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1995-11-09 第134回国会 参議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成七年十一月九日(木曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  十一月八日     辞任         補欠選任      田村 秀昭君     鈴木 正孝君  十一月九日     辞任         補欠選任      田沢 智治君     山本 一太君      武見 敬三君     阿部 正俊君      宮澤  弘君     中原  爽君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         木庭健太郎君     理 事                 笠原 潤一君                 野沢 太三君                 寺澤 芳男君                 矢田部 理君     委 員                 阿部 正俊君                 大木  浩君                 中原  爽君                 成瀬 守重君                 矢野 哲朗君                 山本 一太君                 鈴木 正孝君                 高野 博師君                 畑   恵君                 川橋 幸子君                 照屋 寛徳君                 立木  洋君                 武田邦太郎君                 佐藤 道夫君    国務大臣        外 務 大 臣  河野 洋平君    政府委員        防衛施設庁総務        部長       大野 琢也君        防衛施設庁施設        部長       小澤  毅君        防衛施設庁労務        部長       早矢仕哲夫君        外務大臣官房審        議官       谷内正太郎君        外務省総合外交        政策局長     川島  裕君        外務省総合外交        政策局軍備管理        ・科学審議官   河村 武和君        外務省アジア局        長        加藤 良三君        外務省北米局長  折田 正樹君        外務省欧亜局長  浦部 和好君        外務省中近東ア        フリカ局長    法眼 健作君        外務省経済局長  原口 幸市君        外務省条約局長  林   暘君    事務局側        常任委員会専門        員        大島 弘輔君    説明員        警察庁刑事局刑        事企画課長    篠原 弘志君        防衛庁防衛局防        衛政策課長    守屋 武昌君        防衛施設庁総務        部総務課長    野津 研二君        防衛施設庁総務        部会計課長    石井 道夫君        法務大臣官房審        議官       木原 武久君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び  に日本国における合衆国軍隊地位に関する協  定第二十四条についての新たな特別の措置に関  する日本国アメリカ合衆国との間の協定の締  結について承認を求めるの件(内閣提出、衆議  院送付)     —————————————
  2. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日、田村秀昭君が委員辞任され、その補欠として鈴木正孝君が選任されました。  また、本日、武見敬三君が委員辞任され、その補欠として阿部正俊君が選任されました。     —————————————
  3. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 次に、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題とし、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 大木浩

    大木浩君 大臣が衆議院の方の委員会でまだおいでになりませんので、まず最初に事務方を対象にして御質問をスタートさせていただきたいと思います。  御存じのとおりに、本日議題になっております、これは大変長いあれなので便宜的に新特別協定とでも呼ばせていただきたいと思いますが、この協定は、もちろん日米地位協定を基礎としてできておるし、そのまたもとには日米安保条約ないしは日米安保体制というものがあるわけでございます。最近沖縄でああいう不幸な事件があったことを契機にして、あるいはいずれ近くまた日米首脳会談が行われるというような状況背景としていろいろと新聞でも、新聞を読むと日米安保問題、日米安保体制についてのいろんな記事が毎日出ておるわけでございます。  大臣おいでになる前に、少し日米安保体制の現状のおさらいをさせていただきたいわけでございます。  日米については、こちらからアメリカに対していろいろと注文をつけるというのが今非常に表面化しておるわけですけれども、ではアメリカとしてこの日米安保体制あるいはアジアにおける防衛問題をどういうふうに理解しているかということになりますと、先般、二月二十七日でしたか国防省の方で、あれはナイ国防次官補が中心になってまとめたペーパーだと思いますが、アメリカの新しい東アジア太平洋地域における戦略構想というのが発表されておるわけでございます。  あのリポートを読みますと、戦後のといいますかポスト冷戦時代アジア地域における構想というものをアメリカはいろいろ分析いたしまして、残念ながらポスト冷戦時代においてもやはりアジアにおける情勢というのは防衛という点から考えても非常に不安定であるということ、そしてその結果としてアメリカ軍プレゼンスというものが東アジア地域において必要であって、従来どちらかといえば縮小ということで検討してきたのを、量的には縮小ではなくてレベルオフだということで、少なくとも十万人程度の在東アジア米軍存在というものは必要だ、こういうことを言っているわけです。それは現在もアメリカ側の方の基本的な姿勢だというふうに理解していいか、まずその辺のところを御確認させていただきたいと思います。
  5. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 今、大木委員おっしゃられたとおり、アメリカ東アジアに関します安全保障上の考え方というのは、先生もおっしゃられました東アジア戦略報告に出ているというふうに思います。おっしゃられるように、アジアにおいては、肯定的な面も出てきているけれども、他方、不確実で緊張した地域であってまだ巨大な軍事力が集中している地域でもある、そのほかいろいろな不安定要因がある、そういう情勢分析をした上で米軍のあり方について論じているわけでございます。  冷戦が終わりましてからアメリカは軍の削減をやってきたわけでございますけれども、今のような情勢を踏まえますと、これ以上アジアにおいて軍を削減するのは適当ではないということで、アメリカのコミットメントとして約十万人の安定した前方展開アジアに置くことが大事であるという認識を述べているわけでございます。そしてその背景には、アメリカアジア太平洋地域の一部分をなしているということで、アジア太平洋地域の安定と繁栄はアメリカ自身の基本的な国益を反映しているという判断をその東アジア戦略報告の中でしているところでございます。
  6. 大木浩

    大木浩君 ということは、結局、今のアメリカ国防省戦略というものを、日本もそれを前提として当面のいろいろな日米協力関係というのを考えているというふうに理解したい。  今おっしゃったように、例えば東アジア地域、あるいは太平洋というのはどこまであるか知りませんが、とにかく十万人というような数字が出ておりますし、日本についても四万七千というような数字が出ていますね、関連の文書の中で。  ちょっと防衛庁にも伺いたいんですが、現在、先ほどのアメリカ側考え方アメリカ国防省考え方というのは日本側外務省ではそのとおりだと、それを前提にしてこれからの日米防衛協力というのを考えるんだということでありますが、防衛庁も、今お話ありましたようなこの二月二十七日のペーパー、あるいはアメリカ側が言っております十万人だとか日本における四万七千といったような数字を基本的には前提にして今の防衛計画を実施しようと思っておられるのか。その辺のところ、簡単に一言でいいですから、要するにそこがそうだというのなら、まずそこを一つ御確認いただきたいと思うわけです。
  7. 守屋武昌

    説明員守屋武昌君) 日本防衛体制でございますが、これは昭和五十一年に閣議決定されました防衛計画大綱に基づいておるわけでございます。  この防衛計画大綱は、私どもが累次御説明いたしておりますように、我が国周辺軍事力に直接対抗するものでない、力の空白をつくらないという観点から、周辺諸国軍事力に比較しまして相対的に規模の小さいものを保有するという考え方に立っております。  この前提に立っておる考え方は、安定化のための国際努力が続けられているということ、それから日米安全保障体制が有効に機能している、こういう前提に立って今我が国防衛力規模防衛計画大綱で決めている、こういう考え方に立っております。  この観点から、現在の日本防衛体制というものは米軍の駐留を含む日米安保体制前提としたものと、こういうふうに考えております。
  8. 大木浩

    大木浩君 昔からの話は結構でございます。我々も大体どういう歴史があったかということは知っておるわけで、むしろ新しい状況があらわれているからこれからどうするか、今の時点防衛庁としてはどういう考え方かということをお聞きしておるわけですので、できるだけひとつその辺に絞った回答をいただきたいわけでございます。  実を言えば、政府与党の中でも今の防衛計画というのは見直しをしなきゃいかぬのじゃないかというのはそれぞれの党がやっておるわけでございまして、社会党さん、きょうは矢田部先生初めたくさんおられますけれども、一生懸命、非常に精力的に検討をしておられるわけですので、一般論ですとなかなか質問に対するお答えになりませんので、ひとつ御協力いただきたいと思うわけです。  そういたしますと、要するに今、日本側においてもアメリカ側においても、今の二月二十七日のペーパーはわかりますけれども、しかしそれはそれとして、世の中はどんどん動いているので、もう少し見直す必要があるんじゃないかということはいろいろな形で出てきておるわけですね。ですから、その辺のところを少し詰めて、これからということになるとそれこそ事務方で今なかなか答えられないこともあると思いますし、外務大臣が来られてからお聞きしたいところもあるわけです。  実を言いますと、日米安保条約あるいは日米安保体制全体というものについては、いろいろと見直しアメリカ側からも出ておるということは御存じのとおりであります。たまたま今、日本におきまして、先般の沖縄の非常に不幸な問題を契機としてこちらからむしろ見直せと、地位協定をどうだというような話はありますけれども、むしろアメリカにおける議論というのはいろんな意味で、アメリカ自体ポスト冷戦時代の世界じゅうの防衛あるいはアジアにおける防衛についてどこまで責任を持つかということについて見直しをしたいというのは、国防総省国防総省としても立場があるけれども、いろいろと政治家やら研究グループもあって、いろいろなことを言っておるわけです。  例えばここ二、三日、産経新聞さんが、アメリカのシンクタンクのCATO研究所外交部長カーペンター氏でしたか、彼の日米安保廃棄論というようなものも紹介しています。これは何もこの論だけが急に一つ飛び出してきたわけじゃなくて、もちろん今すぐに日米安保条約廃棄しろというような議論アメリカ議員の中でも少ないけれども、将来の問題としてはいろんな面からレビューする必要があるのではないかということは、これはもう非常に多くの人々が言い出しておるわけでございます。  このCATO報告書というのは、私もまだ新聞で概略を読ませていただいただけですけれども、その前に、たしか七月ごろにカーペンター氏が日本へも来ていろいろと、日本政府の要人とも会われたし、それから彼が書いたメモみたいなものを私も八月の時点で読ませていただいて、そういう考え方があるということは記憶をしております。  それからまた、このCATO研究所というのはあくまで民間研究所ですけれどもアメリカではそういった研究所を使って国会議員がいろいろと勉強をするというようなことも非常に多いわけでありまして、例えば私の知っている共和党の若い議員は非常にこのCATO研究所との連携によっていろいろ勉強をしている人も多いわけでありますので、これは単に民間の一研究所が思いつきで言っているということじゃ決してない。もうちょっとこれはしっかりと受けとめて、そこで議論しておられることは勉強したらいいと思うんです。  それで、大臣おいでになりましたので、質問を続けたいと思います。  大臣、御苦労さまでございました。先般はまた葬儀おいでいただきまして、まことに御苦労さまでございました。実は本会議葬儀のことについて日本は首相が行かなくて外務大臣だというようなことでいろいろあったようですけれども、私はあの状況で、村山総理も大変お忙しかったし、日本として決して礼を失したわけじゃないので、大分厳しいコメントが本会議では出ていたようですけれども日本としては最近、中東とのコンタクトはイスラエルを含めて非常に積極的にやっておられるということで、それはそれで大変結構だと思うんです。  私は、何かああいうことが起こりますと、すぐに総理が行ったとか行かなかったとか、そういうことだけに議論が集中してしまうんですけれども中東というのは日本にとってある意味においては外交面ではまだまだ勉強も実際の接触も十分でないところだと思いますので、むしろこれからひとつ強力にやっていただくということでぜひそういうふうに進めていただきたい。  これは別にお答えを求めているわけじゃないんですけれども、何か事件が起きるとすぐに日本ではだれか特使をやれとか親書を送るとかいうことであります。そういうこともそれはやる必要があればやってもいいけれども、むしろ実質的にどういうことをやるか。例えば、中東におきましても日本がゴラン高原のPKOについてどこまで本当に参画するのかという点で実質的な問題が必要だと思いますので、そういうことから今後とも外務大臣、ぜひひとつ陣頭指揮をお願いしたいと思います。  ところで、大臣おいでになる前に、実は最近、アメリカCATO研究所というところで日米安保見直し論というかむしろ廃棄論というのが出ております。これは、日本でも今地位協定見直しとかそちらの方に焦点が行っておりますけれども、しかし日米安保体制全体をきちっと見直すということがやっぱり必要ではないかということで、ひとついろいろとお伺いをしたいということであります。  今もちょっと申し上げかけておったんですが、与党三党の中でもいろいろ、これからの日米安保体制については新しい状況がもうたくさんあるわけですから見直しが必要だというようなことで、もちろん自民党の方でも勉強させていただいておりますし、ほかの社会党さんやらさきがけさんでも勉強しておられるということでございますが、どうも日米安保体制が新しい状況の中で、これはなかなか今この時点で難しいんですけれども日米安保体制双務性の欠如というか片務性といいますか、日本アメリカが全く対等の立場じゃない。これはもちろん日本憲法上の制約もありますから当然対等にはなり得ないけれども、実質的に日本日本ばかりじゃなくてアジア東アジアあるいは太平洋地域の全体の防衛についてはもうひとつ積極的に協力してもらいたいというのが私はアメリカ側立場だというふうに理解をしておるわけでございます。  その辺で、これは大臣レベルでもあるいは事務レベルでもいろいろとあると思います。特に、日米安保条約との関連あるいは日本憲法あるいは国連憲章、いろいろありまして、そういったところで集団安全保障というのはこれは非常に難しい問題で、私もこれは今の時点ですぐに政府としてこうということはなかなか言いにくいと思うんですけれども、最近の日米安保についての議論を見ると、どうしてもそこへ問題が来るわけでございます。ですから、これについては政府部内でも、あるいは私どもも党としても勉強をいたしますが、これはもう少し勉強していただいて、これからどうするんだということをわかりやすく示していただかないと、なかなか日米の話し合いでもどうもわからないということになる。  特に、専門家ばかりじゃなくてアメリカ人立場から言いましても、何か事が起こったときにアメリカの兵隊は血を流して死ぬかもしれぬ、しかし日本の方は日本の領海からは出られないとか何にもできないとか、そういうことではちょっと通りにくいということが非常にあると思うんですが、大臣、今の時点でこの問題をどういうふうに受けとめておられますか、ひとつお伺いしたいと思います。
  9. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 日米安保条約というものがアメリカにとってどういう意味があるかということについて、我々も大いに考え、論じなきゃならぬという側面があると思うんです。私、ちょっとおくれて参りましたが、大木議員からアメリカ国内における安保条約に対する賛否両論といいますか、むしろ香の方についての御紹介があったのかと思います。  アメリカ国内においても米軍を外国に置いておくことの是非についていろいろな議論がある。というのは、もっと言うと、アメリカでも政治的議論がやはり非常に内向きになりつつある。何も国際的な役割を果たすよりはアメリカ国内の問題の解決をもっと考えたらどうだというような話から始まって、どうも内向きアメリカがなってきているんじゃないか。国際的な経済的な支援についてもいろいろ議論が出てきたり、そうしたことよりもむしろ国内的な景気対策が優先されるべきではないかというような議論もあると思うんです。  そういう状況の中で、日米安保条約というものについてアメリカ国内是非両論があることは、これは私はやむを得ないことだと思うんです。決して否定的な議論が多いと私は思いません。思いませんが、そうした否定的な議論をする研究所があったり、あるいは議員の方がおられたりすることを私どもも承知はしております。  アメリカという国はあれだけ大きな国ですから、ヨーロッパに面してヨーロッパを見ている人もいれば、太平洋に面してアジアを見ている人たちもいる。それは、例えばビジネスマンの中にもアジアビジネスというものを非常に大きく見てその将来性について非常に高くポテンジャリティーを評価するというビジネスマンもあれば、あるいはやっぱりビジネスヨーロッパとやることがいいのだと考えておられるビジネスマンがおられる、あるいはビジネスというのはもう全部アメリカ国内十分収益も上げられる、外に向かなくても国内だけでやれると見ておられる方も、それぞれおられると思うんです。  しかし、アメリカにとってアジア太平洋地域というものは経済的に見て非常に新しい、非常に魅力的な地域だという意見が相当あって、そのためにもアメリカアジア太平洋地域に軍事的な展開をして、そのプレゼンスの結果、アジア太平洋に非常に平和と安定というものがもたらされた。その平和と安定の上に安心して投資ができる、あるいは安心して経済がそこを相手にできるという状況ができてきて、アジア太平洋地域は、今、世界的に最もダイナミックな発展を遂げつつあるという状況まで来た。このアジア太平洋アメリカはやはり非常に大事にすると考えるのがアメリカにとっても正しい判断なんだろうと私は思っているわけです。したがって、アメリカ日本の安全のためだけじゃない、アメリカ自身にとっても日米安保条約というものは極めて重要なものだと、アメリカ自身もそう思っている。  そして、それに対して日本も、もちろん日本の国の安全、私は国政に参画する人間として国の安全というものを大変重要に考えようとすれば何をもって日本の国の安全を保障するかといえば、限られた自衛隊と米軍存在というものがうまくマッチして、そして日本及び日本周辺の安全、安定というものがつくり上げられるということは日本にとってこれはまた十分意味のあるものでありますから、私は日米安保条約というものは両国それぞれにとって利益の多いものだ、そういう判断双方がする必要があるのではないか。  安保条約というのは、日本にとって非常に利益が多いものだ、アメリカにとっては余り利益のないものだと考える必要もないし、アメリカの軍事的な基地だけを提供して日本にとっては何の利益もないなどと考えるべきでもない。これは両国にとって応分の、相応のといいますか、あるいは平等のといいますか、これはなかなか量的にはかれないものではありますけれども日米両国にとって十分意味のある、双方利益のあるものであるというふうに我々も考え、アメリカも考えておられる。だから、日米両国はこの安保条約というものを今後も堅持していこうという結論がそこから導き出されるということなんだろうと私は思っております。  しかし、アメリカ国内にも今申し上げたようにこれについての賛否両論あって、量的にはいろいろありますけれども、それから日本国内にも両論がこれまたある。両国にそれぞれ賛否両論はあるけれども双方考えてみれば、この安保条約によってもたらされる利益というものは双方にとって大きなものである。もっと言えばかえがたいものだ。  日米安保条約をやめろとおっしゃる方がいて、もし日米安保条約をやめたとすれば、ではそれは何によって置きかえられるのかというと、今は置きかえるべきものは私は簡単には見つからないというふうに思います。アメリカもまたこの方法以外に、彼らがアジア太平洋地域発言権を持ち、大きな関心を持ち、それに向かっていろいろと進んでいこう、経済的に展開をしようと思ってもなかなか方法はない。それは双方がそう思って  いるというふうに私は思います。
  10. 大木浩

    大木浩君 今、大臣がおっしゃったように、日米安保見直しというか、一番極端に言えば廃棄まで考えている人もあるわけですが、今これを唱える人の中にもいろんな立場があると思うんですね。もう日本同盟国として信頼できない、だから見直すんだと、こういう議論もありますけれども、例えば今回のこのカーペンター氏の論文なんかを読んでみますと必ずしもそうじゃないんです。今まで、戦争直後はアメリカ日本がまた軍事大国になるのは困るからそれを抑えるというような考え方もあって、それで日米安保条約ができてきたというようなことも背景としてあると思いますけれども、現在では日本の力が非常についてきた、これから日本も、あえて軍事的とは言いませんけれども、政治的にもっと活躍するのが当然だし期待されておる、だからもっとそういうことを日本に信頼してやってもらったらいいんじゃないかという議論もあるように理解しております。  それからまた、もちろん国際情勢が変わってきておるわけです。かつての冷戦時代ポスト冷戦時代とは違いますから、今までは米ソという超大国が対立しておりまして、軍事バランスというと、まずは両方のICBMだとかSLBMが、どっちが多いかとかどっちが先にボタンを押すかというような話で、日本の頭を越えて何か防衛問題が動くということであったのが、今はちょっと違いますね。レベルが低いとは申しませんけれども、違った次元でのいろいろな紛争というのが生じておる。となると、やっぱりもうちょっと日本にも積極的に関与してもらってもいいんじゃないか、こういう議論も出てくる余地があると思います。  今、大臣もおっしゃいましたように、アメリカにもいろんな議論があるんですが、日本側でも議論があるし、その前提となります今のアジア情勢の分析というか情勢認識、これも相当違っているわけですね。いや、アジアというのは、ちょっと先ほども大臣もおっしゃったけれども経済的には非常に発展しておるので、だからこれはもう安定しているんだ、どこかからの脅威なんか余りないんじゃないかという議論も出ておるように思います。  実は、先ほどちょっと産経のことを申し上げたので、今度は別の新聞にリファーして質問させていただきます。  朝日新聞がここ数日、夕刊ですけれども、「冷戦後の日米安保を考える」という続き物を出しておられまして、いろんな先生方が、国連大学の猪口さんやら慶応の小島朋之さんやらが書いておられて、昨日は九州大学の室山さんという方が書いておられます。これを読んでみますと、現在のアジア情勢についての認識が少なくとも私とは、あるいは恐らく政府とも相当変わっているんじゃないかなということがあるんです。  ちょっと文章を読ませていただきますが、  ソ連が消滅し、日本に対する直接的な脅威も消滅した現在、日米安保に残った機能は、「日本軍事大国化阻止」と「極東における米国権益の確保」の二つである。米国にとって米軍プレゼンス日米安保は、経済大国であり強力な潜在的軍事能力を持つ日本が米国離れして自立することを防止する手段として、また米国がアジア太平洋地域の成長と繁栄から利益を得るための手段として極めて重宝なシステムとなっている。云々と書いてあります。  これは非常にアメリカにとっては厳しい分析ですけれども、もちろんいかなる国も自分の国の国益を伸ばすためにいろんなことをやっているわけですから、日米安保アメリカにとってマイナスだと思ってアメリカがやっているはずはない。しかし、こういうお考え方だけでは今の日米安保前提になるアジア情勢というのがそう正しく理解されないんじゃないかと思います。  どうでしょう、外務省としては、アジアにおいていろんな形の不安定要因、例えば地域的にいえば朝鮮半島とかあるいは台湾海峡とか、もっといろいろありますけれども、やっぱり一種の緊張が存在しますよね。その辺のところ、そういう緊張というものはないと思っておられるのか、やっぱり緊張というものを、少なくとも日本としてそういうものを意識して一種の緊張と理解してそれに備えなきゃいかぬと考えておられるのか、お考えを伺いたいと思います。
  11. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 緊張感というのは、一触即発というぴりぴりした緊張感もあれば、やはりこれが将来非常に大きな問題になるだろうとみんなが見ているという緊張感、いろんな緊張感があると思います。アジアには、例えば南沙諸島を初めとして非常に国際的な問題となりそうな領土問題、我が国も抱えておりますけれども領土問題というものがあって、これはそれぞれの国のリーダーがあたり構わずこの問題で自説をごり押しすればすぐ問題になるという可能性のある部分ももちろんございます。  それから、今お話しの朝鮮半島のように、これは一触即発と言うと表現は余り適当でないと思いますけれども、しかしやはり相当な緊張感を持ってそれぞれが見詰め合っているという状況はあると思いますね。それは、一方の透明度が一方に比べて我々からの見え方がやや少ないものですから、どういうことになっているだろうか、軍事力の程度あるいは兵員の配置の仕方、さらにはその後方、それら全体を見て、経済的な状況あるいは食糧問題とか、つまり国内的な危機みたいなものがあるとそれをどうやって処理するだろうか。さらにはリーダーの統率力とか、いろんなことをアジアのさまざまな国にみんな当てはめてみて、ここはもう問題はない、ここは仮に何かがあったとしても事前に情報も我々は受けることができるし、我々から見ていてよくわかるというところはやや安心感がより多いわけですけれども、いろいろな状況がやっぱりあるんだと思います。  それから一方、経済的に非常な発展を遂げているということは、一方でそのフルーツが軍事力の増強あるいは装備の近代化に回されているということもあるようでございますし、そうしたことを見ていると、我々は全く緊張感がないかと言われれば、やはり全く緊張感がないと言える状況ではないと思うんです。  もう一つ言えば、今どうか、現在直ちにどうかということと同時に、むしろこれは将来どういう状況になっていくだろうかとよく注意して考えなければいかぬ、見なければならぬという部分もあると思うんですね。そうしたことを考えて、予防的なものということまで考えれば、いや、今は問題ないから丸裸で、何かあったら急いでよろいかぶとに身を固めればいいじゃないかというほど簡単なものでは、きっと専門家の方から言わせればそう簡単なものではないのであって、やはりきちんとした備えといいますか、構えといいますか、あるいは態勢といいますか、そういうものはやっぱり持っている必要がある。それはアジア太平洋我が国周辺を見回しても、やはり互いにこういう形になっていきたいなと思うところというのもあるわけで、そうしたことを考えれば私は緊張感がない状況とは言えないと思いますね。
  12. 大木浩

    大木浩君 現状をどういうふうに理解するか、なかなか立場によって、それは客観的に情報がまずあるかないかという、非常に不透明な地域もあるわけでありますから、そういう問題もあると思います。  先ほどの朝日新聞の室山教授の文章ばかりに拘泥するわけじゃないんですが、その一つの見方としてここに書いてあるんです。これを読ませていただきますが、「地域紛争が多発する他地域とは逆に、紛争がほぼ沈静化し地域安定サイクルが軌道に乗りつつあるというのが、冷戦後のアジアの姿なのである。」と、こう言い切っておられる。  そしてこのような安定サイクルを最も必要としているのが中国にほかならない。」と書いてあるんです。  これはもちろん朝日新聞の意見じゃなくて九州大学の室山先生の意見ですから、それはそれで一応そういうものと受けとめさせていただくんですが、これは単なる素人じゃなくてやっぱり国際政治の専門家の分析ですから、そういう意見もあるなどいう中で、さあどうしようかと、こういうことであります。特に今、中国というのは非常に問題になりまして、これは日本政治家の中でも各党でもいろいろ中国とのおつき合いというのは、もちろんあれだけの大きな隣国でありまして、長い歴史もある。何とかして中国とは友好関係をさらに深めたいというのは、これは私は日本人の大多数の気持ちだと思うけれども、じゃ具体的にどうするかというようなことになるとなかなか難しいわけであります。  例えば、先般の核実験をめぐりまして中国に対する経済協力はどうだというようなことになりますと、中国と経済協力を続けてますます友好関係を深めるという議論もあるし、いや、やっぱり核実験をやるようなところにはしばらくはきつい態度を示すべきじゃないか、こういうような議論もある。いろいろあるわけでございます。中国とか朝鮮半島については、もし時間があれば後でもう一遍戻りたいと思います。  ちょっと先ほども申しかけておりましたけれども、今の日米安保体制というものを現状でもっとしっかりしたというか現状に合った有機的なものにするためには、どうしても今までの日本政府あるいは日本の、我々も含めてですが、集団的安全保障という概念について、これをどう理解するか。憲法上そう書いてあるとおっしゃる方もあるし、いや、あれは解釈の問題だと言う方もあるし、あれは憲法とは関係ないんだけれども政策として議論してきたんだとおっしゃる方もと、いろいろあります。  さっきから言っておりますように、これはもし何か新しいことを言われたら非常に問題になりますからなかなか言いにくいと思いますけれども、しかし少なくともほっておいていい問題ではないと思うんですね。自民党だけがそう言っているわけじゃなくて、いろんなところで議論がございますですね。よその方でも、新進党さんもたしかそういう問題はかなり真剣に検討しておられるということですから、いずれ私は、我々政治家で本当に日本としてこれをどう処理するかということを考えなきゃいけないと思います。  十一月二日の産経新聞ですが、かつて参議院にもおられた関嘉彦先生が「安保条約の有効性に関する疑問」という論説を書いておられます。そこでもいろいろと、日本アメリカが本当にこれからのポスト冷戦時代において日米安保というものをきちっと有効なものにしていくためには、やっぱり集団的安全保障という考え方をもう少し整理しないと動かないんじゃないかと。これはもう恐らく、アメリカの当事者と外務省あるいは防衛庁がいろんな議論をされてこれからさらに協力を強めましょうというときに、必ずそこのところはどうなるのかというようなことが出てくると思うんです。  ということでございますので、これは答えにくいとは思いますけれども、これだけ毎日いろいろと新聞に書いてあるんですね。集団的安全保障をどうするんだというのはほとんどの人が日米安保との関係で言っておりますので、答えにくいことは百も承知の上で、どういうふうにこれから少なくとも勉強していかれるのか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  13. 川島裕

    政府委員(川島裕君) 集団的自衛権のお話だと思いますけれども、これは先生御指摘になられましたとおり大変難しい問題でございますし、政治のレベルでこれからさらに議論があるということであれば、それは見守らせていただくということだと思います。  他方、集団安全保障の方はむしろ国連憲章の中での概念でございまして、憲章七章にいろいろあるわけでございまして、こちらの方もこれはこれでいろいろ限界が出てきたというのが冷戦後の数年間のレッスンだろうと思います。  御承知のとおり、集団安全保障の基本的な考え方は、戦後に米ソ葉ですか、その辺の国が協力して、いよいよとなれば力を行使すれば平和を維持できるだろうという考え方だったわけですけれども冷戦が終わってそういうふうに動くかというと、どうもそうではなくて、ソマリアとか旧ユーゴスラビアとかでも平和が壊れたのを力の行使によって、集団安全保障の方向で回復するというのは極めて難しいということがわかってきたのが最近の状況だろうという気がいたすわけでございます。  いずれにいたしましても、アジア太平洋地域の平和、安全保障という観点から見ますると、やはりこれまで政府がやってまいりました三本柱と申しますか、自衛力の保持、それから日米安保体制に依拠する部分、それから周辺の地域が少しでもより安全な方向にいろいろな外交努力を積み重ねるというその三本柱の延長線の中で考えるということではないかと考えます。
  14. 大木浩

    大木浩君 今、局長も言われましたように、詰めて言えば集団的安全保障という概念、これは法律的にどう理解するのか知りませんが、これとまた集団的自衛権というのは多少違ったものですけれども、その辺お互いに関連づけてこれから検討をしなきゃいけないと思うんです。  いずれにいたしましても、今の日米安保体制というものは、単に日本アメリカが守るというだけじゃなくて、やっぱりもっと広いアジア全体の安定のためにひとつお互いにこれを守って役立てていきましょうということですよね。そういうことになると、余計従来以上に集団的という形容詞のついた考え方というものがいろんなところで出てくるわけでありますから、法律論もいいけれども、解釈論もいいけれども、現実に日本にとってはどういうことが必要であるか実質的な立場から見て決めていくということも必要じゃないかということで、この辺はこれからいろんなところで現実問題として出てくると思います。ぜひひとつ引き続き御検討をいただきたいと思います。  それから、大臣、先ほど日米安保体制というのは、いろいろ議論はあるけれども、要するに一言で言うとこれにかわるものはないよというところがありますね。見直し輪なりあるいは縮小論なりいろいろありまして、あるいはもっと基本的に、共産党さんなどはどういうふうなお考えなのかよくわかりませんけれども日米安保体制というものは余り、条約は要らないよと。要らないよという言葉は悪いかもしれませんが、むしろその意義を余り認めないお立場のようですけれども、ではどうするんだということですね。  かつては社会党さんも相当、要らないよとはおっしゃらなかったかもしれませんけれども、批判的なお立場であった。ではどうするんだということになると、それに代替するものとして、例えばですけれども非武装ないしは軽武装中立論とが、いやいや、もうこれは日米だけで安保を考えていてもだめだからもっと多角的な安全保障体制あるいは機構というようなものをつくってそれでやれというような議論もありますね。  こういう問題については、大臣なり外務省としてはどういうふうにお考えでしょうか。
  15. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 我々、我々といいますか多くの人がやや誘惑に駆られる議論はARFですね。ASEAN地域フォーラムというARFで安全保障について議論をして、その話が進んでいくとそこで安全保障はできるんじゃないか、こういうふうに考えることが多いわけです。しかし、なかなかそれは、ARFが進んでいって軍事力が要らなくなるということには、私はその結果ならないだろうと思うんです。  ヨーロッパでOSCEというのができまして、ヨーロッパの安全についていろいろそこで議論をするということはありますけれども、そのOSCEも結果はNATOとかそういう軍事的なベースがあって、その上でトラブルを未然に防ごうという、そういう場をつくるということなんだろうと思うんです。  私は、ARFについても、もちろんARFの将来を余り悲観的に言い切ってしまうのはよくないかと思いますけれども、ここに現在過大な期待をするということは少なくとも適当でないんじゃないか。もちろん、私の言うことを誤解されると困るんですが、ARFによってトラブルの発生を未然に防いでいく、それから相互の信頼関係を醸成することによって軍事力を低いレベルに抑えていく、こういったことは私はあり得るし、またそれをそのために相当活用していいものだと思いますけれども、その結果が全くお互いに武装のない状況になるかというと、これはなかなか難しいだろうと思うんです。  そういうトラブルを未然に防ぐ、あるいはトラブルを最小限に防ぐという政治的な話し合いの場を十分成熟させていくということと同時に、その一方でやはり私に言わせれば日米安保条約のようなものがペースにあると。しかし、それは武力の発動のないことが望ましいのは当然のことですから、それはもうできるだけ武力は発動しない。しかし、そういうものが存在はするということが今一つ考えられると思います。  私は、これを全部やめて、少なくとも現在の日本日米安保条約を破棄して、あるいは終わりにして云々という議論は現実的ではないと。仮に安保条約をやめて自主防衛などということが可能だとは私は全く思いませんし、またやるべきではないと思います。日本国民も、五十年前の反省に基づけば、武力によって、武力を強化することによって云々ということを考えるとは私は思いません。ということになれば、十分コントロールのきいた今日の自衛隊と、そして政治的にこれまた十分コントロールのきく日米安保体制というものが今考え得るよい選択だというふうに私は思います。
  16. 大木浩

    大木浩君 ありがとうございました。  今の大臣のお考えが結局、今、日本をめぐる状況の中での唯一の選択であろうというふうに私も考えるわけです。  アジア地域において非常にまだいろいろと緊張もあるし、それから不透明な地域もあると思うんですが、その中でも一番不透明なのは朝鮮半島、特に北です。最近また北の金正日書記ですか、今どういう肩書だか忘れましたけれども、とにかく軍の方の責任者という肩書はついているけれども依然として党の方の責任者でもなければ国家主席にもならないというようなことで、どうも朝鮮半島の政治的な不安定というか不透明という状況が依然として続いているんですが、外務省、最近の朝鮮半島、特に北の方はどういうふうに理解しておられるか。アジア局長なり、前アジア局長もおられますけれども専門家がたくさんそろっておられるので、ひとつ教えていただきたいと思います。
  17. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 御案内のとおり、朝鮮半島、北朝鮮の状況というのはなかなか不透明でわからないところがございます。金正日書記がいまだ労働党総書記にも、それから主席にも就任しておりませんことは御承知のとおりでございますし、また今後いつ就任するかということについても確たることは不明な状況でございます。ただ、一般的な見方としては、金正日書記が国政全般を何らかの形で指導しているということは変わらないという見方が一般的であろうかと思っております。  他方、経済などの面で北朝鮮が種々困難を抱えているということも事実でございますし、そのような兆候もあらわれていることは御案内のとおりでございますので、我々としてもとにかく北朝鮮の諸動向というものを注意深く見守ってまいりたいと思っているのが、率直なところ、現状でございます。
  18. 大木浩

    大木浩君 なかなかよその国のことをどうだと言いにくいのでしょうが、私どもいろいろな情報を聞いていますと、どうも金正日書記が本当の意味ですべての面についての指導者になる可能性というのは非常に少ないんじゃないかというような議論もあるわけでございます。これ以上側質問はいたしませんけれども、そういう議論もあるので、なかなか難しいと思いますが、どうぞ北の話については情報を引き続き精力的に集めていただきまして、これからの対朝鮮半島外交に遺憾なきを期していただきたいと思います。  それから、中国のことにまた戻りますが、今度またAPECで中国も来られるわけですね。前から日中外交というのは、日本と中国で話をすると何か中国のペースにはまってなかなか言いたいことも言えないじゃないかと、こういうのがちまたの声ですね。本当にそうだとは思いません、しっかり言っておられると思いますけれども。  例えば、今度APECでいろいろとアジアの問題、これは経済もでしょうけれども、もちろんアジア全体の安定ということを議論されるんですが、どうなんでしょう、APECとかそういった場で中国に対して物申すと言うと言葉が変ですけれども日本ももちろん言うんでしょうが、みんなでどう考えているんだというようなことをもっと強力に言えないのかということを、どなたでも結構ですが、ちょっとコメントしていただけませんか。
  19. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 私たちは、当然のことながら中国との関係でもコレクトと申しますかそういう外交を行ってまいりたいと思っておりますし、またそのつもりでございます。  APECのときに日中首脳会談が行われるべく今調整中の段階にあると思いますし、そのほか外相レベルの会談というのもあるわけでございます。それで、こういうときになるべく広い角度から、今、委員が御指摘になられたような点も含めまして、当然私たちの中国に対する見方、中国が日本国内においてどういうふうなイメージになっているかというような点も含めての対話ということが行われることになるだろうというふうに思います。
  20. 大木浩

    大木浩君 せっかく中国やら朝鮮半島のことを話したので、ついでと言っては悪いけれども、もう一つの大物のロシアですね、エリツィンさんの健康がどうだというようなことがあるんですけれども、最近の対ロ外交、北方領土問題というのも何かしばらく陰の方へ行ってしまったような感じがいたしますけれども、ロシアとの関係について今どういうふうに取り組んでおられるのか。
  21. 浦部和好

    政府委員(浦部和好君) 先生御案内のようにロシアとの関係は北方領土問題を解決して平和条約をつくる、これが我々の基本でございまして、九三年の十月にエリツィン大統領が来られて東京宣言というのをつくりました。これをベースにして、我々はしっかりとその後話し合いをしているというのが現状でございます。  ただ、率直に申し上げまして、ロシア・サイドはなかなかしっかりとした交渉に応じるというところまで来ておりません。つい先日も、この九月でございますか、事務レベルの協議をいたしました。その際に、ことしは五十周年に当たるものですから、わざわざ総理からエリツィンへのメッセージを私持っていきました。その趣旨は、ぜひこういう機会に一歩を大きく進めよう、政治的決断が欲しいということでございましたが、先方のエリツィン大統領から総理あてのメッセージでは、なかなか難しいので、静かに時間をかけて慎重にというような形でございまして、残念ながら我々の期待したような大きな一歩というものをこの五十周年の機会に踏み出すことはできなかった。しかし、今後も粘り強く交渉を続けていく必要があると、かように考えております。
  22. 大木浩

    大木浩君 どうもロシアについては困ったことに、相手が何かきちっと本当にコントロールしておられるのか、もうお体も大丈夫かというようなことで、非常に苦労があることはよくわかりますけれども、どうぞひとつ北方領土問題がどこかへ忘れ去られないように、引き続き強力なる交渉を続けていただきたいと思います。  それで、あともう数分しかございませんので最後に。  これから日米首脳会談も行われるわけでありまして、外務大臣も当然そういうことで関連されると思うわけですが、今のところ、沖縄事件が起こったりいたしまして、日米地位協定だとかあるいは日米安保、要するに軍事面、防衛面の方が非常に集中的に議論されておりますけれども、もちろん日米関係というのは防衛問題ばかりではない、例えば今の日米安保体制の中でもたしか改定のときにある程度経済的な分野でのいろんな協力という概念というか姿勢も入っております。経済を含め、例えば国連における日米協力とか、あるいは国連がいろいろ行う活動における協力というのもあると思います。  日米首脳会談に臨む政府のお立場というようなもの、特に日米のバイでどういうことが話し合われ得るのかというようなことについてお考えがあれば伺いまして、私の質問を終わりたいと思います。
  23. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 日米の首脳が率直に話し合うということは、村山・クリントン会談は過去四回行われておりますが、これまでもそうでございましたけれども、私も陪席をしておりまして、極めて率直に話をされます。今回も恐らくさまざまな方面についてのお話をなさるだろうと思いますが、あれだけ二人の首脳が率直に話し合えるというのは、一つはやっぱり日米が共通の価値観を持っているからだというふうに思います。  考えてみますと、こうした共通の価値観を持っている、しかも五十年にわたって議会制民主主義というものをしっかりと守り育ててきている国はアジアにはそうないわけでありますから、アメリカ日本に対して非常に率直に話をされますし、日本も率直に話をするのは当然だと思います。五十年という節目の年でもありますから、やはりこれまでの五十年を振り返るということもあるかもしれません。それからまた、この節目の年に今話題でございます日米安保体制というものについても十分話し合われるし、あるいは経済問題についても話し合われるということになるだろうとも思うんです。  それと同時に、私は、今まさに大木議員がお話しになったように、日米の首脳が話し合うときには、日米二国間の話だけではなくて、日米が一緒に地球規模の問題に対してどういう協力ができるかということについても話し合われることになるだろうと思うんです。これは、これまでの首脳会談で、コモン・アジェンダと言うんですが、日米が協力して地球規模の問題について対応しようということをいつも話し合われて、そのコモン・アジェンダもさまざまな分野に広がってきていますが、今回もまたそのコモン・アジェンダの対象をさらに広げて、しかも深くしていくということについても話し合われるだろうと思うんです。  どうも関心が一カ所に寄り過ぎて、もちろん沖縄の問題というのは非常に重要な問題でありますから、そこに関心が集まるのは私は当然だとは思います。両首脳が話し合えば、そのことももちろん重要な問題ですから十分話し合われると思いますが、それ以外にも今申し上げたように経済の問題もあるし、あるいは留学生をもう少し飛躍的に数をふやそうなんという話がこれまでもあって、これまではフルブライトさんの提唱によるフルブライト留学生制度というものがあったけれども、今度は日本がイニシアチブをとって思い切って留学生の数をふやすということがあるかどうか。これはどうも留学生の行き来がバランスしていないではないか、もう少しこういうもののバランスを考えてはどうかというようなこともあるかもしれません。  それから、今申し上げたように、日米が協力して地球規模の問題に対応をする。もう本当にコモン・アジェンダは項目が多くて、日米が協力してサンゴ礁の保存に取り組もうなんということから、開発途上国の女性問題に取り組もうとか、非常に幅広くいろいろな問題に取り組んでいるわけですが、こうした問題についてもさらに議論を進めるということにもなろうかと思います。  いずれにしても、率直で実りのあるものにしてほしい。私どもは、どうも皆さんにせっつかれるものですからやっぱり実りがないといかぬ、具体的なフルーツと、こう思うんですが、一方で首脳が話し合うときは少し高邁な次元の高い話もしてもらいたいというふうにも思いますし、数回にわたって会われるわけですから、いろいろな議論はしていただけるものと思っております。
  24. 大木浩

    大木浩君 会談の御成功をお祈りいたします。  終わります。
  25. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 平成会の鈴木正孝でございます。  本日はこの参議院の外務委員会で私は当選以来初めての質問をさせていただく、大変重い委員会で初の質問ということで私も大変緊張しておりますし、大変光栄に思っているところでもございます。外務大臣にはいろいろとまた御質問させていただくわけで、イスラエルへの国葬、大変お疲れのところ大変恐縮に思いますけれども、よろしくお願い申し上げたいというふうに思います。  初めに、イスラエルのラビン首相の国葬に際しまして、昨日の本会議、そして今、大木先生からもまたお話もございましたけれども河野外務大臣日本政府を代表されて弔問特使ということで派遣されたわけでございますけれども、先進諸国では大統領あるいは首相クラスの方々が派遣されておった、特に先進七カ国首脳会議に参加している国では日本だけがそういう体制ではなかったというようなことで、いささか日本の対応が諸外国に比べて見劣りをしているんではないかというような、そんなようなこともございました。  私もこのラビン首相の中東和平にかけた熱情そして実績等を心から評価もし、また哀悼の気持ちを持っているわけでございますけれども、先ほど来のお話の中でも実質をとればいいではないかというようなお話もあったのかなというふうにも拝聴をいたしたわけでございますが、弔問ということになりますとやはり形式というものも大事だろうというふうにも思います。  そんな中で、外務大臣では格が劣るというようなことでは決してないわけではありますけれども、自民党の中にも元総理もおられるわけでございますし、新進党、我々の中にも元総理が三人ほどいらっしゃるというようなこともあります。そんなことを含めまして総合的にお考えになってやられたんだろうというふうに思いますけれども、弔問特使派遣決定にかかわっての経緯、官邸だけで決めたということではないと思います、外務省も大いにかかわっておられるに違いない、常識的にはそう考えるわけでございますので、その辺の経緯等を御質問したいと思います。
  26. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) ラビン首相がまことに悲劇的な暗殺という最期を遂げられて、そのニュースを聞きましたのは日曜日の朝でございました。日曜日の朝、第一報を聞きまして、これは大変なことだ、イスラエルにとっては本当にどんなにかつらいことであろうかと思いました。  御案内のとおり、総理はつい先般イスラエルを訪問されましたし、それからその後、国連の五十周年の記念式典の折にもニューヨークで、お気づきだったかと思いますが、記念撮影をしたときにはちょうどラビン首相の隣でございました。あのころはマスコミの方は村山さんは六段目でどうも影が薄いなんということを言って、重要な人物は前の方にいるのに村山さんは余り重要でないから六段目だなんと言った人もいるんですが、あのときの写真を見ると、両側がラビンさんとアラファトさんで、隣のラビンさんが死んだら、世界で一番大事な人が死んだんだからみんな行かなきゃいけないみたいなことを今度は急に言い出すというようなことも、これは余計なことですけれどもあって、あのときにもラビンさんと話をしておられる。それだけに、村山さんはそのラビンさんが亡くなったということで非常にショックを受けられて、これは何とかしなけりゃならぬというふうに思われたようです。  官房長官から私にも連絡があって、葬儀のときには考えなきゃいかぬなと私も思っておりましたら、官房長官から直接のお電話がありましたのはもう日曜日の十時、時間は余り正確じゃないんですが、十時前後だったと思いますが、葬儀の日程が決まりました、明日の二時が葬儀です、そこでだれか行ってください、総理はどうしても行かれませんと、こういうお話でございました。そうですか、それじゃだれかお願いをするなり人選を至急考えましょうということになったんですが、時計を見ましたらもう十一時近くなっておりまして、役所に指示をして今からだれかに行っていただくについてはどういう飛行機の手配ができるかと言いましたら、葬儀に間に合う飛行機は一時半に乗らなければもう間に合いません、つまりそのときからもうあと二時間半で成田空港で飛行機に乗っていなければ葬儀に間に合わない、こういう状況でございました。  では、二時間半でどなたにお願いできるか。今お話がありましたように元総理ということを全く考えなかったわけではございませんが、それからお願いをして二時間半で成田へ行ってくださいというお願いは私は恐らく不可能であろうというふうにも思いましたし、一人でいろいろ思いをめぐらせて、もう一度官房長官にお電話をして、今からどなたかお願いするといっても適当な人を今からお願いはできないと思います、ついては私が行くことでいかがでしょうか、ただし私が行くについては国会のお許しがなければ行けません、国会のお許しをいただいて、なおかつ総理がそれでよろしいとおっしゃるなら私が参りますということを申し上げたわけです。  いずれにしても、それから国会のお許しをいただいてから一時半に乗るということはもう不可能でございますから政府専用機をお貸し願えますか、こう言いましたら、あなたに政府の特使という肩書をつければ政府専用機が何とか使えるだろうというお話もありまして、それじゃ政府特使であなたに行ってもらいますと、こういうお話でしたから、それから準備を整えて出かけたわけでございます。  私は、これは決して私自身少し思い上がって申し上げるつもりはありませんが、国内議論では元総理ということがあるかと思いますが、現職の外務大臣が行くのと元総理が行くのとではどちらが先方にとって高いレベルかといえば、現職の外務大臣の方がレベルとしては上だと私は思います。現職閣僚の重みというものは、やっぱりそれだけの重みを持っているものだと思わなければならないと思います。外務大臣が行ったんじゃしょうがないな、おまえが行くくらいなら元総理に行ってもらった方がよかったというのは、河野洋平じゃ少し軽いなというならわかりますが、外務大臣というポストをお考えになれば、それはやはり元首相よりは現職の外務大臣というものの重みを見るべきだと私は思います。これは決して自分のことを言っているのではないので、そこはぜひ誤解のないようにお願いをしたいと思います。  それで、私は参りまして、確かに先生おっしゃるように、アメリカからはもう大弔問団でございました。私もアメリカ人たちがたむろしているところへ行ってみましたけれども、ブッシュさんはおられるわカーターさんはおられるわ元国務長官のバンスさんはおられるわ、たしかシュルツさんもおられたかと思います。それから閣僚もきら星のごとく、ルービンさんはいるわクリストファーさんはいるわで、もうそれは大変な大弔問団でした。しかし、それはイスラエルとアメリカの関係、それからイギリスとイスラエルの関係、ドイツとジューイッシュの国との関係、フランスとイスラエルの関係であって、それらを見れば、それはそういう方々が行ったからということと日本からだれが行くかということを別に世間体を気にして比較をする必要はないのではないか。やや強がりなんですけれども、そう私は正直思いました。  ただ、そこで問題は、私が弔問に行ってどれだけ現地にいられるかということが非常に重要だと思うんです。私は、野党の先生方、与党先生方に御理解をいただいて葬儀に参加をして、葬儀が終わったのは夕方五時ごろでございましたけれども、一晩泊まって翌朝帰ってまいりました。国によっては葬儀が終わってさっと引き揚げる国もありましたし、一晩泊まって翌日帰る国もあったんですが、私はお時間をいただいて一晩泊まって翌朝帰るという関係で、エジプトのムバラク大統領にもゆっくりお目にかかることができましたし、ジョルダンのフセイン国王とお目にかかることもできましたし、もちろんラビンさんの後を引き受けられるペレス首相代行とお目にかかることもできたわけで、そのことはやはり非常に大事であったと思います。それは、私があそこに少し時間的にいられたということと同時に、中東人たち日本に対する期待感とかあるいは存在感というものが非常にあるということの証左だというふうに私は思います。  どうも外務大臣ごときが行ったから全然相手にされないだろうとか存在感がないとか、ここにはおられないでしょうけれども書かれた記者もいるんですが、しかし実態は必ずしもそうではなかったというふうに自分自身は思って戻ってまいりました。しかし、これは自分で評価を決めちゃいけませんので、皆さんの御判断にお願いをしなきゃなりません。  おっしゃるように、確かに形式というものも大事にしなければならないということも私はよくわかります。しかし、とにかく撃たれた翌日、つまり撃たれて二日目にもう埋葬式をするという短時間に日本から駆けつけたということを向こうは大変喜んでいたことは間違いがないことでございます。
  27. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 今、外務大臣がおっしゃるように、弔問外交ということの意味、重要さということなんだろうというふうに思いますが、それが世界の今や常識というような状況になっているのだろうと思うんです。私ども心配しますのは、まさに中東和平実現に向けての日本の熱意、努力というものに影響があってはいけないんだ、そういうふうなことなんだろうと思うんです。この中東和平実現に向けている中で大変不幸な暗殺事件が起こったわけでございますけれども、これが悪影響があってはならないということはまた当然な話だろうと思います。  和平路線継続への見通し、そういうものをどのようにお考えになっているか、あるいはまたそれに対して今後我が国がどのようなかかわりを持っていくのか、その辺についてお尋ねしたいと思います。
  28. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) ラビン首相の恐らく後継者となられるに違いない現在のペレス首相代行どお目にかかりましたときに、私は、大変悲しい出来事ではあるけれども、しかしこの悲しみを乗り越えて和平プロセスは進めていただかなければなりませんということを申し上げまして、ペレス首相代行も、もちろんそのとおりです、それがラビン首相の御遺志であるだけに私は一歩も引くことはありませんと。そして、それは葬儀の終わった翌日の朝でございましたが、もう既に私は首相代行として軍の撤兵についての指示を出しております、私はこの問題は一刻も休んではならぬと思っておりますという非常に強いことをおっしゃっておられました。  私は、ペレス首相代行に、こういう痛ましい事件がありましたが我が国中東和平プロセスへのかかわりは今までと方針を変えるつもりはありません、和平プロセスが進められる限り我々としてはできる限りの貢献を日本としていたしますということを申しましたら、ペレス首相代行は、全くその言葉が聞きたかった、その言葉がうれしい、ぜひお願いしますということでございました。  ムバラク大統領もフセイン国王もペレス首相代行もこもごも、経済的支援が極めて重要です、経済的に豊かになれば国民は平和な心を持ちます、貧しさはテロを生みます、豊かさが大事なんですということをしきりに言っておられました。我々にはできることとできないことがございますが、できる範囲内で経済的な支援、技術的な支援あるいは選挙の際には選挙監視団というような人的支援を行うという気持ちのあることをそれぞれの方々にお伝えいたしました。  また、埋葬をするお墓のわきでクリントン大統領と隣同士になりました。私はクリントン大統領から声をかけていただきましたので、大統領に大変悲しいことでありますが日本は支援を引き続き行う決意でございますということを申しましたら、大統領は、ぜひそうしてくれ、自分たちはみんなで力を合わせて中東の和平を達成しなければならないと思っているというようなことをおっしゃっておられました。
  29. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 中東の和平路線に積極的にかかわって取り組んでいくということをぜひお願いしたいというふうに思います。  来春、PKO関連でゴラン高原にPKO部隊を派遣するというようなことで、既にそういう方向を決定されているように承知はしているんですけれども、この暗殺事件がこの部隊派遣、PKO派遣に現地情勢との関係で若干影響があるというふうにごらんになるのか、あるいはいささかも影響なしというふうにごらんになるのか、その辺をお伺いしたいわけでございます。今の既定路線でいけば部隊とか隊員、派遣される者の安全ということが当然重要な要素になりますので、その辺をどのようにお考えになっているか。  これは外務省あるいはPKOの事務局の方かとも思いますけれども、もし事務局の方がいらっしゃらなければ外務省からまとめて、情勢の認識ということでもありますので、お答えいただければと思います。
  30. 法眼健作

    政府委員(法眼健作君) ラビン首相暗殺後の中東地域、特に和平関連地域情勢でございますが、私ども、いろいろ情報を収集したりしておりますが、ペレス首相代行は、例えばシリアとの和平交渉においても引き続き最大限の努力をしたいということを言っておりますし、また葬儀に参列した各国首脳なども、ただいま外務大臣が申されたとおり、事件にかかわらず和平プロセスをしっかりと推進するように支えていきたい、こういうことを皆さんおっしゃっておられます。  ゴランの状況は引き続き安定しておりまして、今回の事件の影響は特段見受けられておりません。  もちろん、先生御指摘のように、私どもから派遣されます、国連PKOに参加いたします自衛隊部隊の要員の安全につきましては、これを確保するために十分な注意を払うことはもう御指摘のとおりでございまして、私どももこれまでも一生懸命その点を念頭に置きまして準備を進めておるわけでございます。今後も、UNDOFに派遣される要員につきましては、一層の安全確保のための十分な措置を図っていく所存でございます。  そして、今の御質問の、現状はどうなのか、特に危なくなったようなことはないのかという御趣旨でございますが、その点については、私どもとしては、特に変わっておらず大丈夫であると、このような認識を持っております。
  31. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 ぜひ安全確保のためにいろいろと細心の注意を払っていただきたいと思います。  今月はとにかくAPECの大阪会議が開催される、あるいは日米首脳会談もそれに含まれるという形で、議長国日本としても、会議に来日されます外国の要人が非常に多いわけでございますので、そのようなテロが日本で起こるというようなことが懸念されないわけでは必ずしもないわけでございます。日本の信用、信頼にかかわることでございますので、どちらにしましても、APECの会議に来日される方々が安心してこのアジア太平洋地域の将来にわたっての話し合いができるような、そういう形での要人の警護、これは外務大臣にお願いするということではないんですけれども、全般そういうところにも十分気をつけていただきまして、日本の信用、信頼が失墜することのないようにひとつぜひ御尽力をいただきたい、そのように思います。  引き続きまして、先ほどもちょっとお話がございましたけれども日米の安保体制について。  米国の国内世論としてもいろいろと御意見があるということは私どもよく承知はしております。代表的なお話としては、ソ連の脅威の消滅、そしてまたアジア太平洋地域における潜在的な脅威は米国の国益に死活的な影響を与えないだろう、あるいは日本は自力で防衛力を保持するだけの経済力を持っている、したがって在日米軍は撤収して安保条約は解消すべきではないかというような米国内の世論。また反対に、日米安保体制維持論といいましょうか、非常に大きな意味を理解している、そういうもろもろの世論も同じようにあるわけでございますけれども、特に日米安保体制不要という、そういう米国内の世論に対して外務省はどのように受けとめておられるか。繰り返しの御質問で大変恐縮ですけれども、お伺いしたいと思います。
  32. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 今、鈴木委員御指摘のようにアメリカの特に研究所を中心としていろいろな意見が出て、それはアメリカの全体とは申しませんけれども、一部に日米安保条約不要あるいは解消を唱える向き存在することはそのとおりでございます。  先生が今御紹介になりましたのは恐らくCATO研究所の提言だろうと思いますけれども、在日米軍の完全撤退、日米安保条約の解消を提言していまして、深刻な脅威はもう存在しない、それから脅威があってもこれは自衛隊によって対処し得るので、すべての米軍は三年から四年以内に日本及び韓国から撤退すべきであるというような趣旨を述べております。  それから、フォーリン・アフェアーズ誌に出て有名になりましたのですが、チャルマーズ・ジョンソン日本政策研究所所長の論文でも、日本を本当に米国のアジア戦略のかなめであるとするならば、むしろ日米安保条約見直し廃棄すべきであるという観点議論をしておられます。  他方、研究所にはいろいろございまして、ランド研究所というのがございますけれども、そこでは、日米同盟は安全保障のための保険、それからアジア太平洋地域安定化要因と日米協力のための基本的な政治的な枠組みとして有益であるというような意見もございます。  それから、議会において、米国議会調査局が報告をことしの一月でございますが出しておりますけれども、その議会の調査局の報告によりますと、日本における米国のプレゼンスが米国の日米関係における利益、米国の地域的及びグローバルな利益を支えるものになっているという見方を示しております。  このように、米国の政界、学界の一部には日米安保条約不要を唱える向きあるいは解消すべきであるという議論があることはそのとおりでございますけれども、私どもとしては、これがアメリカの中で主流を占めるというふうにはまだ考えておりません。  他方、私どもとしては、日米安保体制の円滑な運用を図ってその信頼性を高めていくということが大事であって、米国の中の各層各界におきます日米安保に対する広範な理解と支持をやはり得ていく努力をしていかなければならない、そのことがとても重要であるというふうに考えております。
  33. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 そのような努力をこれからも継続してやっていただくことも非常に大事なことだというふうに思います。  そういうことに関連いたしまして、沖縄の基地の問題を含めましてお尋ねしたいわけでございますけれども、米国のアジアにおける軍事的なプレゼンス、この意味と、在日米軍基地、特に沖縄における米軍駐留、そういうものについての意義と必要性、これについてどのようにお考えになっておりますか。
  34. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 何よりも私どもといたしましては、冷戦が終結したとは申せ、我々を取り巻くこの地域には依然不安定要因というのがあるんだろうと思います。その中で我が国が引き続き日本の安全を確保していくためには、安保条約というのは必要であるというふうに思います。  この安保体制というのは、国際社会における広範な日米協力関係の政治的基盤にもなっている、そしてアジア太平洋地域における安定要因としてのアメリカ存在を確保するし、この地域の平和と繁栄を確保するために不可欠であるというふうに認識しているわけでございます。我が国におきます米軍の駐留というのは、このような重要な日米安保体制にとりまして中核的な要素をなすものではないだろうか、そして沖縄に駐留する米軍もその重要な一端を担っているというふうに考えるところでございます。  他方、沖縄には米軍施設区域の密度が高い。その整理統合さらには縮小について非常に強い御要望、お気持ちがあるということは我々としても十分重く受けとめなければならないということでございますけれども、先般、アメリカとの間で設置が合意されました新たな協議の場というものも活用しつつ、こうした安保体制の目的達成との調和を図りながら、地元の方々の御協力も得て施設区域の整理統合に進展が得られるよう努力していきたいというふうに考えております。
  35. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 アメリカは、アジア太平洋地域の平和と安定のためにプレゼンスを含めていろいろとやっているということでもございますけれども、この地域に十万大規模日本には約四万七千人程度ということで前方展開戦力を維持している、この政策にはいささかも変更はないということを重ね重ね強調しているように承知しているわけでございます。  先般、日米両国政府間で沖縄米軍基地の整理統合、縮小等に関する新たな協議機関を設置するということで合意したわけでございますけれども、この機関で先ほどいろいろと御説明のあったような米国の軍事戦略といいましょうか、そういう大きな方針にかかわるような、内容の実質にわたるような議論を行うことができるのだろうか。非常に難しいのじゃないかというように思うわけです。兵力の規模とか編成とか装備とかあるいは補給訓練、もろもろあるわけですけれども、基地の配置の場所だとかあるいはその面積とか、いろいろ重要な実質的な要素というものがかなり含まれてくるというふうに思うんですね。  ですから、どういう形で実際上取り組んでいかれるおつもりなのか。新たな協議機関を設置していろいろと対応しようということではございますけれども、その辺がひとつ懸念、心配されるというように思うんですけれども、いかがですか。
  36. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) アメリカは、我が国を含みますアジア太平洋地域における現在の前方展開戦力を維持するという政策をとっておりまして、今、鈴木委員御指摘のように、この政策は、この前、ペリー国防長官が来られたときにも同長官によって確認されているところでございます。  他方、このようなアメリカの政策を前提としつつも、さまざまな合理化、創意工夫によって沖縄における施設区域の整理統合、それから沖縄存在します米軍の活動から生じます諸問題について検討するということは、我々としては可能であるというふうに思います。  ペリー長官が来られたときに、外務大臣防衛庁長官との間で設置に原則的に合意しました新しい協議の場におきまして具体的にどのような方向でこの検討を行っていくかということは、さらに日米首脳会談に向けてアメリカ側と話し合っていきたいと思っておりますけれども日米間で知恵を絞りまして、安保条約の目的達成と沖縄県の方々の御要望、この二つをどう調和させていくかということの解決策に向けて努力していきたいと思います。先生御指摘のように、この協議の場は軍事戦略だとかそれ自体を議論するということにはなかなかならないだろうと思います。  他方、日米間には日米安全保障協議委員会、これは閣僚レベルでございます。先般、外務大臣にもニューヨークに行っていただいて、国務長官、それから国防長官、日本側防衛庁長官が集まっておりますけれども、そういう委員会というのがございますし、日米安保事務レベル協議という場もございます。日米安保関連する問題につきまして、これらの場で幅広くいろんな議論ができるわけでございまして、このような場も活用しながら日米間の安全保障対話を緊密にやっていく必要があるというふうに考えているところでございます。
  37. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 沖縄県民の皆さんの本当のいら立ちといいましょうか、大田県知事の御発言にあるように県土の約一〇%、あるいは沖縄本島の約一八%ですか、こういうような米軍基地の存在が将来にわたって固定化されるんじゃないか、そういうような強い懸念、そういうものがいら立ちの根源にあるのではないかというふうに思っているわけです。  政府は、いずれにしましても日米安保体制の堅持、これを大前提沖縄米軍基地の整理統合、縮小を図る、そういう方針をお示しになりながら、どちらにしましても総合的な見地から見直し作業を進めざるを得ないのではないか。そうなりますと、具体的な計画を沖縄県民の皆さんに示しながらということに当然なるわけでございますけれども、その辺、外務大臣、どのようなお考えでございましょうか。
  38. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 議員御指摘のとおりだと思います。私ども沖縄県民の不安あるいは怒り、いら立ち、そういったものを十分理解しなければならないし、我々としてもそれを受けとめているつもりでおります。先般、村山総理が大田沖縄県知事とお目にかかっていろいろと沖縄県の実情、沖縄県民が今何を考えておられるのかということについて聞かれております。  私は、今、北米局長が御答弁申し上げましたが、今回、日米間で合意をいたしました新しい協議機関は、今まさに議員がおっしゃったように、日米安保体制というものを堅持するということを前提にしながらも、いかに沖縄県民のこうした思いあるいは主張、そういったものを受けとめて改善をしていくかということを話し合うための協議機関というふうに考えております。  この協議機関は、沖縄県の施設区域についてどういうアイデアがあるか、それは整理統合、縮小についてどういう考え方ができるか、あるいはどういうふうに具体化することができるかということを一定期間の間に議論して結論を出して、それはしかし中長期的なものになろうかと思いますけれども、その結論を中期的にはこういうふうにする、長期的にはこういうふうにすると。まあ議論が出てきませんから全くこれは私の頭の中でのイメージを申し上げているわけでございますが、そういうことになるのだろうと思います。そうした計画といいますか考え方日米間のこの新しい協議機関によって議論をしていただくことになるというふうに思っております。そこで中長期的な計画、実行可能な計画を立てるということになろうかと思います。
  39. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 具体的な計画策定につきまして、非常に困難な難しいテーマということもあるわけですけれども、そこでの実現の可能性、可能であるか否かというようなことが大きな要素になるような気がするわけです。その中で何ができて何ができないのか、そういう仕分けを勇気を持ってするということもやはり必要なんだろうというふうに思います。また、そのことをアメリカ側に対しても勇気を持って要求すべきは要求し、あるいは国民、また沖縄県民の皆さんにも説明すべきは説明して、そういう理解を得るように誠意を持って努めるということが大変重要なことかなというふうにも思うわけです。  そういう中で、透明度といいましょうか、あらかじめ国民にある程度わかるような、特に県民の皆さんにある程度わかるような、そういう工夫、努力が必要ではないかというように思いますが、重ねて外務大臣いかがでしょうか。
  40. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 私は、この問題を具体化していくといろいろな問題が出てくる。その問題を解決するためには、県民の皆さんの御協力、御理解もいただかなければならないし、沖縄県下自治体の御理解と御協力をいただかなければならないということもあると思います。県の御理解もそうでございます。もちろん、政府がこの問題解決のためにどのくらいさまざまな角度から支援ができるか、あるいは実行するためには何ができるかということも同時に考えていかなければならないと思います。  ただ単に、ここをこうする、わかった、そうしようというだけで解決ができるほど単純でない問題がたくさんあるというふうに私は聞いておりますので、その問題を解決するためには今申し上げたさまざまなレベルでさまざまな協力あるいは理解あるいは新しい手法、そういうものも考える必要が出てくるだろうと思います。そのためには何が問題かということもきちんと示していかなければ進めないというふうにも私は考えまして、今、議員のお話でございますけれども、大事な御指摘だろうと思います。
  41. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 私ども新進党としてもこの沖縄の基地問題につきましては鋭意いろんな観点から検討もし、そしてそれなりの結論を出し公表しているところでございます。この十一月四日の村山首相と大田知事との会談でも話し合い決着の見通しが立たない状況になっているということでもあるわけでございまして、総理が職務執行の最高責任者という立場で、少なくとも日米首脳会談、これは二十日に行われる予定というようなことかもしれませんけれども、それまでにはみずから法的手続についての決断を下すべきだ、そのように思っております。  有力な関係閣僚というお立場外務大臣はどのように考えておられるか。あるいは総理に対して適切なまた助言というようなことも必要ではないかというふうに思ってもおりますし、それから日米関係の重要性あるいは手続に要する時間的な経過等から考えてみますと、もう一刻の余裕もないのではないかというような気がするわけです。そんなことからしますと、早急な手続の開始がこれはどうしても必要ではないかというように思います。  かつて沖縄米軍基地にかかわって無権原の使用というような絶対に避けなければならないような事態が、私の記憶ではたしか五十二年の五月のあのころに法律の成立のおくれというようなことで数日間あったような記憶もございますけれども、今回はアメリカ側からの問題の発生ということもあるし、また戦後五十年という一つの大きな節目でいろんな形で問題が取り上げられているというような事柄、またそれがこの国会との関係ではなくて、行政府と司法府というような絡みが出てくる可能性が非常に大きいという観点をトータルで考えてみますと、もう余裕はないのではないかというふうに思うわけです。  その点、外務大臣はどのようにお考えになり、またその観点から総理に対しても関係有力閣僚の一人としていろいろと御助言をされるおつもりがあるかどうか、その辺をちょっとお伺いしたいと思います。
  42. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 四日に行われました知事との会談の後、沖縄県民の感情といいますか考え方を踏まえた知事のお気持ちは、やはり署名押印はできないということであったというふうに私は官邸から聞いております。ということになれば、どうするかということを当然考えなければならないと思います。  外務大臣としてこれ以上申し上げることは少し出過ぎたことで、議員もよく御承知のとおり、防衛施設庁を中心に今後の段取りなどを考えて、どういうことがあるのかという御議論は今詰めておられるに違いないと私は思いますが、まだ現時点ではどういう対応をなさるのかということを直接伺っておりません。  ただ、私どもとしては、でき得る限り県民の理解を得るための努力がぎりぎりなされてしかるべきというふうに思いますと同時に、やはり法律に適法に処理をされるための努力というものも当然行われなければならないということもございます。  総理はこの問題について大変真剣に受けとめておられまして、総理のまだ御決断を承っておりませんので申し上げようがございませんが、真剣に目下検討しておられるというふうに思います。
  43. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 外務大臣日米関係の重要性、安保体制の堅持、この重要性ということは先ほど来重ねていろいろとお伺いしたわけでございますけれども、そういう状況で将来のことを考えますと、やはり物事はタイミングというのが非常に大事だろうというふうにも思いますし、そこに時間的な余裕がないとすれば外務大臣としてやはり何らかの進言といいましょうか対応を早急に、一日も早くとる、そういう進言をなさるのがよろしいんじゃないかというふうに私は思うんです。重ねてその辺の、総理の一存だ、政治的な大所高所からの判断だと、そのようにされるか。そういう御進言をされるおつもりはございませんか。いかがでしょうか。
  44. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 総理は常に日米安保体制を堅持するということを明言しておられます。これまでもアメリカのペリー国防長官とお会いになったり、その他大事な方々とは御本人に直接会っていろいろなお話をしておられますから、私は総理はもう十分深く認識をしておられるというふうに思います。  議員御指摘のとおり、しかし私は外務大臣としての職員をきちんと果たさなければなりません。その職員を果たすべきだと考えるときには、私は職員はきちっと果たしたいと思います。
  45. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 ぜひそのように御進言されることを私ども期待したいというふうにも思います。  それから日米間の新しい協議機関、そしてまた村山首相と大田知事との間で、また政府沖縄県との間で新しい協議機関をつくるというようなことが決まったというように承知はしているわけですけれども、従来、政府部内には十一省庁の協議機関とか、あるいは沖縄には三者機関でしょうか、そのようなもの、あるいは合同委員会、あるいは施設委員会分科会ですか、そういうようなものもありますし、こういうものの機関相互の関係、あるいはそこの中でどういうテーマでどういう形で取り組んでいくのか、余りに複雑になり過ぎて混乱をするんではないかというような思いもするわけです。いろんな方が会談して、そのときにこういうものをつくろうということ、それはそれなりに大変結構なことではありますけれども、実際の物事の進め方ということを考えてみますと、余りにいろんなものができ過ぎることもまたこれ混乱のもと、物事が進まない原因になるというようなこともあります。また、今までつくっておったものを廃止するというようなお考えで対処しようとされているのか、その辺をお伺いしたいんです。
  46. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) まず、日米間の協議の場でございますけれども外務大臣とペリー国防長官との会談で原則的に決まり、さらにクリントンさんが訪日されるまでの間に細部を詰めるということになっているものは日米安全保障協議委員会、これは閣僚レベルでございますが、のもとにこの委員会をつくるということでございます。これは、先ほど来大臣からも御説明がございましたように、中長期的観点から沖縄県における米軍施設区域のあり方、それから訓練、安全の問題等について検討を行うこととするものでございます。そして、四日の村山総理と大田沖縄県知事との会談において政府沖縄県による協議の場を設置するということで合意されたと承知しております。  鈴木委員御指摘のように、今まで十一省庁が関与する場とかいろんな場があったようでございますけれども、基本的認識としてはどうもその場がうまく活用されていない、生かされていないということがそもそもあるようでございまして、そういうことを踏まえて新しい協議の場をつくりたいということで合意がなされたというふうに私ども伺っております。この具体的な枠組みは、今、内閣が中心になりまして沖縄県との間で話をしていくということになっております。
  47. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 ぜひ現場が混乱しないようにいろんな形での整理を図られておやりになっていただきたい、そのように思います。  次に、新しい特別協定について若干の質問をさせていただきます。  新しい協定が締結されまして在日米軍駐留経費の負担が継続するということになったわけですけれども、この締結の意義とか継続理由はどんなところから出ているのか、その辺をお伺いしたいんです。
  48. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) これも外務大臣がきのう本会議で御説明申し上げたところでございますけれども冷戦の終結後も特にこの地域については依然不安定要因がある。その中で、日米安保条約は、我が国及び極東の平和と安全を確保し、広くアジア太平洋地域の発展を図っていくための不可欠な枠組みであるというふうに考えているわけです。そして、この安保体制というのは、日米の緊密な協力関係を維持していく政治的基盤としての機能も有しているということでございます。  他方、日米間の経済力の相対的関係が変化してきた中でアメリカは、日本もそうでございますけれどもアメリカも膨大な財政赤字を抱えながらも国際の平和と安全の維持のために役割を果たしているということで、在日米軍駐留経費の逼迫に直面しているのが実情でございます。  我が国も財政は厳しいわけでございますけれども日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を確保していくという観点から米軍日本におきます駐留を支える大きな柱である在日米軍駐留経費についてこれまでも自主的にできる限りの努力を図ってきているところでございますけれども、今般、新しい特別協定を締結いたしまして、在日米軍の駐留を維持していくために不可欠な在日米軍従業員の基本給とか光熱水料とか訓練の移転に要する追加的経費を負担することによって在日米軍の効果的な活動の基盤を確保したいということでございます。  そして、この在日米軍従業員の基本給などの負担でございますけれども、これは在日米軍従業員の雇用の安定にも資するのではないかというふうに我々は考えているところでございます。
  49. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 新たに訓練移転経費を負担するということになったわけでございますけれども、その辺の理由はどんなことでございましょうか。
  50. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 日米安保条約の目的達成のために在日米軍が軍隊として即応能力の維持向上のために必要な訓練を行うことは不可欠の要請であろうかと思います。他方におきまして、米軍の訓練が周辺の住民の方々の生活環境に影響を与えるというような場合におきまして、安保条約の目的達成と地域の住民の方々の要望との調和を図るため可能な範囲でその訓練をほかの場所に移転することによってこのような影響を軽減するということは、日米安保体制の円滑な運用を確保する上で極めて重要であると考えているところでございます。  しかるに、このような訓練の移転は、米側が本来特定の施設区域を使用することにより効果的に行い得るものでございますけれども日本側の要請によってほかの施設区域を使用して実施することになる。そういったような事情を勘案いたしまして、このような訓練の移転に伴って追加的に必要となる経費の全部または一部を我が国が負担することによりまして米軍によります訓練の移転が容易に行われるような施策をとることが適切と判断したわけでございます。  新特別協定に基づきますこのような措置によりまして、施設区域関連する問題への一層適切な対応が図られるというふうに考えているところでございます。
  51. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 そのような理由で新しく訓練移転経費を負担しようというようなことでございますけれども、その具体的な訓練はどんなものが考えられるのか、その辺をお聞きしたいわけでございます。  いずれにしましても、訓練経費の負担が大きくなればなるほど、見方によってはいわば米軍を丸抱えでというような状況、あるいは国民感情からいかがかというような見方をされないわけでもないので、その辺は気をつけないといけないというようなことが当然あるわけでございます。通常考えられますのは、言ってみればNLPの施設を硫黄島につくったというようなこともございますので、そういうことを念頭に置いておられるのかというような気もいたしますけれども、その辺の状況。  そして、この訓練移転費の負担によって厚木あるいは三沢等で夜間の離着陸訓練あるいはタッチ・アンド・ゴーのようなものが全廃ということになるのかならないのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  52. 野津研二

    説明員(野津研二君) 新しい特別協定におきます訓練移転費負担の趣旨につきましては、ただいま外務省から御答弁があったとおりでございますが、現在この経費負担の対象として具体的に私ども念頭に置いております訓練は、御指摘のように厚木飛行場等で行われます空母艦載機の夜間離着陸訓練、いわゆるNLP、この訓練の硫黄島への移転でございます。  硫黄島におきますNLPにつきましては、米軍の運用上の問題ということもございまして明確にお答えできる立場にないということについて御理解をいただきたいわけでございますけれども、米側の説明によりますれば、基本的にはできるだけ多くの訓練を硫黄島で実施する、そういうふうに努力するということでございます。ただ、硫黄島が厚木飛行場から約一千二百キロという遠距離にあるということから、即応態勢などの面あるいは天候不良等の際の不測の事態、そういうことを勘案しますと必ずしも訓練の全部を同島で実施することは困難ということでございます。  いずれにいたしましても、私どもといたしましては、厚木飛行場等の騒音軽減という問題は非常に重要な問題というふうに認識をいたしておりまして、できるだけ多くの訓練が硫黄島において実施されるよう今後とも米側の理解と協力を求めてまいる、そういう所存でございます。
  53. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 硫黄島と厚木の関係、それなりのことかなというふうにも思いますが、現在問題になっております沖縄県の一〇四号線越えの実弾射撃訓練、これも未解決の三事案の一つというようなことで大変大きな問題になっておりますし、県民の方々も非常に関心が深く、憂慮しているというようなことでもございます。この事案も対象となるのかどうか。私は、解決の道筋をつけるためにもぜひ有効な手だて、バックアップ体制というようなことを新協定をさらに有効に生かすため内容のある解決の手だての一つに加えられるような、そういう対応をとっていただくことがこの際望ましいんじゃないかというような気がいたします。  現在、沖縄県の生活産業道路でございます県道一〇四号線を越えての実弾射撃、これも訓練移転経費の対象の訓練というような取り扱いをしていただきたい、そのように思います。それはぜひやってほしいんですが、その辺はいかがでございましょうか。
  54. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 今、鈴木委員御指摘の沖縄の県道一〇四号線越えの実弾射撃訓練の移転、これは日米の首脳レベルで話されたいわゆる三事案のうちの一つでございます。これは大変重要な案件と我々は考えておりますけれども、この実弾射撃訓練の移転につきまして日米間で調整が図られる場合には、この特別協定第三条に基づく負担の対象になり得るものと我々は考えております。
  55. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 ぜひそのように判断もし、また対応をとっていただきたいというように思います。  そして、この新協定は国会による承認の手続を経て、来年、平成八年四月一日から効力を生ずるということになっているわけですけれども、来年度の予算の概算要求との関係で今後の予算的な手続というのはどうなるんでしょうか。改め要求というような形で差し繰りしながらというような形をとっていかれるのかどうか。その辺はいかがですか。
  56. 石井道夫

    説明員(石井道夫君) 新特別協定に係る概算要求につきましては、概算要求の提出期限であります八月三十一日現在、同協定について協議中でございましたので、平成七年度の場合と同様に現行特別協定の枠組みがそのまま維持されるものとして経費を積算し、計上しております。  その後、御案内のとおり九月に新特別協定が締結されたわけでありますけれども、この新特別協定の締結により必要となる経費の追加要求が必要でございます。その追加要求につきましては、年末の予算編成に向けまして関係省庁との間で所要の調整を行いまして、適切に対処してまいる所存でございます。
  57. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 新しい経費負担も含まれているということでもございますので、アメリカ側の経費節減のための努力、これは節約努力というような形で交換されました書簡に含まれているように承知しておりますけれども、これにかかわる担保といいましょうか、その辺はどのようにお考えになっておりましょうか。
  58. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 経費の負担に当たりましては、鈴木委員御指摘のように、外務大臣からの書簡をもちましてアメリカが本件経費の節約に努める方針を有していると理解している旨表明し、アメリカ側は国務長官の返簡におきまして本件経費の節約に努める方針を有するということで経費節約に努める意図を明らかにしているところでございます。  具体的には、労務費につきましては、これまでも防衛施設庁におきまして労務管理のさまざまな場面において経費節約を可能な限り米側に要請してきていると承知しております。引き続きこのような努力をしていくことになるということでございます。  また、光熱水料等につきましても、米側はこれらを効率的に使用するため節約計画を立てて努力していく旨述べておるところでございまして、日本側としましてもこの点について説明を適宜求めつつ、節約に関する努力を米側に要請していきたいというふうに思います。  さらに、訓練の移転に伴います追加的に必要となる経費でございますけれどもアメリカ側から提供される情報等を考慮いたしまして、日本側が審査の上確定する仕組みとなっておりまして、このような過程において節約に関する努力を要請していくということになります。
  59. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 外務大臣、これまで特別協定に基づきまして駐留経費の負担ということで、実質的には防衛関係費という中でいろいろと対応していたというようなことでもございまして、御承知のように、自衛隊関係の予算がこれによっていささか圧迫されたということも事実なんだろうと思います。そのようなことを考えまして、この協定の締結、執行によってさらなる圧迫が自衛隊関係の予算に生じないようにするということも、これもまたいろんな意味で配慮する必要のあることだろうと、このように思います。  外務大臣も関係閣僚のお一人としてその点についてぜひ十分な配慮をとっていただけるようにお願いをしたいというふうに思いますが、いかがでございましょうか。
  60. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 国の予算編成に当たって防衛費予算をどういう程度にするかということは極めて重要なことだと思っております。連立与党の間でさまざまな議論がございますが、いずれにせよ、国の安全にかかわる重要な問題そして予算でございますだけにこれらは十分、これをやった結果一方に充足できないものが起こるというようなことのないようにするべきものと考えます。御指摘を踏まえて、大蔵大臣等に私からも申し上げることにいたしたいと思います。
  61. 鈴木正孝

    鈴木正孝君 外務大臣、ぜひそのように取り扱っていただきたいと存じます。  若干時間が残っておりますけれども、私の質問はここで終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  62. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時二十分に再開することとし、休憩いたします。    午後零時十分休憩      ————◇—————    午後一時二十一分開会
  63. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題とし、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  64. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 まず、質問に入ります前に、イスラエルのラビン首相が中東和平の道半ばにしてテロの凶弾に倒れられたことに深い悲しみを覚えるものでございます。同時に、河野外務大臣におかれましては、政府特使としてラビン首相の葬儀への御参列、大変御苦労さまでございました。総理が出席すべきだとかあるいは総理経験者が出席すべきだとかいろんな議論がございましたけれども、私は十分に政府特使としての役目を果たされたということで、大変御苦労さまというふうに申し上げたいと思います。今後とも政治家あるいは外務大臣としてぜひ御奮聞いただきたいというふうに思っております。  それではお伺いいたしますが、去る十月二十五日に成立をした地位協定十七条五項(c)の日米合同委員会の合意について外務大臣にお尋ねをいたします。  今度、九月四日に沖縄で発生をしたアメリカ海兵隊員らによる少女暴行事件、私は予算委員会外務委員会質問させていただきましたが、本当に胸がつぶれるような痛ましい事件でございました。この事件契機に、地位協定十七条五項(c)のいわゆる身柄の引き渡し問題が日米間で協議をされたわけでございますが、十月二十五日の日米合同委員会合意について、外務大臣を含めて外務省の幹部の皆さん方は、この成立した合意内容を大変誇らしげに大いなる成果だというふうに語っております。ところが、沖縄ではすべての政党あるいは十月二十一日の県民大会に結集をした多くの団体、県民がほとんど評価いたしておりません。  そこで、一つお尋ねいたしますけれども、十月二十五日の日米合同委員会合意というのは条約や協定のような法的拘束力はあるんでしょうか、そのことについてお尋ねいたします。
  65. 林暘

    政府委員(林暘君) お答えを申し上げます。  照屋委員御案内のとおり、今度の合同委員会合意といいますものは、そもそもから申し上げれば、地位協定の二十五条によって設置されております日米合同委員会地位協定の実施に関して日米間で協議した結果、日米間のある種の合意、一致した見解というような形で文章にした、そういう合意であるわけでございます。  そういう意味では、今、委員が御指摘になりましたような条約とか協定とか取り決めというような意味で法的拘束力を持ついわゆる政府間の協定がという御質問だとすれば、そういうものではございません。これはあくまで地位協定の運用であるとか解釈であるとか実施の細目であるとか、そういったものを合同委員会の場で協議をした上で、そこでの合意ないしは一致した見解ということで書きとどめたものでございます。  ただ、これも十分御承知と思いますけれども、今回の合意をつくりますに当たりましては、両政府それぞれが十分に時間をかけて検討した上で合意をつくったものでございますので、これが先ほど申し上げましたようにいわゆる政府間の協定という意味で法的拘束力を持たないから守られないものだというふうには全く考えておりません。
  66. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 県民や国民が求めておったのはそういう運用の改善ではなくして、しかも条約や協定のような法的拘束力を持たないそういう日米合同委員会合意ではなくして、これは制度的に起訴前の身柄の引き渡しが担保されるような地位協定の改定だったというふうに私は思っております。そういう点では、今度の日米合同委員会合意というのは起訴前の身柄の引き渡しについては法的拘束力がありませんので、あくまでもアメリカの側の裁量にゆだねられる、こういう問題を持っておることを指摘しておきたいと思います。  次に、その合同委員会合意で起訴前の身柄引き渡しを求めるに当たってなぜ殺人罪や強姦事件のみに限定をしたのかということであります。と申し上げますのは、一九七二年五月十五日の復帰からことしの八月末日までに、沖縄では米軍人軍属の犯罪が四千七百十六件発生いたしております。そのうち凶悪事件は五百九件で、内訳は殺人事件が二十二件、それから強盗事件が三百五十四件、放火事件二十三件、強姦事件が実に百十件起こっておりますし、それ以外にも例えばひき逃げ事故、いわゆる業務上過失致死傷事件ども多発をしているわけであります。  そういう状況の中で、今度の合意は基本的には殺人罪や強姦罪に限定をしている。その理由はどういうことなんでしょうか、簡潔にお答えください。
  67. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 今回の合意は「殺人又は強姦という凶悪な犯罪の特定の場合に日本国が行うことがある被疑者の起訴前の拘禁の移転について」「好意的考慮を払う。」という取り決めの内容になっておりますけれども、殺人及び強姦以外の犯罪につきましても、事案によってその事件の悪質性、結果の重大性、社会的影響、捜査上の必要性等を総合的に勘案した上で、拘禁の移転が適当と考えられるものにつきましては今回の合意の第二段目の文章で被疑者の起訴前の引き渡しを可能とする道を開いたものでございまして、殺人と強姦に限ったということではございません。
  68. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 今説明のあった今回の日米合同委員会合意の第一項の後段部分、これは私もよく承知をしております。しかし、これは原則はあくまでも殺人または強姦という凶悪犯罪なんですね。そういうことが県民が今どうしても納得できない怒りなわけであります。  そこで、十月二十五日の日米合同委員会合意が成立をして後、さらに十一月四日の村山・大田会談の後も沖縄県から、日米地位協定の十七条五項同についてはいかなる犯罪についても公務外の犯罪、日本が第一次裁判権を有する場合には原則的に身柄の引き渡しができるようにしてほしい、こういうことが外務省を含めて政府に要望があることは承知しておりますか。
  69. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) そのような御要望があることは承知しております。
  70. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 十一月七日にアメリカ海兵隊員ら三名に対する初公判がございました。私もできたら傍聴したいということで傍聴券を求めて並んでおったんですが、抽せんで外れて実際に法廷の中で傍聴することはできませんでしたけれども、法廷外で初公判の様子を見ておったんですが、その件との関連で幾つか質問させていただきたいと思います。  十一月七日に被告人三名の米兵の家族がアメリカで記者会見をして、自分たちの息子たちは日本の警察、すなわち沖縄県警で取り調べの際に自白を強要されたというふうなことを記者会見で述べております。そのような被告人家族の訴えに対して、警察庁はどのように考えておられますか。
  71. 篠原弘志

    説明員(篠原弘志君) お答えいたします。  ただいま自白を強要したのではないかとのお尋ねでございますけれども沖縄県警におきましては適正な捜査を実施した上で検察庁に書類を送致しておりまして、そのような事実はないと私どもは認識をしておるところでございます。
  72. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 第一回公判のときに非常に異様に感じましたのは、被告人の米兵三名が入廷をする際に、これは警察でしょうか法務省の職員でしょうか、ジュラルミン製の盾で米兵を覆い隠して入廷させておるわけですね。ところが、御案内のように、日本の裁判で日本人が被告人の場合に、手錠をかけてしかも腰には捕縄をつけて、そしてマスコミにも公衆にもさらしものにして入廷させているわけですよ。これはなぜ米兵だけそういう措置をとるんですか、このことについて。
  73. 木原武久

    説明員(木原武久君) お答えいたします。  拘置所におきましては、これは未決拘禁施設の当然の責務でございますけれども、被収容者の逃走、自殺等の事故防止、これはもちろんでございますが、それ以外にも外部からの襲撃であるとかあるいは身柄奪取、そういったような事態をも想定いたしまして身柄の保全には遺漏のないように鋭意努めているわけでございます。  そこで、御質問に係る米兵の出廷の件でございますけれども、本件は社会の耳目を聳動させて非常に注目を浴びている事件の被告人が初めて公判に出るということでございました。そこで、拘置支所から地方裁判所へ連行するに際しましても、外部からの襲撃、例えば投石を受けるとか狙撃されるとか、そういった事態が起こる可能性も全く否定できないような事態でございましたので、そういうことで不測の事態を防止するために万全を期しまして被告人の周囲を刑務官が盾で囲いながら出廷する、そういう方法をとったわけでございます。  したがいまして、これは米軍人であるからあのような方法をとったということではございませんで、あくまでそういった危害を防止するという観点からとった措置でございます。日本人につきましても、同じように危険が予測されるような事態でありますればやはり同じような戒護方法をとって身柄の保全を期す、こういうような措置をとっておるわけでございます。
  74. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 私は沖縄で二十四年間弁護士をやっておりますけれども、被告人だから公判に出廷する際に手錠や捕縄をかけて公衆やマスコミにさらしものにしなさいと言っているわけじゃないんです。むしろ、それはあってはいかぬと思うんですね。  ところが、今答弁を聞いておりますと納得しがたいわけでございますが、具体的にその米兵三名が襲撃をされるような動きだとか蓋然性だとかそういうものがないのに、過剰に反応しているとしか思えないわけですね。  それとの関連でお聞きいたしますけれども、自白を強要されたとかあるいはまた黒人だから身柄を引き渡したんじゃないか、こういうようなことを家族がおっしゃっているわけですね。ところが、これは起訴後に身柄を引き渡されたのであって起訴前に身柄が引き渡されたわけでもないし、起訴後は犯人であれば白人であれ黒人であれ引き渡されるようになっているのが地位協定の仕組みであって、今アメリカの犯人の家族がマスコミにアピールしている黒人だから身柄を引き渡した、この事件をあたかも人種差別と絡めてやられるというのは、私は被害者にとっては二重の意味で暴行を受けるようなもので、非常に許しがたいなというふうに思っておるんです。  そのことについては、政府としても家族やアメリカのマスコミに対しても誤解を解くようなことをぜひ大臣、御配慮いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  75. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 今回の被疑者の身柄の引き渡しについては、当初、沖縄の皆さんのお気持ちが一日も早い身柄の引き渡しが必要だ、こういう御要請があったわけでございます。私どもは、アメリカに対して身柄の引き渡しをこの沖縄県の要請に基づいてするためには、やはり規則に基づかない身柄の引き渡しというのはあり得ないわけでございますから、今お話がございましたように地位協定を変えるか、あるいは地位協定の運用の改善を図るか、いずれかしなければ身柄の引き渡しはないということから、運用の改善について早急に専門家委員会を開いて作業をしてほしいということをモンデール大使に申し入れしたわけですが、結果として、起訴が行われてルールに基づいて身柄は引き渡されたわけでございます。  この身柄の引き渡しについては、我々とすれば当初の地位協定に基づいて身柄の引き渡しがルールどおり行われた、その間には何らルールに基づかないやりとりがあったわけではない、ルールに基づかない身柄の引き渡しがあったわけではないということははっきり申し上げておきたいと思います。
  76. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 私は、沖縄だけに限らず全国的に今度の事件では早急に起訴前の身柄引き渡しをやるべきだという声があれだけあったにもかかわらず、日米政府地位協定を盾にして起訴後まで身柄を引き渡さなかった。その三名の犯人が黒人の米兵だったがゆえに、起訴前の身柄引き渡しをやると人種問題と絡めていろんなことが起こるんじゃないかという配慮をしてやらなかったとむしろ私は思うんです。  それで、なぜこういうことをくどく質問しているかと申し上げますと、今回政府は、十七条五項(c)については合同委員会合意で、いわば運用の改善で起訴前においても身柄の引き渡しができるようにしよう、こういうふうになったわけですね。ところが、今家族がアピールしているように、黒人だから身柄を引き渡したんじゃないかとか、日本の警察で自白を強要されたとか、私からすれば言いがかりとしか思えませんけれども、そういうふうなアピールが起こってくる。その場合に、日本が第一次裁判権を持っている場合には無条件で起訴前でも身柄を引き渡すということを制度的に改定しないと、運用の改善であると個々のケースでこのような問題が、今回家族が言っているようなことが出てくると思うんですよ。  その点について、だからこそ運用の改善じゃなくして制度的に改めるべきだと、私はそういうことを言いたいわけですが、大臣、いかがでしょうか。
  77. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 議員のおっしゃらんとすることはよく理解できます。しかしながら、もしそういうことであれば、ルールを変えることも恐らくアメリカ側としてはちゅうちょするでありましょう。それは同じぐらい困難になってくるというふうに思います。  私は、今回決して外務省がよくやったと褒めていただきたいと思ってはおりませんが、私どもとしてできる限りの努力をいたしたつもりでございます。先ほど照屋議員から、今回の運用の改善については前段、後段やや書き分けてあって、殺人云々というのが前段にあって、後段にしかし重要な問題についてもやるんだというふうに書き分けてある。この書き分けてあることはどうもやっぱりちょっと違うんじゃないかというような御指摘がありましたが、私どもがこの問題で日米間の合意を取りつけるためにどのくらいアメリカ側に対して執拗に求めたかということを、むしろこの文脈の中で御理解いただきたいというふうに私は思っているんです。  何回も行き来があって、私のところでも、これでは不十分、もう一度アメリカとは折衝しろということで担当者を励まして、二度三度アメリカ側とやりとりをしたということがこのルールの改善の中に私は残されているというふうに思っているわけでございます。  ちょっと余計なことを申しましたが、我々としてはこの日米両国専門家による合意、しかもその合意を私はモンデール大使との間でも確認をして、これが両国の今回の専門家委員会における議論の合意であるということを確認しておりますから、この合意は行われるものと私は確信をしております。  しかもそれが、何か事件が起こって被疑者が逮捕されて、その被疑者がこういう人柄、こういう人間であるからこういうルールを急いでつくったというのではないわけですから、もう既にできているルールというものは当然のルールとして判断が行われるというふうに私は確信をいたします。
  78. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 それでは次に、十一月一日のペリー国防長官との会談の件でお伺いいたしますが、ペリー国防長官との会談で合意された新しい協議機関の設置の問題です。この新しい協議機関はいつごろ開催をされるのか、そこでどのような内容について協議をして、いつまでに沖縄の基地の整理縮小について結論を得ようとするのか、そのことについてお伺いいたしたいと思います。
  79. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) ペリー長官とはいろいろな話をしたわけでございますが、その中で、今御指摘の新しい協議機関の問題について申し上げますと、この協議機関は2プラス2の日米安全保障協議委員会という両方から閣僚が二人ずつ出る会議でございますが、その会議のもとに新しい協議機関をつくろうと。  この協議機関には、詳細は北米局長から御説明をさせますが、両者からかなりハイレベルの、しかもこれまでよりも幅の広い人たちの参加によって構成される協議会をつくる。その協議会の中では沖縄の問題について協議をする、基地の整理統合及び縮小について討議をしてもらう。一定の期間を限りまして、その一定期間の中で協議をして中長期的な案をつくってほしい、これは私、やや願望も含めておりますが、中長期的な案をつくってほしい、こう考えております。そのことはペリー長官にも私申しました。ペリー長官も、自分もあらましそう考えているということでございました。  いずれにせよ、詳細は今月二十日、日米首脳会談が行われるまでの間に詳細をもう少し詰めることにしようということにいたしております。もうあと二週間でございますが、この二週間の間に詳細詰められるものは詰めたいと思っております。
  80. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 大臣にお伺いいたしますが、十一月四日、村山総理と大田知事の会談がございました。その際に、沖縄県の方から在沖米軍基地の返還実行計画、いわゆる基地返還のアクションプログラムというのが政府に示されております。このアクションプログラムでは、二〇一五年までに在沖米軍基地を全部返してほしい、こういう具体的な段階ごとの計画が政府に示されておるわけでございますが、これはぜひ真剣に外務省としても政府としても受けとめて、私はしかるべき対応をすべきだというふうに思っておるんです。  そこで外務大臣に、この県が示したアクションプログラムに対する御感想というんでしょうか、御所見をお伺いしたいなというふうに思っております。
  81. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) アクションプログラムと称する県の試案とでも申しましょうか、拝見をいたしておりますが、もちろんこの試案、真剣に受けとめて私どもも検討しなければならないと思います。我々が考えます案を、先ほど申し上げましたように沖縄の基地の整理統合、そしてその結果として縮小ということを当然考える新しい協議機関に我々からも提示する何らかの案をつくらなければならないわけですから、その案づくりを検討するときに真剣に受けとめたいと考えます。  いずれにせよ、その新しい協議機関は日米安保体制を堅持するということが前提になっております。日米安保体制を堅持するということが日米両方の合意、了解の上新しい協議機関をつくって、この新しい協議機関で議論をする案は日米安保体制を堅持するということを前提にするということになっているわけですから、それを前提として協議、検討をしてもらう案として我が方がどういう案を出すかということになると思います。これから真剣に検討をして提案をするわけでございますから、今予断をすることはもちろん差し控えなければならないと思いますが、いずれにせよ大田知事が村山総理に直接提案をされた案でございますから、私どもも予断を持たずに拝見をして検討をさせていただきたいと思っております。
  82. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 十一月四日の村山総理と大田知事の会談後も、大田知事は米軍用地強制使用のための代理署名を拒否するんだということを明言いたしております。  私は知事の後援会の事務局長を五年ばかりやっておりまして、日ごろ知事の考え方に接する機会が多かったわけですが、はっきり申し上げて大田知事は決して感情的な反米主義者じゃないんです。彼は沖縄の師範学校を卒業して早稲田大学に学び、その後アメリカの大学院で研究を重ねて、それからアメリカの大学でも教鞭をとっておられました。むしろ、私は、大田さんというのは非常にアメリカを理解する立場の方だというふうに思っておりますが、その知事が、村山・大田会談後もなお自分の手で米軍基地を確保するそういう手続に加担するわけにはいかぬ、こういうことで代理署名の拒否を貫いていることについて大臣はどのように思っておられますか。
  83. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 知事さんには知事さんの政治的信条というものがおありだろうと思います。県政を県民からゆだねられて県政の発展のために努力をなさる、懸命に努力をしておられるということだろうと思います。他方、日本の国は四十七都道府県あって、その四十七都道府県で日本の国を構成して、日本の国民はいかに安全にその国土の中で暮らすかということもまた考えなければならないわけでございます。国政における村山総理の国全般を考え、あるいは国家と国際社会を考えたこれまた政治家としての信念、信条をもとにして真剣に今日の状況を考えておられることも、また大田知事にはぜひその点は理解をしていただきたいと思います。  お話しのとおり、私も大学は同窓でございます。何度もお目にかかって知事のお人柄に接したことはございます。アメリカをよく御存じだということを伺って大変安心もいたしておりますが、アメリカを知ると同時に、今日の日米関係あるいは今日の国際情勢というものについての御見識もぜひ我々もお伺いをするなり、あるいはまた我々も申し上げて、もちろん県民に軸足を置かれたお考え、御発言というものもよくわかりますけれども、それと同時に、日本がいかに国際社会の中で生きるか、あるいは日本の将来をいかに安全に導くかということについても、知事として国政とのかかわり合いについてこれまたいろいろお考えもお聞かせいただきたいというふうに思っております。
  84. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 大田知事もそうでございますが、私たち県民が望んでおるのは、戦後五十年間、米軍基地の重圧のもとで苦しめられてきて、これからさらに二十一世紀の新しい時代にわたって沖縄が自立経済を達成していく、あるいは沖縄の新しい町づくりや産業振興の上でも基地が余りにも過密過ぎる、だから二十一世紀へのグランドデザインを描こうにもどうしてもその広大な米軍基地が邪魔である、後に続いてくる世代の者にまでこれ以上基地の重圧、桎梏を押しつけるわけにはいかぬというのが沖縄の大人の責任であるし、政治家の責任だと私は思うんですね。したがって、いかに政府日米安保の重要性を強調しても現実問題として米軍基地が存在をする地域人たちの理解が得られないと、私は基地の機能そのものが維持できないと思うんですね。  現に知事は総理との会談後も、土地調書、物件調書への代理署名の拒否だけじゃなくして、仮に手続がさらに進行して県の収用委員会への裁決申請後の公告・縦覧の代理署名も拒否するとおっしゃっているわけですね。  それから、今回、この土地調書、物件調書の代理署名には応じた宜野湾市の桃原市長が、普天間飛行場との関連で公告・縦覧の代理署名にはもう応じませんというふうにせんだって明らかにしておりますし、それから普天間飛行場の地主である新進党の伊佐県議会議員が、もう自分は次回から契約を拒否するんだ、こういうことを県議会の場で公にしているわけです。  そうすると、やはり沖縄の基地問題を真剣に政府が受けとめて県が今回提示した基地返還のアクションプログラムについても理解を持って取り組んでいかないと、いかに安保堅持、安保が必要だ必要だと言っても、結果的には安保体制そのものに風穴があいてくる、こういう事態が沖縄から私は起こってくるに違いないと思うんです。そういうことについて大臣はどのように考えておられますか。
  85. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 沖縄県民の皆さんが戦中戦後を通じて大変厳しい環境の中で生きてこられたということをもちろん日本国民は承知をしている、理解をしておると思いますし、また理解しなければならないと思います。したがいまして、そうした沖縄県民の目の前に沖縄県土の一〇%という基地が存在するということを、これは村山総理も十分認識しておられます。私がペリー長官と話をしましたときにも、いかにも沖縄米軍の基地が集中している、こういう状況がこのままでいいというふうには思わないということについては、先方もそれは自分もそう思いますということを言っておられたことは事実なんです。そこで、それではどういう解決策があるかということについて真剣に検討をしなければならないと思います。  私は、知事さんの大変な御決意もあって、あるいは沖縄県民の皆さんの、何といいますか、我慢の限界とでもいいましょうか、大変な今回の問題に端を発した大集会とかそういったものが目に見えて、これはもう本当に大変なことだ、こうしたことを解消するためにみんなが考えなきゃならぬと。これはもちろんアメリカとの話も当然でございますけれども日本国民としてどこに住んでおっても、日本の安全のためにこういう状況が起こっているとするならばそれはみんなでこの問題解決のために考えなきゃならぬ、そういうふうに広くみんなが思ったことは今までないと思いますね。今までで今が一番こういうことが真剣に考えられている、そう私は思います。  それは比較はできません、全く比較はできませんが、原子力発電所が集中している町の町長さんは、何でおれの町にだけこんなに原子力発電所が集中しなければならぬのか、我々だけが原子力発電所の中に生きていて、多くの人の電力をここで供給しているということを考えると割り切れない気がするとおっしゃった話を聞いたことがございます。全く比較対照すべきものではないとは思いますけれども、やはりそれぞれの町、それぞれの地域でいろいろなそうした問題を考えるときに、夜、家へ帰ってスイッチをひねれば電気がぱっとつく、あるいはもう全く感じないほどの安全を我々は享受している。そういう国民が、なぜ我々が今安全に生きていられるのか、なぜこういう明るい電気のもとにいられるのかということをやはり考えなければならない、そういう場面だと思うんです。そういう理解を集めてこの問題の解決を考えなければならないと私は思います。
  86. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 原発の問題とはちょっと違うと思いますけれども、論争している時間がもったいないですので先に進みます。  防衛施設庁にお伺いいたしますが、今度の米兵による少女暴行事件の被害者に対する補償、どのような手続でなされるのか、それから現段階までに補償の話し合いがなされているか否か、簡潔にお答えください。
  87. 大野琢也

    政府委員(大野琢也君) お答えいたします。  本件のような公務外の事件につきましては、原則として加害者が賠償責任を負って当事者間の示談で解決するということが原則でございます。この示談が困難な場合には、地位協定十八条六項の規定によりましてアメリカ政府が補償金額を決定し、被害者の受諾を得た上で支払いを行うということになっております。その際、当庁といたしましては、被害者から補償請求に関する話を受けまして、その内容を審査しまして、結果を米側に送付することになっております。  この件に関しましては、当庁といたしまして、本事件の性質にかんがみまして被害者の御家族との直接の接触というのは今までのところやっておりません。直接の接触を避けまして御家族のしかるべき関係者と現在調整しているところでございます。本事件の性質上、御家族の御意向もあるということで、現段階では直接の接触は望ましくないというお話を受けております。したがいまして、御家族への訪問というのは差し控えているところでございます。  今後、被害者側からお話がございましたら、可能な限りの努力を払いまして、適正な補償が得られるよう米側と調整をしていきたいと思っております。また、アメリカ側からも被害者への補償につきましては誠実に対応したいという話を聞いております。  以上でございます。
  88. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 今、アメリカ側から誠実な対応をしたいというのは、アメリカ政府からですか、それとも被告人の家族からですか。
  89. 大野琢也

    政府委員(大野琢也君) 私どもが話を聞いておりますのは、アメリカ政府の方から誠実に対応したいという話を聞いております。
  90. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 どういうふうな形で伝えられたんですか、アメリカ政府から防衛施設庁に。
  91. 大野琢也

    政府委員(大野琢也君) 私ども沖縄の出先であります那覇局の者が現地の法務部の者と接触をした結果、そういう話を聞いております。
  92. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 この補償問題については先日の外務委員会でも私はお聞きをいたしまして、むしろ防衛施設庁長官よりも外務大臣の御答弁の方がより深刻な事態に的を射た答弁だったんですね。  正直申し上げまして、これまで復帰前、復帰後、この種の米軍人軍属の犯罪による被害者というのはもうほとんど泣き寝入り、そしてやられ損なんですね。要するに適正な補償がなされてこなかった。このこともやはり県民の怒りの強いところなんですよ。私自身も戦の終わった年にサイパンのアメリカ軍の捕虜収容所で生まれて、五十年間、基地の島沖縄で生きてまいりました。だから、米軍人軍属の犯罪というのも直接間接に見てきたわけです。もちろん犯罪を根絶することが一番大事なんだけれども、起きてしまった犯罪に対する被害者への補償というものも大事なんです。  そこでお伺いいたしますが、沖縄県から地位協定十八条六項について公務中か公務外かを問わず日本政府の責任で補償が受けられるように全面改正をしてほしい、こういう要望が政府に出されております。県の方は日本政府の責任でと。私は、個人的には日米政府が責任を負うべきだというふうに考えておりますが、公務中、公務外を問わず、ともあれ沖縄県が要求している日本政府の責任による補償制度への改正要求について防衛施設庁並びに外務省はどのように受けとめておられますか。
  93. 大野琢也

    政府委員(大野琢也君) 当庁といたしましては、所掌事務の上からいいまして地位協定関連規定に従って補償業務を実施するという立場ですので、地位協定そのものをどうするこうするというようなことについてはお答えをするような立場にはないんじゃないかというふうに考えております。  ただ、個人的な感触ということで申し上げさせていただきますと、我が国の場合には、公務員の不法行為につきまして国が国家賠償法の規定により補償する責任を負うというのは公務員がその職務を行うについて違法に他人に損害を与えた場合、すなわち公務上の不法行為により損害を与えた場合に限られているわけでございまして、その他の場合には、加害者が公務員である場合を含め、民法上の不法行為として当事者間の問題にゆだねられることとなっているわけでございます。  その結果、加害者の資力の問題等で被害者が十分な補償を受けられないことは往々にしてあり得るものでございますが、仮に米軍人等の公務外の事件、事故に対して国が補償額を支払うというような制度を新たに設けるということは、他の不法行為による被害者に対する補償との均衡という問題もあるのではないかというふうに考えております。  ただ、沖縄県の方の御要望もよくわかりますので、その点、政府議論する場があれば我々としても真剣に考えていきたいというふうに考えております。
  94. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 何も禅問答をしようと思っているんじゃないんです。国賠法の仕組みというのはあなたが言わなくても私もわかっています。しかし、〇・六%の国土面積の沖縄に在日米軍専用施設の七五%が集中しているんですよ。年間二百件以上も米軍人軍属の犯罪が起こっているんです。そして、その被害補償が実現できないということでもうみんな骨身にしみているわけですよ、被害者は。それは特別法制度でもやらなくちゃいかぬじゃないですか。そう思いませんか。
  95. 大野琢也

    政府委員(大野琢也君) 沖縄県の方からそういう問題提起があるということを我々は真剣に受けとめておりますし、今後いろいろ勉強していきたいというふうには考えております。
  96. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 外務大臣、どうでしょうか。
  97. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) これは施設庁が大変御苦労、御苦心をいただいているところだと思います。  私は少し、法律に素人の人間がこういうことを申し上げるのはどうかと思いますが、この十八条はルールとしてはきちんとできていると思うんです、ルールとしては。ただ、ルールどおりやっても向こうが十分な金を出さないというところに問題があるので、これはルールに欠陥があって金が出ないんじゃない、ルールはちゃんとしているんだけれども金が出ないというところなんです。力関係というんでしょうか何というんでしょうか、私が拝見をしたところ、じゃこのルールを変えれば金がちゃんと出るかというと、もちろんそのルールのつくり方にもよるんだろうと思いますが、そういうところもやっぱりよく議論をしてみる必要があるだろうと思います。  いずれにしても、私は、お気の毒な事例がたくさんあるという事実はあるわけですから、このお気の毒な事例を今後繰り返してはならぬというふうに思います。今回の場合には、アメリカがたしかいち早くファンドかなんかをつくられてこれに対応しようというふうになさったと伺っておりますが、いずれにしてもこの問題を泣き寝入りさせるようなことはしてはならぬというふうに私は思います。  それではどういう方法でこれが解決できるかということになりますと、私、直ちにここでこうすればいいという知恵がないことは申しわけなく思いますが、お許しをいただきたいと思います。
  98. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 ぜひ外務大臣、この十八条六項の被害者に対する補償制度については、外務大臣がおっしゃるようにルールはうまくできているんだというふうにおっしゃっても、現実に被害を受けた人たちが救済されない、泣き寝入り、やられ損というのはどうしてもそれは改めなければいけないわけで、先日新しい協議機関を設置することが決まったわけでございますから、ぜひそういう協議機関の場などを通して、この補償制度の改善問題についても速やかな御検討をいただきたいというふうに思いますが、御決意を賜りたいと思います。
  99. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) ちょっととっさのことで、ここでも少し議論がありますので、御指摘を踏まえて検討させていただきます。お考えの趣旨で、今新しい協議機関を頭に置いてのお話のように伺いましたが、そういうことができるかどうか、少し難しいような問題があるようですので、検討させていただきます。
  100. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 それでは、新特別協定に関してお伺いをさせていただきたいと思います。  まず最初に、在日米軍基地で働いている基地労働者、この法的雇用主はだれになっておりますか。
  101. 早矢仕哲夫

    政府委員(早矢仕哲夫君) お答えいたします。  地位協定第十二条第四項におきまして「現地の労務に対する合衆国軍隊及び第十五条に定める諸機関の需要は、日本国の当局の援助を得て充足される。」と規定されております。またさらに、防衛庁設置法におきまして在日米軍従業員の雇い入れ、提供、解雇及び労務管理に関することは防衛施設庁長官の権限とされております。
  102. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 要するに、基地労働者の法的雇用主は日本政府ですね。
  103. 早矢仕哲夫

    政府委員(早矢仕哲夫君) そういうことでございます。
  104. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 しからば、基地労働者の給与等は雇用関係から生ずるものでありますから、法的雇用主である日本政府が直接に支払う義務を負っているのではありませんか。
  105. 早矢仕哲夫

    政府委員(早矢仕哲夫君) 給与支払いといいますか、給与の負担がどうなっているかをまず御説明させていただきたいと思います。  我が国は、在日米軍従業員の安定的な雇用の維持を図り、もって在日米軍の効果的な活動を確保するため、昭和五十四年度から国家公務員の給与条件に相当する部分を超える格差給、五月手当及び退職手当の一部を、いずれも地位協定第二十四条第一項上、米側に負担義務のある合衆国軍隊を有することに伴う経費に該当しないとの考え方から負担してきております。  その後、日米両国を取り巻く経済情勢の変化によりまして、在日米軍駐留経費が急激に圧迫されている事態にかんがみ、昭和六十二年に締結された旧特別協定に基づき調整手当等八手当の全部または一部について負担を行ってきております。  さらに平成三年、現特別協定を締結し、旧特別協定に基づく調整手当等八手当の負担に加え、在日米軍従業員の基本給等の一部を負担することとし、平成七年度にその全額を負担することとしたところでございます。
  106. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 質問の範囲をはるかに超えてくどくど説明するのはよしていただきたいと思います。端的に聞いているんです。  要するに、日本政府が法的雇用主なんだから、雇い入れている基地労働者の雇用条件に関して給与等を支払うのは日本政府の義務でしょうと私は聞いているんです。
  107. 早矢仕哲夫

    政府委員(早矢仕哲夫君) 在日米軍従業員の場合、一般の会社と違うところがあると思います。それはどういうことかと申しますと、先ほどもお答えしましたように、法律上の雇用主としては国ではございますけれども、実際の使用者は在日米軍ということになっておりますので、そういう関係で給与等の負担をどうするかということにつきましては、地位協定の話は外務省所管ということになるわけでございますけれども地位協定の枠内で判断されるものだと私どもは考えております。
  108. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 今、いわゆる基地労働者については間接雇用制度で、かつてはアメリカ政府アメリカの諸機関が直接雇用するという制度であったわけです。ところが、安保条約地位協定等に基づいて沖縄の基地労働者についても復帰後は直接雇用から間接雇用に制度が移行して日本政府が雇用してアメリカに提供する、こういう仕組みなわけですね。それは間違いありませんね。
  109. 早矢仕哲夫

    政府委員(早矢仕哲夫君) 現在の雇用制度は、今御指摘のあったとおりであることは間違いございません。
  110. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 間接雇用制度の中でMLC基本労務契約あるいはIHA基本労務契約というのがございますね。  そこでお伺いしたいんですけれども、在沖米軍基地で働いている労働者の労働条件については日本の労働関係法規が適用されるんですか、されないんですか。
  111. 早矢仕哲夫

    政府委員(早矢仕哲夫君) 一般的には適用されると理解しております。
  112. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 私は適用されるのが当たり前だと思うんですね。ところが現実には、基地で働いている労働者との関係で、直接労働者の労務の指揮監督をやるのはアメリカ人の上司なわけです。そのアメリカ人の労務指揮をやる監督者が、あたかも基地内は治外法権で日本の労働法規が適用されないんだというふうに思い込んでおって、例えば年次有給休暇を請求する際に、正当な理由もないのに時季変更権を行使したり年休を与えなかったりということで、私も法的雇用主である日本政府を相手に裁判をして幾つか勝訴判決をもらったことがあるんです。  防衛施設庁としては、基地内で働いている労働者に対しても日本の労働関係法規が適用されるんだ、こういうことを米軍当局に対してきちんと私は指導すべきだと思いますが、どうでしょうか。
  113. 早矢仕哲夫

    政府委員(早矢仕哲夫君) 在日米軍従業員の雇用等の条件に関しましては、やはり日本国の労働法令を適用していこうという方向はそのとおりだと思いますけれども米軍の活動を制約する形で行うというのは非常に難しいのではないかと思います。したがいまして、私どもは、米側と労働関係のいろんな問題を調整するに当たりましては実質的な形で従業員の方々の権利保護を確保していく、そういう方向で調整をしてきておりますし、これからもそういう方向で調整していこうと思っているところでございます。
  114. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 新特別協定との関連でお伺いいたしますが、いわゆる思いやり予算でもって基地内でアメリカ軍が教会をつくっているということがいろんなマスコミ報道で報じられておりますが、沖縄に限らず全国どこかの基地で思いやり予算でアメリカ軍が教会をつくった、こういうふうな事実が確認されておりますか。
  115. 小澤毅

    政府委員(小澤毅君) 沖縄におきまして、提供施設整備によりまして、昭和五十八年度にキャンプ・コートニーにおいて一棟を整備しているということは承知しております。また、牧港の補給地区において、直接教会という形ではございませんけれども、礼拝堂を備えた教育施設ということで昭和六十二年度に一棟を整備しているというふうに聞いております。  全国的なものにつきましてはちょっと今手元に資料がございませんので、後で御回答申し上げたいと思います。
  116. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 これはそのとおりだったかというので今驚いておりますけれども沖縄に限らず在日米軍の各基地をぜひ点検していただきたいと思うんです。  いわば思いやり予算というのは日本政府のお金でしょう。私ども国民の税金で負担をしているわけですよ。そうすると、憲法の政教分離の原則にも私は大きくかかわってくる大変大きな問題だと思いますよ、教会を思いやり予算でつくるなんというのは。それを施設庁はどう思っているんですか。
  117. 小澤毅

    政府委員(小澤毅君) 教会の建設でございますけれども、ただいま先生の御指摘はいわゆる提供施設整備ということでございます。そのほかにリロケーションという格好でつくっているものもあります。これはいわゆる機能をそのまま別のところに移設するという意味でつくっているものもございます。  現在、先生の御指摘でございます提供施設整備による教会の建設につきましては、この問題につきましては平成二年の国会においても取り上げられたということは先生御承知かと思いますけれども、その際、政府からはおおむね次のような答弁をしております。  提供施設の整備については、地位協定第二十四条第二項の規定により、すべての施設区域をこの協定の存続期間中、合衆国に負担をかけないで提供することとされており、安保条約の目的達成のための必要な米軍施設について、我が国がその経費を負担し整備するものである。したがって、地位協定上は、施設区域であれば整備し提供することは可能である。  なお、個々の施設の整備については、安保条約の目的達成との関係、我が国の財政負担との関係、社会経済的影響等を総合的に勘案の上、我が国の自主的判断により決定している。本件建物、これは教会のことでございますけれども、本件建物は、米軍の駐留を円滑ならしめることを目的とし、米軍に対する施設提供の一環として米軍人、米軍属及びその家族の日常生活に必要不可欠とされる施設であるとの観点から建設し提供したものであり、宗教に対する援助、助長等を目的とするものではない。また、本件建物の建設のための国費の支出及び本件建物の米軍への提供は、宗教上の組織または団体に対する財政援助的な支出とは言えないというふうに答弁しておると承知しております。
  118. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 私は非常に苦しい説明だと思いますよ。教会というのはやっぱり宗教活動をする場所でしょう。その点はまた別の機会でやりますけれども。  新特別協定で新たに訓練移転費を日本政府が負担することになりましたね。この訓練移転費の負担でございますが、新協定三条に明記をしてございます。新特別協定では労務費や光熱水道費などについては上限の定めがあるけれども、訓練移転費については協定上、上限の定めがございません。それはどうしてなんでしょうか。
  119. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 委員御指摘のように、第三条で訓練の移転に伴い追加的に必要となる経費を対象としております。いかなる経費が追加的に必要となる経費に相当するかについては個々のケースごとに判断されることになりますけれども、あえて一般論として申し上げれば、例えば特定の施設区域から他の施設区域への米軍の移動に要する燃料費や、他の施設区域において訓練を実施するために新たに必要となる物資等の輸送費といったものが考えられます。  そして、委員御指摘の負担の上限の問題でございますけれども、本件協定第三条に言う経費の負担の対象は、日本国政府自身が経費を負担することを前提に移転を要請するものに限られるということ、また各会計年度ごとの経費の概算要求額及び個々の訓練の移転事業ごとに我が国が負担することとする額は、それぞれ米側から提供される経費項目見積もり等の情報及び移転に伴う追加的に生じた経費等を踏まえて日本国自身が決定することになっておるわけでございます。したがいまして、特に経費負担の上限を定めているわけではございませんけれども、負担が無制限に行われることとなるようなことはないと考えております。
  120. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 その訓練移転費なんですが、これは今審議をしている来年四月一日から発効する新協定の中で新たな日本の負担として出てきたわけでございますが、この訓練移転費、これはアメリカからの要求なんですか、それとも日本政府から進んで訓練移転費を負担しましょうと、こういうことで新たな協定で合意をされたんでしょうか。
  121. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 交渉の経緯の中身については申し上げることを差し控えさせていただきたいと思いますけれども双方で協議をしている中でこういうアイデアが出てきたということでございます。
  122. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 それはおかしいじゃないですか。今まで制度的になかった新しい制度、新しい仕組み、新しい負担をやろうというわけですから、どちらからか言い出さないと、交渉している間に、むにゃむにゃしている間に双方何とかということにはならぬと思いますよ。はっきりしてください。
  123. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) この経費につきましては、本来特定の施設区域を使用することにより米側が効果的に行い得る訓練を日本側の要請によって他の施設区域を使用して実施することになるという事情を勘案しまして、政府としては自主的判断として、こういう経費の全部または一部を我が国が負担することが適切であるというふうに判断したものでございます。
  124. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 ちょっと聞こえにくいし、大事なことなんだけれども、これまで特別協定の中になかった新しい訓練移転費の負担というのはアメリカ政府から日本政府に要求があったんですか、日本政府から負担してあげましょうと持ち出したんですか、端的にどっちか答えていただきたいんですよ。
  125. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 我が国が自主的に判断したものでございます。
  126. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 さて、平成七年度のいわゆる思いやり予算による在日米軍の駐留関係の日本側負担経費が実に六千二百五十七億円に達しているようでございます。  一九九三年二月に、当時のパウエル統合参謀本部議長がこんなことを言っております。想起しなければならないことは、日本に軍隊を置くことは米国に置くよりも実際はるかに安くつくことですというふうに言っております。また、一九九二年五月、当時のチェイニー国防長官がいわゆるメルボルン・スピーチという演説の中で、横須賀は空母インディペンデンス戦闘団が維持されている場所である、日本が費用負担してくれるので日本に置いておく方がサンディエゴに置くよりも我々にとって安くつくのである、こういうふうに言っておるわけであります。  アメリカ軍は、お金が出ないヨーロッパではかつての三十万人以上の兵力から十万人余に削減をいたしております。ところが、日本ではこの五年間でわずかに九%ぐらいしか兵力は削減をされていないのであります。冷戦体制が崩壊をしたのに、沖縄には冷戦体制そのままの米軍基地が存在をしております。なぜ沖縄だけが平和の配当が受けられないのでしょうか。  沖縄米軍基地が固定化をされる、あるいは兵力も削減されないままに沖縄基地の戦略的機能が強化をされる、これはその思いやり予算の結果だと、そういうふうに私は考えておるんですが、外務大臣はどのように思われておるでしょうか、お尋ねいたします。
  127. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) きょうは午前中から、日米安保条約というものが、この場面、この国際環境のもとでどういう意義を持つかということについて各委員からいろいろな御指摘をいただきました。私どもは、今日の状況におきましても日米安保条約というものは我が国にとっても有益なものであるし、アメリカにとっても有益なものであるという認識、これは我が国及び我が国の周辺に、まだまだ冷戦が終了したとはいえ不透明、不確実な地域存在をする、そしてそれは今日ただいま非常に緊張感のある地域もあるし、あるいは将来この地域については十分我々がいろいろと考えていかなければならない地域もあるということを申し上げたわけです。  こうした国際情勢の認識のもとで、安保条約というものは我が国にとっても十分有益なものであるというふうに考えておりますが、その結果として、沖縄に在日米軍の少なくとも現在は七五%の基地が集中しておる、これは沖縄県土の一〇%にも上る、こういう現実が今出てきてしまっている。これは過去何年間がさかのぼってみますれば、案件にしてかなりの案件は合理化された部分もあります。しかし、縮小された面積はそんなに大きな面積でないということも我々は確認をいたしております。  そういう状況の中で、沖縄県民の皆さんのお気持ちを大切にしながら、日米間の話し合いもできる限り我が方の主張というものをぶつけながら、どういう整理統合そして縮小という方法があるかということを真剣に今考えているわけでございまして、このことは必ずしも、今の沖縄状況が固定化されて五年先、十年先全く変わらないということであってはならぬというふうに考えながら、そうではないというふうに私はしたいと思っております。
  128. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 外務大臣、政治的な考え方は違うと思いますけれども、今、大臣がおっしゃった県民の希望、県民の願い、気持ちというのは、戦後五十年たってもうこれ以上、たとえ国策とはいえ安保条約、安保体制の犠牲に、なぜ沖縄県民だけがその犠牲を受けなければならないのか、安保体制、安保条約をなくしてほしいというのが県民の気持ちなんですよ。これは政治論じゃないんです。そういうふうに実感するぐらい、余りにも沖縄米軍基地というのは死の恐怖に接近し過ぎていると私は思います。  そういう点では私はこのことをぜひ聞いておきたいなと思いますが、日本が思いやり予算でもって駐留経費を負担しない場合でも、いわゆるナイ・レポートというか、あるいはアメリカ東アジア戦略報告で言う東アジアでの十万人体制、在日米軍の兵力四万七千人体制の維持、こういうことがあり得ると思いますか、大臣
  129. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) アメリカの当局は、ボトムアップ・レビューその他を丹念にした上で東アジア戦略報告なるものをつくり上げているわけです。この東アジア戦略報告はつまり相当練り上げられたものであって、今日の国際情勢あるいはこの国際情勢が将来どういうふうになるか。あの東アジア情勢の分析を見ますとかなり詳細な分析、かなりのと言ってはちょっと適当でなかったかと思いますが、相当周到な分析が行われて、将来についてもしこうでなければこうなるであろう、そのためにはこうしておくことがいいといったようなことをさまざまな角度から検証して練り上げられたものであって、安上がりだからここに置こうという程度のものではないというふうに私は思っております。
  130. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 今、国会に承認を求められている新特別協定なんですが、この協定が、合衆国軍隊の効果的な活動を確保するため、地位協定第二十四条についての新たな特別の措置を講ずることが必要であることを認めて日米政府間で協定を締結した、こういうことでその締結した協定承認を求められているわけでありますが、地位協定二十四条では、基地のいわゆる賃料を除いてすべての経費は日本国に負担をかけないで合衆国が負担するということが原則なわけですね、地位協定二十四条の。  そうであれば、なぜ地位協定二十四条そのものを改定しないのか、地位協定二十四条を改定しないでなぜ特別協定という形で合意をされるのか、私はそこがどうしても納得できない。そのことについて御説明いただきたいと思います。
  131. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 私どもは、今を取り巻く国際情勢等にかんがみまして、新たに五年間を期限とする暫定的な措置を特例的に導入することとしたということでございまして、在日米軍経費のうち在日米軍従業員の基本給等、光熱水料等、及び我が国の要請に基づく在日米軍の訓練移転に係る追加的経費に限って我が方が負担するということにしたものでございまして、あくまでもこの時点判断に基づいてとられる暫定的、特例的、限定的な性格のものであるということでございます。
  132. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 どうしても納得できない。  一つの事実を私は指摘したいと思います。  思いやり予算によって米軍基地内の施設整備が始まったのが一九七九年からであります。その思いやり予算で提供施設整備費あるいは軍用地料、これは順調に額が伸びております。一方、基地周辺整備資金は、沖縄に限っても一九八二年度以降これはどんどん減ってきておるわけであります。このようにして非常に特徴的でありますが、提供施設整備費と基地周辺整備資金は一九八四年を契機に逆転しちゃうんですね。  これは何を意味しているかというと、提供施設整備費は米軍への思いやりであります、いわゆる思いやり予算。一方、基地周辺整備法に基づく諸事業というのは、いわば基地周辺住民にとっては迷惑料でありあるいは原因者負担だというふうに理解をしております。そうすると、この新特別協定との関連で申し上げますと、米軍への思いやり予算の方が基地周辺で苦しんでいる住民の迷惑料、原因者負担の予算をはるかに超えておる、こういう事実であります。  これは答弁は要りませんけれども、その事実を大臣を含めて政府の関係者はぜひ御認識をしていただいて、私が申し上げましたけれども、復帰して二十三年間、戦後五十年も米軍基地のために苦しんできた沖縄県民の思いを深く受けとめていただきたい。  同時に、県民大会で表明された県民の結集された怒りというのは、これまで沖縄の県民が、沖縄人たちがこいねがって基地をつくらせたんじゃないんですね。そして、沖縄人たちはこれまでみずからの運命をみずから決めることができなかった。しかし、もう戦後五十年たって、自立をしようじゃないか、自立経済を達成しようじゃないか、そしてウチナーンチュとウチナーの運命はみずから主体的に選択をしていこうじゃないか、こういう意味での新しい沖縄の権利宣言だというふうに私は思っております。  大臣並びに出席をされている政府の各関係者におかれては、そのような沖縄県民の思いを理解していただいて、県民が強く望んでいる速やかな沖縄米軍基地の整理縮小のためにぜひ大きな力を発揮していただきたいということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  133. 立木洋

    ○立木洋君 この地位協定に関する問題のあらわれ方の中に、今の典型的な日米関係が私は存在しているということを指摘したいんです。この地位協定の問題に関しては、もう本委員会で相当回数私も質問してまいりました。  もともとなぜ二十四条に関する特別の措置に関する協定を結んだのか。これは当初、一九七八年に思いやり予算を金丸信さんが言われたとき、これは二十四条の解釈を政府側が自分に都合のいいように解釈されることによって思いやり予算というのを一九七八年にやったんです。ところが、それから後、一九八〇年代に入って、結局二十四条の解釈の変更だけではもうこれ以上アメリカ側に金を出してやることができない。だから、二十四条に関するいわゆる特別の措置に関する協定をつくって、そして二十四条には日本側の負担はこうなっているけれども、その二十四条を実際に行う場合にはといういわゆる拘束力を持った協定を別個につくったんですよ。つくらざるを得なかった。  この一九八七年のときの二十四条の特別協定、これは何かというと、八つの手当について五〇%負担をする。今、折田さんが言った、くしくも暫定的、限定的、特例的に私たちはこうして決めましたと言って国会で答弁したんですよ。ところが、その同じ時期にアメリカの下院の軍事委員会に対して提出されたアメリカ会計検査院の報告によれば、これは今後とも日本側は延長できますと。だけれども、国会で通すのに都合がよいようにするために暫定的、限定的、特例的というふうに言って主張しているんです。そのことを御理解くださいと言ってあなた方は文書を出された。そのとき、北米局長が松浦さんですよ。  私は松浦さんにどうだと言ったら、先生が言及されておる報告書についてはともかくといたしまして、私たちは誠意を持って交渉しますと。否定できなかったんです。大体アメリカに言っている言い方と国会でする答弁とは違うんですよ。私はもうはっきりわかった、そのことを。  そして一九八八年、その明くる年に、この八つの手当についての五〇%負担を一〇〇%負担にしたんです。だから、一〇〇%負担にしたから今度労働者に対する労務費をさらに日本政府は負担するんじゃないですかと言ったら、宇野外務大臣はもうこれが日本政府の限界でございますと明確に答えている。そうしたらその後、何ですか一年間も前倒しして、一九九一年になったら労務費一切の金額を負担したんでしょう、日本側が。そして、米軍の水、光熱、下水道それから暖房用の燃料費、この負担を一年間に二五%ふやして、もう現在では一〇〇%ですよ。  こういうふうにやってきたのは何かといったら、日本側が持ち出したことは一回もないんです。これはアメリカ側から要求されて、日本側が何とかそれを金を出せるようにというふうに、いわゆる知恵を絞ってアメリカ側の要求にこたえてやってきた経過がこういう経過なんですよ。これは全部私は審議してきました。こういう状況なんです。  それなら、一体何のためにアメリカの言われるとおりに一生懸命苦心して日本側協定なんかをつくってやって、そして金を出してやらなければならないのかという問題になってくるわけです。ましてや、今度の場合は沖縄におけるあんな大変な非人間的な事件が起こった。その最中に今度の新しい協定を結ぶと。今まで、限界です、もうこれ以上日本政府は持てませんと言いながらどんどんふやしてやってきた経過。  ですから、思いやり予算が始まってからこれまでの十七年間、米軍が駐留している経費の中で日本側が負担している経費、これが前年より少なくなった年が一体ただの一回でもあったでしょうか。
  134. 大野琢也

    政府委員(大野琢也君) お答えいたします。  昭和五十三年度に在日米軍駐留経費負担を開始しておりますが……
  135. 立木洋

    ○立木洋君 減ったことがあるかないかだけで結構です。
  136. 大野琢也

    政府委員(大野琢也君) はい。平成七年度までに前年度に対し予算が減少した年はございません。
  137. 立木洋

    ○立木洋君 莫大なふえ方をしているんですね。私は本会議でも言いましたけれども、総計するとこの十七年間で六兆五千三百四十五億円を日本が出してやっているんです。毎年ふやしてやっているんです、どんどんね。それで結局、最初に出した年から見れば平成七年には三倍以上にもなっているという状況です。そして今度は、さらにその上新しい第三条を確定した。そして、さらにより多く米軍のためにお金を出しますと。  この第三条を確定した根拠について述べていただきたい。簡潔にお願いします。
  138. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 米軍の訓練が周辺地域の住民の方々の生活環境に影響を与えるような場合に、安保条約の目的達成と地域住民の方々の要望との調和を図るために可能な範囲で訓練を他の場所に移転することによりこのような影響を軽減することは、日米安保体制の円滑な運用を確保する上で極めて重要であるというふうに考えます。  このような訓練の移転は、日本側の要請により米側が運用上の不便を甘受しつつ実施することになるという事情を勘案いたしまして、政府としては、このような訓練の移転に伴い追加的に必要となる経費を我が国が負担するということとしたわけでございまして、これにより米軍により訓練の移転が容易に行われるような施策を図ることが適切と判断したものでございます。
  139. 立木洋

    ○立木洋君 さっき同僚議員質問に、これは日本側が考えていると言われたようだけれども、これは米側の要求というのが根底にあるということを私ははっきり指摘しておきたい。先ほど来のあなたの答弁は、そういう意味では私は正確な答弁ではないということだけは指摘しておきたいと思うんです。  そこで、「追加的に必要となる経費」というのはどういう内容のものを具体的に示すのか、もう一遍はっきりさせてください。
  140. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) いかなる経費が「追加的に必要となる経費」に相当するかについては個々のケースごとに判断されることになりますが、あえて一般論として申し上げれば、例えば特定の施設区域から他の施設区域への米軍の移動に要する燃料や、他の施設区域において訓練を実施するために新たに必要となる物資等の輸送費といったものが挙げられると思います。
  141. 立木洋

    ○立木洋君 先ほど午前中の議論の中でも出ておりましたけれども、NLP、これで言えば、現在自衛隊が行っている米軍の要員や装備の輸送を日本負担で実施するということになるのかどうなのか。また、厚木と硫黄島を往復する燃料、これも日本の負担となるのかどうか、それはいかがでしょうか。
  142. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 具体的にケースを一つ一つ点検しながら、先ほど申し上げましたように「追加的に必要となる経費」ということで判断するわけでございます。
  143. 立木洋

    ○立木洋君 折田さん、口をもごもごされたらちょっと聞こえないんですよ。大切なところですから、はっきりお願いしたいんです。  今、自衛隊がやっておる米軍の要員や装備の輸送については、いわゆる向こう持ちですね。これを今度は日本側が持つということになるんじゃないですか。具体的なことを私は聞いているんです。この協定で言われている「追加的に必要となる経費」というのは一体何なのか。先ほどあなたは輸送費、燃料費と言われた。それならNLPの場合にはどうなるのか。
  144. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) NLPの訓練に関しましては、艦載機等の本土から硫黄島への往復にかかる経費、これには燃料費、物資の輸送費等が入ると思います。それから、硫黄島に滞在することに伴う経費、調理配膳のための役務費とか宿舎管理費等があろうかと思います。それから、新たに必要となる支援機材の購入費、こうしたものが考えられようかと思います。
  145. 立木洋

    ○立木洋君 今度は先ほど問題になった沖縄の県道一〇四号越えの実弾演習の移転の問題です。今度、移転先にそういうものの弾薬だとか装備なんかに必要な、弾薬庫だとか装備費というふうなものも当然それに付随して出てくる経費で、これも当然日本側が負担することになりますね。
  146. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 今回の措置は、特別協定がなければ本来米側の負担となるべきものを対象として行われるわけでございます。  弾薬庫ということを、今、先生おっしゃいましたけれども、これが具体的にどんなものであるか必ずしも明らかではございませんけれども、仮に地位協定第二十四条二項によって我が国が負担し得る施設区域の提供ということであれば、これに係る経費というのはこの協定の対象にはならないという整理でございます。
  147. 立木洋

    ○立木洋君 なるかもしれないしならないかもしれないという答弁ですから、答弁になっていないんですよ。なるならなる、ならないならならないとはっきりしていただきたい。  ことしの二月二十七日に、時の北米局長をやっておられた時野谷さんに私の党の古堅さんが質問したんです。それで、この二十四条に関して、いわゆる訓練なんかに係る移動費、それに伴う経費、これについてはどうなるのかと。それは一切日本側では負担できないことになっております。負担はいたしませんと。二十七日の議事録を調べていただいて結構です。つい最近ですよ。それが今度は、もうきのうの国会で村山総理の答弁の中でも、訓練移転費についてはと、ちゃんと述べているんです、訓練にかかわる経費まで負担することが可能だと。だから私は、あえてNLPだとかいわゆる一〇四号実弾演習のときの経費がどうなるのかと。これは実際には事実上負担せざるを得なくなる、そういうことになることは私はもう目に見えていると思うのです。  そういうことからいって、結局ここでの問題は何か。この地位協定二十四条を実質的には変えるような特別措置協定まで結んでアメリカ側にお金を提供してやっているんですよ。これはそのことを要求するという意味ではありません。仮に言うならば、それならなぜあの十七条に関する特別措置協定というのを結んで拘束力があるようにして、そしていわゆる被疑者が出てきたらそれを逮捕できる、起訴する前にちゃんと逮捕できるというふうな協定にまで変えるというふうなことをなぜしなかったのか。協定としての拘束力がないようなことで、運用上の問題ですといって現に十七条五項(c)では生きているじゃないですか、あの文章はそのまま。それにかわり得るだけの拘束力を持ち得ない運用上の問題だといって、日本国民の要求に対してはそういう態度をとる。アメリカ側の要求に対しては地位協定の部分的な改定まできちっとやってやって金まで出してやる。どっちを向いて政治をやるのかという点に最大の問題があるんじゃないでしょうか。大臣、いかがでしょう。
  148. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 私が繰り返し安保条約の重要性をここで申し上げるのは避けたいと思いますが、安保条約の効果的な運用というものは、いずれにせよ安保条約が重要と考えておる以上は当然だと思います。  今、議員はNLPを一つの例示としてお話しになりましたが、厚木基地におきますNLPが基地周辺住民にとって耐えがたい騒音あるいは危険といったものも感じて、これを何としてもどこかに移してほしい、これは基地周辺住民の大変な強い希望であったことも、これは日本共産党もよく御存じのとおりでございます。共産党の方からもいろいろと御陳情があったに違いないと思います。  そういう問題を解決するために日米間でさまざまな議論があった結果、硫黄島に訓練施設をつくると。しかし、これはアメリカが望んで行くわけではないわけで、我が国が基地周辺住民のそうした要請を受けて、その問題の解決のためにとった一つの解決策でございますから、その解決策はそれなりに意味のあることだろうと思うんです。  お話しのように、どっちを向いて政治をしておるのか、こういうお話でございますが、やはり基地周辺住民のそうした厳しい状況を解決するためにできる限りの努力をするということが我々の仕事でございます。厚木のNLPも、これで完全とは言いませんけれども、一つの改善措置がこれによってとられるということになれば、沖縄についてもそうした改善措置双方の努力、知恵によってとられることにこれからなるだろうと思うんです。  やはりそうやって一つ一つ改善をしていくことが大事なのであって、もちろん形式も大事です、私はそう思います。しかし、その形式的な大改革も御主張としてよくわかりますが、私どもは現実的に一つずつ解決をするという努力もまた必要だ、意味のあることだと思って努力をしているわけでございまして、こうした努力をしております我々からすれば、どちらを向いてやっておるのかと言われることは大変残念なことで、我々はそうした姿勢をたがえる、間違えた姿勢をとるつもりは全くありません。
  149. 立木洋

    ○立木洋君 今、厚木の夜間離発着訓練の問題、これは裁判でも結論が出たんですね。しかし、裁判どおり時間を制限しましたか、米側は。守りましたか。守っていないんですよ。依然としてトラブルが生じているんです。そういう問題が起こっているにもかかわらず、やはりきちっとそれを守らせるだけの努力を日本政府としてはやらなければならない。  午前中の論議だってそうですよ。厚木だけの問題で全部硫黄島に行くわけじゃありません、厚木も依然として使いますと、一部。そういうことになると、結局は住民にとっては同じ状態なんですよ。結局回数が多少減るかどうかという問題、さらに訓練が重要になればさらにふやすかもしれない。必ず減らすという保証はないんです。  私は、何でこの地位協定の問題を一番最初に言ったのか。アメリカ側がどんどん要求してきて、そして、アメリカ側日本側で取り決めた地位協定二十四条の内容にまで反して米側の要求を受け入れて特別協定をつくって、金をどんどん提供してやっているんですよ。  今度の問題だって、訓練に関する問題、演習に関する、それにかかわるような費用についてはやはり持たないという日本側は原則があって、それも地位協定で明確にされているわけですから、本来ならばそういうことはできないという当然の立場がなければならない。そうはなっていないという点に私は問題があるんだということを言いたいんです。  だから、もしそうであるならば、アメリカ側の要求については特別協定をつくってまでも受け入れてやるという姿勢をとられるならば、沖縄で出されている十項目にかかわる地位協定に関する改定を日本側としてきちっとやっぱり要求をする、そして話し合いを進めてみると。それで、実際に法的な拘束力のない運用上の改善だけでは事実上保証がないではないかという点を私は指摘したいわけです。
  150. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) どうも立木委員とは私は意見を異にいたします。  すべての例を今ここで挙げて論争するつもりはありません。また、今それだけの準備がございません。しかし、少なくとも厚木のNLPを硫黄島に移すということはアメリカの希望ではありません。これは明らかに日本側からの改善策でございます。日本側からの改善策について米軍がそれを認めたということであって、これは何でもアメリカがこうするああするというふうにおっしゃられることは私は正しくないのではないかと思います。  先ほども申し上げましたように、一つ一つ少なくとも周辺住民の意向、希望に沿った形で改善をする努力というものを我々はしてきたつもりでございます。
  151. 立木洋

    ○立木洋君 結局、日本の国民が要求しているというのは、あの騒音、あれを何とかしてなくしてほしい、そして飛行機が墜落するかもしれぬからそういう危険な状態を取り除いてほしいということなんです。どこかほかのところへ移してくれ、ほかのところでやるならばいい、日本国内どこでもいいというふうなことを言っているんじゃないんです。日本国民全体に部分的に起こってきている課題のようではあるけれども日本人の生命と財産と安全、そして環境を守るような状態にしてほしいというのが根本的な要求なんですよ。  これは日本側の国民が要求したからとおっしゃいましたけれども地位協定で決められているんでは米側の要求なんです。五条をごらんになっていただければわかる。  だから、日本側で禁止されているいわゆる曲技飛行だとか編隊飛行だとか超低空飛行だとか速度制限だとか、こういうものについてはかかわらないことになっているんですよ。そういう状態の中で起こっているからこそ、日本の国民から、そういう状態をなくして住みやすい環境にしていただきたいという声が出てきたんです。  だから、日本側から要求しているんだから日本側がお金を持つのは当たり前なんであって、何でもアメリカが言っているんではありませんということではなくて、最初に地位協定の成り立ちから見て、これまでアメリカ側の要求をずっと受け入れてきたという経過を踏まえて私は最初から質問をしたわけです。だから、日本側が「日本国政府の要請に基づきこという言葉を入れたのは、なるほど知恵を働かせたなと私は思いましたよ。
  152. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 実態をあらわしている。
  153. 立木洋

    ○立木洋君 実態じゃないんです、これは。  だから、こういう地位協定の成り立ちから見て、そういうふうな文言を入れなければならないような状況日本政府は立っているんだということを考えておいていただきたい。  それで、問題をさらに先に進めますが、そういう意味では日本国民の要求というのが何かということはもう一度よくお考えいただきたい。硫黄島に移ってくださいじゃないんです。あの一〇四号の実弾演習を北海道に移してくださいというのが沖縄県民の要求じゃないんですよ。日本国民全体がそういう状態から本当に解放されるようにしてほしいというのが国民全体の要求だということを私は改めて強調しておきたいと思うんです。  そして、その上で、先ほども同僚議員が指摘されましたが、この経費は協定で上限を限定しないではないかと。限定していないではないかという点について折田さんは、これは日本側からの要請だからというふうなことを言いましたけれども、私は本会議質問しましたように、結局は上限を決めないでこういう問題が設置されると、次から次へと、いわゆるこちらにも移転こちらにも移転というふうな格好にふえてくれば、それは日本側の要請に基づくものだとしてどんどん予算が膨れ上がっていくということに結果はならざるを得ないんじゃないか、移動、訓練に付随する経費の日本の負担は際限なく拡大されていく、そういう危険性があるんではないかという指摘についてはいかがでしょうか。上限に関しては何らかの形で知恵を働かせて、「日本国政府の要請に基づきこのように知恵を働かせて上限をつくることがなぜできないのか。
  154. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 先ほどの御答弁の繰り返しで恐縮でございますけれども、最終的には日本国政府が決定することとしているわけでございまして、本件経費について特に経費負担の上限は定めなくても負担が無制限に行われるというようなことにはならないと考えている次第でございます。
  155. 立木洋

    ○立木洋君 そうしたら、先ほどのNLPの一個飛行隊が移動する。一個飛行隊というのは十二機あります。二個飛行隊が移動するならばどれだけの予算がかかりますか、燃料費で。
  156. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 申しわけございません。ただいま数字を持ち合わせておりません。
  157. 立木洋

    ○立木洋君 では、後で調べて教えていただきたいと思います。  私はなぜそういうことを今言ったかといいますと、移動、訓練に付随する経費、これがどういう形で起こってくるかは合同委員会で話し合うと。合同委員会で話し合って、それは日本側が持たぬといかぬなというようなことになってくれば、これはどんどんふえるんです、上限がない限り。だから、上限をつくるという知恵を働かすことも必要ではないか。労働者の雇用の人数だとか、ほかの光熱費の問題とか下水道の問題だとかというのは何百立方メートルまで、それ以上は出しませんよと上限をちゃんと決めているじゃないですか、今度の場合も。私は、上限を決めているから結構だとは言いませんが、なぜ上限を決めないのか。日本側で要請するからだと。話がさっぱりわからない。  だから、そこのところは私は知恵を働かせていただきたいということを改めて要求しておきたいんですが、大臣、どうですか。
  158. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) できる限りの知恵を絞りたいと思います。  しかし、議員ももう十分御承知で言っておられると思いますけれども、訓練の移転は、つまり我が方からこれは向こうへ行ってやってくれということを言うわけですから、それは無限大にふえるということではないということはおわかりいただけると思いますし、一機が向こうへ行った、二機が行けば倍になるだろう、しかしその分こちら側の騒音はそれだけ減る、周辺住民の睡眠はそれだけ深まるということにはなるわけでありますから、そこは少しお考えをいただいていいのではないかと思います。
  159. 立木洋

    ○立木洋君 もうこれ以上繰り返しても同じ答弁になるだろうと思います。  この地位協定の二十四条に関するいわゆる特別措置協定がどういう経過の中で今まで思いやり予算からなってきたのかということを私は極めて短い形で経過をしゃべりました。そういう状況の中に置かれてとってきているのが日本政府の態度だということを考えるならば、ここに先ほど言ったような文言を使っているということの意味合いについては、私は同じような理解はいたしません。  そういう点では、日本国民が要求している要求は一体何かということを根本的に見ていただきたいということを重ねて私は先ほど強調したわけです。ですから、この問題については同じ答弁になるでしょうから、この質問については次の機会にまた改めてすることにいたします。  次の質問に移らせていただきます。  第二条で「公用のため調達する次のもの」というふうに限っております。この電気、ガス、水道、下水道、調理用、暖房用の燃料などですね。この「公用」という概念については、一九九一年にこの議論をしたときに、公用という問題については米軍の基地内に限るという説明だったと思いますが、公用のためではない水光熱費、それはどういうふうな区分になるんでしょうか。それについて、ここで「公用」ということが使われている限り、公用と公用でない区別が何を基準にして区別をするのか、お答えをいただきたいと思います。
  160. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 具体的にどのような調達がここに言う「公用」に当たるかにつきましては、米軍または米軍の公認調達機関から適当な証明書を受けて調達したか否かによって区分されるわけでございます。
  161. 立木洋

    ○立木洋君 ところが、私は平成五年四月二十二日にその問題について聞いたんですよ。軍人と家族、これは分けることができないのでございますという政府の答弁ですね。そして、家族が使っている分については、これは私用なのに公用ですかと聞いたら、例えば基地内の住宅などでございますと、在日米軍当局が一括して調達しておりますので、それにつきましてはすべて公用というものになっておりますと。それではアメリカ側任せですよねと私が言ったら、はいと、そう答えております。だから、私用でも払っているということがあり得るということを平成五年四月二十二日の当外務委員会では認めているんですが、現在でもそういう状態になっていて、公用、私用というのは明らかにされていないんじゃないですか。どうなんですか。
  162. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 施設及び区域内に居住する米軍人等の当該電気等の調達は米軍または米軍の公認調達機関が証明書を付する場合には公用というふうになっているわけでございます。
  163. 立木洋

    ○立木洋君 今度はちょっと早口でよくわかりにくいので、もっと簡潔にわかりやすく言ってくれませんか。何が何を形容しているのかわからない。
  164. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) どこで仕分けをするかでございますけれども、先ほど来申し上げておりますように、公認調達機関から適当な証明書を受けて調達したか否かによって区分されているということでございますので、そういう適当な証明書がついている場合には公用というふうに判断しているわけでございます。
  165. 立木洋

    ○立木洋君 しかし、その公用の証明書をつくるのはどこですか。アメリカ側でしょう。米側が出すんですよね。というと、一括してそれを持っていく場合に、証明書をつけて持ってきたら、それは私用も公用も区別のしようが日本側にはないということですね。それは現にもう平成五年四月二十二日に認めているんですよ、政府は。今あなたはそうではないと言って、それを覆すつもりなんでしょうか。
  166. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 米軍またはその公認調達機関が調達した電気、ガスなどを在日米軍の維持の一環として我が国に居住している米軍軍人の住宅にも供給しているものであって、これを米軍軍人個人による個人的な購入と同一視して公用に当たらないとすることは理由がないものと我々は考えております。
  167. 立木洋

    ○立木洋君 これは余り例を出してややこしくしたくないんですが、この間、福生市の問題が出ていましたね、横田基地内の下水道料金の問題。一九七八年の段階でしたかね、結局あそこで出てくる下水道の料金ですね。  大口料金というのは、小口料金、一般家庭用の料金から比べると四倍近く高いんですね。米軍の基地から出てくるのは大口料金として取っておった、福生市が。ところが、それは困る、西側にあるのは住宅で、基地内にあるけれども家庭用の、個人用の住宅なんだから、そこから出る水については小口にしてくれという施設庁への申し入れがあって、施設庁は結構でございましょうと言って、福生市に言って、ですから十六年間に六億円余りいわゆる減額になったんですよ、下水道料金が。今度、一九九五年になったら、下水道の料金は一〇〇%日本側が見ますと。日本政府が見ますとなったら、もとのとおりに変えましょうということを米側が今度言い出したんですよ。  つまり、私用であるのか公用であるのかというのが極めてあいまいにされる。そして、都合のいいように米側がやったら、施設庁にしろ日本側にしろそれを認めて、そして福生市では十六年間に六億円の減額になったと。これは地方自治体にしては大変な痛手ですよね、金が少なくなるということは。今度は、日本側が一〇〇%持つようになったら、もとのとおり変えてもらって結構だというふうになってきた。そんなふうな勝手気ままに公用、私用の使い分けがやられるようでは、本当に厳密にここで「公用」というふうに書かれていても、この概念どおりに実行できるのかどうかという点についても疑念さえ持たざるを得ない。  だから、少なくとも公用、私用の問題についての使い分け、区別の仕方は私は検討していただきたい。何が私用で何が公用なのか。私が二年前に聞いたときには、公用と私用を軍人用と家族用に分けることは非常に難しいという答弁がされたんだけれども、それから以後何ら改善されていないというのが今日の事態でもう明らかですから、その問題についてはやっぱり協定を厳格に守るというならば、そういう姿勢を日本政府はとるべきではないか。この点については、大臣、いかがでしょうか、御検討いただけますでしょうか。
  168. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 思いやり予算として我が国政府から、もちろんこれは我が国国民の税金を思いやり予算として提供するわけですから、その使い方については適正な、適切な使い方があってしかるべきと思います。  私、ちょっと正確に議員のお話がわからなかったんですが、下水を大口にするか小口にするかという話は、私用と公用という問題ではなくて節約する気持ちがあるかどうかということにむしろなるんでしょうか。
  169. 立木洋

    ○立木洋君 いや、基地内にあっても、いわゆる私的な住宅から出る水だから小口にしてくれないかという趣旨なんですよ。
  170. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) つまり、それは非常に細やかに出費を減らそうという努力ですよ、一つは。
  171. 立木洋

    ○立木洋君 私は、最近起こった事件だから皆さんは新聞をごらんになってよくわかっているだろうと思ってその例を今引用させていただいただけなんです。
  172. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) わかりました。済みません、認識が不足をしておりました。  いずれにせよ、適切に使われるということが重要だというふうに思います。
  173. 立木洋

    ○立木洋君 ここで日米安保の再定義の問題についてお尋ねしようという予定なんですが、やっぱり四十分でも足らないですね、もうあと六、七分しかない。それで、この問題で議論をしたら私は堂々めぐりになる可能性があると思うので、ちょっと問題を変えます。これはやっぱり日米関係の問題です。  アメリカのエネルギー省は、去る十月二十七日に核兵器の安全性、信頼性を保つために新しい核実験を来年六月から九七年九月までに六回行うと発表しました。核爆発が起きない実験として、アメリカのネバダ州の地下で行うというものであります。  地下核実験については、いち早く中国やフランスの核実験については対応されました。それが適切だったかどうかという問題は別にして、直ちに対応されました。このアメリカの核実験についてはどういう所見を大臣はお持ちなんでしょうか、また政府としてはどういう対応をおとりになるおつもりでしょうか。
  174. 河村武和

    政府委員(河村武和君) 今、立木委員が御指摘になりましたアメリカ政府の予定でございますけれどもアメリカ政府はいかなる爆発をも伴わない実験を本件について行う、御指摘のとおり六回ということを言っておりますけれども、そういう意味におきましてアメリカは必ずしも核実験であるというようなことを言っているわけではございません。いわゆる爆発を伴わない、エネルギーを放出しない実験というものを行う、こういうことのようでございます。
  175. 立木洋

    ○立木洋君 そうしたら、爆発を伴わなければ核兵器を維持し続ける実験は結構だということですか。核実験に反対するのは、一体何のために反対するんですか、大臣
  176. 河村武和

    政府委員(河村武和君) 今、立木委員は核実験と申されましたけれども、私が今申しましたとおり、それは爆発を伴わない実験ということでございまして、例えば現在大気圏におきましていわゆる核兵器の実験を禁止している条約でも規定してございますとおり、大気圏内で行うものはいわゆる核兵器の爆発を禁ずるということでございます。
  177. 立木洋

    ○立木洋君 これが最後の質問になりますので大臣にひとつお願いしたいんですが、核実験をやって爆発を伴わないものについては何も言わない、伴うものについては意見を言うと。しかし、私は政府の見解を見ました。そうしたら、「究極的」という要らないものがついているけれども「究極的廃絶」と書いているんですよ。核兵器廃絶のためにやっぱり実験はあってはならないんだ、そういうものがあってはということにならなくて、ただ環境問題だけを問題にして核実験の反対をしているのかどうかということにならざるを得ないんです、今の答弁ならば。  だから、やっぱり廃絶ということを少なくとも念頭に入れるならば、核兵器を保持するためのいかなる実験であっても賛成してはならないという結論にならなければ整合性がないんですよ。だから、そういう態度をおとりになるならばアメリカの実験についても何らかあってしかるべきではないかというのが私の考えです。  その点についての大臣の所見を最後に伺って、時間が来ましたので質問を終わります。
  178. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) おっしゃるとおり、私は究極的核廃絶を求めております。我が国政府は、昨年の国連総会におきまして、単独発議ではありますけれども、究極的核廃絶を求める決議案を出して多くの国々の賛成を得ているわけであります。少なくとも究極的核廃絶に向かって我々は努力をしなければならないというふうに思っております。
  179. 立木洋

    ○立木洋君 アメリカに対する態度は。
  180. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 私は、いかなる国に対しても究極的核廃絶に向かって進んでもらいたい、こう考えます。
  181. 立木洋

    ○立木洋君 次の機会にします。
  182. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 前回の委員会に引き続きまして、若干時間をいただいて日米安保についての大臣の御意見を伺います。例によって基本的な、いわば長期的視点に立った話でございますので、御辛抱いただきます。  日米安保というものがどういう役目を持っているかといえば、常識的に言って三つあると思います。  一つは、中国とか北朝鮮の軍事力に対して日本を守る。これは軍事的空白を埋めるとかなんとか抽象論的な言葉がありますが、こういうことはちっともわからないですね。はっきり言えば、中国、北朝鮮を主とする近隣の軍事力から日本を守る、これが一つですね。  もう一つは、これはこの前申しましたが、中国からイラクにかけてのアジア中東へのにらみをきかすアメリカの軍事戦略の最大の拠点として沖縄その他がある。これは必ずしも日本を守るだけの意味ではない、より多くアメリカの軍事戦略の拠点として使われている、これが第二点。  第三点は、近隣諸国は、日本がまた軍事大国になりあるいは核兵器を持つかもしれないからアメリカに抑えてもらおう、こういういわゆる瓶のふたですね。これは我々の方ではなくて近隣諸国が、中国なんかもそうらしいですけれども、本当は日米安保は嫌なんだけれども、もっと嫌なのは日本軍事大国になるのは困るからアメリカに抑えてもらおう、この三つだろうと思うんですね。  ところが、この三つはことごとく我々にとっては好ましくありません。この前、私の見解は大臣からごらんになると小さな軍備での中立を守る立場というふうにおっしゃいましたが、全くそうではありません。できれば軍備は持ちたくないんです。そして、アメリカに対しても中国に対しても、もちろん北朝鮮その他の国々に対しても中立じゃないんです。積極的に戦争をやめると、戦争によって国を守るという立場は必ず相手をも傷つけることになるから、お互いの平和と安全には適合しないと。  特に核兵器のあらわれた後においては、核兵器は抑止とかなんとか言うけれども、抑止にはならないんだ、抑止になるならばすべての国が核兵器を持てばいいので、これをだれかがフランスの大使に言ったら大使は参ってしまったそうでありますけれども、抑止というのはいいかげんな言葉であって、抑止力は核にはありません。それは眼前の事実だけとらえているのであって、そういうことを十分に頭に入れて、私は少しでも早く日米安保が不必要な条件をつくっていくことが正しいと。  ややもすると未来永劫に日米安保を守らなければ日本は立っていかないかのごとき錯覚が横行するのでありますけれども、少しでも早く日米安保の要らないように、それはこの前も若干申しましたが、中国や北朝鮮が日本を攻めるような条件をなくしていく。簡単に言えば本当の親友になると。もちろんその場合にはアメリカを敵にしてはならない。アメリカをも心からの親友にして、まず第一に、大臣も賛成なさいましたが、日中米が心からの親友になる。この可能性を信ずるならば少しも早く、先ほど照屋議員がおっしゃいましたけれども、今後二十年の間に基地を返すんだと。時間は十分にあります。これからの二十年は過去の五十年以上の速さをもって歴史が進むのです。この二十年の間にアメリカの基地をアメリカの心からの賛成において解消することができるかできないか。  日本はややもすれば各国の動く間をうろうろ歩いている、ちっとも歴史をみずから打ち開く努力をしないという批判があるかに聞きますけれども、それは困るわけです。これだけの経済力を持ち、どうしても我々は過去の戦争の反省の上に立ちまして日本が世界平和の先頭に立つんだと。こういう意味で、まず核の廃絶はアメリカが唱道しろと。第二次大戦で勝った国は核兵器を持つ、ほかの国は持つな、そういうことが長く国際間に通用するはずはまずない、これが歴史の論理だろうと思うんですね。  アメリカのような国がまず核兵器を廃絶するから、持っていない国は持ちなさんな、それだけの努力があるならばもっと国民の生活レベルを高めなさいとか、そういうふうに言うのが指導国のトップたるアメリカの言うべきことだろうと思うんですね。  私はどこまでもアメリカと仲よくなりたいので、まずこういうことも、大臣は今後とも長く日本の政治を担う重要な政治家だと期待するのでこういう抽象論を言うのでありますけれどもアメリカに向かって堂々と核廃絶の先頭に立ちなさい、人類史においてあなたの国はさん然と輝くだろうというぐらいのことは、やはり国連の広い立場でもいいし、あるいは親しい間柄の食事のときでもいいから、ああ、日本外務大臣はいいことを言ってくれた、あれが本当の親友だと思われるような発言ができないかと。もちろん中国に対しても同じことです。そういうことが第二点ですね。  第三点は、現在の情勢はどんどん変化するんですね。今の情勢ではもう日米安保以外に行き道がないように思われるかもしれないけれども、さっき申し上げたように、今後の二十年は過去の五十年以上の変化がある。その変化はどういう方向に変化するのか。防ぎ得ない重大な変化は途上国の前進であります。途上国の前進でありますから、これは相対的に先進国はむちゃなことは要求できない。そういう状況でありますし、やがて先進国が途上国に援助するのは、富める者が貧しい者に施し物をするんじゃなくて、当然の責務として知性とヒューマニズムにおいて経済援助をする。もちろん軍事援助は絶対にやらない、こういうことであるべきだろうと思うんですね。  ちょっと私も口が滑り過ぎまして、農業について申し上げる時間が参りました。大臣のお返事をいただいているとそっちの問題ができなくなりますので、こちらの同僚と同じように、この次にやっていただきます。  それで、農業についての問題は、今、大部分の人が日本の農業というものは自由化に耐え得ないと思っているんですね。だから、農水省でもどれぐらい伸びれば自由化に耐え得るという基準を持っておりません。輸入価格と国内の価格とは、幾らか品質の違いはありますけれども、算術的に言えば五倍から六倍の格差がございます。ところが、五倍から六倍の値段で売って農業者一人当たりの年間付加価値は二次、三次産業の方が三倍半くらいあるんですね。それを掛け合わせれば二十倍です。だから、農業側の生産性が一人二十倍になれば輸入価格とバランスしながら都会並みの収入が上がるというそろばんが成り立つわけです。しからばそれはできないかと。  農水省は、御承知のように、平成四年の新政策では一戸当たり十ヘクから二十ヘクと、こう言っております。私が申し上げているのは、三十ヘクあれば十分なんです。そうしますと、十ヘク、二十ヘクにするのができて三十ヘクができないかというと、そういうことはありません。むしろ三十ヘクの方が農家が希望と自信を持って立ち上がる条件ができまして、平成四年以後、農水省はちっとも農村に工作しておりませんから、新政策についての農村の理解は全くできておりません。市町村もそれをやるという意気込みはできておりません。  ここで、このAPECをチャンスといたしまして、あなたたち、自分の村がどういうように若者がいなくなってどういうように農業がつぶれつつあるかという現実をよく知りなさいと。ことしは農業センサスの年でありますから、これはもう手にとるようにわかります、ことしの暮れごろには。ああ、おれの村は、おれの町はかくのごとく農業がつぶれている。若者は十人ちょっとしかいない。我々が年とったら後はもうやる者はいない。こういう実情をよく見て、ある家は息子が三十ヘクやるのか、それとも相当の小作料を取っておれの方は地主になるのか、二つに一つを選びなさいという決意を、盆、正月、その次の盆と三回ぐらい家族会議を開いて、一軒一軒の農家の方針を確定させなけりゃだめだと、私はこう言い続けております。これが第一。  第二は、大学試験場あるいは地域の前向きの農家が協力して、これくらいの農業ができれば自由化されても大丈夫だというモデルファームをつくって農家あるいは国民の眼前に提示する。こういう段階を踏まないでいきなり政策を出したって、それはやろうとはいたしません。  そういうことで、時間が参りましたが、お金は十分にあるわけです。第四次土地改良長期計画では四十一兆円を計上しております。しかし、日本の平野部にある二百万町歩の田んぼを自由化に備えるように、稲作の国際競争力をつけるのに幾ら金が要るかというと、四十一兆円の中で半分も要りません、四割あれば十分でしょう。したがって、先ほどの沖縄の基地返還の二十年ではありませんけれども、十五年あれば十分です、これは。  もう時間が来ましたので、お招きあれば幾らでもお伺いしていきますが、とにかく議長国として、みんなが自由化しろと言っておるのに、おれの方はできないといって逃げ回るような醜態だけは演じないように。大臣は直接は担当なさらぬでしょうけれども、直接の担当の方々にとにかく頑張ればやれると。これはもう農水省の人たちはよく知っているんですよ、私が何回も言っているから。だから、それをやろうとするのかしないのか、それだけの話でありますので、これから先、日本が国際間で大いに発言するためにも、農業の自由化に対してはこの前は時間さえ与えればやるとこう申しましたけれども、本当を言えば十五年で余ります。ぜひお願いいたします。  終わります。
  183. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 私からは地位協定十七条五項(c)について絞って質問させていただきます。  五項(c)は、御案内のとおり、罪を犯した米軍人は米軍が拘禁する限り日本側には渡さない、米軍が引き続き拘禁する、こういう規定になっておりまして、今回の事件のもとはここにあったわけです。日本警察の要請に対して米軍は引き渡さなかったということで、これは不平等条約である等々の非難を受けたわけです。果たしてそうなんだろうかというところから実は私の疑問は出発するわけです。  いずれにしろ、この件につきましては、このたび合意事項ができまして、日本側の要求に対しては最大限好意的な考慮を払うということになりましたので、恐らく原則的にほとんど例外なしに引き渡される、こういうふうに考えていいのだろうと思います。  実は、協定を法律と仮定しますと、こういうふうに法律と現実の運用、建前と本音の使い分けをするのは、これは日本人独特の特徴ですから日本人の社会だけで通用するのかと私は思いましたら、今度アメリカ人も加わりましてこういうふうな合意事項ができたようです。法律は法律、しかし運用でやっていこう、めでたしめでたしと、こう言っていいのかどうか、実は大変問題があるわけです。  私が仮にアメリカ人の弁護士で、日本国内で罪を犯したと疑われている米軍人、しかも米軍当局に拘禁されている米軍人の家族から弁護を依頼された、こういうふうに仮定します。  私は、まず最初に米軍当局に対して、おまえのところで今身柄を拘禁しているあの身柄は絶対に日本側に渡してはいかぬぞ、地位協定が何しろそうなっているんだからねということを念を押します。米軍当局はわかりましたと、こう言うんでしょうが、日本当局から再三要請があるとぐらぐらし出して、どうも最大限の考慮を払うということになっておりますから渡すような雲行きになってくるんでしょう。  その際、私はアメリカの司法裁判所に対して、日本側に身柄を渡してはならないという差しとめの訴訟を起こします。これは弁護士として被疑者の人権を守る立場にあるわけですから当然のことです。アメリカの司法裁判所ですからかなり時間的なこともありまして、米軍当局は身柄を日本側に引き渡してしまうこともあるかもしれません。身柄は日本の警察が拘禁しているわけです。  そうなりますと、私は今度は日本の裁判所あてに人身保護法に基づきまして人身保護令状の請求をします。何しろ地位協定では米軍当局が拘禁する、こうなっておるわけですから、合意事項でこうなっておるああなっておるといっても、先ほど照屋委員質問に対して法的効果はないんだと。そのとおりだと思います。単なる行政当局の取り決めにすぎないわけですから、いかなる法的効果もない、地位協定にはとても対抗すべくもないわけです。日本の裁判所もこれはやむを得ないということで身柄を米軍に引き渡すことになろうかと思います。  そうなりますと、そのころはもう日米両国ともハチの巣をつついたような大騒ぎになっているんじゃないかと思います。米議会にとってみれば、地位協定では身柄を渡さないとなっているのにかかわらず何で軍は身柄を日本側に渡したんだ、そういう合意事項があるなしということは我々は関知しないんだと、米議会人ならば恐らくこういう言い方をするでしょう。  一方、沖縄を初め基地のある土地の方々にとっては、何だ、この前、合意事項ができてすべて問題は解決した、こういうふうに聞いておったら、身柄は依然として動かないではないか、一体何をやっているんだということで質問外務省に殺到してくるだろうと思いますけれども、その場合にどのようなお答えになるのか、ちょっと教えていただきたい、こういうわけでございます。
  184. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 大変専門的な立場からの御質問で、実際に裁判に案件がかかった場合の取り扱いという場合にどのように裁判所が対応するかというところまでの御議論で、ちょっと私のお答えの能力を超えるように思いますけれども。  地位協定十七条五(c)は、我が国が第一次の裁判権を有する場合において被疑者が米側により拘禁されているときは日本側は公訴を提起するまでの間は暫定的に米側当局に拘禁の権利を認めた規定でありますけれども、この条文の規定の解釈上、米側が特定の場合にこのような権利を行使せず日本側に起訴前に被疑者の身柄を渡すようなルールをつくるということは私は妨げられていないのではないかと。そういうことからいいますと、合同委員会の合意という形で新たなルールがつくられたわけで、その新たなルールに従ってなされたことについては私は正当性があると思います。
  185. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 地位協定は言うまでもなく条約でありまして、双方の議会が承認しているわけです。ところが、今回の合意事項というのは単なる行政当局の約束事ですから、どちらが優先するかといえば、もう議論の余地はないわけです。  それから、私は先ほど弁護士であるとすればというふうに申しましたけれどもアメリカ人というのは非常に人権感覚が旺盛ですからその辺は日本人とちょっと違うかと思いますけれども、特に弁護士なんかは法律を駆使して頑張るわけですから、当然のこととして、この身柄は地位協定によって米軍が起訴までは拘禁するとなっておるから、日本側に引き渡せば日本の警察というのは何かずく拷問をする、あれこれと自白をとる、そんな警察に渡してならぬぞということは強く申し入れてくるはずですよ。  その際に、いやいや、何か約束があるから日本立場も考えて渡しますよということは恐らく軍当局は言わないと思います。アメリカの軍当局はまた法律に非常に神経質ですから、過敏ですから、そういう申し入れを見越して渡すようなことは一切しないと思います。  よってもって、今回、合意事項でこういうことができました、よってこれからは安心ですよという外務当局の説明は実は説明になっていないんじゃないかという気がしてしょうがないんです。向こうは法律の世界ですから、内々の話し合いで何とか事を済まそうというこの日本人の理屈はなかなか通用しない社会だと思います。
  186. 林暘

    政府委員(林暘君) 御専門なので、裁判所でどうこうということについて私がお答えする立場にはございませんけれども、これをつくりました趣旨及び考え方についてちょっと御説明をさせていただきます。  先生御案内のとおり、十七条の五項というのに刑事裁判権及びそれに伴います拘禁の規定があるわけでございます。十七条五項の(a)はいわゆる一般的に相互に援助するという規定でございますけれども、これは考え方としては、第一次刑事裁判権を持っている方が拘禁をするということについて基本的にお互いに援助しましょうという規定、それの特則として(c)項で、日本国が第一次裁判権を持つものであっても向こう側が逮捕した場合の拘禁の規定を置いているわけでございます。  これは、この(c)項の解釈としては、そういう状況に被疑者がある場合には(a)項ではなくて同項で米側がその拘禁を継続することができるという規定なわけです。したがって、それはアメリカ側がそういう被疑者を拘禁し続けなければいけないという規定ではなくて、同項にもかかわらず同項で拘禁することができるという規定なわけです。  今回、合同委員会の合意という形でいたしましたのは、そういう場合であっても、一定の場合、あそこに書かれております特定の場合にはアメリカがその拘禁の権利を行使しないということ、それを向こう側が約束してくれたわけですけれども、それは何もアメリカのだれかそこの責任を持っていない者が言ったわけではなくて、アメリカ政府部内で十分検討した上でこういうことをしましょうということを言ったわけでございますから、今、委員がおっしゃるように裁判の問題というのはどうなるかわかりませんけれどもアメリカ政府としてはこういう場合には好意的配慮を払って、したがって特定の例外を除けばそういう被疑者は日本側に引き渡すということを約束したというふうに我々は理解をしております。
  187. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 (c)項が義務規定ではなくて権限規定だということはおっしゃるまでもなくわかっていることなんです。  今回のケースを取り上げてみますると、日本側の要請に対して渡さなかったわけでございましょう。その根拠は何だと聞かれれば、米側は(c)に求めていくわけです。今度その(c)の例外的な取り扱いを、約束でやります、双方の約束事でやっていきますと、こう言うんですが、大原則が条約、法律で決められている限り、その例外的な取り扱い、例外が今度は原則になるんだというような言い方をされておりますけれども、例外的な取り扱いというのはあくまでも例外だろうと思いますよ。米軍側がそれに応じて原則的に身柄を渡してくれると考えるのはこちらの考え過ぎだと私は思います。世の中そんな簡単なものではないと思います。  私はこの前もちょっと申し上げましたけれども、法律は法律としておいて運用で解決していこうというのは、これは日本人の生活の知恵なんですけれども、世界的に通用している理屈じゃないんですよ。日本の社会もだんだんそれから脱却しつつあるようでして、食糧管理法でやみ米はだめだと言っておきながら日本人がもう全部平気でやみ米の取引をしている、だれもあれを怪しまない、やっぱりこれじゃいかぬのじゃないかということで、この前、新食糧法というのができ上がったわけですよ。だんだん日本の社会も二十一世紀に向けてそうなりつつあるんだろうと思います。  ですから、法律は法律、運用でやっていきますよというこの考え方はもう今日的ではない、恐らく維持できないんじゃないかと思います。そういうことを私はアメリカ側に篤と説明をしまして、理屈がもしあなたのおっしゃるとおりだとすればそういう線で協定を改めていけばいいわけですから、なるほどそうですねと、それだけのことです。  そもそも地位協定ができたのは一九六〇年というから三十数年前、時代がもうすっかり変わっておるんですね。全体的な見直しを要求する声もあるようですけれども、そういう線に沿って一回アメリカ側ととことん話し合ってみたらどうでしょうか。いつまでも昔の感覚で、冷戦時代の感覚で、この協定は直せないとかこの条項は大事だから譲れないとか、そんな人たちはもう一線を退いているはずですから、お互い同士が虚心坦懐に話し合えば地位協定の矛盾点なんかは幾らでも解決できるんじゃないかという気がするわけです。この十七条五項(c)はまことに一つの先例的な存在価値があるんだろうと私は思っておりますので、そういう意味で実は申し上げておるわけです。  それから、結論的に申し上げますと、今回の合意事項でもって身柄を引き渡してもらえるようなケースは私はまずないと思いますよ。もしそれが原則だと考えておるとすれば、極めて楽観的過ぎるんじゃないかという気がしてしょうがないんです。
  188. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 地位協定の問題は、議員もよく御承知のとおり、日米関係だけにあるものではなくて、米韓にもございます、米豪にもございます、アメリカヨーロッパ各地ともあるわけでございまして、アメリカとのやりとりの中で、アメリカはこの問題に関してすべて地位協定を持っている国との関係を十分検討した上でなければこの問題の処理はできないということがあると思うんです。そうしたことを踏まえると、地位協定の改定には相当な時間的な問題もあれば、非常な困難も伴うであろうというふうに思います。  いや、困難があろうと時間がかかろうとやってみる価値はあるではないかという御指摘であるとすれば、それはやってみる価値はあるかもしれません。あるかもしれませんが、一方で、その言ってみた結果起こる可能性のあるリスクというものも相当大きいと思わなければならないと思います。私は、それに伴うリスクとトライする価値というものとをやはり厳粛にはかってやるのが外交上極めて重要ではないかというふうに考えたわけでございます。
  189. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 ちょっと揚げ足をとるようですけれども、どういうリスクがあるんでしょうか。具体的に説明していただきたいと思います。
  190. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 余り具体的な説明は差し控えたいと思いますが、つまりこのことがアメリカ国内にある日本に対するもろもろの気持ち、そういうものに口実を与えるという可能性は一つあると思います。
  191. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 私は、今日の日米関係というのはもうそういう余計なことを考える時代じゃないんじゃないか、お互いが虚心坦懐に議論し合ってそれで理解し合えるような立場、関係に来ているんじゃないかという気がしておるわけです。  それと、韓国、ドイツあるいはNATO諸国、これも日本と同じ立場にあるわけですから、やはりこういう問題についてはこういう関係諸国の協議会でも開いて、同じような意思を統一してアメリカと協議に入るということも一つの方法ではないかというふうに考えておりますので、余りリスクを恐れずに、具体的に挙げられないようなリスクを余り恐れずに、ひとつ前向きで取り組んでもらえればという気がいたします。  以上でございます。質問を終わります。
  192. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 先ほどちょっと勘違いして早く切り上げましたので、格別のお許しをいただいて、若干補足をして、もし時間があったら大臣のお考えをと。  先ほど規模を拡大するように申しましたが、その拡大された規模を、農家のだんなさんが年間千六百時間ぐらいの労働、奥さんが頭脳労働を入れて八百時間、合計二千四百時間の肉体的、頭脳的労働によって完全にマスターできるような田んぼづくり、これがこの次に期待する農地基盤整備の実力であります。簡単に言いますと、水をかけるのと水をはかすのが自由自在にできる、これはもう今日相当やっております。それから、一枚の田んぼが普通三十アールなんですね。この三十アールの田んぼですと、十アール当たり労働時間が四十時間で五百キロの収量を上げますから、労働一時間では十二キロ半とれると。これを、農水省が今計画しておりますのは一つの区画が一ヘクタールというのでありますが、これでやりますと十アール当たり大体十時間ぐらい、四分の一になります。収量は今までどおりにいったとすれば一時間当たり五十キロですね。これまでから見ますと四倍ぐらいの労働生産性の向上でありますけれども、もちろんこれでは国際競争はできません。これを三ヘクタール以上に広げますと、十アール当たり二時間で五百キロ、うまくやれば六百キロとれますので、労働一時間で二百五十キロから三百キロ。これなら十分アメリカ、オーストラリアの稲作と相撲がとれます。  そういうように、三十アールのものを一ヘクタールにする、一ヘクタールのものを三ヘクタール以上にする。どちらが金が余計かからぬかというと、三ヘクタール以上にする方が金がかからないのであります。それは、一区画を大きくすれば農道とか水路が少なくて済みますので、大体において三%から五%ぐらい実質的な農地がふえるんですね。同時に、農道や水路が減りますから、農地基盤整備の事業費が大体三〇%以上は安くなると。これはただ計算じゃありませんで、私どもの仲間が全国四カ所で実績を上げて数字がわかっておりますのでありますから、非常に安い設備投資で非常に収量が上がる、特に労働生産性が飛躍的に上がるということがもう実証されておるわけであります。  規模拡大しても農地があちこち飛び飛びになる、こういう欠陥がありますけれども、私どもの仲間がやっている経験では、理想を言えば農協の支所単位ですね、五百ヘクタールぐらいの単位の中で農地を持っている農業者が地主組合をつくって、国際的に通用する大きな田んぼをつくりまして、それを有能な農家に貸して上がってくる小作料を面積割に配当する。こういう地主組合を結成して、有能な農家に貸す方式をとりますと、これはもう所有地は全く所有権に束縛されないで第一級の団地化された田んぼができるわけでありまして、これはぜひ実行してもらいたい。  では、そうなると農村の人口が減るだろう、こういう心配があるわけでありますけれども、これはプロの大型農家の数は減りますけれども、米、麦、大豆のほかに果物、野菜ですと半分でいいですし、施設園芸や畜産ならさらに少なくていいんです。そういうことのほかに、ドイツのクラインガルテンですね、国が二戸当たり百坪ぐらいずつ農業のプロ以外の国民に土地を貸している、そして農村地帯の生産と喜びをエンジョイさせる、こういうことをやっております。そういうことで、ドイツでは大体百万戸以上の農民以外の人が農業を楽しんでいる、こういうことをやるべきだというふうに言っております。  あと一分ぐらいしかありませんが、何か御所見がありましたら。
  193. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 御高説を伺いました。     —————————————
  194. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、田沢智治君、宮澤弘君が委員辞任され、その補欠として山本一太君、中原爽君が選任されました。     —————————————
  195. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  196. 立木洋

    ○立木洋君 私は、日本共産党を代表して、新たな特別協定に反対する討論を行います。  第一の理由は、沖縄での米兵による少女暴行事件で沸き起こった沖縄県民と国民の日米地位協定抜本見直しの要求には、運用の改善などと言って日本政府自身が拒否的な態度をとりながら、アメリカが要求する米軍の駐留経費の日本側負担の拡大のためには、地位協定の第二十四条に違反してまでも特別協定日本が負担を背負い込むという全く屈辱的な対応をとり、耐えがたい犠牲を引き続いて県民や国民に押しつけようとしているからであります。  第二に、在日米軍駐留経費の日米負担義務を定めた明確な基準として、日米地位協定第二十四条があるにもかかわらず、基準をあいまいにして負担増大を容認してきたこれまでの歴代内閣の対米追随的な対応以上に、新たに米軍の訓練、移動の分野にまで負担を拡大したものであるという点にあります。こうした対米追随的な対応の積み重ねは、米側が最終的には円建て経費を一〇〇%支払ってほしいというように、施設建設費や艦船修理費、航空機・艦船・軍用車両の油代など円ベースで支払う経費の要請や、これまでの交渉経緯でも米側は電話代、ごみ処理費なども負担を要求していることを見るならば、今後も日本側が負担を拡大しないという何らの保証もないという点にあります。  第三に、アメリカ日本に部隊を置く方が安上がりだと言っている点があります。米軍の維持的経費のさらなる拡大は、物品役務融通の日米協力の企てと相まって、アジア太平洋地域及び地球規模の諸問題に日米両国の部隊が共同して対処する日米役割の強化を先取りするものにほかなりません。  最後に、こうした日米軍事力依存の強化と安保体制の拡大強化の中で、日本政府自身がみずから署名代行する強権発動に踏み切る姿勢を示していることは、沖縄県民と日本国民への挑戦的な態度と言わざるを得ません。  こうしたことに道を開く本特別協定に断固反対し、討論を終わります。
  197. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  198. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、本件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  199. 木庭健太郎

    委員長木庭健太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時七分散会