると思うのであります。
前述した諸問題、人類的
課題は、いずれも国家という枠を超えて存在するものであり、しかしながら人間の尊厳というものに注目しなければ根本的な解決は望めないものであると思います。国連でも提唱しているヒューマンセキュリティー、すなわち人間の安全保障こそが二十一世紀のキーワードであり、国家の論理から人間の論理への発想の転換が必要であると思います。そしてまた、我々は、国家益から人類益を目指して国際貢献、国際参加を積極的に行うべきであります。そのような外交理念に基づいて、国際上の問題を大局的にとらえることが必要であろうと思います。
さて、戦後五十年の大きな節目に当たり、先般、沖縄で忌まわしい暴行
事件が起き、
日米安保体制を揺るがしかねない
状況にあります。しかしながら、我が国とアジア、そして世界の安定と繁栄のためには、
日米安保体制が重要な位置を占めておることは疑いを入れません。しかし、
国民は、冷戦後も何ゆえ
日米安保が必要なのか十分
理解しているとは言えません。それはいわゆる五五年体制というものが
日米安保を是か非かの単純な構図に追いやってき、加えて、
村山総理が率いる社会党が
政権についた途端、一夜にして安保堅持を打ち出したことから
国民は困惑しているのであります。その
責任は
総理にもあると思います。
この際、
総理または外務
大臣から、
日米安保の必要性、重要性につき
国民にわかりやすく説明していただきたいのであります。
私は、これまでの我が国
政府は、一面では安保体制に安住し過ぎたのではないかと思います。自国の防衛は
米国に任せ、基地は沖縄県に任せきりで、
経済発展だけに専念してきたと思うのであります。しかして、
米国に対しては外交的に物を言うべきときにも言えないでき、また世界からは一国平和主義、一国繁栄主義と批判され、さらにはアジア諸国からは、
日本は
経済大国にはなったけれども、外交のリーダーではないとも批判されております。
我が国の安全保障
政策は、
日米安保の堅持、防衛力整備、そして国際
政治の安定を確保するための外交
努力の三つの柱から成っております。私は、本当の安全保障はまさにこの三番目の外交
努力があって初めて確保されると確信いたします。
激動する複雑な
国際社会の中にあって、外交当局は、長期的な展望に立ち、柔軟な、多元的な、そして明確な方針を持って積極的な外交を展開していただきたいと要望いたします。
日本は顔が見えないとよく言われますが、顔よりも言葉が見えないのであります。特に外交問題に関しては、明快な言葉で我が国の意見を示していただきたいと思います。
さてそこで、
政府は新
特別協定を締結し、在
日米軍駐留経費の
負担を継続することといたしましたが、その締結の意義及び継続理由につき、
総理にお伺いいたします。また、我が国の厳しい財政事情の中で訓練移転費を
負担増する理由についても
お尋ねいたします。
次に、沖縄の基地問題について
質問いたします。
米軍用地の使用権原の代理署名については、先日の
総理と大田知事の会談の後明らかになったように、知事は署名を拒否しております。宝珠山前長官の言ったとおりになるのは皮肉でありますが、
総理は最高
責任者として
日米首脳会談までにみずから法的手続の
決断を下すべきであると思いますが、
総理の御
見解を伺います。また、沖縄の米軍基地につきましては、冷戦後の国際
情勢の変化を踏まえ、
日米安保体制の堅持を前提に基地の整理、統合、縮小を図るため総合的見地からの見直しを行うべきであると思いますが、具体的計画につきお伺いいたします。
また、先般、米側の要人に、四万七千人もの軍人が駐留していれば犯罪は起こり得るものだという
趣旨の発言がありましたが、これは先ほど述べたように、人間の論理を無視してはならないと思います。また、先日の沖縄県民総決起大会の決議の中に、沖縄の現実に
政府がどのような抜本的解決策を提示し得るか注視している、戦後
政治と
日本の民主主義が試されることにもなるとあります。
かかる
観点から、また、
国民の生命と財産を守るという基本的
認識から、被疑者の身柄引き渡しに関する地位
協定十七条五項(c)の規定は、単なる運用
改善などというその場しのぎではなく、見直しを行うよう誠意を持って米側と話し合うべきであると思いますが、
総理の御
見解をお伺いします。
そして、沖縄の基地問題は、米軍と沖縄の問題ではなくて、むしろ国内問題、すなわち沖縄対本土の問題であります。長きにわたって沖縄県民に過重な
負担を強いてきた事実を踏まえ、今後その代償としての沖縄振興のための具体的な
支援策について、
総理及び防衛庁長官の
見解をお伺いいたします。
次に、核兵器の使用に関する国際司法裁判所の審理に伴う陳述についてお伺いいたします。
長崎、広島両市長の陳述原案に対し、外務省は、核兵器使用は国際法違反という
部分を削除修正させた旨の報道がありますが、事実
関係をお伺いしたい。
昨日、両市長は、法廷で違法性を明確に主張して、世界からも高く評価されております。ここで改めて、核兵器使用の違法性につき、外務
大臣の
見解を求めます。
我が国
政府は、フランスや中国の核実験に対しては反対の抗議をし、中国の場合は無償援助の
凍結までの強い
措置をとっております。一方で、核兵器使用については、これまで実定国際法上違法とは言えない等の
見解を示してきました。一貫性がないと思います。我が国が本当に核のない平和な世界を望んでいるのであれば、核兵器使用の不当性を主張し、国際的な世論をリードしていくべきであり、それが唯一の被爆国としての人類に対する、また被爆者に対する責務であろうと思います。
次に、テロ
事件について
質問いたします。
先日、
米国上院の公聴会でオウム真理教によるテロが取り上げられましたが、この無差別テロに対して
日本と
米国政府との適切な
情報交換がなかったことが致命的な対応のおくれをもたらしたと
関係者は述べております。また、来る
日米首脳会談では、テロに関する国際協力について
米国側から
提案される
可能性がありますが、
日本側の対応の現状につき、
総理にお伺いいたします。
ところで、私は南米のある国に勤務しておりましたが、麻薬組織やゲリラ組織による誘拐、暗殺、無差別テロ等が連日頻発していた時期でありました。私は、直接現役のゲリラに会って治安情報もとり、また邦人誘拐の犯人とも直接交渉もやりました。
彼らによれば、ダイナマイト爆弾のような無差別テロは数人で実行でき、必ずしも集団や組織であることを要しないというのであります。すなわち、テロの手段となる武器、弾薬、生物化学兵器となり得る材料さえ入手できれば事は簡単だというのであります。まさに現実にそれが行われているのであります。特に、コンピューター情報を使えば少人数による大都市における無差別テロが広がる危険性をはらんでおり、国際的な
情報交換システムの確立が急務であります。これは国家の
危機管理能力の問題でもあります。
地下鉄サリン
事件を契機に、
国民が今望んでいるのは、安心して安全に暮らせる社会でありますしかるに、今、
政府・与党が血眼になっているのは、オウム再発とは
関係ないと言いながら、巧みに世論を誘導し、
オウム事件とイメージをダブらせて宗教法人法の改悪をもくろんでいることであります。
今、
政府がなすべきは、まさに
オウム事件のような無差別テロの再発防止の
措置であり、そのためには、武器や生物化学兵器の原料のコントロールであり、宗教団体のコントロールではないのであります。無差別テロは、さまざまな各種法人、任意団体、さらには
個人でも実行し得るという事実を正確に
認識しなければなりません。
政府の抜本的なテロ
対策の現状につき、
総理にお伺いいたしたいと思います。
今、
政府、共産党までオール与党に入っているのでありますが、与党が
実現しようとしている宗教法人法の改悪は、信教の自由を脅かすおそれがあるばかりか、
オウム事件再発防止とすりかえ、
国民を欺いているものと言えるのであります。明らかに
政治的意図を持って特定の宗教団体を抑えつけようとするものであります。
オウム真理教は特定の宗教団体の要人を暗殺しようとして未遂に終わりましたが、
政府のやろうとしていることは余りにも的外れであり、時代錯誤であり、また、一面からするなら基本的人権という人類の普遍的な原理を踏みにじろうとする暴挙であります。必ずや歴史に汚点を残すでありましょう。
さらに、宗教法人法の
改正については、アジア各国の新聞が
改正反対ないし懸念を表明する論調を行っております。
例えば香港の九月十四日付新報紙は、再度の侵略の野心に憂慮するとし、また、九月二十日付信報紙は、思い起こせば半世紀前、
日本政府による宗教統制・弾圧が侵略戦争の伏線になったと報じ、また、十月五日付フィリピンのゴールド・スター・デイリー紙は、宗教が統制されれば権力を監視する力が弱まるとし、同紙十月十日付では、思想統制の黒い策略等と論じております。このほかマレーシア等の新聞も同様の危惧を表明しております。
これらのアジア各国の動向に対し、
政府はどう対応するのか、
総理の御
所見をお伺いしたいと思います。
宗教法人法の
改正問題は、ひとり
日本国内の問題ではないのであります。この
背景には、
総理の日韓併合条約に関する発言や島村文部
大臣の侵略戦争に関する発言等、たび重なる不用意な発言があるのであります。
我が国が
国際社会の中で名誉ある地位を占めるためにも、そしてアジア各国と相互依存の信頼協力
関係を築くためにも、
政府の反省を促して、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣村山富市君
登壇、
拍手〕