○
国務大臣(
河野洋平君) 安保
条約の役割についてはいろんな
議論があると思います。今、
議員が
お話しになりました三つの効能といいますか役割の中で、瓶のふた論というのもよく言われる一つですけれども、私は
日本人として、安保
条約があるから
日本は危なくない、
日本が軍事
大国化をしないのだ、あるいは軍事力をもって出てくることはないのだ、
日本がそういうことにならないのは安保
条約があるからだなどと言われることには非常に抵抗を
感じます。
私は、
日本の国が軍事
大国化しないのは、あるいは軍事力によって何かしようとしないのは
国民の意識の問題であって、安保
条約によって瓶にふたがされているからではないということははっきりとそうした瓶のふた論をおっしゃる方には申し上げなければならないと思います。
我が国は、
国民の意識、
国民の総意によって現在の
憲法というものが維持されている。その
憲法が維持されているということは、とりもなおさず軍事力によって
国際的な紛争を解決しようという意思を持たないということになっているわけで、安保
条約の効能が瓶のふただというこの問題については、私は
日本人のプライドにかけて、いや、それはそのとおりですと言うわけにはいかないというふうにまず思うんです。
それから、確かに
議員がおっしゃるように、軍事力によって問題が解決されることはないという御
指摘がございました。今回のボスニアの問題を見ても、私はボスニアの和平が本当に
意味があって、これもまだまだどういうことになるか十分注視する必要があるとは思いますけれども、しかし和平が達成をされたあの最後の場面は、確かにテーブルに着いて、二十一日間も指導者がテーブルを囲んで真剣に
考えた結果和平というものが達成せられた、このことは間違いのない事実でございます。
しかし、そこに至るまでに、では一体どんなことがあったかということもまた
考えてみなければなりません。そのことは、プラスもありました、もちろんとうとい人命をたくさん失うという大変なマイナスもございました。しかし、そこに至るまでに、例えばNATO軍が果たした役割というものは
評価すべきなのかすべきでないのかとか、いろいろな角度の
議論というものはあるだろうと思うんです。したがって、私は、確かに
議員がおっしゃるように、恒久的に問題を解決するのは軍事力によるものではないだろうと思います。最終的にはやっぱり政治力といいますか、
人間同士が英知によって問題を解決するということが一番いいということは全く合意いたします。
しかし、例えばイラクがクウエートに攻め込んできてしまった。そのときに言葉だけで問題が解決できただろうかというと、それはなかなかそうはいかなかったかもしれません。つまり、いろいろな場面を
考えてみるに、お説のとおり全く軍事力というものを論外にして
議論をするというわけにはなかなかいかないのではないかというふうに私は思います。
それから、
我が国周辺の問題についてもまだまだ透明度が足らない、不透明な部分が多い、不確実な部分が多いということも否定のできないことでありましょう。それを、我々はできる限り透明度を高めてほしいということを主張し説得をしても、それは徐々にそういうことが進むかもしれませんが、いっそうなるかということについては我々にはしかとした期限は切れない
状況でございます。
ということになれば、我々はやっぱり、政治にかかわり責任を持つべき立場にある
人間は、与えられた前提条件の中で最善の選択をしていかなければならないのではないかというふうにも思うわけでございます。私は、与えられた前提条件、しかもそれが直ちに変えられない前提条件であるならば、やはりその前提条件の中における最善の選択をする、そういう
努力が必要だろうと思います。
最後に、
議員お話しになりました三十年程度の相互不可侵
条約について
努力をすべきだという御提言は、それをどことやるかという問題がございます。例えば、日中平和友好
条約の中には、相互に不可侵ということはもう既にうたわれているわけでございます。
いずれにせよ、
国連を初めとする
国際場裏では
お互いが相互不可侵であるということはそれぞれが確認をされているわけで、いや、それは一般的なものであって、バイ、二国間で、あるいは
議員のおっしゃるように三国で改めてやるということに
意味があると。これはやや精神的なといいますか、
意味が私は全くないとは申しませんが、既に相互不可侵
条約というものの持つ重さというものについては、それぞれがいろいろな経験から
感じていることもあって、ただ単にそのことだけでは私は十分ではないのではないか。むしろ、
国際社会の中における相互依存
関係をもっと深めていくことによって、
お互いがチェック機能を持つことができるというふうに私は思っております。