○高見裕一君 今回
提出されました
災害対策基本法及び大
規模地震対策特別措置法の一部を
改正する
法律案並びに
災害対策基本法の一部を
改正する
法律案に対して、自由民主党・自由連合、
日本社会党・護憲民主連合、新党さきがけを代表いたしまして、
質問をさせていただきます。
阪神・
淡路大震災から早くも九カ月が過ぎました。未曾有の都市型
災害の
発生に対して
政府として
現行法上可能な限りの
対応をしてきたことは、
被災者の
方々にも
認識されているところであります。しかし、今振り返って考えると、改善するべきことや今後の施策に生かしていかなければならない
課題も数多くあったのではないかと思います。
私は、
阪神・
淡路大震災発生の一月十七日に
現地で
被災をし、
被災地の現状をつぶさに見てきた一人の人間として、今回の
災害対策基本法改正案について意見を述べ、
質問をさせていただきたいと思います。
まず、今回の
阪神・
淡路大震災で感じたことは、緊急時の
対応、特に震災の場合には、
地震が起こった直後できるだけ速やかに
救助活動を開始することの
重要性を強く
認識いたしました。
私も、
被災直後から神戸の町に飛び出して
人命救助などを行ってまいりましたが、個人としてできることには当然限度があり、
組織的、効率的な救助・
救援活動を少しでも早く行うこと、それは警察官や消防署員だけではなく、
自衛隊員の早期の
活動開始が非常に重要になってくると痛感したところでございます。そのためには、大
規模災害の場合には、特にいち早く
災害の
状況や正確な情報を
政府、特に首相官邸に集中して、短い時間で的確な判断を下すことができるシステムを構築することが要求されるのではないかと思います。
次に、ライフラインの切断の問題であります。
大都市においては、ライン型の構造を築くことによって効率よくインフラを
整備するということはあるのでしょうが、いざ震災が起こってみると、ライフラインが切断され、復旧にも時間がかかったこともあり、市民
生活に耐えがたいほどの非常に大きな影響を及ぼしました。
今後は、耐震型の共同溝を
設置するなどライフラインの
強化も必要になってくるのでしょうが、少なくともポイントごとに井戸や浄化槽型のトイレなどが
設置されていれば、あれほどまでに市民
生活に不都合が生じることはなかったのではないかと感じており、そのような施策を今後講ずることが必要になってくると痛感しております。
さらに、今回の
阪神・
淡路大震災では、市民の自発的な
活動の
重要性が強く
認識されたのではないかと思います。多くのNGOや一般市民、若い学生の
方々などが自発的に
被災地を訪れ、精力的に
活動を展開してくれたおかげで、
被災者の
方々がどれほど助けられたか枚挙にいとまがありません。
しかし、
ボランティアと行政との連携について言えば、改善するべき点も多々あったのではないかと思います。ふだんから行政とNGOや市民が連携する場を設けることによって、
災害時にも効率的な行政と
ボランティアとの連携が可能となるのではないかと思います。このことは、
海外の
ボランティア団体の
受け入れについても言えるのではないでしょうか。緊急時に慌てて
対応を考えるのではなく、ふだんから
海外の
ボランティアやNGOについての情報収集を行ったり、
法律の
整備を行うことが肝要であると考えます。
加えて、今回の
地震では、地域市民によるコミュニティーが
初期の救命
活動の極めて重要な一翼を担い、数多くの人命を救ったという事実があります。市民による自発的な
活動と国や地方
自治体による
組織的な
活動をうまく組み合わせることによって、
初期段階での効率的な
救援や
災害復旧作業を行うことができ、その意味では、市民の自主的な
活動と行政の連携を真剣かつ積極的に模索するべき時代に来ているのではないかと考えます。そして、多くの
自治体にまたがる大
規模な
災害が起こった場合には、地方
自治体間の連携が重要であり、現在でも東海や関東地方では積極的に行われておりますが、
日本は世界的にも有数の
地震発生国であることを考えれば、全国的に広域
防災体制を展開する必要があるのではないでしょうか。特に、人口の集中した都市部での
災害に対しては、周辺
自治体との
協力なしに有効な
災害救助活動はできないと強く実感をしているところであります。加えて、今回の
地震の後で大きな問題となったのは心のケアの問題であり、お年寄りや幼児や、とりわけ体の不自由な
方々などのいわゆる弱者に対する
配慮であります。どこへ行けば何をしてくれるのかなとの情報が末端まで伝わりにくいということから、どうしても弱者の方の不安が募る結果となり、それが心の問題にまで発展するケースも多々見受けられました。弱者の方でも安心して
避難生活が送れるような
措置をぜひとも講ずるべきですし、広報
活動や相談窓口の
充実、メンタルケア、医療
活動等の
充実も図らなければならないと痛切に感じたところであります。不幸にも今回の
阪神大震災で亡くなられた五千五百人を超える
方々の死をむだにしないように、
災害発生時には一人でも多くの人命を救うことができるように、
被災した
方々が一刻も早く安心して
生活できるような施策を国としても講じていかなければならないと存じます。
そこで、まず
総理にお尋ねをしたいのですが、先ほど申しましたように、大
災害が起こった場合には、
初期の
段階でのできるだけ多くの正確な情報収集とその情報の集中、集まった情報の迅速な処理と判断が要求され、そのことによって
被害を最小限に食いとめることが可能になるのではないかと考えます。情報収集体制については、今回の
政府案で、
阪神・
淡路大震災の何を教訓とし、どのような改善がなされたのか、お答えをいただきたいと存じます。
加えて、
防災面における市民の自発的な
活動、すなわち
ボランティア活動や地域コミュニティーの
活動を今後どのように位置づけ、はぐくんでいこうとしているのか、さらに、そのような市民の自発的な
活動と行政はどのように連携を図っていこうとしておられるのか、あわせてお答えをいただきたいと存じます。
また、
政府として、五千五百人を超える
犠牲者を出した
阪神・
淡路大震災の経験を踏まえ、
災害対策全般の
見直しについて取り組んでいるところだと聞いております。特に、ことし三月に
設置された
防災問題懇談会においては、
自然災害に
対応した国、
地方公共団体による
防災体制のあり方について熱心な議論、検討が行われた結果、運用・実務面の改善を行うべき施策と法制度など制度面の改善を行うべき施策の両面にわたって詳細な提言が
提出されたところであります。
総理は、この提言をどのように受けとめ、今後の
災害対策の取り組みのために、今回の
災害対策基本法の
改正案にどのような形で反映させたのかについてもお答えいただきたいと存じます。
次に、
阪神・
淡路大震災以降、国、
地方公共団体を通じた
防災体制のあり方については、国会においてもさまざまな議論がなされてきたところであります。
災害対策というものは極めて多岐の分野にわたり、それらについては予算面においても積極的な
対応が図られてきているところであります。そのような多様な分野にわたる
災害対策については、各省庁を挙げて総合的に取り組むことが必要であると考えます。その際には、各省庁がばらばらに施策を遂行するのではなく、施策の総合調整が的確になされなければならず、総合調整機能を果たす国土庁の
責任は極めて大きなものであると考えます。
もとより
災害は、その一つ一つがかなり異なる性格を有するため、その予防や
応急措置、復旧・復興に対するそれぞれの施策については、これまでの経験と知識の積み重ねによって不断の改善を続けるべきであると考えます。今回の
阪神・
淡路大震災を教訓とした
災害対策の推進に当たり、当面考えられる制度的な手当てについて、特に私が先ほど申し上げた事柄について今回の
災害対策基本法の
改正に十分盛り込まれたものになっているのかについて、
国土庁長官の見解をお
伺いしたいと思います。
さらに、
災害発生後の緊急即応体制のあり方についてもかなりの議論が行われてきたところでありますが、機動的な即応体制をできる限り早期に立ち上げ、有効に機能させる仕組みを構築することが
災害発生時には非常に重要になってまいります。特に
阪神・
淡路大震災のような激甚な
災害につきましては、国全体として、すなわちそれぞれの省庁の
最高責任者が集い、
災害対策の横断的調整がなされることが重要であり、
緊急災害対策本部についてはそのような方向で大幅に
組織や
権限の面での
改正が予定されております。
新たな
緊急災害対策本部においては、
本部長となる
内閣総理大臣の活躍が大いに期待されることになるわけであります。しかし、今回の法
改正においては、
緊急災害対策本部における
総理の立場はあくまでも
総理府の長としての立場であり、内閣の長としての立場ではありません。確かに調整
権限は
強化されておりますが、緊急時における強い
リーダーシップが要求されているときに、それだけの
権限で十分であるかどうかについては、さきがけとしては今後とも十分に議論を深めていかなければならないものと考えます。この問題については内閣法の
改正も視野に入れなければなりません。その点をも含めて、今後の
総理の
災害対策についての取り組みについてお
伺いしたいと思います。
今回は、
政府からも
新進党からも
災害対策基本法の
改正案が
提出されているところでありますが、両者ともに、雲仙・普賢岳や
阪神・
淡路大震災の教訓をもとに、今後の
災害対策をより
強化し、
被害の拡大を最小限にして、機動的な
災害対策を講ずることができるような
改正を目指しているのだと確信いたします。
ところで、
災害救助の
現場における
指示については、できるだけ
住民の危険を減らし、
救助活動などを効率的に行うためにも、
現行法を
強化する必要性があるという点においては
政府案も
新進党案も一致しているのでしょうが、
現場の
自衛官の
権限行使の
要件や内容については若干の違いが見受けられます。
例えば
権限の内容については、
政府案にある
警戒区域の設定のかわりに、
新進党案では、避難のための立ち退きの
指示ができるという
規定が置かれております。このような
指示については、緊急性が低い場合もあると考えられますが、このような
規定を置いた
趣旨についてお聞かせいただきたく思います。
また、
自衛隊の
派遣についても、
新進党案では、市町村にも
派遣要請をできる
権限を、
都道府県知事の場合よりも
要件を絞って与えております。この件についても今回の
防災業務計画では詳細な
規定が追加されており、自主
派遣での
対応も十分に可能であるとも考えられますが、あえて市町村の
派遣要請を
規定した意義についてもあわせて明確に、しかし簡潔に
答弁をお願いいたします。
最後に、今肝心なことは、いたずらに感情的、揚げ足取り的、魔女狩り的な不もの
責任者探してはなく、
被災地が一日も早く復興し、市民が健全な暮らしを取り戻すよう万全の
支援、手助けを国を挙げて行い、かつ、次の
災害に備えていかに
被害を最小限に抑え得るかを我々の人知を尽くして前向きに、
国民生活と国の将来を見据えて議論することであります。
復興や
災害対策を政争の具にすることなく、真摯な討議を積み重ねていただけることを
被災地に住む人間の一人しとて切望しつつ、私の
質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣村山富市君
登壇〕