○岡野裕君 私は、自由民主党・自由
国民会議を代表して、
政府の
財政演説に対し、
村山総理並びに
関係大臣に
質問をいたします。
まず冒頭、
村山総理に対して緊急
質問をいたします。
史上未曾有の凶悪犯罪を犯したオウム真理教に対し
政府がどんな対処をするか、今、
日本国民はもとより、全世界は非常な関心を持ってこれを注視しております。
マスコミによれば、オウム真理教に対する破壊活動防止法の適用については既に証拠固めの最終段階に入った、こう伝えられております。ところが、
総理の
対応は、去る九月二十七日の記者会見における「政治的に判断することではない」の発言から、十月三日夕刻、法務省幹部を呼んでの「いろいろ問題があるので十分慎重に
検討してほしい」まで、大きく軌道修正をしているかに報道されております。
しかしながら、およそ破防法の適用は、いやしくも党利党略、政治判断によって左右されるべきものでは断じてなく、公安調査庁長官の証拠に基づくかつ適正なる手続を経た請求により、公安
審査委員会が厳正かったんたんとこれを決定すべきものであります。伝えられる
総理の発言は、一部にはいわゆる指揮権発動にも似た動きではないかと
懸念されるおそれもなしとはいたしません。
〔
議長退席、副
議長着席〕
よって、この際、
総理の真意を御披瀝いただき、
国民にいたずらな誤解を与えぬよう、この点について明確な答弁を求める次第であります。
なおまた、所管の法務
大臣は、御
意見があればいかがでありましょうか。
さて、次に移ります。
このたび我が自由民主党は、テレビ公開討論会、所信
発表演説会、そして全国的な街頭
演説会等、新しいメディアもこれをふんだんに取り入れた文字どおり開かれた総裁
選挙を行い、党所属国
会議員、全国党員党友の圧倒的支持のもと、橋本龍太郎新総裁が誕生いたしました。橋本総裁、まことにおめでとうございます。
また、前総裁、河野外務
大臣には、二年二カ月の間、政治
改革、党
改革、とりわけ三党連立
内閣の実現等、数々の業績を残されました。改めて河野前総裁の御努力に対し深く感謝申し上げる次第であります。
ところで、ただいま申し上げた我が党の総裁
選挙において第一の論争の柱とされましたのが、ほかならぬゼロ成長からの脱却であり、本格的な
景気回復、これであります。去る七月の参議院
選挙を戦い、全国を駆け回った私どもがひとしく耳にした有権者の要望もこれまた、長引く不況はもう真っ平だ、一日も早く克服をしろ、この叫びでありました。
今や
我が国は、
バブル崩壊の後遺症と超
円高の進行という悪条件が重なり、三年連続のゼロ成長、おまけに
価格破壊と呼ばれる
デフレ状態の悪循環、これに陥りかねない戦後
最大の難局にあります。ために、
国民の多くはその渦中にあえいでいると言って過言ではありません。
されば、
村山総理も、第二次
内閣の
発足に当たりみずからを
景気回復内閣と名づけて、今
国会冒頭の
所信表明演説において、従来の発想を大きく乗り越え、思い切った
経済・財政
政策を断行しようとするの
決意を表明なさいました。
総理、この本
会議場で拝聴をいたしておりました私は、思わず、とんちゃん、そこだと。失礼をいたしました。いや、
総理、それで行けと、こう叫んで大きく評価をした次第であります。
大蔵大臣の
財政演説によりますれば、今回の
経済対策は、その
規模、総額において十四兆二千億円、うち
公共投資等十二兆八千億円、しかも真水の部分は実に八兆円に達するという、名実ともに
史上最大の
規模であります。(「それでもよくならない」と呼ぶ者あり)これはよくなる。これは第二次
補正予算五兆三千億円についても同様であり、これらの
対策は、
円高や
バブル崩壊で活力を減退させている個々の家計や
企業にとって必ずや強力なカンフル剤となり、もって
我が国を着実な
景気回復へ導くものと信じて疑いません。
そこで、このような未曾有の
経済対策、思い切った
補正予算を組まれた
総理に対し、
景気回復にみずからをかける御
決意のほどをお伺いし、また、この命題達成に向けてどのような政治手段を講ずるのかを
お尋ねいたします。
総理、役人の作文ではなく、
総理のお人柄を愛し、
総理をお支え申し上げている我々にお顔を向けて、あなたの生の声をぜひお聞かせください。
次に、このたび総裁御就任の橋本
通産大臣は、過般、日米自動車協議で強靱かつ積極的な交渉を展開され、見事、世界の自由貿易と
日本の国益とをあわせて守られましたこと、既に御案内のとおりであります。
その橋本総裁は、このたびの就任に際し、決断と責任の政治を標榜され、具体的に三つの自信
回復、とりわけこの一年は本格的な
景気回復に献身すべき旨を訴えられました。この主張を、自由民主党総裁として、はたまた三党連立政権下における
景気回復内閣の副
総理として、どのように実現されるお
考えか、その御抱負をお聞かせ願えればまことに幸せであります。
次に、今、
景気回復の
最大の足かせとなっておりますのが巨額の
不良債権であり、
土地流動化の停滞であります。
不良債権は、
大臣も申されたとおり、四十兆円以上、うち
最大二十兆円とも言われる最終損失をどう処理するのか、この大問題を解決しない限り金融信用システムに対する不安は払拭できません。著名
銀行の国際格付もがた落ち、国際的にも批判が強まっているところであります。
振り返って、不正、乱脈をきわめた東京協和、安全の二億組に始まり、コスモ信組、さらには関西に飛んで木津信組と兵庫
銀行の
経営破綻が明らかになりました。いずれも巨額の不良貸し付けを抱え、放漫な
経営の実態が明らかになりつつあり、その処理、支援のあり方をめぐって大きな
議論を引き起こしております。
住専八社を初め、
不良債権の処理は極めて困難な
課題でありますが、
経済回復のためには何としても早く解決いたさねばなりません。
村山総理もこの
不良債権の処理について、金融
制度の維持、
預金者の保護を
考えて処理しなければならない、必要ならば
公的資金も、かような発言をなされておられます。
ただ、
政府のPRはどうしていつもこう下手くそなのでありましょうか。
国民の中には、信用維持に対する理解がだめで、バブルに乗って巨大な利益を上げ、今日なおリストラも不十分、休職中であるのに月に八十万円ももらっているとかの函館ハイジャック犯人や、今度の大和
銀行ニューヨーク支店など、何かと話題の多い
銀行になぜ公金を出すのかとの声もあります。
この際、
不良債権について、
財務内容のディスクロージャーや
経営責任のとり方、そして、国、日銀、
地方団体、預金保険
機構等の資金援助のあり方なとできるだけ早く
具体策を示し、
金融システムに対する信頼の
回復を図らなければなりません。
総理及び
大蔵大臣から自信のある御答弁をちょうだいいたしたい、かように存じます。
次に、
土地の流動化についてであります。
なるほど地価の
下落はマイホームを夢見る庶民にとっては望ましいことでありましょう。しかし、三大都市圏でも五年連続して地価が急落しております。これが資産の
デフレを招きます。
金融機関の
不良債権を膨らませます。
企業の
投資余力が減退いたします。そして、それらがみんな
現下の
景気低迷の
原因となっております。
今まで
我が国の
経済金融システムは、
土地本位制的な面もあり、凍結
状態の
土地の流動化を図ることが
経済を元気づけるには一番であります。このためにはバブル時の
土地税制の
見直しが不可欠であります。
地価税を凍結し、
土地譲渡益課税の一層の
緩和に踏み切ることであります。そして、有取税、これの再
検討、固定資産税の
軽減等の措置を強く要望いたすものであります。
大蔵大臣の前向きのお
考えを承りたいと存じます。
中小企業対策であります。
急激な
円高は国内
経済の
空洞化を急速に進め、とりわけ
中小企業にかつてない厳しい
経営環境をもたらしているところであります。
市中金利は今や史上最低であります。しかし、
中小企業は、かつての年利七、八%という高金利で長期に借りている
企業も少なくありません。こうした高金利時代に借り入れた既往債務の負担にあえいでいる
経営の救済、これを図るべきであります。
この際、
通産大臣に、金利負担の大幅な
軽減と返済の円滑化について、できるだけ多くの
企業が対象となり、
経営再建に積極的に取り組める、そんな条件の
整備をお願いいたしたいと存じます。御方針をお聞かせください。
次は雇用情勢であります。
現在、完全失業率は三二一%と戦後最悪、
企業内過剰雇用も
考えますと、雇用調整がさらに厳しくなるのではないかなという心配が残ります。
一番のしわ寄せを受けるのは虫周年、女性、新卒の労働力であります。就職浪人は十五万人が見込まれ、女子学生はお断りだという
企業が少なくありません。若者の社会人としての夢がそのスタートから破れるというような
事態は、何としても早急に打開しなければなりません。
雇用支援
事業の適用範囲の拡大や職業紹介の
規制緩和、その他学生のための総合的な就職支援について、
総理のいわゆる人にやさしい政治の
観点から
具体策をお伺いいたします。(「何もない」と呼ぶ者あり)今、
総理の答弁を求めているんです。
終身雇用、年功序列のシステムが崩壊していく中、うまく労働力を流動化するための受け皿づくりが急がれます。このため、ハイテク
産業など成長分野を中心に雇用を拡大していくため、就職支援・能力開発の分野を助成する新たなアクションプログラム、これを
検討すべきであります。
以上の点について
総理の方針をお伺いいたします。
さて、
経済構造改革についてであります。
世界は今や大
競争時代に突入しつつあります。
我が国の
経済もこの大波に洗われ、視界が必ずしもはっきりいたしません。
日本経済の構造
改革が叫ばれて久しいものがありますが、円相場、
株式市場とも最悪の
状態を脱した今こそ、貿易黒字の大幅な削減目標を設定し、輸入
促進、
円高差益の還元、ベンチャービジネスの育成、
経済フロンティアの拡大等、これを中心に
経済構造改革を断行すべきであります。
そのためには、いつまでもぐずぐずしていてちっとも進まない
公共事業の概念の
見直しを初め、従来型の財政から大きく脱皮し、新たな
産業・雇用を創造する起爆剤の役割を果たす分野、例えば
情報通信・
科学技術を国の最重点分野と位置づけ、かの光ファイバー網の
整備やその利活用の方策、そうして
情報通信技術の開発などに重点的に
投資を行うべきであります。
総理並びに郵政
大臣の御
所見をお伺いいたします。
今回の
経済対策が
発表されて直後、先ほどもどこかで御発言がありましたが、円相場や株式相場に一時的若干マイナス現象が生じました。
投機筋の相場に一喜一憂は慎むべきでありますが、
市場等に材料の出尽くし感が出ていることはやはり熟考すべきであります。その大きな
原因としては、
日本経済の中長期的な
政府の展望が明確でないことを挙げなければならないのではないでしょうか。
橋本総裁は、創造的
経済システムの構築を目指し、強い
日本経済再建の三段階のシステムを主張されております。このように、今一番求められているのは、斬新なイメージで
国民のエネルギーを結集できる具体的な計画、これであります。
目下、
経済審議会で新
経済計画の策定を
検討されている趣でありますが、この中で、前述の貿易黒字の大幅な削減目標を明確にし、
景気回復、構造
改革のためのダイナミックなシナリオが織り込まれるべきと
考えます。
総理並びに副
総理、いかがでございましょうか。
以上、私の
質問を締めくくるに当たり、最後に一言申し上げたいと存じます。
今まで申し上げた
経済問題以外に、今後、APECの
議長国としての責任ある
対応など、重要な外交
課題がメジロ押してあります。オウム真理教のような凶悪事件の未然防止
対策や宗教
法人法の改正、阪神大震災等、震災等の危機管理体制も大きな内政上の
課題となっております。
このようにかつてない国内外の難局に対処するためには、
与党三党すべからく
一体となって取り組むとともに、議会においては与野党ともに
国民、国益のため真剣に審議を進めてまいらなければならないと存じます。
私ども自由民主党は、橋本総裁のもと、新しい体制で重要懸案事項の処理に尽力する
所存でありますが、政局は予断を許さず、
総理のおひざ元にもその帰趨の不透明な部分が決してないわけではないようでございます。
総理とされましては、
現下の
最大の政治
課題、使命達成のため、大局的視点に立って、ぜひとも強いリーダーシップを発揮され政治への信頼
回復を図られますようその御
決意を伺って、
質問を終わります。
村山総理、一生懸命頑張ってまいりましょう。(
拍手)
〔
国務大臣村山富市君
登壇、
拍手〕