○谷口隆義君 私は、新進党・民主
会議を代表して、ただいま御提案のありました
政府提出の
租税特別措置法の一部を
改正する
法律案について、村山総理並びに
関係大臣に質問を行うものであります。
今回の法案は、まさに税の立場から景気の活性化を図るものであり、そのような観点から、現下の
経済不況の根底の問題としての金融機関の不良債権についてお尋ねいたします。
我が国は、現在、戦後最大量悪の
経済不況の渦中にあります。昭和五十年代の初めに高度
経済成長からいわゆる安定成長に移行し、また、昭和六十年代から
平成にかけては急激な好況を呈し、我が国の財政におきましても、一時、
特例公債がゼロという時期があったわけであります。まさにバブルと言われるような時代でありました。バブルの崩壊とともに日本
経済の右上がり神話は消え去り、それとともに戦後日本
経済の構造的な問題が露呈化されたのであります。
戦後の日本
経済は、欧米の新たな知識を効率的に吸収し、いち早く製品化した上シェア拡大を目指し、大量生産により薄利多売を続ける一方、獲得した市場には参入規制等を設け排他的領域とすることで利益の
確保を図るメカニズムが構築され、それを通し、日本企業のシェア重視、低収益体質と、
経済社会全体にわたって強い既得権体質が生み出されたわけであります。
このような
経済構造の中で、我が国に対する国際的な自由化の要請等や、リーディングカンパニーの勢いが低下したことや、またバブルの崩壊等により
経済全体が横ばいになり、数々の問題が露呈化いたしたのであります。これに対して、
政府は過去五次にわたって累計四十六兆にも上る
経済対策を講じたのでありますが、顕著な効果がなく、今般の十四兆二千億の大型
経済対策の効果も疑わざるを得ません。
それは、現下の
経済不況の元凶に、硬直化した
構造上の問題と日本の金融システムの危機的な状況があるからであります。また、このような金融システムの状況は、今や世界
経済破綻の火種になる様相を呈しております。これは先日のG7において大きなテーマになり、武村大蔵大臣が欧米諸国に対し
説明されたと聞いております。
そこで、まず初めに、戦後最大、十四兆二千億の今回の
経済対策について、金融機関の不良債権の処理について方向が明確でない状況でどれほどの効果があるのか、
経済企画庁長官に景気の先行きについてまずお尋ねいたします。
また、G7の大きなテーマになるほど欧米諸国が我が国の金融システムに危機感を持っているわけでありますが、これについて大蔵大臣の御所見をお願いいたします。
十月十六日に、米国議会下院銀行・金融
委員会による日本の金融システムに関する公聴会が行われたそうであります。その際に、日本の不良債権の実態、また大蔵省の対応の仕方について不透明であるというようなことであったようでございます。
私も先日の大蔵
委員会で質問いたしたわけでありますが、不良債権の四十兆というのは根拠のない推定値であります。一刻も早く、積み上げ計算による不良債権総額を開示するところからスタートすべきであると申し上げたわけであります。米国議会下院の銀行・金融
委員会のジム・リーチ
委員長も、延滞債権の把握の仕方で日本は六カ月、米国は三カ月等の違いがあるにせよ、アナリストによれば公表額の二倍に当たる八十兆との試算もあると、このようにおっしゃっているようであります。四十兆からそれほどふえることはないと答弁された武村大蔵大臣の御所見をお聞きいたします。
先日も申し上げたわけでありますが、不良債権の処理をめぐっては、まず不良債権の全容を把握することから始まるものと考えております。国民の間に、全容を把握されておらない何とも不気味さが不要な不信感を生み出し、預金者は預け入れ金融機関に過敏になり、企業家は不透明な状況の中で設備投資にちゅうちょをいたしておるわけであります。地域金融機関は突然の預けかえの恐怖に恐れております。そこで、一刻も早く全金融機関の不良債権の開示を行うべきと考えます。
本年九月の金融システム安定化
委員会審議経過報告におきましては、都銀、長信銀、信託二十一行は、
平成八年三月期より、破綻先債権、延滞債権、金利減免債権はすべて開示の方向になっておりますが、地銀、第二地銀は金利減免債権は開示の方向ではありません。また信用金庫は、一定規模以上のみ破綻先債権を開示し、あとは
対象になっておらず、信用組合においてはすべて開示の
対象になっておらないわけであります。
そこで、総理、大蔵大臣にお聞きいたしたいのでありますが、なぜ全金融機関の開示が一挙にできないのですか。できないとするなら、その理由を提示してもらいたい。また、米国における基準と同様に、より厳しい開示基準の御検討をお願いいたしたい、このように思うわけであります。これらが不良債権処理の第一歩であることを念頭に入れていただいて、御所見をお願いいたします。
次に、先日、邦銀が経営危機に陥った場合、米国連邦制度理事会、FRBが、日本の金融当局が保有する米国債と引きかえに即座に数十億ドルの範囲内でドル
資金を供給することで日本側と合意したと一部マスコミの報道がありましたが、これはまさに米国が日本の金融システムがいかに危険であると見ているかという証左であります。この合意の有無も含めて、大蔵大臣の御見解をお願いいたします。
次に、現在の我が国の金融行政の中で、地方自治体に機関委任事務の
関係から一部欠落していると言ってもよい信用組合の経営破綻処理についてお尋ねいたします。
信用組合の経営破綻に伴う費用を賄う特別基金を、国、地方自治体、民間金融機関から
資金を集めて五年間の時限
措置で設置する方針だとお聞きいたしております。預金保険機構とは別組織で、当初の基金規模は一千億から二千億程度のようであります。現在、御存じのように、国民の側からは公的
資金の導入について大変厳しいものがございます。経営責任の追及、金融機関の自助努力等の前提で公的
資金の導入が検討されるべきであります。大蔵大臣の御所見をお願いいたします。
今回の
租税特別措置法の一部を
改正する
法律案には、土地税制が盛り込まれておりません。御存じのように、土地取引が鎮静化いたしております。バブルの崩壊により地価が下落し、また、金融機関の貸出金の見合いの担保として徴求された不動産は、不良債権化した貸出金とともに沈滞した状況にあります。土地取引の活性化は景気を刺激し、活性化の大きな要因となるものであります。
今回の新進党案に盛られておる長期保有の個人の土地譲渡課税の軽減については、特別控除後の譲渡益四千万円以下の部分につき、国、地方合わせて三二・五%の税率を二六%に引き下げ、土地の流動化を
促進しようとするものであります。自民党は
平成六年に同じ
内容の法案を
提出しており、
賛成されるものと理解しておりますが、社会党の
委員長である村山総理に御所見をお尋ねいたします。
また、次に、所有期間が二年を超える土地の譲渡について、個人の
事業所得等の課税の
特例及び法人の土地等の追加課税制度の適用を取りやめることと、特定の
事業用資産の買いかえ等の課税の
特例制度の
拡充等、景気刺激策としての土地取引の流動化を
促進する税
改正についても、同様に総理の御所見をお願いいたします。
土地取引の鎮静化とともに、証券市場におきましても、一九八九年に日経ダウ三万九千円をつけて以降、一時は一万四千円台まで下落し、金融機関の所有しておる有価証券の含み益がなくなるのではないかという危険ラインまで危惧されたわけでありますが、現在は一万八千円台で推移いたしておりますが、まだBIS基準の問題や、金融機関の貸し出し姿勢が慎重になり、貸し渋りから、より景気を鎮静化させるのではという心配は取り除かれておりません。
今回の
政府案の自己株式の利益による消却の際に生じるみなし配当課税の
特例は、消却する際のネックになっていたものであり、バブルの渦中で行われたエクイティーファイナンスの結果、市中に流通しておる過大な株を消却することにより、株価変動を活性化させるものであり、新進党が前国会に
提出していた法案を今回
政府案として
提出されたものでございます。遅きに失したとはいえ、評価されるものであります。
しかし、それと同時に、現在、株式取引のもう一つのネック、有価証券取引税の非課税に触れておらないのはバランスを逸していると言っても過言ではありません。今こそ均衡財政理論に一時的に目をつぶってもカンフル剤を打たなければ、失速した証券市場の回復は望めません。そのために有価証券取引税の三年間の凍結について、大蔵大臣の御所見をお伺いいたします。
次に、地価税についてお伺いいたします。
土地基本法の精神から、保有にかかわる税金に重点を置くべく導入されたもので、固定資産税が激変緩和
措置があるにせよ急激に上昇する中で、地価税のあり方が問われております。また、納税者が偏在しておるというような批判をされておる中で、地価税負担が重くのしかかっておるわけであります。私は、固定資産税とのバランスの中で、地価税は一時凍結すべきものであると考えますが、総理の御所見をお伺いいたします。
国際的調和の観点、また産業の空洞化の原因として、我が国の法人税の引き下げの方向が
政府税調で検討されていると聞いております。その中で、課税ベースの拡大ということで引当金、準備金の縮減が考えられているようでありますが、企業会計上、
租税特別措置法上の準備金と本法で限定されている引当金は区別する必要があります。政策目的により計上が認められている利益留保性の準備金と負債性引当金として妥当な額の計上が義務づけられているものとの区別であります。税法の観点のみならず、企業会計原則の観点からも検討する必要があります。大蔵大臣の御見解をお伺いいたします。
いずれにいたしましても、現在の
経済不況の原因は、我が国の抱える構造的なものであり、従来型の
経済対策では顕著な効果を上げることは困難だと考えます。抜本的な改革という外科的治療を講じなければならない現在、自社さきがけの政権で抜本的な
経済対策を行い得るのでしょうか。
土地税制、また不良債権処理をめぐっても
意見は相反する中で、現政権の無策ぶりは大多数の国民の認めるところであります。戦後五十年、我が国国民が営々と築き上げてきた日本
経済が今や破綻寸前であり、欧米諸国から大きく評価を下げている現在、村山政権は大いにその責任を自覚し、形だけの政権維持に固執せず、一刻も早く国民に信を問うべきであります。
政治家のかじ取りが今ほど必要なときはなく、国家百年の大計は今このときであるとの自覚のもとに、議場のすべての議員に共通の問いかけをさせていただきまして、皆様方の御清聴に感謝し、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣村山富市君
登壇〕