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小池百合子君 私は、新進党を代表し、先日
大阪で開催されました
APEC大阪会議に関しまして、
総理並びに
通産、
外務大臣に質問させていただきます。
まず、ただいま
APECに関する御
報告を
通産、
外務各
大臣からちょうだいしたわけでございますが、
APECの
議長を務められ、
首脳会議に出席されたはずの
村山総理大臣からの御
報告がないことに、強い不満を感じるところでございます。
国会での
総理報告は不要と考えられるということは、つまり
国会軽視と指摘せざるを得ないわけであります。
さて、今から五十二年前の同じ月、十一月、
東京において大
東亜会議が開かれました。
アジア各国の
首脳が
日本の地に集うのはそのとき以来、五十二年ぶりのことであります。戦後五十年の節目の年に、
アメリカや
オセアニア等の
国々も加えて、戦場ではなく、自由な
市場のあり方についての
会議が持たれたことに深い感銘を覚えます。
現在、
APEC加盟国の
人口は
世界の四〇%、GDPの総計では五〇%に達し、中でも
東アジア地域は
世界の
成長センターと目されるように目覚ましい
発展を続けております。それだけに、
APECの動向は
世界経済全体に影響を与えるものとして
世界が注目していたわけでございますが、今回採択された
行動宣言を初め、
アジア的なるあいまいさが目立ち、わかりにくいものとなっております。
APECのAはアシビキュァス、あいまいのAではないかともささやかれているほどでございます。
そこで、
総理及び
関係大臣にお尋ねいたします。
まず、
我が国にとって、
国民にとって、
APECとはどのような利点をもたらすのか、明らかにしていただきたいというのが一点。
外務大臣、お答えください。
二点目には、そもそも
APECをどう性格づけておられるのでしょうか。
機構としての
存在か、またはクラブ、フォーラムとしての
存在なのか。特に、
貿易と投資の
自由化を強力に進めるため
APECの
機構化を進めてきた
クリントン・
アメリカ大統領という
牽引車を欠いた今回の
会議において、
APECの性格と
流れは変わったと言わざるを得ません。
APECの
流れを変えることは、
議長国として当初から予定しておられたのか、それとも結果的にそうなったのかについて明らかにしていただきたいと思います。
三点目には、六七年に結成されました
ASEANを初め、
NAFTA、
EU、そしてAFTA(
ASEAN自由貿易地域)、さらには
ASEANプラスEU、
ASEANプラスNAFTAなどの冷戦後
世界各地で台頭する
地域経済機構とその組み合わせの中で、
我が国が唯一加盟する
APECがどのように関連し、また今後どのような
調整をしていくのか、
世界の
貿易の
ブロック化を
日本はどう防ぐのか、
総理に伺いたいと思います。
また、
マレーシアの
マハティール首相が提唱するEAECですが、今回、形を変えて
存在したと言わざるを得ません。
APEC開催中、
ASEAN諸国と
日本、
中国、
韓国、それにあえてオーストラリアを加えて開かれました非公式
閣僚会議がそれであります。
外務省はこの
会議をほとんど無視し、
通産省はこの
会合に積極的に臨んだと伝えられておりますが、これでは二元
外交ととられても仕方がございません。EAECに対して
我が国はどのような対応をとるおつもりなのか、
総理、そして
外務、
通産各
大臣に伺わせていただきます。
さらに、
行動宣言でうたわれておりますWTOとの整合についてですが、具体的な
市場開放の
推進に当たってWTOとの
調整をどのように考えておられるのでしょうか。
外務大臣に伺います。
ほかにもあいまいな点をこの際クリアにしておきたいと思います。
「
行動指針」にあります「強制されない自主的な
自由化」という
意味をもっとわかりやすく御
説明していただきたい。
ちなみに、
総理は記者会見で、「各
メンバーの自主的
行動と共同
行動を組み合わせるという
アジア・
太平洋方式を提示するもの」と答えておられます。自主的
行動と共同
行動を組み合わせることのどこが
アジア・
太平洋方式なのか、明らかではありません。
自由化という言葉は、結局、
各国が自分に都合のよいように自由にするという
意味の
自由化なのでありましょうか。
また、「強制されない」という部分について
通産大臣に伺います。
ボゴール宣言にうたわれました「先進工業
経済は遅くとも二〇一〇年までに、開発途上
経済は二〇二〇年までに自由で開かれた
貿易及び投資という目標を達成する」というのは、結局、自主的な努力目標にすぎないということなのでありましょうか。それで達成が可能なのでありましょうか。
議長国としての責任も問われますので、ここは明快にお答えください。特に、
市場開放に後ろ向きになりがちな
我が国の目標達成が気になるところでございます。
また、ちなみに、先進工業国と開発途上国の目安はどこに置くのでしょうか。
国民一人当たりのGDPでございますか。
さて、
議長としての大任を果たされました
村山総理、御苦労さまでございました。聞き役に徴され、議事進行に努められたと伺っておりますが、
議長としては当然のことであり、たとえ開催地が
日本でなくとも、また
議長が他の国の
首脳であっても、必要な要件がと思います。
ただ、それだけでは必要十分条件とは言えません。今回の
大阪会議では、
議長として以外の立場、つまり
我が国の
総理大臣として
APECのビジョンづくりにいかなるリーダーシップを振るわれたのか。
行動計画の作成という実務的作業
段階であったとはいえ、
総理のリーダーシップやメッセージが伝わったかというと否定せざるを得ません。
唯一挙げるならば、前進のためのパートナー、PFPに対しまして百億円を拠出するということでしょうか。しかし、それは旧態依然とした小切手
外交の域を抜け出ておりません。
会議の根回しには口を出さずに官僚に任せ、お金だけは出すという姿勢では、会場提供者にすぎなくなってしまいます。いや、そうではないとおっしゃるのならば、
総理はどのようなリーダーシップを振るい、どのようなメッセージを発信されたのか、ここで改めて伺いたいと思います。
これまで
APECでリーダーシップを発揮してきた
アメリカの
クリントン大統領の
訪日中止ですが、
米国政府の機能
停止という事態への対処が
最大の理由であります。しかしながら、
アメリカの
APEC担当大使でありますサンドラ・クリストフ女史は、
大統領の
訪日中止決定前からこう話っています。「今回の
APECは、
日本が
議長国としてリーダーシップを発揮せず、
APEC全体の
自由化推進を妨害する見通しが強いため、
大統領が出席してもプラスとなることは少ない」。
訪日中止の背景にはそんな思いがあったからと考えざるを得ません。
大統領の
訪日中止の
意味は、
日本にとって、
APECへの不参加もさることながら、国賓としての
日本公式訪問取りやめという側面の方が大きいと受けとめる必要があると思います。
それには幾つかの背景があります。
第一は、
沖縄の米軍基地問題です。
沖縄の少女暴行事件は、同じ女性としても許しがたい事件であります。
アメリカ兵の暴行は決して許されるものではなく、ましてや、先日即刻辞任したマッキー
太平洋軍司令官の
発言は火に油を注ぐような愚劣なものでありました。また、
アメリカは、ボトムアップ・レビューなどの国防総省の公文書において「ジャパン・アンド・オキナワ」といった表現をいまだに平気で使っていることにも本質的な問題がございましょう。
しかし、
日本政府の対応のまずさをここで見過ごすわけにはまいりません。
沖縄の土地を米軍に基地として提供しているのは、ほかでもない
日本政府でありますのであればこそ、少女暴行事件の発生直後、まず最初に
沖縄の人に謝罪すべきだったのは
日本政府だったのではないでしょうか。それなのに、今回の事件発生直後の
日本政府の対応は後手に回るばかりでありました。事は、
日米関係のみならず、
沖縄問題、国内問題なのです。代理署名についてようやく決心されたようでございますが、防衛庁の高官が進言したとおりの結論にたどり着いた今、問題を複雑化させた責任をどうお考えなのか、
総理、お答えください。
第二の理由は、大和銀行事件であります。
大蔵省がこの犯罪にかかわったとする見方が
アメリカでは大半を占めているところに、
国際金融局長が文化の違いという
日本の特殊性を声高に訴えるなど、開き直りの姿勢さえ見られます。この問題についてのその後の
日本政府の対応は、
アメリカの司法当局の結論を待ってということで、全く人任せ、問題の
重要性を軽視しておられるのではありませんか。
総理、こうした問題先送り、明確な対応を避ける村山政権が得意とするこれらの姿勢が、結果として
アメリカ大統領の
訪日をおっくうにしたのではありませんか。
APECのかなめであるべき
日米関係を一層強力にするためにも、今後、
沖縄の米軍基地問題の解決に向けてどのような対応をなさるのか。そしてまた、大和銀行問題に対しては大蔵省
関係者を含んでどのようになさるのか。
総理、はっきりとお答え願います。
また、江藤前総務庁長官の
発言をめぐります
政府の混乱について伺いたいと思います。
問題は、江藤
発言に関しまして野坂官房長官が記者会見の席上、「事態を静観する。様子を見る」と述べられている点でございます。相手の出方を見てからということは、
韓国側が
日韓首脳会議の中止といった強硬な反応を見せなかったならばそのまま看過したということでございましょうか。つまり、自分では何も決めない、できればそのうち事態がおさまってくれればいいなといった楽観論、ひとりよがりではありませんか。
総理、閣僚の罷免・任命権者は一体だれなのか、お答えください。
最近、株式
市場は
村山総理辞任説が
流れたことで三日間にわたって株価が連騰いたしました。株式
市場は本音の
世界でございます。
最大の景気対策は
総理がおやめになることを
市場が催促しているのであります。(
拍手)
総理の任命権者は、直接、間接的に
国民であります。ちなみに、さきの佐賀県での参議院補欠選挙におきましては、全国で数少ない自民党の牙城であっただけに我が党は苦杯をなめましたが、社会党候補については、公選法九十三条が定めるところの供託金没収という事態に陥るほどの低い得票に終わっております。佐賀県民の貴重な一票が生かされないのに、なぜ社会党
委員長であるあなたが延々と
総理を続けておられるのか、理解に苦しみます。
世界の七不思議でもあります。
「
日本は東洋と西洋のかけ橋の立場にある」と述べましたのは重光葵外相です。一九五六年十二月、
国連総会において
我が国の国連加盟受諾演説の結びの言葉でありました。国連創立五十周年のことし、
APECという新しい
機構の
議長国である
我が国が、東洋でもなく西洋でもなく、かけ橋どころかどこからも
信頼されず漂流する
日本。
我が国を一体どこまで漂わせるおつもりでしょうか。このままでは、
ボゴール宣言で定めました目標達成期限について、
我が国は二〇二〇年を目標とする国に転落するのではないかとさえ思うのであります。
現在でも空洞化している
我が国の政治の現状にあって、みずからの進退、そして
国民に信を問うお考えが
総理におありかどうか伺いまして、私の質問を終わります。(
拍手)
〔内閣
総理大臣村山富市君
登壇〕