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参考人(山口廣君) 山口でございます。
私は、現在審議されております
改正案、ぜひとも実現していただきたいという熱い気持ちでおります。よろしくお願いいたします。
私自身は、
全国霊感商法対
策弁護士連絡会という全国の三百名で形成されております弁護士とともに、霊感商法の被害者の救済と根絶にこの九年間ほどかかわってまいりました。文字どおり超党派で、政治とは
関係のない弁護士の
団体です。
私
ども、九年間で一万六千人余の市民から被害相談を受け、被害合計額は何と六百三十億円に達しております。そのデータの詳細はきょうお配りさせていただきました資料2をぜひごらんいただきまして、深刻な
実情をごらんいただきたいと思います。
私が最も許せないのは、
先祖を考え、自分の将来を考え、幸せになりたいという熱い気持ちのあるまじめな
方々がひっかかっている、このことがどうしても許せないのであります。
手口についてはもう既に広く報道されておりますが、簡単に言わせていただきますと、まず戸別訪問で印鑑や数珠を売りつけます。これが四十万円です。そしてその後、霊場に連れていって大理石のつぼや多宝塔を売りつけます。その後、もう一回霊場に連れていって一本八万円のニンジン液を、先日相談者は五百本、つまり四千万円買わされておりました。あり金すべてを何回もそこに連れていってはたき出させる、このマニュアルが高度にでき上がっているのであります。
広く報道されるようになってからは、さすがにつぼ、多宝塔はなくなりましたけれ
ども、今でも街頭で声をかけて数珠や印鑑を売りつけ、その後、韓国のメーカーでつくっているものですからさばかなきゃいけない、教団でさばかなきゃいけないので、これをノルマ化して信者に買わせ、また市民に売りつけている。この手口は今も続いているということをぜひ御認識していただきたいと思います。決して過去の問題ではございません。
私自身も、この八年間余にわたって四百人以上の統一教会の元信者、あるいは霊感商法の元被害者に話を聞いてまいりました。この九年間、さまざま私は考えさせていただきましたし、
宗教についての認識も改まったと認識をしておりますが、その中でぜひきょう申し上げたいのは三点ございます。
第一に
宗教の重要さであります。言うまでもないことですが、改めて申し上げさせていただきたいのは、今、特に若者やそれから私
ども団塊の世代の特に女性、それから高齢者に
宗教に対するニーズといいますか、熱いものがあるということを御認識いただきたいと思います。まじめであればあるほどそうです。
現代の若者が、例えば大学生が何を人生にかけるのか、それを見出すのはなかなか難しい御時世だと思います。そんなときに、特に
宗教、生きる教祖を
中心に内閉的、独特な別世界、別共同体を形成しているカルト的な教団は、簡単に、何のために生きるのか、人生の
目的は何なのかということを非常にわかりやすく答えを出してくれる。若者を引きつけます。
団塊の世代の主婦は、夫が
仕事にスポイルされ、子供は学校でそれなりの世界を形成し始めますので、自分が必要とされているという実感、つまり妻として母として必要とされているという実感を喪失しておる人もかなり多いと思います。そんな心の空洞に、
宗教はこの空洞をいやしてくれると思います。
また、私
ども団塊の世代が六十歳になる二十一世紀初頭には、体は丈夫だけれ
ども企業は厄介者にするという行き場のない高齢者がたくさん生み出されるはずです。その我々にとっても
宗教というのは切実な、重要な問題になると思います。
二番目に強調したいのは、破壊的カルトと言われる教団のマインドコントロールの恐怖です。
私自身、教団の財政のために売春をさせる教団の相談を受けたことがございます。教団のために売春をする、これは決して単純に指示されてやったわけじゃないんです。一年間にわたって教育を受けるわけです。女性はだれのためにあるのか、あなたは何のために生きるのか、神は何を望んでいるのか、女性の体は神様のものですよ、それを神のために使うことの
意味は何なんですかよく考えてごらんと。一年かけて外部の情報を遮断した中で教理とその実践の
意味を教え込んでいきますと、真面目な女性がみずから体を売って
お金をつくることが正しいことだと思うようになるんです。サリンをまいて人を殺すことを正しいと思うに至る過程と同じです。人をだまして教祖のために
お金を巻き上げることが正しいことになる。その人の救いになると感じるようになるのと同じなんです。
私自身、統一教会の信者から言われました。教祖の文鮮明氏が、山口を殺してこい、その方があいつが霊界で救われることになるんだともし言ったならば、私は恐らくやったでしょうと、そういう信者から何人も話を聞きました。彼らにとっては、サリンで人を殺す、あるいは坂本弁護士一家を拉致して殺す、決して奇想天外な話じゃないんです。マインドコントロールされている教祖から指示されればやります、あるいはやりかねないという、そういうマインドコントロールの恐ろしさ。私自身は、マインドコントロールというよりもマインドオールタネーション、つまり心の入れかえ、あるいは心を交代させる、それを強制するというそういう手口、テクニックだと思いますが、これが一定の
目的になされた場合には、かなりの恐ろしいことが可能になるし、またそういう恐ろしさを秘めたカルト
集団が若者を引きつけているという
実情をぜひ御認識いただきたいと思います。
第三に、
宗教行政の問題点です。
八七年に私
ども霊感商法の問題を始めまして、それに対抗するべく統一教会は霊石愛好会という別働隊をつくって私
どもを批判し始めました。そしてその後、八八年の二月ごろから天地正教というダミー
組織をつくりまして、そこで被害者をまたつくり始めました。
北海道庁が
認証したばかりの
団体だったものですから、私
どもは北海道庁に赴きまして、
認証を取り消すべきだ、あれはダミー
団体で被害者がたくさん出ていますよ、問題じゃないですかということを言ったんですが、北海道庁の担当者は、一たん
認証した以上どうしようもない、
認証取り消しの
事例はないんですということを言われました。私
どもまた宗務課に何回も赴いて会って、霊感商法の問題を何とかしていただきたいということについても申し入れてきたんですが、実効性あることは全くしていただいておりません。
また、私
どもの相談窓口には、霊感商法の問題だけではなくて、ほかの教団の問題も多数持ち込まれます。ほかに相談の窓口がないんです。したがいまして、先生のところでこの問題をぜひ扱っていただきたいというほかの教団の問題もたくさん参ります。その一部の資料をきょうの資料の第九の中で配付させていただいておりますので、後ほどごらんいただきたいと思います。
つまり、祈祷料とかその他いろいろな名目で市民が被害に遭って私
どもに相談に来ておりますし、またうちの子供、うちの女房が急に人が変わったようになってしまった、いなくなっちゃった、どうしたらいいんだろうという大変深刻な相談がたくさん参ります。
また、そういう中で、海外で問題になっている、刑事摘発を受けているとか、あるいは税務上
宗教法人と認められていないそういう
宗教団体が
日本に入り込んできて、そして若者を引きつけているという問題もわかってまいりましたし、オウム真理教の問題も出てきました。
そこで、私自身宗務課の方に会って、そういう
実態は
御存じですか、こういう
団体がありますけれ
ども、こういうことをやっているけれ
ども御存じですかということを申し上げました。そうしたら知らないと言っていました。知らないなら、まず何をすべきかを検討する前に、調査してください、そのことぐらいはしていいでしょうということを申し上げたんですが、そういう
権限はないんですということをお話しになりました。
今でも私は明確に覚えているんですが、その方がこうおっしゃったんです。戦前の反省に立って、戦後の
宗教行政というのは何もしないことが
宗教行政なんだと、こういうふうにはっきり言われました。私自身はもうどうにもならないなとそのとき思ったわけですけれ
ども、あのときあるいはこれまで少しでも調査していただいていれば、あのサリン事件は防げたのではないかと、今でも私は残念でしょうがありません。
また、
国民生活センターや消費者センターにも少なからずこの
宗教絡みの相談が来ているはずです。しかしながら、これまで私自身、
都道府県の
宗教担当の方と、あるいは
文部省宗務課の方と
国民生活センターや
宗教の所轄の担当者が情報交換している、一緒に
活動しているということを聞いたことがない。もう少し連携して何とかやっていただけないだろうかと思うんです。
宗教へのニーズは高いものがあります。破壊的カルトであるほど勧誘や資金集めに熱心です。そこでは、教団は特定のねらいで市民に近づいて心を変え、そしてその特殊なテクニックが使われます。それをチェックするシステムが全くないのが
実情なんです。これではオウム真理教のごとき事態が私は必ず再発すると思います。
法律を
改正しなくても、当局や弁護士が
努力すれば
現行法で十分対処できるはずだということを言う方がいます。確かに、私自身、
行政や司法当局、もう少しやっていただければ防げたのではないかという気はいたしますが、しかしながら、この種の事件の
行政や司法のチェックは
現行法上非常に難しいと思います。ブラックボックスになっている
宗教法人の財政とか運営を
現行法上外部の者がどうやってチェックできるのか、実際問題わからないんです。
霊視商法主言われる統一教会の霊感商法をもっと露骨にして仏教的粉飾を凝らした
宗教法人の
組織的資金集め問題も、数年前から私
どもの窓口にもたくさん来ておりました。ある県警でこれを摘発しようということで周到な捜査がなされたんですが、私の聞く限りでは、検察庁の担当者が
宗教にはある程度のおどしはっきものだという
判断でこの摘発を断念したというふうに聞いております。幸い、ようやくことしの十一月になって愛知県警が摘発していただきまして、詐欺罪で公訴提起されておりますけれ
ども、私は遅きに失したと。しかしながら、検察官がそうおっしゃったのもよくわかるし、警察の苦労も本当によくわかるつもりでおります。
もちろん、
霊視商法についても弁護団が編成されまして、二百五十三名の被害者について五億五千万を回復する勝利的和解をから取っておりますが、それでもこの手口は、この
宗教法人は東京からさらに関西に、そして九州にまで手を広げて、被害の拡大をこれまでしておりました。
しかし、
宗教絡みの詐欺、恐喝事件の摘発というのは大変難しいものがあります。例えば、オウム真理教の件で警察が三月に上九一色村のサティアンに強制捜査に入りました。このときに、信者
たちがスピーカーで無間地獄に落ちると警察官をののしっていたのを
御存じだと思います。我々から見れば、あるいはお巡りさんから見れば何を寝ぼけたことを言っているのかということだったと思いますが、しかしオウムの信者にとっては、無間地獄に落ちるということは死ぬよりも怖いことなんです。永遠に続く霊界の地獄で永遠に責めさいなまれ続ける、その姿が彼らにとってはリアルに思い浮かべられるんです。大変な脅迫文言です。しかし、私
どもにはそれは理解できない。
統一教会の霊感商法でも同じです。例えばこう言います。あなたの御主人の今、奥さん、子供さんの健康とあなたが親から相続した財産とどっちが大事なんですか。このままでは霊界からあなたに救いを求めているお母さんが救われませんよ。あなたの娘さんは、あなたの七倍の重荷を背負ってこれからあなたと同じ不幸な運命をたどることになるんですよと。こういうことを、めったに会えない偉い霊能師と信じている、信じさせられている方からじっと目を見詰められて、閉ざされた場所で長時間説得されるわけです。
しかも被害者は、数カ月かけて家系図をとられて、生い立ちから今に至るまでのプライバシーをすべて聞き出されています。霊界が実際に存在していることとか、
先祖の罪の因縁とかあるいは殺傷因縁、そして色情の因縁があるんだということを吹き込まれているんです。その上、横に付き添った方が頑張って頑張ってよ、あなた、よかったわね、救いになるわよと励ますものですから、なかなか否定できない。このような特殊な
状況をマニュアルに沿って意図的に設定されているわけです。その中でやはり言われると、これはやっぱりその被害者にとっては恐怖なわけです。
しかしながら、これを
宗教に縁のないお巡りさんに理解していただくことはなかなか難しい。さらにお巡りさんは、警察官は、検事も説得しなきゃいけませんし、裁判官を納得させる資料も集めなきゃいけない。そうなると、なかなか難しいというのが
実情です。このようなオウム真理教や霊感商法、
霊視商法の手口を不法
行為として断罪するというのはなかなか難しいところがあるということをぜひ御認識いただきたいと思います。
特に、
宗教法人は公益
法人として税務上の特典を与えられておりますので、私は、今回の
改正である程度の経理を
所轄庁に
報告する、あるいは信者に開示するということは最低限のこととして全く差し支えない、あるいはこれが
宗教の侵害になるものではないというふうに思っておりますので、ぜひ御理解いただきたいと思います。また、この提出の義務づけは、休眠
法人がたくさん問題になっておりますが、これを
解散させる
手続にも役に立つというふうに思っております。
最後に、私どうしても申し上げたいのは、
宗教界の皆さんが協議して早急に
宗教情報センターのごとき民間
団体を
組織していただきたいということであります。そこで率直に話し合って、
宗教団体として好ましくない勧誘
行為とかあるいは信者勧誘のあり方などについてガイドラインのようなものをつくっていただきたいと思うんです。ECでは決議がされております。国会でも御審議いただきたいと思いますが、ぜひ
宗教団体みずからそういうガイドラインを考えていただきたいと思います。
我々外部の者には、
宗教界の皆さんが日常的に行っている信者勧誘や献金を勧める
活動の
実情がわかりません。
宗教界の
方々がみずから協議して、勧誘に当たっては、例えば教団名と最小限の
教義とか信者の
責任くらいは説明しなきゃいけない、あるいは
先祖の因縁でということでおどして一時間以上献金を要求してはいかぬとか、あるいは十万円以上のお布施や献金についてはきちんと領収書を出すようにしましょうとかそういう基準をみずから相談して決めていただきたいと思うんです。
もちろん、これを守らない教団や
宗教家も出ると思いますが、しかし多くの
宗教団体の
方々がこれに賛同して、それが公表されているということになれば、私は
宗教に対するイメージや信頼ももう一度高まると思うんですね。
その
意味で、ぜひ私は、二十一世紀に大事なものですから、
宗教団体の
方々にもう一度
宗教を見直す、
宗教一般を見直す
努力をしていただくようにぜひお願いしたいと思います。
以上です。