○橋本敦君 私は、
日本共産党を代表して、
村山総理の所信表明に対し
質問いたします。
質問に先立って、
日本共産党は、またも
フランスが
世界に広がる
核実験禁止、
核兵器廃絶の願いを踏みにじり
核実験を強行した暴挙に対し、断固たる
抗議を表明するものであります。
さて、さきの参議院
選挙の投函率は四四・五%と史上最低となりました。これは、米輸入
自由化を初め、消費税の税率アップ、年金支給開始年齢の引き上げなどの公約違反の
政治、それと
国民不在の政争に対する強い批判のあらわれであります。わけても連立与党の議席の後退は、悪政
推進に直接
責任を負う政党に対する
国民の明白な審判であります。
総理、
社会党は
史上最大の敗北となりましたが、これは
社会党が公然と自民党
政治の一翼を担うに至り、安保、自衛隊、消費税問題などで明白にこれまでの
基本路線に反した結果、
国民の厳しい批判を受けたのではありませんか。無党派と言われる人々も含め多くの
国民は、公約を守るまともな
政治、筋の通った
国民本位の新しい
政治を求めているのであります。
総理はこの
国民の審判をどう受けとめ、みずからの
責任をどう
認識しておられるのか、明確にお答えください。
まず、
景気対策について伺います。
今日の
不況は、四年間のゼロ成長、過去最高の
失業率、青年や女性の厳しい就職難、
中小企業の相次ぐ倒産、廃業、個人消費の三年連続の落ち込み、中小
金融機関の経営破綻などと戦後最悪の様相を呈しています。
政府はこれまで五回にわたり
景気対策に約四十八兆円もつぎ込みましたが、それにもかかわらず
日本経済は一向回復の兆しが見えません。
政府の今回の
経済対策もその
基本は、十二兆八千百億円の巨額の公共投資で
景気の下支えをするという相も変わらぬ従来型の繰り返してあります。
まず、これまでの
経済対策をどう
評価し
反省するのか、根本的な
見直しと
検討が必要ではありませんか。真の
景気回復の道、そのかなめは、無
反省に従来型を継続するのではなく、この際、思い切って
国民生活を直接向上させる
対策を講ずることではありませんか。
そのために、悪魔のサイクルと言われる異常
円高の根源にメスを入れる根本
対策、大
企業の人減らしリストラを抑え、
雇用安定を進めることはもちろんでありますが、巨額の公共投資についてその重点をもっと
国民生活密着型、
福祉型の公共事業優先に変えるべきであります。例えば、
国民が願う
教育条件の整備、
高齢化社会に
対応した住宅建設など、
景気の
活性化に直結する公共事業の需要は無数にあるではありませんか。
阪神大震災の復興も急がねばなりません。
政府も公共事業の中に震災復興
対策を入れてはいますが、大きなビルが建ち並び道路ができても、それだけでは真の復興になりません。人々が我が町に戻ってこそ町はよみがえります。そのためには、被災地復興の最優先
課題として、市民がそれぞれの生活圏内で住める公共住宅を大量に建設することが必要です。それとともに、我が党がかねてから
主張しているように、一夜にして我が家を、資産を失った被災者に対し、個人補償を行うべきではありませんか。それは個人の住宅再建を大きく促進し、
地域での多数の関連業種の仕事をつくり出し、
景気回復の大きな支えになることは疑いないではありませんか。
景気回復のもう一つの重要な柱は、
国内総生産の六割を占めるといわれる
国民の消費購買力を大きく引き上げることであります。
総理、今、
国民が買いたいものがあっても買えない、無理をしても貯蓄しなければならないという思いに迫られているのはなぜかおわかりでしょうか。消費税率の引き上げ、老後の不安、
失業や病気の心配、高額な
教育費の
負担等々、庶民の暮らしは追い詰められているのです。
しかし、こうした問題は、すべて
福祉、
教育、
医療など、本来
政府がやるべきことをやらず、後退させてきた結果ではありませんか。法人税、土地税制、有価証券取引税、みなし配当課税など、一握りの大
企業が潤う
見直してはなく、
政治の流れを変えて庶民減税と公共料金値上げストップ、
教育、
福祉、
社会保障の
充実など、国のやるべき
責任を果たしたらどうですか。そのためにも消費税増税はきっぱりやめるのが当然であります。
総理、いかがですか。次に、金融問題であります。
二信組問題に始まり、今年に入って
金融機関の破綻と莫大な不良債権の
処理が問題になっています。その背景には、
政府や日銀が八〇年代以降金融
自由化を急速に推し進め、次々と規制緩和を図り、プラザ合意以降アメリカの言いなりの超低金利政策をとって金融をだぶつかせてきたことがあります。まさにこれらの政策がバブルを引き起こしためであり、まず問われなければならないのはこの
責任ではありませんか。
さらに、住専問題をめぐっては、設立母体銀行の
役割と
責任、住専が不動産投機にのめり込んでいくことを事実上容認した大蔵省の指導
責任、これも厳しく問われねばなりません。さらには、監督官庁たる大蔵省高級幹部の驚くべき腐敗と綱紀の緩みは何ということでしょう。これらの問題について、一体大蔵大臣はその
責任をどう
認識されているのか、伺います。
次に、公的
資金の導入問題であります。
大銀行などの不良債権の
処理に当たっては、預金保護や金融秩序維持の名目で、乱脈経営のツケをやすやすと
国民の税金で穴埋めすることなどは断じて許されません。バブルの時期に大きな利益を上げた大銀行は巨額の内部留保を持ち、さらに相次ぐ金利の引き下げても莫大な利益を得ています。その上、今回の史上最低○・五%への公定歩合引き下げても、銀行の利益は来年の春には四兆七千億円にも上るだろうと見られています。それなのにどうして
国民の税金で救済する必要がありますか。
さらに、大蔵大臣、六兆とも八兆円とも言われるこの不良債権について、その巨額の
資金の行き先ほどこなのですか。だれが返済もせず不当に利得している結果となっているのですか。乱脈経営
責任の究明とともに、これらの問題を
国民の前に明らかにすることは当然ではありませんか。大蔵省はどう
対応しますか、具体的にお答えいただきたい。
言うまでもなく、公定歩合引き下げによる史上最低の利子で預金の目減りに苦しめられているのは
国民です。
政府が真に
国民の預金を保護するというのなら、せめて高齢者世帯や母子世帯の貯蓄を守るために、銀行預金、郵便貯金に対し、異常な低金利政策に左右されずに常に特別の金利を保障すべきではありませんか。
総理の
見解を伺います。
次に、
沖縄の許すべからざる
米兵暴行
事件であります。
あどけない少女に対する
米兵の非道きわまる犯行を、
日本国民として、人間としてどうして許せるでしょうか。
米兵が野蛮な野獣と化して抵抗もできない幼い少女をじゅうりんするその暴虐、それなのに日米
地位協定のため
日本の警察が犯人の逮捕もできない。その無念と民族の屈辱に
沖縄県民の怒りが沸き起こり、それが今、
日本じゅうに燃え広がっているのは当然であります。
沖縄県民が犯人の引き渡しと日米
地位協定の
見直しを強く要求しているまさにそのときに、
政府は何をしたのでしょうか。犯人の引き渡しを要求しなかったばかりか、アメリカの要求はやすやすと受け入れて、
地位協定には根拠のない思いやり予算を増額し、新たに米軍の戦闘訓練費まで
負担することを約束しました。何という対米追随の屈辱的な態度でしょう。なぜきっぱり拒否できないのですか。
ある新聞は、基地が少女に襲いかかったのだ、
沖縄では人間の存在と尊厳が日々侵されていると書きました。一体、
総理は、
戦争中は悲惨な戦場となり、戦後も米軍占領下に置かれて、今日まで基地の重みに苦しみ耐え続けている
沖縄県民の怒りが本当にわかっているのですか。
総理、
日本の捜査権を侵す米軍の治外法権的特権はこのままでよいとお考えですか。
日本の主権と
国民の尊厳にかかわる重大問題です。日米
地位協定の改定を緊急の
課題として直ちに取り組むべきであります。
総理の
責任ある
答弁を求めます。
次に、安保・防衛問題について伺います。
社会党はさきの参議院
選挙で
軍縮を公約に掲げました。その一つは、
軍事費の伸び率を前年度並みに抑えるというものであります。そもそも
軍事費の伸び率を抑えるというのは、それだけでは本来
軍縮の名に値しないものですが、それさえ守れず、
軍事費の伸び率は今年度を上回る二・九%増となりました。
第二に、正面装備は強化しないと言っていましだが、この公約にも反し、その内容は一機百二十三億円もする
支援戦闘機百四十一機、総額二兆ないし四兆円にも及ぶ戦域ミサイル防衛など限定的かつ小
規模の
侵略への対処という現在の防衛計画大綱を超える装備強化の方向であることは明白であり、早くも公約が破られたのです。
総理、一体
国民にどう説明されるおつもりですか。
また、
総理は、自衛隊の高級幹部会同で
日米安保条約の強化を公言されました。そして、九月二十七日の日米安保協議では、十一月の日米首脳会談で新しい
時代における日米の
役割を明らかに示すことで一致したというのであります。これまで
政府は、
日米安保条約はソ連の脅威に対処するためと、こう言ってきました。そのソ連が
崩壊してその日実がもはやなくなった今日、
日米安保条約の存在そのものが問い直されるべきなのに、新しい
役割の確認など一体どういう必要があるのでしょう。
アメリカのペリー国防長官は、米軍と自衛隊が
世界の安全保障のために助け合うことで将来に備える、こう
演説しています。一方、九月二日訪米した衛藤防衛庁長官は、
日本領域に限らず
世界のあらゆる
地域で
行動する米軍に対して給油や輸送で自衛隊が協力するという物品役務融通
協定を締結して、これをPKOにも適用したい、こう言っています。
このように、
総理、
日米安保条約の再定義なるものは、現在の日米
軍事同盟と日米共同作戦を
世界的
規模、全体に広げようとする重大な改悪であり、
総理の
責任ある
答弁を求めたいのであります。
日米安保条約は
日本の主権を侵すだけではありません。
軍事費の
増大を押しつけ、さらには
世界のどこでも日米共同の
軍事行動を進め、
憲法の平和原則を踏みにじっていく大もとになっています。今こそ
日米安保条約の解消に向けて真剣に
検討を進め、核も基地もない
日本を目指すべきです。そうしてこそ、敵対でも従属でもない対等平等の真の日米友好関係が築かれるでしょう。それが
日本の正しい進路を開く
政治家の
責任ではありませんか。
次に、
農業問題について伺います。
日本の
農業は、米輸入
自由化、新農政による大
規模経営の
推進、さらにこの十一月から施行される新
食糧法のいわば三悪農政によっていよいよ重大な
危機に追い込まれています。
この新
食糧法は、米の生産と供給を
基本的には市場原理に任せて
政府の
責任を放棄するもので、農民には、米の
価格が暴落するのではないか、このまま米づくりを続けられるのだろうかという深刻な不安が広がり、消費者は国産米の安定供給が脅かされようとしています。既に施行を前にしてアメリカの巨大穀物商社や
国内の総合商社などが米市場に参入してきており、米価の乱高下や投機の危険は
現実のものとなっています。
この事態に対し、何よりもすべての農家が安心して米づくりが続けられるように、米価の下支えの仕組みをどう
確立するつもりですか。これは
政府の差し迫った
責任のある問題ではありませんか。農水大臣の具体的な
答弁を求めます。
この点で我が党は、当面、
政府の買い入れ米の
数量を三百万トンにふやし、買い入れ
価格も再生産が保障できる
価格として六十キロ当たり最低二万円以上にする必要があると考えていますが、
政府の
見解を求めます。
最後に、オウム真理教についてであります。
ついに坂本弁護士一家は帰りませんでした。生きて帰ってほしいという切実な願いはついえ、限りない怒りと痛恨の思いが広がっています。
この凶悪な反
社会的犯罪
集団に対しては、刑法によって厳重に処断するとともに、
宗教法人法により一刻も早く解散させることは当然であります。それが本来の筋道、正攻法であり、また最も
実効性があるものです。しかるに、オウム
事件に死に体となっている破防法を適用しようとする動きが出ていますが、これは
憲法と民主主義の名において断じて容認できません。
そもそも破防法の重大な問題は、
国民の自由な
政治活動を
国家権力が取り締まり弾圧する目的で公安調査庁という名の秘密
政治警察をつくり、日常的に調査、監視し、ひそかにスパイ活動を行うことであります。実際に公安調査庁は、これまでも調査対象は独断で決め、政党、労働組合、
市民団体に対し、身分を隠したりしながら数々の不法不当なスパイ活動を行ってきているではありませんか。これが
国民の結社の自由、思想、信条の自由に対する重大な侵害であることは言うまでもありません。このような秘密
政治警察が
憲法と相入れない存在であることはだれの目にも明らかではありませんか。
総理、民主
政治のもとで秘密
政治警察の存在が許されるとお考えですか。
破防法は制定当時、広く
国民の各界から、戦前の悪名高い治安維持法の復活ではないかなど、
憲法違反の悪法を許すなど大きな反対意見が沸き起こり、
国民的大闘争となりました。今日までの四十三年間、一度も団体規制が行われなかったのは、この破防法がまさに民主主義の根本に背く悪法だからにほかなりません。このような破防法をオウム
事件を機会に持ち出し、紛れもない秘密
政治警察であり本来は解散すべき公安調査庁を認知するようなことは、それこそ民主
政治に対する重大な暴挙であります。
総理は、きのう我が党の志位書記局長の
質問に対し、この法律は
国民の
基本的権利に重大な関係を持つものであり、厳正かつ慎重に運用されるべきものであると考えておりますと
答弁して、
総理自身の
見解を示されましたが、そうであれば、
行政庁任せにするのでなく、
我が国民主
政治の根幹にかかわるこの重大な問題について
総理御自身の判断と
責任で厳正に対処するよう強く求め、重ねて
日本共産党は破防法の適用に断じて反対であることを表明して、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣村山富市君
登壇、
拍手〕